エネルギ効率の高い自動車
【課題】アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない状況で燃料又はエネルギの無駄な消費を防止することができ、エネルギ効率を高めることができる自動車を提供する。
【解決手段】 エンジン1は、アクセル踏み込み量に対応して開度が制御される電子制御式のスロットルバルブ15を備えている。エンジン1は、さらに、アクセルセンサ31と、スロットルバルブ15を開閉するアクチュエータ16と、コントローラ30とを備えている。コントローラ30は、アクセル踏み込み量に対応するスロットル目標開度を演算し、スロットル目標開度に対応する連続的な制御信号をアクチュエータ16に出力する。さらに、コントローラ30は、自動車又はエンジン1がスロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態では、スロットル制御信号をパルス制御信号に変換してアクチュエータ16に出力する。
【解決手段】 エンジン1は、アクセル踏み込み量に対応して開度が制御される電子制御式のスロットルバルブ15を備えている。エンジン1は、さらに、アクセルセンサ31と、スロットルバルブ15を開閉するアクチュエータ16と、コントローラ30とを備えている。コントローラ30は、アクセル踏み込み量に対応するスロットル目標開度を演算し、スロットル目標開度に対応する連続的な制御信号をアクチュエータ16に出力する。さらに、コントローラ30は、自動車又はエンジン1がスロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態では、スロットル制御信号をパルス制御信号に変換してアクチュエータ16に出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行に必要とされる動力が、アクセルペダルの踏み込み量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、原動機の動力生成量を低減するようにしたエネルギ効率の高い自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車では、原動機によって生成される動力は、アクセルペダルの操作により制御される。例えば、電子制御式のスロットルバルブを備えた火花点火式エンジンを搭載している自動車では、アクセルセンサによって検出されたアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル踏み込み量」という。)に対応するスロットルバルブの目標開度を演算し、この目標開度に対応する制御信号をスロットルバルブのアクチュエータに出力して、スロットルバルブの開度ひいてはエンジンの生成動力を制御するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電子制御式のインジェクタを備えたディーゼルエンジンを搭載している自動車では、アクセル踏み込み量に対応するインジェクタの目標燃料噴射量を演算し、この目標燃料噴射量に対応する制御信号をインジェクタに出力して、インジェクタの燃料噴射量ひいてはエンジンの生成動力を制御するようにしている(例えば、特許文献2参照)。また、原動機として電気モータを搭載している電気自動車では、アクセル踏み込み量に対応する電力を電気モータに供給し、該電気モータの生成動力を制御するようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−280180号公報
【特許文献2】特開2007−064191号公報
【特許文献3】特開2002−199513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、原動機として火花点火式エンジン、ディーゼルエンジン、電気モータ等を搭載した自動車では、アクセル踏み込み量に応じて運転者の意図に合致する動力が原動機から出力される。しかしながら、自動車の運転時に、走行環境ないしは運転状態によっては、アクセル踏み込み量に対応する動力を出力することを必要としないことがある。
【0006】
例えば、自動車が走行している路面が比較的急な下り勾配であるとき、あるいは自動車に比較的強い追い風が吹いているときには、自動車に前進方向の外力が作用するので、その分、原動機の動力は不要となる。かくして、従来の自動車では、アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない状況下では、燃料又はエネルギを無駄に消費することになり、自動車のエネルギ効率が低下するといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない状況下における燃料又はエネルギの無駄な消費を防止することができ、ひいてはエネルギ効率を高めることができる自動車を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様に係る自動車は、原動機と、動力源供給装置と、アクセルペダルと、アクセルセンサと、コントローラとを備えている。ここで、原動機は、動力源(例えば燃料、電力等)から動力ないしはトルクを生成する。動力源供給装置は、原動機に動力源を供給する。アクセルペダルは、運転者の踏み込み動作により操作される。アクセルセンサはアクセル踏み込み量(すなわち、アクセルペダルの踏み込み量)を検出する。コントローラは、アクセルセンサによって検出されたアクセル踏み込み量に対応する動力源供給装置の目標操作量を演算し、目標操作量に対応する連続的な制御信号(以下「連続制御信号」という。)を動力源供給装置に出力して該動力源供給装置を動作させる。コントローラは、原動機に要求される動力が目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、連続制御信号を、パルス高さが連続制御信号の大きさと同一である、予め設定されたパルス幅及びパルス間隔のパルス信号に変換して動力源供給装置に出力する。
【0009】
本発明の第1の態様に係る自動車では、原動機として例えば火花点火式エンジンを用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して開度が制御される電子制御式のスロットルバルブと、スロットルバルブを経由して流れる空気に対して予め設定された割合(空燃比)でエンジンに燃料を供給する燃料噴射弁とで構成される。動力源としては、例えばガソリン、プロパン、水素等の火花点火式エンジン用の燃料が用いられる。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応するスロットルバルブの目標開度(以下「スロットル目標開度」という。)を演算し、スロットル目標開度に対応する連続制御信号をスロットルバルブに出力して該スロットルバルブを動作させる。
【0010】
本発明の第1の態様に係る自動車において、運転状態としては、例えばスロットル目標開度が挙げられる。コントローラは、例えば、スロットル目標開度がその基準値(例えば、スロットル全開状態の1/5〜1/10等)以下であるときに連続制御信号をパルス信号に変換するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の第1の態様に係る自動車では、原動機として電気モータ(例えば、直流直巻モータ等)も用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して電気モータへの印加電圧を制御する電圧印加回路であってもよい。なお、動力源は電力ないしは電気エネルギである。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応する電圧印加回路の目標印加電圧(目標操作量)を演算し、目標印加電圧に対応する連続制御信号を電圧印加回路に出力して該電圧印加回路を動作させる。
【0012】
原動機として電気モータを用いる自動車においては、電圧印加回路として、例えば電気モータと直列に接続されアクセル踏み込み量に対応して電気抵抗が制御される可変抵抗回路を用いてもよい。この場合、コントローラは、アクセ踏み込み量に対応する可変抵抗回路の目標電気抵抗を演算し、目標電気抵抗に対応する連続制御信号を可変抵抗回路に出力して該可変抵抗回路を動作させる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る自動車は、該自動車が走行している路面の勾配を検出する路面勾配検出手段、路面の平坦度を検出する路面平坦度検出手段及び該自動車の周囲の風速及び風向を検出する風速風向検出器のうちの少なくとも1つを備えているのが好ましい。この場合、路面勾配検出手段は、GPS受信装置を備えていて該GPS受信装置によって受信されたGPS電波に基づいて路面の勾配を検出するのが好ましい。また、路面平坦度検出手段は、撮像カメラを備えていて該撮像カメラによって撮影された該自動車の前方の情景の画像に基づいて路面の平坦度を検出するのが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様に係る自動車において、走行環境としては、例えば自動車が走行している路面の勾配、路面の平坦度又は自動車の周囲の風速及び風向などが挙げられる。コントローラは、例えば路面の下り勾配がその基準値(例えば、3〜5°等)以上であるとき、路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値(例えば、10〜15m/秒等)以上であるときに、連続制御信号をパルス信号に変換するのが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様に係る自動車は、基本的には本発明の第1の態様に係る自動車と同様の、原動機と、動力源供給装置と、アクセルペダルと、アクセルセンサと、コントローラとを備えている。ただし、本発明の第2の態様に係る自動車では、コントローラは、動力源供給装置に、目標操作量に対応するパルス状の制御信号(以下「パルス制御信号」という。)を出力して該動力源供給装置を動作させる。また、コントローラは、原動機に要求される動力が目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、パルス制御信号のパルス幅を小さくして動力源供給装置に出力する。
【0016】
本発明の第2の態様に係る自動車では、原動機として、例えばディーゼルエンジンを用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して燃料噴射量が制御される電子制御式のインジェクタであってもよい。この場合、動力源としては、例えば軽油、灯油等のディーゼルエンジン用の燃料が用いられる。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応するインジェクタの目標燃料噴射量(目標操作量)を演算し、目標燃料噴射量に対応するパルス制御信号をインジェクタに出力して該インジェクタを動作させる。
【0017】
また、本発明の第2の態様に係る自動車では、原動機として電気モータ(例えば、直流直巻モータ等)も用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して電気モータへの印加電圧のオン・オフ比(デューティ比)を制御する電子制御式のチョッパ回路であってもよい。なお、動力源は電力ないしは電気エネルギである。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応するチョッパ回路の目標オン・オフ比(目標操作量)を演算し、目標オン・オフ比に対応するパルス制御信号をチョッパ回路に出力して該チョッパ回路を動作させる。
【0018】
本発明の第2の態様に係る自動車でも、第1の態様に係る自動車と同様の路面勾配検出手段(例えば、GPS受信装置を備えたもの)、路面平坦度検出手段(例えば、撮像カメラを備えたもの)及び風速風向検出器のうちの少なくとも1つを備えているのが好ましい。また、本発明の第2の態様に係る自動車においても、走行環境としては、例えば自動車が走行している路面の勾配、路面の平坦度又は自動車の周囲の風速及び風向などが挙げられる。コントローラは、例えば、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときに、パルス制御信号のパルス幅を小さくするのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様に係る自動車用においては、自動車が実際に必要とする動力が、アクセル踏み込み量に(又は目標操作量)に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、連続制御信号がパルス信号に変換される。このように連続制御信号がパルス信号に変換されているときには、各パルス間では目標操作量に対応する制御信号が出力されないので、その分だけ、動力源供給装置から原動機に供給される動力源の量が少なくなる。このため、燃料、電力等の動力源の無駄な消費を防止することができ、ひいては自動車のエネルギ効率を高めることができる。
【0020】
本発明の第2の態様に係る自動車用においては、自動車が実際に必要とする動力が、アクセル踏み込み量(又は目標操作量)に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、パルス制御信号のパルス幅が小さくなる。このとき、パルス幅が減少した期間は、目標操作量に対応する制御信号が出力されないので、動力源供給装置から原動機に供給される動力源の量が少なくなる。このため、燃料、電力等の動力源の無駄な消費を防止することができ、ひいては自動車のエネルギ効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動車に搭載された火花点火式エンジンのシステム構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すエンジンのスロットルバルブの構造を示す模式図である。
【図3】図1に示すエンジンにおける、スロットル目標開度とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図4】アクセル踏み込み量が変化したときにおける、スロットル制御電流及びスロットル目標開度の時間に対する変化特性を示すグラフである。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ、自動車が走行している路面の下り勾配及び自動車に対する追い風の速度に対するパルスオフ率の変化特性を示すグラフである。
【図6】制御電流パルス化制御が行われた場合における、スロットル制御電流ないしはパルス制御電流の時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態2に係る自動車に搭載されたディーゼルエンジンのシステム構成を示す模式図である。
【図8】図7に示すエンジンにおける、目標燃料噴射量とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図9】図7に示すエンジンにおける、燃料噴射パルスの時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態3に係る電気自動車の駆動系統のシステム構成を示す模式図である。
【図11】図10に示す電気自動車における、モータへの供給電力とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図12】図10に示す電気自動車における、モータへの印加電圧の時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態4に係る電気自動車の駆動系統のシステム構成を示す模式図である。
【図14】図13に示す電気自動車における、モータへの供給電力とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図15】図13に示す電気自動車における、モータへの印加電圧(パルス電圧)の時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施の形態1〜4を具体的に説明する。なお、実施の形態1は原動機として火花点火式エンジンを搭載した自動車に係るものであり、実施の形態2は原動機としてディーゼルエンジンを搭載した自動車に係るものであり、実施の形態3及び4は原動機として電気モータを搭載した電気自動車に係るものである。
【0023】
(実施の形態1)
図1に示すように、実施の形態1に係る自動車W1には、ガソリンを燃料とする火花点火式の多気筒エンジン1A(1つの気筒のみ図示)が搭載されている。エンジン1Aの各気筒においては、吸気行程において吸気バルブ2が開かれたときに、吸気ポート3から燃焼室4内に燃料燃焼用の空気が吸入される。続いて、圧縮行程において所定のタイミングで燃焼室4内の空気中にインジェクタ5(燃料噴射弁)から燃料が噴射され、混合気が形成される。この圧縮行程では、燃焼室4内の混合気がピストン6によって圧縮される。圧縮された燃焼室4内の混合気は、圧縮上死点付近において所定のタイミングで点火プラグ7により点火されて燃焼し、膨張行程で燃焼ガスの圧力によってピストン6が押し下げられる。この後、排気行程において排気バルブ8が開かれたときに、燃焼ガスが排気ポート9に排出される。
【0024】
このような吸入、圧縮、膨張、排気の4行程が連続的に繰り返され、ピストン6は気筒内で往復運動を繰り返す。このピストン6の往復運動は、コネクチングロッド10等によりクランクシャフト11の回転運動に変換される。このクランクシャフト11の回転運動は、エンジン1Aの出力動力として取り出され、エンジン1Aを搭載している自動車W1を走行させるとともに、図示していないオルタネータやエアコンなどの補機を駆動する。
【0025】
エンジン1Aの各気筒の燃焼室4に燃料燃焼用の空気を供給する吸気システムには、全気筒に共通な単一の共通吸気管12が設けられている。共通吸気管12の先端は大気に開放され、その先端部近傍に、共通吸気管12に吸入された空気中のダスト等を除去するエアクリーナ13と、共通吸気管12内の空気の流量を検出するエアフローセンサ14とが設けられている。さらに、共通吸気管12には、アクセル踏み込み量、すなわちアクセルペダル19の踏み込み量に応じて共通吸気管12内の空気の流れを絞るスロットルバルブ15が設けられている。スロットルバルブ15は、後で詳しく説明するように、アクセル踏み込み量に応じて、電気式のアクチュエータ16によってその開度が制御される電子制御式のスロットルバルブである。
【0026】
共通吸気管12の下流端は、各気筒の燃焼室4に供給される空気の脈動を減衰させてその流れを安定させるサージタンク17に接続されている。そして、サージタンク17には、各気筒の燃焼室4に個別的に空気を供給する分岐吸気管18が接続され、その下流端は、それぞれ対応する気筒の吸気ポート3に接続されている。なお、このエンジン1Aは、燃焼室4内に燃料を噴射する直噴式エンジンであるが、吸気ポート3内又は分岐吸気管18内に燃料を噴射して混合気を生成するポート噴射式エンジンであってもよい。ポート噴射式エンジンの場合は、各分岐吸気管18に、それぞれ、吸気ポート3内に向かって燃料を噴射するインジェクタが配設される。
【0027】
また、エンジン1Aには、各燃焼室4から排出された排気ガスを大気中に排出する排気システムが設けられ、この排気システムには、各気筒に共通の単一の共通排気管20が設けられている。ただし、排気ガスの流れ方向にみてその上流端近傍部では、共通排気管20は気筒毎に分岐して、対応する気筒の排気ポート9に接続されている。そして、共通排気管20には、排気ガス中のCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)及びNOx(窒素酸化物)を浄化する三元触媒を用いた触媒コンバータ21が設けられている。
【0028】
さらに、エンジン1Aには、混合気の燃焼温度を低下させてNOx発生量を低減するために、共通排気管20内の排気ガスの一部を、EGRガスとして吸気システムに還流させるEGR装置22が設けられている。このEGR装置22には、EGRガスの流路となるEGR通路23が設けられている。EGRガスの流れ方向にみてEGR通路23の上流端は、排気ガスの流れ方向にみて触媒コンバータ21より上流側で共通排気管20に接続されている。他方、EGR通路23の下流端は、サージタンク17に接続されている。そして、EGR通路22には、EGRガスの流量を制御するEGRバルブ24が設けられている。
【0029】
図2に示すように、スロットルバルブ15は、共通吸気管12内に配置されたバタフライ弁26と、共通吸気管12をその直径方向に貫通して伸びバタフライ弁26を支持する回転シャフト27とを備えている。そして、回転シャフト27がその中心軸L1のまわりに回転すると、バタフライ弁26が回転シャフト27と一体的に回転し、共通吸気管12を開閉する。なお、回転シャフト27(ひいてはバタフライ弁26)は、その回転軸L1のまわりに約90°回転することができる。
【0030】
バタフライ弁26は、その広がり面が共通吸気管12の中心軸L2とほぼ垂直となる姿勢となっているときには全閉状態となる。また、バタフライ弁26は、その広がり面が共通吸気管12の中心軸L2とほぼ平行となる姿勢となっているときには全開状態となる。なお、バタフライ弁26(スロットルバルブ15)が全閉状態となっているときでも、バタフライ弁26と共通吸気管12との間には隙間が存在し、エンジン1Aのアイドリングに必要とされる空気がこの隙間を通って流れる。
【0031】
スロットルバルブ15の回転シャフト27の一端は共通吸気管12外においてアクチュエータ16に連結され、他端は共通吸気管12外において回転シャフト戻し機構28に連結されている。ここで、回転シャフト戻し機構28は復帰ばね29を有し、復帰ばね29の付勢力により、回転シャフト27(ひいてはバタフライ弁26)を、バタフライ弁26が全閉状態となる方向に付勢する。他方、アクチュエータ16は、該アクチュエータ16に印加される電流(又は電圧)に応じて、復帰ばね29の付勢力に抗して、回転シャフト27(ひいてはバタフライ弁26)を、全開状態となる方向に回転駆動する。
【0032】
かくして、アクチュエータ16に電流が印加されていないとき、すなわち電流が0であるときには、バタフライ弁26は復帰ばね29の付勢力により全閉状態となる。他方、アクチュエータ16に電流が印加されているときには、バタフライ弁26は、印加された電流の大きさに応じて開弁され、最大限の電流が印加されているときには全開状態となる。なお、回転シャフト戻し機構28には、バタフライ弁26が全開状態を超えて回転するのを防止するストッパ(図示せず)が設けられている。
【0033】
以下、エンジン1Aないしは自動車W1の制御システムを説明する。図1及び図2に示すように、エンジン1Aには、アクセルペダル19に付設されアクセル踏み込み量を検出するアクセルセンサ31と、自動車W1が走行している路面の勾配を検出する路面勾配センサ32と、自動車W1の周囲の風速及び風向を検出する風速風向センサ33とが設けられている。さらに、自動車W1には、その前方を撮影する撮像カメラ34(ビデオカメラ)と、GPS受信装置35とが設けられている。ここで、撮像カメラ34は自動車W1の前方の道路等の情景を連続的に撮影する。また、GPS受信装置35は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)からGPS電波を受信する。
【0034】
なお、本願発明の要旨とは関連性が希薄であるので図示していないが、エンジン1Aには、さらに、その運転状態に関する各種情報を収集するために、共通吸気管12内の空気の温度を検出する吸気温センサ、共通吸気管12内の空気の圧力を検出する吸気圧センサ、エンジン1Aの冷却水温度を検出する水温センサ、クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)を検出する回転数センサ、クランク角を検出するクランク角センサ等の種々のセンサが設けられている。これらの各センサの検出信号は、エンジン1Aの制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0035】
コントローラ30は、自動車W1又はエンジン1Aないしはその付属機器の総合的な制御装置である。詳しくは図示していないが、コントローラ30は、制御信号の入出力を行う入出力部(インターフェース)、データや制御情報等を記憶する記憶部(ROM、RAM等)、各種演算処理を行う中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。また、コントローラ30は、撮像カメラ34によって撮影された自動車W1の前方の情景の画像を解析し、自動車W1が走行している道路の状況、例えば路面の平坦度を判定する。さらに、コントローラ30は、GPS受信装置35により受信されたGPS電波に基づいて、種々のデータ、例えば自動車W1が走行している位置、走行している道路の勾配等を算出する。
【0036】
そして、コントローラ30は、前記各センサ14、31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出、判定又は算出された各種データに基づいて、インジェクタ5、点火プラグ7、アクチュエータ16、EGRバルブ24等を制御ないしは駆動することにより、通常の燃料噴射制御、通常の点火時期制御、通常のEGR制御等の一般的なエンジン1Aの制御を行う。しかしながら、エンジン1Aの一般的な制御の制御手法は当業者にはよく知られており、また本願発明の要旨とするところでもないので、その説明は省略する。
【0037】
さらに、コントローラ30は、エンジン1A(又は自動車W1)が、アクセル踏み込み量(又はスロットル目標開度)に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、アクチュエータ16に印加する連続的な制御電流(以下「スロットル制御電流」という。)ないしは制御電圧を、パルス高さがスロットル制御電流の大きさと同一であるパルス制御電流ないしはパルス制御電圧に変換するといった制御(以下「電流パルス化制御」という。)を行うようになっている。
【0038】
以下、本発明の実施の形態1に係る電流パルス化制御の制御手法を説明する。
例えば図3に示すように、コントローラ30は、スロットル目標開度ないしはスロットル開度を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定する。なお、図3に示す例では、スロットル目標開度はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、スロットル目標開度とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができる。例えば、アクセル踏み込み量に対するスロットル目標開度の増加率を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくしてもよく(スロットル目標開度が大きい側に凹状となる)、又は逆に小さくしてもよい(スロットル目標開度が大きい側に凸状となる)。
【0039】
図4中にグラフG1で示すように自動車が一定のアクセル踏み込み量a1で運転されているときに、時刻t1でアクセルペダル19が踏み込まれて加速が開始され、時刻t2以降は一定のアクセル踏み込み量a2(>a1)で運転される通常の運転状態、すなわちアクチュエータ16に印加する電流がパルス化されていないときのスロットル制御電流の時間に対する変化特性(グラフG2)と、スロットル開度の時間に対する変化特性(グラフG3)とを示す。
【0040】
図4から明らかなとおり、自動車W1ないしはエンジン1Aの通常の運転状態、すなわち自動車W1の走行環境ないしはエンジン1Aの運転状態が、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要とする普通の運転状態では、コントローラ30からアクチュエータ16に印加されるスロットル制御電流は、パルス状ではなく連続的な電流である。このように、自動車ないしはエンジン1Aの通常の運転時には、従来のこの種の自動車ないしはエンジンと同様にスロットル目標開度が設定される。
【0041】
他方、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態では、スロットル制御電流は、エンジン動力の不要度合いに応じてパルス化される。すなわち、パルス高さがスロットル制御電流の大きさと同一である、予め設定されたパルス幅及びパルス間隔のパルス制御電流に変換される。ここで、パルス幅は1つのオンオフサイクル(例えば、1秒、0.1秒、0.01秒等)におけるパルスオン期間であり、パルス間隔は上記オンオフサイクルにおけるパルスオフ期間である。なお、以下では、便宜上、1つのオンオフサイクルにおけるパルスオフ期間の比率(パルスオフ期間/1オンオフサイクル期間)を「パルスオフ率」という。なお、パルスオフ率が0であれば、スロットル制御電流は全くパルス化されていない(すなわち連続的)ことになり、パルスオフ率が1であれば、アクチュエータ16にはスロットル制御電流は全く流れないことになる。
【0042】
かくして、パルス制御電流のパルスオフ率は、自動車W1の走行環境又はエンジン1Aの運転状態に応じて設定される。スロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要とするかしないかを判断するための自動車W1の走行環境としては、例えば、路面勾配センサ32によって検出され又はGPS電波に基づいて算出される路面の勾配、撮像カメラ34によって取得される前方の道路の画像から判定される路面の平坦度、風速風向センサ33によって検出される自動車の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルスオフ率で、スロットル制御電流がパルス化される。なお、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにスロットル制御電流をパルス化するようにしてもよい。
【0043】
具体的には、例えば、図5(a)にグラフH1(実線)で示すように、パルスオフ率は、自動車が走行している路面の下り勾配が大きいときほど大きくなるように設定される。なお、グラフH2(破線)で示すように、路面の下り勾配が予め設定された基準値θ1未満であるときにはパルスオフ率を0とし(パルス化しない)、基準値θ1以上であるときにパルスオフ率を所定の値に設定するようにしてもよい。
【0044】
また、例えば、図5(b)にグラフH3(実線)で示すように、パルスオフ率は、自動車の追い風の速度が大きいときほど大きくなるように設定される。なお、グラフH4(破線)で示すように、追い風の速度が予め設定された基準値V1未満であるときにはパルスオフ率を0とし(パルス化しない)、基準値V1以上であるときにパルスオフ率を所定の値に設定するようにしてもよい。自動車の周囲の風の向きが自動車の前後方向でないときには、追い風の速度は、周囲の風の自動車の進行方向の速度成分を用いればよい。
【0045】
また、スロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要とするかしないかを判断するためのエンジン1Aの運転状態としてはスロットル目標開度自体などが挙げられる。具体的には、スロットル目標開度が、例えばスロットルバルブ全開状態の1/5〜1/10以下であるときに、スロットル制御電流がパルス制御信号に変換される。
【0046】
図6に、このような電流パルス化制御が行われた場合における、スロットル制御電流又はパルス制御電流の時間に対する変化特性の一例を示す。図6に示す例では、時刻t10〜t11の期間は、スロットル目標開度が基準値(例えば、スロットル全開状態の1/5〜1/10)以下となり、スロットル制御電流がパルス化されている。このように、スロットル目標開度が小さいときには、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないので、スロットル制御電流をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ、燃焼室4に供給される空気の量が低減され、これにより燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0047】
図6に示す例では、時刻t12〜t13の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、スロットル制御電流がパルス化されている。このように、下り勾配が大きいときには、自動車W1には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないので、スロットル制御電流をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ、燃焼室4に供給される空気の量が低減され、これにより燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0048】
なお、図6中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、スロットル制御電流がパルス化される。このように、追い風が吹いているときには、自動車W1には風力により前進方向の力が作用し、スロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要としないので、スロットル制御電流をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ燃焼室4に供給される空気の量が低減され、これにより燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性能を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態1によれば、アクセル踏み込み量(又はスロットル目標開度)に対応するエンジン動力を必要としない状況下では、スロットル制御電流がパルス化される。このため、パルスオフ期間ではアクチュエータ16に駆動電流(又は駆動電圧)が印加されないので、その分だけエンジン1Aの燃焼室4に供給される空気の量が減少し、これに伴って燃焼室4に供給される燃料の量が減少する。したがって、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0050】
(実施の形態2)
以下、図7〜図9を参照しつつ、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態2に係る自動車W2には、原動機として直噴式のディーゼルエンジン1B(以下、略して「エンジン1B」という。)が搭載されている。以下、エンジン1Bの構成及び機能を説明する。ただし、エンジン1Bは、点火火花式エンジンではなくディーゼルエンジンであることと、これに付随して必然的に生じる相違点とを除けば、実施の形態1に係る火花点火式のエンジン1Aと同様である。そこで、以下では説明の重複を避けるため、主として実施の形態1に係るエンジン1Aと異なる点を説明する。
【0051】
図7に示すように、エンジン1Bにおいては、吸気行程で吸気バルブ2が開かれたときに、吸気ポート3から燃焼室4内に燃料燃焼用の空気が吸入される。そして、圧縮行程で燃焼室4内の吸入空気がピストン6によって圧縮され、高温・高圧状態となる。そして、圧縮上死点付近で、インジェクタ40から燃焼室4内の高温・高圧の吸入空気中に燃料(軽油等)が噴射され、膨張行程でこの燃料は自己着火して燃焼する。なお、エンジン1Bには、点火プラグは設けられていない。燃焼によって生じたガスすなわち排気ガスは、排気行程で排気バルブ8が開かれたときに排気ポート9に排出される。これらの一連の動作が繰り返され、ピストン4は気筒内で往復運動を繰り返す。ピストン4の往復運動をクランクシャフト11の回転運動に変換する機構は、実施の形態1に係るエンジン1Aと同様である。
【0052】
エンジン1Bでは、インジェクタ40は、その噴射孔が燃焼室4に臨むように配置され、燃焼室4内に直接燃料を噴射する。インジェクタ40は燃料供給通路41に接続され、この燃料供給通路41には、高圧燃料ポンプ42が介設されている。高圧燃料ポンプ42は、燃料供給通路41内の燃料圧が設定値以上に保持されるように作動する。そして、エンジン1Bでは、インジェクタ40からの燃料噴射は、圧縮上死点付近すなわち噴射された燃料の自己着火が可能なタイミングで、燃料噴射量に対応する時間だけインジェクタ40を開弁することに行われる。すなわち、燃料は、インジェクタ40から燃焼室4内へ、間欠的にパルス噴射される。なお、インジェクタ40は、コントローラ30から所定の駆動電圧が印加されているときには開弁されて燃料を噴射し、駆動電圧が印加されていないときには閉弁され、このときには燃料は噴射されない。
【0053】
エンジン1Bの吸気システムでは、共通吸気管12にはスロットルバルブは設けられていない。したがって、燃焼室4へはほぼ大気圧の空気が吸入される。また、吸気脈動はほとんど生じないので、サージタンクは設けられていない。各気筒の分岐吸気管18は、直接、共通吸気管12から分岐している。また、EGR通路23の下流端は、共通吸気管12に接続されている。エンジン1Bの吸気システムのその他の構成は、実施の形態1に係るエンジン1Aと同様である。
【0054】
以下、エンジン1Bないしは自動車W2の制御システムを説明する。詳しくは図示していないが、実施の形態2に係る自動車W2ないしはエンジン1Bでも、実施の形態1の場合と同様に、アクセルセンサ31と、路面勾配センサ32と、風速風向センサ33と、撮像カメラ34と、GPS受信装置35とが設けられている。また、実施の形態1の場合と同様に、吸気温センサ、吸気圧センサ、水温センサ、回転数センサ、クランク角センサ等の種々のセンサが設けられている。これらの各センサの検出信号は、エンジン1Bの制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0055】
コントローラ30は、自動車W2又はエンジン1Bないしはその付属機器の総合的な制御装置であり、実施の形態1の場合と同様に入出力部(インターフェース)、記憶部(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。そして、コントローラ30は、各センサ14、31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出、判定又は算出された各種データに基づいて、インジェクタ40、EGRバルブ24等を制御ないしは駆動することにより、通常の燃料噴射制御、通常のEGR制御等の一般的なエンジン1Bの制御を行う。なお、エンジン1Bの一般的な制御の制御手法は当業者にはよく知られており、また本願発明の要旨とするところでもないので、その説明は省略する。
【0056】
さらに、コントローラ30は、エンジン1B(又は自動車W2)が、アクセル踏み込み量(又は目標燃料噴射量)に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、インジェクタ40に印加するパルス状の駆動電圧のパルス幅を小さくするといった制御(以下「パルス幅縮小制御」という。)を行う。
【0057】
以下、本発明の実施の形態2に係るパルス幅縮小制御の制御手法を説明する。
図8に示すように、エンジン1Bでは、コントローラ30は、インジェクタ40の目標燃料噴射量ないしは燃料噴射量を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定するようになっている。なお、図8に示す例では、目標燃料噴射量はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、目標燃料噴射量とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができるのは、実施の形態1の場合と同様である。
【0058】
そして、自動車W2ないしはエンジン1Bの通常の運転状態、すなわち自動車W2の走行環境ないしはエンジン1Bの運転状態がアクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要とする普通の運転状態では、目標燃料噴射量に対応するパルス幅の駆動電圧が、コントローラ30からインジェクタ40に印加される。すなわち、通常の運転時には、従来のこの種の自動車ないしはエンジンと同様に燃料噴射のパルス幅が設定される。
【0059】
他方、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態では、インジェクタ40に印加されパルス状の駆動電圧のパルス幅が、予め設定されたパルス幅縮小率で縮小される。なお、パルス縮小率が0であれば、通常時と同様のパルス幅で燃料が噴射されることになり、パルス縮小率が1であれば、インジェクタ40は全く開弁されず、燃料は全く噴射されないことになる。
【0060】
ここで、インジェクタ40のパルス状の駆動電圧のパルス縮小率は、自動車W2の走行環境又はエンジン1Bの運転状態に応じて設定される。アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要とするかしないかを判断するための自動車の走行環境としては、実施の形態1の場合と同様に、路面の勾配、路面の平坦度、自動車W2の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルス縮小率で、パルス状の駆動電圧のパルス幅が縮小される。この場合、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにパルス幅を縮小するのが好ましい。なお、駆動電圧のパルス縮小率は、実施の形態1におけるパルスオフ率と同様に、自動車が走行している路面の下り勾配あるいは自動車の追い風の速度に応じて設定される。
【0061】
図9に、このようなパルス幅縮小制御が行われた場合における、駆動パルス電圧ないしは燃料噴射パルスの時間に対する変化特性の一例を示す。なお、図9では、紙面の都合上、各燃料噴射パルスの間隔は時間軸方向に短縮して示している。すなわち、実際には、各燃料噴射パルスは時間軸方向に離間している。図9に示す例では、時刻t21〜t22の期間は、アクセル開度が比較的小さく、このため燃料噴射パルスのパルス幅は比較的小さくなっている。また、時刻t23以降は、アクセル開度が比較的大きく、このため燃料噴射パルスのパルス幅は比較的大きくなっている。
【0062】
また、図9に示す例では、時刻t24〜t25の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、燃料噴射パルスのパルス幅が勾配に応じた所定のパルス縮小率で縮小されている。なお、図9中において破線は縮小されない場合のパルス幅を示している。このように、下り勾配が大きいときには、自動車W2には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないので、燃料噴射パルスのパルス幅を縮小することにより、パルス縮小期間に相当する分だけ、燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0063】
なお、図9中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、燃料噴射パルスのパルス幅が縮小される。このように、追い風が吹いているときには、自動車W2には風力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないからである。
【0064】
以上、本発明の実施の形態2によっても、実施の形態1の場合と同様に、自動車W2ないしはエンジン1Bにおける無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0065】
(実施の形態3)
以下、図10〜図12を参照しつつ、本発明の実施の形態3を説明する。図10に示すように、実施の形態3に係る電気自動車W3には、原動機として直流直巻モータ50(以下「モータ50」という。)が搭載されている。このモータ50が出力する動力ないしはトルク(以下「モータ動力」という。)は、差動装置51(ディファレンシャル装置)と、左右の車軸52とを介して、左右の車輪53に伝達される。
【0066】
モータ50は、導線54を介してバッテリ55に接続され、この導線54には電圧印加回路56が介設されている。電圧印加回路56は、例えば可変抵抗器を有し、コントローラ30からの制御信号に従って、アクセル踏み込み量に応じてモータ50に印加する電圧を連続的に制御し、これによりモータ動力を制御する。詳しくは図示していないが、実施の形態3に係る電気自動車W3でも、実施の形態1の場合と同様に、アクセルセンサ31と、路面勾配センサ32と、風速風向センサ33と、撮像カメラ34と、GPS受信装置35とが設けられている。これらの各センサの検出信号は、電気自動車W3の制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0067】
コントローラ30は、自動車W3の総合的な制御装置であり、入出力部(インターフェース)、記憶部(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。そして、コントローラ30は、各センサ31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出、判定又は算出された各種データに基づいて電圧印加回路56を制御する。
【0068】
図11に示すように、電気自動車W3では、コントローラ30は、モータ50への目標供給電力(ないしは目標印加電圧)を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定している。なお、図11に示す例では、目標供給電力はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、目標供給電力とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができるのは、実施の形態1の場合と同様である。さらに、コントローラ30は、電気自動車W3が、アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、モータ50に印加されている連続的な電圧をパルス化するといった制御(以下「制御電圧パルス化制御」という。)を行うようになっている。
【0069】
この制御電圧パルス化制御では、電気自動車W3の通常の運転状態、すなわち電気自動車W3の走行環境ないしは運転状態がアクセル踏み込み量(又は目標供給電力)に対応するモータ動力を必要とする普通の運転状態では、目標供給電力に対応する連続的な制御信号が、コントローラ30から電圧印加回路56に印加される。すなわち、通常の運転時には、従来のこの種の電気自動車と同様に連続的な電圧がモータ50に印加される。
【0070】
他方、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としない走行環境又は運転状態では、モータ50に印加される連続的な電圧が予め設定されたパルスオフ率でパルス化される。なお、パルスオフ率が0であれば、通常時と同様の連続的な電圧がモータ50に印加されることになり、パルスオフ率が1であれば、モータ50には全く電力が供給されないことになる。
【0071】
ここで、モータ50に印加される連続的な電圧のパルスオフ率は、電気自動車W3の走行環境又は運転状態に応じて設定される。アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要とするかしないかを判断するための走行環境としては、実施の形態1の場合と同様に、路面の勾配、路面の平坦度、電気自動車W3の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルスオフ率で、連続的な電圧がパルス化される。この場合、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにパルス化するのが好ましい。なお、モータ50への印加電圧のパルスオフ率は、実施の形態1におけるパルスオフ率と同様に、自動車W3が走行している路面の下り勾配あるいは自動車W3の追い風の速度に応じて設定される。
【0072】
図12に、このような電圧パルス化制御が行われた場合における、モータ50への印加電圧の時間に対する変化特性の一例を示す。図12に示す例では、時刻t31までの期間はアクセル開度が比較的小さく、このため印加電圧は比較的低くなっている。また、時刻t32以降はアクセル開度が比較的大きく、このため印加電圧は比較的高くなっている。
【0073】
また、図12に示す例では、時刻t33〜t34の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、印加電圧が、勾配に応じた所定のパルスオフ率でパルス化されている。このように、下り勾配が大きいときには、電気自動車W3には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないので、印加電圧をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ、モータ50に供給される電力の量が低減される。すなわち、無駄な電力消費を防止することができ、ひいては電気自動車W3のエネルギ効率を高めることができる。
【0074】
なお、図12中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、モータ50への印加電圧がパルス化される。このように、追い風が吹いているときには、電気自動車W3には風力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないからである。
【0075】
(実施の形態4)
以下、図13〜図15を参照しつつ、本発明の実施の形態4を説明する。図13に示すように、実施の形態4に係る電気自動車W4には、実施の形態3の場合と同様にモータ50が搭載され、モータ動力は、差動装置51と、左右の車軸52とを介して、左右の車輪53に伝達される。また、実施の形態3の場合と同様に、モータ50は、導線54を介してバッテリ55に接続されている。
【0076】
そして、実施の形態4に係る電気自動車W4では、導線54にPWM(パルス幅変調)チョッパ回路60が介設されている。PWMチョッパ回路56は、コントローラ30からの制御信号に従って、アクセル踏み込み量に応じてモータ50に印加するパルス状の制御電圧のオン・オフ率を制御し、これによりモータ動力を制御する。詳しくは図示していないが、実施の形態4に係る電気自動車W4でも、実施の形態1の場合と同様に、アクセルセンサ31と、路面勾配センサ32と、風速風向センサ33と、撮像カメラ34と、GPS受信装置35とが設けられている。これらの各センサの検出信号は、電気自動車W4の制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0077】
コントローラ30は、自動車W4の総合的な制御装置であり、入出力部(インターフェース)、記憶部(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。そして、コントローラ30は、各センサ31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出又は算出された各種データに基づいて、チョッパ回路60を制御する。
【0078】
図14に示すように、電気自動車W4では、コントローラ30は、モータ50への目標供給電力を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定している。なお、図14に示す例では、目標供給電力はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、目標供給電力とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができるのは、実施の形態1の場合と同様である。さらに、コントローラ30は、電気自動車W4が、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、モータ50に印加されているパルス状の制御電圧のパルス幅を縮小するといった制御(以下「電圧パルス幅縮小制御」という。)を行うようになっている。
【0079】
この電圧パルス幅縮小制御では、電気自動車W4の通常の運転状態、すなわち電気自動車W4の走行環境ないしは運転状態がアクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要とする普通の運転状態では、目標供給電力に対応するパルス状の制御信号が、コントローラ30からチョッパ回路60に印加される。すなわち、通常の運転時には、従来のこの種の電気自動車と同様にパルス状の電圧がモータ50に印加される。
【0080】
他方、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としない走行環境又は運転状態では、モータ50に印加される制御電圧のパルス幅が、予め設定されたパルス縮小率で縮小される。なお、パルス縮小率が0であれば、通常時と同様のパルス状の電圧がモータ50に印加されることになり、パルス縮小率が1であれば、モータ50には全く電圧が印加されないことになる。
【0081】
ここで、モータ50へのパルス状の印加電圧のパルス縮小率は、電気自動車W4の走行環境又は運転状態に応じて設定される。アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要とするかしないかを判断するための走行環境としては、実施の形態1の場合と同様に、路面の勾配、路面の平坦度、電気自動車W4の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルス縮小率で、パルス状の印加電圧のパルス幅が縮小される。この場合、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにパルス幅を縮小するのが好ましい。なお、印加電圧のパルス縮小率は、実施の形態1におけるパルスオフ率と同様に、自動車W4が走行している路面の下り勾配あるいは自動車W4の追い風の速度に応じて設定される。
【0082】
図15に、このような電圧パルス幅縮小制御が行われた場合における、モータ50への印加電圧の時間に対する変化特性の一例を示す。図15に示す例では、時刻t41〜t42の期間は、アクセル開度が比較的小さく、このためモータ50への印加電圧のパルス幅は比較的小さくなっている。また、時刻t43以降は、アクセル開度が比較的大きく、このためモータ50への印加電圧のパルス幅は比較的大きくなっている。
【0083】
また、図15に示す例では、時刻t44〜t45の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、印加電圧のパルス幅が勾配に応じた所定のパルス縮小率で縮小されている。なお、図15中において破線は縮小されない場合のパルス幅を示している。このように、下り勾配が大きいときには、自動車W4には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないので、モータ50への印加電圧のパルス幅を縮小することにより、パルス縮小期間に相当する分だけ、モータ50に供給される電力の量が低減される。すなわち、無駄な電力消費を防止することができ、ひいては電気自動車W4のエネルギ効率を高めることができる。
【0084】
なお、図15中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、モータ50への印加電圧のパルス幅が縮小される。このように、追い風が吹いているときには、電気自動車W4には風力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないからである。
【0085】
以上、本発明は、その特定の実施の形態に関連して説明されているが、このほか多数の変形例及び修正例が可能であるということは当業者にとっては自明なことであろう。それゆえ、本発明は、このような実施の形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によって限定されるべきものである。
【符号の説明】
【0086】
W1〜W4 自動車、1A エンジン、1B エンジン、2 吸気バルブ、3 吸気ポート、4 燃焼室、5 インジェクタ、6 ピストン、7 点火プラグ、8 排気バルブ、9排気ポート、10 コネクチングロッド、11 クランクシャフト、12 共通吸気管、13 エアクリーナ、14 エアフローセンサ、15 スロットルバルブ、16 アクチュエータ、17 サージタンク、18 分岐吸気管、20 共通排気管、21 触媒コンバータ、22 EGR装置、23 EGR通路、24 EGRバルブ、26 バラフライ弁、27 回転シャフト、28 回転シャフト戻し機構、29 復帰ばね、30 コントローラ、31 アクセルセンサ、32 路面勾配センサ、33 風速風向センサ、34 撮像カメラ、35 GPS受信装置、40 インジェクタ、50 モータ、51 差動装置、52 車軸、53 車輪、54 導線、55 バッテリ、56 電圧印加回路、
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行に必要とされる動力が、アクセルペダルの踏み込み量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、原動機の動力生成量を低減するようにしたエネルギ効率の高い自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車では、原動機によって生成される動力は、アクセルペダルの操作により制御される。例えば、電子制御式のスロットルバルブを備えた火花点火式エンジンを搭載している自動車では、アクセルセンサによって検出されたアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル踏み込み量」という。)に対応するスロットルバルブの目標開度を演算し、この目標開度に対応する制御信号をスロットルバルブのアクチュエータに出力して、スロットルバルブの開度ひいてはエンジンの生成動力を制御するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電子制御式のインジェクタを備えたディーゼルエンジンを搭載している自動車では、アクセル踏み込み量に対応するインジェクタの目標燃料噴射量を演算し、この目標燃料噴射量に対応する制御信号をインジェクタに出力して、インジェクタの燃料噴射量ひいてはエンジンの生成動力を制御するようにしている(例えば、特許文献2参照)。また、原動機として電気モータを搭載している電気自動車では、アクセル踏み込み量に対応する電力を電気モータに供給し、該電気モータの生成動力を制御するようにしている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−280180号公報
【特許文献2】特開2007−064191号公報
【特許文献3】特開2002−199513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、原動機として火花点火式エンジン、ディーゼルエンジン、電気モータ等を搭載した自動車では、アクセル踏み込み量に応じて運転者の意図に合致する動力が原動機から出力される。しかしながら、自動車の運転時に、走行環境ないしは運転状態によっては、アクセル踏み込み量に対応する動力を出力することを必要としないことがある。
【0006】
例えば、自動車が走行している路面が比較的急な下り勾配であるとき、あるいは自動車に比較的強い追い風が吹いているときには、自動車に前進方向の外力が作用するので、その分、原動機の動力は不要となる。かくして、従来の自動車では、アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない状況下では、燃料又はエネルギを無駄に消費することになり、自動車のエネルギ効率が低下するといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない状況下における燃料又はエネルギの無駄な消費を防止することができ、ひいてはエネルギ効率を高めることができる自動車を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様に係る自動車は、原動機と、動力源供給装置と、アクセルペダルと、アクセルセンサと、コントローラとを備えている。ここで、原動機は、動力源(例えば燃料、電力等)から動力ないしはトルクを生成する。動力源供給装置は、原動機に動力源を供給する。アクセルペダルは、運転者の踏み込み動作により操作される。アクセルセンサはアクセル踏み込み量(すなわち、アクセルペダルの踏み込み量)を検出する。コントローラは、アクセルセンサによって検出されたアクセル踏み込み量に対応する動力源供給装置の目標操作量を演算し、目標操作量に対応する連続的な制御信号(以下「連続制御信号」という。)を動力源供給装置に出力して該動力源供給装置を動作させる。コントローラは、原動機に要求される動力が目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、連続制御信号を、パルス高さが連続制御信号の大きさと同一である、予め設定されたパルス幅及びパルス間隔のパルス信号に変換して動力源供給装置に出力する。
【0009】
本発明の第1の態様に係る自動車では、原動機として例えば火花点火式エンジンを用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して開度が制御される電子制御式のスロットルバルブと、スロットルバルブを経由して流れる空気に対して予め設定された割合(空燃比)でエンジンに燃料を供給する燃料噴射弁とで構成される。動力源としては、例えばガソリン、プロパン、水素等の火花点火式エンジン用の燃料が用いられる。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応するスロットルバルブの目標開度(以下「スロットル目標開度」という。)を演算し、スロットル目標開度に対応する連続制御信号をスロットルバルブに出力して該スロットルバルブを動作させる。
【0010】
本発明の第1の態様に係る自動車において、運転状態としては、例えばスロットル目標開度が挙げられる。コントローラは、例えば、スロットル目標開度がその基準値(例えば、スロットル全開状態の1/5〜1/10等)以下であるときに連続制御信号をパルス信号に変換するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の第1の態様に係る自動車では、原動機として電気モータ(例えば、直流直巻モータ等)も用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して電気モータへの印加電圧を制御する電圧印加回路であってもよい。なお、動力源は電力ないしは電気エネルギである。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応する電圧印加回路の目標印加電圧(目標操作量)を演算し、目標印加電圧に対応する連続制御信号を電圧印加回路に出力して該電圧印加回路を動作させる。
【0012】
原動機として電気モータを用いる自動車においては、電圧印加回路として、例えば電気モータと直列に接続されアクセル踏み込み量に対応して電気抵抗が制御される可変抵抗回路を用いてもよい。この場合、コントローラは、アクセ踏み込み量に対応する可変抵抗回路の目標電気抵抗を演算し、目標電気抵抗に対応する連続制御信号を可変抵抗回路に出力して該可変抵抗回路を動作させる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る自動車は、該自動車が走行している路面の勾配を検出する路面勾配検出手段、路面の平坦度を検出する路面平坦度検出手段及び該自動車の周囲の風速及び風向を検出する風速風向検出器のうちの少なくとも1つを備えているのが好ましい。この場合、路面勾配検出手段は、GPS受信装置を備えていて該GPS受信装置によって受信されたGPS電波に基づいて路面の勾配を検出するのが好ましい。また、路面平坦度検出手段は、撮像カメラを備えていて該撮像カメラによって撮影された該自動車の前方の情景の画像に基づいて路面の平坦度を検出するのが好ましい。
【0014】
本発明の第1の態様に係る自動車において、走行環境としては、例えば自動車が走行している路面の勾配、路面の平坦度又は自動車の周囲の風速及び風向などが挙げられる。コントローラは、例えば路面の下り勾配がその基準値(例えば、3〜5°等)以上であるとき、路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値(例えば、10〜15m/秒等)以上であるときに、連続制御信号をパルス信号に変換するのが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様に係る自動車は、基本的には本発明の第1の態様に係る自動車と同様の、原動機と、動力源供給装置と、アクセルペダルと、アクセルセンサと、コントローラとを備えている。ただし、本発明の第2の態様に係る自動車では、コントローラは、動力源供給装置に、目標操作量に対応するパルス状の制御信号(以下「パルス制御信号」という。)を出力して該動力源供給装置を動作させる。また、コントローラは、原動機に要求される動力が目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、パルス制御信号のパルス幅を小さくして動力源供給装置に出力する。
【0016】
本発明の第2の態様に係る自動車では、原動機として、例えばディーゼルエンジンを用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して燃料噴射量が制御される電子制御式のインジェクタであってもよい。この場合、動力源としては、例えば軽油、灯油等のディーゼルエンジン用の燃料が用いられる。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応するインジェクタの目標燃料噴射量(目標操作量)を演算し、目標燃料噴射量に対応するパルス制御信号をインジェクタに出力して該インジェクタを動作させる。
【0017】
また、本発明の第2の態様に係る自動車では、原動機として電気モータ(例えば、直流直巻モータ等)も用いることができる。この場合、動力源供給装置は、アクセル踏み込み量に対応して電気モータへの印加電圧のオン・オフ比(デューティ比)を制御する電子制御式のチョッパ回路であってもよい。なお、動力源は電力ないしは電気エネルギである。そして、コントローラは、アクセル踏み込み量に対応するチョッパ回路の目標オン・オフ比(目標操作量)を演算し、目標オン・オフ比に対応するパルス制御信号をチョッパ回路に出力して該チョッパ回路を動作させる。
【0018】
本発明の第2の態様に係る自動車でも、第1の態様に係る自動車と同様の路面勾配検出手段(例えば、GPS受信装置を備えたもの)、路面平坦度検出手段(例えば、撮像カメラを備えたもの)及び風速風向検出器のうちの少なくとも1つを備えているのが好ましい。また、本発明の第2の態様に係る自動車においても、走行環境としては、例えば自動車が走行している路面の勾配、路面の平坦度又は自動車の周囲の風速及び風向などが挙げられる。コントローラは、例えば、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときに、パルス制御信号のパルス幅を小さくするのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様に係る自動車用においては、自動車が実際に必要とする動力が、アクセル踏み込み量に(又は目標操作量)に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、連続制御信号がパルス信号に変換される。このように連続制御信号がパルス信号に変換されているときには、各パルス間では目標操作量に対応する制御信号が出力されないので、その分だけ、動力源供給装置から原動機に供給される動力源の量が少なくなる。このため、燃料、電力等の動力源の無駄な消費を防止することができ、ひいては自動車のエネルギ効率を高めることができる。
【0020】
本発明の第2の態様に係る自動車用においては、自動車が実際に必要とする動力が、アクセル踏み込み量(又は目標操作量)に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、パルス制御信号のパルス幅が小さくなる。このとき、パルス幅が減少した期間は、目標操作量に対応する制御信号が出力されないので、動力源供給装置から原動機に供給される動力源の量が少なくなる。このため、燃料、電力等の動力源の無駄な消費を防止することができ、ひいては自動車のエネルギ効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動車に搭載された火花点火式エンジンのシステム構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すエンジンのスロットルバルブの構造を示す模式図である。
【図3】図1に示すエンジンにおける、スロットル目標開度とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図4】アクセル踏み込み量が変化したときにおける、スロットル制御電流及びスロットル目標開度の時間に対する変化特性を示すグラフである。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ、自動車が走行している路面の下り勾配及び自動車に対する追い風の速度に対するパルスオフ率の変化特性を示すグラフである。
【図6】制御電流パルス化制御が行われた場合における、スロットル制御電流ないしはパルス制御電流の時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態2に係る自動車に搭載されたディーゼルエンジンのシステム構成を示す模式図である。
【図8】図7に示すエンジンにおける、目標燃料噴射量とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図9】図7に示すエンジンにおける、燃料噴射パルスの時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態3に係る電気自動車の駆動系統のシステム構成を示す模式図である。
【図11】図10に示す電気自動車における、モータへの供給電力とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図12】図10に示す電気自動車における、モータへの印加電圧の時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態4に係る電気自動車の駆動系統のシステム構成を示す模式図である。
【図14】図13に示す電気自動車における、モータへの供給電力とアクセル踏み込み量の関係を示すグラフである。
【図15】図13に示す電気自動車における、モータへの印加電圧(パルス電圧)の時間に対する変化特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施の形態1〜4を具体的に説明する。なお、実施の形態1は原動機として火花点火式エンジンを搭載した自動車に係るものであり、実施の形態2は原動機としてディーゼルエンジンを搭載した自動車に係るものであり、実施の形態3及び4は原動機として電気モータを搭載した電気自動車に係るものである。
【0023】
(実施の形態1)
図1に示すように、実施の形態1に係る自動車W1には、ガソリンを燃料とする火花点火式の多気筒エンジン1A(1つの気筒のみ図示)が搭載されている。エンジン1Aの各気筒においては、吸気行程において吸気バルブ2が開かれたときに、吸気ポート3から燃焼室4内に燃料燃焼用の空気が吸入される。続いて、圧縮行程において所定のタイミングで燃焼室4内の空気中にインジェクタ5(燃料噴射弁)から燃料が噴射され、混合気が形成される。この圧縮行程では、燃焼室4内の混合気がピストン6によって圧縮される。圧縮された燃焼室4内の混合気は、圧縮上死点付近において所定のタイミングで点火プラグ7により点火されて燃焼し、膨張行程で燃焼ガスの圧力によってピストン6が押し下げられる。この後、排気行程において排気バルブ8が開かれたときに、燃焼ガスが排気ポート9に排出される。
【0024】
このような吸入、圧縮、膨張、排気の4行程が連続的に繰り返され、ピストン6は気筒内で往復運動を繰り返す。このピストン6の往復運動は、コネクチングロッド10等によりクランクシャフト11の回転運動に変換される。このクランクシャフト11の回転運動は、エンジン1Aの出力動力として取り出され、エンジン1Aを搭載している自動車W1を走行させるとともに、図示していないオルタネータやエアコンなどの補機を駆動する。
【0025】
エンジン1Aの各気筒の燃焼室4に燃料燃焼用の空気を供給する吸気システムには、全気筒に共通な単一の共通吸気管12が設けられている。共通吸気管12の先端は大気に開放され、その先端部近傍に、共通吸気管12に吸入された空気中のダスト等を除去するエアクリーナ13と、共通吸気管12内の空気の流量を検出するエアフローセンサ14とが設けられている。さらに、共通吸気管12には、アクセル踏み込み量、すなわちアクセルペダル19の踏み込み量に応じて共通吸気管12内の空気の流れを絞るスロットルバルブ15が設けられている。スロットルバルブ15は、後で詳しく説明するように、アクセル踏み込み量に応じて、電気式のアクチュエータ16によってその開度が制御される電子制御式のスロットルバルブである。
【0026】
共通吸気管12の下流端は、各気筒の燃焼室4に供給される空気の脈動を減衰させてその流れを安定させるサージタンク17に接続されている。そして、サージタンク17には、各気筒の燃焼室4に個別的に空気を供給する分岐吸気管18が接続され、その下流端は、それぞれ対応する気筒の吸気ポート3に接続されている。なお、このエンジン1Aは、燃焼室4内に燃料を噴射する直噴式エンジンであるが、吸気ポート3内又は分岐吸気管18内に燃料を噴射して混合気を生成するポート噴射式エンジンであってもよい。ポート噴射式エンジンの場合は、各分岐吸気管18に、それぞれ、吸気ポート3内に向かって燃料を噴射するインジェクタが配設される。
【0027】
また、エンジン1Aには、各燃焼室4から排出された排気ガスを大気中に排出する排気システムが設けられ、この排気システムには、各気筒に共通の単一の共通排気管20が設けられている。ただし、排気ガスの流れ方向にみてその上流端近傍部では、共通排気管20は気筒毎に分岐して、対応する気筒の排気ポート9に接続されている。そして、共通排気管20には、排気ガス中のCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)及びNOx(窒素酸化物)を浄化する三元触媒を用いた触媒コンバータ21が設けられている。
【0028】
さらに、エンジン1Aには、混合気の燃焼温度を低下させてNOx発生量を低減するために、共通排気管20内の排気ガスの一部を、EGRガスとして吸気システムに還流させるEGR装置22が設けられている。このEGR装置22には、EGRガスの流路となるEGR通路23が設けられている。EGRガスの流れ方向にみてEGR通路23の上流端は、排気ガスの流れ方向にみて触媒コンバータ21より上流側で共通排気管20に接続されている。他方、EGR通路23の下流端は、サージタンク17に接続されている。そして、EGR通路22には、EGRガスの流量を制御するEGRバルブ24が設けられている。
【0029】
図2に示すように、スロットルバルブ15は、共通吸気管12内に配置されたバタフライ弁26と、共通吸気管12をその直径方向に貫通して伸びバタフライ弁26を支持する回転シャフト27とを備えている。そして、回転シャフト27がその中心軸L1のまわりに回転すると、バタフライ弁26が回転シャフト27と一体的に回転し、共通吸気管12を開閉する。なお、回転シャフト27(ひいてはバタフライ弁26)は、その回転軸L1のまわりに約90°回転することができる。
【0030】
バタフライ弁26は、その広がり面が共通吸気管12の中心軸L2とほぼ垂直となる姿勢となっているときには全閉状態となる。また、バタフライ弁26は、その広がり面が共通吸気管12の中心軸L2とほぼ平行となる姿勢となっているときには全開状態となる。なお、バタフライ弁26(スロットルバルブ15)が全閉状態となっているときでも、バタフライ弁26と共通吸気管12との間には隙間が存在し、エンジン1Aのアイドリングに必要とされる空気がこの隙間を通って流れる。
【0031】
スロットルバルブ15の回転シャフト27の一端は共通吸気管12外においてアクチュエータ16に連結され、他端は共通吸気管12外において回転シャフト戻し機構28に連結されている。ここで、回転シャフト戻し機構28は復帰ばね29を有し、復帰ばね29の付勢力により、回転シャフト27(ひいてはバタフライ弁26)を、バタフライ弁26が全閉状態となる方向に付勢する。他方、アクチュエータ16は、該アクチュエータ16に印加される電流(又は電圧)に応じて、復帰ばね29の付勢力に抗して、回転シャフト27(ひいてはバタフライ弁26)を、全開状態となる方向に回転駆動する。
【0032】
かくして、アクチュエータ16に電流が印加されていないとき、すなわち電流が0であるときには、バタフライ弁26は復帰ばね29の付勢力により全閉状態となる。他方、アクチュエータ16に電流が印加されているときには、バタフライ弁26は、印加された電流の大きさに応じて開弁され、最大限の電流が印加されているときには全開状態となる。なお、回転シャフト戻し機構28には、バタフライ弁26が全開状態を超えて回転するのを防止するストッパ(図示せず)が設けられている。
【0033】
以下、エンジン1Aないしは自動車W1の制御システムを説明する。図1及び図2に示すように、エンジン1Aには、アクセルペダル19に付設されアクセル踏み込み量を検出するアクセルセンサ31と、自動車W1が走行している路面の勾配を検出する路面勾配センサ32と、自動車W1の周囲の風速及び風向を検出する風速風向センサ33とが設けられている。さらに、自動車W1には、その前方を撮影する撮像カメラ34(ビデオカメラ)と、GPS受信装置35とが設けられている。ここで、撮像カメラ34は自動車W1の前方の道路等の情景を連続的に撮影する。また、GPS受信装置35は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)からGPS電波を受信する。
【0034】
なお、本願発明の要旨とは関連性が希薄であるので図示していないが、エンジン1Aには、さらに、その運転状態に関する各種情報を収集するために、共通吸気管12内の空気の温度を検出する吸気温センサ、共通吸気管12内の空気の圧力を検出する吸気圧センサ、エンジン1Aの冷却水温度を検出する水温センサ、クランクシャフト11の回転数(エンジン回転数)を検出する回転数センサ、クランク角を検出するクランク角センサ等の種々のセンサが設けられている。これらの各センサの検出信号は、エンジン1Aの制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0035】
コントローラ30は、自動車W1又はエンジン1Aないしはその付属機器の総合的な制御装置である。詳しくは図示していないが、コントローラ30は、制御信号の入出力を行う入出力部(インターフェース)、データや制御情報等を記憶する記憶部(ROM、RAM等)、各種演算処理を行う中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。また、コントローラ30は、撮像カメラ34によって撮影された自動車W1の前方の情景の画像を解析し、自動車W1が走行している道路の状況、例えば路面の平坦度を判定する。さらに、コントローラ30は、GPS受信装置35により受信されたGPS電波に基づいて、種々のデータ、例えば自動車W1が走行している位置、走行している道路の勾配等を算出する。
【0036】
そして、コントローラ30は、前記各センサ14、31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出、判定又は算出された各種データに基づいて、インジェクタ5、点火プラグ7、アクチュエータ16、EGRバルブ24等を制御ないしは駆動することにより、通常の燃料噴射制御、通常の点火時期制御、通常のEGR制御等の一般的なエンジン1Aの制御を行う。しかしながら、エンジン1Aの一般的な制御の制御手法は当業者にはよく知られており、また本願発明の要旨とするところでもないので、その説明は省略する。
【0037】
さらに、コントローラ30は、エンジン1A(又は自動車W1)が、アクセル踏み込み量(又はスロットル目標開度)に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、アクチュエータ16に印加する連続的な制御電流(以下「スロットル制御電流」という。)ないしは制御電圧を、パルス高さがスロットル制御電流の大きさと同一であるパルス制御電流ないしはパルス制御電圧に変換するといった制御(以下「電流パルス化制御」という。)を行うようになっている。
【0038】
以下、本発明の実施の形態1に係る電流パルス化制御の制御手法を説明する。
例えば図3に示すように、コントローラ30は、スロットル目標開度ないしはスロットル開度を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定する。なお、図3に示す例では、スロットル目標開度はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、スロットル目標開度とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができる。例えば、アクセル踏み込み量に対するスロットル目標開度の増加率を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくしてもよく(スロットル目標開度が大きい側に凹状となる)、又は逆に小さくしてもよい(スロットル目標開度が大きい側に凸状となる)。
【0039】
図4中にグラフG1で示すように自動車が一定のアクセル踏み込み量a1で運転されているときに、時刻t1でアクセルペダル19が踏み込まれて加速が開始され、時刻t2以降は一定のアクセル踏み込み量a2(>a1)で運転される通常の運転状態、すなわちアクチュエータ16に印加する電流がパルス化されていないときのスロットル制御電流の時間に対する変化特性(グラフG2)と、スロットル開度の時間に対する変化特性(グラフG3)とを示す。
【0040】
図4から明らかなとおり、自動車W1ないしはエンジン1Aの通常の運転状態、すなわち自動車W1の走行環境ないしはエンジン1Aの運転状態が、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要とする普通の運転状態では、コントローラ30からアクチュエータ16に印加されるスロットル制御電流は、パルス状ではなく連続的な電流である。このように、自動車ないしはエンジン1Aの通常の運転時には、従来のこの種の自動車ないしはエンジンと同様にスロットル目標開度が設定される。
【0041】
他方、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態では、スロットル制御電流は、エンジン動力の不要度合いに応じてパルス化される。すなわち、パルス高さがスロットル制御電流の大きさと同一である、予め設定されたパルス幅及びパルス間隔のパルス制御電流に変換される。ここで、パルス幅は1つのオンオフサイクル(例えば、1秒、0.1秒、0.01秒等)におけるパルスオン期間であり、パルス間隔は上記オンオフサイクルにおけるパルスオフ期間である。なお、以下では、便宜上、1つのオンオフサイクルにおけるパルスオフ期間の比率(パルスオフ期間/1オンオフサイクル期間)を「パルスオフ率」という。なお、パルスオフ率が0であれば、スロットル制御電流は全くパルス化されていない(すなわち連続的)ことになり、パルスオフ率が1であれば、アクチュエータ16にはスロットル制御電流は全く流れないことになる。
【0042】
かくして、パルス制御電流のパルスオフ率は、自動車W1の走行環境又はエンジン1Aの運転状態に応じて設定される。スロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要とするかしないかを判断するための自動車W1の走行環境としては、例えば、路面勾配センサ32によって検出され又はGPS電波に基づいて算出される路面の勾配、撮像カメラ34によって取得される前方の道路の画像から判定される路面の平坦度、風速風向センサ33によって検出される自動車の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルスオフ率で、スロットル制御電流がパルス化される。なお、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにスロットル制御電流をパルス化するようにしてもよい。
【0043】
具体的には、例えば、図5(a)にグラフH1(実線)で示すように、パルスオフ率は、自動車が走行している路面の下り勾配が大きいときほど大きくなるように設定される。なお、グラフH2(破線)で示すように、路面の下り勾配が予め設定された基準値θ1未満であるときにはパルスオフ率を0とし(パルス化しない)、基準値θ1以上であるときにパルスオフ率を所定の値に設定するようにしてもよい。
【0044】
また、例えば、図5(b)にグラフH3(実線)で示すように、パルスオフ率は、自動車の追い風の速度が大きいときほど大きくなるように設定される。なお、グラフH4(破線)で示すように、追い風の速度が予め設定された基準値V1未満であるときにはパルスオフ率を0とし(パルス化しない)、基準値V1以上であるときにパルスオフ率を所定の値に設定するようにしてもよい。自動車の周囲の風の向きが自動車の前後方向でないときには、追い風の速度は、周囲の風の自動車の進行方向の速度成分を用いればよい。
【0045】
また、スロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要とするかしないかを判断するためのエンジン1Aの運転状態としてはスロットル目標開度自体などが挙げられる。具体的には、スロットル目標開度が、例えばスロットルバルブ全開状態の1/5〜1/10以下であるときに、スロットル制御電流がパルス制御信号に変換される。
【0046】
図6に、このような電流パルス化制御が行われた場合における、スロットル制御電流又はパルス制御電流の時間に対する変化特性の一例を示す。図6に示す例では、時刻t10〜t11の期間は、スロットル目標開度が基準値(例えば、スロットル全開状態の1/5〜1/10)以下となり、スロットル制御電流がパルス化されている。このように、スロットル目標開度が小さいときには、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないので、スロットル制御電流をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ、燃焼室4に供給される空気の量が低減され、これにより燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0047】
図6に示す例では、時刻t12〜t13の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、スロットル制御電流がパルス化されている。このように、下り勾配が大きいときには、自動車W1には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないので、スロットル制御電流をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ、燃焼室4に供給される空気の量が低減され、これにより燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0048】
なお、図6中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、スロットル制御電流がパルス化される。このように、追い風が吹いているときには、自動車W1には風力により前進方向の力が作用し、スロットル目標開度に対応するエンジン動力を必要としないので、スロットル制御電流をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ燃焼室4に供給される空気の量が低減され、これにより燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性能を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態1によれば、アクセル踏み込み量(又はスロットル目標開度)に対応するエンジン動力を必要としない状況下では、スロットル制御電流がパルス化される。このため、パルスオフ期間ではアクチュエータ16に駆動電流(又は駆動電圧)が印加されないので、その分だけエンジン1Aの燃焼室4に供給される空気の量が減少し、これに伴って燃焼室4に供給される燃料の量が減少する。したがって、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0050】
(実施の形態2)
以下、図7〜図9を参照しつつ、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態2に係る自動車W2には、原動機として直噴式のディーゼルエンジン1B(以下、略して「エンジン1B」という。)が搭載されている。以下、エンジン1Bの構成及び機能を説明する。ただし、エンジン1Bは、点火火花式エンジンではなくディーゼルエンジンであることと、これに付随して必然的に生じる相違点とを除けば、実施の形態1に係る火花点火式のエンジン1Aと同様である。そこで、以下では説明の重複を避けるため、主として実施の形態1に係るエンジン1Aと異なる点を説明する。
【0051】
図7に示すように、エンジン1Bにおいては、吸気行程で吸気バルブ2が開かれたときに、吸気ポート3から燃焼室4内に燃料燃焼用の空気が吸入される。そして、圧縮行程で燃焼室4内の吸入空気がピストン6によって圧縮され、高温・高圧状態となる。そして、圧縮上死点付近で、インジェクタ40から燃焼室4内の高温・高圧の吸入空気中に燃料(軽油等)が噴射され、膨張行程でこの燃料は自己着火して燃焼する。なお、エンジン1Bには、点火プラグは設けられていない。燃焼によって生じたガスすなわち排気ガスは、排気行程で排気バルブ8が開かれたときに排気ポート9に排出される。これらの一連の動作が繰り返され、ピストン4は気筒内で往復運動を繰り返す。ピストン4の往復運動をクランクシャフト11の回転運動に変換する機構は、実施の形態1に係るエンジン1Aと同様である。
【0052】
エンジン1Bでは、インジェクタ40は、その噴射孔が燃焼室4に臨むように配置され、燃焼室4内に直接燃料を噴射する。インジェクタ40は燃料供給通路41に接続され、この燃料供給通路41には、高圧燃料ポンプ42が介設されている。高圧燃料ポンプ42は、燃料供給通路41内の燃料圧が設定値以上に保持されるように作動する。そして、エンジン1Bでは、インジェクタ40からの燃料噴射は、圧縮上死点付近すなわち噴射された燃料の自己着火が可能なタイミングで、燃料噴射量に対応する時間だけインジェクタ40を開弁することに行われる。すなわち、燃料は、インジェクタ40から燃焼室4内へ、間欠的にパルス噴射される。なお、インジェクタ40は、コントローラ30から所定の駆動電圧が印加されているときには開弁されて燃料を噴射し、駆動電圧が印加されていないときには閉弁され、このときには燃料は噴射されない。
【0053】
エンジン1Bの吸気システムでは、共通吸気管12にはスロットルバルブは設けられていない。したがって、燃焼室4へはほぼ大気圧の空気が吸入される。また、吸気脈動はほとんど生じないので、サージタンクは設けられていない。各気筒の分岐吸気管18は、直接、共通吸気管12から分岐している。また、EGR通路23の下流端は、共通吸気管12に接続されている。エンジン1Bの吸気システムのその他の構成は、実施の形態1に係るエンジン1Aと同様である。
【0054】
以下、エンジン1Bないしは自動車W2の制御システムを説明する。詳しくは図示していないが、実施の形態2に係る自動車W2ないしはエンジン1Bでも、実施の形態1の場合と同様に、アクセルセンサ31と、路面勾配センサ32と、風速風向センサ33と、撮像カメラ34と、GPS受信装置35とが設けられている。また、実施の形態1の場合と同様に、吸気温センサ、吸気圧センサ、水温センサ、回転数センサ、クランク角センサ等の種々のセンサが設けられている。これらの各センサの検出信号は、エンジン1Bの制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0055】
コントローラ30は、自動車W2又はエンジン1Bないしはその付属機器の総合的な制御装置であり、実施の形態1の場合と同様に入出力部(インターフェース)、記憶部(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。そして、コントローラ30は、各センサ14、31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出、判定又は算出された各種データに基づいて、インジェクタ40、EGRバルブ24等を制御ないしは駆動することにより、通常の燃料噴射制御、通常のEGR制御等の一般的なエンジン1Bの制御を行う。なお、エンジン1Bの一般的な制御の制御手法は当業者にはよく知られており、また本願発明の要旨とするところでもないので、その説明は省略する。
【0056】
さらに、コントローラ30は、エンジン1B(又は自動車W2)が、アクセル踏み込み量(又は目標燃料噴射量)に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、インジェクタ40に印加するパルス状の駆動電圧のパルス幅を小さくするといった制御(以下「パルス幅縮小制御」という。)を行う。
【0057】
以下、本発明の実施の形態2に係るパルス幅縮小制御の制御手法を説明する。
図8に示すように、エンジン1Bでは、コントローラ30は、インジェクタ40の目標燃料噴射量ないしは燃料噴射量を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定するようになっている。なお、図8に示す例では、目標燃料噴射量はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、目標燃料噴射量とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができるのは、実施の形態1の場合と同様である。
【0058】
そして、自動車W2ないしはエンジン1Bの通常の運転状態、すなわち自動車W2の走行環境ないしはエンジン1Bの運転状態がアクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要とする普通の運転状態では、目標燃料噴射量に対応するパルス幅の駆動電圧が、コントローラ30からインジェクタ40に印加される。すなわち、通常の運転時には、従来のこの種の自動車ないしはエンジンと同様に燃料噴射のパルス幅が設定される。
【0059】
他方、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としない走行環境又は運転状態では、インジェクタ40に印加されパルス状の駆動電圧のパルス幅が、予め設定されたパルス幅縮小率で縮小される。なお、パルス縮小率が0であれば、通常時と同様のパルス幅で燃料が噴射されることになり、パルス縮小率が1であれば、インジェクタ40は全く開弁されず、燃料は全く噴射されないことになる。
【0060】
ここで、インジェクタ40のパルス状の駆動電圧のパルス縮小率は、自動車W2の走行環境又はエンジン1Bの運転状態に応じて設定される。アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要とするかしないかを判断するための自動車の走行環境としては、実施の形態1の場合と同様に、路面の勾配、路面の平坦度、自動車W2の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルス縮小率で、パルス状の駆動電圧のパルス幅が縮小される。この場合、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにパルス幅を縮小するのが好ましい。なお、駆動電圧のパルス縮小率は、実施の形態1におけるパルスオフ率と同様に、自動車が走行している路面の下り勾配あるいは自動車の追い風の速度に応じて設定される。
【0061】
図9に、このようなパルス幅縮小制御が行われた場合における、駆動パルス電圧ないしは燃料噴射パルスの時間に対する変化特性の一例を示す。なお、図9では、紙面の都合上、各燃料噴射パルスの間隔は時間軸方向に短縮して示している。すなわち、実際には、各燃料噴射パルスは時間軸方向に離間している。図9に示す例では、時刻t21〜t22の期間は、アクセル開度が比較的小さく、このため燃料噴射パルスのパルス幅は比較的小さくなっている。また、時刻t23以降は、アクセル開度が比較的大きく、このため燃料噴射パルスのパルス幅は比較的大きくなっている。
【0062】
また、図9に示す例では、時刻t24〜t25の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、燃料噴射パルスのパルス幅が勾配に応じた所定のパルス縮小率で縮小されている。なお、図9中において破線は縮小されない場合のパルス幅を示している。このように、下り勾配が大きいときには、自動車W2には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないので、燃料噴射パルスのパルス幅を縮小することにより、パルス縮小期間に相当する分だけ、燃焼室4に供給される燃料の量が低減される。すなわち、無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0063】
なお、図9中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、燃料噴射パルスのパルス幅が縮小される。このように、追い風が吹いているときには、自動車W2には風力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するエンジン動力を必要としないからである。
【0064】
以上、本発明の実施の形態2によっても、実施の形態1の場合と同様に、自動車W2ないしはエンジン1Bにおける無駄な燃料消費を防止することができ、ひいては燃費性すなわちエネルギ効率を向上させることができる。
【0065】
(実施の形態3)
以下、図10〜図12を参照しつつ、本発明の実施の形態3を説明する。図10に示すように、実施の形態3に係る電気自動車W3には、原動機として直流直巻モータ50(以下「モータ50」という。)が搭載されている。このモータ50が出力する動力ないしはトルク(以下「モータ動力」という。)は、差動装置51(ディファレンシャル装置)と、左右の車軸52とを介して、左右の車輪53に伝達される。
【0066】
モータ50は、導線54を介してバッテリ55に接続され、この導線54には電圧印加回路56が介設されている。電圧印加回路56は、例えば可変抵抗器を有し、コントローラ30からの制御信号に従って、アクセル踏み込み量に応じてモータ50に印加する電圧を連続的に制御し、これによりモータ動力を制御する。詳しくは図示していないが、実施の形態3に係る電気自動車W3でも、実施の形態1の場合と同様に、アクセルセンサ31と、路面勾配センサ32と、風速風向センサ33と、撮像カメラ34と、GPS受信装置35とが設けられている。これらの各センサの検出信号は、電気自動車W3の制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0067】
コントローラ30は、自動車W3の総合的な制御装置であり、入出力部(インターフェース)、記憶部(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。そして、コントローラ30は、各センサ31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出、判定又は算出された各種データに基づいて電圧印加回路56を制御する。
【0068】
図11に示すように、電気自動車W3では、コントローラ30は、モータ50への目標供給電力(ないしは目標印加電圧)を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定している。なお、図11に示す例では、目標供給電力はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、目標供給電力とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができるのは、実施の形態1の場合と同様である。さらに、コントローラ30は、電気自動車W3が、アクセル踏み込み量に対応する動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、モータ50に印加されている連続的な電圧をパルス化するといった制御(以下「制御電圧パルス化制御」という。)を行うようになっている。
【0069】
この制御電圧パルス化制御では、電気自動車W3の通常の運転状態、すなわち電気自動車W3の走行環境ないしは運転状態がアクセル踏み込み量(又は目標供給電力)に対応するモータ動力を必要とする普通の運転状態では、目標供給電力に対応する連続的な制御信号が、コントローラ30から電圧印加回路56に印加される。すなわち、通常の運転時には、従来のこの種の電気自動車と同様に連続的な電圧がモータ50に印加される。
【0070】
他方、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としない走行環境又は運転状態では、モータ50に印加される連続的な電圧が予め設定されたパルスオフ率でパルス化される。なお、パルスオフ率が0であれば、通常時と同様の連続的な電圧がモータ50に印加されることになり、パルスオフ率が1であれば、モータ50には全く電力が供給されないことになる。
【0071】
ここで、モータ50に印加される連続的な電圧のパルスオフ率は、電気自動車W3の走行環境又は運転状態に応じて設定される。アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要とするかしないかを判断するための走行環境としては、実施の形態1の場合と同様に、路面の勾配、路面の平坦度、電気自動車W3の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルスオフ率で、連続的な電圧がパルス化される。この場合、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにパルス化するのが好ましい。なお、モータ50への印加電圧のパルスオフ率は、実施の形態1におけるパルスオフ率と同様に、自動車W3が走行している路面の下り勾配あるいは自動車W3の追い風の速度に応じて設定される。
【0072】
図12に、このような電圧パルス化制御が行われた場合における、モータ50への印加電圧の時間に対する変化特性の一例を示す。図12に示す例では、時刻t31までの期間はアクセル開度が比較的小さく、このため印加電圧は比較的低くなっている。また、時刻t32以降はアクセル開度が比較的大きく、このため印加電圧は比較的高くなっている。
【0073】
また、図12に示す例では、時刻t33〜t34の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、印加電圧が、勾配に応じた所定のパルスオフ率でパルス化されている。このように、下り勾配が大きいときには、電気自動車W3には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないので、印加電圧をパルス化することにより、パルスオフ期間に相当する分だけ、モータ50に供給される電力の量が低減される。すなわち、無駄な電力消費を防止することができ、ひいては電気自動車W3のエネルギ効率を高めることができる。
【0074】
なお、図12中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、モータ50への印加電圧がパルス化される。このように、追い風が吹いているときには、電気自動車W3には風力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないからである。
【0075】
(実施の形態4)
以下、図13〜図15を参照しつつ、本発明の実施の形態4を説明する。図13に示すように、実施の形態4に係る電気自動車W4には、実施の形態3の場合と同様にモータ50が搭載され、モータ動力は、差動装置51と、左右の車軸52とを介して、左右の車輪53に伝達される。また、実施の形態3の場合と同様に、モータ50は、導線54を介してバッテリ55に接続されている。
【0076】
そして、実施の形態4に係る電気自動車W4では、導線54にPWM(パルス幅変調)チョッパ回路60が介設されている。PWMチョッパ回路56は、コントローラ30からの制御信号に従って、アクセル踏み込み量に応じてモータ50に印加するパルス状の制御電圧のオン・オフ率を制御し、これによりモータ動力を制御する。詳しくは図示していないが、実施の形態4に係る電気自動車W4でも、実施の形態1の場合と同様に、アクセルセンサ31と、路面勾配センサ32と、風速風向センサ33と、撮像カメラ34と、GPS受信装置35とが設けられている。これらの各センサの検出信号は、電気自動車W4の制御情報としてコントローラ30に入力される。
【0077】
コントローラ30は、自動車W4の総合的な制御装置であり、入出力部(インターフェース)、記憶部(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマ、カウンタ等を備えたコンピュータである。そして、コントローラ30は、各センサ31〜33、撮像カメラ34、GPS受信装置35等によって検出又は算出された各種データに基づいて、チョッパ回路60を制御する。
【0078】
図14に示すように、電気自動車W4では、コントローラ30は、モータ50への目標供給電力を、アクセル踏み込み量が大きいときほど大きくなるように設定している。なお、図14に示す例では、目標供給電力はアクセル踏み込み量に比例するように設定されているが、目標供給電力とアクセル踏み込み量の関係は、このような比例関係に限定されるものではなく、所望の特性に設定することができるのは、実施の形態1の場合と同様である。さらに、コントローラ30は、電気自動車W4が、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としない走行環境又は運転状態にあるときには、モータ50に印加されているパルス状の制御電圧のパルス幅を縮小するといった制御(以下「電圧パルス幅縮小制御」という。)を行うようになっている。
【0079】
この電圧パルス幅縮小制御では、電気自動車W4の通常の運転状態、すなわち電気自動車W4の走行環境ないしは運転状態がアクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要とする普通の運転状態では、目標供給電力に対応するパルス状の制御信号が、コントローラ30からチョッパ回路60に印加される。すなわち、通常の運転時には、従来のこの種の電気自動車と同様にパルス状の電圧がモータ50に印加される。
【0080】
他方、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としない走行環境又は運転状態では、モータ50に印加される制御電圧のパルス幅が、予め設定されたパルス縮小率で縮小される。なお、パルス縮小率が0であれば、通常時と同様のパルス状の電圧がモータ50に印加されることになり、パルス縮小率が1であれば、モータ50には全く電圧が印加されないことになる。
【0081】
ここで、モータ50へのパルス状の印加電圧のパルス縮小率は、電気自動車W4の走行環境又は運転状態に応じて設定される。アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要とするかしないかを判断するための走行環境としては、実施の形態1の場合と同様に、路面の勾配、路面の平坦度、電気自動車W4の周囲の風速及び風向などが挙げられる。具体的には、道路が下り坂であるとき、路面の平坦度が高いとき、追い風が吹いているときには、これらの度合いに応じたパルス縮小率で、パルス状の印加電圧のパルス幅が縮小される。この場合、路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときにパルス幅を縮小するのが好ましい。なお、印加電圧のパルス縮小率は、実施の形態1におけるパルスオフ率と同様に、自動車W4が走行している路面の下り勾配あるいは自動車W4の追い風の速度に応じて設定される。
【0082】
図15に、このような電圧パルス幅縮小制御が行われた場合における、モータ50への印加電圧の時間に対する変化特性の一例を示す。図15に示す例では、時刻t41〜t42の期間は、アクセル開度が比較的小さく、このためモータ50への印加電圧のパルス幅は比較的小さくなっている。また、時刻t43以降は、アクセル開度が比較的大きく、このためモータ50への印加電圧のパルス幅は比較的大きくなっている。
【0083】
また、図15に示す例では、時刻t44〜t45の期間は、下り坂の勾配が基準値(例えば、3〜5°)以上となり、印加電圧のパルス幅が勾配に応じた所定のパルス縮小率で縮小されている。なお、図15中において破線は縮小されない場合のパルス幅を示している。このように、下り勾配が大きいときには、自動車W4には重力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないので、モータ50への印加電圧のパルス幅を縮小することにより、パルス縮小期間に相当する分だけ、モータ50に供給される電力の量が低減される。すなわち、無駄な電力消費を防止することができ、ひいては電気自動車W4のエネルギ効率を高めることができる。
【0084】
なお、図15中には示していないが、追い風の速度(ないしは周囲の風の自動車進行方向の速度成分)が基準値(例えば、10〜15m/秒)以上となったときにも、下り坂の勾配が基準値以上となったときと同様に、モータ50への印加電圧のパルス幅が縮小される。このように、追い風が吹いているときには、電気自動車W4には風力により前進方向の力が作用し、アクセル踏み込み量に対応するモータ動力を必要としないからである。
【0085】
以上、本発明は、その特定の実施の形態に関連して説明されているが、このほか多数の変形例及び修正例が可能であるということは当業者にとっては自明なことであろう。それゆえ、本発明は、このような実施の形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲によって限定されるべきものである。
【符号の説明】
【0086】
W1〜W4 自動車、1A エンジン、1B エンジン、2 吸気バルブ、3 吸気ポート、4 燃焼室、5 インジェクタ、6 ピストン、7 点火プラグ、8 排気バルブ、9排気ポート、10 コネクチングロッド、11 クランクシャフト、12 共通吸気管、13 エアクリーナ、14 エアフローセンサ、15 スロットルバルブ、16 アクチュエータ、17 サージタンク、18 分岐吸気管、20 共通排気管、21 触媒コンバータ、22 EGR装置、23 EGR通路、24 EGRバルブ、26 バラフライ弁、27 回転シャフト、28 回転シャフト戻し機構、29 復帰ばね、30 コントローラ、31 アクセルセンサ、32 路面勾配センサ、33 風速風向センサ、34 撮像カメラ、35 GPS受信装置、40 インジェクタ、50 モータ、51 差動装置、52 車軸、53 車輪、54 導線、55 バッテリ、56 電圧印加回路、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源から動力を生成する原動機と、
上記原動機へ動力源を供給する動力源供給装置と、
運転者の踏み込み動作により操作されるアクセルペダルと、
上記アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサと、
上記アクセルセンサによって検出された上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記動力源供給装置の目標操作量を演算し、上記目標操作量に対応する連続的な制御信号を上記動力源供給装置に出力して該動力源供給装置を動作させ、上記原動機への動力源の供給量を制御するコントローラとを備えている自動車であって、
上記コントローラが、上記原動機に要求される動力が上記目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、上記制御信号を、パルス高さが上記制御信号の大きさと同一である、予め設定されたパルス幅及びパルス間隔のパルス信号に変換して上記動力源供給装置に出力することを特徴とする自動車。
【請求項2】
上記原動機が火花点火式エンジンであり、
上記動力源供給装置が、アクセルペダルの踏み込み量に対応して開度が制御される電子制御式のスロットルバルブと、上記スロットルバルブを経由して流れる空気に対して予め設定された割合で上記エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁とで構成され、
上記動力源が火花点火式エンジン用の燃料であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記スロットルバルブの目標開度を演算し、上記目標開度に対応する連続的な制御信号を上記スロットルバルブに出力して該スロットルバルブを動作させることを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
上記運転状態が上記スロットルバルブの目標開度であることを特徴とする、請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
上記コントローラが、上記スロットルバルブの上記目標開度がその基準値以下であるときに、上記制御信号を上記パルス信号に変換することを特徴とする、請求項3に記載の自動車。
【請求項5】
上記原動機が電気モータであり、
上記動力源供給装置が、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応して上記電気モータへの印加電圧を制御する電圧印加回路であり、
上記動力源が電力であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記電圧印加回路の目標印加電圧を演算し、上記目標印加電圧に対応する連続的な制御信号を上記電圧印加回路に出力して該電圧印加回路を動作させることを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項6】
上記電圧印加回路が、上記電気モータと直列に接続され、アクセルペダルの踏み込み量に対応して電気抵抗が制御される可変抵抗回路であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記可変抵抗回路の目標電気抵抗を演算し、上記目標電気抵抗に対応する連続的な制御信号を上記可変抵抗回路に出力して該可変抵抗回路を動作させることを特徴とする、請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
該自動車が走行している路面の勾配を検出する路面勾配検出手段、上記路面の平坦度を検出する路面平坦度検出手段及び該自動車の周囲の風速及び風向を検出する風速風向検出器のうちの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項8】
上記路面勾配検出手段は、GPS受信装置を備えていて、該GPS受信装置によって受信されたGPS電波に基づいて路面の勾配を検出することを特徴とする、請求項7に記載の自動車。
【請求項9】
上記路面平坦度検出手段は、撮像カメラを備えていて、該撮像カメラによって撮影された該自動車の前方の情景の画像に基づいて路面の平坦度を検出することを特徴とする、請求項7に記載の自動車。
【請求項10】
上記走行環境が、該自動車が走行している路面の勾配、上記路面の平坦度又は該自動車の周囲の風速及び風向であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項11】
上記コントローラが、上記路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、上記路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときに、上記制御信号を上記パルス信号に変換することを特徴とする、請求項10に記載の自動車。
【請求項12】
動力源から動力を生成する原動機と、
上記原動機へ動力源を供給する動力源供給装置と、
運転者の踏み込み動作により操作されるアクセルペダルと、
上記アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサと、
上記アクセルセンサによって検出された上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記動力源供給装置の目標操作量を演算し、上記目標操作量に対応するパルス状の制御信号を上記動力源供給装置に出力して該動力源供給装置を動作させ、上記原動機への動力源の供給量を制御するコントローラとを備えている自動車であって、
上記コントローラが、上記原動機に要求される動力が上記目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、上記制御信号のパルス幅を小さくして上記動力源供給装置に出力することを特徴とする自動車。
【請求項13】
上記原動機がディーゼルエンジンであり、
上記動力源供給装置が、アクセルペダルの踏み込み量に対応して燃料噴射量が制御される電子制御式のインジェクタであり、
上記動力源がディーゼルエンジン用の燃料であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記インジェクタの目標燃料噴射量を演算し、上記目標燃料噴射量に対応するパルス状の制御信号を上記インジェクタに出力して該インジェクタを動作させることを特徴とする、請求項12に記載の自動車。
【請求項14】
上記原動機が電気モータであり、
上記動力源供給装置が、アクセルペダルの踏み込み量に対応して上記電気モータへの印加電圧のオン・オフ比を制御する電子制御式のチョッパ回路であり、
上記動力源が電力であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記チョッパ回路の目標オン・オフ比を演算し、上記目標オン・オフ比に対応するパルス状の制御信号を上記チョッパ回路に出力して該チョッパ回路を動作させることを特徴とする、請求項12に記載の自動車。
【請求項15】
該自動車が走行している路面の勾配を検出する路面勾配検出手段、上記路面の平坦度を検出する路面平坦度検出手段及び該自動車の周囲の風速及び風向を検出する風速風向検出器のうちの少なくとも1つの検出器が設けられていることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項16】
上記路面勾配検出手段は、GPS受信装置を備えていて、該GPS受信装置によって受信されたGPS電波に基づいて路面の勾配を検出することを特徴とする、請求項15に記載の自動車。
【請求項17】
上記路面平坦度検出手段は、撮像カメラを備えていて、該撮像カメラによって撮影された該自動車の前方の情景の画像に基づいて路面の平坦度を検出することを特徴とする、請求項15に記載の自動車。
【請求項18】
上記走行環境が、該自動車が走行している路面の勾配、上記路面の平坦度又は該自動車の周囲の風速及び風向であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項19】
上記コントローラは、上記路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、上記路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときに、上記制御信号のパルス幅を小さくすることを特徴とする、請求項18に記載の自動車。
【請求項1】
動力源から動力を生成する原動機と、
上記原動機へ動力源を供給する動力源供給装置と、
運転者の踏み込み動作により操作されるアクセルペダルと、
上記アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサと、
上記アクセルセンサによって検出された上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記動力源供給装置の目標操作量を演算し、上記目標操作量に対応する連続的な制御信号を上記動力源供給装置に出力して該動力源供給装置を動作させ、上記原動機への動力源の供給量を制御するコントローラとを備えている自動車であって、
上記コントローラが、上記原動機に要求される動力が上記目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、上記制御信号を、パルス高さが上記制御信号の大きさと同一である、予め設定されたパルス幅及びパルス間隔のパルス信号に変換して上記動力源供給装置に出力することを特徴とする自動車。
【請求項2】
上記原動機が火花点火式エンジンであり、
上記動力源供給装置が、アクセルペダルの踏み込み量に対応して開度が制御される電子制御式のスロットルバルブと、上記スロットルバルブを経由して流れる空気に対して予め設定された割合で上記エンジンに燃料を供給する燃料噴射弁とで構成され、
上記動力源が火花点火式エンジン用の燃料であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記スロットルバルブの目標開度を演算し、上記目標開度に対応する連続的な制御信号を上記スロットルバルブに出力して該スロットルバルブを動作させることを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
上記運転状態が上記スロットルバルブの目標開度であることを特徴とする、請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
上記コントローラが、上記スロットルバルブの上記目標開度がその基準値以下であるときに、上記制御信号を上記パルス信号に変換することを特徴とする、請求項3に記載の自動車。
【請求項5】
上記原動機が電気モータであり、
上記動力源供給装置が、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応して上記電気モータへの印加電圧を制御する電圧印加回路であり、
上記動力源が電力であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記電圧印加回路の目標印加電圧を演算し、上記目標印加電圧に対応する連続的な制御信号を上記電圧印加回路に出力して該電圧印加回路を動作させることを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項6】
上記電圧印加回路が、上記電気モータと直列に接続され、アクセルペダルの踏み込み量に対応して電気抵抗が制御される可変抵抗回路であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記可変抵抗回路の目標電気抵抗を演算し、上記目標電気抵抗に対応する連続的な制御信号を上記可変抵抗回路に出力して該可変抵抗回路を動作させることを特徴とする、請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
該自動車が走行している路面の勾配を検出する路面勾配検出手段、上記路面の平坦度を検出する路面平坦度検出手段及び該自動車の周囲の風速及び風向を検出する風速風向検出器のうちの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項8】
上記路面勾配検出手段は、GPS受信装置を備えていて、該GPS受信装置によって受信されたGPS電波に基づいて路面の勾配を検出することを特徴とする、請求項7に記載の自動車。
【請求項9】
上記路面平坦度検出手段は、撮像カメラを備えていて、該撮像カメラによって撮影された該自動車の前方の情景の画像に基づいて路面の平坦度を検出することを特徴とする、請求項7に記載の自動車。
【請求項10】
上記走行環境が、該自動車が走行している路面の勾配、上記路面の平坦度又は該自動車の周囲の風速及び風向であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項11】
上記コントローラが、上記路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、上記路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときに、上記制御信号を上記パルス信号に変換することを特徴とする、請求項10に記載の自動車。
【請求項12】
動力源から動力を生成する原動機と、
上記原動機へ動力源を供給する動力源供給装置と、
運転者の踏み込み動作により操作されるアクセルペダルと、
上記アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサと、
上記アクセルセンサによって検出された上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記動力源供給装置の目標操作量を演算し、上記目標操作量に対応するパルス状の制御信号を上記動力源供給装置に出力して該動力源供給装置を動作させ、上記原動機への動力源の供給量を制御するコントローラとを備えている自動車であって、
上記コントローラが、上記原動機に要求される動力が上記目標操作量に対応する動力よりも小さい走行環境又は運転状態では、上記制御信号のパルス幅を小さくして上記動力源供給装置に出力することを特徴とする自動車。
【請求項13】
上記原動機がディーゼルエンジンであり、
上記動力源供給装置が、アクセルペダルの踏み込み量に対応して燃料噴射量が制御される電子制御式のインジェクタであり、
上記動力源がディーゼルエンジン用の燃料であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記インジェクタの目標燃料噴射量を演算し、上記目標燃料噴射量に対応するパルス状の制御信号を上記インジェクタに出力して該インジェクタを動作させることを特徴とする、請求項12に記載の自動車。
【請求項14】
上記原動機が電気モータであり、
上記動力源供給装置が、アクセルペダルの踏み込み量に対応して上記電気モータへの印加電圧のオン・オフ比を制御する電子制御式のチョッパ回路であり、
上記動力源が電力であり、
上記コントローラが、上記アクセルペダルの踏み込み量に対応する上記チョッパ回路の目標オン・オフ比を演算し、上記目標オン・オフ比に対応するパルス状の制御信号を上記チョッパ回路に出力して該チョッパ回路を動作させることを特徴とする、請求項12に記載の自動車。
【請求項15】
該自動車が走行している路面の勾配を検出する路面勾配検出手段、上記路面の平坦度を検出する路面平坦度検出手段及び該自動車の周囲の風速及び風向を検出する風速風向検出器のうちの少なくとも1つの検出器が設けられていることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項16】
上記路面勾配検出手段は、GPS受信装置を備えていて、該GPS受信装置によって受信されたGPS電波に基づいて路面の勾配を検出することを特徴とする、請求項15に記載の自動車。
【請求項17】
上記路面平坦度検出手段は、撮像カメラを備えていて、該撮像カメラによって撮影された該自動車の前方の情景の画像に基づいて路面の平坦度を検出することを特徴とする、請求項15に記載の自動車。
【請求項18】
上記走行環境が、該自動車が走行している路面の勾配、上記路面の平坦度又は該自動車の周囲の風速及び風向であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1つに記載の自動車。
【請求項19】
上記コントローラは、上記路面の下り勾配がその基準値以上であるとき、上記路面の平坦度がその基準状態より良好であるとき、又は、追い風の風速がその基準値以上であるときに、上記制御信号のパルス幅を小さくすることを特徴とする、請求項18に記載の自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−242737(P2010−242737A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114658(P2009−114658)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(508259559)ラスク・インテレクチュアル・リザーブ・アクチェンゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】RUSK Intellectual Reserve AG
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(508259559)ラスク・インテレクチュアル・リザーブ・アクチェンゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】RUSK Intellectual Reserve AG
【Fターム(参考)】
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