説明

半導体装置、及び該半導体装置を用いたエネルギー伝達装置

【課題】ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスすることがあっても、半導体集積回路においてラッチアップが発生することを防止できるエネルギー伝達装置、及び該エネルギー伝達装置を実現可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】第1の半導体基板に形成された半導体装置24と、第2の半導体基板の表面に形成された第2導電型の逆電流防止層、及び第2の半導体基板中に形成され逆電流防止層を覆う第1導電型のウェル層を含む逆電流防止ダイオード41を備えた半導体集積回路48と、直流電圧源52と、変圧器60とを備え、変圧器60は、半導体装置24及び直流電圧源52と直列に接続される一次巻線53と、負荷と接続される第1二次巻線54とを含み、変圧器60の第1二次巻線54から負荷へ電力が供給されるように構成されている。半導体装置24の第2ドレイン電極(TAP電極)は、半導体集積回路48の逆電流防止層と電気的に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及び該半導体装置を用いたエネルギー伝達装置に関し、特に、エネルギー伝達装置を代表するスイッチング電源装置において、主電流を繰り返し開閉する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、高耐圧横型半導体装置を具体例に挙げて、図6を参照しながら説明する(例えば特許文献1参照)。図6は、従来の半導体装置の構成について示す断面図である。
【0003】
従来の半導体装置124は、図6に示すように、スイッチング素子121及びJFET(Junction Field-Effect Transistor)素子122を含む高耐圧半導体素子123を備えている。半導体装置124は、ソース電極111と、ゲート電極112と、第1ドレイン電極(以下、「ドレイン電極」と称す)113と、第2ドレイン電極(以下、「TAP電極」と称す)114とを備え、4種類の電極を備えている。
【0004】
-型半導体基板101の表面には、N型ドリフト領域102が形成されている。半導体基板101の表面には、ドリフト領域102と隣接してP型ベース領域103が形成されている。ベース領域103の表面には、ドリフト領域102と離間してN+型ソース領域104が形成されている。ベース領域103の表面には、ソース領域104と隣接してP+型ベースコンタクト領域105が形成されている。ソース領域104とドリフト領域102との間のベース領域103上には、ゲート絶縁膜106が形成されている。ドリフト領域102の表面には、ベース領域103と離間してN+型第1ドレイン領域107が形成されている。ドリフト領域102の表面には、第1ドレイン領域107と離間してN+型第2ドレイン領域108が形成されている。
【0005】
ベース領域103と第1ドレイン領域107との間のドリフト領域102の表面には、第1ドレイン領域107と離間してP型第1頂上半導体層109aが形成され、第1頂上半導体層109aは、ベース領域103と図示されない箇所で電気的に接続している。第1ドレイン領域107と第2ドレイン領域108との間のドリフト領域102の表面には、第1ドレイン領域107及び第2ドレイン領域108と離間してP型第2頂上半導体層109bが形成され、第2頂上半導体層109bは、ベース領域103と図示されない箇所で電気的に接続している。
【0006】
ソース電極111は、半導体基板101上に形成され、ベース領域103及びソース領域104と電気的に接続している。ゲート電極112は、ゲート絶縁膜106上に形成されている。ドレイン電極113は、半導体基板101上に形成され、第1ドレイン領域107と電気的に接続している。TAP電極114は、半導体基板101上に形成され、第2ドレイン領域108と電気的に接続している。
【0007】
第1,第2頂上半導体層109a,109b上には、第1,第2フィールド絶縁膜110a,110bが形成されている。半導体基板101上には、第1,第2フィールド絶縁膜110a,110bを介して、層間膜115が形成されている。
【0008】
従来の半導体装置では、ドレイン電極113とソース電極111間に電圧が印加されると、電界効果により第2ドレイン領域108近傍のドリフト領域102が空乏化され、TAP電極114に出力される電圧が例えば50V程度になるとピンチオフされる。
【0009】
即ち、図7に示すように、ドレイン電極113とソース電極111間に印加される電圧がピンチオフ電圧よりも低いときには、TAP電極114に供給される電圧は、ドレイン電極113とソース電極111間に印加される電圧に比例する。一方、ドレイン電極113とソース電極111間に印加される電圧がピンチオフ電圧よりも高いときには、TAP電極114に供給される電圧は、ピンチオフ電圧、即ち一定の電圧であり、ドレイン電極113とソース電極111間に印加される電圧よりも低い。
【0010】
このように、従来の半導体装置124では、オン状態のTAP電極114に供給される電圧は、図7に示すように、ドレイン電極113の電圧に比例するから、TAP電極114によりオン状態のドレイン電極113とソース電極111間のオン電圧を検出できる。
【0011】
また、オフ状態のドレイン電極113に高電圧が印加されることがあっても、TAP電極114に出力される電圧をピンチオフすることができる。
【0012】
ここで、従来の半導体装置124の動作について、以下に説明する。
【0013】
ソース電極111が負電圧になりゲート電極112が正電圧になった場合に、ベース領域103のうちゲート絶縁膜106を挟んでゲート電極112と相対する領域の表面が、N型領域に反転するので、該N型領域を通ってドレイン電極113とソース電極111間に電流を流すことができる(オン状態)。即ち、ゲート電極112に電圧をかけることで生じた電界によりドレイン電極113とソース電極111間に流れる電流を制御することができる。
【0014】
ゲート電極112をソース電極111と同電位とし(オフ状態)、ドレイン電極113に高電圧を印加しても、TAP電極114に出力される電圧を、第2ドレイン領域108近傍のドリフト領域102に拡がる空乏層により、ピンチオフすることができる。従って、TAP電極114を低電圧回路(ここで、「低電圧回路」の具体例としては、例えば、従来の半導体装置を備えたスイッチング電源装置に含まれる制御回路(後述の図8:144参照)等が挙げられる)に接続することができる。
【0015】
以下に、従来の半導体装置を用いたエネルギー伝達装置について、スイッチング電源装置を具体例に挙げて、図8を参照しながら説明する(例えば特許文献2参照)。図8は、従来の半導体装置124を備えたスイッチング電源装置の回路図である。
【0016】
従来のスイッチング電源装置は、図8に示すように、従来の半導体装置124と、半導体集積回路148と、直流電圧源152と、変圧器160とを備えている。変圧器160は、半導体装置124及び直流電圧源152と直列に接続される一次巻線153と、負荷と接続される第1二次巻線154と、制御回路144と接続される第2二次巻線157とを含む。従来の半導体装置124は、変圧器160の第1二次巻線154から負荷へ電力が供給されると共に、変圧器160の第2二次巻線157から制御回路144へ電力が供給されるように構成されている。
【0017】
半導体集積回路148、直流電圧源152、及び変圧器160の構成について順に説明する。
【0018】
半導体集積回路148は、制御回路144と、例えば耐圧が100Vの中耐圧トランジスタ142とを備えている。制御回路144は、例えばパルス幅変調等を利用して、主電流をスイッチングする半導体装置124の開閉を制御する。
【0019】
直流電圧源152は、ダイオードブリッジ150と、フィルタコンデンサ151とから構成されている。直流電圧源152には、交流電源eが供給される。
【0020】
変圧器160は、一次巻線153と、第1二次巻線154と、第2二次巻線157とを含む。変圧器160の第1二次巻線154は、ダイオード155及びフィルタコンデンサ156と接続している。また、変圧器160の第2二次巻線157は、ダイオード158及びフィルタコンデンサ159と接続している。
【0021】
なお、半導体集積回路148は、ゲート電極及びTAP電極を介して、半導体装置124と接続し、半導体集積回路148と半導体装置124とは、個別の半導体基板に形成されている。
【0022】
ここで、制御回路144は低電圧回路であり、高電圧を印加できない。そのため、図8に示すように、JFET素子122のTAP電極と制御回路144とを、例えば抵抗143及び中耐圧トランジスタ142を介して接続する。
【0023】
上述したようにTAP電極の電圧はピンチオフされるため、変圧器160の一次巻線153からドレイン電極に高電圧が印加されることがあっても、TAP電極の電圧は一定、即ちピンチオフ電圧(例えば50V程度)であるため、TAP電極を制御回路144と接続して制御回路144に起動電力を供給できる。
【0024】
ここで、起動時(電源投入時)に、TAP電極から制御回路144に起動電力を供給する動作について説明する。
【0025】
通常時は、スイッチング素子121が開閉動作を繰り返すことにより、変圧器160の第2二次巻線157に電圧が誘起され、ダイオード158を経て、Vbias電源端子149から制御回路144に電流が供給される。一方、交流電源eの投入時は、スイッチング素子121が開閉動作をしていないため、第2二次巻線157に電圧が誘起されず、制御回路144は無電源の状態である。
【0026】
中耐圧トランジスタ142は、制御回路144により、Vbias電源端子149の電圧が所定電圧以下のとき、オンするように制御される。従って、交流電源eが投入されると、直流電圧源152で発生し一次巻線153を経た直流電流の一部は、JFET素子122のTAP電極から、オン状態の中耐圧トランジスタ142を通って制御回路144へ供給され、制御回路144が起動する。
【0027】
すると、スイッチング素子121は開閉動作を繰り返すので、変圧器160の第2二次巻線157に電圧が誘起され、ダイオード158を経て、Vbias電源端子149から制御回路144に電流が供給される。Vbias電源端子149の電圧が所定電圧を超えると、中耐圧トランジスタ142はオフ状態となって、制御回路144は定常の動作状態になる。
【0028】
このように、電源投入時に必要な起動用の低電圧を、TAP電極で生成できるので、電力供給用の高耐圧で高電力の抵抗を不要にできる。従って、配線の簡素化及びそれに伴うコスト削減、並びに電源回路の小型化ができる。
【特許文献1】米国特許第4811075号明細書
【特許文献2】米国特許第5285369号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、従来の半導体装置を用いたエネルギー伝達装置では、以下に示す問題がある。
【0030】
この問題を説明するため、エネルギー伝達装置として、スイッチング電源装置を具体例に挙げて、図9を参照しながら説明する。図9は、従来のスイッチング電源装置に含まれる従来の半導体装置124及び半導体集積回路148の構成について示す断面図である。なお、図9中に示す半導体装置124は、前述の図6中に示す半導体装置124と同一の構成であるため、説明を省略する。また、図9中に示す中耐圧トランジスタ142は、前述の図8中に示す中耐圧トランジスタ142に相当する。また、図9中に示すバイポーラトランジスタ168は、制御回路(図8:144参照)に含まれている。なお、前述の図8において、簡略的に図示するために、図9中に示すバイポーラトランジスタ168の図示を省略している。
【0031】
中耐圧トランジスタ142とバイポーラトランジスタ168とは、図9に示すように、共通のP-型第2の半導体基板125に形成されている。第2の半導体基板125は、半導体装置124の第1の半導体基板101とは個別に形成されている。
【0032】
中耐圧トランジスタ142、及びバイポーラトランジスタ168の構成について、順に説明する。
【0033】
−中耐圧トランジスタ−
図9に示すように、中耐圧トランジスタ142は、第2の半導体基板125の表面に形成されたN型ドリフト領域131と、第2の半導体基板125の表面にドリフト領域131と隣接して形成されたP型ベース領域132と、ベース領域132の表面に形成されたN+型ソース領域133と、ベース領域132上に形成されたゲート絶縁膜134と、ドリフト領域131の表面にベース領域132と離間して形成されたN+型ドレイン領域135と、第2の半導体基板125上に形成されソース領域133と電気的に接続するソース電極136と、ゲート絶縁膜134上に形成されたゲート電極137と、第2の半導体基板125上に形成されドレイン領域135と電気的に接続するドレイン電極138とを備えている。
【0034】
ソース電極136は、図示されない箇所で制御回路(図8:144参照)と接続している。ゲート電極137は、図示されない箇所で抵抗(図8:143参照)を介してTAP電極114と接続していると共に、図示されない箇所で制御回路と接続している。
【0035】
図9に示すように、半導体装置124のTAP電極114は、中耐圧トランジスタ142のドレイン電極138と接続している。
【0036】
−バイポーラトランジスタ−
バイポーラトランジスタ168は、第2の半導体基板125の表面に形成されたN型コレクタ領域161と、コレクタ領域161の表面に形成されたN+型コレクタコンタクト領域162と、コレクタ領域161の表面にコレクタコンタクト領域162と離間して形成されたP型ベース領域163と、ベース領域163の表面に形成されたN+型エミッタ領域164と、第2の半導体基板125上に形成され、コレクタコンタクト領域162と電気的に接続するコレクタ電極165と、第2の半導体基板125上に形成され、ベース領域163と電気的に接続するベース電極166と、第2の半導体基板125上に形成され、エミッタ領域164と電気的に接続するエミッタ電極167とを備えている。
【0037】
バイポーラトランジスタ168と中耐圧トランジスタ142とが共通して形成された第2の半導体基板125上には、フィールド絶縁膜139を介して、層間膜140が形成されている。
【0038】
ここで、ドレイン電極113をソース電極111に対して負バイアスすると、TAP電極114から負電圧が出力される。すると、P-型第2の半導体基板125に対してN+型ドレイン領域135が順バイアスされ、第2の半導体基板125からドレイン領域135へ電流が流れる。このとき、P型ベース領域163、N型コレクタ領域161、P-型第2の半導体基板125、及びN型ドリフト領域131からなる寄生サイリスタがオンし、即ち、半導体集積回路148においてラッチアップが発生して、誤動作又は破壊を引き起こす。
【0039】
このように、従来の半導体装置124では、ドレイン電極113をソース電極111に対して負バイアスすると、従来の半導体装置124を用いたスイッチング電源装置に含まれる半導体集積回路148においてラッチアップを発生させるため、ドレイン電極113をソース電極111に対して負バイアスできないという問題がある。
【0040】
また、従来のスイッチング電源装置では、上述のように、ドレイン電極113をソース電極111に対して負バイアスすると(具体的には例えば、電磁ノイズ又は雷サージにより、ドレイン電極113に瞬時的に負バイアスが印加されると)、半導体集積回路148においてラッチアップが発生するという問題がある。従って、従来のスイッチング電源装置では、ノイズ耐性及び雷サージ耐性が弱い。加えて、ドレイン電極113の電圧が負バイアスにならないようにトランス設計をせねばならず、トランスを含めた周辺部品の設計が煩雑になる。
【0041】
前記に鑑み、本発明の目的は、ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスすることがあっても、半導体集積回路においてラッチアップが発生することを防止できるエネルギー伝達装置、及び該エネルギー伝達装置を実現可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
前記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、スイッチング素子とJFET素子とを含む高耐圧半導体素子を備えた半導体装置であって、高耐圧半導体素子は、第1の半導体基板の表面に形成された第1導電型のドリフト領域と、第1の半導体基板の表面にドリフト領域と隣接して形成された第2導電型のベース領域と、ベース領域の表面にドリフト領域と離間して形成された第1導電型のソース領域と、ソース領域とドリフト領域との間のベース領域上に形成されたゲート絶縁膜と、ドリフト領域の表面にベース領域と離間して形成された第1導電型の第1ドレイン領域と、ドリフト領域の表面に第1ドレイン領域と離間して形成された第1導電型の第2ドレイン領域と、第1の半導体基板上に形成され、ベース領域及びソース領域と電気的に接続するソース電極と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、第1の半導体基板上に形成され、第1ドレイン領域と電気的に接続する第1ドレイン電極と、第1の半導体基板上に形成され、第2ドレイン領域と電気的に接続する第2ドレイン電極とを備え、第2ドレイン電極は、第2の半導体基板の表面に形成された第2導電型の逆電流防止層と電気的に接続し、逆電流防止層は、第2の半導体基板中に形成された第1導電型のウェル層で覆われていることを特徴とする。
【0043】
本発明に係る半導体装置によると、第1ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスすることがあっても、第2ドレイン電極(TAP電極)から出力された負電圧は、逆電流防止層及びウェル層を逆バイアスするため、逆電流防止層に電流が流れ込まない。そのため、第1ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスできる。
【0044】
従って、本発明に係る半導体装置を、エネルギー伝達装置に適用した場合、エネルギー伝達装置に含まれる半導体集積回路においてラッチアップが発生することを防止できる。そのため、従来の半導体装置が適用されたエネルギー伝達装置に比べて、ノイズ耐性及び雷サージ耐性の高いエネルギー伝達装置を提供することが可能である。加えて、本発明に係る半導体装置が適用されたエネルギー伝達装置では、第1ドレイン電極の電圧が負バイアスにならないようにトランス設計をする必要がないため、周辺部品の設計を容易にすることが可能である。
【0045】
また、第1ドレイン電極に高電圧が印加されることがあっても、第2ドレイン領域近傍のドリフト領域に拡がる空乏層により、第2ドレイン電極(TAP電極)に出力される電圧をピンチオフすることができる。
【0046】
本発明に係る半導体装置において、第1の半導体基板と第2の半導体基板とは個別に形成されていることが好ましい。
【0047】
本発明に係る半導体装置において、第1の半導体基板と第2の半導体基板とは共通に形成されていることが好ましい。
【0048】
本発明に係る半導体装置において、高耐圧半導体素子は、ベース領域と第1ドレイン領域との間のドリフト領域の表面に第1ドレイン領域と離間して形成され、ベース領域と電気的に接続する第2導電型の第1頂上半導体層をさらに備えていることが好ましい。
【0049】
このようにすると、第1頂上半導体層を備えた高耐圧半導体素子は、例えば第1頂上半導体層を備えていない高耐圧半導体素子に比べて、ドリフト領域の濃度を濃くできるため、半導体装置のオン抵抗を小さくできる。
【0050】
本発明に係る半導体装置において、第1の半導体基板の導電型は、第2導電型であり、高耐圧半導体素子は、ベース領域と第1ドレイン領域との間のドリフト領域中に第1ドレイン領域と離間して形成され、ベース領域と電気的に接続する第2導電型の第1内部半導体層をさらに備えていることが好ましい。
【0051】
このようにすると、第1内部半導体層を備えた高耐圧半導体素子は、例えば第1頂上半導体層を備えた高耐圧半導体素子に比べて、ドリフト領域の濃度を濃くできるため、半導体装置のオン抵抗を小さくできる。
【0052】
本発明に係る半導体装置において、領域は、第2導電型のコレクタ領域であり、電極は、コレクタ電極であり、コレクタ電極は、コレクタ領域と電気的に接続していることが好ましい。
【0053】
このようにすると、IGBT型半導体装置を提供できる。また、スイッチング素子として、MOSユニポーラ素子ではなくIGBTバイポーラ素子を採用するため、半導体装置のオン抵抗を小さくできる。
【0054】
本発明に係る半導体装置において、領域は、第2導電型のコレクタ領域と、該コレクタ領域と隣接する第1導電型の第1ドレイン領域とを含み、電極は、コレクタ/ドレイン電極であり、コレクタ/ドレイン電極は、コレクタ領域及び第1ドレイン領域と電気的に接続していることが好ましい。
【0055】
このようにすると、ターンオフ時に電子を第1ドレイン領域から引き抜くことができるため、例えばIGBT型半導体装置に比べて、スイッチングスピードを速くできる。
【0056】
前記の目的を達成するために、本発明に係るエネルギー伝達装置は、本発明に係る半導体装置と、逆電流防止層及びウェル層を含む逆電流防止ダイオードと、主電流を繰り返し開閉する半導体装置の開閉を制御する制御回路とを備えた半導体集積回路と、直流電圧源と、変圧器とを備え、変圧器は、半導体装置及び直流電圧源と直列に接続される一次巻線と、負荷と接続される第1二次巻線とを含み、変圧器の第1二次巻線から負荷へ電力が供給されるように構成され、半導体装置の第2ドレイン電極は、半導体集積回路の逆電流防止層と電気的に接続していることを特徴とする。
【0057】
本発明に係るエネルギー伝達装置によると、第1ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスすることがあっても、第2ドレイン電極(TAP電極)から出力された負電圧は、逆電流防止層及びウェル層を逆バイアスするため、逆電流防止層に電流が流れ込まないので、半導体集積回路においてラッチアップが発生することを防止できる。従って、従来のエネルギー伝達装置に比べて、ノイズ耐性及び雷サージ耐性の高いエネルギー伝達装置を実現できる。加えて、第1ドレイン電極の電圧が負バイアスにならないようにトランス設計をする必要がないため、周辺部品の設計を容易にすることができる。
【0058】
本発明に係るエネルギー伝達装置において、変圧器は、制御回路に接続される第2二次巻線をさらに含み、変圧器の第2二次巻線から制御回路へ電力が供給されるように構成されていることが好ましい。
【0059】
本発明に係るエネルギー伝達装置において、逆電流防止ダイオードは、ウェル層の表面に逆電流防止層と離間して形成された第1導電型のカソードコンタクト領域と、第2の半導体基板上に形成され、逆電流防止層と電気的に接続するアノード電極と、第2の半導体基板上に形成され、カソードコンタクト領域と電気的に接続するカソード電極とをさらに含み、アノード電極は、半導体装置の第2ドレイン電極と接続していることが好ましい。
【0060】
本発明に係るエネルギー伝達装置において、半導体集積回路は、第1導電型の第1トランジスタをさらに備え、第1トランジスタは、第1抵抗及び逆電流防止ダイオードを介して、半導体装置の第2ドレイン電極と接続され、第1トランジスタは、第2抵抗を介してグランド電位と接続され、第1トランジスタのゲート電位は、スイッチング素子のゲート電位と同期されていることが好ましい。
【0061】
このようにすると、第1抵抗と第2抵抗との抵抗分割により、スイッチング素子のターンオン時に第2ドレイン電極(TAP電極)に出力されたオン電圧(=第1ドレイン電極に出力されたオン電圧)を検出できる。第2ドレイン電極(TAP電極)に出力されたオン電圧を検出することで、半導体装置に流れる電流を調整できる。
【0062】
本発明に係るエネルギー伝達装置において、半導体集積回路は、第1導電型の第2トランジスタをさらに備え、抵抗及び第2トランジスタを介して、半導体装置の第2ドレイン電極と制御回路とが接続され、第2トランジスタは、制御回路により、制御回路に電流を供給するバイアス電源端子の電圧が所定電圧以下のとき、オンするように制御されていることが好ましい。
【0063】
このようにすると、第2ドレイン電極(TAP電極)により、起動時に制御回路に駆動電力を供給できるため、電源投入時に必要な起動用の低電圧を、第2ドレイン電極で生成できるので、電力供給用の高耐圧で高電力の抵抗を不要にできる。従って、配線の簡素化及びそれに伴うコスト削減、並びに電源回路の小型化ができる。
【発明の効果】
【0064】
本発明に係る半導体装置、及び該半導体装置を用いたエネルギー伝達装置によると、第1ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスすることがあっても、第2ドレイン電極(TAP電極)から出力された負電圧は、逆電流防止層及びウェル層を逆バイアスするため、逆電流防止層に電流が流れ込まないので、半導体集積回路においてラッチアップが発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0066】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成について示す断面図である。なお、図1では、半導体装置24の他に、該半導体装置24を用いたスイッチング電源装置に含まれる半導体集積回路48を図示している。
【0067】
<半導体装置>
本実施形態に係る半導体装置24は、従来のようにスイッチング素子21及びJFET素子22を含む高耐圧半導体素子23を備えている。
【0068】
半導体装置24は、ソース電極11と、ゲート電極12と、第1ドレイン電極(以下、「ドレイン電極」と称す)13と、第2ドレイン電極(以下、「TAP電極」と称す)14とを備え、4種類の電極を備えている。
【0069】
高耐圧半導体素子23の構成について説明する。
【0070】
高耐圧半導体素子23において、P-型第1の半導体基板1の表面には、N型ドリフト領域2が形成されている。第1の半導体基板1の表面には、ドリフト領域2と隣接してP型ベース領域3が形成されている。ベース領域3の表面には、ドリフト領域2と離間してN+型ソース領域4が形成されている。ベース領域3の表面には、ソース領域4と隣接してP+型ベースコンタクト領域5が形成されている。ソース領域4とドリフト領域2との間のベース領域3上には、ゲート絶縁膜6が形成されている。ドリフト領域2の表面には、ベース領域3と離間してN+型第1ドレイン領域7が形成されている。ドリフト領域2の表面には、第1ドレイン領域7と離間してN+型第2ドレイン領域8が形成されている。
【0071】
ベース領域3と第1ドレイン領域7との間のドリフト領域2の表面には、第1ドレイン領域7と離間してP型第1頂上半導体層9aが形成され、第1頂上半導体層9aは、ベース領域3と図示されない箇所で電気的に接続している。第1ドレイン領域7と第2ドレイン領域8との間のドリフト領域2の表面には、第1ドレイン領域7及び第2ドレイン領域8と離間してP型第2頂上半導体層9bが形成され、第2頂上半導体層9bは、ベース領域3と図示されない箇所で電気的に接続している。第1,第2頂上半導体層9a,9b上には、第1,第2フィールド絶縁膜10a,10bが形成されている。
【0072】
ソース電極11は、第1の半導体基板1上に形成され、ベース領域3及びソース領域4と電気的に接続している。ゲート電極12は、ゲート絶縁膜6上に形成されている。ドレイン電極13は、半導体基板1上に形成され、第1ドレイン領域7と電気的に接続している。TAP電極14は、半導体基板1上に形成され、第2ドレイン領域8と電気的に接続している。
【0073】
第1の半導体基板1上には、第1,第2フィールド絶縁膜10a,10bを介して、層間膜15が形成されている。
【0074】
本実施形態に係る半導体装置24が従来の半導体装置(図9:124参照)と相違する点は、TAP電極14が、ドレイン領域(図9:135参照)ではなく、P+型逆電流防止層26と電気的に接続している点である。逆電流防止層26は、第1の半導体基板1と個別に形成された第2の半導体基板25の表面に形成され、第2の半導体基板25中に形成されたN型ウェル層27で覆われている。
【0075】
本実施形態に係る半導体装置24は、以下に示す特有の効果を得ることができる。
【0076】
ドレイン電極13をソース電極11に対して負バイアスすることがあっても、TAP電極14から出力された負電圧は逆電流防止層26及びウェル層27を逆バイアスするため、逆電流防止層26に電流が流れ込まない。そのため、ドレイン電極13をソース電極11に対して負バイアスできる。
【0077】
従って、本実施形態に係る半導体装置24を、例えばスイッチング電源装置に適用した場合、スイッチング電源装置に含まれる半導体集積回路48においてラッチアップが発生することを防止できる。そのため、従来の半導体装置が適用されたスイッチング電源装置に比べて、ノイズ耐性及び雷サージ耐性の高いスイッチング電源装置を提供することが可能である。加えて、本実施形態に係る半導体装置24が適用されたスイッチング電源装置では、ドレイン電極13の電圧が負バイアスにならないようにトランス設計をする必要がないため、周辺部品の設計を容易にすることが可能である。
【0078】
さらに、本実施形態に係る半導体装置24と、該半導体装置24が適用されたスイッチング電源装置に含まれる半導体集積回路48とは、個別の半導体基板に形成されているため、半導体集積回路48においてラッチアップが発生することを効果的に防止できる。
【0079】
また、本実施形態に係る半導体装置24は、従来の半導体装置と同様の効果、即ち、TAP電極14によりオン状態のドレイン電極13とソース電極11間のオン電圧を検出できるという効果等を得ることができる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置24は、図1に示すように、半導体集積回路48に含まれる逆電流防止ダイオード41の逆電流防止層26と電気的に接続している(なお、半導体集積回路48は、逆電流防止ダイオード41の他に、図1に示すように、例えば第2トランジスタ42等を含む)。
【0081】
以下に、逆電流防止ダイオード41について、図1〜図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る半導体装置24及び半導体集積回路48の回路図(即ち、図1に示す構成の回路図)である。なお、図1において、簡略的に図示するために、半導体集積回路48に含まれる制御回路44の図示を省略している。
【0082】
図2に示すように、半導体装置24のTAP電極14は、半導体集積回路48に含まれる逆電流防止ダイオード41と電気的に接続している。
【0083】
逆電流防止ダイオード41の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0084】
図1に示すように、逆電流防止ダイオード41は、P-型第2の半導体基板25の表面に形成されたP+型逆電流防止層26と、第2の半導体基板25中に形成され、逆電流防止層26を覆うN型ウェル層27とを備えている。
【0085】
さらに、逆電流防止ダイオード41は、ウェル層27の表面に、逆電流防止層26と離間して形成されたN+型カソードコンタクト領域28と、第2の半導体基板25上に形成され、逆電流防止層26と電気的に接続するアノード電極29と、第2の半導体基板25上に形成され、カソードコンタクト領域28と電気的に接続するカソード電極30とを備えている。
【0086】
カソード電極30は、図1に示すように、耐圧が例えば100VのN型第2トランジスタ42のドレイン電極38と接続している。
【0087】
なお、第2トランジスタ42の構成は、次の通りである。図1に示すように、第2の半導体基板25の表面には、N型ドリフト領域31が形成されている。第2の半導体基板25の表面には、ドリフト領域31と隣接してP型ベース領域32が形成されている。ベース領域32の表面には、ドリフト領域31と離間してN+型ソース領域33が形成されている。ベース領域32上には、ゲート絶縁膜34が形成されている。ドリフト領域31の表面には、ベース領域32と離間してN+型ドレイン領域35が形成されている。第2の半導体基板25の上には、ソース電極36が形成され、ソース電極36はソース領域33と電気的に接続している。ゲート絶縁膜34上には、ゲート電極37が形成されている。第2の半導体基板25の上には、ドレイン電極38が形成され、ドレイン電極38はドレイン領域35と電気的に接続している。
【0088】
なお、第2トランジスタ42のソース電極36は、図示されない箇所で制御回路(図2:44参照)と接続している。第2トランジスタ42のゲート電極37は、図示されない箇所で抵抗(図2:43参照)を介して、カソード電極30と接続していると共に、図示されない箇所で制御回路と接続している。
【0089】
第2の半導体基板25上には、フィールド絶縁膜39が形成されている。第2の半導体基板25上には、フィールド絶縁膜39を介して、層間膜40が形成されている。
【0090】
このように、本実施形態に係る半導体装置24と、従来の半導体装置(図9:124参照)との相違点は、次に示す点である。従来におけるTAP電極(図9:114参照)は、中耐圧トランジスタ(図9:142参照)のドレイン電極(図9:138参照)と接続している点に対し、本実施形態におけるTAP電極14は、逆電流防止ダイオード41のアノード電極29と接続している点である。
【0091】
なお、逆電流防止ダイオード41は、一般的な半導体プロセスにより、製造コストを増大させずに製造することができる。
【0092】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置24を用いたスイッチング電源装置の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。なお、前述の図2において、簡略的に図示するために、半導体集積回路48に含まれる第1トランジスタ45の図示を省略している。
【0093】
<スイッチング電源装置>
本実施形態に係るスイッチング電源装置は、図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置24と、逆電流防止層(図1:26参照)及びウェル層(図1:27参照)を含む逆電流防止ダイオード41と、主電流を繰り返し開閉する(主電流をスイッチングする)半導体装置24の開閉を制御する制御回路44とを備えた半導体集積回路48と、直流電圧源52と、変圧器60とを備えている。変圧器60は、半導体装置24及び直流電圧源52と直列に接続される一次巻線53と、負荷と接続される第1二次巻線54と、制御回路44に接続される第2二次巻線57とを含み、変圧器60の第1二次巻線54から負荷へ電力が供給されると共に、変圧器60の第2二次巻線57から制御回路44へ電力が供給されるように構成され、半導体装置24のTAP電極14は、半導体集積回路48に含まれる逆電流防止ダイオード41の逆電流防止層と電気的に接続している。
【0094】
本実施形態に係るスイッチング電源装置を構成する各構成要素について順に説明する。
【0095】
−半導体装置−
本実施形態に係る半導体装置24は、図3に示すように、スイッチング素子21と、JFET素子22とを備えている。JFET素子22のTAP電極14は、逆電流防止ダイオード41の逆電流防止層(図1:26参照)と電気的に接続している。
【0096】
−半導体集積回路−
半導体集積回路48は、逆電流防止層(図1:26参照)及びウェル層(図1:27参照)を含む逆電流防止ダイオード41と、主電流をスイッチングする半導体装置24の開閉を制御する制御回路44とを備えている。
【0097】
加えて、半導体集積回路48は、耐圧が例えば100VのN型第1トランジスタ45を備えている。第1トランジスタ45は、第1抵抗46及び逆電流防止ダイオード41を介して、TAP電極14と接続している。第1トランジスタ45は、第2抵抗47を介して、GND電位(グランド電位)と接続している。第1トランジスタ45のゲート電位は、スイッチング素子21のゲート電位と同期されている。
【0098】
また、半導体集積回路48は、耐圧が例えば100VのN型第2トランジスタ42を備えている。TAP電極14と制御回路44とは、抵抗43及び第2トランジスタ42を介して接続している。第2トランジスタ42は、制御回路44により、Vbias電源端子49の電圧が所定電圧以下のとき、オンするように制御されている。
【0099】
−直流電圧源−
直流電圧源52は、ダイオードブリッジ50と、フィルタコンデンサ51とから構成されている。直流電圧源52には、交流電源eが供給される。
【0100】
−変圧器−
変圧器60は、一次巻線53と、第1二次巻線54と、第2二次巻線57とを含む。変圧器60の第1二次巻線54は、ダイオード55及びフィルタコンデンサ56と接続している。また、変圧器60の第2二次巻線57は、ダイオード58及びフィルタコンデンサ59と接続している。
【0101】
本実施形態に係るスイッチング電源装置が、従来のスイッチング電源装置(図8参照)と相違する点は、半導体集積回路48が逆電流防止ダイオード41を備え、半導体装置24のTAP電極14が逆電流防止ダイオード41と電気的に接続している点である。
【0102】
本実施形態に係るスイッチング電源装置は、以下に示す特有の効果を得ることができる。
【0103】
既述の通り、ドレイン電極13をソース電極11に対して負バイアスすることがあっても、半導体集積回路48においてラッチアップが発生することを防止できる。従って、従来のスイッチング電源装置に比べて、ノイズ耐性及び雷サージ耐性の高いスイッチング電源装置を実現できる。加えて、ドレイン電極13の電圧が負バイアスにならないようにトランス設計をする必要がないため、周辺部品の設計を容易にすることができる。
【0104】
また、本実施形態に係るスイッチング電源装置は、以下に示す効果を得ることができる。
【0105】
図3に示すように、第1トランジスタ45は、そのドレイン電極が、第1抵抗46を介して、逆電流防止ダイオード41のカソード電位と接続していると共に、そのソース電極が、第2抵抗47を介して、GND電位と接続している。第1トランジスタ45のゲート電位は、スイッチング素子21のゲート電位と同期されており、スイッチング素子21がターンオンするタイミングに合わせて、第1トランジスタ45もターンオンする。
【0106】
これにより、第1抵抗46と第2抵抗47との抵抗分割により、スイッチング素子21のターンオン時にTAP電極14に出力されたオン電圧(=ドレイン電極13に出力されたオン電圧)を、制御回路44で検出できる。TAP電極14に出力されたオン電圧を検出することで、半導体装置24に流れる電流を調整できる。
【0107】
また、従来と同様に、TAP電極14により、起動時に制御回路44に駆動電力を供給できることで、電源投入時に必要な起動用の低電圧を、TAP電極14で生成できるので、電力供給用の高耐圧で高電力の抵抗を不要にできる。従って、配線の簡素化及びそれに伴うコスト削減、並びに電源回路の小型化ができる。
【0108】
また、スイッチング素子21のオン抵抗が温度に対して正の相関があり、一定のドレイン電流の下、温度上昇に伴ってドレイン電圧が所定の割合で上昇する場合、オン電圧が所定電圧以上になると半導体装置24が過熱状態(異常状態)であると判定して、半導体装置24を保護することが可能である。
【0109】
また、特に図示しないが、逆電流防止ダイオード41のカソード電位を抵抗分割した電圧を用いて、制御回路44でスイッチング素子21がターンオンするタイミングを検出することも可能である。
【0110】
なお、本実施形態では、エネルギー伝達装置として、スイッチング電源装置を用いた場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば交流インバータ装置等を用いてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、図1に示すように、第1頂上半導体層9a及び第2頂上半導体層9bの双方を備えた高耐圧半導体素子23を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1頂上半導体層9aのみを備えた高耐圧半導体素子でもよい。
【0112】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を構成する高耐圧半導体素子23A部分の構成について示す断面図である。なお、図4において、前述の第1の実施形態における構成要素と同一の構成要素には、第1の実施形態における図1に示す符号と同一の符号を付すことにより、本実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点については適宜省略して説明する。
【0113】
本実施形態と第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態におけるP型第1,第2の頂上半導体層9a,9bの代わりに、P型第1,第2の内部半導体層16a,16bを設ける点である。
【0114】
詳細には、第1の実施形態では、図1に示すように、ベース領域3と第1ドレイン領域7との間のドリフト領域2の表面に、第1ドレイン領域7と離間して第1頂上半導体層9aが形成されている。また、第1ドレイン領域7と第2ドレイン領域8との間のドリフト領域2の表面に、第1,第2ドレイン領域7,8と離間して第2頂上半導体層9bが形成されている。
【0115】
これに対し、本実施形態では、図4に示すように、ベース領域3と第1ドレイン領域7との間のドリフト領域2中に、第1ドレイン領域7と離間して第1内部半導体層16aが形成されている。第1ドレイン領域7と第2ドレイン領域8との間のドリフト領域2中に、第1,第2ドレイン領域7,8と離間して第2内部半導体層16bが形成されている。
【0116】
本実施形態によると、第1,第2頂上半導体層9a,9bの代わりに、第1,第2内部半導体層16a,16bを設けることにより、本実施形態における高耐圧半導体素子23Aの耐圧を、第1の実施形態における高耐圧半導体素子23の耐圧と同程度としたとき、本実施形態におけるドリフト領域2の濃度を、第1の実施形態におけるドリフト領域2の濃度よりも濃くできるため、半導体装置のオン抵抗を小さくできる。
【0117】
加えて、第1の実施形態では、第2頂上半導体層9b下のドリフト領域2が主に空乏化されるのに対して、本実施形態では、第2内部半導体層16b周囲のドリフト領域2が主に空乏化されるので、第1の実施形態に比べて、ドリフト領域2のうち空乏化される領域を拡げて、TAP電極14に出力される電圧を、より容易にピンチオフすることができる。
【0118】
なお、本実施形態における高耐圧半導体素子23Aは、一般的な半導体プロセスにより、第1の実施形態における高耐圧半導体素子23に比べて、製造コストを増大させずに製造することができる。
【0119】
また、本実施形態では、図4に示すように、第1内部半導体層16a及び第2内部半導体層16bの双方を備えた高耐圧半導体素子23Aを具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1内部半導体層16aのみを備えた高耐圧半導体素子でもよい。
【0120】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を構成するスイッチング素子21B部分の斜視図である。なお、図5において、前述の第1の実施形態における構成要素と同一の構成要素には、第1の実施形態における図1に示す符号と同一の符号を付すことにより、本実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点については適宜省略して説明する。
【0121】
本実施形態と第1の実施形態との相違点は、第1ドレイン領域に加えてコレクタ領域(図5:17参照)を設けて、スイッチング素子をIGBT化した点である。
【0122】
詳細には、第1に、第1の実施形態では、ドリフト領域2の表面に、図1に示すように、第1ドレイン領域7が形成されている。これに対して、本実施形態では、ドリフト領域2の表面に、図5に示すように、P型コレクタ領域17及び該コレクタ領域17と隣接するN+型第1ドレイン領域18が形成されている。
【0123】
第2に、第1の実施形態では、ベース領域3及びソース領域4と電気的に接続するソース電極11が設けられている。これに対して、本実施形態では、ベース領域3及びソース領域4と電気的に接続するエミッタ/ソース電極19が設けられている。
【0124】
第3に、第1の実施形態では、第1ドレイン領域7と電気的に接続するドレイン電極13が設けられている。これに対して、本実施形態では、コレクタ領域17及び第1ドレイン領域18と電気的に接続するコレクタ/ドレイン電極20が設けられている。
【0125】
スイッチング素子21Bにおいて、コレクタ/ドレイン電極20とエミッタ/ソース電極19間を正バイアスしてゲート電極12に正電圧を印加すると、第1ドレイン領域18からソース領域4を経てエミッタ/ソース電極19へ電流が流れ始める(MOSFET動作)。そして、コレクタ領域17下のドリフト領域2の電位がコレクタ領域17の電位に比べて約0.6Vだけ下がると、コレクタ領域17からドリフト領域2へホールが注入されて、MOSFET動作からIGBT動作に切り替わる。これにより、半導体装置のオン抵抗をより小さくできる。
【0126】
また、ターンオフ時に電子を第1ドレイン領域18から引き抜くことができるため、スイッチングスピードを速くできる。
【0127】
なお、本実施形態におけるスイッチング素子21Bは、一般的な半導体プロセスにより、第1の実施形態におけるスイッチング素子21に比べて、製造コストを増大させずに製造することができる。
【0128】
また、本実施形態では、第1ドレイン領域18に加えてコレクタ領域17を設けた構成を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1ドレイン領域の代わりにコレクタ領域のみを設けた構成でもよい。
【0129】
なお、第1〜第3の実施形態では、半導体装置と、半導体集積回路とが、個別の半導体基板に形成されている場合を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、両者が共通の半導体基板に形成されていてもよい。
【0130】
また、第1〜第3の実施形態では、電流が半導体基板1に対して横方向に流れる横型半導体装置を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電流が半導体基板に対して縦方向に流れる縦型半導体装置でもよい。
【0131】
また、第1,第3の実施形態では、ドリフト領域2の表面に形成された第1,第2頂上半導体層9a,9bを備えた半導体装置を具体例に挙げて説明する一方、第2の実施形態では、ドリフト領域2中に形成された第1,第2内部半導体層16a,16bを備えた半導体装置を具体例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、頂上半導体層及び内部半導体層を備えていない半導体装置においても、本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、第1ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスすることがあっても、半導体集積回路においてラッチアップが発生することを防止できるため、第1ドレイン電極をソース電極に対して負バイアスできるので、半導体装置及び該半導体装置を用いたエネルギー伝達装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成について示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置、及び半導体集積回路の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を用いたスイッチング電源装置の回路図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を構成するスイッチング素子及びJFET素子部分の構成について示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を構成するスイッチング素子部分の構成について示す斜視図である。
【図6】従来の半導体装置の構成について示す断面図である。
【図7】TAP電極のピンチオフ特性を表すグラフである。
【図8】従来の半導体装置を用いたスイッチング電源装置の回路図である。
【図9】従来の半導体装置、及び半導体集積回路の構成について示す断面図である。
【符号の説明】
【0134】
1 第1の半導体基板
2 ドリフト領域
3 ベース領域
4 ソース領域
5 ベースコンタクト領域
6 ゲート絶縁膜
7 第1ドレイン領域
8 第2ドレイン領域
9a 第1頂上半導体層
9b 第2頂上半導体層
10a 第1フィールド絶縁膜
10b 第2フィールド絶縁膜
11 ソース電極
12 ゲート電極
13 第1ドレイン電極(ドレイン電極)
14 第2ドレイン電極(TAP電極)
15 層間膜
16a 第1内部半導体層
16b 第2内部半導体層
17 コレクタ領域
18 第1ドレイン領域
19 エミッタ/ソース電極
20 コレクタ/ドレイン電極
21,21A,21B スイッチング素子
22,22A JFET素子
23,23A 高耐圧半導体素子
24 半導体装置
25 第2の半導体基板
26 逆電流防止層
27 ウェル層
28 カソードコンタクト領域
29 アノード電極
30 カソード電極
31 ドリフト領域
32 ベース領域
33 ソース領域
34 ゲート絶縁膜
35 ドレイン領域
36 ソース電極
37 ゲート電極
38 ドレイン電極
39 フィールド絶縁膜
40 層間膜
41 逆電流防止ダイオード
42 第2トランジスタ
43 抵抗
44 制御回路
45 第1トランジスタ
46 第1抵抗
47 第2抵抗
48 半導体集積回路
49 Vbias電源端子
50 ダイオードブリッジ
51 フィルタコンデンサ
52 直流電圧源
53 一次巻線
54 第1二次巻線
55 ダイオード
56 フィルタコンデンサ
57 第2二次巻線
58 ダイオード
59 フィルタコンデンサ
60 変圧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子とJFET素子とを含む高耐圧半導体素子を備えた半導体装置であって、
前記高耐圧半導体素子は、
第1の半導体基板の表面に形成された第1導電型のドリフト領域と、
前記第1の半導体基板の表面に前記ドリフト領域と隣接して形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の表面に前記ドリフト領域と離間して形成された第1導電型のソース領域と、
前記ソース領域と前記ドリフト領域との間の前記ベース領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ドリフト領域の表面に前記ベース領域と離間して形成された領域と、
前記ドリフト領域の表面に前記領域と離間して形成された第1導電型の第2ドレイン領域と、
前記第1の半導体基板上に形成され、前記ベース領域及び前記ソース領域と電気的に接続するソース電極と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記第1の半導体基板上に形成され、前記領域と電気的に接続する電極と、
前記第1の半導体基板上に形成され、前記第2ドレイン領域と電気的に接続する第2ドレイン電極とを備え、
前記第2ドレイン電極は、第2の半導体基板の表面に形成された第2導電型の逆電流防止層と電気的に接続し、
前記逆電流防止層は、前記第2の半導体基板中に形成された第1導電型のウェル層で覆われていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記領域は、第1導電型の第1ドレイン領域であり、
前記電極は、第1ドレイン電極であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板とは個別に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の半導体基板と前記第2の半導体基板とは共通に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1の半導体基板の導電型は、第2導電型であり、
前記高耐圧半導体素子は、
前記ベース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記ドリフト領域の表面に前記第1ドレイン領域と離間して形成され、前記ベース領域と電気的に接続する第2導電型の第1頂上半導体層をさらに備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第1の半導体基板の導電型は、第2導電型であり、
前記高耐圧半導体素子は、
前記ベース領域と前記第1ドレイン領域との間の前記ドリフト領域中に前記第1ドレイン領域と離間して形成され、前記ベース領域と電気的に接続する第2導電型の第1内部半導体層をさらに備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記領域は、第2導電型のコレクタ領域であり、
前記電極は、コレクタ電極であり、
前記コレクタ電極は、前記コレクタ領域と電気的に接続していることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記領域は、第2導電型のコレクタ領域と、該コレクタ領域と隣接する第1導電型の第1ドレイン領域とを含み、
前記電極は、コレクタ/ドレイン電極であり、
前記コレクタ/ドレイン電極は、前記コレクタ領域及び前記第1ドレイン領域と電気的に接続していることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記逆電流防止層及び前記ウェル層を含む逆電流防止ダイオードと、主電流を繰り返し開閉する前記半導体装置の開閉を制御する制御回路とを備えた半導体集積回路と、
直流電圧源と、
変圧器とを備え、
前記変圧器は、
前記半導体装置及び前記直流電圧源と直列に接続される一次巻線と、
負荷と接続される第1二次巻線とを含み、
前記変圧器の前記第1二次巻線から前記負荷へ電力が供給されるように構成され、
前記半導体装置の前記第2ドレイン電極は、前記半導体集積回路の前記逆電流防止層と電気的に接続していることを特徴とするエネルギー伝達装置。
【請求項10】
請求項9に記載のエネルギー伝達装置において、
前記変圧器は、前記制御回路に接続される第2二次巻線をさらに含み、
前記変圧器の前記第2二次巻線から前記制御回路へ電力が供給されるように構成されていることを特徴とするエネルギー伝達装置。
【請求項11】
請求項9に記載のエネルギー伝達装置において、
前記逆電流防止ダイオードは、
前記ウェル層の表面に前記逆電流防止層と離間して形成された第1導電型のカソードコンタクト領域と、
前記第2の半導体基板上に形成され、前記逆電流防止層と電気的に接続するアノード電極と、
前記第2の半導体基板上に形成され、前記カソードコンタクト領域と電気的に接続するカソード電極とをさらに含み、
前記アノード電極は、前記半導体装置の前記第2ドレイン電極と接続していることを特徴とするエネルギー伝達装置。
【請求項12】
請求項9に記載のエネルギー伝達装置において、
前記半導体集積回路は、
第1導電型の第1トランジスタをさらに備え、
前記第1トランジスタは、第1抵抗及び前記逆電流防止ダイオードを介して、前記半導体装置の前記第2ドレイン電極と接続され、
前記第1トランジスタは、第2抵抗を介してグランド電位と接続され、
前記第1トランジスタのゲート電位は、前記スイッチング素子のゲート電位と同期されていることを特徴とするエネルギー伝達装置。
【請求項13】
請求項9に記載のエネルギー伝達装置において、
前記半導体集積回路は、
第1導電型の第2トランジスタをさらに備え、
抵抗及び前記第2トランジスタを介して、前記半導体装置の前記第2ドレイン電極と前記制御回路とが接続され、
前記第2トランジスタは、前記制御回路により、前記制御回路に電流を供給するバイアス電源端子の電圧が所定電圧以下のとき、オンするように制御されていることを特徴とするエネルギー伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−259972(P2009−259972A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105998(P2008−105998)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】