説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができるトランジスタを提供する。
【解決手段】半導体基板10のチャネル形成領域にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層15が埋め込まれ、チャネル形成領域上にゲート絶縁膜28が形成され、ゲート絶縁膜上に、第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域を有するゲート電極29が形成され、チャネル形成領域を挟む半導体基板においてエクステンション領域12を有するソースドレイン領域13が形成されて、電界効果トランジスタが構成されており、エクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないようにエクステンション領域とSiGe層が離間されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及びその製造方法に関し、特に、電界効果トランジスタを有する半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電界効果トランジスタのゲート長縮小に対する技術的な障壁が高くなってきており、この状況を緩和するために、高移動度チャネル材料、例えば歪みSiやSiGe、Geなどが注目されている。さらにゲート長を縮小した場合、トランジスタの動作速度は、移動度よりもむしろソース端でのキャリア注入速度の重要性が高くなっていることが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されているトランジスタでは、ソース端に注目すると、Si層領域からSi1−xGe(x=0〜1)層領域へキャリアが移動すると、伝導体と荷電子帯のバンドギャップが狭まることにより、キャリアの注入速度が増加する。その結果、ゲート長が短い場合であっても、トランジスタ動作速度を向上させることが可能であると主張している。
【0004】
特許文献2にも同様な構造のトランジスタが開示されている。
特許文献2では、チャネル及びソースドレイン領域が全てSiGeで形成されている場合、不純物拡散を制御することが難しいために、エクステンション及びディープソースドレイン領域は、Si層にて形成するという構造となっている。本構造により、ソースドレインの不純物拡散の制御性を確保しつつ、チャネル移動度を向上させることが可能になると主張している。
【0005】
特許文献3に開示されたトランジスタは、Geイオン注入によりSi層中にSiGe層を形成し、チャネル領域が、ゲート酸化膜/Si層/SiGe層が積層した構成になっている。この構造により、均質なゲート酸化膜を形成しつつ、キャリアはバンドギャップの狭く、移動度の高いSiGe層を移動し、これによりトランジスタ特性を改善するものである。これは、いわゆるSiGeチャネルトランジスタである。
【0006】
特許文献4にはSiGe中をキャリアが移動するダブルゲートトランジスタが開示されている。これも、特許文献3と同様のSiGeチャネルトランジスタである。
【0007】
特許文献5に開示されたトランジスタは、引張り歪みSiGeをチャネル領域に形成し、NMOSとPMOSの駆動電流をバランス良く向上させて、CMOS特性を改善するものである。この特許文献5のトランジスタも、上述同様にSiGeチャネルトランジスタである。
引張りSiの場合、SiのMOSFETに比べて、NMOSは1.7倍、PMOSは1.4倍の駆動電流向上となる。その結果、NMOSとPMOSのバランスがさらに大きくなってしまう。よって、PMOSの駆動電流改善率を向上させる必要がある。引張りSiGeを用いると、Ge濃度が高い領域においては、引張りSiよりも移動度向上率が大きいため、CMOS特性としては改善するというものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1のトランジスタの場合、SiGe領域がゲート端まで拡がっている構造をしている。通常、オーバーラップ領域を形成するために、エクステンション不純物はゲート内側まで入り込むように設計されている。つまり、特許文献1のトランジスタ構造ではソースドレインの接合がSiGe領域に形成されるため、バンドギャップがSiに比べて狭いことに起因する接合リークを抑制することができない。その結果、オフリーク電流の増加に繋がり、LSIとしての特性が劣化してしまう。
【0009】
特許文献2のトランジスタの場合、不純物プロファイルの制御性の観点から、SiGe領域に不純物が入らないように、予め形成されたSiGe領域よりも外側までゲートが配置される構造となっている。この特許文献2では、エクステンションの空乏層がSiGe領域まで入り込む可能性がある。その点で、特許文献1と同様の接合リークが発生する可能性がある。また、プロセスとして、SiGe領域を形成した後にゲートを形成するため、自己整合的でない。よって、必ずSiGe領域の外側にソースドレイン接合が形成されるとは限らず、特許文献1と同様に、接合リークが増加してしまう可能性がある。
【0010】
特許文献3〜5の場合、SiGe領域が全ソースドレイン領域であるために、特許文献1以上に、接合リークが発生しやすい構造となっており、オフリーク電流の増加に繋がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−39762号公報
【特許文献2】特開2005−209980号公報
【特許文献3】特開平03−280437号公報
【特許文献4】特開平05−112491号公報
【特許文献5】特開2001−291864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする課題は、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができるトランジスタを提供することが困難であることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の半導体装置は、チャネル形成領域にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層が埋め込まれている半導体基板と、前記チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記第1の幅より大きい第2の幅を有して前記SiGe層の形成領域からはみ出す領域を有するゲート電極と、前記チャネル形成領域を挟む前記半導体基板において形成されたエクステンション領域を有するソースドレイン領域と、を有して電界効果トランジスタが構成されており、前記エクステンション領域と前記半導体基板の接合面から伸びる空乏層が前記SiGe層に達しないように前記エクステンション領域と前記SiGe層が離間されている。
【0014】
上記の本発明の半導体装置は、半導体基板のチャネル形成領域にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層が埋め込まれ、チャネル形成領域上にゲート絶縁膜が形成され、ゲート絶縁膜上に、第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域を有するゲート電極が形成され、チャネル形成領域を挟む半導体基板においてエクステンション領域を有するソースドレイン領域が形成されて、電界効果トランジスタが構成されている。
ここで、エクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないようにエクステンション領域とSiGe層が離間されている。
【0015】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、チャネル形成領域を有する半導体基板にダミーゲート絶縁膜及びダミーゲート電極を形成する工程と、前記ダミーゲート電極の両側部にオフセットスペーサを形成する工程と、前記オフセットスペーサ及び前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板にエクステンション領域を形成する工程と、前記オフセットスペーサの両側部にサイドウォールスペーサを形成する工程と、前記サイドウォールスペーサ、前記オフセットスペーサ及び前記ダミーゲート電極をマスクとして前記半導体基板にソースドレイン領域を形成する工程と、前記ダミーゲート電極を被覆する絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜の上面から前記ダミーゲート電極が露出するまで前記絶縁膜を除去する工程と、前記ダミーゲート電極及びダミーゲート絶縁膜を除去してゲート電極用溝を形成する工程と、前記ゲート電極用溝の底部における前記半導体基板の表面にSiGe層埋め込み用凹部を形成する工程と、前記SiGe層埋め込み用凹部にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層を形成する工程と、前記オフセットスペーサを除去する工程と、前記オフセットスペーサが除去された前記ゲート電極用溝の底部において前記SiGe層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート電極用溝を埋め込んで前記ゲート絶縁膜上に前記第1の幅より大きい第2の幅を有して前記SiGe層の形成領域からはみ出す領域にゲート電極を形成する工程とを有して電界効果トランジスタを形成し、前記SiGe層を形成する工程において、前記エクステンション領域と前記半導体基板の接合面から伸びる空乏層が前記SiGe層に達しないように前記エクステンション領域と前記SiGe層を離間して形成する。
【0016】
上記の本発明の半導体装置の製造方法は、チャネル形成領域を有する半導体基板にダミーゲート絶縁膜及びダミーゲート電極を形成し、ダミーゲート電極の両側部にオフセットスペーサを形成し、オフセットスペーサ及びゲート電極をマスクとして半導体基板にエクステンション領域を形成し、オフセットスペーサの両側部にサイドウォールスペーサを形成し、サイドウォールスペーサ、オフセットスペーサ及びダミーゲート電極をマスクとして半導体基板にソースドレイン領域を形成する。
次に、ダミーゲート電極を被覆する絶縁膜を形成し、絶縁膜の上面からダミーゲート電極が露出するまで絶縁膜を除去し、ダミーゲート電極及びダミーゲート絶縁膜を除去してゲート電極用溝を形成する。
次に、ゲート電極用溝の底部における半導体基板の表面にSiGe層埋め込み用凹部を形成し、SiGe層埋め込み用凹部にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層を形成し、オフセットスペーサを除去し、オフセットスペーサが除去されたゲート電極用溝の底部においてSiGe層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート電極用溝を埋め込んでゲート絶縁膜上に第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域にゲート電極を形成する。
以上のようにして、電界効果トランジスタを形成する。
ここで、SiGe層を形成する工程において、エクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないようにエクステンション領域とSiGe層を離間して形成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置は、MOS電界効果トランジスタにおいて、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。
【図2】図2(a)は本発明の第1実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図2(b)は図2(a)の一部の拡大図である。
【図3】図3は本発明の第1実施形態に係る半導体装置のエネルギーバンドを示す図である。
【図4】図4(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図6】図6(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図9】図9(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図10】図10(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図11】図11(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図12】図12(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図13】図13は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図14】図14(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図15】図15(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図16】図16(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図17】図17(a)は本発明の第3実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図17(b)は図17(a)の一部の拡大図である。
【図18】図18(a)及び(b)は本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図19】図19(a)は本発明の第4実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図19(b)は図19(a)の一部の拡大図である。
【図20】図20(a)は本発明の第5実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図20(b)は図20(a)の一部の拡大図である。
【図21】図21(a)及び(b)は本発明の第5実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図22】図22は本発明の第6実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図23】図23(a)及び(b)は本発明の第6実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図24】図24(a)及び(b)は本発明の第6実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図25】図25は本発明の第7実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図26】図26(a)〜(c)本発明の第7実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図27】図27は本発明の第8実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図28】図28(a)及び(b)は本発明の第8実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図29】図29(a)及び(b)は本発明の第8実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図30】図30(a)及び(b)は本発明の第8実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図31】図31は本発明の第9実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図32】図32(a)〜(c)は本発明の第9実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図33】図33(a)及び(b)は本発明の第9実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図34】図34(a)及び(b)は本発明の第9実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図35】図35(a)及び(b)は本発明の第9実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の半導体装置及びその製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
尚、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態(本発明の実施形態の全体構成)
2.第2実施形態(ゲート電極が高融点金属シリサイド及びポリシリコンからなる構成)
3.第3実施形態(基板表面から深くなるにつれてSiGe層のチャネル方向の幅が大きくなる構成)
4.第4実施形態(ソースドレイン領域側の端部からSiGe層の中央側方向に向かってGeの濃度が濃くなっている構成)
5.第5実施形態(SiGe層の上面が凸部を有し、半導体基板に埋め込まれた部分から凸部方向に向かってGeの濃度が濃くなっている構成)
6.第6実施形態(ソースドレイン領域の表層部分にソースドレイン用SiGe層が埋め込まれている構成)
7.第7実施形態(SiGe層用凹部内にSi層とSiGe層が形成された構成)
8.第8実施形態(CMOSにおいてゲート電極の材料が異なる構成)
9.第9実施形態(CMOSにおけるNMOSに引っ張り歪が印加されるようにした構成)
【0022】
<第1実施形態>
[半導体装置のレイアウト]
図1は本実施形態に係る半導体装置の模式的な平面図である。本実施形態に係る半導体装置は、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ(以下PMOSと称する)である。
n型のシリコン(Si)からなる半導体基板または半導体基板のnウェルにおいて、チャネル形成領域CHにチャネル方向に第1の幅を有するn型のSiGe層が埋め込まれている。
チャネル形成領域上にゲート絶縁膜が形成され、ゲート絶縁膜上に、第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域を有するゲート電極Gが形成されている。
チャネル形成領域CHを挟む半導体基板においてp型のエクステンション領域を有するp型のソースドレイン領域SDが形成されている。図面上はエクステンション領域を有するソースドレイン領域を区別していない。
上記のようにして、PMOSが構成されている。
本実施形態の半導体装置においては、ソースドレイン領域SDを構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないようにエクステンション領域とSiGe層が離間されている。図面上は、ソースドレイン領域SDを構成するエクステンション領域のチャネル形成領域側の端部EとSiGe層との間が十分に離間していることにより、空乏層がSiGe層に達しないレイアウトであることを示している。
【0023】
[半導体装置の断面構成]
図2(a)は本実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図2(b)は図2(a)の一部であるエクステンション領域、ゲート電極及びSiGe層の近傍部分の拡大図である。
【0024】
例えば、チャネル形成領域を有するn型のシリコン(Si)からなる半導体基板10または半導体基板10のnウェルに、活性領域を区切るSTI(shallow trench isolation)法による素子分離絶縁膜11が形成されている。半導体基板10のチャネル形成領域にSiGe層埋め込み用凹部10aが形成されており、チャネル方向に第1の幅を有するn型のSiGe層15が埋め込まれている。
【0025】
また、例えば、チャネル形成領域となるSiGe層15の領域を挟む領域において、半導体基板10上に窒化シリコン膜などからなる1対のサイドウォールスペーサ24が形成されている。
【0026】
例えば、上記の1対のサイドウォールスペーサ24の間の領域はゲート電極用溝Aとなっている。ゲート電極用溝Aの底部を含む内壁面を被覆して、酸化ハフニウムあるいは酸化アルミニウムなどの酸化シリコンより誘電率が高い、いわゆるHigh−k膜などからなるゲート絶縁膜28が形成されている。
【0027】
例えば、ゲート絶縁膜28の上層においてゲート電極用溝Aに埋め込まれて、金属材料などからなるゲート電極29が形成されている。ゲート電極29は、例えば、タングステン、ハフニウム、タンタル、チタン、モリブデン、ルテニウム、ニッケル、白金からなる群から選択された金属、該金属を含む合金、または、該金属の化合物からなる。
【0028】
また、例えば、少なくともサイドウォールスペーサ24の下部を含む、チャネル形成領域となるSiGe層15を挟む半導体基板10において、p型のエクステンション領域12を有するp型のソースドレイン領域13が形成されている。
ソースドレイン領域13の表層部分にNiSiなどの高融点金属シリサイド層14が形成されている。
上記のようにして、PMOSが構成されている。
【0029】
また、上記のPMOSを被覆して、酸化シリコンからなる第1層間絶縁膜26及び第2層間絶縁膜30が積層されている。
第1層間絶縁膜26及び第2層間絶縁膜30を貫通して、ソースドレイン領域13に接続する高融点金属シリサイド層14及びゲート電極29に達する開口部が設けられ、金属などの導電性材料からなるプラグ31が埋め込まれている。また、これに接続して第2層間絶縁膜30上に導電性材料からなる上層配線32が形成されている。
【0030】
本実施形態において、図2(b)に示すように、例えば、エクステンション領域12はゲート電極29の下部まで入り込むオーバーラップ領域を有する。
【0031】
[エネルギーバンドの説明]
上記の本実施形態に係る半導体装置は、MOS電界効果トランジスタにおいて、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。
上記の効果について、図3を用いて説明する。図3は本実施形態に係る半導体装置のエネルギーバンドを示す図である。特に、ゲート電極に電圧を印加している場合のバンド構造である。
図3中にSiとSiGeの価電子帯VB(Si),VB(SiGe)及びSiの伝導帯CB(Si)が示されている。
本実施形態のPMOSは、ソースドレイン領域はシリコン(Si)で構成され、チャネル形成領域CHはSiGeで構成されている。価電子帯のエネルギー順位は、VB(Si)とVB(SiGe)を滑らかに接続したような構成となる。
ここで、図3中の破線aは特許文献3などに開示された従来のSiGeチャネルトランジスタの価電子帯のエネルギー順位である。Siのみのトランジスタと比較すると、Xで示す位置においてバンドギャップが減少し、ポテンシャルが急峻となるので、キャリアの注入速度が増加される。
【0032】
一方、本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。これにより、本実施形態のトランジスタの価電子帯のエネルギー順位は図3中の実線bで示される。特に、従来のXで示すエネルギー順位がYで示す順位に修正されている。
【0033】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置はMOS電界効果トランジスタにおいて、狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0034】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図4(a)に示すように、シリコンの半導体基板10に活性領域を区分するようにSTI法により素子分離絶縁膜11を100〜200nm程度の膜厚でパターン形成する。
例えば、半導体基板10に酸化シリコンを10nm、窒化シリコンを20nm程度成膜し、素子分離絶縁膜のパターンにパターニングし、さらに半導体基板10に素子分離用溝を形成する。
次に、例えば800℃20分程度の熱処理で素子分離用溝の表面を酸化し、CVD(Chemical Vapor Deposition)などにより素子分離用溝を埋め込んで全面に酸化シリコンを堆積させる。酸化シリコン膜は例えば高密度プラズマHDP(High Density Plasma)を用いた酸化シリコン膜、あるいはO−TEOS(tetraethylorthosilicate)を用いたHARP(High Aspect Ratio Planarization)による酸化シリコン膜などで形成できる。
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)による平坦化を行い、ホットリン酸を用いて窒化シリコン膜を除去する。
以上のようにして、素子分離絶縁膜11を形成する。
【0035】
次に、ウェル及びチャネルのためのイオン注入を行う。
図面上はPMOS領域を示しており、例えばウェルとしてPを500keVで3.0×1013/cmのドーズ量で注入し、チャネルとしてPを50keVで6.0×1012/cmのドーズ量で注入する。不図示の領域にNMOSを形成する場合には、例えばウェルとしてBを230keVで2.0×1013/cmのドーズ量で注入し、チャネルとしてBを20keVで1.0×1013/cmのドーズ量で注入する。
【0036】
次に、フッ酸を用いて上記の酸化シリコン膜を除去した後、図4(b)に示すように、熱酸化などにより3〜5nm程度の酸化シリコン膜を形成してダミーゲート絶縁膜20を形成する。次に、CVD法などでポリシリコンを堆積し、ハードマスク22をゲート電極のパターンに形成し、ポリシリコンをエッチング加工してダミーゲート電極21を形成する。
【0037】
次に、図5(a)に示すように、例えばCVD法により全面に4〜8nmの厚みの酸化シリコンを堆積し、全面にエッチバックすることで、ダミーゲート電極21の両側部にオフセットスペーサ23を形成する。
次に、例えば、活性領域においてオフセットスペーサ23及びハードマスク22(あるいはダミーゲート電極21)をマスクとして不純物をイオン注入して、半導体基板10中にポケット層(Halo;不図示)及びエクステンション領域12を形成する。
図面上はPMOS領域を示しており、例えばポケット層としてAsを50keVで2.0×1013/cmのドーズ量で注入し、エクステンション領域としてBFを1.5keVで6.0×1014/cmのドーズ量で注入する。不図示の領域にNMOSを形成する場合には、例えばポケット層としてBFを40keVで2.0×1013/cmのドーズ量で注入し、エクステンション領域としてAsを1.5keVで6.0×1014/cmのドーズ量で注入する。
【0038】
次に、図5(b)に示すように、例えばCVD法により全面に20nmの厚みの窒化シリコンを堆積し、さらに35nmの厚みの酸化シリコンを堆積し、全面にエッチバックする。これにより、オフセットスペーサ23の両側部に、窒化シリコンのサイドウォールスペーサ24及び酸化シリコンのサイドウォールスペーサ25を形成する。サイドウォールスペーサは、酸化シリコン膜/窒化シリコン膜/酸化シリコン膜などの3層積層絶縁膜であってもよい。
【0039】
次に、図6(a)に示すように、例えば、活性領域においてサイドウォールスペーサ(24,25)、オフセットスペーサ23及びハードマスク層22(あるいはダミーゲート電極21)をマスクとして不純物をイオン注入する。例えばBを4.0keVで4.0×1015/cmのドーズ量で注入する。不図示の領域にNMOSを形成する場合には、Pを20keVで4.0×1013/cmのドーズ量で注入する。
これにより、半導体基板10中にエクステンション領域12に接続してソースドレイン領域13を形成する。
この後、不純物の活性化のためにスパイクRTA処理(1030〜1070℃)の熱処理を施す。
【0040】
次に、図6(b)に示すように、例えば、希フッ酸(DHF)の前処理を経て、スパッタリングにより全面にニッケル、コバルト、白金などの高融点金属を2〜8nmの膜厚で堆積させる。次に、ソースドレイン領域の表面における、高融点金属とシリコンが接しているところでシリサイド化させて、高融点金属シリサイド層14を形成する。この後で、未反応の高融点金属を除去する。
ここで、上記のDHF処理において酸化シリコンのサイドウォールスペーサ25が除去される。以降は、窒化シリコンのサイドウォールスペーサ24のみが残された場合について示す。
【0041】
次に、図7(a)に示すように、例えば、ハードマスク層22(あるいはダミーゲート電極21)を被覆するように全面にCVD法などで酸化シリコンを150〜200nmの膜厚で堆積させて第1層間絶縁膜26を形成する。
【0042】
次に、図7(b)に示すように、例えば、ダミーゲート電極21の表面が露出するまで上面からCMP法により研磨する。
【0043】
次に、図8(a)に示すように、例えば、ドライエッチング処理によりダミーゲート電極21を除去する。
上記のエッチングが、酸化シリコンのダミーゲート絶縁膜に対して十分に選択比を有するようなエッチング条件とする。この際、ダミーゲート絶縁膜20の膜厚は、ドライエッチングに耐え得る膜厚になっており、半導体基板10にダメージが入ることは無い。
【0044】
次に、図8(b)に示すように、例えば、フッ酸を用いてダミーゲート絶縁膜20及びオフセットスペーサ23を除去する。
上記により、1対のサイドウォールスペーサ24の間の領域にゲート電極用溝Aを形成する。
【0045】
次に、図9(a)に示すように、例えばCVD法により全面に2〜6nmの厚みの窒化シリコン(SiN)、ホウ素を含む窒化シリコン(SiBN)または炭素を含む窒化シリコン(SiCN)を堆積し、全面にエッチバックする。
上記により、ゲート電極用溝Aの内部側壁面に、エクステンション領域の不純物が拡散していないチャネル領域のSiのみをエッチングするためのオフセットスペーサ27を改めて形成する。
この後にSiGeをエピタキシャル成長するためのフッ酸による前処理工程があるが、このフッ酸に耐性のある窒化シリコン、ホウ素を含む窒化シリコン膜または炭素を含む窒化シリコン膜を用いることができる。膜厚は2〜6nm程度とし、必要な領域のシリコンのみがエッチングされるようにオフセットスペーサ27の膜厚を制御する必要がある。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、例えばオフセットスペーサ27をマスクとして、エクステンション領域の不純物が拡散していないチャネル領域のSiのみをエッチングし、SiGe層埋め込み用凹部10aを形成する。SiGe層埋め込み用凹部10aは、チャネル方向に第1の幅を有するものとする。
SiGe層埋め込み用凹部10aの深さは、5〜20nm程度とする。少なくとも、キャリアが移動する反転層領域がSiGe層となるようにSiGe層埋め込み用凹部10aを形成すればよい。
【0047】
次に、図10(a)に示すように、例えば、フッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行い、SiGe層埋め込み用凹部10a内に埋め込んでSiGe層15を形成する。SiGe層15は、チャネル方向に第1の幅を有する。SiGe層15は組成として、Si1−xGe(x=0〜1)と表記でき、Ge濃度を自由に変更することができる。
【0048】
次に、図10(b)に示すように、例えば、ホットリン酸を用いて窒化シリコン膜、SiBN膜または炭素を含む窒化シリコン(SiCN)で形成されているオフセットスペーサ27を除去する。この際、形成されているオフセットスペーサ27を丁度除去する処理を行うことが好ましい。例えば、オフセットスペーサ27の膜厚が4nmである場合、4nm分の窒化シリコンもしくはSiBNを除去するホットリン酸処理を行う。
以上で、ゲート電極用溝A内における半導体基板10の表面が再び露出する。
【0049】
次に、図11(a)に示すように、例えば、オフセットスペーサが除去されたゲート電極用溝Aの底部におけるSiGe層の表面を被覆して全面に、酸化ハフニウムあるいは酸化アルミニウムなどのHigh−k膜からなるゲート絶縁膜28を形成する。
【0050】
次に、図11(b)に示すように、例えば、スパッタリング法あるいはCVD法などによりゲート電極用溝Aを埋め込んでゲート絶縁膜28上に第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域にゲート電極29を形成する。
ゲート電極29は、例えば、窒化チタンあるいはハフニウムシリサイド(HfSi)などから形成する。
【0051】
次に、図12(a)に示すように、例えば、CMP処理によりゲート電極用溝Aの外部に堆積されたゲート電極となる導電体材料を除去し、ゲート電極用溝Aに埋め込まれたゲート電極29とする。
【0052】
次に、図12(b)に示すように、例えば、全面にCVD法などで酸化シリコンを50〜100nmの膜厚で堆積させて第2層間絶縁膜30を形成する。
【0053】
以降の工程としては、例えば、第2層間絶縁膜30及び第1層間絶縁膜26を貫通して、ソースドレイン領域13の高融点金属シリサイド層14及びゲート電極29に達する開口部を形成する。
得られた開口部内に、バリアメタルとしてTi(30nm)/TiN(10nm)を成膜し、タングステンなどからなるプラグ31を埋め込む。さらにプラグ31に接続して導電性材料をパターン形成し、上層配線32を形成する。
以上で、図1及び図2に示す構造の半導体装置と同様の半導体装置を製造することができる。
【0054】
本実施形態において、図2(b)に示すように、例えば、エクステンション領域12として、ゲート電極29の下部まで入り込み、オーバーラップ領域を有するエクステンション領域を形成することができる。
【0055】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極を、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成する。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成する。これにより、狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0056】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0057】
<第2実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図13は本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
例えば、ゲート電極用溝Aの底部には、酸化シリコンなどからなるゲート絶縁膜33が形成されている。また、ゲート絶縁膜33の上層においてゲート電極用溝Aにポリシリコンからなるゲート電極34が形成されている。また、ゲート電極34の上部表面にNiSiなどの高融点金属シリサイド層35が形成されている。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0058】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0059】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置は第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0060】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図14(a)に示す構成までは、第1実施形態の図10(b)までの工程と同様にして行う。
次に、図14(b)に示すように、例えば、CVD法などにより、オフセットスペーサが除去されたゲート電極用溝Aの底部におけるSiGe層の表面を被覆して全面に、酸化シリコンからなるゲート絶縁膜33を形成する。
【0061】
次に、図15(a)に示すように、例えば、CVD法などによりゲート電極用溝Aを埋め込んでポリシリコンを堆積し、ゲート絶縁膜33上に第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域にゲート電極34を形成する。
【0062】
次に、図15(b)に示すように、例えば、CMP処理によりゲート電極用溝Aの外部に堆積されたポリシリコンを除去し、ゲート電極用溝Aに埋め込まれたゲート電極34とする。
【0063】
次に、図16(a)に示すように、例えば、希フッ酸(DHF)の前処理を経て、スパッタリングにより全面にニッケル、コバルト、白金などの高融点金属を2〜8nmの膜厚で堆積させる。次に、ゲート電極の表面における、高融点金属とシリコンが接しているところでシリサイド化させて、高融点金属シリサイド層35を形成する。この後で、未反応の高融点金属を除去する。
【0064】
次に、図16(b)に示すように、例えば、全面にCVD法などで酸化シリコンを50〜100nmの膜厚で堆積させて第2層間絶縁膜30を形成する。
【0065】
以降の工程としては、例えば、第2層間絶縁膜30及び第1層間絶縁膜26を貫通して、ソースドレイン領域13の高融点金属シリサイド層14及びゲート電極34の高融点金属シリサイド層35に達する開口部を形成する。
得られた開口部内に、バリアメタルとしてTi(30nm)/TiN(10nm)を成膜し、タングステンなどからなるプラグ31を埋め込む。さらにプラグ31に接続して導電性材料をパターン形成し、上層配線32を形成する。
以上で、図13に示す構造の半導体装置と同様の半導体装置を製造することができる。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0067】
<第3実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図17(a)は本実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図17(b)は図17(a)の一部であるエクステンション領域、ゲート電極及びSiGe層の近傍部分の拡大図である。
例えば、SiGe層埋め込み用凹部10bが、半導体基板10の表面から深くなるにつれてチャネル方向の幅が広くなる領域を有する。従って、SiGe層埋め込み用凹部10bに埋め込まれているSiGe層15は、半導体基板10の表面から深くなるにつれてチャネル方向の幅が広くなる領域を有する。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0068】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0069】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置は第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0070】
Si1−xGe(x=0〜1)の正孔キャリア移動度が大きい理由として、キャリア移動度の大きいGeが含まれていることがある。この他、Siよりもイオン半径が大きいGeを含むことにより、チャネル領域のSi1−xGe(x=0〜1)が、圧縮応力を受けていることが挙げられる。この効果も、正孔キャリア移動度の向上に寄与している。よって、SiGe層の体積が大きいほど、この圧縮応力は大きくなる。Si1−xGe(x=0〜1)層が、半導体基板10の表面から深くなるにつれてチャネル方向の幅が広くなる領域を有する構成とすることで、上記の圧縮応力を高めることができ、さらにキャリア移動度を大きくすることができる。
【0071】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図18(a)に示す構成までは、第1実施形態の図9(a)までの工程と同様にして行う。
次に、図18(b)に示すように、例えばオフセットスペーサ27をマスクとして、エクステンション領域の不純物が拡散していないチャネル領域のSiのみをエッチングし、SiGe層埋め込み用凹部10bを形成する。SiGe層埋め込み用凹部10bは、チャネル方向に第1の幅を有するものとする。
SiGe層埋め込み用凹部10bの深さは、5〜20nm程度とする。少なくとも、キャリアが移動する反転層領域がSiGe層となるようにSiGe層埋め込み用凹部10bを形成すればよい。
ここで、半導体基板の表面から深くなるにつれてチャネル方向の幅が大きくなる領域を有する形状とするには、例えば、初期は異方性エッチング条件、続いて等方性エッチング条件とする。
【0072】
次に、例えば、フッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行い、SiGe層埋め込み用凹部10a内に埋め込んでSiGe層15を形成する。
本実施形態においては、SiGe層15を形成する工程において、半導体基板10の表面から深くなるにつれてSiGe層15のチャネル方向の幅が大きくなる領域を有するように形成する。
SiGe層15は、チャネル方向に第1の幅を有する。SiGe層15は組成として、Si1−xGe(x=0〜1)と表記でき、Ge濃度を自由に変更することができる。
エピタキシャル成長される領域の上面が狭いことから、エッチングされた領域に完全にエピタキシャル成長させるため、下面のみから成長させる異方性エピタキシャル成長の条件とすることが好ましい。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0074】
<第4実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図19(a)は本実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図19(b)は図19(a)の一部であるエクステンション領域、ゲート電極及びSiGe層の近傍部分の拡大図である。
例えば、SiGe層15において、ソースドレイン領域13側の端部からSiGe層15の中央側方向に向かってGeの濃度が濃くなっている。例えば、Ge濃度について低濃度SiGe層15a、中濃度SiGe層15b及び高濃度SiGe層15cが連続的に形成されている。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0075】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0076】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置は第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0077】
特に、本実施形態のトランジスタにおいては、Ge濃度がチャネル中央に向かって高められている。徐々にGe濃度が高まるため、Si層とSi1−xGe(x=0〜1)層間の欠陥を発生させることなく、最大Ge濃度を大きくすることが可能である。その結果、さらにポテンシャル変動が急峻にすることができ、よりキャリア速度を大きくすることができる。
【0078】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、第1実施形態の図9(b)に示す工程まで同様にして行う。
次に、例えば、フッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行い、SiGe層埋め込み用凹部10a内に埋め込んでSiGe層15を形成する。ここで、低濃度SiGe層15a、中濃度SiGe層15b及び高濃度SiGe層15cを連続的に形成する。これにより、SiGe層15において、ソースドレイン領域13側の端部からSiGe層15の中央側方向に向かってGeの濃度が濃くなっている構成とする。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0079】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0080】
<第5実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図20(a)は本実施形態に係る半導体装置の断面図であり、図20(b)は図20(a)の一部であるエクステンション領域、ゲート電極及びSiGe層の近傍部分の拡大図である。
例えば、SiGe層15において、SiGe層15の上面が半導体基板10の表面から突き出た凸部15pを有しており、半導体基板10に埋め込まれた部分のSiGe層15から凸部15p方向に向かってGeの濃度が濃くなっている。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0081】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0082】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置は第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0083】
特に、本実施形態のトランジスタにおいては、上記の凸部15pにおける価電子帯のポテンシャルはさらに急峻になる。その結果、キャリアの速度が加速され、よりキャリア速度を大きくすることができる。
この構造の場合、凸部を有する構造のため、チャネル長が若干大きくなる。キャリア速度の向上分が打ち消されない程度の凸部の高さとする必要がある。
【0084】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図21(a)に示す構成までは、第1実施形態の図9(b)までの工程と同様にして行う。
次に、図21(b)に示すように、例えば、フッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行い、SiGe層埋め込み用凹部10a内に埋め込んでSiGe層15を形成する。さらに、連続的にSiGeからなる凸部15pを形成する。
ここで、SiGe層は組成として、Si1−xGe(x=0〜1)と表記でき、Ge濃度を自由に変更することができる。この際、SiGe層15と凸部15pにおいて上面ほどGe濃度が高くなるような条件でエピタキシャル成長させる。キャリアがソースからチャネル中央へ流れるに従って、Ge濃度が高くなり、キャリア移動度を向上させることができる。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0085】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0086】
<第6実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図22は本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
例えば、ソースドレイン領域13の表層部分にソースドレイン用SiGe層16が埋め込まれている。
また、ソースドレイン用SiGe層16の表層部分にNiSiなどの高融点金属シリサイド層14が形成されている。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0087】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0088】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置は第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0089】
特に、本実施形態のトランジスタにおいては、ソースドレイン領域にソースドレイン用SiGe層16を有することで、SiGe層15に印加される圧縮応力をさらに増やし、正孔キャリア移動度を改善することができる。
【0090】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、第1実施形態の図5(b)に示す工程まで同様にして行う。
次に、図23(a)に示すように、例えばサイドウォールスペーサ(24,25)などをマスクとして、エクステンション領域12の表面からソースドレイン領域となる領域のSiをエッチングし、ソースドレイン用SiGe層埋め込み用凹部10cを形成する。
【0091】
次に、図23(b)に示すように、例えば、フッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行い、ソースドレイン用SiGe層埋め込み用凹部10c内に埋め込んでソースドレイン用SiGe層16を形成する。ソースドレイン用SiGe層16はGe濃度を自由に変更することができる。
【0092】
次に、図24(a)に示すように、例えば、活性領域においてサイドウォールスペーサ(24,25)、オフセットスペーサ23及びハードマスク層22(あるいはダミーゲート電極21)をマスクとして不純物をイオン注入する。これにより、半導体基板10中にエクステンション領域12に接続してソースドレイン領域13を形成する。
この後、不純物の活性化のためにスパイクRTA処理(1030〜1070℃)の熱処理を施す。
【0093】
次に、図24(b)に示すように、例えば、希フッ酸(DHF)の前処理を経て、スパッタリングにより全面にニッケル、コバルト、白金などの高融点金属を2〜8nmの膜厚で堆積させる。次に、ソースドレイン領域の表面における、高融点金属とシリコンが接しているところでシリサイド化させて、高融点金属シリサイド層14を形成する。この後で、未反応の高融点金属を除去する。
ここで、上記のDHF処理において酸化シリコンのサイドウォールスペーサ25が除去される。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0094】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0095】
<第7実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図25は本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
SiGe層埋め込み用凹部10d内において、SiGe層埋め込み用凹部の内壁に所定の厚さのSi層15dが形成され、その上層にチャネル方向に第1の幅となるようにSiGe層15eが形成されている。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0096】
本実施形態のトランジスタにおいては、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0097】
上記のことから、本実施形態に係る半導体装置は第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0098】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図26(a)に示す構成までは、第1実施形態の図8(b)までの工程と同様にして行う。
【0099】
次に、図26(b)に示すように、例えばサイドウォールスペーサ24をマスクとして、チャネル領域のSiをエッチングし、SiGe層埋め込み用凹部10dを形成する。第1実施形態とは異なり、オフセットスペーサを再び形成せずにSiをエッチングする。SiGe層埋め込み用凹部10dの深さは5〜20nm程度とする。
【0100】
次に、図26(c)に示すように、例えば、フッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行う。
ここでは、SiGe層埋め込み用凹部10dの内壁にSi層15dを所定の厚さで成長させた後に、チャネル方向に第1の幅となるようにSiGe層15eを形成する。
エクステンション領域の不純物が存在する領域はSiで形成されている必要があるため、エピタキシャル成長の第1ステップではSiを成長させる。このSi層15dは、以降のプロセスにおける熱工程によってエクステンション領域の不純物が拡散する程度まで形成される必要があり、概ね1〜3nm程度の厚さとする。
SiGe層15eは組成として、Si1−xGe(x=0〜1)と表記でき、Ge濃度を自由に変更することができる。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0101】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0102】
<第8実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図27は本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
本実施形態に係る半導体装置は、PMOSとNMOSを有するCMOSの構成である。
NMOSは、第1実施形態と同様の構成である。
【0103】
PMOSは、例えば以下の構成である。例えば、素子分離絶縁膜11で素子分離されたチャネル形成領域を有するn型のシリコン(Si)からなる半導体基板10にpウェル17が形成されており、チャネル形成領域にSiGe層埋め込み用凹部10eが形成されており、チャネル方向に第1の幅を有するn型のSiGe層15fが埋め込まれている。
【0104】
また、例えば、チャネル形成領域となるSiGe層15fの領域を挟む領域において、半導体基板10上に窒化シリコン膜などからなる1対のサイドウォールスペーサ24が形成されている。
【0105】
例えば、上記の1対のサイドウォールスペーサ24の間の領域はゲート電極用溝となっている。ゲート電極用溝の底部を含む内壁面を被覆して、酸化ハフニウムあるいは酸化アルミニウムなどの酸化シリコンより誘電率が高い、いわゆるHigh−k膜などからなるゲート絶縁膜28が形成されている。
【0106】
例えば、ゲート絶縁膜28の上層においてゲート電極用溝に埋め込まれて、金属材料などからなるゲート電極36が形成されている。ゲート電極36は、例えば、タングステン、ハフニウム、タンタル、チタン、モリブデン、ルテニウム、ニッケル、白金からなる群から選択された金属、該金属を含む合金、または、該金属の化合物からなる。
【0107】
また、例えば、少なくともサイドウォールスペーサ24の下部を含む、チャネル形成領域となるSiGe層15fを挟むpウェル17において、n型のエクステンション領域12aを有するn型のソースドレイン領域13aが形成されている。
ソースドレイン領域13aの表層部分にNiSiなどの高融点金属シリサイド層14が形成されている。
上記のようにして、NMOSが構成されている。
【0108】
上記のNMOSは、PMOSと同様に酸化シリコンからなる第1層間絶縁膜26及び第2層間絶縁膜30で被覆され、ソースドレイン領域などに対する開口部が設けられ、プラグ及び上層配線が形成されている。
【0109】
本実施形態において、例えば、NMOSのゲート電極36とPMOSのゲート電極29を構成する導電性材料は異なっている。
例えば、NMOSのゲート電極36がHfSiからなり、PMOSのゲート電極29がTiNからなる構成とする。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0110】
本実施形態のトランジスタにおいては、PMOSにおいて、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0111】
本実施形態に係る半導体装置のPMOSは第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0112】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図28(a)に示す構成までは、NMOS形成領域ANMOSとPMOS形成領域APMOSにおいて、第1実施形態の図11(a)までの工程と同様にして行う。
但し、NMOS形成領域ANMOSでは、pウェル17の形成を行い、エクステンション領域12及びソースドレイン領域13を形成するイオン注入はn型不純物を用いる。
【0113】
次に、図28(b)に示すように、例えばスパッタリング法あるいはCVD法などによりNMOS形成領域ANMOSとPMOS形成領域APMOSにおいてゲート電極用溝を埋め込んでHfSiを堆積させる。これにより、NMOS用のゲート電極36を形成する。
【0114】
次に、図29(a)に示すように、NMOS形成領域ANMOSを保護するレジスト膜37を形成し、エッチングを行ってPMOS形成領域APMOSのゲート電極36を除去する。
【0115】
次に、図29(b)に示すように、例えばスパッタリング法あるいはCVD法などによりPMOS形成領域APMOSにおいてゲート電極用溝を埋め込んでTiNを堆積させる。これにより、PMOS用のゲート電極29を形成する。NMOS形成領域ANMOSにおいては、ゲート電極29はゲート電極36上に積層される。
【0116】
次に、図30(a)に示すように、例えば、CMP処理によりゲート電極用溝の外部に堆積されたゲート電極となる導電体材料を除去し、ゲート電極用溝に埋め込まれたゲート電極(29,36)とする。
【0117】
次に、図30(b)に示すように、例えば、全面にCVD法などで酸化シリコンを50〜100nmの膜厚で堆積させて第2層間絶縁膜30を形成する。
上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様である。
【0118】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、PMOSにおいて、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0119】
<第9実施形態>
[半導体装置の断面構成]
図31は本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
本実施形態に係る半導体装置は、PMOSとNMOSを有するCMOSの構成である。
NMOSは、第1実施形態と同様の構成である。
【0120】
PMOSは、例えば以下の構成である。例えば、素子分離絶縁膜11で素子分離されたチャネル形成領域を有するn型のシリコン(Si)からなる半導体基板10にSiGe層18が形成されている。SiGe層18のチャネル形成領域以外の領域において、SiGe層18が除去され、Si層19が形成されている。
Si層19中に、エクステンション領域12aを有するソースドレイン領域13aが形成されており、ソースドレイン領域13aの表層部分にNiSiなどの高融点金属シリサイド層14が形成されている。
上記のようにして、NMOSが構成されている。
【0121】
上記のNMOSは、PMOSと同様に酸化シリコンからなる第1層間絶縁膜26及び第2層間絶縁膜30で被覆され、ソースドレイン領域などに対する開口部が設けられ、プラグ及び上層配線が形成されている。
【0122】
本実施形態において、例えば、NMOSのゲート電極36とPMOSのゲート電極29を構成する導電性材料は異なっている。
例えば、NMOSのゲート電極36がHfSiからなり、PMOSのゲート電極29がTiNからなる構成とする。また、同じゲート電極29からなっていてもよい。
上記を除いて、第1実施形態と同様の構成である。
【0123】
本実施形態のトランジスタにおいては、PMOSにおいて、ゲート電極が、SiGe層の第1の幅より大きい第2の幅を有してSiGe層の形成領域からはみ出す領域に形成されている。また、ソースドレイン領域を構成するエクステンション領域と半導体基板の接合面から伸びる空乏層がSiGe層に達しないように形成されている。
【0124】
本実施形態に係る半導体装置のPMOSは第1実施形態と同様に、MOS電界効果トランジスタにおいて狭バンドギャップに起因する接合リークを抑制しながらキャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現することができる。この結果、トランジスタの駆動電流を改善することができる。
【0125】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。
まず、図32(a)に示すように、NMOS形成領域ANMOSとPMOS形成領域APMOSを有するシリコンの半導体基板10上において、PMOS形成領域APMOSを保護する窒化シリコン膜38をパターン形成する。
【0126】
次に、図32(b)に示すように、NMOS形成領域ANMOSにおいてSiを所定の深さでエッチング除去し、NMOS用凹部10fを形成する。
【0127】
次に、図32(c)に示すように、NMOS形成領域ANMOSにおいてSiGe層18をエピタキシャル成長させる。
成長後、CMP法などでNMOS形成領域ANMOSとのSiGe層18の表面とPMOS形成領域APMOSのSiの半導体基板10の表面が一致するようにする。
【0128】
次に、図33(a)に示すように、NMOS形成領域ANMOSとPMOS形成領域APMOSにおいて、シリコンの半導体基板10に活性領域を区分するようにSTI法により素子分離絶縁膜11を100〜200nm程度の膜厚でパターン形成する。
【0129】
次に、図33(b)に示すように、NMOS形成領域ANMOSとPMOS形成領域APMOSにおいて、ウェル及びチャネルのためのイオン注入を行い、ダミーゲート絶縁膜20、ダミーゲート電極21及びハードマスク22を形成する。
【0130】
次に、図34(a)に示すように、例えばCVD法により全面に4〜8nmの厚みの窒化シリコン、ホウ素を含有する窒化シリコン(SiBN)または炭素を含む窒化シリコン(SiCN)を堆積する。次に、PMOS形成領域APMOSを保護するレジスト膜39を形成し、NMOS形成領域ANMOSにおいてエッチバックする。
これにより、NMOS形成領域ANMOSにおいて、ダミーゲート電極21の両側部にオフセットスペーサ23を形成する。
窒化シリコン、ホウ素を含有する窒化シリコンまたは炭素を含む窒化シリコンを用いるのは、これ以降にエピタキシャル成長工程があり、選択性を確保するためである。
【0131】
次に、図34(b)に示すように、レジスト膜39、ハードマスク22及びオフセットスペーサ23をマスクとして、NMOS形成領域ANMOSにおいてSiGe層18の表面からソースドレイン領域となる領域のSiGe層18をエッチングする。これにより、ソースドレイン用Si層用凹部18aを形成する。
【0132】
次に、レジスト膜39を除去し、図35(a)に示すように、例えばフッ酸などで前処理を行った後、エピタキシャル成長を行い、NMOS形成領域ANMOSにおいてソースドレイン用Si層用凹部18a内に埋め込んでソースドレイン用のSi層19を形成する。
【0133】
次に、図35(b)に示すように、NMOS形成領域ANMOSを保護するレジスト膜40を形成し、PMOS形成領域APMOSにおいてエッチバックする。
これにより、PMOS形成領域APMOSにおいて、ダミーゲート電極21の両側部にオフセットスペーサ23を形成する。
以降の工程は、第1実施形態及び第8実施形態と同様にして、また、上記以外の工程は、実質的に第1実施形態と同様にして、図31に示す半導体装置を製造できる。
【0134】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、PMOSにおいて、接合リークを抑制しながら、キャリアの移動度向上とチャネル中でのキャリア速度の増加を実現するMOS電界効果トランジスタを形成することができる。
【0135】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、第1〜第7実施形態においては、図面上PMOSのみを示しているが、さらにNMOSを有するCMOSの半導体装置であってもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0136】
10…半導体基板、10a,10b,10d,10e…SiGe層埋め込み用凹部、10c…ソースドレイン用SiGe層埋め込み用凹部、10f…NMOS用凹部、11…素子分離絶縁膜、12,12a…エクステンション領域、13,13a…ソースドレイン領域、14…高融点金属シリサイド層、15…SiGe層、16…ソースドレイン用SiGe層、17…pウェル、18…SiGe層、18a…ソースドレイン用Si層用凹部、19…Si層、20…ダミーゲート絶縁膜、21…ダミーゲート電極、22…ハードマスク、23…オフセットスペーサ、24,25…サイドウォールスペーサ、26…第1層間絶縁膜、27…オフセットスペーサ、28…ゲート絶縁膜、29…ゲート電極、30…第2層間絶縁膜、31…プラグ、32…上層配線、33…ゲート絶縁膜、34…ゲート電極、35…高融点金属シリサイド層、36…ゲート電極、37…レジスト膜、38…窒化シリコン膜、39,40…レジスト膜、A…ゲート電極用溝、ANMOS…NMOS形成領域、APMOS…PMOS形成領域、CB…伝導帯、CH…チャネル形成領域、E…端部、G…ゲート電極、SD…ソースドレイン領域、VB…価電子帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル形成領域にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層が埋め込まれている半導体基板と、
前記チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記第1の幅より大きい第2の幅を有して前記SiGe層の形成領域からはみ出す領域を有するゲート電極と、
前記チャネル形成領域を挟む前記半導体基板において形成されたエクステンション領域を有するソースドレイン領域と、
を有して電界効果トランジスタが構成されており、
前記エクステンション領域と前記半導体基板の接合面から伸びる空乏層が前記SiGe層に達しないように前記エクステンション領域と前記SiGe層が離間されている
半導体装置。
【請求項2】
前記エクステンション領域は前記ゲート電極の下部まで入り込むオーバーラップ領域を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の表面から深くなるにつれて前記SiGe層のチャネル方向の幅が大きくなる領域を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記SiGe層において、前記ソースドレイン領域側の端部から前記SiGe層の中央側方向に向かってGeの濃度が濃くなっている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記SiGe層において、前記SiGe層の上面が前記半導体基板の表面から突き出た凸部を有しており、前記半導体基板に埋め込まれた部分から前記凸部方向に向かってGeの濃度が濃くなっている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ソースドレイン領域の表層部分にソースドレイン用SiGe層が埋め込まれている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
チャネル形成領域を有する半導体基板にダミーゲート絶縁膜及びダミーゲート電極を形成する工程と、
前記ダミーゲート電極の両側部にオフセットスペーサを形成する工程と、
前記オフセットスペーサ及び前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板にエクステンション領域を形成する工程と、
前記オフセットスペーサの両側部にサイドウォールスペーサを形成する工程と、
前記サイドウォールスペーサ、前記オフセットスペーサ及び前記ダミーゲート電極をマスクとして前記半導体基板にソースドレイン領域を形成する工程と、
前記ダミーゲート電極を被覆する絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の上面から前記ダミーゲート電極が露出するまで前記絶縁膜を除去する工程と、
前記ダミーゲート電極及びダミーゲート絶縁膜を除去してゲート電極用溝を形成する工程と、
前記ゲート電極用溝の底部における前記半導体基板の表面にSiGe層埋め込み用凹部を形成する工程と、
前記SiGe層埋め込み用凹部にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層を形成する工程と、
前記オフセットスペーサを除去する工程と、
前記オフセットスペーサが除去された前記ゲート電極用溝の底部において前記SiGe層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート電極用溝を埋め込んで前記ゲート絶縁膜上に前記第1の幅より大きい第2の幅を有するゲート電極を形成する工程と
を有して電界効果トランジスタを形成し、
前記SiGe層を形成する工程において、前記エクステンション領域と前記半導体基板の接合面から伸びる空乏層が前記SiGe層に達しないように前記エクステンション領域と前記SiGe層を離間して形成する
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記SiGe層埋め込み用凹部を形成する工程において、前記オフセットスペーサをマスクとして前記オフセットスペーサの間に領域に前記SiGe層埋め込み用凹部を形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記SiGe層埋め込み用凹部を形成する工程の前に、前記オフセットスペーサを除去する工程を行い、
前記SiGe層埋め込み用凹部を形成する工程において、前記サイドウォールスペーサをマスクとして前記サイドウォールスペーサの間に領域に前記SiGe層埋め込み用凹部を形成し、
前記SiGe層を形成する工程において、SiGe層埋め込み用凹部の内壁にSi層を所定の厚さで成長させた後に、チャネル方向に前記第1の幅となるようにSiGe層を形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記エクステンション領域を形成する工程において、前記ゲート電極の下部まで入り込むオーバーラップ領域を有するように形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記SiGe層埋め込み用凹部を形成する工程において、前記半導体基板の表面から深くなるにつれてチャネル方向の幅が大きくなる領域を有するように凹部を形成し、
前記SiGe層を形成する工程において、前記半導体基板の表面から深くなるにつれて前記SiGe層のチャネル方向の幅が大きくなる領域を有するように形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記SiGe層を形成する工程において、前記ソースドレイン領域側の端部から前記SiGe層の中央側方向に向かってGeの濃度が濃くなるように形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記SiGe層を形成する工程において、前記SiGe層の上面が前記半導体基板の表面から突き出た凸部を形成し、前記半導体基板に埋め込まれた部分から前記凸部方向に向かってGeの濃度が濃くなるように形成する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記ソースドレイン領域の表層部分にソースドレイン用SiGe層を埋め込んで形成する工程をさらに有する
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
半導体基板のチャネル形成領域となる領域を挟む領域にエクステンション領域を有するソースドレイン領域を形成する工程と、
前記半導体基板のチャネル形成領域となる領域にチャネル方向に第1の幅を有するSiGe層を埋め込んで形成する工程と、
前記チャネル形成領域上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、前記第1の幅より大きい第2の幅を有するゲート電極を形成する工程と
を有して電界効果トランジスタを形成し、
前記SiGe層を形成する工程において、前記エクステンション領域と前記半導体基板の接合面から伸びる空乏層が前記SiGe層に達しないように前記エクステンション領域と前記SiGe層を離間して形成する
半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−44659(P2011−44659A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193353(P2009−193353)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】