説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の処理不良を防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】処理部のスピンチャック21には、スピンベース22が回転可能に設けられている。スピンベース22上には、基板Wを保持するための複数の保持部23が設けられている。各保持部23は、保持部材52および支持ピン81を有する。基板Wに処理液(薬液)が供給される際には、基板Wが支持ピン81上に支持された状態でスピンベース22が約300rpmで回転される。基板Wにリンス液が供給される際には、基板Wが保持部材52により保持された状態でスピンベース22が約1000rpmで回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に薬液処理を施す基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、光ディスク用ガラス基板等の基板に種々の薬液処理を行うために、基板処理装置が用いられている。
【0003】
一般に、基板処理装置では、スピンチャックにより基板が保持される(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の基板処理装置のスピンチャックは、円板状のスピンベース、スピンベース上において基板を下方から支持する支持部材、およびスピンベース上において基板の周縁部を挟持する複数の保持部材を有する。
【0004】
この基板処理装置においては、基板に薬液が供給される際には、保持部材により基板が挟持された状態でスピンベースが回転される。それにより、基板を回転させつつ、基板上に薬液を供給することができる。その結果、基板の表面全体に均一に薬液を供給することができる。
【特許文献1】特開2004−235234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成を有するスピンチャックにおいては、回転部材を高速回転させる際に、基板と保持部材との間に大きな接触応力が発生する。そのため、金属等の硬度の高い材料により保持部材が形成されている場合には、基板と保持部材との接触部において基板が損傷するおそれがある。このような基板の損傷を防止するためには、金属等に比べて硬度が低い樹脂材料により保持部材を形成することが好ましい。
【0006】
しかしながら、一般に、樹脂材料の硬度は温度の上昇に従って低下する。そのため、保持部材が樹脂材料により形成されている場合、高温の薬液により基板を処理する際には基板の温度が高温になるため保持部材の硬度が低下する。それにより、基板回転時に基板から与えられる圧力により保持部材が変形する。この場合、基板を安定して保持することができず、基板の処理不良が発生するおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、基板の処理不良を防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る基板処理装置は、薬液を用いて基板を処理する基板処理装置であって、略鉛直方向の軸の周りで回転可能に設けられた回転部材と、回転部材上に設けられ、基板の下面を支持する支持部と、基板の外周端部に当接することにより基板を保持する保持位置と基板の外周端部から離間することにより基板を解放する解放位置との間で移動可能に回転部材に設けられた複数の保持部材と、複数の保持部材を保持位置と解放位置とに設定する設定機構と、回転部材上の基板に薬液を供給する薬液供給部とを備え、設定機構は、回転部材が第1の回転速度で回転しかつ薬液供給部から回転部材上の基板に薬液が供給されている場合には複数の保持部材を解放位置に設定し、回転部材が第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転している場合には複数の保持部材を保持位置に設定するものである。
【0009】
この基板処理装置によれば、回転部材が第1の回転速度で回転しかつ薬液供給部から基板に薬液が供給されている場合には、複数の支持部により基板の下面が支持され、回転部材が第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転している場合には、複数の保持部材が基板の外周端部に当接することにより基板が保持される。
【0010】
このように、この基板処理装置においては、基板に薬液が供給される際には、回転部材の回転速度が第1の回転速度に設定されるとともに、支持部により基板が支持される。この場合、第1の回転速度を低く設定することにより、基板が支持部に対して滑ることを防止することができる。また、複数の保持部材は基板の外周端部から離間している。それにより、複数の保持部材の材料にかかわらず支持部上に基板を安定して保持することが可能となる。したがって、基板の薬液処理時に基板の処理不良が発生することを防止することができる。
【0011】
(2)複数の保持部材は樹脂材料からなってもよい。この場合、基板と複数の保持部材との間に発生する接触応力により基板が損傷することを防止することができる。
【0012】
(3)第1の回転速度が300rpm以下に設定されてもよい。この場合、基板が支持部に対して滑ることを確実に防止することができる。それにより、回転部材上に基板を安定して保持することができるので、基板の処理不良が発生することを確実に防止することができる。
【0013】
(4)回転部材の回転速度が第1の回転速度に設定される際の回転部材の回転加速度が500rpm/s以下に設定されてもよい。
【0014】
この場合、支持部と基板との間の摩擦力により、基板を支持部上に安定して保持することができる。それにより、基板の処理不良が発生することを十分に防止することができる。
【0015】
(5)基板処理装置は、回転部材上の基板にリンス液を供給するリンス液供給部をさらに備え、リンス液供給部は、薬液供給部からの薬液の供給が停止された後であって回転部材の回転速度が第2の回転速度に設定される前に回転部材上の基板へのリンス液の供給を開始してもよい。
【0016】
この場合、基板が保持部材により保持される前に、リンス液により基板の温度を低下させることができる。それにより、回転部材が第2の回転速度で回転している際に基板の熱により複数の保持部材の硬度が低下することを防止することができる。したがって、回転部材が第2の回転速度で回転している際に基板の保持状態が不安定になることを確実に防止することができる。
【0017】
また、基板にリンス液が供給される際には、回転部材の回転速度が第1の速度よりも高い第2の回転速度に設定されるとともに、複数の保持部材により基板が保持される。この場合、複数の保持部材が基板の外周端部に当接することにより基板が回転部材上に確実に保持される。また、基板に薬液が供給されないので、薬液により複数の保持部材の硬度が低下することを防止することができる。それにより、基板を高速で回転しても基板を十分に安定させることができる。したがって、第2の回転速度を十分高く設定することにより、基板上の薬液をリンス液により確実に洗い流すことができる。
【0018】
(6)回転部材の回転速度は、薬液供給部からの薬液の供給が停止されてから所定時間経過した後に第2の回転速度に設定されてもよい。
【0019】
この場合、基板の温度が十分に低下した後に回転部材の回転速度を第2の回転速度に設定することができる。すなわち、基板の温度が十分に低下した後に複数の保持部材により基板が保持される。
【0020】
それにより、回転部材が第2の回転速度で回転している際に基板の熱により複数の保持部材の硬度が低下することを確実に防止することができる。したがって、回転部材が第2の回転速度で回転している際に基板の保持状態が不安定になることを確実に防止することができる。
【0021】
(7)回転部材の回転速度は、薬液供給部からの薬液の供給が停止された後回転部材上の基板の温度が所定の温度に低下した場合に第2の回転速度に設定されてもよい。
【0022】
この場合、基板の温度が十分に低下した後に回転部材の回転速度を第2の回転速度に設定することができる。すなわち、基板の温度が十分に低下した後に複数の保持部材により基板が保持される。
【0023】
それにより、回転部材が第2の回転速度で回転している際に基板の熱により複数の保持部材の硬度が低下することを確実に防止することができる。したがって、回転部材が第2の回転速度で回転している際に基板の保持状態が不安定になることを確実に防止することができる。
【0024】
(8)第2の発明に係る基板処理方法は、薬液を用いて基板を処理する基板処理方法であって、基板の下面を複数の支持部により支持する工程と、支持部により支持された基板を略鉛直方向の軸の周りで第1の回転速度で回転させる工程と、第1の回転速度で回転する基板に薬液を供給する工程と、複数の保持部材を基板の外周端部に当接させることにより基板を保持する工程と、複数の保持部材により保持された基板を第1の回転速度より高い第2の回転速度で回転させる工程とを備えたものである。
【0025】
この基板処理方法によれば、基板が複数の支持部により支持された状態で第1の回転速度で回転される。そして、その第1の回転速度で回転する基板に薬液が供給される。
【0026】
この場合、第1の回転速度を低く設定することにより、基板が支持部に対して滑ることを防止することができる。それにより、複数の保持部材の材料にかかわらず支持部上に基板を安定して保持することが可能となる。したがって、基板の薬液処理時に基板の処理不良が発生することを防止することができる。
【0027】
また、複数の保持部材が基板の外周端部に当接することにより基板が保持された状態で、その基板が第2の回転速度で回転される。この場合、複数の保持部材が基板の外周端部に当接することにより基板が確実に保持される。それにより、基板を高速で回転しても基板を十分に安定させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基板に薬液が供給される際には、基板の回転速度が第1の回転速度に設定されるとともに、支持部により基板が支持される。この場合、第1の回転速度を低く設定することにより、基板が支持部に対して滑ることを防止することができる。それにより、複数の保持部材の材料にかかわらず支持部上に基板を安定して保持することが可能となる。したがって、基板の薬液処理時に基板の処理不良が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係る基板処理方法および基板処理装置について図面を参照しながら説明する。
【0030】
以下の説明において、基板とは、半導体ウェハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP(プラズマディスプレイパネル)用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等をいう。
【0031】
(1)基板処理装置の構成
図1は本発明の実施の形態に係る基板処理装置の平面図である。図1に示すように、基板処理装置100は、処理領域A,Bを有し、処理領域A,B間に搬送領域Cを有する。
【0032】
処理領域Aには、制御部4、流体ボックス部2a,2bおよび処理部5a,5bが配置されている。
【0033】
図1の流体ボックス部2a,2bは、それぞれ処理部5a,5bへの薬液の供給および処理部5a,5bからの廃液等に関する配管、継ぎ手、バルブ、流量計、レギュレータ、ポンプ、温度調節器、処理液貯留タンク等の流体関連機器を収納する。
【0034】
処理部5a,5bでは、基板Wに付着している不要なレジストを除去するための処理が行われる。処理部5a,5bの詳細については後述する。
【0035】
処理領域Bには、流体ボックス部2c,2dおよび処理部5c,5dが配置されている。流体ボックス部2c,2dおよび処理部5c,5dの各々は、上記流体ボックス部2a,2bおよび処理部5a,5bと同様の構成を有し、処理部5c,5dは処理部5a,5bと同様の処理を行う。
【0036】
以下、処理部5a,5b,5c,5dを処理ユニットと総称する。搬送領域Cには、基板搬送ロボットCRが設けられている。
【0037】
処理領域A,Bの一端部側には、基板Wの搬入および搬出を行うインデクサIDが配置されており、インデクサロボットIRはインデクサIDの内部に設けられている。インデクサIDには、基板Wを収納するキャリア1が載置される。本実施の形態においては、キャリア1として、基板Wを密閉した状態で収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)を用いているが、これに限定されるものではなく、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、OC(Open Cassette)等を用いてもよい。
【0038】
インデクサIDのインデクサロボットIRは、矢印Uの方向に移動し、キャリア1から基板Wを取り出して基板搬送ロボットCRに渡し、逆に、一連の処理が施された基板Wを基板搬送ロボットCRから受け取ってキャリア1に戻す。
【0039】
基板搬送ロボットCRは、インデクサロボットIRから渡された基板Wを指定された処理ユニットに搬送し、または、処理ユニットから受け取った基板Wを他の処理ユニットまたはインデクサロボットIRに搬送する。
【0040】
本実施の形態においては、処理部5a〜5dのいずれかにおいて基板Wに処理が行われた後に、基板搬送ロボットCRにより基板Wが処理部5a〜5dから搬出され、インデクサロボットIRを介してキャリア1に搬入される。
【0041】
制御部4は、CPU(中央演算処理装置)を含むコンピュータ等からなり、処理領域A,Bの各処理ユニットの動作、搬送領域Cの基板搬送ロボットCRの動作およびインデクサIDのインデクサロボットIRの動作を制御する。
【0042】
(2)処理部の構成
図2は本発明の一実施の形態に係る基板処理装置100の処理部5a〜5dの詳細を説明するための図である。図2の処理部5a〜5dは、基板Wの表面から、エッチングまたはイオン注入等の処理が行われた後に不要となったレジストを除去するレジスト剥離処理を行う。
【0043】
図2に示すように、処理部5a〜5dは、基板Wを水平に保持するとともに、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸の周りで基板Wを回転させるためのスピンチャック21を備える。スピンチャック21は、円板状のスピンベース22、およびスピンベース22上に設けられて基板Wを保持する複数の保持部23を有する。保持部23の詳細については後述する。
【0044】
スピンチャック21は、チャック回転駆動機構24によって回転される回転軸25の上端に固定されている。回転軸25は中空軸からなる。回転軸25の内部には、液体供給管26が挿通されている。液体供給管26は、バルブ27を介して図示しないリンス液供給系に接続されている。また、液体供給管26は、スピンチャック21に保持された基板Wの裏面に近接する位置まで延びている。液体供給管26の先端には、基板Wの裏面中央に向けてリンス液を吐出する裏面ノズル26aが設けられている。リンス液としては、例えば、純水が用いられる。
【0045】
スピンチャック21の上方には、処理液供給ノズル61およびリンス液供給ノズル71が設けられている。処理液供給ノズル61は、処理液供給管62およびバルブ63を介して図示しない処理液供給系に接続されている。バルブ63を開くことにより、処理液が処理液供給管62を通して処理液供給ノズル61に供給される。それにより、処理液供給ノズル61から基板Wの表面に処理液が供給される。
【0046】
本実施の形態においては、処理液として、高温(120℃以上)に加熱された硫酸(HSO)と過酸化水素(H)との混合液(以下、SPMと略記する。)が用いられる。
【0047】
リンス液供給ノズル71は、リンス液供給管72およびバルブ73を介して図示しないリンス液供給系に接続されている。バルブ73を開くことにより、リンス液がリンス液供給管72を通してリンス液供給ノズル71に供給される。それにより、リンス液供給ノズル71から基板Wの表面にリンス液が供給される。バルブ27,63,73の開閉動作は、制御部4(図1)により制御される。
【0048】
基板Wの処理液による処理時には、スピンチャック21により基板Wが回転されるとともに、処理液供給ノズル61から基板W上に処理液が供給される。それにより、基板Wの表面に処理液(SPM)が供給され、基板Wの表面に付着している不要となったレジストを除去することができる。
【0049】
その後、リンス液供給ノズル71および裏面ノズル26aから基板Wの表面および裏面にリンス液が供給される。それにより、基板W上の処理液が洗い流されるとともに、基板Wの表面に付着する不要となったレジストが除去される。
【0050】
(3)保持部の構成
次に、保持部23の構成について説明する。
【0051】
図3(a)は、保持部23の側面図であり、図3(b)は、スピンチャック21の平面図である。
【0052】
図3(b)に示すように、複数の保持部23(本実施の形態では3つの保持部23)が等角度間隔でスピンベース22の周縁部に配置されている。図3(a)に示すように、各保持部23は、回転板51、支持ピン81および円柱状の保持部材52を有する。支持ピン81および保持部材52は、回転板51上に固定されている。
【0053】
保持部材52の上部の外周面には、V字状の溝部52aが周方向にわたって形成されている。保持部材52は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体)、PFA(ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)等のフッ素樹脂材料またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の他の樹脂材料からなる。また、これらの樹脂材料に炭素(C)を混合させた材料により保持部材52を形成してもよい。なお、処理液として硫酸を用いる場合には、PEEK以外の樹脂材料により保持部材52を形成することが好ましい。
【0054】
回転板51は、円柱状の連結部材53に固定されている。連結部材53は、リンク部54に取り付けられている。リンク部54は、スピンベース22内に設けられている。リンク部54は図示しない駆動機構に接続されている。駆動機構の駆動力は、リンク部54を介して連結部材53に伝達される。それにより、回転板51が連結部材53(図3(a))を回転軸として回転する。
【0055】
なお、本実施の形態においては、連結部材53の回転軸と支持ピン81の中心軸とが同一直線上に配置されている。したがって、図3(b)に示すように、回転板51が回転することにより、保持部材52は、支持ピン81を中心とする円周上を移動する。これにより、保持部材52を基板Wに対して近接または離間するように移動させることができる。
【0056】
詳細には、図3(b)に一点鎖線で示すように、各保持部材52が基板Wから離間している場合には、複数の支持ピン81により基板Wが支持されている。この状態から、回転板51が回転することにより、保持部材52の外周面が基板Wの周縁部に押し当てられる。それにより、基板Wが溝部52aの傾斜に沿って徐々に上方に移動し、支持ピン81から浮き上がった状態となる。回転板51は、基板Wの周縁部が溝部52aの中央部に移動するまで回転する。これにより、基板Wが保持部材52により完全に保持される。
【0057】
なお、本実施の形態においては、処理液供給ノズル61から処理液(薬液)が基板Wに供給されている際には、支持ピン81により基板Wが支持され、リンス液供給ノズル71から基板Wにリンス液が供給されている際には、保持部材52により基板Wが保持される。支持ピン81および保持部材52の使い分けによる効果については後述する。
【0058】
(4)処理部の動作
図4は、処理部5a〜5dの動作の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理部5a〜5dの各構成要素の動作は、図1の制御部4により制御される。また、以下の説明においては、保持部材52により基板Wが保持される場合の保持部材52の位置を保持位置と称し、保持部材52が基板Wから離間している場合の保持部材52の位置を解放位置と称する。
【0059】
図4に示すように、処理部5a〜5dによる基板Wの処理開始時には、保持部材52(図3)が解放位置に設定される(ステップS1)。この状態で、基板搬送ロボットCR(図1)により基板Wが処理部5a〜5dに搬入され、支持ピン81(図3)上に載置される。
【0060】
次に、スピンチャック21(図2)が300rpmで回転される(ステップS2)。それにより、基板Wが回転する。なお、この場合、スピンチャック21の回転速度が低いので、基板Wが支持ピン81上に対して滑ることなく支持ピン81上に安定して保持される。
【0061】
本実施の形態においては、スピンチャック21の回転速度が0rpmから300rpmに上昇される際には、スピンチャック21の回転加速度が500rpm/s以下に設定される。この場合、支持ピン81と基板Wとの間の摩擦力により、基板Wを支持ピン81上に保持することができる。なお、スピンチャック21の回転加速度は、300rpm/s以下に設定されることがより好ましい。この場合、基板Wを支持ピン81上に確実に保持することができる。
【0062】
次に、処理液供給ノズル61(図2)から基板Wの表面に処理液(高温の薬液)が供給される(ステップS3)。これにより、基板Wの表面から不要となったレジストが除去される。
【0063】
所定時間経過後、処理液供給ノズル61からの処理液の供給が停止される(ステップS4)。その後、リンス液供給ノズル71(図2)および裏面ノズル26a(図2)から基板Wの表面および裏面にリンス液が供給される(ステップS5)。これにより、基板W上の処理液がリンス液により洗い流されるとともに、基板Wの温度が低下する。
【0064】
基板Wへのリンス液の供給開始から所定時間(例えば、5秒)経過後、各保持部材52(図3)が保持位置に移動される(ステップS6)。これにより、基板Wが複数の保持部材52により保持される。なお、本実施の形態においては、基板Wが保持部材52により保持される際に基板Wの温度が例えば80℃以下になっているように、上記所定時間が設定される。
【0065】
すなわち、本実施の形態においては、基板Wの温度が十分に低下した状態で保持部材52により基板Wが保持される。それにより、基板Wから与えられる熱により保持部材52の硬度が低下することを防止することができる。その結果、保持部材52により基板Wを確実に保持することができる。なお、ステップS6における所定時間は、制御部4(図1)の図示しない記憶部に予め記憶されていている。
【0066】
次に、スピンチャック21(図2)の回転速度が1000rpmまで上昇される(ステップS7)。これにより、基板W上の処理液が十分に洗い流される。その後、リンス液供給ノズル71(図2)および裏面ノズル26a(図2)から基板Wへのリンス液の供給が停止される(ステップS8)。基板Wへのリンス液の供給が停止された後、スピンチャック21の回転速度は所定時間1000rpmに維持される。これにより、基板Wが乾燥される。
【0067】
その後、スピンチャック21が停止される(ステップS9)。最後に、保持部材52(図3)が解放位置に移動される(ステップS10)。これにより、基板Wは支持ピン81上により支持される。この状態で、基板搬送ロボットCR(図1)により基板Wが処理部5a〜5dから搬出される。
【0068】
(5)本実施の形態の効果
本実施の形態においては、高温の薬液により基板Wを処理する際には、スピンチャック21の回転速度が300rpmに設定される。この場合、スピンチャック21の回転速度が低いので、基板Wが支持ピン81上に対して滑ることなく支持ピン81上に安定して保持される。したがって、高温の薬液を用いる場合にもスピンチャック21上に基板Wを安定して保持することができる。それにより、薬液処理時に基板Wの処理不良が発生することを防止することができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、スピンチャック21の回転速度が0rpmから300rpmに上昇される際に、スピンチャック21の回転加速度が500rpm/s以下に設定されている。この場合、支持ピン81と基板Wの裏面との間の摩擦力により、支持ピン81上に基板Wを十分に安定させることができる。その結果、基板の処理不良を十分に防止することができる。
【0070】
また、本実施の形態においては、基板Wの温度が十分に低下した状態で保持部材52により基板Wが保持される。この場合、基板Wの熱により樹脂材料からなる保持部材52の硬度が低下することを防止することができる。したがって、保持部材52により基板Wを確実に保持することができるので、基板Wを高速で回転させる際にも、基板Wを十分に安定させることができる。それにより、リンス液による基板Wの洗浄処理および基板Wの乾燥処理時に基板Wの処理不良が発生することを確実に防止することができる。
【0071】
(6)変形例
上記実施の形態においては、基板Wの温度が80℃以下の状態でステップS6(図4)の処理が実行されるように処理部5a〜5dが制御されているが、ステップS6の処理が実行される際の基板Wの温度は上記の例に限定されない。例えば、基板Wの温度が60℃以下の状態でステップS6の処理が実行されてもよく、基板Wの温度が90°以下の状態でステップS6の処理が実行されてもよい。すなわち、保持部材52の硬度低下を引き起こさない程度まで基板Wの温度が低下した時点でステップS6の処理が実行されればよい。
【0072】
また、上記実施の形態においては、ステップS5(図4)の処理が開始されてから5秒後にステップS6の処理が開始されているが、ステップS5の処理が開始されてから5秒経過前にステップS6の処理が開始されてもよく、5秒以上経過した後にステップS6の処理が開始されてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態においては、制御部4に予め記憶されている時間に基づいてステップS6(図4)の処理が実行されているが、制御部4に上記時間が記憶されていなくてもよい。例えば、温度センサ等により基板Wの温度をモニタリングし、基板Wの温度が十分に低下した場合にステップS6の処理を実行してもよい。
【0074】
また、上記実施の形態においては、1つのスピンチャック21に3つの保持部23が設けられているが、4つ以上の保持部23が設けられてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態においては、保持部材52と支持ピン81とが1つの保持部23に設けられているが、保持部材52と支持ピン81とが別個の保持部に設けられてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態においては、処理液としてSPMが用いられているが、処理液はSPMに限定されない。例えば、BHF(バッファードフッ酸)、DHF(希フッ酸)、フッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸もしくはアンモニア等の水溶液、またはそれらの混合溶液を処理液として用いてもよい。
【0077】
また、処理部5a〜5dにおいて行われる基板Wの処理はレジスト剥離処理に限定されない。例えば、処理部5a〜5dにおいて、基板Wに付着したパーティクル等の汚染物を除去する処理またはエッチング処理等が処理液を用いて行われてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態においては、リンス液として純水が用いられているが、リンス液は純水に限定されない。例えば、IPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤または純水、炭酸水、水素水および電解イオン水のいずれかをリンス液として用いてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態においては、処理液供給ノズル61とリンス液供給ノズル71とが別個に設けられているが、処理液供給ノズル61とリンス液供給ノズル71とが一体的に設けられてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態においては、保持部材52が樹脂材料から形成されているが、上記樹脂材料と同等の硬度を有する他の材料から保持部材52が形成されてもよい。
【0081】
また、上記実施の形態においては、ステップS2(図7)においてスピンチャック21の回転速度が300rpmに設定されているが、ステップS2におけるスピンチャック21の回転速度は上記の例に限定されない。例えば、ステップS2においてスピンチャック21の回転速度が300rpm未満に設定されてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態においては、ステップS7(図4)においてスピンチャック21の回転速度が1000rpmに設定されているが、ステップS7におけるスピンチャック21の回転速度は上記の例に限定されない。例えば、ステップS7においてスピンチャック21の回転速度が301rpm以上999rpm以下に設定されてもよく、1001rpm以上に設定されてもよい。
【0083】
なお、上記実施の形態に係る処理部5a〜5dは、処理液供給ノズル61から基板Wに供給される処理液が高温でない場合にも有効に用いられる。例えば、基板Wに供給される際には常温であるが、基板W上の膜成分との反応により温度上昇するような薬液が処理液として用いられる場合には、上記実施の形態に係る処理部5a〜5dを有効に用いることができる。
【0084】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0085】
上記実施の形態では、スピンベース22が回転部材の例であり、支持ピン81が支持部の例であり、保持部材52が保持部材の例であり、回転板51、連結部材53およびリンク部54が設定機構の例であり、処理液供給ノズル61が薬液供給部の例であり、リンス液供給ノズル71がリンス液供給部の例である。
【0086】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、光ディスク用ガラス基板等の基板製造等に用いられる基板処理装置および基板処理方法に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の平面図である。
【図2】処理部の詳細を説明するための図である。
【図3】保持部の詳細を説明するための図である。
【図4】処理部の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
5a〜5d 処理部
21 スピンチャック
22 スピンベース
23 保持部
51 回転板
52 保持部材
53 連結部材
54 リンク部
61 処理液供給ノズル
71 リンス液供給ノズル
81 支持ピン
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を用いて基板を処理する基板処理装置であって、
略鉛直方向の軸の周りで回転可能に設けられた回転部材と、
前記回転部材上に設けられ、基板の下面を支持する支持部と、
基板の外周端部に当接することにより基板を保持する保持位置と基板の外周端部から離間することにより基板を解放する解放位置との間で移動可能に前記回転部材に設けられた複数の保持部材と、
前記複数の保持部材を前記保持位置と前記解放位置とに設定する設定機構と、
前記回転部材上の基板に薬液を供給する薬液供給部とを備え、
前記設定機構は、前記回転部材が第1の回転速度で回転しかつ前記薬液供給部から前記回転部材上の基板に薬液が供給されている場合には前記複数の保持部材を前記解放位置に設定し、前記回転部材が前記第1の回転速度よりも高い第2の回転速度で回転している場合には前記複数の保持部材を前記保持位置に設定することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記複数の保持部材は樹脂材料からなることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の回転速度が300rpm以下に設定されることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記回転部材の回転速度が前記第1の回転速度に設定される際の前記回転部材の回転加速度が500rpm/s以下に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記回転部材上の基板にリンス液を供給するリンス液供給部をさらに備え、
前記リンス液供給部は、前記薬液供給部からの薬液の供給が停止された後であって前記回転部材の回転速度が前記第2の回転速度に設定される前に前記回転部材上の基板へのリンス液の供給を開始することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記回転部材の回転速度は、前記薬液供給部からの薬液の供給が停止されてから所定時間経過した後に前記第2の回転速度に設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記回転部材の回転速度は、前記薬液供給部からの薬液の供給が停止された後前記回転部材上の基板の温度が所定の温度に低下した場合に前記第2の回転速度に設定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
薬液を用いて基板を処理する基板処理方法であって、
基板の下面を複数の支持部により支持する工程と、
前記支持部により支持された基板を略鉛直方向の軸の周りで第1の回転速度で回転させる工程と、
前記第1の回転速度で回転する基板に薬液を供給する工程と、
複数の保持部材を基板の外周端部に当接させることにより基板を保持する工程と、
前記複数の保持部材により保持された基板を前記第1の回転速度より高い第2の回転速度で回転させる工程とを備えたことを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−239026(P2009−239026A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83360(P2008−83360)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】