説明

欠陥検査装置

【課題】 透明な層間絶縁膜上の微細パターンおよび同一層の欠陥を感度良く検出する一方、下層のパターンおよび同一層の欠陥をデフォーカスした状態で検出し、本来検査したい工程の欠陥のみを検出可能とすること。
【解決手段】 本来同一形状となるべきパターンが複数規則的に配置された被検査物の検査装置において、解像度0.18μm以下、より好ましくは0.13μm以下となる照明波長と対物レンズ開口数の関係を備えた撮像光学系と、撮像光学系の結像位置に配置された光電変換器と 撮像光学系とは別に設けられた光路からなり入射角度85度以上、より好ましくは88度以上で照明する自動焦点光学系と、自動焦点光学系の検出信号に基づき撮像光学系の焦点位置を調節する手段と、光電変換器の電気信号を処理する手段とを、具備した構成をとる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検査パターンの欠陥を検出する欠陥検査装置に係り、特に、半導体ウェハーの透明膜上に形成された微細なパターンの光学像を検出するのに用いて好適な欠陥検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光学式の欠陥検査装置は、微細なパターンを光学的に結像させるために高精度な自動焦点合わせ機能を備えた顕微鏡システムを搭載している。このような顕微鏡システムに関する技術が、特開平6―265773号公報(名称;顕微鏡自動焦点装置)に開示されており、この先願公報に記載された従来技術においては、対物レンズを自動焦点光線が通過するTTL(Through the Lens)方式を採用している。
【0003】TTL方式は、結像光線と自動焦点光線が共に対物レンズを通過するため、温度等のわずかな環境変化により焦点距離が変動しても、自動焦点検出結果と結像コントラストに高い相関が保たれる特徴がある。このため、半導体ウェハーに形成された微細なパターンを検出するような顕微鏡システムでは、TTL方式が標準的な自動焦点方式となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】半導体装置の配線ルールは、現在0.18μm幅が主流であり、今後0.13μm幅に移行することが予想されている。このような微細な回路パターンを形成するためには、CMP(Chemical Mechanical Polishing)加工が必須となりつつある。
【0005】図4に、CMP加工されたウェハーの断面図を示す。図4の(a)は、下層回路パターン1が形成された状態を示し、図4の(b)は、下層回路パターン1上に透明膜である層間絶縁膜2が塗布された状態を示している。層間絶縁膜2は下層回路パターン1が形成されている場所で盛り上がり、結果として、層間絶縁膜表面は凹凸を有する。そこで、層間絶縁膜2上に微細なパターンを形成するために、上記凹凸を平坦化することが必要となる。なぜなら、微細パターンを形成する露光装置の焦点深度は浅く、上記凹凸が無視できないためである。
【0006】この凹凸を平坦化するのがCMP加工である。具体的には、研磨パッドを層間絶縁膜(透明膜)2の表面に押し付け化学砥粒(スラリー)を塗布しながら研磨する。この結果、図4の(c)に示すような平坦な表面3を得ることができる。この平坦な表面3上には、図4の(d)に示すように、微細な回路パターン4の形成が可能である。すなわち、0.18〜0.13μm幅ルールの今後の半導体製品では、CMP加工された透明膜上に微細な回路パターンが形成される特徴がある。このため、欠陥検査装置は、前記のような回路パターンを精度良く解像できる光学性能を持つことが必要となる。
【0007】しかし、前記TTL方式の自動焦点は、CMP加工された透明膜においては、以下に述べる課題を有する。これを、図5、6を用いて説明する。図5の(a)は、対物レンズ5の広がり角θを示している。広がり角θと開口数NAとの間には、NA=sinθ ……(1)式上記(1)式の関係がある。
【0008】図5の(b)は、(1)式の関係を図示したものである。図5の(b)に示すように、大気中で用いられるNAとして最大に近いNA=0.95でも、広がり角θは72度程度であることが判る。
【0009】図6は、透明膜に入射する光線の入射角iと反射率Rの関係を示しており、黒丸はS偏光、黒四角はP偏光である。反射率Rは入射角度iの関数であり、偏光状態によって異なる。同図に示すように、72度(図中の符号6)では有利なS偏光においても、わずか30%程度(図中の符号7)しか反射せず、残り70%は透明膜中に透過することが判る。このため、TTL方式の自動焦点光線は、ほとんどが透明膜中に透過して下層パターン部で反射して検出されることが判る。
【0010】図7に、TTL方式で照明した光線8が、透明な層間絶縁膜2を透過して下層回路パターン1の形成面10で合焦した場合を示す。この結果、本来検出すべき透明な層間絶縁膜9上の微細なパターン4および同一層で発生した欠陥11は、デフォーカスし、本来検出すべきでない透明な層間絶縁膜9の下の層に形成した下層回路パターン1および同一層で発生した欠陥12に、フォーカスが一致することとなる。
【0011】半導体装置の欠陥検査においては、検出された欠陥がどの層で発生したのかを切り分けることが重要であり、欠陥が層別に把握できることにより、初めて対策が可能となり、欠陥を低減することができる。しかしながら、図7に示したように、検出用の光線が、合焦させたい位置と異なる位置に合焦すると、検出すべき位置の欠陥検出の精度が極端に悪化する。
【0012】本発明の目的は、透明膜上に形成された微細パターンに発生した欠陥を感度良く検出するべく、透明膜表面に精度良くフォーカス位置を一致させて高解像撮像した画像により、欠陥が検出可能な欠陥検査装置を提供することにある。
【0013】また、本発明の他の目的は、透明膜表面に精度良くフォーカス位置を一致させて高解像撮像した画像を、周囲の温度変化の影響を受けずに安定して出力できるする欠陥検査装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明では以下の技術的手段を備える。
【0015】まず、本来同一形状となるべきパターンが複数規則的に配置された被検査物を検査するための欠陥検査装置において、解像度0.18μm以下、より好ましくは0.13μm以下となる照明波長と対物レンズ開口数との関係を備えた撮像光学系と、撮像光学系の結像位置に配置された光電変換器と、撮像光学系とは別に設けられた光路からなり入射角度85度以上、より好ましくは88度以上で照明する自動焦点光学系と、自動焦点光学系の検出信号に基づき撮像光学系の焦点位置を調節する手段と、光電変換器の電気信号を処理する手段とを、備えた構成をとる。
【0016】また、上記欠陥検査装置において、温度検出手段と、予め計測もしくはシミュレーションにより算出した温度と合焦点位置オフセットとの関係を記憶する手段と、温度検出手段による温度検出結果に基づき、温度と合焦点位置オフセットとの上記関係から合焦点位置オフセットを予測する手段と、この手段による予測量に基づき、合焦点位置オフセットを修正する手段とを、備えた構成をとる。
【0017】また、前記欠陥検査装置において、撮像光学系を分岐して構成される焦点位置測定光学系と、被検査物とは別に設けられ焦点位置測定光学系による測定対象となる試料と、この試料において焦点位置測定光学系により合焦位置オフセットを計測し、この計測結果に基づき、撮像光学系とは別に設けられた前記自動焦点光学系のオフセットを調節する手段とを、備えた構成をとる。
【0018】上記した構成を具備することによる有用性は、以下の発明の実施の形態の説明において明らかとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体ウェハーの欠陥検査装置の構成を示す図である。
【0020】図1に示した構成において、照明光源15の光線は、ハーフミラー16で反射して、対物レンズ5を介して被検査物であるウェハー17を落斜照明する。ウェハー17からの反射光線は、ハーフミラー16を透過し、結像レンズ18によりイメージセンサ19上に結像される。ウェハー17は、X、Y、Zステージ(20、21、22)上に固定されている。
【0021】イメージセンサ19の信号は、Xステージ20に付加されたリニアスケール23から、Xステージが一定間隔移動する度に発生されるタイミング信号24に基づき、読み出される。
【0022】自動焦点光学系について述べれば、スリット25を通過した照明光線は、結像レンズ26によりウェハー17表面に集光され、スリット像が投影される。ウェハー17表面で反射した光線は、結像レンズ27により受光センサ28に結像される。
【0023】図2は自動焦点光学系の原理を説明している。自動焦点光学系の照明光線の入射角をθ、ウェハー17の高さ変化をΔh、結像レンズ27の結像倍率をmとすると、受光センサ28上の移動距離ΔSは、 ΔS=2m×Δh×sinθ ……(2)式上記(2)式のようになる。
【0024】受光センサ28が2分割ダイオードの場合、撮像光学系の焦点位置で2つのダイオードの受光量が等しくなるように、オフセットを調節しておく。ウェハー高さがΔh変化すると、センサ上の受光位置がΔS変動するため、2つのダイオードの受光量がアンバランスとなる。そこで、光量のバランスが取れる位置にウェハー17が来るように、Zステージ制御部13によってZステージ22を制御することにより、常に、撮像光学系の焦点位置にウェハー高さが調節される。
【0025】図3は、イメージセンサ19の出力を処理する画像処理部29の構成図である。イメージセンサ19の出力を、遅延メモリ30aによりウェハー17をX方向に1チップ分移動する時間だけ遅らせる。これにより、イメージセンサ19の出力信号と遅延メモリ30aの出力信号は、隣接するチップの画像信号にそれぞれ相当するものとなる。イメージセンサ19からの画像信号と遅延メモリ30aからの画像信号を、エッジ検出回路30b、30cにそれぞれ入力し、被検査パターンのパターンエッジを検出し、2値化回路30d、30eで、上記検出されたパターンエッジが2値化される。次に、不一致検出回路30fにおいて、エッジ検出回路30bから出力されるパターンエッジと30cから出力されるパターンエッジをXY方向にシフトしながら、両信号の不一致が小さい最適な位置ずれ量の検出を行う。そして、位置合わせ回路30gにおいて、イメージセンサ19からの画像信号と遅延メモリ30aからの画像信号とに基づき検出された位置ずれ量だけ、不一致画素をシフトして、欠陥判定回路30hに出力する。
【0026】ところで、被検査物である半導体装置の配線ルールは、3年で1/√2倍の周期で微細化しており、現在主流である最小線幅0.18μmが、今後0.13μmに移行することが予想されている。このような微細な回路パターンを形成するためには、図4を用いて先に述べたように、CMP加工が必須となりつつあり、CMP加工された透明な層間絶縁膜上に形成された微細なパターンを検出することが必要となる。
【0027】そこで以下に、図1の欠陥検査装置が、CMP加工された透明な層間絶縁膜2上に形成された微細なパターン4を安定して検出するための必要条件について述べる。
【0028】一般に、顕微鏡光学系の分解能Resは、Res=0.5×λ/NA ……(3)式上記(3)式のように表される。ここで、λは照明光線の波長、NAは対物レンズの開口数である。
【0029】図8の(a)は、(3)式の定義を模式的に示している。(3)式は、ラインとスペースの繰り返しパターン31を仮定しており、撮像光学系の結像位置32において、隣接したパターンの像33が分離して検出される条件を示している。また、図8の(b)は、対物レンズの開口数NAと照明光線の波長λとに対する分解能Resの関係を示している。
【0030】ここで、(3)式や図8の(b)より明らかなように、分解能を向上するためには(Resの値を小さくするためには)、照明波長λを短くするか、または、対物レンズの開口数NAを大きくする必要がある。ただし、両者には物理的な制約があり、自ずと実現可能な範囲が決まってくる。照明波長λについて述べれば、光電変換器(イメージセンサ19)の変換効率により下限が決まる。すなわち、光電変換器において光子がセンサに衝突する際に発生する電子の割合を量子効率と呼ぶが、この量子効率は光線波長の関数となることが知られている。実在する光電変換器について述べれば、実用的な量子効率が得られる照明波長λの下限は、0.2〜0.3μm(図8の(b)中の符号34)程度である。
【0031】このようなλ=0.2〜0.3μmの範囲に該当する顕微鏡の照明光源としては、キセノンランプまたは水銀キセノンランプがあり、連続した波長の照明光が得られる。また、例えばYAGレーザ(λ=0.532μm)と非線形光学素子を組み合わせることにより、第2高調波である波長0.266μmが得られることが知られている。図8の(b)から、照明波長範囲0.2〜0.3μmにおいて、回路パターン幅寸法と略同等である分解能Res=0.15μm(図8の(b)中の符号35)を実現するNAは、ほぼ0.7〜0.9(図8の(b)中の符号36)の範囲となることが判る。
【0032】一方、照明波長λと開口数NAから、焦点深度DOFは、 DOF=0.5×λ/(NA) ……(4)式上記(4)式の関係によって求めることができる。
【0033】図9の(a)に、(4)式の定義を模式的に示す。撮像光学系のベストフォーカス位置37に対して、±DOFの範囲38においては、良好な結像性能が維持できることを意味する。
【0034】図9の(b)に、対物レンズの開口数NAと照明波長λとに対する焦点深度DOFの関係を示す。回路パターン幅と略同等である分解能0.15μmを実現するNA(図9の(b)の符号36)と照明波長λ(図9の(b)の符号34)における焦点深度は、ほぼ±0.2μm(図9の(b)の符号39)となる。このため、この範囲にある回路パターンおよび欠陥は良好に解像し、この範囲から外れるにつれてコントラストが低下してデフォーカスする。そこで、自動焦点光学系の高さ検出誤差は、上記の焦点深度未満であることが必要となる。
【0035】図10に、透明膜40における自動焦点光学系の照明角度θと高さ検出誤差との関係を示す。透明膜40に照明角度θで光線41が入射すると、偏光方向に応じて、 Rp=(cosi/n−cosi/n)/(cosi/n+cosi/n) ……(5)式 Tp=1−Rp ……(6)式 Rs=(n×cosi−n×cosi)/(n×cosi+n×cosi) ……(7)式 Ts=1−Rs ……(8)式上記(5)式〜(8)式の関係によって、反射光線と透過光線に分岐する。ここで、Rは振幅反射率、Tは振幅透過率、s、pは偏光方向の添字、1と2は媒質の添字であり、nは屈折率、iは入射角度である。
【0036】空気中の屈折率を1、透明膜の屈折率を1.5、透明膜厚を1μm、下層膜での反射率を1(高さ検出誤差が最大の場合を仮定)として、照明角度θと高さ検出誤差との関係を求めたのが、図10の(b)であり、図中、黒丸はP偏光、黒四角はS偏光である。
【0037】図10の(b)から、高さ検出誤差が焦点深度±0.2μm(図10の(b)中の符号39)未満となる条件は、照明光線の光量ロスが少ないランダム偏光の場合(ワーストケースとしてP偏光を仮定すると)88度(図10の(b)中の符号43)以上であることが判る。光量ロスを許容してS偏光とすれば85度(図1010の(b)中の符号42)以上でも良い。これらの照明角度は、TTL方式での実現は困難である。
【0038】図11は、上記した図8から図10で述べた条件を備えた欠陥検査装置で、透明膜上の微細パターンが撮像される様子を示している。撮像光学系として、照明光の波長λ=0.266μm、対物レンズの開口数NA=0.85を仮定すると、分解能Resおよび焦点深度DOFは、Res=0.5×0.266/0.85=0.156μmDOF=0.5×0.266/(0.85×0.85)=0.184μmそれぞれ上記のようになる。
【0039】さらに、自動焦点の照明光線を、S偏光で85度以上の照明角度で入射することにより、高さ検出誤差を±0.2μm未満とすることができる。この結果、欠陥検査装置で検出される画像は、透明膜(透明な層間絶縁膜)2の表面14に合焦された状態となり、透明膜2上に形成された0.15μm幅の微細な回路パターン4を良好に結像した状態で検出でき、同一層の欠陥11を感度良く検出可能となる。一方、透明膜2の膜厚が0.2μm以上の場合は、下層回路パターン1のコントラストが低下して、本来検出すべきでない欠陥12の過検出を防止することができる。
【0040】図12は、上述した記載事項を前提として、本実施形態による検査結果と従来技術の検査結果とを対比して、模式的に示したものである。図12の(b)に示す本実施形態では、0.15μm幅が結像可能な撮像光学系(NA=0.85、λ=0.266μm)およびS偏光で照明角度85度以上の自動焦点光学系を組み合わせることにより、透明膜2の表面14(表面14の高さ±0.2μmの範囲内)の微細な回路パターン4(0.15μm幅)を解像して、感度良く欠陥11を検出することが可能である。さらに、透明膜2(膜厚0.2μm以上)の下層にある欠陥12の過検出45が防止される。
【0041】一方、図12の(a)に示した従来の検査条件(S偏光で照明角度85度未満の、約58度)においては、透明膜2の下層の表面10にフォーカスが一致するため、本来検出すべきでない欠陥12の過検出や、本来検出すべき欠陥の見逃し46が発生する。
【0042】なお、上述した例では、回路パターン幅を0.15μmとして発明の構成要件が満たすべき数値の説明を行った。今後、回路パターンが微細化すると、(3)式の分解能Resを更に向上する必要があり、照明波光の波長λおよび対物レンズの開口数NAを向上させる必要が生じる。この結果、(4)式の焦点深度DOFが浅くなるため、図10の(b)に示す、高さ検出誤差を更に低減する必要が生じる。この場合、S偏光において照明角度を88度(図10の(b)中の符号43)以上とすることが必要となるが、本発明の構成要件において解決可能である。
【0043】図13は、本発明の第2実施形態に係る半導体ウェハーの欠陥検査装置の構成を示す図である。本実施形態が前述した第1実施形態と相違するのは、第1実施形態の構成に、温度センサ50と、合焦位置オフセット調整部51とを付加したことにある。
【0044】欠陥検査装置の対物レンズは、短い照明波長において収差補正がなされており、多数枚のレンズからなることが多い。このため、摂氏1度程度の温度変化であっても、焦点距離が焦点深度相当変動することが避けられない。そこで、第1実施形態で述べた性能を長時間維持するためには、経時的に変動する焦点距離を補正する必要がある。なぜなら、自動焦点光学系は撮像光学系とは別光路からなるため、焦点距離が変動すると合焦位置とは異なる位置に毎回ウェハー17の高さが調節され、検出される画像がデフォーカスするためである。
【0045】温度が変化するとレンズが膨張または収縮して焦点距離が変動する。このため、温度と焦点距離の関係を予め計測しておく。図14に、その計測例を示す。横軸は温度、縦軸は焦点距離を示す。これらは予め温度を変化させて計測することが可能である。また、図1414の関係は、光学シミュレーションによっても算出することが可能である。
【0046】図14の関係が既知であれば、温度センサ50で計測した対物レンズ5の温度から、現在の焦点距離が予測可能となり、合焦位置のオフセットを補正することが可能となる。そこで、予め計測もしくはシミュレーションにより算出した温度と合焦位置オフセットとの関係(図14の関係)を、合焦位置オフセット調整部51に記憶させておく。そして、合焦位置オフセット調整部51は、温度センサ50による温度検出結果に基づき、図14の関係から合焦点位置オフセットを予測し、この予測量に基づき合焦位置のオフセットを修正する信号を、Zステージ制御部13に出力する。これにより、温度変化に起因する合焦位置のオフセットを、合焦位置オフセット調整部51により補正させることが可能となる。合焦位置オフセット調整部51は、例えば、上記オフセット調整を前回のゼロ点に加算させることにより実行する。
【0047】図15は、本発明の第3実施形態に係る半導体ウェハーの欠陥検査装置の構成を示す図である。本実施形態が前述した第1実施形態と相違するのは、第1実施形態の構成に、TTL方式の焦点位置測定光学系と、該焦点位置測定光学系の測定対象となる焦点位置測定用の試料53とを付加したことにある。本実施形態においても、前記第2実施形態と同様に、経時的に変動する撮像光学系の焦点距離を補正できるようにしている。
【0048】焦点位置測定用の試料53は、その表面高さが、ウェハー17の高さと略同一高さとなるように設定されており、かつ、その平坦な表面は、照明光を概略全反射するミラー面として構成されていて、ウェハー17と共にX、Y、Zステージ(20、21、22)上に取り付けられている。図16の(a)は、焦点位置測定用の試料53とウェハー17との関係を示す平面図で、試料53は、ここでは、ウェハー17の外周を囲むようにリング状に形成されたものとしているが、試料53の形状はこれに限られるものではない。また、試料53の表面高さの設定位置も任意である。
【0049】TTL方式の焦点位置測定系光学は、TTLの自動焦点光学系と同一であり、例えば照明光路に設置されたスリット54により絞り込んだ照明光によって、試料53上の所定の領域(撮像用の照明領域以外の領域=照明領域におけるイメージセンサ19に対応する領域以外の領域)を照明し、試料53からの反射光を、ダイクロイックミラー55により分岐させ、この分岐させて取り出した光路を、ハーフミラーおよびミラーを用いてさらに2つに分岐して、それぞれの光路において結像位置と共役な位置の前後にそれぞれ配置した受光センサ56によって、センシングするようにしたものである。そして、この2つの受光センサ56、56の出力をTTL焦点位置測定部57において比較し、合焦状態を計測するものである。このような、TTLの焦点位置測定光学系では、試料53の表面高さが対物レンズ5の合焦位置に一致した場合、2つのセンサ56のコントラストは等しくなる。
【0050】このため、温度変化等によって、自動焦点光学系による焦点位置に対して対物レンズ5の合焦位置が変動した場合であっても、同一箇所をTTL方式の焦点位置測定系で測定することにより、TTL焦点位置測定部57から、Zステージ制御部13に自動焦点のオフセット補正信号を与えることによって、自動焦点のオフセットを正確に補正できる。つまり、TTL方式の焦点位置測定光学系の光線と撮像光学系の光線は、共に対物レンズ5を通過するので、TTL方式の焦点位置測定光学系の焦点位置を、撮像光学系の焦点位置と等価なものと見なすことができ、このため、自動焦点光学系による焦点位置に対する位置ずれ量を、TTL焦点位置測定部57で正確に演算することができ、この演算結果に基づき、TTL焦点位置測定部57からZステージ制御部13に自動焦点のオフセット補正信号を与えることで、自動焦点のオフセットを正確に補正できる。この結果、図1616の(b)に示すように、焦点位置測定用の試料53上において、自動焦点光学系の反射位置57とTTL方式の焦点位置測定系の合焦位置57とが、一致するように制御することが可能となり、以って、ウェハー17の透明膜上においても、自動焦点光学系の反射位置とTTL方式の焦点位置測定光学系の合焦位置(つまり、撮像光学系の合焦位置)とが一致するように制御することが可能になる。
【0051】以下、図17のフローチャートに基づき、本実施形態の動作を説明する。まず、検査開始前に、ウェハー周辺に設けられた試料53の初期位置58(図16R>6の(a)参照)が、自動焦点光学系およびTTL方式の焦点位置測定光学系の測定位置となるようにステージを移動させる(ステップS1)。次に、試料53の初期位置58において、自動焦点光学系による測定結果を用いて、Zステージ22を駆動制御して自動焦点合わせ処理を実行させ(ステップS2)、然る後、TTL方式の焦点位置測定光学系による焦点位置測定を実行させる(ステップS3)。次に、自動焦点光学系による合焦位置と、TTL方式の焦点位置測定光学系による合焦位置とのずれ量を、TTL焦点位置測定部57で算出し、この算出結果に基づく自動焦点のオフセット補正信号をZステージ制御部13に与えて、自動焦点光学系による自動焦点検出値が対物レンズ5の合焦位置と一致するようにオフセット補正する(ステップS4)。この後、Xステージ22を移動させて、ウェハー17上の所定領域の欠陥検査が実行され、Xステージ22が往動完了した時点でYステージ21が1ステップ駆動され、次にXステージ22が復動されて、ウェハー17上の次の所定領域の欠陥検査が実行される(ステップS5)。そして、Xステージ22が1往復し、自動焦点光学系の反射位置が試料53上の位置59(図16の(a)参照)となった時点で、Xステージ22の動作を一旦停止させて、欠陥検査が終了したか否かを判断する(ステップS6)。検査が終了していない場合は、Yステージ21を1ステップ駆動して、自動焦点光学系の反射位置を、次のオフセット補正用の測定位置60(図16の(a)参照)に移動させ(ステップS7)、然る後、再度、ステップS2〜S4において自動焦点のオフセットを補正した後、ステップS5で欠陥検査を実行し、以下、ウェハー17上の全領域の検査が完了するまで、上記の動作を繰り返す。
【0052】なお、上述した例では、自動焦点のオフセット補正を、Xステージ22の1往復毎に行っているが、オフセット補正の頻度は、周囲の環境変化の程度などに応じて、任意に増減可能であることは云うまでもない。
【0053】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、透明な層間絶縁膜上の微細パターンおよび同一層の欠陥を感度良く検出でき、かつ、下層のパターンおよび同一層の欠陥をデフォーカスした状態で検出できるので、本来検査したい工程の欠陥のみが検出可能となる。この結果、工程別の欠陥数を正確に把握することが可能となり、的確なな不良発生防止対策を講じることが可能となる。また、本発明によれば、上記のような性能を、温度等の環境変化に影響を受けることなく、長期間安定に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体ウェハーの欠陥検査装置の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の各実施形態で用いられる、自動焦点光学系の検出原理を示す説明図である。
【図3】図1中の画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】CMP加工されるウェハーの断面を示す説明図である。
【図5】対物レンズの開口数と広がり角との関係を示す説明図である。
【図6】透明膜に入射する光線の入射角と反射率との関係を示す説明図である。
【図7】TTL方式の自動焦点光学系によって下層パターンに合焦した様子を示す説明図である。
【図8】NAとλと分解能との関係を示す説明図である。
【図9】NAとλと焦点深度との関係を示す説明図である。
【図10】透明膜における自動焦点光学系の照明角度と高さ検出誤差との関係を示す説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態の構成により、透明膜上の微細パターンが撮像される様子を示す説明図である。
【図12】従来技術による欠陥検査の様子と、本発明の第1実施形態による欠陥検査の様子とを示す説明図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る半導体ウェハーの欠陥検査装置の構成を示す説明図である。
【図14】撮像光学系における温度と焦点位置との関係を示す説明図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る半導体ウェハーの欠陥検査装置の構成を示す説明図である。
【図16】本発明の第3実施形態における、焦点位置測定用の試料や検査時のステージ移動シーケンスの概要などを示す説明図である。
【図17】本発明の第3実施形態における、欠陥検査動作の1例の概要を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
1 下層回路パターン
2 層間絶縁膜(透明膜)
3 平坦な表面
4 回路パターン
5 対物レンズ
6 72度
7 30%
8 TTL方式で照明した光線
10 下層回路パターン1の形成
11 回路パターン4と同一層で発生した欠陥
12 下層回路パターン1と同一層で発生した欠陥
13 Zステージ制御部
14 層間絶縁膜(透明膜)2の表面
15 照明光源
16 ハーフミラー
17 ウェハー
18 結像レンズ
19 イメージセンサ
20 Xステージ
21 Yステージ
22 Zステージ
23 リニアスケール
24 タイミング信号
25 スリット
26 結像レンズ
27 結像レンズ
28 受光センサ
29 画像処理部
30a 遅延メモリ
30b エッジ検出回路
30c エッジ検出回路
30d 2値化回路
30e 2値化回路
30f 不一致検出回路
30g 位置合わせ回路
30h 欠陥判定回路
31 繰り返しパターン
32 結像位置
33 像
34 0.2〜0.3μm
35 0.15μm
36 0.7〜0.9
37 ベストフォーカス位置
38 DOF範囲
39 0.2μm
40 透明膜
41 光線
42 85度
43 88度
45 過検出防止
46 見逃し
50 温度センサ
51 合焦位置オフセット調整部
53 焦点位置測定用の試料
54 スリット
55 ダイクロイックミラー
56 受光センサ
57 合焦位置(反射位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本来同一形状となるべきパターンが複数規則的に配置された被検査物の検査装置であって、分解能0.18μm以下、より好ましくは0.13μm以下となる照明波長と対物レンズ開口数との関係を備えた撮像光学系と、該撮像光学系の結像位置に配置された光電変換器と、前記撮像光学系とは別に設けられた光路からなり入射角度85度以上、より好ましくは88度以上で照明する自動焦点光学系と、該自動焦点光学系の検出信号に基づき前記撮像光学系の焦点位置を調節する手段と、前記光電変換器の電気信号を処理する手段とを、有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】 請求項1記載の欠陥検査装置において、温度検出手段と、予め計測もしくはシミュレーションにより算出した温度と合焦点位置オフセットとの関係を記憶する手段と、前記温度検出手段による温度検出結果に基づき、温度と合焦点位置オフセットとの前記関係から合焦点位置オフセットを予測する手段と、該手段による予測量に基づき合焦点位置オフセットを修正する手段とを、備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】 請求項1記載の欠陥検査装置において、撮像光学系を分岐して構成される焦点位置測定光学系と、前記被検査物とは別に設けられ前記焦点位置測定光学系による測定対象となる試料と、前記試料において前記焦点位置測定光学系により合焦位置オフセットを計測し、この計測結果に基づき前記撮像光学系とは別に設けられた前記自動焦点光学系のオフセットを調節する手段とを、備えることを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図10】
image rotate


【図14】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図15】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【公開番号】特開2002−90311(P2002−90311A)
【公開日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−282144(P2000−282144)
【出願日】平成12年9月18日(2000.9.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】