微結晶半導体膜の作製方法、及び半導体装置の作製方法
【課題】結晶粒間に鬆がない緻密な結晶性半導体膜(例えば微結晶半導体膜)を作製する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマCVD装置の反応室内における反応ガスの圧力を450Pa〜13332Paとし、当該プラズマCVD装置の第1の電極と第2の電極の間隔を1mm〜20mm、好ましくは4mm以上16mm以下として、前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、第1の電極および第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する半導体でなる堆積前駆体を形成し、堆積前駆体を堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成する。
【解決手段】プラズマCVD装置の反応室内における反応ガスの圧力を450Pa〜13332Paとし、当該プラズマCVD装置の第1の電極と第2の電極の間隔を1mm〜20mm、好ましくは4mm以上16mm以下として、前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、第1の電極および第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する半導体でなる堆積前駆体を形成し、堆積前駆体を堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、気相成長法を用いた結晶性半導体膜及び当該結晶性半導体膜を有する半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタの技術分野において、半導体膜の作製に用いられるプラズマCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法が用いられ、より良い製品を製造するために様々な改良が試みられている。
【0003】
例えば、反応室内にプラズマを生成するための電極に筒状の凹部を設け、該凹部の径より幅の狭い溝により凹部が相互に連結されたプラズマCVD装置の電極構造が開示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、ガスを処理チャンバー内に分散させ、膜厚や膜特性を均一とするために、中心部から縁部に向かって、径、深さ及び表面積が徐々に増加するガス流路を有するガスディフューザプレート(所謂シャワー板)が開示されている(特許文献2を参照)。他の例として、より高品質な膜をより効率良く製造するために、梯子状電極を用い、400Paのガス圧力で100MHzの超高周波電力を供給し、梯子状電極と基板との間隔を6mmとした状態で成膜速度を2nm/秒として膜を成膜する技術が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−296526号公報
【特許文献2】特開2005−328021号公報
【特許文献3】特開2005−259853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のプラズマCVD装置では、局部的に電界が集中してしまう構造的な欠陥が存在していたため、緻密な微結晶半導体膜を作製することができなかった。例えば、平板状の電極の表面に凹部又は凸部が設けられたことにより、その凹部又は凸部の角部おいて電界が集中する構造となっていた。そのため電界が集中する領域で反応ガスが激しく反応し、また気相中の反応で異常成長した粉体が堆積膜中に含まれることにより、緻密な半導体膜を形成することができなかった。
【0007】
このような状況に鑑み、本明細書で開示される発明の一形態は、緻密な半導体膜を作製するためのプラズマCVD装置の構成を提供することを目的とする。また、本明細書で開示される発明の一形態は、結晶粒間に鬆がない緻密な結晶性半導体膜(例えば微結晶半導体膜)を作製する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、プラズマCVD装置の反応室にプラズマを生成するための電力が供給される電極を有するプラズマCVD装置である。この電極は、基板と対向する面に共通平面を有し、この共通平面には、反応室内に反応ガスを供給するガス供給口が複数設けられている。ガス供給口の周囲には、ガス供給口が設けられる共通平面から突出する凸状の構造体(凸部)が設けられている。この凸状の構造体はガス供給口を囲むように設けられている。凸状の構造体は、それぞれが孤立した配置をとり、ガス供給口を囲むように複数個設けられていても良い。
【0009】
また、本発明の一形態は、プラズマCVD装置の反応室にプラズマを生成するための電力が供給される電極を有するプラズマCVD装置である。この電極は、基板と対向する面に共通平面を有し、この共通平面から突起する凸状の構造体が複数設けられている。複数の凸状の構造体はそれぞれが孤立している。第1のガス供給口はこの凸状の構造体の頂部若しくはその近傍にも設けられている。また、この電極の共通平面には第2のガス供給口が設けられている。凸状の構造体は第2のガス供給口を囲むように設けられている。第1のガス供給口と第2のガス供給口からは、同種のガスまたは別種のガスが供給されるようにガス系が構成されている。
【0010】
ガス供給口が設けられる共通平面から突出するように設けられた凸状の構造体は、その近傍においてプラズマ密度が高くなるように作用する。この場合において、当該凸状の構造体の角部は鋭利な端面を有さず、なめらかな曲線形状を有していることが好ましい。すなわち、電極に設けられた凸状の構造体はガス供給口の存在する部分のプラズマ密度を高めつつ、当該凸状の構造体の角部に強電界領域が形成されないような形状を有していることが好ましい。このような作用を奏するために、凸状の構造体はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることが好ましい。
【0011】
プラズマを生成するための電力が供給される電極のガス供給口の近傍に高密度プラズマ領域が形成される構成とし、その領域に反応ガスを供給することで、反応ガスの分解が促進され、堆積前駆体の気相中での反応が増進する。このような作用を助長するために、当該電極は反応ガスの分解を助長するために電極の加熱手段が設けられていても良い。
【0012】
また、本発明の一形態は、反応室に供給される反応ガスの供給口の近傍にプラズマの高密度領域を形成しつつ、その高密度プラズマ領域を含む気相中で半導体の結晶を成長させ、それを膜として堆積させる方法である。
【0013】
気相中で半導体の結晶を成長させるためには反応圧力を高くし、電極間隔を狭くすることが好ましい。反応圧力が高い程、グロー放電によって生成されたラジカル同士、及びラジカルと反応ガス分子との衝突反応を生ずる確率が高くなり、電極間隔を狭くすることにより結晶性を有する堆積前駆体が肥大化する前に基板の堆積表面に到達させ、堆積表面で結晶核となり、当該結晶核を結晶成長させることで、緻密な結晶性を有する微結晶半導体膜を形成することができる。そして、気相中で結晶性を有する堆積前駆体を生成することで、下地が絶縁膜であっても堆積初期段階から結晶性の良い微結晶半導体膜を作製することができる。
【0014】
また、反応ガスに希ガスを加えることは好ましい。反応ガスと共に反応室に導入された希ガスは、電子温度を下げ電子密度を高くする作用がある。それによりラジカルの生成量が増大し、成膜速度が向上し、微結晶半導体膜の結晶性が向上し、微結晶半導体膜が緻密化するように作用する。このような作用を得るためには、希ガスを準安定状態に励起させる必要があり、そのためには希ガスの励起種を生成させ、あるいは希ガスを電離させることができる程度の電界を印加する必要がある。例えば、反応ガスであるシランガスと水素ガスに加え、希ガスとしてアルゴンを加えると、水素ラジカルが増大し微結晶半導体膜の結晶性を向上させることが可能となる。
【0015】
例えば、本発明の一形態は、プラズマCVD装置の反応室内における反応ガスの圧力を450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下とし、当該プラズマCVD装置の第1の電極と第2の電極の間隔を1mm以上20mm以下、好ましくは4mm以上16mm以下として、前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、第1の電極および第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する堆積前駆体を形成し、堆積前駆体を堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成する、微結晶半導体膜の作製方法である。
【0016】
なお、第1の電極または第2の電極に凸状の構造体が設けられている場合、第1の電極または第2の電極の共通平面、または凸状の構造体の頂部若しくはその近傍に設けられたガス供給口から反応ガスを供給し、高密度プラズマ領域に反応ガスが流れるようにして、堆積前駆体を生成してもよい。または、第1の電極または第2の電極の凸状の構造体の頂部若しくはその近傍に設けられた第1のガス供給口と、電極の共通平面に設けられた第2のガス供給口とから反応ガスを供給し、高密度プラズマ領域にそれぞれのガス供給口から供給された反応ガスが流れるようにして堆積前駆体を生成してもよい。
【0017】
上記において、反応ガスに希ガスを加えることにより、高密度プラズマ領域における電子温度を下げると共に、高密度プラズマ領域における電子密度を高め、微結晶半導体膜の結晶性を向上させることができる。
【0018】
また、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極を覆うゲート絶縁層を形成した後に、上記微結晶半導体膜の作製方法を用いて、ゲート絶縁層上に微結晶半導体層を形成し、微結晶半導体層に電気的に接続される配線を形成することにより、薄膜トランジスタを作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
ガス供給口から供給される反応ガスを高密度プラズマ領域に流すことで、気相中で堆積前駆体を生成し、その反応を促進することができる。
【0020】
また、平板状の電極表面に構造体を設け、その構造体の角部を曲面形状とすることにより、当該角部に電界を集中させずに高密度プラズマ領域を形成することができる。
【0021】
また、電極間隔を狭くすることでナノクリスタルとなった堆積前駆体同士の衝突は生ずることはなく、非晶質成分を生じさせない。
【0022】
上記により、堆積される微結晶半導体膜に含まれる非晶質成分を低減することができ、緻密な微結晶半導体膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】微結晶半導体膜の作製方法を説明する図である。
【図2】プラズマCVD装置の一例を説明する図である。
【図3】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図4】成膜装置の一例を説明する図である。
【図5】プラズマCVD装置の一例を説明する図である。
【図6】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図7】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図8】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図9】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図10】プラズマCVD装置中のプラズマの強度を説明する図である。
【図11】プラズマCVD装置の一例を説明する図。
【図12】プラズマCVD装置の一例を説明する図。
【図13】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図。
【図14】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図。
【図15】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図。
【図16】薄膜トランジスタ構造を説明する図である。
【図17】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図18】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図19】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図20】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図21】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図22】表示装置を説明する図である。
【図23】表示装置を説明する図である。
【図24】薄膜トランジスタを適用した電子機器である。
【図25】成膜装置の構成の概略を示す図である。
【図26】水素ラジカル密度を示す図である。
【図27】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図28】微結晶シリコン膜の結晶性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。なお、各図面において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。従って、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態では、結晶性の高い微結晶半導体膜の作製方法について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0026】
本実施の形態に示す微結晶半導体膜の形成方法は、図1(A)に示すように、気相中で堆積前駆体43を形成し、基板40上に形成された下地膜42上に当該堆積前駆体43を堆積させ、結晶核44を形成する。次に、図1(B)に示すように、結晶核44上に微結晶半導体膜を形成することで、結晶核44を結晶成長の核として、結晶成長した微結晶半導体膜46を形成することができる。
【0027】
堆積前駆体43はプラズマ中で原料ガスと電子の反応により形成されるものであり、成膜室内の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力300Paより高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、より好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすることで生成することができる。堆積前駆体は、大きさが数nmであり、複数のラジカルが逐次反応し、ある程度秩序性を有する高次ラジカル(SiHn)x(n=1、2、3)ともいえる。原料ガスがシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の場合、堆積前駆体43は、シリコン、ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウムで形成される。このため、下地膜42上に堆積した堆積前駆体43は結晶核44となる。または、下地膜42上に堆積した堆積前駆体43にプラズマ中で解離された活性なラジカルが結合し、結晶核44となる。結晶核44は、5nm以上15nm以下であり、粒子内に単結晶とみなせる微小結晶である結晶子を有するため、秩序性を有する。このため、結晶核44にプラズマ中で解離された活性なラジカルが到達すると、結晶核44を核として結晶成長するため、下地膜との界面から結晶性の高い微結晶半導体膜46を形成することができる。
【0028】
本実施の形態では、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすることで、結晶核44を下地膜42上に緻密に堆積させることが可能である。即ち、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に堆積させることが可能である。このため、結晶核44を核として結晶成長させると、結晶粒が緻密となり、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜46を形成することができる。
【0029】
なお、下地膜42とは、微結晶半導体膜46が形成される被形成面を有する膜をいう。基板40及び下地膜42は適宜用いることができる。
【0030】
ここで、本実施の形態の特徴である堆積前駆体43及び結晶核44を作製することが可能なプラズマCVD装置について図2乃至図4を用いて説明する。
【0031】
図2はプラズマCVD装置の反応室の一構成を示す。反応室100bはアルミニウム又はステンレスなど剛性のある素材で形成され、内部を真空排気できるように構成されている。本実施の形態で示す反応室100bは、機械的強度を高めるためにチャンバーの素材をステンレスとし、内面にアルミニウム溶射を施したものである。また、本実施の形態で示すプラズマCVD装置は、メンテナンスのため分解が可能なチャンバー構成とし、定期的に再度のアルミニウム溶射を施すことが可能な構成とするとよい。反応室100bには第1の電極101(上部電極とも呼ぶ。)と、第1の電極101と対向する第2の電極102(下部電極とも呼ぶ。)が備えられている。
【0032】
第1の電極101には高周波電力供給手段103が連結されている。第2の電極102は接地され、基板40を載置できるように構成されている。第1の電極101は絶縁材116により反応室100bと絶縁分離されることで、高周波電力が漏洩しないように構成されている。絶縁材116として、例えばセラミック材料を用いる場合には、上部電極のシールにナイフエッジ型メタルシールフランジを用いることが困難であるため、Oリングシールを用いるとよい。
【0033】
なお、図2では、第1の電極101と第2の電極102を有する容量結合型(平行平板型)の構成を示しているが、これに限定されない。高周波電力を供給して反応室100bの内部にグロー放電プラズマを発生させることができるものであれば、誘導結合型など他の構成を適用してもよい。
【0034】
第1の電極101と第2の電極102は、その一表面が略平行となるように設けられている。第1の電極101には、ガス供給手段108に接続される中空部144が設けられている。中空部144は、ガスライン146を介してガス供給手段108のシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ110aに接続されている。このため、中空部144のガス供給口からは、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が反応室100bに供給される。
【0035】
ガス供給手段108は、ガスが充填されたシリンダ110、圧力調整弁111、ストップバルブ112、マスフローコントローラ113などで構成されている。また、ガス供給手段108は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ110aと、水素が充填されたシリンダ110bと、希釈ガスが充填されたシリンダ110cとを有する。なお、ここでは、希釈ガスが充填されたシリンダ110cを設けたが、必ずしも必要としない。
【0036】
シリンダ110aに充填されたシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体として、代表的には、シラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、ゲルマン(GeH4)ガス、ジゲルマン(Ge2H6)ガス等があるが、他の堆積性気体を用いることもできる。
【0037】
シリンダ110cに充填された希釈ガスとしては、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガスがある。
【0038】
ヒータコントローラ115により温度制御される基板加熱ヒータ114は、第2の電極102内に設けられている。基板加熱ヒータ114が第2の電極102内に設けられる場合、熱伝導加熱方式が採用される。基板加熱ヒータ114は、例えばシーズヒータで構成される。
【0039】
高周波電力供給手段103には、高周波電源104、整合器106、高周波カットフィルタ129が含まれている。高周波電源104から供給される高周波電力は、第1の電極101に供給される。
【0040】
高周波電源104は、60MHz以下の高周波電力を供給する。また、第2の電極102上に載置される基板が第7世代以上の大面積基板の場合には、高周波電源104として、波長が概ね10m以上の高周波電力を供給することが好ましい。代表的には、13.56MHz以下、例えば3MHz以上13.56MHz以下の高周波電力を供給することが好ましい。高周波電源104が、上記範囲の高周波電力を供給することで、第7世代以上の大面積基板を第2の電極102上に載置してグロー放電を行っても、表面定在波の影響を受けることなく均一なプラズマを発生させることができるため、基板が大面積であっても基板全体に均質で良質な膜を形成することができる。
【0041】
また、高周波電源104として周波数13.56MHzを発振する電源を用いる場合、高周波カットフィルタ129として10pF〜100pFの可変コンデンサを用いるとよい。
【0042】
また、高周波カットフィルタ129として、さらにコイルを用いて、コイルと可変コンデンサとを用いる並列共振回路を構成してもよい。
【0043】
反応室100bに接続されている排気手段109には真空排気する機能と、反応ガスを流す場合に反応室100b内を所定の圧力に保持するように制御する機能が含まれている。排気手段109の構成としては、バタフライバルブ117、バタフライバルブ118、ストップバルブ119〜124、ターボ分子ポンプ125、ターボ分子ポンプ126、ドライポンプ127などが含まれる。なお、ターボ分子ポンプ126はストップバルブ124を介してドライポンプ127と連結されている。
【0044】
反応室100b内を真空排気する場合には、まず、粗引き用のストップバルブ119と粗引き用のストップバルブ121を開き、反応室100b内をドライポンプ127で排気した後、ストップバルブ119を閉じて、バタフライバルブ117、ストップバルブ120を開き、真空排気を行う。さらに、反応室100b内を10−5Paよりも低い圧力の超高真空まで排気する場合には、反応室100b内をドライポンプによって排気した後、バタフライバルブ117、ストップバルブ120およびストップバルブ121を閉じ、バタフライバルブ118からストップバルブ122、123、124を開き、直列接続されたターボ分子ポンプ125、ターボ分子ポンプ126およびドライポンプ127による排気を行って真空排気する。また、真空排気を行った後に、反応室100b内を加熱処理して内壁からの脱ガス処理を行うことが好ましい。
【0045】
第1の電極101と第2の電極102の間隔(ギャップ間隔とも呼ぶ)は適宜変更できるように構成されている。このギャップ間隔の調節は、反応室100b内で第2の電極102の高さの調整により行うことができる。ベローズ107を用いることで、反応室100b内を真空に保持しつつ、ギャップ間隔の調節を行うことができる。
【0046】
ここで、第1の電極101の形状の一形態について、図3に示す。図3(A)は第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図3(B)は、図3(A)のA−Bにおける断面図である。
【0047】
図3(A)および図3(B)に示すように、第1の電極101には中空部144のガス供給口が規則的に、好ましくは等間隔で配置される。ガス供給口の口径は、第1の電極101の全面において均一であっても良いし、異なっていても良い。なお、図に示すガス供給口の配置は一例にすぎず、開示する発明の一態様がこれに限定して解釈されるものではない。例えば、ガス供給口を第1の電極101の中央部のみに設けても良い。
【0048】
図4は、複数の反応室を備えたマルチ・チャンバ・プラズマCVD装置の一形態の概略図を示す。この装置は、共通室130、ロード/アンロード室131、第1の反応室100a、第2の反応室100b、第3の反応室100c、及び第4の反応室100dを備えている。ロード/アンロード室131は、カセットに装填される基板が共通室130の搬送機構134によって各反応室に搬出入される枚葉式の構成である。共通室130と各室の間にはゲートバルブ133が備えられ、各反応室で行われる処理が、相互に干渉しないように構成されている。
【0049】
各反応室は、形成する薄膜の種類によって区分されている。勿論、反応室の数はこれに限定されるわけではなく、必要に応じて任意に増減させることができる。また、一の反応室で一の膜を成膜するようにしてもよいし、一の反応室で複数の膜を成膜するように構成しても良い。
【0050】
各反応室には、排気手段109が接続されている。排気手段は図2及び図4に示す真空ポンプの組み合わせに限定されるものではなく、概略10−5Paから10−1Paの真空度にまで排気できるものであれば他の真空ポンプを適用してもよい。
【0051】
なお、ロード/アンロード室131に、ドライポンプ136の他に超高真空まで真空排気が可能なクライオポンプ135を連結してもよい。クライオポンプ135を用いることで、ロード/アンロード室131の圧力を10−5Paよりも低い圧力の超高真空とすることができ、反応室中の基板に堆積される膜の不純物濃度を低減することができる。また、クライオポンプ135は、ターボ分子ポンプ及びドライポンプと比較して排気速度が速いため、開閉頻度の高いロード/アンロード室131にクライオポンプ135を設けることで、スループットを向上させることができる。
【0052】
ガス供給手段108は、ガスが充填されたシリンダ110、圧力調整弁111、ストップバルブ112、マスフローコントローラ113などで構成されている。ここでは図示しないが、ガスが充填されたシリンダは、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ、水素が充填されたシリンダ、希釈ガスが充填されたシリンダ、反応性ガス(酸化性ガス、窒化性ガス、ハロゲンガス等)が充填されたシリンダ、一導電型を付与する不純物元素を有するガスが充填されたシリンダ等を有する。
【0053】
各反応室にはプラズマを形成するための高周波電力供給手段が連結されている。高周波電力供給手段には、少なくとも高周波電源104と整合器106が含まれる。
【0054】
各反応室は形成する薄膜の種類によって使い分けることが可能である。それぞれの薄膜には最適な成膜温度があるので、反応室を個別に分けておくことで成膜温度を形成する膜ごとに管理することが容易となる。さらに、同じ膜種を繰り返し成膜することができるので、前に形成された膜に起因する残留不純物の影響を排除することができる。
【0055】
図2に示すプラズマCVD装置の反応室100bにおいて、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、より好ましくは500Pa以上1500Pa以下とし、原料ガスとしてシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体及び水素を反応室に導入し、第1の電極101に高周波電力を供給して、グロー放電させると、分子の平均自由行程が短くなり、プラズマ中において電子が気体分子に衝突する確率が高くなり、反応確率が増加する。このため、プラズマ中で活性なラジカルが生成されやすい。特に、プラズマ密度の高い領域では寿命の短い活性なラジカルが生成され、これが気相中で反応して核が形成される。核が形成されると気相中で逐次反応が進みナノメートルサイズの堆積前駆体の成長が促進される。このような従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力での放電は、第1の電極101及び第2の電極102の距離が短く、代表的には1mm以上20mm以下、好ましくは4mm以上16mm以下、さらに好ましくは5mm以上10mm以下の場合に発生させやすい。なお、ここでは、第1の電極101及び第2の電極102の距離とは、第1の電極101及び第2の電極102の間隔をいう。
【0056】
堆積前駆体の核が発生すると、活性なラジカルが核に付着して堆積前駆体が成長する。核発生に必要なラジカルは核成長で消費されるので、新たな核の生成は抑制される。よって、反応室の圧力と共に、第1の電極101に供給する電力の供給時間(例えば、パルス波電力におけるパルス幅、パルス周波数)、ガス流量、ガスの排気速度を制御することで、堆積前駆体のサイズ及び生成量を制御することが可能である。
【0057】
堆積前駆体の組成は、供給するガスの選択によって制御することができる。ガスの種類によって、プラズマ中で生成されるラジカルが異なるからである。よって、堆積前駆体の成長の途中で堆積性気体の種類を切り替えることによって、多層構造の堆積前駆体の生成も可能である。なお、原料ガスがシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の場合、堆積前駆体は、シリコン、ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウムで形成される。
【0058】
プラズマ中で堆積前駆体は負に帯電しやすいため、クーロン力により堆積前駆体同士の凝集は抑制される性質がある。よって、本実施の形態により、単分散に近い堆積前駆体を高密度に得ることができる。
【0059】
堆積前駆体の構造は、成長に寄与するラジカルの種類の他に、堆積前駆体の温度が重要である。堆積前駆体の温度は、その表面(堆積前駆体の表面)に入射するイオン、電子の運動エネルギー、表面における化学反応によるエネルギーの放出又は吸収、中性ガス分子の衝突による加熱又は冷却などの影響を受けて決まる。
【0060】
例えば、シリコンの堆積前駆体を生成する場合、シラン(SiH4)を水素で希釈することで結晶構造とすることができる。これは、微結晶シリコン膜を堆積する場合に起こる表面反応と同様なメカニズムであると考えられ、シランが解離して生成されたラジカルと水素との反応が、結晶構造を有するシリコンの堆積前駆体の生成に主として寄与しているためと考えられる。
【0061】
このことにより、気相中で形成された秩序性を有する堆積前駆体を基板表面に堆積させ、結晶核とし、当該結晶核を基板上での結晶成長の核として使用することができる。また、堆積する膜中に結晶性の堆積前駆体を含ませることができる。更に、結晶核上に微結晶半導体膜を堆積すると、秩序性を有する結晶核を結晶成長の核として下地膜との界面から結晶成長するため、下地膜界面から結晶性の高い微結晶半導体膜を形成することができる。さらには、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、より好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすることで、堆積前駆体の生成速度が増加するため、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に形成させることが可能であると共に、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域(鬆ともいう。)が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜の成膜速度を高めることができる。
【0062】
(実施の形態2)
【0063】
本実施の形態では、実施の形態1に示すプラズマCVD装置において、第1の電極に適用可能な構造について、図5乃至図10を用いて説明する。
【0064】
図5に示すプラズマCVD装置の反応室の一構成において、第1の電極101は、凸部141及び凹部143が規則的に、好ましくは等間隔で配置された凹凸電極である。即ち、凸状の構造体で形成される凸部141が規則的に、好ましくは等間隔で配置されている。また、第1の電極101の凹部143には、ガス供給手段108に接続される中空部144が設けられている。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面が凹部143である。なお、ここでは、第2の電極102の表面との距離が近いガス供給口を有する領域を凸部141とし、第2の電極102の表面との距離が遠いガス供給口を有する領域を凹部143として示す。
【0065】
また、中空部144は、ガスライン146を介してガス供給手段108のシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ110aに接続されている。このため、凹部143に設けられている中空部144のガス供給口からは、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が反応室100bに供給される。
【0066】
ここで、第1の電極101の形状の一形態について、図6及び図7を用いて説明する。図6(A)及び図7(A)は、第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図6(B)及び図7(B)は、図6(A)及び図7(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図6(A)及び図7(A)において、凹凸の様子を分かりやすくするため、窪んでいる領域(即ち、凹部)を間隔の狭いハッチパターンで示す。
【0067】
図6(A)及び図6(B)に示すように、凹部143に形成される中空部144のガス供給口が、規則的に、好ましくは等間隔で配置される。また、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。複数の凸部141のそれぞれは分離されており、凹部143は繋がった一の平面(共通平面)である。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面から突出するように設けられた凸状の構造体を有し、該凸状の構造体はそれぞれ孤立している。ここでは、凸部141を四角錐台としている。なお、凸部141はこれに限定されず、適宜、三角錐台、五角錐台、六角錐台その他の多角錐台としてもよい。また、凸部141の稜及び角に丸み面取りを施して、角丸の多角錐台とすることが好ましい。凸部141及び凹部143の稜及び角に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0068】
また、図7(A)及び図7(B)に示すように、凸部141が円錐台となっていてもよい。また、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。なお、凸部141の稜に丸み面取りを施して、角丸の円錐台とすることが好ましい。凸部141を円錐台とし、凸部141及び凹部143の稜に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0069】
また、図6及び図7に示す凸部141においては、角丸の多角錐台または円錐台を示したが、図8(A)に示すように、多角錐台または円錐台の稜及び角に丸みを帯びないように面取りを施すことができる。代表的には、凸部141をテーパ形状とし角147を面取りすることができる。また、凹部143をテーパ形状とし角149を面取りすることができる。凸部141及び凹部143において、角147、149を面取りすることで、当該領域の電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0070】
また、図6及び図7に示す凹部143において、図8(B)に示すように、中空部144のガス供給口周辺の155または角を丸めてもよい。さらには、図示しないが、中空部144のガス供給口周辺に丸みを帯びないように面取りを施してもよい。この結果、ガス供給口付近における電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0071】
ここで、第1の電極101の断面形状と電界の強度について、図10を用いて説明する。図10(A)及び図10(B)はそれぞれ、計算に用いた第1の電極101の断面形状を示し、図10(C)及び図10(D)はそれぞれ、電界シミュレーターによって計算した電界の強度を示す。
【0072】
図10(A)は第1の電極101の凸部の側面が凹部の表面と垂直な形状(第1の形状)を示し、図10(B)は第1の電極101の凸部の断面形状がテーパ形状(第2の形状)を示す。即ち、第1の電極101の凸部の側面と凹部の表面が凸部内でなす角をθとし、凸部の頂部の表面と側面がなす角をγとすると、θが90°未満であり、γが90°より大きい形状である。なお、凸部の断面形状がテーパ形状である場合(図10(B)の場合)には、頂部に向かうにつれ断面積が単調に小さくなる。
【0073】
図10(A)においては、凹部の深さd1を40mm、隣接する凸部の間隔d2を20mm、第1の電極101及び第2の電極102の間隔d3を20mmとした。
【0074】
図10(B)においては、凹部の深さd4を40mm、隣接する凸部において第2の電極102側の頂部の間隔d5を60mm、第1の電極101及び第2の電極102の間隔d6を20mmとした。なお、凹部においてガス供給口が形成される平面の直径d7を20mmとした。また、凸部の稜及び角の曲率半径Rを10mmとした。
【0075】
また、図10(A)及び図10(B)のそれぞれにおいて、ガス供給口近傍をA、凹部の中央近傍をB、凹部の第2の電極102近傍をC、第1の電極101の凸部の極近傍をDとし、これらの電界の強度について計算した結果を表1に示す。なお、表1は、図10(A)に示す第1の電極101の凸部の近傍Dの電界強度を1として、その他の領域の電界強度を規格化したものである。このとき、第1の電極101に供給した電力の周波数は13.56MHzである。
【0076】
【表1】
【0077】
図10(C)は、図10(A)について計算した電界強度の分布を示し、図10(D)は、図10(B)について計算した電界強度の分布を示す。
【0078】
図10(C)において、隣接する凸部の間の凹部表面の近傍(Aの近傍)には電界が極端に弱い領域181が形成され、凸部とプラズマ187の間(第1の電極101の凸部の近傍(Dの近傍))には電界の強い領域185が形成される。
【0079】
一方、図10(D)において、テーパ角θが小さいほど凹部の表面まで電界が回り込むため、凹部では電界が弱い領域191が形成され、凸部の頂部表面近傍では中程度の電界の領域193が形成される。
【0080】
図10(C)と図10(D)を比較すると、図10(B)の形状では、凸部の頂部、特に凸部の稜及び角近傍における電界を緩和することができ、基板40表面へのプラズマダメージを低減すると共に、アーク放電が原因のパーティクルの発生を低減することができる。また、凸部の頂部の表面の領域を小さくするほど、凸部の頂部近傍に高密度プラズマ領域を形成することができる。
【0081】
本実施の形態に示す第1の電極は、凸部141及び凹部143を有するため、凸部141の頂部に高密度プラズマ領域を形成することが可能である。このため、高密度プラズマ領域において反応性が高まり、核及び堆積前駆体の生成を促進させることができる。この結果、実施の形態1と同様に、気相中で形成された秩序性を有する堆積前駆体を基板表面に堆積させ結晶核とし、当該結晶核を基板上での結晶成長の核として使用することができる。また、堆積する膜中に結晶性の堆積前駆体を含ませることができる。更に、結晶核上に微結晶半導体膜を堆積すると、秩序性を有する結晶核を結晶成長の核として下地膜との界面から結晶成長するため、下地膜界面から結晶性の高い微結晶半導体膜を作製することができる。さらには、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすると共に、凸部近傍において高密度プラズマ領域を形成することで、堆積前駆体の生成速度が増加するため、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に形成させることが可能であると共に、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域(鬆ともいう。)が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜の成膜速度を高めることができる。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示すプラズマCVD装置において、第1の電極に適用可能な構造について、図9を用いて説明する。図9(A)は第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図9(B)は、図9(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図9(A)において、凹凸の様子を分かりやすくするため、窪んでいる領域(即ち、凹部)を間隔の狭いハッチパターンで示す。
【0083】
図9(A)及び図9(B)に示すように、凸部141に形成される中空部142のガス供給口が規則的に、好ましくは等間隔で配置される。また、図9(B)に示すように、凸部141には中空部142のガス供給口が設けられている。複数の凸部141のそれぞれは分離されており、凹部143は繋がった一の平面(共通平面)である。ここでは、凸部141を四角錐台としている。なお、凸部141はこれに限定されず、適宜、三角錐台、五角錐台、六角錐台その他の多角錐台としてもよい。また、凸部141の稜及び角を丸めて、角丸の多角錐台とすることが好ましい。また、凸部141が円錐台となっていてもよい。更には、凸部141の稜を丸めて、角丸の円錐台とすることが好ましい。
【0084】
グロー放電により、凸部141の頂部において高密度プラズマ領域が形成されるため、凸部141のガス供給口から反応室に導入された原料ガスの反応が更に促進される。このため、堆積前駆体43の生成が進み、下地膜上により多くの結晶核44を緻密に堆積することができる。
【0085】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に示すプラズマCVD装置において、第1の電極に適用可能な構造について、図11乃至図15を参照して説明する。
【0086】
図11に示すプラズマCVD装置の反応室の一構成において、第1の電極101は、凸部141および凹部143が規則的に、好ましくは等間隔で配置された凹凸電極である。即ち、凸状の構造体で形成される凸部141が規則的に、好ましくは等間隔で配置されている。また、第1電極101の凸部141には、ガス供給手段108に接続される中空部142が設けられており、第1の電極101の凹部143には、ガス供給手段108に接続される中空部144が設けられている。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面が凹部143である。このような構造とすることにより、凸部141と凹部143から反応室100bに供給されるガス種を異ならせることができる。なお、ここでは、第2の電極102の表面との距離が近いガス供給口を有する領域を凸部141とし、第2の電極102の表面との距離が遠いガス供給口を有する領域を凹部143として示す。
【0087】
ここで、中空部142と中空部144から流すガスの種類は必要に応じて決定すればよい。例えば、中空部142から堆積性ガスを流し、中空部144から水素ガスを流してもよい。または、中空部142から水素ガスを流し、中空部144から堆積性ガスを流してもよい。または、中空部142から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流し、中空部144から堆積性ガスを流してもよい。または、中空部142から堆積性ガスを流し、中空部144から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流してもよい。または、中空部142から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流し、中空部144から水素ガスを流してもよい。最も好ましくは、中空部142から水素ガスを流し、中空部144から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流すことである。中空部142から水素ガスを流し、中空部144から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流すことで、形成される微結晶半導体膜の結晶性を向上させることができる。
【0088】
なお、成膜途中でガスの流量比を変えてもよい。例えば、成膜初期には堆積性ガスの流量比を高くし、成膜後期には希釈率を高くすることで、結晶性を向上させることができる。
【0089】
また、第1の電極101は、複数の拡散板を有してもよい(図12を参照)。図12では、ガスライン145から供給されたガスは、拡散板151で拡散した後、拡散板151の貫通孔153を通過して、凸部141に設けられる中空部142の導入口から、反応室100bに供給される。また、ガスライン146から供給されたガスは、拡散板152で拡散した後、拡散板152の貫通孔154を通過して、凹部143に設けられた中空部144の導入口から、反応室100bに供給される。図12に示すように、第1の電極101は拡散板151および拡散板152を有することにより、ガスライン145およびガスライン146から導入されたガスが第1の電極101内で十分に拡散され、均質なガスを反応室100bに供給することができるため、基板上に均質で良質な膜を形成することができる。
【0090】
ここで、第1の電極101の形状の一形態について、図13および図14を参照して説明する。図13(A)および図14(A)は、第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図13(B)および図14(B)は、図13(A)および図14(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図13(A)および図14(A)において、凹凸の様子を分かりやすくするため、窪んでいる領域(即ち、凹部)を間隔の狭いハッチパターンで示す。
【0091】
図13(A)及び図13(B)に示すように、凸部141に形成される中空部142のガス供給口と、凹部143に形成される中空部144のガス供給口が規則的に、好ましくは等間隔で配置される。また、凸部141には中空部142のガス供給口が設けられており、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。複数の凸部141のそれぞれは分離されており、凹部143は繋がった一の平面(共通平面)である。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面から突出するように設けられた凸状の構造体を有し、該凸状の構造体はそれぞれ孤立している。ここでは、凸部141を四角錐台としている。なお、凸部141はこれに限定されず、適宜、三角錐台、五角錐台、六角錐台その他の多角錐台としてもよい。また、凸部141の稜および角に丸み面取りを施して、角丸の多角錐台とすることが好ましい。凸部141および凹部143の稜および角に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0092】
また、図14(A)に示すように、凸部141が円錐台となっていてもよい。また、図14(B)に示すように、凸部141には中空部142のガス供給口が設けられており、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。なお、凸部141の稜に丸み面取りを施して、角丸の円錐台とすることが好ましい。代表的には、凸部141をテーパ形状とし、角156、158を面取りすることができる。また、凹部143をテーパ形状とすることができる。凸部141および凹部143をテーパ形状とし、角156、158を面取りすることで、当該領域の電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる(図15(A)を参照)。凸部141を円錐台とし、凸部141および凹部143の稜に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0093】
また、図13および図14に示す凸部141においては、角丸の多角錐台または円錐台を示したが、多角錐台または円錐台の稜および角に丸みを帯びないように面取りを施してもよい。
【0094】
また、中空部144のガス供給口周辺の稜および角157を丸めてもよい(図15(B)を参照)。さらには、図示しないが、中空部144のガス供給口周辺に丸みを帯びないように面取りを施してもよい。この結果、ガス供給口付近における電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0095】
なお、シリコンの堆積前駆体を生成する場合、シラン(SiH4)を水素で希釈することで結晶構造とすることができる。これは、微結晶シリコン膜を堆積する場合に起こる表面反応と同様なメカニズムであると考えられ、シランが解離して生成されたラジカルと水素との反応が、結晶構造を有するシリコンの堆積前駆体の生成に主として寄与しているためと考えられる。
【0096】
この場合、例えば、凹部に設けられた中空部144のガス供給口から供給するガスをシランガスまたは水素希釈のシランガスとすれば、堆積前駆体の成長が促進され、基板40に堆積する膜の堆積速度を向上させることができる。一方、凹部に設けられた中空部144のガス供給口から供給するガスをキセノン、クリプトン、アルゴンなどの希ガスにすれば、希ガスの励起種によりシランの分解が促進され高次ラジカルの生成に寄与するものとなる。
【0097】
本実施の形態に示す第1の電極は、凸部141及び凹部143を有するため、凸部141の頂部に高密度プラズマ領域を形成することが可能である。このため、高密度プラズマ領域において反応性が高まり、核及び堆積前駆体の生成を促進させることができる。この結果、実施の形態1と同様に、気相中で形成された秩序性を有する堆積前駆体を基板表面に堆積させ結晶核とし、当該結晶核を基板上での結晶成長の核として使用することができる。また、堆積する膜中に結晶性の堆積前駆体を含ませることができる。更に、結晶核上に微結晶半導体膜を堆積すると、秩序性を有する結晶核を結晶成長の核として下地膜との界面から結晶成長するため、下地膜界面から結晶性の高い微結晶半導体膜を形成することができる。さらには、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすると共に、凸部近傍において高密度プラズマ領域を形成することで、堆積前駆体の生成速度が増加するため、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に形成させることが可能であると共に、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域(鬆ともいう。)が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜の成膜速度を高めることができる。
【0098】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4より更に結晶性の高い微結晶半導体膜の形成方法について説明する。
【0099】
本実施の形態では、図1の堆積前駆体43及び微結晶半導体膜46の原料ガスとして、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体及び水素の他、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガスを用いることを特徴とする。
【0100】
原料ガスとして、アルゴン、キセノン、クリプトンのような励起エネルギーが小さく、且つシラン及び水素の解離エネルギーに近い準安定エネルギーを有する希ガスを用いることで、プラズマ中における電子密度及び水素ラジカル量が増加する。また、電子温度が低下するため、プラズマ電位差が減少し、微結晶半導体膜へのダメージが低減し、結晶性の高い微結晶半導体膜46を形成することができる。また、希ガスを原料ガスに用いることで、プラズマが安定し、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体、及び水素の解離が促進され、活性なラジカルの量が増加する。このため、活性なラジカル同士の反応が促進され、堆積前駆体43の生成速度及び微結晶半導体膜46の成膜速度が高まる。また、成膜速度が高まると、微結晶半導体膜46の堆積時間が短くなり、堆積中に取り込まれる反応室内の不純物量が低減するため、微結晶半導体膜46に含まれる不純物量が低減し、微結晶半導体膜46の結晶性を高めることができる。
【0101】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態5で示す形成方法を用いた微結晶半導体膜を有する薄膜トランジスタの構造について、図16を用いて説明する。
【0102】
実施の形態1乃至実施の形態5に示す形成方法を用いた微結晶半導体膜は、薄膜トランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。薄膜トランジスタとしては、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ及びトップゲート型の薄膜トランジスタの両方に用いることができるが、特にボトムゲート型の薄膜トランジスタに用いることで、薄膜トランジスタの特性を向上させることができる。ここでは、代表的はボトムゲート型の薄膜トランジスタの構造について、図16を用いて説明する。
【0103】
図16(A)に示す薄膜トランジスタは、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタである。基板201上にゲート電極203が形成され、基板201及びゲート電極203を覆うゲート絶縁膜204が形成される。ゲート絶縁膜204上には、微結晶半導体膜207が形成される。微結晶半導体膜207上には、一対の不純物半導体膜209が形成される。また、一対の不純物半導体膜209それぞれに接して、一対の配線211が形成される。微結晶半導体膜207を、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜を用いて形成することで、チャネル形成領域を結晶性の高い微結晶半導体膜で形成することができる。実施の形態1乃至実施の形態5により作製される微結晶半導体膜は結晶粒が隣接しており、結晶粒間の接触面積が大きいため、チャネル形成領域においてキャリアが移動しやすくなり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0104】
基板201は、ガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる程度の耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。また、基板に透光性を要しない場合には、ステンレス合金等の金属の基板の表面に絶縁膜を設けたものを用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板を用いるとよい。また、基板201として、第3の世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm、または620mm×750mm)、第4の世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5の世代(1100mm×1300mm)、第6の世代(1500mm×1850mm)、第7の世代(1870mm×2200mm)、第8の世代(2200mm×2400mm)、第9の世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のガラス基板を用いることができる。
【0105】
ゲート電極203は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料、またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でもしくは積層して形成することができる。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体膜やAgPdCu合金を用いてもよい。
【0106】
ゲート電極203の2層の積層構造としては、アルミニウム膜上にモリブデン膜が積層した二層構造、銅膜上にモリブデン膜を積層した二層構造、銅膜上に窒化チタン膜若しくは窒化タンタル膜を積層した二層構造、または窒化チタン膜とモリブデン膜とを積層した二層構造とすることが好ましい。ゲート電極203の三層構造としては、タングステン膜または窒化タングステン膜と、アルミニウム及びシリコンの合金またはアルミニウムとチタンの合金と、窒化チタン膜またはチタン膜とを積層した三層構造とすることが好ましい。電気的抵抗が低い膜上にバリア膜として機能する金属膜が積層されることで、電気的抵抗が低く、且つ金属膜から半導体膜への金属元素の拡散を防止することができる。
【0107】
なお、ゲート電極203及び基板201との密着性向上として、上記の金属材料の窒化物膜を、基板201とゲート電極203との間に設けてもよい。
【0108】
ゲート絶縁膜204は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を、単層若しくは積層して形成することができる。
【0109】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、好ましくは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、好ましくは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。ただし、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0110】
微結晶半導体膜207は、代表的には、微結晶シリコン膜、微結晶シリコンゲルマニウム膜、微結晶ゲルマニウム膜等を用いて形成する。また、リン、砒素、またはアンチモンを含む微結晶シリコン膜、リン、砒素、またはアンチモンを含む微結晶シリコンゲルマニウム膜、リン、砒素、またはアンチモンを含む微結晶ゲルマニウム膜等を用いて形成してもよい。なお、薄膜トランジスタのしきい値電圧を制御するため、微結晶半導体膜207に、ボロンを添加してもよい。
【0111】
微結晶半導体膜を構成する微結晶半導体とは、結晶構造(単結晶、多結晶を含む)を有する半導体である。微結晶半導体は、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な半導体であり、結晶粒径が2nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上80nm以下、より好ましくは、20nm以上50nm以下の柱状結晶または錐形結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。このため、柱状結晶または錐形結晶の界面には、結晶粒界が形成される場合もある。
【0112】
微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルのピークが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークを示す。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませてもよい。さらに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス元素を含ませてもよく、これにより格子歪みをさらに助長させることで、微結晶の構造の安定性が増し良好な微結晶半導体が得られる。このような微結晶半導体に関する記述は、例えば、米国特許4,409,134号で開示されている。
【0113】
また、微結晶半導体膜に含まれる酸素及び窒素の二次イオン質量分析法によって計測される濃度を、1×1018atoms/cm3未満とすることで、微結晶半導体膜207の結晶性を高めることができるため好ましい。
【0114】
不純物半導体膜209は、薄膜トランジスタがnチャネル型の場合は、リンが添加されたアモルファスシリコン、またはリンが添加された微結晶シリコンで形成する。また、薄膜トランジスタがpチャネル型の場合は、ボロンが添加されたアモルファスシリコン、またはボロンが添加された微結晶シリコンで形成する。
【0115】
配線211は、アルミニウム、銅、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデン、クロム、タンタル若しくはタングステン等により単層で、または積層して形成することができる。または、ヒロック防止元素が添加されたアルミニウム合金(ゲート電極203に用いることができるアルミニウム−ネオジム合金等)により形成してもよい。不純物半導体膜209と接する側の膜を、チタン、タンタル、モリブデン、タングステンまたはこれらの元素の窒化物により形成し、その上にアルミニウムまたはアルミニウム合金を形成した積層構造としても良い。更には、アルミニウムまたはアルミニウム合金の上面及び下面を、チタン、タンタル、モリブデン、若しくはタングステン、またはこれらの元素の窒化物で挟んだ積層構造としてもよい。
【0116】
図16(B)に示す薄膜トランジスタは、チャネルストップ型の薄膜トランジスタである。基板201上にゲート電極203が形成され、基板201及びゲート電極203を覆うゲート絶縁膜204が形成される。ゲート絶縁膜204上には、微結晶半導体膜221が形成される。微結晶半導体膜221上には、チャネル保護膜223が形成される。また、微結晶半導体膜221及びチャネル保護膜223上には、一対の不純物半導体膜225が形成される。また、一対の不純物半導体膜225それぞれに接して、一対の配線227が形成される。微結晶半導体膜221を、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜の形成方法を用いて形成することで、チャネル形成領域を結晶性の高い微結晶半導体膜で形成することができる。実施の形態1乃至実施の形態5により作製される微結晶半導体膜は結晶粒が隣接しており、結晶粒間の接触面積が大きいため、チャネル形成領域におけるキャリアが移動しやすくなり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0117】
チャネル保護膜223は、ゲート絶縁膜204と同様に形成することができる。または、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、その他の有機絶縁膜を用いて形成することができる。
【0118】
一対の不純物半導体膜225は、図16(A)に示す一対の不純物半導体膜209と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0119】
一対の配線227は、図16(A)に示す一対の配線211と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0120】
チャネル保護型の薄膜トランジスタは、チャネル形成領域に実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜を用いて形成すると共に、チャネル保護膜を有するため、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めると共に、オフ電流を低減させることができる。
【0121】
図16(C)に示す薄膜トランジスタは、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタであり、微結晶半導体膜231と一対の不純物半導体膜237の間に非晶質半導体膜を有する点が図16(A)及び図16(B)と異なる。
【0122】
基板201上にゲート電極203が形成され、基板201及びゲート電極203を覆うゲート絶縁膜204が形成される。ゲート絶縁膜204上には、微結晶半導体膜231が形成される。微結晶半導体膜231上には、非晶質半導体膜235が形成される。また、非晶質半導体膜235上には、一対の不純物半導体膜237が形成される。また、一対の不純物半導体膜237それぞれに接して、一対の配線239が形成される。微結晶半導体膜231を、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜の形成方法を用いて形成することで、チャネル形成領域を結晶性の高い微結晶半導体膜で形成することができる。実施の形態1乃至実施の形態5により作製される微結晶半導体膜は結晶粒が隣接しており、結晶粒間の接触面積が大きいため、チャネル形成領域におけるキャリアが移動しやすくなり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0123】
非晶質半導体膜235は、アモルファスシリコン、窒素を含むアモルファスシリコン、塩素を含むアモルファスシリコン等で形成することができる。微結晶半導体膜231及び一対の不純物半導体膜237の間に非晶質半導体膜235を設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0124】
また、非晶質半導体膜235として、低温フォトルミネッセンス分光によるスペクトルのピーク領域が、1.31eV以上1.39eV以下である半導体膜を用いることができる。当該半導体膜は、CPM(Constant photocurrent method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体膜を形成することができる。即ち、従来の非晶質半導体と比較して、欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体である。当該半導体膜は価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻であるため、バンドギャップが広くなり、トンネル電流が流れにくい。このため、当該半導体膜をバックチャネル側に設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減しつつ、オン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0125】
一対の不純物半導体膜237は、図16(A)に示す一対の不純物半導体膜209と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0126】
一対の配線239は、図16(A)に示す一対の配線211と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0127】
図16(C)に示す薄膜トランジスタは、チャネル形成領域に実施の形態1乃至実施の形態4に示す微結晶半導体膜を用いて形成すると共に、非晶質半導体膜235を有するため、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めると共に、オフ電流を低減させることができる。
【0128】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態6に示す薄膜トランジスタの一形態である図16(C)に示す薄膜トランジスタの作製方法について図17乃至図21を参照して説明する。
【0129】
ここでは、同一の基板上に形成する薄膜トランジスタを全て同じ導電型に統一すると、工程数を抑えることができるため好ましい。そのため、本実施の形態では、nチャネル型の薄膜トランジスタの作製方法について説明する。
【0130】
図17(A)に示すように、基板301上にゲート電極303を形成する。次に、ゲート電極303を覆うゲート絶縁膜304を形成した後に、実施の形態1乃至実施の形態4に示す方法を用いて、ゲート絶縁膜304上に結晶核305を形成する。
【0131】
基板301としては、実施の形態6に示す基板201を適宜用いることができる。
【0132】
ゲート電極303は、実施の形態6に示すゲート電極203に用いる材料及び構成を適宜用いることができる。
【0133】
ゲート電極303は、基板301上に、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて導電膜を形成し、該導電膜上にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法等によりマスクを形成し、該マスクを用いて導電膜をエッチングして形成することができる。また、銀、金または銅等の導電性ナノペーストをインクジェット法により基板上に吐出し、焼成することで形成することもできる。ここでは、基板301上に導電膜を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程で形成したレジストマスクによりエッチングして、ゲート電極303を形成する。
【0134】
なお、フォトリソグラフィ工程においては、レジストを基板全面に形成してもよいが、レジストマスクを形成する領域に印刷法によりレジストを印刷した後、露光することで、レジストを節約することが可能であり、コスト削減が可能である。また、露光機を用いてレジストを露光する代わりに、レーザビーム直描装置によってレジストを露光してもよい。
【0135】
また、ゲート電極303の側面は、テーパ形状とすることで、ゲート電極303上に形成する半導体膜及び配線膜の、段差の箇所における切断を低減することができる。ゲート電極303の側面をテーパ形状にするためには、レジストマスクを後退させつつエッチングを行えばよい。
【0136】
また、ゲート電極303を形成する工程でゲート配線(走査線)及び容量配線も同時に形成することができる。なお、走査線とは画素を選択する配線をいい、容量配線とは画素の容量素子の一方の電極に接続された配線をいう。ただし、これに限定されず、ゲート配線及び容量配線の一方または双方と、ゲート電極303とは別工程で形成してもよい。
【0137】
ゲート絶縁膜304は、実施の形態6に示すゲート絶縁膜204に示す材料及び構成を適宜用いることができる。ゲート絶縁膜304は、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等を適宜用いることができる。
【0138】
また、ゲート絶縁膜304の最表面として、有機シランガスを用いたCVD法により酸化シリコン膜を形成することで、後に形成する第1の半導体膜の結晶性を高めることが可能であり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
【0139】
結晶核305は、実施の形態1乃至実施の形態5に示す堆積前駆体43の形成方法を用いて形成する。図2に示すプラズマCVD装置の第1の電極101の中空部144のガス供給口から、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体を反応室内に導入し、高周波電源をオンとし、高周波電力を供給して形成する。なお、中空部144のガス供給口から反応室内に導入する気体として、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体のほかに、水素を導入してもよい。更には、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体のほかに、水素及び希ガスを導入してもよい。
【0140】
次に、図17(B)に示すように、結晶核305を核として、結晶成長させて、第1の半導体膜306を形成する。
【0141】
第1の半導体膜306としては、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜46の形成方法を用いて形成する。
【0142】
第1の半導体膜306の厚さは、3〜100nm、好ましくは5〜50nmとすることが望ましい。これは、第1の半導体膜306の厚さが薄すぎると、薄膜トランジスタのオン電流が低減する。また、第1の半導体膜306の厚さが厚すぎると、薄膜トランジスタが高温で動作する際に、オフ電流が上昇してしまうためである。第1の半導体膜306の厚さを厚さ3〜100nm、好ましくは5〜50nmとすることで、薄膜トランジスタのオン電流及びオフ電流を制御することができる。
【0143】
ここでは、第1の半導体膜306は、図2に示すプラズマCVD装置の第1の電極101の中空部144のガス供給口から、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と、水素とを反応室内に導入し、グロー放電プラズマにより形成する。または、図2に示すプラズマCVD装置の第1の電極101の中空部144のガス供給口から、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と、水素と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスとを反応室内に導入し、グロー放電プラズマにより形成する。シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の流量に対して、水素の流量を10〜2000倍、好ましくは10〜200倍に希釈して、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、微結晶ゲルマニウム等を形成する。このときの堆積温度は、室温〜300℃、好ましくは200〜280℃が好ましい。
【0144】
シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の代表例としては、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)等がある。
【0145】
また、第1の半導体膜306を形成する前に、CVD装置の反応室内の気体を排気しながら、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体を導入して、反応室内の不純物を除去することで、後に形成される薄膜トランジスタのゲート絶縁膜304及び第1の半導体膜306の界面における不純物量を低減することが可能であり、薄膜トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0146】
また、第1の半導体膜306を形成する前に、ゲート絶縁膜304の表面に酸素プラズマ、水素プラズマ等を曝してもよい。
【0147】
次に、図17(C)に示すように、第1の半導体膜306上に第2の半導体膜307を形成する。ここでは、第2の半導体膜307として、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する構造を示す。次に、第2の半導体膜307上に、不純物半導体膜309、及び導電膜311を形成する。次に、導電膜311上にレジストマスク313を形成する。
【0148】
第1の半導体膜306を種結晶として、部分的に結晶成長させる条件で、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する第2の半導体膜307を形成することができる。
【0149】
第2の半導体膜307は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と、水素と、窒素を含む気体とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。窒素を含む気体としては、アンモニア、窒素、フッ化窒素、塩化窒素、クロロアミン、フルオロアミン等がある。グロー放電プラズマの生成は、第1の半導体膜306と同様にすることができる。
【0150】
このとき、原料ガスに、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と窒素を含む気体を用いることで、第1の半導体膜306の堆積条件よりも、結晶成長を低減する条件とすることができる。この結果、第2の半導体膜307において、混合領域307b、及び欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体膜で形成される非晶質半導体を含む領域307cを形成することができる。
【0151】
ここでは、第2の半導体膜307を形成する条件の代表例は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量が10〜2000倍、好ましくは10〜200倍である。なお、通常の非晶質半導体膜を形成する条件の代表例は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量は0〜5倍である。
【0152】
また、第2の半導体膜307の原料ガスに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、またはクリプトン等の希ガスを導入することで、成膜速度を高めることができる。
【0153】
第2の半導体膜307の厚さは、厚さ50〜350nm、好ましくは120〜250nmとすることが好ましい。
【0154】
第2の半導体膜307の堆積初期においては、原料ガスに窒素を含む気体が含まれるため、部分的に結晶成長が抑制され、錐形状の微結晶半導体領域が成長すると共に、当該錐形状の微結晶半導体領域の間を充填する非晶質半導体領域が形成される。このように、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域が混在する領域を混合領域307bという。さらに、錐形状の微結晶半導体領域の結晶成長が停止し、微結晶半導体領域が含まれず、非晶質半導体領域のみが形成される。このように、微結晶半導体領域が含まれず、非晶質半導体領域のみが形成される領域を、非晶質半導体を含む領域307cという。なお、錐形状の微結晶半導体領域が成長する前に、第1の半導体膜306を種結晶として、第1の半導体膜306上全体に微結晶半導体膜が堆積される場合もある。
【0155】
ここでは、第2の半導体膜307の原料ガスに窒素を含む気体を含ませて、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する第2の半導体膜307を形成したが、他の第2の半導体膜307の形成方法として、第1の半導体膜306の表面に窒素を含む気体を曝して、第1の半導体膜306の表面に窒素を吸着させた後、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体及び水素を原料ガスとして用いて第2の半導体膜307を形成することで、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する第2の半導体膜307を形成することができる。
【0156】
不純物半導体膜309は、プラズマCVD装置の反応室内において、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、ホスフィン(水素希釈またはシラン希釈)とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。シリコンを含む堆積性気体を水素で希釈して、リンが添加されたアモルファスシリコン、またはリンが添加された微結晶シリコンを形成する。なお、pチャネル型の薄膜トランジスタを作製する場合は、不純物半導体膜309として、ホスフィンの代わりに、ジボランを用いて、グロー放電プラズマによりボロンが添加されたアモルファスシリコン、またはボロンが添加された微結晶シリコンを形成すればよい。
【0157】
ここで、ゲート絶縁膜304と、不純物半導体膜309との間に形成される第2の半導体膜307の構造について、図19乃至図21を参照して説明する。図19乃至図21は、ゲート絶縁膜304と、不純物半導体膜309との間の拡大図である。
【0158】
図19(A)に示されるように、混合領域307bは、第1の半導体膜306の表面から凸状に伸びた微結晶半導体領域331aと、微結晶半導体領域331aの間に充填された非晶質半導体領域331bとを有する。
【0159】
微結晶半導体領域331aは、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって、先端が狭まる凸状(錐形状)の微結晶半導体である。なお、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって幅が広がる凸状(逆錐形状)の微結晶半導体であってもよい。
【0160】
また、混合領域307bに含まれる非晶質半導体領域331bに、粒径が1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下の半導体結晶粒を含んでいてもよい。
【0161】
また、図19(B)に示すように、混合領域307bは、第1の半導体膜306上に一定の厚さで堆積した微結晶半導体領域331cと、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって先端が狭まる凸状(錐形状)の微結晶半導体領域331aと、が連続的に形成される場合もある。
【0162】
また、図19(A)及び図19(B)に示す混合領域307bに含まれる非晶質半導体領域331bは、非晶質半導体を含む領域307cと概略同質の半導体である。
【0163】
これらのことから、微結晶半導体で形成される領域と非晶質半導体で形成される領域の界面は、混合領域307bにおける微結晶半導体領域331aと非晶質半導体領域331bの界面ともいえる。そのため、微結晶半導体と非晶質半導体との境界は、断面図において凹凸状またはジグザグ状であるといえる。
【0164】
また、混合領域307bにおいて、微結晶半導体領域331aが、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって先端が狭まる凸状(錐形状)の半導体結晶粒である場合には、非晶質半導体を含む領域307cの近傍よりも第1の半導体膜306の近傍のほうが、微結晶半導体が占める割合が高い。微結晶半導体領域331aは第1の半導体膜306の表面から膜厚方向に結晶成長する。しかし、原料ガスに窒素を含むガスを混合し、または原料ガスに窒素を含むガスを含ませつつ第1の半導体膜306の堆積条件よりもシランに対する水素の流量を少なくすると、微結晶半導体領域331aの結晶成長が抑制され、錐形状の半導体結晶粒となるとともに、やがて非晶質半導体が堆積する。これは、微結晶半導体領域における窒素の固溶度が、非晶質半導体領域における窒素の固溶度に比べて低いためである。
【0165】
第1の半導体膜306及び混合領域307bの厚さの合計、即ち、ゲート絶縁膜304の界面から、微結晶半導体領域331aの突起(凸部)の先端の距離は、3nm以上410nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下とする。第1の半導体膜306及び混合領域307bの厚さの合計を3nm以上410nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下とすることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0166】
非晶質半導体を含む領域307cは、上述したように、非晶質半導体領域331bと概略同質の半導体であり、窒素を含む。さらには、粒径が1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下の半導体結晶粒を含む場合もある。ここでは、非晶質半導体を含む領域307cは、従来の非晶質半導体と比較して、CPM(Constant photocurrent method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体膜である。即ち、非晶質半導体を含む領域307cは、従来の非晶質半導体と比較して、欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体である。非晶質半導体を含む領域307cは、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻であるため、バンドギャップが広くなり、トンネル電流が流れにくい。このため、非晶質半導体を含む領域307cをバックチャネル側に設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、非晶質半導体を含む領域307cを設けることで、オン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0167】
さらに、非晶質半導体を含む領域307cは、低温フォトルミネッセンス分光によるスペクトルのピーク領域は、1.31eV以上1.39eV以下である。なお、微結晶半導体膜、代表的には微結晶シリコン膜を低温フォトルミネッセンス分光により測定したスペクトルのピーク領域は、0.98eV以上1.02eV以下であり、非晶質半導体を含む領域307cは、微結晶半導体膜とは異なるものである。
【0168】
なお、非晶質半導体を含む領域307cの非晶質半導体は、代表的にはアモルファスシリコンである。
【0169】
また、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cに含まれる窒素は、例えばNH基またはNH2基として存在していてもよい。
【0170】
また、図20に示すように、第1の半導体膜306と不純物半導体膜309との間がすべて混合領域307bとなる構成としてもよい。即ち、第2の半導体膜307が混合領域307bであってもよい。図20に示す構造では、混合領域307bにおける微結晶半導体領域331aの割合が、図19に示す構造よりも低いことが好ましい。さらには、ソース領域とドレイン領域の間、即ちキャリアが流れる領域においては、混合領域307bにおける微結晶半導体領域331aの割合が低いことが好ましい。この結果、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、混合領域307bにおいて、オン状態で配線325により構成されるソース電極及びドレイン電極に電圧を印加したときの縦方向(厚さ方向)の抵抗、即ち、半導体膜と、ソース領域またはドレイン領域との間の抵抗を下げることが可能であり、薄膜トランジスタのオン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0171】
なお、図20においても、図19(B)に示すように、混合領域307bに微結晶半導体領域331cを有していてもよい。
【0172】
また、図21(A)に示すように、非晶質半導体を含む領域307cと、不純物半導体膜309との間に、従来の非晶質半導体領域333dを設けてもよい。即ち、第2の半導体膜307が、混合領域307b、非晶質半導体を含む領域307c、及び非晶質半導体領域333dであってもよい。または、図21(B)に示すように、混合領域307b及び不純物半導体膜309の間に従来の非晶質半導体領域333dを設けてもよい。即ち、第2の半導体膜307が、混合領域307b及び非晶質半導体領域333dであってもよい。図21(A)及び図21(B)に示す構造を適用することにより、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0173】
なお、図21においても、図19(B)に示すように、混合領域307bに微結晶半導体領域331cを有していてもよい。
【0174】
混合領域307bは錐形状の微結晶半導体領域331aを有するため、オン状態でソース電極及びドレイン電極の間に電圧が印加されたときの縦方向(膜厚方向)における抵抗、即ち、第1の半導体膜306、混合領域307b、及び非晶質半導体を含む領域307cの抵抗を下げることが可能である。
【0175】
また、上述したように、混合領域307bに含まれる窒素は、代表的にはNH基またはNH2基として存在していてもよい。これは、微結晶半導体領域331aに含まれる、複数の微結晶半導体領域間の界面、微結晶半導体領域331aと非晶質半導体領域331bの界面、または第1の半導体膜306と非晶質半導体領域331bの界面において、NH基またはNH2基がシリコン原子のダングリングボンドと結合すると、欠陥の数が減るためである。このため、第2の半導体膜307の窒素濃度を1×1019atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下、好ましくは1×1020atoms/cm3乃至1×1021atoms/cm3、より好ましくは2×1020atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下とすることで、シリコン原子のダングリングボンドをNH基で架橋しやすくなり、キャリアが流れやすくなる。または、上記した界面における半導体原子のダングリングボンドがNH2基で終端されて、欠陥準位が消失する。この結果、オン状態でソース電極及びドレイン電極の間に電圧が印加されたときの縦方向(厚さ方向)の抵抗が低減する。即ち、薄膜トランジスタの電界効果移動度とオン電流が増加する。
【0176】
また、混合領域307bの酸素濃度を窒素濃度より低くすることにより、微結晶半導体領域331aと非晶質半導体領域331bの界面における欠陥、または半導体結晶粒同士の界面における欠陥による、キャリアの移動を阻害する結合を少なくすることができる。
【0177】
このため、チャネル形成領域を第1の半導体膜306で形成し、チャネル形成領域と不純物半導体膜309の間に、非晶質半導体を含む領域307cを設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、混合領域307bと非晶質半導体を含む領域307cを設けることで、さらに、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めつつ、オフ電流を低減することができる。これは、混合領域307bが錐形状の微結晶半導体領域331aを有し、非晶質半導体を含む領域307cには欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体膜で形成されているからである。
【0178】
導電膜311は、実施の形態6に示す材料及び構造を適宜用いて形成することができる。
【0179】
導電膜311は、CVD法、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて形成する。または、導電膜311は、スクリーン印刷法もしくはインクジェット法等を用いて、銀、金または銅等の導電性ナノペーストを配置し、焼成することで形成してもよい。
【0180】
第2のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスク313を形成する。レジストマスク313は厚さの異なる領域を有する。このようなレジストマスクは、多階調マスクを用いて形成することができる。多階調マスクを用いることで、使用するフォトマスクの枚数が低減し、作製工程数が削減できるため好ましい。本実施の形態において、第1の半導体膜306、第2の半導体膜307のパターンを形成する工程と、ソース領域とドレイン領域を分離する工程において、多階調マスクを用いて形成したレジストマスクを用いることができる。
【0181】
多階調マスクとは、多段階の光量で露光を行うことが可能なマスクであり、代表的には、露光領域、半露光領域及び未露光領域の3段階の光量で露光を行う。多階調マスクを用いることで、一度の露光及び現像工程によって、複数(代表的には二種類)の厚さを有するレジストマスクを形成することができる。そのため、多階調マスクを用いることで、フォトマスクの枚数を削減することができる。
【0182】
次に、レジストマスク313を用いて、第1の半導体膜306、第2の半導体膜307、不純物半導体膜309、及び導電膜311をエッチングする。この工程により、第1の半導体膜306、第2の半導体膜307、不純物半導体膜309及び導電膜311を素子毎に分離し、第3の半導体膜315、不純物半導体膜317、及び導電膜319を形成する。なお、第3の半導体膜315は、第1の半導体膜306がエッチングされた微結晶半導体膜315a、第2の半導体膜307の混合領域307bがエッチングされた混合領域315b、及び第2の半導体膜307の非晶質半導体を含む領域307cがエッチングされた非晶質半導体を含む領域315cを有する(図17(D)を参照)。
【0183】
次に、レジストマスク313を後退させて、分離されたレジストマスク323を形成する。レジストマスクの後退には、酸素プラズマによるアッシングを用いればよい。ここでは、ゲート電極上で分離するようにレジストマスク313をアッシングすることで、レジストマスク323を形成することができる(図18(A)参照)。
【0184】
次に、レジストマスク323を用いて導電膜319をエッチングし、ソース電極及びドレイン電極として機能する配線325を形成する(図18(B)を参照)。ここでは、ドライエッチングを用いる。配線325は、ソース電極またはドレイン電極のみならず信号線としても機能する。ただし、これに限定されず、信号線とソース電極及びドレイン電極とは別に設けてもよい。
【0185】
次に、レジストマスク323を用いて、第3の半導体膜315の非晶質半導体を含む領域315c、及び不純物半導体膜317のそれぞれ一部をエッチングする。ここでは、ドライエッチングを用いる。本工程までで、表面に凹部を有する非晶質半導体を含む領域329c、ソース領域及びドレイン領域として機能する不純物半導体膜327を形成する(図18(C)参照)。この後、レジストマスク323を除去する。
【0186】
なお、ここでは、導電膜319、非晶質半導体を含む領域315c、及び不純物半導体膜317のそれぞれ一部をドライエッチングしたため、導電膜319が異方的にエッチングされ、配線325の側面及び不純物半導体膜327の側面は概略一致する形状となる。
【0187】
なお、導電膜319をエッチングし、レジストマスク323を除去した後、不純物半導体膜317及び非晶質半導体を含む領域315cの一部をエッチングしてもよい。当該エッチングより、配線325を用いて不純物半導体膜317をエッチングするため、配線325の側面及び不純物半導体膜327の側面が概略一致する。
【0188】
また、導電膜319をウェットエッチングし、非晶質半導体を含む領域315c及び不純物半導体膜317をドライエッチングしてもよい。ウェットエッチングにより、導電膜319が等方的にエッチングされるため、レジストマスク323よりも内側に後退した、配線325が形成される。また、配線325の側面の外側に、不純物半導体膜327の側面が形成される形状となる。
【0189】
次に、ドライエッチングを行ってもよい。ドライエッチングの条件は、露出している非晶質半導体を含む領域329c表面にダメージが入らず、且つ非晶質半導体を含む領域329cに対するエッチングレートが低い条件を用いる。つまり、露出している非晶質半導体を含む領域329c表面にほとんどダメージを与えず、且つ非晶質半導体を含む領域329cの露出している部分の厚さがほとんど減少しない条件を用いる。エッチングガスとしては、代表的にはCl2、CF4、またはN2等を用いる。また、エッチング方法については特に限定はなく、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)方式、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance)方式、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)方式等を用いることができる。
【0190】
次に、非晶質半導体を含む領域329cの表面をプラズマ処理、代表的には水プラズマ処理、アンモニアプラズマ処理、窒素プラズマ処理等を行ってもよい。
【0191】
水プラズマ処理は、水蒸気に代表される、水を主成分とするガスを反応空間に導入し、プラズマを生成して、行うことができる。
【0192】
上記したように、不純物半導体膜327を形成した後に、非晶質半導体を含む領域329cにダメージを与えない条件で更なるドライエッチングを行うことで、露出した非晶質半導体を含む領域329c表面上に存在する残渣などの不純物を除去することができる。また、プラズマ処理を行うことで、ソース領域とドレイン領域との間の絶縁を確実なものにすることができ、完成する薄膜トランジスタのオフ電流を低減し、電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0193】
以上の工程により、少ないマスク数で、電気特性の良好な薄膜トランジスタを生産性高く作製することができる。
【0194】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態6及び実施の形態7で示す薄膜トランジスタを用いることが可能な、素子基板、及び当該素子基板を有する表示装置について、以下に示す。表示装置としては、液晶表示装置、発光表示装置、電子ペーパー等があるが、上記実施の形態の薄膜トランジスタは他の表示装置の素子基板にも用いることができる。ここでは、上記実施の形態6及び実施の形態7で示す薄膜トランジスタを有する液晶表示装置、代表的には、VA(Vertical Alignment)型の液晶表示装置について、図22及び図23を用いて説明する。
【0195】
図22において、液晶表示装置の画素部の断面構造を示す。基板401上に、上記実施の形態で作製される薄膜トランジスタ403及び容量素子405が形成される。また、薄膜トランジスタ403上に形成される絶縁膜408上に画素電極409が形成される。薄膜トランジスタ403のソース電極またはドレイン電極407と、画素電極409とは、絶縁膜408に設けられる開口部において、接続される。画素電極409上には配向膜411が形成される。
【0196】
容量素子405は、薄膜トランジスタ403のゲート電極402と同時に形成される容量配線404と、ゲート絶縁膜406と、画素電極409とで構成される。
【0197】
基板401から配向膜411までの積膜体を素子基板413という。
【0198】
対向基板421には、薄膜トランジスタ403への光の入射を遮断する遮光膜423と、着色膜425とが形成される。また、遮光膜423及び着色膜425上に平坦化膜427が形成される。平坦化膜427上に対向電極429が形成され、対向電極429上に配向膜431が形成される。
【0199】
なお、対向基板421上の、遮光膜423、着色膜425、及び平坦化膜427により、カラーフィルタとして機能する。なお、遮光膜423、平坦化膜427の何れか一方、または両方は、対向基板421上に形成されていなくともよい。
【0200】
また、着色膜は、可視光の波長範囲のうち、任意の波長範囲の光を優先的に透過させる機能を有する。通常は、赤色波長範囲の光、青色波長範囲の光、及び緑色波長範囲の光、それぞれを優先的に透過させる着色膜を組み合わせて、カラーフィルタに用いることが多い。しかしながら、着色膜の組み合わせに関しては、これに限られない。
【0201】
基板401及び対向基板421は、シール材(図示しない)で固定され、基板401、対向基板421、及びシール材の内側に液晶層443が充填される。また、基板401及び対向基板421の間隔を保つために、スペーサ441が設けられている。
【0202】
画素電極409、液晶層443、及び対向電極429が重なり合うことで、液晶素子が形成されている。
【0203】
図23に、図22とは異なる液晶表示装置を示す。ここでは、対向基板421側に着色膜が形成されず、薄膜トランジスタ403が形成される基板401側に着色膜が形成されることを特徴とする。
【0204】
図23において、液晶表示装置の画素部の断面構造を示す。基板401上に、上記実施の形態で作製される薄膜トランジスタ403及び容量素子405が形成される。
【0205】
また、薄膜トランジスタ403上に形成される絶縁膜408上に、着色膜451が形成される。また、着色膜451上には、着色膜451に含まれる不純物が液晶層443に混入するのを防ぐために、保護膜453が形成される。着色膜451及び保護膜453上に、画素電極409が形成される。着色膜451は、各画素毎に、任意の波長範囲の光(赤色、青色、または緑色)を優先的に透過させる膜で形成すればよい。また、着色膜451は平坦化膜としても機能するため、液晶層443の配向ムラを低減することができる。
【0206】
薄膜トランジスタ403のソース電極またはドレイン電極407と、画素電極409とは、絶縁膜408、着色膜451、及び保護膜453に設けられる開口部において、接続される。画素電極409上には配向膜411が形成される。
【0207】
容量素子405は、薄膜トランジスタ403のゲート電極402と同時に形成される容量配線404と、ゲート絶縁膜406と、画素電極409とで構成される。
【0208】
基板401から配向膜411までの積層体を素子基板455という。
【0209】
対向基板421には、薄膜トランジスタ403への光の入射を遮断する遮光膜423と、遮光膜423及び対向基板421を覆う平坦化膜427が形成される。平坦化膜427上に対向電極429が形成され、対向電極429上に配向膜431が形成される。
【0210】
画素電極409、液晶層443、及び対向電極429が重なり合うことで、液晶素子が形成されている。
【0211】
なお、ここでは、液晶表示装置として、VA型の液晶表示装置を示したが、これに限定されない。すなわち、実施の形態6及び実施の形態7に示す薄膜トランジスタを用いて形成した素子基板を、FFS型の液晶表示装置、IPS型の液晶表示装置、TN型の液晶表示装置又はその他の液晶表示装置に用いることができる。
【0212】
本実施の形態の液晶表示装置は、オン電流及び電界効果移動度が高くオフ電流が低い薄膜トランジスタを画素トランジスタとして用いているため、画質が良好(例えば、高コントラスト)の表示画質を高めることができる。また、薄膜トランジスタの大きさを小さくしても、薄膜トランジスタの電気特性が低減されないため、薄膜トランジスタの面積を小さくすることで、液晶表示装置の開口率を向上させることができる。または、画素の面積を小さくすることが可能であり、液晶表示装置の解像度を高めることができる。
【0213】
また、図23に示す液晶表示装置は、遮光膜423と、着色膜451を同一基板上に形成しない。このため、着色膜451の形成におけるマスクずれを回避するため、遮光膜423の面積を大きくする必要がなくなるため、画素における開口率を向上させることができる。
【0214】
(実施の形態9)
実施の形態8で示す素子基板413、455において、配向膜411を形成せず、発光素子を設けることにより、当該素子基板を発光表示装置や、発光装置に用いることができる。発光表示装置や発光装置は、発光素子として代表的には、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子がある。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0215】
本実施の形態の発光表示装置及び発光装置は、オン電流及び電界効果移動度が高くオフ電流が低い薄膜トランジスタを画素トランジスタとして用いているため、画質が良好(例えば、高コントラスト)であり、且つ消費電力の低い発光表示装置及び発光装置を作製することができる。
【0216】
(実施の形態10)
上記実施の形態に係る薄膜トランジスタを有する表示装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、電子ペーパー、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。特に、実施の形態8及び実施の形態9で示したように、上記実施の形態に係る薄膜トランジスタを液晶表示装置、発光装置、電気泳動方式表示装置などに適用することにより、電子機器の表示部に用いることができる。以下に具体的に例示する。
【0217】
上記実施の形態に係る薄膜トランジスタを有する半導体装置は、電子ペーパーに適用することができる。電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブック)、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、デジタルサイネージ、PID(Public Infomation Display)、クレジットカード等の各種カードにおける表示等に適用することができる。電子機器の一例を図24に示す。
【0218】
図24(A)は、電子書籍の一例を示している。図24(A)に示す電子書籍は、筐体500および筐体501の2つの筐体で構成されている。筐体500および筐体501は、蝶番504により一体になっており、開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0219】
筐体500には表示部502が組み込まれ、筐体501には表示部503が組み込まれている。表示部502および表示部503は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図24(A)では表示部502)に文章を表示し、左側の表示部(図24(A)では表示部503)に画像を表示することができる。
【0220】
また、図24(A)では、筐体500に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体500は、電源505、操作キー506、スピーカ507などを備えている。操作キー506により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングディバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、図24(A)に示す電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0221】
また、図24(A)に示す電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0222】
図24(B)は、デジタルフォトフレームの一例を示している。例えば、図24(B)に示すデジタルフォトフレームは、筐体511に表示部512が組み込まれている。表示部512は、各種画像を表示することが可能であり、例えばデジタルカメラなどで撮影した画像データを表示させることで、通常の写真立てと同様に機能させることができる。
【0223】
なお、図24(B)に示すデジタルフォトフレームは、操作部、外部接続用端子(USB端子、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成とするとよい。これらの構成は、表示部と同一面に組み込まれていてもよいが、側面や裏面に備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像データを取り込み、取り込んだ画像データを表示部512に表示させることができる。
【0224】
また、図24(B)に示すデジタルフォトフレームは、無線で情報を送受信出来る構成としてもよい。無線により、所望の画像データを取り込み、表示させる構成とすることもできる。
【0225】
図24(C)は、テレビジョン装置の一例を示している。図24(C)に示すテレビジョン装置は、筐体521に表示部522が組み込まれている。表示部522により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド523により筐体521を支持した構成を示している。表示部522は、実施の形態8及び実施の形態9に示した表示装置を適用することができる。
【0226】
テレビジョン装置の操作は、筐体521が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。リモコン操作機が備える操作キーにより、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部522に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0227】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とするとよい。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0228】
図24(D)は、携帯電話機の一例を示している。図24(D)に示す携帯電話機は、筐体531に組み込まれた表示部532の他、操作ボタン533、操作ボタン537、外部接続ポート534、スピーカ535、マイク536などを備えている。表示部532には、実施の形態8及び実施の形態9に示した表示装置を適用することができる。
【0229】
図24(D)に示す携帯電話機は、表示部532がタッチパネルになっており、指などの接触により、表示部532の表示内容を操作することができる。また、電話の発信、或いはメールの作成は、表示部532を指などで接触することにより行うことができる。
【0230】
表示部532の画面は主として3つのモードがある。第1のモードは、画像の表示を主とする表示モードであり、第2のモードは、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3のモードは、表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0231】
例えば、電話の発信、或いはメールを作成する場合は、表示部532を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部532の画面の大部分の領域にキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0232】
また、携帯電話機の内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦または横)を判断して、表示部532のモード(または表示情報)を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0233】
また、画面のモードの切り替えは、表示部532への接触、又は筐体531の操作ボタン537の操作により行われる。また、表示部532に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替えることができる。
【0234】
また、入力モードにおいて、表示部532の光センサで検出される信号を検知し、表示部532のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0235】
表示部532は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部532を掌や指で触れることで、掌紋、指紋等をイメージセンサで撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0236】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0237】
本実施例では、高圧条件、または、アルゴン添加条件により、微結晶半導体膜の結晶性が向上する様子について、計算機シミュレーションを用いて確認した結果を示す。具体的には、異なる圧力、異なるガス種における水素ラジカルの密度を計算し、比較した結果を示す。なお、計算には、CFD Research Corporation社製のマルチフィジックス解析ソフトウェアCFD−ACE+を用いた。
【0238】
計算における成膜装置のモデルとしては、平行平板容量結合型のCVD装置を想定した。成膜装置の構成の概略を図25に示す。上部電極1000(RF電極と呼んでもよい)は、コンデンサ1010を介して高周波電源1020に接続される。基板ステージとして機能する下部電極1002は接地されている。
【0239】
計算により求められた水素ラジカル密度を図26に示す。図26において、横軸は上部電極からの距離(m)を示し、縦軸は水素ラジカルの密度(m−3)を示す。図26から、高圧条件(500Pa、H2)の場合には、低圧条件(100Pa、H2)と比較して、水素ラジカル密度が高くなっていることが分かる。これは、高圧条件では、低圧条件と比較して、水素の衝突解離レートが向上することに起因するものである。
【0240】
また、水素のみの場合(100Pa、H2)と比較して、アルゴンを添加した混合ガス(100Pa、H2+Ar)では、水素ラジカル密度が高くなっていることが分かる。アルゴンを添加することにより水素分子密度は低下するため、水素の衝突解離レートは低下するが、気相中における以下の反応により、水素の分解が促進され、水素ラジカル密度が高まっているものと考察される。
Ar++H2→H++H+Ar (1)
ArH++H2→H3++Ar (2)
H−+ArH+→Ar+2H (3)
e+ArH+→Ar+H (4)
H−+Ar+→Ar+H (5)
Ar(4s)+H2→2H+Ar (6)
Ar(4p)+H2→2H+Ar (7)
【0241】
水素ラジカル密度が高まることにより、水素ラジカル−水素ラジカルの反応が促進される。そして、当該反応による余剰エネルギーが放出され、反応表面では加熱の効果が生じる。例えば、当該反応が高次ラジカル(SiHn)x(n=1、2、3)の表面で生じた場合、余剰エネルギーにより、高次ラジカルの結晶性が向上することになる。
【0242】
このように、水素ラジカル密度は、良好な結晶性を備える結晶核の生成に大きな影響を与える。上記計算の結果より、水素ラジカル密度を高めることで、微結晶半導体膜の結晶性が向上することが理解される。
【実施例2】
【0243】
本実施例では、実施の形態2の図6に示すような形状の第1の電極101を有するプラズマCVD装置を用いて形成した微結晶シリコン膜について、図27及び図28を用いて説明する。
【0244】
はじめに、本実施例で用いた第1の電極101の形状の詳細について示す。図27(A)は本実施例で用いた第1の電極101を第2の電極側からみた斜視図を示し、図27(B)は図27(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図27(A)においては、第1の電極101を第2の電極側からみているため、中空部607が下側である。また、図27(B)においては、中空部607は上側であり、ガスは矢印方向に流れる。
【0245】
図27(A)に示すように、共通平面である凹部601上において分離された凸部603が形成される。また、凹部601にガス供給口605が形成される。また、凹部601で隣接するガス供給口605の間隔d1は3mmであった。
【0246】
図27(B)に示すように、凸部603及びガス供給口605が交互に配列するA−B断面において、ガス供給口605を有する平面の幅d2は1.4mm、隣接する凸部603の頂部の間隔d3は3.1mm、ガス供給口605の間隔d4は、4.2mmであった。
【0247】
次に、図27に示すような第1の電極101を備えたプラズマCVD装置の反応室で形成した微結晶シリコン膜の結晶性の関係について、図28に示す。
【0248】
ここでは、反応室に、シラン、750sccmの水素、750sccmのアルゴンを導入し、基板温度を250℃、反応室の圧力を1237Pa、第1の電極101の凸部の表面と基板との間隔を7mmとし、周波数13.56MHzの高周波を第1の電極に供給して、基板上に微結晶シリコン膜を形成した。このとき、シランの流量を3sccm、4sccm、5sccm、6sccmと条件振りをした。また、高周波電源の電力を50Wから350Wまで、50W刻みで条件振りをした。また、微結晶シリコン膜の厚さは、サンプルにより21nmから37nmであった。
【0249】
ここで、比較例である従来の微結晶シリコン膜の成膜条件を以下に示す。反応室に、10sccmのシラン、1500sccmの水素、1500sccmのアルゴンを導入し、基板温度を280℃、反応室の圧力を280Pa、第1の電極101(平行平板)と基板間隔を24.5mmとし、周波数13.56MHzの高周波を第1の電極に供給して、基板上に微結晶シリコン膜を形成した。このとき、高周波電源の電力を50Wとした。
【0250】
次に、微結晶シリコン膜の結晶性(Ic/Ia;結晶ピークの高さとアモルファスピークの高さの比)をラマン分光分析により測定した。ラマン分光分析としては、LabLAM HR−PL(堀場製作所製)を用いた。また、測定条件としては、焦点距離800mm、グレーティング:600gr/mm、励起光:YAG固体レーザ光(λ=532nm)とし、−70℃における検出波長範囲が200nm〜1000nmのCCD検出器を用いた。また、励起光のスポット径を約0.75μmとした。
【0251】
図28は、シラン流量を3sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性をひし形で示し、シラン流量を4sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性を四角で示し、シラン流量を5sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性を三角で示し、シラン流量を6sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性を丸で示した。
【0252】
また、比較例である従来の微結晶シリコン膜の結晶性(Ic/Ia)を破線611で示した。
【0253】
図28から、高周波電源の電力に対して微結晶シリコン膜の結晶性は極大値を取る傾向があり、そのピーク位置はシランの流量によって異なる。シラン流量の少ない高希釈条件ほどIc/Iaの極大値は低パワー側となり、微結晶シリコン膜の結晶性が高くなる。また、従来の微結晶シリコン膜の成膜条件と比較して、圧力を高くし、高周波電源の電力を高くすることで、微結晶シリコン膜の結晶性を高めることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、気相成長法を用いた結晶性半導体膜及び当該結晶性半導体膜を有する半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタの技術分野において、半導体膜の作製に用いられるプラズマCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法が用いられ、より良い製品を製造するために様々な改良が試みられている。
【0003】
例えば、反応室内にプラズマを生成するための電極に筒状の凹部を設け、該凹部の径より幅の狭い溝により凹部が相互に連結されたプラズマCVD装置の電極構造が開示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、ガスを処理チャンバー内に分散させ、膜厚や膜特性を均一とするために、中心部から縁部に向かって、径、深さ及び表面積が徐々に増加するガス流路を有するガスディフューザプレート(所謂シャワー板)が開示されている(特許文献2を参照)。他の例として、より高品質な膜をより効率良く製造するために、梯子状電極を用い、400Paのガス圧力で100MHzの超高周波電力を供給し、梯子状電極と基板との間隔を6mmとした状態で成膜速度を2nm/秒として膜を成膜する技術が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−296526号公報
【特許文献2】特開2005−328021号公報
【特許文献3】特開2005−259853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のプラズマCVD装置では、局部的に電界が集中してしまう構造的な欠陥が存在していたため、緻密な微結晶半導体膜を作製することができなかった。例えば、平板状の電極の表面に凹部又は凸部が設けられたことにより、その凹部又は凸部の角部おいて電界が集中する構造となっていた。そのため電界が集中する領域で反応ガスが激しく反応し、また気相中の反応で異常成長した粉体が堆積膜中に含まれることにより、緻密な半導体膜を形成することができなかった。
【0007】
このような状況に鑑み、本明細書で開示される発明の一形態は、緻密な半導体膜を作製するためのプラズマCVD装置の構成を提供することを目的とする。また、本明細書で開示される発明の一形態は、結晶粒間に鬆がない緻密な結晶性半導体膜(例えば微結晶半導体膜)を作製する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、プラズマCVD装置の反応室にプラズマを生成するための電力が供給される電極を有するプラズマCVD装置である。この電極は、基板と対向する面に共通平面を有し、この共通平面には、反応室内に反応ガスを供給するガス供給口が複数設けられている。ガス供給口の周囲には、ガス供給口が設けられる共通平面から突出する凸状の構造体(凸部)が設けられている。この凸状の構造体はガス供給口を囲むように設けられている。凸状の構造体は、それぞれが孤立した配置をとり、ガス供給口を囲むように複数個設けられていても良い。
【0009】
また、本発明の一形態は、プラズマCVD装置の反応室にプラズマを生成するための電力が供給される電極を有するプラズマCVD装置である。この電極は、基板と対向する面に共通平面を有し、この共通平面から突起する凸状の構造体が複数設けられている。複数の凸状の構造体はそれぞれが孤立している。第1のガス供給口はこの凸状の構造体の頂部若しくはその近傍にも設けられている。また、この電極の共通平面には第2のガス供給口が設けられている。凸状の構造体は第2のガス供給口を囲むように設けられている。第1のガス供給口と第2のガス供給口からは、同種のガスまたは別種のガスが供給されるようにガス系が構成されている。
【0010】
ガス供給口が設けられる共通平面から突出するように設けられた凸状の構造体は、その近傍においてプラズマ密度が高くなるように作用する。この場合において、当該凸状の構造体の角部は鋭利な端面を有さず、なめらかな曲線形状を有していることが好ましい。すなわち、電極に設けられた凸状の構造体はガス供給口の存在する部分のプラズマ密度を高めつつ、当該凸状の構造体の角部に強電界領域が形成されないような形状を有していることが好ましい。このような作用を奏するために、凸状の構造体はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることが好ましい。
【0011】
プラズマを生成するための電力が供給される電極のガス供給口の近傍に高密度プラズマ領域が形成される構成とし、その領域に反応ガスを供給することで、反応ガスの分解が促進され、堆積前駆体の気相中での反応が増進する。このような作用を助長するために、当該電極は反応ガスの分解を助長するために電極の加熱手段が設けられていても良い。
【0012】
また、本発明の一形態は、反応室に供給される反応ガスの供給口の近傍にプラズマの高密度領域を形成しつつ、その高密度プラズマ領域を含む気相中で半導体の結晶を成長させ、それを膜として堆積させる方法である。
【0013】
気相中で半導体の結晶を成長させるためには反応圧力を高くし、電極間隔を狭くすることが好ましい。反応圧力が高い程、グロー放電によって生成されたラジカル同士、及びラジカルと反応ガス分子との衝突反応を生ずる確率が高くなり、電極間隔を狭くすることにより結晶性を有する堆積前駆体が肥大化する前に基板の堆積表面に到達させ、堆積表面で結晶核となり、当該結晶核を結晶成長させることで、緻密な結晶性を有する微結晶半導体膜を形成することができる。そして、気相中で結晶性を有する堆積前駆体を生成することで、下地が絶縁膜であっても堆積初期段階から結晶性の良い微結晶半導体膜を作製することができる。
【0014】
また、反応ガスに希ガスを加えることは好ましい。反応ガスと共に反応室に導入された希ガスは、電子温度を下げ電子密度を高くする作用がある。それによりラジカルの生成量が増大し、成膜速度が向上し、微結晶半導体膜の結晶性が向上し、微結晶半導体膜が緻密化するように作用する。このような作用を得るためには、希ガスを準安定状態に励起させる必要があり、そのためには希ガスの励起種を生成させ、あるいは希ガスを電離させることができる程度の電界を印加する必要がある。例えば、反応ガスであるシランガスと水素ガスに加え、希ガスとしてアルゴンを加えると、水素ラジカルが増大し微結晶半導体膜の結晶性を向上させることが可能となる。
【0015】
例えば、本発明の一形態は、プラズマCVD装置の反応室内における反応ガスの圧力を450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下とし、当該プラズマCVD装置の第1の電極と第2の電極の間隔を1mm以上20mm以下、好ましくは4mm以上16mm以下として、前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、第1の電極および第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する堆積前駆体を形成し、堆積前駆体を堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成する、微結晶半導体膜の作製方法である。
【0016】
なお、第1の電極または第2の電極に凸状の構造体が設けられている場合、第1の電極または第2の電極の共通平面、または凸状の構造体の頂部若しくはその近傍に設けられたガス供給口から反応ガスを供給し、高密度プラズマ領域に反応ガスが流れるようにして、堆積前駆体を生成してもよい。または、第1の電極または第2の電極の凸状の構造体の頂部若しくはその近傍に設けられた第1のガス供給口と、電極の共通平面に設けられた第2のガス供給口とから反応ガスを供給し、高密度プラズマ領域にそれぞれのガス供給口から供給された反応ガスが流れるようにして堆積前駆体を生成してもよい。
【0017】
上記において、反応ガスに希ガスを加えることにより、高密度プラズマ領域における電子温度を下げると共に、高密度プラズマ領域における電子密度を高め、微結晶半導体膜の結晶性を向上させることができる。
【0018】
また、基板上にゲート電極を形成し、ゲート電極を覆うゲート絶縁層を形成した後に、上記微結晶半導体膜の作製方法を用いて、ゲート絶縁層上に微結晶半導体層を形成し、微結晶半導体層に電気的に接続される配線を形成することにより、薄膜トランジスタを作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
ガス供給口から供給される反応ガスを高密度プラズマ領域に流すことで、気相中で堆積前駆体を生成し、その反応を促進することができる。
【0020】
また、平板状の電極表面に構造体を設け、その構造体の角部を曲面形状とすることにより、当該角部に電界を集中させずに高密度プラズマ領域を形成することができる。
【0021】
また、電極間隔を狭くすることでナノクリスタルとなった堆積前駆体同士の衝突は生ずることはなく、非晶質成分を生じさせない。
【0022】
上記により、堆積される微結晶半導体膜に含まれる非晶質成分を低減することができ、緻密な微結晶半導体膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】微結晶半導体膜の作製方法を説明する図である。
【図2】プラズマCVD装置の一例を説明する図である。
【図3】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図4】成膜装置の一例を説明する図である。
【図5】プラズマCVD装置の一例を説明する図である。
【図6】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図7】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図8】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図9】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図10】プラズマCVD装置中のプラズマの強度を説明する図である。
【図11】プラズマCVD装置の一例を説明する図。
【図12】プラズマCVD装置の一例を説明する図。
【図13】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図。
【図14】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図。
【図15】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図。
【図16】薄膜トランジスタ構造を説明する図である。
【図17】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図18】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図19】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図20】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図21】薄膜トランジスタの作製方法の一形態を説明する図である。
【図22】表示装置を説明する図である。
【図23】表示装置を説明する図である。
【図24】薄膜トランジスタを適用した電子機器である。
【図25】成膜装置の構成の概略を示す図である。
【図26】水素ラジカル密度を示す図である。
【図27】プラズマCVD装置の上部電極の形状を説明する図である。
【図28】微結晶シリコン膜の結晶性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。なお、各図面において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。従って、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0025】
(実施の形態1)
実施の形態では、結晶性の高い微結晶半導体膜の作製方法について、図1乃至図4を用いて説明する。
【0026】
本実施の形態に示す微結晶半導体膜の形成方法は、図1(A)に示すように、気相中で堆積前駆体43を形成し、基板40上に形成された下地膜42上に当該堆積前駆体43を堆積させ、結晶核44を形成する。次に、図1(B)に示すように、結晶核44上に微結晶半導体膜を形成することで、結晶核44を結晶成長の核として、結晶成長した微結晶半導体膜46を形成することができる。
【0027】
堆積前駆体43はプラズマ中で原料ガスと電子の反応により形成されるものであり、成膜室内の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力300Paより高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、より好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすることで生成することができる。堆積前駆体は、大きさが数nmであり、複数のラジカルが逐次反応し、ある程度秩序性を有する高次ラジカル(SiHn)x(n=1、2、3)ともいえる。原料ガスがシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の場合、堆積前駆体43は、シリコン、ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウムで形成される。このため、下地膜42上に堆積した堆積前駆体43は結晶核44となる。または、下地膜42上に堆積した堆積前駆体43にプラズマ中で解離された活性なラジカルが結合し、結晶核44となる。結晶核44は、5nm以上15nm以下であり、粒子内に単結晶とみなせる微小結晶である結晶子を有するため、秩序性を有する。このため、結晶核44にプラズマ中で解離された活性なラジカルが到達すると、結晶核44を核として結晶成長するため、下地膜との界面から結晶性の高い微結晶半導体膜46を形成することができる。
【0028】
本実施の形態では、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすることで、結晶核44を下地膜42上に緻密に堆積させることが可能である。即ち、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に堆積させることが可能である。このため、結晶核44を核として結晶成長させると、結晶粒が緻密となり、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜46を形成することができる。
【0029】
なお、下地膜42とは、微結晶半導体膜46が形成される被形成面を有する膜をいう。基板40及び下地膜42は適宜用いることができる。
【0030】
ここで、本実施の形態の特徴である堆積前駆体43及び結晶核44を作製することが可能なプラズマCVD装置について図2乃至図4を用いて説明する。
【0031】
図2はプラズマCVD装置の反応室の一構成を示す。反応室100bはアルミニウム又はステンレスなど剛性のある素材で形成され、内部を真空排気できるように構成されている。本実施の形態で示す反応室100bは、機械的強度を高めるためにチャンバーの素材をステンレスとし、内面にアルミニウム溶射を施したものである。また、本実施の形態で示すプラズマCVD装置は、メンテナンスのため分解が可能なチャンバー構成とし、定期的に再度のアルミニウム溶射を施すことが可能な構成とするとよい。反応室100bには第1の電極101(上部電極とも呼ぶ。)と、第1の電極101と対向する第2の電極102(下部電極とも呼ぶ。)が備えられている。
【0032】
第1の電極101には高周波電力供給手段103が連結されている。第2の電極102は接地され、基板40を載置できるように構成されている。第1の電極101は絶縁材116により反応室100bと絶縁分離されることで、高周波電力が漏洩しないように構成されている。絶縁材116として、例えばセラミック材料を用いる場合には、上部電極のシールにナイフエッジ型メタルシールフランジを用いることが困難であるため、Oリングシールを用いるとよい。
【0033】
なお、図2では、第1の電極101と第2の電極102を有する容量結合型(平行平板型)の構成を示しているが、これに限定されない。高周波電力を供給して反応室100bの内部にグロー放電プラズマを発生させることができるものであれば、誘導結合型など他の構成を適用してもよい。
【0034】
第1の電極101と第2の電極102は、その一表面が略平行となるように設けられている。第1の電極101には、ガス供給手段108に接続される中空部144が設けられている。中空部144は、ガスライン146を介してガス供給手段108のシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ110aに接続されている。このため、中空部144のガス供給口からは、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が反応室100bに供給される。
【0035】
ガス供給手段108は、ガスが充填されたシリンダ110、圧力調整弁111、ストップバルブ112、マスフローコントローラ113などで構成されている。また、ガス供給手段108は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ110aと、水素が充填されたシリンダ110bと、希釈ガスが充填されたシリンダ110cとを有する。なお、ここでは、希釈ガスが充填されたシリンダ110cを設けたが、必ずしも必要としない。
【0036】
シリンダ110aに充填されたシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体として、代表的には、シラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、ゲルマン(GeH4)ガス、ジゲルマン(Ge2H6)ガス等があるが、他の堆積性気体を用いることもできる。
【0037】
シリンダ110cに充填された希釈ガスとしては、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガスがある。
【0038】
ヒータコントローラ115により温度制御される基板加熱ヒータ114は、第2の電極102内に設けられている。基板加熱ヒータ114が第2の電極102内に設けられる場合、熱伝導加熱方式が採用される。基板加熱ヒータ114は、例えばシーズヒータで構成される。
【0039】
高周波電力供給手段103には、高周波電源104、整合器106、高周波カットフィルタ129が含まれている。高周波電源104から供給される高周波電力は、第1の電極101に供給される。
【0040】
高周波電源104は、60MHz以下の高周波電力を供給する。また、第2の電極102上に載置される基板が第7世代以上の大面積基板の場合には、高周波電源104として、波長が概ね10m以上の高周波電力を供給することが好ましい。代表的には、13.56MHz以下、例えば3MHz以上13.56MHz以下の高周波電力を供給することが好ましい。高周波電源104が、上記範囲の高周波電力を供給することで、第7世代以上の大面積基板を第2の電極102上に載置してグロー放電を行っても、表面定在波の影響を受けることなく均一なプラズマを発生させることができるため、基板が大面積であっても基板全体に均質で良質な膜を形成することができる。
【0041】
また、高周波電源104として周波数13.56MHzを発振する電源を用いる場合、高周波カットフィルタ129として10pF〜100pFの可変コンデンサを用いるとよい。
【0042】
また、高周波カットフィルタ129として、さらにコイルを用いて、コイルと可変コンデンサとを用いる並列共振回路を構成してもよい。
【0043】
反応室100bに接続されている排気手段109には真空排気する機能と、反応ガスを流す場合に反応室100b内を所定の圧力に保持するように制御する機能が含まれている。排気手段109の構成としては、バタフライバルブ117、バタフライバルブ118、ストップバルブ119〜124、ターボ分子ポンプ125、ターボ分子ポンプ126、ドライポンプ127などが含まれる。なお、ターボ分子ポンプ126はストップバルブ124を介してドライポンプ127と連結されている。
【0044】
反応室100b内を真空排気する場合には、まず、粗引き用のストップバルブ119と粗引き用のストップバルブ121を開き、反応室100b内をドライポンプ127で排気した後、ストップバルブ119を閉じて、バタフライバルブ117、ストップバルブ120を開き、真空排気を行う。さらに、反応室100b内を10−5Paよりも低い圧力の超高真空まで排気する場合には、反応室100b内をドライポンプによって排気した後、バタフライバルブ117、ストップバルブ120およびストップバルブ121を閉じ、バタフライバルブ118からストップバルブ122、123、124を開き、直列接続されたターボ分子ポンプ125、ターボ分子ポンプ126およびドライポンプ127による排気を行って真空排気する。また、真空排気を行った後に、反応室100b内を加熱処理して内壁からの脱ガス処理を行うことが好ましい。
【0045】
第1の電極101と第2の電極102の間隔(ギャップ間隔とも呼ぶ)は適宜変更できるように構成されている。このギャップ間隔の調節は、反応室100b内で第2の電極102の高さの調整により行うことができる。ベローズ107を用いることで、反応室100b内を真空に保持しつつ、ギャップ間隔の調節を行うことができる。
【0046】
ここで、第1の電極101の形状の一形態について、図3に示す。図3(A)は第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図3(B)は、図3(A)のA−Bにおける断面図である。
【0047】
図3(A)および図3(B)に示すように、第1の電極101には中空部144のガス供給口が規則的に、好ましくは等間隔で配置される。ガス供給口の口径は、第1の電極101の全面において均一であっても良いし、異なっていても良い。なお、図に示すガス供給口の配置は一例にすぎず、開示する発明の一態様がこれに限定して解釈されるものではない。例えば、ガス供給口を第1の電極101の中央部のみに設けても良い。
【0048】
図4は、複数の反応室を備えたマルチ・チャンバ・プラズマCVD装置の一形態の概略図を示す。この装置は、共通室130、ロード/アンロード室131、第1の反応室100a、第2の反応室100b、第3の反応室100c、及び第4の反応室100dを備えている。ロード/アンロード室131は、カセットに装填される基板が共通室130の搬送機構134によって各反応室に搬出入される枚葉式の構成である。共通室130と各室の間にはゲートバルブ133が備えられ、各反応室で行われる処理が、相互に干渉しないように構成されている。
【0049】
各反応室は、形成する薄膜の種類によって区分されている。勿論、反応室の数はこれに限定されるわけではなく、必要に応じて任意に増減させることができる。また、一の反応室で一の膜を成膜するようにしてもよいし、一の反応室で複数の膜を成膜するように構成しても良い。
【0050】
各反応室には、排気手段109が接続されている。排気手段は図2及び図4に示す真空ポンプの組み合わせに限定されるものではなく、概略10−5Paから10−1Paの真空度にまで排気できるものであれば他の真空ポンプを適用してもよい。
【0051】
なお、ロード/アンロード室131に、ドライポンプ136の他に超高真空まで真空排気が可能なクライオポンプ135を連結してもよい。クライオポンプ135を用いることで、ロード/アンロード室131の圧力を10−5Paよりも低い圧力の超高真空とすることができ、反応室中の基板に堆積される膜の不純物濃度を低減することができる。また、クライオポンプ135は、ターボ分子ポンプ及びドライポンプと比較して排気速度が速いため、開閉頻度の高いロード/アンロード室131にクライオポンプ135を設けることで、スループットを向上させることができる。
【0052】
ガス供給手段108は、ガスが充填されたシリンダ110、圧力調整弁111、ストップバルブ112、マスフローコントローラ113などで構成されている。ここでは図示しないが、ガスが充填されたシリンダは、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ、水素が充填されたシリンダ、希釈ガスが充填されたシリンダ、反応性ガス(酸化性ガス、窒化性ガス、ハロゲンガス等)が充填されたシリンダ、一導電型を付与する不純物元素を有するガスが充填されたシリンダ等を有する。
【0053】
各反応室にはプラズマを形成するための高周波電力供給手段が連結されている。高周波電力供給手段には、少なくとも高周波電源104と整合器106が含まれる。
【0054】
各反応室は形成する薄膜の種類によって使い分けることが可能である。それぞれの薄膜には最適な成膜温度があるので、反応室を個別に分けておくことで成膜温度を形成する膜ごとに管理することが容易となる。さらに、同じ膜種を繰り返し成膜することができるので、前に形成された膜に起因する残留不純物の影響を排除することができる。
【0055】
図2に示すプラズマCVD装置の反応室100bにおいて、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、より好ましくは500Pa以上1500Pa以下とし、原料ガスとしてシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体及び水素を反応室に導入し、第1の電極101に高周波電力を供給して、グロー放電させると、分子の平均自由行程が短くなり、プラズマ中において電子が気体分子に衝突する確率が高くなり、反応確率が増加する。このため、プラズマ中で活性なラジカルが生成されやすい。特に、プラズマ密度の高い領域では寿命の短い活性なラジカルが生成され、これが気相中で反応して核が形成される。核が形成されると気相中で逐次反応が進みナノメートルサイズの堆積前駆体の成長が促進される。このような従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力での放電は、第1の電極101及び第2の電極102の距離が短く、代表的には1mm以上20mm以下、好ましくは4mm以上16mm以下、さらに好ましくは5mm以上10mm以下の場合に発生させやすい。なお、ここでは、第1の電極101及び第2の電極102の距離とは、第1の電極101及び第2の電極102の間隔をいう。
【0056】
堆積前駆体の核が発生すると、活性なラジカルが核に付着して堆積前駆体が成長する。核発生に必要なラジカルは核成長で消費されるので、新たな核の生成は抑制される。よって、反応室の圧力と共に、第1の電極101に供給する電力の供給時間(例えば、パルス波電力におけるパルス幅、パルス周波数)、ガス流量、ガスの排気速度を制御することで、堆積前駆体のサイズ及び生成量を制御することが可能である。
【0057】
堆積前駆体の組成は、供給するガスの選択によって制御することができる。ガスの種類によって、プラズマ中で生成されるラジカルが異なるからである。よって、堆積前駆体の成長の途中で堆積性気体の種類を切り替えることによって、多層構造の堆積前駆体の生成も可能である。なお、原料ガスがシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の場合、堆積前駆体は、シリコン、ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウムで形成される。
【0058】
プラズマ中で堆積前駆体は負に帯電しやすいため、クーロン力により堆積前駆体同士の凝集は抑制される性質がある。よって、本実施の形態により、単分散に近い堆積前駆体を高密度に得ることができる。
【0059】
堆積前駆体の構造は、成長に寄与するラジカルの種類の他に、堆積前駆体の温度が重要である。堆積前駆体の温度は、その表面(堆積前駆体の表面)に入射するイオン、電子の運動エネルギー、表面における化学反応によるエネルギーの放出又は吸収、中性ガス分子の衝突による加熱又は冷却などの影響を受けて決まる。
【0060】
例えば、シリコンの堆積前駆体を生成する場合、シラン(SiH4)を水素で希釈することで結晶構造とすることができる。これは、微結晶シリコン膜を堆積する場合に起こる表面反応と同様なメカニズムであると考えられ、シランが解離して生成されたラジカルと水素との反応が、結晶構造を有するシリコンの堆積前駆体の生成に主として寄与しているためと考えられる。
【0061】
このことにより、気相中で形成された秩序性を有する堆積前駆体を基板表面に堆積させ、結晶核とし、当該結晶核を基板上での結晶成長の核として使用することができる。また、堆積する膜中に結晶性の堆積前駆体を含ませることができる。更に、結晶核上に微結晶半導体膜を堆積すると、秩序性を有する結晶核を結晶成長の核として下地膜との界面から結晶成長するため、下地膜界面から結晶性の高い微結晶半導体膜を形成することができる。さらには、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、より好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすることで、堆積前駆体の生成速度が増加するため、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に形成させることが可能であると共に、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域(鬆ともいう。)が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜の成膜速度を高めることができる。
【0062】
(実施の形態2)
【0063】
本実施の形態では、実施の形態1に示すプラズマCVD装置において、第1の電極に適用可能な構造について、図5乃至図10を用いて説明する。
【0064】
図5に示すプラズマCVD装置の反応室の一構成において、第1の電極101は、凸部141及び凹部143が規則的に、好ましくは等間隔で配置された凹凸電極である。即ち、凸状の構造体で形成される凸部141が規則的に、好ましくは等間隔で配置されている。また、第1の電極101の凹部143には、ガス供給手段108に接続される中空部144が設けられている。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面が凹部143である。なお、ここでは、第2の電極102の表面との距離が近いガス供給口を有する領域を凸部141とし、第2の電極102の表面との距離が遠いガス供給口を有する領域を凹部143として示す。
【0065】
また、中空部144は、ガスライン146を介してガス供給手段108のシリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が充填されたシリンダ110aに接続されている。このため、凹部143に設けられている中空部144のガス供給口からは、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体が反応室100bに供給される。
【0066】
ここで、第1の電極101の形状の一形態について、図6及び図7を用いて説明する。図6(A)及び図7(A)は、第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図6(B)及び図7(B)は、図6(A)及び図7(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図6(A)及び図7(A)において、凹凸の様子を分かりやすくするため、窪んでいる領域(即ち、凹部)を間隔の狭いハッチパターンで示す。
【0067】
図6(A)及び図6(B)に示すように、凹部143に形成される中空部144のガス供給口が、規則的に、好ましくは等間隔で配置される。また、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。複数の凸部141のそれぞれは分離されており、凹部143は繋がった一の平面(共通平面)である。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面から突出するように設けられた凸状の構造体を有し、該凸状の構造体はそれぞれ孤立している。ここでは、凸部141を四角錐台としている。なお、凸部141はこれに限定されず、適宜、三角錐台、五角錐台、六角錐台その他の多角錐台としてもよい。また、凸部141の稜及び角に丸み面取りを施して、角丸の多角錐台とすることが好ましい。凸部141及び凹部143の稜及び角に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0068】
また、図7(A)及び図7(B)に示すように、凸部141が円錐台となっていてもよい。また、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。なお、凸部141の稜に丸み面取りを施して、角丸の円錐台とすることが好ましい。凸部141を円錐台とし、凸部141及び凹部143の稜に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0069】
また、図6及び図7に示す凸部141においては、角丸の多角錐台または円錐台を示したが、図8(A)に示すように、多角錐台または円錐台の稜及び角に丸みを帯びないように面取りを施すことができる。代表的には、凸部141をテーパ形状とし角147を面取りすることができる。また、凹部143をテーパ形状とし角149を面取りすることができる。凸部141及び凹部143において、角147、149を面取りすることで、当該領域の電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0070】
また、図6及び図7に示す凹部143において、図8(B)に示すように、中空部144のガス供給口周辺の155または角を丸めてもよい。さらには、図示しないが、中空部144のガス供給口周辺に丸みを帯びないように面取りを施してもよい。この結果、ガス供給口付近における電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0071】
ここで、第1の電極101の断面形状と電界の強度について、図10を用いて説明する。図10(A)及び図10(B)はそれぞれ、計算に用いた第1の電極101の断面形状を示し、図10(C)及び図10(D)はそれぞれ、電界シミュレーターによって計算した電界の強度を示す。
【0072】
図10(A)は第1の電極101の凸部の側面が凹部の表面と垂直な形状(第1の形状)を示し、図10(B)は第1の電極101の凸部の断面形状がテーパ形状(第2の形状)を示す。即ち、第1の電極101の凸部の側面と凹部の表面が凸部内でなす角をθとし、凸部の頂部の表面と側面がなす角をγとすると、θが90°未満であり、γが90°より大きい形状である。なお、凸部の断面形状がテーパ形状である場合(図10(B)の場合)には、頂部に向かうにつれ断面積が単調に小さくなる。
【0073】
図10(A)においては、凹部の深さd1を40mm、隣接する凸部の間隔d2を20mm、第1の電極101及び第2の電極102の間隔d3を20mmとした。
【0074】
図10(B)においては、凹部の深さd4を40mm、隣接する凸部において第2の電極102側の頂部の間隔d5を60mm、第1の電極101及び第2の電極102の間隔d6を20mmとした。なお、凹部においてガス供給口が形成される平面の直径d7を20mmとした。また、凸部の稜及び角の曲率半径Rを10mmとした。
【0075】
また、図10(A)及び図10(B)のそれぞれにおいて、ガス供給口近傍をA、凹部の中央近傍をB、凹部の第2の電極102近傍をC、第1の電極101の凸部の極近傍をDとし、これらの電界の強度について計算した結果を表1に示す。なお、表1は、図10(A)に示す第1の電極101の凸部の近傍Dの電界強度を1として、その他の領域の電界強度を規格化したものである。このとき、第1の電極101に供給した電力の周波数は13.56MHzである。
【0076】
【表1】
【0077】
図10(C)は、図10(A)について計算した電界強度の分布を示し、図10(D)は、図10(B)について計算した電界強度の分布を示す。
【0078】
図10(C)において、隣接する凸部の間の凹部表面の近傍(Aの近傍)には電界が極端に弱い領域181が形成され、凸部とプラズマ187の間(第1の電極101の凸部の近傍(Dの近傍))には電界の強い領域185が形成される。
【0079】
一方、図10(D)において、テーパ角θが小さいほど凹部の表面まで電界が回り込むため、凹部では電界が弱い領域191が形成され、凸部の頂部表面近傍では中程度の電界の領域193が形成される。
【0080】
図10(C)と図10(D)を比較すると、図10(B)の形状では、凸部の頂部、特に凸部の稜及び角近傍における電界を緩和することができ、基板40表面へのプラズマダメージを低減すると共に、アーク放電が原因のパーティクルの発生を低減することができる。また、凸部の頂部の表面の領域を小さくするほど、凸部の頂部近傍に高密度プラズマ領域を形成することができる。
【0081】
本実施の形態に示す第1の電極は、凸部141及び凹部143を有するため、凸部141の頂部に高密度プラズマ領域を形成することが可能である。このため、高密度プラズマ領域において反応性が高まり、核及び堆積前駆体の生成を促進させることができる。この結果、実施の形態1と同様に、気相中で形成された秩序性を有する堆積前駆体を基板表面に堆積させ結晶核とし、当該結晶核を基板上での結晶成長の核として使用することができる。また、堆積する膜中に結晶性の堆積前駆体を含ませることができる。更に、結晶核上に微結晶半導体膜を堆積すると、秩序性を有する結晶核を結晶成長の核として下地膜との界面から結晶成長するため、下地膜界面から結晶性の高い微結晶半導体膜を作製することができる。さらには、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすると共に、凸部近傍において高密度プラズマ領域を形成することで、堆積前駆体の生成速度が増加するため、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に形成させることが可能であると共に、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域(鬆ともいう。)が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜の成膜速度を高めることができる。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示すプラズマCVD装置において、第1の電極に適用可能な構造について、図9を用いて説明する。図9(A)は第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図9(B)は、図9(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図9(A)において、凹凸の様子を分かりやすくするため、窪んでいる領域(即ち、凹部)を間隔の狭いハッチパターンで示す。
【0083】
図9(A)及び図9(B)に示すように、凸部141に形成される中空部142のガス供給口が規則的に、好ましくは等間隔で配置される。また、図9(B)に示すように、凸部141には中空部142のガス供給口が設けられている。複数の凸部141のそれぞれは分離されており、凹部143は繋がった一の平面(共通平面)である。ここでは、凸部141を四角錐台としている。なお、凸部141はこれに限定されず、適宜、三角錐台、五角錐台、六角錐台その他の多角錐台としてもよい。また、凸部141の稜及び角を丸めて、角丸の多角錐台とすることが好ましい。また、凸部141が円錐台となっていてもよい。更には、凸部141の稜を丸めて、角丸の円錐台とすることが好ましい。
【0084】
グロー放電により、凸部141の頂部において高密度プラズマ領域が形成されるため、凸部141のガス供給口から反応室に導入された原料ガスの反応が更に促進される。このため、堆積前駆体43の生成が進み、下地膜上により多くの結晶核44を緻密に堆積することができる。
【0085】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に示すプラズマCVD装置において、第1の電極に適用可能な構造について、図11乃至図15を参照して説明する。
【0086】
図11に示すプラズマCVD装置の反応室の一構成において、第1の電極101は、凸部141および凹部143が規則的に、好ましくは等間隔で配置された凹凸電極である。即ち、凸状の構造体で形成される凸部141が規則的に、好ましくは等間隔で配置されている。また、第1電極101の凸部141には、ガス供給手段108に接続される中空部142が設けられており、第1の電極101の凹部143には、ガス供給手段108に接続される中空部144が設けられている。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面が凹部143である。このような構造とすることにより、凸部141と凹部143から反応室100bに供給されるガス種を異ならせることができる。なお、ここでは、第2の電極102の表面との距離が近いガス供給口を有する領域を凸部141とし、第2の電極102の表面との距離が遠いガス供給口を有する領域を凹部143として示す。
【0087】
ここで、中空部142と中空部144から流すガスの種類は必要に応じて決定すればよい。例えば、中空部142から堆積性ガスを流し、中空部144から水素ガスを流してもよい。または、中空部142から水素ガスを流し、中空部144から堆積性ガスを流してもよい。または、中空部142から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流し、中空部144から堆積性ガスを流してもよい。または、中空部142から堆積性ガスを流し、中空部144から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流してもよい。または、中空部142から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流し、中空部144から水素ガスを流してもよい。最も好ましくは、中空部142から水素ガスを流し、中空部144から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流すことである。中空部142から水素ガスを流し、中空部144から堆積性ガスと水素ガスの混合ガスを流すことで、形成される微結晶半導体膜の結晶性を向上させることができる。
【0088】
なお、成膜途中でガスの流量比を変えてもよい。例えば、成膜初期には堆積性ガスの流量比を高くし、成膜後期には希釈率を高くすることで、結晶性を向上させることができる。
【0089】
また、第1の電極101は、複数の拡散板を有してもよい(図12を参照)。図12では、ガスライン145から供給されたガスは、拡散板151で拡散した後、拡散板151の貫通孔153を通過して、凸部141に設けられる中空部142の導入口から、反応室100bに供給される。また、ガスライン146から供給されたガスは、拡散板152で拡散した後、拡散板152の貫通孔154を通過して、凹部143に設けられた中空部144の導入口から、反応室100bに供給される。図12に示すように、第1の電極101は拡散板151および拡散板152を有することにより、ガスライン145およびガスライン146から導入されたガスが第1の電極101内で十分に拡散され、均質なガスを反応室100bに供給することができるため、基板上に均質で良質な膜を形成することができる。
【0090】
ここで、第1の電極101の形状の一形態について、図13および図14を参照して説明する。図13(A)および図14(A)は、第1の電極101を第2の電極102側からみた平面図であり、図13(B)および図14(B)は、図13(A)および図14(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図13(A)および図14(A)において、凹凸の様子を分かりやすくするため、窪んでいる領域(即ち、凹部)を間隔の狭いハッチパターンで示す。
【0091】
図13(A)及び図13(B)に示すように、凸部141に形成される中空部142のガス供給口と、凹部143に形成される中空部144のガス供給口が規則的に、好ましくは等間隔で配置される。また、凸部141には中空部142のガス供給口が設けられており、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。複数の凸部141のそれぞれは分離されており、凹部143は繋がった一の平面(共通平面)である。即ち、ガス供給口が設けられる共通平面から突出するように設けられた凸状の構造体を有し、該凸状の構造体はそれぞれ孤立している。ここでは、凸部141を四角錐台としている。なお、凸部141はこれに限定されず、適宜、三角錐台、五角錐台、六角錐台その他の多角錐台としてもよい。また、凸部141の稜および角に丸み面取りを施して、角丸の多角錐台とすることが好ましい。凸部141および凹部143の稜および角に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0092】
また、図14(A)に示すように、凸部141が円錐台となっていてもよい。また、図14(B)に示すように、凸部141には中空部142のガス供給口が設けられており、凹部143には中空部144のガス供給口が設けられている。なお、凸部141の稜に丸み面取りを施して、角丸の円錐台とすることが好ましい。代表的には、凸部141をテーパ形状とし、角156、158を面取りすることができる。また、凹部143をテーパ形状とすることができる。凸部141および凹部143をテーパ形状とし、角156、158を面取りすることで、当該領域の電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる(図15(A)を参照)。凸部141を円錐台とし、凸部141および凹部143の稜に丸み面取りを施すことにより、過剰な電界集中を低減することが可能である。このため、局所的なアーク放電を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0093】
また、図13および図14に示す凸部141においては、角丸の多角錐台または円錐台を示したが、多角錐台または円錐台の稜および角に丸みを帯びないように面取りを施してもよい。
【0094】
また、中空部144のガス供給口周辺の稜および角157を丸めてもよい(図15(B)を参照)。さらには、図示しないが、中空部144のガス供給口周辺に丸みを帯びないように面取りを施してもよい。この結果、ガス供給口付近における電界集中を低減することが可能であり、パーティクルの発生を低減することができる。
【0095】
なお、シリコンの堆積前駆体を生成する場合、シラン(SiH4)を水素で希釈することで結晶構造とすることができる。これは、微結晶シリコン膜を堆積する場合に起こる表面反応と同様なメカニズムであると考えられ、シランが解離して生成されたラジカルと水素との反応が、結晶構造を有するシリコンの堆積前駆体の生成に主として寄与しているためと考えられる。
【0096】
この場合、例えば、凹部に設けられた中空部144のガス供給口から供給するガスをシランガスまたは水素希釈のシランガスとすれば、堆積前駆体の成長が促進され、基板40に堆積する膜の堆積速度を向上させることができる。一方、凹部に設けられた中空部144のガス供給口から供給するガスをキセノン、クリプトン、アルゴンなどの希ガスにすれば、希ガスの励起種によりシランの分解が促進され高次ラジカルの生成に寄与するものとなる。
【0097】
本実施の形態に示す第1の電極は、凸部141及び凹部143を有するため、凸部141の頂部に高密度プラズマ領域を形成することが可能である。このため、高密度プラズマ領域において反応性が高まり、核及び堆積前駆体の生成を促進させることができる。この結果、実施の形態1と同様に、気相中で形成された秩序性を有する堆積前駆体を基板表面に堆積させ結晶核とし、当該結晶核を基板上での結晶成長の核として使用することができる。また、堆積する膜中に結晶性の堆積前駆体を含ませることができる。更に、結晶核上に微結晶半導体膜を堆積すると、秩序性を有する結晶核を結晶成長の核として下地膜との界面から結晶成長するため、下地膜界面から結晶性の高い微結晶半導体膜を形成することができる。さらには、反応室の圧力を従来の微結晶半導体膜の成膜圧力より高い圧力、代表的には450Pa以上13332Pa以下、好ましくは450Pa以上2000Pa以下、好ましくは500Pa以上1500Pa以下とすると共に、凸部近傍において高密度プラズマ領域を形成することで、堆積前駆体の生成速度が増加するため、隣接する結晶核44が密に接した状態で下地膜42上に形成させることが可能であると共に、結晶粒の間における非晶質半導体や低密度領域(鬆ともいう。)が低減するため、結晶性の高い微結晶半導体膜の成膜速度を高めることができる。
【0098】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態4より更に結晶性の高い微結晶半導体膜の形成方法について説明する。
【0099】
本実施の形態では、図1の堆積前駆体43及び微結晶半導体膜46の原料ガスとして、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体及び水素の他、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガスを用いることを特徴とする。
【0100】
原料ガスとして、アルゴン、キセノン、クリプトンのような励起エネルギーが小さく、且つシラン及び水素の解離エネルギーに近い準安定エネルギーを有する希ガスを用いることで、プラズマ中における電子密度及び水素ラジカル量が増加する。また、電子温度が低下するため、プラズマ電位差が減少し、微結晶半導体膜へのダメージが低減し、結晶性の高い微結晶半導体膜46を形成することができる。また、希ガスを原料ガスに用いることで、プラズマが安定し、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体、及び水素の解離が促進され、活性なラジカルの量が増加する。このため、活性なラジカル同士の反応が促進され、堆積前駆体43の生成速度及び微結晶半導体膜46の成膜速度が高まる。また、成膜速度が高まると、微結晶半導体膜46の堆積時間が短くなり、堆積中に取り込まれる反応室内の不純物量が低減するため、微結晶半導体膜46に含まれる不純物量が低減し、微結晶半導体膜46の結晶性を高めることができる。
【0101】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態5で示す形成方法を用いた微結晶半導体膜を有する薄膜トランジスタの構造について、図16を用いて説明する。
【0102】
実施の形態1乃至実施の形態5に示す形成方法を用いた微結晶半導体膜は、薄膜トランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。薄膜トランジスタとしては、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ及びトップゲート型の薄膜トランジスタの両方に用いることができるが、特にボトムゲート型の薄膜トランジスタに用いることで、薄膜トランジスタの特性を向上させることができる。ここでは、代表的はボトムゲート型の薄膜トランジスタの構造について、図16を用いて説明する。
【0103】
図16(A)に示す薄膜トランジスタは、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタである。基板201上にゲート電極203が形成され、基板201及びゲート電極203を覆うゲート絶縁膜204が形成される。ゲート絶縁膜204上には、微結晶半導体膜207が形成される。微結晶半導体膜207上には、一対の不純物半導体膜209が形成される。また、一対の不純物半導体膜209それぞれに接して、一対の配線211が形成される。微結晶半導体膜207を、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜を用いて形成することで、チャネル形成領域を結晶性の高い微結晶半導体膜で形成することができる。実施の形態1乃至実施の形態5により作製される微結晶半導体膜は結晶粒が隣接しており、結晶粒間の接触面積が大きいため、チャネル形成領域においてキャリアが移動しやすくなり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0104】
基板201は、ガラス基板、セラミック基板の他、本作製工程の処理温度に耐えうる程度の耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる。また、基板に透光性を要しない場合には、ステンレス合金等の金属の基板の表面に絶縁膜を設けたものを用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板を用いるとよい。また、基板201として、第3の世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm、または620mm×750mm)、第4の世代(680mm×880mm、または730mm×920mm)、第5の世代(1100mm×1300mm)、第6の世代(1500mm×1850mm)、第7の世代(1870mm×2200mm)、第8の世代(2200mm×2400mm)、第9の世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のガラス基板を用いることができる。
【0105】
ゲート電極203は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料、またはこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層でもしくは積層して形成することができる。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体膜やAgPdCu合金を用いてもよい。
【0106】
ゲート電極203の2層の積層構造としては、アルミニウム膜上にモリブデン膜が積層した二層構造、銅膜上にモリブデン膜を積層した二層構造、銅膜上に窒化チタン膜若しくは窒化タンタル膜を積層した二層構造、または窒化チタン膜とモリブデン膜とを積層した二層構造とすることが好ましい。ゲート電極203の三層構造としては、タングステン膜または窒化タングステン膜と、アルミニウム及びシリコンの合金またはアルミニウムとチタンの合金と、窒化チタン膜またはチタン膜とを積層した三層構造とすることが好ましい。電気的抵抗が低い膜上にバリア膜として機能する金属膜が積層されることで、電気的抵抗が低く、且つ金属膜から半導体膜への金属元素の拡散を防止することができる。
【0107】
なお、ゲート電極203及び基板201との密着性向上として、上記の金属材料の窒化物膜を、基板201とゲート電極203との間に設けてもよい。
【0108】
ゲート絶縁膜204は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコン膜を、単層若しくは積層して形成することができる。
【0109】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、好ましくは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、好ましくは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。ただし、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0110】
微結晶半導体膜207は、代表的には、微結晶シリコン膜、微結晶シリコンゲルマニウム膜、微結晶ゲルマニウム膜等を用いて形成する。また、リン、砒素、またはアンチモンを含む微結晶シリコン膜、リン、砒素、またはアンチモンを含む微結晶シリコンゲルマニウム膜、リン、砒素、またはアンチモンを含む微結晶ゲルマニウム膜等を用いて形成してもよい。なお、薄膜トランジスタのしきい値電圧を制御するため、微結晶半導体膜207に、ボロンを添加してもよい。
【0111】
微結晶半導体膜を構成する微結晶半導体とは、結晶構造(単結晶、多結晶を含む)を有する半導体である。微結晶半導体は、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な半導体であり、結晶粒径が2nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上80nm以下、より好ましくは、20nm以上50nm以下の柱状結晶または錐形結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。このため、柱状結晶または錐形結晶の界面には、結晶粒界が形成される場合もある。
【0112】
微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルのピークが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークを示す。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませてもよい。さらに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガス元素を含ませてもよく、これにより格子歪みをさらに助長させることで、微結晶の構造の安定性が増し良好な微結晶半導体が得られる。このような微結晶半導体に関する記述は、例えば、米国特許4,409,134号で開示されている。
【0113】
また、微結晶半導体膜に含まれる酸素及び窒素の二次イオン質量分析法によって計測される濃度を、1×1018atoms/cm3未満とすることで、微結晶半導体膜207の結晶性を高めることができるため好ましい。
【0114】
不純物半導体膜209は、薄膜トランジスタがnチャネル型の場合は、リンが添加されたアモルファスシリコン、またはリンが添加された微結晶シリコンで形成する。また、薄膜トランジスタがpチャネル型の場合は、ボロンが添加されたアモルファスシリコン、またはボロンが添加された微結晶シリコンで形成する。
【0115】
配線211は、アルミニウム、銅、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデン、クロム、タンタル若しくはタングステン等により単層で、または積層して形成することができる。または、ヒロック防止元素が添加されたアルミニウム合金(ゲート電極203に用いることができるアルミニウム−ネオジム合金等)により形成してもよい。不純物半導体膜209と接する側の膜を、チタン、タンタル、モリブデン、タングステンまたはこれらの元素の窒化物により形成し、その上にアルミニウムまたはアルミニウム合金を形成した積層構造としても良い。更には、アルミニウムまたはアルミニウム合金の上面及び下面を、チタン、タンタル、モリブデン、若しくはタングステン、またはこれらの元素の窒化物で挟んだ積層構造としてもよい。
【0116】
図16(B)に示す薄膜トランジスタは、チャネルストップ型の薄膜トランジスタである。基板201上にゲート電極203が形成され、基板201及びゲート電極203を覆うゲート絶縁膜204が形成される。ゲート絶縁膜204上には、微結晶半導体膜221が形成される。微結晶半導体膜221上には、チャネル保護膜223が形成される。また、微結晶半導体膜221及びチャネル保護膜223上には、一対の不純物半導体膜225が形成される。また、一対の不純物半導体膜225それぞれに接して、一対の配線227が形成される。微結晶半導体膜221を、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜の形成方法を用いて形成することで、チャネル形成領域を結晶性の高い微結晶半導体膜で形成することができる。実施の形態1乃至実施の形態5により作製される微結晶半導体膜は結晶粒が隣接しており、結晶粒間の接触面積が大きいため、チャネル形成領域におけるキャリアが移動しやすくなり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0117】
チャネル保護膜223は、ゲート絶縁膜204と同様に形成することができる。または、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、その他の有機絶縁膜を用いて形成することができる。
【0118】
一対の不純物半導体膜225は、図16(A)に示す一対の不純物半導体膜209と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0119】
一対の配線227は、図16(A)に示す一対の配線211と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0120】
チャネル保護型の薄膜トランジスタは、チャネル形成領域に実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜を用いて形成すると共に、チャネル保護膜を有するため、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めると共に、オフ電流を低減させることができる。
【0121】
図16(C)に示す薄膜トランジスタは、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタであり、微結晶半導体膜231と一対の不純物半導体膜237の間に非晶質半導体膜を有する点が図16(A)及び図16(B)と異なる。
【0122】
基板201上にゲート電極203が形成され、基板201及びゲート電極203を覆うゲート絶縁膜204が形成される。ゲート絶縁膜204上には、微結晶半導体膜231が形成される。微結晶半導体膜231上には、非晶質半導体膜235が形成される。また、非晶質半導体膜235上には、一対の不純物半導体膜237が形成される。また、一対の不純物半導体膜237それぞれに接して、一対の配線239が形成される。微結晶半導体膜231を、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜の形成方法を用いて形成することで、チャネル形成領域を結晶性の高い微結晶半導体膜で形成することができる。実施の形態1乃至実施の形態5により作製される微結晶半導体膜は結晶粒が隣接しており、結晶粒間の接触面積が大きいため、チャネル形成領域におけるキャリアが移動しやすくなり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。
【0123】
非晶質半導体膜235は、アモルファスシリコン、窒素を含むアモルファスシリコン、塩素を含むアモルファスシリコン等で形成することができる。微結晶半導体膜231及び一対の不純物半導体膜237の間に非晶質半導体膜235を設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0124】
また、非晶質半導体膜235として、低温フォトルミネッセンス分光によるスペクトルのピーク領域が、1.31eV以上1.39eV以下である半導体膜を用いることができる。当該半導体膜は、CPM(Constant photocurrent method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体膜を形成することができる。即ち、従来の非晶質半導体と比較して、欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体である。当該半導体膜は価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻であるため、バンドギャップが広くなり、トンネル電流が流れにくい。このため、当該半導体膜をバックチャネル側に設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減しつつ、オン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0125】
一対の不純物半導体膜237は、図16(A)に示す一対の不純物半導体膜209と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0126】
一対の配線239は、図16(A)に示す一対の配線211と同様の材料及び構造を用いて形成することができる。
【0127】
図16(C)に示す薄膜トランジスタは、チャネル形成領域に実施の形態1乃至実施の形態4に示す微結晶半導体膜を用いて形成すると共に、非晶質半導体膜235を有するため、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めると共に、オフ電流を低減させることができる。
【0128】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態6に示す薄膜トランジスタの一形態である図16(C)に示す薄膜トランジスタの作製方法について図17乃至図21を参照して説明する。
【0129】
ここでは、同一の基板上に形成する薄膜トランジスタを全て同じ導電型に統一すると、工程数を抑えることができるため好ましい。そのため、本実施の形態では、nチャネル型の薄膜トランジスタの作製方法について説明する。
【0130】
図17(A)に示すように、基板301上にゲート電極303を形成する。次に、ゲート電極303を覆うゲート絶縁膜304を形成した後に、実施の形態1乃至実施の形態4に示す方法を用いて、ゲート絶縁膜304上に結晶核305を形成する。
【0131】
基板301としては、実施の形態6に示す基板201を適宜用いることができる。
【0132】
ゲート電極303は、実施の形態6に示すゲート電極203に用いる材料及び構成を適宜用いることができる。
【0133】
ゲート電極303は、基板301上に、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて導電膜を形成し、該導電膜上にフォトリソグラフィ法またはインクジェット法等によりマスクを形成し、該マスクを用いて導電膜をエッチングして形成することができる。また、銀、金または銅等の導電性ナノペーストをインクジェット法により基板上に吐出し、焼成することで形成することもできる。ここでは、基板301上に導電膜を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程で形成したレジストマスクによりエッチングして、ゲート電極303を形成する。
【0134】
なお、フォトリソグラフィ工程においては、レジストを基板全面に形成してもよいが、レジストマスクを形成する領域に印刷法によりレジストを印刷した後、露光することで、レジストを節約することが可能であり、コスト削減が可能である。また、露光機を用いてレジストを露光する代わりに、レーザビーム直描装置によってレジストを露光してもよい。
【0135】
また、ゲート電極303の側面は、テーパ形状とすることで、ゲート電極303上に形成する半導体膜及び配線膜の、段差の箇所における切断を低減することができる。ゲート電極303の側面をテーパ形状にするためには、レジストマスクを後退させつつエッチングを行えばよい。
【0136】
また、ゲート電極303を形成する工程でゲート配線(走査線)及び容量配線も同時に形成することができる。なお、走査線とは画素を選択する配線をいい、容量配線とは画素の容量素子の一方の電極に接続された配線をいう。ただし、これに限定されず、ゲート配線及び容量配線の一方または双方と、ゲート電極303とは別工程で形成してもよい。
【0137】
ゲート絶縁膜304は、実施の形態6に示すゲート絶縁膜204に示す材料及び構成を適宜用いることができる。ゲート絶縁膜304は、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等を適宜用いることができる。
【0138】
また、ゲート絶縁膜304の最表面として、有機シランガスを用いたCVD法により酸化シリコン膜を形成することで、後に形成する第1の半導体膜の結晶性を高めることが可能であり、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることができる。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
【0139】
結晶核305は、実施の形態1乃至実施の形態5に示す堆積前駆体43の形成方法を用いて形成する。図2に示すプラズマCVD装置の第1の電極101の中空部144のガス供給口から、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体を反応室内に導入し、高周波電源をオンとし、高周波電力を供給して形成する。なお、中空部144のガス供給口から反応室内に導入する気体として、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体のほかに、水素を導入してもよい。更には、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体のほかに、水素及び希ガスを導入してもよい。
【0140】
次に、図17(B)に示すように、結晶核305を核として、結晶成長させて、第1の半導体膜306を形成する。
【0141】
第1の半導体膜306としては、実施の形態1乃至実施の形態5に示す微結晶半導体膜46の形成方法を用いて形成する。
【0142】
第1の半導体膜306の厚さは、3〜100nm、好ましくは5〜50nmとすることが望ましい。これは、第1の半導体膜306の厚さが薄すぎると、薄膜トランジスタのオン電流が低減する。また、第1の半導体膜306の厚さが厚すぎると、薄膜トランジスタが高温で動作する際に、オフ電流が上昇してしまうためである。第1の半導体膜306の厚さを厚さ3〜100nm、好ましくは5〜50nmとすることで、薄膜トランジスタのオン電流及びオフ電流を制御することができる。
【0143】
ここでは、第1の半導体膜306は、図2に示すプラズマCVD装置の第1の電極101の中空部144のガス供給口から、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と、水素とを反応室内に導入し、グロー放電プラズマにより形成する。または、図2に示すプラズマCVD装置の第1の電極101の中空部144のガス供給口から、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と、水素と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスとを反応室内に導入し、グロー放電プラズマにより形成する。シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の流量に対して、水素の流量を10〜2000倍、好ましくは10〜200倍に希釈して、微結晶シリコン、微結晶シリコンゲルマニウム、微結晶ゲルマニウム等を形成する。このときの堆積温度は、室温〜300℃、好ましくは200〜280℃が好ましい。
【0144】
シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の代表例としては、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、ゲルマン(GeH4)、ジゲルマン(Ge2H6)等がある。
【0145】
また、第1の半導体膜306を形成する前に、CVD装置の反応室内の気体を排気しながら、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体を導入して、反応室内の不純物を除去することで、後に形成される薄膜トランジスタのゲート絶縁膜304及び第1の半導体膜306の界面における不純物量を低減することが可能であり、薄膜トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0146】
また、第1の半導体膜306を形成する前に、ゲート絶縁膜304の表面に酸素プラズマ、水素プラズマ等を曝してもよい。
【0147】
次に、図17(C)に示すように、第1の半導体膜306上に第2の半導体膜307を形成する。ここでは、第2の半導体膜307として、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する構造を示す。次に、第2の半導体膜307上に、不純物半導体膜309、及び導電膜311を形成する。次に、導電膜311上にレジストマスク313を形成する。
【0148】
第1の半導体膜306を種結晶として、部分的に結晶成長させる条件で、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する第2の半導体膜307を形成することができる。
【0149】
第2の半導体膜307は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と、水素と、窒素を含む気体とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。窒素を含む気体としては、アンモニア、窒素、フッ化窒素、塩化窒素、クロロアミン、フルオロアミン等がある。グロー放電プラズマの生成は、第1の半導体膜306と同様にすることができる。
【0150】
このとき、原料ガスに、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体と窒素を含む気体を用いることで、第1の半導体膜306の堆積条件よりも、結晶成長を低減する条件とすることができる。この結果、第2の半導体膜307において、混合領域307b、及び欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体膜で形成される非晶質半導体を含む領域307cを形成することができる。
【0151】
ここでは、第2の半導体膜307を形成する条件の代表例は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量が10〜2000倍、好ましくは10〜200倍である。なお、通常の非晶質半導体膜を形成する条件の代表例は、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体の流量に対する水素の流量は0〜5倍である。
【0152】
また、第2の半導体膜307の原料ガスに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、またはクリプトン等の希ガスを導入することで、成膜速度を高めることができる。
【0153】
第2の半導体膜307の厚さは、厚さ50〜350nm、好ましくは120〜250nmとすることが好ましい。
【0154】
第2の半導体膜307の堆積初期においては、原料ガスに窒素を含む気体が含まれるため、部分的に結晶成長が抑制され、錐形状の微結晶半導体領域が成長すると共に、当該錐形状の微結晶半導体領域の間を充填する非晶質半導体領域が形成される。このように、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域が混在する領域を混合領域307bという。さらに、錐形状の微結晶半導体領域の結晶成長が停止し、微結晶半導体領域が含まれず、非晶質半導体領域のみが形成される。このように、微結晶半導体領域が含まれず、非晶質半導体領域のみが形成される領域を、非晶質半導体を含む領域307cという。なお、錐形状の微結晶半導体領域が成長する前に、第1の半導体膜306を種結晶として、第1の半導体膜306上全体に微結晶半導体膜が堆積される場合もある。
【0155】
ここでは、第2の半導体膜307の原料ガスに窒素を含む気体を含ませて、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する第2の半導体膜307を形成したが、他の第2の半導体膜307の形成方法として、第1の半導体膜306の表面に窒素を含む気体を曝して、第1の半導体膜306の表面に窒素を吸着させた後、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体及び水素を原料ガスとして用いて第2の半導体膜307を形成することで、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cを有する第2の半導体膜307を形成することができる。
【0156】
不純物半導体膜309は、プラズマCVD装置の反応室内において、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、ホスフィン(水素希釈またはシラン希釈)とを混合し、グロー放電プラズマにより形成する。シリコンを含む堆積性気体を水素で希釈して、リンが添加されたアモルファスシリコン、またはリンが添加された微結晶シリコンを形成する。なお、pチャネル型の薄膜トランジスタを作製する場合は、不純物半導体膜309として、ホスフィンの代わりに、ジボランを用いて、グロー放電プラズマによりボロンが添加されたアモルファスシリコン、またはボロンが添加された微結晶シリコンを形成すればよい。
【0157】
ここで、ゲート絶縁膜304と、不純物半導体膜309との間に形成される第2の半導体膜307の構造について、図19乃至図21を参照して説明する。図19乃至図21は、ゲート絶縁膜304と、不純物半導体膜309との間の拡大図である。
【0158】
図19(A)に示されるように、混合領域307bは、第1の半導体膜306の表面から凸状に伸びた微結晶半導体領域331aと、微結晶半導体領域331aの間に充填された非晶質半導体領域331bとを有する。
【0159】
微結晶半導体領域331aは、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって、先端が狭まる凸状(錐形状)の微結晶半導体である。なお、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって幅が広がる凸状(逆錐形状)の微結晶半導体であってもよい。
【0160】
また、混合領域307bに含まれる非晶質半導体領域331bに、粒径が1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下の半導体結晶粒を含んでいてもよい。
【0161】
また、図19(B)に示すように、混合領域307bは、第1の半導体膜306上に一定の厚さで堆積した微結晶半導体領域331cと、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって先端が狭まる凸状(錐形状)の微結晶半導体領域331aと、が連続的に形成される場合もある。
【0162】
また、図19(A)及び図19(B)に示す混合領域307bに含まれる非晶質半導体領域331bは、非晶質半導体を含む領域307cと概略同質の半導体である。
【0163】
これらのことから、微結晶半導体で形成される領域と非晶質半導体で形成される領域の界面は、混合領域307bにおける微結晶半導体領域331aと非晶質半導体領域331bの界面ともいえる。そのため、微結晶半導体と非晶質半導体との境界は、断面図において凹凸状またはジグザグ状であるといえる。
【0164】
また、混合領域307bにおいて、微結晶半導体領域331aが、ゲート絶縁膜304から非晶質半導体を含む領域307cに向かって先端が狭まる凸状(錐形状)の半導体結晶粒である場合には、非晶質半導体を含む領域307cの近傍よりも第1の半導体膜306の近傍のほうが、微結晶半導体が占める割合が高い。微結晶半導体領域331aは第1の半導体膜306の表面から膜厚方向に結晶成長する。しかし、原料ガスに窒素を含むガスを混合し、または原料ガスに窒素を含むガスを含ませつつ第1の半導体膜306の堆積条件よりもシランに対する水素の流量を少なくすると、微結晶半導体領域331aの結晶成長が抑制され、錐形状の半導体結晶粒となるとともに、やがて非晶質半導体が堆積する。これは、微結晶半導体領域における窒素の固溶度が、非晶質半導体領域における窒素の固溶度に比べて低いためである。
【0165】
第1の半導体膜306及び混合領域307bの厚さの合計、即ち、ゲート絶縁膜304の界面から、微結晶半導体領域331aの突起(凸部)の先端の距離は、3nm以上410nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下とする。第1の半導体膜306及び混合領域307bの厚さの合計を3nm以上410nm以下、好ましくは20nm以上100nm以下とすることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0166】
非晶質半導体を含む領域307cは、上述したように、非晶質半導体領域331bと概略同質の半導体であり、窒素を含む。さらには、粒径が1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下の半導体結晶粒を含む場合もある。ここでは、非晶質半導体を含む領域307cは、従来の非晶質半導体と比較して、CPM(Constant photocurrent method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体膜である。即ち、非晶質半導体を含む領域307cは、従来の非晶質半導体と比較して、欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体である。非晶質半導体を含む領域307cは、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻であるため、バンドギャップが広くなり、トンネル電流が流れにくい。このため、非晶質半導体を含む領域307cをバックチャネル側に設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、非晶質半導体を含む領域307cを設けることで、オン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0167】
さらに、非晶質半導体を含む領域307cは、低温フォトルミネッセンス分光によるスペクトルのピーク領域は、1.31eV以上1.39eV以下である。なお、微結晶半導体膜、代表的には微結晶シリコン膜を低温フォトルミネッセンス分光により測定したスペクトルのピーク領域は、0.98eV以上1.02eV以下であり、非晶質半導体を含む領域307cは、微結晶半導体膜とは異なるものである。
【0168】
なお、非晶質半導体を含む領域307cの非晶質半導体は、代表的にはアモルファスシリコンである。
【0169】
また、混合領域307b及び非晶質半導体を含む領域307cに含まれる窒素は、例えばNH基またはNH2基として存在していてもよい。
【0170】
また、図20に示すように、第1の半導体膜306と不純物半導体膜309との間がすべて混合領域307bとなる構成としてもよい。即ち、第2の半導体膜307が混合領域307bであってもよい。図20に示す構造では、混合領域307bにおける微結晶半導体領域331aの割合が、図19に示す構造よりも低いことが好ましい。さらには、ソース領域とドレイン領域の間、即ちキャリアが流れる領域においては、混合領域307bにおける微結晶半導体領域331aの割合が低いことが好ましい。この結果、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、混合領域307bにおいて、オン状態で配線325により構成されるソース電極及びドレイン電極に電圧を印加したときの縦方向(厚さ方向)の抵抗、即ち、半導体膜と、ソース領域またはドレイン領域との間の抵抗を下げることが可能であり、薄膜トランジスタのオン電流と電界効果移動度を高めることが可能である。
【0171】
なお、図20においても、図19(B)に示すように、混合領域307bに微結晶半導体領域331cを有していてもよい。
【0172】
また、図21(A)に示すように、非晶質半導体を含む領域307cと、不純物半導体膜309との間に、従来の非晶質半導体領域333dを設けてもよい。即ち、第2の半導体膜307が、混合領域307b、非晶質半導体を含む領域307c、及び非晶質半導体領域333dであってもよい。または、図21(B)に示すように、混合領域307b及び不純物半導体膜309の間に従来の非晶質半導体領域333dを設けてもよい。即ち、第2の半導体膜307が、混合領域307b及び非晶質半導体領域333dであってもよい。図21(A)及び図21(B)に示す構造を適用することにより、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0173】
なお、図21においても、図19(B)に示すように、混合領域307bに微結晶半導体領域331cを有していてもよい。
【0174】
混合領域307bは錐形状の微結晶半導体領域331aを有するため、オン状態でソース電極及びドレイン電極の間に電圧が印加されたときの縦方向(膜厚方向)における抵抗、即ち、第1の半導体膜306、混合領域307b、及び非晶質半導体を含む領域307cの抵抗を下げることが可能である。
【0175】
また、上述したように、混合領域307bに含まれる窒素は、代表的にはNH基またはNH2基として存在していてもよい。これは、微結晶半導体領域331aに含まれる、複数の微結晶半導体領域間の界面、微結晶半導体領域331aと非晶質半導体領域331bの界面、または第1の半導体膜306と非晶質半導体領域331bの界面において、NH基またはNH2基がシリコン原子のダングリングボンドと結合すると、欠陥の数が減るためである。このため、第2の半導体膜307の窒素濃度を1×1019atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下、好ましくは1×1020atoms/cm3乃至1×1021atoms/cm3、より好ましくは2×1020atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下とすることで、シリコン原子のダングリングボンドをNH基で架橋しやすくなり、キャリアが流れやすくなる。または、上記した界面における半導体原子のダングリングボンドがNH2基で終端されて、欠陥準位が消失する。この結果、オン状態でソース電極及びドレイン電極の間に電圧が印加されたときの縦方向(厚さ方向)の抵抗が低減する。即ち、薄膜トランジスタの電界効果移動度とオン電流が増加する。
【0176】
また、混合領域307bの酸素濃度を窒素濃度より低くすることにより、微結晶半導体領域331aと非晶質半導体領域331bの界面における欠陥、または半導体結晶粒同士の界面における欠陥による、キャリアの移動を阻害する結合を少なくすることができる。
【0177】
このため、チャネル形成領域を第1の半導体膜306で形成し、チャネル形成領域と不純物半導体膜309の間に、非晶質半導体を含む領域307cを設けることで、薄膜トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、混合領域307bと非晶質半導体を含む領域307cを設けることで、さらに、薄膜トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めつつ、オフ電流を低減することができる。これは、混合領域307bが錐形状の微結晶半導体領域331aを有し、非晶質半導体を含む領域307cには欠陥が少なく、価電子帯のバンド端における準位のテール(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体膜で形成されているからである。
【0178】
導電膜311は、実施の形態6に示す材料及び構造を適宜用いて形成することができる。
【0179】
導電膜311は、CVD法、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて形成する。または、導電膜311は、スクリーン印刷法もしくはインクジェット法等を用いて、銀、金または銅等の導電性ナノペーストを配置し、焼成することで形成してもよい。
【0180】
第2のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスク313を形成する。レジストマスク313は厚さの異なる領域を有する。このようなレジストマスクは、多階調マスクを用いて形成することができる。多階調マスクを用いることで、使用するフォトマスクの枚数が低減し、作製工程数が削減できるため好ましい。本実施の形態において、第1の半導体膜306、第2の半導体膜307のパターンを形成する工程と、ソース領域とドレイン領域を分離する工程において、多階調マスクを用いて形成したレジストマスクを用いることができる。
【0181】
多階調マスクとは、多段階の光量で露光を行うことが可能なマスクであり、代表的には、露光領域、半露光領域及び未露光領域の3段階の光量で露光を行う。多階調マスクを用いることで、一度の露光及び現像工程によって、複数(代表的には二種類)の厚さを有するレジストマスクを形成することができる。そのため、多階調マスクを用いることで、フォトマスクの枚数を削減することができる。
【0182】
次に、レジストマスク313を用いて、第1の半導体膜306、第2の半導体膜307、不純物半導体膜309、及び導電膜311をエッチングする。この工程により、第1の半導体膜306、第2の半導体膜307、不純物半導体膜309及び導電膜311を素子毎に分離し、第3の半導体膜315、不純物半導体膜317、及び導電膜319を形成する。なお、第3の半導体膜315は、第1の半導体膜306がエッチングされた微結晶半導体膜315a、第2の半導体膜307の混合領域307bがエッチングされた混合領域315b、及び第2の半導体膜307の非晶質半導体を含む領域307cがエッチングされた非晶質半導体を含む領域315cを有する(図17(D)を参照)。
【0183】
次に、レジストマスク313を後退させて、分離されたレジストマスク323を形成する。レジストマスクの後退には、酸素プラズマによるアッシングを用いればよい。ここでは、ゲート電極上で分離するようにレジストマスク313をアッシングすることで、レジストマスク323を形成することができる(図18(A)参照)。
【0184】
次に、レジストマスク323を用いて導電膜319をエッチングし、ソース電極及びドレイン電極として機能する配線325を形成する(図18(B)を参照)。ここでは、ドライエッチングを用いる。配線325は、ソース電極またはドレイン電極のみならず信号線としても機能する。ただし、これに限定されず、信号線とソース電極及びドレイン電極とは別に設けてもよい。
【0185】
次に、レジストマスク323を用いて、第3の半導体膜315の非晶質半導体を含む領域315c、及び不純物半導体膜317のそれぞれ一部をエッチングする。ここでは、ドライエッチングを用いる。本工程までで、表面に凹部を有する非晶質半導体を含む領域329c、ソース領域及びドレイン領域として機能する不純物半導体膜327を形成する(図18(C)参照)。この後、レジストマスク323を除去する。
【0186】
なお、ここでは、導電膜319、非晶質半導体を含む領域315c、及び不純物半導体膜317のそれぞれ一部をドライエッチングしたため、導電膜319が異方的にエッチングされ、配線325の側面及び不純物半導体膜327の側面は概略一致する形状となる。
【0187】
なお、導電膜319をエッチングし、レジストマスク323を除去した後、不純物半導体膜317及び非晶質半導体を含む領域315cの一部をエッチングしてもよい。当該エッチングより、配線325を用いて不純物半導体膜317をエッチングするため、配線325の側面及び不純物半導体膜327の側面が概略一致する。
【0188】
また、導電膜319をウェットエッチングし、非晶質半導体を含む領域315c及び不純物半導体膜317をドライエッチングしてもよい。ウェットエッチングにより、導電膜319が等方的にエッチングされるため、レジストマスク323よりも内側に後退した、配線325が形成される。また、配線325の側面の外側に、不純物半導体膜327の側面が形成される形状となる。
【0189】
次に、ドライエッチングを行ってもよい。ドライエッチングの条件は、露出している非晶質半導体を含む領域329c表面にダメージが入らず、且つ非晶質半導体を含む領域329cに対するエッチングレートが低い条件を用いる。つまり、露出している非晶質半導体を含む領域329c表面にほとんどダメージを与えず、且つ非晶質半導体を含む領域329cの露出している部分の厚さがほとんど減少しない条件を用いる。エッチングガスとしては、代表的にはCl2、CF4、またはN2等を用いる。また、エッチング方法については特に限定はなく、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)方式、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)方式、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance)方式、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)方式等を用いることができる。
【0190】
次に、非晶質半導体を含む領域329cの表面をプラズマ処理、代表的には水プラズマ処理、アンモニアプラズマ処理、窒素プラズマ処理等を行ってもよい。
【0191】
水プラズマ処理は、水蒸気に代表される、水を主成分とするガスを反応空間に導入し、プラズマを生成して、行うことができる。
【0192】
上記したように、不純物半導体膜327を形成した後に、非晶質半導体を含む領域329cにダメージを与えない条件で更なるドライエッチングを行うことで、露出した非晶質半導体を含む領域329c表面上に存在する残渣などの不純物を除去することができる。また、プラズマ処理を行うことで、ソース領域とドレイン領域との間の絶縁を確実なものにすることができ、完成する薄膜トランジスタのオフ電流を低減し、電気的特性のばらつきを低減することができる。
【0193】
以上の工程により、少ないマスク数で、電気特性の良好な薄膜トランジスタを生産性高く作製することができる。
【0194】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態6及び実施の形態7で示す薄膜トランジスタを用いることが可能な、素子基板、及び当該素子基板を有する表示装置について、以下に示す。表示装置としては、液晶表示装置、発光表示装置、電子ペーパー等があるが、上記実施の形態の薄膜トランジスタは他の表示装置の素子基板にも用いることができる。ここでは、上記実施の形態6及び実施の形態7で示す薄膜トランジスタを有する液晶表示装置、代表的には、VA(Vertical Alignment)型の液晶表示装置について、図22及び図23を用いて説明する。
【0195】
図22において、液晶表示装置の画素部の断面構造を示す。基板401上に、上記実施の形態で作製される薄膜トランジスタ403及び容量素子405が形成される。また、薄膜トランジスタ403上に形成される絶縁膜408上に画素電極409が形成される。薄膜トランジスタ403のソース電極またはドレイン電極407と、画素電極409とは、絶縁膜408に設けられる開口部において、接続される。画素電極409上には配向膜411が形成される。
【0196】
容量素子405は、薄膜トランジスタ403のゲート電極402と同時に形成される容量配線404と、ゲート絶縁膜406と、画素電極409とで構成される。
【0197】
基板401から配向膜411までの積膜体を素子基板413という。
【0198】
対向基板421には、薄膜トランジスタ403への光の入射を遮断する遮光膜423と、着色膜425とが形成される。また、遮光膜423及び着色膜425上に平坦化膜427が形成される。平坦化膜427上に対向電極429が形成され、対向電極429上に配向膜431が形成される。
【0199】
なお、対向基板421上の、遮光膜423、着色膜425、及び平坦化膜427により、カラーフィルタとして機能する。なお、遮光膜423、平坦化膜427の何れか一方、または両方は、対向基板421上に形成されていなくともよい。
【0200】
また、着色膜は、可視光の波長範囲のうち、任意の波長範囲の光を優先的に透過させる機能を有する。通常は、赤色波長範囲の光、青色波長範囲の光、及び緑色波長範囲の光、それぞれを優先的に透過させる着色膜を組み合わせて、カラーフィルタに用いることが多い。しかしながら、着色膜の組み合わせに関しては、これに限られない。
【0201】
基板401及び対向基板421は、シール材(図示しない)で固定され、基板401、対向基板421、及びシール材の内側に液晶層443が充填される。また、基板401及び対向基板421の間隔を保つために、スペーサ441が設けられている。
【0202】
画素電極409、液晶層443、及び対向電極429が重なり合うことで、液晶素子が形成されている。
【0203】
図23に、図22とは異なる液晶表示装置を示す。ここでは、対向基板421側に着色膜が形成されず、薄膜トランジスタ403が形成される基板401側に着色膜が形成されることを特徴とする。
【0204】
図23において、液晶表示装置の画素部の断面構造を示す。基板401上に、上記実施の形態で作製される薄膜トランジスタ403及び容量素子405が形成される。
【0205】
また、薄膜トランジスタ403上に形成される絶縁膜408上に、着色膜451が形成される。また、着色膜451上には、着色膜451に含まれる不純物が液晶層443に混入するのを防ぐために、保護膜453が形成される。着色膜451及び保護膜453上に、画素電極409が形成される。着色膜451は、各画素毎に、任意の波長範囲の光(赤色、青色、または緑色)を優先的に透過させる膜で形成すればよい。また、着色膜451は平坦化膜としても機能するため、液晶層443の配向ムラを低減することができる。
【0206】
薄膜トランジスタ403のソース電極またはドレイン電極407と、画素電極409とは、絶縁膜408、着色膜451、及び保護膜453に設けられる開口部において、接続される。画素電極409上には配向膜411が形成される。
【0207】
容量素子405は、薄膜トランジスタ403のゲート電極402と同時に形成される容量配線404と、ゲート絶縁膜406と、画素電極409とで構成される。
【0208】
基板401から配向膜411までの積層体を素子基板455という。
【0209】
対向基板421には、薄膜トランジスタ403への光の入射を遮断する遮光膜423と、遮光膜423及び対向基板421を覆う平坦化膜427が形成される。平坦化膜427上に対向電極429が形成され、対向電極429上に配向膜431が形成される。
【0210】
画素電極409、液晶層443、及び対向電極429が重なり合うことで、液晶素子が形成されている。
【0211】
なお、ここでは、液晶表示装置として、VA型の液晶表示装置を示したが、これに限定されない。すなわち、実施の形態6及び実施の形態7に示す薄膜トランジスタを用いて形成した素子基板を、FFS型の液晶表示装置、IPS型の液晶表示装置、TN型の液晶表示装置又はその他の液晶表示装置に用いることができる。
【0212】
本実施の形態の液晶表示装置は、オン電流及び電界効果移動度が高くオフ電流が低い薄膜トランジスタを画素トランジスタとして用いているため、画質が良好(例えば、高コントラスト)の表示画質を高めることができる。また、薄膜トランジスタの大きさを小さくしても、薄膜トランジスタの電気特性が低減されないため、薄膜トランジスタの面積を小さくすることで、液晶表示装置の開口率を向上させることができる。または、画素の面積を小さくすることが可能であり、液晶表示装置の解像度を高めることができる。
【0213】
また、図23に示す液晶表示装置は、遮光膜423と、着色膜451を同一基板上に形成しない。このため、着色膜451の形成におけるマスクずれを回避するため、遮光膜423の面積を大きくする必要がなくなるため、画素における開口率を向上させることができる。
【0214】
(実施の形態9)
実施の形態8で示す素子基板413、455において、配向膜411を形成せず、発光素子を設けることにより、当該素子基板を発光表示装置や、発光装置に用いることができる。発光表示装置や発光装置は、発光素子として代表的には、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子がある。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0215】
本実施の形態の発光表示装置及び発光装置は、オン電流及び電界効果移動度が高くオフ電流が低い薄膜トランジスタを画素トランジスタとして用いているため、画質が良好(例えば、高コントラスト)であり、且つ消費電力の低い発光表示装置及び発光装置を作製することができる。
【0216】
(実施の形態10)
上記実施の形態に係る薄膜トランジスタを有する表示装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、電子ペーパー、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。特に、実施の形態8及び実施の形態9で示したように、上記実施の形態に係る薄膜トランジスタを液晶表示装置、発光装置、電気泳動方式表示装置などに適用することにより、電子機器の表示部に用いることができる。以下に具体的に例示する。
【0217】
上記実施の形態に係る薄膜トランジスタを有する半導体装置は、電子ペーパーに適用することができる。電子ペーパーは、情報を表示するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブック)、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、デジタルサイネージ、PID(Public Infomation Display)、クレジットカード等の各種カードにおける表示等に適用することができる。電子機器の一例を図24に示す。
【0218】
図24(A)は、電子書籍の一例を示している。図24(A)に示す電子書籍は、筐体500および筐体501の2つの筐体で構成されている。筐体500および筐体501は、蝶番504により一体になっており、開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0219】
筐体500には表示部502が組み込まれ、筐体501には表示部503が組み込まれている。表示部502および表示部503は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図24(A)では表示部502)に文章を表示し、左側の表示部(図24(A)では表示部503)に画像を表示することができる。
【0220】
また、図24(A)では、筐体500に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体500は、電源505、操作キー506、スピーカ507などを備えている。操作キー506により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングディバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、図24(A)に示す電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0221】
また、図24(A)に示す電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0222】
図24(B)は、デジタルフォトフレームの一例を示している。例えば、図24(B)に示すデジタルフォトフレームは、筐体511に表示部512が組み込まれている。表示部512は、各種画像を表示することが可能であり、例えばデジタルカメラなどで撮影した画像データを表示させることで、通常の写真立てと同様に機能させることができる。
【0223】
なお、図24(B)に示すデジタルフォトフレームは、操作部、外部接続用端子(USB端子、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成とするとよい。これらの構成は、表示部と同一面に組み込まれていてもよいが、側面や裏面に備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像データを取り込み、取り込んだ画像データを表示部512に表示させることができる。
【0224】
また、図24(B)に示すデジタルフォトフレームは、無線で情報を送受信出来る構成としてもよい。無線により、所望の画像データを取り込み、表示させる構成とすることもできる。
【0225】
図24(C)は、テレビジョン装置の一例を示している。図24(C)に示すテレビジョン装置は、筐体521に表示部522が組み込まれている。表示部522により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド523により筐体521を支持した構成を示している。表示部522は、実施の形態8及び実施の形態9に示した表示装置を適用することができる。
【0226】
テレビジョン装置の操作は、筐体521が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。リモコン操作機が備える操作キーにより、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部522に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0227】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とするとよい。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0228】
図24(D)は、携帯電話機の一例を示している。図24(D)に示す携帯電話機は、筐体531に組み込まれた表示部532の他、操作ボタン533、操作ボタン537、外部接続ポート534、スピーカ535、マイク536などを備えている。表示部532には、実施の形態8及び実施の形態9に示した表示装置を適用することができる。
【0229】
図24(D)に示す携帯電話機は、表示部532がタッチパネルになっており、指などの接触により、表示部532の表示内容を操作することができる。また、電話の発信、或いはメールの作成は、表示部532を指などで接触することにより行うことができる。
【0230】
表示部532の画面は主として3つのモードがある。第1のモードは、画像の表示を主とする表示モードであり、第2のモードは、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3のモードは、表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0231】
例えば、電話の発信、或いはメールを作成する場合は、表示部532を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部532の画面の大部分の領域にキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0232】
また、携帯電話機の内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦または横)を判断して、表示部532のモード(または表示情報)を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0233】
また、画面のモードの切り替えは、表示部532への接触、又は筐体531の操作ボタン537の操作により行われる。また、表示部532に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替えることができる。
【0234】
また、入力モードにおいて、表示部532の光センサで検出される信号を検知し、表示部532のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0235】
表示部532は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部532を掌や指で触れることで、掌紋、指紋等をイメージセンサで撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0236】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0237】
本実施例では、高圧条件、または、アルゴン添加条件により、微結晶半導体膜の結晶性が向上する様子について、計算機シミュレーションを用いて確認した結果を示す。具体的には、異なる圧力、異なるガス種における水素ラジカルの密度を計算し、比較した結果を示す。なお、計算には、CFD Research Corporation社製のマルチフィジックス解析ソフトウェアCFD−ACE+を用いた。
【0238】
計算における成膜装置のモデルとしては、平行平板容量結合型のCVD装置を想定した。成膜装置の構成の概略を図25に示す。上部電極1000(RF電極と呼んでもよい)は、コンデンサ1010を介して高周波電源1020に接続される。基板ステージとして機能する下部電極1002は接地されている。
【0239】
計算により求められた水素ラジカル密度を図26に示す。図26において、横軸は上部電極からの距離(m)を示し、縦軸は水素ラジカルの密度(m−3)を示す。図26から、高圧条件(500Pa、H2)の場合には、低圧条件(100Pa、H2)と比較して、水素ラジカル密度が高くなっていることが分かる。これは、高圧条件では、低圧条件と比較して、水素の衝突解離レートが向上することに起因するものである。
【0240】
また、水素のみの場合(100Pa、H2)と比較して、アルゴンを添加した混合ガス(100Pa、H2+Ar)では、水素ラジカル密度が高くなっていることが分かる。アルゴンを添加することにより水素分子密度は低下するため、水素の衝突解離レートは低下するが、気相中における以下の反応により、水素の分解が促進され、水素ラジカル密度が高まっているものと考察される。
Ar++H2→H++H+Ar (1)
ArH++H2→H3++Ar (2)
H−+ArH+→Ar+2H (3)
e+ArH+→Ar+H (4)
H−+Ar+→Ar+H (5)
Ar(4s)+H2→2H+Ar (6)
Ar(4p)+H2→2H+Ar (7)
【0241】
水素ラジカル密度が高まることにより、水素ラジカル−水素ラジカルの反応が促進される。そして、当該反応による余剰エネルギーが放出され、反応表面では加熱の効果が生じる。例えば、当該反応が高次ラジカル(SiHn)x(n=1、2、3)の表面で生じた場合、余剰エネルギーにより、高次ラジカルの結晶性が向上することになる。
【0242】
このように、水素ラジカル密度は、良好な結晶性を備える結晶核の生成に大きな影響を与える。上記計算の結果より、水素ラジカル密度を高めることで、微結晶半導体膜の結晶性が向上することが理解される。
【実施例2】
【0243】
本実施例では、実施の形態2の図6に示すような形状の第1の電極101を有するプラズマCVD装置を用いて形成した微結晶シリコン膜について、図27及び図28を用いて説明する。
【0244】
はじめに、本実施例で用いた第1の電極101の形状の詳細について示す。図27(A)は本実施例で用いた第1の電極101を第2の電極側からみた斜視図を示し、図27(B)は図27(A)のA−Bにおける断面図である。なお、図27(A)においては、第1の電極101を第2の電極側からみているため、中空部607が下側である。また、図27(B)においては、中空部607は上側であり、ガスは矢印方向に流れる。
【0245】
図27(A)に示すように、共通平面である凹部601上において分離された凸部603が形成される。また、凹部601にガス供給口605が形成される。また、凹部601で隣接するガス供給口605の間隔d1は3mmであった。
【0246】
図27(B)に示すように、凸部603及びガス供給口605が交互に配列するA−B断面において、ガス供給口605を有する平面の幅d2は1.4mm、隣接する凸部603の頂部の間隔d3は3.1mm、ガス供給口605の間隔d4は、4.2mmであった。
【0247】
次に、図27に示すような第1の電極101を備えたプラズマCVD装置の反応室で形成した微結晶シリコン膜の結晶性の関係について、図28に示す。
【0248】
ここでは、反応室に、シラン、750sccmの水素、750sccmのアルゴンを導入し、基板温度を250℃、反応室の圧力を1237Pa、第1の電極101の凸部の表面と基板との間隔を7mmとし、周波数13.56MHzの高周波を第1の電極に供給して、基板上に微結晶シリコン膜を形成した。このとき、シランの流量を3sccm、4sccm、5sccm、6sccmと条件振りをした。また、高周波電源の電力を50Wから350Wまで、50W刻みで条件振りをした。また、微結晶シリコン膜の厚さは、サンプルにより21nmから37nmであった。
【0249】
ここで、比較例である従来の微結晶シリコン膜の成膜条件を以下に示す。反応室に、10sccmのシラン、1500sccmの水素、1500sccmのアルゴンを導入し、基板温度を280℃、反応室の圧力を280Pa、第1の電極101(平行平板)と基板間隔を24.5mmとし、周波数13.56MHzの高周波を第1の電極に供給して、基板上に微結晶シリコン膜を形成した。このとき、高周波電源の電力を50Wとした。
【0250】
次に、微結晶シリコン膜の結晶性(Ic/Ia;結晶ピークの高さとアモルファスピークの高さの比)をラマン分光分析により測定した。ラマン分光分析としては、LabLAM HR−PL(堀場製作所製)を用いた。また、測定条件としては、焦点距離800mm、グレーティング:600gr/mm、励起光:YAG固体レーザ光(λ=532nm)とし、−70℃における検出波長範囲が200nm〜1000nmのCCD検出器を用いた。また、励起光のスポット径を約0.75μmとした。
【0251】
図28は、シラン流量を3sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性をひし形で示し、シラン流量を4sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性を四角で示し、シラン流量を5sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性を三角で示し、シラン流量を6sccmとしたときの微結晶シリコン膜の結晶性を丸で示した。
【0252】
また、比較例である従来の微結晶シリコン膜の結晶性(Ic/Ia)を破線611で示した。
【0253】
図28から、高周波電源の電力に対して微結晶シリコン膜の結晶性は極大値を取る傾向があり、そのピーク位置はシランの流量によって異なる。シラン流量の少ない高希釈条件ほどIc/Iaの極大値は低パワー側となり、微結晶シリコン膜の結晶性が高くなる。また、従来の微結晶シリコン膜の成膜条件と比較して、圧力を高くし、高周波電源の電力を高くすることで、微結晶シリコン膜の結晶性を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVD装置の反応室内における反応ガスの圧力を450Pa以上13332Pa以下とし、当該プラズマCVD装置の第1の電極と第2の電極の間隔を1mm以上20mm以下として、前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、前記第1の電極および前記第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、
前記プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する堆積前駆体を形成し、
前記堆積前駆体を前記基板上に堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、
前記結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成する、微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項2】
反応室内に第1の電極と第2の電極が備えられたプラズマCVD装置を用いた微結晶半導体膜の作製方法であって、
前記第2の電極と対向し、該第2の電極と対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される前記第1の電極のガス供給口から前記反応室に反応ガスを導入し、
前記反応室の圧力を450Pa以上13332Pa以下とし、
前記第1の電極と前記第2の電極の間隔を1mm以上20mm以下とし、
前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、前記第1の電極および前記第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、
前記プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する半導体でなる堆積前駆体を形成し、
前記堆積前駆体を基板上に堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、
前記結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成することを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、前記ガス供給口は、前記複数の凸部の間に設けられることを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項4】
請求項2において、前記ガス供給口は、前記複数の凸部の頂部に設けられることを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項5】
反応室内に上部電極と下部電極が備えられたプラズマCVD装置を用いた微結晶半導体膜の作製方法であって、
前記反応室内に反応ガスを導入し、
前記反応室内の圧力を450Pa以上13332Pa以下に調整し、
前記上部電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより前記上部電極と前記下部電極の間にプラズマ領域を形成し、
前記プラズマ領域を含む気相中で、結晶性を有する堆積前駆体を形成し、
前記堆積前駆体を堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、
前記結晶核から結晶成長させ、
前記上部電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の頂部に設けられた第1のガス供給口と、該複数の凸部の間に設けられた第2のガス供給口と、を有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされており、
前記上部電極と前記下部電極の間隔は1mm以上20mm以下であることを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記反応ガスに希ガスを加えることにより、前記電子密度の高いグロー放電プラズマにおける電子温度を下げると共に、前記電子密度の高いグロー放電プラズマにおける電子密度を高め、前記微結晶半導体膜の結晶性を向上させる、微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項7】
基板上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層を形成した後に、
請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の微結晶半導体膜の作製方法を用いて、前記ゲート絶縁層上に微結晶半導体層を形成し、
前記微結晶半導体層に電気的に接続される配線を形成する、薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項8】
反応室内に第1の電極と第2の電極が備えられたプラズマCVD装置であって、
前記反応室内に備えられ、基板が載置される第2の電極と、
前記第2の電極と対向し、該対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される第1の電極と、を有し、
前記第1の電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の間に設けられたガス供給口とを有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項9】
反応室内に第1の電極と第2の電極が備えられたプラズマCVD装置であって、
前記反応室内に備えられ、基板が載置される第2の電極と、
前記第2の電極と対向し、該対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される第1の電極と、を有し、
前記第1の電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の頂部に設けられたガス供給口とを有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項10】
反応室内に上部電極と下部電極が備えられたプラズマCVD装置であって、
前記反応室内に備えられ、基板が載置される下部電極と、
前記下部電極と対向し、該対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される上部電極と、を有し、
前記上部電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の頂部に設けられた第1のガス供給口と、該複数の凸部の間に設けられた第2のガス供給口と、を有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項1】
プラズマCVD装置の反応室内における反応ガスの圧力を450Pa以上13332Pa以下とし、当該プラズマCVD装置の第1の電極と第2の電極の間隔を1mm以上20mm以下として、前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、前記第1の電極および前記第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、
前記プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する堆積前駆体を形成し、
前記堆積前駆体を前記基板上に堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、
前記結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成する、微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項2】
反応室内に第1の電極と第2の電極が備えられたプラズマCVD装置を用いた微結晶半導体膜の作製方法であって、
前記第2の電極と対向し、該第2の電極と対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される前記第1の電極のガス供給口から前記反応室に反応ガスを導入し、
前記反応室の圧力を450Pa以上13332Pa以下とし、
前記第1の電極と前記第2の電極の間隔を1mm以上20mm以下とし、
前記第1の電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより、前記第1の電極および前記第2の電極の間にプラズマ領域を形成し、
前記プラズマ領域を含む気相中において、結晶性を有する半導体でなる堆積前駆体を形成し、
前記堆積前駆体を基板上に堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、
前記結晶核から結晶成長させることにより微結晶半導体膜を形成することを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、前記ガス供給口は、前記複数の凸部の間に設けられることを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項4】
請求項2において、前記ガス供給口は、前記複数の凸部の頂部に設けられることを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項5】
反応室内に上部電極と下部電極が備えられたプラズマCVD装置を用いた微結晶半導体膜の作製方法であって、
前記反応室内に反応ガスを導入し、
前記反応室内の圧力を450Pa以上13332Pa以下に調整し、
前記上部電極に60MHz以下の高周波電力を供給することにより前記上部電極と前記下部電極の間にプラズマ領域を形成し、
前記プラズマ領域を含む気相中で、結晶性を有する堆積前駆体を形成し、
前記堆積前駆体を堆積させることにより、5nm以上15nm以下の結晶核を形成し、
前記結晶核から結晶成長させ、
前記上部電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の頂部に設けられた第1のガス供給口と、該複数の凸部の間に設けられた第2のガス供給口と、を有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされており、
前記上部電極と前記下部電極の間隔は1mm以上20mm以下であることを特徴とする微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記反応ガスに希ガスを加えることにより、前記電子密度の高いグロー放電プラズマにおける電子温度を下げると共に、前記電子密度の高いグロー放電プラズマにおける電子密度を高め、前記微結晶半導体膜の結晶性を向上させる、微結晶半導体膜の作製方法。
【請求項7】
基板上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層を形成した後に、
請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の微結晶半導体膜の作製方法を用いて、前記ゲート絶縁層上に微結晶半導体層を形成し、
前記微結晶半導体層に電気的に接続される配線を形成する、薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項8】
反応室内に第1の電極と第2の電極が備えられたプラズマCVD装置であって、
前記反応室内に備えられ、基板が載置される第2の電極と、
前記第2の電極と対向し、該対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される第1の電極と、を有し、
前記第1の電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の間に設けられたガス供給口とを有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項9】
反応室内に第1の電極と第2の電極が備えられたプラズマCVD装置であって、
前記反応室内に備えられ、基板が載置される第2の電極と、
前記第2の電極と対向し、該対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される第1の電極と、を有し、
前記第1の電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の頂部に設けられたガス供給口とを有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項10】
反応室内に上部電極と下部電極が備えられたプラズマCVD装置であって、
前記反応室内に備えられ、基板が載置される下部電極と、
前記下部電極と対向し、該対向する面に複数の凸部が設けられ、高周波電力が供給される上部電極と、を有し、
前記上部電極は、前記高周波電力が供給されて前記反応室内に電子密度の高いグロー放電プラズマを形成する複数の凸部と、前記複数の凸部の頂部に設けられた第1のガス供給口と、該複数の凸部の間に設けられた第2のガス供給口と、を有し、
前記複数の凸部はテーパ形状を有し、且つ面取りされていることを特徴とするプラズマCVD装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図17】
【図18】
【図19】
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【図25】
【図26】
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【図27】
【公開番号】特開2011−71498(P2011−71498A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186900(P2010−186900)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】
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