MIS型トランジスタおよびその製造方法
【課題】S/D拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に実現することのできるMIS型トランジスタ及びその製造方法の提供。
【解決手段】MIS型トランジスタは、半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備える。このMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置し、かつ、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えると共に、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっている。
【解決手段】MIS型トランジスタは、半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備える。このMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置し、かつ、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えると共に、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMIS型トランジスタおよびその製造方法に係り、特に駆動電流量が大きく寄生容量が小さいMIS型トランジスタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属・絶縁膜・半導体(Metal Insulator Semiconductor)−MIS−構造のトランジスタについての微細化の要請が強くなるのに伴って、現在MIS型構造のトランジスタの微細化が着々と進展している。このMISトランジスタの微細化は、大きく捉えるとゲート長に比例させてソース・ドレイン領域を形成するスケーリング則と呼ばれる手法を用いて行なわれており、具体的には、ゲート長を小さくした場合にこのゲート長が小さくなるのに応じてソースおよびドレインとなる不純物拡散領域、いわゆる拡散層の接合の深さを浅くすることにより行なわれている。
【0003】
しかしながら、ゲート長が0.2μmを下回るような微細なトランジスタにおいては、拡散の深さ(Xj)が浅くなり過ぎてしまい、ゲートにおける抵抗が増大してトランジスタ全体の寄生抵抗が増加し実質的な駆動電流が減少してしまうという問題があった。そこで、この寄生抵抗を低減させるためには、導入されるソースおよびドレインを金属シリサイド化(シリサイデーション)する際に接合の深さを浅くすることも場合により考えられるが、接合の深さを浅くすることに腐心する余り、接合が拡散層内に留まらずに基板側へ突き抜けてしまって、接合リークを引き起こすという問題があった。
【0004】
上記接合が浅い場合に、抵抗が増大したり、シリサイデーションが困難となったりするという問題は、エレベーティッドソース・ドレイン,コンケーブトランジスタ,リセストチャネルトランジスタなどと呼ばれる技術により解決が図られており、これらはトランジスタにおけるチャネル面よりもソースおよびドレインの表面を高く形成する構造を備えている(例えば、非特許文献1)。図14はこのようなコンケーブMOS構造を有するMIS型トランジスタを示しており、半導体基板1と、ソース・ドレイン領域2と、その間に位置するチャネル形成面7と、チャネル形成面7の上部に設けられたSiO2膜51と、このSiO2膜51を介してチャネル形成面7に対向して設けられたゲート電極6と、を備えている。
【0005】
図14において、ソース・ドレイン領域2はチャネル形成面7よりも半導体基板1内に属する第1の不純物拡散領域2aと、チャネル形成面7よりも外側(図においては上側)に積層された第2の不純物拡散領域2bとを含んでおり、このような第2の不純物拡散領域2bがSiO2膜5を介してゲート電極6を取り囲む構造は、ソース・ドレイン領域2に溝が形成されている構成とも考えられるし、第2の不純物拡散領域2bが嵩上げ(エレベート)された構成とも考えることができる。
【特許文献1】特開平09−116142号公報
【特許文献2】特開平07−099310号公報、
【非特許文献1】S.M.Sze Physics of Semiconductor Devices second edition, 1981, pp490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図14に示した構造を有する従来のMIS型トランジスタにおいては、ゲート電極6がSiO2(絶縁)膜51を介してソース・ドレイン拡散層2に囲まれる構造となっており、このためゲートドレイン間容量およびソース・ドレイン間容量が増大することにより、トランジスタの動作速度が大幅に悪化してしまうという問題があった。
【0007】
上述したように、従来のMIS型トランジスタにおいては、ソース・ドレインの拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に解決することができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、ソース・ドレインの拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に実現することのできるMIS型トランジスタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の基本構成に係るMIS型トランジスタは、半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置し、かつ、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えると共に、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴している。
【0010】
また、上記第1の基本構成に係るMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置すると共に、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えるようにしても良い。
【0011】
また、上記構成において、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていても良い。
【0012】
また、上記第1の基本構成に係るMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていても良い。
【0013】
また、本発明の第2の基本構成に係るMIS型トランジスタの製造方法は、半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタを製造する方法であって、選択的に形成された半導体層に囲まれた前記チャネル形成面上にダミーゲート絶縁膜と、第2の半導体層を含むダミーゲート電極を少なくともリソグラフィーを含む手法により形成する工程と、前記半導体基板上のチャネル形成面となる領域を挟んでソース・ドレイン領域となる半導体層を、この半導体層上面と前記チャネル形成面との間が傾斜面となるようにしつつ、選択的に堆積させると工程と、前記第2の半導体層をマスクにして前記半導体基板の表面に不純物を拡散させて不純物拡散領域を形成する工程と、前記不純物拡散領域に挟まれた上記チャネル形成面となる部分の上に形成されたダミーゲート電極をエッチングにより除去する工程と、露出された上記チャネル形成面上に高誘電体膜よりなる絶縁膜を全面に堆積させて中心側に溝状の空間を有する断面形状でゲート絶縁膜を形成する工程と、中心側に溝状の空間を有する断面形状で全面に形成された前記ゲート絶縁膜の上面にゲート電極を堆積させて、断面T字形状となったゲート電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上詳細に説明したように、本発明に係るMIS型トランジスタおよびその製造方法によれば、ソース・ドレインを構成する不純物拡散層の抵抗を低減させることができると同時に、ゲートの寄生容量を低減させることができ、トランジスタの動作速度を大幅に向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るMIS型トランジスタは、MOS型トランジスタにおいてゲート絶縁膜たる第1の絶縁膜材利用の平均誘電率が前記溝の上面とゲート材料間を絶縁する第2の絶縁膜の平均誘電率より高くなるように構成しても良い。
【0016】
さらに、このようなMOS型トランジスタにおいて前記ゲート絶縁膜たる第1の絶縁膜は、SiO2 膜よりも高い誘電率を持つ絶縁膜とそれを保護するバッファ絶縁膜の積層構造により構成するようにしても良い。
【0017】
また、上記MIS型トランジスタにおいてゲート絶縁膜の実膜厚を平均誘電率で割ることによって求められるキャパシタ換算膜厚と等しいキャパシタ換算膜厚を有する第2の絶縁膜の実膜厚より大きい量だけ前記半導体基板表面より高い位置にゲート電極の下面が位置するように構成しても良い。以上のように、本発明によれば、ソース・ドレインの拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るMIS型トランジスタおよびその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタの概略構成を示す断面図である。なお、図においては、表示を明瞭にするため断面を表すハッチングを省略する。また、図14と同一符号を付した構成要素は、従来のMIS型トランジスタと同一または相当する構成要素を示している。
【0020】
図1において、符号1は半導体基板であり、この半導体基板1の表面側にはチャネル領域7を介してソース・ドレインとして用いられる不純物領域2が設けられている。この不純物領域2は、トランジスタとして動作する際に一方がドレイン電極、他方がソース電極として用いられるものであり、両者の間のチャネル形成面7に掛けての部分には凹部または溝部4が形成されている。溝部4内には保護膜3を介して高誘電体ゲート絶縁膜5が設けられており、高誘電体ゲート絶縁膜5の上部側にはゲート電極6が設けられている。ソース・ドレインとして用いられる不純物領域2とゲート電極6との間は絶縁膜13により絶縁されている。高誘電体ゲート絶縁膜5は図14に示された従来のMIS型トランジスタにおけるSiO2膜5の比誘電率3.9より高い誘電率を有している。
【0021】
上記構成において重要なことは、第2の不純物拡散領域2bと絶縁膜13との間のソース・ドレイン上面のレベルLa が、前記チャネル形成面7のレベルLb よりは半導体基板1より離れて位置すると共にゲート電極6の下面のレベルLc よりは半導体基板1の近くに位置している点である。
【0022】
前記不純物領域2は、図14に示した従来のMIS型トランジスタと同様に、チャネル形成面7よりも半導体基板1内に属する第1の不純物拡散領域2aと、チャネル形成面7よりも外側(図においては上側)に積層された第2の不純物拡散領域2bと、を含んでいる。また、前記保護膜3はゲート絶縁膜5を保護するために例えばSiNやオキシナイトライド膜等により形成されており、チャネル形成面7とゲート絶縁膜5との間に位置する第1の保護膜3aと、第2の不純物拡散領域2bとの間に位置する第2の保護膜3bとを含んでいる。
【0023】
以上の構成において、本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタは、図14の従来のMIS型トランジスタと同様に、電流が流れるチャネルが形成されているチャネル形成面7よりソース・ドレインとして用いられる不純物拡散領域2が第2の不純物拡散領域2bの厚さ分だけ半導体基板1の逆側に形成されている。このため、チャネル形成面7より下側の第1の不純物拡散領域2aだけにソース・ドレイン領域が形成される場合と比較して、拡散層抵抗を低くすることができ、また、ニッケル(Ni),チタン(Ti)等とのシリサイドを形成する際にも接合面までシリサイド化が進むことにより生じる接合リークの発生を避けることができる。
【0024】
また、ゲート電極6の下面8をソース・ドレインとして用いられる不純物拡散領域2の上面よりも高い位置、すなわち半導体基板1側より離れる側に設けることにより、性能の低下を引き起こすゲート電極とソース・ドレインとの容量を図14に示す従来型コンケーブMOSよりも大幅に低減することができる。
【0025】
さらに、ゲート電極6とソース・ドレイン電極2bとの距離を従来例よりも離すことができ、電界を小さく保つことができる。したがって、これらの間のリーク電流を減少させて、絶縁破壊を防ぐことができる。この特徴は以下に説明する全ての実施形態に当てはまることである。
【0026】
また、図示説明を省略したが、チャネル形成面とソース・ドレイン領域の上面と同一平面とした従来のMIS型トランジスタにおいて、ゲート電極とチャネル形成面との間のゲート絶縁膜をSiO2膜により形成したものとすると、ゲート電極6の下面8をこのSiO2膜の厚さより面7から高く設けると共に、ゲート電極とソース・ドレインを絶縁する絶縁膜13をSiO2膜とすることにより、平面型の従来MOSトランジスタよりも寄生容量を低減することができる。
【0027】
例えば、従来技術ではゲート長が0.1ミクロンの場合、ゲート酸化膜の厚さは3nm程度にスケーリングされるが、本発明を比誘電率が約25のTa2O5と1nmのSiN(比誘電率7.5)の保護膜でデバイス設計すると、トランジスタの表面電荷量Qsを等しくするために、SiO2の換算膜厚3nmを保つものとして、第1の保護膜3aのSiN実膜厚は1nmとなり、SiO2換算膜厚は「1nm×3.9/7.5=0.52」nmとなり、高誘電体ゲート絶縁膜5(Ta2O5)のSiO2 換算膜厚は「3nm−0.52nm=2.48nm」となり、実膜厚は「2.48nm×25/3.9=15.9nm」となる。
【0028】
すなわちソース・ドレインとなる不純物拡散領域2の溝の深さを「15.9nm(ゲート絶縁膜5の分)+1nm(保護膜3aの分)=16.9nm」とすればゲート電極6の下面8がソース・ドレイン表面と同じ高さとなり、13.9nmとすれば従来のスケーリングトレンド上の3nm酸化膜を用いたMOSトランジスタと同程度の寄生容量となる。ここで、従来のスケーリングによれば、トランジスタの拡散層の深さは0.1ミクロントランジスタであっても40nm程度であり、これより13.9nm即ち35%拡散層を厚くして寄生抵抗を下げることができる。
【0029】
ここで、SiO2の比誘電率をε、SiO2膜の膜厚をTSiO2、高誘電体ゲート絶縁膜5の比誘電率をε5、実膜厚をT5、保護膜3の比誘電率をε3、実膜厚をT3とするとTSiO2厚さのSiO2膜と同等の平行平板容量を与える膜厚は、下式
TSiO2/εSiO2 = T3/ε2 + T5/ε5
を満たせば良い。保護膜に1nm厚さのSiN膜を用い、SiO2,SiNの比誘電率に3.9,7.5をそれぞれ用いると、
T5=ε5(TSiO2/3.9−1/7.5)(nm)となり従来スケーリングトレンド上の厚さTSiO2とし、それと同等の寄生容量となる溝の赤さはゲート−ソース・ドレイン間の絶縁膜材料をSiO2または同等の誘電率を持つものとすると、
Dconcave =ε5(TSiO2/3.9−1/7.5)−TSiO2
により与えられる。これよりも溝が浅ければより寄生容量が小さくなる。
【0030】
比誘電率約80でありかつ熱的に安定でその点からは保護膜の必要がないチタン酸化膜TiO2膜を用いた場合は、保護膜分を取り除いた同様の計算で、
Dconcave =ε5×TSiO2/3.9−TSiO2
となり、溝深さを58.5nmとすれば、従来の3nm酸化膜を用いたMOSトランジスタと同程度の寄生容量となり、かつ、58.5nm即ち従来の40nm深さの拡散層を用いた場合と比較し150%拡散層を厚くして寄生抵抗を低減させることができる。
【0031】
次に、図2(a)ないし図2(e)を用いて本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、半導体基板としてのシリコン基板1上にSiO2膜9を堆積してリソグラフィーによりエッチングする。次に、SiO2膜9をマスクとして反応性イオンエッチング(RIE−Reactive Ion Etching−)により溝4を形成する(図2(b))。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、SiO2膜9およびシリコン基板1の溝4の表面に薄い犠牲酸化膜11を積層した後、ポリシリコン10を堆積して、化学的機械的研磨法(−CMP−Chemical Mechanical Polishing)あるいはエッチバック技術等を用いてSiO2膜9の上面まで平坦化する。このとき、薄い犠牲酸化膜11を積層しておくのは、ポリシリコン10とシリコン基板1とを分離するためである。
【0033】
次に、図2(d)に示すように、前記シリコン酸化(SiO2)膜9を除去した後、ポリシリコン10をマスクにしてイオン注入技術あるいは固相拡散技術等を用いてソース・ドレイン領域2を形成する。次に、ポリシリコン10と犠牲酸化膜11とを例えば化学的ドライエッチング(CDE−Chemical Dry Etching−)等により除去する。その後、図2(e)に示すように保護膜としてのSiN膜3を堆積あるいは熱窒化により形成する。次に、スパッタ技術等により高誘電体膜5を形成し、さらにゲート電極6を堆積する。最後に、シリコン(Si)酸化膜12を形成して図1に示すMIS型トランジスタと同一構造の半導体装置が製造されることになる。
【0034】
次に、図3(a)ないし図3(e)を用いて本発明の第2実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法および構成を説明する。まず、図3(a)ないし図3(e)に従いMIS型トランジスタの製造方法について説明する。図3(a)に示す半導体基板1上に、犠牲酸化膜11を介してダミーポリシリコン10を形成してパターニングし、さらに酸化してダミーポリシリコン10を酸化膜で包んだ後、図3(b)に示すように、ソース・ドレイン領域2をイオン注入等により形成する。
【0035】
次に、選択エピタキシャル成長技術によりシリコンをかさ上げ(elevate )した後、さらに追加のイオン注入によりかさ上げ部分に再度不純物を注入して拡散させる。第1実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法は、溝4をまず形成しその溝に対して上方から不純物を注入拡散していたのでソース・ドレイン領域2の深さの制御が難しかったが、この第2実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法においては、チャネル形成面7よりも下側になるソース・ドレイン領域2の深さがチャネル形成面7からの不純物の注入の度合で決まるので制御がしやすいという効果がある。
【0036】
次に、ポリシリコン10を残したままソース・ドレイン領域2の上にシリコン(Si)酸化膜12を堆積させて、ポリシリコン10をストッパとしてCMP技術によりシリコン酸化膜12をポリシリコン10の上面まで平坦化する。ここで、図3(c)に示すようにポリシリコン10と犠牲酸化膜11とをCDE等で剥離し、シリコン酸化膜12およびソース・ドレイン領域の側面からチャネル形成面7の上面にかけて窒化シリコン(SiN)保護膜3を堆積させる。
【0037】
次に、図3(d)に示すように高誘電体ゲート絶縁膜5をスパッタ、CVD等によりソース・ドレイン領域2の上面よりも高い位置まで堆積する。このような工程を採用する際に、仮に高誘電体ゲート絶縁膜5の膜厚が溝の深さより浅い場合にはゲート電極とソース・ドレインの間の絶縁を保護膜3で保たねばならず、本実施形態のように高誘電体ゲート絶縁膜5を溝4より高く設けた場合と比較して、保護膜3の厚さを厚くしなければならなくなる。
【0038】
次に、図3(e)に示すように、高誘電ゲート絶縁膜5の上部にゲート電極6をスパッタ、CVD等によりシリコン酸化膜12と略々同一の高さまで堆積させる。また、上記のように、仮に高誘電体ゲート絶縁膜五の膜厚が溝の深さよりも浅い場合には、ゲート電極6とソース・ドレイン領域2の上面との距離が保護膜3を介して離隔するだけで最も近接することになり、この部分の耐圧がクリティカルとなるので、このような状態においてはその電気的特性から
Dconcave =ε5(TSiO2/3.9−1/7.5)−TSiO2
を満たすようにしていた。したがって、トランジスタの耐圧を向上させるには溝部分をより浅くすることが望ましい。あるいは溝上部での保護膜3の厚さを下部より厚くすることも耐圧の向上にとって望ましい。そのためには、図3(d)に示す工程においてCDE等を行なうことにより、高誘電体ゲート絶縁膜5とソース・ドレイン領域2との間を僅かにエッチングして埋め戻すこと等で実現する。
【0039】
以上のような第2実施形態のMIS型トランジスタの製造方法によれば、SiO2膜をマスクにして溝4を形成してからソース・ドレイン領域2を形成する第1実施形態に係る製造方法とは異なる工程を経て、略々同一の構成のトランジスタを得ることができる。ただし、基板1の上面に溝4を形成するものと考えるか、基板1にソース・ドレイン領域2を形成してチャネル形成面7のレベルからこのソース・ドレイン領域2をさらに嵩上げするものと考えるかの違いがあるのみである。
【0040】
上記第1および第2実施形態に係るMIS型トランジスタにおいては、何れも高誘電体ゲート絶縁膜5とソース・ドレイン領域2との間に保護膜3を形成していたが、高誘電体ゲート絶縁膜5の材料あるいはプロセスの低温化等を調整することにより、保護膜3が必要でない場合もある。このように、保護膜3を設けないようにした場合の第3実施形態に係るMIS型トランジスタが図4に示されている。図4においては、半導体基板としてのシリコン基板1のチャネル形成面7と高誘電体ゲート絶縁膜5との間に保護膜(図1における保護膜3a)が設けられておらず、ゲート絶縁膜5の側壁と第2の不純物拡散領域2bとの間のみに保護膜3bが設けられている構成となっている。
【0041】
次に、図5(a)ないし図5(e)を用いて本発明の第4の実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法について説明する。図5(a)ないし図5(c)までの工程については、基本的には第1あるいは第2実施形態に係るMISトランジスタの製造方法と略同様に形成するものとする。次に、図5(b)に示す犠牲酸化膜11とポリシリコンを10をCDE等により剥離して、シリコン酸化膜12およびソース・ドレイン領域2の側面からチャネル形成面7の上面にかけて窒化シリコン(SiN)保護膜3を堆積させ、高誘電体ゲート絶縁膜5をCVDまたはスパッタ等により堆積させる。
【0042】
次に、図5(c)に示すように、CVDまたはスパッタ等により堆積させた高誘電体ゲート絶縁膜5をCMP技術を用いて酸化膜12の上面まで平坦化する。
【0043】
この第3実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法においては、高誘電体ゲート絶縁膜5の膜厚をシリコン酸化膜12の厚さと溝4の深さにより決定しているのでゲート絶縁膜5の膜厚が制御し易いという優れた効果を奏する。
【0044】
ただし、この第4実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法の場合にはゲート電極6はリソグラフィーを再度行なうことにより形成されているので、溝4にゲート電極6をセルフアラインさせることは難しい。このため、図5(e)に示すように、溝4の開口面積よりも大きく形成されることになる。したがって、ゲート電極6の寄生容量が幾分増加することになるが、シリコン酸化膜12の膜厚が充分に厚く、また、シリコン酸化膜12の誘電率も小さいため、大きな影響を受けることはない。
【0045】
図6には、図5(a)ないし図5(e)に示された製造方法により製造された第4実施形態に係るMIS型トランジスタの断面が示されている。図6において、MIS型トランジスタは、半導体基板としてのシリコン基板1と、チャネル形成面7よりも基板1側に位置する第1の不純物拡散領域2aとチャネル形成面7よりもゲート電極6側に位置する第2の不純物拡散領域2bを含むソース・ドレイン領域2と、シリコン酸化膜12と、シリコン酸化膜12および第2の不純物拡散領域2bに形成された溝4の内壁に設けられた保護膜3と、この保護膜3を介して溝4内に形成された高誘電体ゲート絶縁膜5と、このゲート絶縁膜5上に保護膜3により囲繞される範囲よりも広い面積となるように形成されたゲート電極6と、を備えている。
【0046】
なお、上述した第1ないし第3実施形態に係るMIS型トランジスタは、ゲート電極6の幅が溝4内に位置するゲート絶縁膜5と同一の幅となるように構成するものと説明し、また、第4実施形態に係るMIS型トランジスタはセルフアラインさせることの困難さからゲート絶縁膜5よりもゲート電極6の方が広範囲となるように形成されているものと説明したが、本発明はこれに限定されず、図7に示す第5実施形態のように、例えばLDD(Lightly Doped Drain )構造におけるゲート電極6に側壁を設けるタイプのトランジスタについても適用できることは勿論である。
【0047】
第5実施形態に係るMIS型トランジスタを示す図7において、符号1は半導体基板としてのシリコン基板、7はチャネル形成面、2は第1の不純物拡散領域2aと第2の不純物拡散領域2bを含むソース・ドレイン領域、3は保護膜、5は高誘電体ゲート絶縁膜、6はゲート電極、8はゲート電極6の周囲に設けられた二酸化シリコン(SiO2)の側壁である。
【0048】
図8(a)ないし図8(e)は第5実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法を示す工程図である。図8(a),図8(b)に示すように、半導体基板1上にゲート絶縁膜となるSiN膜3aと、例えばTa2O5からなる高誘電体膜5と、ゲート電極となるTiNとポリシリコン6とを順次堆積し、図8(c)に示すようにエッチングによりポリシリコン6からゲート電極となる部分を形成する。次に、図8(d)に示すように、CVD等によりゲート電極6の周囲にSiO2の側壁8を形成し、ゲート電極6および側壁8をマスクとしてCDE等によりゲート絶縁膜5を形成する。
【0049】
最後に、図8(e)に示すように、ポリシリコンのゲート電極6および側壁8とゲート絶縁膜5との積層構造をマスクに用いてエッチングした後、側壁絶縁膜3bを形成して、ソース・ドレインをせり上げして不純物拡散領域2bを形成した後、イオン注入および固相拡散等によりソース・ドレイン領域2を形成する。このソース・ドレイン領域2は、第1ないし第4実施形態と同様に、チャネル形成面7よりも基板1の内部側に位置するように形成された第1の不純物拡散領域2aと、チャネル形成面7よりもゲート電極6側に近く、かつ、その上面がゲート電極6の下面よりも低い位置である第2の不純物拡散領域2bと、よりなるという本願発明の要旨を備えている。
【0050】
図8(a)ないし図8(e)に示す工程により形成された第5実施形態に係るMIS型トランジスタは図7に示すような構成を有しており、高誘電体ゲート絶縁膜5の周囲、少なくとも下面側と側壁側は保護膜3により囲まれており、ゲート絶縁膜5の下側と基板1のチャネル形成面7との間は第1の保護膜3aとなり、第2の不純物拡散領域2bとゲート絶縁膜5との間は第2の保護膜3bとなっている。
【0051】
なお、本発明は上述した第1ないし第5実施形態に限定されず、図9に示される構成を備える第6実施形態に係るトランジスタにも敷衍することができる。図9においては、p+半導体基板1と、チャネル形成面7と、ソース領域2Aと、ドレイン領域2Bと、高誘電体ゲート絶縁膜5と、ゲート電極6とを備えている点では上記幾つかの実施形態、特に第5実施形態のMIS型トランジスタと略々同一の構成である。
【0052】
図9に示される第6実施形態に係るトランジスタでは、それぞれの電極領域に低抵抗コンタクト15を介してそれぞれの端子、すなわちゲート端子16,ソース端子17およびドレイン端子18が設けられている。また、チャネル形成面7とゲート絶縁膜5との間には保護膜3aが設けられ、さらにゲート電極6低抵抗コンタクト15およびゲート端子16の全体を囲む側壁8との間にも保護膜3bが設けられている。
【0053】
上記ゲート絶縁膜5は、0xが1.5nm以下に相当するように構成されており、低抵抗コンタクト15は、「Rcontact <10−8Ωcm2」の抵抗値を有し、チャネル形成面7は「Rp 〜15nm,dRp 〜7nm」の極浅チャネル(retrograde channel)である。また、ソース領域2Aおよびドレイン領域2Bは「Xj <10nm,R<16Ωμm」の低抵抗で極薄に嵩上げされた(elevated)第2の不純物拡散領域2bとなるように形成されている。
【0054】
このような構成を有する第6実施形態に係るトランジスタにおいても、ソース・ドレイン領域の上面がチャネル形成面よりもゲート電極側に位置し、かつ、ゲート電極の底面よりも基板側に位置するという本願発明の要旨を充足しており、本願発明に係るMIS型トランジスタの好適な実施形態の1つとなっているものである。
【0055】
次に、図10ないし図13(e)を用いて、本発明の第7実施形態に係る半導体装置について説明する。まず、図10に本発明の第7実施形態に係る半導体装置の断面構造を示している。
【0056】
図10において、例えばp型Siからなる半導体層105の上部に、例えばTiO2やアルミナ、あるいは、タンタル酸化膜、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム鉛からなるゲート絶縁膜113を介して、例えば、poly Si(多結晶シリコン),amorphous Si(非晶質シリコン),TiNやW、Pt,RuO2,IrO2からなるゲート電極114が形成されている。ここで、ゲート絶縁膜 113の半導体層105に接する部分での厚さをt(nm)、比誘電率をεとすると、t<1.3εとなる関係を満たしている。
【0057】
また、ゲート電極の両側の105の領域内には、例えば、P,SbまたはAsをイオン注入または固相拡散して成長させると共に、前記半導体層105の導電性とは逆の導電性を有するソース拡散層およびドレイン拡散層110が形成されてn型MISFETを形成している。さらに、ソースおよびドレイン拡散層110の上部には、例えば、P,SbまたはAsを添加した、Si,SiGe,SiGeCからなる半導体領域104が形成されている。この半導体領域104はゲート絶縁膜113と半導体層105との界面よりも積み上げ方向上方に形成され、いわゆる嵩上げされた(elevated)ソース・ドレイン構造となっている。
【0058】
さらに、ゲート絶縁膜113のゲート電極114が形成されていない側の側壁には、例えばシリコン窒化膜からなる絶縁膜109が形成されている。また、絶縁膜109と導電領域104との間には、例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜108が形成されている。さらに、領域104の上面で、絶縁膜108および113が形成されていない上面には、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、またはチタンシリサイドからなる導電体層115が形成されている。この第7実施形態の特徴的な構成は、導電領域104の上面の高さが、ゲート電極114の底部の高さよりも低く形成されていることにある。このようにすることにより、ゲート電極114と導電領域104との間の容量を小さく保ちつつ、ソース・ドレイン領域を嵩上げされた(elevated)構造にすることができ、導電領域104の接合深さを浅くし、短チャネル効果が小さく低抵抗なソース・ドレインを実現することができる。
【0059】
さらに、導電層115の上面には、例えば、シリコン酸化膜からなる絶縁膜111および絶縁膜112が積層して形成されている。ゲート絶縁膜113の上面高さは、この絶縁膜112の上面高さよりも低く形成されることが、ゲート絶縁膜113のエッチングが困難な場合でもコンタクト116を良好な形状で形成するためには望ましい。さらに、ゲート電極114、ゲート絶縁膜113、絶縁膜112の上部には、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる絶縁膜118が形成されている。また、ゲート電極114の上部および電極115の上部には例えばAlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,W,AlSi,AlSiCu,Cu,TiNからなるコンタクト電極116が形成されている。
【0060】
さらに、コンタクト電極116の上部にはAlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,AlSi,AlSiCu,Cu,Wからなる金属を堆積し、上部の配線層117が形成されている。図10においてはゲート電極に対するコンタクト電極116および配線層117を、ソース・ドレイン電極に対するコンタクト電極116および配線層117と共に同一断面に示したが、これらは、同一断面に設けられる必要はなく、図11(a)および図11(b)に示すように、それぞれ別の平面で切断した異なる高さの断面に形成するようにしても良い。
【0061】
次に、図12(a)ないし図13(e)を用いて、この第7実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。まず、例えばボロン濃度1015cm−3のp型領域を形成した半導体層105を準備する。次いで、このp型半導体層105にボロンを1012〜1015cm−2程度イオン注入してウェル拡散し、この半導体層105の濃度を最適化してもよい。イオン注入のエネルギーは、例えば100eVから1000eVと間とする。これらWell領域の濃度は1015cm−3〜1019cm−3とすればよい。ついで、図示していないが、例えばLOCOS分離やトレンチ分離からなる素子分離領域を形成する。
【0062】
次いで、p型半導体層105にボロンやインジウムをイオン注入してウェル拡散し、半導体層105の濃度を最適化してもよい。次に、半導体層105の表面を例えば、3〜50nm酸化または窒化してダミーゲート絶縁膜102を形成し、ダミーゲート電極101となる多結晶シリコン膜を例えば、10〜200nm全面に堆積する。さらに、絶縁膜106となるシリコン酸化膜を、例えば、2〜200nm全面堆積または多結晶シリコン膜の酸化によって形成した後、リソグラフィーと反応性イオンエッチングにより絶縁膜106およびダミーゲート電極101となる多結晶シリコン膜を絶縁膜102上まで達するように加工して、ダミーゲート電極101を形成する。次に、絶縁膜103となるシリコン酸化膜を、例えば2〜50nmの厚さで全面に堆積させた後、異方性エッチングにより加工して、ダミーゲート電極101の切り立った側壁上に側壁絶縁膜103を残している。この後、この絶縁膜103をマスクとして、絶縁膜102をエッチングし、半導体層105を露出させる。この側壁絶縁膜103とリソグラフィーの直前に堆積した絶縁膜106がダミーゲート電極101を取り囲む形となり、ソース・ドレイン層に選択的に半導体を成長することが容易になる。
【0063】
次いで、図12(a)のように例えば、SiやSiGe混晶、SiGeC混晶を選択エピタキシャル成長法または選択堆積法を用いることによって、例えば、厚さ5〜100nmの厚さに半導体層104を形成する。このとき、ドーピングも同時に行ない、半導体層104はドナー不純物添加を1016〜1021cm−3の濃度でAs,Sb,またはPを添加するのが低抵抗の浅い接合を形成するのに望ましい。半導体層104は、例えば、AsH3やPH3を、AsまたはPを半導体層104の表面に吸着させ、その後例えば、SiやSiGe混晶、SiGeC混晶を選択エピタキシャル成長により形成してもよい。
【0064】
また、特に、半導体基板を{100}面とし、ゲート加工を<100>方位に平行にパターニングすることによって、図12(a)のようにゲート側壁部で{311}面が形成され、ゲート側壁から上に向かうに従って離れる構造を形成することができるため、ゲートとソースとの間の容量、および、ゲートとドレインとの間の容量をより小さく保つことができる。
【0065】
次に、例えば、700-1100℃で、0.01〜60min、例えばArまたはN2雰囲気で加熱することによって、図12(b)のように不純物添加n型領域110をp型半導体層105内に拡散する工程を加える。拡散時間は、典型的には、n型領域110がダミーゲート層101の下まで形成されるようにし、後に形成されるゲート電極114の下にまで達するように形成されることが電流駆動能力を大きくするのに望ましい。
【0066】
半導体層104およびn型領域110を形成する工程は、例えば、まず、AsやP,SBを加速電圧1〜100eV、1013〜1016cm−2イオン注入してn型領域110を形成し、その後に半導体層104を選択エピタキシャル成長をする工程と代替してもよい。また、不純物を意図的に添加しない半導体層104を形成した後に、AsやP,Sbを加速電圧1〜300eV、1013〜1016cm−2イオン注入してn型領域110を形成する工程と代替してもよい。
【0067】
さらに、例えば、シリコン酸化膜を2〜100nm全面堆積し、絶縁膜108を形成する。次いで、例えば、シリコン窒化膜を10〜300nm全面堆積し、異方性エッチングによって切り立った側壁絶縁膜108の側壁に絶縁膜109を形成することにより、図12(b)に示す形状を得ることができる。ここで、絶縁膜108は、絶縁膜109の応力緩和とエッチング選択性およびダメージ緩和のためのバッファ層であり、絶縁膜109の応力、半導体層104に対する絶縁膜109のエッチング選択性について特に問題が無ければ、絶縁膜108は設けなくても構わない。
【0068】
また、絶縁膜108と側壁絶縁膜103の厚さの和は、絶縁膜102の厚さよりも薄くなるようにすることにより、絶縁膜102を剥離する際に、絶縁膜109が露出してゲート絶縁膜113の幅を規定することになり望ましい。また、絶縁膜109の間隔は、ゲート絶縁膜113の半導体層105に接した部分での厚さの2倍以上にする。さらに、絶縁膜109をマスクとして、エッチングにより半導体層104上の絶縁膜108を取り去った後、シリサイドまたは金属をソース・ドレイン領域となる半導体層104上に選択的に形成し、ソース又はドレイン電極115を形成する。これには、例えば、Ni,CoかTiを0.01〜0.03μm全面堆積し、600度以上の熱工程を経ることによって選択的にソース・ドレイン領域となる半導体層104上にNiSi,CoSiまたはTiSiを形成し、残った金属を、例えば、硫酸過酸化水素水の溶液によりエッチングして取り除いている。
【0069】
さらに、例えば、シリコン酸化膜を5〜100nmの厚さで全面に堆積し、層間絶縁膜111を形成する。次いで、例えば、シリコン酸化膜、PSG,BPSG,または、BSGを50〜1000nm全面堆積し、例えば、CMP―Chemical Mechanical Polishing―によって平坦化し、層間絶縁膜112を形成する。この後、リソグラフィーと異方性エッチングによって、ダミーゲート電極101の上部をパターニングして、図12(c)に示すように、層間絶縁膜112、層間絶縁膜111、およびバッファ絶縁膜108、絶縁膜106、側壁絶縁膜103の一部をエッチングし、ダミーゲート電極101が一部露出するようにする。
【0070】
このとき、膜112,111,108,106および103をシリコン酸化膜により形成し、絶縁膜109をシリコン窒化膜で形成しておくことにより、絶縁膜109を残したままで、膜112,111,108,106および103を選択的にエッチングすることができる。図示説明は省略するが、このエッチングの後、パターニングに用いたレジストは、膜102をエッチングする前に、例えば灰化や硫酸過酸化水素水溶液で取り除いておくことが、ゲート絶縁膜113をメタルや有機物汚染させないようにするのに望ましい。
【0071】
次いで、例えば、HBrを含んだガスによる反応性エッチングによって、ダミーゲート電極101をすべて取り除く。このとき、膜112,111,108,106および103は選択性を保つことによって残される。さらに、例えば、希フッ酸や弗化アンモニウム水溶液、またはHF蒸気によって、シリコン酸化膜から成るダミーゲート絶縁膜102をすべて取り除く。この際、シリコン酸化膜からなる膜108および膜103もエッチングされ取り除かれ、シリコン窒化膜からなる側壁絶縁膜109が取り残され、その間隔によってゲート長を規定することができる。この膜102を取り除く工程では、半導体層105にダメージを与えないように、イオンエッチングではなくウェットエッチングで行なうことが望ましい。
【0072】
次いで、例えばTiO2やAl2O3(アルミナ)、あるいは、タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム鉛からなるゲート絶縁膜113を、10〜200nmの厚さ全面堆積する。さらに、例えば、poly Si,amorphous Si,TiNW、Pt,RuO2またはIrO2からなるゲート電極114を10〜200nmの厚さ全面堆積し、図13(d)の形状を得る。この際、層間絶縁膜111と112は、膜102と同様にシリコン酸化膜によって形成されており、膜102のエッチングの際にさらに後退し、膜109より上部ではエッチング開口が大きくなる。よって、この部分のゲート電極114の幅も底部分よりも広くなり、いわゆるT-shape形状のゲートとなる。この形状は、ゲート電極の抵抗を下げ、かつ、ゲート電極とソース・ドレイン電極との容量を小さく保つのに望ましい。このときの開口幅は、層間絶縁膜111の縁が側壁絶縁膜109上で留まるようにするのが、良好なT-shape形状を形成するのに望ましい。また、ゲート絶縁膜113の均一性が良くない場合には、図13(d)に示すように、積み上げ方向上側に行くに従い一部狭くなる形状が得られる。この状態でゲート電極114を堆積すると、図13(d)に示すように、ゲート電極下部に切り欠き部(割れ目、ボイド―void―)が形成される。
【0073】
次いで、例えば、CMP―Chemical Mechanical Polishing―法により、ゲート電極114を全面平坦化しつつ膜113が露出するまでエッチングする。さらに、膜113を層間絶縁膜112が露出するまで全面エッチングすることにより、図13(e)の形状を得ている。膜113が、後のコンタクト形成工程で容易に異方性エッチングすることが可能であれば、膜113を取り除く工程は省略できる。
【0074】
これ以降は図示説明を省略するが、例えば、シリコン酸化膜はBSG,PSG,BPSGからなる層間絶縁膜118を、例えば20〜1000nm堆積した後、リソグラフィーと反応性イオンエッチングにより配線コンタクト116を形成する。コンタクト116の深さはゲート電極114またはソース・ドレイン導電体電極115に達するまでとし、コンタクト116には、例えば、AlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,W,AlSi,AlSiCu,Cu,TiNを堆積または選択成長して埋め込み形成すればよい。さらに、AlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,AlSi,AlSiCu,Cu,Wからなる金属を厚さ20〜500nm堆積し、上部の配線層117を形成して完成する。
【0075】
本第7実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法を用いれば、ゲート絶縁膜113を形成する前に、ソース・ドレイン電極の不純物を活性化しシリサイド形成しているので、高温熱工程および水素アニールなどゲート絶縁膜113の特性を悪化させるプロセスをゲート絶縁膜形成後に行なう必要はない。したがって、信頼性の高いプロセスが実現できる。
【0076】
さらに、ゲート電極の半導体領域105に対向する幅を、(ダミーゲート101の幅)+(絶縁膜103の厚さ)*2+(絶縁膜108の厚さ)*2−(ゲート絶縁膜113の側壁の厚さ)*2となり、ダミーゲート101の幅よりも小さくすることができる。したがって、リソグラフィーよりも小さいゲート長を絶縁膜103および絶縁膜108の幅を調整することにより実現することができる。
【0077】
この構造ではゲート電極114と、ソース・ドレイン領域110およびチャネル領域との位置関係を示した単体MISFET平面図を図11(a)および図11(b)に示す。両図において、符号119は、例えば、LOCOS分離やトレンチ分離から成る素子分離膜を示している。また、コンタクト116の位置を、丸印を用いて示しており、ゲート、ソース、およびドレインにそれぞれ1つのコンタクトが形成されている場合を想定している。また半導体領域は、2つのソース・ドレイン電極110、および、その間の一点鎖線により挟まれ、これとゲート電極114の実線とにより囲まれた長方形の領域となっており、ゲート電極114の下に形成された部分の境界を一点鎖線で示している。
【0078】
図11(a)では、点線で示すゲート電極114の下部幅が素子分離119で囲まれた半導体領域上で一定になるようにしている。このようにすることにより、ゲート電極のリソグラフィーが上下方向に合わせずれても、常に一定のゲート長を得ることができ、トランジスタ特性の向上に加えて記憶エラーに対しても抵抗をもたせることができる。図11(b)は、ゲート電極パターンの変形例で、素子分離119と半導体領域との境界でのゲート長(=a)は半導体領域内部のゲート長(=b)よりも長くなっている。堆積膜によって形成されているゲート絶縁膜113では、溝の開口幅が広いほど溝の底面に堆積する膜厚が大きくなっている。したがって、図11(b)の構造をとることによって、素子分離119と半導体領域との境界でのゲート絶縁膜を平面部よりも大きくすることができ、この部分での耐圧やリーク電流特性を向上させることができる。ここで、トレンチ分離を素子分離膜119に用いた場合、例えば、ダミーゲート電極102をエッチングする工程によって素子分離膜119がエッチングされ、半導体領域よりも下に素子分離膜119が形成されると、半導体領域が素子分離膜119側に凸になり、ゲート電界が集中するために、しきい値の低下が問題となる。しかし、図11(b)の構造をとることによって解決することができる。
【0079】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において絶縁膜12,111,112,113,102,103,106,108,118,109の形成方法としては、熱酸化による酸化膜形成法、30keV程度の低加速エネルギーで酸素を注入した酸化膜を形成してもよいし、絶縁膜を堆積する方法や、シリコン窒化膜を堆積する方法の何れかにより形成してもよいし、これらを組み合わせて形成してもよい。また、素子分離膜や絶縁膜形成法自身は、シリコンをシリコン酸化膜やシリコン窒化膜に変換するこれら以外の方法、例えば酸素イオンを堆積したシリコンに注入する方法や、堆積したシリコンを酸化する方法を用いてもかまわない。もちろん、この絶縁膜にシリコン窒化膜その他タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム鉛などの強誘電体膜、常誘電体膜の単層膜またはそれらの複合膜を用いることもできる。
【0080】
上記の実施形態においては、半導体層7,105としてp型Si基板を用いたが、本発明はこれに限定されず、その代わりにn型Si基板やSOI基板、GaAs基板、InP基板を用いても良い。また、n型MISFETではなくp型MISFETに適用してもよく、その場合、上述の実施形態のn型をp型、p型をn型と読み替え、さらに、ドーピング不純物種のAs、P、SbをIn、B、のいずれかと読み替え、イオン注入の場合にはAs、P、SbをIn、B、BF2のいずれかと読み替えればよい。
【0081】
ゲート電極6,10,114は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、ポーラス・シリコン、アモルファス・シリコン、SiGe混晶、SiGeC混晶、GaAs、W、Ta、Ti、Hf、Co、Pt、Pdの金属、合金、あるいはそのシリサイド、TaN、TiN、導電性ナイトライドを用いることもできる。また、これらの積層構造にしてもよい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々に変形して実施することができる。また、ダミーゲート10は、SiGe,またはSiGeCにより形成するのが好ましく、これにより、ダミーゲート10の除去工程の間のソース・ドレイン領域2に対するエッチングの選択性が高まる。
以上の第7実施形態に係るMIS型トランジスタおよびその製造方法によればソース・ドレイン領域となる半導体層の上面からチャネル形成面に掛けて傾斜面を形成しているので、ゲート電極下端からの距離を確保することができ、ゲートとソースとの間の容量、およびゲートとドレインとの間の容量をより小さく保つことができるという特有の効果を奏する。
【0082】
また、ゲート電極の形状をT字状とすることにより、ゲート電極の抵抗を下げることができ、かつ、ゲート電極とソース・ドレイン電極との容量を小さく保つことができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図2】第1実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法における各工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法の工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法における各工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図6】本発明の第4実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図7】本発明の第5実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図8】本発明の第5実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法における各工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図9】本発明の第6実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図10】本発明の第7実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図。
【図11】図10に示す半導体装置のそれぞれ異なる断面(a)および(b)の平面構成を示す平面図。
【図12】第7実施形態の半導体装置の製造工程(a)および(b)を示す断面図。
【図13】図12の続きの製造工程(d)および(e)を示す断面図。
【図14】従来のMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体基板
2 ソース・ドレイン領域
2A ソース領域
2B ドレイン領域
2a 第1の不純物拡散領域
2b 第2の不純物拡散領域
4 溝
5 高誘電体ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 チャネル形成面
9 シリコン酸化膜
10 ポリシリコン
101 ダミーゲート電極
102 ダミーゲート絶縁膜
104 半導体領域
111 絶縁膜
112 絶縁膜
113 ゲート絶縁膜
114 ゲート電極
115 導電体層
【技術分野】
【0001】
本発明はMIS型トランジスタおよびその製造方法に係り、特に駆動電流量が大きく寄生容量が小さいMIS型トランジスタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属・絶縁膜・半導体(Metal Insulator Semiconductor)−MIS−構造のトランジスタについての微細化の要請が強くなるのに伴って、現在MIS型構造のトランジスタの微細化が着々と進展している。このMISトランジスタの微細化は、大きく捉えるとゲート長に比例させてソース・ドレイン領域を形成するスケーリング則と呼ばれる手法を用いて行なわれており、具体的には、ゲート長を小さくした場合にこのゲート長が小さくなるのに応じてソースおよびドレインとなる不純物拡散領域、いわゆる拡散層の接合の深さを浅くすることにより行なわれている。
【0003】
しかしながら、ゲート長が0.2μmを下回るような微細なトランジスタにおいては、拡散の深さ(Xj)が浅くなり過ぎてしまい、ゲートにおける抵抗が増大してトランジスタ全体の寄生抵抗が増加し実質的な駆動電流が減少してしまうという問題があった。そこで、この寄生抵抗を低減させるためには、導入されるソースおよびドレインを金属シリサイド化(シリサイデーション)する際に接合の深さを浅くすることも場合により考えられるが、接合の深さを浅くすることに腐心する余り、接合が拡散層内に留まらずに基板側へ突き抜けてしまって、接合リークを引き起こすという問題があった。
【0004】
上記接合が浅い場合に、抵抗が増大したり、シリサイデーションが困難となったりするという問題は、エレベーティッドソース・ドレイン,コンケーブトランジスタ,リセストチャネルトランジスタなどと呼ばれる技術により解決が図られており、これらはトランジスタにおけるチャネル面よりもソースおよびドレインの表面を高く形成する構造を備えている(例えば、非特許文献1)。図14はこのようなコンケーブMOS構造を有するMIS型トランジスタを示しており、半導体基板1と、ソース・ドレイン領域2と、その間に位置するチャネル形成面7と、チャネル形成面7の上部に設けられたSiO2膜51と、このSiO2膜51を介してチャネル形成面7に対向して設けられたゲート電極6と、を備えている。
【0005】
図14において、ソース・ドレイン領域2はチャネル形成面7よりも半導体基板1内に属する第1の不純物拡散領域2aと、チャネル形成面7よりも外側(図においては上側)に積層された第2の不純物拡散領域2bとを含んでおり、このような第2の不純物拡散領域2bがSiO2膜5を介してゲート電極6を取り囲む構造は、ソース・ドレイン領域2に溝が形成されている構成とも考えられるし、第2の不純物拡散領域2bが嵩上げ(エレベート)された構成とも考えることができる。
【特許文献1】特開平09−116142号公報
【特許文献2】特開平07−099310号公報、
【非特許文献1】S.M.Sze Physics of Semiconductor Devices second edition, 1981, pp490
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図14に示した構造を有する従来のMIS型トランジスタにおいては、ゲート電極6がSiO2(絶縁)膜51を介してソース・ドレイン拡散層2に囲まれる構造となっており、このためゲートドレイン間容量およびソース・ドレイン間容量が増大することにより、トランジスタの動作速度が大幅に悪化してしまうという問題があった。
【0007】
上述したように、従来のMIS型トランジスタにおいては、ソース・ドレインの拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に解決することができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、ソース・ドレインの拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に実現することのできるMIS型トランジスタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の基本構成に係るMIS型トランジスタは、半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置し、かつ、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えると共に、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴している。
【0010】
また、上記第1の基本構成に係るMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置すると共に、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えるようにしても良い。
【0011】
また、上記構成において、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていても良い。
【0012】
また、上記第1の基本構成に係るMIS型トランジスタにおいて、前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていても良い。
【0013】
また、本発明の第2の基本構成に係るMIS型トランジスタの製造方法は、半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタを製造する方法であって、選択的に形成された半導体層に囲まれた前記チャネル形成面上にダミーゲート絶縁膜と、第2の半導体層を含むダミーゲート電極を少なくともリソグラフィーを含む手法により形成する工程と、前記半導体基板上のチャネル形成面となる領域を挟んでソース・ドレイン領域となる半導体層を、この半導体層上面と前記チャネル形成面との間が傾斜面となるようにしつつ、選択的に堆積させると工程と、前記第2の半導体層をマスクにして前記半導体基板の表面に不純物を拡散させて不純物拡散領域を形成する工程と、前記不純物拡散領域に挟まれた上記チャネル形成面となる部分の上に形成されたダミーゲート電極をエッチングにより除去する工程と、露出された上記チャネル形成面上に高誘電体膜よりなる絶縁膜を全面に堆積させて中心側に溝状の空間を有する断面形状でゲート絶縁膜を形成する工程と、中心側に溝状の空間を有する断面形状で全面に形成された前記ゲート絶縁膜の上面にゲート電極を堆積させて、断面T字形状となったゲート電極を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上詳細に説明したように、本発明に係るMIS型トランジスタおよびその製造方法によれば、ソース・ドレインを構成する不純物拡散層の抵抗を低減させることができると同時に、ゲートの寄生容量を低減させることができ、トランジスタの動作速度を大幅に向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るMIS型トランジスタは、MOS型トランジスタにおいてゲート絶縁膜たる第1の絶縁膜材利用の平均誘電率が前記溝の上面とゲート材料間を絶縁する第2の絶縁膜の平均誘電率より高くなるように構成しても良い。
【0016】
さらに、このようなMOS型トランジスタにおいて前記ゲート絶縁膜たる第1の絶縁膜は、SiO2 膜よりも高い誘電率を持つ絶縁膜とそれを保護するバッファ絶縁膜の積層構造により構成するようにしても良い。
【0017】
また、上記MIS型トランジスタにおいてゲート絶縁膜の実膜厚を平均誘電率で割ることによって求められるキャパシタ換算膜厚と等しいキャパシタ換算膜厚を有する第2の絶縁膜の実膜厚より大きい量だけ前記半導体基板表面より高い位置にゲート電極の下面が位置するように構成しても良い。以上のように、本発明によれば、ソース・ドレインの拡散層抵抗の低減とゲート寄生容量の低減とを同時に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るMIS型トランジスタおよびその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタの概略構成を示す断面図である。なお、図においては、表示を明瞭にするため断面を表すハッチングを省略する。また、図14と同一符号を付した構成要素は、従来のMIS型トランジスタと同一または相当する構成要素を示している。
【0020】
図1において、符号1は半導体基板であり、この半導体基板1の表面側にはチャネル領域7を介してソース・ドレインとして用いられる不純物領域2が設けられている。この不純物領域2は、トランジスタとして動作する際に一方がドレイン電極、他方がソース電極として用いられるものであり、両者の間のチャネル形成面7に掛けての部分には凹部または溝部4が形成されている。溝部4内には保護膜3を介して高誘電体ゲート絶縁膜5が設けられており、高誘電体ゲート絶縁膜5の上部側にはゲート電極6が設けられている。ソース・ドレインとして用いられる不純物領域2とゲート電極6との間は絶縁膜13により絶縁されている。高誘電体ゲート絶縁膜5は図14に示された従来のMIS型トランジスタにおけるSiO2膜5の比誘電率3.9より高い誘電率を有している。
【0021】
上記構成において重要なことは、第2の不純物拡散領域2bと絶縁膜13との間のソース・ドレイン上面のレベルLa が、前記チャネル形成面7のレベルLb よりは半導体基板1より離れて位置すると共にゲート電極6の下面のレベルLc よりは半導体基板1の近くに位置している点である。
【0022】
前記不純物領域2は、図14に示した従来のMIS型トランジスタと同様に、チャネル形成面7よりも半導体基板1内に属する第1の不純物拡散領域2aと、チャネル形成面7よりも外側(図においては上側)に積層された第2の不純物拡散領域2bと、を含んでいる。また、前記保護膜3はゲート絶縁膜5を保護するために例えばSiNやオキシナイトライド膜等により形成されており、チャネル形成面7とゲート絶縁膜5との間に位置する第1の保護膜3aと、第2の不純物拡散領域2bとの間に位置する第2の保護膜3bとを含んでいる。
【0023】
以上の構成において、本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタは、図14の従来のMIS型トランジスタと同様に、電流が流れるチャネルが形成されているチャネル形成面7よりソース・ドレインとして用いられる不純物拡散領域2が第2の不純物拡散領域2bの厚さ分だけ半導体基板1の逆側に形成されている。このため、チャネル形成面7より下側の第1の不純物拡散領域2aだけにソース・ドレイン領域が形成される場合と比較して、拡散層抵抗を低くすることができ、また、ニッケル(Ni),チタン(Ti)等とのシリサイドを形成する際にも接合面までシリサイド化が進むことにより生じる接合リークの発生を避けることができる。
【0024】
また、ゲート電極6の下面8をソース・ドレインとして用いられる不純物拡散領域2の上面よりも高い位置、すなわち半導体基板1側より離れる側に設けることにより、性能の低下を引き起こすゲート電極とソース・ドレインとの容量を図14に示す従来型コンケーブMOSよりも大幅に低減することができる。
【0025】
さらに、ゲート電極6とソース・ドレイン電極2bとの距離を従来例よりも離すことができ、電界を小さく保つことができる。したがって、これらの間のリーク電流を減少させて、絶縁破壊を防ぐことができる。この特徴は以下に説明する全ての実施形態に当てはまることである。
【0026】
また、図示説明を省略したが、チャネル形成面とソース・ドレイン領域の上面と同一平面とした従来のMIS型トランジスタにおいて、ゲート電極とチャネル形成面との間のゲート絶縁膜をSiO2膜により形成したものとすると、ゲート電極6の下面8をこのSiO2膜の厚さより面7から高く設けると共に、ゲート電極とソース・ドレインを絶縁する絶縁膜13をSiO2膜とすることにより、平面型の従来MOSトランジスタよりも寄生容量を低減することができる。
【0027】
例えば、従来技術ではゲート長が0.1ミクロンの場合、ゲート酸化膜の厚さは3nm程度にスケーリングされるが、本発明を比誘電率が約25のTa2O5と1nmのSiN(比誘電率7.5)の保護膜でデバイス設計すると、トランジスタの表面電荷量Qsを等しくするために、SiO2の換算膜厚3nmを保つものとして、第1の保護膜3aのSiN実膜厚は1nmとなり、SiO2換算膜厚は「1nm×3.9/7.5=0.52」nmとなり、高誘電体ゲート絶縁膜5(Ta2O5)のSiO2 換算膜厚は「3nm−0.52nm=2.48nm」となり、実膜厚は「2.48nm×25/3.9=15.9nm」となる。
【0028】
すなわちソース・ドレインとなる不純物拡散領域2の溝の深さを「15.9nm(ゲート絶縁膜5の分)+1nm(保護膜3aの分)=16.9nm」とすればゲート電極6の下面8がソース・ドレイン表面と同じ高さとなり、13.9nmとすれば従来のスケーリングトレンド上の3nm酸化膜を用いたMOSトランジスタと同程度の寄生容量となる。ここで、従来のスケーリングによれば、トランジスタの拡散層の深さは0.1ミクロントランジスタであっても40nm程度であり、これより13.9nm即ち35%拡散層を厚くして寄生抵抗を下げることができる。
【0029】
ここで、SiO2の比誘電率をε、SiO2膜の膜厚をTSiO2、高誘電体ゲート絶縁膜5の比誘電率をε5、実膜厚をT5、保護膜3の比誘電率をε3、実膜厚をT3とするとTSiO2厚さのSiO2膜と同等の平行平板容量を与える膜厚は、下式
TSiO2/εSiO2 = T3/ε2 + T5/ε5
を満たせば良い。保護膜に1nm厚さのSiN膜を用い、SiO2,SiNの比誘電率に3.9,7.5をそれぞれ用いると、
T5=ε5(TSiO2/3.9−1/7.5)(nm)となり従来スケーリングトレンド上の厚さTSiO2とし、それと同等の寄生容量となる溝の赤さはゲート−ソース・ドレイン間の絶縁膜材料をSiO2または同等の誘電率を持つものとすると、
Dconcave =ε5(TSiO2/3.9−1/7.5)−TSiO2
により与えられる。これよりも溝が浅ければより寄生容量が小さくなる。
【0030】
比誘電率約80でありかつ熱的に安定でその点からは保護膜の必要がないチタン酸化膜TiO2膜を用いた場合は、保護膜分を取り除いた同様の計算で、
Dconcave =ε5×TSiO2/3.9−TSiO2
となり、溝深さを58.5nmとすれば、従来の3nm酸化膜を用いたMOSトランジスタと同程度の寄生容量となり、かつ、58.5nm即ち従来の40nm深さの拡散層を用いた場合と比較し150%拡散層を厚くして寄生抵抗を低減させることができる。
【0031】
次に、図2(a)ないし図2(e)を用いて本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法について説明する。まず、図2(a)に示すように、半導体基板としてのシリコン基板1上にSiO2膜9を堆積してリソグラフィーによりエッチングする。次に、SiO2膜9をマスクとして反応性イオンエッチング(RIE−Reactive Ion Etching−)により溝4を形成する(図2(b))。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、SiO2膜9およびシリコン基板1の溝4の表面に薄い犠牲酸化膜11を積層した後、ポリシリコン10を堆積して、化学的機械的研磨法(−CMP−Chemical Mechanical Polishing)あるいはエッチバック技術等を用いてSiO2膜9の上面まで平坦化する。このとき、薄い犠牲酸化膜11を積層しておくのは、ポリシリコン10とシリコン基板1とを分離するためである。
【0033】
次に、図2(d)に示すように、前記シリコン酸化(SiO2)膜9を除去した後、ポリシリコン10をマスクにしてイオン注入技術あるいは固相拡散技術等を用いてソース・ドレイン領域2を形成する。次に、ポリシリコン10と犠牲酸化膜11とを例えば化学的ドライエッチング(CDE−Chemical Dry Etching−)等により除去する。その後、図2(e)に示すように保護膜としてのSiN膜3を堆積あるいは熱窒化により形成する。次に、スパッタ技術等により高誘電体膜5を形成し、さらにゲート電極6を堆積する。最後に、シリコン(Si)酸化膜12を形成して図1に示すMIS型トランジスタと同一構造の半導体装置が製造されることになる。
【0034】
次に、図3(a)ないし図3(e)を用いて本発明の第2実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法および構成を説明する。まず、図3(a)ないし図3(e)に従いMIS型トランジスタの製造方法について説明する。図3(a)に示す半導体基板1上に、犠牲酸化膜11を介してダミーポリシリコン10を形成してパターニングし、さらに酸化してダミーポリシリコン10を酸化膜で包んだ後、図3(b)に示すように、ソース・ドレイン領域2をイオン注入等により形成する。
【0035】
次に、選択エピタキシャル成長技術によりシリコンをかさ上げ(elevate )した後、さらに追加のイオン注入によりかさ上げ部分に再度不純物を注入して拡散させる。第1実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法は、溝4をまず形成しその溝に対して上方から不純物を注入拡散していたのでソース・ドレイン領域2の深さの制御が難しかったが、この第2実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法においては、チャネル形成面7よりも下側になるソース・ドレイン領域2の深さがチャネル形成面7からの不純物の注入の度合で決まるので制御がしやすいという効果がある。
【0036】
次に、ポリシリコン10を残したままソース・ドレイン領域2の上にシリコン(Si)酸化膜12を堆積させて、ポリシリコン10をストッパとしてCMP技術によりシリコン酸化膜12をポリシリコン10の上面まで平坦化する。ここで、図3(c)に示すようにポリシリコン10と犠牲酸化膜11とをCDE等で剥離し、シリコン酸化膜12およびソース・ドレイン領域の側面からチャネル形成面7の上面にかけて窒化シリコン(SiN)保護膜3を堆積させる。
【0037】
次に、図3(d)に示すように高誘電体ゲート絶縁膜5をスパッタ、CVD等によりソース・ドレイン領域2の上面よりも高い位置まで堆積する。このような工程を採用する際に、仮に高誘電体ゲート絶縁膜5の膜厚が溝の深さより浅い場合にはゲート電極とソース・ドレインの間の絶縁を保護膜3で保たねばならず、本実施形態のように高誘電体ゲート絶縁膜5を溝4より高く設けた場合と比較して、保護膜3の厚さを厚くしなければならなくなる。
【0038】
次に、図3(e)に示すように、高誘電ゲート絶縁膜5の上部にゲート電極6をスパッタ、CVD等によりシリコン酸化膜12と略々同一の高さまで堆積させる。また、上記のように、仮に高誘電体ゲート絶縁膜五の膜厚が溝の深さよりも浅い場合には、ゲート電極6とソース・ドレイン領域2の上面との距離が保護膜3を介して離隔するだけで最も近接することになり、この部分の耐圧がクリティカルとなるので、このような状態においてはその電気的特性から
Dconcave =ε5(TSiO2/3.9−1/7.5)−TSiO2
を満たすようにしていた。したがって、トランジスタの耐圧を向上させるには溝部分をより浅くすることが望ましい。あるいは溝上部での保護膜3の厚さを下部より厚くすることも耐圧の向上にとって望ましい。そのためには、図3(d)に示す工程においてCDE等を行なうことにより、高誘電体ゲート絶縁膜5とソース・ドレイン領域2との間を僅かにエッチングして埋め戻すこと等で実現する。
【0039】
以上のような第2実施形態のMIS型トランジスタの製造方法によれば、SiO2膜をマスクにして溝4を形成してからソース・ドレイン領域2を形成する第1実施形態に係る製造方法とは異なる工程を経て、略々同一の構成のトランジスタを得ることができる。ただし、基板1の上面に溝4を形成するものと考えるか、基板1にソース・ドレイン領域2を形成してチャネル形成面7のレベルからこのソース・ドレイン領域2をさらに嵩上げするものと考えるかの違いがあるのみである。
【0040】
上記第1および第2実施形態に係るMIS型トランジスタにおいては、何れも高誘電体ゲート絶縁膜5とソース・ドレイン領域2との間に保護膜3を形成していたが、高誘電体ゲート絶縁膜5の材料あるいはプロセスの低温化等を調整することにより、保護膜3が必要でない場合もある。このように、保護膜3を設けないようにした場合の第3実施形態に係るMIS型トランジスタが図4に示されている。図4においては、半導体基板としてのシリコン基板1のチャネル形成面7と高誘電体ゲート絶縁膜5との間に保護膜(図1における保護膜3a)が設けられておらず、ゲート絶縁膜5の側壁と第2の不純物拡散領域2bとの間のみに保護膜3bが設けられている構成となっている。
【0041】
次に、図5(a)ないし図5(e)を用いて本発明の第4の実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法について説明する。図5(a)ないし図5(c)までの工程については、基本的には第1あるいは第2実施形態に係るMISトランジスタの製造方法と略同様に形成するものとする。次に、図5(b)に示す犠牲酸化膜11とポリシリコンを10をCDE等により剥離して、シリコン酸化膜12およびソース・ドレイン領域2の側面からチャネル形成面7の上面にかけて窒化シリコン(SiN)保護膜3を堆積させ、高誘電体ゲート絶縁膜5をCVDまたはスパッタ等により堆積させる。
【0042】
次に、図5(c)に示すように、CVDまたはスパッタ等により堆積させた高誘電体ゲート絶縁膜5をCMP技術を用いて酸化膜12の上面まで平坦化する。
【0043】
この第3実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法においては、高誘電体ゲート絶縁膜5の膜厚をシリコン酸化膜12の厚さと溝4の深さにより決定しているのでゲート絶縁膜5の膜厚が制御し易いという優れた効果を奏する。
【0044】
ただし、この第4実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法の場合にはゲート電極6はリソグラフィーを再度行なうことにより形成されているので、溝4にゲート電極6をセルフアラインさせることは難しい。このため、図5(e)に示すように、溝4の開口面積よりも大きく形成されることになる。したがって、ゲート電極6の寄生容量が幾分増加することになるが、シリコン酸化膜12の膜厚が充分に厚く、また、シリコン酸化膜12の誘電率も小さいため、大きな影響を受けることはない。
【0045】
図6には、図5(a)ないし図5(e)に示された製造方法により製造された第4実施形態に係るMIS型トランジスタの断面が示されている。図6において、MIS型トランジスタは、半導体基板としてのシリコン基板1と、チャネル形成面7よりも基板1側に位置する第1の不純物拡散領域2aとチャネル形成面7よりもゲート電極6側に位置する第2の不純物拡散領域2bを含むソース・ドレイン領域2と、シリコン酸化膜12と、シリコン酸化膜12および第2の不純物拡散領域2bに形成された溝4の内壁に設けられた保護膜3と、この保護膜3を介して溝4内に形成された高誘電体ゲート絶縁膜5と、このゲート絶縁膜5上に保護膜3により囲繞される範囲よりも広い面積となるように形成されたゲート電極6と、を備えている。
【0046】
なお、上述した第1ないし第3実施形態に係るMIS型トランジスタは、ゲート電極6の幅が溝4内に位置するゲート絶縁膜5と同一の幅となるように構成するものと説明し、また、第4実施形態に係るMIS型トランジスタはセルフアラインさせることの困難さからゲート絶縁膜5よりもゲート電極6の方が広範囲となるように形成されているものと説明したが、本発明はこれに限定されず、図7に示す第5実施形態のように、例えばLDD(Lightly Doped Drain )構造におけるゲート電極6に側壁を設けるタイプのトランジスタについても適用できることは勿論である。
【0047】
第5実施形態に係るMIS型トランジスタを示す図7において、符号1は半導体基板としてのシリコン基板、7はチャネル形成面、2は第1の不純物拡散領域2aと第2の不純物拡散領域2bを含むソース・ドレイン領域、3は保護膜、5は高誘電体ゲート絶縁膜、6はゲート電極、8はゲート電極6の周囲に設けられた二酸化シリコン(SiO2)の側壁である。
【0048】
図8(a)ないし図8(e)は第5実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法を示す工程図である。図8(a),図8(b)に示すように、半導体基板1上にゲート絶縁膜となるSiN膜3aと、例えばTa2O5からなる高誘電体膜5と、ゲート電極となるTiNとポリシリコン6とを順次堆積し、図8(c)に示すようにエッチングによりポリシリコン6からゲート電極となる部分を形成する。次に、図8(d)に示すように、CVD等によりゲート電極6の周囲にSiO2の側壁8を形成し、ゲート電極6および側壁8をマスクとしてCDE等によりゲート絶縁膜5を形成する。
【0049】
最後に、図8(e)に示すように、ポリシリコンのゲート電極6および側壁8とゲート絶縁膜5との積層構造をマスクに用いてエッチングした後、側壁絶縁膜3bを形成して、ソース・ドレインをせり上げして不純物拡散領域2bを形成した後、イオン注入および固相拡散等によりソース・ドレイン領域2を形成する。このソース・ドレイン領域2は、第1ないし第4実施形態と同様に、チャネル形成面7よりも基板1の内部側に位置するように形成された第1の不純物拡散領域2aと、チャネル形成面7よりもゲート電極6側に近く、かつ、その上面がゲート電極6の下面よりも低い位置である第2の不純物拡散領域2bと、よりなるという本願発明の要旨を備えている。
【0050】
図8(a)ないし図8(e)に示す工程により形成された第5実施形態に係るMIS型トランジスタは図7に示すような構成を有しており、高誘電体ゲート絶縁膜5の周囲、少なくとも下面側と側壁側は保護膜3により囲まれており、ゲート絶縁膜5の下側と基板1のチャネル形成面7との間は第1の保護膜3aとなり、第2の不純物拡散領域2bとゲート絶縁膜5との間は第2の保護膜3bとなっている。
【0051】
なお、本発明は上述した第1ないし第5実施形態に限定されず、図9に示される構成を備える第6実施形態に係るトランジスタにも敷衍することができる。図9においては、p+半導体基板1と、チャネル形成面7と、ソース領域2Aと、ドレイン領域2Bと、高誘電体ゲート絶縁膜5と、ゲート電極6とを備えている点では上記幾つかの実施形態、特に第5実施形態のMIS型トランジスタと略々同一の構成である。
【0052】
図9に示される第6実施形態に係るトランジスタでは、それぞれの電極領域に低抵抗コンタクト15を介してそれぞれの端子、すなわちゲート端子16,ソース端子17およびドレイン端子18が設けられている。また、チャネル形成面7とゲート絶縁膜5との間には保護膜3aが設けられ、さらにゲート電極6低抵抗コンタクト15およびゲート端子16の全体を囲む側壁8との間にも保護膜3bが設けられている。
【0053】
上記ゲート絶縁膜5は、0xが1.5nm以下に相当するように構成されており、低抵抗コンタクト15は、「Rcontact <10−8Ωcm2」の抵抗値を有し、チャネル形成面7は「Rp 〜15nm,dRp 〜7nm」の極浅チャネル(retrograde channel)である。また、ソース領域2Aおよびドレイン領域2Bは「Xj <10nm,R<16Ωμm」の低抵抗で極薄に嵩上げされた(elevated)第2の不純物拡散領域2bとなるように形成されている。
【0054】
このような構成を有する第6実施形態に係るトランジスタにおいても、ソース・ドレイン領域の上面がチャネル形成面よりもゲート電極側に位置し、かつ、ゲート電極の底面よりも基板側に位置するという本願発明の要旨を充足しており、本願発明に係るMIS型トランジスタの好適な実施形態の1つとなっているものである。
【0055】
次に、図10ないし図13(e)を用いて、本発明の第7実施形態に係る半導体装置について説明する。まず、図10に本発明の第7実施形態に係る半導体装置の断面構造を示している。
【0056】
図10において、例えばp型Siからなる半導体層105の上部に、例えばTiO2やアルミナ、あるいは、タンタル酸化膜、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム鉛からなるゲート絶縁膜113を介して、例えば、poly Si(多結晶シリコン),amorphous Si(非晶質シリコン),TiNやW、Pt,RuO2,IrO2からなるゲート電極114が形成されている。ここで、ゲート絶縁膜 113の半導体層105に接する部分での厚さをt(nm)、比誘電率をεとすると、t<1.3εとなる関係を満たしている。
【0057】
また、ゲート電極の両側の105の領域内には、例えば、P,SbまたはAsをイオン注入または固相拡散して成長させると共に、前記半導体層105の導電性とは逆の導電性を有するソース拡散層およびドレイン拡散層110が形成されてn型MISFETを形成している。さらに、ソースおよびドレイン拡散層110の上部には、例えば、P,SbまたはAsを添加した、Si,SiGe,SiGeCからなる半導体領域104が形成されている。この半導体領域104はゲート絶縁膜113と半導体層105との界面よりも積み上げ方向上方に形成され、いわゆる嵩上げされた(elevated)ソース・ドレイン構造となっている。
【0058】
さらに、ゲート絶縁膜113のゲート電極114が形成されていない側の側壁には、例えばシリコン窒化膜からなる絶縁膜109が形成されている。また、絶縁膜109と導電領域104との間には、例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜108が形成されている。さらに、領域104の上面で、絶縁膜108および113が形成されていない上面には、例えばコバルトシリサイド、ニッケルシリサイド、またはチタンシリサイドからなる導電体層115が形成されている。この第7実施形態の特徴的な構成は、導電領域104の上面の高さが、ゲート電極114の底部の高さよりも低く形成されていることにある。このようにすることにより、ゲート電極114と導電領域104との間の容量を小さく保ちつつ、ソース・ドレイン領域を嵩上げされた(elevated)構造にすることができ、導電領域104の接合深さを浅くし、短チャネル効果が小さく低抵抗なソース・ドレインを実現することができる。
【0059】
さらに、導電層115の上面には、例えば、シリコン酸化膜からなる絶縁膜111および絶縁膜112が積層して形成されている。ゲート絶縁膜113の上面高さは、この絶縁膜112の上面高さよりも低く形成されることが、ゲート絶縁膜113のエッチングが困難な場合でもコンタクト116を良好な形状で形成するためには望ましい。さらに、ゲート電極114、ゲート絶縁膜113、絶縁膜112の上部には、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる絶縁膜118が形成されている。また、ゲート電極114の上部および電極115の上部には例えばAlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,W,AlSi,AlSiCu,Cu,TiNからなるコンタクト電極116が形成されている。
【0060】
さらに、コンタクト電極116の上部にはAlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,AlSi,AlSiCu,Cu,Wからなる金属を堆積し、上部の配線層117が形成されている。図10においてはゲート電極に対するコンタクト電極116および配線層117を、ソース・ドレイン電極に対するコンタクト電極116および配線層117と共に同一断面に示したが、これらは、同一断面に設けられる必要はなく、図11(a)および図11(b)に示すように、それぞれ別の平面で切断した異なる高さの断面に形成するようにしても良い。
【0061】
次に、図12(a)ないし図13(e)を用いて、この第7実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明する。まず、例えばボロン濃度1015cm−3のp型領域を形成した半導体層105を準備する。次いで、このp型半導体層105にボロンを1012〜1015cm−2程度イオン注入してウェル拡散し、この半導体層105の濃度を最適化してもよい。イオン注入のエネルギーは、例えば100eVから1000eVと間とする。これらWell領域の濃度は1015cm−3〜1019cm−3とすればよい。ついで、図示していないが、例えばLOCOS分離やトレンチ分離からなる素子分離領域を形成する。
【0062】
次いで、p型半導体層105にボロンやインジウムをイオン注入してウェル拡散し、半導体層105の濃度を最適化してもよい。次に、半導体層105の表面を例えば、3〜50nm酸化または窒化してダミーゲート絶縁膜102を形成し、ダミーゲート電極101となる多結晶シリコン膜を例えば、10〜200nm全面に堆積する。さらに、絶縁膜106となるシリコン酸化膜を、例えば、2〜200nm全面堆積または多結晶シリコン膜の酸化によって形成した後、リソグラフィーと反応性イオンエッチングにより絶縁膜106およびダミーゲート電極101となる多結晶シリコン膜を絶縁膜102上まで達するように加工して、ダミーゲート電極101を形成する。次に、絶縁膜103となるシリコン酸化膜を、例えば2〜50nmの厚さで全面に堆積させた後、異方性エッチングにより加工して、ダミーゲート電極101の切り立った側壁上に側壁絶縁膜103を残している。この後、この絶縁膜103をマスクとして、絶縁膜102をエッチングし、半導体層105を露出させる。この側壁絶縁膜103とリソグラフィーの直前に堆積した絶縁膜106がダミーゲート電極101を取り囲む形となり、ソース・ドレイン層に選択的に半導体を成長することが容易になる。
【0063】
次いで、図12(a)のように例えば、SiやSiGe混晶、SiGeC混晶を選択エピタキシャル成長法または選択堆積法を用いることによって、例えば、厚さ5〜100nmの厚さに半導体層104を形成する。このとき、ドーピングも同時に行ない、半導体層104はドナー不純物添加を1016〜1021cm−3の濃度でAs,Sb,またはPを添加するのが低抵抗の浅い接合を形成するのに望ましい。半導体層104は、例えば、AsH3やPH3を、AsまたはPを半導体層104の表面に吸着させ、その後例えば、SiやSiGe混晶、SiGeC混晶を選択エピタキシャル成長により形成してもよい。
【0064】
また、特に、半導体基板を{100}面とし、ゲート加工を<100>方位に平行にパターニングすることによって、図12(a)のようにゲート側壁部で{311}面が形成され、ゲート側壁から上に向かうに従って離れる構造を形成することができるため、ゲートとソースとの間の容量、および、ゲートとドレインとの間の容量をより小さく保つことができる。
【0065】
次に、例えば、700-1100℃で、0.01〜60min、例えばArまたはN2雰囲気で加熱することによって、図12(b)のように不純物添加n型領域110をp型半導体層105内に拡散する工程を加える。拡散時間は、典型的には、n型領域110がダミーゲート層101の下まで形成されるようにし、後に形成されるゲート電極114の下にまで達するように形成されることが電流駆動能力を大きくするのに望ましい。
【0066】
半導体層104およびn型領域110を形成する工程は、例えば、まず、AsやP,SBを加速電圧1〜100eV、1013〜1016cm−2イオン注入してn型領域110を形成し、その後に半導体層104を選択エピタキシャル成長をする工程と代替してもよい。また、不純物を意図的に添加しない半導体層104を形成した後に、AsやP,Sbを加速電圧1〜300eV、1013〜1016cm−2イオン注入してn型領域110を形成する工程と代替してもよい。
【0067】
さらに、例えば、シリコン酸化膜を2〜100nm全面堆積し、絶縁膜108を形成する。次いで、例えば、シリコン窒化膜を10〜300nm全面堆積し、異方性エッチングによって切り立った側壁絶縁膜108の側壁に絶縁膜109を形成することにより、図12(b)に示す形状を得ることができる。ここで、絶縁膜108は、絶縁膜109の応力緩和とエッチング選択性およびダメージ緩和のためのバッファ層であり、絶縁膜109の応力、半導体層104に対する絶縁膜109のエッチング選択性について特に問題が無ければ、絶縁膜108は設けなくても構わない。
【0068】
また、絶縁膜108と側壁絶縁膜103の厚さの和は、絶縁膜102の厚さよりも薄くなるようにすることにより、絶縁膜102を剥離する際に、絶縁膜109が露出してゲート絶縁膜113の幅を規定することになり望ましい。また、絶縁膜109の間隔は、ゲート絶縁膜113の半導体層105に接した部分での厚さの2倍以上にする。さらに、絶縁膜109をマスクとして、エッチングにより半導体層104上の絶縁膜108を取り去った後、シリサイドまたは金属をソース・ドレイン領域となる半導体層104上に選択的に形成し、ソース又はドレイン電極115を形成する。これには、例えば、Ni,CoかTiを0.01〜0.03μm全面堆積し、600度以上の熱工程を経ることによって選択的にソース・ドレイン領域となる半導体層104上にNiSi,CoSiまたはTiSiを形成し、残った金属を、例えば、硫酸過酸化水素水の溶液によりエッチングして取り除いている。
【0069】
さらに、例えば、シリコン酸化膜を5〜100nmの厚さで全面に堆積し、層間絶縁膜111を形成する。次いで、例えば、シリコン酸化膜、PSG,BPSG,または、BSGを50〜1000nm全面堆積し、例えば、CMP―Chemical Mechanical Polishing―によって平坦化し、層間絶縁膜112を形成する。この後、リソグラフィーと異方性エッチングによって、ダミーゲート電極101の上部をパターニングして、図12(c)に示すように、層間絶縁膜112、層間絶縁膜111、およびバッファ絶縁膜108、絶縁膜106、側壁絶縁膜103の一部をエッチングし、ダミーゲート電極101が一部露出するようにする。
【0070】
このとき、膜112,111,108,106および103をシリコン酸化膜により形成し、絶縁膜109をシリコン窒化膜で形成しておくことにより、絶縁膜109を残したままで、膜112,111,108,106および103を選択的にエッチングすることができる。図示説明は省略するが、このエッチングの後、パターニングに用いたレジストは、膜102をエッチングする前に、例えば灰化や硫酸過酸化水素水溶液で取り除いておくことが、ゲート絶縁膜113をメタルや有機物汚染させないようにするのに望ましい。
【0071】
次いで、例えば、HBrを含んだガスによる反応性エッチングによって、ダミーゲート電極101をすべて取り除く。このとき、膜112,111,108,106および103は選択性を保つことによって残される。さらに、例えば、希フッ酸や弗化アンモニウム水溶液、またはHF蒸気によって、シリコン酸化膜から成るダミーゲート絶縁膜102をすべて取り除く。この際、シリコン酸化膜からなる膜108および膜103もエッチングされ取り除かれ、シリコン窒化膜からなる側壁絶縁膜109が取り残され、その間隔によってゲート長を規定することができる。この膜102を取り除く工程では、半導体層105にダメージを与えないように、イオンエッチングではなくウェットエッチングで行なうことが望ましい。
【0072】
次いで、例えばTiO2やAl2O3(アルミナ)、あるいは、タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム鉛からなるゲート絶縁膜113を、10〜200nmの厚さ全面堆積する。さらに、例えば、poly Si,amorphous Si,TiNW、Pt,RuO2またはIrO2からなるゲート電極114を10〜200nmの厚さ全面堆積し、図13(d)の形状を得る。この際、層間絶縁膜111と112は、膜102と同様にシリコン酸化膜によって形成されており、膜102のエッチングの際にさらに後退し、膜109より上部ではエッチング開口が大きくなる。よって、この部分のゲート電極114の幅も底部分よりも広くなり、いわゆるT-shape形状のゲートとなる。この形状は、ゲート電極の抵抗を下げ、かつ、ゲート電極とソース・ドレイン電極との容量を小さく保つのに望ましい。このときの開口幅は、層間絶縁膜111の縁が側壁絶縁膜109上で留まるようにするのが、良好なT-shape形状を形成するのに望ましい。また、ゲート絶縁膜113の均一性が良くない場合には、図13(d)に示すように、積み上げ方向上側に行くに従い一部狭くなる形状が得られる。この状態でゲート電極114を堆積すると、図13(d)に示すように、ゲート電極下部に切り欠き部(割れ目、ボイド―void―)が形成される。
【0073】
次いで、例えば、CMP―Chemical Mechanical Polishing―法により、ゲート電極114を全面平坦化しつつ膜113が露出するまでエッチングする。さらに、膜113を層間絶縁膜112が露出するまで全面エッチングすることにより、図13(e)の形状を得ている。膜113が、後のコンタクト形成工程で容易に異方性エッチングすることが可能であれば、膜113を取り除く工程は省略できる。
【0074】
これ以降は図示説明を省略するが、例えば、シリコン酸化膜はBSG,PSG,BPSGからなる層間絶縁膜118を、例えば20〜1000nm堆積した後、リソグラフィーと反応性イオンエッチングにより配線コンタクト116を形成する。コンタクト116の深さはゲート電極114またはソース・ドレイン導電体電極115に達するまでとし、コンタクト116には、例えば、AlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,W,AlSi,AlSiCu,Cu,TiNを堆積または選択成長して埋め込み形成すればよい。さらに、AlやPやBをドープした多結晶シリコン、WSi,TiSi,AlSi,AlSiCu,Cu,Wからなる金属を厚さ20〜500nm堆積し、上部の配線層117を形成して完成する。
【0075】
本第7実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法を用いれば、ゲート絶縁膜113を形成する前に、ソース・ドレイン電極の不純物を活性化しシリサイド形成しているので、高温熱工程および水素アニールなどゲート絶縁膜113の特性を悪化させるプロセスをゲート絶縁膜形成後に行なう必要はない。したがって、信頼性の高いプロセスが実現できる。
【0076】
さらに、ゲート電極の半導体領域105に対向する幅を、(ダミーゲート101の幅)+(絶縁膜103の厚さ)*2+(絶縁膜108の厚さ)*2−(ゲート絶縁膜113の側壁の厚さ)*2となり、ダミーゲート101の幅よりも小さくすることができる。したがって、リソグラフィーよりも小さいゲート長を絶縁膜103および絶縁膜108の幅を調整することにより実現することができる。
【0077】
この構造ではゲート電極114と、ソース・ドレイン領域110およびチャネル領域との位置関係を示した単体MISFET平面図を図11(a)および図11(b)に示す。両図において、符号119は、例えば、LOCOS分離やトレンチ分離から成る素子分離膜を示している。また、コンタクト116の位置を、丸印を用いて示しており、ゲート、ソース、およびドレインにそれぞれ1つのコンタクトが形成されている場合を想定している。また半導体領域は、2つのソース・ドレイン電極110、および、その間の一点鎖線により挟まれ、これとゲート電極114の実線とにより囲まれた長方形の領域となっており、ゲート電極114の下に形成された部分の境界を一点鎖線で示している。
【0078】
図11(a)では、点線で示すゲート電極114の下部幅が素子分離119で囲まれた半導体領域上で一定になるようにしている。このようにすることにより、ゲート電極のリソグラフィーが上下方向に合わせずれても、常に一定のゲート長を得ることができ、トランジスタ特性の向上に加えて記憶エラーに対しても抵抗をもたせることができる。図11(b)は、ゲート電極パターンの変形例で、素子分離119と半導体領域との境界でのゲート長(=a)は半導体領域内部のゲート長(=b)よりも長くなっている。堆積膜によって形成されているゲート絶縁膜113では、溝の開口幅が広いほど溝の底面に堆積する膜厚が大きくなっている。したがって、図11(b)の構造をとることによって、素子分離119と半導体領域との境界でのゲート絶縁膜を平面部よりも大きくすることができ、この部分での耐圧やリーク電流特性を向上させることができる。ここで、トレンチ分離を素子分離膜119に用いた場合、例えば、ダミーゲート電極102をエッチングする工程によって素子分離膜119がエッチングされ、半導体領域よりも下に素子分離膜119が形成されると、半導体領域が素子分離膜119側に凸になり、ゲート電界が集中するために、しきい値の低下が問題となる。しかし、図11(b)の構造をとることによって解決することができる。
【0079】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において絶縁膜12,111,112,113,102,103,106,108,118,109の形成方法としては、熱酸化による酸化膜形成法、30keV程度の低加速エネルギーで酸素を注入した酸化膜を形成してもよいし、絶縁膜を堆積する方法や、シリコン窒化膜を堆積する方法の何れかにより形成してもよいし、これらを組み合わせて形成してもよい。また、素子分離膜や絶縁膜形成法自身は、シリコンをシリコン酸化膜やシリコン窒化膜に変換するこれら以外の方法、例えば酸素イオンを堆積したシリコンに注入する方法や、堆積したシリコンを酸化する方法を用いてもかまわない。もちろん、この絶縁膜にシリコン窒化膜その他タンタル酸化膜、チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム鉛などの強誘電体膜、常誘電体膜の単層膜またはそれらの複合膜を用いることもできる。
【0080】
上記の実施形態においては、半導体層7,105としてp型Si基板を用いたが、本発明はこれに限定されず、その代わりにn型Si基板やSOI基板、GaAs基板、InP基板を用いても良い。また、n型MISFETではなくp型MISFETに適用してもよく、その場合、上述の実施形態のn型をp型、p型をn型と読み替え、さらに、ドーピング不純物種のAs、P、SbをIn、B、のいずれかと読み替え、イオン注入の場合にはAs、P、SbをIn、B、BF2のいずれかと読み替えればよい。
【0081】
ゲート電極6,10,114は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、ポーラス・シリコン、アモルファス・シリコン、SiGe混晶、SiGeC混晶、GaAs、W、Ta、Ti、Hf、Co、Pt、Pdの金属、合金、あるいはそのシリサイド、TaN、TiN、導電性ナイトライドを用いることもできる。また、これらの積層構造にしてもよい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々に変形して実施することができる。また、ダミーゲート10は、SiGe,またはSiGeCにより形成するのが好ましく、これにより、ダミーゲート10の除去工程の間のソース・ドレイン領域2に対するエッチングの選択性が高まる。
以上の第7実施形態に係るMIS型トランジスタおよびその製造方法によればソース・ドレイン領域となる半導体層の上面からチャネル形成面に掛けて傾斜面を形成しているので、ゲート電極下端からの距離を確保することができ、ゲートとソースとの間の容量、およびゲートとドレインとの間の容量をより小さく保つことができるという特有の効果を奏する。
【0082】
また、ゲート電極の形状をT字状とすることにより、ゲート電極の抵抗を下げることができ、かつ、ゲート電極とソース・ドレイン電極との容量を小さく保つことができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図2】第1実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法における各工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法の工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法における各工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図6】本発明の第4実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図7】本発明の第5実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図8】本発明の第5実施形態に係るMIS型トランジスタの製造方法における各工程(a)ないし(e)を示す断面図。
【図9】本発明の第6実施形態に係るMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【図10】本発明の第7実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図。
【図11】図10に示す半導体装置のそれぞれ異なる断面(a)および(b)の平面構成を示す平面図。
【図12】第7実施形態の半導体装置の製造工程(a)および(b)を示す断面図。
【図13】図12の続きの製造工程(d)および(e)を示す断面図。
【図14】従来のMIS型トランジスタの構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体基板
2 ソース・ドレイン領域
2A ソース領域
2B ドレイン領域
2a 第1の不純物拡散領域
2b 第2の不純物拡散領域
4 溝
5 高誘電体ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 チャネル形成面
9 シリコン酸化膜
10 ポリシリコン
101 ダミーゲート電極
102 ダミーゲート絶縁膜
104 半導体領域
111 絶縁膜
112 絶縁膜
113 ゲート絶縁膜
114 ゲート電極
115 導電体層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタにおいて、
前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置し、かつ、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えると共に、
前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴とするMIS型トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置すると共に、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のMIS型トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴とする請求項2に記載のMIS型トランジスタ。
【請求項4】
前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴とする請求項1に記載のMIS型トランジスタ。
【請求項5】
半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタを製造する方法であって、
選択的に形成された半導体層に囲まれた前記チャネル形成面上にダミーゲート絶縁膜、および、第2の半導体層を含むダミーゲート電極を少なリソグラフィーを含む手法により形成する工程と、
前記半導体基板上のチャネル形成面となる領域を挟んでソース・ドレイン領域となる半導体層を、この半導体層上面と前記チャネル形成面との間が傾斜面となるようにしつつ、選択的に堆積させると工程と、
前記第2の半導体層をマスクにして前記半導体基板の表面に不純物を拡散させて不純物拡散領域を形成する工程と、
前記不純物拡散領域に挟まれた上記チャネル形成面となる部分の上に形成されたダミーゲート電極をエッチングにより除去する工程と、
露出された上記チャネル形成面上に高誘電体膜よりなる絶縁膜を全面に堆積させて中心側に溝状の空間を有する断面形状でゲート絶縁膜を形成する工程と、
中心側に溝状の空間を有する断面形状で全面に形成された前記ゲート絶縁膜の上面にゲート電極を堆積させて、断面T字形状となったゲート電極を形成する工程と、
を備えることを特徴とするMIS型トランジスタの製造方法。
【請求項1】
半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタにおいて、
前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置し、かつ、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えると共に、
前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴とするMIS型トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル形成面を挟んで設けられた前記ソース・ドレイン領域の上面が、前記チャネル形成面よりも嵩上げされてゲート電極側に位置すると共に、前記ソース・ドレイン領域の上面は、嵩上げされて前記ゲート電極側に位置するレベルの実質的な平坦面と、この平坦面のレベルから前記チャネル形成面のレベルまで傾斜する傾斜面と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のMIS型トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴とする請求項2に記載のMIS型トランジスタ。
【請求項4】
前記チャネル形成面の上側に設けられたゲート絶縁膜により囲まれるゲート電極の形状が、段部を介して下側が先細りとなった断面T字の形状となっていることを特徴とする請求項1に記載のMIS型トランジスタ。
【請求項5】
半導体基板と、この基板上に形成されたソース・ドレイン領域と、このソース・ドレイン領域間のチャネル領域の上方に設けられたゲート電極と、を備えるMIS型トランジスタを製造する方法であって、
選択的に形成された半導体層に囲まれた前記チャネル形成面上にダミーゲート絶縁膜、および、第2の半導体層を含むダミーゲート電極を少なリソグラフィーを含む手法により形成する工程と、
前記半導体基板上のチャネル形成面となる領域を挟んでソース・ドレイン領域となる半導体層を、この半導体層上面と前記チャネル形成面との間が傾斜面となるようにしつつ、選択的に堆積させると工程と、
前記第2の半導体層をマスクにして前記半導体基板の表面に不純物を拡散させて不純物拡散領域を形成する工程と、
前記不純物拡散領域に挟まれた上記チャネル形成面となる部分の上に形成されたダミーゲート電極をエッチングにより除去する工程と、
露出された上記チャネル形成面上に高誘電体膜よりなる絶縁膜を全面に堆積させて中心側に溝状の空間を有する断面形状でゲート絶縁膜を形成する工程と、
中心側に溝状の空間を有する断面形状で全面に形成された前記ゲート絶縁膜の上面にゲート電極を堆積させて、断面T字形状となったゲート電極を形成する工程と、
を備えることを特徴とするMIS型トランジスタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−253706(P2006−253706A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113606(P2006−113606)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【分割の表示】特願平11−184386の分割
【原出願日】平成11年6月29日(1999.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【分割の表示】特願平11−184386の分割
【原出願日】平成11年6月29日(1999.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]