説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】基板に所望のプラズマ処理を適切に施すことができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置10は、ウエハWを収容するチャンバ11内部をプラズマ生成室12及びウエハ処理室13に仕切るイオントラップ14と、プラズマ生成室12内に配置される高周波アンテナ15と、プラズマ生成室12内に処理ガスを導入する処理ガス導入部16と、ウエハ処理室13内に配置されてウエハWを載置し且つバイアス電圧が印加される載置台17とを備え、イオントラップ14は、プラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向けて二重に配置された板状の上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21を有し、上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21のそれぞれは設置された導電体20a,21aと該導電体20a,21aの表面を覆う絶縁体からなる絶縁膜20b,21bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関し、高周波アンテナを用いて発生させたプラズマを用いる基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板としてのウエハにプラズマを用いた処理、例えば、CVD処理やプラズマエッチング処理を施す基板処理装置として、容量結合プラズマを生成して用いるもの、誘導結合プラズマを生成して用いるもの、ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマを生成して用いるもの、マイクロ波プラズマを生成して用いるものが知られている。これらの装置はいずれもウエハを収容して該ウエハにプラズマを用いた処理を施す収容室を備える。
【0003】
上記のうち誘導結合プラズマを用いる基板処理装置は、プラズマを生成する際に高周波電力を効率良く利用するために高周波アンテナを収容室内に備える(例えば、特許文献1参照。)。この基板処理装置では高密度のプラズマ、例えば、イオン濃度が約1010〜1011cm−3のプラズマを容易に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−220600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、収容室内に発生するプラズマが高密度になると、該プラズマから発光される紫外線光の強度が大きくなり、該紫外線光がウエハ上に形成された膜に好ましくない影響を与えることがある。また、プラズマが高密度になるとバイアス電圧が印加される載置台に載置されたウエハに引きこまれるイオンの数が増加し、スパッタリングによってウエハ上に形成された各種膜が特定方向に消耗しすぎることがある。すなわち、高周波アンテナによって生じた高密度のプラズマをそのまま用いると、ウエハに所望のプラズマ処理を適切に施すことができない虞がある。
【0006】
本発明の目的は、基板に所望のプラズマ処理を適切に施すことができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置は、基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台とを備える基板処理装置であって、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記仕切部材は、前記プラズマ生成室から前記基板処理室へ向けて少なくとも二重に配置された板状部材からなり、各前記板状部材は表面を覆う絶縁体とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項2記載の基板処理装置において、各前記板状部材は重ね合わせ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、前記プラズマ生成室から前記基板処理室へ向けて眺めたとき、一の前記板状部材における各前記貫通孔は、他の前記板状部材における各前記貫通孔と重ならないことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の基板処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記基板処理室内に他の処理ガスを導入する他の処理ガス導入部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の基板処理装置は、請求項4記載の基板処理装置において、前記他の処理ガス導入部は複数のガス吹き出し口を有し、前記複数のガス吹き出し口は前記仕切部材における前記基板処理室側において分散して配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の基板処理装置は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記高周波アンテナ及び前記仕切部材の間の距離は30mm以上であることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項7記載の基板処理方法は、基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台と、前記基板処理室内に他の処理ガスを導入する他の処理ガス導入部とを備え、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有する基板処理装置における基板処理方法であって、前記他の処理ガス導入部が前記基板処理室内にシラン系のガスを導入する原料ガス導入ステップと、前記処理ガス導入部が前記プラズマ生成室内に酸素ガスを導入し、前記高周波アンテナが前記酸素ガスからプラズマを生成するプラズマ生成ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項8記載の基板処理方法は、基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台とを備え、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有する基板処理装置における基板処理方法であって、前記処理ガス導入部が前記プラズマ生成室内に水素ガスを導入し、前記高周波アンテナが前記水素ガスからプラズマを生成するプラズマ生成ステップを有し、前記基板の表面の少なくとも一部に異物が堆積していることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項9記載の基板処理方法は、基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台とを備え、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有する基板処理装置における基板処理方法であって、前記処理ガス導入部が前記プラズマ生成室内に酸素ガスを導入し、前記高周波アンテナが前記酸素ガスからプラズマを生成するプラズマ生成ステップを有し、前記基板は、その表面に形成されたフォトレジストからなる所定の幅を有する突形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の基板処理装置によれば、仕切部材が収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切るので、プラズマ生成室で生じた高密度のプラズマから基板処理室へ向けて発光される紫外線光を遮断することができ、もって、基板へ到達する紫外線光の強度を低下させることができる。また、仕切部材は導電体の表面を覆う絶縁体を有するので、プラズマ生成室で生成されたプラズマが基板処理室へ向かう際、まず絶縁体に電子がチャージされ、該電子にプラズマ中のイオンの大部分が引きつけられて仕切部材の近傍にシースが発生する。すなわち、プラズマ中のイオンの大部分が仕切部材近傍に留まるため、バイアス電圧が印加される載置台に載置された基板に引きこまれるイオンの数を抑制することができる。その結果、プラズマ中のラジカルを優先的に基板へ到達させることができる。さらに、仕切部材は接地された導電体を有するので、仕切部材はバイアス電圧が印加されて電極として機能する載置台の対向電極となり、基板処理室内において確実に電界を生じさせることができる。以上より、基板に所望のプラズマ処理を適切に施すことができる。
【0017】
請求項2記載の基板処理装置によれば、仕切部材は、プラズマ生成室から基板処理室へ向けて少なくとも二重に配置された板状部材からなるので、高密度のプラズマから発光される紫外線光を確実に遮断することができるとともに、各板状部材は表面を覆う絶縁体とを有するので、板状部材のそれぞれがイオンを引きつけることができ、これにより、プラズマ中のイオンが大量に仕切部材を通過するのを確実に阻止することができる。
【0018】
請求項3記載の基板処理装置によれば、各板状部材は重ね合わせ方向に貫通する複数の貫通孔を有するので、プラズマは仕切部材をプラズマ生成室から基板処理室へ向けて通過することができるが、プラズマ生成室から基板処理室へ向けて眺めたとき、一の板状部材における各貫通孔は、他の板状部材における各貫通孔と重ならないので、バイアス電圧によってプラズマ生成室から基板処理室へ直線状に移動するイオンは仕切部材を通過することができない。その結果、プラズマ中のラジカルをより優先的に基板処理室内の載置台に載置された基板へ到達させることができる。
【0019】
請求項4記載の基板処理装置によれば、基板処理室内に他の処理ガスを導入する他の処理ガス導入部をさらに備えるので、基板に対してプラズマ処理だけでなく他の処理ガスを用いた処理を施すことができ、処理のバリエーションを増加させることができる。
【0020】
請求項5記載の基板処理装置によれば、他の処理ガス導入部の複数のガス吹き出し口は仕切部材における基板処理室側において分散して配置されるので、他の処理ガスを基板処理室内へ分散して導入することができ、もって、他の処理ガスを用いた処理を基板へ均一に施すことができる。
【0021】
請求項6記載の基板処理装置によれば、高周波アンテナ及び仕切部材の間の距離は30mm以上であるので、高周波アンテナから発生する磁界の形成を仕切部材が阻止するのを抑制することができ、もって、プラズマ生成室におけるプラズマの生成を効率的に行うことができる。
【0022】
請求項7記載の基板処理方法によれば、プラズマ生成室で生じた高密度のプラズマから発光される紫外線光を遮断し、基板に引きこまれるプラズマ中のイオンの数を抑制してラジカルを優先的に基板に到達させる基板処理装置において、基板処理室内にシラン系のガスが導入され、その後、プラズマ生成室内で酸素ガスからプラズマが生成されるので、基板の表面にシラン系のガスが吸着された後、該基板に酸素ラジカルが優先的に到達する。その結果、基板上に形成された各種膜の紫外線光による変質やイオンスパッタによる消耗を防止しながら、シラン系のガス中のシリコン及び酸素ラジカルの化学反応によって基板の表面に二酸化珪素の膜を確実に形成することができる。
【0023】
請求項8記載の基板処理方法によれば、プラズマ生成室で生じた高密度のプラズマから発光される紫外線光を遮断し、基板に引きこまれるプラズマ中のイオンの数を抑制してラジカルを優先的に基板に到達させる基板処理装置において、プラズマ生成室内で水素ガスからプラズマが生成されるので、表面の少なくとも一部に異物が堆積している基板に水素ラジカルを優先的に到達させることができ、堆積した異物をイオンによってスパッタすることなく水素ラジカルと優先的に化学反応させることができる。したがって、水素ラジカルと反応しない物質から形成される他の膜の消耗を防止しながら基板の表面の少なくとも一部に堆積した異物のみを除去することができる。
【0024】
請求項9記載の基板処理方法によれば、プラズマ生成室で生じた高密度のプラズマから発光される紫外線光を遮断し、基板に引きこまれるプラズマ中のイオンの数を抑制してラジカルを優先的に基板に到達させる基板処理装置において、プラズマ生成室内で酸素ガスからプラズマが生成されるので、フォトレジストからなる所定の幅を有する突形状が形成された基板に酸素ラジカルを優先的に到達させることができ、フォトレジストをイオンによってスパッタすることなく酸素ラジカルと優先的に化学反応させることができる。フォトレジストからなる突形状は現像される際にその側面の組織が化学的に弱くなる。したがって、突形状の側面が選択的にラジカルとの化学反応によってエッチングされる。その結果、突形状の高さを余り低くすることなく突形状の幅を縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1におけるイオントラップの構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【図3】本実施の形態に係る基板処理方法としての成膜方法を示す工程図である。
【図4】本実施の形態に係る基板処理方法としてのドライクリーニング方法を示す工程図である。
【図5】本実施の形態に係る基板処理方法としてのトリミング方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【0028】
図1において、基板処理装置10は、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wを内部に収容する略円筒状のチャンバ11(収容室)と、該チャンバ11の内部を高さ方向において2つに分割するように配置されてプラズマ生成室12及びウエハ処理室13に仕切るイオントラップ14(仕切部材)と、プラズマ生成室12内に配置される複数の高周波アンテナ15と、プラズマ生成室12内に処理ガスを導入する処理ガス導入部16と、ウエハ処理室13内においてイオントラップ14と対向するように配置される載置台17と、該載置台17にバイアス電圧を印加する高周波電源18と、ウエハ処理室13内を排気し且つ圧力を調整する排気装置19とを備える。
【0029】
図2は、図1におけるイオントラップの構成を概略的に示す部分拡大断面図である。
【0030】
図2において、イオントラップ14は、プラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向けて二重に配置された板状の上側イオントラップ板20(一の板状部材)及び下側イオントラップ板21(他の板状部材)と、上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21の間の間隔を所定の値に維持するスペーサー22とを有する。上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21のそれぞれは設置された導電体20a,21aと該導電体20a,21aの表面を覆う絶縁体からなる絶縁膜20b,21bと、重ね合わせ方向(プラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向かう方向)に貫通する複数の貫通孔20c,21cとを有する。各貫通孔20cは、プラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向けて眺めたとき、各貫通孔21cと重ならない。
【0031】
また、導電体20a,21aは金属、例えば、アルミニウムからなり、絶縁膜20b,21bは、例えば、アルマイトやイットリアからなる。なお、下側イオントラップ板21のウエハ処理室13側を石英で覆い、さらにシリコンを溶着して構成してもよく、この場合、該シリコンに直流電圧を印加してもよい。
【0032】
イオントラップ14では、下側イオントラップ板21がウエハ処理室13側においてほぼ均等に分散して配置された複数のガス吹き出し口23(他の処理ガス導入部)を有する。複数のガス吹き出し口23は処理ガス導入部16が導入する処理ガスとは他の処理ガスをウエハ処理室13内に導入する。
【0033】
また、イオントラップ14の各上側イオントラップ板20、下側イオントラップ板21における導電体20a,21aは接地されており、バイアス電圧が印加される載置台17はイオントラップ14と対向するため、イオントラップ14はバイアス電圧に関して載置台17の対向電極として機能する。これにより、ウエハ処理室13内にイオントラップ14から載置台17へ向けて確実に電界が発生する。
【0034】
図1に戻り、高周波アンテナ15は、アンテナ心材と、該心材をプラズマ生成室12内において覆う、例えば、石英からなるチューブとからなり、高周波電力をプラズマ生成室12内に印加する。高周波アンテナ15はイオントラップ14から少なくとも30mm以上離間して配置される。また、複数の高周波アンテナ15は、プラズマ生成室12内にプラズマPが均等に発生するように、プラズマ生成室12内において分散して配置される。なお、高周波アンテナ15のチューブは腐食対策のために、例えば、イットリアで覆われる。
【0035】
基板処理装置10においてウエハWにプラズマ処理を施す際、まず、排気装置19がチャンバ11内の圧力を1.3×10−3〜1.3×10Pa(10−5〜100Torr)に維持し、各高周波アンテナ15はプラズマ生成室12内に、例えば、周波数が13.56MHzの高周波電力を印加し、処理ガス導入部16は処理ガスをプラズマ生成室12内に導入する。このとき、導入された処理ガスは高周波電力によって励起されて高密度、例えば、イオン濃度が約1010〜1011cm−3のプラズマPになる。プラズマPの生成において複数の高周波アンテナ15による高周波電力の印加のシーケンスはプラズマ処理の内容に応じて所望のシーケンスを用いることができる。例えば、全ての高周波アンテナ15が同時に高周波電力を印加してもよいし、各高周波アンテナ15がプラズマ生成室12内で円を描くように順番に高周波電力を印加してもよい。また、高周波アンテナ15が印加する高周波電力の周波数は、13.56MHzに限られず、100KHz〜100MHzのいずれかの周波数の高周波電力を印加してもよい。
【0036】
プラズマ生成室12内に生成されたプラズマPは重力や載置台17に印加されたバイアス電圧によってウエハ処理室13内へ向けて移動する。プラズマPがイオントラップ14に到達すると、プラズマP中の電子が上側イオントラップ板20や下側イオントラップ板21の絶縁膜20b,21bにチャージされ、該チャージされた電子によってプラズマP中のイオンの大部分が引きつけられて上側イオントラップ板20や下側イオントラップ板21の近傍にシース24が発生する(図2参照。)。すなわち、プラズマP中のイオンの大部分がイオントラップ14の近傍に留まるため、載置台17に載置されたウエハWに引きこまれるイオンの数が抑制される。また、イオントラップ14は、プラズマ生成室12及びウエハ処理室13の間に介在するため、プラズマ生成室12内において生成されたプラズマPからウエハ処理室13内へ向けて発光される紫外線光を遮断する。
【0037】
イオントラップ14を通過したプラズマPは、その後、載置台17に載置されたウエハWに到達して該ウエハWにプラズマ処理を施す。
【0038】
本実施の形態に係る基板処理装置10によれば、イオントラップ14がチャンバ11内をプラズマ生成室12及びウエハ処理室13に仕切り、該イオントラップ14はプラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向けて二重に配置された板状の上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21からなるので、ウエハWへ到達する紫外線光の強度を確実に低下させることができる。また、イオントラップ14の上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21は、導電体20a,21aの表面を覆う絶縁膜20b,21bを有するので、プラズマ生成室12で生成されたプラズマPがウエハ処理室13へ向かう際、上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21のそれぞれがイオンを引きつけることができ、プラズマP中のイオンの大部分がイオントラップ14近傍に留まる。その結果、プラズマP中のラジカルを優先的にウエハWへ到達させることができる。さらに、イオントラップ14は接地された導電体20a,21aを有するので、ウエハ処理室13内においてイオントラップ14から載置台17へ向けた電界を確実に生じさせることができる。以上より、ウエハWに所望のプラズマ処理を適切に施すことができる。
【0039】
上述した基板処理装置10では、上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21は重ね合わせ方向に貫通する複数の貫通孔20c,21cを有するので、プラズマPはイオントラップ14をプラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向けて通過することができるが、プラズマ生成室12からウエハ処理室13へ向けて眺めたとき、上側イオントラップ板20における各貫通孔20cは、下側イオントラップ板21における各貫通孔21cと重ならないので、バイアス電圧によってプラズマ生成室12からウエハ処理室13へ直線状に移動するイオンは上側イオントラップ板20又は下側イオントラップ板21に衝突してイオントラップ14を通過することができない。その結果、プラズマP中のラジカルをより優先的に載置台17に載置されたウエハWへ到達させることができる。
【0040】
また、上述した基板処理装置10は、複数のガス吹き出し口23をさらに備え、該複数のガス吹き出し口23はイオントラップ14におけるウエハ処理室13側において分散して配置されるので、ウエハWに対してプラズマ処理だけでなく他の処理ガスを用いた処理を施すことができ、処理のバリエーションを増加させることができるとともに、他の処理ガスをウエハ処理室13内へ分散して導入することができ、もって、他の処理ガスを用いた処理をウエハWへ均一に施すことができる。
【0041】
さらに、上述した基板処理装置10では、高周波アンテナ15及びイオントラップ14の間の距離は少なくとも30mm以上であるので、高周波アンテナ15から発生する磁界の形成をイオントラップ14が阻止するのを抑制することができ、もって、プラズマ生成室12におけるプラズマPの生成を効率的に行うことができる。
【0042】
また、基板処理装置10では、プラズマ生成室12及びウエハ処理室13の間にイオントラップ14が介在するので、プラズマ生成室12内の圧力とウエハ処理室13内の圧力との差を発生させることができる。例えば、プラズマ生成室12内の圧力をウエハ処理室13の圧力よりも高くなるように設定してもよい。このとき、ウエハWのプラズマ処理の際に発生する副生成物がウエハ処理室13からプラズマ生成室12へ逆流して高周波アンテナ15へ付着するのを防止することができる。
【0043】
上述した基板処理装置10では、イオントラップ14が上側イオントラップ板20及び下側イオントラップ板21によって構成されたが、イオントラップ14は1つ又は3つ以上のイオントラップ板によって構成されてもよい。
【0044】
次に、本実施の形態に係る基板処理方法について説明する。
【0045】
図3は、本実施の形態に係る基板処理方法としての成膜方法を示す工程図である。この成膜方法では、ウエハWの表面に二酸化珪素膜を形成する。
【0046】
基板処理装置10において、まず、ウエハWをウエハ処理室13内に収容して載置台17に載置し、各ガス吹き出し口23からウエハ処理室13内にシラン系のガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)30を導入する(原料ガス導入ステップ)。BTBAS30はシリコンを多量に含有するガスであり、導入されたBTBAS30はウエハWの表面に付着する(図3(A))。
【0047】
次いで、BTBAS30の導入を停止し、プラズマ生成室12内に酸素ガスを導入し、高周波アンテナ15によってプラズマ生成室12内に高周波電力を印加して酸素プラズマを生成する(プラズマ生成ステップ)。生成された酸素プラズマは重力や載置台17に印加されたバイアス電圧によってウエハ処理室13内へ向けて移動するが、イオントラップ14によって酸素プラズマ中の酸素イオンの大部分がイオントラップ14の近傍に留まるため、酸素プラズマ中の酸素ラジカル31が優先的にウエハWへ到達する。このとき、プラズマ生成室12内の酸素プラズマがウエハ処理室13へ向けて発光する紫外線はイオントラップ14によって遮断される。
【0048】
その結果、ウエハW上に形成された各種膜(形成されつつある二酸化珪素膜も含む)の紫外線光による変質や、酸素イオンスパッタによる予想外の消耗を防止しながら、BTBAS30中のシリコン及び酸素ラジカル31の化学反応を行うことができ、これにより、ウエハWの表面に二酸化珪素膜32を確実に形成することができる(図3(C))。
【0049】
なお、上述した原料ガス導入ステップ及びプラズマ生成ステップを交互に繰り返してもよい。これにより、所定の厚さの二酸化珪素の膜を容易に形成することができる。
【0050】
上述した成膜方法では、シラン系のガスとしてBTBASを用いたが、シラン系のガスはこれに限られず、例えば、ジクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、モノシラン、ジシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラクロロシラン、ジシリルアミン、又はトリシリルアミンを用いてもよい。
【0051】
図4は、本実施の形態に係る基板処理方法としてのドライクリーニング方法を示す工程図である。このドライクリーニング方法では、PMD(Pre-Metal Dielectric)膜にドライエッチングでNiSi層へのコンタクトホールを形成した際に露出したNiSi層の表面に堆積した異物を除去する。
【0052】
従来、ドライエッチング後に露出した層の表面に堆積した異物を除去するために薬液等を用いるウェット洗浄、例えば、RCA洗浄がウエハWに施されていた。しかしながら、ウェット洗浄では薬液と異物の化学反応が余り促進されず、異物を完全に除去することは困難であり、歩留まりが低下することがある。また、ウェット洗浄は乾燥工程を必要とするため、スループットを低下させる。さらに、今後、絶縁膜として有機系の膜、例えば、Low−k膜が多用されることが予想されるが、有機系の膜は薬液を吸収し、吸収された薬液が後の工程で蒸発して後の処理に悪影響を及ぼすこともある。
【0053】
そこで、本実施の形態では、基板処理装置10により、プラズマを用いたドライクリーニングによって異物を除去する。
【0054】
まず、シリコン基板40上にNiSi層41、PMD層42、及び該PMD層42を一部露出させるフォトレジスト層43が順に積層されているウエハW(図4(A))において、ドライクリーニングによってPMD層42をエッチングしてNiSi層41を一部露出させるコンタクトホール44を形成する。このとき、コンタクトホール44の底部に露出したNiSi層41の表面にはドライエッチングの際に生じた反応生成物を主成分とする異物45が堆積する(図4(B))。
【0055】
次いで、酸素プラズマを用いたアッシングによってフォトレジスト層43を除去する(図4(C))。このときもアッシングの際に生じた反応生成物がさらに異物45として堆積する。
【0056】
次いで、基板処理装置10において、ウエハWをウエハ処理室13内に収容して載置台17に載置し、プラズマ生成室12内に水素ガスを導入し、高周波アンテナ15によってプラズマ生成室12内に高周波電力を印加して水素プラズマを生成する(プラズマ生成ステップ)。生成された水素プラズマは重力や載置台17に印加されたバイアス電圧によってウエハ処理室13内へ向けて移動するが、イオントラップ14によって水素プラズマ中の水素イオンの大部分がイオントラップ14の近傍に留まるため、水素プラズマ中の水素ラジカル46が優先的にウエハWへ到達する(図4(D))。
【0057】
したがって、異物45を水素イオンによってスパッタすることなく水素ラジカル46と優先的に化学反応させることができる。このとき、水素ラジカル46は異物45を化学反応によって反応生成物に変化させて昇華させることによって除去する(図4(E))。また、ウエハWに水素イオンの大部分が到達しないので、水素イオンによって水素ラジカル46と反応しない物質から形成される他の膜の消耗を防止することができる。さらに、水素ラジカル46は活性種であり、異物45の化学反応を促進するため、異物45をほぼ完全に除去することができるとともに、化学反応を用いて異物45を除去するため、水素ラジカルとの化学反応の対象である異物45が完全に除去されれば、水素ラジカルによる化学反応は自動的に終了し、他の膜を消耗するのを自動的に防止することができる。
【0058】
図5は、本実施の形態に係る基板処理方法としてのトリミング方法を示す工程図である。このトリミング方法では、強アルカリ溶液を用いて現像されたフォトレジストからなる突形状の幅を縮小する(トリミングする)。
【0059】
通常、フォトレジストを用いてウエハ上に所定のパターンのフォトレジストからなるマスク膜を現像する際、まず、スピンコータによってウエハ上の全面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜を形成した後、所定のパターンと反転したパターンの紫外線光をフォトレジスト膜に照射して該反転したパターンに対応するフォトレジスト膜の一部をアルカリ可溶性に変質させ、さらに、強アルカリ溶液によって変質したフォトレジスト膜の一部を除去する。
【0060】
ところで、近年、半導体デバイスの微細化に伴いウエハ上に形成されるトレンチの幅が20nm以下となりつつある。一方、従来のステッパーによるマスク膜の現像だけではトレンチの幅を50nm以下にすることができないため、現在、ステッパーによってフォトレジストからなるマスク膜を現像した後、マスク膜における突形状を酸素プラズマによってエッチングして該突形状の幅を縮小することが検討されている。
【0061】
しかしながら、従来の酸素プラズマによるエッチングでは酸素ラジカルだけでなく酸素イオンもマスク膜に到達する。一般に方向性を持たない酸素ラジカルは突形状を等方的にエッチングするが、酸素イオンはバイアス電圧によって進行方向が定められるため、突形状を高さ方向にスパッタしてエッチングする。したがって、突形状において酸素プラズマによるエッチングで所望の幅を得た場合、突形状の高さが低くなりすぎてマスク膜として機能しなくなる虞がある。
【0062】
そこで、本実施の形態では、基板処理装置10により、マスク膜における突形状のフォトレジストを酸素ラジカルと優先的に化学反応させて該突形状の幅を縮小する。
【0063】
まず、SiN層50、BARC層51、及び該BARC層51を一部露出させるフォトレジストからなる突形状52が順に積層されているウエハW(図5(A))をウエハ処理室13内に収容して載置台17に載置し、プラズマ生成室12内に酸素ガスを導入し、高周波アンテナ15によってプラズマ生成室12内に高周波電力を印加して酸素プラズマを生成する(プラズマ生成ステップ)。生成された酸素プラズマは重力や載置台17に印加されたバイアス電圧によってウエハ処理室13内へ向けて移動するが、イオントラップ14によって酸素プラズマ中の酸素イオンの大部分がイオントラップ14の近傍に留まるため、酸素プラズマ中の酸素ラジカル53が優先的にウエハWへ到達する(図5(B))。
【0064】
ところで、突形状52の側面はフォトレジストがアルカリ可溶性へ変質する部分との境界であり、マスク膜の現像の際、強アルカリ溶液に晒されるため、組織が化学的に弱くなる。したがって、方向性を持たない酸素ラジカル53は突形状52の側面を選択的に化学反応によってエッチングする。また、酸素イオンの大部分は突形状52へ到達しないため、突形状52は酸素イオンによってスパッタされることが殆どない。
【0065】
さらに、フォトレジストは紫外線光によってシュリンクすることがあるため、プラズマ生成室12内の酸素プラズマからウエハ処理室13へ向けて発光される紫外線光によって突形状52が高さ方向にシュリンクする虞があるが、基板処理装置10では、プラズマ生成室12内の酸素プラズマが発光する紫外線はイオントラップ14によって遮断されるため、突形状52が高さ方向にシュリンクすることもない。
【0066】
その結果、突形状52の高さを余り低くすることなく突形状52の幅を縮小することができる(図5(C))。
【0067】
なお、本発明者は上述したトリミング方法によって所定の幅の突形状52の幅を縮小させたところ、トリミング時間の経過とともに突形状52のアスペクト比が増加することを確認した(例えば、トリミング時間7秒経過でアスペクト比が3.6、トリミング時間14秒経過でアスペクト比が4.0、トリミング時間21秒経過でアスペクト比が4.2)。すなわち、上述したトリミング方法を用いることによって突形状52の高さを余り低くすることなく突形状52の幅を縮小することができることが分かった。
【0068】
なお、上述した本実施の形態では、用いられる基板が半導電体ウエハであったが、用いられる基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を含むFPD(Flat Panel Display)等のガラス基板であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
W ウエハ
10 基板処理装置
11 チャンバ
12 プラズマ生成室
13 ウエハ処理室
14 イオントラップ
16 処理ガス導入部
17 載置台
20 上側イオントラップ板
20a,21a 導電体
20b,21b 絶縁膜
20c,21c 貫通孔
21 下側イオントラップ板
23 ガス吹き出し口
30 BTBAS
31,53 酸素ラジカル
32 二酸化珪素膜
45 異物
46 水素ラジカル
52 突形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台とを備える基板処理装置であって、
前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記仕切部材は、前記プラズマ生成室から前記基板処理室へ向けて少なくとも二重に配置された板状部材からなり、各前記板状部材は表面を覆う絶縁体とを有することを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
各前記板状部材は重ね合わせ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
前記プラズマ生成室から前記基板処理室へ向けて眺めたとき、一の前記板状部材における各前記貫通孔は、他の前記板状部材における各前記貫通孔と重ならないことを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板処理室内に他の処理ガスを導入する他の処理ガス導入部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記他の処理ガス導入部は複数のガス吹き出し口を有し、前記複数のガス吹き出し口は前記仕切部材における前記基板処理室側において分散して配置されることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記高周波アンテナ及び前記仕切部材の間の距離は30mm以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台と、前記基板処理室内に他の処理ガスを導入する他の処理ガス導入部とを備え、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有する基板処理装置における基板処理方法であって、
前記他の処理ガス導入部が前記基板処理室内にシラン系のガスを導入する原料ガス導入ステップと、
前記処理ガス導入部が前記プラズマ生成室内に酸素ガスを導入し、前記高周波アンテナが前記酸素ガスからプラズマを生成するプラズマ生成ステップとを有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台とを備え、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有する基板処理装置における基板処理方法であって、
前記処理ガス導入部が前記プラズマ生成室内に水素ガスを導入し、前記高周波アンテナが前記水素ガスからプラズマを生成するプラズマ生成ステップを有し、
前記基板の表面の少なくとも一部に異物が堆積していることを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
基板を収容する収容室と、該収容室をプラズマ生成室及び基板処理室に仕切る仕切部材と、前記プラズマ生成室内に配置される高周波アンテナと、前記プラズマ生成室内に処理ガスを導入する処理ガス導入部と、前記基板処理室内に配置されて前記基板を載置し且つバイアス電圧が印加される載置台とを備え、前記仕切部材は、接地された導電体と該導電体の表面を覆う絶縁体とを有する基板処理装置における基板処理方法であって、
前記処理ガス導入部が前記プラズマ生成室内に酸素ガスを導入し、前記高周波アンテナが前記酸素ガスからプラズマを生成するプラズマ生成ステップを有し、
前記基板は、その表面に形成されたフォトレジストからなる所定の幅を有する突形状を有することを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−192197(P2010−192197A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33851(P2009−33851)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】