露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法
【課題】移動体を精度良く駆動する。
【解決手段】 移動体RSTのY軸方向の位置情報を、干渉計16yと、該干渉計に比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ((24A,26A1)、(24B,26B1))とを用いて計測し、その計測結果に基づいてエンコーダの計測値を補正する補正情報を取得するための所定の較正動作を実行する。これにより、干渉計の計測値を用いて、その干渉計に比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダの計測値を補正する補正情報が取得される。そして、エンコーダの計測値と前記補正情報とに基づいて、移動体をY軸方向に精度良く駆動する。
【解決手段】 移動体RSTのY軸方向の位置情報を、干渉計16yと、該干渉計に比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ((24A,26A1)、(24B,26B1))とを用いて計測し、その計測結果に基づいてエンコーダの計測値を補正する補正情報を取得するための所定の較正動作を実行する。これにより、干渉計の計測値を用いて、その干渉計に比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダの計測値を補正する補正情報が取得される。そして、エンコーダの計測値と前記補正情報とに基づいて、移動体をY軸方向に精度良く駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、特に、マイクロデバイス(電子デバイスなど)の製造におけるリソグラフィ工程で用いられる露光装置及び露光方法、並びに露光装置又は前記露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子、液晶表示素子等のマイクロデバイス(電子デバイスなど)の製造におけるリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)、又はステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが比較的多く用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージはXY2次元方向に例えばリニアモータ等により駆動される。特に、スキャニング・ステッパの場合、ウエハステージのみならず、レチクルステージもリニアモータ等により走査方向に所定ストロークで駆動される。レチクルステージ及びウエハステージの位置計測は、長期に渡って計測値の安定性が良好で、高分解能なレーザ干渉計を用いて行われるのが、一般的である。
【0004】
しかるに、半導体素子の高集積化に伴う、パターンの微細化により、より高精度なステージの位置制御が要求されるようになり、今や、レーザ干渉計のビーム光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が無視できなくなりつつある。
【0005】
一方、最近では、位置計測装置の一種であるエンコーダとして、計測分解能が、レーザ干渉計と同程度以上のものが出現している(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、エンコーダは、スケール(グレーティング)を使用するため、スケールに使用時間の経過と共に生じる種々の誤差要因(格子ピッチのドリフト、固定位置ドリフト、熱膨張等)が存在し、機械的な長期安定性に欠ける。このため、エンコーダは、レーザ干渉計に比べて、計測値のリニアリティに欠け、長期安定性に劣るという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,639,686号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光装置であって、前記基板を保持する可動体を有し、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動する基板ステージ装置と;前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムと、を有する計測システムと;前記基板の露光動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御し、前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能な制御装置と;を備える露光装置が、提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、デバイス製造方法であって、本発明の露光装置を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光方法であって、前記基板を保持する可動体を有する基板ステージ装置によって、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動し、前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムとを有する計測システムの前記エンコーダシステムによって、前記基板の露光動作中、前記可動体の位置情報を計測しつつその移動を制御し、前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能である露光方法が、提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、デバイス製造方法であって、本発明の露光方法を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】レチクルステージを、該レチクルステージの位置情報を計測するエンコーダシステム及び干渉計システムと共に示す平面図である。
【図3】ウエハステージを、該ウエハステージの位置情報を計測するエンコーダ及び干渉計と共に示す平面図である。
【図4】図1のウエハステージWSTの位置を計測するY干渉計、並びにZ干渉計及びその近傍の構成部分を取り出して示す図である。
【図5】エンコーダの構成の一例を示す図である。
【図6】一実施形態に係る露光装置のステージ制御に関連する制御系を一部省略して示すブロック図である。
【図7】位置計測系の切り換え動作を説明するための図(その1)である。
【図8】位置計測系の切り換え動作を説明するための図(その2)である。
【図9】レチクル側のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む露光のためのレチクルステージのスキャン動作を説明するための図(その1)である。
【図10】レチクル側のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む露光のためのレチクルステージのスキャン動作を説明するための図(その2)である。
【図11】レチクル側のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む露光のためのレチクルステージのスキャン動作を説明するための図(その3)である。
【図12】図12(A)は、ウエハの中央付近が投影ユニットの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図、図12(B)は、ウエハの中心と外周との中間付近が投影ユニットの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図である。
【図13】図13(A)は、ウエハの+Y側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図、図13(B)は、ウエハの中心から見てX軸及びY軸に対し45°を成す方向のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図である。
【図14】ウエハの+X側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図である。
【図15】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の第1のキャリブレーション動作で得られるマップの一例を示す線図である。
【図16】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測誤差を較正する第2のキャリブレーション動作を説明するための図(その1)である。
【図17】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測誤差を較正する第2のキャリブレーション動作を説明するための図(その2)である。
【図18】第2のキャリブレーション動作で得られるマップの一例を示す図である。
【図19】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測誤差を較正する第2のキャリブレーション動作で得られるマップの一例を示す図である。
【図20】エンコーダ50A〜50Dの計測値の長期キャリブレーション動作(第1のキャリブレーション動作)、すなわち移動スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報の取得動作について説明するための図である。
【図21】エンコーダの計測誤差の逐次キャリブレーションで得られる干渉計及びエンコーダの計測値を示す図である。
【図22】変形例に係る、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報の取得動作を説明するための図(その1)である。
【図23】変形例に係る、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報の取得動作を説明するための図(その2)である。
【図24】変形例に係る、移動スケール44B,44Dの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報の取得動作について説明するための図である。
【図25】ウエハステージ用のエンコーダシステムの変形例を示す図である。
【図26】ウエハステージ用のエンコーダシステムの別の変形例を示す図である。
【図27】液浸露光装置で用いられるウエハステージの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図21に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置、すなわち、いわゆるスキャニング・ステッパである。後述するように本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0014】
露光装置100は、光源及び照明光学系を含み、照明光(露光光)ILによりレチクルR1,R2を照明する照明系10、レチクルR1,R2を保持するレチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハWが載置されるウエハステージWSTを含むウエハステージ装置12、レチクルステージRST及び投影ユニットPUなどが搭載されたボディBD、及びこれらの制御系等を備えている。
【0015】
照明系10は、不図示のレチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR1又はR2上でX軸方向に延びるスリット状の照明領域IAR(図2参照)を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0016】
前記レチクルステージRSTは、後述する第2コラム34の天板を構成するレチクルベース36上に、その底面に設けられた不図示のエアベアリングなどによって、例えば数μm程度のクリアランスを介して支持されている。レチクルステージRSTとしては、例えば1枚のレチクルを保持可能なレチクルステージ、あるいはそれぞれ1枚のレチクルを保持して独立に可動なツインレチクルステージを用いることもできるが、本実施形態ではレチクルを2枚同時に保持可能なダブルレチクルホルダ方式のレチクルステージが用いられている。
【0017】
レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11により、投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で2次元的に(X軸方向、Y軸方向及びθz方向に)微少駆動可能である。また、レチクルステージRSTは、レチクルステージ駆動系11により、レチクルベース36上を所定の走査方向(ここでは、図1における紙面左右方向であるY軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。なお、レチクルステージRSTは、例えば特開平8−130179号公報(対応米国 特許第6,721,034号明細書)に開示される粗微動構造としても良く、その構造は本実施形態(図2など)に限定されるものではない。
【0018】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報は、図1に示される、レチクルYレーザ干渉計(以下、「レチクルY干渉計」という)16y等を含むレチクル干渉計システム、並びにエンコーダヘッド(以下、「ヘッド」と略述する)26A1〜26A3、26C1〜26C3及び移動スケール24A等を含むエンコーダシステムによって計測可能に構成されている。なお、図1では、移動スケール24Aの上方にレチクルR1,R2の上端面が露出した状態が示されているが、これは説明の便宜上からこのように図示したもので、実際とは異なる。
【0019】
ここで、レチクルステージRST及びそのXY平面(移動面)内の位置を計測するレチクル干渉計システム及びエンコーダシステムの構成等について更に詳述する。
【0020】
レチクルステージRSTの中央部には、図2に示されるように、平面視で(上方から見て)Y軸方向(走査方向)に細長い矩形の凹部22が、形成されている。凹部22の内部底面には、ほぼ正方形の開口(不図示)が2つY軸方向に並んで形成され、これらの開口をそれぞれ覆う状態で、レチクルR1、レチクルR2がY軸方向に並んで配置されている。レチクルR1,R2のそれぞれは、凹部22の内部底面の2つの開口のX軸方向の両側に設けられた不図示の吸着機構、例えばバキュームチャックによってそれぞれ真空吸着されている。
【0021】
また、レチクルステージRSTの上面の+X側端部及び−X側端部には、照明領域IARの中心(本実施形態では、投影光学系PLの第1面(物体面)内でその光軸AXとほぼ一致)を通る、Y軸方向に平行な中心軸に関して対称の配置で、一対の移動スケール24A,24BがY軸方向を長手方向として延設されている。移動スケール24A,24Bは、同一の素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)から成り、その表面には、周期方向をY軸方向とする反射型の回折格子が、上記中心軸に関して対称の配置で形成されている。移動スケール24A,24Bは、局所的な伸縮が生じないように、例えば真空吸着(又は板ばね)等によりレチクルステージRSTに固定されている。
【0022】
移動スケール24A,24Bの上方(+Z側)には、図2に示されるように、移動スケール24A,24Bに対向して、2対のY軸方向位置計測用のヘッド26A1,26A2,26B1,26B2が、上述の中心軸に関して対称に配置されている(図1参照)。このうち、ヘッド26A1,26B1は、前述の照明領域IARの中心を通るX軸方向の直線(計測軸)上にその計測中心がほぼ一致する位置に配置されている。また、ヘッド26A2,26B2は、ヘッド26A1,26B1から同一距離だけ+Y方向にそれぞれ離れた位置でかつヘッド26A1,26B1と同一面上に配置されている。さらに、ヘッド26A1,26B1と同一面上で上記計測軸に関してヘッド26A2,26B2と対称に、ヘッド26A1,26B1から同一距離だけ−Y方向にそれぞれ離れた位置には、一対のヘッド26A3,26B3が配置されている。上記3対のヘッド26A1,26B1,26A2,26B2,26A3,26B3は、不図示の支持部材をそれぞれ介してレチクルベース36に固定されている。
【0023】
また、レチクルステージRST上面の移動スケール24Aの−X側には、Y軸方向を長手方向とする移動スケール28が移動スケール24Aと並んで配置され、例えば真空吸着(又は板ばね)等によりレチクルステージRSTに固定されている。この移動スケール28は、移動スケール24A、24Bと同一素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)で構成され、かつその上面には、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子がY軸方向に関してほぼ全長に渡って形成されている。
【0024】
移動スケール28の上方(+Z側)には、図2に示されるように、移動スケール28に対向して、2つのX軸方向位置計測用のヘッド26C1,26C2が配置されている(図1参照)。このうち、ヘッド26C1は、前述の照明領域IARの中心を通るX軸方向の直線(計測軸)上にほぼ位置している。また、ヘッド26C2は、ヘッド26C1から所定距離だけ+Y方向に離れたヘッド26A2の近傍の位置でかつヘッド26A1,26A2等と同一面上に配置されている。
【0025】
さらに、ヘッド26C1と同一面上で上記計測軸に関してヘッド26C2と対称に、ヘッド26C1から所定距離だけ−Y方向に離れた位置には、ヘッド26C3が配置されている。上記3つのヘッド26C1,26C2,26C3は、不図示の支持部材をそれぞれ介してレチクルベース36に固定されている。なお、本実施形態では9つのヘッド26A1〜26A3,26B1〜26B3,26C1〜26C3を、不図示の支持部材を介してレチクルベース36に固定するものとしたが、これに限らず、例えば防振機構を介して床面F又はベースプレートBSに設置されるフレーム部材に設けてもよい。
【0026】
本実施形態では、ヘッド26A1,26B1と、対向する移動スケール24A,24Bとによって、レチクルステージRSTのY軸方向の位置(Y位置)を計測する一対のYリニアエンコーダが構成されている。以下では、便宜上、これらのYリニアエンコーダを、それぞれのヘッドと同一の符号を用いて、Yリニアエンコーダ26A1、26B1と記述する。
【0027】
Yリニアエンコーダ26A1、26B1の計測軸は、前述の照明領域IARの中心(本実施形態では、投影光学系PLの光軸AXに一致)から、X軸方向に関して同一の距離にあり、例えば露光時などには、Yリニアエンコーダ26A1、26B1の計測値の平均値に基づいて、レチクルステージRSTのY位置が計測される。すなわち、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1によるレチクルステージRSTの位置情報を計測する実質的な計測軸は、投影光学系PLの光軸AX上を通る。従って、露光時などには、レチクルステージRSTのY位置は、Yリニアエンコーダ26A1、26B1を用いて、アッベ誤差なく、計測することが可能である。さらに、Yリニアエンコーダ26A1、26B1の計測値に基づいてレチクルステージRSTのθz方向の回転情報(ヨーイング)が計測される。
【0028】
同様に、ヘッド26A2,26A3と、これらに対向する移動スケール24Aとによって、レチクルステージRSTのY位置を計測するYリニアエンコーダが、それぞれ構成される。同様に、ヘッド26B2,26B3と、これらに対向する移動スケール24Bとによって、レチクルステージRSTのY位置を計測するYリニアエンコーダが、それぞれ構成される。以下では、便宜上、これらのYリニアエンコーダを、それぞれのヘッドと同一の符号を用いて、Yリニアエンコーダ26A2、26A3、26B2、26B3と記述する。
【0029】
また、ヘッド26C1と、これに対向する移動スケール28とによって、前述の照明領域IARの中心を通る、X軸方向と平行な直線(計測軸)におけるレチクルステージRSTのX軸方向の位置(X位置)を計測するXリニアエンコーダが構成されている。以下では、便宜上、このXリニアエンコーダを、そのヘッドと同一の符号を用いて、Xリニアエンコーダ26C1と記述する。従って、露光時などには、レチクルステージRSTのX位置は、Xリニアエンコーダ26C1を用いて、アッベ誤差なく、計測することが可能である。
【0030】
同様に、ヘッド26C2,26C3と移動スケール28とによって、レチクルステージRSTのX位置を計測するXリニアエンコーダが、それぞれ構成される。以下では、便宜上、これらのXリニアエンコーダを、それぞれのヘッドと同一の符号を用いて、Xリニアエンコーダ26C2、26C3と記述する。
【0031】
上記9つのリニアエンコーダ(以下、適宜「エンコーダ」とも記述する)26A1〜26C3の計測値は、主制御装置20(図1参照)に送られるようになっている(図6参照)。
【0032】
なお、前述した3つの移動スケール24A、24B、28はそのY軸方向の長さ(移動スケール24A、24Bでは回折格子の形成範囲、移動スケール28では回折格子の幅に相当)が、少なくともレチクルR1、R2をそれぞれ介してウエハWを走査露光するときのレチクルステージRSTのY軸方向の移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(本実施形態では、少なくとも走査露光中と、走査露光前後のレチクルステージRSTの加減速及び同期整定の期間中とに、例えば3つで一組のヘッド26Ai、26Bi、26Ci(i=1〜3)のうち、少なくとも1つの組のヘッド(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように設定されている。また、前述した3つの移動スケール24A、24B、28のX軸方向の幅(移動スケール24A、24Bでは回折格子の幅、移動スケール28では回折格子の形成範囲に相当)も同様に、レチクルステージRSTのX軸方向の移動ストロークの全域をカバーする(本実施形態では、例えば3つで一組のヘッド26Ai、26Bi、26Ci(i=1〜3)のうち、少なくとも1つの組のヘッド(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように設定されている。レチクルステージRSTはθz方向に微小回転可能であるので、当然ながらこの回転によって少なくとも3つのリニアエンコーダ26A1、26B1、26C1による計測が不能とならないように、前述した3つの移動スケール24A、24B、28はθz方向の回転範囲をも考慮してX軸及びY軸方向の大きさ(長さ、幅)が設定されている。
【0033】
さらに本実施形態では、レチクルR2を用いる走査露光では6つのリニアエンコーダ26A1、26A2、26B1、26B2、26C1、26C2によって、レチクルステージRSTの位置情報(少なくともX軸及びY軸方向の位置とθz方向の回転情報とを含む)を計測可能となっている。また、レチクルR1を用いる走査露光では6つのリニアエンコーダ26A1、26A3、26B1、26B3、26C1、26C3によって、レチクルステージRSTの位置情報(少なくともX軸及びY軸方向の位置とθz方向の回転情報とを含む)を計測可能となっている。また、本実施形態では、前述の照明領域IARに対して+Y側又は−Y側でレチクルR1、R2の交換が行われる、あるいはレチクルR1は−Y側、レチクルR2は+Y側でその交換が行われ、この交換位置においても少なくとも3つのリニアエンコーダ26A2、26B2、26C2あるいはリニアエンコーダ26A3、26B3、26C3によってレチクルステージRSTの位置情報を計測可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態では3つの移動スケール24A、24B、28と、9つのヘッド26A1〜26A3、26B1〜26B3、26C1〜26C3を有するヘッドユニットとによって、レチクルステージRST用のエンコーダシステムを構成するものとしたが、エンコーダシステムはその構成が図2に限られるものでなく、例えばヘッドユニットは3つのヘッド26A1、26B1、26C1を有するだけでも良い。この場合、上記レチクル交換位置又はその交換位置までの途中で、リニアエンコーダ26A1、26B1、26C1によるレチクルステージRSTの位置計測が不能になるときは、例えば別の計測装置、あるいは前述のレチクル干渉計システムの少なくとも一部を用いてレチクルステージRSTの位置計測を行っても良い。また、本実施形態では吸着機構又は板ばねなどによって3つの移動スケール24A、24B、28をレチクルステージRSTに固定するものとしたが、これに限られず、例えばネジ留め、あるいは回折格子を直接レチクルステージRSTに形成しても良い。さらに、本実施形態では移動スケール24A、24B、28を、レチクルステージRSTの上面(照明系側)に設けるものとしたが、その下面(投影光学系側)に設けても良いし、前述のヘッドユニット(エンコーダヘッド)と移動スケール24A、24B、28との配置を逆にする、すなわち前述のヘッドユニットをレチクルステージRSTに設け、移動スケール24A、24B、28をボディ側に設けても良い。
【0035】
前記レチクル干渉計システムは、図2及び図6に示されるように、レチクルY干渉計16yと、レチクルX干渉計16xとを備えている。
【0036】
レチクルX干渉計16xは、図2に示されるように、センサヘッド19A(図1では不図示)と、レチクルステージRSTの+X側の端面に固定された光学系ユニット19Bとを含む。
【0037】
センサヘッド19Aは、レチクルベース36上面に固定され、その内部に光源、光学系、並びに2つの検光子(偏光子)及び2つの光電変換素子等を内蔵している。光源としては、ゼーマン効果を利用した2周波レーザが用いられている。この光源からのレーザビームが光学系により断面形状が水平方向に拡大され、図2に示されるように、その断面形状が拡大されたビームBMがセンサヘッド19Aから出力される。そして、光学系ユニット19B内でビームBMは2分割され、一方の分割ビームは不図示の第1ビームスプリッタに入射して測定ビームBM1と参照ビームとに分割され、測定ビームBM1は平面鏡21の反射面で反射され、かつ参照ビームは例えばレチクルステージRSTの反射面で反射されて第1ビームスプリッタに戻り、同軸に合成されて光学系ユニット19Bから出力される。同様に、他方の分割ビームは不図示の第2ビームスプリッタに入射して測定ビームBM2と参照ビームとに分割され、測定ビームBM2は平面鏡21の反射面で反射され、かつ参照ビームは例えばレチクルステージRSTの反射面で反射されて第2ビームスプリッタに戻り、同軸に合成されて光学系ユニット19Bから出力される。図示していないが、本実施形態では平面鏡21が前述のボディBDの一部、例えば第2コラム34のレチクルベース36、あるいは後述の第1コラム32の鏡筒定盤(メインフレーム)38に固定されている。
【0038】
また、センサヘッド19Aには、光学系ユニット19B内の第1及び第2ビームスプリッタそれぞれからの戻り光(前述した測定ビームBM1,BM2とそれぞれの参照ビームとの合成光)が戻ってくる。センサヘッド19Aの内部では、これらの戻り光は、光学系を介して個別の検光子にそれぞれ入射し、各検光子から出力される干渉光が2つの光電変換素子で個別に受光され、各干渉光に応じた干渉信号が不図示の信号処理系に送られる。この信号処理系は、各光電変換素子からの干渉信号に基づいて、測定ビームの位相が参照ビームの位相に対してドップラーシフトし、位相変化が生じることを利用して、その位相変化で生じた干渉信号の変化をヘテロダイン検出する。そして、信号処理系は、検出した干渉信号の変化から、測定ビームBM1,BM2の照射点における、平面鏡21を基準としたX軸方向の位置情報、すなわち測定ビームBM1,BM2の照射点におけるレチクルステージRSTのX位置情報を、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出する。
【0039】
レチクルY干渉計16yは、光源としてレチクルX干渉計16xと同様にゼーマン効果を利用した2周波レーザを用いたマイケルソン型のヘテロダイン・レーザ干渉計である。このレチクルY干渉計16yは、投影ユニットPUを構成する鏡筒40の側面に固定された固定鏡14(図1参照)を基準として、レチクルステージRSTのY位置を、レチクルステージRSTに固定された移動鏡(平面鏡又はレトロリフレクタなど)15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出する。なお、レチクルY干渉計16yはその少なくとも一部(例えば、光源を除く光学ユニット)が、例えばレチクルベース36に固定されている。
【0040】
レチクルX干渉計16xからの2軸のX位置情報及びレチクルY干渉計16yからのY位置情報は、主制御装置20に送られている(図6参照)。
【0041】
なお、前述のレチクル干渉計システムは、センサヘッド19AとレチクルステージRSTに設けられる光学系ユニット19Bとを有するX干渉計16xを備えるものとしたが、X干渉計16xの構成はこれに限られず、例えば光学系ユニット19B及び平面鏡21の配置が逆、すなわちレチクルステージRSTの側面にY軸方向に延びて形成される反射面(平面鏡21に相当)に、レチクルベース36に配置される光学系ユニット19Bから測定ビームを照射する構成としても良い。さらに、センサヘッド19Aはレチクルベース36に設けられるものとしたが、例えばその少なくとも一部がボディBDとは別のフレーム部材に設けられてもよい。また、本実施形態ではレチクル干渉計システムの干渉計用反射面として、レチクルステージRSTの端部に固定される前述の移動鏡15などを用いるものとしたが、その代わりに、例えばレチクルステージRSTの端面(側面)を鏡面加工して得られる反射面を用いても良い。さらに本実施形態では、Y干渉計16yは測長軸が1本で、X干渉計16xは測長軸が2本であるものとしたが、例えば測長軸の本数はX軸方向とY軸方向とで逆でも良いし、あるいはそれぞれ2本以上ずつとしても良い。特に後者では、Y干渉計16yによってレチクルステージRSTのθx方向の回転情報(ピッチング)を、X干渉計16xによってレチクルステージRSTのθy方向の回転情報(ローリング)を計測可能としても良い。
【0042】
本実施形態の露光装置100では、レチクル干渉計システム16x,16yの計測値は、後述する、エンコーダ26A1,26B1,26C1等の計測値のキャリブレーション(較正)の際にのみ用いられ、露光動作の際には、レチクルステージRSTの位置は、レチクル側のエンコーダシステムの計測値に基づいて制御される。特に走査露光中のレチクルステージRSTの位置は、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。従って、図2からも容易に想像されるように、露光動作に際しては、レチクルステージRSTの位置制御に用いる、エンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)を行う必要があるが、これについては後述する。
【0043】
レチクルステージRSTの上方には、投影光学系PLを介してウエハステージWST上の一対の基準マークとこれに対応するレチクル上の一対のレチクルマークとを同時に検出するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)方式のアライメント系から成る一対のレチクルアライメント系13A、13B(図1では不図示、図6参照)がX軸方向に所定距離隔てて設けられている。この一対のレチクルアライメント系13A、13Bとしては、例えば特開平7−176468号公報(対応する米国特許第5,646,413号明細書)などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。
【0044】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方で、ボディBDの一部に保持されている。このボディBDは、クリーンルームの床面F上に設置されたフレームキャスタFC上に設けられた第1コラム32と、この第1コラム32の上に固定された第2コラム34とを備えている。
【0045】
フレームキャスタFCは、床面F上に水平に置かれたベースプレートBSと、該ベースプレートBS上に固定された複数本、例えば3本(又は4本)の脚部39(但し、図1における紙面奥側の脚部は図示省略)とを備えている。
【0046】
第1コラム32は、上記フレームキャスタFCを構成する複数本の脚部39それぞれの上端に個別に固定された複数、例えば3つ(又は4つ)の第1の防振機構58によって、ほぼ水平に支持された鏡筒定盤(メインフレーム)38を備えている。
【0047】
鏡筒定盤38には、そのほぼ中央部に不図示の円形開口が形成され、この円形開口内に投影ユニットPUが上方から挿入され、投影ユニットPUはその外周部に設けられたフランジFLGを介して鏡筒定盤38に保持されている。鏡筒定盤38の上面には、投影ユニットPUを取り囲む位置に、複数本、例えば3本の脚41(但し、図1における紙面奥側の脚は図示省略)の一端(下端)が固定されている。これらの脚41それぞれの他端(上端)面は、ほぼ同一の水平面上にあり、これらの脚41に前述のレチクルベース36が固定されている。このようにして、複数本の脚41によってレチクルベース36が水平に支持されている。すなわち、レチクルベース36とこれを支持する複数本の脚41とによって第2コラム34が構成されている。レチクルベース36には、その中央部に照明光ILの通路となる開口36aが形成されている。
【0048】
投影ユニットPUは、円筒状で前記フランジFLGが設けられた鏡筒40と、該鏡筒40に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを含む。本実施形態では、投影ユニットPUを鏡筒定盤38に載置するものとしたが、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベース36などに対して投影ユニットPUを吊り下げ支持してもよい。
【0049】
投影光学系PLとしては、例えばZ軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数枚のレンズ(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。この投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4倍又は1/5倍)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクル(R1又はR2)を通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、その第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(露光領域)に形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルを走査方向(Y軸方向)に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクル及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0050】
ウエハステージ装置12は、ベースプレートBS上に配置された複数(例えば3つ又は4つ)の第2の防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたステージベース71、該ステージベース71上に配置されたウエハステージWST、該ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系27等を備えている。
【0051】
ステージベース71は、定盤とも呼ばれる板状部材からなり、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
【0052】
ウエハステージWSTは、本体部とその上部のテーブル部とを有し、例えばリニアモータ、ボイスコイルモータ等を含むウエハステージ駆動系27によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向の6自由度方向に駆動される。
【0053】
なお、ウエハステージWSTとして、例えばリニアモータ等により少なくともX軸方向、Y軸方向、及びθz方向に駆動されるウエハステージ本体と、該ウエハステージ本体上でボイスコイルモータなどにより少なくともZ軸方向、θx方向、及びθy方向に微小駆動されるウエハテーブルとを備えた構造を採用しても良い。
【0054】
前記ウエハステージWST上(より正確には上記テーブル部上)には、不図示のウエハホルダを介してウエハWが載置され、ウエハWは、例えば真空吸着(又は静電吸着)などによってウエハホルダに固定されている。
【0055】
また、ウエハステージWSTのXY平面(移動面)内の位置情報は、図1に示される、ヘッドユニット46B、46C、46D及び移動スケール44B、44C、44Dなどを含むエンコーダシステムと、ウエハレーザ干渉計システム(以下、「ウエハ干渉計システム」という)18とによってそれぞれ計測可能に構成されている。以下、ウエハステージWST用のエンコーダシステム、及びウエハ干渉計システム18の構成等について詳述する。
【0056】
ウエハステージWSTの上面には、図3に示されるように、ウエハWを取り囲んで4つの移動スケール44A〜44Dが固定されている。これを更に詳述すると、移動スケール44A〜44Dは、同一素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)から成り、その表面に長手方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されている。この回折格子は、例えば4μm〜138nmの間のピッチ、本実施形態では1μmピッチで形成されている。なお、図3では、図示の便宜上から、格子のピッチは、実際のピッチに比べて格段に広く図示されている。その他の図においても同様である。
【0057】
移動スケール44A及び44Cは、長手方向が図3におけるY軸方向と一致し、ウエハステージWST(移動鏡17X,17Yを除いて考える)の中心を通る、Y軸方向に平行な中心線に関して対称に配置され、移動スケール44A,44Cに形成された各回折格子も、その中心線に関して対称の配置となっている。これらの移動スケール44A、44Cは、回折格子がY軸方向に周期的に配列されているので、ウエハステージWSTのY軸方向の位置計測に用いられる。
【0058】
また、移動スケール44B及び44Dは、長手方向が図3におけるX軸方向と一致し、ウエハステージWST(移動鏡17X,17Yを除いて考える)の中心を通る、X軸方向に平行な中心線に関して対称に配置され、移動スケール44B,44Dに形成された各回折格子も、その中心線に関して対称の配置となっている。これらの移動スケール44B、44Dは、回折格子がX軸方向に周期的に配列されているので、ウエハステージWSTのX軸方向の位置計測に用いられる。
【0059】
なお、図1においては、ウエハWが、移動スケール44Cの上方に露出した状態が示されているが、これは便宜上このようにしたもので、実際には、移動スケール44A〜44Dの上面はウエハWの上面とほぼ同一高さ、若しくは上方に位置している。
【0060】
一方、図1及び図3からわかるように、投影ユニットPUの最下端部の周囲を四方から囲む状態で、4つのエンコーダヘッドユニット(以下、「ヘッドユニット」と略述する)46A〜46Dが、それぞれ対応する移動スケール44A〜44Dと交差して配置されている。これらのヘッドユニット46A〜46Dは、図1では図面の錯綜を避ける観点から図示が省略されているが、実際には、支持部材を介して鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。
【0061】
ヘッドユニット46A、46Cは、投影ユニットPUの−X側、+X側にそれぞれ、対応する移動スケール44A、44Cの長手方向(図3におけるY軸方向)と直交するX軸方向を長手方向として、かつ投影光学系PLの光軸AXに関して対称に配置されている。また、ヘッドユニット46B、46Dは、投影ユニットPUの+Y側、−Y側にそれぞれ、対応する移動スケール44B、44Dの長手方向(図3におけるX軸方向)と直交するY軸方向を長手方向として、かつ投影光学系PLの光軸AXに関して対称に配置されている。
【0062】
ヘッドユニット46A〜46Dのそれぞれは、例えば単一のヘッド、あるいはほぼ切れ目なく配列される複数のヘッドを有するものでも良いが、本実施形態では図3中に、ヘッドユニット46Cについて代表的に示されるように、その長手方向に沿って所定間隔で配置された複数、例えば11個のヘッド48a〜48kを有している。なお、ヘッドユニット46A〜46Dはそれぞれ隣接する2つのヘッドが対応する移動スケール(回折格子)から外れない間隔、換言すれば移動スケールの長手方向(回折格子の配列方向)と直交する方向に関する回折格子の幅と同程度以下の間隔で複数のヘッドが配置される。
【0063】
ヘッドユニット46Aは、移動スケール44Aとともに、ウエハステージWSTのY位置を計測する、ヘッド48a〜48kを備えた多眼、より正確には11眼のYリニアエンコーダ50A(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット46Bは、移動スケール44Bとともに、ウエハステージWSTのX位置を計測する11眼のXリニアエンコーダ50B(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット46Cは、移動スケール44Cとともに、ウエハステージWSTのY位置を計測する11眼のYリニアエンコーダ50C(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット46Dは、移動スケール44Dとともに、ウエハステージWSTのX位置を計測する11眼のXリニアエンコーダ50D(図6参照)を構成する。エンコーダ50A〜50Dの計測値は、主制御装置20に供給される。なお、本実施形態では4つのヘッドユニット46A〜46Dを鏡筒定盤38に吊り下げ支持するものとしたが、図1の露光装置100が前述の如くメインフレーム部材またはレチクルベース36に対して投影ユニットPUを吊り下げ支持する構成である場合、例えば投影ユニットPUと一体にヘッドユニット46A〜46Dを吊り下げ支持してもよいし、あるいは投影ユニットPUとは独立にメインフレーム部材またはレチクルベース36から吊り下げ支持される計測フレームに4つのヘッドユニット46A〜46Dを設けてもよい。
【0064】
また、ウエハステージWSTの位置情報は、図1に示されるように、ウエハステージWSTに固定された移動鏡17,43に測定ビームを照射するウエハ干渉計システム18によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハ干渉計システム18はその少なくとも一部(例えば、光源を除く光学ユニット)が、鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。なお、ウエハ干渉計システム18の少なくとも一部を、投影ユニットPUと一体に吊り下げ支持してもよいし、あるいは前述の計測フレームに設けてもよい。
【0065】
ここで、ウエハステージWST上には、実際には、図3に示されるように、走査方向であるY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡17Yと、非走査方向であるX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡17Xとが設けられているが、図1では、これらが代表的に移動鏡17として示されている。
【0066】
前記ウエハ干渉計システム18は、図3に示されるように、ウエハY干渉計18Yと、2つのウエハX干渉計18X1及び18X2と、2つのZ干渉計18Z1,18Z2の5つの干渉計を含む。これら5つの干渉計18Y、18X1、18X2、18Z1、18Z2としては、ゼーマン効果を利用した2周波レーザを用いたマイケルソン型のヘテロダイン・レーザ干渉計が用いられている。このうち、ウエハY干渉計18Yとしては、図3に示されるように、投影光学系PLの光軸AX(前述の露光領域の中心)及びアライメント系ALGの検出中心を通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称な2つの測長軸を含む複数の測長軸を有する多軸干渉計が用いられている。
【0067】
ウエハX干渉計18X1は、投影光学系PLの光軸AXを通る、X軸に平行な測長軸に沿って測定ビームを移動鏡17Xに対して照射する。このウエハX干渉計18X1は、投影ユニットPUの鏡筒40の側面に固定されたX固定鏡の反射面を基準とする移動鏡17Xの反射面の位置情報をウエハステージWSTのX位置として計測する。
【0068】
ウエハX干渉計18X2は、アライメント系ALGの検出中心を通る、X軸に平行な測長軸に沿って測定ビームを移動鏡17Xに対して照射し、アライメント系ALGの側面に固定された固定鏡の反射面を基準とする移動鏡17Xの反射面の位置情報をウエハステージWSTのX位置として計測する。
【0069】
また、ウエハステージWSTの本体部の+Y側の側面には、図1及び図4に示されるように、X軸方向を長手方向とする移動鏡43が、不図示のキネマティック支持機構を介して取り付けられている。
【0070】
移動鏡43に対向して、該移動鏡43に測定ビームを照射する、干渉計システム18の一部を構成する一対のZ干渉計18Z1,18Z2が設けられている(図3及び図4参照)。これをさらに詳述すると、移動鏡43は、図3及び図4からわかるように、X軸方向の長さが移動鏡17Yよりも長く、長方形と等脚台形とを一体化したような六角形の断面形状を有する部材から成る。この移動鏡43の+Y側の面に鏡面加工が施され、図4に示される3つの反射面43b、43a、43cが形成されている。
【0071】
反射面43aは、移動鏡43の+Y側の端面を構成し、XZ平面と平行に且つX軸方向に延びている。反射面43bは、反射面43aの+Z側に隣接する面を構成し、XZ平面に対して所定角度だけ図4における時計回り方向に傾斜した面と平行に且つX軸方向に延びている。反射面43cは、反射面43aの−Z側に隣接する面を構成し、反射面43aを挟んで反射面43bと対称に設けられている。
【0072】
前記Z干渉計18Z1、18Z2は、図3及び図4からわかるように、Y干渉計18YのX軸方向の一側と他側にほぼ同一距離離れて、且つY干渉計18Yより幾分低い位置にそれぞれ配置されている。
【0073】
Z干渉計18Z1、18Z2は、図3及び図4に示されるように、Y軸方向に沿って測定ビームB1、B2をそれぞれ反射面43b、43cに投射する。本実施形態では、反射面43bで反射された測定ビームB1がほぼ垂直に入射する反射面を有する固定鏡47A、及び反射面43cで反射された測定ビームB2がほぼ垂直に入射する反射面を有する固定鏡47BがそれぞれX軸方向に延設されている。
【0074】
固定鏡47A、47Bは、例えば鏡筒定盤38に設けられた同一の支持体(不図示)に支持される。なお、固定鏡47A、47Bを前述の計測フレームなどで支持してもよい。
【0075】
前記Y干渉計18Yは、図3に示されるように、投影光学系PLの投影中心(光軸AX、図1参照)を通るY軸に平行な直線から同一距離−X側,+X側に離れたY軸方向の測長軸に沿って測定ビームB41,B42を移動鏡17Yに投射し、それぞれの反射光を受光することで、測定ビームB41,B42の照射点におけるウエハステージWSTのY軸方向の位置情報を、投影ユニットPUの鏡筒40の側面に固定されたY固定鏡の反射面を基準として検出している。なお、図4では、測定ビームB41,B42が代表的に測定ビームB4として示されている。
【0076】
また、Y干渉計18Yは、平面視で測定ビームB41,B42のほぼ中央に位置し、かつ側面視で測定ビームB41,B42の−Z側に位置するY軸方向の測長軸に沿って測定ビームB3を固定鏡43の反射面43aに向けて投射し、反射面43aで反射した測定ビームB3を受光することにより、移動鏡43の反射面43a(すなわちウエハステージWST)のY軸方向の位置情報を検出している。
【0077】
主制御装置20は、Y干渉計18Yの測定ビームB41,B42に対応する測長軸の計測値の平均値に基づいて移動鏡17Y、すなわちウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のY位置を算出する。また、主制御装置20は、移動鏡17Y及び移動鏡43の反射面43aにおけるY位置に基づいて、ウエハステージWSTのθx方向の変位(ピッチング量)を算出する。
【0078】
また、Z干渉計18Z1,18Z2から投射される測定ビームB1、B2はそれぞれ、移動鏡43の反射面43b,43cに所定の入射角(θ/2とする)で入射し、かつ反射面43b,43cで反射されて固定鏡47A,47Bの反射面に垂直に入射する。そして、固定鏡47A,47Bで反射された測定ビームB1、B2は、再度反射面43b,43cでそれぞれ反射されてZ干渉計18Z1、18Z2で受光される。
【0079】
ここで、ウエハステージWST(すなわち移動鏡43)のY軸方向への変位(移動量)をΔYo、Z軸方向への変位(移動量)をΔZoとすると、Z干渉計18Z1、18Z2で受光される測定ビームB1の光路長変化ΔL1及び測定ビームB2の光路長変化ΔL2は、それぞれ以下の式(1)、(2)で表される。
【0080】
ΔL1≒ΔYo×cosθ−ΔZo×sinθ …(1)
ΔL2≒ΔYo×cosθ+ΔZo×sinθ …(2)
従って、式(1)、(2)からΔZo及びΔYoは次式(3)、(4)で求められる。
【0081】
ΔZo=(ΔL2−ΔL1)/2sinθ …(3)
ΔYo=(ΔL1+ΔL2)/2cosθ …(4)
【0082】
上記の変位ΔZo、ΔYoは、Z干渉計18Z1、18Z2のそれぞれで求められる。このため、Z干渉計18Z1で求められる変位をΔZoR、ΔYoRとし、Z干渉計18Z2で求められる変位をΔZoL、ΔYoLとし、測定ビームB1、B2のX軸方向の距離(間隔)をDとすると(図3参照)、移動鏡43(すなわちウエハステージWST)のθz方向への変位(ヨーイング量)Δθz、及び移動鏡43(すなわちウエハステージWST)のθy方向への変位(ローリング量)Δθyは次式(5)、(6)で求められる。
【0083】
Δθz=(ΔYoR−ΔYoL)/D …(5)
Δθy=(ΔZoL−ΔZoR)/D …(6)
従って、主制御装置20は、上記式(1)〜式(6)を用いることで、Z干渉計43A、43Bの計測結果に基づいて、ウエハステージWSTの4自由度の変位ΔZo、ΔYo、Δθz、Δθyを算出することができる。
【0084】
また、上述したように、主制御装置20は、Y干渉計18Yの計測結果により、ウエハステージWSTのY軸方向の変位ΔY、及びウエハステージWSTのθx方向の変位(ピッチング量)Δθxを求めることができる。
【0085】
なお、図1では、X干渉計18X1,18X2及びY干渉計18Y、並びにZ干渉計18Z1,18Z2が代表的にウエハ干渉計システム18として示され、X軸方向位置計測用の固定鏡とY軸方向位置計測用の固定鏡とが代表的に固定鏡57として図示されている。また、アライメント系ALG及びこれに固定された固定鏡は図1では図示が省略されている。
【0086】
本実施形態では、ウエハX干渉計18X1とウエハY干渉計18Yとは、ウエハの露光動作時に用いられるエンコーダシステムのキャリブレーションに用いられるとともに、ウエハX干渉計18X2とウエハY干渉計18Yとは、アライメント系ALGによるマーク検出時に用いられる。また、ウエハY干渉計18Yは、ウエハステージWSTのY位置の他、θx方向の回転情報(ピッチング)も計測可能となっている。なお、本実施形態では、前述のウエハ干渉計システム18のX干渉計18X1,18X2及びY干渉計18Yの測定ビームの反射面として、ウエハステージWSTに固定される移動鏡17X、17Yを用いるものとしたが、これに限らず、例えばウエハステージWSTの端面(側面)を鏡面加工して反射面(移動鏡17X,17Yの反射面に相当)を形成しても良い。
【0087】
ウエハY干渉計18Y、ウエハX干渉計18X1及び18X2、並びにZ干渉計18Z1及び18Z2の計測値は、主制御装置20に供給されるようになっている。
【0088】
また、ウエハステージWST上には、不図示の基準マーク板が、その表面がウエハWと同一高さとなる状態で固定されている。この基準マーク板の表面には、少なくとも一対のレチクルアライメント用の第1基準マークと、これらの第1基準マークに対して既知の位置関係にあるアライメント系ALGのベースライン計測用の第2基準マークなどが形成されている。
【0089】
本実施形態の露光装置100では、図1では図示が省略されているが、例えば特開平6−283403号公報(対応する米国特許第5,448,332号明細書)等に開示されるものと同様の照射系42aと受光系42b(図6参照)とから成る斜入射方式の多点焦点位置検出系が設けられている。
【0090】
また、露光装置100では、投影ユニットPUの近傍に、前述のアライメント系ALG(図1では不図示)が設けられている。このアライメント系ALGとしては、例えば、画像処理方式のアライメントセンサ、いわゆるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。このオフアクシス方式のアライメント系ALGは、指標中心を基準とするマークの位置情報を主制御装置20に供給する。主制御装置20は、この供給された情報と、ウエハ干渉計システム18の干渉計18Y、18X2の計測値とに基づいて、検出対象のマーク、具体的には基準マーク板上の第2基準マーク又はウエハ上のアライメントマークの、干渉計18Y、18X2で規定される座標系(アライメント座標系)上における位置情報を計測する。
【0091】
次に、エンコーダ50A〜50Dの構成等について、図5に拡大して示されるエンコーダ50Cを代表的に採り上げて説明する。この図5では、移動スケール44Cに検出光を照射するヘッドユニット46Cのヘッド48a〜48k(図3)の1つをヘッド48yとして示している。
【0092】
ヘッド48yは、大別すると、照射系64a、光学系64b、及び受光系64cの3部分から構成されている。
【0093】
照射系64aは、レーザ光LBをY軸及びZ軸に対して45°を成す方向に射出する光源、例えば半導体レーザLDと、該半導体レーザLDから射出されるレーザ光LBの光路上に配置されたレンズL1とを含む。
【0094】
光学系64bは、その分離面がXZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と記述する)WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2b等を備えている。
【0095】
受光系64cは、偏光子(検光子)及び光検出器等を含む。
【0096】
このエンコーダ50Cにおいて、半導体レーザLDから射出されたレーザビームLBはレンズL1を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射し、偏光分離されて2つのビームLB1、LB2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過したビームLB1は反射ミラーR1aを介して移動スケール44Cに形成された反射型回折格子RGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射されたビームLB2は反射ミラーR1bを介して反射型回折格子RGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0097】
ビームLB1、LB2の照射によって回折格子RGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームはそれぞれ、レンズL2b、L2aを介してλ/4板WP1b、WP1aにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2b、R2aにより反射されて再度λ/4板WP1b、WP1aを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0098】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つのビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過したビームLB1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射されて受光系64cに入射するとともに、先に偏光ビームスプリッタPBSで反射されたビームLB2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過してビームLB1の1次回折ビームと同軸に合成されて受光系64cに入射する。
【0099】
そして、上記2つの1次回折ビームは、受光系64cの内部で、検光子によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。
【0100】
上記の説明からわかるように、エンコーダ50Cでは、干渉させる2つのビームの光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響がほとんど無視できる。そして、移動スケール44C(すなわちウエハステージWST)が計測方向(この場合、Y軸方向)に移動すると、2つのビームそれぞれの位相が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化が、受光系64cによって検出され、その強度変化に応じた位置情報がエンコーダ50Cの計測値として出力される。その他のエンコーダ50A,50B,50Dも、エンコーダ50Cと同様にして構成されている。また、前述したレチクルステージ用の9つのエンコーダ26A1〜26C3も、エンコーダ50Cと同様の構成の回折干渉方式のエンコーダが用いられている。各エンコーダとしては、分解能が、例えば0.1nm程度のものが用いられている。
【0101】
図6には、本実施形態の露光装置100のステージ制御に関連する制御系が一部省略されてブロック図にて示されている。この図6の制御系は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する主制御装置20を中心として構成されている。
【0102】
上述のようにして構成された露光装置100では、例えば特開昭61−44429号公報及び対応する米国特許第4,780,617号明細書などに開示されているEGA(エンハンスド・グローバル・アライメント)方式などで行われるウエハアライメント動作時には、上述の如く、ウエハ干渉計システム18の計測値に基づいて、ウエハステージWSTの位置が主制御装置20によって管理され、ウエハアライメント動作時以外、例えば露光動作時などには、エンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいて、ウエハステージWSTの位置が主制御装置20によって管理される。なお、ウエハアライメント動作時にもエンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいてウエハステージWSTの位置を管理してもよい。また、エンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいてウエハステージWSTの位置を管理する場合、ウエハ干渉計システム18の少なくとも1つの計測値(例えば、Z軸、θx及びθy方向の位置情報)を併用してもよい。
【0103】
従って、本実施形態ではウエハアライメント動作終了後、露光開始前までの間で、ウエハステージの位置計測に用いる位置計測系を、ウエハ干渉計システム18(すなわち、ウエハY干渉計18Y及びウエハX干渉計18X2)からエンコーダ50A〜50Dへ切り替える、位置計測系の切り換え動作を行う必要がある。
【0104】
以下、この位置計測系の切り換え動作について簡単に説明する。
【0105】
ウエハアライメントが終了した時点では、例えば、図7に示されるように、ウエハステージWSTの位置は、干渉計18Y,18X2,18Z1,18Z2の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理されている。そこで、ウエハアライメントの終了後、主制御装置20は、これらの干渉計18Y,18X2,18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ウエハステージWSTを、ウエハステージ駆動系27を介して+Y方向に駆動する。
【0106】
そして、図8に示されるように、干渉計18X2からの測定ビームと、干渉計18X1からの2本の測定ビームとが同時にX移動鏡17Xに照射される位置に、ウエハステージWSTが到達すると、主制御装置20は、干渉計18Yの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのθz回転誤差(ヨーイング誤差)(及びθx回転誤差(ピッチング誤差))が零となるようにウエハステージWSTの姿勢を調整した後、干渉計18X1の計測値を、そのときの干渉計18X2の計測値と同じ値にプリセットする。なお、ウエハステージWSTのθz回転誤差は、Z干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて調整することとしても良い。
【0107】
そのプリセット後、主制御装置20は、干渉計18X1、18Yの計測値の空気揺らぎ(空気の温度揺らぎ)による短期的変動が平均化効果により無視できるレベルになるまでの所定時間その位置でウエハステージWSTを停止させ、その停止時間中に取得した干渉計18X1の計測値の加算平均値(停止時間中の平均値)を、Xリニアエンコーダ50B,50Dの計測値として引き継ぐ。これとともに、主制御装置20は、その停止時間中に取得した干渉計18Yの複数軸それぞれにおける計測値の加算平均値(停止時間中の平均値)の平均値を、Yリニアエンコーダ50A,50Cの計測値として引き継ぐ。これにより、Xリニアエンコーダ50B,50D、及びYリニアエンコーダ50A,50Cのプリセット、すなわち位置計測系の切り換え動作が完了する。以後、主制御装置20により、エンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいて、ウエハステージWSTの位置が管理されることとなる。
【0108】
次に、レチクルステージ用のエンコーダシステムにおけるエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む、露光のためのレチクルステージRSTのスキャン動作について説明する。
【0109】
例えば、ウエハWの+Y方向への移動とレチクルR1の−Y方向への移動とによる走査露光(ここではウエハWの移動方向に着目してプラススキャン露光と呼ぶ)の場合、図9に示される加速開始位置からレチクルステージRSTの−Y方向への加速が開始される。この加速開始位置では、レチクルステージRSTの位置は、主制御装置20によってエンコーダ26A2,26B2及び26C2を用いて計測されている。
【0110】
そして、レチクルステージRSTの−Y方向への加速が終了した加速終了時点では、一例として、図10に示されるように、レチクルR1の−Y端が照明領域IARの+Y端にほぼ一致する。この直前に、ヘッド26A1,26B1,26C1が、移動スケール24A,24B,28にそれぞれ対向するようになる。すなわち、エンコーダ26A2,26B2及び26C2のみでなく、エンコーダ26A1,26B1,26C1によっても、レチクルステージRSTの位置を計測できるようになる。
【0111】
そこで、主制御装置20は、例えばエンコーダ26A1,26B1,26C1によってレチクルステージRSTの位置が計測可能になった時点から加速が終了するまでのある時点における、エンコーダ26A2,26B2及び26C2の計測値(所定の原点を零とするカウント値(スケールの読み値))を、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値としてそのまま引き継ぐ。以後、主制御装置20は、エンコーダ26A1,26B1,26C1を用いて、レチクルステージRSTの位置を管理する。
【0112】
そして、図10の時点からレチクルステージRSTの等速移動が開始され、所定の整定時間が経過して、照明領域IARにレチクルR1のパターン領域が達した時点で露光が開始される(図16参照)。さらに、所定時間経過後、露光が終了して(図17参照)、レチクルステージRSTの減速が開始され、図11に示される位置で停止する。なお、露光終了とほぼ同時にレチクルステージRSTの減速を開始しても良い。
【0113】
図10及び図11からわかるように、露光開始直前(すなわち、レチクルステージRSTの位置制御に使用するエンコーダの切り替えが行われた時点)から走査露光期間を経て減速が終了するまでの期間、レチクルステージRSTの位置は、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。
【0114】
一方、ウエハWの−Y方向への移動とレチクルR1の+Y方向への移動とによる走査露光(マイナススキャン露光)の場合には、上記プラススキャン露光と逆に、図11の状態からレチクルステージRSTの+Y方向への加速が開始され、図10に示される露光終了直後の時点で、エンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)が行われ、減速期間中は、レチクルステージRSTの位置が、エンコーダ26A2,26B2,26C2の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。
【0115】
ここで、図9、図10、図11等では、エンコーダに加え、干渉計16x、16yによってもレチクルステージRSTの位置を計測している状態が示されているが、干渉計によるレチクルステージRSTの位置計測は必ずしも行う必要が無いことは勿論である。本実施形態において、走査露光中に得られたエンコーダ及び干渉計16x、16yの計測結果の利用方法については後述する。
【0116】
なお、詳細説明は省略するが、レチクルR2を用いる、プラススキャン露光及びマイナススキャン露光では、エンコーダ26A1,26B1,26C1とエンコーダ26A3,26B3,26C3とが用いられる。この際にも、前述と同様のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)が行われ、少なくとも走査露光の期間では、レチクルステージRSTの位置は、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。また、主制御装置20はエンコーダの計測値に基づいてレチクルステージRSTのX、Y位置だけでなくθz方向の位置(ヨーイング)も管理している。
【0117】
本実施形態の露光装置100では、通常のスキャニング・ステッパと同様に、レチクルアライメント系13A,13B(図6)、ウエハステージWST上の基準マーク板及びアライメント系ALGなどを用いて、レチクルアライメント(レチクル座標系とウエハ座標系との対応付けを含む)及びアライメント系ALGのベースライン計測などの一連の作業が行われる。これらの一連の作業中のレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置制御は、干渉計16y及び16x、並びに干渉計18X1,18X2,18Y,18Z1,18Z2の計測値に基づいて行われる。なお、レチクルアライメント、あるいはベースライン計測などでも、前述したエンコーダの計測値のみ、又は干渉計とエンコーダの両方の計測値に基づいてレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置制御を行ってもよい。
【0118】
次いで、主制御装置20により、不図示のウエハローダ(搬送装置)を用いてウエハステージWST上のウエハ交換(ウエハステージWST上にウエハがない場合は、ウエハのロード)が行われ、そのウエハに対するアライメント系ALGを用いた、例えばEGA方式のウエハアライメントが行われる。このウエハアライメントにより、前述したアライメント座標系上におけるウエハ上の複数のショット領域の配列座標が求められる。
【0119】
その後、主制御装置20により、前述した位置計測系の切り替えが行われた後、先に計測したベースライン及びエンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいてウエハステージWSTの位置が管理され、かつ前述したエンコーダ26A1,26B1及び26C1の計測値に基づいてレチクルステージRSTの位置を管理しつつ、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順で、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、レチクル(R1又はR2)のパターンがウエハ上の複数のショット領域にそれぞれ転写される。
【0120】
図12(A)には、ウエハWの中央付近が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示され、図12(B)には、ウエハWの中心と外周との中間付近が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示されている。また、図13(A)には、ウエハWの+Y側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示され、図13(B)には、ウエハWの中心から見てX軸及びY軸に対して45°を成す方向のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示されている。また、図14には、ウエハWの+X側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示されている。これら図12(A)〜図14を見ると、いずれの図においても、ヘッドユニット46A〜46Dの各々においてその11個のヘッドの少なくとも1つ(本実施形態では1つ又は2つ)が、対応する移動スケールに対向していることがわかる。この事実、及びヘッドユニット46A〜46Dの投影光学系PLの光軸AXを中心とする上下、左右方向に関する対称配置、並びに移動スケール44A〜44DのウエハステージWSTの中心に対するX軸方向及びY軸方向に関する対称配置を総合して考えれば、次のことがわかる。すなわち、露光装置100では、露光動作中のウエハステージWSTの移動範囲内のいずれの位置にウエハステージWSTがあっても、ヘッドユニット46A〜46Dの各々においてその11個のヘッドの少なくとも1つが、対応する移動スケールに対向し、4つのエンコーダ50A〜50DによるウエハステージWSTのX位置及びY位置の計測を常時行うことができる。また、ウエハステージWSTのヨーイング計測も可能となっている。
【0121】
換言すれば、前述した4つの移動スケール44A〜44Dはそれぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の形成範囲に相当)が、少なくともウエハWの全面を走査露光するときのウエハステージWSTの移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(本実施形態では全てのショット領域で、少なくとも走査露光中と、走査露光前後のウエハステージWSTの加減速及び同期整定の期間中とに、4つのヘッドユニット46A〜46D(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、ウエハWの大きさ(直径)よりも長く設定されている。
【0122】
また、4つのヘッドユニット46A〜46Dも同様に、それぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の検出範囲に相当)が、少なくともウエハWの全面を走査露光するときのウエハステージWSTの移動ストロークの全域をカバーする(すなわち、少なくともウエハWの露光動作中に4つのヘッドユニット46A〜46D(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、その移動ストロークと同程度以上に設定されている。なお、露光動作だけでなく他の動作、例えばアライメント動作(前述のウエハアライメント及びベースライン計測を含む)でもエンコーダ50A〜50DによるウエハステージWSTの位置計測を可能とするようにヘッドユニット46A〜46Dを構成してもよい。
【0123】
ところで、エンコーダの移動スケールは、使用時間の経過と共に固定位置がずれる、あるいは熱膨張などにより回折格子のピッチが部分的は又は全体的に変化するので、エンコーダは長期安定性に欠ける。このため、その計測値に含まれる誤差が使用時間の経過と共に大きくなるので、これをキャリブレーションする必要がある。以下、本実施形態の露光装置100で行われるエンコーダのキャリブレーション動作について説明する。
【0124】
まず、レチクルステージ用のエンコーダシステムを構成するエンコーダの計測値のゲイン誤差及びリニアリティ誤差を補正するための第1のキャリブレーション動作について説明する。この第1のキャリブレーション動作は、例えばロット毎に先頭のウエハの露光開始前に行われる、すなわち比較的長期のインターバルで行われるので、以下では長期キャリブレーション動作とも呼ぶ。
【0125】
具体的には、主制御装置20は、レチクルR1及びR2(のパターン領域)を照明領域IARが通過する(実際には、照明領域IARをレチクルR1及びR2(のパターン領域)が横切る)範囲を、干渉計の計測値の短期変動が無視できる程度の極低速で、レチクルステージRSTをY軸方向にスキャンする。なお、この第1のキャリブレーション動作に際しては、照明領域IARが照明光ILで照明されるわけではないが、ここではレチクルステージRSTの移動位置を分かり易く説明するために、「照明領域IARが通過する」等の表現を用いている。
【0126】
上記のスキャン中に、主制御装置20は、所定のサンプリング間隔で、レチクルY干渉計16y及びYリニアエンコーダ26A1、26B1の計測値、並びにレチクルX干渉計16x及びXリニアエンコーダ26C1の計測値を取り込み、それら計測値を不図示のメモリに格納するとともに、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1の計測値とレチクルY干渉計16yの計測値、レチクルX干渉計16xの計測値とXリニアエンコーダ26C1の計測値について、図15に示されるようなマップをそれぞれ作成する。ここで、3つのエンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測値を取り込むのは、レチクルR1及びR2(のパターン領域)を照明領域IARが通過する範囲では、これら3つのエンコーダ26A1、26B1及び26C1を用いてレチクルステージRSTの位置が制御されることを考慮したためである。
【0127】
図15は、横軸が干渉計の計測値、縦軸がエンコーダの計測値とした場合の両者の関係を曲線Cで示す線図であり、この曲線Cと理想ラインTLとの差がエンコーダの計測値に含まれる誤差を示す。この図15の線図をそのままエンコーダの計測値を補正する補正マップとすることができる。その理由は、例えば図15における点P1は、エンコーダの計測値がe1のとき、対応する干渉計の計測値がi1であることを示すが、この干渉計の計測値は、前述した極低速でレチクルステージRSTをスキャンしたときに得られるものであるから、長期的な変動誤差は勿論、空気揺らぎに起因する短期的な変動誤差も殆ど含まれず、誤差が無視できる正確な値と考えて差し支えないからである。
【0128】
この図15の補正マップに従って、エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測値を補正したエンコーダ26A1、26B1及び26C1の補正後の計測値と、対応する干渉計の計測値との関係を求めると、図15の理想ラインTLに一致する。なお、エンコーダ26C1の計測値を補正する補正マップは、レチクルステージRSTをX軸方向に可動範囲内で駆動し、その駆動中に得られたエンコーダ26C1、レチクルX干渉計16xの計測値に基づいて、作成しても勿論良い。
【0129】
主制御装置20は、残りのエンコーダについても、上述のエンコーダ26A1,26B1及び26C1と同様の手順で、干渉計16x,16yの計測値を用いて補正マップを作成することとしても良い。
【0130】
但し、上記の長期キャリブレーション動作の他に、後述する短期キャリブレーション動作を併せて実行する場合には、上記の補正マップの曲線Cを、オフセット成分及び傾斜成分の低次成分と、それ以外の高次成分とに分離して、低次成分、高次成分のそれぞれを補正マップとして持っておく、あるいは低次成分もオフセット成分と傾斜成分とに分離してそれぞれの補正マップを、高次成分と共に持っておいても良い。あるいは、比較的長期に渡って変動しないであろうと予想される高次成分についての補正マップ(補正情報)を持っておき、比較的短期に変動すると予想される低次成分の補正情報を短期キャリブレーション動作で取得することとしても良い。
【0131】
なお、上記の説明において少なくともエンコーダ26A1、26B1の計測値の補正情報を取得(決定)するキャリブレーション動作では、前述の如くレチクルR1及びR2のパターン領域がそれぞれ照明領域IARを横切る範囲に渡ってレチクルステージRSTを走査方向(Y軸方向)に移動するものとしたが、レチクルステージRSTの移動範囲はこれに限られるものではない。例えば、エンコーダ26A1、26B1の計測可能範囲(移動スケール24A、24Bの回折格子の形成範囲に対応)のほぼ全域、あるいはレチクルR1、R2のいずれか一方を用いる走査露光時の移動範囲などとしても良い。この走査露光時の移動範囲は、走査露光期間だけでなく、その前後の加減速期間及び同期整定期間などの少なくとも一部を含めたレチクルステージRSTの移動範囲としても良い。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、レチクルR1、R2を用いる走査露光時のレチクルステージRSTの移動範囲だけでなく、レチクルステージRSTに設けられる不図示の基準マークを用いる計測動作時の移動範囲をも含むものとしてよい。この基準マークは、レチクルステージRST上でレチクルR1に対して−Y側、及び/又はレチクルR2に対して+Y側に少なくとも1つ設けられる。
【0132】
次に、例えばウエハ1枚毎に(いわゆるオーバー・ヘッド時間(前ウエハの露光終了から次ウエハの露光開始までの間)に)実施される、エンコーダ26A1、26B1及び26C1のゲイン誤差(エンコーダ計測値の干渉計計測値に対するスケーリング誤差)を較正する、第2のキャリブレーション動作について説明する。この第2のキャリブレーション動作は、ウエハ1枚毎などに行われる、すなわち比較的短期のインターバルで行われるので、以下では短期キャリブレーション動作とも呼ぶ。
【0133】
まず、主制御装置20は、図16に示されるように、走査方向(Y軸方向)に関して、次の露光に用いられるレチクルR1(又はR2)のパターン領域の−Y側の端部が照明領域IARの+Y側の端部に一致する第1のY位置(以下では、単に第1位置とも呼ぶ)にレチクルステージRSTを位置決めする。このキャリブレーション動作に際しても、実際には照明領域IARが照明光ILで照明されるわけではないが、図16では、レチクルステージRSTの位置を分かり易くするために、照明領域IARが図示されている。
【0134】
そして、主制御装置20は、この図16に示される上記第1位置でのレチクルステージRSTの位置決め状態を所定時間継続し、その位置決め状態の継続中にエンコーダ26A1、26B1及び26C1、並びに干渉計16x,16yの計測値を所定のサンプリング間隔で取得し、不図示のメモリに記憶する。
【0135】
次に、主制御装置20は、レチクルステージRSTを−Y方向に駆動して、図17に示されるように、レチクルR1(又はR2)のパターン領域の+Y側の端部が照明領域IARの−Y側の端部に一致する第2のY位置(以下では、単に第2位置とも呼ぶ)にレチクルステージRSTを位置決めする。そして、主制御装置20は、この図17に示される上記第2位置でのレチクルステージRSTの位置決め状態を所定時間継続し、その位置決め状態の継続中にエンコーダ26A1、26B1及び26C1、並びに干渉計16x,16yの計測値を所定のサンプリング間隔で取得し、不図示のメモリに記憶する。
【0136】
そして、主制御装置20は、上記第1及び第2位置でそれぞれメモリに記憶した計測値(情報)に基づき、エンコーダ26A1、26B1及び26C1、並びに干渉計16x,16yのそれぞれについて、上記第1及び第2位置それぞれにおける計測値の加算平均値(時間平均値)を算出する。そして、この算出結果に基づいて、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1の計測値とレチクルY干渉計16yの計測値、及びレチクルX干渉計16xの計測値とXリニアエンコーダ26C1の計測値について、図18に示されるようなマップをそれぞれ作成する。この図18のマップにおいて、点P2、点P3が、上記第1及び第2位置それぞれにおける、空気揺らぎなどに起因する短期的変動を平均化効果により低減させた干渉計の計測値と、対応するエンコーダの計測値との関係を示す点である。
【0137】
次に、主制御装置20は、エンコーダの計測値を干渉計の計測値を用いて補正する補正マップの傾斜成分(スケーリング)Scを、次式により算出する。
Sc=(e3−e2)/(i3−i2)
そして、主制御装置20は、算出された補正マップの傾斜成分を、低次成分の補正マップ中の傾斜成分に置き換え、その置き換え後の低次成分の補正マップと、補正マップとして持っている高次成分とに基づいて、低次成分及び高次成分を補正するための新たな補正マップを作成する。
【0138】
なお、上記の説明では、レチクルステージRSTを、露光対象のレチクルR1(又はR2)のパターン領域を照明領域IARが通過する範囲の両端の位置である第1位置と第2位置の2箇所にそれぞれ位置決めし、所定の処理を行って上記の新たな補正情報を算出するものとした。しかし、これに限らず、第1位置、第2位置の他に、これらの位置の間の少なくとも1つの位置を含む3つ以上の位置に、レチクルステージRSTをそれぞれ位置決めして、上記と同様の処理を行い、得られた3つ以上の点の最小二乗近似直線を求め、その近似直線に基づいて、補正マップの傾斜成分(スケーリング誤差)に加えてオフセット成分を算出することとしても良い。この場合、算出された補正マップの低次成分(傾斜成分及びオフセット成分)と、補正マップとして持っている高次成分とに基づいて、低次成分及び高次成分を補正するための新たな補正マップを作成すれば良い。また、レチクルステージRSTを位置決めする第1及び第2位置は、走査方向に関してレチクルのパターン領域の全体が照明領域IARを横切るためのレチクルステージRSTの移動範囲の両端に対応するものとしたが、これに限らず、例えばレチクルR1、R2のいずれか一方を用いる走査露光時にレチクルステージRSTが実際に移動される範囲(走査露光前後の加減速期間及び同期整定期間をも含めた移動範囲)に対応するものとしても良い。さらに、第1及び第2位置によって規定される走査方向の移動範囲は、レチクルのパターン領域の全体が照明領域IARを横切るためのレチクルステージRSTの移動範囲と少なくとも一部がずれていても良いが、少なくともその移動範囲を含むことが好ましい。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、前述した基準マークを用いる計測動作時の移動範囲をも含むものとしてよい。
【0139】
次に、ウエハ1枚毎(いわゆるオーバー・ヘッド時間)に実施される、エンコーダ26A1、26B1及び26C1のゲイン誤差(エンコーダ計測値の干渉計計測値に対するスケーリング誤差及びオフセット)、すなわち前述の補正マップの低次成分を更新する、第3のキャリブレーション動作について説明する。この第3のキャリブレーション動作も、前述と同様の理由により、以下では、短期キャリブレーション動作とも呼ぶ。
【0140】
まず、主制御装置20は、この第3のキャリブレーション動作の実施によって露光装置100のスループットが低下しても、スループットを許容範囲内に維持できる程度の低速で、次の露光に用いられるレチクルR1(又はR2)のパターン領域を照明領域IARが通過する所定範囲内で、レチクルステージRSTをY軸方向に駆動する。そして、その駆動中に干渉計16x,16y及びエンコーダ26A1、26B1及び26C1を用いてレチクルステージRSTの位置情報を所定のサンプリング間隔で取得し、不図示のメモリに記憶する。なお、この第3のキャリブレーション動作に際しても、照明領域IARが照明光ILで照明されることはないが、前述と同様の理由で、「照明領域IARが通過する」等の表現を用いている。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、前述した第2のキャリブレーション動作で説明した範囲と同一である。但し、この第3のキャリブレーション動作ではその移動範囲の両端でレチクルステージRSTの位置決めを行う必要はない。
【0141】
次いで、主制御装置20は、前述と同様に、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1の計測値とレチクルY干渉計16yの計測値、レチクルX干渉計16xの計測値とXリニアエンコーダ26C1の計測値について、図19中に示される曲線C1のような曲線を、それぞれ作成する。なお、図19において、符号EAは、レチクルR1(又はR2)のパターン領域を照明領域IARが通過する所定範囲、すなわち露光区間を示す。
【0142】
次に、主制御装置20は、その曲線C1の最小二乗近似直線FLを求め、この近似直線FLの理想直線TLに対するオフセットドリフトOD、スケーリングドリフトSDを求める。そして求めたオフセットドリフト(オフセット誤差)、スケーリングドリフト(傾斜誤差)を用いて、予めマップとして持っていた低次成分の補正マップを更新する。そして、この補正後の低次成分の補正マップと、予めマップとして持っている高次成分の補正マップとに基づいて、低次成分及び高次成分を補正するための新たな補正マップを作成する。
【0143】
なお、第3のキャリブレーション動作におけるレチクルステージRSTの移動範囲は、レチクルのパターン領域の全体が照明領域IARを横切るための所定範囲(露光区間EAに対応)と少なくとも一部がずれていても良いが、少なくともその所定範囲を含むことが好ましく、例えばレチクルR1、R2のいずれか一方を用いる走査露光時にレチクルステージRSTが実際に移動される範囲(走査露光前後の加減速期間及び同期整定期間をも含めた移動範囲)としても良い。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、前述した基準マークを用いる計測動作時の移動範囲をも含むものとしてよい。
【0144】
なお、露光装置100では、露光動作時のウエハステージWSTの位置制御に用いられるエンコーダ50A〜50Dの長期キャリブレーション動作、短期キャリブレーション動作が、主制御装置20によって、前述の第1〜第3のキャリブレーション動作と同様の手法で行われる。但し、ウエハステージWSTの移動は2次元面内で行われる。この場合、ウエハY干渉計18Y及びウエハX干渉計18X1で規定される直交座標系上でウエハステージWSTを駆動して、Xリニアエンコーダ50B,50Dの計測値の誤差の分布を基にした補正マップ、Yリニアエンコーダ50A,50Cの計測値の誤差の分布を基にした補正マップが求められる。このとき、Yリニアエンコーダ50A、50Cは、移動スケール44A、44Cの回折格子の配列方向、及び長手方向が共にY軸方向であり、ヘッドユニット46A、46Cの長手方向(ヘッドの配列方向)がX軸方向である。
【0145】
次に、本実施形態の露光装置100で行われるエンコーダ50A〜50Dの長期キャリブレーション動作(第1のキャリブレーション動作)、すなわちウエハステージWSTの移動スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報の取得動作について、図20に基づいて説明する。
【0146】
この図20において、Y干渉計18Yからの測定ビームB41,B42は、投影光学系PLの光軸を通る、Y軸と平行な直線(ヘッドユニット46B及びヘッドユニット46Dの複数のヘッドの中心を結んだ直線に一致)に関して対称に配置され、Y干渉計18Yの実質的な測長軸は、投影光学系PLの光軸を通る、Y軸と平行な直線に一致する。このため、Y干渉計18Yによれば、アッベ誤差なくウエハステージWSTのY位置を計測することができる。同様に、X干渉計18X1からの測定ビームは、投影光学系PLの光軸を通る、X軸と平行な直線(ヘッドユニット46A及びヘッドユニット46Cの複数のヘッドの中心を結んだ直線に一致)上に配置され、X干渉計18X1の測長軸は、投影光学系PLの光軸を通る、X軸と平行な直線に一致する。このため、X干渉計18X1によれば、露光時などにアッベ誤差なくウエハステージWSTのX位置を計測することができる。
【0147】
ここで、一例として、Xスケールの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報と、Yスケールの格子ピッチの補正情報との取得動作について説明する。ここでは、説明を簡単にするために、移動鏡17Xの反射面は、理想的な平面であるものとする。
【0148】
まず、主制御装置20は、Y干渉計18Y、X干渉計18X1及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいてウエハステージWSTを駆動し、図20に示されるように、移動スケール44A、44Cがそれぞれ対応するヘッドユニット46A、46C(少なくとも1つのヘッド)の直下に配置され、かつ移動スケール(回折格子)44A、44Cの+Y側の一端がそれぞれ対応するヘッドユニット46A、46Cと一致する位置に、ウエハステージWSTを位置決めする。
【0149】
次に、主制御装置20は、Y干渉計18Yの計測値の短期変動が無視できる程度の低速で、且つX干渉計18X1の計測値を所定値に固定しつつ、Y干渉計18Y及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ピッチング量、ローリング量及びヨーイング量を全て零に維持しながら、図20中に矢印Fで示されるように、例えば移動スケール44A、44Cの他端(−Y側の一端)がそれぞれ対応するヘッドユニット46A、46Cと一致するまでウエハステージWSTを+Y方向に移動させる。この移動中に、主制御装置20は、Yリニアエンコーダ50A,50Cの計測値とY干渉計18Yの計測値(測定ビームB41,B42による計測値)とを、所定のサンプリング間隔で取り込み、その取り込んだ計測値に基づいてYリニアエンコーダ50A,50Cの計測値とY干渉計18Yの計測値との関係を求める。すなわち、主制御装置20は、ウエハステージWSTの移動に伴ってヘッドユニット46A及び46Cに順次対向して配置される移動スケール44A及び44Cの格子ピッチ(隣接する格子線の間隔)及び該格子ピッチの補正情報を求める。この格子ピッチの補正情報は、例えば、横軸が干渉計の計測値、縦軸がエンコーダの計測値とした場合の両者の関係を曲線で示す補正マップなどとして求めることができる。この場合のY干渉計18Yの計測値は、前述した極低速でウエハステージWSTをスキャンしたときに得られるものであるから、長期的な変動誤差は勿論、空気揺らぎなどに起因する短期的な変動誤差も殆ど含まれず、誤差が無視できる正確な値と考えて差し支えない。ここでは、移動スケール44A、44Cの両端が対応するヘッドユニット46A、46Cを横切る範囲に渡ってウエハステージWSTをY軸方向に駆動するものとしたが、これに限らず、例えばウエハの露光動作時にウエハステージWSTが移動されるY軸方向の範囲でウエハステージWSTを駆動しても良い。
【0150】
また、主制御装置20は、ウエハステージWSTの移動中に、その移動に伴って移動スケール44B,44Dに順次対向して配置されるヘッドユニット46B及び46Dの複数のヘッドから得られる計測値(Xリニアエンコーダ50B及び50Dの計測値)を統計的に処理、例えば平均する(又は重み付け平均する)ことで、その複数のヘッドに順次対向した格子線の変形(曲がり)の補正情報をも求めている。これは、移動鏡17Xの反射面が理想的な平面である場合には、ウエハステージWSTを+Y方向に送っていく過程で、繰り返し同じぶれパターンが出現する筈であるから、複数のヘッドで取得した計測データを平均化等すれば、その複数のヘッドに順次対向した移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報を正確に求めることができるからである。
【0151】
なお、移動鏡17Xの反射面が理想的な平面でない場合には、予めその反射面の凹凸(曲がり)を計測してその曲がりの補正データを求めておく。そして、上述のウエハステージWSTの+Y方向への移動の際に、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定する代わりに、その補正データに基づいて、ウエハステージWSTのX位置を制御することで、ウエハステージWSTを正確にY軸方向に移動させることとすれば良い。このようにすれば、上記と全く同様に、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報及び移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報を得ることができる。なお、ヘッドユニット46B及び46Dの複数のヘッドで取得した計測データは、移動鏡17Xの反射面の異なる部位基準での複数のデータであり、いずれのヘッドも同一の格子線の変形(曲がり)を計測しているのであるから、上記の平均化等によって、反射面の曲がり補正残差が平均化されて真の値に近づく(換言すれば、複数のヘッドで取得した計測データ(格子線の曲がり情報)を平均化することで、曲がり残差の影響を薄めることができる)という付随的な効果もある。
【0152】
なお、Xリニアエンコーダ50B,50Dは、移動スケール44B、44Dの回折格子の配列方向及び長手方向、並びにヘッドユニット46B、46Dの長手方向(ヘッドの配列方向)がいずれもYリニアエンコーダ50A、50CとX軸及びY軸方向が逆であるだけなので、Yスケールの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報、及び移動スケール50B,50Dの格子ピッチの補正情報の取得動作(第1のキャリブレーション動作)に際しては、上述の補正の場合と、X軸方向とY軸方向とを入れ替えた処理を行えば良いので詳細説明は省略する。
【0153】
このようにして、主制御装置20は、所定のタイミング毎、例えばロット毎などに、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報及び移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報、並びに移動スケール44B,44Dの格子ピッチの補正情報及び移動スケール44A,44Cの格子線の変形(曲がり)の補正情報を得る。
【0154】
そして、ロット内のウエハの露光処理中などには、主制御装置20は、ヘッドユニット46A,46Cから得られる計測値(すなわち、エンコーダ50A,50Cの計測値)を、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報及び格子線の変形(曲がり)の補正情報に基づいて補正しながら、ウエハステージWSTのY軸方向の位置制御を行う。これにより、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの経時的な変化及び格子線の曲がりの影響を受けることなく、リニアエンコーダ50A,50Cを用いて、ウエハステージWSTのY軸方向の位置制御を精度良く行なうことが可能となる。
【0155】
また、ロット内のウエハの露光処理中などには、主制御装置20は、ヘッドユニット46B,46Dから得られる計測値(すなわち、エンコーダ50B,50Dの計測値)を、移動スケール44B,44Dの格子ピッチの補正情報及び格子線の変形(曲がり)の補正情報に基づいて補正しながら、ウエハステージWSTのX軸方向の位置制御を行う。これにより、移動スケール44B,44Dの格子ピッチの経時的な変化及び格子線の曲がりの影響を受けることなく、リニアエンコーダ50B,50Dを用いて、ウエハステージWSTのX軸方向の位置制御を精度良く行なうことが可能となる。
【0156】
なお、上述の説明では、移動スケール44A〜44Dのいずれについても、格子ピッチ、及び格子線曲がりの補正情報の取得を行うものとしたが、これに限らず、移動スケール44A,44C及び移動スケール44B,44Dのいずれかについてのみ、格子ピッチ及び格子線曲がりの補正情報の取得を行っても良いし、移動スケール44A,44C及び移動スケール44B,44Dの両者について、格子ピッチ、格子線曲がりのいずれかについての補正情報のみを取得しても良い。
【0157】
なお、詳細説明は省略するが、露光動作時のウエハステージWSTの位置制御に用いられるエンコーダ50A〜50Dの短期キャリブレーション動作(第2,第3のキャリレーション動作)についても、上記長期キャリブレーション動作(第1のキャリブレーション動作)に準じて行われる。
【0158】
そして、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作の際に、前述の如く主制御装置20によってエンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値及びその補正マップに基づいてレチクルステージRSTの位置制御が行われるとともに、エンコーダ50A〜50Dの計測値及びその補正マップに基づいてウエハステージWSTの位置制御が行われる。
【0159】
また、本実施形態の露光装置100では、レチクルステージRST上にレチクルR1とレチクルR2とを同時に載置可能である。このため、主制御装置20は、レチクルR1とレチクルR2とについて、レチクルアライメントを行っておくことで、レチクルステージRSTに対するレチクル交換の動作を行うことなく、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいてレチクルステージRSTを移動させるだけで、レチクルR1とレチクルR2とを用いて、例えば二重露光を行うことができる。
【0160】
なお、本実施形態で用いられる各エンコーダとしては、上述した回折干渉方式に限らず、いわゆるピックアップ方式など種々の方式のものを用いることができ、例えば米国特許第6,639,686号明細書などに開示されるいわゆるスキャンエンコーダなどを用いることができる。
【0161】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、主制御装置20により、例えばエンコーダ26A1,26B1,26C1などの較正動作が実行される。すなわち、エンコーダ26A1,26B1,26C1などに比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計16y,16xの計測値を用いて、当該干渉計16y,16xに比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ26A1,26B1,26C1などの計測値を補正する補正情報が取得される。そして、主制御装置20は走査露光時などに、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値と前記補正情報とに基づいてレチクルステージRSTを駆動する。
【0162】
従って、補正情報を用いて補正されたエンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なレチクルステージRSTの位置情報に基づいて、レチクルステージRSTを精度良く駆動することができる。
【0163】
また、本実施形態の露光装置100によると、前述した長期キャリブレーションにより、エンコーダ26A1,26B1に比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計16yの計測値を用いて、その干渉計16yに比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ26A1,26B1の計測値を補正する補正情報が取得される。そして、主制御装置20はパターン転写時などに、エンコーダ26A1,26B1の計測値と前記補正情報とに基づいてレチクルステージRSTの移動を制御する。従って、補正情報を用いて補正されたエンコーダ26A1,26B1の計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なレチクルステージRSTの走査方向の位置情報に基づいて、レチクルステージRSTの走査方向の移動を精度良く制御することが可能になる。
【0164】
また、本実施形態の露光装置100によると、前述したいずれかの短期キャリブレーションにより、エンコーダ26A1,26B1に比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計16yと、その干渉計16yに比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ26A1,26B1の計測値との関係を示すマップ情報の低次成分(スケーリング誤差、又はスケーリング誤差及びスケーリングオフセット)を補正するための補正情報が取得される。そして、主制御装置20はパターン転写時などに、エンコーダ26A1,26B1の計測値と、上記補正情報を用いて低次成分が補正されたマップ情報とに基づいてレチクルステージRSTの移動を制御する。
【0165】
また、露光装置100によると、主制御装置20により、例えばエンコーダ50A〜50Dの較正動作が、上述のエンコーダ26A1,26B1の較正動作と同様にして実行される。すなわち、干渉計18Y、18X1に比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ50A〜50Dの計測値を、エンコーダ50A〜50Dに比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計18Y、18X1の計測値を用いて補正する補正情報が取得される。そして、主制御装置20は走査露光時、及びショット領域間のステップ移動時などに、エンコーダ50A〜50Dの計測値と前記補正情報とに基づいてウエハステージWSTを駆動する。
【0166】
従って、補正情報を用いて補正されたエンコーダ50A〜50Dの計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なウエハステージWSTのX軸及びY軸方向に関する位置情報に基づいて、ウエハステージWSTをX軸及びY軸方向のいずれであっても精度良く駆動することができる。
【0167】
従って、本実施形態の露光装置100では、ウエハ上の各ショット領域に対する走査露光の際に、主制御装置20は、エンコーダ26A1,26B1、26C1、及びエンコーダ50A〜50D)の計測値に基づいて、レチクルR1又はR2(レチクルステージRST)とウエハW(ウエハステージWST)を走査方向(Y軸方向)に沿って精度良く駆動することが可能であるとともに、非走査方向(X軸方向)に関するレチクルR1又はR2(レチクルステージRST)とウエハW(ウエハステージWST)との高精度な位置決め(アライメント)も可能となる。これにより、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルR1(又はR2)のパターンを精度良く形成することが可能になる。
【0168】
なお、本実施形態の露光装置100において、主制御装置20は露光動作とは別にレチクルステージRSTを移動して得られるエンコーダ及び干渉計の計測値に基づいて、エンコーダの計測値の補正情報を更新するものとしたが、例えば露光動作時におけるレチクルステージRSTの移動中に得られるエンコーダ及び干渉計の計測値を用いて補正情報を更新してもよい。すなわち、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルR1(又はR2)のパターンを順次転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行う際に、例えば各ショット領域の走査露光中、レチクルステージRSTの位置を、エンコーダの計測値及びその補正情報に基づいて制御し、その制御(ウエハの露光動作)と並行して、干渉計及びエンコーダの計測値を蓄積し、この蓄積した計測値に基づいて、次のウエハの露光に先立って補正情報(例えば、図21に示される、干渉計の計測値とエンコーダの計測値との関係を示すマップ情報)を較正する、エンコーダの計測誤差の逐次キャリブレーションを実行することとしても良い。
【0169】
図21において、符号C2は、蓄積されたデータの平均値を示し、この平均値のデータは、干渉計の計測値の短期変動(空気揺らぎなどに起因する計測値の変動)が平均化されている。この場合、走査露光中のデータを全てのショット領域について蓄積する必要はなく、干渉計の計測値の短期変動を平均化するに足る数のショット領域について走査露光中のデータを蓄積するだけでも良い。図21において、符号EAは、図19と同様の露光区間を示す。
【0170】
この場合においても、次のウエハに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光に際して、各ショット領域の走査露光時(パターン転写時)のレチクルステージRSTの移動を、補正情報(例えば図21のマップ情報)を用いて補正されたエンコーダの計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なレチクルステージの位置情報に基づいて、精度良く制御することが可能になる。これにより、レチクルR1(又はR2)に形成されたパターンを走査露光によりそのウエハ上の複数のショット領域に精度良く転写することが可能になる。なお、このキャリブレーションはYリニアエンコーダだけでなくXリニアエンコーダに対して行っても良いし、さらにはウエハステージのエンコーダシステム(エンコーダ50A〜50D)に対して行っても良い。
【0171】
なお、上記実施形態の露光装置100では、移動スケールの格子ピッチの補正情報及び格子線の曲がりの補正情報を次に説明する変形例に係る方法によって取得しても良い。
【0172】
ここでは、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報の取得動作及び移動スケール44B,44Dの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報の取得動作について説明する。また、説明を簡単にするために、移動鏡17Xの反射面は、理想的な平面であるものとする。
【0173】
まず、主制御装置20は、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定しつつ、Y干渉計18Y及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ピッチング量、ローリング量及びヨーイング量を全て零に維持しながら、例えば前述したストローク範囲で図22中に矢印Fで示される+Y方向にウエハステージWSTを移動させる。この移動中に、主制御装置20は、エンコーダ50A、50Cの計測値、及びY干渉計18Yの計測値(測定ビームB41,B42による計測値)を、所定のサンプリング間隔で内部メモリに取り込む。この場合、エンコーダ50Cの計測値は、移動スケール44Cと対向する、投影光学系PLの光軸を通るY軸に平行な直線LVから+X方向に距離aの位置にある図22中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Cのヘッド48kから得られる。また、エンコーダ50Aの計測値は、移動スケール44Aと対向する、直線LVから−X方向に距離bの位置にある図22中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Aのヘッド48eから得られる。
【0174】
次に、主制御装置20は、X干渉計18X1の計測値に基づいてウエハステージWSTを+X方向に所定距離移動させた後、Y干渉計18Yの計測値に基づいて図22中に矢印F’で示される−Y方向に所定距離移動させた位置で停止させる。
【0175】
そして、主制御装置20は、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定しつつ、Y干渉計18Y及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ピッチング量及びローリング量を零、かつヨーイング量を極力零に維持しながら、例えば前述のストローク範囲で図23中に矢印Fで示される+Y方向にウエハステージWSTを移動させる。この移動中に、主制御装置20は、エンコーダ50A、50Cの計測値、及びY干渉計18Yの計測値(測定ビームB41,B42による計測値)を、所定のサンプリング間隔で内部メモリに取り込む。この場合、エンコーダ50Cの計測値は、移動スケール44Cと対向する、直線LVから+X方向に距離bの位置にある図23中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Cのヘッド48eから得られる。また、エンコーダ50Aの計測値は、移動スケール44Aと対向する、直線LVから−X方向に距離aの位置にある図23中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Aのヘッド48kから得られる。
【0176】
しかるに、各ヘッドのXY座標系上の位置は既知であるから、上述の2回の動作で得られたサンプリング値を用いて連立方程式を立て、この連立方程式を解くことで、移動スケール44C、44Aの格子ピッチの補正情報(例えば補正マップ)を、それぞれ独立に求めることができる。
【0177】
なお、移動鏡17Xの反射面が理想的な平面でない場合には、予めその反射面の凹凸(曲がり)を計測してその曲がりの補正データを求めておく。そして、上述の図22、図23に示されるウエハステージWSTの+Y方向への移動の際に、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定する代わりに、その補正データに基づいてウエハステージWSTのX位置を制御することで、ウエハステージWSTを正確にY軸方向に移動させることとすれば良い。
【0178】
上述のようにして、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報(例えば補正マップ)をそれぞれ求めた後に、主制御装置20は、例えば図24に示されるように、ウエハステージWSTを、上述の図22等の場合と同様の手順で、+Y方向に移動させる。この場合、移動スケール44A、44Cの格子ピッチの補正情報の取得の際とは異なり、移動スケール44B及び44Dにそれぞれ対向している、図24中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Bのヘッド48g及びヘッドユニット46Dのヘッド48iはX干渉計18X1の測長軸上から外れている。このため、空気揺らぎに起因して干渉計によって計測されるウエハステージWSTの見かけ上のヨーイング量の影響が誤差(以下、ヨーイング起因誤差と略述する)として、エンコーダ50B及び50D(ヘッドユニット46Bのヘッド48g及びヘッドユニット46Dのヘッド48i)の計測値に含まれてしまう。しかるに、この場合、エンコーダ50A,50C(移動スケール44A,44Cとそれぞれ対向する、図24中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Aのヘッド48h及びヘッドユニット46Cのヘッド48h)を用いて、上述の空気揺らぎに起因して干渉計によって計測されるウエハステージWSTの見かけ上のヨーイング量を計測できる。すなわち、主制御装置20は、先に求められている移動スケール44C、44Aの格子ピッチの補正情報を用いてエンコーダ50A,50Cの計測値を補正しつつ、その補正された計測値に基づいて上述したウエハステージWSTの見かけ上のヨーイング量を求めることができる。そして、主制御装置20は、その求めた見かけ上のヨーイング量を用いて、上述のヨーイング起因誤差を補正することができる。
【0179】
主制御装置20は、ウエハステージWSTの+Y方向への移動中に、上述のようにしてヨーイング起因誤差を補正しながら、移動スケール44B,44Dに順次対向して配置されるヘッドユニット46B及び46Dの複数のヘッドから得られる計測値を所定のサンプリング間隔で内部メモリに取り込む。そして、主制御装置20は、前述と同様の理由で、内部メモリに取り込んだ計測値を統計的に処理、例えば平均する(又は重み付け平均する)ことで、移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報をも求める。
【0180】
また、いわゆる正逆差を考慮して、ウエハステージWSTを図22、図23及び図24中に矢印F’で示される−Y方向に駆動して、移動スケール44A、44Cの格子ピッチの補正情報(例えば補正マップ)、及び/又は移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報を求める場合にも、上述と同様の処理を行えば良い。
【0181】
一方、移動スケール44A,44Cの格子線の変形(曲がり)の補正情報と、移動スケール44B,44Dの格子ピッチの補正情報との取得に際しては、主制御装置20は、上述の場合と、X軸方向とY軸方向とを入れ替えた処理を行うが、かかる詳細説明については省略する。
【0182】
なお、各スケール(回折格子)には幅があるので、その幅方向に関して、例えば左右中央の3つのラインに沿って、上述の格子ピッチの補正情報を取得し、格子曲がりについては代表的な格子線を取り上げて曲がり計測をすれば足りる。このようにすることが、精度及び作業性の点からは好ましい。
【0183】
以上説明した変形例に係る方法によると、スケールの格子ピッチの補正情報の取得及び/又はスケールの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報の取得に際して、ウエハステージWSTを必ずしも極低速で移動させる必要がないので、それらの補正情報の取得動作を短時間で行うことが可能になる。
【0184】
次に、図25、図26を参照してウエハステージ用のエンコーダシステムの変形例について説明する。なお、図25、図26は図3との差異がエンコーダシステムの構成のみであるので、以下では図3と同一若しくは同等の作用、機能の構成部分には同一の符号を付すとともにその説明を省略する。
【0185】
図25に示されるように、ウエハステージWSTの上面には、互いに長手方向が直交し、かつそれぞれY軸及びX軸方向を長手方向とする2つの移動スケール52A、52BがL字状に固定されている。2つの移動スケール52A、52Bは、その表面に長手方向と直交する方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されている。
【0186】
また、ヘッドユニット46Aと、一対のヘッドユニット46B1、46B2とはそれぞれ対応する移動スケール52A、52Bと交差して配置され、不図示の支持部材を介して鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。ヘッドユニット46Aは、移動スケール52Aの長手方向(Y軸方向)と直交するX軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)として、投影光学系PLの光軸AXを通るX軸に平行な軸(中心軸)上に配置されるとともに、移動スケール52Aと共にウエハステージWSTのX軸方向の位置情報を計測するXリニアエンコーダ56Aを構成する。一対のヘッドユニット46B1、46B2はそれぞれ移動スケール52Bの長手方向(X軸方向)と直交するY軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)とし、投影光学系PLの光軸AXを通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称に配置されるとともに、移動スケール52Bと共にウエハステージWSTのY軸方向の2つの位置情報を計測するYリニアエンコーダ56Bを構成する。
【0187】
さらに、2つのリニアエンコーダ56A、56Bの計測値は主制御装置20に供給され、主制御装置20はX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報とに基づき、ウエハステージ駆動系27を介してウエハステージWSTの位置制御を行う。これにより、上記実施形態と全く同様に、高精度なウエハステージWSTの2次元駆動が可能となる。
【0188】
図26は、ウエハステージ用のエンコーダシステムの別の変形例を示す図であり、図25との差異は前述した一組のリニアエンコーダ56A、56Bとは別に、もう一組のリニアエンコーダ56C、56Dを設けた点のみである。図26に示されるように、ウエハステージWSTの上面には、互いに長手方向が直交し、かつそれぞれY軸及びX軸方向を長手方向とする2つの移動スケール52C、52DがL字状に固定されている。2つの移動スケール52C、52Dは、その表面に長手方向と直交する方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されるとともに、ウエハステージWSTの中心に関して移動スケール52A、52Bと対称に配置されている。
【0189】
また、ヘッドユニット46Cと、一対のヘッドユニット46D1、46D2とはそれぞれ対応する移動スケール52C、52Dと交差して配置され、不図示の支持部材を介して鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。ヘッドユニット46Cは、移動スケール52Cの長手方向(Y軸方向)と直交するX軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)として、投影光学系PLの光軸AXに関して前述のヘッドユニット46Aと対称に配置される(すなわち、前述した光軸AXを通るX軸に平行な軸(中心軸)上に配置される)とともに、移動スケール52Cと共にウエハステージWSTのX軸方向の位置情報を計測するXリニアエンコーダ56Cを構成する。一対のヘッドユニット46D1、46D2はそれぞれ移動スケール52Dの長手方向(X軸方向)と直交するY軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)とし、投影光学系PLの光軸AXに関して前述のヘッドユニット46B1、46B2と対称に配置される(すなわち、前述した光軸AXを通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称に配置される)とともに、移動スケール52Dと共にウエハステージWSTのY軸方向の2つの位置情報を計測するYリニアエンコーダ56Dを構成する。
【0190】
さらに、4つのリニアエンコーダ56A〜56Dの計測値は主制御装置20に供給され、主制御装置20はX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報とに基づき、ウエハステージ駆動系27を介してウエハステージWSTの位置制御を行う。これにより、上記実施形態と全く同様に、高精度なウエハステージWSTの2次元駆動が可能となる。なお、図26のエンコーダシステムは4つのリニアエンコーダ56A〜56Dを有しているので、図25のエンコーダシステムに比べてヘッドユニットを投影光学系PLに近接して配置しなくても、ウエハの露光動作時におけるウエハステージWSTの位置によらず、常に4つのリニアエンコーダ56A〜56Dの少なくとも3つからそれぞれウエハステージWSTの位置情報(X軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報)を得ることができる。また、図26のエンコーダシステムはYリニアエンコーダ56B、56Dがそれぞれ2つのヘッドユニットを有するものとしたが、これに限らず、例えば1つのヘッドユニットのみを有するものとしても良い。
【0191】
ここで、前述のウエハX干渉計18X1は投影光学系PLの光軸AXを通るX軸に平行な軸(中心軸)に一致する測長軸(図中の実線に対応)を含む少なくとも1つの測長軸を有している。そして、図25及び図26に示されるエンコーダシステムにおいて、Xリニアエンコーダ56A(及び56C)はヘッドユニット46A(及び46C)の計測軸(ヘッドの配列方向)がその中心軸(ウエハX干渉計18X1のX計測における測長軸)と一致して配置される。また、前述のウエハY干渉計18Yは投影光学系PLの光軸AX及びアライメント系ALGの検出中心を通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称な2つの測長軸(図25,26中の実線で示されるビームB41,B42に対応)を含む複数の測長軸を有している。そして、Yリニアエンコーダ56B(及び56D)はヘッドユニット46B1、46B2(及び46D1、46D2)の計測軸(ヘッドの配列方向)がそれぞれその2つの測長軸と一致して配置される。これにより、前述した計測軸と測長軸とが一致するリニアエンコーダとウエハ干渉計とでその計測値に差が生じにくくなり、前述したキャリブレーション動作を精度良く実施することが可能となる。なお、本変形例ではリニアエンコーダの計測軸とウエハ干渉計の測長軸とを一致させるものとしたが、これに限らず、XY平面内で両軸をずらして配置しても構わない。また、これは上記実施形態(図3)でも同様である。
【0192】
なお、図25、図26に示されるエンコーダシステムにおいて、2つ又は4つの移動スケール(52A〜52D)は、同一素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)から成り、それぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の幅に相当)が、少なくともウエハWの露光動作時におけるウエハステージWSTの移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(換言すれば、全てのショット領域の走査露光時に各ヘッドユニット(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、ウエハWの大きさ(直径)より長く設定される。また、図25、図26に示されるエンコーダシステムにおいて、3つ又は6つのヘッドユニット(46A〜46D2)はそれぞれ、例えば単一のヘッド、あるいはほぼ切れ目なく配列される複数のヘッドを有するものでも良いが、図25、図26に示されるエンコーダシステムではいずれもその長手方向に沿って所定間隔で配置された複数個のヘッドを有するものとしている。さらに各ヘッドユニットは、隣接する2つのヘッドが対応する移動スケール(回折格子)から外れない間隔、すなわち移動スケールの長手方向と直交する方向(回折格子の配列方向)に関する回折格子の形成範囲と同程度以下の間隔で複数のヘッドが配置される。また、3つ又は6つのヘッドユニット(46A〜46D2)はそれぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の検出範囲に相当)が、少なくともウエハWの露光動作時におけるウエハステージWSTの移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(換言すれば、全てのショット領域の走査露光時に各ヘッドユニット(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、その移動ストロークと同程度以上に設定される。
【0193】
また、図25、図26に示されるエンコーダシステムを備える露光装置でも、上記実施形態の露光装置100(図3に示されるエンコーダシステムを含む)と全く同様に、各エンコーダの計測値の補正情報を決定するキャリブレーション動作(前述した第1〜第3のキャリブレーション動作)が行われる。この場合、各エンコーダでは一例として、その長手方向に関して移動スケールの位置をその一端が対応するヘッドユニットと一致するように設定してから、回折格子の配列方向(長手方向と直交する方向)に関して移動スケールをその幅と同程度の距離以上、移動する。さらに、移動スケールをその長手方向に、ヘッドユニットの1つのヘッドにおける計測ビームの大きさと同程度の距離だけ移動してから、同様に、回折格子の配列方向に関して移動スケールをその幅と同程度の距離以上移動する。以下、移動スケールの他端がヘッドユニットと一致するまで上記動作を繰り返し実行する。そして、この駆動によって得られるエンコーダ、及び該エンコーダと計測方向が同じであるウエハ干渉計の計測値に基づき、そのエンコーダの補正情報を決定すれば良い。ここでは、その長手方向に関して移動スケールの両端が対応するヘッドユニットと一致する範囲に渡ってウエハステージWSTを駆動するものとしたが、これに限らず、例えばウエハの露光動作時にウエハステージWSTが移動されるその長手方向の範囲でウエハステージWSTを駆動しても良い。
【0194】
ところで、上記実施形態及び変形例では、ウエハの露光動作時に前述のエンコーダシステム(図2、図3、図25、図26)のみを用いてレチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御を行うものとした。しかし、前述した(特に短期的な)キャリブレーション動作を実行しても、何らかの原因(例えば、移動スケールへの異物の付着、移動スケールの位置ずれ、ヘッドユニットの倒れ又はそのテレセンの崩れ、許容範囲を超える移動スケールのZ方向(表面と直交する方向)への変位など)によって、位置計測が不能となる、あるいは計測精度が許容範囲を超えるなどという問題が生じ、露光動作中に上記位置制御に必要なX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報の少なくとも一部が得られなくなることがある。なお、図3、図26に示されるエンコーダシステムは4つのエンコーダを有するので、1つのエンコーダに上記問題が生じても上記位置制御を行えなくなることはないが、図2、図25に示されるエンコーダシステムでは、1つのエンコーダに上記問題が生じると、上記位置制御を行うことができなくなる。
【0195】
そこで、前述のエンコーダシステムによって計測される位置情報を用いる第1駆動モードと、前述の干渉計システムによって計測される位置情報を用いる第2駆動モードとを用意するとともに、通常は第1駆動モードが露光動作時に使用されるように設定しておく。そして、例えば露光動作中などに位置制御に必要なX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報の少なくとも一部が得られなくなったときは、第1駆動モードを第2駆動モードに切り換えてレチクルステージ又はウエハステージの位置制御を行うようにすることが好ましい。さらに、前述のエンコーダシステムによって計測される位置情報の少なくとも一部と、前述の干渉計システムによって計測される位置情報の少なくとも一部とを併用する第3駆動モードも用意しておき、第1駆動モードの代わりに第2及び第3駆動モードの一方を用いて、レチクルステージ又はウエハステージの位置制御を行うことを可能としても良い。なお、第1駆動モードの第2駆動モード(又は第3駆動モード)への切り換えは露光動作時のみに限られるものでなく、他の動作(例えばアライメントなどの計測動作など)でも同様にその切り換えを行っても良い。また、他の動作では予め第1駆動モードを設定しておく必要はなく、第1駆動モードの代わりに他の駆動モード(例えば、第2及び第3駆動モードの一方など)を設定しても良い。この場合、他の駆動モードによるステージの位置制御時に、例えばエラーなどが生じたら、別の駆動モード(例えば、第2及び第3駆動モードの他方、又は第1駆動モードなど)に切り換えるようにしても良い。さらに、露光動作以外では任意の駆動モードを選択可能としても良い。
【0196】
なお、上記実施形態及び変形例では、位置計測系の切り換え動作時、干渉計18X1、18Yの計測値の空気揺らぎ(空気の温度揺らぎ)による短期的変動の影響が平均化効果により無視できるレベルになるまでの所定時間ウエハステージWSTを停止させた後、干渉計18X1、18Yの計測値をエンコーダ50A〜50Dに引き継ぐ場合について説明したが、これに限らず、例えば前述の第2のキャリブレーション動作と同様の動作を行い、得られた低次成分に基づいて干渉計18X1、18Yからエンコーダ50A〜50Dへの計測値の引き継ぎを行っても良い。また、前述した位置計測系の切り換え動作は必ずしも行わなくても良い。すなわち、アライメント系ALGとウエハ干渉計システム(18X2、18Y)とによってウエハW上のアライメントマーク、及びウエハステージWST上の基準マークの位置情報を計測するとともに、レチクルアライメント系とエンコーダシステムとによってウエハステージWST上の基準マークの位置情報を計測し、これら位置情報に基づき、エンコーダシステムによるウエハステージの位置制御を行うようにしても良い。
【0197】
また、上記実施形態及び変形例では、位置計測系の切り換え動作として、干渉計からエンコーダに切り換える場合について説明したが、本発明がこれに限られるものではない。例えば、アライメント系ALGを、投影ユニットPUから十分に離れた位置に設置する場合などには、そのアライメント系ALGを用いたアライメント動作が行われる領域にも、前述のヘッドユニット46A〜46Dと同様のヘッドユニットを、アライメント系ALGを中心として十字状に配置しておく。そして、移動スケール44A〜44Dに原点をそれぞれ持たせておき、EGAなどのウエハアライメントの際には、これらの移動スケール44A〜44Dの組み合わせによって規定される座標系の原点(すなわち、移動スケール44A〜44Dの原点によって規定される点)を基準とするウエハW上の各アライメントマークの位置情報を、ヘッドユニットと移動スケール44A〜44Dとを用いて検出し、その検出結果に基づいて所定の演算を行って、上記の原点に対する各ショット領域の相対位置情報を求めておくこととしても良い。この場合、露光の際には、エンコーダ50A〜50Dを用いてその原点を検出することで、上記の原点に対する各ショット領域の相対位置情報を用いて、各ショット領域を露光のための加速開始位置に移動させることができる。この場合、ヘッドと、投影ユニットPU、アライメント系ALGとの間の位置ドリフトも誤差要因となるので、これもまたキャリブレーションすることが望ましい。
【0198】
なお、上記実施形態及び変形例では、ウエハの露光動作中に前述のエンコーダシステム(図2、図3、図25、図26)を用いてレチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御を行うものとしたが、エンコーダシステムを用いるステージの位置制御は露光動作時のみに限られるものでなく、露光動作以外、例えばレチクルアライメント系によるレチクルのアライメントマーク又はレチクルステージRSTの基準マークの検出動作、あるいはレチクルの交換動作などにおいても、図2に示したエンコーダシステムを用いてレチクルステージRSTの位置制御を行っても良い。同様に、例えばアライメント系ALGによるウエハWのアライメントマークなどの検出動作、あるいはウエハの交換動作などにおいても、図3、図25、図26に示したエンコーダシステムを用いてウエハステージWSTの位置制御を行っても良い。この場合、当然ながら前述した位置計測系の切り換え動作が不要となる。
【0199】
ここで、アライメント系ALGによるウエハW上のアライメントマーク又はウエハステージWSTの基準マークの検出時、あるいはレチクルアライメント系によるウエハステージWSTの基準マークの検出時などでも、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)を用いる場合、この検出動作時におけるウエハステージWSTの移動範囲をも考慮することが好ましい。特にアライメント系ALGの計測位置にウエハステージを移動して行われるマークの検出動作中にも、各ヘッドユニット(46A〜46D、46A〜46D2)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわちエンコーダシステムによる位置計測が不能となってウエハステージの位置制御が切れることがないように、各ヘッドユニットの長手方向の長さ(又は配置など)を設定する、あるいはそれらヘッドユニットとは別のヘッドユニットを設けることが好ましい。
【0200】
また、ウエハの交換位置(ロード位置とアンロード位置との少なくとも一方を含む)において、あるいはその交換位置と、投影光学系PLを介してレチクルパターンの転写が行われる露光位置、又はアライメント系ALGによるマーク検出が行われる計測位置との一方から他方へのウエハステージWSTの移動中に、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)を用いる場合、同様に、ウエハ交換位置及びその交換動作時におけるウエハステージの移動範囲をも考慮し、エンコーダシステムによる位置計測が不能となってウエハステージの位置制御が切れることがないように、各ヘッドユニットの配置、長さなどを設定する、あるいはそれらヘッドユニットとは別のヘッドユニットを設けることが好ましい。
【0201】
さらに、例えば特開平10−214783号公報及び対応する米国特許第6,341,007号明細書、並びに国際公開第98/40791号及び対応する米国特許第6,262,796号明細書などに開示されているように、2つのウエハステージを用いて露光動作と計測動作(例えば、アライメント系によるマーク検出など)とをほぼ並行して実行可能なツインウエハステージ方式の露光装置でも、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)を用いて各ウエハステージの位置制御を行うことが可能である。ここで、露光動作時だけでなく計測動作時でも、各ヘッドユニットの配置、長さなどを適切に設定することで、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)をそのまま用いて各ウエハステージの位置制御を行うことが可能であるが、前述したヘッドユニット(46A〜46D、54A〜54D2)とは別に、その計測動作中に使用可能なヘッドユニットを設けても良い。例えば、アライメント系ALGを中心として十字状に配置される4つのヘッドユニットを設け、上記計測動作時にはこれらヘッドユニットと対応の移動スケール(46A〜46D、52A〜52D)とによって各ウエハステージWSTの位置情報を計測するようにしても良い。ツインウエハステージ方式の露光装置では、2つのウエハステージにそれぞれ2つ又は4つの移動スケール(図3、図25、図26)が設けられるとともに、一方のウエハステージに載置されたウエハの露光動作が終了すると、その一方のウエハステージとの交換で、計測位置にてマーク検出などが行われた次のウエハを載置する他方のウエハステージが露光位置に配置される。また、露光動作と並行して行われる計測動作は、アライメント系によるウエハなどのマークの検出に限られるものでなく、その代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えばウエハの面情報(段差情報など)の検出などを行っても良い。
【0202】
なお、上記の説明において、計測位置又は交換位置において、あるいは露光位置、計測位置、及び交換位置の1つから他の位置へのウエハステージの移動中に、エンコーダシステムを用いるウエハステージの位置制御が切れるときは、そのエンコーダシステムとは別の計測装置(例えば、干渉計、エンコーダなど)を用いて、上記各位置あるいは移動中にウエハステージの位置制御を行うことが好ましい。
【0203】
また、上記実施形態及び変形例では、例えば国際公開第2005/074014号、国際公開第99/23692号、米国特許第6,897,963号明細書などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(基準マーク、センサなど)を有する計測ステージを設け、ウエハの交換動作時などにウエハステージとの交換で計測ステージを投影光学系PLの直下に配置し、露光装置の特性(例えば、投影光学系の結像特性(波面収差など)、照明光ILの偏光特性など)を計測するものとしても良い。この場合、計測ステージにも移動スケールを配置し、前述のエンコーダシステムを用いて計測ステージの位置制御を行うようにしても良い。また、ウエハステージに載置したウエハの露光動作中、計測ステージはウエハステージと干渉しない所定位置に退避しており、この退避位置と露光位置との間で移動されることになる。このため、その退避位置においても、あるいはその退避位置と露光位置との一方から他方への移動中にも、ウエハステージと同様に、計測ステージの移動範囲をも考慮し、エンコーダシステムによる位置計測が不能となって計測ステージの位置制御が切れることがないように各ヘッドユニットの配置、長さなどを設定する、あるいはそれらヘッドユニットとは別のヘッドユニットを設けることが好ましい。又は、その退避位置で、又はその移動中にエンコーダシステムによる計測ステージの位置制御が切れるときは、エンコーダシステムとは別の計測装置(例えば干渉計、エンコーダなど)を用いて計測ステージの位置制御を行うことが好ましい。
【0204】
また、上記実施形態及び変形例では、例えば投影ユニットPUの大きさなどによっては、同一方向に延設される一対のヘッドユニットの間隔を広げなければならず、ウエハW上の特定のショット領域、例えば最外周に位置するショット領域の走査露光時に、その一対のヘッドユニットの一方が対応する移動スケールから外れることがある。一例として、図3中で投影ユニットPUが少し大きくなると、一対のヘッドユニット46B、46Dのうちヘッドユニット46Bが対応する移動スケール44Bから外れ得る。さらに、例えば国際公開第99/49504号、国際公開第2004/053955号(対応米国特許出願公開第2005/0252506号明細書)、米国特許第6,952,253号明細書、欧州特許出願公開第1420298号明細書、国際公開第2004/055803号、国際公開第2004/057590号、米国特許出願公開第2006/0231206号明細書、米国特許出願公開第2005/0280791号明細書などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体(例えば純水など)が満たされる液浸型露光装置では、液体を供給するノズル部材などが投影ユニットPUを囲むように設けられるので、投影光学系PLの前述の露光領域に対してヘッドユニットを近づけて配置することが一層困難となる。そこで、図3、図26に示したエンコーダシステムでは、常にX軸及びY軸方向に関してそれぞれ2つずつ位置情報が計測可能である必要はなく、X軸及びY軸方向の一方では2つの位置情報、及び他方では1つの位置情報が計測可能となるように、エンコーダシステム(特にヘッドユニット)を構成すれば良い。すなわち、エンコーダシステムによるウエハステージ(又は計測ステージ)の位置制御では、必ずしもX軸及びY軸方向に関してそれぞれ2つずつ、計4つの位置情報を用いなくても良い。また、液浸型露光装置では、例えば、図27に示されるように、ウエハステージWST上(又はウエハテーブルWTB)上面の撥液板WRPをガラスにし、そのガラスにスケールパターンを直接設けても良い。あるいは、ウエハテーブルをガラスで作っても良い。なお、上記実施形態及び変形例の移動スケール(図3、図25、図26)を有するウエハステージ(又は計測ステージ)を備える液浸型露光装置では、その移動スケールの表面に撥液膜を形成しておくことが好ましい。
【0205】
なお、ウエハステージWSTの小型化及び軽量化などを考慮すると、ウエハステージWST上でウエハWになるべく近づけて移動スケールを配置することが好ましいが、ウエハステージを大きくすることが許容されるときは、ウエハステージを大きくし、対向して配置される一対の移動スケールの間隔を広げることで、少なくともウエハの露光動作中は常にX軸及びY軸方向に関してそれぞれ2つずつ、計4つの位置情報を計測可能としても良い。また、ウエハステージを大きくする代わりに、例えば移動スケールをその一部がウエハステージからはみ出るように設ける、あるいは少なくとも1つの移動スケールが設けられる補助プレートを用いてウエハステージ本体よりも外側に移動スケールを配置することで、対向して配置される一対の移動スケールの間隔を広げるようにしても良い。
【0206】
また、エンコーダシステムによるステージの位置制御を行うのに先立ち、例えばヘッドユニットの倒れ(Z軸方向に対する傾き)、XY平面内でのヘッドの配列(位置又は間隔など)、あるいはヘッドのテレセン傾きなどを計測しておき、この計測結果を上記位置制御で用いることが好ましい。さらに、例えば移動スケールのZ軸方向(表面と垂直な方向)への変位量又は傾斜量などを計測し、この計測結果を上記位置制御で用いることが好ましい。
【0207】
上記実施形態及び変形例で説明したエンコーダの第1〜第3のキャリブレーション動作、及び上記の逐次キャリブレーション動作は、単独で、あるいは適宜組み合わせて実行しても良い。また、前述のキャリブレーション動作におけるエンコーダシステム及び干渉計システムによる位置計測時にステージを低速移動するものとしたが、これに限らず、前述の如く走査露光時と同等の速度でステージを移動しても良い。
【0208】
また、上記実施形態及び変形例ではエンコーダシステムを用いてレチクルステージ及びウエハステージの位置制御を行うものとしたが、これに限らず、例えばレチクルステージ及びウエハステージの一方ではエンコーダシステムを用いる位置制御を行い、他方のステージでは干渉計システムを用いる位置制御を行うようにしても良い。さらに、上記実施形態及び変形例では、レチクルステージの上方にエンコーダのヘッドユニットを配置するものとしたが、レチクルステージの下方にエンコーダのヘッドユニットを配置してもよい。この場合、移動スケールもレチクルステージの下面側に設けられる。
【0209】
さらに、上記実施形態及び変形例(図3、図25、図26)のエンコーダシステムにおいて、複数の移動スケール(44A〜44D、52A〜52D)はそれぞれ、例えばバキュームチャックなどの吸着機構又は板ばねなどによってウエハステージWSTに固定するものとしているが、これに限らず、例えばネジ留め、あるいは回折格子をウエハステージに直接形成しても良い。特に後者では、ウエハホルダが形成されるテーブル、あるいは特に液浸型露光装置では撥液板に回折格子を形成しても良い。また、レチクルステージRSTとウエハステージWSTのいずれにおいても、回折格子を形成する部材(前述の移動スケールなどを含む)は、セラミックスなどの低熱膨張の材料(例えば、ショット社製のゼロデュアなど)で構成することが好ましい。また、異物の付着、汚れなどによる計測精度の低下を防止するために、例えば少なくとも回折格子を覆うように表面にコーティングを施す、あるいはカバーガラスを設けても良い。さらに、レチクルステージRSTとウエハステージWSTのいずれでも、各移動スケールはその長手方向のほぼ全域に渡って回折格子が連続的に形成されるものとしたが、例えば回折格子を複数の領域に分けて断続的に形成しても良いし、あるいは各移動スケールを複数のスケールで構成しても良い。
【0210】
なお、上記実施形態及び変形例において、特に図3のエンコーダシステムでは、Y軸方向位置の計測に用いられる一対の移動スケール44A,44Cと、X軸方向位置の計測に用いられる一対の移動スケール44B,44Dとが、ウエハステージWST上に設けられ、これに対応して、一対のヘッドユニット46A、46Cが投影光学系PLのX軸方向の一側と他側に配置され、一対のヘッドユニット46B、46Dが投影光学系PLのY軸方向の一側と他側に配置される場合について例示した。しかしながら、これに限らず、Y軸方向位置の計測用の移動スケール44A,44C及びX軸方向位置計測用の移動スケール44B,44Dのうち、少なくとも一方が一対でなく1つのみ、ウエハステージWST上に設けられていても良いし、あるいは、一対のヘッドユニット46A、46C及び一対のヘッドユニット46B、46Dのうち、少なくとも一方が、一対でなく1つのみ設けられていても良い。これは、図26に示されるエンコーダシステムについても同様である。また、移動スケールの延設方向及びヘッドユニットの延設方向は、上記実施形態のX軸方向、Y軸方向のような直交方向に限定されるものではない。
【0211】
また、上記実施形態及び変形例において、ウエハ干渉計システム18はその構成が図3に限られるものでなく、例えばアライメント系ALG(計測位置)にもヘッドユニットを配置するときなどは、ウエハX干渉計18X2を備えていなくても良いし、ウエハX干渉計18X2を、例えばウエハY干渉計18Yと同様に多軸干渉計によって構成し、ウエハステージWSTのX位置の他、回転情報(例えばヨーイング及びローリング)を計測できるようにしても良い。また、ウエハX干渉計18X1と同様にウエハY干渉計18Yを1軸干渉計とし、ウエハX干渉計18X1をウエハY干渉計18Yと同様に多軸干渉計としても良い。多軸干渉計では回転情報としてヨーイングのみ計測可能としても良い。さらに、ウエハX干渉計18X1とウエハY干渉計18Yとのいずれか一方では、回転情報を1つ(ローリング又はピッチング)のみ計測可能としても良い。すなわち、本実施形態のウエハ干渉計システム18は、ウエハの露光動作中に少なくともX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報(ヨーイング)が計測可能であれば良い。
【0212】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてそのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができる。また、このエンコーダの計測値の短期変動を干渉計の計測値を用いて補正する補正情報とエンコーダの計測値とに基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明は適用することができる。
【0213】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。さらに、投影光学系PLを介して照明光ILが照射される露光領域は、投影光学系PLの視野内で光軸AXを含むオンアクシス領域であるが、例えば国際公開第2004/107011号に開示されるように、複数の反射面を有しかつ中間像を少なくとも1回形成する光学系(反射系または反屈系)がその一部に設けられ、かつ単一の光軸を有する、いわゆるインライン型の反射屈折系と同様に、その露光領域は光軸AXを含まないオフアクシス領域でもよい。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでもよい。
【0214】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光、又はF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。真空紫外光として、例えば国際公開第99/46835号(対応米国特許第7,023,610号明細書)に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0215】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを形成するために、SOR又はプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0216】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン、減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、そのステージの位置をエンコーダを用いて計測し、そのエンコーダの計測値を前述と同様にして干渉計の計測値を用いてキャリブレーションすることで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0217】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0218】
さらに、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号明細書)に開示されているように、2つのレチクルパターンを、双頭型の投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0219】
また、物体上にパターンを形成する装置は前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置にも本発明を適用することができる。
【0220】
なお、上記実施形態及び変形例でパターンを形成すべき物体(エネルギービームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、マスクブランクス、あるいはフィルム部材など他の物体でも良い。また、その物体の形状は円形のみならず、矩形など他の形状でもよい。
【0221】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、又は有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン、DNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0222】
なお、本発明は、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0223】
なお、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、上記実施形態の露光装置で、マスクに形成されたパターンを感光物体上に転写するリソグラフィステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置が用いられるので、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。
【0224】
また、上記実施形態及び変形例の露光装置(パターン形成装置)は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0225】
以上説明したように、本発明の露光方法及び露光装置は、物体を露光して該物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの製造などに適している。
【符号の説明】
【0226】
11…レチクルステージ駆動系、16y…レチクルY干渉計、18Y…ウエハY干渉計、20…主制御装置、26A1,26B1…Yエンコーダ、27…ウエハステージ駆動系、50A,50B…Yリニアエンコーダ、100…露光装置、RST…レチクルステージ、WST…ウエハステージ、IL…照明光、W…ウエハ、R…レチクル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法、並びにデバイス製造方法に係り、特に、マイクロデバイス(電子デバイスなど)の製造におけるリソグラフィ工程で用いられる露光装置及び露光方法、並びに露光装置又は前記露光方法を用いるデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子、液晶表示素子等のマイクロデバイス(電子デバイスなど)の製造におけるリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の縮小投影露光装置(いわゆるステッパ)、又はステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが比較的多く用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、ウエハ上の複数のショット領域にレチクル(又はマスク)のパターンを転写するために、ウエハを保持するウエハステージはXY2次元方向に例えばリニアモータ等により駆動される。特に、スキャニング・ステッパの場合、ウエハステージのみならず、レチクルステージもリニアモータ等により走査方向に所定ストロークで駆動される。レチクルステージ及びウエハステージの位置計測は、長期に渡って計測値の安定性が良好で、高分解能なレーザ干渉計を用いて行われるのが、一般的である。
【0004】
しかるに、半導体素子の高集積化に伴う、パターンの微細化により、より高精度なステージの位置制御が要求されるようになり、今や、レーザ干渉計のビーム光路上の雰囲気の温度揺らぎに起因する計測値の短期的な変動が無視できなくなりつつある。
【0005】
一方、最近では、位置計測装置の一種であるエンコーダとして、計測分解能が、レーザ干渉計と同程度以上のものが出現している(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、エンコーダは、スケール(グレーティング)を使用するため、スケールに使用時間の経過と共に生じる種々の誤差要因(格子ピッチのドリフト、固定位置ドリフト、熱膨張等)が存在し、機械的な長期安定性に欠ける。このため、エンコーダは、レーザ干渉計に比べて、計測値のリニアリティに欠け、長期安定性に劣るという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,639,686号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光装置であって、前記基板を保持する可動体を有し、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動する基板ステージ装置と;前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムと、を有する計測システムと;前記基板の露光動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御し、前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能な制御装置と;を備える露光装置が、提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、デバイス製造方法であって、本発明の露光装置を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法が、提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光方法であって、前記基板を保持する可動体を有する基板ステージ装置によって、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動し、前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムとを有する計測システムの前記エンコーダシステムによって、前記基板の露光動作中、前記可動体の位置情報を計測しつつその移動を制御し、前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能である露光方法が、提供される。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、デバイス製造方法であって、本発明の露光方法を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】レチクルステージを、該レチクルステージの位置情報を計測するエンコーダシステム及び干渉計システムと共に示す平面図である。
【図3】ウエハステージを、該ウエハステージの位置情報を計測するエンコーダ及び干渉計と共に示す平面図である。
【図4】図1のウエハステージWSTの位置を計測するY干渉計、並びにZ干渉計及びその近傍の構成部分を取り出して示す図である。
【図5】エンコーダの構成の一例を示す図である。
【図6】一実施形態に係る露光装置のステージ制御に関連する制御系を一部省略して示すブロック図である。
【図7】位置計測系の切り換え動作を説明するための図(その1)である。
【図8】位置計測系の切り換え動作を説明するための図(その2)である。
【図9】レチクル側のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む露光のためのレチクルステージのスキャン動作を説明するための図(その1)である。
【図10】レチクル側のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む露光のためのレチクルステージのスキャン動作を説明するための図(その2)である。
【図11】レチクル側のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む露光のためのレチクルステージのスキャン動作を説明するための図(その3)である。
【図12】図12(A)は、ウエハの中央付近が投影ユニットの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図、図12(B)は、ウエハの中心と外周との中間付近が投影ユニットの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図である。
【図13】図13(A)は、ウエハの+Y側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図、図13(B)は、ウエハの中心から見てX軸及びY軸に対し45°を成す方向のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図である。
【図14】ウエハの+X側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージがある状態を示す図である。
【図15】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の第1のキャリブレーション動作で得られるマップの一例を示す線図である。
【図16】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測誤差を較正する第2のキャリブレーション動作を説明するための図(その1)である。
【図17】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測誤差を較正する第2のキャリブレーション動作を説明するための図(その2)である。
【図18】第2のキャリブレーション動作で得られるマップの一例を示す図である。
【図19】エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測誤差を較正する第2のキャリブレーション動作で得られるマップの一例を示す図である。
【図20】エンコーダ50A〜50Dの計測値の長期キャリブレーション動作(第1のキャリブレーション動作)、すなわち移動スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報の取得動作について説明するための図である。
【図21】エンコーダの計測誤差の逐次キャリブレーションで得られる干渉計及びエンコーダの計測値を示す図である。
【図22】変形例に係る、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報の取得動作を説明するための図(その1)である。
【図23】変形例に係る、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報の取得動作を説明するための図(その2)である。
【図24】変形例に係る、移動スケール44B,44Dの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報の取得動作について説明するための図である。
【図25】ウエハステージ用のエンコーダシステムの変形例を示す図である。
【図26】ウエハステージ用のエンコーダシステムの別の変形例を示す図である。
【図27】液浸露光装置で用いられるウエハステージの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図21に基づいて説明する。
【0013】
図1には、一実施形態に係る露光装置100の概略構成が示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置、すなわち、いわゆるスキャニング・ステッパである。後述するように本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0014】
露光装置100は、光源及び照明光学系を含み、照明光(露光光)ILによりレチクルR1,R2を照明する照明系10、レチクルR1,R2を保持するレチクルステージRST、投影ユニットPU、ウエハWが載置されるウエハステージWSTを含むウエハステージ装置12、レチクルステージRST及び投影ユニットPUなどが搭載されたボディBD、及びこれらの制御系等を備えている。
【0015】
照明系10は、不図示のレチクルブラインド(マスキングシステム)で規定されたレチクルR1又はR2上でX軸方向に延びるスリット状の照明領域IAR(図2参照)を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0016】
前記レチクルステージRSTは、後述する第2コラム34の天板を構成するレチクルベース36上に、その底面に設けられた不図示のエアベアリングなどによって、例えば数μm程度のクリアランスを介して支持されている。レチクルステージRSTとしては、例えば1枚のレチクルを保持可能なレチクルステージ、あるいはそれぞれ1枚のレチクルを保持して独立に可動なツインレチクルステージを用いることもできるが、本実施形態ではレチクルを2枚同時に保持可能なダブルレチクルホルダ方式のレチクルステージが用いられている。
【0017】
レチクルステージRSTは、ここでは、リニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11により、投影光学系PLの光軸AXに垂直なXY平面内で2次元的に(X軸方向、Y軸方向及びθz方向に)微少駆動可能である。また、レチクルステージRSTは、レチクルステージ駆動系11により、レチクルベース36上を所定の走査方向(ここでは、図1における紙面左右方向であるY軸方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。なお、レチクルステージRSTは、例えば特開平8−130179号公報(対応米国 特許第6,721,034号明細書)に開示される粗微動構造としても良く、その構造は本実施形態(図2など)に限定されるものではない。
【0018】
レチクルステージRSTのXY平面(移動面)内の位置情報は、図1に示される、レチクルYレーザ干渉計(以下、「レチクルY干渉計」という)16y等を含むレチクル干渉計システム、並びにエンコーダヘッド(以下、「ヘッド」と略述する)26A1〜26A3、26C1〜26C3及び移動スケール24A等を含むエンコーダシステムによって計測可能に構成されている。なお、図1では、移動スケール24Aの上方にレチクルR1,R2の上端面が露出した状態が示されているが、これは説明の便宜上からこのように図示したもので、実際とは異なる。
【0019】
ここで、レチクルステージRST及びそのXY平面(移動面)内の位置を計測するレチクル干渉計システム及びエンコーダシステムの構成等について更に詳述する。
【0020】
レチクルステージRSTの中央部には、図2に示されるように、平面視で(上方から見て)Y軸方向(走査方向)に細長い矩形の凹部22が、形成されている。凹部22の内部底面には、ほぼ正方形の開口(不図示)が2つY軸方向に並んで形成され、これらの開口をそれぞれ覆う状態で、レチクルR1、レチクルR2がY軸方向に並んで配置されている。レチクルR1,R2のそれぞれは、凹部22の内部底面の2つの開口のX軸方向の両側に設けられた不図示の吸着機構、例えばバキュームチャックによってそれぞれ真空吸着されている。
【0021】
また、レチクルステージRSTの上面の+X側端部及び−X側端部には、照明領域IARの中心(本実施形態では、投影光学系PLの第1面(物体面)内でその光軸AXとほぼ一致)を通る、Y軸方向に平行な中心軸に関して対称の配置で、一対の移動スケール24A,24BがY軸方向を長手方向として延設されている。移動スケール24A,24Bは、同一の素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)から成り、その表面には、周期方向をY軸方向とする反射型の回折格子が、上記中心軸に関して対称の配置で形成されている。移動スケール24A,24Bは、局所的な伸縮が生じないように、例えば真空吸着(又は板ばね)等によりレチクルステージRSTに固定されている。
【0022】
移動スケール24A,24Bの上方(+Z側)には、図2に示されるように、移動スケール24A,24Bに対向して、2対のY軸方向位置計測用のヘッド26A1,26A2,26B1,26B2が、上述の中心軸に関して対称に配置されている(図1参照)。このうち、ヘッド26A1,26B1は、前述の照明領域IARの中心を通るX軸方向の直線(計測軸)上にその計測中心がほぼ一致する位置に配置されている。また、ヘッド26A2,26B2は、ヘッド26A1,26B1から同一距離だけ+Y方向にそれぞれ離れた位置でかつヘッド26A1,26B1と同一面上に配置されている。さらに、ヘッド26A1,26B1と同一面上で上記計測軸に関してヘッド26A2,26B2と対称に、ヘッド26A1,26B1から同一距離だけ−Y方向にそれぞれ離れた位置には、一対のヘッド26A3,26B3が配置されている。上記3対のヘッド26A1,26B1,26A2,26B2,26A3,26B3は、不図示の支持部材をそれぞれ介してレチクルベース36に固定されている。
【0023】
また、レチクルステージRST上面の移動スケール24Aの−X側には、Y軸方向を長手方向とする移動スケール28が移動スケール24Aと並んで配置され、例えば真空吸着(又は板ばね)等によりレチクルステージRSTに固定されている。この移動スケール28は、移動スケール24A、24Bと同一素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)で構成され、かつその上面には、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子がY軸方向に関してほぼ全長に渡って形成されている。
【0024】
移動スケール28の上方(+Z側)には、図2に示されるように、移動スケール28に対向して、2つのX軸方向位置計測用のヘッド26C1,26C2が配置されている(図1参照)。このうち、ヘッド26C1は、前述の照明領域IARの中心を通るX軸方向の直線(計測軸)上にほぼ位置している。また、ヘッド26C2は、ヘッド26C1から所定距離だけ+Y方向に離れたヘッド26A2の近傍の位置でかつヘッド26A1,26A2等と同一面上に配置されている。
【0025】
さらに、ヘッド26C1と同一面上で上記計測軸に関してヘッド26C2と対称に、ヘッド26C1から所定距離だけ−Y方向に離れた位置には、ヘッド26C3が配置されている。上記3つのヘッド26C1,26C2,26C3は、不図示の支持部材をそれぞれ介してレチクルベース36に固定されている。なお、本実施形態では9つのヘッド26A1〜26A3,26B1〜26B3,26C1〜26C3を、不図示の支持部材を介してレチクルベース36に固定するものとしたが、これに限らず、例えば防振機構を介して床面F又はベースプレートBSに設置されるフレーム部材に設けてもよい。
【0026】
本実施形態では、ヘッド26A1,26B1と、対向する移動スケール24A,24Bとによって、レチクルステージRSTのY軸方向の位置(Y位置)を計測する一対のYリニアエンコーダが構成されている。以下では、便宜上、これらのYリニアエンコーダを、それぞれのヘッドと同一の符号を用いて、Yリニアエンコーダ26A1、26B1と記述する。
【0027】
Yリニアエンコーダ26A1、26B1の計測軸は、前述の照明領域IARの中心(本実施形態では、投影光学系PLの光軸AXに一致)から、X軸方向に関して同一の距離にあり、例えば露光時などには、Yリニアエンコーダ26A1、26B1の計測値の平均値に基づいて、レチクルステージRSTのY位置が計測される。すなわち、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1によるレチクルステージRSTの位置情報を計測する実質的な計測軸は、投影光学系PLの光軸AX上を通る。従って、露光時などには、レチクルステージRSTのY位置は、Yリニアエンコーダ26A1、26B1を用いて、アッベ誤差なく、計測することが可能である。さらに、Yリニアエンコーダ26A1、26B1の計測値に基づいてレチクルステージRSTのθz方向の回転情報(ヨーイング)が計測される。
【0028】
同様に、ヘッド26A2,26A3と、これらに対向する移動スケール24Aとによって、レチクルステージRSTのY位置を計測するYリニアエンコーダが、それぞれ構成される。同様に、ヘッド26B2,26B3と、これらに対向する移動スケール24Bとによって、レチクルステージRSTのY位置を計測するYリニアエンコーダが、それぞれ構成される。以下では、便宜上、これらのYリニアエンコーダを、それぞれのヘッドと同一の符号を用いて、Yリニアエンコーダ26A2、26A3、26B2、26B3と記述する。
【0029】
また、ヘッド26C1と、これに対向する移動スケール28とによって、前述の照明領域IARの中心を通る、X軸方向と平行な直線(計測軸)におけるレチクルステージRSTのX軸方向の位置(X位置)を計測するXリニアエンコーダが構成されている。以下では、便宜上、このXリニアエンコーダを、そのヘッドと同一の符号を用いて、Xリニアエンコーダ26C1と記述する。従って、露光時などには、レチクルステージRSTのX位置は、Xリニアエンコーダ26C1を用いて、アッベ誤差なく、計測することが可能である。
【0030】
同様に、ヘッド26C2,26C3と移動スケール28とによって、レチクルステージRSTのX位置を計測するXリニアエンコーダが、それぞれ構成される。以下では、便宜上、これらのXリニアエンコーダを、それぞれのヘッドと同一の符号を用いて、Xリニアエンコーダ26C2、26C3と記述する。
【0031】
上記9つのリニアエンコーダ(以下、適宜「エンコーダ」とも記述する)26A1〜26C3の計測値は、主制御装置20(図1参照)に送られるようになっている(図6参照)。
【0032】
なお、前述した3つの移動スケール24A、24B、28はそのY軸方向の長さ(移動スケール24A、24Bでは回折格子の形成範囲、移動スケール28では回折格子の幅に相当)が、少なくともレチクルR1、R2をそれぞれ介してウエハWを走査露光するときのレチクルステージRSTのY軸方向の移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(本実施形態では、少なくとも走査露光中と、走査露光前後のレチクルステージRSTの加減速及び同期整定の期間中とに、例えば3つで一組のヘッド26Ai、26Bi、26Ci(i=1〜3)のうち、少なくとも1つの組のヘッド(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように設定されている。また、前述した3つの移動スケール24A、24B、28のX軸方向の幅(移動スケール24A、24Bでは回折格子の幅、移動スケール28では回折格子の形成範囲に相当)も同様に、レチクルステージRSTのX軸方向の移動ストロークの全域をカバーする(本実施形態では、例えば3つで一組のヘッド26Ai、26Bi、26Ci(i=1〜3)のうち、少なくとも1つの組のヘッド(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように設定されている。レチクルステージRSTはθz方向に微小回転可能であるので、当然ながらこの回転によって少なくとも3つのリニアエンコーダ26A1、26B1、26C1による計測が不能とならないように、前述した3つの移動スケール24A、24B、28はθz方向の回転範囲をも考慮してX軸及びY軸方向の大きさ(長さ、幅)が設定されている。
【0033】
さらに本実施形態では、レチクルR2を用いる走査露光では6つのリニアエンコーダ26A1、26A2、26B1、26B2、26C1、26C2によって、レチクルステージRSTの位置情報(少なくともX軸及びY軸方向の位置とθz方向の回転情報とを含む)を計測可能となっている。また、レチクルR1を用いる走査露光では6つのリニアエンコーダ26A1、26A3、26B1、26B3、26C1、26C3によって、レチクルステージRSTの位置情報(少なくともX軸及びY軸方向の位置とθz方向の回転情報とを含む)を計測可能となっている。また、本実施形態では、前述の照明領域IARに対して+Y側又は−Y側でレチクルR1、R2の交換が行われる、あるいはレチクルR1は−Y側、レチクルR2は+Y側でその交換が行われ、この交換位置においても少なくとも3つのリニアエンコーダ26A2、26B2、26C2あるいはリニアエンコーダ26A3、26B3、26C3によってレチクルステージRSTの位置情報を計測可能となっている。
【0034】
なお、本実施形態では3つの移動スケール24A、24B、28と、9つのヘッド26A1〜26A3、26B1〜26B3、26C1〜26C3を有するヘッドユニットとによって、レチクルステージRST用のエンコーダシステムを構成するものとしたが、エンコーダシステムはその構成が図2に限られるものでなく、例えばヘッドユニットは3つのヘッド26A1、26B1、26C1を有するだけでも良い。この場合、上記レチクル交換位置又はその交換位置までの途中で、リニアエンコーダ26A1、26B1、26C1によるレチクルステージRSTの位置計測が不能になるときは、例えば別の計測装置、あるいは前述のレチクル干渉計システムの少なくとも一部を用いてレチクルステージRSTの位置計測を行っても良い。また、本実施形態では吸着機構又は板ばねなどによって3つの移動スケール24A、24B、28をレチクルステージRSTに固定するものとしたが、これに限られず、例えばネジ留め、あるいは回折格子を直接レチクルステージRSTに形成しても良い。さらに、本実施形態では移動スケール24A、24B、28を、レチクルステージRSTの上面(照明系側)に設けるものとしたが、その下面(投影光学系側)に設けても良いし、前述のヘッドユニット(エンコーダヘッド)と移動スケール24A、24B、28との配置を逆にする、すなわち前述のヘッドユニットをレチクルステージRSTに設け、移動スケール24A、24B、28をボディ側に設けても良い。
【0035】
前記レチクル干渉計システムは、図2及び図6に示されるように、レチクルY干渉計16yと、レチクルX干渉計16xとを備えている。
【0036】
レチクルX干渉計16xは、図2に示されるように、センサヘッド19A(図1では不図示)と、レチクルステージRSTの+X側の端面に固定された光学系ユニット19Bとを含む。
【0037】
センサヘッド19Aは、レチクルベース36上面に固定され、その内部に光源、光学系、並びに2つの検光子(偏光子)及び2つの光電変換素子等を内蔵している。光源としては、ゼーマン効果を利用した2周波レーザが用いられている。この光源からのレーザビームが光学系により断面形状が水平方向に拡大され、図2に示されるように、その断面形状が拡大されたビームBMがセンサヘッド19Aから出力される。そして、光学系ユニット19B内でビームBMは2分割され、一方の分割ビームは不図示の第1ビームスプリッタに入射して測定ビームBM1と参照ビームとに分割され、測定ビームBM1は平面鏡21の反射面で反射され、かつ参照ビームは例えばレチクルステージRSTの反射面で反射されて第1ビームスプリッタに戻り、同軸に合成されて光学系ユニット19Bから出力される。同様に、他方の分割ビームは不図示の第2ビームスプリッタに入射して測定ビームBM2と参照ビームとに分割され、測定ビームBM2は平面鏡21の反射面で反射され、かつ参照ビームは例えばレチクルステージRSTの反射面で反射されて第2ビームスプリッタに戻り、同軸に合成されて光学系ユニット19Bから出力される。図示していないが、本実施形態では平面鏡21が前述のボディBDの一部、例えば第2コラム34のレチクルベース36、あるいは後述の第1コラム32の鏡筒定盤(メインフレーム)38に固定されている。
【0038】
また、センサヘッド19Aには、光学系ユニット19B内の第1及び第2ビームスプリッタそれぞれからの戻り光(前述した測定ビームBM1,BM2とそれぞれの参照ビームとの合成光)が戻ってくる。センサヘッド19Aの内部では、これらの戻り光は、光学系を介して個別の検光子にそれぞれ入射し、各検光子から出力される干渉光が2つの光電変換素子で個別に受光され、各干渉光に応じた干渉信号が不図示の信号処理系に送られる。この信号処理系は、各光電変換素子からの干渉信号に基づいて、測定ビームの位相が参照ビームの位相に対してドップラーシフトし、位相変化が生じることを利用して、その位相変化で生じた干渉信号の変化をヘテロダイン検出する。そして、信号処理系は、検出した干渉信号の変化から、測定ビームBM1,BM2の照射点における、平面鏡21を基準としたX軸方向の位置情報、すなわち測定ビームBM1,BM2の照射点におけるレチクルステージRSTのX位置情報を、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出する。
【0039】
レチクルY干渉計16yは、光源としてレチクルX干渉計16xと同様にゼーマン効果を利用した2周波レーザを用いたマイケルソン型のヘテロダイン・レーザ干渉計である。このレチクルY干渉計16yは、投影ユニットPUを構成する鏡筒40の側面に固定された固定鏡14(図1参照)を基準として、レチクルステージRSTのY位置を、レチクルステージRSTに固定された移動鏡(平面鏡又はレトロリフレクタなど)15を介して、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出する。なお、レチクルY干渉計16yはその少なくとも一部(例えば、光源を除く光学ユニット)が、例えばレチクルベース36に固定されている。
【0040】
レチクルX干渉計16xからの2軸のX位置情報及びレチクルY干渉計16yからのY位置情報は、主制御装置20に送られている(図6参照)。
【0041】
なお、前述のレチクル干渉計システムは、センサヘッド19AとレチクルステージRSTに設けられる光学系ユニット19Bとを有するX干渉計16xを備えるものとしたが、X干渉計16xの構成はこれに限られず、例えば光学系ユニット19B及び平面鏡21の配置が逆、すなわちレチクルステージRSTの側面にY軸方向に延びて形成される反射面(平面鏡21に相当)に、レチクルベース36に配置される光学系ユニット19Bから測定ビームを照射する構成としても良い。さらに、センサヘッド19Aはレチクルベース36に設けられるものとしたが、例えばその少なくとも一部がボディBDとは別のフレーム部材に設けられてもよい。また、本実施形態ではレチクル干渉計システムの干渉計用反射面として、レチクルステージRSTの端部に固定される前述の移動鏡15などを用いるものとしたが、その代わりに、例えばレチクルステージRSTの端面(側面)を鏡面加工して得られる反射面を用いても良い。さらに本実施形態では、Y干渉計16yは測長軸が1本で、X干渉計16xは測長軸が2本であるものとしたが、例えば測長軸の本数はX軸方向とY軸方向とで逆でも良いし、あるいはそれぞれ2本以上ずつとしても良い。特に後者では、Y干渉計16yによってレチクルステージRSTのθx方向の回転情報(ピッチング)を、X干渉計16xによってレチクルステージRSTのθy方向の回転情報(ローリング)を計測可能としても良い。
【0042】
本実施形態の露光装置100では、レチクル干渉計システム16x,16yの計測値は、後述する、エンコーダ26A1,26B1,26C1等の計測値のキャリブレーション(較正)の際にのみ用いられ、露光動作の際には、レチクルステージRSTの位置は、レチクル側のエンコーダシステムの計測値に基づいて制御される。特に走査露光中のレチクルステージRSTの位置は、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。従って、図2からも容易に想像されるように、露光動作に際しては、レチクルステージRSTの位置制御に用いる、エンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)を行う必要があるが、これについては後述する。
【0043】
レチクルステージRSTの上方には、投影光学系PLを介してウエハステージWST上の一対の基準マークとこれに対応するレチクル上の一対のレチクルマークとを同時に検出するための露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)方式のアライメント系から成る一対のレチクルアライメント系13A、13B(図1では不図示、図6参照)がX軸方向に所定距離隔てて設けられている。この一対のレチクルアライメント系13A、13Bとしては、例えば特開平7−176468号公報(対応する米国特許第5,646,413号明細書)などに開示されるものと同様の構成のものを用いることができる。
【0044】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方で、ボディBDの一部に保持されている。このボディBDは、クリーンルームの床面F上に設置されたフレームキャスタFC上に設けられた第1コラム32と、この第1コラム32の上に固定された第2コラム34とを備えている。
【0045】
フレームキャスタFCは、床面F上に水平に置かれたベースプレートBSと、該ベースプレートBS上に固定された複数本、例えば3本(又は4本)の脚部39(但し、図1における紙面奥側の脚部は図示省略)とを備えている。
【0046】
第1コラム32は、上記フレームキャスタFCを構成する複数本の脚部39それぞれの上端に個別に固定された複数、例えば3つ(又は4つ)の第1の防振機構58によって、ほぼ水平に支持された鏡筒定盤(メインフレーム)38を備えている。
【0047】
鏡筒定盤38には、そのほぼ中央部に不図示の円形開口が形成され、この円形開口内に投影ユニットPUが上方から挿入され、投影ユニットPUはその外周部に設けられたフランジFLGを介して鏡筒定盤38に保持されている。鏡筒定盤38の上面には、投影ユニットPUを取り囲む位置に、複数本、例えば3本の脚41(但し、図1における紙面奥側の脚は図示省略)の一端(下端)が固定されている。これらの脚41それぞれの他端(上端)面は、ほぼ同一の水平面上にあり、これらの脚41に前述のレチクルベース36が固定されている。このようにして、複数本の脚41によってレチクルベース36が水平に支持されている。すなわち、レチクルベース36とこれを支持する複数本の脚41とによって第2コラム34が構成されている。レチクルベース36には、その中央部に照明光ILの通路となる開口36aが形成されている。
【0048】
投影ユニットPUは、円筒状で前記フランジFLGが設けられた鏡筒40と、該鏡筒40に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLとを含む。本実施形態では、投影ユニットPUを鏡筒定盤38に載置するものとしたが、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベース36などに対して投影ユニットPUを吊り下げ支持してもよい。
【0049】
投影光学系PLとしては、例えばZ軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数枚のレンズ(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。この投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率(例えば1/4倍又は1/5倍)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによって照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクル(R1又はR2)を通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域IAR内のレチクルの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、その第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(露光領域)に形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルを走査方向(Y軸方向)に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動することで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、レチクル及び投影光学系PLによってウエハW上にパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0050】
ウエハステージ装置12は、ベースプレートBS上に配置された複数(例えば3つ又は4つ)の第2の防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたステージベース71、該ステージベース71上に配置されたウエハステージWST、該ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系27等を備えている。
【0051】
ステージベース71は、定盤とも呼ばれる板状部材からなり、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
【0052】
ウエハステージWSTは、本体部とその上部のテーブル部とを有し、例えばリニアモータ、ボイスコイルモータ等を含むウエハステージ駆動系27によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向の6自由度方向に駆動される。
【0053】
なお、ウエハステージWSTとして、例えばリニアモータ等により少なくともX軸方向、Y軸方向、及びθz方向に駆動されるウエハステージ本体と、該ウエハステージ本体上でボイスコイルモータなどにより少なくともZ軸方向、θx方向、及びθy方向に微小駆動されるウエハテーブルとを備えた構造を採用しても良い。
【0054】
前記ウエハステージWST上(より正確には上記テーブル部上)には、不図示のウエハホルダを介してウエハWが載置され、ウエハWは、例えば真空吸着(又は静電吸着)などによってウエハホルダに固定されている。
【0055】
また、ウエハステージWSTのXY平面(移動面)内の位置情報は、図1に示される、ヘッドユニット46B、46C、46D及び移動スケール44B、44C、44Dなどを含むエンコーダシステムと、ウエハレーザ干渉計システム(以下、「ウエハ干渉計システム」という)18とによってそれぞれ計測可能に構成されている。以下、ウエハステージWST用のエンコーダシステム、及びウエハ干渉計システム18の構成等について詳述する。
【0056】
ウエハステージWSTの上面には、図3に示されるように、ウエハWを取り囲んで4つの移動スケール44A〜44Dが固定されている。これを更に詳述すると、移動スケール44A〜44Dは、同一素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)から成り、その表面に長手方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されている。この回折格子は、例えば4μm〜138nmの間のピッチ、本実施形態では1μmピッチで形成されている。なお、図3では、図示の便宜上から、格子のピッチは、実際のピッチに比べて格段に広く図示されている。その他の図においても同様である。
【0057】
移動スケール44A及び44Cは、長手方向が図3におけるY軸方向と一致し、ウエハステージWST(移動鏡17X,17Yを除いて考える)の中心を通る、Y軸方向に平行な中心線に関して対称に配置され、移動スケール44A,44Cに形成された各回折格子も、その中心線に関して対称の配置となっている。これらの移動スケール44A、44Cは、回折格子がY軸方向に周期的に配列されているので、ウエハステージWSTのY軸方向の位置計測に用いられる。
【0058】
また、移動スケール44B及び44Dは、長手方向が図3におけるX軸方向と一致し、ウエハステージWST(移動鏡17X,17Yを除いて考える)の中心を通る、X軸方向に平行な中心線に関して対称に配置され、移動スケール44B,44Dに形成された各回折格子も、その中心線に関して対称の配置となっている。これらの移動スケール44B、44Dは、回折格子がX軸方向に周期的に配列されているので、ウエハステージWSTのX軸方向の位置計測に用いられる。
【0059】
なお、図1においては、ウエハWが、移動スケール44Cの上方に露出した状態が示されているが、これは便宜上このようにしたもので、実際には、移動スケール44A〜44Dの上面はウエハWの上面とほぼ同一高さ、若しくは上方に位置している。
【0060】
一方、図1及び図3からわかるように、投影ユニットPUの最下端部の周囲を四方から囲む状態で、4つのエンコーダヘッドユニット(以下、「ヘッドユニット」と略述する)46A〜46Dが、それぞれ対応する移動スケール44A〜44Dと交差して配置されている。これらのヘッドユニット46A〜46Dは、図1では図面の錯綜を避ける観点から図示が省略されているが、実際には、支持部材を介して鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。
【0061】
ヘッドユニット46A、46Cは、投影ユニットPUの−X側、+X側にそれぞれ、対応する移動スケール44A、44Cの長手方向(図3におけるY軸方向)と直交するX軸方向を長手方向として、かつ投影光学系PLの光軸AXに関して対称に配置されている。また、ヘッドユニット46B、46Dは、投影ユニットPUの+Y側、−Y側にそれぞれ、対応する移動スケール44B、44Dの長手方向(図3におけるX軸方向)と直交するY軸方向を長手方向として、かつ投影光学系PLの光軸AXに関して対称に配置されている。
【0062】
ヘッドユニット46A〜46Dのそれぞれは、例えば単一のヘッド、あるいはほぼ切れ目なく配列される複数のヘッドを有するものでも良いが、本実施形態では図3中に、ヘッドユニット46Cについて代表的に示されるように、その長手方向に沿って所定間隔で配置された複数、例えば11個のヘッド48a〜48kを有している。なお、ヘッドユニット46A〜46Dはそれぞれ隣接する2つのヘッドが対応する移動スケール(回折格子)から外れない間隔、換言すれば移動スケールの長手方向(回折格子の配列方向)と直交する方向に関する回折格子の幅と同程度以下の間隔で複数のヘッドが配置される。
【0063】
ヘッドユニット46Aは、移動スケール44Aとともに、ウエハステージWSTのY位置を計測する、ヘッド48a〜48kを備えた多眼、より正確には11眼のYリニアエンコーダ50A(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット46Bは、移動スケール44Bとともに、ウエハステージWSTのX位置を計測する11眼のXリニアエンコーダ50B(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット46Cは、移動スケール44Cとともに、ウエハステージWSTのY位置を計測する11眼のYリニアエンコーダ50C(図6参照)を構成する。また、ヘッドユニット46Dは、移動スケール44Dとともに、ウエハステージWSTのX位置を計測する11眼のXリニアエンコーダ50D(図6参照)を構成する。エンコーダ50A〜50Dの計測値は、主制御装置20に供給される。なお、本実施形態では4つのヘッドユニット46A〜46Dを鏡筒定盤38に吊り下げ支持するものとしたが、図1の露光装置100が前述の如くメインフレーム部材またはレチクルベース36に対して投影ユニットPUを吊り下げ支持する構成である場合、例えば投影ユニットPUと一体にヘッドユニット46A〜46Dを吊り下げ支持してもよいし、あるいは投影ユニットPUとは独立にメインフレーム部材またはレチクルベース36から吊り下げ支持される計測フレームに4つのヘッドユニット46A〜46Dを設けてもよい。
【0064】
また、ウエハステージWSTの位置情報は、図1に示されるように、ウエハステージWSTに固定された移動鏡17,43に測定ビームを照射するウエハ干渉計システム18によって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。ウエハ干渉計システム18はその少なくとも一部(例えば、光源を除く光学ユニット)が、鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。なお、ウエハ干渉計システム18の少なくとも一部を、投影ユニットPUと一体に吊り下げ支持してもよいし、あるいは前述の計測フレームに設けてもよい。
【0065】
ここで、ウエハステージWST上には、実際には、図3に示されるように、走査方向であるY軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡17Yと、非走査方向であるX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡17Xとが設けられているが、図1では、これらが代表的に移動鏡17として示されている。
【0066】
前記ウエハ干渉計システム18は、図3に示されるように、ウエハY干渉計18Yと、2つのウエハX干渉計18X1及び18X2と、2つのZ干渉計18Z1,18Z2の5つの干渉計を含む。これら5つの干渉計18Y、18X1、18X2、18Z1、18Z2としては、ゼーマン効果を利用した2周波レーザを用いたマイケルソン型のヘテロダイン・レーザ干渉計が用いられている。このうち、ウエハY干渉計18Yとしては、図3に示されるように、投影光学系PLの光軸AX(前述の露光領域の中心)及びアライメント系ALGの検出中心を通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称な2つの測長軸を含む複数の測長軸を有する多軸干渉計が用いられている。
【0067】
ウエハX干渉計18X1は、投影光学系PLの光軸AXを通る、X軸に平行な測長軸に沿って測定ビームを移動鏡17Xに対して照射する。このウエハX干渉計18X1は、投影ユニットPUの鏡筒40の側面に固定されたX固定鏡の反射面を基準とする移動鏡17Xの反射面の位置情報をウエハステージWSTのX位置として計測する。
【0068】
ウエハX干渉計18X2は、アライメント系ALGの検出中心を通る、X軸に平行な測長軸に沿って測定ビームを移動鏡17Xに対して照射し、アライメント系ALGの側面に固定された固定鏡の反射面を基準とする移動鏡17Xの反射面の位置情報をウエハステージWSTのX位置として計測する。
【0069】
また、ウエハステージWSTの本体部の+Y側の側面には、図1及び図4に示されるように、X軸方向を長手方向とする移動鏡43が、不図示のキネマティック支持機構を介して取り付けられている。
【0070】
移動鏡43に対向して、該移動鏡43に測定ビームを照射する、干渉計システム18の一部を構成する一対のZ干渉計18Z1,18Z2が設けられている(図3及び図4参照)。これをさらに詳述すると、移動鏡43は、図3及び図4からわかるように、X軸方向の長さが移動鏡17Yよりも長く、長方形と等脚台形とを一体化したような六角形の断面形状を有する部材から成る。この移動鏡43の+Y側の面に鏡面加工が施され、図4に示される3つの反射面43b、43a、43cが形成されている。
【0071】
反射面43aは、移動鏡43の+Y側の端面を構成し、XZ平面と平行に且つX軸方向に延びている。反射面43bは、反射面43aの+Z側に隣接する面を構成し、XZ平面に対して所定角度だけ図4における時計回り方向に傾斜した面と平行に且つX軸方向に延びている。反射面43cは、反射面43aの−Z側に隣接する面を構成し、反射面43aを挟んで反射面43bと対称に設けられている。
【0072】
前記Z干渉計18Z1、18Z2は、図3及び図4からわかるように、Y干渉計18YのX軸方向の一側と他側にほぼ同一距離離れて、且つY干渉計18Yより幾分低い位置にそれぞれ配置されている。
【0073】
Z干渉計18Z1、18Z2は、図3及び図4に示されるように、Y軸方向に沿って測定ビームB1、B2をそれぞれ反射面43b、43cに投射する。本実施形態では、反射面43bで反射された測定ビームB1がほぼ垂直に入射する反射面を有する固定鏡47A、及び反射面43cで反射された測定ビームB2がほぼ垂直に入射する反射面を有する固定鏡47BがそれぞれX軸方向に延設されている。
【0074】
固定鏡47A、47Bは、例えば鏡筒定盤38に設けられた同一の支持体(不図示)に支持される。なお、固定鏡47A、47Bを前述の計測フレームなどで支持してもよい。
【0075】
前記Y干渉計18Yは、図3に示されるように、投影光学系PLの投影中心(光軸AX、図1参照)を通るY軸に平行な直線から同一距離−X側,+X側に離れたY軸方向の測長軸に沿って測定ビームB41,B42を移動鏡17Yに投射し、それぞれの反射光を受光することで、測定ビームB41,B42の照射点におけるウエハステージWSTのY軸方向の位置情報を、投影ユニットPUの鏡筒40の側面に固定されたY固定鏡の反射面を基準として検出している。なお、図4では、測定ビームB41,B42が代表的に測定ビームB4として示されている。
【0076】
また、Y干渉計18Yは、平面視で測定ビームB41,B42のほぼ中央に位置し、かつ側面視で測定ビームB41,B42の−Z側に位置するY軸方向の測長軸に沿って測定ビームB3を固定鏡43の反射面43aに向けて投射し、反射面43aで反射した測定ビームB3を受光することにより、移動鏡43の反射面43a(すなわちウエハステージWST)のY軸方向の位置情報を検出している。
【0077】
主制御装置20は、Y干渉計18Yの測定ビームB41,B42に対応する測長軸の計測値の平均値に基づいて移動鏡17Y、すなわちウエハテーブルWTB(ウエハステージWST)のY位置を算出する。また、主制御装置20は、移動鏡17Y及び移動鏡43の反射面43aにおけるY位置に基づいて、ウエハステージWSTのθx方向の変位(ピッチング量)を算出する。
【0078】
また、Z干渉計18Z1,18Z2から投射される測定ビームB1、B2はそれぞれ、移動鏡43の反射面43b,43cに所定の入射角(θ/2とする)で入射し、かつ反射面43b,43cで反射されて固定鏡47A,47Bの反射面に垂直に入射する。そして、固定鏡47A,47Bで反射された測定ビームB1、B2は、再度反射面43b,43cでそれぞれ反射されてZ干渉計18Z1、18Z2で受光される。
【0079】
ここで、ウエハステージWST(すなわち移動鏡43)のY軸方向への変位(移動量)をΔYo、Z軸方向への変位(移動量)をΔZoとすると、Z干渉計18Z1、18Z2で受光される測定ビームB1の光路長変化ΔL1及び測定ビームB2の光路長変化ΔL2は、それぞれ以下の式(1)、(2)で表される。
【0080】
ΔL1≒ΔYo×cosθ−ΔZo×sinθ …(1)
ΔL2≒ΔYo×cosθ+ΔZo×sinθ …(2)
従って、式(1)、(2)からΔZo及びΔYoは次式(3)、(4)で求められる。
【0081】
ΔZo=(ΔL2−ΔL1)/2sinθ …(3)
ΔYo=(ΔL1+ΔL2)/2cosθ …(4)
【0082】
上記の変位ΔZo、ΔYoは、Z干渉計18Z1、18Z2のそれぞれで求められる。このため、Z干渉計18Z1で求められる変位をΔZoR、ΔYoRとし、Z干渉計18Z2で求められる変位をΔZoL、ΔYoLとし、測定ビームB1、B2のX軸方向の距離(間隔)をDとすると(図3参照)、移動鏡43(すなわちウエハステージWST)のθz方向への変位(ヨーイング量)Δθz、及び移動鏡43(すなわちウエハステージWST)のθy方向への変位(ローリング量)Δθyは次式(5)、(6)で求められる。
【0083】
Δθz=(ΔYoR−ΔYoL)/D …(5)
Δθy=(ΔZoL−ΔZoR)/D …(6)
従って、主制御装置20は、上記式(1)〜式(6)を用いることで、Z干渉計43A、43Bの計測結果に基づいて、ウエハステージWSTの4自由度の変位ΔZo、ΔYo、Δθz、Δθyを算出することができる。
【0084】
また、上述したように、主制御装置20は、Y干渉計18Yの計測結果により、ウエハステージWSTのY軸方向の変位ΔY、及びウエハステージWSTのθx方向の変位(ピッチング量)Δθxを求めることができる。
【0085】
なお、図1では、X干渉計18X1,18X2及びY干渉計18Y、並びにZ干渉計18Z1,18Z2が代表的にウエハ干渉計システム18として示され、X軸方向位置計測用の固定鏡とY軸方向位置計測用の固定鏡とが代表的に固定鏡57として図示されている。また、アライメント系ALG及びこれに固定された固定鏡は図1では図示が省略されている。
【0086】
本実施形態では、ウエハX干渉計18X1とウエハY干渉計18Yとは、ウエハの露光動作時に用いられるエンコーダシステムのキャリブレーションに用いられるとともに、ウエハX干渉計18X2とウエハY干渉計18Yとは、アライメント系ALGによるマーク検出時に用いられる。また、ウエハY干渉計18Yは、ウエハステージWSTのY位置の他、θx方向の回転情報(ピッチング)も計測可能となっている。なお、本実施形態では、前述のウエハ干渉計システム18のX干渉計18X1,18X2及びY干渉計18Yの測定ビームの反射面として、ウエハステージWSTに固定される移動鏡17X、17Yを用いるものとしたが、これに限らず、例えばウエハステージWSTの端面(側面)を鏡面加工して反射面(移動鏡17X,17Yの反射面に相当)を形成しても良い。
【0087】
ウエハY干渉計18Y、ウエハX干渉計18X1及び18X2、並びにZ干渉計18Z1及び18Z2の計測値は、主制御装置20に供給されるようになっている。
【0088】
また、ウエハステージWST上には、不図示の基準マーク板が、その表面がウエハWと同一高さとなる状態で固定されている。この基準マーク板の表面には、少なくとも一対のレチクルアライメント用の第1基準マークと、これらの第1基準マークに対して既知の位置関係にあるアライメント系ALGのベースライン計測用の第2基準マークなどが形成されている。
【0089】
本実施形態の露光装置100では、図1では図示が省略されているが、例えば特開平6−283403号公報(対応する米国特許第5,448,332号明細書)等に開示されるものと同様の照射系42aと受光系42b(図6参照)とから成る斜入射方式の多点焦点位置検出系が設けられている。
【0090】
また、露光装置100では、投影ユニットPUの近傍に、前述のアライメント系ALG(図1では不図示)が設けられている。このアライメント系ALGとしては、例えば、画像処理方式のアライメントセンサ、いわゆるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。このオフアクシス方式のアライメント系ALGは、指標中心を基準とするマークの位置情報を主制御装置20に供給する。主制御装置20は、この供給された情報と、ウエハ干渉計システム18の干渉計18Y、18X2の計測値とに基づいて、検出対象のマーク、具体的には基準マーク板上の第2基準マーク又はウエハ上のアライメントマークの、干渉計18Y、18X2で規定される座標系(アライメント座標系)上における位置情報を計測する。
【0091】
次に、エンコーダ50A〜50Dの構成等について、図5に拡大して示されるエンコーダ50Cを代表的に採り上げて説明する。この図5では、移動スケール44Cに検出光を照射するヘッドユニット46Cのヘッド48a〜48k(図3)の1つをヘッド48yとして示している。
【0092】
ヘッド48yは、大別すると、照射系64a、光学系64b、及び受光系64cの3部分から構成されている。
【0093】
照射系64aは、レーザ光LBをY軸及びZ軸に対して45°を成す方向に射出する光源、例えば半導体レーザLDと、該半導体レーザLDから射出されるレーザ光LBの光路上に配置されたレンズL1とを含む。
【0094】
光学系64bは、その分離面がXZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と記述する)WP1a,WP1b、及び反射ミラーR2a,R2b等を備えている。
【0095】
受光系64cは、偏光子(検光子)及び光検出器等を含む。
【0096】
このエンコーダ50Cにおいて、半導体レーザLDから射出されたレーザビームLBはレンズL1を介して偏光ビームスプリッタPBSに入射し、偏光分離されて2つのビームLB1、LB2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過したビームLB1は反射ミラーR1aを介して移動スケール44Cに形成された反射型回折格子RGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射されたビームLB2は反射ミラーR1bを介して反射型回折格子RGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0097】
ビームLB1、LB2の照射によって回折格子RGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームはそれぞれ、レンズL2b、L2aを介してλ/4板WP1b、WP1aにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2b、R2aにより反射されて再度λ/4板WP1b、WP1aを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0098】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つのビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過したビームLB1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射されて受光系64cに入射するとともに、先に偏光ビームスプリッタPBSで反射されたビームLB2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過してビームLB1の1次回折ビームと同軸に合成されて受光系64cに入射する。
【0099】
そして、上記2つの1次回折ビームは、受光系64cの内部で、検光子によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。
【0100】
上記の説明からわかるように、エンコーダ50Cでは、干渉させる2つのビームの光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響がほとんど無視できる。そして、移動スケール44C(すなわちウエハステージWST)が計測方向(この場合、Y軸方向)に移動すると、2つのビームそれぞれの位相が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化が、受光系64cによって検出され、その強度変化に応じた位置情報がエンコーダ50Cの計測値として出力される。その他のエンコーダ50A,50B,50Dも、エンコーダ50Cと同様にして構成されている。また、前述したレチクルステージ用の9つのエンコーダ26A1〜26C3も、エンコーダ50Cと同様の構成の回折干渉方式のエンコーダが用いられている。各エンコーダとしては、分解能が、例えば0.1nm程度のものが用いられている。
【0101】
図6には、本実施形態の露光装置100のステージ制御に関連する制御系が一部省略されてブロック図にて示されている。この図6の制御系は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータ(又はワークステーション)を含み、装置全体を統括して制御する主制御装置20を中心として構成されている。
【0102】
上述のようにして構成された露光装置100では、例えば特開昭61−44429号公報及び対応する米国特許第4,780,617号明細書などに開示されているEGA(エンハンスド・グローバル・アライメント)方式などで行われるウエハアライメント動作時には、上述の如く、ウエハ干渉計システム18の計測値に基づいて、ウエハステージWSTの位置が主制御装置20によって管理され、ウエハアライメント動作時以外、例えば露光動作時などには、エンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいて、ウエハステージWSTの位置が主制御装置20によって管理される。なお、ウエハアライメント動作時にもエンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいてウエハステージWSTの位置を管理してもよい。また、エンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいてウエハステージWSTの位置を管理する場合、ウエハ干渉計システム18の少なくとも1つの計測値(例えば、Z軸、θx及びθy方向の位置情報)を併用してもよい。
【0103】
従って、本実施形態ではウエハアライメント動作終了後、露光開始前までの間で、ウエハステージの位置計測に用いる位置計測系を、ウエハ干渉計システム18(すなわち、ウエハY干渉計18Y及びウエハX干渉計18X2)からエンコーダ50A〜50Dへ切り替える、位置計測系の切り換え動作を行う必要がある。
【0104】
以下、この位置計測系の切り換え動作について簡単に説明する。
【0105】
ウエハアライメントが終了した時点では、例えば、図7に示されるように、ウエハステージWSTの位置は、干渉計18Y,18X2,18Z1,18Z2の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理されている。そこで、ウエハアライメントの終了後、主制御装置20は、これらの干渉計18Y,18X2,18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ウエハステージWSTを、ウエハステージ駆動系27を介して+Y方向に駆動する。
【0106】
そして、図8に示されるように、干渉計18X2からの測定ビームと、干渉計18X1からの2本の測定ビームとが同時にX移動鏡17Xに照射される位置に、ウエハステージWSTが到達すると、主制御装置20は、干渉計18Yの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのθz回転誤差(ヨーイング誤差)(及びθx回転誤差(ピッチング誤差))が零となるようにウエハステージWSTの姿勢を調整した後、干渉計18X1の計測値を、そのときの干渉計18X2の計測値と同じ値にプリセットする。なお、ウエハステージWSTのθz回転誤差は、Z干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて調整することとしても良い。
【0107】
そのプリセット後、主制御装置20は、干渉計18X1、18Yの計測値の空気揺らぎ(空気の温度揺らぎ)による短期的変動が平均化効果により無視できるレベルになるまでの所定時間その位置でウエハステージWSTを停止させ、その停止時間中に取得した干渉計18X1の計測値の加算平均値(停止時間中の平均値)を、Xリニアエンコーダ50B,50Dの計測値として引き継ぐ。これとともに、主制御装置20は、その停止時間中に取得した干渉計18Yの複数軸それぞれにおける計測値の加算平均値(停止時間中の平均値)の平均値を、Yリニアエンコーダ50A,50Cの計測値として引き継ぐ。これにより、Xリニアエンコーダ50B,50D、及びYリニアエンコーダ50A,50Cのプリセット、すなわち位置計測系の切り換え動作が完了する。以後、主制御装置20により、エンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいて、ウエハステージWSTの位置が管理されることとなる。
【0108】
次に、レチクルステージ用のエンコーダシステムにおけるエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)動作を含む、露光のためのレチクルステージRSTのスキャン動作について説明する。
【0109】
例えば、ウエハWの+Y方向への移動とレチクルR1の−Y方向への移動とによる走査露光(ここではウエハWの移動方向に着目してプラススキャン露光と呼ぶ)の場合、図9に示される加速開始位置からレチクルステージRSTの−Y方向への加速が開始される。この加速開始位置では、レチクルステージRSTの位置は、主制御装置20によってエンコーダ26A2,26B2及び26C2を用いて計測されている。
【0110】
そして、レチクルステージRSTの−Y方向への加速が終了した加速終了時点では、一例として、図10に示されるように、レチクルR1の−Y端が照明領域IARの+Y端にほぼ一致する。この直前に、ヘッド26A1,26B1,26C1が、移動スケール24A,24B,28にそれぞれ対向するようになる。すなわち、エンコーダ26A2,26B2及び26C2のみでなく、エンコーダ26A1,26B1,26C1によっても、レチクルステージRSTの位置を計測できるようになる。
【0111】
そこで、主制御装置20は、例えばエンコーダ26A1,26B1,26C1によってレチクルステージRSTの位置が計測可能になった時点から加速が終了するまでのある時点における、エンコーダ26A2,26B2及び26C2の計測値(所定の原点を零とするカウント値(スケールの読み値))を、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値としてそのまま引き継ぐ。以後、主制御装置20は、エンコーダ26A1,26B1,26C1を用いて、レチクルステージRSTの位置を管理する。
【0112】
そして、図10の時点からレチクルステージRSTの等速移動が開始され、所定の整定時間が経過して、照明領域IARにレチクルR1のパターン領域が達した時点で露光が開始される(図16参照)。さらに、所定時間経過後、露光が終了して(図17参照)、レチクルステージRSTの減速が開始され、図11に示される位置で停止する。なお、露光終了とほぼ同時にレチクルステージRSTの減速を開始しても良い。
【0113】
図10及び図11からわかるように、露光開始直前(すなわち、レチクルステージRSTの位置制御に使用するエンコーダの切り替えが行われた時点)から走査露光期間を経て減速が終了するまでの期間、レチクルステージRSTの位置は、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。
【0114】
一方、ウエハWの−Y方向への移動とレチクルR1の+Y方向への移動とによる走査露光(マイナススキャン露光)の場合には、上記プラススキャン露光と逆に、図11の状態からレチクルステージRSTの+Y方向への加速が開始され、図10に示される露光終了直後の時点で、エンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)が行われ、減速期間中は、レチクルステージRSTの位置が、エンコーダ26A2,26B2,26C2の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。
【0115】
ここで、図9、図10、図11等では、エンコーダに加え、干渉計16x、16yによってもレチクルステージRSTの位置を計測している状態が示されているが、干渉計によるレチクルステージRSTの位置計測は必ずしも行う必要が無いことは勿論である。本実施形態において、走査露光中に得られたエンコーダ及び干渉計16x、16yの計測結果の利用方法については後述する。
【0116】
なお、詳細説明は省略するが、レチクルR2を用いる、プラススキャン露光及びマイナススキャン露光では、エンコーダ26A1,26B1,26C1とエンコーダ26A3,26B3,26C3とが用いられる。この際にも、前述と同様のエンコーダの切り替え(計測値のつなぎ)が行われ、少なくとも走査露光の期間では、レチクルステージRSTの位置は、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいて、主制御装置20によって管理される。また、主制御装置20はエンコーダの計測値に基づいてレチクルステージRSTのX、Y位置だけでなくθz方向の位置(ヨーイング)も管理している。
【0117】
本実施形態の露光装置100では、通常のスキャニング・ステッパと同様に、レチクルアライメント系13A,13B(図6)、ウエハステージWST上の基準マーク板及びアライメント系ALGなどを用いて、レチクルアライメント(レチクル座標系とウエハ座標系との対応付けを含む)及びアライメント系ALGのベースライン計測などの一連の作業が行われる。これらの一連の作業中のレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置制御は、干渉計16y及び16x、並びに干渉計18X1,18X2,18Y,18Z1,18Z2の計測値に基づいて行われる。なお、レチクルアライメント、あるいはベースライン計測などでも、前述したエンコーダの計測値のみ、又は干渉計とエンコーダの両方の計測値に基づいてレチクルステージRST、ウエハステージWSTの位置制御を行ってもよい。
【0118】
次いで、主制御装置20により、不図示のウエハローダ(搬送装置)を用いてウエハステージWST上のウエハ交換(ウエハステージWST上にウエハがない場合は、ウエハのロード)が行われ、そのウエハに対するアライメント系ALGを用いた、例えばEGA方式のウエハアライメントが行われる。このウエハアライメントにより、前述したアライメント座標系上におけるウエハ上の複数のショット領域の配列座標が求められる。
【0119】
その後、主制御装置20により、前述した位置計測系の切り替えが行われた後、先に計測したベースライン及びエンコーダ50A〜50Dの計測値に基づいてウエハステージWSTの位置が管理され、かつ前述したエンコーダ26A1,26B1及び26C1の計測値に基づいてレチクルステージRSTの位置を管理しつつ、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順で、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、レチクル(R1又はR2)のパターンがウエハ上の複数のショット領域にそれぞれ転写される。
【0120】
図12(A)には、ウエハWの中央付近が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示され、図12(B)には、ウエハWの中心と外周との中間付近が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示されている。また、図13(A)には、ウエハWの+Y側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示され、図13(B)には、ウエハWの中心から見てX軸及びY軸に対して45°を成す方向のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示されている。また、図14には、ウエハWの+X側のエッジ近傍が投影ユニットPUの直下となる位置にウエハステージWSTがある状態が示されている。これら図12(A)〜図14を見ると、いずれの図においても、ヘッドユニット46A〜46Dの各々においてその11個のヘッドの少なくとも1つ(本実施形態では1つ又は2つ)が、対応する移動スケールに対向していることがわかる。この事実、及びヘッドユニット46A〜46Dの投影光学系PLの光軸AXを中心とする上下、左右方向に関する対称配置、並びに移動スケール44A〜44DのウエハステージWSTの中心に対するX軸方向及びY軸方向に関する対称配置を総合して考えれば、次のことがわかる。すなわち、露光装置100では、露光動作中のウエハステージWSTの移動範囲内のいずれの位置にウエハステージWSTがあっても、ヘッドユニット46A〜46Dの各々においてその11個のヘッドの少なくとも1つが、対応する移動スケールに対向し、4つのエンコーダ50A〜50DによるウエハステージWSTのX位置及びY位置の計測を常時行うことができる。また、ウエハステージWSTのヨーイング計測も可能となっている。
【0121】
換言すれば、前述した4つの移動スケール44A〜44Dはそれぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の形成範囲に相当)が、少なくともウエハWの全面を走査露光するときのウエハステージWSTの移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(本実施形態では全てのショット領域で、少なくとも走査露光中と、走査露光前後のウエハステージWSTの加減速及び同期整定の期間中とに、4つのヘッドユニット46A〜46D(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、ウエハWの大きさ(直径)よりも長く設定されている。
【0122】
また、4つのヘッドユニット46A〜46Dも同様に、それぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の検出範囲に相当)が、少なくともウエハWの全面を走査露光するときのウエハステージWSTの移動ストロークの全域をカバーする(すなわち、少なくともウエハWの露光動作中に4つのヘッドユニット46A〜46D(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、その移動ストロークと同程度以上に設定されている。なお、露光動作だけでなく他の動作、例えばアライメント動作(前述のウエハアライメント及びベースライン計測を含む)でもエンコーダ50A〜50DによるウエハステージWSTの位置計測を可能とするようにヘッドユニット46A〜46Dを構成してもよい。
【0123】
ところで、エンコーダの移動スケールは、使用時間の経過と共に固定位置がずれる、あるいは熱膨張などにより回折格子のピッチが部分的は又は全体的に変化するので、エンコーダは長期安定性に欠ける。このため、その計測値に含まれる誤差が使用時間の経過と共に大きくなるので、これをキャリブレーションする必要がある。以下、本実施形態の露光装置100で行われるエンコーダのキャリブレーション動作について説明する。
【0124】
まず、レチクルステージ用のエンコーダシステムを構成するエンコーダの計測値のゲイン誤差及びリニアリティ誤差を補正するための第1のキャリブレーション動作について説明する。この第1のキャリブレーション動作は、例えばロット毎に先頭のウエハの露光開始前に行われる、すなわち比較的長期のインターバルで行われるので、以下では長期キャリブレーション動作とも呼ぶ。
【0125】
具体的には、主制御装置20は、レチクルR1及びR2(のパターン領域)を照明領域IARが通過する(実際には、照明領域IARをレチクルR1及びR2(のパターン領域)が横切る)範囲を、干渉計の計測値の短期変動が無視できる程度の極低速で、レチクルステージRSTをY軸方向にスキャンする。なお、この第1のキャリブレーション動作に際しては、照明領域IARが照明光ILで照明されるわけではないが、ここではレチクルステージRSTの移動位置を分かり易く説明するために、「照明領域IARが通過する」等の表現を用いている。
【0126】
上記のスキャン中に、主制御装置20は、所定のサンプリング間隔で、レチクルY干渉計16y及びYリニアエンコーダ26A1、26B1の計測値、並びにレチクルX干渉計16x及びXリニアエンコーダ26C1の計測値を取り込み、それら計測値を不図示のメモリに格納するとともに、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1の計測値とレチクルY干渉計16yの計測値、レチクルX干渉計16xの計測値とXリニアエンコーダ26C1の計測値について、図15に示されるようなマップをそれぞれ作成する。ここで、3つのエンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測値を取り込むのは、レチクルR1及びR2(のパターン領域)を照明領域IARが通過する範囲では、これら3つのエンコーダ26A1、26B1及び26C1を用いてレチクルステージRSTの位置が制御されることを考慮したためである。
【0127】
図15は、横軸が干渉計の計測値、縦軸がエンコーダの計測値とした場合の両者の関係を曲線Cで示す線図であり、この曲線Cと理想ラインTLとの差がエンコーダの計測値に含まれる誤差を示す。この図15の線図をそのままエンコーダの計測値を補正する補正マップとすることができる。その理由は、例えば図15における点P1は、エンコーダの計測値がe1のとき、対応する干渉計の計測値がi1であることを示すが、この干渉計の計測値は、前述した極低速でレチクルステージRSTをスキャンしたときに得られるものであるから、長期的な変動誤差は勿論、空気揺らぎに起因する短期的な変動誤差も殆ど含まれず、誤差が無視できる正確な値と考えて差し支えないからである。
【0128】
この図15の補正マップに従って、エンコーダ26A1、26B1及び26C1の計測値を補正したエンコーダ26A1、26B1及び26C1の補正後の計測値と、対応する干渉計の計測値との関係を求めると、図15の理想ラインTLに一致する。なお、エンコーダ26C1の計測値を補正する補正マップは、レチクルステージRSTをX軸方向に可動範囲内で駆動し、その駆動中に得られたエンコーダ26C1、レチクルX干渉計16xの計測値に基づいて、作成しても勿論良い。
【0129】
主制御装置20は、残りのエンコーダについても、上述のエンコーダ26A1,26B1及び26C1と同様の手順で、干渉計16x,16yの計測値を用いて補正マップを作成することとしても良い。
【0130】
但し、上記の長期キャリブレーション動作の他に、後述する短期キャリブレーション動作を併せて実行する場合には、上記の補正マップの曲線Cを、オフセット成分及び傾斜成分の低次成分と、それ以外の高次成分とに分離して、低次成分、高次成分のそれぞれを補正マップとして持っておく、あるいは低次成分もオフセット成分と傾斜成分とに分離してそれぞれの補正マップを、高次成分と共に持っておいても良い。あるいは、比較的長期に渡って変動しないであろうと予想される高次成分についての補正マップ(補正情報)を持っておき、比較的短期に変動すると予想される低次成分の補正情報を短期キャリブレーション動作で取得することとしても良い。
【0131】
なお、上記の説明において少なくともエンコーダ26A1、26B1の計測値の補正情報を取得(決定)するキャリブレーション動作では、前述の如くレチクルR1及びR2のパターン領域がそれぞれ照明領域IARを横切る範囲に渡ってレチクルステージRSTを走査方向(Y軸方向)に移動するものとしたが、レチクルステージRSTの移動範囲はこれに限られるものではない。例えば、エンコーダ26A1、26B1の計測可能範囲(移動スケール24A、24Bの回折格子の形成範囲に対応)のほぼ全域、あるいはレチクルR1、R2のいずれか一方を用いる走査露光時の移動範囲などとしても良い。この走査露光時の移動範囲は、走査露光期間だけでなく、その前後の加減速期間及び同期整定期間などの少なくとも一部を含めたレチクルステージRSTの移動範囲としても良い。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、レチクルR1、R2を用いる走査露光時のレチクルステージRSTの移動範囲だけでなく、レチクルステージRSTに設けられる不図示の基準マークを用いる計測動作時の移動範囲をも含むものとしてよい。この基準マークは、レチクルステージRST上でレチクルR1に対して−Y側、及び/又はレチクルR2に対して+Y側に少なくとも1つ設けられる。
【0132】
次に、例えばウエハ1枚毎に(いわゆるオーバー・ヘッド時間(前ウエハの露光終了から次ウエハの露光開始までの間)に)実施される、エンコーダ26A1、26B1及び26C1のゲイン誤差(エンコーダ計測値の干渉計計測値に対するスケーリング誤差)を較正する、第2のキャリブレーション動作について説明する。この第2のキャリブレーション動作は、ウエハ1枚毎などに行われる、すなわち比較的短期のインターバルで行われるので、以下では短期キャリブレーション動作とも呼ぶ。
【0133】
まず、主制御装置20は、図16に示されるように、走査方向(Y軸方向)に関して、次の露光に用いられるレチクルR1(又はR2)のパターン領域の−Y側の端部が照明領域IARの+Y側の端部に一致する第1のY位置(以下では、単に第1位置とも呼ぶ)にレチクルステージRSTを位置決めする。このキャリブレーション動作に際しても、実際には照明領域IARが照明光ILで照明されるわけではないが、図16では、レチクルステージRSTの位置を分かり易くするために、照明領域IARが図示されている。
【0134】
そして、主制御装置20は、この図16に示される上記第1位置でのレチクルステージRSTの位置決め状態を所定時間継続し、その位置決め状態の継続中にエンコーダ26A1、26B1及び26C1、並びに干渉計16x,16yの計測値を所定のサンプリング間隔で取得し、不図示のメモリに記憶する。
【0135】
次に、主制御装置20は、レチクルステージRSTを−Y方向に駆動して、図17に示されるように、レチクルR1(又はR2)のパターン領域の+Y側の端部が照明領域IARの−Y側の端部に一致する第2のY位置(以下では、単に第2位置とも呼ぶ)にレチクルステージRSTを位置決めする。そして、主制御装置20は、この図17に示される上記第2位置でのレチクルステージRSTの位置決め状態を所定時間継続し、その位置決め状態の継続中にエンコーダ26A1、26B1及び26C1、並びに干渉計16x,16yの計測値を所定のサンプリング間隔で取得し、不図示のメモリに記憶する。
【0136】
そして、主制御装置20は、上記第1及び第2位置でそれぞれメモリに記憶した計測値(情報)に基づき、エンコーダ26A1、26B1及び26C1、並びに干渉計16x,16yのそれぞれについて、上記第1及び第2位置それぞれにおける計測値の加算平均値(時間平均値)を算出する。そして、この算出結果に基づいて、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1の計測値とレチクルY干渉計16yの計測値、及びレチクルX干渉計16xの計測値とXリニアエンコーダ26C1の計測値について、図18に示されるようなマップをそれぞれ作成する。この図18のマップにおいて、点P2、点P3が、上記第1及び第2位置それぞれにおける、空気揺らぎなどに起因する短期的変動を平均化効果により低減させた干渉計の計測値と、対応するエンコーダの計測値との関係を示す点である。
【0137】
次に、主制御装置20は、エンコーダの計測値を干渉計の計測値を用いて補正する補正マップの傾斜成分(スケーリング)Scを、次式により算出する。
Sc=(e3−e2)/(i3−i2)
そして、主制御装置20は、算出された補正マップの傾斜成分を、低次成分の補正マップ中の傾斜成分に置き換え、その置き換え後の低次成分の補正マップと、補正マップとして持っている高次成分とに基づいて、低次成分及び高次成分を補正するための新たな補正マップを作成する。
【0138】
なお、上記の説明では、レチクルステージRSTを、露光対象のレチクルR1(又はR2)のパターン領域を照明領域IARが通過する範囲の両端の位置である第1位置と第2位置の2箇所にそれぞれ位置決めし、所定の処理を行って上記の新たな補正情報を算出するものとした。しかし、これに限らず、第1位置、第2位置の他に、これらの位置の間の少なくとも1つの位置を含む3つ以上の位置に、レチクルステージRSTをそれぞれ位置決めして、上記と同様の処理を行い、得られた3つ以上の点の最小二乗近似直線を求め、その近似直線に基づいて、補正マップの傾斜成分(スケーリング誤差)に加えてオフセット成分を算出することとしても良い。この場合、算出された補正マップの低次成分(傾斜成分及びオフセット成分)と、補正マップとして持っている高次成分とに基づいて、低次成分及び高次成分を補正するための新たな補正マップを作成すれば良い。また、レチクルステージRSTを位置決めする第1及び第2位置は、走査方向に関してレチクルのパターン領域の全体が照明領域IARを横切るためのレチクルステージRSTの移動範囲の両端に対応するものとしたが、これに限らず、例えばレチクルR1、R2のいずれか一方を用いる走査露光時にレチクルステージRSTが実際に移動される範囲(走査露光前後の加減速期間及び同期整定期間をも含めた移動範囲)に対応するものとしても良い。さらに、第1及び第2位置によって規定される走査方向の移動範囲は、レチクルのパターン領域の全体が照明領域IARを横切るためのレチクルステージRSTの移動範囲と少なくとも一部がずれていても良いが、少なくともその移動範囲を含むことが好ましい。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、前述した基準マークを用いる計測動作時の移動範囲をも含むものとしてよい。
【0139】
次に、ウエハ1枚毎(いわゆるオーバー・ヘッド時間)に実施される、エンコーダ26A1、26B1及び26C1のゲイン誤差(エンコーダ計測値の干渉計計測値に対するスケーリング誤差及びオフセット)、すなわち前述の補正マップの低次成分を更新する、第3のキャリブレーション動作について説明する。この第3のキャリブレーション動作も、前述と同様の理由により、以下では、短期キャリブレーション動作とも呼ぶ。
【0140】
まず、主制御装置20は、この第3のキャリブレーション動作の実施によって露光装置100のスループットが低下しても、スループットを許容範囲内に維持できる程度の低速で、次の露光に用いられるレチクルR1(又はR2)のパターン領域を照明領域IARが通過する所定範囲内で、レチクルステージRSTをY軸方向に駆動する。そして、その駆動中に干渉計16x,16y及びエンコーダ26A1、26B1及び26C1を用いてレチクルステージRSTの位置情報を所定のサンプリング間隔で取得し、不図示のメモリに記憶する。なお、この第3のキャリブレーション動作に際しても、照明領域IARが照明光ILで照明されることはないが、前述と同様の理由で、「照明領域IARが通過する」等の表現を用いている。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、前述した第2のキャリブレーション動作で説明した範囲と同一である。但し、この第3のキャリブレーション動作ではその移動範囲の両端でレチクルステージRSTの位置決めを行う必要はない。
【0141】
次いで、主制御装置20は、前述と同様に、Yリニアエンコーダ26A1及び26B1の計測値とレチクルY干渉計16yの計測値、レチクルX干渉計16xの計測値とXリニアエンコーダ26C1の計測値について、図19中に示される曲線C1のような曲線を、それぞれ作成する。なお、図19において、符号EAは、レチクルR1(又はR2)のパターン領域を照明領域IARが通過する所定範囲、すなわち露光区間を示す。
【0142】
次に、主制御装置20は、その曲線C1の最小二乗近似直線FLを求め、この近似直線FLの理想直線TLに対するオフセットドリフトOD、スケーリングドリフトSDを求める。そして求めたオフセットドリフト(オフセット誤差)、スケーリングドリフト(傾斜誤差)を用いて、予めマップとして持っていた低次成分の補正マップを更新する。そして、この補正後の低次成分の補正マップと、予めマップとして持っている高次成分の補正マップとに基づいて、低次成分及び高次成分を補正するための新たな補正マップを作成する。
【0143】
なお、第3のキャリブレーション動作におけるレチクルステージRSTの移動範囲は、レチクルのパターン領域の全体が照明領域IARを横切るための所定範囲(露光区間EAに対応)と少なくとも一部がずれていても良いが、少なくともその所定範囲を含むことが好ましく、例えばレチクルR1、R2のいずれか一方を用いる走査露光時にレチクルステージRSTが実際に移動される範囲(走査露光前後の加減速期間及び同期整定期間をも含めた移動範囲)としても良い。また、レチクルステージRSTの移動範囲は、前述した基準マークを用いる計測動作時の移動範囲をも含むものとしてよい。
【0144】
なお、露光装置100では、露光動作時のウエハステージWSTの位置制御に用いられるエンコーダ50A〜50Dの長期キャリブレーション動作、短期キャリブレーション動作が、主制御装置20によって、前述の第1〜第3のキャリブレーション動作と同様の手法で行われる。但し、ウエハステージWSTの移動は2次元面内で行われる。この場合、ウエハY干渉計18Y及びウエハX干渉計18X1で規定される直交座標系上でウエハステージWSTを駆動して、Xリニアエンコーダ50B,50Dの計測値の誤差の分布を基にした補正マップ、Yリニアエンコーダ50A,50Cの計測値の誤差の分布を基にした補正マップが求められる。このとき、Yリニアエンコーダ50A、50Cは、移動スケール44A、44Cの回折格子の配列方向、及び長手方向が共にY軸方向であり、ヘッドユニット46A、46Cの長手方向(ヘッドの配列方向)がX軸方向である。
【0145】
次に、本実施形態の露光装置100で行われるエンコーダ50A〜50Dの長期キャリブレーション動作(第1のキャリブレーション動作)、すなわちウエハステージWSTの移動スケールの格子ピッチの補正情報及び格子変形の補正情報の取得動作について、図20に基づいて説明する。
【0146】
この図20において、Y干渉計18Yからの測定ビームB41,B42は、投影光学系PLの光軸を通る、Y軸と平行な直線(ヘッドユニット46B及びヘッドユニット46Dの複数のヘッドの中心を結んだ直線に一致)に関して対称に配置され、Y干渉計18Yの実質的な測長軸は、投影光学系PLの光軸を通る、Y軸と平行な直線に一致する。このため、Y干渉計18Yによれば、アッベ誤差なくウエハステージWSTのY位置を計測することができる。同様に、X干渉計18X1からの測定ビームは、投影光学系PLの光軸を通る、X軸と平行な直線(ヘッドユニット46A及びヘッドユニット46Cの複数のヘッドの中心を結んだ直線に一致)上に配置され、X干渉計18X1の測長軸は、投影光学系PLの光軸を通る、X軸と平行な直線に一致する。このため、X干渉計18X1によれば、露光時などにアッベ誤差なくウエハステージWSTのX位置を計測することができる。
【0147】
ここで、一例として、Xスケールの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報と、Yスケールの格子ピッチの補正情報との取得動作について説明する。ここでは、説明を簡単にするために、移動鏡17Xの反射面は、理想的な平面であるものとする。
【0148】
まず、主制御装置20は、Y干渉計18Y、X干渉計18X1及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいてウエハステージWSTを駆動し、図20に示されるように、移動スケール44A、44Cがそれぞれ対応するヘッドユニット46A、46C(少なくとも1つのヘッド)の直下に配置され、かつ移動スケール(回折格子)44A、44Cの+Y側の一端がそれぞれ対応するヘッドユニット46A、46Cと一致する位置に、ウエハステージWSTを位置決めする。
【0149】
次に、主制御装置20は、Y干渉計18Yの計測値の短期変動が無視できる程度の低速で、且つX干渉計18X1の計測値を所定値に固定しつつ、Y干渉計18Y及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ピッチング量、ローリング量及びヨーイング量を全て零に維持しながら、図20中に矢印Fで示されるように、例えば移動スケール44A、44Cの他端(−Y側の一端)がそれぞれ対応するヘッドユニット46A、46Cと一致するまでウエハステージWSTを+Y方向に移動させる。この移動中に、主制御装置20は、Yリニアエンコーダ50A,50Cの計測値とY干渉計18Yの計測値(測定ビームB41,B42による計測値)とを、所定のサンプリング間隔で取り込み、その取り込んだ計測値に基づいてYリニアエンコーダ50A,50Cの計測値とY干渉計18Yの計測値との関係を求める。すなわち、主制御装置20は、ウエハステージWSTの移動に伴ってヘッドユニット46A及び46Cに順次対向して配置される移動スケール44A及び44Cの格子ピッチ(隣接する格子線の間隔)及び該格子ピッチの補正情報を求める。この格子ピッチの補正情報は、例えば、横軸が干渉計の計測値、縦軸がエンコーダの計測値とした場合の両者の関係を曲線で示す補正マップなどとして求めることができる。この場合のY干渉計18Yの計測値は、前述した極低速でウエハステージWSTをスキャンしたときに得られるものであるから、長期的な変動誤差は勿論、空気揺らぎなどに起因する短期的な変動誤差も殆ど含まれず、誤差が無視できる正確な値と考えて差し支えない。ここでは、移動スケール44A、44Cの両端が対応するヘッドユニット46A、46Cを横切る範囲に渡ってウエハステージWSTをY軸方向に駆動するものとしたが、これに限らず、例えばウエハの露光動作時にウエハステージWSTが移動されるY軸方向の範囲でウエハステージWSTを駆動しても良い。
【0150】
また、主制御装置20は、ウエハステージWSTの移動中に、その移動に伴って移動スケール44B,44Dに順次対向して配置されるヘッドユニット46B及び46Dの複数のヘッドから得られる計測値(Xリニアエンコーダ50B及び50Dの計測値)を統計的に処理、例えば平均する(又は重み付け平均する)ことで、その複数のヘッドに順次対向した格子線の変形(曲がり)の補正情報をも求めている。これは、移動鏡17Xの反射面が理想的な平面である場合には、ウエハステージWSTを+Y方向に送っていく過程で、繰り返し同じぶれパターンが出現する筈であるから、複数のヘッドで取得した計測データを平均化等すれば、その複数のヘッドに順次対向した移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報を正確に求めることができるからである。
【0151】
なお、移動鏡17Xの反射面が理想的な平面でない場合には、予めその反射面の凹凸(曲がり)を計測してその曲がりの補正データを求めておく。そして、上述のウエハステージWSTの+Y方向への移動の際に、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定する代わりに、その補正データに基づいて、ウエハステージWSTのX位置を制御することで、ウエハステージWSTを正確にY軸方向に移動させることとすれば良い。このようにすれば、上記と全く同様に、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報及び移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報を得ることができる。なお、ヘッドユニット46B及び46Dの複数のヘッドで取得した計測データは、移動鏡17Xの反射面の異なる部位基準での複数のデータであり、いずれのヘッドも同一の格子線の変形(曲がり)を計測しているのであるから、上記の平均化等によって、反射面の曲がり補正残差が平均化されて真の値に近づく(換言すれば、複数のヘッドで取得した計測データ(格子線の曲がり情報)を平均化することで、曲がり残差の影響を薄めることができる)という付随的な効果もある。
【0152】
なお、Xリニアエンコーダ50B,50Dは、移動スケール44B、44Dの回折格子の配列方向及び長手方向、並びにヘッドユニット46B、46Dの長手方向(ヘッドの配列方向)がいずれもYリニアエンコーダ50A、50CとX軸及びY軸方向が逆であるだけなので、Yスケールの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報、及び移動スケール50B,50Dの格子ピッチの補正情報の取得動作(第1のキャリブレーション動作)に際しては、上述の補正の場合と、X軸方向とY軸方向とを入れ替えた処理を行えば良いので詳細説明は省略する。
【0153】
このようにして、主制御装置20は、所定のタイミング毎、例えばロット毎などに、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報及び移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報、並びに移動スケール44B,44Dの格子ピッチの補正情報及び移動スケール44A,44Cの格子線の変形(曲がり)の補正情報を得る。
【0154】
そして、ロット内のウエハの露光処理中などには、主制御装置20は、ヘッドユニット46A,46Cから得られる計測値(すなわち、エンコーダ50A,50Cの計測値)を、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報及び格子線の変形(曲がり)の補正情報に基づいて補正しながら、ウエハステージWSTのY軸方向の位置制御を行う。これにより、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの経時的な変化及び格子線の曲がりの影響を受けることなく、リニアエンコーダ50A,50Cを用いて、ウエハステージWSTのY軸方向の位置制御を精度良く行なうことが可能となる。
【0155】
また、ロット内のウエハの露光処理中などには、主制御装置20は、ヘッドユニット46B,46Dから得られる計測値(すなわち、エンコーダ50B,50Dの計測値)を、移動スケール44B,44Dの格子ピッチの補正情報及び格子線の変形(曲がり)の補正情報に基づいて補正しながら、ウエハステージWSTのX軸方向の位置制御を行う。これにより、移動スケール44B,44Dの格子ピッチの経時的な変化及び格子線の曲がりの影響を受けることなく、リニアエンコーダ50B,50Dを用いて、ウエハステージWSTのX軸方向の位置制御を精度良く行なうことが可能となる。
【0156】
なお、上述の説明では、移動スケール44A〜44Dのいずれについても、格子ピッチ、及び格子線曲がりの補正情報の取得を行うものとしたが、これに限らず、移動スケール44A,44C及び移動スケール44B,44Dのいずれかについてのみ、格子ピッチ及び格子線曲がりの補正情報の取得を行っても良いし、移動スケール44A,44C及び移動スケール44B,44Dの両者について、格子ピッチ、格子線曲がりのいずれかについての補正情報のみを取得しても良い。
【0157】
なお、詳細説明は省略するが、露光動作時のウエハステージWSTの位置制御に用いられるエンコーダ50A〜50Dの短期キャリブレーション動作(第2,第3のキャリレーション動作)についても、上記長期キャリブレーション動作(第1のキャリブレーション動作)に準じて行われる。
【0158】
そして、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作の際に、前述の如く主制御装置20によってエンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値及びその補正マップに基づいてレチクルステージRSTの位置制御が行われるとともに、エンコーダ50A〜50Dの計測値及びその補正マップに基づいてウエハステージWSTの位置制御が行われる。
【0159】
また、本実施形態の露光装置100では、レチクルステージRST上にレチクルR1とレチクルR2とを同時に載置可能である。このため、主制御装置20は、レチクルR1とレチクルR2とについて、レチクルアライメントを行っておくことで、レチクルステージRSTに対するレチクル交換の動作を行うことなく、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値に基づいてレチクルステージRSTを移動させるだけで、レチクルR1とレチクルR2とを用いて、例えば二重露光を行うことができる。
【0160】
なお、本実施形態で用いられる各エンコーダとしては、上述した回折干渉方式に限らず、いわゆるピックアップ方式など種々の方式のものを用いることができ、例えば米国特許第6,639,686号明細書などに開示されるいわゆるスキャンエンコーダなどを用いることができる。
【0161】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、主制御装置20により、例えばエンコーダ26A1,26B1,26C1などの較正動作が実行される。すなわち、エンコーダ26A1,26B1,26C1などに比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計16y,16xの計測値を用いて、当該干渉計16y,16xに比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ26A1,26B1,26C1などの計測値を補正する補正情報が取得される。そして、主制御装置20は走査露光時などに、エンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値と前記補正情報とに基づいてレチクルステージRSTを駆動する。
【0162】
従って、補正情報を用いて補正されたエンコーダ26A1,26B1,26C1の計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なレチクルステージRSTの位置情報に基づいて、レチクルステージRSTを精度良く駆動することができる。
【0163】
また、本実施形態の露光装置100によると、前述した長期キャリブレーションにより、エンコーダ26A1,26B1に比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計16yの計測値を用いて、その干渉計16yに比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ26A1,26B1の計測値を補正する補正情報が取得される。そして、主制御装置20はパターン転写時などに、エンコーダ26A1,26B1の計測値と前記補正情報とに基づいてレチクルステージRSTの移動を制御する。従って、補正情報を用いて補正されたエンコーダ26A1,26B1の計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なレチクルステージRSTの走査方向の位置情報に基づいて、レチクルステージRSTの走査方向の移動を精度良く制御することが可能になる。
【0164】
また、本実施形態の露光装置100によると、前述したいずれかの短期キャリブレーションにより、エンコーダ26A1,26B1に比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計16yと、その干渉計16yに比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ26A1,26B1の計測値との関係を示すマップ情報の低次成分(スケーリング誤差、又はスケーリング誤差及びスケーリングオフセット)を補正するための補正情報が取得される。そして、主制御装置20はパターン転写時などに、エンコーダ26A1,26B1の計測値と、上記補正情報を用いて低次成分が補正されたマップ情報とに基づいてレチクルステージRSTの移動を制御する。
【0165】
また、露光装置100によると、主制御装置20により、例えばエンコーダ50A〜50Dの較正動作が、上述のエンコーダ26A1,26B1の較正動作と同様にして実行される。すなわち、干渉計18Y、18X1に比べて計測値の短期安定性が優れるエンコーダ50A〜50Dの計測値を、エンコーダ50A〜50Dに比べて計測値のリニアリティ及び長期安定性が優れる干渉計18Y、18X1の計測値を用いて補正する補正情報が取得される。そして、主制御装置20は走査露光時、及びショット領域間のステップ移動時などに、エンコーダ50A〜50Dの計測値と前記補正情報とに基づいてウエハステージWSTを駆動する。
【0166】
従って、補正情報を用いて補正されたエンコーダ50A〜50Dの計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なウエハステージWSTのX軸及びY軸方向に関する位置情報に基づいて、ウエハステージWSTをX軸及びY軸方向のいずれであっても精度良く駆動することができる。
【0167】
従って、本実施形態の露光装置100では、ウエハ上の各ショット領域に対する走査露光の際に、主制御装置20は、エンコーダ26A1,26B1、26C1、及びエンコーダ50A〜50D)の計測値に基づいて、レチクルR1又はR2(レチクルステージRST)とウエハW(ウエハステージWST)を走査方向(Y軸方向)に沿って精度良く駆動することが可能であるとともに、非走査方向(X軸方向)に関するレチクルR1又はR2(レチクルステージRST)とウエハW(ウエハステージWST)との高精度な位置決め(アライメント)も可能となる。これにより、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルR1(又はR2)のパターンを精度良く形成することが可能になる。
【0168】
なお、本実施形態の露光装置100において、主制御装置20は露光動作とは別にレチクルステージRSTを移動して得られるエンコーダ及び干渉計の計測値に基づいて、エンコーダの計測値の補正情報を更新するものとしたが、例えば露光動作時におけるレチクルステージRSTの移動中に得られるエンコーダ及び干渉計の計測値を用いて補正情報を更新してもよい。すなわち、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルR1(又はR2)のパターンを順次転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行う際に、例えば各ショット領域の走査露光中、レチクルステージRSTの位置を、エンコーダの計測値及びその補正情報に基づいて制御し、その制御(ウエハの露光動作)と並行して、干渉計及びエンコーダの計測値を蓄積し、この蓄積した計測値に基づいて、次のウエハの露光に先立って補正情報(例えば、図21に示される、干渉計の計測値とエンコーダの計測値との関係を示すマップ情報)を較正する、エンコーダの計測誤差の逐次キャリブレーションを実行することとしても良い。
【0169】
図21において、符号C2は、蓄積されたデータの平均値を示し、この平均値のデータは、干渉計の計測値の短期変動(空気揺らぎなどに起因する計測値の変動)が平均化されている。この場合、走査露光中のデータを全てのショット領域について蓄積する必要はなく、干渉計の計測値の短期変動を平均化するに足る数のショット領域について走査露光中のデータを蓄積するだけでも良い。図21において、符号EAは、図19と同様の露光区間を示す。
【0170】
この場合においても、次のウエハに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光に際して、各ショット領域の走査露光時(パターン転写時)のレチクルステージRSTの移動を、補正情報(例えば図21のマップ情報)を用いて補正されたエンコーダの計測値、すなわち短期安定性は勿論、リニアリティ及び長期安定性も良好なレチクルステージの位置情報に基づいて、精度良く制御することが可能になる。これにより、レチクルR1(又はR2)に形成されたパターンを走査露光によりそのウエハ上の複数のショット領域に精度良く転写することが可能になる。なお、このキャリブレーションはYリニアエンコーダだけでなくXリニアエンコーダに対して行っても良いし、さらにはウエハステージのエンコーダシステム(エンコーダ50A〜50D)に対して行っても良い。
【0171】
なお、上記実施形態の露光装置100では、移動スケールの格子ピッチの補正情報及び格子線の曲がりの補正情報を次に説明する変形例に係る方法によって取得しても良い。
【0172】
ここでは、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報の取得動作及び移動スケール44B,44Dの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報の取得動作について説明する。また、説明を簡単にするために、移動鏡17Xの反射面は、理想的な平面であるものとする。
【0173】
まず、主制御装置20は、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定しつつ、Y干渉計18Y及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ピッチング量、ローリング量及びヨーイング量を全て零に維持しながら、例えば前述したストローク範囲で図22中に矢印Fで示される+Y方向にウエハステージWSTを移動させる。この移動中に、主制御装置20は、エンコーダ50A、50Cの計測値、及びY干渉計18Yの計測値(測定ビームB41,B42による計測値)を、所定のサンプリング間隔で内部メモリに取り込む。この場合、エンコーダ50Cの計測値は、移動スケール44Cと対向する、投影光学系PLの光軸を通るY軸に平行な直線LVから+X方向に距離aの位置にある図22中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Cのヘッド48kから得られる。また、エンコーダ50Aの計測値は、移動スケール44Aと対向する、直線LVから−X方向に距離bの位置にある図22中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Aのヘッド48eから得られる。
【0174】
次に、主制御装置20は、X干渉計18X1の計測値に基づいてウエハステージWSTを+X方向に所定距離移動させた後、Y干渉計18Yの計測値に基づいて図22中に矢印F’で示される−Y方向に所定距離移動させた位置で停止させる。
【0175】
そして、主制御装置20は、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定しつつ、Y干渉計18Y及びZ干渉計18Z1,18Z2の計測値に基づいて、ピッチング量及びローリング量を零、かつヨーイング量を極力零に維持しながら、例えば前述のストローク範囲で図23中に矢印Fで示される+Y方向にウエハステージWSTを移動させる。この移動中に、主制御装置20は、エンコーダ50A、50Cの計測値、及びY干渉計18Yの計測値(測定ビームB41,B42による計測値)を、所定のサンプリング間隔で内部メモリに取り込む。この場合、エンコーダ50Cの計測値は、移動スケール44Cと対向する、直線LVから+X方向に距離bの位置にある図23中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Cのヘッド48eから得られる。また、エンコーダ50Aの計測値は、移動スケール44Aと対向する、直線LVから−X方向に距離aの位置にある図23中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Aのヘッド48kから得られる。
【0176】
しかるに、各ヘッドのXY座標系上の位置は既知であるから、上述の2回の動作で得られたサンプリング値を用いて連立方程式を立て、この連立方程式を解くことで、移動スケール44C、44Aの格子ピッチの補正情報(例えば補正マップ)を、それぞれ独立に求めることができる。
【0177】
なお、移動鏡17Xの反射面が理想的な平面でない場合には、予めその反射面の凹凸(曲がり)を計測してその曲がりの補正データを求めておく。そして、上述の図22、図23に示されるウエハステージWSTの+Y方向への移動の際に、X干渉計18X1の計測値を所定値に固定する代わりに、その補正データに基づいてウエハステージWSTのX位置を制御することで、ウエハステージWSTを正確にY軸方向に移動させることとすれば良い。
【0178】
上述のようにして、移動スケール44A,44Cの格子ピッチの補正情報(例えば補正マップ)をそれぞれ求めた後に、主制御装置20は、例えば図24に示されるように、ウエハステージWSTを、上述の図22等の場合と同様の手順で、+Y方向に移動させる。この場合、移動スケール44A、44Cの格子ピッチの補正情報の取得の際とは異なり、移動スケール44B及び44Dにそれぞれ対向している、図24中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Bのヘッド48g及びヘッドユニット46Dのヘッド48iはX干渉計18X1の測長軸上から外れている。このため、空気揺らぎに起因して干渉計によって計測されるウエハステージWSTの見かけ上のヨーイング量の影響が誤差(以下、ヨーイング起因誤差と略述する)として、エンコーダ50B及び50D(ヘッドユニット46Bのヘッド48g及びヘッドユニット46Dのヘッド48i)の計測値に含まれてしまう。しかるに、この場合、エンコーダ50A,50C(移動スケール44A,44Cとそれぞれ対向する、図24中に丸で囲んで示されるヘッドユニット46Aのヘッド48h及びヘッドユニット46Cのヘッド48h)を用いて、上述の空気揺らぎに起因して干渉計によって計測されるウエハステージWSTの見かけ上のヨーイング量を計測できる。すなわち、主制御装置20は、先に求められている移動スケール44C、44Aの格子ピッチの補正情報を用いてエンコーダ50A,50Cの計測値を補正しつつ、その補正された計測値に基づいて上述したウエハステージWSTの見かけ上のヨーイング量を求めることができる。そして、主制御装置20は、その求めた見かけ上のヨーイング量を用いて、上述のヨーイング起因誤差を補正することができる。
【0179】
主制御装置20は、ウエハステージWSTの+Y方向への移動中に、上述のようにしてヨーイング起因誤差を補正しながら、移動スケール44B,44Dに順次対向して配置されるヘッドユニット46B及び46Dの複数のヘッドから得られる計測値を所定のサンプリング間隔で内部メモリに取り込む。そして、主制御装置20は、前述と同様の理由で、内部メモリに取り込んだ計測値を統計的に処理、例えば平均する(又は重み付け平均する)ことで、移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報をも求める。
【0180】
また、いわゆる正逆差を考慮して、ウエハステージWSTを図22、図23及び図24中に矢印F’で示される−Y方向に駆動して、移動スケール44A、44Cの格子ピッチの補正情報(例えば補正マップ)、及び/又は移動スケール44B,44Dの格子線の変形(曲がり)の補正情報を求める場合にも、上述と同様の処理を行えば良い。
【0181】
一方、移動スケール44A,44Cの格子線の変形(曲がり)の補正情報と、移動スケール44B,44Dの格子ピッチの補正情報との取得に際しては、主制御装置20は、上述の場合と、X軸方向とY軸方向とを入れ替えた処理を行うが、かかる詳細説明については省略する。
【0182】
なお、各スケール(回折格子)には幅があるので、その幅方向に関して、例えば左右中央の3つのラインに沿って、上述の格子ピッチの補正情報を取得し、格子曲がりについては代表的な格子線を取り上げて曲がり計測をすれば足りる。このようにすることが、精度及び作業性の点からは好ましい。
【0183】
以上説明した変形例に係る方法によると、スケールの格子ピッチの補正情報の取得及び/又はスケールの格子線の変形(格子線の曲がり)の補正情報の取得に際して、ウエハステージWSTを必ずしも極低速で移動させる必要がないので、それらの補正情報の取得動作を短時間で行うことが可能になる。
【0184】
次に、図25、図26を参照してウエハステージ用のエンコーダシステムの変形例について説明する。なお、図25、図26は図3との差異がエンコーダシステムの構成のみであるので、以下では図3と同一若しくは同等の作用、機能の構成部分には同一の符号を付すとともにその説明を省略する。
【0185】
図25に示されるように、ウエハステージWSTの上面には、互いに長手方向が直交し、かつそれぞれY軸及びX軸方向を長手方向とする2つの移動スケール52A、52BがL字状に固定されている。2つの移動スケール52A、52Bは、その表面に長手方向と直交する方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されている。
【0186】
また、ヘッドユニット46Aと、一対のヘッドユニット46B1、46B2とはそれぞれ対応する移動スケール52A、52Bと交差して配置され、不図示の支持部材を介して鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。ヘッドユニット46Aは、移動スケール52Aの長手方向(Y軸方向)と直交するX軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)として、投影光学系PLの光軸AXを通るX軸に平行な軸(中心軸)上に配置されるとともに、移動スケール52Aと共にウエハステージWSTのX軸方向の位置情報を計測するXリニアエンコーダ56Aを構成する。一対のヘッドユニット46B1、46B2はそれぞれ移動スケール52Bの長手方向(X軸方向)と直交するY軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)とし、投影光学系PLの光軸AXを通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称に配置されるとともに、移動スケール52Bと共にウエハステージWSTのY軸方向の2つの位置情報を計測するYリニアエンコーダ56Bを構成する。
【0187】
さらに、2つのリニアエンコーダ56A、56Bの計測値は主制御装置20に供給され、主制御装置20はX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報とに基づき、ウエハステージ駆動系27を介してウエハステージWSTの位置制御を行う。これにより、上記実施形態と全く同様に、高精度なウエハステージWSTの2次元駆動が可能となる。
【0188】
図26は、ウエハステージ用のエンコーダシステムの別の変形例を示す図であり、図25との差異は前述した一組のリニアエンコーダ56A、56Bとは別に、もう一組のリニアエンコーダ56C、56Dを設けた点のみである。図26に示されるように、ウエハステージWSTの上面には、互いに長手方向が直交し、かつそれぞれY軸及びX軸方向を長手方向とする2つの移動スケール52C、52DがL字状に固定されている。2つの移動スケール52C、52Dは、その表面に長手方向と直交する方向を周期方向とする反射型の回折格子が形成されるとともに、ウエハステージWSTの中心に関して移動スケール52A、52Bと対称に配置されている。
【0189】
また、ヘッドユニット46Cと、一対のヘッドユニット46D1、46D2とはそれぞれ対応する移動スケール52C、52Dと交差して配置され、不図示の支持部材を介して鏡筒定盤38に吊り下げ状態で固定されている。ヘッドユニット46Cは、移動スケール52Cの長手方向(Y軸方向)と直交するX軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)として、投影光学系PLの光軸AXに関して前述のヘッドユニット46Aと対称に配置される(すなわち、前述した光軸AXを通るX軸に平行な軸(中心軸)上に配置される)とともに、移動スケール52Cと共にウエハステージWSTのX軸方向の位置情報を計測するXリニアエンコーダ56Cを構成する。一対のヘッドユニット46D1、46D2はそれぞれ移動スケール52Dの長手方向(X軸方向)と直交するY軸方向(回折格子の周期方向)を長手方向(ヘッドの配列方向)とし、投影光学系PLの光軸AXに関して前述のヘッドユニット46B1、46B2と対称に配置される(すなわち、前述した光軸AXを通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称に配置される)とともに、移動スケール52Dと共にウエハステージWSTのY軸方向の2つの位置情報を計測するYリニアエンコーダ56Dを構成する。
【0190】
さらに、4つのリニアエンコーダ56A〜56Dの計測値は主制御装置20に供給され、主制御装置20はX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報とに基づき、ウエハステージ駆動系27を介してウエハステージWSTの位置制御を行う。これにより、上記実施形態と全く同様に、高精度なウエハステージWSTの2次元駆動が可能となる。なお、図26のエンコーダシステムは4つのリニアエンコーダ56A〜56Dを有しているので、図25のエンコーダシステムに比べてヘッドユニットを投影光学系PLに近接して配置しなくても、ウエハの露光動作時におけるウエハステージWSTの位置によらず、常に4つのリニアエンコーダ56A〜56Dの少なくとも3つからそれぞれウエハステージWSTの位置情報(X軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報)を得ることができる。また、図26のエンコーダシステムはYリニアエンコーダ56B、56Dがそれぞれ2つのヘッドユニットを有するものとしたが、これに限らず、例えば1つのヘッドユニットのみを有するものとしても良い。
【0191】
ここで、前述のウエハX干渉計18X1は投影光学系PLの光軸AXを通るX軸に平行な軸(中心軸)に一致する測長軸(図中の実線に対応)を含む少なくとも1つの測長軸を有している。そして、図25及び図26に示されるエンコーダシステムにおいて、Xリニアエンコーダ56A(及び56C)はヘッドユニット46A(及び46C)の計測軸(ヘッドの配列方向)がその中心軸(ウエハX干渉計18X1のX計測における測長軸)と一致して配置される。また、前述のウエハY干渉計18Yは投影光学系PLの光軸AX及びアライメント系ALGの検出中心を通るY軸に平行な軸(中心軸)に関して対称な2つの測長軸(図25,26中の実線で示されるビームB41,B42に対応)を含む複数の測長軸を有している。そして、Yリニアエンコーダ56B(及び56D)はヘッドユニット46B1、46B2(及び46D1、46D2)の計測軸(ヘッドの配列方向)がそれぞれその2つの測長軸と一致して配置される。これにより、前述した計測軸と測長軸とが一致するリニアエンコーダとウエハ干渉計とでその計測値に差が生じにくくなり、前述したキャリブレーション動作を精度良く実施することが可能となる。なお、本変形例ではリニアエンコーダの計測軸とウエハ干渉計の測長軸とを一致させるものとしたが、これに限らず、XY平面内で両軸をずらして配置しても構わない。また、これは上記実施形態(図3)でも同様である。
【0192】
なお、図25、図26に示されるエンコーダシステムにおいて、2つ又は4つの移動スケール(52A〜52D)は、同一素材(例えばセラミックス、又は低熱膨張のガラスなど)から成り、それぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の幅に相当)が、少なくともウエハWの露光動作時におけるウエハステージWSTの移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(換言すれば、全てのショット領域の走査露光時に各ヘッドユニット(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、ウエハWの大きさ(直径)より長く設定される。また、図25、図26に示されるエンコーダシステムにおいて、3つ又は6つのヘッドユニット(46A〜46D2)はそれぞれ、例えば単一のヘッド、あるいはほぼ切れ目なく配列される複数のヘッドを有するものでも良いが、図25、図26に示されるエンコーダシステムではいずれもその長手方向に沿って所定間隔で配置された複数個のヘッドを有するものとしている。さらに各ヘッドユニットは、隣接する2つのヘッドが対応する移動スケール(回折格子)から外れない間隔、すなわち移動スケールの長手方向と直交する方向(回折格子の配列方向)に関する回折格子の形成範囲と同程度以下の間隔で複数のヘッドが配置される。また、3つ又は6つのヘッドユニット(46A〜46D2)はそれぞれ長手方向に関して、その長さ(回折格子の検出範囲に相当)が、少なくともウエハWの露光動作時におけるウエハステージWSTの移動ストローク(移動範囲)の全域をカバーする(換言すれば、全てのショット領域の走査露光時に各ヘッドユニット(計測ビーム)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわち計測不能とならない)ように、その移動ストロークと同程度以上に設定される。
【0193】
また、図25、図26に示されるエンコーダシステムを備える露光装置でも、上記実施形態の露光装置100(図3に示されるエンコーダシステムを含む)と全く同様に、各エンコーダの計測値の補正情報を決定するキャリブレーション動作(前述した第1〜第3のキャリブレーション動作)が行われる。この場合、各エンコーダでは一例として、その長手方向に関して移動スケールの位置をその一端が対応するヘッドユニットと一致するように設定してから、回折格子の配列方向(長手方向と直交する方向)に関して移動スケールをその幅と同程度の距離以上、移動する。さらに、移動スケールをその長手方向に、ヘッドユニットの1つのヘッドにおける計測ビームの大きさと同程度の距離だけ移動してから、同様に、回折格子の配列方向に関して移動スケールをその幅と同程度の距離以上移動する。以下、移動スケールの他端がヘッドユニットと一致するまで上記動作を繰り返し実行する。そして、この駆動によって得られるエンコーダ、及び該エンコーダと計測方向が同じであるウエハ干渉計の計測値に基づき、そのエンコーダの補正情報を決定すれば良い。ここでは、その長手方向に関して移動スケールの両端が対応するヘッドユニットと一致する範囲に渡ってウエハステージWSTを駆動するものとしたが、これに限らず、例えばウエハの露光動作時にウエハステージWSTが移動されるその長手方向の範囲でウエハステージWSTを駆動しても良い。
【0194】
ところで、上記実施形態及び変形例では、ウエハの露光動作時に前述のエンコーダシステム(図2、図3、図25、図26)のみを用いてレチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御を行うものとした。しかし、前述した(特に短期的な)キャリブレーション動作を実行しても、何らかの原因(例えば、移動スケールへの異物の付着、移動スケールの位置ずれ、ヘッドユニットの倒れ又はそのテレセンの崩れ、許容範囲を超える移動スケールのZ方向(表面と直交する方向)への変位など)によって、位置計測が不能となる、あるいは計測精度が許容範囲を超えるなどという問題が生じ、露光動作中に上記位置制御に必要なX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報の少なくとも一部が得られなくなることがある。なお、図3、図26に示されるエンコーダシステムは4つのエンコーダを有するので、1つのエンコーダに上記問題が生じても上記位置制御を行えなくなることはないが、図2、図25に示されるエンコーダシステムでは、1つのエンコーダに上記問題が生じると、上記位置制御を行うことができなくなる。
【0195】
そこで、前述のエンコーダシステムによって計測される位置情報を用いる第1駆動モードと、前述の干渉計システムによって計測される位置情報を用いる第2駆動モードとを用意するとともに、通常は第1駆動モードが露光動作時に使用されるように設定しておく。そして、例えば露光動作中などに位置制御に必要なX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報の少なくとも一部が得られなくなったときは、第1駆動モードを第2駆動モードに切り換えてレチクルステージ又はウエハステージの位置制御を行うようにすることが好ましい。さらに、前述のエンコーダシステムによって計測される位置情報の少なくとも一部と、前述の干渉計システムによって計測される位置情報の少なくとも一部とを併用する第3駆動モードも用意しておき、第1駆動モードの代わりに第2及び第3駆動モードの一方を用いて、レチクルステージ又はウエハステージの位置制御を行うことを可能としても良い。なお、第1駆動モードの第2駆動モード(又は第3駆動モード)への切り換えは露光動作時のみに限られるものでなく、他の動作(例えばアライメントなどの計測動作など)でも同様にその切り換えを行っても良い。また、他の動作では予め第1駆動モードを設定しておく必要はなく、第1駆動モードの代わりに他の駆動モード(例えば、第2及び第3駆動モードの一方など)を設定しても良い。この場合、他の駆動モードによるステージの位置制御時に、例えばエラーなどが生じたら、別の駆動モード(例えば、第2及び第3駆動モードの他方、又は第1駆動モードなど)に切り換えるようにしても良い。さらに、露光動作以外では任意の駆動モードを選択可能としても良い。
【0196】
なお、上記実施形態及び変形例では、位置計測系の切り換え動作時、干渉計18X1、18Yの計測値の空気揺らぎ(空気の温度揺らぎ)による短期的変動の影響が平均化効果により無視できるレベルになるまでの所定時間ウエハステージWSTを停止させた後、干渉計18X1、18Yの計測値をエンコーダ50A〜50Dに引き継ぐ場合について説明したが、これに限らず、例えば前述の第2のキャリブレーション動作と同様の動作を行い、得られた低次成分に基づいて干渉計18X1、18Yからエンコーダ50A〜50Dへの計測値の引き継ぎを行っても良い。また、前述した位置計測系の切り換え動作は必ずしも行わなくても良い。すなわち、アライメント系ALGとウエハ干渉計システム(18X2、18Y)とによってウエハW上のアライメントマーク、及びウエハステージWST上の基準マークの位置情報を計測するとともに、レチクルアライメント系とエンコーダシステムとによってウエハステージWST上の基準マークの位置情報を計測し、これら位置情報に基づき、エンコーダシステムによるウエハステージの位置制御を行うようにしても良い。
【0197】
また、上記実施形態及び変形例では、位置計測系の切り換え動作として、干渉計からエンコーダに切り換える場合について説明したが、本発明がこれに限られるものではない。例えば、アライメント系ALGを、投影ユニットPUから十分に離れた位置に設置する場合などには、そのアライメント系ALGを用いたアライメント動作が行われる領域にも、前述のヘッドユニット46A〜46Dと同様のヘッドユニットを、アライメント系ALGを中心として十字状に配置しておく。そして、移動スケール44A〜44Dに原点をそれぞれ持たせておき、EGAなどのウエハアライメントの際には、これらの移動スケール44A〜44Dの組み合わせによって規定される座標系の原点(すなわち、移動スケール44A〜44Dの原点によって規定される点)を基準とするウエハW上の各アライメントマークの位置情報を、ヘッドユニットと移動スケール44A〜44Dとを用いて検出し、その検出結果に基づいて所定の演算を行って、上記の原点に対する各ショット領域の相対位置情報を求めておくこととしても良い。この場合、露光の際には、エンコーダ50A〜50Dを用いてその原点を検出することで、上記の原点に対する各ショット領域の相対位置情報を用いて、各ショット領域を露光のための加速開始位置に移動させることができる。この場合、ヘッドと、投影ユニットPU、アライメント系ALGとの間の位置ドリフトも誤差要因となるので、これもまたキャリブレーションすることが望ましい。
【0198】
なお、上記実施形態及び変形例では、ウエハの露光動作中に前述のエンコーダシステム(図2、図3、図25、図26)を用いてレチクルステージRST及びウエハステージWSTの位置制御を行うものとしたが、エンコーダシステムを用いるステージの位置制御は露光動作時のみに限られるものでなく、露光動作以外、例えばレチクルアライメント系によるレチクルのアライメントマーク又はレチクルステージRSTの基準マークの検出動作、あるいはレチクルの交換動作などにおいても、図2に示したエンコーダシステムを用いてレチクルステージRSTの位置制御を行っても良い。同様に、例えばアライメント系ALGによるウエハWのアライメントマークなどの検出動作、あるいはウエハの交換動作などにおいても、図3、図25、図26に示したエンコーダシステムを用いてウエハステージWSTの位置制御を行っても良い。この場合、当然ながら前述した位置計測系の切り換え動作が不要となる。
【0199】
ここで、アライメント系ALGによるウエハW上のアライメントマーク又はウエハステージWSTの基準マークの検出時、あるいはレチクルアライメント系によるウエハステージWSTの基準マークの検出時などでも、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)を用いる場合、この検出動作時におけるウエハステージWSTの移動範囲をも考慮することが好ましい。特にアライメント系ALGの計測位置にウエハステージを移動して行われるマークの検出動作中にも、各ヘッドユニット(46A〜46D、46A〜46D2)が対応する移動スケール(回折格子)から外れない、すなわちエンコーダシステムによる位置計測が不能となってウエハステージの位置制御が切れることがないように、各ヘッドユニットの長手方向の長さ(又は配置など)を設定する、あるいはそれらヘッドユニットとは別のヘッドユニットを設けることが好ましい。
【0200】
また、ウエハの交換位置(ロード位置とアンロード位置との少なくとも一方を含む)において、あるいはその交換位置と、投影光学系PLを介してレチクルパターンの転写が行われる露光位置、又はアライメント系ALGによるマーク検出が行われる計測位置との一方から他方へのウエハステージWSTの移動中に、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)を用いる場合、同様に、ウエハ交換位置及びその交換動作時におけるウエハステージの移動範囲をも考慮し、エンコーダシステムによる位置計測が不能となってウエハステージの位置制御が切れることがないように、各ヘッドユニットの配置、長さなどを設定する、あるいはそれらヘッドユニットとは別のヘッドユニットを設けることが好ましい。
【0201】
さらに、例えば特開平10−214783号公報及び対応する米国特許第6,341,007号明細書、並びに国際公開第98/40791号及び対応する米国特許第6,262,796号明細書などに開示されているように、2つのウエハステージを用いて露光動作と計測動作(例えば、アライメント系によるマーク検出など)とをほぼ並行して実行可能なツインウエハステージ方式の露光装置でも、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)を用いて各ウエハステージの位置制御を行うことが可能である。ここで、露光動作時だけでなく計測動作時でも、各ヘッドユニットの配置、長さなどを適切に設定することで、前述のエンコーダシステム(図3、図25、図26)をそのまま用いて各ウエハステージの位置制御を行うことが可能であるが、前述したヘッドユニット(46A〜46D、54A〜54D2)とは別に、その計測動作中に使用可能なヘッドユニットを設けても良い。例えば、アライメント系ALGを中心として十字状に配置される4つのヘッドユニットを設け、上記計測動作時にはこれらヘッドユニットと対応の移動スケール(46A〜46D、52A〜52D)とによって各ウエハステージWSTの位置情報を計測するようにしても良い。ツインウエハステージ方式の露光装置では、2つのウエハステージにそれぞれ2つ又は4つの移動スケール(図3、図25、図26)が設けられるとともに、一方のウエハステージに載置されたウエハの露光動作が終了すると、その一方のウエハステージとの交換で、計測位置にてマーク検出などが行われた次のウエハを載置する他方のウエハステージが露光位置に配置される。また、露光動作と並行して行われる計測動作は、アライメント系によるウエハなどのマークの検出に限られるものでなく、その代わりに、あるいはそれと組み合わせて、例えばウエハの面情報(段差情報など)の検出などを行っても良い。
【0202】
なお、上記の説明において、計測位置又は交換位置において、あるいは露光位置、計測位置、及び交換位置の1つから他の位置へのウエハステージの移動中に、エンコーダシステムを用いるウエハステージの位置制御が切れるときは、そのエンコーダシステムとは別の計測装置(例えば、干渉計、エンコーダなど)を用いて、上記各位置あるいは移動中にウエハステージの位置制御を行うことが好ましい。
【0203】
また、上記実施形態及び変形例では、例えば国際公開第2005/074014号、国際公開第99/23692号、米国特許第6,897,963号明細書などに開示されているように、ウエハステージとは別に、計測部材(基準マーク、センサなど)を有する計測ステージを設け、ウエハの交換動作時などにウエハステージとの交換で計測ステージを投影光学系PLの直下に配置し、露光装置の特性(例えば、投影光学系の結像特性(波面収差など)、照明光ILの偏光特性など)を計測するものとしても良い。この場合、計測ステージにも移動スケールを配置し、前述のエンコーダシステムを用いて計測ステージの位置制御を行うようにしても良い。また、ウエハステージに載置したウエハの露光動作中、計測ステージはウエハステージと干渉しない所定位置に退避しており、この退避位置と露光位置との間で移動されることになる。このため、その退避位置においても、あるいはその退避位置と露光位置との一方から他方への移動中にも、ウエハステージと同様に、計測ステージの移動範囲をも考慮し、エンコーダシステムによる位置計測が不能となって計測ステージの位置制御が切れることがないように各ヘッドユニットの配置、長さなどを設定する、あるいはそれらヘッドユニットとは別のヘッドユニットを設けることが好ましい。又は、その退避位置で、又はその移動中にエンコーダシステムによる計測ステージの位置制御が切れるときは、エンコーダシステムとは別の計測装置(例えば干渉計、エンコーダなど)を用いて計測ステージの位置制御を行うことが好ましい。
【0204】
また、上記実施形態及び変形例では、例えば投影ユニットPUの大きさなどによっては、同一方向に延設される一対のヘッドユニットの間隔を広げなければならず、ウエハW上の特定のショット領域、例えば最外周に位置するショット領域の走査露光時に、その一対のヘッドユニットの一方が対応する移動スケールから外れることがある。一例として、図3中で投影ユニットPUが少し大きくなると、一対のヘッドユニット46B、46Dのうちヘッドユニット46Bが対応する移動スケール44Bから外れ得る。さらに、例えば国際公開第99/49504号、国際公開第2004/053955号(対応米国特許出願公開第2005/0252506号明細書)、米国特許第6,952,253号明細書、欧州特許出願公開第1420298号明細書、国際公開第2004/055803号、国際公開第2004/057590号、米国特許出願公開第2006/0231206号明細書、米国特許出願公開第2005/0280791号明細書などに開示される、投影光学系PLとウエハとの間に液体(例えば純水など)が満たされる液浸型露光装置では、液体を供給するノズル部材などが投影ユニットPUを囲むように設けられるので、投影光学系PLの前述の露光領域に対してヘッドユニットを近づけて配置することが一層困難となる。そこで、図3、図26に示したエンコーダシステムでは、常にX軸及びY軸方向に関してそれぞれ2つずつ位置情報が計測可能である必要はなく、X軸及びY軸方向の一方では2つの位置情報、及び他方では1つの位置情報が計測可能となるように、エンコーダシステム(特にヘッドユニット)を構成すれば良い。すなわち、エンコーダシステムによるウエハステージ(又は計測ステージ)の位置制御では、必ずしもX軸及びY軸方向に関してそれぞれ2つずつ、計4つの位置情報を用いなくても良い。また、液浸型露光装置では、例えば、図27に示されるように、ウエハステージWST上(又はウエハテーブルWTB)上面の撥液板WRPをガラスにし、そのガラスにスケールパターンを直接設けても良い。あるいは、ウエハテーブルをガラスで作っても良い。なお、上記実施形態及び変形例の移動スケール(図3、図25、図26)を有するウエハステージ(又は計測ステージ)を備える液浸型露光装置では、その移動スケールの表面に撥液膜を形成しておくことが好ましい。
【0205】
なお、ウエハステージWSTの小型化及び軽量化などを考慮すると、ウエハステージWST上でウエハWになるべく近づけて移動スケールを配置することが好ましいが、ウエハステージを大きくすることが許容されるときは、ウエハステージを大きくし、対向して配置される一対の移動スケールの間隔を広げることで、少なくともウエハの露光動作中は常にX軸及びY軸方向に関してそれぞれ2つずつ、計4つの位置情報を計測可能としても良い。また、ウエハステージを大きくする代わりに、例えば移動スケールをその一部がウエハステージからはみ出るように設ける、あるいは少なくとも1つの移動スケールが設けられる補助プレートを用いてウエハステージ本体よりも外側に移動スケールを配置することで、対向して配置される一対の移動スケールの間隔を広げるようにしても良い。
【0206】
また、エンコーダシステムによるステージの位置制御を行うのに先立ち、例えばヘッドユニットの倒れ(Z軸方向に対する傾き)、XY平面内でのヘッドの配列(位置又は間隔など)、あるいはヘッドのテレセン傾きなどを計測しておき、この計測結果を上記位置制御で用いることが好ましい。さらに、例えば移動スケールのZ軸方向(表面と垂直な方向)への変位量又は傾斜量などを計測し、この計測結果を上記位置制御で用いることが好ましい。
【0207】
上記実施形態及び変形例で説明したエンコーダの第1〜第3のキャリブレーション動作、及び上記の逐次キャリブレーション動作は、単独で、あるいは適宜組み合わせて実行しても良い。また、前述のキャリブレーション動作におけるエンコーダシステム及び干渉計システムによる位置計測時にステージを低速移動するものとしたが、これに限らず、前述の如く走査露光時と同等の速度でステージを移動しても良い。
【0208】
また、上記実施形態及び変形例ではエンコーダシステムを用いてレチクルステージ及びウエハステージの位置制御を行うものとしたが、これに限らず、例えばレチクルステージ及びウエハステージの一方ではエンコーダシステムを用いる位置制御を行い、他方のステージでは干渉計システムを用いる位置制御を行うようにしても良い。さらに、上記実施形態及び変形例では、レチクルステージの上方にエンコーダのヘッドユニットを配置するものとしたが、レチクルステージの下方にエンコーダのヘッドユニットを配置してもよい。この場合、移動スケールもレチクルステージの下面側に設けられる。
【0209】
さらに、上記実施形態及び変形例(図3、図25、図26)のエンコーダシステムにおいて、複数の移動スケール(44A〜44D、52A〜52D)はそれぞれ、例えばバキュームチャックなどの吸着機構又は板ばねなどによってウエハステージWSTに固定するものとしているが、これに限らず、例えばネジ留め、あるいは回折格子をウエハステージに直接形成しても良い。特に後者では、ウエハホルダが形成されるテーブル、あるいは特に液浸型露光装置では撥液板に回折格子を形成しても良い。また、レチクルステージRSTとウエハステージWSTのいずれにおいても、回折格子を形成する部材(前述の移動スケールなどを含む)は、セラミックスなどの低熱膨張の材料(例えば、ショット社製のゼロデュアなど)で構成することが好ましい。また、異物の付着、汚れなどによる計測精度の低下を防止するために、例えば少なくとも回折格子を覆うように表面にコーティングを施す、あるいはカバーガラスを設けても良い。さらに、レチクルステージRSTとウエハステージWSTのいずれでも、各移動スケールはその長手方向のほぼ全域に渡って回折格子が連続的に形成されるものとしたが、例えば回折格子を複数の領域に分けて断続的に形成しても良いし、あるいは各移動スケールを複数のスケールで構成しても良い。
【0210】
なお、上記実施形態及び変形例において、特に図3のエンコーダシステムでは、Y軸方向位置の計測に用いられる一対の移動スケール44A,44Cと、X軸方向位置の計測に用いられる一対の移動スケール44B,44Dとが、ウエハステージWST上に設けられ、これに対応して、一対のヘッドユニット46A、46Cが投影光学系PLのX軸方向の一側と他側に配置され、一対のヘッドユニット46B、46Dが投影光学系PLのY軸方向の一側と他側に配置される場合について例示した。しかしながら、これに限らず、Y軸方向位置の計測用の移動スケール44A,44C及びX軸方向位置計測用の移動スケール44B,44Dのうち、少なくとも一方が一対でなく1つのみ、ウエハステージWST上に設けられていても良いし、あるいは、一対のヘッドユニット46A、46C及び一対のヘッドユニット46B、46Dのうち、少なくとも一方が、一対でなく1つのみ設けられていても良い。これは、図26に示されるエンコーダシステムについても同様である。また、移動スケールの延設方向及びヘッドユニットの延設方向は、上記実施形態のX軸方向、Y軸方向のような直交方向に限定されるものではない。
【0211】
また、上記実施形態及び変形例において、ウエハ干渉計システム18はその構成が図3に限られるものでなく、例えばアライメント系ALG(計測位置)にもヘッドユニットを配置するときなどは、ウエハX干渉計18X2を備えていなくても良いし、ウエハX干渉計18X2を、例えばウエハY干渉計18Yと同様に多軸干渉計によって構成し、ウエハステージWSTのX位置の他、回転情報(例えばヨーイング及びローリング)を計測できるようにしても良い。また、ウエハX干渉計18X1と同様にウエハY干渉計18Yを1軸干渉計とし、ウエハX干渉計18X1をウエハY干渉計18Yと同様に多軸干渉計としても良い。多軸干渉計では回転情報としてヨーイングのみ計測可能としても良い。さらに、ウエハX干渉計18X1とウエハY干渉計18Yとのいずれか一方では、回転情報を1つ(ローリング又はピッチング)のみ計測可能としても良い。すなわち、本実施形態のウエハ干渉計システム18は、ウエハの露光動作中に少なくともX軸及びY軸方向の位置情報とθz方向の回転情報(ヨーイング)が計測可能であれば良い。
【0212】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてそのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができる。また、このエンコーダの計測値の短期変動を干渉計の計測値を用いて補正する補正情報とエンコーダの計測値とに基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置、プロキシミティー方式の露光装置、又はミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明は適用することができる。
【0213】
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系の倍率は縮小系のみならず等倍および拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、その投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。さらに、投影光学系PLを介して照明光ILが照射される露光領域は、投影光学系PLの視野内で光軸AXを含むオンアクシス領域であるが、例えば国際公開第2004/107011号に開示されるように、複数の反射面を有しかつ中間像を少なくとも1回形成する光学系(反射系または反屈系)がその一部に設けられ、かつ単一の光軸を有する、いわゆるインライン型の反射屈折系と同様に、その露光領域は光軸AXを含まないオフアクシス領域でもよい。また、前述の照明領域及び露光領域はその形状が矩形であるものとしたが、これに限らず、例えば円弧、台形、あるいは平行四辺形などでもよい。
【0214】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光、又はF2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。真空紫外光として、例えば国際公開第99/46835号(対応米国特許第7,023,610号明細書)に開示されているように、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0215】
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、近年、70nm以下のパターンを形成するために、SOR又はプラズマレーザを光源として、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を発生させるとともに、その露光波長(例えば13.5nm)の下で設計されたオール反射縮小光学系、及び反射型マスクを用いたEUV露光装置の開発が行われている。この装置においては、円弧照明を用いてマスクとウエハを同期走査してスキャン露光する構成が考えられるので、かかる装置にも本発明を好適に適用することができる。この他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0216】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン、減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器とも呼ばれる)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、そのステージの位置をエンコーダを用いて計測し、そのエンコーダの計測値を前述と同様にして干渉計の計測値を用いてキャリブレーションすることで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0217】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0218】
さらに、例えば特表2004−519850号公報(対応米国特許第6,611,316号明細書)に開示されているように、2つのレチクルパターンを、双頭型の投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0219】
また、物体上にパターンを形成する装置は前述の露光装置(リソグラフィシステム)に限られず、例えばインクジェット方式にて物体上にパターンを形成する装置にも本発明を適用することができる。
【0220】
なお、上記実施形態及び変形例でパターンを形成すべき物体(エネルギービームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、マスクブランクス、あるいはフィルム部材など他の物体でも良い。また、その物体の形状は円形のみならず、矩形など他の形状でもよい。
【0221】
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置、又は有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン、DNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0222】
なお、本発明は、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0223】
なお、半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、上記実施形態の露光装置で、マスクに形成されたパターンを感光物体上に転写するリソグラフィステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置が用いられるので、高集積度のデバイスを歩留り良く製造することができる。
【0224】
また、上記実施形態及び変形例の露光装置(パターン形成装置)は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0225】
以上説明したように、本発明の露光方法及び露光装置は、物体を露光して該物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの製造などに適している。
【符号の説明】
【0226】
11…レチクルステージ駆動系、16y…レチクルY干渉計、18Y…ウエハY干渉計、20…主制御装置、26A1,26B1…Yエンコーダ、27…ウエハステージ駆動系、50A,50B…Yリニアエンコーダ、100…露光装置、RST…レチクルステージ、WST…ウエハステージ、IL…照明光、W…ウエハ、R…レチクル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持する可動体を有し、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動する基板ステージ装置と;
前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムと、を有する計測システムと;
前記基板の露光動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御し、前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能な制御装置と;を備える露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記可動体の移動を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの両方の計測情報に基づいて制御可能である露光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の露光装置において、
前記基板の露光動作とは異なる計測動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御する露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記計測動作は、前記基板のマークの検出動作を含む露光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記エンコーダシステムは、前記格子部と対向する複数のヘッド部によって前記可動体の位置情報を計測し、前記位置情報の計測に用いる複数のヘッド部の少なくとも1つが前記可動体の移動によって切り替わる露光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記干渉計システムを用いて前記エンコーダシステムのキャリブレーションを実行する露光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記マスクを保持する、前記可動体とは別の可動体を有するマスクステージ装置をさらに備え、
前記計測システムは、前記別の可動体の位置情報を計測する、前記エンコーダシステムとは別のエンコーダシステムを有する露光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の補正情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の露光装置において、
前記補正情報は、前記格子部に形成される格子のピッチと変形との少なくとも一方に関する補正情報を含む露光装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記格子部に起因して生じる前記エンコーダシステムの計測誤差を補正する露光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムのヘッドユニットに起因して生じる計測誤差を補正する露光装置。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の配列に関する情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムのヘッドユニットに関する情報を用いる露光装置。
【請求項14】
デバイス製造方法であって、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の露光装置を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法。
【請求項15】
マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光方法であって、
前記基板を保持する可動体を有する基板ステージ装置によって、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動し、
前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムとを有する計測システムの前記エンコーダシステムによって、前記基板の露光動作中、前記可動体の位置情報を計測しつつその移動を制御し、
前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能である露光方法。
【請求項16】
請求項15に記載の露光方法において、
前記可動体の移動を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの両方の計測情報に基づいて制御可能である露光方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の露光方法において、
前記基板の露光動作とは異なる計測動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御する露光方法。
【請求項18】
請求項17に記載の露光方法において、
前記計測動作は、前記基板のマークの検出動作を含む露光方法。
【請求項19】
請求項15〜18いずれか一項に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムは、前記格子部と対向する複数のヘッド部によって前記可動体の位置情報を計測し、前記位置情報の計測に用いる複数のヘッド部の少なくとも1つが前記可動体の移動によって切り替わる露光方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記干渉計システムを用いて前記エンコーダシステムのキャリブレーションを実行する露光方法。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記マスクを保持する、前記可動体とは別の可動体を有するマスクステージ装置によって、前記別の可動体を駆動して前記マスクを移動することと、
前記エンコーダシステムとは別のエンコーダシステムによって、前記別の可動体の位置情報を計測しつつその移動を制御することと、を含む露光方法。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の補正情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光方法。
【請求項23】
請求項22に記載の露光方法において、
前記補正情報は、前記格子部に形成される格子のピッチと変形との少なくとも一方に関する補正情報を含む露光方法。
【請求項24】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記格子部に起因して生じる前記エンコーダシステムの計測誤差を補正する露光方法。
【請求項25】
請求項24に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムのヘッドユニットに起因して生じる計測誤差を補正する露光方法。
【請求項26】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の配列に関する情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光方法。
【請求項27】
請求項26に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムのヘッドユニットに関する情報を用いる露光方法。
【請求項28】
デバイス製造方法であって、
請求項15〜27のいずれか一項に記載の露光方法を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持する可動体を有し、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動する基板ステージ装置と;
前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムと、を有する計測システムと;
前記基板の露光動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御し、前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能な制御装置と;を備える露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記可動体の移動を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの両方の計測情報に基づいて制御可能である露光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の露光装置において、
前記基板の露光動作とは異なる計測動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御する露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記計測動作は、前記基板のマークの検出動作を含む露光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記エンコーダシステムは、前記格子部と対向する複数のヘッド部によって前記可動体の位置情報を計測し、前記位置情報の計測に用いる複数のヘッド部の少なくとも1つが前記可動体の移動によって切り替わる露光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記干渉計システムを用いて前記エンコーダシステムのキャリブレーションを実行する露光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記マスクを保持する、前記可動体とは別の可動体を有するマスクステージ装置をさらに備え、
前記計測システムは、前記別の可動体の位置情報を計測する、前記エンコーダシステムとは別のエンコーダシステムを有する露光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の補正情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の露光装置において、
前記補正情報は、前記格子部に形成される格子のピッチと変形との少なくとも一方に関する補正情報を含む露光装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記格子部に起因して生じる前記エンコーダシステムの計測誤差を補正する露光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムのヘッドユニットに起因して生じる計測誤差を補正する露光装置。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の配列に関する情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の露光装置において、
前記制御装置は、前記エンコーダシステムのヘッドユニットに関する情報を用いる露光装置。
【請求項14】
デバイス製造方法であって、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の露光装置を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法。
【請求項15】
マスクを介してエネルギービームで基板を露光する露光方法であって、
前記基板を保持する可動体を有する基板ステージ装置によって、前記可動体を駆動して所定面内で前記基板を移動し、
前記所定面と実質的に平行に配置される格子部にビームを照射して前記可動体の位置情報を計測するエンコーダシステムと、前記可動体の位置情報を計測する干渉計システムとを有する計測システムの前記エンコーダシステムによって、前記基板の露光動作中、前記可動体の位置情報を計測しつつその移動を制御し、
前記可動体の移動に用いる位置情報を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの一方から他方に切り替え可能である露光方法。
【請求項16】
請求項15に記載の露光方法において、
前記可動体の移動を、前記エンコーダシステムと前記干渉計システムとの両方の計測情報に基づいて制御可能である露光方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の露光方法において、
前記基板の露光動作とは異なる計測動作中、前記エンコーダシステムの計測情報に基づいて前記可動体の移動を制御する露光方法。
【請求項18】
請求項17に記載の露光方法において、
前記計測動作は、前記基板のマークの検出動作を含む露光方法。
【請求項19】
請求項15〜18いずれか一項に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムは、前記格子部と対向する複数のヘッド部によって前記可動体の位置情報を計測し、前記位置情報の計測に用いる複数のヘッド部の少なくとも1つが前記可動体の移動によって切り替わる露光方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記干渉計システムを用いて前記エンコーダシステムのキャリブレーションを実行する露光方法。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記マスクを保持する、前記可動体とは別の可動体を有するマスクステージ装置によって、前記別の可動体を駆動して前記マスクを移動することと、
前記エンコーダシステムとは別のエンコーダシステムによって、前記別の可動体の位置情報を計測しつつその移動を制御することと、を含む露光方法。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の補正情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光方法。
【請求項23】
請求項22に記載の露光方法において、
前記補正情報は、前記格子部に形成される格子のピッチと変形との少なくとも一方に関する補正情報を含む露光方法。
【請求項24】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記格子部に起因して生じる前記エンコーダシステムの計測誤差を補正する露光方法。
【請求項25】
請求項24に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムのヘッドユニットに起因して生じる計測誤差を補正する露光方法。
【請求項26】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムの計測情報と前記格子部の配列に関する情報とに基づいて前記可動体の移動を制御する露光方法。
【請求項27】
請求項26に記載の露光方法において、
前記エンコーダシステムのヘッドユニットに関する情報を用いる露光方法。
【請求項28】
デバイス製造方法であって、
請求項15〜27のいずれか一項に記載の露光方法を用いて感光基板にパターンを転写するリソグラフィ工程を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2011−14915(P2011−14915A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169058(P2010−169058)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【分割の表示】特願2007−554984(P2007−554984)の分割
【原出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【分割の表示】特願2007−554984(P2007−554984)の分割
【原出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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