説明

基板洗浄方法

【課題】簡単な装置構成で実施可能であり、微細パターンが形成されている基板をその微細パターンに悪影響を与えることなく短時間で洗浄するための基板洗浄方法を提供する。
【解決手段】微細パターンが表面に形成された基板としてのウエハWの洗浄処理を、ウエハWの表面に所定の加工を施す処理チャンバからウエハWの洗浄を行う洗浄チャンバへ搬送する搬送ステップと、洗浄チャンバ内においてウエハWを所定温度に冷却する冷却ステップと、超流動体としての超流動ヘリウムをウエハWの表面に供給し、ウエハWの表面から超流動ヘリウムを流し出すことによって微細パターン内の汚染成分を押し流す超流動洗浄ステップにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンが形成された基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体基板にエッチング処理や成膜処理等の処理を行った際に、半導体基板の表面にその処理に応じてプロセスガスや反応物等(以下「汚染成分」という)が残留する。このような汚染成分は、その後、ガス化して半導体基板の周囲の環境を汚染するおそれがあるため、処理後の半導体基板を真空環境で一定時間保持することにより、または、ガスが流れる環境に一定時間保持すること(以下「パージ処理」いう)により、汚染成分を蒸発等させて半導体基板から除去し、その後、半導体基板をフープ(FOUP)に収容して次の処理工程に進める等している。
【0003】
しかし、半導体基板から、多量のガスが発生する場合には、ガスが処理装置のパーツに付着してそのパーツを腐食させたり、パーツに付着した後に剥離してパーティクルの原因となったりする等の問題が生じる。また、真空処理機能は、処理装置の仕様によっては搭載できない場合があり、パージ処理では、長い処理時間が必要となって、処理装置のスループットが低下する場合がある。
【0004】
汚染成分の除去には、液体による洗浄方法の適用も考えられるが、近年の微細化(細線化)されたレジストパターンやエッチングパターンでは、液体の表面張力によるパターン倒れの問題が生じる。
【0005】
そこで、例えば、リソグラフィー法を適用して微細パターンを形成する過程において基板表面に塗布されてパターン形成に使用された後に残存するレジストを除去するために、基板においてレジストが付着している部位を超臨界流体中に浸漬するレジストの除去方法が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、基板に形成された微細パターンにダメージを与えることなく、洗浄力を向上させるために、エアロゾルを被洗浄物に吹付けて洗浄するエアロゾル洗浄方法において、エアロゾルを所定速度以上で被洗浄物に衝突させることにより、被洗浄物表面に局所的に超臨界状態又は擬似超臨界状態を生成させて、洗浄力を高めるエアロゾル洗浄方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−181050号公報
【特許文献2】特開2003−209088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された超臨界流体による洗浄処理は、高温高圧の環境下において行う必要があるために、装置構成が複雑になるという問題がある。また、特許文献2に開示されたエアロゾル洗浄方法は、極めて高速のエアロゾルを基板に対して吹き付けるための噴射装置が必要であるため、装置が大型化、複雑化し、また、基板上のパターンを破壊するという問題がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な装置構成で実施が可能であり、微細パターンが形成されている基板をその微細パターンに悪影響を与えることなく短時間で洗浄する基板洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板洗浄方法は、微細パターンが表面に形成された基板を洗浄する基板洗浄方法であって、前記基板を、前記基板の表面に所定の加工を施す処理チャンバから前記基板の洗浄を行う洗浄チャンバへ搬送する搬送ステップと、前記洗浄チャンバ内において、前記基板を所定の温度に冷却する冷却ステップと、超流動体を前記基板の表面に供給し、その後、前記基板の表面から前記超流動体を流し出すことによって前記微細パターン内の汚染成分を押し流す超流動洗浄ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の基板洗浄方法は、請求項1記載の基板洗浄方法において、前記超流動洗浄ステップは、前記基板に前記超流動体を供給しながら、前記基板から流れ出る前記超流動体を回収することにより行われることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の基板洗浄方法は、請求項1記載の基板洗浄方法において、前記超流動洗浄ステップは、前記基板を前記超流動体に浸漬する浸漬ステップと、前記基板が浸漬されている前記超流動体の水位を前記基板の表面よりも低くすることによって、前記超流動体を前記基板の表面から流し出す流し出しステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の基板洗浄方法は、請求項1記載の基板洗浄方法において、前記超流動体はヘリウムであることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の基板洗浄方法は、請求項1記載の基板洗浄方法において、前記微細パターンの代表長が0.1μm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の基板洗浄方法は、請求項1記載の基板洗浄方法において、前記基板を前記超流体により洗浄処理する前又は後において、前記基板を超臨界流体により洗浄する超臨界洗浄ステップをさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の基板洗浄方法によれば、微細パターンが形成された基板に対して、パターン倒れを発生させることなく、基板から汚染成分を除去することができ、これにより、基板からのガス発生を防止することができる。
【0017】
請求項2記載の基板洗浄方法によれば、基板から汚染成分を流し出しながら洗浄を行うために、基板の清浄度を高めることができる。
【0018】
請求項3記載の基板洗浄方法によれば、超流動体の使用量を少なく抑えながら、超流動体の、所謂、壁を昇る現象を利用して、基板上から汚染成分を含む超流動体を除去することができる。
【0019】
請求項4記載の基板洗浄方法によれば、超流動状態を確実に実現することができる。
【0020】
請求項5記載の基板洗浄方法によれば、代表長が0.1μm以下の極めて微細なパターンであっても、パターン倒れを発生させることなく、汚染成分を除去することができる。
【0021】
請求項6記載の基板洗浄方法によれば、超流動体による洗浄と超臨界流体による洗浄とを組み合わせることにより、より精密な洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る基板洗浄方法を実施可能な第1の基板処理システムの概略構造を示す平面図である。
【図2】図1に示した基板処理システムが備える洗浄処理ユニットの概略構造を示す断面図である。
【図3】洗浄処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図4】基板に形成された微細パターンにおける超流動体の流れを模式的に示す図である。
【図5】本発明に係る基板洗浄方法を実施可能な第2の基板処理システムの概略構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、基板としての半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)にエッチング処理を施す基板処理システムを用いて、本発明に係る基板洗浄方法を実施する形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る基板洗浄方法を実施可能な第1の基板処理システムの概略構造を示す平面図である。この基板処理システム10は、ウエハWにRIE(異方性エッチング)処理を施す2つのプロセスシップ11と、これらのプロセスシップ11がそれぞれ接続された矩形状の共通搬送室としての大気搬送室(以下「ローダーモジュール」という)13とを備えている。そして、ローダーモジュール13には、例えば25枚のウエハWを収容する収納容器としてのフープ14がそれぞれ載置される3つのフープ載置台15と、フープ14から搬出されたウエハWの位置をプリアライメントするオリエンタ16と、RIE処理が施されたウエハWの洗浄処理を行う超流動洗浄ユニット17と、が接続されている。
【0025】
2つのプロセスシップ11は、ローダーモジュール13の長手方向における側壁に接続されると共に、ローダーモジュール13を挟んで3つのフープ載置台15と対向するように配置されている。オリエンタ16はローダーモジュール13の長手方向に関する一端に配置され、超流動洗浄ユニット17はローダーモジュール13の長手方向に関する他端に配置されている。なお、超流動洗浄ユニット17の構造について、後に詳細に説明する。
【0026】
ローダーモジュール13の内部には、ウエハWを搬送するスカラ型デュアルアームタイプの搬送アーム機構19が配設されている。ローダーモジュール13のフープ載置台15側の側壁には、フープ載置台15の位置と対応する位置に、ウエハWの投入口として、また、フープ接続口として用いられる3つのロードポート20が設けられている。同様に、ローダーモジュール13の超流動洗浄ユニット17側の側壁にはロードポート18が設けられている。なお、これらのロードポート18,20にはそれぞれ開閉扉が設けられている。このような構成により、搬送アーム機構19は、フープ載置台15に載置されたフープ14からウエハWをロードポート20経由で取り出し、取り出したウエハWをプロセスシップ11やオリエンタ16、超流動洗浄ユニット17に対して搬出入する。
【0027】
プロセスシップ11は、ウエハWにRIE処理を施す真空処理室としてのプロセスモジュール25と、プロセスモジュール25にウエハWを受け渡すリンク型シングルピックタイプの搬送アーム26を内蔵するロード・ロックモジュール27とを備えている。
【0028】
プロセスモジュール25は、その詳細な構造は図示しないが、ウエハWを収容する円筒状のチャンバと、ウエハWを載置するためにチャンバ内に配置されたウエハステージと、ウエハステージの上面と一定間隔で対向するように配置された上部電極とを備えている。ウエハステージはウエハWをクーロン力等によってチャックする機能と、下部電極としての機能を併せ持っており、上部電極とウエハステージとの間隔は、ウエハWにRIE処理を施す適切な距離に設定されている。
【0029】
プロセスモジュール25では、チャンバ内部にフッ素系ガス又は臭素系ガス等の処理ガスを導入し、上部電極及び下部電極間に電界を発生させることによって導入された処理ガスをプラズマ化してイオン及びラジカルを発生させ、そのイオン及びラジカルによってウエハWにRIE処理を施す。例えば、ウエハWの表面に形成されたポリシリコン層がエッチングされて、微細パターンが形成される。
【0030】
プロセスシップ11では、ローダーモジュール13の内部の圧力は大気圧に維持される一方、プロセスモジュール25の内部圧力は真空に維持される。そのため、ロード・ロックモジュール27は、プロセスモジュール25との連結部に真空ゲートバルブ29を備えると共に、ローダーモジュール13との連結部に大気ゲートバルブ30を備えることによって、その内部圧力を真空環境と大気圧環境との間で調整可能となっている。
【0031】
ロード・ロックモジュール27において、搬送アーム26は略中央部に設置されており、プロセスモジュール25側に第1のバッファ31が、ローダーモジュール13側に第2のバッファ32がそれぞれ設置されている。第1のバッファ31及び第2のバッファ32は、搬送アーム26の先端部に配置されたウエハWを支持するためのピック33が移動する軌道上に配置されている。RIE処理が施されたウエハWを一時的にピック33の軌道の上方に待避させることにより、RIE未処理のウエハWとRIE処理済みのウエハWとのプロセスモジュール25における円滑な入れ換えが可能となっている。
【0032】
基板処理システム10において、ローダーモジュール13の長手方向に関する一端には、プロセスシップ11、ローダーモジュール13、オリエンタ16及び超流動洗浄ユニット17の動作を制御するオペレーションコントローラ40が配置されている。すなわち、オペレーションコントローラ40は、RIE処理や洗浄処理、ウエハWの搬送処理を所定のレシピで実行するために、これに対応するプログラムを実行する。こうして、基板処理システム10を構成する各種稼働要素の動作が制御される。なお、オペレーションコントローラ40は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示部(図示せず)を有しており、この表示部でレシピの確認や各種稼働要素の動作状況を確認することができるようになっている。
【0033】
上述の通りに構成された基板処理システムにおいては、ウエハWが収納されたフープ14がフープ載置台15に載置されると、ロードポート20が開かれ、搬送アーム機構19によってフープ14からウエハWが取り出され、そのウエハWはオリエンタ16に搬入される。オリエンタ16において位置のアライメントが行われたウエハWは、搬送アーム機構19によってオリエンタ16から取り出され、一方のプロセスシップ11の大気ゲートバルブ30を介して、大気圧環境に維持されたロード・ロックモジュール27内の搬送アーム26に受け渡される。
【0034】
大気ゲートバルブ30が閉じられ、ロード・ロックモジュール27内が真空環境とされた後、真空ゲートバルブ29が開かれて、ウエハWはプロセスモジュール25に搬入される。真空ゲートバルブ29が閉じられて、プロセスモジュール25においてRIE処理が行われた後、真空ゲートバルブ29が開かれて、ウエハWはプロセスモジュール25からロード・ロックモジュール27内の搬送アーム26によって搬出される。
【0035】
真空ゲートバルブ29が閉じられた後、ロード・ロックモジュール27内は大気圧環境に戻され、大気ゲートバルブ30が開かれて、ウエハWは、搬送アーム26から搬送アーム機構19に受け渡される。搬送アーム機構19は、ロードポート20を通して保持したウエハWを超流動洗浄ユニット17に搬入し、そこでウエハWの洗浄処理が行われる。この洗浄処理の具体的内容については後に詳細に説明する。洗浄処理を終えたウエハWは、搬送アーム機構19によって超流動洗浄ユニット17から搬出され、所定のフープ14に戻される。
【0036】
次に、超流動洗浄ユニット17について詳細に説明する。図2は超流動洗浄ユニットの概略構造を示す垂直断面図である。超流動洗浄ユニット17は、真空断熱層(図示せず)を備えた外側容器41と、真空断熱層(図示せず)を有し、外側容器41の内側に配置された内側容器42とからなる二重構造を有する洗浄チャンバを備えている。外側容器41と内側容器42との間には、液体窒素(Liq.N2)を貯留する空間が設けられており、この液体窒素貯留空間には、液体窒素供給ライン51を通じて外部から液体窒素が供給され、また、そこで蒸発した窒素ガス(N2-gas)が窒素ガス排出ライン52から排出されるようになっている。
【0037】
なお、液体窒素貯留空間に熱伝導性に優れた銅等の金属からなる伝熱板を設け、この伝熱板にスターリング型冷凍機等の冷凍機で発生させた冷熱を伝熱することにより、液体窒素貯留空間内の液体窒素を固化させることができる構成としてもよい。
【0038】
内側容器42内の下側には、ウエハWを載置するためのステージ43が配置されており、ステージ43上にウエハWが載置される。ステージ43は、伝熱管45を介して、外側容器41の外側に配置された冷凍機44と接続されている。冷凍機44としてはスターリング型冷凍機等の極低温冷凍機が好適に用いられ、ステージ43は、好ましくは、冷凍機44から伝熱管45を介して伝えられる冷熱によって、ヘリウム(He)が超流動の性質を示す相転移温度(=約2.17K)まで冷却され、これにより、ステージ43に載置されたウエハWもまたこの相転移温度まで冷却される。
【0039】
その一方で、ステージ43には、冷却されたウエハWを速やかに室温に戻すために、ヒータ電源46からの給電によって発熱するヒータ(図示せず)が埋設されている。そのため、伝熱管45には、冷凍機44からステージ43への冷熱の熱伝達を遮断する伝熱遮断機構(図示せず)が設けられており、ヒータの動作時にはこの伝熱遮断機構によって冷凍機44に発生させた冷熱のステージ43への熱伝達が遮断されるようになっている。これにより、冷凍機44を停止させる必要がなくなり、ステージ43上に載置されたウエハWを速やかに冷却することができる。
【0040】
内側容器42内の上側には、ステージ43に載置されたウエハWに超流動体としての液体ヘリウム(Liq.He)を供給するシャワーヘッド47が配設されており、シャワーヘッド47には、液体ヘリウム供給ライン53を通して、外部から液体ヘリウムが供給されるようになっている。
【0041】
液体ヘリウムは約2.17Kで相転移を起こし、通常の液体ヘリウム(常流動ヘリウム;He I)から超流動ヘリウム(He II)に変わる。超流動ヘリウムは、粘性が0(ゼロ)の状態となっており、壁を昇っていったり、原子1個が通れる隙間さえあればそこから漏れ出したりする性質を示す。
【0042】
但し、有限温度領域では、常流動ヘリウムと超流動ヘリウムとが共存しており、そのため、常流動ヘリウムによって洗浄効果が得られる。なお、超流動ヘリウムには粘性がないので、固体状の汚染成分に対する洗浄効果は期待できないが、ウエハWの微細パターンに付着し又は取り込まれている分子状汚染成分を置換して、除去する効果が期待できる。そこで、シャワーヘッド47から吐出された液体ヘリウムは超流動状態に維持され、超流動ヘリウムにより、ウエハWに形成された微細パターンに付着した脱ガス原因となる汚染成分を除去し、ウエハWを洗浄する。
【0043】
内側容器42内に供給された液体ヘリウムが蒸発することによって発生するヘリウムガス(He-gas)は、ヘリウムガス排出ライン54から排出される。図2には示していないロードポート18の近傍領域は、液体ヘリウムの沸点を超える温度となり、主にこの領域で液体ヘリウムが蒸発する。ヘリウムガスは液化処理により再利用されるが、ウエハWの洗浄処理を行った後のヘリウムガスには不純物が含まれるため、液化処理の段階で不純物が除去される。
【0044】
内側容器42内に供給された液体ヘリウムは、適宜、内側容器42の底部に設けられたドレイン48を通して外部に排出され、再利用されるようになっている。ドレイン48からの排液はバルブ49の開閉操作によって行われる。
【0045】
内側容器42には、内側容器42内を真空(減圧)環境にすることができるように、排気ライン55が接続されている。この排気ライン55は必ずしも必要なものではないが、内側容器42内の気圧を下げることによって、冷凍機44の負荷を増大させることなく、液体ヘリウムを、常流動状態から超流動状態となる相転移度に容易に到達させることができる。内側容器42内を真空環境とした場合に、内側容器42内を大気圧に戻すには、内側容器42内での液体ヘリウムの蒸発による圧力上昇を利用することができ、また、排気ライン55又はヘリウムガス排出ライン54を利用して清浄なガスを内側容器42内に導入するようにしてもよい。
【0046】
なお、上述の通り、超流動洗浄ユニット17では、ウエハWを超流動ヘリウムと接触させることができればよいので、ウエハWは、必ずしも液体ヘリウムが超流動状態となる相転移温度にまで冷却されていなければならないものではなく、ウエハWは、液体ヘリウムとの最初の接触時にダメージを受けない温度に冷却されていればよい。
【0047】
次に、超流動洗浄ユニット17における処理フローについて詳細に説明する。図3は洗浄処理ユニットにおける洗浄処理の処理フローを示すフローチャートである。図3には、第1の処理フロー(第1洗浄方法)と、第2の処理フロー(第2洗浄方法)を併記している。
【0048】
第1洗浄方法では、まず、ウエハWは、超流動洗浄ユニット17に搬入され、ステージ43に載置されると、冷凍機44からの冷熱によってステージ43と共に所定温度に冷却される(S10)。次いで、シャワーヘッド47からウエハWに液体ヘリウムが供給されてウエハWの洗浄処理が行われ、このとき、バルブ49は開いた状態に維持され、ウエハWから流れ落ちる液体ヘリウムはドレイン48から排出、回収される(S11)。このステップS11では、液体ヘリウムはウエハW上で超流動状態となっていればよく、内側容器42内は、大気圧環境であってもよいし、真空環境であってもよい。
【0049】
ステップS11を終了するためにウエハWへの液体ヘリウムの吐出が停止されると、ウエハWの超流動ヘリウムは、自然にウエハW表面から流れ落ちる。図4は、超流動ヘリウムが有する、所謂、壁を昇って流れる性質により流れ出る様子を示した模式図である。
【0050】
ウエハWに形成された微細パターンの凸部60間の溝や穴(例えば、RIE処理により形成されたトレンチやホール等)の中の超流動ヘリウムは、その水位がウエハWの表面より高い状態にあったとしても、壁を昇って流れる性質によって、図4の左図に示されるように凸部60を這い上がって水位の低い場所へと流れる。
【0051】
これにより、図4の右図に示されるように、凸部60間の溝や穴には超流動ヘリウムは残らず、最終的に、全ての超流動ヘリウムはウエハWの表面から流れ落ちる。超流動ヘリウムは粘性が0(ゼロ)であるために、ウエハWに形成されるパターンが極めて微細になっても、パターン倒れが起こることがない。そのため、超流動ヘリウムを用いたウエハWの洗浄は、ウエハWに形成された微細パターンの代表長さが0.1μm以下の場合に、好適に用いられる。
【0052】
超流動ヘリウムがウエハWから流れ落ちた後に、バルブ49が閉じられ、ステージ43への冷熱の熱伝達が遮断され、ウエハWは室温に戻される(S12)。その後、ウエハWは、超流動洗浄ユニット17から搬出され、フープ14に収容される。
【0053】
第2洗浄方法では、ウエハWは、超流動洗浄ユニット17に搬入され、ステージ43に載置されると、冷凍機44からの冷熱によってステージ43と共に所定温度に冷却される(S10)。次いで、バルブ49を閉じた状態でシャワーヘッド47からウエハWに液体ヘリウムを供給し、内側容器42内に液体ヘリウムを貯留する。そして、ウエハWが液体ヘリウムに浸漬したら、液体ヘリウムの供給を停止する(S21)。
【0054】
このとき、液体ヘリウムが超流動ヘリウムであれば、所定時間経過後にステップS22へと進む。一方、液体ヘリウムが常流動ヘリウムの状態となっているならば、内側容器42内をさらに冷却し又は減圧することにより、超流動ヘリウムへと相転移させ、ウエハWを超流動ヘリウムに浸漬させた状態にする。つまり、ステップS21〜22の間で、ウエハWは超流動ヘリウムに浸漬された状態となる。
【0055】
ウエハWが超流動ヘリウムに浸漬された後、内側容器42内の超流動ヘリウムの水位がウエハWの表面よりも低くなる程度に、バルブ49を開いて内側容器42内から一定量の超流動ヘリウムを排出する。これにより、先に図4を参照して説明したように、ウエハW上の超流動ヘリウムは、ウエハW上から流れ出て、ウエハW上に残留しない状態となる(S22)。
【0056】
第2洗浄方法では、このようにステップS21,22を1セットとして、1回の洗浄処理が行われる。ステップS21,22を所定回数行うことで、ウエハWの洗浄をより精密に行うことができる。
【0057】
ステップS22の次には、ステップS21,22が予め定められた処理回数行われた否かが判断される(S23)。ステップS23の判断が“YES”の場合には、バルブ49が開かれ、内側容器42内の超流動ヘリウムが排出、回収される(S24)。一方、ステップS23の判断が“NO”の場合には、ステップS21に戻って、さらにウエハWの洗浄処理が行われる。
【0058】
ステップS24の後には、バルブ49が閉じられ、ステージ43への冷熱の熱伝達が遮断され、ウエハWは室温に戻される(S12)。こうして、室温に戻されたウエハWは、超流動洗浄ユニット17から搬出され、フープ14に収容される。
【0059】
超流動洗浄ユニット17におけるウエハWの洗浄は、上述した第1,第2洗浄方法を組み合わせて行ってもよい。また、超流動ヘリウムにフッ素を含有させることによって、金属系の汚染成分を除去する効果が得られ、超流動ヘリウムにオゾンを含有させることによって、酸素との反応性を有する汚染成分を除去する効果が得られることが、それぞれ期待される。
【0060】
次に、本発明に係る基板洗浄方法を実施可能な別の基板処理システムについて説明する。図5は、本発明に係る基板洗浄方法を実施可能な第2の基板処理システムの概略構造を示す平面図である。この基板処理システム10Aは、図1に示した基板処理システム10にさらに、ウエハWに超臨界洗浄処理を施す超臨界洗浄ユニット70を備えた構造を有している。そのため、ここでは超臨界洗浄ユニット70の概要についてのみ説明することとする。
【0061】
超臨界洗浄ユニット80は、フープ載置台15と一列に並んでローダーモジュール13の側壁に接続されている。超臨界洗浄ユニット80の配設位置はこれに限定されるものではなく、プロセスシップ11側に配置してもよく、また、超流動洗浄ユニット17の上部に配置して、多段洗浄ユニットを構成してもよい。
【0062】
超臨界洗浄ユニット80の詳細な構造の図示は省略するが、超臨界洗浄ユニット80は、ウエハWを収容する高温高圧チャンバと、高温高圧チャンバ内の温度を制御する温度制御装置と、高温高圧チャンバ内の圧力を制御する圧力制御装置と、高温高圧チャンバに超臨界流体を供給/回収する媒体供給/回収ラインと、窒素ガス等の不活性ガスで高温高圧チャンバ内をパージするパージラインとを備えている。超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素(CO2)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスを用いることができる。
【0063】
超臨界洗浄ユニット80によるウエハWの洗浄処理は、超流動洗浄ユニット17におけるウエハWの洗浄処理の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。超流動体による洗浄処理と超臨界流体による洗浄処理とを行うことで、一方のみの処理では除去できない汚染成分を他方の処理で除去する等して、より精密な洗浄処理を行うことができる。超臨界洗浄ユニット80では、ウエハWが、所定時間の間、超臨界流体に晒されることによって、汚染成分が除去される。超臨界流体は気体であるため、ウエハWに形成された微細パターンにパターン倒れが発生することがない。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではない。例えば、ウエハWにRIE処理を施すプロセスモジュール25を備える基板処理システムを取り上げたが、プロセスモジュールは、ウエハWに成膜処理や拡散処理を行うものであってもよい。
【0065】
上記形態においては、RIE処理を施す装置に超流動洗浄ユニット17を接続することによって、基板処理システム10,10Aを構成した。このように、超流動洗浄ユニット17は、RIE処理や成膜処理、拡散処理等を施す種々の処理装置に接続が可能であるため、既存の処理装置に容易に適用することができるものであるが、一方で、超流動洗浄ユニット17を、これらの処理装置に接続することなく、独立した洗浄処理装置として使用することも可能である。
【0066】
上記説明では、基板として半導体ウエハを取り上げたが、基板はこれに限定されるものではなく、LCD(Liquid Crystal Display)等のFPD(Flat Panel Display)用基板やフォトマスク、CD基板、プリント基板等の各種基板であってもよい。
【0067】
本発明の目的は、オペレーションコントローラ40において、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、コンピュータ(例えば、制御部)に供給し、コンピュータのCPUが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0068】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した各実施の形態の機能を実現することになり、プログラムコード及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0069】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、RAM、NV−RAM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD(DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW)等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、他のROM等の上記プログラムコードを記憶できるものであればよい。或いは、上記プログラムコードは、インターネット、商用ネットワーク、若しくはローカルエリアネットワーク等に接続される不図示の他のコンピュータやデータベース等からダウンロードすることによりコンピュータに供給されてもよい。
【0070】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、CPU上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0071】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0072】
上記プログラムコードの形態は、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード、OSに供給されるスクリプトデータ等の形態から成ってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10,10A 基板処理システム
13 ローダーモジュール
17 超流動洗浄ユニット
25 プロセスモジュール
27 ロード・ロックモジュール
40 オペレーションコントローラ
41 外側容器
42 内側容器
43 ステージ
44 冷凍機
45 伝熱管
46 ヒータ電源
47 シャワーヘッド
48 ドレイン
49 バルブ
51 液体窒素供給ライン
52 窒素ガス排出ライン
53 液体ヘリウム供給ライン
54 ヘリウムガス排出ライン
55 排気ライン
70 超臨界洗浄ユニット
W (半導体)ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細パターンが表面に形成された基板を洗浄する基板洗浄方法であって、
前記基板を、前記基板の表面に所定の加工を施す処理チャンバから前記基板の洗浄を行う洗浄チャンバへ搬送する搬送ステップと、
前記洗浄チャンバ内において、前記基板を所定の温度に冷却する冷却ステップと、
超流動体を前記基板の表面に供給し、その後、前記基板の表面から前記超流動体を流し出すことによって前記微細パターン内の汚染成分を押し流す超流動洗浄ステップと、
を有することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
前記超流動洗浄ステップは、前記基板に前記超流動体を供給しながら、前記基板から流れ出る前記超流動体を回収することにより行われることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記超流動洗浄ステップは、
前記基板を前記超流動体に浸漬する浸漬ステップと、
前記基板が浸漬されている前記超流動体の水位を前記基板の表面よりも低くすることによって、前記超流動体を前記基板の表面から流し出す流し出しステップと、
を有することを特徴とする請求項1記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記超流動体はヘリウムであることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記微細パターンの代表長が0.1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記基板を前記超流体により洗浄処理する前又は後において、前記基板を超臨界流体により洗浄する超臨界洗浄ステップをさらに有することを特徴とする請求項1記載の基板洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−212585(P2010−212585A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59330(P2009−59330)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】