説明

MOS型半導体メモリ装置

【課題】優れたデータ保持特性と、高速でのデータ書換え性能と、低消費電力での動作性能と、高い信頼性と、を同時に兼ね備えた不揮発性MOS型半導体メモリ装置を提供する。
【解決手段】MOS型半導体メモリ装置601は、大きなバンドギャップを持つ第1の絶縁膜111および第5の絶縁膜と、最も小さなバンドギャップを持つ第3の絶縁膜113との間に、両者の中間の大きさのバンドギャップを持つ第2の絶縁膜112および第4の絶縁膜114を備えている。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜111を介した電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体に電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さく抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS(Metal−Oxide−Silicon)型半導体メモリ装置に関し、特に基板と電極層との間に、バンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜を有するMOS型半導体メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、MOS型半導体メモリ装置の一つとして、電気的書換え動作が可能なEEPROM(Electrically Erasable
and Programmable ROM)が知られている。この装置は、半導体基板上に酸化珪素膜を形成した後、その上に1層以上の窒化珪素膜を形成し、さらにその上に酸化珪素膜を形成し、その上に制御ゲート電極を形成した構造になっている(例えば、特許文献1)。EEPROMでは、半導体基板と制御ゲート電極との間に電圧を印加し、上記積層構造の絶縁膜(絶縁膜積層体)の、主として窒化珪素膜中、または窒化珪素膜とその上下の酸化珪素膜との界面に電子もしくは正孔を蓄積させることによって、「1」、「0」のデータの書換えが行われる。
【0003】
以下に、電荷蓄積領域としての絶縁膜積層体に電子を注入する場合を例にとって、従来技術を説明する。まず、半導体基板に0Vを印加し、制御ゲート電極に例えば10Vを印加する。すると、半導体基板と制御ゲート電極間の絶縁膜積層体に強い電界が印加されることとなり、半導体基板から窒化珪素膜へ、電子が下側の酸化珪素膜を介してトンネル現象により注入される。そして、注入された電子は、主として、窒化珪素膜中、または窒化珪素膜と下側の酸化珪素膜もしくは上側の酸化珪素膜との界面付近にトラップされ、データとして蓄積される。
【0004】
ところで、EEPROMのような不揮発性半導体メモリ装置に求められる重要な性能として、データ保持特性が挙げられる。従来技術のMOS型半導体メモリ装置において、窒化珪素膜中、または窒化珪素膜と下側の酸化珪素膜もしくは上側の酸化珪素膜との界面付近にトラップされた電子を長時間安定的に保持するためには、これら上下の酸化珪素膜の膜厚を厚く形成する必要があった。しかし、上下の酸化珪素膜の膜厚を厚くすると、データを書き込む際に絶縁膜積層体に印加される電界が弱くなってデータ書き込み速度が遅くなってしまう、という問題があった。
【0005】
絶縁膜積層体に加わる電界を強くすることによって上記問題の解決を図ることも可能であるが、それにはデータ書き込み電圧を上げる必要がある。しかし、そうすると、半導体メモリ装置の消費電力の増大と絶縁膜の絶縁破壊の確率が増加し、半導体メモリ装置の信頼性を大きく低下させてしまうという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−203917号公報(例えば、図1、図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来技術のMOS型半導体メモリ装置においては、データ保持特性を改善しようとすると、データ書き込み速度が低下しまう。データ書き込み速度を向上させようとすると、消費電力の増大と絶縁破壊の発生確率が高まり、半導体メモリ装置の信頼性を低下させてしまう、という問題があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、優れたデータ保持特性と、高速でのデータ書換え性能と、低消費電力での動作性能と、高い信頼性と、を同時に兼ね備えたMOS型半導体メモリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のMOS型半導体メモリ装置は、半導体層とゲート電極との間に、電荷を蓄積する領域として複数の絶縁膜を積層した絶縁膜積層体を設けたMOS型半導体メモリ装置である。
【0010】
本発明のMOS型半導体メモリ装置は、前記絶縁膜積層体を構成する絶縁膜のうち、前記半導体層に最も近い位置に設けられた絶縁膜および前記ゲート電極に最も近い位置に設けられた絶縁膜は、これらの間に介在する二以上の絶縁膜と比較して大きなバンドギャップを有している。
【0011】
本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記絶縁膜積層体は、
前記半導体層に最も近い位置に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第4の絶縁膜と、
前記ゲート電極に最も近い位置に設けられ、前記第4の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第5の絶縁膜と、
を備えていてもよい。
【0012】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記絶縁膜積層体は、
前記半導体層に最も近い位置に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第4の絶縁膜と、
前記ゲート電極に最も近い位置に設けられ、前記第4の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第5の絶縁膜と、
を備えていてもよい。
【0013】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第1の絶縁膜と前記第5の絶縁膜との間に、前記第2の絶縁膜、前記第3の絶縁膜および前記第4の絶縁膜を含む中間積層体が繰り返し形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第1の絶縁膜は、前記半導体層に接して設けられていてもよいし、あるいは、前記第1の絶縁膜は、前記半導体層に接して設けられた絶縁層と、該絶縁層に接して設けられた電極層と、を介して設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第1の絶縁膜と前記第5の絶縁膜が酸化珪素膜であり、前記第2の絶縁膜、前記第3の絶縁膜および前記第4の絶縁膜が、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜または金属酸化膜であってもよい。
【0016】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第3の絶縁膜は、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、前記第2の絶縁膜との界面付近および前記第4の絶縁膜との界面付近に比べ、膜中央部のバンドギャップが大きいエネルギーバンド構造を有していてもよい。この場合、前記第3の絶縁膜は窒化酸化珪素膜であり、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、膜中の窒素に対する酸素の組成比が、前記第2の絶縁膜との界面付近および前記第4の絶縁膜との界面付近に比べ膜中央部において大きい酸素濃度プロファイルを有している。
【0017】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第3の絶縁膜は、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、前記第2の絶縁膜との界面付近および前記第4の絶縁膜との界面付近に比べ、膜中央部のバンドギャップが小さいエネルギーバンド構造を有していてもよい。この場合、前記第3の絶縁膜は窒化珪素膜であり、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、膜中のシリコンに対する窒素の組成比が、前記第2の絶縁膜との界面付近および第4の絶縁膜との界面付近に比べ膜中央部において大きい窒素濃度プロファイルを有している。
【0018】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第2の絶縁膜および前記第4の絶縁膜の膜厚が、前記第3の絶縁膜の膜厚に比べて薄くてもよい。
【0019】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記第1の絶縁膜と前記第5の絶縁膜の膜厚が0.5nm以上20nm以下の範囲内であってもよい。
【0020】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記半導体層の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、前記第2の絶縁膜の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べてデータ書き込み時には高く、データ読み出し時およびデータ保持時には低くてもよい。
【0021】
また、本発明のMOS型半導体メモリ装置において、前記半導体層が柱状シリコン層であり、その側方に前記絶縁膜積層体および前記ゲート電極を設けた縦型積層構造を有していてもよい。
【0022】
本発明のNAND型メモリセルアレイは、上記MOS型半導体メモリ装置を直列に配列したことを特徴とするものである。
【0023】
本発明のNOR型メモリセルアレイは、上記MOS型半導体メモリ装置を並列に配列したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のMOS型半導体メモリ装置は、半導体層とゲート電極との間に設けられた絶縁膜積層体のうち、最も半導体層側および最もゲート電極側に位置する絶縁膜が、これらの間に介在する絶縁膜に比べて大きなバンドギャップを有している。このため、トンネル現象により半導体層から絶縁膜積層体への電荷の注入が起こりやすい。従って、データ書き込み時には、トンネリング確率を低下させることなく、素早い書き込みが可能になる。また、書き込みに必要な電圧を小さく抑えることができるので、加電圧であってもインパクトイオン化による電子・正孔対の生成を少なくすることができ、絶縁破壊を起こしにくい。従って、データ書き込みに高電圧を印加する必要はなく、低消費電力での動作が可能であり、かつ高い信頼性が確保される。
【0025】
また、最も半導体層側および最もゲート電極側に位置する絶縁膜が大きなバンドギャップを持つことにより、これらの間に保持された電荷が抜け出ることが防止される。従って、最も半導体層側および最もゲート電極側に位置する絶縁膜を厚くしなくとも優れたデータ保持特性が得られる。
【0026】
このように、本発明のMOS型半導体メモリ装置は、優れたデータ保持特性と、高速のデータ書換え性能と、低消費電力での動作性能と、高い信頼性と、を同時に兼ね備えたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す断面図である。また、図2は、図1のMOS型半導体メモリ装置601のエネルギーバンド図である。
【0028】
本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置601は、図1に示すように、半導体層としてのp型のシリコン基板101と、このp型のシリコン基板101上に積層形成された、バンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜からなる絶縁膜積層体102aと、この絶縁膜積層体102aの上に形成されたゲート電極103と、を有している。シリコン基板101とゲート電極103との間には、第1の絶縁膜111と、第2の絶縁膜112と、第3の絶縁膜113と、第4の絶縁膜114と、第5の絶縁膜115とを有する絶縁膜積層体102aが設けられている。シリコン基板101には、ゲート電極103の両側に位置するように、表面から所定の深さでn型拡散層である第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105が形成され、両者の間はチャネル形成領域106となっている。なお、MOS型半導体メモリ装置601は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。また、本実施の形態は、nチャネルMOSデバイスを例に挙げて説明を行うが、pチャネルMOSデバイスで実施してもかまわない。従って、以下に記載する本実施の形態の内容は、全てnチャネルMOSデバイス、及び、pチャネルMOSデバイスに適用することができる。
【0029】
第1の絶縁膜111は、例えばシリコン基板101の表面を熱酸化法により酸化して形成された二酸化珪素膜(SiO膜)である。この第1の絶縁膜111は、例えば8〜10eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有するものである。第1の絶縁膜111の膜厚は、例えば0.5nm〜20nmの範囲内が好ましく、1nm〜10nmの範囲内がより好ましく、1nm〜3nmの範囲内が望ましい。
【0030】
第2の絶縁膜112は、第1の絶縁膜111の表面に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜;ここで、SiとOとNとの組成比は必ずしも化学量論的に決定されず、成膜条件により異なる値をとる。以下、同様である)である。この第2の絶縁膜112は、例えば5〜7eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有するものである。第2の絶縁膜112の膜厚は、例えば2nm〜20nmの範囲内が好ましく、2nm〜10nmの範囲内がより好ましく、3nm〜5nmの範囲内が望ましい。
【0031】
第3の絶縁膜113は、第2の絶縁膜112上に形成された窒化珪素膜(SiN膜;ここで、SiとNの組成比は必ずしも化学量論的に決定されず、成膜条件により異なる値をとる。以下同様である)である。この第3の絶縁膜113は、例えば2.5〜4eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有するものである。第3の絶縁膜113の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、4nm〜10nmの範囲内が望ましい。
【0032】
第4の絶縁膜114は、第3の絶縁膜113上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。この第4の絶縁膜114は、第2の絶縁膜112と同様のエネルギーバンドギャップおよび膜厚を有している。
【0033】
第5の絶縁膜115は、第4の絶縁膜114上に、例えばCVD(Chemical
Vapor Deposition;化学気相堆積)法により堆積させた二酸化珪素膜(SiO膜)である。この第5の絶縁膜115は、電極103と第4の絶縁膜114との間でブロック層(バリア層)として機能する。この第5の絶縁膜115は、例えば8〜10eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有するものである。第5の絶縁膜115の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、5nm〜8nmの範囲内が望ましい。
【0034】
ゲート電極103は、例えばCVD法により成膜された多結晶シリコン膜からなり、コントロールゲート(CG)電極として機能する。また、ゲート電極103は、例えばW,Ti,Ta,Cu,Al,Au,Pt等の金属を含む膜であってもよい。ゲート電極103は、単層に限らず、ゲート電極103の比抵抗を下げ、高速化する目的で、例えばタングステン、モリブデン、タンタル、チタン、白金それらのシリサイド、ナイトライド、合金等を含む積層構造にすることもできる。ゲート電極103は、図示しない配線層に接続されている。
【0035】
本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置601において、上記第1の絶縁膜111および第5の絶縁膜115としては、窒化酸化珪素膜(SiON膜)もしくは二酸化珪素膜(SiO膜)を用いることが好ましい。また、第2の絶縁膜112、第3の絶縁膜113および第4の絶縁膜114の材料としては、窒化珪素や窒化酸化珪素に限らず、金属酸化物などの絶縁材料を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、HfO、Hf−Si−O、Hf−Al−O、ZrO、Al、PZT[Pb(Zr,Ti)O;チタン酸ジルコン酸鉛]、BST[(Ba,Sr)TiO]、SRO(SrRuO)、SBT(SrBiTa;タンタル酸ビスマスストロンチウム)、Ta(五酸化タンタル)、BaTiO(チタン酸バリウム)、TiO、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、BIT(BiTi12)、STO(SrTiO)、ジルコニウム・シリコン複合酸化物、La、CeO、Na、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、La、Pr、Pr11、ZrON(ジルコニウムオキシナイトライド)等を用いることができる。
【0036】
図2に示すように、MOS型半導体メモリ装置601は、第1の絶縁膜111および第5の絶縁膜115のバンドギャップ111aおよび115aが、これらの間に介在する中間積層体である第2の絶縁膜112、第3の絶縁膜113および第4の絶縁膜114のバンドギャップ112a,113aおよび114aに比較して大きなエネルギーバンド構造を有する。また、第1の絶縁膜111および第5の絶縁膜115と、バンドギャップが最も小さな第3の絶縁膜113との間には、両者の中間の大きさのバンドギャップ112a,114aを持つ第2の絶縁膜112および第4の絶縁膜114を介在させている。なお、図2における符号101aはシリコン基板101のバンドギャップであり、符号103aはゲート電極103のバンドギャップである(図5、図7、図9、図11および図12において同様である)。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜111を介した電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体102aに電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さく抑えることができる。本実施の形態において、第1〜第5の絶縁膜111〜115のバンドギャップの大きさは、膜を構成する元素とその組成比により制御することができる。
【0037】
また、書き込み速度を速くするためには、第2の絶縁膜112および第4の絶縁膜114の膜厚を、書き込み時にクーロンブロッケード現象が起こるように第3の絶縁膜113の膜厚に比べて薄く設定することが好ましい。さらに、書き込み時には、例えばFN(Fowler-Nordheim)トンネリング等のトンネル現象の発生確率を上昇させ、書き込み速度をより向上させる目的から、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜112の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定することが好ましい。また、データ保持特性を向上させるために、データ保持状態では、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜112の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。さらに、データ読み出し時においても、データ保持状態と同様にシリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜112の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。
【0038】
また、絶縁膜積層体102aでは、バンドギャップが最も小さな第3の絶縁膜113を中心とする領域に主に電荷が蓄積されやすい。その一方で、一旦第3の絶縁膜113を中心とする領域に電荷が保持された状態では、隣接する第2の絶縁膜112および第4の絶縁膜114の存在によってエネルギー障壁が大きくなり、第1の絶縁膜111または第5の絶縁膜115を介して電荷が抜け出ることが防止される。従って、第1の絶縁膜111や第5の絶縁膜115の膜厚を厚くしなくとも、絶縁膜積層体102a内部に電荷を安定的に保持することが可能であり、優れたデータ保持特性が得られる。
【0039】
以上のような構造のMOS型半導体メモリ装置601の動作例について説明する。まず、データ書き込み時には、シリコン基板101の電位を基準として、第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105を0Vに保持し、ゲート電極3に所定の正の電圧を印加する。このとき、チャネル形成領域106に電子が蓄積されて反転層が形成され、その反転層内の電荷の一部がトンネル現象により第1の絶縁膜111を介して絶縁膜積層体102aに移動する。絶縁膜積層体102aに移動した電子は、その内部に形成された電荷捕獲中心に捕獲され、データの蓄積が行われる。
【0040】
データ読み出し時には、シリコン基板101の電位を基準として第1のソース・ドレイン104または第2のソース・ドレイン105のいずれか一方に0Vの電圧を印加し、もう一方に所定の電圧を印加する。さらに、ゲート電極103にも所定の電圧を印加する。このように電圧を印加することにより、絶縁膜積層体102a内に蓄積された電荷の有無や、蓄積された電荷の量に応じ、チャネルの電流量やドレイン電圧が変化する。従って、このチャンネル電流またはドレイン電圧の変化を検出することによって、データを外部に読み出すことができる。
【0041】
データの消去時には、シリコン基板101の電位を基準とし、第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105の両方に0Vの電圧を印加し、ゲート電極103に所定の大きさの負の電圧を印加する。このような電圧の印加によって、絶縁膜積層体102a内に保持されていた電荷は第1の絶縁膜111を介してシリコン基板101のチャネル形成領域106に引き抜かれる。これにより、MOS型半導体メモリ装置601は、絶縁膜積層体102a内の電子蓄積量が低い消去状態に戻る。
【0042】
なお、MOS型半導体メモリ装置601における情報の書き込み、読み出し、消去の方法は限定されるものではなく、上記とは異なる方式で書き込み、読み出しおよび消去を行ってもよい。例えば、FNトンネル現象、ホットエレクトロン注入現象、ホットホール注入現象、光電効果等々の物理現象を用いて情報の書き込み、読み出し、消去を行うことができる。また、第1のソース・ドレイン104と第2のソース・ドレイン105を固定せず、交互にソースまたはドレインとなるように機能させて1メモリセルで2ビット以上の情報の書き込み・読み出しを行えるようにしてもよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601は、従来のMOS型半導体メモリ装置に比べて、データ保持特性の向上と書き込み動作速度の高速化と低消費電力化と信頼性向上とが同時に実現された優れたMOS型半導体メモリ装置である。
【0044】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601は、常法に従って製造できる。ここでは代表的な手順の一例を挙げて説明する。まず、シリコン基板101上に、例えばLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法やSTI(Shallow Trench Isolation)法などの手法で素子分離膜を形成する。次に、シリコン基板101の表面に、例えば熱酸化法によって第1の絶縁膜111を形成する。
【0045】
次に、第1の絶縁膜111の上に第2の絶縁膜112、第3の絶縁膜113および第4の絶縁膜114を順次形成する。第3の絶縁膜113としての窒化珪素膜は、例えばCVD法により成膜できる。また、第2または第4の絶縁膜112,114としての窒化酸化珪素膜や金属酸化物膜は、例えば、CVD法により直接成膜してもよいし、CVD法により成膜した窒化珪素膜を酸化処理したり、CVD法により成膜した酸化珪素膜を窒化処理したりすることにより製造できる。
【0046】
次に、第4の絶縁膜114の上に、第5の絶縁膜115を形成する。この第5の絶縁膜115は、例えばCVD法によって形成することができる。さらに、第5の絶縁膜115の上に、例えばCVD法によってポリシリコン層や金属層、あるいは金属シリサイド層などを成膜してゲート電極103となる金属膜を形成する。
【0047】
次に、フォトリソグラフィー技術を用い、パターン形成したレジストをマスクとして、前記金属膜、第5〜第1の絶縁膜115〜111をエッチングすることにより、図1に示したようにパターン形成されたゲート電極103と絶縁膜積層体102aとを有するゲート積層構造体が得られる。次に、ゲート積層構造体の両側に隣接するシリコン表面にn型不純物を高濃度にイオン注入し、第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105を形成する。このようにして、図1に示した構造のMOS型半導体メモリ装置601を製造できる。
【0048】
本実施の形態において、第1の絶縁膜111〜第5の絶縁膜115として用いる酸化珪素膜、窒化珪素膜や窒化酸化珪素膜の成膜方法は、特に限定されるものではなく、熱酸化法、CVD法、原子拡散による酸化処理や窒化処理などの手法を適宜選択できる。例えばシリコン膜をプラズマ酸化法などの方法で酸化処理して酸化珪素膜を形成してもよく、また、シリコン膜をプラズマ窒化法などの方法で窒化処理して窒化珪素膜を形成してもよい。さらに、例えばCVD法により成膜した二酸化珪素膜をプラズマ窒化法などの方法で窒化処理して窒化酸化珪素膜を形成してもよいし、CVD法により成膜した窒化珪素膜をプラズマ酸化法などの方法で酸化処理して窒化酸化珪素膜を形成してもよい。これらの方法を適宜組み合わせて第1の絶縁膜111〜第5の絶縁膜115を成膜することができる。
【0049】
本実施の形態においては、主に電荷蓄積領域として中心的な役割を果たす第2の絶縁膜112、第3の絶縁膜113および第4の絶縁膜114を、後述するプラズマ処理装置100を用いたプラズマCVD法を利用して成膜する方法を選択することが好ましい。すなわち、プラズマ処理装置100を用いるプラズマCVD法により窒化珪素膜を形成するか、この窒化珪素膜を酸化処理して窒化酸化珪素膜とすることが好ましい。
【0050】
次に、絶縁膜積層体102aにおける第2〜第4の絶縁膜112〜114を形成するために用いられる窒化珪素膜の成膜方法の好ましい例について、図3を参照しながら説明する。図3は、窒化珪素膜の形成に利用可能なプラズマ処理装置100の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0051】
プラズマ処理装置100は、複数のスロット状の孔を有する平面アンテナ、特にRLSA(Radial Line Slot Antenna;ラジアルラインスロットアンテナ)にて処理室内にマイクロ波を導入してプラズマを発生させることにより、高密度かつ低電子温度のマイクロ波励起プラズマを発生させ得るRLSAマイクロ波プラズマ処理装置として構成されている。プラズマ処理装置100では、1×1010〜5×1012/cmのプラズマ密度で、かつ0.7〜2eVの低電子温度を有するプラズマによる処理が可能である。従って、プラズマ処理装置100は、各種半導体装置の製造過程においてプラズマCVD法によりダメージの少ない窒化珪素膜を成膜処理する目的で好適に利用できる。
【0052】
プラズマ処理装置100は、主要な構成として、気密に構成されたチャンバー(処理室)1と、チャンバー1内にガスを供給するガス供給機構18と、チャンバー1内を減圧排気するための排気機構としての排気装置24と、チャンバー1の上部に設けられ、チャンバー1内にマイクロ波を導入するマイクロ波導入機構27と、これらプラズマ処理装置100の各構成部を制御する制御部50と、を備えている。
【0053】
チャンバー1は、接地された略円筒状の容器により形成されている。なお、チャンバー1は角筒形状の容器により形成してもよい。チャンバー1は、アルミニウム等の材質からなる底壁1aと側壁1bとを有している。
【0054】
チャンバー1の内部は、被処理体であるシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」と記す)Wを水平に支持するための載置台2が設けられている。載置台2は、熱伝導性の高い材質例えばAlN等のセラミックスにより構成されている。この載置台2は、排気室11の底部中央から上方に延びる円筒状の支持部材3により支持されている。支持部材3は、例えばAlN等のセラミックスにより構成されている。
【0055】
また、載置台2には、その外縁部をカバーし、ウエハWをガイドするためのカバーリング4が設けられている。このカバーリング4は、例えば石英、AlN、Al、SiN等の材質で構成された環状部材である。
【0056】
また、載置台2には、温度調節機構としての抵抗加熱型のヒータ5が埋め込まれている。このヒータ5は、ヒータ電源5aから給電されることにより載置台2を加熱して、その熱で被処理基板であるウエハWを均一に加熱する。
【0057】
また、載置台2には、熱電対(TC)6が配備されている。この熱電対6により、温度計測を行うことにより、ウエハWの加熱温度を例えば室温から900℃までの範囲で制御可能となっている。
【0058】
また、載置台2には、ウエハWを支持して昇降させるためのウエハ支持ピン(図示せず)を有している。各ウエハ支持ピンは、載置台2の表面に対して突没可能に設けられている。
【0059】
チャンバー1の底壁1aの略中央部には、円形の開口部10が形成されている。底壁1aにはこの開口部10と連通し、下方に向けて突出する排気室11が設けられている。この排気室11には、排気管12が接続されており、この排気管12を介して排気装置24に接続されている。
【0060】
チャンバー1を形成する側壁1bの上端には、環状をなすガス導入部14が設けられている。また、チャンバー1の側壁1bには、環状をなすガス導入部15が設けられている。つまり、ガス導入部14および15は、上下2段に設けられている。各ガス導入部14および15は成膜原料ガスやプラズマ励起用ガスを供給するガス供給機構18に接続されている。なお、ガス導入部14および15はノズル状またはシャワー状に設けてもよい。
【0061】
また、チャンバー1の側壁1bには、プラズマ処理装置100と、これに隣接する搬送室(図示せず)との間で、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口16と、この搬入出口16を開閉するゲートバルブ17とが設けられている。
【0062】
ガス供給機構18は、例えば窒素含有ガス(N含有ガス)供給源19a、シリコン含有ガス(Si含有ガス)供給源19bおよび不活性ガス供給源19cを有している。窒素含有ガス供給源19aは、上段のガス導入部14に接続されている。また、シリコン含有ガス供給源19bおよび不活性ガス供給源19cは、下段のガス導入部15に接続されている。なお、ガス供給機構18は、上記以外の図示しないガス供給源として、例えば、チャンバー1内をクリーニングする際に用いるクリーニングガス供給源等を有していてもよい。
【0063】
成膜原料ガスである窒素含有ガスとしては、例えば窒素ガス(N)、アンモニア(NH)、MMH(モノメチルヒドラジン)等のヒドラジン誘導体などを用いることができる。また、他の成膜原料ガスであるシリコン含有ガスとしては、例えばシラン(SiH)、ジシラン(Si)、トリシラン(Si)、TSA(トリシリルアミン)などを用いることができる。この中でも、特にジシラン(Si)が好ましい。さらに、不活性ガスとしては、例えばNガスや希ガスなどを用いることができる。希ガスは、プラズマ励起用ガスであり、例えばArガス、Krガス、Xeガス、Heガスなどを用いることができるが工業的にはArガスが好ましい。
【0064】
窒素含有ガスは、ガス供給機構18の窒素含有ガス供給源19aから、ガスライン20を介してガス導入部14からチャンバー1内に導入される。一方、シリコン含有ガスおよび不活性ガスは、シリコン含有ガス供給源19bおよび不活性ガス供給源19cから、それぞれガスライン20を介してガス導入部15からチャンバー1内に導入される。ガスライン20には、マスフローコントローラ21およびその前後の開閉バルブ22が設けられ、供給されるガスの切替えや流量等の制御が出来るようになっている。
【0065】
チャンバー1内のガスは、排気装置24を作動させることにより、排気管12を介して外部へ排気される。これにより、チャンバー1内を所定の真空度、例えば0.133Paまで高速に減圧することが可能となっている。なお、チャンバー1には圧力ゲージ(図示省略)が配備されており、チャンバー1内の圧力を計測できるようになっている。
【0066】
マイクロ波導入機構27は、主要な構成として、透過板28、平面アンテナ部材31、遅波材33、シールド蓋体34、導波管37、マッチング回路38およびマイクロ波発生装置39を備えている。
【0067】
次に、RLSA方式のプラズマ処理装置100を用いたプラズマCVD法による窒化珪素膜の堆積処理について説明する。まず、ゲートバルブ17を開にして搬入出口16からウエハWをチャンバー1内に搬入し、載置台2上に載置する。次に、チャンバー1内を減圧排気しながら、ガス供給機構18の窒素含有ガス供給源19aおよびシリコン含有ガス供給源19bから、窒素含有ガスおよびシリコン含有ガスを所定の流量でそれぞれガス導入部14,15を介してチャンバー1内に導入する。このようにして、チャンバー1内を所定の圧力に調節する。
【0068】
次に、マイクロ波発生装置39で発生させた所定周波数例えば2.45GHzのマイクロ波を、平面アンテナ部材31に貫通形成されたスロット状のマイクロ波放射孔32から透過板28を介してチャンバー1内におけるウエハWの上方空間に放射する。この際のマイクロ波出力は、例えば500〜3000W(透過板28の面積1cmあたり0.25〜1.54W/cm)程度とすることができる。
【0069】
平面アンテナ部材31から透過板28を経てチャンバー1に放射されたマイクロ波により、チャンバー1内で電磁界が形成され、窒素含有ガス、シリコン含有ガスがそれぞれプラズマ化する。そして、プラズマ中で原料ガスの解離が進み、Si、SiH、NH、N(ここで、p、qは任意の数を意味する。以下同様である。)などの活性種の反応によって、窒化珪素SiNの薄膜が堆積される。
【0070】
プラズマ処理装置100においては、窒化珪素膜を成膜する際のプラズマCVD処理の条件を選定することにより、窒化珪素膜のトラップ密度を所望の大きさにコントロールすることができる。例えば成膜する窒化珪素膜中のトラップ密度を大きくする場合(例えば、トラップ密度が5×1012〜1×1013cm−2eV−1の範囲内)には、次に示す条件でプラズマCVD処理を行うことが好ましい。窒素含有ガスとしてNHガス、シリコン含有ガスとしてSiガスを使用し、NHガスの流量を10〜5000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは100〜2000mL/min(sccm)の範囲内、Siガスの流量を0.5〜100mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは1〜50mL/min(sccm)の範囲内に設定する。このとき、NHガスとSiガスとの流量比(NHガス流量/Siガス流量)は、Si密度が高い窒化珪素膜を形成する観点から、0.1〜2000の範囲内とすることが好ましく、0.1〜1000の範囲内とすることがより好ましく、5〜50の範囲内とすることが望ましい。また、上記NHガスとSiガスを用いる場合において、大きなトラップ密度を有する窒化珪素膜を形成するためには、処理圧力を1〜1333Paにすることが好ましく、50〜650Paにすることがより好ましい。
【0071】
また、例えば成膜する窒化珪素膜のトラップ密度を小さくする場合(例えばトラップ密度が5×1010〜5×1012cm−2eV−1未満の範囲内)には、窒素含有ガスとしてNガス、シリコン含有ガスとしてSiガスを使用することが好ましい。具体的には、Nガス流量を10〜5000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは100〜2000mL/min(sccm)の範囲内、Siガス流量を0.5〜100mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは0.5〜10mL/min(sccm)の範囲内に設定する。このとき、NガスとSiガスとの流量比(Nガス流量/Siガス流量)は、Si密度が低い窒化珪素膜を均一な膜厚で形成する観点から、0.1〜5000の範囲内とすることが好ましく、100〜4000の範囲内とすることがより好ましい。また、上記NガスとSiガスを用いる場合において、小さなトラップ密度を有する窒化珪素膜を形成するためには、処理圧力を0.1〜500Paにすることが好ましく、1〜100Paにすることがより好ましい。
【0072】
なお、上記トラップ密度を大きくする場合の条件と、トラップ密度を小さくする場合の条件と、で交互にプラズマCVD処理を行なうことにより、トラップ密度が異なる窒化珪素膜を交互に堆積させることもできる。
【0073】
また、上記いずれの場合も、プラズマCVD処理の処理温度は、載置台2の温度を300℃以上、好ましくは400〜600℃に加熱することが好ましい。
【0074】
以上のようにして、第2〜第4の絶縁膜112〜114を構成する窒化珪素膜を容易に製造することができる。窒化酸化珪素膜(SiON膜)は、以上のようにして得られた窒化珪素膜を例えばプラズマ酸化処理、熱酸化処理することによって容易に得ることができる。なお、MOS型半導体メモリ装置を製造する場合には、プラズマ処理装置100を含む複数の成膜装置を大気に曝すことなく真空を介して接続することにより、各成膜装置で順次目的の膜(酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜など)を形成することが可能である。
【0075】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す断面図である。また、図5は、図4のMOS型半導体メモリ装置602のエネルギーバンド図である。
【0076】
本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置602は、図4に示すように、半導体層としてのp型のシリコン基板101と、このp型のシリコン基板101上に積層形成されたバンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜からなる絶縁膜積層体102bと、この絶縁膜積層体102bの上に形成されたゲート電極103と、を有している。シリコン基板101とゲート電極103との間には、第1の絶縁膜121と、第2の絶縁膜122と、第3の絶縁膜123と、第4の絶縁膜124と、第5の絶縁膜125とを有する絶縁膜積層体102bが設けられている。シリコン基板101には、ゲート電極103の両側に位置するように、表面から所定の深さで、n型拡散層からなる第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105が形成され、両者の間はチャネル形成領域106となっている。なお、MOS型半導体メモリ装置602は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。また、本実施の形態は、nチャネルMOSデバイスを例に挙げて説明を行うが、pチャネルMOSデバイスで実施してもかまわない。従って、以下に記載する本実施の形態の内容は、全てnチャネルMOSデバイス、及び、pチャネルMOSデバイスに適用することができる。
【0077】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置602において、第1の絶縁膜121、第5の絶縁膜125およびゲート電極103は、図1に示した第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601の第1の絶縁膜111、第5の絶縁膜115およびゲート電極103とそれぞれ同様の構成であるため、説明を省略する。
【0078】
第2の絶縁膜122は、第1の絶縁膜121上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第2の絶縁膜122は、例えば2.5〜4eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有するものである。第2の絶縁膜122の膜厚は、例えば2nm〜20nmの範囲内が好ましく、2nm〜10nmの範囲内がより好ましく、3nm〜5nmの範囲内が望ましい。
【0079】
第3の絶縁膜123は、第2の絶縁膜122上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。この第3の絶縁膜123は、例えば5〜7eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第3の絶縁膜123の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、4nm〜10nmの範囲内が望ましい。
【0080】
第4の絶縁膜124は、第3の絶縁膜123上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第4の絶縁膜124は、第2の絶縁膜122と同様のエネルギーバンドギャップおよび膜厚を有している。
【0081】
本実施の形態において、書き込み速度を速くするためには、第2の絶縁膜122および第4の絶縁膜124の膜厚を、書き込み時にクーロンブロッケード現象が起こるように第3の絶縁膜123の膜厚に比べて薄く設定することが好ましい。さらに、トンネリングの発生確率を上昇させ、書き込み速度をより向上させる目的から、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜122の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定することが好ましい。また、データ保持特性を向上させるために、データ保持状態では、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜122の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。さらに、データ読み出し時においても、データ保持状態と同様にシリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜122の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。
【0082】
上記第2の絶縁膜122、第3の絶縁膜123および第4の絶縁膜124の材料としては、窒化珪素や窒化酸化珪素に限らず、金属酸化物などの絶縁材料を用いることができる。ここで、金属酸化物としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0083】
また、第1の絶縁膜121〜第5の絶縁膜125の成膜方法は、第1の実施の形態と同様に、熱酸化法やCVD法、原子拡散による酸化処理や窒化処理などを適宜組み合わせて成膜することができる。また、本実施の形態においても、主に電荷蓄積領域として中心的な役割を果たす第2の絶縁膜122、第3の絶縁膜123および第4の絶縁膜124を、プラズマ処理装置100を用いたプラズマCVD法を利用して成膜する方法を選択することが好ましい。すなわち、プラズマ処理装置100を用いるプラズマCVD法により窒化珪素膜を形成するか、この窒化珪素膜を酸化処理して窒化酸化珪素膜とすることが好ましい。
【0084】
図5に示すように、MOS型半導体メモリ装置602は、第1の絶縁膜121および第5の絶縁膜125のバンドギャップ121aおよび125aが、これらの間に介在する中間積層体である第2の絶縁膜122、第3の絶縁膜123および第4の絶縁膜124のバンドギャップ122a、123aおよび124aに比較して大きなエネルギーバンド構造を有する。また、第1の絶縁膜121および第5の絶縁膜125と、中間の大きさのバンドギャップ123aを持つ第3の絶縁膜123との間には、最も小さなバンドギャップを持つ第2の絶縁膜122と第4の絶縁膜124を介在させている。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜121を介したトンネル現象による電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体102bに電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さくすることができる。第1〜第5の絶縁膜121〜125のバンドギャップの大きさは、膜を構成する元素とその組成比により制御することができる。
【0085】
絶縁膜積層体102bでは、第3の絶縁膜123と、小さなバンドギャップを持つ第2の絶縁膜122および第4の絶縁膜124との界面付近に主に電荷が蓄積されやすい。その一方で、一旦これらの界面付近に電荷が保持された状態では、第2の絶縁膜122および第4の絶縁膜124の存在によってエネルギー障壁が大きくなり、第1の絶縁膜121または第5の絶縁膜125を介して電荷が抜け出ることが防止される。従って、第1の絶縁膜121および第5の絶縁膜125の膜厚を厚くしなくとも、絶縁膜積層体102b内部に電荷を安定的に保持することが可能であり、優れたデータ保持特性が得られる。
【0086】
従って、MOS型半導体メモリ装置602は、従来のMOS型半導体メモリ装置に比べて、データ保持特性の向上と書き込み動作速度の高速化と低消費電力化と信頼性向上とが同時に実現された優れたMOS型半導体メモリ装置である。
【0087】
本実施の形態にかかるMOS型半導体メモリ装置602の書き込み、読み出しおよび消去の動作は、第1の実施の形態と同様に行うことができる。また、MOS型半導体メモリ装置602は、第1の実施の形態において説明した手順に準じて製造できる。
【0088】
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す断面図である。また、図7は、図6のMOS型半導体メモリ装置603のエネルギーバンド図である。
【0089】
本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置603は、図6に示すように、半導体層としてのp型のシリコン基板101と、このp型のシリコン基板101上に積層形成された、バンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜からなる絶縁膜積層体102cと、この絶縁膜積層体102cの上に形成されたゲート電極103と、を有している。シリコン基板101とゲート電極103との間には、第1の絶縁膜131と、第2の絶縁膜132と、第3の絶縁膜133と、第4の絶縁膜134と、第5の絶縁膜135とを有する絶縁膜積層体102cが設けられている。シリコン基板101には、ゲート電極103の両側に位置するように、表面から所定の深さでn型拡散層からなる第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105が形成され、両者の間はチャネル形成領域106となっている。なお、MOS型半導体メモリ装置603は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。また、本実施の形態は、nチャネルMOSデバイスを例に挙げて説明を行うが、pチャネルMOSデバイスで実施してもかまわない。従って、以下に記載する本実施の形態の内容は、全てnチャネルMOSデバイス、及び、pチャネルMOSデバイスに適用することができる。
【0090】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置603において、第1の絶縁膜131、第5の絶縁膜135およびゲート電極103は、図1に示した第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601の第1の絶縁膜111、第5の絶縁膜115およびゲート電極103と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0091】
第2の絶縁膜132は、第1の絶縁膜131上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。この第2の絶縁膜132は、例えば5〜7eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第2の絶縁膜132の膜厚は、例えば2nm〜20nmの範囲内が好ましく、2nm〜10nmの範囲内がより好ましく、3nm〜5nmの範囲内が望ましい。
【0092】
第3の絶縁膜133は、第2の絶縁膜132上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第3の絶縁膜133は、膜全体の平均として例えば2.5〜4eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第3の絶縁膜133の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、4nm〜10nmの範囲内が望ましい。
【0093】
また、第3の絶縁膜133は、シリコン基板101からゲート電極103へ向かう膜の厚み方向に、窒素の組成比率を変化させている。すなわち、第3の絶縁膜133は、第2の絶縁膜132との界面付近では窒素組成比が小さく、膜中央部で一旦前記界面付近よりも相対的に大きな窒素組成比になり、第4の絶縁膜134との界面付近で再び小さな窒素組成比に変化する窒素濃度プロファイルを有している。このような膜中の窒素濃度の制御は、図3に示したプラズマ処理装置100を使用して第3の絶縁膜133となる窒化珪素膜のCVD成膜を行う途中で、原料ガス組成や圧力などを変化させることにより可能となる。また、膜中の窒素濃度の制御は、例えばCVD等により形成されたシリコン膜をプラズマ酸化処理する過程で、原料ガス組成や圧力などを変化させることにより行ってもよい。
【0094】
第4の絶縁膜134は、第3の絶縁膜133上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。この第4の絶縁膜134は、第2の絶縁膜132と同様のエネルギーバンドギャップおよび膜厚を有している。
【0095】
上記第2の絶縁膜132、第3の絶縁膜133および第4の絶縁膜134の材料としては、窒化珪素や窒化酸化珪素に限らず、金属酸化物などの絶縁材料を用いることができる。ここで、金属酸化物としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0096】
また、第1の絶縁膜131〜第5の絶縁膜135の成膜方法は、第1の実施の形態と同様に、熱酸化法やCVD法、原子拡散による酸化処理や窒化処理などを適宜組み合わせて成膜することができる。また、本実施の形態においても、主に電荷蓄積領域としての役割を果たす第2の絶縁膜132、第3の絶縁膜133および第4の絶縁膜134を、プラズマ処理装置100を用いたプラズマCVD法を利用して成膜する方法を選択することが好ましい。すなわち、プラズマ処理装置100を用いるプラズマCVD法により窒化珪素膜を形成するか、この窒化珪素膜を酸化処理して窒化酸化珪素膜とすることが好ましい。
【0097】
図7に示すように、MOS型半導体メモリ装置603は、第1の絶縁膜131および第5の絶縁膜135のバンドギャップ131aおよび135aが、これらの間に介在する中間積層体である第2の絶縁膜132、第3の絶縁膜133および第4の絶縁膜134のバンドギャップ132a,133aおよび134aに比較して大きなエネルギーバンド構造を有する。また、第1の絶縁膜131および第5の絶縁膜135と、最もバンドギャップの小さな第3の絶縁膜133との間には、中間の大きさバンドギャップ132a,134aを持つ第2の絶縁膜132および第4の絶縁膜134を介在させている。さらに、第3の絶縁膜133は、バンドギャップ133aの大きさが、膜の厚さ方向に膜中央部で小さく、膜の両端(つまり、第2の絶縁膜132および第4の絶縁膜134との界面付近)で大きくなるように変化するバンド構造を有している。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜131を介したトンネル現象による電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体102cに電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さくすることができる。本実施の形態において、第1〜第5の絶縁膜131〜135のバンドギャップの大きさは、膜を構成する元素とその組成比により制御することができる。
【0098】
また、本実施の形態において、書き込み速度を速くするためには、第2の絶縁膜132および第4の絶縁膜134の膜厚を、書き込み時にクーロンブロッケード現象が起こるように第3の絶縁膜133の膜厚に比べて薄く設定することが好ましい。さらに、トンネリングの発生確率を上昇させ、書き込み速度をより向上させる目的から、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜132の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定することが好ましい。また、データ保持特性を向上させるために、データ保持状態では、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜132の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。さらに、データ読み出し時においても、データ保持状態と同様にシリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜132の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。
【0099】
また、絶縁膜積層体102cでは、バンドギャップがもっとも小さな第3の絶縁膜133を中心とする領域に主に電荷が蓄積されやすい。特に、本実施の形態では、第3の絶縁膜133の膜中で膜厚方向に組成比を変化させることにより、膜中に多くの格子ギャップが存在することになり、多くのダングリングボンドが存在する。その結果、第3の絶縁膜133中には、電荷を捕獲するためのトラップ(電荷捕獲中心)が多く形成されるので、電荷蓄積能力を大きくすることができる。
【0100】
また、一旦第3の絶縁膜133を主とする領域に電荷が保持された状態では、第2の絶縁膜132および第4の絶縁膜134の存在によって、エネルギー障壁が大きくなり、第1の絶縁膜131または第5の絶縁膜135を介して電荷が抜け出ることが防止される。従って、第1の絶縁膜131や第5の絶縁膜135の膜厚を厚くしなくとも、絶縁膜積層体102c内部に電荷を安定的に保持することが可能であり、優れたデータ保持特性が得られる。
【0101】
従って、MOS型半導体メモリ装置603は、従来のMOS型半導体メモリ装置に比べて、データ保持特性の向上と書き込み動作速度の高速化と低消費電力化と信頼性向上とが同時に実現された優れたMOS型半導体メモリ装置である。
【0102】
本実施の形態にかかるMOS型半導体メモリ装置603の書き込み、読み出しおよび消去の動作は、第1の実施の形態と同様に行うことができる。また、MOS型半導体メモリ装置603は、第1の実施の形態において説明した手順に準じて製造できる。
【0103】
[第4の実施の形態]
図8は、本発明の第4の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す断面図である。また、図9は、図8のMOS型半導体メモリ装置604のエネルギーバンド図である。
【0104】
本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置604は、図8に示すように、半導体層としてのp型のシリコン基板101と、このp型のシリコン基板101上に積層形成された、バンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜からなる絶縁膜積層体102dと、この絶縁膜積層体102dの上に形成されたゲート電極103と、を有している。シリコン基板101とゲート電極103との間には、第1の絶縁膜141と、第2の絶縁膜142と、第3の絶縁膜143と、第4の絶縁膜144と、第5の絶縁膜145とを有する絶縁膜積層体102dが設けられている。シリコン基板101には、ゲート電極103の両側に位置するように、表面から所定の深さで、n型拡散層からなる第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105が形成され、両者の間はチャネル形成領域106となっている。なお、MOS型半導体メモリ装置604は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。また、本実施の形態は、nチャネルMOSデバイスを例に挙げて説明を行うが、pチャネルMOSデバイスで実施してもかまわない。従って、以下に記載する本実施の形態の内容は、全てnチャネルMOSデバイス、及び、pチャネルMOSデバイスに適用することができる。
【0105】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置604において、第1の絶縁膜141、第5の絶縁膜145およびゲート電極103は、図1に示した第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601の第1の絶縁膜111、第5の絶縁膜115およびゲート電極103と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0106】
第2の絶縁膜142は、第1の絶縁膜141上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第2の絶縁膜142は、例えば2.5〜4eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第2の絶縁膜142の膜厚は、例えば2nm〜20nmの範囲内が好ましく、2nm〜10nmの範囲内がより好ましく、3nm〜5nmの範囲内が望ましい。
【0107】
第3の絶縁膜143は、第2の絶縁膜142上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。この第3の絶縁膜143は、膜全体の平均として例えば5〜7eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第3の絶縁膜143の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、4nm〜10nmの範囲内が望ましい。
【0108】
第3の絶縁膜143は、シリコン基板101からゲート電極103へ向かう膜の厚み方向に、酸素の組成比率を変化させている。すなわち、第3の絶縁膜143は、第2の絶縁膜142との界面付近では、膜中の窒素に対する酸素の組成比が小さく、膜中央部で一旦大きな酸素組成比になり、第4の絶縁膜144との界面付近で再び小さな酸素組成比に変化するプロファイルを有している。このような膜中の酸素濃度の制御は、例えば窒化珪素膜をプラズマ酸化処理する途中で、酸素ガスの組成や圧力などの条件を変化させることにより可能となる。
【0109】
第4の絶縁膜144は、第3の絶縁膜143上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第4の絶縁膜144は、第2の絶縁膜142と同様のエネルギーバンドギャップおよび膜厚を有している。
【0110】
上記第2の絶縁膜142、第3の絶縁膜143および第4の絶縁膜144の材料としては、窒化珪素や窒化酸化珪素に限らず、金属酸化物などの絶縁材料を用いることができる。金属酸化物としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0111】
また、第1の絶縁膜141〜第5の絶縁膜145の成膜方法は、第1の実施の形態と同様に、熱酸化法やCVD法、原子拡散による酸化処理や窒化処理などを適宜組み合わせて成膜することができる。また、本実施の形態においても、主に電荷蓄積領域として中心的な役割を果たす第2の絶縁膜142、第3の絶縁膜143および第4の絶縁膜144を、プラズマ処理装置100を用いたプラズマCVD法を利用して成膜する方法を選択することが好ましい。すなわち、プラズマ処理装置100を用いるプラズマCVD法により窒化珪素膜を形成するか、この窒化珪素膜を酸化処理して窒化酸化珪素膜とすることが好ましい。
【0112】
図9に示したように、MOS型半導体メモリ装置604は、第1の絶縁膜141および第5の絶縁膜145のバンドギャップ141aおよび145aが、これらの間に介在する中間積層体である第2の絶縁膜142、第3の絶縁膜143および第4の絶縁膜144のバンドギャップ142a,143aおよび144aに比較して大きなエネルギーバンド構造を有する。また、第1の絶縁膜141および第5の絶縁膜145と、中間の大きさのバンドギャップ143aを持つ第3の絶縁膜143との間には、最も小さなバンドギャップを持つ第2の絶縁膜142、第4の絶縁膜144を介在させている。さらに、第3の絶縁膜143は、膜の厚さ方向にバンドギャップの大きさが、第2の絶縁膜142との界面付近で小さく、膜中央部で一旦大きくなり、第4の絶縁膜144との界面付近で再び小さくなるように変化するプロファイルを有している。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜141を介したトンネル現象による電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体102dに電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さくすることができる。本実施の形態において、第1〜第5の絶縁膜141〜145のバンドギャップの大きさは、膜を構成する元素とその組成比により制御することができる。
【0113】
本実施の形態において、書き込み速度を速くするためには、第2の絶縁膜142および第4の絶縁膜144の膜厚を、書き込み時にクーロンブロッケード現象が起こるように第3の絶縁膜143の膜厚に比べて薄く設定することが好ましい。さらに、トンネリングの発生確率を上昇させ、書き込み速度をより向上させる目的から、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜142の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定することが好ましい。また、データ保持特性を向上させるために、データ保持時には、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜142の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。さらに、データ読み出し時においても、データ保持時と同様にシリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜142の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。
【0114】
また、絶縁膜積層体102dでは、第3の絶縁膜143と小さなバンドギャップを持つ第2の絶縁膜142および第4の絶縁膜144との界面付近に主に電荷が蓄積されやすい。特に、本実施の形態では、第3の絶縁膜143の膜中で膜厚方向に窒素原子に対する酸素原子の組成比を変化させたことにより、膜中に多くの格子ギャップが存在することになり、多くのダングリングボンドが存在する。その結果、第3の絶縁膜143中には、電荷を捕獲するためのトラップ(電荷捕獲中心)が多く形成されるので、電荷蓄積能力を大きくすることができる。
【0115】
また、一旦第3の絶縁膜143の界面付近を中心とする領域に電荷が保持された状態では、第2の絶縁膜142および第4の絶縁膜144の存在によって、エネルギー障壁が大きくなり、第1の絶縁膜141または第5の絶縁膜145を介して電荷が抜け出ることが防止される。従って、第1の絶縁膜141や第5の絶縁膜145の膜厚を厚くしなくとも、絶縁膜積層体102cに電荷を安定的に保持することが可能であり、優れたデータ保持特性が得られる。
【0116】
従って、MOS型半導体メモリ装置604は、従来のMOS型半導体メモリ装置に比べて、データ保持特性の向上と書き込み動作速度の高速化と低消費電力化と信頼性向上とが同時に実現された優れた半導体メモリ装置である。
【0117】
なお、本実施の形態にかかるMOS型半導体メモリ装置604の書き込み、読み出しおよび消去の動作は、第1の実施の形態と同様に行うことができる。また、MOS型半導体メモリ装置604は、第1の実施の形態において説明した手順に準じて製造できる。
【0118】
[第5の実施の形態]
図10は、本発明の第5の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す断面図である。また、図11は、図10のMOS型半導体メモリ装置605のエネルギーバンド図である。
【0119】
本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置605は、図10に示すように、半導体層としてのp型のシリコン基板101と、このp型のシリコン基板101上に積層形成された、バンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜からなる絶縁膜積層体102eと、この絶縁膜積層体102eの上に形成されたゲート電極103と、を有している。シリコン基板101とゲート電極103との間には、絶縁膜積層体102eが設けられており、この絶縁膜積層体102eは、第1の絶縁膜151と、第2の絶縁膜152と、第3の絶縁膜153と、第4の絶縁膜154と、第5の絶縁膜155と、スペーサー絶縁膜156と、を有する。絶縁膜積層体102eにおいては、第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜153および第4の絶縁膜154の3層の積層体が一単位となり、スペーサー絶縁膜156を介して繰り返し3単位が積層されている。
【0120】
また、シリコン基板101には、ゲート電極103の両側に位置するように、表面から所定の深さで、n型拡散層からなる第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105が形成され、両者の間はチャネル形成領域106となっている。また、本実施の形態は、nチャネルMOSデバイスを例に挙げて説明を行うが、pチャネルMOSデバイスで実施してもかまわない。従って、以下に記載する本実施の形態の内容は、全てnチャネルMOSデバイス、及び、pチャネルMOSデバイスに適用することができる。
【0121】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置605において、第1の絶縁膜151、第5の絶縁膜155およびゲート電極103は、図1に示した第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601の第1の絶縁膜111、第5の絶縁膜115およびゲート電極103と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0122】
第2の絶縁膜152は、第1の絶縁膜151上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第2の絶縁膜152は、例えば2.5〜4eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第2の絶縁膜152の膜厚は、例えば2nm〜20nmの範囲内が好ましく、2nm〜10nmの範囲内がより好ましく、3nm〜5nmの範囲内が望ましい。
【0123】
第3の絶縁膜153は、第2の絶縁膜152上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。この第3の絶縁膜153は、例えば5〜7eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。第3の絶縁膜153の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、4nm〜10nmの範囲内が望ましい。
【0124】
第4の絶縁膜154は、第3の絶縁膜153上に形成された窒化珪素膜(SiN膜)である。この第4の絶縁膜154は、第2の絶縁膜152と同様のエネルギーバンドギャップおよび膜厚を有している。
【0125】
スペーサー絶縁膜156は、第4の絶縁膜154上に形成された窒化酸化珪素膜(SiON膜)である。本実施の形態において、スペーサー絶縁膜156としては、第3の絶縁膜153と同様の膜を用いることができる。すなわち、スペーサー絶縁膜156は、例えば5〜7eVの範囲内のエネルギーバンドギャップを有している。また、スペーサー絶縁膜156の膜厚は、例えば2nm〜30nmの範囲内が好ましく、2nm〜15nmの範囲内がより好ましく、4nm〜10nmの範囲内が望ましい。
【0126】
上記第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜153、第4の絶縁膜154およびスペーサー絶縁膜156の材料としては、窒化珪素膜や窒化酸化珪素膜に限らず、金属酸化物などの絶縁材料を用いることができる。金属酸化物としては、第1の実施形態と同様のものを用いることができる。
【0127】
また、第1の絶縁膜151〜第5の絶縁膜155およびスペーサー絶縁膜156の成膜方法は、第1の実施の形態と同様に、熱酸化法やCVD法、原子拡散による酸化処理や窒化処理などを適宜組み合わせて成膜することができる。また、本実施の形態においても、主に電荷蓄積領域として中心的な役割を果たす第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜153および第4の絶縁膜154を、プラズマ処理装置100を用いたプラズマCVD法を利用して成膜する方法を選択することが好ましい。すなわち、プラズマ処理装置100を用いるプラズマCVD法により窒化珪素膜を形成するか、この窒化珪素膜を酸化処理して窒化酸化珪素膜とすることが好ましい。
【0128】
また、図11に示したように、MOS型半導体メモリ装置605は、第1の絶縁膜151および第5の絶縁膜155のバンドギャップ151aおよび155aが、これらの間に介在する中間積層体である第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜153、第4の絶縁膜154およびスペーサー絶縁膜156のバンドギャップ152a,153a,154aおよび156aに比較して大きなエネルギーバンド構造を有する。また、第1の絶縁膜151および第5の絶縁膜155に接する位置には、最もバンドギャップの小さな第2の絶縁膜152および第4の絶縁膜154を介在させている。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜151を介したトンネル現象による電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体102eに電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さくすることができる。本実施の形態において、第1〜第5の絶縁膜151〜155およびスペーサー絶縁膜156のバンドギャップの大きさは、膜を構成する元素とその組成比により制御することができる。
【0129】
本実施の形態において、書き込み速度を速くするためには、第2の絶縁膜152および第4の絶縁膜154の膜厚を、書き込み時にクーロンブロッケード現象が起こるように第3の絶縁膜153の膜厚に比べて薄く設定することが好ましい。さらに、トンネリングの発生確率を上昇させ、書き込み速度をより向上させる目的から、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜152の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定することが好ましい。また、データ保持特性を向上させるために、データ保持状態では、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜152の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。さらに、データ読み出し時においても、データ保持状態と同様にシリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜152の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することが好ましい。
【0130】
絶縁膜積層体102eでは、第3の絶縁膜153と、小さなバンドギャップを持つ第2の絶縁膜152および第4の絶縁膜154との界面付近に、主に電荷が蓄積されやすい。また、一旦第3の絶縁膜153の界面付近を中心とする領域に電荷が保持された状態では、第2の絶縁膜152および第4の絶縁膜154の存在によって、エネルギー障壁が大きくなり、第1の絶縁膜151または第5の絶縁膜155を介して電荷が抜け出ることが防止される。従って、第1の絶縁膜151や第5の絶縁膜155の膜厚を厚くしなくとも、絶縁膜積層体102eに電荷を安定的に保持することが可能であり、優れたデータ保持特性が得られる。
【0131】
従って、MOS型半導体メモリ装置605は、従来のMOS型半導体メモリ装置に比べて、データ保持特性の向上と書き込み動作速度の高速化と低消費電力化と信頼性向上とが同時に実現された優れた半導体メモリ装置である。
【0132】
なお、本実施の形態では、第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜153および第4の絶縁膜154の積層体を1単位として3単位を繰り返し積層したが、繰り返し回数は2単位または4単位以上でもよい。また、本実施の形態では、第2の絶縁膜152、第3の絶縁膜153および第4の絶縁膜154の積層体を、スペーサー絶縁膜156を介して繰り返し積層したが、スペーサー絶縁膜156を設けなくてもよい。
【0133】
また、本実施の形態においても、第3の絶縁膜153中のシリコンに対する窒素の組成比または窒素に対する酸素の組成比を膜厚方向に変化させて、第3の絶縁膜153を、第3の実施の形態または第4の実施の形態に示したバンドギャップ構造と同様に構成することが可能である。
【0134】
さらに、図10に示すMOS型半導体メモリ装置605において、第2の絶縁膜152を窒化酸化珪素膜(SiON膜)、第3の絶縁膜153を窒化珪素膜(SiN膜)、第4の絶縁膜154を窒化酸化珪素膜(SiON膜)、スペーサー絶縁膜156を窒化珪素膜(SiN膜)としてもよい。この場合のエネルギーバンド構造の一例を図12に示した。このようなエネルギーバンド構造を有することにより、データ書き込み時には第1の絶縁膜151を介したトンネル現象による電荷の移動が起こりやすく、書き込み動作速度を高速化することが可能で、かつ絶縁膜積層体102eに電荷を注入するために必要な書き込み電圧を小さくすることができる。また、第3の絶縁膜153を中心とする領域に、主に電荷が蓄積されやすくなり、第1の絶縁膜151や第5の絶縁膜155の膜厚を厚くしなくとも、絶縁膜積層体102eに電荷を安定的に保持することが可能であり、優れたデータ保持特性が得られる。
【0135】
本実施の形態にかかるMOS型半導体メモリ装置604の書き込み、読み出しおよび消去の動作は、第1の実施の形態と同様に行うことができる。また、MOS型半導体メモリ装置604は、第1の実施の形態において説明した手順に準じて製造できる。
【0136】
[第6の実施の形態]
図13は、本発明の第6の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す断面図である。本実施の形態のMOS型半導体メモリ装置606は、図13に示したように、半導体層としてのp型のシリコン基板101と、このp型のシリコン基板101上に形成された絶縁膜161と、この絶縁膜161上に形成された第1のゲート電極162と、この第1のゲート電極162上に積層形成された、バンドギャップの大きさが異なる複数の絶縁膜からなる絶縁膜積層体102fと、この絶縁膜積層体102fの上に形成された第2のゲート電極163と、を有している。シリコン基板101には、ゲート電極163の両側に位置するように、表面から所定の深さで、n型拡散層である第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105が形成され、両者の間はチャネル形成領域106となっている。なお、MOS型半導体メモリ装置601は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。また、本実施の形態は、nチャネルMOSデバイスを例に挙げて説明を行うが、pチャネルMOSデバイスで実施してもかまわない。従って、以下に記載する本実施の形態の内容は、全てnチャネルMOSデバイス、及び、pチャネルMOSデバイスに適用することができる。
【0137】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置606において、絶縁膜161は、図1に示した第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601の第1の絶縁膜111と同様の構成であり、また、MOS型半導体メモリ装置606における第1のゲート電極162および第2のゲート電極163は、第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601のゲート電極103と同様の構成であるため説明を省略する。
【0138】
また、第1のゲート電極162と第2のゲート電極163との間の絶縁膜積層体102fとしては、上記第1〜第5の実施の形態のいずれかに記載した絶縁膜積層体102a〜102eと同様の構造のものを用いることができる。なお、図13では絶縁膜積層体102fを構成する個々の絶縁膜は図示を省略した。
【0139】
上記第1〜第5の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601〜605(図1、図4、図6、図8および図10)では、半導体層としてのシリコン基板101とゲート電極103との間で電荷を移動させたのに対し、本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置606では、絶縁膜161上に形成された第1のゲート電極162と第2のゲート電極163との間で電荷を移動させることによりデータの書換えを行うことができる。
【0140】
以上のような構造のMOS型半導体メモリ装置606の動作例について説明する。まず、データ書き込み時には、シリコン基板101の電位を基準として、第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105を0Vに保持し、第1のゲート電極162は浮遊として、第2のゲート電極163に所定の正の電圧を印加する。このとき、チャネル形成領域106に電子が蓄積されて反転層が形成され、その反転層内の電荷の一部がトンネル現象により絶縁膜161および第1のゲート電極162を介して絶縁膜積層体102fに移動する。もしくは、データ書き込み時に、シリコン基板101の電位を基準として、第1のソース・ドレイン104、第2のソース・ドレイン105および第1のゲート電極162を0Vに保持し、第2のゲート電極163に所定の正の電圧を印加することで、第1のゲート電極162から電荷の一部を絶縁膜積層体102fに移動させてもよい。
そして、絶縁膜積層体102fに移動した電子は、その内部に形成された電荷捕獲中心に捕獲され、データの蓄積が行われる。この際、従来のデバイスでは、厚い絶縁膜を介して電荷を注入する必要があったために、書き込み電圧が大きいとか、書き込み速度が遅い等の問題が生じていた(図14(a)を参照)。これに対して、本発明によれば、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜(例えば、第2の絶縁膜112,122,132,142,152)の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定することにより、薄い絶縁膜を介して電荷を注入することが可能となる(図14(d)を参照)。そのため、本発明によるデバイスでは、書き込み電圧を小さくでき、書き込み速度を高速にすることが可能となる。
【0141】
データ読み出し時には、シリコン基板101の電位を基準として第1のソース・ドレイン104または第2のソース・ドレイン105のいずれか一方に0Vの電圧を印加し、もう一方に所定の電圧を印加する。さらに、第2のゲート電極163にも所定の電圧を印加する。第1のゲート電極162は浮遊とする。このように電圧を印加することにより、絶縁膜積層体102f内に蓄積された電荷の有無や、蓄積された電荷の量に応じ、チャネルの電流量やドレイン電圧が変化する。従って、このチャンネル電流またはドレイン電圧の変化を検出することによって、データを外部に読み出すことができる。この際、従来のデバイスでは、厚い絶縁膜を介して電荷の有無やその量の情報を読み出すために、読み出し電圧が大きいとか、読み出し速度が遅い等の問題が生じていた(図14(c)を参照)。これに対して、本発明によれば、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜(例えば、第2の絶縁膜112,122,132,142,152)の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて低くなるように設定することにより、厚い絶縁膜を介しているものの、実効平均バリヤ障壁を小さくすることが可能となる(図14(f)を参照)。そのため、本発明によるデバイスでは、読み出し電圧を小さくでき、読み出し速度を高速にすることが可能となる。
【0142】
データの消去時には、シリコン基板1の電位を基準とし、第1のソース・ドレイン104および第2のソース・ドレイン105の両方に0Vの電圧を印加し、第1のゲート電極162は浮遊として、第2のゲート電極163に所定の大きさの負の電圧を印加する。このような電圧の印加によって、絶縁膜積層体102f内に保持されていた電子は絶縁膜161を介してシリコン基板101のチャネル形成領域106に引き抜かれる。これにより、MOS型半導体メモリ装置606は、絶縁膜積層体102f内の電子蓄積量が低い消去状態に戻る。もしくは、データ消去時に、シリコン基板1
01の電位を基準として、第1のソース・ドレイン104、第2のソース・ドレイン105および第1のゲート電極162を0Vに保持し、第2のゲート電極163に所定の負の電圧を印加することで、絶縁膜積層体102f内に保持されていた電子を、絶縁膜161を介してシリコン基板101のチャネル形成領域106に引き抜いてもよい。
この際、従来のデバイスでは、厚い絶縁膜を介して電荷を放出する必要があったために、消去電圧が大きいとか、消去速度が遅い等の問題が生じていた(図14(b)を参照)。これに対して、本発明によれば、シリコン基板101の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、第2の絶縁膜(例えば、第2の絶縁膜112,122,132,142,152)の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて高くなるように設定するために、薄い絶縁膜を介して電荷を放出することが可能となる(図14(e)を参照)。そのため、本発明によるデバイスでは、消去電圧を小さくでき、消去速度を高速にすることが可能となる。
【0143】
MOS型半導体メモリ装置606における情報の書き込み、読み出し、消去の方法は限定されるものではなく、上記とは異なる方式で書き込み、読み出しおよび消去を行ってもよい。また、第1のソース・ドレイン104と第2のソース・ドレイン105を固定せず、交互にソースまたはドレインとなるように機能させて1メモリセルで2ビット以上の情報の書き込み・読み出しを行えるようにすることで大容量化することもできる。
【0144】
本実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置606は、第1〜第5の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601〜605と同様に、従来のMOS型半導体メモリ装置に比べて、データ保持特性の向上と書き込み動作速度の高速化と低消費電力化と信頼性向上とが同時に実現された優れたMOS型半導体メモリ装置である。なお、本実施の形態にかかるMOS型半導体メモリ装置606は、第1の実施の形態において説明した手順に準じて製造できる。
【0145】
以上、第1〜第6の実施の形態に関して述べたように、本発明は、絶縁膜中に存在する電荷によってメモリセルのしきい値が変化する範囲において種々変形して用いることができる。例えば、FNトンネル現象、ホットエレクトロン注入現象、ホットホール注入現象、光電効果等々の物理現象を用いて情報の書き込み、読み出し、消去を行うことができる。
【0146】
次に、再び図14を参照しながら上記実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の作用について説明する。図14(a)〜(c)は、従来のMOS型半導体メモリ装置の書き込み時、消去時およびデータ保持状態におけるエネルギーダイアグラムを模式的に示したものである。また、同図(d)〜(f)は、本発明のMOS型半導体メモリ装置の書き込み時、消去時およびデータ保持状態におけるエネルギーダイアグラムを模式的に示したものである。なお、第1〜第6の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置では、電荷は第1の絶縁膜から第5の絶縁膜の間に、ある分布で保持されることになるが、主として第3の絶縁膜内またはその界面付近を中心とする領域が電荷蓄積の中心を担う部分であることから、説明の便宜上、この部分を図14では「電荷蓄積領域」と表現している。
【0147】
シリコン基板と電荷蓄積領域との間で電子が移動する確率は、エネルギー障壁EBの大きさ(つまり、エネルギー障壁EBの高さHと幅T)に反比例する。第1の絶縁膜のバンドギャップを大きくすると、エネルギー障壁EBの高さHが高くなることから、シリコン基板側と電荷蓄積層側との間の電子の移動が制限される。また、第1の絶縁膜の膜厚を厚くした場合には、幅Tが大きくなることから、エネルギー障壁EBも大きくなる。このように、第1の絶縁膜の膜厚を増加させることは、電荷蓄積領域側に保持された電子が第1の絶縁膜を介してシリコン基板側へ抜け出ることを防止する上で効果的な方法である。従って、MOS型半導体メモリ装置において、電荷保持能力を向上させるためには、第1の絶縁膜のバンドギャップを大きく、かつ膜厚を厚くして、図14(c)に示したように、第1の絶縁膜によるエネルギー障壁EBの高さHと幅Tを大きくすればよい。
【0148】
しかし、第1の絶縁膜の膜厚を増加させると、例えば書き込み時にトンネル効果によるシリコン基板から電荷蓄積領域への電子の注入も起こりにくくなってしまい、図14(a)に示したように、書き込み時に大きな書き込み電圧を印加しなければならなくなる。また、消去時にも同図(b)に示したように大きな消去用電圧が必要になる。書き込み電圧と消去用電圧を下げるためには、第1の絶縁膜のバンドギャップを小さく、かつ膜厚を薄くすればよいが、そうするとエネルギー障壁EBも小さくなるため、データ保持特性が低下してしまう。
【0149】
本発明では、上記第1〜第6の実施の形態に例示したように、大きなバンドギャップを有する第1の絶縁膜および第5の絶縁膜に隣接して、これらに比べて小さなバンドギャップを有する第2および第4の絶縁膜を設けた。このようなエネルギーバンド構造を採用することにより、図14(d)に示したように、書き込み時に、シリコン基板側から電子がバンドギャップの大きな第1の絶縁膜を通過して電荷蓄積領域へ移動する際には、エネルギー障壁EBの幅は第1の絶縁膜相当のTでよく、低い書き込み電圧でも電子の移動がスムーズに行われる。消去時も、図14(e)に示したように、電荷蓄積領域側からシリコン基板側へ電子が通過する際のエネルギー障壁EBの幅はTでよく、低い消去用電圧でも電子の移動がスムーズに行われる。なお、図示は省略するが、電荷蓄積領域から第5の絶縁膜を介してゲート電極103側へ電子を抜き出す場合も同様である。一方で、図14(f)に示したように、電荷蓄積領域に電子を保持した状態では、第1の絶縁膜(第5の絶縁膜)だけでなく、第2の絶縁膜(第4の絶縁膜)も含めてエネルギー障壁EBとなることから幅Tは大きくなり、第1の絶縁膜(第5の絶縁膜)の膜厚を厚くしなくても、電荷蓄積領域から電荷が抜け出ることが防止され、優れた電荷保持特性が得られるのである。
【0150】
また、上記第1〜第6の実施の形態においては、絶縁膜の材質を変えることによりバンドギャップの大きさを制御した。しかし、絶縁膜の材質を変えることなく、プラズマ処理装置100におけるプラズマCVDの条件を変化させることによって、バンドギャップの大きさが異なる絶縁膜を順次積層形成することも可能である。すなわち、プラズマ処理装置100においては、窒化珪素膜を成膜する際のプラズマCVD処理の条件、特に圧力条件を選定することにより、形成される窒化珪素膜のバンドギャップを所望の大きさにコントロールすることができる。このことを実験データに基づいて説明する。図15および図16は、プラズマ処理装置100によりプラズマCVDを実施し、単膜の窒化珪素膜を形成した場合の窒化珪素膜のバンドギャップと処理圧力との関係を示している。図15は、窒素含有ガスとしてNHガス、シリコン含有ガスとしてSiガスを使用した場合の結果であり、図16は、窒素含有ガスとしてNガス、シリコン含有ガスとしてSiガスを使用した場合の結果である。プラズマCVD条件は以下のとおりである。
【0151】
[共通条件]
処理温度(載置台):400℃
マイクロ波パワー:2kW(パワー密度1.02W/cm;透過板の面積あたり)
【0152】
[NH/Si系]
処理圧力;13.3Pa(100mTorr)〜133.3Pa(1000mTorr)
Arガス流量;200mL/min(sccm)
NHガス流量;200mL/min(sccm)
Siガス流量;4または8mL/min(sccm)
【0153】
[N/Si系]
処理圧力;2.7Pa(20mTorr)〜66.7Pa(500mTorr)
Arガス流量;200mL/min(sccm)
ガス流量;200mL/min(sccm)
Siガス流量;2、4または8mL/min(sccm)
【0154】
なお、窒化珪素膜のバンドギャップは、薄膜特性測定装置n&k Analyzer(商品名;n&kテクノロジー社製)を用いて計測した。
【0155】
図15に示したように、NH/Si系の成膜原料ガスを使用したプラズマCVDでは、処理圧力を13.3Pa〜133.3Paの範囲内で変化させた結果、成膜される窒化珪素膜のバンドギャップが約5.1eVから5.8eVの範囲内で変化した。つまり、Si流量を一定にして処理圧力のみを変化させることによって、容易に所望のバンドギャップを有する窒化珪素膜を形成することができる。この場合、処理圧力を主として制御し、必要に応じてSi流量を従として制御することも出来る。例えば、Si流量は、3mL/min(sccm)以上40mL/min(sccm)以下の範囲内が好ましく、3mL/min(sccm)以上20mL/min(sccm)以下の範囲内がより好ましい。NH流量は、50mL/min(sccm)以上1000mL/min(sccm)以下の範囲内が好ましく、50mL/min(sccm)以上500mL/min(sccm)以下の範囲内がより好ましい。さらに、SiガスとNHガスとの流量比(Si/NH)は、0.015以上0.2以下の範囲内が好ましく、0.015以上0.1以下の範囲内がより好ましい。
【0156】
また、図16に示したように、N/Si系の成膜原料ガスを使用したプラズマCVDでは、処理圧力を2.7Pa〜66.7Paの範囲内で変化させた結果、成膜される窒化珪素膜のバンドギャップが約4.9eV以上5.8eV以下の範囲内で変化した。また、処理圧力が2.7Paまたは66.7Paでは、Siガスの流量を変化させることによっても、バンドギャップの大きさを変化させることができた。この場合、SiガスとNガスとの流量比(Si/N)は、0.01以上0.2以下の範囲内が好ましく、0.01以上0.1以下の範囲内がより好ましい。
【0157】
以上のように、処理圧力と原料ガスの流量比を制御することにより、4.9eV以上のバンドギャップを有する窒化珪素膜を形成することが出来る。
【0158】
なお、比較のため、同様に処理圧力を変化させてLPCVDにより窒化珪素膜を形成したが、バンドギャップは4.9eV〜5eVと0.1eVの範囲内の変化にとどまり、LPCVDではバンドギャップの制御は困難であった。
【0159】
以上のように、プラズマ処理装置100を用いるプラズマCVD処理において、成膜されるバンドギャップの大きさを決定する主な要因は処理圧力である。従って、プラズマ処理装置100を用いて、他の条件は一定にし、処理圧力のみを変化させることにより、相対的にバンドギャップの大きな窒化珪素膜と、小さな窒化珪素膜を容易に形成できることが確認された。
【0160】
[バンドギャップの大きな膜を形成する場合]
成膜する窒化珪素膜のバンドギャップを大きくする(例えば、バンドギャップを5eV〜7eVの範囲内にする)には、次に示す条件でプラズマCVD処理を行うことが好ましい。
【0161】
窒素含有ガスとしてNHガス、シリコン含有ガスとしてSiガスなどのシラン系ガスを使用する場合は、処理圧力を1〜1333Paの範囲内にすることが好ましく、1〜133Paの範囲内にすることがより好ましい。なお、この場合の全ガス流量に対するNHガスの流量比率は10〜99.99%の範囲内、好ましくは90〜99.9%の範囲内、全ガス流量に対するSiガスの流量比率は、0.01〜90%の範囲内、好ましくは0.1〜10%の範囲内である。このとき、SiガスとNHガスとの流量比(Siガス流量/NHガス流量)は、窒化珪素膜の電荷のトラップ量を多くし、書込み速度および消去速度を速くし、かつ電荷の保持性能を高くする観点から、0.015〜0.2の範囲内とすることが好ましい。また、希ガスの流量は20〜2000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは20〜1000mL/min(sccm)の範囲内、NHガスの流量は20〜3000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは20〜1000mL/min(sccm)の範囲内、Siガスの流量は0.1〜50mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは0.5〜10mL/min(sccm)の範囲内から、上記流量比率になるように設定することができる。
【0162】
また、窒素含有ガスとしてNガス、シリコン含有ガスとしてSiガスなどのシラン系ガスを使用する場合は、処理圧力を1〜1333Paの範囲内にすることが好ましく、1〜133Paの範囲内にすることがより好ましい。なお、この場合の全ガス流量に対するNガスの流量比率は10〜99.99%の範囲内、好ましくは90〜99.99%の範囲内、全ガス流量に対するSiガスの流量比率は、0.01〜90%の範囲内、好ましくは0.01〜10%の範囲内である。このとき、SiガスとNガスとの流量比(Siガス流量/Nガス流量)は、窒化珪素膜の電荷のトラップ量を多くし、書込み速度および消去速度を速くし、かつ電荷の保持性能を高くする観点から、0.01〜0.2の範囲内とすることが好ましい。また、希ガスの流量は20〜3000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは20〜1000mL/min(sccm)の範囲内、Nガスの流量は50〜3000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは200〜1500mL/min(sccm)の範囲内、Siガスの流量は0.1〜50mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは0.5〜5mL/min(sccm)の範囲内から、それぞれ上記流量比率になるように設定することができる。
【0163】
[バンドギャップの小さな膜を形成する場合]
成膜する窒化珪素膜中のバンドギャップを小さくする(例えば、バンドギャップを2.5〜5eV未満の範囲内にする)には、次に示す条件でプラズマCVD処理を行うことが好ましい。
【0164】
窒素含有ガスとしてNHガス、シリコン含有ガスとしてSiガスなどのシラン系ガスを使用する場合は、処理圧力を1〜1333Paの範囲内にすることが好ましく、1〜133Paの範囲内にすることがより好ましい。なお、この場合の全ガス流量に対するNHガスの流量比率は10〜99.99%の範囲内、好ましくは90〜99.9%の範囲内、全ガス流量に対するSiガスの流量比率は、0.001〜10%の範囲内、好ましくは0.01〜10%の範囲内である。このとき、SiガスとNHガスとの流量比(Siガス流量/NHガス流量)は、窒化珪素膜の電荷のトラップ量を多くし、書込み速度および消去速度を速くし、かつ電荷の保持性能を高くする観点から、0.015〜0.2の範囲内とすることが好ましい。また、希ガスの流量は20〜2000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは200〜1000mL/min(sccm)の範囲内、NHガスの流量は20〜1000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは200〜800mL/min(sccm)の範囲内、Siガスの流量は0.5〜50mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは0.5〜10mL/min(sccm)の範囲内から、それぞれ上記流量比率になるように設定することができる。
【0165】
また、窒素含有ガスとしてNガス、シリコン含有ガスとしてSiガスなどのシラン系ガスを使用する場合は、処理圧力を1〜1333Paの範囲内にすることが好ましく、1〜133Paの範囲内にすることがより好ましい。なお、この場合の全ガス流量に対するNガスの流量比率は10〜99.99%の範囲内、好ましくは90〜99.9%の範囲内、全ガス流量に対するSiガスの流量比率は、0.01〜90%の範囲内、好ましくは0.1〜10%の範囲内である。このとき、SiガスとNガスとの流量比(Siガス流量/Nガス流量)は、窒化珪素膜の電荷のトラップ量を多くし、書込み速度および消去速度を速くし、かつ電荷の保持性能を高くする観点から、0.01〜0.2の範囲内とすることが好ましい。また、希ガスの流量は20〜3000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは200〜1000mL/min(sccm)の範囲内、Nガスの流量は20〜3000mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは200〜2000mL/min(sccm)の範囲内、Siガスの流量は0.5〜50mL/min(sccm)の範囲内、好ましくは0.5〜10mL/min(sccm)の範囲内から、それぞれ上記流量比率になるように設定することができる。
【0166】
また、上記いずれの場合も、プラズマCVD処理の処理温度は、載置台2の温度を300℃以上、好ましくは400〜600℃に設定することが好ましい。
【0167】
上記バンドギャップを大きくする場合の条件と、バンドギャップを小さくする場合の条件と、で交互にプラズマCVD処理を行なうことにより、バンドギャップが異なる窒化珪素膜を交互に堆積させることができる。特に、処理圧力のみによってバンドギャップの大小を容易に制御できることから、異なるバンドギャップを有する窒化珪素膜の積層体を形成する場合に連続的な成膜が可能になり、プロセス効率を向上させる上で極めて有利である。
【0168】
また、処理圧力の調節のみによって窒化珪素膜のバンドギャップが容易に調整可能になることから、様々なバンドギャップ構造の絶縁膜積層体を簡単に製造できる。そのため、優れたデータ保持特性と、高速のデータ書換え性能と、低消費電力での動作性能と、高い信頼性と、を同時に兼ね備えたMOS型半導体メモリ装置を製造するためのプロセスに好ましく適用できるものである。
【0169】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置601の絶縁膜積層体102bを形成する場合を例に挙げて、プラズマCVD処理について説明する。
【0170】
次に、MOS型半導体メモリ装置601(図1参照)の絶縁膜積層体102aを製造する場合を例に挙げ、圧力条件を変化させて行われるMOS型半導体メモリ装置の製造方法について説明を行う。ここでは代表的な手順の一例を挙げて説明する。なお、第1の絶縁膜111および第5の絶縁膜115の形成は、第1の実施の形態で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0171】
第1の絶縁膜111の上に、プラズマ処理装置100を用いプラズマCVD法によって第2の絶縁膜112、第3の絶縁膜113および第4の絶縁膜114を順次形成する。第2の絶縁膜112を形成する場合は、第1の絶縁膜111に比べてバンドギャップが小さくなる条件でプラズマCVDを行う。第3の絶縁膜113を形成するときは、第2の絶縁膜112に比べてバンドギャップが小さくなる条件でプラズマCVDを行う。第4の絶縁膜114を形成する場合は、第3の絶縁膜113に比べてバンドギャップが大きくなる条件でプラズマCVDを行う。図1に示した例では、第2の絶縁膜112と第4の絶縁膜114のバンドギャップの大きさが同じになるように、同じプラズマCVD条件で絶縁膜の成膜を行う。ただし、第2の絶縁膜112および第4の絶縁膜114のバンドギャップ112a,114aは異なっていてもよい。各膜のバンドギャップの大きさは、前記のとおり、シラン系ガスの流量を一定にしてプラズマCVD処理の圧力条件のみを変化させることにより容易に制御できる。
【0172】
以上のような圧力制御による絶縁膜積層体の連続的な形成は、例えば、第2の実施の形態〜第6の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置の製造にも同様に適用可能である。
【0173】
また、プラズマ処理装置100を用いてプラズマCVDを行う際に、1層の絶縁膜を形成する途中で、プラズマCVDの処理圧力を徐々に変化させることも可能である。例えば、第1の実施の形態に係る図1のMOS型半導体メモリ装置601を製造する過程で、第3の絶縁膜113を形成する際に、例えば図15に示したようにシラン系ガスの流量を一定にして処理圧力を少しずつ段階的に上昇または下降させたり、あるいは、例えば図16に示したように、処理圧力を一定にしてシラン系ガスの流量を徐々に増減させたりすることにより、例えば図17に示したようなエネルギーバンド構造を持つMOS型半導体メモリ装置を形成することができる。この場合、各処理圧力段階あるいは各ガス流量段階で成膜される窒化珪素膜の膜厚が同じになるようにすることが好ましい。図17では、第3の絶縁膜113を形成する過程で、バンドギャップ113aが少しずつ大きくなるように、処理圧力を変化させた例を示している。なお、図17とは逆に、第3の絶縁膜113を形成する過程で、バンドギャップ113aが少しずつ小さくなるようにすることも可能である。
【0174】
[メモリセルアレイの構成例]
次に、図18〜図27を参照して、本発明のMOS型半導体メモリ装置を適用可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)のメモリセルアレイの構成について説明する。上記第1〜第6の実施の形態に記載されたMOS型半導体メモリ装置を行列状に配置することにより、メモリセルアレイを形成することができる。メモリセルアレイの構造は特に限定されるものではなく、例えばNOR型、NAND型などを適宜採用することができる。
【0175】
図18は、本発明の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置を有するメモリセルを直列に接続したNAND型のメモリセルアレイ701の構成例を示している。図19は、図18におけるA−A線矢視の断面図である。また、図20は、図18に示したメモリセルアレイ701の等価回路図である。
【0176】
本実施の形態では、図18に示したように、各ビット線BL1,BL2…に4個のメモリセル211〜214が直列に、かつ隣接するメモリセルがソース拡散層およびドレイン拡散層を共有する形で接続されている。このように直列に接続されたメモリセルがさらに多数配列されてNAND型のメモリセルアレイ701が構成される。
【0177】
図19に断面構造を示したように、n型シリコン基板201には、pウェル202が形成され、このpウェル202上にメモリセル211〜214が直列に配列されている。配列された4個のメモリセル211〜214の一方の端には選択ゲート電極221が設けられ、他方の端には、選択ゲート電極222が設けられている。pウェル202に設けられたn型拡散層250は、各メモリセル211〜214のソース、ドレインとなる。なお、各メモリセル211〜214は、p型シリコン基板やp型シリコン層に形成されていてもよい。
【0178】
各メモリセル211〜214は、pウェル202上に形成された第1の絶縁膜231と、第1の絶縁膜231上に形成された第2の絶縁膜232と、第2の絶縁膜232上に形成された第3の絶縁膜233と、第3の絶縁膜233上に形成された第4の絶縁膜234と、第4の絶縁膜234上に形成された第5の絶縁膜235と、第5の絶縁膜235の上に形成されたゲート電極240を有している。
【0179】
各メモリセル211〜214は、例えばCVD法等の方法で堆積させた絶縁膜260により覆われ、その上にビット線(BL1,BL2…)となるAl等の金属製の配線270が設けられている。配線270は、コンタクト部271でn型拡散層250に接続されている。
【0180】
メモリセルアレイ701の一端のドレイン側は、選択ゲート221を介してビット線BL1,BL2…に接続され、他端のソース側は選択ゲート222を介して共通ソース線(接地線)280に接続されている。各メモリセルのゲート電極240は、ビット線BL1,BL2…と交差する方向に配設されてワード線(WL1,WL2,WL3,WL4)を構成している。
【0181】
なお、図19では、第1〜第5の絶縁膜231〜235とゲート電極240とを有する積層構造を示したが、各メモリセル211〜214の構成は、上記第1〜第6の実施の形態におけるMOS型半導体メモリ装置601〜606と同様にすることができる。すなわち、例えば本実施の形態における第1〜第5の絶縁膜231〜235を、第1〜第4の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置601〜604における絶縁膜積層体102a〜102dと同様に構成にしてもよいし、あるいは、第5の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置605における絶縁膜積層体102eのように、さらに多くの絶縁膜を有する構成としてもよい。また、本実施の形態においても、第6の実施の形態のMOS型半導体装置606のように、上下にゲート電極を有する構成を採用してもよい。
【0182】
また、本実施の形態では、4個のメモリセルを1つの単位として多数の単位からメモリセルアレイ701を構成した。しかし、より多くの数のメモリセルを1単位としてメモリセルアレイ701を形成することもできる。
【0183】
図21〜図23は、本発明の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置を並列に接続したNOR型のメモリセルアレイの構成例を示している。図21は、NOR型のメモリセルアレイ702の平面図であり、図22は、図21におけるB−B線矢視の断面図を示す。また、図23は、図21のメモリセルアレイ702の等価回路図である。
【0184】
本実施の形態では、ビット線BL1,BL2…に並列に接続されたメモリセル311,312…,321,322…が多数マトリックス状に配列されてNOR型のメモリセルアレイ702が構成される。
【0185】
図22に断面構造を示したように、n型シリコン基板301にpウェル302が形成され、このpウェル302上にメモリセル311,312…,321,322…が形成されている。各メモリセルは、pウェル302上に形成された第1の絶縁膜331と、第1の絶縁膜331上に形成された第2の絶縁膜332と、第2の絶縁膜332上に形成された第3の絶縁膜333と、第3の絶縁膜333上に形成された第4の絶縁膜334と、第4の絶縁膜334上に形成された第5の絶縁膜335と、第5の絶縁膜335の上に形成されたゲート電極340を有している。pウェル302に設けられたn型拡散層350は、各メモリセルのソース、ドレインとなる。なお、各メモリセルは、p型シリコン基板やp型シリコン層に形成されていてもよい。
【0186】
各メモリセルは、例えばCVD法等の方法で堆積させた絶縁膜360により覆われ、その上にAl等の金属製の配線370が設けられている。配線370は、コンタクト部371でn型拡散層350に接続されている。各メモリセル311,312…,321,322…のゲート電極340は、ビット線BL1,BL2…と交差する方向に配設されたワード線WL1,WL2…と接続している。
【0187】
なお、図22では、第1〜第5の絶縁膜331〜335とゲート電極340との積層構造を有するMOS型メモリ構造を示したが、各メモリセル311,312…,321,322…の構成は、上記第1〜第6の実施の形態におけるMOS型半導体メモリ装置601〜606と同様にすることができる。すなわち、例えば本実施の形態における第1〜第5の絶縁膜331〜335を、第1〜第4の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置601〜604における絶縁膜積層体102a〜102dと同様に構成してもよいし、あるいは、第5の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置605における絶縁膜積層体102eのように、さらに多くの絶縁膜を有する構成としてもよい。また、本実施の形態においても、第6の実施の形態のMOS型半導体装置606のように、上下にゲート電極を有する構成を採用してもよい。
【0188】
[縦型メモリセルの構成例]
本発明のMOS型半導体メモリ装置を用いて、縦型構造の半導体メモリセルを構成することもできる。図24は縦型メモリセルの平面図であり、図25は、図24におけるC-C線矢視の断面図である。なお、図24には、4つの縦型メモリセル400を示している。
【0189】
本実施の形態では、第1の導電型(例えばp型)のシリコン基板401を用いる。シリコン基板401には、格子状の溝402により分離された複数のシリコン柱403が配列されている。各縦型メモリセル400は、各シリコン柱403を中心に形成されている。すなわち、p型シリコン柱403の周囲を取り囲むように、第1の絶縁膜411を介して、第2の絶縁膜412、第3の絶縁膜413、第4の絶縁膜414および第5の絶縁膜415がこの順に形成され、さらにその外側にゲート電極420が形成されている。そして、各縦型メモリセル400を覆うように、溝402には所定の厚みで絶縁膜404が形成されている。なお、シリコン柱403は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。
【0190】
また、各p型シリコン柱403の上部には、第2の導電型としてn型拡散層のドレイン431が形成されている。また、p型シリコン柱403の下方には、n型拡散層のソース432が形成されている。このように、縦型メモリセル400は、MOSFET構造をなしている。
【0191】
本実施の形態において、ゲート電極420は、図示しないワード線に接続している。縦型メモリセル400は絶縁膜404により覆われ、その上にメモリセルのドレイン431を共通接続するビット線BLとなるAl等の金属配線440が設けられている。金属配線440は、ワード線(図示省略)と交差する方向に延び、コンタクト部441においてドレイン431に接続している。
【0192】
本実施の形態に係る縦型メモリセル400では、図示しない選択ワード線を介してゲート電極420に正の電圧を印加し、選択ビット線BLに0Vを印加することにより、選択された縦型メモリセル400においてシリコン基板401のシリコン柱403から電子をトンネル現象によって絶縁膜積層体に注入し、データの書き込みを行う。データが書き込まれた状態の縦型メモリセル400は、しきい値電圧が変化するので、読み出しは、ワード線に所定の読み出し電圧を印加し、縦型メモリセルに電流が流れるか否かでデータの有無(「0」または「1」)を判断することができる。
【0193】
なお、本実施の形態の各縦型メモリセル400において、第1〜第5の絶縁膜411〜415およびゲート電極420は、シリコン柱403の側壁を取り囲むように形成してもよいし、あるいは、シリコン柱403の側壁の一部分に形成してもよい。
【0194】
また、本実施の形態において電荷を蓄積する領域となる絶縁膜積層体(第1〜第5の絶縁膜411〜415)は、例えば第1〜第4の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置601〜604の絶縁膜積層体102a〜102dの積層方向を横にして配置した構造にしてもよいし、あるいは、第5の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置605のように、さらに多くの絶縁膜を有する絶縁膜積層体102eの積層方向に横にして配置した構成としてもよい。また、本実施の形態においても、第6の実施の形態のMOS型半導体装置606のように、二層のゲート電極を設け、それらを横方向に積層した構成にしてもよい。
【0195】
[積層型メモリセルアレイの構成例]
本発明のMOS型半導体メモリ装置を適用した縦型構造の半導体メモリセルを半導体基板に対して垂直方向に積層することにより、積層型メモリセルアレイを形成することもできる。図26は、縦型メモリセルを積層した積層型メモリセルアレイ703の平面図であり、図27はそのD−D線矢視における断面図である。なお、図26には、4つの積層型メモリセルアレイ703を示している。
【0196】
図27に示したように、本実施の形態にかかる積層型メモリセルアレイ703では、第1の導電型(例えばp型)のシリコン基板501を用いる。シリコン基板501には、格子状の溝502により分離された複数のシリコン柱503が配列され、各シリコン柱503を中心にそれぞれ縦型メモリセル500が縦に複数段(図27では2段のみ図示)配列されて、積層型メモリセルアレイ703が形成されている。シリコン基板501に形成された溝502には、縦型メモリセル500を覆うように、所定の厚みで絶縁膜504が形成されている。なお、シリコン柱503は、半導体基板内に形成されたpウェルやp型シリコン層に形成されていてもよい。
【0197】
各縦型メモリセル500は、シリコン柱503の周囲を取り囲むように形成されている。すなわち、縦型メモリセル500は、シリコン柱503の側方に、第1の絶縁膜511、第2の絶縁膜512、第3の絶縁膜513、第4の絶縁膜514および第5の絶縁膜515が順に形成され、さらにその外側にゲート電極520が形成された積層構造を有している。シリコン柱503の上部と下部の側方には、それぞれ絶縁膜505を介して選択ゲート521,522が設けられている。また、シリコン柱503の上部には、ドレインとなる第2の導電型のn型拡散層531が形成されている。シリコン柱503の側部には、隣接する縦型メモリセル500どうしを直列に接続するソース、ドレインとなるn型拡散層532が複数設けられており、さらに、シリコン柱503の下方には、各縦型メモリセル500に共通したソースとして、n型拡散層533が形成されている。このように、縦型メモリセル500は、MOSFET構造をなしている。なお、本実施の形態の変形例として、n型拡散層532は設けなくてもよい。
【0198】
このように、本実施の形態の積層型メモリセルアレイ703では、複数の縦型メモリセル500を、シリコン基板501上に形成した一つのシリコン柱503で垂直方向に直列に接続した構造である。縦型メモリセル500のゲート電極520は、行方向に連続的に配設されてワード線(図示省略)を形成している。また、縦型メモリセル500を覆う絶縁膜504の上に、縦型メモリセル500のドレイン531を共通接続するビット線BLとなるAl等の金属配線540が設けられている。金属配線540は、ワード線と交差する方向に延び、コンタクト部541においてドレイン531に接続している。そして、ドレイン側は選択ゲート521を介してビット線BLに接続され、ソース側は選択ゲート522を介して共通ソース線(n型拡散層533)に接続されている。この積層型メモリセルアレイ703の等価回路図は、図18に示したNAND型メモリセルアレイと同様である。
【0199】
なお、各縦型メモリセル500において、第1〜第5の絶縁膜511〜515およびゲート電極520は、シリコン柱503の側壁を取り囲むように形成してもよいし、シリコン柱503の側壁の一部分に形成してもよい。
【0200】
また、各縦型メモリセル500において電荷を蓄積する領域となる絶縁膜積層体(第1〜第5の絶縁膜511〜515)は、例えば第1〜第4の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置601〜604の絶縁膜積層体102a〜102dの積層方向が横になるように配置した構造にしてもよいし、あるいは、第5の実施の形態のMOS型半導体メモリ装置605のように、さらに多くの絶縁膜を有する絶縁膜積層体102eを積層方向が横になるように配置した構成としてもよい。また、本実施の形態においても、第6の実施の形態のMOS型半導体装置606のように、二層のゲート電極を設け、それらを横方向に積層した構成にしてもよい。
【0201】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、以上に挙げた各実施形態では、nチャネル型のMOS型半導体メモリ装置を例に挙げたが、pチャネル型の半導体メモリ装置の場合は、不純物導電型を逆にすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1に示したMOS型半導体メモリ装置のエネルギーバンド図である。
【図3】絶縁膜の形成に適したプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す説明図である。
【図5】図4に示したMOS型半導体メモリ装置のエネルギーバンド図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す説明図である。
【図7】図6に示したMOS型半導体メモリ装置のエネルギーバンド図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す説明図である。
【図9】図8に示したMOS型半導体メモリ装置のエネルギーバンド図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す説明図である。
【図11】図10に示したMOS型半導体メモリ装置のエネルギーバンド図である。
【図12】図10に示したMOS型半導体メモリ装置の別の例のエネルギーバンド図である。
【図13】本発明の第6の実施の形態に係るMOS型半導体メモリ装置の概略構成を示す説明図である。
【図14】従来技術との対比において本発明の作用を説明する原理図であり、(a)〜(c)は従来技術におけるエネルギーダイアグラムを示し、(d)〜(f)は本発明におけるエネルギーダイアグラムを示す。
【図15】成膜原料ガスとしてアンモニアを用いたプラズマCVDにおける処理圧力とバンドギャップとの関係を示すグラフ図面。
【図16】成膜原料ガスとして窒素を用いたプラズマCVDにおける処理圧力とバンドギャップとの関係を示すグラフ図面。
【図17】図1に示したMOS型半導体メモリ装置の変形例を示すエネルギーバンド図である。
【図18】本発明のMOS型半導体メモリ装置を適用可能なNAND型メモリセルアレイの平面図である。
【図19】図18におけるA−A線矢視の断面図である。
【図20】図18に示したメモリセルアレイの等価回路図である。
【図21】本発明のMOS型半導体メモリ装置を適用可能なNOR型メモリセルアレイの平面図である。
【図22】図21におけるB−B線矢視の断面図である。
【図23】図21に示したメモリセルアレイの等価回路図である。
【図24】本発明のMOS型半導体メモリ装置を適用可能な縦型メモリセルアレイの平面図である。
【図25】図24におけるC−C線矢視の断面図である。
【図26】本発明のMOS型半導体メモリ装置を適用可能な積層型メモリセルアレイの平面図である。
【図27】図26におけるD−D線矢視の断面図である。
【符号の説明】
【0203】
1…チャンバー(処理室)、2…載置台、3…支持部材、5…ヒータ、12…排気管、14,15…ガス導入部、16…搬入出口、17…ゲートバルブ、18…ガス供給機構、19a…窒素含有ガス供給源、19b…Si含有ガス供給源、19c…不活性ガス供給源、24…排気装置、27…マイクロ波導入機構、28…透過板、31…平面アンテナ部材、32…マイクロ波放射孔、37…導波管、39…マイクロ波発生装置、50…制御部、100…プラズマ処理装置、101…シリコン基板、102a,102b,102c,102d,102e,102f…絶縁膜積層体、103…ゲート電極、104…第1のソース・ドレイン、105…第2のソース・ドレイン、111…第1の絶縁膜、112…第2の絶縁膜、113…第3の絶縁膜、114…第4の絶縁膜、115…第5の絶縁膜、601,602,603,604,605,606…MOS型半導体メモリ装置、W…半導体ウエハ(基板)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層とゲート電極との間に、電荷を蓄積する領域として複数の絶縁膜を積層した絶縁膜積層体を設けたMOS型半導体メモリ装置であって、
前記絶縁膜積層体を構成する絶縁膜のうち、前記半導体層に最も近い位置に設けられた絶縁膜および前記ゲート電極に最も近い位置に設けられた絶縁膜は、これらの間に介在する二以上の絶縁膜と比較して大きなバンドギャップを有していることを特徴とするMOS型半導体メモリ装置。
【請求項2】
前記絶縁膜積層体は、
前記半導体層に最も近い位置に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第4の絶縁膜と、
前記ゲート電極に最も近い位置に設けられ、前記第4の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第5の絶縁膜と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項3】
前記絶縁膜積層体は、
前記半導体層に最も近い位置に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜よりも小さなバンドギャップを有する第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第4の絶縁膜と、
前記ゲート電極に最も近い位置に設けられ、前記第4の絶縁膜よりも大きなバンドギャップを有する第5の絶縁膜と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項4】
前記第1の絶縁膜と前記第5の絶縁膜との間に、前記第2の絶縁膜、前記第3の絶縁膜および前記第4の絶縁膜を含む中間積層体が繰り返し形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項5】
前記第1の絶縁膜は、前記半導体層に接して設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項6】
前記第1の絶縁膜は、前記半導体層に接して設けられた絶縁層と、該絶縁層に接して設けられた電極層と、を介して設けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項7】
前記第1の絶縁膜と前記第5の絶縁膜が酸化珪素膜であり、前記第2の絶縁膜、前記第3の絶縁膜および前記第4の絶縁膜が、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜または金属酸化膜であることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項8】
前記第3の絶縁膜は、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、前記第2の絶縁膜との界面付近および前記第4の絶縁膜との界面付近に比べ、膜中央部のバンドギャップが大きいエネルギーバンド構造を有していることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項9】
前記第3の絶縁膜は窒化酸化珪素膜であり、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、膜中の窒素に対する酸素の組成比が、前記第2の絶縁膜との界面付近および前記第4の絶縁膜との界面付近に比べ膜中央部において大きい酸素濃度プロファイルを有していることを特徴とする請求項8に記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項10】
前記第3の絶縁膜は、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、前記第2の絶縁膜との界面付近および前記第4の絶縁膜との界面付近に比べ、膜中央部のバンドギャップが小さいエネルギーバンド構造を有していることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項11】
前記第3の絶縁膜は窒化珪素膜であり、前記半導体層側から前記ゲート電極側へ向かう膜の厚み方向に、膜中のシリコンに対する窒素の組成比が、前記第2の絶縁膜との界面付近および第4の絶縁膜との界面付近に比べ膜中央部において大きい窒素濃度プロファイルを有していることを特徴とする請求項10に記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項12】
前記第2の絶縁膜および前記第4の絶縁膜の膜厚が、前記第3の絶縁膜の膜厚に比べて薄いことを特徴とする請求項2ないし請求項11のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項13】
前記第1の絶縁膜と前記第5の絶縁膜の膜厚が0.5nm以上20nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2ないし12のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項14】
前記半導体層の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーが、前記第2の絶縁膜の伝導帯における電子ポテンシャルエネルギーに比べて、データ書き込み時には高く、データ読み出し時およびデータ保持時には低いことを特徴とする請求項2ないし13のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項15】
前記半導体層が柱状シリコン層であり、その側方に前記絶縁膜積層体および前記ゲート電極を設けた縦型積層構造を有することを特徴とする請求項2ないし14のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置。
【請求項16】
請求項1ないし請求項15のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置を直列に配列したことを特徴とするNAND型メモリセルアレイ。
【請求項17】
請求項1ないし請求項15のいずれかに記載のMOS型半導体メモリ装置を並列に配列したことを特徴とするNOR型メモリセルアレイ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−27134(P2009−27134A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92420(P2008−92420)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】