説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】キャップ膜としてのランタン酸化膜の膜厚の増加を抑えつつ、閾値電圧の低減化を図れる、窒化チタン膜を含むメタルゲート電極/Hfを含有するゲート絶縁膜のゲートスタック構造を有するMOSFETを備えた半導体装置を適用すること。
【解決手段】P型半導体領域105を含む半導体基板101と、P型半導体領域101に形成されたNチャネルMOSFETとを具備してなり、前記NチャネルMOSトランジスタは、半導体基板101上に形成され、ハフニウムを含有するゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜109上に形成され、膜厚が所定値以下のランタン酸化膜109と、ランタン酸化膜109上に形成され、N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜110を含むゲート電極とを具備してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルゲート電極/高誘電率(High-k)ゲート絶縁膜のゲートスタック構造を有するMOSFETを備えた半導体装置およびその製造方法に係わり、特に、窒化チタン膜を含むメタルゲート電極/Hf(ハフニウム)を含有するゲート絶縁膜のゲートスタック構造を有するMOSFETを備えた半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路の微細化に伴いゲート絶縁膜の薄膜化が要求されている。32nmノード以降のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)では、SiO2 換算膜厚で0.9nm以下のゲート絶縁膜が必要となる。
【0003】
一方、ゲート電極としては、従来より、多結晶シリコン(Poly-Si)ゲート電極が用いられている。Poly-Siゲート電極はその半導体特性より空乏化を生じる。このPoly-Siゲート電極の空乏化は、ゲート絶縁膜の実効的な膜厚を増加させ、ゲート絶縁膜の薄膜化を阻害している。したがって、Poly-Siゲート電極の空乏化を抑制するために、メタルゲート電極の導入が求められている。
【0004】
メタルゲート電極には、トランジスタの閾値電圧(Vth)の低減のために、Siバンド端近傍の実効仕事関数(EWF)が求められている。具体的には、NMOSFET(N Channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)では、Si伝導帯端(4.05eV)近傍のEWFが求められており、一方、PMOSFET(P Channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)では、Si価電子帯端(5.17eV)近傍のEWFが求められている。Siバンド端のEWFを実現させることで、Vthを低減し所望のCOMSの駆動力を得ることができる。
【0005】
現在、メタルゲート電極の候補材料として、熱的安定性や、ゲート加工の容易さの観点から、窒化チタン(TiN)が広く検討されている。TiNは、High-k絶縁膜上でSiバンドギャップのミッドギャップ近傍のEWFを持つことが知られており、この技術だけでは低Vth化は実現できない。
【0006】
そこで、NMOSFET領域では、TiN電極/High-kゲート絶縁膜の界面にランタン酸化膜(キャップ膜)を選択的に導入することにより、フラットバンド電圧(VFB)を負側にシフトさせ、つまり、EWFを低減させ、Vthを低減させる技術を採用している(特許文献1)。また、ランタン酸化膜の膜厚の増加に伴い、VFBの負側のシフト量が増加して、EWFをSi伝導帯端近傍まで低減させ、所望のVthを得ることができることが知られている。
【0007】
しかしながら、NMOSFETとして、TiN電極/ランタン酸化膜/HfSiON膜の積層構造(ゲートスタック構造)を用いた場合に、従来の組成の制御されていないTiN膜では、膜厚が1nm以下のランタン酸化膜と組み合わせてもEWFをSi伝導帯端近傍まで低減させることができない可能性がある。逆に、ランタン酸化膜の膜厚を1nmよりも厚くすると、PMOS側のランタン酸化膜を選択的に剥離するプロセスにおいて、局所的なランタン酸化膜の剥離残りの問題、(High-kまたはHfSiON)高誘電率ゲート絶縁膜の膜減りおよびそのサイドエッチングの問題がさらに深刻になることが予測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−270821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、キャップ膜としてのランタン酸化膜の膜厚の増加を抑えつつ、閾値電圧の低減化を図れる、窒化チタン膜を含むメタルゲート電極/Hfを含有するゲート絶縁膜の積層構造を有するMOSトランジスタを備えた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による半導体装置は、P型半導体領域を含む半導体基板と、前記P型半導体領域に形成されたNチャネルMOSFETとを具備してなり、前記NチャネルMOSFETは、前記半導体基板上に形成されたシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜の絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたハフニウムを含有するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜と前記絶縁膜との間に形成され、一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜を含むゲート電極とを具備してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様による半導体装置の製造方法は、N型半導体領域およびP型半導体領域を含む半導体基板上に、シリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜の絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上にハフニウムを含有するゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜を選択的に形成し、その後、前記N型半導体領域上の前記ランタン酸化膜を選択的に除去する工程と、前記P型半導体領域上の前記ランタン酸化膜、および、前記N型半導体領域上の前記ゲート絶縁膜の上に、N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜を含むゲート電極を形成する工程と、熱処理により、前記ランタン酸化膜を構成するランタン酸化物を、前記絶縁膜と前記ゲート絶縁膜との間に拡散させ、前記絶縁膜と前記ゲート絶縁膜との間に、一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜を選択的に形成する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャップ膜としてのランタン酸化膜の膜厚の増加を抑えつつ、閾値電圧の低減化を図れる、窒化チタン膜を含むメタルゲート電極/Hfを含有するゲート絶縁膜のゲートスタック構造を有するMOSトランジスタを備えた半導体装置およびその製造方法を実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図2】図1に続く第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図3】図2に続く第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図4】図3に続く第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図5】図4に続く第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図6】図5に続く第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図7】図6に続く第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図8】Poly-Si/TiN/LaxOy/HfSiON/SiO2/Si積層構造を持つMOSキャパシタにおけるLaxOy膜添加によるVFBの負側へのシフト量の成膜時のTiN膜110中のN/Ti原子数比依存性を示す図。
【図9】Poly-Si/TiN/HfSiON/SiO2/Si積層構造を持つMOSキャパシタにおけるTaccの成膜時のTiN中のN/Ti原子数比依存性を示す図。
【図10】第2の実施形態の半導体装置を説明するための断面図。
【図11】Poly-Si/TiN/HfSiON/SiO2/Si積層構造を持つMOSキャパシタにおけるVFBの成膜時のTiN膜中のN/Ti原子数比依存性を示す図。
【図12】第2の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図13】図12に続く第2の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図14】図13に続く第2の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図。
【図15】第3の実施形態の半導体装置を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1−図7は第1の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図であり、MOSFETのチャネル長方向の断面図を示している。
【0016】
[図1]
周知の方法により、シリコン基板101に、STI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離領域102、犠牲酸化膜103、N型拡散層(N型半導体領域)104およびP型拡散層(P型半導体領域)105を形成する。
【0017】
[図2]
P型拡散層105を覆うレジスト(不図示)をマスクとして、NH4 F水溶液または希フッ酸を用いて、N型拡散層104上の犠牲酸化膜を除去し、N型拡散層104上にSiGeを選択的にエピタキシャル成長させ、チャネルSiGe層106を形成し、さらに、チャネルSiGe層106上にSi膜(不図示)を形成する。上記レジスト(不図示)を剥離し、P型拡散層105上の犠牲酸化膜をNH4 F水溶液または希フッ酸を用いて剥離し、その後、NおよびP型拡散層104,105上に共にケミカルSiO2 膜(シリコン酸化膜)107を形成する。
【0018】
ここでは、界面層としてケミカルSiO2 膜(シリコン酸化膜)107を形成したが、その代わりにシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成しても構わない。シリコン酸窒化膜の形成方法は、例えば、ケミカルSiO2 膜を形成する工程と、該ケミカルSiO2 膜を窒化(例えばプラズマ窒化)する工程と、窒化したケミカルSiO2 膜を酸化(例えば酸素アニール酸化)する工程とを含む。
【0019】
[図3]
MOCVD法を用いて、図示しないHfSiO膜(ハフニウム珪酸化膜)を全面に形成する。上記の図示しないHfSiO膜を窒素プラズマ雰囲気中で処理した後に熱処理を行って、上記の図示しないHfSiO膜を、HfSiON膜(ハフニウム珪酸窒化膜)108に改質する。さらに、1nm以下の膜厚のランタン酸化膜をPVD法で全面に堆積して、図示しないレジストをマスクとしてN型拡散層104側のランタン酸化膜をエッチングにより除去する。このようにしてP型拡散層105側にキャップ層としてのランタン酸化膜109が選択的に形成される。その後、上記図示しないレジストを剥離する。
【0020】
[図4]
TiN(窒化チタン)膜110をTiターゲットの反応性スパッタ法で全面に成膜する。その際、成膜中のN2 /Ar流量比を制御し、N/Ti原子数比が0.67以上1.00未満の範囲のTiN膜110を形成する。スパッタ法の代わりに、CVD法やALD法でN/Ti原子数比を制御してTiN膜110を成膜しても構わない。
【0021】
[図5]
TiN膜110上にSi膜111を形成する。
【0022】
[図6]
図示しないハードマスクを用いて、Si膜111、TiN膜110をRIE加工し、さらに、N型拡散領域においてはHfSiON膜108およびSiO2 膜107をエッチングし、P型拡散領域においてはランタン酸化膜109、HfSiON膜108およびSiO2 膜107をエッチングする。
【0023】
[図7]
次に、全面にシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜の絶縁膜をCVD法で堆積し、その堆積した絶縁膜をRIE法を用いてエッチングすることにより、オフセットスペーサー112を形成する。さらに、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜からなるサイドウォールスペーサー(不図示)をCVD法およびRIE法で形成する。
【0024】
図示しないレジストをマスクに用いてBをN型拡散層104にイオン注入し、同様に図示しないレジストをマスクに用いてP型拡散層105にPまたはAsをイオン注入し、その後、熱処理を行うことにより、P型ソース/ドレイン拡散層113とN型ソース/ドレイン拡散層114を形成する。
【0025】
上記の図示しないサイドウォールスペーサを除去し、その後、図示しないレジストをマスクに用いてBをN型拡散層104にイオン注入し、同様にレジストマスクを用いてP型拡散層105にPまたはAsをイオン注入し、熱処理を行うことにより、P型エクステンション拡散層115とN型エクステンション拡散層116を形成する。
【0026】
この時の拡散層115,116の形成時の熱処理により、TiN膜110中の窒素がHfSiON膜(High-kゲート絶縁膜)108中へ拡散し、最終的にN/Ti原子数比が1未満のTiN電極(メタルゲート電極)117が形成される。
【0027】
さらに、上記熱処理によって、図3の工程で形成したランタン酸化膜109を構成するランタン酸化物は、シリコン酸化膜107とHfSiON膜108との間に拡散し、最終的な構造としては、これら107,108の間に一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜109’が形成されることになる。ランタン酸化膜109’の膜厚はランタン酸化膜109の膜厚以下となる。
【0028】
なお、ランタン酸化膜109’を形成するための熱処理は、ランタン酸化膜109の形成後に行われる熱処理であれば特に限定されるものではない。また、ランタン酸化膜109’を形成することを目的とする最適化された熱処理を別途付加しても構わない。
【0029】
CVD法およびRIE法を用いて、SiO2 膜118とシリコン窒化膜119からなる2層のサイドウォールスペーサを形成する。周知のサリサイドプロセスにより、ソース/ドレイン拡散層113,114およびSi膜111の表面にシリサイド膜120を自己整合的に形成する。その結果、NMOS側には、シリサイド/Si/メタルゲート/の積層構造を有するゲート電極120,111,109が形成される。
【0030】
この後は、従来のトランジスタで用いられているように、層間絶縁膜の形成、コンタクトホールの開口および埋め込み、配線形成等を行うことによって、CMOSFETを備えた半導体集積回路を形成することができる。
【0031】
図8に、Poly-Si/TiN/LaxOy/HfSiON/SiO2/Si積層構造を持つMOSキャパシタにおける0.6および1.0nmのLaxOy膜添加によるフラットバンド電圧(VFB)の負側へのシフト量(VFB負シフト量)の成膜時のTiN膜110中のN/Ti原子数比依存性を示す。
【0032】
図8から、TiN(TiN膜110に相当)中のN/Ti原子数比の減少に伴い、同膜厚のLaxOy(ランタン酸化膜109に相当)の添加によるVFBの負シフト量が増大する傾向にあることが分かる。この理由は以下のように考えられる。
【0033】
N/Ti原子数比が減少すると、TiN中からHfSiON(HfSiON膜108に相当)中へ拡散する窒素の量が減少する。この窒素の量の減少は、実施形態のデバイスで言えば、例えば、拡散層115,116の形成時の熱処理によって起こる。
【0034】
ここで、HfSiON中の窒素は、LaのHfSiON中の拡散を阻害する。したがって、N/Ti原子数比が減少し、HfSiON中に拡散する窒素の量が減少すると、HfSiON中のLaの拡散量が増加し、HfSiON/SiO2 の界面におけるLaの量が増加する。このようなLaは、HfSiON/SiO2 の界面においてダイポール(La界面ダイポール)を形成する。La界面ダイポールは、VFBの負シフト量を増大するように寄与する。したがって、N/Ti原子数比の減少によってVFBの負シフト量が増大する理由は、N/Ti原子数比の減少によってLa界面ダイポールが増大することにあると考えられる。
【0035】
また、図8より、VFBの負シフト量はLaxOy膜厚およびHfSiON膜厚にも依存することが分かるが、HfSiON膜厚が2.0〜2.5nmの領域でLaxOy膜厚が1.0nm以下で300mV以上のVFBの負シフト量(デバイスで必要な性能)を実現するためには、N/Ti原子数比が1未満のTiN膜110を用いれば十分であることが分かる。
【0036】
図9に、Poly-Si/TiN/HfSiON/SiO2/Si積層構造を持つMOSキャパシタにおける蓄積容量換算膜厚(Tacc)の成膜時のTiN中のN/Ti原子数比依存性を示す。図9から、N/Ti原子数比の低減に伴い、Taccが増加している傾向があることが分かる。これはN/Ti原子数比の減少により、TiN自体の熱的な安定性が低下したためである。したがって、TiN膜の熱的安定性を考慮すると、成膜時のN/Ti原子数比が0.67〜1.00の範囲のTiN膜110を用いれば十分であるといえる。TiN膜110のN/Ti原子数比は、ラザフォード後方散乱法(RBS)を用いた計測により確認することができる。
【0037】
本実施形態では、TiNの組成を意図的に制御してN/Ti原子数比を1未満にしている。意図的に変えないと安定はN/Ti原子数比である1になってしまうので、本願の解題は解決されない。
【0038】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態の半導体装置を説明するための断面図である。なお、図10以降において、既出の図と対応する部分には既出の図と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。また、既出の図と対応する部分であっても、説明の上で符号が不要な部分もしくは符号がなくても特に誤解がない場合には符号は付していない。
【0039】
第1の実施形態の場合では、NMOSおよびPMOS側共にN/Ti原子数比が0.67以上1未満の範囲のTiN膜を形成した。
【0040】
これに対して本実施形態では、PMOS側には、N/Ti原子数比が1より大きいTiN膜110aをさらに選択的に形成する。このTiN膜110a上には、第1の実施形態と同じ範囲のN/Ti原子数比のTiN膜117を形成している。
【0041】
PMOS側のTiN膜のN/Ti原子数比を、1以上にする理由について説明する。図11は、Poly-Si/TiN/HfSiON/SiO2/Si積層構造を持つMOSキャパシタにおけるVFBの成膜時のTiN膜中のN/Ti原子数比依存性を示す。図11から、N/Ti原子数比の減少に伴い、VFBは負側にシフトしていく傾向があることが分かる。そこで、本実施形態では、PMOS側のVFBをできるだけ大きくするため、N/Ti原子数比が1以上のTiN膜を形成する。
【0042】
図12−図14は、第2の実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0043】
[図12]
第1の実施形態と同様に、シリコン基板101に、素子分離領域102、N型拡散層104、P型拡散層105、チャネルSiGe層106およびHfSiON膜108を形成する。
【0044】
[図13]
HfSiON膜108上にN/Ti原子数比が1以上のTiN膜を形成し、続いて、図示しないレジストをマスクに用いてNMOS側のTiN膜をエッチングすることにより、PMOS側のHfSiON膜108上にN/Ti原子数比が1以上のTiN膜110a(第1の窒化チタン膜)を選択的に残置させる。
【0045】
[図14]
全面にランタン酸化膜をPVD法により形成し、続いて、図示しないレジストをマスクに用いてPMOS側のランタン酸化膜をエッチングし、NMOS側のHfSiON膜108上にランタン酸化膜109を選択的に残置させる。全面(NMOS側のランタン酸化膜109、PMOS側のTiN膜110a)にN/Ti原子数比が0.67以上1未満の範囲のTiN膜110(第2の窒化チタン膜)を形成する。
【0046】
その後、第1の実施形態の同様の工程(図5以降の工程)を経て、図10に示した半導体装置が得られる。
【0047】
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態の半導体装置を示す断面図である。
【0048】
第2の実施形態の場合では、NMOS側にはランタン酸化膜は存在するが、PMOS側にはランタン酸化膜は存在していない。
【0049】
これに対して本実施形態では、NMOSおよびPMOS側共にランタン酸化膜109が存在する。これにより、第2の実施形態の図14においては必要であった、PMOS側のランタン酸化膜のエッチング工程(除去工程)がなくなるので、工程数を減らすことができ、スループットを高められる。
【0050】
また、本実施形態の場合、PMOS側にランタン酸化膜109を残しても、ランタン酸化膜109とHfSiON膜108との間にはTiN膜110aが介在している。このTiN膜110aは、ランタン酸化膜109中のLaがHfSiON膜108中に拡散することを抑制する。したがって、PMOS側に残したランタン酸化膜109からHfSiON膜108へのLa拡散によるVFBシフトの心配ない。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記実施形態では、ソース/ドレイン拡散を形成した後に、サイドウォールスペーサを除去してエクステンション拡散層を形成したが、オフセットスペーサの形成直後にエクステンション拡散層を形成し、その後、サイドウォールスペーサを形成してからソース/ドレイン拡散層を形成しても構わない。
【0053】
また、上記実施形態は本発明をCMOS(NおよびPチャネルMOSFET)に適用した例であるが、本発明はNチャネルMOSFETのみに適用しても構わない。
【0054】
さらに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0055】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
101…シリコン基板、102…素子分離領域、103…犠牲酸化膜、104…N型拡散層、105…P型拡散層、106…チャネルSiGe層、107…シリコン酸化膜(シリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜の絶縁膜)、108…HfSiON膜、109,109’…ランタン酸化膜、110…TiN膜,110a…TiN膜、111…Si膜(ゲート電極)、112…オフセットスペーサ、113…P型ソース/ドレイン拡散層、114…N型ソース/ドレイン拡散層、115…P型エクステンション拡散層、116…N型エクステンション拡散層、117…TiN電極(ゲート電極)、118…SiO2 膜(サイドウォールスペーサ)、119…シリコン窒化膜(サイドウォールスペーサー)、120…シリサイド膜(ゲート電極)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型半導体領域を含む半導体基板と、
前記P型半導体領域に形成されたNチャネルMOSFETと
を具備してなり、
前記NチャネルMOSFETは、前記半導体基板上に形成されたシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜の絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたハフニウムを含有するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜と前記絶縁膜との間に形成され、一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜を含むゲート電極とを具備してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記一定値は、1nmであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板はさらにN型半導体領域を含み、前記N型半導体領域にはPチャネルMOSFETが形成され、前記PチャネルMOSFETは、ハフニウムを含有するゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜を含むゲート電極とを具備してなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記PチャネルMOSFETの前記ゲート電極は、N/Ti原子数比が1以上の窒化チタン膜をさらに含み、前記N/Ti原子数比が1以上の窒化チタン膜は、前記N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜の下に選択的に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
N型半導体領域およびP型半導体領域を含む半導体基板上に、シリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜の絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜上にハフニウムを含有するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜を選択的に形成し、その後、前記N型半導体領域上の前記ランタン酸化膜を選択的に除去する工程と、
前記P型半導体領域上の前記ランタン酸化膜、および、前記N型半導体領域上の前記ゲート絶縁膜の上に、N/Ti原子数比が1未満の窒化チタン膜を含むゲート電極を形成する工程と、
熱処理により、前記ランタン酸化膜を構成するランタン酸化物を、前記絶縁膜と前記ゲート絶縁膜との間に拡散させ、前記絶縁膜と前記ゲート絶縁膜との間に、一定値以下の膜厚を有するランタン酸化膜を選択的に形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−161308(P2010−161308A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3909(P2009−3909)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】