半導体装置の製造方法、半導体装置、および電気光学装置
【課題】、ポリシリコン膜に含まれる結晶欠陥を電気的に略不活性化させた場合でも、その後の工程での処理温度が限定されることがなく、かつ、能動層とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができる半導体装置の製造方法、半導体装置および電気光学装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置10tの製造工程では、電界効果型トランジスタ30nの能動層となるシリコン膜1sを結晶化させた後、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを行う酸素プラズマ照射工程と、酸素プラズマ照射工程によりシリコン膜1sに形成された表面酸化物1rを除去する表面酸化物除去工程とを行う。その後、シリコン膜1sをパターニングする。
【解決手段】半導体装置10tの製造工程では、電界効果型トランジスタ30nの能動層となるシリコン膜1sを結晶化させた後、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを行う酸素プラズマ照射工程と、酸素プラズマ照射工程によりシリコン膜1sに形成された表面酸化物1rを除去する表面酸化物除去工程とを行う。その後、シリコン膜1sをパターニングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタを備えた半導体装置の製造方法、該製造方法により得た半導体装置、および該半導体装置を備えた電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気光学装置のうち、例えば、液晶装置では、基板の表面に画素電極および電界効果型トランジスタが形成された素子基板(半導体装置)と、対向基板とが対向配置されているとともに、素子基板と対向基板との間に電気光学物質としての液晶が保持されている。このような電気光学装置において、電界効果型トランジスタは、駆動用スイッチング素子や画素スイッチング素子などとして用いられている。
【0003】
電界効果型トランジスタの能動層となる半導体層は、基板上にシリコン膜を堆積させた後、シリコン膜を結晶化する方法が多用されている。このような能動層の形成方法は、基板上に単結晶シリコン層膜を貼り付けたSOI構造の基板を用いる方法と比較して液晶装置を廉価に製造することができるという利点がある一方、シリコン膜を結晶化すると、結晶化したシリコン膜(ポリシリコン膜)に結晶欠陥が含まれてしまうという欠点がある。かかる結晶欠陥は、電界効果型トランジスタの能動層内において電子や正孔といったキャリアを捕獲する捕獲準位として働くので、電界効果型トランジスタの性能を低下させてしまう。すなわち、ゲート電極に電圧を印加するとMOSキャパシタ容量によって決まるキャリアが半導体層側に誘起されるが、半導体層側に捕獲準位があると、誘起されたキャリアがこれら捕獲準位に捕獲されて伝導に寄与できない。
【0004】
そこで、特許文献1では、能動層内の結晶欠陥を終端して電気的に略不活性化することを目的として、能動層となるシリコン膜に対して水素プラズマを照射する技術が提案されている。また、特許文献2には、能動層となるシリコン膜に対して酸素プラズマを照射する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平9−116166号公報
【特許文献2】特開2003−124231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、シリコン膜に水素を導入する方法では、温度が350℃程度の熱処理を行なっただけで水素がシリコン膜から抜けてしまい、結晶欠陥の終端に寄与しなくなる。このため、水素プラズマ照射後は、350℃よりも低温で電界効果型トランジスタを形成しなければならず、例えば、能動層の上層にゲート絶縁層を形成する場合に、800℃以上の高温でシリコン膜を熱酸化させる方法を採用することができないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術のように、酸素プラズマ照射を行うと、シリコン膜の表面に酸化シリコンからなる表面酸化物が形成されてしまい、その後に行われるゲート絶縁層の形成工程において、この表面酸化物がシリコン膜とゲート絶縁層との間に良好なMOS界面を形成することを妨げるという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ポリシリコン膜に含まれる結晶欠陥を電気的に略不活性化させた場合でも、その後の工程での処理温度が限定されることがなく、かつ、能動層とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。また、かかる製造方法により得た半導体装置、および該半導体装置を備えた電気光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、電界効果型トランジスタの能動層を形成するためのシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、前記シリコン膜に酸素プラズマ照射を行う酸素プラズマ照射工程と、前記酸素プラズマ照射工程により前記シリコン膜表面に形成された表面酸化物を除去する表面酸化物除去工程と、前記シリコン膜表面にゲート絶縁層を形成するゲート絶縁層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記シリコン膜形成工程の後、前記酸素プラズマ照射工程の前に、前記シリコン膜を結晶化させる結晶化工程を有している構成を採用することができる。本発明において、「結晶化」とは、結晶化工程を行なう前の状態で非晶質、結晶質のいずれの状態にあるかにかかわらず、加熱やレーザ照射により誘起される構造変化により結晶を形成することを意味する。
【0010】
電界効果型トランジスタの能動層にポリシリコン膜を用いる場合、ポリシリコン膜に結晶欠陥が含まれていると、この結晶欠陥が電界効果型トランジスタの能動層内において電子や正孔といったキャリアを捕獲する捕獲準位として働き、電界効果型トランジスタの性能を低下させてしまう。そこで、本発明では、酸素プラズマ照射工程において、ポリシリコン膜に酸素プラズマ照射してポリシリコン膜に含まれている結晶欠陥を電気的に略不活性化させる。従って、電界効果型トランジスタの性能を向上することができる。また、水素プラズマ照射は、酸素プラズマ照射と略同様な効果を有するが、シリコンと水素との結合力は比較的小さい。このため、水素プラズマ照射の場合、その後の工程で温度が350℃程度以上の熱処理を行なうと、水素がシリコン膜から抜けて結晶欠陥を略不活性化する効果が消失してしまう。これに対し、酸素とシリコンとの結合力は、シリコンと水素の結合力と比較して大きいため、酸素プラズマ照射による効果は、その後の工程において温度が600℃以上、さらには800℃以上の熱処理を行なった場合でも消失しない。それ故、本発明によれば、電界効果型トランジスタの能動層となる結晶化したシリコン膜に含まれる結晶欠陥を略不活性化させた場合でも、その後の工程での処理温度に対する制約がない。また、酸素プラズマ照射を行なった際、シリコン膜表面に酸化シリコンからなる表面酸化物が形成されてしまい、かかる表面酸化物は、シリコン膜とゲート絶縁層との界面の状態を劣化させる。しかるに本発明では、酸素プラズマ照射によりシリコン膜表面に形成された表面酸化物を表面酸化物除去工程により除去する。このため、シリコン膜とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができるので、電界効果型トランジスタの特性を向上することができる。
【0011】
本発明において、前記表面酸化物除去工程では、ウエットエッチングにより前記表面酸化物を除去することが好ましい。ウエットエッチングによれば、ドライエッチングに比較してエッチング選択比が大きいので、他の膜をエッチングすることを防止することができる。
【0012】
本発明において、前記ゲート絶縁層形成工程の前に、前記酸素プラズマ照射工程と前記表面酸化物除去工程とを交互に複数回繰り返すことが好ましい。本願発明者は、繰り返し行なった検討から、酸素プラズマ照射を行なった際にシリコン膜の表面に表面酸化物が形成されると、それ以降の酸素プラズマ照射の効果が低下してしまうという新たな知見を得ている。従って、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に複数回繰り返せば、シリコン膜の表面に表面酸化物が存在しない状態で酸素プラズマ照射を行なうことができるので、酸素プラズマ照射の効果が大である。
【0013】
本発明において、前記シリコン膜形成工程の前に下側絶縁膜を形成する下側絶縁膜形成工程を行なう場合、前記ゲート絶縁層形成工程の前、前記表面酸化物除去工程の後に、前記シリコン膜をパターニングするパターニング工程を行なうことが好ましい。シリコン膜形成工程の前に下側絶縁膜を形成する下側絶縁膜形成工程を行なうと、シリコン膜が下側絶縁膜の表面に形成されることになる。表面酸化物除去工程の前にシリコン膜に対するパターニング工程を行なうと、表面酸化物除去工程の際、下地絶縁膜の一部もエッチングされてしまい、パターニング後のシリコン膜に近接する位置に凹部が形成されてしまう。かかる凹部が存在すると、ゲート電極(ゲート配線)を形成した際、凹部に起因する断部でゲート配線が断線するおそれがある。しかるに、表面酸化物除去工程の後に、シリコン膜をパターニングすれば、かかる断線の発生を防止することができる。
【0014】
本発明において、前記ゲート絶縁層形成工程は、前記シリコン膜の表面を熱酸化して熱酸化膜を形成する熱酸化工程を備えていることが好ましい。本発明では、シリコン膜の結晶欠陥を略不活性化するにあたって酸素プラズマ照射を利用したため、その後の工程で高温の熱処理を行なっても、酸素プラズマ照射の効果が消失しない。従って、熱酸化によりゲート絶縁層を形成することができ、熱酸化を利用すれば、能動層とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができる。
【0015】
本発明において、前記ゲート絶縁層形成工程は、前記熱酸化工程の後に、前記熱酸化膜の上層に酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜を堆積させるゲート絶縁膜堆積工程を備えていることが好ましい。かかる構成を採用すれば、能動層と熱酸化膜とによって界面を形成した状態で、ゲート絶縁層を所望の膜厚とすることができる。
【0016】
本発明に係る方法により製造した半導体装置は、液晶装置や有機エレクトロルミネッセンス装置などの電気光学装置の素子基板として用いることができ、かかる素子基板は、前記電界効果型トランジスタを介して配線に電気的に接続する画素電極を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0018】
[半導体装置]
(半導体装置の構造)
図1は、本発明を適用した半導体装置の構造を示す断面図である。図1に示す半導体装置10tは、石英基板や耐熱ガラス基板などの透光性の基板10s上に電界効果型トランジスタ30nを備えており、本形態では、基板10sとして厚さ1.1mm程度の石英基板が用いられている。なお、半導体装置10tの種類によっては、基板10sとしては、セラミック基板などを用いてもよい。本形態では、基板10s上に、所定のパターンの遮光膜11pと、下側絶縁膜としての酸化シリコン膜からなる下地絶縁膜12sとが順に形成されており、下地絶縁膜12sの上層に、電界効果型トランジスタ30nの能動層を構成する半導体層1jが島状に形成されている。半導体層1jは、アモルファスシリコンを600℃を超える温度で結晶化させたポリシリコン膜(多結晶シリコン膜)からなる。遮光膜11pは、電界効果型トランジスタ30nに光が入射するのを防止する機能を担っている。なお、遮光膜11pに代えて、下側配線などを形成した場合も略同様な構造となる。
【0019】
本形態において、電界効果型トランジスタ30nは、島状の半導体層1jに対して、高濃度ソース領域1t、低濃度ソース領域1u、チャネル領域1h、低濃度ドレイン領域1v、および高濃度ドレイン領域1wが形成されたLDD(Lightly Doped Drain)構造を備えている。半導体層1jの表面側にはゲート絶縁層2yが形成されており、ゲート絶縁層2yの表面にゲート電極3sが形成されている。
【0020】
本形態において、ゲート絶縁層2yは2層構造になっており、半導体層1jに対する熱酸化膜により形成された下側の第1ゲート絶縁層21yと、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより堆積された酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜からなる上側の第2ゲート絶縁層22yとを備えている。本形態では、第2ゲート絶縁層22yとして酸化シリコン膜が用いられている。
【0021】
電界効果型トランジスタ30nの上層側には、層間絶縁膜7sが形成されている。層間絶縁膜7sの表面にはソース電極6rおよびドレイン電極6sが形成され、ソース電極6rは、層間絶縁膜7sおよびゲート絶縁層2yに形成されたコンタクトホール7t、2tを介して高濃度ソース領域1tに電気的に接続している。ドレイン電極6sは、層間絶縁膜7sおよびゲート絶縁層2yに形成されたコンタクトホール7t、2tを介して高濃度ソース領域1wに電気的に接続している。
【0022】
(半導体装置の製造方法)
図2〜図5は、本発明を適用した半導体装置10tの製造方法の要部を示す工程断面図である。なお、電界効果型トランジスタ30nは、Nチャネル型およびPチャネル型のいずれの導電型であってもよいが、以下の説明では、電界効果型トランジスタ30nをNチャネル型として構成する場合を説明する。
【0023】
本形態の半導体装置10tを製造するにあたっては、まず、図2(a)に示すように、まず、基板10sの表面の全面に遮光膜11sを形成する。次に、図2(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術により遮光膜11sをパターニングし、電界効果型トランジスタ30nを形成すべき領域に島状の遮光膜11pを形成する。遮光膜11sは、タングステンシリサイド膜をスパッタリング法で堆積させたものである。遮光膜11sの膜厚は100〜400nmの範囲であればよく、本例では、200nm程度としてある。遮光膜11sとしては、モリブデンやタングステンやタンタルなどの高融点金属、或いは、多結晶シリコンやモリブデンシリサイドなどのシリコン膜やシリサイド膜を用いることもできる。遮光膜11sの成膜方法については、スパッタリング法の他、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、電子ビーム加熱蒸着法などを用いることができる。
【0024】
次に、図2(c)に示す下側絶縁膜形成工程において、遮光膜11pの表面および基板10sの表面を覆うように下地絶縁膜12sを形成する。本形態において、下地絶縁膜12sは、プラズマCVD法で成膜した酸化シリコン膜である。
【0025】
次に、図2(d)〜図4(a)を参照して説明する以下の工程により、遮光膜11pが形成されている領域上に、電界効果型トランジスタ30nの能動層を構成するための島状の半導体層1jを形成する。
【0026】
かかる半導体層1jの形成工程では、まず、図2(d)に示すシリコン膜形成工程において、下地絶縁膜12sの表面に、減圧気相化学成長法やプラズマCVD法により、アモルファスのシリコン膜1sを堆積させる。シリコン膜1sの膜厚は50nmから70nmである。
【0027】
次に、結晶化工程において、非酸化雰囲気中で600℃から700℃程度の温度でアモルファスのシリコン膜1sに熱処理を行なって、シリコン膜1sをポリシリコン膜に結晶化させる。本形態では、かかる熱処理として、640℃の窒素雰囲気中にて4時間の熱処理を行なう。
【0028】
次に、図3(a)に示す酸素プラズマ照射工程において、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行い、結晶化させたシリコン膜1sに含まれる結晶欠陥を電気的に終端させて略不活性化する。酸素プラズマ照射OPは、基板10sを150℃から400℃に加熱した状態で5分間から20分間行なう。酸素プラズマは、平行平板型のプラズマ発生装置に酸素ガスを供給して、酸素雰囲気圧力を40Paから100Pa、RFパワーを400Wから1500Wとした状態で発生させる。
【0029】
かかる酸素プラズマ照射OPを行なうと、図3(b)に示すように、シリコン膜1sの表面には、酸化シリコンからなる不必要な表面酸化物1rが形成される。従って、本形態では、表面酸化物1rを除去する表面酸化物除去工程を行なう。本形態では、1〜2%に希釈したフッ化水素酸水溶液に、シリコン膜1sを30秒間程接触させて、図3(c)に示すように、シリコン膜1sの表面から表面酸化物1rを除去する。なお、表面酸化物除去工程では、上記のウエットエッチングに代えて、ドライエッチングを行なってもよい。
【0030】
本形態では、図3(a)〜(f)に示すように、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に2回ずつ行なう。すなわち、酸素プラズマ照射OPによって形成された表面酸化物1rを除去した後に、再度、酸素プラズマ照射OPを行ない、しかる後に、再び表面酸化物1rを除去する。
【0031】
次に、図4(a)に示すパターニング工程において、フォトリソグラフィ技術によりシリコン膜1sをパターニングし、島状の半導体層1jを形成する。かかるパターニング工程では、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれを用いてもよい。
【0032】
次に、図4(b)、(c)を参照して説明するゲート絶縁膜形成工程を行なう。本形態では、ゲート絶縁膜形成工程において、まず、図4(b)に示す熱酸化工程において、酸化雰囲気中で半導体層1jの表面を800℃から1000℃程度の温度に加熱して、半導体層1jの表面を熱酸化膜してなる第1ゲート絶縁層21y(酸化シリコン膜)を形成する。次に、図4(c)に示すゲート絶縁膜堆積工程において、プラズマCVD法などにより、第1ゲート絶縁層21yおよび下地絶縁膜12sの表面に酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜からなる第2ゲート絶縁層22yを形成する。本形態では、第2ゲート絶縁層22yとして酸化シリコン膜を形成する。
【0033】
かかる方法によれば、所望の厚さのゲート絶縁層2yを形成することができる。また、ゲート絶縁膜形成工程の熱酸化工程において、ポリシリコン膜からなる半導体層1jを長時間熱酸化させると、半導体層1jの表面に多数の凸部が形成されるので、第1ゲート絶縁層21yの形成にあたっては、半導体層1jの熱酸化を短時間で行い、良好な界面を形成する。本例では、熱酸化工程では、930℃で10分間程度の熱酸化により半導体層1jに表面に膜厚約10nmの第1ゲート絶縁層21yを形成する。そして、ゲート絶縁膜堆積工程では、膜厚が15nm程度の酸化シリコン膜(第2ゲート絶縁層22y)をCVD法により堆積することにより、膜厚が25nm程度のゲート絶縁層2yを形成する。
【0034】
次に、図4(d)に示すように、ゲート絶縁層2y上にゲート電極3sを形成する。かかるゲート電極3sを形成するにあたっては、不純物をドープした多結晶シリコンやタンタルなどの金属からなる導電膜を形成した後、この導電膜をパターニングする。導電膜の形成には、例えば、CVD法やスパッタリング法が用いられる。なお、ゲート電極3sのパターニング時に、このゲート電極3sから延在する配線も併せてパターニング形成する。
【0035】
次に、図5(a)に示すように、ゲート電極3sをマスクとして、ゲート電極3sの両側から半導体層1jにリン(P)などのN型の不純物を低濃度で導入し、低濃度不純物導入領域(低濃度ソース領域1uおよび低濃度ドレイン領域1v)を形成する。次に、ゲート電極3sの側壁に形成した不図示のサイドウォール膜をマスクにして、リンなどのN型の不純物を高濃度で導入して、高濃度不純物導入領域(高濃度ソース領域1tおよび高濃度ドレイン領域1w)を形成する。かかる不純物導入工程で不純物が導入されなかった領域はチャネル領域1hとなる。高濃度の不純物を導入するにあたっては、ゲート電極3sを広めに覆うレジストマスクを用いてもよい。また、斜めインプラ法などを用いて不純物を導入してもよい。
【0036】
次に、図5(b)に示すように、ゲート電極3sの上層側に層間絶縁膜7sとして、酸化シリコン膜をPECVD(Plasma-Enhanced CVD)法で500nm程度堆積する。次に、850℃程度の温度で熱処理を行ない、不純物導入領域(低濃度ソース領域1u、低濃度ドレイン領域1v、高濃度ソース領域1tおよび高濃度ドレイン領域1w)中の不純物を活性化させる。
【0037】
次に、図5(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて層間絶縁膜7sにおいて、高濃度ソース領域1tおよび高濃度ドレイン領域1wと重なる領域の層間絶縁膜7sおよびゲート絶縁層2yをエッチングし、コンタクトホール7t、2tを形成する。次に、コンタクトホール7t、2t内を含む層間絶縁膜7s上に、アルミニウム、タングステンなどの金属をスパッタリング法などで堆積させて導電膜を形成する。次に、この導電膜をパターニングして、ソース電極6r、ドレイン電極6s、および配線を形成する。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置10tの製造工程では、結晶化工程により多結晶化させたシリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行うため、酸素プラズマがシリコン膜に含まれている結晶欠陥に作用して、シリコン膜1s中の結晶欠陥を電気的に略不活性化することができる。このため、電界効果型トランジスタ30nの能動層(半導体層1j)において、結晶欠陥が電子や正孔といったキャリアを捕獲するのを防止、あるいは抑制することができるので、電界効果型トランジスタ30nの性能を向上することができる。
【0039】
図6は、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射工程を行なった場合の効果を示す説明図であり、図6(a)は、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射工程を行なった場合の電界効果型トランジスタのオン電流分布を示すグラフであり、図6(b)は、酸素プラズマ照射工程を行なわなかった場合のオン電流分布を示すグラフである。図6に示す結果は、ドレイン電圧5V、ゲート電圧5Vの時にソース・ドレイン間を流れる電流である。
【0040】
例えば、図6(a)に示すように、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行なった場合の電界効果型トランジスタ30nのオン電流のばらつきは約9%であり、小さい。これに対して、図6(b)に示すように、これに対して、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行なわない場合の電界効果型トランジスタのオン電流のばらつきは約20%であり、大きい。このように、本形態によれば、電界効果型トランジスタのオン電流のばらつきを大幅に抑制できる。
【0041】
また、本形態は、酸素プラズマ照射OPによってシリコン膜1sの表面に形成された表面酸化物1rを除去する酸化シリコン膜除去工程を行なうため、ゲート絶縁層形成工程においては、表面酸化物1rを除去した清浄な半導体層1jの表面に対して熱酸化を行ない、第1ゲート絶縁層21yを形成する。このため、半導体層1jとゲート絶縁層2yとの間に良好な界面を形成することができる。
【0042】
また、シリコン膜1sをパターニングして島状の半導体層1jを形成する際、シリコン膜1sの表面に表面酸化物1rが存在しないので、シリコン膜1sのエッチングを良好に行なうことができる。
【0043】
さらに、本形態では、ゲート絶縁層形成工程の前に、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に2回繰り返している。このため、図7を参照して以下に説明するように、結晶欠陥を略不活性化させる効果が高い。
【0044】
図7は、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射を行なった際の照射時間とシリコン膜1sの電気伝導率との関係を示すグラフである。図7に示す結果は、結晶化した後のシリコン膜1sに対してリンをドープして酸素プラズマ照射OPを行った際の電気伝導率変化である。
【0045】
図7に示す結果において、曲線LAで示す結果は、酸素プラズマ照射OPを連続して行なったときのシリコン膜1sの電気伝導率である。図7において、点PBで示す結果は、酸素プラズマ照射OPを10分行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを10分行ったときのシリコン膜1sの電気伝導率である。図7において、点PCで示す結果は、酸素プラズマ照射OPを20分行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを20分行ったときのシリコン膜1sの電気伝導率である。
【0046】
図7に曲線LAで示す結果から分るように、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを行なうと、電気伝導率が向上しており、酸素プラズマ照射OPの効果が認められる。しかし、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを連続して行なうと、照射時間が20分以上の条件では、照射時間を延長しても、電気伝導率の向上度合いが鈍化する。
【0047】
これに対して、図7に点PBで示すように、酸素プラズマ照射OPを10分間行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを10分間行った場合には、プラズマ照射を20分間連続して行なったときの曲線LAで示す結果に比較して、電気伝導率が著しく向上している。また、図7に点PCで示すように、酸素プラズマ照射OPを20分間行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを20分間行った場合には、プラズマ照射を40分間連続して行なったときの曲線LAで示す結果に比較して、電気伝導率が著しく向上している。
【0048】
このように、酸素プラズマ照射OPを行なった場合、シリコン膜1s内に含まれている結晶欠陥を電気的に略不活性化させる作用が、酸素プラズマ照射OPによってシリコン膜1sの表面に形成される表面酸化物1rによって妨げられていることが分る。従って、酸素プラズマ照射OPによって形成された表面酸化物1rを一旦除去した後に、再度、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを行えば、表面酸化物1rによる影響を解消することができるので、シリコン膜1sの結晶欠陥を効率よく電気的に略不活性化することができる。
【0049】
また、本形態では、酸素プラズマ照射OPにより、シリコン膜1sの結晶欠陥を略不活性化するため、水素プラズマを利用した場合と違って、その後の工程で高温の熱処理を行なっても、酸素プラズマ照射OPによる効果が消失しない。このため、ゲート絶縁層形成工程では、800℃以上の温度でシリコン膜1s(シリコン膜)の表面を熱酸化させて第1ゲート絶縁層21yを形成することができる。また、800℃以上の温度での熱酸化であれば、熱酸化工程が短時間で済むため、半導体層1jの表面に凸部が発生しない。それ故、半導体層1jとゲート絶縁層2yの間に良好な界面を形成することができる。
【0050】
さらに、ゲート絶縁層形成工程では、熱酸化膜からなる第1ゲート絶縁層21yの上層に堆積法によって酸化シリコン膜からなる第2ゲート絶縁層22yを形成する。このため、熱酸化時間を短くした場合でも、ゲート絶縁層2yを所望の膜厚にすることができる。
【0051】
[別の実施の形態]
図8は、本発明を適用した半導体装置10tの製造方法において、シリコン膜1sに対するパターニング工程を表面酸化物除去工程の前に行なった場合に半導体層1j周辺の構造に及ぼす影響を示す説明図である。
【0052】
上記実施の形態では、シリコン膜1sに対するパターニング工程を表面酸化物除去工程の後に行っているが、シリコン膜1sをパターニングして半導体層1jを得た後、酸素プラズマ照射工程および表面酸化物除去工程を行ってもよい。
【0053】
但し、シリコン膜1sをパターニングした後、表面酸化物除去工程を行なうと、フッ化水素酸水溶液によって半導体層1jの表面酸化物1rを除去した際、図8に示すように、半導体層1jから露出する下地絶縁膜12sも同時にエッチングされて、半導体層1jと隣接する部分に段部12eが発生するおそれがある。かかる段部12eが形成されると、後工程でゲート電極3sおよびそれから延在するゲート線を形成した際、ゲート線が段部12eで断線するおそれがある。従って、酸素プラズマ照射工程および表面酸化物除去工程については、シリコン膜1sに対するパターニング工程を行なう前、すなわち、下地絶縁膜12sが露出していない状態で実施することが好ましい。
【0054】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に2回繰り返しているが、これらの各工程は、少なくとも1回行われればよい。また、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に3回以上繰り返してもよい。
【0055】
上記実施の形態では、本形態の電界効果型トランジスタはN型であるが、P型の電界効果型トランジスタを製造する際にも、シリコン膜を結晶化させる結晶化工程の後に酸素プラズマ照射工程および表面酸化物除去工程を行なえば、電界効果型トランジスタの性能を向上することができる。
【0056】
上記実施の形態では、第2ゲート絶縁層22yが酸化シリコン膜であったが、窒化シリコン膜であってもよい。また、上記実施の形態において、下地絶縁膜12sは、酸化シリコン膜であったが、窒化シリコン膜であってもよい。
【0057】
上記実施の形態では、ゲート絶縁層2yを熱酸化膜からなる第1ゲート絶縁層21yと、堆積させた酸化シリコン膜からなる第2ゲート絶縁層22yの2層構造としたが、熱酸化膜からなる第1ゲート絶縁層21yのみによってゲート絶縁層2yを構成してもよい。
【0058】
[電気光学装置への適用]
図1〜図8を参照して説明した半導体装置およびその製造方法は、例えば、以下に説明する液晶装置などといった電気光学装置の素子基板およびその製造方法として用いることができる。すなわち、以下に説明する電気光学装置の素子基板は、基板上に電界効果型トランジスタが形成された半導体装置として構成されるので、本発明を適用することができる。
【0059】
(全体構成)
図9は、本発明を適用した電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図9に示す電気光学装置100は液晶パネル100pを有しており、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画素領域10bを備えている。
【0060】
かかる液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10には、画素領域10bの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、画素スイッチング素子としての電界効果型トランジスタ30および画素電極9aが形成されている。電界効果型トランジスタ30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、電界効果型トランジスタ30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、電界効果型トランジスタ30のドレインには画素電極9aが電気的に接続されている。
【0061】
素子基板10において、画素領域10bの外側領域には走査線駆動回路104およびデータ線駆動回路101が構成されている。データ線駆動回路101は各データ線6aの一端に電気的に接続しており、不図示の画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0062】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板に形成された共通電極と液晶を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号がリークするのを防ぐために、液晶容量50aと並列に保持容量60が付加されている。本形態では、保持容量60を構成するために、走査線3aと並列するように容量線3bが形成されており、かかる容量線3bは共通電位線に接続され、所定の電位に保持されている。なお、保持容量60は前段の走査線3aとの間に形成される場合もある。
【0063】
(液晶パネルおよび素子基板の構成)
図10(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置100の液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。図10(a)、(b)に示すように、電気光学装置100の液晶パネル100pでは、所定の隙間を介して素子基板10と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の縁に沿うように配置されている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂などからなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0064】
素子基板10において、シール材107の外側領域では、素子基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する一辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材109が形成されている。
【0065】
詳しくは後述するが、素子基板10には、画素電極9aがマトリクス状に形成されている。これに対して、対向基板20には、シール材107の内側領域に遮光性材料からなる額縁108が形成され、その内側が画像表示領域10aとされている。また、対向基板20では、素子基板10の画素電極9aの縦横の境界領域と対向する領域にブラックマトリクス、あるいはブラックストライプなどと称せられる遮光膜23が形成され、その上層側には、ITO(Indium Tin Oxide)膜からなる共通電極25が形成されている。なお、画素領域10bには、額縁108と重なる領域にダミーの画素が構成される場合があり、この場合、画素領域10bのうち、ダミー画素を除いた領域が画像表示領域10aとして利用されることになる。
【0066】
このように形成した電気光学装置100は、後述するモバイルコンピュータ、携帯電話機、液晶テレビ、投射型表示装置などといった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルタ(図示せず)や保護膜が形成される。また、対向基板20および素子基板10の光入射側の面あるいは光出射側には、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード等々の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の向きに配置される。
【0067】
電気光学装置100は、透過型に限らず、反射型および半透過反射型として構成される場合があり、この場合、例えば、素子基板10には光反射層が形成される。電気光学装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクタ)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各電気光学装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルタは形成されない。また、対向基板20に対して、各画素に対応するようにマイクロレンズを形成すれば、入射光の画素電極9aに対する集光効率を高めることができるので、明るい表示を行うことができる。さらにまた、対向基板20に何層もの屈折率の異なる干渉層を積層することにより、光の干渉作用を利用して、RGB色をつくり出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付きの対向基板によれば、より明るいカラー表示を行うことができる。
【0068】
(各画素の構成)
図11(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置100に用いた素子基板10において相隣接する画素の平面図、およびそのA−A′線に相当する位置で電気光学装置100を切断したときの断面図である。
【0069】
図11(a)、(b)に示すように、素子基板10には、石英基板や耐熱ガラス基板などからなる透光性基板10dの表面に、所定形状に形成された遮光膜11と、シリコン酸化膜などからなる下地絶縁膜12が形成されているとともに、その表面側にはN型の電界効果型トランジスタ30が形成されている。電界効果型トランジスタ30は、結晶化したポリシリコン層からなる島状の半導体層1aに対して、チャネル領域1g、低濃度ソース領域1b、高濃度ソース領域1d、低濃度ドレイン領域1c、および高濃度ドレイン領域1eが形成されたLDD構造を備えている。また、半導体層1aの表面側にゲート絶縁層2yが形成されており、ゲート絶縁層2yの表面にゲート電極(走査線3a)が形成されている。なお、チャネル領域1gは必要に応じてチャネルドープされている。
【0070】
ここで、電界効果型トランジスタ30および半導体層1aは各々、図1〜8を参照して説明した電界効果型トランジスタ30nおよび半導体層1jに相当する。
【0071】
電界効果型トランジスタ30の上層側には、層間絶縁膜7、8が形成されている。層間絶縁膜7の表面にはデータ線6aおよびドレイン電極6bが形成され、データ線6aは、層間絶縁膜7に形成されたコンタクトホール7aを介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続している。また、ドレイン電極6bは、層間絶縁膜7に形成されたコンタクトホール7bを介して高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続している。層間絶縁膜8の表面にはITO膜からなる画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、層間絶縁膜8に形成されたコンタクトホール8aを介してドレイン電極6bに電気的に接続している。画素電極9aの表面側にはポリイミド膜からなる配向膜16が形成されている。また、高濃度ドレイン領域1eからの延設部分1f(下電極)に対しては、ゲート絶縁層2yと同時形成された絶縁層(誘電体膜)を介して、走査線3aと同層の容量線3bが上電極として対向することにより、保持容量60が構成されている。
【0072】
このように構成した素子基板10と対向基板20とは、画素電極9aと共通電極25とが対面するように配置され、かつ、これらの基板間には、前記のシール材107(図7(a)、(b)参照)により囲まれた空間内に電気光学物質としての液晶50が封入されている。液晶50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16、24により所定の配向状態をとる。液晶50は、例えば一種または数種のネマティック液晶を混合したものなどからなる。
【0073】
このような電気光学装置100では、表示に寄与する画素電極9aの面積を大きくするために、画素スイッチング素子としての電界効果型トランジスタ30のサイズを小さくする必要がある。このため、電界効果型トランジスタ30のチャネルの大きさと半導体層1aを形成するシリコンの結晶粒の大きさが同程度になり、個々の電界効果型トランジスタ30毎に半導体層1aに含まれる結晶欠陥の数にばらつきが生じる。かかるばらつきは、電界効果型トランジスタ30の特性ばらつきや、特性低下の原因となる。しかるに本発明では、図1〜図8を参照して説明したように、電界効果型トランジスタ30の製造工程で酸素プラズマ照射OPを行うことにより結晶欠陥を電気的に略不活性化させているので、り、電界効果型トランジスタ30の特性ばらつきや、特性低下が発生しない。また、半導体層1aでは、酸素プラズマ照射OPにより形成された表面酸化物1r(図3参照)が除去されている。このため、半導体層1aとゲート絶縁層2yとの間に良好な界面を形成することができるので、電界効果型トランジスタ30の特性を向上することができる。
【0074】
また、電界効果型トランジスタ30nの半導体層1aの下層側には遮光膜11が形成されているので、半導体層1aに対して光の侵入が防止されている。従って、迷光強度の強い高輝度光源を用いる場合でも、光の影響を受けることなく、安定して動作する電気光学装置となる。
【0075】
[半導体装置のその他の構成例]
上記形態では、本発明に係る電気光学装置として液晶装置を例に説明したが、有機エレクトロルミネッセンス装置でも、電界効果型トランジスタが画素スイッチング素子として用いられていることから、本発明に係る半導体装置は、有機エレクトロルミネッセンス装置の素子基板として用いてもよい。また、本発明に係る半導体装置は、上記の電気光学装置の他、撮像装置に用いる素子基板などとして用いることもできる。
【0076】
[電子機器への搭載例]
図12および図13は、本発明を適用した電気光学装置を用いた電子機器の説明図である。まず、本発明に係る電気光学装置100を透過型の液晶装置として構成した場合、図12(a)に示す投射型表示装置のライトバルブとして用いることができる。また、図12(a)に示す投射型表示装置は、図12(b)に示すリア型プロジェクタなどに用いることができる。
【0077】
図12(a)に示す投射型表示装置110は、光源112、ダイクロイックミラー113、114、およびリレー系120などを備えた光源部140と、液晶ライトバルブ115〜117(透過型の電気光学装置100)と、クロスダイクロイックプリズム119(合成光学系)と、投射光学系118とを備えている。
【0078】
光源112は、赤色光、緑色光および青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共に緑色光および青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光および青色光のうち青色光を透過させると共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学系を構成する。
【0079】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレータ121および偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレータ121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0080】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115cおよび第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0081】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0082】
なお、λ/2位相差板115aおよび第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115aおよび第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0083】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル116cおよび第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0084】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117cおよび第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0085】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。なお、λ/2位相差板117aおよび第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0086】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0087】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光学系118に向けて射出するように構成されている。
【0088】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を有効に合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光および青色光をs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0089】
図12(b)に示すように、投射型表示装置110をリア型プロジェクタ200に搭載した場合には、反射鏡201、202によりスクリーン203に画像が表示される。リア型プロジェクタ200では、液晶ライトバルブ115、116、117に侵入する光の強度が極めて高いので、その迷光の強度は高い。しかるに本発明の電気光学装置100では、電界効果型トランジスタ30nの半導体層1aの下層側には遮光膜11が形成されているので、半導体層1aに対して迷光の侵入が防止されている。従って、迷光強度の強い高輝度光源を用いた場合でも、安定した動作を得ることができる。また、電界効果型トランジスタ30に性能のばらつきや、特性の低下がないので、出力画像の高画質化を実現することができる。
【0090】
次に、本発明に係る電気光学装置100を反射型の液晶装置として構成した場合、図13(a)に示す投射型表示装置のライトバルブとして用いることができる。また、本発明に係る電気光学装置100は、図13(b)、(c)に示す直視型表示装置として利用することもきる。
【0091】
図13(a)に示す投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置した光源部810、インテグレータレンズ820および偏光変換素子830を備えた偏光照明装置800と、この偏光照明装置800から出射されたS偏光光束をS偏光光束反射面841により反射させる偏光ビームスプリッタ840と、偏光ビームスプリッタ840のS偏光光束反射面841から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー842と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー843とを有している。また、投射型表示装置1000は、各色光が入射する3枚の電気光学装置100(反射型の電気光学装置100R、100G、100B)を備えている。さらに、投射型表示装置1000は、3つの電気光学装置100R、100G、100Bにて変調された光をダイクロイックミラー842、843、および偏光ビームスプリッタ840にて合成した後、この合成光を投射光学系850によりスクリーン860に投写する。
【0092】
また、図13(b)に示す携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001、スクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0093】
図13(c)に示す情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)4000は、複数の操作ボタン4001、電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置100を備えており、電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置100に表示される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明を適用した半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図3】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図4】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図5】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図6】半導体層に対して酸素プラズマ照射工程を行なった場合の効果を示す説明図である。
【図7】シリコン膜に対して酸素プラズマ照射を行なった際の照射時間とシリコン膜の電気伝導率との関係を示すグラフである。
【図8】本発明を適用した半導体装置の製造方法において、シリコン膜に対するパターニング工程を表面酸化物除去工程の前に行なった場合に半導体層周辺の構造に及ぼす影響を示す説明図である。
【図9】本発明を適用した電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置を各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【図11】(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置に用いた素子基板において相隣接する画素の平面図、およびそのA−A′線に相当する位置で電気光学装置を切断したときの断面図である。
【図12】本発明に係る電気光学装置を用いた電子機器の説明図である。
【図13】本発明に係る電気光学装置を用いた別の電子機器の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1h・・チャネル領域、1j・・半導体層、1r・・表面酸化物、1s・・シリコン膜、1t・・高濃度ソース領域、1u・・低濃度ソース領域、1v・・低濃度ドレイン領域、1w・・高濃度ドレイン領域、2y・・ゲート絶縁層、3s・・ゲート電極、7s・・層間絶縁膜、10s・・基板、10t・・半導体装置、11p・・遮光膜、12s・・下地絶縁膜、21y・・第1ゲート絶縁層、22y・・第2ゲート絶縁層、30、30n・・N型の電界効果型トランジスタ、100・・電気光学装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタを備えた半導体装置の製造方法、該製造方法により得た半導体装置、および該半導体装置を備えた電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気光学装置のうち、例えば、液晶装置では、基板の表面に画素電極および電界効果型トランジスタが形成された素子基板(半導体装置)と、対向基板とが対向配置されているとともに、素子基板と対向基板との間に電気光学物質としての液晶が保持されている。このような電気光学装置において、電界効果型トランジスタは、駆動用スイッチング素子や画素スイッチング素子などとして用いられている。
【0003】
電界効果型トランジスタの能動層となる半導体層は、基板上にシリコン膜を堆積させた後、シリコン膜を結晶化する方法が多用されている。このような能動層の形成方法は、基板上に単結晶シリコン層膜を貼り付けたSOI構造の基板を用いる方法と比較して液晶装置を廉価に製造することができるという利点がある一方、シリコン膜を結晶化すると、結晶化したシリコン膜(ポリシリコン膜)に結晶欠陥が含まれてしまうという欠点がある。かかる結晶欠陥は、電界効果型トランジスタの能動層内において電子や正孔といったキャリアを捕獲する捕獲準位として働くので、電界効果型トランジスタの性能を低下させてしまう。すなわち、ゲート電極に電圧を印加するとMOSキャパシタ容量によって決まるキャリアが半導体層側に誘起されるが、半導体層側に捕獲準位があると、誘起されたキャリアがこれら捕獲準位に捕獲されて伝導に寄与できない。
【0004】
そこで、特許文献1では、能動層内の結晶欠陥を終端して電気的に略不活性化することを目的として、能動層となるシリコン膜に対して水素プラズマを照射する技術が提案されている。また、特許文献2には、能動層となるシリコン膜に対して酸素プラズマを照射する技術が提案されている。
【特許文献1】特開平9−116166号公報
【特許文献2】特開2003−124231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、シリコン膜に水素を導入する方法では、温度が350℃程度の熱処理を行なっただけで水素がシリコン膜から抜けてしまい、結晶欠陥の終端に寄与しなくなる。このため、水素プラズマ照射後は、350℃よりも低温で電界効果型トランジスタを形成しなければならず、例えば、能動層の上層にゲート絶縁層を形成する場合に、800℃以上の高温でシリコン膜を熱酸化させる方法を採用することができないという問題点がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術のように、酸素プラズマ照射を行うと、シリコン膜の表面に酸化シリコンからなる表面酸化物が形成されてしまい、その後に行われるゲート絶縁層の形成工程において、この表面酸化物がシリコン膜とゲート絶縁層との間に良好なMOS界面を形成することを妨げるという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ポリシリコン膜に含まれる結晶欠陥を電気的に略不活性化させた場合でも、その後の工程での処理温度が限定されることがなく、かつ、能動層とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができる半導体装置の製造方法を提供することにある。また、かかる製造方法により得た半導体装置、および該半導体装置を備えた電気光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、電界効果型トランジスタの能動層を形成するためのシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、前記シリコン膜に酸素プラズマ照射を行う酸素プラズマ照射工程と、前記酸素プラズマ照射工程により前記シリコン膜表面に形成された表面酸化物を除去する表面酸化物除去工程と、前記シリコン膜表面にゲート絶縁層を形成するゲート絶縁層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記シリコン膜形成工程の後、前記酸素プラズマ照射工程の前に、前記シリコン膜を結晶化させる結晶化工程を有している構成を採用することができる。本発明において、「結晶化」とは、結晶化工程を行なう前の状態で非晶質、結晶質のいずれの状態にあるかにかかわらず、加熱やレーザ照射により誘起される構造変化により結晶を形成することを意味する。
【0010】
電界効果型トランジスタの能動層にポリシリコン膜を用いる場合、ポリシリコン膜に結晶欠陥が含まれていると、この結晶欠陥が電界効果型トランジスタの能動層内において電子や正孔といったキャリアを捕獲する捕獲準位として働き、電界効果型トランジスタの性能を低下させてしまう。そこで、本発明では、酸素プラズマ照射工程において、ポリシリコン膜に酸素プラズマ照射してポリシリコン膜に含まれている結晶欠陥を電気的に略不活性化させる。従って、電界効果型トランジスタの性能を向上することができる。また、水素プラズマ照射は、酸素プラズマ照射と略同様な効果を有するが、シリコンと水素との結合力は比較的小さい。このため、水素プラズマ照射の場合、その後の工程で温度が350℃程度以上の熱処理を行なうと、水素がシリコン膜から抜けて結晶欠陥を略不活性化する効果が消失してしまう。これに対し、酸素とシリコンとの結合力は、シリコンと水素の結合力と比較して大きいため、酸素プラズマ照射による効果は、その後の工程において温度が600℃以上、さらには800℃以上の熱処理を行なった場合でも消失しない。それ故、本発明によれば、電界効果型トランジスタの能動層となる結晶化したシリコン膜に含まれる結晶欠陥を略不活性化させた場合でも、その後の工程での処理温度に対する制約がない。また、酸素プラズマ照射を行なった際、シリコン膜表面に酸化シリコンからなる表面酸化物が形成されてしまい、かかる表面酸化物は、シリコン膜とゲート絶縁層との界面の状態を劣化させる。しかるに本発明では、酸素プラズマ照射によりシリコン膜表面に形成された表面酸化物を表面酸化物除去工程により除去する。このため、シリコン膜とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができるので、電界効果型トランジスタの特性を向上することができる。
【0011】
本発明において、前記表面酸化物除去工程では、ウエットエッチングにより前記表面酸化物を除去することが好ましい。ウエットエッチングによれば、ドライエッチングに比較してエッチング選択比が大きいので、他の膜をエッチングすることを防止することができる。
【0012】
本発明において、前記ゲート絶縁層形成工程の前に、前記酸素プラズマ照射工程と前記表面酸化物除去工程とを交互に複数回繰り返すことが好ましい。本願発明者は、繰り返し行なった検討から、酸素プラズマ照射を行なった際にシリコン膜の表面に表面酸化物が形成されると、それ以降の酸素プラズマ照射の効果が低下してしまうという新たな知見を得ている。従って、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に複数回繰り返せば、シリコン膜の表面に表面酸化物が存在しない状態で酸素プラズマ照射を行なうことができるので、酸素プラズマ照射の効果が大である。
【0013】
本発明において、前記シリコン膜形成工程の前に下側絶縁膜を形成する下側絶縁膜形成工程を行なう場合、前記ゲート絶縁層形成工程の前、前記表面酸化物除去工程の後に、前記シリコン膜をパターニングするパターニング工程を行なうことが好ましい。シリコン膜形成工程の前に下側絶縁膜を形成する下側絶縁膜形成工程を行なうと、シリコン膜が下側絶縁膜の表面に形成されることになる。表面酸化物除去工程の前にシリコン膜に対するパターニング工程を行なうと、表面酸化物除去工程の際、下地絶縁膜の一部もエッチングされてしまい、パターニング後のシリコン膜に近接する位置に凹部が形成されてしまう。かかる凹部が存在すると、ゲート電極(ゲート配線)を形成した際、凹部に起因する断部でゲート配線が断線するおそれがある。しかるに、表面酸化物除去工程の後に、シリコン膜をパターニングすれば、かかる断線の発生を防止することができる。
【0014】
本発明において、前記ゲート絶縁層形成工程は、前記シリコン膜の表面を熱酸化して熱酸化膜を形成する熱酸化工程を備えていることが好ましい。本発明では、シリコン膜の結晶欠陥を略不活性化するにあたって酸素プラズマ照射を利用したため、その後の工程で高温の熱処理を行なっても、酸素プラズマ照射の効果が消失しない。従って、熱酸化によりゲート絶縁層を形成することができ、熱酸化を利用すれば、能動層とゲート絶縁層との間に良好な界面を形成することができる。
【0015】
本発明において、前記ゲート絶縁層形成工程は、前記熱酸化工程の後に、前記熱酸化膜の上層に酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜を堆積させるゲート絶縁膜堆積工程を備えていることが好ましい。かかる構成を採用すれば、能動層と熱酸化膜とによって界面を形成した状態で、ゲート絶縁層を所望の膜厚とすることができる。
【0016】
本発明に係る方法により製造した半導体装置は、液晶装置や有機エレクトロルミネッセンス装置などの電気光学装置の素子基板として用いることができ、かかる素子基板は、前記電界効果型トランジスタを介して配線に電気的に接続する画素電極を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0018】
[半導体装置]
(半導体装置の構造)
図1は、本発明を適用した半導体装置の構造を示す断面図である。図1に示す半導体装置10tは、石英基板や耐熱ガラス基板などの透光性の基板10s上に電界効果型トランジスタ30nを備えており、本形態では、基板10sとして厚さ1.1mm程度の石英基板が用いられている。なお、半導体装置10tの種類によっては、基板10sとしては、セラミック基板などを用いてもよい。本形態では、基板10s上に、所定のパターンの遮光膜11pと、下側絶縁膜としての酸化シリコン膜からなる下地絶縁膜12sとが順に形成されており、下地絶縁膜12sの上層に、電界効果型トランジスタ30nの能動層を構成する半導体層1jが島状に形成されている。半導体層1jは、アモルファスシリコンを600℃を超える温度で結晶化させたポリシリコン膜(多結晶シリコン膜)からなる。遮光膜11pは、電界効果型トランジスタ30nに光が入射するのを防止する機能を担っている。なお、遮光膜11pに代えて、下側配線などを形成した場合も略同様な構造となる。
【0019】
本形態において、電界効果型トランジスタ30nは、島状の半導体層1jに対して、高濃度ソース領域1t、低濃度ソース領域1u、チャネル領域1h、低濃度ドレイン領域1v、および高濃度ドレイン領域1wが形成されたLDD(Lightly Doped Drain)構造を備えている。半導体層1jの表面側にはゲート絶縁層2yが形成されており、ゲート絶縁層2yの表面にゲート電極3sが形成されている。
【0020】
本形態において、ゲート絶縁層2yは2層構造になっており、半導体層1jに対する熱酸化膜により形成された下側の第1ゲート絶縁層21yと、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより堆積された酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜からなる上側の第2ゲート絶縁層22yとを備えている。本形態では、第2ゲート絶縁層22yとして酸化シリコン膜が用いられている。
【0021】
電界効果型トランジスタ30nの上層側には、層間絶縁膜7sが形成されている。層間絶縁膜7sの表面にはソース電極6rおよびドレイン電極6sが形成され、ソース電極6rは、層間絶縁膜7sおよびゲート絶縁層2yに形成されたコンタクトホール7t、2tを介して高濃度ソース領域1tに電気的に接続している。ドレイン電極6sは、層間絶縁膜7sおよびゲート絶縁層2yに形成されたコンタクトホール7t、2tを介して高濃度ソース領域1wに電気的に接続している。
【0022】
(半導体装置の製造方法)
図2〜図5は、本発明を適用した半導体装置10tの製造方法の要部を示す工程断面図である。なお、電界効果型トランジスタ30nは、Nチャネル型およびPチャネル型のいずれの導電型であってもよいが、以下の説明では、電界効果型トランジスタ30nをNチャネル型として構成する場合を説明する。
【0023】
本形態の半導体装置10tを製造するにあたっては、まず、図2(a)に示すように、まず、基板10sの表面の全面に遮光膜11sを形成する。次に、図2(b)に示すように、フォトリソグラフィ技術により遮光膜11sをパターニングし、電界効果型トランジスタ30nを形成すべき領域に島状の遮光膜11pを形成する。遮光膜11sは、タングステンシリサイド膜をスパッタリング法で堆積させたものである。遮光膜11sの膜厚は100〜400nmの範囲であればよく、本例では、200nm程度としてある。遮光膜11sとしては、モリブデンやタングステンやタンタルなどの高融点金属、或いは、多結晶シリコンやモリブデンシリサイドなどのシリコン膜やシリサイド膜を用いることもできる。遮光膜11sの成膜方法については、スパッタリング法の他、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、電子ビーム加熱蒸着法などを用いることができる。
【0024】
次に、図2(c)に示す下側絶縁膜形成工程において、遮光膜11pの表面および基板10sの表面を覆うように下地絶縁膜12sを形成する。本形態において、下地絶縁膜12sは、プラズマCVD法で成膜した酸化シリコン膜である。
【0025】
次に、図2(d)〜図4(a)を参照して説明する以下の工程により、遮光膜11pが形成されている領域上に、電界効果型トランジスタ30nの能動層を構成するための島状の半導体層1jを形成する。
【0026】
かかる半導体層1jの形成工程では、まず、図2(d)に示すシリコン膜形成工程において、下地絶縁膜12sの表面に、減圧気相化学成長法やプラズマCVD法により、アモルファスのシリコン膜1sを堆積させる。シリコン膜1sの膜厚は50nmから70nmである。
【0027】
次に、結晶化工程において、非酸化雰囲気中で600℃から700℃程度の温度でアモルファスのシリコン膜1sに熱処理を行なって、シリコン膜1sをポリシリコン膜に結晶化させる。本形態では、かかる熱処理として、640℃の窒素雰囲気中にて4時間の熱処理を行なう。
【0028】
次に、図3(a)に示す酸素プラズマ照射工程において、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行い、結晶化させたシリコン膜1sに含まれる結晶欠陥を電気的に終端させて略不活性化する。酸素プラズマ照射OPは、基板10sを150℃から400℃に加熱した状態で5分間から20分間行なう。酸素プラズマは、平行平板型のプラズマ発生装置に酸素ガスを供給して、酸素雰囲気圧力を40Paから100Pa、RFパワーを400Wから1500Wとした状態で発生させる。
【0029】
かかる酸素プラズマ照射OPを行なうと、図3(b)に示すように、シリコン膜1sの表面には、酸化シリコンからなる不必要な表面酸化物1rが形成される。従って、本形態では、表面酸化物1rを除去する表面酸化物除去工程を行なう。本形態では、1〜2%に希釈したフッ化水素酸水溶液に、シリコン膜1sを30秒間程接触させて、図3(c)に示すように、シリコン膜1sの表面から表面酸化物1rを除去する。なお、表面酸化物除去工程では、上記のウエットエッチングに代えて、ドライエッチングを行なってもよい。
【0030】
本形態では、図3(a)〜(f)に示すように、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に2回ずつ行なう。すなわち、酸素プラズマ照射OPによって形成された表面酸化物1rを除去した後に、再度、酸素プラズマ照射OPを行ない、しかる後に、再び表面酸化物1rを除去する。
【0031】
次に、図4(a)に示すパターニング工程において、フォトリソグラフィ技術によりシリコン膜1sをパターニングし、島状の半導体層1jを形成する。かかるパターニング工程では、ウエットエッチングおよびドライエッチングのいずれを用いてもよい。
【0032】
次に、図4(b)、(c)を参照して説明するゲート絶縁膜形成工程を行なう。本形態では、ゲート絶縁膜形成工程において、まず、図4(b)に示す熱酸化工程において、酸化雰囲気中で半導体層1jの表面を800℃から1000℃程度の温度に加熱して、半導体層1jの表面を熱酸化膜してなる第1ゲート絶縁層21y(酸化シリコン膜)を形成する。次に、図4(c)に示すゲート絶縁膜堆積工程において、プラズマCVD法などにより、第1ゲート絶縁層21yおよび下地絶縁膜12sの表面に酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜からなる第2ゲート絶縁層22yを形成する。本形態では、第2ゲート絶縁層22yとして酸化シリコン膜を形成する。
【0033】
かかる方法によれば、所望の厚さのゲート絶縁層2yを形成することができる。また、ゲート絶縁膜形成工程の熱酸化工程において、ポリシリコン膜からなる半導体層1jを長時間熱酸化させると、半導体層1jの表面に多数の凸部が形成されるので、第1ゲート絶縁層21yの形成にあたっては、半導体層1jの熱酸化を短時間で行い、良好な界面を形成する。本例では、熱酸化工程では、930℃で10分間程度の熱酸化により半導体層1jに表面に膜厚約10nmの第1ゲート絶縁層21yを形成する。そして、ゲート絶縁膜堆積工程では、膜厚が15nm程度の酸化シリコン膜(第2ゲート絶縁層22y)をCVD法により堆積することにより、膜厚が25nm程度のゲート絶縁層2yを形成する。
【0034】
次に、図4(d)に示すように、ゲート絶縁層2y上にゲート電極3sを形成する。かかるゲート電極3sを形成するにあたっては、不純物をドープした多結晶シリコンやタンタルなどの金属からなる導電膜を形成した後、この導電膜をパターニングする。導電膜の形成には、例えば、CVD法やスパッタリング法が用いられる。なお、ゲート電極3sのパターニング時に、このゲート電極3sから延在する配線も併せてパターニング形成する。
【0035】
次に、図5(a)に示すように、ゲート電極3sをマスクとして、ゲート電極3sの両側から半導体層1jにリン(P)などのN型の不純物を低濃度で導入し、低濃度不純物導入領域(低濃度ソース領域1uおよび低濃度ドレイン領域1v)を形成する。次に、ゲート電極3sの側壁に形成した不図示のサイドウォール膜をマスクにして、リンなどのN型の不純物を高濃度で導入して、高濃度不純物導入領域(高濃度ソース領域1tおよび高濃度ドレイン領域1w)を形成する。かかる不純物導入工程で不純物が導入されなかった領域はチャネル領域1hとなる。高濃度の不純物を導入するにあたっては、ゲート電極3sを広めに覆うレジストマスクを用いてもよい。また、斜めインプラ法などを用いて不純物を導入してもよい。
【0036】
次に、図5(b)に示すように、ゲート電極3sの上層側に層間絶縁膜7sとして、酸化シリコン膜をPECVD(Plasma-Enhanced CVD)法で500nm程度堆積する。次に、850℃程度の温度で熱処理を行ない、不純物導入領域(低濃度ソース領域1u、低濃度ドレイン領域1v、高濃度ソース領域1tおよび高濃度ドレイン領域1w)中の不純物を活性化させる。
【0037】
次に、図5(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて層間絶縁膜7sにおいて、高濃度ソース領域1tおよび高濃度ドレイン領域1wと重なる領域の層間絶縁膜7sおよびゲート絶縁層2yをエッチングし、コンタクトホール7t、2tを形成する。次に、コンタクトホール7t、2t内を含む層間絶縁膜7s上に、アルミニウム、タングステンなどの金属をスパッタリング法などで堆積させて導電膜を形成する。次に、この導電膜をパターニングして、ソース電極6r、ドレイン電極6s、および配線を形成する。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本実施の形態の半導体装置10tの製造工程では、結晶化工程により多結晶化させたシリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行うため、酸素プラズマがシリコン膜に含まれている結晶欠陥に作用して、シリコン膜1s中の結晶欠陥を電気的に略不活性化することができる。このため、電界効果型トランジスタ30nの能動層(半導体層1j)において、結晶欠陥が電子や正孔といったキャリアを捕獲するのを防止、あるいは抑制することができるので、電界効果型トランジスタ30nの性能を向上することができる。
【0039】
図6は、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射工程を行なった場合の効果を示す説明図であり、図6(a)は、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射工程を行なった場合の電界効果型トランジスタのオン電流分布を示すグラフであり、図6(b)は、酸素プラズマ照射工程を行なわなかった場合のオン電流分布を示すグラフである。図6に示す結果は、ドレイン電圧5V、ゲート電圧5Vの時にソース・ドレイン間を流れる電流である。
【0040】
例えば、図6(a)に示すように、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行なった場合の電界効果型トランジスタ30nのオン電流のばらつきは約9%であり、小さい。これに対して、図6(b)に示すように、これに対して、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射OPを行なわない場合の電界効果型トランジスタのオン電流のばらつきは約20%であり、大きい。このように、本形態によれば、電界効果型トランジスタのオン電流のばらつきを大幅に抑制できる。
【0041】
また、本形態は、酸素プラズマ照射OPによってシリコン膜1sの表面に形成された表面酸化物1rを除去する酸化シリコン膜除去工程を行なうため、ゲート絶縁層形成工程においては、表面酸化物1rを除去した清浄な半導体層1jの表面に対して熱酸化を行ない、第1ゲート絶縁層21yを形成する。このため、半導体層1jとゲート絶縁層2yとの間に良好な界面を形成することができる。
【0042】
また、シリコン膜1sをパターニングして島状の半導体層1jを形成する際、シリコン膜1sの表面に表面酸化物1rが存在しないので、シリコン膜1sのエッチングを良好に行なうことができる。
【0043】
さらに、本形態では、ゲート絶縁層形成工程の前に、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に2回繰り返している。このため、図7を参照して以下に説明するように、結晶欠陥を略不活性化させる効果が高い。
【0044】
図7は、シリコン膜1sに対して酸素プラズマ照射を行なった際の照射時間とシリコン膜1sの電気伝導率との関係を示すグラフである。図7に示す結果は、結晶化した後のシリコン膜1sに対してリンをドープして酸素プラズマ照射OPを行った際の電気伝導率変化である。
【0045】
図7に示す結果において、曲線LAで示す結果は、酸素プラズマ照射OPを連続して行なったときのシリコン膜1sの電気伝導率である。図7において、点PBで示す結果は、酸素プラズマ照射OPを10分行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを10分行ったときのシリコン膜1sの電気伝導率である。図7において、点PCで示す結果は、酸素プラズマ照射OPを20分行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを20分行ったときのシリコン膜1sの電気伝導率である。
【0046】
図7に曲線LAで示す結果から分るように、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを行なうと、電気伝導率が向上しており、酸素プラズマ照射OPの効果が認められる。しかし、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを連続して行なうと、照射時間が20分以上の条件では、照射時間を延長しても、電気伝導率の向上度合いが鈍化する。
【0047】
これに対して、図7に点PBで示すように、酸素プラズマ照射OPを10分間行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを10分間行った場合には、プラズマ照射を20分間連続して行なったときの曲線LAで示す結果に比較して、電気伝導率が著しく向上している。また、図7に点PCで示すように、酸素プラズマ照射OPを20分間行った後にフッ化水素酸水溶液により表面酸化物1rを除去し、再度、酸素プラズマ照射OPを20分間行った場合には、プラズマ照射を40分間連続して行なったときの曲線LAで示す結果に比較して、電気伝導率が著しく向上している。
【0048】
このように、酸素プラズマ照射OPを行なった場合、シリコン膜1s内に含まれている結晶欠陥を電気的に略不活性化させる作用が、酸素プラズマ照射OPによってシリコン膜1sの表面に形成される表面酸化物1rによって妨げられていることが分る。従って、酸素プラズマ照射OPによって形成された表面酸化物1rを一旦除去した後に、再度、シリコン膜1sに酸素プラズマ照射OPを行えば、表面酸化物1rによる影響を解消することができるので、シリコン膜1sの結晶欠陥を効率よく電気的に略不活性化することができる。
【0049】
また、本形態では、酸素プラズマ照射OPにより、シリコン膜1sの結晶欠陥を略不活性化するため、水素プラズマを利用した場合と違って、その後の工程で高温の熱処理を行なっても、酸素プラズマ照射OPによる効果が消失しない。このため、ゲート絶縁層形成工程では、800℃以上の温度でシリコン膜1s(シリコン膜)の表面を熱酸化させて第1ゲート絶縁層21yを形成することができる。また、800℃以上の温度での熱酸化であれば、熱酸化工程が短時間で済むため、半導体層1jの表面に凸部が発生しない。それ故、半導体層1jとゲート絶縁層2yの間に良好な界面を形成することができる。
【0050】
さらに、ゲート絶縁層形成工程では、熱酸化膜からなる第1ゲート絶縁層21yの上層に堆積法によって酸化シリコン膜からなる第2ゲート絶縁層22yを形成する。このため、熱酸化時間を短くした場合でも、ゲート絶縁層2yを所望の膜厚にすることができる。
【0051】
[別の実施の形態]
図8は、本発明を適用した半導体装置10tの製造方法において、シリコン膜1sに対するパターニング工程を表面酸化物除去工程の前に行なった場合に半導体層1j周辺の構造に及ぼす影響を示す説明図である。
【0052】
上記実施の形態では、シリコン膜1sに対するパターニング工程を表面酸化物除去工程の後に行っているが、シリコン膜1sをパターニングして半導体層1jを得た後、酸素プラズマ照射工程および表面酸化物除去工程を行ってもよい。
【0053】
但し、シリコン膜1sをパターニングした後、表面酸化物除去工程を行なうと、フッ化水素酸水溶液によって半導体層1jの表面酸化物1rを除去した際、図8に示すように、半導体層1jから露出する下地絶縁膜12sも同時にエッチングされて、半導体層1jと隣接する部分に段部12eが発生するおそれがある。かかる段部12eが形成されると、後工程でゲート電極3sおよびそれから延在するゲート線を形成した際、ゲート線が段部12eで断線するおそれがある。従って、酸素プラズマ照射工程および表面酸化物除去工程については、シリコン膜1sに対するパターニング工程を行なう前、すなわち、下地絶縁膜12sが露出していない状態で実施することが好ましい。
【0054】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に2回繰り返しているが、これらの各工程は、少なくとも1回行われればよい。また、酸素プラズマ照射工程と表面酸化物除去工程とを交互に3回以上繰り返してもよい。
【0055】
上記実施の形態では、本形態の電界効果型トランジスタはN型であるが、P型の電界効果型トランジスタを製造する際にも、シリコン膜を結晶化させる結晶化工程の後に酸素プラズマ照射工程および表面酸化物除去工程を行なえば、電界効果型トランジスタの性能を向上することができる。
【0056】
上記実施の形態では、第2ゲート絶縁層22yが酸化シリコン膜であったが、窒化シリコン膜であってもよい。また、上記実施の形態において、下地絶縁膜12sは、酸化シリコン膜であったが、窒化シリコン膜であってもよい。
【0057】
上記実施の形態では、ゲート絶縁層2yを熱酸化膜からなる第1ゲート絶縁層21yと、堆積させた酸化シリコン膜からなる第2ゲート絶縁層22yの2層構造としたが、熱酸化膜からなる第1ゲート絶縁層21yのみによってゲート絶縁層2yを構成してもよい。
【0058】
[電気光学装置への適用]
図1〜図8を参照して説明した半導体装置およびその製造方法は、例えば、以下に説明する液晶装置などといった電気光学装置の素子基板およびその製造方法として用いることができる。すなわち、以下に説明する電気光学装置の素子基板は、基板上に電界効果型トランジスタが形成された半導体装置として構成されるので、本発明を適用することができる。
【0059】
(全体構成)
図9は、本発明を適用した電気光学装置(液晶装置)の電気的構成を示すブロック図である。図9に示す電気光学装置100は液晶パネル100pを有しており、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画素領域10bを備えている。
【0060】
かかる液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10には、画素領域10bの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている。複数の画素100aの各々には、画素スイッチング素子としての電界効果型トランジスタ30および画素電極9aが形成されている。電界効果型トランジスタ30のソースにはデータ線6aが電気的に接続され、電界効果型トランジスタ30のゲートには走査線3aが電気的に接続され、電界効果型トランジスタ30のドレインには画素電極9aが電気的に接続されている。
【0061】
素子基板10において、画素領域10bの外側領域には走査線駆動回路104およびデータ線駆動回路101が構成されている。データ線駆動回路101は各データ線6aの一端に電気的に接続しており、不図示の画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走査線3aに順次供給する。
【0062】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板に形成された共通電極と液晶を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号がリークするのを防ぐために、液晶容量50aと並列に保持容量60が付加されている。本形態では、保持容量60を構成するために、走査線3aと並列するように容量線3bが形成されており、かかる容量線3bは共通電位線に接続され、所定の電位に保持されている。なお、保持容量60は前段の走査線3aとの間に形成される場合もある。
【0063】
(液晶パネルおよび素子基板の構成)
図10(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置100の液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。図10(a)、(b)に示すように、電気光学装置100の液晶パネル100pでは、所定の隙間を介して素子基板10と対向基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は対向基板20の縁に沿うように配置されている。シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂などからなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0064】
素子基板10において、シール材107の外側領域では、素子基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する一辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、素子基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材109が形成されている。
【0065】
詳しくは後述するが、素子基板10には、画素電極9aがマトリクス状に形成されている。これに対して、対向基板20には、シール材107の内側領域に遮光性材料からなる額縁108が形成され、その内側が画像表示領域10aとされている。また、対向基板20では、素子基板10の画素電極9aの縦横の境界領域と対向する領域にブラックマトリクス、あるいはブラックストライプなどと称せられる遮光膜23が形成され、その上層側には、ITO(Indium Tin Oxide)膜からなる共通電極25が形成されている。なお、画素領域10bには、額縁108と重なる領域にダミーの画素が構成される場合があり、この場合、画素領域10bのうち、ダミー画素を除いた領域が画像表示領域10aとして利用されることになる。
【0066】
このように形成した電気光学装置100は、後述するモバイルコンピュータ、携帯電話機、液晶テレビ、投射型表示装置などといった電子機器のカラー表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルタ(図示せず)や保護膜が形成される。また、対向基板20および素子基板10の光入射側の面あるいは光出射側には、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード等々の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の向きに配置される。
【0067】
電気光学装置100は、透過型に限らず、反射型および半透過反射型として構成される場合があり、この場合、例えば、素子基板10には光反射層が形成される。電気光学装置100は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクタ)において、RGB用のライトバルブとして用いることができる。この場合、RGB用の各電気光学装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになるので、カラーフィルタは形成されない。また、対向基板20に対して、各画素に対応するようにマイクロレンズを形成すれば、入射光の画素電極9aに対する集光効率を高めることができるので、明るい表示を行うことができる。さらにまた、対向基板20に何層もの屈折率の異なる干渉層を積層することにより、光の干渉作用を利用して、RGB色をつくり出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付きの対向基板によれば、より明るいカラー表示を行うことができる。
【0068】
(各画素の構成)
図11(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置100に用いた素子基板10において相隣接する画素の平面図、およびそのA−A′線に相当する位置で電気光学装置100を切断したときの断面図である。
【0069】
図11(a)、(b)に示すように、素子基板10には、石英基板や耐熱ガラス基板などからなる透光性基板10dの表面に、所定形状に形成された遮光膜11と、シリコン酸化膜などからなる下地絶縁膜12が形成されているとともに、その表面側にはN型の電界効果型トランジスタ30が形成されている。電界効果型トランジスタ30は、結晶化したポリシリコン層からなる島状の半導体層1aに対して、チャネル領域1g、低濃度ソース領域1b、高濃度ソース領域1d、低濃度ドレイン領域1c、および高濃度ドレイン領域1eが形成されたLDD構造を備えている。また、半導体層1aの表面側にゲート絶縁層2yが形成されており、ゲート絶縁層2yの表面にゲート電極(走査線3a)が形成されている。なお、チャネル領域1gは必要に応じてチャネルドープされている。
【0070】
ここで、電界効果型トランジスタ30および半導体層1aは各々、図1〜8を参照して説明した電界効果型トランジスタ30nおよび半導体層1jに相当する。
【0071】
電界効果型トランジスタ30の上層側には、層間絶縁膜7、8が形成されている。層間絶縁膜7の表面にはデータ線6aおよびドレイン電極6bが形成され、データ線6aは、層間絶縁膜7に形成されたコンタクトホール7aを介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続している。また、ドレイン電極6bは、層間絶縁膜7に形成されたコンタクトホール7bを介して高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続している。層間絶縁膜8の表面にはITO膜からなる画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、層間絶縁膜8に形成されたコンタクトホール8aを介してドレイン電極6bに電気的に接続している。画素電極9aの表面側にはポリイミド膜からなる配向膜16が形成されている。また、高濃度ドレイン領域1eからの延設部分1f(下電極)に対しては、ゲート絶縁層2yと同時形成された絶縁層(誘電体膜)を介して、走査線3aと同層の容量線3bが上電極として対向することにより、保持容量60が構成されている。
【0072】
このように構成した素子基板10と対向基板20とは、画素電極9aと共通電極25とが対面するように配置され、かつ、これらの基板間には、前記のシール材107(図7(a)、(b)参照)により囲まれた空間内に電気光学物質としての液晶50が封入されている。液晶50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16、24により所定の配向状態をとる。液晶50は、例えば一種または数種のネマティック液晶を混合したものなどからなる。
【0073】
このような電気光学装置100では、表示に寄与する画素電極9aの面積を大きくするために、画素スイッチング素子としての電界効果型トランジスタ30のサイズを小さくする必要がある。このため、電界効果型トランジスタ30のチャネルの大きさと半導体層1aを形成するシリコンの結晶粒の大きさが同程度になり、個々の電界効果型トランジスタ30毎に半導体層1aに含まれる結晶欠陥の数にばらつきが生じる。かかるばらつきは、電界効果型トランジスタ30の特性ばらつきや、特性低下の原因となる。しかるに本発明では、図1〜図8を参照して説明したように、電界効果型トランジスタ30の製造工程で酸素プラズマ照射OPを行うことにより結晶欠陥を電気的に略不活性化させているので、り、電界効果型トランジスタ30の特性ばらつきや、特性低下が発生しない。また、半導体層1aでは、酸素プラズマ照射OPにより形成された表面酸化物1r(図3参照)が除去されている。このため、半導体層1aとゲート絶縁層2yとの間に良好な界面を形成することができるので、電界効果型トランジスタ30の特性を向上することができる。
【0074】
また、電界効果型トランジスタ30nの半導体層1aの下層側には遮光膜11が形成されているので、半導体層1aに対して光の侵入が防止されている。従って、迷光強度の強い高輝度光源を用いる場合でも、光の影響を受けることなく、安定して動作する電気光学装置となる。
【0075】
[半導体装置のその他の構成例]
上記形態では、本発明に係る電気光学装置として液晶装置を例に説明したが、有機エレクトロルミネッセンス装置でも、電界効果型トランジスタが画素スイッチング素子として用いられていることから、本発明に係る半導体装置は、有機エレクトロルミネッセンス装置の素子基板として用いてもよい。また、本発明に係る半導体装置は、上記の電気光学装置の他、撮像装置に用いる素子基板などとして用いることもできる。
【0076】
[電子機器への搭載例]
図12および図13は、本発明を適用した電気光学装置を用いた電子機器の説明図である。まず、本発明に係る電気光学装置100を透過型の液晶装置として構成した場合、図12(a)に示す投射型表示装置のライトバルブとして用いることができる。また、図12(a)に示す投射型表示装置は、図12(b)に示すリア型プロジェクタなどに用いることができる。
【0077】
図12(a)に示す投射型表示装置110は、光源112、ダイクロイックミラー113、114、およびリレー系120などを備えた光源部140と、液晶ライトバルブ115〜117(透過型の電気光学装置100)と、クロスダイクロイックプリズム119(合成光学系)と、投射光学系118とを備えている。
【0078】
光源112は、赤色光、緑色光および青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共に緑色光および青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光および青色光のうち青色光を透過させると共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学系を構成する。
【0079】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレータ121および偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレータ121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0080】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115cおよび第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0081】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0082】
なお、λ/2位相差板115aおよび第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115aおよび第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0083】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル116cおよび第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0084】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過型の電気光学装置である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117cおよび第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0085】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロスダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。なお、λ/2位相差板117aおよび第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0086】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0087】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光学系118に向けて射出するように構成されている。
【0088】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を有効に合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光および青色光をs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0089】
図12(b)に示すように、投射型表示装置110をリア型プロジェクタ200に搭載した場合には、反射鏡201、202によりスクリーン203に画像が表示される。リア型プロジェクタ200では、液晶ライトバルブ115、116、117に侵入する光の強度が極めて高いので、その迷光の強度は高い。しかるに本発明の電気光学装置100では、電界効果型トランジスタ30nの半導体層1aの下層側には遮光膜11が形成されているので、半導体層1aに対して迷光の侵入が防止されている。従って、迷光強度の強い高輝度光源を用いた場合でも、安定した動作を得ることができる。また、電界効果型トランジスタ30に性能のばらつきや、特性の低下がないので、出力画像の高画質化を実現することができる。
【0090】
次に、本発明に係る電気光学装置100を反射型の液晶装置として構成した場合、図13(a)に示す投射型表示装置のライトバルブとして用いることができる。また、本発明に係る電気光学装置100は、図13(b)、(c)に示す直視型表示装置として利用することもきる。
【0091】
図13(a)に示す投射型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置した光源部810、インテグレータレンズ820および偏光変換素子830を備えた偏光照明装置800と、この偏光照明装置800から出射されたS偏光光束をS偏光光束反射面841により反射させる偏光ビームスプリッタ840と、偏光ビームスプリッタ840のS偏光光束反射面841から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー842と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー843とを有している。また、投射型表示装置1000は、各色光が入射する3枚の電気光学装置100(反射型の電気光学装置100R、100G、100B)を備えている。さらに、投射型表示装置1000は、3つの電気光学装置100R、100G、100Bにて変調された光をダイクロイックミラー842、843、および偏光ビームスプリッタ840にて合成した後、この合成光を投射光学系850によりスクリーン860に投写する。
【0092】
また、図13(b)に示す携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001、スクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置100を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0093】
図13(c)に示す情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)4000は、複数の操作ボタン4001、電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置100を備えており、電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置100に表示される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明を適用した半導体装置の構造を示す断面図である。
【図2】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図3】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図4】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図5】本発明を適用した半導体装置の製造方法の要部を示す工程断面図である。
【図6】半導体層に対して酸素プラズマ照射工程を行なった場合の効果を示す説明図である。
【図7】シリコン膜に対して酸素プラズマ照射を行なった際の照射時間とシリコン膜の電気伝導率との関係を示すグラフである。
【図8】本発明を適用した半導体装置の製造方法において、シリコン膜に対するパターニング工程を表面酸化物除去工程の前に行なった場合に半導体層周辺の構造に及ぼす影響を示す説明図である。
【図9】本発明を適用した電気光学装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図10】(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置を各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【図11】(a)、(b)は各々、本発明を適用した電気光学装置に用いた素子基板において相隣接する画素の平面図、およびそのA−A′線に相当する位置で電気光学装置を切断したときの断面図である。
【図12】本発明に係る電気光学装置を用いた電子機器の説明図である。
【図13】本発明に係る電気光学装置を用いた別の電子機器の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1h・・チャネル領域、1j・・半導体層、1r・・表面酸化物、1s・・シリコン膜、1t・・高濃度ソース領域、1u・・低濃度ソース領域、1v・・低濃度ドレイン領域、1w・・高濃度ドレイン領域、2y・・ゲート絶縁層、3s・・ゲート電極、7s・・層間絶縁膜、10s・・基板、10t・・半導体装置、11p・・遮光膜、12s・・下地絶縁膜、21y・・第1ゲート絶縁層、22y・・第2ゲート絶縁層、30、30n・・N型の電界効果型トランジスタ、100・・電気光学装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果型トランジスタの能動層を形成するためのシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、
前記シリコン膜に酸素プラズマ照射を行う酸素プラズマ照射工程と、
前記酸素プラズマ照射工程により前記シリコン膜表面に形成された表面酸化物を除去する表面酸化物除去工程と、
前記シリコン膜表面にゲート絶縁層を形成するゲート絶縁層形成工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン膜形成工程の後、前記酸素プラズマ照射工程の前に、前記シリコン膜を結晶化させる結晶化工程を有していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記表面酸化物除去工程では、ウエットエッチングにより前記表面酸化物を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート絶縁層形成工程の前に、前記酸素プラズマ照射工程と前記表面酸化物除去工程とを交互に複数回繰り返すことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シリコン膜形成工程の前に下側絶縁膜を形成する下側絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁層形成工程の前、前記表面酸化物除去工程の後に、前記シリコン膜をパターニングするパターニング工程を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁層形成工程は、前記シリコン膜の表面を熱酸化して熱酸化膜を形成する熱酸化工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ゲート絶縁層形成工程は、前記熱酸化工程の後に、前記熱酸化膜の上層に酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜を堆積させるゲート絶縁膜堆積工程を備えていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の製造方法により製造したことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置を備えた電気光学装置であって、
前記半導体装置は、前記電界効果型トランジスタを介して配線に電気的に接続する画素電極を備えた素子基板であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項1】
電界効果型トランジスタの能動層を形成するためのシリコン膜を形成するシリコン膜形成工程と、
前記シリコン膜に酸素プラズマ照射を行う酸素プラズマ照射工程と、
前記酸素プラズマ照射工程により前記シリコン膜表面に形成された表面酸化物を除去する表面酸化物除去工程と、
前記シリコン膜表面にゲート絶縁層を形成するゲート絶縁層形成工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン膜形成工程の後、前記酸素プラズマ照射工程の前に、前記シリコン膜を結晶化させる結晶化工程を有していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記表面酸化物除去工程では、ウエットエッチングにより前記表面酸化物を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート絶縁層形成工程の前に、前記酸素プラズマ照射工程と前記表面酸化物除去工程とを交互に複数回繰り返すことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記シリコン膜形成工程の前に下側絶縁膜を形成する下側絶縁膜形成工程と、
前記ゲート絶縁層形成工程の前、前記表面酸化物除去工程の後に、前記シリコン膜をパターニングするパターニング工程を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁層形成工程は、前記シリコン膜の表面を熱酸化して熱酸化膜を形成する熱酸化工程を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ゲート絶縁層形成工程は、前記熱酸化工程の後に、前記熱酸化膜の上層に酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜を堆積させるゲート絶縁膜堆積工程を備えていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の製造方法により製造したことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置を備えた電気光学装置であって、
前記半導体装置は、前記電界効果型トランジスタを介して配線に電気的に接続する画素電極を備えた素子基板であることを特徴とする電気光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図6】
【公開番号】特開2010−109030(P2010−109030A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277814(P2008−277814)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]