説明

半導体装置の作製方法

【課題】絶縁膜中にコンタクトホールを形成せずに、絶縁膜の表面と裏面の間に導電領域を形成することを課題とする。
【解決手段】基板上の半導体素子及び第1の電極上に絶縁膜を形成し、絶縁膜中に第1の加速電圧で第1のイオンを添加して、絶縁膜中の第1の深さに第1の欠陥の多い領域を形成し、第1の加速電圧とは異なる第2の加速電圧で、第2のイオンを添加して、絶縁膜中の第1の深さとは異なる第2の深さに第2の欠陥の多い領域を形成し、第1及び第2の欠陥の多い領域上に、金属元素を含む導電材料を形成し、第1及び第2の欠陥の多い領域のうちの上方の領域から下方の領域に、金属元素を拡散させることにより、絶縁膜中に、第1の電極と、金属元素を含む導電材料とを電気的に接続する導電領域を形成する半導体装置の作製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される発明は半導体装置に係り、特に絶縁層の上層側及び下層側に設けられる配線間の接続を図る構成に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の配線構造として多層配線技術が知られている。多層配線技術は、層間絶縁膜を挟んで設けられる下層配線と上層配線を接続するためにはコンタクトホールが必要である。多層配線技術に係る課題の一つとして、当該コンタクトホールを埋め込む配線材料(金属材料)のステップカバレッジの問題がある。コンタクトホールを埋め込む配線材料のステップカバレッジが悪いと断線不良が発生し、上下の配線間で導通がとれなくなるといった問題が発生する。
【0003】
この問題を解決するための手段として、コンタクトホール内にメタルプラグを選択成長させた後、化学的機械研磨処理により層間絶縁膜とメタルプラグを平坦化する方法(特許文献1)、メッキ法によりコンタクトホール内に埋め込み金属層を形成する方法(特許文献2)などが従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−222631号公報
【特許文献2】特開平11−163129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術では、層間絶縁膜を挟んで下層側の配線と上層側の配線を接続するために、コンタクトホールに金属材料を埋め込む構造によってステップカバレッジの問題を解決している。しかしながら、コンタクトホールに金属材料を埋め込む方法では、成膜方法及び成膜条件が限定され、さらに平坦化処理と組み合わせて行う必要があるなどプロセス上の制約が種々存在している。
【0006】
さらに、多層配線技術ではステップカバレッジに関する問題の他に、コンタクトホールを形成する工程にもいくつかの問題が内在している。例えば、ドライエッチング法でコンタクトホールを形成する場合にはプラズマダメージやエッチング残渣の問題がある。ウエットエッチング法では、層間絶縁膜に微細な口径のコンタクトホールを形成することが困難であるといった問題がある。
【0007】
このような状況に鑑み、多層配線構造において、下層配線と上層配線の接続部におけるステップカバレッジの問題を解消することを目的の一とする。多層配線構造において、コンタクトホールを形成する工程を省略して多層配線間の接続部を構成することを他の目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
層間絶縁膜の下層配線と上層配線の接続を図るコンタクト部に、深さの異なる複数の欠陥部を設け、該欠陥部に導電材料を拡散させて下層配線と上層配線のコンタクトを形成することを要旨とする。ここで、層間絶縁膜の欠陥部は、金属等の導電材料を偏析させる作用があり、深さの異なる複数の欠陥部を設けることで層間絶縁膜を貫通する導通部を形成するために有益である。
【0009】
例示的な態様によれば、絶縁膜の一部の領域に、加速電圧を変えて複数回に分けてイオンを添加することにより、深さの異なる欠陥部を形成する。或いは、質量の異なるイオンを同じ加速電圧で絶縁膜の特定領域に添加することで、深さの異なる欠陥部を形成する。
【0010】
例示的な態様によれば、絶縁膜中にイオンを複数回に分けて添加する際に、少なくとも一のイオンは水素イオン、又はヘリウムイオン、アルゴンイオン、クリプトン若しくはネオンなど希ガスイオンを用いる。
【0011】
例示的な態様によれば、絶縁膜に設けられる欠陥部は、該絶縁膜の上方側と下方側の少なくとも2つの部位が存在する。このとき上方の欠陥部は下方の欠陥部よりも、欠陥が多く含まれている構成とされる。この構成により、金属等の導電性材料が上方側から下方側により拡散しやすくする。
【0012】
例示的な態様によれば、本発明は、基板上に半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極を形成し、前記半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜中に第1の加速電圧で第1のイオンを添加する第1のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の第1の深さに第1の欠陥の多い領域を形成し、前記絶縁膜中に、前記第1の加速電圧とは異なる第2の加速電圧で、第2のイオンを添加する第2のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の前記第1の深さとは異なる第2の深さに第2の欠陥の多い領域を形成し、前記第1及び第2の欠陥の多い領域上に、金属元素を含む導電材料を形成し、前記第1及び第2の欠陥の多い領域のうちの上方の領域から、下方の領域に、前記金属元素を拡散させることにより、前記絶縁膜中に、第1の電極と、前記金属元素を含む導電材料とを電気的に接続する導電領域を形成する半導体装置の作製方法に関する。
【0013】
例示的な態様によれば、基板上に半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極を形成し、前記半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜中に第1の加速電圧で第1のイオンを添加する第1のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の第1の深さに第1の欠陥の多い領域を形成し、前記絶縁膜中に、前記第1の加速電圧と同じ電圧で、前記第1のイオンとは異なる第2のイオンを添加する第2のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の前記第1の深さとは異なる第2の深さに第2の欠陥の多い領域を形成し、前記第1及び第2の欠陥の多い領域上に、金属元素を含む導電材料を形成し、前記第1及び第2の欠陥の多い領域のうちの上方の領域から、下方の領域に、前記金属元素を拡散させることにより、前記絶縁膜中に、第1の電極と、前記金属元素を含む導電材料とを電気的に接続する導電領域を形成する。
【発明の効果】
【0014】
層間絶縁膜に欠陥部を設け、該欠陥部を利用して導電材料を拡散させることにより、コンタクトホールを設けずに下層配線と上層配線の接続構造を設けることができる。ここで、層間絶縁膜に複数の欠陥部、すなわち深さの異なる欠陥部を設けることで導電性材料の拡散を容易とし、層間絶縁膜が厚くなった場合でも下層配線と上層配線の接続構造を設けることができる。層間絶縁膜にコンタクトホールを設けないことで、コンタクトホール形成プロセスに係るプラズマダメージやエッチング残渣の問題を解消することができる。また、層間絶縁膜に段差構造が無くなることで、ステップカバレッジの問題を無くすことができる。
【0015】
コンタクトホール形成の作製工程を行わないことで、製造コストを削減し、製造に要する時間を短縮することが可能となる。半導体装置の信頼性の観点からは、コンタクトホール内のエッチング残渣を原因として生じる接続不良(絶縁不良)の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】導電領域の形成方法を説明する断面図。
【図2】導電領域の形成方法を説明する断面図。
【図3】導電領域の形成方法を説明する断面図。
【図4】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図5】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図6】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図7】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図8】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図9】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図10】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図11】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図12】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図13】半導体装置の作製方法を説明する断面図。
【図14】イオンドーピングにおける、イオン種と加速電圧と深さの関係を示す図。
【図15】イオンドーピングにおける、加速電圧と深さの関係を示す図。
【図16】イオンドーピングにおける、加速電圧と深さの関係を示す図。
【図17】イオンドーピングにおける、イオン種と深さの関係を示す図。
【図18】イオンドーピングにおける、イオン種と深さの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
なお、本明細書において、半導体装置とは半導体素子(トランジスタやダイオードなど)を含む回路を有する装置をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般でもよい。
【0019】
[実施の形態1]
本実施の形態を、図1(A)〜図1(D)、図2(A)〜図2(D)、図3(A)〜図3(D)を用いて説明する。
【0020】
まず絶縁表面101上に、下方電極102(下方電極102a、下方電極102b、下方電極102c)を形成する。絶縁表面101とは、絶縁表面を有する基板でもよいし、基板上に絶縁膜を形成したものでもよい。
【0021】
下方電極102は、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、またはこれらの元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を用い、単層膜あるいは積層膜を形成すればよい。
【0022】
下方電極102を覆って、絶縁膜103を形成する(図1(A)参照)。絶縁膜103は、珪素の酸化物及び珪素の窒化物等の無機材料、すなわち、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜を用いることができる。さらに絶縁膜103として、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、及びエポキシ等の有機材料、シロキサン材料、ポリシラザン材料のいずれか一種または複数種を単層または積層で形成することができる。
【0023】
シロキサンとは、珪素(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む、又は置換基にフッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有するポリマー材料、を出発原料として形成される。
【0024】
またポリシラザンとは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料、いわゆるポリシラザンを含む液体材料を出発原料として形成される。
【0025】
絶縁膜103上の、下方電極102a、下方電極102b、下方電極102cが形成されていない領域に、レジストマスク104を形成する。
【0026】
次いでレジストマスク104をマスクとして、絶縁膜103中に第1のイオン105を用い、第1の加速電圧で第1のイオンドーピングを行う(図1(B)参照)。イオンドーピングを行うことにより、絶縁膜103の結晶構造が破壊され、欠陥が発生する。
【0027】
第1のイオン105は、水素イオン、又はヘリウムイオン、アルゴンイオン、クリプトン若しくはネオンなど希ガスイオンを用いる。第1のイオン105としては、水素又は希ガスを含むソースガスをプラズマ励起して生成された1つの原子または複数の同一の原子からなるイオン種、あるいは異種の原子からなるイオン種を打ち込むことが好ましい。
【0028】
アルゴン等原子半径の大きな原子のイオンを添加すると、絶縁膜103中により多くの欠陥を形成することができる。
【0029】
なお本明細書においてイオンドーピングとは、原料ガスから生成されるイオン化したガスを質量分離せず、そのまま電界で加速して対象物に添加する方式を指す。
【0030】
第1のイオンドーピングにより、レジストマスク104が形成されなかった絶縁膜103の内部に、ドーピングされた領域107(領域107a、領域107b、領域107c)が形成される(図1(C)参照)。領域107a、領域107b、領域107cそれぞれの内部には、第1のイオンドーピングのために欠陥が生じている。
【0031】
ただし、イオンドーピングでは、ある深さで濃度のピークを有するため、領域107中においても欠陥がある深さで濃度が一番大きくなる。領域107(領域107a、領域107b、領域107c)において欠陥の濃度が一番大きい領域を領域109(領域109a、領域109b、領域109c)とする。
【0032】
図1(D)には、第1のイオン105がドーピングされた領域107a中に形成された、欠陥の多い領域109aを示す。
【0033】
次いで第2のイオン112を用い、第2の加速電圧で第2のイオンドーピングを行う(図2(A)参照)。
【0034】
第2のイオンドーピングにより、レジストマスク104が形成されなかった絶縁膜103の内部に、ドーピングされた領域113(領域113a、領域113b、領域113c)が形成される(図2(B)参照)。領域113a、領域113b、領域113cそれぞれの内部にも、第2のイオンドーピングにより欠陥が生じている。
【0035】
また領域113(領域113a、領域113b、領域113c)において欠陥の濃度が一番大きい領域を領域109(領域109a、領域109b、領域109c)とする。
【0036】
図2(C)には、第2のイオン112がドーピングされた領域113a中に形成された、欠陥の多い領域109aを示す。
【0037】
本実施の形態において、第2のイオンドーピングの際の加速電圧を、第1のイオンドーピングの際の加速電圧より小さいものとしている。これにより、領域115aは、領域109aよりも上方に形成される。
【0038】
第2のイオン112は、第1のイオン105と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし上記のように、原子半径の大きな原子のイオンを添加すると、より多くの欠陥を形成することができるので、必要に応じて、原子半径の大きな原子と原子半径の小さな原子を使い分ければよい。
【0039】
第1のイオン105と第2のイオン112が同じ場合は、加速電圧が高い方が深く添加されるので、第1のイオン105と第2のイオン112として同じイオンを用い、加速電圧を変えることにより領域109と領域115aの深さを決定してもよい。
【0040】
また、同じ加速電圧であっても、重い原子のイオンの方が軽い原子のイオンよりも浅く添加されるので、第1のイオン105と第2のイオン112の一方を重い原子のイオン、他方を軽い原子のイオンを用い、加速電圧を同じ電圧で添加してもよい。
【0041】
本実施の形態では、第1のイオン105として水素イオン、第2のイオンとしてアルゴンイオンを用い、第2の加速電圧を第1の加速電圧よりも小さくして、第1及び第2のイオンドーピングを行う。これにより上方の領域115aの方が下方の領域109aよりも欠陥が多くなる。
【0042】
後述する工程で、絶縁膜103上に形成した金属膜116の金属元素を、領域113a中に拡散させる。このときに上方の領域115aの方が下方の領域109aよりも欠陥が多いと、金属元素が上方から下方へ拡散しやすくなる。
【0043】
次いで、絶縁膜103及びレジストマスク104上に、金属膜116を形成する(図2(D)参照)。金属膜116は、金属元素を含む導電材料膜であればよく、スパッタリング法やメッキ法等により形成することができる。金属膜116としては、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)から選択された元素、またはこれらの元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を用い、単層膜あるいは積層膜を形成する。さらに、炭素(C)またはシリコン(Si)から選択された元素、またはこれらの元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を用い、単層膜あるいは積層膜を形成してもよい。
【0044】
あるいは上記の金属元素を含む導電ペーストを塗布することにより、金属膜116を形成すればよい。さらに金属元素を含む導電ペーストを用いる際は、レジストマスク104上には形成せず、絶縁膜103上のみに金属膜116を形成することも可能である。
【0045】
金属膜116に含まれる金属元素は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)等の侵入型原子であると、絶縁膜103中により入り込みやすくなる。
【0046】
本実施の形態では、金属膜116として、ニッケル膜をスパッタ法により、絶縁膜103上に成膜する。
【0047】
次いで加熱工程により、金属膜116と絶縁膜103が接している領域から、絶縁膜103中の領域113に、金属膜116の金属元素を拡散させる(図3(A)参照)。
【0048】
図3(B)に領域113の1つ領域113aの拡大図を示す。領域113aにおいて、まず金属元素は領域115aに拡散する。領域113aは、上述の工程により欠陥が多くなっているので、金属元素が拡散しやすい。すなわち、領域113aは金属元素の第1の貯蔵領域として機能する。
【0049】
さらに金属元素は領域113aから領域109aと拡散する。すなわち領域109aは、金属元素の第2の貯蔵領域として機能する。もし貯蔵領域が1つしかない場合、すなわち領域113aか領域109aのどちらかしか形成されない場合は、貯蔵領域に蓄えられた金属元素が拡散しない恐れが生じてしまう。そのため絶縁膜103の深さ方向に2つの貯蔵領域が形成されると、導電領域を形成する上で有利である。
【0050】
金属元素が領域109aからさらに下方に拡散され、下方電極102aにまで到達することにより、上方電極である金属膜116と下方電極102aを電気的に接続する導電領域119a(並びに、導電領域119b及び導電領域119c)が形成される(図3(C)参照)。
【0051】
加熱工程は、レーザアニール、ランプアニール、またはファーネスアニールによって行えばよい。
【0052】
次いで、レジストマスク104とレジストマスク104上の金属膜116を除去する(図3(D)参照)。導電領域119a、導電領域119b、導電領域119c上の金属膜116を、それぞれ電極116a、電極116b、電極116cとする。
【0053】
あるいは加熱工程の前に、レジストマスク104とレジストマスク104上の金属膜116を除去してもよい。
【0054】
さらに、第2のイオン112を添加後、レジストマスク104を除去し、絶縁膜103上に金属膜116を形成し、エッチングにより領域113a、領域113b、領域113c上以外の金属膜116を除去してもよい。
【0055】
以上のようにして、絶縁膜103の表面と裏面を導通させる、すなわち膜厚方向に対して導通する導電領域119を有する絶縁膜103を得ることができる。またこのような絶縁膜103を有する素子を得ることが可能となる。
【0056】
[実施の形態2]
本実施の形態では、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を有する半導体装置を作製した例を、図4(A)〜図4(C)、図5(A)〜図5(C)、図6(A)〜図6(D)、を用いて説明する。
【0057】
まず基板121上の下地膜122上に、TFT139、TFT149、絶縁膜123、絶縁膜124、電極138a、電極138b、電極148a、電極148bを形成する(図4(A)参照)。
【0058】
基板121は、絶縁性の表面を有する基板であり、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、上面に絶縁膜を有したシリコンウェハや金属板等である。本実施の形態では、基板121としてガラス基板を用いる。
【0059】
下地膜122は、基板121中の不純物がTFT139及びTFT149内に混入しないために設け、必要なければ下地膜122を設けなくてもよい。下地膜122として、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜いずれかの単層膜、あるいはこれら2つ以上の膜を積層した積層膜を形成してもよい。
【0060】
TFT139は、島状半導体膜134、ゲート絶縁膜135、ゲート電極136、ゲート電極136の側面に形成されたサイドウォール137a及びサイドウォール137bを有している。
【0061】
島状半導体膜134中には、チャネル形成領域131、低濃度不純物領域132a及び低濃度不純物領域132b、高濃度不純物領域133a及び高濃度不純物領域133bが形成されている。低濃度不純物領域132a及び低濃度不純物領域132b、ソース領域及びドレイン領域である高濃度不純物領域133a及び高濃度不純物領域133bには、それぞれn型を付与する不純物元素、例えばリン(P)やヒ素(As)が含まれており、TFT139はnチャネル型TFTである。
【0062】
TFT149は、島状半導体膜144、ゲート絶縁膜145、ゲート電極146、ゲート電極146の側面に形成されたサイドウォール147a及びサイドウォール147bを有している。
【0063】
島状半導体膜144中には、チャネル形成領域141、ソース領域及びドレイン領域である高濃度不純物領域143a及び高濃度不純物領域143bが形成されている。高濃度不純物領域143a及び高濃度不純物領域143bには、それぞれp型を付与する不純物元素、例えばホウ素(B)が含まれており、TFT149はpチャネル型TFTである。
【0064】
TFT139及びTFT149を覆って絶縁膜123が形成されている。絶縁膜123は、窒化珪素膜あるいは酸素を含む窒化珪素膜を用いて形成すればよい。
【0065】
絶縁膜123を覆って、絶縁膜124が形成される。珪素の酸化物及び珪素の窒化物等の無機材料、すなわち、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜を用いることができる。また絶縁膜124として、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、及びエポキシ等の有機材料、シロキサン材料、ポリシラザン材料のいずれか一種または複数種を単層または積層で形成することができる。
【0066】
絶縁膜124上に、高濃度不純物領域133aに電気的に接続される電極138a、高濃度不純物領域133bに電気的に接続される電極138b、高濃度不純物領域143aに電気的に接続される電極148a、高濃度不純物領域143bに電気的に接続される電極148bを形成する。
【0067】
電極138a、電極138b、電極148a、電極148bとして、実施の形態1で述べられた下方電極102と同様の材料を用いて形成すればよい。すなわち、電極138a、電極138b、電極148a、電極148bとして、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、またはこれらの元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を用い、単層膜あるいは積層膜を形成すればよい。
【0068】
なお、電極138a、電極138b、電極148a、電極148bの1つあるいは2つ以上は、配線として形成してもよいし、電極と配線を別々に形成後それらを電気的に接続してもよい。
【0069】
次いで、絶縁膜124、電極138a、電極138b、電極148a、電極148bを覆って、絶縁膜151を形成する(図4(B)参照)。絶縁膜151は、絶縁膜103と同様の材料、つまり珪素の酸化物及び珪素の窒化物等の無機材料、すなわち、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜を用いることができる。さらに絶縁膜151として、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、及びエポキシ等の有機材料、シロキサン材料、ポリシラザン材料のいずれか一種または複数種を単層または積層で形成することができる。
【0070】
次いで、実施の形態1の図1(B)に示す作製工程と同様に、絶縁膜151上に、レジストマスク152を形成する。このときレジストマスク152を形成しない開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dが設けられる(図5(C)参照)。
【0071】
開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dは、それぞれ電極138a、電極138b、電極148a、電極148b上に設けられる。
【0072】
次いで、レジストマスク152をマスクとして、絶縁膜151の開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dに、第1のイオン153を用い第1の加速電圧で第1のイオンドーピングを行う(図5(A)参照)。第1のイオン153は実施の形態1の第1のイオン105と同様のものを用いればよい。また後の工程に第2のドーピングで用いられる第2のイオン161に応じて、イオン種を選べばよい。また第1の加速電圧も、第2のドーピングの際の第2の加速電圧に応じて決めればよい。
【0073】
開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dに第1のイオン153が添加されると、開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dの下に存在する、絶縁膜151中の領域155a、領域155b、領域155c、領域155dは、結晶構造が破壊され、欠陥が形成される(図5(B)参照)。
【0074】
実施の形態1で述べたように、イオンドーピングでは、ある深さで濃度のピークを有するため、領域155a、領域155b、領域155c、領域155dそれぞれにおいても、ある深さで欠陥の濃度が一番大きくなる。
【0075】
次いで、レジストマスク152をマスクとして、絶縁膜151の開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dに、第2のイオン161を用い第2の加速電圧で第2のイオンドーピングを行う(図5(C)参照)。第2のイオン161は実施の形態1の第2のイオン112と同様のものを用いればよい。
【0076】
第2のイオンドーピングにより、開口部154a、開口部154b、開口部154c、開口部154dの下に存在する、絶縁膜151中に、領域156a、領域156b、領域156c、領域156dに、欠陥が形成される(図6(A)参照)。
【0077】
第2の加速電圧を第1の加速電圧と異ならせ、実施の形態1の図2(C)に示すように、領域156a、領域156b、領域156c、領域156dのそれぞれに、深さの異なる欠陥が多い領域を2つ形成する。
【0078】
次いで、レジストマスク152及び絶縁膜151上に、金属元素を含む導電材料膜として金属膜157を形成する(図6(B)参照)。金属膜157は、金属膜116と同様の材料を用いればよい。
【0079】
金属膜157を形成後、加熱して金属元素を領域156a、領域156b、領域156c、領域156dに拡散させる。これにより導電領域159a、導電領域159b、導電領域159c、導電領域159dが形成される(図6(C)参照)。
【0080】
あるいは、加熱工程の前にレジストマスク152及びレジストマスク152上の金属膜157を除去してもよい。さらに、第2のイオン161を添加後、レジストマスク152を除去し、絶縁膜151上に金属膜157を形成し、エッチングにより領域156a、領域156b、領域156c、領域156d上の金属膜157を除去してもよい。
【0081】
実施の形態1で述べたように、2段階のイオンドーピングによって上下に2つの欠陥の多い領域が形成されていると、金属元素がより拡散しやすくなり、電極138a、電極138b、電極148a、電極148bそれぞれに確実に達することができる。これにより信頼性の高い導電領域159a、導電領域159b、導電領域159c、導電領域159dを形成することができる。また導電領域159a、導電領域159b、導電領域159c、導電領域159dそれぞれの抵抗値を低くすることができる。
【0082】
次いでレジストマスク152及びレジストマスク152上の金属膜157を除去する。絶縁膜151上に残存し、導電領域159a、導電領域159b、導電領域159c、導電領域159dそれぞれに電気的に接続する金属膜157を、それぞれ電極157a、電極157b、電極157c、電極157dとする。
【0083】
すなわち、電極138a、導電領域159a、電極157aは電気的に接続されており、電極138b、導電領域159b、電極157bは電気的に接続されている。また、電極148a、導電領域159c、電極157cは電気的に接続されており、電極148b、導電領域159d、電極157dは電気的に接続されている。
【0084】
また、nチャネル型TFTであるTFT139とpチャネル型TFTであるTFT149は、それぞれに独立させてもよいし、電極138b及び電極148aを電気的に接続、あるいは、電極157b及び電極157cを電気的に接続することにより、CMOS回路を形成してもよい。
【0085】
なお電極138b及び電極148aを電気的に接続した場合は、導電領域159a及び159cは、どちらか一方を形成すればよい。さらに電極157bと157cもどちらか一方を形成すればよい。
【0086】
本実施の形態の半導体装置は、絶縁膜151にコンタクトホールを形成することなく、導電領域159a、導電領域159b、導電領域159c、導電領域159dを形成することができる。これにより絶縁膜151の強度及び平坦性をを維持することができる。
【0087】
本実施の形態では、2段階にイオンをドーピングすることで、絶縁膜151の深さ方向に、上下に2つの欠陥の多い領域を形成することができ、より確実かつ均一に金属元素を拡散させることができる。
【0088】
[実施の形態3]
本実施の形態では、実施の形態2とは異なる作製工程で半導体装置を作製する例を、図7(A)〜図7(D)、図8(A)〜図8(C)、図9(A)〜図9(D)、図10(A)〜図10(D)、図11(A)〜図11(C)、図12(A)〜図12(C)、図13を用いて説明する。
【0089】
まず、基板201の一方の面上に第1の絶縁層202を形成する。次に、第1の絶縁層202上に剥離層203を形成する。続いて、剥離層203上に第2の絶縁層204を形成する(図7(A)参照)。
【0090】
基板201は、絶縁性の表面を有する基板であり、例えば、ガラス基板、石英基板、樹脂(プラスチック)基板、サファイア基板、上面に絶縁膜を有したシリコンウェハや金属板等である。好適には、基板201として、ガラス基板又はプラスチック基板を用いるとよい。ガラス基板やプラスチック基板は、1辺が1メートル以上で四角形状などの所望の形状のものを作製することが容易である。例えば、四角形状で、1辺が1メートル以上のガラス基板やプラスチック基板を用いると、作製する半導体集積回路が四角形状であるため生産性を大幅に向上させることができる。このような利点は、円形で、最大で直径が30センチメートル程度のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。
【0091】
第1の絶縁層202及び第2の絶縁層204は、気相成長法(CVD法)やスパッタリング法等により、珪素の酸化物、珪素の窒化物、窒素を含む珪素の酸化物、酸素を含む珪素の窒化物などを材料として形成する。また、第1の絶縁層202及び第2の絶縁層204は積層構造であってもよい。第1の絶縁層202は、基板201からの不純物元素が上層に侵入してしまうことを防止する役目を担う。但し、第1の絶縁層202は、必要がなければ形成しなくても良い。
【0092】
剥離層203は、スパッタリング法等により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)等から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは合金も含む化合物材料を含む層の、単層又は積層を形成する。なお、珪素を含む層に含まれる珪素は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。
【0093】
剥離層203が単層構造の場合、好ましくは、タングステン、モリブデン、タングステンとモリブデンの混合物、タングステンの酸化物、タングステンの窒化物、タングステンの酸化窒化物、タングステンの窒化酸化物、モリブデンの酸化物、モリブデンの窒化物、モリブデンの酸化窒化物、モリブデンの窒化酸化物、タングステンとモリブデンの混合物の酸化物、タングステンとモリブデンの混合物の窒化物、タングステンとモリブデンの混合物の酸化窒化物、タングステンとモリブデンの混合物の窒化酸化物のいずれかを含む層を形成する。
【0094】
剥離層203を積層構造で形成する場合、例えば、1層目としてタングステン、モリブデン、またはタングステンとモリブデンの混合物を含む層のいずれか1層を形成し、2層目として、タングステンの酸化物、窒化物、酸化窒化物、もしくは窒化酸化物、または、モリブデンの酸化物、窒化物、酸化窒化物、もしくは窒化酸化物、またはタングステンとモリブデンの混合物の酸化物、窒化物、酸化窒化物、もしくは窒化酸化物を形成することができる。これらの酸化物や酸化窒化物は、1層目の表面を酸素プラズマ処理、またはNOプラズマ処理することによって形成することができる。
【0095】
剥離層203として、タングステン等の金属を含む層と当該金属の酸化物を含む層との積層構造を形成する場合、金属を含む層上に酸化珪素を含む層を形成することで、金属を含む層と酸化珪素を含む層との界面に当該金属の酸化物を含む層が形成されることを利用しても良い。
【0096】
また、タングステン等の金属を含む層の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、またはオゾン水等酸化力の強い溶液での処理等を行い、金属を含む層上に当該金属の酸化物を含む層を形成した後、その上層に窒化珪素層、酸化窒化珪素層、または窒化酸化珪素層を形成することができる。これは、上記金属の窒化物、酸化窒化物、および窒化酸化物を含む層を形成する場合も同様である。
【0097】
次に、第2の絶縁層204上に半導体素子を形成する。半導体素子としてはトランジスタ、ダイオード、コンデンサ、バイポーラトランジスタ、薄膜トランジスタ等が挙げられる。本実施の形態では、半導体素子としてnチャネル型TFT139及びpチャネル型TFT149を形成した場合を示す(図7(B)参照)。なお、nチャネル型TFT139、pチャネル型TFT149、絶縁膜123、絶縁膜124、電極138a、電極138b、電極138c、電極138dの作製方法については、実施の形態2に基づけばよい。
【0098】
次いで、nチャネル型TFT139、pチャネル型TFT149、絶縁膜124、電極138a、電極138b、電極138c、電極138dを覆って、絶縁膜151を形成する(図7(C)参照)。
【0099】
次いで、絶縁膜151の一部、絶縁膜124の一部、絶縁膜123の一部、第2の絶縁層204の一部、剥離層203の一部を除去し、第1の絶縁層202の一部が露出するように、開口部205を形成する(図7(D)参照)。
【0100】
開口部205を形成する方法については特に限定されない。例えば、レジスト等により形成されたマスクを絶縁膜151上に設けた後、絶縁膜151、絶縁膜124、絶縁膜123、第2の絶縁層204、剥離層203をエッチングすることによって開口部205を形成することができる。開口部205を形成するためのエッチング方法について特に限定はなく、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、又は両方を組み合わせた方法を用いてもよい。
【0101】
次に、絶縁膜151上に、支持基板221を設ける(図8(A)参照)。支持基板221は、絶縁層207と接着層206が積層された基板である。接着層206は、加熱処理により接着力が低下する熱可塑性樹脂であり、例えば、加熱によって軟化する材料、加熱により膨張するマイクロカプセルや発泡剤を混入した材料、熱硬化性樹脂に熱溶融性や熱分解性を付与した材料、水の侵入による界面強度劣化やそれに伴って吸水性樹脂が膨張する材料を用いて形成される。本明細書において、絶縁層207と接着層206とをあわせた支持基板221を、熱剥離型の支持基板とも記載する。
【0102】
また、熱剥離型の支持基板の代わりに、加熱処理によって接着力が低下するフィルムからなる熱剥離フィルムや、UV(紫外線)照射を行うことによって、接着力が低下するUV(紫外線)剥離フィルム等を用いてもよい。UVフィルムは、絶縁層207とUV(紫外線)照射を行うことによって粘着力が弱くなる接着層206が積層されたフィルムである。
【0103】
次に、支持基板221を用いて、剥離層203の内部、または、剥離層203と第2の絶縁層204を境界として、基板201と半導体素子の剥離を行う。図8(B)に図示する構成では、剥離層203と第2の絶縁層204の間を境界として剥離が行われた場合を示す。このように、支持基板221を用いることにより剥離工程を容易にかつ短時間で行うことができる。
【0104】
次に、加熱処理により接着層206と絶縁膜151の間の接着力を低下させ、半導体素子から支持基板221を分離する(図8(C)参照)。
【0105】
半導体素子から支持基板221分離する際に、開口部205により、絶縁膜151の別の一部、絶縁膜124の別の一部、絶縁膜123の別の一部、第2の絶縁層204の別の一部が除去される(図9(A)参照)。
【0106】
次いで、第2の絶縁層204上の、電極138a、電極138b、電極148a、電極148bそれぞれに対応する領域に、レジストマスク208を形成する(図9(C)参照)。
【0107】
次いで、第1のイオン209を用いて第1の加速電圧で第1のイオンドーピングを行うことにより(図9(C)参照)、欠陥が多い領域211a、領域211b、領域211c、領域211dが形成される(図9(D)参照)。第1のイオン209は、実施の形態1の第1のイオン105と同様のものを用いればよい。また後の工程に第2のドーピングで用いられる第2のイオン210に応じて、イオン種を選べばよい。また第1の加速電圧も、第2のドーピングの際の第2の加速電圧に応じて決めればよい。
【0108】
次いでレジストマスク208を用い、第2のイオン210を用いて第2の加速電圧で第2のイオンドーピングを行うことにより(図10(A)参照)、欠陥が多い領域212a、領域212b、領域212c、領域212dが形成される(図10(B)参照)。
【0109】
実施の形態1及び実施の形態2で述べたように、第1の加速電圧と第2の加速電圧を変えることにより、領域212a、領域212b、領域212c、領域212dそれぞれに、深さが異なる欠陥領域を2つ形成する。
【0110】
次いで、絶縁層204及びレジストマスク208上に金属膜215を形成する(図10(C)参照)
【0111】
次いで、加熱工程により、領域211a、領域211b、領域211c、領域211dに金属元素を拡散させ、導電領域216a、導電領域216b、導電領域216c、導電領域216dを形成する(図10(D)参照)。
【0112】
次いで、レジストマスク208及びレジストマスク208上の金属膜215を除去する。導電領域216a、導電領域216b、導電領域216c、導電領域216dそれぞれの上の金属膜215は、電極215a、電極215b、電極215c、電極215dとなる。以上の工程により、半導体回路素子231が作製される(図11(A)参照)。
【0113】
電極138a、導電領域216a、電極215aは電気的に接続されており、電極138b、導電領域216b、電極215bは電気的に接続されている。また、電極148a、導電領域216c、電極215cは電気的に接続されており、電極148b、導電領域216d、電極215dは電気的に接続されている。
【0114】
また、実施の形態2と同様に、絶縁膜151中に導電領域を形成してもよい。図9(A)に示す構成を得た後、絶縁膜151中に欠陥の多い領域を形成し、金属元素を拡散させて、絶縁膜151中に、導電領域226a、導電領域226b、導電領域226c、導電領域226dを形成してもよい。導電領域226a、導電領域226b、導電領域226c、導電領域226dのそれぞれの上には、電極227a、電極227b、電極227c、電極227dが形成されている(図11(B)参照)。図11(B)に示す構成を、半導体回路素子232とする。
【0115】
電極138a、導電領域226a、電極227aは電気的に接続されており、電極138b、導電領域226b、電極227bは電気的に接続されている。また、電極148a、導電領域226c、電極227cは電気的に接続されており、電極148b、導電領域226d、電極227dは電気的に接続されている。
【0116】
また、半導体回路素子231と半導体回路素子232を組み合わせた構成を図11(C)に示す。図11(C)の構成では、半導体回路素子231の電極215a、電極215b、電極215c、電極215dをそれぞれ、半導体回路素子232の電極227a、電極227b、電極227c、電極227dと電気的に接続することで、立体的な回路素子を作製することができる。
【0117】
また図12(A)に示すように、絶縁膜124に導電領域216a、導電領域216b、導電領域216c、導電領域216dを形成し、絶縁膜151に導電領域226a、導電領域226b、導電領域226c、導電領域226dを形成した半導体回路素子233を作製してもよい。
【0118】
半導体回路素子233において、TFT139の電極138a、並びに、導電領域216a、電極215a、導電領域226a、電極227aは電気的に接続されている。また、TFT139の電極138b、並びに、導電領域216b、電極215b、導電領域226b、電極227bは電気的に接続されている。また、TFT149の電極148a、並びに、導電領域216c、電極215c、導電領域226c、電極227cは電気的に接続されている。また、TFT149の電極148b、並びに、導電領域216d、電極215d、導電領域226d、電極227dは電気的に接続されている。
【0119】
さらに、半導体回路素子232と半導体回路素子233を立体的に配置してもよいし(図12(B)参照)、半導体回路素子231と半導体回路素子233を立体的に配置してもよい(図12(C)参照)。
【0120】
また複数の半導体回路素子233を立体的に配置してもよい。図13には2つの半導体回路素子233を立体的に配置した構成を示す。複数の半導体回路素子233を立体的に配置し、さらに半導体回路素子231または半導体回路素子232、あるいはその両方を配置してもよい。
【0121】
本実施の形態の半導体装置は、絶縁層204、絶縁膜123、絶縁膜124、または、絶縁膜151、さらにあるいはその全部にコンタクトホールを形成することなく、導電領域216a、導電領域216b、導電領域216c、導電領域216d、または、導電領域226a、導電領域226b、導電領域226c、導電領域226d、さらにあるいはその全てを形成することができる。これにより、絶縁層204、絶縁膜123、絶縁膜124、または、絶縁膜151、さらにあるいはその全部の強度及び平坦性をを維持することができる。
【0122】
本実施の形態では、2段階にイオンをドーピングすることで、絶縁層204、絶縁膜123、絶縁膜124、または、絶縁膜151、さらにあるいはその全部の深さ方向に、上下に2つの欠陥の多い領域を形成することができ、より確実かつ均一に金属元素を拡散させることができる。
【実施例1】
【0123】
本実施例では、イオンドーピングにおける加速電圧と濃度の関係、及び、イオン種と濃度の関係について計算を行った結果を、図14、図15、図16、図17、図18を用いて説明する。
【0124】
本実施例で用いたイオンがドーピングされる膜は、密度2.3g/cmの酸化珪素膜(SiO膜)であり、注入イオン数は99999である。イオン種は、アルゴン(Ar)と水素(H)を用いた。
【0125】
図14において、イオン種はアルゴン(Ar)で加速電圧は40kV、イオン種はアルゴン(Ar)で加速電圧は80kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は5kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は10kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は5kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は10kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は20kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は40kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は50kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は80kV、イオン種は水素(H)で加速電圧は10kV(ただし酸化珪素膜(SiO膜)の密度は1.3g/cmとする)を用いて計算を行った。
【0126】
図15では、イオン種としてアルゴン(Ar)を用い、加速電圧を変えた計算結果を示す。アルゴンを加速電圧40kVでドーピングしたものと、加速電圧80kVでドーピングしたものを比べると、40kVでドーピングした場合は濃度が高く深さが浅い位置に濃度のピークが生じる。一方、80kVでドーピングした場合は、濃度は小さくなってしまうが、より深い位置に濃度のピークが生じる。
【0127】
また図16には、イオン種として水素(H)を用い、加速電圧を変えた計算結果を示す。図16では、加速電圧が5kVの場合は濃度が高いが、それ以外は加速電圧が変わっても、濃度はあまり変化しない。
【0128】
また図17及び図18では、加速電圧が一定(40kV及び80kV)の場合で、イオン種によってどのように違うかを示したグラフである。重い原子であるアルゴン(Ar)は、水素(H)と比較して、濃度は高い反面浅い位置にしか添加されない。逆に言うと、軽い原子である水素(H)は深い深さまで添加されるが、濃度は小さくなってしまう。
【0129】
図14〜図18で示されたように、イオン種や加速速度を変えることにより、ドーピングされる深さや濃度を制御することができる。これにより、絶縁膜中の欠陥の多い領域の深さや濃度を制御することができる。
【符号の説明】
【0130】
101 絶縁表面
102 下方電極
102a 下方電極
102b 下方電極
102c 下方電極
103 絶縁膜
104 レジストマスク
105 イオン
107 領域
107a 領域
107b 領域
107c 領域
109 領域
109a 領域
109b 領域
109c 領域
112 イオン
113 領域
113a 領域
113b 領域
113c 領域
115a 領域
116 金属膜
116a 電極
116b 電極
116c 電極
119 導電領域
119a 導電領域
119b 導電領域
119c 導電領域
121 基板
122 下地膜
123 絶縁膜
124 絶縁膜
131 チャネル形成領域
132a 低濃度不純物領域
132b 低濃度不純物領域
133a 高濃度不純物領域
133b 高濃度不純物領域
134 島状半導体膜
135 ゲート絶縁膜
136 ゲート電極
137a サイドウォール
137b サイドウォール
138a 電極
138b 電極
138c 電極
138d 電極
139 TFT
141 チャネル形成領域
143a 高濃度不純物領域
143b 高濃度不純物領域
144 島状半導体膜
145 ゲート絶縁膜
146 ゲート電極
147a サイドウォール
147b サイドウォール
148a 電極
148b 電極
149 TFT
151 絶縁膜
152 レジストマスク
153 イオン
154a 開口部
154b 開口部
154c 開口部
154d 開口部
155a 領域
155b 領域
155c 領域
155d 領域
156a 領域
156b 領域
156c 領域
156d 領域
157 金属膜
157a 電極
157b 電極
157c 電極
157d 電極
159a 導電領域
159b 導電領域
159c 導電領域
159d 導電領域
161 イオン
201 基板
202 絶縁層
203 剥離層
204 絶縁層
205 開口部
206 接着層
207 絶縁層
208 レジストマスク
209 イオン
210 イオン
211a 領域
211b 領域
211c 領域
211d 領域
212a 領域
212b 領域
212c 領域
212d 領域
215 金属膜
215a 電極
215b 電極
215c 電極
215d 電極
216a 導電領域
216b 導電領域
216c 導電領域
216d 導電領域
221 支持基板
226a 導電領域
226b 導電領域
226c 導電領域
226d 導電領域
227a 電極
227b 電極
227c 電極
227d 電極
231 半導体回路素子
232 半導体回路素子
233 半導体回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極を形成し、
前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜中に第1の加速電圧で第1のイオンを添加する第1のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の第1の深さに第1の欠陥の多い領域を形成し、
前記絶縁膜中に、前記第1の加速電圧とは異なる第2の加速電圧で、第2のイオンを添加する第2のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の前記第1の深さとは異なる第2の深さに第2の欠陥の多い領域を形成し、
前記第1及び第2の欠陥の多い領域上に、金属元素を含む導電材料を形成し、
前記第1及び第2の欠陥の多い領域のうちの上方の領域から、下方の領域に、前記金属元素を拡散させることにより、
前記絶縁膜中に、第1の電極と、前記金属元素を含む導電材料とを電気的に接続する導電領域を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のイオンまたは第2のイオンは、水素イオン、又は希ガスイオンのいずれかであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のイオンと第2のイオンは、同じイオンであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
基板上に半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極を形成し、
前記半導体素子及び前記半導体素子と電気的に接続された第1の電極上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜中に第1の加速電圧で第1のイオンを添加する第1のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の第1の深さに第1の欠陥の多い領域を形成し、
前記絶縁膜中に、前記第1の加速電圧と同じ電圧で、前記第1のイオンとは異なる第2のイオンを添加する第2のドーピング工程を行い、前記絶縁膜中の前記第1の深さとは異なる第2の深さに第2の欠陥の多い領域を形成し、
前記第1及び第2の欠陥の多い領域上に、金属元素を含む導電材料を形成し、
前記第1及び第2の欠陥の多い領域のうちの上方の領域から、下方の領域に、前記金属元素を拡散させることにより、
前記絶縁膜中に、第1の電極と、前記金属元素を含む導電材料とを電気的に接続する導電領域を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1のイオンまたは第2のイオンは、水素イオン、又は希ガスイオンのいずれかであり、
前記第1のイオン及び第2の一方は他方よりも重い原子のイオンであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、
前記絶縁膜は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜のいずれかであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、
前記絶縁膜は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ、シロキサン材料、ポリシラザン材料のいずれか一種または複数種を単層または積層で形成されていることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項において、
前記金属元素は、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)のいずれかであることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−80943(P2010−80943A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194370(P2009−194370)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】