説明

内燃機関の排気還流装置

【課題】シリンダ内に供給されるEGRガスと空気との温度差の変化を緩和して燃焼悪化を抑制できる内燃機関の排気還流装置を提供する。
【解決手段】排気還流装置16は、シリンダ2に対して二つの吸気ポート8、9が設けられた内燃機関1に適用され、内燃機関1の排気通路7から取り出した排気の一部を吸気ポート9のみを経由させてシリンダ2内にEGRガスとして供給できる。EGRガスの温度を排気還流通路17に設けられた燃料添加弁20から燃料を噴射することにより調整して、吸気ポート9からシリンダ2に供給されるEGRガスの温度を、吸気ポート8からシリンダ2に供給される空気の温度に基づいて定められた目標温度になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路から取り出した排気の一部をEGRガスとしてシリンダ内に供給する内燃機関の排気還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一つのシリンダに対して二つの吸気ポートが設けられた内燃機関に適用され、二つの吸気ポートのうちの一方の吸気ポートのみを経由させてシリンダ内にEGRガスを供給できるようにした内燃機関の排気還流装置が知られている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2〜5が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開平5−18254号公報
【特許文献2】特開2004−34006号公報
【特許文献3】特開平11−303687号公報
【特許文献4】特開2002−89377号公報
【特許文献5】特開2004−270622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、一つのシリンダ内に、一方の吸気ポートを経由してEGRガスが供給されるとともに他方の吸気ポートを経由して空気が供給されるので、EGRガスの温度と空気の温度との温度差が変化するとシリンダ内でのEGRガスの分布が変化して燃焼悪化を招くおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、シリンダ内に供給されるEGRガスと空気との温度差の変化を緩和して燃焼悪化を抑制できる内燃機関の排気還流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関の排気還流装置は、一つのシリンダに対して複数の吸気ポートが設けられた内燃機関に適用され、前記内燃機関の排気通路から取り出した排気の一部を前記複数の吸気ポートのうちの一部の吸気ポートのみを経由させて前記シリンダ内にEGRガスとして供給できる内燃機関の排気還流装置において、前記一部の吸気ポートのみを経由して前記シリンダに供給されるEGRガスの温度であるEGRガス供給温度を調整できるEGRガス温度調整手段と、前記EGRガス供給温度が前記複数の吸気ポートのうちの残りの吸気ポートを経由して前記シリンダに供給される空気の温度を考慮して定められた目標温度となるように、前記EGRガス温度調整手段を制御するEGRガス温度制御手段と、を備えることにより上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
本発明の排気還流装置によれば、シリンダ内に供給されるEGRガスのEGRガス供給温度がシリンダ内に供給される空気の温度を考慮して定められた目標温度となるように制御されるので、シリンダ内に供給されるEGRガスと空気との温度差の変化を緩和することができる。その結果、シリンダ内にEGRガスを供給した際の燃焼悪化を抑制することができる。
【0008】
EGRガス温度調整手段はEGRガス供給温度を調整することができることを限度として種々の態様にて実現できる。例えば、EGRガスと冷媒との間で熱交換できる冷却装置を設けるとともにその冷却装置を迂回できるバイパス通路を設け、バイパス通路を通過するEGRガスの流入量を調整することによってEGRガス供給温度を調整することもできる。また、前記排気通路に接続されてEGRガスを導く排気還流通路を更に備え、前記EGRガス温度調整手段として、前記排気還流通路内に燃料を噴射できる燃料供給手段が設けられ、前記EGRガス温度制御手段は、前記EGRガス供給温度が前記目標温度よりも高い場合に前記EGR通路内に燃料が噴射されるように前記燃料供給手段を制御してもよい(請求項2)。この場合には、燃料供給手段が燃料を噴射して噴射燃料を排気還流通路内で気化させることにより、その気化潜熱を利用して排気還流通路内を流れるEGRガスを冷却することができる。気化潜熱を利用する場合は燃料の気化に要する時間が短いため、冷媒との熱交換を利用してEGRガスを冷却する場合と比べて短時間で冷却できる。従って、この態様によれば、EGRガス供給温度を応答性良く制御することができる。
【0009】
燃料供給手段が噴射すべき燃料供給量は適宜に設定すればよい。例えば、前記燃料供給手段が噴射すべき燃料供給量の複数の候補を、前記EGRガス供給温度を前記目標温度まで低下させるために必要な要求温度低下量に基づいて、前記排気通路から取り出される排気温度に基づいて、前記排気還流通路の所定位置の通路壁温度に基づいて、それぞれ算出する候補算出手段と、前記候補算出手段が算出した前記複数の候補のうちの最小値を前記燃料供給手段が噴射すべき燃料供給量として算出する燃料供給量算出手段と、を更に備えてもよい(請求項3)。気化する燃料が多いほどEGRガスの温度低下幅は拡大するが、燃料供給量が適量よりも過大になると、気化しきれなかった燃料が排気還流通路の通路壁に付着することによって排気還流通路の詰まりを引き起こすおそれがある。この態様によれば、複数の候補のなかの最小値が燃料供給量として算出されるので、燃料供給量が適量よりも過大になることを防止できる。これにより、通路壁への燃料付着による排気還流通路の詰まりを回避することが可能となる。この態様においては、前記排気還流通路の通路壁温度が所定値以下の場合に前記燃料供給手段による燃料噴射が禁止されるように前記燃料供給手段を制御する燃料供給禁止手段を更に備えてもよい(請求項4)。この場合には、通路壁温度が所定値以下の場合に強制的に燃料噴射が禁止されるので、排気還流通路の詰まりを確実に回避できる。
【0010】
本発明の排気還流装置の一態様においては、前記内燃機関は、前記シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁を有した圧縮着火型機関として構成されており、前記燃料供給手段による燃料噴射が行われた後に前記EGRガス供給温度が前記目標値を含む許容範囲内に収まっている場合、前記燃料噴射弁にて噴射された燃料の着火時期が早まることを防止できる所定操作を前記内燃機関に対して実行する早期着火防止手段を更に備えてもよい(請求項5)。燃料供給手段にて噴射された燃料は気化した後にEGRガスとともにシリンダ内に供給される。そのため、燃料噴射弁にてシリンダ内に燃料を噴射する前にシリンダ内の燃料濃度が高くなって圧縮行程における着火時期が早まるので、燃料供給手段にて燃料を供給しない通常時と比べて排気性能が悪化、即ち排気中の有害成分が増加するおそれがある。この態様によれば、着火時期が早まることを防止できる所定操作が内燃機関に対して実行されるので、燃料供給手段による燃料噴射に伴う排気性能の悪化を防止できる。所定操作としては着火時期が早まることを防止できる操作であればよい。
【0011】
例えば、前記内燃機関は、前記燃料噴射弁による燃料噴射を、所定時期に行われるメイン噴射と前記メイン噴射よりも少量の燃料にて前記所定時期よりも前に行われるパイロット噴射とに分割するパイロット噴射モードを実行でき、かつ前記メイン噴射及び前記パイロット噴射のそれぞれの燃料噴射時期とそれぞれの燃料噴射量とを変更できるように構成されており、前記早期着火防止手段は、前記所定操作として、前記パイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及び前記メイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作の少なくとも一つを前記内燃機関に対して実行してもよい(請求項6)。パイロット噴射の燃料噴射量の減量させる操作及びメイン噴射の着火時期の遅角させる操作はいずれも着火時期の早まりを抑える効果があるので、これらの操作の両方を行ってもよい。
【0012】
本発明の排気還流装置の一態様においては、前記内燃機関は、前記シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁を有した圧縮着火型内燃機関として構成されており、前記燃料供給手段による燃料噴射が行われた後に前記EGRガス供給温度が前記目標値を含む許容範囲の上限を超えている場合、前記燃料噴射弁からの噴射燃料によって前記シリンダ内に形成される混合気の分布が前記シリンダに供給されるEGRガスと吸気との温度差に伴って変化することを防止できる所定操作を前記内燃機関に対して実行する分布変化防止手段を更に備えてもよい(請求項7)。EGRガス供給温度が許容範囲の上限を超えている場合、シリンダに供給されるEGRガスと空気との温度差により、相対的に高温のEGRガスがシリンダ内の中央に偏る。これにより、シリンダ中央の雰囲気の温度が上昇するため燃料噴射弁から噴射された燃料噴霧の蒸発が早まる。そのため、シリンダの内周面付近まで混合気が到達し難くなってシリンダ内に形成される混合気の分布が変化するので、燃料供給手段にて燃料を供給しない通常時と比べて排気性能が悪化、即ち排気中の有害成分が増加するおそれがある。この態様によれば、混合気の分布の変化を防止できる所定操作が内燃機関に対して実行されるので、燃料供給手段による燃料噴射に伴う排気性能の悪化を防止できる。所定操作としては混合気の分布の変化を防止できる操作であればよい。
【0013】
例えば、前記内燃機関は、前記燃料噴射弁による燃料の噴射圧力を変更でき、前記燃料噴射弁による燃料噴射を、所定時期に行われるメイン噴射と前記メイン噴射よりも少量の燃料にて前記所定時期よりも前に行われるパイロット噴射とに分割するパイロット噴射モードを実行でき、かつ前記メイン噴射及び前記パイロット噴射のそれぞれの燃料噴射時期とそれぞれの燃料噴射量とを変更できるように構成されており、前記分布変化防止手段は、前記所定操作として、前記燃料噴射弁による燃料の噴射圧力を増圧させる操作、前記パイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及び前記メイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作の少なくとも一つを前記内燃機関に対して実行してもよい(請求項8)。燃料噴射弁による燃料の噴射圧力を増圧させる操作、パイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及びメイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作はいずれも混合気の分布の変化を抑える効果があるので、これらの操作のすべてを行ってもよいし、これらの操作から選ばれた二つの操作を行ってもよい。
【0014】
本発明の排気還流装置の一態様においては、前記内燃機関は、前記シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁を有した圧縮着火型内燃機関として構成されており、前記排気還流通路を流れるガスの流量を調整できる調整弁と、前記内燃機関の機関回転速度が減速中でかつ前記燃料噴射弁による燃料噴射が中断している時に前記調整弁を開き側に制御する通路壁温度制御手段と、を更に備えてもよい(請求項9)。この態様によれば、調整弁が開き側に制御されるときにシリンダを経由した空気が排気還流通路に導かれるので、排気通路の通路壁の温度を下げることができる。調整弁の開き側の開度は適宜に定めればよく、例えば調整弁を全開に制御してもよい。
【0015】
この態様において、前記内燃機関には、前記残りの吸気ポートを含む吸気通路に設けられたコンプレッサと、前記排気還流通路が接続される位置よりも下流側の前記排気通路に設けられたタービンと、最大開度から最小開度までの間で可動することにより前記タービンの入口を絞ることができる可動部材とを有し、前記コンプレッサと前記タービンとが一体回転可能に組み合わされた可変容量型のターボチャージャーが設けられており、前記通路壁温度制御手段は、前記内燃機関の機関回転速度が減速中でかつ前記燃料噴射弁による燃料噴射が中断している時に、前記調整弁が全開となり、かつ前記可動部材の開度が閉じ側となるように前記調整弁及び前記可動部材をそれぞれ制御してもよい(請求項10)。この場合は、可動部材の開度を閉じ側に制御することによってタービン上流の排気通路の圧力である背圧が上昇するため、排気還流通路の入口と出口との差圧を大きくすることができる。これにより、排気還流通路を通過する空気を増加させることができる。
【0016】
また、前記内燃機関には、前記内燃機関には、前記残りの吸気ポートを含む吸気通路に設けられたコンプレッサと、前記排気還流通路が接続される位置よりも下流側の前記排気通路に設けられたタービンと、最大開度から最小開度までの間で可動することにより前記タービンの入口を絞ることができる可動部材とを有し、前記コンプレッサと前記タービンとが一体回転可能に組み合わされた可変容量型のターボチャージャーが設けられており、前記通路壁温度制御手段は、前記内燃機関の機関回転速度が減速中でかつ前記燃料噴射弁による燃料噴射が中断している時に、前記調整弁が全開となり、かつ前記可動部材の開度が開き側となるように前記調整弁及び前記可動部材をそれぞれ制御してもよい(請求項11)。この場合は、可動部材の開度が開き側に制御することによって吸気通路内の圧力である過給圧が下がるため、排気還流通路の入口と出口との差圧を大きくすることができる。これにより、これにより、排気還流通路を通過する空気を増加させることができる。
【0017】
本発明の排気還流装置の一態様においては、前記EGRガス温度制御手段は、前記燃料供給手段が噴射した燃料によって冷却されたEGRガスが前記一部の吸気ポートを経由して前記シリンダに到達する到達時期が前記シリンダの吸気行程に同期するように、前記燃料供給手段による燃料の噴射時期を制御してもよい(請求項12)。冷却後のEGRガスがシリンダ内に供給されるまで排気還流通路内に留まっていると、一旦冷却されたEGRガスが排気還流通路の壁等から受熱することにより、冷却したEGRガスの温度が上昇してしまう。そのような温度上昇を避けるために燃料供給手段から多くの燃料を噴射させると燃料噴射量が増大する。この態様によれば、シリンダに供給されるEGRガスを狙い打ちして冷却できるので、結果として燃料供給手段による燃料噴射が間欠的なものとなる。その結果、燃料消費量が抑えられるためEGRガスの冷却効率が向上する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、シリンダ内に供給されるEGRガスのEGRガス供給温度がシリンダ内に供給される空気の温度を考慮して定められた目標温度となるように制御されるので、シリンダ内に供給されるEGRガスと空気との温度差の変化を緩和することができる。その結果、シリンダ内にEGRガスを供給した際の燃焼悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の形態)
図1は本発明の一形態に係る排気還流装置が適用された内燃機関の要部を示している。内燃機関1は不図示の車両に走行用動力源として搭載され、4つのシリンダ2が一列に並べられた直列4気筒の圧縮着火型のディーゼルエンジンとして構成されている。各シリンダ2は機関本体3に設けられており、各シリンダ2には不図示のピストンが往復運動自在に設けられ、ピストンの往復運動がクランクシャフト4の回転運動に変換されて出力される。各シリンダ2の天井面には燃料噴射弁5がその先端をシリンダ2内に臨ませるようにしてシリンダ2の中央部に設けられている。燃料噴射弁5は不図示のコモンレールに接続されて所定燃圧の燃料が供給されるようになっている。
【0020】
各シリンダ2には吸気通路6及び排気通路7が接続される。吸気通路6はシリンダ2毎に設けられた二つの吸気ポート8、9と、各吸気ポート8が接続される第1の吸気マニホールド10と、各吸気ポート9が接続される第2の吸気マニホールド11と、これらの吸気マニホールド10、11を連通させる連通路12とを含んでいる。一方、排気通路7はシリンダ2毎に設けられた二つの排気ポート13と、各排気ポート13が接続される排気マニホールド14とを含んでいる。各吸気ポート8、9は不図示の吸気弁により、各排気ポート18は不図示の排気弁によりそれぞれ開閉される。吸気弁及び排気弁は不図示の動弁装置にてシリンダ2毎の開閉タイミングがクランク角にして180°CAずれるように開閉駆動される。
【0021】
内燃機関1には連通路12を開閉する開閉弁15が設けられている。開閉弁15によって連通路12が閉鎖されると、吸気通路6に導かれる空気は第1の吸気マニホールド10に導かれた後、吸気ポート8のみを経由してシリンダ2内に供給される。一方、開閉弁15によって連通路12が開通されると、吸気通路6に導かれる空気は第1の吸気マニホールド10及び第2の吸気マニホールド11のそれぞれへ導かれた後、二つの吸気ポート8、9を経由してシリンダ2内に供給される。二つの吸気ポート8、9を経由して所定のガスが吸入されることにより、シリンダ2内にはその中心線と交差する平面内を旋回するスワールが生成されるように、これらの吸気ポート8、9が構成されている。
【0022】
内燃機関1には排気通路7から取り出した排気の一部をEGRガスとしてシリンダ2内に供給する排気還流装置16が設けられている。排気還流装置16は排気マニホールド14と第2の吸気マニホールド11とを接続する排気還流通路17と、排気還流通路17を流れるガスの流量を調整できる調整弁としての排気還流弁18と、排気還流通路17を流れるガスを冷却するための冷却装置19とを備えている。上述した開閉弁15にて連通路12が閉鎖された状態で排気還流弁18が開かれることにより、排気通路7からEGRガスが取り出される。そのEGRガスは空気と混合されずに排気還流通路17、第2の吸気マニホールド11及び吸気ポート9を経由して各シリンダ2へ供給される。つまり、排気還流装置1はEGRガスを吸気ポート9のみを経由させてシリンダ2内に供給することができる。二つの吸気ポート8、9が本発明に係る複数の吸気ポートに相当し、吸気ポート9が本発明に係る一部の吸気ポートに、吸気ポート8が本発明に係る残りの吸気ポートにそれぞれ相当する。なお、開閉弁15にて連通路が開通された状態で排気還流弁18が開かれた場合には排気通路7から取り出されたEGRガスは二つの吸気ポート8、9を経由してシリンダ2内に供給される。以下の説明では、開閉弁15にて連通路12が閉鎖された状態を片ポート経由状態と称する場合がある。
【0023】
また、排気還流装置16は、EGRガスが片ポート経由状態でシリンダ2内に供給された際の温度(EGRガス供給温度)を調整するため、排気還流通路17内に燃料を噴射できる燃料供給手段としての燃料添加弁20を更に備えている。燃料添加弁20には所定燃圧の燃料が供給される。燃料添加弁20にて燃料が排気通路17内に噴射されることにより噴射燃料が気化し、その気化潜熱を利用してEGRガスを冷却することができる。排気還流通路17に噴射される燃料量が変化するとその燃料がEGRガスから奪う熱量が変わるので、燃料添加弁20による燃料噴射量を調整することによりEGRガス供給温度を調整することができる。つまり、燃料添加弁20は本発明に係るEGRガス温度調整手段として機能する。
【0024】
また、内燃機関1には、過給を行うための可変容型のターボチャージャー21が設けられている。ターボチャージャー21は吸気通路6に配置されたコンプレッサ21aと、排気還流通路17の接続位置17aよりも下流側の排気通路7に配置されたタービン21bとを有しており、コンプレッサ21aとタービン21bとは一体回転可能に組み合わされる。ターボチャージャー21はタービン21bの入口に設けられて最大開度から最小開度までの間で可動することによりその入口を絞ることができる可動部材としての可動ベーン21cを更に備えている。また、コンプレッサ21aよりも下流側の吸気通路6には加圧された空気を冷却するためのインタークーラ22が設けられている。
【0025】
図1に示すように、排気還流装置16の制御は、内燃機関1の運転状態を適正に制御するためのコンピュータとして設けられたエンジンコントロールユニット(ECU)30にて実施される。ECU30はマイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を備えていて、各種センサからの信号に基づいて内燃機関1の各部を制御する。例えば、ECU30は燃料噴射弁5を操作して燃料噴射量や燃料噴射時期の制御を行う他、開閉弁15を操作して吸気系の経路を切り替える制御やターボチャージャー21の可動ベーン21cの開度制御等を内燃機関1の運転状態に応じて実行する。ECU30に接続されるセンサとしては、内燃機関1の機関回転数(回転速度)に応じた信号を出力するクランク角センサ31や吸気通路6内を流れる空気の温度(吸気温)に応じた信号を出力する吸気温センサ32が設けられる。この他にも種々のセンサがECU30に接続されるが、これらは本発明の要旨と関連性しないため図示を省略する。
【0026】
以下、本発明に関連してECU30が実行する制御について説明する。図2はECU30が実行する排気還流制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU30のROMに保持されており、適時に読み出されて所定の演算間隔で繰り返し実行される。この制御ルーチンは上述した片ポート経由状態の場合に実施される。ECU30は、まずステップS1で内燃機関1の運転状態として例えば機関回転数Ne、燃料噴射量Q及び吸気温度Taをそれぞれ取得する。機関回転数Neはクランク角センサ31の信号に基づいて取得される。燃料噴射量Qとしては図2と並行して実行される燃料噴射制御(不図示)の演算結果が使用される。吸気温度Taは吸気温度センサ32からの信号に基づいて取得される。次に、ステップS2において、シリンダ2内に供給すべきEGRガスの流量(EGR量)を内燃機関1の運転状態に応じて算出する。次に、ステップS3において、ECU30は算出したEGR量が得られるように排気還流弁18の開度を制御する。
【0027】
次に、ECU30は片ポート経由状態でシリンダ2に供給されるEGRガスの温度(EGRガス供給温度)Tpを取得する。EGRガス供給温度Tpは内燃機関1の排気温度と機関回転数とに相関して変化するので、予め特定した相関関係に基づいて推定することができる。また、排気還流通路17に温度センサを設けてこれから直接的に取得することも可能である。次に、ステップS5において、EGRガス供給温度Tpの目標温度Ttrgを設定する。この目標温度Ttrgはシリンダ2内に吸気ポート9を経由して供給されるEGRガスと吸気ポート8を経由して供給される空気との温度差が所定範囲内に収まるように、吸気ポート8を経由して供給される空気の温度を考慮して設定される。目標温度Ttrgの設定に考慮される温度としてはステップS1で取得した吸気温度Taを使用する。目標温度Ttrgの設定は、吸気温度Taを変数として目標温度Ttrgを与えるマップを準備し、そのマップをECU30が参照することにより実現することができる。
【0028】
次に、ステップS6において、EGRガス供給温度Tpが目標温度Ttrgよりも大きいか否かを判定する。温度Tpが目標温度Ttrgよりも高い場合はステップS7に進み、温度Tpが目標温度Ttrg以下の場合は燃料添加弁20から燃料を噴射させる処理(冷却制御)を実行する必要がないので、以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0029】
ステップS7では、燃料添加弁20から噴射させるべき燃料量(燃料供給量)qを算出する。その算出は次の手順で行う。
【0030】
(1)まず、EGRガス供給温度Tpを目標温度Ttrgまで低下させるために必要な要求温度低下量ΔTpをEGRガス供給温度Tpと目標温度Ttrgとの差に応じて算出する。
【0031】
(2)次に、要求温度低下量ΔTpに基づいてEGRガスの単位量当たりの最大燃料供給量qmax1を算出する。燃料添加弁20から噴射される燃料が増えると気化しきれない燃料が出てくるため、EGRガスの温度低下量は燃料供給量に対して比例関係にならない。そのため、要求温度低下量ΔTpに対して完全に気化できる燃料供給量の上限を最大燃料供給量qmax1として特定するマップを実験的に作成してECU30のROMに記憶させておき、ECU30がそのマップを参照することによって要求温度低下量ΔTpに対応する最大燃料供給量qmax1が算出される。図3はそのマップの一例を示している。この図に示すように、要求温度低下量ΔTpに対応する最大燃料供給量qmax1が燃料供給量qの候補の一つとして算出される。
【0032】
(3)次に、排気通路7から取り出される排気の排気温度Teに基づいてEGRガスの単位量当たりの最大燃料供給量qmax2を算出する。排気温度Teは排気還流通路17の入口におけるEGRガスの温度と同義であり、内燃機関1の機関回転数と負荷(燃料噴射量)とに基づいて推定される。最大燃料供給量qmax2は噴射燃料が完全に気化でき、かつ排気温度Teの雰囲気で自着火しない上限値として算出される。具体的には、図4に示すような排気温度Teを変数として最大燃料供給量qmax2を与えるマップを実験的に作成してECU30のROMに記憶させておき、ECU30がこのマップを参照することにより最大燃料供給量qmax2が燃料供給量qの候補の一つとして算出される。
【0033】
(4)次に、排気還流通路17の所定位置a(図1参照)における通路壁温度Twaに基づいてEGRガスの単位量当たりの最大燃料供給量qmax3を燃料供給量qの候補の一つとして算出する。具体的には、(3)の場合と同様に、図5に示すような通路壁温度Twaを変数として最大燃料供給量qmax3を与えるマップを実験的に作成してECU30のROMに記憶させておき、ECU30がこのマップを参照することにより最大燃料供給量qmax3が燃料供給量qの候補の一つとして算出される。このマップは、気化した燃料が排気還流通路17の通路壁に触れた場合でも自着火しない上限値として最大燃料供給量qmax3が与えられる。同様に、図6に示すように、他の所定位置b(図1参照)における通路壁温度Twbに基づいてEGRガスの単位量当たりの最大燃料供給量qmax4を燃料供給量qの候補の一つとして算出する。通路壁温度Twa、Twbは温度センサより直接測定してもよいし、所定の実験式から推定してもよい。また、所定位置の数は任意であり、位置a、b以外の位置に関する通路壁温度に基づいて燃料供給量qの候補を算出してもよい。
【0034】
(5)最後に、燃料供給量qの複数の候補として算出された最大燃料供給量qmax1、qmax2、qmax3、qmax4の中から最小のものを特定し、その特定された最大燃料供給量にEGR量を乗じることによって燃料供給量qを算出する。
【0035】
以上のように燃料供給量qが算出された後、続くステップS8において、ECU30は、燃料供給量qに相当する燃料が燃料添加弁20から噴射されるように燃料添加弁20を制御して今回のルーチンを終了する。
【0036】
図2の制御ルーチンが繰り返し実行されることにより、EGRガス供給温度Tpが目標温度Ttrgとなるように調整されるため、シリンダ2内に供給されるEGRガスと空気との温度差が過大になることを防止できる。
【0037】
次に、ECU30が実行する燃料供給禁止制御について図7を参照して説明する。図7は燃料供給禁止制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。図7のルーチンは図2のルーチンと並行して所定間隔で繰り返し実行される。
【0038】
ECU30は、まずステップS11において、排気還流通路17の所定位置aにおける通路壁温度Twaを取得する。この形態では上述と同一位置の通路壁温度を取得しているが、その位置とは異なる位置の通路壁温度を取得してもよい。この通路壁温度Twaは上述と同様の方法で取得することができる。次に、ステップS12において、通路壁温度Twaが所定値Twth以下か否かを判定する。所定値Twthは気化が不十分になるおそれがある通路壁温度の上限値であり実験的に設定される。従って、通路壁温度Twaが所定値Twh以下の場合は、燃料添加弁20から燃料を噴射させると燃料の気化が不十分となるのでステップS13に進み、冷却制御が禁止されるように、つまり燃料添加弁20からの燃料噴射が禁止されるように燃料添加弁20の動作を制御して今回のルーチンを終了する。一方、通路壁温度Twaが所定値Twhよりも高い場合は冷却制御を禁止する必要がないので、ステップS13をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0039】
図7の制御によれば、通路壁温度が所定値以下の場合に燃料添加弁20からの燃料噴射が禁止されるので、排気還流通路17への燃料付着が回避される。これにより、排気還流通路17の詰まりを確実に回避できる。
【0040】
第1の形態において、ECU30は、図2のステップS4〜ステップS10を実行することにより、本発明に係るEGRガス温度制御手段として、同図のステップS9を実行することにより、本発明に係る候補算出手段及び燃料供給量算出手段として、図7のルーチンを実行することにより、本発明に係る燃料供給禁止手段として、それぞれ機能する。
【0041】
(第2の形態)
次に、図8を参照して本発明の第2の形態を説明する。以下、第1の形態と共通の構成についての説明を省略する。この形態は燃料添加弁20による燃料の噴射(冷却制御)の実行に伴う内燃機関1の燃焼状態の変動を抑えることに特徴がある。この形態においては内燃機関1がパイロット噴射モードを実行できるように構成されている。即ち、内燃機関1は燃料噴射弁による燃料噴射を、所定時期に行われるメイン噴射と、メイン噴射よりも少量の燃料にてそれよりも前に行われるパイロット噴射とに分割することができ、かつメイン噴射及びパイロット噴射のそれぞれの燃料噴射時期とそれぞれの燃料噴射量とを変更できるように構成されている。更に、内燃機関1は燃料噴射弁5による燃料噴射圧を変更できるように構成されている。
【0042】
冷却制御が実行されると、燃料添加弁20にて噴射された燃料は気化した後にEGRガスとともにシリンダ2内に供給される。そのため、燃料噴射弁5にてシリンダ2内に燃料を噴射する前にシリンダ2内の燃料濃度が高くなって圧縮行程における着火時期が早まる他、EGRガスと空気との温度差に起因してシリンダ2内に形成される混合気の分布が変化するなどの燃焼変動を招く現象が生じる。その結果、燃料供給手段にて燃料を供給しない通常時と比べて排気中の有害成分が増加するおそれがある。そこで、この形態では、そのような燃焼変動が起こらないように、図2及び図7の制御とともに図8の燃焼変動防止制御を実行する。
【0043】
図8は燃焼変動防止制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャートである。このルーチンのプログラムはECU30のROMに保持されており、適時に読み出されて所定の演算間隔で繰り返し実行される。まず、ECU30はステップS21において、冷却制御が実行中であるか否かを判定する。冷却制御が実行中である場合はステップS22に進み、そうでない場合は以後の処理をスキップして今回のルーチンを終了する。
【0044】
ステップS22では、EGRガス供給温度Tpが目標温度Ttrgを含む許容範囲内に収まっているか否かを判定する。許容範囲内に収まっている場合は、ステップS23に進み、シリンダ2内での燃料の着火時期が早まることを防止するため早期着火防止制御を行う。早期着火防止制御では、ECU30はパイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及びメイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作の少なくとも一つを内燃機関1に対して実行する。これらの操作はいずれも着火時期の早まりを抑える効果があるので、これらの両者を同時に実行してもよい。
【0045】
EGRガス供給温度Tpが許容範囲外の場合には、ステップS24に進んでEGRガス供給温度Tpが許容範囲の上限より高いか否かを判定する。EGRガス供給温度Tpがその上限よりも高い場合はステップS25に進み、そうでない場合はステップS25をスキップしてステップS26に進む。
【0046】
ステップS25では、ECU30は分布変化防止制御を実行する。EGRガス供給温度が許容範囲の上限を超えている場合、シリンダ2に供給されるEGRガスと空気との温度差により、相対的に高温のEGRガスがシリンダ2内の中央に偏る。これにより、シリンダ2の中央の雰囲気の温度が上昇するため燃料噴射弁5から噴射された燃料噴霧の蒸発が早まる。そのため、シリンダ2の内周面付近まで混合気が到達し難くなってシリンダ2内に形成される混合気の分布が変化する。分布変化防止制御はこのような混合気の分布の変化を防止するために行われる。この分布変化防止制御では、ECU30は燃料噴射弁5による燃料の噴射圧力を増圧させる操作、パイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及びメイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作の少なくとも一つを内燃機関1に対して実行する。これらの操作はいずれも混合気の分布の変化を抑える効果があるので、これらの操作のすべてを行ってもよいし、これらの操作から選ばれた二つの操作を行ってもよい。
【0047】
ステップS26では、燃料添加弁20による燃料供給量を考慮してメイン噴射の噴射量を補正して今回のルーチンを終了する。
【0048】
図8の制御によれば、EGRガス供給温度Tpに応じて早期着火防止制御と分布変化防止制御とが適宜に実行されて、シリンダ2内の燃料の早期着火と混合気の分布変化とが防止されるので、冷却制御に伴うシリンダ2内の燃焼変動を防止することができる。
【0049】
第2の形態において、ECU30は第1の形態と同様に本発明に係るEGRガス温度制御手段、候補算出手段、燃料供給量算出手段及び燃料供給禁止手段としてそれぞれ機能するとともに、図8のステップS23を実行することにより、本発明に係る早期着火防止手段として、図8のステップS25を実行することにより、本発明に係る分布変化防止手段として、それぞれ機能する。
【0050】
(第3の形態)
次に、図9を参照して本発明の第3の形態を説明する。以下、第1の形態と共通の構成についての説明を省略する。この形態は、冷却制御の実行条件が成立後の特定の条件で排気還流弁18の操作とターボチャージャー21の可動ベーン21cの操作とを連係させて排気還流通路17に空気を通過させることに特徴がある。図9は第3の形態に係る排気還流制御の制御ルーチンを示したフローチャートである。なお、図2と同一の処理には同一の符号を付して説明を省略する。図9から明らかなように、この形態の制御ルーチンは図2のステップS7とステップS8との間に、ステップS31〜ステップS32を挿入したものである。即ち、EGRガス供給温度Tpを低下させる必要がある場合に、ECU30はステップS31において内燃機関1の機関回転速度が減速中でかつ燃料噴射弁5による燃料噴射が中断されている(燃料カット)か否かを判定する。
【0051】
燃料カット時にはシリンダ2内で燃焼が起きないため、吸気通路6に導かれた空気がシリンダ2を経由して排気通路7に排出される。そのため、排気還流弁18の開度を開き側に制御することにより、排気通路7に排出された空気を排気還流通路17に導くことができる。そこで、内燃機関1の機関回転速度が減速中でかつ燃料噴射弁5による燃料噴射が中断されている場合には、ステップS32に進み、排気還流弁18の開度を開き側の開度として全開に制御し、続くステップS33において排気還流通路17の入口と出口との差圧が増加して排気還流通路17を通過する空気が多くなるように可動ベーン21cの開度を制御する。可動ベーン21cの開度を閉じ側に制御して背圧を上げることも、その開度を開き側に制御して過給圧を下げることも、排気還流通路17の出口と入口との差圧を増加させることに寄与するが、内燃機関1の運転状態によってその寄与の度合いが相違する。従って、ステップS33では、内燃機関1の運転条件に応じて、より多くの空気が排気還流通路17を流れる高い方向に可動ベーン21cの開度を制御する。例えば、この可動ベーン21cの開度制御は、可動ベーン21cの開度と排気還流通路17を通過する空気量との関係を種々の運転条件に対応させて実験的に定めたマップをECU30のROMに記憶させておき、排気還流通路17を通過する空気量が現在の運転状態で最大となる可動ベーン21cの開度をそのマップから検索することによって実現することができる。
【0052】
図9の制御によれば、排気還流通路17内に空気を通過させることにより、燃料を通路壁に付着させることなく通路壁温度を低下させることができる。
【0053】
第3の形態において、ECU30は図9のルーチンを実行することにより、第1の形態と同様に本発明に係るEGRガス温度制御手段、候補算出手段及び燃料供給量算出手段としてそれぞれ機能するとともに、図9のステップS31〜ステップS33を実行することにより、本発明に係る通路壁温度制御手段として機能する。
【0054】
(第4の形態)
次に、図10を参照して本発明の第3の形態を説明する。以下、第1の形態と共通の構成についての説明を省略する。この形態は、燃料添加弁20からの燃料噴射を間欠的に実施することに特徴がある。図10は、燃料添加弁20による燃料噴射と各シリンダ2の吸気行程における吸気弁のリフトとの対応関係を示したタイミングチャートである。図10における#1〜#4は気筒番号であり、これらは図1の左から右へのシリンダ2の並び順に対応する。燃料添加弁20による燃料噴射は噴射時期t1〜t4のそれぞれに分割されていて、間欠的なものとなっている。燃料添加弁20の燃料噴射で冷却されたEGRガスがシリンダ2に到達するまでに要する時間がαである。この図から明らかなように、燃料添加弁20の燃料噴射によって冷却されたEGRガスが#1のシリンダ2に到達する到達時期x1がその吸気行程に同期するように、燃料添加弁20による燃料噴射時期t1が設定されている。同様に、到達時期x2〜x4がその他のシリンダ2の吸気行程に同期するように燃料噴射時期t2〜t4がそれぞれ設定されている。
【0055】
時間αは内燃機関1の機関回転数に相関するため、機関回転数毎に時間αを特定するマップを実験的に作成してECU30のROMに記憶させておき、ECU30がそのマップを参照することにより、機関回転数に応じた時間αを算出することができる。また、各シリンダ2の吸気行程はクランク角センサ31からの信号で特定できる。これにより、ECU30は上記の到達時期と各シリンダ2の吸気行程とが同期するように燃料噴射時期を制御することができる。
【0056】
この形態によれば、シリンダ2に供給されるEGRガスを狙い打ちして冷却できるので燃料添加弁20による燃料噴射が間欠的なものとなる。つまり、図10の時刻t1から時刻t4までの間に連続して燃料噴射を行う場合よりも燃料の無駄が少ない。その結果、燃料添加弁20による燃料消費量が抑えられるためEGRガスの冷却効率が向上する。この形態の燃料噴射は上述した各形態に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一形態に係る排気還流装置が適用された内燃機関の要部を示した図。
【図2】第1の形態に係る排気還流制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
【図3】要求温度低下量を変数として最大燃料供給量を与えるマップの一例を示した図。
【図4】排気温度を変数として最大燃料供給量を与えるマップの一例を示した図。
【図5】通路壁温度を変数として最大燃料供給量を与えるマップの一例を示した図。
【図6】図5とは異なる位置の通路壁温度を変数として最大燃料供給量を与えるマップの一例を示した図。
【図7】第1の形態に係る燃料供給禁止制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
【図8】第2の形態に係る燃焼変動防止制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
【図9】第3の形態に係る排気還流制御の制御ルーチンの一例を示したフローチャート。
【図10】第4の形態を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0058】
1 内燃機関
2 シリンダ
5 燃料噴射弁
6 吸気通路
7 排気通路
8 吸気ポート(残りの吸気ポート)
9 吸気ポート(一部の吸気ポート)
16 排気還流装置
17 排気還流通路
18 排気還流弁(調整弁)
20 燃料添加弁(EGRガス温度調整手段、燃料供給手段)
21 ターボチャージャー
21a コンプレッサ
21b タービン
21c 可動ベーン(可動部材)
30 ECU(EGRガス温度制御手段、候補算出手段、燃料供給量算出手段、燃料供給禁止手段、早期着火防止手段、分布変化防止手段、通路壁温度制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのシリンダに対して複数の吸気ポートが設けられた内燃機関に適用され、前記内燃機関の排気通路から取り出した排気の一部を前記複数の吸気ポートのうちの一部の吸気ポートのみを経由させて前記シリンダ内にEGRガスとして供給できる内燃機関の排気還流装置において、
前記一部の吸気ポートのみを経由して前記シリンダに供給されるEGRガスの温度であるEGRガス供給温度を調整できるEGRガス温度調整手段と、前記EGRガス供給温度が前記複数の吸気ポートのうちの残りの吸気ポートを経由して前記シリンダに供給される空気の温度を考慮して定められた目標温度となるように、前記EGRガス温度調整手段を制御するEGRガス温度制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の排気還流装置。
【請求項2】
前記排気通路に接続されてEGRガスを導く排気還流通路を更に備え、
前記EGRガス温度調整手段として、前記排気還流通路内に燃料を噴射できる燃料供給手段が設けられ、
前記EGRガス温度制御手段は、前記EGRガス供給温度が前記目標温度よりも高い場合に前記EGR通路内に燃料が噴射されるように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項3】
前記燃料供給手段が噴射すべき燃料供給量の複数の候補を、前記EGRガス供給温度を前記目標温度まで低下させるために必要な要求温度低下量に基づいて、前記排気通路から取り出される排気温度に基づいて、前記排気還流通路の所定位置の通路壁温度に基づいて、それぞれ算出する候補算出手段と、前記候補算出手段が算出した前記複数の候補のうちの最小値を前記燃料供給手段が噴射すべき燃料供給量として算出する燃料供給量算出手段と、を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項4】
前記排気還流通路の通路壁温度が所定値以下の場合に前記燃料供給手段による燃料噴射が禁止されるように前記燃料供給手段を制御する燃料供給禁止手段を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、前記シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁を有した圧縮着火型機関として構成されており、
前記燃料供給手段による燃料噴射が行われた後に前記EGRガス供給温度が前記目標値を含む許容範囲内に収まっている場合、前記燃料噴射弁にて噴射された燃料の着火時期が早まることを防止できる所定操作を前記内燃機関に対して実行する早期着火防止手段を更に備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項6】
前記内燃機関は、前記燃料噴射弁による燃料噴射を、所定時期に行われるメイン噴射と前記メイン噴射よりも少量の燃料にて前記所定時期よりも前に行われるパイロット噴射とに分割するパイロット噴射モードを実行でき、かつ前記メイン噴射及び前記パイロット噴射のそれぞれの燃料噴射時期とそれぞれの燃料噴射量とを変更できるように構成されており、
前記早期着火防止手段は、前記所定操作として、前記パイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及び前記メイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作の少なくとも一つを前記内燃機関に対して実行することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項7】
前記内燃機関は、前記シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁を有した圧縮着火型内燃機関として構成されており、
前記燃料供給手段による燃料噴射が行われた後に前記EGRガス供給温度が前記目標値を含む許容範囲の上限を超えている場合、前記燃料噴射弁にて噴射された燃料の蒸発が早まることを防止できる所定操作を前記内燃機関に対して実行する早期蒸発防止手段を更に備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項8】
前記内燃機関は、前記燃料噴射弁による燃料の噴射圧力を変更でき、前記燃料噴射弁による燃料噴射を、所定時期に行われるメイン噴射と前記メイン噴射よりも少量の燃料にて前記所定時期よりも前に行われるパイロット噴射とに分割するパイロット噴射モードを実行でき、かつ前記メイン噴射及び前記パイロット噴射のそれぞれの燃料噴射時期とそれぞれの燃料噴射量とを変更できるように構成されており、
前記早期蒸発防止手段は、前記所定操作として、前記燃料噴射弁による燃料の噴射圧力を増圧させる操作、前記パイロット噴射の燃料噴射量を減量させる操作及び前記メイン噴射の燃料噴射時期を遅角させる操作の少なくとも一つを前記内燃機関に対して実行することを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項9】
前記内燃機関は、前記シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射弁を有した圧縮着火型内燃機関として構成されており、
前記排気還流通路を流れるガスの流量を調整できる調整弁と、前記内燃機関の機関回転速度が減速中でかつ前記燃料噴射弁による燃料噴射が中断している時に前記調整弁を開き側に制御する通路壁温度制御手段と、を更に備えることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項10】
前記内燃機関には、前記残りの吸気ポートを含む吸気通路に設けられたコンプレッサと、前記排気還流通路が接続される位置よりも下流側の前記排気通路に設けられたタービンと、最大開度から最小開度までの間で可動することにより前記タービンの入口を絞ることができる可動部材とを有し、前記コンプレッサと前記タービンとが一体回転可能に組み合わされた可変容量型のターボチャージャーが設けられており、
前記通路壁温度制御手段は、前記内燃機関の機関回転速度が減速中でかつ前記燃料噴射弁による燃料噴射が中断している時に、前記調整弁が全開となり、かつ前記可動部材の開度が閉じ側となるように前記調整弁及び前記可動部材をそれぞれ制御することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項11】
前記内燃機関には、前記残りの吸気ポートを含む吸気通路に設けられたコンプレッサと、前記排気還流通路が接続される位置よりも下流側の前記排気通路に設けられたタービンと、最大開度から最小開度までの間で可動することにより前記タービンの入口を絞ることができる可動部材とを有し、前記コンプレッサと前記タービンとが一体回転可能に組み合わされた可変容量型のターボチャージャーが設けられており、
前記通路壁温度制御手段は、前記内燃機関の機関回転速度が減速中でかつ前記燃料噴射弁による燃料噴射が中断している時に、前記調整弁が全開となり、かつ前記可動部材の開度が開き側となるように前記調整弁及び前記可動部材をそれぞれ制御することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の排気還流装置。
【請求項12】
前記EGRガス温度制御手段は、前記燃料供給手段が噴射した燃料によって冷却されたEGRガスが前記一部の吸気ポートを経由して前記シリンダに到達する到達時期が前記シリンダの吸気行程に同期するように、前記燃料供給手段による燃料の噴射時期を制御することを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の排気還流装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−291687(P2008−291687A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136370(P2007−136370)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】