説明

基板表面から異物を除去する方法

【課題】シリコン製若しくはガラス製の基板表面、または基板表面に形成された無機系被膜表面に強固に付着している無機系の異物を表面粗さの増加を抑えながら容易に除去することができ、しかも一度除去された異物が基板表面に再付着することが防止された異物除去方法の提供。
【解決手段】シリコン製若しくはガラス製の基板表面または該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法であって、前記基板材料、前記無機系被膜材料および前記無機系異物のうち少なくとも1つに対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面に照射量10J/cm2以上で照射した後、負の表面電位を有する前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝すことを特徴とする基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ、フォトマスク基板またはフォトマスクブランクスとして使用されるシリコン製若しくはガラス製の基板表面、ナノインプリントに使用されるテンプレート用ガラス基板表面、各種表示素子の基板として使用されるガラス製の基板表面、または該基板表面に形成されている無機系被膜表面に強固に付着している無機系の異物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集積回路製造プロセスにおいては、露光装置を用いてマスク上の回路パターンをウェハ上に縮小投影することにより、ウェハ上に集積回路を形成する光リソグラフィプロセスが広く利用されている。集積回路の高集積化および高機能化に伴い、集積回路の微細化が進み、露光装置には深い焦点深度で微細な寸法の回路パターンをウェハ面上に結像させることが求められ、露光光源の短波長化が進められている。露光光源は、従来のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)やKrFエキシマレーザ(波長248nm)から進んでArFエキシマレーザ(波長193nm)が用いられようとしている。また、さらに回路パターンの寸法が50nm以下となる将来の集積回路に対応するため、露光光源としてF2レーザ(波長157nm)、EUV光(極端紫外光:波長約13nm)を用いることが有力視されている。
【0003】
このような集積回路の寸法微細化に伴い、マスクやウェハ上に許容される異物のサイズは小さくなってきている。例えばITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)2005年版によれば、ハーフピッチ32nmのDRAM(ランダムアクセスメモリー)を製造するために使用されるウェハ上、またはウェハ上に塗布されたレジスト中に許容される異物に対する要求は、「大きさ20nmの異物密度が0.01個/cm2以下」であり、またマスクの場合、大きさ26nm以上の異物がマスク上に存在しないことが要求される。また微細な凹凸パターンを形成する方法として、リソグラフィ法以外にナノインプリント法が提案され、盛んに検討されているが、同ナノインプリント法は等倍マスク(テンプレート)を使用するため、リソグラフィ用マスク基板上の異物に対する要求に比べて、さらに小さいサイズの異物を同様の密度まで低減することが要求される。これら異物の要求サイズは、ハーフピッチ80nmのDRAMのそれと比べて約30nm小さく、ウェハやマスクとして使用されるシリコン製若しくはガラス製の基板表面からこのような微小異物を効率的に除去する方法が求められている。
またマスクの場合、露光波長の短波長化に伴い、表面での光散乱を抑制するなどの目的から、その表面粗さは極力小さい程好ましく、例えばEUVリソグラフィに用いられる反射型マスク用基板の場合、表面粗さ(RMS)1.5Å以下が求められている。このため、マスクとして使用される基板の場合、表面粗さの増加を極力抑制しつつ、前記微小異物を効率的に除去することが求められている。
【0004】
ところで、シリコン製若しくはガラス製の基板から異物を除去する方法としては、基板表面を酸やアルカリなど様々な化学薬液に曝し、基板表面をごく微量にウェットエッチングして異物を除去する方法、いわゆるリフトオフ法が一般的である。たとえば、特許文献1にて提案されているように、石英ガラス基板表面をフッ化水素酸に曝し、同基板表面をウェットエッチングすることにより、基板表面に付着した異物(たとえば研磨に使用するコロイダルシリカガラスやアルミナ粉末などの無機系異物など)と基板表面の間隔を付着力(主にファンデルワールス力)が働かなくなる程度(約5〜10Å以上)まで広げることにより、異物を基板表面から除去することができる。このような化学薬液に曝した後、イオン交換水などで基板表面をリンスし、同薬液をイオン交換水で置換した後、乾燥する。また、シリコンウェハとして使用される基板においては、フッ化水素と過酸化水素を含む水溶液に同表面を曝し、表面のシリコンを過酸化水素水の酸化力を利用して酸化シリコンへと酸化し、同酸化シリコンをフッ化水素酸にてウェットエッチングすることにより、前記と同様、同ウェハ表面に付着した異物をリフトオフ法により除去することが、例えば特許文献2にて提案されている。
【0005】
ここで、基板に付着した異物をリフト法により除去する観点から見ると、異物/基板間に電気的反発力が存在することが好ましい。つまり異物と基板表面とが同符号の表面電位を有していることが好ましい。さらに異物と基板表面が同符号の表面電位を有している場合、より大きな電気的反発力が得られることから、異物と基板との表面電位量の差の絶対値は大きいほど好ましい。
基板材料若しくは基板上に存在する異物となり得る殆どの物質(SiO2,Si34,有機物など)の表面電位は、曝されている液体のpHに大きく依存し、フッ化水素酸のような強酸の存在下、すなわち、pH=3〜4の領域では、その表面電位がほぼ0もしくは若干正となっており、弱酸性からアルカリ性までの領域(3〜4<pH)では、その表面電位が負になっている。但し、例外もあり、例えばSiの表面電位は大きなpH依存性を示さず、酸性からアルカリ性までの広い領域(pH=3〜11)にて安定して負の表面電位を示す。
しかしながら、リフト法に使用する薬液にpH<7の酸性溶液を使用した場合、薬液のpHが等電位点に近く、基板や異物の表面電位がほぼ0であり電気的反発力をほとんど示さないため、基板からの異物の除去が困難であるばかりか、基板から一度除去された後、薬液中に浮遊している異物が基板に再付着しやすいという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−131889号公報
【特許文献2】特開平3−120719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するため、シリコン製若しくはガラス製の基板表面、または基板表面に形成された無機系被膜表面に強固に付着している無機系の異物を表面粗さの増加を抑えながら容易に除去することができ、しかも一度除去された異物が基板表面に再付着することが防止された異物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、シリコン製若しくはガラス製の基板表面または該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法であって、
前記基板材料、前記無機系被膜材料および前記無機系異物のうち少なくとも1つに対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面に照射量10J/cm2以上で照射した後、負の表面電位を有する前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝すことを特徴とする基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法を提供する。
【0009】
また本発明は、シリコン製若しくはガラス製の基板表面または該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法であって、前記基板材料、前記無機系被膜材料および前記無機系異物のうち少なくとも1つに対して1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面に照射量1J/cm2以上で照射した後、負の表面電位を有する前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝すことを特徴とする異物除去方法を提供する。
段落番号[0008]および[0009]に記載の方法のことを、以下、「本発明の異物除去方法」という。
【0010】
本発明の異物除去方法において、前記光線照射後、前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面を水溶液若しくは水蒸気で処理することが好ましい。
【0011】
本発明の異物除去方法において、前記pH≦6の酸性溶液を曝す際、前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面の表面電位が−10mV以下であるが好ましい。
【0012】
本発明の異物除去方法において、前記pH≦6の酸性溶液を曝した後、前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH8〜12のアルカリ溶液を曝して、基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から有機系異物を除去することをことが好ましい。
【0013】
本発明の異物除去方法において、前記光線の波長が400nm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の異物除去方法において、前記光線の波長が180nm以下であり、前記酸素若しくはオゾン含有雰囲気における酸素濃度若しくはオゾン濃度が10vol%以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の異物除去方法において、前記光線の波長が180nm超400nm以下であり、前記酸素若しくはオゾン含有雰囲気における酸素濃度若しくはオゾン濃度が0.1vol%以上50vol%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の異物除去方法において、前記酸素若しくはオゾン含有雰囲気は、H2およびH2Oの合計濃度が1vol%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の異物除去方法において、前記基板が、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク用の基板であることが好ましい。
【0018】
本発明の異物除去方法において、前記基板の表面粗さが1.5Å以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の異物除去方法によれば、シリコン製若しくはガラス製の基板表面、または該基板表面に形成された無機系被膜表面に強固に付着している無機系の異物を表面粗さの増加を抑えながら容易に除去することができ、しかも一度除去された異物が基板表面に再付着することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の異物除去方法は、シリコン製若しくはガラス製の基板表面または該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法である。
ここで、シリコン製基板としては、シリコンウェハが例示される。
ガラス製の基板としては、フォトマスク基板またはフォトマスクブランクスとして使用されるガラス製の基板、具体的には例えば、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク(EUVマスクブランク)用のガラス基板、ナノインプリントに使用されるテンプレート用ガラス基板、各種表示素子の基板として使用されるガラス製の基板が挙げられる。ガラス基板の材料としては、ボロシリケートガラスのような無アルカリガラス、溶融石英ガラス、合成石英ガラス、合成石英ガラスに意図的に何らかの物質、例えば、チタン、フッ素、ボロン、アルミニウムなどをドープしたドープド合成石英ガラス、ガラスセラミックス、サファイア(アルミナ単結晶)等が例示される。これらの中でも熱膨張係数が0±1×10-7/℃の低膨張ガラス、具体的には、熱膨張係数が0±1×10-7/℃の合成石英ガラス、Tiドープド合成石英ガラス、ガラスセラミックスが好ましい。
【0021】
基板表面に形成される無機系被膜としては、Cr,CrOx,CrN,CrFO,Si,MoSi,MoSiO,MoSiON,TaSiO,Ta,TaN,TaBN,TaSiBN,SiO2,TiO2,Ru,RuB,RuZrなどの無機化合物または金属を構成成分とする被膜が挙げられる。これらの無機系被膜は、例えば、表示素子用ガラス基板やシリコンウェハの場合、絶縁膜や電極などの半導体デバイスを構成するために形成される。またフォトマスク基板の場合は、フォトマスク基板に入射する光を必要な部位のみ選択的に透過、反射するよう調整する役割を担うために形成される。
また、EUVマスクブランク用のガラス基板の場合、基板表面に形成される無機系被膜には、多層反射膜も含まれる。多層反射膜の具体例としては、Si膜とMo膜とを交互に積層させたSi/Mo多層反射膜、BeとMo膜とを交互に積層させたBe/Mo多層反射膜、Si化合物とMo化合物層とを交互に積層させたSi化合物/Mo化合物多層反射膜、Si膜、Mo膜およびRu膜をこの順番に積層させたSi/Mo/Ru多層反射膜、Si膜、Ru膜、Mo膜およびRu膜をこの順番に積層させたSi/Ru/Mo/Ru多層反射膜が挙げられる。
【0022】
本発明で除去対象とする無機系異物とは、SiO2、Si34、Al23、Fe34、CeO2のような無機化合物を主成分とする異物、および鉄、ステンレス、クロム、アルミニウムなどの金属系異物を指す。
これらの無機系異物は、たとえば研磨に使用するコロイダルシリカガラスやアルミナ粉末などが基板表面に付着したもの、基板表面を研磨中に基板表面の一部が剥離した研磨屑が基板表面に付着したもの、基板を搬送・保管する際に何らかの原因で付着したもの、基板に何らかの処理(例えば熱処理、イオン注入)を施す間に何らかの原因で付着したもの、基板を検査する際に何らかの原因で付着したもの等が挙げられる。
本発明で除去対象とする無機系異物は、主として大きさ200nm未満のナノパーティクルであり、特に大きさ100nm未満のナノパーティクルである。
【0023】
本発明の異物除去方法では、使用する光線の種類および照射量は、基板材料、無機系皮膜材料および無機系異物材料の光吸収の程度に依存するため一概に述べることはできないが、光吸収が大きいほど少ない光照射量で済み、また逆に光吸収が少ないほど多い光照射量が必要である。
具体的にたとえば、基板材料、無機系被膜材料および無機系異物のうち少なくとも1つに対して、0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線の場合、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて、基板表面、若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面に10J/cm2以上照射する必要がある。基板表面若しくは無機系被膜表面に照射する光線として以下のものを使用することができる。
(1)基板表面に無機系被膜が形成されていない場合
(a)基板材料に対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
(b)無機系異物に対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
(2)基板表面に無機系被膜が形成されている場合
(c)無機系被膜材料に対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
(d)無機系異物に対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
ここで、(a),(b)に共通する波長域の光線が存在する場合、両者に共通する波長域の光線を使用することが好ましい。また、(c),(d)に共通する波長域の光線が存在する場合、両者に共通する波長域の光線が存在する場合、両者に共通する波長域の光線を使用することが好ましい。一方、(a),(b)に共有する波長域の光線が存在しない場合、光線(a)を使用することが好ましく、(c),(d)に共有する光線が存在しない場合、光線(c)を使用することが好ましい。
【0024】
一方、基板材料、無機系被膜材料および無機系異物のうち少なくとも1つに対して、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線の場合には、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて、基板表面、若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面に1J/cm2以上照射すればよい。
この場合、基板表面若しくは無機系被膜表面に照射する光線として以下のものを使用することができる。
(1)基板表面に無機系被膜が形成されていない場合
(a´)基板材料に対して1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
(b´)無機系異物に対して1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
(2)基板表面に無機系被膜が形成されている場合
(c´)無機系被膜材料に対して1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
(d´)無機系異物に対して1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線
ここで、(a´),(b´)に共通する波長域の光線が存在する場合、両者に共通する波長域の光線を使用することが好ましい。また、(c´),(d´)に共通する波長域の光線が存在する場合、両者に共通する波長域の光線が存在する場合、両者に共通する波長域の光線を使用することが好ましい。一方、(a´),(b´)に共有する波長域の光線が存在しない場合、光線(a´)を使用することが好ましく、(c´),(d´)に共有する光線が存在しない場合、光線(c´)を使用することが好ましい。
【0025】
光照射に要する照射量が少なく、照射時間が短時間ですむため、基板材料、無機系被膜材料および無機系異物のうち少なくとも1つに対して、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線、すなわち、上記(a´)〜(d´)の光線を用いることが好ましい。
【0026】
上記(a)〜(d)、(a´)〜(d´)に該当する波長域の光線の具体例を以下に示す。図1は、Tiドープド合成石英ガラス(TiO2含有量約5〜10質量%、SiO2含有量約90〜95質量%)の吸収スペクトルである。このガラスの場合、波長約315nm以下で光吸収係数が0.01/cm以上、波長290nm以下で光吸収係数が1/cm以上となるため、このガラス材料製の基板の場合、光線(a)として波長315nm以下のものを使用することができ、光線(a´)として波長290nm以下のものを使用することができる。なお、図1には、波長310nmまでしか示されていないが、波長310〜315nmの範囲でも光吸収係数が0.01/cm以上であることを、図1から外挿により確認した。図2は、OH含有量5ppmの合成石英ガラスの吸収スペクトルである。この場合の場合、波長約174nm以下で光吸収係数が0.01/cm以上、波長約155nm以下で光吸収係数が1/cm以上となるため、このガラス材料製の基板の場合、光線(a)として波長174nm以下のものを使用することができ、光線(a´)として波長155nm以下のものを使用することができる。図3は、図1に示すTiドープド合成石英ガラス、図2に示すOH含有量5ppmの合成石英ガラス、結晶化ガラス(SiO2−Al23−Li2O−TiO2−ZrO2−P25系ガラス,日本電気硝子株式会社製、ネオセラム(商品名))、ソーダライムガラス(旭硝子株式会社製、AS(商品名))の各種ガラスについて、厚み約2mmにおける紫外域から真空紫外域(150〜550nm)の光透過率スペクトルを示す。図3から明らかなようにTiドープド合成石英ガラスおよびOH含有量5ppmの合成石英ガラスの透過率は、それぞれ、波長290nm以下、155nm以下の波長域において吸収係数の増加により急激に低下しており、同波長域の光線を光線(a´)として使用することができる。また結晶化ガラス、ソーダライムガラスの場合、透過率はともに波長約350nm以下で急激に低下しており、光吸収係数が0.01/cm以上となる波長350nm以下の光線を、光線(a)として使用することができる。
【0027】
本発明において、基板、無機系被膜および異物を構成する無機系材料は、いずれも比較的類似した吸収スペクトルを示す。したがって、上記した光線(a)〜(d)、(a´)〜(d´)としては、波長400nm以下の光線を使用することができる。
本発明の異物除去方法において、基板表面若しくは無機系被膜表面に光線を照射するのに使用する光源としては、上記の波長域400nm以下の光線を発生する光源から広く選択することができる。具体的には、高圧水銀ランプ(主波長250〜320nm,365nm)、低圧水銀ランプ(主波長185nm,254nm)、XeClガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長308nm)、KrClガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長222nm)、Xe2ガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長172nm)、Krガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長146nm)、Ar2ガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長126nm)、XeClエキシマレーザ(主波長308nm)、KrFエキシマレーザ(主波長248nm)、ArFエキシマレーザ(主波長193nm)、F2レーザ(主波長157nm)を挙げることができる。
これらの光源の中から、光線を照射する基板材料、無機系被膜材料および無機系異物に応じて所望の光源を選択すればよい。例えば、基板材料が図1に吸収スペクトルを示したTiドープド合成石英ガラスである場合、光線(a)として、波長315nm以下の光源を使用することができ、光線(a´)として、波長290nm以下の光源を使用することができる。波長290nm以下の光源としては、比較的高照度の光源が比較的安価で入手でき、かつランニングコストが低く、比較的大きな面積を一度に照射できる等の理由から、低圧水銀ランプ(主波長185nm,254nm)、KrClガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長222nm)、Xe2ガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長172nm)のランプ光源が有用である。一方、図2に吸収スペクトルを示した合成石英ガラスの場合、光線(a)として、波長174nm以下の光源を使用することができ、光線(a´)として、波長155nm以下の光源を使用することができる。波長174nm以下の光源としては、Xe2ガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長172nm)を使用することができ、波長155nm以下の光源としては、Krガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長146nm)を使用することができる。
【0028】
本発明において、上記光線(a)〜(d)を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて、基板表面、若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面に照射量10J/cm2以上で照射することにより、基板表面を構成する材料、無機系被膜表面を構成する材料または無機系異物表面を構成する材料の結合が開裂する。また、上記光線(a´)〜(d´)を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて、基板表面、若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面に照射量1J/cm2以上で照射することにより、基板表面を構成する材料、無機系被膜表面を構成する材料または無機系異物表面を構成する材料の結合が開裂する。
具体的には、光線(a)、(a´)を基板表面に照射した場合、基板表面を構成する材料の結合が開裂する。同様に、光線(b)、(b´)を基板表面に照射した場合、無機系異物表面を構成する材料の結合が開裂し、光線(c)、(c´)を無機系被膜表面に照射した場合、無機系被膜表面を構成する材料の結合が開裂し、光線(d)、(d´)を無機系被膜表面に照射した場合、無機系異物表面を構成する材料の結合が開裂する。
一方、雰囲気中の酸素分子は、光線照射により酸素ラジカル(O・)、オゾン(O3)、励起酸素(O2*)などの活性種(酸素活性種)になる。また、雰囲気中のオゾンは、元々活性種であり、また、光線照射により酸素ラジカル(O・)、励起酸素(O2*)などの活性種(オゾン活性種)になる。基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面の開裂した結合は、雰囲気中の前記酸素活性種またはオゾン活性種と容易に結びつき、非架橋酸素ラジカルにて終端される。続いて、基板表面若しくは無機系被膜表面を水蒸気処理若しくは水溶液処理することにより、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面に存在する非架橋酸素ラジカルが、OH基で終端され、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面には多くのOH基が存在することになる。基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面に多くのOH基で存在することにより、後で該基板表面若しくは該無機系被膜表面に酸性溶液を曝した際、基板表面若しくは無機系被膜表面が負の表面電位を有する。
【0029】
上記の手順により、基板表面がOH基にて終端されるメカニズムを石英ガラス(SiO2)基板の酸素含有雰囲気下で光線照射した場合について示す。
まず、Step1として、酸素含有雰囲気下にて、0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を基板表面に照射量10J/cm2以上で照射することにより、または、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を基板表面に照射量1J/cm2以上で照射することにより、基板表面のSi−Oの結合がラジカル分解される。
これらと同時に、雰囲気中の酸素分子も光線照射によりラジカル分解される。
<Step1 光照射による励起反応>
【化1】


次に、Step2として、形成したラジカルの一方(SiラジカルまたはSi−Oラジカル)が酸素ラジカルまたは酸素分子と反応することにより、基板表面が非架橋酸素ラジカルで終端される。
<Step2 非架橋酸素ラジカルによる終端>
≡Si・ + O・(and/or O2) → ≡Si−O・
≡SiO・ + O・(and/or O2) → ≡Si−O−O・
最後に、Step3として、基板表面を水溶液処理または水蒸気処理することにより、H2Oと非架橋酸素ラジカルが結びつき、基板表面がOH基で終端される。
<Step3 水酸基による終端>
≡Si−O・ + H2O → ≡Si−OH
≡Si−O−O・ +H2O → ≡Si−O−OH
このようにして、基板表面には多くのOH基が存在することとなる。その後、pH≦6の酸性溶液を曝した際、基板表面のOH基が解離し、Hが脱離してO-となり、基板が負の表面電位を有する。
なお、Step2で基板表面を非架橋酸素ラジカルで終端させた後、基板表面を水溶液処理または水蒸気処理しなかったとしても、該基板表面にpH≦6の酸性溶液を曝した際、上記Step3と同様の作用で基板表面がOH基で終端されることとなる。したがって、Step2により基板表面を非架橋酸素ラジカルで終端させた後、基板表面を水溶液処理または水蒸気処理をすることは必ずしも必要ではない。
なお、Step3として、水溶液処理または水蒸気処理を実施する場合、それぞれ以下の条件で実施することが好ましい。
[水溶液処理]
基板表面にイオン交換水を曝せばよく、具体的には、例えば、基板をイオン交換水を含む容器中に浸漬すればよい。あるいは、基板表面にイオン交換水を吐出、供給すればよい。処理に使用するイオン交換水の温度は室温〜80℃であることが好ましく、処理時間は3〜10分間が好ましい。
[水蒸気処理]
水蒸気を含む雰囲気に基板を曝せばよい。水蒸気を含む雰囲気は、湿度が40%RH〜100%RHであることが好ましく、温度が室温〜80℃であることが好ましい。また、処理時間は3〜10分間が好ましい。
【0030】
ところで、基板表面に付着した異物を除去するのに先立って、該基板表面に光線を照射することは以下の文献に記載されている。
[文献1]K.Masui et.al.,“Ultra−fine Mask Cleaning Technology using Ultra−violet Irradiation”,SPIE,vol.3412,p447(1998)
[文献2]J.Zheng,et.al.,“Impact of surface contamination on transmittance of modified fused silica for 157−nm lithography application”SPIE,vol.4186,p767(2001)
[文献3]菅原 寛他,「誘電体バリア放電エキシマランプを用いた光洗浄」,化学工学会姫路大会講演要旨集 SD2−15(1996)
[文献4]磯他,「Xe2*エキシマランプを用いたUV/O3洗浄の検討」,照明学会誌 vol.83,no.5(1999)
[文献5]特開2003−71399号公報
しかしながら、これら文献に記載された方法は、基板表面に付着した有機物を分解除去し、基板の濡れ性を改善することを目的としたものであるため、基板表面に照射する光線、特に光線の照射量が本発明とは全く異なっており、光線照射により生じる効果も本発明とは全く異なっている。以下に両者の相違について、より具体的に説明する。
【0031】
例えば、文献3では、基板の濡れ性改善(水に対する基板の接触角を約10度以下に低下するための濡れ性改善処理)を目的とした光線照射として、石英ガラス表面に、低圧水銀ランプから発する光(主発光波長は185nmおよび254nmであり、同波長における発光管直下の照度はそれぞれ15mW/cm2(185nm),120mW/cm2(254nm)を照射する場合、約3〜5分間の照射時間を要する。また石英ガラス表面にXe2ガスを封入した誘電体放電バリアランプから発する光(主発光波長172nm,窓面照度6.7mW/cm2)を照射する場合、約1分間の照射時間を要する。ここで石英ガラスの光吸収係数は、石英ガラスの種類に依存するものの、文献3には詳細に記述されておらず正確にはわからないが、一般的に0.1/cm以下(172nm),0.01/cm以下(185nm),0.001/cm以下(254nm)と非常に小さく、光線照射の際に石英ガラスに吸収される光量はいずれもごくわずかである(光吸収係数を用いて計算した場合、185nm:45mJ/cm2・cm以下,254nm:36mJ/cm2・cm以下,172nm:40mJ/cm2・cm以下)。さらに、光線の光子エネルギー(172nm:7.2eV,185nm:6.7eV,254nm:4.9eV)は、いずれもSi−O結合の結合エネルギー(8〜9eV)に比べて小さく、Si−O結合の開裂のためには多光子吸収が必要となるため、長時間の光線照射が必要となる。このため、現実的な光線照射条件では、石英ガラスを構成するSi−O結合をほとんど開裂させることができず、石英ガラス表面に非架橋酸素ラジカルが生成したとしてもごくわずかである。したがって、酸性溶液による洗浄時、石英ガラス表面は実質的に負の表面電位を有していない。
【0032】
一方、本発明では、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて、基板材料、無機系被膜材料および無機系異物のうち少なくとも1つに対して0.01cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を基板表面、若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面に照射量10J/cm2以上で照射することにより、または、基板材料、無機系被膜材料および無機系異物のうち少なくとも1つに対して1cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を基板表面、若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面に照射量1J/cm2以上で照射することにより、基板表面を構成する材料、無機系被膜表面を構成する材料または無機系異物表面を構成する材料の結合を開裂させ、雰囲気中の酸素分子若しくはオゾン分子の光線照射により活性した活性種が該開裂した結合に結びつくことにより、基板表面若しくは無機系被膜表面に非架橋酸素ラジカルを意図的に発生させるものである。この結果、pH≦6の酸性溶液を曝した際、基板表面若しくは無機系被膜表面は、該非架橋酸素ラジカルがH2Oと結びつくことによって生じた多くのOH基により、負の表面電位を有している。例えば、図2に示した吸収スペクトルを有する合成石英ガラス(OH含有量5ppm)製の基板の場合、光吸収係数が10/cm以上である波長146nm付近の光を主に発光するKr2エキシマランプ光(照度5mW/cm2)を酸素含有雰囲気下(例えば酸素/窒素=0.1/99.9vol%)にて10分間照射した場合、光線の照射量は3J/cm2と多く、かつ光源の光子エネルギーが8.5eVとSi−O結合の結合エネルギー(8〜9eV)にほぼ匹敵するため、Si−O結合が一光子吸収過程を経て効率的に開裂されて、基板表面に非架橋酸素ラジカルを意図的に生成させることができる。
【0033】
したがって、本発明は、異物除去の前処理として基板表面に光線を照射する点では、従来の濡れ性改善するための石英基板表面から有機物を分解除去する方法と類似するが、基板表面を構成する材料、無機系被膜表面を構成する材料または無機系異物表面を構成する材料の結合を積極的に開裂させるものであり、材料の結合エネルギーに匹敵する、またそれよりも高い光子エネルギーを有する光線を用いる必要がある。すなわち、基板材料、無機系被膜材料および無機系異物のうち、少なくとも1つに対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線、または、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を使用する必要がある。
また、波長の選択だけでなく光線の照射量も重要であり、0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線、または、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を十分な照射量にて照射する必要がある。具体的には、光吸収係数が0.01/cm以上1/cm未満の場合は、前記のStep1における光照射による励起反応は、多光子吸収過程が支配的(多光子吸収過程の中でも特に2光子吸収過程が支配的)であるため、照射量は、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面に吸収される光量(照射量×光吸収係数の2乗)が0.1J/cm2・cm2以上となるように光線を照射する必要がある。このため、0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を10J/cm2以上の照射量にて照射する必要がある。
一方、光吸収係数が1/cm以上の場合は、前記のStep1における光照射による励起反応は、1光子吸収過程が支配的となるため、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面に吸収される光量(照射量×光吸収係数)が1J/cm2・cm以上となるよう光線を照射する必要がある。このため、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を1J/cm2以上の照射量にて照射する必要がある。
このように、ある値の光吸収係数となる波長域の光線を十分な照射量にて基板表面若しくは無機系被膜表面に照射するため、基板若しくは無機系被膜へのダメージが懸念されるが、照射した光線は基板のごく表層付近において殆ど吸収されるため、基板全体としての機械的特性(ヤング率など)、熱的特性(熱膨張係数など)、光学的特性(光線透過率など)、化学的特性(耐薬品性など)を損なうことはなく、問題とならない。同様の理由から、無機系被膜の特性を損なうことはなく、問題とならない。
但し、基板若しくは無機系被膜へのダメージ防止という点では、0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を使用する場合、1000J/cm2以上の照射量にて照射することが好ましく、1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を使用する場合、100J/cm2以上の照射量にて照射することが好ましい。
なお、[文献3]について述べたように、[文献1]〜[文献5]では光線の照射量が本願に比べて小さくなっているが、その理由は、基板表面へのダメージを盲目的に問題であると即断しているところにあると推定される。
【0034】
基板表面若しくは無機系被膜表面に照射する光線の照度は、基板材料、無機系被膜材料または無機系異物の光吸収係数にも依存するが、照射量10J/cm2以上(光吸収係数が0.01/cm以上の場合)または1J/cm2以上(光吸収係数が1/cm以上の場合)とするのに要する照射時間を短くできることから、3mW/cm2以上が好ましく、特に5mW/cm2以上であることが好ましい。
一方、基板若しくは無機系被膜へのダメージ防止という点では、基板表面若しくは無機系被膜表面に照射する光線の照度は、から、100mW/cm2以下が好ましく、特に50mW/cm2以下であることが好ましい。
また、光線の照射時間は、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物に吸収される光量に依存するが、基板の吸収係数が1/cm以上である光源を用いる場合に、照射量が1J/cm2以上となるように照射することが好ましく、3J/cm2以上となるように照射することがさらに好ましい。また基板の吸収係数が0.01/cm以上である光源を用いる場合に、照射量が10J/cm2以上となるように照射することが好ましく、15J/cm2以上となるように照射することがさらに好ましい。
また、照射する光線は、基板全面若しくは無機系被膜全面にわたって一度に照射することもできるし、基板表面若しくは無機系被膜表面より小さな照射面積を有する光源の場合、光線を基板上若しくは無機系被膜上でスキャンさせることもできる。ただしスループットの点から、基板全面若しくは無機系被膜全面に一度に光線を照射することが好ましい。
【0035】
図1に示した吸収スペクトルを有するTiドープド合成石英ガラス(TiO2濃度7質量%、SiO2濃度93質量%)に、Xe2ガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長172nm、窓面照度10mW/cm2、ウシオ電機社製)から光線照射した際の表面電位のpH依存性を図4に示す。また、図4のpH=3.1付近における表面電位の照射時間依存性を図5に示す。なお、表面電位は表面電位計(Brookhaven社製EI−BKA)を用いて、同一材質の基板を2枚準備し、Xe2ガスを封入した誘電体放電バリアランプ(主波長172nm、窓面照度10mW/cm2、ウシオ電機社製)にて窒素/酸素=80/20vol%の雰囲気下5〜60分間照射し表面改質した後、測定面を約100μmの間隔をあけて重ねあわせてセルを構成し、セル間に所定のpHの酸性溶液を満たして測定した。
図4から明らかなように、照射時間が長くなるほど、表面のOH修飾基濃度が増え、等電位点のpHが低下し、広いpH範囲に渡って基板表面が負の表面電位を有していることがわかる。また照射時間が長くなるほど、pH≦6の酸性域において、負の表面電位の絶対値が大きくなっていることもわかる。また、図5から明らかなように、照射時間が長くなるほど、負の表面電位の絶対値が大きな値を示すことがわかる。なお、図4、5において、負の表面電位の絶対値の大小は、基板表面に存在するOH基の多少を示している。すなわち、負の表面電位の絶対値が大きくなるほど、基板表面により多くのOH基が存在することになる。
【0036】
上記したように、本発明において、基板表面若しくは無機系被膜表面への光線照射は、酸素含有雰囲気下若しくはオゾン含有雰囲気で実施する。なお、光線照射を酸素含有雰囲気若しくはオゾン含有雰囲気で行う理由は、上記したStep1およびStep2により、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面を非架橋酸素ラジカルにて終端させ、その後、Step3で基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面をOH基で終端させるためであるが、これに加えて、基板、無機系被膜または無機系異物が金属で形成されている場合、これら金属は、酸素含有雰囲気若しくはオゾン含有雰囲気で光線照射することによって、その表面が金属酸化物となる。例えばシリコンの場合、その表面が酸化シリコンとなる。続いてpH≦6の酸性溶液を曝す際、フッ酸やバッファードフッ酸のような酸化シリコン腐食性の酸性溶液を用いれば、酸化された表面層が除去されて、表面からの異物除去が促進される。他の金属の場合も、pH≦6の酸性溶液を曝す際に、所望の金属酸化物腐食性の酸性溶液を用いることにより、同様の効果が得られる。
ここで、酸素含有雰囲気とは、酸素を所定量含有する雰囲気のことを指す。酸素分子が光吸収を殆ど有しない波長域(185nm以上400nm未満)の光線を使用する場合、上記したStep1およびStep2を促進させるため、雰囲気中の酸素含有量が高いことが好ましい。具体的には、酸素含有量が1体積%以上であることが好ましく、特に10体積%以上が好ましい。一方、酸素分子が光吸収を有する波長域(185nm未満)の光線を使用する場合は、酸素の含有量が高いと、照射した光線が酸素により吸収される割合が高くなるため、基板表面への光線照射量が減少する。このため、酸素含有量は1体積%以下、特に0.1体積%以下であることが好ましい。但し、上記したStep1およびStep2を行うため、酸素含有量は0.001体積%以上であることが好ましい。
【0037】
なお、上記したStep1において、雰囲気中にH2やH2Oが存在すると、H2やH2Oがラジカル分解されて水素ラジカルが生成する。
2 → 2H・
2O → H・ + ・OH
この結果、上記したStep2において、基板表面が非架橋酸素ラジカルの代わりに、水素(−H)により終端される部位が生じる。
≡Si・ + H・ → ≡Si−H
基板表面がHにより終端された部位が多くなると、該基板表面にpH≦6の酸性溶液を曝した際、等電位点が高pH側にシフトし、基板表面の電位が正になり易く、たとえ負の値であってもその絶対値は小さくなる。
このため、光線照射時の雰囲気中にはH2およびH2Oは実質的に存在しないことが好ましく、具体的には、雰囲気中におけるH2およびH2Oの含有量は合計で1体積%以下、特には0.1体積%以下であることが好ましい。
したがって、酸素含有雰囲気およびオゾン含有雰囲気において、酸素およびオゾン以外の成分は不活性ガスであることが好ましい。ここで、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、クリプトン、ヘリウムなどを用いることができる。
また、酸素含有雰囲気およびオゾン含有雰囲気において、雰囲気圧力は特に限定されないが、上記したStep1およびStep2で酸素およびオゾンが必要とされることから、高いことが好ましく、具体的には、常圧であることが好ましい。
【0038】
本発明の異物除去方法では、上記手順で基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面がOH基で終端された基板表面若しくは無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝す。上記したように、基板表面、無機系被膜表面または無機系異物表面には多くのOH基が存在しているため、pH≦6の酸性溶液を曝した際、基板表面若しくは無機系被膜表面は負の表面電位を有する。
pH≦6の酸性溶液を曝した際、基板表面若しくは無機系被膜表面が負の表面電位を有していることにより、基板表面と無機系異物との間、若しくは無機系被膜表面と無機系異物との間に高い電気的反発力が生じ、基板表面若しくは無機系被膜表面から無機系異物を容易に除去することができ、基板表面若しくは無機系被膜表面から除去された無機系異物がこれら表面に再付着することが防止される。
上記の理由から、基板表面若しくは無機系被膜表面の負の表面電位は、その絶対値が大きいことが好ましい。具体的には、表面電位が−10mV以下であることが好ましく、−15mV以下であることがより好ましく、−20mV以下であることがさらに好ましい。
【0039】
次いで、基板表面若しくは無機系被膜表面に何らかの方法でpH≦6の酸性溶液を曝す。ここで基板表面若しくは無機系被膜表面へ酸性溶液を供給する方法としては、以下の2通りの方法が考えられる。
(1)基板上部に設置したノズルから酸性溶液を基板上に供給し、基板上に酸性溶液からなる液膜を形成した状態で、基板を回転させるスピン法
(2)基板を、酸性溶液を満たした槽内に浸漬するバッチ法
酸性溶液を供給する際に、周波数500〜5MHzの超音波を印加してもよい。上記した(1)の形態の場合、超音波を印加した酸性溶液を基板上に供給する。(2)の形態の場合、超音波振動子を槽内外に設置し、超音波を基板が浸漬された酸性溶液に印加する。また、酸性溶液を比較的高圧(圧力20〜100PSi)で基板表面に吹付けてもよく、酸性溶液を供給しながらブラシなどで基板を擦るなどの機械的力を加えてもよい。特に、数十nm程度の小さな異物から1μm程度の比較的大きな異物まで広範囲の大きさの異物除去に効果的であることから、上記した超音波を印加する方法が好ましい。
使用できる酸性溶液としては、フッ酸(HF,0.01〜0.5wt%)、バッファードフッ酸(HFとNH4Fの混合溶液,HF=0.01〜0.5wt%,NH4F=20〜40wt%)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、有機酸(酢酸やクエン酸など)などの酸、およびこれら酸とオゾン水の混合溶液、これら酸と過酸化水素水の混合溶液、これら酸とアルカリ性界面活性剤(たとえば花王社製クリンスルー、横浜油脂社製LC−2、ライオン社製サンウォッシュなど)若しくはイオン交換水(pH=7)の混合溶液、炭酸ガスを溶解したイオン交換水(pH=4〜6)を挙げることができる。
基板材料、無機系被膜材料または無機系異物の主成分がSiO2である場合、酸性溶液としてフッ酸、バッファードフッ酸のような酸化シリコン腐食性の酸性溶液を使用すれば、表面が微量にエッチングされて、基板表面若しくは無機系被膜表面からの無機系異物除去が促進されるため、特に好ましい。
【0040】
本発明の異物除去方法において、基板表面若しくは無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝して、基板表面若しくは無機系被膜表面から無機系異物を除去した後、該基板表面若しくは無機系被膜表面にpH8〜12のアルカリ溶液を曝して、基板表面若しくは無機系被膜表面に付着した有機系の異物を除去することが好ましい。
上記した[文献1]〜[文献5]に記載された方法によれば、基板表面若しくは無機系被膜表面への光線照射により、基板表面若しくは無機系被膜表面に付着した有機物は下記式にしたがって分解・除去される。
xy + O・ → xCO2 + y/2H2
しかしながら、基板表面若しくは無機系被膜表面には、分解されなかった有機系異物の一部が残留する。また、有機系の異物の一部の分解により生じた有機残渣が基板表面若しくは無機系被膜表面に残留する。また、酸性溶液中に有機系異物が含まれている場合があり、このような有機系異物が基板表面若しくは無機系被膜表面に酸性溶液を曝した際に、基板表面若しくは無機系被膜表面に付着する。
pH=2〜5の酸性領域において、これら有機系異物は負の表面電位を有していない。このため、基板表面若しくは無機系被膜と有機物の間に静電的反発力が期待できず、むしろ両者の間には静電気的吸引力が働くため、基板表面若しくは無機系被膜表面には有機系の異物が強固に付着している。
一方、pH>7、好ましくはpH=8〜12のアルカリ性領域では、有機系異物表面が負の表面電位を有しており、基板表面若しくは無機系被膜表面も負の表面電位を有しているので、基板表面と有機系異物との間、若しくは無機系被膜表面と有機系異物との間に高い電気的反発力が生じ、基板表面若しくは無機系被膜表面から有機系異物を容易に除去することができ、基板表面若しくは無機系被膜表面から除去された有機系異物がこれら表面に再付着することが防止される。
基板表面若しくは無機系被膜表面にpH>7、好ましくはpH=8〜12のアルカリ溶液を供給する方法としては、基板表面若しくは無機系被膜表面に酸性溶液を供給する場合と同様に、スピン法またはバッチ法を使用することができる。また、アルカリ溶液を供給する際に、周波数500〜5MHzの超音波を印加してもよい。
アルカリ溶液としては、アンモニア水(0.1〜1wt%,pH=9〜12)、アンモニア水(0.01〜1wt%)と水素水(1〜5ppm)の混合溶液(pH=9〜12)、アンモニア水(0.1〜1wt%)と過酸化水素水(0.1〜1wt%)の混合溶液(pH=9〜12)、アルカリ性界面活性剤(7<pH≦12)を使用することができる。
【0041】
以下の理由から、酸性溶液に曝した後、アルカリ溶液に曝す前にイオン交換水を用いて基板表面若しくは無機系被膜表面から酸性溶液を洗い流すことが好ましい。
酸性溶液にアルカリ溶液が混ざると、中和反応により生成した塩が新たな異物となるおそれがある。また、中和反応により発熱する恐れがある。また、場合によっては、中和反応が激しく進行することによって、酸性溶液およびアルカリ溶液が周囲に飛び散るおそれがあり、装置の汚染だけでなく、安全上問題となりうる。
なお、アルカリ溶液に曝した後は、イオン交換水を用いて基板表面若しくは無機系被膜表面からアルカリ溶液を洗い流すことが好ましい。イオン交換水により洗浄されたガラス基板は、乾燥させた後、用途に応じてさらなる処理に供される。
【実施例】
【0042】
(例1)(比較例)
火炎加水分解法により合成した石英ガラスブロックからサイズ6×6×0.26(インチ)の基板を切り出し、同基板表面を酸化セリウムおよび酸化シリコンからなる粒子を用いて表面粗さが1.2Å(RMS)になるよう鏡面研磨する。研磨された基板をポリビニルアルコール(PVA)スポンジを用いてスクラブ洗浄し、イソプロピルアルコール(IPA)蒸気で乾燥する。上記の一連のプロセスにより処理した基板を計5枚準備し、以下に示すプロセス1,2を順に行い評価する。評価方法については後述する。なお本実施例で用いる基板の146nm,172nmにおける光吸収係数はそれぞれ10/cm超(外挿より約1000/cmと推定),0.01/cmである。
(プロセス1)光線照射
図5に示す光線照射装置のプロセスチャンバ20内に基板1をセットする。プロセスチャンバ20内にガス(N2/O2)、ランプハウス10内に設置された光源11から、窓11を通して、下記条件で光線を照射する。
Xe2ガスを封入した誘電体バリア放電ランプ(主発光波長172nm)
窓30面における照度=10mW/cm2
ガス(N2/O2)=95/5vol%
照射時間=5min(照射量=3J/cm2
表面電位=−2mV(pH=3.1における)
(プロセス2)スピン法
図6,7に示す枚葉式洗浄装置(たとえばHamatech社製ASC5500)の回転可能な基台40に基板チャック41を介して、プロセス1で光線が照射された面が上側になるように基板1をセットする。基台40を回転させながら、基板1表面にノズル50から酸性溶液またはアルカリ溶液60を供給して、下記条件でスピン法を実施する。ノズル50は旋回可能であり(can swivel)、基板1表面全体に薬液をむらなく供給することができる。
スピン法(酸性溶液):0.8wt%HF水溶液(室温、pH=1),50rpm×5min
リンス:イオン交換水(室温),150rpm×3min
スピン乾燥:1200rpm×1min
<評価方法>
プロセス1,2の実施前、および実施後の基板表面に対して、下記評価1,2を実施する。
(評価1)欠点検査
欠点検査装置(たとえばLasertec社製M1350)に基板をセットし、基板中央の領域(142×142mm□)におけるポリスチレンラテックス(PSL)粒子換算サイズ60nm以上の大きさの異物を検査する。プロセス1,2の実施前後の検査にて検出された異物の座標を比較することにより、スピン法により除去されない異物数およびスピン法により新たに付着する異物数を以下の要領で求める。
スピン法により除去されない異物数:プロセス1,2の実施前後の検査で、基板内の同じ場所(距離20μm以内の位置)に検出される異物の個数。
スピン法により新たに付着する異物数:プロセス1,2の実施前の検査では検出されず、プロセス1,2の実施後の検査でのみ検出される異物の個数。
(評価2)表面粗さ測定
原子間力顕微鏡(Veeco社製Dimensionシリーズ)を用いて、プロセス1および2の実施後、上記した基板中央の領域における表面粗さ(RMS)を測定する。
評価1,2の結果を下記表に示す。
【0043】
(例2)(比較例)
プロセス1におけるランプの照射条件およびプロセス2におけるスピン法の条件を下記に示した条件に変更する以外は例1と同様に処理して、例1と同様の方法で評価する。評価1,2の結果を下記表に示す。
プロセス1
Xe2ガスを封入した誘電体バリア放電ランプ(主発光波長172nm)
窓30面における照度=10mW/cm2
ガス(N2/O2)=95/5vol%
照射時間=5min(照射量=3J/cm2
表面電位=−2mV(pH=3.1における)
プロセス2
スピン法(酸性溶液):0.1wt%HF水溶液(室温、pH=2),50rpm×5min
リンス:イオン交換水(室温),150rpm×3min
スピン乾燥:1200rpm×1min
(例3)
プロセス1におけるランプの照射条件およびプロセス2におけるスピン法の条件を下記に示した条件に変更する以外は例1と同様に処理して、例1と同様の方法で評価する。評価1,2の結果を下記表に示す。
プロセス1
Xe2ガスを封入した誘電体バリア放電ランプ(主発光波長172nm)
窓30面における照度=10mW/cm2
ガス(N2/O2)=99.9/0.1vol%
照射時間=30min(照射量=18J/cm2
表面電位=−15mV(pH=3.1における)
プロセス2
スピン法(酸性溶液):0.1wt%HF水溶液(室温、pH=2),50rpm×5min
リンス:イオン交換水(室温),150rpm×3min
スピン乾燥:1200rpm×1min
(例4)
プロセス1におけるランプの照射条件およびプロセス2におけるスピン法の条件を下記に示した条件に変更する以外は例1と同様に処理して、例1と同様の方法で評価する。評価1,2の結果を下記表に示す。
プロセス1
Krガスを封入した誘電体バリア放電ランプ(主発光波長146nm)
窓30面における照度=5mW/cm2
ガス(N2/O2)=99.9/0.1vol%
照射時間=5min(照射量=1.5J/cm2
表面電位=−30mV(pH=3.1における)
プロセス2
スピン法(酸性溶液):0.1wt%HF水溶液(室温、pH=2),50rpm×5min
リンス:イオン交換水(室温),150rpm×3min
スピン乾燥:1200rpm×1min
(例5)
プロセス1におけるランプの照射条件およびプロセス2におけるスピン法の条件を下記に示した条件に変更する以外は例1と同様に処理して、例1と同様の方法で評価する。評価1,2の結果を下記表に示す。
プロセス1
Krガスを封入した誘電体バリア放電ランプ(主発光波長146nm)
窓30面における照度=5mW/cm2
ガス(N2/O2)=95/5vol%
照射時間=15min(照射量=4.5J/cm2
表面電位=−50mV(pH=3.1における)
プロセス2
スピン法(酸性溶液):0.1wt%HF水溶液(室温、pH=2),50rpm×5min
リンス:イオン交換水(室温),150rpm×3min
スピン法(アルカリ溶液):1wt%アンモニア水溶液(室温)
供給時1MHzの超音波を印加
50rpm×5min
リンス:イオン交換水(室温),150rpm×3min
スピン乾燥:1200rpm×1min
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、本発明の方法にて処理される基板(例3〜5)は、比較例(例1および2)に比べて、表面粗さ増加を問題なき程度(洗浄後の表面粗さ(RMS)1.5Å未満)に抑制しつつ、異物を効率的に除去することができ、かつ処理により新たに付着する異物をほとんど生じさせない。
また、例3〜5の基板を用いてEUVマスクブランクを形成する。これらのEUVマスクブランクは、ブランクス起因の欠陥が生じず、十分な露光が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、Tiドープド合成石英ガラス(Tiドープ量7質量%)の吸収スペクトルである。
【図2】図2は、OH含有量5ppmの合成石英ガラスの吸収スペクトルである。
【図3】図3は、各種ガラスについて、厚み約2mmにおける紫外域から真空紫外域の光透過率スペクトルを示す。
【図4】図4は、図1に吸収スペクトルを示したTiドープド合成石英ガラスにおける光線照射後の表面電位のpH依存性を示す。
【図5】図5は、図4のpH=3.1付近における表面電位の照射時間依存性を示す。
【図6】図6は、実施例で使用する光線照射装置の1構成例を示した概念図である。
【図7】図7は、実施例で使用する枝葉式洗浄装置の側面図である。
【図8】図8は、図7に示す枝葉式洗浄装置の平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1:基板
10:ランプハウス
11:光源
20:プロセスチャンバ
30:窓
40:基台
41:基板チャック
50:ノズル
60:薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン製若しくはガラス製の基板表面または該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法であって、
前記基板材料、前記無機系被膜材料および前記無機系異物のうち少なくとも1つに対して0.01/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面に照射量10J/cm2以上で照射した後、負の表面電位を有する前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝すことを特徴とする基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項2】
シリコン製若しくはガラス製の基板表面または該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法であって、
前記基板材料、前記無機系被膜材料および前記無機系異物のうち少なくとも1つに対して1/cm以上の光吸収係数となる波長域の光線を、酸素若しくはオゾン含有雰囲気下にて前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面に照射量1J/cm2以上で照射した後、負の表面電位を有する前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH≦6の酸性溶液を曝すことを特徴とする基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項3】
前記光線照射後、前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面を水溶液若しくは水蒸気で処理することを特徴とする請求項1または2に記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項4】
前記pH≦6の酸性溶液を曝す際、前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面の表面電位が−10mV以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項5】
前記pH≦6の酸性溶液を曝した後、前記基板表面若しくは前記無機系被膜表面にpH8〜12のアルカリ溶液を曝して、基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から有機系異物を除去することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項6】
前記光線の波長が400nm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項7】
前記光線の波長が180nm以下であり、前記酸素若しくはオゾン含有雰囲気における酸素濃度若しくはオゾン濃度が10vol%以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項8】
前記光線の波長が180nm超400nm以下であり、前記酸素若しくはオゾン含有雰囲気における酸素濃度若しくはオゾン濃度が0.1vol%以上50vol%以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項9】
前記酸素若しくはオゾン含有雰囲気は、H2およびH2Oの合計濃度が1vol%以下であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項10】
前記基板が、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク用の基板であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。
【請求項11】
前記基板の表面粗さが1.5Å以下である請求項1ないし9のいずれかに記載の基板表面若しくは該基板表面に形成された無機系被膜表面から無機系異物を除去する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−507904(P2010−507904A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558571(P2008−558571)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/JP2007/070214
【国際公開番号】WO2008/053705
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】