説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】プロセス負荷を軽減するとともに、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現した半導体装置を提供する。
【解決手段】基板101の異なる領域に形成されたp型トランジスタ100a及びn型トランジスタ100bを備える半導体装置100であって、p型トランジスタ100aは、基板101上方に形成された、第1高誘電率材料からなる第1高誘電率膜106aと、第1高誘電率膜106a上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第1フルシリサイド電極107aとを備え、n型トランジスタ100bは、基板101上方に形成された、第2高誘電率材料が添加された第1高誘電率材料からなる第2高誘電率膜106bと、第2高誘電率膜106b上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第2フルシリサイド電極107bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、高誘電率材料からなるゲート絶縁膜を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の高集積化、高機能化及び高速化に伴って、金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の微細化が進められている。微細化に伴い、ゲート絶縁膜の薄膜化を進めると、トンネル現象によるゲートリーク電流の増大、及び、ポリシリコンゲート電極の空乏化の影響が顕著になり、オン電流の確保、ひいてはMOSFETの動作速度の維持又は向上が難しくなってきた。
【0003】
この問題を解決するために、ゲート絶縁膜をシリコン酸化膜から、ハフニウム酸化膜(HfO2)等のより誘電率が高い絶縁膜(高誘電率膜、high−k膜)に置き換えるとともに、ゲート電極をポリシリコンから金属に置き換える検討が進められている。これらを用いることにより、ゲート絶縁膜の物理的な膜厚を大きくしながら、酸化膜換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)を低減する、さらには、ゲート電極の空乏化を抑えて、反転層膜厚(Tinv)を低減する、など電気的な膜厚の薄膜化を進めることができるからである。ここで、酸化膜換算膜厚EOTとは、酸化シリコンと異なる比誘電率を持つ誘電体膜の膜厚を、酸化シリコンの比誘電率で換算した膜厚値をいう。
【0004】
通常、このhigh−kゲート絶縁膜とシリコン基板との間には、主にシリコン酸化膜からなる界面層が形成される。この界面層は誘電率が小さく、ゲート絶縁膜全体の実効的な比誘電率が下がってしまうため、酸化膜換算膜厚EOTを低減するという観点からは極力抑える必要がある。他方、high−k材料はキャリアの散乱因子となるため、この界面層は、high−k材料をチャネルから隔てることで移動度を確保する意味合いも有する。このように、EOTと移動度とは、界面層を介してトレードオフの関係にあり、界面層の膜厚及び誘電率の制御は、非常に重要な課題となっている。
【0005】
もう1つの課題として、high−kゲート絶縁膜の上部界面の反応に起因して、トランジスタ動作時の閾値電圧Vtの絶対値が大きくなってしまうという問題がある。その詳細は明らかではないが、ソース及びドレインの活性化処理等の高温プロセスに曝される結果、ゲート電極材料とゲート絶縁膜材料とが反応してしまい、ゲート電極材料の実効的な仕事関数が変化してしまう現象が報告されており、この現象は、フェルミ・レベル・ピニング現象と呼ばれている。
【0006】
そのため、適正な閾値電圧を得る方法として、非特許文献1では、ゲートラスト法が開示されている。ゲートラスト法では、ソース及びドレインの活性化処理等の高温プロセスが終わった後、ダミーとして用いたポリシリコンゲート電極を、pMOS及びnMOSのそれぞれにバンドエッジ(価電子帯/伝導帯)付近の適切な仕事関数を持った異種金属で置き換える。この場合、フェルミ・レベル・ピニング現象の影響を殆ど受けない。
【0007】
同様に、フェルミ・レベル・ピニング現象の影響を軽減できる方法として、非特許文献2では、フルシリサイド法が開示されている。この場合の仕事関数は、シリサイドの組成制御などによって変化させることが可能である。
【0008】
他方、非特許文献3では、通常のゲートファースト法を基本に、pMOS及びnMOSに共通の金属とポリシリコンとの積層電極が用いられている。
【0009】
また、非特許文献4では、ゲートファースト法又はゲートラスト法を問わず、EOTを低減する方法が開示されている。この方法では、high−k膜上に、ともに膜厚5nm未満の金属膜及びシリコン・キャップ膜を大気開放せずに連続して堆積する。これにより、後続工程での雰囲気からの酸素の浸入を阻止するだけでなく、界面層中の酸素をゲッタリングし、除去することでその膜厚を減らすことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7432567号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K. Mistry ほか, “A 45nm Logic Technology with High-k+Metal Gate Transistors, Strained Silicon, 9 Cu Interconnect Layers, 193nm Dry Patterning, and 100% Pb-free Packaging”, IEDM Tech.Dig.,(2007),p.247-250.
【非特許文献2】A. Lauwers ほか,“ CMOS Integration of Dual Work Function Phase Controlled Ni FUSI with Simultaneous Silicidation of NMOS (NiSi) and PMOS (Ni-rich silicide) Gates on HfSiON”, IEDM Tech.Dig.,(2005),p.646-649.
【非特許文献3】F. Arnaudほか,“Competitive and Cost Effective high-k based 28nm CMOS Technology for Low Power Applications”, IEDM Tech.Dig.,(2009),p.651-654.
【非特許文献4】L.-A. Ragnarssonほか,“Ultra Low-EOT (5 A) Gate-First and Gate-Last High Performance CMOS Achieved by Gate-Electrode Optimization”, IEDM Tech. Dig. ,(2009),p.663-666.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来技術では、以下のような課題がある。
【0013】
非特許文献1に開示されたゲートラスト法では、仕事関数を決定する金属キャップ膜材料は、フェルミ・レベル・ピニング現象の影響を殆ど受けないため、比較的好適なものを得やすい。しかしながら、ダミーポリシリコンのエッチバック、pn領域への異種金属の堆積とそのエッチバック、及び、金属の化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)などの工程が必要で、プロセス負荷が大きく複雑であるという課題がある。
【0014】
非特許文献2に開示されたフルシリサイド法では、シリサイドの組成の制御などによって、仕事関数を変化させることが可能である。しかしながら、非特許文献2に記載の技術では、層間絶縁膜のCMP、ダミーポリシリコン(pMOS領域のシリコン電極)の選択的な部分エッチバックなどの工程が必要で、ゲートラスト法ほど大きくはないが一部類似のプロセス負荷がある。
【0015】
また、非特許文献2に記載の技術では、pMOSに好適なバンドエッジ(価電子帯)付近の適切な仕事関数は得やすい。しかしながら、nMOSには組成制御を駆使しても、ミッドギャップ付近の仕事関数のものしか得られないという課題がある。
【0016】
また、非特許文献3に基づくゲートファースト法では、pMOS及びnMOSに共通の金属とポリシリコンとの積層電極を用いるため、プロセス負荷は比較的小さい。しかし、金属電極の膜厚が5nm未満と薄く、その実効仕事関数がミッドギャップ〜やや伝導帯寄りとなってしまい、pMOSの閾値電圧が増大してしまうという課題がある。さらには、金属とポリシリコン電極との間の界面抵抗が大きいという課題もある。
【0017】
また、詳細は明らかにされていないが、特許文献1によれば、フェルミ・レベル・ピニング現象を許容しながらも、pMOS及びnMOSのそれぞれに、アルミニウム/希土類金属をhigh−k材料に添加することでダイポールを発生させ、好適な実効仕事関数にシフトさせているものと思われる。
【0018】
このとき、アルミニウム/希土類金属を添加すると誘電率が低下/増加してしまうため、pMOSのEOTがnMOSに比べ、0.2nm前後増大してしまうという課題がある。
【0019】
また、非特許文献4に開示された方法を適用した半導体装置の製造方法では、high−k膜上に、ともに膜厚5nm未満の金属膜及びシリコン・キャップ膜を大気開放せずに連続して堆積する。その後、引き続き、相当膜厚のアモルファスシリコン膜を電極母材として堆積することで、通常のゲート加工プロセスを経てトランジスタ構造を得ることができる。
【0020】
この段階の構造は、非特許文献2に開示されたゲートファースト構造とほぼ同等でありながら、酸素の浸入阻止、及び、ゲッタリング効果によって界面層膜厚は大幅に低減されている。
【0021】
しかし、実効仕事関数の制御にあたっては、ゲートファースト又はゲートラスト法に示された方法を付加する必要がある。すなわち、上記ゲートラスト法による場合、層間絶縁膜の堆積及び平坦化、ダミーポリシリコンのエッチバック、pn領域への異種金属の堆積及びエッチバック、並びに、金属のCMPなどの工程が必要である。
【0022】
また、上記ゲートファースト法による場合、pMOS/nMOSそれぞれに、アルミニウム/希土類金属をhigh−k材料に添加、積層しておく等の工夫が必要になる。ゲートファースト及びゲートラスト法いずれについても、上記で説明したそれぞれの基本的な課題を踏襲することに変わりはない。
【0023】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、プロセス負荷を軽減するとともに、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現した半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る半導体装置は、基板の異なる領域に形成されたp型トランジスタ及びn型トランジスタを備える半導体装置であって、前記p型トランジスタは、前記基板上方に形成された、第1高誘電率材料からなる第1ゲート絶縁膜と、前記第1ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第1ゲート電極とを備え、前記n型トランジスタは、前記基板上方に形成された、第2高誘電率材料が添加された前記第1高誘電率材料からなる第2ゲート絶縁膜と、前記第2ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が前記金属によりシリサイド化された第2ゲート電極とを備える。
【0025】
本態様によれば、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いるので、EOTを十分に低減することができる。また、金属によりフルシリサイド化された電極を備えるので、金属とシリコンとの組成比を調整することで、p型トランジスタに好適な価電子帯に近い仕事関数を有するゲート電極を形成することができる。また、p型トランジスタとn型トランジスタとでゲート電極に用いる金属が同じであるので、異種金属を利用する場合よりもプロセス負荷を軽減することができる。また、従来の金属とポリシリコンとの積層電極のように界面抵抗の大きさの影響を受けることはない。
【0026】
さらに、本態様によれば、n型トランジスタは、第2高誘電率材料が添加された第1高誘電率材料が添加された第2ゲート絶縁膜を備えるので、実効的な仕事関数を従来よりも伝導帯に近づけることができる。このように、p型トランジスタ及びn型トランジスタの双方で、バンドエッジ近傍の実効的な仕事関数を有するゲート構造を実現することができる。
【0027】
また、前記第1ゲート電極のシリコンと前記金属との組成比は、前記第2ゲート電極のシリコンと前記金属との組成比に等しくてもよい。
【0028】
本態様によれば、p型トランジスタのゲート電極の組成比と、n型トランジスタのゲート電極の組成比とが同じであるので、同一の工程で同時にp型トランジスタのゲート電極と、n型トランジスタのゲート電極とを形成することができる。つまり、簡単なプロセスで作成することができ、プロセス負荷を軽減することができる。
【0029】
また、前記p型トランジスタは、さらに、前記第1ゲート絶縁膜と前記第1ゲート電極との間に形成された第1導電性緩衝膜を備えてもよい。
【0030】
本態様によれば、第1導電性緩衝膜が、外部から第1ゲート絶縁膜に酸素が浸入するのを防止する。したがって、第1ゲート絶縁膜が酸素を含むことで、その膜厚が大きくなるのを防止することができ、第1ゲート絶縁膜の薄膜化を実現することができる。
【0031】
また、前記第1導電性緩衝膜の膜厚は、5nm未満であってもよい。
【0032】
本態様によれば、第1導電性緩衝膜が5nm未満であり、十分に薄いので、フルシリサイド化された第1ゲート電極の仕事関数に与える影響を最小限に抑えることができ、実効的な仕事関数を価電子帯に近づけたままにすることができる。
【0033】
例えば、前記第1導電性緩衝膜は、TiNであってもよい。
【0034】
また、前記n型トランジスタは、さらに、前記第2ゲート絶縁膜と前記第2ゲート電極との間に形成された第2導電性緩衝膜を備えてもよい。
【0035】
本態様によれば、第2導電性緩衝膜が、n型トランジスタのゲート電極の実効的な仕事関数をさらに引き下げることができ、より伝導帯に近い仕事関数を実現することができる。
【0036】
また、前記第2導電性緩衝膜の膜厚は、5nm以上であってもよい。
【0037】
本態様によれば、第2導電性緩衝膜が5nm以上であるので、フルシリサイド電極の実効的な仕事関数を引き下げる効果が高い。
【0038】
例えば、前記第2導電性緩衝膜は、TaNであってもよい。
【0039】
また、前記第2高誘電率材料は、希土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも1つであってもよい。
【0040】
本態様によれば、実効的な仕事関数を引き下げるダイポールを誘起することができる。したがって、n型トランジスタのゲート電極の実効的な仕事関数をさらに引き下げることができ、より伝導帯に近い仕事関数を実現することができる。
【0041】
また、前記第1ゲート電極は、4.8eV以上の仕事関数を有する。
【0042】
本態様によれば、p型トランジスタのゲート電極の仕事関数が、十分に価電子帯に近づけることができる。
【0043】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、p型トランジスタ及びn型トランジスタを備える半導体装置の製造方法であって、基板の第1領域及び第2領域の上方に、第1高誘電率材料からなる第1ゲート絶縁膜を形成する第1ゲート絶縁膜形成ステップと、前記第2領域上方における前記第1ゲート絶縁膜に第2高誘電率材料を添加することで、第2ゲート絶縁膜を形成する第2ゲート絶縁膜形成ステップと、前記第1ゲート絶縁膜上方に第1シリコン電極を、前記第2ゲート絶縁膜上方に第2シリコン電極を形成するシリコン電極形成ステップと、前記第1シリコン電極の全体及び前記第2シリコン電極の全体を、金属によりシリサイド化することで、前記p型トランジスタのゲート電極である第1フルシリサイド電極と、前記n型トランジスタのゲート電極である第2フルシリサイド電極とを形成するフルシリサイド化ステップとを含む。
【0044】
本態様によれば、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いるので、EOTを十分に低減することができる。また、シリコン電極を金属によりフルシリサイド化することでゲート電極を形成するので、金属とシリコンとの組成比を調整することで、p型トランジスタに好適な価電子帯に近い仕事関数を有するゲート電極を形成することができる。また、p型トランジスタとn型トランジスタとでゲート電極に用いる金属が同じであるので、異種金属を利用する場合よりもプロセス負荷を軽減することができる。また、従来の金属とポリシリコンとの積層電極のように界面抵抗の大きさの影響を受けることはない。
【0045】
さらに、本態様によれば、第1高誘電率材料に第2高誘電率材料を添加することで第2ゲート絶縁膜を形成するので、実効的な仕事関数を従来よりも伝導帯に近づけることができる。このように、p型トランジスタ及びn型トランジスタの双方で、バンドエッジ近傍の実効的な仕事関数を有するゲート構造を有する半導体装置を製造することができる。
【0046】
また、前記第2ゲート絶縁膜形成ステップは、前記第2領域上方における前記第1ゲート絶縁膜上に、前記第2高誘電率材料を含む高誘電率材料膜を形成する高誘電率材料形成ステップと、熱処理により前記第2高誘電率材料を前記第1ゲート絶縁膜に拡散させることで、前記第2ゲート絶縁膜を形成する熱処理ステップとを含んでもよい。
【0047】
本態様によれば、簡単なプロセスで第1ゲート絶縁膜に第2高誘電率材料を添加することができる。
【0048】
また、前記フルシリサイド化ステップでは、前記第1シリコン電極の全体及び前記第2シリコン電極の全体を、同一の金属により同時にシリサイド化してもよい。
【0049】
本態様によれば、同一の金属を用いて同時に、p型トランジスタ用の第1シリコン電極とn型トランジスタ用の第2シリコン電極とをフルシリサイド化するので、プロセス負荷を軽減することができる。
【0050】
また、前記半導体装置の製造方法は、さらに、前記第1ゲート絶縁膜上に第1導電性緩衝膜を形成する第1導電性緩衝膜形成ステップを含んでもよい。
【0051】
本態様によれば、第1導電性緩衝膜を形成することで、第1ゲート絶縁膜への外部からの酸素の浸入を防止することができる。さらに、第1導電性緩衝膜は、後続工程におけるエッチングの際のマスク、及び、ストッパ層としても利用することができる。
【0052】
また、前記第1導電性緩衝膜形成ステップでは、前記第1導電性緩衝膜を形成した後、大気開放することなく連続的に、シリコン・キャップ層を前記第1導電性緩衝膜上に形成してもよい。
【0053】
本態様によれば、シリコン・キャップ層を形成することで、第1ゲート絶縁膜への外部からの酸素の浸入を防止することができる。さらに、シリコン・キャップ層は、後続工程におけるエッチングの際のマスク、及び、ストッパ層としても利用することができる。
【0054】
また、前記半導体装置の製造方法は、さらに、前記第2ゲート絶縁膜上に第2導電性緩衝膜を形成する第2導電性緩衝膜形成ステップを含んでもよい。
【0055】
本態様によれば、第2導電性緩衝膜が、n型トランジスタのゲート電極の実効的な仕事関数をさらに引き下げることができ、より伝導帯に近い仕事関数を実現することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によると、プロセス負荷を軽減するとともに、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現した半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置におけるゲート電極の仕事関数の一例を示すバンド図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る半導体装置におけるゲート電極の仕事関数の一例を示すバンド図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の比較例1に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の比較例1に係る半導体装置におけるゲート電極の仕事関数を示すバンド図である。
【図9】本発明の実施の形態の比較例2に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1に係る半導体装置とその製造方法とについて、図面を参照しながら説明する。
【0059】
本発明の実施の形態1に係る半導体装置は、基板上の異なる領域に形成されたp型トランジスタ及びn型トランジスタを備える半導体装置である。p型トランジスタは、基板上方に形成された、第1高誘電率材料からなる第1ゲート絶縁膜と、第1ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第1ゲート電極とを備える。n型トランジスタは、基板上方に形成された、第2高誘電率材料が添加された第1高誘電率材料からなる第2ゲート絶縁膜と、第2ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第2ゲート電極とを備える。
【0060】
第2高誘電率材料が実効的な仕事関数を引き下げるダイポールを誘起するので、n型トランジスタの第2ゲート電極の実効的な仕事関数を伝導帯に近づけることができる。これにより、本発明の実施の形態1に係る半導体装置は、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現することができる。
【0061】
まず、以下では、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【0062】
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100は、p型トランジスタ100aと、n型トランジスタ100bとを備える。例えば、半導体装置100は、p型のMOSFETとn型のMOSFETとを備えるCMOSデバイスである。
【0063】
p型トランジスタ100aと、n型トランジスタ100bとは、基板101の異なる領域に形成されている。具体的には、p型トランジスタ100aと、n型トランジスタ100bとは、素子分離領域102及び層間絶縁膜110とによって、分離されている。
【0064】
基板101は、例えば、シリコン基板である。
【0065】
素子分離領域102は、p型トランジスタ100aとn型トランジスタ100bとを分離するために基板101内に形成された絶縁領域である。例えば、素子分離領域102は、シャロウトレンチ分離(STI:Shallow Trench Isolation)によって形成される。
【0066】
層間絶縁膜110は、p型トランジスタ100aとn型トランジスタ100bとを分離するために基板101上に形成された層間絶縁膜である。例えば、層間絶縁膜110は、酸化シリコン(SiO2)から構成される。
【0067】
p型トランジスタ100aは、p型のMOSFET(実施の形態において、単にpMOSと記載する場合がある)である。図1に示すように、p型トランジスタ100aは、基板101内に形成されたn型ウェル103a及び活性化領域104aと、下地膜105aと、第1高誘電率膜106aと、第1フルシリサイド電極107aと、オフセット・スペーサ108aと、サイドウォール・スペーサ109aとを備える。
【0068】
n型ウェル103aは、基板101内にn型不純物が添加された領域であり、pMOSが形成されるデバイス領域である。
【0069】
活性化領域104aは、ソース領域と、ドレイン領域と、エクステンション領域とを含んでいる。活性化領域104aは、基板101内にp型不純物が添加された領域である。
【0070】
下地膜105aは、基板101のn型ウェル103a上に形成された界面酸化膜(界面層)である。例えば、下地膜105aは、SiO2膜であり、膜厚は、約1nmである。なお、下地膜105aは、ウェット処理により形成されたケミカルなシリコン酸化膜、又は、ISSG(In−Situ Steam Generation)膜でもよい。
【0071】
第1高誘電率膜106aは、基板101上方に形成された、第1高誘電率材料からなる第1ゲート絶縁膜の一例である。具体的には、第1高誘電率膜106aは、下地膜105a上に形成されている。第1高誘電率材料は、いわゆるhigh−k材料である。つまり、第1高誘電率膜106aは、いわゆるhigh−k膜である。第1高誘電率膜106aの膜厚は、例えば、0.5〜3.0nmであって、好ましくは、1.0〜2.0nmである。
【0072】
第1高誘電率材料は、例えば、酸化シリコンより誘電率が高い金属酸化物であり、具体的には、酸化ハフニウム(HfO2)である。なお、第1高誘電率材料は、Hfの他、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、希土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属などでもよい。本発明の実施の形態1の例では、第1高誘電率膜106aは、膜厚が約3nmのHfO2膜である。
【0073】
第1フルシリサイド電極107aは、第1ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第1ゲート電極の一例である。具体的には、第1フルシリサイド電極107aは、第1高誘電率膜106a上に形成されている。
【0074】
本発明の実施の形態1の例では、第1フルシリサイド電極107aは、ニッケル(Ni)によってシリサイド化されたポリシリコン電極、すなわち、Ni2Siからなる電極である。なお、シリサイド化に利用する金属は、仕事関数が大きい材料が好ましく、例えば、Ni以外に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)が利用できる。
【0075】
また、第1フルシリサイド電極107aの膜厚は、例えば、80nmである。なお、膜厚は、40〜80nmでもよく、好ましくは、60〜80nmである。
【0076】
オフセット・スペーサ108aは、下地膜105a、第1高誘電率膜106a及び第1フルシリサイド電極107aの側面に形成された絶縁層である。例えば、オフセット・スペーサ108aは、窒化シリコン(SiN)から構成される。なお、オフセット・スペーサ108aは、第1フルシリサイド電極107aなどの各層の側面を保護するとともに、活性化領域104aのエクステンション領域を形成する際のイオン注入のマスクとして利用される。
【0077】
サイドウォール・スペーサ109aは、オフセット・スペーサ108aの側面に形成された絶縁層である。例えば、サイドウォール・スペーサ109aは、SiNから構成される。なお、サイドウォール・スペーサ109aは、活性化領域104aのソース領域及びドレイン領域を形成する際のイオン注入のマスクとしても利用される。
【0078】
n型トランジスタ100bは、n型のMOSFET(実施の形態において、単にnMOSと記載する場合がある)である。図1に示すように、n型トランジスタ100bは、基板101内に形成されたp型ウェル103b及び活性化領域104bと、下地膜105bと、第2高誘電率膜106bと、第2フルシリサイド電極107bと、オフセット・スペーサ108bと、サイドウォール・スペーサ109bとを備える。
【0079】
p型ウェル103bは、基板101内にp型不純物が添加された領域であり、nMOSが形成されるデバイス領域である。
【0080】
活性化領域104bは、ソース領域と、ドレイン領域と、エクステンション領域とを含んでいる。活性化領域104bは、基板101内にn型不純物が添加された領域である。
【0081】
下地膜105bは、基板101のp型ウェル103b上に形成された界面酸化膜(界面層)である。例えば、下地膜105bは、SiO2膜であり、膜厚は、約1nmである。なお、下地膜105bは、ウェット処理により形成されたケミカルなシリコン酸化膜、又は、ISSG(In−Situ Steam Generation)膜でもよい。
【0082】
第2高誘電率膜106bは、基板101上方に形成された、第2高誘電率材料が添加された第1高誘電率材料からなる第2ゲート絶縁膜の一例である。具体的には、第2高誘電率膜106bは、下地膜105b上に形成されている。第2高誘電率膜106bの膜厚は、例えば、0.1〜2.0nmであって、好ましくは、0.2〜1.0nmである。
【0083】
第2高誘電率材料は、仕事関数を引き下げる効果を有する材料であり、例えば、希土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも1つである。具体的には、第2高誘電率材料は、ランタン(La)である。なお、第2高誘電率材料は、イットリウム(Y)、又は、マグネシウム(Mg)などでもよい。本発明の実施の形態1の例では、第2高誘電率膜106bは、膜厚が約3nmの、Laが添加されたHfO2膜である。
【0084】
第2フルシリサイド電極107bは、第2ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第2ゲート電極の一例である。具体的には、第2フルシリサイド電極107bは、第2高誘電率膜106b上に形成されている。
【0085】
本発明の実施の形態1の例では、第2フルシリサイド電極107bは、ニッケル(Ni)によってシリサイド化されたポリシリコン電極、すなわち、Ni2Siからなる電極である。なお、シリサイド化に利用する金属は、仕事関数が大きい材料が好ましく、例えば、Ni以外に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)が利用できる。
【0086】
また、第2フルシリサイド電極107bの膜厚は、例えば、80nmである。なお、膜厚は、20〜80nmでもよく、好ましくは、80nmである。
【0087】
オフセット・スペーサ108bは、下地膜105b、第2高誘電率膜106b及び第2フルシリサイド電極107bの側面に形成された絶縁層である。例えば、オフセット・スペーサ108bは、窒化シリコン(SiN)から構成される。なお、オフセット・スペーサ108bは、第2フルシリサイド電極107bなどの各層の側面を保護するとともに、活性化領域104bのエクステンション領域を形成する際のイオン注入のマスクとして利用される。
【0088】
サイドウォール・スペーサ109bは、オフセット・スペーサ108bの側面に形成された絶縁層である。例えば、サイドウォール・スペーサ109bは、SiNから構成される。なお、サイドウォール・スペーサ109bは、活性化領域104bのソース領域及びドレイン領域を形成する際のイオン注入のマスクとしても利用される。
【0089】
なお、半導体装置100の製造工程の工数を減らすために、第2フルシリサイド電極107bは、第1フルシリサイド電極107aと同じ金属でシリサイド化されていることが好ましい。さらには、第2フルシリサイド電極107bのSiと金属(例えば、Ni)との組成比は、第1フルシリサイド電極107aのSiと金属(例えば、Ni)との組成比と同じであってもよい。
【0090】
同様に、下地膜105a及び105b、オフセット・スペーサ108a及び108b、サイドウォール・スペーサ109a及び109などもそれぞれ、同じ材料で形成されることが好ましい。工数を減らすことで、低コスト化を実現することができる。
【0091】
以上の構成に示すように、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100は、p型トランジスタ100aとn型トランジスタ100bとを備える。そして、p型トランジスタ100aは、第1高誘電率材料からなる第1高誘電率膜106aと、全体が金属によりシリサイド化された第1フルシリサイド電極107aとを備える。n型トランジスタ100bは、第2高誘電率材料が添加された第1高誘電率材料からなる第2高誘電率膜106bと、全体が金属によりシリサイド化された第2フルシリサイド電極107bとを備える。
【0092】
この構成により、プロセス負荷を軽減するとともに、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現することができる。以下では、図2を用いて、pMOS及びnMOSの各電極の仕事関数について説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係るゲート電極の仕事関数の一例を示すバンド図である。
【0093】
p/n共通のフルシリサイドゲート電極の材料として、Ni2Siのような、仕事関数の大きな金属が過剰な組成を選択し、ゲート電極を形成することで、図2に示すように、ゲート電極の仕事関数は、価電子帯に近い値となる。具体的には、形成したゲート電極の仕事関数は、4.8eV以上となり、pMOSのゲート電極として好適な価電子帯寄りの仕事関数を有するゲート電極を形成することができる。
【0094】
他方、nMOSについては、高誘電率膜にLa等の希土類金属を添加することで、実効的に仕事関数を0.3〜0.5eV程度引き下げるダイポールを誘起することができる。したがって、図2に示すように、nMOSのゲート電極として好適な伝導帯寄りの仕事関数を有するゲート電極を形成することができる。
【0095】
続いて、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100の製造方法について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【0096】
まず、図3(a)に示すように、例えば、シリコン(Si)からなる基板101の上部に、シャロウトレンチ分離(STI)からなる素子分離領域102を選択的に形成する。続いて、イオン注入法により、pMOS領域にはn型ウェル103a、nMOS領域にはp型ウェル103bを形成する。これにより、すなわち、CMOSデバイス領域が形成される。なお、pMOS領域は、基板101の第1領域の一例であり、nMOS領域は、基板101の第2領域の一例である。
【0097】
続いて、基板101の表面に対して、公知の標準RCA洗浄及び希釈フッ酸(HF)洗浄を順次行う。そして、その表面が洗浄された基板101に対して、例えば、温度が600℃〜1000℃程度の酸素雰囲気で熱処理を行う。これにより、基板101のCMOSデバイス領域上に、酸化シリコン(SiO2)からなる膜厚が1nm前後の下地膜105が形成される。また、下地膜105は、ウェット処理により形成した、ケミカルなシリコン酸化膜やISSG膜でもよい。
【0098】
続いて、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition;原子層堆積)法を用いて、下地膜105の上に、膜厚が約3nmの金属酸化物からなる第1高誘電率膜106aを成膜する。具体的には、例えば、第1高誘電率膜106aとしてHfO2膜を成膜する場合、Hf原料としてHfCl4を、酸化剤としてH2Oを用い、成膜温度は200〜400℃とする。HfCl4の供給→パージ→H2Oの供給→パージのサイクルを繰り返すことで、HfO2を原子層レベルで成長させることができる。複数サイクル繰り返すことで、所望の膜厚のHfO2からなる第1高誘電率膜106aを形成する。
【0099】
次に、第2高誘電率膜106bをnMOS領域上に選択的に形成するためのマスクとして作用する第1導電性緩衝膜111を、第1高誘電率膜106a上に堆積する。具体的には、例えば、スパッタ法を用いて1〜10nm程度のTiN膜を、第1導電性緩衝膜111として堆積する。さらに、第1導電性緩衝膜111の上に、nMOS注入用マスク112をレジスト塗布及びパターニングによって形成する。
【0100】
nMOS注入用マスク112を用いて、図3(b)に示すように、nMOS領域上の第1導電性緩衝膜111をエッチバックすることで、除去する。
【0101】
次に、nMOS領域の第1高誘電率膜106aに添加することで仕事関数を引き下げる(伝導帯に近づける)効果を有する第2高誘電率材料を含む第2高誘電率材料膜113を堆積する。nMOSに好適な、仕事関数を引き下げる効果を有する第2高誘電率材料としては、希土類金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属がある。なお、pMOSに好適な、仕事関数を引き上げる効果を有する材料としては、アルミニウム、チタンがある。ここでは、具体的には、例えば、スパッタ法を用いて0.5〜2nm程度のLaO膜を第2高誘電率材料膜113として堆積する。
【0102】
その後、図3(c)に示すように、nMOS領域上の第1高誘電率膜106a中に第2高誘電率材料膜113を反応させ、拡散させるために、温度が600℃〜800℃程度の熱処理を行う。これにより、nMOS領域の下地膜105上に、第2高誘電率膜106bを形成する。第2高誘電率材料膜113と第1高誘電率膜106aとの反応量は、堆積膜厚、反応温度及び時間で決定され、反応量に応じて仕事関数がシフトする。
【0103】
その後、nMOS領域の第2高誘電率材料膜113と反応することで形成された、第2高誘電率膜106b上に残った未反応の第2高誘電率材料膜113、及び、pMOS領域の第1導電性緩衝膜111上の第2高誘電率材料膜113を、例えば、アンモニア過水等の洗浄液を用いて選択除去する。次いで、不要となった第1導電性緩衝膜111を、例えば、硫酸過水等の洗浄液を用いて、選択除去する。
【0104】
さらに、図3(c)に示すように、所望のゲート電極の高さとなるように、60〜80nm程度の(アモルファス)シリコン電極114と、膜厚が80nm程度の酸化シリコンからなるハードマスク115とを、第1高誘電率膜106a及び第2高誘電率膜106b上に、順次堆積する。続いて、リソグラフィ技術により、ハードマスク115の上にゲートパターンを有するレジストマスク116を形成する。
【0105】
次に、図3(d)に示すように、例えば塩素(Cl2)ガスを主成分とし、レジストマスク116を用いたドライエッチング及びウェットエッチングにより、ハードマスク115、(アモルファス)シリコン電極114、第1高誘電率膜106a、第2高誘電率膜106b、下地膜105(下地膜105a及び105b)を順次パターニングする。続いて、各ゲート電極の両側面上に窒化シリコンからなるオフセット・スペーサ(OSS)108a及び108bを形成し、基板101の上部にイオン注入(エクステンション/ポケット注入)を行う。
【0106】
さらに、各ゲート電極の両オフセット・スペーサ108a及び108bの側面上に窒化シリコンからなるサイドウォール(SW)109a及び109bを形成し、これらをマスクとして、基板101の上部に再度イオン注入(ソース・ドレイン注入)を行う。その後、1000℃以上の温度にて、注入ドーパントの活性化アニールを行い、pMOS領域上にp型の活性化領域104aを、nMOS領域上にn型の活性化領域104bを形成する。
【0107】
次に、図3(e)に示すように、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、基板101全面にわたって、酸化シリコンからなる層間絶縁膜110を堆積する。続いて、例えばCMP法により、堆積した層間絶縁膜110の上面を平坦化することで、ハードマスク115を露出させる。次いで、フルオロカーボンを主成分とするエッチングガスを用いたエッチバックを行うことで、ハードマスク115を除去し、(ポリ)シリコン電極114上端を露出する。
【0108】
さらには、フルシリサイド化反応にかかわるシリコン(Si)含有量を調節するため、例えば塩素(Cl2)ガスを主成分としたドライエッチングにより、(ポリ)シリコン電極114を部分的に除去し、上端を20〜40nm程度後退させる。次に、スパッタ法等により、後退した(ポリ)シリコン電極114上端及び層間絶縁膜110の上に、(ポリ)シリコン電極114をシリサイド化するための、シリサイド化用金属膜117を堆積する。
【0109】
次に、図3(f)に示すように、温度が300〜600℃程度の窒素雰囲気で1分程度の熱処理を施す。その後、未反応のシリサイド化用金属膜117を混酸等で除去することにより、各(ポリ)シリコン電極114の上部から下部までの全体がシリサイド化された第1フルシリサイド電極107a及び第2フルシリサイド電極107bが形成される。シリサイド化用金属膜117としては、仕事関数が大きくpMOSに好適なニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)を用いることができる。
【0110】
なお、フルシリサイドの組成は、基本的に(ポリ)シリコン電極114の高さとシリサイド化用金属膜117の厚みとの比で決まる。ここでは、膜厚が40〜100nm程度のニッケル(Ni)からなる金属膜を、シリサイド化用金属膜117として用いることで、仕事関数が4.8eV以上と大きい、ニッケル・リッチなNi2Si相を生成することができる。
【0111】
以上説明したように、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100の製造方法によれば、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いた半導体装置において、pMOS及びnMOSのそれぞれにバンドエッジ近傍の仕事関数を有するデュアルゲート構造を実現できる。
【0112】
本発明の実施の形態1に係る半導体装置100の製造方法では、第1高誘電率膜106a及び第2高誘電率膜106b上に形成したシリコン電極114をフルシリサイド化する。つまり、従来の非特許文献1のように、一度形成したシリコン電極をエッチバックにより除去する工程と、pMOS領域及びnMOS領域のそれぞれに異なる電極を体積及びエッチバックする工程との両方を行わなくてよい。したがって、本発明によれば、プロセス負荷を軽減することができる。
【0113】
また、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100は、n型トランジスタ100bのゲート絶縁膜として、第2高誘電率材料が添加された第2高誘電率膜106bを備える。これにより、n型トランジスタ100bの第2フルシリサイド電極107bの実効的な仕事関数を引き下げ、伝導帯に近づけることができる。図2と後述する図8との比較から明らかなように、仕事関数をより伝導帯に近づけることができる。
【0114】
また、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100は、pMOS及びnMOSのゲート電極として共通のフルシリサイド化された電極を備える。つまり、従来の金属とポリシリコンとの積層電極のように界面抵抗の大きさの影響を受けることはない。
【0115】
また、非特許文献3と異なり、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100では、ゲート絶縁膜の材料にアルミニウムを用いていない。アルミニウムは、誘電率が低いために、アルミニウムを含むゲート絶縁膜を用いた場合、EOTを十分に低下させることができない。このため、本発明の実施の形態1に係る半導体装置100によれば、従来よりもさらにEOTを低下させることができる。
【0116】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現した半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0117】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る半導体装置とその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0118】
本発明の実施の形態2では、さらに、EOTを低減することを目的とする。本発明の実施の形態2に係る半導体装置では、p型トランジスタが、さらに、第1ゲート絶縁膜と第1ゲート電極との間に形成された第1導電性緩衝膜を備え、n型トランジスタが、さらに、第2ゲート絶縁膜と第2ゲート電極との間に形成された第2導電性緩衝膜を備えることを特徴とする。
【0119】
これにより、本発明の実施の形態1に係る半導体装置によれば、p型トランジスタにおけるEOTを、さらに薄膜化することができるとともに、n型トランジスタにおける実効的な仕事関数を、さらに伝導帯に近づけることができる。
【0120】
まず、以下では、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の構成について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【0121】
図4に示すように、本発明の実施の形態2に係る半導体装置200は、p型トランジスタ200aと、n型トランジスタ200bとを備える。例えば、半導体装置200は、pMOSとnMOSとを備えるCMOSデバイスである。
【0122】
なお、以下の説明においては、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。実施の形態1と同じ構成については同じ参照符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0123】
p型トランジスタ200aとn型トランジスタ200bとは、基板101の異なる領域に形成されている。具体的には、p型トランジスタ200aとn型トランジスタ200bとは、素子分離領域102及び層間絶縁膜110とによって、分離されている。
【0124】
p型トランジスタ200aは、pMOSである。図4に示すように、p型トランジスタ200aは、基板101内に形成されたn型ウェル103a及び活性化領域104aと、下地膜105aと、第1高誘電率膜106aと、第1導電性緩衝膜211aと、第1フルシリサイド電極107aと、オフセット・スペーサ108aと、サイドウォール・スペーサ109aとを備える。
【0125】
実施の形態2に係るp型トランジスタ200aは、図1に示す実施の形態1に係るp型トランジスタ100aと比較すると、第1高誘電率膜106aと第1フルシリサイド電極107aとの間に、第1導電性緩衝膜211aを備える点が異なっている。
【0126】
第1導電性緩衝膜211aは、第1ゲート絶縁膜と第1ゲート電極との間に形成された第1導電性緩衝膜の一例である。具体的には、第1導電性緩衝膜211aは、第1高誘電率膜106aと第1フルシリサイド電極107aとの間に形成されている。例えば、第1導電性緩衝膜211aは、膜厚が約1〜5nmの窒化チタン(TiN)膜である。
【0127】
第1導電性緩衝膜211aは、酸素が第1高誘電率膜106aに浸入することで、第1高誘電率膜106aが酸素を含むことにより、その膜厚が大きくなることを防止する。また、半導体装置200の製造時には、nMOS領域に形成する層をエッチングする際のマスクとして機能するとともに、第1導電性緩衝膜211a上に形成する層をエッチングする際のエッチングストッパ層としても機能する。
【0128】
なお、第1導電性緩衝膜211aは、膜厚が1〜5nmと薄いため、第1フルシリサイド電極107aの仕事関数にほとんど影響を与えない。また、第1導電性緩衝膜211aの膜厚は、1〜20nmであってもよい。好ましくは、第1導電性緩衝膜211aの膜厚は、5nm未満である。また、第1導電性緩衝膜211aは、TiN以外に、TaN、又は、WNでもよい。
【0129】
なお、第1導電性緩衝膜211aは、アルミニウムを含んでいないことが好ましい。アルミニウムは、誘電率が低いために、アルミニウムを含むゲート絶縁膜を用いた場合、EOTを十分に低下させることができない。
【0130】
n型トランジスタ200bは、nMOSである。図4に示すように、n型トランジスタ200bは、基板101内に形成されたp型ウェル103b及び活性化領域104bと、下地膜105bと、第2高誘電率膜106bと、第2導電性緩衝膜211bと、第2フルシリサイド電極107bと、オフセット・スペーサ108bと、サイドウォール・スペーサ109bとを備える。
【0131】
実施の形態2に係るn型トランジスタ200bは、図1に示す実施の形態1に係るn型トランジスタ100bと比較すると、第2高誘電率膜106bと第2フルシリサイド電極107bとの間に、第2導電性緩衝膜211bを備える点が異なっている。
【0132】
第2導電性緩衝膜211bは、第2ゲート絶縁膜と第2ゲート電極との間に形成された第2導電性緩衝膜の一例である。具体的には、第2導電性緩衝膜211bは、第2高誘電率膜106bと第2フルシリサイド電極107bとの間に形成されている。例えば、第2導電性緩衝膜211bは、膜厚が約5〜10nmの窒化タンタル(TaN)膜である。
【0133】
第2導電性緩衝膜211bは、nMOSのゲート電極の実効的な仕事関数を、第2フルシリサイド電極107bの仕事関数から引き下げる機能を有する。つまり、第2導電性緩衝膜211bが、第2フルシリサイド電極107bと第2高誘電率膜106bとの間に形成されているので、nMOSのゲート電極の実効的な仕事関数が、第2導電性緩衝膜211bと第2フルシリサイド電極107bとの中間的な値となる(ダイポールを考慮に入れていない場合)。
【0134】
なお、第2導電性緩衝膜211bの膜厚は、1〜20nmであってもよい。好ましくは、第2導電性緩衝膜211bの膜厚は、5nm以上である。また、第2導電性緩衝膜211bは、TaN以外に、TiN、又は、WNでもよい。
【0135】
以上の構成に示すように、本発明の実施の形態2に係る半導体装置200は、p型トランジスタ200aとn型トランジスタ200bとを備える。そして、p型トランジスタ200aは、第1高誘電率材料からなる第1高誘電率膜106aと、第1フルシリサイド電極107aと、第1高誘電率膜106aと第1フルシリサイド電極107aとの間に形成された第1導電性緩衝膜211aとを備える。また、n型トランジスタ200bは、第2高誘電率材料が添加された第1高誘電率材料からなる第2高誘電率膜106bと、第2フルシリサイド電極107bと、第2高誘電率膜106bと第2フルシリサイド電極107bとの間に形成された第2導電性緩衝膜211bとを備える。
【0136】
この構成により、EOTを十分に低減するための絶縁膜の薄膜化と、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するゲート構造とを実現することができる。以下では、図5を用いて、pMOS及びnMOSの各電極の仕事関数について説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係るゲート電極の仕事関数の一例を示すバンド図である。
【0137】
p/n共通のフルシリサイドゲート電極の材料として、Ni2Siのような、仕事関数の大きな金属が過剰な組成を選択し、ゲート電極を形成することで、図5に示すように、ゲート電極の仕事関数は、価電子帯に近い値となる。具体的には、形成したゲート電極の仕事関数は、4.8eV以上となり、pMOSのゲート電極として好適な価電子帯寄りの仕事関数を有するゲート電極を形成することができる。
【0138】
なお、実施の形態1と異なり、pMOSにおいては、第1導電性緩衝膜211aが第1高誘電率膜106a上に残っている。しかしながら、その膜厚は5nm以下と薄いため、フルシリサイドゲート電極の大きな仕事関数をほぼ反映させることができる。つまり、図5に示すように、第1導電性緩衝膜211aとフルシリサイド電極との間の仕事関数が、pMOSのゲート電極の実効的な仕事関数となる。
【0139】
他方、nMOSについては、実施の形態1と同様、高誘電率膜にLa等の希土類金属を添加することで、実効的に仕事関数を0.3〜0.5eV程度引き下げるダイポールを誘起することができる。その上、フルシリサイドゲート電極の影響を抑え、その低い仕事関数を十分に反映できる程度に十分な膜厚の第2導電性緩衝膜211bが第2高誘電率膜106b上に残っている。
【0140】
このため、さらに、nMOSのゲート電極として好適な伝導帯寄りの仕事関数を有するゲート電極を形成することができる。つまり、図5に示すように、第2導電性緩衝膜211bとフルシリサイドゲート電極との間の仕事関数が、ダイポールによって、さらに伝導帯寄りの仕事関数となる。この仕事関数が、nMOSのゲート電極の実効的な仕事関数となる。
【0141】
続いて、本発明の実施の形態2に係る半導体装置200の製造方法について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置200の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【0142】
まず、実施の形態1と同様に、図6(a)に示すように、例えば、シリコン(Si)からなる基板101の上部に、STIからなる素子分離領域102を選択的に形成する。続いて、イオン注入法により、pMOS領域にはn型ウェル103a、nMOS領域にはp型ウェル103bを形成する。続いて、基板101の表面を洗浄後、膜厚が1nm前後の下地膜105を形成する。具体的な方法は、実施の形態1で説明した通りである。
【0143】
続いて、例えば、ALD法を用いて、下地膜105の上に、膜厚が約3nmの第1高誘電率膜106aを成膜する。具体的には、例えば、Hf原料としてHfCl4を、酸化剤としてH2Oを用い、成膜温度200〜400℃にて、HfO2を原子層レベルで成長させる。より具体的には、HfCl4の供給→パージ→H2Oの供給→パージのサイクルを、複数サイクル繰り返すことで、所望の膜厚のHfO2からなる第1高誘電率膜106aを形成する。
【0144】
次に、第1導電性緩衝膜211aを下地膜105上に堆積する。なお、第1導電性緩衝膜211aは、実施の形態1において、第2高誘電率膜106bをnMOS領域上に選択的に形成するためのマスクとして使用した第1導電性緩衝膜111と同じでもよい。ただし、第1導電性緩衝膜211aの膜厚は、第1導電性緩衝膜111と異なっていてもよい。具体的には、例えば、第1導電性緩衝膜211aとして、スパッタ法を用いて1〜5nm程度のTiN膜を堆積する。
【0145】
そして、さらに第1導電性緩衝膜211aの上に第1シリコン・キャップ膜221aとして、(アモルファス)シリコン膜を大気に曝すことなく連続して堆積する。第1シリコン・キャップ膜221aを大気に曝すことなく堆積することで、後続工程での雰囲気からの酸素のゲート絶縁膜(第1高誘電率膜106a、第2高誘電率膜106b及び下地膜105)への浸入を阻止することができる。さらに、酸素の浸入だけでなく、界面層中の酸素をゲッタリング、及び、除去することで、その膜厚を減らすことができる。
【0146】
この場合、第1導電性緩衝膜211aは、界面層から引き出された酸素を、第1シリコン・キャップ膜221aまで透過させる必要がある。そのため、第1導電性緩衝膜211aの膜厚を5nm以下にすることが好ましい。第1シリコン・キャップ膜221aの膜厚については、後続工程での雰囲気からの酸素の浸入を阻止するための最低限の膜厚、例えば、5nm程度とするのが適当と考えられる。
【0147】
本発明の実施の形態2においては、第1導電性緩衝膜211a及び第1シリコン・キャップ膜221aの積層膜を、第2高誘電率膜106bをnMOS領域上に選択的に形成するためのマスクとして使用する。したがって、当該積層膜の上に、nMOS注入用マスク112をレジスト塗布及びパターニングによって形成する。そして、nMOS注入用マスク112を用いて、図6(b)に示すように、nMOS領域上の第1導電性緩衝膜211a及び第1シリコン・キャップ膜221aの積層膜をエッチバックすることで、除去する。
【0148】
次に、図6(c)に示すように、nMOS領域の第1高誘電率膜106aに添加することで仕事関数を引き下げる(伝導帯に近づける)効果を有する第2高誘電率材料を含む第2高誘電率材料膜113を堆積する。ここでは、nMOSに好適な、仕事関数を引き下げる効果を有する第2高誘電率材料としては、希土類金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などがある。
【0149】
具体的には、例えば、スパッタ法を用いて0.5〜2nm程度のLaO膜を、第2高誘電率材料膜113として堆積する。さらに、第1導電性緩衝膜211a及び第1シリコン・キャップ膜221aと同様に、第2導電性緩衝膜211b及び第2シリコン・キャップ膜221bを大気に曝すことなく、第2高誘電率材料膜113上に連続して堆積する。
【0150】
この場合、第2シリコン・キャップ膜221bの役割は、第1シリコン・キャップ膜221aと同様である。一方で、第2導電性緩衝膜211bは、第1導電性緩衝膜211aと異なり、後にp/n共通電極として形成する仕事関数の大きなフルシリサイドの影響を低減する、あるいは、電極材料としての仕事関数を引き下げる機能を付与することが好ましい。そのため、本来、仕事関数の小さな導電性材料を比較的厚めに、第2導電性緩衝膜211bとして堆積することが好ましい。
【0151】
具体的には、例えば、第2導電性緩衝膜211bとして、スパッタ法を用いて、膜厚が5〜10nm程度のTaN膜を堆積する。さらに、第2導電性緩衝膜211bの上に第2シリコン・キャップ膜221bとして、(アモルファス)シリコン膜を大気に曝すことなく連続して堆積する。
【0152】
さらに、nMOS領域の第2シリコン・キャップ膜221bの上に、pMOS注入用マスク222をレジスト塗布及びパターニングによって形成する。形成したpMOS注入用マスク222を用いて、図6(d)に示すように、pMOS領域上の第2導電性緩衝膜211b及び第2シリコン・キャップ膜221bの積層膜をエッチバックすることで、除去する。この場合、先に形成した第1導電性緩衝膜211a及び第1シリコン・キャップ膜221aの積層膜は、pMOS領域をカバーするストッパ膜としての機能も果たしている。また、後続工程でのフルシリサイド化時に懸念されるゲート絶縁膜の侵食による欠陥発生についてもバリア層としての機能を有する。
【0153】
その後、nMOS領域上の第1高誘電率膜106a中に第2高誘電率材料膜113を反応させ、拡散させるために、温度が600℃〜800℃程度の熱処理を行う。これにより、nMOS領域の下地膜105上に、第2高誘電率膜106bを形成する。以降の製造方法は、第1導電性緩衝膜211a及び第1シリコン・キャップ膜221aが第1高誘電率膜106a上に残っていること、及び、第2導電性緩衝膜211b及び第2シリコン・キャップ膜221bが第2高誘電率膜106b上に残っていること以外は、実施の形態1と同様である。
【0154】
すなわち、図6(d)に示すように、所望のゲート電極の高さとなるように、60〜80nm程度の(アモルファス)シリコン電極114と、膜厚が80nm程度の酸化シリコンからなるハードマスク115とを、第1シリコン・キャップ膜221a及び第2シリコン・キャップ膜221b上に順次堆積する。続いて、リソグラフィ技術により、ハードマスク115の上にゲートパターンを有するレジストマスク116を形成する。
【0155】
次に、図6(e)に示すように、例えば、塩素(Cl2)ガスを主成分とし、レジストマスク116を用いたドライエッチング及びウェットエッチングにより、ハードマスク115、(アモルファス)シリコン電極114、第1シリコン・キャップ膜221a、第2シリコン・キャップ膜221b、第1高誘電率膜106a、第2高誘電率膜106b、及び、下地膜105(下地膜105a及び105b)を順次パターニングする。続いて、各ゲート電極の両側面上に窒化シリコンからなるオフセット・スペーサ(OSS)108a及び108bを形成し、基板101の上部にイオン注入(エクステンション/ポケット注入)を行う。
【0156】
さらに、各ゲート電極の両オフセット・スペーサ108a及び108bの側面上に窒化シリコンからなるサイドウォール(SW)109a及び109bを形成し、これらをマスクとして、基板101の上部に再度イオン注入(ソース・ドレイン注入)を行う。その後、1000℃以上の温度にて、注入ドーパントの活性化アニールを行い、pMOS領域上に、p型の活性化領域104aを、nMOS領域上にn型の活性化領域104bを形成する。
【0157】
さらに、(アモルファス)シリコン電極114と、第1シリコン・キャップ膜221a及び第2シリコン・キャップ膜221bは、活性化アニールを経て、(ポリ)シリコン電極214に一体化される。
【0158】
次に、図6(f)に示すように、プラズマCVD法により、基板101全面にわたって、酸化シリコンからなる層間絶縁膜110を堆積する。続いて、例えばCMP法により、堆積した層間絶縁膜110の上面を平坦化することで、ハードマスク115を露出させる。
【0159】
次いで、フルオロカーボンを主成分とするエッチングガスを用いたエッチバックを行なって、ハードマスク115を除去し、(ポリ)シリコン電極214の上端を露出する。さらには、図6(g)に示すように、フルシリサイド化反応にかかわるシリコン(Si)含有量を調節するため、例えば塩素(Cl2)ガスを主成分としたドライエッチングにより、(ポリ)シリコン電極214を部分的に除去し、上端を20〜40nm程度後退させる。次に、スパッタ法等により、後退した(ポリ)シリコン電極214上端及び層間絶縁膜110の上に、(ポリ)シリコン電極214をシリサイド化するための、シリサイド化用金属膜117を堆積する。
【0160】
次に、図6(h)に示すように、温度が300〜600℃程度の窒素雰囲気で1分程度の熱処理を施す。その後、未反応のシリサイド化用金属膜117を混酸等で除去することにより、各(ポリ)シリコン電極214の上部から下部までの全体がシリサイド化された第1フルシリサイド電極107a及び107bを形成する。シリサイド化用金属膜117としては、仕事関数が大きくpMOSに好適なニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)を用いることができる。
【0161】
なお、フルシリサイドの組成は、基本的に(ポリ)シリコン電極214の高さとシリサイド化用金属膜117の厚みとの比で決まる。ここでは、膜厚が40〜100nm程度のニッケル(Ni)からなる金属膜を、シリサイド化用金属膜117として用いることで、仕事関数が4.8eV以上と大きい、ニッケル・リッチなNi2Si相を生成することができる。
【0162】
以上説明したように、本発明の実施の形態2に係る半導体装置200の製造方法によれば、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いた半導体装置において、pMOS及びnMOSのそれぞれにバンドエッジ近傍の仕事関数を有するデュアルゲート構造を実現することができる。さらには、EOT薄膜化も実現することができる。
【0163】
pMOSのEOT薄膜化については、第1導電性緩衝膜211a及び第1シリコン・キャップ膜221aの構成を用いることで、後続工程での雰囲気からの酸素の浸入を阻止するだけでなく、界面層中の酸素をゲッタリング、除去することでその膜厚を減らすことができる。このため、本発明の実施の形態2に係る半導体装置200によれば、pMOSのEOTは、大幅に低減されている。他方、nMOSのEOTについては、第2導電性緩衝膜211bの膜厚が厚く、界面層中の酸素をゲッタリングする効果までは期待できないが、第2高誘電率膜として誘電率の高い希土類金属の酸化物等を添加することで、EOTをかなり低減することができる。このため、結果としてpMOS/nMOSともバランス良く薄膜化することができる。
【0164】
ここで、本発明の実施の形態に係る半導体装置100及び200の比較例1及び2に係る半導体装置について説明する。
【0165】
図7は、本発明の実施の形態の比較例1に係る半導体装置300の製造方法を示す工程断面図である。具体的には、図7は、非特許文献2に記載のフルシリサイド法を適用した場合の半導体装置300の製造方法を示す。
【0166】
まず、図7(a)に示すように、基板301に、素子分離領域302と、n型ウェル303a及びp型ウェル303bとを形成する。なお、n型ウェル303aはpMOS領域に、p型ウェル303bはnMOS領域に形成される。次に、基板301上に順次、下地膜304、高誘電率膜305、シリコン電極306、ハードマスク307を形成する。さらに、ハードマスク307上に、ゲートパターンにパターニングされたレジストマスク308を形成する。
【0167】
次に、図7(b)に示すように、ハードマスク307、シリコン電極306、高誘電率膜305及び下地膜304のパターニングを順次パターニングする。さらに、パターニングにより形成された、pMOS及びnMOSそれぞれのゲート電極構造の側面にオフセット・スペーサ309と、サイドウォール・スペーサ310とを形成する。さらに、イオン注入により活性化領域311を形成する。
【0168】
次に、図7(c)に示すように、層間絶縁膜312を形成し、CMP法により上面を平坦化する。そして、ハードマスク307を除去した後、nMOS領域にレジストマスク313を形成し、pMOS領域のシリコン電極306をエッチバックにより除去する。
【0169】
次に、図7(d)に示すように、レジストマスク313を除去した後、シリサイド化用の金属膜314を堆積する。最後に、図7(e)に示すように、シリコン電極306をフルシリサイド化することで、フルシリサイド電極315a及び315bを形成する。pMOS用のフルシリサイド電極315aは、Niが多く、仕事関数が高いのに対して、nMOS用のフルシリサイド電極315bは、Niが少なく、仕事関数が低い。
【0170】
上記の図7に示す比較例1では、シリサイドの組成の制御などによって、仕事関数を変化させることが可能である。しかしながら、図7に示す技術では、図7(c)に示すように、層間絶縁膜312のCMP、ダミーポリシリコン(pMOS領域のシリコン電極306)の選択的な部分エッチバックなどの工程が必要で、ゲートラスト法ほど大きくはないが一部類似のプロセス負荷がある。
【0171】
また、図7に示す比較例1に係る半導体装置300では、図8に示すように、pMOSに好適なバンドエッジ(価電子帯)付近の適切な仕事関数は得やすい。しかしながら、nMOSには組成制御を駆使しても、ミッドギャップ付近の仕事関数のものしか得られない。
【0172】
図9は、本発明の実施の形態の比較例2に係る半導体装置400の製造方法を示す工程断面図である。具体的には、図9は、非特許文献4に開示された方法を適用した場合の半導体装置400の製造方法を示す。
【0173】
図9(b)に示すように、high−k膜(高誘電率膜305)上に、ともに膜厚5nm未満の金属膜320及びシリコン・キャップ膜321を大気開放せずに連続して堆積する。その後、引き続き、相当膜厚のアモルファスシリコン膜(シリコン電極306)を電極母材として堆積することで、通常のゲート加工プロセスを経てトランジスタ構造を形成することができる。
【0174】
図9に示す技術によれば、酸素の浸入阻止、及び、ゲッタリング効果によって界面層膜厚は大幅に低減されている。
【0175】
しかし、実効仕事関数の制御にあたっては、ゲートファースト又はゲートラスト法に示された方法を付加する必要がある。すなわち、上記ゲートラスト法による場合、図9(c)〜図9(e)に示すように層間絶縁膜312の堆積及び平坦化、ダミーポリシリコン(シリコン電極306)のエッチバック、pn領域への異種金属(金属キャップ膜322)の堆積及びエッチバック、並びに、金属のCMPなどの工程が必要である。
【0176】
また、上記ゲートファースト法による場合、図9(a)の段階で、pMOS/nMOSそれぞれに、アルミニウム/希土類金属をhigh−k材料(高誘電率膜305)に添加、積層しておく等の工夫が必要になる。ゲートファースト及びゲートラスト法のいずれについても、上記で説明したそれぞれの基本的な課題を踏襲することに変わりはない。
【0177】
これに対して、本発明の実施の形態1及び2に係る半導体装置100及び200の製造方法では、同一の工程で、同一の金属を用いてシリコン電極をフルシリサイド化することで、pMOS及びnMOSに共通のゲート電極を形成する(図3(e)及び図6(g)参照)。このため、プロセス負荷を軽減することができる。
【0178】
また、本発明の実施の形態1及び2に係る半導体装置100及び200では、n型トランジスタ100b及び200bが、第2高誘電率材料を添加された第1高誘電率材料からなる第2高誘電率膜106bを備える。これにより、第2高誘電率材料がダイポールを誘起し、誘起されたダイポールによってn型トランジスタ100b及び200bの実効的な仕事関数を伝導帯に近づけることができる(図2及び図5参照)。
【0179】
以上、本発明に係る半導体装置及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を当該実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0180】
例えば、上記で示した各構成要素の材料は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された材料に制限されない。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いた半導体装置において、バンドエッジ近傍の仕事関数を有するデュアルゲート構造を、十分に低減されたEOTにおいても実現することができ、例えば、高誘電率材料からなるゲート絶縁膜を有するCMOS型の半導体装置及びその製造方法等に有用である。
【符号の説明】
【0182】
100、200、300、400 半導体装置
100a、200a p型トランジスタ
100b、200b n型トランジスタ
101、301 基板
102、302 素子分離領域
103a、303a n型ウェル
103b、303b p型ウェル
104a、104b、311 活性化領域
105、105a、105b、304 下地膜
106a 第1高誘電率膜
106b 第2高誘電率膜
107a 第1フルシリサイド電極
107b 第2フルシリサイド電極
108a、108b、309 オフセット・スペーサ
109a、109b、310 サイドウォール・スペーサ
110、312 層間絶縁膜
111、211a 第1導電性緩衝膜
112 nMOS注入用マスク
113 第2高誘電率材料膜
114、214、306 シリコン電極
115、307 ハードマスク
116、308、313 レジストマスク
117 シリサイド化用金属膜
211b 第2導電性緩衝膜
221a 第1シリコン・キャップ膜
221b 第2シリコン・キャップ膜
222 pMOS注入用マスク
305 高誘電率膜
315a、315b フルシリサイド電極
314、320 金属膜
321 シリコン・キャップ膜
322 金属キャップ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の異なる領域に形成されたp型トランジスタ及びn型トランジスタを備える半導体装置であって、
前記p型トランジスタは、
前記基板上方に形成された、第1高誘電率材料からなる第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が金属によりシリサイド化された第1ゲート電極とを備え、
前記n型トランジスタは、
前記基板上方に形成された、第2高誘電率材料が添加された前記第1高誘電率材料からなる第2ゲート絶縁膜と、
前記第2ゲート絶縁膜上方に形成された、全体が前記金属によりシリサイド化された第2ゲート電極とを備える
半導体装置。
【請求項2】
前記第1ゲート電極のシリコンと前記金属との組成比は、前記第2ゲート電極のシリコンと前記金属との組成比に等しい
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記p型トランジスタは、さらに、前記第1ゲート絶縁膜と前記第1ゲート電極との間に形成された第1導電性緩衝膜を備える
請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電性緩衝膜の膜厚は、5nm未満である
請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1導電性緩衝膜は、TiNである
請求項3又は4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記n型トランジスタは、さらに、前記第2ゲート絶縁膜と前記第2ゲート電極との間に形成された第2導電性緩衝膜を備える
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2導電性緩衝膜の膜厚は、5nm以上である
請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2導電性緩衝膜は、TaNである
請求項6又は7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2高誘電率材料は、希土類金属、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも1つである
請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1ゲート電極は、4.8eV以上の仕事関数を有する
請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
p型トランジスタ及びn型トランジスタを備える半導体装置の製造方法であって、
基板の第1領域及び第2領域の上方に、第1高誘電率材料からなる第1ゲート絶縁膜を形成する第1ゲート絶縁膜形成ステップと、
前記第2領域上方における前記第1ゲート絶縁膜に第2高誘電率材料を添加することで、第2ゲート絶縁膜を形成する第2ゲート絶縁膜形成ステップと、
前記第1ゲート絶縁膜上方に第1シリコン電極を、前記第2ゲート絶縁膜上方に第2シリコン電極を形成するシリコン電極形成ステップと、
前記第1シリコン電極の全体及び前記第2シリコン電極の全体を、金属によりシリサイド化することで、前記p型トランジスタのゲート電極である第1フルシリサイド電極と、前記n型トランジスタのゲート電極である第2フルシリサイド電極とを形成するフルシリサイド化ステップとを含む
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2ゲート絶縁膜形成ステップは、
前記第2領域上方における前記第1ゲート絶縁膜上に、前記第2高誘電率材料を含む高誘電率材料膜を形成する高誘電率材料形成ステップと、
熱処理により前記第2高誘電率材料を前記第1ゲート絶縁膜に拡散させることで、前記第2ゲート絶縁膜を形成する熱処理ステップとを含む
請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記フルシリサイド化ステップでは、前記第1シリコン電極の全体及び前記第2シリコン電極の全体を、同一の金属により同時にシリサイド化する
請求項11又は12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記半導体装置の製造方法は、さらに、
前記第1ゲート絶縁膜上に第1導電性緩衝膜を形成する第1導電性緩衝膜形成ステップを含む
請求項11〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1導電性緩衝膜形成ステップでは、前記第1導電性緩衝膜を形成した後、大気開放することなく連続的に、シリコン・キャップ層を前記第1導電性緩衝膜上に形成する
請求項14記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記半導体装置の製造方法は、さらに、
前記第2ゲート絶縁膜上に第2導電性緩衝膜を形成する第2導電性緩衝膜形成ステップを含む
請求項11〜15のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−15383(P2012−15383A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151473(P2010−151473)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】