説明

MOSトランジスタ、CMOS及びこれを用いたモータ駆動用半導体集積回路装置

【課題】本発明は、製造工程の大きな変更もなく、1枚のマスクの変更のみで駆動時の出力波形の立ち上がりの時間的変化率を緩やかにできるMOSトランジスタを提供することを目的とする。
【解決手段】半導体基板上80に所定のゲート幅Wを有して延在する複数のゲート10が略平行に配置され、該ゲートの両側にソース20とドレイン30が交互に配置された複数のトランジスタセルを含むMOSトランジスタ100、100aであって、
前記ゲート10の両端部11、12と平面視的に重なり、前記ゲート10の両端部11、12から同電位の供給が可能に配置されたゲート配線層70を有し、
該ゲート配線層70と前記ゲート10の端部とを電気的に接続するゲートコンタクト40が、前記ゲート10の端部11、12の片側のみに設けられたトランジスタセルを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSトランジスタ、CMOS及びこれを用いたモータ駆動用半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチング速度が速く、電力用の半導体スイッチング素子として利用されるMOS半導体装置が知られている。かかるMOS半導体装置において、ターンオン・ターンオフ時のコレクタ電流の、コレクタ−エミッタ間電圧の時間的変化率が急激であると、定格を超えるほどのピークや振動を発生し、MOS半導体装置の誤動作や破壊を引き起こすおそれがある。よって、これを防ぐべく、2以上の整数n個のゲートを有するMOS半導体装置を用いて、その第1のゲートから第nのゲートまでを順次オン・オフ駆動することにより、ターンオン・ターンオフ時の電流及び電圧の時間的変化率を緩和するようにしたMOS半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−32064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、ゲートを分割し、回路及びデバイス構造で駆動タイミングを変化させるため、回路規模が大きくなり、チップ面積の増大によるコスト上昇を招いてしまうという問題があった。
【0004】
また、デバイス構造を大きく変えると、マスク等を総て作り変える必要が生じ、製造コストも併せて増大してしまうという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、製造工程の大きな変更もなく、1枚のマスクの変更のみで駆動時の電流の出力波形の立ち上がりの時間的変化率を緩やかにできるMOSトランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係るMOSトランジスタ(100、100a)は、半導体基板上(80)に所定のゲート幅(W)を有して延在する複数のゲート(10)が略平行に配置され、該ゲートの両側にソース(20)とドレイン(30)が交互に配置された複数のトランジスタセルを含むMOSトランジスタ(100、100a)であって、
前記ゲート(10)の両端部(11、12)と平面視的に重なり、前記ゲート(10)の両端部(11、12)から同電位の供給が可能に配置されたゲート配線層(70)を有し、
該ゲート配線層(70)と前記ゲート(10)の端部とを電気的に接続するゲートコンタクト(40)が、前記ゲート(10)の端部(11、12)の片側のみに設けられたトランジスタセルを含むことを特徴とする。
【0007】
これにより、ゲートコンタクトの有無によりゲートの寄生抵抗の値を変化させることができ、所望の出力電流立ち上がり特性を得ることができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係るMOSトランジスタ(100、100a)において、
前記ゲートコンタクト(40)は、前記ゲート(10)の一方の端部(12)には総て設けられたことを特徴とする。
【0009】
これにより、コンタクトを製造する際のマスクの変更が容易となるとともに、得られる立ち上がり電流波形が予測し易くなる。
【0010】
第3の発明に係るCMOS(300、300a)は、第2の発明に係るMOSトランジスタ(100、100a)を備え、
該MOSトランジスタ(100、100a)に隣接して該MOSトランジスタ(100、100a)とは異なる導電型の第2のMOSトランジスタ(200)を有するCMOS(300、300a)であって、
前記第2のMOSトランジスタ(200)のゲート(10)は前記MOSトランジスタ(100、100a)のゲート(10)と共用であり、
前記MOSトランジスタ(100、100a)のゲート配線層(70)のうち、前記第2のトランジスタ(200)側のゲート配線層(72)は、前記MOSトランジスタ(100、100a)と前記第2のトランジスタ(200)とに挟まれて配置され、接続されるゲートコンタクト(40)が総て共用されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、CMOSの共通ゲートから電位を供給し、他方の端部のゲートコンタクトの有無により、CMOSの立ち上がり電流波形の傾斜を調整することができる。
【0012】
第4の発明に係るモータ駆動用半導体集積回路装置は、第3の発明に係るCMOS(300、300a)を備え、
該CMOS(300、300a)でモータ駆動回路の出力段(310)を構成したことを特徴とする。
【0013】
これにより、立ち上がりの傾きが緩やかな波形を有する電流をモータに供給してモータを駆動することができ、モータコイルの逆起電力の影響を受け難くすることができる。
【0014】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造工程を殆ど変えることなく、MOSトランジスタの出力波形の立ち上がりの傾きを緩やかにし、時間変化率を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明を適用した実施例1に係るMOSトランジスタの平面構成の一例を示した図である。図1において、実施例1に係るMOSトランジスタ100は、半導体基板80上に、ゲート10と、ソース20と、ドレイン30と、ゲートコンタクト40と、ソースコンタクト50と、ドレインコンタクト60と、ゲート配線層70とを有する。
【0018】
ゲート10は、一方向に延在して複数のゲート10が略平行に配置される。ゲート10は、延在する長手方向にゲート幅W、短手方向にゲート長Lの形状を有する。ゲートの両側には、ソース20とドレイン30が、ゲート10の長手方向と略平行に配置される。ゲート10、ソース20及びドレイン30の組み合わせで1つのトランジスタセルを構成し、全体で本実施例に係るMOSトランジスタ100を構成している。なお、ソース20及びドレイン30は、半導体基板80上に拡散層として形成され、ゲート10は、半導体基板80の表面上に酸化膜で覆われた状態で形成される。この点については、後述する。
【0019】
ゲート配線層70は、ゲート10に電位を供給するための配線パターンである。ゲート配線層70は、ゲート10の例えば上層に形成され、上層からゲート10に給電可能に構成される。ゲート配線層70は、複数のトランジスタセルからなるトランジスタセル領域の周囲を囲むようにコ字状に配置され、ゲート10の両端部11、12に平面視的に重なるような形状に構成されている。つまり、ゲート配線層70は、ゲート10の両端から、同電位を供給可能な形状に構成されている。図1においては、ゲート配線層70は、ゲート10の一方の端部11と重なる第1ゲート配線部71と、ゲート10の他方の端部12と重なる第2ゲート配線部72と、ゲート10の延在方向と平行に配置され、第1ゲート配線部71と第2ゲート配線部72とを接続する第3ゲート配線部73とを有する。このような構成により、ゲート10の両端部11、12から同電位の供給が可能な構成となっている。なお、ゲート配線層70は、例えば、アルミニウムや銅等の配線用の金属材料が適用されてよい。
【0020】
また、ゲート配線層70と同層又は他層に、ソース20又はドレイン30に給電を行うソース20用の金属配線層とドレイン30用の金属配線層が形成されてよいが、本実施例においては、省略している。
【0021】
ゲートコンタクト40は、ゲート10とゲート配線層70を電気的に接続するためのコンタクトホールである。ゲート10とゲート配線層70との間の絶縁層に貫通孔として形成され、ゲート配線層70から、ゲート10に電位の供給が可能なように、金属が充填される。
【0022】
本実施例に係るMOSトランジスタ100においては、ゲートコンタクト40は、ゲート10の紙面下側の端部12の側にのみ設けられ、紙面上側の端部11には設けられていない。これにより、ゲート10への電位供給は、ゲート10の一方の端部12からのみなされる。ゲート10は、ポリシリコン等の多結晶導電膜から形成されている。よって、寄生抵抗は、金属よりも遙かに大きい値となる。このように、ゲートコンタクト40を、ゲート10の両端に設けるのではなく、片側にのみ設けることにより、ゲート10の寄生抵抗を用いて、ゲート10に抵抗を接続したのと同様の状態とし、MOSトランジスタ100の特性を変化させることができる。この場合、ゲート10の抵抗を増加させるので、RC積分回路の抵抗値を増加させたようになり、ゲート10の両端部11、12の双方から電位を供給した場合よりも、出力電流の立ち上がりの時間変化率を緩やかにすることができる。
【0023】
図2は、1本のゲート10の両端11、12から給電を行う場合と、ゲート10の一方の端部12のみから給電を行う場合の相違比較を行うための図である。
【0024】
図2(a)は、ゲート幅Wを有して延在するゲート10の両端11、12から、給電を行った場合を示す模式図である。図2(a)において、ゲート10は、ゲート10の延在方向に寄生容量C1〜C6と、寄生抵抗Rpを有する。ここで、ゲート寄生容量C1〜C6をチャージする場合の寄生抵抗Rは、単純計算すると、R=L・W×(ゲートシート抵抗)で表され、その動作は、パターンレイアウトに依存し、動作時の寄生抵抗Rpは変化する。
【0025】
図2(b)は、動作時の寄生抵抗Rpを、分布定数回路として近似して演算し、RC回路として等価的に示した図である。このとき、寄生抵抗Rpの合成抵抗は、上述の単純計算した抵抗Rを基準とすると、約R/12となることが知られている。これは、文献1)R.Goyal, High-frequency analog integrated circuit design, John Willy & Sons,Inc., New York, 1994.、文献2) W.Liu and M.C.Chang,"Transistor transient studies including transcapacitiv current and distributive gate resistance for inverter circuits,"IEEE Trans. On Circuit and Systems-1:Fundamental Theory and Applications, vol.45, no.4, 1998.等の文献にその演算結果及び内容が記載されている。
【0026】
図2(c)は、1本のゲート10の一方の端部12のみから電位の供給を行う場合を模式的に示した図である。寄生容量は、全部まとめてCで省略して示している。この場合、逆の端部11に電流が到達するには、時間的なラグが生じることが分かる。
【0027】
図2(d)は、図2(c)に示した模式図を、等価回路として示した図である。図2(d)において、分布定数的に合成抵抗を近似して演算した値は、上述の文献から、約R/3となることが知られている。ゲート10の両端11、12の双方から給電を行った場合には、分布定数的な合成の寄生抵抗Rp=R/12であったので、ゲート10の一方の端部12のみから給電を行った場合には、合成の寄生抵抗Rpは、4倍に増加したことが分かる。このように、ゲート10への給電コンタクト数を減少させることにより、寄生抵抗Rpを増加させ、MOSトランジスタ100の出力電流波形の傾斜を緩やかにすることができる。
【0028】
図1に戻る。図1において、ゲート10は、MOSトランジスタ100内において、複数が略平行に配列されている。よって、図1に示すように、ゲート10の総てに対して一方の端部12から給電を行うようにすれば、総てのゲート10の寄生抵抗Rpをゲート10の両端部11、12の双方から給電を行う場合よりも各々約4倍とすることができる。これにより、ゲート10に外付け抵抗を直列接続したのと同じ状態とすることができ、MOSトランジスタ100の出力特性を緩やかな立ち上がり特性とすることができる。
【0029】
なお、図1の実施例1に係るMOSトランジスタ100において、ゲート配線層70のゲートコンタクト40が接続されていないゲート10の上側の端部11と重なる第1ゲート配線部71は、ゲート配線層70自体を無くすことも可能である。しかしながら、第1ゲート配線部71を最初から設けていないゲート配線層70を形成しようとすると、MOSトランジスタ100の製造工程において、ゲート配線層70を形成するための既存のマスクのパターンと、ゲートコンタクト40形成用のマスクのパターンを根本的に変更する必要が出てくる。一方、本実施例に係るMOSトランジスタ100のように、ゲート配線層70のパターン自体は、通常のMOSトランジスタと同様にゲート10の両端部11、12から給電可能な配線パターンとしておき、ゲートコンタクト40の有無によりその出力特性を変更・調整するように構成すれば、ゲートコンタクト40形成用のマスクの変更だけで済む。そして、寄生抵抗値Rpを、4倍までいかず、もっと少ない割合で増加させたい場合には、図1のMOSトランジスタ100に、ゲートコンタクト40をゲート10の両端部11、12に設けたパターンも含ませることにより、MOSトランジスタ100全体としての寄生抵抗Rpの増加分を調整することができる。
【0030】
このように、実施例1に係るMOSトランジスタ100によれば、ゲート配線層70のパターン形状を変更することなく、ゲートコンタクト40の有無のみによりMOSトランジスタ100の出力特性を調整することができ、製造工程に大きな変更を加えることなく出力電流波形の立ち上がりを緩やかにすることができる。
【0031】
なお、実施例1に係るMOSトランジスタ100は、Nチャネル型MOSトランジスタに適用してもよいし、Pチャネル型MOSトランジスタに適用してもよい。
【0032】
また、実施例1においては、ゲートコンタクト40は、ゲート10の同じ側の一方の端部12にのみ設けられている例を挙げて説明したが、寄生抵抗Rp自体はゲート10への給電コンタクト数により定められるので、ゲートコンタクト40をゲート10の両端部11、12に分散させて設けてもよい。例えば、ゲートコンタクト40を、隣接するゲート10同士で、紙面上側端部11、紙面下側端部12、紙面上側端部11、紙面下側端部12というようにジグザグに配置するようにしてもよい。これによって、ゲート10を流れる電流により発生する磁場を打ち消し合うようにすることもできる。また、小ブロック毎に、ゲート10の上側端部11にゲートコンタクト40を設けるブロックと、ゲート10の下側端部12にゲートコンタクト40を設けるブロックを、適宜組み合わせて構成してもよい。
【0033】
このように、ゲート10の片側にのみ設けるゲートコンタクト40は、種々のパターンとすることができ、またそれらの種々の変更に対しても、ゲートコンタクト40のマスク変更のみで対応することができる。
【実施例2】
【0034】
図3は、本発明を適用した実施例2に係るMOSトランジスタ100aの平面構成の一例を示した図である。実施例2に係るMOSトランジスタ100aは、半導体基板80上に平行にゲート幅W、ゲート長Lを有して延在するゲート10を複数有し、ゲート10の両側にソース20とドレイン30とが交互に配置されて複数のトランジスタセルを形成している。そして、トランジスタセル全体をコ字状にゲート配線層70が囲んで配置され、ゲート10の一方の端部12には、ゲート配線層70とゲート10とを電気的に接続するゲートコンタクト40が総てのゲート10に対応して設けられている。これらの点については、実施例2に係るMOSトランジスタ100aは、実施例1に係るMOSトランジスタ100と同様である。ソースコンタクト50及びドレインコンタクト60がソース20及びドレイン30の上層に各々設けられている点も、実施例1と同様である。
【0035】
実施例2に係るMOSトランジスタ100aにおいては、ゲート10の片側の端部12にのみゲートコンタクト40が設けられているゲート10が、第3ゲート配線部73に最も近いゲート15の1つだけである点で、実施例1に係るMOSトランジスタ100と異なっている。このように、実施例2に係るMOSトランジスタ100aのように、複数存在するゲート10のうち、総てをゲート10の片側の端部12のみから給電するのではなく、1つだけゲート10の片側の端部12のみから給電するトランジスタセルを含んでいる構成であってもよい。図3に示した実施例2に係るMOSトランジスタ100aでは、1本のゲート15のみの寄生抵抗Rpの値が増加するため、MOSトランジスタ100a全体の寄生抵抗Rpの増加は、僅かなものとなる。図3においては、最も寄生抵抗Rpの増加が少ないパターン例を挙げて説明しているが、実施例1において説明した最もゲート10の寄生抵抗Rpが大きいパターンと、実施例2において説明した最もゲート10の寄生抵抗Rpが小さいパターンとの間で、ゲートコンタクト40を片側にのみ設けるトランジスタセルの数は、自由に定めることができる。例えば、奇数番目に配置されたゲート10は、両端部11、12にゲートコンタクト40が設けられ、偶数番目に配置されたゲート10は、端部12にのみゲートコンタクト40が設けられるようなパターンとしてもよい。このように、ゲートコンタクト40をゲート10の両端部11、12の双方又は片側の端部12にのみ設けるトランジスタセルの数を変化させることにより、ゲート10の寄生抵抗Rpを所望の値に調整して設定することができる。
【0036】
図4は、実施例1及び実施例2に係るMOSトランジスタ100、100aの、ゲートコンタクト40を含む断面構成の一例を示した図である。
【0037】
図4において、半導体基板80の表面側には、ソース20の拡散領域とドレイン30の拡散領域が形成され、半導体基板80の表面上には、酸化絶縁膜90を介してゲート10が形成されている。半導体基板80は、例えば、シリコン基板等で形成されてよい。また、ソース20及びドレイン30の拡散領域は、n型半導体であっても、p型半導体であってもよい。
【0038】
ゲート10の上層には、ゲート配線層70が形成されている。そして、ゲート配線層70の第2ゲート配線部72とゲート10との間に、金属が充填されたゲートコンタクト40が設けられており、ゲートコンタクト40がゲート配線層70とゲート10との電気的接続を図るようになっている。そして、ゲート配線層70からゲートコンタクト40を介してゲート10に端部11、12から電位を供給し、トランジスタセルを駆動するようになっている。
【0039】
なお、ソース20及びドレイン30についても、同様にソース配線層55及びドレイン配線層65が設けられ、ソースコンタクト50及びドレインコンタクト60を介して電位が供給されるように構成されている。
【実施例3】
【0040】
図5は、本発明を適用した実施例3に係るCMOS300の平面構成の一例を示した図である。実施例3に係るCMOS300は、pチャネルMOSトランジスタ100と、第2のMOSトランジスタであるnチャネルMOSトランジスタ200とを備える。
【0041】
pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200は、半導体基板80上に共通のゲート10を有してゲート幅W方向に隣接して配置され、ゲート10は、両者に共通にpチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200とを貫くように延在して備えられている。また、pチャネルMOSトランジスタ100の外側、pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタとの境界、nチャネルMOSトランジスタ200の外側に存在するゲート端部11、12、13に給電が可能なように、逆E字状にゲート配線層70が配置されている。よって、pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200の境界に存在するゲート10の端部12は、pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200の共通接点となっている。また、pチャネルMOSトランジスタ100のゲート長Wと、nチャネルMOSトランジスタ200のゲート長W1との比は、約1.5:1に構成されている。これは、pチャネルMOSトランジスタ100の動作が一般的にnチャネルMOSトランジスタ200の動作に比較して遅いため、バランスを取るために、pチャネルMOSトランジスタ100のゲート長WがnチャネルMOSトランジスタ200のゲート長W1よりも長く設定されている。この比は、用途に応じて適切な比に適宜変更することができる。
【0042】
pチャネルMOSトランジスタ100は、実施例1に係るMOSトランジスタ100がそのまま適用されている。よって、延在する複数のゲート10の両側にソース20とドレイン30が交互に配置され、複数のトランジスタセルが設けられている。ソース20及びドレイン30の上層には、ソースコンタクト50とドレインコンタクト60も設けられてよい。ゲート10の両端部11、12の上層には、平面視的に重なるようにゲート配線層70が形成され、ゲート10の両端から給電が可能な配線パターンが形成されているが、ゲートコンタクト40は、一方の端部12の上方にのみ設けられており、片側からのみゲート10に電位が供給される構成となっている。これにより、ゲート10の寄生抵抗Rpは、給電を両端部11、12から行う場合よりも増加し、CMOS300のpチャネルMOSトランジスタ100の出力電流波形の立ち上がりを緩やかにすることができる。実施例1の図2において説明したように、寄生抵抗Rpは、R=W・L×(ゲートシート抵抗)とすると、約R/3となる。
【0043】
一方、nチャネルMOSトランジスタ200は、ゲート10の両端部12、13から電位の供給を受けており、通常のnチャネルMOSトランジスタ200として構成されている。複数の延在するゲート10の両側に、ソース120とドレイン130が交互に配置され、複数のトランジスタセルを含んでいる。ソース120の上層にはソースコンタクト50、ドレイン130の上層にはドレインコンタクト60が各々設けられる。ゲート10への電位の供給は、ゲート10の両端部12、13の双方に存在するゲートコンタクト40から行われる。実施例1の図2において説明したように、R=W・L×(ゲートシート抵抗)とすると、約R/12の寄生抵抗Rpが発生することになる。
【0044】
このような構成のCMOS300において、pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200の出力電流波形の立ち上がりスピードの比は、p:n≒1:10となる。これは、pチャネルMOSトランジスタ100の立ち上がり速度が相当に遅くなり、nチャネルMOSトランジスタ200の1/10の速度となっている。
【0045】
このように、CMOS300において、pチャネルMOSトランジスタ100又はnチャネルMOSトランジスタ200のいずれか一方に、ゲート10の片側の端部12のみから電位を供給するトランジスタセルを含むMOSトランジスタを設け、他方にはゲート10の両端部12、13から電位を供給するトランジスタセルのみで構成し、pチャネルMOSトランジスタ100による出力電流波形と、nチャネルMOSトランジスタ200による出力電流波形との立ち上がり速度を調整することができる。
【0046】
なお、図5においては、pチャネルMOSトランジスタ100のトランジスタセルについて、ゲート10の片側の端部12のみから給電を行う構成とし、nチャネルMOSトランジスタ200のトランジスタセルのゲート10には、両端部12、13から給電を行う構成としているが、これを逆とし、pチャネルMOSトランジスタ100のトランジスタセルのゲート10には両端部11、12から給電を行い、nチャネルMOSトランジスタ200のトランジスタセルのゲート10に対しては、片側の端部12のみから給電を行う構成としてもよい。この場合には、nチャネルMOSトランジスタ200の出力波形の立ち上がり速度を遅くすることができる。
【0047】
なお、本実施例に係るCMOS300においては、pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200の境界にあるゲート端部12に対しては、総てゲートコンタクト40を設け、給電を行うことが好ましい。pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200との境界に存在する第2ゲート配線部72及びゲートコンタクト40は、CMOS300の共通ゲート入力線を構成するので、ここからの入力は確保した方がCMOS300の動作上好ましく、またゲートコンタクト40を設ける全体数を減らすことができるからである。更に、外側にあるゲート10の端部11、13のゲートコンタクト40の有無でゲート10の寄生抵抗Rpを調整する方が、演算及びパターン構成上も簡素かつ容易とすることができるので好ましい。
【0048】
このように、実施例3に係るCMOS300によれば、ゲート配線層70のパターンを変化させることなく、pチャネルMOSトランジスタ100とnチャネルMOSトランジスタ200の出力電流波形の立ち上がり速度を異ならせることができる。
【実施例4】
【0049】
図6は、本発明を適用した実施例4に係るCMOS300aの平面構成の一例を示した図である。実施例4に係るCMOS300aは、pチャネルMOSトランジスタ100bと、nチャネルMOSトランジスタ200とを有する。nチャネルMOSトランジスタ200の構成は、実施例3に係るCMOS300のnチャネルMOSトランジスタ200の構成を同様であるので、その構成要素には実施例3に係るnチャネルMOSトランジスタ200と同一の参照符号を付して、その説明を省略する。また、ゲート配線層70の形状及び構成も、実施例3に係るMOSトランジスタ300と同様であるので、これと同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0050】
pチャネルMOSトランジスタ100bにおいて、ゲート10、ソース20及びドレイン30から構成されるトランジスタセルの構成と、ゲート端部12に設けられたゲートコンタクト40の構成は、実施例3に係るCMOS100bのpチャネルMOSトランジスタ100と同様である。しかしながら、実施例4に係るCMOS300aのpチャネルMOSトランジスタ100bは、ゲート10の本数分存在する図6の紙面上側の複数のゲート端部11のうち、ゲートコンタクト40が設けられていないゲート10が、中央に配置されたゲート16の1つのみである点で、実施例3に係るCMOS300のpチャネルMOSトランジスタ100と異なっている。つまり、実施例3においては、上側のゲート端部11には、ゲートコンタクト40が1つも形成されていなかったが、実施例4においては、1つのゲート16を除いた他のゲート10には総てゲートコンタクト40が形成されている。このように、ゲート10の端部11、12の片側にのみゲートコンタクト40が形成されているトランジスタセルは、最低1つ含まれていればよい。
【0051】
この場合には、pチャネルMOSトランジスタ100bの出力波形の立ち上がり速度は、通常のCMOSのpチャネルMOSトランジスタ100bに近くなり、その立ち上がりスピードの比は、p:n≒1:2となる。つまり、pチャネルMOSトランジスタ100bの寄生抵抗Rpがあまり大きくならないので、pチャネルMOSトランジスタ100bの出力電流波形の立ち上がり速度があまり低下しない状態となる。
【0052】
実際のCMOSに本実施例を適用する場合には、ゲート10の片側のみから給電を行うゲート16が1つだけでは、その出力電流の立ち上がり速度を緩くする効果が小さいので、例えば全体の1/4、1/3、1/2、2/3、3/4というように、ある程度の数のゲート10に対して、ゲート10の片側の端部12のみから給電を行うトランジスタセルを設けるような構成とすることが好ましい。
【0053】
このように、実施例4に係るCMOS300aにおいては、ゲートコンタクト40の数を、所望の特性が得られるように用途に応じて設定することができる。また、その際、ゲートコンタクト40の数及び位置の変更は、ゲートコンタクト40形成用のマスクのみを変更すれば良いので、設計上も大きな変更を行う必要が無く、設計の労力や製造コストを大幅に増加させることなく変更が可能である。
【実施例5】
【0054】
図7は、実施例3又は実施例4に係るCMOS300、300aをモータ駆動回路に適用した場合の、実施例5に係るモータ駆動回路の回路構成を示す図の一例である。図7において、実施例5に係るモータ駆動回路は、モータ350を駆動するための出力段310と、インバータ320から構成される。
【0055】
かかる構成のモータ駆動回路において、実施例3又は実施例4に係るCMOS300、300aは、出力段310を構成するCMOS311、312に適用される。CMOS311は、pチャネルMOSトランジスタM1と、nチャネルMOSトランジスタM2から構成され、同様にCMOS312は、pチャネルMOSトランジスタM3と、nチャネルMOSトランジスタM4とから構成される。また、出力段311の前段のインバータ321は、やはりpチャネルMOSトランジスタM5とnチャネルMOSトランジスタM6とから構成され、出力段312の前段のインバータ322は、pチャネルMOSトランジスタM7とnチャネルMOSトランジスタM8とから構成される。
【0056】
かかるモータ駆動回路において、出力段310に実施例3又は実施例4に係るCMOSを適用することにより、pチャネルMOSトランジスタM1、M3又はnチャネルMOSトランジスタM2、M4のいずれか一方の出力電流波形の立ち上がりを、他方に比較して遅い立ち上がり特性とすることができ、高周波分のノイズを防いだり、立ち上がり時間が短いことによる故障を防いだりすることができる。
【0057】
図8は、実施例5に係るモータ駆動回路の各デバイスを流れる電流のタイミングチャートの一例を示した図である。図8においては、pチャネルMOSトランジスタM1、M3の立ち上がりを遅くした波形が示されている。
【0058】
図8において、pチャネルMOSトランジスタM1、M3の出力電流波形の立ち上がり及び立ち下がりは、破線で示されている通り、通常の場合の実線で示されたpチャネルMOSトランジスタM1、M3の出力電流波形よりも遅れ、緩やかな立ち上がり及び立ち下がり特性を示している。これは、通常のゲート10の両端から給電を行うnチャネルMOSトランジスタM2、M4と比較しても同様である。
【0059】
また、モータ350への入力電流波形は、pチャネルMOSトランジスタM1、M3の出力電流波形の立ち上がり及び立ち下がりの特性を反映し、破線に示すように緩やかに遅れた特性を有する入力電流波形となっている。
【0060】
このように、実施例5に係るモータ駆動回路によれば、モータ駆動を行う駆動電流の立ち上がり及び立ち下がりを緩やかにし、各MOSトランジスタM1〜M4の破損やノイズの発生を低減することができる。
【0061】
なお、図7に示したモータ駆動回路は、半導体基板80上に形成されてよく、パッケージングされてモータ駆動用半導体集積回路装置として構成されてよい。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1に係るMOSトランジスタの平面構成の一例を示した図である。
【図2】ゲート10の両端11、12と、一方の端部12のみから給電を行う場合の比較図である。図2(a)は、ゲート10の両端11、12から給電を行った場合を示す模式図である。図2(b)は、動作時の寄生抵抗Rpを等価的に示した図である。図2(c)は、ゲート10の一方の端部12のみから電位供給を行う模式的図である。図2(d)は、図2(c)に示した模式図を等価回路として示した図である。
【図3】実施例2に係るMOSトランジスタ100aの平面構成の一例を示した図である。
【図4】MOSトランジスタ100、100aの断面構成の一例を示した図である。
【図5】実施例3に係るCMOS300の平面構成の一例を示した図である。
【図6】実施例4に係るCMOS300aの平面構成の一例を示した図である。
【図7】実施例5に係るモータ駆動回路の回路構成を示す図の一例である。
【図8】モータ駆動回路の各デバイス電流のタイミングチャートの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0064】
10、15、16 ゲート
11、12、13 端部
20、120 ソース
30、130 ドレイン
40 ゲートコンタクト
50 ソースコンタクト
55 ソース配線層
60 ドレインコンタクト
65 ドレイン配線層
70、70a ゲート配線層
71、72、73 ゲート配線部
80 半導体基板
90 酸化絶縁膜
100、100a MOSトランジスタ
100b pチャネルMOSトランジスタ
200 nチャネルMOSトランジスタ
300、300a CMOS
310 出力段
320 インバータ
350 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に所定のゲート幅を有して延在する複数のゲートが略平行に配置され、該ゲートの両側にソースとドレインが交互に配置された複数のトランジスタセルを含むMOSトランジスタであって、
前記ゲートの両端部と平面視的に重なり、前記ゲートの両端部から同電位の供給が可能に配置されたゲート配線層を有し、
該ゲート配線層と前記ゲートの端部とを電気的に接続するゲートコンタクトが、前記ゲートの端部の片側のみに設けられたトランジスタセルを含むことを特徴とするMOSトランジスタ。
【請求項2】
前記ゲートコンタクトは、前記ゲートの一方の端部には総て設けられたことを特徴とする請求項1に記載のMOSトランジスタ。
【請求項3】
請求項2に記載のMOSトランジスタを備え、
該MOSトランジスタに隣接して該MOSトランジスタとは異なる導電型の第2のMOSトランジスタを有するCMOSであって、
前記第2のMOSトランジスタのゲートは前記MOSトランジスタのゲートと共用であり、
前記MOSトランジスタのゲート配線層のうち、前記第2のトランジスタ側のゲート配線層は、前記MOSトランジスタと前記第2のトランジスタとに挟まれて配置され、接続されるゲートコンタクトが総て共用されていることを特徴とするCMOS。
【請求項4】
請求項3に記載のCMOSを備え、
該CMOSでモータ駆動回路の出力段を構成したことを特徴とするモータ駆動用半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−28040(P2010−28040A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191141(P2008−191141)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】