説明

レジストの除去方法

【課題】硬化層が形成されたレジストを、基層にダメージを与えないように除去する。
【解決手段】レジスト除去方法は、イオンが注入されているレジストに、当該イオンの注入によって形成されたレジストの硬化層にアルカリ可溶性を生じさせる程度の紫外光を照射する照射工程と、前記レジストをアルカリ溶液に接触させて当該レジストをシリコン基板から剥離させる除去工程と、を含む。レジストには、1×1014〜5×1015個/cmのイオンが注入されており、前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも1800mJ/cmとし、前記除去工程では、60℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストの除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1から3に開示されているように、半導体層等の基層の上にパターン形成されたレジストを除去する方法が種々知られている。特許文献1に開示されている除去方法では、レジストを露光した後、不要となったレジストを除去する際に、現像液に溶解させてレジストを洗い流すようにしている。
【0003】
また、特許文献2には、基板のレジストにオゾンガスを接触させてレジストの成分を分解するガス処理工程と、レジストに紫外線を照射してレジストの成分をアルカリ水溶液に可溶とする紫外線処理工程と、アルカリ水溶液によってレジストを除去するアルカリ処理工程とを含むレジスト除去方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、高ドーズのイオン注入が行われた基板の表面に形成されているレジストを速やかに除去することを目的として、基板表面に紫外線を照射した後、無水硫酸と過酸化水素水を含むレジスト剥離液でレジストを剥離させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−206707号公報
【特許文献2】特開2002−231696号公報
【特許文献3】特開2006−286830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の方法では、レジストを露光後、現像液を用いてレジストを除去するため、製造コストを抑えることが可能であるが、不純物元素の拡散工程やイオン注入工程等を経由していると、レジストの除去が困難となる。
【0006】
また、特許文献2の方法では、高速にレジストを除去できることが期待できるが、オゾンガスで処理するため、非常に高価で大掛かりな装置が必要となる。しかも、その比較例7として、ソースドレイン配線を作成した後のレジスト、即ち高濃度にイオン注入がなされたレジストについては、除去できないことが示されている。
【0007】
また、特許文献3の方法では、高濃度にイオンが注入されているレジストを剥離することが可能となっているが、この方法では、酸性のレジスト剥離液で処理を行うため、基板を酸化させてしまい、基板にダメージを与える虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、硬化層が形成されたレジストを、基層にダメージを与えないように除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明は、レジストが被着された基層から当該レジストを剥離する方法であって、イオンが注入されているレジストに、当該イオンの注入によって形成されたレジストの硬化層にアルカリ可溶性を生じさせる程度の紫外光を照射する照射工程と、前記レジストをアルカリ溶液に接触させて当該レジストを基層から剥離させる除去工程と、を含むレジスト除去方法である。
【0010】
本発明では、照射工程において、レジストの硬化層がアルカリ可溶性になる程度の照射量でレジストに紫外光を照射するため、イオンが注入されて剥離困難となっているレジストであっても、レジストを剥離可能な状態にすることができ、除去工程においてアルカリ溶液によってレジストを除去することができるようになる。すなわち、本発明では、紫外光の照射によってレジストの硬化層をアルカリ可溶性にする。このため、プラズマアッシング処理やオゾンガス処理が不要となり、大掛かりな装置が不要となる。しかも、レジストにアルカリ溶液を接触させることによって基層からレジストを剥離させるため、基層を酸化させることはない。この結果、基層にダメージを与えることなく、レジストを除去することができる。
【0011】
前記レジストには、1×1014〜1×1017個/cmのイオンが注入されていてもよい。
【0012】
また、前記レジストに、1×1014〜5×1015個/cmのイオンが注入されている場合には、前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも1800mJ/cmとし、前記除去工程では、60℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いるようにしてもよい。この態様では、5×1015個/cmのイオンが注入されたレジストであっても、レジストをそのほぼ全域で基層から剥離させることができる。
【0013】
この態様において、前記紫外光は、3分間以上かけて1800mJ/cmの照射量を照射するのが好ましい。この態様では、紫外光の照射を3分間以上行うので、レジストの昇温を伴い、それにより、硬化層をアルカリ可溶性にし易くすることができる。
【0014】
一方、前記レジストに、1×1014個/cm以下のイオンが注入されている場合には、前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも1800mJ/cmとし、前記除去工程では、40℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いるのが好ましい。この態様では、1×1014個/cmのイオンが注入されたレジストであっても、レジストをそのほぼ全域で基層から剥離させることができる。
【0015】
この態様において、前記紫外光は、3分間以上かけて1800mJ/cm以上の照射量を照射するのが好ましい。この態様では、紫外光の照射を3分間以上行うので、レジストの昇温を伴い、それにより、硬化層をアルカリ可溶性にし易くすることができる。
【0016】
また、前記レジストに、1×1014〜5×1015個/cmのイオンが注入されている場合には、前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも4200mJ/cmとし、前記除去工程では、40℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いることもできる。この態様では、5×1015個/cmのイオンが注入されたレジストであっても、レジストをそのほぼ全域で基層から剥離させることができる。
【0017】
この態様において、前記紫外光は、7分間以上かけて4200mJ/cm以上の照射量を照射するのが好ましい。この態様では、紫外光の照射を7分間以上行うので、レジストの昇温を伴い、それにより、硬化層をアルカリ可溶性にし易くすることができる。
【0018】
前記照射工程と前記除去工程を繰り返し行うようにしてもよい。
【0019】
この場合、前記レジストには、1×1014〜1×1017個/cmのイオンが注入されていてもよい。
【0020】
そして、前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも6000mJ/cmとし、前記除去工程では、70℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いるようにしてもよい。この態様では、1×1017個/cmのイオンが注入されたレジストであっても、レジストをそのほぼ全域で基層から剥離させることができる。
【0021】
この態様において、前記紫外光は、10分間以上かけて6000mJ/cm以上の照射量を照射するのが好ましい。この態様では、紫外光の照射を10分間以上行うので、レジストの昇温を伴い、それにより、硬化層をアルカリ可溶性にし易くすることができる。
【0022】
前記紫外光の照射強度は、3mW/cm以上であってもよい。
【0023】
前記レジストにはPAGが含まれていてもよい。
【0024】
前記アルカリ溶液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液又はトリメチル2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液であってもよい。
【0025】
前記基層は、半導体層、酸化シリコン層、窒化シリコン層及び金属層の何れかであってもよい。
【0026】
前記除去工程では、超臨界二酸化炭素中に前記アルカリ溶液と、このアルカリ溶液と前記超臨界二酸化炭素との中和反応を抑制する薬液と、を注入して、前記レジストを前記基層から剥離させるようにしてもよい。
【0027】
この態様では、表面張力のない超臨界二酸化炭素によって微細パターンにダメージを与えることなくレジストの剥離が可能であり、しかも超臨界二酸化炭素とアルカリ溶液との中和反応による塩の析出を抑制する薬液をも注入するので、超臨界二酸化炭素とアルカリ溶液とが反応して塩が析出することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、硬化層が形成されたレジストを、基層にダメージを与えないように除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態としてのレジスト除去方法を実施可能なレジスト除去装置10を示している。このレジスト除去装置10は、半導体基板Wからレジストを除去するための装置である。
【0031】
レジスト除去装置10は、装置本体12と、この装置本体12に半導体基板Wを供給するための基板カセット14とを備えている。装置本体12は、載置台18、紫外線照射ユニット20、アルカリ水溶液供給部22、純水供給部24、超音波ユニット26、搬送装置28等を主要な構成機器として備えている。載置台18は、レジストを除去する半導体基板Wを載置するためのテーブルであり、半導体基板Wを回転させるためのモータ(図示省略)が内蔵されている。半導体基板Wは、回転板18aに保持されて回転する。
【0032】
紫外線照射ユニット20は、載置台18上の半導体基板Wに紫外線を照射可能な照射部20aと、図略の制御部とを有する。制御部は、照射部20aから照射される紫外線の波長、照射強度、照射時間、照射距離等を制御可能に構成されている。照射部20aは、222nmの波長を中心とする波長の紫外光(KrClエキシマ光)、248nmの波長を中心とする波長の紫外光(KrFエキシマ光)、193nmの波長を中心とする波長の紫外光(ArFエキシマ光)、172nmの波長を中心とする波長の紫外光(Xeエキシマ光)等を出射可能である。照射される紫外光の波長は、レジストのタイプに応じて選定することができる。また、照射部20aから照射される紫外光の照射強度は、少なくとも3mW/cm以上の範囲で設定可能となっている。また、照射部20aは、スタンド30に上下移動可能に支持されており、半導体基板Wとの距離が数mm〜数百mmの範囲で調整可能となっている。なお、照射部20aは、波形の反射板を有しており、反射板によって乱反射した紫外光を半導体基板Wに照射することができる。これにより、レジスト側面にも紫外光が照射され易くなっている。
【0033】
アルカリ水溶液供給部22は、半導体基板Wに紫外光を照射した後、半導体基板Wの表面にアルカリ水溶液を供給するためのものであり、第1ノズル22aと図略の温度制御器とを有する。温度制御器は、第1ノズル22aから噴出されるアルカリ水溶液の温度を所望の温度に調整する。例えば、アルカリ水溶液は、加熱されることなく常温のままで吐出することも可能であるが、40℃〜70℃に加熱される。アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)2.38%水溶液が用いられる。なお、アルカリ水溶液として、コリン水溶液(トリメチル2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)を用いるようにしてもよい。
【0034】
純水供給部24は、半導体基板Wの表面をリンスするためのものであり、第2ノズル24aを有する。第2ノズル24aは、超純水を噴出する。第1ノズル22a及び第2ノズル24aは、上下方向に移動可能にスタンド32に支持されるとともに、スタンド32の軸回りに回動可能となっている。したがって、第1ノズル22a及び第2ノズル24aは、半導体基板Wとの相対位置関係を容易に変えることができる。
【0035】
超音波ユニット26は、アルカリ水溶液処理時及びリンス時に使用されるものであり、剥離したレジストが半導体基板Wに再付着しないように振動を与える。
【0036】
搬送装置28は、基板カセット14と載置台18との間で半導体基板Wを搬送する。
【0037】
次に、本レジスト除去装置10を用いたレジスト除去方法について説明する。ここでは、半導体基板Wの製造工程において、ソースドレインが形成された半導体基板Wからレジストを除去する場合について説明する。半導体基板Wを例示すると、例えば図2に示すように、半導体基板Wは、p−ウエル領域51、n−ウエル領域52、素子分離層53、ソース電極54、ドレイン電極55が形成されたシリコン基板56を有する。シリコン基板56は、レジスト60が被着される基層をなすものであり、シリコン基板56上には、酸化膜を介してゲート電極62が形成されている。半導体基板Wは、p−MOSトランジスター部64とn−MOSトランジスター部66とを有し、p−MOSトランジスター部64には、イオン注入等の際に使用されるレジスト60が残っている。イオン注入によりレジスト60の表面には硬化層60aが形成されている。硬化層60aは、高ドーズのイオン注入がなされることでレジスト60表面が変質(硬化)したものである。注入されているイオンは、例えば砒素(As)である。レジスト60は、PAG(Photo Acid Generator;光酸化発生剤)が含まれている化学増幅型のフォトレジスト60である。そして、本レジスト除去装置10は、このレジスト60をシリコン基板56から除去するのに使用することができる。
【0038】
このレジスト除去装置10では、搬送装置28が基板カセット14から半導体基板Wを取り出し、載置台18に搬送する。そして、搬送装置28は、載置台18の回転板18a上に半導体基板Wを載置し、回転板18aに半導体基板Wがセットされると、紫外線照射ユニット20は、半導体基板Wに紫外光を照射する(照射工程)。この照射工程では、照射部20aと半導体基板Wとの距離が例えば155mmに設定され、照射部20aは、10mW/cmの照射強度で半導体基板Wに紫外光を照射する。
【0039】
照射時間は、レジスト60に注入されているイオン量に応じて設定される。すなわち、レジスト除去装置10に搬入される半導体基板Wのタイプ等が予め分かっているため、そのタイプに応じて照射時間を設定しておけばよい。例えば、イオンのドーズ量が1×1014個/cmのレジスト60に対しては、照射時間は3分に設定され、イオンのドーズ量が5×1015個/cmのレジスト60に対しては、照射時間は7分に設定される。換言すれば、ドーズ量が1×1014個/cmのレジスト60に対しては、1800mJ/cmの照射量に設定され、ドーズ量が5×1015個/cmのレジスト60に対しては、4200mJ/cmの照射量に設定される。前記の時間をかけて紫外光を照射することで、レジスト60が昇温され、レジスト表面の硬化層60aがアルカリ可溶性になり易くなると推測される。
【0040】
照射工程が終了すると、アルカリ水溶液供給部22かららアルカリ水溶液が供給される(除去工程)。アルカリ水溶液は、第1ノズル22aから半導体基板Wに降りかけられる。このため、除去工程では、半導体基板表面のレジスト60はアルカリ水溶液と接触する。このとき、回転板18aが回転するので、半導体基板Wの表面でアルカリ水溶液が流動する。このため、半導体基板表面の全域に亘ってアルカリ水溶液を満遍なく行き渡らせることができ、しかも、常に新鮮なアルカリ水溶液をレジスト60に接触させることができる。アルカリ可溶性のレジスト60がアルカリ水溶液に接触することで、レジスト60はシリコン基板56から剥離する。またこのとき、必要に応じて超音波ユニット26から超音波を発生させる。これにより、シリコン基板56から剥離したレジスト60が再びシリコン基板56に付着しないようにすることができる。
【0041】
アルカリ水溶液の供給が所定時間行われると、続いてリンスを行う。リンス工程では、超純水が半導体基板表面に降りかけられ、これにより、半導体基板表面に残っているアルカリ水溶液が除去される。このときも超音波ユニット26から超音波が発生される。所定時間リンスされた後、半導体基板Wは、乾燥されて、搬送装置28によって搬出されて、一連のレジスト除去工程が終了する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、照射工程において、レジスト60の硬化層60aがアルカリ可溶性になる程度の照射量をレジスト60に照射するため、イオンが注入されて剥離困難となっているレジスト60であっても、レジスト60を剥離可能な状態にすることができ、除去工程においてアルカリ溶液によってレジスト60を除去することができる。すなわち、紫外光の照射によってレジスト60の硬化層60aをアルカリ可溶性にしているため、プラズマアッシング処理やオゾンガス処理が不要となり、大掛かりな装置が不要となる。しかも、レジスト60にアルカリ溶液を接触させることによってレジスト60をシリコン基板56から剥離させるため、シリコン基板56を酸化させることはない。この結果、シリコン基板56にダメージを与えることなく、レジスト60を除去することができる。
【0043】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、図3に示すように、液晶ガラス基板W1に設けられたレジストを除去するためのレジスト除去装置70によって実施することも可能である。液晶ガラス基板W1では、例えば電極等が成膜されていて、その電極等にレジストが被着されているので、このレジストを除去するために本レジスト除去装置70が使用される。
【0044】
この除去装置70では、液晶ガラス基板W1が収納される基板カセット14が設けられている。そして、搬送装置28は、基板カセット14から液晶ガラス基板W1を取り出して、載置台18上にセットする。この載置台18は、回転板を有しないため、液晶ガラス基板W1は固定された状態にセットされる。アルカリ水溶液供給部22の第1ノズル22aは、スタンド32に固定されたレール22bに沿って水平方向に移動可能に支持されている。スタンド32には、不活性ガスを噴出可能なガスノズル72を備えている。不活性ガスは、液晶ガラス基板W1を乾燥させるために使用される。この除去装置70においても、前記実施形態のレジスト除去装置10と同様に照射工程及び除去工程が実施される。その他の構成、動作等は前記実施形態のレジスト除去装置10と同様である。
【0045】
前記実施形態では、アルカリ水溶液をノズル22aから噴出させて半導体基板Wに降りかけるようにしたが、これに限られるものではない。例えば、アルカリ水溶液を超臨界二酸化炭素とともに半導体基板Wに接触させてレジストの除去を行うようにしてもよい。具体的には、図4に示すように、レジスト除去装置10は、紫外線照射ユニット20に加え、洗浄チャンバ81と、この洗浄チャンバ81に超臨界二酸化炭素、アルカリ溶液及び薬液を供給する洗浄流体供給部82と、を有する。載置台18は、紫外線照射ユニット20が配置された紫外線照射セクションと、洗浄チャンバ81との間で半導体基板Wを搬送可能に構成されている。洗浄チャンバ81は、洗浄対象となる半導体基板Wを収容可能な洗浄室81aを有する。洗浄流体供給部82は、洗浄チャンバ81に接続された循環回路83と、この循環回路83に超臨界二酸化炭素が含まれる洗浄流体を供給する超臨界流体供給部84と、循環回路83にアルカリ溶液を供給するアルカリ溶液供給部85と、循環回路83に薬液を供給する薬液供給部86と、循環回路83の洗浄流体を排出可能な洗浄流体排出部87と、を有する。循環回路83には、洗浄流体を循環させるためのポンプ83aと、異物を除去するためのフィルタ83bとが設けられている。超臨界流体供給部84は、循環回路83及び超臨界二酸化炭素の供給源に接続された供給管84aと、この供給管84aに設けられたヒータ84b及び開閉弁84cとを有する。洗浄流体排出部87は、排出管87aと、この排出管87aに設けられた開閉弁87bとを有する。アルカリ溶液供給部85は、循環回路83に接続された供給管85aと、この供給管85aに設けられたアルカリ溶液ポンプ85b及び開閉弁85cとを有する。アルカリ溶液ポンプ85bにより、超臨界領域の圧力下でも溶液を注入できる。アルカリ溶液供給部85は、アルカリ溶液を加熱するためのヒータ(図示省略)を有していてもよい。薬液供給部86は、循環回路83に接続された供給管86aと、この供給管86aに設けられた薬液ポンプ86b及び開閉弁86cとを有する。薬液ポンプ86bにより、超臨界領域の圧力下でも薬液を注入できる。薬液としては、水、メタノール等が用いられる。この薬液は、超臨界二酸化炭素とアルカリ溶液との中和反応による塩の析出を抑制するためのものである。洗浄チャンバ81には、超臨界二酸化炭素にアルカリ溶液と薬液とが混合された洗浄流体が供給され、この洗浄流体による半導体基板Wの洗浄が行われる。超臨界二酸化炭素にアルカリ溶液とともに薬液を注入することにより、中和反応による塩の析出を抑制することができる。
【0046】
したがって、この実施形態では、表面張力のない超臨界二酸化炭素によって微細パターンにダメージを与えることなくレジストの剥離が可能であり、しかも超臨界二酸化炭素とアルカリ溶液との中和反応による塩の析出を抑制する薬液をも注入するので、超臨界二酸化炭素とアルカリ溶液とが反応して塩が析出することを抑制することができる。
【実施例】
【0047】
続いて、実際に確認した実施例について説明する。
【0048】
(実施例1)
実施例1では、300mmシリコン基板を用いた。シリコン基板には、図2に示すようにレジスト60が被着されおり、ソース電極54およびドレイン電極55に砒素イオンが注入されている。レジスト60は、PAGが含まれているKrF用の化学増幅型フォトレジストであり、その厚みは1200nmである。砒素イオンのドーズ量は5×1015ions/cmであり、加速電圧50keVの条件でイオン注入した。イオン注入後のレジスト60の硬化層60aは、180nm程度の厚みであることを電子顕微鏡写真で確認している。このシリコン基板56を15×15mmの大きさに割った半導体基板Wを用いて、以下の処理を行った。
【0049】
まず、紫外線照射装置により半導体基板Wに紫外線を照射した。照射した紫外光はKrClエキシマ光であり、222nmの波長を中心とする波長を有する。紫外光を照射するランプの照射強度は10mW/cmである。紫外線照射装置のランプと半導体基板Wとの距離を155mmとし、照射時間を7分とした。したがって、紫外光の照射量は4200mJ/cmである。次に、TMAHの2.38%水溶液を30ml用い、この水溶液の温度を40℃に安定させ、その中に半導体基板Wを浸漬した。浸漬時間は10分とした。この処理後の半導体基板Wを光学顕微鏡で観察した。
【0050】
(実施例2)
実施例2は、半導体基板Wへの紫外線照射時間を10分(照射量6000mJ/cm)とした点を除いて、実施例1と同じである。
【0051】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ半導体基板Wを用いた。この半導体基板Wへの紫外線照射時間を5分(照射量3000mJ/cm)とした点を除き、比較例1は実施例1と同じである。
【0052】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同じ半導体基板Wを用いた。この半導体基板Wへの紫外線照射時間を3分(照射量1800mJ/cm)とした点を除き、比較例2は実施例1と同じである。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同じ半導体基板Wを用いた。この半導体基板Wへの紫外線照射時間を3分(照射量1800mJ/cm)とし、TMAH水溶液の温度を60℃とした点を除いて、実施例3は実施例1と同じである。
【0054】
(比較例3)
比較例3は、半導体基板Wへの紫外線照射時間を1分(照射量600mJ/cm)とした点を除いて、実施例3と同じである。
【0055】
(実施例4)
実施例4では、砒素イオンのドーズ量が1×1014ions/cmである半導体基板Wを用いた。実施例1と同様に、イオン注入は加速電圧50keVの条件下で行った。半導体基板Wへの紫外線照射時間を3分(照射量1800mJ/cm)とし、TMAH水溶液の温度を40℃とした。それ以外の条件は、実施例1と同じである。
【0056】
(実施例5)
実施例5は、TMAH水溶液の温度を60℃とした点を除いて、実施例4と同じである。
【0057】
(比較例4)
比較例4は、紫外線照射時間を1分(照射量600mJ/cm)とした点を除いて、実施例4と同じである。
【0058】
(比較例5)
比較例5は、TMAH水溶液の温度を60℃とした点を除いて、比較例4と同じである。
【0059】
(実施例6)
実施例6では、砒素イオンのドーズ量が1×1017ions/cmである半導体基板Wを用いた。実施例1と同様に、イオン注入は加速電圧50keVの条件下で行った。半導体基板Wへの紫外線照射時間を10分(照射量6000mJ/cm)とし、TMAH水溶液の温度を70℃とした。TMAH水溶液への浸漬時間を30秒とした。そして、紫外線の照射とTMAH水溶液への浸漬を3回繰り返した。このとき、紫外線の照射とTMAH水溶液への浸漬を行うごと(1サイクルごと)に光学顕微鏡でレジスト60の剥離状況を観察した。
【0060】
(実施例7)
実施例7では、ホウ素(B)イオンが注入された半導体基板Wを用いた。注入イオンのドーズ量は1×1017ions/cmである。それ以外の条件は、実施例6と同じである。
【0061】
以上の実施例1〜7、比較例1〜5について、光学顕微鏡を用いてレジスト剥離状況を観察した結果を表1及び表2に示す。表1中の「○」は、レジスト60がほぼ全域で除去されている場合を示し、「×」はそれ以外の場合である。また、表2中の数値は、レジスト60が剥離した面積の割合を示している。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1に示すように、イオンドーズ量が5×1015ions/cmの半導体基板Wに対して、TMAH水溶液温度が40℃の場合には、紫外線照射量が少なくとも4200mJ/cm(照射時間7分)であれば、レジスト60は除去される(実施例1)。そして、TMAH水溶液温度が60℃であれば、紫外線照射量を少なくとも1800mJ/cm(照射時間3分)とすれば、レジスト60は除去される(実施例3)。
【0065】
一方、イオンドーズ量が1×1014ions/cmの半導体基板Wに対しては、TMAH水溶液温度が40℃の場合であっても60℃の場合であっても、紫外線照射量を少なくとも1800mJ/cm(照射時間3分)とすれば、レジスト60は除去される(実施例4,5)。
【0066】
表2に示すように、紫外線の照射とTMAH水溶液への浸漬を繰り返すことで、レジスト60の剥離量が増加することが分かる。そして、イオンドーズ量が1×1017ions/cmの半導体基板Wに対しては、3回繰り返すことによりほぼ全域でレジスト60を除去することができる(実施例6,7)。
【0067】
なお、各実施例及び比較例では、ランプと半導体基板Wとの距離を155mmとしたが、これに限られるものではない。ランプと半導体基板Wとの距離を25mmとして実験を行ったが、同様の結果が得られている。
【0068】
また、実施例4では、イオンドーズ量が1×1014ions/cmである半導体基板Wを用いたが、例えばイオンドーズ量が1×1012ions/cm程度の半導体基板Wに対して、実施例4と同じ条件で処理を行ったとしても、レジスト60が剥離することは明らかである。
【0069】
また、各実施例及び比較例では、半導体基板WをTMAH水溶液に浸漬するようにしたが、前記実施形態に示したように、半導体基板WにTMAH水溶液を噴きかけるようにしても処理時間に差がないことを確認している。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態としてのレジスト除去方法を実施可能なレジスト除去装置を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態によるレジスト除去方法が適用され得る半導体基板を概略的に示す図である。
【図3】本発明のその他の実施形態としてのレジスト除去方法を実施可能なレジスト除去装置を概略的に示す図である。
【図4】本発明のその他の実施形態としてのレジスト除去方法を実施可能なレジスト除去装置を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0071】
W 半導体基板
W1 液晶ガラス基板
10 レジスト除去装置
12 装置本体
14 基板カセット
18 載置台
18a 回転板
20 紫外線照射ユニット
20a 照射部
22 アルカリ水溶液供給部
22a 第1ノズル
22b レール
24 純水供給部
24a 第2ノズル
26 超音波ユニット
28 搬送装置
30 スタンド
32 スタンド
51 p−ウエル領域
52 n−ウエル領域
53 素子分離層
54 ソース電極
55 ドレイン電極
56 シリコン基板
60 レジスト
60a 硬化層
62 ゲート電極
64 p−MOSトランジスター部
66 n−MOSトランジスター部
70 レジスト除去装置
72 ガスノズル
81 洗浄チャンバ
81a 洗浄室
82 洗浄流体供給部
83 循環回路
83a ポンプ
83b フィルタ
84 超臨界流体供給部
84a 供給管
84b ヒータ
84c 開閉弁
85 アルカリ溶液供給部
85a 供給管
85b アルカリ溶液ポンプ
85c 開閉弁
86 薬液供給部
86a 供給管
86b 薬液ポンプ
86c 開閉弁
87 洗浄流体排出部
87a 排出管
87b 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストが被着された基層から当該レジストを剥離する方法であって、
イオンが注入されているレジストに、当該イオンの注入によって形成されたレジストの硬化層にアルカリ可溶性を生じさせる程度の紫外光を照射する照射工程と、
前記レジストをアルカリ溶液に接触させて当該レジストを基層から剥離させる除去工程と、を含むレジスト除去方法。
【請求項2】
前記レジストには、1×1014〜1×1017個/cmのイオンが注入されている請求項1に記載のレジスト除去方法。
【請求項3】
前記レジストには、1×1014〜5×1015個/cmのイオンが注入されており、
前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも1800mJ/cmとし、
前記除去工程では、60℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いる請求項1に記載のレジスト除去方法。
【請求項4】
前記紫外光は、3分間以上かけて1800mJ/cmの照射量を照射する請求項3に記載のレジスト除去方法。
【請求項5】
前記レジストには、1×1014個/cm以下のイオンが注入されており、
前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも1800mJ/cmとし、
前記除去工程では、40℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いる請求項1に記載のレジスト除去方法。
【請求項6】
前記紫外光は、3分間以上かけて1800mJ/cm以上の照射量を照射する請求項5に記載のレジスト除去方法。
【請求項7】
前記レジストには、1×1014〜5×1015個/cmのイオンが注入されており、
前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも4200mJ/cmとし、
前記除去工程では、40℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いる請求項1に記載のレジスト除去方法。
【請求項8】
前記紫外光は、7分間以上かけて4200mJ/cm以上の照射量を照射する請求項7に記載のレジスト除去方法。
【請求項9】
前記照射工程と前記除去工程を繰り返し行う請求項1に記載のレジスト除去方法。
【請求項10】
前記レジストには、1×1014〜1×1017個/cmのイオンが注入されている請求項9に記載のレジスト除去方法。
【請求項11】
前記照射工程における紫外光の照射量を少なくとも6000mJ/cmとし、
前記除去工程では、70℃以上に加熱された前記アルカリ溶液を用いる請求項10に記載のレジスト除去方法。
【請求項12】
前記紫外光は、10分間以上かけて6000mJ/cm以上の照射量を照射する請求項11に記載のレジスト除去方法。
【請求項13】
前記紫外光の照射強度は、3mW/cm以上である請求項1から12の何れか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項14】
前記レジストにはPAGが含まれている請求項1から12の何れか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項15】
前記アルカリ溶液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液又はトリメチル2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液である請求項1から12の何れか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項16】
前記基層は、半導体層、酸化シリコン層、窒化シリコン層及び金属層の何れかである請求項1から12の何れか1項に記載のレジスト除去方法。
【請求項17】
前記除去工程では、超臨界二酸化炭素中に前記アルカリ溶液と、このアルカリ溶液と前記超臨界二酸化炭素との中和反応を抑制する薬液と、を注入して、前記レジストを前記基層から剥離させる請求項1に記載のレジスト除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−129837(P2010−129837A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304074(P2008−304074)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【出願人】(301028325)株式会社つくばセミテクノロジー (15)
【Fターム(参考)】