半導体装置の製造方法
【課題】レジストパターンの下地層への悪影響を及ぼすことなくスカムを最適に除去する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1の上に酸化膜5cを形成し、前記酸化膜5c上にフォトレジスト8を塗布し、前記フォトレジスト8を露光し、露光された前記フォトレジスト8を現像することにより前記フォトレジス8トに開口部8aを形成し、前記フォトレジスト8をマスクとして、前記酸化膜5cを酸素プラズマ処理し、前記酸素プラズマ処理の後、前記酸化膜5cと前記フォトレジスト8に希釈フッ酸を供給し、前記希釈フッ酸を供給する工程の後、前記フォトレジスト8をマスクとして前記酸化膜5cを通して記半導体基板1に一導電型不純物をイオン注入する工程を含む。
【解決手段】半導体基板1の上に酸化膜5cを形成し、前記酸化膜5c上にフォトレジスト8を塗布し、前記フォトレジスト8を露光し、露光された前記フォトレジスト8を現像することにより前記フォトレジス8トに開口部8aを形成し、前記フォトレジスト8をマスクとして、前記酸化膜5cを酸素プラズマ処理し、前記酸素プラズマ処理の後、前記酸化膜5cと前記フォトレジスト8に希釈フッ酸を供給し、前記希釈フッ酸を供給する工程の後、前記フォトレジスト8をマスクとして前記酸化膜5cを通して記半導体基板1に一導電型不純物をイオン注入する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程における処理、例えばバンプ形成用のめっき処理、半導体基板内へのイオン注入処理、パターニング処理においてはマスクとしてレジストパターンが使用される。レジストパターンは、下地の上にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストをプリベーク、露光、現像、ポストベークなどをすることにより形成される。
【0003】
バンプ形成用のめっきの際に使用されるフォトレジストは厚く形成され、フォトレジストに開口を形成した後には、開口の底部に現像残渣であるスカムが残っている場合がある。そのスカムは、金属膜をめっきする際に金属の成長異常や形状異常の発生の原因となる。
【0004】
そこで、スカムを除去するために、フォトレジストに開口を形成した後に酸素プラズマで処理する方法が知られている。また、酸素プラズマによりスカムを除去する際に、フォトレジストの膜厚が減ることがある。その対策として、フォトレジストのパターンが形成された基板を平行平板型プラズマアッシング装置の電極の間に置き、それらの電極の距離を7mm以上、13mm以下とする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−159194号公報
【特許文献2】特開平10−172960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸素プラズマによりスカムを除去する方法によれば、フォトレジストの開口部から露出する半導体基板が酸化される。
【0007】
本発明の目的は、レジストパターンの下地層への悪影響を及ぼすことなくスカムを最適に除去する半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の1つの観点によれば、半導体基板の上に酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜上にフォトレジストを塗布する工程と、前記フォトレジストを露光する工程と、露光された前記フォトレジストを現像することにより、前記フォトレジストに開口部を形成する工程と、前記フォトレジストをマスクとして、前記酸化膜を酸素プラズマ処理する工程と、前記酸素プラズマ処理の後、前記酸化膜と前記フォトレジストに希釈フッ酸を供給する工程と、前記希釈フッ酸を供給する工程の後、前記フォトレジストをマスクとして前記酸化膜を通して記半導体基板に一導電型不純物をイオン注入する工程と、有する半導体装置の製造方法が提供される。
発明の目的および利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素および組み合わせによって実現され達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、典型例および説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない、と理解される。
【発明の効果】
【0009】
実施形態によれば、半導体基板内への不純物イオン注入時のマスクとして使用されるレジストパターンを形成する際に、フォトレジストの開口部から露出する酸化膜及びフォトレジストを酸素プラズマに曝した後に希釈フッ酸処理を行っている。これにより、半導体基板内への炭素の注入を抑制して不純物の注入効率を高めることができるとともに、フォトレジストの剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、比較例に係る半導体装置の製造工程のうちのイオン注入方法を例示する断面図である。
【図2】図2は、異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板内の炭素濃度分布を例示する図である。
【図3】図3は、別の処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板内の炭素濃度と深さの関係を例示する図である。
【図4】図4は、さらに異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後のシリコン基板内の炭素濃度と深さの関係を例示する図である。
【図5】図5は、異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板表面からの深さ方向の酸素濃度分布を例示する図である。
【図6】図6は、さらに異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板表面からの深さ方向の酸素濃度分布を例示する図である。
【図7】図7は、図6に示した試料について、砒素イオン注入後の半導体基板内の炭素濃度分布を例示する図である。
【図8】図8は、処理条件の異なる試料について、半導体基板内にイオン注入された砒素濃度と、砒素濃度の目標値からの減少率を例示する図である。
【図9】図9は、処理条件の異なる試料について、シリコン基板表面の酸化膜の厚さを示す図である。
【図10】図10は、形成方法の異なる酸化膜のエッチング速度の相違を示す図である。
【図11】図11は、試験方法に使用される試料の断面図である。
【図12】図12は、酸化膜の処理方法とエッチング量の関係を示す図である。
【図13】図13は、酸化膜の処理時間とエッチング量の関係を示す図である。
【図14A】図14A〜図14Dは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14E】図14E〜図14Gは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14H】図14H〜図14Jは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14K】図14K〜図14Mは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14N】図14N〜図14Pは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面において、同様の構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0012】
図1は、MOSトランジスタを形成する工程におけるn型エクステンション領域を形成するためのイオン注入を例示する断面図である。
【0013】
シリコン基板51内において、素子分離絶縁膜52に囲まれた2つの領域にはそれぞれPウエル53とNウエル54が形成されている。また、Pウエル53とNウエル54のそ
れぞれの上にはゲート絶縁膜55a、55bを介して第1、第2ゲート電極56a、56bが形成されている。さらに、シリコン基板51の上にはレジストパターン(フォトレジスト)57が形成されている。レジストパターン57は、Pウエル53を露出する開口部57aを有し、さらにNウエル54を覆う形状を有している。
【0014】
レジストパターン57は、例えば、化学増幅レジストをシリコン基板51の上方に塗布した後に、プリベーク、露光、ポストベーク、現像等の処理を経ることにより形成される。
【0015】
そのような状態で、レジストパターン57、第1ゲート電極56aをマスクに使用し、開口部57aを通してPウエル53内にn型不純物、例えば砒素をイオン注入する。これにより、第1ゲート電極56aの両側のPウエル53内にn型エクステンション領域58s、58dが形成される。
【0016】
ところで、レジストパターン57の開口部57aから露出した領域において、シリコン基板51の表面又はゲート絶縁膜55aの上には、レジストパターン形成時に発生したコンタミや炭素が残っている。
【0017】
炭素が残った状態でPウエル53に砒素をイオン注入すると、その炭素59はイオンとともにn型エクステンション領域58s、58dに入り込んでn型エクステンション領域58s、58での結晶性を劣化させるおそれがある。n型エクステンション領域58s、58dの結晶性の劣化はトランジスタ特性を劣化させる原因となる。
【0018】
そこで、イオン注入時の炭素又は炭素系化合物のシリコン基板への入り込みを防止する方法を以下に説明する。
【0019】
まず、3種類の試料を用意する。第1の試料は、シリコン基板(シリコンウェハ)の表面に、フォトレジストを塗布せず、シリコン基板内に砒素をイオン注入した試料である。第2の試料は、シリコン基板の表面にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストをベーク、露光、現像、純水リンスを行った後に、シリコン基板内に砒素をイオン注入した試料である。第3の試料は、シリコンウェハの表面にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストをベーク、露光、現像し、第2の試料の作成よりもリンスを約2倍の時間で長く行った後に、シリコン基板内に砒素をイオン注入した試料である。
【0020】
第1〜第3の試料におけるシリコン基板への不純物イオン注入条件、即ちドーズ量、イオン加速エネルギー等は同じに設定される。また、第2、第3の試料における露光は、全面露光とした。これは、図1におけるレジストパターン57の開口部57aを通して不純物イオン注入する際のシリコン基板51内の炭素の入り込み状態を調べるためである。
【0021】
第1〜第3の試料についてシリコン基板内の炭素濃度分布を二次イオン質量分析(SIMS)法で調べたところ図2に例示する結果が得られた。図2は、シリコンウェハの表面から深さ方向の炭素濃度の分布を示している。
【0022】
図2において、実線は、第1の試料のシリコン基板内の炭素濃度の分布の分析結果の一例を示し、破線は、第2の試料の炭素濃度分布を示し、二点鎖線は第3の試料の炭素濃度分布を示している。なお、図2において深さ0nm〜約1nmまでのピークは、シリコン基板の表面に空気内で付着した炭素などが原因で生じたものであり、その領域は評価の対象外となる。
【0023】
図2によれば、第2の試料の炭素濃度分布が第1の試料のそれに比べて全体的に高くな
っていることがわかる。これにより、フォトレジストを塗布、露光等することにより、フォトレジスト除去後もシリコン基板の表面には多くの炭素が付着していることが明らかになった。また、第3の試料についての試験結果によれば、フォトレジストの現像後、即ち除去後のリンス時間を過剰に行っても、シリコン基板の表面の炭素を除去する効果は殆ど期待できないことが明らかになった。
【0024】
次に、シリコン基板上にフォトレジストを塗布、ベーク、露光した後に、現像処理を第2の試料の2倍の時間で行い、その後に通常の時間でリンスし、その後に第1〜第3の試料と同じ条件で砒素をシリコン基板内にイオン注入した。これを第4の試料とした。
【0025】
第4の試料について第1、第2の試料と同様に、シリコン基板内の炭素濃度をSIMS分析したところ、図3の二点鎖線のような分布となった。図3において、実線、破線はそれぞれ上記と同じ処理が行われた第1、第2の試料の試験結果である。
【0026】
第4の試料によれば、第2の試料に比べて、シリコン基板内の炭素濃度が減少しているので、現像時間を通常よりも長くすることにより炭素イオン注入の量を減らす改善がなされたことがわかる。しかし、第4の試料における炭素濃度分布は、ベアシリコン基板を使用する第1の試料の炭素濃度分布に比べて、依然として高くなっている。
【0027】
次に、第5の試料を作成し、そのシリコン基板内の炭素濃度分布をSIMS分析した。第5の試料は、シリコン基板上にフォトレジストの塗布からリンスまでを第2の試料と同じ条件で処理した後に、さらに、シリコン基板の表面を酸化トリートメント(酸化処理)し、その後にシリコン基板に砒素をイオン注入して作成される。
【0028】
酸化トリートメントは、酸素プラズマの発生雰囲気内にシリコン基板を置くことが条件であり、フォトレジストのアッシングを抑制できる条件が好ましい。プラズマ発生装置としては、特に限定されず、例えば、高周波プラズマアッシング装置、マイクロ波アッシング装置、高密度プラズマアッシング装置のいずれかを使用する。本実施形態ではアッシング装置を使用しているが、これはフォトレジストをアッシングするための使用ではなく、シリコン基板表面を酸素プラズマ処理するために利用し易い装置として使用しただけであり、プラズマエッチング装置であってもよい。
【0029】
高周波プラズマアッシング装置として、例えば高周波電圧が印加される平行平板型電極を有する装置が使用される。マイクロ波アッシング装置として、例えば、マイクロ波をチャンバに導く構造を有する装置が使用される。高密度プラズマアッシング装置として、例えば、コイルを有する誘導結合プラズマ装置が使用される。
【0030】
高周波プラズマアッシング装置を酸化トリートメント装置として使用する場合には、チャンバ内にガス管を介して酸素(O2)のガス源だけを接続し、オゾン源、フッ素系ガス源、その他のガス源は使用されない。そのような装置において、シリコン基板上面の酸化トリートメントを行うための条件として、チャンバ内の基板載置側の電極の温度を150〜200℃、処理時間を10〜20秒間、チャンバ内圧力を150〜200Paとする。さらに、電極に供給する電力を40〜60W、酸素流量を1000〜2000sccm、チャンバ内の電極間距離(ギャップ)を10mmに設定し、レジストエッチングレートに換算して約50nm/分の処理を行う。
【0031】
マイクロ波アッシング装置を酸化トリートメント装置として使用する場合には、チャンバ内には、ガス管を介して酸素(O2)のガス源だけを接続し、オゾン源、フッ素系ガス源、その他のガス源は使用されない。そのような装置において、シリコン基板の酸化トリートメントを行うための条件として、チャンバ内の基板載置ステージの温度を150〜2
00℃、処理時間を10〜20秒間、チャンバ内圧力を100〜200Paとする。さらに、マイクロ波出力を1500〜2500W、酸素流量を4000〜5000sccm、リフトピンの基板支持位置を1mmに設定し、レジストエッチングレートに換算して約20nm/分の処理を行う。
【0032】
第5の試料について、不純物イオン注入後のSIMS分析により炭素濃度分布を調べたところ図4の二点鎖線に示すような結果が得た。図4によれば、実線で示す第1の試料、即ちベアシリコン基板に比べて炭素濃度が大幅に減少していることがわかる。即ち、シリコン基板上に塗布されたレジストを現像液、例えばテトラメチルアンモニウム(TMAH)により除去し、純水でリンス処理し、シリコン基板表面を酸化トリートメントした後にイオン注入する方法がシリコン基板表面の炭素を減少させることに有効なことがわかる。これは、シリコン基板表面の炭素が、酸化トリートメントの酸素と結合して酸化炭素となって昇華するからである。なお、図4における破線は、上記と同じ処理が行われた第2の試料の試験結果である。
【0033】
次に、第1、第2及び第5の試料について、不純物イオン注入後のシリコン基板の酸化膜の厚さをSIMS分析により調べたところ、図5に例示する結果が得られた。図5によれば、第5の試料のシリコン基板の表面のシリコン酸化膜の厚さは、第1、第2試料のシリコン酸化膜の厚さに比べて厚くなっている。図5において、シリコン酸化膜は、酸素(O)濃度で示されている。シリコン基板表面のシリコン酸化膜が厚くなると、後述するように、図1に例示する不純物イオン注入の際に、シリコン酸化膜に吸収される注入エネルギーが大きくなって、n型不純物がシリコン基板1内に入り難くなる。
【0034】
そこで、シリコン基板の表面にレジストを塗布し、これをベーク、全面露光、現像、リンス、酸化トリートメントした後に、シリコン酸化膜に希釈フッ酸を供給し、リンス処理後に、シリコン基板に砒素をイオン注入して第6の試料を作成した。第6の試料によれば、図6の実線に例示する酸素分布が得られた。図6において破線、二点鎖線は、それぞれ上記の第2の試料、第5の試料を示している。
【0035】
図6に示す酸素濃度分布によれば、第6の試料ではシリコン酸化膜の厚さが第5の試料のそれに比べて薄くなっている一方、第2の試料、即ち酸化トリートメントをせずにイオン注入したシリコン基板上のシリコン酸化膜とほぼ同じ厚さになっている。また、第6、第5及び第2の試料のそれぞれのシリコン基板内の炭素濃度を調べたところ、図7に例示する分布が検出された。図7において破線、実線、二点鎖線は、それぞれ第2の試料、第6の試料、第5の試料の順でシリコン基板内の炭素濃度分布が小さくなっている。なお、図6、図7に示した第6の試料の希釈フッ酸処理の時間は異なり、図6では120秒、図7では60秒となっている。
【0036】
図7によれば、第6、第5の試料のシリコン基板内の炭素濃度がほぼ同じ分布となり、第2の試料、即ち酸化トリートメント、希釈フッ酸処理をしない試料に比べて、その炭素濃度分布が小さくなった。
【0037】
以上のことから、図1に示したシリコン基板51に不純物をイオン注入する際には、フォトレジスト57をシリコン基板51に塗布した後に、露光、現像、酸化トリートメント、希釈フッ酸処理の順での処理を含むことが好ましい。この場合、ベーク、液体トリートメント等の処理についてはフォトレジスト57の材料の種類により適宜変更してもよい。例えば、フォトレジストとして化学増幅レジストを使用する場合に、ポストベークは露光後、現像前に行われる。化学増幅レジストは、光反応でレジスト膜中に酸を発生させ、酸を触媒として露光後の加熱により、レジストの基材樹脂が反応してパターンを得る材料で、露光で発生した酸が少量であっても熱拡散により連鎖的に反応が進行するため高い感度
が得られる。
【0038】
ところで、フォトレジストの材料として使用される化学増幅型レジストは、KrFレーザやArFレーザにより露光され、現像された後の状態では、ポーラス状態となっている。このため、図1に示す状態で希釈フッ酸をレジストパターン57及び開口部57a内に供給すると、レジストパターン57の内部にフッ酸が染みこんで、Nエル54の上のゲート絶縁膜55bであるシリコン酸化膜に達するおそれがある。
【0039】
シリコン酸化膜は、フッ酸により可溶である。このため、レジストパターン57に浸透した希釈フッ酸によりゲート絶縁膜55bが溶解されるとレジストパターン57がシリコン基板51から剥がれ易い状態となる。そこで、レジストパターン57を化学増幅レジストから形成する場合に、レジストパターン57及びシリコン基板51へ供給する希釈フッ酸処理の最適条件について次に説明する。
【0040】
まず、化学増幅レジストを使用して第1、第2、第5、第6の試料を作成する際の砒素イオン注入による目標のドーズ量を約1.68atoms/cm3とする。そして、第1の試料、第2の試料、第5の試料、第6の試料の作成時にそれぞれ同じ条件で砒素イオンをシリコン基板にイオン注入した。
【0041】
また、第6の試料の作成時にシリコン基板に供給される希釈フッ酸の処理時間を30秒、60秒、120秒と変え、それらの第6の試料を新たに第7、第8及び第9の試料とした。そのような第1、第2、第5、第7、第8及び第9の試料のそれぞれのシリコン基板内のドーズ量を分析したところ、図8に例示するような結果が得られた。
【0042】
図8によれば、第1の試料、即ち、フォトレジストが塗布されなかったベアシリコン基板に砒素をイオン注入したところ、シリコン基板内の実際の砒素濃度は約1.49atoms/cm3の砒素濃度であった。目標値に達しなかったのは第1の試料のシリコン基板の表面には自然酸化膜が形成されているからである。
【0043】
また、図8によれば、シリコン基板上のフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス、砒素イオン注入を順に行った第2の試料では、シリコン基板内の砒素濃度は約1.47atoms/cm3と第1の試料とほぼ同じ状態になった。なお、第1、第2の試料のシリコン基板の表面には、自然酸化膜が形成されている。
【0044】
これに対し、シリコン基板上のフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス、酸化トリートメント(酸素プラズマ処理)、砒素イオン注入を順に行った第5の試料では、シリコン基板内の砒素濃度は約1.42atoms/cm3と第1、第2の試料よりも低い濃度になった。第5の試料のシリコン基板の表面には、酸化トリートメントにより自然酸化膜よりも厚い酸化膜が形成された状態になっている。砒素濃度の低下は、シリコン基板の表面の酸化膜の増加により不純物イオン注入がされにくくなるからである。
【0045】
さらに、シリコン基板上のフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス、酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、リンス、砒素イオン注入を順に行った第7〜9の試料では、希釈フッ酸処理の時間が長くなるにつれて、シリコン基板内の砒素濃度は約1.44atoms/cm3、約1.46atoms/cm3、約1.52atoms/cm3と徐々に高い濃度になっている。これは、希釈フッ酸の処理時間が長くなるにつれて、シリコン基板上の酸化膜の減少量が増えるからである。なお、図8の折れ線グラフは、右の縦軸の比例目盛で示した砒素濃度の目標値に対する減少率を示している。
【0046】
図8によれば、化学増幅レジストの現像後に酸化トリートメントを入れると、イオン注
入されたシリコン基板内の砒素濃度を下げる原因となる。これに対し、シリコン基板表面の酸化トリートメント後に希釈フッ酸処理すると、シリコン基板内の砒素濃度の低下が抑制され、さらに、希釈フッ酸処理の時間を長くするほど、基板内の砒素濃度がベアシリコン基板の状態まで又はそれ以上に回復することがわかる。
【0047】
第2、第5、第7〜第9の試料について、砒素イオン注入前のシリコン基板表面の酸化膜の厚さを調べたところ、図9に例示する結果が得られた。図9において、第2の試料、即ちフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス処理した後のシリコン基板の表面には厚さ約0.55nmのシリコン酸化膜が形成されている。また、第5の試料、即ちフォトレジストの塗布から酸化トリートメント(酸素プラズマ処理)までの工程を経たシリコン基板の表面には厚さ約0.71nmのシリコン酸化膜が形成されていた。さらに、第7〜第9の試料、即ちフォトレジストの塗布から酸化トリートメントまでの工程を経た後に、時間を変えて希釈フッ酸に曝されたシリコン酸化膜の厚さはそれぞれ約0.61nm、約0.58nm、約0.52nmの厚さとなっている。
【0048】
従って、図8、図9の試験結果によれば、酸化トリートメント後のシリコン基板への希釈フッ酸の供給時間を長くしてシリコン基板の表面のシリコン酸化膜を薄くするほどシリコン基板内の砒素濃度を高くすることが可能になることを示唆している。図8、図9に示した第7〜第9の試料の作成に使用された希釈フッ酸は、水とフッ酸の割合が500対1となっている。
【0049】
ところで、酸素プラズマを使用する酸化トリートメントによりシリコン基板表面に形成される酸化膜と、熱酸化法によりシリコン基板表面に形成される酸化膜のそれぞれについて、希釈フッ酸処理によるエッチングレートの違いを調べたところ、図10に例示する結果が得られた。図10によれば、酸素プラズマにより形成される酸化膜のエッチングレートが熱酸化法による酸化膜のエッチングレートよりも大きいことがわかる。従って、フォトレジストの現像後に、酸化トリートメントによりシリコン基板表面に形成される酸化膜はエッチングレートが高く、その酸化膜の薄層化は短時間で可能になる。図10に示した試験に使用された希釈フッ酸は、水とフッ酸の割合が500対1となっている。
【0050】
図9に示したようにシリコン基板上のシリコン酸化膜を薄くするための希釈フッ酸処理の時間を長くすると、フォトレジストとして使用される化学増幅レジストへの希釈フッ酸の染み込み量が増す。これにより、開口部以外の領域の化学増幅レジストの下に存在するシリコン酸化膜がエッチングされる。
【0051】
従って、化学増幅レジストの現像後に酸化トリートメントされたシリコン基板の表面に希釈フッ酸を供給する場合に、現像後に残された化学増幅レジストの下のシリコン酸化膜のエッチングを防止するための希釈フッ酸の濃度と供給時間を制御することが好ましい。そこで、図11に例示するように、シリコン基板61の表面に熱酸化法によりシリコン酸化膜62を約5nmの厚さに形成し、さらにシリコン酸化膜62上に化学増幅レジスト63を塗布、全面露光、ベークした試料を複数用意した。そして、それらの試料に対して次のような試験を行った。
【0052】
まず、試料の化学増幅レジスト63を現像液により除去し、さらに硫酸過水(SPM)とアンモニア過水(APM)を順にシリコン酸化膜62に供給し、この状態の試料を第10の試料としてシリコン基板上のシリコン酸化膜の厚さを測定した。これにより、図12に例示するようにシリコン酸化膜の厚さは約0.1nm減少した。
【0053】
さらに、水とフッ酸を50対1の割合で含む希釈フッ酸(希フッ酸(DHF)もしくはバッファードフッ酸(BHF))を試料の化学増幅レジスト63に50秒間供給し、さら
に化学増幅レジスト63を除去した後に、シリコン酸化膜62にSPM、AMPを順に供給し、この状態の試料を第11の試料とした。これにより、図12に示すようにシリコン酸化膜62の厚さは約1.97nm減少した。第10の試料によれば、SPM及びAMPによるシリコン酸化膜の厚さは約0.1nmであるので、第11の試料の化学増幅レジスト63に希釈フッ酸を供給することによるシリコン酸化膜62のエッチング厚さ(減少量)は約1.87nmである。なお、その濃度の希釈フッ酸をシリコン酸化膜に直に50秒間供給した場合のシリコン酸化膜のエッチング量は約6nmである。
【0054】
また、水とフッ酸を200対1の割合で含む希釈フッ酸を試料の化学増幅レジスト63に295秒間供給し、さらに化学増幅レジスト63を除去した後に、シリコン酸化膜にSPM、AMPを順に供給し、この状態の試料を第12の試料とした。これにより、図12に示すようにシリコン酸化膜の厚さは約0.54nm減少した。第10の試料によれば、SPM及びAMPによるシリコン酸化膜62の厚さは約0.1nmであるので、第12の試料の化学増幅レジス63トへの希釈フッ酸の供給によるシリコン酸化膜62のエッチング厚さ(減少量)は約0.44nmである。なお、その濃度の希釈フッ酸をシリコン酸化膜に直に295秒間供給した場合のシリコン酸化膜のエッチング量は約6nmである。
【0055】
さらに、水とフッ酸を200対1の割合で含む希釈フッ酸を試料の化学増幅レジスト63に540秒間供給し、さらに化学増幅レジスト63を除去した後に、シリコン酸化膜62にSPM、AMPを順に供給し、この状態の試料を第13の試料とした。これにより、図12に示すように試料のシリコン酸化膜62の厚さは約1.84nm減少した。第10の試料によれば、SPM及びAMPによるシリコン酸化膜62の厚さは約0.1nmであるので、第13の試料の希釈フッ酸によるシリコン酸化膜62のエッチング厚さは約1.74nmである。なお、その濃度の希釈フッ酸をシリコン酸化膜に直に540秒間供給した場合のシリコン酸化膜のエッチング量は約11nmである。
【0056】
図12によれば、化学増幅レジスト63内に染みこんだ希釈フッ酸によりシリコン基板61上のシリコン酸化膜62がエッチングされることが明らかになった。また、希釈フッ酸の濃度が高いほど、および供給時間が長いほどシリコン酸化膜62のエッチング量が多くなることも明らかになった。そのシリコン酸化膜62が過剰にエッチングされると、その上に形成されている化学増幅レジスト63がリフトオフするおそれがある。
【0057】
従って、上記のように化学増幅レジストを塗布し、露光し、ベークし、さらに化学増幅レジストに希釈フッ酸を供給すると、条件によってその下のシリコン酸化膜がエッチングされることが明らかになった。
【0058】
図12によれば、化学増幅レジストのレジストパターンを形成した後に、レジストパターンの開口部を通してシリコン基板を酸化トリートメント、希釈フッ酸処理をすると、シリコン酸化膜がエッチングされてその上のレジストパターンが剥離するおそれがある。
【0059】
そこで、希釈フッ酸のフッ酸濃度を0.1重量%以下に下げ、例えば水とフッ酸の割合を500対1にして実験を行ったところ図13に例示する結果が得られた。図13は、図11に示したと同じ条件で作成した試料を使用し、化学増幅レジスト63に希釈フッ酸を供給し、化学増幅レジスト63を除去した後のシリコン酸化膜62の膜厚の減少量を示している。
【0060】
図13によれば、水とフッ酸の割合が500対1の濃度(0.1重量%以下)の希釈フッ酸を化学増幅レジスト63に供給することによるシリコン酸化膜62のエッチング減量量は、ほぼSPM、APMによるエッチング減少量と同じになった。即ち、その濃度の希釈フッ酸の化学増幅レジスト63への染み込みによるシリコン酸化膜62に及ぼす影響は
極めて少なく、処理時間の依存性も低いことがわかる。
【0061】
また、水に対するフッ酸の割合が0.1重量%以下の濃度の希釈フッ酸をシリコン基板61上のシリコン酸化膜62に直に供給する場合には、シリコン酸化膜62はエッチングされていないことがわかる。
【0062】
従って、図1に示したレジストパターン57を化学増幅レジストから形成する場合に、レジストパターン57を剥離させずに、開口部57aを通してゲート絶縁膜55aであるシリコン酸化膜をエッチングすることが可能になる。
【0063】
なお、図13では、シリコン酸化膜62のSPM、APMによる膜厚の減少量も併せて示されているが、その減少量は図12とは異なっている。これは、フッ酸処理装置の構造の違いによる。
【0064】
以上によれば、フォトレジストを塗布、プリベーク、露光、ポストベーク、現像、リンス処理、酸化トリートメント、極低濃度フッ酸処理、リンス処理により化学増幅レジストのパターンを形成した後に、不純物をイオン注入することが好ましい。この場合の極低濃度フッ酸は、水に対するフッ酸の濃度が0.1重量%以下の希釈フッ酸である。これにより、レジストパターンの下のシリコン酸化膜のエッチングを防止するとともに、不純物イオン注入時にシリコン基板に導入される炭素濃度を減らし、さらにシリコン基板内の不純物濃度を高くすることができる。
【0065】
そこで以下に、レジストパターンをマスクに使用して不純物を半導体基板内にイオン注入する工程を含む半導体装置の製造方法について説明する。
図14A〜図14Pは、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。次に、図14Aに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0066】
まず、半導体基板であるシリコン基板1上に、研磨ストップマスクとなるシリコン酸化膜(不図示)、シリコン窒化膜(不図示)を順に形成した後に、シリコン窒化膜上にレジストパターン(不図示)を形成する。そのレジストパターンは、シリコン基板1の複数の活性領域の周囲の素子分離領域に開口部を有する。続いて、レジストパターンをマスクにしてシリコン窒化膜、シリコン酸化膜をエッチングして開口部を形成し、研磨ストップマスクを形成する。その後に、研磨ストップマスクの開口部を通してシリコン基板1をドライエッチングすることにより、シリコン基板1内に素子分離溝1aを形成する。
【0067】
続いて、素子分離溝1aの内面を熱酸化した後に、その中と研磨ストップマスクの上にシリコン酸化膜をCVD法により形成する。さらに、研磨ストップマスクの上のシリコン酸化膜を化学機械研磨(CMP)法により除去するとともに素子分離溝1a内に残存させる。その後に、研磨ストップスクを熱リン酸、希釈フッ酸により除去する。これにより、素子分離溝1a内に残された酸化シリコン膜は、素子分離絶縁構造であるシャロートレンチアイソレーション(STI)2として使用される。なお、素子分離絶縁構造として、STI2の他に、LOCOS法により形成した絶縁膜を使用してもよい。
【0068】
さらに、シリコン基板1の表面に酸化シリコン膜(不図示)を形成した後に、シリコン基板1の第1活性領域にn型不純物、例えば燐又は砒素をイオン注入する。この場合、n型不純物をイオン注入しない領域をレジストパターン(不図示)により覆う。ついで、シリコン基板1の第2活性領域にp型不純物、例えばホウ素をイオン注入する。この場合、p型不純物をイオン注入しない領域を別のレジストパターン(不図示)により覆う。
【0069】
次に、シリコン基板1の表面を熱酸化して絶縁膜として酸化シリコン膜(不図示)を形
成する。さらに、シリコン基板1をアニールすることにより第1、第2活性領域を活性化する。これにより、シリコン基板1において、第1活性領域内には、周囲がSTI2に囲まれたPウエル3が形成され、さらに、第2活性領域内には、周囲がSTI2に囲まれたNウエル4が形成される。その後に、シリコン基板1の表面の酸化シリコン膜を除去し、さらにその表面を酸化してPウエル3、Nウエル4の表面にゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜5a、5bを形成する。
【0070】
次に、図14Bに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、STI2及び酸化シリコン膜5a、5b上にポリシリコン膜をCVD法により例えば約50nmの厚さに形成する。続いて、ポリシリコン膜上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像等することにより、Nウエル3、Pウエル4のそれぞれの上にゲート電極平面形状を有するレジストパターン(不図示)を形成する。
【0071】
続いて、そのレジストパターンをマスクにして、ポリシリコン膜を例えばRIE法によりエッチングする。ポリシリコン膜のエッチング用ガスとして例えば塩素系/フッ素系ガスを使用する。これにより、Pウエル3、Nウエル4のそれぞれの上方に残されたポリシリコン膜のパターンは第1、第2のゲート電極6a、6bとして使用される。
【0072】
次に、図14Cに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第1、第2のゲート電極6a、6b、ゲート絶縁膜5a、5b及びシリコン基板1の表面に保護絶縁膜として例えばシリコン窒化膜をCVD法により形成する。次に、保護絶縁膜をRIE法により垂直方向にエッチングバックすることにより、保護絶縁膜を第1、第2のゲート電極6a、6bの側面に残すとともに、シリコン基板1の上面を露出させる。これにより第1、第2のゲート電極6a、6bの側面上に残された保護絶縁膜を第1層目サイドウォール7a、7bとする。この後に、シリコン基板1の表面を熱酸化してシリコン酸化膜5c、5dを例えば数nmの厚さに形成する。
【0073】
次に、図14Dに示すように、第1、第2のゲート電極6a、6b、第1層目サイドウォール7a、7b、シリコン基板1の上にフォトレジスト8として例えばポジ型の化学増幅型レジストを例えば数百nmの厚さに塗布する。続いて、化学増幅レジストを温度約60〜150℃、約60〜180秒の条件でプリベークする。
【0074】
さらに、化学増幅レジストのうちPウエル3及びその周囲の領域に露光光として例えばArFエキシマレーザを照射する。続いて、化学増幅レジスト膜を例えば約100℃のプレート上で約60秒間ポストベークする。その後、化学増幅レジスト膜をテトラメチルアンモニウムハイドロキシド(TMAH)水溶液を現像液として使用してフォトレジスト8を例えば約60秒間現像し、さらに純水で例えば約30秒間水洗する。これにより、図14Eに示すように、フォトレジスト8はパターニングされ、レーザ光照射領域に開口部8aを有する第1レジストパターンが形成される。なお、フォトレジスト8として化学増幅レジスト以外の材料を使用する場合にはポストベークは現像後に行われる。
【0075】
続いて、シリコン基板1をプラズマ発生装置に入れ、そのチャンバの中で酸素プラズマを発生させる。これにより、フォトレジスト8をマスクに使用して開口部8aぁらシリコン基板1表面のシリコン酸化膜5cに酸素プラズマ(O*)を供給する。これにより、開口部8aから露出したシリコン基板1上の炭素を酸化し、酸化炭素として昇華させて除去する。この場合、Pウエル3表面の酸化が進んでシリコン酸化膜5cの厚さが増す。
【0076】
この場合のプラズマ処理は、例えばマイクロ波プラズマ発生装置を使用して行う。酸化トリートメント条件として、例えば、酸素(O2)ガスを約4500sccm、チャンバ内圧力を約150Pa、マイクロ波パワーを2000Wとして、化学増幅レジストのエッ
チングレートを30nm/分に設定し、処理時間はフォトレジスト8のエッチング量が4.5〜5.0nmとなる時間とする。この場合、装置のガス管(不図示)を通して酸素以外のガスをチャンバ内に積極的に導入しない。また、シリコン基板1はウエハステージから1mm程度ピンアップされる。
【0077】
続いて、図14Fに示すように、プラズマ発生装置から取り出したシリコン基板1のフォトレジスト8上とその開口部8a内に希釈フッ酸(DHF若しくはBHF)を供給する。希釈フッ酸は、水に対するフッ酸の濃度が0.1重量%以下の液を使用する。希釈フッ酸による処理時間は、例えば250秒以下、好ましくは120〜250秒とする。
【0078】
これにより、フォトレジスト8の開口部8aから露出したPウエル3上のシリコン酸化膜5cを酸素プラズマ処理前の厚さ又はそれ以下にすることにより、次のイオン注入に最適な厚さに調整することが可能になる。しかも、フォトレジスト8内に浸透した希釈フッ酸によりフォトレジスト8とNウエル4の間のシリコン酸化膜5dはエッチングされずに残り、フォトレジスト8の剥離は防止される。そのような希釈フッ酸によるシリコン基板1表面を希釈フッ酸処理した後に、フォトレジスト8及び開口部8a内を純水により水洗する。
【0079】
その後に、図14Gに示すように、フォトレジスト8をマスクに使用し、開口部8aを通してPウエル3内にn型不純物、例えばヒ素をイオン注入(I.I)する。この場合、第1のゲート電極6aとその側面の第1層目サイドウォール7aもマスクとして機能するので、第1のゲート電極6aの両側に注入されたn型不純物拡散領域はn型エクステンション領域11s、11dとなる。
【0080】
このイオン注入の際に、フォトレジスト8の開口部8aから露出したシリコン基板1の表面には、酸素プラズマの酸化トリートメントにより炭素が除去されている。従って、Pウエル3内にn型不純物とともに入り込んだ炭素の濃度は、上記の図4の二点鎖線に例示したと同様に、大幅に低下する。
【0081】
そのようなイオン注入を終えた後に、アッシング装置又は溶剤を使用して、フォトレジスト8をシリコン基板1から除去する。アッシング装置によりフォトレジスト8を除去する場合には、アッシング装置内には酸素だけでなく、フッ素系ガス、その他のガスを導入するのが一般的である。その後に、シリコン基板1の表面にSPMを供給してレジスト残渣を除去し、さらにAPMを供給してクリーニングし、続いて純水によりシリコン基板1の表面を水洗する。
【0082】
次に、図14Hに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン基板1の上にフォトレジスト9として化学増幅レジストを塗布し、これを第1レジストパターン形成と同様な方法により、Nウエル4及びその周辺の上に開口部9aを有する第2のレジストパターンを形成する。その後に、第1のレジストパターンの形成後と同様な条件で、フォトレジスト9の開口部9aを通してシリコン基板1の上を酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、水洗処理を順に行う。これにより、第2のレジストパターンの剥離を防止しつつ開口部9aから露出した領域のシリコン基板1内の炭素を減らすことができ、しかも、シリコン基板1上のシリコン酸化膜5dの厚さを最適に調整することができる。
【0083】
続いて、フォトレジスト9、第2のゲート電極6b及び第1層目サイドウォール7bをマスクにしてNウエル4内にp型不純物、例えばホウ素をイオン注入する。これにより、第2のゲート電極6bの両側のNウエル4内のp型不純物拡散領域をp型エクステンション領域12s、12dとする。その後に、フォトレジスト9を除去した後に、SPM、A
PMを順にシリコン基板1の表面に供給し、さらにその表面を水洗する。
【0084】
次に、図14Iに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第1のレジストパターン(8)の形成と同様な方法及び条件により、Pウエル3及びその周辺の上に開口部10aを有する第3のレジストパターン10をシリコン基板1の上に形成し、さらに酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、水洗を行う。その後に、Pウエル3上の第1のゲート電極6a、第1層目サイドウォール7a及び第3のレジストパターン10をマスクにしてp型不純物をPウエル3内にイオン注入することによりにn型エクステンション領域11s、11dの下にp型ポケット領域13s、13dを形成する。その後に、第1のレジストパターン(8)の除去と同じ方法により、第3のレジストパターン10をシリコン基板1上から除去した後に、シリコン基板1にSPM、APM、純水を順に供給する。これらにより、p型不純物をイオン注入する際にシリコン基板1に入り込む炭素の濃度を低減するとともにp型ポケット領域13s、13dの不純物濃度の不純物注入効率を高くすることができる。
【0085】
次に、図14Jに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第2のレジストパターン(9)の形成と同様な方法及び条件により、Nウエル4及びその周辺の上に開口部15aを有する第4のレジストパターン15をシリコン基板1の上に形成し、さらに酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、水洗を行う。その後に、Nウエル4上の第2ゲート電極6b、第1層目サイドウォール7b及び第4のレジストパターン15をマスクにしてn型不純物をNウエル4内にイオン注入することによりにp型エクステンション領域12s、12dの下にn型ポケット領域14s、14dを形成する。その後に、第2のレジストパターン(9)の除去と同じ方法により、第4のレジストパターン15をシリコン基板1上から除去した後に、シリコン基板1にSPM、APM、純水を順に供給する。これらにより、n型不純物をイオン注入する際にシリコン基板1に入り込む炭素の濃度を低減するとともにn型ポケット領域の不純物濃度の不純物注入効率を高くすることができる。
【0086】
次に、図14Kに示す構造を形成するまでの工程について説明する。
まず、第1、第2ゲート電極6a、6b、ゲート絶縁膜5a、5b、第1層目サイドウォール7a、7b及びシリコン基板1の表面に絶縁膜として例えば酸化シリコン膜をCVD法により形成する。続いて、絶縁膜をRIE法により垂直方向にエッチングすることにより、絶縁膜を第1、第2のゲート電極6a、6bの側面に残すとともに、シリコン基板1の上面を露出させる。これにより第1、第2のゲート電極6a、6bの側面上に残された絶縁膜を第2層目サイドウォール16a、16bとする。
【0087】
続いて、シリコン基板1の上にフォトレジスト21を塗布する。フォトレジスト21として、ノボラック系レジストを使用する。これをプリベーク、露光、現像、ポストベーク、水洗する。これにより、Pウエル3及びその周辺の上に開口部21aを有する第5のレジストパターンを形成する。
【0088】
その後に、Pウエル3上の第1のゲート電極6a、第1、第2層目サイドウォール7a、16a及びフォトレジスト21をマスクに使用してn型不純物をPウエル3内にイオン注入する。これにより、第1のゲート電極6aの両側方に高濃度不純物のn型ソース/ドレイン領域17s、17dを形成する。その後に、第1のレジストパターン(8)の除去と同じ方法により、第5のレジストパターンをシリコン基板1上から除去した後に、シリコン基板にSPM、APM、純水を順にシリコン基板1表面に供給する。
【0089】
これにより、Pウエル3及びその上には、n型ソース/ドレイン領域17s、17d、ゲート絶縁膜5a、第1のゲート電極6a等を有するn型MOSトランジスタT1が形成
され、シリコン基板1内に入り込む炭素の濃度を低減することができる。
【0090】
次に、図14Lに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン基板1の上にフォトレジスト22を塗布する。フォトレジスト22として、ノボラック系レジストを使用する。これを、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、水洗する。これにより、Nウエル4及びその周辺の上に開口部22aを有する第6のレジストパターンを形成する。
【0091】
その後に、Nウエル4上の第2のゲート電極6b、第1、第2層目サイドウォール7b、16b及びフォトレジスト22をマスクに使用してp型不純物をNウエル4内にイオン注入する。これにより、第2のゲート電極6bの両側方に高濃度不純物のp型ソース/ドレイン領域18s、18dを形成する。その後に、第5のレジストパターン(21)の除去と同じ方法により、第6のレジストパターンをシリコン基板1上から除去し、後処理を行う。
【0092】
これにより、Nウエル4及びその上には、p型ソース/ドレイン領域18s、18d、ゲート絶縁膜5b、第2のゲート電極6b等を有するp型MOSトランジスタT2が形成され、シリコン基板1内に入り込む炭素の濃度を低減することができる。
【0093】
ところで、図14K、14Lに示す構造を形成するために、フォトレジスト21,22の少なくとも一方の材料として化学増幅レジストを使用してもよく、この場合には、第1、第2のレジストパターン(8、9)と同様なレジストパターンの形成方法、処理方法、除去方法を採用する。
【0094】
以上のような不純物イオン注入の後に、シリコン基板を例えばランプアニール装置に入れて加熱することにより、シリコン基板1内のn型不純物及びp型不純物を活性化する。
【0095】
次に、図14Mに示す構造を形成するまでの工程を説明する。まず、シリコン基板1及び第1、第2ゲート電極6a、6bの表面上の酸化膜を除去した後に、それらの表面上に金属膜(不図示)、例えばコバルト膜又はニッケル膜を形成する。その後に、シリコン基板1を加熱することにより、ソース/ドレイン領域25s、25d、26s、26dのシリコンと金属を合金化し、同時にゲート電極6a、6b上層のポリシリコン膜14と金属を合金化する。これにより、第1、第2のゲート電極6a、6bとソース/ドレイン領域25s、25d、26s、26dのそれぞれの上層部にシリサイド層23a〜23fを形成する。
【0096】
次に、図14Nに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン基板1、ゲート電極6a、6bの上にカバー絶縁膜24として窒化シリコン膜をCVD法により形成し、さらに、カバー絶縁膜24の上に第1の層間絶縁膜25として例えば酸化シリコン膜をCVD法により形成し、さらに、第2の層間絶縁膜26として例えばBPSG膜をCVD法により形成する。その後に、第2層間絶縁膜26の表面を化学機械研磨(CMP)法により平坦化する。
【0097】
続いて、図14Oに示すように、第1、第2の層間絶縁膜25、26及びカバー絶縁膜24をフォトリソグラフィー法にパターニングすることにより、ソース/ドレイン領域17s、17s、18s、18d等の上にコンタクトホール26a〜216dを形成する。
【0098】
さらに、第2の層間絶縁膜26上とコンタクトホール26a〜26dの中に窒化チタン膜とタングステン膜をCVD法により順に形成する。その後に、第2の層間絶縁膜26の上面上のタングステン膜及び窒化チタン膜をCMP法により除去する。これにより、コン
タクトホール26a〜26d内に残された窒化チタン膜とタングステン膜をコンタクトプラグ27a〜27dとして使用する。続いて、図14Pに示すように、第2の層間絶縁膜26上に例えばアルミニウム合金膜を形成し、これをパターニングすることにより配線28a〜28dを形成する。その後に、さらに層間絶縁膜、ビア、配線等を形成するが、その詳細は省略する。
【0099】
以上のように、半導体基板1内への不純物イオン注入時のマスクとして開口部8a、9a、10a、15aを有するフォトレジスト8、9、10、15を形成する。そして、フォトレジスト8、9、10、15のパターンをマスクとして半導体基板1表面の酸化膜5c、5dを酸素プラズマに曝した後に、希釈フッ酸(DHF若しくはBHF)を酸化膜5c、5dとフォトレジスト8、9、10、15に供給している。これにより、半導体基板1内への炭素の注入を抑制して不純物の注入効率を高めるとともに、さらに希釈フッ酸の濃度を0.1重量%以下とすることによりフォトレジスト8、9、10、15の剥離を防止することが可能になる。
【0100】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈され、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができると理解される。
【符号の説明】
【0101】
1 シリコン基板(半導体基板)
2 STI
3 Pウエル
4 Nウエル
5a、5b ゲート絶縁膜
5c、5d シリコン酸化膜
6a、6b ゲート電極
7a、7b、16a、16b サイドウォール
8、9、10、21、22 フォトレジスト
8a、9a、10a、21a、22a 開口部
11s、11d n型エクステンション領域
13s、13d p型ポケット領域
12s、12d p型エクステンション領域
14s、14d n型ポケット領域
17s、17d n型ソース/ドレイン領域
18s、18d p型ソース/ドレイン領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程における処理、例えばバンプ形成用のめっき処理、半導体基板内へのイオン注入処理、パターニング処理においてはマスクとしてレジストパターンが使用される。レジストパターンは、下地の上にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストをプリベーク、露光、現像、ポストベークなどをすることにより形成される。
【0003】
バンプ形成用のめっきの際に使用されるフォトレジストは厚く形成され、フォトレジストに開口を形成した後には、開口の底部に現像残渣であるスカムが残っている場合がある。そのスカムは、金属膜をめっきする際に金属の成長異常や形状異常の発生の原因となる。
【0004】
そこで、スカムを除去するために、フォトレジストに開口を形成した後に酸素プラズマで処理する方法が知られている。また、酸素プラズマによりスカムを除去する際に、フォトレジストの膜厚が減ることがある。その対策として、フォトレジストのパターンが形成された基板を平行平板型プラズマアッシング装置の電極の間に置き、それらの電極の距離を7mm以上、13mm以下とする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−159194号公報
【特許文献2】特開平10−172960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸素プラズマによりスカムを除去する方法によれば、フォトレジストの開口部から露出する半導体基板が酸化される。
【0007】
本発明の目的は、レジストパターンの下地層への悪影響を及ぼすことなくスカムを最適に除去する半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の1つの観点によれば、半導体基板の上に酸化膜を形成する工程と、前記酸化膜上にフォトレジストを塗布する工程と、前記フォトレジストを露光する工程と、露光された前記フォトレジストを現像することにより、前記フォトレジストに開口部を形成する工程と、前記フォトレジストをマスクとして、前記酸化膜を酸素プラズマ処理する工程と、前記酸素プラズマ処理の後、前記酸化膜と前記フォトレジストに希釈フッ酸を供給する工程と、前記希釈フッ酸を供給する工程の後、前記フォトレジストをマスクとして前記酸化膜を通して記半導体基板に一導電型不純物をイオン注入する工程と、有する半導体装置の製造方法が提供される。
発明の目的および利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素および組み合わせによって実現され達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、典型例および説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない、と理解される。
【発明の効果】
【0009】
実施形態によれば、半導体基板内への不純物イオン注入時のマスクとして使用されるレジストパターンを形成する際に、フォトレジストの開口部から露出する酸化膜及びフォトレジストを酸素プラズマに曝した後に希釈フッ酸処理を行っている。これにより、半導体基板内への炭素の注入を抑制して不純物の注入効率を高めることができるとともに、フォトレジストの剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、比較例に係る半導体装置の製造工程のうちのイオン注入方法を例示する断面図である。
【図2】図2は、異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板内の炭素濃度分布を例示する図である。
【図3】図3は、別の処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板内の炭素濃度と深さの関係を例示する図である。
【図4】図4は、さらに異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後のシリコン基板内の炭素濃度と深さの関係を例示する図である。
【図5】図5は、異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板表面からの深さ方向の酸素濃度分布を例示する図である。
【図6】図6は、さらに異なる処理条件で形成された試料について、砒素イオン注入後の半導体基板表面からの深さ方向の酸素濃度分布を例示する図である。
【図7】図7は、図6に示した試料について、砒素イオン注入後の半導体基板内の炭素濃度分布を例示する図である。
【図8】図8は、処理条件の異なる試料について、半導体基板内にイオン注入された砒素濃度と、砒素濃度の目標値からの減少率を例示する図である。
【図9】図9は、処理条件の異なる試料について、シリコン基板表面の酸化膜の厚さを示す図である。
【図10】図10は、形成方法の異なる酸化膜のエッチング速度の相違を示す図である。
【図11】図11は、試験方法に使用される試料の断面図である。
【図12】図12は、酸化膜の処理方法とエッチング量の関係を示す図である。
【図13】図13は、酸化膜の処理時間とエッチング量の関係を示す図である。
【図14A】図14A〜図14Dは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14E】図14E〜図14Gは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14H】図14H〜図14Jは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14K】図14K〜図14Mは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【図14N】図14N〜図14Pは、本発明の実施形態に係る半導体装置の形成工程の一部を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面において、同様の構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0012】
図1は、MOSトランジスタを形成する工程におけるn型エクステンション領域を形成するためのイオン注入を例示する断面図である。
【0013】
シリコン基板51内において、素子分離絶縁膜52に囲まれた2つの領域にはそれぞれPウエル53とNウエル54が形成されている。また、Pウエル53とNウエル54のそ
れぞれの上にはゲート絶縁膜55a、55bを介して第1、第2ゲート電極56a、56bが形成されている。さらに、シリコン基板51の上にはレジストパターン(フォトレジスト)57が形成されている。レジストパターン57は、Pウエル53を露出する開口部57aを有し、さらにNウエル54を覆う形状を有している。
【0014】
レジストパターン57は、例えば、化学増幅レジストをシリコン基板51の上方に塗布した後に、プリベーク、露光、ポストベーク、現像等の処理を経ることにより形成される。
【0015】
そのような状態で、レジストパターン57、第1ゲート電極56aをマスクに使用し、開口部57aを通してPウエル53内にn型不純物、例えば砒素をイオン注入する。これにより、第1ゲート電極56aの両側のPウエル53内にn型エクステンション領域58s、58dが形成される。
【0016】
ところで、レジストパターン57の開口部57aから露出した領域において、シリコン基板51の表面又はゲート絶縁膜55aの上には、レジストパターン形成時に発生したコンタミや炭素が残っている。
【0017】
炭素が残った状態でPウエル53に砒素をイオン注入すると、その炭素59はイオンとともにn型エクステンション領域58s、58dに入り込んでn型エクステンション領域58s、58での結晶性を劣化させるおそれがある。n型エクステンション領域58s、58dの結晶性の劣化はトランジスタ特性を劣化させる原因となる。
【0018】
そこで、イオン注入時の炭素又は炭素系化合物のシリコン基板への入り込みを防止する方法を以下に説明する。
【0019】
まず、3種類の試料を用意する。第1の試料は、シリコン基板(シリコンウェハ)の表面に、フォトレジストを塗布せず、シリコン基板内に砒素をイオン注入した試料である。第2の試料は、シリコン基板の表面にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストをベーク、露光、現像、純水リンスを行った後に、シリコン基板内に砒素をイオン注入した試料である。第3の試料は、シリコンウェハの表面にフォトレジストを塗布した後に、フォトレジストをベーク、露光、現像し、第2の試料の作成よりもリンスを約2倍の時間で長く行った後に、シリコン基板内に砒素をイオン注入した試料である。
【0020】
第1〜第3の試料におけるシリコン基板への不純物イオン注入条件、即ちドーズ量、イオン加速エネルギー等は同じに設定される。また、第2、第3の試料における露光は、全面露光とした。これは、図1におけるレジストパターン57の開口部57aを通して不純物イオン注入する際のシリコン基板51内の炭素の入り込み状態を調べるためである。
【0021】
第1〜第3の試料についてシリコン基板内の炭素濃度分布を二次イオン質量分析(SIMS)法で調べたところ図2に例示する結果が得られた。図2は、シリコンウェハの表面から深さ方向の炭素濃度の分布を示している。
【0022】
図2において、実線は、第1の試料のシリコン基板内の炭素濃度の分布の分析結果の一例を示し、破線は、第2の試料の炭素濃度分布を示し、二点鎖線は第3の試料の炭素濃度分布を示している。なお、図2において深さ0nm〜約1nmまでのピークは、シリコン基板の表面に空気内で付着した炭素などが原因で生じたものであり、その領域は評価の対象外となる。
【0023】
図2によれば、第2の試料の炭素濃度分布が第1の試料のそれに比べて全体的に高くな
っていることがわかる。これにより、フォトレジストを塗布、露光等することにより、フォトレジスト除去後もシリコン基板の表面には多くの炭素が付着していることが明らかになった。また、第3の試料についての試験結果によれば、フォトレジストの現像後、即ち除去後のリンス時間を過剰に行っても、シリコン基板の表面の炭素を除去する効果は殆ど期待できないことが明らかになった。
【0024】
次に、シリコン基板上にフォトレジストを塗布、ベーク、露光した後に、現像処理を第2の試料の2倍の時間で行い、その後に通常の時間でリンスし、その後に第1〜第3の試料と同じ条件で砒素をシリコン基板内にイオン注入した。これを第4の試料とした。
【0025】
第4の試料について第1、第2の試料と同様に、シリコン基板内の炭素濃度をSIMS分析したところ、図3の二点鎖線のような分布となった。図3において、実線、破線はそれぞれ上記と同じ処理が行われた第1、第2の試料の試験結果である。
【0026】
第4の試料によれば、第2の試料に比べて、シリコン基板内の炭素濃度が減少しているので、現像時間を通常よりも長くすることにより炭素イオン注入の量を減らす改善がなされたことがわかる。しかし、第4の試料における炭素濃度分布は、ベアシリコン基板を使用する第1の試料の炭素濃度分布に比べて、依然として高くなっている。
【0027】
次に、第5の試料を作成し、そのシリコン基板内の炭素濃度分布をSIMS分析した。第5の試料は、シリコン基板上にフォトレジストの塗布からリンスまでを第2の試料と同じ条件で処理した後に、さらに、シリコン基板の表面を酸化トリートメント(酸化処理)し、その後にシリコン基板に砒素をイオン注入して作成される。
【0028】
酸化トリートメントは、酸素プラズマの発生雰囲気内にシリコン基板を置くことが条件であり、フォトレジストのアッシングを抑制できる条件が好ましい。プラズマ発生装置としては、特に限定されず、例えば、高周波プラズマアッシング装置、マイクロ波アッシング装置、高密度プラズマアッシング装置のいずれかを使用する。本実施形態ではアッシング装置を使用しているが、これはフォトレジストをアッシングするための使用ではなく、シリコン基板表面を酸素プラズマ処理するために利用し易い装置として使用しただけであり、プラズマエッチング装置であってもよい。
【0029】
高周波プラズマアッシング装置として、例えば高周波電圧が印加される平行平板型電極を有する装置が使用される。マイクロ波アッシング装置として、例えば、マイクロ波をチャンバに導く構造を有する装置が使用される。高密度プラズマアッシング装置として、例えば、コイルを有する誘導結合プラズマ装置が使用される。
【0030】
高周波プラズマアッシング装置を酸化トリートメント装置として使用する場合には、チャンバ内にガス管を介して酸素(O2)のガス源だけを接続し、オゾン源、フッ素系ガス源、その他のガス源は使用されない。そのような装置において、シリコン基板上面の酸化トリートメントを行うための条件として、チャンバ内の基板載置側の電極の温度を150〜200℃、処理時間を10〜20秒間、チャンバ内圧力を150〜200Paとする。さらに、電極に供給する電力を40〜60W、酸素流量を1000〜2000sccm、チャンバ内の電極間距離(ギャップ)を10mmに設定し、レジストエッチングレートに換算して約50nm/分の処理を行う。
【0031】
マイクロ波アッシング装置を酸化トリートメント装置として使用する場合には、チャンバ内には、ガス管を介して酸素(O2)のガス源だけを接続し、オゾン源、フッ素系ガス源、その他のガス源は使用されない。そのような装置において、シリコン基板の酸化トリートメントを行うための条件として、チャンバ内の基板載置ステージの温度を150〜2
00℃、処理時間を10〜20秒間、チャンバ内圧力を100〜200Paとする。さらに、マイクロ波出力を1500〜2500W、酸素流量を4000〜5000sccm、リフトピンの基板支持位置を1mmに設定し、レジストエッチングレートに換算して約20nm/分の処理を行う。
【0032】
第5の試料について、不純物イオン注入後のSIMS分析により炭素濃度分布を調べたところ図4の二点鎖線に示すような結果が得た。図4によれば、実線で示す第1の試料、即ちベアシリコン基板に比べて炭素濃度が大幅に減少していることがわかる。即ち、シリコン基板上に塗布されたレジストを現像液、例えばテトラメチルアンモニウム(TMAH)により除去し、純水でリンス処理し、シリコン基板表面を酸化トリートメントした後にイオン注入する方法がシリコン基板表面の炭素を減少させることに有効なことがわかる。これは、シリコン基板表面の炭素が、酸化トリートメントの酸素と結合して酸化炭素となって昇華するからである。なお、図4における破線は、上記と同じ処理が行われた第2の試料の試験結果である。
【0033】
次に、第1、第2及び第5の試料について、不純物イオン注入後のシリコン基板の酸化膜の厚さをSIMS分析により調べたところ、図5に例示する結果が得られた。図5によれば、第5の試料のシリコン基板の表面のシリコン酸化膜の厚さは、第1、第2試料のシリコン酸化膜の厚さに比べて厚くなっている。図5において、シリコン酸化膜は、酸素(O)濃度で示されている。シリコン基板表面のシリコン酸化膜が厚くなると、後述するように、図1に例示する不純物イオン注入の際に、シリコン酸化膜に吸収される注入エネルギーが大きくなって、n型不純物がシリコン基板1内に入り難くなる。
【0034】
そこで、シリコン基板の表面にレジストを塗布し、これをベーク、全面露光、現像、リンス、酸化トリートメントした後に、シリコン酸化膜に希釈フッ酸を供給し、リンス処理後に、シリコン基板に砒素をイオン注入して第6の試料を作成した。第6の試料によれば、図6の実線に例示する酸素分布が得られた。図6において破線、二点鎖線は、それぞれ上記の第2の試料、第5の試料を示している。
【0035】
図6に示す酸素濃度分布によれば、第6の試料ではシリコン酸化膜の厚さが第5の試料のそれに比べて薄くなっている一方、第2の試料、即ち酸化トリートメントをせずにイオン注入したシリコン基板上のシリコン酸化膜とほぼ同じ厚さになっている。また、第6、第5及び第2の試料のそれぞれのシリコン基板内の炭素濃度を調べたところ、図7に例示する分布が検出された。図7において破線、実線、二点鎖線は、それぞれ第2の試料、第6の試料、第5の試料の順でシリコン基板内の炭素濃度分布が小さくなっている。なお、図6、図7に示した第6の試料の希釈フッ酸処理の時間は異なり、図6では120秒、図7では60秒となっている。
【0036】
図7によれば、第6、第5の試料のシリコン基板内の炭素濃度がほぼ同じ分布となり、第2の試料、即ち酸化トリートメント、希釈フッ酸処理をしない試料に比べて、その炭素濃度分布が小さくなった。
【0037】
以上のことから、図1に示したシリコン基板51に不純物をイオン注入する際には、フォトレジスト57をシリコン基板51に塗布した後に、露光、現像、酸化トリートメント、希釈フッ酸処理の順での処理を含むことが好ましい。この場合、ベーク、液体トリートメント等の処理についてはフォトレジスト57の材料の種類により適宜変更してもよい。例えば、フォトレジストとして化学増幅レジストを使用する場合に、ポストベークは露光後、現像前に行われる。化学増幅レジストは、光反応でレジスト膜中に酸を発生させ、酸を触媒として露光後の加熱により、レジストの基材樹脂が反応してパターンを得る材料で、露光で発生した酸が少量であっても熱拡散により連鎖的に反応が進行するため高い感度
が得られる。
【0038】
ところで、フォトレジストの材料として使用される化学増幅型レジストは、KrFレーザやArFレーザにより露光され、現像された後の状態では、ポーラス状態となっている。このため、図1に示す状態で希釈フッ酸をレジストパターン57及び開口部57a内に供給すると、レジストパターン57の内部にフッ酸が染みこんで、Nエル54の上のゲート絶縁膜55bであるシリコン酸化膜に達するおそれがある。
【0039】
シリコン酸化膜は、フッ酸により可溶である。このため、レジストパターン57に浸透した希釈フッ酸によりゲート絶縁膜55bが溶解されるとレジストパターン57がシリコン基板51から剥がれ易い状態となる。そこで、レジストパターン57を化学増幅レジストから形成する場合に、レジストパターン57及びシリコン基板51へ供給する希釈フッ酸処理の最適条件について次に説明する。
【0040】
まず、化学増幅レジストを使用して第1、第2、第5、第6の試料を作成する際の砒素イオン注入による目標のドーズ量を約1.68atoms/cm3とする。そして、第1の試料、第2の試料、第5の試料、第6の試料の作成時にそれぞれ同じ条件で砒素イオンをシリコン基板にイオン注入した。
【0041】
また、第6の試料の作成時にシリコン基板に供給される希釈フッ酸の処理時間を30秒、60秒、120秒と変え、それらの第6の試料を新たに第7、第8及び第9の試料とした。そのような第1、第2、第5、第7、第8及び第9の試料のそれぞれのシリコン基板内のドーズ量を分析したところ、図8に例示するような結果が得られた。
【0042】
図8によれば、第1の試料、即ち、フォトレジストが塗布されなかったベアシリコン基板に砒素をイオン注入したところ、シリコン基板内の実際の砒素濃度は約1.49atoms/cm3の砒素濃度であった。目標値に達しなかったのは第1の試料のシリコン基板の表面には自然酸化膜が形成されているからである。
【0043】
また、図8によれば、シリコン基板上のフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス、砒素イオン注入を順に行った第2の試料では、シリコン基板内の砒素濃度は約1.47atoms/cm3と第1の試料とほぼ同じ状態になった。なお、第1、第2の試料のシリコン基板の表面には、自然酸化膜が形成されている。
【0044】
これに対し、シリコン基板上のフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス、酸化トリートメント(酸素プラズマ処理)、砒素イオン注入を順に行った第5の試料では、シリコン基板内の砒素濃度は約1.42atoms/cm3と第1、第2の試料よりも低い濃度になった。第5の試料のシリコン基板の表面には、酸化トリートメントにより自然酸化膜よりも厚い酸化膜が形成された状態になっている。砒素濃度の低下は、シリコン基板の表面の酸化膜の増加により不純物イオン注入がされにくくなるからである。
【0045】
さらに、シリコン基板上のフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス、酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、リンス、砒素イオン注入を順に行った第7〜9の試料では、希釈フッ酸処理の時間が長くなるにつれて、シリコン基板内の砒素濃度は約1.44atoms/cm3、約1.46atoms/cm3、約1.52atoms/cm3と徐々に高い濃度になっている。これは、希釈フッ酸の処理時間が長くなるにつれて、シリコン基板上の酸化膜の減少量が増えるからである。なお、図8の折れ線グラフは、右の縦軸の比例目盛で示した砒素濃度の目標値に対する減少率を示している。
【0046】
図8によれば、化学増幅レジストの現像後に酸化トリートメントを入れると、イオン注
入されたシリコン基板内の砒素濃度を下げる原因となる。これに対し、シリコン基板表面の酸化トリートメント後に希釈フッ酸処理すると、シリコン基板内の砒素濃度の低下が抑制され、さらに、希釈フッ酸処理の時間を長くするほど、基板内の砒素濃度がベアシリコン基板の状態まで又はそれ以上に回復することがわかる。
【0047】
第2、第5、第7〜第9の試料について、砒素イオン注入前のシリコン基板表面の酸化膜の厚さを調べたところ、図9に例示する結果が得られた。図9において、第2の試料、即ちフォトレジストを露光、ベーク、現像、リンス処理した後のシリコン基板の表面には厚さ約0.55nmのシリコン酸化膜が形成されている。また、第5の試料、即ちフォトレジストの塗布から酸化トリートメント(酸素プラズマ処理)までの工程を経たシリコン基板の表面には厚さ約0.71nmのシリコン酸化膜が形成されていた。さらに、第7〜第9の試料、即ちフォトレジストの塗布から酸化トリートメントまでの工程を経た後に、時間を変えて希釈フッ酸に曝されたシリコン酸化膜の厚さはそれぞれ約0.61nm、約0.58nm、約0.52nmの厚さとなっている。
【0048】
従って、図8、図9の試験結果によれば、酸化トリートメント後のシリコン基板への希釈フッ酸の供給時間を長くしてシリコン基板の表面のシリコン酸化膜を薄くするほどシリコン基板内の砒素濃度を高くすることが可能になることを示唆している。図8、図9に示した第7〜第9の試料の作成に使用された希釈フッ酸は、水とフッ酸の割合が500対1となっている。
【0049】
ところで、酸素プラズマを使用する酸化トリートメントによりシリコン基板表面に形成される酸化膜と、熱酸化法によりシリコン基板表面に形成される酸化膜のそれぞれについて、希釈フッ酸処理によるエッチングレートの違いを調べたところ、図10に例示する結果が得られた。図10によれば、酸素プラズマにより形成される酸化膜のエッチングレートが熱酸化法による酸化膜のエッチングレートよりも大きいことがわかる。従って、フォトレジストの現像後に、酸化トリートメントによりシリコン基板表面に形成される酸化膜はエッチングレートが高く、その酸化膜の薄層化は短時間で可能になる。図10に示した試験に使用された希釈フッ酸は、水とフッ酸の割合が500対1となっている。
【0050】
図9に示したようにシリコン基板上のシリコン酸化膜を薄くするための希釈フッ酸処理の時間を長くすると、フォトレジストとして使用される化学増幅レジストへの希釈フッ酸の染み込み量が増す。これにより、開口部以外の領域の化学増幅レジストの下に存在するシリコン酸化膜がエッチングされる。
【0051】
従って、化学増幅レジストの現像後に酸化トリートメントされたシリコン基板の表面に希釈フッ酸を供給する場合に、現像後に残された化学増幅レジストの下のシリコン酸化膜のエッチングを防止するための希釈フッ酸の濃度と供給時間を制御することが好ましい。そこで、図11に例示するように、シリコン基板61の表面に熱酸化法によりシリコン酸化膜62を約5nmの厚さに形成し、さらにシリコン酸化膜62上に化学増幅レジスト63を塗布、全面露光、ベークした試料を複数用意した。そして、それらの試料に対して次のような試験を行った。
【0052】
まず、試料の化学増幅レジスト63を現像液により除去し、さらに硫酸過水(SPM)とアンモニア過水(APM)を順にシリコン酸化膜62に供給し、この状態の試料を第10の試料としてシリコン基板上のシリコン酸化膜の厚さを測定した。これにより、図12に例示するようにシリコン酸化膜の厚さは約0.1nm減少した。
【0053】
さらに、水とフッ酸を50対1の割合で含む希釈フッ酸(希フッ酸(DHF)もしくはバッファードフッ酸(BHF))を試料の化学増幅レジスト63に50秒間供給し、さら
に化学増幅レジスト63を除去した後に、シリコン酸化膜62にSPM、AMPを順に供給し、この状態の試料を第11の試料とした。これにより、図12に示すようにシリコン酸化膜62の厚さは約1.97nm減少した。第10の試料によれば、SPM及びAMPによるシリコン酸化膜の厚さは約0.1nmであるので、第11の試料の化学増幅レジスト63に希釈フッ酸を供給することによるシリコン酸化膜62のエッチング厚さ(減少量)は約1.87nmである。なお、その濃度の希釈フッ酸をシリコン酸化膜に直に50秒間供給した場合のシリコン酸化膜のエッチング量は約6nmである。
【0054】
また、水とフッ酸を200対1の割合で含む希釈フッ酸を試料の化学増幅レジスト63に295秒間供給し、さらに化学増幅レジスト63を除去した後に、シリコン酸化膜にSPM、AMPを順に供給し、この状態の試料を第12の試料とした。これにより、図12に示すようにシリコン酸化膜の厚さは約0.54nm減少した。第10の試料によれば、SPM及びAMPによるシリコン酸化膜62の厚さは約0.1nmであるので、第12の試料の化学増幅レジス63トへの希釈フッ酸の供給によるシリコン酸化膜62のエッチング厚さ(減少量)は約0.44nmである。なお、その濃度の希釈フッ酸をシリコン酸化膜に直に295秒間供給した場合のシリコン酸化膜のエッチング量は約6nmである。
【0055】
さらに、水とフッ酸を200対1の割合で含む希釈フッ酸を試料の化学増幅レジスト63に540秒間供給し、さらに化学増幅レジスト63を除去した後に、シリコン酸化膜62にSPM、AMPを順に供給し、この状態の試料を第13の試料とした。これにより、図12に示すように試料のシリコン酸化膜62の厚さは約1.84nm減少した。第10の試料によれば、SPM及びAMPによるシリコン酸化膜62の厚さは約0.1nmであるので、第13の試料の希釈フッ酸によるシリコン酸化膜62のエッチング厚さは約1.74nmである。なお、その濃度の希釈フッ酸をシリコン酸化膜に直に540秒間供給した場合のシリコン酸化膜のエッチング量は約11nmである。
【0056】
図12によれば、化学増幅レジスト63内に染みこんだ希釈フッ酸によりシリコン基板61上のシリコン酸化膜62がエッチングされることが明らかになった。また、希釈フッ酸の濃度が高いほど、および供給時間が長いほどシリコン酸化膜62のエッチング量が多くなることも明らかになった。そのシリコン酸化膜62が過剰にエッチングされると、その上に形成されている化学増幅レジスト63がリフトオフするおそれがある。
【0057】
従って、上記のように化学増幅レジストを塗布し、露光し、ベークし、さらに化学増幅レジストに希釈フッ酸を供給すると、条件によってその下のシリコン酸化膜がエッチングされることが明らかになった。
【0058】
図12によれば、化学増幅レジストのレジストパターンを形成した後に、レジストパターンの開口部を通してシリコン基板を酸化トリートメント、希釈フッ酸処理をすると、シリコン酸化膜がエッチングされてその上のレジストパターンが剥離するおそれがある。
【0059】
そこで、希釈フッ酸のフッ酸濃度を0.1重量%以下に下げ、例えば水とフッ酸の割合を500対1にして実験を行ったところ図13に例示する結果が得られた。図13は、図11に示したと同じ条件で作成した試料を使用し、化学増幅レジスト63に希釈フッ酸を供給し、化学増幅レジスト63を除去した後のシリコン酸化膜62の膜厚の減少量を示している。
【0060】
図13によれば、水とフッ酸の割合が500対1の濃度(0.1重量%以下)の希釈フッ酸を化学増幅レジスト63に供給することによるシリコン酸化膜62のエッチング減量量は、ほぼSPM、APMによるエッチング減少量と同じになった。即ち、その濃度の希釈フッ酸の化学増幅レジスト63への染み込みによるシリコン酸化膜62に及ぼす影響は
極めて少なく、処理時間の依存性も低いことがわかる。
【0061】
また、水に対するフッ酸の割合が0.1重量%以下の濃度の希釈フッ酸をシリコン基板61上のシリコン酸化膜62に直に供給する場合には、シリコン酸化膜62はエッチングされていないことがわかる。
【0062】
従って、図1に示したレジストパターン57を化学増幅レジストから形成する場合に、レジストパターン57を剥離させずに、開口部57aを通してゲート絶縁膜55aであるシリコン酸化膜をエッチングすることが可能になる。
【0063】
なお、図13では、シリコン酸化膜62のSPM、APMによる膜厚の減少量も併せて示されているが、その減少量は図12とは異なっている。これは、フッ酸処理装置の構造の違いによる。
【0064】
以上によれば、フォトレジストを塗布、プリベーク、露光、ポストベーク、現像、リンス処理、酸化トリートメント、極低濃度フッ酸処理、リンス処理により化学増幅レジストのパターンを形成した後に、不純物をイオン注入することが好ましい。この場合の極低濃度フッ酸は、水に対するフッ酸の濃度が0.1重量%以下の希釈フッ酸である。これにより、レジストパターンの下のシリコン酸化膜のエッチングを防止するとともに、不純物イオン注入時にシリコン基板に導入される炭素濃度を減らし、さらにシリコン基板内の不純物濃度を高くすることができる。
【0065】
そこで以下に、レジストパターンをマスクに使用して不純物を半導体基板内にイオン注入する工程を含む半導体装置の製造方法について説明する。
図14A〜図14Pは、本実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。次に、図14Aに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0066】
まず、半導体基板であるシリコン基板1上に、研磨ストップマスクとなるシリコン酸化膜(不図示)、シリコン窒化膜(不図示)を順に形成した後に、シリコン窒化膜上にレジストパターン(不図示)を形成する。そのレジストパターンは、シリコン基板1の複数の活性領域の周囲の素子分離領域に開口部を有する。続いて、レジストパターンをマスクにしてシリコン窒化膜、シリコン酸化膜をエッチングして開口部を形成し、研磨ストップマスクを形成する。その後に、研磨ストップマスクの開口部を通してシリコン基板1をドライエッチングすることにより、シリコン基板1内に素子分離溝1aを形成する。
【0067】
続いて、素子分離溝1aの内面を熱酸化した後に、その中と研磨ストップマスクの上にシリコン酸化膜をCVD法により形成する。さらに、研磨ストップマスクの上のシリコン酸化膜を化学機械研磨(CMP)法により除去するとともに素子分離溝1a内に残存させる。その後に、研磨ストップスクを熱リン酸、希釈フッ酸により除去する。これにより、素子分離溝1a内に残された酸化シリコン膜は、素子分離絶縁構造であるシャロートレンチアイソレーション(STI)2として使用される。なお、素子分離絶縁構造として、STI2の他に、LOCOS法により形成した絶縁膜を使用してもよい。
【0068】
さらに、シリコン基板1の表面に酸化シリコン膜(不図示)を形成した後に、シリコン基板1の第1活性領域にn型不純物、例えば燐又は砒素をイオン注入する。この場合、n型不純物をイオン注入しない領域をレジストパターン(不図示)により覆う。ついで、シリコン基板1の第2活性領域にp型不純物、例えばホウ素をイオン注入する。この場合、p型不純物をイオン注入しない領域を別のレジストパターン(不図示)により覆う。
【0069】
次に、シリコン基板1の表面を熱酸化して絶縁膜として酸化シリコン膜(不図示)を形
成する。さらに、シリコン基板1をアニールすることにより第1、第2活性領域を活性化する。これにより、シリコン基板1において、第1活性領域内には、周囲がSTI2に囲まれたPウエル3が形成され、さらに、第2活性領域内には、周囲がSTI2に囲まれたNウエル4が形成される。その後に、シリコン基板1の表面の酸化シリコン膜を除去し、さらにその表面を酸化してPウエル3、Nウエル4の表面にゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜5a、5bを形成する。
【0070】
次に、図14Bに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、STI2及び酸化シリコン膜5a、5b上にポリシリコン膜をCVD法により例えば約50nmの厚さに形成する。続いて、ポリシリコン膜上にフォトレジストを塗布し、これを露光、現像等することにより、Nウエル3、Pウエル4のそれぞれの上にゲート電極平面形状を有するレジストパターン(不図示)を形成する。
【0071】
続いて、そのレジストパターンをマスクにして、ポリシリコン膜を例えばRIE法によりエッチングする。ポリシリコン膜のエッチング用ガスとして例えば塩素系/フッ素系ガスを使用する。これにより、Pウエル3、Nウエル4のそれぞれの上方に残されたポリシリコン膜のパターンは第1、第2のゲート電極6a、6bとして使用される。
【0072】
次に、図14Cに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第1、第2のゲート電極6a、6b、ゲート絶縁膜5a、5b及びシリコン基板1の表面に保護絶縁膜として例えばシリコン窒化膜をCVD法により形成する。次に、保護絶縁膜をRIE法により垂直方向にエッチングバックすることにより、保護絶縁膜を第1、第2のゲート電極6a、6bの側面に残すとともに、シリコン基板1の上面を露出させる。これにより第1、第2のゲート電極6a、6bの側面上に残された保護絶縁膜を第1層目サイドウォール7a、7bとする。この後に、シリコン基板1の表面を熱酸化してシリコン酸化膜5c、5dを例えば数nmの厚さに形成する。
【0073】
次に、図14Dに示すように、第1、第2のゲート電極6a、6b、第1層目サイドウォール7a、7b、シリコン基板1の上にフォトレジスト8として例えばポジ型の化学増幅型レジストを例えば数百nmの厚さに塗布する。続いて、化学増幅レジストを温度約60〜150℃、約60〜180秒の条件でプリベークする。
【0074】
さらに、化学増幅レジストのうちPウエル3及びその周囲の領域に露光光として例えばArFエキシマレーザを照射する。続いて、化学増幅レジスト膜を例えば約100℃のプレート上で約60秒間ポストベークする。その後、化学増幅レジスト膜をテトラメチルアンモニウムハイドロキシド(TMAH)水溶液を現像液として使用してフォトレジスト8を例えば約60秒間現像し、さらに純水で例えば約30秒間水洗する。これにより、図14Eに示すように、フォトレジスト8はパターニングされ、レーザ光照射領域に開口部8aを有する第1レジストパターンが形成される。なお、フォトレジスト8として化学増幅レジスト以外の材料を使用する場合にはポストベークは現像後に行われる。
【0075】
続いて、シリコン基板1をプラズマ発生装置に入れ、そのチャンバの中で酸素プラズマを発生させる。これにより、フォトレジスト8をマスクに使用して開口部8aぁらシリコン基板1表面のシリコン酸化膜5cに酸素プラズマ(O*)を供給する。これにより、開口部8aから露出したシリコン基板1上の炭素を酸化し、酸化炭素として昇華させて除去する。この場合、Pウエル3表面の酸化が進んでシリコン酸化膜5cの厚さが増す。
【0076】
この場合のプラズマ処理は、例えばマイクロ波プラズマ発生装置を使用して行う。酸化トリートメント条件として、例えば、酸素(O2)ガスを約4500sccm、チャンバ内圧力を約150Pa、マイクロ波パワーを2000Wとして、化学増幅レジストのエッ
チングレートを30nm/分に設定し、処理時間はフォトレジスト8のエッチング量が4.5〜5.0nmとなる時間とする。この場合、装置のガス管(不図示)を通して酸素以外のガスをチャンバ内に積極的に導入しない。また、シリコン基板1はウエハステージから1mm程度ピンアップされる。
【0077】
続いて、図14Fに示すように、プラズマ発生装置から取り出したシリコン基板1のフォトレジスト8上とその開口部8a内に希釈フッ酸(DHF若しくはBHF)を供給する。希釈フッ酸は、水に対するフッ酸の濃度が0.1重量%以下の液を使用する。希釈フッ酸による処理時間は、例えば250秒以下、好ましくは120〜250秒とする。
【0078】
これにより、フォトレジスト8の開口部8aから露出したPウエル3上のシリコン酸化膜5cを酸素プラズマ処理前の厚さ又はそれ以下にすることにより、次のイオン注入に最適な厚さに調整することが可能になる。しかも、フォトレジスト8内に浸透した希釈フッ酸によりフォトレジスト8とNウエル4の間のシリコン酸化膜5dはエッチングされずに残り、フォトレジスト8の剥離は防止される。そのような希釈フッ酸によるシリコン基板1表面を希釈フッ酸処理した後に、フォトレジスト8及び開口部8a内を純水により水洗する。
【0079】
その後に、図14Gに示すように、フォトレジスト8をマスクに使用し、開口部8aを通してPウエル3内にn型不純物、例えばヒ素をイオン注入(I.I)する。この場合、第1のゲート電極6aとその側面の第1層目サイドウォール7aもマスクとして機能するので、第1のゲート電極6aの両側に注入されたn型不純物拡散領域はn型エクステンション領域11s、11dとなる。
【0080】
このイオン注入の際に、フォトレジスト8の開口部8aから露出したシリコン基板1の表面には、酸素プラズマの酸化トリートメントにより炭素が除去されている。従って、Pウエル3内にn型不純物とともに入り込んだ炭素の濃度は、上記の図4の二点鎖線に例示したと同様に、大幅に低下する。
【0081】
そのようなイオン注入を終えた後に、アッシング装置又は溶剤を使用して、フォトレジスト8をシリコン基板1から除去する。アッシング装置によりフォトレジスト8を除去する場合には、アッシング装置内には酸素だけでなく、フッ素系ガス、その他のガスを導入するのが一般的である。その後に、シリコン基板1の表面にSPMを供給してレジスト残渣を除去し、さらにAPMを供給してクリーニングし、続いて純水によりシリコン基板1の表面を水洗する。
【0082】
次に、図14Hに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン基板1の上にフォトレジスト9として化学増幅レジストを塗布し、これを第1レジストパターン形成と同様な方法により、Nウエル4及びその周辺の上に開口部9aを有する第2のレジストパターンを形成する。その後に、第1のレジストパターンの形成後と同様な条件で、フォトレジスト9の開口部9aを通してシリコン基板1の上を酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、水洗処理を順に行う。これにより、第2のレジストパターンの剥離を防止しつつ開口部9aから露出した領域のシリコン基板1内の炭素を減らすことができ、しかも、シリコン基板1上のシリコン酸化膜5dの厚さを最適に調整することができる。
【0083】
続いて、フォトレジスト9、第2のゲート電極6b及び第1層目サイドウォール7bをマスクにしてNウエル4内にp型不純物、例えばホウ素をイオン注入する。これにより、第2のゲート電極6bの両側のNウエル4内のp型不純物拡散領域をp型エクステンション領域12s、12dとする。その後に、フォトレジスト9を除去した後に、SPM、A
PMを順にシリコン基板1の表面に供給し、さらにその表面を水洗する。
【0084】
次に、図14Iに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第1のレジストパターン(8)の形成と同様な方法及び条件により、Pウエル3及びその周辺の上に開口部10aを有する第3のレジストパターン10をシリコン基板1の上に形成し、さらに酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、水洗を行う。その後に、Pウエル3上の第1のゲート電極6a、第1層目サイドウォール7a及び第3のレジストパターン10をマスクにしてp型不純物をPウエル3内にイオン注入することによりにn型エクステンション領域11s、11dの下にp型ポケット領域13s、13dを形成する。その後に、第1のレジストパターン(8)の除去と同じ方法により、第3のレジストパターン10をシリコン基板1上から除去した後に、シリコン基板1にSPM、APM、純水を順に供給する。これらにより、p型不純物をイオン注入する際にシリコン基板1に入り込む炭素の濃度を低減するとともにp型ポケット領域13s、13dの不純物濃度の不純物注入効率を高くすることができる。
【0085】
次に、図14Jに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、第2のレジストパターン(9)の形成と同様な方法及び条件により、Nウエル4及びその周辺の上に開口部15aを有する第4のレジストパターン15をシリコン基板1の上に形成し、さらに酸化トリートメント、希釈フッ酸処理、水洗を行う。その後に、Nウエル4上の第2ゲート電極6b、第1層目サイドウォール7b及び第4のレジストパターン15をマスクにしてn型不純物をNウエル4内にイオン注入することによりにp型エクステンション領域12s、12dの下にn型ポケット領域14s、14dを形成する。その後に、第2のレジストパターン(9)の除去と同じ方法により、第4のレジストパターン15をシリコン基板1上から除去した後に、シリコン基板1にSPM、APM、純水を順に供給する。これらにより、n型不純物をイオン注入する際にシリコン基板1に入り込む炭素の濃度を低減するとともにn型ポケット領域の不純物濃度の不純物注入効率を高くすることができる。
【0086】
次に、図14Kに示す構造を形成するまでの工程について説明する。
まず、第1、第2ゲート電極6a、6b、ゲート絶縁膜5a、5b、第1層目サイドウォール7a、7b及びシリコン基板1の表面に絶縁膜として例えば酸化シリコン膜をCVD法により形成する。続いて、絶縁膜をRIE法により垂直方向にエッチングすることにより、絶縁膜を第1、第2のゲート電極6a、6bの側面に残すとともに、シリコン基板1の上面を露出させる。これにより第1、第2のゲート電極6a、6bの側面上に残された絶縁膜を第2層目サイドウォール16a、16bとする。
【0087】
続いて、シリコン基板1の上にフォトレジスト21を塗布する。フォトレジスト21として、ノボラック系レジストを使用する。これをプリベーク、露光、現像、ポストベーク、水洗する。これにより、Pウエル3及びその周辺の上に開口部21aを有する第5のレジストパターンを形成する。
【0088】
その後に、Pウエル3上の第1のゲート電極6a、第1、第2層目サイドウォール7a、16a及びフォトレジスト21をマスクに使用してn型不純物をPウエル3内にイオン注入する。これにより、第1のゲート電極6aの両側方に高濃度不純物のn型ソース/ドレイン領域17s、17dを形成する。その後に、第1のレジストパターン(8)の除去と同じ方法により、第5のレジストパターンをシリコン基板1上から除去した後に、シリコン基板にSPM、APM、純水を順にシリコン基板1表面に供給する。
【0089】
これにより、Pウエル3及びその上には、n型ソース/ドレイン領域17s、17d、ゲート絶縁膜5a、第1のゲート電極6a等を有するn型MOSトランジスタT1が形成
され、シリコン基板1内に入り込む炭素の濃度を低減することができる。
【0090】
次に、図14Lに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン基板1の上にフォトレジスト22を塗布する。フォトレジスト22として、ノボラック系レジストを使用する。これを、プリベーク、露光、現像、ポストベーク、水洗する。これにより、Nウエル4及びその周辺の上に開口部22aを有する第6のレジストパターンを形成する。
【0091】
その後に、Nウエル4上の第2のゲート電極6b、第1、第2層目サイドウォール7b、16b及びフォトレジスト22をマスクに使用してp型不純物をNウエル4内にイオン注入する。これにより、第2のゲート電極6bの両側方に高濃度不純物のp型ソース/ドレイン領域18s、18dを形成する。その後に、第5のレジストパターン(21)の除去と同じ方法により、第6のレジストパターンをシリコン基板1上から除去し、後処理を行う。
【0092】
これにより、Nウエル4及びその上には、p型ソース/ドレイン領域18s、18d、ゲート絶縁膜5b、第2のゲート電極6b等を有するp型MOSトランジスタT2が形成され、シリコン基板1内に入り込む炭素の濃度を低減することができる。
【0093】
ところで、図14K、14Lに示す構造を形成するために、フォトレジスト21,22の少なくとも一方の材料として化学増幅レジストを使用してもよく、この場合には、第1、第2のレジストパターン(8、9)と同様なレジストパターンの形成方法、処理方法、除去方法を採用する。
【0094】
以上のような不純物イオン注入の後に、シリコン基板を例えばランプアニール装置に入れて加熱することにより、シリコン基板1内のn型不純物及びp型不純物を活性化する。
【0095】
次に、図14Mに示す構造を形成するまでの工程を説明する。まず、シリコン基板1及び第1、第2ゲート電極6a、6bの表面上の酸化膜を除去した後に、それらの表面上に金属膜(不図示)、例えばコバルト膜又はニッケル膜を形成する。その後に、シリコン基板1を加熱することにより、ソース/ドレイン領域25s、25d、26s、26dのシリコンと金属を合金化し、同時にゲート電極6a、6b上層のポリシリコン膜14と金属を合金化する。これにより、第1、第2のゲート電極6a、6bとソース/ドレイン領域25s、25d、26s、26dのそれぞれの上層部にシリサイド層23a〜23fを形成する。
【0096】
次に、図14Nに示す構造を形成するまでの工程を説明する。
まず、シリコン基板1、ゲート電極6a、6bの上にカバー絶縁膜24として窒化シリコン膜をCVD法により形成し、さらに、カバー絶縁膜24の上に第1の層間絶縁膜25として例えば酸化シリコン膜をCVD法により形成し、さらに、第2の層間絶縁膜26として例えばBPSG膜をCVD法により形成する。その後に、第2層間絶縁膜26の表面を化学機械研磨(CMP)法により平坦化する。
【0097】
続いて、図14Oに示すように、第1、第2の層間絶縁膜25、26及びカバー絶縁膜24をフォトリソグラフィー法にパターニングすることにより、ソース/ドレイン領域17s、17s、18s、18d等の上にコンタクトホール26a〜216dを形成する。
【0098】
さらに、第2の層間絶縁膜26上とコンタクトホール26a〜26dの中に窒化チタン膜とタングステン膜をCVD法により順に形成する。その後に、第2の層間絶縁膜26の上面上のタングステン膜及び窒化チタン膜をCMP法により除去する。これにより、コン
タクトホール26a〜26d内に残された窒化チタン膜とタングステン膜をコンタクトプラグ27a〜27dとして使用する。続いて、図14Pに示すように、第2の層間絶縁膜26上に例えばアルミニウム合金膜を形成し、これをパターニングすることにより配線28a〜28dを形成する。その後に、さらに層間絶縁膜、ビア、配線等を形成するが、その詳細は省略する。
【0099】
以上のように、半導体基板1内への不純物イオン注入時のマスクとして開口部8a、9a、10a、15aを有するフォトレジスト8、9、10、15を形成する。そして、フォトレジスト8、9、10、15のパターンをマスクとして半導体基板1表面の酸化膜5c、5dを酸素プラズマに曝した後に、希釈フッ酸(DHF若しくはBHF)を酸化膜5c、5dとフォトレジスト8、9、10、15に供給している。これにより、半導体基板1内への炭素の注入を抑制して不純物の注入効率を高めるとともに、さらに希釈フッ酸の濃度を0.1重量%以下とすることによりフォトレジスト8、9、10、15の剥離を防止することが可能になる。
【0100】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈され、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができると理解される。
【符号の説明】
【0101】
1 シリコン基板(半導体基板)
2 STI
3 Pウエル
4 Nウエル
5a、5b ゲート絶縁膜
5c、5d シリコン酸化膜
6a、6b ゲート電極
7a、7b、16a、16b サイドウォール
8、9、10、21、22 フォトレジスト
8a、9a、10a、21a、22a 開口部
11s、11d n型エクステンション領域
13s、13d p型ポケット領域
12s、12d p型エクステンション領域
14s、14d n型ポケット領域
17s、17d n型ソース/ドレイン領域
18s、18d p型ソース/ドレイン領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上に酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜上にフォトレジストを塗布する工程と、
前記フォトレジストを露光する工程と、
露光された前記フォトレジストを現像することにより、前記フォトレジストに開口部を形成する工程と、
前記フォトレジストをマスクとして、前記酸化膜を酸素プラズマ処理する工程と、
前記酸素プラズマ処理の後、前記酸化膜と前記フォトレジストに希釈フッ酸を供給する工程と、
前記希釈フッ酸を供給する工程の後、前記フォトレジストをマスクとして前記酸化膜を通して記半導体基板に一導電型不純物をイオン注入する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フォトレジストは、化学増幅レジストであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記希釈フッ酸は、水に対するフッ酸の割合が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記フォトレジストを塗布する前に、前記開口部が形成される領域の前記酸化膜上に電極を形成する工程と、
前記一導電型不純物のイオン注入により前記電極の両側方の前記半導体基板内にエクステンション領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記フォトレジストを塗布する前に、前記開口部が形成される領域の前記酸化膜の上に電極を形成する工程と、
二導電型不純物のイオン注入により前記電極の両側方の前記半導体基板内の前記エクステンション領域の下にポケット領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板の上に酸化膜を形成する工程と、
前記酸化膜上にフォトレジストを塗布する工程と、
前記フォトレジストを露光する工程と、
露光された前記フォトレジストを現像することにより、前記フォトレジストに開口部を形成する工程と、
前記フォトレジストをマスクとして、前記酸化膜を酸素プラズマ処理する工程と、
前記酸素プラズマ処理の後、前記酸化膜と前記フォトレジストに希釈フッ酸を供給する工程と、
前記希釈フッ酸を供給する工程の後、前記フォトレジストをマスクとして前記酸化膜を通して記半導体基板に一導電型不純物をイオン注入する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フォトレジストは、化学増幅レジストであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記希釈フッ酸は、水に対するフッ酸の割合が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記フォトレジストを塗布する前に、前記開口部が形成される領域の前記酸化膜上に電極を形成する工程と、
前記一導電型不純物のイオン注入により前記電極の両側方の前記半導体基板内にエクステンション領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記フォトレジストを塗布する前に、前記開口部が形成される領域の前記酸化膜の上に電極を形成する工程と、
二導電型不純物のイオン注入により前記電極の両側方の前記半導体基板内の前記エクステンション領域の下にポケット領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14E】
【図14H】
【図14K】
【図14N】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14E】
【図14H】
【図14K】
【図14N】
【公開番号】特開2013−65594(P2013−65594A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201825(P2011−201825)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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