説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】高温環境下での絶縁膜の腐食を抑制して、絶縁不良を回避した半導体装置及びその製造方法を提供することことを課題とする。
【解決手段】半導体基板11上にエピタキシャル成長により第1絶縁膜12が積層形成され、この第1絶縁膜12上には、耐熱性の電極13が選択的に形成され、この電極13の上部には、シリカガラスを主成分とする層間絶縁膜14が形成され、この層間絶縁膜14の表面には絶縁バリア膜15が形成され、この絶縁バリア膜15の上には、Alの配線16が形成され、絶縁バリア膜15は、絶縁性の窒化物、炭化物、窒化炭化物の単層膜、多層膜、または混合膜で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下での使用に適した半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)半導体は、シリコンや砒化ガリウム等の他の半導体に比べて禁制帯幅が広いので、pn接合のオン抵抗ならびに逆方向耐圧の一方の特性を著しく高めたり、あるいは双方の特性を従来に比べてある程度高めたデバイスに有用である。
【0003】
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献には、炭化珪素半導体を用いたパワーデバイスの縦型MOSFETの技術が記載されている。この半導体装置は、炭化珪素半導体基板の表面にエピタキシャル成長によりドリフト層が積層形成され、このドラフト層内の表層部にベース領域が形成され、このベース領域内に一対のソース領域が形成されている。各ソース領域上には、ゲート絶縁膜を介してポリシリコンからなる耐熱性のゲート電極が形成され、ゲート電極上には無添加またはリンやボロンを添加した石英ガラス(シリカガラス)からなる層間絶縁膜を介してAl(アルミニウム)の配線電極が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4078391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の炭化珪素半導体装置を、200℃程度以上の高温環境下におくと、短期間にゲート電極がゲート電極上部に形成された配線電極と短絡してしまうといった不具合が発生するおそれがあった。このような不具合を詳しく解析してみると、Alの配線電極が下層のシリカガラスの層間絶縁膜を激しく腐食しながら侵入し、この層間絶縁膜を貫通し、ゲート電極に到達したことが原因であることが判明した。すなわち、高温時の絶縁不良は、Alの配線電極がシリカガラスの層間絶縁膜を腐食し尽くすということが原因であった。
【0006】
このような腐食現象は、上述した炭化珪素半導体装置に限ったことではなく、シリカガラスの層間絶縁膜を介在してAlの配線電極とその下部の電極あるいは半導体基板に形成された導電領域とが対向する3層構造を有するすべての半導体装置でも発生しうる普遍的な問題であることが言える。
【0007】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高温環境下での絶縁膜の腐食を抑制して、絶縁不良を回避した半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の課題を解決する手段は、絶縁性の窒化物、炭化物、窒化炭化物の単層膜または多層膜で構成されたバリア膜を介して絶縁膜と金属配線とが配置形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁性の窒化物、炭化物、窒化炭化物の単層膜または多層膜で構成されたバリア膜によって絶縁膜と金属配線とが分離されているので、金属配線による絶縁膜の腐食を抑制することが可能となり、絶縁不良を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置ならびに従来の半導体装置の高温下での不良特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例2に係る半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例3に係る半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施例4に係る半導体装置の要部構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例5に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図8−A】本発明の実施例5に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図8−B】本発明の実施例5に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施例を説明する。なお、以下の実施例の説明で参照する図面は、模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際の装置のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。さらに、以下提示する各図において、同符号のものは同一機能を有するものであり、一度説明した後は冗長を避けるために、原則として説明を省略するか簡略化する。
【0012】
本発明の技術思想は、概ね200℃程度以上の高温においてAlの配線が接するシリカガラスの層間絶縁膜を腐食して配線の近傍に形成された他の配線や電極、導電層と短絡するという課題を解決するものであるから、本発明の技術思想の根幹と関係の薄い部位が多数含まれている実際の半導体装置(デバイス)を用いて本発明を説明すると冗長になり、かえって本発明の要旨が判りにくくなるおそれがあるので、それを回避するために、以下に説明する実施例1〜4においては、本発明の半導体装置を単純化した構造で説明し、本発明の実際のデバイスへの適用は、実施例5で説明することにする。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係る半導体装置の要部構成を示す断面図である。図1に示す実施例1の半導体装置は、シリコンや炭化珪素等の半導体基板11上にエピタキシャル成長により第1絶縁膜12が積層形成されている。この第1絶縁膜12は、実際のデバイスにあってはゲート絶縁膜やフィールド絶縁膜に相当する。第1絶縁膜12上には、耐熱性の電極13が選択的に形成されている。この電極13は、既述した従来技術との連関でMOSデバイス等のゲート電極が含まれるが、本発明はこれに限定するものではない。すなわち、電極13には後述するシリカガラスと反応しない導電材料が選択される。例えば、不純物が添加されたポリSi(シリコン)、あるいはポリSiの一部または全部を珪化させたポリサイド、もしくはMoやW等の高融点金属などである。
【0014】
電極13の上方には、後述する層間絶縁膜14ならびに絶縁バリア膜15を介して電極13とは接続されていないAl(アルミニウム)の配線16が形成されている。配線16は純粋なAlでもよいし、SiやCuを添加したAlでもよい。なお、配線16の下部には、この配線16と他の領域とが接合するコンタクト領域(接合面)でのAlのスパイク現象を抑止するためのTiやTiN、TaNなどのバリアメタルを備えていてもよい。以下、これらバリアメタルも含めたものをAlの配線と称する。
【0015】
配線16と電極13との間にはシリカガラスを主成分とする層間絶縁膜14が挟持されている。この層間絶縁膜14は、純粋(無添加)なシリカガラス(USG)膜のほか、無添加のシリカガラスにリンPを添加したPSG膜、ホウ素Bを添加したBSG膜、フッ素Fを添加したFSG膜、Cを添加したCSG膜、及びこれらの混合膜や積層膜などで形成される。なお、層間絶縁膜14は、電極13と配線16とを電気的にのみならず静電結合的にも絶縁する機能が要求される場合には、一般に数百nm以上の厚みで、熱酸化(SiO)膜などと比べると遥かに疎な膜(誘電率を下げるため)で形成される。
【0016】
絶縁バリア膜15は、本発明の特徴的な構成要素であり、層間絶縁膜14の上部に形成されている。絶縁バリア膜15は、20nm程度より厚く層間絶縁膜14より薄い絶縁体で形成され、少なくとも以下に示す機能を有するように構成材料が選択される。
【0017】
(機能1)配線16を構成するAlの内方(層間絶縁膜14側への)拡散を阻止する。
【0018】
(機能2)電極13を構成するSiの外向(配線16側への)拡散を阻止する。
【0019】
(機能3)絶縁バリア膜15が接する配線16を構成するAl、ならびに層間絶縁膜14を構成するシリガガラスとの化学反応を同時に阻止する。
【0020】
(機能4)配線16を構成するAlならびに層間絶縁膜14を構成するシリカガラスとの双方に対して強固(少なくとも装置としての信頼性を確保できる程度に十分)な接合力を備えている。
【0021】
なお、配線16の下部に上述したようにバリアメタルが形成されている場合には、絶縁バリア膜15はバリアメタルを構成する元素の内方拡散を阻止する機能、ならびにバリアメタルと層間絶縁膜14との間の化学反応を阻止する機能をも併せ備えているものとする。
【0022】
このような絶縁バリア膜15に適した材料としては、例えば絶縁性の窒化物、炭化物、窒化炭化物の単層膜または多層膜、混合膜を挙げることができる。これに該当する材料としては、例えばSiC膜、SiN膜、GeC膜、GeN膜、AlN膜などである。なお、絶縁バリア膜15を構成する成分に酸素が含有していると腐食が急激に起きやすくなるので、酸素が含まれないようにすることが必要である。
【0023】
次に、図1に示す構造を得る製造方法について説明する。
【0024】
先ず、周知の洗浄液で十分洗浄した半導体基板11の表面に所定の方法、例えば熱酸化により第1絶縁膜12を成長させる。続いて、第1絶縁膜12上に耐熱性の電極膜を全面に成膜した後、この電極膜を周知のフォトリソグラフィとエッチングによりパターニングして、耐熱性の電極13を形成する。例えば、低抵抗ポリSiが電極膜である場合には、ポリSiの成長は減圧CVD法、ドーピングはPOClを原料とした固体熱拡散、エッチング(パターニング)は反応性イオンエッチング法を用いる。
【0025】
その後、半導体基板11の全面にシリカガラスを主成分とする層間絶縁膜14を常圧CVD(化学的気相成長)法やプラズマCVD法などで成膜する。
【0026】
次に、層間絶縁膜14の上面に無定形でかつ緻密でかつ応力の小さい絶縁バリア膜15を成長させる。この成長法としては、例えば600℃程度以下の温度で成長可能なプラズマCVD法、またはMO(有機金属)CVD法、ALD(原子層成膜)法、光励起CVD法が望ましい。
【0027】
一方、600℃程度以上で成長した絶縁バリア膜15は応力の強い膜となり、これが原因となって層間絶縁膜14に亀裂を生じさせたり、Alの配線16や層間絶縁膜14と剥離させたりするおそれがあるので、本発明の目的に適っているとは言い難い。そこで、いくつかの絶縁バリア膜材の成長方法を具体的に述べると、SiNの場合にはシランと窒素またはアンモニアを原料ガスとしたプラズマCVD法、SiCの場合にはトリメチルシランまたはテトラメチルシランとHeを原料ガスとしたプラズマCVD法で形成することができる。
【0028】
最後に、Alの配線膜を基板全面にスパッタ蒸着した後、周知のフォトリソグラフィと反応性イオンエッチングでパターニングしてAlの配線16を形成し、図1に示す構成の半導体装置が完成する。
【0029】
次に、上記構成の半導体装置における作用、効果について説明する。
【0030】
先ず、配線16と層間絶縁膜14との間に、Alとシリカガラスとの化学反応を阻止する機能(上記機能3)を備えた絶縁バリア膜15を設けることで、Alの配線16と層間絶縁膜14とが高温において激しく反応する事態を回避することができる。したがって、配線16と層間絶縁膜14との反応は、配線16から絶縁バリア膜15を内向拡散したAlの原子と層間絶縁膜14との反応、もしくは層間絶縁膜14から外向拡散したSiの原子と配線16との反応に限られることになる。
【0031】
一方、上述したように絶縁バリア膜15は、Alの内方拡散を阻止する機能(上記機能1)とSiの外向拡散の阻止する機能(上記機能2)も兼備していることから、これらの拡散反応も反応速度的に極めて抑制することが可能となる。この結果、配線16が層間絶縁膜14を短期間に腐食し尽くすことは抑制され、配線16と電極13との短絡を防止することができる。さらに、絶縁バリア膜15は、配線16とも層間絶縁膜14とも強い接合性を有するので、絶縁バリア膜15を配線16と層間絶縁膜14との間に介在させることにより、新たに剥離不良が生じるおそれも回避することができる。また、絶縁バリア膜15は、成膜法の適正化により低応力の膜として生成することが可能なので、下部の層間絶縁膜14に亀裂等の損傷を招くおそれも回避することができる。
【0032】
以下、実験結果に基づいて、上記構成の半導体装置の具体的な特性効果について説明する。
【0033】
先ず、上記図1に示す構成の半導体装置を実際に製造し、500℃程度の不活性雰囲気に保存し、配線16と電極13との短絡の発生を観察した。製造した装置の仕様は以下の通りである。
【0034】
電極13:n型ポリSi電極
層間絶縁膜14:PSGとUSGの積層膜
絶縁バリア膜15:プラズマSiN膜またはプラズマSiC膜(厚さ150nm)
配線16:スパッタAl膜(Si1%添加、バリアメタルあり)
なお、層間絶縁膜14と絶縁バリア膜15の全厚は1μmである。また、比較のために、絶縁バリア膜15もバリアメタルもない従来の半導体装置、ならびに絶縁バリア膜はなくバリアメタルだけある従来の半導体装置も作製した。
【0035】
図2は上記信頼性試験の結果を示すものであり、500℃程度での保管時間(横軸)と短絡の累積不良率(縦軸)との関係を示している。横軸の時間軸は対数で表されている。図2から明らかなように、この信頼性試験で採用した、プラズマSiN膜(図2では「p−SiN」と表記)の絶縁バリア膜15、ならびにもプラズマSiC膜(図2では「p−SiC」と表記)の絶縁バリア膜15は、従来技術(図2では「なし」と表記)に比べて3桁半以上、1000時間を越える長寿命を達成しているのがわかる。
【0036】
また、図2においては、配線16にバリアメタルを設けた場合(図2では「BM」と表記)には、設けない場合に比べて一定の効果があることを示している。しかし、その効果は寿命を数十時間に引き上げる程度の改善にとどまり、絶縁バリア膜15を設けた場合に比べて格段に劣ることがわかる。
【0037】
さらに、SiC膜は、累積故障率50%程度において約4200時間程度であるのに対して、SiN膜では同故障率の保管時間はSiC膜の半分(1/2)程度となり、絶縁バリア膜15は、SiN膜よりもSiC膜が相対的に優れていることがわかる。
【実施例2】
【0038】
図3は本発明の実施例2に係る半導体装置の要部構成を示す断面図である。図3に示す実施例2の半導体装置は、シリコンや炭化珪素等の半導体基板11内の表層部に、p型またはn型の導電領域31が選択的に形成されている。導電領域31が形成された半導体基板11上には、先の実施例1と同様の層間絶縁膜14が形成され、層間絶縁膜14の上部には先の実施例1と同様の絶縁バリア膜15を介して先の実施例1と同様のAlの配線16が積層形成されている。
【0039】
このような構成の製造方法としては、先ず半導体基板11にp型またはn型の不純物を選択的にイオン注入し、注入したイオンを活性化することで導電領域31を形成する。その後は、先の実施例1と同様の工程を適用することで、図3に示す構成の半導体装置を得ることができる。
【0040】
このような構成では、先の実施例1と同様に配線16と層間絶縁膜14との間に先の実施例1と同様な機能を有する絶縁バリア膜15が設けられているので、Alの配線16がシリカガラスの層間絶縁膜14を短期間に腐食し尽くすことは抑制され、配線16と下層の導電領域31との短絡を回避することが可能となる。
【実施例3】
【0041】
図4は本発明の実施例3に係る半導体装置の要部構成を示す図である。この実施例3は、パワートランジスタ等で多用されている構成であり、先の実施例1と実施例2との構成を共に含む構成において、先の実施例1と同様の電極13と配線16との短絡を回避することに加えて、コンタクトホール41を介して先の実施例2と同様の導電領域31とAlの配線16とを電気的に接続した構成を備えている。
【0042】
このような構成において、本発明の特徴的な技術思想である、絶縁バリア膜15により配線16と層間絶縁膜14との接触を遮断するために、コンタクトホール41の側壁に面した層間絶縁膜14の側面にも絶縁バリア膜15を配設するようにしている。これにより、Alの配線16の層間絶縁膜14の側面側からの腐食も抑制することができる。
【0043】
そこで、コンタクトホール41の側壁に絶縁バリア膜15を形成する方法であるが、コンタクトホール41の面積が十分大きい場合には、層間絶縁膜14にコンタクトホール41を開口形成した後、絶縁バリア膜15を全面に成膜し、周知のフォトリソグラフィーとエッチングによりコンタクトホール41の底部の絶縁バリア膜15を除去することで、所望の被覆構造を得ることは可能である。しかしながら、通常の半導体装置ではコンタクトホールの開口面積は一般に微細であって、上記プロセスでコンタクトホールの側壁に絶縁バリア膜を被覆形成することは困難である。
【0044】
そこで、本実施例3では、以下の図5(a)〜同図(d)に示す工程断面図を参照して説明する製造方法を採用することで、開口面積が微細なコンタクトホールの側壁に絶縁バリア膜を容易に被覆形成することが可能となる。
【0045】
先ず、先の実施例2で説明したと同様にして半導体基板11内の表層部に導電領域31を選択的に形成した後、先の実施例1で説明したと同様にして第1絶縁膜12、耐熱性の電極13、シリカガラスを主成分とする層間絶縁膜14を順に形成する(図5(a))。
【0046】
続いて、装置の表面全面に1次絶縁バリア膜15aを形成した後、1次絶縁バリア膜15a上に一過性のシリカガラス膜51を積層形成する。1次絶縁バリア膜15aの仕様及び成膜法は、先の実施例1で説明した絶縁バリア膜15と同様である。なお、一過性のシリカガラス膜51は省略してもかまわない(図5(b))。
【0047】
次に、周知のフォトリソグラフィーと反応性イオンエッチング(RIE)または電磁誘導結合プラズマエッチング(ICP))を用いて、導電領域31の上部の1次絶縁バリア膜15a、一過性のシリカガラス膜51、ならびに層間絶縁膜14を選択的に除去してコンタクトホール41を開口形成する。その後、装置の全面に2次絶縁バリア膜15bを成膜することで、コンタクトホール41の側壁ならびに底部に2次絶縁バリア膜15bを形成する。この2次絶縁バリア膜15bの仕様及び成膜法も先の実施例1で説明した絶縁バリア膜15と同様であるが、1次絶縁バリア膜15aと2次絶縁バリア膜15bとは必ずしも同一の材料である必要はない(図5(c))。
【0048】
続いて、RIEまたはICP等の異方性エッチングにより2次絶縁バリア膜15bのエッチバックを行い、シリカガラス膜51が露出したところでエッチングを終了し、その後半導体基板11を緩衝フッ酸溶液に浸漬してシリカガラス膜51を除去する。このエッチバックの実行により、層間絶縁膜14の上面には1次絶縁バリア膜15aが残存し、コンタクトホール41の側壁には2次絶縁バリア膜15bが残され、両絶縁バリア膜が一体となって構成される絶縁バリア膜15が形成される(図5(d))。
【0049】
上記工程において、エッチバック処理が一過性のシリカガラス膜51に到達してシリカガラス膜51が露出すると、エッチング排ガスに酸素が含まれるようになるので、エッチング排ガスの酸素をモニターすることによって、エッチバックの終点を検出することができる。
【0050】
そして最後に、Alを全面にスパッタ蒸着した後、周知のフォトリソグラフィーとRIEでAlをパターニングして配線16を選択的に形成し、図4に示す半導体装置が完成する。
【0051】
このように、上記実施例3では、コンタクトホール41の側壁で層間絶縁膜14とAlの配線とが対向するような構造を有する装置であっても、開口面積が比較的に小さいコンタクトホール41の側壁に絶縁バリア膜15を形成することが可能となり、先の実施例1,2と同様の効果を得ることが可能となる。
【実施例4】
【0052】
図6は本発明の実施例4に係る半導体装置の構成を示す断面図である。この実施例4の特徴とするところは、Alの多層配線を備えた装置に先の実施例1,2で説明した本発明の技術思想を適用したことにある。
【0053】
図6において、図1に示す構成と同様に、半導体基板11上に、第1絶縁膜12、耐熱性の電極13、第1層間絶縁膜(図1の層間絶縁膜14に相当)61、第1絶縁バリア膜(図1の絶縁バリア膜15に相当)62、Alの第1配線(図1の配線16に相当)63が実施例1と同様の方法で形成されている。
【0054】
さらに、この実施例4では、第1絶縁バリア膜62ならびにAlの第1配線63上に第2絶縁バリア膜64が積層形成され、第2絶縁バリア膜64上に第2層間絶縁膜65が積層形成され、第2層間絶縁膜65上に第3絶縁バリア膜66が積層形成され、第3絶縁バリア膜66上にAlの第2配線67が選択的に積層形成され、Alの2層配線構造を備えている。
【0055】
すなわち、第1層間絶縁膜61と第1配線63との間には第1絶縁バリア膜62が介在し、第1配線63と第2層間絶縁膜65との間には第2絶縁バリア膜64が介在し、第2層間絶縁膜65と第2配線67との間には第3絶縁バリア膜66が介在している。
【0056】
第1層間絶縁膜61ならびに第2層間絶縁膜65は、先の実施例1の層間絶縁膜14と同様に構成されて同様の機能を有し、第1絶縁バリア膜62、第2絶縁バリア膜64ならびに第3絶縁バリア膜66は、先の実施例1の絶縁バリア膜15と同様に構成されて同様の機能を有している。
【0057】
次に、図6に示す装置を製造する方法を説明する。
【0058】
先ず、実施例1で説明したと同様の方法により図1に示す構成と同様の構成を形成する。これにより、第1絶縁バリア膜62上にAlの第1配線63が形成されるまでの工程が終了する。
【0059】
引き続いて、装置全面に第2絶縁バリア膜64、第2層間絶縁膜65、第3絶縁バリア膜66を順に成膜する。第2層間絶縁膜65の形成方法や仕様は第1層間絶縁膜61と同様である。
【0060】
最後に、装置全面にAlをスパッタ蒸着した後、標準フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングでパターニングして、Alの第2配線67を選択的に形成し、図6に示す構成の装置が完成する。
【0061】
第2絶縁バリア膜64ならびに第3絶縁バリア膜66の成長法としては、少なくとも500℃程度以下、好ましくは400℃程度以下の温度で成長可能な、プラズマCVD法、MO(有機金属)CVD法、ALD(原子層成膜)法、もしくは光励起CVD法がよい。また、560℃程度付近がAl(1%のSiを含有)の共融点温度であるため、500℃程度以上のプロセス温度では、Alの第1配線63が融解したり、軟化したり、劣化したりするおそれがある。そこで、いくつかの絶縁バリア膜材の成長方法を具体的に述べると、SiN膜についてはシランと窒素またはアンモニアを原料ガスとしたプラズマCVD法により形成可能であり、SiC膜ではトリメチルシランまたはテトラメチルシランとHeを原料ガスとしたプラズマCVD法で形成することができる。これらの堆積法は400℃程度以下の成長温度で成膜が可能である。
【0062】
このように、Alの配線ならびに層間絶縁膜が多層化され、多層化されたそれぞれの配線が層間絶縁膜で絶縁分離された構造を有する半導体装置においても、層間絶縁膜とAlの配線との間に本発明で採用した絶縁バリア膜を介在させることで、Alが層間絶縁膜を腐食し、腐食した層間絶縁膜を介して対向するAlの配線間が短絡するといった不良を抑制することが可能となり、先の実施例1,2と同様の効果を得ることが可能となる。
【実施例5】
【0063】
図7は本発明の実施例5に係る半導体装置の構成を示す断面図である。この実施例5は、Alの配線とシリカガラスを主成分とする層間絶縁膜との構成要素に着目して上記実施例1〜4で説明した本発明の技術思想を炭化珪素の半導体基板に形成されたパワー半導体装置(縦型MOSFET(金属−酸化物−半導体構造電界効果トランジスタ))に適用した実施例である。
【0064】
図7にはMOSFETのユニットセル700の要部構成を示している。ユニットセルとは、素子領域の最小単位を表し、パワー素子では素子領域のユニットセルを縦横に多数並列配置して大電流化を図っている。なお、以下の説明では、符号700は素子領域とユニットセルの両方の意味で用いることにする。
【0065】
炭化珪素半導体基板(SiC基板)701は、不純物窒素を1×1019/cm程度添加したn型(0001)Si面単結晶4H−SiC基板である。SiC基板701は、4Hのほか、6H、3C、15Rなど全ての晶系(Hは六方晶、Cは立方晶、Rは菱面体晶)のSiC基板を用いることができる。SiC基板701の一方の主面(図面では上面側)上には、厚み10μm程度、不純物窒素を1×1016/cm程度添加したn型のエピタキシャル層702がホモエピタキシャル成長により形成されている。
【0066】
エピタキシャル層702の表層には、p型の不純物をエピタキシャル層702の不純物濃度よりも高く添加したp型のベース領域703a,703bが所定の距離だけ離間して選択的に形成されている。
【0067】
各ベース領域703a、703bの表層には、ベース領域703a、703bよりも浅くかつ高濃度の不純物を添加したn型のソース領域(高濃度不純物領域)704a、704bが形成されている。ベース領域703a,703bの一部であって、かつソース領域704a,704bの外部表層には、ベース領域703a,703bよりもp型の不純物を高濃度に添加したp型のベース領域705a,705bが形成されている。なお、n型のエピタキシャル層702、p型のベース領域703a,703b、n型のソース領域704a,704bの不純物濃度はこの順序で大きくなるように設定されている。
【0068】
上記各不純物領域を形成したSiC基板701の一方の主面側には、ゲート絶縁膜706を介して導電性の多結晶シリコンからなるゲート電極707(図1の耐熱性の電極13に相当)が選択的に形成されている。このゲート電極707の側面および上面には、多結晶シリコン酸化膜708が形成され、多結晶シリコン酸化膜708でゲート電極707が被覆されている。ゲート絶縁膜706および多結晶シリコン酸化膜708上には、シリカガラスを主成分とした層間絶縁膜709(図1の層間絶縁膜14に相当)が形成されている。
【0069】
また、SiC基板701の一方の主面側には、n型のソース領域704a,704bとp型のベース領域705a,705bにまたがって貫通するソース窓710a,710b(図4のコンタクトホール41に相当)が形成されている。このソース窓710a,710bの底部には、NiSiからなるソース電極711a,711bが形成されている。各ソース電極711a,711bは、n型のソース領域704a,704bとp型のベース領域705a,705bの異極性領域に同時にオーミックコンタクトを与える機能を備えている。
【0070】
さらに、装置の一方の主面側の表面には、ソース電極711a,711bを介してn型のソース領域704a,704bならびにp型のベース領域705a,705bを、外部回路や同一基板上の他の回路要素に結線するためのAl(1%Si含有)の配線712(図1、図3、図4のAlの配線16に相当)が形成されている。なお、図示していないが、配線712の一部として同配線の下部には、配線712のAlとソース電極711a,711bのNiSiとの合金化を防止するために、Ta/TaNのようなバリアメタルが形成されていてもかまわない。
【0071】
また、配線712と層間絶縁膜709/ゲート絶縁膜706とが隣接する層間絶縁膜709の表面、およびソース窓710a,710b側の層間絶縁膜709/ゲート絶縁膜706の側壁には、絶縁バリア膜713(図1、図3、図4の絶縁バリア膜15に相当)が形成されている。すなわち、層間絶縁膜709とAlの配線712との間には絶縁バリア膜713が介在して、層間絶縁膜709と配線712とは絶縁バリア膜713で分離されている。
【0072】
一方、SiC基板701の他方の主面(図7では下面)には、MOSFETセルのドレインにオーミックコンタクトを付与するための、NiSiからなるドレイン電極714が積層形成されている。ドレイン電極714上には、ダイボンディングを円滑に行うことを目的とした、例えばTi/Ni/Ag積層膜から構成された実装電極715が積層形成されている。
【0073】
上記の構成によって、この炭化珪素半導体装置は縦型金属−酸化物−半導体構造の電界効果トランジスタとして機能する。
【0074】
このようなMOSFETにおいては、シリカガラスを主成分とする層間絶縁膜709は絶縁バリア膜713によって配線712と完全に隔絶されているので、先の実施例1〜4で得られる効果と同様の効果をMOSFETで得ることができる。すなわち、層間絶縁膜709が200℃超の高温において配線712を短期に腐食し、配線712とゲート電極707とが短絡するといった不具合を回避することができる。
【0075】
次に、図8−A,同図−Bの工程断面図を参照して、先の図7に示す装置の製造方法を説明する。
【0076】
先ずはじめに、一方の主面側に、厚み約10μm程度のn型のエピタキシャル層702をホモエピタキシャル成長させた炭化珪素基板であるn型4H−SiC基板701を用意し、先の実施例1で説明した高温選択イオン注入法によりエピタキシャル層702にp型の不純物あるいはn型の不純物を選択的に注入し、p型のベース領域703a,703b、n型のソース領域704a,704b、p型のベース領域705a,705bとなる前駆体領域を順次形成する。各領域のイオン注入条件の一例を示すと次のとおりである。
【0077】
p型のベース領域のイオン注入条件
不純物 Alイオン
基板温度 750℃
加速電圧/ドース量 360keV/5×1013/cm
型のベース領域のイオン注入条件
イオン種 Al
注入温度 750℃
加速電圧/ドース量
30KeV/1.0×1015/cm
50KeV/1.0×1015/cm
70KeV/2.0×1015/cm
100KeV/3.0×1015/cm
型のソース領域のイオン注入条件
イオン種 P (リン)
注入温度 500℃
加速電圧/ドース量
40KeV/5.0×1014/cm
70KeV/6.0×1014/cm
100KeV/1.0×1015/cm
160KeV/2.0×1015/cm
高温イオン注入が終了した後、イオン注入時に形成されたマスクを緩衝フッ酸溶液に浸漬して除去し、SiC基板701を十分洗浄して乾燥させる。その後、活性化アニールにより先のイオン注入により形成した各前駆体領域(不純物領域)の不純物を一挙に活性化させて、p型のベース領域703a,703b、n型のソース領域704a,704b、p型のベース領域705a,705bをそれぞれ形成する(図8−A(a))。
【0078】
上記注入イオンの活性化は、高純度のカーボンサセプタ上に、SiC基板701の一方の主面側が上方となるように(SiC基板701の他方の主面側がカーボンサセプタに接するように)載置して、例えばAr等の高純度不活性ガス雰囲気、あるいは僅かにシランを含有する高純度不活性ガス雰囲気において、1600℃程度以上の温度で1分〜数分程度の急速加熱処理を行うことで実施する。
【0079】
次に、前工程での注入イオンの活性化後のSiC基板701を十分洗浄して乾燥させた後、1100℃程度のドライ酸素雰囲気下で犠牲酸化を行い、SiC基板701の表面に熱酸化膜を形成し、その後緩衝フッ酸溶液に浸漬してSiC基板701表面の熱酸化膜を取り除く(犠牲酸化処理)。この熱酸化膜の厚みは50nm未満、好ましくは5nm〜20nmが望ましい。この犠牲酸化処理によりSiC基板701の表面からデバイスの不良の要因となる汚染層や不整層が適切に除去される。
【0080】
続いて、SiC基板701を十分洗浄した後、1100℃程度のドライ酸素雰囲気で熱酸化してSiC基板701の表裏の両主面全面に概ね5nm〜20nm程度の厚さの熱酸化膜を成長形成する。さらに、SiC基板701の表面側の一方の主面上に、常圧化学的気相成長法(APCVD)などを用いて600nm程度の厚さのSiO膜を堆積することにより、熱酸化膜とAPCVD−SiO膜からなる2層構造のフィールド絶縁膜802を形成する。この熱酸化によりSiC基板701の裏面側の他方の主面上にも100nm程度以上の厚さの一過性の熱酸化膜801が形成される(図8−A(b))。なお、フィールド絶縁膜802の下層の熱酸化膜はフィールド絶縁膜802とSiC基板701の表面との界面を安定化させ、縦型デバイスの耐電圧性を高め、そのばらつきを抑制する効果がある。
【0081】
次に、周知のフォトリソグラフィとウェットエッチング、または前述したドライとウェットを併用したエッチングを用いてSiC基板701の表面のフィールド絶縁膜802を選択的にエッチングして除去し、フィールド領域とフィールド絶縁膜802が除去された図7に示す素子領域700を形成する。一過性の熱酸化膜801は、上記フィールド絶縁膜802を除去する際のウェットエッチングにより除去される。この時の素子領域700の構造は図8−A(a)と同じであるが、素子領域700以外の部分ではフィールド絶縁膜802が存在しており、SiC基板701全体の構造は異なっている。
【0082】
続いて、SiC基板701を再び十分洗浄するとともに、この洗浄の最終段階において素子領域700の表面に生成した化学的酸化膜(SiO)を除去するためにSiC基板701を緩衝フッ酸溶液に5秒〜10秒間程度浸する。その後、超純水で緩衝フッ酸溶液を完全にすすぎ落として乾燥させ、直ちに熱酸化して素子領域700のSiC基板701の表面に例えば40nm程度の厚さのゲート絶縁膜706を成長形成する。このゲート絶縁膜の形成の際にSiC基板701の裏面側の主面に一過性の熱酸化膜803が再び成長形成する。ゲート酸化の条件としては、これに限定されることはなく、例えば1160℃程度でのドライ酸化であってもよい。ここで重要なことは、熱酸化温度は以下のすべての後続工程のどの熱処理温度よりも高く設定するということである。なお、ここではゲート絶縁膜706として単層の熱酸化膜を用いたが、例えば特許文献の特開2006−74024号公報の図14に記載されているONO膜のような複合絶縁膜を用いてもよい。
【0083】
引き続いて、SiC基板701の表面側の主面及び裏面側の主面の全面にシラン原料を用いた減圧CVD法(成長温度600℃〜700℃程度)で300nm〜400nm程度の厚さの多結晶シリコン膜804を成膜する。その後、塩素酸リン(POCl)と酸素を用いた周知の熱拡散法(処理温度900℃〜950℃程度)で多結晶シリコン膜804にP(リン)を添加し、導電性を付与する。さらに続けて、SiC基板701の表面にマスク材のフォトレジストを塗布して、フォトリソグラフィ、ならびにCと酸素をエッチャントとした反応性イオンエッチング(RIE)を用いて、SiC基板701の表面側の多結晶シリコン膜804を選択的に除去し、ゲート電極707を形成する(図8−A(c))。
【0084】
次に、ゲート電極形成時のマスクを除去してエッチング後のSiC基板701を十分洗浄した後、900℃程度のドライ酸素雰囲気下で熱酸化し、ゲート電極707とSiC基板701の裏面側の主面の多結晶シリコン膜804の表面に多結晶シリコン酸化膜708を形成する。
【0085】
続いて、SiC基板701の表面側の主面全面にシリカガラスを主成分とした層間絶縁膜709を堆積する。この層間絶縁膜709としては、シランと酸素を原料としたAPCVDで形成した約1μm程度の厚のSiO膜(NSG膜)、あるいはリンを添加したリン珪酸ガラス(PSG)膜、さらにこれにホウ素を添加したホウ素リン珪酸ガラス(BPSG)膜などが適しているが、これに限定されるものではない。
【0086】
引き続いて、SiC基板701の表面をレジスト材で保護した後、SiC基板701の裏面の多結晶シリコン酸化膜708を緩衝フッ酸溶液で除去し、多結晶シリコン膜804を周知のドライエッチングで除去し、その後レジスト材を除去する(図8−B(d))。
【0087】
次に、周知のフォトリソグラフィーとRIE、ウェット併用エッチングで、SiC基板701の表面側の主面の層間絶縁膜709とゲート絶縁膜706にソース窓710a,710bとゲート窓(素子領域700外にあるため図示せず)を開口する。このとき、SiC基板701の裏面側の主面の熱酸化膜803も同時に除去される。
【0088】
その後、SiC基板701を超純水で十分洗浄して乾燥させ、直ちに電子ビーム蒸着あるいはDCマクネトロンスパッタリングなどの成膜法によりSiC基板701の表面側の主面と裏面側の主面の双方にNiやCoなどのコンタクト母材を50nm〜100nm程度の厚さに蒸着する。引き続いて、600℃程度で1時間の熱処理を行った後、SiC基板701を110℃〜130℃程度の硫酸と過酸化水素水の混合液に浸漬し、層間絶縁膜709等の絶縁膜に付着している未反応のNiを除去する。一方、ソース窓710a,710bの底部及びゲート窓の底部とSiC基板701の裏面側の主面には、Niシリサイドの前駆体が残される。
【0089】
さらに続いて、SiC基板701を1000℃程度の不活性雰囲気下で2分程度の急速熱処理を行い、低抵抗のソース電極711a,711b、ゲートコンタクト(非表示)、ドレイン電極714を形成する。形成されたソース電極711a,711bとドレイン電極714は、ともに10−6Ωcm程度台、あるいはそれ以下の極めて低いコンタクト抵抗を示す。その後、先の図5で説明した手法を用いて、層間絶縁膜709の表面およびソース窓710a,710bの側壁とゲート窓の側壁(図示せず)に絶縁バリア膜713を形成して被覆する(図8−B(e))。
【0090】
次に、SiC基板701を十分洗浄して乾燥した後、SiC基板701の表面側の主面の全面にDCマグネトロンスパッタリングなどで表面側の主面の配線電極材料、例えばAlを成膜し、フォトリソグラフィとドライエッチング(RIEなど)でAlをパターニングして、Alの配線712を形成する。その後、フォトレジスト材を剥離し、SiC基板701を洗浄して乾燥する。Alの配線712とソース電極711a,711bの間にTiやTiN、TaNなどのバリアメタルを挿入形成する場合には、これら材料を先に成膜形成した後配線712を成膜形成するようにする。なお、配線712がAlの場合には、Alと同じエッチャントガスでバリアメタルの構成材も連続的にパターニングすることができる。
【0091】
最後に、SiC基板701の裏面側の主面のドレイン電極714上全面に、DCマグネトロンスパッタリングなどを用いて、ダイボンド実装などに使用する実装電極材料を蒸着して、実装電極715を形成する。実装電極715の一例を挙げると、Ti(80nm程度の厚さ)とNi(300nm程度の厚さ)とAg(700nm程度の厚さ)をこの順に積層したTi/Ni/Ag積層膜があるが、これに限ったものではない。これにより、先の図7に示すMOSFETの半導体装置が完成する(図8−B(f))。
【0092】
以上説明した製造工程の説明から明らかなように、上記製造方法はAlの配線とシリカガラスを主成分とする層間絶縁膜を備えた典型的な半導体装置である、パワーMOSFETの製造に合理的かつ容易に導入することができる。したがって、同様にして、Alの配線とシリカガラス系の層間絶縁膜を具有する他のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、JFET(接合型FET)、SIT(静電誘導型トランジスタ)、ならびにMESFET(金属半導体接合電界効果トランジスタジス)等の半導体装置の製造にも容易に適用することができる。
【0093】
なお、本発明は、実用化が急進展しているSiCやGaNなどの半導体装置の高温利用に極めて有用であるが、これに限るものではなく、200℃程度以上の高温での使用を目的としたすべての半導体材料の半導体装置、例えばダイヤモンド半導体装置やSOI基板上に形成された半導体装置にも等しく適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
11…半導体基板
12…第1絶縁膜
13…電極
14,709…層間絶縁膜
15,713…絶縁バリア膜
15a…1次絶縁バリア膜
15b…2次絶縁バリア膜
16,712…配線
31…導電領域
41…コンタクトホール
51…シリカガラス膜
61…第1層間絶縁膜
62…第1絶縁バリア膜
63…第1配線
64…第2絶縁バリア膜
65…第2層間絶縁膜
66…第3絶縁バリア膜
67…第2配線
700…ユニットセル
701…SiC基板
702…エピタキシャル層
703a,703b,705a,705b…ベース領域
704a,704b…ソース領域
706…ゲート絶縁膜
707…ゲート電極
708…多結晶シリコン酸化膜
710a,710b…ソース窓
711a,711b…ソース電極
714…ドレイン電極
715…実装電極
801,803…熱酸化膜
802…フィールド絶縁膜
804…多結晶シリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に接して形成され、絶縁性の窒化物、炭化物、窒化炭化物の単層膜、多層膜または混合膜で構成されたバリア膜と、
前記バリア膜に接して形成された金属配線と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板に形成され、前記絶縁膜で被覆された金属電極
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板に形成された導電領域
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁膜の端面を側壁とし、前記金属配線が埋め込まれるコンタクトホールを有し、
前記バリア膜は、前記コンタクトホールの側壁に形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁膜、前記バリア膜ならびに前記金属配線は多層化されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記バリア膜は、絶縁性のSiC膜、SiN膜、GeC膜、GeN膜、AlN膜のいずれか1つの膜、あるいはこれらの混合膜、またはこれらの積層膜で構成されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記バリア膜は、20nm程度よりも厚く、かつ前記絶縁膜の厚さよりも薄く形成されている
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁膜は、シリカガラスを主成分として構成され、
前記金属配線は、アルミニウムで構成されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属配線は、バリアメタル層を含む
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体基板に絶縁膜を形成する第1の工程と、
前記絶縁膜に接して第1のバリア膜を形成する第2の工程と、
前記絶縁膜と前記第1のバリア膜を選択的に除去して、側壁が前記絶縁膜の端面を含むコンタクトホールを開口する第3の工程と、
前記コンタクトホールの側壁ならびに底部に第2のバリア膜を形成する第4の工程と、
前記コンタクトホールの底部に形成された前記第2のバリア膜を選択的に除去し、前記コンタクトホールの側壁に前記第2のバリア膜を残存させる第5の工程と、
前記コンタクトホール内に金属配線を形成する第6の工程とを有し、
前記第1のバリア膜ならびに前記第2のバリア膜は、絶縁性の窒化物、炭化物、窒化炭化物の単層膜または多層膜で構成されている
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2の工程と前記第3の工程との間に、前記第1のバリア膜に接して酸化膜を形成する工程
を有することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1のバリア膜ならびに前記第2のバリア膜は、600℃程度以下の温度下で形成される
ことを特徴とする請求項10または11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1のバリア膜ならびに前記第2のバリア膜は、プラズマCVD法、MO(有機金属)CVD法、ALD(原子層成膜)法、ならびに光励起CVD法のいずれか1つの化学的気相成長法で成長形成される
ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−A】
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【図8−B】
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【公開番号】特開2010−272785(P2010−272785A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124976(P2009−124976)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「パワーエレクトロニクスインバータ基盤技術開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】