説明

エンジン制御方法及び制御装置

【課題】デコンプバルブを備えたエンジンにおいて、寒冷時にデコンプバルブが凍結して動かなくなるのを防ぎ、寒冷時のエンジンの始動を容易にする。
【解決手段】気筒内を外部に連通させるデコンプホールと、デコンプホールを開閉するデコンプバルブ116と、燃料噴射装置INJとを備えたエンジン1の少なくともデコンプバルブと燃料噴射装置とを制御するエンジン制御装置であって、エンジンを停止させる際にエンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うように燃料噴射装置を制御するエンジン停止時燃料噴射制御手段61と、エンジンを停止させる際にデコンプバルブを開くように制御するエンジン停止時デコンプバルブ制御手段62とを設けて、エンジンを停止させる際に燃料を含まない圧縮空気をデコンプホールを通して流すことによりデコンプバルブのエアーブローを行い、デコンプバルブに付着している水分を除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各気筒内を外部に連通させるデコンプホールと、デコンプホールを開閉する制御可能なデコンプバルブと、燃料噴射装置とを備えたエンジンの少なくともデコンプバルブと燃料噴射装置とを制御するエンジン制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されたエンジン始動装置では、ソレノイドを励磁することにより排気バルブを強制的にリフトアップする構造のデコンプ機構を設けて、このデコンプ機構により排気バルブを開いた状態で(エンジンの圧縮トルクを軽減させた状態で)クランキングを行い、助走区間でクランク軸の回転速度を所定の回転速度まで上昇させた時点で排気バルブを閉じて圧縮行程を行わせるようにしている。
【0003】
しかしながら、排気バルブをリフトアップして強制的に開く構造のデコンプ機構は構造が複雑で、エンジンのコストを上昇させるため、好ましくない。そこで、本出願人は、特願2006−56344号において、エンジンの各気筒内を外部(カム室内、吸気管内、排気管内、ブローバイガス環流通路内、エアクリーナ内等)に連通させるデコンプホールをシリンダヘッドに設けると共に、このデコンプホールを開閉する制御可能なデコンプバルブ(電磁弁)を設けて、エンジンの始動時にクランキングを行う際にデコンプバルブを開き、エンジンが始動した後にデコンプバルブを閉じることにより、クランキングを容易にしてエンジンの始動を容易にすることを提案した。
【特許文献1】特開2002−332938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンのシリンダヘッドにデコンプホールと、該デコンプホールを開閉するデコンプバルブとを設けると、排気バルブを強制的にリフトアップする場合のようにエンジンの構造を複雑にすることなく、エンジンのクランキングを容易にしてエンジンの始動性を向上させることができる。しかしながら、このようなデコンプ機構を採用した場合には、エンジンを氷点下の温度下で使用した場合に、燃焼ガス中に含まれる水分がデコンプバルブで結露することがあり、この結露をそのままにしてエンジンを停止させておくと、結露してデコンプバルブに付着した水が凍結して、次回のエンジン始動時にデコンプバルブが動かなくなるという問題が生じる。低温下でのエンジン始動時にデコンプバルブが開かないと、エンジンの圧縮行程でスタータモータにかかる負荷が大きくなって、クランキング速度が低下するため、エンジンの始動性が悪くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、寒冷地において、デコンプバルブに付着した水分が凍結してデコンプバルブが動かなくなる事態が生じるのを防いで、エンジンの始動を容易にすることができるようにしたエンジン制御方法及びこの制御方法を実施するために用いるエンジン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、各気筒内を外部に連通させるデコンプホールと、デコンプホールを開閉する制御可能なデコンプバルブと、燃料噴射装置とを備えたエンジンの少なくともデコンプバルブと燃料噴射装置とを制御するエンジン制御方法に係わるもので、本発明においては、エンジンを停止させる際に、エンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うとともにデコンプバルブを開くように、燃料噴射装置とデコンプバルブとを制御するエンジン停止時制御を行う。
【0007】
デコンプバルブに付着する水分は、燃焼ガス中に含まれる水分が結露したものである。燃焼ガス中に含まれる水分は、燃料のガソリンに含まれる水素(H)が燃焼して空気中の酸素と結合して水(HO)になったものである。上記のように、エンジンを停止する際に、燃料をカットした状態でデコンプバルブを開くと、燃料を含まない乾燥した圧縮空気がデコンプホールとデコンプバルブを通して外部に流れるため、この乾燥した空気の流れによりデコンプバルブに付着した水分を飛散させることができる。そのため、停止したエンジンを氷点下の気温下に放置しておいた場合にデコンプバルブが凍結するのを防ぐことができ、次回のエンジン始動時にデコンプバルブが動かなくなるのを防ぐことができる。
【0008】
上記のように、エンジン停止時制御を行う際には、同時にエンジンの吸入空気量を増大させるように吸入空気量調節手段を制御することが好ましい。制御の対象とするエンジンにおいて、アクチュエータにより駆動されるように構成されて、開度を目標開度に一致させるように電子的に制御される電子制御スロットルが吸入空気量調節手段として用いられている場合には、エンジン停止時の燃料カットが行われた際に、スロットルバルブ開度を増大させるように、電子制御スロットルを制御することにより、吸入空気量を増大させる制御を行わせることができる。
【0009】
また、アイドリング回転速度を制御するために、スロットルバルブをバイパスするようにアイドル制御バルブ[ISCバルブ(Idle Speed Control Valve)]が設けられている場合には、エンジン停止時の燃料カットを行う際に、アイドル制御バルブの開度を増大させるように制御することにより、吸入空気量を増大させる制御を行わせることができる。
【0010】
スロットルが閉じられているアイドリング状態で、エンジンを停止させるために燃料カットを行うと、エンジンは、2〜3回転で停止してしまう。デコンプホールを通して空気を流す時間が短いと、デコンプバルブに付着した水分を十分に飛散させることができないことがある。これに対し、エンジン停止時制御を行う際に、同時にエンジンの吸入空気量を増大させる制御を行うようにすると、スロットルロス(コンプレッションロス)が減少するため、エンジンをより長く惰性回転させることができ、デコンプホールを通して空気が流れる時間を長くして、デコンプバルブに付着した水分を飛散させる効果を高めることができる。
【0011】
本発明においてはまた、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンを始動するために設けられているスタータモータを設定時間の間駆動して、デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを行うことが好ましい。
【0012】
このように、エンジン停止時制御を行う際にエアーブロー・クランキングを行わせると、デコンプホールを通して空気が流れる(エアーブローが行われる)時間を長くすることができるため、デコンプバルブに付着した水分の除去を確実にすることができる。
【0013】
本発明においてはまた、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンを始動するために設けられているスタータモータを駆動してデコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを、エンジンのクランク軸の回転回数が設定値に達するまでの間行うようにしてもよい。
【0014】
エンジンにおいては、エンジンの運転中に該エンジンを減速する際にも燃料カットを行う場合がある。このように、エンジンを減速する際にも燃料カットを行う場合には、エンジンの減速時の燃料カットの際にもデコンプバルブを開く制御を行うことが好ましい。
【0015】
このように、エンジンの運転中に燃料カットが行われる場合にもデコンプバルブを開く制御を行うようにすると、デコンプバルブを乾燥させる機会を増やすことができるため、デコンプバルブの凍結を更に確実に防ぐことができる。
【0016】
エンジンを始動する際には、デコンプバルブを開いた状態でエンジンのクランク軸を一旦逆方向に回転させて始動時の初回の点火に備えて燃料を噴射するのに適したクランク角範囲のクランク角位置で始動時の初回の燃料噴射を行い、次いでクランク軸を正方向に回転させて始動時の点火位置として適したクランク角位置で点火を行う始動時制御を行うことが好ましい。
【0017】
上記のように、始動時にクランク軸を一旦逆方向に回転させて始動時の初回の燃料噴射を行ってからクランク軸を正方向に回転させるようにすると、始動時に最初に点火が行われる気筒に混合気を確実に供給することができるため、始動時に最初に点火時期を迎える気筒内で確実に初爆を行わせて、機関の始動性を向上させることができる。
【0018】
本発明はまた、気筒内を外部に連通させるデコンプホールと、デコンプホールを開閉する制御可能なデコンプバルブと、燃料噴射装置とを備えたエンジンの少なくともデコンプバルブと燃料噴射装置とを制御するエンジン制御装置に適用される。
【0019】
本発明においては、エンジンを停止させる際に、エンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うように燃料噴射装置を制御するエンジン停止時燃料噴射制御手段と、エンジンを停止させる際に、デコンプバルブを開くように制御するエンジン停止時デコンプバルブ制御手段とを備えた。
【0020】
本発明の好ましい態様では、エンジン停止時制御を行う際に、同時にエンジンの吸入空気量を増大させるように吸入空気量調節手段を制御するエンジン停止時吸入空気量制御手段が更に設けられる。
【0021】
本発明の更に他の好ましい態様では、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンを始動するために設けられているスタータモータを設定時間の間駆動して、デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを行うようにスタータモータを制御するエンジン停止時スタータモータ制御手段が更に設けられる。
【0022】
本発明の更に他の好ましい態様では、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンを始動するために設けられているスタータモータを駆動して前記デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを、前記エンジンのクランク軸の回転回数が設定値に達するまでの間行うエンジン停止時スタータモータ制御手段が更に設けられる。
【0023】
本発明の更に他の好ましい態様では、エンジンの運転中に該エンジンを減速する際に燃料カットを行うように前記燃料噴射装置を制御する減速時燃料噴射制御手段と、エンジンの減速時の燃料カットの際に前記デコンプバルブを開くように制御する減速時デコンプバルブ制御手段とが更に設けられる。
【0024】
本発明の更に他の好ましい態様では、エンジンを始動する際に、デコンプバルブを開き、エンジンの始動が完了したときにデコンプバルブを閉じるように制御する始動時デコンプバルブ制御手段と、エンジンの始動時にエンジンのクランク軸を一旦逆方向に回転させるスタータ逆転駆動手段と、始動時の初回の点火に備えて燃料を噴射するのに適したクランク角範囲のクランク角位置で始動時の初回の燃料噴射を行うように燃料噴射装置を制御する始動時燃料噴射制御手段と、スタータ逆転駆動手段によるスタータモータの駆動が終了した後にクランク軸を正方向に回転させるスタータ正転駆動手段と、始動時の点火位置として適したクランク角位置でエンジンを点火する点火装置に点火動作を行わせる始動時点火制御手段とが更に設けられる。
【0025】
上記デコンプホールは、エンジンの各気筒内と吸気バルブ及び排気バルブを駆動するカムが配置されたカム室内とを連通させるように設けることができる。
【0026】
上記デコンプホールはまた、エンジンの各気筒内と排気ポート内とを連通させるように設けることもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、エンジンを停止する際に、燃料をカットした状態でデコンプバルブを開くようにしたので、燃料を含まない乾燥した圧縮空気をデコンプホールとデコンプバルブとを通して外部に流して、デコンプバルブに付着した水分を飛散させることができる。従って、停止したエンジンを氷点下の気温下に放置しておいた場合にデコンプバルブが凍結するのを防ぐことができ、次回のエンジン始動時にデコンプバルブが動かなくなるのを防ぐことができる。
【0028】
また本発明において、エンジン停止時制御を行う際に、同時にエンジンの吸入空気量を増大させるように吸入空気量調節手段を制御するようにした場合には、スロットルロス(コンプレッションロス)を減少させてエンジンをより長く惰性回転させることができるため、デコンプホールを通して空気が流れる時間を長くして、デコンプバルブに付着した水分を飛散させる効果を高めることができる。
【0029】
本発明において、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンを始動するために設けられているスタータモータを設定時間の間駆動して、デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを行うようにした場合には、デコンプホールを通して空気が流れる時間を長くすることができるため、デコンプバルブに付着した水分の除去を確実にすることができる。
【0030】
本発明において、エンジンの運転中に燃料カットが行われる場合にもデコンプバルブを開く制御を行うようにした場合には、デコンプバルブを乾燥させる機会を増やすことができるため、デコンプバルブの凍結を更に確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係わるエンジン制御装置を備えたエンジンシステムの構成を示したものである。同図においてENGは並列2気筒4サイクルエンジンで、このエンジンの1番気筒の燃焼サイクルと2番気筒の燃焼サイクルとの位相差は360°である。1はエンジン本体で、エンジン本体1は、内部にピストン100が設けられた2つの気筒101(図面には1番気筒のみを示してある。)と、気筒内のピストン100にコンロッド102を介して連結されたクランク軸103とを有している。
【0032】
図4にも示したように、エンジン本体1は、吸気ポート104と、排気ポート105とを有し、吸気ポート104には吸気管106が接続されている。吸気管106内にはスロットルバルブ107が設けられている。吸気ポート104及び排気ポート105をそれぞれ開閉するように吸気バルブ108及び排気バルブ109が設けられている。エンジン本体のシリンダヘッド110の上部にはカムカバー111が取り付けられ、このカムカバー111の内側に、吸気バルブ108及び排気バルブ109を駆動するカム機構112を収容したカム室113が設けられている。
【0033】
本実施形態では、各気筒101内とカム室113内とを連通させるように、デコンプホール115(図4参照)が設けられている。またデコンプホール115を開閉するために制御可能な電磁弁からなるデコンプバルブ116が設けられ、エンジンの始動時にデコンプバルブ116を開き、エンジンの始動後にデコンプバルブ116を閉じるようにデコンプバルブを制御するデコンプバルブ制御手段が設けられている。
【0034】
エンジンENGはまた、吸気管106を通して気筒101内に供給する混合気を生成するために燃料を噴射する燃料噴射装置と、気筒101内で圧縮された混合気に点火する点火装置と、クランク軸103を正転方向及び逆転方向に回転駆動し得るスタータモータとを備えている。
【0035】
図示の例では、スロットルバルブ107よりも下流側の吸気管内または吸気ポート内に燃料を噴射するようにインジェクタ(電磁式燃料噴射弁)2が取り付けられている。インジェクタ2は、先端に噴射孔を有するインジェクタボディと、噴射孔を開閉するニードルバルブと、ニードルバルブを駆動するソレノイドとを有する周知のもので、そのインジェクタボディ内には、燃料タンク3内の燃料4を汲み出す燃料ポンプ5から燃料が供給されている。燃料ポンプ5からインジェクタ2に供給される燃料の圧力は、圧力調整器6により一定に保たれている。インジェクタ2のソレノイドは電子式制御ユニット(ECU)10内に設けられたインジェクタ駆動回路に接続されている。インジェクタ駆動回路は、ECU内で噴射指令信号が発生したときにインジェクタ2のソレノイドに駆動電圧を与える。インジェクタ2は、インジェクタ駆動回路からそのソレノイドに駆動電圧Vinjが与えられている間にバルブを開いて吸気管内に燃料を噴射する。インジェクタに与えられる燃料の圧力が一定に保たれる場合、燃料の噴射量は噴射時間(インジェクタのバルブを開いている時間)により管理される。
【0036】
この例では、インジェクタ2と後記するインジェクタ駆動回路と、該インジェクタ駆動回路に噴射指令を与える燃料噴射制御手段とにより燃料噴射装置が構成されている。
【0037】
図1に示されているように、エンジン本体のシリンダヘッドにはまた、各気筒101内の燃焼室に先端の放電ギャップを臨ませた状態で各気筒用の点火プラグ12が取り付けられ、各気筒用の点火プラグは、各気筒用の点火コイル13の二次側に接続されている。各気筒用の点火コイル13の一次側は、ECU10内に設けられた図示しない点火回路に接続されている。点火回路は、点火指令発生部から点火指令が与えられたときに点火コイル13の一次電流I1に急激な変化を生じさせて点火コイル13の二次側に点火用の高電圧を誘起させる回路で、点火プラグ12と、点火コイル13と図示しない点火回路と、該点火回路に点火指令を与える点火指令発生部とにより、エンジンを点火する点火装置が構成されている。点火指令発生部は、エンジンの定常運転時の点火位置を演算して、演算した点火位置が検出されたときに点火指令を発生する定常時点火制御手段と、エンジンの始動時に、エンジンを始動させるために適した点火位置で点火指令を発生する始動時点火制御手段とにより構成される。
【0038】
図1に示されたエンジンでは、スロットルバルブをバイパスするように、ソレノイドにより操作されるISC(Idle Speed Control)バルブ120が設けられている。ECU10内にはISCバルブ120に駆動信号Viscを与えるISCバルブ駆動回路が設けられ、エンジンのアイドリング回転速度を一定に保つように、ISCバルブ120に駆動信号Viscが与えられる。
【0039】
本実施形態では、エンジンの始動時にはブラシレスモータとして駆動され、エンジンが始動した後はジェネレータ(発電機)として運転される回転電機(スタータジェネレータと呼ばれる。)SGがエンジンに取り付けられ、この回転電機SGがスタータモータとして用いられる。回転電機SGは、エンジンのクランク軸103に取り付けられた回転子21と、エンジン本体のケース等に固定された固定子22とからなっている。
【0040】
回転子21は、カップ状に形成された鉄製の回転子ヨーク23と、その内周に取り付けられた永久磁石24とからなっていて、この例では、回転子ヨーク23の内周に取り付けられた永久磁石24により12極の磁石界磁が構成されている。回転子21は、その回転子ヨーク23の底壁部の中央に設けられたボス部25の内側に形成されたテーパ孔にエンジンのクランク軸103の先端のテーパ部を嵌合させて、ネジ部材によりボス部25をクランク軸103に対して締め付けることによりクランク軸103に取り付けられている。
【0041】
固定子22は、環状のヨーク26yの外周から18個の突極部26pを放射状に突出させた構造を有する固定子鉄心26と、固定子鉄心の一連の突極部26pに巻回されて3相結線された電機子コイル27とからなっていて、固定子鉄心26の各突極部26pの先端の磁極部が回転子の磁極部に所定のギャップを介して対向させられている。
【0042】
回転子ヨーク23の外周には弧状の突起からなるリラクタrが形成され、エンジンのケース側には、このリラクタrの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出して極性が異なるパルスを発生する信号発生器28が取り付けられている。また回転電機SGの固定子側には、3相の各相の電機子コイルに対してそれぞれ設定された検出位置に配置されて、回転子21の磁石界磁の各磁極の極性を検出するホールIC等のホールセンサ29uないし29wが設けられている。図1においては、3相のホールセンサ29uないし29wが回転子ヨーク23の外側に配置されているように図示されているが、実際には、3相のホールセンサ29uないし29wが回転子21の内側に配置されて、固定子22に対して固定されたプリント基板等に取り付けられている。ホールセンサの設け方は、通常の3相ブラシレスモータにおけるそれと同様である。ホールセンサ29uないし29wは、検出している磁極がN極であるときとS極であるときとでレベルが異なる電圧信号からなる位置検出信号huないしhwを出力する。
【0043】
回転電機SGの3相の電機子コイルは配線30uないし30wを通してモータ駆動/整流回路31の交流側端子に接続され、モータ駆動/整流回路31の直流側端子間にバッテリ32が接続されている。モータ駆動/整流回路31は、MOSFETやパワートランジスタなどのオンオフ制御が可能なスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzにより3相Hブリッジの各辺を構成したブリッジ形の3相インバータ回路(モータ駆動回路)と、該インバータ回路のスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzにそれぞれ逆並列接続されたダイオードDuないしDw及びDxないしDzにより構成されたダイオードブリッジ3相全波整流回路とを備えた周知の回路である。
【0044】
回転電機SGをブラシレスモータ(スタータモータ)として動作させる際には、ホールセンサ29uないし29wの出力から検出された回転子21の回転角度位置に応じてインバータ回路のスイッチ素子がオンオフ制御されることにより、バッテリ32からインバータ回路を通して3相の電機子コイル27に、所定の相順で転流する駆動電流が供給される。
【0045】
またエンジンが始動した後、回転電機SGをジェネレータとして運転する際には、電機子コイル27から得られる3相交流出力が、モータ駆動/整流回路31内の全波整流回路を通してバッテリ32と、バッテリ32の両端に接続された各種の負荷(図示せず。)とに供給される。このとき、バッテリ32の両端の電圧に応じて、インバータ回路のブリッジの上辺を構成するスイッチ素子またはブリッジ下辺を構成するスイッチ素子が同時にオンオフ制御されることにより、バッテリ32の両端の電圧が設定値を超えないように制御される。
【0046】
例えば、バッテリ32の両端の電圧が設定値以下のときにはインバータ回路のHブリッジを構成するスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzがオフ状態に保持されてモータ駆動/整流回路31内の整流回路の出力がそのままバッテリ32に印加される。また、バッテリ32の両端の電圧が設定値を超えたときには、インバータ回路のブリッジの3つの下辺(上辺でもよい)をそれぞれ構成する3つのスイッチ素子QxないしQzが同時にオン状態にされることにより、ジェネレータの3相交流出力が短絡されて、バッテリ32の両端の電圧が設定値以下に低下させられる。これらの動作の繰り返しによりバッテリ32の両端の電圧が設定値付近の値に保たれる。
【0047】
また上記のような制御を行う代わりに、バッテリ32から回転電機SGの電機子コイルに、該電機子コイルの誘起電圧と周波数が等しく、かつ該電機子コイルの無負荷時の誘起電圧に対して所定の位相角を有する交流制御電圧を印加するようにインバータ回路を制御する手段を設けておいて、バッテリの両端の電圧の変化に応じてバッテリ側から電機子コイルに与える交流制御電圧の位相を、電機子コイルの無負荷有機電圧に対して変化させることにより、回転電機の発電出力を増加または減少させて、バッテリ32の両端の電圧を設定された範囲に保つ制御を行なわせることもできる。
【0048】
なおインバータ回路のブリッジの各辺を構成するスイッチ素子としてMOSFETが用いられる場合には、該MOSFETのドレインソース間に形成される寄生ダイオードを上記ダイオードDuないしDw及びDxないしDzとして用いることができる。
【0049】
また図示の例では、ECU10のマイクロプロセッサにエンジンの情報を与えるために、スロットルバルブ107の位置(開度)を検出するスロットルポジションセンサ35と、スロットルバルブ107よりも下流側の吸気管内圧力を検出する圧力センサ36と、エンジンの冷却水温度を検出する冷却水温度センサ37と、エンジンに吸入される空気の温度を検出する吸気温度センサ38とが設けられている。
【0050】
上記のように、本実施形態では回転電機(スタータジェネレータ)SGの回転子をエンジンのクランク軸に直結して、エンジンの始動時にはこの回転電機をスタータモータとして用い、エンジンが始動した後はこの回転電機をジェネレータとして用いるが、以下に記載するエンジン始動装置についての説明では、回転電機SGをスタータモータとして動作させる際の制御を対象とするので、便宜上この回転電機SGをスタータモータと呼ぶことにする。
【0051】
図2を参照すると、図1に示されたシステムの電気的な構成がブロック図で示されている。ECU10は、マイクロプロセッサ(MPU)40と、点火回路41と、インジェクタ駆動回路42と、ISCバルブ駆動回路43と、モータ駆動/整流回路31の温度を検出する温度センサ44と、マイクロプロセッサ40から与えられる指令に応じてモータ駆動/整流回路31のインバータ回路のスイッチ素子に駆動信号を与えるコントロール回路45と、デコンプバルブ116に駆動電流を与えるデコンプバルブ駆動回路46と、所定個数のインターフェース回路I/Fとを備えている。
【0052】
マイクロプロセッサ40は、ROMに記憶された所定のプログラムを実行させることにより、エンジンを制御するために必要な各種の制御手段を構成する。図示の例では、マイクロプロセッサにエンジンの情報を与えるために、スロットルポジションセンサ35から得られるスロットルポジション信号Sa、圧力センサ36から得られる吸気管内圧力検出信号Sb、冷却水温度センサ37から得られる冷却水温検出信号Sc及び吸気温度センサ38から得られる吸気温度検出信号SdがECU10内のマイクロプロセッサにインターフェース回路I/Fを通して入力されている。またホールセンサ29uないし29wの出力信号huないしhwと、信号発生器28の出力Spとが所定のインターフェース回路I/Fを通してマイクロプロセッサ40に入力されている。
【0053】
そして、ECU10内の点火回路41から点火コイル13に一次電流I1が供給され、ECU10内のインジェクタ駆動回路42からインジェクタ2に駆動電圧Vinjが与えられている。またコントロール回路45からモータ駆動/整流回路31のインバータ回路の6個のスイッチ素子QuないしQw及びQxないしQzにそれぞれ駆動信号(スイッチ素子をオン状態にするための信号)SuないしSw及びSxないしSzが与えられている。
【0054】
なお図2において、47はバッテリ32の出力電圧が入力された電源回路で、電源回路47は、バッテリ32の出力電圧を降圧して安定化することにより、ECU10の各部に供給する電源電圧を出力する。
【0055】
本実施形態において、マイクロプロセッサ40が構成する各種の制御手段を含む制御装置の要部の構成を図3に示した。図3において、INJは、インジェクタ2とインジェクタ駆動回路42とからなる燃料噴射装置、IGは点火コイル13と点火回路41とからなる点火装置である。またACは吸入空気量調節手段で、この手段は例えばスロットルバルブ107やISCバルブ120により構成される。
【0056】
図3において、50は、エンジンを始動することを指令する始動指令を発生する始動指令発生手段、51は、エンジン停止指令を発生する停止指令発生手段、52はエンジンの減速を検出する減速検出手段である。また61は、エンジンを停止させる際に、エンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うように燃料噴射装置を制御するエンジン停止時燃料噴射制御手段、62は、エンジンを停止させる際に、デコンプバルブ116を開くように制御するエンジン停止時デコンプバルブ制御手段である。
【0057】
本発明においては、上記エンジン停止時燃料噴射制御手段61とエンジン停止時デコンプバルブ制御手段62とを設けて、エンジンを停止することを指令する停止指令が発生したときに、エンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うとともに、デコンプバルブ116を開くように燃料噴射装置INJとデコンプバルブ116とを制御するエンジン停止時制御を行う。
【0058】
このように、エンジン停止時制御を行うと、燃料を含まない乾燥した空気をデコンプホール115とデコンプバルブ116とを通して流してデコンプバルブ116のエアブローを行うことができるため、デコンプバルブ116に付着している水分を飛散させて除去することができる。従って、停止したエンジンを氷点下の気温下に放置した場合にデコンプバルブが凍結するのを防止することができ、エンジン始動時にデコンプバルブ116が動かなくなる事態が生じるのを防いで、寒冷時におけるエンジンの始動を容易にすることができる。
【0059】
上記のように、本発明においては、エンジン停止時燃料噴射制御手段61とエンジン停止時デコンプバルブ制御手段62とを設けてエンジン停止時制御を行うることを基本とするが、本実施形態では更に、エンジン停止時吸入空気量制御手段63と、エンジン停止時スタータ制御手段64と、減速時燃料噴射制御手段65と、減速時デコンプバルブ制御手段66と、始動時デコンプバルブ制御手段67と、スタータ逆転駆動手段68と、始動時燃料噴射制御手段69と、スタータ正転駆動手段70と、始動時点火制御手段71と、定常時燃料噴射・点火制御手段72とを設けている。
【0060】
更に詳細に説明すると、エンジン停止時吸入空気量制御手段63は、エンジン停止時制御を行う際に、同時にエンジンの吸入空気量を増大させるように吸入空気量調節手段を制御する手段である。エンジンの吸入空気量を増大させる制御は、スロットルバルブ107の開度を増大させるように、電子制御スロットルを制御したり、アイドル制御バルブ120の開度を増大させるように制御したりすることにより行うことができる。
【0061】
エンジン停止時吸入空気量制御手段63を設けて、エンジン停止時制御を行う際に、同時にエンジンの吸入空気量を増大させる制御を行うようにすると、スロットルロス(コンプレッションロス)を減少させて、エンジンをより長く惰性回転させることができるため、デコンプホールを通して空気が流れる時間を長くして、デコンプバルブに付着した水分を飛散させる効果を高めることができる。
【0062】
エンジン停止時スタータ制御手段64は、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンを始動するために設けられているスタータモータを設定時間の間駆動して、デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを行うようにスタータモータを制御する手段である。このようにエンジン停止時スタータ制御手段64を設けて、エンジン停止時制御を行う際にエアーブロー・クランキングを行わせると、デコンプホールを通して空気が流れる(エアーブローが行われる)時間を長くすることができるため、デコンプバルブに付着した水分の除去を確実にすることができる。
【0063】
また減速時燃料噴射制御手段65は、エンジンの運転中に減速検出手段52によりエンジンが減速されたことが検出されたときに、燃料カットを行うように燃料噴射装置を制御する手段であり、減速時デコンプバルブ制御手段66は、エンジンの減速時の燃料カットの際にデコンプバルブを開くように制御する手段である。このように、エンジンの運転中に燃料カットが行われる場合にもデコンプバルブを開く制御を行うようにすると、デコンプバルブをエアブローする機会を増やすことができるため、デコンプバルブからの水分の除去を確実にして、デコンプバルブの凍結を更に確実に防ぐことができる。
【0064】
また始動時デコンプバルブ制御手段67は、エンジンを始動する際に、デコンプバルブを開き、エンジンの始動が完了したときにデコンプバルブを閉じるように制御する手段である。このように、始動時にデコンプバルブを開く手段を設けておくと、クランキングの際に圧縮行程にある気筒からスタータモータにかかる負荷が軽くなるため、クランキングを容易にして、機関の始動性を向上させることができる。
【0065】
スタータ逆転駆動手段68は、エンジンの始動時にエンジンのクランク軸を一旦逆方向に回転させる手段であり、始動時燃料噴射制御手段69は、始動時の初回の点火に備えて燃料を噴射するのに適したクランク角範囲のクランク角位置で始動時の初回の燃料噴射を行うように燃料噴射装置を制御する手段である。
【0066】
上記のように、スタータ逆転駆動手段68と、始動時燃料噴射制御手段69とを設けて、始動時にクランク軸を一旦逆方向に回転させて始動時の初回の燃料噴射を行ってからクランク軸を正方向に回転させるようにすると、始動時に最初に点火が行われる気筒に混合気を確実に供給することができるため、始動時に最初に点火時期を迎える気筒内で確実に初爆を行わせて、機関の始動性を向上させることができる。
【0067】
特に本発明が対象とするエンジンにおいては、エンジンのシリンダヘッドに各気筒内を外部に連通させるデコンプホールを設けてあるため、ピストンが圧縮行程の上死点に向けて変位していく過程で、気筒内の混合気の一部をデコンプホールを通して流出させて、圧縮トルクの低下を促し、ピストンが短時間で圧縮トルク最大位置を越えるようにすることができるため、大形のスタータモータを用いなくても、エンジンの始動開始後最初に行われる圧縮行程を短時間で完了させて、エンジンの始動性を向上させることができる。
【0068】
デコンプホールは、気筒内(燃焼室内)を排気ポートに連通させるように設けてもよく、排気ポート以外の他の箇所、例えば吸排気バルブを駆動するカムが収容されるカム室内に連通させるようにしてもよい。
【0069】
デコンプホールを排気ポートに連通させた場合、未燃焼ガスがデコンプホールを通して排気ポートに吹き抜けるため、排気ガスの成分を悪化させるおそれがある。これに対し、デコンプホールをカム室内に連通させるようにした場合には、未燃焼ガスが排出されるのを防ぐことができる。もともとブローバイガス(気筒から漏洩した未燃焼ガス)が溜まるカム室(クランク室に通じている)内は、クランク室に接続されたブローバイガス還元通路、または該カム室に直接接続されたブローバイガス還元通路を通して吸気系に接続されていて、気筒内からカム室内に漏れた未燃焼ガスは吸気系に戻されるため、デコンプホールをカム室内に連通させるように設けた場合には、デコンプホールを通して漏れた未燃焼ガスを吸気系を通して再度気筒内に戻して燃焼させることができる。
【0070】
また図3において、スタータ正転駆動手段70は、スタータ逆転駆動手段68によるスタータモータの駆動が終了した後にクランク軸を正方向に回転させる手段であり、始動時点火制御手段71は、始動時の点火位置として適したクランク角位置でエンジンを点火する点火装置に点火動作を行わせる手段である。
【0071】
なお、スタータ正転駆動手段70は、クランク軸を正方向に回転させている過程で、特定の気筒内のピストンが圧縮行程の上死点に達する前にクランク軸が停止したときでもエンジンの始動が確認されるまでの間スタータモータを正転方向に駆動し続けるように構成するのが好ましい。
【0072】
エンジンの圧縮行程でクランク軸にかかる最大負荷トルク(圧縮トルク)よりも出力トルクが小さいスタータモータを用いた場合、エンジンの温度が低く、エンジンのフリクショントルクが大きいと、始動開始後、圧縮行程においてピストンが上死点に向けて上昇していく過程で、圧縮トルクとフリクショントルクとの和がモータの出力トルクを超えた時点でモータが停止する。しかしながら、本発明が対象とするエンジンでは、ピストンが圧縮行程の上死点に向けて上昇していく過程で、デコンプホールを通して圧縮漏れが生じるため、圧縮トルクとフリクショントルクとに打ち勝つことができずにスタータモータが停止した後もスタータモータを駆動し続けると、圧縮漏れによる圧縮トルクの漸減に伴ってピストンが上昇していき、クランク軸が微速で回転する。ピストンが圧縮行程の上死点の手前にある圧縮トルク最大位置(通常は圧縮行程の上死点前30°附近の位置)を超えると、スタータモータにかかる負荷が軽くなるため、クランク軸は速度を上げて回転し始め、ピストンは容易に圧縮行程の上死点を越え、圧縮行程が完了する。
【0073】
図3において、定常時燃料噴射・点火制御手段72は、エンジンの始動が完了した後の燃料噴射量の制御と、点火位置の制御とを行う手段で、この手段は、エンジンの吸気温度、冷却水温度、吸気管内圧力、大気圧、スロットルバルブ開度等の制御条件に対してインジェクタから燃料を噴射する時間(噴射時間)を演算して、所定の燃料噴射タイミングが検出されたときに演算された噴射時間の間インジェクタから燃料を噴射させるために必要なパルス幅を有するインジェクタ駆動パルスをインジェクタ駆動回路42に与える燃料噴射制御手段と、エンジンの回転速度に対してエンジンの点火位置を演算して、演算した点火位置を検出したときに点火回路41に点火信号を与える点火制御手段とにより構成される。
【0074】
図3に示したエンジン停止時デコンプバルブ制御手段62と、減速時デコンプバルブ制御手段66と、始動時デコンプバルブ制御手段67とを構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示すフローチャートを図5に示した。図5のタスクは微少時間間隔で実行されるもので、このタスクが開始されると、ステップS1において運転モードが始動モードであるか否かを判定する。その結果、運転モードが始動モードである場合には、ステップS2に進んでデコンプバルブ116を開いた後このタスクを終了する。ステップS1において運転モードが始動モードでないと判定されたときには、ステップS3に移行して減速時の燃料カットが行われているか否かを判定し、減速時の燃料カットが行われている場合には、ステップS4に進んでデコンプバルブ116を開く。
【0075】
ステップS3で減速時の燃料カットが行われていないと判定されたときには、ステップS5に移行してエンジン停止時の燃料カットが行われているか否かを判定する。その結果エンジン停止時の燃料カットが行われていると判定されたときには、ステップS6に進んでデコンプバルブ116を開き、このタスクを終了する。またステップS5でエンジン停止時の燃料カットが行われていないと判定されたときにはステップS7に進んでデコンプバルブ116を閉じた後このタスクを終了する。
【0076】
図5に示したアルゴリズムによる場合には、ステップS1及びS2により始動時デコンプバルブ制御手段67が構成され、ステップS3とステップS4とにより、減速時デコンプバルブ制御手段66が構成される。またステップS5とS6とにより、エンジン停止時デコンプバルブ制御手段62が構成される。
【0077】
次に図6を参照して、図3に示したエンジン停止時吸入空気量制御手段63を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクについて説明する。図6に示されたタスクも微少時間間隔で繰り返し実行される。図6のタスクが開始されると、先ずステップS11において運転モードが始動モードであるか否かを判定し、始動モードであると判定されたときには、ステップS12に進んでエンジン停止時の燃料カットが行われているか否かを判定する。その結果エンジン停止時の燃料カットが行われていると判定されたときには、ステップS13に進んでISCバルブ120の目標開度を全開に設定してこのタスクを終了する。ステップS11で運転モードが始動モードでないと判定されたとき及びステップS12でエンジン停止時の燃料カットが行われていないと判定されたときには、ステップS14に進んでISCバルブの目標開度を定常運転時の開度に設定してこのタスクを終了する。
【0078】
図7は、エンジン停止時にエアーブロークランキングを行うようにスタータモータを制御するエンジン停止時スタータ制御手段64を構成するために、微少時間間隔でマイクロプロセッサに繰り返し実行させるタスクのアルゴリズムを示したものである。図7のタスクが開始されると、ステップS21で運転モードが完爆モード(定常運転時のモード)にあるか否かを判定し、完爆モードである場合には、ステップS22でエンジンの停止要求があるか否かを判定する。その結果、エンジンの停止要求があると判定されたときには、ステップS23に進んでエアブロー・クランキングが行われている時間が設定時間以内であるか否かを判定する。ステップS23でエアブロー・クランキングが行われている時間が設定時間以内であると判定されたときにはステップS24に進んでスタータモータSGを駆動する要求を出し、ステップS25でエアブロー・クランキングが行われている時間を計測するエアブロー・クランキングタイマをカウントアップしてこのタスクを終了する。
【0079】
ステップS22でエンジン停止要求がないと判定されたとき、及びステップS23でエアブロー・クランキングが行われている時間が設定時間を超えていると判定されたときには、ステップS26に進んでスタータモータSGを停止させてこのタスクを終了する。
【0080】
またステップS21で運転モードが完爆モードでないと判定されたときには、ステップS27に進んでスタータモータSGを停止させ、ステップS28でエアブロー・クランキングタイマをリセットした後このタスクを終了する。
【0081】
上記の実施形態では、エンジン停止時制御を行う際に、スタータモータを設定時間の間だけ駆動してエアーブロー・クランキングを行わせるようにエンジン停止時スタータモータ制御手段を構成しているが、エンジン停止時制御を行う際に、エンジンのクランク軸の回転回数が設定値(例えば6)に達するまでの間[クランク軸が設定された回数(例えば6回)だけ回転する間]スタータモータを駆動して、エアーブロー・クランキングを行わせるように、エンジン停止時スタータモータ制御手段を構成することもできる。
【0082】
上記の例では、スタータモータを備えたエンジンを例にとったが、リコイルスタータなどの人力により操作される始動装置により始動されるエンジンにも本発明を適用することができる。
【0083】
また上記の例では、エンジンの始動時に一旦クランク軸を逆転方向に回転させてから正転方向に回転させるとしたが、始動時に最初からクランク軸を正転方向に駆動する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係わる制御装置を適用するエンジンシステムのハードウェアの構成を示した構成図である。
【図2】図1に示したシステムの電気的な構成を示したブロック図である。
【図3】本発明に係わるエンジン制御装置の構成を示したブロック図である。
【図4】図1に示されたエンジンの要部を示した断面図である。
【図5】エンジン停止時デコンプバルブ制御手段と、減速時デコンプバルブ制御手段と、始動時デコンプバルブ制御手段とを構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【図6】エンジン停止時吸入空気量制御手段を構成するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【図7】エンジン停止時スタータ制御手段を構成するために、マイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1 エンジン本体
100 ピストン
101 シリンダ
ENG エンジン
SG 回転電機(スタータモータ)
2 インジェクタ
10 ECU
12 点火プラグ
13 点火コイル
61 エンジン停止時燃料噴射制御手段
62 エンジン停止時デコンプバルブ制御手段
63 エンジン停止時吸入空気量制御手段
64 エンジン停止時スタータ制御手段
65 減速時燃料噴射制御手段
66 減速時デコンプバルブ制御手段
67 始動時デコンプバルブ制御手段
68 スタータ正転駆動手段
69 始動時燃料噴射制御手段
70 スタータ正転駆動手段
71 始動時点火制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各気筒内を外部に連通させるデコンプホールと、前記デコンプホールを開閉する制御可能なデコンプバルブと、燃料噴射装置とを備えたエンジンの少なくとも前記デコンプバルブと燃料噴射装置とを制御するエンジン制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記エンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うとともに前記デコンプバルブを開くように、前記燃料噴射装置と前記デコンプバルブとを制御するエンジン停止時制御を行うことを特徴とするエンジン制御方法。
【請求項2】
前記エンジン停止時制御を行う際に、同時に前記エンジンの吸入空気量を増大させるように吸入空気量調節手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御方法。
【請求項3】
前記エンジン停止時制御を行う際に、前記エンジンを始動するために設けられているスタータモータを設定時間の間駆動して、前記デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを行うことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン制御方法。
【請求項4】
前記エンジン停止時制御を行う際に、前記エンジンを始動するために設けられているスタータモータを駆動して前記デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを、前記エンジンのクランク軸の回転回数が設定値に達するまでの間行うことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン制御方法。
【請求項5】
前記エンジンの運転中に該エンジンを減速する際にも燃料カットを行い、エンジンの減速時の燃料カットの際にも前記デコンプバルブを開くことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のエンジン制御方法。
【請求項6】
前記エンジンを始動する際には、前記デコンプバルブを開いた状態で前記エンジンのクランク軸を一旦逆方向に回転させて始動時の初回の点火に備えて燃料を噴射するのに適したクランク角範囲のクランク角位置で始動時の初回の燃料噴射を行い、次いで前記クランク軸を正方向に回転させて始動時の点火位置として適したクランク角位置で点火を行う始動時制御を行う請求項1,2,3,4または5に記載のエンジン制御方法。
【請求項7】
気筒内を外部に連通させるデコンプホールと、前記デコンプホールを開閉する制御可能なデコンプバルブと、燃料噴射装置とを備えたエンジンの少なくとも前記デコンプバルブと燃料噴射装置とを制御するエンジン制御装置であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記エンジンへの燃料の供給を停止する燃料カットを行うように前記燃料噴射装置を制御するエンジン停止時燃料噴射制御手段と、
前記エンジンを停止させる際に、前記デコンプバルブを開くように制御するエンジン停止時デコンプバルブ制御手段と、
を備えたことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項8】
前記エンジン停止時制御を行う際に、同時に前記エンジンの吸入空気量を増大させるように吸入空気量調節手段を制御するエンジン停止時吸入空気量制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項7に記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記エンジン停止時制御を行う際に、前記エンジンを始動するために設けられているスタータモータを設定時間の間駆動して、前記デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを行うように前記スタータモータを制御するエンジン停止時スタータモータ制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項7または8に記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記エンジン停止時制御を行う際に、前記エンジンを始動するために設けられているスタータモータを駆動して前記デコンプホールを通して空気が流れる状態を維持するためのエアーブロー・クランキングを、前記エンジンのクランク軸の回転回数が設定値に達するまでの間行うエンジン停止時スタータモータ制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項7または8に記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記エンジンの運転中に該エンジンを減速する際に燃料カットを行うように前記燃料噴射装置を制御する減速時燃料噴射制御手段と、
前記エンジンの減速時の燃料カットの際に前記デコンプバルブを開くように制御する減速時デコンプバルブ制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項7,8,9または10に記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記エンジンを始動する際に、前記デコンプバルブを開き、前記エンジンの始動が完了したときに前記デコンプバルブを閉じるように制御する始動時デコンプバルブ制御手段と、前記エンジンの始動時に前記エンジンのクランク軸を一旦逆方向に回転させるスタータ逆転駆動手段と、始動時の初回の点火に備えて燃料を噴射するのに適したクランク角範囲のクランク角位置で始動時の初回の燃料噴射を行うように前記燃料噴射装置を制御する始動時燃料噴射制御手段と、前記スタータ逆転駆動手段によるスタータモータの駆動が終了した後に前記クランク軸を正方向に回転させるスタータ正転駆動手段と、始動時の点火位置として適したクランク角位置で前記エンジンを点火する点火装置に点火動作を行わせる始動時点火制御手段とを備えていることを特徴とする請求項7ないし11のいずれか1つに記載のエンジン制御装置。
【請求項13】
前記デコンプホールは、前記エンジンの各気筒内と吸気バルブ及び排気バルブを駆動するカムが配置されたカム室内とを連通させるように設けられている請求項7ないし12のいずれか1つに記載のエンジン始動装置。
【請求項14】
前記デコンプホールは、前記エンジンの各気筒内と排気ポート内とを連通させるように設けられている請求項7ないし12のいずれか1つに記載のエンジン始動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−202557(P2008−202557A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41970(P2007−41970)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】