説明

筒内噴射式ガソリン機関の制御装置

【課題】筒内噴射式ガソリン機関において、筒内の混合気が過濃(リッチ)状態になりやすい加速運転時にも、燃費悪化を最小限に抑えつつPM排出量を抑制する。
【解決手段】筒内噴射式ガソリン機関において、加速運転時に、排気閉弁時期を早期化することにより内部EGRを増量するとともに燃料噴射圧力を上昇する。その際、燃料噴射圧力の上昇幅を現在の排気閉弁時期に基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン機関の制御装置に係り、特に、筒内噴射式ガソリン機関の粒子状物質、いわゆるPM(Particulate Matter)排出量の低減に好適な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒内噴射式ガソリン機関は、吸気ポート噴射式のガソリン機関と比較して、PM排出量が多いことが課題である。その原因としては、筒内に直接燃料を噴射することによるシリンダやピストンへの燃料付着や、不十分な混合によって生じる局所的な燃料過濃領域の存在が挙げられる。従って筒内噴射式ガソリン機関のPM対策としては、燃料付着量の低減や燃料と空気との混合の促進が有効である。
【0003】
筒内噴射式ガソリン機関におけるPM排出量を抑制する技術として、PM排出量が大きい始動冷機時において、高温の排気ガスを燃焼室に存在させる、つまり内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)を導入することで燃料の気化を促進し、黒煙の排出を抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−327651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PMが排出されるのは始動冷機時のみではなく、エンジン完暖後に排出される量も無視できない。特に、空気と燃料の制御応答性の差異により筒内の混合気が燃料過濃(リッチ)状態になりやすい加速運転時には、PMが多く排出される。さらに加速時においては、PM排出量を抑制するために各エンジンデバイス(動弁,燃料噴射,点火など)のパラメータを設定したとしても、応答の遅いパラメータにより燃焼室が過渡的に所望と異なる状態を経てしまうため、そこでPM排出量が増大してしまうという課題がある。従って、加速時に排出されるPMの量を低減するためには、各デバイスの過渡応答性を十分に考慮する必要がある。
【0006】
上記のような問題点に鑑み、本発明の目的は、筒内の空燃比がリッチな状態になりやすい加速運転時においても、PM排出量を抑制することができる筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置は、排気弁に可変動弁機構を備えた筒内噴射式ガソリン機関において、車両の運転状態を判定する運転状態判定手段を有し、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記排気弁の閉弁時期を早期化すること、を特徴としている。
【0008】
かかる構成により、筒内混合気がリッチになりやすい加速運転時において、排気弁早閉じにより内部EGRを導入し、燃料の気化を促進することにより、PMの生成および排出量を低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の他の態様としては、排気弁に可変動弁機構を備えた筒内噴射式ガソリン機関において、車両の運転状態を判定する運転状態判定手段を有し、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記排気弁の閉弁時期を早期化するとともに、燃料噴射圧力を上昇させること、を特徴としている。
【0010】
かかる構成により、排気弁制御の応答速度が遅く、内部EGR量が所望値(目標値)に達するまでに数サイクルを要する場合にも、内部EGR量が所望値に達するまでの期間中に、応答速度が速い燃料圧力を上昇させることで燃料を微粒化し、気化を促進することによりPMを抑制することが可能となる。
【0011】
更にまた、本発明の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の他の態様としては、排気弁に可変動弁機構を備えた筒内噴射式ガソリン機関において、車両の運転状態を判定する運転状態判定手段を有し、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記排気弁の閉弁時期を早期化するとともに、燃料噴射圧力を上昇させ、さらに、前記排気弁の閉弁時期が早期化するに伴い前記燃料噴射圧力の上昇幅を減少させること、を特徴としている。
【0012】
かかる構成により、内部EGRが所望値(目標値)に近づくに伴い、燃料噴射圧力の上昇幅を下げていくことで、PM排出量を抑制しながら、燃料噴射圧力の上昇による燃料ポンプ駆動力の上昇を最小限に抑え、車両の燃費を向上させることが可能となる。
【0013】
更にまた、本発明の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の他の態様としては、さらに前記エンジンの出力軸に直接またはギアを介して接続するモータを備え、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、車両の全駆動力に占める前記モータの駆動力の割合が増加するように、前記ガソリン機関の駆動力または前記モータの駆動力を制御すること、を特徴としている。
【0014】
かかる構成により、加速時に内部EGR量を増加することにより吸入空気量の応答遅れが生じ、エンジンのトルクレスポンスが低下する場合にも、モータにより車両駆動力(トルク)をアシストすることで、車両の加速性能を損なうことなく、PM低減を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、混合気が過濃(リッチ)状態になりやすい加速運転時においても、燃費の悪化を最小限に抑えつつ、内部EGR量増加によりPM排出量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ機構の特性の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の燃料量および空気量のタイムチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における、PM低減方法の基本原理を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブおよび燃料圧力制御内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブおよび燃料圧力制御のタイムチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の排気弁閉弁時期と燃料噴射圧力の関係を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における、PM低減方法の基本原理を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時のEGR弁および燃料圧力制御内容を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時のEGR弁および燃料圧力制御のタイムチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の吸気温度と燃料噴射圧力の関係を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブおよび空燃比制御内容を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第3の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブおよび空燃比制御のタイムチャートである。
【図17】本発明の第4の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブ制御内容を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第4の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブ制御のタイムチャートである。
【図19】本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置をハイブリッド自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成図である。
【図20】本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【図21】本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブ,燃料圧力,モータ駆動力の制御内容を示すフローチャートである。
【図22】本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の可変バルブ,燃料圧力,モータ駆動力制御のタイムチャートである。
【図23】本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の排気弁閉弁時期とモータ駆動力割合の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図8を用いて、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成を示すシステム構成図である。
【0018】
エンジン100は、火花点火式燃焼を実施する自動車用の4気筒ガソリンエンジンである。吸入空気量を計測するエアフローセンサ1と、吸気管圧力を調整する電子制御スロットル2と、吸入空気温度検出器の一態様であって吸入空気の温度を計測する吸気温度センサ15が、吸気管6の各々の適宜位置に備えられている。また、エンジン100には、各気筒の燃焼室12の中に燃料を噴射する燃料噴射装置(以下、インジェクタ)3と、点火エネルギーを供給する点火プラグ4が気筒ごとに備えられ、エンジンの冷却水の温度を計測する冷却水温度センサ14がシリンダヘッド7の適宜位置に備えられている。また、筒内に流入する吸入ガスを調整する吸気バルブ可変装置5aと筒内から排出される排気ガスを調整する排気バルブ可変装置5bとから構成される可変バルブ5と、がシリンダヘッド7の各々の適宜位置に備えられている。可変バルブ5を調整することにより、1番から4番まで全気筒の吸気量およびEGR量を調整する。また、燃料噴射装置3に高圧燃料を供給するための高圧燃料ポンプ17が燃料配管によって燃料噴射装置3と接続されている。燃料配管中には、燃料噴射圧力を計測するための燃料圧力センサ18が備えられている。
【0019】
さらに、排気を浄化する三元触媒10と、空燃比検出器の一態様であって、三元触媒10の上流側にて排気の空燃比を検出する空燃比センサ9と、排気温度検出器の一態様あって、三元触媒10の上流側にて排気の温度を計測する排気温度センサ11とが排気管8の各々の適宜位置に備えられる。また、クランク軸には、回転角度を算出するためのクランク角度センサ13が備えられている。
【0020】
エアフローセンサ1と空燃比センサ9と冷却水温度センサ14と吸気温度センサ15と排気温度センサ11とクランク角センサ13と燃料圧力センサ18とから得られる信号は、エンジンコントロールユニット(ECU)20に送られる。また、アクセル開度センサ16から得られる信号がECU20に送られる。アクセル開度センサ16は、アクセルペダルの踏み込み量、すなわち、アクセル開度を検出する。ECU20は、アクセル開度センサ16の出力信号に基づいて、要求トルクを演算する。すなわち、アクセル開度センサ16は、エンジンへの要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。また、ECU20は、クランク角度センサ13の出力信号に基づいて、エンジンの回転速度を演算する。ECU20は、上記各種センサの出力から得られるエンジンの運転状態に基づき、空気流量,燃料噴射量,点火時期,燃料圧力等のエンジンの主要な作動量を最適に演算する。
【0021】
ECU20で演算された燃料噴射量は開弁パルス信号に変換され、インジェクタ3に送られる。また、ECU20で演算された点火時期で点火されるように、点火プラグ駆動信号が点火プラグ4に送られる。また、ECU20で演算されたスロットル開度は、スロットル駆動信号として電子制御スロットル2に送られる。また、ECU20で演算された可変バルブの作動量は、可変バルブ駆動信号として、可変バルブ5へ送られる。また、ECU20で演算された燃料圧力は、高圧燃料ポンプ駆動信号として、高圧燃料ポンプ17へ送られる。
【0022】
吸気管6から吸気バルブを経て燃焼室12内に流入した空気に対し、燃料が噴射され、混合気を形成する。混合気は所定の点火時期で点火プラグ4から発生される火花により爆発し、その燃焼圧によりピストンを押し下げてエンジンの駆動力となる。更に、爆発後の排気ガスは排気管8を経て、三元触媒10に送りこまれ、排気成分は三元触媒10内で浄化され、外部へと排出される。
【0023】
次に、図2を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成を示すシステムブロック図である。
【0024】
エアフローセンサ1,空燃比センサ9,排気温度センサ11,クランク角センサ13,冷却水温度センサ14,吸気温度センサ15,アクセル開度センサ16,燃料圧力センサ18の出力信号は、ECU20の入力回路20aに入力する。但し、入力信号はこれらだけに限られない。入力された各センサの入力信号は入出力ポート20b内の入力ポートに送られる。入出力ポート20bに送られた値は、RAM20cに保管され、CPU20eで演算処理される。演算処理内容を記述した制御プログラムは、ROM20dに予め書き込まれている。
【0025】
制御プログラムに従って演算された各アクチュエータの作動量を示す値は、RAM20cに保管された後、入出力ポート20b内の出力ポートに送られ、各駆動回路を経て各アクチュエータに送られる。本実施形態の場合は、駆動回路として、電子スロットル駆動回路20f,インジェクタ駆動回路20g,点火出力回路20h,可変バルブ駆動回路20j,高圧燃料ポンプ駆動回路20kがある。各回路は、それぞれ、電子制御スロットル2,インジェクタ3,点火プラグ4,可変バルブ5,高圧燃料ポンプ17を制御する。本実施形態においては、ECU20内に上記駆動回路を備えた装置であるが、これに限るものではなく、上記駆動回路のいずれかをECU20内に備えるものであってもよい。
【0026】
ECU20は、可変バルブ5によって燃焼室内に残留させる排気の量(内部EGR量)を制御する。特に、加速運転時に、排気弁の閉弁時期の早期化を行うことにより内部EGR量を増加し、PM排出量を抑制する。さらに、加速運転時に燃料噴射圧力を上昇させる。また、燃料噴射圧力の上昇幅は、排気弁の閉弁時期が進角するに伴い低下させる。その結果、加速運転時におけるPM排出量を抑制することが可能となる。
【0027】
次に、図3を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブの特性について説明する。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ機構の特性の説明図である。本実施形態では、吸気バルブおよび排気バルブに位相の連続可変機構を備えており、各バルブの開弁時期および閉弁時期を制御することができる。
【0029】
次に、図4を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の空気量および燃料量の挙動について説明する。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の空気量および燃料量のタイムチャートを示している。図中上から、車両速度,アクセル開度,吸気量,燃料噴射パルス幅,実空燃比の時間変化を示している。
【0031】
まず、ドライバがアクセルを踏む(アクセル開度が上昇する)ことにより車両の加速が開始する。それに伴い吸気スロットルが開くことで、吸気量を増加させる。また、燃料噴射パルス幅を大きくすることで、燃料噴射量を増加させる。
【0032】
ここで、スロットル弁と燃焼室の間には一定の容積をもつ吸気管が存在しており、燃焼室への吸気はこの吸気管を介して供給される。従って、燃焼室への吸気量は、アクセル開度(スロットル開度)に対しての応答遅れが大きい。
【0033】
一方で、燃料噴射量は、インジェクタを介して筒内に直接燃料を噴射するため、サイクル毎の精密な制御が可能でありアクセル開度に対して応答遅れは生じない。従って、この両者の間に過渡時の応答性に差異が生じ、加速運転時には吸気量に対して燃料噴射量が先行的に増加し、一時的に燃料が過濃(リッチ)な状態を経てしまう。通常、過渡時においても筒内の空燃比が所望値になるように燃料噴射量は過渡補正制御がなされるが、過渡時の吸入空気量を正確に検出することが困難であることから、完全に所望の空燃比(≒ストイキ)には制御できず、必ず筒内混合気がリッチな状態を経てしまう。前述した通り、このように混合気がリッチな状態になると、PM生成の起源となる付着燃料量や局所リッチ領域が増加してしまう。従って後述するような、加速時のPM排出量低減のための制御が必要となる。
【0034】
次に、図5〜図8を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブおよび燃料噴射圧力の制御方法について説明する。
最初に、図5を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置におけるPM排出量低減方法に関する基本原理について説明する。
【0035】
図5は、排気弁の閉弁時期および燃料噴射圧力と、PM排出量および燃料消費量との関係を示す図である。まず、排気弁の閉弁時期および燃料噴射圧力と、PM排出量との関係について説明する。排気弁の閉弁時期を早期化することで内部EGR量が増加し、筒内ガスの温度が上昇される。筒内ガスの高温化によって、筒内に噴射された燃料の気化が促進され、付着燃料量や局所リッチ領域が低減される。従って、図5(左上)に示すように、排気弁の閉弁時期を早期化することによりPM排出量が低減される。
【0036】
また、燃料噴射圧力が上昇することで筒内に噴射される燃料が微粒化して燃料の気化が促進され、付着燃料量や局所リッチ領域が低減される。従って、図(右上)に示すように、燃料噴射圧力を上昇することによりPM排出量が低減される。
【0037】
次に、排気弁の閉弁時期および燃料噴射圧力と、燃料消費量との関係について説明する。排気弁の閉弁時期を早期化することで内部EGR量が増加する。内部EGR量が増加することで、燃費向上につながる「ポンピングロスの減少」と、燃費悪化につながる「不活性ガス量の増加による燃焼速度の低下」が同時に起こる。前述の2つの効果が合わさることで、排気弁の閉弁時期と燃焼消費量は図5(左下)に示すような関係となる。
【0038】
一方で、燃料噴射圧力を上昇させるには、高圧燃料ポンプ17の駆動力を増加させる必要があるため、その分、燃料消費量が増加してしまうという欠点がある。従って、燃料噴射圧力と燃料消費量との関係は図5(右下)に示すような関係となる。
【0039】
以上より、排気弁の閉時期の早期化、および燃料噴射圧力の上昇は、共にPM排出量の低減策として有効であるが、燃料消費量(燃費)を考慮すると、排気弁閉時期の早期化の方が有利であるといえる。
【0040】
次に図6を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ(排気弁)および燃料噴射圧力制御内容について説明する。
【0041】
図6は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブおよび燃料噴射圧力制御内容を示すフローチャートである。図6に示す制御内容は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0042】
ステップS101において、ECU20は、現在のアクセル開度センサ16の値を読み込む。次に、ステップS102において、現在のアクセル開度センサの値に基づき、現在の車両の運転状態を判定する。例えば、現在のアクセル開度が、所定のアクセル開度以上の場合を加速運転、所定のアクセル開度以下の場合を定速運転もしくは減速運転と判定する。上記では、アクセル開度により車両運転状態を判定する例を示したが、あるいは、車両速度や吸気管圧力から車両運転状態を判定してもよい。
【0043】
次に、ステップS103において、現在の車両の運転状態が加速運転中かどうかを判定し、加速運転中でない(つまり定速運転もしくは減速運転である)場合には、ステップS104に進み、現在のエンジン運転条件に関する情報(エンジン回転数,要求エンジントルクなど)を読み込む。その後、ステップS105に進み、ECU20は、通常制御を実施する。通常制御とは、エンジン回転数やエンジントルクなどを用いて予め定められたマップなどから各デバイス(可変バルブおよび高圧燃料ポンプ)の制御値を読み出し、その値に基づきデバイスを制御するものである。
【0044】
ステップS103において、加速運転中であると判定された場合には、ステップS106に進み、内部EGR量を増量すべく、排気弁の閉弁時期の早期化制御を実施する。この時、内部EGR量を増量するためには、排気弁の閉弁時期を上死点よりもさらに早期化する必要がある。目標となる排気弁の閉弁時期は、アクセル開度およびエンジン回転数などから決定される。
【0045】
次に、ステップS107において、現在の排気弁の閉弁時期が目標とする排気弁の閉弁時期に達しているかどうかを判定する。ステップS107において、まだ排気弁の閉弁時期が目標値に到達していない、つまり排気弁制御の応答遅れ期間中であると判定された場合は、ステップS108に進み、内部EGRの応答遅れを補うための、燃料圧力上昇幅を演算する。燃料圧力上昇幅は、主に現在の排気弁の閉弁時期(つまり現在の内部EGR量)から演算される。その後、ステップS109に進み、前述の燃料圧力上昇幅に基づき高燃料圧力制御が実施される。ステップS107において、既に排気弁の閉弁時期が目標値に到達していると判断された場合は、一連の燃料圧力上昇制御を実施せずに制御を終了する。
【0046】
次に、図7および図8を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による加速運転時の可変バルブおよび燃料噴射圧力制御内容の詳細について説明する。
【0047】
図7は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における可変バルブ(排気弁の閉弁時期)と燃料噴射圧力制御のタイムチャートを示している。図中上から、車両速度,アクセル開度,実空燃比,排気弁閉弁時期,燃料噴射圧力,内部EGR量の時間変化を示している。定速運転を実施している際は、エンジン回転数およびエンジントルクに応じた通常の排気弁制御および燃料噴射圧力制御が実施されている。その後ドライバがアクセルを踏み込むことによりアクセル開度が上昇し、車両が加速される。加速運転時は前述の通り、筒内の空燃比を一定に保つことが困難であるため、図示したように筒内の実空燃比はリッチ側にシフトする。ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、加速運転用の可変バルブおよび燃料噴射圧力制御を開始する。具体的には、排気弁の閉弁時期を早期化させることで内部EGR量を増加させ、筒内がリッチになっている状態でも、燃料の気化を促進してPMの排出量を抑制する。しかし、可変バルブ(排気弁)制御には応答遅れが存在し、排気弁の閉時期つまり内部EGR量が目標値に到達するまでには数サイクル〜数百ミリ秒程度かかってしまうため、その間のPM排出量を抑制する別の方策が必要となる。そこで、ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、排気弁の閉弁時期を早期化させるとともに、燃料噴射圧力を上昇させる。燃料噴射圧力は、高圧燃料ポンプにより制御され、その制御応答が早いことから、サイクル単位での高速な制御が可能である。本制御によって、加速初期時の排気弁(内部EGR量)の応答遅れ期間中においても、燃料噴射圧力の上昇により燃料を微粒化し、気化を促進することで、PM排出量を抑制することが可能となる。さらに、ECU20は、前述の燃料圧力上昇幅を現在の排気弁の閉弁時期が目標値に近づくに応じて小さくなるように燃料圧力を制御する。本制御によって、PM排出量抑制のための燃料圧力の上昇期間を必要最小限に抑えることが可能となり、高圧燃料ポンプの駆動力の上昇による燃費悪化を低減することができる。
【0048】
図8は、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における排気弁の閉弁時期と燃料噴射圧力との関係を示したものである。各排気弁の閉弁時期(内部EGR量)に対して、加速時におけるPM排出量を所望値以下とするために必要な燃料噴射圧力が設定されている(図中実線部)。したがって、内部EGR量が少ない(排気弁の閉弁時期が遅い)時には、筒内温度が低く燃料の気化特性が悪いため、燃料の圧力を大きく上昇させて燃料を微粒化させる必要があり、逆に内部EGR量が多い(排気弁の閉弁時期が早い)時には、筒内温度が高く十分な燃料気化特性が得られるため、燃料圧力を上昇させる必要がない。ここで、定速運転から加速運転に移行した際の、排気弁閉弁時期および燃料噴射圧力の推移を図中矢印で示している。定速運転時は排気弁の閉弁時期は遅角側に、燃料噴射圧力は低圧側に設定されている。加速運転に入ると、排気弁の閉弁時期の早期化および燃料噴射圧力の上昇制御が実施されるが、排気弁の応答遅れにより、初めは燃料圧力の上昇幅が大きい状態に設定され、排気弁が目標値に近づくにしたがって、燃料圧力の上昇幅が小さくなっていく。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、加速運転時において、排気弁の閉弁時期を早期化し、さらに現在の排気弁閉弁時期に応じて燃料噴射圧力を上昇させることによって、加速運転中の燃料の気化特性を改善し、燃費の悪化を最小限に抑えながら、PM排出量を抑制することができる。
【0050】
次に、図9から図14を用いて、本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成及び動作について説明する。
【0051】
図9に本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用多気筒ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成を示す。図1に示した第1の実施形態のシステム構成における可変バルブ5のかわりに、本実施形態では、排気管と吸気管とのバイパス通路が設けられ、その通路中に、吸気管へ流入する排気量を制御するためのEGR弁19が備えられている。また、吸気温度センサ15の位置がスロットル弁の下流(スロットル弁−吸気バルブ間の吸気管流路内)へと変更されている。
【0052】
図10は、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成を示すシステムブロック図である。図2に示した、本発明の第1の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成と基本的には同じであるが、本実施形態では、可変バルブ駆動回路20jの代わりに、EGR弁駆動回路20lが備わっていることが特徴である。
【0053】
また、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の空気量および燃料量(実空燃比)の挙動については図4と同様である。
【0054】
次に、図11〜図14を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置におけるEGR弁および燃料噴射圧力の制御方法について説明する。
最初に、図11を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置におけるPM排出量低減方法に関する基本原理について説明する。
【0055】
図11は、EGR弁の開度と、PM排出量および燃料消費量との関係を示す図である。EGR弁の開度を増加することで排気管から吸気管に流入する排気量(EGR量)が増加し、筒内ガスの温度が上昇される。筒内ガスの高温化によって、筒内に噴射された燃料の気化が促進され、付着燃料量や局所リッチ領域が低減される。従って、図11(上)に示すように、EGR弁開度を増加することによりPM排出量が低減される。EGR弁の開度を増加することでEGR量が増加する。EGR量が増加することで、燃費向上につながる「ポンピングロスの減少」と、燃費悪化につながる「不活性ガス量の増加による燃焼速度の低下」が同時に起こる。前述の2つの効果が合わさることで、排気弁の閉弁時期と燃焼消費量は図11(下)に示すような関係となる。
【0056】
なお、本実施形態における燃料噴射圧力とPM排出量および燃料消費量との関係は、図5に示した第一の実施形態と同様である。
【0057】
次に図12を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置におけるEGR弁および燃料噴射圧力制御内容について説明する。
【0058】
図12は、本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置におけるEGR弁および燃料噴射圧力の制御内容を示すフローチャートである。図12に示す制御内容は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0059】
ステップS201において、ECU20は、現在のアクセル開度センサ16の値を読み込む。次に、ステップS202において、現在のアクセル開度センサの値に基づき、現在の車両の運転状態を判定する。例えば、現在のアクセル開度が、所定のアクセル開度以上の場合を加速運転、所定のアクセル開度以下の場合を定速運転もしくは減速運転と判定する。上記では、アクセル開度により車両運転状態を判定する例を示したが、あるいは、車両速度や吸気管圧力から車両運転状態を判定してもよい。
【0060】
次に、ステップS203において、現在の車両の運転状態が加速運転中かどうかを判定し、加速運転中でない(つまり定速運転もしくは減速運転である)場合には、ステップS204に進み、現在のエンジン運転条件に関する情報(エンジン回転数,要求エンジントルクなど)を読み込む。その後、ステップS205に進み、ECU20は、通常制御を実施する。通常制御とは、エンジン回転数やエンジントルクなどを用いて予め定められたマップなどから各デバイス(EGR弁および高圧燃料ポンプ)の制御値を読み出し、その値に基づきデバイスを制御するものである。
【0061】
ステップS203において、加速運転中であると判定された場合には、ステップS206に進み、EGR量を増量すべく、EGR弁の開弁制御を実施する。目標となるEGR弁の開度は、アクセル開度およびエンジン回転数などから決定される。
【0062】
次に、ステップS207において、吸気温度センサから検出される現在の吸気温度を読み込む。ここで、EGR量はEGR弁の開度が変化した後に、バイパス流路容積に比例した一定の遅れを持って変化するため、加速運転時においてはEGR弁の開度は必ずしもEGR量を示していない。吸気温度はEGR量が多くなるほど上昇することから、加速時のEGR量の指標として用いている。
【0063】
ステップS208において、現在の吸気温度(≒EGR量)がまだ目標値に到達していない、つまりEGRの応答遅れ期間中であると判定された場合は、ステップS209に進み、EGRの応答遅れを補うための、燃料圧力上昇幅を演算する。燃料圧力上昇幅は、主に現在の吸気温度(つまり現在のEGR量)から演算される。その後、ステップS210に進み、前述の燃料圧力上昇幅に基づき高燃料圧力制御が実施される。ステップS208において、既に吸気温度が目標値に到達していると判断された場合は、一連の燃料圧力上昇制御を実施せずに制御を終了する。
【0064】
次に、図13および図14を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による加速運転時のEGR弁および燃料噴射圧力制御内容の詳細について説明する。
【0065】
図13は、本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時におけるEGR弁と燃料噴射圧力制御のタイムチャートを示している。図中上から、車両速度,アクセル開度,実空燃比,EGR弁開度,燃料噴射圧力,吸気温度,EGR量の時間変化を示している。定速運転を実施している際は、エンジン回転数およびエンジントルクに応じた通常のEGR弁制御および燃料噴射圧力制御が実施されている。その後ドライバがアクセルを踏み込むことによりアクセル開度が上昇し、車両が加速される。加速運転時は前述の通り、筒内の空燃比を一定に保つことが困難であるため、図示したように筒内の実空燃比はリッチ側にシフトする。ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、加速運転用のEGR弁および燃料噴射圧力制御を開始する。具体的には、EGR弁の開度を増加させることでEGR量を増加させ、筒内がリッチになっている状態でも、燃料の気化を促進してPMの排出量を抑制する。しかし、EGR量の制御には、EGRバイパス通路の容量に比例した応答遅れが存在し、EGR量(ここでは、吸気温度センサをEGR量の指標としている)が目標値に到達するまでには数十ミリ〜数百ミリ秒程度かかってしまうため、その間のPM排出量を抑制する別の方策が必要となる。そこで、ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、EGR弁の開度を増加させるとともに、燃料噴射圧力を上昇させる。燃料噴射圧力は、高圧燃料ポンプにより制御され、その制御応答が早いことから、サイクル単位での高速な制御が可能である。本制御によって、加速初期時のEGR量の応答遅れ期間中においても、燃料噴射圧力の上昇により燃料を微粒化し、気化を促進することで、PM排出量を抑制することが可能となる。さらに、ECU20は、前述の燃料圧力上昇幅を現在の吸気温度(≒EGR量)が目標値に近づくに応じて小さくなるように燃料圧力を制御する。本制御よって、PM排出量抑制のための燃料圧力の上昇期間を必要最小限に抑えることが可能となり、高圧燃料ポンプの駆動力の上昇による燃費悪化を低減することができる。
【0066】
図14は、本発明の第2の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における吸気温度と燃料噴射圧力との関係を示したものである。各吸気温度(≒EGR量)に対して、加速時におけるPM排出量を所望値以下とするために必要な燃料噴射圧力が設定されている(図中実線部)。したがって、EGR量が少ない(吸気温度が低い)時には、筒内温度が低く燃料の気化特性が悪いため、燃料の圧力を大きく上昇させて燃料を微粒化させる必要があり、逆にEGR量が多い(吸気温度が高い)時には、筒内温度が高く十分な燃料気化特性が得られるため、燃料圧力を上昇させる必要がない。ここで、定速運転から加速運転に移行した際の、吸気温度および燃料噴射圧力の推移を図中矢印で示している。定速運転時は吸気温度は低い側(EGR弁の開度が小さい側)、燃料噴射圧力は低圧側に設定されている。加速運転に入ると、EGR弁の開度の増加および燃料噴射圧力の上昇制御が実施されるが、吸気温度(EGR量)の応答遅れにより、初めは燃料圧力の上昇幅が大きい状態に設定され、吸気温度(EGR量)が目標値に近づくにしたがって、燃料圧力の上昇幅が小さくなっていく。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、加速運転時において、EGR弁の開度を増加させ、さらに現在の吸気温度に応じて燃料噴射圧力を上昇させることによって、加速運転中の燃料の気化特性を改善し、燃費の悪化を最小限に抑えながら、PM排出量を抑制することができる。
【0068】
以下、本発明の第3の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成及び動作について説明する。
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成は図1と同様である。
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成については図2と同様である。
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブの特性については図3と同様である。
【0069】
次に、図15および図16を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ(排気弁)および空燃比(燃料噴射量)制御内容について説明する。
【0070】
図15は、本発明の第3の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブおよび空燃比制御内容を示すフローチャートである。図15に示す制御内容は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0071】
ステップS301において、ECU20は、現在のアクセル開度センサ16の値を読み込む。次に、ステップS302において、現在のアクセル開度センサの値に基づき、現在の車両の運転状態を判定する。例えば、現在のアクセル開度が、所定のアクセル開度以上の場合を加速運転、所定のアクセル開度以下の場合を定速運転もしくは減速運転と判定する。上記では、アクセル開度により車両運転状態を判定する例を示したが、あるいは、車両速度や吸気管圧力から車両運転状態を判定してもよい。
【0072】
次に、ステップS303において、現在の車両の運転状態が加速運転中かどうかを判定し、加速運転中でない(つまり定速運転もしくは減速運転である)場合には、ステップS304に進み、現在のエンジン運転条件に関する情報(エンジン回転数,要求エンジントルクなど)を読み込む。その後、ステップS105に進み、ECU20は、通常制御を実施する。通常制御とは、エンジン回転数やエンジントルクなどを用いて予め定められたマップなどから各デバイス(可変バルブおよび高圧燃料ポンプ)の制御値を読み出し、その値に基づきデバイスを制御するものである。
【0073】
ステップS303において、加速運転中であると判定された場合には、ステップS306に進み、内部EGR量を増量すべく、排気弁の閉弁時期の早期化制御を実施する。この時、内部EGR量を増量するためには、排気弁の閉弁時期を上死点よりもさらに早期化する必要がある。目標となる排気弁の閉弁時期は、アクセル開度およびエンジン回転数などから決定される。
【0074】
次に、ステップS307において、現在の排気弁の閉弁時期が目標とする排気弁の閉弁時期に達しているかどうかを判定する。ステップS307において、まだ排気弁の閉弁時期が目標値に到達していない、つまり排気弁制御の応答遅れ期間中であると判定された場合は、ステップS308に進み、内部EGRの応答遅れを補うための、目標空燃比を希薄側に制御する。この時の空燃比は、主に現在の排気弁の閉弁時期(つまり現在の内部EGR量)から演算される。その後、ステップS309に進み、前述の目標空燃比に基づき希薄燃焼制御が実施される。ステップS307において、既に排気弁の閉弁時期が目標値に到達していると判断された場合は、一連の希薄燃焼制御を実施せずに制御を終了する。
【0075】
図16は、本発明の第3の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における可変バルブ(排気弁の閉弁時期)と空燃比制御のタイムチャートを示している。図中上から、車両速度,アクセル開度,実空燃比,排気弁閉弁時期,内部EGR量の時間変化を示している。定速運転を実施している際は、エンジン回転数およびエンジントルクに応じた通常の排気弁制御および空燃比制御(両論比に設定)が実施されている。その後ドライバがアクセルを踏み込むことによりアクセル開度が上昇し、車両が加速される。加速運転時は前述の通り、筒内の空燃比を一定に保つことが困難であるため、空燃比を両論比に制御しようとした場合、筒内の実空燃比はリッチ側にシフトする。ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、加速運転用の可変バルブおよび空燃比制御を開始する。具体的には、排気弁の閉弁時期を早期化させることで内部EGR量を増加させ、燃料の気化を促進してPMの排出量を抑制する。しかし、可変バルブ(排気弁)制御には応答遅れが存在し、排気弁の閉時期つまり内部EGR量が目標値に到達するまでには数サイクル〜数百ミリ秒程度かかってしまうため、その間のPM排出量を抑制する別の方策が必要となる。そこで、ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、排気弁の閉弁時期を早期化させるとともに、燃焼室内の実空燃比が両論比よりも希薄側になるように燃料噴射量を制御する。燃料噴射量は、制御応答が早いことから、サイクル単位での高速な制御が可能である。本制御によって、加速初期時の排気弁(内部EGR量)の応答遅れ期間中においても、希薄燃焼を実施することによりPM排出量を抑制することが可能となる。さらに、ECU20は、前述の加速運転時の空燃比を現在の排気弁の閉弁時期が目標値に近づくに応じて、両論比に近づくように制御する。本制御によって、PM排出量抑制のための希薄燃焼期間を必要最小限に抑えることが可能となり、触媒性能低下による排気悪化を抑制することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、加速運転時において、排気弁の閉弁時期を早期化し、さらに現在の排気弁閉弁時期に応じて空燃比を希薄化させることによって、加速運転中の燃料の気化特性を改善し、排気の悪化を最小限に抑えながら、PM排出量を抑制することができる。
【0077】
以下、本発明の第4の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成及び動作について説明する。
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置を自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成は図1と同様である。
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成については図2と同様である。
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブの特性については図3と同様である。
【0078】
次に、図17および図18を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ(排気弁および吸気弁)制御内容について説明する。
【0079】
図17は、本発明の第4の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ制御内容を示すフローチャートである。図17に示す制御内容は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0080】
ステップS401において、ECU20は、現在のアクセル開度センサ16の値を読み込む。次に、ステップS402において、現在のアクセル開度センサの値に基づき、現在の車両の運転状態を判定する。例えば、現在のアクセル開度が、所定のアクセル開度以上の場合を加速運転、所定のアクセル開度以下の場合を定速運転もしくは減速運転と判定する。上記では、アクセル開度により車両運転状態を判定する例を示したが、あるいは、車両速度や吸気管圧力から車両運転状態を判定してもよい。
【0081】
次に、ステップS403において、現在の車両の運転状態が加速運転中かどうかを判定し、加速運転中でない(つまり定速運転もしくは減速運転である)場合には、ステップS404に進み、現在のエンジン運転条件に関する情報(エンジン回転数,要求エンジントルクなど)を読み込む。その後、ステップS405に進み、ECU20は、通常制御を実施する。通常制御とは、エンジン回転数やエンジントルクなどを用いて予め定められたマップなどから各デバイス(吸排気可変バルブ)の制御値を読み出し、その値に基づきデバイスを制御するものである。
【0082】
ステップS403において、加速運転中であると判定された場合には、ステップS406に進み、内部EGR量を増量すべく、排気弁の閉弁時期の早期化制御を実施する。この時、内部EGR量を増量するためには、排気弁の閉弁時期を上死点よりもさらに早期化する必要がある。目標となる排気弁の閉弁時期は、アクセル開度およびエンジン回転数などから決定される。
【0083】
次に、ステップS407において、吸気吹き戻し量を低減すべく、吸気弁の閉弁時期の早期化制御を実施する。目標となる排気弁の閉弁時期は、アクセル開度およびエンジン回転数などから決定される。
【0084】
図18は、本発明の第4の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における可変バルブ(排気弁および吸気弁閉弁時期)のタイムチャートを示している。図中上から、車両速度,アクセル開度,実空燃比,排気弁閉弁時期,吸気弁閉弁時期,吸気吹き戻し量,現サイクルの燃料噴射割合,内部EGR量の時間変化を示している。定速運転を実施している際は、エンジン回転数およびエンジントルクに応じた通常の排気弁制御および吸気弁制御が実施されている。その後ドライバがアクセルを踏み込むことによりアクセル開度が上昇し、車両が加速される。加速運転時は前述の通り、筒内の空燃比を一定に保つことが困難であるため、空燃比を両論比に制御しようとした場合、筒内の実空燃比はリッチ側にシフトする。ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、加速運転用の可変バルブ制御を開始する。具体的には、排気弁の閉弁時期を早期化させることで内部EGR量を増加させ、燃料の気化を促進してPMの排出量を抑制する。しかし、可変バルブ(排気弁)制御には応答遅れが存在し、排気弁の閉時期つまり内部EGR量が目標値に到達するまでには数サイクル〜数百ミリ秒程度かかってしまうため、その間のPM排出量を抑制する別の方策が必要となる。そこで、ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、排気弁の閉弁時期を早期化させるとともに、吸気弁の閉弁時期を早期化させる。
【0085】
ここで本実施例における吸気弁制御に関して詳細を説明する。通常制御時(加速時以外)においては、吸気弁は下死点後(ABDC 40°程度)に設定されている。そのため、一度燃焼室に吸入されたガス(空気と燃料の混合気)のうち、一部は吸気弁が閉じるまでに再び吸気管へ吐き出される(吸気吹き戻し)。吹き戻されたガスは次サイクルの燃焼に使用される。従って、現サイクルで噴射される燃料の一部は、次サイクルで使用するための燃料となる。つまり、「現サイクルでの燃焼に使用される燃料量」は、「前サイクルの吹き戻し分に含まれる燃料」+「現サイクルの燃料噴射量」−「現サイクルの吹き戻し分に含まれる燃料」で表すことができる。定常状態(吸気閉弁時期が一定状態)では「前サイクルの吹き戻し分に含まれる燃料」と「現サイクルの吹き戻し分に含まれる燃料」が同等のため、「現サイクルでの燃焼に使用される燃料量」=「現サイクルの燃料噴射量」となる。そこで、本実施例では加速時、特に加速初期において「現サイクルの燃料噴射量」を可能な限り低減するため、加速初期に吸気弁の閉弁時期を早期化する。吸気弁の閉弁時期が早期化している最中は、「前サイクルの吹き戻し分に含まれる燃料」が「現サイクルの吹き戻し分に含まれる燃料」よりも大きくなるため、その分、「現サイクルの燃料噴射量」を低減することが可能となる。「現サイクルでの燃焼に使用される燃料量」のうち、「現サイクルで噴射された燃料」が占める割合を「現サイクルの燃料噴射量割合」と定義すると、図18に示したように、「現サイクルの燃料噴射量割合」は吸気弁の閉弁時期の変化の傾きに比例する。本制御によって、加速初期時の排気弁(内部EGR量)の応答遅れ期間中においても、燃焼に必要な現サイクルの燃料噴射量を減少させ、付着燃料量を低減し、混合気の均質性を改善することによりPM排出量を抑制することが可能となる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、加速運転時において、排気弁の閉弁時期を早期化し、さらに吸気弁の閉弁時期を早期化させることによって、加速運転中の付着燃料量を低減し、混合気の均質性を改善することにより、燃費性能を損なうことなく、PM排出量を抑制することができる。
【0087】
以下、図19〜図23を用いて、本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図19を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置をハイブリッド自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成について説明する。
【0088】
図19は、本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置をハイブリッド自動車用ガソリンエンジンに適用させたシステムの構成を示すシステム構成図である。図1に示した第1の実施形態におけるシステムに加え、エンジンの出力軸に変速機21が接続されており、さらに変速機の出力軸にはモータ用ギア23を介してモータ22が接続されている。また、変速機の出力軸は減速ギア24を介して車輪25と接続されている。ECU20は、車両の運転状態に応じて、モータ駆動力を演算する。演算されたモータ駆動力は、モータ駆動信号としてモータ22に送られる。
【0089】
次に、図20を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成について説明する。
図20は、本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置の構成を示すシステムブロック図である。図2に示した第1の実施形態における構成に加え、本実施形態の場合は、駆動回路として、モータ駆動回路20mを備えている。モータ駆動回路20mは、モータ22を制御する。
【0090】
ECU20は、モータ22およびエンジン100により車両の駆動に必要な駆動力を発生させる。特に、加速運転時において、排気弁の閉弁時期の早期化を行うことにより内部EGR量を増加する際に、内部EGR増量に伴うエンジン駆動力の減少を、モータ駆動力を増加させることで補う。
【0091】
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブの特性については図3と同様である。
【0092】
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における加速運転時の空気量および燃料量の挙動は図4と同様である。
【0093】
本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置におけるPM排出量低減方法に関する基本原理は、図5と同様である。
【0094】
次に図21を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ,燃料噴射圧力,モータ駆動力(モータ駆動力割合)制御内容について説明する。図21は、本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置における可変バルブ,燃料噴射圧力,モータ駆動力(モータ駆動力割合)の制御内容を示すフローチャートである。図21に示す制御内容は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0095】
ステップS501において、ECU20は、現在のアクセル開度センサ16の値を読み込む。次に、ステップS502において、現在のアクセル開度センサの値に基づき、現在の車両の運転状態を判定する。例えば、現在のアクセル開度が、所定のアクセル開度以上の場合を加速運転、所定のアクセル開度以下の場合を定速運転もしくは減速運転と判定する。上記では、アクセル開度により車両運転状態を判定する例を示したが、あるいは、車両速度や吸気管圧力から車両運転状態を判定してもよい。
【0096】
次に、ステップS503において、現在の車両の運転状態が加速運転中かどうかを判定し、加速運転中でない(つまり定速運転もしくは減速運転である)場合には、ステップS504に進み、現在のエンジン運転条件に関する情報(エンジン回転数,要求エンジントルクなど)を読み込む。その後、ステップS505に進み、ECU20は、通常制御を実施する。通常制御とは、エンジン回転数やエンジントルクなどを用いて予め定められたマップなどから各デバイス(可変バルブおよび高圧燃料ポンプ)の制御値を読み出し、その値に基づきデバイスを制御するものである。
【0097】
ステップS503において、加速運転中であると判定された場合には、ステップS506に進み、内部EGR量を増量すべく、排気弁の閉弁時期の早期化制御を実施する。この時、内部EGR量を増量するためには、排気弁の閉弁時期を上死点よりもさらに早期化する必要がある。目標となる排気弁の閉弁時期は、アクセル開度およびエンジン回転数などから決定される。その後、ステップS507に進み、内部EGR増量に伴うエンジン駆動力の減少を補うためのモータ駆動力の割合を演算する。モータ駆動力割合は主に現在の排気弁の閉弁時期(つまり現在の内部EGR量)から演算される。その後、ステップS508に進み、前述のモータ駆動力割合に基づきモータ駆動アシスト制御が実施される。次に、ステップS509において、現在の排気弁の閉弁時期が目標とする排気弁の閉弁時期に達しているかどうかを判定する。ステップS509において、まだ排気弁の閉弁時期が目標値に到達していない、つまり排気弁制御の応答遅れ期間中であると判定された場合は、ステップS510に進み、内部EGRの応答遅れを補うための、燃料圧力上昇幅を演算する。燃料圧力上昇幅は、主に現在の排気弁の閉弁時期(つまり現在の内部EGR量)から演算される。その後、ステップS511に進み、前述の燃料圧力上昇幅に基づき高燃料圧力制御が実施される。ステップS509において、既に排気弁の閉弁時期が目標値に到達していると判断された場合は、一連の燃料圧力上昇制御を実施せずに制御を終了する。
【0098】
次に、図22および図23を用いて、本実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による加速運転時の可変バルブおよび燃料噴射圧力制御内容の詳細について説明する。
【0099】
図22は、本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における可変バルブ,燃料噴射圧力,モータ駆動制御のタイムチャートを示している。図中上から、車両速度,アクセル開度,実空燃比,排気弁閉弁時期,燃料噴射圧力,内部EGR量,モータ駆動力割合の時間変化を示している。定速運転を実施している際は、エンジン回転数およびエンジントルクに応じた通常の排気弁制御および燃料噴射圧力制御が実施されている。その後ドライバがアクセルを踏み込むことによりアクセル開度が上昇し、車両が加速される。加速運転時は前述の通り、筒内の空燃比を一定に保つことが困難であるため、図示したように筒内の実空燃比はリッチ側にシフトする。ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、加速運転用の可変バルブおよび燃料噴射圧力制御を開始する。具体的には、排気弁の閉弁時期を早期化させることで内部EGR量を増加させ、筒内がリッチになっている状態でも、燃料の気化を促進してPMの排出量を抑制する。しかし、可変バルブ(排気弁)制御には応答遅れが存在し、排気弁の閉時期つまり内部EGR量が目標値に到達するまでには数サイクル〜数百ミリ秒程度かかってしまうため、その間のPM排出量を抑制する別の方策が必要となる。そこで、ECU20は、アクセル開度が上昇し加速運転に入ったと判定すると、排気弁の閉弁時期を早期化させるとともに、燃料噴射圧力を上昇させる。燃料噴射圧力は、高圧燃料ポンプにより制御され、その制御応答が早いことから、サイクル単位での高速な制御が可能である。本制御によって、加速初期時の排気弁(内部EGR量)の応答遅れ期間中においても、燃料噴射圧力の上昇により燃料を微粒化し、気化を促進することで、PM排出量を抑制することが可能となる。さらに、ECU20は、前述の燃料圧力上昇幅を現在の排気弁の閉弁時期が目標値に近づくに応じて小さくなるように燃料圧力を制御する。本制御よって、PM排出量抑制のための燃料圧力の上昇期間を必要最小限に抑えることが可能となり、高圧燃料ポンプの駆動力の上昇による燃費悪化を低減することができる。
【0100】
一方で、加速時に排気弁閉弁時期を早期化(内部EGRを増量)すると、燃焼室内に排気が多く導入されることで新規吸気量が減少してエンジントルク(駆動力)が低下してしまい、車両の加速時のレスポンスの悪化を招く可能性がある。そこでECU20は、加速運転時にモータ駆動力によってエンジントルクの低下を補う。図に示すように排気弁の閉弁時期が早期化するに応じてモータ駆動力割合(車両の全駆動力に対するモータ駆動力の割合)を高める。
【0101】
図23は、本発明の第5の実施形態による筒内噴射式ガソリン機関の制御装置による、加速運転時における排気弁の閉弁時期とモータ駆動力割合との関係を示したものである。各排気弁の閉弁時期(内部EGR量)に対して、加速時に必要な車両駆動力を発生させるために必要なモータ駆動力割合が設定されている(図中実線部)。したがって、内部EGR量が少ない(排気弁の閉弁時期が遅い)時には、新規吸気量が多く、エンジントルクの低下が少ないため、モータによる駆動力を低くし、逆に内部EGR量が多い(排気弁の閉弁時期が早い)時には、新規吸気量が少なく、エンジントルクの低下が著しいため、モータによる駆動力を高めて、エンジントルクの低下を補う。
【0102】
以上説明したように、本実施形態によれば、加速運転時において、排気弁の閉弁時期を早期化し、さらに現在の排気弁閉弁時期に応じて燃料噴射圧力を上昇させ、さらに現在の排気弁閉弁時期に応じてモータ駆動力割合を決定することによって、加速運転中のPM排出量を抑制しつつ、加速時の車両レスポンスを向上することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 エアフローセンサ
2 電子制御スロットル
3 筒内直接噴射用インジェクタ
4 点火プラグ
5 可変バルブ
5a 吸気バルブ可変装置
5b 排気バルブ可変装置
6 吸気管
7 シリンダヘッド
8 排気管
9 空燃比センサ
10 三元触媒
11 排気温度センサ
12 燃焼室
13 クランク角度センサ
14 冷却水温度センサ
15 吸気温度センサ
16 アクセル開度センサ
17 高圧燃料ポンプ
18 燃料圧力センサ
19 EGR弁
20 ECU
20a 入力回路
20b 入出力ポート
20c RAM
20d ROM
20e CPU
20f 電子制御スロットル駆動回路
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20h 点火出力回路
20j 可変バルブ駆動回路
20k 高圧燃料ポンプ駆動回路
20l EGR弁駆動回路
20m モータ駆動回路
21 変速機
22 モータ
23 モータ用ギア
24 減速ギア
25 車輪
100 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気弁に可変動弁機構を備えた筒内噴射式ガソリン機関において、車両の運転状態を判定する運転状態判定手段を有し、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記排気弁の閉弁時期を早期化すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記排気弁の閉弁時期を早期化するとともに、燃料噴射圧力を上昇させること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、加速運転に遷移したと判定された場合の前記燃料噴射圧力の上昇幅を、前記排気弁の閉弁時期に基づいて決定すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記排気弁の閉弁時期が早期化するに伴い前記燃料噴射圧力の上昇幅を減少させること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項5】
吸気管と排気管との間に排気バイパス通路を備え、前記通路中に吸気管へ流入する排気流量を制御するためのEGR制御弁を備えた筒内噴射式ガソリン機関において、車両の運転状態を判定する運転状態判定手段を有し、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記EGR制御弁の開度を増加させること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、EGR制御弁の開度を増加させるとともに、燃料噴射圧力を上昇させること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、さらに燃焼室に吸入されるガスの温度を推定する吸気温度検出手段を備え、加速運転に遷移したと判定された場合の前記燃料噴射圧力の上昇幅を、前記吸気温度検出手段により推定された吸気温度に基づいて決定すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記吸気温度が高温化するに伴い前記燃料噴射圧力の上昇幅を減少させること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項9】
請求項1および5に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記運転状態判定手段は、アクセル開度センサ,車両速度センサ,加速度センサ,吸気流量センサ,吸気管圧力センサによって得られた信号のうち、少なくとも1つに基づいて車両運転状態を判定すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項10】
請求項1に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、筒内混合気の空燃比を両論比よりも希薄にすること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、加速運転に遷移したと判定された場合の空燃比を、前記排気弁の閉弁時期に基づいて決定すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項12】
請求項1に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、さらに吸気弁に可変動弁機構を備え、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、前記吸気弁の閉弁時期を早期化すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項13】
請求項1から12に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、さらに前記エンジンの出力軸に直接またはギアを介して接続するモータを備え、前記運転状態判定手段により、前記車両が定速運転もしくは減速運転から加速運転に遷移したと判定された場合に、車両の全駆動力に占める前記モータの駆動力の割合が増加するように、前記ガソリン機関の駆動力または前記モータの駆動力を制御すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の筒内噴射式ガソリン機関の制御装置において、前記車両の全駆動力に占める前記モータの駆動力の割合を前記排気弁の閉弁時期または前記吸気温度に基づいて決定すること、を特徴とする筒内噴射式ガソリン機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−87708(P2012−87708A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236062(P2010−236062)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】