説明

酸化物材料および半導体装置

【課題】トランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供する。また、このような半導体装置を実現する酸化物材料を提供する。
【解決手段】それぞれ、c軸配向し、ab面、上面または被形成面に垂直な方向から見て少なくとも三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)で表される、ab面(または上面または被形成面)においては、a軸またはb軸の向きが異なる二種以上の結晶部分を含む酸化物膜を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物材料、並びに該酸化物材料を用いたトランジスタなどの半導体素子を含む半導体装置およびその作製方法に関する。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイス、メモリ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネルに代表される電気光学装置、発光素子を有する発光表示装置等を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタの多くはアモルファスシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用いたトランジスタは電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することができる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
近年は、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。酸化物半導体として、例えば、酸化亜鉛、In−Ga−Zn−O系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1および特許文献2で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電気的特性は、酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜と接する絶縁膜との界面の電子状態に影響されやすい。そのため、トランジスタの作製中または作製後において、絶縁膜に接する酸化物半導体膜が非晶質状態であると、絶縁膜と酸化物半導体膜との界面において欠陥状態密度が大きくなり、トランジスタの電気的特性が不安定となりやすい。
【0007】
また、酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光を照射することで電気的特性が変化し、信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明の一態様は、トランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。また、このような半導体装置を実現する酸化物材料を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、それぞれ、c軸配向し、ab面、上面または被形成面に垂直な方向から見て少なくとも三角形状または六角形状の原子配列を有する、a軸またはb軸の向きが異なる二種以上の結晶部分を含む酸化物材料である。
【0010】
本発明の一態様に係る酸化物材料は、亜鉛を含んでいる。亜鉛を含むことにより、それぞれ、c軸配向し、ab面、上面または被形成面に垂直な方向から見て少なくとも三角形状または六角形状の原子配列を有する、a軸またはb軸の向きが異なる二種以上の結晶部分を含む酸化物材料を形成しやすくなる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る酸化物材料は、インジウム、ガリウム、亜鉛、錫、チタンおよびアルミニウムから選ばれた二種以上の元素を含む。
【0012】
本発明の一態様に係る酸化物材料は、スパッタリング法、蒸着法、プラズマ化学気相成長法(PCVD法)、パルスレーザー堆積法(PLD法)、原子層堆積法(ALD法)または分子線エピタキシー法(MBE法)などによって形成することができる。
【0013】
本発明の一態様に係る酸化物材料は、組成の異なる二種の膜を積層し、積層後の加熱処理によって結晶化させることで、形成することができる。なお、酸化物材料の成膜条件によっては、積層後の加熱処理を行わなくても結晶化することもある。
【0014】
本発明の一態様は、複数の金属層または金属酸化物層を有し、該複数の金属層または金属酸化物層は、4配位の酸素原子(以下、4配位のO)を介して結合する酸化物材料である。また、複数の金属層または金属酸化物層は、4配位の中心金属原子と、5配位の中心金属原子と、5配位および6配位の両方をとりうる中心金属原子と、を有する酸化物材料である。
【0015】
本発明の一態様に係る酸化物材料が導電性を有する場合、トランジスタのゲート電極の材料に用いることができる。なお、ゲート電極は、本発明の一態様に係る酸化物材料からなる膜と金属膜との積層構造としてもよい。
【0016】
または、本発明の一態様に係る酸化物材料が導電性を有する場合、トランジスタのソース電極およびドレイン電極の材料に用いることができる。なお、ソース電極およびドレイン電極は、本発明の一態様に係る酸化物材料からなる膜と金属膜との積層構造としてもよい。
【0017】
本発明の一態様に係る酸化物材料が半導体性を有する場合、トランジスタのチャネル形成領域に本発明の一態様に係る酸化物材料からなる膜を用いることができる。その場合、例えば、トランジスタのソース電極およびドレイン電極として機能する導電膜と絶縁膜との間に接して設ける。なお、該絶縁膜は、トランジスタのゲート絶縁膜、下地絶縁膜または層間絶縁膜として機能する。
【発明の効果】
【0018】
トランジスタに安定した電気的特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、このような半導体装置を実現する酸化物材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図2】本発明の一態様に係る酸化物材料の組成比を示す図。
【図3】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図4】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図および断面図。
【図5】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図6】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図7】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図8】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図9】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図10】本発明の一態様に係る液晶表示装置の一例を示す回路図。
【図11】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の一例を示す回路図および電気特性を示す図。
【図12】本発明の一態様に係る半導体記憶装置の一例を示す回路図および電気特性を示す図。
【図13】本発明の一態様に係る半導体装置を適用した電子機器の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更しうることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0021】
以下、本発明の説明を行うが、本明細書で用いる用語について簡単に説明する。トランジスタのソースとドレインは、一方をドレインと呼ぶとき他方をソースとする。すなわち、電位の高低によって、それらを区別しない。したがって、本明細書において、ソースとされている部分をドレインと読み替えることもできる。
【0022】
また、電圧は、ある電位と基準の電位(例えばグラウンド電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位を言い換えることが可能である。
【0023】
本明細書においては、「接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在している場合だけのこともある。
【0024】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、それぞれ、c軸配向し、ab面、上面または被形成面に垂直な方向から見て少なくとも三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては、金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している、ab面(または上面または被形成面)において、a軸またはb軸の向きが異なる二種以上の結晶部分を含む酸化物(CAAC酸化物:C Axis Aligned Crystalline Oxideともいう。)材料について説明する。
【0026】
CAAC酸化物とは、広義に、非単結晶であって、ab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、または正六角形の原子配列を有し、かつ、c軸に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0027】
CAAC酸化物は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC酸化物は結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では明確に判別できない。
【0028】
なお、CAAC酸化物を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC酸化物を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、上面または被形成面に垂直な方向)に揃っていてもよい。または、CAAC酸化物を構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、上面または被形成面に垂直な方向)を向いていてもよい。
【0029】
CAAC酸化物は、その組成等に応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成等に応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0030】
このようなCAAC酸化物の例として、膜状に形成され、上面または被形成面に垂直な方向から観察すると三角形、または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子、または金属原子と酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる材料を挙げることもできる。
【0031】
CAAC酸化物に含まれる結晶部分について図1を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図1は上方向をc軸方向とし、c軸と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図1において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0032】
図1(A)に、1個の6配位の金属原子M_1と、金属原子M_1に近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。このような金属原子1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を、ここでは小グループと呼ぶ。図1(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図1(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。
【0033】
図1(B)は、1個の5配位の金属原子M_2と、金属原子M_2に近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図1(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。
【0034】
図1(C)は、1個の4配位の金属原子M_3と、金属原子M_3に近接の4個の4配位のOと、による構造を示す。図1(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。
【0035】
これらの配位数を有する金属原子同士は、4配位のOを介して結合する。具体的には、4配位のOが足して4個のときに結合する。例えば、6配位の金属原子M_1が上半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子M_2の上半分の4配位のO、5配位の金属原子M_2の下半分の4配位のOまたは4配位の金属原子M_3の上半分の4配位のOのいずれかと結合することになる。
【0036】
これらの配位数を有する金属原子は、4配位のOを介して結合し、さらに層構造の合計の電荷が0となるように小グループ同士が結合して1グループを構成する。なお、小グループのいくつかの集合体を1グループと呼ぶ。
【0037】
図1(D)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデル図を示す。
【0038】
図1(D)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、In原子の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図1(D)において、Sn原子の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図1(D)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZn原子と、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZn原子とを示している。
【0039】
図1(D)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する1グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子が、上半分に1個の4配位のOがあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の3個の4配位のOを介してSn原子の上半分の1個の4配位のOが結合し、そのSn原子の下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に1個の4配位のOがあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の3個の4配位のOを介してZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の1個の4配位のOを介してIn原子が結合している構成である。この1グループを複数結合して1周期分である1ユニットを構成する。
【0040】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。したがって、Snからなる小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図1(D)に示すように、Znの小グループが二つ結合した構造が挙げられる。例えば、Snからなる小グループが1個に対し、Znの小グループが二つ結合した構造が1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0041】
また、Inは5配位および6配位のいずれもとることができるものとする。図1(D)に示した1グループを繰り返す構造とすることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。なお、In−Sn−Zn−O系の結晶は、mの数が大きいと結晶性が向上するため、好ましい。
【0042】
また、このほかにも、In−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、In−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系酸化物半導体などを用いた場合も同様である。
【0043】
次に、CAAC酸化物膜の形成方法について説明する。
【0044】
まず、平坦性を有する基板に第1の酸化物膜をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などによって成膜する。なお、成膜時に基板を加熱することで、非晶質部分に対して結晶部分の占める割合の多い酸化物膜とすることができる。例えば、基板温度が150℃以上450℃以下とすればよい。好ましくは、基板温度が200℃以上350℃以下とする。
【0045】
成膜時の基板温度を高めることによって、より非晶質部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC酸化物膜を成膜することができる。
【0046】
次に、基板に第1の加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理を行うことによって、より非晶質部分に対して結晶部分の割合の多い酸化物膜とすることができる。第1の加熱処理は、例えば200℃以上基板の歪み点未満で行えばよい。好ましくは、250℃以上450℃以下とする。雰囲気は限定されないが、酸化性雰囲気、不活性雰囲気または減圧雰囲気(10Pa以下)で行う。処理時間は3分〜24時間とする。処理時間を長くするほど非晶質部分に対して結晶部分の割合の多い酸化物膜を形成することができるが、24時間を超える加熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。ただし、24時間を超えて加熱処理を行っても構わない。
【0047】
酸化性雰囲気とは酸化性ガスを含む雰囲気である。酸化性ガスとは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などであって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、加熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上(不純物濃度が10ppb以下、好ましくは0.1ppb未満)とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。
【0048】
ここで、不活性雰囲気とは、窒素、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)などの不活性ガスを主成分とする雰囲気である。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満とする。
【0049】
第1の加熱処理はRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で加熱処理を行うことができる。そのため、非晶質部分に対して結晶部分の割合の多い酸化物膜を形成するための時間を短縮することができる。
【0050】
次に、第1の酸化物膜上に第2の酸化物膜を成膜し、酸化物積層体を形成してもよい。第2の酸化物膜は、第1の酸化物膜と同様の方法から選択して成膜すればよい。
【0051】
第2の酸化物膜を成膜する際、基板加熱しながら成膜することで、第1の酸化物膜を種結晶に、第2の酸化物膜を結晶化させることができる。このとき、第1の酸化物膜と第2の酸化物膜が同一の元素から構成されることをホモ成長という。または、第1の酸化物膜と第2の酸化物膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されることをヘテロ成長という。
【0052】
なお、第2の酸化物膜を成膜した後、第2の加熱処理を行ってもよい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の方法で行えばよい。第2の加熱処理を行うことによって、非晶質部分に対して結晶部分の割合の多い酸化物積層体とすることができる。または、第2の加熱処理を行うことによって、第1の酸化物膜を種結晶に、第2の酸化物膜を結晶化させることができる。このとき、第1の酸化物膜と第2の酸化物膜が同一の元素から構成されるホモ成長としても構わない。または、第1の酸化物膜と第2の酸化物膜とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されるヘテロ成長としても構わない。
【0053】
以上の方法で、CAAC酸化物膜を形成することができる。
【0054】
ここで、In−Sn−Zn−O系の材料がとりうる組成比を図2に示す。In−Sn−Zn−O系の材料が採る代表的な組成比は、In:Sn:Zn=2:1:3[原子数比]、In:Sn:Zn=2:1:4[原子数比]などが挙げられ、その近傍の組成比とすると好ましい。例えば、図2に示したIn:Sn:Zn=36.5:15:48.5[原子数比]などとしてもよい。また、In−Sn−Zn−O系の材料をターゲットに用いて、スパッタリング法によってIn−Sn−Zn−O系酸化物膜を成膜する場合、Znが蒸発して失われやすいため、所望の組成比に対してZnの割合の高いターゲットを用いる。例えばZnを50原子%以上含ませると好ましい。なお、組成式InSnZnで表される酸化物がInSnZnの近傍の組成比という場合、a、b、cが2つの方程式a+b+c=7、(a−2)+(b−1)+(c−4)≦0.25を満たす。
【0055】
なお、非晶質であるIn−Sn−Zn−O系酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタの電気的特性が報告されており、電界効果移動度30cm/Vsが得られている(Eri Fukumoto, Toshiaki Arai, Narihiro Morosawa, Kazuhiko Tokunaga, Yasuhiro Terai, Takashige Fujimori and Tatsuya Sasaoka、 「High Mobility Oxide Semiconductor TFT for Circuit Integration of AM−OLED」、 IDW’10 p631−p634)。
【0056】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示したCAAC酸化物材料を用いたトランジスタについて、図3乃至図9を用いて説明する。
【0058】
図3は、トップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図3(A)にトランジスタの上面図を、図3(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを図3(B)に示す。
【0059】
図3(B)に示すトランジスタは、基板100上に設けられた下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102の周辺に設けられた保護絶縁膜104と、下地絶縁膜102および保護絶縁膜104上に設けられた高抵抗領域106aおよび低抵抗領域106bを有する酸化物半導体膜106と、酸化物半導体膜106上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108を介して高抵抗領域106aと重畳して設けられたゲート電極110と、ゲート電極110の側面と接する側壁絶縁膜112と、少なくとも低抵抗領域106bおよび側壁絶縁膜112と接する一対の電極114と、を有する。該トランジスタは、該トランジスタを覆って設けられた層間絶縁膜116と、層間絶縁膜116に設けられた開口部を介して一対の電極114と接続する配線118と、を有しても構わない。
【0060】
ここで、酸化物半導体膜106は、実施の形態1に示したCAAC酸化物膜を用いる。酸化物半導体膜106に実施の形態1に示したCAAC酸化物膜を用いることで、電界効果移動度が高く、かつ信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0061】
図3(B)に示すトランジスタは、ゲート電極110をマスクに用いて、自己整合的に酸化物半導体膜106の低抵抗領域106bを形成することができる。そのため、低抵抗領域106b(および同時に形成される高抵抗領域106a)のためのフォトリソグラフィ工程を省略することができる。また、低抵抗領域106bとゲート電極110との重なりがほとんどないため、低抵抗領域106bおよびゲート電極110の重なりによる寄生容量が生じず、トランジスタの高速動作が可能となる。なお、高抵抗領域106aは、ゲートにトランジスタのしきい値電圧以上の電圧が印加されたときにチャネルを形成する。
【0062】
図3(B)に示すトランジスタは、側壁絶縁膜112を有するため、トランジスタの動作時には、低抵抗領域106bを介して、一対の電極114から高抵抗領域106aに電界が印加されることになる。低抵抗領域106bを介することで、高抵抗領域106a端部の電界集中が緩和され、チャネル長の小さい微細なトランジスタにおいてもホットキャリア劣化などの劣化を抑制でき、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0063】
下地絶縁膜102は、加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いると好ましい。酸化物半導体膜106と接する膜に加熱処理により酸素を放出する絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜106および酸化物半導体膜106の界面近傍に生じる酸素欠損を修復することができ、トランジスタの電気的特性の劣化を抑制できる。
【0064】
下地絶縁膜102は、酸化物半導体膜106が結晶成長しやすいように、十分な平坦性を有することが好ましい。具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下となるように下地絶縁膜102を設ける。なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、数式1にて定義される。
【0065】
【数1】

【0066】
なお、数式1において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0067】
下地絶縁膜102は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セシウム、酸化タンタルおよび酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。
【0068】
「加熱処理により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて放出される酸素が酸素原子に換算して1.0×1018atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上であることをいう。
【0069】
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0070】
TDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そしてこの積分値と標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。
【0071】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、数式2で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のガスとしてほかにCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子および質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0072】
【数2】

【0073】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。数式2の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した。
【0074】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0075】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0076】
上記構成において、加熱処理により酸素を放出する膜は、酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiO(X>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0077】
下地絶縁膜102から酸化物半導体膜106に酸素が供給されることで、酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との界面準位密度を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体膜106と下地絶縁膜102との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、電気的特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0078】
さらに、酸化物半導体膜106の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体膜の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そこで、下地絶縁膜102から酸化物半導体膜106に酸素が十分に供給されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体膜106の酸素欠損を低減することができる。
【0079】
保護絶縁膜104は、250℃以上450℃以下、好ましくは150℃以上800℃以下の温度範囲において、例えば1時間の加熱処理を行っても酸素を透過しない性質を有すると好ましい。
【0080】
以上のような性質により、保護絶縁膜104を下地絶縁膜102の周辺に設ける構造をとることで、下地絶縁膜102から加熱処理によって放出された酸素が、トランジスタの外方へ拡散していくことを抑制できる。そのため、下地絶縁膜102に酸素が保持され、トランジスタの電気的特性および信頼性を高めることができる。
【0081】
ただし、保護絶縁膜104を設けない構造を除外するものではない。
【0082】
保護絶縁膜104は、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セシウム、酸化タンタルおよび酸化マグネシウムの一種以上を選択して、単層または積層で用いればよい。
【0083】
また、基板100として、可とう性基板を用いてもよい。その場合は、可とう性基板上に直接的にトランジスタを作製する。なお、可とう性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可とう性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可とう性基板である基板100に転置する方法もある。その場合には、非可とう性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0084】
ゲート電極110は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ag、TaおよびW、それらの窒化物、酸化物ならびに合金から一種以上選択し、単層でまたは積層で用いればよい。なお、実施の形態1で示したCAAC酸化物膜を用いても構わない。
【0085】
ゲート絶縁膜108は、下地絶縁膜102と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0086】
一対の電極114は、ゲート電極110と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0087】
層間絶縁膜116は、下地絶縁膜102と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0088】
配線118は、ゲート電極110と同様の方法および同様の材料によって形成すればよい。
【0089】
図3(B)に示すトランジスタの作製方法の一例を以下に示す。
【0090】
ここで、全ての膜において、トランジスタの特性に悪影響を与える水素または水などの不純物が含まれないようにすると好ましい。例えば、基板100などの表面に付着している不純物も膜に取り込まれてしまう。そのため、各層の成膜前に減圧雰囲気または酸化性雰囲気にて加熱処理を行い、基板100などの表面に付着している不純物を除去しておくことが好ましい。また、成膜室に存在する不純物も問題となるため、あらかじめ除去しておくと好ましい。具体的には、成膜室をベーキングすることで成膜室内部からの脱ガスを促し、排気しておくことが好ましい。また、各層の成膜前(または成膜室の大気開放後)には、5分程度のダミー成膜をダミー基板100枚程度に対し行っておくと好ましい。なお、ダミー成膜を1枚行うごとに成膜室の排気を行うとより好ましい。ここで、ダミー成膜とは、ダミー基板に対してスパッタリングなどによる成膜を行うことをいう。ダミー成膜によって、ダミー基板及び成膜室内壁に膜を堆積させ、成膜室内の不純物及び成膜室内壁に存在する吸着物を膜中に閉じこめることができる。ダミー基板は、放出ガスの少ない材料が好ましく、例えば基板100と同様の材料を用いてもよい。ダミー成膜を行うことで、後に成膜される膜中の不純物濃度を低減することができる。
【0091】
また成膜に用いるガスの純度も膜中の不純物濃度に影響するため、なるべく純度の高いガスを用いることが好ましい。スパッタリング法を用いる場合、例えば、純度が9Nであるアルゴンガス(露点−121℃、水0.1ppb、水素0.5ppb)および純度が8Nの酸素(露点−112℃、水1ppb、水素1ppb)のガスを用いればよい。
【0092】
まず、基板100上にスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて、下地絶縁膜102として示した材料から選択し、下地絶縁膜152を成膜する(図5(A)参照。)。
【0093】
次に、フォトリソグラフィ工程などによって下地絶縁膜152を加工し、下地絶縁膜102を形成する(図5(B)参照。)。
【0094】
次に、スパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて、保護絶縁膜104として示した材料から選択し、保護絶縁膜154を成膜する(図5(C)参照。)。
【0095】
次に、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理によって、下地絶縁膜102と上面の揃った保護絶縁膜104を形成する(図5(D)参照。)。なお、下地絶縁膜102と保護絶縁膜104とは、概略上面の高さが一致していればよい。
【0096】
次に、酸化物半導体膜を実施の形態1に示した酸化物膜と同様の方法で形成し、フォトリソグラフィ工程などによって加工して酸化物半導体膜156を形成する(図5(E)参照。)。このとき行われる加熱処理によって、下地絶縁膜102から酸化物半導体膜へ酸素が供給される。
【0097】
次に、絶縁膜158、導電膜160をこの順番で成膜する(図5(F)参照。)。成膜方法は、いずれもスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて、それぞれゲート絶縁膜108、ゲート電極110で示した材料から選択して成膜すればよい。
【0098】
次に、フォトリソグラフィ工程などによって導電膜160を加工し、ゲート電極110を形成する(図6(A)参照。)。
【0099】
次に、ゲート電極110をマスクに用い、絶縁膜158を介して酸化物半導体膜156の抵抗値を低減する不純物120を添加し、高抵抗領域106aおよび低抵抗領域106bを有する酸化物半導体膜106を形成する(図6(B)参照。)。なお、不純物120は、リン、窒素またはホウ素などを用いればよい。不純物120の添加後に250℃以上650℃以下の温度で加熱処理を行ってもよい。なお、不純物120は、イオン注入法を用いて添加すると、イオンドーピング法を用いて不純物120を添加した場合と比べ、酸化物半導体膜106中への水素の添加が少なくなるため好ましい。ただし、イオンドーピング法を除外するものではない。
【0100】
なお、絶縁膜158を介して不純物120を添加することにより、酸化物半導体膜106に不純物120の添加する際に生じるダメージを低減することができる。
【0101】
次に、絶縁膜162をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて、側壁絶縁膜112として示した材料から選択し、成膜する(図6(C)参照。)。
【0102】
次に、絶縁膜162をエッチングすることにより側壁絶縁膜112を形成する。該エッチングは、異方性の高いエッチングであり、側壁絶縁膜112は、絶縁膜162に異方性の高いエッチング工程を行うことで自己整合的に形成することができる。ここで、異方性の高いエッチングとしては、ドライエッチングが好ましく、例えば、エッチングガスとして、トリフルオロメタン(CHF)、オクタフルオロシクロブタン(C)、テトラフルオロメタン(CF)などのフッ素を含むガスを用いることができ、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスまたは水素(H)を添加しても良い。さらに、ドライエッチングとして、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いるのが好ましい。
【0103】
側壁絶縁膜112を形成するとともに、絶縁膜158を加工し、ゲート絶縁膜108を形成することができる(図6(D)参照。)
【0104】
次に、導電膜をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜し、フォトリソグラフィ工程などによって該導電膜を加工し、一対の電極114を形成する(図7(A)参照。)。
【0105】
次に、層間絶縁膜116をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜し、一対の電極114を露出する開口部を設ける。次に、導電膜をスパッタリング法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法などを用いて成膜し、フォトリソグラフィ工程などによって、該導電膜を加工して、一対の電極114のそれぞれと接する配線118を形成する(図7(B)参照。)。なお、層間絶縁膜116として、少なくとも一部に20nm以上、好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上の厚さを有する酸化アルミニウム膜を用いると好ましい。酸化アルミニウム膜を用いることによって、トランジスタの外部から水素または水などのトランジスタの電気的特性に悪影響を及ぼす不純物の侵入を抑制できる。また、下地絶縁膜102から放出された酸素がトランジスタから外方拡散することを抑制できる。これらの効果は、酸化アルミニウム膜の膜質にもよるが、ある程度の厚さが必要とされる。ただし、あまりに酸化アルミニウム膜を厚くしすぎると生産性が低下してしまうため、適切な厚さを選択するとよい。
【0106】
以上の工程によって、図3(B)に示すトランジスタを作製することができる。
【0107】
図4は、トップゲート・ボトムコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図4(A)にトランジスタの上面図を、図4(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面A−Bを図4(B)に示す。
【0108】
図4(B)に示すトランジスタは、基板100上に設けられた下地絶縁膜103と、下地絶縁膜103の溝部に設けられた一対の電極115と、下地絶縁膜103および一対の電極115上に設けられた高抵抗領域106aおよび低抵抗領域106bを有する酸化物半導体膜106と、酸化物半導体膜106上に設けられたゲート絶縁膜109と、ゲート絶縁膜109を介して高抵抗領域106aと重畳して設けられたゲート電極111と、を有する。該トランジスタは、該トランジスタを覆って設けられた層間絶縁膜117と、層間絶縁膜117、ゲート絶縁膜109および酸化物半導体膜106に設けられた開口部を介して一対の電極115と接続する配線119と、を有しても構わない。
【0109】
なお、下地絶縁膜103、ゲート絶縁膜109、ゲート電極111、一対の電極115、層間絶縁膜117および配線119は、それぞれ下地絶縁膜102、ゲート絶縁膜108、ゲート電極110、一対の電極114、層間絶縁膜116および配線118と同様の材料および同様の方法で形成すればよい。
【0110】
図4(B)に示すトランジスタは、一対の電極115が酸化物半導体膜106の下部で接している点で図3(B)に示すトランジスタと異なる。このような構造とすることで、一対の電極115を形成する際に、同時に酸化物半導体膜106の一部がプラズマや薬液などに曝されることがないため、酸化物半導体膜106を薄く形成する場合(例えば、5nm以下の厚さで形成する場合)などに好ましい構造である。
【0111】
図4(B)に示すトランジスタの作製方法の一例を以下に示す。
【0112】
まず、基板100に下地絶縁膜153を成膜する(図8(A)参照。)。
【0113】
次に、下地絶縁膜153を加工して下地絶縁膜103を形成する(図8(B)参照。)。
【0114】
次に、導電膜165を成膜する(図8(C)参照。)。
【0115】
次に、CMP処理を行い、下地絶縁膜103と上面の揃った一対の電極115を形成する(図8(D)参照。)。
【0116】
次に、酸化物半導体膜156を形成する(図8(E)参照。)。
【0117】
次に、ゲート絶縁膜109、導電膜161をこの順番で成膜する(図8(F)参照。)。
【0118】
次に、導電膜161を加工してゲート電極111を形成する(図9(A)参照。)。
【0119】
次に、ゲート電極111をマスクに用い、ゲート絶縁膜109を介して酸化物半導体膜156の抵抗値を低減する不純物120を添加し、高抵抗領域106aおよび低抵抗領域106bを有する酸化物半導体膜106を形成する(図9(B)参照。)。
【0120】
次に、層間絶縁膜117を成膜し、一対の電極115を露出する開口部を設ける。次に、導電膜を成膜し、該導電膜を加工して、一対の電極115のそれぞれと接する配線119を形成する(図9(C)参照。)。
【0121】
以上の工程によって、図4(B)に示すトランジスタを作製することができる。
【0122】
本実施の形態では、実施の形態1に示したCAAC酸化物材料を酸化物半導体膜106に用いているため、電界効果移動度が高く、かつ信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0123】
本実施の形態は他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0124】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2に示したトランジスタを用いて作製した液晶表示装置について説明する。なお、本実施の形態では液晶表示装置に本発明の一態様を適用した例について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、EL(Electroluminescence)表示装置に本発明の一態様を適用することも、当業者であれば容易に想到しうるものである。
【0125】
図10にアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置の回路図を示す。液晶表示装置は、ソース線SL_1乃至SL_a、ゲート線GL_1乃至GL_b、および複数の画素200を有する。画素200は、トランジスタ230と、キャパシタ220と、液晶素子210と、を含む。こうした画素200をマトリクス状に配置することで液晶表示装置の画素部を構成する。なお、単にソース線またはゲート線を指す場合には、ソース線SLまたはゲート線GLと記載する。
【0126】
トランジスタ230として、実施の形態2で示したトランジスタを用いることができる。実施の形態2で示したトランジスタを用いることで、消費電力が小さく、電気的特性が良好かつ信頼性の高い液晶表示装置を得ることができる。なお、酸化物半導体を用いたトランジスタとそのほかのトランジスタとを区別するために、トランジスタ230で示す記号を用いる。
【0127】
ゲート線GLはトランジスタ230のゲートと接続し、ソース線SLはトランジスタ230のソースと接続し、トランジスタ230のドレインは、キャパシタ220の一方の容量電極と、液晶素子210の一方の画素電極と、それぞれ接続する。キャパシタ220の他方の容量電極および液晶素子210の他方の画素電極は、共通電極と接続する。なお、共通電極はゲート線GLと同一層かつ同一材料で設けてもよい。
【0128】
また、ゲート線GLは、ゲート駆動回路と接続される。ゲート駆動回路は、実施の形態2に示したトランジスタを含んでもよい。該トランジスタはオフ電流を小さくでき、またオンのための電圧を小さくすることができる。そのため、消費電力を低減することができる。
【0129】
また、ソース線SLは、ソース駆動回路と接続される。ソース駆動回路は、実施の形態2に示したトランジスタを含んでもよい。該トランジスタはオフ電流を小さくでき、またオンのための電圧を小さくすることができる。そのため、消費電力を低減することができる。
【0130】
なお、ゲート駆動回路およびソース駆動回路のいずれかまたは両方を、別途用意された基板上に形成し、COG(Chip On Glass)、ワイヤボンディング、またはTAB(Tape Automated Bonding)などの方法を用いて接続してもよい。
【0131】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0132】
ゲート線GLにトランジスタ230のしきい値電圧以上になるように電位を印加すると、ソース線SLから供給された電荷がトランジスタ230のドレイン電流となってキャパシタ220に電荷が蓄積される。一行分の充電後、該行にあるトランジスタ230はオフ状態となり、ソース線SLから電圧が印加されなくなるが、キャパシタ220に蓄積された電荷によって必要な電圧を維持することができる。その後、次の行のキャパシタ220の充電を行う。このようにして、1行〜b行の充電を行う。
【0133】
なお、トランジスタ230はオフ電流が低いトランジスタであるため、キャパシタ220に保持された電荷が抜けにくく、キャパシタ220の容量を小さくすることが可能となるため、充電に必要な消費電力を低減することができる。
【0134】
また、トランジスタ230にオフ電流の小さなトランジスタ(実施の形態2で示したトランジスタなど)を用いる場合、電圧を維持する期間を長くすることができる。この効果によって、動きの少ない画像(静止画を含む。)では、表示の書き換え周波数を低減でき、さらなる消費電力の低減が可能となる。また、キャパシタ220の容量をさらに小さくすることが可能となるため、充電に必要な消費電力を低減することができる。
【0135】
以上のように、本発明の一態様に係るトランジスタを用いることによって、信頼性が高く、消費電力の小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0136】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0137】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2に示したトランジスタを用いて、半導体記憶装置を作製する例について説明する。
【0138】
揮発性半導体記憶装置の代表的な例としては、記憶素子を構成するトランジスタを選択してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶するDRAM(Dynamic Random Access Memory)、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を保持するSRAM(Static Random Access Memory)がある。
【0139】
不揮発性半導体記憶装置の代表例としては、トランジスタのゲート電極とチャネル形成領域との間にフローティングゲートを有し、当該フローティングゲートに電荷を保持することで記憶を行うフラッシュメモリがある。
【0140】
上述した半導体記憶装置に含まれるトランジスタの一部に実施の形態2で示したトランジスタを適用することができる。
【0141】
まずは、実施の形態2で示したトランジスタを適用した半導体記憶装置であるメモリセルについて図11を用いて説明する。
【0142】
メモリセルは、ビット線BLと、ワード線WLと、センスアンプSAmpと、トランジスタTrと、キャパシタCと、を有する(図11(A)参照。)。
【0143】
キャパシタに保持された電位の時間変化は、トランジスタTrのオフ電流によって図11(B)に示すように徐々に低減していくことが知られている。当初V0からV1まで充電された電位は、時間が経過するとdata1を読み出す限界点であるVAまで低減する。この期間を保持期間T_1とする。即ち、2値メモリセルの場合、保持期間T_1の間にリフレッシュをする必要がある。
【0144】
ここで、トランジスタTrに実施の形態2で示したトランジスタを適用すると、オフ電流が低いため、保持期間T_1を長くすることができる。即ち、リフレッシュの頻度を少なくすることが可能となるため、消費電力を低減することができる。
【0145】
トランジスタTrにオフ電流の小さなトランジスタを用いる場合、電圧を維持する期間をさらに長くすることが可能となるため、さらに消費電力を低減することができる。例えば、オフ電流が1×10−21A以下、好ましくは1×10−24A以下となった実施の形態2で示したトランジスタでメモリセルを構成すると、電力を供給せずに数日間〜数十年間に渡ってデータを保持することが可能となる。
【0146】
以上のように、本発明の一態様によって、信頼性が高く、消費電力の小さい半導体記憶装置を得ることができる。
【0147】
次に、実施の形態2で示したトランジスタを適用した図11とは異なる半導体記憶装置であるメモリセルについて図12を用いて説明する。
【0148】
図12(A)は、メモリセルの回路図である。メモリセルは、トランジスタTr_1と、トランジスタTr_1のゲートと接続するゲート線GL_1と、トランジスタTr_1のソースと接続するソース線SL_1と、トランジスタTr_2と、トランジスタTr_2のソースと接続するソース線SL_2と、トランジスタTr_2のドレインと接続するドレイン線DL_2と、キャパシタCと、キャパシタCの一端と接続する容量線CLと、キャパシタCの他端、トランジスタTr_1のドレインおよびトランジスタTr_2のゲートと接続するフローティングゲートFGと、を有する。
【0149】
なお、本実施の形態に示すメモリセルは、フローティングゲートFGの電位に応じて、トランジスタTr_2のしきい値電圧が変動することを利用したものである。例えば、図12(B)は容量線CLの電位VCLと、トランジスタTr_2を流れるドレイン電流I_2との関係を説明する図である。
【0150】
ここで、フローティングゲートFGは、トランジスタTr_1を介して、電位を調整することができる。例えば、ソース線SL_1の電位をVDDとする。このとき、ゲート線GL_1の電位をトランジスタTr_1のしきい値電圧VthにVDDを加えた電位以上とすることで、フローティングゲートFGの電位をHIGHにすることができる。また、ゲート線GL_1の電位をトランジスタTr_1のしきい値電圧Vth以下とすることで、フローティングゲートFGの電位をLOWにすることができる。
【0151】
そのため、FG=LOWで示したVCL−I_2カーブと、FG=HIGHで示したVCL−I_2カーブのいずれかを得ることができる。即ち、FG=LOWでは、VCL=0Vにてドレイン電流I_2が小さいため、データ0となる。また、FG=HIGHでは、VCL=0Vにてドレイン電流I_2が大きいため、データ1となる。このようにして、データを記憶することができる。
【0152】
ここで、トランジスタTr_1に実施の形態2で示したトランジスタを適用することにより、該トランジスタのオフ電流を極めて小さくすることができるため、フローティングゲートFGに蓄積された電荷がトランジスタTr_1を通して意図せずにリークすることを抑制できる。そのため、長期間に渡ってデータを保持することができる。
【0153】
なお、トランジスタTr_2に、実施の形態2で示したトランジスタを適用しても構わない。
【0154】
以上のように、本発明の一態様によって、長期間の信頼性が高く、消費電力の小さい半導体記憶装置を得ることができる。
【0155】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0156】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2乃至4を適用した電子機器の例について説明する。
【0157】
図13(A)は携帯情報端末である。携帯情報端末は、筐体300と、ボタン301と、マイクロフォン302と、表示部303と、スピーカ304と、カメラ305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有してもよい。実施の形態3に示した表示装置を、表示部303およびカメラ305に適用することができる。また、図示しないが、筐体300内部にある演算装置、無線回路または記憶回路に、実施の形態4に示した半導体記憶装置を適用することもできる。
【0158】
図13(B)は、ディスプレイである。ディスプレイは、筐体310と、表示部311と、を具備する。実施の形態3に係る表示装置を、表示部311に適用することができる。また、本発明の一態様に係るトランジスタを用いることで、表示部311のサイズを大きくしたときにも消費電力が小さく、表示品位の高いディスプレイとすることができる。
【0159】
図13(C)は、デジタルスチルカメラである。デジタルスチルカメラは、筐体320と、ボタン321と、マイクロフォン322と、表示部323と、を具備する。実施の形態3に示した表示装置を、表示部323に適用することができる。また、図示しないが、筐体320内部に含まれる記憶回路またはイメージセンサに実施の形態4に示した半導体記憶装置を適用することもできる。
【0160】
本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、消費電力が小さく、性能の高い電子機器を提供することができる。
【0161】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0162】
100 基板
102 下地絶縁膜
103 下地絶縁膜
104 保護絶縁膜
106 酸化物半導体膜
108 ゲート絶縁膜
109 ゲート絶縁膜
110 ゲート電極
111 ゲート電極
112 側壁絶縁膜
114 一対の電極
115 一対の電極
116 層間絶縁膜
117 層間絶縁膜
118 配線
119 配線
120 不純物
152 下地絶縁膜
153 下地絶縁膜
154 保護絶縁膜
156 酸化物半導体膜
158 絶縁膜
160 導電膜
161 導電膜
162 絶縁膜
165 導電膜
200 画素
210 液晶素子
220 キャパシタ
230 トランジスタ
300 筐体
301 ボタン
302 マイクロフォン
303 表示部
304 スピーカ
305 カメラ
310 筐体
311 表示部
320 筐体
321 ボタン
322 マイクロフォン
323 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物材料は、
c軸配向し、ab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)で表され、かつa軸またはb軸の向きが異なる二種以上の結晶部分を含むことを特徴とする酸化物材料。
【請求項2】
c軸に垂直な方向から見て、金属原子、または金属原子および酸素原子が層状に原子配列することを特徴とする請求項1に記載の酸化物材料。
【請求項3】
組成の異なる二種の膜を含む請求項1または請求項2のいずれか一に記載の酸化物材料。
【請求項4】
ゲート電極と、
前記ゲート電極と接するゲート絶縁膜と、
c軸配向し、ab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)で表され、かつa軸またはb軸の向きが異なる二種以上の結晶部分を含む酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と少なくとも一部が接する一対の電極と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、前記ゲート電極と対向して前記ゲート絶縁膜に接して設けられることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−232889(P2012−232889A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94131(P2012−94131)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】