説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】容易に製造することができ、トランジスタの性能を向上させることができる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1上にゲート絶縁膜2及びゲート電極3が形成されている。半導体基板1の表面の、平面視でゲート電極3を挟む位置に2個の不純物拡散層4が形成されている。2個の不純物拡散層4の表面に、ゲート絶縁膜2と半導体基板1との界面より低くなった掘り込み部6が設けられている。更に、半導体基板1のゲート絶縁膜2下の領域(チャネル)に応力を付加する応力付加膜が、少なくとも掘り込み部6内に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スケーリング則により、MOS(metal-oxide-semiconductor)トランジスタ等の電界効果トランジスタの性能は微細化に伴って向上するが、微細化が進むと、単なる微細化のみでは十分に性能を向上させることが困難になってきている。つまり、近年、スケーリング則による性能の向上の効果が飽和しつつある。そこで、歪技術による性能の向上について検討されている。
【0003】
しかしながら、従来の歪技術には、SiGe等のSiに代わる材料が必要とされたり、温度制御等の複雑な処理が必要とされたりする。このため、製造コストが大幅に上昇してしまう。また、歪み技術には不確定な要素が多いため、高い歩留まりを得ることが難しい。
【0004】
また、CMOS(complementary MOS)トランジスタを備えたSRAM(static random access memory)では、CMOSトランジスタの微細化に伴って書き込みマージン及び読み出しマージンの確保が困難になってきている。この要因として、チャネル等に導入される不純物の真性ばらつき、及び短チャネル効果による電流の低下等が挙げられる。
【0005】
書き込みマージン及び読み出しマージンは、周辺回路及び電源の改良等により確保することも可能であるが、周辺回路及び電源の改良等を行うと、それに伴ってコストが大幅に増加してしまう。また、全体のレイアウト面積が増加して、CMOSトランジスタの微細化による効果が相殺されてしまうこともある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−27194号公報
【特許文献2】特開2007−227563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、容易に製造することができ、トランジスタの性能を向上させることができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体装置の一態様には、半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極と、前記半導体基板の表面の、平面視で前記ゲート電極を挟む位置に形成された2個の不純物拡散層と、前記半導体基板の前記ゲート絶縁膜下の領域に応力を付加する応力付加膜と、が設けられている。そして、前記2個の不純物拡散層のうちの少なくとも一方の表面に、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面より低くなった掘り込み部が設けられており、前記応力付加膜は、少なくとも前記掘り込み部内に位置している。
【0009】
半導体装置の他の一態様には、半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成され、導電型がn型の不純物拡散層を備えたドライバトランジスタと、前記半導体基板の表面に形成され、導電型がp型の不純物拡散層を備えたロードトランジスタと、前記半導体基板の表面に形成され、導電型がn型の不純物拡散層を備えたトランスファトランジスタと、少なくとも前記ドライバトランジスタ及び前記ロードトランジスタのチャネルに前記半導体基板の表面に平行な方向の引張応力を付加する応力付加膜と、が設けられている。そして、前記ドライバトランジスタの前記不純物拡散層の表面に、当該ドライバトランジスタのチャネルの表面より低くなった掘り込み部が設けられている。前記ロードトランジスタの前記不純物拡散層の表面に、当該ロードトランジスタのチャネルの表面より低くなった掘り込み部が設けられている。前記応力付加膜は、少なくとも、前記ドライバトランジスタ及び前記ロードトランジスタの前記掘り込み部内に位置している。
【0010】
半導体装置の製造方法の一態様では、半導体基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成し、その後、前記ゲート電極の側方にサイドウォールを形成し、前記半導体基板の表面の、平面視で前記ゲート電極を挟む位置に2個の不純物拡散層を形成する。次に、前記2個の不純物拡散層のうちの少なくとも一方の表面に、前記サイドウォールの外延に整合し、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面より低くなった掘り込み部を形成する。そして、少なくとも前記掘り込み部内に位置し、前記半導体基板の前記ゲート絶縁膜下の領域に応力を付加する応力付加膜を形成する。
【発明の効果】
【0011】
上記半導体装置等によれば、自己整合的な形成が可能な掘り込み部内に応力付加膜が位置するので、半導体基板のゲート絶縁膜下の領域(チャネル)に十分な歪を生じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら詳述する。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0014】
第1の実施形態においては、シリコン基板等の半導体基板1上にゲート絶縁膜2及びゲート電極3が形成され、ゲート電極3の側方にサイドウォール5が形成されている。また、平面視でゲート電極3を挟むようにして2つの不純物拡散層4が半導体基板1の表面に形成されている。不純物拡散層4はサイドウォール5の下方を起点としてゲート電極3から離間するように広がっている。
【0015】
そして、本実施形態では、不純物拡散層4のサイドウォール5から露出している部分に掘り込み部6が形成されている。つまり、不純物拡散層4の表面の位置が、サイドウォール5から露出している部分において、サイドウォール5により覆われている部分よりも低くなっている。また、不純物拡散層4の表面にはシリサイド層7が形成されている。このようにして電界効果トランジスタTrが構成されている。掘り込み部6の深さは、20nm〜40nm程度である。掘り込み部6の深さが20nm未満であると、電流増加の効果を十分に得ることができないことがある。また、掘り込み部6の深さが40nmより大きいと、不純物の拡散の際に連続性及び/又は抵抗に問題が起こることがある。
【0016】
更に、本実施形態では、電界効果トランジスタTrを覆う応力付加膜8が形成されている。応力付加膜8は掘り込み部6内にも形成されている。応力付加膜8は、例えばシリコン窒化物からなり、電界効果トランジスタTrのチャネルに対し、ソースとドレインとを結ぶ方向の応力を作用させる。例えば、電界効果トランジスタTrがnチャネル型トランジスタである場合、応力付加膜8としてはチャネルに引張応力を作用させるものが用いられ、電界効果トランジスタTrがpチャネル型トランジスタである場合、応力付加膜8としてはチャネルに圧縮応力を作用させるものが用いられる。
【0017】
本実施形態では、応力付加膜8上に、表面が平坦化された層間絶縁膜9が形成されており、この層間絶縁膜9内に、不純物拡散層4に接するプラグ10が埋め込まれている。更に、層間絶縁膜9上に、プラグ10に接する配線11が形成されている。
【0018】
このように構成された本実施形態においては、不純物拡散層4の表面に掘り込み部6が形成され、その内部にも応力付加膜8が形成されているため、掘り込み部6が形成されていない場合と比較して、強い応力をチャネルに作用させることができる。つまり、掘り込み部6の存在により応力付加膜8とチャネルとの距離が短縮されるため、チャネルに強い応力が作用する。この結果、チャネルに生じる歪みが大きくなる。
【0019】
従って、電界効果トランジスタTrがnチャネル型トランジスタであって、且つ応力付加膜8としてチャネルに引張応力を作用させるものが用いられている場合には、掘り込み部6が形成されていないものと比較して大きな電流を得ることができる。また、電界効果トランジスタTrがpチャネル型トランジスタであって、且つ応力付加膜8としてチャネルに圧縮応力を作用させるものが用いられている場合にも、掘り込み部6が形成されていないものと比較して大きな電流を得ることができる。
【0020】
なお、後述のように、用途によっては、掘り込み部6が形成されていないものと比較して小さな電流を得ることが望ましいこともある。従って、電界効果トランジスタTrがnチャネル型トランジスタである場合に、応力付加膜8としてチャネルに圧縮応力を作用させるものが用いられてもよい。また、電界効果トランジスタTrがpチャネル型トランジスタである場合に、応力付加膜8としてチャネルに引張応力を作用させるものが用いられてもよい。
【0021】
次に、本願発明者が行った第1の実施形態に関するシミュレーションについて説明する。このシミュレーションでは、3種類のnチャネル型トランジスタにおける応力分布を見積もった。第1のnチャネル型トランジスタは、掘り込み部6がなく、不純物拡散層4の表面が平坦なものである。第2のnチャネル型トランジスタは、深さが20μmの掘り込み部6が形成されたものである。第3のnチャネル型トランジスタは、深さが40μmの掘り込み部6が形成されたものである。また、いずれのnチャネル型トランジスタにおいても、応力付加膜8として、厚さが60nmで、引張応力が1GPaのものが用いられることとした。また、ゲート長が50nm、サイドウォール5の横方向の厚さが60nmであるとした。
【0022】
この結果を図2に示す。図2は、第1の実施形態に関するシミュレーション(深さと応力との関係)の結果を示す図である。図2(a)は第1のnチャネル型トランジスタの結果を示し、(b)は第2のnチャネル型トランジスタの結果を示し、(c)は第3のnチャネル型トランジスタの結果を示す。図2では、濃淡が薄い部分ほど応力が大きいことを示している。そして、図2に示すように、掘り込み部6が深いものほどチャネルに作用する応力が大きいことを示す結果が得られた。
【0023】
本願発明者は、更に、上記の3種類のnチャネル型トランジスタについて、ゲート電圧とドレイン電流との関係についてのシミュレーションも行った。この結果を図3に示す。図3は、第1の実施形態に関するシミュレーション(ゲート電圧とドレイン電流との関係)の結果を示す図である。図3に示すように、掘り込み部6が深いものほど大きなドレイン電流が得られることを示す結果が得られた。即ち、第1のnチャネル型トランジスタを基準とすると、第2のnチャネル型トランジスタでは、17%程度高いドレイン電流が得られ、第3のnチャネル型トランジスタでは、32%程度高いドレイン電流が得られることを示す結果が得られた。
【0024】
なお、圧縮応力が正の応力付加膜8を用いたpチャネル型トランジスタでも、同様に、掘り込み部6が深いものほどチャネルに作用する応力が大きくなり、また、高いドレイン電流が得られる。
【0025】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図4は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0026】
先ず、図4(a)に示すように、半導体基板1上にゲート絶縁膜2及びゲート電極3を形成する。次いで、ゲート電極3をマスクとしたイオン注入を行って、半導体基板1の表面に不純物導入領域4aを形成する。nチャネル型トランジスタを形成する場合、n型不純物の導入を行い、pチャネル型トランジスタを形成する場合、p型不純物の導入を行う。
【0027】
その後、図4(b)に示すように、ゲート電極3の側方にサイドウォール5を形成する。続いて、ゲート電極3及びサイドウォール5をマスクとしたイオン注入を行って、半導体基板1の表面に、一部が不純物導入領域4aの一部と重畳する不純物導入領域4bを形成する。nチャネル型トランジスタを形成する場合、n型不純物の導入を行い、pチャネル型トランジスタを形成する場合、p型不純物の導入を行う。また、不純物導入領域4aを形成する際よりも高い濃度で不純物を導入する。
【0028】
次いで、熱処理を行うことにより、不純物導入領域4a及び4b中の不純物を拡散させ、図4(c)に示すように、不純物拡散層4を形成する。
【0029】
その後、ゲート電極3及びサイドウォール5をマスクとして不純物拡散層4の表面をエッチングすることにより、図4(d)に示すように、掘り込み部6を形成する。掘り込み部6の深さは、例えば20nm〜40nm程度とする。このエッチングとしては、例えば、TMAH(tetra methyl ammonium hydride)を用いたウェットエッチング又はドライエッチングを行う。
【0030】
続いて、図4(e)に示すように、掘り込み部6が形成された不純物拡散層4の表面にシリサイド層7を形成する。
【0031】
次いで、図4(f)に示すように、電界効果トランジスタTrを覆う応力付加膜8を形成する。応力付加膜8としては、例えば、電界効果トランジスタTrがnチャネル型トランジスタである場合、チャネルに引張応力を作用させるものを形成し、電界効果トランジスタTrがpチャネル型トランジスタである場合、チャネルに圧縮応力を作用させるものを形成する。また、応力付加膜8の厚さは、例えば40nm〜100nm程度とする。応力付加膜8の厚さが40nm未満であると、十分な応力を作用させることが困難なことがある。また、応力付加膜8の厚さが100nmを超えると、ゲート電極3よりも高くなって、その後の処理が困難になることがある。
【0032】
その後、図4(g)に示すように、応力付加膜8上に表面が平坦な層間絶縁膜9を形成する。続いて、層間絶縁膜9及び応力付加膜8に、シリサイド層7まで到達するコンタクトホールを形成し、その内部にプラグ10を形成する。
【0033】
次いで、図4(h)に示すように、層間絶縁膜9上にプラグ10に接する配線11を形成する。その後、上層の配線等を形成して半導体装置を完成させる。
【0034】
このような製造方法では、SiGe等のSiよりも高価な材料を用いず、また、複雑な処理等を用いずに、チャネルに大きな応力が作用する半導体装置を得ることができる。つまり、掘り込み部6が存在するためにチャネルに大きな応力が作用するが、掘り込み部6の形成は自己整合的に行うことができるため、容易に半導体装置を製造することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0036】
第2の実施形態においては、2つの不純物拡散層4の一方のみに掘り込み部6が形成されている。他方の不純物拡散層4では、掘り込み部6が形成されることなくシリサイド層7が形成されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0037】
このような第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果がえられる。また、電流分布が非対称になるため、2つの不純物拡散層4間で電流を流す向きを切り替えることにより、つまり、ソースとドレインとを切り替えることにより、ゲート電圧を固定したままでドレイン電流を切り替えることができる。
【0038】
次に、本願発明者が行った第2の実施形態に関するシミュレーションについて説明する。このシミュレーションでも、3種類のnチャネル型トランジスタにおける応力分布を見積もった。第4のnチャネル型トランジスタは、掘り込み部6がなく、不純物拡散層4の表面が平坦なものである。第5のnチャネル型トランジスタは、深さが20μmの掘り込み部6が一方の不純物拡散層4に形成されたものである。第6のnチャネル型トランジスタは、深さが40μmの掘り込み部6が一方の不純物拡散層4に形成されたものである。また、いずれのnチャネル型トランジスタにおいても、応力付加膜8として、厚さが60nmで、引張応力が1GPaのものが用いられることとした。また、ゲート長が50nm、サイドウォール5の横方向の厚さが60nmであるとした。
【0039】
この結果を図6に示す。図6は、第2の実施形態に関するシミュレーション(深さと応力との関係)の結果を示す図である。図6(a)は第4のnチャネル型トランジスタの結果を示し、(b)は第5のnチャネル型トランジスタの結果を示し、(c)は第6のnチャネル型トランジスタの結果を示す。図6でも、濃淡が薄い部分ほど応力が大きいことを示している。そして、図6に示すように、掘り込み部6が深いものほどチャネルに作用する応力が大きいことを示す結果が得られた。また、第5及び第6のnチャネル型トランジスタでは、掘り込み部6が形成された不純物拡散層4近傍において、掘り込み部6が形成されていない不純物拡散層4近傍よりも大きな応力が作用していることを示す結果が得られた。
【0040】
本願発明者は、更に、第6のnチャネル型トランジスタについて、電流を流す方向とドレイン電流との関係についてのシミュレーションも行った。この結果を図7に示す。図7は、第2の実施形態に関するシミュレーション(電流を流す方向とドレイン電流との関係)の結果を示す図である。図7に示すように、掘り込み部6が形成された不純物拡散層4をドレインとした場合(◆)に、掘り込み部6が形成されていない不純物拡散層4をドレインとした場合(■)よりも高いドレイン電流が得られることを示す結果が得られた。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、SRAMセルに関する。図8は、第3の実施形態に係る半導体装置(SRAMセル)の構成を示す図である。
【0042】
第3の実施形態では、2本のビット線BL及びxBLに、夫々トランスファトランジスタT1、T2のn型ソース拡散層ST1が接続されている。トランスファトランジスタT1及びT2のゲート電極GT1及びGT2はワード線WLに接続されている。トランスファトランジスタT1のn型ドレイン拡散層DT1には、ロードトランジスタL1のp型ドレイン拡散層DL1、及びドライバトランジスタD1のn型ドレイン拡散層DD1が接続されている。また、トランスファトランジスタT2のn型ドレイン拡散層DT2には、ロードトランジスタL2のp型ドレイン拡散層DL2、及びドライバトランジスタD2のn型ドレイン拡散層DD2が接続されている。ロードトランジスタL1及びL2のp型ソース拡散層SL1及びSL2には電源電位VDDが付与され、ドライバトランジスタD1及びD2のn型ソース拡散層SD1及びSD2は接地電位GNDが付与される。ロードトランジスタL1及びドライバトランジスタD1に共通のゲート電極GDL1が設けられ、ロードトランジスタL2及びドライバトランジスタD2に共通のゲート電極GDL2が設けられている。また、各トランジスタの周囲には素子分離領域20が設けられている。但し、トランスファトランジスタT1のn型ドレイン拡散層DT1及びドライバトランジスタD1のn型ドレイン拡散層DD1は互いに直接接しており、トランスファトランジスタT2のn型ドレイン拡散層DT2及びドライバトランジスタD2のn型ドレイン拡散層DD2は互いに直接接している。このような6個のトランジスタがSRAMセルに含まれている。トランスファトランジスタT1及びT2並びにドライバトランジスタD1及びD2は、nチャネル型トランジスタであり、ロードトランジスタL1及びL2は、pチャネル型トランジスタである。
【0043】
ここで、ドライバトランジスタD1、ロードトランジスタL1及びトランスファトランジスタT1の構成について説明する。図9(a)は、ドライバトランジスタD1の構造を示す断面図であり、図9(b)は、ロードトランジスタL1の構造を示す断面図であり、図9(c)は、トランスファトランジスタT1の構造を示す断面図である。図9(a)は、図8(b)中のI−I線に沿った断面を示し、図9(b)は、図8(b)中のII−II線に沿った断面を示し、図9(c)は、図8(b)中のIII−III線に沿った断面を示す。
【0044】
ドライバトランジスタD1では、図9(a)に示すように、半導体基板21上にゲート絶縁膜22及びゲート電極23が形成され、ゲート電極23の側方にサイドウォール25が形成されている。また、平面視でゲート電極23を挟むようにしてn型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1が半導体基板21の表面に形成されている。n型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1はサイドウォール25の下方を起点としてゲート電極23から離間するように広がっている。
【0045】
また、n型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1のサイドウォール25から露出している部分に掘り込み部26が形成されている。つまり、n型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1の表面の位置が、サイドウォール25から露出している部分において、サイドウォール25により覆われている部分よりも低くなっている。また、n型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1の表面にはシリサイド層27が形成されている。図示していないが、チャネルの導電型はp型である。このようにしてドライバトランジスタD1が構成されている。ドライバトランジスタD2も同様の構成である。
【0046】
ロードトランジスタL1では、図9(b)に示すように、半導体基板1の表面に、p型ソース拡散層SL1及びp型ドレイン拡散層DL1がn型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1に代えて形成されている。また、図示していないが、チャネルの導電型はn型である。他の構成はドライバトランジスタD1と同様である。このようにしてロードトランジスタL1が構成されている。ロードトランジスタL2も同様の構成である。
【0047】
トランスファトランジスタT1では、図9(c)に示すように、半導体基板1の表面に、n型ソース拡散層ST1及びn型ドレイン拡散層DT1がn型ソース拡散層SD1及びn型ドレイン拡散層DD1に代えて形成されている。他の構成はドライバトランジスタD1と同様である。このようにしてトランスファトランジスタT1が構成されている。トランスファトランジスタT2も同様の構成である。
【0048】
更に、本実施形態では、6個のトランジスタを覆い、各トランジスタのチャネルに引張応力を付加する応力付加膜28が形成されている。
【0049】
一般的に、SRAMセルの書き込みマージンはパラメータ「β ratio」に基づいて評価することができ、読み出しマージンはパラメータ「PUR」に基づいて評価することができる。パラメータ「β ratio」及び「PUR」は次の式で表わされる。ここで、「Ion_transfer」はトランスファトランジスタを流れる電流の大きさであり、「Ion_load」はロードトランジスタを流れる電流の大きさであり、「Ion_driver」はドライバトランジスタを流れる電流の大きさである。
β ratio=Ion_driver/Ion_transfer
PUR=Ion_load/Ion_transfer
【0050】
そして、パラメータ「β ratio」が大きいほど読み出しマージンが広がり、パラメータ「PUR」が小さいほど書き込みマージンが広がる。
【0051】
本実施形態と掘り込み部26が全く形成されていないSRAMセルとを比較すると、トランスファトランジスタに流れる電流の大きさは同程度である。また、ロードトランジスタに流れる電流の大きさは、本実施形態において小さくなり、ドライバトランジスタに流れる電流の大きさは、本実施形態において大きくなる。つまり、本実施形態では、「Ion_transfer」が同程度のまま、「Ion_load」が小さくなり、「Ion_transfer」が大きくなる。このため、本実施形態と掘り込み部26が全く形成されていないSRAMセルとを比較すると、パラメータ「β ratio」が大きくなると共に、パラメータ「PUR」が小さくなる。従って、読み出しマージン及び書き込みマージンの双方を向上させることができる。
【0052】
本願発明者がシミュレーションを行ったところ、掘り込み部26が形成されていないSRAMセルを基準とすると、掘り込み部26の深さが20nmの場合、パラメータ「β ratio」が6%大きくなり、パラメータ「PUR」が18%小さくなるという結果が得られた。また、掘り込み部26の深さが40nmの場合は、パラメータ「β ratio」が13%大きくなり、パラメータ「PUR」が29%小さくなるという結果も得られた。なお、このシミュレーションでは、応力付加膜28として、厚さが60nmで、引張応力が1GPaのものが用いられることとした。また、ゲート長が50nm、サイドウォール25の横方向の厚さが60nmであるとした。
【0053】
なお、SRAMでは、複数のSRAMセルがアレイ状に配列している。図8(b)には1個のSRAMセルのみを図示しているが、2個のSRAMセルのレイアウトは図10のようになる。このようなレイアウトで複数のSRAMセルが縦横に並んで配列されている。
【0054】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0055】
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極と、
前記半導体基板の表面の、平面視で前記ゲート電極を挟む位置に形成された2個の不純物拡散層と、
前記半導体基板の前記ゲート絶縁膜下の領域に応力を付加する応力付加膜と、
を有し、
前記2個の不純物拡散層のうちの少なくとも一方の表面に、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面より低くなった掘り込み部が設けられており、
前記応力付加膜は、少なくとも前記掘り込み部内に位置していることを特徴とする半導体装置。
【0056】
(付記2)
前記ゲート電極の側方に形成されたサイドウォールを有し、
前記掘り込み部は、前記サイドウォールの外延に整合するようにして形成されていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0057】
(付記3)
前記応力付加膜は、前記ゲート電極を跨いで前記2個の不純物拡散層上まで延在していることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0058】
(付記4)
前記不純物拡散層の導電型はn型であり、
前記応力付加膜は、前記半導体基板の表面に平行な方向の引張応力を付加することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0059】
(付記5)
前記不純物拡散層の導電型はp型であり、
前記応力付加膜は、前記半導体基板の表面に平行な方向の圧縮応力を付加することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0060】
(付記6)
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成され、導電型がn型の不純物拡散層を備えたドライバトランジスタと、
前記半導体基板の表面に形成され、導電型がp型の不純物拡散層を備えたロードトランジスタと、
前記半導体基板の表面に形成され、導電型がn型の不純物拡散層を備えたトランスファトランジスタと、
少なくとも前記ドライバトランジスタ及び前記ロードトランジスタのチャネルに前記半導体基板の表面に平行な方向の引張応力を付加する応力付加膜と、
を有し、
前記ドライバトランジスタの前記不純物拡散層の表面に、当該ドライバトランジスタのチャネルの表面より低くなった掘り込み部が設けられており、
前記ロードトランジスタの前記不純物拡散層の表面に、当該ロードトランジスタのチャネルの表面より低くなった掘り込み部が設けられており、
前記応力付加膜は、少なくとも、前記ドライバトランジスタ及び前記ロードトランジスタの前記掘り込み部内に位置していることを特徴とする半導体装置。
【0061】
(付記7)
前記掘り込み部の深さは、20nm乃至40nmであることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0062】
(付記8)
半導体基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の側方にサイドウォールを形成する工程と、
前記半導体基板の表面の、平面視で前記ゲート電極を挟む位置に2個の不純物拡散層を形成する工程と、
前記2個の不純物拡散層のうちの少なくとも一方の表面に、前記サイドウォールの外延に整合し、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面より低くなった掘り込み部を形成する工程と、
少なくとも前記掘り込み部内に位置し、前記半導体基板の前記ゲート絶縁膜下の領域に応力を付加する応力付加膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0063】
(付記9)
前記応力付加膜を、前記ゲート電極を跨いで前記2個の不純物拡散層上まで延在するように形成することを特徴とする付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に関するシミュレーション(深さと応力との関係)の結果を示す図である。
【図3】第1の実施形態に関するシミュレーション(ゲート電圧とドレイン電流との関係)の結果を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図6】第2の実施形態に関するシミュレーション(深さと応力との関係)の結果を示す図である。
【図7】第2の実施形態に関するシミュレーション(電流を流す方向とドレイン電流との関係)の結果を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る半導体装置(SRAMセル)の構成を示す図である。
【図9】ドライバトランジスタD1、ロードトランジスタL1及びトランスファトランジスタT1の構成を示す断面図である。
【図10】2個のSRAMセルの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1:半導体基板
2:ゲート絶縁膜
3:ゲート電極
4:不純物拡散層
5:サイドウォール
6:掘り込み部
7:シリサイド層
8:応力付加膜
Tr:電界効果トランジスタ
21:半導体基板
22:ゲート絶縁膜
23:ゲート電極
25:サイドウォール
26:掘り込み部
27:シリサイド層
28:応力付加膜
T1、T2:トランスファトランジスタ
L1、L2:ロードトランジスタ
D1、D2:ドライバトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜及びゲート電極と、
前記半導体基板の表面の、平面視で前記ゲート電極を挟む位置に形成された2個の不純物拡散層と、
前記半導体基板の前記ゲート絶縁膜下の領域に応力を付加する応力付加膜と、
を有し、
前記2個の不純物拡散層のうちの少なくとも一方の表面に、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面より低くなった掘り込み部が設けられており、
前記応力付加膜は、少なくとも前記掘り込み部内に位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極の側方に形成されたサイドウォールを有し、
前記掘り込み部は、前記サイドウォールの外延に整合するようにして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記応力付加膜は、前記ゲート電極を跨いで前記2個の不純物拡散層上まで延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成され、導電型がn型の不純物拡散層を備えたドライバトランジスタと、
前記半導体基板の表面に形成され、導電型がp型の不純物拡散層を備えたロードトランジスタと、
前記半導体基板の表面に形成され、導電型がn型の不純物拡散層を備えたトランスファトランジスタと、
少なくとも前記ドライバトランジスタ及び前記ロードトランジスタのチャネルに前記半導体基板の表面に平行な方向の引張応力を付加する応力付加膜と、
を有し、
前記ドライバトランジスタの前記不純物拡散層の表面に、当該ドライバトランジスタのチャネルの表面より低くなった掘り込み部が設けられており、
前記ロードトランジスタの前記不純物拡散層の表面に、当該ロードトランジスタのチャネルの表面より低くなった掘り込み部が設けられており、
前記応力付加膜は、少なくとも、前記ドライバトランジスタ及び前記ロードトランジスタの前記掘り込み部内に位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
半導体基板上にゲート絶縁膜及びゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極の側方にサイドウォールを形成する工程と、
前記半導体基板の表面の、平面視で前記ゲート電極を挟む位置に2個の不純物拡散層を形成する工程と、
前記2個の不純物拡散層のうちの少なくとも一方の表面に、前記サイドウォールの外延に整合し、前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との界面より低くなった掘り込み部を形成する工程と、
少なくとも前記掘り込み部内に位置し、前記半導体基板の前記ゲート絶縁膜下の領域に応力を付加する応力付加膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記応力付加膜を、前記ゲート電極を跨いで前記2個の不純物拡散層上まで延在するように形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図2】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−157616(P2010−157616A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335123(P2008−335123)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】