説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】基板を処理する処理容器内におけるガスの流れをコントロールすることにより、処理容器内の圧力を適切に制御し、所望の圧力状態にすることが可能な基板処理技術を提供する。
【解決手段】処理容器2内に処理ガスを導入するとともに排気して処理容器2内の載置台4上に置かれた基板Gを処理する基板処理装置1であって、処理容器2内において、載置台4の周囲を複数の領域15に仕切る仕切り部材6と、処理容器2の底面2aにおいて、仕切り部材6によって仕切られた複数の領域15にそれぞれ設けられた、処理ガスを排気する複数の排気口5と、複数の排気口5の各々に接続されて個別に作動可能な排気機構55と、各領域15の圧力を検出するセンサ47と、センサ47が検出した圧力に基づいて排気機構55を個別に制御する制御装置45を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理装置や液晶表示装置等の製造プロセスにおけるエッチング及び成膜等の基板処理を行う基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体処理装置や液晶表示装置等の製造プロセスにおけるエッチング及び成膜等の基板処理は、例えばゴミの発生防止や基板処理に必要な圧力設定等を目的として、真空ポンプ等の減圧手段を用いて処理容器内を減圧した状態で基板の処理が行われる。
【0003】
本出願人が開示した特許文献1には、そのような基板処理技術の一例として、処理容器内で基板を支持するサセプタと処理容器内壁との間にバッフル板(整流板、プロテクトリング、排気リングとも呼ばれる)を設けることにより、処理容器内の上部空間及び下部空間の連通口の形状、寸法等を調整して排気流の流れを整え、処理容器内の気体を均一に排気する基板処理技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3061346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体処理装置や液晶表示装置等の製造プロセスを行う場合、図1に示すように、処理容器内は、TMP、ブースター、バキュームポンプなどで吸引され、バッフル板の上方に形成された基板周囲の雰囲気は、0.1Pa〜100Pa程度の減圧状態に保たれる。そして、例えばエッチング等の基板処理は、1Pa未満程度の分子流領域で処理プロセスが行われる。一方、成膜等の基板処理は、1Pa以上程度の中間領域から粘性流領域で処理プロセスが行われる。
【0006】
ここで、1Pa未満となるエッチング処理プロセスなどでは、バッフル板上方のプロセス空間は分子流領域となり、気体分子同士の衝突がほとんどなく、各気体分子の平均自由行程が中間領域や粘性流領域に比べて大きくなる。このため、エッチング等の処理プロセスでは、処理容器の下部空間に設けた単一の排気口から処理ガスを排気したとしても、排気口の設置位置は、バッフル板上方の基板周囲の雰囲気に大きな影響は与えないと考えられる。
【0007】
これに対して、1Pa以上となる成膜処理プロセスなどでは、バッフル板上方のプロセス空間は中間領域から粘性流領域となり、気体分子同士の衝突が発生しやすくなって、各気体分子の流れが互いに影響し合うようになる。このため、成膜等の処理プロセスでは、処理容器の下部空間に設けた単一の排気口から処理ガスを排気した場合、排気口の設置位置により、バッフル板上方の基板周囲の雰囲気に影響を与えてしまう。上記特許文献1の基板処理技術のように、処理容器の下部空間に設けた単一の排気口から処理ガスを排気した場合、処理容器内のプロセス空間の圧力を均一に調整することが困難となる。また、バッフル板に形成された連通口の形状や配置によって、プロセス空間の圧力分布が一義的に決まってしまい、プロセス空間の圧力分布をリアルタイムで任意に制御することが困難となる。つまり、従来技術では、排気口の設置位置やバッフル板に形成された連通口の形状や配置によって一旦プロセス空間の圧力分布が決まってしまうと、それをプロセス中に変化させてコントロールすることができなかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基板を処理する処理容器内におけるガスの流れをコントロールすることにより、処理容器内の圧力を適切に制御し、所望の圧力状態にすることが可能な基板処理技術を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、処理容器内に処理ガスを導入するとともに排気して前記処理容器内の載置台上に置かれた基板を処理する基板処理装置であって、前記処理容器内において、前記載置台の周囲を複数の領域に仕切る仕切り部材と、前記処理容器の底面において、前記仕切り部材によって仕切られた複数の領域にそれぞれ設けられた、前記処理ガスを排気する複数の排気口と、前記複数の排気口の各々に接続されて個別に作動可能な排気機構と、前記仕切り部材によって仕切られた複数の各領域の圧力を検出するセンサと、前記センサが検出した圧力に基づいて前記排気機構を個別に制御する制御装置と、を有する、基板処理装置が提供される。
【0010】
上記基板処理装置において、前記排気機構は、回転式ポンプであってもよい。この場合、回転式ポンプに代えて、もしくは、回転式ポンプに加えて、ドライポンプ(ブースターポンプ)、ドラッグポンプなどを利用しても良い。
【0011】
また、前記仕切り部材の上端が、前記載置台の高さ以上であっても良い。この場合、前記仕切り部材の上端が、前記載置台の高さよりも0〜250mm、好ましくは100〜150mm高くなっていても良い。この高さは、シャワーヘッドから導入された処理ガスが基板上に均一に供給され、基板上に均一の処理が行われる値に設定される。また、前記処理容器内において、前記載置台の上方に処理ガスを導入するシャワーヘッドが設けられ、前記仕切り部材の上端が、前記シャワーヘッド下面よりも低くても良い。
【0012】
また、本発明によれば、処理容器内に処理ガスを導入するとともに排気して前記処理容器内の載置台上に置かれた基板を処理する基板処理方法であって、前記処理容器内において、前記載置台の周囲を複数の領域に仕切る仕切り部材と、前記処理容器の底面において、前記仕切り部材によって仕切られた複数の領域にそれぞれ設けられた、前記処理ガスを排気する複数の排気口とが設けられ、前記仕切り部材で仕切られた各領域の圧力を検出し、当該検出した圧力に基づいて、前記複数の排気口からの排気を個別に制御する、基板処理方法が提供される。
【0013】
上記基板処理方法において、前記複数の排気口からの排気の個別の制御は、前記複数の排気口の各々に接続された回転式ポンプの回転数を個別に制御することにより行われても良い。あるいは、回転式ポンプに代えて、もしくは、回転式ポンプに加えて、ドライポンプ(ブースターポンプ)、ドラッグポンプなどを個別に制御して、前記複数の排気口からの排気を個別に制御しても良い。
【0014】
また、前記複数の排気口からの排気が、いずれも粘性流と分子流の中間領域となるように制御されても良い。その場合、前記仕切り部材によって仕切られた複数の領域の圧力が、いずれも1〜30Paに制御されても良い。このように各領域の圧力を中間領域の範囲にして制御することにより、基板周囲のプロセス空間の圧力を均一に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特に、基板周囲の圧力を中間領域の範囲にして、複数の排気口の各々に接続された排気機構を個別に制御することにより、基板周囲に形成された各領域の圧力を均一にしたり、意図的に不均一にしたりする等、基板周囲の雰囲気を所望の圧力状態にすることができる。また、従来公知の基板処理技術で用いられるバッフル板が不要になり、排気機構の排気能力を無駄なく利用してエネルギー効率を向上させることができる。特に、排気の制御を行う際に排気機構自体を直接調整した場合には、そのエネルギー効率を一層向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】分子流領域、中間領域、粘性流領域を説明するための、処理容器内の圧力P(Pa)と排気速度S(l/sec)の関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置の概略的な構成を示した縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置の処理容器の底面を示す平面図である。
【図4】実施例に用いたプラズマ処理装置の処理容器の底面を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、基板の一例としてのLCD(Liquid Crystal Display;液晶表示装置)用のガラス基板G上に対して、CVD(Chemical Vapor Deposition)処理を行うプラズマ処理装置1に基づいて説明する。
【0018】
このプラズマ処理装置1は、上部が開口した有底直方体形状の処理容器2と、この処理容器2の上方を塞ぐ蓋体3を備えている。これら処理容器2と蓋体3は例えばアルミニウムからなり、いずれも接地された状態になっている。
【0019】
処理容器2の内部には、基板として例えばガラス基板(以下「基板」という)Gを載置するための載置台としてのサセプタ4が設けられている。このサセプタ4は例えば窒化アルミニウムからなり、その内部には、基板Gを静電吸着すると共に処理容器2の内部に所定のバイアス電圧を印加させるための給電部(図示せず)、基板Gを所定の温度に加熱するヒータ(図示せず)等が設けられている。この給電部には、処理容器2の外部に設けられたバイアス印加用の高周波電源(図示せず)がコンデンサなどを備えた整合器(図示せず)を介して接続されると共に、静電吸着用の高圧直流電源(図示せず)がコイル(図示せず)を介して接続されている。また、ヒータには、同様に処理容器2の外部に設けられた交流電源が接続(図示せず)されている。
【0020】
処理容器2の底面2aには、処理容器2内の雰囲気を排気するための排気口5が複数設けられている。図1、2に示すプラズマ処理装置1では、断面が円形状の排気口5が、処理容器2の底面2aにおいてサセプタ4の周りに計20個、配置されている。処理容器2の底面2aは、長方形状をなしており、処理容器2の底面2aの長辺方向Yに沿って7個の排気口5が配置され、短辺方向Xに沿って5個の排気口5が配置されている。
【0021】
また、処理容器2内において、サセプタ4の周囲には、サセプタ4上に置かれた基板Gの周囲を仕切る仕切り部材6が、各排気口5毎に設けられている。この仕切り部材6は、サセプタ4の周りを囲むように、処理容器2の底面2aに垂直に配置されている。仕切り部材6の上端は、サセプタ4の上面よりも上方に突出しており、サセプタ4上に置かれた基板Gの周囲は、仕切り部材6によって複数の領域15に仕切られた状態になっている。この場合、サセプタ4の上面から仕切り部材6の上端までの高さhは、例えば0〜250mm、好ましくは100〜150mmである。仕切り部材6の上端が、サセプタ4の上面の高さよりも例えば100〜150mm高いことが好ましい。但し、仕切り部材6の上端は、後述するシャワーヘッド29の下面よりは低くなっている。このため、仕切り部材6の上端は、シャワーヘッド29の下面には接触していない。また、前述の排気口5は、処理容器2の底面2aにおいて、仕切り部材6で仕切られた各領域15に開口している。この高さhは、シャワーヘッド29とサセプタ4の上面の関係からなり、シャワーヘッド29から導入された処理ガスが基板G上に均一に供給され、基板G上に均一の成膜処理が行われるための条件に依存している。
【0022】
蓋体3は、例えばアルミニウムからなる蓋本体20の下面に誘電体22を取り付けた構成を有する。図1に示すように処理容器2の上方を蓋体3によって塞いだ状態では、蓋本体20の下面周辺部と処理容器2の上面との間に配置されたOリング23によって、処理容器2内の気密性が保持されている。誘電体22は、例えば石英ガラス、AlN、Al、サファイア、SiN、セラミックス等から構成されている。
【0023】
蓋本体20の下面には、複数本の導波管25が形成されている。これらの導波管25は、断面形状が方形状のいわゆる方形導波管に構成されており、例えばTE10モード等、任意のモードでマイクロ波を供給できるように構成されている。各導波管25の内部は、例えばAl、石英、フッ素樹脂などによって充填されている。各導波管25の端部は、導波路26を介して処理容器2の外部に設けられたマイクロ波供給装置27に接続されている。これにより、マイクロ波供給装置27で発生させた例えば2.45GHzのマイクロ波が、この導波路26を経て各導波管25にそれぞれ導入される。なお、処理容器2の外部に冷却水供給源を設け、この冷却水供給源から蓋本体20の内部の導波管に冷却水が循環供給されるようにしてもよい。
【0024】
次に、処理容器2内に処理ガスを供給する供給系統について説明する。図1に示すように、処理容器2の内部において、蓋体3の下方には、所定のガスを供給するシャワーヘッド29が設けられている。このシャワーヘッド29は、ガス流路31を介して処理容器2の外部のガス供給源30に接続されており、ガス供給源30から所定のガスを処理容器2内に供給するように構成されている。本実施の形態においては、ガス供給源30として、例えばアルゴンガス供給源、成膜ガスとしてのシランガス供給源及び水素ガス供給源等が用いられている。これらの供給源は、各々、バルブ(図示せず)、マスフローコントローラ(図示せず)、バルブ(図示せず)を介して、ガス流路31に接続されている。これにより、これらのガスのうち、任意のガスを処理容器2の内部に所望の流量で供給することができる。
【0025】
シャワーヘッド29は、上向き及び下向きの2種類のガス噴射口35を備えている。これにより、供給するガスの種類によって噴射の向きを上向き又は下向きを個別に設定可能である。また、上向き及び下向きの噴射の両方を同時に実行することも可能である。本実施の形態では、アルゴンガスを上向きに噴射し、シランガスを下向きに噴射するように設定されている。
【0026】
次に、処理容器2内から処理ガスを排気する排気系統について説明する。図1に示すように、上述した20個の排気口5は、各々、排気機構55を介して排気管51に接続されている。各排気機構55は、各々、個別に作動可能な回転式ポンプ40を備えている。本実施の形態では、各排気機構55の回転式ポンプ40が処理容器2に直接接続された構成を有し、回転式ポンプ40の吸引口が排気口5になっている。なお、各回転式ポンプ40を処理容器2に直接接続せず、排気口5と回転式ポンプ40との間に管等の流路を設けるようにしてもよい。また、排気機構55の排気側の排気管51には、各々、個別に作動可能な弁50が設けられている。20個の排気口5から延設された20本の排気管51は、各弁50の下流(排気側)で全て合流し、1本になって外部に連通した構成になっている。
【0027】
回転式ポンプ40は、その回転数を調整することにより、排気能力を制御することができるようになっている。回転式ポンプ40としては、基板の処理の種類、条件等に適した圧力範囲内でその能力を100%近く発揮するドラッグポンプを用いるのが好ましい。例えば、本実施の形態では、基板Gを1Pa〜10Paの圧力範囲内でプラズマ処理するため、この範囲で排気能力を100%近く発揮することが可能な、例えばadixen社製のドラッグポンプ(製品名:MDP5011)が用いられる。なお、回転式ポンプ40に代えて、もしくは、回転式ポンプ40に加えて、ドライポンプ(ブースターポンプ)、ドラッグポンプなどを利用しても良い。
【0028】
20個の排気機構55が各々備える回転式ポンプ40は、いずれも制御装置45に接続されている。また、仕切り部材6で仕切られた各領域15には、各領域15において処理容器2内の圧力を検出するセンサ47が設置されており、このセンサ47によって検出される各領域15内の圧力が、制御装置45に入力されている。制御装置45は、各センサ47が検出した各領域15内の圧力に基づいて、20個の回転式ポンプ40を個別に制御を行うように構成されている。制御装置45による回転式ポンプ40の制御は、各回転式ポンプ40の回転数を個別に制御することにより行われる。これにより、20個の各排気口5を介しての処理容器2内からの処理ガスの排気を個別に調整し、サセプタ4上に置かれた基板Gの周囲に形成された各領域15の圧力を個別に所望の圧力状態に調整できるようになっている。なお、回転式ポンプ40に代えて、もしくは、回転式ポンプ40に加えて、ドライポンプ(ブースターポンプ)、ドラッグポンプなどを個別に制御して、各領域15からの排気を個別に制御しても良い。
【0029】
以上のように構成された本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置1において、例えばアモルファスシリコン成膜する場合について説明する。処理する際には、処理容器2内のサセプタ4上に基板Gを載置し、ガス供給源30からガス流路31、シャワーヘッド29のガス噴射口35を経て所定のガス、例えばアルゴンガス/シランガス/水素の混合ガスを処理容器2内に供給する。この場合、蓋本体20の下面全体に分布して配置されているガス噴射口35から所定のガスを噴き出すことにより、サセプタ4上に載置された基板Gの表面全体に所定のガスを満遍なく供給することができる。
【0030】
上述したように処理容器2内に処理ガスを導入するとともに、図1及び図2に示す20個の排気口5から処理容器2内の処理ガスを、予め取得した経験的データ又はシミュレーション解析等に基づいて各排気口5の各排気機構55を個別に制御し、各排気口5から個別の排気を行うことにより、基板Gの周囲に形成された各領域15を所定の圧力に設定する。この場合、仕切り部材6で仕切られた各領域15に設けられたセンサ47で検出された圧力に基いて、各回転式ポンプ40の回転数がそれぞれ個別に制御され、各排気口5からの排気速度がコントロールされる。例えば、基板Gに成膜されるアモルファスシリコンの膜厚と各領域15の圧力が比例関係にある場合には、膜厚が局所的に薄い部分にもっとも近い排気口5に接続された回転式ポンプ40の回転数を下げ、排気を絞って圧力を高くし、ガスの滞留時間を長くして膜厚を稼げばよい。同様に、反比例する関係にある場合には、その逆に、膜厚が局所的に薄い部分にもっとも近い排気口5に接続された回転式ポンプ40の回転数を上げ、排気を大きくして圧力を低く、ガスの滞留時間を短く膜厚を稼げばよい。なお、各領域15の圧力は常に一定に制御する必要は無く、成膜の初期やそれ以降で経時的に変化させても良い。
【0031】
また、処理容器2の底面2aの四隅に排気口5を配置すると、マスクを置いたときに出来る基板Gのコーナー部の膜厚低下を抑制するのに有効である。また、図2に示すように、基板Gがサセプタ4と同様に長方形になっている場合、制御装置45によって、サセプタ4の短辺方向Xに沿って配置された排気口5に接続された排気機構55の回転式ポンプ40の回転数と、サセプタ4の長辺方向Yに沿って配置された排気口5に接続された排気機構55の回転式ポンプ40の回転数を変化させることにより、処理容器2内の圧力を従来よりも均一にすることが可能になる。
【0032】
そして、このように所定のガスを処理容器2内に供給し且つ処理容器2内から排気する一方で、ヒータ(図示せず)によって基板Gを所定の温度に加熱する。また、マイクロ波供給装置27で発生させた例えば2.45GHzのマイクロ波が、導波路26を経て各導波管25から、誘電体22に伝播される。こうして、誘電体22に伝播されたマイクロ波のエネルギーによって、処理容器2内に電磁界が形成され、処理容器2内の前記処理ガスをプラズマ化することにより、基板G上の表面に対して、アモルファスシリコン成膜が行われる。この場合、例えば0.7eV〜2.0eVの低電子温度、1011〜1013cm−3の高密度プラズマによって、基板Gへのダメージの少ない均一な成膜が行える。アモルファスシリコン成膜の条件は、例えば処理容器2内の圧力については、1〜100Pa、好ましくは1〜30Pa、基板Gの温度については、200〜300℃、好ましくは250℃〜300℃、マイクロ波供給装置のパワーの出力については、500〜5000W、好ましくは1500〜2500Wが適当である。
【0033】
以上の実施の形態によれば、複数の排気口5の各々に接続された回転式ポンプ40を個別に制御して、処理容器2の底面2aにおいて、仕切り部材6で仕切られた各領域15の圧力を制御することによって、サセプタ4上に置かれた基板Gの周囲の圧力を均一にしたり、意図的に不均一にしたりする等、処理容器2内を所望の圧力状態にすることができる。特に、処理する基板Gの形状に応じて処理容器2内を適切に排気して均一な圧力状態にすることが可能になる。例えば、図2に示すように、基板Gの形状がサセプタ4と同様に短辺及び長辺を備えた長方体形状である場合には、制御装置45によって、サセプタ4の短辺側に設けた排気口5の排気機構55の排気動作と、サセプタ4の長辺側に設けた排気口5の排気機構55の排気動作とを別個に作動させることによって、従来よりも均一な圧力状態に設定することができる。あるいは、処理容器2内の圧力状態を意図的に非均一な状態にすることも可能である。また、各領域15の圧力をセンサ47で検出して、回転式ポンプ40の出力を制御することにより、プロセス空間の圧力分布をリアルタイムで任意に制御することが可能となる。
【0034】
特に、仕切り部材6で仕切られた各領域15の圧力を分子流領域と粘性流領域の中間領域の範囲に制御することにより、プロセス空間の圧力を均一に調整することが可能となる。このような制御は、各領域15の圧力を1〜30Paとして、基板Gに成膜を行うプロセスにおいて特に有益である。
【0035】
さらに、処理容器2内に複数の排気口5及び排気機構55を設けて個別に制御するようにしたことによって、従来公知の基板処理技術において処理容器2内からの処理ガスの排気を均一に行うために用いられていたバッフル板が不要になる。このため、バッフル板に起因する排気流の流路の制限がなくなり、排気機構55の排気能力を無駄なく活用することができる。特に、各排気機構55が備えるポンプ40を回転式にした場合には、さらに、ポンプ40の制御に起因する排気流の流路の制限をなくして排気能力を最大限活用することができ、基板処理装置のエネルギー効率を向上させることができる。
【0036】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0037】
上述した実施形態においては、処理される基板がLCD用のガラス基板Gである場合について説明したが、処理される基板はガラス基板G以外に半導体処理装置の基板等、その他の基板であってもよい。
【0038】
上述した実施形態においては、基板Gを処理する基板処理の一例としてプラズマを用いたCVD処理を行う場合について説明したが、エッチング処理、アニール処理等、その他の基板処理が行われてもよい。
【0039】
上述した実施形態においては、20個の排気口5がサセプタ4の上面の縁辺に沿って配置されている場合について説明したが、2以上の任意の数の排気口5が、処理容器2内に任意の配置構成で設けられていてもよい。
【0040】
上述した実施形態においては、排気機構55が回転式ポンプ40を備えている場合について説明したが、排気機構55が備えているポンプは、回転式ポンプ以外のポンプであってもよい。例えば、回転式ポンプに代えて、もしくは、回転式ポンプに加えて、ドライポンプ(ブースターポンプ)、ドラッグポンプなどを利用しても良い。
【0041】
上述した実施形態においては、20個の排気機構55の下流(排気側)の排気管51に、各々、弁50を設け、各弁50の下流で全ての排気管51が1本に合流し、外部に排気できるように構成されている場合について説明したが、排気管51が排気機構55の下流で合流せず、各々が別個に外部と連通する等、排気機構55、弁50及び排気管51の構成は、その他の構成であってもよい。
【実施例】
【0042】
図4に示すように、長方形をなす処理容器2の底面2aの長辺方向Yに沿って4個の排気口5が配置され、短辺方向Xに沿って3個の排気口5が配置されたプラズマ処理装置で行われる成膜処理について、シミュレーションを行った。なお、排気口5の口径Bを150mm、仕切り部材6で仕切られた各領域15のX方向の距離Aを150mm、Y方向の距離Cを300mmとする。また、説明のため、図3中において左上に位置する領域15の位置をa位置とし、a位置の領域15から時計回転方向に沿って、b位置〜j位置と定義する。
【0043】
例えば、基板Gの中心部の膜が厚く、短辺側の膜が薄い時、a位置、b位置、c位置、f位置、g位置、h位置にある各排気口5に接続された回転式ポンプ40の回転数を、d位置、e位置、i位置、j位置にある各排気口5に接続された回転式ポンプ40の回転数よりも相対的に上げ、短辺側の排気速度を上げることで均一性が改善出来る。各回転式ポンプ40の回転数制御は、各領域15に設けられたセンサ47の検出値を元に制御すれば良く、例えば、ガス流量2slm、チャンバー圧力10Paでコントロールした結果、基板Gの中心部の膜が厚く、短辺側の膜が薄い分布になっている場合は、例えば、位置b、位置gの各領域15内の圧力を8Pa、位置a、位置c、位置f、位置hの各領域15内の圧力をを7Pa、位置d、位置e、位置i、位置jの各領域15内の圧力を10Paとなるようにコントロールすれば均一性の向上が期待できる。
【0044】
四隅のマスクによる膜厚減少部分を改善するには、a位置、c位置、f位置、h位置にある各排気口5に接続された回転式ポンプ40の回転数を他よりも相対的に上げ、コーナー部の排気速度を上げることで均一性が改善出来る。
【0045】
なお、各排気口5の口径Bと各領域15のX方向の距離AおよびY方向の距離Cとの関係は、排気速度の劣化がないように、A=Bまたは排気口5の開口面積と各領域15の面積が同等πB/4=ACにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば基板を処理する基板処理設備に有用であり、特に、基板をプラズマ処理するプラズ処理設備に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 プラズマ処理装置
2 処理容器
2a 底面
3 蓋体
4 サセプタ
5 排気口
6 仕切り部材
15 領域
20 蓋本体
22 誘電体
23 Oリング
25 導波管
26 導波路
27 マイクロ波供給装置
29 シャワーヘッド
30 ガス供給源
31 ガス流路
35 ガス噴射口
40 回転式ポンプ
45 制御装置
47 センサ
50 弁
51 排気管
55 排気機構
G (ガラス)基板
X サセプタの短辺方向
Y サセプタの長辺方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に処理ガスを導入するとともに排気しながら前記処理容器内の載置台上に置かれた基板を処理する基板処理装置であって、
前記処理容器内において、前記載置台の周囲を複数の領域に仕切る仕切り部材と、
前記処理容器の底面において、前記仕切り部材によって仕切られた複数の領域にそれぞれ設けられた、前記処理ガスを排気する複数の排気口と、
前記複数の排気口の各々に接続されて個別に作動可能な排気機構と、
前記仕切り部材によって仕切られた複数の各領域の圧力を検出するセンサと、
前記センサが検出した圧力に基づいて前記排気機構を個別に制御する制御装置と、を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記排気機構は、回転式ポンプである、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記仕切り部材の上端が、前記載置台の高さ以上である、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記仕切り部材の上端が、前記載置台の高さよりも100〜150mm高い、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理容器内において、前記載置台の上方に処理ガスを導入するシャワーヘッドが設けられ、
前記仕切り部材の上端が、前記シャワーヘッド下面よりも低い、請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
処理容器内に処理ガスを導入するとともに排気して前記処理容器内の載置台上に置かれた基板を処理する基板処理方法であって、
前記処理容器内において、前記載置台の周囲を複数の領域に仕切る仕切り部材と、前記処理容器の底面において、前記仕切り部材によって仕切られた複数の領域にそれぞれ設けられた、前記処理ガスを排気する複数の排気口とが設けられ、
前記仕切り部材で仕切られた各領域の圧力を検出し、当該検出した圧力に基づいて、前記複数の排気口からの排気を個別に制御する、基板処理方法。
【請求項7】
前記複数の排気口からの排気の個別の制御は、前記複数の排気口の各々に接続された回転式ポンプの回転数を個別に制御することにより行われる、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記複数の排気口からの排気が、いずれも粘性流と分子流の中間領域となるように制御される、請求項6または7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記仕切り部材によって仕切られた複数の領域の圧力が、いずれも1〜30Paに制御される、請求項6〜8のいずれかに記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−272551(P2010−272551A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120482(P2009−120482)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】