説明

ローラの製造方法、現像ローラ及び画像形成装置

【課題】硬化終了後冷却することなく金型から脱型することができ凹み不良を発生せずに寸法精度の高いローラを効率よく得ることのできるローラの製造方法を提供する。
【解決手段】金型の内面に離型剤の塗布面を形成する離型剤塗布工程、金型内に軸芯体を配置する軸芯体配置工程、金型内に軸芯体と同心状に液状シリコーンゴムをローラ状に射出する射出工程、金型内で液状シリコーンゴムを成形する一次硬化工程、軸芯体114aおよび成形された液状シリコーンゴム114bを金型から取り出す脱型工程、および、脱型工程後の液状シリコーンゴムの硬化を進める二次硬化工程を含むローラの製造方法において、離型剤がフッ素系離型剤と界面活性剤とを含む離型剤組成物であり、フッ素系離型剤と界面活性剤との質量比が1:9以上9:1以下である。この方法で製造された現像ローラおよびこの現像ローラを備える画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置における現像、帯電、転写、クリーニング、除電等に用いる導電性ローラなどとして好適なローラの製造方法に関する。本発明はまた、このような画像形成装置に関し、画像形成装置に用いられる現像ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタや複写機、ファクシミリなどの電子写真方式を採用した各種装置には現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等のローラが組み込まれている。
【0003】
このようなローラの弾性層の形成方法は研磨によって所望の形状を削り出す方式と、専用の型に材料を注入、硬化させることで所望の形状とする方式の二つに分けられる。その中でも、金型成形は、研磨などの後工程を必要とせず、高精度なローラが得られることから非常に多く用いられている。この金型成形においては、金型の内径形状が高精度に加工された筒状のキャビティ内に軸芯体を配し、その後キャビティ内に液状シリコーンゴム等の液状ゴム原料を注入し加熱硬化させて、導電性弾性層を形成することが可能である。しかしながら、硬化したシリコーンゴムは熱膨張が大きいため、金型のキャビティ内壁面に強い力で押し付けられている状態となる。このため、加熱により熱硬化が終了した弾性ローラを金型から取り出す(以後、脱型という。)際には、冷却して、硬化したシリコーンゴムの熱膨張を除去してから脱型しなければならなかった。冷却せずに脱型した場合、金型のキャビティ壁面とのストレスで弾性ローラが変形したり、変形に耐えられない場合には破壊が起こる場合もある。このため、金型キャビティ壁面と弾性ローラとの接触面での摩擦力を低減させる必要がある。
【0004】
このような問題に対して、金型のキャビティ壁面にフッ素系またはシリコーン系の離型剤を塗布する方法が提案されている。しかし、このような離型剤を用いた手法を採用したとしても、弾性ローラを金型から脱型するためには、上述したような理由から少なくともある程度冷却を行い、弾性ローラの外径を金型のキャビティの径よりも小さくしてから脱型する必要があった。この冷却工程には熱交換器等の設備が必要であり、さらに、金型から脱型後再び加熱して硬化する際に、常温から硬化温度までの昇温に大きな熱量が必要となり、成形サイクルタイムの増加だけでなく使用する電力もまた大きくなり問題となっていた。
【0005】
一方、あらかじめシリコーンゴムに大量のシリコーンオイルを含ませる方法も提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、このような方法では、ローラからオイルが染み出して画像不良の原因となっていた。オイル成分を大量に含むシリコーンゴムはゴム特性がローラの条件を満足しないことがあるので、熱変形、圧縮永久歪、ゴム硬度等の基本的な特性を満足させるためには、添加するオイル成分量に上限があった。
【特許文献1】特開昭48−62436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は液状シリコーンゴムの金型成形において、硬化終了後冷却することなく金型から脱型することができ、かつ凹み不良を発生せずに寸法精度の高いローラを効率よく得ることのできるローラの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の別の目的は、寸法精度が高く、かつより安価な現像ローラおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、金型の内面に離型剤の塗布面を形成する離型剤塗布工程、金型内に軸芯体を配置する軸芯体配置工程、金型内に軸芯体と同心状に液状シリコーンゴムをローラ状に射出する射出工程、金型内で液状シリコーンゴムを成形する一次硬化工程、軸芯体および成形された液状シリコーンゴムを金型から取り出す脱型工程、および、脱型工程後の液状シリコーンゴムの硬化を進める二次硬化工程を含むローラの製造方法において、
該離型剤がフッ素系離型剤と界面活性剤とを含む離型剤組成物であり、
該離型剤組成物におけるフッ素系離型剤と界面活性剤との質量比が1:9以上9:1以下であることを特徴とするローラの製造方法が提供される。
【0009】
前記離型剤塗布工程において、前記離型剤組成物が有機溶剤または水性媒体中に溶解または分散した塗布液であって該塗布液における離型剤組成物の固形分が0.05質量%以上20質量%以下である塗布液を、金型の内面に塗布することが好ましい。
【0010】
前記界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0011】
本発明により、画像形成装置用の、潜像が形成された像担持体に現像剤を付与する現像ローラにおいて、
該現像ローラが、上記方法により製造されたローラであることを特徴とする現像ローラが提供される。
【0012】
本発明により、潜像が形成された像担持体に現像剤を付与する現像ローラを備える画像形成装置において、
該現像ローラが、上記現像ローラであることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液状シリコーンゴムの金型成形において、硬化終了後冷却することなく金型から脱型することが可能となり、凹み不良を発生せずに寸法精度の高いローラを効率よく得ることができるローラの製造方法が提供される。
【0014】
本発明によれば、寸法精度が高く、かつより安価な現像ローラおよび画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明のローラの製造方法は次の工程を含む。
【0017】
・金型の内面に離型剤の塗布面を形成する離型剤塗布工程。
【0018】
金型の内面に離型剤の塗布面を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、金型を離型剤の溶液または分散液中に浸漬する方法、金型の内面に離型剤の溶液または分散液を吹き付けまたは刷毛塗りすること等により、または布に染み込ませて塗りつけることにより塗布する方法がある。その後、有機溶剤または水性媒体を蒸発除去することができる。
【0019】
・金型内に軸芯体を配置する軸芯体配置工程。
【0020】
・金型内に軸芯体と同心状に液状シリコーンゴムをローラ状に射出する射出工程。
【0021】
・金型内で液状シリコーンゴムを成形する一次硬化工程。
【0022】
一次硬化とは、金型内から成形したローラの形状を著しく損なうことなく取り出すことができる程度にまで、液状シリコーンゴムを硬化させることを指す。更には、金型内でローラの破壊を起こさない範囲で液状シリコーンゴムを硬化させることを指す。
【0023】
・軸芯体および成形された液状シリコーンゴムを金型から取り出す脱型工程。
【0024】
・脱型工程後の液状シリコーンゴムの硬化を進める二次硬化工程。
【0025】
本発明では、前記離型剤がフッ素系離型剤と界面活性剤とを含む組成物(離型剤組成物)である。そして、この離型剤組成物におけるフッ素系離型剤と界面活性剤との質量比が1:9以上9:1以下である。
【0026】
このような特徴を有する本発明によれば、金型のキャビティ壁面とのすべり性が良好になり、硬化後冷却せずに脱型することが可能となり効率よく導電性ローラ等のローラを得ることが出来る。
【0027】
本発明の製造方法により製造された導電性ローラの一例を図1に示す。図1において、(b)は導電性ローラの軸芯体の中心線に沿った概略断面図であり、(a)は導電性ローラを軸芯体の中心線方向からみた図である。図1に示した導電性ローラ114は、導電性の軸芯体114aと、導電性の軸芯体114aの外周面上に同心円状に形成された導電性弾性層114bと、導電性弾性層114bの外周面上に形成された被覆層114cを有する。
【0028】
〔軸芯体〕
軸芯体としては、ローラ、特には画像形成装置用の導電性ローラに用いることのできる公知の軸芯体を、適宜用いることができる。例えば、炭素鋼合金表面に5μm厚さの化学ニッケルメッキを施した、導電性の、円柱状の形状を有するものが好ましい。導電性の軸芯体を構成する材料としては、その他、例えば、鉄、アルミニウム、チタン、銅およびニッケル等の金属や、これらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、青銅等の合金、さらにカーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等の剛直で導電性を示す公知の材料を使用することもできる。また、本発明で使用する軸芯体は、形状としては、円柱状のほかに中心部分を空洞とした円筒形状とすることも可能である。
【0029】
〔金型〕
金型としては、ローラ、特には画像形成装置用の導電性ローラを成形するために用いることのできる公知の金型を、適宜用いることができる。鋼鉄製の金型であって金型の少なくともキャビティ壁面に表面処理を施したものが好ましい。表面処理としては、化学ニッケルメッキ法、テフロンコーティング法、ガス窒化法、塩浴窒化法、ガス軟窒化法、プラズマ窒化法等の方法による表面処理が挙げられるが、処理前の金型材質や形状により適宜選択することができる。
【0030】
〔離型剤〕
本発明においては、フッ素系離型剤と界面活性剤を含む離型剤組成物を用いる。例えば離型剤組成物としてフッ素系離型剤と界面活性剤との混合物を用いることができる。
【0031】
フッ素系離型剤として、有機フッ素化合物を用いることができる。
【0032】
有機フッ素化合物としては、特に制限は無く、離型剤の分野で従来公知の各種フッ素系化合物の中から適宜選択して使用できる。例えば、パーフルオロ酢酸、パーフルオロ酪酸等のパーフルオロカルボン酸及びこれらのリチウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩等のパーフルオロカルボン酸塩;フルオロアルキル(C2〜C10)カルボン酸およびその塩;パーフルオロカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等のパーフルオロカルボン酸アルキルエステル;フルオロアルキル(C2〜C10)カルボン酸のアルキルエステル;パーフルオロアルキルアクリレートまたはメタクリレートの重合体、またはこれらとブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等との共重合体等である。
【0033】
界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を用いることができる。
【0034】
陰イオン系の界面活性を有する化合物の例としては、次の(1)〜(3)を挙げることができる。(1)スルホン酸の、IA、IIA又はIIB族(周期律表第1族、第2族または第12族)金属の塩であるスルホン酸塩系有機化合物。(2)硫酸とアルコールとのエステルのIA、IIA又はIIB族金属の塩である硫酸エステル塩系有機化合物。(3)リン酸エステルのIA、IIA又はIIB族金属の塩であるリン酸エステル塩系有機化合物。これらの中では、スルホン酸系有機化合物が好ましい。
【0035】
スルホン酸系有機化合物としては、オクチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等が得られる炭素数8〜18のアルキル基を有する高級アルコール硫酸エステル、高級アルコール・硫酸エステルアミン塩、オキソアルコールの硫酸エステル、エライジルアルコールの硫酸エステル、アビエチルアルコールの硫酸エステル、ナフテンアルコールの硫酸エステル、ステリンの硫酸エステル、4−オクチル−2−メチルシクロヘキサノール、水添ベンジルクレゾール、水添アミルフェノール、水添ビスフェノール等の脂環族アルコールの硫酸エステル、クロルヒドリン等のハロゲンアルコールの硫酸エステル、高級グリコールの硫酸エステル等のアルコールの硫酸エステル;1−ヘキサデセンの硫酸エステル、ヘプタデセンの硫酸エステル、石油オレフィンの硫酸エステル、パラフィンロウ熱分解オレフィンの硫酸エステル、重合オレフィン(炭素数8〜20)の硫酸エステル、スクアレンの硫酸エステル、テルペンの硫酸エステル等のオレフィンの硫酸エステル;硫酸化モノグリセリド、リシノール酸モノグリセリド硫酸エステル、リシノール、オレイン酸のプロピル、ブチル、アミンエステル等から得られる脂肪酸エステルの硫酸エステル、アセチル化リシノール酸の硫酸化物、オレイルアルコールの硫酸化物、マッコウ鯨油の硫酸エステル、ナフテン酸エステルの硫酸化物、グリコールのナフテン酸エステルの硫酸化物、ヘキサンジオール脂肪酸エステルの硫酸エステル、オキシ酸エステルの硫酸エステル、ポリオキシカルボン酸の硫酸エステル、脂肪酸テトラヒドロフルフリルエステルの硫酸エステル、ホルムアルデヒド縮合エステル結合硫酸エステル、メタクリルアルコール脂肪酸エステルの硫酸化物、水添ロジンペンタエリトリットエステルの硫酸化物、多価アルコールモノエステルの硫酸化物等のエステル結合硫酸エステル;脂肪酸アミド硫酸エステル、脂肪酸アニリド硫酸エステル、脂肪酸エタノールアミド硫酸エステル、アシルアミノシクロヘキサノール硫酸エステル、脂肪酸アリルアミド硫酸化物、リンゴ酸アミド硫酸エステル、ウレタン結合硫酸エステル、アミド・スルホンアミド結合硫酸エステル等のアミド結合硫酸エステル;グリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、アルキルフェノールグリコールエーテル、アルキルフェノール・グリセリンエーテル、アルキルフェニルカルビノールグリセリンエーテル、アルコキシシクロヘキサノール、脂肪酸ポリオキシエチレンアミド、アルキルフェノールアリルエーテル、脂肪アルコールグリコシド、ヒドロキシチオエーテル、ヒドロキシスルホン、スルホニルアミノエタノール等の硫酸エステルであるエーテル結合硫酸エステル等が挙げられる。
【0036】
非イオン性の界面活性を有する化合物としては、(1)ポリエチレングリコール系有機化合物および、(2)多価アルコール系有機化合物などを挙げることができる。
【0037】
ポリエチレングリコール系有機化合物としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0038】
多価アルコール系有機化合物としては、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0039】
フッ素系離型剤と界面活性剤の質量比は、1:9〜9:1が好ましく、さらには7:3〜9:1が好ましい。前記比が9:1以下(質量基準で、フッ素系離型剤の界面活性剤に対する比率が9以下)であると、液状ゴム原料(液状シリコーンゴム)を硬化して形成した導電性弾性層を有するローラを、金型から容易に脱型することができる。前記比が1:9以上(質量基準で、フッ素系離型剤の界面活性剤に対する比率が1/9以上)であると、離型剤がゴムを浸蝕してローラが凹むことを容易に防止することができる。
【0040】
離型剤組成物は、有機溶剤または水性媒体中に溶解または分散させて使用することが好ましい。例えば、離型剤塗布工程において、離型剤組成物を有機溶剤または水性媒体中に溶解または分散させた塗布液を、金型の内面に塗布することができる。
【0041】
有機溶剤または水性媒体としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、塩化メチレン、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、トリクロルエタン、トリクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類;および水が挙げられる。これらは単独で使用できるが、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
有機溶剤もしくは水性媒体中の離型剤組成物の固形分は、好ましくは0.05質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。離型剤組成物の固形分が0.05質量%以上であると、離型性に優れる。また、離型剤組成物の固形分の濃度が20質量%以下であると、画像不良の原因となる離型剤跡が導電性弾性層に付着することを優れて防止することができる。
【0043】
金型のキャビティ壁面に離型剤組成物を塗布するには、公知の離型剤塗布方法を用いることができる。例えば、金型を離型剤組成物の溶液または分散液中に浸漬する方法、金型のキャビティ壁面に離型剤組成物の溶液または分散液を吹き付けまたは刷毛塗りすること等により、または布にしみこませて塗りつけることにより塗布する方法がある。その後、有機溶剤または水性媒体を蒸発除去することができる。
【0044】
〔導電性弾性層〕
導電性ローラを製造するために、液状シリコーンゴムを用いて弾性層を形成することができる。導電性弾性層を構成する材料としては、導電性ローラの分野で公知の材料から適宜選ぶことができる。弾性の度合いは使用目的に応じて適宜決めることができる。導電性弾性ローラの場合、弾性層は導電性を有する。導電性の度合いは使用目的に応じて適宜決めることができる。電子写真プロセスに用いられる導電性弾性ローラの場合、導電性弾性層を構成する材料として、液状ゴム原料、好ましくは液状付加反応架橋型シリコーンポリマーに導電性付与剤としてカーボンブラック等の導電性フィラーを配合したものを反応硬化したものが好ましく用いられる。
【0045】
〔液状ゴム原料〕
導電性弾性層を構成する材料としては、耐熱、耐寒性にすぐれ、広い温度範囲で良好な圧縮復元性を示し、耐候性、耐オゾン性、耐コロナ性、電気特性、耐熱油性、耐薬品性、耐熱水性などにもすぐれる材料が好ましい。これらの特性は、導電性弾性層を構成する材料を得るための液状ゴム原料に配合されるシリコーンポリマー、充填剤、添加剤などの種類や、配合方法によって決定されうる。
【0046】
上記シリコーンポリマーは、オルガノポリシロキサン、およびオルガノハイドロジエンポリシロキサンを含み、さらに無機質充填剤や白金系触媒、硬化反応遅延剤と適宜混合して液状ゴム原料として用いられる。
【0047】
上記オルガノポリシロキサンは、線状構造または分岐鎖状構造を有しており、液状シリコーンゴム原料のベースポリマーとして用いられる。導電性ローラの弾性層を形成するための液状ゴム原料は、オルガノポリシロキサンを含むものが好ましい。その分子量は特に限定されないが10万以上100万以下であるものが好ましく、重量平均分子量はおよそ50万程度であるものが好ましい。さらに加工特性および得られる液状ゴム原料の特性等の観点から、25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度は、下限値として10Pa・s以上が好ましく、50Pa・s以上がより好ましい。また、上限値としては300Pa・s以下が好ましく250Pa・s以下がより好ましい。オルガノポリシロキサンの粘度を10Pa・s以上とすると、液状ゴム原料の流動性が小さく、漏れにくくなるため好ましい。また、オルガノポリシロキサンの粘度を300Pa・s以下とすると、気泡をかみにくい液状ゴム原料が得られ好ましい。
【0048】
上記オルガノポリシロキサンの分子末端基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位である。分子末端基の種類は特に限定されないが、トリオルガノシリル基、例えば、トリメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルアリルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基等を例示することができる。活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基およびアリル基の少なくとも一方を含むトリオルガノシリル基であることが好ましく、ビニル基を含むトリオルガノシリル基であることが特に好ましい。
【0049】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に直結した少なくとも2個の水素原子を有することが必要とされる。これは前記水素原子と前記オルガノポリシロキサン中のアルケニル基との付加反応によって架橋を形成し、これらを含む液状ゴム原料を硬化させるために必要である。導電性ローラの弾性層を形成するための液状ゴム原料は、ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むものが好ましい。ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量に特に制限はなく、1000〜10000であるものが好ましい。液状ゴム原料の硬化反応を適切に行なわせるためには、比較的低分子量(1000以上、5000以下)のポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0050】
〔被覆層〕
導電性弾性層の外周面上に被覆層を形成することができる。被覆層は、耐摩耗性やトナー帯電性、トナー搬送性等の要求に対応するため、例えば、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等を含む材料から構成することが好ましい。導電性ローラが現像ローラであるときは、圧縮永久歪の観点から、被覆層はポリウレタン樹脂を含む材料から構成されたものが好ましい。
【0051】
ポリウレタン樹脂の原料としてのポリオール化合物としては、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレンジアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリプロピレングリコール等の公知のポリウレタン用ポリオールを挙げることができる。
【0052】
また、ポリウレタン樹脂の原料としてのイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、およびそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等を好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、HDIおよびそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等である。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほどより高い柔軟性を有するポリウレタン被覆層を生成する。
【0053】
導電性ローラ全体の電気抵抗を調整する目的のため、被覆層は導電性又は半導電性にすることも可能である。導電性、半導電性の発現のためには、各種電子伝導機構を有する導電剤(カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)あるいはイオン導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩等)を適宜用いることで実現することができる。この場合、所望の導電性を得るためには、前記各種導電剤を2種以上併用してもよい。
【0054】
被覆層の形成においては、被覆層を形成するための塗料を導電性弾性層の外周面に塗布し、乾燥して、塗工層を形成し、さらにこれを加熱して硬化して被覆層を形成することが好ましい。被覆層を形成するための塗料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して原材料を分散させて調製することができる。得られた被覆層形成用の塗料は、スプレー塗工法、ディッピング法等により導電性弾性層の表面に塗布される。
【0055】
被覆層形成用塗料の調製に有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤として、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンのケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられる。有機溶剤は、前工程で形成した導電性弾性層を溶解しないものが好ましい。また、導電性弾性層を構成する材料が溶解する場合は、水等を溶剤として用いてもよい。
【0056】
被覆層の層厚は5〜100μm、特に10〜30μmであることが好ましい。層厚が5μm以上であると、基層の導電性弾性層中の低分子量成分がしみだして感光体等を汚染することを容易に防止することができる。また、100μm以下であると、導電性ローラが硬くなることを容易に防止でき、例えば、現像ローラの場合にトナー融着を容易に防止することができる。
【0057】
上記被覆層中に平均粒子径が1〜20μmの微粒子を分散させることにより、導電性ローラを現像ローラとした場合、トナーの搬送を容易にすることができ、好適な量のトナーを現像領域に搬送することができる。このような目的に使用する微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子等の樹脂微粒子が挙げられる。特にポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、およびポリウレタン微粒子が好ましい。これらの微粒子は、通常、前記被覆層を構成する材料の約3〜50質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0058】
〔画像形成装置〕
次に、本発明のローラの製造方法により製造された現像ローラを具備する画像形成装置の一例について、図を用いて説明する。図2は、本発明のローラの製造方法により製造された現像ローラを具備するプロセスカートリッジを有する画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0059】
このプロセスカートリッジは、潜像を担持する像担持体としての感光ドラムに対向して当接または圧接した状態で現像剤を担持する現像剤担持部材25を備えている。さらに、このプロセスカートリッジは、像担持体としての感光ドラム21、帯電装置22、現像ブレード27、現像容器34、供給ローラ26、クリーニングブレード30を備えており、現像剤担持部材25として本発明の現像ローラを用いたものである。この現像剤担持部材25は、感光ドラム21に現像剤としてのトナーを付与することにより潜像を現像剤像として可視化する。この画像形成装置においては、感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によって一様に帯電され、感光ドラム21に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。上記静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なロセスカートリッジに保持される現像装置24によって現像剤たるトナー28を付与されることにより現像され、トナー像として可視化される。
【0060】
現像は露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム21上のトナー像は、転写ローラ29によって記録媒体である紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0061】
一方、転写されずに感光ドラム21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21は上述作用を繰り返し行う。
【0062】
現像装置24は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像容器34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持部材25としての本発明の現像ローラとを備える。そして現像装置は、現像ローラ25にトナーを供給すると共に余剰のトナーを剥ぎ取る供給ローラ26と、現像ローラ25に供給されるトナーの層厚を規制する現像ブレード27も備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0063】
尚、現像剤担持部材25は感光ドラム21と当接幅をもって接触し、矢印B方向に回転している。現像装置24においては、供給ローラ26が、現像容器34内で、現像ブレード27の現像剤担持部材25表面との当接部に対し現像剤担持部材25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0064】
供給ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像剤担持部材25へのトナー28供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。この供給ローラ26の現像剤担持部材25に対する当接幅としては、例えば1〜8mmが有効であり、また、現像剤担持部材25に対してはその当接部において相対速度を持たせることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
また、本実施例において、凹み評価は、次に記載する方法で行った。
【0067】
〔凹み評価〕
得られた導電性弾性層の凹み発生有無確認方法及びその判定について説明する。
【0068】
実際に成形した導電性弾性層を目視にて観察を行った。
【0069】
ローラの平面を基準とした時に、凹みの部分の最大直径が1mm以上の凹みがローラ1本中に1個でも発生した場合、このローラは凹みが発生したものと判定する。
【0070】
同じ方法で成形したローラを1000本観察し、その本数を数えた。
【0071】
<実施例1>
離型剤組成物として、フッ素系離型剤(フリリース(商品名):ネオス株式会社)と非イオン性界面活性剤(エマルゲンB-66(商品名):花王株式会社)を質量比で7:3の割合で混合し、固形分10%の離型剤組成物を調製した。
【0072】
金型のキャビティ壁面に、上記の離型剤組成物を吹き付け、その後、布で離型剤組成物をのばした。金型キャビティ内に、直径8mmの軸芯体を、キャビティと同心となるように設置した。
【0073】
次に、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、体積固有抵抗10×107Ωcm品)を金型の注入口から10mL/sで注入し、100℃の温度にて10分加熱して一次硬化させ、硬化後冷却することなく脱型し弾性ローラを作製した。導電性弾性層の硬化後の物性を安定させ、シリコーンゴム弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去すること等を目的として、このローラをオーブンを用いて200℃で4時間熱処理を行った(二次硬化)。得られた弾性ローラは、軸芯体の外周面上に形成された導電性弾性層を有しており、導電性弾性層が形成された部位の直径はおよそ16mm、導電性弾性層の形成された部位の長さは240mmであった。
【0074】
得られたローラについて、上記の評価方法を用いて、凹みの発生状況を評価した。その結果を表1に示す。得られたローラは電子写真方式の画像形成装置用の現像ローラとして好適に使用可能なものであった。
<実施例2>
フッ素系離型剤(フリリース(商品名):ネオス株式会社)と非イオン性界面活性剤(エマルゲンB−66(商品名):花王株式会社)を5:5の質量比で混合して、固形分5%の離型剤組成物を調製した。これ以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0075】
<実施例3>
フッ素系離型剤(フリリース(商品名):ネオス株式会社)と陰イオン性界面活性剤(ペレックスSS−H(商品名):花王株式会社)を4:6の質量比で混合して、固形分15%の離型剤組成物を調製した。これ以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例4>
フッ素系離型剤(フリリース(商品名):ネオス株式会社)と陰イオン性界面活性剤(ペレックスSS−H(商品名):花王株式会社)を1:9の質量比で混合して、固形分3%の離型剤組成物を調製した。これ以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例5>
フッ素系離型剤(フリリース(商品名):ネオス株式会社)と陰イオン性界面活性剤(ペレックスSS−H(商品名):花王株式会社)を9:1の質量比で混合して、固形分3%の離型剤組成物を調製した。これ以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0078】
<比較例1>
離型剤組成物に替えて、固形分10%のフッ素系離型剤(フリリース(商品名):ネオス株式会社)のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0079】
<比較例2>
離型剤組成物に替えて、固形分10%の非イオン性界面活性剤(ナロアクティー ID−60(商品名):三洋化成株式会社)のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして現像ローラを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜5においては、フッ素系離型剤と界面活性剤の混合比が1:9〜9:1であるという条件を満たすことで、離型剤起因の凹みを発生することなく寸法精度の高いローラが得られた。
【0082】
これに対して比較例1では離型剤としてフッ素系離型剤のみを使用しているため、熱い金型のままローラを脱型することが難しくなり、凹みが生じた。
【0083】
また、比較例2では離型剤として界面活性剤のみを使用しているため、離型剤起因の凹みが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のローラの製造方法の一実施形態において作製される導電性ローラの基本構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0085】
21 像担持体(感光ドラム)
22 帯電装置
23 レーザー光
24 現像装置
25 現像剤担持部材(現像ローラ)
26 供給ローラ
27 現像ブレード
28 現像剤(トナー)
29 転写ローラ
30 クリーニングブレード
31 廃トナー容器
32 定着装置
33 紙
34 現像容器
114 導電性ローラ
114a 軸芯体
114b 導電性弾性層
114c 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の内面に離型剤の塗布面を形成する離型剤塗布工程、金型内に軸芯体を配置する軸芯体配置工程、金型内に軸芯体と同心状に液状シリコーンゴムをローラ状に射出する射出工程、金型内で液状シリコーンゴムを成形する一次硬化工程、軸芯体および成形された液状シリコーンゴムを金型から取り出す脱型工程、および、脱型工程後の液状シリコーンゴムの硬化を進める二次硬化工程を含むローラの製造方法において、
該離型剤がフッ素系離型剤と界面活性剤とを含む離型剤組成物であり、
該離型剤組成物におけるフッ素系離型剤と界面活性剤との質量比が1:9以上9:1以下であることを特徴とするローラの製造方法。
【請求項2】
前記離型剤塗布工程において、前記離型剤組成物が有機溶剤または水性媒体中に溶解または分散した塗布液であって該塗布液における離型剤組成物の固形分が0.05質量%以上20質量%以下である塗布液を、金型の内面に塗布することを特徴とする請求項1記載のローラの製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2記載のローラの製造方法。
【請求項4】
画像形成装置用の、潜像が形成された像担持体に現像剤を付与する現像ローラにおいて、
該現像ローラが、請求項1〜3いずれか一項記載の方法により製造されたローラであることを特徴とする現像ローラ。
【請求項5】
潜像が形成された像担持体に現像剤を付与する現像ローラを備える画像形成装置において、
該現像ローラが、請求項4記載の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30102(P2010−30102A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193437(P2008−193437)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】