説明

制動装置

【課題】制動力を車両の対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分を行うことができる制動装置を提供すること。
【解決手段】ブレーキオイルOILにマスタ圧PMCを付与するマスタシリンダ22と、FRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに加圧されたブレーキオイルOIL1を供給する第1系統25と、FLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに加圧されたブレーキオイルOIL2を供給する第2系統26と、保持ソレノイド弁25b,25cの上流側と、保持ソレノイド弁26bとFLシリンダ27cとの間とを接続する第1接続配管L18と、保持ソレノイド弁26b,26cの上流側と、保持ソレノイド弁25cとRLシリンダ27bとの間を接続する第2接続配管L28と、第1接続配管L18に設けられた第1切替弁25dと、第2接続配管L28に設けられた第2切替弁26dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動装置に関し、更に詳しくは、右側前輪および左側後輪に制動力を作用させる第1制動系と、左側前輪及び右側後輪に制動力を作用させる第2制動系とを有する制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者のブレーキ操作に伴って作動流体を加圧し、加圧された作動流体を車両の前後輪に設けられたホイールシリンダに供給することで前後輪に圧力制動力を作用させる制動装置がある。従来の制動装置としては、右側前輪に設けられた前輪右側ホイールシリンダおよび左側後輪に設けられた後輪左側ホイールシリンダに加圧された作動流体を供給する第1系統と、左側前輪に設けられた前輪左側ホイールシリンダおよび右側後輪に設けられた後輪右側ホイールシリンダに加圧された作動流体を供給する第2系統とにより構成されているものがある。つまり、従来の圧力制動装置は、作動流体を供給する配管が各車輪に対してクロス配管で接続されている。クロス配管式の圧力制動装置を有する制動装置は、圧力制動力を車両の対角線に配置された車輪に作用させる構成である。従って、エンジンが車両の前方に搭載されて前輪が駆動輪となる、所謂FF車など前輪の荷重が大きくなる車両において、第1系統および第2系統のいずれかが失陥しても、圧力制動力を前輪および後輪に作用させ、制動時における車両挙動の安定性を確保することができる。
【0003】
また、従来の圧力制動装置には、特許文献1に示すように、車両の各車輪に各ホイールシリンダのホイールシリンダ圧による圧力制動力を作用させる圧力制動装置と、車両の前輪あるいは後輪の少なくともいずれか一方に回生制動力を作用させる回生制動手段とを備え、回生制動力の変動による制動力不足を圧力制動装置により補うものがある。特許文献1に示す圧力制動装置は、各前輪に設けられた前輪ホイールシリンダに加圧された作動流体を供給する第1系統と、各後輪に設けられた後輪ホイールシリンダに加圧された作動流体を供給する第2系統とにより構成されている。つまり、特許文献1に示す圧力制動装置は、作動流体を供給する配管が各車輪に対して前後配管で接続されている。前後配管式の圧力制動装置を有する制動装置は、圧力制動力を車両の前輪に作用する前輪制動力と車両の後輪に作用する後輪制動力とに配分するための構成である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−276666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クロス配管式の圧力制動装置を有する制動装置では、前後配管式の圧力制動装置を有する制動装置のように、圧力制動力を車両の前輪に作用する前輪圧力制動力と車両の後輪に作用する後輪圧力制動力とに配分することができない。従って、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができない。一方、前後配管式の圧力制動装置を有する制動装置では、クロス配管式の圧力制動装置を有する制動装置のように、第1系統および第2系統のいずれかが失陥した際に圧力制動力を前輪および後輪に作用させることができず、制動時における車両挙動の安定性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、制動力を車両の対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分を行うことができる制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明では、運転者のブレーキ操作に伴って作動流体を加圧し、前記加圧された作動流体を車両の各車輪に設けられたホイールシリンダに供給することで前記車両に圧力制動力を作用させる制動装置において、前記運転者により操作されるブレーキペダルと、前記運転者のブレーキペダルの操作に応じて、前記作動流体に操作圧力を付与する操作圧力付与手段と、右側前輪に設けられた前輪右側ホイールシリンダおよび左側後輪に設けられた後輪左側ホイールシリンダに前記加圧された作動流体を供給する第1系統と、左側前輪に設けられた前輪左側ホイールシリンダおよび右側後輪に設けられた後輪右側ホイールシリンダに前記加圧された作動流体を供給する第2系統と、前記第1系統のうち前記前輪右側ホイールシリンダの上流側に設けられる第11系統弁と、前記第1系統のうち前記後輪左側ホイールシリンダの上流側に設けられる第12系統弁と、前記第2系統のうち前記前輪左側ホイールシリンダの上流側に設けられる第21系統弁と、前記第2系統のうち前記後輪右側ホイールシリンダの上流側に設けられる第22系統弁と、前記第1系統のうち前記第11系統弁および前記第12系統弁の上流側と、前記第21系統弁と前記前輪左側ホイールシリンダとの間、あるいは前記第22系統弁と前記後輪右側ホイールシリンダとの間のいずれか一方とを接続する第1接続配管と、前記第2系統のうち前記第21系統弁および前記第22系統弁の上流側と、前記第1接続配管が接続する前記前輪左側ホイールシリンダあるいは前記後輪右側ホイールシリンダのいずれかと前記車両の前後方向において対向する前記後輪左側ホイールシリンダと前記第12系統弁との間、あるいは前記前輪右側ホイールシリンダと前記第11系統弁との間のいずれか一方とを接続する第2接続配管と、前記第1接続配管に設けられた第1切替弁と、前記第2接続配管に設けられた第2切替弁と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記制動装置において、少なくとも前記各弁の開閉を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、制動モードを前後制動モードと左右制動モードとに切り替えることができ、前記前後制動モード時は、前記第1切替弁および前記第2切替弁が開弁され、前記第11系統弁および前記第12系統弁のうち前記第2接続配管と接続する一方が閉弁され、他方が開弁され、前記第21系統弁および前記第22系統弁のうち前記第1接続配管と接続する一方が閉弁され、他方が開弁され、前記左右制動モード時は、前記第1切替弁および前記第2切替弁が閉弁され、前記第11系統弁および前記第12系統弁が開弁され、前記第21系統弁および前記第22系統弁が開弁されることが好ましい。
【0009】
また、上記制動装置において、前記第1系統あるいは前記第2系統の少なくともいずれか一方の異常を検出する異常検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記異常が検出されない場合に前記前後制動モードに切り替え、当該異常が検出された場合に前記左右制動モードに切り替えることが好ましい。
【0010】
また、上記制動装置において、前記運転者によるブレーキ操作に応じた要求制動力を設定する要求制動力設定手段と、前記設定された要求制動力に基づいて、前記第1系統における第1系統作動流体および前記第2系統における第2系統作動流体をそれぞれ加圧して、当該第1系統作動流体および当該第2系統作動流体に加圧圧力をそれぞれ付与する加圧手段をさらに備え、前記制御手段は、前記第1系統作動流体および前記第2系統作動流体に前記加圧手段によりそれぞれ付与する加圧圧力を個別に制御する加圧制御を行うことが好ましい。
【0011】
また、上記制動装置において、前記前後制動モード時に前記車両に作用する制動力に対する前記車両の前輪に作用する前輪制動力と当該車両の後輪に作用する後輪制動力との比である前後配分比を設定する配分比設定手段をさらに備え、前記制御手段は、前記設定された前後配分比に基づいて前記加圧制御を行うことが好ましい。
【0012】
また、上記制動装置において、前記車両の加速度を検出する加速度検出手段をさらに備え、前記配分比設定手段は、前記検出された加速度に基づいて前記前後配分比を設定することが好ましい。
【0013】
また、上記制動装置において、前記車両の前輪あるいは後輪の少なくともいずれか一方に回生制動力を作用させる回生制動手段と、目標回生制動力を設定する回生制動力設定手段と、をさらに備え、前記制御手段は、前記操作圧力による圧力制動力と前記設定された目標回生制動力に基づいた前記回生制動力との合計が前記設定された要求制動力に対して不足している場合に前記加圧制御を行うことが好ましい。
【0014】
また、上記制動装置において、前記制御手段は、前記前後制動モード時において、前記回生制動手段による回生モードを少なくとも配分優先モードと燃費優先モードとに切り替えることができ、前記回生制動力設定手段は、前記配分優先モード時よりも前記燃費優先モード時に前記目標回生制動力を大きく設定することが好ましい。また、回生制動力設定手段を構成するバッテリのバッテリ状態に応じてモードの切り替えを行って良く、バッテリ状態、例えばSOCが高い状態では配分優先モードに切り替えることが望ましい。
【0015】
また、上記制動装置において、前記回生モードは、前記車両の減速状態あるいは当該車両の走行する路面の摩擦状況の少なくともいずれか一方に基づいて切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる制動装置は、第1切替弁および第2切替弁が開弁され、第11系統弁および第12系統弁のうち第2接続配管と接続する一方が閉弁され、他方が開弁され、第21系統弁および第22系統弁のうち第1接続配管と接続する一方が閉弁され、他方が開弁されることで、第1系統で車両の前輪に前輪制動力を作用させることができ、第2系統で車両の後輪に後輪制動力を作用させることができる。また、第1切替弁および第2切替弁が閉弁され、第11系統弁および第12系統弁が開弁され、第21系統弁および第22系統弁が開弁されることで、第1系統および第2系統が車両の対角線に配置された車輪に制動力をそれぞれ作用させることができる。従って、制動力を車両の対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。
【0017】
また、本発明は、異常が検出された場合に、第1系統あるいは第2系統のいずれかが車両の対角線に配置された車輪に制動力を作用させるので、異常時における車両挙動の安定性を維持することができる。
【0018】
また、本発明は、前後制動モード時では、第1系統作動流体に付与された加圧圧力は、車両の前輪に対応するホイールシリンダに作用し、第2系統作動流体に付与された加圧圧力は車両の後輪に対応するホイールシリンダに作用する。従って、第1系統作動流体に付与される加圧圧力および第2系統作動流体に付与される加圧圧力を例えば設定された前後配分比に基づいた個別に制御する加圧制御を行うことで、車両に前輪制動力および後輪制動力を任意に作用させることができる。
【0019】
また、本発明では、左右制動モード時では、第1系統作動流体に付与された加圧圧力は、車両の対角線上に配置される車輪に対応するホイールシリンダに作用し、第2系統作動流体に付与された加圧圧力は車両の対角線上に配置される車輪に対応するホイールシリンダに作用する。従って、第1系統作動流体に付与された加圧圧力および第2系統作動流体に付与される加圧圧力を例えば設定された前後配分比に基づいた個別に制御する加圧制御を行うことで、第1系統あるいは第2系統のいずれか一方の異常があっても、いずれ片方の系統により車両に対角線上の車輪に前輪制動力および後輪制動力をそれぞれ作用させることができる。
【0020】
また、本発明では、前後制御モードでは、前後配分比が検出された加速度に基づいて設定されるので、車両に制動力が作用することで、車両の図示しない前輪の前輪加重および後輪の後輪加重が静止時における前輪荷重および後輪荷重から変化しても、変化した荷重を考慮して、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。従って、制動時における車両挙動の安定性を向上することができる。
【0021】
また、本発明では、制動力を車両の対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、回生制動力を含む制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分にすることができる。
【0022】
また、本発明では、車両の車両挙動の安定性が低下する虞がある場合は、回生制動手段による回生制動よりも、前後配分比を維持して回生制動力を含む制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分するので、安定性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。図2は、圧力制動装置の概略構成例(左右制動モード時)を示す図である。図3は、前後制動モード時における圧力制動装置の概略構成例を示す図である。図1および図2に示すように、実施の形態1にかかる制動装置1−1は、図示しない内燃機関のみが搭載されている図示しない車両(以下、単に「車両CA」と称する)に搭載され、圧力制動装置2により構成されている。
【0025】
圧力制動装置2は、圧力制動力を発生するものである。圧力制動装置2は、実施の形態1では、図2に示すように、ブレーキペダル21と、マスタシリンダ22と、ブレーキブースタ23と、マスタシリンダ圧センサ24と、第1系統25と、第2系統26と、図示しない右側前輪に設けられた前輪右側ホイールシリンダ27a(以下、単に「FRシリンダ27a」と称する)と、図示しない左側後輪に設けられた後輪左側ホイールシリンダ27b(以下、単に「RLシリンダ27b」と称する)と、図示しない左側前輪に設けられた前輪左側ホイールシリンダ27c(以下、単に「FLシリンダ27c」と称する)と、右側後輪に設けられた後輪右側ホイールシリンダ27d(以下、単に「RRシリンダ27d」と称する)と、ブレーキ制御装置28とにより構成されている。ここで、圧力制動装置2は、マスタシリンダ22から第1系統25および第2系統26を介して各ホイールシリンダ27a〜27dまでの間に、作動流体であるブレーキオイルOILが充填されている。圧力制動装置2では、基本的に、運転者のブレーキ操作に伴ってブレーキオイルOILを加圧し、加圧されたブレーキオイルを各ホイールシリンダ27a〜27dに供給することで車両CAの図示しない各車輪に圧力制動力を作用させるものである。実施の形態1では、基本的に、運転者がブレーキペダル21を踏むことで、ブレーキペダル21に作用する踏力に応じてマスタシリンダ22によりブレーキオイルOILに操作圧力が付与され、操作圧力、すなわちマスタシリンダ圧PMCが各ホイールシリンダ27a〜27dに同一ホイールシリンダ圧PWCとして作用し、操作圧力による圧力制動力であるマスタ圧制動力が車両CAの各車輪に作用することとなる。
【0026】
ブレーキペダル21は、運転者が車両CAに対して制動力を発生させる際、すなわち制動要求によって操作するものである。ブレーキペダル21には、ストロークセンサ21aが設けられている。ストロークセンサ21aは、ストローク検出手段であり、ブレーキペダル21が運転者により踏み込まれた際の踏み込み量、すなわちブレーキペダル21のペダルストローク量STを検出するものである。ストロークセンサ21aは、ブレーキ制御装置28に接続されており、ストロークセンサ21aが検出したブレーキペダル21のペダルストローク量STは、ブレーキ制御装置28に出力される。
【0027】
マスタシリンダ22は、操作圧力付与手段であり、運転者によるブレーキペダル21の操作に応じて、作動流体であるブレーキオイルOILを加圧し、操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCを付与するものである。マスタシリンダ22は、運転者がブレーキペダル21を踏み込むことでブレーキペダル21に作用する踏力が付与される図示しないピストンによりブレーキオイルOILを加圧するものである。なお、マスタシリンダ22には、リザーバ22aが設けられており、リザーバ22aに圧力制動装置に用いられるブレーキオイルが貯留されている。
【0028】
ブレーキブースタ23は、真空式倍力装置であり、図示しない内燃機関により発生する負圧により、運転者がブレーキペダル21を踏み込むことでブレーキペダル21に作用する踏力を増幅するものである。ブレーキブースタ23は、負圧配管23cおよび逆止弁23bを介して、内燃機関の図示しない吸気経路と接続されている。ブレーキブースタ23は、内燃機関の吸気経路に発生する負圧と外気による圧力との差圧により図示しないダイヤフラムに作用する力により踏力を増幅する。従って、実施の形態1では、ブレーキブースタ23により増幅されたブレーキペダル21に作用する踏力に応じて、マスタシリンダ22によりブレーキオイルOILが加圧され、ブレーキオイルOILに操作圧力が付与される。つまり、ブレーキブースタ23は、操作圧力付与手段の一部を構成するものである。従って、操作圧力は、運転者の踏力と内燃機関の負圧に応じたものとなる。ここで、ブレーキブースタ23には、負圧配管23bの途中に負圧センサ23aが設けられている。負圧センサ23aは、負圧配管23b内の圧力をブレーキブースタ23の負圧PVとして検出するものである。負圧センサ23aは、ブレーキ制御装置28に接続されており、負圧センサ23aが検出した負圧PVは、ブレーキ制御装置28に出力される。なお、マスタシリンダ22およびブレーキブースタ23は、操作圧力による圧力制動力が運転者の制動要求に基づいた要求制動力よりも低く設定されている。通常の圧力制動装置2よりも低く設定されている。これは、要求制動力に対する加圧圧力による加圧制動力を大きくすることで、後述する第1系統25で車両CAの図示しない前輪に作用させる前輪制動力および第2系統26で車両CAの図示しない後輪に作用させる後輪制動力への制動力の配分を任意に行うことができるためである。
【0029】
マスタシリンダ圧センサ24は、操作圧力検出手段であり、操作圧力を検出するものである。マスタシリンダ圧センサ24は、実施の形態1では、マスタシリンダ22と第1系統25の後述するマスタカットソレノイド弁25aとを接続する油圧配管L10の途中に設けられている。つまり、マスタシリンダ圧センサ24は、油圧配管L10内のブレーキオイルOILの圧力を操作圧力、すなわちマスタシリンダ圧PMCとして検出するものである。マスタシリンダ圧センサ24は、ブレーキ制御装置28に接続されており、マスタシリンダ圧センサ24が検出したマスタシリンダ圧PMCは、ブレーキ制御装置28に出力される。
【0030】
第1系統25は、FRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに加圧されたブレーキオイルOILを供給するものである。つまり、第1系統25は、マスタシリンダ22によりブレーキオイルOILに付与されたマスタシリンダ圧PMCに応じてFRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCを制御、あるいはマスタシリンダ22によりブレーキオイルOILにマスタシリンダ圧PMCが付与されているか否かにかかわらずFRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bにホイールシリンダ圧PWCを作用させるものである。第1系統25は、マスタシリンダ22と、ブレーキブースタ23と、マスタカットソレノイド弁25aと、保持ソレノイド弁25b,25cと、第1切替弁25dと、減圧ソレノイド弁25e,25fと、リザーバ25gと、加圧ポンプ25hと、逆止弁25i,25kと、油圧配管L10〜L17と、第1接続配管L18とにより構成されている。
【0031】
第2系統26は、FLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに加圧されたブレーキオイルOILを供給するものである。つまり、第2系統26は、マスタシリンダ22によりブレーキオイルOILに付与されたマスタシリンダ圧PMCに応じてFLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCを制御、あるいはマスタシリンダ22によりブレーキオイルOILにマスタシリンダ圧PMCが付与されているか否かにかかわらずFLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dにホイールシリンダ圧PWCを作用させるものである。第2系統26は、マスタシリンダ22と、ブレーキブースタ23と、マスタカットソレノイド弁26aと、保持ソレノイド弁26b,26cと、第2切替弁26dと、減圧ソレノイド弁26e,26fと、リザーバ26gと、加圧ポンプ26hと、逆止弁26i,26kと、油圧配管L20〜L27と、第2接続配管L28とにより構成されている。なお、第1系統25および第2系統26は、マスタシリンダ22から同一の圧力(マスタシリンダ圧PMC)のブレーキオイルOILがそれぞれ供給される。また、29は、加圧ポンプ25h,26hを駆動する駆動用モータである。
【0032】
各マスタカットソレノイド弁25a,26aは、加圧手段を構成する調圧手段であり、ブレーキオイルOILのうち、第1系統25における第1系統作動流体である第1系統25に供給されるブレーキオイルOIL1に付与される加圧圧力Pp1および第2系統26における第2系統作動流体である第2系統26に供給されるブレーキオイルOIL2に付与される加圧圧力Pp2をそれぞれ個別に調圧するものである。マスタカットソレノイド弁25aは、油圧配管L10と油圧配管L11とに接続されており、油圧配管L10と油圧配管L11との連通、連通の解除や、連通時におけるマスタカットソレノイド弁25aの上流側と下流側との差圧を調圧する。つまり、マスタカットソレノイド弁25aは、加圧ポンプ25hにより加圧されたブレーキオイルOIL1の圧力とマスタシリンダ圧PMCとの差圧を加圧圧力Pp1として調整するものである。また、マスタカットソレノイド弁26aは、油圧配管L20と油圧配管L21とに接続されており、油圧配管L20と油圧配管L21との連通、連通の解除や、連通時におけるマスタカットソレノイド弁26aの上流側と下流側との差圧を調整する。つまり、マスタカットソレノイド弁26aは、加圧ポンプ26hにより加圧されたブレーキオイルOIL2の圧力とマスタシリンダ圧PMCとの差圧を加圧圧力Pp2として調整するものである。マスタカットソレノイド弁25a,26aは、リニアソレノイド弁であり、ブレーキ制御装置28に接続されている。従って、各マスタカットソレノイド弁25a,26aは、ブレーキ制御装置28の後述する弁開閉制御部28iからの指令電流値に基づいて、供給される電流が制御され、開度を制御する開度制御がそれぞれ行われ、指令電流値に応じて加圧圧力Pp1,Pp2を調圧するものである。つまり、ブレーキ制御装置28は、加圧ポンプ25hによりブレーキオイルOIL1に付与する加圧圧力Pp1および加圧ポンプ26hによりブレーキオイルOIL2に付与する加圧圧力Pp2をマスタカットソレノイド弁25a,26aにより個別に制御する加圧制御を行うものである。なお、マスタカットソレノイド弁25a,26aは、電流が供給されていない、すなわち非通電時に全開となっている。
【0033】
保持ソレノイド弁25bは、第1系統25に設けられた第11系統弁であり、FRシリンダ27aに対応するものである。保持ソレノイド弁25bは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L11とFRシリンダ27aに接続する油圧配管L12と接続されており、油圧配管L11と油圧配管L12との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイド弁25bは、第1系統25のうちFRシリンダ27aの上流側に設けられるものであり、マスタシリンダ22とFRシリンダ27aとの接続、接続の解除を行うものである。また、保持ソレノイド弁25cは、第1系統25に設けられた第12系統弁であり、RLシリンダ27bに対応するものである。保持ソレノイド弁25cは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L11とRLシリンダ27bに接続する第1シリンダ配管である油圧配管L13と接続されており、油圧配管L11と油圧配管L13との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイド弁25cは、第1系統25のうちRLシリンダ27bの上流側に設けられるものであり、マスタシリンダ22とRLシリンダ27bとの接続、接続の解除を行うものである。また、保持ソレノイド弁26bは、第2系統26に設けられた第21系統弁であり、RLシリンダ27cに対応するものである。保持ソレノイド弁26bは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L21とFLシリンダ27cに接続する第2シリンダ配管である油圧配管L22と接続されており、油圧配管L21と油圧配管L22との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイド弁26bは、第2系統26のうちFLシリンダ27cの上流側に設けられるものであり、マスタシリンダ22とFLシリンダ27cとの接続、接続の解除を行うものである。また、保持ソレノイド弁26cは、第2系統26の第22系統弁であり、RRシリンダ27dに対応するものである。保持ソレノイド弁26cは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L21とRRシリンダ27dに接続する第2シリンダ配管である油圧配管L23と接続されており、油圧配管L21と油圧配管L23との連通、連通の解除を行うものである。つまり、保持ソレノイド弁26cは、第2系統26のうちRRシリンダ27dの上流側に設けられるものであり、マスタシリンダ22とRRシリンダ27dとの接続、接続の解除を行うものである。各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cは、常開型ソレノイド弁であり、ブレーキ制御装置28に接続されている。従って、各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cは、ブレーキ制御装置28の弁開閉制御部28iによりON/OFF制御されることで、開閉がそれぞれ制御されるものである。各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cは、ブレーキ制御装置28によりONされると通電状態となり、通電時は全閉となる。一方、ブレーキ制御装置28によりOFFされると非通電状態となり、非通電時は全開となる。各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cは、通電時に下流側の圧力が上流側の圧力よりも高い場合には、ブレーキオイルOILを各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cの上流側(油圧配管L11,L21側)に戻す逆止弁がそれぞれ設けられている。
【0034】
第1切替弁25dは、第1接続配管L18に設けられたものであり、FLシリンダ27cに対応するものである。実施の形態1では、第1接続配管L18の一方の端部は、第1系統25のうち保持ソレノイド弁25bおよび保持ソレノイド弁25cの上流側すなわち油圧配管L11と接続されている。また、第1接続配管L18の他方の端部は、保持ソレノイド弁26bとFLシリンダ27cとの間、すなわち第2系統26のうち保持ソレノイド弁26bの下流側と接続されている。従って、第1切替弁25dは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L11とFLシリンダ27cに接続する油圧配管L22と接続されており、油圧配管L11と油圧配管L22との連通、連通の解除を行うものである。つまり、第1切替弁25dは、第1系統25のマスタカットソレノイド弁25aと、FLシリンダ27cとの接続、接続の解除を行うものである。第2切替弁26dは、第2接続配管L28に設けられたものであり、RLシリンダ27bに対応するものである。実施の形態1では、第2接続配管L28の一方の端部は、第2系統26のうち保持ソレノイド弁26bおよび保持ソレノイド弁26cの上流側すなわち油圧配管L21と接続されている。また、第2接続配管L28の他方の端部は、保持ソレノイド弁25cとRLシリンダ27bとの間、すなわち第1系統25のうち保持ソレノイド弁25cの下流側と接続されている。つまり、第2接続配管L28の他方の端部は、第1接続配管L18が接続する図示しない左側前輪に設けられたFLシリンダ27cと車両CAの前後方向において対向する左側後輪に設けられたRLシリンダ27bと保持ソレノイド弁25cとの間とを接続されている。従って、第2切替弁26dは、マスタシリンダ22に接続する油圧配管L21とRLシリンダ27bに接続する油圧配管L13と接続されており、油圧配管L21と油圧配管L13との連通、連通の解除を行うものである。つまり、第2切替弁26dは、第2系統26のマスタカットソレノイド弁26aと、RLシリンダ27bとの接続、接続の解除を行うものである。上記各切替弁25d,26dは、常閉型ソレノイド弁であり、ブレーキ制御装置28に接続されている。従って、各切替弁25d,26dは、ブレーキ制御装置28の弁開閉制御部28iによりON/OFF制御されることで、開閉がそれぞれ制御されるものである。各切替弁25d,26dは、ブレーキ制御装置28によりONされると通電状態となり、通電時は全開となる。一方、ブレーキ制御装置28によりOFFされると非通電状態となり、非通電時は全閉となる。
【0035】
減圧ソレノイド弁25eは、FRシリンダ27aに対応するものである。減圧ソレノイド弁25eは、FRシリンダ27aに接続する油圧配管L12とリザーバ25gに接続する油圧配管L14と接続されており、油圧配管L12と油圧配管L14との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイド弁25eは、FRシリンダ27aとリザーバ25gとの接続、接続の解除を行うものである。また、減圧ソレノイド弁25fは、RLシリンダ27bに対応するものである。減圧ソレノイド弁25fは、RLシリンダ27bに接続する油圧配管L13とリザーバ25gに接続する油圧配管L14と接続されており、油圧配管L13と油圧配管L14との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイド弁25fは、RLシリンダ27bとリザーバ25gとの接続、接続の解除を行うものである。また、減圧ソレノイド弁26eは、FLシリンダ27cに対応するものである。減圧ソレノイド弁26eは、FLシリンダ27cに接続する油圧配管L22とリザーバ26gに接続する油圧配管L24と接続されており、油圧配管L22と油圧配管L24との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイド弁26eは、FLシリンダ27cとリザーバ26gとの接続、接続の解除を行うものである。また、減圧ソレノイド弁26fは、RRシリンダ27dに対応するものである。減圧ソレノイド弁26fは、RRシリンダ27dに接続する油圧配管L23とリザーバ26gに接続する油圧配管L24と接続されており、油圧配管L23と油圧配管L24との連通、連通の解除を行うものである。つまり、減圧ソレノイド弁26fは、RRシリンダ27dとリザーバ26gとの接続、接続の解除を行うものである。各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fは、常閉型ソレノイド弁であり、ブレーキ制御装置28に接続されている。従って、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fは、ブレーキ制御装置28の弁開閉制御部28iによりON/OFF制御されることで、開閉がそれぞれ制御されるものである。各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fは、ブレーキ制御装置28によりONされると通電状態となり、通電時は全開となる。一方、ブレーキ制御装置28によりOFFされると非通電状態となり、非通電時は全閉となる。
【0036】
リザーバ25gは、油圧配管L14および加圧ポンプ25hに接続する油圧配管L15と、油圧配管L10に逆止弁25kを介して接続する油圧配管L17と接続されている。従って、リザーバ25gには、減圧ソレノイド弁25e,25fからのブレーキオイルOIL1、あるいは油圧配管L10、すなわちマスタカットソレノイド弁25aの上流側のブレーキオイルOIL1を導入することができる。リザーバ26gは、油圧配管L24および加圧ポンプ26hに接続する油圧配管L25と、油圧配管L20に逆止弁26kを介して接続する油圧配管L27と接続されている。従って、リザーバ26gには、減圧ソレノイド弁26e,26fからのブレーキオイルOIL2、あるいは油圧配管L20、すなわちマスタカットソレノイド弁26aの上流側のブレーキオイルOIL2を導入することができる。
【0037】
各加圧ポンプ25h,26hは、加圧手段を構成するものであり、ブレーキオイルOIL1,OIL2をそれぞれ加圧するものである。加圧ポンプ25hは、リザーバ25gに接続する油圧配管L15と、油圧配管L11に逆止弁25iを介して接続する油圧配管L16とに接続されている。従って、加圧ポンプ25hは、リザーバ25gを介してマスタカットソレノイド弁25aの上流側のブレーキオイルOIL1を吸引し、加圧して油圧配管L11、すなわちマスタカットソレノイド弁25aの下流側に吐出するものである。また、加圧ポンプ26hは、リザーバ26gに接続する油圧配管L25と、油圧配管L21に逆止弁25iを介して接続する油圧配管L26とに接続されている。従って、加圧ポンプ26hは、リザーバ26gを介してマスタカットソレノイド弁26aの上流側のブレーキオイルOIL2を吸引し、加圧して油圧配管L21、すなわちマスタカットソレノイド弁26aの下流側に吐出するものである。ここで、各加圧ポンプ25h,26hは、駆動用モータ29により駆動される。駆動用モータ29は、ブレーキ制御装置28に接続されている。従って、各加圧ポンプ25h,26hは、ブレーキ制御装置28により駆動用モータ29が駆動制御されることで、駆動制御される。以上のように、加圧手段は、各加圧ポンプ25h,26hによりブレーキオイルOIL1,OIL2をそれぞれ加圧し、加圧されたブレーキオイルOIL1,OIL2の圧力とマスタシリンダ圧PMCとの差圧を各マスタカットソレノイド弁25a,26aがそれぞれ調圧することで、第1系統25における加圧圧力Pp1および第2系統26における加圧圧力Pp2をブレーキオイルOIL1,OIL2にそれぞれ個別に付与するものである。従って、車両CAには、加圧圧力Pp1による圧力制動力および加圧圧力Pp2による圧力制動力が加圧制動力として作用する。
【0038】
車両CAは、図示しない右側前輪にFRシリンダ27a、ブレーキパッド27e、ブレーキロータ27iが設けられ、左側後輪にPLシリンダ27b、ブレーキパッド27f、ブレーキロータ27kが設けられ、左側前輪にFLシリンダ27c、ブレーキパッド27g、ブレーキロータ27lが設けられ、右側後輪にRRシリンダ27d、ブレーキパッド27h、ブレーキロータ27mが設けられている。各ホイールシリンダ27a〜27dは、充填されたブレーキオイルOILの圧力であるホイールシリンダ圧PWC、すなわちマスタシリンダ圧PMCと加圧圧力Pp1あるいは加圧圧力Pp2との合計圧力が作用することで、各ホイールシリンダ27a〜27dにそれぞれ対応するブレーキパッド27e〜27hおよび各ブレーキロータ27i〜27mにより圧力制動力を発生するものである。各ホイールシリンダ27a〜27dは、ホイールシリンダ圧PWCが作用することで、図示しない各車輪とそれぞれ一体回転する各ブレーキパッド27e〜27hと対向する各ブレーキロータ27i〜27mを各ブレーキパッド27e〜27hにそれぞれ接触させ、各ブレーキパッド27e〜27hと各ブレーキロータ27i〜27mとの間にそれぞれ発生する摩擦力によって圧力制動力を発生するものである。なお、前輪に設けられる各ブレーキパッド27e,27gおよびブレーキロータ27i,27lは、各ホイールシリンダ27a〜27dに同一ホイールシリンダ圧PWCが作用した際に、後輪に設けられる各ブレーキパッド27f,27hとブレーキロータ27k,27mとの間で発生する摩擦力よりも、大きな摩擦力を発生するように設定されている。
【0039】
ブレーキ制御装置28は、制動装置1−1を制御することで、運転者の制動要求に基づいた制動力を発生させるものである。ブレーキ制御装置28は、圧力制動装置2を制御するものである。ブレーキ制御装置28は、図1に示すように、制動装置1および車両CAに備えられたセンサから各種入力信号が入力される。入力信号としては、実施の形態1では、ストロークセンサ21aにより検出されたペダルストローク量ST、負圧センサ23aにより検出された負圧PV、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCなどがある。
【0040】
ブレーキ制御装置28は、これらの入力信号と、記憶部28cに予め記憶されている各種マップとに基づいて各種出力信号を出力する。出力信号としては、実施の形態1では、各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御、各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cのON/OFF制御、各切替弁25d,26dのON/OFF制御、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fのON/OFF制御、各加圧ポンプ25h,26hを駆動する駆動用モータ29の駆動制御などを行うための信号などである。
【0041】
また、ブレーキ制御装置28は、上記入力信号や出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)28aと、処理部28bと、記憶部28cとにより構成されている。処理部28bは、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部28bは、少なくとも要求制動力設定部28dと、マスタ圧制動力設定部28eと、制動モード設定部28fと、前後配分比設定部28g、加圧制動力設定部28hと、弁開閉制御部28iと、ポンプ駆動制御部28kと、異常検出部28lとを有している。処理部29bは、制動装置1−1の制御方法などに基づくプログラムをメモリにロードして実行することにより、制動装置1−1の制御方法、特に圧力制動装置2の制御方法などを実現させるものであっても良い。
【0042】
また、記憶部28cは、記憶手段であり、BF*−ST−PMCマップなどの各種マップが予め記憶されている。なお、記憶部29cは、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0043】
BF*−ST−PMCマップは、要求制動力BF*とペダルストローク量STとマスタシリンダ圧PMCとに基づいたものであり、要求制動力BF*とペダルストローク量STとマスタシリンダ圧PMCとの対応関係を示すものである。BF*−ST−PMCマップでは、ペダルストローク量STおよび/またはマスタシリンダ圧PMCの増加に伴い、要求制動力BF*が増加して設定されるように設定されている。なお、実施の形態1では、要求制動力BF*をBF*−ST−PMCマップ、検出されたペダルストローク量STおよび検出されたマスタシリンダ圧PMCに基づいて設定するが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、要求制動力BF*とペダルストローク量STとマスタシリンダ圧PMCと負圧PVとに基づいたBF*−ST−PMC−PVマップ、検出されたペダルストローク量ST、検出されたマスタシリンダ圧PMCおよび負圧センサ23aにより検出される負圧PVに基づいて設定しても良い。BF*−ST−PMC−PVマップは、負圧PVの低下に伴い、同一ペダルストローク量STおよび同一マスタシリンダ圧PMCにおいて要求制動力BF*が増加して設定されるように設定されている。
【0044】
要求制動力設定部28dは、要求制動力設定手段であり、運転者の制動要求に基づいた要求制動力を設定するものである。要求制動力設定部28dは、基本的には、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCと、BF*−ST−PMCマップとに基づいて要求制動力BF*を設定するものである。また、要求制動力設定部28dは、設定された要求制動力BF*と、前後配分比設定部28gにより設定された前後配分比とに基づいて前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rを設定するものでもある。
【0045】
マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCに基づいて操作圧力による圧力制動力、すなわちマスタ圧制動力BFpmc、車両CAの図示しない前輪に対応する前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪に対応する後輪マスタ圧制動力BFpmcrを設定するものである。
【0046】
制動モード設定部28fは、制動装置1−1の制動モードを設定するものである。制動モード設定部28fは、実施の形態1では、制動装置1−1の制動モードを前後制動モード、あるいは左右制動モードとのいずれかに設定するものである。制動モード設定部28fは、後述する異常検出部28lにより異常が検出されない場合に前後制動モードに、異常が検出された場合に左右制動モードに切り替える。つまり、ブレーキ制御装置28は、制動装置1−1の制動モードを前後制動モードと左右制動モードとに切り替えることができるものである。ここで、前後制動モードは、制動装置1−1で発生した制動力(マスタ圧制動力および加圧制動力を含む)を車両CAの図示しない前輪に作用する前輪制動力と図示しない後輪に作用する後輪制動力との比である前後配分比に基づいて前輪制動力と後輪制動力とに配分する制動モードである。また、左右制動モードは、制動装置1−1で発生した制動力(マスタ圧制動力および加圧制動力を含む)を第1系統25により車両CAの図示しない右側前輪および左側後輪に作用させ、第2系統26により車両CAの図示しない左側前輪および右側後輪に作用させる制動モードである。なお、制動モード設定部28fは、制動装置1−1により制動中である場合は、1つの制動モードを維持する。
【0047】
前後配分比設定部28gは、配分比設定手段であり、前後制動モード時に、前輪制動力と後輪制動力との比である前後配分比KF:KRを設定するものである。実施の形態1では、予め記憶部28cに車両CAの諸元などに基づいた前後配分比KF0:KR0が記憶されており、前後配分比設定部28gは、記憶されている前後配分比KF0:KR0を前後配分比KF:KRに設定する。
【0048】
加圧制動力設定部28hは、加圧制動力設定手段であり、上記要求制動力設定部29dにより設定された要求制動力BF*と、マスタシリンダ圧センサ24により検出されたマスタシリンダ圧PMCに基づいて設定されたマスタ圧制動力BFpmcとに基づいて、第1系統25に対応する第1加圧制動力BFpp1および第2系統26に対応する第2加圧制動力BFpp2を設定するものである。加圧制動力設定部28hは、実施の形態1では、設定された要求制動力BF*と、設定されたマスタ圧制動力BFpmcとに基づいて、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定するものである。また、加圧制動力設定部28hは、設定された前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rと、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcrと、上記前後配分比設定部28gにより設定された前後配分比KF:KRとに基づいて、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定するものでもある。
【0049】
弁開閉制御部28iは、各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御、各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cのON/OFF制御、各切替弁25d,26dのON/OFF制御、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fのON/OFF制御を行うものである。弁開閉制御部28iは、上記加圧制動力設定部28hにより設定された加圧制動力BFpp1,BFpp2に基づいてそれぞれ設定された加圧圧力Pp1,Pp2に基づいて指令電流値I1,I2を設定し、設定された指令電流値I1,I2に基づいて各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行うものである。つまり、ブレーキ制御装置28は、圧力制動装置2の各弁25a〜25f,26a〜26fの開閉を制御するものである。
【0050】
ポンプ駆動制御部28kは、駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hを駆動するものである。つまり、ブレーキ制御装置28は、運転者によるブレーキペダル21の操作に応じた要求制動力BF*に基づいて第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2が設定され、設定された第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2に基づいてそれぞれ設定された第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2に基づいてブレーキオイルOIL1,OIL2をそれぞれ個別に加圧して、ブレーキオイルOIL1,OIL2に設定された第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2をそれぞれ個別に付与する加圧制御を行う。つまり、ブレーキ制御装置28は、設定された前後配分比KF:KRに基づいて加圧制御を行うこととなる。
【0051】
異常検出部28lは、異常検出手段であり、第1系統25あるいは第2系統26の少なくともいずれか一方の異常を検出するものである。つまり、異常検出部28lは、圧力制動装置2の異常を検出するものである。異常検出部28lは、実施の形態1では、例えば検出されたペダルストローク量STと検出されたマスタシリンダ圧PMCとに基づいて第1系統25あるいは第2系統26の少なくともいずれか一方の異常を検出する。
【0052】
ここで、圧力制動装置2の基本的な動作について説明する。まず、制動モードが前後制動モードである場合は、図3に示すように、ブレーキ制御装置28により第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを通電して開弁(ON制御)し、第1系統25の保持ソレノイド弁25b,25cのうち、第2接続配管L28と接続する一方の保持ソレノイド弁25cを通電して閉弁(ON制御)し、他方の保持ソレノイド弁25bを通電せずに開弁(OFF制御)し、第2系統26の保持ソレノイド弁26b,26cのうち、第1接続配管L18と接続する一方の保持ソレノイド弁26bを通電して閉弁(ON制御)し、他方の保持ソレノイド弁25cを通電せずに開弁(OFF制御)する。なお、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fも通電せずに閉弁(OFF制御)とする。これにより、第1系統25におけるブレーキオイルOIL1は、FRシリンダ27aとFLシリンダ27cのみに供給されることとなる。また、第2系統26におけるブレーキオイルOIL2は、RLシリンダ27bとRRシリンダ27dのみに供給されることとなる。つまり、前後制動モード時には、第1系統25におけるブレーキオイルOIL1が車両CAの図示しない前輪に設けられた各ホイールシリンダ27a,27cに供給され、第2系統26におけるブレーキオイルOIL2が車両CAの図示しない後輪に設けられた各ホイールシリンダ27b,27dに供給される。
【0053】
ここで、前後制動モード時では、加圧手段によりブレーキオイルOIL1に第1加圧圧力Pp1およびブレーキオイルOIL2に第2加圧圧力Pp2を付与することができる。例えば、各マスタカットソレノイド弁25a,26aがブレーキ制御装置28からの指令電流値I1,I2に基づいてそれぞれ開度制御され、開度が全開時よりも小さくなり、加圧ポンプ25h,26hを駆動する駆動用モータ29がブレーキ制御装置28からの駆動指令値に基づいて駆動制御されると、各マスタカットソレノイド弁25a,26aの上流側、すなわち油圧配管L10,L20から各リザーバ25g,26gにブレーキオイルOIL1,OIL2がそれぞれ導入される。リザーバ25gに導入されたブレーキオイルOIL1は、加圧ポンプ25hにより加圧され、油圧配管L11、保持ソレノイド弁25b、油圧配管L12を介してFRシリンダ27aと、第1切替弁25d、油圧配管L18,L22を介してFLシリンダ27cとに供給される。ここで、マスタカットソレノイド弁25aは、マスタカットソレノイド弁25aの下流側のブレーキオイルOIL1、すなわちFRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用するホイールシリンダ圧PWCと、マスタカットソレノイド弁25aの上流側のブレーキオイルOIL1、すなわちマスタシリンダ22により発生するマスタシリンダ圧PMCと差圧を第1加圧圧力Pp1として調圧しているので、FRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第2加圧圧力Pp1との合計圧力となる。また、リザーバ26gに導入されたブレーキオイルOIL2は、加圧ポンプ26hにより加圧され、油圧配管L21、保持ソレノイド弁26c、油圧配管L23を介してRRシリンダ27dと、第2切替弁26d、油圧配管L28,L13を介してRLシリンダ27bとに供給される。ここで、マスタカットソレノイド弁26aは、マスタカットソレノイド弁26aの下流側のブレーキオイルOIL2、すなわちRRシリンダ27dおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCと、マスタカットソレノイド弁26aの上流側のブレーキオイルOIL2、すなわちマスタシリンダ22により発生するマスタシリンダ圧PMCと差圧を第2加圧圧力Pp2として調圧しているので、RRシリンダ27dおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第2加圧圧力Pp2との合計圧力となる。つまり、合計圧力は、ホイールシリンダ圧PWCとして各ホイールシリンダ27a〜27dに作用する。従って、ブレーキオイルOIL1に付与された第1加圧圧力Pp1はFRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用し、ブレーキオイルOIL2に付与された第2加圧圧力Pp2はRLシリンダ27bおよびRRシリンダ27dに作用する。これにより、実施の形態1にかかる制動装置1−1では、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を個別に制御する加圧制御を行うことで、車両CAに前輪制動力および後輪制動力を任意に作用させることができ、前後配分比KF:KRを任意に変更することができる。
【0054】
次に、制動モードが左右制動モードである場合は、図2に示すように、ブレーキ制御装置28により第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを通電せずに閉弁(OFF制御)し、第1系統25の保持ソレノイド弁25b,25cを通電せずに開弁(OFF制御)し、第2系統26の保持ソレノイド弁26b,26cを通電せずに開弁(OFF制御)する。なお、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fも通電せずに閉弁(OFF制御)とする。これにより、第1系統25におけるブレーキオイルOIL1は、FRシリンダ27aとRLシリンダ27bのみに供給されることとなる。また、第2系統26におけるブレーキオイルOIL2は、FLシリンダ27cとRRシリンダ27dのみに供給されることとなる。つまり、左右制動モード時には、第1系統25におけるブレーキオイルOIL1が車両CAの図示しない右側前輪および左側後輪にそれぞれ設けられた各ホイールシリンダ27a,27bに供給され、第2系統26におけるブレーキオイルOIL2が車両CAの図示しない右側前輪および左側後輪にそれぞれ設けられた各ホイールシリンダ27c,27dに供給される。
【0055】
ここで、左右制動モード時でも、加圧手段によりブレーキオイルOIL1に第1加圧圧力Pp1およびブレーキオイルOIL2に第2加圧圧力Pp2を付与することができる。上述のように、リザーバ25gに導入されたブレーキオイルOIL1は、加圧ポンプ25hにより加圧され、油圧配管L11、保持ソレノイド弁25b、油圧配管L12を介してFRシリンダ27aと、保持ソレノイド弁25c、油圧配管L13を介してRLシリンダ27bとに供給される。上述のように、FRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCと、マスタシリンダ圧PMCと差圧を第1加圧圧力Pp1として調圧しているので、FRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第2加圧圧力Pp1との合計圧力となる。また、リザーバ26gに導入されたブレーキオイルOIL2は、加圧ポンプ26hにより加圧され、油圧配管L21、保持ソレノイド弁26b、油圧配管L22を介してFLシリンダ27cと、保持ソレノイド弁26c、油圧配管L23を介してRRシリンダ27dとに供給される。上述のように、FLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCと、マスタシリンダ圧PMCと差圧を第2加圧圧力Pp2として調圧しているので、FLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第2加圧圧力Pp2との合計圧力となる。従って、ブレーキオイルOIL1に付与された第1加圧圧力Pp1はFRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用し、ブレーキオイルOIL2に付与された第2加圧圧力Pp2はFLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用する。これにより、第1系統25あるいは第2系統26のいずれか一方の異常があっても、いずれ片方の系統により車両CAに対角線上の図示しない車輪に前輪制動力および後輪制動力をそれぞれ作用させることができる。
【0056】
なお、前後制動モードおよび左右制動モードにおいて、第1系統25および第2系統26が保持モード時では、ブレーキ制御装置28により各マスタカットソレノイド弁25a,26aを通電せずに開弁(OFF制御)し、第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを通電せずに閉弁(OFF制御)し、保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cを通電して閉弁(ON制御)し、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fを通電せずに閉弁(OFF制御)し、駆動用モータ29を駆動制御せずに、各加圧ポンプ25h,26hによりブレーキオイルOIL1,OIL2を加圧しない。保持モード時は、各切替弁25d,26dおよび各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cと各ホイールシリンダ27a〜27dとの間でブレーキオイルOIL1,OIL2が保持されるため、各ホイールシリンダ27a〜27dにそれぞれ作用するホイールシリンダ圧PWCを一定に維持できる。また、前後制動モードおよび左右制動モードにおいて、第1系統25および第2系統26が減圧モード時では、ブレーキ制御装置28により各マスタカットソレノイド弁25a,26aを通電せずに開弁(OFF制御)し、第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを通電せずに閉弁(OFF制御)し、保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cを通電して閉弁(ON制御)し、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fを通電して開弁(ON制御)し、駆動用モータ29を駆動制御せずに、各加圧ポンプ25h,26hによりブレーキオイルOIL1,OIL2を加圧しない。減圧モード時は、各切替弁25d,26dおよび各保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cと各ホイールシリンダ27a〜27dとの間で保持されていたブレーキオイルOIL1,OIL2が油圧配管L14,L24を介してリザーバ25g,26gに貯留されるため、各ホイールシリンダ27a〜27dにそれぞれ作用するホイールシリンダ圧PWCを減少できる。これにより、ブレーキ制御装置28は、車両CAの図示しない各車輪のいずれかがロックして路面に対してスリップすることを抑制するアンチロックブレーキ制御を行うことができる。
【0057】
また、加圧手段は、運転者によるブレーキペダル21の操作を行わない場合でも、ブレーキ制御装置28により、ブレーキオイルの加圧を行うことができる。このとき、上述した保持モード、減圧モードとなるように、ブレーキ制御装置28により各弁25a〜25f,26a〜26fを制御すれば、各ホイールシリンダ27a〜27dに作用するホイールシリンダ圧PWCを調整することができる。これにより、圧力制動装置2は、車両CAの図示しない各車輪のいずれかが駆動力を路面に伝達している際に、路面に対してスリップすることを抑制するトラクションコントロールや、車両CAが旋回中に、各前後輪のいずれかが横滑りをすることを抑制する姿勢安定化制御(VSC)などを行うことができる。
【0058】
次に、実施の形態1にかかる制動装置1−1の制御方法、特に、制動装置1−1により発生する制動力の制御方法について説明する。図4は、実施の形態1にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。なお、制動装置1−1の制御方法は、制動装置1−1の制御周期、例えば数msecごとに行われる。
【0059】
まず、ブレーキ制御装置28の処理部28bは、同図に示すように、制動要求中であるか否かを判断する(ステップST101)。ここでは、処理部28bは、例えば、ブレーキペダル21の踏み込みを検出する図示しない踏力検出センサにより、運転者によりブレーキペダル21の踏み込みがあったか否かを検出することで、運転者による制動要求があったか否かを判断する。
【0060】
次に、処理部28bは、運転者による制動要求があったと判断される(ステップST101肯定)と、ペダルストローク量ST、マスタシリンダ圧PMCを取得する(ステップST102)。ここでは、処理部28bは、ストロークセンサ21aにより検出され、ブレーキ制御装置28に出力されたペダルストローク量STを取得し、マスタシリンダ圧センサ24により検出され、ブレーキ制御装置28に出力された操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCを取得する。
【0061】
次に、処理部28bの要求制動力設定部28dは、要求制動力BF*を設定する(ステップST103)。ここでは、要求制動力設定部28dは、実施の形態1では、上記検出されたペダルストローク量STと、検出されたマスタシリンダ圧PMCと、BF*−ST−PMCマップとに基づいて、運転者の制動要求に応じた要求制動力BF*を設定する。
【0062】
次に、処理部28bの異常検出部28lは、第1系統25あるいは第2系統26の少なくともいずれか一方が異常であるか否か判定するものである(ステップST104)。
【0063】
次に、処理部28bの制動モード設定部28fは、異常でないと判定すると(ステップST104否定)、制動モードを前後制動モードに設定する(ステップST105)。ここで、制動モードが前後制動モードに設定されると、処理部28bの弁開閉制御部28iは、第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを開弁し、保持ソレノイド弁25cおよび保持ソレノイド弁26bを閉弁し、保持ソレノイド弁25bおよび保持ソレノイド弁26cを開弁し、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fを閉弁する。
【0064】
次に、処理部28bの前後配分比設定部28gは、前後配分比KF:KRを設定するものである(ステップST106)。実施の形態1では、記憶部28cに記憶されている前後配分比KF0:KR0を前後配分比KF:KRに設定する(KF:KR=KF0:KR0)。
【0065】
次に、要求制動力設定部28dは、前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rを設定する(ステップST107)。ここでは、要求制動力設定部28dは、設定された要求制動力BF*と、下記の式(1),(2)とに基づいて前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rを設定する。

BF*f=BF*×KF/(KF+KR) …(1)
BF*r=BF*×KR/(KF+KR) …(2)
【0066】
次に、処理部28bのマスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいて前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcrを設定する(ステップST108)。ここでは、マスタ圧制動力設定部28eは、検出されたマスタシリンダ圧PMCと、下記の式(3),(4)とに基づいて前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcrを設定する。ここで、kfは、車両CAの図示しない前輪に対応するFRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用するホイールシリンダ圧PWCからFRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cの制動力を導き出すための変換係数である。ここで、krは、車両CAに図示しない後輪に対応するRLシリンダ27bおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCからRLシリンダ27bおよびRRシリンダ27dの制動力を導き出すための変換係数である。

BFpmcf=2×PMC×kf …(3)
BFpmcr=2×PMC×kr …(4)
【0067】
次に、処理部28bの加圧制動力設定部28hは、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST109)。ここでは、加圧制動力設定部28hは、上記設定された前輪要求制動力BF*fと、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcfと、下記の式(5)とに基づいて第1加圧制動力BFpp1を設定し、上記設定された後輪要求制動力BF*rと、設定された後輪マスタ圧制動力BFpmcrと、下記の式(6)とに基づいて第2加圧制動力BFpp2を設定する。

BFpp1=BF*f−BFpmcf …(5)
BFpp2=BF*r−BFpmcr …(6)
【0068】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST110)。ここでは、処理部28bは、設定された第1加圧制動力BFpp1と、下記の式(7)とに基づいて、マスタカットソレノイド弁25aおよび加圧ポンプ25hによりブレーキオイルOIL1に付与される第1加圧圧力Pp1を設定し、設定された第2加圧制動力BFpp2と、下記の式(8)とに基づいて、マスタカットソレノイド弁26aおよび加圧ポンプ26hによりブレーキオイルOIL2に付与される第2加圧圧力Pp2を設定する。

Pp1=BFpp1/2/kf …(7)
Pp2=BFpp2/2/kr …(8)
【0069】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST111)。ここで、ポンプ駆動制御部28kは、各加圧ポンプ25h,26hを常時決められた回転数で駆動し、一定の吐出量を保つように駆動制御する。つまり、ポンプ駆動制御部28kは、各加圧ポンプ25h,26hを常時決められた回転数で駆動し、一定の吐出量を保つように、各加圧ポンプ25h,26hを駆動する駆動用モータ29を駆動制御する。弁開閉制御部28iは、設定された第1加圧圧力Pp1と図示しないPp−Iマップとに基づいて、マスタカットソレノイド弁25aの開度制御を行うための指令電流値I1を設定し、設定された第2加圧圧力Pp2と図示しないPp−Iマップとに基づいて、マスタカットソレノイド弁26aの開度制御を行うための指令電流値I2を設定する。弁開閉制御部28iは、設定された指令電流値I1,I2に基づいて各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御をそれぞれ行う。加圧ポンプ25hが一定の吐出量を保つように駆動制御され、マスタカットソレノイド弁25aが開度制御されることで、マスタカットソレノイド弁25aの下流側であるFRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用するホイールシリンダ圧PWCがマスタカットソレノイド弁25aの上流側であるマスタシリンダ圧PMCと差圧である第1加圧圧力Pp1との和となる。つまり、FRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第1加圧圧力Pp1との合計圧力となる。従って、FRシリンダ27aおよびFLシリンダ27cに作用する圧力制動力は、マスタシリンダ圧PMCにより作用する前輪マスタ圧制動力BFpmcfと第1加圧圧力Pp1により作用する第1加圧制動力BFpp1との合計となる。加圧ポンプ26hが一定の吐出量を保つように駆動制御され、マスタカットソレノイド弁26aが開度制御されることで、マスタカットソレノイド弁26aの下流側であるRLシリンダ27bおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCがマスタカットソレノイド弁26aの上流側であるマスタシリンダ圧PMCと差圧である第2加圧圧力Pp2との和となる。つまり、RLシリンダ27bおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第2加圧圧力Pp2との合計圧力となる。従って、RLシリンダ27bおよびRRシリンダ27dに作用する圧力制動力は、マスタシリンダ圧PMCにより作用する後輪マスタ圧制動力BFpmcrと第2加圧圧力Pp2により作用する第2加圧制動力BFpp2との合計となる。
【0070】
また、処理部28bの制動モード設定部28fは、異常であると判定すると(ステップST104肯定)、制動モードを左右制動モードに設定する(ステップST112)。ここで、制動モードが左右制動モードに設定されると、処理部28bの弁開閉制御部28iは、第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを閉弁し、保持ソレノイド弁25b,25c,26b,26cを開弁し、各減圧ソレノイド弁25e,25f,26e,26fを閉弁する。
【0071】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいてマスタ圧制動力BFpmcを設定する(ステップST113)。ここでは、マスタ圧制動力設定部28eは、検出されたマスタシリンダ圧PMCと、下記の式(9)とに基づいて車両CAの全輪に作用するマスタ圧制動力BFpmcを設定する。

BFpmc=2×PMC×(kf+kr) …(9)
【0072】
次に、処理部28bの加圧制動力設定部28hは、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST114)。ここでは、加圧制動力設定部28hは、上記設定された要求制動力BF*と、設定されたマスタ圧制動力BFpmcと、下記の式(10),(11)とに基づいて第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する。つまり、左右制動モード時では、車両CAの図示しない全輪に同一の加圧制動力を作用させる。

BFpp1=(BF*−BFpmc)/2 …(10)
BFpp2=BFpp1 …(11)
【0073】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST115)。ここでは、処理部28bは、設定された第1加圧制動力BFpp1と、下記の式(12)とに基づいて、マスタカットソレノイド弁25aおよび加圧ポンプ25hによりブレーキオイルOIL1に付与される第1加圧圧力Pp1を設定し、設定された第2加圧制動力BFpp2と、下記の式(13)とに基づいて、マスタカットソレノイド弁26aおよび加圧ポンプ26hによりブレーキオイルOIL2に付与される第2加圧圧力Pp2を設定する。つまり、左右制動モード時では、ブレーキオイルOIL1,OIL2に同一の加圧圧力をそれぞれ付与する。

Pp1=BFpp1/(kf+kr) …(12)
Pp2=BFpp2/(kf+kr)=Pp1 …(13)
【0074】
次に、上述のように、ポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST111)。弁開閉制御部28iは、設定された指令電流値I1,I2に基づいて各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御をそれぞれ行う。加圧ポンプ25hが一定の吐出量を保つように駆動制御され、マスタカットソレノイド弁25aが開度制御されることで、マスタカットソレノイド弁25aの下流側であるFRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCがマスタカットソレノイド弁25aの上流側であるマスタシリンダ圧PMCと差圧である第1加圧圧力Pp1との和となる。つまり、FRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第1加圧圧力Pp1との合計圧力となる。従って、FRシリンダ27aおよびRLシリンダ27bに作用する圧力制動力は、マスタシリンダ圧PMCにより作用する前輪マスタ圧制動力BFpmcfと第1加圧圧力Pp1により作用する第1加圧制動力BFpp1との合計となる。加圧ポンプ26hが一定の吐出量を保つように駆動制御され、マスタカットソレノイド弁26aが開度制御されることで、マスタカットソレノイド弁26aの下流側であるFLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCがマスタカットソレノイド弁26aの上流側であるマスタシリンダ圧PMCと差圧である第2加圧圧力Pp2との和となる。つまり、FLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用するホイールシリンダ圧PWCは、マスタシリンダ圧PMCと第2加圧圧力Pp2との合計圧力となる。従って、FLシリンダ27cおよびRRシリンダ27dに作用する圧力制動力は、マスタシリンダ圧PMCにより作用する後輪マスタ圧制動力BFpmcrと第2加圧圧力Pp2により作用する第2加圧制動力BFpp2との合計となる。
【0075】
以上のように、実施の形態1にかかる制動装置1−1では、前後制動モード時に、第1系統25で車両CAの図示しない前輪に前輪制動力を作用させることができ、第2系統26で車両CAの図示しない後輪に後輪制動力を作用させることができる。また、左右制動モード時に、第1系統25で車両CAの対角線に配置された図示しない車輪に制動力を作用させることができ、第2系統26で車両CAの対角線に配置された図示しない車輪(第1系統25により制動力が作用する車輪と異なる車輪)に制動力を作用させることができる。従って、制動力を車両CAの対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。また、異常検出部28lにより異常が検出された場合に、制動モードを左右制動モードに切り替え、第1系統25あるいは第2系統26のいずれかが車両の対角線上に配置された車輪に制動力を作用させる、すなわち車両CAの前輪のみ、後輪のみ、左側車輪のみ、右側車輪のみに制動力を作用させないので、異常時における車両挙動の安定性を維持することができる。
【0076】
〔実施の形態2〕
図5は、実施の形態2にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。実施の形態2が実施の形態1と異なる点は、前後配分比KF:KRを制動時における車両CAの姿勢変化に伴う荷重移動に基づいて設定する点である。実施の形態2にかかる制動装置1−2は、圧力制動装置2と、Gセンサ3とにより構成されている。なお、実施の形態2にかかる制動装置1−2の基本的構成は、実施の形態1にかかる制動装置1−1の基本的構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0077】
図5に示すように、3は、加速度検出手段であり、車両CAに作用する加速度を検出するGセンサである。Gセンサ3は、実施の形態2では、車両CAの重心位置に取り付けられており、ブレーキ制御装置28に接続されている。Gセンサ3が検出した加速度G、特に制動時における減速度は、ブレーキ制御装置28に出力される。なお、ブレーキ制御装置28の記憶部28cには、予め車両CAの重心高HおよびホイールベースLが記憶されている。
【0078】
ブレーキ制御装置28の前後配分比設定部28gは、実施の形態2では、検出された加速度Gに基づいて前後配分比KF:KRを設定する。ここでは、前後配分比設定部28gは、検出された加速度Gと、予め記憶部28cに記憶されている重心高Hと、ホイールベースLとから車両CAの図示しない前輪および後輪における荷重移動量Xと、予め記憶部28cに記憶されている前後配分比KF0:KR0に基づいて前後配分比KF:KRを設定する。つまり、前後配分比設定部28gは、車両CAの制動時における荷重の移動を考慮した動的な前後配分比KF:KRを設定する。なお、実施の形態2では、記憶部28cに記憶されている前後配分比KF0:KR0は、静止時における車両CAの前輪荷重と後輪荷重との比である荷重比に基づいたものである。
【0079】
次に、実施の形態2にかかる制動装置1−2の制御方法、特に、制動装置1−2により発生する制動力の制御方法について説明する。図6は、実施の形態2にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。なお、実施の形態2にかかる制動装置1−2の制御方法は、実施の形態1にかかる制動装置1−1の制御方法と基本的手順が同様であるので、その説明は簡略化あるいは省略する。
【0080】
まず、処理部28bは、同図に示すように、制動要求中であるか否かを判断する(ステップST201)。
【0081】
次に、処理部28bは、運転者による制動要求があったと判断される(ステップST201肯定)と、ペダルストローク量ST、マスタシリンダ圧PMC、加速度Gを取得する(ステップST202)。ここでは、処理部28bは、ストロークセンサ21aにより検出され、ブレーキ制御装置28に出力されたペダルストローク量STを取得し、マスタシリンダ圧センサ24により検出され、ブレーキ制御装置28に出力された操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCを取得し、Gセンサ3により検出され、ブレーキ制御装置28に出力された加速度G、すなわち制動要求があり制動装置1−2により車両CAが制動中であるので減速度を取得する。
【0082】
次に、要求制動力設定部28dは、要求制動力BF*を設定する(ステップST203)。
【0083】
次に、異常検出部28lは、第1系統25あるいは第2系統26の少なくともいずれか一方が異常であるか否か判定するものである(ステップST204)。
【0084】
次に、制動モード設定部28fは、異常でないと判定すると(ステップST204否定)、制動モードを前後制動モードに設定する(ステップST205)。
【0085】
次に、前後配分比設定部28gは、前後配分比KF:KRを設定するものである(ステップST206)。実施の形態2では、検出された加速度Gと、記憶部28cに記憶されている重心高Hと、ホイールベースLと前後配分比KF0:Kr0に基づいて前後配分比KF:KRと、下記の式(14),(15)とに基づいて前後配分比KF:KRを設定する。

KF=KF0+G×H/L …(14)
KR=KR0−G×H/L …(15)
【0086】
次に、要求制動力設定部28dは、前後配分比KF:KRに基づいて前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rを設定する(ステップST207)。
【0087】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいて前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcrを設定する(ステップST208)。
【0088】
次に、加圧制動力設定部28hは、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST209)。
【0089】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST210)。
【0090】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST211)。従って、前後制動モードでは、前後配分比KF:KRに基づいた前輪制動力が車両CAの図示しない前輪に作用し、後輪制動力が車両CAの図示しない後輪に作用する。
【0091】
また、処理部28bの制動モード設定部28fは、異常であると判定すると(ステップST204肯定)、制動モードを左右制動モードに設定する(ステップST212)。
【0092】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいてマスタ圧制動力BFpmcを設定する(ステップST213)。
【0093】
次に、加圧制動力設定部28hは、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST214)。
【0094】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST215)。
【0095】
次に、ポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST211)。
【0096】
以上のように、実施の形態2にかかる制動装置1−2では、上記実施の形態1と同様に、制動力を車両CAの対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。また、異常時における車両挙動の安定性を維持することができる。また、制動力の前輪制動力および後輪制動力の配分は、検出された車両CAの加速度Gに基づいて設定されるので、車両CAに制動力が作用することで、車両CAの図示しない前輪の前輪加重および後輪の後輪加重が静止時における前輪荷重および後輪荷重から変化しても、変化した荷重を考慮して、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。従って、制動時における車両挙動の安定性を向上することができる。
【0097】
〔実施の形態3〕
図7は、実施の形態3,4にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。実施の形態3が実施の形態1と異なる点は、回生制動装置4をさらに備える点である。つまり、車両CAがハイブリッド車両である点である。実施の形態3にかかる制動装置1−3は、圧力制動装置2と、Gセンサ3と、回生制動装置4と、ハイブリッド制御装置5と、路面摩擦推定装置6とにより構成されている。なお、実施の形態3にかかる制動装置1−3の基本的構成は、実施の形態1にかかる制動装置1−1の基本的構成と同様であるため、その説明は省略する。
【0098】
処理部28bの回生モード設定部28mは、回生制動装置4の回生モードを設定するものである。回生モード設定部28mは、制動モードが前後制動モード時において、回生モードを配分優先モードあるいは燃費優先モードのいずれかに設定するものである。回生モード設定部28mは、実施の形態3では、Gセンサ3により検出され、ブレーキ制御装置28に出力された加速度Gと、後述する路面摩擦推定装置6により推定された路面摩擦係数μとに基づいて回生モードを配分優先モードあるいは燃費優先モードに切り替えるものである。つまり、回生モードは、車両CAの減速状態と、車両CAの走行する路面の摩擦状況とに基づいて切り替えられる。具体的には、回生モード設定部28mは、検出された加速度Gが所定加速度以下(減速度が所定減速度以上)であり、推定された路面摩擦係数μが所定路面摩擦係数以下である場合に、回生モードを配分優先モードに切り替える。ここで、配分優先モードとは、前後配分比に基づいた前輪制動力と後輪制動力との配分を回生制動よりも優先する回生モードである。また、燃費優先モードは、回生制動を前後配分比に基づいた前輪制動力と後輪制動力との配分よりも優先する回生モードである。なお、回生モード設定部28mは、検出された加速度Gあるいは推定された路面摩擦係数μのいずれか1つに基づいて回生モードを配分優先モードあるいは燃費優先モードに切り替えても良い。
【0099】
処理部28bの目標回生制動力設定部28nは、回生制動力設定手段であり、上記要求制動力設定部28dにより設定された要求制動力BF*(前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*r)と、操作圧力による圧力制動力、すなわちマスタ圧制動力BFpmc(前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcr)との差を目標回生制動力BFr*として設定するものである。実施の形態3では、目標回生制動力設定部28nは、配分優先モード時に前輪要求駆動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値を目標回生制動力BFr*とし、燃費優先モード時に要求駆動力BF*からマスタ圧制動力BFpmcを引いた値を目標回生制動力BFr*とする。従って、燃費優先モード時における目標回生制動力BFr*は、配分優先モード時における目標回生制動力BFr*に後輪要求駆動力BF*rから後輪マスタ圧制動力BFpmcrを引いた値を加えることができる。これにより、目標回生制動力設定部28nは、回生モードが配分優先モード時よりも燃費優先モード時に目標回生制動力BFr*を大きく設定することができる。つまり、目標回生制動力設定部28nは、検出された加速度Gあるいは推定された路面摩擦係数μのいずれか1つに基づいて目標回生制動力BFr*を変更するものでもある。
【0100】
回生制動装置4は、図7に示すように、回生制動手段である。回生制動装置4は、回生制動力を発生し回生制動を行うものである。回生制動装置4は、実施の形態3では、回生制動力を車両CAの図示しない前輪に作用させるものである。回生制動装置4は、目標回生制動力設定部28nにより設定された目標回生制動力BFr*に基づいて回生制動力を発生するものである。回生制動装置4は、基本的に、要求制動力BF*(前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*r)と、操作圧力による圧力制動力、すなわちマスタ圧制動力BFpmc(前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcr)との差を回生制動力として発生するものである。また、ブレーキ制御装置28は、マスタ圧制動力BFpmc(前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcr)と設定された目標回生制動力BFr*に基づいた実際の回生制動力である実効回生制動力BTKとの合計が設定された要求制動力BF*(前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*r)に対して不足している場合に加圧制御を行う。
【0101】
回生制動装置4は、モータジェネレータ41と、インバータ42と、バッテリ43と、モータジェネレータ制御装置44とにより構成されている。モータジェネレータ41は、ジェネレータとして機能するとともに、モータとしても機能するものであり、例えば同期発電電動機である。モータジェネレータ41は、車軸と連結されており、モータとして機能する場合に車軸を介して車軸に取り付けられている車輪に回転力を付与し、ジェネレータとして機能する場合に車輪の回転力に基づいて車軸に回生制動力を発生する。モータジェネレータ41は、インバータ42を介してバッテリ43と接続されている。モータジェネレータ41は、バッテリ43から電力が供給され、回転駆動することでモータとして機能することができるとともに、回生制動を行い、発電した電力をバッテリ43に蓄電することでジェネレータとして機能することができる。モータジェネレータ41は、モータジェネレータ制御装置44に接続されている。モータジェネレータ制御装置44は、インバータ42を介して、モータジェネレータ41をモータとして機能させる駆動制御、あるいはモータジェネレータ41をジェネレータとして機能させる回生制動制御を行うものである。モータジェネレータ制御装置44は、ハイブリッド制御装置5に接続されており、ハイブリッド制御装置5からの駆動制御、あるいは目標回生制動力BFr*に基づいた回生制動制御の指示に応じて、インバータ42のスイッチング制御を行う。なお、ハイブリッド制御装置5には、モータジェネレータ制御装置44を介してモータジェネレータ41の回転数や、モータジェネレータ41への相電流値などが入力される。また、バッテリ43は、図示しないバッテリ制御装置に接続されており、バッテリ制御装置により管理されている。バッテリ制御装置は、充放電電流、バッテリ温度などに基づいて残容量SOC、入出力制限などを算出するものである。バッテリ制御装置は、ハイブリッド制御装置5に接続されており、残容量SOCなどがハイブリッド制御装置5に出力される。
【0102】
ハイブリッド制御装置5は、車両CAを総合的に運転制御するものである。ハイブリッド制御装置5は、ブレーキ制御装置28、モータジェネレータ制御装置44、図示しない内燃機関を運転制御するエンジン制御装置、上記図示しないバッテリ制御装置、内燃機関の駆動力を車輪に伝達する変速機を制御する変速機制御装置などと接続されている。なお、ハイブリッド制御装置5には、図示しないイグニッションスイッチのON/OFF、図示しないシフトレバーのシフトポジション、図示しないアクセルペダルのアクセル開度、車両CAの車速などがハイブリッド車両に備えられたセンサから入力される。
【0103】
路面摩擦推定装置6は、車両CAが走行する路面の摩擦状況を示す路面摩擦係数μを推定するものである。路面摩擦推定装置6は、ブレーキ制御装置28に接続されており、路面摩擦推定装置6が検出した路面摩擦係数μは、ブレーキ制御装置28に出力される。なお、路面摩擦推定装置6により路面摩擦係数μを推定(例えば、任意の1つの車輪のスリップ率に基づいて路面摩擦係数μを推定)する手段は、既に公知技術であるため、ここでの説明は省略する。
【0104】
次に、実施の形態3にかかる制動装置1−3の制御方法、特に、制動装置1−3により発生する制動力の制御方法について説明する。図8は、実施の形態3にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。なお、実施の形態3にかかる制動装置1−3の制御方法は、実施の形態1にかかる制動装置1−1の制御方法と基本的手順が同様であるので、その説明は簡略化あるいは省略する。
【0105】
まず、処理部28bは、同図に示すように、制動要求中であるか否かを判断する(ステップST301)。
【0106】
次に、処理部28bは、運転者による制動要求があったと判断される(ステップST301肯定)と、ペダルストローク量ST、マスタシリンダ圧PMC、実効回生制動力BTK、加速度G、路面摩擦係数μを取得する(ステップST302)。ここでは、処理部28bは、ストロークセンサ21aにより検出され、ブレーキ制御装置28に出力されたペダルストローク量STを取得し、マスタシリンダ圧センサ24により検出され、ブレーキ制御装置28に出力された操作圧力であるマスタシリンダ圧PMCを取得し、上記ハイブリッド制御装置5からブレーキ制御装置28に出力された実効回生制動力BTKを取得し、Gセンサ3により検出され、ブレーキ制御装置28に出力された加速度G、すなわち制動要求があり制動装置1−3により車両CAが制動中であるので減速度を取得し、路面摩擦推定装置6により推定され、ブレーキ制御装置28に出力された路面摩擦係数μを取得する。なお、実効回生制動力BTKは、目標回生制動力設定部28nにより設定され、ハイブリッド制御装置5に出力された目標回生制動力BFr*と、モータジェネレータ41の回転数と、バッテリ43の残容量SOCとに基づいて、回生制動装置4が実際に発生することができる回生制動力である。従って、実効回生制動力BTKは、現在の制御周期により設定された目標回生制動力BFr*に基づいたものではなく、前回以前に設定された目標回生制動力BFr*に基づいたものとなる。
【0107】
次に、要求制動力設定部28dは、要求制動力BF*を設定する(ステップST303)。
【0108】
次に、異常検出部28lは、第1系統25あるいは第2系統26の少なくともいずれか一方が異常であるか否か判定するものである(ステップST304)。
【0109】
次に、制動モード設定部28fは、異常でないと判定すると(ステップST304否定)、制動モードを前後制動モードに設定する(ステップST305)。
【0110】
次に、前後配分比設定部28gは、前後配分比KF:KRを設定するものである(ステップST306)。実施の形態3では、記憶部28cに記憶されている前後配分比KF0:KR0を前後配分比KF:KRに設定する(KF:KR=KF0:KR0)。
【0111】
次に、要求制動力設定部28dは、前後配分比KF:KRに基づいて前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rを設定する(ステップST307)。
【0112】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいて前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcrを設定する(ステップST308)。
【0113】
次に、処理部28bの回生モード設定部28mは、配分優先モードであるか否かを判定する(ステップST309)。ここでは、回生モード設定部28mは、取得された加速度Gが所定加速度以下であり、かつ取得された路面摩擦係数μが所定路面摩擦係数以下であるか否かを判定する。つまり、回生モード設定部28mは、制動時における車両CAの車両挙動の安定性が低下する虞があるか否かを判断する。
【0114】
次に、処理部28bの目標回生制動力設定部28nは、配分優先モードであると判定される(ステップST309肯定)と、配分優先モードにおける目標回生制動力BFr*を設定する(ステップST310)。ここでは、目標回生制動力設定部28nは、設定された前輪要求駆動力BF*fと、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcfと、下記の式(16)とに基づいて、配分優先モードにおける目標回生制動力BFr*を設定する。つまり、実施の形態3では、回生モードが配分優先モードである場合は、回生制動装置4による回生制動力が車両CAの図示しない前輪に作用するので、操作圧力により前輪に作用する圧力制動力と回生制動装置4により前輪に作用する回生制動力との合計が設定された前輪要求制動力BF*fとなるように、目標回生制動力BFr*を設定する。

BFr*=BF*f−BFpmcf …(16)
【0115】
ここで、目標回生制動力設定部28nは、設定された目標回生制動力BFr*をハイブリッド制御装置5に送信する。ハイブリッド制御装置5は、目標回生制動力BFr*と、モータジェネレータ41の回転数と、バッテリ43の残容量SOCとに基づいて、回生制動装置4が実際に発生することができる実効回生制動力BTKを設定し、モータジェネレータ制御装置44に送信する。モータジェネレータ制御装置44は、実効回生制動力BTKに基づいてインバータ42のスイッチング制御を行うことで、モータジェネレータ41に対して実効回生制動力BTKに基づいた回生制動制御を行い、回生制動装置4により実効回生制動力BTKを発生させる。
【0116】
次に、加圧制動力設定部28hは、配分優先モードにおける第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST311)。ここでは、加圧制動力設定部28hは、設定された前輪要求駆動力BF*fと、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcfと、取得された実効回生制動力BTKと、下記の式(17)とに基づいて第1加圧制動力BFpp1を設定し、設定された後輪要求駆動力BF*rと、設定された後輪マスタ圧制動力BFpmcrと、下記の式(18)とに基づいて第2加圧制動力設定部BFpp2を設定する。

BFpp1=BF*f−BFpmcf−BTK …(17)
BFpp2=BF*r−BFpmcr …(18)
【0117】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST315)。
【0118】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST316)。従って、配分優先モードでは、前後配分比KF:KRに基づいて前輪制動力を車両CAの図示しない前輪に作用させ、後輪制動力を車両CAの図示しない後輪に作用させる。これにより、前後配分比KF:KRを維持して回生制動力を含む制動力を前輪制動力および後輪制動力に配分することができる。
【0119】
また、処理部28bの目標回生制動力設定部28nは、燃費優先モードであると判定される(ステップST309否定)と、燃費優先モードにおける目標回生制動力BFr*を設定する(ステップST312)。ここでは、目標回生制動力設定部28nは、設定された要求駆動力BF*と、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcfと後輪マスタ圧制動力BFpmcrとの合計であるマスタ圧制動力BFpmcr、下記の式(19)とに基づいて、すなわち燃費優先モードにおける目標回生制動力BFr*を設定する。つまり、実施の形態3では、回生モードが燃費優先モードである場合は、操作圧力により車両CAの図示しない全輪に作用する圧力制動力と回生制動装置4により前輪に作用する回生制動力との合計が設定された要求制動力BF*となるように、目標回生制動力BFr*を設定する。なお、上記ステップST310と同様に、モータジェネレータ制御装置44は、実効回生制動力BTKに基づいてインバータ42のスイッチング制御を行うことで、モータジェネレータ41に対して実効回生制動力BTKに基づいた回生制動制御を行い、回生制動装置4により実効回生制動力BTKを発生させる。


BFr*=BF*−(BFpmcf+BFpmcr) …(19)
【0120】
次に、処理部28bは、取得された実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値以上であるか否かを判定する(ステップST313)。ここでは、処理部28bは、現在の回生制動装置4により車両CAの図示しない前輪に作用する実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fに対して不足している分の制動力以上であるか否かを判定する(BTK≧BF*f―BFpmcf)。
【0121】
次に、加圧制動力設定部28hは、取得された実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値以上であると判定される(ステップST313肯定)と、燃費優先モードにおける第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST314)。ここでは、加圧制動力設定部28hは、車両CAの図示しない前輪に第1加圧制動力BFpp1が作用しないように第1加圧制動力BFpp1を0(下記の式(20)参照)とし、設定された要求駆動力BF*と、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcと後輪マスタ圧制動力BFpmcrとの合計であるマスタ圧制動力BFpmcfと、実効回生制度力BTKと、下記の式(21)とに基づいて第2加圧制動力設定部BFpp2を設定する。つまり、加圧制動力設定部28hは、マスタ圧制動力BFpmcと実効回生制動力BTKと加圧制動力との合計が設定された要求制動力BF*を超えないように第2加圧制動力を設定する。

BFpp1=0 …(20)
BFpp2=BF*−(BFpmcf+BFpmcr)−BTK …(21)
【0122】
また、加圧制動力設定部28hは、取得された実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値未満であると判定される(ステップST313否定)と、配分優先モードと同様の方法で、燃費優先モードにおける第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST311)。ここでは、加圧制動力設定部28hは、設定された前輪要求駆動力BF*fと、設定された前輪マスタ圧制動力BFpmcfと、取得された実効回生制動力BTKと、上記の式(17)とに基づいて第1加圧制動力BFpp1を設定し、設定された後輪要求駆動力BF*rと、設定された後輪マスタ圧制動力BFpmcrと、上記の式(18)とに基づいて第2加圧制動力設定部BFpp2を設定する。
【0123】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST315)。
【0124】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST316)。従って、燃費優先モードでは、設定された要求制度力BF*を維持しつつ、回生制動装置4による回生制動力を車両CAの図示しない前輪に優先して作用させる。これにより、燃費優先モードでは、前後配分比がKF:KRとなるように回生制動力を含む制動力を前輪制動力および後輪制動力に配分するとともに、回生制動装置4により回生制動を効率良く行うことができる。
【0125】
また、処理部28bの制動モード設定部28fは、異常であると判定すると(ステップST304肯定)、制動モードを左右制動モードに設定する(ステップST317)。
【0126】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいてマスタ圧制動力BFpmcを設定する(ステップST318)。
【0127】
次に、目標回生制動力設定部28nは、目標回生制動力BFr*を0とする(ステップST319)。ここでは、目標回生制動力設定部28nは、左右制動モード時に回生制動装置4による回生制動を行わないように、目標回生制動力BFr*を0に設定する(BFr*=0)。
【0128】
次に、加圧制動力設定部28hは、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST320)。
【0129】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST321)。
【0130】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST316)。
【0131】
以上のように、実施の形態3にかかる制動装置1−3では、上記実施の形態1と同様に、制動力を車両CAの対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、回生制動力を含む制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。また、異常時における車両挙動の安定性を維持することができる。制動時における車両CAの車両挙動の安定性が低下する虞がある場合は、回生制動手段による回生制動よりも、前後配分比を維持して回生制動力を含む制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分するので、安定性の低下を抑制することができる。
【0132】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4にかかる制動装置について説明する。実施の形態4が実施の形態3と異なる点は、前後配分比KF:KRを制動時における車両CAの姿勢変化に伴う荷重移動に基づいて設定する点である。実施の形態4にかかる制動装置1−4は、図7に示すように、圧力制動装置2と、Gセンサ3と、回生制動装置4と、ハイブリッド制御装置5と、路面摩擦推定装置6とにより構成されている。なお、実施の形態4にかかる制動装置1−4の基本的構成は、実施の形態3にかかる制動装置1−3の基本的構成と同様であるため、その説明は省略する。また、実施の形態4にかかる制動装置1−4の前後配分比設定部28gの機能は、実施の形態2にかかる制動装置1−2の前後配分比設定部28gの機能と同様であるため、その説明は省略する。
【0133】
次に、実施の形態4にかかる制動装置1−4の制御方法、特に、制動装置1−4により発生する制動力の制御方法について説明する。図9は、実施の形態4にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。なお、実施の形態4にかかる制動装置1−4の制御方法は、実施の形態3にかかる制動装置1−3の制御方法と基本的手順が同様であるので、その説明は簡略化あるいは省略する。
【0134】
まず、処理部28bは、同図に示すように、制動要求中であるか否かを判断する(ステップST401)。
【0135】
次に、処理部28bは、運転者による制動要求があったと判断される(ステップST401肯定)と、ペダルストローク量ST、マスタシリンダ圧PMC、実効回生制動力BTK、加速度G、路面摩擦係数μを取得する(ステップST402)。
【0136】
次に、要求制動力設定部28dは、要求制動力BF*を設定する(ステップST403)。
【0137】
次に、異常検出部28lは、第1系統25あるいは第2系統26の少なくともいずれか一方が異常であるか否か判定するものである(ステップST404)。
【0138】
次に、制動モード設定部28fは、異常でないと判定すると(ステップST404否定)、制動モードを前後制動モードに設定する(ステップST405)。
【0139】
次に、前後配分比設定部28gは、前後配分比KF:KRを設定するものである(ステップST406)。実施の形態4では、検出された加速度Gと、記憶部28cに記憶されている重心高Hと、ホイールベースLと前後配分比KF0:KR0に基づいて前後配分比KF:KRと、上記の式(14),(15)とに基づいて前後配分比KF:KRを設定する。
【0140】
次に、要求制動力設定部28dは、前後配分比KF:KRに基づいて前輪要求制動力BF*fおよび後輪要求制動力BF*rを設定する(ステップST407)。
【0141】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいて前輪マスタ圧制動力BFpmcfおよび後輪マスタ圧制動力BFpmcrを設定する(ステップST408)。
【0142】
次に、処理部28bの回生モード設定部28mは、配分優先モードであるか否かを判定する(ステップST409)。
【0143】
次に、処理部28bの目標回生制動力設定部28nは、配分優先モードであると判定される(ステップST409肯定)と、配分優先モードにおける目標回生制動力BFr*を設定する(ステップST410)。
【0144】
次に、加圧制動力設定部28hは、配分優先モードにおける第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST411)。
【0145】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST415)。
【0146】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST416)。従って、配分優先モードでは、前後配分比KF:KRに基づいて前輪制動力を車両CAの図示しない前輪に作用させ、後輪制動力を車両CAの図示しない後輪に作用させる。これにより、前後配分比KF:KRを維持して回生制動力を含む制動力を前輪制動力および後輪制動力に配分することができる。
【0147】
また、処理部28bの目標回生制動力設定部28nは、燃費優先モードであると判定される(ステップST309否定)と、燃費優先モードにおける目標回生制動力BFr*を設定する(ステップST412)。
【0148】
次に、処理部28bは、取得された実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値以上であるか否かを判定する(ステップST413)。
【0149】
次に、加圧制動力設定部28hは、取得された実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値以上であると判定される(ステップST413肯定)と、燃費優先モードにおける第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST414)。
【0150】
また、加圧制動力設定部28hは、取得された実効回生制動力BTKが設定された前輪要求制動力BF*fから前輪マスタ圧制動力BFpmcfを引いた値未満であると判定される(ステップST413否定)と、配分優先モードと同様の方法で、燃費優先モードにおける第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST411)。
【0151】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST415)。
【0152】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST416)。
【0153】
また、処理部28bの制動モード設定部28fは、異常であると判定すると(ステップST404肯定)、制動モードを左右制動モードに設定する(ステップST417)。
【0154】
次に、マスタ圧制動力設定部28eは、マスタシリンダ圧PMCに基づいてマスタ圧制動力BFpmcを設定する(ステップST418)。
【0155】
次に、目標回生制動力設定部28nは、目標回生制動力BFr*を0とする(ステップST419)。
【0156】
次に、加圧制動力設定部28hは、第1加圧制動力BFpp1および第2加圧制動力BFpp2を設定する(ステップST420)。
【0157】
次に、処理部28bは、第1加圧圧力Pp1および第2加圧圧力Pp2を設定する(ステップST421)。
【0158】
次に、処理部28bのポンプ駆動制御部28kは駆動用モータ29を駆動制御することで、各加圧ポンプ25h,26hの駆動制御を行い、弁開閉制御部28iは各マスタカットソレノイド弁25a,26aの開度制御を行う(ステップST416)。
【0159】
以上のように、実施の形態4にかかる制動装置1−4では、上記実施の形態3と同様に、制動力を車両CAの対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、回生制動力を含む制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。また、異常時における車両挙動の安定性を維持することができる。制動時における車両CAの車両挙動の安定性が低下する虞がある場合は、回生制動手段による回生制動よりも、前後配分比を維持して回生制動力を含む制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分するので、安定性の低下を抑制することができる。また、制動力の前輪制動力および後輪制動力の配分は、検出された車両CAの加速度Gに基づいて設定されるので、車両CAに制動力が作用することで、車両CAの図示しない前輪の前輪加重および後輪の後輪加重が静止時における前輪荷重および後輪荷重から変化しても、変化した荷重を考慮して、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分することができる。従って、制動時における車両挙動の安定性を向上することができる。
【0160】
なお、上記実施の形態1〜4では、前後制動モード時に、第1系統25のブレーキオイルOIL1により車両CAの図示しない前輪に前輪制動力を、第2系統26のブレーキオイルOIL2により車両CAの図示しない後輪に後輪制動力を作用させるように、第1接続配管L18および第2接続配管L28を配置したが本発明はこれに限定するものではない。第1接続配管L18は、一方の端部を第1系統25のうち保持ソレノイド弁25bおよび保持ソレノイド弁25cの上流側に接続し、他方の端部を保持ソレノイド弁26cとRRシリンダ27dとの間、すなわち第2系統26のうち保持ソレノイド弁26cの下流側と接続しても良い。この場合、第1切替弁25dは、第1系統25のマスタカットソレノイド弁25aと、RRシリンダ27dとの接続、接続の解除を行う。一方、第2接続配管L28は、一方の端部を第2系統26のうち保持ソレノイド弁26bおよび保持ソレノイド弁26cの上流側に接続し、他方の端部が保持ソレノイド弁25bとFRシリンダ27aとの間、すなわち第1系統25のうち保持ソレノイド弁25bの下流側と接続しても良い。この場合、第2切替弁26dは、第2系統26のマスタカットソレノイド弁26aと、FRシリンダ27aとの接続、接続の解除を行う。従って、前後制動モード時に、第1切替弁25dおよび第2切替弁26dを開弁し、第1系統25の保持ソレノイド弁25bを閉弁し、保持ソレノイド弁25cを開弁し、第2系統26の保持ソレノイド弁26bを開弁し、保持ソレノイド弁26cを閉弁することで、第1系統25のブレーキオイルOIL1により車両CAの後輪に後輪制動力を、第2系統26のブレーキオイルOIL2により車両CAの前輪に前輪制動力を作用させても良い。
【0161】
また、上記実施の形態3,4では、回生制動力が車両CAの前輪に作用するように回生制動装置4を設けたが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回生制動装置4は、回生制動力を車両CAの図示しない後輪に作用させても良い。この場合、配分優先モード時においては、目標回生制動力BFr*の設定が後輪要求制動力BF*rに基づいて行われ、第2加圧制動力の設定が実効回生制動力BTKに基づいて行われる。また、燃費優先モード時においては、実効回生制動力BTKが後輪要求制動力BF*rから後輪マスタ圧制動力BFpmcrを引いた値以上である否か判定され、実効回生制動力BTKが後輪要求制動力BF*rから後輪マスタ圧制動力BFpmcrを引いた値以上であると第1加圧制動力の設定が実効回生制動力BTKに基づいて行われ、実効回生制動力BTKが後輪要求制動力BF*rから後輪マスタ圧制動力BFpmcrを引いた値未満であると第2加圧制動力の設定が実効回生制動力BTKに基づいて行われる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
以上のように、本発明にかかる制動装置は、右側前輪および左側後輪に制動力を作用させる第1制動系と、左側前輪及び右側後輪に制動力を作用させる第2制動系とを有する制動装置に有用であり、特に、制動力を車両の対角線に配置された車輪に作用させることができるとともに、制動力を前輪制動力と後輪制動力とに配分を行うのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】実施の形態1にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。
【図2】圧力制動装置の概略構成例(左右制動モード時)を示す図である。
【図3】前後制動モード時における圧力制動装置の概略構成例を示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。
【図5】実施の形態2にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。
【図6】実施の形態2にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。
【図7】実施の形態3,4にかかる制動装置の概略構成例を示す図である。
【図8】実施の形態3にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。
【図9】実施の形態4にかかる制動装置の制御方法のフローを示す図である。
【符号の説明】
【0164】
1−1〜1−4 制動装置
2 圧力制動装置
21 ブレーキペダル
21a ストロークセンサ
22 マスタシリンダ
22a リザーバ
23 ブレーキブースタ
23a 負圧センサ
23b 負圧配管
23c 逆止弁
24 マスタシリンダ圧センサ
25 第1系統
25a マスタカットソレノイド弁(加圧手段)
25b,25c 保持ソレノイド弁(第11系統弁、第12系統弁)
25d 第1切替弁
25e,25f 減圧ソレノイド弁
25g リザーバ
25h 加圧ポンプ(加圧手段)
26 第2系統
26a マスタカットソレノイド弁(加圧手段)
26b,26c 保持ソレノイド弁(第21系統弁、第22系統弁)
26d 第2切替弁
26e,26f 減圧ソレノイド弁
26g リザーバ
26h 加圧ポンプ(加圧手段)
27a〜27d ホイールシリンダ
27e〜27h ブレーキパッド
27i〜27m ブレーキロータ
28 ブレーキ制御装置(制御手段)
28a 入出力部
28b 処理部
28c 記憶部
28d 要求制動力設定部(要求制動力設定手段)
28e マスタ圧制動力設定部
28f 制動モード設定部(制動モード設定手段)
28g 前後配分比設定部(前後配分比設定手段)
28h 加圧制動力設定部
28i 弁開閉制御部
28k ポンプ駆動制御部
28l 異常検出部(異常検出手段)
28m 回生モード設定部(回生モード設定手段)
28n 目標回生制動力設定部(目標回生制動力設定手段)
29 駆動用モータ
3 Gセンサ(加速度検出手段)
4 回生制動装置(回生制動手段)
41 モータジェネレータ
42 インバータ
43 バッテリ
44 モータジェネレータ制御装置
5 ハイブリッド制御装置
6 路面摩擦推定装置
BF* 要求制動力
BF*f 前輪要求制動力
BF*r 後輪要求制動力
BFpmc マスタ圧制動力
BFpmcf 前輪マスタ圧制動力
BFpmcr 後輪マスタ圧制動力
BFpp1 第1加圧制動力
BFpp2 第2加圧制動力
BFr* 目標回生制動力
BTK 実効回生制動力
I1,I2 指令電流値
L10〜L17,L20〜L27 油圧配管
L18 第1接続配管
L28 第2接続配管
Pp1 第1加圧圧力
Pp2 第2加圧圧力
PMC マスタシリンダ圧
PV 負圧
PWC ホイールシリンダ圧
ST ペダルストローク量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作に伴って作動流体を加圧し、前記加圧された作動流体を車両の各車輪に設けられたホイールシリンダに供給することで前記車両に圧力制動力を作用させる制動装置において、
前記運転者により操作されるブレーキペダルと、
前記運転者のブレーキペダルの操作に応じて、前記作動流体に操作圧力を付与する操作圧力付与手段と、
右側前輪に設けられた前輪右側ホイールシリンダおよび左側後輪に設けられた後輪左側ホイールシリンダに前記加圧された作動流体を供給する第1系統と、
左側前輪に設けられた前輪左側ホイールシリンダおよび右側後輪に設けられた後輪右側ホイールシリンダに前記加圧された作動流体を供給する第2系統と、
前記第1系統のうち前記前輪右側ホイールシリンダの上流側に設けられる第11系統弁と、
前記第1系統のうち前記後輪左側ホイールシリンダの上流側に設けられる第12系統弁と、
前記第2系統のうち前記前輪左側ホイールシリンダの上流側に設けられる第21系統弁と、
前記第2系統のうち前記後輪右側ホイールシリンダの上流側に設けられる第22系統弁と、
前記第1系統のうち前記第11系統弁および前記第12系統弁の上流側と、前記第21系統弁と前記前輪左側ホイールシリンダとの間、あるいは前記第22系統弁と前記後輪右側ホイールシリンダとの間のいずれか一方とを接続する第1接続配管と、
前記第2系統のうち前記第21系統弁および前記第22系統弁の上流側と、前記第1接続配管が接続する前記前輪左側ホイールシリンダあるいは前記後輪右側ホイールシリンダのいずれかと前記車両の前後方向において対向する前記後輪左側ホイールシリンダと前記第12系統弁との間、あるいは前記前輪右側ホイールシリンダと前記第11系統弁との間のいずれか一方とを接続する第2接続配管と、
前記第1接続配管に設けられた第1切替弁と、
前記第2接続配管に設けられた第2切替弁と、
を備えることを特徴とする制動装置。
【請求項2】
少なくとも前記各弁の開閉を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は、制動モードを前後制動モードと左右制動モードとに切り替えることができ、
前記前後制動モード時は、前記第1切替弁および前記第2切替弁が開弁され、前記第11系統弁および前記第12系統弁のうち前記第2接続配管と接続する一方が閉弁され、他方が開弁され、前記第21系統弁および前記第22系統弁のうち前記第1接続配管と接続する一方が閉弁され、他方が開弁され、
前記左右制動モード時は、前記第1切替弁および前記第2切替弁が閉弁され、前記第11系統弁および前記第12系統弁が開弁され、前記第21系統弁および前記第22系統弁が開弁されることを特徴とする請求項2に記載の制動装置。
【請求項3】
前記第1系統あるいは前記第2系統の少なくともいずれか一方の異常を検出する異常検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記異常が検出されない場合に前記前後制動モードに切り替え、当該異常が検出された場合に前記左右制動モードに切り替えることを特徴とする請求項2に記載の制動装置。
【請求項4】
前記運転者によるブレーキ操作に応じた要求制動力を設定する要求制動力設定手段と、
前記設定された要求制動力に基づいて、前記第1系統における第1系統作動流体および前記第2系統における第2系統作動流体をそれぞれ加圧して、当該第1系統作動流体および当該第2系統作動流体に加圧圧力をそれぞれ付与する加圧手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1系統作動流体および前記第2系統作動流体に前記加圧手段によりそれぞれ付与する加圧圧力を個別に制御する加圧制御を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の制動装置。
【請求項5】
前記前後制動モード時に前記車両に作用する制動力に対する前記車両の前輪に作用する前輪制動力と当該車両の後輪に作用する後輪制動力との比である前後配分比を設定する配分比設定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記設定された前後配分比に基づいて前記加圧制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の制動装置。
【請求項6】
前記車両の加速度を検出する加速度検出手段をさらに備え、
前記配分比設定手段は、前記検出された加速度に基づいて前記前後配分比を設定することを特徴とする請求項5に記載の制動装置。
【請求項7】
前記車両の前輪あるいは後輪の少なくともいずれか一方に回生制動力を作用させる回生制動手段と、
目標回生制動力を設定する回生制動力設定手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、前記操作圧力による圧力制動力と前記設定された目標回生制動力に基づいた前記回生制動力との合計が前記設定された要求制動力に対して不足している場合に前記加圧制御を行うことを特徴とする請求項5または6に記載の制動装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記前後制動モード時において、前記回生制動手段による回生モードを少なくとも配分優先モードと燃費優先モードとに切り替えることができ、
前記回生制動力設定手段は、前記配分優先モード時よりも前記燃費優先モード時に前記目標回生制動力を大きく設定することを特徴とする請求項7に記載の制動装置。
【請求項9】
前記回生モードは、前記車両の減速状態あるいは当該車両の走行する路面の摩擦状況の少なくともいずれか一方に基づいて切り替えることを特徴とする請求項8に記載の制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−255622(P2009−255622A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104092(P2008−104092)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】