説明

半導体装置の製造方法

【課題】 広範囲にわたって全導電性領域に、断切れ及び上層配線層との間のリーク電流の発生のない、均一な膜厚の銅配線層を形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 ガラス基板上に薄膜トランジスタ及び配線を有する半導体装置を製造する方法において、ガラス基板上に下地絶縁層を形成する工程と、前記下地絶縁層上に下地バリア層を形成する工程と、前記下地バリア層上にシード層を形成する工程と、前記シード層を前記配線に対応する形状にパターニングしてシード層パターンを形成する工程と、前記シード層パターンの表面に銅配線層を無電解めっき法で形成する工程と、前記銅配線層マスクとして前記下地バリア層をパターニングする工程と、前記銅配線層を被覆するように絶縁層を形成する工程とを備えたことを特徴する半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線層を備える半導体装置の製造方法に係り、特に、液晶表示装置に代表される表示装置やULSI等の半導体装置等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LSIやULSIに代表される半導体装置における配線材料としては、アルミニウム(Al)やその合金が主流となっている。しかし、近年の集積度の向上による微細化、細線化等の要求や、動作スピードの向上の要求等により、Al配線よりも抵抗が低く、且つエレクトロマイグレーションやストレスマイグレーション等に対する高い耐性を有する銅(Cu)を次世代の配線及び電極の材料として採用することが検討されている。
【0003】
さらに、液晶表示装置等に代表される表示装置の分野においても、表示面積の拡大による配線長の増加や、駆動用ドライバ回路や画素内メモリといった様々な付加機能を搭載するモノリシック化等の要求によって、半導体装置の分野と同様に低抵抗の配線の要求が高まってきている。
【0004】
微細な銅の配線加工は、Al配線の形成技術と同様に、PEP(Photo Engraving Process:写真食刻工程、所謂フォトリソグラフィー)によるマスキング技術と、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法等のエッチング技術とを単に組み合わせただけでは、実現が困難であった。つまり、銅のハロゲン化物の蒸気圧は、Alのハロゲン化物に対して非常に低く、蒸発しにくいため、RIE等のエッチング技術を用いて銅をエッチングする場合には、基板温度を摂氏200〜300℃又はそれ以上にする必要があり、実用化には課題が多い。また、通常のフォトレジストマスクではなく、SiO2やSiNxからなるマスクを使用する必要もある。
【0005】
そこで、銅配線層の形成方法として、例えば、特許文型1や特許文献2に開示されているダマシン法を用いた銅配線層の形成方法が提案されている。このダマシン法は、次のようなプロセスで銅配線層を形成する方法である。 まず、基板上に絶縁層として酸化シリコン層を形成し、この絶縁層に対して、あらかじめ所望の配線パターンの配線溝を形成する。次に、銅が上記酸化シリコン層中に拡散するのを防止するために銅配線層の下地層としてTaN、Ta、TiN等の拡散防止層を形成する。
【0006】
次いで、この拡散防止層の上に配線溝を埋め込むようにスパッタリング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法、めっき法、又は有機金属材料を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法等の種々の手法を用いて、銅配線層となる銅薄層を溝内部に埋め込むとともに、絶縁層上の全面に亘って形成する。その後、銅薄層を基板表面側から下層の絶縁層が露出する(溝部分の開口端面)までCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨法)等の研磨法やエッチバック等の手段を用いて除去すると、溝に埋め込まれた銅からなる配線パターンが形成される。最後に、拡散防止機能を有する絶縁層もしくは金属層を銅配線上に形成する。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなダマシン法には、以下に挙げるような課題がある。即ち、ダマシン法は、少なくとも配線を埋め込むための溝を形成する溝加工工程の他に、金属拡散防止層、金属シード層、金属配線層及び研磨停止膜をそれぞれ形成するための成膜工程、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程、及び研磨工程という多くの工程が必要であり、製造工程が煩雑となり、製造コストを高くしている。
【0008】
また、配線抵抗を低減するためには、配線の断面積を大きくする必要があるが、配線の断面積を大きくすることは、高集積化から制約がある。高集積化を損なうことなく配線の断面積を大きくする手段として、アスペクト比の高い(つまり、幅や径が狭く、深い)溝やビアホールを採用することが考えられるが、幅が狭く深い溝やビアホールなどに銅を充填することは困難であり、銅の埋め込み性が低い。また、銅薄層を基板全面に成膜した後に、不要部分を除去して平坦化するというCMP工程等は、処理時間が長く掛かり、スループットを悪くしている。
【0009】
さらに、直径12インチ等の大口径半導体ウエハサイズに対応する大型のCMP装置が開発されているが、上記半導体ウエハよりも大面積で矩形のガラス基板を用いる表示装置のためのCMP装置装は実用化されていない。また、表示装置例えば、大型液晶表示装置の場合は、上記CMPによる全面研磨やエッチング法による配線層の形成が可能であったとしても、配線として利用される銅薄層部分は、ガラス基板の面積に比較して非常に小さいために、成膜された銅薄層の大部分は除去され、廃棄されている。この結果、材料として高価な銅資源の利用効率は、非常に悪くなり、高コストになる影響で製品価格も高くなる。
【0010】
上記銅資源の有効利用を可能にした銅配線の形成技術として、電解めっき法を用いた、特許文献3に記載されている技術がある。この技術により配線形成領域のみに銅めっき膜を形成することができ、コストを低減することができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−189295号公報
【特許文献2】特開平11−135504号公報
【特許文献3】特開2004−134771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、薄膜トランジスタなどを有する回路の配線層、電極、電極パッド、などの導電性領域を電解めっき法により銅配線層を形成した場合、後工程でそれぞれの配線、電極、電極パッドなどを分離する工程が必要であることに加え、大面積基板では電解めっき用周辺電極部からの距離や電流密度分布による膜厚ばらつきの発生や、トランジスタ、容量などの素子への影響を考慮した、電解めっき用の高電圧印加法等が必要であるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、広範囲にわたって全導電性領域に、断切れ及び上層配線層との間のリーク電流の発生のない、均一な膜厚の銅配線層を形成することが可能な銅配線層を備える半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、ガラス基板上に薄膜トランジスタ及び配線を有する半導体装置を製造する方法において、ガラス基板上に下地絶縁層を形成する工程と、前記下地絶縁層上に下地バリア層を形成する工程と、前記下地バリア層上にシード層を形成する工程と、前記シード層を前記配線に対応する形状にパターニングしてシード層パターンを形成する工程と、前記シード層パターンの表面に銅配線層を無電解めっき法で形成する工程と、前記銅配線層マスクとして前記下地バリア層をパターニングする工程と、前記銅配線層を被覆するように絶縁層を形成する工程とを備えたことを特徴する半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、銅シード層のパターン上に銅を無電解めっきすることにより、広範囲にわたって全導電性領域に、断切れ及び上層配線層との間のリーク電流の発生のない、均一な膜厚の銅配線層を備える半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法の一例を工程順に説明する断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法の一例を工程順に説明する断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法の一工程を説明する断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法の他の例を工程順に説明する断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法の更に他の例を工程順に説明する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法の更に他の例を工程順に説明する断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に説明する工程フロー図である。
【図8】図7における結晶化工程を説明するための結晶化装置の構成を示す図である。
【図9】図8における照明系の構成を説明するための図である。
【図10】図7に示す方法により製造された半導体装置の構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
パラジウム触媒処理によりパラジウム核を形成した後に、無電解めっき浴を用いて、基板上に形成されたバリア層上に直接、無電解めっき法により銅層を形成する方法が知られている。しかし、めっきによる膜成長は、パラジウム核(数nm〜数10nm)の表面を覆うように形成されるために、膜厚が薄いときには、パラジウム核を高密度に形成しないと連続膜を得ることが難しく、大面積の領域を均一な厚さでめっき処理を行うことは困難である。
【0018】
本発明では、基板上に形成された銅シード層のパターン上に、銅配線層を無電解めっき法で形成することにより、上記問題をすべて解決した。
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る銅配線層の形成方法について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。図1は、銅シード層を加工するためのレジストパターンを形成するまでを工程順に説明する断面図であり、図12及び図3は、図1の工程により形成されたレジストパターンを用いて銅シード層のエッチングから銅配線層を形成するまでを工程順に説明する断面図である。
【0020】
図1〜図3には、同一部分には、同一符号を附与し、その重複説明は省略する。この明細書での銅配線層とは、集積回路や表示装置などにおいて、回路素子、例えばトランジスタ間を電気的に接続する電気的配線、トランジスタの電極、端子(パッド)などの導電性領域を含むものとする。
【0021】
本実施形態に係る方法によると、予め銅シード層を配線パターン状に形成しておき、この銅シード層上に無電解めっきを施すことにより、全ての銅シード層の表面上のみに銅めっき層を形成することができる。この方法によれば、銅シード層をパターニングした後に銅配線層を無電解めっきするので、溝内にめっき膜を形成する場合と比べて、パターン幅による膜厚のばらつき、断切れ、上層配線層との間のリーク電流の発生を防止することができる。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、基板1上に、基板1からの不純物の浸透を防止するために、下地絶縁層2、例えばSiN(窒化シリコン)膜が、例えば300nmの膜厚で形成される。基板1の材質としては、導電体、絶縁体、半導体のいずれでもよい。このSiN膜2は、例えば、プラズマCVD法により、表面が比較的平坦なガラス基板1上に形成することができる。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、表面が比較的平坦な下地絶縁層2上に下地バリア層3が成膜される。下地バリア層3としては、銅の拡散を抑制し、かつ、下地絶縁層2との密着性を向上させる、例えばTa、TaN、TiN、TaSiN等の少なくとも1つの層からなるバリアメタルを用いることができる。これらのバリアメタルは、下地絶縁層2上にスパッタリング法により、例えば30nm程度の厚さに形成される。
【0024】
銅シード層のパターンの形成
まず、図1(c)に示すように、表面が比較的平坦な下地バリア層3上に、銅を主成分とする金属シード層、例えば銅シード層4が成膜される。この銅シード層4の成膜法としては、例えばスパッタリング法を用いることができる。銅シード層4は、例えば30nm〜300nmの厚さに形成される。銅シード層4は、結晶面の結晶方位が主として(111)に配向していることが望ましい。
【0025】
次に、図1(d)に示すように、銅シード層4上にフォトレジスト層5が成膜される。このフォトレジスト層5の成膜法は、例えばスピンコーティング法であり、フォトレジスト層5の膜厚は、例えば1.2μmである。
【0026】
フォトレジスト層5が塗布され、硬化された後の基板1は、露光装置に搬入され、そこで、予め定められた電極パターンや所望の配線形成パターンやパッドなどのパターンを有する露光用マスクを通して上記フォトレジスト層5が露光される。露光後、上記フォトレジスト層5に現像を施すことにより、図1(e)に示すように、所望の配線パターンのフォトレジスト層5aが形成される。
【0027】
次に、図2(a)に示すように、銅シード層4のフォトレジスト開口部6から露出した部分を例えばエッチングすることにより除去し、銅シード層パターン4aを形成する。この銅シード層4のエッチング法としては、ウェットエッチング法を用いることができる。銅シード層の層厚が薄いため、容易にエッチングが可能であり、サイドエッチングの抑制が可能である。
【0028】
微細パターンを形成する場合には、塩素ガス、塩素水素ガス、臭化水素ガス等のハロゲン元素を含むガスを用いたプラズマもしくは反応性イオンエッチング法により、露出している銅シード層4を水溶性のCuClxやCuBrxのようなハロゲン化銅に変換した後に除去する方法を用いることが望ましい。この時、銅シード層4の厚さが薄いために、ハロゲン化銅の形成を銅シード層4の膜厚にわたって十分に行うことが可能である。もちろん、アルゴンガス等を用いたスパッタエッチング等のドライプロセスを用いることも可能である。その際は、上記レジスト層5の代わりに無機絶縁層やメタル層を用い、銅シード層をエッチングした後に、無機絶縁層やメタル層を除去することが望ましい。このようにして、図2(b)に示すように、銅シード層パターン4aを得ることができる。
【0029】
銅配線層の形成
次に、図2(c)に示すように、銅シード層4の上に銅薄膜、例えば銅配線層7を無電解めっき法で形成する。無電解めっき法では、電解めっき法と異なり、電界をかけるための配線形成及びその後の工程での切断工程が不要である。また、電界を付与するための装置が不要であるため、基板1の1辺サイズが1メートルを越える矩形基板でも均一な成膜が可能である。銅配線層7の厚さは、例えば400nmである。銅配線層7は、図2(c)に示すように、銅シード層4の表面上のみに成膜される。
【0030】
このとき、銅(めっき)配線パターン7は、エピタキシャル成長により銅シード層パターン4a上のみに形成された。このため、主として銅シード層4の結晶方位が(111)であり、銅シード層4の平均結晶粒径が大きい方が、銅(めっき)配線層7の平均結晶粒径が大きくなり、低比抵抗の銅(めっき)配線層7が得られるために望ましい。無電解めっき法による銅配線層7の形成の前処理として、銅シード層4の表面の酸化物を除去する洗浄工程を付することが望ましい。
【0031】
無電解めっき浴としては、銅化合物、例えば硫酸銅を含む溶液に、還元剤としてコバルト塩を添加した、アルカリ金属を含まない中性無電解めっき浴を用いることが望ましいが、レジスト層は除去されているため、強アルカリ性のめっき浴でも適用が可能であり、例えばホルムアルデヒドを還元剤とするめっき浴を用いることが可能である。ここで、通常のホルムアルデヒド浴は、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いているが、このような無機アルカリよりも有機アルカリ等を用いる方が、液晶表示装置におけるような薄膜トランジスタの製造工程の適用にあたっては望ましい。
【0032】
無電解めっきによる銅を主成分とする銅配線層7の成膜は、基板1として大きさ1メートル以上の液晶表示装置用ガラス基板への薄膜の成膜を可能にする。
【0033】
銅シード層4上のみに銅配線層7を無電解めっきすることは、銅を不要な部分に成膜しないため、省資源効果のある方法である。このようにして銅配線層7を形成することができる。
【0034】
続いて、図2(d)に示すように、銅配線層7をマスクとして用いて、露出する下地バリア層3が、例えばエッチングにより除去され、バリア層パターン3aとされる。エッチング方法としては、例えば下地バリア層3としてバリアメタルのTa系のものを用いた場合、エッチングガスとして例えばCFガスとOガスの混合ガスを用いたプラズマエッチングが好ましい。
【0035】
銅を主成分とする銅配線層7は、易拡散性を有する。従って、この銅の拡散を阻止するために、図3に示すように、銅の拡散バリア性を有する材料、例えばSiN、SiC、ベンゾシクロブテン(BCB)等の層間絶縁層8を銅配線層7の表面上を覆うように形成することが望ましい。
【0036】
本実施形態に係る銅配線層7の形成方法によると、銅を主成分とする微細金属配線を選択的に形成することができる。銅配線層7は、配線膜厚が200〜1000nm程度のサブμmオーダの薄膜でも、2.5μΩcm以下の低比抵抗を得ることができる。さらに、サイズが1メートル以上の大きな基板1でも、低比抵抗の銅配線層7を形成することができる。
【0037】
即ち、通常の電解銅めっきや無電解銅めっき層の形成では、配線厚が1〜30μm程度と厚いため、めっきの膜厚が増大すると共に結晶粒径は増大する。
【0038】
他方、液晶表示装置のような配線は、サブμmオーダの薄膜が要求されるため、銅配線層7を厚くすることが出来ない。銅(めっき)配線層7の比抵抗を低減するためには、銅(めっき)配線層7の結晶粒径を大きくすればよい。
【0039】
銅配線層の結晶粒径を大きくする手段としては、(1)銅シード層4をアニールして銅シード層4の結晶粒径を大きくし、その上に形成する銅めっき層7の結晶粒径を大きくする方法、(2)銅シード層4上に無電解銅めっき層を形成したのち、アニールして、銅配線層の結晶粒径を大きくする方法、(3)下地バリア層3の材質及び/又は結晶配向性を制御して、結晶粒径の大きな銅シード層4を形成する方法、などがある。
【0040】
結晶粒径の大きな銅シード層4は、例えばスパッタリング法により銅シード層4を形成する場合のスパッタリング条件を選択することにより形成することができる。
【0041】
銅シード層4をアニールして銅シード層4の結晶粒径を大きくする方法としては、銅シード層4を形成したのち、非酸化性雰囲気中例えば窒素雰囲気中、水素を含む還元雰囲気中、又は真空中でアニールすることが挙げられる。即ち、銅シード層4をアニールして銅シード層4の結晶粒径を大きくする方法としては、銅シード層4を形成したのち窒素雰囲気中で500℃以下の温度でアニールする方法があり、工業的なアニール温度は、200℃〜450℃が望ましい。200℃未満では結晶成長に長時間を要することとなり、450℃を超えると表面の凹凸が大きくなる傾向がある。
【0042】
銅シード層4上に銅めっき層を形成したのち、アニールを施して銅配線層の結晶粒径を大きくする方法としては、銅シード層4を形成し、この銅シード層4を所望する形状にパターニングしたのち、銅を無電解めっきして銅配線層を形成し、その後、非酸化雰囲気中でアニール処理する方法がある。アニール処理条件は、非酸化性雰囲気中で500℃以下、工業的には200℃〜450℃が望ましい。
【0043】
次に、銅配線層7からの銅の拡散防止性を高めるために、銅配線層7の表面上に2重に銅の拡散防止性を有する層を形成する実施形態を、図4を参照して説明する。図1〜図3と同一部分には、同一符号を附与し、その詳細な説明は重複するので省略する。上記実施形態と図2(d)までの工程は、同一であるので、図2(d)以降の工程を示す。
【0044】
図4(a)は、図2(d)と同一であり、銅配線層7が形成された状態を示す断面図である。銅配線層7をマスクとして露出する下地バリア層3を除去してバリア層パターン3aとした後、銅の拡散防止層9を形成する。この銅の拡散防止層9は、下地バリア層3の表面(側面も含む)上に形成された、銅配線層7から銅が拡散するのを抑制するための層であり、例えば、キャッピングメタル層9である(図4(b))。キャッピングメタル層9としては、コバルトやニッケルを主成分とする層(例えば、CoB、NiB等)9を無電解めっき法により形成することが望ましい。銅の拡散防止層9は、少なくとも銅配線層7の露出している面を被覆することが望ましい。
【0045】
このキャッピングメタル層9上には、更に、図4(c)に示すように、銅配線層7から銅が拡散するのを抑制するバリア性を高めるために、バリア性の層例えばSiN、SiC、BCB等の層間絶縁層8を形成する。
【0046】
次に、下地バリア層3を用いずに、下地絶縁層2と銅シード層4との密着性を高くする実施形態を図5及び図6を参照して説明する。図1〜図4と同一部分には、同一符号を付し、その詳細な説明は、重複するので省略する。
【0047】
まず、図5(a)に示すように、基板例えばガラス基板1上に、下地絶縁膜層2が形成され、次いで、図5(b)に示すように、この下地絶縁膜層2上に、銅シード層4として銅を主成分とするが、Mg、Ta、Ti、Ta、Mo、Mn、Al、W、Zrの少なくとも一つ以上の金属を含む銅合金シード層12が形成される。この銅合金シード層12と下地絶縁層2との界面には、熱処理例えば400℃程度の熱処理により、少なくともバリア性を有する添加金属の酸化物層例えば、MgO、TiO、Ta等の層を形成し、下地絶縁層2と銅合金シード層12の密着性を向上させることが望ましい。
【0048】
このようにして形成された銅合金シード層12上には、図1〜図3に示す実施形態と同様のプロセスを用いて、銅配線層7を形成することができる。即ち、図5(c)に示すように、銅合金シード層12上に、フォトレジスト層5が設けられ、次いで、図5(d)に示すように、このフォトレジスト層5は配線パターン状に加工される。
【0049】
次に、配線パターン状に形成されたフォトレジストパターン5aをマスクとして、開口部6を通して露出する銅合金シード層12をエッチングし、図6(a)に示すように下地絶縁膜2上に上記配線パターン状の銅合金シード層12aを形成し、図6(b)に示すようにフォトレジストパターン5aをエッチングにより除去する。
【0050】
その後、図6(c)に示すように、上記配線パターン状の銅合金シード層パターン12a上に銅配線層7を無電解めっき法で形成する。即ち、銅合金シード層パターン12a上には銅配線層7を構成する無電解めっき膜が成膜される。この無電解めっき膜の膜厚は、例えば400nmである。
【0051】
更に、図6(d)に示すように、各銅配線層7の上および間に、銅配線層7からの銅の拡散に対してバリア性を有する材料からなる層間絶縁層8を形成する。このようにして銅配線層7が形成される。
【0052】
銅配線素7からの銅の拡散を抑制する手段としては、層間絶縁層8の1層のみに限らず2層を設けてもよい。2層による拡散抑制に関する実施形態は、上述した図4に示す通りである。即ち、図4(a)に示されているように銅配線層7が形成された後、銅配線層7の側面を含む露出している表面を、図4(b)に示すように銅の拡散を抑制する材料層を成膜することにより被覆して1層目を形成する。銅の拡散を抑制する材料層は、例えばキャッピングメタル層9である。キャッピングメタル層9は、例えばコバルトやニッケルを主成分とするCoB、CoWB、NiB、NiWB等を無電解めっき法により形成する。このようにして形成された1層目のキャッピングメタル層9上に図4(c)に示すように、2層目の層間絶縁層8を形成して2層構造の銅の拡散防止層を形成する。
【0053】
キャッピングメタル層9上に2層目のSiN、SiC、BCB等の層間絶縁層8を形成してもよい。
【0054】
このようにして形成された銅配線層7は、半導体集積回路、LCDだけではなく、有機LED、例えばアクティブマトリックス型有機LEDの基板上に形成される信号線、電源線、走査線及びTFT内の電極、及び周辺配線や同一基板上に形成された周辺駆動回路内の配線等に適用できることは、説明するまでもないことである。上記実施形態の配線の形成方法によれば、選択的に銅を主成分とする金属配線を形成でき、更に周辺駆動回路の配線に要求されるような微細配線パターンの形成が可能となる。
【0055】
上記実施形態の銅配線層の形成方法は、基板上に予め定められたパターン状に銅シード層を形成する工程と、前記銅シード層上に銅配線層を無電解めっき法で形成する工程とを具備してなる。この方法によれば、銅配線層を無電解めっき法で形成するので、めっき用電極が不要となるため、めっき範囲が広範囲になっても前記銅シード層上に銅めっき層を形成することができると共に、後工程で銅配線間の分離を行う必要がない。前記銅シード層上にのみ銅めっき層を形成するので、不要な領域に銅膜を形成することがなくなり、銅の利用効率が向上する。広範囲にわたって全導電性領域に銅配線層を形成することができる。
【0056】
さらに、前記パターン状に銅シード層を形成する工程は、基板上に銅シード層を形成する工程と、前記銅シード層を予め定められた配線パターン状に除去して形成する工程とにある。この方法によれば、溝内にめっき膜を形成する場合と比べて、銅シード層をパターニングした後に銅配線層を無電解めっきするので、パターン幅による膜厚のばらつきが少なく、断切れなどの発生も少ない。更に、配線端面形状も垂直でなく、配線断面形状としては蒲鉾型となるため、上層の層間絶縁層のカバレッジ性もよく、上層配線層とのリーク電流の発生も少ない。
【0057】
次に、本発明を半導体装置の製造方法に適用した実施形態について、図7〜図10を参照して、説明する。図1〜図6と同一部分には同一符号を附与し、その詳細な説明は、重複するので省略する。この実施形態は、絶縁基板上にTFT(薄膜トランジスタ)及び配線を有する半導体装置を製造する方法に係るものである。
【0058】
先ず、図7に示すフローチャートを参照して、図8に示す結晶化用基板18の製造工程Sを説明する。基板例えば石英または無アルカリガラス等からなるガラス基板21を搬送してプラズマCVD装置チャンバ内の予め定められた位置に位置決めして設置する(工程−1)。次に、ガラス基板21上に、下地絶縁層22例えば窒化シリコン層がプラズマCVD法により気相成長される(工程−2)。次いで、窒化シリコン膜22上に、結晶化対象の非晶質シリコン層もしくは多結晶シリコン層からなる非単結晶半導体層例えば非晶質シリコン層23が30nm〜300nm、例えば約200nmの膜厚にプラズマCVD法により気相成長される(工程−3)。その後、非晶質シリコン層23上に、大粒径結晶化領域を形成するために、入射光に対して透過性および蓄熱作用を有するキャップ層、例えば酸化シリコン層24がプラズマCVDにより10nm〜1000nm、例えば260nmの膜厚に成膜される。キャップ層24は絶縁層からなり、蓄熱作用を有し、レーザ光を照射して結晶化する際、非単結晶半導体層の降温速度を緩和するための膜である。このようにして結晶化用基板18を製造する(工程−4)。
【0059】
次に、結晶化工程Tを実行する。先ず、製造された被結晶化基板18は、結晶化装置26の基板試料台19の予め定められた位置に位置合わせして設置される。結晶化装置26に搬送された被結晶化基板18の予め定められた結晶化位置に逆ピークパターン状の光強度分布を有するエキシマレーザ光束をキャップ層である酸化シリコン層24を透過して非晶質シリコン層23に照射し(工程−5)、この照射領域に大粒径の結晶化領域を形成する(工程−6)。このような照射工程における照射領域は、非晶質シリコン層23を移動させながら順次予め定められた位置に移動されて、結晶化工程が行われる。
【0060】
上記エキシマレーザ光は、例えば、エネルギー密度が500mJ/cm2のKrFエキシマレーザである。結晶化するための位置情報は、予め結晶化装置26のコンピュータに記憶されている。このコンピュータは、指令により自動的に非結晶化基板18内の結晶化位置に位置決めして結晶化のためのレーザ光を照射し、その照射位置を順次移動させ、順次結晶化を行い、結晶化工程Tを終了する。
【0061】
即ち、結晶化工程Tは、位相変調エキシマレーザ結晶化法を用いて、キャップ層24の表面に逆ピーク状の光強度分布Rを有するエキシマパルスレーザ光を照射する。パルスレーザ光によるレーザ照射によって、非晶質シリコン層23の照射された領域は高温となり、溶融する。このときの高温は、下地絶縁層22及びキャップ層24を加熱し、下地絶縁層22およびキャップ層24に蓄熱される。上記溶融領域は、パルスレーザ光の遮断期間に降温し、凝固位置が上記蓄熱により横方向(水平方向)にゆっくり移動して、結晶成長し、大粒径の結晶化領域が形成される。
【0062】
その結果、非晶質シリコン層23の一部又は全域が結晶化され、結晶性シリコン層に変換される。逆ピーク状の高強度分布Rを有するパルスレーザ光の照射は1回でもよいが、同一箇所又は一部の領域が重なるように複数回行ってもよく、また、パルスレーザ光の照射とフラッシュランプ光の照射を組合せてもよい。このようにして結晶化された非晶質シリコン層23を、本明細書では、結晶性シリコン層と定義する。
【0063】
次に、結晶化工程Tを終了した半導体薄膜にTFTなどの半導体装置を形成する工程Uを説明する。結晶化工程Tが終了した上記被結晶化基板18の表面には、キャップ層24である酸化シリコン層(SiO)が成膜されている。
【0064】
この実施形態では、前工程において大粒径結晶化領域にTFTを形成するために設けたキャップ層24をエッチングにより除去する(工程−7)。キャップ層24が除去された非結晶化基板18の表面には、結晶化工程Tが終了した結晶性シリコン層が露出する。
【0065】
次いで、結晶化工程Tが終了したガラス基板21への半導体装置、例えばTFT(薄膜トランジスタ)の形成を行う。先ず、上記ガラス基板21をプラズマCVD反応室内に搬送し、搬送されたガラス基板21の露出した結晶性シリコン層27の表面上に、図7に示されているように、ゲート絶縁層30を形成するための酸化シリコン膜を成膜する(工程−8)。ゲート絶縁層30は、例えば厚さ30nmのシリコン酸化膜である。
【0066】
その後、ゲート絶縁層30の予め定められた配線パターン位置に、MoWからなるゲート電極31を形成する(工程−9)。
【0067】
形成されたゲート電極31をマスクとして用いて、不純物イオンを結晶化領域に高濃度にイオン注入する。不純物イオンは、Nチャネルトランジスタの場合には、例えばリンを、Pチャネルトランジスタの場合には例えばホウ素をイオン注入する。その後、窒素雰囲気中でアニール処理(例えば、550℃で1時間)を行い、不純物を活性化して結晶化領域にソース領域S、ドレイン領域Dが形成される。この結果、形成されたソース領域Sおよびドレイン領域D間には、キャリアが移動するチャネル領域Cが形成されている(工程−10)。
【0068】
次に、ゲート絶縁層30及びゲート電極31上に、それぞれSiOとSiN又はBCBの積層構造からなる層間絶縁層32を形成する。この層間絶縁層32に、ソース電極33、ドレイン電極34、及びこれら電極33、34に接続される配線35、36を形成するためのコンタクトホールを夫々形成する(工程−11)。
【0069】
次に、形成されたコンタクトホールに、ソース電極33及びドレイン電極34を構成する、図1〜図3を参照して説明した、下地バリア層3、銅シード層4及び銅配線層7の積層構造を成膜する。さらに、層間絶縁層32上にもフォトリソグラフィ技術を用いて予め定められた所定のパターンの下地バリア層3、銅シード層4及び銅配線層7からなる配線35,36を形成して、薄膜トランジスタ(TFT)39、及びこの薄膜トランジスタ(TFT)39を備える半導体装置40を製造する(工程−12)。
【0070】
次に、TFT39の上に、パシベーション層41として例えばSiNもしくはSiNとBCBの積層体等を形成する。次いで、パシベーション層41の電極パッド等の予め定められた所望の位置にコンタクトホールを形成する(工程−13)。この電極パッドも図1A〜1Jで説明した下地バリア層3、銅シード層4及び銅配線層7の積層構造により形成することができる。
【0071】
上記実施形態では、ゲート電極としてMoW層を用いた例について説明したが、図1〜図3や図4〜図6で説明した下地バリア層3、銅シード層4及び銅配線層7の積層構造により形成することができる。配線パターンは、電極、パッド、配線などの形である。
【0072】
次に、上記実施形態で説明した結晶化工程Tの結晶化装置26について、図8および図9を参照して具体的に説明する。結晶化装置26は、照明系51と、この照明系51の光軸上に設けられた位相変調素子52と、この位相変調素子52の光軸上に設けられた結晶光学系53と、この結像光学系53の光軸上に設けられる被結晶化基板18を支持する基板試料台19とからなる。
【0073】
照明系51は、図9に示す光学系であり、例えば光源56とホモジナイザ57とからなる。光源56は、308nmの波長を有する光を供給するXeClエキシマレーザ光源を備えている。なお、光源56としては、248nmの波長を有するパルス光を出射するKrFエキシマレーザ光源や波長193nmのパルス光を出射するArFレーザなどのエキシマレーザを用いてもよい。更に、光源56は、YAGレーザ光源でもよい。光源56は、非単結晶半導体膜、例えば非晶質シリコン層23を溶融するエネルギーを出力する他の適当な光源を用いることもできる。この光源56から出射されたレーザ光の光軸上には、ホモジナイザ57が設けられている。
【0074】
このホモジナイザ57は、光源56からのレーザ光の光軸上に、例えばビームエキスパンダ58と、第1フライアイレンズ59と、第1コンデンサー光学系60と、第2フライアイレンズ61と、第2コンデンサー光学系62とが順次設けられたものである。ホモジナイザ57は、光源56から出射されたレーザ光を光束の断面内において光強度および位相変調素子52への入射角を均一化処理するものである。
【0075】
即ち、照明系51において、光源56から入射されたレーザ光は、ビームエキスパンダ58にて拡大された後、第1フライアイレンズ59に入射する。この第1フライアイレンズ59の後側焦点面には複数の光源が形成され、これらの複数の光源からの光束は第1コンデンサー光学系60を介して、第2フライアイレンズ61の入射面を重畳的に照明する。その結果、第2フライアイレンズ61の後側焦点面には、第1フライアイレンズ59の後側焦点面よりも多くの多数の光源が形成される。第2フライアイレンズ61の後側焦点面に形成された多数の光源からの光束は、第2コンデンサー光学系62を介して、位相変調素子52に入射し、重畳的に照明する。
【0076】
この結果、ホモジナイザ57の第1フライアイレンズ59および第1コンデンサー光学系60は、第1ホモジナイザを構成し、位相変調素子52に入射するレーザ光の入射角度に関する均一化処理を行う。また、第2フライアイレンズ61および第2コンデンサー光学系62は、第2ホモジナイザを構成し、この第2ホモジナイザにより第1ホモジナイザからの入射角度が均一化されたレーザ光について位相変調素子52上での面内各位置での光強度に関する均一化処理を行う。こうして、照明系57は、ほぼ均一な光強度分布を有するレーザ光を形成し、このレーザ光が位相変調素子52に入射する。
【0077】
位相変調素子52、例えば位相シフタは、ホモジナイザ57からの出射光を位相変調して逆ピーク状の光強度最小分布のレーザビームを出射する光学素子である。逆ピーク状の光強度最小分布は、横軸が場所(被照射面での位置)であり、縦軸は光強度(エネルギー)である。逆ピーク状の光強度最小分布を得る光学系には、透明基板、例えば石英ガラスに形成された凹凸パターンがラインアンドスペースパターンと面積変調パターンとがある。
【0078】
位相シフタは、透明体、例えば石英基材に段差(凹凸)をつけ、段差の境界でレーザ光の回折と干渉を起こさせ、レーザ光強度に周期的な空間分布を付与するものである。位相シフタは、例えば段差部x=0を境界として左右で180度の位相差を付けた場合である。一般にレーザ光の波長をλとすると、屈折率nの透明媒質を透明基材上に形成して180度の位相差を付けるには、透明媒質の膜厚tは、t=λ/2(n−1)で与えられる。石英基材の屈折率を1.46とすると、XeClエキシマレーザ光の波長が308nmであるから、180度の位相差を付けるためには、334.8nmの段差をフォトエッチング等の方法で形成する。
【0079】
また、SiNx膜を透明媒質としてPECVD、LPCVD等で成膜する場合は、SiNx膜の屈折率を2.0とすると、SiNx膜を石英基材上に154nm成膜し、フォトエッチングして段差を付ければ良い。例えば、180度の位相差をつけた位相シフタを通過したレーザ光の強度は、周期的強弱(ラインアンドスペース)のパターンを示す。
【0080】
この実施形態では、段差そのものを繰り返し周期的に形成したマスクが周期的位相シフタである。位相シフトパターンの幅とパターン間距離はともに例えば3μmである。位相差は必ずしも180度である必要はなく、レーザ光に強弱を実現できる位相差であればよい。
【0081】
位相変調素子52で位相変調されたレーザ光は、結像光学系53を介して、被結晶化基板18に入射される。ここで、結像光学系53は、位相変調素子52のパターン面と被結晶化基板18とを光学的に共役に配置している。換言すれば、被結晶化基板18は、位相変調素子52のパターン面と光学的に共役な面(結像光学系53の像面)に設定されるように基板試料台19の高さ位置が補正される。結像光学系53は、正レンズ群65と正レンズ群66との間に開口絞り67を備えている。結像光学系53は、位相変調素子52の像を等倍又は縮小例えば1/5に縮小して被結晶化基板18に結像させる光学レンズである。
【0082】
開口絞り67は、開口部(光透過部)の大きさの異なる複数の開口絞りを有する。これらの複数の開口絞り67は、光路に対して交換可能に構成されていてもよい。あるいは、開口絞り67は、開口部の大きさを連続的に変化させることのできる虹彩絞りを有していてもよい。いずれにしても、開口絞り67の開口部の大きさ(ひいては結像光学系4の像側開口数NA)は、後述するように、被結晶化基板18の半導体膜上において所要の光強度分布を発生させるように設定されている。なお、結像光学系53は、屈折型の光学系であってもよいし、反射型の光学系であってもよいし、屈折反射型の光学系であってもよい。
【0083】
また、被結晶化基板18は、図8に示すように、たとえば液晶ディスプレイ用板ガラス21の上に化学気相成長法(CVD)又はスパッタリング法により下地絶縁層22として酸化シリコン層、被結晶化対象層として非晶質シリコン層23およびキャップ層24として酸化シリコン層が順次形成されたものである。
【0084】
非晶質シリコン層23は、結晶化処理される膜であり、膜厚例えば30〜250nmに選択される。キャップ層24は、結晶化工程時に非晶質シリコン層23が溶融したとき発生する熱を蓄熱し、この蓄熱作用が大粒径の結晶化領域の形成に寄与する。このキャップ層24は、絶縁膜例えば酸化シリコン膜(SiO2)であり、膜厚が100nm〜400nm例えば300nmである。
【0085】
被結晶化基板18は、結晶化装置26の基板試料台19上に自動的に搬送され、予め定められた所定の位置に位置決めされて載置され、真空チャックや静電チャックなどにより保持される。
【0086】
次に、結晶化プロセスを、図8および図9を参照して説明する。レーザ光源56から出射されたパルスレーザ光は、ホモジナイザ57に入射してレーザ光のビーム径内で光強度の均一化および位相変調素子52への入射角の均一化が行なわれる。即ち、ホモジナイザ57は、光源56から入射したレーザビームを水平方向に広げ線状(例えば、線長さ200mm)のレーザビームにし、さらに光強度分布を均一にする。たとえば、複数のX方向シリンドリカルレンズをY方向に並べて、Y方向に並んだ複数の光束を形成し、他のX方向シリンドリカルレンズで各光束を再分布させ、同様に複数のY方向シリンドリカルレンズをX方向に並べて、X方向に並んだ複数の光束を形成し、他のY方向シリンドリカルレンズで各光束を再分布させる。
【0087】
レーザ光は波長308nmのXeClエキシマレーザ光で、1ショットのパルス継続時間は20〜200nsである。上記条件で位相変調素子52に、パルスレーザ光を照射すると、周期的に形成された位相変調素子52に入射したパルスレーザ光は、段差部で回折と干渉を起こす。この結果、位相変調素子52は、周期的に変化する逆ピークパターン状の強弱の光強度分布を生成する。
【0088】
この逆ピークパターン状の強弱の光強度分布は、最小光強度から最大光強度で非晶質シリコン層23を溶融させる強度のレーザ光強度を出力する。位相変調素子52を通過したパルスレーザ光は、結像光学系53により被結晶化基板18に集束して非晶質シリコン層23に入射する。
【0089】
即ち、入射したパルスレーザ光は、キャップ層24をほとんど透過し、非晶質シリコン層23に吸収される。この結果、非晶質シリコン層23の被照射領域は、加熱され、溶融される。この溶融したときの熱は、キャップ層24および下地絶縁層22の酸化シリコン膜に蓄熱される。
【0090】
パルスレーザ光の照射が遮断期間になると、被照射領域は、高速で降温しようとするが、表裏面に設けられているキャップ層24および下地絶縁層22の酸化シリコン膜に蓄熱されている熱により、降温速度が極めて緩やかとなる。このとき、被照射領域の降温は、位相変調素子52により生成された逆ピークパターンの光強度分布に応じて降温し、横方向に順次結晶成長する。
【0091】
換言すれば、被照射領域内溶融領域での凝固位置は、順次低温側から高温側に漸次移動する。即ち、結晶成長開始位置から結晶成長終了位置に向かって横方向に結晶成長する。このようにして1パルスレーザ光による結晶化工程が終了する。このようにして結晶成長された結晶化領域は、1又は複数個のTFTを形成するのに充分な大きさである。
【0092】
結晶化装置26は、予め記憶されたプログラムにより自動的に次の非晶質シリコン層23の結晶化領域にパルスレーザ光を照射して結晶化領域を形成する。次の結晶化位置への移動は、被結晶化基板18と光源56とを相対的に移動例えば基板試料台19を移動させて位置選択することができる。
【0093】
被結晶化領域が選択され位置合わせが完了したとき、次のパルスレーザ光が出射される。このようなレーザ光のショットを繰り返することにより、被結晶化基板18の広い範囲の結晶化を行うことができる。このようにして結晶化工程を終了する。
【0094】
この実施形態は、半導体装置だけでなく、LCD、有機RL表示装置(OLED)例えば、アクティブマトリックス型有機OLEDの基板上に形成される信号線、電源線、走査線及びTFT内の電極、及び周辺配線や同一基板上に形成された周辺駆動回路内の配線等に容易に適用することもできる。上記の実施形態では、結晶性シリコン半導体層を有するトランジスタについて説明したが、もちろん多結晶シリコン半導体層を有するもの、半導体層の下にゲート電極を有するアモルファスシリコントランジスタの電極、及び周辺配線にも適用できることも容易である。下ゲート構造のアモルファスシリコントランジスタのゲート電極に適用する際には、その上に形成するゲート絶縁膜はバリア性を有する窒化シリコン層、酸化ハフニウム(HfO)等と、酸化シリコンとの積層構造にすることが望ましい。
【0095】
以上説明したように上記実施形態によれば、比抵抗が例えば2.5μΩcm以下の低抵抗銅配線を可能にすることができる。特に、薄膜トランジスタや薄膜トランジスタ回路などの半導体装置を構成することができる。さらに、所望する断面積の銅配線を形成することができる。さらに、大型基板であっても広範囲にわたって所望する全導電性領域に銅めっき層を形成することができる。
【符号の説明】
【0096】
1,21・・・基板、2,22・・・下地絶縁層、3・・・下地バリア層、4,12・・・銅シード層、4a,12a・・・銅シード層パターン、5・・・フォトレジスト層、5a・・・フォトレジスト層パターン、6・・・フォトレジスト開口部、7・・・銅配線層、8・・・層間絶縁層、9・・・キャッピングメタル層、12・・・銅合金シード層、18・・・被結晶化基板、19・・・基板試料台、23・・・非晶質シリコン層、24・・・キャップ層、26・・結晶化装置、27・・・結晶性シリコン層、30・・・ゲート絶縁層、31・・・ゲート電極、,32・・・層間絶縁層、33・・・ソース電極、34・・・ドレイン電極、35,36・・・配線、39・・・薄膜トランジスタ(TFT)、40・・・半導体装置、51・・・照明系、52・・・位相変調素子、53・・・結晶光学系、56・・・光源、57・・・ホモジナイザ、58・・・ビームエキスパンダ、59・・・第1フライアイレンズ、60・・・第1コンデンサー光学系、61・・・第2フライアイレンズ、62・・・第2コンデンサー光学系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に薄膜トランジスタ及び配線を有する半導体装置を製造する方法において、
ガラス基板上に下地絶縁層を形成する工程と、
前記下地絶縁層上に下地バリア層を形成する工程と、
前記下地バリア層上にシード層を形成する工程と、
前記シード層を前記配線に対応する形状にパターニングしてシード層パターンを形成する工程と、
前記シード層パターンの表面に銅配線層を無電解めっき法で形成する工程と、
前記銅配線層マスクとして前記下地バリア層をパターニングする工程と、
前記銅配線層を被覆するように絶縁層を形成する工程と、
を備えたことを特徴する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記下地絶縁層は、窒化シリコン膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記下地バリア層は、Ta,TaN,TiN,TaSiNの少なくとも1つの層からなるバリアメタルであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シード層は、銅を主成分とする銅シード層であることを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シード層は、Mg,Ta,Ti,Mo,Mn,Al,W,Zrの少なくとも一つ以上の金属を含む銅合金シード層であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記シード層と前記下地絶縁層との界面に酸化物層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記酸化物層はMgO,TiO2,Ta2O5から選ばれることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記シード層は、結晶面の結晶方位が(111)に配向していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記銅配線層の膜厚は200〜1000nmであり、比抵抗が2.5μΩcm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記銅配線層を500℃以上の非酸化性雰囲気又は真空中でアニールする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−49573(P2011−49573A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219825(P2010−219825)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【分割の表示】特願2006−27244(P2006−27244)の分割
【原出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】