説明

半導体装置の製造方法

【課題】レジスト膜のスリミング時にその膜厚の消費を抑制する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基体11上に複数の絶縁層25と複数の導電層WLとを交互に積層して積層体を形成する工程と、積層体上にレジスト膜50を形成する工程と、レジスト膜50をマスクにして絶縁層25及び導電層WLをプラズマエッチングする工程と、ホウ素、リン及びヒ素の少なくとも1つを含むガスを用いたプラズマ処理により、レジスト膜50の上面に、ホウ素、リン及びヒ素の少なくとも1つを含む硬化層51を形成する工程と、レジスト膜50の上面に硬化層51が形成された状態で、酸素を含むガスを用いたプラズマ処理によりレジスト膜50の平面サイズをスリミングする工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリデバイスにおけるコントロールゲートとして機能する導電層と、絶縁層とを交互に複数積層した積層体にメモリホールを形成し、そのメモリホールの内壁に電荷蓄積膜を形成した後、メモリホール内にシリコンを設けることでメモリセルを3次元配列する技術が、例えば特許文献1に提案されている。
【0003】
また、特許文献1には、レジスト膜のスリミングと、そのレジスト膜をマスクにした積層体のRIE(Reactive Ion Etching)とを繰り返すことによって、積層体における周辺領域側の端部を階段状に加工することが開示されている。しかしながら、このような加工方法によると、レジスト膜のスリミングの際にレジスト膜が幅方向と膜厚方向の両方に後退するため、特に積層体の層数を増加した場合に、レジスト膜が消失するまでその膜厚が後退するおそれが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−146954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レジスト膜のスリミング時にその膜厚の消費を抑制する半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板上に、複数の絶縁層と複数の導電層とを交互に積層して積層体を形成する工程と、前記積層体上に、レジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をマスクにして、前記絶縁層及び前記導電層をプラズマエッチングする工程と、ホウ素、リン及びヒ素の少なくとも1つを含むガスを用いたプラズマ処理により、前記レジスト膜の上面に、前記ホウ素、前記リン及び前記ヒ素の少なくとも1つを含む硬化層を形成する工程と、前記レジスト膜の上面に前記硬化層が形成された状態で、酸素を含むガスを用いたプラズマ処理により前記レジスト膜の平面サイズをスリミングする工程と、を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レジスト膜のスリミング時にその膜厚の消費を抑制する半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの模式斜視図。
【図2】同メモリセルアレイにおける要部の拡大断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る半導体装置における階段構造部の模式断面図。
【図4】同階段構造部の形成方法を示す模式断面図。
【図5】図4に続く工程を示す模式断面図。
【図6】図5に続く工程を示す模式断面図。
【図7】図6に続く工程を示す模式断面図。
【図8】図7に続く工程を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの構成の一例を示す。なお、図1においては、図を見易くするために、メモリホールMH内に形成された絶縁膜以外の絶縁部分については図示を省略している。また、以下の実施形態では半導体としてシリコンを例示するが、シリコン以外の半導体を用いてもよい。
【0011】
また、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、基板10の主面に対して平行な方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とし、これらX方向及びY方向の双方に対して直交する方向をZ方向とする。複数の導電層WLはZ方向に積層されている。
【0012】
基板10上には図示しない絶縁層を介してバックゲートBGが設けられている。バックゲートBGは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。バックゲートBG上には、複数の導電層WLと、図示しない絶縁層とが交互に積層されている。導電層WLは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0013】
導電層WLは、X方向に延びるスリットによって複数のブロックに分断されている。あるブロックにおける最上層の導電層WL上には図示しない絶縁層を介してドレイン側選択ゲートDSGが設けられている。ドレイン側選択ゲートDSGは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。そのブロックに隣接する別のブロックにおける最上層の導電層WL上には図示しない絶縁層を介してソース側選択ゲートSSGが設けられている。ソース側選択ゲートSSGは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0014】
ソース側選択ゲートSSG上には図示しない絶縁層を介してソース線SLが設けられている。ソース線SLは、例えば不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。あるいは、ソース線SLとして金属材料を用いてもよい。ソース線SL及びドレイン側選択ゲートDSG上には、図示しない絶縁層を介して複数本のビット線BLが設けられている。各ビット線BLは、Y方向に延在している。
【0015】
基板10上の前述した積層体には、U字状のメモリホールMHが複数形成されている。ドレイン側選択ゲートDSGを含むブロックには、ドレイン側選択ゲートDSG及びその下の導電層WLを貫通しZ方向に延在するホールが形成され、ソース側選択ゲートSSGを含むブロックには、ソース側選択ゲートSSG及びその下の導電層WLを貫通しZ方向に延在するホールが形成されている。それら両ホールは、バックゲートBG内に形成されY方向に延在するホールを介してつながっている。
【0016】
メモリホールMHの内部には、U字状のシリコン層としてチャネルボディ20が設けられている。ドレイン側選択ゲートDSGとチャネルボディ20との間のメモリホールMHの側壁には、ゲート絶縁膜35が形成されている。ソース側選択ゲートSSGとチャネルボディ20との間のメモリホールMHの側壁には、ゲート絶縁膜36が形成されている。
【0017】
各導電層WLとチャネルボディ20との間のメモリホールMHの側壁には、絶縁膜30が形成されている。バックゲートBGとチャネルボディ20との間のメモリホールMHの内壁にも、絶縁膜30が形成されている。絶縁膜30は、例えば一対のシリコン酸化膜でシリコン窒化膜を挟んだONO(Oxide-Nitride-Oxide)構造を有する。
【0018】
図2は、チャネルボディ20が、複数の導電層WL及び層間の絶縁層25を貫通する部分の拡大断面を示す。図2では、図1では省略した導電層WL間の絶縁層を絶縁層25として表している。
【0019】
各導電層WLとチャネルボディ20との間には、導電層WL側から順に第1の絶縁膜31、電荷蓄積膜32及び第2の絶縁膜33が設けられている。第1の絶縁膜31は導電層WLに接し、第2の絶縁膜33はチャネルボディ20に接し、第1の絶縁膜31と第2の絶縁膜33との間に電荷蓄積膜32が設けられている。
【0020】
チャネルボディ20はチャネルとして機能し、導電層WLはコントロールゲートとして機能し、電荷蓄積膜32はチャネルボディ20から注入される電荷を蓄積するデータ記憶層として機能する。すなわち、チャネルボディ20と各導電層WLとの交差部分に、チャネルの周囲をコントロールゲートが囲んだ構造のメモリセルが形成されている。
【0021】
本実施形態に係る半導体装置は、データの消去・書き込みを電気的に自由に行うことができ、電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性半導体記憶装置である。例えば、メモリセルはチャージトラップ構造のメモリセルである。電荷蓄積膜32は、電荷(電子)を閉じこめるトラップを多数有し、例えばシリコン窒化膜である。第2の絶縁膜33は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜32にチャネルボディ20から電荷が注入される際、または電荷蓄積膜32に蓄積された電荷がチャネルボディ20へ拡散する際に電位障壁となる。第1の絶縁膜31は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜32に蓄積された電荷が、導電層WLへ拡散するのを防止する。
【0022】
再び図1を参照すると、ドレイン側選択ゲートDSGと、ドレイン側選択ゲートDSGを貫通するチャネルボディ20と、このチャネルボディ20とドレイン側選択ゲートDSGとの間に設けられたゲート絶縁膜35は、ドレイン側選択トランジスタDSTを構成する。チャネルボディ20におけるドレイン側選択ゲートDSGより上方に突出する上端部は、対応する各ビット線BLに接続されている。
【0023】
ソース側選択ゲートSSGと、ソース側選択ゲートSSGを貫通するチャネルボディ20と、このチャネルボディ20とソース側選択ゲートSSGとの間に設けられたゲート絶縁膜36は、ソース側選択トランジスタSSTを構成する。チャネルボディ20におけるソース側選択ゲートSSGより上方に突出する上端部は、ソース線SLに接続されている。
【0024】
バックゲートBG、このバックゲートBG内に設けられたチャネルボディ20及びバックゲートBGとチャネルボディ20との間の絶縁膜30は、バックゲートトランジスタBGTを構成する。
【0025】
ドレイン側選択トランジスタDSTとバックゲートトランジスタBGTとの間には、各導電層WLをコントロールゲートとするメモリセルMCが、導電層WLの層数に対応して複数設けられている。
【0026】
同様に、バックゲートトランジスタBGTとソース側選択トランジスタSSTの間にも、各導電層WLをコントロールゲートとするメモリセルMCが、導電層WLの層数に対応して複数設けられている。
【0027】
それらメモリセルMC、ドレイン側選択トランジスタDST、バックゲートトランジスタBGTおよびソース側選択トランジスタSSTは直列接続され、U字状の1つのメモリストリングを構成する。このようなメモリストリングがX方向及びY方向に複数配列されていることにより、複数のメモリセルMCがX方向、Y方向及びZ方向に3次元的に設けられている。
【0028】
次に、図3は、各導電層WLを、図示しない上層配線と接続させるためのコンタクト領域の断面構造を示す。このコンタクト領域は、図1に示すメモリセルアレイ領域よりもX方向に見て外側の領域である。
【0029】
複数の導電層WLと複数の絶縁層25との積層体の一部はコンタクト領域で階段状に加工されている。その階段構造部はストッパー層61で覆われ、そのストッパー層61上に層間絶縁層62が設けられている。例えば、ストッパー層61はシリコン窒化物であり、層間絶縁層62はシリコン酸化物である。
【0030】
層間絶縁層62及びストッパー層61には複数のコンタクトホールCHが形成され、各コンタクトホールCH内にコンタクト電極40が設けられている。
【0031】
各コンタクトホールCHは、層間絶縁層62、ストッパー層61および絶縁層25を貫通して、対応する各段の導電層WLに達する。そのコンタクトホールCH内には、コンタクト電極40として、例えばタングステンが埋め込まれている。各層の導電層WLは、コンタクト電極40を介して、図示しない上層の配線と接続される。
【0032】
次に、図4(a)〜図8(b)を参照して、階段構造部の形成方法について説明する。
【0033】
まず、図4(a)に示すように、基体11上に、複数の絶縁層25と複数の導電層WLとをそれぞれ交互に積層して、それらの積層体を形成する。図には8層の導電層WLを例示するが、導電層WLの層数は任意である。
【0034】
ここで、基体11は、図1における基板10、バックゲートBG及びそれらの層間の絶縁層などを含む。メモリセルアレイ領域のバックゲートBGには、絶縁層25及び導電層WLの積層体を形成する前に、U字状メモリストリングの底部に対応する凹部が形成される。そして、その凹部内に犠牲膜が埋め込まれた後、絶縁層25と導電層WLとが積層されていく。
【0035】
絶縁層25はシリコン酸化物を主に含むシリコン酸化層であり、導電層WLは、シリコンを主に含むシリコン層(例えば多結晶シリコン層)である。絶縁層25及び導電層WLは、例えば、CVD(chemical vapor deposition)法で形成される。
【0036】
この積層体の形成後、メモリセルアレイ領域に対して、メモリセルMC、ドレイン側選択トランジスタDST、ソース側選択トランジスタSST、バックゲートトランジスタBGTなどの形成工程が行われる。バックゲートBGの凹部内に埋め込まれた犠牲膜は、積層体を縦方向(積層方向)に貫通するホールの形成後、そのホールを通じて除去される。これにより、U字状のメモリホールMHが形成される。メモリホールMHの内壁には、電荷蓄積膜32を含む絶縁膜30が形成され、その内側にチャネルボディ20となるシリコン層が形成される。
【0037】
メモリセルアレイの形成後、以下に説明するように、コンタクト領域に対する工程が行われる。
【0038】
まず、図4(b)に示すように、積層体上にレジスト膜50を形成する。図4(b)の場合、例えば最上層の絶縁層25上にレジスト膜50が形成される。
【0039】
次に、レジスト膜50に対して、図示しないマスクを用いたリソグラフィ及び現像を行い、レジスト膜50の端が所望の位置に位置するようにパターニングする。
【0040】
次に、そのレジスト膜50をマスクにしてRIE(Reactive Ion Etching)を行い、レジスト膜50から露出している絶縁層25及びその下の導電層WLをそれぞれ1層ずつ除去する(図5(a))。
【0041】
例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)型のプラズマ処理装置が用いられる。上記積層体が形成されたウェーハは処理室内に収容され、その処理室内は所望の減圧雰囲気にされる。
【0042】
例えば、TEOS(tetraethoxysilane)からなる絶縁層25をエッチングするときには、処理室内にCHFガスが導入される。絶縁層25のエッチング時、ICP型プラズマ処理装置の上部アンテナに電力を印加することで処理室内にプラズマが生起され、また基体11(または基板10)側には高周波電力が印加される。具体的には、処理室内でウェーハを保持する保持部に高周波電力が印加される。
【0043】
例えば、多結晶シリコンからなる導電層WLをエッチングするときには、処理室内にHBrガスとOガスが導入される。導電層WLのエッチング時も、上部アンテナに電力を印加することで処理室内にプラズマが生起され、また基体11側に高周波電力が印加される。
【0044】
絶縁層25及び導電層WLのプラズマエッチング後、同じ処理室内で、図5(b)に示す硬化層51の形成が行われる。硬化層51の形成は、ホウ素(B)、リン(P)及びヒ素(As)の少なくとも1つを含むガスを用いたプラズマ処理により行われる。
【0045】
例えば、処理室内にBClガスを導入し、上部アンテナに電力を印加して処理室内にプラズマを生起する。これにより、BClが分解して生成したB(ホウ素)がレジスト膜50の上面50aに注入される。このとき、基体11側には高周波電力が印加され、Bは基体11側に向かう縦方向に指向性を持って加速され、レジスト膜50の上面50aに注入される。したがって、Bはレジスト膜50の側面50bにはほとんど注入されず、レジスト膜50の側面50bにはほとんど硬化層51は形成されない。なお、レジスト膜50から露出している絶縁層25にBが注入されても問題はない。
【0046】
レジスト膜50は例えば炭素(C)を含む有機材料からなり、そのレジスト膜50にホウ素(B)が注入されることで、レジスト膜50の上面50aにCとBとの結合を有する硬化層51が形成される。
【0047】
次に、上面50aに硬化層51が形成された状態で、レジスト膜50の平面サイズを縮小するスリミングを等方的なプラズマエッチング処理により行う。これも同じ処理室内で続けて行われる。例えば、処理室内には酸素(O)ガスと塩素(Cl)ガスが導入され、上部アンテナに電力が印加され、処理室内にプラズマが生起される。レジスト膜50のスリミング時は、基体11側には電力は印加されず、基体11を保持する保持部は接地されている。したがって、レジスト膜50は等方的にエッチングされる。
【0048】
しかし、本実施形態では、レジスト膜50の上面50aには硬化層51が形成されているため、レジスト膜50の膜厚方向の消費を抑えることができる。このレジストスリミング時のエッチング条件に対して、硬化層51はレジスト膜50よりも、エッチングレートが遅く、エッチング耐性がある。例えば、硬化層51は、レジスト膜50よりも30倍ほど高いエッチング耐性を有する。したがって、図6(a)に示すように、面方向(横方向)に選択的にレジスト膜50のエッチングが進み、レジスト膜50の側面50b位置が変化する。
【0049】
続けて、同じ処理室内でのプラズマエッチングにより硬化層51の除去を行う。例えば、処理室内に酸素(O)ガスを導入し、上部アンテナに電力を印加して処理室内にプラズマを生起する。このとき、基体11側には高周波電力が印加されている。基体11側に電力を印加することで、硬化層51の除去は膜厚方向に指向性を持って進み、レジスト膜50の横方向のエッチングを抑制できる。
【0050】
レジストスリミングにより、図6(b)に示すように、最上層の絶縁層25の表面の一部が新たに露出する。そして、スリミングされたレジスト膜50をマスクにして、再びレジスト膜50から露出している絶縁層25及び導電層WLをそれぞれ一層ずつプラズマエッチングして除去する。このときの条件は、前述した条件と同じである。
【0051】
これにより、図7(a)に示すように、先のエッチングによる除去箇所の下の絶縁層25及びその下の導電層WL(上から2層目の導電層WL)が除去されると共に、その隣の部分でレジスト膜50から露出している絶縁層25及びその下の導電層WL(上から1層目の導電層WL)も除去される。
【0052】
以降、前述した各工程を繰り返し行う。すなわち、レジスト膜50の上面50aへの硬化層51の形成、その硬化層51が形成された状態でのレジスト膜50のさらなるスリミング、そのスリミングされたレジスト膜50をマスクにした絶縁層25及び導電層WLのエッチングを、複数回繰り返す。これにより、図7(b)に示す階段構造部が得られる。
【0053】
レジスト膜50のスリミング時、レジスト膜50の平面サイズを縮小するために面方向(横方向)にエッチングを進行させることから等方的エッチングになり、縦方向(膜厚方向)も横方向と同程度の量エッチングされることがある。そのため、特に積層体が多層化して階段構造部の段数が増えると、レジストスリミング回数も増え、途中で膜厚方向のレジスト膜50がすべて消費されてしまうことが起こり得る。その場合、階段構造部の加工途中で、ウェーハを露光装置及び現像装置に搬送して、再度レジスト膜50の形成、リソグラフィ及び現像を行ってレジスト膜50をパターニングしなければならない。
【0054】
これに対して、本実施形態では、階段構造部の加工を行っている同じ処理室内で、レジストスリミング前に、レジスト膜50の上面50aに硬化層51を形成する。その硬化層51によって、レジストスリミング時におけるレジスト膜50の膜厚方向の消費が抑制される。この結果、すべての段の加工が終了するまで、レジスト膜50を積層体上に残すことができ、再度レジスト膜50を形成してパターニングしなくて済む。
【0055】
硬化層51の高いエッチング耐性は、レジスト膜50に含まれる炭素(C)と、注入されたホウ素(B)との結合に起因する。上記実施形態では、硬化層51形成時の原料ガスとしてBClガスを例示したが、BFガスを使って、レジスト膜50の上面50aにBを注入してもよい。なお、塩素(Cl)はフッ素(F)よりも炭素(C)と反応しにくいので、BClガスを使った方がCとBとが結合しやすい。また、炭素とフッ素との化合物CFxは、炭素と塩素との化合物CClxに比べて揮発しやすい。したがって、硬化層51を形成するときの原料ガスとしては、Fを含むガスよりもClを含む例えばBClガスが望ましい。
【0056】
なお、ホウ素(B)に限らず、リン(P)またはヒ素(As)をレジスト膜50に注入して、PとCとの結合、またはAsとCとの結合を有する硬化層51を形成してもよい。この場合も、Bを使った場合と同様に、レジストスリミング時にレジスト膜50よりもエッチング耐性の高い硬化層51をレジスト膜50の上面50aに形成することができ、レジスト膜50の膜厚方向の消費を抑制することができる。例えば、Pを含む原料ガスとしてはPH、PFを、Asを含む原料ガスとしてはAsHを用いることができる。
【0057】
レジスト膜50に、B、P、Asなどを注入する方法としてはイオン注入法も考えられるが、積層体のエッチングやレジスト膜50のスリミングを行うプラズマ処理装置の処理室と、イオン注入装置との間を何度も搬送する必要があり、効率的でない。
【0058】
本実施形態では、硬化層51の形成、レジスト膜50のスリミング、硬化層51の除去、絶縁層25及び導電層WLのエッチングは、導入するガス種、流量、与える電力などを切り換えた上で、同じ処理室内にて減圧雰囲気を維持しつつ行われる。これにより、効率的な処理を行える。
【0059】
上記実施形態では、絶縁層25及び導電層WLのエッチング時とは異なるガスを導入して別の工程として硬化層51の除去を行った。しかし、これに限らず、絶縁層25及び導電層WLのエッチング時と同じガスを用いて、そのエッチング時に硬化層51も同時に除去することも可能である。なお、予め硬化層51を確実に除去した上で、絶縁層25及び導電層WLのエッチングを行う方が、階段構造部の高い加工精度を得やすい。
【0060】
階段構造部の形成後、図8(a)に示すように、階段構造部を覆うようにストッパー層61を形成する。ストッパー層61は、例えばシリコン窒化物である。その後、ストッパー層61上に層間絶縁層62を形成する。層間絶縁層62は、ストッパー層61と異なる材料の例えばシリコン酸化物である。
【0061】
その後、層間絶縁層62の上面を平坦化した後、その上に図示しないマスクを形成し、それをマスクとして、層間絶縁層62、ストッパー層61およびストッパー層61のすぐ下の絶縁層25を選択的にエッチングする。
【0062】
これにより、図8(b)に示すように、層間絶縁層62、ストッパー層61およびストッパー層61のすぐ下の絶縁層25に、複数のコンタクトホールCHが形成される。複数のコンタクトホールCHは、層間絶縁層62の上面からの深さが互いに異なる。各コンタクトホールCHは、層間絶縁層62、ストッパー層61およびストッパー層61のすぐ下の絶縁層25を貫通し、それぞれ対応する各段の導電層WLに達する。
【0063】
複数のコンタクトホールCHはRIE(Reactive Ion Etching)により同時に一括形成される。複数層の導電層WLを階段状に加工しておくことで、各導電層WLに達する複数のコンタクトホールCHを、同一エッチングプロセスにより一括形成することができ、効率的である。このとき、シリコン窒化物であるストッパー層61は、シリコン酸化物である層間絶縁層62のエッチング時のエッチングストッパーとして機能する。
【0064】
コンタクトホールCHの形成後、その内部に、図3に示すようにコンタクト電極40が設けられる。具体的には、まずコンタクトホールCHの内壁に第1のバリア膜(例えばチタン膜)を形成し、その第1のバリア膜の内側に第2のバリア膜(例えば窒化チタン膜)を形成し、その第2のバリア膜の内側に、埋め込み性に優れた例えばタングステンを埋め込む。第1及び第2のバリア膜は、タングステン(W)の拡散を防止する、また、第1及び第2のバリア膜は、コンタクトホールCHの内壁及びタングステンの双方に対して密着する密着層としても機能する。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0066】
メモリストリングはU字状に限らず、複数の導電層WLの積層方向に直線状に延びるI字状であってもよい。また、導電層WLとチャネルボディ20との間の絶縁膜構造はONO(Oxide-Nitride-Oxide)構造に限らず、例えば電荷蓄積層とゲート絶縁膜との2層構造であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
20…チャネルボディ、25…絶縁層、30…絶縁膜、32…電荷蓄積膜、40…コンタクト電極、50…レジスト膜、51…硬化層、61…ストッパー層、62…層間絶縁層、WL…導電層、CH…コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の絶縁層と複数の導電層とを交互に積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体上に、レジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をマスクにして、前記絶縁層及び前記導電層をプラズマエッチングする工程と、
ホウ素、リン及びヒ素の少なくとも1つを含むガスを用いたプラズマ処理により、前記レジスト膜の上面に、前記ホウ素、前記リン及び前記ヒ素の少なくとも1つを含む硬化層を形成する工程と、
前記レジスト膜の上面に前記硬化層が形成された状態で、酸素を含むガスを用いたプラズマ処理により前記レジスト膜の平面サイズをスリミングする工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レジスト膜をスリミングした後、前記硬化層を除去する工程をさらに備え、
前記硬化層を除去した後、前記スリミングされたレジスト膜をマスクにして、前記絶縁層及び前記導電層をプラズマエッチングすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板側に電力を印加した状態で、前記硬化層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板側を接地した状態で、前記レジスト膜をスリミングすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記硬化層を形成する工程と、前記レジスト膜をスリミングする工程と、前記絶縁層及び前記導電層をプラズマエッチングする工程とを、同じ処理室内にて減圧雰囲気を維持しつつ行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−166061(P2011−166061A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30050(P2010−30050)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】