説明

積層構造体及びその製造方法、並びに多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置

【課題】インクジェット法を用いた場合でも高いスループットで微細な導電層を有する積層構造体を製造可能な積層構造体の製造方法、並びに積層構造体、多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】基板上に、同一パターンの高表面エネルギー部40を一定の間隔で周期的に配列しておき、インクジェット装置の主走査方向(X軸方向)における吐出ノズル1,2の間隔を、高表面エネルギー部40のパターン間隔と一致させて選択的に機能液の液滴dを滴下してソース電極230、ソース電極線290、ドレイン電極240となる導電層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体及びその製造方法、並びに多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路等における電極、絶縁体、半導体などの形成方法として、これらの機能性材料を含有する機能液を基板上の所定位置に供給するインクジェット法がある。インクジェット法は、従来半導体デバイスの製造に用いられてきたフォトリソグラフィーやエッチングを行う方法に比べて、高価な装置や設備を必要とすることなく、工程数も少なく、材料効率が高いといった利点を有している。しかし一方で、1pL以下の液滴の制御が困難であり液滴の大きさに下限が存在する、複数のノズルを用いた際に機能液の着弾位置のバラツキが生じる、着弾後被印刷面で濡れ広がる、などといった理由で、一般に線幅50μm以下といった微細パターンを形成することが困難であった。
【0003】
これに対して特許文献1では、エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する濡れ性変化層を用いた積層構造体の製造方法が開示されている。濡れ性変化層へエネルギーを付与し、機能液に対して親水的な高表面エネルギー部と、機能液に対して疎水的な低表面エネルギー部を形成することで、高表面エネルギー部に選択的に導電性材料を含有する機能液を滴下した場合に、微細な導電層を備える積層構造体が形成可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている製造方法は、濡れ性変化層の表面エネルギーを制御することで機能液の動きを制御できるため、従来のインクジェット法に比べてより微細なパターンが形成可能になるが、スループットが課題とされるインクジェット法を用いるため、結果的に積層構造体の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、インクジェット法を用いた場合でも高いスループットで微細な導電層を有する積層構造体を製造するための製造方法、並びにこの製造方法を用いて製造した積層構造体、多層配線基板、アクティブマトリクス基板及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する濡れ性変化材料を含み、少なくとも表面エネルギーの異なる2つの部位を有する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層における表面エネルギーの異なる2つの部位のうち、表面エネルギーの高い高表面エネルギー部上に形成された所定パターンの導電層と、を備える積層構造体の製造方法であって、濡れ性変化材料を含む濡れ性変化層(濡れ性変化層30)を形成する第1の工程と(図1)、前記濡れ性変化層の一部にエネルギーを付与し、前記濡れ性変化層に表面エネルギーの低い低表面エネルギー部(低表面エネルギー部50)と表面エネルギーの高い高表面エネルギー部(高表面エネルギー部40)を形成する第2の工程と(図2)、一方向に複数のノズル(液滴吐出ノズル93)が一定のノズル間隔で配列されたインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド103)と、前記第2の工程後の基板(基板20)を支持するステージ(ステージ102)と、前記インクジェットヘッドに対して前記ステージを相対的に移動させる移動機構(Y軸方向移動機構105)とを備えるインクジェット装置(インクジェット装置100、図5)を用いて、導電性材料を含有する機能液(機能液61)を前記高表面エネルギー部に選択的に滴下する第3の工程と(図3)、前記高表面エネルギー部に滴下された機能液を乾燥させて前記高表面エネルギー部上に前記導電性材料を含む導電層(導電層71)を形成する第4の工程と(図4)、を有し、前記第2の工程後の基板には、同一パターンの前記高表面エネルギー部が一定の間隔で周期的に配列されており、前記第3の工程において、前記インクジェット装置の所定方向における前記複数のノズルの間隔を、前記高表面エネルギー部のパターン間隔と一致させることを特徴とする積層構造体の製造方法(図10,図11,図20)。
〔2〕 前記第3の工程において、前記インクジェットヘッドを回転させて、前記インクジェット装置の所定方向における前記複数のノズルの間隔を調整することを特徴とする前記〔1〕に記載の積層構造体の製造方法(図11)。
〔3〕 前記第3の工程において、前記インクジェット装置におけるステージの相対的な移動方向を、前記高表面エネルギー部のパターン形状としての長手方向と一致させることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の積層構造体の製造方法(図10)。
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか一項に記載の積層構造体の製造方法を用いて製造されてなる積層構造体。
〔5〕 少なくとも基板と、絶縁層と、電極層と、を有する多層配線基板において、前記〔4〕に記載の積層構造体を有し、前記導電層は前記電極層の少なくとも一部を構成することを特徴とする多層配線基板。
〔6〕 ゲート電極(ゲート電極210)、ゲート絶縁層(ゲート絶縁層220)、ソース電極(ソース電極230)、ドレイン電極(ドレイン電極240)、保持容量電極(保持容量電極250)及び半導体層(半導体層260)を含むトランジスタ(トランジスタ270)と、前記ゲート電極から一方向に延設されたゲート信号線(ゲート信号線280)と、前記ソース電極から、前記ゲート信号線の延設方向に対して略直交する方向に延設されたソース信号線(ソース信号線290)と、前記保持容量電極から、前記ゲート信号線又は前記ソース信号線の延設方向に対して略平行に延設された共通信号線(共通信号線300)と、を備えるアクティブマトリクス基板において、前記〔4〕に記載の積層構造体を有し、前記導電層は、前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記保持容量電極、前記ゲート信号線、前記ソース信号線及び前記共通信号線のうち、少なくともいずれか1つを構成することを特徴とするアクティブマトリクス基板(アクティブマトリクス基板400、図14)。
〔7〕 画像表示素子(画像表示素子550)と、前記〔6〕に記載されたアクティブマトリクス基板(アクティブマトリクス基板400)と、を備えることを特徴とする画像表示装置(画像表示装置500、図17)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層構造体の製造方法によれば、第2の工程後の基板には、同一パターンの高表面エネルギー部が一定の間隔で周期的に配列されており、記第3の工程において、インクジェット装置の所定方向における複数のノズルの間隔を、高表面エネルギー部のパターン間隔と一致させるので、主走査数を低減でき、結果としてより高いスループットで導電層を形成することが可能となる。また、高表面エネルギー部のパターン間隔(積層構造体の配列間隔)がノズル間隔よりも狭い場合でも、回転機構を有するインクジェットヘッドを用いることで、インクジェット装置の所定方向における複数のノズルの間隔(ノズル間隔をインクジェットヘッドの主走査方向に投影した間隔)を、高表面エネルギー部のパターン間隔に一致させることが可能となるため、高いスループットで任意の配列間隔を有する積層構造体を形成できる。またさらに、第3の工程において、インクジェット装置におけるステージの相対的な移動方向を、高表面エネルギー部のパターン形状としての長手方向と一致させることで、導電層を形成するために高表面エネルギー部上に滴下される機能液をより短い時間間隔で滴下できるようになるため、滴下された機能液の乾燥による固化などの影響を低減でき、結果として膜厚均一性の高い導電層を形成できる。
また本発明の積層構造体によれば、本発明の積層構造体の製造方法を用いることで、安価に微細な積層構造体が提供できる。
また本発明の多層配線基板によれば、本発明の積層構造体を用いるため、安価に微細な多層配線基板が提供できる。
また本発明のアクティブマトリクス基板によれば、本発明の積層構造体を用いるため、安価に微細なアクティブマトリクス基板が提供できる。
また本発明の画像形成装置によれば、本発明のアクティブマトリクス基板を用いるため、安価かつ高性能な画像表示装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る積層構造体の製造方法における第1の工程の説明図である。
【図2】本発明に係る積層構造体の製造方法における第2の工程の説明図である。
【図3】本発明に係る積層構造体の製造方法における第3の工程の説明図である。
【図4】本発明に係る積層構造体の製造方法における第4の工程の説明図である。
【図5】本発明に係る積層構造体の製造方法で用いるインクジェット装置の構成例を示す概略図である。
【図6】図5に示すインクジェット装置の印刷手順例(1)を示す概略図である。
【図7】図5に示すインクジェット装置の印刷手順例(2)を示す概略図である。
【図8】図5に示すインクジェット装置の印刷手順例(3)を示す概略図である。
【図9】図5に示すインクジェット装置の印刷手順例(4)を示す概略図である。
【図10】本発明に係る積層構造体の製造方法におけるX軸方向印刷解像度を低減するための手法(1)を示す概略図である。
【図11】本発明に係る積層構造体の製造方法におけるX軸方向印刷解像度を低減するための手法(2)を示す概略図である。
【図12】本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造手順(1)を示す概略図である。
【図13】本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造手順(2)を示す概略図である。
【図14】本発明に係るアクティブマトリクス基板の製造手順(3)を示す概略図である。
【図15】図12の製造手順においてゲート電極、保持容量電極、ゲート信号線、共通信号線を有する積層構造体を形成する際の、機能液の滴下位置とノズル位置との関係を示す概略図である。
【図16】図13の製造手順においてソース電極、ドレイン電極、ソース信号線を有する積層構造体を形成する際の、機能液の滴下位置とノズル位置との関係を示す概略図である。
【図17】本発明に係る画像表示装置の構成を示す断面図である。
【図18】試験例1の積層構造体の構成を示す概略図である。
【図19】実施例1のアクティブマトリクス基板の構成を示す概略図である。
【図20】実施例1においてソース電極、ドレイン電極、ソース信号線を形成する際の、高表面エネルギー部に対する機能液の滴下位置とノズル位置との関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る積層構造体の製造方法は、濡れ性変化層30を形成する第1の工程(図1)と濡れ性変化層30の一部に紫外線等のエネルギーを付与し、濡れ性変化層30に低表面エネルギー部50と高表面エネルギー部40とを形成する第2の工程(図2)と、導電性材料を含有する第1の機能液61を、高表面エネルギー部40上へ選択的に滴下する第3の工程(図3)と、機能液61を乾燥させて導電層71を形成する第4の工程(図4)と、を有する。
【0010】
第1の工程では、濡れ性変化材料を含む溶液を、スピンコート法などにより基板20上に塗布し、乾燥させて、濡れ性変化層30を形成する。
【0011】
ここで、基板20には、ガラス基板、シリコン基板、ステンレス基板、フィルム基板などの基板を用いることができる。フィルム基板では、ポリイミド(PI)基板、ポリエーテルサルホン(PES)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板などを用いることができる。
【0012】
濡れ性変化層30は、熱、電子線、紫外線、プラズマ等のエネルギーの付与により表面エネルギー(臨界表面張力)が変化する濡れ性変化材料を含む。この濡れ性変化材料には、側鎖に疎水性基を有する高分子材料を用いることができる。高分子材料としては、具体的には、ポリイミドや(メタ)アクリルレート等の骨格を有する主鎖に直接或いは結合基を介して疎水性基を有する側鎖が結合しているものを用いることができる。疎水基としては、フッ素原子を含むフルオロアルキル基やフッ素元素を含まない炭化水素基を用いることができる。
【0013】
濡れ性変化材料として、側鎖に疎水基を有する構造の高分子材料を用いた場合、低表面エネルギー部50からなる濡れ性変化層30が基板20上に形成される。
【0014】
第2の工程では、フォトマスク91を用いて、紫外線92を濡れ性変化層30上の一部へ露光する。紫外線92を露光した部分の濡れ性変化層30は、疎水基の結合が切断され低表面エネルギー(疎水性)から高表面エネルギー(親水性)に変化する。このため、濡れ性変化層30上に高表面エネルギー部40と低表面エネルギー部50とからなるパターンを形成することができる。
【0015】
第3の工程では、液滴吐出ノズル(吐出ノズル、ノズルともいう)93から、導電性材料を含む機能液61を高表面エネルギー部40上へ選択的に配置する。機能液61の配置手段としては、微小液滴を1滴ずつ精度よく滴下可能であるという特徴を有する、インクジェット法が好適である。
【0016】
導電性材料を含む機能液61は、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Ni、Pd、Pb、In、Sn、Zn、TIやこれらの合金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ガリウムなどの透明導電体、などからなる金属微粒子を有機溶媒や水に分散させたインクや、金属錯体を有機溶媒や水に溶解させたインクや、ドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリエチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液などが挙げられる。インクジェット法で用いるために、機能液61の表面張力は20mN/m以上、50mN/m以下であることが望ましく、また粘度は2mPa・s以上、50mPa・s以下である事が望ましい。
【0017】
図5は、インクジェット装置の構造の一実施例を示した概略図である。
インクジェット装置100は、定盤101と、ステージ102と、液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッドともいう)103と、液滴吐出ヘッド103に接続されたX軸方向移動機構104と、ステージ102に接続されたY軸方向移動機構105と、制御装置106とを備えている。
【0018】
ステージ102は、基板20を支持する目的で備えられており、基板20を吸着する吸着機構(図示せず)等の固定機構を備えている。また、基板20上に滴下された機能液61を乾燥させるための熱処理機構を備えて良い。
【0019】
液滴吐出ヘッド103は、複数の液滴吐出ノズル93を備えたインクジェットヘッドであり、複数の液滴吐出ノズル93が液滴吐出ヘッド103の下面に、X軸方向に沿って一定間隔で並んでいる。この液滴吐出ノズル93からステージ102に支持されている基板20に対して機能液61が吐出される。液滴吐出ヘッド103の液滴吐出機構には、例えばピエゾ方式を用いることができ、この場合、液滴吐出ヘッド103内のピエゾ素子に電圧を印加することで液滴が吐出する。
【0020】
X軸方向移動機構104は、X軸方向駆動軸107、及びX軸方向駆動モータ108で構成される。X軸方向駆動モータ108はステッピングモータ等であり、制御装置106からX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸駆動軸107を動作させ、液滴吐出ヘッド103がX軸方向に移動する。
【0021】
Y軸方向移動機構105は、Y軸方向駆動軸109およびY軸方向駆動モータ110で構成される。制御装置106からY軸方向の駆動信号が供給されるとステージ102がY軸方向に移動する。
【0022】
制御装置106は、液滴吐出ヘッド103に吐出制御用の信号を供給する。またX軸方向駆動モータ108にX軸方向の駆動信号を、またY軸方向駆動モータ110にY軸方向の駆動信号をそれぞれ供給する。なお制御装置106は、液滴吐出ヘッド103、X軸方向駆動モータ108、Y軸方向駆動モータ110とそれぞれつながっているが、その配線は図示していない。
【0023】
インクジェット装置100は、液滴吐出ヘッド103とステージ102とを相対的に走査させながらステージ102上に固定された基板20に対して機能液61の液滴を吐出する。なお液滴吐出ヘッド103とX軸方向移動機構104の間には、X軸方向移動機構104と独立動作する回転機構を備え付けても良い。回転機構を動作させて液滴吐出ヘッド103とステージ102との相対角度を変化させることで、吐出ノズル間ピッチを調節できる。また液滴吐出ヘッド103とX軸方向移動機構104の間には、X軸方向移動機構104と独立動作するZ軸方向移動機構を備え付けても良い。Z軸方向に液滴吐出ヘッド103を移動させることで、基板20とノズル面との距離を任意に調節可能である。またステージ102とY軸方向移動機構105の間には、Y軸方向移動機構105と独立動作する回転機構を備え付けても良い。回転機構を動作させることで、ステージ102上に固定された基板20を任意の角度に回転させた状態で、基板20に対して液滴を吐出できる。
【0024】
図6は、図5に示すインクジェット装置の印刷手順例を示した図である。
(S11) はじめにインクジェット装置100の液滴吐出ヘッド103を制御装置106で制御するために、図中にあるグリッド状に図示された印刷用ラスターデータを作成する。ここではデータ例として、吐出と不吐出に対応した白黒2値のデータを図示しているが、必ずしもこれに限定されるわけではない。
【0025】
(S12) 次に、制御装置106で印刷解像度を決定するとともに印刷データを読み込み、液滴吐出ヘッド103の各ノズルとの対応を決定する。印刷解像度とは印刷用データの1グリッドの大きさを意味しており、ここではX軸方向印刷解像度、Y軸方向印刷解像度ともにノズル間隔の1/12とした。この場合、例えばノズル1は印刷データ上でのX座標の1〜12を、ノズル2は13〜24を、ノズル3は25〜36を、といったように各ノズルが担当するX軸座標範囲が決定される。
【0026】
(S13) 次に、インクジェット装置100を用いて印刷を行う。
図7に示すように、はじめにX軸方向移動機構104を固定した状態でY軸方向移動機構105を駆動させて液滴吐出ヘッド103を相対的に移動させるとともに、印刷データ上の白黒2値に応じて吐出、不吐出となるように液滴吐出ヘッド103を制御し、黒色で示す位置に液滴を滴下する。なおこの際のY軸方向の走査を副走査と呼ぶが、この副走査ではノズル位置に対応したX軸座標の1、13、25、・・に相当するX軸座標範囲の印刷を行う。
【0027】
(S14) 次に図8に示すように、X軸方向移動機構104を制御し、液滴吐出ヘッド103を相対的に印刷解像度に相当する量だけX軸方向に移動させる。なおこの際のX軸方向の走査を主走査と呼ぶ。
【0028】
(S15) 次に、ステップS13と同様にX軸方向移動機構104を固定し、Y軸方向移動機構105を駆動させながら、印刷データ上の白黒2値に応じて液滴吐出ヘッド103を制御する。この副走査では、ノズル位置に対応したX軸座標の2、14、26、・・に相当するX座標範囲の印刷を行う。
【0029】
以降、上記と同様の手順で、ノズル間の隙間を埋め尽くすまで、X軸方向の主走査、Y軸方向の副走査を繰り返し行い、最終的に図9に示すような状態で印刷が完了する。
【0030】
なお本印刷手法において、X軸方向移動機構104とY軸方向移動機構105の移動速度は駆動モータの位置決め精度が保証される範囲で任意に決定する事が可能であり、またX軸方向印刷解像度とY軸方向印刷解像度も任意に決定する事が可能である。
【0031】
実際には、Y軸方向の移動速度と吐出位置間隔(黒グリッドと黒グリッドとの間隔)によって、ノズルに要求される周波数性能が変わり、Y軸方向移動速度が早いほど、またY軸方向吐出位置間隔が狭いほど、高周波での吐出が必要になる。そのため仮に液滴吐出ヘッド103の吐出上限周波数が規定された場合には、Y軸方向吐出位置間隔が広いほどY軸方向移動速度を高速化可能であり、スループットが向上する。Y軸方向吐出位置間隔を広げるためには機能液の体積をできるだけ大きくし、より少ない機能液の滴数数で導電層を形成するのが有効であるが、この場合、濡れ性変化層の低表面エネルギー部、高表面エネルギー部に対する機能液の接触角と高表面エネルギー部の幅に応じて機能液の体積を調整することが望ましい。
【0032】
また上で述べてきたように、インクジェット法のスループットを規定する主因子にX軸方向移動機能による主走査回数が挙げられる。図6に示した例ではX軸方向印刷解像度をノズル間隔の1/12としたため、12回の主走査が必要であった。よって高スループット化には、X軸方向印刷解像度を低減するような条件設定が重要である。
【0033】
図10に、X軸方向印刷解像度を低減するための手法(1)を示す。
ここではY軸方向を長手とする線形状パターンの導電層が一定の間隔で周期的に配列された積層構造体を作製する場合を示しており、液滴吐出ヘッド103のノズル間隔を線形状の高表面エネルギー部40(図中、点線で囲まれた領域。)の配列間隔に一致させている。なおこの例は、液滴吐出ヘッド103の主走査方向とノズル配列方向が同一となっている。この場合、ノズル間隔と高表面エネルギー部40の配列間隔が一致しているため、1回の副走査で全ての高表面エネルギー部に機能液を滴下可能となる。
【0034】
また図11に、X軸方向印刷解像度を低減するための手法(2)を示す。
ここではY軸方向を長手とする線形状パターンの導電層が一定の間隔で周期的に配列された積層構造体を作製する場合であって、Y軸方向を長手とする線形状パターンの高表面エネルギー部40(図中、点線で囲まれた領域。)のパターン間隔が液滴吐出ヘッド103のノズル間隔よりも狭い場合の例を示している。この場合、液滴吐出ヘッド103を回転させて、インクジェット装置100の所定方向(X軸方向、主走査方向)におけるノズル間隔を調整することが好ましい。これにより、ノズル間隔を液滴吐出ヘッド103の主走査方向に投影した間隔(インクジェット装置100の所定方向(X軸方向、主走査方向)におけるノズル間隔)を、高表面エネルギー部40のパターン間隔(積層構造体の配列間隔)に一致させることができ、1回の副走査で全ての高表面エネルギー部40に機能液を滴下可能となる。
【0035】
なお図10では、高表面エネルギー部40のパターン形状が線形状となっているが、1回の副走査で高表面エネルギー部に機能液を滴下していくため、高表面エネルギー部40への機能液の滴下時間間隔をより短くでき、滴下された機能液の乾燥による固化などの影響を低減できるため、結果として膜厚均一性の高い導電層を形成できる。
【0036】
[アクティブマトリクス基板の製造方法]
次に、本発明のアクティブマトリクス基板の製造方法について説明する。
本発明のアクティブマトリクス基板400は、図14に示すように、ゲート電極210、ゲート絶縁層220、ソース電極230、ドレイン電極240、保持容量電極250及び半導体層260を含むトランジスタ270と、ゲート電極210から一方向に延設されたゲート信号線280と、ソース電極230から、ゲート信号線280の延設方向に対して略直交する方向に延設されたソース信号線290と、保持容量電極250から、ゲート信号線280又はソース信号線290の延設方向に対して略平行に延設された共通信号線300と、を備え、その特徴的な構成として上述の本発明の積層構造体の製造方法を用いて製造された積層構造体(図4)を有し、その積層構造体の導電層71は、ゲート電極210、ソース電極230、ドレイン電極240、保持容量電極250、ゲート信号線280、ソース信号線290、共通信号線300の、少なくともといずれか一つを構成している。
また、本発明のアクティブマトリクス基板400は、基板20上に複数のトランジスタ270が2次元アレイ状に配置されたものである。
【0037】
また、図14に示すアクティブマトリクス基板400は、少なくとも基板(基板20)と、絶縁層(濡れ性変化層31,32)と、電極層(ゲート電極210、ソース電極230、ドレイン電極240、保持容量電極250、ゲート信号線280、ソース信号線290、共通信号線300)と、を有する多層配線基板と捉えることができ、その特徴的な構成として本発明の積層構造体の製造方法を用いて製造された積層構造体(図4)を有し、その積層構造体の導電層71は、前記電極層の少なくとも一部を構成することを特徴とするものである。
【0038】
ここでは一例として、図12〜図14に示す手順によるアクティブマトリクス基板の製造方法を説明する。
(S21) はじめに上述した積層構造体の製造方法を用いて、図12に示すように、基板20上に、高表面エネルギー部41と低表面エネルギー部51とを備える濡れ性変化層31、及び高表面エネルギー部41上に、ゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、共通信号線300を形成する。
(S22) 次に、上述した積層構造体の製造方法を再度用いて、図13に示すように、高表面エネルギー部42と低表面エネルギー部52とを備える濡れ性変化層32、および高表面エネルギー部42上に、ソース電極230、ドレイン電極240、ソース信号線290を形成する。なお本構成においては、濡れ性変化層32がゲート絶縁層220の機能を兼ねており、また、ソース信号線290がソース電極230の機能を兼ねている。
(S23) 最後に、図14に示すように、ソース電極230及びドレイン電極240の両方に接するように半導体層260を、例えばマイクロコンタクトプリンティング法で形成することで、アクティブマトリクス基板400が完成する。
【0039】
ここで、このアクティブマトリクス基板を製造する際に適用する本発明の積層構造体の製造方法についてより詳細に説明する。
図15は、図12においてゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、共通信号線300を有する積層構造体を形成する際の、高表面エネルギー部40(図中、点線で囲まれた領域。)における機能液の滴下位置(図中、黒色の升目位置)とノズル位置との関係を示したものである。アクティブマトリクス基板のゲート信号線280、共通信号線300の延在方向に直交する方向にノズルが配置されており、またゲート信号線280、共通信号線300の延在方向と副走査方向(Y軸方向)が一致している。このようにすることで2回の副走査で積層構造体を形成することが可能になる。
【0040】
また図16は、図13においてソース電極230、ドレイン電極240、ソース信号線290を有する積層構造体を形成する際の、高表面エネルギー部40(図中、点線で囲まれた領域。)における機能液の滴下位置(図中、黒色の升目位置)とノズル位置との関係を示したものである。アクティブマトリクス基板のソース信号線290の延在方向に直交する方向にノズルが配置されており、またソース信号線290の延在方向と副走査方向(Y軸方向)が一致している。このようにすることで2回の副走査で積層構造体を形成することが可能になる。
【0041】
つぎに、本発明に係る画像表示装置について説明する。
本発明に係る画像表示装置は、画像表示素子と、前述したアクティブマトリクス基板400と、を備えることを特徴とするものである。
【0042】
図17に、本発明に係る画像表示装置の構成例を示す。
図17に示すように、画像表示装置500は、上述したアクティブマトリクス基板400と、透明導電膜502を有する第2の基板501と、アクティブマトリクス基板400と第2の基板501の間に設けられる画像表示素子550と、を備え、トランジスタ270によって画素電極を兼ねるドレイン電極240上の画像表示素子がスイッチングされる。ここで、第2の基板501としては、ガラスやポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等のプラスチックを用いることができる。また、画像表示素子550としては液晶、電気泳動、有機EL等の方式を用いることができる。
【0043】
画像表示素子550として液晶を用いた液晶表示素子は電界駆動であることから消費電力が小さく、また駆動電圧が低いことからTFTの駆動周波数を高くすることができ、大容量表示に適している。液晶表示素子の表示方式として、TN、STN、ゲスト・ホスト型、高分子分散液晶(Polymer-dispersed Liquid Crystal=PDLC)等が挙げられるが、反射型で明るい白色表示が得られる点ではPDLCが好ましい。
【0044】
なお、アクティブマトリクス基板400上に画像表示素子550が積層される反射型液晶素子等においては、アクティブマトリクス基板400上に層間絶縁膜(不図示)を設け、コンタクトホールを通じて該層間絶縁膜上に設けた画素電極(不図示)が、トランジスタ270のドレイン電極240と接続される。
【0045】
電気泳動表示素子は、第1の色(例えば白色)を呈する粒子を第2の色を呈する着色分散媒中に分散した分散液、あるいは互いに異なる色(例えば白色と黒色)に着色した2種以上の粒子が無色の分散中に分散した分散液からなるもので、着色粒子が分散媒中で帯電することにより、電界の作用で分散媒中における存在位置を変えることができ、それによって表示色が変化する。この表示方式によれば明るく、視野角の広い表示ができ、また表示メモリー性があるため特に消費電力の観点から好ましく使用される。
【0046】
上記分散液を高分子膜で包んだマイクロカプセルとすることにより、表示動作が安定化するとともに、表示装置の製造が容易になる。マイクロカプセルはコアセルベーション法、In−Situ重合法、界面重合法、等公知の方法で作製することができる。白色粒子としては、酸化チタンが特に好適に用いられ、必要に応じて表面処理或いは他の材料との複合化等が施される。分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、臭化エチル等のハロゲン化炭(化水)素類、含フッ素エーテル化合物、含フッ素エステル化合物、シリコーンオイル等の抵抗率の高い有機溶媒を使用するのが好ましい。分散媒を着色するためには所望の吸収特性を有するアントラキノン類やアゾ化合物類等の油溶性染料が用いられる。分散液中には分散安定化のために界面活性剤等を添加してもよい。
【0047】
有機EL素子は自発光型であるため鮮やかなフルカラー表示を行うことができる。また、EL層は非常に薄い有機薄膜であるので、柔軟性に富み、特にフレキシブルな基板上に形成するのに適している。
【実施例】
【0048】
以下、試験例、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記試験例、実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記試験例、実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0049】
(試験例1)
試験例1は、図18に示す積層構造体の作製方法に関する。
まず、濡れ性変化材料を含有するNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)溶液を、ガラス基板上にスピンコート塗布した。この濡れ性変化材料には、下記構造式(I)で表される重合比を変えた2種類のポリイミド材料A、Bを用いた。次に、100℃のオーブンで前焼成を行った後、300℃のオーブンで熱処理を加えて濡れ性変化層30を形成した。ここではポリイミド材料の種類により、低表面エネルギー部の表面エネルギーを変えている。
【0050】
【化1】

【0051】
続いて、複数の線状の開口パターンを有するフォトマスク91を作製し、波長300nm以下の紫外線(超高圧水銀ランプ)92を濡れ性変化層30上の一部へ露光させ、濡れ性変化層30上に高表面エネルギー部40および低表面エネルギー部50とからなるパターンを形成した。各ポリイミド材料に対して、紫外線照射量を変えることで、高表面エネルギー部40の表面エネルギーを変えている。また作製したフォトマスク91には3種類の大きさの異なる開口パターンをあらかじめ設けており、3種類の異なる幅(20,25,35μm)を有する高表面エネルギー部40を形成している。
【0052】
続いて、Agナノ粒子を含有する親水性インクからなる機能液61をインクジェット法で高表面エネルギー部40に選択的に滴下した。このときの滴下中心位置は高表面エネルギー部40の幅中心(X=0)としている。また、この機能液61の表面張力は約30mN/m、粘度10mPa・sである。
液滴法を用いて測定した機能液61の低表面エネルギー部50に対する接触角および高表面エネルギー部40に対する接触角は、ポリイミド材料種や露光量(紫外線照射量)によって6水準変化させている。
【0053】
なお、インクジェット法としては、ピエゾ方式のインクジェットヘッドを用い、駆動波形および駆動電圧を調整し、液滴吐出ノズル93から吐出される機能液61の平均体積を約7pL(飛翔時の直径は約24μm)として、高表面エネルギー部への機能液61の滴下を行った。
【0054】
続いて、高表面エネルギー部40に滴下された機能液61を100℃のオーブンで乾燥・固化させ、積層構造体を作製した。
【0055】
表1に、作製した積層構造体を金属顕微鏡で観察し、導電層71がどのように形成されているかを評価した結果を示す。表1より、高表面エネルギー部40のみに安定して導電層71を形成するためには、前記濡れ性変化層30の低表面エネルギー部50に対する機能液61の接触角が30°以上、前記濡れ性変化層30の高表面エネルギー部40に対する機能液61の接触角が10°以下であり、また機能液61の飛翔時の直径が高表面エネルギー部40の幅以下であればよいことがわかった。
すなわち、濡れ性変化層30の低表面エネルギー部50、高表面エネルギー部40に対する機能液61の接触角と、高表面エネルギー部40の幅に応じて機能液61の液滴の体積を調整することで、確実に高表面エネルギー部40上にのみに導電層71を形成することができる。また許容範囲内で機能液61の液滴の体積をより大きくした場合に、より少ない滴下機能液数で導電層71が形成できるため、結果として吐出ヘッドへ要求される周波数性能が緩和され、より高いスループットで導電層が形成可能となる。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例1)
実施例1は、図19に示すアクティブマトリクス基板の作製方法に関する。図19の(a)はアクティブマトリクス基板の上面図、(b)は(a)の矢視A−A’から見た断面図である。
アクティブマトリクス基板は、ゲート電極210、ゲート絶縁層220、ソース電極230、ドレイン電極240、保持容量電極250及び半導体層260を含むトランジスタ270と、ゲート電極210から一方向に延設されたゲート信号線280と、ソース電極230から、ゲート信号線280の延設方向に対して略直交する方向に延設されたソース信号線290と、保持容量電極250から、ゲート信号線280又はソース信号線290の延設方向に対して略平行に延設された共通信号線300と、を備える。なお、図19では、ソース信号線290が、ソース電極230の機能を兼ねている。
【0058】
本実施例のアクティブマトリクス基板は、その特徴的な構成として、本発明の積層構造体を有し、その積層構造体の導電層71は、ソース電極230、ドレイン電極240、ソース信号線290を構成している。なお、図19には、アクティブマトリクス基板の4画素の構成例を示すが、実際には、画素が縦200画素、横200画素からなる、計40000画素がマトリクス状に並設されている。また、画素サイズは、150PPIに相当し約169μmである。またソース電極230の線幅は35μm、ソース電極230とドレイン電極240の間隔として表現されるチャネル長は5μmとしている。
【0059】
以下、アクティブマトリクス基板の作製方法について説明するが、ポリイミド材料及び機能液61については、試験例1と同一のものを用いたので、説明を省略する。
(S31) はじめにフォトリソグラフィー法を用いて、ガラス基板20上にゲート電極210、保持容量電極250、ゲート信号線280、および共通信号線300を作製した。
(S32) 次に、ポリイミド材料を含有するNMP溶液を、スピンコート法でガラス基板20上に塗布し、100℃のオーブンで前焼成を行った後、300℃のオーブンで熱処理を加えて濡れ性変化層30を形成した。
(S33) その後、所定のパターンを有するフォトマスク91を用いて、紫外線92を濡れ性変化層30上の一部へ露光させ、濡れ性変化層30上に高表面エネルギー部40と低表面エネルギー部50とからなるパターンを形成した。
(S34) 次に、図5に示すインクジェット装置100を用いて、インクジェット法により機能液61を、高表面エネルギー部40へ選択的に滴下した。このとき、液滴吐出ヘッド103は384個の吐出ノズル93がノズル間隔150PPIで配列されており、アクティブマトリクス基板の画素ピッチと同一としている。また、ステージ速度を500mm/sとしてY軸方向駆動機構105を制御している。
なお、液滴法を用いて測定した機能液61の低表面エネルギー部50に対する接触角および高表面エネルギー部40に対する接触角は、それぞれ30°、10°であった。また液滴吐出ノズル93から吐出される機能液61の平均体積は20pL(飛翔時の直径は約34μm)とした。
【0060】
図20には、本実施例(ステップS34)においてソース電極230、ドレイン電極240、ソース信号線290を形成する際の、高表面エネルギー部40に対する機能液61の滴下位置とノズル位置との関係図を示す。
アクティブマトリクス基板のソース信号線290の延在方向に直交する方向(X軸方向)に、液滴吐出ヘッド103の液滴吐出ノズル93としてのノズル1、ノズル2が配置されており、またソース信号線290の延在方向と副走査方向(Y軸方向)が一致しているため、2回の副走査で積層構造体を形成することが可能になる。さらに1画素ごとのソース電極230、ドレイン電極240のどちらに対しても1滴ずつの機能液(液滴d)しか滴下していない。
【0061】
このような吐出制御を行う場合、機能液61の吐出位置間隔は画素ピッチの169μmであることから、ステージ速度500mm/sで走査した場合においても、液滴吐出ヘッド103に要求される周波数は3kHz程度であり、また一定周期で液滴吐出ヘッド103を駆動させる事から非常に安定した吐出状態を維持することが可能であった。また1回の副走査に要する時間は1秒以下であり、非常に高いスループットを実現することができた。
【0062】
(S35) 機能液61の滴下後、熱処理してソース電極230及びドレイン電極240、並びにソース信号線290を形成した。
(S36) 次に、下記式(II)に示すようなスキームより合成した有機半導体なる重合体をトルエンに溶解した溶液をインクジェット法にて塗布して半導体層260を形成し、アクティブマトリクス基板を作製した。
【0063】
【化2】

【0064】
このように本発命のアクティブマトリクス基板の製造方法を用いれば、線幅35μmやチャネル長5μmといった微細な電極を高いスループットかつ安定して形成することができる。
【0065】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で作製したアクティブマトリクス基板に、画像表示素子として電気泳動素子を貼り合わせて、図17に示すような画像表示装置を作製した。電気泳動素子は、酸化チタン粒子オイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセルをPVA水溶液に混合して、ITO(酸化インジウムスズ)からなる透明電極を形成したポリカーボネート基板上に塗布して、マイクロカプセルとPVAバインダーからなる層を形成した。この基板と前記アクティブマトリクス基板を積層して画像表示装置を形成して動作させたところ、コントラストの高い画像を表示することができた。また150PPIと高精細なアクティブマトリクス基板を用いたことで、10pt文字を明瞭に表示することができた。
【0066】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
20 基板
30,31,32 濡れ性変化層
40,41,42 高表面エネルギー部
50,51,52 低表面エネルギー部
61 機能液
71 導電層
91 フォトマスク
92 紫外線
93 液滴吐出ノズル
100 インクジェット装置
101 定盤
102 ステージ
103 液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)
104 X軸方向移動機構
105 Y軸方向移動機構
106 制御装置
107 X軸方向駆動軸
108 X軸方向駆動モータ
109 Y軸方向駆動軸
110 Y軸方向駆動モータ
210 ゲート電極
220 ゲート絶縁層
230 ソース電極
240 ドレイン電極
250 保持容量電極
260 半導体層
270 トランジスタ(TFT)
280 ゲート信号線
290 ソース信号線
300 共通信号線
400 アクティブマトリクス基板
500 画像表示装置
501 第2の基板
502 透明導電膜
550 画像表示素子
d 液滴
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2005−310962号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーの付与により表面エネルギーが変化する濡れ性変化材料を含み、少なくとも表面エネルギーの異なる2つの部位を有する濡れ性変化層と、前記濡れ性変化層における表面エネルギーの異なる2つの部位のうち、表面エネルギーの高い高表面エネルギー部上に形成された所定パターンの導電層と、を備える積層構造体の製造方法であって、
濡れ性変化材料を含む濡れ性変化層を形成する第1の工程と、
前記濡れ性変化層の一部にエネルギーを付与し、前記濡れ性変化層に表面エネルギーの低い低表面エネルギー部と表面エネルギーの高い高表面エネルギー部を形成する第2の工程と、
一方向に複数のノズルが一定のノズル間隔で配列されたインクジェットヘッドと、前記第2の工程後の基板を支持するステージと、前記インクジェットヘッドに対して前記ステージを相対的に移動させる移動機構とを備えるインクジェット装置を用いて、導電性材料を含有する機能液を前記高表面エネルギー部に選択的に滴下する第3の工程と、
前記高表面エネルギー部に滴下された機能液を乾燥させて前記高表面エネルギー部上に前記導電性材料を含む導電層を形成する第4の工程と、を有し、
前記第2の工程後の基板には、同一パターンの前記高表面エネルギー部が一定の間隔で周期的に配列されており、
前記第3の工程において、前記インクジェット装置の所定方向における前記複数のノズルの間隔を、前記高表面エネルギー部のパターン間隔と一致させることを特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程において、前記インクジェットヘッドを回転させて、前記インクジェット装置の所定方向における前記複数のノズルの間隔を調整することを特徴とする請求項1に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程において、前記インクジェット装置におけるステージの相対的な移動方向を、前記高表面エネルギー部のパターン形状としての長手方向と一致させることを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載の積層構造体の製造方法を用いて製造されてなる積層構造体。
【請求項5】
少なくとも基板と、絶縁層と、電極層と、を有する多層配線基板において、
請求項4に記載の積層構造体を有し、前記導電層は前記電極層の少なくとも一部を構成することを特徴とする多層配線基板。
【請求項6】
ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、保持容量電極及び半導体層を含むトランジスタと、前記ゲート電極から一方向に延設されたゲート信号線と、前記ソース電極から、前記ゲート信号線の延設方向に対して略直交する方向に延設されたソース信号線と、前記保持容量電極から、前記ゲート信号線又は前記ソース信号線の延設方向に対して略平行に延設された共通信号線と、を備えるアクティブマトリクス基板において、
請求項4に記載の積層構造体を有し、
前記導電層は、前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記保持容量電極、前記ゲート信号線、前記ソース信号線及び前記共通信号線のうち、少なくともいずれか1つを構成することを特徴とするアクティブマトリクス基板。
【請求項7】
画像表示素子と、請求項6に記載されたアクティブマトリクス基板と、を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図5】
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【図17】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−228476(P2011−228476A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96874(P2010−96874)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】