説明

半導体デバイスの製造方法およびエピタキシャル成長用の支持基板

【課題】中間層の一部が露出している支持基板であっても、それに適切な処理を加えることにより、半導体デバイスを歩留まりよく製造することができる半導体デバイスの製造方法およびエピタキシャル成長用の支持基板を提供する。
【解決手段】本半導体デバイスの製造方法は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させることができる下地基板10と、下地基板10上に全面的に配置された中間層20と、中間層20上に部分的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aと中間層20の一部とが露出している支持基板2を形成する工程と、支持基板2の中間層20が露出している部分20p,20q,20rを選択的に除去することにより、下地基板10の一部を露出させる工程と、GaN層30a上に、III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地基板に中間層を介在させてGaN層を積層させた支持基板を用いた半導体デバイスの製造方法およびエピタキシャル成長用の支持基板に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体を用いた半導体デバイスは種々の方法で形成されている。一つの方法は、III族窒化物半導体基板上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる方法である。しかし、かかる方法は、III族窒化物半導体基板が非常に高価であるため、得られる半導体デバイスも非常に高価となる。
【0003】
このため、III族窒化物半導体とは化学組成が異なる下地基板上にIII族窒化物半導体層を積層させた支持基板のIII族窒化物半導体層上にIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる方法が好適に用いられている。
【0004】
たとえば、特開2006−210660号公報(特許文献1)は、積層された半導体基板の製造方法として、第1の窒化物半導体基板の表面近傍にイオンを注入する工程と、その第1の窒化物半導体基板の表面側を第2の基板に重ね合わせる工程と、重ね合わせた上記2枚の基板を熱処理する工程と、イオン注入された層を境として上記第1の窒化物半導体基板の大部分を上記第2の窒化物半導体基板から引き剥がす工程と含む製造方法を開示する。
【0005】
また、特開2008−300562号公報(特許文献2)は、III族窒化物半導体層貼り合わせ基板として、III族窒化物半導体基板と下地基板とが貼り合わされている基板であって、III族窒化物半導体層の熱膨張係数と下地基板の熱膨張係数との差が4.5×10-6-1以下と小さく、下地基板の熱伝導率が50W・m-1・K-1以上と高い貼り合わせ基板を開示する。また、かかるIII族窒化物半導体層貼り合わせ基板上に形成されている少なくとも1層のIII族窒化物層を含む半導体デバイスを開示する。
【0006】
また、特開2010−165927号公報(特許文献3)は、発光素子用基板として、波長が400nm以上600nm以下の光に対して透明な透明基板と、透明基板の一方の主面上に接合により形成された窒化物系化合物半導体薄膜とを備え、透明基板の主表面に垂直な方向における透明基板の熱膨張係数をα1、窒化物系化合物半導体薄膜の熱膨張係数をα2とすれば、(α1−α2)/α2が−0.5以上1.0以下と小さい基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−210660号公報
【特許文献2】特開2008−300562号公報
【特許文献3】特開2010−165927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特開2006−210660号公報(特許文献1)、特開2008−300562号公報(特許文献2)および特開2010−165927号公報(特許文献3)に開示された支持基板は、いずれも下地基板とIII族窒化物半導体層が直接貼り合わせたものであり、下地基板の種類によってはIII族窒化物半導体層との接合強度が必ずしも十分でない場合があった。
【0009】
このため、下地基板とIII族窒化物半導体層との接合強度を高めるため、下地基板とIII族窒化物半導体層とをそれらの間に中間層を介在させて貼り合わせた支持基板が検討されつつある。
【0010】
しかしながら、現在の実際の製造において得られる下地基板とIII族窒化物半導体層との間に中間層を介在させて積層された支持基板上にIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させると、異常な成長が発生するため、半導体デバイスの歩留まりが低下するという問題点がある。
【0011】
本発明者らは、上記問題点の原因について鋭意調査研究した結果、下地基板上のIII族窒化物半導体層の一部がかけて中間層の一部が露出しており、この露出部がIII族窒化物半導体層のエピタキシャル成長時に種々の異常成長を引き起こすことをつきとめた。本発明は、上記の知見に基づき、中間層の一部が露出している支持基板であっても、それに適切な処理を加えることにより、半導体デバイスを歩留まりよく製造することができる半導体デバイスの製造方法およびエピタキシャル成長用の支持基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる下地基板と、下地基板上に全面的に配置された中間層と、中間層上に部分的に配置されたGaN層とを含み、GaN層と中間層の一部とが露出している支持基板を形成する工程と、支持基板の中間層が露出している部分を選択的に除去することにより、下地基板の一部を露出させる工程と、GaN層上および下地基板が露出している部分上に、III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を備える半導体デバイスの製造方法である。
【0013】
本発明にかかる半導体デバイスの製造方法において、中間層が露出している部分を選択的に除去する方法を、ウェットエッチングおよびドライエッチングの少なくともいずれかとすることができる。さらに、ウェットエッチングおよびドライエッチングのマスクとして、中間層上に配置されたGaN層自体を用いることにより、製造工程の増分を最小限に抑え,かつ除去すべき中間層が露出している部分を過不足なく除去できる。また、下地基板を、GaN基板、サファイア基板、Si基板、SiC基板、GaAs基板およびInP基板からなる群から選ばれるいずれかとすることができる。また、中間層は、SiO2、Si34、SiおよびSiONからなる群から選ばれるいずれかを含むことができる。また、中間層は、Sn、Zn、Ti、Cr、Ni、Ga、In、Sb、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくともいずれかを含むことができる。
【0014】
また、本発明は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる下地基板と、下地基板上に部分的に配置された中間層と、中間層上に全面的に配置されたGaN層とを含み、GaN層と下地基板の一部とが露出しているエピタキシャル成長用の支持基板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中間層の一部が露出している支持基板であっても、それに適切な処理を加えることにより、半導体デバイスを歩留まりよく製造することができる半導体デバイスの製造方法およびエピタキシャル成長用の支持基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】半導体デバイスの理想的な製造方法を示す概略断面図である。ここで、(A)は下地基板およびGaN基板の準備工程、中間層の形成工程およびイオン注入工程を示し、(B)は貼り合わせ工程を示し、(C)はGaN基板の分離による支持基板の形成工程を示し、(D)はIII族窒化物半導体層の成長工程を示す。
【図2】実際の半導体デバイスの製造方法において、支持基板を製造する際の問題点を示す概略断面図である。ここで、(A)は下地基板およびGaN基板の準備工程、中間層の形成工程およびイオン注入工程を示し、(B)は貼り合わせ工程を示し、(C)はGaN基板の分離による支持基板の形成工程を示す。
【図3】実際の半導体デバイスの製造方法において、支持基板上にIII族窒化物半導体層を成長させる際の問題点を示す概略断面図である。ここで、(A)は支持基板を示し、(B)は支持基板上のIII族窒化物半導体層の成長工程を示す。
【図4】本発明にかかる半導体デバイスの製造方法の一例を示す概略断面図である。ここで、(A)は支持基板の形成工程を示し、(B)は支持基板の中間層が露出している部分の選択的除去工程を示し、(C)は支持基板上のIII族窒化物半導体層の成長工程を示し、(D)は半導体デバイスの形成工程を示す。
【図5】本発明にかかる半導体デバイスの製造方法により得られる半導体デバイスの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明にかかる半導体デバイスの製造方法により得られる半導体デバイスの別の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
図4を参照して、本発明の一実施形態である半導体デバイスの製造方法は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させることができる下地基板10と、下地基板10上に全面的に配置された中間層20と、中間層20上に部分的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aと中間層20の一部とが露出している支持基板2を形成する工程(図4(A))と、支持基板2の中間層20が露出している部分20p,20q,20rを選択的に除去することにより、下地基板10の一部を露出させる工程(図4(B))と、GaN層30a上および下地基板10が露出している部分10p,10q,10r上に、III族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させる工程(図4(C))と、を備える。かかる製造方法により、支持基板のGaN層および下地基板が露出している部分上にIII族窒化物半導体層を均一に成長させることができ、半導体デバイスを歩留まりよく製造できる。
【0018】
以下、本発明の背景および意義について詳細に説明する。たとえば、図1を参照して、下地基板とGaN層とが中間層を介在させて貼り合わされた支持基板を用いた半導体デバイスの製造方法は、理想的には以下のように行われる。
【0019】
図1(A)を参照して、まず、下地基板10と、GaN層を形成するためのドナー基板としてのGaN基板30とを準備する(下地基板およびGaN基板の準備工程)。次いで、下地基板10上に中間層20aを形成し、GaN基板30上に中間層20bを形成する(中間層の形成工程)。次いで、GaN基板30の中間層20bが形成された側からイオンを注入する(イオン注入工程)。ここで、イオンは、GaN基板30の表面から深さDの面であるイオン注入領域30iに注入される。
【0020】
図1(B)を参照して、次に、下地基板10上に形成された中間層20aとGaN基板30上に形成された中間層20bとを貼り合わせる(貼り合わせ工程)。ここで、中間層20aと中間層20bとは、両者の接合強度を高める観点から、化学的性質が同一または近似の層が好ましく、同一の化学組成が同一または近似の層がより好ましい。中間層20aと中間層20bとが同一の化学組成である場合は、一体化して中間層20となる。次いで、次に、下地基板10、中間層20およびGaN基板30に熱を加えて注入したイオンを活性化させてボイドを形成させることによりイオン注入領域30iを脆化させる。
【0021】
図1(C)を参照して、次いで、下地基板10とGaN基板30との間に応力を加えてGaN基板30をイオン注入領域30iにおいてGaN層30aと残りのGaN基板30bとに分離することにより、下地基板10、中間層20および厚さTDのGaN層がこの順に積層された支持基板1が得られる(GaN基板の分離による支持基板の形成工程)。ここで、GaN層30aの厚さTDの大きさはGaN基板30におけるイオン注入の深さDの大きさとほぼ同じである。
【0022】
図1(D)を参照して、次に、支持基板1のGaN層30a上に1層以上のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させる(III族窒化物半導体層の成長工程)。こうして得られた積層ウエハ4に電極を形成することにより、半導体デバイスが得られる。
【0023】
しかしながら、上記の図1(A)〜(D)に示すような理想的な工程を行うことは、実際にはきわめて困難である。図2および図3を参照して、実際には以下の問題点がある。
【0024】
図2(A)を参照して、上記の下地基板10およびGaN基板30の準備工程、中間層20a,20bの形成工程、イオン注入工程を経て、貼り合わせ工程の前までに、下地基板10およびGaN基板30の表面の少なくともいずれかに結晶欠陥および/または研磨不良に由来するピットPが発生する場合がある。また、下地基板10上およびGaN基板30上に形成される中間層20a,20bの厚さの不均一さ、中間層20a,20bの研磨不良、およびイオン注入時のダメージの少なくともいずれかに由来するピットQが発生する場合がある。また、中間層20a,20b上にゴミなどの異物Rが混入する場合がある。
【0025】
図2(B)を参照して、中間層20a,20bに上記のピットP,Qおよび異物Rのいずれかが存在する場合に、下地基板10上に形成された中間層20aとGaN基板30上に形成された中間層20bとを貼り合わせると、中間層20aと中間層20bとが一体化して形成される中間層20において、上記のピットP,Qおよび異物Rに由来する空隙VP,VQ,VRが発生する。中間層20内にこのような空隙部分VP,VQ,VRが発生すると、下地基板10およびGaN基板30に熱を加えても、GaN基板30のイオン注入領域30iのうち中間層20に発生した空隙部分VP,VQ,VRに近傍する部分の脆化が不十分となる。ここで、下地基板10とGaN基板との貼り合わせに用いられる中間層20としては、特に制限はないが、一般的には、III族窒化物半導体層がその上にエピタキシャル成長しにくい層が用いられる。
【0026】
図2(B)および(C)ならびに図3(A)を参照して、次いで、下地基板10とGaN基板30との間に応力を加えて両者を分離すると、GaN基板30のイオン注入領域30iのうち中間層20に発生した空隙部分VP,VQ,VRの近傍部分30iiでは、脆化が不十分なためイオン注入領域を境として分離できない。これらの部分では,GaN基板30の分離のために加えられた応力が空隙部分VP,VRの外周部分に集中することで一部の中間層20cが残りのGaN基板30b側に残る形で分離したり(図2(C)の分離異常部分WP,WRを参照)、中間層20とGaN基板30との界面における密着性が低い場合はその界面で分離したりする(図2(C)の分離異常部分WQを参照)といった現象が起きる。このようにして,中間層20が露出している部分20p,20q,20rを有する支持基板2が得られる.ここで、支持基板2において、中間層20の一部が露出していることおよび中間層20が露出している部分は、光学顕微鏡による観察、エネルギー分散型X線分析法を併用した走査型電子顕微鏡観察(以下、SEM−EDXという。)、分光エリプソメトリーなどによって確認することができる。
【0027】
図3(B)を参照して、上記のようにして得られたGaN層30aと中間層20の一部が露出している支持基板2上に、III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させようとすると、以下の問題点が発生する。GaN層30a上にはIII族窒化物半導体層40がエピタキシャル成長する。このとき、中間層20上はエピタキシャル成長に向いた表面状態にないことが問題の原因となる。GaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出していない部分上には、所望の厚さのIII族窒化物半導体層40aが得られる。これに対して、GaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出している部分上には、中間層20上で消費されなかったガスが拡散してくることにより、所望の厚さに比べて極めて厚いIII族窒化物半導体層40bが形成される。また、中間層20が露出している部分20p,20q,20rでは、III族窒化物半導体層がエピタキシャル成長しない。中間層20の露出部分が小さい場合(図3(B)に示された中間層20が露出している部分20qを参照)は、露出している部分20q上には、III族窒化物半導体層が成長しない。中間層20の露出部分がある程度より大きい場合(図3(B)に示された中間層20が露出している部分20p,20rを参照)は、露出している部分20p,20r上に堆積したIII族窒化物の微結晶を核としてIII族窒化物多結晶44が成長する。ここで、III族窒化物多結晶44の厚さはIII族窒化物半導体層40の厚さの2倍以上にも達する場合がある。すなわち、中間層20が露出している部分20p,20q,20rおよびGa層30aの中間層に近傍している部分においては、設計した通りの結晶方位、厚さおよび構造を有するIII族窒化物半導体層が得られないため、所望の特性を持つ半導体デバイスが作製できない。また、上記の不良部分は,予期しない導通不良や発光不良,その他製造工程上の不具合(コンタクトマスクの破壊や貼り合わせの阻害)を引き起こす可能性がある。その結果、半導体デバイスの歩留まりが低下する。
【0028】
なお、上述の図1および2ならびに後述の図3においては、説明の都合上、支持基板の形成において中間層が露出している欠陥部分を強調して描いている。すなわち、現実の支持基板の形成においても、上記欠陥部分は少なく、中間層上にGaN層が形成されており、その上に少なくとも1層以上のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させて半導体デバイスを形成することができる部分は十分に確保されている。
【0029】
本実施形態の半導体デバイスの製造方法は、従来の製造方法における上記の問題点を解決するためのものであり、図4を参照して、以下に詳細に説明する。
【0030】
図4(A)を参照して、本実施形態の半導体デバイスの製造方法は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる下地基板10と、下地基板10上に全面的に配置された中間層20と、中間層20上に部分的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aと中間層20の一部とが露出している支持基板2を形成する工程を備える。かかる支持基板2を形成する工程は、具体的には、上記の図2(A)〜(C)において説明したとおりである。
【0031】
図4(A)を参照して、本実施形態の製造方法の支持基板2を形成する工程において用いられる下地基板10は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる基板である。これは、後の工程(図4(B)〜(C))により得られる支持基板3において露出された下地基板10上にもIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させることにより、GaN層30a上およびそれ以外の部分上に異常成長が発生するのを防止するためである。このような下地基板10であれば、特に制限はないが、結晶品質の高いIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させる観点から、GaN基板、サファイア基板、Si基板、SiC基板、GaAs基板およびInP基板からなる群から選ばれるいずれかを含む下地基板10が好ましい。
【0032】
また、本実施形態の製造方法の支持基板2を形成する工程において用いられる中間層20は、下地基板10とGaN層30aとの接合強度が高いものであれば特に制限はないが、後の工程(図4(B))において、中間層20が露出している部分20p,20q,20rを、GaN層をマスクとしたウェットエッチングおよびドライエッチングのいずれかにより、選択的に除去できるものであることが好ましい。かかる観点から、中間層20は、SiO2、Si34、SiおよびSiONからなる群から選ばれるいずれかを含むことが好ましく、SiO2層、Si34層、Si層、SiON層およびこれらの複合層からなる群から選ばれるいずれかであることがより好ましい。また、同様の観点から、中間層20は、Sn、Zn、Ti、Cr、Ni、Ga、In、Sb、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくともいずれかを含むことが好ましく、Sn、Zn、Ti、Cr、Ni、Ga、In、Sb、WおよびMoの金属層、これらの金属の合金層、これらの金属の複合層、これらの金属の酸化物層(たとえば、ITO(インジウムスズ酸化物)層、IZO(インジウム亜鉛酸化物)層、ATO(アンチモンスズ酸化物)層、NiO層など)ならびにこれらの金属の窒化物層(たとえば、TiN層など)からなる群から選ばれるいずれかであることがより好ましい。
【0033】
図4(B)を参照して、本実施形態の半導体デバイスの製造方法は、支持基板2の中間層20が露出している部分20p,20q,20rを選択的に除去することにより、下地基板10の一部を露出させる工程を備える。かかる工程により、支持基板2の中間層20が露出している部分20p,20q,20rを選択的に除去して、下地基板10と、下地基板10上に部分的に配置された中間層20と、中間層20上に全面的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aと下地基板10の一部とが露出しているエピタキシャル成長用の支持基板3が得られる。こうして得られたエピタキシャル成長用の支持基板3には、中間層20が露出している部分がないため、III族窒化物半導体層を成長させる際に図3(B)に示すような異常成長が起こらず、支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出している部分10p,10q,10r上に少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させることができる。ここで、エピタキシャル成長用の支持基板3において、中間層20が露出している部分がないことは、光学顕微鏡、SEM−EDX、分光エリプソメトリーなどにより確認することができる。
【0034】
ここで、支持基板2の中間層20が露出している部分20p,20q,20rを選択的に除去する方法は、特に制限はないが、GaN層30aをマスクとしたウェットエッチングおよびドライエッチングの少なくともいずれかとすることにより、製造工程を極めて簡単にすることができる。すなわち、GaN層30aをエッチングすることなく、中間層20が露出した部分20p,20q,20rのみを選択的に除去するエッチング方法を用いることが好ましい。
【0035】
たとえば、中間層20としてSiO2層、Si34層、Si層、SiON層、Ti層、TiN層などを用いる場合は、BHF(バッファードフッ酸)を用いたウェットエッチング、CF4ガスなどを用いたRIE(反応性イオンエッチング)などのドライエッチングが好適に用いられる。また、中間層20としてCr層、Ni層、Ga層、In層などを用いる場合は、塩酸を用いたウェットエッチング、Cl2ガスなどを用いたRIEなどのドライエッチングが好適に用いられる。また、中間層20としてITO層などを用いる場合は、BHFを用いたウェットエッチング、Cl2ガスなどを用いたRIEなどのドライエッチングが好適に用いられる。
【0036】
図4(C)を参照して、本実施形態の半導体デバイスの製造方法は、エピタキシャル成長用の支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出している部分10p,10q,10r上に、III族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させる工程を備える。かかる工程により、支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出している部分10p,10q,10r上に少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長することができる。これにより、III族窒化物半導体層を形成するための原料ガスが支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出している部分上で均一に消費されることにより上述の異常成長が抑制されるため、GaN層30a上に均一なIII族窒化物半導体層40が得られる。また、下地基板10が露出している部分10p,10q,10rは、エピタキシャル成長に適した面になっているため,これらの部分上でもIII族窒化物半導体層40が膜状にエピタキシャル成長することにより、多結晶体の形成を抑制できる。以上の結果、半導体デバイスの歩留まりを高めることができる。
【0037】
少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させる方法には、特に制限はなく、たとえば、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法が用いられる。III族窒化物半導体層40の厚さの制御が容易な観点から、MOCVD法が好ましい。
【0038】
エピタキシャル成長用の支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出した部分10p,10q,10r上にエピタキシャル成長させる少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40は、特に制限はなく、たとえば、支持基板3のGaN層30aおよび下地基板10が露出している部分10p,10q,10r側から、順に、n型Al0.05Ga0.95N層40na、n型GaN層40ngおよびn型In0.05Ga0.95N層40niで構成されるn型III族窒化物半導体層40n、In0.18Ga0.82N井戸層とGaN障壁層とで構成される多重量子井戸構造を有する発光層40e、ならびにp型Al0.2Ga0.8N層40paおよびp型GaN層40pgで構成されるp型III族窒化物半導体層40pである。
【0039】
図4(D)を参照して、本実施形態の半導体デバイスの製造方法は、エピタキシャル成長用の支持基板3に少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40が形成された積層ウエハ4に電極(p側電極50pおよびn側電極50n)を形成する工程(電極形成工程)および電極が形成された積層ウエハ4を分割してチップを形成する工程(チップ形成工程)をさらに備えることができる。こうして、半導体デバイス5A,5Bが得られる(半導体デバイス形成工程)。
【0040】
具体的には、図4(C)および(D)を参照して、エピタキシャル成長用の支持基板3のGaN層30a上に少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40として、順に、n型Al0.05Ga0.95N層40na、n型GaN層40ngおよびn型In0.05Ga0.95N層40niで構成されるn型III族窒化物半導体層40n、In0.18Ga0.82N井戸層とGaN障壁層とで構成される多重量子井戸構造を有する発光層40e、ならびにp型Al0.2Ga0.8N層40paおよびp型GaN層40pgで構成されるp型III族窒化物半導体層40pが形成されている積層ウエハ部分4tにおいて、下地基板10および中間層20の少なくともいずれかが絶縁性である場合は、メサエッチングによりIII族窒化物半導体層40のp型GaN層40pg、p型Al0.2Ga0.8N層40pa、発光層40e、およびn型In0.05Ga0.95N層40niのそれぞれの一部を除去して、n型GaN層40ngの一部を露出させ、p型GaN層40pg上にp側電極50pを形成し、n型GaN層40ngが露出している部分上にn側電極50nを形成することにより、横型構造の半導体デバイス5Aを形成することができる。なお、p側電極50pおよびn側電極50nの形成方法は、特に制限はなく、電極の材質に応じて、真空蒸着法、電子線蒸着法、スパッタ法などが用いられる。
【0041】
これに対して、上記の積層ウエハ部分4tにおいて、下地基板10および中間層20が導電性である場合は、III族窒化物半導体層40のn型GaN層40ng上にp側電極50pを形成し、下地基板10上にn側電極50nを形成することにより、縦型構造の半導体デバイス5Bを形成することができる。
【0042】
このようにして、本実施形態の半導体デバイスの製造方法によれば、歩留まりよく半導体デバイス5A,5Bが得られる。
【0043】
[実施形態2]
図4(B)を参照して、本発明の別の実施形態であるエピタキシャル成長用の支持基板3は、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させることができる下地基板10と、下地基板10上に部分的に配置された中間層20と、中間層20上に全面的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aと下地基板10の一部が露出している。
【0044】
本実施形態のエピタキシャル成長用の支持基板3には、中間層20が露出している部分がないため、III族窒化物半導体層を成長させる際に図3(B)に示すような異常成長が起こらず、支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出している部分10p,10q,10r上に少なくとも1層のIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させることができる。ここで、エピタキシャル成長用の支持基板3において、中間層20が露出している部分がないことは、光学顕微鏡、SEM−EDX、分光エリプソメトリーなどにより確認することができる。
【0045】
なお、本実施形態のエピタキシャル成長用の支持基板3の製造方法は、実施形態1において、図4(A)および(B)を用いて説明したとおりであり、ここでは繰り返さない。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
1.支持基板の形成工程
図4(A)に示す支持基板の形成工程を以下に示す。まず、図2(A)を参照して、下地基板10として直径2インチ(5.08cm)で厚さ350μmのサファイア基板を準備した。また、GaN層を形成するためのドナー基板として直径2インチで厚さ350μmのGaN基板30を準備した。次いで、スパッタ法により、サファイア基板(下地基板10)上に中間層20aとして厚さ300nmのSiO2層を形成し、GaN基板30上に中間層20bとして厚さ300nmのSiO2層を形成した。次いで、GaN基板30とSiO2層(中間層20b)との界面からGaN基板30内に300nmの深さDの面にH+イオン(プロトン)を注入した。その後、それぞれの基板のSiO2層(中間層20a,20b)の表面を、CMP(化学機械的研磨)により、表面から50nmの深さまで研磨して、その表面をより平滑な鏡面とした。
【0047】
次いで、図2(B)を参照して、真空チャンバー内で、サファイア基板(下地基板10)およびGaN基板30のそれぞれのSiO2層(中間層20a,20b)の表面をAr(アルゴン)プラズマにより清浄化した後、それぞれのSiO層(中間層20a,20b)の表面同士を7MPaの圧力で圧着させることにより接合した(表面活性化法)。その後、大気中で、接合させた基板を200℃〜300℃に加熱することにより接合強度を高めるとともに注入したH+イオンを活性化させてボイドを発生させ、イオン注入領域30iを脆化させた。
【0048】
次いで、図2(C)および図4(A)を参照して、サファイア基板(下地基板10)とGaN基板とを、応力をかけて分離した。これにより、サファイア基板(下地基板10)上に全面的に配置されたSiO2層(中間層20)と、SiO2層(中間層20)上に部分的に配置された厚さが300nmのGaN層30aとを含み、GaN層30aとSiO2層(中間層20)の一部とが露出している支持基板2が得られた。支持基板2においてSiO2層(中間層20)の一部が露出していることは、SEM−EDXによる測定で確認した。このような支持基板2が得られたのは、上記の図2(A)〜(C)で述べた理由によるものと考えられる。かかる支持基板2のGaN層30aの表面を、CMPにより、表面から100nmの深さまで研磨して、鏡面化した。
【0049】
2.支持基板の中間層が露出している部分の選択的除去工程
次に、図4(B)を参照して、支持基板2のSiO2層(中間層20)が露出している部分20p,20q,20rを、CF4ガスを用いたRIEでドライエッチングすることにより、GaN基板(下地基板10)と、GaN基板(下地基板10)上に部分的に配置されたSiO2層(中間層20)と、SiO2層(中間層20)上に全面的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aとGaN基板(下地基板10)の一部とが露出しているエピタキシャル成長用の支持基板3が得られた。RIE条件は、RFパワーが70W、チャンバー圧力が20Pa、ガス流量が50sccm(ここで、1sccmは標準状態の気体の1分間当り1cm3の流量を示す)、エッチング時間が10分間とした。ここで、GaNは、CF4およびそのプラズマ活性種とは反応しないため、GaN層30aを一種のハードマスクとして利用し、SiO2層(中間層20)が露出している部分のみを除去することができた。こうして得られた支持基板3においてSiO2層が露出している部分がないことは、SEM−EDXによる測定で確認した。
【0050】
3.支持基板上のIII族窒化物半導体層の成長工程
次に、図4(C)を参照して、エピタキシャル成長用の支持基板3のGaN層30a上および下地基板10が露出している部分10p,10q,10r上に、III族窒化物半導体層40として、厚さ0.05μmのn型Al0.05Ga0.95N層40na、厚さ2μmのn型GaN層40ngおよび厚さ0.05μmのn型In0.05Ga0.95N層40ni、In0.18Ga0.82N井戸層とGaN障壁層とで構成される6重量子井戸構造を有する厚さ100nmの発光層40e、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8N層40pa、および厚さ0.15μmのp型GaN層40pgをエピタキシャル成長させた。このとき、支持基板3のサファイア基板(下地基板10)が露出した部分10p,10q,10r上では、III族窒化物半導体層40が膜状にエピタキシャル成長し、多結晶様のIII族窒化物の成長は見られなかった。
【0051】
4.半導体デバイスの形成工程
次に、図4(D)を参照して、メサエッチングにより、p型GaN層40pg、p型Al0.2Ga0.8N層40pa、発光層40eおよびn型In0.05Ga0.95N層40niのそれぞれの一部を除去して、n型GaN層40ngの一部を露出させた。次いで、真空蒸着法または電子ビーム蒸着法により、p型GaN層40pg上にp側電極50pを形成し、n型GaN層43が露出している部分上にn側電極50nを形成して、図5に示す横型構造の半導体デバイス5Aを得た。このようにして、歩留まりよく半導体デバイス5Aを得ることができた。
【0052】
なお、実施例1において、支持基板3上にIII族窒化物半導体層40を成長させた後、サファイア基板(下地基板10)をリフトオフすることにより、III族窒化物半導体層40を別の支持基板に移すこともできる。また、実施例1において下地基板10として用いたサファイア基板にかえてGaN基板を用いることもできる。
【0053】
(比較例1)
1.支持基板の形成工程
図3(A)を参照して、実施例1と同様にして、サファイア基板(下地基板10)上に全面的に配置されたSiO2層(中間層20)と、SiO2層(中間層20)上に部分的配置された厚さが300nmのGaN層30aとを含み、GaN層30aとSiO2層(中間層20)の一部とが露出している支持基板2を得た。また、得られた支持基板2のGaN層30aの表面を、実施例1と同様にして、鏡面とした。
【0054】
2.支持基板上のIII族窒化物半導体層の成長工程
図3(B)を参照して、支持基板2のSiO2層(中間層20)が露出した部分20p,20q,20rを選択的に除去しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、支持基板2上にIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させて積層ウエハを得た。得られた積層ウエハにおいて、GaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出していない部分上には、所望の厚さのIII族窒化物半導体層40aが得られた。これに対して、GaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出している部分上には、所望の厚さに比べて極めて厚いIII族窒化物半導体層40bが形成された。また、中間層20が小さく(たとえば、露出部分の最小径が200μm未満)露出している部分20q上には、III族窒化物半導体層40が成長しなかった。中間層20がある程度の大きさ以上(たとえば、露出部分の最小径が200μm以上)で露出している部分20p,20r上には、その上に堆積したIII族窒化物の微結晶を核としてIII族窒化物多結晶44が成長した。ここで、III族窒化物多結晶44の厚さはIII族窒化物半導体層40の厚さの2倍以上にも達した。
【0055】
上記積層ウエハのGaN層30a上に形成されたIII族窒化物半導体層40(すなわちGaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出していない部分上に形成されたIII族窒化物半導体層40aおよびGaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出している部分上に形成されたIII族窒化物半導体層40b)の一部をメサエッチングして、III族窒化物半導体層40のp型GaN層上にp側電極を形成し、上記メサエッチングにより露出されたn型GaN層40ng上にn側電極を形成することにより、横型構造の半導体デバイスを作製した。
【0056】
ここで、上記積層ウエハにおける上記のような凹凸は、たとえば電極の作製におけるフォトリソグラフィー工程において、レジストの均一な塗布を阻害する、コンタクトマスクと積層ウエハおよびその表面に塗布したレジストとの均一な接着を阻害する、コンタクトマスクに傷をつけるなどの原因となり、半導体デバイスの製造において、半導体デバイスの歩留まり低下に繋がる様々な問題が発生した。また、製造された半導体デバイスにおいても、その少なくとも一部にIII族窒化物半導体層40bを含む半導体デバイスでは、設計通りの発光強度,発光(中心)波長,電圧―電流特性が得られなかった。
【0057】
(実施例2)
1.支持基板の形成工程
図4(A)を参照して、下地基板10として直径2インチで厚さ350μmのGaN基板を用い、中間層20としてITO層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、GaN基板(下地基板10)上に全面的に配置されたITO層(中間層20)と、ITO層(中間層20)上に部分的配置された厚さが300nmのGaN層30aとを含み、GaN層30aとITO層(中間層20)の一部とが露出している支持基板2を得た。ここで、ITO層(中間層20a,20b,20)の形成方法および厚さは実施例1と同様とした。また、得られた支持基板2のGaN層30aの表面を、実施例1と同様にして、鏡面化した。
【0058】
2.支持基板の中間層が露出している部分の選択的除去工程
次に、図4(B)を参照して、支持基板2のITO層(中間層20)が露出している部分20p,20q,20rを、30質量%塩酸と60質量%硝酸と水との質量比が10:1:10の混合液を用いて、40℃で20分間ウェットエッチングすることにより、サファイア基板(下地基板10)と、サファイア基板(下地基板10)上に部分的に配置されたITO層(中間層20)と、ITO層(中間層20)上に全面的に配置されたGaN層30aとを含み、GaN層30aとサファイア基板の一部とが露出しているエピタキシャル成長用の支持基板3が得られた。支持基板3においてITO層(中間層20)が露出している部分がないことは、実施例1と同様にして確認した。
【0059】
3.支持基板上のIII族窒化物半導体層の成長工程
次に、図4(C)を参照して、支持基板3のGaN層30aおよびGaN基板(下地基板10)が露出している部分10p,10q,10r上に、III族窒化物半導体層40として、厚さ0.05μmのn型Al0.05Ga0.95N層40na、厚さ2μmのn型GaN層40ngおよび厚さ0.05μmのn型In0.05Ga0.95N層40ni、In0.18Ga0.82N井戸層とGaN障壁層とで構成される6重量子井戸構造を有する厚さ100nmの発光層40e、厚さ20nmのp型Al0.2Ga0.8N層40pa、および厚さ0.15μmのp型GaN層40pgをエピタキシャル成長させた。このとき、支持基板3のサファイア基板(下地基板10)が露出した部分10p,10q,10r上では、III族窒化物半導体層40が膜状にエピタキシャル成長し、多結晶様のIII族窒化物の成長は見られなかった。
【0060】
4.半導体デバイスの形成工程
次に、図4(D)を参照して、真空蒸着法または電子ビーム蒸着法により、III族窒化物半導体層40の最外層であるp型GaN層40pg上にp側電極50pを形成し、GaN基板(下地基板10)にn側電極50nを形成して、図6に示す縦型構造の半導体デバイス5Bを得た。このようにして、歩留まりよく半導体デバイス5Bを得ることができた。
【0061】
(比較例2)
1.支持基板の形成工程
図3(A)を参照して、実施例2と同様にして、GaN基板(下地基板10)上に全面的に配置されたITO層(中間層20)と、ITO層(中間層20)上に部分的配置された厚さが300nmのGaN層30aとを含み、GaN層30aとITO層(中間層20)の一部とが露出している支持基板2を得た。また、得られた支持基板2のGaN層30aの表面を、実施例2と同様にして、鏡面とした。
【0062】
2.支持基板上のIII族窒化物半導体層の成長工程
図3(B)を参照して、支持基板2のITO層(中間層20)が露出した部分20p,20q,20rを選択的に除去しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、支持基板2上にIII族窒化物半導体層40をエピタキシャル成長させて積層ウエハを得た。得られた積層ウエハにおいて、GaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出していない部分上には、所望の厚さのIII族窒化物半導体層40aが得られた。これに対して、GaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出している部分上には、所望の厚さに比べて極めて厚いIII族窒化物半導体層40bが形成された。また、中間層20が小さく(たとえば、露出部分の最小径が200μm未満)露出している部分20q上には、III族窒化物半導体層40が成長しなかった。中間層20がある程度の大きさ以上(たとえば、露出部分の最小径が200μm以上)で露出している部分20p,20r上には、その上に堆積したIII族窒化物の微結晶を核としてIII族窒化物多結晶44が成長した。ここで、III族窒化物多結晶44の厚さはIII族窒化物半導体層40の厚さの2倍以上にも達した。
【0063】
上記積層ウエハのGaN層30a上に形成されたIII族窒化物半導体層40(すなわちGaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出していない部分上に形成されたIII族窒化物半導体層40aおよびGaN層30aにおいて近傍に中間層20が露出している部分上に形成されたIII族窒化物半導体層40b)の一部をメサエッチングして、III族窒化物半導体層40のp型GaN層上にp側電極を形成し、上記メサエッチングにより露出されたn型GaN層40ng上にn側電極を形成することにより、縦型構造の半導体デバイスを作製した。
【0064】
ここで、上記積層ウエハにおける上記のような凹凸は、たとえば電極の作製におけるフォトリソグラフィー工程において、レジストの均一な塗布を阻害する、コンタクトマスクと積層ウエハおよびその表面に塗布したレジストとの均一な接着を阻害する、コンタクトマスクに傷をつけるなどの原因となり、半導体デバイスの製造において、半導体デバイスの歩留まり低下に繋がる様々な問題が発生した。また、製造された半導体デバイスにおいても、その少なくとも一部にIII族窒化物半導体層40bを含む半導体デバイスでは、設計通りの発光強度,発光(中心)波長,電圧―電流特性が得られなかった。
【0065】
上記実施例では光デバイスについて説明したが、本発明は光デバイス以外の種々の半導体デバイス、たとえば、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、電界効果トランジスタ(FET)、静電誘導トランジスタ(SIT)などの種々の電子デバイス、光検出器などの光半導体デバイスなどに適用可能である。
【0066】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3 支持基板、4 積層ウエハ、4t 積層ウエハ部分、5A,5B 半導体デバイス、10 下地基板、10p,10q,10r,20p,20q,20r 露出している部分、20,20a,20b,20c 中間層、30,30b GaN基板、30a GaN層、40 III族窒化物半導体層、40e 発光層、40n n型III族窒化物半導体層、40na n型Al0.05Ga0.95N層、40ng n型GaN層、40ni n型In0.05Ga0.95N層、40p p型III族窒化物半導体層、40pa p型Al0.2Ga0.8N層、40pn p型GaN層、44 III族窒化物多結晶、50n n側電極、50p p側電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる下地基板と、前記下地基板上に全面的に配置された中間層と、前記中間層上に部分的に配置されたGaN層とを含み、前記GaN層と前記中間層の一部とが露出している支持基板を形成する工程と、
前記支持基板の前記中間層が露出している部分を選択的に除去することにより、前記下地基板の一部を露出させる工程と、
前記GaN層上および前記下地基板を露出させた部分上に、前記III族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させる工程と、を備える半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記中間層が露出している部分を選択的に除去する方法は、ウェットエッチングおよびドライエッチングの少なくともいずれかである請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記ウェットエッチングおよびドライエッチングのマスクとして前記GaN層を用いる請求項2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記下地基板は、GaN基板、サファイア基板、Si基板、SiC基板、GaAs基板およびInP基板からなる群から選ばれるいずれかを含む請求項1または請求項2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記中間層は、SiO2、Si34、SiおよびSiONからなる群から選ばれるいずれかを含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記中間層は、Sn、Zn、Ti、Cr、Ni、Ga、In、Sb、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくともいずれかを含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
少なくとも1層のIII族窒化物半導体層をエピタキシャル成長させることができる下地基板と、前記下地基板上に部分的に配置された中間層と、前記中間層上に全面的に配置されたGaN層とを含み、前記GaN層と前記下地基板の一部とが露出しているエピタキシャル成長用の支持基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142366(P2012−142366A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292924(P2010−292924)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】