説明

半導体装置の作製方法

【課題】酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【解決手段】ゲート電極を形成し、ゲート電極上に第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給し、第1の絶縁膜上に、ゲート電極と重畳して酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜に熱処理を行って、酸化物半導体膜中の水素原子を除去し、水素原子が除去された酸化物半導体膜に酸素ドープ処理を行って、酸化物半導体膜中に酸素原子を供給し、酸素原子が供給された酸化物半導体膜に熱処理を行い、酸化物半導体膜上に接して、ソース電極およびドレイン電極を形成し、第2の絶縁膜を形成する半導体装置の作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、電子キャリア濃度が1018/cm未満であるインジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、酸化物半導体はデバイス作製工程において、電子供与体を形成する水素や水の混入などが生じると、その電気伝導度が変化する恐れがある。このような現象は、酸化物半導体を用いたトランジスタにとって電気的特性の変動要因となる。
【0007】
上述の問題に鑑み、酸化物半導体を用いた半導体装置に安定した電気的特性を付与し、高信頼性化することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
酸化物半導体膜を有するトランジスタの作製工程において、熱処理による脱水化または脱水素化処理、ハロゲンドープ処理及び酸素ドープ処理を行う。
【0009】
開示する発明の一態様は、ゲート電極を形成し、ゲート電極上に第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給し、第1の絶縁膜上に、ゲート電極と重畳して酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜に第1の熱処理を行って、酸化物半導体膜中の水素原子を除去し、水素原子が除去された酸化物半導体膜に酸素ドープ処理を行って、酸化物半導体膜中に酸素原子を供給し、酸素原子が供給された酸化物半導体膜に第2の熱処理を行い、酸化物半導体膜上に接して、ソース電極およびドレイン電極を形成し、酸化物半導体膜上に接して、第2の絶縁膜を形成する半導体装置の作製方法である。また、上記において、第2の絶縁膜を覆うように、窒素を含有する第3の絶縁膜を形成する場合がある。
【0010】
開示する発明の別の一態様は第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給し、第1の絶縁膜上に酸化物半導体膜を形成し、酸化物半導体膜に熱処理を行って、酸化物半導体膜中の水素原子を除去し、水素原子が除去された酸化物半導体膜に酸素ドープ処理を行って、酸化物半導体膜中に酸素原子を供給し、酸素原子が供給された酸化物半導体膜に熱処理を行い、酸化物半導体膜上に接して、ソース電極およびドレイン電極を形成し、酸化物半導体膜上に接して、第2の絶縁膜を形成し、第2の絶縁膜上の酸化物半導体膜と重畳する領域にゲート電極を形成する半導体装置の作製方法である。また、上記において、ゲート電極を覆うように、窒素を含有する第3の絶縁膜を形成する場合がある。
【0011】
また、上記において、酸化物半導体膜を形成した後、酸化物半導体膜を島状に加工する場合がある。また、酸化物半導体膜を島状に加工する工程において、少なくとも第1の絶縁膜の一部も島状に加工する場合がある。また、第1の絶縁膜と接するように第2の絶縁膜を形成する場合がある。
【0012】
また、第1の絶縁膜または第2の絶縁膜として、酸化物半導体膜の構成元素を含む絶縁膜を形成する場合がある。また、第1の絶縁膜または第2の絶縁膜として、酸化物半導体膜の構成元素を含む絶縁膜と、酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜を積層して形成する場合がある。また、第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給する工程に代えて、第1の絶縁膜として、酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜を形成し、酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜にハロゲン原子を供給し、第1の絶縁膜として、酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜上に酸化物半導体膜の構成元素を含む絶縁膜を形成する場合がある。
【0013】
また、第1の絶縁膜または第2の絶縁膜として、ガリウムを含む絶縁膜を形成する場合がある。また、第1の絶縁膜または第2の絶縁膜として、ガリウムを含む絶縁膜と、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜を形成する場合がある。また、第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給する工程に代えて、第1の絶縁膜として、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜を形成し、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜にハロゲン原子を供給し、第1の絶縁膜として、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜上にガリウムを含む絶縁膜を形成する場合がある。
【0014】
また、上記のハロゲンドープ処理において、塩素を用いることが好ましい。
【0015】
なお、本明細書において、「酸化ガリウム」の用語は、特に言及しない限り、構成元素としての酸素とガリウムを意味するものであって、酸化ガリウムの態様に限る趣旨で用いない。例えば、「酸化ガリウムを含む絶縁膜」という場合には、「酸素とガリウムを含む絶縁膜」のように読み替えることが可能である。
【0016】
また、上記において、ゲート電極を覆うように、窒素を含有する絶縁膜を形成する場合がある。このように、上方に、水素の含有がない、または極めて少ない窒化シリコンなどを用いた絶縁膜を形成する場合には、添加された酸素が外部に放出されることを防ぎ、加えて、外部からの水素や水の混入を防ぐことが可能である。この点において、当該絶縁膜の重要性は高いといえる。
【0017】
なお、上記の「ハロゲンドープ」とは、塩素やフッ素に代表されるハロゲンをバルクに添加することを言う。例えば、ハロゲンとして塩素を用いる場合、少なくとも、塩素ラジカル、塩素原子、塩素イオン、のいずれかをバルクに添加する。なお、当該「バルク」の用語は、ハロゲンを、薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、「ハロゲンドープ」には、プラズマ化したハロゲンをバルクに添加する「ハロゲンプラズマドープ」が含まれる。
【0018】
なお、上記の「酸素ドープ」とは、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)をバルクに添加することを言う。なお、当該「バルク」の用語は、酸素を、薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、「酸素ドープ」には、プラズマ化した酸素をバルクに添加する「酸素プラズマドープ」が含まれる。
【0019】
上記の酸素ドープ処理によって、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、絶縁膜の膜中(バルク中)、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面、のいずれかには少なくとも化学量論比をこえる量の酸素が存在する。酸素の量は、好ましくは化学量論比の1倍を超えて4倍まで(4倍未満)、より好ましくは、1倍を超えて2倍まで(2倍未満)である。ここで、化学量論比を超える酸素過剰な酸化物とは、それが、例えば、InGaZnSiAlMg(a,b,c,d,e,f,g≧0)で表されるとき、2g>3a+3b+2c+4d+3e+2f、を満たす酸化物をいう。なお、酸素ドープ処理によって添加された酸素は、酸化物半導体の格子間に存在する場合もある。
【0020】
また、少なくとも脱水化、脱水素化した後の酸化物半導体膜中の水素よりも添加される酸素の量が多くなるようにする。少なくとも上記構成のいずれかにおいて酸素の量が多ければ、それが拡散し、他の不安定性の原因の水素と反応することにより水素を固定化(非可動イオン化)することができる。すなわち、信頼性上の不安定性を減らす、または十分減らすことができる。また、酸素を過剰とすることで酸素欠損に起因するしきい値電圧Vthのばらつきを低減すると共に、しきい値電圧のシフト量ΔVthを低減することができる。
【0021】
なお、酸化物半導体膜の膜中(バルク中)、絶縁膜の膜中(バルク中)、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面、の2カ所以上に上述した量の酸素が存在するとより好ましい。
【0022】
なお、欠陥(酸素欠損)のない酸化物半導体であれば、化学量論比に一致した量の酸素が含まれていれば良いが、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑えるなどの信頼性を確保するためには、酸化物半導体には、化学量論比を超える量の酸素が含まれていることが好ましい。同様に、欠陥(酸素欠損)のない酸化物半導体であれば、下地膜を酸素過剰の絶縁膜とする必要はないが、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑えるなどの信頼性を確保するためには、酸化物半導体層に酸素欠損の状態が生じ得ることを考慮して、下地膜を酸素過剰の絶縁膜とすることが好ましい。
【0023】
ここで、上述の「酸素プラズマドープ」処理によって、バルク中に酸素が添加される様子を示す。なお、酸素を一成分として含む酸化物半導体膜中に酸素ドープ処理を行う場合、一般に、酸素濃度の増減を確認することは困難である。よって、ここでは、シリコンウエハを用いて、酸素ドープ処理の効果を確認した。
【0024】
酸素ドープ処理は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式を用いて行った。その条件は、ICP電力800W、RFバイアス電力300Wまたは0W、圧力1.5Pa、ガス流量75sccm、基板温度70℃である。図15に、SIMS(SIMS、Secondary Ion Mass Spectrometry)分析によるシリコンウエハの深さ方向の酸素濃度プロファイルを示す。図15において、縦軸は酸素濃度を示し、横軸はシリコンウエハ表面からの深さを示す。
【0025】
図15より、RFバイアス電力が0Wの場合および300Wの場合のいずれにおいても、酸素が添加されていることが確認できる。それと比較して、プラズマ処理を行わない場合は酸素の添加量が少なくなっている。また、RFバイアス300Wの場合は、RFバイアス0Wの場合と比較して、酸素がより深く添加されることが確認できる。
【0026】
次に、酸素ドープ処理を行う前と、酸素ドープを行った後のシリコンウエハの断面をSTEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)で観察した結果を図16に示す。図16(A)は、酸素ドープ処理を行う前のSTEM像であり、図16(B)は、上述のRFバイアス電力300Wの条件で酸素ドープ処理を行った後のSTEM像である。図16(B)に示すように、酸素ドープを行うことによって、シリコンウエハに酸素高ドープ領域が形成されていることが確認できる。
【0027】
以上のように、シリコンウエハに対して酸素ドープを行うことで、シリコンウエハに酸素が添加されることが示された。この結果により、酸化物半導体膜に対して酸素ドープを行うことによっても、酸化物半導体膜に酸素を当然に添加できることが理解できる。
【0028】
開示する発明の一態様である上述の構成の効果は、次のように考えると理解が容易である。ただし、以下の説明は、あくまでも一考察に過ぎないことを付記する。
【0029】
ゲート電極にプラスの電圧を印加すると、酸化物半導体膜のゲート電極側からバックチャネル側(ゲート絶縁膜と反対側)へ電界が発生するため、酸化物半導体膜中に存在するプラスの電荷を有する水素イオンがバックチャネル側へ移動して、酸化物半導体膜と絶縁膜との界面のうち酸化物半導体膜側へと蓄積する。蓄積した水素イオンから絶縁膜中の電荷捕獲中心(水素原子、水、あるいは汚染物等)へプラスの電荷が移動することによって、酸化物半導体膜のバックチャネル側にはマイナスの電荷が蓄積される。すなわち、トランジスタのバックチャネル側に寄生チャネルが発生して、しきい値電圧がマイナス側にシフトし、トランジスタがノーマリーオンの傾向を示す。
【0030】
上記の通り、絶縁膜中の水素または水等の電荷捕獲中心がプラスの電荷を捕獲し、絶縁膜中へプラスの電荷が移動することによってトランジスタの電気的特性が変動するため、トランジスタの電気的特性の変動を抑制するためには、絶縁膜中にこれらの電荷捕獲中心が存在しない、またはその含有量が少ないことが重要である。したがって、絶縁膜の成膜には、成膜時に水素含有量が少ないスパッタ法を用いるのが望ましい。スパッタ法により成膜された絶縁膜は、その膜中に電荷捕獲中心が存在しない、または少なく、CVD法等によって成膜した場合と比較してプラスの電荷の移動が起こりにくい。よって、トランジスタのしきい値電圧のシフトを抑制し、トランジスタをノーマリーオフとすることができる。
【0031】
なお、トップゲート型のトランジスタにおいては、下地となる絶縁膜上に酸化物半導体膜を形成した後、熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる水または水素を除去すると同時に、絶縁膜中に含まれる水または水素をも除去することができる。よって、絶縁膜中には、酸化物半導体膜中を移動してきたプラスの電荷を捕獲するための電荷捕獲中心が少ない。このように、酸化物半導体膜への脱水化または脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体膜に加えて、酸化物半導体膜の下層に存在する絶縁膜に対しても行われるため、トップゲート型のトランジスタにおいては、下地となる絶縁膜はプラズマCVD法等のCVD法を用いて成膜されていても構わない。
【0032】
また、ボトムゲート型のトランジスタにおいては、ゲート絶縁膜上に酸化物半導体膜を形成した後、熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる水または水素を除去すると同時に、ゲート絶縁膜中に含まれる水または水素をも除去することができる。よって、ゲート絶縁膜中には、酸化物半導体膜中を移動してきたプラスの電荷を捕獲するための電荷捕獲中心が少ない。このように、酸化物半導体膜への脱水化または脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体膜に加えて、酸化物半導体膜の下層に存在するゲート絶縁膜に対しても行われるため、ボトムゲート型のトランジスタにおいては、ゲート絶縁膜はプラズマCVD法等のCVD法を用いて形成されていても構わない。
【0033】
また、ゲート電極にマイナスの電圧を印加すると、バックチャネル側からゲート電極側へ電界が発生するため、酸化物半導体膜中に存在する水素イオンがゲート絶縁膜側へ移動して、酸化物半導体膜とゲート絶縁膜との界面のうち酸化物半導体膜側へと蓄積する。また、これによりトランジスタのしきい値電圧はマイナス側へシフトする。
【0034】
なお、ゲート電圧を0として放置すると、電荷捕獲中心からプラスの電荷が解放され、トランジスタのしきい値電圧がプラス側へシフトして、初期状態に戻る、または、場合によっては初期状態よりもプラス側へシフトする。この現象は、酸化物半導体膜中に移動しやすいイオンが存在していることを示唆しており、最も移動しやすいイオンは、最も小さい原子である水素がイオン化した水素イオンであると考察することができる。
【0035】
また、酸化物半導体膜が光を吸収することによって、光エネルギーによって酸化物半導体膜中の金属元素(M)と水素原子(H)との結合(M−H結合とも表記する)が切れる。なお、波長が400nm前後の光エネルギーと、金属元素及び水素原子の結合エネルギーと、は概略一致している。酸化物半導体膜中の金属元素と水素原子との結合が切れたトランジスタに負のゲートバイアスを加えると、金属元素から脱離した水素イオンがゲート電極側に引き寄せられるため電荷の分布が変化し、トランジスタのしきい値電圧はマイナス側にシフトして、ノーマリーオンの傾向を示す。
【0036】
なお、トランジスタへの光照射と負のゲートバイアスの印加によってゲート絶縁膜界面に移動した水素イオンは、電圧の印加を停止すると元に戻る。これは、酸化物半導体膜中のイオンの移動の代表的な例として理解できる。
【0037】
このような、電圧印加による電気的特性の変動(BT劣化)または光照射による電気的特性の変動(光劣化)への対策は、酸化物半導体膜から水素原子または水などの水素原子を含む不純物を徹底的に排除し、酸化物半導体膜を高純度化することが最も重要である。電荷密度が1015cm−3、つまり、単位面積あたりの電荷が1010cm−2の場合、その電荷はトランジスタ特性に影響しないまたは影響するとしてもごく僅かである。よって、電荷密度は1015cm−3以下であることが望ましい。仮に、酸化物半導体膜に含まれる水素のうち、10%の水素が酸化物半導体膜中で移動する場合、酸化物半導体膜に含まれる水素の濃度は1016cm−3以下であることが望ましい。さらに、デバイス完成後に水素が外部より侵入するのを防ぐために、スパッタ法によって成膜した窒化シリコン膜をパッシベーション膜として用い、トランジスタを覆うのが好ましい。
【0038】
さらに、酸化物半導体膜中に含まれる水素に対して、過剰な酸素をドープする((水素原子の数)<<(酸素ラジカルの数)または、(酸素イオンの数)とする)ことで、酸化物半導体膜から水素または水を排除することができる。具体的には、高周波(RF)を用いて酸素をプラズマ化し、基板バイアスを大きくして、酸素ラジカル、酸素イオンを基板上の酸化物半導体膜へドープまたは添加し、酸化物半導体膜中では残存する水素よりも酸素を多くする。酸素の電気陰性度は3.0と、電気陰性度が約2.0である酸化物半導体膜中の金属(Zn、Ga、In)よりも大きいため、水素に対して酸素を過剰に含有させることで、M−H結合より水素原子を奪い、OH基を形成する。なお、このOH基は、Mと結合してM−O−H基を形成しうる。
【0039】
なお、酸化物半導体膜の酸素の含有量が、化学量論比よりも過剰となるように酸素をドープするのがより好ましい。例えば、酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体膜を用いる場合、酸素のドープなどによって酸素の比率を化学量論比の1倍を超えて2倍まで(2倍未満)とするのがより好ましい。例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体の単結晶の化学量論比をIn:Ga:Zn:O=1:1:1:4とすると、組成がInGaZnOで表される酸化物半導体薄膜において、Xは4を超えて8未満とするのがより好ましい。よって、酸化物半導体膜において酸素の含有量は水素の含有量より大きくなる。
【0040】
光エネルギーやBTストレスによって、M−H結合から水素イオンが脱離して劣化の原因となるが、上述のドープによって酸素を注入する場合、注入された酸素が水素イオンと結合してOH基となる。OH基は、結合エネルギーが大きいため、トランジスタに光照射やBTストレスが加えられても水素イオンを放出せず、また、水素イオンより質量も大きいため、酸化物半導体膜中を移動しにくい。よって、酸素のドープに起因して形成されるOH基は、トランジスタの劣化の原因にならないか、または劣化の原因を減らすことができる。
【0041】
なお、酸化物半導体膜の膜厚を大きくする程、トランジスタのしきい値電圧のばらつきが大きくなる傾向が確認されている。これは、酸化物半導体膜中の酸素欠陥がしきい値電圧の変動の一因であり、膜厚が大きくなるほど該酸素欠陥が増加するためと推測できる。開示する発明の一態様に係るトランジスタにおいて酸化物半導体膜に酸素をドープする工程は、酸化物半導体膜からの水素または水の排除のみでなく、膜中の酸素欠陥の補填に対しても有効である。よって、本発明の一態様に係るトランジスタは、しきい値電圧のばらつきも制御することができる。
【0042】
また、酸化物半導体膜を挟んで、酸化物半導体膜と同種の成分でなる金属酸化物膜を設ける構成も、電気的特性の変動防止に効果的である。酸化物半導体膜と同種の成分でなる金属酸化物膜として、具体的には、酸化物半導体膜の構成元素から選択される一または複数の金属元素の酸化物を含む膜を用いるのが好ましい。このような材料は酸化物半導体膜との相性が良く、酸化物半導体膜を挟んで該金属酸化物膜を設けることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができる。つまり、上述の材料を用いた金属酸化物膜を、酸化物半導体膜と接する絶縁膜として設けることで、該金属酸化物膜と酸化物半導体膜との界面及びその近傍への水素イオンの蓄積を抑制または防止することができる。したがって、酸化物半導体膜を挟んで、例えば酸化シリコン膜等の酸化物半導体膜とは異なる成分でなる絶縁膜を設けた場合と比較して、トランジスタのしきい値電圧に影響を与える酸化物半導体膜界面の水素濃度を十分に低減することができる。
【0043】
なお、該金属酸化物膜としては、酸化ガリウム膜を用いるのが好ましい。酸化ガリウムは、バンドギャップ(Eg)が大きいので、酸化ガリウム膜によって酸化物半導体膜を挟むことで、酸化物半導体膜と金属酸化物膜との界面において、エネルギー障壁が形成され、その界面においてキャリアの移動は妨げられる。したがって、キャリアは酸化物半導体から金属酸化物に移動することなく、酸化物半導体膜中を移動する。一方、水素イオンは、酸化物半導体と金属酸化物との界面を通過して、金属酸化物と絶縁膜との界面付近に蓄積する。仮に、絶縁膜との界面近傍に水素イオンが蓄積されたとしても、金属酸化物膜としての酸化ガリウム膜にはキャリアが流れうる寄生チャネルが形成されないため、トランジスタのしきい値電圧への影響を与えない、またはその影響が極めて少ない。なお、酸化ガリウムとIn−Ga−Zn−O系の材料を接触させた場合のエネルギー障壁は、伝導帯側で約0.8eVとなり、価電子帯側で約0.9eVとなる。
【0044】
開示する発明の一態様に係るトランジスタは、酸素ドープ処理によって、酸化物半導体膜に接する絶縁膜中、酸化物半導体膜中、またはこれらの界面近傍の少なくともいずれか一に酸素の含有量を増大させることを技術思想とするものである。
【0045】
さらに、酸化物半導体膜の形成前に、酸化物半導体膜が上に形成される絶縁膜に対して、ハロゲンドープ処理を行うことにより、当酸化物半導体膜からさらに水素を排除することができる。例えば、ハロゲンとして塩素を用いる場合、高周波(RF)を用いて塩素をプラズマ化し、塩素ラジカル、塩素イオンを基板上の絶縁膜へ添加する。この時、絶縁膜が形成される基板にバイアスを印加すると好ましい。基板に印加するバイアスを大きくすることで、より深くまで塩素を添加することができる。また、電界で加速したハロゲンイオンを照射して、ハロゲンを添加してもよい。また、ハロゲンと同時に酸素を添加してもよい。
【0046】
塩素やフッ素などのハロゲンは、酸化物半導体膜中の金属(Zn、Ga、In)よりも電気陰性度が大きいため、酸化物半導体膜中のM−H結合から水素原子を奪うことができる。このようにして、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面に添加された塩素やフッ素などのハロゲンは、トランジスタの劣化の原因となる酸化物半導体膜中のM−H結合から脱離した水素イオンを、捕獲することができる。さらに、絶縁膜中の塩素やフッ素などのハロゲンは、該絶縁膜中の水素を固定化し、該絶縁膜中から酸化物半導体膜中への水素の拡散を防ぐことができる。よって、トランジスタに光照射が行われ、またはBTストレスが与えられても、トランジスタ特性の劣化は抑制され、または低減される。
【0047】
開示する発明の一態様に係るトランジスタは、ハロゲンドープ処理によって、酸化物半導体膜に接する絶縁膜中、または当該絶縁膜と酸化物半導体膜との界面近傍の少なくともいずれか一に塩素に代表されるハロゲンを添加することを技術思想とするものである。
【発明の効果】
【0048】
熱処理による脱水化または脱水素化処理、ハロゲンドープ処理、および、酸素ドープ処理された酸化物半導体膜を有するトランジスタは、バイアス−熱ストレス(BT)試験前後においてもトランジスタのしきい値電圧の変化量が低減できており、安定した電気特性を有する信頼性の高いトランジスタが実現できる。
【0049】
また、開示する発明の一態様により、電気特性が良好で信頼性の高いトランジスタを有する様々な半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】半導体装置の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置の断面図、上面図及び回路図。
【図8】半導体装置の一形態を説明する図。
【図9】半導体装置の一形態を説明する図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】半導体装置の一形態を説明する図。
【図12】半導体装置の一態様を説明する図。
【図13】電子機器を示す図。
【図14】電子機器を示す図。
【図15】SIMSの測定結果を示す図である。
【図16】断面STEM像を説明する図である。
【図17】プラズマ装置の上面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0052】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0053】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置および半導体装置の作製方法について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0054】
〈半導体装置の構成例〉
図1には、トランジスタ120の構成例を示す。ここで、図1(A)は平面図であり、図1(B)および図1(C)はそれぞれ、図1(A)におけるA−B断面およびC−D断面に係る断面図である。なお、図1(A)では煩雑になることを避けるため、トランジスタ120の構成要素の一部(例えば、絶縁膜110a、絶縁膜110bなど)を省略している。
【0055】
図1に示すトランジスタ120は、基板100上のゲート電極112、ゲート絶縁膜102a、ゲート絶縁膜102b、酸化物半導体膜108、ソース電極104a、ドレイン電極104b、絶縁膜110a、絶縁膜110bを含む。
【0056】
図1に示すトランジスタ120において、酸化物半導体膜108は、酸素ドープ処理が行われた酸化物半導体膜である。酸素ドープ処理が行われることにより、信頼性が高められたトランジスタ120が実現する。
【0057】
さらに、図1に示すトランジスタ120においては、ゲート絶縁膜102aに対してハロゲンドープ処理が行われている。このようなハロゲンドープ処理によって、さらに信頼性が高められたトランジスタ120が実現する。
【0058】
〈半導体装置の作製工程例〉
以下、図2を用いて、図1に示す半導体装置の作製工程の一例を説明する。
【0059】
まず、絶縁表面を有する基板100上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極112を形成する(図2(A)参照)。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0060】
基板100の材質等に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐える程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
【0061】
また、基板100として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板上にトランジスタを設ける場合、可撓性基板上に直接的にトランジスタを作り込むことができる。また、他の基板にトランジスタを形成した後、これを剥離し、可撓性基板に転置しても良い。なお、トランジスタを剥離し、可撓性基板に転置するためには、上記他の基板とトランジスタとの間に剥離層を形成すると良い。
【0062】
下地膜となる絶縁膜を基板100とゲート電極112との間に設けてもよい。下地膜は、基板100からの不純物元素の拡散を防止する機能を有し、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0063】
また、ゲート電極112は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0064】
次いで、ゲート電極112上にゲート絶縁膜102aを形成する(図2(A)参照)。
【0065】
ゲート絶縁膜102aには、後に形成される酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁材料を用いることが好ましい。ゲート絶縁膜102aは、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。ただし、トランジスタのゲート絶縁膜として機能することを考慮して、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、などの比誘電率が高い材料を採用しても良い。なお、水素や水などが混入しにくいという点では、スパッタリング法が好適である。
【0066】
次に、ゲート絶縁膜102aに対して、ハロゲン180による処理(ハロゲンドープ処理や、ハロゲンプラズマドープ処理ともいう)を行い、ゲート絶縁膜102a中にハロゲンを含有させる(図2(B)参照)。ハロゲン180は、塩素やフッ素などを用いることができる。塩素やフッ素などのハロゲンは電気陰性度が大きいため、トランジスタの劣化の原因となる水素イオンを、捕獲することができる。また、酸化物半導体膜108が上に形成されるゲート絶縁膜102aに塩素などのハロゲンを含有させることで、ゲート絶縁膜102a中の水素を固定化し、ゲート絶縁膜102a中から酸化物半導体膜108中への水素の拡散を防ぐことができる。よって、トランジスタに光照射が行われ、またはBTストレスが与えられても、トランジスタ特性の劣化は抑制され、または低減される。
【0067】
ここで、塩素は、フッ素に比べて原子半径が大きく、拡散係数が小さいので、水素イオンをゲート絶縁膜102a中に固定しやすい。特に後に行う加熱処理の際に、塩素の方がフッ素より動きにくいので、より効果的に水素イオンを捕獲しておくことができる。よって、ハロゲン180としては、塩素を用いるのが好ましい。本実施の形態においてはハロゲン180として塩素を用いる。ハロゲン180として塩素を用いる場合、ハロゲン180には、少なくとも、塩素ラジカル、塩素原子、塩素イオン、のいずれかが含まれている。
【0068】
上述のハロゲン180は、プラズマ発生装置やオゾン発生装置によって発生させることができる。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うことができる装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うことができる装置などを用いてハロゲン180を発生させ、ゲート絶縁膜102aを処理することができる。なお、ハロゲンの添加は、ゲート絶縁膜102aの表面に与えるダメージが最小限となる条件で行うことが好ましい。
【0069】
なお、ハロゲンの添加をより好適に行うためには、基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。基板に印加するバイアスを大きくすることで、より深くまでハロゲンを添加することができる。
【0070】
ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)装置を用いて塩素を添加する場合、プラズマ発生源であるICPコイルに1kW以上10kW以下の高周波電源を印加し、プラズマを発生させた状態を一定時間(30秒以上600秒以下)維持することが好ましい。例えば、ICPパワー6000W、バイアスパワー250W、塩素ガス流量を500sccm、処理室内の圧力を1.3Pa、処理時間60秒、という条件で塩素ドープ処理を行えばよい。
【0071】
また、電界で加速したハロゲンイオンを照射して、ハロゲンを添加してもよい。
【0072】
また、塩素に代表されるハロゲンと同時に酸素を添加しても良い。
【0073】
次いで、ゲート絶縁膜102a上にゲート絶縁膜102bを形成する(図2(C)参照)。
【0074】
ゲート絶縁膜102bには、後に形成される酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料を用いると特に好ましい。このような材料は酸化物半導体膜との相性が良く、これをゲート絶縁膜102bに用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができるからである。ここで、「酸化物半導体膜と同種の成分」とは、酸化物半導体膜の構成金属元素から選択される一または複数の元素を含むことを意味する。例えば、酸化物半導体膜がIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分でなる絶縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0075】
また、図2(C)で示すように、ゲート絶縁膜を、酸化物半導体膜とは異なる材料を含むゲート絶縁膜102aと、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜102bとの積層構造とすることがより好ましい。ゲート絶縁膜102a、ゲート絶縁膜102bおよび酸化物半導体膜の順に積層した構造とすることで、電荷はゲート絶縁膜102aとゲート絶縁膜102bとの界面の電荷捕獲中心に優先的に捕獲される(酸化物半導体膜とゲート絶縁膜102bとの界面との比較)ため、酸化物半導体膜の界面での電荷捕獲を十分に抑制することができるようになり、半導体装置の信頼性が向上するためである。また、ゲート絶縁膜102aに上述のハロゲンドープ処理を行うことによって、電荷をゲート絶縁膜102aとゲート絶縁膜102bとの界面の電荷捕獲中心にさらに優先的に捕獲することができる。
【0076】
なお、このようなゲート絶縁膜102aとゲート絶縁膜102bの積層構造としては、酸化ガリウム膜と酸化シリコン膜の積層構造や、酸化ガリウム膜と窒化シリコン膜との積層構造などを適用することができる。
【0077】
なお、図1に示すトランジスタ120では、ゲート絶縁膜を、酸化物半導体膜とは異なる材料を含むゲート絶縁膜102aと酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料からなるゲート絶縁膜102bとの積層構造としているが、これに限られるものではない。例えば、ゲート絶縁膜を、酸化物半導体膜とは異なる材料を含むゲート絶縁膜102aと酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料からなるゲート絶縁膜102bのいずれかで形成する構造としても良い。
【0078】
また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので、ゲート絶縁膜102a、ゲート絶縁膜102bの形成に用いると好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲート絶縁膜とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0079】
次に、ゲート絶縁膜102b上に、ゲート電極112と重畳するように酸化物半導体膜108を形成する(図2(C)参照)。
【0080】
酸化物半導体膜は、水素や水などが混入しにくい方法で作製するのが望ましい。例えば、スパッタリング法などを用いて作製することができる。また、酸化物半導体膜の厚さは、3nm以上30nm以下とするのが望ましい。酸化物半導体膜を厚くしすぎると(例えば、膜厚を50nm以上)、トランジスタがノーマリーオンとなってしまうおそれがあるためである。
【0081】
酸化物半導体膜に用いる材料としては、例えば、インジウムを含有する酸化物半導体材料や、インジウムおよびガリウムを含有する酸化物半導体材料などがある。
【0082】
また、酸化物半導体膜に用いる材料としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系の材料や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系の材料、In−Sn−Zn−O系の材料、In−Al−Zn−O系の材料、Sn−Ga−Zn−O系の材料、Al−Ga−Zn−O系の材料、Sn−Al−Zn−O系の材料や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系の材料、Sn−Zn−O系の材料、Al−Zn−O系の材料、Zn−Mg−O系の材料、Sn−Mg−O系の材料、In−Mg−O系の材料、In−Ga−O系の材料や、一元系金属の酸化物であるIn−O系の材料、Sn−O系の材料、Zn−O系の材料などがある。また、上記の材料にSiOを含ませてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系の材料とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。
【0083】
また、酸化物半導体膜は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いた薄膜とすることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoなどを用いることができる。
【0084】
本実施の形態では、酸化物半導体膜を、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いたスパッタリング法により形成する。
【0085】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用ターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることができる。なお、ターゲットの材料および組成を上述に限定する必要はない。例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることもできる。
【0086】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0087】
酸化物半導体成膜用ターゲットの充填率は、90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とする。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができるためである。
【0088】
成膜の雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または、希ガスと酸素の混合雰囲気下などとすればよい。また、酸化物半導体膜への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの水素原子を含む不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
【0089】
より具体的には、例えば、酸化物半導体膜は次のように形成することができる。
【0090】
まず、減圧状態に保持された成膜室内に基板100を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板100が加熱された状態で成膜を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができるためである。また、スパッタリングによる損傷を軽減することができるためである。
【0091】
次に、成膜室内の残留水分を除去しつつ、水素および水などの水素原子を含む不純物が十分に除去された高純度ガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板100上に酸化物半導体膜を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、排気手段として、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどの吸着型の真空ポンプを用いることが望ましい。また、排気手段は、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素分子や、水(HO)などの水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)などが除去されているため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0092】
成膜条件の一例として、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力を0.6Pa、直流(DC)電源を0.5kW、成膜雰囲気を酸素(酸素流量比率100%)雰囲気とすることができる。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時の粉状物質(パーティクル、ごみともいう)の発生を軽減でき、膜厚分布も均一となるため好ましい。
【0093】
その後、酸化物半導体膜108に対して熱処理を行う。この熱処理によって酸化物半導体膜108中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、酸化物半導体膜の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。上記熱処理の温度は、250℃以上650℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0094】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体膜108は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0095】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。
【0096】
例えば、上記熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0097】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0098】
ところで、上述の熱処理には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、例えば、酸化物半導体膜を島状に加工する前などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。また、上述のハロゲンドープ処理において、ゲート絶縁膜102aなどに混入した水素なども当該熱処理で除去することができる。
【0099】
次に、当該酸化物半導体膜108を加工して島状の酸化物半導体膜108を形成する(図2(D)参照)。
【0100】
酸化物半導体膜108の加工は、所望の形状のマスクを酸化物半導体膜上に形成した後、当該酸化物半導体膜をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグラフィなどの方法を用いて形成することができる。または、インクジェット法などの方法を用いてマスクを形成しても良い。
【0101】
また、このとき酸化物半導体膜108と共に、酸化物半導体膜108と同種の成分でなる絶縁材料を用いているゲート絶縁膜102bをエッチングし、ゲート絶縁膜102bを島状に加工しても良い。
【0102】
なお、酸化物半導体膜108およびゲート絶縁膜102bのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。もちろん、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0103】
なお、酸化物半導体膜108は必ずしも島状に加工しなくてもよい。
【0104】
次に、酸化物半導体膜108に対して、酸素182による処理(酸素ドープ処理や、酸素プラズマドープ処理ともいう)を行う(図2(E)参照)。ここで、酸素182には、少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかが含まれている。酸化物半導体膜108に酸素ドープ処理を行うことにより、酸化物半導体膜108中、酸化物半導体膜108界面近傍、または、酸化物半導体膜108中および該界面近傍に酸素を含有させることができる。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体膜108の化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)、とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量をYとして、Yを超える程度、好ましくは、Yを超えて2Yまでとすることもできる。あるいは、酸素の含有量は、酸素ドープ処理を行わない場合の酸化物半導体膜中の酸素の量Zを基準として、Zを超える程度、好ましくは、Zを超えて2Zまでとすることもできる。なお、上述の好ましい範囲に上限が存在するのは、酸素の含有量を多くしすぎると、水素吸蔵合金(水素貯蔵合金)のように、酸化物半導体膜108が水素を取り込んでしまう恐れがあるためである。なお、酸化物半導体膜において酸素の含有量は水素の含有量より大きくなる。
【0105】
結晶構造がInGaO(ZnO)(m>0)で表現される材料の場合、例えば、m=1(InGaZnO)の結晶構造を基準にすれば、InGaZnOにおいてxは4を越えて8まで、また、m=2(InGaZn)の結晶構造を基準にすれば、InGaZnにおいてxは5を越えて10まで、が許容される。なお、このような酸素過剰領域は、酸化物半導体の一部(界面を含む)に存在していればよい。
【0106】
なお、酸化物半導体膜において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体膜に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0107】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体膜中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜に意図的に酸素が添加されたか否かを判別しても良い。
【0108】
例えば、18Oの濃度を基準に用いると、酸化物半導体膜において、酸素が添加された領域における酸素の同位体の濃度D1(18O)と、酸素が添加されていない領域における酸素の同位体の濃度D2(18O)との間には、D1(18O)>D2(18O)が成立するといえる。
【0109】
また、酸化物半導体膜に添加される酸素182の少なくとも一部は、酸化物半導体中において不対結合手を有することが好ましい。不対結合手を有することにより、膜中に残存する水素と結合して、水素を固定化(非可動イオン化)することができるためである。
【0110】
上述の酸素182は、プラズマ発生装置やオゾン発生装置によって発生させることができる。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うことができる装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うことができる装置などを用いて酸素182を発生させ、酸化物半導体膜108を処理することができる。また、電界で加速した酸素イオンを照射して、酸素を添加してもよい。
【0111】
なお、酸素の添加をより好適に行うためには、基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。
【0112】
なお、酸素ドープ処理を行った後の酸化物半導体膜108に熱処理を行うのが望ましい。当該熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0113】
当該熱処理により、水素と酸化物半導体材料との反応によって生成された水、水酸化物(OH)などを酸化物半導体膜から除去することができる。また、上述の酸素ドープ処理において、酸化物半導体膜108などに混入した水素なども当該熱処理で除去することができる。熱処理は、水、水素などが十分に低減された窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)などの雰囲気下で行えばよく、特に酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度は、6N(99.9999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下)とするのが好ましく、7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を0.1ppm以下)とすると、より好ましい。
【0114】
また、酸素ドープ処理と熱処理を繰り返して行っても良い。当該処理を繰り返して行うことにより、トランジスタの信頼性をさらに高めることができる。なお、繰り返しの回数は適宜設定することができる。
【0115】
本実施の形態に係る上記の熱処理においては、酸素を含む雰囲気下で酸化物半導体膜108を加熱するのが望ましい。したがって、上述の脱水化(または脱水素化)処理によって減少してしまう可能性のある酸素を、酸化物半導体膜108へ供給することも可能である。この意味において、当該熱処理を、加酸化(加酸素化)と呼ぶこともできる。
【0116】
なお、加酸化を目的とする熱処理のタイミングは、酸化物半導体膜108の形成後であれば特に限定されない。例えば、後述する絶縁膜110aの形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。または、ゲート電極の形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。または、脱水化等を目的とする熱処理に続けて加酸化を目的とする熱処理を行っても良いし、脱水化等を目的とする熱処理に加酸化を目的とする熱処理を兼ねさせても良いし、加酸化を目的とする熱処理に脱水化等を目的とする熱処理を兼ねさせても良い。
【0117】
上述のように、脱水化等を目的とする熱処理と、酸素ドープ処理または加酸化を目的とする熱処理とを適用することで、酸化物半導体膜108を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。高純度化された酸化物半導体膜108中にはドナーに由来するキャリアが極めて少ない(ゼロに近い)。このような熱処理によって不純物を低減し、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜を形成することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現することができる。
【0118】
なお、本実施の形態においては、脱水化等を目的とする熱処理を行い、酸化物半導体膜108を島状に加工し、酸素ドープ処理を行い、加酸化を目的とする熱処理を行ったが、これらの工程はこの順番に限られるものではない。
【0119】
次いで、ゲート絶縁膜102a、ゲート絶縁膜102bおよび酸化物半導体膜108上に、ソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成し、当該導電膜を加工して、ソース電極104aおよびドレイン電極104bを形成する(図2(F)参照)。なお、ここで形成されるソース電極104aの端部とドレイン電極104bの端部との間隔によって、トランジスタのチャネル長Lが決定されることになる。
【0120】
ソース電極104aおよびドレイン電極104bに用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等がある。また、Al、Cuなどの金属膜の下側または上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた導電膜を用いても良い。
【0121】
また、ソース電極104aおよびドレイン電極104bに用いる導電膜は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0122】
導電膜の加工は、レジストマスクを用いたエッチングによって行うことができる。当該エッチングに用いるレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光などを用いるとよい。
【0123】
なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、例えば、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて、レジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。したがって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを微細化することが可能であり、回路の動作速度を高めることができる。
【0124】
また、いわゆる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成されたレジストマスクは、複数の膜厚を有する形状となり、アッシングによってさらに形状を変形させることができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることが可能である。このため、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。つまり、工程の簡略化が可能となる。
【0125】
次に、酸化物半導体膜108の一部と接し、かつ、ソース電極104aおよびドレイン電極104bを覆う絶縁膜110a、絶縁膜110bを形成する(図2(F)参照)。
【0126】
絶縁膜110aは、ゲート絶縁膜102bと同様に形成することができる。すなわち、絶縁膜110aは、酸化物半導体膜108と同種の成分でなる絶縁材料を用いると特に好ましい。このような材料は酸化物半導体膜との相性が良く、これを絶縁膜110aに用いることで、酸化物半導体膜108との界面の状態を良好に保つことができるからである。例えば、酸化物半導体膜108がIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分でなる絶縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0127】
また、絶縁膜110aは酸素を含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このように絶縁膜110aが過剰な酸素を有することにより、酸化物半導体膜108および酸化物半導体膜108との界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0128】
また、絶縁膜110bは、ゲート絶縁膜102aと同様に形成することができる。すなわち、絶縁膜110bは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。
【0129】
また、絶縁膜110bは酸素を含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このように絶縁膜110bが過剰な酸素を有することにより、酸化物半導体膜108および酸化物半導体膜108との界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0130】
ここで、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜110aと、酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜110bとの積層構造とすることがより好ましい。酸化物半導体膜108、絶縁膜110b、および絶縁膜110aの順に積層した構造とすることで、電荷は絶縁膜110aと絶縁膜110bとの界面の電荷捕獲中心に優先的に捕獲される(酸化物半導体膜と絶縁膜110aとの界面との比較)ため、酸化物半導体膜の界面での電荷捕獲を十分に抑制することができるようになり、半導体装置の信頼性が向上するためである。
【0131】
なお、このような絶縁膜110aと絶縁膜110bの積層構造としては、酸化ガリウム膜と酸化シリコン膜の積層構造や、酸化ガリウム膜と窒化シリコン膜との積層構造などを適用することができる。
【0132】
なお、図1に示すトランジスタ120では、絶縁膜を、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜110aと、酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜110bとの積層構造としているが、これに限られるものではない。例えば、絶縁膜を、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜110aと、酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜110bのいずれかで形成する構造としても良い。
【0133】
なお絶縁膜110aまたは絶縁膜110bは、ゲート絶縁膜102aまたはゲート絶縁膜102bと接するように形成することが好ましい。このように絶縁膜110aまたは絶縁膜110bを形成することにより、酸化物半導体膜108全体を覆うことができるので、酸化物半導体膜108および酸化物半導体膜108との界面により効果的に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0134】
以上の工程でトランジスタ120が形成される。
【0135】
なお、上述の説明は、島状に加工され高純度化された酸化物半導体膜108に対して酸素ドープ処理を行う例についてのものだが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、高純度化および酸素ドープ処理を行った後に、酸化物半導体膜を島状に加工しても良いし、ソース電極104aおよびドレイン電極104bを形成した後に酸素ドープ処理を行っても良い。
【0136】
〈半導体装置の変形例〉
図3(A)乃至図3(F)には、図1に示すトランジスタ120の変形例として、トランジスタ130、トランジスタ140、トランジスタ150、トランジスタ125、トランジスタ135およびトランジスタ145の断面図を示す。
【0137】
図3(A)に示すトランジスタ130は、基板100上のゲート電極112、ゲート絶縁膜102a、ゲート絶縁膜102b、酸化物半導体膜108、ソース電極104a、ドレイン電極104b、絶縁膜110a、絶縁膜110bを含む点で、トランジスタ120と共通している。トランジスタ130とトランジスタ120との相違は、上述の構成要素を覆う絶縁膜114の有無である。すなわち、トランジスタ130は、絶縁膜114を有している。その他の構成要素については図1のトランジスタ120と同様であるから、詳細は、図1に関する記載を参酌することができる。
【0138】
なお、絶縁膜114は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ガリウム、これらの混合材料、などを用いて形成することができる。特に、絶縁膜114として窒化シリコン膜を用いる場合には、添加された酸素の外部への放出を防ぐことができると共に、酸化物半導体膜108への外部からの水素等の混入を効果的に抑制することができるため好適である。特に絶縁膜114において、水素の含有量は、窒素の含有量の10分の1以下とし、好ましくは1×1020cm−3未満とし、さらに好ましくは5×1018cm−3未満とする。なお、絶縁膜114はソース電極104aやドレイン電極104b、ゲート電極112などと接続される配線を形成しても良い。
【0139】
図3(B)に示すトランジスタ140は、基板100上のゲート電極112、ゲート絶縁膜102b、酸化物半導体膜108、ソース電極104a、ドレイン電極104b、絶縁膜110aを含む点で、トランジスタ120と共通している。トランジスタ140とトランジスタ120との相違は、ゲート絶縁膜および、酸化物半導体膜108上の絶縁膜にある。すなわち、トランジスタ140は、ゲート絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜102bのみで形成され、酸化物半導体膜108上の絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜110aのみで形成されている。その他の構成要素については図1のトランジスタ120と同様であるから、詳細は、図1に関する記載を参酌することができる。
【0140】
なお、トランジスタ140を形成する際には、図2(A)、図2(B)に示す工程とは異なり、ゲート電極112上にゲート絶縁膜102bを形成してから、ゲート絶縁膜102bにハロゲンドープ処理を行い、ゲート絶縁膜102bにハロゲンを含有させる。ゲート絶縁膜102bにハロゲンを含有させることにより、塩素やフッ素などのハロゲンは、酸化物半導体膜108中の金属(Zn、Ga、In)よりも電気陰性度が大きいので、酸化物半導体膜108中のM−H結合から水素原子を奪うことができる。このようにして、酸化物半導体膜108とゲート絶縁膜102bの界面に添加された塩素やフッ素などのハロゲンは、トランジスタの劣化の原因となる酸化物半導体膜108中のM−H結合から脱離した水素イオンを、捕獲することができる。
【0141】
図3(C)に示すトランジスタ150は、上述の各構成要素を含む点で、図1に示すトランジスタ120と共通している。トランジスタ150とトランジスタ120との相違は、ゲート絶縁膜102bが島状に加工されているか否かである。つまり、トランジスタ120では、ゲート絶縁膜102bが島状に加工されているのに対して、トランジスタ140では、ゲート絶縁膜102bが島状に加工されていない。なお、酸化物半導体膜108とゲート絶縁膜102bのエッチングの選択比によっては、ゲート絶縁膜102bの酸化物半導体膜108と重畳しない領域の膜厚が、ゲート絶縁膜102bの酸化物半導体膜108と重畳する領域の膜厚より薄くなる場合がある。その他の構成要素については、図1と同様である。
【0142】
図3(D)に示すトランジスタ125は、上述の各構成要素を含む点で、図1に示すトランジスタ120と共通している。トランジスタ125とトランジスタ120との相違は、ソース電極104aおよびドレイン電極104bと、酸化物半導体膜108との積層順序である。つまり、トランジスタ120では、酸化物半導体膜108が先に形成されるのに対して、トランジスタ125では、ソース電極104aおよびドレイン電極104bが先に形成される。その他の構成要素については、図1と同様である。
【0143】
図3(E)に示すトランジスタ135は、図3(D)に示すトランジスタ125において、トランジスタ130のように、絶縁膜114を有する構成としたものである。
【0144】
図3(F)に示すトランジスタ145は、図3(D)に示すトランジスタ125において、トランジスタ140のように、ゲート絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜102bのみで形成され、酸化物半導体膜108上の絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜110aのみで形成されたものである。
【0145】
なお、上述の各トランジスタの構成は、おのおの適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0146】
本実施の形態に係るトランジスタは、熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの水素原子を含む不純物を酸化物半導体より排除し、かつ、不純物の排除工程において減少するおそれのある酸素を供給することによって、高純度化およびi型(真性)化を図った酸化物半導体膜を用いている。このように高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタは、しきい値電圧などの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0147】
特に、酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜中の酸素の含有量を増大させることで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化を抑制し、光による劣化を低減することができる。
【0148】
さらに、ハロゲンドープ処理によって酸化物半導体膜が形成されるゲート絶縁膜に塩素に代表されるハロゲンを添加することで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化をより抑制し、光による劣化をより低減することができる。
【0149】
このように、開示する発明の一態様によって、信頼性に優れたトランジスタを提供することが可能である。
【0150】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0151】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置および半導体装置の作製方法について、図4乃至図6を用いて説明する。
【0152】
〈半導体装置の構成例〉
図4には、トランジスタ320の構成例を示す。ここで、図4(A)は平面図であり、図4(B)および図4(C)はそれぞれ、図4(A)におけるA−B断面およびC−D断面に係る断面図である。なお、図4(A)では煩雑になることを避けるため、トランジスタ320の構成要素の一部(例えば、ゲート絶縁膜310a、ゲート絶縁膜310bなど)を省略している。
【0153】
図4に示すトランジスタ320は、基板300上の絶縁膜302a、絶縁膜302b、酸化物半導体膜308、ソース電極304a、ドレイン電極304b、ゲート絶縁膜310a、ゲート絶縁膜310b、ゲート電極312を含む。
【0154】
図4に示すトランジスタ320において、酸化物半導体膜308は、酸素ドープ処理が行われた酸化物半導体膜である。酸素ドープ処理が行われることにより、信頼性が高められたトランジスタ320が実現する。
【0155】
さらに、図4に示すトランジスタ320においては、絶縁膜302aに対してハロゲンドープ処理が行われている。このようなハロゲンドープ処理によって、さらに信頼性が高められたトランジスタ320が実現する。
【0156】
〈半導体装置の作製工程例〉
以下、図5を用いて、図4に示す半導体装置の作製工程の一例を説明する。
【0157】
まず、基板300上に絶縁膜302aを形成する(図5(A)参照)。
【0158】
基板300の材質等に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐える程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板300として用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板300として用いてもよい。
【0159】
また、基板300として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板上にトランジスタを設ける場合、可撓性基板上に直接的にトランジスタを作り込むことができる。また、他の基板にトランジスタを形成した後、これを剥離し、可撓性基板に転置しても良い。なお、トランジスタを剥離し、可撓性基板に転置するためには、上記他の基板とトランジスタとの間に剥離層を形成すると良い。
【0160】
絶縁膜302aは、下地として機能する絶縁膜であり、後に形成される酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁材料を用いることが好ましい。絶縁膜302aは、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。なお、水素や水などが混入しにくいという点では、スパッタリング法が好適である。
【0161】
次に、絶縁膜302aに対して、ハロゲン380による処理(ハロゲンドープ処理や、ハロゲンプラズマドープ処理ともいう)を行い、絶縁膜302a中にハロゲンを含有させる(図5(B)参照)。ハロゲン380は、塩素やフッ素などを用いることができる。塩素やフッ素などのハロゲンは電気陰性度が大きいため、トランジスタの劣化の原因となる水素イオンを、捕獲することができる。また、酸化物半導体膜308が上に形成される絶縁膜302aに塩素などのハロゲンを含有させることで、絶縁膜302a中の水素を固定化し、絶縁膜302a中から酸化物半導体膜308中への水素の拡散を防ぐことができる。よって、トランジスタに光照射が行われ、またはBTストレスが与えられても、トランジスタ特性の劣化は抑制され、または低減される。
【0162】
ここで、塩素は、フッ素に比べて原子半径が大きく、拡散係数が小さいので、水素イオンを絶縁膜302a中に固定しやすい。特に後に行う加熱処理の際に、塩素の方がフッ素より動きにくいので、より効果的に水素イオンを捕獲しておくことができる。よって、ハロゲン380としては、塩素を用いるのが好ましい。本実施の形態においてはハロゲン380として塩素を用いる。ハロゲン380として塩素を用いる場合、ハロゲン380には、少なくとも、塩素ラジカル、塩素原子、塩素イオン、のいずれかが含まれている。
【0163】
上述のハロゲン380は、プラズマ発生装置やオゾン発生装置によって発生させることができる。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うことができる装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うことができる装置などを用いてハロゲン380を発生させ、絶縁膜302aを処理することができる。なお、ハロゲンの添加は、絶縁膜302aの表面に与えるダメージが最小限となる条件で行うことが好ましい。
【0164】
なお、ハロゲンの添加をより好適に行うためには、基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。基板に印加するバイアスを大きくすることで、より深くまでハロゲンを添加することができる。
【0165】
ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)装置を用いて塩素を添加する場合、プラズマ発生源であるICPコイルに1kW以上10kW以下の高周波電源を印加し、プラズマを発生させた状態を一定時間(30秒以上600秒以下)維持することが好ましい。例えば、ICPパワー6000W、バイアスパワー250W、塩素ガス流量を500sccm、処理室内の圧力を1.3Pa、処理時間60秒、という条件で塩素ドープ処理を行えばよい。
【0166】
また、電界で加速したハロゲンイオンを照射して、ハロゲンを添加してもよい。
【0167】
また、塩素に代表されるハロゲンと同時に酸素を添加しても良い。
【0168】
次いで、絶縁膜302a上に、下地として機能する絶縁膜302bを形成する(図5(C)参照)。
【0169】
絶縁膜302bには、後に形成される酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料を用いると特に好ましい。このような材料は酸化物半導体膜との相性が良く、これを絶縁膜302bに用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができるからである。ここで、「酸化物半導体膜と同種の成分」とは、酸化物半導体膜の構成金属元素から選択される一または複数の元素を含むことを意味する。例えば、酸化物半導体膜がIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分でなる絶縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0170】
また、図5(C)で示すように、下地として機能する絶縁膜を、酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜302aと、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜302bとの積層構造とすることがより好ましい。絶縁膜302a、絶縁膜302bおよび酸化物半導体膜の順に積層した構造とすることで、電荷は絶縁膜302aと絶縁膜302bとの界面の電荷捕獲中心に優先的に捕獲される(酸化物半導体膜と絶縁膜302bとの界面との比較)ため、酸化物半導体膜の界面での電荷捕獲を十分に抑制することができるようになり、半導体装置の信頼性が向上するためである。また、絶縁膜302aに上述のハロゲンドープ処理を行うことによって、電荷を絶縁膜302aと絶縁膜302bとの界面の電荷捕獲中心にさらに優先的に捕獲することができる。
【0171】
なお、このような絶縁膜302aと絶縁膜302bの積層構造としては、酸化ガリウム膜と酸化シリコン膜の積層構造や、酸化ガリウム膜と窒化シリコン膜との積層構造などを適用することができる。
【0172】
なお、図4に示すトランジスタ320では、下地として機能する絶縁膜を、酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜302aと酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料からなる絶縁膜302bとの積層構造としているが、これに限られるものではない。例えば、下地として機能する絶縁膜を、酸化物半導体膜とは異なる材料を含む絶縁膜302aと酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料からなる絶縁膜302bのいずれかで形成する構造としても良い。
【0173】
次に、絶縁膜302b上に酸化物半導体膜308を形成する(図5(C)参照)。
【0174】
酸化物半導体膜は、水素や水などが混入しにくい方法で作製するのが望ましい。例えば、スパッタリング法などを用いて作製することができる。また、酸化物半導体膜の厚さは、3nm以上30nm以下とするのが望ましい。酸化物半導体膜を厚くしすぎると(例えば、膜厚を50nm以上)、トランジスタがノーマリーオンとなってしまうおそれがあるためである。
【0175】
酸化物半導体膜に用いる材料としては、例えば、インジウムを含有する酸化物半導体材料や、インジウムおよびガリウムを含有する酸化物半導体材料などがある。
【0176】
また、酸化物半導体膜に用いる材料としては、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系の材料や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系の材料、In−Sn−Zn−O系の材料、In−Al−Zn−O系の材料、Sn−Ga−Zn−O系の材料、Al−Ga−Zn−O系の材料、Sn−Al−Zn−O系の材料や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系の材料、Sn−Zn−O系の材料、Al−Zn−O系の材料、Zn−Mg−O系の材料、Sn−Mg−O系の材料、In−Mg−O系の材料、In−Ga−O系の材料や、一元系金属の酸化物であるIn−O系の材料、Sn−O系の材料、Zn−O系の材料などがある。また、上記の材料にSiOを含ませてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系の材料とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜、という意味であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。
【0177】
また、酸化物半導体膜は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いた薄膜とすることができる。ここで、Mは、Ga、Al、MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoなどを用いることができる。
【0178】
本実施の形態では、酸化物半導体膜を、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いたスパッタリング法により形成する。
【0179】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用ターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることができる。なお、ターゲットの材料および組成を上述に限定する必要はない。例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることもできる。
【0180】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0181】
酸化物半導体成膜用ターゲットの充填率は、90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とする。充填率の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができるためである。
【0182】
成膜の雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または、希ガスと酸素の混合雰囲気下などとすればよい。また、酸化物半導体膜への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの水素原子を含む不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
【0183】
より具体的には、例えば、酸化物半導体膜は次のように形成することができる。
【0184】
まず、減圧状態に保持された成膜室内に基板300を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板300が加熱された状態で成膜を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができるためである。また、スパッタリングによる損傷を軽減することができるためである。
【0185】
次に、成膜室内の残留水分を除去しつつ、水素および水などの水素原子を含む不純物が十分に除去された高純度ガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板300上に酸化物半導体膜を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、排気手段として、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどの吸着型の真空ポンプを用いることが望ましい。また、排気手段は、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素分子や、水(HO)などの水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)などが除去されているため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0186】
成膜条件の一例として、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力を0.6Pa、直流(DC)電源を0.5kW、成膜雰囲気を酸素(酸素流量比率100%)雰囲気とすることができる。なお、パルス直流電源を用いると、成膜時の粉状物質(パーティクル、ごみともいう)の発生を軽減でき、膜厚分布も均一となるため好ましい。
【0187】
その後、酸化物半導体膜308に対して熱処理を行う。この熱処理によって酸化物半導体膜308中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、酸化物半導体膜の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。上記熱処理の温度は、250℃以上650℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0188】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体膜308は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0189】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0190】
例えば、上記熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0191】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0192】
ところで、上述の熱処理には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、例えば、酸化物半導体膜を島状に加工する前などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。また、上述のハロゲンドープ処理において、絶縁膜302aなどに混入した水素なども当該熱処理で除去することができる。
【0193】
次に、当該酸化物半導体膜308を加工して島状の酸化物半導体膜308を形成する(図5(D)参照)。
【0194】
酸化物半導体膜308の加工は、所望の形状のマスクを酸化物半導体膜上に形成した後、当該酸化物半導体膜をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグラフィなどの方法を用いて形成することができる。または、インクジェット法などの方法を用いてマスクを形成しても良い。
【0195】
また、このとき酸化物半導体膜308と共に、酸化物半導体膜308と同種の成分でなる絶縁材料を用いた絶縁膜302bをエッチングし、絶縁膜302bを島状に加工しても良い。
【0196】
なお、酸化物半導体膜308および絶縁膜302bのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよい。もちろん、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0197】
なお、酸化物半導体膜308は必ずしも島状に加工しなくてもよい。
【0198】
次に、酸化物半導体膜308に対して、酸素382による処理(酸素ドープ処理や、酸素プラズマドープ処理ともいう)を行う(図5(E)参照)。ここで、酸素382には、少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかが含まれている。酸化物半導体膜308に酸素ドープ処理を行うことにより、酸化物半導体膜308中、酸化物半導体膜308界面近傍、または、酸化物半導体膜308中および該界面近傍に酸素を含有させることができる。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体膜308の化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)、とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量をYとして、Yを超える程度、好ましくは、Yを超えて2Yまでとすることもできる。あるいは、酸素の含有量は、酸素ドープ処理を行わない場合の酸化物半導体膜中の酸素の量Zを基準として、Zを超える程度、好ましくは、Zを超えて2Zまでとすることもできる。なお、上述の好ましい範囲に上限が存在するのは、酸素の含有量を多くしすぎると、水素吸蔵合金(水素貯蔵合金)のように、酸化物半導体膜308が水素を取り込んでしまう恐れがあるためである。なお、酸化物半導体膜において酸素の含有量は水素の含有量より大きくなる。
【0199】
結晶構造がInGaO(ZnO)(m>0)で表現される材料の場合、例えば、m=1(InGaZnO)の結晶構造を基準にすれば、InGaZnOにおいてxは4を越えて8まで、また、m=2(InGaZn)の結晶構造を基準にすれば、InGaZnにおいてxは5を越えて10まで、が許容される。なお、このような酸素過剰領域は、酸化物半導体の一部(界面を含む)に存在していればよい。
【0200】
なお、酸化物半導体膜において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMSなどの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体膜に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0201】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体膜中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜に意図的に酸素が添加されたか否かを判別しても良い。
【0202】
例えば、18Oの濃度を基準に用いると、酸化物半導体膜において、酸素が添加された領域における酸素の同位体の濃度D1(18O)と、酸素が添加されていない領域における酸素の同位体の濃度D2(18O)との間には、D1(18O)>D2(18O)が成立するといえる。
【0203】
また、酸化物半導体膜に添加される酸素382の少なくとも一部は、酸化物半導体中において不対結合手を有することが好ましい。不対結合手を有することにより、膜中に残存する水素と結合して、水素を固定化(非可動イオン化)することができるためである。
【0204】
上述の酸素382は、プラズマ発生装置やオゾン発生装置によって発生させることができる。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うことができる装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うことができる装置などを用いて酸素382を発生させ、酸化物半導体膜308を処理することができる。また、電界で加速した酸素イオンを照射して、酸素を添加してもよい。
【0205】
なお、酸素の添加をより好適に行うためには、基板には電気的なバイアスを加えておくことが望ましい。
【0206】
なお、酸素ドープ処理を行った後の酸化物半導体膜308に熱処理を行うのが望ましい。当該熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0207】
当該熱処理により、酸素と酸化物半導体材料との反応によって生成された水、水酸化物(OH)などを酸化物半導体膜から除去することができる。また、上述の酸素ドープ処理において、酸化物半導体膜308などに混入した水素なども当該熱処理で除去することができる。熱処理は、水、水素などが十分に低減された窒素、酸素、超乾燥空気(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)などの雰囲気下で行えばよく、特に酸素を含む雰囲気で行うことが好ましい。また、熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度は、6N(99.9999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下)とするのが好ましく、7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を0.1ppm以下)とすると、より好ましい。
【0208】
また、酸素ドープ処理と熱処理を繰り返して行っても良い。当該処理を繰り返して行うことにより、トランジスタの信頼性をさらに高めることができる。なお、繰り返しの回数は適宜設定することができる。
【0209】
本実施の形態に係る上記の熱処理においては、酸素を含む雰囲気下で酸化物半導体膜308を加熱するのが望ましい。したがって、上述の脱水化(または脱水素化)処理によって減少してしまう可能性のある酸素を、酸化物半導体膜308へ供給することも可能である。この意味において、当該熱処理を、加酸化(加酸素化)と呼ぶこともできる。
【0210】
なお、加酸化を目的とする熱処理のタイミングは、酸化物半導体膜308の形成後であれば特に限定されない。例えば、後述するゲート絶縁膜310aの形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。または、ゲート電極の形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。または、脱水化等を目的とする熱処理に続けて加酸化を目的とする熱処理を行っても良いし、脱水化等を目的とする熱処理に加酸化を目的とする熱処理を兼ねさせても良いし、加酸化を目的とする熱処理に脱水化等を目的とする熱処理を兼ねさせても良い。
【0211】
上述のように、脱水化等を目的とする熱処理と、酸素ドープ処理または加酸化を目的とする熱処理とを適用することで、酸化物半導体膜308を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。高純度化された酸化物半導体膜308中にはドナーに由来するキャリアが極めて少ない(ゼロに近い)。このような熱処理によって不純物を低減し、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜を形成することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現することができる。
【0212】
なお、本実施の形態においては、脱水化等を目的とする熱処理を行い、酸化物半導体膜308を島状に加工し、酸素ドープ処理を行い、加酸化を目的とする熱処理を行ったが、これらの工程はこの順番に限られるものではない。
【0213】
次いで、絶縁膜302a、絶縁膜302bおよび酸化物半導体膜308上に、ソース電極およびドレイン電極(これと同じ層で形成される配線を含む)を形成するための導電膜を形成し、当該導電膜を加工して、ソース電極304aおよびドレイン電極304bを形成する(図5(F)参照)。なお、ここで形成されるソース電極304aの端部とドレイン電極304bの端部との間隔によって、トランジスタのチャネル長Lが決定されることになる。
【0214】
ソース電極304aおよびドレイン電極304bに用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等がある。また、Al、Cuなどの金属膜の下側または上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた導電膜を用いても良い。
【0215】
また、ソース電極304aおよびドレイン電極304bに用いる導電膜は、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0216】
導電膜の加工は、レジストマスクを用いたエッチングによって行うことができる。当該エッチングに用いるレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光などを用いるとよい。
【0217】
なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、例えば、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて、レジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。したがって、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを微細化することが可能であり、回路の動作速度を高めることができる。
【0218】
また、いわゆる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成されたレジストマスクは、複数の膜厚を有する形状となり、アッシングによってさらに形状を変形させることができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることが可能である。このため、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。つまり、工程の簡略化が可能となる。
【0219】
次に、酸化物半導体膜308の一部と接し、かつ、ソース電極304aおよびドレイン電極304bを覆うゲート絶縁膜310a、ゲート絶縁膜310bを形成する(図5(F)参照)。
【0220】
ゲート絶縁膜310aは、絶縁膜302bと同様に形成することができる。すなわち、ゲート絶縁膜310aは、酸化物半導体膜308と同種の成分でなる絶縁材料を用いると特に好ましい。このような材料は酸化物半導体膜との相性が良く、これをゲート絶縁膜310aに用いることで、酸化物半導体膜308との界面の状態を良好に保つことができるからである。例えば、酸化物半導体膜308がIn−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分でなる絶縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0221】
また、ゲート絶縁膜310aは酸素を含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このようにゲート絶縁膜310aが過剰な酸素を有することにより、酸化物半導体膜308および酸化物半導体膜308との界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0222】
また、ゲート絶縁膜310bは、絶縁膜302aと同様に形成することができる。すなわち、ゲート絶縁膜310bは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はこれらの混合材料を用いて単層で又は積層して形成することができる。ただし、トランジスタのゲート絶縁膜として機能することを考慮して、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、などの比誘電率が高い材料を採用しても良い。
【0223】
また、ゲート絶縁膜310bは酸素を含有していることが好ましく、化学量論比を超える程度、好ましくは、化学量論比の1倍を超えて2倍まで(1倍より大きく2倍未満)酸素を含有していることが好ましい。このようにゲート絶縁膜310bが過剰な酸素を有することにより、酸化物半導体膜308および酸化物半導体膜308との界面に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0224】
ここで、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜310aと、酸化物半導体膜とは異なる材料を含むゲート絶縁膜310bとの積層構造とすることがより好ましい。酸化物半導体膜308、ゲート絶縁膜310b、およびゲート絶縁膜310aの順に積層した構造とすることで、電荷はゲート絶縁膜310aとゲート絶縁膜310bとの界面の電荷捕獲中心に優先的に捕獲される(酸化物半導体膜とゲート絶縁膜310aとの界面との比較)ため、酸化物半導体膜の界面での電荷捕獲を十分に抑制することができるようになり、半導体装置の信頼性が向上するためである。
【0225】
なお、このようなゲート絶縁膜310aとゲート絶縁膜310bの積層構造としては、酸化ガリウム膜と酸化シリコン膜の積層構造や、酸化ガリウム膜と窒化シリコン膜との積層構造などを適用することができる。
【0226】
なお、図4に示すトランジスタ320では、絶縁膜を、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜310aと、酸化物半導体膜とは異なる材料を含むゲート絶縁膜310bとの積層構造としているが、これに限られるものではない。例えば、絶縁膜を、酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜310aと、酸化物半導体膜とは異なる材料を含むゲート絶縁膜310bのいずれかで形成する構造としても良い。
【0227】
なおゲート絶縁膜310aまたはゲート絶縁膜310bは、絶縁膜302aまたは絶縁膜302bと接するように形成することが好ましい。このようにゲート絶縁膜310aまたはゲート絶縁膜310bを形成することにより、酸化物半導体膜308全体を覆うことができるので、酸化物半導体膜308および酸化物半導体膜308との界面により効果的に酸素を供給し、酸素の欠損を低減することができる。
【0228】
また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので、ゲート絶縁膜310a、ゲート絶縁膜310bの形成に用いると好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲート絶縁膜とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0229】
その後、ゲート絶縁膜310b上の酸化物半導体膜308と重畳する領域にゲート電極312を形成する(図5(F)参照)。ゲート電極312は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。なお、ゲート電極312は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0230】
以上の工程でトランジスタ320が形成される。
【0231】
なお、上述の説明は、島状に加工され高純度化された酸化物半導体膜308に対して酸素ドープ処理を行う例についてのものだが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、高純度化および酸素ドープ処理を行った後に、酸化物半導体膜を島状に加工しても良いし、ソース電極304aおよびドレイン電極304bを形成した後に酸素ドープ処理を行っても良い。
【0232】
〈半導体装置の変形例〉
図6(A)乃至図6(F)には、図4に示すトランジスタ320の変形例として、トランジスタ330、トランジスタ340、トランジスタ350、トランジスタ325、トランジスタ335およびトランジスタ345の断面図を示す。
【0233】
図6(A)に示すトランジスタ330は、基板300上の絶縁膜302a、絶縁膜302b、酸化物半導体膜308、ソース電極304a、ドレイン電極304b、ゲート絶縁膜310a、ゲート絶縁膜310b、ゲート電極312を含む点で、トランジスタ320と共通している。トランジスタ330とトランジスタ320との相違は、上述の構成要素を覆う絶縁膜314の有無である。すなわち、トランジスタ330は、絶縁膜314を有している。その他の構成要素については図4のトランジスタ320と同様であるから、詳細は、図4に関する記載を参酌することができる。
【0234】
なお、絶縁膜314は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ガリウム、これらの混合材料、などを用いて形成することができる。特に、絶縁膜314として窒化シリコン膜を用いる場合には、添加された酸素の外部への放出を防ぐことができると共に、酸化物半導体膜308への外部からの水素等の混入を効果的に抑制することができるため好適である。特に絶縁膜314において、水素の含有量は、窒素の含有量の10分の1以下とし、好ましくは1×1020cm−3未満とし、さらに好ましくは5×1018cm−3未満とする。なお、絶縁膜314はソース電極304aやドレイン電極304b、ゲート電極312などと接続される配線を形成しても良い。
【0235】
図6(B)に示すトランジスタ340は、基板300上の絶縁膜302b、酸化物半導体膜308、ソース電極304a、ドレイン電極304b、ゲート絶縁膜310a、ゲート電極312を含む点で、トランジスタ320と共通している。トランジスタ340とトランジスタ320との相違は、下地として機能する絶縁膜およびゲート絶縁膜にある。すなわち、トランジスタ340は、下地として機能する絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜302bのみで形成され、ゲート絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜310aのみで形成されている。その他の構成要素については図4のトランジスタ320と同様であるから、詳細は、図4に関する記載を参酌することができる。
【0236】
なお、トランジスタ340を形成する際には、図5(A)、図5(B)に示す工程とは異なり、基板300上に絶縁膜302bを形成してから、絶縁膜302bにハロゲンドープ処理を行い、絶縁膜302bにハロゲンを含有させる。絶縁膜302bにハロゲンを含有させることにより、塩素やフッ素などのハロゲンは、酸化物半導体膜308中の金属(Zn、Ga、In)よりも電気陰性度が大きいので、酸化物半導体膜308中のM−H結合から水素原子を奪うことができる。このようにして、酸化物半導体膜308と絶縁膜302bの界面に添加された塩素やフッ素などのハロゲンは、トランジスタの劣化の原因となる酸化物半導体膜308中のM−H結合から脱離した水素イオンを、捕獲することができる。
【0237】
図6(C)に示すトランジスタ350は、上述の各構成要素を含む点で、図4に示すトランジスタ320と共通している。トランジスタ350とトランジスタ320との相違は、絶縁膜302bが島状に加工されているか否かである。つまり、トランジスタ320では、絶縁膜302bが島状に加工されているのに対して、トランジスタ340では、絶縁膜302bが島状に加工されていない。なお、酸化物半導体膜308と絶縁膜302bのエッチングの選択比によっては、絶縁膜302bの酸化物半導体膜308と重畳しない領域の膜厚が、絶縁膜302bの酸化物半導体膜308と重畳する領域の膜厚より薄くなる場合がある。その他の構成要素については、図4と同様である。
【0238】
図6(D)に示すトランジスタ325は、上述の各構成要素を含む点で、図4に示すトランジスタ320と共通している。トランジスタ325とトランジスタ320との相違は、ソース電極304aおよびドレイン電極304bと、酸化物半導体膜308との積層順序である。つまり、トランジスタ320では、酸化物半導体膜308が先に形成されるのに対して、トランジスタ325では、ソース電極304aおよびドレイン電極304bが先に形成される。その他の構成要素については、図4と同様である。
【0239】
図6(E)に示すトランジスタ335は、図6(D)に示すトランジスタ325において、トランジスタ330のように、絶縁膜314を有する構成としたものである。
【0240】
図6(F)に示すトランジスタ345は、図6(D)に示すトランジスタ325において、トランジスタ340のように、下地として機能する絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなる絶縁膜302bのみで形成され、ゲート絶縁膜が酸化物半導体膜と同種の成分でなる絶縁材料でなるゲート絶縁膜310aのみで形成されたものである。
【0241】
なお、上述の各トランジスタの構成は、おのおの適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0242】
本実施の形態に係るトランジスタは、熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの水素原子を含む不純物を酸化物半導体より排除し、かつ、不純物の排除工程において減少するおそれのある酸素を供給することによって、高純度化およびi型(真性)化を図った酸化物半導体膜を用いている。このように高純度化された酸化物半導体膜を含むトランジスタは、しきい値電圧などの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0243】
特に、酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜中の酸素の含有量を増大させることで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化を抑制し、光による劣化を低減することができる。
【0244】
さらに、ハロゲンドープ処理によって酸化物半導体膜が形成される絶縁膜に塩素に代表されるハロゲンを添加することで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化をより抑制し、光による劣化をより低減することができる。
【0245】
このように、開示する発明の一態様によって、信頼性に優れたトランジスタを提供することが可能である。
【0246】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0247】
(実施の形態3)
本実施の形態では、酸素ドープ処理またはハロゲンドープ処理に用いることができるプラズマ装置(アッシング装置とも呼ぶ)の例を説明する。なお、この装置は、例えば第5世代以降の大型のガラス基板などに対応することができる点で、イオン注入装置などよりも工業的に適している。
【0248】
図17(A)は、枚葉式マルチチャンバー設備の上面図の一例を示す。図17(B)は、酸素プラズマドープを行うプラズマ装置(アッシング装置とも呼ぶ)の断面図の一例を示す。
【0249】
図17(A)に示す枚葉式マルチチャンバー設備は、図17(B)に示すプラズマ装置10を3つ有し、被処理基板を収容するカセットポート14を3つ有する基板供給室11や、ロードロック室12や、搬送室13などを有している。基板供給室に供給された基板は、ロードロック室12と搬送室13を介してプラズマ装置内の真空チャンバー15に搬送されて酸素プラズマドープが行われる。酸素プラズマドープが終了した基板は、プラズマ装置からロードロック室と搬送室を介して基板供給室に搬送される。なお、基板供給室11及び搬送室13には、被処理基板を搬送するための搬送ロボットがそれぞれ配置されている。
【0250】
図17(B)を参照すると、プラズマ装置10は、真空チャンバー15を備える。真空チャンバー15の上部には、複数のガス吹き出し口と、プラズマ発生源であるICPコイル16(誘導結合プラズマコイル)が配置されている。
【0251】
ガス吹き出し口は、プラズマ装置10の上面から見て中央部分に12個配置されている。それぞれのガス吹き出し口は、酸素ガスを供給するためのガス供給源とガス流路17を介して接続されており、ガス供給源は、マスフローコントローラ等を備え、所望の流量(0より多く1000sccm以下)でガス流路17に対して酸素ガスを供給することができる。ガス供給源から供給される酸素ガスは、ガス流路17から12個のガス吹き出し口を介して真空チャンバー15内に供給される。
【0252】
ICPコイル16は、複数本の帯状の導体を螺旋状に配置してなる。各導体の一端は、インピーダンス調整のためのマッチング回路を介して第1の高周波電源18(13.56MHz)に電気的に接続され、他端は接地されている。
【0253】
真空チャンバーの下部には、下部電極として機能する基板ステージ19が配置されている。基板ステージ19に設けられた静電チャックなどにより、基板ステージ上に被処理基板20が着脱可能に保持される。基板ステージ19には、加熱機構としてヒータ、冷却機構としてHeガス流路を備えている。基板ステージは、基板バイアス電圧印加用の第2の高周波電源21(3.2MHz)に接続されている。
【0254】
また、真空チャンバー15には、排気口が設けられ、自動圧力制御弁22(Automatic Pressure Control valve、APCとも呼ぶ。)が備えられる。APCはターボ分子ポンプ23に接続され、さらにターボ分子ポンプ23を介してドライポンプ24に接続される。APCは真空チャンバー内の圧力制御を行い、ターボ分子ポンプ23及びドライポンプ24は、真空チャンバー15内を減圧する。
【0255】
次に、図17(B)に示す真空チャンバー15内にプラズマを発生させ、被処理基板20に設けられている酸化物半導体膜、下地絶縁膜またはゲート絶縁膜に酸素プラズマドープを行う一例を示す。
【0256】
まず、ターボ分子ポンプ23及びドライポンプ24などを作動させて、真空チャンバー15内を所望の圧力に保持した後、被処理基板20を真空チャンバー15内の基板ステージに設置する。なお、基板ステージに保持する被処理基板20には少なくとも酸化物半導体膜または下地絶縁膜を備えるものとする。本実施の形態では、真空チャンバー15内の圧力を1.33Paに保持する。なお、酸素ガスをガス吹き出し口から真空チャンバー15内に供給する流量を250sccmに設定する。
【0257】
次いで、第1の高周波電源18からICPコイル16に高周波電力を印加し、プラズマを発生させる。そして、プラズマを発生させた状態を一定時間(30秒以上600秒以下)維持する。なお、ICPコイル16に印加する高周波電力は、1kW以上10kW以下とする。本実施の形態では、6000Wとする。この際、第2の高周波電源21から基板ステージに基板バイアス電圧を印加してもよい。本実施の形態では基板バイアス電圧印加に用いる電力を1000Wとする。
【0258】
本実施の形態では、プラズマを発生させた状態を60秒維持した後、被処理基板20を真空チャンバー15から搬出する。こうして、被処理基板20に設けられている酸化物半導体膜、下地絶縁膜またはゲート絶縁膜に酸素プラズマドープを行うことができる。
【0259】
なお、同様の装置を用いて、塩素ガスやフッ素ガスなどのハロゲンガスを用いることで、ハロゲンドープ処理を行うこともできる。
【0260】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0261】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)を示す。本実施の形態では、実施の形態1または2などにおいて示す酸化物半導体を用いたトランジスタと、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタとを同一基板上に形成する。
【0262】
図7は、半導体装置の構成の一例である。図7(A)には、半導体装置の断面を、図7(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図7(A)は、図7(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、図7(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図7(A)および図7(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ240を有し、上部に実施の形態2で示したトランジスタ345を有する。なお、トランジスタ345は、第2の半導体材料として酸化物半導体を用いている。本実施の形態では、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0263】
なお、本実施の形態においては、トランジスタ345を用いて記憶媒体を構成する例を示すが、トランジスタ345に代えて、実施の形態1または2で示したトランジスタを適用可能であることは、いうまでもない。
【0264】
図7におけるトランジスタ240は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板200に設けられたチャネル形成領域216と、チャネル形成領域216を挟むように設けられた不純物領域220と、不純物領域220に接する金属化合物領域224と、チャネル形成領域216上に設けられたゲート絶縁膜208と、ゲート絶縁膜208上に設けられたゲート電極210と、を有する。
【0265】
半導体材料を含む基板200は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0266】
基板200上にはトランジスタ240を囲むように素子分離絶縁膜206が設けられており、トランジスタ240を覆うように絶縁膜228および絶縁膜230が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図7(A)に示すようにトランジスタ240がサイドウォール絶縁膜を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ240の特性を重視する場合には、ゲート電極210の側面にサイドウォール絶縁膜を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域220を設けても良い。
【0267】
トランジスタ240はシリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いて作製することができる。このようなトランジスタ240は、高速動作が可能であるという特徴を有する。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0268】
トランジスタ240を形成した後、トランジスタ345および容量素子164の形成前の処理として、絶縁膜228や絶縁膜230にCMP処理を施して、ゲート電極210の上面を露出させる。ゲート電極210の上面を露出させる処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能であるが、トランジスタ345の特性を向上させるために、絶縁膜228や絶縁膜230の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。
【0269】
次に、酸化物半導体膜308に接し、下地として機能する絶縁膜302を形成する。絶縁膜302は、実施の形態2で示した絶縁膜302aまたは絶縁膜302b、もしくはそれらの積層構造を用いて、実施の形態2に示す材料及び形成プロセスを用いて形成することができる。
【0270】
次に、ゲート電極210、絶縁膜228、絶縁膜230などの上に導電膜を形成し、該導電膜を選択的にエッチングして、ソース電極304a、ドレイン電極304bを形成する。
【0271】
導電膜は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0272】
導電膜は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電膜を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極304a、およびドレイン電極304bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0273】
上部のトランジスタ345のチャネル長(L)は、ソース電極304a、およびドレイン電極304bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線を用いるのが望ましい。
【0274】
次に、ソース電極304a、およびドレイン電極304bを覆うように酸化物半導体膜を形成した後、当該酸化物半導体膜を選択的にエッチングして酸化物半導体膜308を形成する。酸化物半導体膜は、実施の形態2に示す材料及び形成プロセスを用いる。
【0275】
次に、酸化物半導体膜308に接するゲート絶縁膜310を形成する。ゲート絶縁膜310は、実施の形態2で示したゲート絶縁膜310aまたはゲート絶縁膜310b、もしくはそれらの積層構造を用いて、実施の形態2に示す材料及び形成プロセスを用いて形成することができる。
【0276】
次に、ゲート絶縁膜310上において酸化物半導体膜308と重畳する領域にゲート電極312aを形成し、ソース電極304aと重畳する領域に電極312bを形成する。
【0277】
ゲート絶縁膜310の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で熱処理(加酸化などとも呼ぶ)を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。
【0278】
なお、加酸化を目的とする熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、ゲート電極の形成後に加酸化を目的とする熱処理を行っても良い。また、脱水化等を目的とする熱処理に続けて加酸化を目的とする熱処理を行っても良いし、脱水化等を目的とする熱処理に加酸化を目的とする熱処理を兼ねさせても良いし、加酸化を目的とする熱処理に脱水化等を目的とする熱処理を兼ねさせても良い。
【0279】
上述のように、脱水化等を目的とする熱処理と、酸素ドープ処理または加酸化を目的とする熱処理とを適用することで、酸化物半導体膜308を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。
【0280】
ゲート電極312aおよび電極312bは、ゲート絶縁膜310上に導電膜を形成した後に、当該導電膜を選択的にエッチングすることによって形成することができる。
【0281】
次に、ゲート絶縁膜310、ゲート電極312a、および電極312b上に、絶縁膜151および絶縁膜152を形成する。絶縁膜151および絶縁膜152は、スパッタ法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化ガリウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0282】
次に、ゲート絶縁膜310、絶縁膜151、及び絶縁膜152に、ドレイン電極304bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0283】
その後、上記開口に電極154を形成し、絶縁膜152上に電極154に接する配線156を形成する。
【0284】
電極154は、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電膜を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記導電膜の一部を除去することにより形成することができる。
【0285】
配線156は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電膜を形成した後、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。また、導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極304aまたはドレイン電極304bなどと同様である。
【0286】
以上により、高純度化された酸化物半導体膜308を用いたトランジスタ345、および容量素子164が完成する。容量素子164は、ソース電極304a、酸化物半導体膜308、ゲート絶縁膜310、および電極312b、で構成される。
【0287】
なお、図7の容量素子164では、酸化物半導体膜308とゲート絶縁膜310を積層させることにより、ソース電極304aと、電極312bとの間の絶縁性を十分に確保することができる。もちろん、十分な容量を確保するために、酸化物半導体膜308を有しない構成の容量素子164を採用しても良い。さらに、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0288】
図7(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図7(C)において、トランジスタ345のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ240のゲート電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ240のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ240のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ345のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ345のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0289】
酸化物半導体を用いたトランジスタ345は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ345をオフ状態とすることで、トランジスタ345のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ240のゲート電極とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0290】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ345がオン状態となる電位にして、トランジスタ345をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ345がオフ状態となる電位にして、トランジスタ345をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0291】
トランジスタ345のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0292】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ240は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ240をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ240の見かけのしきい値Vth_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ240の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ240を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ240は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ240は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ240のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0293】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ345がオン状態となる電位にして、トランジスタ345をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ345がオフ状態となる電位にして、トランジスタ345をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0294】
本実施の形態で示すトランジスタ345は、高純度化され、真性化された酸化物半導体膜308を用いることで、トランジスタ345のオフ電流を十分に低減することができる。また、酸化物半導体膜308を酸素過剰な層とすることで、トランジスタ345の電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定なトランジスタとすることができる。さらに、ハロゲンドープ処理によって酸化物半導体膜が形成されるゲート絶縁膜に塩素に代表されるハロゲンを添加することで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化をより抑制し、光による劣化をより低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能で、信頼性の高い半導体装置が得られる。また、多値のデータを記憶する半導体装置には、しきい値の変動が小さいことが求められるが、トランジスタ345は、そのような目的に適している。
【0295】
また、本実施の形態において示す半導体装置では、トランジスタ240とトランジスタ345を重畳させることで、集積度が十分に高められた半導体装置が実現される。
【0296】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0297】
(実施の形態5)
実施の形態1または2で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0298】
図8(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図8(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0299】
図8(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図8(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図8(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0300】
また図8(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0301】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図8(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図8(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図8(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0302】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0303】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0304】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1または2で例示したトランジスタを適用することができる。
【0305】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0306】
半導体装置の一形態について、図9乃至図11を用いて説明する。図9乃至図11は、図8(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0307】
図9乃至図11で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0308】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極及びドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0309】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図9乃至図11では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図10及び図11では、トランジスタ4010、4011上に、絶縁層4021が設けられている。
【0310】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1または2で示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ4010、トランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図9乃至図11で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0311】
また、本実施の形態では、絶縁層上において駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置には導電層を設けてもよい。導電層を酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0312】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0313】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0314】
図9に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図9において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0315】
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なおスペーサ4035の形状は、柱状に限定されるものではなく、例えば、球状のスペーサを用いていても良い。
【0316】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0317】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0318】
また、液晶材料の固有抵抗率は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗率の値は、20℃で測定した値とする。
【0319】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0320】
本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0321】
また、本実施の形態で用いる高純度化された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。よって、液晶表示装置の画素部に上記トランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、上記トランジスタは、同一基板上に駆動回路部または画素部に作り分けて作製することができるため、液晶表示装置の部品点数を削減することができる。
【0322】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0323】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。ここで、垂直配向モードとは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種であり、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0324】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0325】
また、バックライトとして複数の発光ダイオード(LED)を用いて、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式)を行うことも可能である。フィールドシーケンシャル駆動方式を適用することで、カラーフィルタを用いることなく、カラー表示を行うことができる。
【0326】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0327】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0328】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0329】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0330】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0331】
図10に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。電流励起型発光では、発光強度をトランジスタのドレイン電流で制御するが、トランジスタのしきい値が変動すると、ドレイン電流が大きく変動してしまうので、しきい値の変動が小さいトランジスタが求められる。実施の形態1や2で示したトランジスタは、この目的にかなっている。
【0332】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0333】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0334】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC(Diamond−Like Carbon)膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0335】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0336】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0337】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0338】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0339】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0340】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0341】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0342】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0343】
図11に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。図11の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。
【0344】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には黒色領域4615a及び白色領域4615bを有し、周りに液体で満たされているキャビティ4612を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極(対向電極)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0345】
なお、図9乃至図11において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0346】
絶縁層4021は、無機絶縁材料又は有機絶縁材料を用いて形成することができる。なお、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いると、平坦化絶縁膜として好適である。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0347】
絶縁層4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いることができる。
【0348】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0349】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0350】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0351】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0352】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0353】
以上のように、実施の形態1または2で例示したトランジスタを適用することで、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0354】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0355】
(実施の形態6)
実施の形態1または2のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0356】
図12(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図12(A)はフォトセンサの等価回路であり、図12(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0357】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0358】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図12(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。
【0359】
図12(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。また、トランジスタ640上には、第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634が設けられている。
【0360】
フォトダイオード602は、第1の層間絶縁層633上に設けられ、第1の層間絶縁層633上に形成した電極層641と、第2の層間絶縁層634上に設けられた電極層642との間に、第1の層間絶縁層633側から順に第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cを積層した構造を有している。
【0361】
また、トランジスタ640のゲート電極と電気的に接続されるように、該ゲート電極と同じ層にゲート電極645が設けられている。ゲート電極645は、第1の層間絶縁層633、トランジスタ640の保護絶縁膜およびトランジスタ640のゲート絶縁膜とに設けられた開口を介して、第1の層間絶縁層633に形成された電極層644と電気的に接続している。第3の半導体層606cと電気的に接続された電極層642は、電極層644を介してゲート電極645と電気的に接続しているため、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。また、第1の半導体層606aと電気的に接続された電極層641は、第2の層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続している。
【0362】
本実施の形態では、トランジスタ640として、実施の形態1または2のいずれかで示したトランジスタを適用することができる。トランジスタ640、トランジスタ656は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定であるため、図12で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0363】
ここでは、第1半導体層606aとしてp型の導電型を有する半導体層と、第2半導体層606bとして高抵抗な半導体層(i型半導体層)、第3半導体層606cとしてn型の導電型を有する半導体層を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0364】
第1半導体層606aはp型半導体層であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体層606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体層606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0365】
第2半導体層606bは、i型半導体層(真性半導体層)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体層606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。第2半導体層606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行っても良い。第2半導体層606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0366】
第3半導体層606cは、n型半導体層であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体層606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体層606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0367】
また、第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶半導体(セミアモルファス半導体(Semi Amorphous Semiconductor:SAS)を用いて形成してもよい。
【0368】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、ダングリングボンドを終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0369】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどのシリコンを含む気体を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH、C等の炭化物気体、GeH、GeF等のゲルマニウムを含む気体、F等を混入させてもよい。
【0370】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体層側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光622を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体層側とは逆の導電型を有する半導体層側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体層側を受光面として用いることもできる。
【0371】
第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁層が好ましい。第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0372】
第1の層間絶縁層633、第2の層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング等を用いて形成することができる。
【0373】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0374】
トランジスタ640として、実施の形態1または2で一例を示したトランジスタを用いることができる。水素、水分、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を意図的に排除することで高純度化され、また、酸素ドープ処理により酸素を過剰に含有する酸化物半導体膜を含むトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0375】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0376】
(実施の形態7)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した液晶表示装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0377】
図13(A)は電子書籍(E−bookともいう)であり、筐体9630、表示部9631、操作キー9632、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有することができる。図13(A)に示した電子書籍は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。なお、図13(A)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ(以下、コンバータと略記)9636を有する構成について示している。先の実施の形態で示した半導体装置を表示部9631に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。
【0378】
図13(A)に示す構成とすることにより、表示部9631として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想され、太陽電池9633による発電、及びバッテリー9635での充電を効率よく行うことができ、好適である。なお太陽電池9633は、筐体9630の空きスペース(表面や裏面)に適宜設けることができるため、効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0379】
また図13(A)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図13(B)にブロック図を示し説明する。図13(B)には、太陽電池9633、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、コンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0380】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0381】
次いで外光により太陽電池9633により発電がされない場合の動作の例について説明する。バッテリー9635に蓄電された電力は、スイッチSW3をオンにすることでコンバータ9637により昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作にバッテリー9635からの電力が用いられることとなる。
【0382】
なお太陽電池9633については、充電手段の一例として示したが、他の手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0383】
図14(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。先の実施の形態で示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0384】
図14(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。先の実施の形態で示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0385】
図14(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0386】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図14(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図14(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。先の実施の形態で示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍2700とすることができる。
【0387】
また、図14(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0388】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0389】
図14(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。先の実施の形態で示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0390】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図14(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0391】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、図14(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0392】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0393】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0394】
図14(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。先の実施の形態で示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0395】
図14(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置9600は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。先の実施の形態で示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置9600とすることができる。
【0396】
テレビジョン装置9600の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0397】
なお、テレビジョン装置9600は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0398】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0399】
10 プラズマ装置
11 基板供給室
12 ロードロック室
13 搬送室
14 カセットポート
15 真空チャンバー
16 ICPコイル
17 ガス流路
18 第1の高周波電源
19 基板ステージ
20 被処理基板
21 第2の高周波電源
22 自動圧力制御弁
23 ターボ分子ポンプ
24 ドライポンプ
100 基板
102a ゲート絶縁膜
102b ゲート絶縁膜
104a ソース電極
104b ドレイン電極
106 酸化物半導体膜
108 酸化物半導体膜
110a 絶縁膜
110b 絶縁膜
112 ゲート電極
112a ゲート電極
112b 電極
114 絶縁膜
120 トランジスタ
125 トランジスタ
130 トランジスタ
135 トランジスタ
140 トランジスタ
145 トランジスタ
150 トランジスタ
151 絶縁膜
152 絶縁膜
154 電極
156 配線
160 トランジスタ
164 容量素子
180 ハロゲン
182 酸素
200 基板
206 素子分離絶縁膜
208 ゲート絶縁膜
210 ゲート電極
216 チャネル形成領域
220 不純物領域
224 金属化合物領域
228 絶縁膜
230 絶縁膜
240 トランジスタ
300 基板
302 絶縁膜
302a 絶縁膜
302b 絶縁膜
304a ソース電極
304b ドレイン電極
308 酸化物半導体膜
310 ゲート絶縁膜
310a ゲート絶縁膜
310b ゲート絶縁膜
312 ゲート電極
312a ゲート電極
312b 電極
314 絶縁膜
320 トランジスタ
325 トランジスタ
330 トランジスタ
335 トランジスタ
340 トランジスタ
345 トランジスタ
350 トランジスタ
380 ハロゲン
382 酸素
601 基板
602 フォトダイオード
606a 半導体層
606b 半導体層
606c 半導体層
608 接着層
613 基板
622 光
631 絶縁膜
633 層間絶縁層
634 層間絶縁層
640 トランジスタ
641 電極層
642 電極層
643 導電層
644 電極層
645 ゲート電極
656 トランジスタ
658 フォトダイオードリセット信号線
659 ゲート信号線
671 フォトセンサ出力信号線
672 フォトセンサ基準信号線
2700 電子書籍
2701 筐体
2703 筐体
2705 表示部
2707 表示部
2711 軸部
2721 電源
2723 操作キー
2725 スピーカー
2800 筐体
2801 筐体
2802 表示パネル
2803 スピーカー
2804 マイクロフォン
2805 操作キー
2806 ポインティングデバイス
2807 カメラ用レンズ
2808 外部接続端子
2810 太陽電池セル
2811 外部メモリスロット
3001 本体
3002 筐体
3003 表示部
3004 キーボード
3021 本体
3022 スタイラス
3023 表示部
3024 操作ボタン
3025 外部インターフェイス
3051 本体
3053 接眼部
3054 操作スイッチ
3055 表示部(B)
3056 バッテリー
3057 表示部(A)
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 基板
4008 液晶層
4010 トランジスタ
4011 トランジスタ
4013 液晶素子
4015 接続端子電極
4016 端子電極
4018 FPC
4019 異方性導電膜
4021 絶縁層
4030 電極層
4031 電極層
4032 絶縁膜
4035 スペーサ
4510 隔壁
4511 電界発光層
4513 発光素子
4514 充填材
4612 キャビティ
4613 球形粒子
4614 充填材
4615a 黒色領域
4615b 白色領域
9600 テレビジョン装置
9601 筐体
9603 表示部
9605 スタンド
9630 筐体
9631 表示部
9632 操作キー
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 バッテリー
9636 コンバータ
9637 コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上に第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、前記第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給し、
前記第1の絶縁膜上に、前記ゲート電極と重畳して酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜に熱処理を行って、前記酸化物半導体膜中の水素原子を除去し、
前記水素原子が除去された酸化物半導体膜に酸素ドープ処理を行って、前記酸化物半導体膜中に酸素原子を供給し、
前記酸素原子が供給された前記酸化物半導体膜に熱処理を行い、
前記酸化物半導体膜上に接して、ソース電極およびドレイン電極を形成し、
前記酸化物半導体膜上に接して、第2の絶縁膜を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項2】
前記第2の絶縁膜を覆うように、窒素を含有する絶縁膜を形成する請求項1に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項3】
第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、前記第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給し、
前記第1の絶縁膜上に酸化物半導体膜を形成し、
前記酸化物半導体膜に熱処理を行って、前記酸化物半導体膜中の水素原子を除去し、
前記水素原子が除去された酸化物半導体膜に酸素ドープ処理を行って、前記酸化物半導体膜中に酸素原子を供給し、
前記酸素原子が供給された酸化物半導体膜に熱処理を行い、
前記酸化物半導体膜上に接して、ソース電極およびドレイン電極を形成し、
前記酸化物半導体膜上に接して、第2の絶縁膜を形成し、
前記第2の絶縁膜上の前記酸化物半導体膜と重畳する領域にゲート電極を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項4】
前記ゲート電極を覆うように、窒素を含有する絶縁膜を形成する請求項3に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項5】
前記酸化物半導体膜を形成した後、前記酸化物半導体膜を島状に加工する請求項1乃至4のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項6】
前記酸化物半導体膜を島状に加工する工程において、少なくとも前記第1の絶縁膜の一部も島状に加工する請求項5に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項7】
前記第1の絶縁膜と接するように前記第2の絶縁膜を形成する請求項5または6に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項8】
前記第1の絶縁膜または前記第2の絶縁膜として、前記酸化物半導体膜の構成元素を含む絶縁膜を形成する請求項1乃至7のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項9】
前記第1の絶縁膜または前記第2の絶縁膜として、前記酸化物半導体膜の構成元素を含む絶縁膜と、前記酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜を積層して形成する請求項1乃至8のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項10】
前記第1の絶縁膜を形成し、前記第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、前記第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給する工程に代えて、
前記第1の絶縁膜として、前記酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜を形成し、
前記酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、前記酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜にハロゲン原子を供給し、
前記第1の絶縁膜として、前記酸化物半導体膜の構成元素とは異なる元素を含む絶縁膜上に前記酸化物半導体膜の構成元素を含む絶縁膜を形成する請求項9に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項11】
前記第1の絶縁膜または前記第2の絶縁膜として、ガリウムを含む絶縁膜を形成する請求項1乃至10のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項12】
前記第1の絶縁膜または前記第2の絶縁膜として、ガリウムを含む絶縁膜と、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜を形成する請求項1乃至11のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項13】
前記第1の絶縁膜を形成し、前記第1の絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、前記第1の絶縁膜にハロゲン原子を供給する工程に代えて、
前記第1の絶縁膜として、ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜を形成し、
前記ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜にハロゲンドープ処理を行って、前記ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜にハロゲン原子を供給し、
前記第1の絶縁膜として、前記ガリウムとは異なる材料を含む絶縁膜上に前記ガリウムを含む絶縁膜を形成する請求項12に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項14】
前記ハロゲンドープ処理において、塩素を用いる請求項1乃至13のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−258939(P2011−258939A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105570(P2011−105570)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】