説明

半導体装置の製造方法、電子機器の製造方法、半導体装置および電子機器

【課題】キャパシタを有する半導体装置において、多層配線(上下に配置される配線)間の寄生容量を低減しつつ、キャパシタ容量を大きくする。
【解決手段】ガラス基板1上にフォトレジスト膜3を形成し、フォトレジスト膜を選択的に除去し、深さT1の溝3cとより浅い深さT2(<T1)の溝3dを有する溝を形成し、この溝内に導電性材料液を注入し、熱処理を施し、導電性膜(下層配線)と導電性膜(下部電極)を形成し、これらの上部に絶縁膜を形成し、その上部に導電性膜(上層配線)および導電性膜(上部電極)を形成する。その結果、下層配線と上層配線との距離を大きくでき、これらの間の寄生容量を低減することができる。また、下部電極と上部電極との距離を小さくでき、これらの間の容量を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法等に関するものであり、特に、半導体装置の配線(導電性膜)の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、半導体膜、絶縁膜および導電性膜の積層構造を有している。中でも、素子の微細化に伴い、配線等の導電性膜の微細化、例えば、細幅化および薄膜化の要求が大きくなっている。
【0003】
一方、ガラス基板上に、薄膜トランジスタ(TFT: thin film transistor)のような半導体素子を形成し、表示装置(液晶装置、有機エレクトロルミネッセンス装置)の表示部や駆動部を構成する場合、液体材料を用いて各構成部位(TFT自身や配線)を形成する技術の開発がなされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1(特開2005−12181号公報)には、細い線状のパターンを、精度よく安定して形成するため、基板(P)上にバンク(B)を形成する工程と、バンク(B)によって区画された領域(A)に、機能液(L)を配置する工程とを有するパターン形成方法が開示されている。なお、括弧内は、当該公報中の符号番号である。
【特許文献1】特開2005−12181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、半導体装置の研究・開発に従事しており、TFT等の半導体素子を有する回路等の形成に際し、最適な配線の形成方法を検討している。
【0006】
例えば、配線の微細化の検討はもとより、素子の微細化や高集積化には、配線の多層化が不可欠な構造となっているため、これらを踏まえた最適な配線の形成方法を検討している。
【0007】
配線を多層化した場合、層間絶縁膜を介して上下に配置される配線間に寄生容量が生じ、動作の高速化を妨げることがある。この寄生容量の低減には、層間絶縁膜を厚く形成する、層間絶縁膜材料を低誘電率(low−k)材料とする等の対策も考えられる。
【0008】
しかしながら、上記対策では、膜応力が大きくなり、膜中にクラックが生じ、また、その応力により膜間の配線やTFTなどの素子の特性の劣化を生じさせる恐れがある。特に、大型の基板やフレキシブル基板上への成膜に際しては、膜応力の低減が要求され、寄生容量を低減する別の対策が重要となる。
【0009】
一方、表示装置の表示部や駆動部には、キャパシタ(容量)が組み込まれることが多々ある。従って、このキャパシタ部においては、容量を大きく確保するため、配線の上下間隔(絶縁膜厚)を小さくすることが必要である。そのため容量を大きくするために、キャパシタ部の容量絶縁膜を層間絶縁膜とは異なる工程で形成し、また、その膜を高誘電率(High−k)材料とする等の工夫が必要であった。
【0010】
本発明は、多層配線(上下に配置される配線)間の寄生容量を低減できる配線の形成方法および配線構造を提供することを目的とする。また、本発明は、キャパシタを有する半導体装置において、多層配線(上下に配置される配線)間の寄生容量を低減しつつ、キャパシタ容量を大きくできる配線の形成方法および配線構造を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の半導体装置の製造方法は、(a)基板上に絶縁膜を形成する工程と、(b)上記絶縁膜を選択的に除去し、第1深さの第1溝部と上記第1深さより浅い第2深さの第2溝部を有する溝を形成する工程と、(c)上記第1溝部および第2溝部内に導電性材料液を注入する工程と、(d)上記導電性材料液に処理を施し、上記第1溝部内に第1導電性膜を形成し、上記第2溝部内に第2導電性膜を形成する工程と、(e)上記第1および第2導電性膜上に他の絶縁膜を形成し、上記他の絶縁膜上に第3導電性膜を形成する工程と、を有する。
【0012】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、(a)基板上に第1導電性膜および第2導電性膜を形成する工程と、(b)上記第1導電性膜および第2導電性膜上に絶縁膜を形成する工程と、(c)上記絶縁膜を選択的に除去し、上記第1導電性膜の上部に位置する第1溝部と、第2導電性膜の上部に位置する第2溝部とを有する溝を形成する工程であって、上記第1導電性膜と上記第1溝の底部との距離より、上記第2導電性膜と上記第2溝の底部との距離が小さい溝を形成する工程と、(d)上記溝内に、導電性材料液を注入する工程と、(e)上記導電性材料液に処理を施し、上記溝内に第3導電性膜を形成する工程と、を有する。
【0013】
かかる方法によれば、第1導電性膜と第3導電性膜との距離を大きくでき、これらの間の寄生容量を低減することができる。また、第2導電性膜と第3導電性膜との距離を小さくでき、これらの間の容量を大きくすることができる。
【0014】
より好ましくは、上記第2導電性膜膜は、キャパシタを構成する第1電極であり、上記第3導電性膜であって、上記第2導電性膜の上部に位置する部分は、上記キャパシタを構成する第2電極である。かかる方法によれば、キャパシタ容量を大きくすることができる。
【0015】
より好ましくは、上記第1導電性膜は、第1配線であり、上記第2電極以外の上記第3導電性膜は、第2配線である。かかる方法によれば、第1配線と第2配線との間の寄生容量を低減することができる。
【0016】
より好ましくは、上記溝は、上記第1導電性膜の上部と第2導電性膜の上部との間に傾斜部を有する。かかる方法によれば、第3導電性膜を一連の配線として形成することができる。
【0017】
より好ましくは、上記溝は、上記第1導電性膜の上部と第2導電性膜の上部との間に第1傾斜部、平坦部および第2傾斜部を有する。かかる方法によれば、平坦部により第1傾斜部に、効率よく導電性材料液を充填することができる。
【0018】
より好ましくは、上記溝は、上記第1導電性膜の上部と第2導電性膜の上部との間に第1傾斜部、逆傾斜部および第2傾斜部を有する。かかる方法によれば、逆傾斜部により第1傾斜部に、効率よく導電性材料液を充填することができる。
【0019】
より好ましくは、上記溝の端部には、上記溝の幅より広い液溜め部が配置され、上記導電性材料液を注入する工程は、上記液溜め部に上記導電性材料液を吐出した後、上記溝に上記導電性材料液を導入する工程である。かかる方法によれば、液溜め部から第2溝に導電性材料液を導入することができる。
【0020】
より好ましくは、上記溝は、第1幅を有する幅広溝と、上記幅広溝の略中央部に位置し、第2幅を有する幅狭溝とから成る。かかる方法によれば、幅狭溝の第2幅および深さによって導電性膜の幅および膜厚が規定されるため、所定の幅および膜厚の第3導電性膜を形成することができる。特に、配線(導電性膜)等の微細化に寄与することができる。
【0021】
より好ましくは、上記溝は、第1幅を有する幅広溝と、上記幅広溝の略中央部に位置し、第2幅を有する幅狭溝とから成り、上記幅狭溝の深さは、ほぼ一定であり、上記幅広溝の深さは、上記第2導電性膜の上部より上記第1導電性膜の上部において、浅い。かかる方法によれば、幅狭溝の第2幅および深さによって導電性膜の幅および膜厚が規定されるため、所定の幅および膜厚の第3導電性膜を形成することができる。また、幅広溝の深さを上記第2導電性膜の上部と上記第1導電性膜の上部において変化させることで、溝の底部の位置(第1もしくは第2導電性膜と第3導電性膜との距離)を容易に変化させることができる。
【0022】
より好ましくは、上記溝の端部には、上記幅狭溝の幅より広い液溜め部が配置され、上記導電性材料液を注入する工程は、上記液溜め部に上記導電性材料液を吐出した後、上記幅狭溝に上記導電性材料液を導入する工程である。かかる方法によれば、液溜め部から幅狭溝に導電性材料液を導入することができる。
【0023】
より好ましくは、上記導電性材料液の注入は、インクジェット法により上記導電性材料液の液滴を滴下させることにより行われる。かかる方法によれば、溝に導電性材料液を注入することができる。
【0024】
より好ましくは、上記液溜め部への上記導電性材料液の吐出は、インクジェット法により上記導電性材料液の液滴を滴下させることにより行われ、上記第2幅の一部は、上記液滴の液滴径より小さく、上記液溜め部の幅は、上記液滴径より大きい。かかる方法によれば、液滴の液滴径より小さい幅の導電性膜を形成することができる。
【0025】
より好ましくは、上記絶縁膜は感光性材料からなる。かかる方法によれば、溝の底面の位置を露光量を調整することで、容易に変化させることができる。また、幅広溝および幅狭溝を、露光量を調整することで、短工程で容易に形成することができる。
【0026】
より好ましくは、上記導電性材料液は、導電性微粒子および分散媒を含有し、上記処理工程は、上記導電性材料液に熱処理を施すことにより行われる。かかる方法によれば、導電性微粒子が焼結した導電性膜を形成することができる。
【0027】
より好ましくは、上記導電性材料液は、触媒を含有し、上記処理工程は、上記導電性膜をメッキ法により成長させることにより行われる。かかる方法によれば、メッキ(無電界メッキ)成長した導電性膜を形成することができる。
【0028】
(2)本発明の電子機器の製造方法は、半導体装置を有する電子機器の製造方法であって、上記半導体装置の製造方法を有する。ここで「電子機器」とは、本発明にかかる半導体装置を備えた一定の機能を奏する機器一般をいい、例えば電気光学装置やメモリを備えて構成される。その構成に特に限定はないが、例えばICカード、携帯電話、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、リア型またはフロント型のプロジェクター、さらに表示機能付ファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、PDA、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイなどが含まれる。また、「電気光学装置」とは、本発明にかかる半導体装置を備えた、電気的作用によって発光するあるいは外部からの光の状態を変化させる電気光学素子を備えた装置一般をいい、自ら光を発するものと外部からの光の通過を抑制するものの双方を含む。例えば、電気光学素子として、液晶素子、電気泳動粒子が分散した分散媒体を有する電気泳動素子、EL(electroluminescence)素子、電界の印加により発生した電子を発光板に当てて発光させる電子放出素子を備えたアクティブマトリクス型の表示装置等がある。
【0029】
(3)本発明の半導体装置は、(a)基板上に形成された絶縁膜と、(b)上記絶縁膜中に形成された溝であって、第1深さの第1溝部と第2深さの第2溝部を有する溝と、(c)上記第1溝部内に形成された第1導電性膜と、(d)上記第2溝部内に形成された第2導電性膜と、(e)上記導電性膜上に他の絶縁膜を介して形成された第3導電性膜と、を有する。
【0030】
また、本発明の半導体装置は、(a)基板上に形成された第1導電性膜および第2導電性膜と、(b)上記第1導電性膜および第2導電性膜上に形成された絶縁膜と、(c)上記絶縁膜中に形成された溝であって、上記第1導電性膜の上部に位置する第1溝部と、第2導電性膜の上部に位置する第2溝部とを有し、上記第1導電性膜と上記第1溝の底部との距離より、上記第2導電性膜と上記第2溝の底部との距離が小さい溝と、(d)上記溝内に形成された第3導電性膜と、を有する。
【0031】
かかる構成によれば、第1導電性膜と第3導電性膜との距離を大きくでき、これらの間の寄生容量を低減することができる。また、第2導電性膜と第3導電性膜との距離を小さくでき、これらの間の容量を大きくすることができる。
【0032】
より好ましくは、上記溝は、第1幅を有する幅広溝と、上記幅広溝の略中央部に位置し、第2幅を有する幅狭溝とから成り、上記幅狭溝の深さは、ほぼ一定であり、上記幅広溝の深さは、上記第2導電性膜の上部より上記第1導電性膜の上部において、浅い。
【0033】
かかる構成によれば、第3導電性膜の幅および厚さを第2溝の第2幅および第2深さに対応したものとすることができる。また、第1溝の深さを上記第2導電性膜の上部と上記第1導電性膜の上部において変化させることにより、第1導電性膜と第3導電性膜との距離を大きくでき、これらの間の寄生容量を低減することができる。また、第2導電性膜と第3導電性膜との距離を小さくでき、これらの間の容量を大きくすることができる。
【0034】
(4)本発明の電子機器は、半導体装置を有する電子機器であって、上記半導体装置を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の機能を有するものには同一もしくは関連の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0036】
<実施の形態1>
図1〜図5は、本実施の形態の配線の製造方法(半導体装置の製造方法)を示す工程断面図および要部平面図である。
【0037】
図1(A)に示すように、ガラス基板(基板、石英基板、透明基板、絶縁性基板)1を準備し、その上部に図示しない下地保護膜を形成する。この下地保護膜は、例えば、酸化シリコン膜よりなり、例えば、TEOS(tetra ethyl ortho silicate、テトラエトキシシラン)および酸素ガスなどを原料ガスとして、例えばプラズマCVD(chemical vapor deposition、化学気相成長)法を用いて形成する。なお、SOG(spin on glass)材料を回転塗布した後、熱処理を施すことにより形成してもよい。次いで、ガラス基板1上に感光性を有する絶縁膜としてフォトレジストを回転塗布し、下地保護膜上にフォトレジスト膜3を形成する。
【0038】
次いで、当該フォトレジスト膜3を露光、現像(フォトリソグラフィー)することにより、フォトレジスト膜3の表面に溝(配線溝)3a〜3dを形成する。この溝3a〜3dの形状について、図2を参照しながら説明する。なお、図1(B)は、図2のI−I’部の断面に対応する。
【0039】
図2に示すように、溝3a〜3dは、y方向に延在し、それぞれ所望の幅を有している。また、溝3a〜3cは、深さT1であり、溝3dは、深さT2<T1である。即ち、溝3dは、溝3a〜3cより浅い。言い換えれば、溝3dの底面は、溝3a〜3cの底面より高い位置にある。なお、ここでは、「溝(凹部、窪み)」と言うが、その両側の突起を指して「バンク」ということもある。
【0040】
このような形状の溝3a〜3dは、フォトレジスト膜3を露光、現像することにより形成することができる。露光機としては、通常のマスク露光機(ステッパー、MPA:Mirror Projection Mask Aliner、PLA)を用いることができる。なお、実施の形態3で説明するマスクレス露光機(デジタル露光機)を用いてもよい。また、溝3a〜3c部より溝3d部の露光量を低減させることで、溝3dの深さT2を浅くすることができる。
【0041】
このように、感光性を有する絶縁膜(フォトレジスト膜3)を用いることで、エッチング工程を省略でき、短工程で溝3a〜3dを形成することができる。また、露光量を調整することで深さの異なる溝を形成することができる。
【0042】
この感光性を有する絶縁膜(フォトレジスト膜3)は、層間絶縁膜としての役割も果たすため、シロキサン骨格を持つ高分子材料、アクリル系、オレフィン系、メラミン系、ポリイミド系の高分子材料等を用いて好適である。
【0043】
もちろん、感光性を有さない絶縁膜をパターニングすることで、溝3a〜3dを形成してもよい。例えば、深さT1の溝3a〜3cを形成し、その後、深さT2の溝3dを形成する。なお、溝3dを形成する際には、溝3a〜3c上をマスクとなるフォトレジスト膜で覆う必要がある。
【0044】
また、導電性材料液を溝3a〜3c内に流れやすくするために、溝3a〜3c形成前にフォトレジスト膜3の表面にフッ素樹脂コーティングやプラズマ処理にて表面の撥液処理を行うことが望ましい。その後、上記露光機にて、所望のパターン(溝)を形成する。
【0045】
次いで、図3(A)に示すように、導電性材料液(機能液、液体材料)を例えば液滴吐出方式(液滴噴射法、インクジェット法、印刷法)により溝3a〜3d中に注入する。各溝3a〜3dに沿って随時液滴を吐出してもよいし、各溝3a〜3dに連結する液溜め部(プール部)を設け、この液溜め部に一括して液滴を吐出し、各溝3a〜3d内に導入してもよい。この際、液溜め部の幅を、各溝の幅より大きくする。また、当該方法によれば、導電性材料液の液滴径(直径)より幅の狭い溝内に材料液を充填することが可能となる。この場合、溝(キャパシタ部を除く)の幅は上記液滴径より小さく、また、液溜め部の幅は、上記液滴径より大きくなる。
【0046】
この際、各溝3a〜3dに、それぞれ所望の膜厚の導電性膜が形成されるよう、各溝3a〜3dに注入される導電性材料液の容量を適宜調整する。次いで、溝3a〜3d内の導電性材料液に熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、溝3a〜3d内に導電性膜(配線)5a〜5dを形成する(図3(A)参照)。ここで、導電性膜5a、5bは、TFTのソース、ドレイン引き出し配線となる。また、導電性膜5cは、下層配線、導電性膜5dは、キャパシタCaの下部電極となる。
【0047】
次いで、図3(B)に示すように、導電性膜5a、5b間のフォトレジスト膜3の一部を除去することにより、導電性膜5a、5b上に、溝7を形成する。次いで、図3(C)に示すように、この溝7内に、半導体膜9として例えばシリコン膜を形成する。このシリコン膜は、例えば、半導体材料液を用いて形成することができる。例えば、ノンドープの高次シラン組成物溶液を塗布した後、熱処理(乾燥、焼成)を行うことによりシリコン膜を形成する。この高次シラン組成物溶液とは、シラン化合物の溶液に紫外線(UV)照射を施し、シラン化合物を重合させ、高次シラン組成物とした溶液である。例えば、低次シラン化合物としてシクロペンタシラン(沸点:194℃)に、波長405nm、強度100mW/cm2の紫外線(UV)を照射した液をトルエン等の有機溶媒で希釈し、高次シラン組成物溶液とする。なお、シリコン膜をCVD法等の他の方法で形成してもよい。
【0048】
次いで、図4(A)に示すように、半導体膜9、導電性膜5c、5d上に、絶縁膜11として例えば酸化シリコン膜をプラズマCVD法で形成する。この絶縁膜11は、半導体膜9上においては、TFTのゲート絶縁膜となり、また、導電性膜5d上においては、キャパシタCaの容量絶縁膜となる。
【0049】
次いで、図4(B)に示すように、絶縁膜11上に導電性膜を例えばCVD法で形成し、パターニングすることにより、導電性膜13aおよび13bを形成する。導電性膜13aは、TFTのゲート電極となり、導電性膜13bは、キャパシタCaの上部電極となる。
【0050】
次いで、図5(A)に示すように、導電性膜13aおよび13b上にフォトレジスト膜15を形成し、露光、現像することにより導電性膜5c上に溝15aを形成する。次いで、図5(B)に示すように、溝17内に導電性材料液を注入し、熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、溝15a内に導電性膜17を形成する。なお、溝15aを形成せず、フォトレジスト膜(絶縁膜)15上に導電性膜をCVD法などにより堆積しパターニングすることにより導電性膜17を形成してもよい。
【0051】
このように、本実施の形態によれば、深さの異なる溝3c、3dを形成し、その内部に導電性膜5c、5dを形成したので、相対的に導電性膜5cが低い場所に位置し、導電性膜5cと17の上下の配線間隔を確保でき、これらの配線の寄生容量を低減することができる。一方、相対的に導電性膜5dが高い場所に位置し、導電性膜5dと13bの上下の配線間隔を狭くでき、キャパシタCaの容量を大きくすることができる。
【0052】
また、上記の実施の形態に示すTFTおよびキャパシタを有する半導体装置の一例として、有機EL装置や液晶装置などの表示装置が挙げられる。図6に、アクティブマトリクス方式の有機EL装置の回路構成例を示す。
【0053】
例えば、アクティブマトリクス方式の有機EL装置は、水平方向(第1方向)に延在する複数の走査線(書込み用走査線)20およびリセット線(消去用走査線)24と、これらの走査線20等と交差して配列された複数の信号線(データ線)22と、走査線20と信号線22との各交点に配置される画素回路(駆動回路)30および有機EL素子32とを有する(図6参照)。なお、図6においては、一の画素回路(駆動回路)30および有機EL素子32のみ記載しているが、これらが、マトリクス状に複数配置されていることは言うまでもない。また、各走査線20、各リセット線24および各信号線22はそれぞれを駆動するドライバに接続されている。
【0054】
上記画素回路30は、電流制御用トランジスタDR、データ書き込み用トランジスタSW1、データ消去用トランジスタSW2、保持容量Cs、を含んで構成される。電流制御用トランジスタDRのソースがOLED(Organic Light Emitting Display)電源線21と接続され、ドレインが有機EL素子32の一方端子と接続されている。この駆動回路30に対応して設けられる有機EL素子32は、一方端子が電流制御用トランジスタDRのドレインと接続され、他方端子が共通陰極と接続される。データ書き込み用トランジスタSW1は、ゲートが走査線20に接続され、ソースが信号線22に接続され、ドレインが電流制御用トランジスタDRのゲートに接続されている。データ消去用トランジスタSW2は、ゲートがリセット線24に接続され、ソースがデータ書き込み用トランジスタSW1のドレインに接続され、ドレインが低電位電源線23に接続されている。保持容量Csは、電流制御用トランジスタDRのゲートとソースの間に並列に接続されている。
【0055】
このような画素回路30に上記実施の形態を適用すれば、多層配線間の寄生容量を低減しつつキャパシタの容量を大きくすることができる。
【0056】
なお、図6は、画素回路30等の構成例に過ぎず、回路構成は種々の変形が可能であることは言うまでもない。また、本実施の形態は、上記有機EL装置等に限らず、多層配線およびキャパシタを有する各種半導体装置の回路に広く適用可能である。
【0057】
また、キャパシタを有さない場合、即ち、単に多層配線間(例えば、上下の配線が平面パターンにおいて交差する箇所)において、配線間隔が大きくなるよう各配線を配置することができる。例えば、上記交差部においては、上層配線を高く配置し、他の部分においては、上層配線を低く配置する。その結果、多層配線間の寄生容量を低減することができる。さらに、かかる配置を複数層において繰り返すことで、トータルの層間絶縁膜の膜厚を低減することができ、膜応力を低減することができる。
【0058】
また、溝3cおよび溝3dの深さをT1とし、図3(A)を参照しながら説明した、導電性材料液の注入量を変えて、導電性膜5cと17の上下の配線間隔を確保し、また、導電性膜5dと13bの上下の配線間隔を狭くしてもよい。
【0059】
<実施の形態2>
実施の形態1においては、下層の導電性膜(導電性膜(下層配線)5c、導電性膜(下部電極)5d)の高さを変えることにより寄生容量の低減およびキャパシタ容量の増加を図ったが、本実施の形態においては、上層の導電性膜(導電性膜(上層配線)17および導電性膜(上部電極)13b)の高さを変えることにより寄生容量の低減およびキャパシタ容量の増加を図る。なお、実施の形態1と同じ部位には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図7は、本実施の形態の配線の製造方法を示す工程断面図である。以下、図7を参照しながら本実施の形態を説明する。
【0061】
図7(A)に示すように、ガラス基板1を準備し、その上部に図示しない下地保護膜を実施の形態1と同様に形成する。次いで、ガラス基板1上に感光性を有する絶縁膜としてフォトレジストを回転塗布し、下地保護膜上にフォトレジスト膜3を形成する。次いで、実施の形態1と同様に、当該フォトレジスト膜3を露光、現像することにより、フォトレジスト膜3の表面に溝(配線溝)3a〜3dを形成する。この溝3a〜3dの平面パターンは、図2を参照しながら説明したように、y方向に延在し、それぞれ所望の幅を有している。ここで、溝3cおよび溝3dの深さは、深さT2であり、ほぼ同一である。
【0062】
次いで、実施の形態1と同様に、導電性材料液を例えば液滴吐出方式により溝3a〜3d中に注入する。この際、各溝3a〜3dに、それぞれ所望の膜厚の導電性膜が形成されるよう、各溝3a〜3dに注入される導電性材料液の容量を適宜調整する。次いで、溝3a〜3d内の導電性材料液に熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、溝3a〜3d内に導電性膜(配線)5a〜5dを形成する。導電性膜5a、5bは、TFTのソース、ドレイン引き出し配線となる。また、導電性膜5cは、下層配線、導電性膜5dは、キャパシタCaの下部電極となる。ここで、溝3cおよび溝3dの深さは、深さT2であり、ほぼ同一であるため、導電性膜(下層配線)5cおよび導電性膜(下部電極)5dは、ほぼ同じ高さに位置する。なお、これらの導電性膜をCVD法などにより堆積し、パターニングすることにより導電性膜5c、5dを形成してもよい。
【0063】
次いで、図7(B)に示すように、導電性膜5a、5b間のフォトレジスト膜の一部を除去することにより、導電性膜5a、5b上に、溝7を形成し、実施の形態1と同様に、溝7内に、半導体膜9として例えばシリコン膜を形成する。次いで、半導体膜9、導電性膜5c、5d上に、絶縁膜11として例えば酸化シリコン膜をプラズマCVD法で形成する。この絶縁膜11は、半導体膜9上においては、TFTのゲート絶縁膜となり、また、導電性膜5d上においては、キャパシタCaの容量絶縁膜となる。
【0064】
次いで、絶縁膜11上にフォトレジスト膜15を形成し、露光、現像することにより、フォトレジスト膜15の表面に溝(配線溝)15a、16a、16bを形成する。この溝15a、16a、16bは、それぞれ所望の幅を有し、溝16a、16bは、深さT21であり、溝15aは、深さT22<T21である。即ち、溝15aは、溝16a、16bより浅い。言い換えれば、溝15aの底面は、溝16a、16bの底面より高い位置にある。また、導電性膜5cと溝15dの底部との距離は、導電性膜5dと溝16bの底部との距離より大きい。
【0065】
このような形状の溝15a、16a、16bも実施の形態1で説明したように、フォトレジスト膜15を露光、現像することにより形成することができる。例えば、溝16a、16b部より溝15a部の露光量を低減させることで、溝15aの深さT22を浅くすることができる。このように、感光性を有する絶縁膜を用いることで、エッチング工程を省略でき、短工程で溝15a、16a、16bを形成することができる。また、露光量を調整することで深さの異なる溝を形成することができる。もちろん、感光性を有さない絶縁膜をパターニングすることで、溝15a、16a、16bを形成してもよい。
【0066】
次いで、図7(C)に示すように、導電性材料液を例えば液滴吐出方式により溝15a、16a、16b中に注入する。この際、実施の形態1で説明したように、各溝に沿って随時液滴を吐出してもよいし、各溝に連結する液溜め部(プール部)に一括して液滴を吐出し、各溝内に導入してもよい。また、各溝15a、16a、16bには、それぞれ所望の膜厚の導電性膜が形成されるよう、注入される導電性材料液の容量を適宜調整して注入する。次いで、溝15a、16a、16b内の導電性材料液に熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、溝15a、16a、16b内に導電性膜(配線)17、17a、17bを形成する。ここで、導電性膜17aは、ゲート電極、導電性膜17bは、上層配線、導電性膜17bは、キャパシタCaの下部電極となる。この後、これらの導電性膜上に図示しない絶縁膜を形成する。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、深さの異なる溝15a、16bを形成し、その内部に導電性膜17、17bを形成したので、相対的に導電性膜17が高い場所に位置し、導電性膜5cと17の上下の配線間隔を確保でき、これらの配線の寄生容量を低減することができる。一方、相対的に導電性膜17bが低い場所に位置し、導電性膜17bと5dの上下の配線間隔を狭くでき、キャパシタCaの容量を大きくすることができる。また、ゲート絶縁膜となる導電性膜17aとこれらの導電性膜17、17bを同時に形成することができる。
【0068】
<実施の形態3>
実施の形態1等においては、溝3c、3d(導電性膜5c、5d)を、y方向に延在する異なるパターンとしたが(図2参照)、これらを一連のパターンとしてもよい。
【0069】
図8および図9は、本実施の形態の配線の製造方法を示す工程断面図もしくは要部平面図である。以下、これらの図を参照しながら本実施の形態を説明する。
【0070】
図8(A)に示すように、ガラス基板1上の図示しない下地保護膜上に導電性膜35c、35dが形成されたガラス基板1を準備する。次いで、これらの導電性膜上を含む下地保護膜上にフォトレジスト膜19を形成する。
【0071】
次いで、当該フォトレジスト膜19を露光、現像することにより、フォトレジスト膜19の表面に溝(配線溝)19a、19bを形成する。この溝19a、19bの形状について、図8及び図9を参照しながら説明する。なお、図8(A)および図9(C)は、図8(B)のI−I’断面に対応する。また、図9(A)および図9(B)は、それぞれ図8(B)のII−II’、III−III’断面に対応する。
【0072】
図8(B)に示すように、溝19aは、x方向に延在し、その一部が幅広となり溝19bとなっている。図9(A)および(B)に示すように、溝19aはII−II’部において、深さT32であり、溝19bは、深さT31<T32である。即ち、溝19aはII−II’部において、溝19bより浅い。言い換えれば、溝19aの底面は、溝19bの底面より高い位置にある。
【0073】
このような形状の溝19a、19bは、フォトレジスト膜19の露光、現像により形成することができる。例えば、マスクレス露光機(デジタル露光機)を用い、マイクロミラーのON/OFFと重ね合わせ回数、時間に寄って光の強度(露光量)を調整しつつ描画することで、浅い溝部と深い溝部を形成することができる。また、形成するパターンに沿ってショットを逐次打っていく露光方法を用い、一定の露光量のショットであっても、ショット回数を増やすことにより溝の深さを調整する。即ち、深い溝部(例えば溝19b部)においては、ショット回数を多くし、浅い溝部(例えば溝19a部)においては、ショット回数を少なくする。また、溝の傾斜部S(図8(A)参照)においては、順次ショット回数を増加(もしくは減少)させる、又は、ショット間隔を小さく(もしくは大きく)することで、溝の底部を傾斜させることができる。また、露光する領域に応じて光の強度を増減し、溝の深い部分および浅い部分等を形成してもよい。
【0074】
このように、感光性を有する絶縁膜(フォトレジスト膜19)を用いることで、フォトリソグラフィー技術を用い、露光量を調整することで、深い部分、浅い部分および傾斜部分を有する溝の形成を容易に行うことができる。
【0075】
次いで、図9(C)に示すように、導電性材料液を例えば液滴吐出方式により一連のパターンである溝19a、19b中に注入する。この際、溝に沿って随時液滴を吐出してもよいし、溝に連結する液溜め部(プール部)に一括して液滴を吐出し、溝内に導入してもよい。次いで、溝19a、19b内の導電性材料液に熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、溝内に導電性膜(配線)41a、41bを形成する。ここで、導電性膜41a部は上層配線部であり、導電性膜41b部は、キャパシタCaの上部電極部となる。次いで、導電性膜41a、41b上に絶縁膜を形成する。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、一連のパターンであって深さの異なる溝19a、19b部を有する溝を形成し、その内部に導電性膜41a、41bを形成したので、下層配線35cとの交差部において、導電性膜41aを高い場所に配置でき、これらの配線間の寄生容量を低減することができる。一方、キャパシタCaの下部電極35dと対向する領域においては、導電性膜41bを低い場所に配置でき、キャパシタCaの容量を大きくすることができる。
【0077】
また、感光性を有する絶縁膜を層間絶縁膜として用いれば、フォトリソグラフィー技術を用い、露光量を調整することで、深い部分、浅い部分および傾斜部分を有する溝の形成を容易に行うことができ、導電性膜(配線)の三次元的な引き回しを容易に行うことができる。
【0078】
なお、図8および図9を参照しながら説明した上記工程においては、上層の導電性膜の形成に際し、深い部分、浅い部分および傾斜部分を有する溝を適用したが、下層の導電性膜の形成に際し、当該溝の形成方法を適用してもよい。
【0079】
図10は、本実施の形態の他の配線の製造方法を示す工程断面図である。図示するように、ガラス基板1上にフォトレジスト膜19を形成し、上記工程と同様に、深い部分、浅い部分および傾斜部分を有する溝を形成し、導電性材料液を注入した後、熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、溝内に導電性膜(配線)41a、41bを形成する。ここで、導電性膜41a部は下層配線部であり、導電性膜41b部は、キャパシタCaの下部電極部となる。上記工程と異なる箇所は、導電性膜41a部が低く、導電性膜41b部が高くなるよう溝を形成する点である。次いで、絶縁膜43を形成し、その上部に導電性膜(上層配線)35cおよび導電性膜(上部電極)35dを形成する。
【0080】
また、上記工程においては、傾斜部Sの形状を単なるスロープとしたが、図11(A)および(B)に示すように、スロープの途中で平坦部(フラット部)S1もしくは逆スロープ部(逆傾斜部)S2を設けてもよい。図11は、本実施の形態の他の配線の製造方法を示す工程断面図である。図示するように、平坦部(フラット部)S1もしくは逆スロープ部S2を設けることにより図8(A)に示す場合より、傾斜部に導電性材料液がより留まりやすくなる。従って、粘性の小さい導電性材料液を用いる場合においても、傾斜部において所定の膜厚を確保することができる。なお、傾斜部の距離によっては、平坦部(フラット部)S1もしくは逆スロープ部S2を複数個所設けてもよい。
【0081】
<実施の形態4>
図12および図13は、本実施の形態の配線の製造方法を示す工程断面図もしくは要部平面図である。なお、図12(A)、図12(B)および図13(A)は、それぞれ図13(B)のIV−IV’、II−II’、III−III’断面に対応する。以下、これらの図を参照しながら本実施の形態を説明する。
【0082】
本実施の形態においては、図12(A)に示すように、フォトレジスト膜19上の溝G1部を、幅W1、深さ(高さ、側壁高さ)D1の幅狭溝G1bと、幅W2(W2>W1)を有し、深さD2の幅広溝G1aとで構成している。言い換えれば、溝G1は、幅W2を有し、深さD2の幅広溝G1aの底面の略中央部に、幅W1(<W2)を有し、深さD1の幅狭溝G1bが配置された構成を有する。また、言い換えれば、溝G1は、幅W2の中央部(幅W1)において、その深さがさらに深く(D1+D2)なる構成を有する。また、言い換えれば、溝G1は、その側壁が2段の階段形状となっている。以下、このような溝構成を2重の溝形状という。
【0083】
また、溝G2部においては、幅W1、深さD1の幅狭溝G2bと、幅W2(W2>W1)を有する幅広溝G2aとからなるが、幅広溝G2aの深さD2が幅広溝G1a部より小さくなっている。
【0084】
なお、溝G3部(キャパシタ部)においても、溝G3が、幅広溝G3aと幅狭溝G3bの2重構造となっているが、その幅がキャパシタCaのパターンに対応して大きくなっている(図13(A))。
【0085】
このような2重の溝形状も、露光量を調整することにより形成可能である。例えば、幅W2中であって幅W1を除く領域(幅W1の両側)に対応する位置に、露光量を低減させる半透過性のマスクを配置する、もしくは、当該領域において実施の形態3で詳細に説明した光の強度の調整や、露光のショット回数を低減させること等で、幅広溝を浅くすることができる。
【0086】
次いで、導電性材料液49を例えば液滴吐出方式により幅狭溝G1b、G2bおよびG3b中に注入する。この際、導電性材料液49は、幅狭溝G1b等内に、その表面張力によって液表面が凸形状となるよう充填されることが好ましい。次いで、熱処理(乾燥、焼成)を施すことにより、幅狭溝G1b等内に導電性膜(配線)49Aを形成する(図13(B)参照)。
【0087】
なお、この場合も、導電性材料液を例えば液滴吐出方式により溝に沿って随時液滴を吐出してもよいし、溝に連結する液溜め部(プール部)を設け、この液溜め部に一括して液滴を吐出し、溝内に導入してもよい。この際、液溜め部の幅を、各溝の幅より大きくする。また、当該方法によれば、導電性材料液の液滴径(直径)より幅の狭い溝内に材料液を充填することが可能となる。この場合、幅狭溝の幅(W1、但し、キャパシタ部を除く)は上記液滴径より小さく、また、液溜め部の幅は、上記液滴径より大きくなる。
【0088】
ここで、この導電性膜49Aの幅は、各幅狭溝G1b、G2b、G3bの幅と対応し、さらに、その膜厚は、幅狭溝G1b等の深さD1と対応する。なお、導電性材料液を構成する溶媒等の揮発や金属粒子の凝縮(焼結)により、導電性膜の膜厚は、深さD1より小さくなる。従って、形成しようとする導電性膜の膜厚に、上記膜厚の減少分を勘案して幅狭溝G1b等の深さD1をあらかじめ設定することで、所望の膜厚を有する導電性膜49Aを任意に形成することができる。
【0089】
また、幅狭溝G1b底面の平坦性を確保するため、フォトレジスト膜19の塗布量を、その下層の最高位置においても、その膜厚が上記深さD1とD2の和(D1+D2)より大きくなるよう予め設定することが好ましい。この場合、幅狭溝G1b底面からは、フォトレジスト膜19自身が露出し、その下層の膜が露出することがない。
【0090】
このように、2重の溝形状とすることで、導電性膜49Aの膜厚のばらつきを低減でき、エレクトロマイグレーション耐性(EM耐性)を向上させることができる。また、この場合、幅広溝G1a、G2a、G3aの深さD2を適宜変更することで、導電性膜の膜厚を均一にしつつ、幅狭溝G1b、G2b、G3bの底面の高さ(導電性膜の位置)を調整することができる。
【0091】
なお、実施の形態1〜4において用いられる導電性材料液について説明する。ここでいう「導電性材料液」とは、以下に示す金属液を分散媒に混合させた機能液の他、有機金属化合物を溶媒中に溶解させた液などを含み、導電性材料が溶解しているか、単に混合(分散)しているかを問わない広い意味での液体材料を指すものである。従って、当該液に何らかの処理(例えば熱処理など)を施すことにより導電性膜が形成される液体であればよい。
【0092】
次いで、導電性材料液の一種である機能液について説明する。機能液は、導電性微粒子(金属微粒子)を分散媒に混合した溶液である。この際、分散媒(分散剤、溶媒)を添加することで、金属微粒子濃度の均一性を向上させることができる。金属微粒子には、金、銀、銅、パラジウムやニッケル等の微粒子がある。これら金属微粒子の他、これら金属酸化物(導電性を有するもの)、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などを用いてもよい。これらの導電性微粒子の粒径(直径)は、1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きい場合には、液滴吐出装置の吐出孔(ヘッドノズル)に詰まり易いからである。また、1nmより小さい場合には、導電性微粒子に対する他の溶質や溶媒の体積比が大きくなり、得られる膜中に残存する有機物等の割合が増加し、膜性能が劣化する恐れがあるからである。
【0093】
分散媒は、導電性微粒子の凝集を阻害する溶液で、分散を促進する溶液あれば、特に限定はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、また、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサンなどの極性化合物などを分散媒として用いることができる。なお、微粒子と分散媒以外に適宜溶媒を加えてもよく、また、分散媒として上記液体を適宜混合してもよい。
【0094】
これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、液滴吐出法への適用のし易さの観点から、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物がより好ましく、最適なものとしては、水、炭化水素系化合物をあげることができる。
【0095】
この他、めっき法により金属膜を成長させ、導電性膜としてもよい。このような場合、例えば、Pd(パラジウム)触媒やAg(銀)触媒をシランカップリング剤などに添加しためっき液を調整し、これを用いて第1溝9A内に、無電解めっきにより、導電性膜をめっき成長させる。この際、あらかじめ溝の底面にめっき金属膜の成長の種となるシード層を形成してもよい。また、上記方法に限らず、有機金属化合物溶液を用いて導電性膜を形成してもよい。
【0096】
また、実施の形態1で説明した、画素回路30等、多層配線およびキャパシタを有する各種半導体装置の回路に広く適用可能である点は、実施の形態2〜3についても同じである。また、単に多層配線間(例えば、上下の配線が平面パターンにおいて交差する箇所)において適用可能である点も、実施の形態2〜3についても同じである。
【0097】
また、用いる感光性を有する絶縁膜(フォトレジスト膜)としては、ポジ型を用いることが望ましい。ポジ型を用いた場合、溝形状が逆台形状となるからである。
【0098】
また、上記発実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0099】
<電気光学装置および電子機器の説明>
次に、実施の形態1で説明した表示装置(TFT等)が使用される電気光学装置や電子機器について説明する。
【0100】
TFTは、例えば、電気光学装置(表示装置)や電子機器の表示部である液晶パネルに用いられる。図14に、電気光学装置を用いた電子機器の例を示す。図14(A)は携帯電話への適用例であり、図14(B)は、ビデオカメラへの適用例である。また、図14(C)は、テレビジョンへ(TV)の適用例であり、図14(D)は、ロールアップ式テレビジョンへの適用例である。
【0101】
図14(A)に示すように、携帯電話530には、アンテナ部531、音声出力部532、音声入力部533、操作部534および電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明の配線やその形成方法を使用することができる。
【0102】
図14(B)に示すように、ビデオカメラ540には、受像部541、操作部542、音声入力部543および電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明の配線やその形成方法を使用することができる。
【0103】
図14(C)に示すように、テレビジョン550は、電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明の配線やその形成方法を使用することができる。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置(電気光学装置)にも本発明の配線やその形成方法を使用することができる。
【0104】
図14(D)に示すように、ロールアップ式テレビジョン560は、電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明の配線やその形成方法を使用することができる。
【0105】
なお、電気光学装置を有する電子機器としては、上記の他、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイなどがある。
【0106】
また、この他、各種電子機器に、本発明の配線やその形成方法を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施の形態1の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図2】実施の形態1の配線の製造方法を示す要部平面図である。
【図3】実施の形態1の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図4】実施の形態1の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図5】実施の形態1の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図6】アクティブマトリクス方式の有機EL装置の回路構成例を示す図である。
【図7】実施の形態2の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】実施の形態3の配線の製造方法を示す工程断面図および要部平面図である。
【図9】実施の形態3の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図10】実施の形態3の他の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図11】実施の形態3の他の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図12】実施の形態4の配線の製造方法を示す工程断面図である。
【図13】実施の形態4の配線の製造方法を示す工程断面図および要部平面図である。
【図14】電気光学装置を用いた電子機器の例を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
1…ガラス基板、3…フォトレジスト膜、3a、3b、3c、3d…溝、5a、5b、5c、5d…導電性膜、7…溝、9…半導体膜、11…絶縁膜、13a、13b…導電性膜、15…フォトレジスト膜、15a…溝、16a、16b…溝、17、17a、17b…導電性膜、19…フォトレジスト膜、19a、19b…溝、20…走査線、21…OLED電源線、22…信号線、23…低電位電源線、24…リセット線、30…画素回路、32…有機EL素子、35c、35d…導電性膜、41a、41b…導電性膜、49…導電性材料液、49A…導電性膜、500…電気光学装置、530…携帯電話、531…アンテナ部、532…音声出力部、533…音声入力部、534…操作部、540…ビデオカメラ、541…受像部、542…操作部、543…音声入力部、550…テレビジョン、560…ロールアップ式テレビジョン、Cs…保持容量、D1、D2…深さ、DR…電流制御トランジスタ、G1、G2、G3…溝、G1a、G2a、G3a…幅広溝、G1b、G2b、G3b…幅狭溝、S…傾斜部、S1…平坦部、S2…逆スロープ部、SW1…データ書き込み用トランジスタ、SW2データ消去用トランジスタ、T1、T2、T21、T22、T31、T32…深さ、W1、W2…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記絶縁膜を選択的に除去し、第1深さの第1溝部と前記第1深さより浅い第2深さの第2溝部を有する溝を形成する工程と、
(c)前記第1溝部および第2溝部内に導電性材料液を注入する工程と、
(d)前記導電性材料液に処理を施し、前記第1溝部内に第1導電性膜を形成し、前記第2溝部内に第2導電性膜を形成する工程と、
(e)前記第1および第2導電性膜上に他の絶縁膜を形成し、前記他の絶縁膜上に第3導電性膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(a)基板上に第1導電性膜および第2導電性膜を形成する工程と、
(b)前記第1導電性膜および第2導電性膜上に絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記絶縁膜を選択的に除去し、前記第1導電性膜の上部に位置する第1溝部と、第2導電性膜の上部に位置する第2溝部とを有する溝を形成する工程であって、
前記第1導電性膜と前記第1溝の底部との距離より、前記第2導電性膜と前記第2溝の底部との距離が小さい溝を形成する工程と、
(d)前記溝内に、導電性材料液を注入する工程と、
(e)前記導電性材料液に処理を施し、前記溝内に第3導電性膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2導電性膜膜は、キャパシタを構成する第1電極であり、
前記第3導電性膜であって、前記第2導電性膜の上部に位置する部分は、前記キャパシタを構成する第2電極であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1導電性膜は、第1配線であり、
前記第2電極以外の前記第3導電性膜は、第2配線であることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記溝は、前記第1導電性膜の上部と第2導電性膜の上部との間に傾斜部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記溝は、前記第1導電性膜の上部と第2導電性膜の上部との間に第1傾斜部、平坦部および第2傾斜部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記溝は、前記第1導電性膜の上部と第2導電性膜の上部との間に第1傾斜部、逆傾斜部および第2傾斜部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記溝の端部には、前記溝の幅より広い液溜め部が配置され、
前記導電性材料液を注入する工程は、前記液溜め部に前記導電性材料液を吐出した後、前記溝に前記導電性材料液を導入する工程であることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記溝は、第1幅を有する幅広溝と、前記幅広溝の略中央部に位置し、第2幅を有する幅狭溝とから成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記溝は、第1幅を有する幅広溝と、前記幅広溝の略中央部に位置し、第2幅を有する幅狭溝とから成り、
前記幅狭溝の深さは、ほぼ一定であり、
前記幅広溝の深さは、前記第2導電性膜の上部より前記第1導電性膜の上部において、浅いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記溝の端部には、前記幅狭溝の幅より広い液溜め部が配置され、
前記導電性材料液を注入する工程は、前記液溜め部に前記導電性材料液を吐出した後、前記幅狭溝に前記導電性材料液を導入する工程であることを特徴とする請求項9又は10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記導電性材料液の注入は、インクジェット法により前記導電性材料液の液滴を滴下させることにより行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記液溜め部への前記導電性材料液の吐出は、インクジェット法により前記導電性材料液の液滴を滴下させることにより行われ、前記第2幅の一部は、前記液滴の液滴径より小さく、前記液溜め部の幅は、前記液滴径より大きいことを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁膜は感光性材料からなることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記導電性材料液は、導電性微粒子および分散媒を含有し、前記処理工程は、前記導電性材料液に熱処理を施すことにより行われることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記導電性材料液は、触媒を含有し、前記処理工程は、前記導電性膜をメッキ法により成長させることにより行われることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
半導体装置を有する電子機器の製造方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項18】
(a)基板上に形成された絶縁膜と、
(b)前記絶縁膜中に形成された溝であって、第1深さの第1溝部と第2深さの第2溝部を有する溝と、
(c)前記第1溝部内に形成された第1導電性膜と、
(d)前記第2溝部内に形成された第2導電性膜と、
(e)前記導電性膜上に他の絶縁膜を介して形成された第3導電性膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項19】
(a)基板上に形成された第1導電性膜および第2導電性膜と、
(b)前記第1導電性膜および第2導電性膜上に形成された絶縁膜と、
(c)前記絶縁膜中に形成された溝であって、前記第1導電性膜の上部に位置する第1溝部と、第2導電性膜の上部に位置する第2溝部とを有し、前記第1導電性膜と前記第1溝の底部との距離より、前記第2導電性膜と前記第2溝の底部との距離が小さい溝と、
(d)前記溝内に形成された第3導電性膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項20】
前記溝は、第1幅を有する幅広溝と、前記幅広溝の略中央部に位置し、第2幅を有する幅狭溝とから成り、
前記幅狭溝の深さは、ほぼ一定であり、
前記幅広溝の深さは、前記第2導電性膜の上部より前記第1導電性膜の上部において、浅いことを特徴とする請求項18又は19記載の半導体装置。
【請求項21】
半導体装置を有する電子機器であって、請求項18〜20のいずれか一項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−305796(P2007−305796A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132953(P2006−132953)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】