適応型負性微分抵抗デバイス
【課題】 単一のシリコンウェーハ中に形成した互いに異なる回路に多様な負性微分抵抗(NDR)特性を付与できるように製造工程中または出荷後のフィールドでの通常動作中に最大電流対最小電流比(PVR)値などの特性値を調整できるようにしたNDRデバイスを提供する。
【解決手段】 互いに異なるNDRモードを発現するように動作中に多様にNDR特性を変える過程を含むNDR素子の制御の方法を開示している。NDR素子(シリコン利用のNDR FETなど)に印加するバイアスの条件を変えることによって、最大電流対最小電流比(PVR)値(またはそれ以外の特性)をNDR素子利用回路の所望の動作変化の実現のために動的に変えることができる。例えば、メモリ用または論理回路用では、動作電力の削減のために最小電流値を休止期間中に小さくすることができる。すなわち、適応型NDR素子を慣用の半導体回路の中で有利に活用することができる。
【解決手段】 互いに異なるNDRモードを発現するように動作中に多様にNDR特性を変える過程を含むNDR素子の制御の方法を開示している。NDR素子(シリコン利用のNDR FETなど)に印加するバイアスの条件を変えることによって、最大電流対最小電流比(PVR)値(またはそれ以外の特性)をNDR素子利用回路の所望の動作変化の実現のために動的に変えることができる。例えば、メモリ用または論理回路用では、動作電力の削減のために最小電流値を休止期間中に小さくすることができる。すなわち、適応型NDR素子を慣用の半導体回路の中で有利に活用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスの動作特性、とくに変動する動作要求に応答して適応的に動作するように構成できる負性微分抵抗(NDR)電界効果トランジスタデバイスの動作特性を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
負性微分抵抗(NDR)特性を有するシリコン利用のデバイスが半導体デバイスの歴史において長い間追求されてきた。CMOS互換性を備え、NDR特性を有する新しい種類のFETはKingほか名義の2000年6月22日提出の特許出願、すなわち米国特許出願第09/603,101号「CMOSプロセス互換性を備え可変同調周波数を有するNDRデバイスおよびそのデバイスを動作させる方法」、同第09/603,102号「電荷トラッピングデバイスおよびNDRモードを備えるトランジスタを構成する方法」(2002年11月12日登録の米国特許第6,479,862号)、および同第09/602,658号「可変同調周波数を有するNDRデバイスを製造するためのCMOSプロセス互換性を備える方法」に開示されているので、ここに参照してそれらの内容をこの明細書に組み入れる。このデバイスの利点はそれら先行出願に記載されているので、この明細書には反復記載しない。
【0003】
それら先行出願に記載してあるとおり、NDRデバイスは、多値論理回路、SRAMセル、ラッチ、発振器など多様な用途に使うことができる。上述のKingほか名義の特許出願には、相補型金属酸化物半導体(CMOS)FETデバイスの製造のための慣用のプレーナプロセス技術を用いてシリコン利用のIC技術によりNDRデバイスを実現することを可能にする画期的な進展を記載してある。NDRデバイスとCMOSデバイスとの一体化が高密度論理回路および高密度メモリ回路に多様な利点をもたらした。
【0004】
上述のNDRデバイスのもたらす利点により、NDRデバイスの製造、試験および動作を全面的に改良して関連技術のさらなる改良および普及を図ることが望まれる。
【0005】
また、トラップ位置制御、トラップエネルギーレベル制御およびトラップ形成の改善がこの種のNDRデバイスに有用であり、またこれら以外のトラップ利用のデバイスにも有益であり得る。
【0006】
さらに、従来技術は最大電流対最小電流比(PVR)の調整の難しいデバイスに限られていた。例えば、製造過程でPVR値を直接に制御できるようにして単一ウェーハ上の互いに異なる回路のNDR特性に変化を与えることができれば有用である。また、デバイスの正常動作中にPVR値を制御できれば望ましいが、慣用のNDR技術では不可能である。
【0007】
【特許文献1】USP 6 479 862
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、この発明の目的は、従来技術における上述の限界を検討して、電荷トラッピングデバイス、NDRデバイスの新たな実施例、およびそれら実施例の新たな製造方法および動作方法を提供することである。上記の目的および上記以外の目的は次に述べるこの発明の多様な実施例により達成できるが、この明細書で述べるこの発明のあらゆる側面をそれら実施例が必要とするとは限らないことは当業者には理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、この発明の第1の側面は、シリコン利用のNDR FETを形成する方法であって、基板を準備する過程と、この基板の第1の部分に第1の不純物を用いて前記NDR FETの第1のNDR領域、すなわち前記NDR FETにNDR特性をもたらすように適合した第1のNDR領域を形成する過程と、前記NDR FETの閾値電圧特性を調整するように前記基板の前記第1の部分に第2の不純物を配置する過程と、前記過程の終了のあと前記NDR FETに第1の熱処理を施す過程と、前記基板の前記第1の部分の上に前記NDR FETのゲート絶縁層を形成する過程と、前記NDR FETに第2の熱処理を施す過程と、前記NDR FETのソース領域およびドレーン領域、すなわち前記基板の前記第1の部分に位置するNDR FETチャネル経由で互いに結合されるソース領域およびドレーン領域を形成する過程とを含む方法に関する。
【0010】
上記チャネルからの十分な数の電荷キャリアが上記第1のNDR領域に一時的にトラップされるとNDR FETはNDR特性を伴って動作するので有利である。上記第1の不純物は第1の導電型のドーパントで構成し、上記第2の不純物はこの第1の導電型と反対の導電型のドーパントで構成するのが好ましい。上記第1の熱処理は反応炉で行い、上記第2の熱処理はパルス状加熱室内の高速加熱アニールランプで行うのが好ましい。また、ゲート電極を形成したあと第3の熱処理を施すのが好ましい。
【0011】
そのあとの工程でゲート電極やソース領域およびドレーン領域の一方または両方などへのシリサイトコンタクトを形成できる。
【0012】
したがって、この発明の実施例には、温度範囲50℃にわたって10以上の最大電流対最小電流比(PVR)を有するシリコン利用のNDR FETもある。温度範囲100℃にわたってPVR値が1000を超える例もある。
【0013】
上記以外の実施例ではSOI(シリコンオンインシュレータ)基板を用いるが、この発明にはひずみSiやSiCなど多様な基板が好適である。
【0014】
上記FETに添加する不純物は、好ましくは基板の伝導帯界面よりも高いエネルギー特性を有する電荷トラッピングサイトを形成するのに用いられる。
【0015】
他の実施例では、NDR FETと非NDR FETとを共通の製造工程により同時並行的に形成する。例えば、アイソレーション領域、LDDイオン打込み、ゲート絶縁膜、ゲート電極、コンタクト、ソース/ドレーンイオン打込みなどを共用のプロセスにより形成できる。それらの例では、NDRデバイスのNDR領域はNDR FETのゲート絶縁領域で構成するのが好ましい。
【0016】
さらに他の実施例では、互いに異なる二つの種類のNDRデバイスを共通の基板の上に形成できる。すなわち、第2のNDR素子の第2のNDR領域を上記半導体基板の第2の領域に形成して、上記第2のNDR領域が第1のNDR FETのNDR特性とは異なる第2のNDR特性を示すのに適合するようにするのである。
【0017】
したがって、この発明の関連する側面は、電流最大値および最小値で画定されるNDR特性で動作する電荷トラップ利用のNDR素子に関係する。NDR素子のトラップ領域における電荷トラップの分布をそれら電荷トラップのエネルギーの集中の制御などにより適切にすることによって、NDR素子の最大電流対最小電流比(PVR)を50℃にわたる温度範囲で10以上の値にすることができる。
【0018】
他の実施例では、25℃から125℃にわたる動作温度範囲でPVR値が5倍以下の範囲で変動するように構成することができる。さらに他の実施例では、25℃から125℃にわたる動作温度範囲でPVR値が1000以上になる。電荷トラッピング領域はNDR素子に伴うFETのチャネルと界面を形成するのが好ましい。
【0019】
電荷トラッピングデバイスの上記以外の実施例も同様の性能を達成するように同様に構成できる。
【0020】
この発明のもう一つの側面は、NDRデバイスを形成する方法であって、ゲート電極付きシリコン利用のNDR素子を形成する過程と、シリコン利用のトランジスタの製造工程中にゲート電極付きシリコン利用NDR素子の最大電流対最小電流比(PVR)特性を第1のPVR値と第2のPVR値との間の目標PVR値に設定する過程とを含む方法に関する。すなわち、半導体の中にNDRデバイスを形成する製造工程の期間中にPVR目標値が変動してそのNDRのPVR値が、少なくとも10倍の範囲で変動しうる第1の実施可能なPVR値と第2のPVR値との間の範囲にある値になり得る。
【0021】
所望のPVRの値をイオン打込みなどの単一の工程で設定できる場合もある。
【0022】
好ましいアプローチでは金属酸化物半導体(MOS)互換性のある製造工程だけを用いる。特定の製造施設では第1のウェーハ上の第1の半導体基板と第2のウェーハ上の第2の別個の半導体基板とが互いに異なる時間に互いに異なるPVR目標値を備えることができるようにこの発明は十分な柔軟性を備える。イオン打込み装置、炉、アニール室、堆積システムなどの半導体製造装置に互いに異なるPVR値をプログラムすることができる。NDR電圧オンセット点(VNDR)も製造時に設定するのが好ましい。
【0023】
他の実施例では、一つ以上の一般プロセスパラメータの制御により製造中にPVR値(および/またはVNDR値)を設定できる。
【0024】
例えば、ある種の実施例では、NDRデバイスのために成長させたゲート絶縁膜の厚さの制御によりPVR値やVNDR値を製造中に設定できる。より詳細に述べると、ゲート絶縁膜の厚さを大きくするだけでPVR特性を上げることができる。ゲート絶縁膜の厚さは少なくとも5nmにするのが好ましく、単一の層、または互いに異なる二つの材料の複合体で構成するのが好ましい。用途によっては、このゲート絶縁膜を熱酸化物と堆積酸化物膜ベースの材料との両方で構成する。すなわち、共通基板上に、第1のゲート絶縁膜厚の第1のPVR特性のシリコン利用のNDRデバイスと第2のゲート絶縁膜厚の第2のPVR特性のシリコン利用のNDRデバイスとを設けることも用途によっては可能である。
【0025】
もう一つの実施例ではPVR値やVNDR値をシリコン利用NDR FETのチャネル長の制御により製造中に設定できる。この発明はスケーリング則をよく維持できるので、PVR特性がチャネル長に追従し、小さいチャネル長により大きいPVR値を実現し大きいチャネル長により小さいPVR値を実現できる。したがって、チャネル長を画定したり、ソース/ドレーン領域イオン打込みを画定する慣用のマスク利用工程によりPVR特性を確立できる。チャネルの大きさは、ゲート電極の側壁に堆積した多様な大きさのスペーサにより画定した大きさにすることができる。すなわち、PVR値は、チャネル長の小幅な削減でも大幅に増加させることができる。
【0026】
さらにもう一つの実施例では、NDR素子に伴う電荷トラップ層に導入する不純物の種類や線量を目標の電荷トラッププロフィルに合致するように制御することによって、PVR値やVNDR値を製造中に設定することができる。好ましいアプローチでは、ホウ素を不純物として選び、線量を1*1014atoms/cm2乃至3*1014atoms/cm2とする。これによって、電荷トラップ層のトラップ領域における電荷トラップ密度1*1019atoms/cm3以上、電荷トラップ層のバルク領域における密度1*1018の目標トラッププロフィルを得る。このようにして、上記以外の不純物、線量などを選ぶだけでPVR値を変えることができる。例えば、ホウ素の不純物線量を50%だけ増やすと、PVR値特性を100%以上上昇させることができる。上記以外のPVR処理の例にもみられるとおり、NDR電圧オンセット点(VNDR)も上述以外のやり方で制御できる。
【0027】
さらにもう一つの実施例では、電荷トラップの目標位置や濃度など全体としての分布を制御することによってPVR値やVNDR値を製造中に設定できる。好ましい実施例では、厚さ約0.5nm以下の目標位置範囲内で電荷トラップを分布させる。さらに、電荷トラップの密度を、界面における密度が電荷トラップ層のバルク領域における値よりも少なくとも1オーダーだけ大きくなるように調整する。
【0028】
他の実施例は、PVR値やVNDR値を急速加熱アニール操作の制御により製造中に設定することができる。好ましいアプローチでは、慣用の電球利用の加熱室におけるサイクルの少なくとも一部にわたって1000℃以上の温度におけるサイクルを用いる。この種の操作により、電荷トラップをバルク領域でなくチャネル界面領域に絞り集中させることができる。
【0029】
さらに他の実施例では、イオン打込みのイオンの種類や線量など低濃度ドーピングによるドレーン領域形成工程のドーピングの制御により製造中にPVR値やVNDR値を設定できる。好ましい実施例ではイオン打込みのドーパントとしてヒ素を1*1015atoms/cm2以上の線量で用いる。他の実施例では、イオン打込みのドーパントとしてリンを1*1015atoms/cm2の線量で用いる。ヒ素によるPVR値はリンによる場合の少なくとも2倍になるので、PVR値が回路動作に臨界的な影響を及ぼすような用途にはリンが好ましい。
【0030】
この発明の上述の側面に関連する側面は、シリコンウェーハ上にNDRデバイスを形成する半導体加工装置であって、ウェーハごとに(またはダイごとに)特定のPVR値を与えるようにプログラムすることができる加工装置に関する。この装置は慣用の半導体製造装置の中に配置するのが好ましく、NDRデバイス製造に伴うNDR関連プロセスレシピに応答するプログラム可能なコントローラを含む。NDR関連プロセスレシピには、NDRデバイスのPVR値の実現に伴う一つ以上の加工工程が含まれる。このプログラム可能なコントローラに結合した加工チェンバはNDR関連プロセスレシピに基づきシリコンウェーハ上に少なくとも一つの半導体加工操作を行うように構成されている。この半導体加工操作は、第1の値とその第1の値の少なくとも2倍である第2の値との間で変動するPVR値を実現するように加工チェンバ内で変更できる。
【0031】
他の実施例では、PVR値は半導体加工装置の中で10と100との間で変動させることができる。加工チェンバはイオン打込み装置、RTAチェンバ、堆積反応器、堆積チェンバなどで構成できる。
【0032】
この発明の上記以外の側面は、NDRデバイスなどの電荷トラップデバイスのための電荷トラッププロフィル形成の多様な最適化に関する。
【0033】
NDR FETの実施例では閾値電圧の改善のために相互ドーピング(counter-doping)を行う。すなわち、制御ゲートとソース領域とドレーン領域とを有する半導体デバイスを、第1の導電型の基板を準備する過程と、前記ソース領域およびドレーン領域の間で電荷キャリアを搬送するソース領域・ドレーン領域間にチャネル、すなわち前記第1の導電型の第1のチャネル不純物でチャネルをドープする第1のチャネルドーピング構成を経て形成されるチャネルを形成する過程とを用いて構成する。上記第2の導電型は第1の導電型と反対の導電型である。上述の第1のチャネルドーピング工程および第2のチャネルドーピング工程の結果、形成されたチャネル領域は第1の導電型を備える。チャネルとの間で界面を有する電荷トラップ領域も形成される。この電荷トラップ領域は上記界面沿いに電荷キャリアを一時的にトラップしデバイスがNDR特性を発揮できるようにする電荷トラップサイトを有する。これら電荷トラップサイトは、界面に実質的に集中した電荷トラップ分布を形成する第1のチャネル不純物に少なくとも一部は由来する。
【0034】
好ましい実施例では第2のチャネルドーピング工程にヒ素を用い、第1のチャネルドーピング工程にホウ素を用いる。好ましい実施例ではシリコンを用いるが、SOIやひずみSiやSiCなどシリコン以外の基板を用いることもできる。シリコンの結晶方位(111,100,110)が異なれば電荷トラッピング特性も異なってくる。
【0035】
電荷トラッピング領域は通常は半導体デバイスのゲート絶縁膜の一部として形成する。その変形では、ゲート絶縁膜の形成のあとその絶縁膜を通じて直接にイオン打込みを行うことによって形成する。また、他の変形では、熱酸化膜と堆積酸化膜との組み合わせなど2層電荷トラップ領域の一部として形成できる。
【0036】
さらに他の変形では、電荷トラッピング領域がチャネルとの界面の全長に及ばないようにすることもできる。また、他の実施例では、ソース側の電荷トラッピングを強めるように電荷トラッピング領域をソース領域から延びるようにする。さらに他の例では、電荷トラッピングサイトの上記界面沿いの分布を不均一にして、その界面沿いの活性電荷キャリアのトラッピング率を可変にする。トラッピング率を上記界面沿いの距離にほぼ比例して変化するように、すなわちソース領域における値がドレーン領域近傍よりも大きくなるように、制御することもできる。
【0037】
他の実施例では、電荷トラッピングサイトを二つの互いに異なる加工工程で形成する。例えば、電荷トラッピングサイトの第1のセットをイオン打込みで形成し、第2のセットを熱処理加工(水蒸気中など)で形成するのである。さらに他の実施例では、同じまたは別々の材料に互いに異なるイオン打込み方法を適用して互いに異なる種類の電荷トラップを形成する(すなわち、ホウ素およびヒ素または超微粒子など)。
【0038】
この発明のさらに他の関連側面は、不純物が適切な電荷トラップサイトを形成し得る界面にそれら不純物を確実に高濃度で分布させるためにアニール工程を用いることに関係する。この関連側面は、シリコン利用のNDR半導体デバイスの形成を、基板を準備する過程と、このNDR半導体デバイスの電荷キャリアを搬送するチャネル領域を形成する過程と、そのチャネル領域に第1の不純物をイオン打ち込みする過程と、前記チャネルとの間で界面を有する第1の誘電体層を形成する過程と、イオン打込み欠陥を減らすとともに前記界面沿いに前記第1の不純物が集中するようにそれら不純物を分布させるように前記チャネル領域をアニールする過程とによって行うことによって達成される。上記界面沿いに分布した上記第1の不純物は、NDR特性を生ずるように電荷キャリアを一時的にトラップするのに適合したエネルギーレベルを備える電荷トラッピングサイトを形成する。
【0039】
好ましい実施例では、第1の不純物は基板と同じ第1の導電型(p)の不純物である。シリコン利用のNDR半導体デバイスは通常はFETであるが、それ以外の電荷トラップ利用のNDRデバイスも含み得る。
【0040】
さらに他の変形では、トラップ分布をさらに機能強化するのに追加のアニール工程を施すことができる。すなわち、半導体デバイスに複数の互いに別々のアニール工程を施し、それらアニール工程のうちの少なくとも第1のアニール工程はチャネル領域との界面沿いに電荷キャリアサイトを集中させ電荷トラッピング層のバルク領域では低密度にするのに適合させる。後続の別のアニール工程は、界面沿いの電荷トラッピングサイトの集中度や配置を変えるのに適合させる。
【0041】
したがって、この発明のさらに他の関連側面は、FETのチャネル領域に隣接した電荷トラッピング層、すなわちチャネル領域から電荷キャリアをトラップしたりトラップ解除したりするように構成した電荷キャリアトラッピングサイトを含む電荷トラッピング層を備えるシリコン利用のFETに関する。電荷キャリアトラッピングサイトを、トラッピング層のバルク領域における密度がチャネル領域との界面沿いの密度よりも少なくとも1オーダー低くなるように分布させる。このようにして、このFETは電荷キャリアのトラッピングおよびトラッピング解除の結果、NDR特性を帯びることができる。
【0042】
好ましい実施例では、上記界面における1立方センチメートルあたりの電荷トラッピングサイトの密度は、トラッピング層のバルク領域の中の電荷トラッピングサイトの濃度よりも少なくとも2オーダーだけ高い。さらに、電荷キャリアトラッピングサイトに用いる不純物のトラッピング層−チャネル界面における濃度はチャネル領域における値よりも少なくとも2倍高い。
【0043】
この発明のもう一つの側面は同一の基板の上に互いに異なる種類のNDRデバイスを形成することに関する。この方法は、第1のNDR特性を有する第1のシリコン利用のNDRデバイスを基板の第1の部分に形成する過程と、第2のNDR特性を有する第2のシリコン利用のNDRデバイスを基板の第2の部分に形成する過程とを含む。互いに異なる種類の回路を収容するために第1のNDR特性と第2のNDR特性とは互いに実質的に異ならせてあり、第1の処理回路とそれとは別の第2の処理回路とにそれぞれ用いてある。
【0044】
第1のNDR特性は第1のPVR値や第1のオンセット電圧値を含み、第2のNDR特性は第2のPVR値や第2のオンセット電圧値を含む。これらの特性値を変動させることによって、互いに異なるNDR利用の回路向けの互いに異なる性能を達成できる。
【0045】
一つの実施例では、PVR/VNDR値は、第1の処理回路が論理回路に対応し第2の処理回路がメモリ回路に対応するので、互いに異なる。
【0046】
もう一つの実施例では、PVR/VNDR値の相違は、第1の処理回路が第1の周波数で動作し第2の処理回路がその第1の周波数よりも高い第2の周波数で動作することに起因する。
【0047】
他の実施例では、PVR/VNDR値の相違は、第1の処理回路が第1の動作電力要件で動作する第1のメモリ回路に対応し第2の処理回路がその第1の動作電力要求よりも高い第2の動作電力要求で動作する第2のメモリ回路に対応することに起因する。
【0048】
さらに他の実施例では、第1の閾値電圧および第1のゲート長を備える第1のFETで第1のNDRを構成し、それら第1の閾値電圧およびゲート長とはそれぞれ実質的に異なる第2の閾値電圧および第2のゲート長を備える第2のFETで第2のNDRを構成するためにPVR/VNDR値が互いに異なる。
【0049】
互いに異なるPVR/VNDR値は、第1のNDRデバイスおよび第2のNDRデバイス向けにそれぞれ構成した第1の電荷トラップ分布および第2の電荷トラップ分布を用いて実現できる。そのような分布を得るための一つのアプローチは、第1のマスキング構成および第1のNDR領域への第1の不純物イオン打込み工程により第1の電荷トラップ分布をまず形成し、第2のマスキング工程および第2のNDR領域への第2の不純物イオン打込み工程により第2の電荷トラップ分布を次に形成するアプローチである。
【0050】
この発明のさらに他の側面は、複数のNDRデバイスを形成する方法であって、第1のゲート付きシリコン利用NDR素子および第2のゲート付きシリコン利用NDR素子を形成する過程と、前記第1のゲート付きNDR素子のPVR特性値を第1のPVR目標値に設定する過程と、前記第2のゲート付きNDR素子のPVR特性値を第2のPVR目標値に設定する過程とを含む。これら第1および第2のPVR値を、前記第1のゲート付きNDR素子および前記第2のゲート付きNDR素子に互いに異なるNDR特性をもたらすように、NDRデバイス製造中に互いに異なる値に設定する。
【0051】
上記第1および第2のゲート付きシリコン利用のNDR素子は、MOS製造プロセスと互換性のある製造工程を用いて形成するのが好ましく、これらNDR素子にはNDR FET、NDRダイオード、可変周波数PVR特性NDR素子などが含まれる。この明細書で述べるプロセスを用いると、PVR値は少なくとも50%、100%変動させることができ、1000%変動させることもできる。通常の利用態様では、互いに異なるPVR値が用いられるので、第1のNDR素子をメモリ回路に、第2のNDR素子を論理回路にそれぞれ用いる。
【0052】
この発明の他の関連側面は、集積回路内で互いに異なる種類のNDRデバイスを動作させる方法であって、第1のNDR特性を有する第1のシリコン利用のNDRデバイスを用いて集積回路内の第1の回路を動作させる過程と、第2のNDR特性を有する第2のシリコン利用のNDRデバイスを用いてその集積回路内の第2の回路を動作させる過程とを含む方法に関する。これら第1および第2のNDR特性は、第1および第2の回路を実質的に互いに異なる電気的特性で動作させるように互いに異ならせてある。
【0053】
これらの実施例では、互いに異なるNDR特性を実現するために互いに異なるNDR値を予め実現しておく必要はない。実質的に互いに異なる電気的特性は、第1の回路で用いるクロック周波数や活性化要因などと第2の回路で用いるクロック周波数や活性化要因などとを互いに異ならせることによって得られる。上記の実質的に互いに異なる電気的特性には、第1の回路の用いる第1のゲートバイアス電圧と第2の回路の用いる第2のゲートバイアス電圧とを、両者が実質的に互いに異なるように設定することも含まれる。第1の回路の用いる第1の電流レベルと第2の回路の用いる電流レベルとを、両者が実質的に互いに異なるように設定することも同様に含まれる。
【0054】
二つの互いに異なる種類のNDR回路を含む半導体回路は、第1のNDR特性を有し半導体基板の第1の部分に設けた第1のNDRデバイスと、第2のNDR特性を有しその基板の第2の部分に設けた第2のNDRデバイスとを含む。これら第1および第2のNDR特性は互いに異なっており、互いに別々の第1の処理回路および第2の処理回路でそれぞれ用いられる。
【0055】
一つの好ましいアプローチでは、互いに異なるNDR特性は、第1のNDRデバイスに伴う第1の電荷トラッピング領域と、第2のNDRデバイスに伴う第2の電荷トラッピング領域とを適宜異ならせて形成することによって実現できる。
【0056】
ある種の用途では、第1および第2のNDRデバイスの少なくとも一方をNDR FETとする。それらNDRデバイスの他方はトンネルダイオードで構成する。
【0057】
この発明のさらに他の側面は適応型NDRデバイスに関する。このデバイスは、適応型NDRデバイスを第1の期間中にわたり第1の電流−電圧関係を保って動作させ、同じデバイスを第2の期間中にわたり第2の電流−電圧関係を保って動作させることによって実現する。これら第1および第2の電流−電圧関係を、適応型NDRデバイスが二つの互いに明確に異なる動作モードを備えるように十分に異ならせる。この適応型NDRデバイスを、集積回路上の制御回路からの制御信号によって第1の動作モードと第2の動作モードとに切り換える。
【0058】
概括的にいうと、このデバイスの動作特性は、第1の動作モードにおける適応型NDRデバイスの第1のNDR電流最大値と第1のNDR電流最小値との間の切換えが同デバイスの第2の動作モードにおける第2のNDR電流最大値と第2のNDR電流最小値との間の切換えよりも高速で行われることに基づいて利用される。
【0059】
この発明の好ましい実施例は、第1の電流−電圧関係および第2の電流−電圧関係を多様な動作パラメータ、すなわち第1および第2のNDRデバイスのゲート端子にそれぞれ加えるゲートバイアス電圧や、NDRデバイスに加える第1および第2のゲート信号の第1および第2のクロック周波数などの動作パラメータにより変えることによって実現する。
【0060】
ある実施例では、制御信号を集積回路で用いる電力消費モード/動作速度モードに基づいて発生して、第1の動作モードでのNDRデバイスの消費電力が第2の動作モードでの消費電力よりも低下するように(または動作速度が低下するように)する。
【0061】
メモリセルの実施例では、上記制御信号は、読出し/書込みコマンドであり、第1の動作モードを読出しまたは書込み動作に関連づけ、第2の動作モードを休止蓄積動作に関連づける。論理回路では、第1の動作モードを平常電力モード動作に関連づけ、第2の動作モードを低電力モード動作に関連づける。
【0062】
他の関連側面は、適応回路を実現するように回路のPVR値を特定の値に変える(調節する)ことに関する。この動作は、回路が処理動作を行っている第1の期間には適応型NDRを第1のPVR値で動作させ、回路が処理動作を行っていない第2の期間にはその適応型NDRを第2のPVR値で動作させて、その適応型NDR素子の消費電流を節減するようにすることによって行う。第1のPVR値は、その適応型NDR素子のPVR特性を回路の動作諸要件に適応させるために、第2のPVR値を少なくとも50%上回るように制御できる。
【0063】
ある実施例では、この回路は論理回路であって、処理動作はAND、NAND、OR、NOR、XOR、NXOR、NOT演算などのブール代数論理演算である。他の実施例では、この回路はメモリセルであって、処理動作はメモリセルに蓄積したデータ値へのアクセス動作である。
【0064】
この関連の側面は適応型半導体回路を作る方法である。この方法は、第1の期間には第1の電流−電圧関係を保って動作でき第2の期間には第2の電流−電圧関係を保って動作できるシリコン利用の適応型NDRデバイスを形成することを含む。第1および第2の動作モードなど二つの互いに別々の動作モードで適応型NDRデバイスが動作できるようにするために、第1および第2の電流−電圧関係を互いに十分に異ならせて画定する。次に、第1の動作モードと第2の動作モードとの間でNDRデバイスを切り換える制御回路を構成する。
【0065】
好ましい実施例では、公称PVR値をNDRデバイスに製造工程中に設定する。この公称PVR値は上記の制御回路でダイナミックPVR値または適応PVR値になるように調整できる。
【0066】
他の変形では、異なる適応PVR値を備えるように異なるNDRデバイスを形成できる。
【0067】
適応型の動作のできる半導体デバイスには、第1の期間中には第1の電流−電圧関係を保って動作し第2の期間中には第2の電流−電圧関係を保って動作するのに適合したシリコン利用の適応型NDRデバイスが含まれる。上述の例の場合と同様に、第1および第2の動作モードなど二つの互いに別々の動作モードで適応型NDRデバイスが動作できるようにするために、NDR特性の第1の電流−電圧関係と第2の電圧関係とは互いに十分に異ならせる。この適応型NDRデバイスを第1の動作モードと第2の動作モード化との間で切り換える制御回路でPVR値遷移を達成する。種類の異なるNDRデバイスに種類の異なる制御回路を用いる例もある。
【0068】
この発明のさらに他の側面は、NDRデバイスの信頼性を高めるための手段として、または切換速度など実際の動作パラメータの改良の手法として、NDRデバイスを試験しストレス付与することに関する。これらの操作は製造工程の期間中または終了後に、または場合によっては使用開始後に行うことができる。
【0069】
この発明のこの側面により半導体デバイスを製造する第1の方法は、第1の製造工程中に電荷トラッピング領域を形成する過程と、一連の第2の製造工程中に前記電荷トラッピング領域に不純物を第1の分布および第1の濃度で導入し分布させるなどして前記電荷トラッピング領域に電荷トラップを形成する過程と、前記電荷トラップの形成のあと電荷トラップの第1の集中度の恒常的上昇や電荷トラッピング領域における電荷トラップの第1の分布の恒常的転換などに適合したストレス電流が半導体デバイス中を流れるように活性化エネルギーを半導体デバイスに加える過程とを含む。これによって、電荷トラップデバイスの動作性能は、新たな電荷トラップまたは界面近傍の電荷トラップがデバイス動作に寄与することにより、多くの場合改善される。
【0070】
好ましい実施例では、上記半導体トランジスタデバイスをNDR特性に適合したFETなどのNDRデバイスとする。上記活性化エネルギーは、FETのソース、ゲート、ドレーン領域への電気的バイアスとして印加され、それによってそのFETのチャネルにストレス電流が流れるようにする。ストレス電流は比較的高い密度のホットエレクトロンを有する。ホットエレクトロンはチャネルの界面近傍にさらに追加の電荷トラップを形成し、それら電荷トラップは電荷の一時的蓄積のみに適合したエネルギーで形成する。ホットエレクトロンの数およびそれらエレクトロンのエネルギーレベルは用途に応じて高精度で制御できる。
【0071】
このようにして、製造工程終了のあとでも、NDR PVR値、オンセット電圧値、切換速度などをNDRデバイスについて変更できる。この場合の特定の実施例ではNDRデバイスを出荷後の使用状態で性能改善することができる。
【0072】
上述の実施例は上記活性化エネルギー印加のタイミングを上記以外の時点に選ぶことができる。例えば、上記トランジスタを含む集積回路の製造工程の終了前に印加できる場合もある。また、製造工程の終了時に(付加的に)印加できる場合もある。
【0073】
上述の試験プロセスの詳細、すなわち活性化エネルギーの印加の繰返し回数や印加時間などの詳細もこの発明のこの側面の一部である。この半導体デバイスの電気的特性の変化をモニタするそのモニタ動作の結果に応じてストレス電流を遮断したり、継続させたり、またある場合にはより高い活性化エネルギーレベルで継続させたりする。ストレス電流は最大値に至るまでステップ状に増加させることもできる。
【0074】
この発明の関連の側面は、ストレス印加前NDRデバイスを製造する方法であって、NDRトランジスタデバイス用基板にチャネルを形成する過程と、電荷トラッピング領域全体にわたり分布する多数の電荷トラッピングサイトを含む電荷トラッピング領域を前記チャネルに隣接して形成する過程とを含む方法に関する。上記電荷トラッピングサイトは、上記トランジスタの平常動作期間中はチャネル内の第1の数の活性化電荷キャリアが一時的にトラップされてそのトランジスタにNDR特性をもたらすようなトラップ集中度とトラップ分布とを保って構成する。そのあと、平常動作に供する前にその半導体デバイスにストレス電流を印加し、チャネルにおける活性化電荷キャリアの上記第1の数が平常動作時の数を上回るようにする。このストレス印加過程により、トランジスタ製造工程終了前に電荷トラッピング領域の中のトラップ集中度の増加やトラップ分布の変更を達成する。
【0075】
さらに他の実施例では、電荷トラッピングサイトの集中度上昇を、NDR特性の変更のためにNDRデバイス出荷後使用の平常動作時に行う。この操作により、製造工程終了後でもトランジスタデバイスの切換時間を改善できる。
【発明の効果】
【0076】
多様なNDRモードをもたらすように動作中にNDR特性を切換えできるNDR素子制御方法を提供できる。例えば、NDR FETなどのNDR素子へのバイアス電圧/電流の切換えによるPVR値の切換えなどの効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
次に図面を参照してこの発明の好ましい実施例を述べる。この明細書で説明する例がこの発明の多様な実施形態の一部であり、したがってこれらの例にこの発明が限定されるわけではないことは当業者には理解されよう。
【0078】
この発明は、半導体集積回路の分野でディジタルメモリ、ディジタル論理回路およびアナログ回路のための追加の基本的構成ブロックとして用いられることが期待される。すなわち、この発明はメモリセル、ブーレ代数演算ユニット、その他の装置に含まれ得る。
【0079】
従来技術の簡単な要約
図1は上記Kingほか名義の特許出願に述べてある種類の慣用のNDR FET100を示す。このデバイスはNDR特性を備えるシリコン利用のMISFETである。すなわち、デバイス100の特徴的部分は、慣用のMOSFET製造プロセスにNDR特性付与のための所要改変を加えたプロセスで構成する。
【0080】
すなわち、図1において、ゲート電極110はゲート選択信号を受けるためのゲート端子に接続する。デバイス100は基板120(p型が好ましい)の中に形成し、チャネル135で接続される周知のソース領域140およびドレーン領域150を備える。基板コンタクト端子125はデバイス100に基板バイアスを供給し、ソース電圧/ドレーン電圧を慣用のソース端子145およびドレーン端子155からそれぞれ供給する。ゲート絶縁層130はチャネル135とゲート電極110との間に位置づける。これらの構成は標準的なMISFETと共通であり、追加の慣用の構成(逆行基板ドーピング、「ハロー」または「ポケット」ドーピング、ゲート側壁スペーサ、浅いソース・ドレーン接合など)はこの発明の性質をより明確に図解するために図示してない。
【0081】
慣用のFETと若干異なっておりNDR特性を発揮するデバイス100内の追加の特徴的構成は、(1)僅かに厚いゲート電極130,(2)p型不純物により低濃度でドープしたチャネル表面領域、および(3)電荷トラッピング領域137である。これらの特徴的構成が協働して上記Kingほか名義の出願で詳述した理由により上記FETにNDR特性を付与する。
【0082】
その特性を図2,すなわちゲート電圧の適切な選択がNDRモードに与える影響を示すように二つの互いに異なるゲート電圧についてドレーン電流対ドレーン電圧特性を表した図2に示す。ソースを基準とした固定のゲート電圧VGSに対しては、ドレーン電流IDSは、慣用のnチャネルMOSトランジスタにおけるドレーン電流と同様に、第1の領域210ではドレーン・ソース間電圧VDSの上昇とともに増加することがこの特性図から理解されよう。しかし、特定のドレーン電圧レベル以上の領域220では、ドレーン電圧のさらなる増加とともにドレーン電流が減少し、このデバイスはNDR特性を備えたNDRモードになる。ドレーン電流が減少し始めるドレーン電圧(すなわちVDS=VNDRとなる点225)は、不純物材料、チャネル長、閾値電圧などを適当に選ぶことにより、調節可能である。
【0083】
図2から理解されるとおり、この発明は、ドレーン・ソース間電圧の上昇とともに閾値電圧Vtが動的に増加するに伴って(トラップされた電荷の累積が原因で)ドレーン電流IDS(Vg−Vtに比例する)が減少することを利用するものと見ることができる。すなわち、曲線228に示した電流値は、与えられたVgおよび変動するVtについて図2に示したひと組の連続曲線229に全体としてフォローする。他の従来技術によるデバイスと対照的に、NDRデバイスの主要評価項目であるいわゆるPVR値およびNDRオンセット電圧は、不純物の種類、不純物のドーピング濃度、デバイス結合構造および印加電圧の適切な組合せにより高精度で最適化できる。また、この発明のNDR特性は広い温度範囲にわたって(−40℃乃至+150℃)100,1000または106以上のPVR値を達成でき、従来技術によるNDRデバイスの性能を大幅に上回る。
【0084】
上述の説明が、この発明のよりよい把握のための背景の説明としてなされたものであって必要に応じて若干省略を含んでいることは当業者には理解されよう。上述の説明は前掲のKingほかの発明の構成上、動作上または物理的構成上の完全な分析を意図するものではなく、その意味に解されるべきではない。また、この明細書で説明する本件発明の限定事項と解釈されるべきではない。
【0085】
トラップエネルギー特性
図3Aは、図1に示したデバイス100の好ましいエネルギー帯図(電子エネルギー対半導体表面と垂直な方向の距離の関係を示す図)を示す。ゲートバイアスを印加すると、電子の反転層が半導体表面に形成され、したがってこのFETはオン状態になる。ゲート310は高不純物濃度でドープした多結晶シリコン(poly−Si)で構成するものとして、ゲート電極330はSiO2で構成するものとして、また基板320は最近のCMOS構造の場合と同様にp型基板としてそれぞれ示してある。周知の他の材料を代わりに用い得ることは理解されよう。
【0086】
半導体材料320に可能な電子エネルギー状態の伝導帯の下端EC、価電子帯の上端EVが示してある。従来のデバイス物性理論によると、EVからECの範囲のエネルギーに対応するバンドギャップの範囲では、この材料に可能な電子エネルギー状態はない。すなわち、半導体材料320内の移動電子はこの範囲内のエネルギーは持ち得ない。
【0087】
図3Aから理解されるとおり、チャネル領域(ゲート誘電体330と半導体基板320との間の界面の近傍)の伝導帯電子は、EC以下のエネルギーレベルの第1の種類の電荷トラップ336に捕獲されるためには、エネルギーを減らさなければならない(例えば格子衝突により)。そのあと電子がトラップ解除されて基板320の伝導帯に戻るためには、(例えば格子振動により)エネルギーを供給されなければならない。したがって、前述のKingほか名義の出願の明細書の説明から明らかな理由により、この種の電荷トラップはNDR特性を生ずるにはとくに有用ではない。
【0088】
これと対照的に、エネルギーレベルがECにごく近くしかもEC以上である第2の種類の電荷トラップ335は、格子衝突を必要とすることなく、そのエネルギーレベルと等しい合計エネルギーレベルの伝導帯電子をトラップすることができる。電荷トラップ335がそのトラップ以上のエネルギーレベルのエネルギーを有する伝導帯電子をトラップできる点でさらに有利なことはもちろんである。これら二つの種類のトラップについては、トラップされた電子は伝導帯の許容された状態に容易に戻りトラップ解除され得る。これら第2の種類のトラップは慣用のFETをNDR特性動作に適応させるのにとくに適している。なお、半導体伝導帯上端部(図示してない)よりも十分に高いエネルギー位置にある界面トラップは、キャリア内の可動キャリアのかなりの部分がトラップされるに十分な運動エネルギーを備えるに至るまでは、FETの動作に何ら影響を及ぼさない。
【0089】
絶縁ゲートFETにおいてNDR特性を得るための好ましいメカニズムは、上述のとおり、チャネルからのホットキャリアをトラップに捕獲してそのトラップから急速にトラップ解除するメカニズムである。トラップは、主として(全部でなくとも)ホットキャリアをトラップするために、半導体伝導帯端部よりも高いエネルギーレベルを備えるように構成するのが好ましい。例えば、半導体伝導帯端部よりも0.5eVだけ高いエネルギー位置のトラップは0.5eV以上の運動エネルギーを備える電子だけをトラップできる。高速NDR FET動作のためには、キャリアトラッピング動作およびトラッピング解除動作をできるだけ高速に行うのが望ましい。それによって、FETの閾値電圧の高速の動的変化が可能になるからである。
【0090】
したがって、Kingほかによる上述のNDRデバイスは、トンネルダイオードなど慣用のNDRデバイスに必要とされる伝導帯そのものへのトンネル効果でなく電荷トラップへのトンネル形成を用いている。すなわち、一つ以上の誘電体層(例えば慣用の誘電体材料からなるゲート絶縁層など)の中に局在する許容エネルギー状態にトラップされるに十分なエネルギーをキャリアに与えればよいのである。慣用のNDRデバイスに必要とされる伝導帯の連続的な組を形成するように高精度で調整した層の組を形成する必要はなく、Kingほかの発明が競合技術よりも広く利用されるものと期待されるもう一つの理由となっている。
【0091】
上述のトラップの物理的分布は前掲のKingほかの出願に記載してあり、その概要の図解を図3Bに示す。同図は電荷トラップの分布と距離との関係を概略的に示す。この図のグラフの左側はトラッピング層(この場合はゲート誘電体330)のバルク領域を示し、図示のとおり、ごく低い電荷トラップ密度(すなわち、1016atoms/cm3以下程度の)を備える。この密度は界面360の近傍で急激に高くなり、この界面360において電界トラップとして有用な不純物(この場合は丸印で示したとおりホウ素)の濃度は好ましくは1019atoms/cm3以上、最も好ましくは1020atoms/cm3以上とする。ホウ素の濃度は次に低下し基板330側ではさらに低下する。しかし、トラップの面積あたりの濃度は過剰(すなわち1014atoms/cm2)であってはならない。すなわち、トラップ相互間ホッピングまたはチャネル・トラップ・チャネル間ホッピングによりソース・ドレーン間の不都合な電子伝導が生ずるからである。
【0092】
図3Bから理解されるとおり、電荷トラップの大部分はチャネルにごく近接して、すなわち誘電体/半導体界面から0.5nm乃至1.5nm以内、または界面そのものに設けなければならない。この要件は、ホウ素を約2乃至3×1014atoms/cm2の線量で低エネルギーイオン打込みすることにより達成できる。当業者には明らかなとおり、これらの数字は単なる代表例であって、特定のプロセス要件、デバイス動作条件などにより、それら数字の値(距離、濃度など)は変わる。すなわち、この発明は上記電荷トラップの特定の配置に限定されない。図3Bの中の三角形の記号はチャネルにおける「正味」p型ドーピングを表し、この明細書に述べる理由により過剰に高濃度p型にならないようにする。すなわち、その結果、閾値電圧を高めるからである。
【0093】
動作の際には、トラッピング/トラッピング解除メカニズムはチャネルのドレーン側で始まり、チャネルのソース側に進んでトランジスタを急速に遮断する。この現象は、電子がチャネルのドレーン側に到達する時点までに最大の運動エネルギーを備え、したがって、その領域でまずトラップされる可能性が高いことに起因する。この機構からも、NDR FETが良好なスケーリング則維持能力を備えることが理解されよう。すなわち、チャネル長が小さくなるに伴い、トラッピング/トラッピング解除メカニズムがトランジスタをより急速にオフに「切り換え」ることができるからである。
【0094】
この余分の自由度、すなわちソース/ドレーンバイアス電圧を通じてFETチャネルの導電率を制御できること(慣用のゲート電圧変調に追加して)はこの発明の追加の利点のもう一つの例である。さらに、このチャネル遮断メカニズムは慣用のMOSFETにおけるオフへの切り換えの手法、すなわち電荷キャリアのチャネルの空乏化に十分な強度の電界を慣用のやり方で(すなわちゲート電圧の印加により)与えるために周知のとおりより薄い酸化物(それ以外の新規な材料)の膜に依存する手法よりも良好である。
【0095】
プロセスの流れの概略
慣用のMOS製造プロセスと一体化できるNDRデバイス製造の好ましい流れ図を図4に示す。同一出願人に譲渡された前掲の出願に述べたとおり、この製造プロセスの利点は、追加の慣用の非NDR回路(メモリおよび論理回路)を同時に製造できることである。
【0096】
図4に示すとおり、好ましい実施例では、シリコンから成る基板をステップ405で選択する。この基板はゲルマニウム、シリコンオンインシュレータ(SOI)、ひずみシリコン、シリコンカーバイドその他任意の材料でも構成できる。この発明の具体化にシリコン以外の材料を用いた場合は、次に述べる工程はこの技術分野で周知の原理にしたがって変更を要することはもちろんである。
【0097】
ステップ410においてその基板にアイソレーション領域を形成する。好ましい実施例では、このアイソレーション領域は浅いトレンチアイソレーション(STI)領域で構成する。ステップ415では酸化物層を成長させる。ステップ420で基板の中にPウェルおよびNウェルを形成する。
【0098】
ステップ425では、前述のトラッピング/トラッピング解除メカニズムを助長するように設計されたNDRデバイス領域に不純物を導入する。この工程の実施には多様な技法、すなわち前述のKingほか名義の出願にも述べたとおり、例えばホウ素を比較的高い線量(1*1014atoms/cm2以上)でNDR FETのチャネル領域にイオン打込みするなどの技法を利用できる。
【0099】
ステップ430ではオプションのNDRチャネル相互ドーピング(n型ドーパントのイオン打込み)を行い、NDRトラップイオン打込みの効果の一部に対抗させ、正味のp型チャネルドーピング濃度を下げる。この工程によって、電圧閾値を下げ、閾値以下のスイングの勾配を大きくし、それに対応してPVR値を高める。
【0100】
ステップ435では、半導体結晶格子への損傷を除去し、トラッピング領域の中のトラップの正しい分布および密度を確保するようにオプションのアニーリングを行う。この工程は、トラップのトラッピング領域への過剰なマイグレーションにより漏洩が大きくなり動作速度が低下し信頼性が下がる事態が生じないようにするものである。
【0101】
ステップ440では酸化物層を選択的に除去して、NDR FETおよび通常のFETの両方に使えるゲート絶縁膜を形成する。この絶縁膜は誘電体材料の複数の層で構成でき、またNDR FET領域において通常のFET領域とは異なる厚さまたは組成のもので構成できる。
【0102】
ステップ445では、チャネル・絶縁膜界面における電荷トラップの密度を上げるようにオプションのアニーリング(好ましくは急速熱アニール「RTA」)を行う。
【0103】
ステップ450ではNDR FETおよび通常のFETの両方に使えるゲート電極を形成する。
【0104】
ステップ455では、チャネル・絶縁層界面における電荷トラップの分布および密度を(必要に応じて)さらに変えたり、ゲート電極端部沿いの領域のゲート絶縁膜の欠陥を補修したりするためのオプションのゲートエッチ後再熱化アニールを行う。
【0105】
ステップ460では「低濃度ドープしたドレーン」(LDD)イオン打込みを浅いソース領域およびドレーン領域(NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方の)を形成するように行う。
【0106】
ステップ465では、LDDイオン打込みに起因する半導体結晶格子の損傷の補修のためのオプションのアニール工程を行う。
【0107】
ステップ470では、深いソース・ドレーン間コンタクト領域のオフセットのためにゲート電極の側壁沿いにスペーサ(NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方のための)を形成する。
【0108】
ステップ471では、NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方に使える、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム合金の選択的エピタキシアル成長による、オプションの浮彫型ソースおよびドレーンコンタクト領域を形成する。
【0109】
ステップ475では、NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方に使える、高濃度ドープしたソース/ドレーンコンタクト領域の形成のために高線量ソース/ドレーンイオン打込みを行う。
【0110】
ステップ480では、上記ソース/ドレーンイオン打込みに起因する損傷の補修およびイオン打込みずみのドーパント原子の活性化のためにアニールを行う。
【0111】
ステップ485では、NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方のために、ゲート領域やソース/ドレーン領域における所要の低抵抗コンタクトの形成に用いるオプションのシリサイト化プロセスモジュールを用いる。
【0112】
ステップ490では、絶縁物から成る不活性化層を堆積し、この層に孔を設けてNDR FETおよび非NDR FETの両方または片方の諸領域へのコンタクトの形成を可能にする。
【0113】
ステップ495では、(銅、アルミニウムまたはそれら以外の低抵抗率材料で構成できる)電気的相互接続を、デバイスの配線の完結および集積回路の形成のためにNDR FETおよび非NDR FETに形成する。これらの相互接続は、介在する絶縁層により互いに分離されている複数の導体層の層間に選択的接続を可能にするバイアホールを設けて形成することができる。
【0114】
次に、最終の不活性化層の形成を製造プロセスの終わりに通常は行う。
【0115】
さらに詳細な説明を、この発明に密接に関係するステップについて次に加える。しかし、これらステップの多くは従来技術によるものであるので詳述しない。特定の構成、これらの層および領域を形成するステップの多くは所望の性能特性およびプロセス要求に左右されるので、多様な手法が適しているとみられる。また、この発明実現のための製造プロセスについて多様な手法の例を挙げたが、それらの例が最新の手法の例示に過ぎないことは当業者には理解されよう。すなわち、この発明は、現在のところ発明者に未知の未開発プロセス技術であって、従来の手法の代替手法となりこの発明に全面的に適合するプロセス技術をも包含することを意図するものである。
【0116】
プロセスの流れの詳細
図5乃至図16はこの発明のNDRデバイス製造プロセスの好ましい実施例に用いる詳細な工程の図解である。
【0117】
より詳細に述べると、図5は、この発明の好ましいNDR FET実施例とそれ以外の慣用の半導体素子およびデバイスを含むNDR素子(上述のステップ405による)の製造に用いる出発基板の概略的断面図を示す。図5に示すとおり、実質的にシリコン(Si)から成る好ましい基板1000をまず準備する。NDR FETおよびIGFETはNチャネルデバイスであるので、NDR FETおよびIGFETを形成する基板部分はp型のほうが好ましい。
【0118】
これに関連して、図5の基板1000が、出発基板の表面(厚さ1000nm以内)にイオン打込みや拡散などにより「能動」領域の画定の前またはあとに当業者に周知の手法で形成したp型ウェルをも意味し得ることは理解されよう。また、基板1000はシリコンオンインシュレータ(SOI)でも構成することができ、最終的には一つ以上のシリコンゲルマニウム合金材料またはシリコンカーバイド材料(図示してない)の層を含み得ることは理解されよう。後者の基板を選ぶ場合は後述の後続工程を上述の変化をとり込むように周知の方法で変更する必要があることは当業者に理解されよう。
【0119】
図6は、NDR素子(NDR FETなど)を形成すべき第1の領域1015および非NDR素子(慣用のFETなど)を形成すべき第2の領域1015’を含む基板表面領域に(上述のステップ410により)電気的に分離された能動領域を形成するステップを示す概略的断面図である。この発明特有の構成をよりよく表すために、図6(および後続の図面)では後続の加工工程は「分割」図で示し、基板1000全体にわたるNDR領域および非NDR領域への多様な加工工程の互いに異なる影響を説明しやすくしてある。これらの図面が縮尺表示を意図するものでないこと、実際の基板プロフィルは実際の製造の実施例においてはずれを生ずる(おそらく大幅に)ものであることは、当業者には理解されよう。いずれにしても、これら図面はこの発明の重要な側面の理解に有用である。
【0120】
したがって、図6においては、基板1000の表面の電気的に分離された「フィールド」領域1010を、シリコンの局部酸化(LOCOS)や浅トレンチアイソレーション(STI)などの確立ずみの手法のうちの任意の手法により形成する。アイソレーション酸化層1010の厚さは通常は100乃至700nmの範囲にあり、浅トレンチアイソレーション構造の深さは通常は100nm乃至1000nmの範囲にある。上記手法以後に開発された手法もこの発明に用いることができる。
【0121】
さらに、これらの領域の細部はこの発明の動作に基本的に重要ではないが、この発明の重要な利点は、それら構成が(それら構成の実現のための方法と関係なく)慣用の能動デバイスとこの発明によるNDRデバイスとの両方に共用できることである。用途によっては上述の種類のアイソレーション領域を用いる必要がない場合もあることはもちろんであり、この発明はそれらアイソレーション領域を含むものには限定されない。
【0122】
次に、酸化物層1018を成長させる。ステップ415および420が従来技術によるステップであり、この発明に重要なものでなく、したがってここに詳述しないことは当業者に理解されよう。この発明と同一の追加の慣用の工程(例えば閾値調整、他の絶縁層、エッチストップ層、プラズマ/熱処理など)もこの発明の説明の便宜のために省略してある。
【0123】
したがって、図7に示すとおり、不純物(ホウ素など)イオン打込みステップを(上述のステップ425の一部として)酸化物層1018を通じて約2乃至3*1014atoms/cm2の線量で行う(丸印で表示)。前掲のKingほか名義の出願で述べた理由により、基板1000の界面またはその近傍、すなわちNDR素子を形成する領域に電荷トラップを導入するのが好ましい。その電荷トラップ導入は適切な不純物のイオン打込みや拡散、またはトラップ含有の誘電物層の堆積などいくつかの既知の技法の一つによって行うことができる。
【0124】
イオン打込みにより導入されるホウ素がこの発明には好ましいが、シリコン、ヒ素、リン、アンチモン、フッ素、塩素、ゲルマニウムまたは他の金属なども電荷トラップとして使うことができる。トラップの形成に水(上記の雰囲気から)を用いることができる例もある。不純物導入のための他のメカニズム、すなわち電荷トラップを含む材料の層または電荷トラッピング材料の層の堆積などのメカニズムも用いることが可能である。例えば、電荷トラップを高密度で含む酸化物層を形成するように、トーピングした膜を堆積して酸化させることもできる。
【0125】
この発明の利点は、NDR特性のオンセットをトラップエネルギーレベルの目標値の選択により制御できることである。一方、トラップエネルギーレベルを、特定の不純物やトラッピング層誘電体の選択など適切なプロセス制御パラメータを通じて調整できる。
【0126】
NDR素子を形成すべき領域1015に電荷トラッピング領域を選択的に形成するようにマスクを用いることもできる。ある場合には、基板1000の全領域1015に延びずにNDR FETの後続のゲート領域対応の小さい領域、またはそのゲート領域の限られた一部に限定されるようにマスクを用いることができる。また、例えばある場合は、所期のデバイスバイアスおよび動作速度に応じてソース領域の近傍だけ、またはドレーン領域の近傍だけ、トラッピング領域を形成することが求められることもある。例えば、「ソース側」トラッピングを最大にするには、電荷トラップを、ソース領域から延びチャネルからドレーンへの側に延びないように、選択的に配置することもできる。チャネルの長さ方向の電荷トラップの可変分布を用いて、電荷捕獲率が対応の変動を示すようにし切換スピードを高速化するようにすることもできる。
【0127】
定型的な実験により、NDR FETの互いに異なる特性、すなわち切換速度、VNDR、雑音免疫性、漏洩、閾値したスイングVtなどの特性の最適化のための多様なトラップ分布が得られるものと見られる。したがって、領域1015全体にわたって延びるものとして図示してあるものの、この発明はそのような構成のみには限られず、用途によって多様な電荷トラッピングメカニズムを用いてこの発明の利点を達成することができる。
【0128】
次に図8を参照してこの発明の好ましい実施例を引き続き述べるが、同図には、基板の表面の第1の領域1015、すなわちこの発明の好ましい実施例を上述のステップ425の一部として形成すべき領域1015の基板表面に絶縁物層(酸化物層1018の除去後)を形成するステップを示す概略的断面図を示している。この絶縁層1020はこれから形成されるNDR FETのゲート絶縁膜の一部として作用し、そのNDR FETの電荷トラッピング領域としても作用する。この絶縁層は基板1000の表面の能動領域1015にシリコンの熱酸化などいくつかの周知の技法の一つで形成する。物理的蒸着方法および化学式蒸気堆積方法も用いることができる。絶縁体層1020は、全体的に、または部分的に、SiO2,SixNy、Si3N4,または金属酸化物、メタルシリケート、それらの積層体、二つ以上の互いに異なる材料層の組合せなどで構成できる。
【0129】
この明細書で述べた他の加工工程の場合と同様に、この発明の利点は、この層(あとでパターニングする)を慣用のデバイスとNDR FETデバイスとの両方で共用できることである。プロセス一体化の影響の視点から見ると、NDR FET形成工程の期間中に非NDR領域に上記の層が存在しても、非NDR素子の構造、性能または信頼性が損なわれることはないということである。用途によっては、非NDR素子を形成すべき領域ではマスキングを施したうえでエッチングを行って、電荷トラッピング領域を基板の全領域にわたって後続の工程で形成することがないようにするのが望ましい場合もある。
【0130】
一つの代替の実施例では、チャネル界面における高濃度および層1020のバルク領域における低濃度を確保するエネルギーおよび不純物を用いてゲート絶縁層1020への直接のイオン打込みで電荷トラップを形成する。
【0131】
さらに他の実施例では、複数電荷トラップ形成ステップを、単一NDRデバイスの標準的な形成プロセスの一部として、微調整プロセスの一部として、または同一基板上での互いに異なる種類のNDRデバイスの標準的な形成プロセスの一部として用いることもできる。例えば、チャネル領域への導入をゲート絶縁層1020形成の前にするトラップもあり、トラップエネルギーやトラップ密度やトラップ分布などのトラッププロフィル目標値の達成のためにゲート絶縁層1020形成のあとにするトラップもある。トラップの互いに異なる二つの組は、互いに異なる種類の電荷キャリアの捕獲のための互いに異なるトラップエネルギーや互いに異なる割合で捕獲/捕獲解除する互いに異なるトラップタイプなど複数のトラッププロフィルが要求される場合は、互いに異なる不純物や互いに異なるイオン打込み対象物で構成する。互いに異なるNDRデバイスを基板上に同時に形成している場合は、後続のトラップ形成工程を被選択NDRデバイスのみに施すことを確実にするために、適切なマスキング工程を用いる。
【0132】
図9は、ホウ素と反対の導電型の第2の種類の不純物を上述の相互ドーピングステップ430の一部として選択的に(少なくとも好ましい実施例のNDR FETを形成すべき領域1015に)導入するステップを示す概略的断面図である。好ましいアプローチでは、この第2の種類の不純物は約1*1014atoms/cm3の濃度で比較的低エネルギーでイオン打込みしたヒ素(図9には×印1031で表示)である。このステップは、NDR FETのチャネルの表面領域における正味p型不純物濃度を低下させる効果がある。これによって、閾値(Vt)特性および閾値以下電圧揺れ(S)特性の両方を改善する。より詳細に述べると、NDR FETのVtを低下させることができ、急峻な閾値揺れを実現することができる。これらの要素はサブミクロンデバイスの後続の形成における適切なスケーリング性能の確保に重要である。これらの性能向上は、この発明を用いた集積回路用のゲートバイアス電圧の低下およびPVR値の増大の形で利用できる。
【0133】
イオン打込みステップ(電荷トラップ形成や相互ドーピングのための)終了のあと、イオン打込みに誘発された欠陥を減らすために熱アニールステップを行う(図4のステップ435に対応)。この工程は、不活性ガス(ArまたはN2)または酸化性ガス(O2またはH2O)の雰囲気の中で、所定温度(例えば550℃)で所定時間(例えば数時間)にわたって行う。上記以外の手法(例えばRTA)、温度、時間なども上述の説明から当業者には明らかであろう。このステップの目的は、電荷トラップの分布をトラッピング層1020のバルク領域内でなくチャネルとの界面にさらに確実に集中させることである。
【0134】
アニールステップを欠いた場合は、ホウ素が格子欠陥によりトラッピング層のバルク領域により急速に拡散し、ゲート漏洩電流のレベルが高くなり望ましくない。電荷トラップの密度をチャネル・ゲート絶縁層界面で高くし、ゲート絶縁層のバルク領域で比較的低くするのが望ましい。これら密度の差はatoms/cm3の値で少なくとも2または3のオーダーの差にするのが望ましい。トラッピングサイトをこの領域(すなわちチャネル界面から約0.5nm以内の領域)に限ることによって、ゲート漏洩電流をさらに小さくする。この領域の寸法がデバイス結合構造ごとにプロセス技術に応じて異なるのはもちろんである。
【0135】
この業界で周知のイオン打込み誘発欠陥の補修のための上記以外の手法(既存のまたは今後開発される)もこの発明に同様に適用できる。イオン打込みによらないまたはゲート領域に過剰のトラップサイトを生じさせないトラップ形成プロセスの場合はアニールステップは不要であろう。例えば、上述のとおりゲート絶縁層を通じた直接イオン打込みでトラップを形成する場合は、それらトラップの分布を電子エネルギーを適切に選ぶことにより特定の領域に集中させることができる。また、熱サイクルの利用によりトラップを界面に形成するように複合体ゲート酸化物(すなわち、イオン打込み、熱酸化および堆積工程、または堆積、イオン打込みおよび熱酸化工程)を用いることもできる。上記以外の工程の変更が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0136】
いずれにしても、トラッピング層1020を基板全体に形成する具体例では、慣用のFETを形成すべき領域(領域1015’)およびそれ以外のトラッピング層不要部分(領域1015を含む)からそのトラッピング層を選択的に除去する。
【0137】
図10は、NDR FETおよびそれ以外の慣用のFETの両方の高品質ゲート絶縁層として作用する追加の絶縁層1040を形成するステップ(図4のステップ440に対応)を示す概略的断面図である。このゲート絶縁層1040は、物理的蒸着、化学的蒸着などのいくつかの手法の一つで形成できる。ゲート絶縁層1040は、SiO2、SiOxNy、これら材料の組合せ、金属酸化物またはメタルシリケイトまたはそれの積層体で、その全体または一部を構成する。
【0138】
ゲート絶縁層1040を熱酸化により形成する場合は層1020の下に配置してNDR FET形成部(領域1015)における厚さをそれ以外の部分(領域1015’の中を含む)における厚さよりも薄くすることができる。その場合は、層1040は高品質ゲート絶縁層でなく電荷トラッピング層として作用し、電荷トラップは熱酸化プロセスの工程またはその後続の工程の期間中に不純物を含めることによって形成する。
【0139】
慣用のFETを同時に形成しない場合は、層1020の一部として単一の酸化物層を十分の厚さで成長させることができるので追加の層1040は不要である。NDR FET素子および非NDR FET素子を同時に形成する実施例においては、追加のゲート絶縁層の必要性を満たすために複合体ゲートのほうが好ましい。
【0140】
ゲート絶縁層の形成のあと、追加の熱アニール工程を施して(図4のステップ445に対応)電荷トラップの分布をさらに最適化し、すなわちチャネル・ゲート絶縁層界面における密度を高める。この工程は短時間に、すなわち1乃至10分間に1100℃で急速熱アニール(RTA)することによって行うのが好ましい。上記以外の温度および時間に設定できることは当業者には明らかであろう。さらに、Si/SiO2界面近傍におけるトラッピングサイトの分布を高める点においてRTA工程のほうが慣用の炉工程(すなわち1000℃でN2雰囲気中1時間)よりも優れていることを発明者は確認した。
【0141】
トラッピングサイトの分布はこの発明のNDRデバイスの最終的なPVR値を左右するので、この工程の選択/制御をPVR値の目標値への設定に用いることができる。すなわち、互いに異なるPVR値を要する互いに異なる用途向けの構成をRTAの時間または温度を調節するだけで、またはPVR値上昇のために炉工程でなくRTA工程を選ぶだけで形成することができる。
【0142】
図11はNDR FETおよび慣用のFETの両方のためのゲート電極層1050を堆積するステップを示す概略的断面を示す。ゲート電極材料1050は多結晶シリコン(ポリSi)、シリコン・ゲルマニウム合金(ポリSiGe)で構成し、または金属、合金、導電性金属窒化物、もしくは導電性金属酸化物で構成する。NDR FETおよび慣用のFETの両方のゲートは同じ材料で同時に形成できるので、この発明の利点は明らかである。
【0143】
ゲート電極材料1050がポリSiまたはポリSiGeである場合は、堆積プロセスの期間中に本来の位置でドープでき、また低抵抗率および適切な仕事関数値の達成のためにイオン打込みや拡散により本来の位置外でドープできる。最終的なゲート電極は多層スタックで構成して、最下層で所望のゲート仕事関数値を提供しその上に重なる層で十分な厚みと導電率を提供することができる。
【0144】
次に、ゲート電極層1050を標準的なリソグラフィおよびエッチングプロセスによりパターニングして多層ゲート電極1060および1060’(図12)を形成する。このステップではステップ450(図4)に対応する。この時点で、ゲート絶縁層のゲート電極端部沿いの部分への損傷を修復するとともに電荷トラップの密度(または形成)をさらに高めるために、オプションのゲートエッチング工程後再酸化アニール工程(図4におけるステップ455)を施す例もある。
【0145】
ある実施例では上記アニール工程(例えば上記雰囲気中750℃で10分、それに続きN2雰囲気中1050℃で1分)を用い得るが、そのアプローチでは作用効果は全具体例にわたって一様になることはない。すなわち、この工程の効果はゲート絶縁層を薄く(すなわち5.5nm)した構成では得られるが、より厚く(すなわち7nm)した構成では得られない。これは、Si/SiO2界面近傍で新たな水ベースのトラップの形成が蒸気により助長されるのに対して、高温度への露出がトラップ関連不純物原子の一部を上記界面からバルク領域に放出して上述の効果を打ち消すように作用することに起因するものと見られる。ゲートが比較的厚い場合は、上述の現象の結果上記界面近傍のトラップのマイグレーション/密度低下が生じ、性能が低下する。したがって、慣用のゲートエッチング工程後再酸化アニール工程が薄いゲート酸化層の場合にはより有用であるとみられる。しかし、新たなトラップを形成するとともに既存トラップの拡散を最小にする上述と同等のアニーリング機構であれば、ゲート絶縁層が厚い場合も薄い場合も同様に適用できる。
【0146】
図13は、好ましい実施例のNDR FETのチャネル界面における電荷トラップ1037の密度を高めるのに用いる上述の1回またはそれ以上のアニール工程の効果の簡単な図解を示す概略的な断面図である。この図における諸要素、すなわち電荷トラップ、トラップ位置などは縮尺表示ではないこと、図示はこの発明の特徴の説明だけを意図するものであることは理解されよう。
【0147】
図14は図4のステップ460に対応する低濃度ドープしたソース/ドレーン領域を形成するステップを示す概略的断面図である。好ましい実施例ではヒ素などのn型ドーパント(*印で図示)をエネルギー10keVおよび線量3*1015atoms/cm2でイオン打込みする。この発明のNDRデバイスにより高いPVR値を達成するにはリンよりもヒ素が優れていると判断される。その理由は完全には明らかになっていないが、ヒ素の拡散はリンよりも低速であって、ヒ素のほうが高い不純物濃度をもたらすことによるものとみられる。これによって、チャネルのドレーン領域における電界強度最大値が高くなり、エネルギーレベルのより高い電子を生じ電荷トラッピングが増加する。同じ理由により、より低いVNDR値が得られる。
【0148】
したがって、LDDドーパント、エネルギーなどを適切に選ぶことにより、NDRデバイスについての所望のPVR値をある程度制御することができる。なお、NDR−FET部分1015における浅いソース/ドレーン延長領域の形成をIGFET部分1015’における浅いソース/ドレーン延長領域と同時並行的に行うことができる。上記NDR FETの浅いソース/ドレーン延長領域のドーパント濃度および接合の深さは、必要に応じて選択的(マスク利用の)イオン打込みによりIGFETと同じ値にすることもでき異なる値にすることもできる。また、実施例によっては、後述の高濃度ドープしたソース/ドレーン領域の形成のあと浅いソース/ドレーン領域を形成するのが望ましい。
【0149】
慣用のアニール工程は、損傷の修復およびPVR目標値の達成のためにLDDイオン打込みのあと(ステップ465で記述のとおり)行う。
【0150】
図15はNDR FETのより高濃度にドープしたドレーン/ソース領域1070および1071と慣用のFETとを形成するステップ(ステップ470−475で記述のとおり)を示す概略的断面図である。この例では、深いソース領域およびドレーン領域は、ゲート電極の側壁に沿って形成したスペーサ1025によりゲート電極の端部からオフセットされている。これら側壁スペーサは、慣用の方法でスペーサ膜を堆積し異方性エッチングすることにより形成する。このスペーサ膜の厚さによって側壁スペーサの幅が定まり、したがってゲート電極からのオフセットの大きさが定まる。スペーサ形成には多様な技法が周知であり、それら技法をこの発明に用いることができる。NDR FETおよび非NDR FETの両方についてこれら側壁スペーサを同時に形成するのが好ましい。
ソース領域およびドレーン領域1070および1071(図4のステップ475)を、ヒ素やリンなどのn型ドーパントのイオン打込みおよびそれに続く損傷補修およびドーパント活性化のための慣用の手法による熱アニール工程(ステップ480)を用いて形成する。この特定の構成例では、ゲート電極1060は、その下の基板100表面に打込みイオンが達することを防ぐのに十分な厚さを備える。
【0151】
簡略化した構成図である図16に示すとおり、デバイス製造工程の最後には、(図4のステップ485,490および495)、シリサイト1085および1085を低抵抗金属・半導体コンタクト形成用にソースコンタクト領域、ドレーンコンタクト領域およびゲート電極に形成し、次に、一つ以上の絶縁性属間膜1075および1077の堆積、コンタクト孔の形成およびこれら孔への金属プラグ1081および1086の充填、相互接続用の一つ以上の金属層1083および1087の堆積およびパターニング、および水素含有雰囲気または重水素含有雰囲気の中での低温(360℃乃至450℃)アニールを行う。
【0152】
必要があれば金属配線形成用の多重金属層を絶縁層および金属層の交互積層の堆積およびパターニングにより形成する。シリサイトコンタクト1080および1085を、ケイ化チタン、ケイ化モリブデン、ケイ化コバルトまたはケイ化ニッケル組成物の低抵抗層で形成し、用途に応じて、ゲート領域またはソース/ドレーン領域の一方だけに接続するようにすることができる。プラグ1081および1086はタングステン、アルミニウム、銅その他の金属材料で形成できる。絶縁膜1075および1077はCVD膜や、スピンオンガラスや、空隙ほかの慣用の絶縁材料で構成できる。金属の相互接続層1083および1087はアルミニウム、銅その他の低抵抗金属で構成する。
【0153】
上述の方法により、一つ以上のIGFET素子および一つ以上のNDR FET素子を含む半導体デバイスを慣用のプロセス技術の工程を用いて製造できる。上述の工程が、シリコン利用の共振トンネルダイオード、ダイオード動作用の2端子NDR FET、サイリスタなど上記以外のNDRデバイスの製造など上記以外の製造環境にも有用であることは当業者に認識されよう。
【0154】
図には明示していないが、NDR FETと慣用のFETとは、後続の工程でパターニングする共通層で構成される多数の領域、すなわち共通基板1000,ゲート絶縁膜1040および1040’、導電性ゲート電極層1060および1060’、層間絶縁層1075および1077,および金属プラグ/層1081,1083,1086および1087などの領域を有する。また、両者はアイソレーション領域1010の一部を共用し、共通イオン打込み/アニール工程で同時並行的に形成するソース/ドレーン領域1070,1071,1070’および1071’を備える。
【0155】
NDR FETのドレーンがIGFETのドレーン/ソースに対応するように、またその逆の対応が得られるように、上記領域を直接に共用できる場合もある。2端子ダイオード動作用との間で上記領域を共用できることはもちろんである。上に述べた工程や層以外の工程や層を追加できること、上述の例がこの発明の内容の例示のみを目的とするものであることは理解されよう。例えば、ICでは追加の相互接続層や絶縁層が通常用いられ、それらは共用され得る。
【0156】
実験結果のデータ
ゲート長120nmのNDR FETを、基本パラメータ、すなわちゲート絶縁層の厚さ7nm、チャネルイオン打込み線量2×1014atoms/cm2、ゲート酸化物形成後のRTAアニール温度1100℃、3×1015/cm2でヒ素ドープしたLDDで試作した。
【0157】
なお、この試作プロセスは上述の好ましいプロセスと同一ではない。例えば、ゲート酸化膜堆積の前には熱アニールは施していない。また、Vtの低下および閾値下揺れのためのチャネルへの相互ドーピング(例えばヒ素)も施していない。単一層のゲート絶縁材料層を用いた。すなわち、この試作プロセスは、NDRデバイスの所期の特徴および性能の試験、把握および慣用のMOS回路応用分野への適合性の確認を主たる目的とするものである。したがって、ここに得られた結果は、特定のデザインルールまたは特定の加工装置を用いて特定の製造施設内で特定のチャネル結合構造で実際に具体化したこの発明の特定の具体例または市場向け製造について得られる実際の結果をそのまま反映するとは限らない。
【0158】
しかし、この発明の多数の基本的特徴および利点の例示にこれら試験結果は有用であると発明者は考える。また、これらのデータは、切換可能なNDR付きのFETなどこの発明による製品の基本的動作の特徴をさらに裏付けるのに有用である。
【0159】
ゲートバイアスおよびゲート長への依存性
NDR FETの電流対電圧(I−V)特性のゲートバイアスおよびゲート長への依存性を測定した。図17Aはゲートバイアスの変化に伴うトランジスタ電流の変動を示す。VNDR以下のドレーンバイアスでは通常の変動傾向が見られるが、ゲート駆動電圧Vgs−Vtの増加とともにトランジスタ電流は直線的に変化する。VNDR以上のドレーンバイアスでは、電流はVdの増加とともに指数関数的に減少する。電流最低値はゲート駆動電圧の上昇とともに増加するが、電流最大値ほどに急速には増加しない。
【0160】
図17Bおよび17Cは、ゲートバイアスおよびゲート長の変動に伴う上記電流最大値および電流最小値をそれぞれ示す。
【0161】
図17Bでは、ドレーン電流最大値が予想どおりゲート駆動電圧の上昇およびゲート長の減少とともに増加することが示されている。
【0162】
図13Cには、ドレーン電流最小値もゲート駆動電圧の上昇とともに増加することが示されており、これはもっとものことと思われる。しかし、ドレーン電流最小値はゲート長の減少とともに減少している。これにも理由があるとみられる。すなわち、エネルギーレベルの高いキャリア(チャネルのドレーン側端部で発生)は高いドレーンバイアスでトラップされ、Vtの上昇の原因となるからである。ゲート長の減少に伴って、これらのキャリアはチャネルのソース側端部近傍にトラップされ、Vtをより効率的に上昇させる。
【0163】
図17に示されるとおり、ゲート長の正味の効果はPVR値の大幅な増加である。なお、ドレーンバイアスの高い値では、チャネルにおけるドーピングのレベルが相対的に高いために、逆バイアスpn接合降伏電流がドレーン電流の主要な成分となる。したがって、NDRトランジスタの電流最低値を把握するにはソース電流をモニタしなければならない。ソース電流についてのPVR値依存性を図17Eに示す。ゲート長を125nmに減少させるに伴ってPVR値は100まで増加する。したがって、この試験結果に見られるとおり、この発明のNDR実施例はスケール則に合致しており、将来のサブミクロンプロセス技術への有用性を確保している。
【0164】
このNDRデバイスの電流最低値を慣用のMOSFETのオフ時漏洩電流と比較して有利になれば理想的である。このNDR FETデバイスでは、オフ電流を2次元トラップ密度(単位面積あたりのトラップ数)によりごく効果的に(最新式のFETと異なったやり方で)制御することができる。
【0165】
温度依存性データ
電子の平均運動エネルギーは温度が高い場合に上昇するので、理論的にはこの発明は他のNDR構成よりも温度特性が優れているものと期待される。すなわち、トラッピング速度およびトラッピング解除速度、したがってNDR FETの応答速度が温度上昇とともに改善されるものと期待される。しかし、チャネルにおける電子の平均自由行程は減少するので、NDR効果を生ずるのに十分なエネルギーレベルの電子を生ずるにはより大きい強度の電界が必要になると考えられる。この必要性を満たす手法は上述のとおり多様である。
【0166】
NDRデバイスの一つの実施例についての追加の温度依存性データを図17Fに示す。このデバイスは試験用に作成したが、この発明の多様な実施例の動作の特徴、すなわちPVR値が25℃から125℃に至る広い温度範囲にわたってほぼ一定であるなどの特徴を表している。すなわち、この図から理解されるとおり、電流最大値が温度とともに増加する一方、電流最低値も増加するからである。したがって、この発明の実施例には、かなり広い温度範囲にわたって相対的温度依存性をもって動作するように設計できるものもある。
【0167】
図17Fのグラフに示してあるとおり、温度が125℃に上昇するに伴って電流最大値および電流最小値の両方が小幅ながら上昇する。このグラフに対する注釈には、ドレーン電流Idに対応する線、およびソース電流Isに対応する記号などがある。黒丸の記号および太線は25℃における測定値を示し、白丸の記号および点線は125℃における測定値を示す。
【0168】
電流最大値は約20%だけ増加し、電流最小値は全温度範囲にわたり3倍以下程度の増加を示す。漏洩電流が温度に対して指数関数的に増加する慣用のMOSFETに比べてこの変化は相対的に小さい。しかし、全体としてNDR FETのPVR値(NDRデバイスの主たる性能指標)は広い温度範囲にわたってほぼ一定の値を保つ。
【0169】
したがって、この発明のNDR FETは市販のIC製品の動作温度仕様を十分に満たすことができる。上述の好ましいプロセスを用いて最適化したこの発明の実施例はごく広い温度範囲にわたって106以上のPVR値を達成し、軍用、航空宇宙用、車両用など厳しい温度環境における動作に適している。この特徴は、慣用のCMOSプロセスとのプロセス互換性と併せて、このNDR FETを高密度IC用として有望なものとしている。
【0170】
トンネルダイオードや共振トンネルダイオードやサイリスタや空間転送トランジスタなど従来技術によるNDRデバイスが高い温度で大幅に性能劣化することに注目すべきである。例えば、サイリスタ利用のメモリは、75℃で安定動作を保証するには、比較的高い(>1nA)保持電流で動作させる必要がある。いわゆる単一トランジスタ(DRAM利用の)SRAMは、高温度動作では消費電力が大幅に増大する。トランジスタ経由の漏洩の増大を補償するためにリフレッシュ周波数を上げる必要があるからである。
【0171】
種々のプロセスパラメータを通じたPVR値およびVNDR値の制御
諸プロセスパラメータがPVR特性およびVNDR特性に及ぼす影響を併せて精査した。この調査は試作品に現れる多様な測定結果についてPVR値およびVNDR値を調べることによって行った。図17Gにみられるとおり、図17A乃至図17Fの結果を生じたゲート酸化膜厚7nmのNDR試験デバイスウェーハA3対応の記号W#A3で示した。これ以外のウェーハプロトタイプも次の項目を含む諸変動パラメータについて試験した。すなわち、
(1)電荷トラップ形成のための互いに異なるチャネルイオン打込み線量(すなわち、ホウ素2*1014atoms/cm2または3*1014atoms/cm2)、
(2)互いに異なる低濃度ドープした不純物(P+またはAs+)、および線量、
(3)互いに異なるゲート酸化膜形成後のアニール工程の条件(RTAまたは炉)、
(4)互いに異なる上記再酸化工程の条件、
(5)互いに異なるゲート絶縁膜厚。
【0172】
ゲート長180nmのNDR FETのPVR値およびVNDR値を図17Gおよび図17Hにそれぞれ総括してある。これら図においては、ドレーン電流値を編みかけつきの棒グラフで、ソース電流値を太線棒グラフでそれぞれ示してある。いくつかの基本的観測がこの試験データから得られ、NDRの特定の具体例についてのPVR値やVNDR値の高精度制御に有用である。より詳細に述べると、製造プロセス進行中に一つ以上の標準的加工工程を微調整することによって所望のPVR/VNDR目標値を実現できることが分かる。これによって、広い範囲のPVR値やVNDR値が可能になり、NDRプロセスについて予測可能で信頼性の高い結果が確実に得られるようになる。
【0173】
好ましい実施例ではVNDRを電源電圧Vddの半分よりも僅かに低い値に、すなわちVNDR≦Vdd/2に設定する。しかし、上述の適切なプロセス制御により半導体基板の互いに異なる領域に互いに異なるVNDR値を達成することができる。
【0174】
上述の試験結果のデータが示すとおり、この発明に特有の構造および特徴的動作により、一つ以上の慣用の加工工程を用いた慣用の製造施設内で所望のPVR値特性やVNDR値特性を容易に設定し制御することができる。したがって、多様な用途について適切なPVR値およびVNDR値の目標値を確実に達成することができる。PVR値およびVNDR値の制御に用い得るプロセス変形の多数の例を上述の説明は提供するが、当業者にはそれら以外の例も自明であろう。したがって、この発明は上述のPVRやVNDRのプロセス制御技術の単一の変形またはそれら変形の組合せに限定されるものではない。
【0175】
チャネルイオン打込み線量の制御を通じたPVR値およびVNDR値の制御
図17Gは、ホウ素イオン打込み線量を上げると高いPVR値が得られることを示している。電荷トラップの密度とSi/SiO2界面近傍の酸化物層にとり込まれるホウ素との間には相関関係があるので上述の結果は予期されたとおりである。しかし、前に述べたとおり、電荷トラップの密度はトラップ相互間伝導の回避のために高くしすぎてはならない。
【0176】
図17Hは、反転層における縦方向電界の平均値が高いために、ホウ素イオン打込み線量の高い値に対してVNDR値が少し低いことを示している(Vtが大きいために1Vのゲート駆動電圧を得るにはVgの値を大きくする必要がある)。縦方向電界の大きい値に対しては、横方向電界(したがってVd)は、トラップされ得るホットエレクトロンの発生のために大きくする必要はない。
【0177】
したがって、任意の製造環境で用いるイオン打込みの種類/線量の選択によって所望の、または目標のPVR値/VNDR値を得ることができる。
【0178】
ゲート酸化層形成後のアニール工程を通じたPVR値およびVNDR値の制御
図17Gに示されるとおり、1000℃炉アニール工程に比べて1100℃RTAでは大幅に大きいPVR値が得られる。これは、Si/SiO2界面における電荷トラップの密度が1100℃RTAではより高くなることを示している。したがって、任意の製造環境で用いる熱アニール工程のタイプを選ぶことによって、所望のPVR値を得ることができる。
【0179】
この場合は、ゲート酸化層形成後のアニール工程の条件へのVNDR値の強い依存性は実験データ(図17Hに示される)には示されていない。
【0180】
LDDイオン打込み線量を通じたPVR値およびVNDR値の制御
図12Gに示されるとおり、リンでドープしたLDDに比べてヒ素でドープしたLDDの場合にPVR値は大幅に大きくなる。これは、ヒ素の拡散がリンよりも低速であり、したがってLDDドーピング濃度はヒ素の場合の方が高くなるためであるとみられる。これによって、チャネルのドレーン領域における電界の最大値が高くなり、より程度の高いホットエレクトロンが生じ、より多くの電荷トラップが生ずる。実験に用いたウェーハではLDDイオン打込みによる損傷は、ヒ素イオン打込みの高線量(3×1015atoms/cm2)については完全にはアニールされておらず、そのために電流最大値は低下し最小電流値は上昇し、したがってPVR値は劣化している。この状態は周知のアニール手法により補修できる。
【0181】
図17Hには、リンでドープしたLDDに比べてヒ素でドープしたLDDの場合にVNDR値が小さいことが示されている。これは、チャネルのドレーン領域における電界の臨界最大値を達成するのに必要なドレーンバイアスが低いことによる(LDDドーピング濃度が高いために)。
【0182】
したがって、LDD工程は慣用のMOSプロセスを用いた所望のPVR/VNDR値微調整設定のもう一つの手法を提供する。
【0183】
ゲート酸化物層の厚さによるPVR値およびVNDR値の制御
図17Jおよび図17Kは同様のPVR値およびVNDR値の試験データをそれぞれ示すが、ゲート酸化膜の厚さが僅かに小さい(5.5nm)ことだけが異なっている。可変PVR値の実現のもう一つの手法をプロセス設計者に提供するのでこのデータも有用である。すなわち、これらの図に示されるとおり、ゲート絶縁層の厚さ7nmの比較対象NDRデバイスに対して、他のパラメータをすべて等しくしたこの例のデバイスではPVR値が全体として小さくなっている。
【0184】
したがって、ゲート酸化物層を厚くするとより大きいPVR値が得られる。この結果は、電荷トラップの密度(NT)が一定であればゲート誘電体層の厚みが大きいほどVtの上昇への影響が大きいこと、すなわち、
ΔVt≒q*NT/Cox
であることから予期される。
【0185】
例えば、NT=5×1012/cm2およびSiO2ゲート誘電体層厚さ7nmの場合、Vt≒1.6であり、106に近いPVR値が得られる(Vgs−Vt=1V,Sは約100mV/decと仮定)。また、実効的PVR値は、電流最大値を上げたり電流最小値を下げたりするようにゲートバイアスを動的に変えることによって、上げることが(100×まで)できる。この種のNDRデバイスの動作中の回路内PVR値調整はある種の実施態様で利用できるこの発明のもう一つの利点である。
【0186】
図17Kは、ゲート酸化物層の厚さがより大きい場合に、反転層内の縦電界の平均値が大きくなるために、VNDR値が僅かに低くなることを示す(Vtが高いためにゲート駆動電圧1Vを得るのにVgを高くする必要がある)。縦電界が大きい場合はトラップされ得るエネルギーレベルが高い電子の発生のために横電界(したがってVd)を高くする必要はない。
【0187】
上述の理由により、所望のPVR値/VNDR値を任意の製造環境の中でのゲート絶縁物の種類と厚さとの選択によって得ることができる。
【0188】
蒸気アニールによるPVR値およびVNDR値制御
蒸気アニール工程の効果は、上述の実験結果から明確な形で確認することはできない。図17Jに示されるとおり、ゲート酸化物層が比較的薄い(5.5nm)場合は、蒸気アニール工程の採用によりPVR値は高くなる。しかし、図17Gに示されるとおり、ゲート酸化物層が厚い場合は、蒸気アニール工程の採用により最低限の(しかし一貫して)減少がみられる。
【0189】
蒸気アニール工程を用いるとVNDR値は全般的に下がる。
【0190】
これらの実験結果は、前にも述べたとおり、蒸気アニール工程はSi/SiO2界面近傍に追加の電荷トラップを形成するのに有用であることを示唆している。しかし、ゲート酸化物層が厚い場合は、蒸気アニール工程によりホウ素拡散が上記界面から離れた部位で高まる(したがって界面でのトラップ状態の密度を低下させる)こともある。
【0191】
したがって、ある種の結合構造については、NDRデバイスの製造に蒸気アニールプロセスを用いることによって所望のPVR値/VNDR値を得ることができる。
【0192】
NDR FETの信頼性
NDR FETでは、Vds>VNDRの場合に、電荷キャリアが極度に薄い界面間酸化物膜をトラップに入る向きまたはトラップから出る向きに通り抜ける。これらキャリアの大部分は、新たなトラップを「トンネル酸化物」内に形成させるに十分な運動のエネルギーを備えていない。新たなトラップを「トンネル酸化物」の内部に形成しようとする場合も(例えば電子エネルギー分布の末尾領域における高エネルギー電子により)、それら新たなトラップは当初からのトラップの近傍よりもSi/SiO2界面の近傍に形成されるので、NDR FETの動作速度を上げる作用をする。
【0193】
NDR FETの信頼性は明確な形では試験していないが、SiO2に関する既存の周知技術からみると、慣用のMOSFETと同等またはそれを上回る信頼性を備えると考えられる。酸化物層の厚さを小さくするに伴って降伏電荷QBDが増加する傾向(厚さが零になると無限大になる)からみると、NDR FETの「反復使用可能性」は極めて高い(例えば、高Vt値と低Vt値との間の反復1012回以上)と考えるのが妥当である。
【0194】
チャネル内の慣用のホットキャリア(すなわち、>3.1eV)は、周知のとおり、酸化物界面および酸化物バルク領域に損傷を与え、それによってMOSFETの性能を低下させる。NDR FETデバイスではホットキャリアの量はエネルギーの高いキャリア(すなわち約0.5eV)のみが生じ高いVdsではトランジスタがオフ状態になるので限られており、そのためにこの種のデバイスはより優れた実験結果を生ずるものとみられる。酸化物層の中に埋め込まれたトラップに入り込む高エネルギーの電子は損傷を生ずるに十分なほどには「ホット」でない。したがって、このNDR FETデバイスは通常の用途に用いる妥当な程度に高い信頼性をもたらすものとみられる。
【0195】
NDR試験/ストレス付与/トラップ機能強化
図18は製造工程の進行中にNDRデバイスの試験や電界トラップ分布の強化に使うことのできる基本プロセス1800を図解する。この発明のNDRデバイスに用いるメカニズムの性質のために、通常の製造工程の進行中または終了後にトラッピング層の中のトラップの密度や分布を意図的に変えることが可能である。他の例では、出荷後の使用中における予測可能で安定な性能を確保するように、特定のトラップ分布を試験進行中などに修正するのが望ましい。
【0196】
したがって、図18に示すとおり、第1のステップ1810はこの明細書または前掲のKingほか名義の出願に記載した多数の技法の一つを用いて電荷トラップを形成することに関連している。次に、ステップ1812において、実際のデバイスまたは試作構造についてNDR性能特性を測定する。
【0197】
界面近傍に追加のトラップを形成することやデバイス内に既存のトラップの分布を変えることなどのために、「ストレス」ステップ1815を次に用いる(製造工程進行中または試験/焼込み段階で)。これら試験のパラメータ(すなわち、時間、強度など)は、フィールドで遭遇する程度以上のストレスをデバイスにかける目的で設定する。その詳細は用途によって異なり、周知の手法および実地試験によって設定できる。このようにして、デバイスの販売前にそのデバイスの特性を修正する製造/試験プロセスの進行中に新たなトラップを形成したり既存のトラップ分布を変更したりすることができるものと期待される。すなわち、上記デバイスを含むウェーハを、NDR特性が実際の使用中にドリフトしたり変わったりすることがないように、前もってストレスに曝すのである。
【0198】
上述のストレスを与えるのに好ましい手法は、NDRデバイス(または試作構造)のゲート領域、本体領域、ソース領域およびドレーン領域にバイアスをかけて、ステップ1820に示すとおり、予め定めた時間長にわたり、または予め定めた反復回数にわたり、ゲート絶縁層を通り抜ける高エネルギー電子を多数発生するようにする手法である。例えば、ゲート・本体間バイアス電圧を適切に高めることによって、チャネルからゲート絶縁層を通じて(トンネル注入を通じて)電流を流すことができる。このストレス付与により、絶縁層の中にもトラップが形成される。NDRデバイスの製造工程進行中に試験を行う場合は、トラップ分布を上述のとおり変えるのに追加の熱処理工程を用いることができる。ホットキャリアの生成やトラップ分布の変更などには、光線照射など上記以外の手法も用いることができる。
【0199】
ステップ1825では、NDRデバイス(または試験用構造)のNDR性能の2番目の測定、すなわち性能指標が目標値に達したかまたは横這いになったかを調べるための切換速度、PVR値、VNDR値などの測定を行う。目標値到達または横這い状態のチェックの場合は、ストレス試験は反復して行うことができ、反復のある回と次の回との間で改善がみられないときは試験を中止する。
【0200】
ステップ1830で追加のストレス試験/バイアス付与が適切であるとみられた場合は、ストレス付与サイクルを所定の時間またはサイクル数にわたり再び課する。反復のある回から次の回へバイアス強度を高めて最高レベルまでデバイスへのストレスを強めることが望ましい場合もある。
【0201】
NDR特性の改善が横這いになるか性能目標値に達した場合はステップ1835において試験は完結する。
【0202】
プロセス1800の利点は、上述のストレス付与ステップがトラッピング領域に追加の恒常的トラップを形成するという副産物を伴うことである。それら追加のトラップは、界面近傍にある場合は、NDR切換速度をさらに高める作用がある。すなわち、慣用のMOSFETの製造の場合と対照的に、トラッピングサイトの追加を有利な形で利用できる場合があるのである。
【0203】
また、当業者には明らかなとおり、この発明の実施例は、デバイスの正常動作に起因する「新たなトラップ」形成プロセスの自然発生に一部基づきフィールドでの時間の経過とともに動作特性が改善される。したがって、この発明の実施例では、市販ICにおける使用の場合、時間の経過とともに動作速度が実際に上昇する。
【0204】
なお、上述のプロセスを特定用途の特定施設で実施するときは単一の試験/較正ウェーハのみに全面的に適用して、ストレス付与プロセスは追加の個々の測定を要しない後続のウェーハプロセス工程で較正できるようにする。すなわち、ストレス試験プロセスそのものは、特定の施設で得られるウェーハのうちの一つ以上の代表的ウェーハからの結果に基づいて設計し最適化することができる。そのあと、ストレス試験をNDR性能のチェックまたは再確認を要することなく自動的に行う。
【0205】
代替的には、試験プロセス1800を、NDR特性のモニタおよび目標性能達成の有無の判定のために、製造施設で重要なNDR工程のあとの任意の時点で行うこともできる。ステップ1825で得られた判定結果は、それ以降のプロセス工程を不一致解消用修正のために変更するのに用いる。
【0206】
この発明の主要点を明らかにするために、実施上の詳細は上の説明において省略してある。モニタリング、ストレス付与および制御プログラムの詳細は、多くの場合、用途に応じて適宜判定できるので、述べていない。また、これらの実施例は好ましいNDR FETデバイスやトラッピング利用のデバイスに関連して説明したが、この発明の原理はこの明細書の記載内容よりも広く、NDR/トラッピング特性のモニタを要する諸用途に使えることは当業者には明らかであろう。したがって、この発明はここに述べた実施の態様に限定されない。
【0207】
NDR動的PVR調節
この発明のもう一つの側面は、製造プロセス進行中にNDRデバイスが完成したあとでも、この明細書で総括的に動的PVR調整プロセスと呼ぶプロセスにより、NDRデバイスのPVR値を調節することができる。これによって、従来技術では不可能であって「適応型」NDRデバイスが得られる。
【0208】
換言すると、通常の回路動作の進行中にPVR特性を変える必要のあるような、すなわち適応的特性を要する環境ではこの発明のいくつかの実施例を利用できる。このような形で、一つの回路を一つの時点では第1のPVR値で動作させ、それよりもあとの時点では第2のPVR値で動作するのに適応させることができる。PVR値は、所望の動作電圧、電力またはクロック周波数などの変化に応答して、急速に変えることができる。したがって、例えば、NDR(または電荷トラップ)デバイスを含む回路を、休止モードの期間中に、漏洩電流を減らすように低電力動作化できる。上述の説明からこれ以外の例も明らかであろう。
【0209】
図19Aに示すとおり、集積回路1900は、NDR利用の論理回路1905およびNDR利用のメモリ回路1910の一方または両方と、追加の非NDR回路1915とを含む。この発明の実施例は上述の例の場合と同様に慣用のMOSトランジスタと互換性のある加工工程を用いて形成できるので、多数の用途についてこれら実施例および慣用のMOSトランジスタを一体化することができる。NDR論理PVR制御回路1920およびNDRメモリPVR制御回路1925により、NDR利用論理回路1905およびNDR利用メモリ回路1910のPVR特性を後述のとおり選択的にそれぞれ制御する。当業者には明らかなとおり、この図は簡略化した図解であり、集積回路1900が論理回路とメモリ回路との両方を利用したり必要としたりするとは限らない。
【0210】
なお、NDR利用のメモリ回路1910は、第1の特定のPVR値を要する第1の種類のNDR素子を含む一つ以上のメモリアレー、ラッチ、レジスタなどを備え得る。NDR利用の論理回路は、算術演算、論理演算などを行うように構成した標準的論理ゲートで構成することができ、第2の特定のPVR値を要する第2の種類のNDR素子を含む。これら二つの種類のNDR素子は両方ともNDR FETとするのが好ましいが、NDR FETとそれ以外のNDR素子(ダイオード、サイリスタ)との組合せでも、後者が何らかの変形可能なPVR特性を備える限り、差し支えない。
【0211】
数多くの用途について、メモリ回路1910で用いる第1の種類のNDR素子と、論理回路1905で用いる第2の種類のNDR素子とは所要動作要件が異なり、所要NDR特性も異なる。したがって、この発明を用いた「混合」型のシステムには、互いに異なるPVR値、VNDR値、ゲートバイアス電圧値、ソース/ドレーンバイアス値などのNDR特性を有する互いに異なる種類のNDR素子を用いるものもあるとみられる。
【0212】
また、互いに異なる種類のNDR素子が、図19Bに示すとおり、互いに異なる動作期間に互いに異なるバイアス値を備える場合もある。この種の動作の利点は注目に値する。すなわち、NDRデバイスは、第1の期間中は第1のPVR特性に基づき電流最大値IHIGHおよび電流最小値I1LOWで動作できる。あとの時点では、NDRデバイスの電流最小値をNDR FETへのゲートバイアス電圧をただ下げることにより減らすことができる。その結果最小電流はI2LOWになり、NDRデバイスのPVR値が変化する。すなわち、IHIGH/I2LOWの比がIHIGH/I1LOWの比を大幅に上回るからである。これは、NDR FETの休止状態の電力消費が動作中に変動して電力消費特性をさらに改善できることを意味する。この点は、ゲート電圧VGに伴ってソース/ドレーン電流も増加することを示す図17Aからも明らかである。同様に、ゲート電圧の低下により、ソース/ドレーン電流も減少する。したがって、この発明の好ましい実施例には適応型NDR特性を示して動作するように構成できるものもある。
【0213】
図19Bを参照すると、NDRメモリ回路1910またはNDR論理回路1905の所望の動作特性の変化にそれぞれ応答して、NDRメモリPVR制御回路1925またはNDR論理PVR制御回路1920(場合に応じて)による制御のもとにI1LOWからI2LOWへの遷移が起こる。この例では、図19Bに示すとおり、遷移は初めに大電流状態から小電流状態になされ、次にその小電流状態からさらに低い電流状態になされて電力の減少に導く。NDRデバイスを正常PVR値状態に復帰させるには、正常ゲートバイアス電圧を再び印加し、デバイスを最小電流(I1LOW)の若干高い状態に切り換える。このあとソース/ドレーン電圧が非NDRモードに変わると、チャネル内の電流は特定の電圧VNDRで再びIHIGHに到達する。
【0214】
特定の低電力モードでは不要な電力消費を削減するのが望ましく、この発明はその動作を行う例を提供する。また、メモリ用および論理用の両方のために漏洩電流を減らすのが望ましく、上述の手法は二つの種類の回路に使うことができる。例えば、メモリ回路の場合は、正常のアクセス動作(読出し/書込み動作)の期間中はある量の駆動電流が必要になり、そのために比較的大きいIHIGHを提供するのが望ましい。しかし、データ蓄積の場合は、電力消費を最小にするのが望ましく、できれば電流最小値をI1LOWからI2LOWに遷移させるのが好ましい。例えば、SRAMセルでは、データラッチするには高いPVR値は必要でないが、低い待機電力のために高いPVR値が望ましい。同様に、NDRデバイスの高速ディジタル論理用途では、低電力動作には大きいPVR値が望ましいものの回路の適切な動作にはPVR値は大きい値である必要はない(たいていの回路には10以下で十分)。PVR値が大きすぎる場合は、NDRデバイスが「最小」電流状態から「最大」電流状態に遷移するのにより長い時間を要するので、回路動作は低速度になる。
【0215】
したがって、この発明の役に立つ一つの用途は、適応型NDRデバイス、すなわち高アクティヴィティ動作(通常は高速動作)を確保するためにPVR値を高く設定し、低アクティヴィティ動作(例えば1パーセント以下のアクティヴィティ率のSRAM)のためにPVR値を低く設定した適応型NDRデバイスである。したがって、特定の用途のためのPVR値を所望の動作モードを許容するように動的に変えることができる。PVR値を調節するか否かの決定は、集積回路/計算システムの電力調整回路により慣用の形で発生した制御信号に応答して、行うことができる。
【0216】
逆に、図19Cに示すとおり、NDRデバイスが小電流状態(最小電流状態も含めて)にあるとすると、スイッチオンの時点で、印加ゲートバイアス電圧が幾分高いことに基づき、デバイスを正常ハイの電流I2HIGHよりも少し高い電流値に遷移させることができる。この動作モードがあまり使われない場合は、NDRデバイスの通常動作の期間中に特定のPVR値を増加させるもう一つの機会を提供する。
【0217】
同様にして、NDRデバイスのPVR値を必要に応じてゲートバイアス電圧を変えるだけで一つのモードから次のモードに変えることができ、それによって、比較的高い最小電流値から(すなわちI1LOWから)比較的低い最大電流値に遷移させることができる。これは動作速度の利点をもたらし、PVR値が臨界的でない場合は有利な特徴となり得る。
【0218】
NDRデバイスのPVR値を変えるもう一つの手法はこのデバイスをNDRモードへまたはNDRモードから切り換える動作速度を変えることによる手法である。すなわち、図19Bを参照して、ソース/ドレーンバイアスを第1の期間中にIHIGHの点で第1の速度でオンオフ切り換えすると、第1の数のキャリアをトラップできる。それらトラップされたキャリアはチャネルを空乏化するように作用し、NDR効果によりチャネルを遮断するようにする(またはチャネルをI2LOWのレベルにする)。他の動作モードの期間中にIHIGHから始めて切換え速度を上げた場合は(すなわち、期間を短くした場合は)より少数のキャリアがトラップされ、PVR値が小さくなる。電流がレベルI1LOWまで低下するのは、それらトラップされたキャリアによるものであるからである。切換え速度を逆に下げると、それに対応してPVR値は増加する。したがって、実際には同一のNDR構成がソース/ドレーンバイアスの切換え速度によって互いに異なるNDRの振舞を示す。PVR値をある目標値(例えば10)以上にする必要のない論理回路の場合は、切換え速度を上げて狭いIHIGH値およびILOW値の範囲で動作させて全く差し支えない(または望ましい)。
【0219】
この発明のもう一つの利用可能な特徴は、NDR FETにおいては上記チャネル界面近傍のゲート絶縁物にトラップが分布することである。この界面またはその隣接部位にあるトラップは電子の捕獲および捕獲解除をより低速で行う。したがって、NDR FETのPVR値は、初期(1ps以内)には低い値(10以下)で始め、より高い値に向かって落ち着く(例えば1ナノ秒後)ようにすることができる。これによって、切換え頻度の低い回路(例えばメモリ)には大きいPVR値を、切換え頻度の高い回路(例えば論理回路)には小さいPVR値を、すなわち自然な形の動的PVR値を提供する。
【0220】
動的PVR値制御手順のプロセス流れ図を図19Dに示す。可変PVRを備えるNDRデバイス(またはそれ以外のトラップ利用デバイス)をステップ1935において集積回路内に形成する。PVR公称値をステップ1940において設定する(すなわち、上述の一つ以上の加工工程を通じて)。このデバイスのフィールドにおける動作中など上記よりもあとの時点のステップ1945でPVR値調節の要否で判定する。用途によって定まる必要性に応じて、一つ以上のNDR回路(論理回路やメモリ回路)のPVR値をステップ1950で切換え速度の調節やゲートバイアス変動により調節する。これらは単なる例であり、これら以外の動的PVR値達成方法も当業者に自明であろう。
【0221】
また、この発明をNDR FET素子について上に述べてきたが、動的PVR値または適応型NDRデバイスの利用が、可変PVR振舞を含み得るダイオード、サイリスタなど上記以外のNDR素子にも可能であることは理解されよう。
【0222】
共通基板上などの可変PVR値および可変VNDR値NDR回路
図20A乃至図20Bを参照してこの発明のさらに他の実施例を説明する。これらの実施例は、この発明のNDRデバイス製造プロセスがごく柔軟性に富んでおり、互いに異なる特性の多様なNDRデバイスを提供可能にすることに基づいている。
【0223】
図20Aに示した最も単純な実施例の一つでは、製造ライン(fab)の中の半導体プロセス装置2000(すなわち、イオン打込み装置、炉、薄膜堆積反応器など)を基板(シリコンウェーハなど)上のNDR特性、例えばPVR値などについての所望の目標値設定のために予め確定ずみの「レシピ」2001にしたがってプログラムできる。例えば、第1のタイプの基板上のNDRデバイスの第1のタイプに対しては、不純物の種類(ホウ素)と所定のエネルギーおよび線量(例えば2*1014atoms/cm2)でイオン打込み装置をプログラムできる。第2のタイプの基板上の第2のタイプのNDRデバイスに対しては、同じイオン打込み装置をより高い線量(すなわち3*1014atoms/cm2)にプログラムできる。
【0224】
イオン打込みを特定する情報は、ウェーハ2002または一群のウェーハに対して用いるべきレシピを製造装置オペレータに指示する「指示カード」に符号で示す。オペレータはその符号を制御モジュール2003に入力し、ローダ2004からの基板2002がアンローダ2006に進む過程でプロセス装置2005からレシピどおりの加工を受けるようにする。製造施設の中の上記以外の装置に対しても同様のプログラミングを行い、互いに異なる基板/ウェーハ/回路の互いに異なる用途について適切なNDR特性が製造中に自動的に得られるようにする。
【0225】
例えば、堆積装置は、NDRデバイスおよび非NDRデバイスの両方のゲート絶縁層の形成を同時並行的に、しかもNDRデバイスの種類に応じて互いに異なる厚さで形成するように、ゲート絶縁物の二つの別々の材料を順次に堆積するようにプログラムできる。すなわち、多様なNDRデバイスの製造を、慣用の製造施設内の既存の装置で容易に一体化する途切れないやり方で達成することができる。
【0226】
図20Bに示すとおり単一の基板2010内に互いに異なる種類のNDRデバイスを含めることを設計者が意図する場合もあろう。このような構成は、例えば、第1の種類のNDRデバイスをメモリ回路に用い第2の種類のNDRデバイスを論理回路に用いたシステムオンチップ構成などの混成回路環境に有用であろう。前述のとおり、NDR利用のSRAMセルには低電力動作用に比較的大きいPVR値が重要である。しかし、NDR利用の論理ゲートではPVR値は相対的に小さく(すなわち10のオーダーの値)できる。したがって、NDR論理回路およびNDRメモリ回路の両方を共通の基板に形成する必要がある場合は、スループットと一体化の改善のために製造工程を共通にする一方、互いに異なる種類のNDRデバイスを個々に最適化できるようにすることが多くの場合可能である。
【0227】
二つの互いに異なる種類のメモリデバイス、または二つの互いに異なる種類の論理デバイスに別々の種類のNDR特性を用いることもできる。NDRデバイスの従来技術による製造方法では共通の製造プロセスの期間中にNDR特性に十分な差をつけることは容易ではない。しかし、この発明の実施例の中には、NDR領域#1,NDR領域#2,・・・、NDR領域#Nで示した複数の互いに別々のNDR領域2012と、非NDR領域#1,非NDR領域#2,・・・、非NDR領域#Nで示した複数の互いに別々の非NDR領域2011とを単一の基板2010に形成することができる実施例もある。
【0228】
互いに異なるNDR領域を形成する簡単な方法は、ウェーハの加工中に互いに異なる加工条件に互いに異なる領域を曝すように選択性マスキングを用いる方法である。選択性マスキングの手法は半導体製造技術の分野で周知であり、この発明はそれら周知の手法の任意のものを用いることができる。例えば最初のイオン打込み工程中には特定の第1のイオン打込み材料を特定の線量および分布でNDR領域#1だけが受けるように、基板2010にマスキングを施す。前述のとおり、トラップ形成のためのNDRイオン打込みの特定の材料、線量およびエネルギーは、NDRデバイスのPVR値やVNDR値の目標値の画定および設定に用いることができる。次に、第2のイオン打込みの工程中には、NDR領域NDR#2のみが第2のイオン打込み材料、線量および分布でイオン打込みを受けるように基板2010をマスキングする。もちろんこれは一つの例に過ぎず、他に多数の変形があることは当業者には明らかであろう。
【0229】
もう一つの代替的手法では第1のNDR領域のゲート長を第2のNDR領域のゲート長と異ならせる。この発明は前述のとおりチャネルサイズのスケール則を維持するので、二つの互いに異なるゲート長により二つの互いに異なるNDR特性を得ることができる。二つの互いに異なる種類のNDRデバイスを全く同一のプロセス条件で製造し、両者間のゲート長の差だけによって周知で予測可能なPVR値およびVNDR値を与えることができる。論理回路とメモリ回路には互いに異なるデザインルール(チャネル長を含む)を用いることが多いので、これら二つの互いに異なる回路に別々のNDR特性を与えるもう一つの手法として使える。
【0230】
さらに、論理回路とメモリ回路とではクロック周波数、電源電圧、消費電力などが異なることが多いので、上記別々の領域の中のNDR構成も互いに異なる場合が多く、動作特性の差の付与に利用できる。例えば、メモリセルのVNDRは、同一基板の中の論理ゲートのVNDRよりも実質的に高い値に設定される。すなわち、メモリセルの用いる電源電圧が論理回路よりも高いからである。これら以外の例も当業者には自明であり、したがってこの発明はこれらの例に限定されない。
【0231】
さらにもう一つの代替的構成では、互いに異なるNDR領域に互いに異なるゲート絶縁膜厚または互いに異なるゲート絶縁層材料を用いることができる。前述のとおり、PVR値(およびVNDR値)はこれらのパラメータによっても設定でき、シリコン基板加工の慣用の工程を用いて上記特徴を付与することは簡単にできる。例えば、NDR領域全部についてゲート絶縁層を第1の厚さに成長させ、次に、一つ以上の領域でその領域における厚さを減らすようにエッチング工程を選択的にかける。または、ゲート絶縁層を開始から所望の厚さまで互いに異なる形で成長させる。この工程にはこれら以外に多数の変形が可能であり、この発明は特定の例に限定されない。
【0232】
さらにもう一つの例では、互いに異なるNDR特性を得るように、互いに異なるトラッピング領域を二つの別々の工程で形成する。すなわち、二つの別々のイオン打込みを行い、別々のアニール工程にかけ、またはトラップの分布を適切にするための共通のアニール工程にかける。捕獲速度・捕獲解除速度の異なる互いに別々の種類のトラップまたは電荷キャリアをトラップする互いに異なるエネルギーなど複数トラッププロフィールが必要な場合は、互いに異なるトラップの組を互いに異なる不純物やイオン打込み材料で形成する。互いに異なるNDRデバイスを一つの基板上に同時に形成している場合は、後続のトラップ形成工程を確実に被選択NDRデバイスのみについて施すように、適切なマスキング工程を用いることができる。
【0233】
図20Bが簡略化した図示であって、慣用のマスキング手法により容易に達成できるとおり、単一の領域の中に互いに異なる種類のNDRが含まれる場合があることは理解されよう。
【0234】
上に示したデータから、機能の大幅に異なる互いに別々の種類のNDRデバイス(すなわち、10以上の差のあるPVR値)をほぼ全面的に共通のプロセス工程により単一の基板内に形成できる(したがって共存させ動作させることができる)ことが明らかである。多くの場合、製造工程の相違はごく僅かであり、NDRデバイスの種類の各々に特有の追加の工程はごく少数に限られる。それら追加の工程を、二つの互いに異なる種類のNDRデバイスの特性の最適化に用い得ることはもちろんである。
【0235】
さらに、上述の例はPVR値やVNDR値などへの言及によりNDR特性の変動を対象としてきたが、上述の諸手法がNDRデバイスの上記以外の特性の改善に容易に拡張できることは明らかである。例えば、NDRデバイスの切換え速度は、チャネル内のトラップの分布の変更、異なるゲート絶縁層、不純物、チャネル長などの使用により変えることができる。また、温度特性も、あるNDRデバイスではPVR特性がほぼ一定になり他のNDRデバイスではPVR特性が変動するように、変えることができる。すなわち、捕獲/捕獲解除動作の温度特性を特定の温度、温度変化などを検出しそれに応答するために利用できる。NDR相互間の区別に適合させた多様な変形が可能であるのでこの発明は特定の特性に限定されない。
【0236】
この発明が、トンネルダイオード、サイリスタその他上記以外のシリコン利用のNDRデバイス(およびトラッピングデバイス)またはこの明細書で述べたそれらデバイスとNDR FETとの組合せに適用可能であることは当業者には明らかであろう。また、この発明はほぼ全面的に慣用のMOS加工プロセス工程を用いて単一の基板、すなわち純粋なシリコンに限られず例えばSOIやSiCでも差し支えない基板の中に多様な種類のNDRデバイスを形成し収容できる。
【0237】
例示のための実施例についてこの発明を上に説明してきたが、この説明は限定的な意味に解釈されることを意図するものではない。この説明が例示のみを目的とするものであってこの発明の範囲への限定ではないこと、この発明が慣用の技術により形成される多様な集積回路に利用できることは当業者には明らかに理解されよう。この発明の上述の実施例およびこれら以外の実施例の多様な変形および組合せが当業者にはこの明細書の記載から自明であろう。それらの変形および組合せは、この明細書に記載した内容の代わりにまたはそれら内容に加えて周知の技術を用いることもできよう。この発明によるデバイスおよび方法(多様な実施態様が可能)に特有の諸特性およびこの技術分野における急速な進展からみて、現時点で未開発の材料、構造およびプロセスの利用による追加の実施例がこの発明に基づいて開発されることが期待される。
【0238】
したがって、この出願の特許請求の範囲の記載はそれら変形、改良および将来の実施例を含めることを意図するものである。特許請求の範囲の欄に記載した請求項はこの明細書に記載した実施例に基づいているが、この明細書の記載内容がこの明細書に明示的または黙示的に開示した新規なまたは非自明的な特徴項(またはそれらの組合せ)に、請求項の記載如何に関わりなく、また明細書記載の解決すべき課題の解決や緩和の有無に関わりなく、該当することは当業者には明らかであろう。また、この出願(および/または関連出願)の審査中において上記新たな非自明的な特徴項を対象とする新たな追加の請求項を提出する権利を出願人は留保する。
【産業上の利用可能性】
【0239】
慣用のMOS製造プロセスとプロセス互換性を備え最大電流対最小電流比(PVR)などの特性を多様な方法で調整できるNDRデバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】この発明の負性微分抵抗(NDR)電界効果トランジスタ(FET)の好ましい実施例の断面図。
【図2】図1のNDR FETの代表的電流対電圧特性曲線。
【図3A】伝導帯、価電子帯および電荷トラッピング領域の電荷トラッピングサイトのエネルギー関係をこの発明の好ましい実施例で利用可能な変形とともに概略的に示す図。
【図3B】NDR FETの一つの実施例における不純物濃度の分布を示す図。
【図4】この発明のNDR FETを含むNDRデバイスを製造するための好ましいプロセスの工程の説明図。
【図5】この発明の好ましい実施例のNDR FETおよび従来技術による半導体素子およびデバイスを含むNDR素子の製造のための出発基板の概略的断面図。
【図6】上記基板の表面の電気的に分離された能動領域を形成する過程を示す概略的断面図。
【図7】好ましい実施例のNDR FETを形成する領域で基板表面に絶縁層を形成する過程を示す概略的断面図。
【図8】好ましい実施例のNDR FETを形成する領域で基板表面に第1の種類の不純物を選択的に導入する過程を示す概略的断面図。
【図9】好ましい実施例のNDR FETを形成する領域で基板表面に第2の種類の不純物を相互ドーピング過程の一部として選択的に導入する過程を示す概略的断面図。
【図10】好ましい実施例のNDR FETおよび従来技術によるFETを形成する領域で基板表面に追加の絶縁層を選択的に導入する過程を示す概略的断面図。
【図11】NDR FETおよび従来技術のFETの両方にゲート膜を堆積させる過程を示す概略的断面図。
【図12】NDR FETおよび従来技術のFETの両方につき上記ゲート膜をゲート電極にパターニングする過程を示す概略的断面図。
【図13】好ましい実施例のNDR FETのチャネル界面における電界トラップの密度を高めるために用いるゲート酸化工程後の一つ以上のアニール過程の効果を示す概略的断面図。
【図14】ヒ素イオン打込みでソースおよびドレーン延長領域を形成する過程を示す概略的断面図。
【図15】NDR FETおよびそれ以外の従来型のFETの高濃度ドープしたソース/ドレーンコンタクト領域を形成する過程を示す概略的断面図。
【図16】絶縁性層間膜を堆積させる過程、層間膜にコンタクト孔を設ける過程、金属層を堆積させる過程、およびNDR FETおよび従来型FETへの相互接続を形成するようにその金属層をパターニングする過程を経た結果を示す概略的断面図。
【図17A】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17B】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17C】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17D】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17E】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17F】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17G】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図17H】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図17J】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図17K】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図18】NDRデバイスおよび電荷トラッピング利用のデバイスの機能強化/確認工程に用い得る試験/ストレスプロセスの流れ図。
【図19A】NDR素子のPVR値の調節のためのPVRコントローラを含む集積回路の実施例を示す図。
【図19B】適応型NDRデバイスの実施例の動作を示す図。
【図19C】適応型NDRデバイスの実施例の動作を示す図。
【図19D】この発明の特定の実施例に用い得るPVR調整プロセスを示す図。
【図20A】従来の工場において複数の互いに異なるNDRプロセスレシピを実行するのに適合した半導体加工装置を単純化して示す図。
【図20B】基板の互いに異なる領域の中に互いに異なる種類のNDR素子を含む集積回路の単純化した構成図。
【符号の説明】
【0241】
100 負性微分抵抗(NDR)電界効果トランジスタ(FET)
110 ゲート電極
120 基板
130 ゲート絶縁層
135 チャネル
137 電荷トラッピング領域
140 ソース領域
150 ドレーン領域
310 ゲート電極(多結晶Si)
320 半導体(Si)
330 ゲート誘電体(SiO2)
335 エネルギーレベルEC以上の電荷トラップ
336 エネルギーレベルEC以下の電荷トラップ
400 慣用のCMOS論理回路/メモリと一体化したNDRデバイスの製造プロセス流れ図
405 出発基板
410 基板にアイソレーション領域を形成する
415 酸化膜形成
420 P−ウェル N−ウェル
425 NDRトラップを導入
430 NDRチャネル相互ドーピング
435 アニール
440 ゲート絶縁層を形成する
445 アニール
450 ゲート電極
455 ゲート電極形成後のエッチング再酸化アニール
460 LDDイオン打込み
465 アニール
470 側壁スペーサ形成
471 持上げソース/ドレーン形成
475 ソース/ドレーンドーピング
480 アニール
485 シリサイト
490 コンタクト
495 相互接続
1810 (NDR)デバイス内に電荷トラップを形成する
1812 NDR性能を測定する
1815 電荷トラップ領域近傍にホットエレクトロンの高密度領域を形成(トラップ形成)
1820 予め定めた時間またはサイクル数ののちNDRデバイスを評価/モニタする
1825 NDR性能達成?または横這い?
1830 バイアスを変えるか否か判定
1935 可変PVR値でNDRを形成
1940 公称PVR値を設定
1945 NDR PVR値調節必要か?
1950 デバイス動作速度またはゲートバイアスを調節
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスの動作特性、とくに変動する動作要求に応答して適応的に動作するように構成できる負性微分抵抗(NDR)電界効果トランジスタデバイスの動作特性を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
負性微分抵抗(NDR)特性を有するシリコン利用のデバイスが半導体デバイスの歴史において長い間追求されてきた。CMOS互換性を備え、NDR特性を有する新しい種類のFETはKingほか名義の2000年6月22日提出の特許出願、すなわち米国特許出願第09/603,101号「CMOSプロセス互換性を備え可変同調周波数を有するNDRデバイスおよびそのデバイスを動作させる方法」、同第09/603,102号「電荷トラッピングデバイスおよびNDRモードを備えるトランジスタを構成する方法」(2002年11月12日登録の米国特許第6,479,862号)、および同第09/602,658号「可変同調周波数を有するNDRデバイスを製造するためのCMOSプロセス互換性を備える方法」に開示されているので、ここに参照してそれらの内容をこの明細書に組み入れる。このデバイスの利点はそれら先行出願に記載されているので、この明細書には反復記載しない。
【0003】
それら先行出願に記載してあるとおり、NDRデバイスは、多値論理回路、SRAMセル、ラッチ、発振器など多様な用途に使うことができる。上述のKingほか名義の特許出願には、相補型金属酸化物半導体(CMOS)FETデバイスの製造のための慣用のプレーナプロセス技術を用いてシリコン利用のIC技術によりNDRデバイスを実現することを可能にする画期的な進展を記載してある。NDRデバイスとCMOSデバイスとの一体化が高密度論理回路および高密度メモリ回路に多様な利点をもたらした。
【0004】
上述のNDRデバイスのもたらす利点により、NDRデバイスの製造、試験および動作を全面的に改良して関連技術のさらなる改良および普及を図ることが望まれる。
【0005】
また、トラップ位置制御、トラップエネルギーレベル制御およびトラップ形成の改善がこの種のNDRデバイスに有用であり、またこれら以外のトラップ利用のデバイスにも有益であり得る。
【0006】
さらに、従来技術は最大電流対最小電流比(PVR)の調整の難しいデバイスに限られていた。例えば、製造過程でPVR値を直接に制御できるようにして単一ウェーハ上の互いに異なる回路のNDR特性に変化を与えることができれば有用である。また、デバイスの正常動作中にPVR値を制御できれば望ましいが、慣用のNDR技術では不可能である。
【0007】
【特許文献1】USP 6 479 862
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、この発明の目的は、従来技術における上述の限界を検討して、電荷トラッピングデバイス、NDRデバイスの新たな実施例、およびそれら実施例の新たな製造方法および動作方法を提供することである。上記の目的および上記以外の目的は次に述べるこの発明の多様な実施例により達成できるが、この明細書で述べるこの発明のあらゆる側面をそれら実施例が必要とするとは限らないことは当業者には理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、この発明の第1の側面は、シリコン利用のNDR FETを形成する方法であって、基板を準備する過程と、この基板の第1の部分に第1の不純物を用いて前記NDR FETの第1のNDR領域、すなわち前記NDR FETにNDR特性をもたらすように適合した第1のNDR領域を形成する過程と、前記NDR FETの閾値電圧特性を調整するように前記基板の前記第1の部分に第2の不純物を配置する過程と、前記過程の終了のあと前記NDR FETに第1の熱処理を施す過程と、前記基板の前記第1の部分の上に前記NDR FETのゲート絶縁層を形成する過程と、前記NDR FETに第2の熱処理を施す過程と、前記NDR FETのソース領域およびドレーン領域、すなわち前記基板の前記第1の部分に位置するNDR FETチャネル経由で互いに結合されるソース領域およびドレーン領域を形成する過程とを含む方法に関する。
【0010】
上記チャネルからの十分な数の電荷キャリアが上記第1のNDR領域に一時的にトラップされるとNDR FETはNDR特性を伴って動作するので有利である。上記第1の不純物は第1の導電型のドーパントで構成し、上記第2の不純物はこの第1の導電型と反対の導電型のドーパントで構成するのが好ましい。上記第1の熱処理は反応炉で行い、上記第2の熱処理はパルス状加熱室内の高速加熱アニールランプで行うのが好ましい。また、ゲート電極を形成したあと第3の熱処理を施すのが好ましい。
【0011】
そのあとの工程でゲート電極やソース領域およびドレーン領域の一方または両方などへのシリサイトコンタクトを形成できる。
【0012】
したがって、この発明の実施例には、温度範囲50℃にわたって10以上の最大電流対最小電流比(PVR)を有するシリコン利用のNDR FETもある。温度範囲100℃にわたってPVR値が1000を超える例もある。
【0013】
上記以外の実施例ではSOI(シリコンオンインシュレータ)基板を用いるが、この発明にはひずみSiやSiCなど多様な基板が好適である。
【0014】
上記FETに添加する不純物は、好ましくは基板の伝導帯界面よりも高いエネルギー特性を有する電荷トラッピングサイトを形成するのに用いられる。
【0015】
他の実施例では、NDR FETと非NDR FETとを共通の製造工程により同時並行的に形成する。例えば、アイソレーション領域、LDDイオン打込み、ゲート絶縁膜、ゲート電極、コンタクト、ソース/ドレーンイオン打込みなどを共用のプロセスにより形成できる。それらの例では、NDRデバイスのNDR領域はNDR FETのゲート絶縁領域で構成するのが好ましい。
【0016】
さらに他の実施例では、互いに異なる二つの種類のNDRデバイスを共通の基板の上に形成できる。すなわち、第2のNDR素子の第2のNDR領域を上記半導体基板の第2の領域に形成して、上記第2のNDR領域が第1のNDR FETのNDR特性とは異なる第2のNDR特性を示すのに適合するようにするのである。
【0017】
したがって、この発明の関連する側面は、電流最大値および最小値で画定されるNDR特性で動作する電荷トラップ利用のNDR素子に関係する。NDR素子のトラップ領域における電荷トラップの分布をそれら電荷トラップのエネルギーの集中の制御などにより適切にすることによって、NDR素子の最大電流対最小電流比(PVR)を50℃にわたる温度範囲で10以上の値にすることができる。
【0018】
他の実施例では、25℃から125℃にわたる動作温度範囲でPVR値が5倍以下の範囲で変動するように構成することができる。さらに他の実施例では、25℃から125℃にわたる動作温度範囲でPVR値が1000以上になる。電荷トラッピング領域はNDR素子に伴うFETのチャネルと界面を形成するのが好ましい。
【0019】
電荷トラッピングデバイスの上記以外の実施例も同様の性能を達成するように同様に構成できる。
【0020】
この発明のもう一つの側面は、NDRデバイスを形成する方法であって、ゲート電極付きシリコン利用のNDR素子を形成する過程と、シリコン利用のトランジスタの製造工程中にゲート電極付きシリコン利用NDR素子の最大電流対最小電流比(PVR)特性を第1のPVR値と第2のPVR値との間の目標PVR値に設定する過程とを含む方法に関する。すなわち、半導体の中にNDRデバイスを形成する製造工程の期間中にPVR目標値が変動してそのNDRのPVR値が、少なくとも10倍の範囲で変動しうる第1の実施可能なPVR値と第2のPVR値との間の範囲にある値になり得る。
【0021】
所望のPVRの値をイオン打込みなどの単一の工程で設定できる場合もある。
【0022】
好ましいアプローチでは金属酸化物半導体(MOS)互換性のある製造工程だけを用いる。特定の製造施設では第1のウェーハ上の第1の半導体基板と第2のウェーハ上の第2の別個の半導体基板とが互いに異なる時間に互いに異なるPVR目標値を備えることができるようにこの発明は十分な柔軟性を備える。イオン打込み装置、炉、アニール室、堆積システムなどの半導体製造装置に互いに異なるPVR値をプログラムすることができる。NDR電圧オンセット点(VNDR)も製造時に設定するのが好ましい。
【0023】
他の実施例では、一つ以上の一般プロセスパラメータの制御により製造中にPVR値(および/またはVNDR値)を設定できる。
【0024】
例えば、ある種の実施例では、NDRデバイスのために成長させたゲート絶縁膜の厚さの制御によりPVR値やVNDR値を製造中に設定できる。より詳細に述べると、ゲート絶縁膜の厚さを大きくするだけでPVR特性を上げることができる。ゲート絶縁膜の厚さは少なくとも5nmにするのが好ましく、単一の層、または互いに異なる二つの材料の複合体で構成するのが好ましい。用途によっては、このゲート絶縁膜を熱酸化物と堆積酸化物膜ベースの材料との両方で構成する。すなわち、共通基板上に、第1のゲート絶縁膜厚の第1のPVR特性のシリコン利用のNDRデバイスと第2のゲート絶縁膜厚の第2のPVR特性のシリコン利用のNDRデバイスとを設けることも用途によっては可能である。
【0025】
もう一つの実施例ではPVR値やVNDR値をシリコン利用NDR FETのチャネル長の制御により製造中に設定できる。この発明はスケーリング則をよく維持できるので、PVR特性がチャネル長に追従し、小さいチャネル長により大きいPVR値を実現し大きいチャネル長により小さいPVR値を実現できる。したがって、チャネル長を画定したり、ソース/ドレーン領域イオン打込みを画定する慣用のマスク利用工程によりPVR特性を確立できる。チャネルの大きさは、ゲート電極の側壁に堆積した多様な大きさのスペーサにより画定した大きさにすることができる。すなわち、PVR値は、チャネル長の小幅な削減でも大幅に増加させることができる。
【0026】
さらにもう一つの実施例では、NDR素子に伴う電荷トラップ層に導入する不純物の種類や線量を目標の電荷トラッププロフィルに合致するように制御することによって、PVR値やVNDR値を製造中に設定することができる。好ましいアプローチでは、ホウ素を不純物として選び、線量を1*1014atoms/cm2乃至3*1014atoms/cm2とする。これによって、電荷トラップ層のトラップ領域における電荷トラップ密度1*1019atoms/cm3以上、電荷トラップ層のバルク領域における密度1*1018の目標トラッププロフィルを得る。このようにして、上記以外の不純物、線量などを選ぶだけでPVR値を変えることができる。例えば、ホウ素の不純物線量を50%だけ増やすと、PVR値特性を100%以上上昇させることができる。上記以外のPVR処理の例にもみられるとおり、NDR電圧オンセット点(VNDR)も上述以外のやり方で制御できる。
【0027】
さらにもう一つの実施例では、電荷トラップの目標位置や濃度など全体としての分布を制御することによってPVR値やVNDR値を製造中に設定できる。好ましい実施例では、厚さ約0.5nm以下の目標位置範囲内で電荷トラップを分布させる。さらに、電荷トラップの密度を、界面における密度が電荷トラップ層のバルク領域における値よりも少なくとも1オーダーだけ大きくなるように調整する。
【0028】
他の実施例は、PVR値やVNDR値を急速加熱アニール操作の制御により製造中に設定することができる。好ましいアプローチでは、慣用の電球利用の加熱室におけるサイクルの少なくとも一部にわたって1000℃以上の温度におけるサイクルを用いる。この種の操作により、電荷トラップをバルク領域でなくチャネル界面領域に絞り集中させることができる。
【0029】
さらに他の実施例では、イオン打込みのイオンの種類や線量など低濃度ドーピングによるドレーン領域形成工程のドーピングの制御により製造中にPVR値やVNDR値を設定できる。好ましい実施例ではイオン打込みのドーパントとしてヒ素を1*1015atoms/cm2以上の線量で用いる。他の実施例では、イオン打込みのドーパントとしてリンを1*1015atoms/cm2の線量で用いる。ヒ素によるPVR値はリンによる場合の少なくとも2倍になるので、PVR値が回路動作に臨界的な影響を及ぼすような用途にはリンが好ましい。
【0030】
この発明の上述の側面に関連する側面は、シリコンウェーハ上にNDRデバイスを形成する半導体加工装置であって、ウェーハごとに(またはダイごとに)特定のPVR値を与えるようにプログラムすることができる加工装置に関する。この装置は慣用の半導体製造装置の中に配置するのが好ましく、NDRデバイス製造に伴うNDR関連プロセスレシピに応答するプログラム可能なコントローラを含む。NDR関連プロセスレシピには、NDRデバイスのPVR値の実現に伴う一つ以上の加工工程が含まれる。このプログラム可能なコントローラに結合した加工チェンバはNDR関連プロセスレシピに基づきシリコンウェーハ上に少なくとも一つの半導体加工操作を行うように構成されている。この半導体加工操作は、第1の値とその第1の値の少なくとも2倍である第2の値との間で変動するPVR値を実現するように加工チェンバ内で変更できる。
【0031】
他の実施例では、PVR値は半導体加工装置の中で10と100との間で変動させることができる。加工チェンバはイオン打込み装置、RTAチェンバ、堆積反応器、堆積チェンバなどで構成できる。
【0032】
この発明の上記以外の側面は、NDRデバイスなどの電荷トラップデバイスのための電荷トラッププロフィル形成の多様な最適化に関する。
【0033】
NDR FETの実施例では閾値電圧の改善のために相互ドーピング(counter-doping)を行う。すなわち、制御ゲートとソース領域とドレーン領域とを有する半導体デバイスを、第1の導電型の基板を準備する過程と、前記ソース領域およびドレーン領域の間で電荷キャリアを搬送するソース領域・ドレーン領域間にチャネル、すなわち前記第1の導電型の第1のチャネル不純物でチャネルをドープする第1のチャネルドーピング構成を経て形成されるチャネルを形成する過程とを用いて構成する。上記第2の導電型は第1の導電型と反対の導電型である。上述の第1のチャネルドーピング工程および第2のチャネルドーピング工程の結果、形成されたチャネル領域は第1の導電型を備える。チャネルとの間で界面を有する電荷トラップ領域も形成される。この電荷トラップ領域は上記界面沿いに電荷キャリアを一時的にトラップしデバイスがNDR特性を発揮できるようにする電荷トラップサイトを有する。これら電荷トラップサイトは、界面に実質的に集中した電荷トラップ分布を形成する第1のチャネル不純物に少なくとも一部は由来する。
【0034】
好ましい実施例では第2のチャネルドーピング工程にヒ素を用い、第1のチャネルドーピング工程にホウ素を用いる。好ましい実施例ではシリコンを用いるが、SOIやひずみSiやSiCなどシリコン以外の基板を用いることもできる。シリコンの結晶方位(111,100,110)が異なれば電荷トラッピング特性も異なってくる。
【0035】
電荷トラッピング領域は通常は半導体デバイスのゲート絶縁膜の一部として形成する。その変形では、ゲート絶縁膜の形成のあとその絶縁膜を通じて直接にイオン打込みを行うことによって形成する。また、他の変形では、熱酸化膜と堆積酸化膜との組み合わせなど2層電荷トラップ領域の一部として形成できる。
【0036】
さらに他の変形では、電荷トラッピング領域がチャネルとの界面の全長に及ばないようにすることもできる。また、他の実施例では、ソース側の電荷トラッピングを強めるように電荷トラッピング領域をソース領域から延びるようにする。さらに他の例では、電荷トラッピングサイトの上記界面沿いの分布を不均一にして、その界面沿いの活性電荷キャリアのトラッピング率を可変にする。トラッピング率を上記界面沿いの距離にほぼ比例して変化するように、すなわちソース領域における値がドレーン領域近傍よりも大きくなるように、制御することもできる。
【0037】
他の実施例では、電荷トラッピングサイトを二つの互いに異なる加工工程で形成する。例えば、電荷トラッピングサイトの第1のセットをイオン打込みで形成し、第2のセットを熱処理加工(水蒸気中など)で形成するのである。さらに他の実施例では、同じまたは別々の材料に互いに異なるイオン打込み方法を適用して互いに異なる種類の電荷トラップを形成する(すなわち、ホウ素およびヒ素または超微粒子など)。
【0038】
この発明のさらに他の関連側面は、不純物が適切な電荷トラップサイトを形成し得る界面にそれら不純物を確実に高濃度で分布させるためにアニール工程を用いることに関係する。この関連側面は、シリコン利用のNDR半導体デバイスの形成を、基板を準備する過程と、このNDR半導体デバイスの電荷キャリアを搬送するチャネル領域を形成する過程と、そのチャネル領域に第1の不純物をイオン打ち込みする過程と、前記チャネルとの間で界面を有する第1の誘電体層を形成する過程と、イオン打込み欠陥を減らすとともに前記界面沿いに前記第1の不純物が集中するようにそれら不純物を分布させるように前記チャネル領域をアニールする過程とによって行うことによって達成される。上記界面沿いに分布した上記第1の不純物は、NDR特性を生ずるように電荷キャリアを一時的にトラップするのに適合したエネルギーレベルを備える電荷トラッピングサイトを形成する。
【0039】
好ましい実施例では、第1の不純物は基板と同じ第1の導電型(p)の不純物である。シリコン利用のNDR半導体デバイスは通常はFETであるが、それ以外の電荷トラップ利用のNDRデバイスも含み得る。
【0040】
さらに他の変形では、トラップ分布をさらに機能強化するのに追加のアニール工程を施すことができる。すなわち、半導体デバイスに複数の互いに別々のアニール工程を施し、それらアニール工程のうちの少なくとも第1のアニール工程はチャネル領域との界面沿いに電荷キャリアサイトを集中させ電荷トラッピング層のバルク領域では低密度にするのに適合させる。後続の別のアニール工程は、界面沿いの電荷トラッピングサイトの集中度や配置を変えるのに適合させる。
【0041】
したがって、この発明のさらに他の関連側面は、FETのチャネル領域に隣接した電荷トラッピング層、すなわちチャネル領域から電荷キャリアをトラップしたりトラップ解除したりするように構成した電荷キャリアトラッピングサイトを含む電荷トラッピング層を備えるシリコン利用のFETに関する。電荷キャリアトラッピングサイトを、トラッピング層のバルク領域における密度がチャネル領域との界面沿いの密度よりも少なくとも1オーダー低くなるように分布させる。このようにして、このFETは電荷キャリアのトラッピングおよびトラッピング解除の結果、NDR特性を帯びることができる。
【0042】
好ましい実施例では、上記界面における1立方センチメートルあたりの電荷トラッピングサイトの密度は、トラッピング層のバルク領域の中の電荷トラッピングサイトの濃度よりも少なくとも2オーダーだけ高い。さらに、電荷キャリアトラッピングサイトに用いる不純物のトラッピング層−チャネル界面における濃度はチャネル領域における値よりも少なくとも2倍高い。
【0043】
この発明のもう一つの側面は同一の基板の上に互いに異なる種類のNDRデバイスを形成することに関する。この方法は、第1のNDR特性を有する第1のシリコン利用のNDRデバイスを基板の第1の部分に形成する過程と、第2のNDR特性を有する第2のシリコン利用のNDRデバイスを基板の第2の部分に形成する過程とを含む。互いに異なる種類の回路を収容するために第1のNDR特性と第2のNDR特性とは互いに実質的に異ならせてあり、第1の処理回路とそれとは別の第2の処理回路とにそれぞれ用いてある。
【0044】
第1のNDR特性は第1のPVR値や第1のオンセット電圧値を含み、第2のNDR特性は第2のPVR値や第2のオンセット電圧値を含む。これらの特性値を変動させることによって、互いに異なるNDR利用の回路向けの互いに異なる性能を達成できる。
【0045】
一つの実施例では、PVR/VNDR値は、第1の処理回路が論理回路に対応し第2の処理回路がメモリ回路に対応するので、互いに異なる。
【0046】
もう一つの実施例では、PVR/VNDR値の相違は、第1の処理回路が第1の周波数で動作し第2の処理回路がその第1の周波数よりも高い第2の周波数で動作することに起因する。
【0047】
他の実施例では、PVR/VNDR値の相違は、第1の処理回路が第1の動作電力要件で動作する第1のメモリ回路に対応し第2の処理回路がその第1の動作電力要求よりも高い第2の動作電力要求で動作する第2のメモリ回路に対応することに起因する。
【0048】
さらに他の実施例では、第1の閾値電圧および第1のゲート長を備える第1のFETで第1のNDRを構成し、それら第1の閾値電圧およびゲート長とはそれぞれ実質的に異なる第2の閾値電圧および第2のゲート長を備える第2のFETで第2のNDRを構成するためにPVR/VNDR値が互いに異なる。
【0049】
互いに異なるPVR/VNDR値は、第1のNDRデバイスおよび第2のNDRデバイス向けにそれぞれ構成した第1の電荷トラップ分布および第2の電荷トラップ分布を用いて実現できる。そのような分布を得るための一つのアプローチは、第1のマスキング構成および第1のNDR領域への第1の不純物イオン打込み工程により第1の電荷トラップ分布をまず形成し、第2のマスキング工程および第2のNDR領域への第2の不純物イオン打込み工程により第2の電荷トラップ分布を次に形成するアプローチである。
【0050】
この発明のさらに他の側面は、複数のNDRデバイスを形成する方法であって、第1のゲート付きシリコン利用NDR素子および第2のゲート付きシリコン利用NDR素子を形成する過程と、前記第1のゲート付きNDR素子のPVR特性値を第1のPVR目標値に設定する過程と、前記第2のゲート付きNDR素子のPVR特性値を第2のPVR目標値に設定する過程とを含む。これら第1および第2のPVR値を、前記第1のゲート付きNDR素子および前記第2のゲート付きNDR素子に互いに異なるNDR特性をもたらすように、NDRデバイス製造中に互いに異なる値に設定する。
【0051】
上記第1および第2のゲート付きシリコン利用のNDR素子は、MOS製造プロセスと互換性のある製造工程を用いて形成するのが好ましく、これらNDR素子にはNDR FET、NDRダイオード、可変周波数PVR特性NDR素子などが含まれる。この明細書で述べるプロセスを用いると、PVR値は少なくとも50%、100%変動させることができ、1000%変動させることもできる。通常の利用態様では、互いに異なるPVR値が用いられるので、第1のNDR素子をメモリ回路に、第2のNDR素子を論理回路にそれぞれ用いる。
【0052】
この発明の他の関連側面は、集積回路内で互いに異なる種類のNDRデバイスを動作させる方法であって、第1のNDR特性を有する第1のシリコン利用のNDRデバイスを用いて集積回路内の第1の回路を動作させる過程と、第2のNDR特性を有する第2のシリコン利用のNDRデバイスを用いてその集積回路内の第2の回路を動作させる過程とを含む方法に関する。これら第1および第2のNDR特性は、第1および第2の回路を実質的に互いに異なる電気的特性で動作させるように互いに異ならせてある。
【0053】
これらの実施例では、互いに異なるNDR特性を実現するために互いに異なるNDR値を予め実現しておく必要はない。実質的に互いに異なる電気的特性は、第1の回路で用いるクロック周波数や活性化要因などと第2の回路で用いるクロック周波数や活性化要因などとを互いに異ならせることによって得られる。上記の実質的に互いに異なる電気的特性には、第1の回路の用いる第1のゲートバイアス電圧と第2の回路の用いる第2のゲートバイアス電圧とを、両者が実質的に互いに異なるように設定することも含まれる。第1の回路の用いる第1の電流レベルと第2の回路の用いる電流レベルとを、両者が実質的に互いに異なるように設定することも同様に含まれる。
【0054】
二つの互いに異なる種類のNDR回路を含む半導体回路は、第1のNDR特性を有し半導体基板の第1の部分に設けた第1のNDRデバイスと、第2のNDR特性を有しその基板の第2の部分に設けた第2のNDRデバイスとを含む。これら第1および第2のNDR特性は互いに異なっており、互いに別々の第1の処理回路および第2の処理回路でそれぞれ用いられる。
【0055】
一つの好ましいアプローチでは、互いに異なるNDR特性は、第1のNDRデバイスに伴う第1の電荷トラッピング領域と、第2のNDRデバイスに伴う第2の電荷トラッピング領域とを適宜異ならせて形成することによって実現できる。
【0056】
ある種の用途では、第1および第2のNDRデバイスの少なくとも一方をNDR FETとする。それらNDRデバイスの他方はトンネルダイオードで構成する。
【0057】
この発明のさらに他の側面は適応型NDRデバイスに関する。このデバイスは、適応型NDRデバイスを第1の期間中にわたり第1の電流−電圧関係を保って動作させ、同じデバイスを第2の期間中にわたり第2の電流−電圧関係を保って動作させることによって実現する。これら第1および第2の電流−電圧関係を、適応型NDRデバイスが二つの互いに明確に異なる動作モードを備えるように十分に異ならせる。この適応型NDRデバイスを、集積回路上の制御回路からの制御信号によって第1の動作モードと第2の動作モードとに切り換える。
【0058】
概括的にいうと、このデバイスの動作特性は、第1の動作モードにおける適応型NDRデバイスの第1のNDR電流最大値と第1のNDR電流最小値との間の切換えが同デバイスの第2の動作モードにおける第2のNDR電流最大値と第2のNDR電流最小値との間の切換えよりも高速で行われることに基づいて利用される。
【0059】
この発明の好ましい実施例は、第1の電流−電圧関係および第2の電流−電圧関係を多様な動作パラメータ、すなわち第1および第2のNDRデバイスのゲート端子にそれぞれ加えるゲートバイアス電圧や、NDRデバイスに加える第1および第2のゲート信号の第1および第2のクロック周波数などの動作パラメータにより変えることによって実現する。
【0060】
ある実施例では、制御信号を集積回路で用いる電力消費モード/動作速度モードに基づいて発生して、第1の動作モードでのNDRデバイスの消費電力が第2の動作モードでの消費電力よりも低下するように(または動作速度が低下するように)する。
【0061】
メモリセルの実施例では、上記制御信号は、読出し/書込みコマンドであり、第1の動作モードを読出しまたは書込み動作に関連づけ、第2の動作モードを休止蓄積動作に関連づける。論理回路では、第1の動作モードを平常電力モード動作に関連づけ、第2の動作モードを低電力モード動作に関連づける。
【0062】
他の関連側面は、適応回路を実現するように回路のPVR値を特定の値に変える(調節する)ことに関する。この動作は、回路が処理動作を行っている第1の期間には適応型NDRを第1のPVR値で動作させ、回路が処理動作を行っていない第2の期間にはその適応型NDRを第2のPVR値で動作させて、その適応型NDR素子の消費電流を節減するようにすることによって行う。第1のPVR値は、その適応型NDR素子のPVR特性を回路の動作諸要件に適応させるために、第2のPVR値を少なくとも50%上回るように制御できる。
【0063】
ある実施例では、この回路は論理回路であって、処理動作はAND、NAND、OR、NOR、XOR、NXOR、NOT演算などのブール代数論理演算である。他の実施例では、この回路はメモリセルであって、処理動作はメモリセルに蓄積したデータ値へのアクセス動作である。
【0064】
この関連の側面は適応型半導体回路を作る方法である。この方法は、第1の期間には第1の電流−電圧関係を保って動作でき第2の期間には第2の電流−電圧関係を保って動作できるシリコン利用の適応型NDRデバイスを形成することを含む。第1および第2の動作モードなど二つの互いに別々の動作モードで適応型NDRデバイスが動作できるようにするために、第1および第2の電流−電圧関係を互いに十分に異ならせて画定する。次に、第1の動作モードと第2の動作モードとの間でNDRデバイスを切り換える制御回路を構成する。
【0065】
好ましい実施例では、公称PVR値をNDRデバイスに製造工程中に設定する。この公称PVR値は上記の制御回路でダイナミックPVR値または適応PVR値になるように調整できる。
【0066】
他の変形では、異なる適応PVR値を備えるように異なるNDRデバイスを形成できる。
【0067】
適応型の動作のできる半導体デバイスには、第1の期間中には第1の電流−電圧関係を保って動作し第2の期間中には第2の電流−電圧関係を保って動作するのに適合したシリコン利用の適応型NDRデバイスが含まれる。上述の例の場合と同様に、第1および第2の動作モードなど二つの互いに別々の動作モードで適応型NDRデバイスが動作できるようにするために、NDR特性の第1の電流−電圧関係と第2の電圧関係とは互いに十分に異ならせる。この適応型NDRデバイスを第1の動作モードと第2の動作モード化との間で切り換える制御回路でPVR値遷移を達成する。種類の異なるNDRデバイスに種類の異なる制御回路を用いる例もある。
【0068】
この発明のさらに他の側面は、NDRデバイスの信頼性を高めるための手段として、または切換速度など実際の動作パラメータの改良の手法として、NDRデバイスを試験しストレス付与することに関する。これらの操作は製造工程の期間中または終了後に、または場合によっては使用開始後に行うことができる。
【0069】
この発明のこの側面により半導体デバイスを製造する第1の方法は、第1の製造工程中に電荷トラッピング領域を形成する過程と、一連の第2の製造工程中に前記電荷トラッピング領域に不純物を第1の分布および第1の濃度で導入し分布させるなどして前記電荷トラッピング領域に電荷トラップを形成する過程と、前記電荷トラップの形成のあと電荷トラップの第1の集中度の恒常的上昇や電荷トラッピング領域における電荷トラップの第1の分布の恒常的転換などに適合したストレス電流が半導体デバイス中を流れるように活性化エネルギーを半導体デバイスに加える過程とを含む。これによって、電荷トラップデバイスの動作性能は、新たな電荷トラップまたは界面近傍の電荷トラップがデバイス動作に寄与することにより、多くの場合改善される。
【0070】
好ましい実施例では、上記半導体トランジスタデバイスをNDR特性に適合したFETなどのNDRデバイスとする。上記活性化エネルギーは、FETのソース、ゲート、ドレーン領域への電気的バイアスとして印加され、それによってそのFETのチャネルにストレス電流が流れるようにする。ストレス電流は比較的高い密度のホットエレクトロンを有する。ホットエレクトロンはチャネルの界面近傍にさらに追加の電荷トラップを形成し、それら電荷トラップは電荷の一時的蓄積のみに適合したエネルギーで形成する。ホットエレクトロンの数およびそれらエレクトロンのエネルギーレベルは用途に応じて高精度で制御できる。
【0071】
このようにして、製造工程終了のあとでも、NDR PVR値、オンセット電圧値、切換速度などをNDRデバイスについて変更できる。この場合の特定の実施例ではNDRデバイスを出荷後の使用状態で性能改善することができる。
【0072】
上述の実施例は上記活性化エネルギー印加のタイミングを上記以外の時点に選ぶことができる。例えば、上記トランジスタを含む集積回路の製造工程の終了前に印加できる場合もある。また、製造工程の終了時に(付加的に)印加できる場合もある。
【0073】
上述の試験プロセスの詳細、すなわち活性化エネルギーの印加の繰返し回数や印加時間などの詳細もこの発明のこの側面の一部である。この半導体デバイスの電気的特性の変化をモニタするそのモニタ動作の結果に応じてストレス電流を遮断したり、継続させたり、またある場合にはより高い活性化エネルギーレベルで継続させたりする。ストレス電流は最大値に至るまでステップ状に増加させることもできる。
【0074】
この発明の関連の側面は、ストレス印加前NDRデバイスを製造する方法であって、NDRトランジスタデバイス用基板にチャネルを形成する過程と、電荷トラッピング領域全体にわたり分布する多数の電荷トラッピングサイトを含む電荷トラッピング領域を前記チャネルに隣接して形成する過程とを含む方法に関する。上記電荷トラッピングサイトは、上記トランジスタの平常動作期間中はチャネル内の第1の数の活性化電荷キャリアが一時的にトラップされてそのトランジスタにNDR特性をもたらすようなトラップ集中度とトラップ分布とを保って構成する。そのあと、平常動作に供する前にその半導体デバイスにストレス電流を印加し、チャネルにおける活性化電荷キャリアの上記第1の数が平常動作時の数を上回るようにする。このストレス印加過程により、トランジスタ製造工程終了前に電荷トラッピング領域の中のトラップ集中度の増加やトラップ分布の変更を達成する。
【0075】
さらに他の実施例では、電荷トラッピングサイトの集中度上昇を、NDR特性の変更のためにNDRデバイス出荷後使用の平常動作時に行う。この操作により、製造工程終了後でもトランジスタデバイスの切換時間を改善できる。
【発明の効果】
【0076】
多様なNDRモードをもたらすように動作中にNDR特性を切換えできるNDR素子制御方法を提供できる。例えば、NDR FETなどのNDR素子へのバイアス電圧/電流の切換えによるPVR値の切換えなどの効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
次に図面を参照してこの発明の好ましい実施例を述べる。この明細書で説明する例がこの発明の多様な実施形態の一部であり、したがってこれらの例にこの発明が限定されるわけではないことは当業者には理解されよう。
【0078】
この発明は、半導体集積回路の分野でディジタルメモリ、ディジタル論理回路およびアナログ回路のための追加の基本的構成ブロックとして用いられることが期待される。すなわち、この発明はメモリセル、ブーレ代数演算ユニット、その他の装置に含まれ得る。
【0079】
従来技術の簡単な要約
図1は上記Kingほか名義の特許出願に述べてある種類の慣用のNDR FET100を示す。このデバイスはNDR特性を備えるシリコン利用のMISFETである。すなわち、デバイス100の特徴的部分は、慣用のMOSFET製造プロセスにNDR特性付与のための所要改変を加えたプロセスで構成する。
【0080】
すなわち、図1において、ゲート電極110はゲート選択信号を受けるためのゲート端子に接続する。デバイス100は基板120(p型が好ましい)の中に形成し、チャネル135で接続される周知のソース領域140およびドレーン領域150を備える。基板コンタクト端子125はデバイス100に基板バイアスを供給し、ソース電圧/ドレーン電圧を慣用のソース端子145およびドレーン端子155からそれぞれ供給する。ゲート絶縁層130はチャネル135とゲート電極110との間に位置づける。これらの構成は標準的なMISFETと共通であり、追加の慣用の構成(逆行基板ドーピング、「ハロー」または「ポケット」ドーピング、ゲート側壁スペーサ、浅いソース・ドレーン接合など)はこの発明の性質をより明確に図解するために図示してない。
【0081】
慣用のFETと若干異なっておりNDR特性を発揮するデバイス100内の追加の特徴的構成は、(1)僅かに厚いゲート電極130,(2)p型不純物により低濃度でドープしたチャネル表面領域、および(3)電荷トラッピング領域137である。これらの特徴的構成が協働して上記Kingほか名義の出願で詳述した理由により上記FETにNDR特性を付与する。
【0082】
その特性を図2,すなわちゲート電圧の適切な選択がNDRモードに与える影響を示すように二つの互いに異なるゲート電圧についてドレーン電流対ドレーン電圧特性を表した図2に示す。ソースを基準とした固定のゲート電圧VGSに対しては、ドレーン電流IDSは、慣用のnチャネルMOSトランジスタにおけるドレーン電流と同様に、第1の領域210ではドレーン・ソース間電圧VDSの上昇とともに増加することがこの特性図から理解されよう。しかし、特定のドレーン電圧レベル以上の領域220では、ドレーン電圧のさらなる増加とともにドレーン電流が減少し、このデバイスはNDR特性を備えたNDRモードになる。ドレーン電流が減少し始めるドレーン電圧(すなわちVDS=VNDRとなる点225)は、不純物材料、チャネル長、閾値電圧などを適当に選ぶことにより、調節可能である。
【0083】
図2から理解されるとおり、この発明は、ドレーン・ソース間電圧の上昇とともに閾値電圧Vtが動的に増加するに伴って(トラップされた電荷の累積が原因で)ドレーン電流IDS(Vg−Vtに比例する)が減少することを利用するものと見ることができる。すなわち、曲線228に示した電流値は、与えられたVgおよび変動するVtについて図2に示したひと組の連続曲線229に全体としてフォローする。他の従来技術によるデバイスと対照的に、NDRデバイスの主要評価項目であるいわゆるPVR値およびNDRオンセット電圧は、不純物の種類、不純物のドーピング濃度、デバイス結合構造および印加電圧の適切な組合せにより高精度で最適化できる。また、この発明のNDR特性は広い温度範囲にわたって(−40℃乃至+150℃)100,1000または106以上のPVR値を達成でき、従来技術によるNDRデバイスの性能を大幅に上回る。
【0084】
上述の説明が、この発明のよりよい把握のための背景の説明としてなされたものであって必要に応じて若干省略を含んでいることは当業者には理解されよう。上述の説明は前掲のKingほかの発明の構成上、動作上または物理的構成上の完全な分析を意図するものではなく、その意味に解されるべきではない。また、この明細書で説明する本件発明の限定事項と解釈されるべきではない。
【0085】
トラップエネルギー特性
図3Aは、図1に示したデバイス100の好ましいエネルギー帯図(電子エネルギー対半導体表面と垂直な方向の距離の関係を示す図)を示す。ゲートバイアスを印加すると、電子の反転層が半導体表面に形成され、したがってこのFETはオン状態になる。ゲート310は高不純物濃度でドープした多結晶シリコン(poly−Si)で構成するものとして、ゲート電極330はSiO2で構成するものとして、また基板320は最近のCMOS構造の場合と同様にp型基板としてそれぞれ示してある。周知の他の材料を代わりに用い得ることは理解されよう。
【0086】
半導体材料320に可能な電子エネルギー状態の伝導帯の下端EC、価電子帯の上端EVが示してある。従来のデバイス物性理論によると、EVからECの範囲のエネルギーに対応するバンドギャップの範囲では、この材料に可能な電子エネルギー状態はない。すなわち、半導体材料320内の移動電子はこの範囲内のエネルギーは持ち得ない。
【0087】
図3Aから理解されるとおり、チャネル領域(ゲート誘電体330と半導体基板320との間の界面の近傍)の伝導帯電子は、EC以下のエネルギーレベルの第1の種類の電荷トラップ336に捕獲されるためには、エネルギーを減らさなければならない(例えば格子衝突により)。そのあと電子がトラップ解除されて基板320の伝導帯に戻るためには、(例えば格子振動により)エネルギーを供給されなければならない。したがって、前述のKingほか名義の出願の明細書の説明から明らかな理由により、この種の電荷トラップはNDR特性を生ずるにはとくに有用ではない。
【0088】
これと対照的に、エネルギーレベルがECにごく近くしかもEC以上である第2の種類の電荷トラップ335は、格子衝突を必要とすることなく、そのエネルギーレベルと等しい合計エネルギーレベルの伝導帯電子をトラップすることができる。電荷トラップ335がそのトラップ以上のエネルギーレベルのエネルギーを有する伝導帯電子をトラップできる点でさらに有利なことはもちろんである。これら二つの種類のトラップについては、トラップされた電子は伝導帯の許容された状態に容易に戻りトラップ解除され得る。これら第2の種類のトラップは慣用のFETをNDR特性動作に適応させるのにとくに適している。なお、半導体伝導帯上端部(図示してない)よりも十分に高いエネルギー位置にある界面トラップは、キャリア内の可動キャリアのかなりの部分がトラップされるに十分な運動エネルギーを備えるに至るまでは、FETの動作に何ら影響を及ぼさない。
【0089】
絶縁ゲートFETにおいてNDR特性を得るための好ましいメカニズムは、上述のとおり、チャネルからのホットキャリアをトラップに捕獲してそのトラップから急速にトラップ解除するメカニズムである。トラップは、主として(全部でなくとも)ホットキャリアをトラップするために、半導体伝導帯端部よりも高いエネルギーレベルを備えるように構成するのが好ましい。例えば、半導体伝導帯端部よりも0.5eVだけ高いエネルギー位置のトラップは0.5eV以上の運動エネルギーを備える電子だけをトラップできる。高速NDR FET動作のためには、キャリアトラッピング動作およびトラッピング解除動作をできるだけ高速に行うのが望ましい。それによって、FETの閾値電圧の高速の動的変化が可能になるからである。
【0090】
したがって、Kingほかによる上述のNDRデバイスは、トンネルダイオードなど慣用のNDRデバイスに必要とされる伝導帯そのものへのトンネル効果でなく電荷トラップへのトンネル形成を用いている。すなわち、一つ以上の誘電体層(例えば慣用の誘電体材料からなるゲート絶縁層など)の中に局在する許容エネルギー状態にトラップされるに十分なエネルギーをキャリアに与えればよいのである。慣用のNDRデバイスに必要とされる伝導帯の連続的な組を形成するように高精度で調整した層の組を形成する必要はなく、Kingほかの発明が競合技術よりも広く利用されるものと期待されるもう一つの理由となっている。
【0091】
上述のトラップの物理的分布は前掲のKingほかの出願に記載してあり、その概要の図解を図3Bに示す。同図は電荷トラップの分布と距離との関係を概略的に示す。この図のグラフの左側はトラッピング層(この場合はゲート誘電体330)のバルク領域を示し、図示のとおり、ごく低い電荷トラップ密度(すなわち、1016atoms/cm3以下程度の)を備える。この密度は界面360の近傍で急激に高くなり、この界面360において電界トラップとして有用な不純物(この場合は丸印で示したとおりホウ素)の濃度は好ましくは1019atoms/cm3以上、最も好ましくは1020atoms/cm3以上とする。ホウ素の濃度は次に低下し基板330側ではさらに低下する。しかし、トラップの面積あたりの濃度は過剰(すなわち1014atoms/cm2)であってはならない。すなわち、トラップ相互間ホッピングまたはチャネル・トラップ・チャネル間ホッピングによりソース・ドレーン間の不都合な電子伝導が生ずるからである。
【0092】
図3Bから理解されるとおり、電荷トラップの大部分はチャネルにごく近接して、すなわち誘電体/半導体界面から0.5nm乃至1.5nm以内、または界面そのものに設けなければならない。この要件は、ホウ素を約2乃至3×1014atoms/cm2の線量で低エネルギーイオン打込みすることにより達成できる。当業者には明らかなとおり、これらの数字は単なる代表例であって、特定のプロセス要件、デバイス動作条件などにより、それら数字の値(距離、濃度など)は変わる。すなわち、この発明は上記電荷トラップの特定の配置に限定されない。図3Bの中の三角形の記号はチャネルにおける「正味」p型ドーピングを表し、この明細書に述べる理由により過剰に高濃度p型にならないようにする。すなわち、その結果、閾値電圧を高めるからである。
【0093】
動作の際には、トラッピング/トラッピング解除メカニズムはチャネルのドレーン側で始まり、チャネルのソース側に進んでトランジスタを急速に遮断する。この現象は、電子がチャネルのドレーン側に到達する時点までに最大の運動エネルギーを備え、したがって、その領域でまずトラップされる可能性が高いことに起因する。この機構からも、NDR FETが良好なスケーリング則維持能力を備えることが理解されよう。すなわち、チャネル長が小さくなるに伴い、トラッピング/トラッピング解除メカニズムがトランジスタをより急速にオフに「切り換え」ることができるからである。
【0094】
この余分の自由度、すなわちソース/ドレーンバイアス電圧を通じてFETチャネルの導電率を制御できること(慣用のゲート電圧変調に追加して)はこの発明の追加の利点のもう一つの例である。さらに、このチャネル遮断メカニズムは慣用のMOSFETにおけるオフへの切り換えの手法、すなわち電荷キャリアのチャネルの空乏化に十分な強度の電界を慣用のやり方で(すなわちゲート電圧の印加により)与えるために周知のとおりより薄い酸化物(それ以外の新規な材料)の膜に依存する手法よりも良好である。
【0095】
プロセスの流れの概略
慣用のMOS製造プロセスと一体化できるNDRデバイス製造の好ましい流れ図を図4に示す。同一出願人に譲渡された前掲の出願に述べたとおり、この製造プロセスの利点は、追加の慣用の非NDR回路(メモリおよび論理回路)を同時に製造できることである。
【0096】
図4に示すとおり、好ましい実施例では、シリコンから成る基板をステップ405で選択する。この基板はゲルマニウム、シリコンオンインシュレータ(SOI)、ひずみシリコン、シリコンカーバイドその他任意の材料でも構成できる。この発明の具体化にシリコン以外の材料を用いた場合は、次に述べる工程はこの技術分野で周知の原理にしたがって変更を要することはもちろんである。
【0097】
ステップ410においてその基板にアイソレーション領域を形成する。好ましい実施例では、このアイソレーション領域は浅いトレンチアイソレーション(STI)領域で構成する。ステップ415では酸化物層を成長させる。ステップ420で基板の中にPウェルおよびNウェルを形成する。
【0098】
ステップ425では、前述のトラッピング/トラッピング解除メカニズムを助長するように設計されたNDRデバイス領域に不純物を導入する。この工程の実施には多様な技法、すなわち前述のKingほか名義の出願にも述べたとおり、例えばホウ素を比較的高い線量(1*1014atoms/cm2以上)でNDR FETのチャネル領域にイオン打込みするなどの技法を利用できる。
【0099】
ステップ430ではオプションのNDRチャネル相互ドーピング(n型ドーパントのイオン打込み)を行い、NDRトラップイオン打込みの効果の一部に対抗させ、正味のp型チャネルドーピング濃度を下げる。この工程によって、電圧閾値を下げ、閾値以下のスイングの勾配を大きくし、それに対応してPVR値を高める。
【0100】
ステップ435では、半導体結晶格子への損傷を除去し、トラッピング領域の中のトラップの正しい分布および密度を確保するようにオプションのアニーリングを行う。この工程は、トラップのトラッピング領域への過剰なマイグレーションにより漏洩が大きくなり動作速度が低下し信頼性が下がる事態が生じないようにするものである。
【0101】
ステップ440では酸化物層を選択的に除去して、NDR FETおよび通常のFETの両方に使えるゲート絶縁膜を形成する。この絶縁膜は誘電体材料の複数の層で構成でき、またNDR FET領域において通常のFET領域とは異なる厚さまたは組成のもので構成できる。
【0102】
ステップ445では、チャネル・絶縁膜界面における電荷トラップの密度を上げるようにオプションのアニーリング(好ましくは急速熱アニール「RTA」)を行う。
【0103】
ステップ450ではNDR FETおよび通常のFETの両方に使えるゲート電極を形成する。
【0104】
ステップ455では、チャネル・絶縁層界面における電荷トラップの分布および密度を(必要に応じて)さらに変えたり、ゲート電極端部沿いの領域のゲート絶縁膜の欠陥を補修したりするためのオプションのゲートエッチ後再熱化アニールを行う。
【0105】
ステップ460では「低濃度ドープしたドレーン」(LDD)イオン打込みを浅いソース領域およびドレーン領域(NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方の)を形成するように行う。
【0106】
ステップ465では、LDDイオン打込みに起因する半導体結晶格子の損傷の補修のためのオプションのアニール工程を行う。
【0107】
ステップ470では、深いソース・ドレーン間コンタクト領域のオフセットのためにゲート電極の側壁沿いにスペーサ(NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方のための)を形成する。
【0108】
ステップ471では、NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方に使える、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム合金の選択的エピタキシアル成長による、オプションの浮彫型ソースおよびドレーンコンタクト領域を形成する。
【0109】
ステップ475では、NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方に使える、高濃度ドープしたソース/ドレーンコンタクト領域の形成のために高線量ソース/ドレーンイオン打込みを行う。
【0110】
ステップ480では、上記ソース/ドレーンイオン打込みに起因する損傷の補修およびイオン打込みずみのドーパント原子の活性化のためにアニールを行う。
【0111】
ステップ485では、NDR FETおよび非NDR FETの両方または片方のために、ゲート領域やソース/ドレーン領域における所要の低抵抗コンタクトの形成に用いるオプションのシリサイト化プロセスモジュールを用いる。
【0112】
ステップ490では、絶縁物から成る不活性化層を堆積し、この層に孔を設けてNDR FETおよび非NDR FETの両方または片方の諸領域へのコンタクトの形成を可能にする。
【0113】
ステップ495では、(銅、アルミニウムまたはそれら以外の低抵抗率材料で構成できる)電気的相互接続を、デバイスの配線の完結および集積回路の形成のためにNDR FETおよび非NDR FETに形成する。これらの相互接続は、介在する絶縁層により互いに分離されている複数の導体層の層間に選択的接続を可能にするバイアホールを設けて形成することができる。
【0114】
次に、最終の不活性化層の形成を製造プロセスの終わりに通常は行う。
【0115】
さらに詳細な説明を、この発明に密接に関係するステップについて次に加える。しかし、これらステップの多くは従来技術によるものであるので詳述しない。特定の構成、これらの層および領域を形成するステップの多くは所望の性能特性およびプロセス要求に左右されるので、多様な手法が適しているとみられる。また、この発明実現のための製造プロセスについて多様な手法の例を挙げたが、それらの例が最新の手法の例示に過ぎないことは当業者には理解されよう。すなわち、この発明は、現在のところ発明者に未知の未開発プロセス技術であって、従来の手法の代替手法となりこの発明に全面的に適合するプロセス技術をも包含することを意図するものである。
【0116】
プロセスの流れの詳細
図5乃至図16はこの発明のNDRデバイス製造プロセスの好ましい実施例に用いる詳細な工程の図解である。
【0117】
より詳細に述べると、図5は、この発明の好ましいNDR FET実施例とそれ以外の慣用の半導体素子およびデバイスを含むNDR素子(上述のステップ405による)の製造に用いる出発基板の概略的断面図を示す。図5に示すとおり、実質的にシリコン(Si)から成る好ましい基板1000をまず準備する。NDR FETおよびIGFETはNチャネルデバイスであるので、NDR FETおよびIGFETを形成する基板部分はp型のほうが好ましい。
【0118】
これに関連して、図5の基板1000が、出発基板の表面(厚さ1000nm以内)にイオン打込みや拡散などにより「能動」領域の画定の前またはあとに当業者に周知の手法で形成したp型ウェルをも意味し得ることは理解されよう。また、基板1000はシリコンオンインシュレータ(SOI)でも構成することができ、最終的には一つ以上のシリコンゲルマニウム合金材料またはシリコンカーバイド材料(図示してない)の層を含み得ることは理解されよう。後者の基板を選ぶ場合は後述の後続工程を上述の変化をとり込むように周知の方法で変更する必要があることは当業者に理解されよう。
【0119】
図6は、NDR素子(NDR FETなど)を形成すべき第1の領域1015および非NDR素子(慣用のFETなど)を形成すべき第2の領域1015’を含む基板表面領域に(上述のステップ410により)電気的に分離された能動領域を形成するステップを示す概略的断面図である。この発明特有の構成をよりよく表すために、図6(および後続の図面)では後続の加工工程は「分割」図で示し、基板1000全体にわたるNDR領域および非NDR領域への多様な加工工程の互いに異なる影響を説明しやすくしてある。これらの図面が縮尺表示を意図するものでないこと、実際の基板プロフィルは実際の製造の実施例においてはずれを生ずる(おそらく大幅に)ものであることは、当業者には理解されよう。いずれにしても、これら図面はこの発明の重要な側面の理解に有用である。
【0120】
したがって、図6においては、基板1000の表面の電気的に分離された「フィールド」領域1010を、シリコンの局部酸化(LOCOS)や浅トレンチアイソレーション(STI)などの確立ずみの手法のうちの任意の手法により形成する。アイソレーション酸化層1010の厚さは通常は100乃至700nmの範囲にあり、浅トレンチアイソレーション構造の深さは通常は100nm乃至1000nmの範囲にある。上記手法以後に開発された手法もこの発明に用いることができる。
【0121】
さらに、これらの領域の細部はこの発明の動作に基本的に重要ではないが、この発明の重要な利点は、それら構成が(それら構成の実現のための方法と関係なく)慣用の能動デバイスとこの発明によるNDRデバイスとの両方に共用できることである。用途によっては上述の種類のアイソレーション領域を用いる必要がない場合もあることはもちろんであり、この発明はそれらアイソレーション領域を含むものには限定されない。
【0122】
次に、酸化物層1018を成長させる。ステップ415および420が従来技術によるステップであり、この発明に重要なものでなく、したがってここに詳述しないことは当業者に理解されよう。この発明と同一の追加の慣用の工程(例えば閾値調整、他の絶縁層、エッチストップ層、プラズマ/熱処理など)もこの発明の説明の便宜のために省略してある。
【0123】
したがって、図7に示すとおり、不純物(ホウ素など)イオン打込みステップを(上述のステップ425の一部として)酸化物層1018を通じて約2乃至3*1014atoms/cm2の線量で行う(丸印で表示)。前掲のKingほか名義の出願で述べた理由により、基板1000の界面またはその近傍、すなわちNDR素子を形成する領域に電荷トラップを導入するのが好ましい。その電荷トラップ導入は適切な不純物のイオン打込みや拡散、またはトラップ含有の誘電物層の堆積などいくつかの既知の技法の一つによって行うことができる。
【0124】
イオン打込みにより導入されるホウ素がこの発明には好ましいが、シリコン、ヒ素、リン、アンチモン、フッ素、塩素、ゲルマニウムまたは他の金属なども電荷トラップとして使うことができる。トラップの形成に水(上記の雰囲気から)を用いることができる例もある。不純物導入のための他のメカニズム、すなわち電荷トラップを含む材料の層または電荷トラッピング材料の層の堆積などのメカニズムも用いることが可能である。例えば、電荷トラップを高密度で含む酸化物層を形成するように、トーピングした膜を堆積して酸化させることもできる。
【0125】
この発明の利点は、NDR特性のオンセットをトラップエネルギーレベルの目標値の選択により制御できることである。一方、トラップエネルギーレベルを、特定の不純物やトラッピング層誘電体の選択など適切なプロセス制御パラメータを通じて調整できる。
【0126】
NDR素子を形成すべき領域1015に電荷トラッピング領域を選択的に形成するようにマスクを用いることもできる。ある場合には、基板1000の全領域1015に延びずにNDR FETの後続のゲート領域対応の小さい領域、またはそのゲート領域の限られた一部に限定されるようにマスクを用いることができる。また、例えばある場合は、所期のデバイスバイアスおよび動作速度に応じてソース領域の近傍だけ、またはドレーン領域の近傍だけ、トラッピング領域を形成することが求められることもある。例えば、「ソース側」トラッピングを最大にするには、電荷トラップを、ソース領域から延びチャネルからドレーンへの側に延びないように、選択的に配置することもできる。チャネルの長さ方向の電荷トラップの可変分布を用いて、電荷捕獲率が対応の変動を示すようにし切換スピードを高速化するようにすることもできる。
【0127】
定型的な実験により、NDR FETの互いに異なる特性、すなわち切換速度、VNDR、雑音免疫性、漏洩、閾値したスイングVtなどの特性の最適化のための多様なトラップ分布が得られるものと見られる。したがって、領域1015全体にわたって延びるものとして図示してあるものの、この発明はそのような構成のみには限られず、用途によって多様な電荷トラッピングメカニズムを用いてこの発明の利点を達成することができる。
【0128】
次に図8を参照してこの発明の好ましい実施例を引き続き述べるが、同図には、基板の表面の第1の領域1015、すなわちこの発明の好ましい実施例を上述のステップ425の一部として形成すべき領域1015の基板表面に絶縁物層(酸化物層1018の除去後)を形成するステップを示す概略的断面図を示している。この絶縁層1020はこれから形成されるNDR FETのゲート絶縁膜の一部として作用し、そのNDR FETの電荷トラッピング領域としても作用する。この絶縁層は基板1000の表面の能動領域1015にシリコンの熱酸化などいくつかの周知の技法の一つで形成する。物理的蒸着方法および化学式蒸気堆積方法も用いることができる。絶縁体層1020は、全体的に、または部分的に、SiO2,SixNy、Si3N4,または金属酸化物、メタルシリケート、それらの積層体、二つ以上の互いに異なる材料層の組合せなどで構成できる。
【0129】
この明細書で述べた他の加工工程の場合と同様に、この発明の利点は、この層(あとでパターニングする)を慣用のデバイスとNDR FETデバイスとの両方で共用できることである。プロセス一体化の影響の視点から見ると、NDR FET形成工程の期間中に非NDR領域に上記の層が存在しても、非NDR素子の構造、性能または信頼性が損なわれることはないということである。用途によっては、非NDR素子を形成すべき領域ではマスキングを施したうえでエッチングを行って、電荷トラッピング領域を基板の全領域にわたって後続の工程で形成することがないようにするのが望ましい場合もある。
【0130】
一つの代替の実施例では、チャネル界面における高濃度および層1020のバルク領域における低濃度を確保するエネルギーおよび不純物を用いてゲート絶縁層1020への直接のイオン打込みで電荷トラップを形成する。
【0131】
さらに他の実施例では、複数電荷トラップ形成ステップを、単一NDRデバイスの標準的な形成プロセスの一部として、微調整プロセスの一部として、または同一基板上での互いに異なる種類のNDRデバイスの標準的な形成プロセスの一部として用いることもできる。例えば、チャネル領域への導入をゲート絶縁層1020形成の前にするトラップもあり、トラップエネルギーやトラップ密度やトラップ分布などのトラッププロフィル目標値の達成のためにゲート絶縁層1020形成のあとにするトラップもある。トラップの互いに異なる二つの組は、互いに異なる種類の電荷キャリアの捕獲のための互いに異なるトラップエネルギーや互いに異なる割合で捕獲/捕獲解除する互いに異なるトラップタイプなど複数のトラッププロフィルが要求される場合は、互いに異なる不純物や互いに異なるイオン打込み対象物で構成する。互いに異なるNDRデバイスを基板上に同時に形成している場合は、後続のトラップ形成工程を被選択NDRデバイスのみに施すことを確実にするために、適切なマスキング工程を用いる。
【0132】
図9は、ホウ素と反対の導電型の第2の種類の不純物を上述の相互ドーピングステップ430の一部として選択的に(少なくとも好ましい実施例のNDR FETを形成すべき領域1015に)導入するステップを示す概略的断面図である。好ましいアプローチでは、この第2の種類の不純物は約1*1014atoms/cm3の濃度で比較的低エネルギーでイオン打込みしたヒ素(図9には×印1031で表示)である。このステップは、NDR FETのチャネルの表面領域における正味p型不純物濃度を低下させる効果がある。これによって、閾値(Vt)特性および閾値以下電圧揺れ(S)特性の両方を改善する。より詳細に述べると、NDR FETのVtを低下させることができ、急峻な閾値揺れを実現することができる。これらの要素はサブミクロンデバイスの後続の形成における適切なスケーリング性能の確保に重要である。これらの性能向上は、この発明を用いた集積回路用のゲートバイアス電圧の低下およびPVR値の増大の形で利用できる。
【0133】
イオン打込みステップ(電荷トラップ形成や相互ドーピングのための)終了のあと、イオン打込みに誘発された欠陥を減らすために熱アニールステップを行う(図4のステップ435に対応)。この工程は、不活性ガス(ArまたはN2)または酸化性ガス(O2またはH2O)の雰囲気の中で、所定温度(例えば550℃)で所定時間(例えば数時間)にわたって行う。上記以外の手法(例えばRTA)、温度、時間なども上述の説明から当業者には明らかであろう。このステップの目的は、電荷トラップの分布をトラッピング層1020のバルク領域内でなくチャネルとの界面にさらに確実に集中させることである。
【0134】
アニールステップを欠いた場合は、ホウ素が格子欠陥によりトラッピング層のバルク領域により急速に拡散し、ゲート漏洩電流のレベルが高くなり望ましくない。電荷トラップの密度をチャネル・ゲート絶縁層界面で高くし、ゲート絶縁層のバルク領域で比較的低くするのが望ましい。これら密度の差はatoms/cm3の値で少なくとも2または3のオーダーの差にするのが望ましい。トラッピングサイトをこの領域(すなわちチャネル界面から約0.5nm以内の領域)に限ることによって、ゲート漏洩電流をさらに小さくする。この領域の寸法がデバイス結合構造ごとにプロセス技術に応じて異なるのはもちろんである。
【0135】
この業界で周知のイオン打込み誘発欠陥の補修のための上記以外の手法(既存のまたは今後開発される)もこの発明に同様に適用できる。イオン打込みによらないまたはゲート領域に過剰のトラップサイトを生じさせないトラップ形成プロセスの場合はアニールステップは不要であろう。例えば、上述のとおりゲート絶縁層を通じた直接イオン打込みでトラップを形成する場合は、それらトラップの分布を電子エネルギーを適切に選ぶことにより特定の領域に集中させることができる。また、熱サイクルの利用によりトラップを界面に形成するように複合体ゲート酸化物(すなわち、イオン打込み、熱酸化および堆積工程、または堆積、イオン打込みおよび熱酸化工程)を用いることもできる。上記以外の工程の変更が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0136】
いずれにしても、トラッピング層1020を基板全体に形成する具体例では、慣用のFETを形成すべき領域(領域1015’)およびそれ以外のトラッピング層不要部分(領域1015を含む)からそのトラッピング層を選択的に除去する。
【0137】
図10は、NDR FETおよびそれ以外の慣用のFETの両方の高品質ゲート絶縁層として作用する追加の絶縁層1040を形成するステップ(図4のステップ440に対応)を示す概略的断面図である。このゲート絶縁層1040は、物理的蒸着、化学的蒸着などのいくつかの手法の一つで形成できる。ゲート絶縁層1040は、SiO2、SiOxNy、これら材料の組合せ、金属酸化物またはメタルシリケイトまたはそれの積層体で、その全体または一部を構成する。
【0138】
ゲート絶縁層1040を熱酸化により形成する場合は層1020の下に配置してNDR FET形成部(領域1015)における厚さをそれ以外の部分(領域1015’の中を含む)における厚さよりも薄くすることができる。その場合は、層1040は高品質ゲート絶縁層でなく電荷トラッピング層として作用し、電荷トラップは熱酸化プロセスの工程またはその後続の工程の期間中に不純物を含めることによって形成する。
【0139】
慣用のFETを同時に形成しない場合は、層1020の一部として単一の酸化物層を十分の厚さで成長させることができるので追加の層1040は不要である。NDR FET素子および非NDR FET素子を同時に形成する実施例においては、追加のゲート絶縁層の必要性を満たすために複合体ゲートのほうが好ましい。
【0140】
ゲート絶縁層の形成のあと、追加の熱アニール工程を施して(図4のステップ445に対応)電荷トラップの分布をさらに最適化し、すなわちチャネル・ゲート絶縁層界面における密度を高める。この工程は短時間に、すなわち1乃至10分間に1100℃で急速熱アニール(RTA)することによって行うのが好ましい。上記以外の温度および時間に設定できることは当業者には明らかであろう。さらに、Si/SiO2界面近傍におけるトラッピングサイトの分布を高める点においてRTA工程のほうが慣用の炉工程(すなわち1000℃でN2雰囲気中1時間)よりも優れていることを発明者は確認した。
【0141】
トラッピングサイトの分布はこの発明のNDRデバイスの最終的なPVR値を左右するので、この工程の選択/制御をPVR値の目標値への設定に用いることができる。すなわち、互いに異なるPVR値を要する互いに異なる用途向けの構成をRTAの時間または温度を調節するだけで、またはPVR値上昇のために炉工程でなくRTA工程を選ぶだけで形成することができる。
【0142】
図11はNDR FETおよび慣用のFETの両方のためのゲート電極層1050を堆積するステップを示す概略的断面を示す。ゲート電極材料1050は多結晶シリコン(ポリSi)、シリコン・ゲルマニウム合金(ポリSiGe)で構成し、または金属、合金、導電性金属窒化物、もしくは導電性金属酸化物で構成する。NDR FETおよび慣用のFETの両方のゲートは同じ材料で同時に形成できるので、この発明の利点は明らかである。
【0143】
ゲート電極材料1050がポリSiまたはポリSiGeである場合は、堆積プロセスの期間中に本来の位置でドープでき、また低抵抗率および適切な仕事関数値の達成のためにイオン打込みや拡散により本来の位置外でドープできる。最終的なゲート電極は多層スタックで構成して、最下層で所望のゲート仕事関数値を提供しその上に重なる層で十分な厚みと導電率を提供することができる。
【0144】
次に、ゲート電極層1050を標準的なリソグラフィおよびエッチングプロセスによりパターニングして多層ゲート電極1060および1060’(図12)を形成する。このステップではステップ450(図4)に対応する。この時点で、ゲート絶縁層のゲート電極端部沿いの部分への損傷を修復するとともに電荷トラップの密度(または形成)をさらに高めるために、オプションのゲートエッチング工程後再酸化アニール工程(図4におけるステップ455)を施す例もある。
【0145】
ある実施例では上記アニール工程(例えば上記雰囲気中750℃で10分、それに続きN2雰囲気中1050℃で1分)を用い得るが、そのアプローチでは作用効果は全具体例にわたって一様になることはない。すなわち、この工程の効果はゲート絶縁層を薄く(すなわち5.5nm)した構成では得られるが、より厚く(すなわち7nm)した構成では得られない。これは、Si/SiO2界面近傍で新たな水ベースのトラップの形成が蒸気により助長されるのに対して、高温度への露出がトラップ関連不純物原子の一部を上記界面からバルク領域に放出して上述の効果を打ち消すように作用することに起因するものと見られる。ゲートが比較的厚い場合は、上述の現象の結果上記界面近傍のトラップのマイグレーション/密度低下が生じ、性能が低下する。したがって、慣用のゲートエッチング工程後再酸化アニール工程が薄いゲート酸化層の場合にはより有用であるとみられる。しかし、新たなトラップを形成するとともに既存トラップの拡散を最小にする上述と同等のアニーリング機構であれば、ゲート絶縁層が厚い場合も薄い場合も同様に適用できる。
【0146】
図13は、好ましい実施例のNDR FETのチャネル界面における電荷トラップ1037の密度を高めるのに用いる上述の1回またはそれ以上のアニール工程の効果の簡単な図解を示す概略的な断面図である。この図における諸要素、すなわち電荷トラップ、トラップ位置などは縮尺表示ではないこと、図示はこの発明の特徴の説明だけを意図するものであることは理解されよう。
【0147】
図14は図4のステップ460に対応する低濃度ドープしたソース/ドレーン領域を形成するステップを示す概略的断面図である。好ましい実施例ではヒ素などのn型ドーパント(*印で図示)をエネルギー10keVおよび線量3*1015atoms/cm2でイオン打込みする。この発明のNDRデバイスにより高いPVR値を達成するにはリンよりもヒ素が優れていると判断される。その理由は完全には明らかになっていないが、ヒ素の拡散はリンよりも低速であって、ヒ素のほうが高い不純物濃度をもたらすことによるものとみられる。これによって、チャネルのドレーン領域における電界強度最大値が高くなり、エネルギーレベルのより高い電子を生じ電荷トラッピングが増加する。同じ理由により、より低いVNDR値が得られる。
【0148】
したがって、LDDドーパント、エネルギーなどを適切に選ぶことにより、NDRデバイスについての所望のPVR値をある程度制御することができる。なお、NDR−FET部分1015における浅いソース/ドレーン延長領域の形成をIGFET部分1015’における浅いソース/ドレーン延長領域と同時並行的に行うことができる。上記NDR FETの浅いソース/ドレーン延長領域のドーパント濃度および接合の深さは、必要に応じて選択的(マスク利用の)イオン打込みによりIGFETと同じ値にすることもでき異なる値にすることもできる。また、実施例によっては、後述の高濃度ドープしたソース/ドレーン領域の形成のあと浅いソース/ドレーン領域を形成するのが望ましい。
【0149】
慣用のアニール工程は、損傷の修復およびPVR目標値の達成のためにLDDイオン打込みのあと(ステップ465で記述のとおり)行う。
【0150】
図15はNDR FETのより高濃度にドープしたドレーン/ソース領域1070および1071と慣用のFETとを形成するステップ(ステップ470−475で記述のとおり)を示す概略的断面図である。この例では、深いソース領域およびドレーン領域は、ゲート電極の側壁に沿って形成したスペーサ1025によりゲート電極の端部からオフセットされている。これら側壁スペーサは、慣用の方法でスペーサ膜を堆積し異方性エッチングすることにより形成する。このスペーサ膜の厚さによって側壁スペーサの幅が定まり、したがってゲート電極からのオフセットの大きさが定まる。スペーサ形成には多様な技法が周知であり、それら技法をこの発明に用いることができる。NDR FETおよび非NDR FETの両方についてこれら側壁スペーサを同時に形成するのが好ましい。
ソース領域およびドレーン領域1070および1071(図4のステップ475)を、ヒ素やリンなどのn型ドーパントのイオン打込みおよびそれに続く損傷補修およびドーパント活性化のための慣用の手法による熱アニール工程(ステップ480)を用いて形成する。この特定の構成例では、ゲート電極1060は、その下の基板100表面に打込みイオンが達することを防ぐのに十分な厚さを備える。
【0151】
簡略化した構成図である図16に示すとおり、デバイス製造工程の最後には、(図4のステップ485,490および495)、シリサイト1085および1085を低抵抗金属・半導体コンタクト形成用にソースコンタクト領域、ドレーンコンタクト領域およびゲート電極に形成し、次に、一つ以上の絶縁性属間膜1075および1077の堆積、コンタクト孔の形成およびこれら孔への金属プラグ1081および1086の充填、相互接続用の一つ以上の金属層1083および1087の堆積およびパターニング、および水素含有雰囲気または重水素含有雰囲気の中での低温(360℃乃至450℃)アニールを行う。
【0152】
必要があれば金属配線形成用の多重金属層を絶縁層および金属層の交互積層の堆積およびパターニングにより形成する。シリサイトコンタクト1080および1085を、ケイ化チタン、ケイ化モリブデン、ケイ化コバルトまたはケイ化ニッケル組成物の低抵抗層で形成し、用途に応じて、ゲート領域またはソース/ドレーン領域の一方だけに接続するようにすることができる。プラグ1081および1086はタングステン、アルミニウム、銅その他の金属材料で形成できる。絶縁膜1075および1077はCVD膜や、スピンオンガラスや、空隙ほかの慣用の絶縁材料で構成できる。金属の相互接続層1083および1087はアルミニウム、銅その他の低抵抗金属で構成する。
【0153】
上述の方法により、一つ以上のIGFET素子および一つ以上のNDR FET素子を含む半導体デバイスを慣用のプロセス技術の工程を用いて製造できる。上述の工程が、シリコン利用の共振トンネルダイオード、ダイオード動作用の2端子NDR FET、サイリスタなど上記以外のNDRデバイスの製造など上記以外の製造環境にも有用であることは当業者に認識されよう。
【0154】
図には明示していないが、NDR FETと慣用のFETとは、後続の工程でパターニングする共通層で構成される多数の領域、すなわち共通基板1000,ゲート絶縁膜1040および1040’、導電性ゲート電極層1060および1060’、層間絶縁層1075および1077,および金属プラグ/層1081,1083,1086および1087などの領域を有する。また、両者はアイソレーション領域1010の一部を共用し、共通イオン打込み/アニール工程で同時並行的に形成するソース/ドレーン領域1070,1071,1070’および1071’を備える。
【0155】
NDR FETのドレーンがIGFETのドレーン/ソースに対応するように、またその逆の対応が得られるように、上記領域を直接に共用できる場合もある。2端子ダイオード動作用との間で上記領域を共用できることはもちろんである。上に述べた工程や層以外の工程や層を追加できること、上述の例がこの発明の内容の例示のみを目的とするものであることは理解されよう。例えば、ICでは追加の相互接続層や絶縁層が通常用いられ、それらは共用され得る。
【0156】
実験結果のデータ
ゲート長120nmのNDR FETを、基本パラメータ、すなわちゲート絶縁層の厚さ7nm、チャネルイオン打込み線量2×1014atoms/cm2、ゲート酸化物形成後のRTAアニール温度1100℃、3×1015/cm2でヒ素ドープしたLDDで試作した。
【0157】
なお、この試作プロセスは上述の好ましいプロセスと同一ではない。例えば、ゲート酸化膜堆積の前には熱アニールは施していない。また、Vtの低下および閾値下揺れのためのチャネルへの相互ドーピング(例えばヒ素)も施していない。単一層のゲート絶縁材料層を用いた。すなわち、この試作プロセスは、NDRデバイスの所期の特徴および性能の試験、把握および慣用のMOS回路応用分野への適合性の確認を主たる目的とするものである。したがって、ここに得られた結果は、特定のデザインルールまたは特定の加工装置を用いて特定の製造施設内で特定のチャネル結合構造で実際に具体化したこの発明の特定の具体例または市場向け製造について得られる実際の結果をそのまま反映するとは限らない。
【0158】
しかし、この発明の多数の基本的特徴および利点の例示にこれら試験結果は有用であると発明者は考える。また、これらのデータは、切換可能なNDR付きのFETなどこの発明による製品の基本的動作の特徴をさらに裏付けるのに有用である。
【0159】
ゲートバイアスおよびゲート長への依存性
NDR FETの電流対電圧(I−V)特性のゲートバイアスおよびゲート長への依存性を測定した。図17Aはゲートバイアスの変化に伴うトランジスタ電流の変動を示す。VNDR以下のドレーンバイアスでは通常の変動傾向が見られるが、ゲート駆動電圧Vgs−Vtの増加とともにトランジスタ電流は直線的に変化する。VNDR以上のドレーンバイアスでは、電流はVdの増加とともに指数関数的に減少する。電流最低値はゲート駆動電圧の上昇とともに増加するが、電流最大値ほどに急速には増加しない。
【0160】
図17Bおよび17Cは、ゲートバイアスおよびゲート長の変動に伴う上記電流最大値および電流最小値をそれぞれ示す。
【0161】
図17Bでは、ドレーン電流最大値が予想どおりゲート駆動電圧の上昇およびゲート長の減少とともに増加することが示されている。
【0162】
図13Cには、ドレーン電流最小値もゲート駆動電圧の上昇とともに増加することが示されており、これはもっとものことと思われる。しかし、ドレーン電流最小値はゲート長の減少とともに減少している。これにも理由があるとみられる。すなわち、エネルギーレベルの高いキャリア(チャネルのドレーン側端部で発生)は高いドレーンバイアスでトラップされ、Vtの上昇の原因となるからである。ゲート長の減少に伴って、これらのキャリアはチャネルのソース側端部近傍にトラップされ、Vtをより効率的に上昇させる。
【0163】
図17に示されるとおり、ゲート長の正味の効果はPVR値の大幅な増加である。なお、ドレーンバイアスの高い値では、チャネルにおけるドーピングのレベルが相対的に高いために、逆バイアスpn接合降伏電流がドレーン電流の主要な成分となる。したがって、NDRトランジスタの電流最低値を把握するにはソース電流をモニタしなければならない。ソース電流についてのPVR値依存性を図17Eに示す。ゲート長を125nmに減少させるに伴ってPVR値は100まで増加する。したがって、この試験結果に見られるとおり、この発明のNDR実施例はスケール則に合致しており、将来のサブミクロンプロセス技術への有用性を確保している。
【0164】
このNDRデバイスの電流最低値を慣用のMOSFETのオフ時漏洩電流と比較して有利になれば理想的である。このNDR FETデバイスでは、オフ電流を2次元トラップ密度(単位面積あたりのトラップ数)によりごく効果的に(最新式のFETと異なったやり方で)制御することができる。
【0165】
温度依存性データ
電子の平均運動エネルギーは温度が高い場合に上昇するので、理論的にはこの発明は他のNDR構成よりも温度特性が優れているものと期待される。すなわち、トラッピング速度およびトラッピング解除速度、したがってNDR FETの応答速度が温度上昇とともに改善されるものと期待される。しかし、チャネルにおける電子の平均自由行程は減少するので、NDR効果を生ずるのに十分なエネルギーレベルの電子を生ずるにはより大きい強度の電界が必要になると考えられる。この必要性を満たす手法は上述のとおり多様である。
【0166】
NDRデバイスの一つの実施例についての追加の温度依存性データを図17Fに示す。このデバイスは試験用に作成したが、この発明の多様な実施例の動作の特徴、すなわちPVR値が25℃から125℃に至る広い温度範囲にわたってほぼ一定であるなどの特徴を表している。すなわち、この図から理解されるとおり、電流最大値が温度とともに増加する一方、電流最低値も増加するからである。したがって、この発明の実施例には、かなり広い温度範囲にわたって相対的温度依存性をもって動作するように設計できるものもある。
【0167】
図17Fのグラフに示してあるとおり、温度が125℃に上昇するに伴って電流最大値および電流最小値の両方が小幅ながら上昇する。このグラフに対する注釈には、ドレーン電流Idに対応する線、およびソース電流Isに対応する記号などがある。黒丸の記号および太線は25℃における測定値を示し、白丸の記号および点線は125℃における測定値を示す。
【0168】
電流最大値は約20%だけ増加し、電流最小値は全温度範囲にわたり3倍以下程度の増加を示す。漏洩電流が温度に対して指数関数的に増加する慣用のMOSFETに比べてこの変化は相対的に小さい。しかし、全体としてNDR FETのPVR値(NDRデバイスの主たる性能指標)は広い温度範囲にわたってほぼ一定の値を保つ。
【0169】
したがって、この発明のNDR FETは市販のIC製品の動作温度仕様を十分に満たすことができる。上述の好ましいプロセスを用いて最適化したこの発明の実施例はごく広い温度範囲にわたって106以上のPVR値を達成し、軍用、航空宇宙用、車両用など厳しい温度環境における動作に適している。この特徴は、慣用のCMOSプロセスとのプロセス互換性と併せて、このNDR FETを高密度IC用として有望なものとしている。
【0170】
トンネルダイオードや共振トンネルダイオードやサイリスタや空間転送トランジスタなど従来技術によるNDRデバイスが高い温度で大幅に性能劣化することに注目すべきである。例えば、サイリスタ利用のメモリは、75℃で安定動作を保証するには、比較的高い(>1nA)保持電流で動作させる必要がある。いわゆる単一トランジスタ(DRAM利用の)SRAMは、高温度動作では消費電力が大幅に増大する。トランジスタ経由の漏洩の増大を補償するためにリフレッシュ周波数を上げる必要があるからである。
【0171】
種々のプロセスパラメータを通じたPVR値およびVNDR値の制御
諸プロセスパラメータがPVR特性およびVNDR特性に及ぼす影響を併せて精査した。この調査は試作品に現れる多様な測定結果についてPVR値およびVNDR値を調べることによって行った。図17Gにみられるとおり、図17A乃至図17Fの結果を生じたゲート酸化膜厚7nmのNDR試験デバイスウェーハA3対応の記号W#A3で示した。これ以外のウェーハプロトタイプも次の項目を含む諸変動パラメータについて試験した。すなわち、
(1)電荷トラップ形成のための互いに異なるチャネルイオン打込み線量(すなわち、ホウ素2*1014atoms/cm2または3*1014atoms/cm2)、
(2)互いに異なる低濃度ドープした不純物(P+またはAs+)、および線量、
(3)互いに異なるゲート酸化膜形成後のアニール工程の条件(RTAまたは炉)、
(4)互いに異なる上記再酸化工程の条件、
(5)互いに異なるゲート絶縁膜厚。
【0172】
ゲート長180nmのNDR FETのPVR値およびVNDR値を図17Gおよび図17Hにそれぞれ総括してある。これら図においては、ドレーン電流値を編みかけつきの棒グラフで、ソース電流値を太線棒グラフでそれぞれ示してある。いくつかの基本的観測がこの試験データから得られ、NDRの特定の具体例についてのPVR値やVNDR値の高精度制御に有用である。より詳細に述べると、製造プロセス進行中に一つ以上の標準的加工工程を微調整することによって所望のPVR/VNDR目標値を実現できることが分かる。これによって、広い範囲のPVR値やVNDR値が可能になり、NDRプロセスについて予測可能で信頼性の高い結果が確実に得られるようになる。
【0173】
好ましい実施例ではVNDRを電源電圧Vddの半分よりも僅かに低い値に、すなわちVNDR≦Vdd/2に設定する。しかし、上述の適切なプロセス制御により半導体基板の互いに異なる領域に互いに異なるVNDR値を達成することができる。
【0174】
上述の試験結果のデータが示すとおり、この発明に特有の構造および特徴的動作により、一つ以上の慣用の加工工程を用いた慣用の製造施設内で所望のPVR値特性やVNDR値特性を容易に設定し制御することができる。したがって、多様な用途について適切なPVR値およびVNDR値の目標値を確実に達成することができる。PVR値およびVNDR値の制御に用い得るプロセス変形の多数の例を上述の説明は提供するが、当業者にはそれら以外の例も自明であろう。したがって、この発明は上述のPVRやVNDRのプロセス制御技術の単一の変形またはそれら変形の組合せに限定されるものではない。
【0175】
チャネルイオン打込み線量の制御を通じたPVR値およびVNDR値の制御
図17Gは、ホウ素イオン打込み線量を上げると高いPVR値が得られることを示している。電荷トラップの密度とSi/SiO2界面近傍の酸化物層にとり込まれるホウ素との間には相関関係があるので上述の結果は予期されたとおりである。しかし、前に述べたとおり、電荷トラップの密度はトラップ相互間伝導の回避のために高くしすぎてはならない。
【0176】
図17Hは、反転層における縦方向電界の平均値が高いために、ホウ素イオン打込み線量の高い値に対してVNDR値が少し低いことを示している(Vtが大きいために1Vのゲート駆動電圧を得るにはVgの値を大きくする必要がある)。縦方向電界の大きい値に対しては、横方向電界(したがってVd)は、トラップされ得るホットエレクトロンの発生のために大きくする必要はない。
【0177】
したがって、任意の製造環境で用いるイオン打込みの種類/線量の選択によって所望の、または目標のPVR値/VNDR値を得ることができる。
【0178】
ゲート酸化層形成後のアニール工程を通じたPVR値およびVNDR値の制御
図17Gに示されるとおり、1000℃炉アニール工程に比べて1100℃RTAでは大幅に大きいPVR値が得られる。これは、Si/SiO2界面における電荷トラップの密度が1100℃RTAではより高くなることを示している。したがって、任意の製造環境で用いる熱アニール工程のタイプを選ぶことによって、所望のPVR値を得ることができる。
【0179】
この場合は、ゲート酸化層形成後のアニール工程の条件へのVNDR値の強い依存性は実験データ(図17Hに示される)には示されていない。
【0180】
LDDイオン打込み線量を通じたPVR値およびVNDR値の制御
図12Gに示されるとおり、リンでドープしたLDDに比べてヒ素でドープしたLDDの場合にPVR値は大幅に大きくなる。これは、ヒ素の拡散がリンよりも低速であり、したがってLDDドーピング濃度はヒ素の場合の方が高くなるためであるとみられる。これによって、チャネルのドレーン領域における電界の最大値が高くなり、より程度の高いホットエレクトロンが生じ、より多くの電荷トラップが生ずる。実験に用いたウェーハではLDDイオン打込みによる損傷は、ヒ素イオン打込みの高線量(3×1015atoms/cm2)については完全にはアニールされておらず、そのために電流最大値は低下し最小電流値は上昇し、したがってPVR値は劣化している。この状態は周知のアニール手法により補修できる。
【0181】
図17Hには、リンでドープしたLDDに比べてヒ素でドープしたLDDの場合にVNDR値が小さいことが示されている。これは、チャネルのドレーン領域における電界の臨界最大値を達成するのに必要なドレーンバイアスが低いことによる(LDDドーピング濃度が高いために)。
【0182】
したがって、LDD工程は慣用のMOSプロセスを用いた所望のPVR/VNDR値微調整設定のもう一つの手法を提供する。
【0183】
ゲート酸化物層の厚さによるPVR値およびVNDR値の制御
図17Jおよび図17Kは同様のPVR値およびVNDR値の試験データをそれぞれ示すが、ゲート酸化膜の厚さが僅かに小さい(5.5nm)ことだけが異なっている。可変PVR値の実現のもう一つの手法をプロセス設計者に提供するのでこのデータも有用である。すなわち、これらの図に示されるとおり、ゲート絶縁層の厚さ7nmの比較対象NDRデバイスに対して、他のパラメータをすべて等しくしたこの例のデバイスではPVR値が全体として小さくなっている。
【0184】
したがって、ゲート酸化物層を厚くするとより大きいPVR値が得られる。この結果は、電荷トラップの密度(NT)が一定であればゲート誘電体層の厚みが大きいほどVtの上昇への影響が大きいこと、すなわち、
ΔVt≒q*NT/Cox
であることから予期される。
【0185】
例えば、NT=5×1012/cm2およびSiO2ゲート誘電体層厚さ7nmの場合、Vt≒1.6であり、106に近いPVR値が得られる(Vgs−Vt=1V,Sは約100mV/decと仮定)。また、実効的PVR値は、電流最大値を上げたり電流最小値を下げたりするようにゲートバイアスを動的に変えることによって、上げることが(100×まで)できる。この種のNDRデバイスの動作中の回路内PVR値調整はある種の実施態様で利用できるこの発明のもう一つの利点である。
【0186】
図17Kは、ゲート酸化物層の厚さがより大きい場合に、反転層内の縦電界の平均値が大きくなるために、VNDR値が僅かに低くなることを示す(Vtが高いためにゲート駆動電圧1Vを得るのにVgを高くする必要がある)。縦電界が大きい場合はトラップされ得るエネルギーレベルが高い電子の発生のために横電界(したがってVd)を高くする必要はない。
【0187】
上述の理由により、所望のPVR値/VNDR値を任意の製造環境の中でのゲート絶縁物の種類と厚さとの選択によって得ることができる。
【0188】
蒸気アニールによるPVR値およびVNDR値制御
蒸気アニール工程の効果は、上述の実験結果から明確な形で確認することはできない。図17Jに示されるとおり、ゲート酸化物層が比較的薄い(5.5nm)場合は、蒸気アニール工程の採用によりPVR値は高くなる。しかし、図17Gに示されるとおり、ゲート酸化物層が厚い場合は、蒸気アニール工程の採用により最低限の(しかし一貫して)減少がみられる。
【0189】
蒸気アニール工程を用いるとVNDR値は全般的に下がる。
【0190】
これらの実験結果は、前にも述べたとおり、蒸気アニール工程はSi/SiO2界面近傍に追加の電荷トラップを形成するのに有用であることを示唆している。しかし、ゲート酸化物層が厚い場合は、蒸気アニール工程によりホウ素拡散が上記界面から離れた部位で高まる(したがって界面でのトラップ状態の密度を低下させる)こともある。
【0191】
したがって、ある種の結合構造については、NDRデバイスの製造に蒸気アニールプロセスを用いることによって所望のPVR値/VNDR値を得ることができる。
【0192】
NDR FETの信頼性
NDR FETでは、Vds>VNDRの場合に、電荷キャリアが極度に薄い界面間酸化物膜をトラップに入る向きまたはトラップから出る向きに通り抜ける。これらキャリアの大部分は、新たなトラップを「トンネル酸化物」内に形成させるに十分な運動のエネルギーを備えていない。新たなトラップを「トンネル酸化物」の内部に形成しようとする場合も(例えば電子エネルギー分布の末尾領域における高エネルギー電子により)、それら新たなトラップは当初からのトラップの近傍よりもSi/SiO2界面の近傍に形成されるので、NDR FETの動作速度を上げる作用をする。
【0193】
NDR FETの信頼性は明確な形では試験していないが、SiO2に関する既存の周知技術からみると、慣用のMOSFETと同等またはそれを上回る信頼性を備えると考えられる。酸化物層の厚さを小さくするに伴って降伏電荷QBDが増加する傾向(厚さが零になると無限大になる)からみると、NDR FETの「反復使用可能性」は極めて高い(例えば、高Vt値と低Vt値との間の反復1012回以上)と考えるのが妥当である。
【0194】
チャネル内の慣用のホットキャリア(すなわち、>3.1eV)は、周知のとおり、酸化物界面および酸化物バルク領域に損傷を与え、それによってMOSFETの性能を低下させる。NDR FETデバイスではホットキャリアの量はエネルギーの高いキャリア(すなわち約0.5eV)のみが生じ高いVdsではトランジスタがオフ状態になるので限られており、そのためにこの種のデバイスはより優れた実験結果を生ずるものとみられる。酸化物層の中に埋め込まれたトラップに入り込む高エネルギーの電子は損傷を生ずるに十分なほどには「ホット」でない。したがって、このNDR FETデバイスは通常の用途に用いる妥当な程度に高い信頼性をもたらすものとみられる。
【0195】
NDR試験/ストレス付与/トラップ機能強化
図18は製造工程の進行中にNDRデバイスの試験や電界トラップ分布の強化に使うことのできる基本プロセス1800を図解する。この発明のNDRデバイスに用いるメカニズムの性質のために、通常の製造工程の進行中または終了後にトラッピング層の中のトラップの密度や分布を意図的に変えることが可能である。他の例では、出荷後の使用中における予測可能で安定な性能を確保するように、特定のトラップ分布を試験進行中などに修正するのが望ましい。
【0196】
したがって、図18に示すとおり、第1のステップ1810はこの明細書または前掲のKingほか名義の出願に記載した多数の技法の一つを用いて電荷トラップを形成することに関連している。次に、ステップ1812において、実際のデバイスまたは試作構造についてNDR性能特性を測定する。
【0197】
界面近傍に追加のトラップを形成することやデバイス内に既存のトラップの分布を変えることなどのために、「ストレス」ステップ1815を次に用いる(製造工程進行中または試験/焼込み段階で)。これら試験のパラメータ(すなわち、時間、強度など)は、フィールドで遭遇する程度以上のストレスをデバイスにかける目的で設定する。その詳細は用途によって異なり、周知の手法および実地試験によって設定できる。このようにして、デバイスの販売前にそのデバイスの特性を修正する製造/試験プロセスの進行中に新たなトラップを形成したり既存のトラップ分布を変更したりすることができるものと期待される。すなわち、上記デバイスを含むウェーハを、NDR特性が実際の使用中にドリフトしたり変わったりすることがないように、前もってストレスに曝すのである。
【0198】
上述のストレスを与えるのに好ましい手法は、NDRデバイス(または試作構造)のゲート領域、本体領域、ソース領域およびドレーン領域にバイアスをかけて、ステップ1820に示すとおり、予め定めた時間長にわたり、または予め定めた反復回数にわたり、ゲート絶縁層を通り抜ける高エネルギー電子を多数発生するようにする手法である。例えば、ゲート・本体間バイアス電圧を適切に高めることによって、チャネルからゲート絶縁層を通じて(トンネル注入を通じて)電流を流すことができる。このストレス付与により、絶縁層の中にもトラップが形成される。NDRデバイスの製造工程進行中に試験を行う場合は、トラップ分布を上述のとおり変えるのに追加の熱処理工程を用いることができる。ホットキャリアの生成やトラップ分布の変更などには、光線照射など上記以外の手法も用いることができる。
【0199】
ステップ1825では、NDRデバイス(または試験用構造)のNDR性能の2番目の測定、すなわち性能指標が目標値に達したかまたは横這いになったかを調べるための切換速度、PVR値、VNDR値などの測定を行う。目標値到達または横這い状態のチェックの場合は、ストレス試験は反復して行うことができ、反復のある回と次の回との間で改善がみられないときは試験を中止する。
【0200】
ステップ1830で追加のストレス試験/バイアス付与が適切であるとみられた場合は、ストレス付与サイクルを所定の時間またはサイクル数にわたり再び課する。反復のある回から次の回へバイアス強度を高めて最高レベルまでデバイスへのストレスを強めることが望ましい場合もある。
【0201】
NDR特性の改善が横這いになるか性能目標値に達した場合はステップ1835において試験は完結する。
【0202】
プロセス1800の利点は、上述のストレス付与ステップがトラッピング領域に追加の恒常的トラップを形成するという副産物を伴うことである。それら追加のトラップは、界面近傍にある場合は、NDR切換速度をさらに高める作用がある。すなわち、慣用のMOSFETの製造の場合と対照的に、トラッピングサイトの追加を有利な形で利用できる場合があるのである。
【0203】
また、当業者には明らかなとおり、この発明の実施例は、デバイスの正常動作に起因する「新たなトラップ」形成プロセスの自然発生に一部基づきフィールドでの時間の経過とともに動作特性が改善される。したがって、この発明の実施例では、市販ICにおける使用の場合、時間の経過とともに動作速度が実際に上昇する。
【0204】
なお、上述のプロセスを特定用途の特定施設で実施するときは単一の試験/較正ウェーハのみに全面的に適用して、ストレス付与プロセスは追加の個々の測定を要しない後続のウェーハプロセス工程で較正できるようにする。すなわち、ストレス試験プロセスそのものは、特定の施設で得られるウェーハのうちの一つ以上の代表的ウェーハからの結果に基づいて設計し最適化することができる。そのあと、ストレス試験をNDR性能のチェックまたは再確認を要することなく自動的に行う。
【0205】
代替的には、試験プロセス1800を、NDR特性のモニタおよび目標性能達成の有無の判定のために、製造施設で重要なNDR工程のあとの任意の時点で行うこともできる。ステップ1825で得られた判定結果は、それ以降のプロセス工程を不一致解消用修正のために変更するのに用いる。
【0206】
この発明の主要点を明らかにするために、実施上の詳細は上の説明において省略してある。モニタリング、ストレス付与および制御プログラムの詳細は、多くの場合、用途に応じて適宜判定できるので、述べていない。また、これらの実施例は好ましいNDR FETデバイスやトラッピング利用のデバイスに関連して説明したが、この発明の原理はこの明細書の記載内容よりも広く、NDR/トラッピング特性のモニタを要する諸用途に使えることは当業者には明らかであろう。したがって、この発明はここに述べた実施の態様に限定されない。
【0207】
NDR動的PVR調節
この発明のもう一つの側面は、製造プロセス進行中にNDRデバイスが完成したあとでも、この明細書で総括的に動的PVR調整プロセスと呼ぶプロセスにより、NDRデバイスのPVR値を調節することができる。これによって、従来技術では不可能であって「適応型」NDRデバイスが得られる。
【0208】
換言すると、通常の回路動作の進行中にPVR特性を変える必要のあるような、すなわち適応的特性を要する環境ではこの発明のいくつかの実施例を利用できる。このような形で、一つの回路を一つの時点では第1のPVR値で動作させ、それよりもあとの時点では第2のPVR値で動作するのに適応させることができる。PVR値は、所望の動作電圧、電力またはクロック周波数などの変化に応答して、急速に変えることができる。したがって、例えば、NDR(または電荷トラップ)デバイスを含む回路を、休止モードの期間中に、漏洩電流を減らすように低電力動作化できる。上述の説明からこれ以外の例も明らかであろう。
【0209】
図19Aに示すとおり、集積回路1900は、NDR利用の論理回路1905およびNDR利用のメモリ回路1910の一方または両方と、追加の非NDR回路1915とを含む。この発明の実施例は上述の例の場合と同様に慣用のMOSトランジスタと互換性のある加工工程を用いて形成できるので、多数の用途についてこれら実施例および慣用のMOSトランジスタを一体化することができる。NDR論理PVR制御回路1920およびNDRメモリPVR制御回路1925により、NDR利用論理回路1905およびNDR利用メモリ回路1910のPVR特性を後述のとおり選択的にそれぞれ制御する。当業者には明らかなとおり、この図は簡略化した図解であり、集積回路1900が論理回路とメモリ回路との両方を利用したり必要としたりするとは限らない。
【0210】
なお、NDR利用のメモリ回路1910は、第1の特定のPVR値を要する第1の種類のNDR素子を含む一つ以上のメモリアレー、ラッチ、レジスタなどを備え得る。NDR利用の論理回路は、算術演算、論理演算などを行うように構成した標準的論理ゲートで構成することができ、第2の特定のPVR値を要する第2の種類のNDR素子を含む。これら二つの種類のNDR素子は両方ともNDR FETとするのが好ましいが、NDR FETとそれ以外のNDR素子(ダイオード、サイリスタ)との組合せでも、後者が何らかの変形可能なPVR特性を備える限り、差し支えない。
【0211】
数多くの用途について、メモリ回路1910で用いる第1の種類のNDR素子と、論理回路1905で用いる第2の種類のNDR素子とは所要動作要件が異なり、所要NDR特性も異なる。したがって、この発明を用いた「混合」型のシステムには、互いに異なるPVR値、VNDR値、ゲートバイアス電圧値、ソース/ドレーンバイアス値などのNDR特性を有する互いに異なる種類のNDR素子を用いるものもあるとみられる。
【0212】
また、互いに異なる種類のNDR素子が、図19Bに示すとおり、互いに異なる動作期間に互いに異なるバイアス値を備える場合もある。この種の動作の利点は注目に値する。すなわち、NDRデバイスは、第1の期間中は第1のPVR特性に基づき電流最大値IHIGHおよび電流最小値I1LOWで動作できる。あとの時点では、NDRデバイスの電流最小値をNDR FETへのゲートバイアス電圧をただ下げることにより減らすことができる。その結果最小電流はI2LOWになり、NDRデバイスのPVR値が変化する。すなわち、IHIGH/I2LOWの比がIHIGH/I1LOWの比を大幅に上回るからである。これは、NDR FETの休止状態の電力消費が動作中に変動して電力消費特性をさらに改善できることを意味する。この点は、ゲート電圧VGに伴ってソース/ドレーン電流も増加することを示す図17Aからも明らかである。同様に、ゲート電圧の低下により、ソース/ドレーン電流も減少する。したがって、この発明の好ましい実施例には適応型NDR特性を示して動作するように構成できるものもある。
【0213】
図19Bを参照すると、NDRメモリ回路1910またはNDR論理回路1905の所望の動作特性の変化にそれぞれ応答して、NDRメモリPVR制御回路1925またはNDR論理PVR制御回路1920(場合に応じて)による制御のもとにI1LOWからI2LOWへの遷移が起こる。この例では、図19Bに示すとおり、遷移は初めに大電流状態から小電流状態になされ、次にその小電流状態からさらに低い電流状態になされて電力の減少に導く。NDRデバイスを正常PVR値状態に復帰させるには、正常ゲートバイアス電圧を再び印加し、デバイスを最小電流(I1LOW)の若干高い状態に切り換える。このあとソース/ドレーン電圧が非NDRモードに変わると、チャネル内の電流は特定の電圧VNDRで再びIHIGHに到達する。
【0214】
特定の低電力モードでは不要な電力消費を削減するのが望ましく、この発明はその動作を行う例を提供する。また、メモリ用および論理用の両方のために漏洩電流を減らすのが望ましく、上述の手法は二つの種類の回路に使うことができる。例えば、メモリ回路の場合は、正常のアクセス動作(読出し/書込み動作)の期間中はある量の駆動電流が必要になり、そのために比較的大きいIHIGHを提供するのが望ましい。しかし、データ蓄積の場合は、電力消費を最小にするのが望ましく、できれば電流最小値をI1LOWからI2LOWに遷移させるのが好ましい。例えば、SRAMセルでは、データラッチするには高いPVR値は必要でないが、低い待機電力のために高いPVR値が望ましい。同様に、NDRデバイスの高速ディジタル論理用途では、低電力動作には大きいPVR値が望ましいものの回路の適切な動作にはPVR値は大きい値である必要はない(たいていの回路には10以下で十分)。PVR値が大きすぎる場合は、NDRデバイスが「最小」電流状態から「最大」電流状態に遷移するのにより長い時間を要するので、回路動作は低速度になる。
【0215】
したがって、この発明の役に立つ一つの用途は、適応型NDRデバイス、すなわち高アクティヴィティ動作(通常は高速動作)を確保するためにPVR値を高く設定し、低アクティヴィティ動作(例えば1パーセント以下のアクティヴィティ率のSRAM)のためにPVR値を低く設定した適応型NDRデバイスである。したがって、特定の用途のためのPVR値を所望の動作モードを許容するように動的に変えることができる。PVR値を調節するか否かの決定は、集積回路/計算システムの電力調整回路により慣用の形で発生した制御信号に応答して、行うことができる。
【0216】
逆に、図19Cに示すとおり、NDRデバイスが小電流状態(最小電流状態も含めて)にあるとすると、スイッチオンの時点で、印加ゲートバイアス電圧が幾分高いことに基づき、デバイスを正常ハイの電流I2HIGHよりも少し高い電流値に遷移させることができる。この動作モードがあまり使われない場合は、NDRデバイスの通常動作の期間中に特定のPVR値を増加させるもう一つの機会を提供する。
【0217】
同様にして、NDRデバイスのPVR値を必要に応じてゲートバイアス電圧を変えるだけで一つのモードから次のモードに変えることができ、それによって、比較的高い最小電流値から(すなわちI1LOWから)比較的低い最大電流値に遷移させることができる。これは動作速度の利点をもたらし、PVR値が臨界的でない場合は有利な特徴となり得る。
【0218】
NDRデバイスのPVR値を変えるもう一つの手法はこのデバイスをNDRモードへまたはNDRモードから切り換える動作速度を変えることによる手法である。すなわち、図19Bを参照して、ソース/ドレーンバイアスを第1の期間中にIHIGHの点で第1の速度でオンオフ切り換えすると、第1の数のキャリアをトラップできる。それらトラップされたキャリアはチャネルを空乏化するように作用し、NDR効果によりチャネルを遮断するようにする(またはチャネルをI2LOWのレベルにする)。他の動作モードの期間中にIHIGHから始めて切換え速度を上げた場合は(すなわち、期間を短くした場合は)より少数のキャリアがトラップされ、PVR値が小さくなる。電流がレベルI1LOWまで低下するのは、それらトラップされたキャリアによるものであるからである。切換え速度を逆に下げると、それに対応してPVR値は増加する。したがって、実際には同一のNDR構成がソース/ドレーンバイアスの切換え速度によって互いに異なるNDRの振舞を示す。PVR値をある目標値(例えば10)以上にする必要のない論理回路の場合は、切換え速度を上げて狭いIHIGH値およびILOW値の範囲で動作させて全く差し支えない(または望ましい)。
【0219】
この発明のもう一つの利用可能な特徴は、NDR FETにおいては上記チャネル界面近傍のゲート絶縁物にトラップが分布することである。この界面またはその隣接部位にあるトラップは電子の捕獲および捕獲解除をより低速で行う。したがって、NDR FETのPVR値は、初期(1ps以内)には低い値(10以下)で始め、より高い値に向かって落ち着く(例えば1ナノ秒後)ようにすることができる。これによって、切換え頻度の低い回路(例えばメモリ)には大きいPVR値を、切換え頻度の高い回路(例えば論理回路)には小さいPVR値を、すなわち自然な形の動的PVR値を提供する。
【0220】
動的PVR値制御手順のプロセス流れ図を図19Dに示す。可変PVRを備えるNDRデバイス(またはそれ以外のトラップ利用デバイス)をステップ1935において集積回路内に形成する。PVR公称値をステップ1940において設定する(すなわち、上述の一つ以上の加工工程を通じて)。このデバイスのフィールドにおける動作中など上記よりもあとの時点のステップ1945でPVR値調節の要否で判定する。用途によって定まる必要性に応じて、一つ以上のNDR回路(論理回路やメモリ回路)のPVR値をステップ1950で切換え速度の調節やゲートバイアス変動により調節する。これらは単なる例であり、これら以外の動的PVR値達成方法も当業者に自明であろう。
【0221】
また、この発明をNDR FET素子について上に述べてきたが、動的PVR値または適応型NDRデバイスの利用が、可変PVR振舞を含み得るダイオード、サイリスタなど上記以外のNDR素子にも可能であることは理解されよう。
【0222】
共通基板上などの可変PVR値および可変VNDR値NDR回路
図20A乃至図20Bを参照してこの発明のさらに他の実施例を説明する。これらの実施例は、この発明のNDRデバイス製造プロセスがごく柔軟性に富んでおり、互いに異なる特性の多様なNDRデバイスを提供可能にすることに基づいている。
【0223】
図20Aに示した最も単純な実施例の一つでは、製造ライン(fab)の中の半導体プロセス装置2000(すなわち、イオン打込み装置、炉、薄膜堆積反応器など)を基板(シリコンウェーハなど)上のNDR特性、例えばPVR値などについての所望の目標値設定のために予め確定ずみの「レシピ」2001にしたがってプログラムできる。例えば、第1のタイプの基板上のNDRデバイスの第1のタイプに対しては、不純物の種類(ホウ素)と所定のエネルギーおよび線量(例えば2*1014atoms/cm2)でイオン打込み装置をプログラムできる。第2のタイプの基板上の第2のタイプのNDRデバイスに対しては、同じイオン打込み装置をより高い線量(すなわち3*1014atoms/cm2)にプログラムできる。
【0224】
イオン打込みを特定する情報は、ウェーハ2002または一群のウェーハに対して用いるべきレシピを製造装置オペレータに指示する「指示カード」に符号で示す。オペレータはその符号を制御モジュール2003に入力し、ローダ2004からの基板2002がアンローダ2006に進む過程でプロセス装置2005からレシピどおりの加工を受けるようにする。製造施設の中の上記以外の装置に対しても同様のプログラミングを行い、互いに異なる基板/ウェーハ/回路の互いに異なる用途について適切なNDR特性が製造中に自動的に得られるようにする。
【0225】
例えば、堆積装置は、NDRデバイスおよび非NDRデバイスの両方のゲート絶縁層の形成を同時並行的に、しかもNDRデバイスの種類に応じて互いに異なる厚さで形成するように、ゲート絶縁物の二つの別々の材料を順次に堆積するようにプログラムできる。すなわち、多様なNDRデバイスの製造を、慣用の製造施設内の既存の装置で容易に一体化する途切れないやり方で達成することができる。
【0226】
図20Bに示すとおり単一の基板2010内に互いに異なる種類のNDRデバイスを含めることを設計者が意図する場合もあろう。このような構成は、例えば、第1の種類のNDRデバイスをメモリ回路に用い第2の種類のNDRデバイスを論理回路に用いたシステムオンチップ構成などの混成回路環境に有用であろう。前述のとおり、NDR利用のSRAMセルには低電力動作用に比較的大きいPVR値が重要である。しかし、NDR利用の論理ゲートではPVR値は相対的に小さく(すなわち10のオーダーの値)できる。したがって、NDR論理回路およびNDRメモリ回路の両方を共通の基板に形成する必要がある場合は、スループットと一体化の改善のために製造工程を共通にする一方、互いに異なる種類のNDRデバイスを個々に最適化できるようにすることが多くの場合可能である。
【0227】
二つの互いに異なる種類のメモリデバイス、または二つの互いに異なる種類の論理デバイスに別々の種類のNDR特性を用いることもできる。NDRデバイスの従来技術による製造方法では共通の製造プロセスの期間中にNDR特性に十分な差をつけることは容易ではない。しかし、この発明の実施例の中には、NDR領域#1,NDR領域#2,・・・、NDR領域#Nで示した複数の互いに別々のNDR領域2012と、非NDR領域#1,非NDR領域#2,・・・、非NDR領域#Nで示した複数の互いに別々の非NDR領域2011とを単一の基板2010に形成することができる実施例もある。
【0228】
互いに異なるNDR領域を形成する簡単な方法は、ウェーハの加工中に互いに異なる加工条件に互いに異なる領域を曝すように選択性マスキングを用いる方法である。選択性マスキングの手法は半導体製造技術の分野で周知であり、この発明はそれら周知の手法の任意のものを用いることができる。例えば最初のイオン打込み工程中には特定の第1のイオン打込み材料を特定の線量および分布でNDR領域#1だけが受けるように、基板2010にマスキングを施す。前述のとおり、トラップ形成のためのNDRイオン打込みの特定の材料、線量およびエネルギーは、NDRデバイスのPVR値やVNDR値の目標値の画定および設定に用いることができる。次に、第2のイオン打込みの工程中には、NDR領域NDR#2のみが第2のイオン打込み材料、線量および分布でイオン打込みを受けるように基板2010をマスキングする。もちろんこれは一つの例に過ぎず、他に多数の変形があることは当業者には明らかであろう。
【0229】
もう一つの代替的手法では第1のNDR領域のゲート長を第2のNDR領域のゲート長と異ならせる。この発明は前述のとおりチャネルサイズのスケール則を維持するので、二つの互いに異なるゲート長により二つの互いに異なるNDR特性を得ることができる。二つの互いに異なる種類のNDRデバイスを全く同一のプロセス条件で製造し、両者間のゲート長の差だけによって周知で予測可能なPVR値およびVNDR値を与えることができる。論理回路とメモリ回路には互いに異なるデザインルール(チャネル長を含む)を用いることが多いので、これら二つの互いに異なる回路に別々のNDR特性を与えるもう一つの手法として使える。
【0230】
さらに、論理回路とメモリ回路とではクロック周波数、電源電圧、消費電力などが異なることが多いので、上記別々の領域の中のNDR構成も互いに異なる場合が多く、動作特性の差の付与に利用できる。例えば、メモリセルのVNDRは、同一基板の中の論理ゲートのVNDRよりも実質的に高い値に設定される。すなわち、メモリセルの用いる電源電圧が論理回路よりも高いからである。これら以外の例も当業者には自明であり、したがってこの発明はこれらの例に限定されない。
【0231】
さらにもう一つの代替的構成では、互いに異なるNDR領域に互いに異なるゲート絶縁膜厚または互いに異なるゲート絶縁層材料を用いることができる。前述のとおり、PVR値(およびVNDR値)はこれらのパラメータによっても設定でき、シリコン基板加工の慣用の工程を用いて上記特徴を付与することは簡単にできる。例えば、NDR領域全部についてゲート絶縁層を第1の厚さに成長させ、次に、一つ以上の領域でその領域における厚さを減らすようにエッチング工程を選択的にかける。または、ゲート絶縁層を開始から所望の厚さまで互いに異なる形で成長させる。この工程にはこれら以外に多数の変形が可能であり、この発明は特定の例に限定されない。
【0232】
さらにもう一つの例では、互いに異なるNDR特性を得るように、互いに異なるトラッピング領域を二つの別々の工程で形成する。すなわち、二つの別々のイオン打込みを行い、別々のアニール工程にかけ、またはトラップの分布を適切にするための共通のアニール工程にかける。捕獲速度・捕獲解除速度の異なる互いに別々の種類のトラップまたは電荷キャリアをトラップする互いに異なるエネルギーなど複数トラッププロフィールが必要な場合は、互いに異なるトラップの組を互いに異なる不純物やイオン打込み材料で形成する。互いに異なるNDRデバイスを一つの基板上に同時に形成している場合は、後続のトラップ形成工程を確実に被選択NDRデバイスのみについて施すように、適切なマスキング工程を用いることができる。
【0233】
図20Bが簡略化した図示であって、慣用のマスキング手法により容易に達成できるとおり、単一の領域の中に互いに異なる種類のNDRが含まれる場合があることは理解されよう。
【0234】
上に示したデータから、機能の大幅に異なる互いに別々の種類のNDRデバイス(すなわち、10以上の差のあるPVR値)をほぼ全面的に共通のプロセス工程により単一の基板内に形成できる(したがって共存させ動作させることができる)ことが明らかである。多くの場合、製造工程の相違はごく僅かであり、NDRデバイスの種類の各々に特有の追加の工程はごく少数に限られる。それら追加の工程を、二つの互いに異なる種類のNDRデバイスの特性の最適化に用い得ることはもちろんである。
【0235】
さらに、上述の例はPVR値やVNDR値などへの言及によりNDR特性の変動を対象としてきたが、上述の諸手法がNDRデバイスの上記以外の特性の改善に容易に拡張できることは明らかである。例えば、NDRデバイスの切換え速度は、チャネル内のトラップの分布の変更、異なるゲート絶縁層、不純物、チャネル長などの使用により変えることができる。また、温度特性も、あるNDRデバイスではPVR特性がほぼ一定になり他のNDRデバイスではPVR特性が変動するように、変えることができる。すなわち、捕獲/捕獲解除動作の温度特性を特定の温度、温度変化などを検出しそれに応答するために利用できる。NDR相互間の区別に適合させた多様な変形が可能であるのでこの発明は特定の特性に限定されない。
【0236】
この発明が、トンネルダイオード、サイリスタその他上記以外のシリコン利用のNDRデバイス(およびトラッピングデバイス)またはこの明細書で述べたそれらデバイスとNDR FETとの組合せに適用可能であることは当業者には明らかであろう。また、この発明はほぼ全面的に慣用のMOS加工プロセス工程を用いて単一の基板、すなわち純粋なシリコンに限られず例えばSOIやSiCでも差し支えない基板の中に多様な種類のNDRデバイスを形成し収容できる。
【0237】
例示のための実施例についてこの発明を上に説明してきたが、この説明は限定的な意味に解釈されることを意図するものではない。この説明が例示のみを目的とするものであってこの発明の範囲への限定ではないこと、この発明が慣用の技術により形成される多様な集積回路に利用できることは当業者には明らかに理解されよう。この発明の上述の実施例およびこれら以外の実施例の多様な変形および組合せが当業者にはこの明細書の記載から自明であろう。それらの変形および組合せは、この明細書に記載した内容の代わりにまたはそれら内容に加えて周知の技術を用いることもできよう。この発明によるデバイスおよび方法(多様な実施態様が可能)に特有の諸特性およびこの技術分野における急速な進展からみて、現時点で未開発の材料、構造およびプロセスの利用による追加の実施例がこの発明に基づいて開発されることが期待される。
【0238】
したがって、この出願の特許請求の範囲の記載はそれら変形、改良および将来の実施例を含めることを意図するものである。特許請求の範囲の欄に記載した請求項はこの明細書に記載した実施例に基づいているが、この明細書の記載内容がこの明細書に明示的または黙示的に開示した新規なまたは非自明的な特徴項(またはそれらの組合せ)に、請求項の記載如何に関わりなく、また明細書記載の解決すべき課題の解決や緩和の有無に関わりなく、該当することは当業者には明らかであろう。また、この出願(および/または関連出願)の審査中において上記新たな非自明的な特徴項を対象とする新たな追加の請求項を提出する権利を出願人は留保する。
【産業上の利用可能性】
【0239】
慣用のMOS製造プロセスとプロセス互換性を備え最大電流対最小電流比(PVR)などの特性を多様な方法で調整できるNDRデバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】この発明の負性微分抵抗(NDR)電界効果トランジスタ(FET)の好ましい実施例の断面図。
【図2】図1のNDR FETの代表的電流対電圧特性曲線。
【図3A】伝導帯、価電子帯および電荷トラッピング領域の電荷トラッピングサイトのエネルギー関係をこの発明の好ましい実施例で利用可能な変形とともに概略的に示す図。
【図3B】NDR FETの一つの実施例における不純物濃度の分布を示す図。
【図4】この発明のNDR FETを含むNDRデバイスを製造するための好ましいプロセスの工程の説明図。
【図5】この発明の好ましい実施例のNDR FETおよび従来技術による半導体素子およびデバイスを含むNDR素子の製造のための出発基板の概略的断面図。
【図6】上記基板の表面の電気的に分離された能動領域を形成する過程を示す概略的断面図。
【図7】好ましい実施例のNDR FETを形成する領域で基板表面に絶縁層を形成する過程を示す概略的断面図。
【図8】好ましい実施例のNDR FETを形成する領域で基板表面に第1の種類の不純物を選択的に導入する過程を示す概略的断面図。
【図9】好ましい実施例のNDR FETを形成する領域で基板表面に第2の種類の不純物を相互ドーピング過程の一部として選択的に導入する過程を示す概略的断面図。
【図10】好ましい実施例のNDR FETおよび従来技術によるFETを形成する領域で基板表面に追加の絶縁層を選択的に導入する過程を示す概略的断面図。
【図11】NDR FETおよび従来技術のFETの両方にゲート膜を堆積させる過程を示す概略的断面図。
【図12】NDR FETおよび従来技術のFETの両方につき上記ゲート膜をゲート電極にパターニングする過程を示す概略的断面図。
【図13】好ましい実施例のNDR FETのチャネル界面における電界トラップの密度を高めるために用いるゲート酸化工程後の一つ以上のアニール過程の効果を示す概略的断面図。
【図14】ヒ素イオン打込みでソースおよびドレーン延長領域を形成する過程を示す概略的断面図。
【図15】NDR FETおよびそれ以外の従来型のFETの高濃度ドープしたソース/ドレーンコンタクト領域を形成する過程を示す概略的断面図。
【図16】絶縁性層間膜を堆積させる過程、層間膜にコンタクト孔を設ける過程、金属層を堆積させる過程、およびNDR FETおよび従来型FETへの相互接続を形成するようにその金属層をパターニングする過程を経た結果を示す概略的断面図。
【図17A】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17B】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17C】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17D】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17E】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17F】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのグラフ。
【図17G】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図17H】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図17J】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図17K】NDR FETデバイスの多様な実施例について得られた実験データのチャート。
【図18】NDRデバイスおよび電荷トラッピング利用のデバイスの機能強化/確認工程に用い得る試験/ストレスプロセスの流れ図。
【図19A】NDR素子のPVR値の調節のためのPVRコントローラを含む集積回路の実施例を示す図。
【図19B】適応型NDRデバイスの実施例の動作を示す図。
【図19C】適応型NDRデバイスの実施例の動作を示す図。
【図19D】この発明の特定の実施例に用い得るPVR調整プロセスを示す図。
【図20A】従来の工場において複数の互いに異なるNDRプロセスレシピを実行するのに適合した半導体加工装置を単純化して示す図。
【図20B】基板の互いに異なる領域の中に互いに異なる種類のNDR素子を含む集積回路の単純化した構成図。
【符号の説明】
【0241】
100 負性微分抵抗(NDR)電界効果トランジスタ(FET)
110 ゲート電極
120 基板
130 ゲート絶縁層
135 チャネル
137 電荷トラッピング領域
140 ソース領域
150 ドレーン領域
310 ゲート電極(多結晶Si)
320 半導体(Si)
330 ゲート誘電体(SiO2)
335 エネルギーレベルEC以上の電荷トラップ
336 エネルギーレベルEC以下の電荷トラップ
400 慣用のCMOS論理回路/メモリと一体化したNDRデバイスの製造プロセス流れ図
405 出発基板
410 基板にアイソレーション領域を形成する
415 酸化膜形成
420 P−ウェル N−ウェル
425 NDRトラップを導入
430 NDRチャネル相互ドーピング
435 アニール
440 ゲート絶縁層を形成する
445 アニール
450 ゲート電極
455 ゲート電極形成後のエッチング再酸化アニール
460 LDDイオン打込み
465 アニール
470 側壁スペーサ形成
471 持上げソース/ドレーン形成
475 ソース/ドレーンドーピング
480 アニール
485 シリサイト
490 コンタクト
495 相互接続
1810 (NDR)デバイス内に電荷トラップを形成する
1812 NDR性能を測定する
1815 電荷トラップ領域近傍にホットエレクトロンの高密度領域を形成(トラップ形成)
1820 予め定めた時間またはサイクル数ののちNDRデバイスを評価/モニタする
1825 NDR性能達成?または横這い?
1830 バイアスを変えるか否か判定
1935 可変PVR値でNDRを形成
1940 公称PVR値を設定
1945 NDR PVR値調節必要か?
1950 デバイス動作速度またはゲートバイアスを調節
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路の中のシリコン利用の適応型負性微分抵抗(NDR)デバイスを動作させる方法であって、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを第1の期間のあいだ第1の電流−電圧関係で動作させる過程と、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを第2の期間のあいだ第2の電流−電圧関係で動作させる過程と
を含み、前記第1の電流−電圧関係と前記第2の電流−電圧関係とが、第1の動作モードおよび第2の動作モードをそれぞれ含む二つの別々の動作モードを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがもつことができるように、互いに十分に異なっており、
前記集積回路の中の制御回路の発生した制御信号に応答して前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り換える過程と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の電流−電圧関係および前記第2の電流−電圧関係を、前記シリコン利用のNDRデバイスのゲート端子に第1のゲートバイアス電圧および第2のゲートバイアス電圧を印加することによりそれぞれ生ずる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電流−電圧関係および前記第2の電流−電圧関係を、前記シリコン利用のNDRデバイスに第1のクロック周波数で第1のゲート信号を、第2のクロック周波数で第2のゲート信号を印加することによりそれぞれ生ずる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記制御信号が前記集積回路で用いる電力消費モード、すなわち前記第2の動作モードの期間中における前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの消費電力が前記第1の動作モードの期間中よりも小さくなる電力消費モードに基づいている請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが前記第1の動作モードの期間中に特定のバイアス状態に対して用いる第1の電流が前記第2の動作モードの期間中に用いる第2の電流よりも大きい請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記制御信号が前記集積回路で用いる速度モード、すなわち前記第2の動作モードの期間中における前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの動作速度が前記第1の動作モードの期間中よりも低くなる速度モードに基づいている請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の動作モードにおける前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの第1の最大NDR電流と第1の最小NDR電流との間の切換えを、前記第2の動作モードにおける第2の最大NDR電流と第2の最小NDR電流との間の切換えよりも高速で行う請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがメモリセルで用いてあり、前記制御信号が読出し/書込みコマンドであり、前記第1の動作モードが読出しまたは書込み動作と関連づけられ、前記第2の動作モードが休止蓄積動作に関連づけられている請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが論理回路に用いてあり、前記第1の動作モードが平常電力モード動作に関連づけられ、前記第2の動作モードが低電力モード動作に関連づけられている請求項1記載の方法。
【請求項10】
適応型の負性微分抵抗(NDR)素子を含む回路を動作させる方法であって、
(a)前記回路が処理動作を行っている第1の期間のあいだ前記適応型のNDR素子を第1の最大電流対最小電流比(PVR)で動作させる過程と、
(b)前記回路が処理動作を行っていない第2の期間のあいだは、前記適応型のNDR素子をその消費電流を減少させるように、前記第1のPVR値との間でその第1のPVR値が少なくとも50%大きいという大小関係を有する第2のPVR値で動作させる過程と
を含み、前記適応型NDR素子の最大電流対最小電流比特性を前記回路の動作要件に適応させることができる方法。
【請求項11】
前記回路が論理回路であって、前記処理動作がブーレ代数論理演算である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記回路がメモリセルであり、前記処理動作がそのメモリセルに蓄積したデータ値へのアクセス動作である請求項10記載の方法。
【請求項13】
半導体回路を製造する方法であって、
第1の期間のあいだは第1の電流−電圧関係で、第2の期間のあいだは第2の電流−電圧関係で動作できるシリコン利用の適応型NDRデバイスを形成する過程を含み、
前記第1の電流−電圧関係と前記第2の電流−電圧関係とが、第1の動作モードおよび第2の動作モードをそれぞれ含む二つの別々の動作モードを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがもつことができるように、互いに十分に異なっており、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り換える制御回路を形成する過程
をさらに含む方法。
【請求項14】
前記半導体回路を中に形成した集積回路の消費電力を調整する電力調整回路を形成する過程と、前記制御回路を前記電力調整回路に接続する過程とをさらに含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
最大電流値対最小電流値比(PVR)の公称値を製造加工の期間中に前記シリコン利用の適応型NDRデバイスに設定し、前記公称PVR値を前記制御回路により調節できる請求項13記載の方法。
【請求項16】
第2のシリコン利用のNDRデバイスを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスと共通の基板に形成する過程をさらに含み、前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが前記第2のシリコン利用のNDRデバイスの第2のPVR値と実質的に異なる第1のPVR値を有する請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記第2のシリコン利用のNDRデバイスも適応型であって、前記制御回路からの制御信号に応答して互いに異なる電流−電圧関係で動作する請求項16記載の方法。
【請求項18】
半導体回路であって、
第1の期間のあいだは第1の電流−電圧関係で動作するとともに第2の期間のあいだは第2の電流−電圧関係で動作するのに適合したシリコン利用の適応型NDRデバイスを含み、
前記第1の電流−電圧関係と前記第2の電流−電圧関係とが、第1の動作モードおよび第2の動作モードをそれぞれ含む二つの別々の動作モードを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがもつことができるように、互いに十分に異なっており、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り換える制御回路
をさらに含む半導体回路。
【請求項19】
前記制御回路が前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの最大電流対最小電流比(PVR)値を制御する請求項18記載の半導体回路。
【請求項20】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがメモリセルの一部として構成されている請求項18記載の半導体回路。
【請求項21】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが論理ゲートの一部として構成されている請求項18記載の半導体回路。
【請求項22】
第2の制御回路をさらに含み、前記制御回路がメモリ回路に用いた複数の第1の種類の前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの最大電流対最小電流比(PVR)値を制御し、前記第2の制御回路が論理回路に用いた複数の第2の種類の前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの最大電流対最小電流比(PVR)値を制御する請求項18記載の半導体回路。
【請求項23】
シリコン利用の負性微分抵抗(NDR)デバイスにおける改良であって、
第1の期間のあいだ最小電流が減少してその第1の期間のあいだに対応の増加を最大電流対最小電流比(PVR)値に生じさせる自己適応を示すように構成されたNDRデバイス
を含み、前記NDRデバイスの前記PVR値の変更に外部制御回路を必要としないNDRデバイスの改良。
【請求項24】
前記デバイスの前記PVR値を前記デバイスの切換スピードの制御により制御し、前記デバイスについてのPVR値を増加させるのにより低い切換え速度を用いることができる請求項23記載のNDRデバイスの改良。
【請求項25】
前記デバイスについての前記PVR値が前記第1の期間の少なくとも一部のあいだ10を上回る請求項23記載のNDRデバイスの改良。
【請求項26】
制御ゲート、ソース領域およびドレーン領域を有する半導体デバイスを形成する方法であって、
(a)第1の導電型の基板を準備する過程と、
(b)前記ソース領域と前記ドレーン領域との間で電荷キャリアを搬送するチャネルを前記ソース領域と前記ドレーン領域との間に、第1のチャネルドーピング工程および第2のチャネルドーピング工程、すなわち
(i)前記第1の導電型の第1のチャネル不純物で前記チャネルをドーピングする第1のチャネルドーピング工程、および
(ii)前記第1の導電型と反対の第2の導電型の第2のチャネル不純物で前記チャネルを相互ドーピングする第2のチャネルドーピング工程
から成る二つの別々の工程により形成する過程であって、
前記第1のドーピング工程および前記第2のドーピング工程により前記チャネルを正味で第1の導電型を備えるチャネル領域として形成する過程と、
(c)前記チャネルとの間で界面を有し、電荷トラッピング領域、すなわち前記電荷キャリアを前記界面沿いに一時的にトラップするトラッピングサイトを有し前記デバイスが負性微分抵抗特性で動作することを可能にする電荷トラッピング領域を形成する過程と
を含み、
前記電荷トラッピングサイトが、前記界面に実質的に集中した電荷トラップ分布を形成する前記第1のチャネル不純物に少なくとも一部起因する方法。
【請求項27】
前記第2のドーピング工程にヒ素を用いた請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記第1のドーピング工程にホウ素を用いた請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記電荷トラッピング領域が前記チャネルとの間の前記界面の長さ全体にわたっては延びていない請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記電荷トラッピング領域が、ソース側のトラッピングを高めるようにソース領域から延びている請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記電荷トラッピング領域が前記半導体デバイスのゲート絶縁層の一部として形成されている請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記電荷トラッピング領域における電荷トラッピングサイトを前記第1のチャネル不純物により形成した請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記第1のチャネル不純物の前記界面における濃度が、前記チャネル領域の正味のドーピング濃度よりも少なくとも1オーダーだけ大きい請求項26記載の方法。
【請求項34】
前記電荷トラッピングサイトが、前記界面沿いでエネルギーレベルの高い電荷キャリアに可変のトラッピング率を与えるように前記界面沿いに不均一に分布している請求項26記載の方法。
【請求項35】
前記可変のトラッピング率が前記界面沿いの距離に実質的に比例して上昇する請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記可変のトラッピング率が関連のソース領域近傍においてドレーン領域近傍よりも高い請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記電荷トラッピング領域における前記電荷トラッピングサイトの形成を、前記電荷トラッピングサイトを生じさせる不純物イオン打込み工程と前記電荷トラッピングサイトを変性させる熱処理工程とを含む二つの別々の工程により行う請求項26記載の方法。
【請求項38】
制御ゲート、ソース領域およびドレーン領域を有するトランジスタを形成する方法であって、
(a)第1の導電型の基板を準備する過程と、
(b)前記ソース領域と前記ドレーン領域との間で電荷キャリアを搬送する前記トランジスタのチャネルを前記ソース領域と前記ドレーン領域との間に形成する過程と、
(c)前記トランジスタのゲート絶縁層を形成する過程と、
(d)前記ゲート絶縁層の形成のあと第1の不純物をそのゲート絶縁層の中におよびそのゲート絶縁層を通じてイオン打込みし、前記第1の不純物の一部が前記電荷キャリアを前記チャネルとの間の界面沿いに一時的にトラップするのに適合したエネルギーレベルの電荷トラッピングサイトを形成し、前記第1の不純物の他の一部が前記チャネルの中の電界強度を高める形で分布するようにするイオン打込み過程と
を含み、前記トランジスタが負性微分抵抗特性を持って動作するトランジスタである方法。
【請求項39】
前記第1の不純物と反対導電型の第2の不純物を前記トランジスタの閾値電圧を低下させるように前記チャネルにイオン打ち込みする過程をさらに含む請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記チャネルが前記第1の不純物と同一の正味の導電型を有する請求項39記載の方法。
【請求項41】
制御ゲート、ソース領域およびチャネル経由で前記ソース領域に結合されたドレーン領域を有する半導体デバイスを第1の導電型の基板に形成する方法であって、
(a)第2の導電型の不純物をチャネルを形成するように前記半導体デバイスのチャネル領域にイオン打込みする過程と、
(b)前記チャネルとの間の界面を構成する第1の導電体層を形成するように少なくとも前記チャネル領域において熱酸化を行う過程であって、
その過程(b)の期間中に、前記電荷キャリアを前記界面沿いに一時的にトラップするのに適合したエネルギーレベルの電荷トラッピングサイトを形成するように前記不純物を前記第1の誘電体層に含ませる過程と、
(c)前記第1の誘電体層の上に第2の誘電体層、すなわち前記第1の誘電体層とともに前記半導体デバイスのゲート絶縁層の一部または全部を形成する第2の誘電体層を形成するように堆積を行う過程と、
を含み、前記半導体デバイスが負性微分抵抗特性で動作するデバイスである方法。
【請求項42】
前記過程(a)に用いた第1の導電型の不純物と、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の不純物であって後続の相互ドーピング過程で用いる第2の導電型の不純物とを含む不純物の二つの別々のイオン打込み工程を前記チャネルにおいて行う請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記二つの別々のイオン打込み工程を行ったあとのアニール工程をさらに含む請求項42記載の方法。
【請求項44】
シリコン利用の負性微分抵抗(NDR)半導体デバイスを形成する方法であって、
(a)基板を準備する過程と、
(b)前記シリコン利用のNDR半導体デバイスの電荷キャリアの流れを搬送するチャネル領域を形成する過程と、
(c)前記チャネル領域に第1の不純物をイオン打込みする過程と、
(d)前記チャネルとの間で界面を有する第1の誘電体層を形成する過程と、
(e)前記イオン打込みによる欠陥を減らすとともに前記第1の不純物をそれら不純物が前記チャネルとの界面沿いに集中する形で分布させるようにアニールする過程と
を含み、
前記界面沿いに分布した前記第1の不純物が、NDR特性を生ずるように前記電荷キャリアを一時的にトラッピングするのに適したエネルギーレベルの電荷トラッピングサイトを形成する方法。
【請求項45】
前記第1の不純物が前記基板と同一の第1の導電型を有する請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記シリコン利用のNDR半導体デバイスが電界効果トランジスタ(FET)である請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記FETのゲート絶縁層を形成する過程をさらに含む請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記ゲート絶縁層の形成のあともう一つのアニール加工を行う過程をさらに含む請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記過程(e)を、前記シリコン利用の負性微分抵抗(NDR)半導体デバイスのゲートの形成の前に行う請求項44記載の方法。
【請求項50】
半導体デバイスを形成する方法であって、
(a)トランジスタチャネル領域に隣接してトラッピング層、すなわち前記チャネル領域からの電荷キャリアをトラップするとともにトラップ解除するように構成したキャリアトラッピングサイトを含むトラッピング層を形成する過程と、
(b)前記半導体装置に複数の別々のアニーリング工程、すなわち少なくとも第1の一つが前記キャリアトラッピングサイトを前記トランジスタチャネル領域との界面沿いに分布させて集中させ、前記トラッピング層のバルク領域では低密度になるようにするアニーリング工程を施す過程とを含み、前記トランジスタチャネルが負性微分抵抗を発揮するような前記誘電体層の中の密度および分布をもつように前記トラッピングサイトを形成する方法。
【請求項51】
前記複数の別々のアニーリング工程の第2の一つが、前記界面沿いに前記電荷トラッピングサイトの密度および分布の少なくとも一つを変えるのに適合している請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記複数の別々のアニーリング工程の前記第1の一つだけが前記トラッピングサイトを分布させるように作用する請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記第1の不純物の前記チャネル領域における正味ドーピング濃度が前記第1の不純物の形成した前記界面におけるキャリアトラッピングサイトの密度よりも少なくともオーダー一つだけ低い請求項50記載の方法。
【請求項1】
集積回路の中のシリコン利用の適応型負性微分抵抗(NDR)デバイスを動作させる方法であって、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを第1の期間のあいだ第1の電流−電圧関係で動作させる過程と、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを第2の期間のあいだ第2の電流−電圧関係で動作させる過程と
を含み、前記第1の電流−電圧関係と前記第2の電流−電圧関係とが、第1の動作モードおよび第2の動作モードをそれぞれ含む二つの別々の動作モードを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがもつことができるように、互いに十分に異なっており、
前記集積回路の中の制御回路の発生した制御信号に応答して前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り換える過程と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の電流−電圧関係および前記第2の電流−電圧関係を、前記シリコン利用のNDRデバイスのゲート端子に第1のゲートバイアス電圧および第2のゲートバイアス電圧を印加することによりそれぞれ生ずる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電流−電圧関係および前記第2の電流−電圧関係を、前記シリコン利用のNDRデバイスに第1のクロック周波数で第1のゲート信号を、第2のクロック周波数で第2のゲート信号を印加することによりそれぞれ生ずる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記制御信号が前記集積回路で用いる電力消費モード、すなわち前記第2の動作モードの期間中における前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの消費電力が前記第1の動作モードの期間中よりも小さくなる電力消費モードに基づいている請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが前記第1の動作モードの期間中に特定のバイアス状態に対して用いる第1の電流が前記第2の動作モードの期間中に用いる第2の電流よりも大きい請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記制御信号が前記集積回路で用いる速度モード、すなわち前記第2の動作モードの期間中における前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの動作速度が前記第1の動作モードの期間中よりも低くなる速度モードに基づいている請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の動作モードにおける前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの第1の最大NDR電流と第1の最小NDR電流との間の切換えを、前記第2の動作モードにおける第2の最大NDR電流と第2の最小NDR電流との間の切換えよりも高速で行う請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがメモリセルで用いてあり、前記制御信号が読出し/書込みコマンドであり、前記第1の動作モードが読出しまたは書込み動作と関連づけられ、前記第2の動作モードが休止蓄積動作に関連づけられている請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが論理回路に用いてあり、前記第1の動作モードが平常電力モード動作に関連づけられ、前記第2の動作モードが低電力モード動作に関連づけられている請求項1記載の方法。
【請求項10】
適応型の負性微分抵抗(NDR)素子を含む回路を動作させる方法であって、
(a)前記回路が処理動作を行っている第1の期間のあいだ前記適応型のNDR素子を第1の最大電流対最小電流比(PVR)で動作させる過程と、
(b)前記回路が処理動作を行っていない第2の期間のあいだは、前記適応型のNDR素子をその消費電流を減少させるように、前記第1のPVR値との間でその第1のPVR値が少なくとも50%大きいという大小関係を有する第2のPVR値で動作させる過程と
を含み、前記適応型NDR素子の最大電流対最小電流比特性を前記回路の動作要件に適応させることができる方法。
【請求項11】
前記回路が論理回路であって、前記処理動作がブーレ代数論理演算である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記回路がメモリセルであり、前記処理動作がそのメモリセルに蓄積したデータ値へのアクセス動作である請求項10記載の方法。
【請求項13】
半導体回路を製造する方法であって、
第1の期間のあいだは第1の電流−電圧関係で、第2の期間のあいだは第2の電流−電圧関係で動作できるシリコン利用の適応型NDRデバイスを形成する過程を含み、
前記第1の電流−電圧関係と前記第2の電流−電圧関係とが、第1の動作モードおよび第2の動作モードをそれぞれ含む二つの別々の動作モードを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがもつことができるように、互いに十分に異なっており、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り換える制御回路を形成する過程
をさらに含む方法。
【請求項14】
前記半導体回路を中に形成した集積回路の消費電力を調整する電力調整回路を形成する過程と、前記制御回路を前記電力調整回路に接続する過程とをさらに含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
最大電流値対最小電流値比(PVR)の公称値を製造加工の期間中に前記シリコン利用の適応型NDRデバイスに設定し、前記公称PVR値を前記制御回路により調節できる請求項13記載の方法。
【請求項16】
第2のシリコン利用のNDRデバイスを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスと共通の基板に形成する過程をさらに含み、前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが前記第2のシリコン利用のNDRデバイスの第2のPVR値と実質的に異なる第1のPVR値を有する請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記第2のシリコン利用のNDRデバイスも適応型であって、前記制御回路からの制御信号に応答して互いに異なる電流−電圧関係で動作する請求項16記載の方法。
【請求項18】
半導体回路であって、
第1の期間のあいだは第1の電流−電圧関係で動作するとともに第2の期間のあいだは第2の電流−電圧関係で動作するのに適合したシリコン利用の適応型NDRデバイスを含み、
前記第1の電流−電圧関係と前記第2の電流−電圧関係とが、第1の動作モードおよび第2の動作モードをそれぞれ含む二つの別々の動作モードを前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがもつことができるように、互いに十分に異なっており、
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスを前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り換える制御回路
をさらに含む半導体回路。
【請求項19】
前記制御回路が前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの最大電流対最小電流比(PVR)値を制御する請求項18記載の半導体回路。
【請求項20】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスがメモリセルの一部として構成されている請求項18記載の半導体回路。
【請求項21】
前記シリコン利用の適応型NDRデバイスが論理ゲートの一部として構成されている請求項18記載の半導体回路。
【請求項22】
第2の制御回路をさらに含み、前記制御回路がメモリ回路に用いた複数の第1の種類の前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの最大電流対最小電流比(PVR)値を制御し、前記第2の制御回路が論理回路に用いた複数の第2の種類の前記シリコン利用の適応型NDRデバイスの最大電流対最小電流比(PVR)値を制御する請求項18記載の半導体回路。
【請求項23】
シリコン利用の負性微分抵抗(NDR)デバイスにおける改良であって、
第1の期間のあいだ最小電流が減少してその第1の期間のあいだに対応の増加を最大電流対最小電流比(PVR)値に生じさせる自己適応を示すように構成されたNDRデバイス
を含み、前記NDRデバイスの前記PVR値の変更に外部制御回路を必要としないNDRデバイスの改良。
【請求項24】
前記デバイスの前記PVR値を前記デバイスの切換スピードの制御により制御し、前記デバイスについてのPVR値を増加させるのにより低い切換え速度を用いることができる請求項23記載のNDRデバイスの改良。
【請求項25】
前記デバイスについての前記PVR値が前記第1の期間の少なくとも一部のあいだ10を上回る請求項23記載のNDRデバイスの改良。
【請求項26】
制御ゲート、ソース領域およびドレーン領域を有する半導体デバイスを形成する方法であって、
(a)第1の導電型の基板を準備する過程と、
(b)前記ソース領域と前記ドレーン領域との間で電荷キャリアを搬送するチャネルを前記ソース領域と前記ドレーン領域との間に、第1のチャネルドーピング工程および第2のチャネルドーピング工程、すなわち
(i)前記第1の導電型の第1のチャネル不純物で前記チャネルをドーピングする第1のチャネルドーピング工程、および
(ii)前記第1の導電型と反対の第2の導電型の第2のチャネル不純物で前記チャネルを相互ドーピングする第2のチャネルドーピング工程
から成る二つの別々の工程により形成する過程であって、
前記第1のドーピング工程および前記第2のドーピング工程により前記チャネルを正味で第1の導電型を備えるチャネル領域として形成する過程と、
(c)前記チャネルとの間で界面を有し、電荷トラッピング領域、すなわち前記電荷キャリアを前記界面沿いに一時的にトラップするトラッピングサイトを有し前記デバイスが負性微分抵抗特性で動作することを可能にする電荷トラッピング領域を形成する過程と
を含み、
前記電荷トラッピングサイトが、前記界面に実質的に集中した電荷トラップ分布を形成する前記第1のチャネル不純物に少なくとも一部起因する方法。
【請求項27】
前記第2のドーピング工程にヒ素を用いた請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記第1のドーピング工程にホウ素を用いた請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記電荷トラッピング領域が前記チャネルとの間の前記界面の長さ全体にわたっては延びていない請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記電荷トラッピング領域が、ソース側のトラッピングを高めるようにソース領域から延びている請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記電荷トラッピング領域が前記半導体デバイスのゲート絶縁層の一部として形成されている請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記電荷トラッピング領域における電荷トラッピングサイトを前記第1のチャネル不純物により形成した請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記第1のチャネル不純物の前記界面における濃度が、前記チャネル領域の正味のドーピング濃度よりも少なくとも1オーダーだけ大きい請求項26記載の方法。
【請求項34】
前記電荷トラッピングサイトが、前記界面沿いでエネルギーレベルの高い電荷キャリアに可変のトラッピング率を与えるように前記界面沿いに不均一に分布している請求項26記載の方法。
【請求項35】
前記可変のトラッピング率が前記界面沿いの距離に実質的に比例して上昇する請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記可変のトラッピング率が関連のソース領域近傍においてドレーン領域近傍よりも高い請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記電荷トラッピング領域における前記電荷トラッピングサイトの形成を、前記電荷トラッピングサイトを生じさせる不純物イオン打込み工程と前記電荷トラッピングサイトを変性させる熱処理工程とを含む二つの別々の工程により行う請求項26記載の方法。
【請求項38】
制御ゲート、ソース領域およびドレーン領域を有するトランジスタを形成する方法であって、
(a)第1の導電型の基板を準備する過程と、
(b)前記ソース領域と前記ドレーン領域との間で電荷キャリアを搬送する前記トランジスタのチャネルを前記ソース領域と前記ドレーン領域との間に形成する過程と、
(c)前記トランジスタのゲート絶縁層を形成する過程と、
(d)前記ゲート絶縁層の形成のあと第1の不純物をそのゲート絶縁層の中におよびそのゲート絶縁層を通じてイオン打込みし、前記第1の不純物の一部が前記電荷キャリアを前記チャネルとの間の界面沿いに一時的にトラップするのに適合したエネルギーレベルの電荷トラッピングサイトを形成し、前記第1の不純物の他の一部が前記チャネルの中の電界強度を高める形で分布するようにするイオン打込み過程と
を含み、前記トランジスタが負性微分抵抗特性を持って動作するトランジスタである方法。
【請求項39】
前記第1の不純物と反対導電型の第2の不純物を前記トランジスタの閾値電圧を低下させるように前記チャネルにイオン打ち込みする過程をさらに含む請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記チャネルが前記第1の不純物と同一の正味の導電型を有する請求項39記載の方法。
【請求項41】
制御ゲート、ソース領域およびチャネル経由で前記ソース領域に結合されたドレーン領域を有する半導体デバイスを第1の導電型の基板に形成する方法であって、
(a)第2の導電型の不純物をチャネルを形成するように前記半導体デバイスのチャネル領域にイオン打込みする過程と、
(b)前記チャネルとの間の界面を構成する第1の導電体層を形成するように少なくとも前記チャネル領域において熱酸化を行う過程であって、
その過程(b)の期間中に、前記電荷キャリアを前記界面沿いに一時的にトラップするのに適合したエネルギーレベルの電荷トラッピングサイトを形成するように前記不純物を前記第1の誘電体層に含ませる過程と、
(c)前記第1の誘電体層の上に第2の誘電体層、すなわち前記第1の誘電体層とともに前記半導体デバイスのゲート絶縁層の一部または全部を形成する第2の誘電体層を形成するように堆積を行う過程と、
を含み、前記半導体デバイスが負性微分抵抗特性で動作するデバイスである方法。
【請求項42】
前記過程(a)に用いた第1の導電型の不純物と、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の不純物であって後続の相互ドーピング過程で用いる第2の導電型の不純物とを含む不純物の二つの別々のイオン打込み工程を前記チャネルにおいて行う請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記二つの別々のイオン打込み工程を行ったあとのアニール工程をさらに含む請求項42記載の方法。
【請求項44】
シリコン利用の負性微分抵抗(NDR)半導体デバイスを形成する方法であって、
(a)基板を準備する過程と、
(b)前記シリコン利用のNDR半導体デバイスの電荷キャリアの流れを搬送するチャネル領域を形成する過程と、
(c)前記チャネル領域に第1の不純物をイオン打込みする過程と、
(d)前記チャネルとの間で界面を有する第1の誘電体層を形成する過程と、
(e)前記イオン打込みによる欠陥を減らすとともに前記第1の不純物をそれら不純物が前記チャネルとの界面沿いに集中する形で分布させるようにアニールする過程と
を含み、
前記界面沿いに分布した前記第1の不純物が、NDR特性を生ずるように前記電荷キャリアを一時的にトラッピングするのに適したエネルギーレベルの電荷トラッピングサイトを形成する方法。
【請求項45】
前記第1の不純物が前記基板と同一の第1の導電型を有する請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記シリコン利用のNDR半導体デバイスが電界効果トランジスタ(FET)である請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記FETのゲート絶縁層を形成する過程をさらに含む請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記ゲート絶縁層の形成のあともう一つのアニール加工を行う過程をさらに含む請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記過程(e)を、前記シリコン利用の負性微分抵抗(NDR)半導体デバイスのゲートの形成の前に行う請求項44記載の方法。
【請求項50】
半導体デバイスを形成する方法であって、
(a)トランジスタチャネル領域に隣接してトラッピング層、すなわち前記チャネル領域からの電荷キャリアをトラップするとともにトラップ解除するように構成したキャリアトラッピングサイトを含むトラッピング層を形成する過程と、
(b)前記半導体装置に複数の別々のアニーリング工程、すなわち少なくとも第1の一つが前記キャリアトラッピングサイトを前記トランジスタチャネル領域との界面沿いに分布させて集中させ、前記トラッピング層のバルク領域では低密度になるようにするアニーリング工程を施す過程とを含み、前記トランジスタチャネルが負性微分抵抗を発揮するような前記誘電体層の中の密度および分布をもつように前記トラッピングサイトを形成する方法。
【請求項51】
前記複数の別々のアニーリング工程の第2の一つが、前記界面沿いに前記電荷トラッピングサイトの密度および分布の少なくとも一つを変えるのに適合している請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記複数の別々のアニーリング工程の前記第1の一つだけが前記トラッピングサイトを分布させるように作用する請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記第1の不純物の前記チャネル領域における正味ドーピング濃度が前記第1の不純物の形成した前記界面におけるキャリアトラッピングサイトの密度よりも少なくともオーダー一つだけ低い請求項50記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17J】
【図17K】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17J】
【図17K】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20B】
【公表番号】特表2006−511941(P2006−511941A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563703(P2004−563703)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040268
【国際公開番号】WO2004/059697
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505001247)プログレッサント テクノロジーズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040268
【国際公開番号】WO2004/059697
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505001247)プログレッサント テクノロジーズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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