説明

半導体装置

【課題】温度が上昇するほどキャリアの移動度を向上できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上10−1に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置される絶縁ゲート型電界効果トランジスタpMOSと、前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、正の膨張係数を有し、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って圧縮応力を加える第1素子分離絶縁膜11−1とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関し、例えば、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ等に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大規模集積回路(LSI:large-scale integration)を構成する能動素子の一つとして、MOS(metal oxide semiconductor)型、MIS(metal insulator semiconductor)型に代表される絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(以下トランジスタ)が知られている。そして、このトランジスタのますますの微細化により、LSI中のトランジスタの数が膨大となっている。そのため、そのトランジスタの数に比例して、LSIから発生する熱量も膨大なものとなってきている。結果、トランジスタを構成するシリコン等の結晶格子の格子振動が激しくなってその熱擾乱が原因の一つになって、電子又はホール(キャリア)の移動度が低減するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、絶縁材によりトランジスタのチャネル領域に所望の応力を加えて、キャリアである電子又はホールの移動度を向上させる半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる構成では、上記絶縁材が与えることができる応力は、半導体基板等の温度上昇に対して一定である。そのため、LSIの温度が室温から高温(例えば、200℃程度)に上昇した場合には、より激しくなったシリコン等の熱擾乱により応力による効果が不十分となって、電子又はホールの移動度が低減する。
【0005】
上記のように従来の半導体装置では、温度が上昇するとキャリアの移動度が低減するという事情があった。
【特許文献1】特開2004−63591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、温度が上昇するほどキャリアの移動度を向上できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様によれば、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置される絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、正の膨張係数を有し、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って圧縮応力を加える第1素子分離絶縁膜とを具備する半導体装置を提供できる。
【0008】
この発明の一態様によれば、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置されるp型絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、正の膨張係数を有し、前記p型絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って圧縮応力を加える第1素子分離絶縁膜と、素子形成面が(100)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<100>方向に沿って配置されるn型絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、負の膨張係数を有し、前記n型絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って引張り応力を加える第2素子分離絶縁膜とを具備する半導体装置を提供できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、温度が上昇するほどキャリアの移動度を向上できる半導体装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[面方位および応力に関する知見について]
まず、図1乃至図11を用いて、本発明者が、この発明に係る半導体装置およびその製造方法を発明するに至った面方位および応力に関する知見についての概要を説明する。
<1.半導体基板の面方位(110)およびトランジスタの構成>
1−1.半導体基板の面方位およびトランジスタのチャネル長方向
図1(a)に示すように、ここで説明する素子形成面の半導体基板(ここでは、シリコン(Si)基板)10−1の面方位は、(110)面(Plane)である。
また、図1(b)に示すように、半導体基板10−1の(110)面上に配置されるトランジスタTrのチャネル長方向は、ノッチ(Notch)に沿った<−110>方向である。換言すると、トランジスタTrのチャネル長方向は、ゲート電極Gが配置される方向と垂直な<−110>方向である。
【0011】
1−2.考察に係るトランジスタの構成例
次に、図2および図3を用い、この考察に係るトランジスタの構成例について説明する。
【0012】
図示するように、素子形成面が(110)面方位の半導体基板(n-Sisub)10−1の表面上の素子領域において、チャネル長方向が<−110>方向に沿って半導体装置(ここでは、pMOSトランジスタ)が配置される。
【0013】
半導体基板10−1の素子分離領域に、pMOSトランジスタを囲むように素子分離絶縁膜STI(Shallow Trench Isolation)が埋め込み配置される。
【0014】
pMOSトランジスタは、素子形成面が(110)面の半導体基板10−1上に設けられるゲート絶縁膜Gox、ゲート絶縁膜Gox上に設けられるゲート電極G、ゲート電極Gを挟むように半導体基板10−1中に隔離して設けられるソースSまたはドレインD、ゲート電極Gの側壁に設けられるスペーサ15、およびコンタクト配線SC,DCを備える。このpMOSトランジスタは、導入されたp型の不純物であるホールをキャリアとする絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。
【0015】
ゲート絶縁膜Goxは、例えば、熱酸化法によりシリコン酸化膜(SiO)等により形成される。
ゲート電極Gは、例えば、ポリシリコン(poly-Si)等により形成される。
ソースSおよびドレインD(p+層)は、半導体基板10−1中に、例えば、イオン注入法によりボロン(B)等のp型の不純物が導入され熱拡散されることにより形成される。導入されたp型の不純物は、キャリアとなるホールを放出する。
スペーサ15は、例えば、シリコン窒化(SiN)膜等により形成される。
コンタクト配線SC,DCは、ソースSおよびドレインD上における層間絶縁膜17中に設けられる。また、コンタクト配線SC,DCの一部は、素子分離絶縁膜STIのフリンジ部分20上に設けられる。
【0016】
ここで、図2に示すように、半導体装置(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)の活性化領域AAにおけるチャネル幅方向の寸法をWと表記し、チャネル長方向(<−110>方向)の寸法をXと表記して、以下に考察した結果について説明する。
【0017】
<2.WまたはXと駆動電流の変化量との関係>
2−1.チャネル幅方向の寸法Wと駆動電流の変化量との関係
次に、図4を用いて、チャネル幅方向の寸法W(μm)と駆動電流の変化量(%)との関係について説明する。ここでは、チャネル長Lが0.04μm〜1μmを有するpMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタのそれぞれに対して行ったTEG(Test Element Group)の結果を示すものである。換言すると、寸法Wの変化によって、ドライブ電流がどのように変化しているかを示すものである。
【0018】
図示するように、チャネル幅方向の寸法Wが10μm〜0.2μm程度まで変化すると、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの駆動電流の変化量(drive current change)が30%程度まで変化することが分かる。即ち、チャネル幅方向の寸法Wが小さくなるにつれて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの素子性能が両方とも30%向上していることが明らかである。
【0019】
尚、図中のプラスマイナスの符号は、電流方向を示すものである。即ち、n型トランジスタがプラスの電流方向とするなら、p型トランジスタはマイナスの電流方向になるということである。この説明は、下記図5および図6においても同様である。
【0020】
2−2.チャネル長方向の寸法Xと駆動電流の変化量との関係
次に、図5を用いて、チャネル長方向の寸法X(μm)と駆動電流の変化量(%)との関係について説明する。ここでは、チャネル長Lが0.04μm〜0.06μmを有するnMOSトランジスタ、およびチャネル長Lが0.04μm〜1μmを有するpMOSトランジスタのそれぞれに対して行ったTEGの結果を示すものである。換言すると、寸法Xの変化によって、ドライブ電流がどのように変化しているかを示すものである。
【0021】
図示するように、チャネル長方向の寸法Xが2μm〜0.2μm程度まで変化すると、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの駆動電流(drive current change)がそれぞれ6%及び10%程度増加することが分かる。即ち、チャネル長方向の寸法Xが小さくなるにつれて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの素子性能が両方とも向上していることが明らかである。
【0022】
2−3.Xと駆動電流の変化量との関係
次に、図6を用いて、チャネル長方向の寸法X(μm)と駆動電流の変化量(%)との関係について説明する。ここでは、チャネル幅Wが0.5μmに固定したnMOSトランジスタおよびpMOSトランジスタのそれぞれに対して行ったTEGの結果を示すものである。換言すると、上記と同様に、寸法Xの変化によって、ドライブ電流がどのように変化しているかを示すものである。
【0023】
図示するように、チャネル長方向の寸法Xが2μm〜0.2μm程度まで変化すると、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの駆動電流の変化量(drive current change)がそれぞれ6%及び10%程度増加することが分かる。即ち、チャネル長方向の寸法Xが小さくなるにつれて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの素子性能が両方とも向上していることが明らかである。
【0024】
<3.トランジスタの導電型に対して有利な面方位の関係>
次に、図7および図8を用いて、トランジスタの導電型に対して有利な面方位の関係について説明する。
3−1.nMOSトランジスタについて
まず、図7を用いて、nMOSトランジスタに有利な面方位について説明する。図7は、(100)面におけるシリコン(Si)基板の格子密度を説明するためのものである。ここでは、シリコン原子の隣接格子間の距離をa(Å)とする。
【0025】
図示するように、(100)面は、隣接するシリコン原子間が最も短いa(Å)一辺とする正方形からなるため、格子密度が最も高い面方位である。そのため、この(100)面方位から構成されるシリコンのチャネルを通過する際には、キャリアの移動度が低減するとも思われる。
【0026】
しかしながら、nMOSトランジスタの場合、キャリアの体積が小さい電子21である。そのため、格子密度が最も高い(100)面であっても、電子21の移動度が著しく低減することはない。
【0027】
加えて、ゲート絶縁膜として、例えば、シリコン酸化(SiO)膜を適用した場合、(100)面ではその格子密度が最も高いため、シリコン原子(Si)と酸素原子(O)との結合を強くでき、ゲート絶縁膜の信頼性を向上できる点でも有利である。
【0028】
従って、nMOSトランジスタに対して有利な面方位は、移動度およびゲート絶縁膜の信頼性の観点から、(100)面であると言える。
【0029】
3−2.pMOSトランジスタについて
次に、図8を用いて、pMOSトランジスタに有利な面方位について説明する。図8は、(110)面におけるシリコン(Si)基板の格子密度を説明するためのものである。
【0030】
図示するように、(110)面は、隣接するシリコン原子間が最も短いa(Å)および21/2a(Å)を一辺とする長方形からなるため、上記(100)面と比べると、格子密度が低い面方位である。
【0031】
ここで、pMOSトランジスタの場合、キャリアの体積が電子21に比べて比較的大きなホール22である。そのため、格子密度が比較的小さい(110)面は、ホール22の移動度向上に対して有利である。
【0032】
従って、pMOSトランジスタに対して有利な面方位は、移動度の観点から総合的に勘案すると、(110)面であると言える。
【0033】
尚、上記3−1.3−2.における移動度の説明は、シリコン原子の結晶格子のみに着目して説明した概略的なものである。より正確には、バンド構造等の計算を厳密に行った結果と合わせて考慮する必要がある。しかしながら、上記実験結果等と合致することから、本質的な要因の一つとして理解できるものである。
【0034】
<4.結論>
以上の考察から、本願発明者が得た以下の4−1.〜4−3.の結論について説明する。
4−1.pMOS,nMOSトランジスタの双方に有利な応力
まず、図9を用いて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの双方に有利な応力について説明する。
【0035】
pMOS,nMOSトランジスタの双方に有利な応力は、図9のように示される。即ち、チャネル長方向に関しては、チャネルCHに、圧縮応力CS(Compressive Stress)を加え、チャネル幅方向に関しては、チャネルCHに、引張り応力TS(Tensile Stress)を加えることである。または、いずれか一方でも良い。
これは、チャネル長方向(X寸法)に関しては、図5および図6に示したように、チャネル長方向の寸法Xが小さくなるにつれて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの素子性能が両方とも向上している。そして、”寸法Xが小さくなると、チャネル長方向に沿って圧縮応力が大きくなること”を鑑み、チャネル長方向に関しては、圧縮応力CSを加える。
【0036】
同様に、チャネル幅方向(W寸法)に関しては、図4に示したように、チャネル幅方向の寸法Wが小さくなるにつれて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの素子性能が両方とも向上している。そして、”寸法Wが小さくなると、チャネル幅方向に沿って引張り応力が大きくなること”を鑑み、チャネル幅方向に関しては、引張り応力TSを加えるのである。
【0037】
4−2.nMOS,pMOSトランジスタに有利な面方位
次に、図10を用いて、pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの双方に有利な面方位について説明する。pMOSトランジスタおよびnMOSトランジスタの双方に有利な面方位は、図10のように示される。
【0038】
図示するように、nMOSトランジスタは、素子形成面が(100)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<100>方向に沿って配置される。これは、上記3−1.で説明したように、nMOSトランジスタの場合、キャリアの体積が小さい電子21である。そのため、格子密度が最も高い(100)面であっても、電子21の移動度が低減することがないからである。加えて、ゲート絶縁膜として、例えば、シリコン酸化(SiO)膜を適用した場合、(100)面ではその格子密度が最も高いため、シリコン原子(Si)と酸素原子(O)との結合を強くでき、ゲート絶縁膜の信頼性を向上できる点でも有利である。
【0039】
従って、nMOSトランジスタに対して有利な面方位は、移動度およびゲート絶縁膜の信頼性の観点から、(100)面であると言える。
【0040】
pMOSトランジスタは、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置される。これは、上記3−2.で説明したように、(110)面であると、格子密度が比較的小さくなるため、ホール22の移動度の向上に対して有利であるからである。
【0041】
従って、pMOSトランジスタに対して有利な面方位は、移動度の観点から総合的に勘案すると、(110)面であると言える。
【0042】
4−3.チャネル長方向が、<−110>方向と垂直な<001>方向について
次に、図11および図12を用いて、チャネル長方向が上記の<−110>方向と垂直な<001>方向であっても、上記と同様に適用し得ることに関して説明する。
【0043】
上記の説明では、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置される絶縁ゲート型電界効果トランジスタについて説明した。しかしながら、この態様に限られず、チャネル長方向が、<−110>方向と垂直な<001>方向に沿って配置される絶縁ゲート型電界効果トランジスタに対しても上記と同様に適用でき、同様の効果を得ることが可能である。
【0044】
4−3−1.トランジスタのチャネル長方向<001>方向について
図11(a)に示すように、素子形成面の半導体基板(シリコン(Si)基板)10−1の面方位は、(110)面(Plane)である。
図11(b)に示すように、半導体基板10−1の(110)面上に配置されるトランジスタTrのチャネル長方向は、<−110>方向(ノッチ(Notch)方向)と垂直な方向に沿った<001>方向である。
【0045】
4−3−2.チャネル長方向<001>方向と<−110>方向の比較
次に、図12を用いて、チャネル長方向<001>方向と<−110>方向の比較について説明する。ここで、図中のLateralは上記のチャネル方向である<−110>方向であり、Verticalは<001>方向である。図12は、これらの2つの方向において、チャネル長L=40nm程度のpMOS,nMOSトランジスタのゲート電圧Vdと、駆動電流Idとの関係を示すものである。
【0046】
図示するように、このチャネル長L=40nm程度のpMOS,nMOSトランジスタにおいては、いずれも、Vertical<001>方向の方が、Lateral<−110>方向よりも、トランジスタ特性が良いという結果が得られていることが分かる。
【0047】
そのため、チャネル長方向が、<−110>方向と垂直な<001>方向であっても、上記と同様に適用し、同様の効果を得ることができる。これは、図12に示されているように、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタの両方にとって、チャネル長方向<001>と<−110>の性能比が常に〜1.1程度とになっているからである。
【0048】
以上のように、本発明者が、この発明に係る半導体装置およびその製造方法を発明するに至った面方位および応力に関する知見についての概要を説明した。
【0049】
そこで、上記の知見を適用し、温度が上昇するほどキャリアの移動度を向上できる半導体装置およびその製造方法について提案する。以下、その半導体装置およびその製造方法に関する実施形態についてより具体的に説明する。
【0050】
この発明の実施形態について図面を参照して説明する。尚、この説明においては、全図にわたり共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0051】
[第1の実施形態(素子分離絶縁膜(正の膨張係数)により応力を印加する一例)]
まず、図13乃至図16を用いて、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法を説明する。本例は、例えば、上記知見4−1.等を適用した素子分離絶縁膜(正の膨張係数)により応力を印加する一例に関するものである。
【0052】
<構成例>
図13および図14を用いて、本例に係る半導体装置の構成例について説明する。
図示するように、本例は、正の膨張係数を有する第1素子分離絶縁膜11−1を更に備える点で、図2および図3に示した半導体装置と相違する。本例の場合は、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置されるpMOSトランジスタを一例に挙げる。
【0053】
pMOSトランジスタは、半導体基板10−1上に設けられるゲート絶縁膜Gox、ゲート絶縁膜Gox 上に設けられるゲート電極G、ゲート電極Gを挟むように半導体基板10−1中に隔離して設けられるソースSまたはドレインD、ゲート電極Gの側壁に設けられるスペーサ15、およびコンタクト配線SC,DCを備える。このpMOSトランジスタは、導入されたp型の不純物であるホールをキャリアとする絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。
【0054】
ゲート絶縁膜Goxは、例えば、熱酸化法等によりシリコン酸化膜(SiO)等により形成される。
ゲート電極Gは、例えば、ポリシリコン(poly-Si)等により形成される。
ソースSおよびドレインD(p+層)は、半導体基板10−1中に、例えば、イオン注入法によりボロン(B)等のp型の不純物が導入され熱拡散されることにより形成される。導入されたp型の不純物は、キャリアとなるホールを放出する。
【0055】
スペーサ15は、例えば、シリコン窒化(SiN)膜等により形成される。コンタクト配線SC,DC は、ソースSおよびドレインD上における層間絶縁膜17中に設けられる。また、コンタクト配線SC,DCの一部は、第1素子分離絶縁膜11−1のフリンジ部分20上に設けられる。
第1素子分離絶縁膜11−1は、半導体基板10−1における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、正の膨張係数を有し、動作熱によりpMOSトランジスタに圧縮応力(Compressive Stress)を加える。
正の膨張係数(正の膨張率)[△V/V/△T](V:体積、T:温度、△V:体積変化)を有している。ここで、正の膨張係数とは、その体積が温度の上昇に伴って増大する割合をいう。例えば、本例での上記圧縮応力は、数〜数十[GPa]程度である。本例に係る第1素子分離絶縁膜11−1は、シリコン酸化膜(SiO膜)により形成されている。ここで、殆どの物質は、温度が上がると伸びるので、正の膨張係数を持っている。従って、正の膨張係数材料の選択肢が多い。膨張係数がなるべく大きく、デバイス性能に影響のない材料なら、どれでも本発明の第1素子分離絶縁膜11−1の埋め込み材として適用可能であるといえる。既存の素子分離絶縁膜STI埋め込み材が、シリコン酸化膜(SiO膜)であることを考えると、本例のように、シリコン酸化膜(SiO膜)に膨張係数が大きくなるような組成を加えた方が最善の解決策であると思われる。埋め込み材料のその他の形態としては、アモルファスでも良いし、上記ガラスセラミックスの組成を変化させた形態でも良い。さらに、シリコン酸化膜(SiO膜)系の他には、熱膨張係数が大きく、しかも弾性係数も大きな、例えば、酸化アルミニウム膜(A1膜)や窒化アルミニウム膜(AlN膜)等を正膨張係数埋め込み材として使っても良い。
【0056】
<駆動動作の際の応力印加>
次に、図15および図16を用いて、第1の実施形態に係る半導体装置の駆動動作の際の応力印加について説明する。
図示するように、pMOSトランジスタの駆動動作時には、上記の構成において、ソース電圧Vs、ドレイン電圧Vd、および所定のゲート電圧Vgが与えられる。すると、ゲート電極G下の半導体基板43中に形成されたチャネルCHに、キャリアであるホールが移動することにより、ソースSドレインD間に流れ、スイッチング動作を行う。この際、上記ドレイン電圧Vd等の印加電圧やスイッチング電流等により、動作熱が発生する。
【0057】
そして、この動作熱が第1素子分離絶縁層11−1に伝導すると、第1素子分離絶縁膜11−1は、自身の正の膨張係数に従って膨張する。そのため、チャネル長方向に沿って、圧縮応力CS(Compressive Stress)が発生する。ここで、上記圧縮応力CSは、例えば、数〜数十[GPa]程度である。
【0058】
その結果、半導体基板10−1等の温度が上昇して高温となった場合であっても、pMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度を向上することができる。これは、上記2−2.2−3.における図5および図6の下欄に示す考察結果によれば、明らかである。
【0059】
また、本例の場合、コンタクト配線SC,DCの一部は、第1素子分離絶縁膜11−1のフリンジ部分20上に設けられる。そのため、コンタクト配線SC,DCに発生した動作熱が、第1素子分離絶縁膜11−1に直接伝導される点でも、ホールの移動度の向上に対して有利であると言える。
【0060】
尚、上記のようなpMOSトランジスタの駆動動作に伴う発熱の場合に限らず、広くこのpMOSトランジスタを備えたLSIが動作する際に発生する熱によっても同様の動作が得られることは勿論である。
【0061】
<製造方法>
次に、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図示は省略するが、半導体基板10−1の素子分離領域に、例えば、RIE法等を用いて、素子分離用の溝を形成する。続いて、上記溝中に、例えば、CVD法を用いて正の膨張係数を有するシリコン酸化(SiO)膜等を埋め込み形成し、第1素子分離絶縁膜11−1を形成する。
ここで、上記のように、殆どの物質は、温度が上がると伸びる性質があり、正の膨張係数を持っている。従って、正の膨張係数材料の選択肢が多い。膨張係数がなるべく大きく、デバイス性能に影響のない材料なら、どれでも本発明の第1素子分離絶縁膜11−1の埋め込み材として適用可能であるといえる。例えば、その他、アモルファスでも良いし、上記ガラスセラミックスの組成を変化させた形態でも良い。さらに、シリコン酸化膜(SiO膜)系の他には、熱膨張係数が大きく、しかも弾性係数も大きな、例えば、酸化アルミニウム膜(Al膜)や窒化アルミニウム膜(AlN膜)等を正の膨張係数埋め込み材として使っても良い。
続いて、通常のLSI製造工程を用いて、本例に係る半導体装置を製造する。
【0062】
<作用効果>
この実施形態に係る半導体装置および製造方法によれば、少なくとも上記と同様の効果が得られる。さらに、本例によれば、少なくとも以下(5)の効果が得られる。
【0063】
(1)LSIの温度が室温から高温(例えば、200℃程度)に上昇するほど、キャリアであるホールの移動度を向上できる。
【0064】
上記のように、pMOSトランジスタが動作する際等に発生する動作熱が第1素子分離絶縁膜11−1に伝導することにより、第1素子分離絶縁膜11−1は自身の正の膨張係数に従って膨張する。そのため、第1素子分離絶縁膜11−1には、チャネル長方向(<−110>)に沿って、圧縮応力CS(Compressive Stress)が発生する。結果、チャネル領域CHにチャネル長方向に沿って、圧縮応力を加えることができる。
【0065】
そのため、半導体基板10−1等の温度が上昇して高温となった場合であっても、pMOSトランジスタのホールの移動度を向上することができる。
【0066】
しかも、高温になるほど上記圧縮応力CSが大きくなるので、ホールの移動度向上の効果は高温になるほど顕著である。これは、上記2−2.2−3.における図5および図6の下欄に示す考察結果により、明らかである。
【0067】
また、第1素子分離絶縁膜11−1は、温度上昇に比例してその体積が膨張するため、チャネル領域CHに、温度上昇に比例した圧縮応力を加えることができる。そのため、pMOSトランジスタを含むLSI等が高温となり、より激しくなったシリコン等の熱擾乱が発生した場合であっても、ホールの移動度が低減することを防止できる。結果、近年のトランジスタの微細化に伴うLSI等の高温状況下において、トランジスタの特性劣化を防止できる点で非常に有利である。
【0068】
[第2の実施形態(素子分離絶縁膜(負の膨張係数)により引張り応力を印加する一例)]
次に、図17乃至図20を用いて、第2の実施形態に係る半導体装置について説明する。この実施形態は、上記4−1.に係る負の膨張係数を有する素子分離絶縁膜により、一軸方向に引張り応力を印加する一例に関するものである。この説明において、上記第1の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0069】
<構成例>
図17および図18を用いて、この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成例を説明する。図示するように、本例は、チャネル長方向に沿った素子分領域中に、負の膨張係数を有する第2素子分離絶縁膜11−2が更に埋め込み配置されている点で、上記第1の実施形態に係る半導体装置と相違する。
【0070】
本例では、素子形成面が(110)面方位の半導体基板10−1上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置されるpMOSトランジスタを一例に挙げる。
pMOSトランジスタは、半導体基板10−1上に設けられるゲート絶縁膜Gox、ゲート絶縁膜Gox上に設けられるゲート電極G、ゲート電極Gを挟むように半導体基板12中に隔離して設けられるソースSまたはドレインD、ゲート電極Gの側壁に設けられるスペーサ15、およびコンタクト配線SC,DCを備える。このnMOSトランジスタは、導入されたn型の不純物である電子をキャリアとする絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。
【0071】
ソースSおよびドレインD(p+層)は、半導体基板12中に、p型の不純物が導入され熱拡散されることにより形成される。導入されたp型の不純物は、キャリアとなるホールを放出する。
スペーサ15は、例えば、シリコン窒化(SiN)膜等により形成される。
コンタクト配線SC,DCは、ソースSおよびドレインD上における層間絶縁膜17中に設けられる。また、コンタクト配線SC,DCの一部は、第1素子分離絶縁膜11−1のフリンジ部分20上に設けられる。
第2素子分離絶縁膜11−2は、半導体基板10−1における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、負の膨張係数を有し、動作熱によりnMOSトランジスタに引張り応力(Tensile Stress)を加える。
【0072】
負の膨張係数(負の膨張率)[△V/V/△T](V:体積、T:温度、△V:体積変化)とは、その体積が温度の上昇に伴って低減する割合をいう。例えば、第2素子分離絶縁膜11−2の膨張係数は、例えば、−8×10−6/K程度である。
【0073】
本例の第2素子分離絶縁膜11−2は、アモルファスマトリックス層18と、アモルファスマトリックス層18中に散在された結晶体19とを有するガラスセラミックス層である。このガラスセラミックス層の組成は、LiO−Al−SiO−TiOの四つの組成を組み合わせでガラス状態になれる組成であればどれでも良い。
【0074】
上記結晶体19が負の膨張係数を有し、アモルファスマトリックス層18が正の膨張係数を有している。そのため、第2素子分離絶縁膜11−2全体中に占める割合は、アモルファスマトリックス層18よりも、結晶体19の方が大きいことが望ましい。
【0075】
第2素子分離絶縁膜11−2は、後述するように、pMOSトランジスタ等のデバイスが動作する時に、その動作熱により、温度が上がるにつれて縮むようになる。結果としてチャネル長方向沿ったチャネル領域CHに、引張り応力が加えられ、ホールの移動度が上がり、pMOSトランジスタの特性を向上できる点で有利である。例えば、本例の場合の引張り応力は、80〜100[GPa]程度である。
【0076】
第2素子分離絶縁膜11−2の詳細な製造方法については、後述する第3の実施形態にて詳細に説明する。
【0077】
<駆動動作の際の応力印加>
次に、図19および図20を用いて、この発明の第2の実施形態に係る半導体装置の駆動動作の際の応力印加について説明する。
図示するように、pMOSトランジスタの駆動動作時には、上記の構成において、ソース電圧Vs、ドレイン電圧Vd、および所定の正のゲート電圧Vgが与えられる。すると、ゲート電極G下の半導体基板10−1中に形成されたチャネルCHに、キャリアである電子が移動することにより、ソースSドレインD間に流れ、スイッチング動作を行う。この際、上記ドレイン電圧Vd等の印加電圧やスイッチング電流等により、動作熱が発生する。
【0078】
そして、この動作熱が第2素子分離絶縁層11−2に伝導すると、第2素子分離絶縁膜11−2は、自身の負の膨張係数に従って圧縮する。そのため、第1素子分離絶縁膜11−1には、チャネル幅方向に沿って、引張り応力TS(Tensile Stress)が発生する。結果、チャネル領域CHに、チャネル幅方向に沿って引張り応力が加えられる。ここで、上記引張り応力TSは、例えば、80〜100[GPa]程度である。
【0079】
そのため、半導体基板12等の温度が上昇して高温となった場合であっても、pMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度をより向上することができる点で有利である。これは、上記4−1.における図4等に示す考察結果によれば、明らかである。
【0080】
尚、上記のようなpMOSトランジスタの駆動動作に伴う発熱の場合に限らず、広くこのpMOSトランジスタを備えたLSIが動作する際の動作熱によっても同様の動作が得られることは勿論である。
【0081】
さらに、本例では、トランジスタの導電型はp型を一例に挙げたが、これに限られない。即ち、n型MOSトランジスタに適用した場合であっても、同様にキャリアである電子の向上に対して有利である。
【0082】
[第3の実施形態(素子分離絶縁膜(正、負の膨張係数)により二軸応力を印加する一例)]
次に、図21乃至図31を用いて、第3の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について説明する。この実施形態は、上記4−1.に係る正および負の膨張係数を有する素子分離絶縁膜により、二軸方向の応力を印加する一例に関するものである。この説明において、上記第1の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0083】
<構成例>
図21および図22を用いて、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成例を説明する。図示するように、本例は、チャネル長方向に沿った素子分領域中に、負の膨張係数を有する第2素子分離絶縁膜11−2が更に埋め込み配置されている点で、上記第1の実施形態に係る半導体装置と相違する。換言すると、本例では、nMOSトランジスタを囲むように、素子分離絶縁領域における半導体基板10−1中に、チャネル長方向に沿って負の膨張係数を有する第2素子分離絶縁膜11−2が配置され、チャネル幅方向に沿って正の膨張係数を有する第1素子分離絶縁膜11−1が配置されている。
本例では、素子形成面が(100)面方位の半導体基板10−1上に、チャネル長方向が<100>方向に沿って配置されるpMOSトランジスタを一例に挙げる。
nMOSトランジスタは、半導体基板10−1上に設けられるゲート絶縁膜Gox、ゲート絶縁膜Gox上に設けられるゲート電極G、ゲート電極Gを挟むように半導体基板12中に隔離して設けられるソースSまたはドレインD、ゲート電極Gの側壁に設けられるスペーサ15、およびコンタクト配線SC,DCを備える。このnMOSトランジスタは、導入されたn型の不純物である電子をキャリアとする絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。
【0084】
ソースSおよびドレインD(n+層)は、半導体基板12中に、例えば、イオン注入法によりリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)等のn型の不純物が導入され熱拡散されることにより形成される。導入されたn型の不純物は、キャリアとなる自由電子を放出する。
スペーサ15は、例えば、シリコン窒化(SiN)膜等により形成される。
コンタクト配線SC,DCは、ソースSおよびドレインD上における層間絶縁膜17中に設けられる。また、コンタクト配線SC,DCの一部は、第1素子分離絶縁膜11−1のフリンジ部分20上に設けられる。
第2素子分離絶縁膜11−2は、半導体基板10−1における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、負の膨張係数を有し、動作熱によりnMOSトランジスタに引張り応力(Tensile Stress)を加える。
【0085】
負の膨張係数(負の膨張率)[△V/V/△T](V:体積、T:温度、△V:体積変化)とは、その体積が温度の上昇に伴って低減する割合をいう。例えば、第2素子分離絶縁膜11−2の膨張係数は、例えば、−8×10−6/K程度である。
【0086】
本例の第2素子分離絶縁膜11−2は、アモルファスマトリックス層18と、アモルファスマトリックス層18中に散在された結晶体19とを有するガラスセラミックス層である。このガラスセラミックス層の組成は、LiO−Al−SiO−TiOの四つの組成を組み合わせでガラス状態になれる組成であればどれでも良い。
【0087】
上記結晶体19が負の膨張係数を有し、アモルファスマトリックス層18が正の膨張係数を有している。そのため、第2素子分離絶縁膜11−2全体中に占める割合は、アモルファスマトリックス層18よりも、結晶体19の方が大きいことが望ましい。
【0088】
第2素子分離絶縁膜11−2は、後述するように、nMOSトランジスタ等のデバイスが動作する時に、その動作熱により、温度が上がるにつれて縮むようになる。結果としてチャネル長方向沿ったチャネル領域CHに、引張り応力が加えられ、電子の移動度が上がり、nMOSトランジスタの特性を向上できる点で有利である。例えば、本例の場合の引張り応力は、80〜100[GPa]程度である。
【0089】
<駆動動作の際の応力印加>
次に、図23および図24を用いて、この発明の第1の実施形態に係る半導体装置の駆動動作の際の応力印加について説明する。
図示するように、nMOSトランジスタの駆動動作時には、上記の構成において、ソース電圧Vs、ドレイン電圧Vd、および所定の正のゲート電圧Vgが与えられる。すると、ゲート電極G下の半導体基板10−1中に形成されたチャネルCHに、キャリアである電子が移動することにより、ソースSドレインD間に流れ、スイッチング動作を行う。この際、上記ドレイン電圧Vd等の印加電圧やスイッチング電流等により、動作熱が発生する。
【0090】
そして、この動作熱が第2素子分離絶縁層11−2に伝導すると、第2素子分離絶縁膜11−2は、自身の負の膨張係数に従って圧縮する。そのため、第1素子分離絶縁膜11−1には、チャネル幅方向に沿って、引張り応力TS(Tensile Stress)が更に発生する。結果、チャネル領域CHに、チャネル幅方向に沿って引張り応力が更に加えられる。ここで、上記引張り応力TSは、例えば、80〜100[GPa]程度である。
【0091】
それと同時に、第1素子分離絶縁膜11−1の熱膨張によって、チャネルCHに圧縮応力CSが加えられることになる。そのため、チャネル長方向<−110>に沿った圧縮応力CS、およびチャネル幅方向に沿った引張り応力TSが、同時に発生する。結果、チャネル領域CHに、チャネル長方向およびチャネル幅方向の二軸方向に沿って、同時に、より強い圧縮応力および引張り応力が加えられる。
【0092】
そのため、半導体基板12等の温度が上昇して高温となった場合であっても、nMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度をより向上することができる点で有利である。
【0093】
その結果、そのため、半導体基板10−1等の温度が上昇して高温となった場合であっても、nMOSトランジスタのキャリアである電子の移動度を向上することができる。これは、上記2−1.乃至2−3.や4−1.における図4乃至図6や図9に示す考察結果によれば、明らかである。
【0094】
また、本例の場合、コンタクト配線SC,DCの一部は、第1素子分離絶縁膜11−1のフリンジ部分20上に設けられる。そのため、コンタクト配線SC,DCに発生した動作熱が、第1素子分離絶縁膜11−1に直接伝導される点でも、電子の移動度の向上に対して有利であると言える。
【0095】
尚、上記のようなnMOSトランジスタの駆動動作に伴う発熱の場合に限らず、広くこのnMOSトランジスタを備えたLSIが動作する際の動作熱によっても同様の動作が得られることは勿論である。
【0096】
<製造方法>
次に、図26乃至図31を用いて、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。この説明においては、図25に示すタイミングチャートに則して説明する。
【0097】
まず、素子形成面が(100)面方位の半導体基板10−1中に、例えば、リン(P)等のp型の不純物を注入し、pウェルを形成する(図示せず)。
続いて、図26に示すように、半導体基板10−1の素子分離領域EIR(Element Isolation Region)に、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法等を用いて、素子分離用の溝を形成する。続いて、上記溝中に、例えば、CVD(chemical vapor deposition)法を用いてシリコン酸化(SiO)膜等を埋め込み、シリコン酸化膜21を形成する。
【0098】
続いて、図27に示すように、半導体基板10−1上に、例えば、フォトレジスト等を塗布し、このフォトレジストに露光および現像を行って素子領域AA(Active Area)上に残存させ、マスク層22を形成する。
【0099】
続いて、マスク層22をマスクとして、シリコン酸化膜21中に、例えば、イオン注入法により、リチウム(Li),アルミニウム(Al),チタン(Ti)等のイオンによる結晶種23を注入する。
【0100】
続いて、図28に示すように、マスク層22を除去し、時刻t1〜t2の間、例えば、酸素雰囲気中において、温度T1(例えば、1000℃程度)で時間Δt1(例えば、10分程度)の間熱処理することによって、シリコン酸化膜21を、ガラス状態(アモスファス状態)にする。
【0101】
続いて、時刻t2の際に、降温速度α1において温度T2(例えば、600℃程度)まで冷却する。ここで、上記速度α1はできるだけ大きい(速い)ほうが望ましい。
【0102】
続いて、図29に示すように、時刻t3〜t4の間、上記ガラス状態のシリコン酸化膜21を、例えば、温度T2(例えば、600℃程度)において時間Δt2(例えば、5分間程度)のアニ−ルする。そして、上記シリコン酸化膜21におけるアモルファスマトリックス層18中に、高密度に結晶核25を析出させる。ここで、上記結晶核25の大きさは、例えば、数nm(ナノメータ)程度である。
【0103】
さらに、上記工程(時刻t3〜t4)において、熱処理を行う温度は、結晶核25が最も速く析出される温度T2(この実施形態では600℃)であることが望ましい。即ち、図31中の実線31に示すように、温度T2の時に結晶核25が析出する速度が、最も速い速度V1であるため、短時間で高密度の結晶核25が形成される。
【0104】
続いて、時刻t4の際に、上記結晶核25を備えたアモルファスマトリックス層18を、昇温速度α2において温度T3(例えば、650℃程度)まで上昇させる。ここで、昇温速度α2は、上記結晶核25の不均一な成長を防止するために、大きい(速い)方が望ましい。
【0105】
続いて、図30に示すように、時刻t5〜t6の間、上記結晶核25を備えたアモルファスマトリックス層18を、例えば、温度T3(例えば、650℃程度)において時間Δt3(例えば、10分間程度)の間アニ−ルすることによって、上記結晶核25を成長させ、結晶体19を形成する。同時に、上記結晶核25を成長させて結晶体19を形成することによって、アモルファスマトリックス層18中に上記イオン注入工程により注入されたイオン(結晶種)23を十分に析出させる。結果、アモルファスマトリックス層18と結晶体19とを備えたガラスセラミックス層を備える第2素子分絶縁膜11−2を形成することができる。ここで、上記結晶体19の大きさは、例えば、数nm〜数十nm程度である。
【0106】
さらに、上記工程(時刻t5〜t6)において、アニ−ルを行う温度は、結晶核25が最も速く成長する温度T3であることが望ましい。即ち、図31中の実線32に示すように、温度T3の時に結晶核25が成長する速度が、最も早く成長する速度V2となり、短時間で結晶核25が成長する。
【0107】
尚、図31中の実線31、32との囲まれた領域33でアニ−ルをすることは望ましくない。領域33では、結晶核25の密度も低くなり、成長も十分にできないためである。
【0108】
続いて、時刻t6の際に、第1素子分離絶縁膜11−1を、降温速度α3で室温程度にまで冷却する。ここで、速度α3は結晶成長で生じた内部応力を緩和するために、できるだけ小さい(遅い)方が望ましい。
【0109】
以上の工程により、ガラスセラミックス(pyroceramics)層により形成された第2素子分離絶縁膜11−2を製造することができる。尚、この実施形態に示したガラスセラミックスの組成は、一例であり、例えば、LiO−Al−SiO−TiO等の組み合わせでアモルファス状態になれる組成であればどれでも良い。
【0110】
続いて、図示は省略するが、半導体基板10−1上の素子領域AAに、例えば、熱酸化法等により、ゲート絶縁膜Goxを形成する。続いて、ゲート絶縁膜Gox上に、チャネル長方向が<100>方向となるように、この<100>方向と垂直な方向にゲート電極Gを形成する。続いて、ゲート電極Gの側壁に沿ってスペーサ15を形成する。続いて、ゲート電極Gおよびスペーサ15をマスクとして、半導体基板12中に、n型の不純物を導入し、ソースSおよびドレインDを形成する。続いて、ゲート電極G上を覆うように、層間絶縁膜17を形成する。
【0111】
続いて、ソースSおよびドレインD上における層間絶縁膜17中に、コンタクトホールを形成し、このコンタクトホール中に例えば、ポリシリコン層等を埋め込むことにより、コンタクト配線SC、DCを形成する。上記コンタクトホールを形成する際、その一部が、第1素子分離絶縁膜11−1におけるフリンジ部分20に接するように形成することが望ましい。
【0112】
以上の製造方法により、第3の実施形態に係る半導体装置を形成する。
<作用効果>
第3の実施形態に係る半導体装置および製造方法によれば、少なくとも下記(2)乃至(5)の効果が得られる。
【0113】
(2)LSIの温度が室温から高温(例えば、200℃程度)に上昇するほど、キャリアである電子(またはホール)の移動度を向上できる。
上記のように、nMOSトランジスタが動作する際等に発生する動作熱が第1,第2素子分離絶縁膜11−1,11−2に伝導することにより、チャネル長方向<100>に沿って圧縮応力CSが発生し、チャネル幅方向<001>に沿って引張り応力TSが更に発生する。結果、チャネル領域CHに、チャネル幅方向に沿って引張り応力が更に加えられる。
【0114】
そのため、チャネル長方向に沿った圧縮応力CS、およびチャネル幅方向に沿った引張り応力TSが、同時に発生する。結果、チャネル領域CHに、チャネル長方向およびチャネル幅方向の二軸方向に沿って、同時に、より強い圧縮応力および引張り応力が加えられる。
【0115】
このように、半導体基板12等の温度が上昇して高温となった場合であっても、nMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度をより向上することができる点で有利である。
【0116】
しかも、高温になるほど引張り応力TSが大きくなるので、電子の移動度向上の効果は高温になるほど顕著である。
【0117】
また、第1素子分離絶縁膜11−1は、温度上昇に比例してその体積が膨張するため、チャネル領域CHに温度上昇に比例した圧縮応力を加えることができる。
【0118】
そのため、nMOSトランジスタを含むLSI等が高温となり、より激しくなったシリコン等の熱擾乱が発生した場合であっても、電子の移動度が低減することを防止できる。結果、近年のトランジスタの微細化に伴うLSI等の高温状況下において、トランジスタの特性劣化を防止できる点で非常に有利である。
【0119】
また、本例の場合、コンタクト配線SC,DCの一部は、第1素子分離絶縁膜11−1のフリンジ部分20上に設けられる。そのため、コンタクト配線SC,DCに発生した動作熱が、第1素子分離絶縁膜11−1に直接伝導される点でも、電子の移動度の向上に対して有利であると言える。
【0120】
尚、本例では、チャネル領域CHに垂直な二軸方向に引張り応力を同時に加えることの効果について、n型のnMOSトランジスタを一例に挙げたが、n型に限られない。pMOSトランジスタのチャネル領域CHに、同様に垂直な二軸方向に引張り応力を同時に加える場合であっても、pMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度を向上することができる。これは、上記図9に示した考察の結論から明らかである。このように、トランジスタの導電型に限られない点でも有利である。
【0121】
(3)nMOSトランジスタの電子の最適な移動度を選択できる。
チャネル領域CHに加えられる圧縮応力CSと引張り応力TSの大きさは、第1,第2素子分離絶縁膜11−1,11−2の、例えば、体積等に比例して増大する。
【0122】
そのため、例えば、シリコン酸化膜21を形成する際(図26)等に、素子分離用の溝の深さ等を選択し、溝内に埋め込むシリコン酸化膜21の体積を制御し、最適な体積等を選択することによって、nMOSトランジスタの電子の最適な移動度を選択できる点で有利である。
【0123】
(3)熱工程を適切に選択することにより、幅広い範囲で第2素子分離絶縁膜11−2の膨張係数の制御が可能であるため、実際のデバイス動作に最適な負の膨張係数を選択できる。
【0124】
図31に示したように、第2素子分離絶縁膜11−2は、結晶核25が形成される実線31で示す温度領域と、結晶核25が成長する実線32で示す温度領域との二つの温度領域を備えている。そのため、例えば、実線31で示す温度領域では低い温度で熱処理をし、実線32で示す温度領域では結晶核の成長速度が最も速い温度T3で熱処理をすると、膨張係数の比較的低い第2素子分離絶縁膜11−2を形成できる。
【0125】
このように、上記熱処理工程(図26−図29)の際に、上記実線31、32で示す温度領域の温度(例えば、T2、T3)、時間(例えば、Δt2、Δt3)を多様に組み合わせて選択できることにより、密度および大きさが多様な結晶体19及びアモルファスマトリックス層18を形成できる。そのため、膨張係数のマージンを拡大でき、容易に目的の膨張係数を有した第2素子分離絶縁膜11−2を形成できる点で有利である。
【0126】
また、上記イオン注入工程(図27)の際に、結晶種23の種類・組成・注入量等を選択することによって、必要な膨張係数を制御することも可能である。
【0127】
上記のように、組成等が同様であっても、熱処理工程(図26−図29)やイオン注入工程(図27)の際に、最適なものを多様に選択することができるため、目的に応じて幅広い範囲での膨張係数の制御が可能である。
【0128】
(4)より具体的には、例えば、温度T2、T3、時間Δt2>時間Δt3を選択することにより、負の膨張係数が大きく、大きな引張り応力TSを加えることができる第2素子分離絶縁膜11−2を形成することができる。
【0129】
チャネル領域CHにより大きな引張り応力を加える絶縁層として働く一観点としては、負の膨張係数がより大きいことがある。そのためには、結晶体19がより高密度で緻密に形成されていることが望ましい。ここで、時間Δt2を大きく取ると結晶核25が形成する密度を高くでき、時間Δt3を大きくとると1つの結晶核25を大きく成長させて大きな結晶体19を形成できる。
【0130】
よって、この実施形態のように温度T2、T3を選択した場合は、温度T2、T3のいずれも結晶核の形成速度・成長速度が最も早い温度であるから(図31)、時間Δt2が時間Δt3よりも大きく(時間Δt2>時間Δt3)することにより、結晶体19が高密度で緻密に形成されたガラスセラミックスの第1素子分離絶縁層11−1を形成することができる。時間Δt2が小さすぎると結晶核25の密度が低下して、結晶体19を緻密に形成できない。一方、時間Δt3が大き過ぎると、1つの結晶核25が大きく成長しすぎてストレスによるクラックが生じる可能性がある。
【0131】
そのため、第2素子分離絶縁膜11−2中に占める割合を、アモルファスマトリックス層18よりも結晶体19方がより大きくなるように形成できる。結果、第2素子分離絶縁膜11−2の全体の膨張係数を負とさせ、負の膨張係数をより大きくできる点で有利である。
【0132】
(5)結晶核25の成長を均一にして、第2素子分離絶縁膜11−2が加える引張り応力TSを均一化できる。
【0133】
速度α2をできるだけ大きく(速く)することによって、アモルファスマトリックス層18の温度を結晶核25が最も速く成長する温度T3に速く到達して温度の不均一を防止し、結晶核25それぞれが成長する時刻を均一にできる。そのため、結晶核25を均一に成長させて結晶体19の粒径を均一にでき、第2素子分離絶縁膜11−2が加える引張り応力TSを均一化できる点で有利である。
【0134】
[第4の実施形態(ハイブリッド基板において素子分離絶縁膜(正、負の膨張係数)により一軸方向の応力を印加する一例)]
次に、図32乃至図44を用いて、第5の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について説明する。この実施形態は、上記3.および4−3.に係る導電型に対して有利な面方位と、さらに正および負の膨張係数を有する素子分離絶縁膜により一軸方向の応力を印加する一例に関するものである。この説明において、上記第1の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0135】
<構成例>
図32および図33を用いて、第4の実施形態に係る半導体装置の構成例を説明する。図示するように、本例は、素子形成面が(110)面方位および(100)面方位からなるハイブリッド基板(Hybrid substrates)上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿ってpMOSトランジスタ,<100>方向に沿ってnMOSトランジスタが交互に隣接して配置されている。
【0136】
pMOSトランジスタ(pMOS1、pMOS2)は、素子形成面が(110)面方位の半導体基板10−1上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置される。素子分離絶縁領域に、チャネル幅方向に沿って、正の膨張係数を有する第1素子分離絶縁膜11−1が埋め込み配置される。例えば、第1素子分離絶縁膜11−1は、上記と同様に、正の膨張係数を有するシリコン酸化膜等により形成される。
【0137】
nMOSトランジスタ(nMOS1、nMOS2)は、素子形成面が(100)面方位のBOX層33を有する半導体基板(SOI(Silicon On Insulater)基板)10−2上に、チャネル長方向が<100>方向に沿って配置される。素子分離絶縁領域に、チャネル幅方向に沿って、負の膨張係数を有する第2素子分離絶縁膜11−2が埋め込み配置される。例えば、第2素子分離絶縁膜11−2は、上記と同様に、負の膨張係数を有するガラスセラミックス層等により形成される。
【0138】
<駆動動作の際の応力印加>
次に、図34および図35を用いて、第4の実施形態に係る半導体装置の駆動動作の際の応力印加について説明する。
【0139】
図示するように、トランジスタnMOS1,nMOS2,pMOS1,pMOS2の駆動動作時には、上記の構成において、ソース電圧Vs、ドレイン電圧Vd、および所定のゲート電圧Vgが与えられる。すると、ゲート電極G下の半導体基板中に形成されたチャネルCHに、キャリアである電子およびホールが移動することにより、ソースSドレインD間に流れ、スイッチング動作を行う。この際、上記ドレイン電圧Vd等の印加電圧やスイッチング電流等により、動作熱が発生する。
【0140】
そして、この動作熱が第1、第2素子分離絶縁層11−1、11−2に伝導すると、第1素子分離絶縁膜11−1は、自身の正の膨張係数に従って膨張する。第2素子分離絶縁膜11−2は、自身の負の膨張係数に従って収縮する。そのため、第1素子分離絶縁膜11−1には、チャネル長方向<−110>に沿って、圧縮応力CSが発生する。第2素子分離絶縁膜11−2には、チャネル長方向<100>に沿って、引張り応力TSが発生する。この際、第1、第2素子分離絶縁層11−1、11−2がチャネル幅方向に沿って隣接して配置されることにより、互いの引張り応力TSおよび圧縮応力CSを強め合い、助け合う相乗効果により、引張り応力TSおよび圧縮応力CSをより増大することができる。
【0141】
結果、nMOSトランジスタnMOS1、nMOS2のチャネル領域CHには、チャネル長方向に沿ってより大きな引張り応力が加えられ、pMOSトランジスタpMOS1、pMOS2のチャネル領域CHには、チャネル長方向に沿ってより大きな圧縮応力が加えられる。
【0142】
このように、本例によれば、半導体基板12等の温度が上昇して高温となった場合であっても、nMOSトランジスタのキャリアである電子、およびpMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度を、同時により向上することができる点で有利である。
【0143】
<製造方法>
次に、図36乃至図44を用いて、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
ハイブリッド基板の製造方法
まず、図36(a),(b)乃至図38(a),(b)を用いて、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法に用いるハイブリッド基板の製造方法について説明する。この説明において、図36(a)乃至図38(a)は、素子形成面が(110)面方位の半導体基板の製造方法であり、図36(b)乃至図38(b)は、素子形成面が(100)面方位の半導体基板の製造方法である。
【0144】
まず、図36(a),(b)に示すように、素子形成面が(110)面方位,(100)面方位の半導体基板10−1,10−2の表面上に、例えば、熱酸化法等を用いて、シリコン酸化膜(Oxide)を形成し、BOX層30を形成する。
【0145】
続いて、半導体基板10−1,10−2の表面上からの所定の深さD1,D2程度に、例えば、イオン注入法等を用いて、水素イオンHを導入する。これは、この水素イオンHは、後の半導体基板10−1,10−2の薄膜化工程において、エッチングストッパとするためのものである。そのため、深さD1,D2は、半導体基板10−1,10−2の膜厚に対応する。
【0146】
続いて、図37(a),(b)に示すように、上記半導体基板10−1,10−2を反転させ、素子形成面がそれぞれ(110)面方位,(100)面方位となるように、BOX層30を操作基板33上に接着させる。
【0147】
続いて、図37(a),(b)に示すように、上記注入した水素イオンHをストッパとして、例えば、CMP法等を用いて、半導体基板10−1,10−2を厚さD1,D2程度まで薄膜化する。
【0148】
以上の製造工程により、素子形成面が(110)面方位,(100)面方位からなる半導体基板(SOI基板)を製造できる。
【0149】
ハイブリッド基板を用いた素子の製造方法
次に、図39乃至図44を参照し、上記製造したハイブリッド基板を用いて、本例に係る半導体装置の製造方法を説明する。この説明では、素子形成面が(100)面方位の半導体基板(SOI基板)を用いる例に挙げて、以下説明する。
【0150】
まず、図39に示すように、素子形成面が(100)面方位の半導体基板10−2上に、例えば、熱酸化法等を用いて、SiO膜41を形成する。続いて、SiO膜41上に、例えば、CVD法等を用いて、窒化膜42を形成する。
【0151】
続いて、図40に示すように、例えば、RIE法等を用いて、pMOSトランジスタ形成領域(pArea)に対応する半導体基板10−1中およびBOX層30中に、所定の溝を形成する。続いて、上記溝の側壁に沿って、例えば、CVD法等を用いて、SiN膜等を形成し、スペーサ43を形成する。
【0152】
続いて、図41に示すように、上記溝中を埋め込むように、例えば、エピタキシャル法等を用いて、素子形成面が(110)面方位となるシリコン基板10−1を形成する。
【0153】
続いて、図42に示すように、例えば、CMP法等を用いて、窒化膜42およびSiO膜を除去する。
【0154】
続いて、図43に示すように、素子分離領域EIRにおける半導体基板10−1,10−2およびBOX層30中に、例えば、RIE法等を用いて、操作基板33表面上まで素子分離用の溝を形成する。
【0155】
続いて、上記素子分離用の溝中に、同様の製造方法を用いて、正または負の膨張係数を有する第1,第2素子分離絶縁膜11−1,11−2を埋め込み形成する。この際、第1、第2素子分離絶縁膜11−1、11−2のいずれか一方を形成する間、他方の領域を保護膜などで覆う。例えば、nMOSトランジスタnMOS1、nMOS2の第2素子分離絶縁膜11−2を形成する間、他方のpMOSトランジスタpMOS1,pMOS2形成領域上に、例えば、CVD法を用いてシリコン窒化(Si)膜等を堆積して、保護膜を形成する。第2素子分離絶縁膜11−2を形成した後、上記保護膜を除去する。
【0156】
続いて、図44に示すように、上記と実質的に同様な製造方法を用いて、素子形成面が(110)面方位の半導体基板上にpMOSトランジスタ(pMOS1、pMOS2)を形成し,素子形成面が(100)面方位の半導体基板上にnMOSトランジスタ(nMOS1、nMOS2)を形成し、本例に係る半導体装置を形成する。この際、トランジスタpMOS1、pMOS2のチャネル長方向が<−110>方向、nMOS1、nMOS2のチャネル長方向が<100>方向となるように、ゲート電極G等を形成する。
【0157】
<作用効果>
第4の実施形態に係る半導体装置および製造方法によれば、少なくとも上記(1)乃至(5)の効果が得られる。さらに、本例では、少なくとも以下の(6)、(7)に示す効果が得られる。
【0158】
(6)導電型に対応して、移動度の向上をより向上できる。
さらに本例では、素子形成面が(110)面方位および(100)面方位からなるハイブリッド基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿ってpMOSトランジスタ,<100>方向に沿ってnMOSトランジスタが交互に隣接して配置されている。そのため、上記4−2.において説明したように、n型、p型トランジスタのそれぞれに対して、移動度の向上に対して有利な(100)面方位、(110)面方位が配置される。そのため、移動度の向上に対してより有利である。
【0159】
また、本例では、面方位が(100)面方位、(110)面方位が異なるが、シリコン基板10−1、10−2上にp型、n型トランジスタをそれぞれ配置させる。一方、例えば、SiGeや歪みSi等のいわゆる歪み半導体基板を用いていない。そのため、本例の構成では、欠陥が少なく、リーク電流を低減できる点で、信頼を向上できる点でもメリットがある。
【0160】
(7)製造コストの低減に対して有利である。
また、例えば、SiGeや歪みSi等のいわゆる歪み半導体基板を用いた場合には、製造プロセスや製造装置が増えるため、製造コストが増大する傾向にある。
【0161】
本例では、かかる歪み半導体基板を用いる必要がなく、面方位が(100)面方位、(110)面方位が異なるが、シリコン基板10−1、10−2を適用できる。そのため、製造プロセスや製造装置を低減でき、製造コストの低減に対して有利である。
【0162】
[第5の実施形態(複数のn型、p型トランジスタに二軸の応力を印加する例)]
次に、第5の実施形態に係る半導体装置について、図45および図46を用いて説明する。この実施形態は、複数のnMOS、pMOSトランジスタに二軸方向に応力を印加する一例に関するものである。この説明において、上記第4の実施形態と重複する部分の詳細な説明を省略する。
【0163】
<構成例>
図45を用いて、本例に係る半導体装置の構成例について説明する。図示するように、第5の実施形態に係る半導体装置は、トランジスタnMOS1,nMOS2,pMOS1,pMOS2を囲むように、素子分離絶縁領域における半導体基板10−1、10−2中にも、チャネル長方向に沿って、負の膨張係数を有する第2素子分離絶縁膜11−2Bが更に配置されている点で、上記第4の実施形態と相違する。換言すると、本例では、トランジスタnMOS1,nMOS2,pMOS1,pMOS2を囲むように、素子分離絶縁領域における半導体基板10−1、10−2中に、チャネル幅方向およびチャネル長方向に沿って、第1、第2素子分離絶縁膜11−1,11−2A,11−2Bが配置されている点で、上記第4の実施形態と相違している。
【0164】
第2素子分離絶縁膜11−2Bは、上記第2素子分離絶縁膜11−2Aと同様な構成である。即ち、第2素子分離絶縁膜11−2Bは、アモルファスマトリックス層18と、アモルファスマトリックス層18中に散在された結晶体19とを有するガラスセラミックス層により形成される。第1素子分離絶縁膜11−1は、上記と同様に、正の膨張係数を有する。
【0165】
<駆動動作の際の応力印加>
次に、図46を用いて、第5の実施形態に係る半導体装置の駆動動作の際の応力印加について説明する。
【0166】
図示するように、トランジスタnMOS1,nMOS2,pMOS1,pMOS2の駆動動作時には、上記の構成において、ソース電圧Vs、ドレイン電圧Vd、および正のゲート電圧Vgが与えられる。すると、ゲート電極G下の半導体基板12中に形成されたチャネルCHに、キャリアである電子およびホールが移動することにより、ソースSおよびドレインD間に流れ、スイッチング動作を行う。この際、上記ドレイン電圧Vd等の印加電圧やスイッチング電流等により、動作熱が発生する。
【0167】
そして、この動作熱が第1、第2素子分離絶縁層11−1,11−2A,11−2Bに伝導すると、第1素子分離絶縁膜11−1は、自身の正の膨張係数に従って膨張する。第2素子分離絶縁膜11−2A,11−2Bは、自身の負の膨張係数に従って収縮する。そのため、第1素子分離絶縁膜11−1には、チャネル長方向<−110>方向または<100>方向に沿って、圧縮応力CSが発生する。第2素子分離絶縁膜11−2A,11−2Bには、チャネル長方向<−110>方向または<100>方向、およびチャネル幅方向に沿って、引張り応力TSA,TSBが発生する。
【0168】
この際、第1、第2素子分離絶縁層11−1,11−1Aが隣接して配置されることにより、互いの引張り応力TSAおよび圧縮応力CSを強め合い、助け合うような相乗効果により、引張り応力TSAおよび圧縮応力CSをより増大することができる。
【0169】
結果、nMOSトランジスタnMOS1,nMOS2のチャネル領域CHには、チャネル長方向<100>に沿ったより大きな引張り応力、およびチャネル幅方向に沿った引張り応力が二軸方向に同時に加えられる。同様に、pMOSトランジスタpMOS1,pMOS2のチャネル領域CHには、チャネル長方向<−110>に沿ったより大きな圧縮応力およびチャネル幅方向に沿った引張り応力が二軸方向に同時に加えられる。
【0170】
ここで、チャネル領域CHに垂直な二軸方向に引張り応力を同時に加えることの効果は、トランジスタの導電型に限られない点で有利である。
【0171】
<作用効果>
第5の実施形態に係る半導体装置および製造方法によれば、少なくとも上記(1)乃至(7)に示す効果が得られる。
【0172】
さらに、本例によれば、半導体基板10−1,10−2等の温度が上昇して高温となった場合であっても、nMOSトランジスタのキャリアである電子、およびpMOSトランジスタのキャリアであるホールの移動度を同時により向上することができる点で有利である。
【0173】
尚、上記説明では、チャネル長方向が<−110>方向に配置される半導体装置を一例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。即ち、4−3.に説明したように、チャネル長方向が、<−110>方向と垂直な<001>方向であっても、上記と同様に適用し、同様の効果を得ることができる。
【0174】
以上、第1乃至第5の実施形態を用いて本発明の説明を行ったが、この発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば各実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】(a)はこの発明に係る半導体基板の面方位およびチャネル長方向を説明するための斜視図、(b)は(a)に対応する平面図。
【図2】この発明に係る半導体装置の平面図。
【図3】図2中のIII−III線に沿った断面図。
【図4】チャネル幅方向(W)と駆動電流変化量との関係を示す図。
【図5】チャネル長方向(X)と駆動電流変化量との関係を示す図。
【図6】チャネル長方向(X)と駆動電流変化量との関係を示す図。
【図7】(100)面方位の格子密度を概略的に示す図。
【図8】(110)面方位の格子密度を概略的に示す図。
【図9】pMOSおよびnMOSに有利な応力を示す平面図。
【図10】pMOSおよびnMOSに有利な面方位を示す断面図。
【図11】(a)および(b)は、チャネル長方向が<−110>方向と垂直な<001>方向の場合を説明するための図。
【図12】チャネル長方向が<−110>方向と<001>方向の場合を比較するための図。
【図13】この発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す平面図。
【図14】図1中のXIV−XIV線に沿った断面図。
【図15】第1の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための平面図。
【図16】第1の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための断面図。
【図17】第2の実施形態に係る半導体装置を示す平面図。
【図18】図17中のXV−XV線に沿った断面図。
【図19】第2の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための平面図。
【図20】第2の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための断面図。
【図21】第3の実施形態に係る半導体装置を示す平面図。
【図22】図21中のXV−XV線に沿った断面図。
【図23】第3の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための平面図。
【図24】第3の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための断面図。
【図25】第3の実施形態に係る時間と温度との関係を示すタイミングチャート図。
【図26】第3の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図27】第3の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図28】第3の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図29】第3の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図30】第3の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図31】第3の実施形態に係る温度と結晶核形成速度/結晶核成長速度との関係を示す図。
【図32】第4の実施形態に係る半導体装置を示す平面図。
【図33】図32中のXXIX−XXIX線に沿った断面図。
【図34】第4の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための平面図。
【図35】第4の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための断面図。
【図36】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図37】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図38】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図39】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図40】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図41】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図42】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図43】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図44】第4の実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図。
【図45】第5の実施形態に係る半導体装置を示す平面図。
【図46】第5の実施形態に係る半導体装置の駆動動作を説明するための平面図。
【符号の説明】
【0176】
nMOSトランジスタ…ゲート絶縁型電界効果トランジスタ、11−1…第1素子分離絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置される絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、
前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、正の膨張係数を有し、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って圧縮応力を加える第1素子分離絶縁膜とを具備すること
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、負の膨張係数を有し、前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル幅方向に沿って引張り応力を加える第2素子分離絶縁膜を更に具備すること
を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁ゲート型電界効果トランジスタのキャリアは、電子またはホールであること
を特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
素子形成面が(110)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<−110>方向に沿って配置されるp型絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、
前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、正の膨張係数を有し、前記p型絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って圧縮応力を加える第1素子分離絶縁膜と、
素子形成面が(100)面方位の半導体基板上に、チャネル長方向が<100>方向に沿って配置されるn型絶縁ゲート型電界効果トランジスタと、
前記半導体基板における素子分離領域の溝内に埋め込まれ、負の膨張係数を有し、前記n型絶縁ゲート型電界効果トランジスタに、動作熱によりチャネル長方向に沿って引張り応力を加える第2素子分離絶縁膜とを具備すること
を特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記第1素子分離絶縁膜は、SiO膜,A1膜,またはAlN膜のいずれかを含んで形成され、
前記第2素子分離絶縁膜は、アモルファスマトリックス層と前記アモルファスマトリックス層中に散在される結晶体とを有するガラスセラミックス層、またはHfW層を含んで形成されること
を特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2010−141263(P2010−141263A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318713(P2008−318713)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】