化合物半導体装置及びその製造方法
【課題】多様な構造を実現することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】化合物半導体装置の一態様には、基板1と、基板1の上方に形成された化合物半導体層2と、が設けられている。化合物半導体層2には、第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域2aと、第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、第1の領域2aよりも低濃度で含有する第2の領域2bと、が設けられている。
【解決手段】化合物半導体装置の一態様には、基板1と、基板1の上方に形成された化合物半導体層2と、が設けられている。化合物半導体層2には、第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域2aと、第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、第1の領域2aよりも低濃度で含有する第2の領域2bと、が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を有している。このため、これらの特性を利用して窒化物半導体を高耐圧及び高出力の半導体デバイスに適用することについて種々の検討が行われている。例えば、窒化物半導体の一種であるGaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。このため、GaNは、高い破壊電界強度を有しており、高電圧動作及び高出力を得る電源用の半導体デバイスの材料として極めて有望である。
【0003】
窒化物半導体を用いた半導体デバイスとしては、電界効果トランジスタ、特に高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)についての報告が数多くなされている。例えば、GaN系HEMTでは、GaNを電子走行層、AlGaNを電子供給層として用いたAlGaN/GaN−HEMTが注目されている。AlGaN/GaN−HEMTでは、GaNとAlGaNとの格子定数差に起因した歪みがAlGaNに生じる。そして、この歪みにより発生したピエゾ分極及びAlGaNの自発分極により、高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が得られる。そのため、AlGaN/GaN−HEMTは、高効率のスイッチ素子、電気自動車用等の高耐圧電力デバイス等として期待されている。
【0004】
しかしながら、Siをトランジスタ等の主材料とするSi系半導体装置と比較すると、窒化物半導体等の化合物半導体を用いた化合物半導体装置で実現することができる構造は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−153493号公報
【特許文献2】特開2009−49288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多様な構造を実現することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
化合物半導体装置の一態様には、基板と、前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、が設けられている。前記化合物半導体層には、第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域と、前記第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、前記第1の領域よりも低濃度で含有する第2の領域と、が設けられている。
【0008】
化合物半導体装置の製造方法の一態様では、基板の上方に不純物を含有する化合物半導体層を形成する。前記化合物半導体層の第1の領域にレーザ光を第1の照射密度で照射することにより、当該第1の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる。前記化合物半導体層の前記第1の領域とは異なる第2の領域にレーザ光を前記第1の照射密度とは異なる第2の照射密度で照射することにより、当該第2の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の化合物半導体装置等によれば、一つの化合物半導体層にキャリア濃度が相違する第1の領域及び第2の領域を含ませることができるため、多様な構造を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【図5A】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5B】図5Aに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5C】図5Bに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【図9A】第4の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9B】図9Aに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9C】図9Bに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】第5の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図11】第5の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【図12A】第5の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図12B】図12Aに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図13】第6の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【図14】第7の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【図15】第8の実施形態に係る高周波増幅器を示す結線図である。
【図16】第1の参考例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図17】第1の実験の結果を示す図である。
【図18】第2の参考例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図19】第2の実験の結果を示す図である。
【図20】第3の参考例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図21】第3の実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(Si系半導体装置と化合物半導体装置との比較)
Si系半導体装置では、n型の領域及びp型の領域の形成に際して不純物の活性化の制御が容易である。これは、Si基板等に不純物をイオン注入し、アニールを行えば、容易に不純物を活性化させてキャリアを発生させることができるためである。そして、活性化の制御が容易であるため、Si基板の表面に平行な方向(面内方向)に種々の不純物活性領域を設けることが可能である。
【0013】
これに対し、化合物半導体装置では、化合物半導体層へのイオン注入等によってキャリアを発生させることが困難であり、通常、化合物半導体層をエピタキシャル成長させる際に不純物を含有させ、その後にアニールを行って不純物を活性化させている。GaN系半導体層を成長させる場合、例えば、n型不純物としてはSiが用いられ、p型不純物としてはMg又はCが用いられる。しかしながら、これら不純物、特にp型不純物はSi系半導体装置で用いられる不純物と比較すると活性化しにくい。このため、キャリア濃度の制御が容易ではなく、Si系半導体装置と比較すると、窒化物半導体等の化合物半導体を用いた化合物半導体装置で実現することができる構造が限られている。
【0014】
例えば、AlGaN/GaN−HEMTでは、ノーマリーオフ動作の実現及び寄生容量の低減のために、それぞれに適したキャリア濃度のp型領域を面内方向に設けることが望まれる場合があるが、従来の技術では、このような構造の実現が困難である。また、理論上、キャリア濃度が相違するp型領域を面内方向で接触させることができれば、ショットキーダイオードを得ることができるが、従来の技術では、このような構造の実現も困難である。
【0015】
そこで、以下に示す諸実施形態では、これらの構造の実現を可能にする。
【0016】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0017】
第1の実施形態では、図1に示すように、基板1の上方に、化合物半導体層2が形成されている。化合物半導体層2には、不純物の活性化により発生したキャリアを含むキャリア高濃度領域2a、及び、キャリア高濃度領域2aと同種の不純物の活性化により発生したキャリアを、キャリア高濃度領域2aよりも低濃度で含有するキャリア低濃度領域2bが含まれている。更に、不純物の活性化が行われていない不活性化領域2cも含まれている。キャリア高濃度領域2aは第1の領域の一例であり、キャリア低濃度領域2bは第2の領域の一例である。
【0018】
このような構造の化合物半導体装置は、次のような方法で製造することができる。図2は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0019】
先ず、図2(a)に示すように、基板1の上方に不純物を含む化合物半導体層2を形成する。化合物半導体層2は、例えばエピタキシャル成長により形成する。次いで、図2(b)に示すように、キャリア高濃度領域2aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたマスク101を化合物半導体層2上に形成する。そして、開口部を介して化合物半導体層2にレーザ光を照射する。この結果、化合物半導体層2のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、不純物が活性化してキャリアが発生する。この部分がキャリア高濃度領域2aとなる。その後、図2(c)に示すように、マスク101を除去し、キャリア低濃度領域2bを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたマスク102を化合物半導体層2上に形成する。そして、開口部を介して化合物半導体層2にレーザ光を照射する。このとき、レーザ光の照射密度を、キャリア高濃度領域2aの形成時の照射密度よりも低くする。この結果、化合物半導体層2のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、不純物がキャリア高濃度領域2aの形成時よりも弱く活性化して低濃度でキャリアが発生する。この部分がキャリア低濃度領域2bとなる。そして、図2(d)に示すように、マスク102を除去する。なお、化合物半導体層2のうち、レーザ光が照射されずにキャリアが発生しなかった部分が不活性化領域2cとなる。
【0020】
このような方法によれば、所望の位置に所望のキャリア濃度の不純物活性領域を容易に形成することができる。従って、基板1の表面に平行な方向の異なる位置に形成されたキャリア高濃度領域2a及びキャリア低濃度領域2bをトランジスタ、ショットキーダイオード等の不純物活性領域として用いることが可能となり、化合物半導体装置の構造の自由度を高めることが可能となる。
【0021】
本願発明者が、化合物半導体層2に含まれる不純物のドーピング量及びその活性化のためのレーザ光の照射密度と、発生したキャリアの密度及び活性化率との関係を調査した結果、表1に示す結果が得られた。ここでは、不純物としてMgを用い、レーザ光の光源としてKrFレーザを用いた。不純物としてMgを用いたため、キャリアとしてホールが発生した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示す結果(ホールの密度、活性化率)から、Mgのドーピング量が一定であれば、レーザ光の照射密度を高くするほど、ホールの密度及び活性化率が高くなることがわかる。また、レーザ光の照射密度が一定であれば、Mgのドーピング量を高くするほど、ホールの密度が高くなるが、Mgのドーピング量を高くしても活性化率は一定であることがわかる。この結果から、不純物を含有する化合物半導体層の複数の領域に、照射密度を相違させてレーザ光を照射すれば、これら複数の領域のキャリア密度を相違させることができることが明らかである。
【0024】
なお、レーザ光の光源としては、種々のものが利用できる。例えば、半導体レーザ、窒素レーザ、ArFレーザ、KrFレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、チタンサファイアレーザ、色素レーザ、炭酸ガスレーザ、ヘリウムネオンレーザ、アルゴンイオンレーザ、エキシマレーザ等を用いることができる。また、化合物半導体層2に含まれる不純物の活性化の際に、レーザ光に代えて電子線又はイオンビームを照射して化合物半導体層2の一部分の温度を上昇させてもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。また、図4は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【0026】
第2の実施形態に係るHEMTチップ10では、図3に示すように、基板11上に、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12が形成されている。基板11としては、例えばSi基板、サファイア基板、GaAs基板、SiC基板及びGaN基板等が用いられる。基板11は、絶縁性、半絶縁性及び導電性のいずれでもよい。バッファ層13としては、例えばAlN層が形成されており、その厚さは、例えば0.1μm程度である。電子走行層14としては、例えば意図的なドーピングを行っていないi−GaN層が形成されており、その厚さは、例えば3μm程度である。中間層15としては、例えば意図的なドーピングを行っていないi−Al0.25Ga0.75N層が形成されており、その厚さは、例えば5nm程度である。電子供給層16としては、例えばn型のn−Al0.25Ga0.75N層が形成されており、その厚さは、例えば30nm程度である。n型のn−Al0.25Ga0.75N層には、例えばn型不純物としてSiが含有されている。Mgドープ化合物半導体層12としては、1×1019/cm3程度のMgがドーピングされたGaN層が形成されており、その厚さは、例えば10nm程度である。
【0027】
Mgドープ化合物半導体層12には、開口部17s及び17dが形成されており、開口部17s内にソース電極20sが形成され、開口部17d内にドレイン電極20dが形成されている。ソース電極20s及びドレイン電極20dには、電子供給層16と接するTa膜18及びその上のAl膜19が含まれている。Mgドープ化合物半導体層12には、ソース電極20s及びドレイン電極20dの間に位置するキャリア高濃度領域12a及びキャリア低濃度領域12bが含まれている。キャリア高濃度領域12a及びキャリア低濃度領域12bは、いずれもMgドープ化合物半導体層12に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、キャリア高濃度領域12aの方がキャリア低濃度領域12bよりも強く活性化されている。従って、キャリア高濃度領域12aのキャリア濃度は、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度よりも高い。また、キャリア高濃度領域12aはキャリア低濃度領域12bよりもソース電極20s側に位置している。従って、キャリア低濃度領域12bはキャリア高濃度領域12aとドレイン電極20dとの間に位置している。また、Mgドープ化合物半導体層12の、ソース電極20sとキャリア高濃度領域12aとの間の領域、キャリア高濃度領域12aとキャリア低濃度領域12bとの間の領域、及びキャリア低濃度領域12bとドレイン電極20dとの間の領域は、Mgの活性化が行われていない不活性化領域12cとなっている。そして、キャリア高濃度領域12a上にゲート電極20gが形成され、キャリア低濃度領域12b上にフィールドプレート電極20fが形成されている。ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fには、キャリア高濃度領域12a又はキャリア低濃度領域12bと接するNi膜及びその上のAu膜が含まれている。
【0028】
そして、Mgドープ化合物半導体層12、ソース電極20s、ドレイン電極20d、ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fを覆う絶縁膜21が形成されている。絶縁膜21としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜21には、ソース電極20sの少なくとも一部を露出する開口部22s、ドレイン電極20dの少なくとも一部を露出する開口部22d、及びフィールドプレート電極20fの少なくとも一部を露出する開口部22fが形成されている。そして、開口部22s及び22fを介してソース電極20sとフィールドプレート電極20fとを互いに接続する配線23が絶縁膜21上に形成されている。また、ドレイン電極20dに接続された配線24も絶縁膜21上に形成されている。更に、図3には図示していないが、絶縁膜21には、ゲート電極20gの少なくとも一部を露出する開口部も形成されており、ゲート電極20gに接続された配線も絶縁膜21上に形成されている。そして、配線23及び24等を覆うパッシベーション膜25が絶縁膜21上に形成されている。パッシベーション膜25としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。
【0029】
このように構成された化合物半導体装置はHEMTとして機能する。つまり、電子走行層14の表層部に2DEGが発生し、ソース電極20sとドレイン電極20dとの間を、ゲート電極20gに印加された電圧に応じて電流が流れる。また、キャリア高濃度領域12aには、キャリアであるホールが高濃度で含まれている。このため、キャリア高濃度領域12aの下方では、電子走行層14の表層部に2DEGがほとんど存在しない。従って、このHEMTはノーマリーオフ動作が可能である。
【0030】
また、平面視でゲート電極20gとドレイン電極20dとの間に存在する2DEGの濃度が全体にわたって高くなっている場合には、空乏層が伸び難く、十分な耐圧を確保することが困難である。これに対し、本実施形態では、ホールを低濃度で含むキャリア低濃度領域12bが、平面視でゲート電極20gとドレイン電極20dとの間に位置しているため、キャリア低濃度領域12bの下方では、その周囲と比較して2DEGの濃度が低い。従って、キャリア低濃度領域12bの下方において空乏層が伸びやすく、電界集中を緩和して耐圧を向上することができる。なお、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度がキャリア高濃度領域12aと同程度であると、2DEGが消失してしまって電流が流れなくなってしまう。
【0031】
更に、本実施形態では、絶縁膜21と2DEGとの間にMgドープ化合物半導体層12が存在し、絶縁膜21と化合物半導体層との界面が2DEGから比較的離れている。この点でも、電界集中に伴う耐圧の低下を抑制することができる。
【0032】
更にまた、ソース電極20sに接続されたフィールドプレート電極20fにより、ゲート電極20gとソース電極20sとの間の寄生容量Cgs、及びゲート電極20gとドレイン電極20dとの間の寄生容量Cgdを低減することができる。このため、高速動作が可能である。
【0033】
なお、図4(a)に示すように、配線23は、HEMTチップ10の外部端子であるソースパッド26sに接続され、配線24は、HEMTチップ10の外部端子であるドレインパッド26dに接続される。また、ゲート電極20gに接続された配線は、HEMTチップ10の外部端子であるゲートパッド26gに接続される。概ね、平面視でソースパッド26sとドレインパッド26dとの間の領域が、2DEGが存在するトランジスタ領域27となっている。
【0034】
また、パッケージングに際しては、図4(b)に示すように、HEMTチップ10の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤34を用いてランド(ダイパッド)33に固定される。また、ドレインパッド26dにAlワイヤ等のワイヤ35dが接続され、ワイヤ35dの他端が、ランド33と一体化しているドレインリード32dに接続される。ソースパッド26sにAlワイヤ等のワイヤ35sが接続され、ワイヤ35sの他端がランド33から独立したソースリード32sに接続される。ゲートパッド26gにAlワイヤ等のワイヤ35gが接続され、ワイヤ35gの他端がランド33から独立したゲートリード32gに接続される。そして、ゲートリード32gの一部、ドレインリード32dの一部及びソースリード32sの一部が突出するようにして、ランド33及びHEMTチップ10等がモールド樹脂31によりパッケージングされている。
【0035】
次に、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法について説明する。図5A〜図5Cは、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0036】
先ず、図5A(a)に示すように、基板11上に、例えば有機化学気相堆積(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)法又は分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等の結晶成長法により、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12を形成する。この結果、電子走行層14の表層部に高濃度で2DEGが発生する。
【0037】
これら化合物半導体層の形成に際して、例えば、Al源であるトリメチルアルミニウムガス、Ga源であるトリメチルガリウムガス、及びN源であるアンモニアガスの混合ガスを用いる。このとき、成長させる化合物半導体層の組成に応じて、トリメチルアルミニウムガス及びトリメチルガリウムガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。各化合物半導体層に共通の原料であるアンモニアガスの流量は、100ccm〜10LM程度とする。また、例えば、成長圧力は50Torr〜300Torr程度、成長温度は1000℃〜1200℃程度とする。また、n型の化合物半導体層を成長させる際には、例えば、Siを含むSiH4ガスを所定の流量で混合ガスに添加し、化合物半導体層にSiをドーピングする。Siのドーピング濃度は、1×1018/cm3程度〜1×1020/cm3程度、例えば5×1018/cm3程度とする。
【0038】
次いで、図5A(b)に示すように、キャリア高濃度領域12aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク103をMgドープ化合物半導体層12上に形成する。そして、図5A(c)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層12にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、例えばレーザ光の照射密度は250mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層12のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgが活性化してホールが発生する。この部分がキャリア高濃度領域12aとなる。また、キャリア高濃度領域12aの形成に伴って、キャリア高濃度領域12aの下方から2DEGが消失する。
【0039】
その後、図5A(d)に示すように、マスク103を除去し、キャリア低濃度領域12bを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク104をMgドープ化合物半導体層12上に形成する。そして、図5B(e)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層12にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、レーザ光の照射密度はキャリア高濃度領域12aの形成時の照射密度よりも低く、例えば100mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層12のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgがキャリア高濃度領域12aの形成時よりも弱く活性化して低濃度でホールが発生する。この部分がキャリア低濃度領域12bとなる。また、キャリア低濃度領域12bの形成に伴って、キャリア低濃度領域12bの下方において2DEGの濃度が低下する。
【0040】
続いて、図5B(f)に示すように、マスク104を除去する。Mgドープ化合物半導体層12のうち、レーザ光が照射されずにキャリアが発生しなかった部分が不活性化領域12cとなる。次いで、図5B(g)に示すように、ソース電極用の開口部17s及びドレイン電極用の開口部17dをMgドープ化合物半導体層12に形成する。その後、図5B(h)に示すように、例えばリフトオフ法により、開口部17s内にソース電極20sを形成し、開口部17d内にドレイン電極20dを形成する。ソース電極20s及びドレイン電極20dの形成に際しては、例えばTa膜18及びAl膜19を蒸着法により形成する。続いて、図5C(i)に示すように、例えばリフトオフ法により、キャリア高濃度領域12a上にゲート電極20gを形成し、キャリア低濃度領域12b上にフィールドプレート電極20fを形成する。ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fの形成に際しては、例えばNi膜及びAu膜を蒸着法により形成する。
【0041】
次いで、図5C(j)に示すように、Mgドープ化合物半導体層12、ソース電極20s、ドレイン電極20d、ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fを覆う絶縁膜21を形成する。その後、図5C(k)に示すように、絶縁膜21に、ソース電極20sの少なくとも一部を露出する開口部22s、ドレイン電極20dの少なくとも一部を露出する開口部22d、及びフィールドプレート電極20fの少なくとも一部を露出する開口部22fを形成する。続いて、図5C(l)に示すように、開口部22s及び22fを介してソース電極20sとフィールドプレート電極20fとを互いに接続する配線23、及びドレイン電極20dに接続される配線24を絶縁膜21上に形成する。なお、図5Cには図示していないが、ゲート電極20gの少なくとも一部を露出する開口部も絶縁膜21に形成し、ゲート電極20gに接続される配線も絶縁膜21上に形成する。そして、配線23及び24等を覆うパッシベーション膜25を形成する。
【0042】
このようにして、図3に示す構造の化合物半導体装置(HEMTチップ10)を製造することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0044】
第3の実施形態では、キャリア低濃度領域12bが、平面視でゲート電極20g側に位置する第1キャリア低濃度領域12cとドレイン電極20d側に位置する第2キャリア低濃度領域12dとに画定されている。第1キャリア低濃度領域12c及び第2キャリア低濃度領域12dは、いずれもMgドープ化合物半導体層12に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、第1キャリア低濃度領域12cの方が第2キャリア低濃度領域12dよりも強く活性化されている。従って、第1キャリア低濃度領域12cのキャリア濃度は、第2キャリア低濃度領域12dのキャリア濃度よりも高い。他の構造は第2の実施形態と同様である。
【0045】
このような第3の実施形態によれば、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度がドレイン電極20dに近づくほど段階的に低くなっているため、第2の実施形態と比較して、より電界集中を緩和することができる。従って、より一層耐圧を向上することができる。
【0046】
第3の実施形態の構造を得るためには、キャリア低濃度領域12bの形成の際に、例えば、2種類のマスクを用いて照射密度が相違する2回のレーザ光の照射を行えばよい。
【0047】
なお、第3の実施形態では、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度が2段階で変化しているが、3段階以上で変化していてもよい。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図7は、第4の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。また、図8は、第4の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【0049】
第4の実施形態に係るダイオードチップ40では、図7に示すように、基板41上に、バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42が形成されている。基板41、バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42としては、第2の実施形態の基板11、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12と同様のものが用いられる。
【0050】
Mgドープ化合物半導体層42には、開口部47a及び47cが形成されており、開口部47a内にアノード電極50aが形成され、開口部47c内にカソード電極50cが形成されている。アノード電極50aには、電子供給層46と接するNi膜48a及びその上のAu膜49aが含まれ、カソード電極50cには、電子供給層46と接するTa膜48c及びその上のAl膜49cが含まれている。Mgドープ化合物半導体層42には、アノード電極50a及びカソード電極50cの間に位置するキャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bが含まれている。キャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bは互いに接触している。キャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bは、いずれもMgドープ化合物半導体層42に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、キャリア高濃度領域42aの方がキャリア低濃度領域42bよりも強く活性化されている。従って、キャリア高濃度領域42aのキャリア濃度は、キャリア低濃度領域42bのキャリア濃度よりも高い。また、キャリア高濃度領域42aはキャリア低濃度領域42bよりもアノード電極50a側に位置している。従って、キャリア低濃度領域42bはキャリア高濃度領域42aとカソード電極50cとの間に位置している。また、Mgドープ化合物半導体層42の、アノード電極50aとキャリア高濃度領域42aとの間の領域、及びキャリア低濃度領域42bとカソード電極50cとの間の領域は、Mgの活性化が行われていない不活性化領域42cとなっている。
【0051】
そして、Mgドープ化合物半導体層42、アノード電極50a及びカソード電極50cを覆う絶縁膜51が形成されている。絶縁膜51としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜51には、アノード電極50aの少なくとも一部を露出する開口部52a、及びカソード電極50cの少なくとも一部を露出する開口部52cが形成されている。そして、アノード電極50aに接続された配線53、及びカソード電極50cに接続された配線54が絶縁膜51上に形成されている。そして、配線53及び54を覆うパッシベーション膜55が絶縁膜51上に形成されている。パッシベーション膜55としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。
【0052】
このように構成された化合物半導体装置はショットキーダイオードとして機能する。つまり、アノード電極50aが電子走行層44とショットキー接触しており、電子走行層44の表層部に2DEGが発生し、アノード電極50aとカソード電極50cとの間を、アノード電極50a及びカソード電極50c間の電界の方向に応じて電流が流れる。
【0053】
そして、キャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bの作用により、高い耐圧を確保することができる。
【0054】
なお、図8(a)に示すように、配線53は、ダイオードチップ40の外部端子であるアノードパッド56aに接続され、配線54は、ダイオードチップ40の外部端子であるカソードパッド56cに接続される。概ね、平面視でアノードパッド56aとカソードパッド56cとの間の領域が、2DEGが存在するダイオード領域57となっている。
【0055】
また、パッケージングに際しては、図8(b)に示すように、ダイオードチップ40の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤64を用いてランド63に固定される。また、アノードパッド56aにAlワイヤ等のワイヤ65aが接続され、ワイヤ65aの他端がランド63から独立したアノードリード62aに接続される。カソードパッド56cにAlワイヤ等のワイヤ65cが接続され、ワイヤ65cの他端がランド63から独立したカソードリード62cに接続される。そして、アノードリード62aの一部及びカソードリード62cの一部が突出するようにして、ランド63及びダイオードチップ40等がモールド樹脂61によりパッケージングされている。
【0056】
第4の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法について説明する。図9A〜図9Cは、第4の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0057】
先ず、図9A(a)に示すように、基板41上に、例えばMOCVD法又はMBE法等の結晶成長法により、バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42を形成する。この結果、電子走行層44の表層部に高濃度で2DEGが発生する。バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42は、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12と同様にして形成することができる。
【0058】
次いで、図9A(b)に示すように、キャリア高濃度領域42aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク105をMgドープ化合物半導体層42上に形成する。そして、図9A(c)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層42にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、例えばレーザ光の照射密度は175mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層42のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgが活性化してホールが発生する。この部分がキャリア高濃度領域42aとなる。また、キャリア高濃度領域42aの形成に伴って、キャリア高濃度領域42aの下方において2DEGの濃度が低下する。
【0059】
その後、図9A(d)に示すように、マスク105を除去し、キャリア低濃度領域42bを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク106をMgドープ化合物半導体層42上に形成する。そして、図9B(e)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層42にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、レーザ光の照射密度はキャリア高濃度領域42aの形成時の照射密度よりも低く、例えば100mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層42のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgがキャリア高濃度領域42aの形成時よりも弱く活性化して低濃度でホールが発生する。この部分がキャリア低濃度領域42bとなる。また、キャリア低濃度領域42bの形成に伴って、キャリア低濃度領域42bの下方において2DEGの濃度が低下する。但し、2DEGの濃度の低下の程度は、キャリア高濃度領域42aの下方よりも低い。つまり、キャリア低濃度領域42bの下方の2DEGの濃度は、キャリア高濃度領域42aの下方より高い。
【0060】
続いて、図9B(f)に示すように、マスク106を除去する。Mgドープ化合物半導体層42のうち、レーザ光が照射されずにキャリアが発生しなかった部分が不活性化領域42cとなる。次いで、図9B(g)に示すように、アノード電極用の開口部47a及びカソード電極用の開口部47cをMgドープ化合物半導体層42に形成する。その後、図9B(h)に示すように、例えばリフトオフ法により、開口部47a内にアノード電極50aを形成し、開口部47c内にカソード電極50cを形成する。アノード電極50aの形成に際しては、例えばNi膜48a及びAu膜49aを蒸着法により形成する。カソード電極50cの形成に際しては、例えばTa膜48c及びAl膜49cを蒸着法により形成する。
【0061】
続いて、図9C(i)に示すように、Mgドープ化合物半導体層42、アノード電極50a及びカソード電極50cを覆う絶縁膜51を形成する。次いで、図9C(j)に示すように、絶縁膜51に、アノード電極50aの少なくとも一部を露出する開口部52a、及びカソード電極50cの少なくとも一部を露出する開口部52cを形成する。その後、図9C(k)に示すように、開口部52aを介してアノード電極50aに接続される配線53、及び開口部52cを介してカソード電極50cに接続される配線54を絶縁膜51上に形成する。そして、図9C(l)に示すように、配線53及び54を覆うパッシベーション膜55を形成する。
【0062】
このようにして、図7に示す構造の化合物半導体装置(ダイオードチップ40)を製造することができる。
【0063】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図10は、第5の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。また、図11は、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【0064】
第5の実施形態に係るトランジスタチップ70では、図10に示すように、基板71上に、バッファ層73、n型GaN層74、n型GaN層74よりも低濃度でn型不純物を含有するn-GaN層75、及びMgドープ化合物半導体層72が形成されている。基板71、バッファ層73及びMgドープ化合物半導体層72としては、第2の実施形態の基板11、バッファ層13及びMgドープ化合物半導体層12と同様のものが用いられる。但し、基板71としては低抵抗のものが用いられる。n型GaN層74の厚さは、例えば100nm〜10000nm程度であり、n-GaN層75の厚さは、例えば10nm〜10000nm程度である。
【0065】
Mgドープ化合物半導体層72には、キャリア低濃度領域72b、及び平面視でキャリア低濃度領域72bを取り囲むキャリア高濃度領域72aが含まれている。Mgドープ化合物半導体層72としては、1×1019/cm3程度のMgがドーピングされたGaN層が形成されており、その厚さは、例えば10nm程度である。キャリア高濃度領域72a及びキャリア低濃度領域72bは、いずれもMgドープ化合物半導体層72に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、キャリア高濃度領域72aの方がキャリア低濃度領域72bよりも強く活性化されている。従って、キャリア高濃度領域72aのキャリア濃度は、キャリア低濃度領域72bのキャリア濃度よりも高い。
【0066】
キャリア低濃度領域72b上にn型GaN層76が形成され、n型GaN層76上にソース電極80sが形成されている。ソース電極80sには、n型GaN層76と接するTa膜78s及びその上のAl膜79sが含まれている。また、キャリア高濃度領域72a上にゲート電極80gが形成されている。ゲート電極80gには、キャリア高濃度領域72aと接するNi膜78g及びその上のAu膜79gが含まれている。更に、基板71の裏面にドレイン電極80dが形成されている。ドレイン電極80dには、基板71と接するTa膜及びその上のAl膜が含まれている。
【0067】
そして、Mgドープ化合物半導体層72、ソース電極80s及びゲート電極80gを覆う絶縁膜81が形成されている。絶縁膜81としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜81には、ソース電極80sの少なくとも一部を露出する開口部82s、及びゲート電極80gの少なくとも一部を露出する開口部82gが形成されている。そして、ソース電極80sに接続された配線83、及びゲート電極80gに接続された配線84が絶縁膜81上に形成されている。そして、配線83及び84を覆うパッシベーション膜85が絶縁膜81上に形成されている。パッシベーション膜85としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。
【0068】
このように構成された化合物半導体装置は縦型電界効果トランジスタとして機能する。そして、キャリア高濃度領域72a及びキャリア低濃度領域72bの作用により、高い耐圧を確保することができる。
【0069】
なお、図11(a)に示すように、配線83は、トランジスタチップ70の外部端子であるソースパッド86sに接続され、配線84は、トランジスタチップ70の外部端子であるゲートパッド86sに接続される。
【0070】
また、パッケージングに際しては、図11(b)に示すように、トランジスタチップ70の裏面がはんだ等の導電性のダイアタッチ剤94を用いてランド93に固定される。また、ソースパッド86sにAlワイヤ等のワイヤ95sが接続され、ワイヤ95sの他端がランド93から独立したソースリード92sに接続される。ゲートパッド86gにAlワイヤ等のワイヤ95gが接続され、ワイヤ95gの他端がランド93から独立したゲートリード92gに接続される。ドレイン電極80dは導電性のダイアタッチ剤94を介してランド93に接続され、ランド93と一体化しているドレインリード92dに接続される。そして、ゲートリード92gの一部、ドレインリード92dの一部及びソースリード92sの一部が突出するようにして、ランド93及びトランジスタチップ70等がモールド樹脂91によりパッケージングされている。
【0071】
次に、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法について説明する。図12A〜図12Bは、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0072】
先ず、図12A(a)に示すように、基板71上に、例えばMOCVD法又はMBE法等の結晶成長法により、バッファ層73、n型GaN層74、n-GaN層75及びMgドープ化合物半導体層72を形成する。
【0073】
次いで、図12A(b)に示すように、Mgドープ化合物半導体層72の全面にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、例えばレーザ光の照射密度は100mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層72の全体の温度が上昇し、Mgが活性化してホールが発生する。Mgドープ化合物半導体層72の全体がキャリア低濃度領域72bとなる。
【0074】
その後、図12A(c)に示すように、キャリア高濃度領域72aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク107をキャリア低濃度領域72b上に形成する。そして、図12A(d)に示すように、開口部を介してキャリア低濃度領域72bにレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、レーザ光の照射密度はキャリア低濃度領域72bの形成時の照射密度よりも高く、例えば250mJ/cm2程度とする。この結果、キャリア低濃度領域72bのレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、再度Mgが活性化して更にホールが発生する。この部分がキャリア高濃度領域72aとなる。
【0075】
続いて、図12B(e)に示すように、マスク107を除去し、キャリア高濃度領域72a及びキャリア低濃度領域72b上にn型GaN層76を、例えばMOCVD法又はMBE法等の結晶成長法により形成する。次いで、図12B(f)に示すように、n型GaN層76に、キャリア高濃度領域72aの少なくとも一部を露出する開口部77を形成する。
【0076】
その後、図12B(g)に示すように、例えばリフトオフ法により、開口部77内にゲート電極80gを形成し、n型GaN層76上にソース電極80sを形成する。ゲート電極80gの形成に際しては、例えばNi膜78g及びAu膜79gを蒸着法により形成する。ソース電極80sの形成に際しては、例えばTa膜78s及びAl膜79sを蒸着法により形成する。
【0077】
続いて、図12B(h)に示すように、ソース電極80s及びゲート電極80g等を覆う絶縁膜81を形成する。次いで、絶縁膜81に、ソース電極80sの少なくとも一部を露出する開口部82s、及びゲート電極80gの少なくとも一部を露出する開口部82gを形成する。その後、開口部82sを介してソース電極80sに接続される配線83、及び開口部82gを介してゲート電極80gに接続される配線84を絶縁膜81上に形成する。そして、配線83及び84を覆うパッシベーション膜85を形成する。
【0078】
このようにして、図10に示す構造の化合物半導体装置(トランジスタチップ70)を製造することができる。
【0079】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、第2又は第3の実施形態に係る化合物半導体装置を備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。図13は、第6の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0080】
PFC回路250には、スイッチ素子(トランジスタ)251、ダイオード252、チョークコイル253、コンデンサ254及び255、ダイオードブリッジ256、並びに交流電源(AC)257が設けられている。そして、スイッチ素子251のドレイン電極と、ダイオード252のアノード端子及びチョークコイル253の一端子とが接続される。スイッチ素子251のソース電極と、コンデンサ254の一端子及びコンデンサ255の一端子とが接続される。コンデンサ254の他端子とチョークコイル253の他端子とが接続される。コンデンサ255の他端子とダイオード252のカソード端子とが接続される。コンデンサ254の両端子間には、ダイオードブリッジ256を介してAC257が接続される。コンデンサ255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子251に、第2又は第3の実施形態のHEMTが用いられている。
【0081】
本実施形態では、耐圧の更なる向上を実現することに加え、デバイス動作速度をより向上させるAlGaN/GaN−HEMTをPFC回路250に適用することができる。従って、信頼性の高いPFC回路250が実現する。
【0082】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、第2又は第3の実施形態に係る化合物半導体装置を備えた電源装置に関する。図14は、第7の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0083】
電源装置には、高圧の一次側回路261及び低圧の二次側回路262、並びに一次側回路261と二次側回路262との間に配設されるトランス263が設けられている。
【0084】
一次側回路261には、第6の実施形態に係るPFC回路250、及びPFC回路250のコンデンサ255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路260が設けられている。フルブリッジインバータ回路260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子264a、264b、264c及び264dが設けられている。
【0085】
二次側回路262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子265a、265b及び265cが設けられている。
【0086】
本実施形態では、一次側回路261を構成するPFC回路250のスイッチ素子251、並びにフルブリッジインバータ回路260のスイッチ素子264a、264b、264c及び264dに、第2又は第3の実施形態のHEMTが用いられている。一方、二次側回路262のスイッチ素子265a、265b及び265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0087】
本実施形態では、耐圧の更なる向上を実現することに加え、デバイス動作速度をより向上させる信頼性の高い高耐圧のAlGaN/GaN−HEMTを高圧回路である一次側回路261に適用することができる。従って、信頼性の高い大電力の電源装置が実現する。
【0088】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、第2又は第3の実施形態に係る化合物半導体装置を備えた高周波増幅器に関する。図15は、第8の実施形態に係る高周波増幅器を示す結線図である。
【0089】
高周波増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路271、ミキサー272a及び272b、並びにパワーアンプ273が設けられている。
【0090】
ディジタル・プレディストーション回路271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ273は、第2又は第3の実施形態のHEMTを備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路271に送出できる。
【0091】
本実施形態では、耐圧の更なる向上を実現することに加え、デバイス動作速度をより向上させるAlGaN/GaN−HEMTを高周波増幅器に適用することができる。従って、信頼性の高い高耐圧の高周波増幅器が実現する。
【0092】
次に、本願発明者が上記の実施形態の効果の確認のために行った実験について説明する。
【0093】
(第1の実験)
第1の実験では、第2の実施形態及び図16に示す第1の参考例について、ドレイン−ソース間の電圧Vdsとドレイン電流Idとの関係、及びドレイン−ソース間に電圧を印加し続けた場合に破壊が起こるまでの時間tについて調べた。これらの結果を図17に示す。第1の参考例のキャリア高濃度領域112a及びキャリア低濃度領域112bの形成に当たっては、キャリア高濃度領域112a用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った後に、キャリア低濃度領域112b用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った。従って、不活性化領域は存在しない。また、絶縁膜21に代えて電子供給層と接するように絶縁膜121を形成した。
【0094】
図17(a)に示すように、第2の実施形態では、動作時であっても非動作時と同等のドレイン電流Idが得られたのに対し、第1の参考例では、動作時のドレイン電流Idが非動作時のものに比べて大きく減少した。これは、2回のMgドープGaN層のエッチングの際に電子供給層にダメージが生じて大量のトラップが発生したためである。つまり、第2の実施形態によれば、電流コラプスによる電流量の低下を抑制することができるといえる。
【0095】
また、図17(b)に示すように、第2の実施形態では、第1の参考例と比較して破壊に至るまでの時間が長くなった。これは、第2の実施形態における絶縁膜21と化合物半導体層との界面が、第1の参考例における絶縁膜121と化合物半導体層との界面よりも2DEGから離間しているため、耐圧が向上したためである。つまり、第2の実施形態によれば、信頼性を向上することができるといえる。
【0096】
従って、第2の実施形態によれば、動作時のオン抵抗の増加現象を抑え、信頼性の高い高耐圧のAlGaN/GaN−HEMTが実現する。第3の実施形態も同様である。
【0097】
(第2の実験)
第2の実験では、第4の実施形態及び図18に示す第2の参考例について、アノード−カソード間の順電圧Vacとアノード電流Iaとの関係、及びアノード−カソード間に逆電圧を印加し続けた場合に破壊が起こるまでの時間tについて調べた。これらの結果を図19に示す。第2の参考例のキャリア高濃度領域142a及びキャリア低濃度領域142bの形成に当たっては、キャリア高濃度領域142a用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った後に、キャリア低濃度領域142b用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った。従って、不活性化領域は存在しない。また、絶縁膜51に代えて電子供給層と接するように絶縁膜151を形成した。
【0098】
図19(a)に示すように、第4の実施形態では、動作時であっても非動作時と同等のアノード電流Iaが得られたのに対し、第2の参考例では、動作時のアノード電流Iaが非動作時のものに比べて大きく減少した。これは、2回のMgドープGaN層のエッチングの際に電子供給層にダメージが生じて大量のトラップが発生したためである。つまり、第4の実施形態によれば、電流コラプスによる電流量の低下を抑制することができるといえる。
【0099】
また、図19(b)に示すように、第4の実施形態では、第2の参考例と比較して破壊に至るまでの時間が長くなった。これは、第4の実施形態における絶縁膜51と化合物半導体層との界面が、第2の参考例における絶縁膜151と化合物半導体層との界面よりも2DEGから離間しているため、耐圧が向上したためである。つまり、第4の実施形態によれば、信頼性を向上することができるといえる。
【0100】
従って、第4の実施形態によれば、動作時のオン抵抗の増加現象を抑え、信頼性の高い高耐圧のAlGaN/GaN−高電子移動度ダイオードが実現する。
【0101】
(第3の実験)
第3の実験では、第5の実施形態及び図20に示す第3の参考例について、オフ時のドレイン−ソース間電圧Vdsとドレイン電流Idとの関係について調べた。この結果を図21に示す。第3の参考例のキャリア高濃度領域172a及びチャネル領域の形成に当たっては、キャリア高濃度領域172a用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った後に、意図的なドーピングを行っていないi−GaN層172bをキャリア低濃度領域72bに代えて形成した。
【0102】
図21に示すように、第5の実施形態では、オフ時にほとんどドレイン電流Idが流れなかったのに対し、第3の参考例では、オフ時にもドレイン電流Idが流れた。つまり、第5の実施形態ではノーマリーオフ動作が実現されたのに対し、第3の参考例では、ノーマリーオフ動作が実現されなかった。
【0103】
従って、第5の実施形態によれば、ノーマリーオフ動作のトランジスタが実現する。
【0104】
なお、レーザ光等の照射によってキャリアを発生させる化合物半導体層に含まれる不純物(第1の不純物、第2の不純物)はMgに限定されず、例えば、ホールを発生させる場合にはC等を用いてもよく、電子を発生させる場合にはSi等を用いることができる。
【0105】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0106】
(付記1)
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、
を有し、
前記化合物半導体層は、
第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域と、
前記第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、前記第1の領域よりも低濃度で含有する第2の領域と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【0107】
(付記2)
前記第1導電型のキャリアがホールであることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0108】
(付記3)
前記第1の不純物及び前記第2の不純物がMg又はCであることを特徴とする付記2に記載の化合物半導体装置。
【0109】
(付記4)
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するソース電極及びドレイン電極と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
を有し、
前記第2の領域は、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0110】
(付記5)
前記第2の領域の上方に位置するフィールドプレート電極を有することを特徴とする付記4に記載の化合物半導体装置。
【0111】
(付記6)
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するアノード電極及びカソード電極と、
を有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、平面視で、前記第1の領域が前記アノード電極側、前記第2の領域が前記カソード電極側になるようにして前記アノード電極及び前記カソード電極の間に位置することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0112】
(付記7)
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む下部化合物半導体層と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
前記第2の領域の上方に位置するソース電極と、
前記第2の領域と前記ソース電極との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む上部化合物半導体層と、
前記基板の下方に位置するドレイン電極と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0113】
(付記8)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0114】
(付記9)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【0115】
(付記10)
基板の上方に不純物を含有する化合物半導体層を形成する工程と、
前記化合物半導体層の第1の領域にレーザ光を第1の照射密度で照射することにより、当該第1の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
前記化合物半導体層の前記第1の領域とは異なる第2の領域にレーザ光を前記第1の照射密度とは異なる第2の照射密度で照射することにより、当該第2の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0116】
(付記11)
前記第1導電型のキャリアがホールであることを特徴とする付記10に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0117】
(付記12)
前記不純物がMg又はCであることを特徴とする付記11に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0118】
(付記13)
前記化合物半導体層を形成する工程の前に、
前記基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、
を有し、
更に、
前記電子走行層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記第1の領域の上方にゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記第2の領域を、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置させることを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0119】
(付記14)
前記第2の領域の上方にフィールドプレート電極を形成する工程を有することを特徴とする付記13に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0120】
(付記15)
前記化合物半導体層を形成する工程の前に、
前記基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、
を有し、
更に、前記電子走行層の上方にアノード電極及びカソード電極を形成する工程を有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域を、平面視で、前記第1の領域が前記アノード電極側、前記第2の領域が前記カソード電極側になるようにして前記アノード電極及び前記カソード電極の間に位置させることを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0121】
(付記16)
前記化合物半導体層を形成する工程の前に、
前記基板の上方に第2導電型のキャリアを含む下部化合物半導体層を形成する工程を有し、
更に、
前記第1の領域の上方にゲート電極を形成する工程と、
前記第2の領域の上方に第2導電型のキャリアを含む上部化合物半導体層を形成する工程と、
前記上部化合物半導体層の上方にソース電極を形成する工程と、
前記基板の下方にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0122】
1、11、41、71:基板
2:化合物半導体層
2a、12a、42a、72a:キャリア高濃度領域
2b、12b、42b、72b:キャリア低濃度領域
12、42、72:Mgドープ化合物半導体層
14、44:電子走行層
15、45:中間層
16、46:電子供給層
20g、80g:ゲート電極
20s、80s:ソース電極
20d、80d:ドレイン電極
40a:アノード電極
40c:カソード電極
74、76:n型GaN層
75:n-GaN層
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を有している。このため、これらの特性を利用して窒化物半導体を高耐圧及び高出力の半導体デバイスに適用することについて種々の検討が行われている。例えば、窒化物半導体の一種であるGaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。このため、GaNは、高い破壊電界強度を有しており、高電圧動作及び高出力を得る電源用の半導体デバイスの材料として極めて有望である。
【0003】
窒化物半導体を用いた半導体デバイスとしては、電界効果トランジスタ、特に高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)についての報告が数多くなされている。例えば、GaN系HEMTでは、GaNを電子走行層、AlGaNを電子供給層として用いたAlGaN/GaN−HEMTが注目されている。AlGaN/GaN−HEMTでは、GaNとAlGaNとの格子定数差に起因した歪みがAlGaNに生じる。そして、この歪みにより発生したピエゾ分極及びAlGaNの自発分極により、高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が得られる。そのため、AlGaN/GaN−HEMTは、高効率のスイッチ素子、電気自動車用等の高耐圧電力デバイス等として期待されている。
【0004】
しかしながら、Siをトランジスタ等の主材料とするSi系半導体装置と比較すると、窒化物半導体等の化合物半導体を用いた化合物半導体装置で実現することができる構造は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−153493号公報
【特許文献2】特開2009−49288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多様な構造を実現することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
化合物半導体装置の一態様には、基板と、前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、が設けられている。前記化合物半導体層には、第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域と、前記第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、前記第1の領域よりも低濃度で含有する第2の領域と、が設けられている。
【0008】
化合物半導体装置の製造方法の一態様では、基板の上方に不純物を含有する化合物半導体層を形成する。前記化合物半導体層の第1の領域にレーザ光を第1の照射密度で照射することにより、当該第1の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる。前記化合物半導体層の前記第1の領域とは異なる第2の領域にレーザ光を前記第1の照射密度とは異なる第2の照射密度で照射することにより、当該第2の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の化合物半導体装置等によれば、一つの化合物半導体層にキャリア濃度が相違する第1の領域及び第2の領域を含ませることができるため、多様な構造を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【図5A】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5B】図5Aに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5C】図5Bに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【図9A】第4の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9B】図9Aに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9C】図9Bに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】第5の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図11】第5の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【図12A】第5の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図12B】図12Aに引き続き、化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図13】第6の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【図14】第7の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【図15】第8の実施形態に係る高周波増幅器を示す結線図である。
【図16】第1の参考例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図17】第1の実験の結果を示す図である。
【図18】第2の参考例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図19】第2の実験の結果を示す図である。
【図20】第3の参考例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【図21】第3の実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(Si系半導体装置と化合物半導体装置との比較)
Si系半導体装置では、n型の領域及びp型の領域の形成に際して不純物の活性化の制御が容易である。これは、Si基板等に不純物をイオン注入し、アニールを行えば、容易に不純物を活性化させてキャリアを発生させることができるためである。そして、活性化の制御が容易であるため、Si基板の表面に平行な方向(面内方向)に種々の不純物活性領域を設けることが可能である。
【0013】
これに対し、化合物半導体装置では、化合物半導体層へのイオン注入等によってキャリアを発生させることが困難であり、通常、化合物半導体層をエピタキシャル成長させる際に不純物を含有させ、その後にアニールを行って不純物を活性化させている。GaN系半導体層を成長させる場合、例えば、n型不純物としてはSiが用いられ、p型不純物としてはMg又はCが用いられる。しかしながら、これら不純物、特にp型不純物はSi系半導体装置で用いられる不純物と比較すると活性化しにくい。このため、キャリア濃度の制御が容易ではなく、Si系半導体装置と比較すると、窒化物半導体等の化合物半導体を用いた化合物半導体装置で実現することができる構造が限られている。
【0014】
例えば、AlGaN/GaN−HEMTでは、ノーマリーオフ動作の実現及び寄生容量の低減のために、それぞれに適したキャリア濃度のp型領域を面内方向に設けることが望まれる場合があるが、従来の技術では、このような構造の実現が困難である。また、理論上、キャリア濃度が相違するp型領域を面内方向で接触させることができれば、ショットキーダイオードを得ることができるが、従来の技術では、このような構造の実現も困難である。
【0015】
そこで、以下に示す諸実施形態では、これらの構造の実現を可能にする。
【0016】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0017】
第1の実施形態では、図1に示すように、基板1の上方に、化合物半導体層2が形成されている。化合物半導体層2には、不純物の活性化により発生したキャリアを含むキャリア高濃度領域2a、及び、キャリア高濃度領域2aと同種の不純物の活性化により発生したキャリアを、キャリア高濃度領域2aよりも低濃度で含有するキャリア低濃度領域2bが含まれている。更に、不純物の活性化が行われていない不活性化領域2cも含まれている。キャリア高濃度領域2aは第1の領域の一例であり、キャリア低濃度領域2bは第2の領域の一例である。
【0018】
このような構造の化合物半導体装置は、次のような方法で製造することができる。図2は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0019】
先ず、図2(a)に示すように、基板1の上方に不純物を含む化合物半導体層2を形成する。化合物半導体層2は、例えばエピタキシャル成長により形成する。次いで、図2(b)に示すように、キャリア高濃度領域2aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたマスク101を化合物半導体層2上に形成する。そして、開口部を介して化合物半導体層2にレーザ光を照射する。この結果、化合物半導体層2のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、不純物が活性化してキャリアが発生する。この部分がキャリア高濃度領域2aとなる。その後、図2(c)に示すように、マスク101を除去し、キャリア低濃度領域2bを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたマスク102を化合物半導体層2上に形成する。そして、開口部を介して化合物半導体層2にレーザ光を照射する。このとき、レーザ光の照射密度を、キャリア高濃度領域2aの形成時の照射密度よりも低くする。この結果、化合物半導体層2のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、不純物がキャリア高濃度領域2aの形成時よりも弱く活性化して低濃度でキャリアが発生する。この部分がキャリア低濃度領域2bとなる。そして、図2(d)に示すように、マスク102を除去する。なお、化合物半導体層2のうち、レーザ光が照射されずにキャリアが発生しなかった部分が不活性化領域2cとなる。
【0020】
このような方法によれば、所望の位置に所望のキャリア濃度の不純物活性領域を容易に形成することができる。従って、基板1の表面に平行な方向の異なる位置に形成されたキャリア高濃度領域2a及びキャリア低濃度領域2bをトランジスタ、ショットキーダイオード等の不純物活性領域として用いることが可能となり、化合物半導体装置の構造の自由度を高めることが可能となる。
【0021】
本願発明者が、化合物半導体層2に含まれる不純物のドーピング量及びその活性化のためのレーザ光の照射密度と、発生したキャリアの密度及び活性化率との関係を調査した結果、表1に示す結果が得られた。ここでは、不純物としてMgを用い、レーザ光の光源としてKrFレーザを用いた。不純物としてMgを用いたため、キャリアとしてホールが発生した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示す結果(ホールの密度、活性化率)から、Mgのドーピング量が一定であれば、レーザ光の照射密度を高くするほど、ホールの密度及び活性化率が高くなることがわかる。また、レーザ光の照射密度が一定であれば、Mgのドーピング量を高くするほど、ホールの密度が高くなるが、Mgのドーピング量を高くしても活性化率は一定であることがわかる。この結果から、不純物を含有する化合物半導体層の複数の領域に、照射密度を相違させてレーザ光を照射すれば、これら複数の領域のキャリア密度を相違させることができることが明らかである。
【0024】
なお、レーザ光の光源としては、種々のものが利用できる。例えば、半導体レーザ、窒素レーザ、ArFレーザ、KrFレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、チタンサファイアレーザ、色素レーザ、炭酸ガスレーザ、ヘリウムネオンレーザ、アルゴンイオンレーザ、エキシマレーザ等を用いることができる。また、化合物半導体層2に含まれる不純物の活性化の際に、レーザ光に代えて電子線又はイオンビームを照射して化合物半導体層2の一部分の温度を上昇させてもよい。以下の実施形態においても同様である。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。また、図4は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【0026】
第2の実施形態に係るHEMTチップ10では、図3に示すように、基板11上に、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12が形成されている。基板11としては、例えばSi基板、サファイア基板、GaAs基板、SiC基板及びGaN基板等が用いられる。基板11は、絶縁性、半絶縁性及び導電性のいずれでもよい。バッファ層13としては、例えばAlN層が形成されており、その厚さは、例えば0.1μm程度である。電子走行層14としては、例えば意図的なドーピングを行っていないi−GaN層が形成されており、その厚さは、例えば3μm程度である。中間層15としては、例えば意図的なドーピングを行っていないi−Al0.25Ga0.75N層が形成されており、その厚さは、例えば5nm程度である。電子供給層16としては、例えばn型のn−Al0.25Ga0.75N層が形成されており、その厚さは、例えば30nm程度である。n型のn−Al0.25Ga0.75N層には、例えばn型不純物としてSiが含有されている。Mgドープ化合物半導体層12としては、1×1019/cm3程度のMgがドーピングされたGaN層が形成されており、その厚さは、例えば10nm程度である。
【0027】
Mgドープ化合物半導体層12には、開口部17s及び17dが形成されており、開口部17s内にソース電極20sが形成され、開口部17d内にドレイン電極20dが形成されている。ソース電極20s及びドレイン電極20dには、電子供給層16と接するTa膜18及びその上のAl膜19が含まれている。Mgドープ化合物半導体層12には、ソース電極20s及びドレイン電極20dの間に位置するキャリア高濃度領域12a及びキャリア低濃度領域12bが含まれている。キャリア高濃度領域12a及びキャリア低濃度領域12bは、いずれもMgドープ化合物半導体層12に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、キャリア高濃度領域12aの方がキャリア低濃度領域12bよりも強く活性化されている。従って、キャリア高濃度領域12aのキャリア濃度は、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度よりも高い。また、キャリア高濃度領域12aはキャリア低濃度領域12bよりもソース電極20s側に位置している。従って、キャリア低濃度領域12bはキャリア高濃度領域12aとドレイン電極20dとの間に位置している。また、Mgドープ化合物半導体層12の、ソース電極20sとキャリア高濃度領域12aとの間の領域、キャリア高濃度領域12aとキャリア低濃度領域12bとの間の領域、及びキャリア低濃度領域12bとドレイン電極20dとの間の領域は、Mgの活性化が行われていない不活性化領域12cとなっている。そして、キャリア高濃度領域12a上にゲート電極20gが形成され、キャリア低濃度領域12b上にフィールドプレート電極20fが形成されている。ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fには、キャリア高濃度領域12a又はキャリア低濃度領域12bと接するNi膜及びその上のAu膜が含まれている。
【0028】
そして、Mgドープ化合物半導体層12、ソース電極20s、ドレイン電極20d、ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fを覆う絶縁膜21が形成されている。絶縁膜21としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜21には、ソース電極20sの少なくとも一部を露出する開口部22s、ドレイン電極20dの少なくとも一部を露出する開口部22d、及びフィールドプレート電極20fの少なくとも一部を露出する開口部22fが形成されている。そして、開口部22s及び22fを介してソース電極20sとフィールドプレート電極20fとを互いに接続する配線23が絶縁膜21上に形成されている。また、ドレイン電極20dに接続された配線24も絶縁膜21上に形成されている。更に、図3には図示していないが、絶縁膜21には、ゲート電極20gの少なくとも一部を露出する開口部も形成されており、ゲート電極20gに接続された配線も絶縁膜21上に形成されている。そして、配線23及び24等を覆うパッシベーション膜25が絶縁膜21上に形成されている。パッシベーション膜25としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。
【0029】
このように構成された化合物半導体装置はHEMTとして機能する。つまり、電子走行層14の表層部に2DEGが発生し、ソース電極20sとドレイン電極20dとの間を、ゲート電極20gに印加された電圧に応じて電流が流れる。また、キャリア高濃度領域12aには、キャリアであるホールが高濃度で含まれている。このため、キャリア高濃度領域12aの下方では、電子走行層14の表層部に2DEGがほとんど存在しない。従って、このHEMTはノーマリーオフ動作が可能である。
【0030】
また、平面視でゲート電極20gとドレイン電極20dとの間に存在する2DEGの濃度が全体にわたって高くなっている場合には、空乏層が伸び難く、十分な耐圧を確保することが困難である。これに対し、本実施形態では、ホールを低濃度で含むキャリア低濃度領域12bが、平面視でゲート電極20gとドレイン電極20dとの間に位置しているため、キャリア低濃度領域12bの下方では、その周囲と比較して2DEGの濃度が低い。従って、キャリア低濃度領域12bの下方において空乏層が伸びやすく、電界集中を緩和して耐圧を向上することができる。なお、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度がキャリア高濃度領域12aと同程度であると、2DEGが消失してしまって電流が流れなくなってしまう。
【0031】
更に、本実施形態では、絶縁膜21と2DEGとの間にMgドープ化合物半導体層12が存在し、絶縁膜21と化合物半導体層との界面が2DEGから比較的離れている。この点でも、電界集中に伴う耐圧の低下を抑制することができる。
【0032】
更にまた、ソース電極20sに接続されたフィールドプレート電極20fにより、ゲート電極20gとソース電極20sとの間の寄生容量Cgs、及びゲート電極20gとドレイン電極20dとの間の寄生容量Cgdを低減することができる。このため、高速動作が可能である。
【0033】
なお、図4(a)に示すように、配線23は、HEMTチップ10の外部端子であるソースパッド26sに接続され、配線24は、HEMTチップ10の外部端子であるドレインパッド26dに接続される。また、ゲート電極20gに接続された配線は、HEMTチップ10の外部端子であるゲートパッド26gに接続される。概ね、平面視でソースパッド26sとドレインパッド26dとの間の領域が、2DEGが存在するトランジスタ領域27となっている。
【0034】
また、パッケージングに際しては、図4(b)に示すように、HEMTチップ10の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤34を用いてランド(ダイパッド)33に固定される。また、ドレインパッド26dにAlワイヤ等のワイヤ35dが接続され、ワイヤ35dの他端が、ランド33と一体化しているドレインリード32dに接続される。ソースパッド26sにAlワイヤ等のワイヤ35sが接続され、ワイヤ35sの他端がランド33から独立したソースリード32sに接続される。ゲートパッド26gにAlワイヤ等のワイヤ35gが接続され、ワイヤ35gの他端がランド33から独立したゲートリード32gに接続される。そして、ゲートリード32gの一部、ドレインリード32dの一部及びソースリード32sの一部が突出するようにして、ランド33及びHEMTチップ10等がモールド樹脂31によりパッケージングされている。
【0035】
次に、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法について説明する。図5A〜図5Cは、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0036】
先ず、図5A(a)に示すように、基板11上に、例えば有機化学気相堆積(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)法又は分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等の結晶成長法により、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12を形成する。この結果、電子走行層14の表層部に高濃度で2DEGが発生する。
【0037】
これら化合物半導体層の形成に際して、例えば、Al源であるトリメチルアルミニウムガス、Ga源であるトリメチルガリウムガス、及びN源であるアンモニアガスの混合ガスを用いる。このとき、成長させる化合物半導体層の組成に応じて、トリメチルアルミニウムガス及びトリメチルガリウムガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。各化合物半導体層に共通の原料であるアンモニアガスの流量は、100ccm〜10LM程度とする。また、例えば、成長圧力は50Torr〜300Torr程度、成長温度は1000℃〜1200℃程度とする。また、n型の化合物半導体層を成長させる際には、例えば、Siを含むSiH4ガスを所定の流量で混合ガスに添加し、化合物半導体層にSiをドーピングする。Siのドーピング濃度は、1×1018/cm3程度〜1×1020/cm3程度、例えば5×1018/cm3程度とする。
【0038】
次いで、図5A(b)に示すように、キャリア高濃度領域12aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク103をMgドープ化合物半導体層12上に形成する。そして、図5A(c)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層12にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、例えばレーザ光の照射密度は250mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層12のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgが活性化してホールが発生する。この部分がキャリア高濃度領域12aとなる。また、キャリア高濃度領域12aの形成に伴って、キャリア高濃度領域12aの下方から2DEGが消失する。
【0039】
その後、図5A(d)に示すように、マスク103を除去し、キャリア低濃度領域12bを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク104をMgドープ化合物半導体層12上に形成する。そして、図5B(e)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層12にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、レーザ光の照射密度はキャリア高濃度領域12aの形成時の照射密度よりも低く、例えば100mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層12のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgがキャリア高濃度領域12aの形成時よりも弱く活性化して低濃度でホールが発生する。この部分がキャリア低濃度領域12bとなる。また、キャリア低濃度領域12bの形成に伴って、キャリア低濃度領域12bの下方において2DEGの濃度が低下する。
【0040】
続いて、図5B(f)に示すように、マスク104を除去する。Mgドープ化合物半導体層12のうち、レーザ光が照射されずにキャリアが発生しなかった部分が不活性化領域12cとなる。次いで、図5B(g)に示すように、ソース電極用の開口部17s及びドレイン電極用の開口部17dをMgドープ化合物半導体層12に形成する。その後、図5B(h)に示すように、例えばリフトオフ法により、開口部17s内にソース電極20sを形成し、開口部17d内にドレイン電極20dを形成する。ソース電極20s及びドレイン電極20dの形成に際しては、例えばTa膜18及びAl膜19を蒸着法により形成する。続いて、図5C(i)に示すように、例えばリフトオフ法により、キャリア高濃度領域12a上にゲート電極20gを形成し、キャリア低濃度領域12b上にフィールドプレート電極20fを形成する。ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fの形成に際しては、例えばNi膜及びAu膜を蒸着法により形成する。
【0041】
次いで、図5C(j)に示すように、Mgドープ化合物半導体層12、ソース電極20s、ドレイン電極20d、ゲート電極20g及びフィールドプレート電極20fを覆う絶縁膜21を形成する。その後、図5C(k)に示すように、絶縁膜21に、ソース電極20sの少なくとも一部を露出する開口部22s、ドレイン電極20dの少なくとも一部を露出する開口部22d、及びフィールドプレート電極20fの少なくとも一部を露出する開口部22fを形成する。続いて、図5C(l)に示すように、開口部22s及び22fを介してソース電極20sとフィールドプレート電極20fとを互いに接続する配線23、及びドレイン電極20dに接続される配線24を絶縁膜21上に形成する。なお、図5Cには図示していないが、ゲート電極20gの少なくとも一部を露出する開口部も絶縁膜21に形成し、ゲート電極20gに接続される配線も絶縁膜21上に形成する。そして、配線23及び24等を覆うパッシベーション膜25を形成する。
【0042】
このようにして、図3に示す構造の化合物半導体装置(HEMTチップ10)を製造することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0044】
第3の実施形態では、キャリア低濃度領域12bが、平面視でゲート電極20g側に位置する第1キャリア低濃度領域12cとドレイン電極20d側に位置する第2キャリア低濃度領域12dとに画定されている。第1キャリア低濃度領域12c及び第2キャリア低濃度領域12dは、いずれもMgドープ化合物半導体層12に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、第1キャリア低濃度領域12cの方が第2キャリア低濃度領域12dよりも強く活性化されている。従って、第1キャリア低濃度領域12cのキャリア濃度は、第2キャリア低濃度領域12dのキャリア濃度よりも高い。他の構造は第2の実施形態と同様である。
【0045】
このような第3の実施形態によれば、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度がドレイン電極20dに近づくほど段階的に低くなっているため、第2の実施形態と比較して、より電界集中を緩和することができる。従って、より一層耐圧を向上することができる。
【0046】
第3の実施形態の構造を得るためには、キャリア低濃度領域12bの形成の際に、例えば、2種類のマスクを用いて照射密度が相違する2回のレーザ光の照射を行えばよい。
【0047】
なお、第3の実施形態では、キャリア低濃度領域12bのキャリア濃度が2段階で変化しているが、3段階以上で変化していてもよい。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図7は、第4の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。また、図8は、第4の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【0049】
第4の実施形態に係るダイオードチップ40では、図7に示すように、基板41上に、バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42が形成されている。基板41、バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42としては、第2の実施形態の基板11、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12と同様のものが用いられる。
【0050】
Mgドープ化合物半導体層42には、開口部47a及び47cが形成されており、開口部47a内にアノード電極50aが形成され、開口部47c内にカソード電極50cが形成されている。アノード電極50aには、電子供給層46と接するNi膜48a及びその上のAu膜49aが含まれ、カソード電極50cには、電子供給層46と接するTa膜48c及びその上のAl膜49cが含まれている。Mgドープ化合物半導体層42には、アノード電極50a及びカソード電極50cの間に位置するキャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bが含まれている。キャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bは互いに接触している。キャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bは、いずれもMgドープ化合物半導体層42に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、キャリア高濃度領域42aの方がキャリア低濃度領域42bよりも強く活性化されている。従って、キャリア高濃度領域42aのキャリア濃度は、キャリア低濃度領域42bのキャリア濃度よりも高い。また、キャリア高濃度領域42aはキャリア低濃度領域42bよりもアノード電極50a側に位置している。従って、キャリア低濃度領域42bはキャリア高濃度領域42aとカソード電極50cとの間に位置している。また、Mgドープ化合物半導体層42の、アノード電極50aとキャリア高濃度領域42aとの間の領域、及びキャリア低濃度領域42bとカソード電極50cとの間の領域は、Mgの活性化が行われていない不活性化領域42cとなっている。
【0051】
そして、Mgドープ化合物半導体層42、アノード電極50a及びカソード電極50cを覆う絶縁膜51が形成されている。絶縁膜51としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜51には、アノード電極50aの少なくとも一部を露出する開口部52a、及びカソード電極50cの少なくとも一部を露出する開口部52cが形成されている。そして、アノード電極50aに接続された配線53、及びカソード電極50cに接続された配線54が絶縁膜51上に形成されている。そして、配線53及び54を覆うパッシベーション膜55が絶縁膜51上に形成されている。パッシベーション膜55としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。
【0052】
このように構成された化合物半導体装置はショットキーダイオードとして機能する。つまり、アノード電極50aが電子走行層44とショットキー接触しており、電子走行層44の表層部に2DEGが発生し、アノード電極50aとカソード電極50cとの間を、アノード電極50a及びカソード電極50c間の電界の方向に応じて電流が流れる。
【0053】
そして、キャリア高濃度領域42a及びキャリア低濃度領域42bの作用により、高い耐圧を確保することができる。
【0054】
なお、図8(a)に示すように、配線53は、ダイオードチップ40の外部端子であるアノードパッド56aに接続され、配線54は、ダイオードチップ40の外部端子であるカソードパッド56cに接続される。概ね、平面視でアノードパッド56aとカソードパッド56cとの間の領域が、2DEGが存在するダイオード領域57となっている。
【0055】
また、パッケージングに際しては、図8(b)に示すように、ダイオードチップ40の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤64を用いてランド63に固定される。また、アノードパッド56aにAlワイヤ等のワイヤ65aが接続され、ワイヤ65aの他端がランド63から独立したアノードリード62aに接続される。カソードパッド56cにAlワイヤ等のワイヤ65cが接続され、ワイヤ65cの他端がランド63から独立したカソードリード62cに接続される。そして、アノードリード62aの一部及びカソードリード62cの一部が突出するようにして、ランド63及びダイオードチップ40等がモールド樹脂61によりパッケージングされている。
【0056】
第4の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法について説明する。図9A〜図9Cは、第4の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0057】
先ず、図9A(a)に示すように、基板41上に、例えばMOCVD法又はMBE法等の結晶成長法により、バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42を形成する。この結果、電子走行層44の表層部に高濃度で2DEGが発生する。バッファ層43、電子走行層44、中間層45、電子供給層46及びMgドープ化合物半導体層42は、バッファ層13、電子走行層14、中間層15、電子供給層16及びMgドープ化合物半導体層12と同様にして形成することができる。
【0058】
次いで、図9A(b)に示すように、キャリア高濃度領域42aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク105をMgドープ化合物半導体層42上に形成する。そして、図9A(c)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層42にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、例えばレーザ光の照射密度は175mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層42のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgが活性化してホールが発生する。この部分がキャリア高濃度領域42aとなる。また、キャリア高濃度領域42aの形成に伴って、キャリア高濃度領域42aの下方において2DEGの濃度が低下する。
【0059】
その後、図9A(d)に示すように、マスク105を除去し、キャリア低濃度領域42bを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク106をMgドープ化合物半導体層42上に形成する。そして、図9B(e)に示すように、開口部を介してMgドープ化合物半導体層42にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、レーザ光の照射密度はキャリア高濃度領域42aの形成時の照射密度よりも低く、例えば100mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層42のレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、Mgがキャリア高濃度領域42aの形成時よりも弱く活性化して低濃度でホールが発生する。この部分がキャリア低濃度領域42bとなる。また、キャリア低濃度領域42bの形成に伴って、キャリア低濃度領域42bの下方において2DEGの濃度が低下する。但し、2DEGの濃度の低下の程度は、キャリア高濃度領域42aの下方よりも低い。つまり、キャリア低濃度領域42bの下方の2DEGの濃度は、キャリア高濃度領域42aの下方より高い。
【0060】
続いて、図9B(f)に示すように、マスク106を除去する。Mgドープ化合物半導体層42のうち、レーザ光が照射されずにキャリアが発生しなかった部分が不活性化領域42cとなる。次いで、図9B(g)に示すように、アノード電極用の開口部47a及びカソード電極用の開口部47cをMgドープ化合物半導体層42に形成する。その後、図9B(h)に示すように、例えばリフトオフ法により、開口部47a内にアノード電極50aを形成し、開口部47c内にカソード電極50cを形成する。アノード電極50aの形成に際しては、例えばNi膜48a及びAu膜49aを蒸着法により形成する。カソード電極50cの形成に際しては、例えばTa膜48c及びAl膜49cを蒸着法により形成する。
【0061】
続いて、図9C(i)に示すように、Mgドープ化合物半導体層42、アノード電極50a及びカソード電極50cを覆う絶縁膜51を形成する。次いで、図9C(j)に示すように、絶縁膜51に、アノード電極50aの少なくとも一部を露出する開口部52a、及びカソード電極50cの少なくとも一部を露出する開口部52cを形成する。その後、図9C(k)に示すように、開口部52aを介してアノード電極50aに接続される配線53、及び開口部52cを介してカソード電極50cに接続される配線54を絶縁膜51上に形成する。そして、図9C(l)に示すように、配線53及び54を覆うパッシベーション膜55を形成する。
【0062】
このようにして、図7に示す構造の化合物半導体装置(ダイオードチップ40)を製造することができる。
【0063】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図10は、第5の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。また、図11は、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の全体像を示す図である。
【0064】
第5の実施形態に係るトランジスタチップ70では、図10に示すように、基板71上に、バッファ層73、n型GaN層74、n型GaN層74よりも低濃度でn型不純物を含有するn-GaN層75、及びMgドープ化合物半導体層72が形成されている。基板71、バッファ層73及びMgドープ化合物半導体層72としては、第2の実施形態の基板11、バッファ層13及びMgドープ化合物半導体層12と同様のものが用いられる。但し、基板71としては低抵抗のものが用いられる。n型GaN層74の厚さは、例えば100nm〜10000nm程度であり、n-GaN層75の厚さは、例えば10nm〜10000nm程度である。
【0065】
Mgドープ化合物半導体層72には、キャリア低濃度領域72b、及び平面視でキャリア低濃度領域72bを取り囲むキャリア高濃度領域72aが含まれている。Mgドープ化合物半導体層72としては、1×1019/cm3程度のMgがドーピングされたGaN層が形成されており、その厚さは、例えば10nm程度である。キャリア高濃度領域72a及びキャリア低濃度領域72bは、いずれもMgドープ化合物半導体層72に含まれるp型不純物であるMgの活性化によって形成された領域であり、キャリア高濃度領域72aの方がキャリア低濃度領域72bよりも強く活性化されている。従って、キャリア高濃度領域72aのキャリア濃度は、キャリア低濃度領域72bのキャリア濃度よりも高い。
【0066】
キャリア低濃度領域72b上にn型GaN層76が形成され、n型GaN層76上にソース電極80sが形成されている。ソース電極80sには、n型GaN層76と接するTa膜78s及びその上のAl膜79sが含まれている。また、キャリア高濃度領域72a上にゲート電極80gが形成されている。ゲート電極80gには、キャリア高濃度領域72aと接するNi膜78g及びその上のAu膜79gが含まれている。更に、基板71の裏面にドレイン電極80dが形成されている。ドレイン電極80dには、基板71と接するTa膜及びその上のAl膜が含まれている。
【0067】
そして、Mgドープ化合物半導体層72、ソース電極80s及びゲート電極80gを覆う絶縁膜81が形成されている。絶縁膜81としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。絶縁膜81には、ソース電極80sの少なくとも一部を露出する開口部82s、及びゲート電極80gの少なくとも一部を露出する開口部82gが形成されている。そして、ソース電極80sに接続された配線83、及びゲート電極80gに接続された配線84が絶縁膜81上に形成されている。そして、配線83及び84を覆うパッシベーション膜85が絶縁膜81上に形成されている。パッシベーション膜85としては、例えばシリコン窒化膜が形成されている。
【0068】
このように構成された化合物半導体装置は縦型電界効果トランジスタとして機能する。そして、キャリア高濃度領域72a及びキャリア低濃度領域72bの作用により、高い耐圧を確保することができる。
【0069】
なお、図11(a)に示すように、配線83は、トランジスタチップ70の外部端子であるソースパッド86sに接続され、配線84は、トランジスタチップ70の外部端子であるゲートパッド86sに接続される。
【0070】
また、パッケージングに際しては、図11(b)に示すように、トランジスタチップ70の裏面がはんだ等の導電性のダイアタッチ剤94を用いてランド93に固定される。また、ソースパッド86sにAlワイヤ等のワイヤ95sが接続され、ワイヤ95sの他端がランド93から独立したソースリード92sに接続される。ゲートパッド86gにAlワイヤ等のワイヤ95gが接続され、ワイヤ95gの他端がランド93から独立したゲートリード92gに接続される。ドレイン電極80dは導電性のダイアタッチ剤94を介してランド93に接続され、ランド93と一体化しているドレインリード92dに接続される。そして、ゲートリード92gの一部、ドレインリード92dの一部及びソースリード92sの一部が突出するようにして、ランド93及びトランジスタチップ70等がモールド樹脂91によりパッケージングされている。
【0071】
次に、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法について説明する。図12A〜図12Bは、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0072】
先ず、図12A(a)に示すように、基板71上に、例えばMOCVD法又はMBE法等の結晶成長法により、バッファ層73、n型GaN層74、n-GaN層75及びMgドープ化合物半導体層72を形成する。
【0073】
次いで、図12A(b)に示すように、Mgドープ化合物半導体層72の全面にレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、例えばレーザ光の照射密度は100mJ/cm2程度とする。この結果、Mgドープ化合物半導体層72の全体の温度が上昇し、Mgが活性化してホールが発生する。Mgドープ化合物半導体層72の全体がキャリア低濃度領域72bとなる。
【0074】
その後、図12A(c)に示すように、キャリア高濃度領域72aを形成する予定の領域を開口する開口部を備えたメタルマスク等のマスク107をキャリア低濃度領域72b上に形成する。そして、図12A(d)に示すように、開口部を介してキャリア低濃度領域72bにレーザ光を照射する。レーザ光の光源としては、例えばKrFエキシマレーザを用いる。このとき、レーザ光の照射密度はキャリア低濃度領域72bの形成時の照射密度よりも高く、例えば250mJ/cm2程度とする。この結果、キャリア低濃度領域72bのレーザ光が照射された部分の温度が上昇し、再度Mgが活性化して更にホールが発生する。この部分がキャリア高濃度領域72aとなる。
【0075】
続いて、図12B(e)に示すように、マスク107を除去し、キャリア高濃度領域72a及びキャリア低濃度領域72b上にn型GaN層76を、例えばMOCVD法又はMBE法等の結晶成長法により形成する。次いで、図12B(f)に示すように、n型GaN層76に、キャリア高濃度領域72aの少なくとも一部を露出する開口部77を形成する。
【0076】
その後、図12B(g)に示すように、例えばリフトオフ法により、開口部77内にゲート電極80gを形成し、n型GaN層76上にソース電極80sを形成する。ゲート電極80gの形成に際しては、例えばNi膜78g及びAu膜79gを蒸着法により形成する。ソース電極80sの形成に際しては、例えばTa膜78s及びAl膜79sを蒸着法により形成する。
【0077】
続いて、図12B(h)に示すように、ソース電極80s及びゲート電極80g等を覆う絶縁膜81を形成する。次いで、絶縁膜81に、ソース電極80sの少なくとも一部を露出する開口部82s、及びゲート電極80gの少なくとも一部を露出する開口部82gを形成する。その後、開口部82sを介してソース電極80sに接続される配線83、及び開口部82gを介してゲート電極80gに接続される配線84を絶縁膜81上に形成する。そして、配線83及び84を覆うパッシベーション膜85を形成する。
【0078】
このようにして、図10に示す構造の化合物半導体装置(トランジスタチップ70)を製造することができる。
【0079】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、第2又は第3の実施形態に係る化合物半導体装置を備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。図13は、第6の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0080】
PFC回路250には、スイッチ素子(トランジスタ)251、ダイオード252、チョークコイル253、コンデンサ254及び255、ダイオードブリッジ256、並びに交流電源(AC)257が設けられている。そして、スイッチ素子251のドレイン電極と、ダイオード252のアノード端子及びチョークコイル253の一端子とが接続される。スイッチ素子251のソース電極と、コンデンサ254の一端子及びコンデンサ255の一端子とが接続される。コンデンサ254の他端子とチョークコイル253の他端子とが接続される。コンデンサ255の他端子とダイオード252のカソード端子とが接続される。コンデンサ254の両端子間には、ダイオードブリッジ256を介してAC257が接続される。コンデンサ255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子251に、第2又は第3の実施形態のHEMTが用いられている。
【0081】
本実施形態では、耐圧の更なる向上を実現することに加え、デバイス動作速度をより向上させるAlGaN/GaN−HEMTをPFC回路250に適用することができる。従って、信頼性の高いPFC回路250が実現する。
【0082】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、第2又は第3の実施形態に係る化合物半導体装置を備えた電源装置に関する。図14は、第7の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0083】
電源装置には、高圧の一次側回路261及び低圧の二次側回路262、並びに一次側回路261と二次側回路262との間に配設されるトランス263が設けられている。
【0084】
一次側回路261には、第6の実施形態に係るPFC回路250、及びPFC回路250のコンデンサ255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路260が設けられている。フルブリッジインバータ回路260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子264a、264b、264c及び264dが設けられている。
【0085】
二次側回路262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子265a、265b及び265cが設けられている。
【0086】
本実施形態では、一次側回路261を構成するPFC回路250のスイッチ素子251、並びにフルブリッジインバータ回路260のスイッチ素子264a、264b、264c及び264dに、第2又は第3の実施形態のHEMTが用いられている。一方、二次側回路262のスイッチ素子265a、265b及び265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0087】
本実施形態では、耐圧の更なる向上を実現することに加え、デバイス動作速度をより向上させる信頼性の高い高耐圧のAlGaN/GaN−HEMTを高圧回路である一次側回路261に適用することができる。従って、信頼性の高い大電力の電源装置が実現する。
【0088】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、第2又は第3の実施形態に係る化合物半導体装置を備えた高周波増幅器に関する。図15は、第8の実施形態に係る高周波増幅器を示す結線図である。
【0089】
高周波増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路271、ミキサー272a及び272b、並びにパワーアンプ273が設けられている。
【0090】
ディジタル・プレディストーション回路271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ273は、第2又は第3の実施形態のHEMTを備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路271に送出できる。
【0091】
本実施形態では、耐圧の更なる向上を実現することに加え、デバイス動作速度をより向上させるAlGaN/GaN−HEMTを高周波増幅器に適用することができる。従って、信頼性の高い高耐圧の高周波増幅器が実現する。
【0092】
次に、本願発明者が上記の実施形態の効果の確認のために行った実験について説明する。
【0093】
(第1の実験)
第1の実験では、第2の実施形態及び図16に示す第1の参考例について、ドレイン−ソース間の電圧Vdsとドレイン電流Idとの関係、及びドレイン−ソース間に電圧を印加し続けた場合に破壊が起こるまでの時間tについて調べた。これらの結果を図17に示す。第1の参考例のキャリア高濃度領域112a及びキャリア低濃度領域112bの形成に当たっては、キャリア高濃度領域112a用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った後に、キャリア低濃度領域112b用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った。従って、不活性化領域は存在しない。また、絶縁膜21に代えて電子供給層と接するように絶縁膜121を形成した。
【0094】
図17(a)に示すように、第2の実施形態では、動作時であっても非動作時と同等のドレイン電流Idが得られたのに対し、第1の参考例では、動作時のドレイン電流Idが非動作時のものに比べて大きく減少した。これは、2回のMgドープGaN層のエッチングの際に電子供給層にダメージが生じて大量のトラップが発生したためである。つまり、第2の実施形態によれば、電流コラプスによる電流量の低下を抑制することができるといえる。
【0095】
また、図17(b)に示すように、第2の実施形態では、第1の参考例と比較して破壊に至るまでの時間が長くなった。これは、第2の実施形態における絶縁膜21と化合物半導体層との界面が、第1の参考例における絶縁膜121と化合物半導体層との界面よりも2DEGから離間しているため、耐圧が向上したためである。つまり、第2の実施形態によれば、信頼性を向上することができるといえる。
【0096】
従って、第2の実施形態によれば、動作時のオン抵抗の増加現象を抑え、信頼性の高い高耐圧のAlGaN/GaN−HEMTが実現する。第3の実施形態も同様である。
【0097】
(第2の実験)
第2の実験では、第4の実施形態及び図18に示す第2の参考例について、アノード−カソード間の順電圧Vacとアノード電流Iaとの関係、及びアノード−カソード間に逆電圧を印加し続けた場合に破壊が起こるまでの時間tについて調べた。これらの結果を図19に示す。第2の参考例のキャリア高濃度領域142a及びキャリア低濃度領域142bの形成に当たっては、キャリア高濃度領域142a用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った後に、キャリア低濃度領域142b用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った。従って、不活性化領域は存在しない。また、絶縁膜51に代えて電子供給層と接するように絶縁膜151を形成した。
【0098】
図19(a)に示すように、第4の実施形態では、動作時であっても非動作時と同等のアノード電流Iaが得られたのに対し、第2の参考例では、動作時のアノード電流Iaが非動作時のものに比べて大きく減少した。これは、2回のMgドープGaN層のエッチングの際に電子供給層にダメージが生じて大量のトラップが発生したためである。つまり、第4の実施形態によれば、電流コラプスによる電流量の低下を抑制することができるといえる。
【0099】
また、図19(b)に示すように、第4の実施形態では、第2の参考例と比較して破壊に至るまでの時間が長くなった。これは、第4の実施形態における絶縁膜51と化合物半導体層との界面が、第2の参考例における絶縁膜151と化合物半導体層との界面よりも2DEGから離間しているため、耐圧が向上したためである。つまり、第4の実施形態によれば、信頼性を向上することができるといえる。
【0100】
従って、第4の実施形態によれば、動作時のオン抵抗の増加現象を抑え、信頼性の高い高耐圧のAlGaN/GaN−高電子移動度ダイオードが実現する。
【0101】
(第3の実験)
第3の実験では、第5の実施形態及び図20に示す第3の参考例について、オフ時のドレイン−ソース間電圧Vdsとドレイン電流Idとの関係について調べた。この結果を図21に示す。第3の参考例のキャリア高濃度領域172a及びチャネル領域の形成に当たっては、キャリア高濃度領域172a用のMgドープGaN層の形成、エッチング及び活性化アニールを行った後に、意図的なドーピングを行っていないi−GaN層172bをキャリア低濃度領域72bに代えて形成した。
【0102】
図21に示すように、第5の実施形態では、オフ時にほとんどドレイン電流Idが流れなかったのに対し、第3の参考例では、オフ時にもドレイン電流Idが流れた。つまり、第5の実施形態ではノーマリーオフ動作が実現されたのに対し、第3の参考例では、ノーマリーオフ動作が実現されなかった。
【0103】
従って、第5の実施形態によれば、ノーマリーオフ動作のトランジスタが実現する。
【0104】
なお、レーザ光等の照射によってキャリアを発生させる化合物半導体層に含まれる不純物(第1の不純物、第2の不純物)はMgに限定されず、例えば、ホールを発生させる場合にはC等を用いてもよく、電子を発生させる場合にはSi等を用いることができる。
【0105】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0106】
(付記1)
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、
を有し、
前記化合物半導体層は、
第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域と、
前記第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、前記第1の領域よりも低濃度で含有する第2の領域と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【0107】
(付記2)
前記第1導電型のキャリアがホールであることを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
【0108】
(付記3)
前記第1の不純物及び前記第2の不純物がMg又はCであることを特徴とする付記2に記載の化合物半導体装置。
【0109】
(付記4)
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するソース電極及びドレイン電極と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
を有し、
前記第2の領域は、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0110】
(付記5)
前記第2の領域の上方に位置するフィールドプレート電極を有することを特徴とする付記4に記載の化合物半導体装置。
【0111】
(付記6)
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するアノード電極及びカソード電極と、
を有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、平面視で、前記第1の領域が前記アノード電極側、前記第2の領域が前記カソード電極側になるようにして前記アノード電極及び前記カソード電極の間に位置することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0112】
(付記7)
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む下部化合物半導体層と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
前記第2の領域の上方に位置するソース電極と、
前記第2の領域と前記ソース電極との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む上部化合物半導体層と、
前記基板の下方に位置するドレイン電極と、
を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【0113】
(付記8)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0114】
(付記9)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【0115】
(付記10)
基板の上方に不純物を含有する化合物半導体層を形成する工程と、
前記化合物半導体層の第1の領域にレーザ光を第1の照射密度で照射することにより、当該第1の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
前記化合物半導体層の前記第1の領域とは異なる第2の領域にレーザ光を前記第1の照射密度とは異なる第2の照射密度で照射することにより、当該第2の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【0116】
(付記11)
前記第1導電型のキャリアがホールであることを特徴とする付記10に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0117】
(付記12)
前記不純物がMg又はCであることを特徴とする付記11に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0118】
(付記13)
前記化合物半導体層を形成する工程の前に、
前記基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、
を有し、
更に、
前記電子走行層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記第1の領域の上方にゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記第2の領域を、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置させることを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0119】
(付記14)
前記第2の領域の上方にフィールドプレート電極を形成する工程を有することを特徴とする付記13に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0120】
(付記15)
前記化合物半導体層を形成する工程の前に、
前記基板の上方に電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層の上方に電子供給層を形成する工程と、
を有し、
更に、前記電子走行層の上方にアノード電極及びカソード電極を形成する工程を有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域を、平面視で、前記第1の領域が前記アノード電極側、前記第2の領域が前記カソード電極側になるようにして前記アノード電極及び前記カソード電極の間に位置させることを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【0121】
(付記16)
前記化合物半導体層を形成する工程の前に、
前記基板の上方に第2導電型のキャリアを含む下部化合物半導体層を形成する工程を有し、
更に、
前記第1の領域の上方にゲート電極を形成する工程と、
前記第2の領域の上方に第2導電型のキャリアを含む上部化合物半導体層を形成する工程と、
前記上部化合物半導体層の上方にソース電極を形成する工程と、
前記基板の下方にドレイン電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする付記10乃至12のいずれか1項に記載の化合物半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0122】
1、11、41、71:基板
2:化合物半導体層
2a、12a、42a、72a:キャリア高濃度領域
2b、12b、42b、72b:キャリア低濃度領域
12、42、72:Mgドープ化合物半導体層
14、44:電子走行層
15、45:中間層
16、46:電子供給層
20g、80g:ゲート電極
20s、80s:ソース電極
20d、80d:ドレイン電極
40a:アノード電極
40c:カソード電極
74、76:n型GaN層
75:n-GaN層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、
を有し、
前記化合物半導体層は、
第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域と、
前記第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、前記第1の領域よりも低濃度で含有する第2の領域と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電型のキャリアがホールであることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記第1の不純物及び前記第2の不純物がMg又はCであることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するソース電極及びドレイン電極と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
を有し、
前記第2の領域は、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記第2の領域の上方に位置するフィールドプレート電極を有することを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するアノード電極及びカソード電極と、
を有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、平面視で、前記第1の領域が前記アノード電極側、前記第2の領域が前記カソード電極側になるようにして前記アノード電極及び前記カソード電極の間に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む下部化合物半導体層と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
前記第2の領域の上方に位置するソース電極と、
前記第2の領域と前記ソース電極との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む上部化合物半導体層と、
前記基板の下方に位置するドレイン電極と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【請求項10】
基板の上方に不純物を含有する化合物半導体層を形成する工程と、
前記化合物半導体層の第1の領域にレーザ光を第1の照射密度で照射することにより、当該第1の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
前記化合物半導体層の前記第1の領域とは異なる第2の領域にレーザ光を前記第1の照射密度とは異なる第2の照射密度で照射することにより、当該第2の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された化合物半導体層と、
を有し、
前記化合物半導体層は、
第1の不純物の活性化により発生した第1導電型のキャリアを含む第1の領域と、
前記第1の不純物と同一種類の第2の不純物の活性化により発生したキャリアを、前記第1の領域よりも低濃度で含有する第2の領域と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電型のキャリアがホールであることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記第1の不純物及び前記第2の不純物がMg又はCであることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するソース電極及びドレイン電極と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
を有し、
前記第2の領域は、平面視で前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記第2の領域の上方に位置するフィールドプレート電極を有することを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置する電子走行層と、
前記電子走行層と前記化合物半導体層との間に位置する電子供給層と、
前記電子走行層の上方に位置するアノード電極及びカソード電極と、
を有し、
前記第1の領域及び前記第2の領域は、平面視で、前記第1の領域が前記アノード電極側、前記第2の領域が前記カソード電極側になるようにして前記アノード電極及び前記カソード電極の間に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記基板と前記化合物半導体層との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む下部化合物半導体層と、
前記第1の領域の上方に位置するゲート電極と、
前記第2の領域の上方に位置するソース電極と、
前記第2の領域と前記ソース電極との間に位置し、第2導電型のキャリアを含む上部化合物半導体層と、
前記基板の下方に位置するドレイン電極と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【請求項10】
基板の上方に不純物を含有する化合物半導体層を形成する工程と、
前記化合物半導体層の第1の領域にレーザ光を第1の照射密度で照射することにより、当該第1の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
前記化合物半導体層の前記第1の領域とは異なる第2の領域にレーザ光を前記第1の照射密度とは異なる第2の照射密度で照射することにより、当該第2の領域内で前記不純物を活性化させて第1導電型のキャリアを発生させる工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−62365(P2013−62365A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199657(P2011−199657)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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