説明

記憶素子及び記憶装置

【課題】電力の供給が停止した後もデータを保持することができる、新たな構成の記憶素子を提供することを目的の一とする。
【解決手段】記憶素子は、ラッチ回路と、第1の選択回路と、第2の選択回路と、第1の不揮発性記憶回路と、第2の不揮発性記憶回路と、を有する。また、第1の不揮発性記憶回路及び第2の不揮発性記憶回路は、それぞれトランジスタ及び容量素子を有する。第1及び第2の不揮発性記憶回路のそれぞれが有するトランジスタは、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタである。当該トランジスタは、オフ電流が極めて低いため、トランジスタと容量素子の接続点であるノードにデータが入力された後、トランジスタがオフ状態となり、電源電圧の供給が停止しても、長期間にわたりデータを保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶素子を利用した記憶装置及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器の普及に伴い、電子機器の高性能化の要求が高まっている。このような電子機器の高性能化を実現するためには、メモリの高速化、インターフェースの高速化、外部機器の処理性能の向上などが挙げられるが、とりわけメモリの高集積化及び大容量化が求められている。
【0003】
ここでいうメモリとは、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、マイクロプロセッサ(MPU:MicroProcessor Unit)に含まれるレジスタやキャッシュメモリなども含まれる。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータを保持するために設けられている。また、キャッシュメモリは、演算回路とメインメモリとの間に介在し、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速に行うために設けられている。レジスタやキャッシュメモリ等の記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータの書き込みを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップが、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。
【0004】
SRAMのメモリセル(記憶素子とも記す)は、1ビットの情報を記憶するラッチ回路と、2個のアクセストランジスタ(nMOSFET)とで構成される。そして、ラッチ回路は、一対のドライバトランジスタ(nMOSFET)と、一対のロードトランジスタ(pMOSFET)とで構成されている。SRAMは、このようなメモリセルがマトリクス状に配列されており、ワード線およびビット線の電位を制御することにより、特定のメモリセルの読出し・書込み・消去の動作が行われる。
【0005】
SRAMは、常時電力が供給状態にあるラッチの動作状態(一対の交差接続トランジスタのうち、一方がオンかオフかの状態)によってその記憶状態を保持している。SRAMでは、DRAMのようなリフレッシュ動作は不要でありラッチ回路の動作状態を維持するのに必要な最低限の電源電流しか消費しないが、SRAMの微細化に伴い、リーク電流による消費電力が増大するという問題が生じている。例えば、一対のロードトランジスタの代わりに一対の容量素子を用いることで、消費電力を低減するという報告もなされている(特許文献1)。しかしながら、さらに大容量化が進んだ場合、リーク電流による消費電力増大が懸念される。
【0006】
また、SRAMは、揮発性であるため、電力の供給がなくなるとデータが失われるため、長期間の記憶の保持には、磁性材料や光学材料を利用した別の記憶装置が必要となる。近年、省エネルギー対策のひとつとして電源を切ってもデータが消失せず、電源オンで高速に動作復帰するノーマリ・オフ型コンピュータが注目されており、不揮発性ロジック及び不揮発性メモリの高性能化は必須の課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−186251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上述の問題に鑑み、本発明の一態様は、リーク電流による消費電力が低減された記憶素子を提供することを目的の一とする。または、電力の供給が停止した後もデータを保持可能な記憶素子を提供することを目的の一とする。または、電力の供給を停止することで消費電力が抑えられた記憶素子を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る記憶素子は、ラッチ回路と、第1の選択回路と、第2の選択回路と、第1の不揮発性記憶回路と、第2の不揮発性記憶回路と、を有する。
【0010】
具体的には、第1の制御信号に応じて、第1のデータ信号を出力する第1の選択回路と、第1の制御信号に応じて、第1のデータ信号の反転信号である第2のデータ信号を出力する第2の選択回路と、第1のデータ信号及び第2のデータ信号が入力され、電源電圧が供給されている期間のみ、第1のデータ信号及び第2のデータ信号を保持するラッチ回路と、第2の制御信号に応じて、ラッチ回路に保持された第1のデータ信号が入力される第1の不揮発性記憶回路と、第2の制御信号に応じて、ラッチ回路に保持された第2のデータ信号が入力される第2の不揮発性記憶回路と、を有し、第1の不揮発性記憶回路及び第2の不揮発性記憶回路は、電源電圧の供給が停止したあとも、第1のデータ信号及び第2のデータ信号を保持する、記憶素子である。
【0011】
第1の不揮発性記憶回路は、第1のトランジスタ及び第1の容量素子を有し、第2の不揮発性記憶回路は、第2のトランジスタ及び第2の容量素子を有する。
【0012】
ここで、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタとして、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタを用いられている。当該トランジスタは、チャネルが結晶性のシリコン膜に形成されるトランジスタと比較して、オフ電流が極めて低いという特徴を有している。したがって、第1のトランジスタと第1の容量素子の接続点であるノードにデータが入力された後、第1のトランジスタがオフ状態となり、電源電圧の供給が停止しても、長期間にわたりデータを保持することができる。つまり、記憶素子を不揮発性とすることができる。同様に、第2のトランジスタと第2の容量素子の接続点であるノードにデータが入力された後、第2のトランジスタがオフ状態となり、電源電圧の供給が停止しても、長期間にわたりデータを保持することができる。
【0013】
記憶素子からデータを読み出すためには、ラッチ回路へ電源電位の供給を開始し、第1の不揮発性記憶回路からラッチ回路を介して第1の選択回路へ、第2の不揮発性記憶回路からラッチ回路を介して第2の選択回路へ、それぞれデータを読み出せばよい。
【0014】
ラッチ回路は、少なくとも2つのトランジスタで構成することができる。また、第1の選択回路及び第2の選択回路は、少なくとも1つのトランジスタで構成することができる。ラッチ回路、第1の選択回路、及び第2の選択回路で用いるトランジスタとして、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成されるトランジスタを用いることができる。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、元素周期表における第14族の半導体材料を用いることができる。
【0015】
ラッチ回路、第1の選択回路、及び第2の選択回路に用いるトランジスタは、nチャネル型トランジスタでも、pチャネル型トランジスタでもよい。本発明の一態様では、ラッチ回路に用いるトランジスタをpチャネル型トランジスタとする。第1の選択回路及び第2の選択回路において、トランジスタをそれぞれ1つずつ用いる場合には、nチャネル型トランジスタとする。なお、第1の選択回路及び第2の選択回路を、それぞれ2つずつ用いる場合には、nチャネル型トランジスタと、pチャネル型トランジスタとを組み合わせて構成することが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る記憶素子を一又は複数用いることにより、記憶装置を作製することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、リーク電流による消費電力が低減された記憶素子を提供することができる。または、電力の供給が停止した後もデータを保持が可能な記憶素子を提供することができる。また、電力の供給を停止することで消費電力を抑えられた記憶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】記憶素子の回路図。
【図2】記憶素子の動作を示すタイミングチャート。
【図3】記憶素子の回路図。
【図4】記憶装置のブロック図。
【図5】記憶装置の作製工程を示す図。
【図6】記憶装置の作製工程を示す図。
【図7】記憶装置の作製工程を示す図。
【図8】記憶装置の作製工程を示す図。
【図9】信号処理回路のブロック図。
【図10】携帯用の電子機器のブロック図。
【図11】メモリ回路のブロック図。
【図12】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図13】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図14】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図15】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図16】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図17】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図18】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図19】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図20】酸化物半導体膜を用いたトランジスタ特性のグラフ。
【図21】試料1のトランジスタのBT試験後のV−I特性を示す図。
【図22】試料2のトランジスタのBT試験後のV−I特性を示す図。
【図23】試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す図。
【図24】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を示す図。
【図25】Iおよび電界効果移動度のV依存性を示す図。
【図26】基板温度としきい値電圧の関係および基板温度と電界効果移動度の関係を示す図。
【図27】半導体装置の上面図及び断面図。
【図28】半導体装置の上面図及び断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0021】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0022】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る記憶素子について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0024】
〈記憶素子の構成〉
図1に、本発明の一態様に係る記憶素子の一例を示す。図1に示す記憶素子100は、ラッチ回路101と、選択回路102と、選択回路103と、第1の不揮発性記憶回路121と、第2の不揮発性記憶回路122と、を有する。
【0025】
ラッチ回路101は、トランジスタ108と、トランジスタ109とを有する。ラッチ回路101の第1の端子は、トランジスタ108のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、トランジスタ109のソース又はドレインの一方に相当し、第3の端子は、トランジスタ108のソース又はドレインの他方(またはトランジスタ109のソース又はドレインの他方)に相当する。また、トランジスタ108のゲートは、トランジスタ109のソース又はドレインの一方と接続され、トランジスタ109のゲートは、トランジスタ108のソース又はドレインの一方と接続され、トランジスタ108のソース又はドレインの他方は、トランジスタ109のソース又はドレインの他方と、接続されている。ラッチ回路101の第3の端子には、電位V1が印加される。
【0026】
選択回路102は、トランジスタ110を用いて構成される。選択回路102の第1の端子は、トランジスタ110のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、トランジスタ110のソース又はドレインの他方に相当し、第3の端子は、トランジスタ110のゲートに相当する。選択回路102の第1の端子は、ラッチ回路101の第1の端子と接続される。また、選択回路102の第2の端子には、データ線Dが接続される。該データ線Dに入力される信号は、ハイレベル電位であってもローレベル電位であってもよい。
【0027】
選択回路103は、トランジスタ111を用いて構成される。選択回路103の第1の端子は、トランジスタ111のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、トランジスタ111のソース又はドレインの他方に相当し、第3の端子は、トランジスタ111のゲートに相当する。選択回路103の第1の端子は、ラッチ回路101の第1の端子と接続される。また、選択回路103の第2の端子には、データ線DBが接続される。該データ線DBに入力される信号は、ハイレベル電位であってもローレベル電位であってもよい。なお、データ線DBには、データ線Dの反転信号が入力される。
【0028】
選択回路102の第3の端子、及び選択回路103の第3の端子には、制御信号S1が入力される。選択回路102の第3の端子に制御信号S1が入力されることによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(トランジスタ110のオン状態またはオフ状態)が選択される。同様に、選択回路103の第3の端子に制御信号S1が入力されることによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(トランジスタ111のオン状態またはオフ状態)が選択される。
【0029】
第1の不揮発性記憶回路121は、トランジスタ104と容量素子106とを有する。第1の不揮発性記憶回路121の第1の端子は、トランジスタ104のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、容量素子106の一対の電極のうちの一方に相当し、第3の端子は、トランジスタ104のゲートに相当する。ここで、トランジスタ104のソース又はドレインの一方は、ラッチ回路101の第1の端子と接続され、トランジスタ104のソース又はドレインの他方は、容量素子106の一対の電極のうちの他方と接続される。ここで、トランジスタ104と、容量素子106との接続点をノードN1とする。
【0030】
第2の不揮発性記憶回路122は、トランジスタ105と容量素子107とを有する。第2の不揮発性記憶回路122の第1の端子は、トランジスタ105のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、容量素子107の一対の電極のうちの一方に相当し、第3の端子は、トランジスタ105のゲートに相当する。ここで、トランジスタ105のソース又はドレインの一方は、ラッチ回路101の第2の端子と接続され、トランジスタ105のソース又はドレインの他方は、容量素子107の一対の電極のうちの他方と接続される。ここで、トランジスタ105と、容量素子107との接続点をノードN2とする。
【0031】
また、第1の不揮発性記憶回路121の第2の端子と、第2の不揮発性記憶回路122の第2の端子とは接続される。つまり、容量素子106の一対の電極のうちの一方は、容量素子107の一対の電極のうちの一方と接続される。また、容量素子106の一対の電極のうちの一方及び容量素子107の一対の電極のうちの一方には電位V2が印加される。
【0032】
第1の不揮発性記憶回路121の第3の端子と、第2の不揮発性記憶回路122の第3の端子とは接続される。つまり、トランジスタ104のゲートは、トランジスタ105のゲートと接続される。また、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートには、制御信号S2が入力される。
【0033】
ここで、トランジスタ104及びトランジスタ105は、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタである。酸化物半導体材料として、例えば、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料を用いることができる。また、水素や水などの不純物が低減されることにより、高純度化された酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタは、そのオフ電流密度を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下とすることができる。このオフ電流密度は、結晶性を有するシリコン膜にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流密度と比較して極めて低い値である。その結果、トランジスタ104がオフ状態である場合、ノードN1の電位を長期間にわたり保持することができる。同様に、トランジスタ105がオフ状態である場合、ノードN2の電位を長期間にわたり保持することができる。さらには、記憶素子100の消費電力を低減することができる。
【0034】
また、トランジスタ108、トランジスタ109、トランジスタ110、及びトランジスタ111は、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成されるトランジスタである。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、元素周期表における第14族の半導体材料を用いることができる。また、トランジスタ108、トランジスタ109、トランジスタ110、及びトランジスタ111は、nチャネル型トランジスタでも、pチャネル型トランジスタでもよい。本実施の形態では、トランジスタ108及びトランジスタ109は、pチャネル型トランジスタとし、トランジスタ110及びトランジスタ111は、nチャネル型トランジスタとする。
【0035】
〈記憶素子の駆動方法〉
次に、図1に示す記憶素子の駆動方法について、図2を参照して説明する。図2は、図1に示す記憶素子のタイミングチャートである。
【0036】
図1及び図2を用いて記憶素子への書き込み、電源電圧の供給の停止、読み出しを行う方法について説明する。図2のタイミングチャートにおいて、Dはデータ線Dの電位を示し、DBはデータ線DBの電位を示し、S1に制御信号S1の電位を示し、S2に制御信号S2の電位を示し、N1はノードN1の電位を示し、N2はノードN2の電位を示し、V1は電位V1を示し、V2は電位V2を示す。
【0037】
期間1は、記憶素子の非アクティブ期間である。期間1では、ラッチ回路101の第3の端子(トランジスタ108のソース又はドレインの他方及びトランジスタ109のソース又はドレインの他方)に、電位V1としてハイレベル電位(例えばVDD)が入力されている。また、容量素子106の一対の電極のうちの一方及び容量素子107の一対の電極のうちの一方には、電位V2としてローレベル電位(例えばVSS)が入力されている。この際、選択回路102の第2の端子には、DataAが入力されており、選択回路103の第2の端子には、DataABが入力されている。ここでは、DataAは、ハイレベル電位(例えばVDD)とし、DataABは、ローレベル電位(例えばVSS)として説明を行う。
【0038】
次に、選択回路102の第3の端子及び選択回路103の第3の端子に制御信号S1としてハイレベル電位(例えばVDD)を入力することにより、選択回路102の第1の端子と第2の端子との間を導通状態とし、選択回路103の第1の端子と第2の端子との間を導通状態とする。
【0039】
選択回路102の第1の端子と第2の端子との間が導通状態となることで、選択回路102の第1の端子からDataAを出力する。これにより、トランジスタ109のゲートには、ハイレベル電位(VDD)が入力され、トランジスタ109がオフ状態となる。また、選択回路103の第1の端子と第2の端子との間が導通状態となることで、選択回路103の第1の端子からDataABを出力する。これにより、トランジスタ108のゲートには、ローレベル電位(VSS)が入力され、トランジスタ108がオン状態となる。
【0040】
選択回路102の第1の端子と第2の端子との間が導通状態、及びトランジスタ108がオン状態となることにより、ラッチ回路101の第1の端子には、ハイレベル電位が入力される。つまり、ラッチ回路101の第1の端子に、DataAが保持された状態となる。また、選択回路103の第1の端子と第2の端子との間が導通状態、及びトランジスタ109がオフ状態となることにより、ラッチ回路101の第2の端子には、ローレベル電位が入力される。つまり、ラッチ回路101の第2の端子に、DataABが保持された状態となる。
【0041】
選択回路102の第1の端子と第2の端子の導通状態、及びトランジスタ108をオン状態とすることによりラッチ回路101の第1の端子の電位を早く確定することができる。同様に、選択回路103の第1の端子と第2の端子の導通状態、及びトランジスタ109をオン状態とすることによりラッチ回路101の第2の端子の電位を早く確定することができる。つまり、ラッチ回路101にデータを書き込むことができる。
【0042】
期間2は、記憶素子の書き込み期間である。期間2では、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートに制御信号S2としてハイレベル電位(例えば、VDDH。VDDHは、VDDよりもトランジスタ104又はトランジスタ105のしきい値電圧分高い電圧を表す)を入力することにより、トランジスタ104及びトランジスタ105をオン状態とする。これにより、ラッチ回路101の第1の端子に入力されている電位(VDD)が、ノードN1に入力され、ラッチ回路101の第2の端子に入力されている電位(VSS)が、ノードN2に入力される。言い換えると、ラッチ回路101の第1の端子に保持されているDataAが、ノードN1に入力され、第2の端子に保持されているDataABが、ノードN2に入力される。
【0043】
期間3は、記憶素子の電源電圧供給停止期間である。期間3では、まず、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートに制御信号S2としてローレベル電位(例えばVSS)を入力することにより、トランジスタ104及びトランジスタ105をオフ状態とする。次に、ラッチ回路101の第3の端子に電位V1としてローレベル電位(例えばVSS)を入力する。これにより、記憶素子へ電源電圧の供給が停止する。また、選択回路102の第3の端子及び選択回路103の第3の端子に制御信号S1としてVSSを入力することにより、選択回路102の第1の端子と第2の端子との間は非導通状態とし、選択回路103の第1の端子と第2の端子との間は非導通状態とする。
【0044】
ここで、トランジスタ104及びトランジスタ105をオフ状態とする前に電位V1をVSSとする、または制御信号S1をVSSとすると、ノードN1に保持されている電位(DataA)や、ノードN2に保持されている電位(DataAB)が変動してしまうおそれがある。また、選択回路102や選択回路103を介して、データが読み出されてしまったり、トランジスタ108及びトランジスタ109のオン状態又はオフ状態が変動してしまい、保持されたデータが消失してしまうおそれがある。したがって、トランジスタ104及びトランジスタ105をオフ状態とした後に、電位V1をローレベル電位及び制御信号S1をローレベル電位とすることが好ましい。
【0045】
電位V1及び制御信号S1をローレベル電位とすることにより、ラッチ回路101の第1の端子の電位及び第2の端子の電位は保持できなくなる。つまり、ラッチ回路101の第1の端子に保持されたDataA及び第2の端子に保持されたDataABは保持できなくなる。
【0046】
本発明の一態様においては、トランジスタ104及びトランジスタ105として、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタが用いられている。当該トランジスタは、オフ電流が極めて低いという特徴を有している。したがって、トランジスタ104及びトランジスタ105がオフ状態となっても、容量素子106によって保持された電位(ノードN1の電位)及び容量素子107によって保持された電位(ノードN2の電位)を長期間保持することができる。つまり、電源電圧の供給が停止した後において、ラッチ回路101の第1の端子が保持していた電位(DataA)は、ノードN1において保持することができ、ラッチ回路101の第2の端子が保持していた電位(DataAB)は、ノードN2において保持することができる。
【0047】
次に、ラッチ回路101の第3の端子に、電位V1としてハイレベル電位(VDD)を入力することで、電源電圧の供給を開始する。
【0048】
期間4は、記憶素子の読み出し期間である。期間4では、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートに制御信号S2としてハイレベル電位(VDDH)を入力することにより、トランジスタ104及びトランジスタ105をオン状態とする。次に、選択回路102の第3の端子及び選択回路103の第3の端子に制御信号S1としてハイレベル電位(VDD)を入力することにより、選択回路102の第1の端子と第2の端子との間を導通状態とし、選択回路103の第1の端子及び第2の端子との間を導通状態とする。
【0049】
これにより、ラッチ回路101の第1の端子の電位を、ノードN1が保持していた電位(DataA)とし、ラッチ回路101の第2の端子の電位を、ノードN2が保持していた電位(DataAB)とすることができる。また、ノードN1が保持していたDataA及びノードN2が保持していたDataABを、選択回路102及び選択回路103のそれぞれを介して、読み出すことができる。
【0050】
〈記憶素子の他の構成〉
次に、本発明の一態様に係る記憶素子の他の一例について、図3を参照して説明する。
【0051】
図3に示す記憶素子150は、ラッチ回路101と、選択回路102と、選択回路103と、トランジスタ104と、トランジスタ105と、容量素子106と、容量素子107と、インバータ114と、を有する。
【0052】
図3に示す記憶素子において、選択回路102は、トランジスタ110と、トランジスタ112とを有する。選択回路102の第1の端子は、トランジスタ110のソース又はドレインの一方及びトランジスタ112のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、トランジスタ110のソース又はドレインの他方及びトランジスタ112のソース又はドレインの他方に相当し、第3の端子は、トランジスタ110のゲートに相当し、第4の端子は、トランジスタ112のゲートに相当する。トランジスタ110のソース又はドレインの一方及びトランジスタ112のソース又はドレインの一方は、ラッチ回路101の第1の端子と接続されている。また、トランジスタ110のソース又はドレインの他方は、トランジスタ112のソース又はドレインの他方と接続されている。
【0053】
選択回路103は、トランジスタ111と、トランジスタ113とを有する。選択回路103の第1の端子は、トランジスタ111のソース又はドレインの一方及びトランジスタ113のソース又はドレインの一方に相当し、第2の端子は、トランジスタ111のソース又はドレインの他方及びトランジスタ113のソース又はドレインの他方に相当し、第3の端子は、トランジスタ111のゲートに相当し、第4の端子は、トランジスタ113のゲートに相当する。トランジスタ111のソース又はドレインの一方及びトランジスタ113のソース又はドレインの一方は、ラッチ回路101の第2の端子と接続されている。また、トランジスタ111のソース又はドレインの他方は、トランジスタ113のソース又はドレインの他方と接続されている。
【0054】
トランジスタ110のゲート及びトランジスタ111のゲートには、制御信号S1が入力される。また、トランジスタ112のゲート及びトランジスタ113のゲートには、インバータ114の出力端子から、制御信号S1が反転した信号が入力される。トランジスタ110のゲートに制御信号S1が入力されることによって、トランジスタ110のオン状態またはオフ状態が選択され、トランジスタ111のゲートに制御信号S1が入力されることによって、トランジスタ111のオン状態またはオフ状態が選択される。同様に、トランジスタ112のゲートに制御信号S1の反転信号が入力されることによって、トランジスタ112のオン状態またはオフ状態が選択され、トランジスタ113のゲートに制御信号S1の反転信号が入力されることによって、トランジスタ113のオン状態またはオフ状態が選択される。
【0055】
ここで、トランジスタ112及びトランジスタ113は、トランジスタ110などと同様に、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成されるトランジスタである。また、トランジスタ112及びトランジスタ113は、nチャネル型トランジスタでもよいし、pチャネル型トランジスタでもよい。本実施の形態では、トランジスタ112及びトランジスタ113は、pチャネル型トランジスタとする。
【0056】
〈記憶素子の駆動方法〉
次に、図3に示す記憶素子150の駆動方法について、図2を参照して説明する。
【0057】
期間1において、ラッチ回路101の第3の端子(トランジスタ108のソース又はドレインの他方及びトランジスタ109のソース又はドレインの他方)に、電位V1としてハイレベル電位が入力されている。また、容量素子106の一対の電極のうちの一方及び容量素子107の一対の電極のうちの一方には、電位V2としてローレベル電位が入力されている。この際、選択回路102の第2の端子(トランジスタ110のソース又はドレインの他方及びトランジスタ112のソース又はドレインの他方)には、DataAが入力されており、選択回路103の第2の端子(トランジスタ111のソース又はドレインの他方及びトランジスタ113のソース又はドレインの他方)には、DataABが入力されている。ここでは、DataAは、ハイレベル電位とし、DataABは、ローレベル電位として説明を行う。
【0058】
次に、選択回路102の第3の端子(トランジスタ110のゲート)及び選択回路103の第3の端子(トランジスタ111のゲート)に、制御信号S1としてハイレベル電位を入力することにより、トランジスタ110及びトランジスタ111をオン状態とする。また、制御信号S1は、インバータ114によって信号が反転するため、選択回路102の第4の端子(トランジスタ112のゲート)及び選択回路103の第4の端子(トランジスタ113のゲート)に、制御信号S1の反転信号(ローレベル電位)が入力されることにより、トランジスタ112及びトランジスタ113がオン状態となる。
【0059】
トランジスタ110及びトランジスタ112がオン状態となることで、トランジスタ109のゲートには、ハイレベル電位が入力され、トランジスタ109がオフ状態となる。また、トランジスタ111及びトランジスタ113がオン状態となることで、トランジスタ108のゲートには、ローレベル電位が入力され、トランジスタ108がオン状態となる。
【0060】
このとき、ラッチ回路101の第1の端子の電位は、選択回路102におけるトランジスタ110とトランジスタ112とのオン状態となるのがいずれか早い方によって決定される。同様に、ラッチ回路101の第2の端子の電位は、選択回路103におけるトランジスタ111とトランジスタ113とのオン状態となるのがいずれか早い方によって決定される。これにより、ラッチ回路101に早くデータを書き込むことができる。
【0061】
期間2において、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートに制御信号S2としてハイレベル電位を入力することにより、トランジスタ104及びトランジスタ105をオン状態とする。これにより、ラッチ回路101の第1の端子に入力されている電位が、ノードN1に入力され、ラッチ回路101の第2の端子に入力されている電位が、ノードN2に入力される。
【0062】
期間3において、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートに制御信号S2としてローレベル電位を入力することにより、トランジスタ104及びトランジスタ105をオフ状態とする。次に、ラッチ回路101の第3の端子に電位V1としてローレベル電位を入力する。これにより、記憶素子へ電源電圧の供給が停止する。また、トランジスタ110のゲート及びトランジスタ111のゲートに制御信号S2としてローレベル電位を入力することにより、トランジスタ110及びトランジスタ111をオフ状態とする。また、トランジスタ112のゲート及びトランジスタ113のゲートに制御信号S2の反転信号が入力されることにより、トランジスタ112及びトランジスタ113がオフ状態となる。
【0063】
電位V1及び制御信号S1をローレベル電位とすることにより、ラッチ回路101の第1の端子及び第2の端子の電位は保持できなくなる。しかし、トランジスタ104及びトランジスタ105として、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタを用いることにより、トランジスタ104及びトランジスタ105がオフ状態となっても、容量素子106によって保持された電位(ノードN1の電位)及び容量素子107によって保持された電位(ノードN2の電位)を長期間保持することができる。つまり、電源電圧の供給が停止した後において、ラッチ回路101の第1の端子が保持していた電位(DataA)は、ノードN1において保持することができ、ラッチ回路101の第2の端子が保持していた電位(DataAB)は、ノードN2において保持することができる。
【0064】
次に、ラッチ回路101の第3の端子に、電位V1としてハイレベル電位を入力することで、電源電圧の供給を開始する。
【0065】
期間4において、トランジスタ104のゲート及びトランジスタ105のゲートに制御信号S2としてハイレベル電位を入力することにより、トランジスタ104及びトランジスタ105をオン状態とする。
【0066】
次に、トランジスタ110のゲート及びトランジスタ111のゲートに制御信号S1としてハイレベル電位を入力することにより、トランジスタ110及びトランジスタ111をオン状態とする。また、制御信号S1は、インバータ114によって信号が反転するため、トランジスタ112のゲート及びトランジスタ113のゲートに、制御信号S1の反転信号が入力されることにより、トランジスタ112及びトランジスタ113がオン状態となる。
【0067】
トランジスタ110及びトランジスタ112がオン状態となることで、トランジスタ109のゲートには、ハイレベル電位が入力され、トランジスタ109がオフ状態となる。また、トランジスタ111及びトランジスタ113がオン状態となることで、トランジスタ108のゲートには、ローレベル電位が入力され、トランジスタ108がオン状態となる。
【0068】
このとき、ラッチ回路101の第1の端子の電位は、選択回路102におけるトランジスタ110とトランジスタ112とのオン状態となるのがいずれか早い方によって決定される。同様に、ラッチ回路101の第2の端子の電位は、選択回路103におけるトランジスタ111とトランジスタ113とのオン状態となるのがいずれか早い方によって決定される。したがって、図1に示す記憶素子と比較して早くラッチ回路101にデータを読み出すことができる。
【0069】
以上説明したように、本発明の一態様に係る記憶素子において、トランジスタ104及びトランジスタ105として、チャネルが酸化物半導体に形成されるトランジスタを用いている。当該トランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。したがって、記憶素子に電源電圧が供給されてない間(トランジスタ104及びトランジスタ105がオフ状態である間)も、ノードN1及びノードN2に保持された電位を長期間にわたり保持することができる。このようにして、記憶素子は、電源電圧の供給が停止した間もデータ(DataA及びDataAB)を保持することができる。さらには、記憶素子の消費電力を低減することができる。
【0070】
〈記憶素子の応用例〉
次に、図1及び図3に示す記憶素子の応用例について、図4を参照して説明する。図1及び図3に示す記憶素子100及び記憶素子150を集積化することにより、記憶装置200を作製することができる。
【0071】
図4は、(m×n)個の記憶素子100を有する記憶装置のブロック図の一例である。図4中の記憶素子100の構成として、図1を採用する場合について説明するが、記憶素子100の構成として、図3を採用することもできる。
【0072】
図4に示す記憶装置200は、m本(mは2以上の整数)の信号線S1と、m本の信号線S2と、n本(nは2以上の整数)のデータ線Dと、n本のデータ線DBと、電源線V1と、電源線V2と、記憶素子100が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ210と、第1の駆動回路211及び第2の駆動回路212と、を有する。第1の駆動回路211は、n本のデータ線D及びデータ線DBと接続されており、第2の駆動回路212は、m本の信号線S1及び信号線S2と接続されている。
【0073】
記憶素子100(1,1)〜100(m,n)へのアクセスは信号線S1と信号線S2で行われ、各データ線Dとデータ線DBは接続されたメモリセルにデータの読み出しや書き込みを行う。
【0074】
第1の駆動回路211は、列方向のメモリセルに対してデータ線Dとデータ線DBのアクセスを制御する。一方、第2の駆動回路212は、行方向のメモリセルに対して信号線S1と信号線S2のアクセスを制御する。
【0075】
上記の動作により、図4中のメモリセルアレイ210にランダムアクセスすることが可能である。
【0076】
本発明の一態様に係る記憶素子を、MPUなどが有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、消費電力を低減することができる。また、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。さらに、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、MPU全体、もしくはMPUを構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる。
【0077】
したがって、本発明の一態様により、電力の供給が停止した後もデータを保持することができる、新たな構成の記憶素子を提供することができる。また、該記憶素子の面積を縮小することができるため、記憶装置の高集積化を図ることができる。
【0078】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す記憶素子の作製方法の一例について図5乃至図8を参照して説明する。はじめに、記憶素子の下部に形成されるトランジスタ108の作製方法について説明し、その後、上部に形成されるトランジスタ104及び容量素子106の作製方法について説明する。なお、トランジスタ109、トランジスタ110、トランジスタ111、トランジスタ112、トランジスタ113は、トランジスタ108と同様に作製することができ、トランジスタ105及び容量素子107は、トランジスタ104及び容量素子106と同様に作製することができる。
【0079】
〈下部のトランジスタの作製方法〉
まず、基板300を用意する(図5(A)参照)。基板300としては、酸化物半導体以外の半導体材料を用いることができる。例えば、基板300として、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体基板を適用することができる。また、基板300として、SOI基板も適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成も含む。なお、基板300は、酸化物半導体材料を含まないため、酸化物半導体以外の半導体材料を含む基板300とも記す。ここでは、基板300として、単結晶シリコン基板を用いる場合について示す。
【0080】
基板300として、特に、シリコンなどの単結晶半導体基板を用いる場合には、実施の形態1に示すラッチ回路101、選択回路102、選択回路103などの動作を高速化することができるため好ましい。
【0081】
次に、基板300上に、素子分離絶縁膜を形成するためのマスクとなる保護層302を形成する(図5(A)参照)。保護層302としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを材料とする絶縁膜を用いることができる。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板300に添加してもよい。基板300がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0082】
次に、上記の保護層302をマスクとして、エッチングを行い、保護層302に覆われていない領域(露出している領域)の、基板300の一部を除去する。これにより、他の半導体領域と分離された半導体領域304が形成される(図5(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチングを用いることが好適であるが、ウェットエッチングを用いてもよい。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0083】
次に、半導体領域304を覆うように絶縁膜を形成し、半導体領域304に重畳する領域の絶縁膜を選択的に除去することで、素子分離絶縁膜306を形成する(図5(C)参照)。当該絶縁膜は、酸化シリコン、窒化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを材料とする絶縁膜を用いることができる。絶縁膜の除去方法としては、化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing、以下CMP処理という)などの研磨処理やエッチング処理などがあるが、そのいずれを用いてもよい。なお、半導体領域304の形成後、または素子分離絶縁膜306の形成後には、上記保護層302を除去する。
【0084】
ここで、CMP処理とは、被加工物の表面を基準にし、それにならって表面を化学的・機械的な複合作用により平坦化する手法である。より具体的には、研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被加工物と研磨布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら研磨ステージと被加工物とを各々回転または揺動させて、スラリーと被加工物との化学反応と、研磨布の被加工物との機械研磨の作用により、被加工物の表面を研磨する方法である。
【0085】
なお、素子分離絶縁膜306の形成方法として、絶縁膜を選択的に除去する方法の他、酸素または窒素を打ち込むことにより、絶縁性の領域を形成する方法などを用いることもできる。
【0086】
次に、半導体領域304の表面に絶縁膜を形成し、当該絶縁膜上に導電材料を含む層を形成する。
【0087】
絶縁膜は、後にゲート絶縁膜となるものであり、例えば、半導体領域304表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずれかの混合ガスを用いて行う。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いて絶縁膜を形成しても良い。当該絶縁膜は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0、z>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0、z>0))等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。また、絶縁膜の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とする。
【0088】
導電材料を含む層は、後にゲート電極となるものであり、例えば、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例について示す。
【0089】
次に、絶縁膜及び導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜308、ゲート電極310を形成する(図5(C)参照)。
【0090】
次に、半導体領域304に不純物元素を添加して、チャネル形成領域316および不純物領域320を形成する(図5(D)参照)。ここで、n型のトランジスタを形成する場合には、半導体領域304にリンや砒素を添加し、p型のトランジスタを形成する場合には、半導体領域304に硼素やアルミニウムなどの不純物元素を添加すればよい。ここで添加する不純物元素の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、その濃度を高くすることが望ましい。
【0091】
なお、ゲート電極310の周囲にサイドウォール絶縁膜を形成して、不純物元素が異なる濃度で添加された不純物領域を形成してもよい。
【0092】
次に、ゲート電極310、不純物領域320などを覆うように金属層322を形成する(図5(E)参照)。当該金属層322は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いて形成することができる。金属層322は、半導体領域304を構成する半導体材料と反応することによって低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。このような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバルト、白金等がある。
【0093】
次に、熱処理を施して、上記金属層322と半導体材料とを反応させる。これにより、不純物領域320に接する金属化合物領域324が形成される(図5(E)参照)。なお、ゲート電極310として、多結晶シリコンなどを用いる場合には、ゲート電極310の金属層322と接する部分にも、金属化合物領域が形成されることになる。
【0094】
上記熱処理としては、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができる。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理を実現できる方法を用いることが望ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成されるものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成することで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、金属化合物領域324を形成した後には、金属層322は除去する。
【0095】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁膜328を形成する(図6(A)参照)。絶縁膜328は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁膜328に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能となるため好適である。なお、絶縁膜328には、これらの材料を用いた多孔質の絶縁膜を適用してもよい。多孔質の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁膜328は、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、図6(A)では、絶縁膜328の単層構造を示すが、2層以上の積層構造としてもよい。
【0096】
次に、絶縁膜328に金属化合物領域324にまで達する開口を形成し、当該開口を埋め込むように導電材料を含む層を形成する。導電材料を含む層は、アルミニウム、銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成してもよい。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。該導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ソース電極又はドレイン電極330a、330bを形成する(図6(B)参照)。
【0097】
次に、絶縁膜328上に導電材料を含む層を形成する。該導電材料を含む層は、ソース電極又はドレイン電極330a、330bで用いる導電材料と同様の材料を用いて形成することができる。該導電材料を含む層にエッチング処理を行い、導電層336a、336b、336cを形成する(図6(C)参照)。
【0098】
以上により、酸化物半導体以外の半導体材料を含む基板300を用いたトランジスタ108を作製することができる(図6(C)参照)。このようなトランジスタ108は、高速動作が可能であるという特徴を有する。このため、トランジスタ108をラッチ回路101、選択回路102、選択回路103等に適用することにより、ラッチ回路101、選択回路102、選択回路103等の動作を高速化することができるため好適である。
【0099】
次に、上記の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁膜340を形成する(図6(D)参照)。絶縁膜340は、絶縁膜328で示した材料及び形成方法を適用することができる。
【0100】
次に、絶縁膜340に導電層336cにまで達する開口を形成し、当該開口を埋め込むように導電材料を含む層を形成する。導電材料を含む層は、ゲート電極310や、導電層336a、336b、336cを形成する際に示した材料及び形成方法を適用することができる。該導電材料を含む層に、エッチング処理を行い、電極329を形成する(図6(D)参照)。
【0101】
その後、トランジスタ104及び容量素子106の形成前の処理として、絶縁膜340にCMP処理を施して、絶縁膜340表面を平坦化させる。このとき、電極329の上面を露出させることが好ましい(図6(D)参照)。絶縁膜340の平坦化処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能であるが、トランジスタ104の特性を向上させるために、絶縁膜340の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。絶縁膜340の表面の平均面粗さ(Ra)として、0.1nm以上0.5nm未満とすることにより、絶縁膜340上に成膜される非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多い酸化物半導体膜とすることができる。ここで、平均面粗さ(Ra)は、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現される。平均面粗さ(Ra)は、下記の数1で表すことができる。
【0102】
【数1】

【0103】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0104】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体膜、絶縁膜などを形成する工程も含んでいてもよい。例えば、配線の構造として、絶縁膜及び導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した記憶装置を実現することも可能である。
【0105】
〈上部のトランジスタの作製方法〉
まず、絶縁膜340、電極329などの上に酸化物半導体膜を成膜する。
【0106】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0107】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0108】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0109】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0110】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0111】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0112】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0113】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0114】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、
(a−A)+(b−B)+(c−C)≦r
を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0115】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0116】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0117】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましい。
【0118】
酸化物半導体膜としてIn−Ga−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物ターゲットを用いることができる。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0119】
また、In−Sn−Zn系酸化物として、用いるターゲットの組成比は、In:Sn:Znが原子数比で、1:2:2、2:1:3、1:1:1、または20:45:35などとなる酸化物ターゲットを用いる。
【0120】
また、酸化物半導体膜としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0121】
また、ターゲットの相対密度は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。相対密度の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0122】
酸化物半導体膜は、スパッタリング法、分子線エピタキシー法、原子層堆積法またはパルスレーザー蒸着法により成膜することができる。また、酸化物半導体膜の膜厚は、5nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下とする。
【0123】
本実施の形態では、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面においてはa軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶(CAAC:C Axis Aligned Crystalともいう。)を含む酸化物について説明する。
【0124】
CAACを含む酸化物とは、広義に、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形または正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む酸化物をいう。
【0125】
CAACは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAACは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0126】
CAACに酸素が含まれる場合、酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAACを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAACが形成される基板面、CAACの表面などに垂直な方向)に揃っていてもよい。または、CAACを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、CAACが形成される基板面、CAACの表面などに垂直な方向)を向いていてもよい。
【0127】
CAACは、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0128】
このようなCAACの例として、膜状に形成され、膜表面または支持する基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる結晶を挙げることもできる。
【0129】
また、トランジスタ104(及びトランジスタ105)のチャネル形成領域をCAACとすることで、可視光または紫外光の照射、および熱やバイアスなどが加わることによるトランジスタ104(及びトランジスタ105)の電気特性の変動を抑制し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0130】
酸化物半導体膜をCAACとする方法として、例えば以下の2種類の方法によって行うことができる。1つの方法は、酸化物半導体膜の成膜を、基板を加熱しながら行う方法であり、もう1つの方法は、酸化物半導体膜の成膜を2回に分け、1度目の成膜の後、2度目の成膜の後のそれぞれに熱処理を行う方法である。
【0131】
基板を加熱しながら酸化物半導体膜の成膜を1回で行う場合には、基板温度は、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が250℃以上350℃以下とする。なお、酸化物半導体膜の成膜時に、基板を加熱する温度を高くすることで、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAACとすることができる。
【0132】
また、酸化物半導体膜の成膜を2回に分ける場合には、基板を基板温度100℃以上450℃以下に保ちながら、絶縁膜340の上に1層目の酸化物半導体膜を成膜し、窒素、酸素、希ガス、または乾燥空気の雰囲気下で、550℃以上基板の歪み点未満の熱処理を行う。該熱処理によって、1層目の酸化物半導体膜の表面を含む領域に結晶領域(板状結晶を含む)が形成される。そして、2層目の酸化物半導体膜を1層目の酸化物半導体膜よりも厚く形成する。その後、再び550℃以上基板の歪み点未満の熱処理を行い、表面を含む領域に、結晶領域(板状結晶を含む)が形成された1層目の酸化物半導体膜を結晶成長の種として、上方に結晶成長させ、2層目の酸化物半導体膜の全体を結晶化させる。なお、1層目の酸化物半導体膜は1nm以上10nm以下で成膜することが好ましい。
【0133】
上述の成膜方法によれば、酸化物半導体膜344が、5nm程度の膜厚であっても、短チャネル効果を抑制することができるため、好ましい。
【0134】
スパッタリング法により成膜される酸化物半導体膜中には、水素又は水(水酸基を含む化合物)が含まれていることがある。水素や水は、ドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。したがって、スパッタリング法を用いて、酸化物半導体膜を成膜する際、できる限り酸化物半導体膜に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。
【0135】
水素濃度を低減させるためには、酸化物半導体膜の成膜時に、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜中へ、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として吸着型の真空ポンプ(例えば、クライオポンプなど)を用いることで、排気系からアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0136】
スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基を含む化合物または水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。例えば、アルゴンの純度を、9N(99.9999999%)以上(HOは、0.1ppb、Hは、0.5ppb)とし、露点−121℃とする。また、酸素の濃度は、8N(99.999999%)以上(HOは、1ppb、Hは、1ppb)とし、露点−112℃とする。また、希ガスと酸素の混合ガスを用いる場合には、酸素の流量比率を大きくすることが好ましい。
【0137】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0138】
CAACの結晶性は、被形成面のラフネスの影響を受けるため、絶縁膜340の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。絶縁膜340表面を平坦化することにより、CAACの連続性を向上させることができる。絶縁膜340の表面の平均面粗さは、例えば、0.1nm以上0.5nm未満とすることが好ましい。
【0139】
上記のようにすることで、水素の混入が低減された酸化物半導体膜を成膜することができる。なお、上記スパッタリング装置を用いても、酸化物半導体膜には少なからず窒素を含んで形成される。例えば、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定される酸化物半導体膜の窒素濃度は、5×1018cm−3未満となる。
【0140】
酸化物半導体膜を成膜する際または成膜後において、酸化物半導体膜の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体膜における酸素欠損は、その酸素欠損の一部がドナーとなりキャリアである電子を生じる。キャリアである電子が生じることで、トランジスタ104のしきい値電圧がマイナス方向に変動してしまう。
【0141】
酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体膜に対して、第1の熱処理を行うことが好ましい。例えば、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体膜に加熱処理を施す。
【0142】
第1の熱処理の温度は、例えば、150℃以上基板歪み点温度未満、好ましくは250℃以上450℃以下、さらに好ましくは300℃以上450℃以下とし、酸化性雰囲気または不活性雰囲気で行う。ここで、酸化性雰囲気は、酸素、オゾンまたは窒化酸素などの酸化性ガスを10ppm以上含有する雰囲気をいう。また、不活性雰囲気は、前述の酸化性ガスが10ppm未満であり、その他、窒素または希ガスで充填された雰囲気をいう。処理時間は3分〜24時間とする。24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0143】
第1の熱処理に用いる加熱装置に特別な限定はなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、電気炉や、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。
【0144】
第1の熱処理によって、酸化物半導体膜から水素(水、水酸基を含む化合物)を放出させることができる。また、第1の熱処理によって、不純物が低減され、i型(真性半導体)または実質的にi型の酸化物半導体膜を形成することができる。
【0145】
また、第1の熱処理によって、酸化物半導体膜から不安定なキャリア源である水素を脱離させることができるため、トランジスタ104のしきい値電圧がマイナス方向へ変動することを抑制させることができる。さらに、トランジスタ104の信頼性を向上させることができる。
【0146】
次に、フォトリソグラフィ工程により酸化物半導体膜上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクを用いて、酸化物半導体膜を所望の形状にエッチングし、島状の酸化物半導体膜344を形成する(図7(A)参照)。なお、該レジストマスクは、フォトリソグラフィ工程の他にインクジェット法、印刷法等を適宜用いることができる。該エッチングは、酸化物半導体膜の端部がテーパ形状となるようにエッチングすることが好ましい。島状の酸化物半導体膜の端部をテーパ形状とすることで、本工程以降のトランジスタ104の作製において、形成される膜の被覆性を向上させることができ、該膜の断切れを防止することができる。テーパ形状は、該レジストマスクを後退させつつエッチングすることで形成することができる。
【0147】
次に、酸化物半導体膜344などの上に、導電材料を含む層を形成する。
【0148】
導電材料を含む層は、後にソース電極およびドレイン電極となるものであり、アルミニウム、クロム、銅、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、上述した金属材料を成分とする合金等を用いて形成することもできる。さらに、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いて形成することもできる。
【0149】
導電材料を含む層は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電材料を含む層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパ形状を有するソース電極又はドレイン電極342a、342bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0150】
また、導電材料を含む層は、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ(ITOともいう)、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いることができる。
【0151】
導電材料を含む層を選択的にエッチングしてソース電極又はドレイン電極342a、342b、及び電極342cを形成する(図7(B)参照)。ここで、ソース電極又はドレイン電極342aは、容量素子の電極として機能する。また、導電層336cと、電極342cとを電極329を介して接続することにより、半導体装置の下層に形成されるトランジスタと、上層に形成されるトランジスタとを接続することができる。
【0152】
導電材料を含む層のエッチングは、形成されるソース電極又はドレイン電極342a、342b、及び電極342cの端部がテーパ形状となるように行うことが好ましい。ここで、テーパ角は、例えば、30°以上60°以下とすることが好ましい。ソース電極又はドレイン電極342a、342bの端部がテーパ形状となるようにエッチングすることにより、後に形成されるゲート絶縁膜の被覆性が向上し、段切れを防止することができる。
【0153】
トランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極又はドレイン電極342a、及びソース電極又はドレイン電極342bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数十nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。また、微細化によって、記憶素子の消費電力を低減することも可能である。
【0154】
次に、ソース電極又はドレイン電極342a、342b、及び電極342cを覆い、かつ酸化物半導体膜344の一部と接するように、ゲート絶縁膜346を形成する(図7(C)参照)。
【0155】
ゲート絶縁膜346は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁膜346は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどを用いることができる。また、ゲート絶縁膜346として、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0、z>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0、z>0))などの高誘電率(high−k)材料を用いることもできる。ゲート絶縁膜346は、単層構造としても良いし、上記の材料を組み合わせて積層構造としても良い。また、その厚さは特に限定されないが、記憶素子を微細化する場合には、トランジスタの動作を確保するために薄くするのが望ましい。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0156】
上述のように、ゲート絶縁膜を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁膜346に、上述したhigh−k材料を用いると良い。high−k材料をゲート絶縁膜346に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、high−k材料を含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムなどのいずれかを含む膜との積層構造としてもよい。
【0157】
また、ゲート絶縁膜346は、第13族元素および酸素を含む絶縁材料としてもよい。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体材料との相性が良い。したがって、第13族元素および酸素を含む絶縁材料を酸化物半導体膜に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができる。
【0158】
ここで、第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一または複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0159】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体膜に接してゲート絶縁膜346を形成する場合に、ゲート絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体膜とゲート絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。また、酸化物半導体膜と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体膜への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0160】
なお、酸化物半導体膜344に第1の熱処理を行うと、水素などが放出されるとともに、酸化物半導体膜344に含まれる酸素も放出されてしまう。酸素が放出されることにより、酸化物半導体膜344には、酸素欠損が生じてしまう。酸素欠損の一部はドナーとなるため、酸化物半導体膜344にキャリアを発生させる原因となり、トランジスタの特性に影響を与えるおそれがある。
【0161】
そこで、酸化物半導体膜344に接するゲート絶縁膜346として、熱処理により酸素が脱離する絶縁膜を用いることが好ましい。
【0162】
本明細書等において、「熱処理により酸素が脱離する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算した酸素の脱離量(又は放出量)が1.0×1018cm−3以上、好ましくは3.0×1020cm−3以上であることをいう。また、「熱処理により酸素が脱離しない」とは、TDS分析にて、酸素原子に換算した酸素の脱離量(又は放出量)が1.0×1018cm−3未満であることをいう。
【0163】
以下、酸素の放出量をTDS分析で酸素原子に換算して定量する方法について説明する。
【0164】
TDS分析したときの気体の脱離量は、イオン強度の積分値に比例する。このため、絶縁膜のイオン強度の積分値と、標準試料の基準値との比により、気体の脱離量を計算することができる。標準試料の基準値とは、所定の密度の原子を含む試料において、当該原子に相当するイオン強度の積分値に対する当該原子の密度の割合である。
【0165】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の脱離量(NO2)は、下記の式で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸素原子及び質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0166】
【数2】

【0167】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。上記の式の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照できる。なお、上記した酸素の脱離量の数値は、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016cm−3の水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した数値である。
【0168】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の脱離量を評価することで、酸素原子の脱離量についても見積もることができる。
【0169】
なお、NO2は酸素分子の脱離量である。絶縁膜においては、酸素原子に換算したときの酸素の脱離量は、酸素分子の脱離量の2倍となる。
【0170】
熱処理により酸素が脱離する膜の一例として、酸素が過剰な酸化シリコン(SiOx(x>2))がある。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOx(x>2))とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位体積当たりのシリコン原子数および酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した値である。
【0171】
酸化物半導体膜344に接する絶縁膜(例えば、絶縁膜340やゲート絶縁膜346)として、熱処理により酸素が脱離する絶縁膜を用い、ゲート絶縁膜346の成膜後のいずれかの工程の後に、第2の熱処理を行うことにより、絶縁膜340やゲート絶縁膜346から酸素が脱離し、酸化物半導体膜344に酸素を供給することができる。これにより、酸化物半導体膜344に生じた酸素欠損を補償することができる。よって、酸化物半導体膜344にキャリアの生成を抑制することができるため、トランジスタの特性の変動を抑制することができる。
【0172】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、導電材料を含む層を成膜する。導電材料を含む層は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。導電材料を含む層を選択的にエッチングしてゲート電極348aおよび導電層348bを形成する。導電層348bは、容量素子の電極として機能する。なお、ゲート電極348aおよび導電層348bは、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0173】
次に、ゲート電極348a及び導電層348bが形成された後に、ゲート電極348a、ソース電極又はドレイン電極342a、342bをマスクとして、酸化物半導体膜344に、n型の導電性を付与するドーパントを添加し、一対のドーパント領域349a、349bを形成する。なお、酸化物半導体膜344のうち、ドーパント領域349aとドーパント領域349bとの間に挟まれた領域が、チャネル形成領域となる。また、チャネル形成領域は、酸化物半導体膜344において、ゲート絶縁膜346を介してゲート電極348aと重なる領域に形成される。
【0174】
ドーパント領域349a、349bを形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンなどの希ガスや、窒素、リン、ヒ素、アンチモンなどの15族原子などを用いることができる。例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、ドーパント領域349a、349b中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。n型の導電性を付与するドーパントが添加されているドーパント領域349a、349bは、酸化物半導体膜344中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、ドーパント領域349a、349bを酸化物半導体膜344に設けることで、ソース電極又はドレイン電極342a、342bの間の抵抗を下げることができる。
【0175】
次に、ゲート絶縁膜346、ゲート電極348a、および導電層348b上に、絶縁膜350及び絶縁膜352を形成する(図8(A)参照)。絶縁膜350及び絶縁膜352は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料、ポリイミド、アクリル等の有機材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜350及び絶縁膜352には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜350及び絶縁膜352の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。例えば、絶縁膜350に、無機材料を含む材料を用い、絶縁膜352に有機材料を含む材料を用いることもできる。
【0176】
また、酸化アルミニウム膜は、水素や水などに対するブロッキング性を有するため、絶縁膜350として用いることで、半導体装置の外部から混入する水素や水などが、酸化物半導体膜344に混入することを防止することができるため、好ましい。また、酸化アルミニウム膜は、酸素に対するブロッキング性も有するため、酸化物半導体膜344に含まれる酸素が外方拡散されてしまうことを抑制することもできる。絶縁膜350として、酸化アルミニウム膜を用いることにより、水素や水などが酸化物半導体膜344に混入することを防止するとともに、酸化物半導体膜344に含まれる酸素が外方拡散されてしまうことを抑制することができるため、トランジスタの電気的特性が変動してしまうことを抑制することができる。
【0177】
次に、ゲート絶縁膜346、絶縁膜350及び絶縁膜352に、ソース電極又はドレイン電極342b、又は電極342cにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。その後、ソース電極又はドレイン電極342b及び電極342cに接する導電材料を有する層を形成する。次に、導電材料を有する層にエッチング又はCMP処理することにより、電極354a、電極354bを形成する(図8(A)参照)。
【0178】
次に、絶縁膜352を覆い、電極354a及び電極354bと接するように、配線356を形成する(図8(B)参照)。配線356は、PVD法や、CVD法を用いて導電材料を有する層を形成した後、当該導電材料を有する層をパターニングすることによって形成される。また、導電材料を有する層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0179】
また、電極354a、電極354bを用いずに、配線356を形成してもよい。例えば、絶縁膜350の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、その後に、開口に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは、ソース電極又はドレイン電極342b、電極342c)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、アルミニウム膜のヒロックを防止することができる。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0180】
配線356を形成することにより、下層に形成されたトランジスタと、トランジスタ104のソース電極又はドレイン電極342bとを、接続することができる(図8(B)参照)。
【0181】
これにより、高純度化された酸化物半導体膜344を用いたトランジスタ104および容量素子106を有する記憶素子が完成する(図8(B)参照)。
【0182】
以上の工程により、酸化物半導体以外の半導体材料を用いたトランジスタ上に、酸化物半導体材料を用いたトランジスタが形成された記憶素子を作製することができる。
【0183】
上述の作製方法を用いることにより、水素やアルカリ金属の不純物が極めて低減された酸化物半導体膜344を得ることができる。このように酸化物半導体膜344に含まれる水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下とすることができる。また、酸化物半導体膜344中に含まれる、Li、Naなどのアルカリ金属、及びCaなどのアルカリ土類金属などの不純物は、低減されていることが好ましい。具体的には、SIMSにより検出されるLiが5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下、Naが5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下、Kは5×1015cm−3以下、好ましくは1×1015cm−3以下であることが好ましい。
【0184】
このような酸化物半導体膜344を用いてトランジスタ104を作製することにより、オフ電流が極めて小さいトランジスタを作製することができる。具体的には、オフ電流密度を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下とすることができる。このオフ電流密度は、結晶性を有するシリコン膜にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流密度と比較して極めて低い値である。このように、トランジスタ104は、オフ電流が極めて小さくすることができるため、記憶素子として用いることにより、長期にわたり記憶内容を保持することができる。
【0185】
本発明の一態様に係る記憶素子は、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成されるトランジスタで構成されるラッチ回路101、選択回路102、選択回路103上に、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタ104及びトランジスタ105、容量素子106、容量素子107を形成することができる。このように、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタ104及びトランジスタ105は、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成されるトランジスタの上に積層することが可能であるため、3次元的に記憶素子を構成することができる。したがって、記憶素子の2次元平面の面積を大幅に削減することができる。
【0186】
ところで、不揮発性のランダムアクセスメモリとして磁気トンネル接合素子(MTJ(Magnetic Tunneling Junction)素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが平行であれば低抵抗状態、反平行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。一方、本発明の一態様に係る記憶素子が有する第1及び第2の不揮発性記憶回路は、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタを利用したものであるので、原理が全く異なっている。表1はMTJ素子(表中、「スピントロニクス(MTJ素子)」で示す。)と、上記実施の形態で示す酸化物半導体を用いた第1及び第2の不揮発性記憶回路(表中、「OS/Si」で示す。)との対比を示す。
【0187】
【表1】

【0188】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0189】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0190】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0191】
一方、上記本実施の形態で示す第1及び第2の不揮発性記憶回路が有する、酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0192】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0193】
(実施の形態3)
本実施の形態では、CPUなどの信号処理回路などに好適な酸化物材料について、図12乃至図15を参照して説明する。
【0194】
CPUなどに用いられるトランジスタには、高い周波数帯でも動作することが求められる場合がある。当該トランジスタとしては、電界効果移動度が高いトランジスタを適用することが好ましい。例えば、当該トランジスタの電界効果移動度は、1〜30cm/V・s以上を有することが好ましい。このような高い電界効果移動度を有するトランジスタとして、チャネルが形成される酸化物膜にCAAC(C Axis Aligned Crystalともいう。)を有することで実現することが可能である。
【0195】
CAACに含まれる結晶構造の一例について図12乃至図14を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図12乃至図14は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図12において丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0196】
図12(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図12(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図12(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図12(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0197】
図12(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図12(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図12(B)に示す構造をとりうる。図12(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0198】
図12(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図12(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図12(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図12(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0199】
図12(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図12(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図12(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0200】
図12(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図12(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図12(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0201】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0202】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図12(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図12(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図12(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)、4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0203】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0204】
図13(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図13(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図13(C)は、図13(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0205】
図13(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図13(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図13(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0206】
図13(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0207】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図12(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0208】
具体的には、図13(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0209】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、などを用いた場合も同様である。
【0210】
例えば、図14(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0211】
図14(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0212】
図14(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図14(C)は、図14(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0213】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0214】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図14(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0215】
CPUなどに用いられるトランジスタには、高い周波数帯で動作可能であることが求められる。その場合のトランジスタの電界効果移動度は、30cm/Vs以上有することが好ましい。このような電界移動度を有するトランジスタとして、酸化物半導体膜をCAACとすることにより実現することが可能である。
【0216】
このようなCAACを、チャネルが形成される酸化物膜に用いることにより、30cm/V・s以上の電界効果移動度を有するトランジスタを作製することができる。該トランジスタは、高い周波数でも動作することが可能であるため、CPUなどの高周波数帯で用いられるトランジスタとして、好適である。
【0217】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図1で示した記憶素子100や、図4で示した記憶装置200を用いた信号処理回路の構成について説明する。
【0218】
図9に、本発明の一態様に係る信号処理回路の一例を示す。信号処理回路は、一または複数の演算回路と、一または複数の記憶装置とを少なくとも有する。具体的に、図9に示す信号処理回路400は、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406、電源制御回路407、記憶装置408を有する。
【0219】
演算回路401、演算回路402は、単純な論理演算を行う論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算回路などを含む。そして、記憶装置403は、演算回路401における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶装置404は、演算回路402における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0220】
また、記憶装置405はメインメモリとして用いることができ、制御装置406が実行するプログラムをデータとして記憶する、或いは演算回路401、演算回路402からのデータを記憶することができる。
【0221】
制御装置406は、信号処理回路400が有する演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405の動作を統括的に制御する回路である。なお、図9では、制御装置406が信号処理回路400の一部である構成を示しているが、制御装置406は信号処理回路400の外部に設けられていても良い。
【0222】
また、記憶装置への電源電圧の供給が停止されるのに合わせて、当該記憶装置とデータのやり取りを行う演算回路または制御回路への、電源電圧の供給を停止するようにしても良い。例えば、演算回路401と記憶装置403において、動作が行われない場合、演算回路401及び記憶装置403への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0223】
また、電源制御回路407は、信号処理回路400が有する演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406、記憶装置408へ供給する電源電圧の大きさを制御する。そして、電源電圧の供給を停止する場合、電源電圧の供給を停止するためのスイッチング素子は、電源制御回路407に設けられていても良いし、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406、記憶装置408のそれぞれに設けられていても良い。後者の場合、電源制御回路407は、必ずしも本発明の信号処理回路に設ける必要はない。
【0224】
また、メインメモリである記憶装置405と、制御装置406との間に、キャッシュメモリとして機能する記憶装置408を設けることが好ましい。キャッシュメモリを設けることで、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶装置408に、本発明の一態様に係る記憶装置200を用いることで、信号処理回路400の消費電力を抑えることができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。また、本発明の一態様に係る記憶素子は、小面積化が図られている。該記憶素子を記憶装置として用いることにより、記憶装置を高集積化することができる。
【0225】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0226】
(実施の形態5)
本発明の一態様に係る記憶装置を用いることで、消費電力の低い電子機器を提供することが可能である。特に電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い記憶装置をその構成要素に追加することにより、連続使用時間が長くなるといったメリットが得られる。また、オフ電流が低いトランジスタを用いることで、オフ電流の高さをカバーするための冗長な回路設計が不要となるため、記憶装置の集積度を高めることができ、記憶装置を高機能化させることができる。
【0227】
本発明の一態様に係る記憶装置は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る記憶装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【0228】
本発明の一態様に係る記憶装置を、携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯用の電子機器に応用した場合について説明する。
【0229】
図10は、携帯用の電子機器のブロック図である。図10に示す携帯用の電子機器はRF回路421、アナログベースバンド回路422、デジタルベースバンド回路423、バッテリー424、電源回路425、アプリケーションプロセッサ426、フラッシュメモリ430、ディスプレイコントローラ431、メモリ回路432、ディスプレイ433、タッチセンサ439、音声回路437、キーボード438などより構成されている。ディスプレイ433は表示部434、ソースドライバ435、ゲートドライバ436によって構成されている。アプリケーションプロセッサ426はCPU427、DSP428、インターフェース429、キャッシュメモリ440を有している。キャッシュメモリ440には本発明の一態様に係る記憶装置を採用することによって、アプリケーションプロセッサ426の消費電力を低減することができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。また、本発明の一態様に係る記憶素子は、小面積化が図られている。該記憶素子を記憶装置として用いることにより、記憶装置を高集積化することができる。なお、メモリ回路432はDRAMで構成されている。
【0230】
図11は電子書籍のブロック図である。電子書籍はバッテリー451、電源回路452、マイクロプロセッサ453、フラッシュメモリ454、音声回路455、キーボード456、メモリ回路457、タッチパネル458、ディスプレイ459、ディスプレイコントローラ460によって構成される。マイクロプロセッサ453には、キャッシュメモリ461が含まれている。キャッシュメモリ461には本発明の一態様に係る記憶装置を採用することによって、マイクロプロセッサ453の消費電力を低減することができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。また、本発明の一態様に係る記憶素子は、小面積化が図られている。該記憶素子を記憶装置として用いることにより、記憶装置を高集積化することができる。
【0231】
例えば、ユーザーが、書籍データ中の特定の箇所において、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどにより、当該箇所とそれ以外の箇所との違いを明確にするハイライト機能を利用する場合、書籍データのうちユーザーが指定した箇所のデータを記憶する必要がある。メモリ回路457は、上記データを一時的に記憶する機能を持つ。なお、上記データを長期に渡って保存する場合には、フラッシュメモリ454に上記データをコピーしておいても良い。
【0232】
本実施形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0233】
(実施の形態6)
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0234】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、以下の式で表現できる。
【0235】
【数3】

【0236】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、以下の式で表される。
【0237】
【数4】

【0238】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体膜であれば、チャネルの厚さは半導体膜の厚さと同一として差し支えない。
線形領域におけるドレイン電流Iは、以下の式となる。
【0239】
【数5】

【0240】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。
上式の両辺をVで割り、更に両辺の対数を取ると、以下のようになる。
【0241】
【数6】

【0242】
上記の式の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(I/V)、横軸を1/Vとして実測値をプロットして得られるグラフの直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0243】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数3および数4よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は35cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0244】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、以下の式で表される。
【0245】
【数7】

【0246】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。BおよびGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数7の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0247】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した結果を図15に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0248】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0249】
図15で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体膜表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0250】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図16乃至図18に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図19に示す。図19に示すトランジスタは酸化物半導体膜にnの導電型を呈する半導体領域2103aおよび半導体領域2103cを有する。半導体領域2103aおよび半導体領域2103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0251】
図19(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜2101と、下地絶縁膜2101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物2102の上に形成される。トランジスタは半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域2103bと、ゲート2105を有する。ゲート2105の幅を33nmとする。
【0252】
ゲート2105と半導体領域2103bの間には、ゲート絶縁膜2104を有し、また、ゲート2105の両側面には側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106b、ゲート2105の上部には、ゲート2105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物2107を有する。側壁絶縁物の幅は5nmとする。また、半導体領域2103aおよび半導体領域2103cに接して、ソース2108aおよびドレイン2108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0253】
図19(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜2101と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物2102の上に形成され、半導体領域2103a、半導体領域2103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域2103bと、幅33nmのゲート2105とゲート絶縁膜2104と側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106bと絶縁物2107とソース2108aおよびドレイン2108bを有する点で図19(A)に示すトランジスタと同じである。
【0254】
図19(A)に示すトランジスタと図19(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106bの下の半導体領域の導電型である。図19(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁物2106aおよび側壁絶縁物2106bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域2103aおよび半導体領域2103cであるが、図19(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域2103bである。すなわち、図19(B)に示す半導体層において、半導体領域2103a(半導体領域2103c)とゲート2105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁物2106a(側壁絶縁物2106b)の幅と同じである。
【0255】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図16は、図19(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(V、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0256】
図16(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図16(B)は10nmとしたものであり、図16(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0257】
図17は、図19(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧V依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図17(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図17(B)は10nmとしたものであり、図17(C)は5nmとしたものである。
【0258】
また、図18は、図19(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図18(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図18(B)は10nmとしたものであり、図18(C)は5nmとしたものである。
【0259】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0260】
なお、移動度μのピークは、図16では80cm/Vs程度であるが、図17では60cm/Vs程度、図18では40cm/Vs程度と、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【実施例1】
【0261】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体膜を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0262】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0263】
例えば、図20(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vは10Vとした。
【0264】
図20(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm/Vsecが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図20(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsecが得られている。
【0265】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図20(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsecが得られている。
【0266】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0267】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0268】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図20(A)と図20(B)の対比からも確認することができる。
【0269】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0270】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0271】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0272】
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
【0273】
まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。なお、Vはドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を示す。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
【0274】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0275】
試料1のプラスBT試験の結果を図21(A)に、マイナスBT試験の結果を図21(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図22(A)に、マイナスBT試験の結果を図22(B)に示す。
【0276】
試料1のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80Vおよび−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79Vおよび0.76Vであった。
試料1および試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0277】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
【0278】
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm以上2×1020/cm以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0279】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0280】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0281】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0282】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0283】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0284】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0285】
図23に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0286】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0287】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0288】
図24に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0289】
具体的には、図24に示すように、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、Siを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
【0290】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0291】
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bのトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0292】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃および150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0293】
図25に、I(実線)および電界効果移動度(点線)のV依存性を示す。また、図26(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図26(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0294】
図26(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0295】
また、図26(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0296】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、Si半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【実施例2】
【0297】
本実施例では、In−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの一例について、図27などを用いて説明する。
【0298】
図27は、コプラナー型であるトップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図27(A)にトランジスタの上面図を示す。また、図27(B)に図27(A)の一点鎖線A1−A2に対応する断面A1−A2を示す。
【0299】
図27(B)に示すトランジスタは、基板3100と、基板3100上に設けられた下地絶縁膜3102と、下地絶縁膜3102の周辺に設けられた保護絶縁膜3104と、下地絶縁膜3102および保護絶縁膜3104上に設けられた高抵抗領域3106aおよび低抵抗領域3106bを有する酸化物半導体膜3106と、酸化物半導体膜3106上に設けられたゲート絶縁膜3108と、ゲート絶縁膜3108を介して酸化物半導体膜3106と重畳して設けられたゲート電極3110と、ゲート電極3110の側面と接して設けられた側壁絶縁膜3112と、少なくとも低抵抗領域3106bと接して設けられた一対の電極3114と、少なくとも酸化物半導体膜3106、ゲート電極3110および一対の電極3114を覆って設けられた層間絶縁膜3116と、層間絶縁膜3116に設けられた開口部を介して少なくとも一対の電極3114の一方と接続して設けられた配線3118と、を有する。
【0300】
なお、図示しないが、層間絶縁膜3116および配線3118を覆って設けられた保護膜を有していても構わない。該保護膜を設けることで、層間絶縁膜3116の表面伝導に起因して生じる微小リーク電流を低減することができ、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【実施例3】
【0301】
本実施例では、上記とは異なるIn−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの他の一例について示す。
【0302】
図28は、本実施例で作製したトランジスタの構造を示す上面図および断面図である。図28(A)はトランジスタの上面図である。また、図28(B)は図28(A)の一点鎖線B1−B2に対応する断面図である。
【0303】
図28(B)に示すトランジスタは、基板3600と、基板3600上に設けられた下地絶縁膜3602と、下地絶縁膜3602上に設けられた酸化物半導体膜3606と、酸化物半導体膜3606と接する一対の電極3614と、酸化物半導体膜3606および一対の電極3614上に設けられたゲート絶縁膜3608と、ゲート絶縁膜3608を介して酸化物半導体膜3606と重畳して設けられたゲート電極3610と、ゲート絶縁膜3608およびゲート電極3610を覆って設けられた層間絶縁膜3616と、層間絶縁膜3616に設けられた開口部を介して一対の電極3614と接続する配線3618と、層間絶縁膜3616および配線3618を覆って設けられた保護膜3620と、を有する。
【0304】
基板3600としてはガラス基板を、下地絶縁膜3602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜3606としてはIn−Sn−Zn−O膜を、一対の電極3614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜3608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極3610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜3616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線3618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜3620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いた。
【0305】
なお、図28(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極3610と一対の電極3614との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体膜3606に対する一対の電極3614のはみ出しをdWと呼ぶ。
【符号の説明】
【0306】
100 記憶素子
101 ラッチ回路
102 選択回路
103 選択回路
104 トランジスタ
105 トランジスタ
106 容量素子
107 容量素子
108 トランジスタ
109 トランジスタ
110 トランジスタ
111 トランジスタ
112 トランジスタ
113 トランジスタ
114 インバータ
121 不揮発性記憶回路
122 不揮発性記憶回路
150 記憶素子
200 記憶装置
210 メモリセルアレイ
211 駆動回路
212 駆動回路
300 基板
302 保護層
304 半導体領域
306 素子分離絶縁膜
308 ゲート絶縁膜
310 ゲート電極
316 チャネル形成領域
320 不純物領域
322 金属層
324 金属化合物領域
328 絶縁膜
329 電極
330a ソース電極又はドレイン電極
330b ソース電極又はドレイン電極
336a 導電層
336b 導電層
336c 導電層
340 絶縁膜
342a ソース電極又はドレイン電極
342b ソース電極又はドレイン電極
342c 電極
354a 電極
354b 電極
344 酸化物半導体膜
346 ゲート絶縁膜
348a ゲート電極
348b 導電層
350 絶縁膜
352 絶縁膜
356 配線
400 信号処理回路
401 演算回路
402 演算回路
403 記憶装置
404 記憶装置
405 記憶装置
406 制御装置
407 電源制御回路
408 記憶装置
421 RF回路
422 アナログベースバンド回路
423 デジタルベースバンド回路
424 バッテリー
425 電源回路
426 アプリケーションプロセッサ
427 CPU
428 DSP
429 インターフェース
430 フラッシュメモリ
431 ディスプレイコントローラ
432 メモリ回路
433 ディスプレイ
434 表示部
435 ソースドライバ
436 ゲートドライバ
437 音声回路
438 キーボード
439 タッチセンサ
451 バッテリー
452 電源回路
453 マイクロプロセッサ
454 フラッシュメモリ
455 音声回路
456 キーボード
457 メモリ回路
458 タッチパネル
459 ディスプレイ
460 ディスプレイコントローラ
2101 下地絶縁膜
2102 埋め込み絶縁物
2103a 半導体領域
2103b 半導体領域
2103c 半導体領域
2104 ゲート絶縁膜
2105 ゲート
2106a 側壁絶縁物
2106b 側壁絶縁物
2107 絶縁物
2108a ソース
2108b ドレイン
3100 基板
3102 下地絶縁膜
3104 保護絶縁膜
3106 酸化物半導体膜
3106a 高抵抗領域
3106b 低抵抗領域
3108 ゲート絶縁膜
3110 ゲート電極
3112 側壁絶縁膜
3114 電極
3116 層間絶縁膜
3118 配線
3600 基板
3602 下地絶縁膜
3606 酸化物半導体膜
3608 ゲート絶縁膜
3610 ゲート電極
3614 電極
3616 層間絶縁膜
3618 配線
3620 保護膜




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御信号に応じて、第1のデータ信号を出力する第1の選択回路と、
前記第1の制御信号に応じて、前記第1のデータ信号の反転信号である第2のデータ信号を出力する第2の選択回路と、
前記第1のデータ信号及び前記第2のデータ信号が入力され、電源電圧が供給されている期間のみ、前記第1のデータ信号及び前記第2のデータ信号を保持するラッチ回路と、
第2の制御信号に応じて、前記ラッチ回路に保持された前記第1のデータ信号が入力される第1の不揮発性記憶回路と、
前記第2の制御信号に応じて、前記ラッチ回路に保持された前記第2のデータ信号が入力される第2の不揮発性記憶回路と、を有し、
前記第1の不揮発性記憶回路及び前記第2の不揮発性記憶回路は、前記電源電圧の供給が停止したあとも、前記第1のデータ信号及び前記第2のデータ信号を保持する、記憶素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の不揮発性記憶回路は、第1のトランジスタ及び第1の容量素子を有し、
前記第2の不揮発性記憶回路は、第2のトランジスタ及び第2の容量素子を有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタは、チャネルが酸化物半導体膜に形成されるトランジスタである記憶素子。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ラッチ回路は、少なくとも2つのトランジスタで構成され、該トランジスタは、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成される記憶素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記第1の選択回路及び前記第2の選択回路は、少なくとも1つのトランジスタで構成され、該トランジスタは、チャネルが酸化物半導体以外の半導体膜に形成される記憶素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記記憶素子を複数用いて構成された記憶装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−256858(P2012−256858A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95288(P2012−95288)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】