説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】アンテナスイッチで発生する高調波歪みをできるだけ低減できる技術を提供する。
【解決手段】界面キャリア層SCLを構成する電子の移動抑制手段として、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELを設けて電極層ELと界面キャリア層SCLとの間に容量素子Cを形成する手段をとっている。そして、この容量素子Cの上部電極となる電極層ELに正電位を印加することにより、電極層ELに相対する界面キャリア層SCLの電子を固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、無線通信機器に搭載されるアンテナスイッチを含む半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008−227084号公報(特許文献1)には、シリコン酸化膜の界面における未結合手が正電荷として作用するため、シリコン基板における界面に接する領域に電子が集まり、この電子が界面キャリアとなって界面キャリア層が形成されることが記載されている。そして、半導体装置の高周波回路に対してRF信号を入力すると、RF信号が導通する配線と接地電位が印加される配線との間の電圧変化によって界面キャリアが移動し、シリコン基板内で電流が発生し、この発生した電流に基づいて、RF信号の高次高調波が発生することが記載されている。この課題に対し、特許文献1に記載された技術では、シリコン基板における界面に接する領域にホウ素ドーピング層を形成するとしている。これにより、このホウ素ドーピング層がホール源となり、界面の近傍に集まった電子を電荷補償し、導通に寄与する界面キャリアを減少させることができる結果、高次高調波の発生を抑制できるとしている。
【0003】
特開2008−71796号公報(特許文献2)には、第1のスルーMOSFET領域、第2のスルーMOSFET領域、第1のシャントMOSFET領域および第2のシャントMOSFET領域のシリコン酸化層を介した背面の領域のみシリコン基板を除去することにより、容量結合の対象となる導電性を有するシリコン基板が存在しなくなるようにすることが記載されている。これにより、これらのMOSFETを高周波で駆動した場合であっても、挿入損失の増加や、アイソレーション(遮断特性)が劣化することを抑制できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−227084号公報
【特許文献2】特開2008−71796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の携帯電話機では音声通話機能だけでなく様々なアプリケーション機能が追加されている。すなわち、携帯電話機を用いた配信音楽の視聴、動画伝送、データ転送などの音声通話機能以外の機能が携帯電話機に追加されている。このような携帯電話機の多機能化に伴い、世界各国での周波数帯(GSM(Global System for Mobile communications)帯、PCS(Personal Communication Services)帯など)や変調方式(GSM、EDGE(Enhanced Data rates for GSM Evolution)、WCDMA(Wideband Code Division Multiplex Access)など)が多数存在することになっている。したがって、携帯電話機では、複数の異なる周波数帯や異なる変調方式に対応した送受信信号に対応する必要がある。このことから、携帯電話機では、これらの送受信信号の送信と受信とを1つのアンテナで共用し、アンテナスイッチによってアンテナとの接続を切り替えることが行なわれている。
【0006】
例えば、携帯電話機においては、送信信号の電力が1Wを超えるなど大電力になることが普通であり、アンテナスイッチには、大電力の送信信号の高品質性を確保し、かつ、他の周波数帯の通信に悪影響を与える妨害波(高次高調波)の発生を低減する性能が要求される。このため、アンテナスイッチを構成するスイッチング素子として電界効果トランジスタを使用する場合、この電界効果トランジスタには、高耐圧性だけでなく、高次高調波歪を低減できる性能が要求される。
【0007】
このことから、アンテナスイッチを構成する電界効果トランジスタは、低損失や低高調波歪みを実現するため、寄生容量が少なく、線形性に優れたGaAs基板やサファイア基板上に形成される電界効果トランジスタ(例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor))が使用されている。しかし、高周波特性に優れている化合物半導体基板は、高価であり、アンテナスイッチのコスト低下の観点から望ましいとはいえない。アンテナスイッチのコスト低下を実現するには、安価なシリコン基板(SOI(Silicon On Insulator)基板)上に形成された電界効果トランジスタを使用することが効果的である。しかし、安価なシリコン基板は、高価な化合物半導体基板に比べて寄生容量が大きく、化合物半導体基板上に形成された電界効果トランジスタよりも高調波歪みが大きくなる問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、アンテナスイッチで発生する高調波歪みをできるだけ低減できる技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
代表的な実施の形態による半導体装置は、アンテナスイッチを形成した半導体チップを備える。このとき、前記半導体チップは、(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層と、前記シリコン層を第1活性領域と第2活性領域に分離する素子分離領域とを含むSOI基板とを有する。そして、前記半導体チップは、(b)前記SOI基板の前記第1活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第1電界効果トランジスタと、(c)前記SOI基板の前記第2活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第2電界効果トランジスタとを有する。さらに、前記半導体チップは、(d)前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタとの間の前記素子分離領域上に形成された電極層を有する。ここで、前記電極層には、正電位が印加されるものである。
【0012】
また、代表的な実施の形態による半導体装置は、アンテナスイッチを形成した半導体チップを備える。このとき、前記半導体チップは、(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層と、前記シリコン層を第1活性領域、第2活性領域、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間に設けられた電極用半導体領域とに分離する素子分離領域とを含むSOI基板とを有する。そして、前記半導体チップは、(b)前記SOI基板の前記第1活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第1電界効果トランジスタと、(c)前記SOI基板の前記第2活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第2電界効果トランジスタとを有する。ここで、前記電極用半導体領域には、正電位が印加されるものである。
【0013】
また、代表的な実施の形態による半導体装置は、アンテナスイッチを形成した半導体チップを備える。このとき、前記半導体チップは、(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層と、前記シリコン層を区画する素子分離領域とを含むSOI基板とを有する。そして、前記半導体チップは、(b)前記SOI基板の前記シリコン層に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第1電界効果トランジスタと、(c)前記SOI基板の前記素子分離領域上に形成された電極層とを有する。さらに、前記半導体チップは、(d)前記第1電界効果トランジスタおよび前記電極層を覆う前記SOI基板上に形成された層間絶縁膜と、(e)前記層間絶縁膜上に形成された配線であって、平面視において、前記配線と前記第1電界効果トランジスタの間に前記電極層が配置されるように形成された前記配線とを有する。ここで、前記電極層には、正電位が印加されるものである。
【0014】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層からなるSOI基板を用意する工程と、(b)前記(a)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層を第1活性領域と第2活性領域に分離する素子分離領域を形成する工程とを備える。次に、(c)前記(b)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、(d)前記(c)工程後、前記シリコン層上に形成された前記ゲート絶縁膜上および前記素子分離領域上に第1導体膜を形成する工程とを備える。そして、(e)前記(d)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記第1活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第1電界効果トランジスタの第1ゲート電極を形成し、前記第2活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第2電界効果トランジスタの第2ゲート電極を形成するとともに、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間の前記素子分離領域上に電極層を形成する工程とを備える。さらに、(f)前記(e)工程後、前記第1活性領域内に前記第1電界効果トランジスタの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記第2活性領域内に前記第2電界効果トランジスタの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成する工程とを備えるものである。
【0015】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層からなるSOI基板を用意する工程と、(b)前記(a)工程後、前記シリコン層を第1活性領域、第2活性領域、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間に設けられた電極用半導体領域に分離する素子分離領域を形成する工程とを備える。次に、(c)前記(b)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、(d)前記(c)工程後、前記シリコン層上に形成された前記ゲート絶縁膜上および前記素子分離領域上に第1導体膜を形成する工程とを備える。そして、(e)前記(d)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記第1活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第1電界効果トランジスタの第1ゲート電極を形成し、前記第2活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第2電界効果トランジスタの第2ゲート電極を形成する工程とを備える。さらに、(f)前記(e)工程後、前記第1活性領域内に第1導電型不純物を導入して、前記第1電界効果トランジスタの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記第2活性領域内に前記第1導電型不純物を導入して、前記第2電界効果トランジスタの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成するとともに、前記電極用半導体領域に前記第1導電型不純物とは逆極性の第2導電型不純物を導入する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
アンテナスイッチで発生する高調波歪みを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるRFモジュールの回路ブロック構成を示す図である。
【図3】実施の形態1におけるRFモジュールの実装構成を示す斜視図である。
【図4】アンテナスイッチの回路構成を示す図である。
【図5】比較例における半導体チップのレイアウト構成を示す平面図である。
【図6】図5のA−A線で切断した断面図である。
【図7】図6の一部領域を拡大した図である。
【図8】実施の形態1における半導体チップのレイアウト構成を示す平面図である。
【図9】図8のA−A線で切断した断面図である。
【図10】実施の形態1における変形例を示す断面図である。
【図11】実施の形態1における変形例を示す断面図である。
【図12】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図32】実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図33】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図34】図33に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図35】図34に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図36】図35に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図37】図36に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図38】図37に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図39】図38に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図40】図39に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図41】図40に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図42】図41に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図43】図42に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図44】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図45】図44に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図46】図45に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図47】図46に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図48】図47に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図49】図48に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図50】図49に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図51】図50に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図52】図51に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図53】図52に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図54】実施の形態3における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図55】実施の形態3の変形例における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図56】実施の形態4におけるRFモジュールの回路ブロック構成を示す図である。
【図57】実施の形態4における半導体チップのレイアウト構成を示す図である。
【図58】実施の形態5における半導体チップのレイアウト構成を示す図である。
【図59】図58のA−A線で切断した断面図である。
【図60】実施の形態5の変形例における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図61】SOS基板に本発明を適用する場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
<携帯電話機の構成および動作>
図1は、携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。図1に示すように、携帯電話機1は、アプリケーションプロセッサ2、メモリ3、ベースバンド部4、RFIC5、電力増幅器6、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ7、アンテナスイッチ8およびアンテナ9を有している。
【0025】
アプリケーションプロセッサ2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)から構成され、携帯電話機1のアプリケーション機能を実現する機能を有している。具体的には、メモリ3から命令を読みだして解読し、解読した結果に基づいて各種の演算や制御することによりアプリケーション機能を実現している。メモリ3は、データを記憶する機能を有しており、例えば、アプリケーションプロセッサ2を動作させるプログラムや、アプリケーションプロセッサ2での処理データを記憶するように構成されている。また、メモリ3は、アプリケーションプロセッサ2だけでなく、ベースバンド部4ともアクセスできるようになっており、ベースバンド部4で処理されるデータの記憶にも使用できるようになっている。
【0026】
ベースバンド部4は、中央制御部であるCPUを内蔵し、送信時には、操作部を介したユーザ(通話者)からの音声信号(アナログ信号)をデジタル処理してベースバンド信号を生成できるように構成されている。一方、受信時には、デジタル信号であるベースバンド信号から音声信号を生成できるように構成されている。
【0027】
RFIC5は、送信時にはベースバンド信号を変調して無線周波数の信号を生成し、受信時には、受信信号を復調してベースバンド信号を生成することができるように構成されている。電力増幅器6は、微弱な入力信号と相似な大電力の信号を電源から供給される電力で新たに生成して出力する半導体装置である。SAWフィルタ7は、受信信号から所定の周波数帯の信号だけを通過させるように構成されている。
【0028】
アンテナスイッチ8は、携帯電話機1に入力される受信信号と携帯電話機1から出力される送信信号とを分離するためのものであり、アンテナ9は、電波を送受信するためのものである。
【0029】
携帯電話機1は、上記のように構成されており、以下に、その動作について簡単に説明する。まず、信号を送信する場合について説明する。ベースバンド部4で音声信号などのアナログ信号をデジタル処理することにより生成されたベースバンド信号は、RFIC5に入力する。RFIC5では、入力したベースバンド信号を、変調信号源およびミキサによって、無線周波数(RF(Radio Frequency)周波数)の信号に変換する。無線周波数に変換された信号は、RFIC5から電力増幅器(RFモジュール)6に出力される。電力増幅器6に入力した無線周波数の信号は、電力増幅器6で増幅された後、アンテナスイッチ8を介してアンテナ9より送信される。
【0030】
次に、信号を受信する場合について説明する。アンテナ9により受信された無線周波数の信号(受信信号)は、SAWフィルタ7を通過した後、RFIC5に入力する。RFIC5では、入力した受信信号を増幅した後、変調信号源およびミキサによって、周波数変換を行なう。そして、周波数変換された信号の検波が行なわれ、ベースバンド信号が抽出される。その後、このベースバンド信号は、RFIC5からベースバンド部4に出力される。このベースバンド信号がベースバンド部4で処理され、音声信号が出力される。
【0031】
<RFモジュールの構成>
上述したように、携帯電話機1(デジタル携帯電話機)から信号を送信する際、電力増幅器6によって信号は増幅された後、アンテナスイッチ8を介してアンテナ9から出力される。この電力増幅器6とアンテナスイッチ8とは例えば、1つのRFモジュール(フロントエンドモジュール)RFMとして製品化されている。以下では、このRFモジュールRFMの回路ブロック構成について説明する。図2は、本実施の形態1におけるRFモジュールRFMの回路ブロック構成を示す図である。
【0032】
図2において、本実施の形態1におけるRFモジュールRFMは、LowBand(LB)用の増幅回路PA(LB)、HighBand(HB)用の増幅回路PA(HB)、方向性結合器PC(LB)、方向性結合器PC(HB)、LB用のローパスフィルタLPF(LB)、HB用のローパスフィルタLPF(HB)、制御回路IC1、アンテナスイッチSPDT1、アンテナスイッチSPDT2、制御回路IC2およびダイプレクサDPXを有している。
【0033】
増幅回路PA(LB)は、入力端子TX1に接続されており、入力端子TX1に入力された入力信号を増幅するように構成されている。すなわち、増幅回路PA(LB)は、GSM低周波帯域(824MHz〜915MHz)の入力信号を増幅するアンプであり、例えば、2つの増幅段から構成されている。増幅回路PA(LB)では、入力端子TX1から出力されたGSM低周波帯域の入力信号がまず、初段の増幅段で増幅される。そして、初段の増幅段で増幅された入力信号は、終段の増幅段で増幅されるようになっている。この増幅回路PA(LB)によって、微弱な入力信号と相似の大電力の増幅信号を得ることができる。
【0034】
増幅回路PA(HB)は、入力端子TX2に接続されており、入力端子TX2に入力された入力信号を増幅するように構成されている。すなわち、増幅回路PA(HB)は、GSM高周波帯域(1710MHz〜1785MHzをDCS、1850MHz〜1910MHzをPCSともいう)の入力信号を増幅するアンプであり、例えば、2つの増幅段から構成されている。増幅回路PA(HB)では、入力端子TX2から出力されたGSM高周波帯域(DCS/PCS)の入力信号がまず、初段の増幅段で増幅される。そして、初段の増幅段で増幅された入力信号は、終段の増幅段で増幅されるようになっている。この増幅回路PA(HB)によって、微弱な入力信号と相似の大電力の増幅信号を得ることができる。
【0035】
以上のように本実施の形態1におけるRFモジュールRFMは、GSM低周波帯域(GSM)の信号とGSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号という異なる周波数帯域の信号を増幅できるように構成されている。そして、RFモジュールRFMには、GSM低周波帯域(GSM)の信号を増幅する増幅回路PA(LB)と、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号を増幅する増幅回路PA(HB)とを制御する制御回路IC1を有している。制御回路IC1は、RFモジュールRFMに入力される電源(電源電圧)と制御信号(パワー制御電圧)にしたがって、それぞれ、増幅回路PA(LB)と増幅回路PA(HB)にバイアス電圧を印加して増幅度を制御するように構成されている。
【0036】
このように、制御回路IC1は、増幅回路PA(LB)と増幅回路PA(HB)との制御を行なうが、増幅回路PA(LB)の増幅度や増幅回路PA(HB)の増幅度が一定になるようにフィードバック制御を行なっている。このフィードバック制御の構成について説明する。
【0037】
フィードバック制御を実現するために、GSM低周波帯(GSM)の信号を増幅する増幅回路PA(LB)の出力には、方向性結合器(カプラ)PC(LB)が設けられている。方向性結合器PC(LB)は、増幅回路PA(LB)で増幅された増幅信号の電力を検出できるように構成されている。具体的に方向性結合器PC(LB)は、主線路を構成する配線と副線路を構成する配線から形成されており、主線路を進行する増幅信号の電力を電磁界結合によって副線路で検出するものである。
【0038】
この方向性結合器PC(LB)には、検波回路(図示せず)が接続されている。検波回路は、方向性結合器PC(LB)により検出された電力を電圧あるいは電流に変換して制御回路IC1に検出信号を出力するように構成されている。このように、フィードバック制御は、方向性結合器PC(LB)と検波回路により実現されている。制御回路IC1では、検波回路から入力した検出信号と制御信号(パワー制御電圧)の差分を算出し、算出した差分がなくなるように増幅回路PA(LB)に印加するバイアス電圧を調整するように構成されている。このようにして、制御回路IC1は、増幅回路PA(LB)の増幅度が一定になるように制御している。同様に、GSM高周波帯(DCS/PCS)の信号を増幅する増幅回路PA(HB)の出力には、方向性結合器(カプラ)PC(HB)が設けられ、この方向性結合器PC(HB)に検波回路(図示せず)が接続されている。検波回路で検出された検出信号は、制御回路IC1に入力するようになっている。
【0039】
次に、ローパスフィルタLPF(LB)は、方向性結合器PC(LB)を介して増幅回路PA(LB)に接続されており、高調波ノイズを除去する機能を有している。例えば、増幅回路PA(LB)で入力信号を増幅する場合、GSM低周波帯域(GSM)の信号が増幅されるが、このとき、GSM低周波帯域(GSM)の整数倍の高調波(例えば、2次高調波や3次高調波)も生成される。この高調波は、GSM低周波帯域(GSM)の信号とともに増幅回路PA(LB)から出力されることになるが、GSM低周波帯域(GSM)の増幅信号とは周波数の異なるノイズ成分となる。したがって、増幅されたGSM低周波帯域(GSM)の増幅信号から高調波成分を除去する必要がある。この機能を有するのが、ローパスフィルタLPF(LB)である。このローパスフィルタLPF(LB)は、複数の周波数帯の信号から特定範囲の周波数帯の信号を通過させる選別回路として機能するものである。すなわち、ローパスフィルタLPF(LB)は、GSM低周波帯域(GSM)の増幅信号を通過させる一方、GSM低周波帯域(GSM)の増幅信号よりも周波数の高い高調波を減衰させるように構成されている。このローパスフィルタLPF(LB)により、GSM低周波帯域(GSM)の増幅信号に含まれる高調波ノイズを低減することができる。
【0040】
続いて、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号を生成する増幅回路PA(HB)の出力にも、方向性結合器PC(HB)を介してローパスフィルタLPF(HB)が接続されている。このローパスフィルタLPF(HB)も、高調波ノイズを除去する機能を有している。例えば、増幅回路PA(HB)で入力信号を増幅する場合、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号が増幅されるが、このとき、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の整数倍の高調波も生成される。この高調波は、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号とともに増幅回路PA(HB)から出力されることになるが、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号とは周波数の異なるノイズ成分となる。したがって、増幅されたGSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号から高調波成分を除去する必要がある。この機能を有するのが、ローパスフィルタLPF(HB)である。このローパスフィルタLPF(HB)は、複数の周波数帯の信号から特定範囲の周波数帯の信号を通過させる選別回路として機能するものである。すなわち、ローパスフィルタLPF(HB)は、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号を通過させる一方、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号よりも周波数の高い高調波を減衰させるように構成されている。このローパスフィルタLPF(HB)により、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号に含まれる高調波ノイズを低減することができる。
【0041】
次に、アンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2は、アンテナANTに接続する回線を切り替えるように構成されている。具体的に、アンテナスイッチSPDT1は、ローパスフィルタLPF(LB)の出力(送信端子TX(LB))とアンテナ端子ANT1との接続、および、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1との接続を切り替えるように構成されている。同様に、アンテナスイッチSPDT2は、ローパスフィルタLPF(HB)の出力(送信端子TX(HB))とアンテナ端子ANT2との接続、および、受信端子RX(HB)とアンテナ端子ANT2との接続を切り替えるように構成されている。
【0042】
つまり、ローパスフィルタLPF(LB)から出力されるGSM低周波帯域(GSM)の増幅信号をアンテナ端子ANT1から出力する場合には、アンテナスイッチSPDT1によって、ローパスフィルタLPF(LB)の出力をアンテナ端子ANT1に接続するようになっている。一方、ローパスフィルタLPF(HB)から出力されるGSM高周波帯域(DCS/PCS)の増幅信号をアンテナ端子ANT2から出力する場合には、アンテナスイッチSPDT2によって、ローパスフィルタLPF(HB)の出力をアンテナ端子ANT2に接続するようになっている。このようにアンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2は、二系統の出力(送信状態)を切り替えるように構成されているとともに、さらに、受信状態にも切り替えることができるように構成されている。例えば、受信状態では、アンテナで受信した受信信号を受信回路へ出力するようにアンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2を動作させるようになっている。例えば、複数の受信信号を出力する受信端子RX(LB)や受信端子RX(HB)が設けられており、アンテナで受信された受信信号は、アンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2による切り替えにより対応する受信回路へ出力されるように構成されている。
【0043】
アンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2による切り替え制御は、制御回路IC2からの制御信号に基づいて行なわれる。例えば、増幅された増幅信号(RF信号(低周波帯域))(GSM))は、アンテナスイッチSPDT1のオン/オフによってアンテナANT1への出力/非出力が制御されている。また、アンテナからの受信信号も、アンテナスイッチSPDT1のオン/オフによって受信回路への出力/非出力が制御される。同様に、増幅された増幅信号(RF信号(高周波帯域)(DCS/PCS))も、アンテナスイッチSPDT2のオン/オフによってアンテナANT2への出力/非出力が制御されている。
【0044】
制御回路IC2は、例えば、発振器、ダウンコンバータ、リセット回路、デコーダ、レベルシフト回路、充電容量切り替え回路などから構成されており、これらの構成要素は、CMOS回路により実現されている。すなわち、制御回路IC2は、CMOS回路から構成されている。
【0045】
続いて、アンテナスイッチSPDT1のアンテナ端子ANT1と、アンテナスイッチSPDT2のアンテナ端子ANT2はダイプレクサDPXと接続されており、このダイプレクサDPXはアンテナ端子ANT(OUT)と接続されている。ダイプレクサDPXは、GSM低周波帯域(GSM)の信号と、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号とを分離する機能を有している。すなわち、ダイプレクサDPXは、GSM低周波帯域(GSM)の信号を通過させるローパスフィルタと、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号を通過させるバンドパスフィルタから構成されている。具体的には、アンテナ端子ANT1とアンテナ端子ANT(OUT)の間にローパスフィルタが接続されており、アンテナ端子ANT2とアンテナ端子ANT(OUT)との間にバンドパスフィルタが接続されている。このように構成されているダイプレクサDPXによって、GSM低周波帯域(GSM)の信号と、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号が分離されることになる。つまり、GSM低周波帯域(GSM)の送信信号は、アンテナスイッチSPDT1のアンテナ端子ANT1からダイプレクサDPXを介してアンテナ端子ANT(OUT)から出力される一方、GSM低周波帯域(GSM)の受信信号は、アンテナ端子ANT(OUT)からダイプレクサDPXを介してアンテナスイッチSPDT1の受信端子RX(LB)に出力される。これに対し、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の送信信号は、アンテナスイッチSPDT2のアンテナ端子ANT2からダイプレクサDPXを介してアンテナ端子ANT(OUT)から出力される一方、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の受信信号は、アンテナ端子ANT(OUT)からダイプレクサDPXを介してアンテナスイッチSPDT2の受信端子RX(HB)に出力される。
【0046】
<RFモジュールの動作>
本実施の形態1におけるRFモジュールRFMは上記のように構成されており、以下に、その動作について説明する。図2に示すように、本実施の形態1では、GSM低周波帯域(GSM)の信号およびGSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号を増幅することができるように構成されているが、動作は同様なので、GSM低周波帯域(GSM)の信号を増幅する動作について説明する。なお、通信方式は、GSM方式について説明しているが、その他の通信方式であってもよい。
【0047】
図2に示すように、RFモジュールRFMに微弱な入力信号(RF入力)が入力されると、まず、微弱な入力信号は、増幅回路PA(LB)に入力する。続いて、増幅回路PA(LB)に入力した入力信号は、増幅回路PA(LB)を構成する2つの増幅段によって電力が増幅される。このとき、増幅回路PA(LB)による電力の増幅は、制御回路IC1によって制御される。具体的には、制御回路IC1に入力する電源(電源電圧)と制御信号(パワー制御電圧)に基づいて、制御回路IC1は、増幅回路PA(LB)にバイアス電圧を印加する。すると、増幅回路PA(LB)は、制御回路IC1からのバイアス電圧に基づいて入力信号を増幅して増幅信号を出力する。このようにして、増幅回路PA(LB)で増幅された増幅信号が出力される。
【0048】
増幅回路PA(LB)から出力される増幅信号は、一定電力であることが望ましい。しかし、外部からの影響により実際に出力される増幅信号の電力が所望の電力になっているとは限らない。そこで、増幅回路PA(LB)を制御する制御回路IC1にフィードバックをかけている。このフィードバック回路の動作について説明する。
【0049】
増幅回路PA(LB)で増幅された増幅信号の電力は、方向性結合器(カプラ)PC(LB)によって検出される。方向性結合器PC(LB)で検出された電力は、方向性結合器PC(LB)に接続されている検波回路(図示ぜす)で電圧に変換される。検波回路で変換された電圧からなる検出信号は、制御回路IC1に入力する。一方、制御回路IC1には、RFモジュールRFMの外部から入力した制御信号(パワー制御電圧)も入力している。そして、制御回路IC1は、検波回路で変換された検出信号と、RFモジュールRFMの外部から入力した制御信号との差分を算出する。次に、制御回路IC1は、算出された差分がなくなるように制御回路IC1から増幅回路PA(LB)へ印加するバイアス電圧を制御する。このようにして、増幅回路PA(LB)で増幅された増幅信号の電力が一定となる。この動作がフィードバック回路の動作である。
【0050】
続いて、増幅回路PA(LB)で増幅された増幅信号は、ローパスフィルタLPF(LB)に向って出力される。続いて、ローパスフィルタLPF(LB)に入力した増幅信号は、ローパスフィルタLPF(LB)で増幅信号に含まれる高次高調波が除去される。その後、ローパスフィルタLPF(LB)を通過した増幅信号は、アンテナスイッチSPDT1に入力する。このとき、制御回路IC2からのスイッチ切り替え制御信号によってアンテナスイッチSPDT1が制御される。いまの場合には、ローパスフィルタLPF(LB)とアンテナ端子ANT1が電気的に接続するようにアンテナスイッチSPDT1が制御される。これにより、ローパスフィルタLPF(LB)から出力された増幅信号は、アンテナスイッチSPDT1を介してアンテナ端子ANT1に出力され、アンテナ端子ANT1に出力された増幅信号は、ダイプレクサDPXを介してアンテナ端子ANT(OUT)へ出力され、さらに、アンテナ端子ANT(OUT)からアンテナへ送信される。以上のようにして、RFモジュールRFMで増幅された増幅信号をアンテナから送信することができる。
【0051】
次に、アンテナANTで受信した受信信号を取り込む動作について説明する。アンテナで受信された受信信号は、アンテナ端子ANT(OUT)を介してダイプレクサDPXに入力する。いまの場合、受信信号はGSM低周波帯域(GSM)の受信信号であるので、ダイプレクサDPXのバンドパスフィルタでは減衰されるため、アンテナスイッチSPDT2側には出力されない。一方、GSM低周波帯域(GSM)の受信信号は、ダイプレクサDPXのローパスフィルタを通過するため、アンテナスイッチSPDT1側に出力される。その際、制御回路IC2からのスイッチ切り替え制御信号によりアンテナスイッチSPDT1が切り替わる。具体的には、アンテナ端子ANT1とRFモジュールRFMの外部に設けられている受信回路(図示せず)とを電気的に接続するように、アンテナスイッチSPDT1を切り替える。すると、アンテナで受信された受信信号は、ダイプレクサDPXおよびアンテナスイッチSPDT1を介して受信回路に入力する。そして、受信回路内で信号処理される。このようにして、受信信号を受信することができる。
【0052】
<アンテナスイッチの実装構成>
次に、本実施の形態1におけるアンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2の実装構成について説明する。本実施の形態1におけるアンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2は、電力増幅器6とともに1つのRFモジュールRFMを構成している。図3は、本実施の形態1におけるRFモジュールRFMの実装構成を示す斜視図である。図3に示すように、本実施の形態1におけるRFモジュールRFMは、配線基板WB上に、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2および受動部品PCが搭載されている。半導体チップCHP1は、例えば、電力増幅器6を構成するLDMOSFET(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、横方向拡散MOSFET)などが形成された半導体チップである。一方、半導体チップCHP2は、例えば、アンテナスイッチSPDT1やアンテナスイッチSPDT2を構成するMISFETなどが形成された半導体チップである。受動部品PCは、抵抗素子(例えばチップ抵抗)、容量素子(例えばチップコンデンサ)またはインダクタ素子(例えばチップインダクタ)などの受動素子からなり、例えばチップ部品からなる。受動部品PCは、例えば、整合回路などを構成する受動部品である。
【0053】
配線基板WB上に搭載されている半導体チップCHP1は、配線基板WB上に形成されている導体パターンとワイヤで接続されている。さらに、この導体パターンは受動部品PCと接続されている。同様に、配線基板WB上に搭載されている半導体チップCHP2は、配線基板WB上に形成されている導体パターンとワイヤで接続されている。このようにして、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2および受動部品PCが導体パターンを介して電気的に接続されていることになる。
【0054】
<アンテナスイッチの回路構成>
次に、アンテナスイッチの回路構成について説明する。アンテナスイッチSPDT1とアンテナスイッチSPDT2とは同様の構成をしているため、以下では、アンテナスイッチSPDT1を例に挙げて説明する。
【0055】
図4は、アンテナスイッチSPDT1の回路構成を示す図である。図4に示すように、アンテナスイッチSPDT1は、送信端子TX(LB)と、受信端子RX(LB)と、アンテナ端子ANT1とを有している。そして、アンテナスイッチSPDT1は、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1との間にTXスルートランジスタTH(TX_LB)を有し、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1との間にRXスルートランジスタTH(RX_LB)を有している。さらに、アンテナスイッチSPDT1は、送信端子TX(LB)とGND端子GND1の間にTXシャントトランジスタSH(TX_LB)を有し、受信端子RX(LB)とGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタSH(RX_LB)を有している。
【0056】
送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1との間に設けられているTXスルートランジスタTH(TX_LB)は、例えば、直列に接続された5つのMISFET(Metal Insulator semiconductor Field Effect Transistor)Qから構成されている。このとき、各MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、TXスルートランジスタTH(TX_LB)を構成するMISFETQにおいては、送信端子TX側の領域をドレイン領域とし、アンテナ端子ANT1側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VTXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VTXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。このように構成されているTXスルートランジスタTH(TX_LB)では、制御端子VTXに印加する電圧を制御することより、直列に接続されたMISFETQのオン/オフを制御して、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1との間を電気的に接続したり、電気的に遮断するようになっている。つまり、TXスルートランジスタTH(TX_LB)は、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1との電気的な接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能する。
【0057】
続いて、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1との間に設けられているRXスルートランジスタTH(RX_LB)も、例えば、TXスルートランジスタTH(TX_LB)と同様に、直列に接続された5つのMISFETQから構成されている。このとき、各MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、RXスルートランジスタTH(RX_LB)を構成するMISFETQにおいては、アンテナ端子ANT1側の領域をドレイン領域とし、受信端子RX(LB)側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VRXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VRXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。このように構成されているRXスルートランジスタTH(RX_LB)では、制御端子VRXに印加する電圧を制御することより、直列に接続されたMISFETQのオン/オフを制御して、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1との間を電気的に接続したり、電気的に遮断するようになっている。つまり、RXスルートランジスタTH(RX_LB)は、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1との電気的な接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能する。
【0058】
次に、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間に設けられているTXシャントトランジスタSH(TX_LB)は、例えば、直列に接続された5つのMISFETQから構成されている。この場合、各MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)を構成するMISFETQにおいては、送信端子TX(LB)側の領域をドレイン領域とし、GND端子GND1側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VRXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VRXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。
【0059】
ここで、上述したTXスルートランジスタTH(TX_LB)は、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1との間で、送信信号を伝達する送信経路の接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能することから、アンテナスイッチSPDT1として必要な構成要素である。これに対し、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)は送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間の接続/非接続を切り替えるものであり、送信端子TX(LB)とGND端子GND1間の経路は直接送信信号が伝達されないことから、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)を設ける必要があるのか疑問となる。しかし、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)は、アンテナで受信信号を受信する際に重要な機能を有しているのである。
【0060】
以下では、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)の機能について説明する。アンテナから受信信号を受信する場合、アンテナスイッチSPDT1では、RXスルートランジスタTH(RX_LB)をオンしてアンテナ端子ANT1と受信端子RX(LB)とを電気的に接続する。これにより、アンテナで受信された受信信号は、アンテナ端子ANT1から受信端子RX(LB)を介して受信回路に伝達される。このとき、送信経路側には受信信号を伝達させない必要があるので、アンテナ端子ANT1と送信端子TX(LB)との間に設けられているTXスルートランジスタTH(TX_LB)はオフされる。これにより、アンテナからアンテナ端子ANT1に入力された受信信号は、送信端子TX(LB)側には伝達されない。TXスルートランジスタTH(TX_LB)をオフすることにより、アンテナ端子ANT1と送信端子TX(LB)との送信経路は電気的に遮断されるので、理想的には受信信号が送信経路に漏れこむことはないと考えられる。しかし、実際には、TXスルートランジスタTH(TX_LB)を構成するMISFETQにおいて、TXスルートランジスタTH(TX_LB)をオフしているということは、電気的にMISFETQのソース領域とドレイン領域の間にオフ容量が発生しているとみなすことができる。このため、高周波信号である受信信号は、このオフ容量を介して送信端子TX(LB)側に漏れるのである。受信信号の電力は小さいので、効率良くアンテナ端子ANT1から受信端子RX(LB)側に伝達させることが望ましい。すなわち、TXスルートランジスタTH(TX_LB)のオフ容量を介した受信信号の送信端子TX(LB)側への漏れこみを抑制する必要がある。特に、TXスルートランジスタTH(TX_LB)を構成する各MISFETQのゲート幅はオン抵抗を低減する観点から大きくなっている。このようにMISFETQのゲート幅が大きくなっていることは、言い換えれば、オフ容量が大きくなるとも言える。いまの場合、TXスルートランジスタTH(TX_LB)は5つのMISFETQを直列に接続しているので、TXスルートランジスタTH(TX_LB)の合成容量は、1つのMISFETQのオフ容量よりも小さくなるものの、TXスルートランジスタTH(TX_LB)のオフ容量は無視できないくらいに大きくなる。TXスルートランジスタTH(TX_LB)のオフ容量が大きくなるということは、それだけ、高周波信号である受信信号が漏れこみやすくなることを意味している。したがって、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1との間にTXスルートランジスタTH(TX_LB)を設ける構成だけでは、受信信号の漏れこみを充分に抑制することができないのである。
【0061】
そこで、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタSH(TX_LB)を設けているのである。つまり、TXスルートランジスタTH(TX_LB)をオフしている状態でも受信信号が送信端子TX(LB)側に漏れこむが、送信端子TX(LB)側に漏れこんだ受信信号を送信端子TX(LB)で充分に反射させることができれば、送信端子TX(LB)側に漏れこむ受信信号を抑制できるのである。すなわち、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間に設けられているTXシャントトランジスタSH(TX_LB)は、送信端子TX(LB)における受信信号の反射を充分に行なう目的で設けられているのである。
【0062】
送信端子TX(LB)において高周波信号である受信信号を充分に反射させるには、送信端子TX(LB)をGND端子GND1に接地することで実現できる。言い換えれば、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間をできるだけ低インピーダンス状態にすることができれば、送信端子TX(LB)での受信信号の反射を充分に行なうことができるのである。このため、受信時に送信端子TX(LB)側では、TXスルートランジスタTH(TX_LB)をオフするとともに、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)をオンすることにより、送信端子TX(LB)とGND端子GND1とを電気的に接続しているのである。これにより、送信端子TX(LB)側に受信信号が漏れこんできても送信端子TX(LB)で充分に反射させることができるので、送信端子TX(LB)側に漏れこむ受信信号を抑制することできる。
【0063】
TXシャントトランジスタSH(TX_LB)は、例えば、5つのMISFETQから構成されている。ここで、複数のMISFETQを直列に接続しているのは、送信時に送信端子TX(LB)に大電力の送信信号が流れる関係上、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間には大きな電圧振幅が印加されるからである。すなわち、複数のMISFETQを直列に接続することにより、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間に大きな電圧振幅が印加される場合であっても、各MISFETQに印加される電圧振幅を耐圧以下にすることができるようにしたものである。
【0064】
続いて、受信端子RX(LB)とGND端子GND2との間に設けられているRXシャントトランジスタSH(RX_LB)は、例えば、1つのMISFETQから構成されている。この場合、MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、RXシャントトランジスタSH(RX_LB)を構成するMISFETQにおいては、受信端子RX(LB)側の領域をドレイン領域とし、GND端子GND2側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VTXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VTXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。
【0065】
ここで、送信時においてRXスルートランジスタTH(RX_LB)をオフしている状態でも、RXスルートランジスタTH(RX_LB)にはオフ容量があることから、送信信号が受信端子RX(LB)側に漏れこむが、受信端子RX(LB)側に漏れこんだ送信信号を受信端子RX(LB)で充分に反射させることができれば、受信端子RX(LB)側に漏れこむ送信信号を抑制できるのである。すなわち、受信端子RX(LB)とGND端子GND2との間に設けられているRXシャントトランジスタSH(RX_LB)は、受信端子RX(LB)における送信信号の反射を充分に行なう目的で設けられているのである。
【0066】
受信端子RX(LB)において高周波信号である送信信号を充分に反射させるには、受信端子RX(LB)をGND端子GND2に接地することで実現できる。言い換えれば、受信端子RX(LB)とGND端子GND2との間をできるだけ低インピーダンス状態にすることができれば、受信端子RX(LB)での送信信号の反射を充分に行なうことができるのである。このため、送信時に受信端子RX(LB)側では、RXスルートランジスタTH(RX_LB)をオフするとともに、RXシャントトランジスタSH(RX_LB)をオンすることにより、受信端子RX(LB)とGND端子GND2とを電気的に接続しているのである。これにより、受信端子RX(LB)側に送信信号が漏れこんできても受信端子RX(LB)で充分に反射させることができるので、受信端子RX(LB)側に漏れこむ送信信号を抑制することできる。
【0067】
RXシャントトランジスタSH(RX_LB)は、例えば、1つのMISFETQから構成されている。ここで、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)と異なり、複数のMISFETQを直列に接続していないのは、受信時に受信端子RX(LB)には微小電力の受信信号しか流れない関係上、1つのMISFETQでも充分に耐圧を確保できるからである。
【0068】
アンテナスイッチSPDT1は上記のように構成されており、以下にその動作について説明する。まず、送信時の動作について説明する。図4において、送信時には、TXスルートランジスタTH(TX_LB)とRXシャントトランジスタSH(RX_LB)とをオンし、かつ、TXシャントトランジスタSH(TX_LB)とRXスルートランジスタTH(RX_LB)とをオフする。これにより、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1が電気的に接続され、かつ、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1が電気的に遮断される。この結果、送信端子TX(LB)からアンテナ端子ANT1に向って送信信号が出力される。このとき、RXスルートランジスタTH(RX_LB)はオフしているが、オフ容量が存在するので、高周波信号である送信信号の一部はRXスルートランジスタTH(RX_LB)のオフ容量を介して、受信端子RX(LB)側に漏れ出る。ところが、受信端子RX(LB)とGND端子GND2とはRXシャントトランジスタSH(RX_LB)がオンしていることから、電気的に接続され、受信端子RX(LB)とGND端子GND2との間のインピーダンスは低インピーダンス状態となる。このため、受信端子RX(LB)側に漏れ出た送信信号は受信端子RX(LB)で充分に反射される。この結果、受信端子RX(LB)に漏れ出る送信信号は抑制されるので、送信端子TX(LB)から送信信号が効率良くアンテナ端子ANT1に伝達される。このようにして、送信信号がアンテナ端子ANT1から出力される。
【0069】
次に、受信時の動作について説明する。図4において、受信時には、RXスルートランジスタTH(RX_LB)とTXシャントトランジスタSH(TX_LB)とをオンし、かつ、RXシャントトランジスタSH(RX_LB)とTXスルートランジスタTH(TX_LB)とをオフする。これにより、受信端子RX(LB)とアンテナ端子ANT1が電気的に接続され、かつ、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1が電気的に遮断される。この結果、アンテナ端子ANT1から受信端子RX(LB)に向って受信信号が伝達される。このとき、TXスルートランジスタTH(TX_LB)はオフしているが、オフ容量が存在するので、高周波信号である受信信号の一部はTXスルートランジスタTH(TX_LB)のオフ容量を介して、送信端子TX(LB)側に漏れ出る。ところが、送信端子TX(LB)とGND端子GND1とはTXシャントトランジスタSH(TX_LB)がオンしていることから、電気的に接続され、送信端子TX(LB)とGND端子GND1との間のインピーダンスは低インピーダンス状態となる。このため、送信端子TX(LB)側に漏れ出た受信信号は送信端子TX(LB)で充分に反射される。この結果、送信端子TX(LB)に漏れ出る受信信号は抑制されるので、アンテナ端子ANT1から効率良く受信端子RX(LB)側に伝達される。このようにして、受信信号がアンテナ端子ANT1から受信端子RX(LB)側に伝達される。
【0070】
<アンテナスイッチを形成した半導体チップの比較例におけるレイアウト構成>
続いて、アンテナスイッチを形成した半導体チップ(図3の半導体チップCHP2)の比較例におけるレイアウト構成について説明する。図5は、比較例における半導体チップCHP2(アンテナスイッチ8)のレイアウト構成を示す平面図である。図5に示すように、半導体チップCHP2は矩形形状をしており、この半導体チップCHP2の内側領域にアンテナスイッチと制御回路IC2が形成されている。具体的に、半導体チップCHP2に形成されているアンテナスイッチは、図4の回路図で示す構成を有するアンテナスイッチが2系統(図2のアンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2)形成されている。
【0071】
図5に示すように、概ね、半導体チップCHP2の右上頂点と左下頂点とを結ぶ対角線によって区画された領域にアンテナスイッチと制御回路IC2がそれぞれ形成されている。つまり、上述した対角線の上側領域に制御回路IC2が形成され、対角線の下側領域にアンテナスイッチが形成されている。対角線の下側領域に形成されているアンテナスイッチは、まず、GND端子GND1と送信端子TX(LB)の間にTXシャントトランジスタSH(TX_LB)が形成されており、この送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1の間にTXスルートランジスタTH(TX_LB)が形成されている。そして、アンテナ端子ANT1と受信端子RX(LB)の間にRXスルートランジスタTH(RX_LB)が形成され、受信端子RX(LB)とGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタRX(SH_LB)が形成されている。
【0072】
さらに、アンテナ端子ANT2と受信端子RX(HB)の間にRXスルートランジスタTH(RX_HB)が形成され、受信端子RX(HB)とGND端子GND4の間にRXシャントトランジスタSH(RX_HB)が形成されている。また、アンテナ端子ANT2と送信端子TX(HB)との間にTXスルートランジスタTH(TX_HB)が形成され、送信端子TX(HB)とGND端子GND3との間にTXシャントトランジスタSH(TX_HB)が形成されている。
【0073】
<比較例におけるアンテナスイッチの断面構造>
次に、図5のA−A線での断面図を使用して、比較例におけるアンテナスイッチの断面構造について説明する。図6は、図5のA−A線で切断した断面を示す断面図である。図6に示すように、例えば、シリコン単結晶よりなる支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上にシリコン層が形成されている。この支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとシリコン層よりなる基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板と呼ばれている。
【0074】
そして、SOI基板のシリコン層は、素子分離領域STIによって複数の活性領域に区画されている。具体的に、図6では、素子分離領域STIで区画された図6の左側領域にMISFETQN1が形成され、素子分離領域STIで区画された図6の右側領域にMISFETQN2が形成されている。具体的に、図6の左側領域に形成されているMISFETQN1は、図5のRXスルートランジスタTH(RX_HB)の一部を構成している電界効果トランジスタであり、図6の右側領域に形成されているMISFETQN2は、図5のRXスルートランジスタTH(RX_LB)の一部を構成している電界効果トランジスタである。
【0075】
まず、MISFETQN1の構造について説明する。図6に示すように、素子分離領域STIで区画された活性領域は半導体領域PSR1となっており、この半導体領域PSR1上にゲート絶縁膜GOXが形成されている。そして、このゲート絶縁膜GOX上にはゲート電極G1が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されており、ゲート電極G1は、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1上に形成された低抵抗化のためのシリサイド膜CSから形成されている。
【0076】
さらに、ゲート電極G1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSW直下には、半導体領域である低濃度n型不純物拡散領域NEX1が形成されている。この低濃度n型不純物拡散領域NEX1の外側領域には、半導体領域である高濃度n型不純物拡散領域NR1が形成されており、この高濃度n型不純物拡散領域NR1の表面には低抵抗化のためのシリサイド膜CSが形成されている。このとき、低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1とシリサイド膜CSによって、MISFETQN1のソース領域が形成され、同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1とシリサイド膜CSによって、MISFETQN1のドレイン領域が形成される。このようにして、SOI基板上にMISFETQN1が形成されている。
【0077】
次に、MISFETQN2の構造について説明する。図6に示すように、素子分離領域STIで区画された活性領域は半導体領域PSR2となっており、この半導体領域PSR2上にゲート絶縁膜GOXが形成されている。そして、このゲート絶縁膜GOX上にはゲート電極G2が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されており、ゲート電極G2は、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1上に形成された低抵抗化のためのシリサイド膜CSから形成されている。
【0078】
さらに、ゲート電極G2の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSW直下には、半導体領域である低濃度n型不純物拡散領域NEX2が形成されている。この低濃度n型不純物拡散領域NEX2の外側領域には、半導体領域である高濃度n型不純物拡散領域NR2が形成されており、この高濃度n型不純物拡散領域NR2の表面には低抵抗化のためのシリサイド膜CSが形成されている。このとき、低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2とシリサイド膜CSによって、MISFETQN2のソース領域が形成され、同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2とシリサイド膜CSによって、MISFETQN2のドレイン領域が形成される。このようにして、SOI基板上にMISFETQN2が形成されている。
【0079】
続いて、MISFETQN1およびMISFETQN2を形成したSOI基板上の配線構造について説明する。図6に示すように、MISFETQN1およびMISFETQN2を形成したSOI基板を覆うように窒化シリコン膜SN1が形成されており、この窒化シリコン膜SN1上に酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILと窒化シリコン膜SN1を貫通して、MISFETQN1やMISFETQN2のソース領域やドレイン領域に達するコンタクトホールCNTが形成されている。このコンタクトホールCNTには、導電性材料が埋め込まれてプラグPLG1が形成されている。具体的に、このプラグPLG1は、コンタクトホールCNTの内壁に形成されたチタン/窒化チタン膜とこのチタン/窒化チタン膜上に形成され、かつ、コンタクトホールCNTを埋め込むように形成されたタングステン膜から構成されている。そして、このプラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、プラグPLG1と電気的に接続される配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化チタン膜との積層膜から形成されている。
【0080】
<比較例におけるアンテナスイッチの問題点>
比較例におけるアンテナスイッチは上記のように構成されており、以下に、比較例での問題点について説明する。アンテナスイッチには、大電力の送信信号の高品質性を確保し、かつ、他の周波数帯の通信に悪影響を与える妨害波(高次高調波)の発生を低減する性能が要求される。このため、アンテナスイッチを構成するスイッチング素子として電界効果トランジスタを使用する場合、この電界効果トランジスタには、高耐圧性だけでなく、高次高調波歪を低減できる性能が要求される。
【0081】
このことから、アンテナスイッチを構成する電界効果トランジスタは、低損失や低高調波歪みを実現するため、寄生容量が少なく、線形性に優れたGaAs基板上に形成される電界効果トランジスタ(例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor))が使用されている。しかし、高周波特性に優れている化合物半導体基板は、高価であり、アンテナスイッチのコスト低下の観点から望ましいとはいえない。アンテナスイッチのコスト低下を実現するには、安価なシリコン基板(SOI(Silicon On Insulator)基板)上に形成された電界効果トランジスタを使用することが効果的である。しかし、安価なシリコン基板は、高価な化合物半導体基板に比べて寄生容量が大きく、化合物半導体基板上に形成された電界効果トランジスタよりも高調波歪みが大きくなる問題点がある。特に、SOI基板上に形成された電界効果トランジスタからアンテナスイッチを構成する場合、SOI基板に特有の構造に起因して高次高調波が発生する問題点が存在する。このSOI基板に特有の構造に起因して高次高調波が発生するメカニズムについて図面を参照しながら説明する。
【0082】
図7は、図6の領域ARを拡大して示す図である。図7において、支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されている。このとき、支持基板1Sは単結晶シリコンから構成されており、埋め込み絶縁層BOXは酸化シリコンから構成されている。具体的に、図7では、シリコン原子を大丸印で示し、酸素原子を小丸印で示している。さらに、水素原子を黒四角印で示している。
【0083】
図7に示すように、支持基板1Sは単結晶シリコンから構成され、かつ、埋め込み絶縁層BOXは酸化シリコンから構成されているので、支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXの境界は異種原子が接触することになる。このため、図7に示すように、支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとの境界に存在するシリコンに未結合手(ダングリングボンド)が発生すると考えられている。このシリコンに存在する未結合手は+電荷(正電荷)として作用することから、支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXの界面近傍には、シリコンの未結合手に起因した正電荷が形成される。したがって、この正電荷に電子が引き寄せられることにより、支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXの境界領域には、負電荷である電子が多数集まって界面キャリア層SCLが形成されると考えられている。つまり、図6に示すように、SOI基板では、支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとの境界領域に、負電荷である電子からなる界面キャリア層SCLが形成される。
【0084】
ここで、MISFETQN1やMISFETQN2を動作させる場合を考える。上述したように、MISFETQN1は、図5のRXスルートランジスタTH(RX_HB)の一部を構成している電界効果トランジスタであり、MISFETQN2は、図5のRXスルートランジスタTH(RX_LB)の一部を構成している電界効果トランジスタである。したがって、RXスルートランジスタTH(RX_HB)がオンしている場合は、RXスルートランジスタTH(RX_LB)がオフし、逆に、RXスルートランジスタTH(RX_HB)がオフしている場合は、RXスルートランジスタTH(RX_LB)がオンしている。すなわち、MISFETQN1やMISFETQN2は、いずれか一方がオンしている場合に他方はオフしていることになる。
【0085】
例えば、MISFETQN1がオンしている一方、MISFETQN2がオフしている場合を考えると、オンしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1には、受信信号(周期的に電位が変化する信号)が印加される一方、オフしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1には固定電位が印加される状態となっている。このことは、オンしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1と、オフしているMISFETQN2と電気的に接続されている配線L1との間に時間的に変化する電位差が発生することを意味している。この結果、この時間的に変化する電位差が支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとの境界領域に形成されている界面キャリア層SCLに影響を及ぼすことになる。具体的には、界面キャリア層SCLを構成する電子が上述した時間的に変化する電位差によって、界面キャリア層SCLを移動する(図6の矢印参照)。界面キャリア層SCLを電子が移動するということは、界面キャリア層SCLに時間的に変化する電流が流れることを意味し、この界面キャリア層SCLを流れる時間的に変化する電流によって、高次高調波が発生するのである。以上のようなメカニズムによって、SOI基板に特有の構造に起因して高次高調波が発生することがわかる。
【0086】
<本実施の形態1における半導体チップのレイアウト構成>
そこで、本実施の形態1では、上述した問題点を解決するために、アンテナスイッチを形成した半導体チップのデバイス構造に工夫を施している。具体的に、本実施の形態1の技術的思想は、SOI基板に界面キャリア層SCLが存在することを前提として、この界面キャリア層SCLに時間的に変化する電位差が加わっても、界面キャリア層SCLを構成する電子が移動することを抑制できる手段を講じれば、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因した高次高調波の発生を抑制できる点に着目している。
【0087】
図8は、本実施の形態1における半導体チップCHP2(アンテナスイッチ8)のレイアウト構成を示す平面図である。図8に示すように、半導体チップCHP2は矩形形状をしており、この半導体チップCHP2の内側領域にアンテナスイッチと制御回路IC2が形成されている。具体的に、半導体チップCHP2に形成されているアンテナスイッチは、図4の回路図で示す構成を有するアンテナスイッチが2系統(図2のアンテナスイッチSPDT1およびアンテナスイッチSPDT2)形成されている。
【0088】
図8に示すように、概ね、半導体チップCHP2の右上頂点と左下頂点とを結ぶ対角線によって区画された領域にアンテナスイッチと制御回路IC2がそれぞれ形成されている。つまり、上述した対角線の上側領域に制御回路IC2が形成され、対角線の下側領域にアンテナスイッチが形成されている。対角線の下側領域に形成されているアンテナスイッチは、まず、GND端子GND1と送信端子TX(LB)の間にTXシャントトランジスタSH(TX_LB)が形成されており、この送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1の間にTXスルートランジスタTH(TX_LB)が形成されている。そして、アンテナ端子ANT1と受信端子RX(LB)の間にRXスルートランジスタTH(RX_LB)が形成され、受信端子RX(LB)とGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタSH(RX_LB)が形成されている。
【0089】
さらに、アンテナ端子ANT2と受信端子RX(HB)の間にRXスルートランジスタTH(RX_HB)が形成され、受信端子RX(HB)とGND端子GND4の間にRXシャントトランジスタSH(RX_HB)が形成されている。また、アンテナ端子ANT2と送信端子TX(HB)との間にTXスルートランジスタTH(TX_HB)が形成され、送信端子TX(HB)とGND端子GND3との間にTXシャントトランジスタSH(TX_HB)が形成されている。
【0090】
ここで、本実施の形態1の特徴は、新たに、半導体チップCHP2に端子TE(GB)を設け、この端子TE(GB)から電極層ELを延在させている点にある。例えば、半導体チップCHP2の上辺近傍に設けられた端子TE(GB)から電極層ELが引き出されている。この引き出されている電極層ELは、アンテナスイッチ形成領域と、制御回路IC2の形成領域との境界を通って、RXスルートランジスタTH(RX_LB)とRXスルートランジスタTH(RX_HB)との間を延在し、さらに、半導体チップCHP2の下辺にまで達するように形成されている。そして、本実施の形態1の重要な点は、端子TE(GB)から電極層ELを延在するように設けるとともに、この電極層ELに正電位を印加することにある。これにより、SOI基板に特有の界面キャリア層SCLに時間的に変化する電位差が加わっても、界面キャリア層SCLを構成する電子が移動することを抑制でき、この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因した高次高調波の発生を抑制できる顕著な効果を得ることができるのである。以下に、このメカニズムについて、本実施の形態1におけるアンテナスイッチの断面構造とともに説明する。
【0091】
<本実施の形態1におけるアンテナスイッチの断面構造>
図8のA−A線での断面図を使用して、本実施の形態1におけるアンテナスイッチの断面構造について説明する。図9は、図8のA−A線で切断した断面を示す断面図である。図9に示すように、例えば、シリコン単結晶よりなる支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上にシリコン層が形成されている。この支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとシリコン層よりなる基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板と呼ばれている。
【0092】
そして、SOI基板のシリコン層は、素子分離領域STIによって複数の活性領域に区画されている。具体的に、図9では、素子分離領域STIで区画された図9の左側領域にMISFETQN1が形成され、素子分離領域STIで区画された図9の右側領域にMISFETQN2が形成されている。具体的に、図9の左側領域に形成されているMISFETQN1は、図8のRXスルートランジスタTH(RX_HB)の一部を構成している電界効果トランジスタであり、図9の右側領域に形成されているMISFETQN2は、図8のRXスルートランジスタTH(RX_LB)の一部を構成している電界効果トランジスタである。
【0093】
まず、MISFETQN1の構造について説明する。図9に示すように、素子分離領域STIで区画された活性領域は半導体領域PSR1となっており、この半導体領域PSR1上にゲート絶縁膜GOXが形成されている。そして、このゲート絶縁膜GOX上にはゲート電極G1が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されており、ゲート電極G1は、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1上に形成された低抵抗化のためのシリサイド膜CSから形成されている。
【0094】
さらに、ゲート電極G1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSW直下には、半導体領域である低濃度n型不純物拡散領域NEX1が形成されている。この低濃度n型不純物拡散領域NEX1の外側領域には、半導体領域である高濃度n型不純物拡散領域NR1が形成されており、この高濃度n型不純物拡散領域NR1の表面には低抵抗化のためのシリサイド膜CSが形成されている。このとき、低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1とシリサイド膜CSによって、MISFETQN1のソース領域が形成され、同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1とシリサイド膜CSによって、MISFETQN1のドレイン領域が形成される。なお、シリサイド膜CSは、例えば、コバルトシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜、プラチナシリサイド膜などから形成することができる。このようにして、SOI基板上にMISFETQN1が形成されている。
【0095】
次に、MISFETQN2の構造について説明する。図9に示すように、素子分離領域STIで区画された活性領域は半導体領域PSR2となっており、この半導体領域PSR2上にゲート絶縁膜GOXが形成されている。そして、このゲート絶縁膜GOX上にはゲート電極G2が形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されており、ゲート電極G2は、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1上に形成された低抵抗化のためのシリサイド膜CSから形成されている。
【0096】
さらに、ゲート電極G2の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSW直下には、半導体領域である低濃度n型不純物拡散領域NEX2が形成されている。この低濃度n型不純物拡散領域NEX2の外側領域には、半導体領域である高濃度n型不純物拡散領域NR2が形成されており、この高濃度n型不純物拡散領域NR2の表面には低抵抗化のためのシリサイド膜CSが形成されている。このとき、低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2とシリサイド膜CSによって、MISFETQN1のソース領域が形成され、同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2とシリサイド膜CSによって、MISFETQN1のドレイン領域が形成される。なお、シリサイド膜CSは、例えば、コバルトシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜、プラチナシリサイド膜などから形成することができる。このようにして、SOI基板上にMISFETQN2が形成されている。
【0097】
続いて、MISFETQN1およびMISFETQN2を形成したSOI基板上の配線構造について説明する。図9に示すように、MISFETQN1およびMISFETQN2を形成したSOI基板を覆うように窒化シリコン膜SN1が形成されており、この窒化シリコン膜SN1上に酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILと窒化シリコン膜SN1を貫通して、MISFETQN1やMISFETQN2のソース領域やドレイン領域に達するコンタクトホールCNTが形成されている。このコンタクトホールCNTには、導電性材料が埋め込まれてプラグPLG1が形成されている。具体的に、このプラグPLG1は、コンタクトホールCNTの内壁に形成されたチタン/窒化チタン膜とこのチタン/窒化チタン膜上に形成され、かつ、コンタクトホールCNTを埋め込むように形成されたタングステン膜から構成されている。そして、このプラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、プラグPLG1と電気的に接続される配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化チタン膜との積層膜から形成されている。
【0098】
次に、本実施の形態1における特徴構造について説明する。図9において、SOI基板上に形成されたMISFETQN1とMISFETQN2の間には、素子分離領域STIが形成されており、この素子分離領域STI上に電極層ELが形成されている。そして、電極層ELの両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。電極層ELは、例えば、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜CSから形成されている。したがって、電極層ELは、MISFETQN1のゲート電極G1やMISFETQN2のゲート電極G2と同様の構成をしており、電極層ELは、ゲート電極G1やゲート電極G2と同工程で形成される。
【0099】
さらに、電極層ELを覆うように、窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILが形成されており、この窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILを貫通して電極層ELに達するようにコンタクトホールCNTが形成されている。このコンタクトホールCNTには、導電性材料が埋め込まれてプラグPLG1が形成されている。具体的に、このプラグPLG1は、コンタクトホールCNTの内壁に形成されたチタン/窒化チタン膜とこのチタン/窒化チタン膜上に形成され、かつ、コンタクトホールCNTを埋め込むように形成されたタングステン膜から構成されている。そして、このプラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、プラグPLG1と電気的に接続される配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化チタン膜との積層膜から形成されている。
【0100】
ここで、本実施の形態1の特徴は、上述した電極層ELを設けることにより、電極層ELと界面キャリア層SCLの間に容量素子Cを形成している点にある。すなわち、この容量素子Cは、電極層ELを上部電極とし、界面キャリア層SCLを下部電極としている。そして、電極層ELと界面キャリア層SCLの間に形成されている素子分離領域STIと埋め込み絶縁層BOXが容量素子Cの容量絶縁膜として機能する。
【0101】
このとき、電極層ELには正電位が印加される。このため、容量素子Cの上部電極として機能する電極層ELには正電荷が蓄積される。そして、電極層ELに相対する界面キャリア層SCLには負電荷である電子が蓄積される。つまり、上部電極である電極層ELに正電圧を印加することにより、下部電極側の界面キャリア層SCLに電子が引き付けられる。この引き付けられた電子は、容量素子Cに蓄積される電荷として固定される。すなわち、本実施の形態1では、容量素子Cの上部電極となる電極層ELに正電荷を印加することにより、この電極層ELに相対する界面キャリア層SCLの電子を固定する点に特徴がある。
【0102】
例えば、オンしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1と、オフしているMISFETQN2と電気的に接続されている配線L1との間に時間的に変化する電位差が発生する場合、この時間的に変化する電位差が支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとの境界領域に形成されている界面キャリア層SCLに影響を及ぼすことになる。
【0103】
しかし、本実施の形態1では、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELを設けており、この電極層ELに正電位を印加している。このため、電極層ELと相対する界面キャリア層SCLに存在する電子が電極層ELに印加されている正電位に引き付けられて固定される。この結果、上述した時間的に変化する電位差が界面キャリア層SCLに加わっても、電極層ELに相対する位置に固定されている電子によって、界面キャリア層SCLを電子が移動することを抑制できる。つまり、本実施の形態1では、正電位が印加されている電極層ELに相対する界面キャリア層SCL内の電子を固定することにより、オンしているMISFETQN1とオフしているMISFETQN2に起因した電位差で、界面キャリア層SCL内を電子が移動することを抑制できるのである。言い換えれば、界面キャリア層SCL内の一部で強制的に電子を固定することにより、上述した時間的に変化する電位差が発生した場合であっても、界面キャリア層SCLを流れる電流を抑制することができ、この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生を抑制できるのである。
【0104】
特に、オンしているMISFETQN1とオフしているMISFETQN2に起因した時間的に変化する電位差は、MISFETQN1とMISFETQN2の間で大きくなる。したがって、本実施の形態1では、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELを設けており、この電極層ELに正電位を印加する構成をとっている。これにより、平面的に、MISFETQN1とMISFETQN2の間に位置する界面キャリア層SCL内の電子を固定することができる。このことは、界面キャリア層SCL内に存在する電子のうち、上述した時間的に変化する電位差が大きくなる位置(MISFETQN1とMISFETQN2の間の位置)に存在する電子を強制的に固定することができることを意味している。すなわち、本実施の形態1の特徴構成をとることにより、界面キャリア層SCLのうち、上述した電位差で最も移動しやすい位置に存在する電子を固定することができるので、本実施の形態1では、効果的に界面キャリア層SCLを流れる電流を抑制することができるのである。
【0105】
このように本実施の形態1の技術的思想は、SOI基板に界面キャリア層SCLが存在することを前提として、この界面キャリア層SCLに時間的に変化する電位差が加わっても、界面キャリア層SCLを構成する電子が移動することを抑制できる手段を提供するものである。具体的に、本実施の形態1では、界面キャリア層SCLを構成する電子の移動抑制手段として、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELを設けて電極層ELと界面キャリア層SCLとの間に容量素子Cを形成する手段をとっている。そして、この容量素子Cの上部電極となる電極層ELに正電位を印加することにより、電極層ELに相対する界面キャリア層SCLの電子を固定している。この固定された電子によって、界面キャリア層SCLを流れる電流を抑制することができるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因した高次高調波の発生を抑制できるという顕著な効果を得ることができる。
【0106】
次に、本実施の形態1の変形例について説明する。図10は、本実施の形態1の変形例を示す断面図である。図9と図10の相違点は、図10に示す電極層ELの面積が、図9に示す電極層ELの面積よりも大きくなっている点である。これは、容量素子Cの静電容量を大きくするためである。つまり、容量素子Cの静電容量は、電極層ELの面積に比例することから、電極層ELの面積を大きくすることにより、容量素子Cの静電容量を大きくすることができる。
【0107】
このように、容量素子Cの静電容量を大きくする理由は以下の通りである。つまり、容量素子Cに蓄積される電荷量は、電荷量=静電容量×印加電圧によって決定されることから、静電容量を大きくすればするほど、容量素子Cに蓄積される電荷量も大きくなる。容量素子Cに蓄積される電荷量が大きくなるということは、電極層ELに相対する界面キャリア層SCL内で固定される電子数が多くなることを意味している。このように界面キャリア層SCL内で固定される電子数が多くなれば、この固定されている電子が邪魔となって界面キャリア層SCL内を電子が移動しづらくなる。この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流がさらに抑制されるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生をさらに抑制することができるのである。
【0108】
本実施の形態1の変形例では、図10に示すように、電極層ELの面積を大きくすることにより、容量素子Cの静電容量を大きくしていたが、例えば、図11に示す構成をとることによっても静電容量を大きくすることができる。
【0109】
図11は、本実施の形態1の変形例を示す断面図である。図11に示すように、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層EL1と電極層EL2が設けられており、この電極層EL1と電極層EL2には同じ正電位を印加できるように構成されている。この場合、上部電極となる電極層EL1と、下部電極となる界面キャリア層SCLと、容量絶縁膜となる素子分離領域STIおよび埋め込み絶縁層BOXにより、容量素子C1が形成される。同様に、上部電極となる電極層EL2と、下部電極となる界面キャリア層SCLと、容量絶縁膜となる素子分離領域STIおよび埋め込み絶縁層BOXにより、容量素子C2が形成される。このように構成されている容量素子C1と容量素子C2とは並列接続されていることになるから、合成容量は、容量素子C1の静電容量と、容量素子C2の静電容量を合わせた静電容量となる。この結果、合成容量が大きくなるので、電極層EL1および電極層EL2に相対する界面キャリア層SCL内で固定される電子数が多くなる。この結果、図11に示す変形例においても、界面キャリア層SCLを流れる電流がさらに抑制されるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生をさらに抑制することができる。
【0110】
<本実施の形態1における半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。以下に示す製造工程の図面では、アンテナスイッチ形成領域ASWRと、CMISFET形成領域とを図示しながら説明する。具体的に、アンテナスイッチ形成領域ASWRは、図8のA−A断面(図9)を示す領域であり、このアンテナスイッチ形成領域ASWR内に電極形成領域ELRが含まれる。一方、CMISFET形成領域は、図8の制御回路IC2内を示す領域であり、CMISFET形成領域は、nチャネル型MISFETが形成されるnチャネル型MISFET形成領域NTRと、pチャネル型MISFETが形成されるpチャネル型MISFET形成領域PTRとに分けられる。
【0111】
まず、図12に示すように、SOI基板を用意する。SOI基板は、シリコン単結晶よりなる支持基板1Sと、この支持基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、この埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層SILから構成されている。このとき、SOI基板は、略円盤形状をした半導体ウェハの状態になっている。
【0112】
次に、図13に示すように、SOI基板のシリコン層SILに素子分離領域STIを形成する。素子分離領域STIは、素子が互いに干渉しないようにするために設けられる。この素子分離領域は、例えばLOCOS(local Oxidation of silicon)法やSTI(shallow trench isolation)法を用いて形成することができる。例えば、STI法では、以下のようにして素子分離領域を形成している。すなわち、SOI基板のシリコン層SILにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して素子分離溝を形成する。そして、素子分離溝を埋め込むようにSOI基板上に酸化シリコン膜を形成し、その後、化学的機械的研磨法(CMP;chemical mechanical polishing)により、SOI基板上に形成された不要な酸化シリコン膜を除去する。これにより、素子分離溝内にだけ酸化シリコン膜を埋め込んだ素子分離領域STIを形成することができる。
【0113】
このようにシリコン層SILに素子分離領域STIを形成することにより、シリコン層SILを複数の活性領域に区画することができる。具体的には、図13に示すように、アンテナスイッチ形成領域ASWRに半導体領域PSR1および半導体領域PSR2を形成する。一方、nチャネル型MISFET形成領域に半導体領域PSR3を形成し、pチャネル型MISFET形成領域に半導体領域NSR1を形成する。
【0114】
続いて、図14に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR1を塗布した後、このレジスト膜FR1に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR1をパターニングする。レジスト膜FR1のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびnチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、pチャネル型MISFET形成領域PTRを露出するように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR1をマスクにしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されている半導体領域NSR1に、例えば、n型不純物であるリン(P)を導入する。これにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されるpチャネル型MISFETのチャネル濃度が決定される。
【0115】
次に、図15に示すように、パターニングしたレジスト膜FR1を除去した後、SOI基板上にレジスト膜FR2を塗布する。その後、レジスト膜FR2に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR2をパターニングする。レジスト膜FR2のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRに形成されている半導体領域PSR1および半導体領域PSR2を露出し、かつ、電極形成領域ELRを覆うように行なわれる。さらに、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されている半導体領域PSR3を露出し、pチャネル型MISFET形成領域PTRを覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR2をマスクにしたイオン注入法により、露出している半導体領域PSR1、半導体領域PSR2および半導体領域PSR3に、例えば、p型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、アンテナスイッチ形成領域ASWRに形成されるMISFET(完全空乏型MISFET)のチャネル濃度が決定される。
【0116】
そして、図16に示すように、パターニングしたレジスト膜FR2を除去した後、SOI基板上にレジスト膜FR3を塗布する。そして、レジスト膜FR3に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR3をパターニングする。レジスト膜FR3のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびpチャネル型MISFET形成領域PTRを覆い、かつ、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されている半導体領域PSR3を露出するように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR3をマスクにしたイオン注入法により、露出している半導体領域PSR3に、例えば、p型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されるMISFET(部分空乏型MISFET)のチャネル濃度が決定される。
【0117】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR3を除去した後、図17に示すように、SOI基板上にゲート絶縁膜GOXを形成する。そして、ゲート絶縁膜GOX上にポリシリコン膜PF1を形成する。ポリシリコン膜PF1は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。
【0118】
ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、例えば熱酸化法を使用して形成することができる。ただし、ゲート絶縁膜GOXは、酸化シリコン膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、ゲート絶縁膜GOXを酸窒化シリコン膜(SiON)としてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜GOXとSOI基板との界面に窒素を偏析させる構造としてもよい。酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて膜中における界面準位の発生を抑制したり、電子トラップを低減する効果が高い。したがって、ゲート絶縁膜GOXのホットキャリア耐性を向上でき、絶縁耐性を向上させることができる。また、酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて不純物が貫通しにくい。このため、ゲート絶縁膜GOXに酸窒化シリコン膜を用いることにより、ゲート電極中の不純物がSOI基板側に拡散することに起因するしきい値電圧の変動を抑制することができる。酸窒化シリコン膜を形成するのは、例えば、SOI基板をNO、NOまたはNHといった窒素を含む雰囲気中で熱処理すればよい。また、SOI基板の表面に酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GOXを形成した後、窒素を含む雰囲気中でSOI基板を熱処理し、ゲート絶縁膜GOXとSOI基板との界面に窒素を偏析させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0119】
また、ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン膜より誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。従来、絶縁耐性が高い、シリコン−酸化シリコン界面の電気的・物性的安定性などが優れているとの観点から、ゲート絶縁膜GOXとして酸化シリコン膜が使用されている。しかし、素子の微細化に伴い、ゲート絶縁膜GOXの膜厚について、極薄化が要求されるようになってきている。このように薄い酸化シリコン膜をゲート絶縁膜GOXとして使用すると、MISFETのチャネルを流れる電子が酸化シリコン膜によって形成される障壁をトンネルしてゲート電極に流れる、いわゆるトンネル電流が発生してしまう。
【0120】
そこで、酸化シリコン膜より誘電率の高い材料を使用することにより、容量が同じでも物理的膜厚を増加させることができる高誘電率膜が使用されるようになってきている。高誘電率膜によれば、容量を同じにしても物理的膜厚を増加させることができるので、リーク電流を低減することができる。
【0121】
例えば、高誘電率膜として、ハフニウム酸化物の一つである酸化ハフニウム膜(HfO膜)が使用されるが、酸化ハフニウム膜に変えて、ハフニウムアルミネート膜、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)、HfAlO膜のような他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。さらに、これらのハフニウム系絶縁膜に酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの酸化物を導入したハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。ハフニウム系絶縁膜は、酸化ハフニウム膜と同様、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜より誘電率が高いので、酸化ハフニウム膜を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0122】
次に、図18に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR4を塗布する。そして、レジスト膜FR4に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR4をパターニングする。レジスト膜FR4のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびnチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、かつ、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているポリシリコン膜PF1を露出するように行なわれる。その後、パターニングしたレジスト膜FR4をマスクとしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているポリシリコン膜PF1にp型不純物であるボロン(B)を導入する。
【0123】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR4を除去した後、図19に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR5を塗布する。そして、レジスト膜FR5に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR5をパターニングする。レジスト膜FR5のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびnチャネル型MISFET形成領域NTRを露出し、かつ、pチャネル型MISFET形成領域PTR覆うように行なわれる。その後、パターニングしたレジスト膜FR5をマスクとしたイオン注入法により、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびnチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているポリシリコン膜PF1にn型不純物であるリン(P)を導入する。
【0124】
その後、パターニングしたレジスト膜FR5を除去し、図20に示すように、ポリシリコン膜PF1上にキャップ絶縁膜HLDを形成し、このキャップ絶縁膜HLD上に反射防止膜BARCを形成する。キャップ絶縁膜HLDは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、CVD法を使用することにより形成することができる。そして、反射防止膜BARC上にレジスト膜FR6を塗布する。そして、レジスト膜FR6に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR6をパターニングする。レジスト膜FR6のパターニングは、ゲート電極形成領域および電極形成領域だけを覆うように行なわれる。
【0125】
次に、図21に示すように、パターニングしたレジスト膜FR6をマスクにしたエッチングにより、反射防止膜BARC、キャップ絶縁膜HLDおよびポリシリコン膜PF1を順次パターニングする。これにより、アンテナスイッチ形成領域ASWRでは、ゲート電極G1およびゲート電極G2を形成することができるとともに、特に電極形成領域ELRには、電極層ELを形成することができる。さらに、nチャネル型MISFET形成領域NTRでは、ゲート電極G3を形成することができ、pチャネル型MISFET形成領域PTRでは、ゲート電極G4を形成することができる。
【0126】
ここで、ゲート電極G1、G2、G3には、ポリシリコン膜PF1中にn型不純物(リン)が導入されている。このため、ゲート電極G1、G2、G3の仕事関数値をシリコンの伝導帯近傍(4.15eV)の値にすることができるので、MISFET(nチャネル型MISFET)のしきい値電圧を低減することができる。一方、ゲート電極G4には、ポリシリコン膜PF1中にp型不純物(ボロン)が導入されている。このため、ゲート電極G4の仕事関数値をシリコンの価電子帯近傍(5.15eV)の値にすることができるので、MISFET(pチャネル型MISFET)のしきい値電圧を低減することができる。このように本実施の形態1では、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を低減することができる(デュアルゲート構造)。
【0127】
続いて、ゲート電極G1〜G4および電極層EL上に形成されている反射防止膜BARCを除去した後、図22に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR7を塗布する。そして、レジスト膜FR7に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR7をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR7をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G1〜G3のそれぞれに整合した半導体領域PSR1〜PSR3にn型不純物であるリン(P)を導入する。これにより、ゲート電極G1に整合して、半導体領域PSR1内に低濃度n型不純物拡散領域NEX1を形成し、ゲート電極G2に整合して、半導体領域PSR2内に低濃度n型不純物拡散領域NEX2を形成することができる。同様に、ゲート電極G3に整合して、半導体領域PSR3内に低濃度n型不純物拡散領域NEX3を形成することができる。
【0128】
そして、パターニングしたレジスト膜FR7を除去した後、図23に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR8を塗布する。そして、レジスト膜FR8に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR8をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR8をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G4に整合した半導体領域NSR1にp型不純物であるフッ化ボロン(BF)を導入する。これにより、ゲート電極G4に整合して、半導体領域NSR1内に低濃度p型不純物拡散領域PEX1を形成することができる。
【0129】
次に、パターニングしたレジスト膜FR8を除去した後、図24に示すように、SOI基板上に酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォールSWをゲート電極G1〜G4の側壁に形成する。サイドウォールSWは、酸化シリコン膜の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールSWを形成してもよい。
【0130】
続いて、図25に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR9を塗布した後、レジスト膜FR9に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR9をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR9をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G1〜G3の側壁に形成されたサイドウォールSWのそれぞれに整合した半導体領域PSR1〜PSR3にn型不純物である砒素(As)を導入する。これにより、ゲート電極G1の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR1内に高濃度n型不純物拡散領域NR1を形成し、ゲート電極G2の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR2内に高濃度n型不純物拡散領域NR2を形成することができる。同様に、ゲート電極G3の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR3内に高濃度n型不純物拡散領域NR3を形成することができる。
【0131】
このようにして、低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1によってソース領域が形成される。同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を低濃度n型不純物拡散領域NEX1と高濃度n型不純物拡散領域NR1で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0132】
また、低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2によってソース領域が形成される。同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を低濃度n型不純物拡散領域NEX2と高濃度n型不純物拡散領域NR2で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0133】
同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX3と高濃度n型不純物拡散領域NR3によってソース領域が形成される。同様に、低濃度n型不純物拡散領域NEX3と高濃度n型不純物拡散領域NR3によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を低濃度n型不純物拡散領域NEX3と高濃度n型不純物拡散領域NR3で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0134】
次に、パターニングしたレジスト膜FR9を除去した後、図26に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR10を塗布する。そして、レジスト膜FR10に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR10をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR10をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G4の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合した半導体領域NSR1にp型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、ゲート電極G4の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域NSR1内に高濃度p型不純物拡散領域PR1を形成することができる。
【0135】
このようにして、低濃度p型不純物拡散領域PEX1と高濃度p型不純物拡散領域PR1によってソース領域が形成される。同様に、低濃度p型不純物拡散領域PEX1と高濃度p型不純物拡散領域PR1によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を低濃度p型不純物拡散領域PEX1と高濃度p型不純物拡散領域PR1で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0136】
その後、図27に示すように、パターニングしたレジスト膜FR10を除去するとともに、ゲート電極G1〜G4上に形成されているキャップ絶縁膜HLD、および、ソース領域およびドレイン領域に露出しているゲート絶縁膜GOXを除去する。
【0137】
続いて、図28に示すように、SOI基板上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極G1〜G4と電極層ELに直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1にもコバルト膜が直接接する。
【0138】
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極G1〜G4や電極層ELを構成するポリシリコン膜PF1とコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜(シリサイド膜CS)を形成する。これにより、ゲート電極G1〜G4および電極層ELはポリシリコン膜PF1とシリサイド膜CSの積層構造となる。シリサイド膜CSは、ゲート電極G1〜G4や電極層ELの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1の表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してシリサイド膜CSが形成される。このため、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1においても低抵抗化を図ることができる。
【0139】
そして、未反応のコバルト膜は、SOI基板上から除去される。なお、本実施の形態1では、シリサイド膜CSをコバルトシリサイド膜から形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜に代えて、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜あるいはプラチナ膜を形成するようにしてもよい。
【0140】
ここまでの工程で、アンテナスイッチ形成領域ASWRにMISFETQN1およびMISFETQN2を形成することができるとともに、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELを形成することができる。また、nチャネル型MISFET形成領域NTRにnチャネル型MISFETQを形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRにpチャネル型MISFETQを形成することができる。
【0141】
次に、図29に示すように、SOI基板の主面上に窒化シリコン膜SN1を形成し、この窒化シリコン膜SN1上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILを形成する。窒化シリコン膜SN1は、例えば、CVD法を使用することにより形成することができる。また、酸化シリコン膜は、例えばTEOS(tetra ethyl ortho silicate)を原料としたCVD法を使用して形成することができる。その後、コンタクト層間絶縁膜CILの表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。
【0142】
続いて、図30に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SN1にコンタクトホールCNTを形成する。そして、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含むコンタクト層間絶縁膜CIL上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0143】
そして、コンタクトホールCNTを埋め込むように、SOI基板の主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法を除去することにより、プラグPLG1を形成することができる。
【0144】
次に、コンタクト層間絶縁膜CILおよびプラグPLG1上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行うことにより配線L1を形成することができる。
【0145】
その後、図31に示すように、配線L1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に、例えば、TEOSを原料として酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL1を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL1を貫通するコンタクトホールを形成し、このコンタクトホール内にチタン/窒化チタン膜とタングステン膜を埋め込むことによりプラグPLG2を形成する。
【0146】
次に、プラグPLG2を形成した層間絶縁膜IL1上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行うことにより配線L2を形成することができる。その後、配線L2を形成した層間絶縁膜IL1上に、例えば、窒化シリコン膜からなる表面保護膜(パッシベーション膜)PASを形成する。以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。
【0147】
(実施の形態2)
<電極領域の構成>
前記実施の形態1では、MISFETQN1とMISFETQN2の間にある素子分離領域STI上に電極層ELを形成する例について説明したが、本実施の形態2では、MISFETQN1とMISFETQN2の間にSOI基板のシリコン層を残し、このシリコン層に半導体領域からなる電極領域を形成する例について説明する。
【0148】
図32は、本実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。図32に示す構成は、前記実施の形態1の半導体装置の構成を示す図9とほぼ同様であるため、相違点について説明する。
【0149】
図32では、MISFETQN1とMISFETQN2の間にSOI基板のシリコン層が残存するように素子分離領域STIが形成されており、この残存しているシリコン層が電極領域ELR1となっている。この電極領域ELR1は半導体領域であり、例えば、p型不純物であるボロン(B)を導入したp型半導体領域や、n型不純物であるリン(P)を導入したn型半導体領域から形成されている。そして、この電極領域ELR1の表面にはシリサイド膜CSが形成されている。この電極領域ELR1上には、窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。電極領域ELR1は、窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILを貫通するコンタクトホールCNTに埋め込まれたプラグPLG1によって、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されている配線L1と接続されている。これにより、電極領域ELR1に正電位を印加できるようになっている。このように構成されている本実施の形態2における半導体装置においても、上部電極を電極領域ELR1、下部電極を界面キャリア層SCL、および、埋め込み絶縁層BOXを容量絶縁膜とする容量素子Cが形成されることになる。
【0150】
したがって、本実施の形態2においても、電極領域ELR1と相対する界面キャリア層SCLに存在する電子が電極領域ELR1に印加されている正電位に引き付けられて固定される。この結果、時間的に変化する電位差が界面キャリア層SCLに加わっても、電極領域ELR1に相対する位置に固定されている電子によって、界面キャリア層SCLを電子が移動することを抑制できる。つまり、本実施の形態2でも、正電位が印加されている電極領域ELR1に相対する界面キャリア層SCL内の電子を固定することにより、オンしているMISFETQN1とオフしているMISFETQN2に起因した電位差で、界面キャリア層SCL内を電子が移動することを抑制できるのである。言い換えれば、界面キャリア層SCL内の一部で強制的に電子を固定することにより、時間的に変化する電位差が発生した場合であっても、界面キャリア層SCLを流れる電流を抑制することができ、この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生を抑制できる。
【0151】
ここで、容量素子Cに蓄積される電荷量は、電荷量=静電容量×印加電圧によって決定されることから、静電容量を大きくすればするほど、容量素子Cに蓄積される電荷量も大きくなる。容量素子Cに蓄積される電荷量が大きくなるということは、電極領域ELR1に相対する界面キャリア層SCL内で固定される電子数が多くなることを意味している。このように界面キャリア層SCL内で固定される電子数が多くなれば、この固定されている電子が邪魔となって界面キャリア層SCL内を電子が移動しづらくなる。この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流がさらに抑制されるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生をさらに抑制することができる。
【0152】
このことから、本実施の形態2では、SOI基板のシリコン層内に電極領域ELR1を形成している。なぜなら、前記実施の形態1のように素子分離領域STI上に電極層ELを形成する場合、容量素子Cの容量絶縁膜は素子分離領域STIと埋め込み絶縁層BOXから形成されることになる。これに対し、本実施の形態2では、SOI基板のシリコン層内に電極領域ELR1を形成するので、容量素子Cの容量絶縁膜は埋め込み絶縁層BOXだけとなる。このことは、前記実施の形態1よりも本実施の形態2のほうが容量絶縁膜の膜厚が薄くなることを意味している。容量素子Cの静電容量は、容量絶縁膜の膜厚に反比例することから、容量絶縁膜の膜厚が薄い本実施の形態2の容量素子Cのほうが前記実施の形態1に容量素子Cよりも静電容量が大きくなる。このため、本実施の形態2によれば、界面キャリア層SCLを流れる電流がさらに抑制されるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生をさらに抑制することができる。
【0153】
本実施の形態2と前記実施の形態1とを比較すると、電荷量=静電容量×印加電圧の関係から以下のようなことが言える。つまり、本実施の形態2のほうが前記実施の形態1よりも静電容量が大きくなることから、電極領域ELR1と電極層ELに同じ正電位を印加する場合には、本実施の形態2のほうが固定できる電荷量が大きくなるため、界面キャリア層SCLを流れる電流をより抑制できるといえる。さらに観点を変えれば、本実施の形態2と前記実施の形態1で固定する電荷量を同じにする場合、本実施の形態2では静電容量が大きいことから、電極領域ELR1に印加する正電位(正電圧)を低くすることができるともいえる。
【0154】
本実施の形態2における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。本実施の形態2において、電極領域ELR1は、p型半導体領域でもn型半導体領域でもよいので、まず、電極領域ELR1をp型半導体領域から形成する方法をまず説明し、その後、電極領域ELR1をn型半導体領域から形成する方法について説明する。
【0155】
<電極領域をp型半導体領域から形成する製造方法>
まず、図33に示すように、SOI基板を用意する。SOI基板は、シリコン単結晶よりなる支持基板1Sと、この支持基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、この埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層SILから構成されている。このとき、SOI基板は、略円盤形状をした半導体ウェハの状態になっている。
【0156】
次に、SOI基板のシリコン層SILに素子分離領域STIを形成する。このようにシリコン層SILに素子分離領域STIを形成することにより、シリコン層SILを複数の活性領域に区画することができる。具体的には、図33に示すように、アンテナスイッチ形成領域ASWRに半導体領域PSR1および半導体領域PSR2を形成するとともに、電極領域ELR1を形成する。一方、nチャネル型MISFET形成領域に半導体領域PSR3を形成し、pチャネル型MISFET形成領域に半導体領域NSR1を形成する。
【0157】
続いて、図34に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR11を塗布した後、このレジスト膜FR11に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR11をパターニングする。レジスト膜FR11のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびnチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、pチャネル型MISFET形成領域PTRを露出するように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR11をマスクにしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されている半導体領域NSR1に、例えば、n型不純物であるリン(P)を導入する。これにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されるpチャネル型MISFETのチャネル濃度が決定される。
【0158】
次に、図35に示すように、パターニングしたレジスト膜FR11を除去した後、SOI基板上にレジスト膜FR12を塗布する。その後、レジスト膜FR12に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR12をパターニングする。レジスト膜FR12のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRに形成されている半導体領域PSR1および半導体領域PSR2と、電極形成領域ELRに形成されている電極領域ELR1を露出するように行なわれる。さらに、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されている半導体領域PSR3を露出し、pチャネル型MISFET形成領域PTRを覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR12をマスクにしたイオン注入法により、露出している半導体領域PSR1、半導体領域PSR2および半導体領域PSR3と電極領域ELR1に、例えば、p型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、アンテナスイッチ形成領域ASWRに形成されるMISFET(完全空乏型MISFET)のチャネル濃度が決定されるとともに、電極領域ELR1をp型半導体領域とすることができる。
【0159】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR12を除去した後、図36に示すように、SOI基板上にゲート絶縁膜GOXを形成する。そして、ゲート絶縁膜GOX上にポリシリコン膜PF1を形成する。ポリシリコン膜PF1は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。その後、ポリシリコン膜PF1上にキャップ絶縁膜HLDを形成し、このキャップ絶縁膜HLD上に反射防止膜BARCを形成する。キャップ絶縁膜HLDは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、CVD法を使用することにより形成することができる。そして、反射防止膜BARC上にレジスト膜FR13を塗布する。そして、レジスト膜FR13に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR13をパターニングする。レジスト膜FR13のパターニングは、ゲート電極形成領域だけを覆うように行なわれる。
【0160】
次に、図37に示すように、パターニングしたレジスト膜FR13をマスクにしたエッチングにより、反射防止膜BARC、キャップ絶縁膜HLDおよびポリシリコン膜PF1を順次パターニングする。これにより、アンテナスイッチ形成領域ASWRでは、ゲート電極G1およびゲート電極G2を形成することができる。さらに、nチャネル型MISFET形成領域NTRでは、ゲート電極G3を形成することができ、pチャネル型MISFET形成領域PTRでは、ゲート電極G4を形成することができる。
【0161】
続いて、ゲート電極G1〜G4上に形成されている反射防止膜BARCを除去した後、図38に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR14を塗布する。そして、レジスト膜FR14に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR14をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR14をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G1〜G3のそれぞれに整合した半導体領域PSR1〜PSR3にn型不純物であるリン(P)を導入する。これにより、ゲート電極G1に整合して、半導体領域PSR1内に低濃度n型不純物拡散領域NEX1を形成し、ゲート電極G2に整合して、半導体領域PSR2内に低濃度n型不純物拡散領域NEX2を形成することができる。同様に、ゲート電極G3に整合して、半導体領域PSR3内に低濃度n型不純物拡散領域NEX3を形成することができる。
【0162】
そして、パターニングしたレジスト膜FR14を除去した後、図39に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR15を塗布する。そして、レジスト膜FR15に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR15をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR15をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G4に整合した半導体領域NSR1と、電極領域ELR1にp型不純物であるフッ化ボロン(BF)を導入する。これにより、ゲート電極G4に整合して、半導体領域NSR1内に低濃度p型不純物拡散領域PEX1を形成することができるとともに、電極領域ELR1をp型半導体領域とすることができる。
【0163】
次に、パターニングしたレジスト膜FR15を除去した後、図40に示すように、SOI基板上に酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォールSWをゲート電極G1〜G4の側壁に形成する。サイドウォールSWは、酸化シリコン膜の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールSWを形成してもよい。
【0164】
続いて、図41に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR16を塗布した後、レジスト膜FR16に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR16をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR16をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G1〜G3の側壁に形成されたサイドウォールSWのそれぞれに整合した半導体領域PSR1〜PSR3にn型不純物である砒素(As)を導入する。これにより、ゲート電極G1の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR1内に高濃度n型不純物拡散領域NR1を形成し、ゲート電極G2の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR2内に高濃度n型不純物拡散領域NR2を形成することができる。同様に、ゲート電極G3の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR3内に高濃度n型不純物拡散領域NR3を形成することができる。
【0165】
次に、パターニングしたレジスト膜FR16を除去した後、図42に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR17を塗布する。そして、レジスト膜FR17に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR17をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR17をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G4の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合した半導体領域NSR1と、電極領域ELR1にp型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、ゲート電極G4の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域NSR1内に高濃度p型不純物拡散領域PR1を形成することができるとともに、電極領域ELR1にp型不純物を導入することができる。
【0166】
続いて、図43に示すように、SOI基板上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極G1〜G4と電極領域ELR1に直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1にもコバルト膜が直接接する。
【0167】
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極G1〜G4を構成するポリシリコン膜PF1とコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜(シリサイド膜CS)を形成する。これにより、ゲート電極G1〜G4および電極層ELはポリシリコン膜PF1とシリサイド膜CSの積層構造となる。シリサイド膜CSは、ゲート電極G1〜G4や電極層ELの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、電極領域ELR1、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1の表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してシリサイド膜CSが形成される。このため、電極領域ELR1、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1においても低抵抗化を図ることができる。
【0168】
そして、未反応のコバルト膜は、SOI基板上から除去される。なお、本実施の形態1では、シリサイド膜CSをコバルトシリサイド膜から形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜に代えて、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜あるいはプラチナ膜を形成するようにしてもよい。
【0169】
ここまでの工程で、アンテナスイッチ形成領域ASWRにMISFETQN1およびMISFETQN2を形成することができるとともに、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極領域ELR1を形成することができる。また、nチャネル型MISFET形成領域NTRにnチャネル型MISFETQを形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRにpチャネル型MISFETQを形成することができる。その後の配線工程は、前記実施の形態1と同様である。以上のようにして、本実施の形態2における半導体装置を製造することができる。
【0170】
<電極領域をn型半導体領域から形成する製造方法>
まず、図44に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR18を塗布した後、このレジスト膜FR18に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR18をパターニングする。レジスト膜FR18のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRおよびnチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、pチャネル型MISFET形成領域PTRおよび電極形成領域ELRを露出するように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR18をマスクにしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されている半導体領域NSR1と電極領域ELR2に、例えば、n型不純物であるリン(P)を導入する。これにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されるpチャネル型MISFETのチャネル濃度が決定されるとともに、電極領域ELR2をn型半導体領域とすることができる。
【0171】
次に、図45に示すように、パターニングしたレジスト膜FR18を除去した後、SOI基板上にレジスト膜FR19を塗布する。その後、レジスト膜FR19に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR19をパターニングする。レジスト膜FR19のパターニングは、アンテナスイッチ形成領域ASWRに形成されている半導体領域PSR1および半導体領域PSR2を露出するように行なわれる。さらに、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されている半導体領域PSR3を露出し、pチャネル型MISFET形成領域PTRを覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR19をマスクにしたイオン注入法により、露出している半導体領域PSR1、半導体領域PSR2および半導体領域PSR3に、例えば、p型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、アンテナスイッチ形成領域ASWRに形成されるMISFET(完全空乏型MISFET)のチャネル濃度が決定される。
【0172】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR19を除去した後、図46に示すように、SOI基板上にゲート絶縁膜GOXを形成する。そして、ゲート絶縁膜GOX上にポリシリコン膜PF1を形成する。ポリシリコン膜PF1は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。その後、ポリシリコン膜PF1上にキャップ絶縁膜HLDを形成し、このキャップ絶縁膜HLD上に反射防止膜BARCを形成する。キャップ絶縁膜HLDは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、CVD法を使用することにより形成することができる。そして、反射防止膜BARC上にレジスト膜FR20を塗布する。そして、レジスト膜FR20に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR20をパターニングする。レジスト膜FR20のパターニングは、ゲート電極形成領域だけを覆うように行なわれる。
【0173】
次に、図47に示すように、パターニングしたレジスト膜FR20をマスクにしたエッチングにより、反射防止膜BARC、キャップ絶縁膜HLDおよびポリシリコン膜PF1を順次パターニングする。これにより、アンテナスイッチ形成領域ASWRでは、ゲート電極G1およびゲート電極G2を形成することができる。さらに、nチャネル型MISFET形成領域NTRでは、ゲート電極G3を形成することができ、pチャネル型MISFET形成領域PTRでは、ゲート電極G4を形成することができる。
【0174】
続いて、ゲート電極G1〜G4上に形成されている反射防止膜BARCを除去した後、図48に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR21を塗布する。そして、レジスト膜FR21に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR21をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR21をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G1〜G3のそれぞれに整合した半導体領域PSR1〜PSR3と、電極領域ELR2にn型不純物であるリン(P)を導入する。これにより、ゲート電極G1に整合して、半導体領域PSR1内に低濃度n型不純物拡散領域NEX1を形成し、ゲート電極G2に整合して、半導体領域PSR2内に低濃度n型不純物拡散領域NEX2を形成することができる。同様に、ゲート電極G3に整合して、半導体領域PSR3内に低濃度n型不純物拡散領域NEX3を形成することができる。さらに、電極領域ELR2にn型不純物を導入することができる。
【0175】
そして、パターニングしたレジスト膜FR21を除去した後、図49に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR22を塗布する。そして、レジスト膜FR22に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR22をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR22をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G4に整合した半導体領域NSR1にp型不純物であるフッ化ボロン(BF)を導入する。これにより、ゲート電極G4に整合して、半導体領域NSR1内に低濃度p型不純物拡散領域PEX1を形成することができる。
【0176】
次に、パターニングしたレジスト膜FR22を除去した後、図50に示すように、SOI基板上に酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォールSWをゲート電極G1〜G4の側壁に形成する。サイドウォールSWは、酸化シリコン膜の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールSWを形成してもよい。
【0177】
続いて、図51に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR23を塗布した後、レジスト膜FR23に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR23をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR23をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G1〜G3の側壁に形成されたサイドウォールSWのそれぞれに整合した半導体領域PSR1〜PSR3と、電極領域ELR2にn型不純物である砒素(As)を導入する。これにより、ゲート電極G1の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR1内に高濃度n型不純物拡散領域NR1を形成し、ゲート電極G2の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR2内に高濃度n型不純物拡散領域NR2を形成することができる。同様に、ゲート電極G3の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域PSR3内に高濃度n型不純物拡散領域NR3を形成することができる。さらに、電極領域ELR2にn型不純物を導入することができる。
【0178】
次に、パターニングしたレジスト膜FR23を除去した後、図52に示すように、SOI基板上にレジスト膜FR24を塗布する。そして、レジスト膜FR24に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR24をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR24をマスクにしたイオン注入法により、ゲート電極G4の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合した半導体領域NSR1にp型不純物であるボロン(B)を導入する。これにより、ゲート電極G4の側壁に形成されたサイドウォールSWに整合して、半導体領域NSR1内に高濃度p型不純物拡散領域PR1を形成することができる。
【0179】
続いて、図53に示すように、SOI基板上にコバルト膜を形成する。このとき、ゲート電極G1〜G4と電極領域ELR2に直接接するようにコバルト膜が形成される。同様に、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1にもコバルト膜が直接接する。
【0180】
コバルト膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、コバルト膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極G1〜G4を構成するポリシリコン膜PF1とコバルト膜を反応させて、コバルトシリサイド膜(シリサイド膜CS)を形成する。これにより、ゲート電極G1〜G4および電極層ELはポリシリコン膜PF1とシリサイド膜CSの積層構造となる。シリサイド膜CSは、ゲート電極G1〜G4や電極層ELの低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、電極領域ELR2、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1の表面においてもシリコンとコバルト膜が反応してシリサイド膜CSが形成される。このため、電極領域ELR1、高濃度n型不純物拡散領域NR1〜NR3および高濃度p型不純物拡散領域PR1においても低抵抗化を図ることができる。
【0181】
そして、未反応のコバルト膜は、SOI基板上から除去される。なお、本実施の形態1では、シリサイド膜CSをコバルトシリサイド膜から形成するように構成しているが、例えば、コバルトシリサイド膜に代えて、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜あるいはプラチナ膜を形成するようにしてもよい。
【0182】
ここまでの工程で、アンテナスイッチ形成領域ASWRにMISFETQN1およびMISFETQN2を形成することができるとともに、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極領域ELR2を形成することができる。また、nチャネル型MISFET形成領域NTRにnチャネル型MISFETQを形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRにpチャネル型MISFETQを形成することができる。その後の配線工程は、前記実施の形態1と同様である。以上のようにして、本実施の形態2における半導体装置を製造することができる。
【0183】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、アンテナスイッチの一部を構成するMISFETと、固定電位が印加される配線との間に電極層を形成する例について説明する。
【0184】
図54は、本実施の形態3における半導体装置の構成を示す断面図である。図54において、支持基板1Sと、この支持基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層からなるSOI基板上に、アンテナスイッチの一部を構成するMISFETQN1が形成されている。具体的には、図54に示すSOI基板の右側領域において、素子分離領域STIで区画されたシリコン層(活性領域)にMISFETQN1が形成されている。このMISFETQN1の構造は、前記実施の形態1や前記実施の形態2と同様である。
【0185】
そして、図54に示すSOI基板の左側領域では、素子分離領域STI上に窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILを介して配線FL1が形成されている。この配線FL1には固定電位が印加されるようになっている。具体的に、配線FL1は、例えば、GND電位が印加される基準配線や、電源電位が印加される電源配線から構成されている。
【0186】
例えば、MISFETQN1がオンしている場合を考えると、オンしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1には、受信信号(周期的に電位が変化する信号)が印加される一方、配線FL1には固定電位(GND電位や電源電位)が印加される状態となっている。このことは、オンしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1と、固定電位が印加される配線FL1との間に時間的に変化する電位差が発生することを意味している。この結果、この時間的に変化する電位差が支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとの境界領域に形成されている界面キャリア層SCLに影響を及ぼすことになる。具体的には、界面キャリア層SCLを構成する電子が上述した時間的に変化する電位差によって、界面キャリア層SCLを移動する。界面キャリア層SCLを電子が移動するということは、界面キャリア層SCLに時間的に変化する電流が流れることを意味し、この界面キャリア層SCLを流れる時間的に変化する電流によって、高次高調波が発生する。
【0187】
そこで、本実施の形態3でも、図54に示すように、SOI基板上に形成されたMISFETQN1と配線FL1の間の素子分離領域STI上に電極層ELを形成している。電極層ELは、例えば、ポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1上に形成されたシリサイド膜CSから形成されている。したがって、電極層ELは、MISFETQN1のゲート電極G1と同様の構成をしており、電極層ELは、ゲート電極G1と同工程で形成される。
【0188】
さらに、電極層ELを覆うように、窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILが形成されており、この窒化シリコン膜SN1およびコンタクト層間絶縁膜CILを貫通して電極層ELに達するようにコンタクトホールCNTが形成されている。このコンタクトホールCNTには、導電性材料が埋め込まれてプラグPLG1が形成されている。具体的に、このプラグPLG1は、コンタクトホールCNTの内壁に形成されたチタン/窒化チタン膜とこのチタン/窒化チタン膜上に形成され、かつ、コンタクトホールCNTを埋め込むように形成されたタングステン膜から構成されている。そして、このプラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には、プラグPLG1と電気的に接続される配線L1が形成されている。この配線L1は、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化チタン膜との積層膜から形成されている。
【0189】
ここで、本実施の形態3でも、上述した電極層ELを設けることにより、電極層ELと界面キャリア層SCLの間に容量素子Cを形成することができる。すなわち、この容量素子Cは、電極層ELを上部電極とし、界面キャリア層SCLを下部電極としている。そして、電極層ELと界面キャリア層SCLの間に形成されている素子分離領域STIと埋め込み絶縁層BOXが容量素子Cの容量絶縁膜として機能する。
【0190】
このとき、電極層ELには正電位が印加される。このため、容量素子Cの上部電極として機能する電極層ELには正電荷が蓄積される。そして、電極層ELに相対する界面キャリア層SCLには負電荷である電子が蓄積される。つまり、上部電極である電極層ELに正電圧を印加することにより、下部電極側の界面キャリア層SCLに電子が引き付けられる。この引き付けられた電子は、容量素子Cに蓄積される電荷として固定される。すなわち、本実施の形態3でも、容量素子Cの上部電極となる電極層ELに正電荷を印加することにより、この電極層ELに相対する界面キャリア層SCLの電子を固定する点に特徴がある。
【0191】
例えば、オンしているMISFETQN1と電気的に接続されている配線L1と、固定電位が印加される配線FL1との間に時間的に変化する電位差が発生する場合、この時間的に変化する電位差が支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとの境界領域に形成されている界面キャリア層SCLに影響を及ぼすことになる。
【0192】
しかし、本実施の形態3では、MISFETQN1と配線FL1の間に電極層ELを設けており、この電極層ELに正電位を印加している。このため、電極層ELと相対する界面キャリア層SCLに存在する電子が電極層ELに印加されている正電位に引き付けられて固定される。この結果、上述した時間的に変化する電位差が界面キャリア層SCLに加わっても、電極層ELに相対する位置に固定されている電子によって、界面キャリア層SCLを電子が移動することを抑制できる。つまり、本実施の形態3でも、正電位が印加されている電極層ELに相対する界面キャリア層SCL内の電子を固定することにより、オンしているMISFETQN1と配線FL1との間に発生する電位差で、界面キャリア層SCL内を電子が移動することを抑制できるのである。言い換えれば、界面キャリア層SCL内の一部で強制的に電子を固定することにより、上述した時間的に変化する電位差が発生した場合であっても、界面キャリア層SCLを流れる電流を抑制することができ、この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生を抑制できる。
【0193】
なお、本実施の形態3でも、例えば、図55に示すように、MISFETQN1と配線FL1との間の領域にSOI基板のシリコン層を残し、このシリコン層に半導体領域からなる電極領域ELR1を図54に示す電極層ELに代えて形成することもできる。この場合、前記実施の形態2と同様に、電極領域ELR1と界面キャリア層SCLとの間に形成される容量素子Cの静電容量を大きくすることができるので、界面キャリア層SCL内で固定される電子数を多くすることができる。この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流がさらに抑制されるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生をさらに抑制することができる。
【0194】
(実施の形態4)
前記実施の形態1では、図2に示すように、ダイプレクサDPXを使用する例について説明したが、本実施の形態4では、ダイプレクサDPXを使用しない例について説明する。
【0195】
まず、前記実施の形態1のようにダイプレクサDPXを使用する場合、以下に示すような利点を有する。例えば、図2では、アンテナスイッチSPDT1のアンテナ端子ANT1と、アンテナスイッチSPDT2のアンテナ端子ANT2がダイプレクサDPXと電気的に接続されている。この構成において、GSM低周波帯域(GSM)の送信信号を送信する場合、アンテナスイッチSPDT1は、送信端子TX(LB)とアンテナ端子ANT1とを電気的に接続するように制御される。すると、ローパスフィルタLPF(LB)を通過したGSM低周波帯域(GSM)の送信信号は、アンテナスイッチSPDT1の送信端子TX(LB)からアンテナ端子ANT1を通って、ダイプレクサDPXに入力する。このとき、アンテナスイッチSPDT1で発生した高次高調波は、ダイプレクサDPXを構成するローパスフィルタで充分に除去される。一方、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の送信信号を送信する場合、アンテナスイッチSPDT2は、送信端子TX(HB)とアンテナ端子ANT2とを電気的に接続するように制御される。すると、ローパスフィルタLPF(HB)を通過したGSM高周波帯域(DCS/PCS)の送信信号は、アンテナスイッチSPDT2の送信端子TX(HB)からアンテナ端子ANT2を通って、ダイプレクサDPXに入力する。このとき、アンテナスイッチSPDT2で発生した高次高調波は、ダイプレクサDPXを構成するバンドパスフィルタで充分に除去される。
【0196】
つまり、ダイプレクサDPXは、GSM低周波帯域(GSM)の信号を通過させるローパスフィルタと、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の信号を通過させるバンドパスフィルタから構成されている。具体的には、アンテナ端子ANT1とアンテナ端子ANT(OUT)の間にローパスフィルタが接続されており、アンテナ端子ANT2とアンテナ端子ANT(OUT)との間にバンドパスフィルタが接続されている。このため、GSM低周波帯域(GSM)の送信信号は、ダイプレクサDPXのローパスフィルタを通過する際、アンテナスイッチSPDT1で発生した高次高調波が除去される。一方、GSM高周波帯域(DCS/PCS)の送信信号は、ダイプレクサDPXのバンドパスフィルタを通過する際、アンテナスイッチSPDT2で発生した高次高調波が除去される。
【0197】
このようにダイプレクサDPXを使用する場合、アンテナスイッチSPDT1やアンテナスイッチSPDT2で高次高調波が発生しても、ダイプレクサDPXによって、これらの高次高調波が低減されるため、アンテナスイッチSPDT1やアンテナスイッチSPDT2に要求される歪特性(高次高調波の低減)はそれほど厳しくならない利点がある。
【0198】
ところが、近年、携帯電話機の多機能化が進み、携帯電話機に搭載される部品の数も多くなってきている。一方、携帯電話機の小型化も進められている。このことから、携帯電話機に搭載されるダイプレクサDPXを削除する構成が主流になりつつある。
【0199】
例えば、図56は、ダイプレクサDPXを削除した本実施の形態4におけるRFモジュールRFMの構成を示す図である。図56に示すように、本実施の形態4におけるRFモジュールRFMでは、ダイプレクサDPXが削除されており、GSM低周波帯域(GSM)用の送信端子TX(LB)および受信端子RX(LB)と、GSM高周波帯域(DCS/PCS)用の送信端子TX(HB)および受信端子RX(HB)を切り替えるアンテナスイッチSP4Tが設けられている。この場合、アンテナスイッチSP4Tで発生した高次高調波を低減するダイプレクサDPXが存在しないので、アンテナスイッチSP4Tに要求される歪特性は厳しくなる。
【0200】
そこで、本実施の形態4のように、携帯電話機にダイプレクサDPXを使用しない場合、アンテナスイッチSP4Tのデバイス構造に本発明の技術的思想を適用することにより、効果的に、アンテナスイッチSP4Tから発生する高次高調波を低減できる。すなわち、携帯電話機からダイプレクサDPXを削除した構成においては、アンテナスイッチSP4Tに本発明の技術的思想を適用することにより、アンテナスイッチSP4Tに要求される厳しい歪特性もクリアすることができるのである。
【0201】
図57は、本実施の形態4における半導体チップCHP2(アンテナスイッチ8)のレイアウト構成を示す平面図である。図57に示すように、半導体チップCHP2は矩形形状をしており、この半導体チップCHP2の内側領域にアンテナスイッチと制御回路IC2が形成されている。
【0202】
ここで、本実施の形態4の特徴は、新たに、半導体チップCHP2に端子TE1(GB)および端子TE2(GB)を設け、この端子TE1(GB)から端子TE2(GB)へ電極層ELを延在させている点にある。例えば、半導体チップCHP2の上辺近傍に設けられた端子TE1(GB)から電極層ELが引き出されている。この引き出されている電極層ELは、例えば、RXスルートランジスタTH(RX_LB)を平面的に囲むとともに、RXスルートランジスタTH(RX_HB)を平面的に囲むように形成されている。さらに、電極層ELは、半導体チップCHP2の下辺近傍に設けられている端子TE2(GB)にまで達するように形成されている。そして、本実施の形態4の重要な点は、端子TE1(GB)から端子TE2(GB)へ電極層ELを延在するように設けるとともに、この電極層ELに正電位を印加することにある。これにより、前記実施の形態1と同様に、SOI基板に特有の界面キャリア層SCLに時間的に変化する電位差が加わっても、界面キャリア層SCLを構成する電子が移動することを抑制でき、この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因した高次高調波の発生を抑制できる顕著な効果を得ることができる。特に、本実施の形態4では、例えば、電極層ELがRXスルートランジスタTH(RX_LB)やRXスルートランジスタTH(RX_HB)を平面的に囲むように形成されているので、RXスルートランジスタTH(RX_LB)やRXスルートランジスタTH(RX_HB)に隣接するあらゆる方向での界面キャリア層SCLを構成する電子の移動を抑制することができる結果、効果的に、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因した高次高調波の発生を抑制できる。
【0203】
(実施の形態5)
本実施の形態5では、半導体チップの周辺を囲むように形成されているガードリング(シールドリング)と本発明の電極層とを電気的に接続する例について説明する。
【0204】
図58は、本実施の形態5における半導体チップCHP2(図1のアンテナスイッチ8が形成された半導体チップ)のレイアウト構成を示す図である。図58に示すように、半導体チップCHP2は矩形形状をしており、この矩形形状をした半導体チップCHP2の周辺領域を囲むようにガードリング(シールドリング)GURが形成されている。このガードリングGURは、半導体チップCHP2の外部から半導体チップCHP2の内部への水分の浸入を防止する機能を有している。そして、このガードリングGURで囲まれた半導体チップCHP2の内部領域に制御回路IC2およびアンテナスイッチが形成されている。そして、本実施の形態5では、ガードリングGURと電気的に接続されるように電極層EL1およぶ電極層EL2が形成されている。具体的に、電極層EL1は、GSM低周波帯域(GSM)用のアンテナスイッチ形成領域と、GSM高周波帯域(DCS/PCS)用のアンテナスイッチ形成領域との境界を延在するように配置され、かつ、電極層EL2は、制御回路IC2とアンテナスイッチ形成領域との境界を延在するように配置されている。
【0205】
以上のように、本実施の形態5では、ガードリングGURと電極層EL1および電極層EL2が電気的に接続されているので、電極層EL1や電極層EL2に正電位を印加することが容易になる利点がある。つまり、電極層EL1や電極層EL2だけが存在する場合には、電極層EL1や電極層EL2は、正電位を供給するパッドと直接接続させる必要があるが、この場合、電極層EL1や電極層EL2の配置位置に合わせて、正電位を供給するパッドの配置位置を決定する必要があるので、正電位を供給するパッドの配置位置の自由度が制限される。これに対し、本実施の形態5では、電極層EL1や電極層EL2が半導体チップCHP2の周辺を囲むように形成されているガードリングGURと電気的に接続されているので、正電位を供給するパッドの配置位置は、電極層EL1や電極層EL2の配置に制約されることなく、ガードリングGURのいずれかの位置で正電位を供給するパッドと接続することができる。つまり、本実施の形態5によれば、正電位を供給するパッドの形成位置に対する自由度が増加する利点がある。以上述べた実施の形態5のように、電極層EL1や電極層EL2に正電位を供給する経路として、既存のガードリングGURを使用することができる。
【0206】
図59は、図58のA−A線で切断した断面図である。図59に示すように、支持基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとシリコン層からなるSOI基板上には、MISFETQN1とMISFETQN2が形成されており、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層EL1が形成されている。そして、MISFETQN2の外側領域(図59の右側領域)には、ガードリングGURが形成されている。このガードリングGURは、例えば、ゲート電極G1、G2および電極層EL1と同層で形成されたガードリング層GUR1と、配線L1と同層で形成されたガードリング層GUR2と、配線L2と同層で形成されたガードリング層GUR3から形成されている。そして、ガードリング層GUR1とガードリング層GUR2はプラグPLG1で接続され、ガードリング層GUR2とガードリング層GUR3はプラグPLG2で接続されている。
【0207】
一方、電極層EL1は配線L1とプラグPLG1で接続され、この配線L1はプラグPLG2で配線L2と接続されている。したがって、電極層EL1と配線L1と配線L2を接続した構造と、ガードリング層GUR1とガードリング層GUR2とガードリング層GUR3とを接続した構造は類似している。特に、電極層EL1と界面キャリア層SCLの間に容量素子C3が形成されているのと同様に、ガードリング層GUR1と界面キャリア層SCLの間に容量素子C4が形成されていることになる。
【0208】
このことから、本実施の形態5では、電極層EL1と相対する界面キャリア層SCLに存在する電子が電極層EL1に印加されている正電位に引き付けられて固定されるとともに、ガードリング層GUR1と相対する界面キャリア層SCLに存在する電子がガードリング層GUR1に印加されている正電位に引き付けられて固定される。この結果、本実施の形態5によれば、界面キャリア層SCL内の一部で強制的に固定される電子が多くなるので、界面キャリア層SCLを流れる電流を充分に抑制することができ、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生を抑制できる。
【0209】
なお、本実施の形態5でも、例えば、図60に示すように、MISFETQN1とMISFETQN2との間の領域にSOI基板のシリコン層を残し、このシリコン層に半導体領域からなる電極領域ELR1を図59に示す電極層EL1に代えて形成することもできる。同様に、MISFETQN2の外側領域(図60の右側領域)にSOI基板のシリコン層を残し、このシリコン層に半導体領域からなるガードリング領域GRRを、図59に示すガードリング層GUR1に代えて形成することもできる。
【0210】
この場合、前記実施の形態2と同様に、電極領域ELR1と界面キャリア層SCLとの間に形成される容量素子C3の静電容量、および、ガードリング領域GRRと界面キャリア層SCLとの間に形成される容量素子C4の静電容量を大きくすることができる。このため、界面キャリア層SCL内で固定される電子数を多くすることができる。この結果、界面キャリア層SCLを流れる電流がさらに抑制されるので、界面キャリア層SCLを流れる電流に起因する高次高調波の発生をさらに抑制することができる。
【0211】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0212】
前記実施の形態1〜5では、SOI基板上にアンテナスイッチを構成するMISFETを形成する構造に本発明の技術的思想を適用する例について説明したが、本発明の技術的思想はこれに限らず、例えば、SOS(Silicon On Sapphire)基板上にアンテナスイッチを構成するMISFETを形成する構造にも幅広く適用することができる。
【0213】
図61は、SOS基板上にアンテナスイッチを形成した半導体装置の構成を示す断面図である。図61に示すように、サファイアからなる支持基板1SA上にシリコン層が形成されたSOS基板に、MISFETQN1およびMISFETQN2が形成されているとともに、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELが形成されている。そして、この電極層ELに正電位が印加されている。
【0214】
このように構成されている半導体装置においても、サファイアからなる支持基板1SAと、この支持基板1SA上に形成されているシリコン層とは異種結合することになるから、支持基板1SAとシリコン層の界面付近に界面キャリア層が形成される。したがって、SOS基板においても、界面キャリア層を流れる電流によって、高次高調波が発生することが少なからず存在すると考えられる。したがって、SOS基板においても、MISFETQN1とMISFETQN2の間に電極層ELを設け、この電極層ELに正電位を印加するという本発明の特徴構成をとることが有効である。このように構成することにより、電極層ELと相対する界面キャリア層に存在する電子が電極層ELに印加されている正電位に引き付けられて固定される。この結果、時間的に変化する電位差が界面キャリア層に加わっても、電極層ELに相対する位置に固定されている電子によって、界面キャリア層を電子が移動することを抑制できる効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0216】
1 携帯電話機
1S 支持基板
1SA 支持基板
2 アプリケーションプロセッサ
3 メモリ
4 ベースバンド部
5 RFIC
6 電力増幅器
7 SAWフィルタ
8 アンテナスイッチ
9 アンテナ
ANT(OUT) アンテナ端子
ANT1 アンテナ端子
ANT2 アンテナ端子
ASWR アンテナスイッチ形成領域
BARC 反射防止膜
BOX 埋め込み絶縁層
C 容量素子
CHP1 半導体チップ
CHP2 半導体チップ
CIL コンタクト層間絶縁膜
CNT コンタクトホール
CS シリサイド膜
C1 容量素子
C2 容量素子
C3 容量素子
C4 容量素子
DPX ダイプレクサ
EL 電極層
EL1 電極層
EL2 電極層
ELR 電極形成領域
ELR1 電極領域
ELR2 電極領域
FL1 配線
FR1 レジスト膜
FR2 レジスト膜
FR3 レジスト膜
FR4 レジスト膜
FR5 レジスト膜
FR6 レジスト膜
FR7 レジスト膜
FR8 レジスト膜
FR9 レジスト膜
FR10 レジスト膜
FR11 レジスト膜
FR12 レジスト膜
FR13 レジスト膜
FR14 レジスト膜
FR15 レジスト膜
FR16 レジスト膜
FR17 レジスト膜
FR18 レジスト膜
FR19 レジスト膜
FR20 レジスト膜
FR21 レジスト膜
FR22 レジスト膜
FR23 レジスト膜
FR24 レジスト膜
GND1 GND端子
GND2 GND端子
GND3 GND端子
GND4 GND端子
GOX ゲート絶縁膜
GR ゲート抵抗
GRR ガードリング領域
GUR ガードリング
GUR1 ガードリング層
GUR2 ガードリング層
GUR3 ガードリング層
G1 ゲート電極
G2 ゲート電極
G3 ゲート電極
G4 ゲート電極
HLD キャップ絶縁膜
IC1 制御回路
IC2 制御回路
IL1 層間絶縁膜
LPF(LB)ローパスフィルタ
LPF(HB)ローパスフィルタ
L1 配線
L2 配線
NEX1 低濃度n型不純物拡散領域
NEX2 低濃度n型不純物拡散領域
NEX3 低濃度n型不純物拡散領域
NR1 高濃度n型不純物拡散領域
NR2 高濃度n型不純物拡散領域
NR3 高濃度n型不純物拡散領域
NSR1 半導体領域
NTR nチャネル型MISFET形成領域
PA(HB) 増幅回路
PA(LB) 増幅回路
PAS 表面保護膜
PC 受動部品
PC(HB) 方向性結合器
PC(LB) 方向性結合器
PEX1 低濃度p型不純物拡散領域
PF1 ポリシリコン膜
PLG1 プラグ
PR1 高濃度p型不純物拡散領域
PSR1 半導体領域
PSR2 半導体領域
PSR3 半導体領域
PTR pチャネル型MISFET形成領域
MISFET
N1 MISFET
N2 MISFET
nチャネル型MISFET
pチャネル型MISFET
RFM RFモジュール
RX(HB) 受信端子
RX(LB) 受信端子
SCL 界面キャリア層
SH(RX_HB) RXシャントトランジスタ
SH(RX_LB) RXシャントトランジスタ
SH(TX_HB) TXシャントトランジスタ
SH(TX_LB) TXシャントトランジスタ
SIL シリコン層
SN1 窒化シリコン膜
SPDT1 アンテナスイッチ
SPDT2 アンテナスイッチ
SP4T アンテナスイッチ
STI 素子分離領域
SW サイドウォール
TE(GB) 端子
TH(RX_HB) RXスルートランジスタ
TH(RX_LB) RXスルートランジスタ
TH(TX_HB) TXスルートランジスタ
TH(TX_LB) TXスルートランジスタ
TX(HB) 送信端子
TX(LB) 送信端子
TX1 入力端子
TX2 入力端子
RX 制御端子
TX 制御端子
WB 配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナスイッチを形成した半導体チップを備え、
前記半導体チップは、
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層と、前記シリコン層を第1活性領域と第2活性領域に分離する素子分離領域とを含むSOI基板と、
(b)前記SOI基板の前記第1活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第1電界効果トランジスタと、
(c)前記SOI基板の前記第2活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第2電界効果トランジスタと、
(d)前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタとの間の前記素子分離領域上に形成された電極層を有し、
前記電極層には、正電位が印加される半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタのいずれか一方の電界効果トランジスタがオンしている場合、他方の電界効果トランジスタはオフしている半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層は、前記第1電界効果トランジスタの第1ゲート電極および前記第2電界効果トランジスタの第2ゲート電極と同じ膜で形成されている半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記電極層は、平面視において、前記第1電界効果トランジスタを囲むように形成されている半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体チップの周辺部には、前記半導体チップの外部から前記半導体チップの内部への水分の浸入を防止する機能を有するガードリングが形成されており、
前記電極層は、前記ガードリングと電気的に接続されている半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記支持基板はシリコンから形成され、前記埋め込み絶縁層は酸化シリコン膜から形成されている半導体装置。
【請求項7】
アンテナスイッチを形成した半導体チップを備え、
前記半導体チップは、
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層と、前記シリコン層を第1活性領域、第2活性領域、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間に設けられた電極用半導体領域とに分離する素子分離領域とを含むSOI基板と、
(b)前記SOI基板の前記第1活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第1電界効果トランジスタと、
(c)前記SOI基板の前記第2活性領域に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第2電界効果トランジスタとを有し、
前記電極用半導体領域には、正電位が印加される半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタのいずれか一方の電界効果トランジスタがオンしている場合、他方の電界効果トランジスタはオフしている半導体装置。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記電極用半導体領域には、導電型不純物が導入されている半導体装置。
【請求項10】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記電極用半導体領域は、平面視において、前記第1電界効果トランジスタを囲むように形成されている半導体装置。
【請求項11】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記半導体チップの周辺部には、前記半導体チップの外部から前記半導体チップの内部への水分の浸入を防止する機能を有するガードリングが形成されており、
前記電極用半導体領域は、前記ガードリングと電気的に接続されている半導体装置。
【請求項12】
請求項7記載の半導体装置であって、
前記支持基板はシリコンから形成され、前記埋め込み絶縁層は酸化シリコン膜から形成されている半導体装置。
【請求項13】
アンテナスイッチを形成した半導体チップを備え、
前記半導体チップは、
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層と、前記シリコン層を区画する素子分離領域とを含むSOI基板と、
(b)前記SOI基板の前記シリコン層に形成され、前記アンテナスイッチの一部を構成する第1電界効果トランジスタと、
(c)前記SOI基板の前記素子分離領域上に形成された電極層と、
(d)前記第1電界効果トランジスタおよび前記電極層を覆う前記SOI基板上に形成された層間絶縁膜と、
(e)前記層間絶縁膜上に形成された配線であって、平面視において、前記配線と前記第1電界効果トランジスタの間に前記電極層が配置されるように形成された前記配線とを有し、
前記電極層には、正電位が印加される半導体装置。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタのソース領域とドレイン領域の間には、周期的に電位が変化する信号が印加される一方、前記配線には固定電位が印加される半導体装置。
【請求項15】
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層からなるSOI基板を用意する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層を第1活性領域と第2活性領域に分離する素子分離領域を形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記シリコン層上に形成された前記ゲート絶縁膜上および前記素子分離領域上に第1導体膜を形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記第1活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第1電界効果トランジスタの第1ゲート電極を形成し、前記第2活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第2電界効果トランジスタの第2ゲート電極を形成するとともに、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間の前記素子分離領域上に電極層を形成する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1活性領域内に前記第1電界効果トランジスタの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記第2活性領域内に前記第2電界効果トランジスタの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成する工程とを備える半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1導体膜はポリシリコン膜から形成されている半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項15記載の半導体装置の製造方法であって、
前記支持基板はシリコンから形成され、前記埋め込み絶縁層は酸化シリコン膜から形成されている半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層からなるSOI基板を用意する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記シリコン層を第1活性領域、第2活性領域、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間に設けられた電極用半導体領域に分離する素子分離領域を形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記シリコン層上に形成された前記ゲート絶縁膜上および前記素子分離領域上に第1導体膜を形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記第1活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第1電界効果トランジスタの第1ゲート電極を形成し、前記第2活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第2電界効果トランジスタの第2ゲート電極を形成する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1活性領域内に第1導電型不純物を導入して、前記第1電界効果トランジスタの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記第2活性領域内に前記第1導電型不純物を導入して、前記第2電界効果トランジスタの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成するとともに、前記電極用半導体領域に前記第1導電型不純物を導入する工程とを備える半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法であって、
前記支持基板はシリコンから形成され、前記埋め込み絶縁層は酸化シリコン膜から形成されている半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成されたシリコン層からなるSOI基板を用意する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記シリコン層を第1活性領域、第2活性領域、前記第1活性領域と前記第2活性領域の間に設けられた電極用半導体領域に分離する素子分離領域を形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記SOI基板の前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記シリコン層上に形成された前記ゲート絶縁膜上および前記素子分離領域上に第1導体膜を形成する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記第1活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第1電界効果トランジスタの第1ゲート電極を形成し、前記第2活性領域上に前記ゲート絶縁膜を介して第2電界効果トランジスタの第2ゲート電極を形成する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1活性領域内に第1導電型不純物を導入して、前記第1電界効果トランジスタの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記第2活性領域内に前記第1導電型不純物を導入して、前記第2電界効果トランジスタの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成するとともに、前記電極用半導体領域に前記第1導電型不純物とは逆極性の第2導電型不純物を導入する工程とを備える半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載の半導体装置の製造方法であって、
前記支持基板はシリコンから形成され、前記埋め込み絶縁層は酸化シリコン膜から形成されている半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【公開番号】特開2011−258642(P2011−258642A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130000(P2010−130000)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】