説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】CWレーザや発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いた結晶化で得られるそれぞれの結晶粒の面方位を、レーザビームの照射領域内で一方向とみなすことができる方向に制御する。
【解決手段】半導体膜上にキャップ膜を形成したのちにCWレーザまたは発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを照射して半導体膜を結晶化する。得られた半導体膜は複数の結晶粒を有し、この結晶粒は幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、この半導体膜の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、第1面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上である。この半導体膜を用いて半導体装置を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを半導体膜に照射することにより結晶構造を有する半導体膜を形成する技術及びこの技術を用いて形成した結晶構造を有する半導体膜を用いた薄膜トランジスタ(以下、TFT)等の半導体装置に関する。また、その作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス基板上に形成された非晶質半導体膜にレーザビームを照射し、結晶構造を有する半導体膜(以下、結晶性半導体膜)を形成するレーザ結晶化技術が広く研究されている。結晶性半導体膜を用いるのは、非晶質半導体膜と比較して高い移動度を有するためである。このため、この結晶性半導体膜を用いてTFTを形成し、例えば、1枚のガラス基板上に、画素部用、または、画素部用と駆動回路用のTFTを形成したアクティブマトリクス型の液晶表示装置や有機EL表示装置等に利用されている。
【0003】
結晶化方法には、ファーネスアニール炉を用いた熱アニール法や、瞬間熱アニール法(RTA法)、レーザアニール法(レーザ照射による結晶化法)等が挙げられるが、熱アニール法などのように固相成長法を用いる場合、600℃以上の高温処理を行うため、その高熱に耐えうる高価な石英基板が必要になり、製造コストを上昇させる。一方、結晶化にレーザを用いた場合では、基板の温度をあまり上昇させることなく半導体膜にのみ熱を吸収させ結晶化することができる。そのため、基板にガラスやプラスチックなどの融点が低い物質を使用できる。これにより、安価で大面積に加工が容易なガラス基板を用いることができるようになり、生産効率が著しく向上した。
【0004】
レーザ結晶化方法の一つに、パルスレーザであるエキシマレーザによる結晶化方法がある。エキシマレーザの波長は紫外域に属しており、珪素に対する吸収率が高い。そのため、エキシマレーザを用いると、珪素へ選択的に熱を与えることができる。例えば、エキシマレーザを用いる場合、レーザ発振器から射出される約10mm×30mmの矩形状のレーザビームを、光学系によって、幅が数百μmで長さが300mm以上の線状のビームスポットに加工して基板上の珪素に照射する。ここで、アスペクト比が高い矩形状、または楕円状のことを線状と呼ぶ。線状に加工されたビームスポットを基板上の珪素に対して相対的に走査させながら照射することにより、アニールを行い、結晶性珪素膜を得る。ビームスポットを走査させる方向を、ビームスポットの長さ(長軸)方向に対して直角方向にすることで高い生産性が得られる。
【0005】
レーザ結晶化方法の別の方法として、連続発振のレーザ(以下、「CWレーザ」と記す。CW:continuous−wave)レーザや繰り返し周波数が10MHz以上と高いパルスレーザによる結晶化方法がある。これらのレーザを線状のビームスポットに形成し、このビームスポットを走査しながら半導体膜に照射して、結晶性珪素膜を得る。この方法を用いることにより、エキシマレーザを照射して得られる結晶と比較して、粒径が非常に大きな結晶(以下、大粒径結晶と称する)領域を有する結晶性珪素膜を形成することができる(例えば、特許文献1を参照)。この大粒径結晶をTFTのチャネル領域に使用すると、チャネル方向には結晶粒界がほとんど含まれないため、電子や正孔などのキャリアに対する電気的障壁が低くなる。その結果、移動度100cm/Vs程度のTFTの作製が可能となる。
【特許文献1】特開2005−191546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のレーザを用いた結晶化で得られる大粒径結晶は、隣接する大粒径結晶間で結晶粒の面方位が全く異なるという特徴を持ち、レーザビームの照射領域内に形成される各大粒径結晶粒の面方位はランダムであり、一方向に制御できていない。したがって、この大粒径結晶からなる半導体膜を活性層としてTFTを作製した場合、チャネルとなる半導体膜の結晶粒の面方位は複数のTFT間によって異なる。そのため、それぞれのTFTの電気的特性は、結晶粒の面方位の違いを起因とするばらつきを持つ。また、隣接する結晶間で面方位が異なると、結晶粒界におけるトラップ準位が、面方位が同じ場合の粒界と比較して大きくなるため、TFTの電気的特性を悪化させる。
【0007】
CWレーザや繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いた結晶化は、レーザ発振器から射出されたレーザビームを光学系によって長さが500μm、幅が20μm程度の線状に整形して、半導体膜上を10〜200cm/sec程度の一定速度で走査させながら照射することで行う。通常、図2(B)に示すように、基板01、下地絶縁膜02上に半導体膜03が形成されている状態でレーザビームが照射される。このとき、得られる結晶は図2(A)に示すように、レーザのエネルギー密度と密接な関係が存在し、エネルギー密度の上昇とともに、微結晶、小粒径結晶、大粒径結晶と変化していく。
【0008】
ここでいう小粒径結晶とは、エキシマレーザを照射したときに形成される結晶と同様のものである。エキシマレーザを半導体膜に照射すると、半導体膜の表面層のみが部分的に溶融し、半導体膜と下地絶縁膜との界面に無数の結晶核がランダムに発生する。次に、結晶核から冷え固まる方向、つまり半導体膜と下地絶縁膜の界面から半導体膜の表面に向かう方向に結晶が成長する。よって比較的小さな結晶が無数に形成される。
【0009】
CWレーザや繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いた結晶化でも、レーザビームの端部が照射された部分のように、小粒径結晶が形成される部分がある。それは、半導体膜が完全溶融するために必要な熱が半導体膜に供給されず、半導体膜が部分的に溶融している結果と理解できる。
【0010】
次に、半導体膜が完全に溶融する条件、すなわち図2(A)において、エネルギーがE以上のレーザビームを照射して結晶化を行うと、大粒径結晶が形成される。このとき、完全溶融した半導体膜中では無数の結晶核が発生し、固液界面の移動とともにそれぞれの結晶核からレーザビームの走査方向へ結晶成長する。なお、本明細書においては、レーザビームの走査方向を、結晶粒の長径方向とも表記する。また、結晶粒の長径方向に垂直な方向を、結晶粒の短径方向とも表記する。この結晶核の発生する位置は無作為であるため、不均一に結晶核が分布する。そして、互いの結晶粒がぶつかり合ったところで結晶成長が終了するため、結晶粒の位置と大きさ、および結晶粒の面方位はランダムなものとなる。
【0011】
そこで、結晶粒の位置と大きさ、および結晶粒の面方位の確認をするために、大粒径結晶が形成されている珪素膜を試料にしてEBSP(Electron Back Scatter Diffraction Pattern)測定を行った。EBSPとは、走査型電子顕微鏡にEBSP検出器を接続し、走査型電子顕微鏡内で高傾斜した試料に収束電子ビームを照射したときに発生する個々の結晶の回折像(EBSP像)の方位を解析し、方位データと測定点の位置情報(x,y)から試料の結晶粒の面方位を測定する方法である。図3にその結果を示す。
【0012】
図3において、(A)は観察面Aにおける面方位分布、(B)は観察面Bにおける面方位分布、(C)は観察面Cにおける面方位分布をそれぞれ示し、(D)は(A)、(B)および(C)における面方位を示す。また、図3(E)、(F)、(G)は順に観察面A、観察面B、観察面Cにおける面方位出現度数分布をそれぞれ示し、(H)は(E)、(F)および(G)における度数である。
【0013】
EBSP測定の測定領域は50μm×50μm、測定ピッチは0.25μmである。なお、図3に示す結果は、図4に示すように、基板410上に下地絶縁膜411を形成し、この下地絶縁膜411上に非晶質半導体膜417を形成した。非晶質半導体膜417にレーザビームを照射して結晶化を行い、互いに垂直な3つのベクトル(ベクトルa、ベクトルb、ベクトルc)を法線ベクトルとする3つの面を観察面A413、観察面B414、観察面C415とし、観察面の面方位の測定を行った結果である。なお、ここでレーザビームの走査方向416とベクトルcは平行である。この3面からの情報より、高精度で大粒径結晶412内の面方位を特定することができる。いずれの観察面から観察した場合でも、面方位、結晶粒の大きさ、および結晶成長の方向にばらつきがあることが確認された。
【0014】
さらに、大粒径結晶が形成される条件よりも高いエネルギーを半導体膜に与えると、半導体膜がスプリット(はがれ)、またはアブレーション(除去)される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
結晶粒の位置、大きさ、および結晶粒の面方位がランダムになる理由は、以下に示すような結晶成長が起こるためである。半導体膜に一度に大量の熱が与えられると、半導体膜は完全溶融する。この半導体膜中に大量の結晶核が発生し、これらの結晶核が元となり、無秩序な結晶成長が起こる。本発明者は、無秩序な結晶成長を抑えることが重要であると考えた。
【0016】
本発明は、上記の問題に鑑み、CWレーザや繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いた結晶化で得られるそれぞれの結晶粒の面方位を、レーザビームの照射領域内で一方向もしくは実質的に一方向とみなせる方向に制御することを目的とするものである。本明細書では、隣接する粒状結晶間の結晶面方位が一方向もしくは実質的に一方向とみなせる方向に制御された結晶を、近似的に単結晶と見なすことができることから準単結晶と呼ぶ。準単結晶中に存在する結晶粒界は、隣接する結晶間で面方位が異なるときの結晶粒界と比較し、粒界に含まれる欠陥の数が少なく、電気的障壁が小さい。
【0017】
具体的な面方位の制御方法は、以下の通りになる。
【0018】
まず、半導体膜上に絶縁膜(以下、キャップ膜とする)を形成する。このキャップ膜は、レーザビームの照射によって完全溶融した半導体膜が1つの面方位に配向して結晶成長を行うように膜厚が最適化される。キャップ膜としては、半導体膜に熱が到達し、半導体膜を溶融するのに十分な透過率を持つ材質を用いる。キャップ膜は、固くて緻密な膜であることが好ましい。キャップ膜を形成することによって、レーザビームが半導体膜に吸収され発生する熱を効率的に結晶化に利用でき、より低いエネルギー密度でレーザ結晶化を行うことができる。キャップ膜は溶融した半導体膜の粘性が低下することを抑える効果、反射防止効果や蓄熱効果などがあると考えられる。
【0019】
また、レーザビームの照射は、照射された領域の半導体膜が完全に溶融する下限のエネルギー密度(以下、Eとする)よりわずかに高いエネルギーで行う。本発明では、照射された領域の半導体膜が完全に溶融するだけのエネルギーがあればよいので、レーザビームのエネルギーの最低限度はEとなる。また、上限は大粒径結晶が形成されはじめるエネルギー(以下、Eとする)である。つまり、本発明を行うことができるレーザビームのエネルギーをEとすると、Eの範囲は、E≦E<Eとなる。しかし、半導体膜に与える熱量を必要最小限に抑えることによって、必要以上に結晶核が発生することや、溶融した半導体膜の粘性が低下することを抑えることができる。そのため、E≦E≦{(E+E)/2}となるように照射するレーザビームのエネルギーEの範囲を調節することがより好ましい(図1(A))。
【0020】
このようにレーザビームのエネルギーを制御することによって、加熱による半導体膜の乱流を低減し、安定な結晶成長を促すことができる。以上、図1(B)に示すように、基板01、下地絶縁膜02上に形成され、キャップ膜04を有する半導体膜03に、半導体膜03が完全に溶融をすることが可能なエネルギー密度E以上のエネルギーを持つレーザビームを照射すると、半導体膜03を準単結晶化し、結晶粒の面方位を制御することが可能となる。
【0021】
本発明を用いて形成された半導体膜の表面は、従来の大粒径結晶より小さい粒径の結晶粒がレーザビームの照射領域に一様に形成されている。個々の結晶粒は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。隣り合う粒界が互いに平行であることが特徴である。この領域では、レーザビームの走査方向と平行な向きに結晶粒が成長しており、その結晶粒の面方位は一方向に揃っているとみなすことができることを特徴とする。また、±10°の角度揺らぎの範囲内では、特定の方位に配向している比率が0.4以上であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明を用いて形成された半導体膜は、レーザラマン分光法による測定で、516〜518cm−1にシフトしたピークが観測され(ラマン測定時の入射レーザ光の偏光方向をレーザ結晶化の走査方向に垂直としたとき)、測定範囲内においてピークのばらつきが変動係数20%以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明の半導体装置は、基板上に複数の結晶粒で構成された半導体膜を有し、この結晶粒は幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。この基板の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、第1面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上であることを特徴とする。
【0024】
本発明の半導体装置は、基板上に複数の結晶粒で構成された半導体膜を有し、この結晶粒は幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。この基板の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、第1面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上である。さらに、基板の表面に平行かつ結晶粒の長径方向に平行な方向を第2の方向とし、この第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、第2面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位は5割以上であることを特徴とする。
【0025】
本発明の半導体装置は、基板上に複数の結晶粒で構成された半導体膜を有し、この結晶粒は幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。基板の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、第1面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上である。さらに、第1の方向および結晶粒の長径方向に垂直な、結晶粒の短径方向を第3方向とし、この第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、第3面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{111}方位は4割以上であることを特徴とする。
【0026】
本発明の半導体装置は、基板上に複数の結晶粒で構成された半導体膜を有し、この結晶粒は幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。基板の表面に平行かつ結晶粒の長径方向に平行な方向を第2方向とし、この第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、第2面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位が5割以上である。さらに、基板表面に平行かつ第2方向に垂直な方向を第3方向とし、この第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、第3面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{111}方位は4割以上であることを特徴とする。
【0027】
なお、±10°の角度揺らぎの範囲内とは、ある面方位からのずれが−10°から+10まで範囲ということを示しており、ある面方位がゆらぐ角度の範囲として、±10°の範囲を許容していることを意味する。例えば、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位とは、面方位{211}から−10°ずれている結晶から+10°ずれている結晶までを、面方位{211}の結晶に含むことを意味する。
【0028】
上記の半導体装置において、半導体膜は珪素であることを特徴とする。また、シリコンゲルマニウム、シリコンカーバイト(SiC)なども用いることができる。
【0029】
また、上記の半導体装置において半導体膜の厚さは20nm以上100nm以下、好ましくは20nm以上80nm以下であることを特徴とする。
【0030】
また、上記の特性を持つ半導体装置の例として、薄膜トランジスタ、駆動回路、電源回路、IC(Integrated Circuits)、メモリ、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)、記憶素子、ダイオード、光電変換素子、抵抗素子、コイル、容量素子、インダクタ、画素、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)、センサなどを挙げることができる。
【0031】
また、上記の特性を持つ半導体装置を用いて、さまざまな電子機器を作製することができる。例えば、薄膜集積回路装置、画像表示装置、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、反射型プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、携帯型の情報処理端末、ゲーム機器、コンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置などを挙げることができる。
【0032】
本発明の半導体装置の作製方法は、下地絶縁膜を形成し、この下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、この半導体膜にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、このキャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを照射することによって、半導体膜を結晶化させることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に下地絶縁膜を形成し、この下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、この半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、このキャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを相対的に走査させながら照射することによって半導体膜を結晶化させることを特徴とする。このようにして形成された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。また、基板の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、結晶化された半導体膜の第1面における面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位の割合が4割以上であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に下地絶縁膜を形成し、この下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、この半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、このキャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを相対的に走査させながら照射することによって半導体膜を結晶化させることを特徴とする。このようにして形成された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。基板の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、第1面における結晶化された半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位の割合が4割以上である。さらにレーザビームの走査方向および基板の表面に平行な方向を第2方向とし、この第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、第2面における結晶化された半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位の割合は5割以上であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に下地絶縁膜を形成し、この下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、この半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、このキャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを相対的に走査させながら照射することによって半導体膜を結晶化させることを特徴とする。このようにして形成された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。基板の表面に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、第1面における結晶化された半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位の割合が4割以上である。さらに、レーザビームの走査方向と垂直かつ基板の表面に平行な方向を第3方向とし、この第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、第3面における結晶化された半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内における{111}方位の割合が4割以上であることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の半導体装置の作製方法は、基板上に下地絶縁膜を形成し、この下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、この半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、このキャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを相対的に走査させながら照射することによって半導体膜を結晶化させることを特徴とする。このようにして形成された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。レーザビームの走査方向および基板の表面に平行な方向を第2方向とし、この第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、第2面における結晶化された半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位の割合は5割以上である。さらに、レーザビームの走査方向と垂直かつ基板の表面に平行な方向を第3方向とし、この第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、第3面における結晶化された半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内における{111}方位の割合が4割以上であることを特徴とする。
【0037】
また、上記の半導体装置の作製方法において、半導体膜は珪素であることを特徴とする。また、半導体膜はシリコンゲルマニウムまたはSiCを用いることもできる。
【0038】
上記の半導体装置の作製方法において、半導体膜の膜厚は20nm以上100nm以下、好ましくは20nm以上80nm以下であることを特徴とする。半導体膜の膜厚が80nm以上であると膜厚方向への結晶成長も発生し、面方位が一方向に揃いにくくなる。
【0039】
上記の半導体装置の作製方法において、連続発振のレーザまたは発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることを特徴とする。
【0040】
また、上記の半導体装置の作製方法において、半導体膜上に形成したキャップ膜をゲート絶縁膜として用いてもよいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明により、ガラスやプラスチックなどの融点が低い材質からなる絶縁基板上に、結晶粒径が大きくかつ隣接する結晶粒同士の面方位が一方向もしくは実質的に一方向とみなせる方向にそろった結晶、つまり限りなく単結晶に近い準単結晶の半導体膜を形成することが可能となる。さらに、この準単結晶の半導体膜を用いることにより、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、かつ素子間において特性のばらつきの小さい半導体素子又は半導体素子群を集積して構成される半導体装置及びその作製方法を提供することができる。
【0042】
さらに、本発明で形成される準単結晶の半導体膜は、結晶欠陥が非常に少ない。この準単結晶をTFTの活性層に用いることにより、高い歩留まりで高品質の半導体装置を作製することができる。
【0043】
また、本発明が示すように半導体膜上にキャップ膜を形成することにより、レーザビームが半導体膜に吸収され発生する熱を効率的に結晶化に利用でき、より低いエネルギー密度でレーザ結晶化を行うことができるようになる。これはキャップ膜が反射防止効果や蓄熱効果などを持つためであると考えられる。したがって、キャップ膜を形成した半導体膜と、キャップ膜を形成しない半導体膜に同じ規格のレーザ発振器を用いてレーザ結晶化を行うと、キャップ膜を形成した半導体膜を用いる方がキャップ膜を形成しない半導体膜よりも線状のビームスポットの長さを伸ばすことができる。そのため、単位時間当たりに結晶化できる面積を増やすこと、つまりスループットを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に本発明の実施の様態を、図面を用いて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0045】
まず、図5(A)に示すように、絶縁表面を有する基板100として、例えば、厚さ0.7mmのガラス基板の片面に、下地絶縁膜101として厚さ50nm乃至150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜する。さらに、下地絶縁膜101上に、半導体膜102として、20nm以上100nm以下の厚さ、好ましくは20nm以上80nm以下の厚さで非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜する。この半導体膜102は、後にレーザにより結晶化される。
【0046】
基板100は、可視光線に対して吸収率の低いアルミノホウケイ酸ガラスやバリウムホウケイ酸ガラスなどのガラスを材料とした基板や石英基板などを用いる。その他には、PET(Polyethylene Terephthalate:ポリエチレンテレフタラート)、PES(Polyether sulfone Resin:ポリエーテルサルホン樹脂)、PEN(Polyethylene Naphthalate:ポリエチレンナフタレート)に代表されるプラスチックや、アクリルなどに代表される合成樹脂を原料とする基板を用いることも可能である。
【0047】
さらに半導体膜102のレーザビームに対する耐性を高めるために、500℃1時間の熱アニールを半導体膜102に対して行う。次に、半導体膜102上にキャップ膜103として厚さ500nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜する。なお、キャップ膜103は、薄すぎると半導体膜102を準単結晶とすることが難しくなるため、200nm以上の厚さで成膜するのが好ましい。本実施の形態では、モノシラン(SiH)および亜酸化窒素(NO)を反応ガスとして、プラズマCVD法を用いて窒素を含む酸化珪素膜を成膜する。次に、キャップ膜103を介して、半導体膜102にレーザビームを照射して半導体膜102を結晶化する。
【0048】
ここではキャップ膜103に窒素を含む酸化珪素膜を選択しているが、この他には酸化珪素膜を用いることもできる。キャップ膜103は、レーザビームの波長に対し十分な透過率を持ち、熱膨張係数などの熱的な値や延性などの値が隣接する半導体膜102と近いものを用いればよい。さらに、キャップ膜103はゲート絶縁膜と同等の固く緻密な膜であることが好ましい。固く緻密な膜は、例えば成膜レートを低くすることにより形成することができる。本実施の形態ではキャップ膜103を40nm/minの成膜レートで成膜する。成膜レートは1nm/min以上400nm/min以下、好ましくは1nm/min以上100nm/min以下から適宜選択することができる。
【0049】
本実施の形態では、キャップ膜103に窒素を含む酸化珪素膜を一層だけ形成する例を示したが、材料の種類の異なる複数の膜で構成したキャップ膜を用いてもよい。例えば、窒素を含む酸化珪素膜と酸素を含む窒化珪素膜を積層した絶縁膜や、酸化珪素膜と酸素を含む窒化珪素膜を積層した絶縁膜などをキャップ膜として用いることができる。また、キャップ膜103を複数層構成にし、かつ、薄膜による光の干渉効果を利用して、半導体膜102への光吸収効率が上がるような構成にしてもよい。以上により、後にレーザビームが照射される面、すなわち被照射面208(図6参照)を持つ被処理物が完成する。
【0050】
本実施の形態においては、半導体膜102として非晶質珪素膜の例を示したが、多結晶珪素膜を使用してもよい。例えば多結晶珪素膜は、非晶質珪素膜成膜後、非晶質珪素膜にニッケル、パラジウム、ゲルマニウム、鉄、スズ、鉛、コバルト、銀、白金、銅、金等の元素を微量に添加し、その後550℃にて4時間の熱処理を施すことによって形成することができる。さらには、珪素とゲルマニウムや炭素の化合物を半導体膜として使用してもよい。また、下地絶縁膜101と基板100との間に剥離層を設け、工程終了後に基板100から半導体素子を剥離してもよい。
【0051】
次に、結晶化に用いるレーザ発振器及びビームスポットを形成する光学系に関して説明する。図6に示すように、レーザ発振器201a、201bとして、合計の最大出力が20W、LD励起のCWレーザ(YVO、第2高調波(波長532nm))を用意する。特にレーザの波長を第2高調波に限定する必要はないが、第2高調波はエネルギー効率の点で、さらに高次の高調波より優れている。
【0052】
CWレーザを半導体膜に照射すると、連続的に半導体膜にエネルギーが与えられるため、一旦半導体膜を溶融状態にすると、溶融状態を継続させることができる。さらに、CWレーザビームを走査することによって半導体膜の固液界面を移動させ、この移動の方向に沿って一方向に長い結晶粒を形成することができる。また、固体レーザを用いるのは、気体レーザ等と比較して、出力の安定性が高く、安定した処理が見込まれるためである。なお、CWレーザに限らず、繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることも可能である。繰り返し周波数が高いパルスレーザを用いると、半導体膜が溶融してから固化するまでの時間よりもレーザのパルス間隔が短ければ、常に半導体膜を溶融状態にとどめることができ、固液界面の移動により一方向に長い結晶粒で構成される半導体膜を形成することができる。なお、図6の場合ではレーザ発振器を2台用意したが、出力が十分であれば1台でよい。また、繰り返し周波数が高いパルスレーザを用いた場合は、レーザ発振器は1台でもよい。
【0053】
本実施の形態では、レーザ発振器201a、201bにYVOレーザを用いたが、その他のCWレーザ及び繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを使用することもできる。例えば、気体レーザとしては、Arレーザ、Krレーザ、COレーザ等がある。固体レーザとして、YAGレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、Yレーザ、YVOレーザ等がある。また、YAGレーザ、Yレーザ、GdVOレーザ、YVOレーザなどのセラミックスレーザがある。金属蒸気レーザとしてはヘリウムカドミウムレーザ等が挙げられる。
【0054】
また、レーザ発振器201a及びレーザ発振器201bにおいて、レーザビームをTEM00(シングル横モード)で発振して射出すると、被照射面208において得られる線状のビームスポットのエネルギー均一性を上げることができるので好ましい。
【0055】
レーザ照射の概要は以下の通りである。レーザ発振器201a、201bからレーザビーム202a、202bをそれぞれ同じエネルギーで射出する。レーザ発振器201bから射出されたレーザビーム202bは、波長板203を通して偏光方向を変える。レーザビーム202bの偏光方向を変えるのは、偏光子204によって互いに偏光方向が異なる2つのレーザビームを合成するためである。波長板203にレーザビーム202bを通した後、ミラー212で反射させ、偏光子204にレーザビーム202bを入射させる。そして、偏光子204でレーザビーム202aとレーザビーム202bを合成する。波長板203および偏光子204を透過した光が適当なエネルギーとなるように波長板203と偏光子204を調整する。なお、本実施の形態では、レーザビームの合成に偏光子204を用いているが、偏光ビームスプリッターなどの他の光学素子を用いてもよい。
【0056】
偏光子204によって合成されたレーザビーム202は、ミラー205によって反射され、焦点距離が、例えば150mmのシリンドリカルレンズ206および焦点距離が、例えば20mmのシリンドリカルレンズ207によって、レーザビームの断面形状を被照射面208において線状に整形する。ミラー205はレーザ照射装置の光学系の設置状況に応じて設ければよい。シリンドリカルレンズ206は、被照射面208で形成されるビームスポットの長さ方向に作用し、シリンドリカルレンズ207は、その幅方向に作用する。これにより、被照射面208において、例えば長さが500μmで、幅が20μm程度の線状のビームスポットが形成される。なお、本実施の形態では、線状に成形するためにシリンドリカルレンズを用いているが、これには限らず、球面レンズなどのその他の光学素子を用いてもよい。また、シリンドリカルレンズの焦点距離は上記の値に限らず、自由に設定することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、レーザビームの整形を、シリンドリカルレンズ206、207を用いて行っているが、レーザビームを線状に引き伸ばすための光学系と、被照射面に細く集光するための光学系を別に設けてもよい。例えば、レーザビームの断面を線状にするためにはシリンドリカルレンズアレイ、回折光学素子、光導波路などを用いることができる。また、レーザ結晶の形状が矩形状のものを用いれば射出段階でレーザビームの断面形状を線状にすることも可能である。セラミックレーザは、レーザ結晶の形状を比較的自由に整形することが可能であるため、そのようなレーザの作製に適している。なお、線状に形成されたレーザビームの断面形状は出来るだけ細い方が好ましく、これにより半導体膜におけるレーザビームのエネルギー密度が上がるため、工程時間を短縮できる。
【0058】
次にレーザビームの照射方法について説明する。半導体膜が形成された被照射面208を比較的高速で動作させるため、吸着ステージ209に固定する。吸着ステージ209は、X軸用の一軸ロボット210とY軸用の一軸ロボット211により、被照射面208に平行な面上をXY方向に動作できる。線状のビームスポットの長さ方向とY軸を一致させて配置する。次に、ビームスポットの幅方向、つまりX軸に沿って被照射面208を動作させ、レーザビームを被照射面208に照射する。ここで、X軸用の一軸ロボット210の走査速度を35cm/sec、また、2台のレーザ発振器201a、201bからそれぞれ7.5Wのエネルギーでレーザビームを射出している。合成後のレーザの出力は15Wとなる。
【0059】
レーザビームが照射されることによって非晶質半導体膜が完全溶融した領域が形成される。固化される過程でひとつの面方位に結晶が成長し、準単結晶化することができる。なお、TEM00モードのレーザ発振器から射出されるレーザビームのエネルギー分布は、一般にガウシアン分布となる。このレーザビームを半導体膜の結晶化プロセスに用いると、レーザビームの中央付近の強度が強い部分のみに準単結晶領域が形成される。なお、レーザビームの照射に用いる光学系によって、準単結晶が形成される領域の幅を変えることができる。例えば、シリンドリカルレンズアレイやフライアイレンズなどのレンズアレイ、回折光学素子、光導波路などを用いることによって、レーザビームの強度を均一化することができる。強度が均一化されたレーザビームを半導体膜に照射することにより、レーザビームが照射された領域のほぼ全てを準単結晶の形成に用いることができる。X軸用の一軸ロボット210の走査速度は、数10〜数100cm/sec程度が適当であり、レーザ発振器の出力に合わせて作業者が適宜決定すればよい。
【0060】
なお、本実施の形態では、X軸用の一軸ロボット210およびY軸用の一軸ロボット211を用いて、被照射面208である非晶質半導体膜を移動させる方式を用いている。これに限らず、レーザビームの走査は、被照射面208を固定してレーザビームの照射位置を移動させる照射系移動型、レーザビームの照射位置を固定して被照射面208を移動させる被照射面移動型、または上記2つの方法を組み合わせた方法を用いることができる。
【0061】
なお、上述したように、上記した光学系によって形成されるビームスポットの長軸方向のエネルギー分布はガウシアン分布であるため、その両端のエネルギー密度の低い箇所では小粒径結晶が形成される。そこで、準単結晶を形成するに充分なエネルギーのみが被照射面208に照射されるよう、被照射面208の手前にスリット等を設けレーザビームの一部を切り取る構成としてもよいし、キャップ膜103である窒素を含む酸化珪素膜上にレーザビームを反射する金属膜等を成膜し、準単結晶化したい箇所のみレーザビームが半導体膜に到達するようパターン形成しておいてもよい。また、レーザ発振器201a及びレーザ発振器201bから射出されるレーザビームをより効率的に使用するために、レンズアレイや回折光学素子等のビームホモジナイザを用いて、ビームスポットの長さ方向のエネルギーを一様な分布としてもよい。
【0062】
さらに、形成された準単結晶領域の幅の分だけ、Y軸用の一軸ロボット211を移動させ、再度X軸用の一軸ロボット210を35cm/secで走査させる。このような一連の動作を繰り返すことにより、半導体膜全面を効率よく結晶化することができる。
【0063】
その後、図5(C)に示すように、エッチングを行うことによってキャップ膜103を除去する。さらに、準単結晶の半導体膜104上にレジストを塗布し、レジストを露光し、現像することによって所望の形状にレジストを形成する。さらに、ここで形成したレジストをマスクとしてエッチングを行い、現像によって露出した準単結晶の半導体膜104を除去する。この工程によって、島状の半導体膜105が形成される(図5(D))。
【0064】
本発明を用いて形成された準単結晶半導体膜は、複数の結晶粒で構成されており、この結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上である。
【0065】
また、本発明を用いて形成された準単結晶半導体膜において、基板の表面に垂直な方向を第1方向、レーザビームの走査方向及び基板の表面に平行な方向を第2方向、レーザビームの走査方向と垂直且つ基板の表面に平行な方向を第3方向とする。さらに、上記第1方向、第2方向、第3方向を法線ベクトルとする面をそれぞれ第1面、第2面、第3面とする。このとき、第1面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上である。または、第2面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位は5割以上である。または、第3面における半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{111}方位は4割以上である。
【0066】
上記のように、本発明を用いて作製した準単結晶半導体膜は、結晶粒の面方位が一方向、または実質的に一方向とみなすことができる方向に揃っている。つまり、性質は単結晶に近い半導体膜である。このような半導体膜を用いると、半導体装置の性能を大幅に向上させることが可能である。
【0067】
例えば、TFTを形成した場合、単結晶半導体を用いた半導体装置と同等の電界効果移動度(モビリティ)を得ることが可能である。また、オン電流値(TFTがオンの状態にあるときに流れるドレイン電流の値)、オフ電流値(TFTがオフの状態にあるときに流れるドレイン電流の値)、しきい値電圧、S値および電界効果移動度のばらつきを低減させることが可能になる。このような効果があるため、TFTの電気的特性は向上し、TFTを用いた半導体装置の動作特性および信頼性が向上する。従って、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、素子間において特性のばらつきが小さい半導体装置を製作することができる。
【実施例1】
【0068】
本実施例では、本発明の準単結晶珪素膜を試料とし、EBSP法により面方位を測定した結果について説明する。また、単結晶珪素膜、および大粒径結晶が形成されている珪素膜についても同様にEBSP法により面方位を測定し、それぞれ比較した。
【0069】
結晶構造を持った試料に電子線を入射させると、後方にも非弾性散乱が起こり、試料中でブラッグ回折による結晶方位に特有な線状のパターンも合わせて観察することができる。ここで、この線状のパターンは、一般的に菊池線と呼ばれている。EBSP法は、検出器に映った菊池線を解析することによって、試料の結晶方位を求めている。
【0070】
多結晶構造の試料は、各結晶粒が異なった結晶方位を持っている。そこで、試料の照射位置を移動させる度に電子線を照射し、照射位置ごとに結晶方位の解析を行う。このようにして、平坦な表面を持つ試料の結晶方位や配向情報を得ることができる。測定領域が広いほど試料全体の結晶方位の傾向を得ることができ、測定点が多いほど測定領域中の結晶方位の情報を詳細に得ることができる。
【0071】
しかし、結晶内部の面方位は、結晶の一つの表面上の面方位のみで決定することはできない。それは、一観察面のみにおいて面方位が一方向に揃っていたとしても、他の観察面において面方位が揃っていなければ、その結晶内部の面方位が揃っているとは言えないからである。
【0072】
結晶内の面方位を決定するためには、少なくとも二つの表面からの面方位が必要となり、より多くの面からの情報が多くなるほど精度が高くなる。そのため、測定領域内で3面とも面方位分布がほぼ均一であれば、近似的に単一の結晶、つまり準単結晶と見なすことができる。
【0073】
実際には、図10に示すように、基板510上に下地絶縁膜511を形成し、この下地絶縁膜511上に非晶質半導体膜517を形成し、さらに非晶質半導体膜517上にキャップ膜518を形成した。キャップ膜518越しに、非晶質半導体膜517にレーザビームを照射して結晶化を行い、互いに直交する3つのベクトル(ベクトルa、ベクトルb、ベクトルc)がそれぞれ法線ベクトルとなる3面(観察面A513、観察面B514、観察面C515)の情報を総合することによって、高精度で結晶内部の面方位を特定することができる。本実施例において、準単結晶珪素膜と大粒径結晶が形成されている珪素膜では、以下のようにベクトルa〜cを設定した。ベクトルcはレーザビームの走査方向516及び基板510表面と平行であり、ベクトルaは基板510表面及びベクトルcと垂直であり、ベクトルbはベクトルa及びベクトルcと互いに垂直である。
【0074】
まず、準単結晶珪素膜512の上記3面における面方位(観察面に垂直な方向の結晶軸方位)を解析した結果を図8及び図9に示す。
【0075】
測定に用いた準単結晶珪素膜は、本実施の形態で用いた試料と同様にして形成した。厚さ0.7mmのガラス基板の片面に厚さ150nmの下地絶縁膜を成膜した。この下地絶縁膜上に、厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜し、さらにキャップ膜として酸化珪素膜を500nm形成した。より具体的に、試料の作製方法を示す。
【0076】
基板は、コーニングス社製の厚さ0.7mmのガラス基板を使用した。
下地絶縁膜として、酸素を含む窒化珪素膜と、窒素を含む酸化珪素膜とを積層した厚さ150nmの膜を平行平板型のプラズマCVD装置で成膜した。成膜の条件は以下の通りである。
【0077】
<酸素を含む窒化珪素膜>
・厚さ 50nm
・ガスの種類(流量)
SiH(10sccm)
NH(100sccm)
O (20sccm)
(400sccm)
・基板温度 300℃
・圧力 40Pa
・RF周波数 27MHz
・RFパワー 50W
・電極間距離 30mm
【0078】
<窒素を含む酸化珪素膜>
・厚さ 100nm
・ガスの種類(流量)
SiH(4sccm)
O (800sccm)
・基板温度 400℃
・圧力 40Pa
・RF周波数 27MHz
・RFパワー 50W
・電極間距離 15mm
【0079】
下地絶縁膜上に、非晶質珪素膜を平行平板型のプラズマCVD装置で成膜した。非晶質珪素膜の成膜の条件は次の通りである。
<非晶質珪素膜>
・厚さ 66nm
・ガスの種類(流量)
SiH(25sccm)
(150sccm)
・基板温度 250℃
・圧力 66.7Pa
・RF周波数 27MHz
・RFパワー 50W
・電極間距離 25mm
【0080】
非晶質珪素膜を形成した後、電気炉内で500℃、1時間加熱した。この加熱処理は、非晶質珪素膜から水素を出すための処理である。水素を出すのは、レーザビームを照射したときに非晶質珪素膜から水素ガスが噴出することを防ぐためであり、非晶質珪素膜に含まれる水素が少なければ省略できる。
【0081】
非晶質珪素膜の上にキャップ膜として、厚さ500nmの酸化珪素膜を形成した。成膜の条件は次の通りである。
【0082】
<酸化珪素膜>
・厚さ 500nm
・ガスの種類(流量)
SiH(4sccm)
O (800sccm)
・基板温度 400℃
・圧力 40Pa
・RF周波数 60MHz
・RFパワー 150W
・電極間距離 28mm
【0083】
表1に、下地絶縁膜、キャップ膜の組成を示す。表1にあげた膜の組成は、加熱処理や、レーザ照射する前の状態の値である。組成比は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Foward Scattering)を用いて測定した。測定感度は±2%程度である。
【0084】
【表1】

【0085】
次に、キャップ膜を介して非晶質珪素膜にレーザビームを照射した。本実施例では、7.5Wのエネルギーのレーザビームを2本射出し、光学系を用いて合成した後に幅500μmの線状に成形した後に照射した。合成後のレーザビームのエネルギーは15Wである。レーザビームの走査速度は35cm/secである。
【0086】
この試料面(即ち、準単結晶珪素膜の表面)に対し、60°の入射角で電子線を入射し、得られるEBSP像から結晶方位を測定した。測定領域は、100μm×50μmである。この領域において、縦横0.25μm毎の格子点状に測定を行った。また、EBSP法の測定面は試料表面であるため、珪素膜を最上層とする必要がある。そのため、キャップ膜である窒素を含む酸化珪素膜をエッチングした後に測定を行った。
【0087】
ベクトルaが法線ベクトルとなる面Aにおける面方位分布を図8(A)に、同様にベクトルbが法線ベクトルとなる面Bにおける面方位分布を図8(B)に、ベクトルcが法線ベクトルとなる面Cにおける面方位分布を図8(C)に示す。図8(A)〜(C)は、各測定点がどの面方位かを示す方位マップ像である。この像より、観測面Aでは{211}方位に強く配向し、観測面Bでは{111}方位に強く配向し、観察面Cでは{110}方位に強く配向していることが分かる。また、個々の結晶粒の内部は面方位が均一であるため、色と形状によって個々の結晶粒の形状や大きさなどの大まかな情報をつかむことができる。
【0088】
ここで、図8(A)〜(C)より、本発明の準単結晶珪素膜は、柱状に長く伸びたドメインで構成されていることが分かる。
【0089】
また、図8(A)〜(C)より、本発明の準単結晶珪素膜は、観察面A、B、Cにおいてそれぞれ{211}方位、{111}方位、および{110}方位に強く配向していることが分かる。特定の指数に強く配向していることが分かった場合、その指数近傍にどの程度の結晶粒が集まっているか、その割合を求めることで配向の度合いを把握することができる。
【0090】
図9(A)は観察面Aにおける面方位出現度数分布を表す逆極点図である。また、図9(C)は観察面Bにおける面方位出現度数分布を表す逆極点図であり、図9(E)は観察面Cにおける面方位出現度数分布を表す逆極点図である。
【0091】
図9(B)は図9(A)の逆極点図の度数を示す。この場合では、観察面Aにおいて、全ての方位が等しい確率で現れる状態の約4.5倍の頻度で{211}方位が出現することを示す。同様に、図9(D)は図9(C)の逆極点図の度数を示す。この場合では、観察面Bにおいて、全ての方位が等しい確率で現れる状態の約15.4倍の頻度で{111}方位が出現することを示す。また、図9(F)は図9(E)の逆極点図の度数を示す。この場合では、観察面Cにおいて、全ての方位が等しい確率で現れる状態の約14.1倍の頻度で{110}方位が出現することを示す。
【0092】
また、図9(A)の逆極点図において、{211}の角度揺らぎの範囲を±10°以内と決めて、全ての測定点に対する{211}の角度揺らぎが±10°以内に存在する測定点の数の割合を求めることにより、配向率を求めることができる。
【0093】
その結果を図45、46に示す。図45(A)は観察面Aにおける配向率を求めた結果であり、図45(B)は観察面Bにおける配向率を求めた結果であり、図46は観察面Cにおける配向率を求めた結果である。図45(A)、(B)および図46において、全測定点のうち特定の配向を持つ点の比率を求めた値がPartition Fractionの値である。この特定の配向を持つ点のうち、配向付けの信頼性が高い測定点の全測定点に対する配向比率を求めた値がTotal Fractionの値である。また、表2は、図45(A)、(B)および図46のTotal Fractionをまとめた表である。この結果から、本発明の準単結晶珪素膜の観察面Aにおいては、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が42.1%を占める。同様に、観察面Bにおいては、±10°の角度揺らぎの範囲内において{111}方位の割合が41.2%を占める。また、同様に観察面Cにおいては、±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位の割合が52.3%を占める。
【0094】
【表2】

【0095】
以上に示すように、3つの観察面すべてにおいて結晶粒の面方位が一つの方向に高い割合で揃っている。つまり、結晶化された領域において、結晶粒の面方位が一方向に揃っているとみなすことができる準単結晶が形成されていることがわかる。このようにして、一辺が数十μmの領域内で、特定の面方位が非常に高い比率を占める準単結晶がガラス基板上に形成されることが確認された。ここで結晶粒の面方位は(100)、(010)、(001)のように等価な方位群をまとめて{100}と表記しており、他の方位{110}や{111}、および{211}についても同様である。
【0096】
比較のために、単結晶珪素膜(SIMOX)のEBSP測定結果を示す(図40)。測定領域は100μm×50μmである。この領域内において、縦横1μm毎の格子点状に測定を行った。図40において(A)は観察面Aおける面方位分布、(B)は観察面Bにおける面方位分布、(C)は観察面Cにおける面方位分布をそれぞれ示し、(D)は(A)、(B)および(C)の面方位を示す。この測定より、3つの観察面はそれぞれ完全に一様な面方位を持つことが分かった。その面方位は、観察面Aでは{001}、観察面Bおよび観察面Cはともに{110}である。そして、それぞれの観察面では結晶粒を形成しないことが分かる。
【0097】
さらに、比較のために大粒径結晶が形成されている珪素膜も同様にして測定した。試料の作製方法は以下の通りである。厚さ0.7mmのガラス基板の片面に下地絶縁膜として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜し、この下地絶縁膜上に、厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜した。非晶質珪素膜を形成後、4Wのエネルギーのレーザビームを35cm/secの走査速度で照射したものを試料とした。つまり、大粒径結晶を形成する際にはキャップ膜を形成しない点が、本発明の準単結晶珪素膜の作成手順と違う。
【0098】
この試料のEBSP法による測定領域は50μm×50μmである。この領域内において、縦横0.25μm毎の格子点状に測定を行った。測定の結果、図3に示されるように、観察面A、B、Cにおいて、面方位、および結晶成長の方向にばらつきがあることが分かる。また、準単結晶珪素膜より結晶粒径が大きいことが分かる。
【0099】
以上の実験結果より、本発明の準単結晶珪素膜は粒径と面方位において単結晶珪素膜および大粒径結晶が形成されている珪素膜とは傾向が異なることが分かる。
【実施例2】
【0100】
本実施例では、本発明の半導体膜の特性を測定した結果について説明する。
【0101】
本発明を用いて作製した準単結晶珪素膜の光学顕微鏡写真を図7に示す。試料は、以下の手順で作製した。厚さ0.7mmのガラス基板上に下地絶縁膜として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を形成し、非晶質珪素膜を66nmの厚さで形成し、さらにキャップ膜として500nmの厚さの窒素を含む酸化珪素膜を形成した。次に、レーザ発振器を2台用意し、それぞれ7.5Wのエネルギーでレーザビームを射出した。光学系を用いてこの2つのレーザビームのエネルギーを合成した後、キャップ膜を介して非晶質珪素膜にレーザビームの照射を行った。合成後のレーザビームのエネルギーは15W、走査速度は35cm/secである。その後、キャップ膜を除去し、エッチング(セコエッチ:Secco etching)を行った。
【0102】
なお、セコエッチとは、結晶性半導体膜の表面の結晶粒界を顕在化させるために行うエッチングである。このエッチング処理で用いるエッチング液は、HF対HOの割合が2対1のフッ酸水溶液に、二クロム酸カリウムを添加剤として足して作る。実際にはこの液体を水で希釈し、室温でエッチング処理を行った。
【0103】
図7(A)は、本発明の準単結晶珪素膜のセコエッチ前の顕微鏡写真である。矢印で示した範囲で結晶の成長方向が揃っているのが分かる。
【0104】
図7(B)は、セコエッチ後の準単結晶珪素膜をさらに拡大したものである。なお、セコエッチを行ったのは、粒界上に残っているアモルファス状の珪素を取り除くためである。図7(A)、図7(B)より、本実施の形態で説明した方法によって、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上となる粒界を形成し、隣り合う粒界が互いに平行であることが判明した。
【0105】
さらに、本発明の準単結晶珪素の表面形状を測定するために、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscopy)を用いて測定を行った。AFMは固体試料表面と探針間に働く力を検出物理量として観察する。表3に観察面全体の表面粗さ解析を行った結果を示す。また、図17に、AFM測定像(俯瞰図)を示す。そして、図17の測定像の3次元表示が図18である。
【0106】
【表3】

【0107】
この測定に用いた試料は、以下の手順で作製した。まず、厚さ0.7mmのガラス基板上に下地絶縁膜として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を形成し、非晶質珪素膜を66nmの厚さで形成した。次にキャップ膜として400nmの厚さの窒素を含む酸化珪素膜を形成した。次に、レーザ発振器を2台用意し、それぞれ9.5Wのエネルギーでレーザビームを射出した。光学系を用いてこの2つのレーザビームのエネルギーを合成した後、キャップ膜を介して非晶質珪素膜にレーザビームの照射を行った。半導体膜に照射されるレーザビームのエネルギーは19W、レーザビームの走査速度は50cm/secである。
【0108】
本測定の結果、平均面粗さ(Ra)は8.577×10−1nmであった。なお、半導体膜に直にCWレーザを照射した場合では、平均面粗さは1〜2.5nmになる。この結果から、本発明によって平均面粗さが直にCWレーザを用いた場合の約0.3〜0.9倍となる効果があることが分かった。よって、表面が非常に平坦である準単結晶からなる半導体膜を活性層としてTFTを作製すると、ゲート電極と活性層との間のリーク電流を小さく抑えることができ、ゲート絶縁膜を薄膜化することが可能となる。
【実施例3】
【0109】
本発明の半導体膜の評価をラマン分光法によって行った。ラマン分光法は、物質の結晶性を評価する有効な方法の1つであり、レーザ照射によって形成される半導体膜の結晶性を定量化する目的で使用される。一般に、ラマン線のピーク位置や半値全幅からは、結晶性や結晶粒子サイズ、応力に関する情報が、ラマン線の強度や本数からは、面方位に関する情報が得られる。また、作製した膜や結晶粒の面方位が分からない場合、異なる方向から偏光ラマン測定を行うことで、面方位や結晶軸方向を特定することができる。
【0110】
まず、図11(A)に示すように、基板300として厚さ0.7mmのガラス基板を用意する。この基板300上に下地絶縁膜301として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を形成し、さらに半導体膜302として非晶質珪素66nmの厚さで形成し、絶縁膜303として厚さ400nm、あるいは500nmの窒素を含む酸化珪素膜を形成した。
【0111】
次に、図11(B)に示すように、エネルギーを段階的に変え、絶縁膜303で覆われた半導体膜302に500μmの照射幅でそれぞれレーザビームの照射を行った。なお、本実施例では、出力が等しいレーザ発振器を2台用意し、それぞれ10.0W、9.5W、9.0W、8.5W、8.0W、7.5W、7.0W、6.5W、6.0W、5.5W、5.0W、4.5Wのエネルギーでレーザビームを射出した。この2つのレーザビームを光学系によって合成した後に絶縁膜303を介して半導体膜302に照射した。つまり、合成されたレーザビームのエネルギーは合成前のエネルギーの倍となり、それぞれ20W、19W、18W、17W、16W、15W、14W、13W、12W、11W、10W、9Wとなる。図11(B)では、合成後のエネルギーを記載している。合成されたレーザビームの断面における強度分布はガウシアン分布である。この合成されたレーザビームを35cm/sec、50cm/sec、75cm/sec、100cm/secの速度で走査して、絶縁膜303の上方から照射した。レーザ照射領域の幅は500μmである。
【0112】
このようにレーザビームを照射した半導体膜を試料として、ラマン分光法による測定を行った。絶縁膜303の厚さが400nmの試料の測定結果を図14に、絶縁膜303の厚さが500nmの試料の測定結果を図15にそれぞれ示す。測定の際に入射したレーザ光の偏光の方向は、レーザ結晶化の際に照射したレーザビームの走査方向に対して直角の方向である。縦軸はラマン強度の標準Siウェハー比、横軸はレーザビームを照射した(=ラマン測定した)位置を表す。ここで、標準Siウェハー比とは、単結晶珪素膜のラマン強度をリファレンスとして測定し、このラマン強度を1としたときの割合である。なお、測定は図11(b)の点線A−A’で示すように各レーザエネルギーのレーザビームの照射領域を横断するようにマッピング測定を行い、測定ピッチは2μmとした。
【0113】
図15は、絶縁膜303、すなわちキャップ膜の厚さが500nmの結果を示す。図15(A)は35cm/secの走査速度で照射した結果である。ここで、2台のレーザ発振器から射出されるエネルギーがそれぞれ7.5W(合成後15W)結果に注目する。これは、実施例1のEBSP測定および実施例2の光学顕微鏡撮影に用いた半導体膜と同一の作製条件で作製した試料のラマン分光法による結果である。実施例1、2より、この作製条件で作製した半導体膜、すなわち本発明の準単結晶半導体膜は、柱状に伸びた結晶粒がレーザビームの照射領域に一様に形成され、結晶粒の面方位は一方向であるとみなすことができることが分かっている。この準単結晶半導体膜をラマン分光法で測定すると、図15(A)の7.5W(合成後15W)のデータに示されるようにラマン強度は単結晶珪素に比べて小さく、強度の振り幅が小さい特徴を持つことが分かる。
【0114】
また、図14はキャップ膜の厚さが400nmの結果を示す。図14(A)は、35cm/secの走査速度で照射した結果である。2台のレーザ発振器から射出されるエネルギーがそれぞれ7.0W(合成後14W)と2台のレーザ発振器から射出されるエネルギーがそれぞれ6.5W(合成後13W)以下では傾向が異なっていることが分かる。各レーザビームのエネルギーが6.5W(合成後13W)以下では、ラマン強度が単結晶珪素膜と比較して小さく、強度の振り幅が小さい部分が見られ、図15(A)の場合と同様に準単結晶が形成されていることが分かる。特に、各レーザビームのエネルギーが5.5W(合成後11W)、および6.0W(合成後12W)でレーザビームを照射した場合、準単結晶が形成されていることが分かる。特に、丸で囲んだ部分が顕著である。この部分では、本発明の準単結晶半導体膜が形成されていることが分かる。一方、各レーザビームのエネルギーが7.0W(合成後14W)以上の場合では、その傾向が変わる。この場合、半導体膜の一部にはラマン強度が小さく、強度の振り幅が小さい部分と、ラマン強度が大きく、振り幅が大きい部分が見られる。この領域には、準単結晶と大粒径結晶が混在して形成されていると推測される。
【0115】
図12(A)は、図14(A)の結果を拡大したものである。なお、ラマン強度は測定値である。図12(B)はラマンシフトを、図12(C)はラマン散乱光の強度を半値全幅で割った結果を示している。いずれも、2台のレーザ発振器から射出されるエネルギーがそれぞれ4.5Wから7.0Wまでの間を0.5W刻み、すなわち合成後に半導体膜に照射されるレーザビームのエネルギーが9Wから14Wまでの間を1W刻みに測定している。
【0116】
ここで、図12(A)においてラマン強度が小さく、ラマン強度の振り幅が小さい5.5W(合成後11W)、6.0W(合成後12W)の丸で囲んだ部分に注目する。図12(A)の結果より、5.5W(合成後11W)、および6.0W(合成後12W)でレーザビームを照射した場合、準単結晶が形成されていることが分かる。準単結晶が形成された部分のラマン強度は、変動係数が20%以下であり、変動係数が30%を超える大粒径結晶と比較してばらつきが非常に小さい。なお、ここで変動係数(CV)とは、標準偏差σの平均値Aveに対する百分率であり(CV=(σ/Ave)×100)、ラマンピークのばらつきの大きさを表す。準単結晶のラマンシフトは、図12(B)より516cm−1以上517cm−1以下となっており、単結晶珪素のラマンシフト値521cm−1よりも小さい値をとる。また、図12(C)より、準単結晶におけるラマン強度と半値全幅との比(ラマン強度/半値全幅)も値が小さく、ばらつきが小さい傾向を持つことが分かる。
【0117】
次に、図14、15について、半導体膜へ照射するレーザビームの走査速度と半導体膜の結晶化との関係について考察した。準単結晶が形成されたと言えるのは、柱状に伸びた結晶粒がレーザビームの照射領域に一様に形成された領域のうちラマン強度が小さく、ラマン強度のばらつきが小さい領域である。図14の場合、各レーザビームのエネルギーは、走査速度が35cm/secのときは5.5W以上8.5W以下(合成後は11W以上17W以下)、50cm/secでは6.5W以上10W以下(合成後は13W以上20W以下)、75cm/secでは9W以上10W以下(合成後は18W以上20W以下)の範囲で準単結晶が形成された。また、走査速度が100cm/sec以上では準単結晶は形成されなかった。つまり、走査速度が低いほど、小さいエネルギーで準単結晶が形成されることが分かる。この傾向は図15に示されるように、キャップ膜の膜厚を変えても同様である。
【0118】
また、それぞれの走査速度に注目する。例として図14(A)を挙げる。準単結晶が形成される際、照射されるレーザビームのエネルギーが低い方がラマン強度のばらつきが小さいことが分かる。ラマン強度のばらつきが小さいことは面方位が揃っていることを示すため、面方位が揃った準単結晶の半導体膜を形成するためには、半導体膜を溶融することができる最低限度のエネルギーを与えるようにレーザのエネルギーを調節することが好ましい。
【0119】
次に、図14、図15について、キャップ膜の厚さと半導体膜の結晶化との関係を考察した。一例を挙げると、図14(A)と図15(A)は走査速度が同じであり、キャップ膜の膜厚のみがそれぞれ異なっている。ここで、図14(A)のキャップ膜が400nmの場合では、5.5W以上8.8W以下(合成後は11W以上17W以下)で準単結晶が形成される。その一方、図15(A)のキャップ膜が500nmの場合では、7.0W以上10W以下(合成後は14W以上20W以下)で準単結晶が形成される。この実験結果からは、同じ走査速度の場合では、キャップ膜が400nmの方が500nmの方より低エネルギーで準単結晶が形成されることが結論づけられる。なお、他の走査速度についても同様の結論を得ることができる。
【0120】
以上の結果より、レーザビームのエネルギー、キャップ膜の膜厚および走査速度は、準単結晶の形成に影響を与える要因となる。従って、必要に応じてレーザビームのエネルギー、キャップ膜の膜厚およびレーザビームの走査速度を適宜制御することが好ましい。
【実施例4】
【0121】
本発明の準単結晶珪素膜、単結晶珪素膜、および大粒径結晶が形成された珪素膜についてラマン分光法による測定を行い、それぞれの相違点について調べた。
【0122】
本発明の準単結晶珪素膜は以下の通りに作製した。まず厚さ0.7mmのガラス基板の片面に、下地絶縁膜として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜した。さらに、この下地絶縁膜上に、厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜した。このようにして形成した試料にキャップ膜として窒素を含む酸化珪素膜を500nmの厚さで形成した後に、レーザビームを照射した。照射したレーザビームのエネルギーは20W、レーザビームの走査速度は35cm/secである。このようにして作製した試料のラマンスペクトルを測定した。測定に際し、入射するレーザ光の偏光方向は、レーザ結晶化の走査方向に直角な方向(0°とする)である。
【0123】
単結晶珪素膜は、SIMOX基板を用いた。また、大粒径結晶が形成された珪素膜は、以下の手順で作製した。厚さ0.7mmのガラス基板の片面に、下地絶縁膜として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜し、さらに厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法で成膜した。その後、キャップ膜を形成せずに20Wのエネルギーのレーザビームを50cm/secの走査速度で照射した。これらの試料も同様にしてラマンスペクトルを測定した。
【0124】
その結果は図41に示す通りである。横軸は波数(cm−1)、縦軸はラマン散乱光の強度(以下、ラマン強度とする)である。このグラフより、本発明の準単結晶珪素膜のラマン強度のピークは517〜518cm−1、単結晶珪素膜のラマン強度のピークは520〜521cm−1、大粒径結晶が形成された珪素膜のラマン強度のピークは515〜516cm−1であることが分かる。ラマン強度のピーク位置が単結晶珪素膜の値に近づくにつれて特性は単結晶珪素膜に近づく。従って、本発明の準単結晶珪素膜は、大粒径結晶が形成された珪素膜と比較すると、より特性が単結晶珪素膜に近いと言える。
【0125】
また、ラマン強度の値についてそれぞれ比較すると、本発明の準単結晶珪素膜の強度は単結晶珪素膜や大粒径結晶が形成された珪素膜のラマン強度より小さい。このように、ラマン強度という点からも、本発明の準単結晶珪素膜は単結晶珪素膜や大粒径結晶が形成された珪素膜とは違うことが分かった。
【実施例5】
【0126】
本発明の半導体膜をラマン分光法で測定し、スペクトルの偏光特性を調べた。
【0127】
試料は、以下の手順で作製した。厚さ0.7mmのガラス基板に下地絶縁膜として厚さ50nmの窒化酸化珪素膜を形成し、さらに100nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜した。下地絶縁膜上に半導体膜として、厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜した。さらに、キャップ膜として厚さ300nmの窒素を含む酸化珪素膜を形成した。キャップ膜の形成後、出力が6W、連続発振の固体レーザ発振器を2つ用意し、これらのレーザ発振器からレーザビームを射出し、光学系を用いて合成した。合成後のレーザビームのエネルギーは12Wである。レーザビームを合成した後に幅500μmの線状に成形して半導体膜に照射した。なお、半導体膜へレーザビームを照射する際の走査速度は50cm/secである。
【0128】
このように形成された第1の試料である準単結晶珪素膜に偏光したレーザ光を入射し、ラマンピークの角度依存性を測定した。偏光方向は、図13(E)に示すように、レーザビームの照射方向に対して直角の方向を0°とし、0°、45°、90°、135°にそれぞれ偏光を入射した。
【0129】
図13(A)〜(D)は偏光方向がそれぞれ0°、45°、90°、135°のラマン強度を示す。
【0130】
図13(A)〜(D)より、レーザビームの中央付近が照射した100〜420μmの領域(丸で囲った部分)に、ラマン強度が小さく、ラマン強度のばらつきが小さい領域がある。この部分のラマン強度の傾向は、実施例3で説明した準単結晶の特徴と一致している。従って、この部分は準単結晶が形成されていると推測される。
【0131】
図13より、偏光の方向が0°、90°の場合と45°、135°の場合とでは傾向が異なることが分かる。0°および90°の場合はそれぞれ同程度の値を取り、45°および135°の場合も同程度の値をとる。しかし、0°および90°の場合のラマン強度は、45°および135°の場合のラマン強度よりも小さい値をとる。従って、本発明の準単結晶のラマン強度は、90°の周期構造を有していることが分かる。また、偏光の方向によって準単結晶が形成された領域のラマン強度の大きさは変わるが、ラマン強度のばらつきは小さいことが分かった。このような周期構造は単結晶膜でも観測されるが、面方位が隣接する結晶間でランダムな大粒径結晶では観測されない。従って、前記周期構造を有するということは、準単結晶が、配向が一様に揃い限りなく単結晶に近い結晶状態であることを示していると考えられる。また、図示しないが、準単結晶のラマンシフトにも90°の同様の周期構造が観測される。
【実施例6】
【0132】
本実施例では、さまざまな条件でキャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを照射して半導体膜の結晶化を行い、本発明の半導体膜を形成する最適な条件を探した。
【0133】
本実施例では、厚さ0.7mmのガラス基板の片面に、下地絶縁膜として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜する。さらに、この下地絶縁膜上に、厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜した。このようにして形成した試料にキャップ膜として窒素を含む酸化珪素膜を形成した後に、CWレーザを照射した。具体的な照射方法は、CWレーザ発振器を2つ用意し、同じ出力で同時に射出し、光学系を用いて合成した後に、キャップ膜を介して半導体膜に照射した。本実施例で変えた条件は、(1)キャップ膜の厚さ、(2)半導体膜に照射するレーザビームのエネルギー、(3)レーザビームの走査速度、の3つである。キャップ膜の膜厚は、400nmと500nmの2種類である。また、レーザ発振器から射出されるエネルギーはそれぞれ4.5Wから10Wまでの間を0.5W刻み(合成後は9Wから20Wまでの間を1W刻み)した12種類である。また、レーザビームの走査速度は35cm/secと50cm/secの2種類である。これらの条件を変えてレーザビームの照射を行った後、光学顕微鏡にて表面の状態を観察した。なお、本実施例も他の実施例と同様に、光学系を用いて2つのレーザ発振器から射出したレーザビームを合成し、500μmの線状に成形した後に半導体膜に照射した。
【0134】
本実施例では、光学顕微鏡を用いた観察は暗視野反射顕微鏡法で行われた。この方法は、試料に当てた光が直接光学顕微鏡の対物レンズに入射しないようにし、そのときの試料からの反射光、散乱光などを観察する。この観察法では、視野の背景が黒く、凹凸があると光って見える。この観察法を用いることにより、透明な試料を観察することが可能であるだけではなく、光学顕微鏡の解像限界よりも小さな8nm程度の粒子や凹凸を認識することが可能である。そのため、半導体膜表面の微小なキズや欠陥などの検査に非常に有効であり、工業分野においては標準的な観察方法となっている。本実施例では、100倍の倍率で表面の凹凸を観察した。
【0135】
図42は、レーザビームの走査速度を35cm/secに固定した場合の光学顕微鏡の像をキャップ膜の厚さとレーザビームのエネルギーの相関関係が分かるように並べたものを示す。同様に、図43はレーザビームの走査速度を50cm/secに固定した場合の光学顕微鏡の像をキャップ膜の厚さとレーザビームのエネルギーの相関関係が分かるように並べたものを示す。
【0136】
半導体膜の表面の凹凸の状態は、結晶化の条件や結晶の状態によって異なる。微結晶や膜とびが起こる領域では半導体膜に凹凸が形成されるため、試料からの反射光や散乱光が観測される。逆に、準単結晶、大粒径の結晶粒、または微結晶が形成される部分では、半導体膜の表面に凹凸が少ないため、視野が黒くなる。
【0137】
図42、図43に示された光学顕微鏡の像について、それぞれ形成されているものを確認し、まとめたものが図44(A)、(B)である。プロットされたマークは図44(A)、(B)ともに共通のものである。*印は結晶化ができなかった領域、×印は微結晶が形成された領域、黒塗りの三角は微結晶と本発明の準単結晶が混在して形成された領域である。+印は微結晶、大粒径結晶、および本発明の準単結晶が混在して形成された領域である。黒塗りの丸は本発明の準単結晶が形成された領域である。黒塗りのひし形は大粒径結晶と本発明の準単結晶が混在して形成された領域であり、白抜きのひし形は、大粒径結晶が形成された領域である。また、白抜きの四角は、半導体膜に与えられるエネルギーが過剰であったため、膜とび(半導体膜が剥がれるまたは蒸発などすること)が起こった領域である。
【0138】
図44(A)はレーザビームの走査速度を35cm/secに固定した場合の結果を示す。この結果より、キャップ膜の膜厚が200nm以上500nm以下で本発明の準単結晶珪素膜が形成されたことが分かる。具体的には、キャップ膜の膜厚が200nmの場合では、各レーザビームのパワーが6.0W以上7.5W以下(合成後12W以上15W以下)の範囲で本発明の準単結晶珪素膜が形成された。同様にして、キャップ膜の膜厚が300nm、400nm、500nmの場合では、各レーザビームのパワーがそれぞれ5.0W以上6.0W以下(合成後10W以上12W以下)、5.5W以上8.5W以下(合成後11W以上17W以下)、7.0W以上10W以下(合成後14W以上20W以下)の範囲で準単結晶珪素膜が形成された。
【0139】
キャップ膜の膜厚が200nmから300nmにかけては、キャップ膜の膜厚が厚くなっても、準単結晶珪素膜が形成されるエネルギーの最低値が下がる。キャップ膜の膜厚が300nm以上になると、キャップ膜の膜厚が厚くなるにつれて準単結晶珪素膜が形成されるエネルギーの最低値が上がる傾向を持つ。
【0140】
また、図44(B)は、レーザビームの走査速度が50cm/secに固定した場合の結果を示す。この結果より、キャップ膜の膜厚が200nm以上500nm以下で本発明の準単結晶珪素膜が形成されたことが分かる。具体的には、キャップ膜の膜厚が200nmの場合では、各レーザビームのパワーが8.0W以上9.0W以下(合成後16W以上18W以下)の範囲で本発明の準単結晶珪素膜が形成される。同様にして、キャップ膜の膜厚が300nm、400nm、500nmの場合では、各レーザビームのパワーがそれぞれ6.5W以上7.5W以下(合成後13W以上15W以下)、6.5W以上10W以下(合成後13W以上20W以下)、8.5W以上10W以下(合成後17W以上20W以下)で準単結晶珪素膜が形成される。
【0141】
図44(A)と同様に、キャップ膜の膜厚が200nmから300nmにかけては、キャップ膜の膜厚が厚くなっても準単結晶珪素膜が形成されるエネルギーの最低値が下がるが、300nmを超えると、キャップ膜の膜厚が厚くなるにつれて、準単結晶珪素膜が形成されるエネルギーの最低値が上がる傾向を持つ。
【0142】
また、図44(A)、(B)において、準単結晶珪素膜が形成される領域を比較する。レーザビームの走査速度が速くなると、準単結晶珪素膜が形成されるエネルギーの最低値が上がるが、準単結晶珪素膜が形成される領域の分布傾向は、レーザビームの走査速度には関係なく、そのまま保持されることが分かる。
【0143】
なお、図13の準単結晶半導体膜の形成条件と図44(B)の結果が合致しないのは、半導体膜に照射したレーザが違うためであると考えられる。
【実施例7】
【0144】
本実施例では、本発明の準単結晶を活性層とした半導体装置の一例として、TFTの作製方法を示し、さらにこのTFTを用いた半導体装置について説明する。なお、本実施例は、半導体膜上に形成したキャップ膜をレーザ結晶化後にエッチングする例である。
【0145】
図19(A)に示すように、絶縁表面を有する基板2000上に下地絶縁膜2001を形成する。本実施例では、基板2000としてガラス基板を用いる。なお、ここで用いる基板には、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミックス基板、ステンレス基板などを用いることができる。また、PET、PES、PENに代表されるプラスチックや、アクリルなどに代表される合成樹脂を原料とする基板は、一般的に他の基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、本工程の処理に耐え得るのであれば用いることができる。
【0146】
下地絶縁膜2001は、基板2000に含まれるナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属が半導体中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼすのを防ぐために設ける。このため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体中への拡散を抑えることのできる酸化珪素膜や窒化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜などの絶縁膜を用いて形成する。また、下地絶縁膜2001は単層または積層構造のいずれでもよい。本実施例では、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)を用いて酸素を含む窒化珪素膜を10〜400nmの膜厚になるように成膜する。
【0147】
なお、基板2000として、ガラス基板またはプラスチック基板のようにアルカリ金属やアルカリ土類金属が多少なりとも含まれている基板を用いている場合には、不純物の拡散を防ぐために下地絶縁膜2001を設けることは有効であるが、石英基板など不純物の拡散がさほど問題にならない基板を用いる場合には必ずしも下地絶縁膜2001を設ける必要はない。
【0148】
次いで、下地絶縁膜2001上に非晶質半導体膜2002を形成する。非晶質半導体膜2002は、公知の方法(スパッタリング法、LPCVD法、プラズマCVD法など)により、25〜200nm(好ましくは30〜80nm)の厚さで形成する。本実施例では、66nmの膜厚で作製する。ここで用いる非晶質半導体膜は、珪素やシリコンゲルマニウム、SiCなどを用いることができるが、本実施例では珪素を用いる。シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であると好ましい。また、本実施例および他の実施例において半導体膜として非晶質珪素膜の例を示すが、多結晶珪素膜を使用してもよい。例えば多結晶珪素膜は、非晶質珪素膜成膜後、非晶質珪素膜にニッケル、パラジウム、ゲルマニウム、鉄、スズ、鉛、コバルト、銀、白金、銅、金等の元素を微量に添加し、その後550℃にて4時間の熱処理を施すことによって形成することができる。さらには、珪素と炭素の化合物を半導体膜として使用してもよい。
【0149】
非晶質珪素膜に添加する上記の元素は、結晶成長を助長する触媒元素として機能しているものと考えられる。触媒元素を非晶質珪素膜に添加する具体的な方法は、(1)非晶質珪素膜の表面に、数nm程度の触媒元素の薄膜をスパッタ法や蒸着法で形成した後、加熱を行うことによって非晶質珪素膜の表面をシリサイド化する方法、(2)触媒元素の単体または化合物を含む溶液を非晶質珪素膜に塗布することによって、非晶質珪素膜の表面に触媒元素を接触させ、加熱によって触媒元素と非晶質珪素膜を反応させて非晶質珪素膜の表面をシリサイド化する方法、などを用いることができる。
【0150】
(2)の方法を用いる場合では、触媒元素の単体または化合物を含む溶媒として水、アルコール、酸、アンモニアなどの極性溶媒を用いることができる。極性溶媒を用いた場合、触媒元素は化合物として添加される。例えばニッケルの場合では、酸または塩基とニッケルとの化合物である臭化ニッケル、酢酸ニッケルなどの化合物を溶媒に溶解し、非晶質珪素膜に塗布する。また、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、エーテルなどの無極性溶媒を用いた場合では、ニッケルと有機物の化合物であるニッケルアセチルアセトネートなどの化合物を溶媒に溶解し、非晶質珪素膜に塗布する。さらに、ニッケル単体やニッケルの化合物が分散媒中に均一に分散したエマルジョンやペーストを用いてもよい。
【0151】
その後、熱処理を施すことによって、シリサイド化した領域からシリサイド化されなかった領域へ向かって結晶成長が行われる。例えば、触媒元素を非晶質珪素膜の表面全面に添加した場合では、非晶質珪素膜の表面から基板に向かって結晶成長が進行する。また、非晶質珪素膜の一部のみに触媒元素を添加した場合では、触媒元素が添加された領域から触媒元素が添加されなかった領域へと基板に平行な方向に結晶成長が行われる。なお、前者は縦成長、後者は横成長とそれぞれ呼ばれている。
【0152】
続いて、非晶質半導体膜2002の上にキャップ膜2003として厚さ500nmの酸化珪素膜を成膜する。キャップ膜2003の材料は酸化珪素膜に限らないが、非晶質半導体膜2002と熱膨張係数や延性などの値が近いものを用いることが好ましい。また、キャップ膜2003は単層で形成しても複数層で形成してもよい。
【0153】
次に、図19(A)で示すように、レーザ照射装置を用いてレーザビームを照射して、非晶質半導体膜2002を準単結晶化させ、準単結晶の半導体膜2004を形成する。照射したレーザビームのエネルギーは17W、レーザビームの走査速度は35cm/secとする。
【0154】
本実施例で用いるレーザ照射装置を図20に示す。レーザ結晶に多結晶集合体のセラミック構造のNd:YAG結晶(以下、セラミックNd:YAGとする)を用いており、発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを射出する。なお、このレーザビームの基本波の波長は1064nmであるので、非線形光学素子を用いて第2高調波(波長532nm)に変換する。
【0155】
本実施例の場合、レーザ結晶にセラミックYAGを用いている。YAGに限らず、セラミックのレーザ結晶は、単結晶とほぼ同じ光学特性(熱伝導率、破壊強度、吸収断面積)を持つ。また、セラミックであるため、短時間かつ低コストで自由な形状に形成することが可能であり、結晶を非常に大きくすることができる。さらには、Nd、Ybなどのドーパントの濃度を単結晶よりも高い濃度に添加することが可能である。このようなレーザ結晶を媒体として用いることによって、非常に出力が高いレーザビームを射出することが可能である。したがって、光学系を用いてこのビームを整形することによって、ビームの短軸の長さは1mm以下で、長軸の長さが数100mm〜数mの線状ビームを得ることが可能となる。
【0156】
また、セラミックNd:YAGレーザだけには限らず、多結晶(セラミック質)のYAG、Y、YVOにNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taなどのドーパントを添加した結晶を媒質としたレーザを用いることが可能である。
【0157】
また、本実施例では、セラミックを用いたレーザだけではなく、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト、YAlO、GdVOに先述のドーパントを添加した結晶を媒質としたレーザや、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、Ti:サファイアレーザなどを用いることもできる。これらは連続発振で発振することも可能であり、モード同期などを行って10MHz以上の発振周波数でパルス発振をさせることも可能である。この他に、COレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザなどを用いることも可能である。
【0158】
具体的には、以下のようにして半導体膜を準結晶化する。レーザ発振器2101より射出されたレーザビームは、波長板2102、偏光ビームスプリッター2103に通す。波長板2102および偏光ビームスプリッター2103を透過した光が適当なエネルギーとなるように波長板2102と偏光ビームスプリッター2103を調整することができる。
【0159】
この後に、シリンドリカルレンズアレイ、フライアイレンズ、光導波路、回折光学素子などのビームホモジナイザ2104によって、レーザビームのエネルギーを均一化すると、レーザビームの照射領域の端部にも準単結晶が形成されるため、より好ましい。本実施例では、ビームホモジナイザ2104として回折光学素子を用いる。回折光学素子を用いると、レーザビームのエネルギーの均一化を行うとともに、レーザビームの断面の形状を線状、四角形状、楕円状などの所望の形状に成形することができる。
【0160】
次に、このレーザビームはスリット2105に通す。スリット2105では、レーザビームの長軸方向の両端部分を遮断し、エネルギーの弱い部分を半導体膜の結晶化には用いないようにする。同時にレーザビームの長軸方向の長さを調節する。このように用いることができる構造あるいは形状であれば、スリット2105の材質や調節方法などには特に制限はない。
【0161】
次に、ミラー2107でレーザビームの方向を変えたのちに集光レンズ2106で集光を行い、被照射物2108に照射する。なお、スリット2105と被照射物2108が共役の位置にあるように集光レンズ2106を設けると、スリット2105の回折光が被照射物2108に到達して干渉縞を被照射物2108に生じさせることがなくなる。このように光学系を配置することで、より強度分布が均一なレーザビームを被照射面に照射することができる。
【0162】
被照射物2108が形成されている基板は、レーザ照射の際に落ちないように吸着ステージ2109に固定されている。吸着ステージ2109は、Xステージ2110、Yステージ2111を用いて、被照射物2108の表面に平行な面上をX軸、またはY軸の方向に走査を行い、被照射物2108の全面にレーザビームを照射する。
【0163】
本実施例ではXステージ2110、Yステージ2111を用いて被照射物2108を動かす構成となっているが、レーザビームの走査は、被照射物2108を固定してレーザビームの照射位置を移動させる照射系移動型、レーザビームの照射位置を固定して被照射物2108を移動させる被処理物移動型、または上記2つの方法を組み合わせた方法を用いることができる。
【0164】
このようにすると、被照射物2108に照射されるレーザビームの強度分布は均一であり、ビームの端部の強度が不足している部分は除去することができる。このような構成を持つことによって、被照射物2108の全面に良好にレーザ照射処理を行うことができる。
【0165】
レーザ照射処理の後に、キャップ膜2003である酸化珪素膜をエッチングにより取り除く(図19(B))。次いで、フォトリソグラフィー技術を用いて、珪素でなる準単結晶の半導体膜2004を所望の形状にパターン形成し、半導体膜2005を形成する(図19(C))。ここでレジストマスクの形成を行う前には、形成された準単結晶の半導体膜2004を保護するために、オゾン含有水溶液の塗布、または酸素雰囲気でUV照射によって発生されたオゾンを用いて酸化珪素膜を形成するとよい。ここで形成した酸化膜はレジストのぬれ性を向上させる効果もある。
【0166】
なお、必要があれば、準単結晶のパターン形成を行う前に、TFTのしきい値電圧を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを、酸化珪素膜を介して行う。酸化珪素膜を介してドーピングを行った場合には、まずキャップ膜2003を除去し、再度CVD法などを用いて酸化珪素膜を形成するとよい。
【0167】
次いで、図19(D)に示すように、パターン成形時に発生する不要物(レジスト残りやレジスト剥離液など)を除去する洗浄を行った後、準単結晶珪素膜の表面を覆って、ゲート絶縁膜2006を形成する。本実施例では、ゲート絶縁膜2006として酸化珪素膜を形成する。
【0168】
ゲート絶縁膜2006は、上記の酸化珪素膜には限らず、少なくとも酸素または窒素を含む絶縁膜であれば良い。また、ゲート絶縁膜2006の構造は単層でも複層でもよい。その際の成膜方法は、プラズマCVD法やスパッタ法を用いることができる。例えば、プラズマCVD法で酸素を含む窒化珪素膜と、窒素を含む酸化珪素膜を連続成膜して、合計膜厚が115nmになるように形成してもよい。なお、チャネル長の長さが1μm以下であるようなTFT(サブミクロンTFTともいう)を形成する場合、ゲート絶縁膜2006は10nm以上50nm以下の厚さで形成することが望ましい。必要に応じて、キャップ膜2003を除去した後に、再びゲート絶縁膜2006を成膜するとよい。
【0169】
次いで、ゲート絶縁膜2006の表面を洗浄した後、ゲート絶縁膜2006上に導電膜を形成し、所望の部分を残して導電膜を除去することによってゲート電極2007を形成する。ゲート電極2007としては、導電性を有するとともに、ヒロックの発生が少ない高融点金属を含む材料を用いることが好ましい。なお、ヒロックの発生が少ない高融点金属は、W,Mo,Ti,Ta,Coなどから選ばれる1種、またはこれらの合金を用いる。また、これらの高融点金属の窒化物(WN,MoN,TiN,TaNなど)を用いて2層以上の積層物としてもよい。
【0170】
また、このほかの方法として、所定の場所に導電性物質を吐出することが可能な印刷法やインクジェット法に代表される液滴吐出法により、ゲート電極2007を直接ゲート絶縁膜2006上に形成してもよい。
【0171】
次いで、ゲート電極2007を形成する際に用いたレジストをマスクとして用い、半導体膜2005にn型を付与する不純物元素(P、As等)、ここではリンを適宜添加して、ソース領域及びドレイン領域を形成する。同様に、p型を付与する不純物元素を導入してもよい。この工程により、ソース領域2008、ドレイン領域2009、LDD(Lightly Doped Drain)領域2010などを形成する。また、同一基板上にある複数の半導体膜に、n型を付与する不純物元素とp型を付与する不純物元素を選択的に添加してもよい。
【0172】
不純物元素を添加した後、不純物元素を活性化するために加熱処理、強光の照射、またはレーザビームの照射を行う。この処理によって、不純物元素の活性化と同時に、ゲート絶縁膜2006へのプラズマダメージや、ゲート絶縁膜2006と半導体膜2005との界面に発生したプラズマダメージを回復することができる。
【0173】
次に、図19(E)に示すように、保護膜として第1の絶縁膜2014を形成する。この第1の絶縁膜2014は、プラズマCVD法またはスパッタ法を用い、窒化珪素膜または酸素を含む窒化珪素膜を、単層または積層構造で100〜200nmの厚さに形成する。酸素を含む窒化珪素膜と窒素を含む酸化珪素膜を組み合わせる場合では、ガスを切り替えることによって連続成膜をすることが可能である。本実施例では、プラズマCVD法により膜厚100nmの窒素を含む酸化珪素膜を形成した。絶縁膜を設けることにより、酸素や空気中の水分をはじめ、各種イオン性の不純物の侵入を阻止するブロッキング作用を得ることができる。
【0174】
次いで、第1の絶縁膜2014上に第2の絶縁膜2015を形成する。ここでは、SOG(Spin On Glass)法またはスピンコート法によって塗布されたポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリル、シロキサン(珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され、珪素にフッ素、脂肪族炭化水素、または芳香族炭化水素のうち少なくとも一種が結合した構造を持つ物質)などの有機樹脂膜、無機層間絶縁膜(窒化珪素膜、酸化珪素膜などの珪素を含む絶縁膜)、low−k(低誘電率)材料などを用いることができる。第2の絶縁膜2015は、ガラス基板上に形成されたTFTによる凹凸を緩和し、平坦化する意味合いが強いため、平坦性に優れた膜が好ましい。
【0175】
さらに、フォトリソグラフィー法を用いて、ゲート絶縁膜2006、第1の絶縁膜2014および第2の絶縁膜2015を加工して、ソース領域2008、ドレイン領域2009に達するコンタクトホールを形成する。
【0176】
次に、導電性材料を用いて導電膜を形成し、この導電膜をパターン加工することによって、配線(ソース電極およびドレイン電極)2016を形成する。配線2016は、W,Mo,Ti,Al,Cuから選ばれた元素、または元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料の単層、またはこれらの積層で形成する。例えば、Ti膜と、純Al膜と、Ti膜との3層構造、またはTi膜と、NiとCを含むAl合金膜と、Ti膜との3層構造で形成することができる。また、後の工程で層間絶縁膜等を形成することを考慮して、配線2016の断面形状をテーパー形状(円錐状に先が細くなる形状)とすることが好ましい。
【0177】
その後、保護膜として第3の絶縁膜2017を形成すると、図19(E)に示すようなTFT(nチャネル型TFT)2011、2012、2013が完成する。なお、半導体膜にp型の不純物元素を添加した場合にはpチャネル型TFTが形成される。また、同一基板上にn型の不純物元素とp型の不純物元素を選択的に導入することによって、同一基板上にnチャネル型TFTとpチャネル型TFTを形成することもできる。
【0178】
本実施例ではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタガ型TFTに適用することが可能である。
【0179】
また、他の実施例で説明したように、本発明の準単結晶は、レーザビームの走査方向と平行な方向に結晶成長し、結晶粒界もレーザビームの走査方向に互いに平行である。そのため、レーザビームの走査方向とソース領域からドレイン領域に向かう方向が合うようにTFTを形成すると、キャリアの移動行程内に結晶粒界が含まれないため好ましい。
【0180】
その一例として図21(A)に示すような画素回路を形成する。図21(A)、(B)において、2201はソース信号線、2202はゲート信号線、2203は電流供給線、2204はスイッチング用TFT、2205は駆動用TFT、2206は容量、2207は発光素子である。なお、スイッチング用TFT2204はnチャネル型TFTであり、駆動用TFT2205はpチャネル型TFTで構成されている。
【0181】
本実施例では、図21(C)に示すように、レーザビームの走査方向の上流側にスイッチング用TFT2204のドレイン領域を形成し、レーザビームの走査方向の下流側にソース領域を形成する。また、駆動用TFT2205のキャリアの移動方向を、レーザビームの走査方向と交わるように形成する。本実施例では、駆動用TFT2205のキャリアの移動方向は、レーザビームの走査方向と直角となるようにしている。なお、図21(C)は、スイッチング用TFT2204と駆動用TFT2205のチャネル形成領域、および容量2206を形成する位置を上面から示しており、これらのTFTのソース領域をS、ドレイン領域をDで示す。
【0182】
なお、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTを組み合わせて構成する電気回路であれば、特に画素を構成する回路に限定されるものではない。例えば、画素を駆動する駆動回路、電源回路、IC、メモリ、CPUを構成する回路など、さまざまな回路に用いることができる。
【0183】
スイッチング用TFT2204は、駆動用TFT2205のオンとオフを切り替えるTFTである。そのため、スイッチング用TFT2204は高速駆動が可能であることが求められる。スイッチング用TFT2204のように、結晶の成長方向に合わせてキャリアが移動するようにソース領域とドレイン領域を形成すると、結晶粒界をキャリアが横切ることなく移動する。つまり、キャリアが結晶粒の粒界に沿って移動することになる。そのため、キャリアの移動度が高く、高速駆動が可能なTFTを得ることができる。
【0184】
駆動用TFT2205は発光素子2207に電流を流して発光させるためのTFTである。駆動用TFT2205のオフ電流が大きいと、駆動用TFT2205をオフにしても発光素子2207に電流が流れ、消費電力の増大につながる。そのため、駆動用TFT2205のオフ電流が小さいことが求められる。図21(C)の配置では、駆動用TFT2205において結晶の粒界を横切るようにキャリアが移動することになる。この場合は、駆動用TFT2205のオン電流(TFTをオンにしたときに流れる電流)も小さくなるが、オフ電流(TFTをオフにしたときに流れる電流)も小さくなる。
【0185】
このように、求められる条件に合わせてTFTの形成場所を配置することにより、応答速度がより高く、性能のよい半導体装置を形成することができる。
【0186】
一般的に、半導体装置は1つのTFTだけで構成されるものではない。例えば、表示装置のパネルは、複数のTFTを用いて1つの画素回路を形成し、この画素回路を集積することによって作られている。ここで、個々の回路を構成するTFTの特性が均一であることが求められる。それは、TFTの特性がバラバラであると、表示ムラなどの不都合が発生するからである。本発明を用いて結晶化した半導体膜は、一方向に伸びた柱状の結晶粒が一様に形成されており、結晶粒の面方位は一方向とみなすことができる。そのため、この半導体膜を用いることによって、特性が等しく、表示ムラが格段に起こりにくいパネルを形成することができる。また、この点はパネルに限られたことではなく、全ての半導体装置に言えることである。
【0187】
以上の工程で示したように、活性層に本発明の準単結晶の半導体膜を用いたTFTを作製することができる。このTFTは高速動作が可能で、電流駆動能力が高く、かつ複数のTFT同士でばらつきが小さい。このTFTを用いて、半導体素子又は複数の半導体素子を集積して構成される半導体装置を提供することができる。
【実施例8】
【0188】
実施例2ではキャップ膜をレーザ結晶化後にエッチングする例を示したが、本実施例でキャップ膜をそのままゲート絶縁膜として使用する半導体装置を作製する例を示す。
【0189】
まず、結晶化する対象である半導体膜の作製方法の例を示す。図22(A)に示すように、可視光線を透過するガラスなどの絶縁物からなる基板3001上に下地絶縁膜3002と半導体膜3003を形成する。基板3001は、実施の形態や他の実施例と同じ種類のものを用いることができる。本実施例では、厚さ0.7mmのガラス基板上に下地絶縁膜3002として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜する。次に、半導体膜3003として、下地絶縁膜3002上に厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜する。さらに半導体膜3003のレーザビームに対する耐性を高めるために、500℃1時間の熱アニールを行う。
【0190】
次いで、図22(B)、(C)に示すように、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて半導体膜3003を所望の形状にパターン成形する処理(パターニング)を行い、非晶質珪素でなる半導体膜3006を形成する。その手法は以下の通りである。
【0191】
まず、非晶質珪素でなる半導体膜3003上に(1)オゾン含有水溶液を塗布する、(2)酸素雰囲気でUVを照射してオゾンを発生させる、などの方法を用いて非晶質珪素膜の表面に極薄い酸化膜3004を形成する。この酸化膜3004は、非晶質珪素膜を保護する効果と、レジストのぬれ性を向上させる効果を持つ。
【0192】
次に、レジストマスク3005を形成する。まず、酸化膜3004上にフォトレジストをスピンコーティング法などにより塗布し、露光を行う。次に、フォトレジストに対して加熱処理(プリベーク)を行う。プリベークの温度は50〜120℃とし、後に行われるポストベークより低い温度で行う。本実施例では、加熱温度は90℃、加熱時間は90秒とした。
【0193】
次に、フォトレジストに現像液を滴下するか、あるいはスプレーノズルから現像液をスプレーすることによって、露光されたフォトレジストを現像(所定の形状に成形)する。
【0194】
その後、現像されたフォトレジストを125℃、180秒で加熱処理を行ういわゆるポストベークを行い、レジストマスク中に残っている水分などを除去し、同時に熱に対する安定性を高める。以上の工程によってレジストマスク3005が形成される。このレジストマスク3005を基に非晶質珪素でなる半導体膜3003をエッチングして、島状に形成された非晶質珪素でなる半導体膜3006が形成される(図22(C))。
【0195】
なお、このほかの方法として、所定の場所に材料を吐出することが可能な印刷法やインクジェット法に代表される液滴吐出法により、レジストマスク3005を直接酸化膜3004上に形成してもよい。
【0196】
なお、必要があれば、半導体膜3003のパターン形成を行う前に、TFTのしきい値電圧を制御するために、酸化膜3004を介して微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを行う。ここで、ドーピングを行っておくと、後に行うレーザ照射処理によって、結晶化工程と同時に添加された不純物元素の活性化を行うことができ、工程を削減する効果を有する。なお、酸化膜3004を介してドーピングを行った後には、酸化膜3004を除去しておくことが好ましい。
【0197】
次いで、図22(D)に示すように、半導体膜3003を所望の形状にパターン成形する際に発生する不要物(レジスト残りやレジスト剥離液など)を除去する洗浄を行った後、島状に形成された半導体膜3006の表面を覆って、キャップ膜兼ゲート絶縁膜となる窒素を含む酸化珪素を主成分とするゲート絶縁膜3007を200nmの厚さで成膜する。なお、ゲート絶縁膜3007として窒素を含む酸化珪素膜を用いるため、固く緻密な膜を形成することが好ましい。
【0198】
上記の酸化珪素膜には限らず、少なくとも酸素または窒素を含む絶縁膜であれば良い。また、ゲート絶縁膜3007の構造は単層でも複層でもよい。その際の成膜方法は、プラズマCVD法やスパッタ法を用いることができる。例えば、プラズマCVD法で窒素を含む酸化珪素膜と酸素を含む窒化珪素膜を連続成膜してもよい。
【0199】
次に、実施の形態で示した方法と同様にレーザビームを照射する。これにより、レーザビームが照射され完全溶融した領域の非晶質珪素膜がひとつの面方位に結晶が成長し、準単結晶の半導体膜3008にすることができる。その後は、ゲート絶縁膜3007上にゲート電極を形成し、不純物を準単結晶の半導体膜3008に導入することによってソース領域とドレイン領域を形成する。さらに、絶縁膜を形成し、ソース領域およびドレイン領域とそれぞれ接続する電極を形成することによって、薄膜トランジスタを形成することができる。なお、ゲート電極の形成以降の工程は、他の実施例に記載の方法を用いることができる。
【0200】
以上の工程で示したように、活性層に準単結晶の半導体膜を用いたTFTを作製することができる。そのため、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、素子間において特性のばらつきの小さい半導体素子を作製することができる。さらに、複数の半導体素子を集積して構成される半導体装置を提供することができる。
【実施例9】
【0201】
本実施例において、以上に示した例とは別のレーザ結晶化方法の例を示す。本実施例において、レーザ発振器には、近赤外領域の波長を持つYbドープファイバーCWレーザを用いる。このレーザは10kWの出力が可能である。本実施例はこれに限らず、ダイオードレーザやLD励起固体レーザ等を用いても良い。また、本実施例ではCWレーザを用いるが、繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いてもよい。
【0202】
波長が近赤外領域のレーザ発振器を使用するのは、以下の理由による。高調波はレーザ媒質から発振した基本波を非線形光学素子に入射させることで得られる。しかし、レーザの出力が大きくなると、多光子吸収などの非線形光学効果により、非線形光学素子にダメージが与えられ、ブレークダウンにつながるなどの問題がある。よって、現在、生産されている可視域のCWレーザ及び繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザは、非線形光学素子の問題から、最大でも15W程度である。したがって、より高い出力を持つ基本波のレーザを結晶化に用いることができれば、被照射面におけるビームスポットを長尺化することが可能になるため、効率よくレーザ照射処理を行うことが可能となる。
【0203】
レーザ結晶化する対象である半導体膜の作製方法の例を示す。図23(A)に示すように、基板4001は、レーザ結晶化に用いるレーザの波長である可視光線を透過するガラスなどの絶縁性の基板を用いる。本実施例では、基板4001として厚さ0.7mmのガラス基板を用いる。なお、基板4001の材質はガラスに限らず、他の実施例に記載された材質を用いることができる。
【0204】
基板4001の片面に下地絶縁膜4002として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜し、その上に半導体膜として厚さ66nmの非晶質珪素膜4003をプラズマCVD法にて成膜する。下地絶縁膜4002と非晶質珪素膜4003は、基板の表面または裏面のどちらに形成してもよいが、本実施例では便宜上、表面としておく。さらに半導体膜のレーザビームに対する耐性を高めるために、500℃、1時間の熱アニールを半導体膜に対して行う。
【0205】
次いで、図23(B)に示すように、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を用いて非晶質珪素膜4003を所望の形状にパターン成形する処理(パターニング)を行い、非晶質珪素膜4004を形成する。この処理において、レジストマスク形成を行う前に、非晶質珪素膜4003を保護するためにオゾン含有水溶液を塗布する方法、または酸素雰囲気でのUV照射によってオゾンを発生させる方法などを用いて酸化膜を形成することができる。ここで形成した酸化膜はレジストのぬれ性を向上させる効果もある。
【0206】
なお、必要があれば、パターン形成を行う前に、TFTのしきい値電圧を制御するために微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを、この酸化膜を介して行う。ここで、ドーピングを行っておくことによって、後に行うレーザによる結晶化工程によって添加された不純物元素の活性化処理を同時に行うことができ、工程を削減する効果をも有する。なお、この酸化膜を介してドーピングを行った場合には、酸化膜を除去しておいてもよい。
【0207】
次いで、パターン成形処理によって発生するレジスト残りやレジスト剥離液などの不要物を除去する洗浄を行った後、島状に形成された非晶質珪素膜4004の表面を覆って、キャップ膜兼ゲート絶縁膜となるSiOを主成分とする絶縁膜4005を成膜する。さらに、キャップ膜の上に、レーザビームの光吸収層4006として、タングステン膜を30nmの厚さで成膜する。
【0208】
光吸収層4006を成膜するのは以下の理由による。上述したように本実施例においては、波長が近赤外領域である基本波のレーザを用いる。しかし、近赤外領域の波長において、珪素の光吸収係数は低い。したがって、波長が近赤外領域である基本波のレーザを用いると、直接珪素を溶融することができない。そこで、近赤外領域において吸収係数が高い光吸収層を設け、レーザビームが光吸収層に吸収されて発生した熱により、間接的に半導体膜の結晶化を行う。
【0209】
よって、光吸収層4006は、近赤外から赤外の波長領域において非晶質珪素膜4004に比べて吸収率の高いものを用いる。例えば、W,Mo,Ti,Ta,Coなどから選ばれる1種、またはこれらの合金、また、これらの高融点金属の窒化物(WN,MoN,TiN,TaNなど)を用いて単層または2層以上の積層で形成することができる。
【0210】
以上の工程によって形成された被照射物にレーザビームを照射する(図23(C))。光吸収層4006がレーザビームの光を吸収して発生する熱によって非晶質珪素膜4004を加熱する。その結果、レーザビームが照射され完全溶融した領域の非晶質珪素膜がひとつの面方位に結晶が成長し、非晶質珪素膜4004を準単結晶4007とすることができる。
【0211】
なお、レーザビームの照射後、光吸収層4006をエッチングにより取り除いてもよいし、エッチングせずに所望の形状に成形し、ゲート電極4008として用いてもよい。図23(D)では、光吸収層4006の一部を残してエッチングによって除去している。
【0212】
なお、ゲート電極4008は一層に限らず、複数層でもよい。図23(E)に示すように、光吸収層4006をエッチングによって成形し、さらに光吸収層4006上に導電膜を形成し、さらにこの導電膜をエッチングによって成形することによって、2層以上のゲート電極4008を形成することもできる。また、図示しないが、光吸収層4006をエッチングする前に、導電材料を含む導電膜4010を形成し、光吸収層4006と導電膜4010を同時にエッチングすることによってゲート電極4008を形成することもできる。図23(E)では、導電材料を含むペーストを噴射ノズル4009から吐き出して、導電膜4010を直接形成する例を示している。
【0213】
導電膜4010の材料は、実施の形態や他の実施例で用いた材料を用いることができる。また、その形成方法はCVD法やスパッタリング法を用いてもよいし、導電材料の微粒子を溶媒によって溶解または分散させた物質を直接ゲート電極の形状に形成する方法を用いてもよい。
【0214】
これ以降の工程は、公知の方法を用いることによって、活性層に準単結晶の半導体膜を用いたTFTを作製することができる。この作製方法を用いたTFTは高速動作が可能で電流駆動能力が高く、素子間で特性のばらつきが小さい。このTFTを用いて半導体素子を形成することや、複数の半導体素子を集積して半導体装置を作製することができる。
【0215】
なお本実施例においては、光吸収層4006をキャップ膜の上に形成し、レーザビームを直接光吸収層4006に照射し、光吸収層4006が発生する熱を非晶質珪素膜4004の溶融に利用する例を示したが、必ずしも最上層にある必要はない。例えば、TFT等の半導体素子によりICタグを作製する場合では、工程終了後に基板からICタグを剥離するため、剥離する層を半導体膜よりも下層に形成する。この剥離する層を光吸収層として兼用する構造にしてもよい。
【0216】
また、本実施例は、半導体膜をエッチングにより所定の形状に加工した後にキャップ膜と光吸収層を形成し、レーザビームを照射するものであるが、半導体膜の形状を加工する前に、キャップ膜と光吸収層を形成し、レーザビームを照射してもよい。
【実施例10】
【0217】
本実施例では、実施の形態や他の実施例とは別のレーザ照射方法の例を示す。なお、本実施例において使用するレーザ発振器は、実施の形態で使用したレーザと同様に、繰り返し周波数が80MHzのYVOパルスレーザの第2高調波(波長532nm)を用いるが、CWレーザを用いてもよい。
【0218】
まず、図24(A)に示すように、本発明の実施の形態で示した方法と同様にして、可視光線に対する透過率が十分に高いガラスなどの基板5001上に、下地絶縁膜5002を形成する。さらに、半導体膜として非晶質珪素膜5003を形成し、非晶質珪素膜5003上にキャップ膜5004として酸化珪素膜を成膜する。他の実施例と同様に、基板5001は絶縁性を有し、可視光線を吸収しない基板であればガラスには限らない。
【0219】
次に、レーザ照射方法に関して説明する。実施の形態においては、レーザビームをキャップ膜の上方から照射していたが、本実施例では、図24(B)に示すように、基板5001の裏面側、すなわち基板5001に何も成膜していない側からレーザビームを照射して、準単結晶5005を形成する。なお、本実施例の場合では、下地絶縁膜5002でレーザビームのビームスポットが形成される。レーザビームのビームスポットを線状にする光学系及び被照射物を搭載するロボットは、実施の形態や他の実施例に示したものを用いることができる。
【0220】
基板5001の裏面からレーザビームを照射する点以外は、実施の形態や他の実施例と同様にレーザビームを照射する。これにより、レーザビームの照射によって完全溶融した領域で、非晶質珪素膜が一方向の面方位に結晶成長し、非晶質珪素膜を準単結晶とすることができる。以上に示したレーザ結晶化方法は、例えば、キャップ膜5004の上に、既に後にゲート電極や配線となるような金属膜等が成膜され、レーザビームを非晶質珪素膜5003に直接照射できない場合に用いることができる。
【0221】
この例を図24(C)に示す。ゲート絶縁膜5006をはじめ、ソース領域5007やドレイン領域5008と接続される配線5009、ゲート電極5010は既に形成されている。基板5001の上面からレーザビームを照射すると、配線5009やゲート電極5010にレーザビームが吸収されるため、ソース領域5007およびドレイン領域5008を形成する半導体膜全体にレーザビームを照射することができなくなる。また、配線5009およびゲート電極5010自体にも影響を及ぼす可能性がある。そこで、基板5001の裏面からレーザを照射することによって、半導体膜全体にレーザビームを照射し、準単結晶化することができる。つまり、本実施例の場合では、下地絶縁膜5002が、実施の形態や他の実施例におけるキャップ膜に相当する。
【0222】
これ以降の工程の半導体装置の作製方法は、他の実施例に記載した方法などの公知の方法を用いることができる。以上の工程を用いると、活性層に準単結晶珪素を用いたTFTを作製することができる。このTFTは、高速動作が可能で電流駆動能力の高く、かつ素子間において特性のばらつきが小さい。このTFTを用いて半導体素子又は複数の半導体素子を集積して構成される半導体装置を提供することができる。
【実施例11】
【0223】
本実施例では、半導体膜にレーザビームが照射されて溶融された状態をより長い時間にすることによって、結晶成長をさらに助長させ、よりドメインの大きい準単結晶を形成する例について説明する。
【0224】
溶融された状態を時間的に延ばすには、レーザビームが照射されている領域に、照射されるレーザビーム以外の熱源からの熱を与えるとよい。具体的な方法を以下に示す。
【0225】
まず、図25(A)に示すように、基板6000上に下地絶縁膜6001を形成する。代表的には、アルミノホウケイ酸ガラスやバリウムホウケイ酸ガラスなどのガラスを材料とした基板6000を用いる。基板6000はガラスに限られるものではなく、可視光線に対して吸収率が低く、本実施例の処理温度に耐えることができる耐熱性を有する材質であれば、自由に選択することができる。例えば、基板6000の材質として、石英、セラミック、ダイヤモンドなどを用いることも可能である。この基板6000上に、下地絶縁膜6001として厚さ150nmの窒素を含む酸化珪素膜を成膜し、その下地絶縁膜6001上に非晶質半導体膜6002として、厚さ66nmの非晶質珪素膜をプラズマCVD法にて成膜する。
【0226】
次に、非晶質半導体膜6002のレーザビームに対する耐性を高めるために、500℃で1時間の熱アニールを非晶質半導体膜6002に対して行う。さらに、非晶質半導体膜6002上に、キャップ膜6003として厚さ300nmの酸化珪素膜を成膜する。
【0227】
次に、実施の形態や他の実施例で示した方法と同様にレーザビームをキャップ膜6003に照射し、同時にレーザビームのビームスポットに重なり合うように高温の気体や熱プラズマを局所的に噴き付ける。
【0228】
本実施例では、繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザとしてYVOレーザを用いたが、繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザおよびCWレーザのいずれかを使用することもできる。例えば、気体レーザとしては、Arレーザ、Krレーザ、COレーザ等があり、固体レーザとして、YAGレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、GdVOレーザ、Yレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、セラミックスレーザ等があり、金属蒸気レーザとしてはヘリウムカドミウムレーザ等が挙げられる。
【0229】
高温の気体を噴き付ける方法の例を挙げる。図25(B)に示すように、キャップ膜6003まで成膜された状態の基板6000をステージ6004に固定する。そして、不活性気体や空気などの気体を噴射するノズル6005に気体供給管6006から気体を供給して噴射させる。ノズル6005が、レーザビームを透過する材質であれば、特に加工する必要はない。また、ノズル6005にレーザビームを吸収する材質を用いた場合は、レーザビームが通過する部分だけをくり抜いた形状にすればよい。ノズル6005は噴出する気体によって浮上させてもよいし、キャップ膜の表面から所定の長さだけ離した状態で予め固定させてもよい。このようにした状態でステージ6004を移動させると、レーザビームがキャップ膜6003の全面に照射され、非晶質半導体膜6002が溶融する。
【0230】
また、図25(C)に示すように、スプレーガン等の気体排気手段6007を用いて、キャップ膜6003上に形成されるビームスポットに斜めから気体を噴き付ける方式にしてもよい。この方法は気体排気手段6007を取り付けるだけで実施できるため、既存の装置を用いることができる。この状態でステージ6004を移動させると、レーザビームがキャップ膜6003の全面に照射され、非晶質半導体膜6002を溶融することができる。
【0231】
高温の気体を吹き付ける場合、気体は窒素やアルゴン等の不活性ガス、あるいは空気やそれらの圧縮気体を用いることができる。本実施例で用いる気体の温度は、300℃以上1500℃以下の温度である。この温度範囲の気体を、レーザスポットに十分重なり合う大きさで吹き付けると好ましい。
【0232】
なお、気体を加熱する温度は、300℃未満だと非晶質半導体膜6002を加熱する効果が小さいので、300℃以上が好ましい。また代表的な半導体である珪素の融点は1414℃である。そのため、1500℃まで加熱する気体を吹き付ければ、熱量としては充分である。
【0233】
また、プラズマを照射する例を挙げる。まず、図26に示すように、キャップ膜6003まで成膜された状態の基板6000をステージ6004に固定する。レーザビームをキャップ膜6003に照射するとともに、窒素やアルゴン等の不活性ガス、あるいは空気を処理ガスとして用い、圧力を大気圧または大気圧の近傍の圧力(具体的には1.3×10〜1.31×10Pa)にして、パルス電圧を印加する。このようにした状態でステージ6004を移動させると、レーザビームがキャップ膜6003の全面に照射され、非晶質半導体膜6002が溶融する。
【0234】
大気圧または大気圧近傍でプラズマを照射する際には、プラズマを射出するノズル6005を用いればよい。ノズル6005には、処理に用いる気体を供給する気体供給管6006と、気体排気手段6007が接続されている。気体供給管6006から供給される気体は、ノズル6005内でプラズマ化して噴出口からキャップ膜6003に噴きつけられる。その後、気体は気体排気手段6007により排出される。大気圧または大気圧近傍の圧力で安定して放電を維持するためには、ノズル6005と被照射面であるキャップ膜6003表面との間隔は50mm以下にすることが好ましい。
【0235】
ノズル6005は、局在的にプラズマ化した気体を照射することが可能な構成であれば円柱状、三角錐状など、自由な形状にすることができる。
【0236】
溶融された状態を時間的に延ばして、さらに結晶成長を助長させるために、上記の方法を用いると、ガラス基板全面を同時に高温にさらすことがなく、一時的に局所加熱を行うことができるため、熱による基板の歪みを抑えることができる。また、レーザビームの照射によって溶融した領域の非晶質珪素膜が、キャップ膜と高温の気体照射の効果によって、より緩やかな結晶成長を促すことが可能となり、非晶質珪素膜をよりドメインの大きい準単結晶とすることができる。
【0237】
これ以降の工程の半導体装置の作製方法は、公知の方法を用いることができる。以上の工程を用いると、活性層に準単結晶珪素を用いたTFTを作製することができ、高速動作が可能で電流駆動能力の高く、かつ素子間においてばらつきの小さい半導体素子又は複数の半導体素子を集積して構成される半導体装置を提供することができる。
【実施例12】
【0238】
本実施例では、本発明の準単結晶半導体膜を材料とした半導体装置の例として、同一基板上に端子部7031と画素部7033と駆動回路部7032が形成されたアクティブマトリクス型の発光装置およびその作製例を説明する。本発明はパッシブ型の発光装置について適用することはもちろん可能である。
【0239】
画素部7033には、スイッチング機能として機能する第1のTFT(以下、スイッチング用TFTと呼ぶ)と、発光素子への電流を制御する第2のTFT(以下、駆動用TFTと呼ぶ)が形成されている。また、駆動回路部7032には、画素部7033を駆動するTFTが形成されている。本発明の半導体膜を用いて、画素部7033のTFTおよび駆動回路部7032のTFTを形成することが可能である。
【0240】
本発明の半導体膜は、結晶欠陥が少なく、結晶粒の面方位が少なくとも実質的に一方向とみなせる程度に揃っている。従って、この半導体膜を用いることにより、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、かつ素子間で特性のばらつきが小さい半導体素子を作製することが可能になる。この素子を用いて、高品質の半導体装置を作製することが可能になる。
【0241】
まず、基板7000上に下地絶縁膜7001a、7001bを形成する(図27(A))。本実施例では基板7000としてガラス基板を用いる。なお、ガラス基板の屈折率は1.55前後である。
【0242】
基板7000側を表示面として発光を取り出す場合、基板7000としては、光透過性を有するガラス基板や石英基板を用いればよい。また、プロセス中の処理温度に耐えうる耐熱性を有するのであれば、ポリイミド、アクリル、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどのプラスチックや、アクリルなどに代表される透光性を持つ合成樹脂を基板の材料として用いることができる。また、基板7000側とは逆の面を表示面として発光を取り出す場合、基板7000の材料は、先述の材料に加え、シリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いることができる。
【0243】
また、基板7000は、必要に応じてCMP(Chemical Mechanical Polishing)などにより研磨してから使用してもよい。
【0244】
下地絶縁膜7001a、7001bは、酸化珪素膜、窒化珪素膜または窒素を含む酸化珪素膜などの絶縁性物質を材料とし、単層又は2以上の複数層で形成する。そして、下地絶縁膜7001a、7001bはスパッタ法やLPCVD法、プラズマCVD法等の公知の手段を用いて形成する。本実施例においては、下地絶縁膜7001a、7001bは組成比の異なる窒素を含む酸化珪素膜の2層構造とする。1層目の下地絶縁膜7001aは、プラズマCVD法を用い、SiH、NH、及びNOを反応ガスとして、窒素を含む酸化珪素膜(組成比Si=32%、O=27%、N=24%、H=17%)を140nmの厚さで形成する。続いて、2層目の下地絶縁膜7001bは、プラズマCVD法を用い、SiH及びNOを反応ガスとして、窒素を含む酸化珪素膜(組成比Si=32%、O=59%、N=7%、H=2%)を100nmの厚さで形成する。なお、本実施例では下地絶縁膜7001a、7001bを2層の積層構造としているが、もちろん単層でも3層以上の複数層でも構わない。また、基板7000の凹凸や、基板7000からの不純物拡散が問題にならない場合は、下地絶縁膜を形成しなくてもよい。
【0245】
次いで、他の実施例に示した方法を用いて、下地絶縁膜7001b上に準単結晶化された半導体膜7002〜7005を形成する。準単結晶化された半導体膜7002〜7005を形成する方法は、大きく分けて2つの方法がある。
【0246】
第1の方法は、実施の形態で説明したように、非晶質半導体膜の全面をレーザビームの照射によって準単結晶化した後に所望の形状に形成する方法である。この工程を、図5を用いて簡単に説明する。
【0247】
図5(A)に示すように、基板100上に下地絶縁膜101を形成し、さらに半導体膜102を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)を用いて25nm以上200nm以下(好ましくは、30nm以上80nm以下)の厚さで形成する。さらに、半導体膜102上にキャップ膜103として窒素を含む酸化珪素膜を200nm以上500nm以下の厚さで形成する。次に、図5(B)に示すように、CWレーザまたは繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを照射し、準単結晶の半導体膜104を得る。
【0248】
より具体的な例を挙げると、半導体膜102として非晶質珪素膜を66nmの厚さで形成し、キャップ膜を500nmで形成し、14W以上20W以下のCWレーザまたは繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを35cm/secの走査速度で照射すると、各結晶粒の結晶方位が揃った珪素膜を良好に形成することができる。レーザビームのエネルギーが十分であれば1台のレーザ発振器を用いればよいし、複数のレーザ発振器から射出したレーザビームを、光学系を用いて合成したのちに半導体膜に照射してもよい。
【0249】
その後、図5(C)に示すように、エッチングを行うことによってキャップ膜103を除去する。その後、準単結晶の半導体膜104上にレジストを塗布する。このレジストを露光し、現像することによって所望の形状にレジストを形成する。さらに、ここで形成したレジストをマスクとしてエッチングを行い、現像によって露出した準単結晶の半導体膜を除去する。この工程によって、島状に形成された準単結晶の半導体膜105が形成される(図5(D))。
【0250】
第2の方法は、実施例8で説明したように、非晶質半導体膜を所望の形状に形成した後に、レーザビームの照射によって準単結晶化する方法である。図22を用いて簡単に説明する。
【0251】
第1の方法と同様に、基板3001上に下地絶縁膜3002、非晶質珪素でなる半導体膜3003、酸化膜3004の形成を行う(図22(A))。基板および形成した膜の材質や厚さは、上記第1の方法と同じ条件である。次に、レジストを塗布し、露光、現像することによって所望の形状にレジストを形成する(図22(B))。形成したレジストをマスクとしてエッチングを行い、現像によって露出した非晶質珪素でなる半導体膜3003を除去し、非晶質珪素でなる島状の半導体膜3006を形成する(図22(C))。その後、非晶質珪素でなる島状の半導体膜3006および下地絶縁膜3002の表面を覆うように、キャップ膜兼ゲート絶縁膜となるゲート絶縁膜3007として酸化珪素膜を形成する(図22(D))。その後、CWレーザまたは繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザをゲート絶縁膜3007に照射すると、半導体膜が溶融し、冷却とともに1つの面方位に結晶が成長し、準単結晶の半導体膜3008が形成される。
【0252】
上記第2の方法を用いると、準単結晶の半導体膜3008を形成する際のキャップ膜をゲート絶縁膜3007として用いることが可能になる。なお、本実施例ではこの方法で準単結晶の半導体膜を形成し、キャップ膜をゲート絶縁膜としてそのまま使用する。従って図27(A)に示す準単結晶化された半導体膜7002〜7005上に形成されたゲート絶縁膜7006はキャップ膜としても機能するものである。
【0253】
なお、図5に示したキャップ膜103又は図22に示したゲート絶縁膜3007として機能するキャップ膜は、上記第1の方法又は第2の方法で用いるレーザの波長に対して十分な透過率を持つことが必要である。また、キャップ膜は非晶質半導体膜に直接接するため、熱膨張係数や延性などの値が非晶質半導体膜の値に近い材料を用いることが望ましい。本実施例では、キャップ膜として窒素を含む酸化珪素を一層だけ形成する例を示すが、一層に限られるものではなく、材料の種類の異なる複数の層でキャップ膜を構成してもよい。
【0254】
なお、非晶質珪素膜を形成した後、実施例7に記載したように、ニッケル、パラジウム、ゲルマニウム、鉄、スズ、鉛、コバルト、白金、銀、銅、金などの触媒元素を添加した後に熱処理を行って多結晶珪素膜を形成し、さらにキャップ膜を形成し、レーザビームを照射して、準単結晶の珪素膜を形成してもよい。また、触媒元素を導入したのちに加熱処理を行って結晶化を促進した段階でレーザビームの照射を行ってもよいし、加熱処理の工程を省略してもよい。また、加熱処理を行った後、その温度を保ちつつレーザ処理を行ってもよい。触媒元素を用いることによって、準単結晶の珪素膜を効率よく形成することができる。
【0255】
レーザ照射の後、必要に応じて半導体膜にしきい値電圧をコントロールするために微量の不純物添加、いわゆるチャネルドーピングを行ってもよい。要求されるしきい値電圧を得るために、N型もしくはP型を呈する不純物(リン、ボロンなど)をイオンドーピング法などによって添加する。
【0256】
図27(B)に示すように、ゲート絶縁膜7006上にゲート電極7007〜7010を形成する。ゲート電極7007〜7010は、プラズマCVD法やスパッタ法を用いて金属膜を形成し、この金属膜を所望の形状にエッチングすることによって形成する。または、所定の方向に材料を吐出することが可能な印刷法やインクジェット法に代表される液滴吐出法により、ゲート電極を直接ゲート絶縁膜上に形成してもよい。
【0257】
ゲート電極7007〜7010は、単層でも2層以上の複数層でもよい。ゲート電極の導電材料、構造、作製方法は適宜選択することができる。
【0258】
プラズマCVD法やスパッタ法を用いてゲート電極7007〜7010を形成する場合には、金、銀、白金、銅、タンタル、アルミニウム、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、ニオブなどから選ばれた元素、またはこれらの元素を主成分とする合成材料若しくは化合物材料で形成してもよい。例えば、リンなどのn型を付与する不純物がドーピングされたSiとNiSi(ニッケルシリサイド)との積層構造や、TaN(窒化タンタル)とW(タングステン)の積層構造でゲート電極7007〜7010を形成することや、AgPdCu合金を用いてゲート電極7007〜7010を形成することができる。
【0259】
液滴吐出法でゲート電極7007〜7010を形成する場合、吐出する材料は、導電体材料を溶媒に溶解または分散させたものを用いる。導電膜となる材料は、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、パラジウム、インジウム、モリブデン、ニッケル、鉛、イリジウム、ロジウム、タングステン、カドミウム、亜鉛、鉄、チタン、ジルコニウム、バリウムなどの金属から少なくとも一種類、またはこれらの金属の合金を含むものである。溶媒は、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、アセトンなどの有機溶剤などを用いることができる。
【0260】
また、液滴吐出法で吐出する組成物の粘度は0.3Pa・s以下とする。これは、乾燥を防止し、吐出口から組成物を円滑に吐出するためである。なお、用いる溶媒や用途に合わせて組成物の粘度や表面張力は適宜調整すると良い。
【0261】
続いて、ゲート電極7007〜7010をマスクとして半導体膜に高濃度の不純物を添加する(図27(C))。これによって、準単結晶化された半導体膜7002〜7005、ゲート絶縁膜7006、ゲート電極7007〜7010を含む薄膜トランジスタが形成される。
【0262】
次に、ゲート電極7007〜7010をマスクとして準単結晶化された半導体膜7002〜7005に不純物元素の添加を行う(図28(A))。不純物元素は半導体膜に一導電型を付与することができる元素であり、n型の導電型を付与する不純物元素としてはリン、p型の導電型を付与する不純物元素としてはホウ素(ボロン)などが代表的に挙げられる。発光素子の第1の電極を陽極として機能させる場合にはp型、陰極として機能させる場合にはn型となるように不純物元素を選択する。
【0263】
その後、ゲート絶縁膜7006を覆って絶縁膜(水素化膜)7011を窒化珪素(SiNx)により形成する(図28(B))。絶縁膜(水素化膜)7011を形成した後、480℃で一時間程度加熱を行い、不純物元素の活性化と半導体膜の水素化を行う。絶縁膜は、窒化珪素に限らず、酸化珪素(SiOx)膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜等の、少なくとも酸素又は窒素を有する絶縁膜を用いればよい。
【0264】
さらに、図29(A)に示すように、絶縁膜(水素化膜)7011を覆う層間絶縁膜7012を形成し、平坦性を高める。層間絶縁膜7012は有機材料や無機材料を用いることができる。有機材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、シロキサンなどを用いることができる。シロキサンとは、−Si−O−Si−で表される珪素と酸素との結合(シロキサン結合)を構成の基本単位とし、珪素にフッ素、脂肪族炭化水素、または芳香族炭化水素などが結合した構造を持つ物質である。無機材料としては、酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SiNx)膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜等の、少なくとも酸素又は窒素を有する絶縁膜を用いることができる。また、層間絶縁膜7012の材料として、ポリシラザン(−(SiHNH)−の構成を基本単位とする無機ポリマーで、加熱によってセラミックス質の絶縁体を形成する物質)を用いることもできる。さらに、ポリシラザンと有機物との複合体を形成し、これを層間絶縁膜7012として用いてもよい。
【0265】
また、層間絶縁膜7012は、上記の絶縁膜を積層したものを用いてもよい。特に、有機物を材料にして絶縁膜を形成すると平坦性は高まるが、有機物によって水分や酸素が吸収される場合がある。絶縁膜による水分や酸素の吸収を防ぐために、有機物を材料とした絶縁膜(以下、有機絶縁膜と呼ぶ)上に、無機物を材料とする絶縁膜(以下、無機絶縁膜と呼ぶ)を形成し、これを層間絶縁膜7012としてもよい。さらには、有機絶縁膜と無機絶縁膜を交互に積層して3層以上とし、これを層間絶縁膜7012としてもよい。
【0266】
なお、絶縁膜(水素化膜)7011形成後の加熱処理は、層間絶縁膜7012の形成後に行っても構わない。
【0267】
その後、層間絶縁膜7012、絶縁膜(水素化膜)7011、ゲート絶縁膜7006にコンタクトホールを形成し、ソース領域およびドレイン領域と接続する配線7013、接続部7014、および後に端子電極7018となる電極を形成する(図29(A))。配線7013、接続部7014、および後に端子電極7018となる電極は、アルミニウム、銅、アルミニウムと炭素とニッケルの合金、アルミニウムと炭素とモリブデンの合金などを材料に用いて単層で形成してもよいし、基板側からモリブデン、アルミニウム、モリブデンの積層構造や、チタン、アルミニウム、チタンの積層構造や、チタン、窒化チタン、アルミニウム、チタンの積層構造にしてもよい。
【0268】
次に、透光性を有する導電層を形成し、この導電層を加工して薄膜発光素子の第1の電極7017(発光素子の陽極または陰極)を形成する。ここで、第1の電極7017は接続部7014と電気的に接触している。
【0269】
第1の電極7017の材料を例示すると、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)などの導電性を有する金属、又はアルミニウムとシリコンからなる合金(Al−Si)、アルミニウムとチタンからなる合金(Al−Ti)、アルミニウム、シリコン及び銅からなる合金(Al−Si−Cu)等それらの合金、または窒化チタン(TiN)等の金属材料の窒化物、インジウム錫酸化物(ITO(indium tin oxide))、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO(Induium Tin Silicon Oxide))、インジウム亜鉛酸化物(IZO(indium zinc oxide))等の金属化合物などを挙げることができる。
【0270】
なお、発光を取り出す電極は、透明性を有する導電膜を用いることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属化合物の他、アルミニウム、銀などの金属の極薄膜を用いる。本実施例では、第1の電極7017から発光を取り出すため、第1の電極7017として酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を用いた。逆に、第1の電極7017から発光を取り出さない場合には、第1の電極7017は反射率の高い材料(アルミニウムや銀など)を用いて形成することができる。
【0271】
なお、配線7013、接続部7014、および後に端子電極7018となる電極を形成した後、第1の電極7017を形成する前に、絶縁性無機物を含む絶縁膜7016を単層または複数層で形成してもよい(図30(A))。絶縁膜7016は、酸化珪素膜、窒化珪素膜、窒素を含む酸化珪素膜などの無機絶縁膜を用いて、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法などを用いて形成することができる。このように絶縁膜7016を形成することにより、駆動回路部7032のTFTや配線7013などを露出することを防ぎ、保護することができる。
【0272】
その後、第1の電極7017、配線7013、層間絶縁膜7012を覆って絶縁膜を形成し、得られた絶縁膜をパターン形成することにより、第1の電極7017の端部を覆う絶縁膜7015を形成する(図29(A)および図30(A))。絶縁膜7015の材料として、自己平坦性を有するアクリル、ポリイミド、シロキサンなどを用いることができる。本実施例では、シロキサンを絶縁膜7015の材料として用いる。
【0273】
その後、発光物質を含む層(以下、発光層7019と呼ぶ)を形成し、発光層7019を覆う第2の電極7020(陰極または陽極)を形成する(図29(B)および図30(B))。これによって、第1の電極7017と第2の電極7020との間に発光層7019を有する構造を持つ発光素子を作製することができる。第2の電極7020の形成に用いられる材料は、第1の電極7017の材料と同様の材料を用いることができる。本実施例ではアルミニウムを第2の電極7020の材料として用いた。
【0274】
なお、第1の電極7017と第2の電極7020は、どちらを陽極にしても陰極にしてもよいが、仕事関数を考慮して材料を選択する必要がある。陽極には仕事関数が大きい(具体的には、4.0eV以上)材料を用いることが好ましい。逆に、陰極には、仕事関数が小さい(具体的には3.8eV以下)材料を用いることが好ましい。ただし、高い電子注入性を有する電子注入層を用いることによって、仕事関数の高い材料、つまり、通常は陽極に用いられている原料で陰極を形成することが可能である。
【0275】
また、発光層7019はインクジェット法に代表される液滴吐出法、蒸着法、スピンコート法、ディップコート法などによって形成される。発光層には、低分子、高分子、低分子と高分子の間の性質を持つ中分子の材料がある。本実施例では、蒸着法によって発光層7019を形成するため、低分子材料を使用する。低分子材料も高分子材料も、溶媒に溶かすことでスピンコート法や液滴吐出法により塗布することができる。また、有機材料だけではなく、無機材料との複合材料も使用することができる。
【0276】
次に、プラズマCVD法によって窒素を含む酸化珪素膜を第1のパッシベーション膜7029として形成する。窒素を含む酸化珪素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH、NO、NHから作製される窒素を含む酸化珪素膜、またはSiH、NOから作製される窒素を含む酸化珪素膜、あるいはSiH、NOをArで希釈したガスから形成される窒素を含む酸化珪素膜を形成すれば良い。
【0277】
また、第1のパッシベーション膜7029の材料に、SiH、NO、Hから作製される酸化窒化水素化珪素膜を適用しても良い。もちろん、第1のパッシベーション膜7029は単層構造に限定されるものではなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層構造、もしくは積層構造として用いても良い。また、窒化炭素膜と窒化珪素膜の多層膜やスチレンポリマーの多層膜、窒化珪素膜やダイヤモンドライクカーボン膜を、窒素を含む酸化珪素膜の代わりに形成してもよい。
【0278】
次に、発光素子の劣化を促進する水などの物質から発光素子を保護するために、表示部の封止を行う。対向基板7021を封止に用いる場合は、絶縁性のシール材7022を用いて、外部に接続する端子7023が露出するように貼り合わせる。対向基板7021と基板7000との間の空間には、乾燥した窒素などの不活性気体を充填してもよいし、シール材7022を全面に塗布した後に対向基板7021を貼り合わせてもよい。シール材7022には、紫外線硬化樹脂などを用いると好適である。また、乾燥剤や基板間のギャップを一定に保つための粒子をシール材7022に混入してもよい。続いて、端子7023にフレキシブル配線回路7024(FPC)を貼り付けることによって、発光装置が完成する。
【0279】
なお、図31は、画素部7033の上面図を示しており、図31中の点線A―Bで切断した断面が、図29(B)、図30(B)における画素部7033の駆動用TFT7025の断面に対応している。また、図31中の鎖線C−Dで切断した断面が、図29(B)、図30(B)の画素部7033のスイッチング用TFT7026の断面に対応している。図31中の7030で示した実線は、絶縁膜7015の周縁を示している。但し、図29(B)、図30(B)、および図31については、本発明を用いて形成した発光装置の一例を示したものであり、レイアウトにより配線などの構造は適宜変更が可能である。
【0280】
また、発光装置において、発光装置の発光表示面は一面または両面であってもよい。第1の電極7017および第2の電極7020を、透光性を有する導電膜で形成した場合、発光素子から発せられた光は、基板および対向基板を通過して両側に取り出される。この場合、基板7000や対向基板7021は透光性を有する材料を用いることが好ましい。
【0281】
第1の電極7017を金属膜で形成し、第2の電極7020を透明導電層で形成した場合、発光素子から発せられた光は、対向基板7021を通過して一方に取り出される構造、即ちトップエミッション型となる。この場合、基板7000は透光性を有する材料を用いなくともよい。
【0282】
また、第2の電極7020を金属膜で形成し、第1の電極7017を透明導電層で形成した場合、発光素子から発せられた光は、基板7000のみを通過して一方に取り出される構造、即ちボトムエミッション型となる。この場合、対向基板7021や充填材7028は透光性を有する材料を用いなくともよい。
【0283】
本実施例は、実施の形態や、他の実施例と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例13】
【0284】
本実施例では、TFTを薄膜集積回路装置、または非接触型薄膜集積回路装置(無線ICタグ、RFID(無線認証、Radio Frequency Identification)とも呼ばれる)として用いることもできる。他の実施例で示した作製方法と組み合わせることより、薄膜集積回路装置や非接触型薄膜集積回路装置は、タグやメモリとして利用することができる。
【0285】
本発明の準単結晶半導体膜は、結晶粒の面方位が一方向に揃っている。そのため、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、かつ素子間において特性のばらつきが小さい半導体装置を歩留まり良く作製することが可能になる。薄膜集積回路は今後需要が大きくなることが予想されるため、高い性能を持つ製品を歩留まり良く作製することが必要になる。したがって、本発明の準単結晶半導体膜を用いることは非常に有用である。その一例を説明する。
【0286】
本実施例では、無線ICタグの集積回路に用いられる半導体素子として絶縁分離されたTFTを用いた例を示す。しかし、無線ICタグの集積回路に用いることができる半導体素子はTFTだけではなく、その他の素子を用いることもできる。例えば、記憶素子、ダイオード、光電変換素子、抵抗素子、コイル、容量素子、インダクタなどを代表的に挙げることができる。また、これらの素子を本発明の準単結晶半導体膜を用いて形成することもできる。
【0287】
以下の図を用いて、無線ICタグの作製方法を説明する。実際には、一辺の長さが1メートルを超える基板に複数の半導体素子を同時に形成した後に、個々の半導体素子に切り離し、それぞれの封止を行うことによって作製する。
【0288】
まず、図32(A)に示すように、第1の基板8000を用意する。第1の基板8000として、バリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板等を用いることができる。この他に、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルフォン(PES)に代表されるプラスチック、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂を用いてもよい。無線ICタグの作製工程における処理温度に耐えることができる合成樹脂であれば、基板として用いることができる。
【0289】
第1の基板8000が、以上に挙げるような材質であれば、その面積や形状に大きな制限はない。そのため、第1の基板8000として、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。
【0290】
また、上記の材料からなる基板の表面を、CMP法などの研磨により平坦化しておいても良い。例えば、ガラス基板、石英基板、または半導体基板を研磨して薄くした基板を用いてもよい。
【0291】
第1の基板8000を準備した後、第1の基板8000上に絶縁膜8002を形成する(図32(A))。絶縁膜8002としては、酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SiNx)膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜等の酸素又は窒素を有する絶縁膜の単層構造または積層構造で設けることができる。本実施例では、絶縁膜8002として窒素を含む酸化珪素膜を100nm成膜する。また、絶縁膜8002に高密度プラズマ処理を行って、絶縁膜8002を酸化させたり窒化させたりしてもよい。
【0292】
高密度プラズマは、マイクロ波、例えば2.45GHzを使うことによって生成される。具体的には、電子密度が1011〜1013/cmかつ電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下の高密度プラズマを用いる。このように低電子温度が特徴である高密度プラズマは、活性種の運動エネルギーが低い。そのため、従来のプラズマ処理に比べると、プラズマダメージが少なく欠陥が少ない膜を形成することができる。プラズマの生成はラジアルスロットアンテナを用いたマイクロ波励起のプラズマ処理装置を用いることができる。マイクロ波を発生するアンテナから第1の基板8000までの距離を20nm以上80mm以下(好ましくは20nm以上60mm以下)とする。
【0293】
次に、剥離層8004を形成する(図32(A))。剥離層8004は金属膜や金属膜と金属酸化膜の積層構造等を用いることができる。金属膜としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、鉛(Pb)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる膜を単層又は積層して形成する。また、これらの材料は、公知の手段(スパッタ法やプラズマCVD法等の各種CVD法)を用いて形成することができる。なお、本実施例では、プラズマCVD法でタングステンを30nm成膜する。
【0294】
剥離層8004を形成するとき、表面に酸化物、窒化物、または窒化酸化物が形成される。これらの化合物はエッチングガス、特に3フッ化塩素(ClF)との反応速度が高く、簡便かつ短時間に剥離することができる。つまり、エッチングガスによって金属、金属酸化物、金属窒化物、又は金属の窒化酸化物のいずれかが除去されれば、剥離が可能である。
【0295】
また、剥離層8004の表面に酸化物、窒化物、又は窒化酸化物が形成されるときに、化学的な状態に変化が生じることがある。例えば、Wを有する酸化膜が形成される場合、酸化タングステン(WO(x=2〜3))は、価数に変化が生じる。その結果、物理的手段により剥離しやすい状態となる。化学的手段と物理的手段を併用すると、より簡便に、短時間で除去することができる。
【0296】
剥離層8004を形成した後に、下地絶縁膜として機能する絶縁膜8006を形成する。本実施例では、スパッタ法を用いて酸化珪素膜を200nm成膜する。
【0297】
次に、半導体膜8008を形成する。半導体膜8008としては、非晶質半導体膜を形成すればよいが、微結晶半導体膜や結晶性半導体膜でもよい。また、半導体膜の材料に限定はないが、好ましくは珪素またはシリコンゲルマニウム(SiGe)を用いるとよい。本実施例では、非晶質珪素膜を66nm形成する。なお、半導体膜8008の形成後に、半導体膜8008に含まれる水素を除去する工程を行っても良い。具体的には、500℃で1時間加熱すればよい。
【0298】
さらに、キャップ膜8009として窒素を含む酸化珪素膜を300nm形成する。なお、キャップ膜8009は酸化珪素膜を用いてもよい。形成方法は他の実施例と同様に、プラズマCVD法やスパッタ法を用いることができる。
【0299】
ここで、レーザ照射装置を用いて半導体膜8008にレーザビームを照射して、半導体膜8008の準単結晶化を行う(図32(B))。本実施例では、10W、第2高調波、TEM00モード(シングル横モード)発振のNd:YVOレーザを用いる。光学系を用いてこのレーザを集光および線状に成形し、走査速度を10〜数100cm/sec程度として照射する。
【0300】
この方法を用いることにより、レーザビームが照射された領域の半導体膜8008が完全に溶解する。そして、冷却される段階で1つの面方位に結晶が成長し、準単結晶を形成する。
【0301】
図32(B)では、キャップ膜8009側からレーザビームを照射している様子を示しているが、実施例10に記載したように第1の基板8000側からレーザビームを照射してもよい。この場合は、剥離層8004が光吸収層となり、剥離層8004がレーザビームを吸収して発生した熱により、間接的に半導体膜8008の結晶化を行う。
【0302】
ここで用いることができるレーザの種類は、Arレーザ、Krレーザ、エキシマレーザなどの気体レーザ、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザのうち一種または複数を用いることができる。
【0303】
なお、単結晶のYAG、YVO、フォルステライト(MgSiO)、YAlO、GdVO、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y、YVO、YAlO、GdVOに、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザ、Arイオンレーザ、またはTi:サファイアレーザは、連続発振をさせることが可能であり、Qスイッチ動作やモード同期などを行うことによって10MHz以上の発振周波数でパルス発振をさせることも可能である。10MHz以上の発振周波数でレーザビームを発振させると、半導体膜がレーザによって溶融してから固化するまでの間に、次のパルスが半導体膜に照射される。従って、発振周波数が低いパルスレーザを用いる場合と異なり、半導体膜中において固液界面を連続的に移動させることができるため、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。
【0304】
レーザの媒質としてセラミック(多結晶)を用いると、短時間かつ低コストで自由な形状に媒質を形成することが可能である。単結晶を用いる場合、通常、直径が数mm、長さが数十mmの円柱状の媒質が用いられているが、セラミックを用いる場合はさらに大きいものを作ることが可能である。
【0305】
発光に直接寄与する媒質中のNd、Ybなどのドーパントの濃度は、単結晶中でも多結晶中でも大きくは変えられないため、濃度を増加させることによるレーザの出力向上にはある程度限界がある。しかしながら、セラミックの場合、単結晶と比較して媒質の濃度を高くすることができるため大幅な出力向上が実現できる。
【0306】
さらに、セラミックの場合では、平行六面体形状や直方体形状の媒質を容易に形成することが可能である。このような形状の媒質を用いて、発振光を媒質の内部でジグザグに進行させると、発振光路を長くとることができる。そのため、増幅が大きくなり、大出力で発振させることが可能になる。また、このような形状の媒質から射出されるレーザビームは射出時の断面形状が四角形状であるため、丸状のビームと比較すると、線状ビームに整形するのに有利である。このように射出されたレーザビームを、光学系を用いて整形することによって、短辺の長さが1mm以下、長辺の長さが数mm〜数mの線状ビームを容易に得ることが可能となる。また、励起光を媒質に均一に照射することにより、線状ビームは長辺方向にエネルギー分布の均一なものとなる。
【0307】
なお、本実施例のレーザ結晶化方法に、結晶化を助長する金属元素(ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、鉄(Fe)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、コバルト(Co)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)など)を用いる結晶化方法を組み合わせると、より結晶化が良好に行われる。
【0308】
次に、キャップ膜8009をエッチングによって除去し、準単結晶膜8010にp型の導電型を付与する不純物元素をドーピングする。ここでは、不純物元素としてホウ素(B)をドーピングする(図32(C))。
【0309】
次に、準単結晶膜8010を選択的にエッチングして、第1の半導体膜8012、第2の半導体膜8014を形成する(図32(D))。
【0310】
次に、第1の半導体膜8012を覆うようにレジストマスク8016を形成した後、第2の半導体膜8014に対してp型の導電型を付与する不純物元素をドーピングする(図33(A))。本実施の例では、不純物元素としてボロン(B)をドーピングする。
【0311】
次に、レジストマスク8016を除去し、第1の半導体膜8012、第2の半導体膜8014に対してプラズマ処理を行い酸化または窒化させることによって、第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014の表面に、第1の絶縁膜8018、8020(酸化膜または窒化膜)を形成する(図33(B))。本実施例では、酸素を含む雰囲気中でプラズマ処理を行い、第1の半導体膜8012、第2の半導体膜8014を酸化し、第1の絶縁膜8018、8020として酸化珪素(SiOx)膜を形成する。第1の絶縁膜8018、8020として窒化珪素膜を形成する場合には、窒素雰囲気下でプラズマ処理を行えばよい。
【0312】
一般的に、CVD法やスパッタ法により形成した酸化珪素膜または窒素を含む酸化珪素膜は、膜の内部に欠陥を含んでいるため膜質が十分でない。そのため、酸素雰囲気下中で、第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014にプラズマ処理を行い、表面を酸化することによって、第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014上に、CVD法やスパッタ法等により形成した絶縁膜より緻密な絶縁膜を形成することができる。
【0313】
また、第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014の上方にCVD法やスパッタ法等を用いて設けられた絶縁膜を介して導電膜を設ける場合、第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014の端部において絶縁膜の段切れ等による被覆不良が生じ半導体膜と導電膜間でショート等が発生する恐れがある。しかし、あらかじめ第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014の表面に、プラズマ処理を用いて酸化または窒化をすることによって、第1の半導体膜8012および第2の半導体膜8014の端部で絶縁膜の被覆不良が発生することを抑制することができる。
【0314】
次に、第1の絶縁膜8018、8020を覆うように第2の絶縁膜8022を形成する。第2の絶縁膜8022の材料は、窒化珪素(SiNx)または酸素を含む窒化珪素膜である。ここでは、第2の絶縁膜8022として窒化珪素膜を4〜20nmの厚さで形成する(図33(C))。
【0315】
次に、第2の絶縁膜8022に対して酸素雰囲気中でプラズマ処理を行い、第2の絶縁膜8022の表面を酸化させ第3の絶縁膜8024を形成する(図33(C))。なお、プラズマ処理は上述した条件下で行うことができる。ここではプラズマ処理により、第2の絶縁膜8022の表面に第3の絶縁膜8024として酸化珪素膜または窒素を含む酸化珪素膜を、2nm以上10nm以下で形成される。
【0316】
次に、第1の半導体膜8012、第2の半導体膜8014の上方にゲート電極として機能する導電膜8026、8028を形成する(図33(D))。なお、ここでは導電膜8026、8028は、第1の導電膜8026a、8028aと第2の導電膜8026b、8028bとの積層構造で設けられている。ここでは、第1の導電膜8026a、8028aとして窒化タンタルを用い、第2の導電膜8026b、8028bとしてタングステンを用いて積層構造で設ける。なお、ゲート電極として用いることができる導電膜は、単層で形成しても良い。また、導電膜の材料も、上記の材料に限定されるものではなく、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された一種類の元素または複数種含む合金、若しくはこれらの元素を含む化合物を用いることができる。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成することもできる。また、結晶性半導体膜でゲート電極を形成することもできる。その場合、本発明の準単結晶半導体膜を用いることもできる。
【0317】
次に、導電膜8026をマスクとして第1の半導体膜8012にp型を付与する不純物元素を導入し、導電膜8028をマスクとして第2の半導体膜8014にn型を付与する不純物元素を導入する。この工程によって、ソース領域およびドレイン領域を形成する。その後、導電膜8026、8028を覆って絶縁膜8030を形成する(図34(A))。
【0318】
第1の半導体膜8012のソース領域またはドレイン領域と電気的に接続するように絶縁膜8030上に導電膜8032を形成する。第1の半導体膜8012をチャネル形成領域として利用するp型の薄膜トランジスタ8034、第2の半導体膜8014をチャネル形成領域として利用するn型の薄膜トランジスタ8036が設けられる(図34(A))。なお、本実施例ではトップゲート型(プラナー型)TFTを作製する例を示したが、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTなどのTFTを作製する際にも、本発明を用いることができる。
【0319】
ここで、第1の半導体膜8012、第2の半導体膜8014およびこれらの半導体膜と同時に形成される導電膜8032(すなわち配線)は、第1の基板8000の上面から見た場合に、角部が丸くなるように形成するのが好ましい。配線などの角を丸めて形成された状態について図37に模式的に示す。
【0320】
図37(A)は従来の形成方法を示した図であり、配線a700、配線b701、配線c702や半導体膜の角が角張っている。図37(B)は配線a700、配線b701、配線c702や半導体膜の角を丸めて形成した状態を示した図である。図37(B)に示すように角部を丸くすると、配線形成時に発生するゴミが配線の角部に残ることを抑制することができる。したがって、半導体装置のゴミによる不良を低減し、歩留まりを向上させることができる。なお、図37(A)および図37(B)中の丸印はコンタクトホール703を表す。
【0321】
次に、導電膜8032を覆うように絶縁膜8038を形成し、この絶縁膜8038上にアンテナとして機能する導電膜8040を形成し、さらに導電膜8040を覆うように絶縁膜8042を形成する(図34(B))。なお、ここで薄膜トランジスタ8034、8036の上方に設けられた導電膜等(点線で囲まれた領域)をまとめて素子群8044と記す。
【0322】
絶縁膜8030、8038、8042は、それぞれ単層でも複数層でも良く、それぞれ同じ材料を用いて形成しても、別々の材料を用いて形成してもよい。その材料として、(1)酸化珪素(SiOx)膜、窒化珪素(SiNx)膜、窒素を含む酸化珪素膜、酸素を含む窒化珪素膜等の酸素または窒素を有する絶縁膜、(2)DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の炭素を含む膜、(3)エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル等の有機材料、およびシロキサン系材料、などを挙げることができる。
【0323】
また、上記の(3)で挙げた材料は、スピンコーティング法、液滴吐出法または印刷法等を用いることによって形成することができるため、平坦化を効率的に行い、処理時間の短縮を図ることができる。さらに、絶縁膜8030、8038、8042にプラズマ処理を行い、酸化または窒化をさせることも可能である。
【0324】
導電膜8040としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)や銀(Ag)や金(Au)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、炭素(C)等の金属、上記の金属を含んだ金属化合物を1つまたは複数有する導電材料を用いることができる。
【0325】
次に、素子群8044を避けた領域に、レーザ照射などの方法によって開口部8046を形成して剥離層8004を露出させ、この開口部8046からエッチャントを導入することによって剥離層8004を除去する(図35(A))。また、剥離層8004は、全て除去してもよいし、完全に除去せずに一部残してもよい。剥離層8004を残すことによって、エッチャントによって剥離層8004を除去した後であっても、第1の基板8000上に薄膜トランジスタ8034、8036を保持することができ、後の工程において取扱いが簡便となる。エッチャントとしては、三フッ化塩素ガス等のフッ化ハロゲンまたはハロゲンを含む気体や液体を使用することができる。例えば、CF、SF、NF、F等を用いることもできる。
【0326】
次に、絶縁膜8042に接着性を有する第1のシート材8048を接着させて、第1の基板8000から素子群8044を剥離させる(図35(B))。
【0327】
第1のシート材8048を接着する目的は、この後の工程で剥離される素子群8044の機械的強度を保持するためである。このため、第1のシート材8048の厚みは50μm以上あると好ましい。第1のシート材8048は、可撓性のフィルムを利用することができ、少なくとも一方の面に粘着剤を有する面が設けてある。第1のシート材8048の一例として、ポリエステルを基材とし、接着面に粘着剤が設けてあるものを利用することができる。粘着剤としては、アクリル樹脂等を含んだ樹脂材料、または合成ゴム材料を含む材料を用いることができる。
【0328】
次に、剥離させた素子群8044を、可撓性を有するフィルムで封止する。ここでは、第2のシート材8050に素子群8044を貼り付け、さらに、第3のシート材8052を用いて素子群8044を封止する(図36(A)、(B))。
【0329】
第2のシート材8050、第3のシート材8052は、可撓性のフィルムを利用することができ、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニルなどからなるフィルム、紙、基材フィルム(ポリエステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム、紙類等)と接着性合成樹脂フィルム(アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂等)との積層フィルム等を利用することができる。また、フィルムは、フィルムの最表面に設けられた接着層か、または最外層に設けられた層(接着層ではない)を加熱処理によって溶かし、加圧により接着することができるものが好ましい。また、第1のシート材8048と第2のシート材8050とで素子形成層を封止する場合には、第1のシート材8048も同様の材料を用いればよい。
【0330】
以上の工程により、記憶素子を有し、非接触でデータのやりとりが可能である半導体装置を得ることができる。また、本実施の例で示した半導体装置は、可撓性を有している。素子群8044を可撓性のある基板に貼り合わせると、厚さが薄く、軽く、落下しても壊れにくい半導体装置が完成する。安価な可撓性基板を用いると、安価に半導体装置を提供することができる。さらに、曲面や異形の形状を持つ物体に貼り合わせることも可能になる。さらに、第1の基板8000を再利用することによって、低コストで半導体装置を作製することができる。
【0331】
なお、本実施例は、実施の形態および他の実施例と自由に組み合わせることができる。
【実施例14】
【0332】
本実施例では、本発明を用いて作製した半導体膜を用いて、非接触でデータの送受信が可能である無線ICタグとして利用した場合を説明する。
【0333】
なお、本発明を用いて作製した準単結晶半導体膜は、結晶粒の面方位が一方向、または実質的に一方向とみなせる方向に揃っている。つまり、限りなく性質は単結晶に近い半導体膜である。従って、この半導体装置を用いると、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、素子間において特性のばらつきが小さい半導体装置を製作することができる。
【0334】
無線ICタグ9001は、非接触でデータを送受信する機能を有し、電源回路9002、クロック発生回路9003、9004、他の回路を制御する制御回路9005、インターフェイス回路9006、メモリ9007、データバス9008、アンテナ(アンテナコイル)9009を有する(図38(A))。
【0335】
電源回路9002は、アンテナ9009から入力された交流信号を基に、半導体装置内にあるそれぞれの回路に供給する各種電源を生成する回路である。クロック発生回路9003は、アンテナ9009から入力された交流信号を基に、半導体装置内のそれぞれの回路に供給する各種クロック信号を生成する回路である。クロック発生回路9004は、リーダライタ9010と送受信するデータを、復調/変調する機能を有する。制御回路9005は、メモリ9007を制御する機能を有する。アンテナ9009は、電波の送受信を行う機能を有する。リーダライタ9010は、半導体装置との送受信、制御および送受信や制御したデータに関する処理を制御する。なお、無線ICタグは上記の構成に制約されない。例えば、電源電圧のリミッタ回路や暗号処理専用ハードウェアといった他の要素を追加した機能であってもよい。
【0336】
また、無線ICタグ9001において、各回路への電源電圧の供給方法は、(1)電源(バッテリー)を搭載せず、アンテナで電波を受信することによって電源電圧を供給する方法、(2)アンテナの代わりに電源(バッテリー)を搭載して電源電圧を供給する方法、(3)電波と電源によって電源電圧を供給する方法、のいずれも用いることができる。
【0337】
本発明の半導体装置を無線ICタグ等に利用した場合、非接触で通信を行う点、複数読取りが可能である点、データの書き込みが可能である点、様々な形状に加工可能である点、選択する周波数によっては、指向性が広く、認識範囲が広い点等の利点を有する。無線ICタグは、非接触による無線通信で人や物の個々の情報を識別可能なタグ、ラベル加工を施して目標物への貼り付けを可能としたラベル、イベントやアミューズメント向けのリストバンド等に適用することができる。また、無線ICタグを樹脂材料で成型加工してもよい。さらに、無線ICタグは、入退室管理、精算、在庫管理などのシステムの運用に活用することができる。
【0338】
本発明を用いて作製した半導体装置を無線ICタグとして実際に用いるときの一形態について説明する。表示部9020を有する携帯端末9021の側面には、リーダライタ9022が設けられ、品物9024の側面には無線ICタグ9026が設けられる(図38(B))。品物9024に設けられた無線ICタグ9026にリーダライタ9022をかざすと、表示部9020に品物9024の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に品物9024の説明等の商品に関する情報が表示される。
【0339】
また、品物9030をベルトコンベアにより搬送する際に、リーダライタ9032と、品物9030に設けられた無線ICタグ9034を用いて、品物9030の検品を行うことができる(図38(C))。このように、システムに無線ICタグを活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現する。さらに、在庫管理や出荷システムと連動させることによって、余剰在庫の減少や棚卸しの簡略化というメリットも生まれる。
【0340】
なお、本実施例は、実施の形態および他の実施例と自由に組み合わせることができる。
【実施例15】
【0341】
本実施例は、液晶表示装置の構成について図面を参照して説明する。
【0342】
図16において、基板610上に下地絶縁膜611を形成する。基板610としては、光透過性を有するガラス基板や石英基板を用いればよい。また、処理温度に耐えうる耐熱性を有する光透過性のプラスチック基板を用いてもよい。また、反射型の液晶表示装置の場合には、前述の基板の他にシリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。ここでは基板610としてガラス基板を用いる。
【0343】
下地絶縁膜611としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの絶縁膜を形成する。ここでは下地絶縁膜611が単層の例を示すが、絶縁膜を2層以上積層させた構造を用いても良い。なお、基板の凹凸や、基板からの不純物拡散が問題にならないのであれば、特に下地絶縁膜611を形成しなくてもよい。
【0344】
また、マイクロ波で励起され、電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下、電子密度が1011〜1013/cm程度である高密度プラズマで、ガラス基板の表面を直接処理しても良い。プラズマの生成はラジアルスロットアンテナを用いたマイクロ波励起のプラズマ処理装置を用いることができる。このとき、窒素(N)、またはアンモニア(NH)、亜酸化窒素(NO)などの窒化物気体を導入すると、ガラス基板の表面を窒化することができる。このガラス基板の表面に形成された窒化物層は、窒化珪素を主成分とするので、ガラス基板側から拡散してくる不純物のブロッキング層として利用することができる。この窒化物層の上に酸化珪素膜または酸窒化珪素膜をプラズマCVD法で形成して下地絶縁膜611としても良い。
【0345】
次いで、下地絶縁膜611上に半導体層を形成する。半導体層は、非晶質構造を有する半導体膜をスパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法などにより成膜する。なお、プラズマCVD法を用いれば、下地絶縁膜と、非晶質構造を有する半導体膜とを大気に触れることなく連続的に積層することができる。この半導体膜の厚さは25nm以上80nm以下(好ましくは30〜70nm)の厚さで形成する。非晶質半導体膜の材料に限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)合金などで形成すると良い。
【0346】
次に、キャップ膜として酸化珪素膜または窒素を含む酸化珪素膜を形成する。キャップ膜の膜厚は200nm以上500nm以下とする。また、このキャップ膜は固くて緻密であることが好ましい。このような膜は、例えば成膜レートを低くすることにより形成することができる。
【0347】
その後、キャップ膜を介して半導体膜にレーザビームを照射することによって半導体膜を準単結晶化させ、準単結晶の半導体膜とする。例えば、キャップ膜として500nmの酸化珪素膜を形成する場合では、17Wのレーザビームを35cm/secで走査すればよい。レーザビームは、CWレーザや繰り返し周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることができる。
【0348】
レーザ照射処理ののちに、キャップ膜をエッチング法によって取り除く。次に、フォトリソグラフィー技術を用いて、準単結晶の半導体膜を所望の形状にパターン成形し、半導体膜613を形成する。
【0349】
半導体膜613に対して、必要があればTFTのしきい値電圧を制御するために、微量な不純物元素(ボロンまたはリン)のドーピングを半導体層に対して行う。例えば、ジボラン(B)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用いることができる。
【0350】
次いで、フッ酸を含むエッチャントで半導体膜613表面の酸化膜を除去すると同時に半導体膜613の表面を洗浄する。そして、半導体膜613を覆う絶縁膜615を形成する。絶縁膜615はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを1nm以上200nm以下とする。好ましくは10nm以上50nm以下と薄くしてシリコンを含む絶縁膜の単層または積層構造で形成した後、マイクロ波によるプラズマを用いた表面窒化処理を行う。この場合において、絶縁膜615の表面を、前述と同様に、マイクロ波で励起され、電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下、電子密度が1011〜1013/cm程度である高密度プラズマ処理によって酸化又は窒化処理して緻密化しても良い。この処理は絶縁膜615の成膜に先立って行っても良い。すなわち、半導体膜613の表面に対してプラズマ処理を行う。このとき、基板温度を300〜450℃とし、酸化雰囲気(O、NOなど)又は窒化雰囲気(N、NHなど)で処理することにより、その上に堆積する絶縁膜615と良好な界面を形成することができる。絶縁膜615は、後に形成されるTFTのゲート絶縁膜として機能する。
【0351】
次いで、絶縁膜615上に膜厚20〜100nmの第1の導電膜と、膜厚100〜400nmの第2の導電膜とを積層形成する。本実施例では、絶縁膜615上に膜厚50nmの窒化タンタル膜、膜厚370nmのタングステン膜を順次積層し、ゲート電極617を形成する。本実施例では、フォトマスクまたはレチクルを用いて、ゲート電極617を形成する。
【0352】
なお、本実施例ではゲート電極617を窒化タンタル(TaN)膜とタングステン(W)膜との積層としたが、特に限定されず、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料の積層で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、2層構造に限定されず、例えば、膜厚50nmのタングステン膜、膜厚500nmのアルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)膜、膜厚30nmの窒化チタン膜を順次積層した3層構造としてもよい。
【0353】
第1の導電膜及び第2の導電膜のエッチング(第1のエッチング処理および第2のエッチング処理)にはICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いると良い。ICPエッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することによって所望のテーパー形状に膜をエッチングすることができる。
【0354】
次いで、n型を付与する不純物元素を半導体膜613に添加するため、ゲート電極617をマスクとして全面にドーピングする第1のドーピング処理を行う。第1のドーピング処理はイオンドープ法、もしくはイオン注入法で行えば良い。イオンドープ法の条件はドーズ量を1.5×1013atoms/cmとし、加速電圧を50〜100kVとして行う。n型を付与する不純物元素として、典型的にはリン(P)または砒素(As)を用いる。
【0355】
次いで、レジストからなるマスクを形成した後、半導体膜613にn型を付与する不純物元素を高濃度にドープするための第2のドーピング工程を行う。マスクは、画素部656のpチャネル型TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域と、画素部656のnチャネル型TFTの一部と、駆動回路部657のpチャネル型TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域と、を保護するために設ける。第2のドーピング工程におけるイオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013〜5×1015atoms/cmとし、加速電圧を60〜100keVとして行う。
【0356】
次いで、半導体膜613にp型を付与する不純物元素(代表的にはボロン)を高濃度にドープするための第3のドーピング工程を行う。マスクは、画素部656のnチャネル型TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域と、駆動回路部657のnチャネル型TFTを形成する半導体層のチャネル形成領域及びその周辺の領域と、を保護するために設ける。
【0357】
以上までの工程で、それぞれの半導体膜613にn型またはp型の導電型を有する不純物領域が形成される。
【0358】
次いで、スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等を用いて、水素を含む絶縁膜619を成膜する。絶縁膜619は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成する。絶縁膜619は、半導体層の汚染を防ぐ保護膜としての機能を含んでいる。この絶縁膜619を堆積した後に、水素ガスを導入して前述のようにマイクロ波で励起された高密度プラズマ処理をすることで、絶縁膜619の水素化を行っても良い。または、アンモニアガスを導入して、絶縁膜619の窒化と水素化を行っても良い。または、酸素、NOガスなどと水素ガスを導入して、酸化窒化処理と水素化処理を行っても良い。この方法により、窒化処理、酸化処理若しくは酸化窒化処理を行うことにより絶縁膜619の表面を緻密化することができる。それにより保護膜としての機能を強化することができる。この絶縁膜619に導入された水素は、その後400〜450℃の熱処理をすることにより、絶縁膜619を形成する窒化シリコンから水素を放出させて、半導体膜613の水素化をすることができる。
【0359】
次いで、スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等を用いて第1層間絶縁膜621を形成する。第1層間絶縁膜621としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの絶縁膜の単層または積層を用いる。第1層間絶縁膜621の膜厚は600nm以上800nm以下とする。次いで、フォトマスクを用いてレジストからなるマスクを形成し、第1層間絶縁膜621を選択的にエッチングしてコンタクトホールを形成する。そして、レジストからなるマスクを除去する。
【0360】
次いで、スパッタ法により金属膜を積層した後、フォトマスクを用いてレジストからなるマスクを形成し、選択的に金属積層膜をエッチングして、TFTのソース電極またはドレイン電極として機能する電極623を形成する。なお、金属積層膜は、同じメタルスパッタ装置内で連続して形成する。そして、レジストからなるマスクを除去する。
【0361】
以上の工程で、同一基板上にポリシリコン膜を活性層とするトップゲート型のTFT625、627、629が作製できる。
【0362】
なお、画素部656に配置されるTFT629は、一つのTFTに複数のチャネル形成領域を有するnチャネル型TFTである。TFT629は、マルチゲート型のTFTである。
【0363】
また、駆動回路部657に配置されるTFT627はゲート電極と重なる低濃度不純物領域(LDD領域とも呼ぶ)を備えたnチャネル型TFTであり、TFT625はpチャネル型TFTである。いずれもシングルゲート構造のTFTである。駆動回路部657においては、TFT627とTFT625を相補的に接続することでCMOS回路を構成し、様々な種類の回路を実現することができる。また、必要であれば、マルチゲート構造のTFTとすることができる。
【0364】
第2層間絶縁膜631は、ポリイミド、アクリル樹脂などの有機樹脂絶縁材料を用い、スピン塗布法で形成する。この第2層間絶縁膜631は、下地表面の凹凸の影響を表面に反映させないようにする、平坦化膜としての機能を有している。
【0365】
第2層間絶縁膜631に、下層に位置するnチャネル型TFT629に接続する配線633を露出させるコンタクトホールを形成し、画素電極635を形成する。画素電極635としては、透光性を有する導電性材料からなる透明導電膜を用いればよく、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物などを用いることができる。勿論、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)なども用いることができる。
【0366】
透光性を有する導電性材料の、組成比例を述べる。酸化タングステンを含むインジウム酸化物の組成比は、酸化タングステン1.0wt%、インジウム酸化物99.0wt%とすればよい。酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物の組成比は、酸化タングステン1.0wt%、酸化亜鉛0.5wt%、インジウム酸化物98.5wt%とすればよい。酸化チタンを含むインジウム酸化物は、酸化チタン1.0wt%〜5.0wt%、インジウム酸化物99.0wt%〜95.0wt%とすればよい。インジウム錫酸化物(ITO)の組成比は、酸化錫10.0wt%、インジウム酸化物90.0wt%とすればよい。インジウム亜鉛酸化物(IZO)の組成比は、酸化亜鉛10.7wt%、インジウム酸化物89.3wt%とすればよい。酸化チタンを含むインジウム錫酸化物の組成比は、酸化チタン5.0wt%、酸化錫10.0wt%、インジウム酸化物85.0wt%とすればよい。上記組成比は例であり、適宜その組成比の割合は設定すればよい。
【0367】
画素電極635の上には、配向膜637を形成する。また、対向基板639にも同様に、透光性を有する導電性材料からなる透明導電膜で対向電極641、配向膜643を形成する。
【0368】
次いで、基板610と対向基板639とを間隔をもってシール材645で固定する。この両基板の間隔は、スペーサ647によって保持する。基板610と対向基板639との間には、液晶層649を形成する。液晶層649は、滴下方式によって、対向基板639を固定する前に形成しても良い。
【0369】
最後にFPC651を異方性導電膜653により公知の方法で端子電極655と貼りつける(図16参照)。なお、端子電極655は、ゲート電極617と同じ工程で得られる。
【0370】
以上の工程によって、画素部656と駆動回路部657と端子部658とを同一基板上に形成することができる。本実施例は実施の形態および他の実施例と自由に組み合わせることができる。
【実施例16】
【0371】
本発明の半導体膜を用いてTFTなどの半導体装置を作製し、この作製した半導体装置を用いてさまざまな電子機器を完成することができる。本発明の準単結晶半導体膜は、結晶粒の面方位が一方向に揃っているため、高速動作が可能で電流駆動能力が高く、かつ素子間において特性のばらつきが小さい半導体素子を歩留まり良く作製することが可能になる。さらに、この半導体素子を用いて、さまざまな半導体装置を作製することができる。本実施例では、図を用いて具体的な例を説明する。
【0372】
図39(A)は表示装置であり、筐体10001、支持台10002、表示部10003、スピーカー部10004、ビデオ入力端子10005などを含む。この表示装置は、他の実施例で示した作製方法により形成したTFTを駆動ICや表示部10003などに用いることにより作製される。なお、表示装置には液晶表示装置、発光表示装置などがあり、用途別にはコンピュータ用、テレビ受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。具体的には、ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、反射型プロジェクターなどを挙げることができる。
【0373】
図39(B)はコンピュータであり、筐体10011、表示部10012、キーボード10013、外部接続ポート10014、ポインティングマウス10015などを含む。本発明を用いて形成されたTFTは、表示部10012の画素部だけではなく、表示用の駆動IC、本体内部のCPU、メモリなどの半導体装置にも適用が可能である。
【0374】
また、図39(C)は携帯電話であり、携帯用の情報処理端末の1つの代表例である。この携帯電話は筐体10021、表示部10022、操作キー10023などを含む。本発明を用いて形成されたTFTは表示部10022の画素部やセンサ部10024だけではなく、表示用の駆動IC、メモリ、音声処理回路などに用いることができる。センサ部10024は光センサ素子を有しており、センサ部10024で得られる照度に合わせて表示部10022の輝度コントロールを行うことや、センサ部10024で得られる照度に合わせて操作キー10023の照明を抑えることによって、携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0375】
上記の携帯電話を初めとして、PDA(Personal Digital Assistants、情報携帯端末)、デジタルカメラ、小型ゲーム機、携帯型の音響再生装置などの電子機器に、本発明を用いて形成した半導体材料を用いることもできる。例えば、CPU、メモリ、センサなどの機能回路を形成することや、これらの電子機器の画素部や、表示用の駆動ICにも適用することが可能である。
【0376】
また、図39(D)、(E)はデジタルカメラである。なお、図39(E)は、図39(D)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体10031、表示部10032、レンズ10033、操作キー10034、シャッター10035などを有する。本発明を用いて形成されたTFTは、表示部10032の画素部、表示部10032を駆動する駆動IC、メモリなどに用いることができる。
【0377】
図39(F)はデジタルビデオカメラである。このデジタルビデオカメラは、本体10041、表示部10042、筐体10043、外部接続ポート10044、リモコン受信部10045、受像部10046、バッテリー10047、音声入力部10048、操作キー10049、接眼部10050などを有する。本発明を用いて形成されたTFTは、表示部10042の画素部、表示部10042を制御する駆動IC、メモリ、デジタル入力処理装置などに用いることができる。
【0378】
この他にも、ナビゲーションシステム、音響再生装置、記録媒体を備えた画像再生装置などに用いることが可能である。これらの表示部の画素部や、表示部を制御する駆動IC、メモリ、デジタル入力処理装置、センサ部などの用途に、本発明を用いて形成されたTFTを用いることができる。
【0379】
以上のように、本発明により作製された半導体装置の適用範囲は極めて広く、本発明の半導体膜を材料として、あらゆる分野の電子機器に用いることができる。なお、これらの電子機器に使われる表示装置は、大きさや強度、または使用目的に応じて、ガラス基板だけでなく耐熱性の合成樹脂基板を用いることも可能である。それによってより一層の軽量化を図ることができる。
【実施例17】
【0380】
本実施例では、本発明の準単結晶半導体膜を材料として作製したTFTの特性について、TEG(Test Element Group)を用いて測定した結果を示す。
【0381】
TEGはTFT基板上に設けられたテスト用のパターンであり、本実施例ではレーザ走査方向に隣接して配置された(縦隣接)2つのTFTのしきい値電圧を測定し、その2つの差を求めた。なお、それぞれのTFTはレーザ走査方向とソース、ドレインを結ぶ方向とが平行になるように配置した。
【0382】
図47(A)、図47(B)は、非晶質半導体膜として非晶質珪素膜を66nmの厚さで形成し、キャップ膜を500nmで形成し、7.2WのエネルギーでCWレーザビームを35cm/secの走査速度、500μmの照射幅で照射したときのnチャネル型TFTにおけるしきい値電圧の差の面内分布(図47(A))、およびpチャネル型TFTにおけるしきい値電圧の差の面内分布((図47(B))である。なお、本実施例のnチャネル型TFT又はpチャネル型TFTのチャネル長(L)とチャネル幅(W)との比は、L/W=4/40である。また、本実施例では、CWレーザとしてYVOレーザ(波長532nm)を用いた。
【0383】
また、図47(C)、図47(D)は、非晶質半導体膜として非晶質珪素膜を66nmの厚さで形成し、比較としてキャップ膜を形成せず、8.3WのエネルギーでCWレーザビームを35cm/secの走査速度、500μmの照射幅で照射したときのnチャネル型TFTにおけるしきい値電圧の差の面内分布(図47(C))、およびpチャネル型TFTにおけるしきい値電圧の差の面内分布((図47(D))である。
【0384】
5インチのTFT基板において、10×8(縦×横)の80カ所の格子点で2つのTFTのしきい値電圧の差を求めた。なお、測定の格子ピッチの大きさは10.5mm×10mm(縦×横)であった。
【0385】
nチャネル型TFTにおけるしきい値電圧の差の面内分布を比較すると、キャップ膜ありの場合(図47(A))は、キャップ膜なしの場合(図47(C))に比べてしきい値電圧の差のばらつきが小さかった。また、pチャネル型TFTにおけるしきい値電圧の差の面内分布を比較すると、nチャネル型TFTにおける場合と同様に、キャップ膜ありの場合(図47(B))は、キャップ膜なしの場合(図47(D))に比べてしきい値電圧の差のばらつきが小さかった。
【0386】
さらに、図47の測定結果を正規確率分布図に表した(図48、図49)。正規確率分布図の横軸はしきい値電圧の差、縦軸は累積度数を示す。また、正規確率分布図においてしきい値電圧の差のばらつきが小さいほど、グラフの傾きが大きくなる。
【0387】
図48は、nチャネル型TFTにおける測定結果の正規確率分布図である。黒塗りの丸印はキャップ膜ありの場合の測定結果、×印はキャップ膜なしの場合の測定結果をそれぞれ示す。2つのグラフを比べると、キャップ膜ありの場合のグラフの方が、キャップ膜なしの場合のグラフよりも傾きが大きい。このことから、キャップ膜ありの方がしきい値電圧の差のばらつきが小さいことがわかる。また、図49は、pチャネル型TFTにおける測定結果の正規確率分布図である。黒塗りの丸印はキャップ膜ありの場合の測定結果、×印はキャップ膜なしの場合の測定結果をそれぞれ示す。2つのグラフを比べると、nチャネル型TFTにおける場合と同様に、キャップ膜ありの場合のグラフの方が、キャップ膜なしの場合のグラフよりも傾きが大きい。このことから、キャップ膜ありの方がしきい値電圧の差のばらつきが小さいことがわかる。
【0388】
以上の結果より、非晶質半導体膜状にキャップ膜を形成してレーザビームを照射すると、特性のばらつきの小さいTFTを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0389】
【図1】半導体膜上にキャップ膜を形成した場合において、レーザビームの強度と、レーザビームが照射された半導体膜の状態の関係を示す図である。
【図2】半導体膜にキャップ膜を形成しない場合において、レーザビームの強度と、レーザビームが照射された半導体膜の状態の関係を示す図である。
【図3】大粒径結晶のEBSP測定結果を示す図である。
【図4】図3の測定方向を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明する図である。
【図6】本発明の結晶性半導体膜の作製に用いるレーザ照射装置の一例を示す図である。
【図7】本発明の結晶性半導体膜の顕微鏡写真である。
【図8】本発明の結晶性半導体膜のEBSP測定結果を示す図である。
【図9】本発明の結晶性半導体膜のEBSP測定結果を示す図である。
【図10】図8、9の測定方向を説明する図である。
【図11】本発明の結晶性半導体膜のラマン分光法の測定方法を説明する図である。
【図12】本発明の結晶性半導体膜のラマン分光法による測定結果を示す図である。
【図13】本発明の結晶性半導体膜のラマン分光法による測定結果を示す図である。
【図14】本発明の結晶性半導体膜のラマン分光法による測定結果を示す図である。
【図15】本発明の結晶性半導体膜のラマン分光法による測定結果を示す図である。
【図16】本発明を用いた液晶表示装置の例を説明する図である。
【図17】本発明の結晶性半導体膜を原子間力顕微鏡による分析結果を示す図である。
【図18】本発明の結晶性半導体膜を原子間力顕微鏡による分析結果を示す図である。
【図19】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図20】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図21】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図22】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図23】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図24】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図25】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図26】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図27】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図28】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図29】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図30】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図31】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図32】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図33】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図34】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図35】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図36】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図37】本発明を用いた半導体装置の作製方法の一例を説明する図である。
【図38】本発明を用いて作製した半導体装置の使用例を説明する図である。
【図39】本発明を用いて作製した半導体装置の例を説明する図である。
【図40】単結晶珪素膜のEBSP法による測定結果を示す図である。
【図41】本発明の準単結晶珪素膜、単結晶珪素膜、および大粒径結晶が形成された珪素膜のラマン分光法による結果を示す図である。
【図42】レーザビームの走査速度を固定し、キャップ膜の膜厚とレーザのエネルギーを変えて結晶化させた半導体膜の光学顕微鏡による像である。
【図43】レーザビームの走査速度を固定し、キャップ膜の膜厚とレーザのエネルギーを変えて結晶化させた半導体膜の光学顕微鏡による像である。
【図44】図42、43をまとめたグラフである。
【図45】図3、4のEBSP法による結果を示す図である。
【図46】図3、4のEBSP法による結果を示す図である。
【図47】縦隣接間TEGのしきい値電圧の差の面内分布を示す図である。
【図48】図47のnチャネル型TFTにおける測定結果の正規確率分布図である。
【図49】図47のpチャネル型TFTにおける測定結果の正規確率分布図である。
【符号の説明】
【0390】
01 基板
02 下地絶縁膜
03 半導体膜
04 キャップ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の結晶粒で構成される半導体膜を有し、前記結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に垂直な方向を第1方向とし、前記第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、前記第1面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板上に複数の結晶粒で構成される半導体膜を有し、前記結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に垂直な方向を第1方向とし、前記第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、前記第1面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は、±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上であり、前記基板表面に平行かつ前記結晶粒の長径方向に平行な方向を第2方向とし、前記第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、前記第2面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位は5割以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
基板上に複数の結晶粒で構成される半導体膜を有し、前記結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に垂直な方向を第1方向とし、前記第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、前記第1面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上であり、前記第1方向及び前記結晶粒の長径方向に垂直な、結晶粒の短径方向を第3方向とし、前記第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、前記第3面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{111}方位は4割以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
基板上に複数の結晶粒で構成される半導体膜を有し、前記結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に平行かつ前記結晶粒の長径方向に平行な方向を第2方向とし、前記第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、前記第2面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{110}方位は5割以上であり、前記基板表面に平行かつ前記第2方向に垂直な方向を第3方向とし、前記第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、前記第3面における前記複数の結晶粒で構成される半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{111}方位は4割以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項において、前記半導体膜は珪素であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置とは、薄膜トランジスタ、駆動回路、電源回路、IC、メモリ、CPU、記憶素子、ダイオード、光電変換素子、抵抗素子、コイル、容量素子、インダクタ、画素、CCD、またはセンサであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置を用いて作製した薄膜集積回路装置、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、反射型プロジェクター、画像表示装置、ヘッドマウントディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置、携帯型の情報処理端末、ゲーム機器、コンピュータ、または記録媒体を備えた画像再生装置。
【請求項8】
下地絶縁膜を形成し、前記下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、前記半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、前記キャップ膜を介して前記半導体膜にレーザビームを照射して前記半導体膜を結晶化させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
基板上に下地絶縁膜を形成し、前記下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、前記半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、前記キャップ膜を介して前記半導体膜にレーザビームを走査させながら照射して前記半導体膜を結晶化させ、前記結晶化された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に垂直な方向を第1方向とし、前記第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、前記第1面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内において{211}方位が4割以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
基板上に下地絶縁膜を形成し、前記下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、前記半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、前記キャップ膜を介して前記半導体膜にレーザビームを走査させながら照射して前記半導体膜を結晶化させ、前記結晶化された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に垂直な方向を第1方向とし、前記第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、前記第1面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内における{211}方位の割合は4割以上であり、前記レーザビームの走査方向および前記基板表面に平行な方向を第2方向とし、前記第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、前記第2面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内における{110}方位の割合は5割以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
基板上に下地絶縁膜を形成し、前記下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、前記半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、前記キャップ膜を介して前記半導体膜にレーザビームを走査させながら照射して前記半導体膜を結晶化させ、前記結晶化された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記基板表面に垂直な方向を第1方向とし、前記第1方向を法線ベクトルとする面を第1面とすると、前記第1面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内における{211}方位の割合は4割以上であり、前記レーザビームの走査方向と垂直かつ前記基板表面に平行な方向を第3方向とし、前記第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、前記第3面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内における{111}方位の割合は4割以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
基板上に下地絶縁膜を形成し、前記下地絶縁膜上に半導体膜を形成し、前記半導体膜上にキャップ膜を200nm以上の厚さで形成し、前記キャップ膜を介して前記半導体膜にレーザビームを走査させながら照射して前記半導体膜を結晶化させ、前記結晶化された半導体膜の結晶粒の粒径は、幅が0.01μm以上、長さが1μm以上であり、前記レーザビームの走査方向および前記基板表面に平行な方向を第2方向とし、前記第2方向を法線ベクトルとする面を第2面とすると、前記第2面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内における{110}方位の割合は5割以上であり、前記レーザビームの走査方向と垂直かつ前記基板表面に平行な方向を第3方向とし、前記第3方向を法線ベクトルとする面を第3面とすると、前記第3面における前記結晶化された半導体膜の面方位は±10°の角度揺らぎの範囲内における{111}方位の割合は4割以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12のいずれか1項において、前記半導体膜は、珪素であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項8乃至請求項13のいずれか1項において、前記レーザビームは、連続発振のレーザまたは発振周波数が10MHz以上のパルスレーザを用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項8乃至請求項14のいずれか1項において、前記キャップ膜をゲート絶縁膜として用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図41】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図17】
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【図18】
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【図40】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2007−288127(P2007−288127A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282447(P2006−282447)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】