説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】メタルゲート電極を有するpチャネル型電界効果トランジスタにおいて、所望するしきい値電圧を安定して得ることのできる技術を提供する。
【解決手段】半導体基板1上に形成されたHfSiON膜からなるゲート絶縁膜5h上に、Me−O−Al−O−Me結合を含むMe1−xAl(0.2≦x≦0.75、0.2≦y≦1.5)組成の導電性膜を一部に有するメタルゲート電極6、またはMe−O−Al−N−Me結合を含むMe1−xAl1−z(0.2≦x≦0.75、0.1≦z≦0.9)組成の導電性膜を一部に有するメタルゲート電極6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、金属膜からなるゲート電極および高誘電体膜からなるゲート絶縁膜を有するpチャネル型電界効果トランジスタおよびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2008−258487号公報(特許文献1)には、ハフニウム系酸窒化物からなるゲート絶縁膜上にRu、Ir、Pt、Pd、Re、W、Mo、Ni、Co、およびTiNからなる群から選択される金属からなり、添加元素としてAlまたは希土類元素を含むゲート電極を形成する技術が開示されている。
【0003】
また、J. K. Schaeffer et al., Microelectronic Engineering 84、2007年、p.2196−2200(非特許文献1)には、pチャネル型電界効果トランジスタのゲート電極にMo膜よりも仕事関数の高いMoON膜を用いることにより、要求される閾値電圧が得られることが記載されている。
【0004】
また、H. -C. Wen et al., 2007 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers、2007年、p.160−161(非特許文献2)には、MoNにAlを添加した材料をゲート電極に用いることにより、pチャネル型電界効果トランジスタの実効仕事関数が大きくなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−258487号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. K. Schaeffer et al., Microelectronic Engineering 84、2007年、p.2196−2200
【非特許文献2】H. -C. Wen et al., 2007 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers、2007年、p.160−161
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ゲート長が30nm以下の微細化が進んだプレーナ型電界効果トランジスタでは、例えばゲート絶縁膜に、一般的にHigh−k絶縁膜と呼ばれる誘電率がSiOよりも大きい絶縁材料を用い、ゲート電極に、多結晶Siに変えて金属を用いた構造が検討されている。
【0008】
ところで、ゲート電極に金属を用いた場合、金属の仕事関数が電界効果トランジスタの閾値電圧を決める大きな要因の一つとなる。使用するゲート電極材料の候補にはTiN、TiSiN、TaSiN、TaC、W、またはMo等の様々な材質があり、それぞれの材質は基本的には固有の仕事関数を有する。なかでもpチャネル型電界効果トランジスタのゲート電極材料として、相対的に高い仕事関数が得られるMoON(例えば上記非特許文献1参照)またはMoAlN(例えば上記非特許文献2参照)が有望視されている。
【0009】
しかしながら、Mo元素の価数が+2、+3、+4、+5、および+6と数多いことから、電界効果トランジスタを製造する過程において、MoONの組成は雰囲気ガスの条件(還元性または酸化性)に大きく左右され、MoONの組成に仕事関数が小さい金属(Mo)から半導体(MoO)まで幅広い構造変化が生じてしまう。その結果、ゲート電極材料として、安定した組成のMoON膜を形成することが難しい。
【0010】
また、MoNにAlを添加した材料をゲート絶縁膜に用いることにより、pチャネル型電界効果トランジスタの仕事関数は増加するが、必ずしも要求されるpチャネル型電界効果トランジスタのしきい値電圧が得られていない。
【0011】
本発明の目的は、メタルゲート電極を有するpチャネル型電界効果トランジスタにおいて、所望するしきい値電圧を安定して得ることのできる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
この実施の形態は、半導体基板の主面に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜およびメタルゲート電極を備えるpチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置である。メタルゲート電極は、金属元素、Al元素、およびO元素からなる結合を有するMe1−xAl組成の導電性膜により構成されており、Al元素の割合xは0.2以上0.75以下、O元素の割合yは0.2以上1.5以下である。
【0015】
また、この実施の形態は、半導体基板の主面に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜およびメタルゲート電極を備えるpチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置である。メタルゲート電極は、金属元素、Al元素、N元素、およびO元素からなる結合を有するMe1−xAl1−z組成の導電性膜により構成されており、Al元素の割合xは0.2以上0.75以下、O元素の割合zは0.1以上0.9以下である。
【0016】
また、この実施の形態は、半導体基板の主面にpチャネル型電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法である。まず、半導体基板の主面上に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜を形成する。続いて、ゲート絶縁膜上に第1金属膜およびAl膜を順次形成した後、半導体基板に400℃以下の温度で熱処理を施し、Al膜を酸化してAlO膜を形成する。続いて、AlO膜上に第2金属膜を形成した後、半導体基板に600℃以上の温度で熱処理を施して、ゲート絶縁膜上にMe1−xAl(0.2≦x≦0.75、0.2≦y≦1.5)組成の導電性膜により構成されるメタルゲート電極を形成する。
【0017】
また、この実施の形態は、半導体基板の主面にpチャネル型電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法である。まず、半導体基板の主面上に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜を形成する。続いて、ゲート絶縁膜上に第1金属窒化膜およびAlN膜を順次形成した後、半導体基板に400℃以下の温度で熱処理を施し、AlN膜を酸化してAlN1−z膜を形成する。続いて、AlN1−z膜上に第2金属窒化膜を形成した後、半導体基板に600℃以上の温度で熱処理を施して、ゲート絶縁膜上にMe1−xAl1−z(0.2≦x≦0.75、0.1≦z≦0.9)組成の導電性膜により構成されるメタルゲート電極を形成する。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
メタルゲート電極を有するpチャネル型電界効果トランジスタにおいて、所望するしきい値電圧を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1によるCMISデバイスを示す要部断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるMo1−xAl膜の仕事関数とAl濃度またはO濃度との関係を説明するグラフ図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるpMISのゲート電極の一部を拡大して示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるCMISデバイスの製造工程を示す要部断面図である。
【図5】図4に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図6】図5に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図7】図6に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図8】図7に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図9】図8に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図10】図9に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図11】図10に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図12】図11に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図13】図12に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図14】図13に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図15】図14に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図16】図15に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図17】図16に続くCMISデバイスの製造工程中の図4と同じ箇所の要部断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2によるCMISデバイスを示す要部断面図である。
【図19】本発明の実施の形態2によるMo1−xAl1−z膜の仕事関数とAl濃度またはO濃度との関係を説明するグラフ図である。
【図20】本発明の実施の形態2によるpMISのゲート電極の一部を拡大して示す模式図である。
【図21】本発明の実施の形態2によるCMISデバイスの製造工程を示す要部断面図である。
【図22】図21に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図23】図22に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図24】図23に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図25】図24に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図26】図25に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図27】図26に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図28】図27に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【図29】図28に続くCMISデバイスの製造工程中の図21と同じ箇所の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0022】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、以下の実施の形態においては、電界効果トランジスタを代表するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をMISと略し、pチャネル型MISFETをpMISと略し、nチャネル型MISFETをnMISと略す。また、以下の実施の形態において、ウエハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウエハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウエハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0024】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態1によるCMIS(Complementary Metal Insulator Semiconductor)デバイスを図1〜図3を用いて説明する。図1はCMISデバイスの要部断面図、図2はMo1−xAl膜の仕事関数とAl濃度またはO濃度との関係を説明するグラフ図、図3はpMISのゲート電極の一部を拡大して示す模式図である。
【0026】
半導体基板1の主面には、素子分離2が形成されている。素子分離2は、半導体基板1に形成される素子間の干渉を防止する機能を有し、例えば半導体基板1に溝を形成し、この溝に絶縁膜を埋め込むSTI(Shallow Trench Isolation)法によって形成される。この素子分離2によって分離された活性領域が、pMIS形成領域またはnMIS形成領域となっている。
【0027】
pMIS形成領域の半導体基板1の主面には半導体領域であるn型ウェル3が形成されており、nMIS形成領域の半導体基板1の主面には半導体領域であるp型ウェル4が形成されている。n型ウェル3にはPまたはAsなどのn型不純物が導入されており、p型ウェル4にはBなどのp型不純物が導入されている。
【0028】
次に、pMIS形成領域に形成されているpMIS100pの構成について説明する。図1に示すように、pMIS形成領域の半導体基板1の主面に形成されたn型ウェル3上には、ゲート絶縁膜5が形成されている。
【0029】
このゲート絶縁膜5は主として、例えばSiOよりも誘電率の高い高誘電体膜5hから形成されている。高誘電体膜5hとしては、例えばHfO膜、HfON膜、HfSiO膜、またはHfSiON膜のようなハフニウム系絶縁膜を使用する。半導体基板1と高誘電体膜5hとの間には、酸化膜5s、例えばSiO膜が形成されている。半導体基板1と高誘電体膜5hとが直接接した場合、pMISの移動度が低下する恐れがあるが、半導体基板1と高誘電体膜5hとの間に酸化膜5sを介在させることにより、上記移動度の低下を防ぐことができる。酸化膜5sの厚さは、例えば0.7nm程度である。
【0030】
ゲート絶縁膜5上には、メタルゲート電極6が形成されている。このメタルゲート電極6は下層メタルゲート電極6Dと上層メタルゲート電極6Uとを積層した構造を有している。
【0031】
下層メタルゲート電極6Dは、Al元素、O元素、および金属元素(以下、Meと記載する場合もある)を含む導電性のMe1−xAl膜により構成され、Al元素の割合(x)は0.2≦x≦0.75、O元素の割合(y)は0.2≦y≦1.5である。金属元素は、例えばMo、Ru、またはIrのいずれかである。
【0032】
図2に、金属元素にMo元素を用いて形成したMo1−xAl膜の仕事関数とMo膜の仕事関数との差のAl濃度またはO濃度依存性を説明するグラフ図を示す。図2に示すように、Mo膜にAl元素およびO元素を添加したMo1−xAl膜の仕事関数は、Mo膜の仕事関数よりも大きく、さらにMo1−xAl膜に含まれるAl元素またはO元素のそれぞれの濃度が増加するに従って、Mo1−xAl膜の仕事関数は増加する。従って、Mo1−xAl膜に含まれるAl元素またはO元素のそれぞれの濃度を調整することにより、Mo膜の仕事関数よりも大きいMo1−xAl膜の所望する仕事関数を得ることができる。その結果、pMISの所望する閾値電圧を得ることができる。
【0033】
Mo1−xAl膜の仕事関数がMo膜の仕事関数よりも大きくなるのは、図3に示すように、下層メタルゲート電極6D(Mo1−xAl膜)とゲート絶縁膜5hとの界面IMから0.5nm程度の下層メタルゲート電極6Dの領域に、Mo−O−Al−O−Mo結合が形成されて、Mo−O結合が強くなったことに起因すると考えられる。SIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)分析により、上記界面IM近傍でMo1−xAl膜のAl濃度およびO濃度が高くなる濃度勾配が本願発明者らによって確認されている。
【0034】
また、前述の図2から分かるように、Mo1−xAl膜の仕事関数は、O濃度よりもAl濃度が支配的である。すなわち、Mo1−xAl膜中のAl濃度が低いとO濃度は低いが、Al濃度が増加すると、それに伴ってO濃度も増加する。従って、上記Mo−O−Al−O−Mo結合を形成するためにO元素の量を多くMo1−xAl膜に添加させるには、Mo1−xAl膜のAl濃度を増加させる必要がある。
【0035】
なお、上記したAl元素の割合(x)およびO元素の割合(y)は、Mo1−xAl膜全体で得られていることが最も好ましいが、少なくとも下層メタルゲート電極6Dとゲート絶縁膜5との界面IMから0.5nm程度の下層メタルゲート電極6Dの領域において得られていれば良い。
【0036】
上層メタルゲート電極6Uは、例えばTiN膜により構成されるが、これに限定されるものではない。例えばTaN膜、TaSiN膜、TiAlN膜、HfN膜、NiSi1−x膜、PtSi膜、NiTa1−xSi膜、NiPt1−xSi膜、HfSi膜、WSi膜、IrSi1−x膜、TaGe膜、TaCx膜、Mo膜、またはW膜のいずれかの膜により、上層メタルゲート電極6Uを構成してもよい。
【0037】
さらに、メタルゲート電極6上には、シリコンゲート電極7が形成されている。シリコンゲート電極7は、例えば1×1020cm−3程度の不純物が導入された多結晶Si膜により構成される。従って、pMIS100pのゲート電極Gp1は、メタルゲート電極6とシリコンゲート電極7とを積層した構造を有している。
【0038】
ゲート電極Gp1の両側の側壁には、例えば絶縁膜よりなるサイドウォール8が形成されている。このサイドウォール8直下の半導体基板1(n型ウェル3)には、半導体領域であるp型拡張領域9が形成されており、p型拡張領域9の外側にはp型拡散領域10が形成されている。p型拡張領域9およびp型拡散領域10にはBなどのp型不純物が導入されており、p型拡散領域10にはp型拡張領域9に比べて高濃度にp型不純物が導入されている。p型拡張領域9およびp型拡散領域10によって、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有するpMIS100pのソース・ドレイン領域SDが形成される。
【0039】
続いて、nMIS形成領域に形成されているnMIS100nの構成について説明する。図1に示すように、nMIS形成領域の半導体基板1の主面に形成されたp型ウェル4上には、ゲート絶縁膜11が形成されている。
【0040】
このゲート絶縁膜11は主として、例えばSiOよりも誘電率の高い高誘電体膜5hから形成されている。高誘電体膜5hとしては、例えばHfO膜、HfON膜、HfSiO膜、またはHfSiON膜のようなハフニウム系絶縁膜を使用する。半導体基板1と高誘電体膜5hとの間には、酸化膜5s、例えばSiO膜が形成されている。
【0041】
ゲート絶縁膜11上には、メタルゲート電極12が形成されている。このメタルゲート電極12は下層メタルゲート電極12Dと上層メタルゲート電極12Uとを積層した構造を有している。下層メタルゲート電極12Dは、例えばTaSiN膜により構成されるが、これに限定されるものではない。例えばTiN膜、TaN膜、TaSiN膜、TiAlN膜、HfN膜、NiSi1−x膜、PtSi膜、NiTa1−xSi膜、NiPt1−xSi膜、HfSi膜、WSi膜、IrSi1−x膜、TaGe膜、TaCx膜、Mo膜、またはW膜のいずれかの膜により、下層メタルゲート電極12Dを構成してもよい。また、上層メタルゲート電極12Uは、前述したpMIS100pのゲート電極Gp1の一部を構成するメタルゲート電極6の上層に位置する上層メタルゲート電極6Uと同じ電極材料により構成されている。
【0042】
さらに、メタルゲート電極12上には、シリコンゲート電極13が形成されている。このシリコンゲート電極13は、前述したpMIS100pのゲート電極Gp1の他の一部を構成するシリコンゲート電極7と同じ電極材料により構成されている。従って、nMIS100nのゲート電極Gn1は、メタルゲート電極12とシリコンゲート電極13とを積層した構造を有している。
【0043】
ゲート電極Gn1の両側の側壁には、例えば絶縁膜よりなるサイドウォール8が形成されている。このサイドウォール8直下の半導体基板1(p型ウェル4)には、半導体領域であるn型拡張領域14が形成されており、n型拡張領域14の外側にはn型拡散領域15が形成されている。n型拡張領域14およびn型拡散領域15にはPまたはAsなどのn型不純物が導入されており、n型拡散領域15にはn型拡張領域14に比べて高濃度にn型不純物が導入されている。n型拡張領域14およびn型拡散領域15によって、LDD構造を有するnMIS100nのソース・ドレイン領域SDが形成される。
【0044】
次に、本実施の形態1によるCMISデバイスの製造方法について図4〜図17を用いて工程順に説明する。図4〜図17はCMISデバイスの要部断面図である。
【0045】
まず、図4に示すように、例えば単結晶Siに、例えばBなどのp型不純物を導入した半導体基板(この段階では半導体ウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板)1を用意する。次に、半導体基板1の主面に素子分離2を形成する。素子分離2は、例えばSiOからなり、STI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法などによって形成される。図4では、半導体基板1に形成された溝にSiO膜を埋め込むSTI法によって形成された素子分離2を示している。この素子分離2によって活性領域が分離され、pMIS形成領域およびnMIS形成領域が形成される。
【0046】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、pMIS形成領域にn型ウェル3を形成する。n型ウェル3は半導体領域であり、PまたはAsなどのn型不純物が導入されている。同様に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、nMIS形成領域にp型ウェル4を形成する。p型ウェル4は半導体領域であり、Bなどのp型不純物が導入されている。
【0047】
次に、半導体基板1の主面上に、例えば熱酸化法を用いてSiO膜16を形成する。SiO膜16の厚さは、例えば1nm以下であり、代表的な厚さは、例えば約0.7nmである。続いて、SiO膜16上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて高誘電体膜、例えばHfSiON膜17を形成する。HfSiON膜17の厚さは、例えば5nm以下であり、代表的な厚さは、例えば約2.0〜2.5nmである。HfSiON膜17に代えて、例えばHfON膜、HfSiO膜、またはHfO膜などの他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。
【0048】
次に、半導体基板1に対して熱処理を行う。熱処理は、例えばN雰囲気中において850℃で約5秒間実施される。この熱処理によりHfSiON膜17の欠陥を修復することができる。
【0049】
次に、図5に示すように、HfSiON膜17上に、例えばスパッタリング法を用いてTaSiN膜18を形成する。TaSiN膜18の厚さは、例えば約10nmである。TaSiN膜18に代えて、例えばTiN膜、TaN膜、TaSiN膜、TiAlN膜、HfN膜、NiSi1−x膜、PtSi膜、NiTa1−xSi膜、NiPt1−xSi膜、HfSi膜、WSi膜、IrSi1−x膜、TaGe膜、TaCx膜、Mo膜、またはW膜などを使用することもできる。
【0050】
次に、図6に示すように、TaSiN膜18上に、例えばCVD法を用いてSiN膜19を形成する。SiN膜19の厚さは、例えば約30nmである。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてnMIS形成領域を覆うレジストパターン20を形成する。
【0051】
次に、図7に示すように、このレジストパターン20をマスクとして、レジストパターン20から露出しているpMIS形成領域のSiN膜19およびTaSiN膜18を、例えばドライエッチング法を用いて除去した後、レジストパターン20を除去する。
【0052】
次に、図8に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、pMIS形成領域ではHfSiON膜17上に、nMIS形成領域ではSiN膜19上に第1Mo膜21を形成する。第1Mo膜21の厚さは、例えば約1nmである。
【0053】
次に、図9に示すように、第1Mo膜21上に、例えばスパッタリング法を用いてAl膜22を形成する。Al膜22の厚さは、例えば約0.1〜1nmである。
【0054】
次に、図10に示すように、半導体基板1に対して酸化処理を行う。酸化処理は400℃以下、例えば酸素雰囲気中において約100℃の温度で実施される。この酸化処理によって、Al膜22を酸化してAlO膜23を形成する。
【0055】
次に、図11に示すように、AlO膜23上に、例えばスパッタリング法を用いて第2Mo膜24を形成する。第2Mo膜24の厚さは、例えば約9nmである。
【0056】
次に、図12に示すように、第2Mo膜24上に、例えばCVD法を用いてSiN膜25を形成する。SiN膜25の厚さは、例えば約30nmである。続いてフォトリソグラフィ法を用いてpMIS形成領域を覆うレジストパターン26を形成する。
【0057】
次に、図13に示すように、このレジストパターン26をマスクとして、レジストパターン26から露出しているnMIS形成領域のSiN膜25、第2Mo膜24、AlO膜23、および第1Mo膜21を、例えばドライエッチング法を用いて除去した後、レジストパターン26を除去する。
【0058】
次に、図14に示すように、SiN膜19,25を除去した後、例えばスパッタリング法を用いてpMIS形成領域では第2Mo膜24上に、nMIS形成領域ではTaSiN膜18上にTiN膜27を形成する。TiN膜27の厚さは5nm以上であり、例えば約5〜10nmである。続いて、TiN膜27上に、例えばCVD法を用いて多結晶Si膜28を形成する。多結晶Si膜28の厚さは、例えば約20〜50nmである。pMIS形成領域およびnMIS形成領域の多結晶Si膜28は、n型不純物またはp型不純物を導入することにより、同じ導電性を示す多結晶Siにより構成してもよいが、pMIS形成領域の多結晶Si膜28をp型の導電性を示す多結晶Siにより構成し、nMIS形成領域の多結晶Si膜28をn型の導電性を示す多結晶Siにより構成してもよい。続いて、多結晶Si膜28上に、例えばスパッタリング法を用いてSiN膜29を形成する。
【0059】
次に、図15に示すように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、pMIS形成領域にゲート絶縁膜5および仮ゲート電極NGp1を形成し、nMIS形成領域にゲート絶縁膜11およびゲート電極Gn1を形成する。
【0060】
pMIS形成領域に形成されたゲート絶縁膜5はSiO膜16からなる酸化膜5sおよびHfSiON膜17からなる高誘電体膜5hにより構成されている。仮ゲート電極NGp1は仮メタルゲート電極N6、および多結晶Si膜28からなるシリコンゲート電極7により構成され、さらに、仮メタルゲート電極N6は第1Mo膜21、AlO膜23、および第2Mo膜24からなる仮下層メタルゲート電極N6D、ならびにTiN膜27からなる上層メタルゲート電極6Uにより構成されている。
【0061】
nMIS形成領域に形成されたゲート絶縁膜11はSiO膜16からなる酸化膜5sおよびHfSiON膜17からなる高誘電体膜5hにより構成されている。ゲート電極Gn1はメタルゲート電極12および多結晶Si膜28からなるシリコンゲート電極13により構成され、さらに、メタルゲート電極12はTaSiN膜18からなる下層メタルゲート電極12DおよびTiN膜27からなる上層メタルゲート電極12Uにより構成されている。
【0062】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、pMIS形成領域に仮ゲート電極NGp1に対して自己整合的にp型拡張領域9を形成する。p型拡張領域9は半導体領域であり、半導体基板1にBなどのp型不純物を導入することにより形成することができる。同様に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、nMIS形成領域にゲート電極Gn1に対して自己整合的にn型拡張領域14を形成する。n型拡張領域14は半導体領域であり、半導体基板1にPまたはAsなどのn型不純物を導入することにより形成することができる。
【0063】
次に、図16に示すように、半導体基板1の主面上に絶縁膜を形成した後、ドライエッチング法を用いて、この絶縁膜を異方性エッチングすることにより、pMIS形成領域の仮ゲート電極NGp1およびnMIS形成領域のゲート電極Gn1のそれぞれの側壁にサイドウォール8を形成する。
【0064】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、pMIS形成領域に仮ゲート電極NGp1およびサイドウォール8に対して自己整合的にp型拡散領域10を形成する。p型拡散領域10は半導体領域であり、半導体基板1にBなどのp型不純物を導入することにより形成することができる。同様に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、nMIS形成領域にゲート電極Gn1およびサイドウォール8に対して自己整合的にn型拡散領域15を形成する。n型拡散領域15は半導体領域であり、半導体基板1にPまたはAsなどのn型不純物を導入することにより形成することができる。
【0065】
次に、半導体基板1に対して熱処理を行う。熱処理は600℃以上、例えば1000℃の温度で実施される。この熱処理によって、pMIS形成領域では、第1Mo膜21、AlO膜23、および第2Mo膜24が相互拡散してMo1−xAl膜が形成される。Mo1−xAl膜の厚さは3nm以上であり、例えば約3〜10nmである。これにより、Mo1−xAl膜からなる下層メタルゲート電極6Dが形成され、下層メタルゲート電極6Dおよび上層メタルゲート電極6Uからなるメタルゲート電極6が形成され、メタルゲート電極6およびシリコンゲート電極7からなるゲート電極Gp1が形成される。
【0066】
さらに、この熱処理によって、pMIS形成領域のp型拡張領域9およびp型拡散領域10に導入されたp型不純物を活性化し、nMIS形成領域のn型拡張領域14およびn型拡散領域15に導入されたn型不純物を活性化させて、ソース・ドレイン領域SDを形成する。
【0067】
次に、図17に示すように、半導体基板1の主面上にNi膜を形成した後、半導体基板1に対して熱処理を行う。熱処理は、例えば450℃の温度で実施される。この熱処理によって、半導体基板1を構成する単結晶SiとNi膜とを固相反応させてNiSiを形成し、続いてHSOとHとの混合溶液を用いて未反応のNiを除去することによりpMIS形成領域およびnMIS形成領域のソース・ドレイン領域SDの表面にNiSi膜30を形成する。
【0068】
次に、半導体基板1の主面上に、例えばCVD法を用いて層間絶縁膜31、例えばTEOS(テトラエトキシシラン(Si(OC))膜を形成した後、この層間絶縁膜31の表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて研削することにより、pMIS100pのゲート電極Gp1およびnMIS100nのゲート電極Gn1のそれぞれの上層に形成されたSiN膜29を露出させ、さらにSiN膜29を除去する。
【0069】
次に、半導体基板1の主面上にNi膜を形成した後、半導体基板1に対して熱処理を行う。熱処理は、例えば450℃の温度で実施される。この熱処理によって、pMIS100pのゲート電極Gp1のシリコンゲート電極7を構成する多結晶Si膜28とNi膜、およびnMIS100nのゲート電極Gn1のシリコンゲート電極13を構成する多結晶Si膜28とNi膜とを固相反応させてNiSiを形成し、続いてHSOとHとの混合溶液を用いて未反応のNiを除去することにより多結晶Si膜28の表面にNiSi膜32を形成する。NiSi膜32の厚さは、例えば約30nmである。多結晶Si膜28の比抵抗は約1000μΩ・cmであるが、NiSi膜32の比抵抗は約100〜200μΩ・cmであり、NiSi膜32を形成することにより、シリコンゲート電極7,13の低抵抗を図ることができる。
【0070】
次に、半導体基板1の主面上に、例えばCVD法を用いて層間絶縁膜33、例えばTEOS膜を形成した後、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、層間絶縁膜31,33に接続孔34を形成する。
【0071】
次に、接続孔34の底面および内壁を含む層間絶縁膜31,33上に、例えばスパッタリング法を用いてTi/TiN膜を順次堆積してTi/TiN膜を形成する。Ti/TiN膜は、例えば後の工程で接続孔34の内部に埋め込まれる材料が拡散するのを防止する、いわゆるバリア機能を有している。続いて、半導体基板1の主面上に、例えばCVD法を用いて接続孔34の内部を埋め込むようにW膜を形成する。続いて、W膜およびTi/TiN膜を、例えばCMP法を用いて研削することにより、接続孔34の内部にプラグ35を形成する。
【0072】
続いて、半導体基板1の主面上にTi/TiN膜、Al膜、およびTi/TiN膜を、例えばスパッタリング法を用いて順次形成する。続いて、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、これらの膜を加工して、配線36を形成する。この後、さらに上層の配線を形成するが、ここでの説明は省略する。以上の工程により、pMIS100pおよびnMIS100nからなるCMISデバイスが略完成する。
【0073】
なお、前述したCMISデバイスの製造方法では、第1Mo膜21、AlO膜23、および第2Mo膜24を相互拡散させることによるMo1−xAl膜の形成は、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、pMIS形成領域に仮ゲート電極NGp1を形成した後に行ったが、これに限定されるものではない。例えば、AlO膜23上に第2Mo膜24を形成した後(前述の図11を用いて説明した工程)に半導体基板1に対して熱処理を施すことにより、Mo1−xAl膜を形成してもよい。
【0074】
また、前述したCMISデバイスの製造方法では、pMIS100pおよびnMIS100nのそれぞれのソース・ドレイン領域SDの表面に低抵抗化のためのNiSi膜30を形成し、pMIS100pのゲート電極Gp1のシリコンゲート電極7およびnMIS100nのゲート電極Gn1のシリコンゲート電極13のそれぞれの表面に低抵抗化のためのNiSi膜32を形成したが、その他のシリサイド材料、例えばPtSi膜またはTiSi膜などを形成してもよい。
【0075】
このように、本実施の形態1によれば、pMIS100pのゲート電極Gp1のメタルゲート電極6をMe1−xAl膜(Meは金属元素、例えばMo、Ru、またはIn)で構成し、Me1−xAl膜に含まれるAl元素またはO元素のそれぞれの濃度を調整することにより、金属元素単体からなる膜の仕事関数よりも大きい所望する仕事関数を得ることができる。その結果、pMIS100pの所望する閾値電圧を得ることができる。
【0076】
(実施の形態2)
本実施の形態2によるCMISデバイスを図18〜図20を用いて説明する。図18はCMISデバイスの要部断面図、図19はMo1−xAl1−z膜の仕事関数とAl濃度またはO濃度との関係を説明するグラフ図、図20はpMISのゲート電極の一部を拡大して示す模式図である。
【0077】
前述した実施の形態1と相違する点は、pMISのゲート電極の構造である。すなわち、前述の実施の形態1では、pMIS100pのゲート電極Gp1の一部を構成するメタルゲート電極6を2層のメタル膜(上層メタルゲート電極6Uおよび下層メタルゲート電極6D)で構成し、さらに下層メタルゲート電極6DをMe1−xAl膜(Meは金属元素、0.2≦x≦0.75、0.2≦y≦1.5)で構成した。これに対して、本実施の形態2では、図18および図20に示すように、pMIS200pのゲート電極Gp2の一部を構成する下層メタルゲート電極6D2をMe1−xAl1−z膜(Meは金属元素、0.2≦x≦0.75、0.1≦z≦0.9)により構成した。Meと記載した金属元素は、例えばMo、Ru、またはIrのいずれかである。本実施の形態2によるnMIS200nのゲート電極Gn2の構成は、前述した実施の形態1によるnMIS100nのゲート電極Gn1と同じである。
【0078】
図19に、金属元素にMo元素を用いて形成したMo1−xAl1−z膜の仕事関数とMo膜の仕事関数との差のAl濃度またはO濃度依存性を説明するグラフ図を示す。図19に示すように、MoN膜にAl元素およびO元素を添加したMo1−xAl1−z膜の仕事関数は、MoN膜の仕事関数よりも大きく、さらにMo1−xAl1−z膜に含まれるAl元素またはO元素のそれぞれの濃度が増加するに従って、Mo1−xAl1−z膜の仕事関数は増加する。従って、Mo1−xAl1−z膜に含まれるAl元素またはO元素のそれぞれの濃度を調整することにより、MoN膜の仕事関数よりも大きいMo1−xAl1−z膜の所望する仕事関数を得ることができる。その結果、pMISの所望する閾値電圧を得ることができる。
【0079】
Mo1−xAl1−z膜の仕事関数がMoN膜の仕事関数よりも大きくなるのは、図20に示すように、下層メタルゲート電極6D2(Mo1−xAl1−z膜)とゲート絶縁膜5hとの界面IMから0.5nm程度の下層メタルゲート電極6D2の領域に、Mo−O−Al−N−Mo結合が形成されて、Mo−O結合およびMo−N結合が強くなったことに起因すると考えられる。SIMS分析により、上記界面IM近傍でMo1−xAl1−z膜のAl濃度およびO濃度が高くなる濃度勾配が本願発明者らによって確認されている。
【0080】
また、前述の図19から分かるように、Mo1−xAl1−z膜の仕事関数は、O濃度よりもAl濃度が支配的である。すなわち、Mo1−xAl1−z膜中のAl濃度が低いとO濃度は低いが、Al濃度が増加すると、それに伴ってO濃度も増加する。従って、上記Mo−O−Al−N−Mo結合を形成するためにO元素の量を多くMo1−xAl1−z膜に添加させるには、Mo1−xAl1−z膜のAl濃度を増加させる必要がある。
【0081】
なお、上記したAl元素の割合(x)およびO元素の割合(z)は、Mo1−xAl1−z膜全体で得られていることが最も好ましいが、少なくとも下層メタルゲート電極6D2とゲート絶縁膜5hとの界面IMから0.5nm程度の下層メタルゲート電極6D2の領域において得られていれば良い。
【0082】
さらに、pMIS200pのゲート電極Gp2の一部を構成するメタルゲート電極6の材料にN元素を含む導電性材料(Me1−xAl1−z膜)を用いることにより、ゲート電極Gp2の側壁に形成されるサイドウォール8をSiN膜で形成した場合、メタルゲート電極6とサイドウォール8との密着性が向上する。微細化が進み、サイドウォール8の幅(サイドウォール長)がさらに短くなってもサイドウォール8の剥がれを抑制することができ、また所定の幅のサイドウォール8が形成できるので、pMIS200pにおいて安定したトランジスタ特性を得ることができる。
【0083】
次に、本実施の形態2によるCMISデバイスの製造方法を図21〜図29を用いて工程順に説明する。図21〜図29はCMISデバイスの要部断面図である。なお、半導体基板1の主面上にSiO膜16およびHfSiON膜17を形成し、nMIS形成領域に、ゲート電極Gn2の下層メタルゲート電極12Dの材料であるTaSiN膜18を形成するまでの製造工程(前述した実施の形態1において図4〜図7を用いて説明した工程)は、前述した実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
前述した実施の形態1において図7を用いて説明した製造工程に続いて、図21に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、pMIS形成領域ではHfSiON膜17上に、nMIS形成領域ではSiN膜19上に第1MoN膜40を形成する。第1MoN膜40の厚さは、例えば約1nmである。
【0085】
次に、図22に示すように、第1MoN膜40上に、例えばスパッタリング法を用いてAlN膜41を形成する。AlN膜41の厚さは、例えば約0.1〜1nmである。
【0086】
次に、図23に示すように、半導体基板1に対して酸化処理を行う。酸化処理は400℃以下、例えば酸素雰囲気中において約100℃の温度で実施される。この酸化処理によって、AlN膜41を酸化してAlN1−z膜42を形成する。
【0087】
次に、図24に示すように、AlN1−z膜42上に、例えばスパッタリング法を用いて第2MoN膜43を形成する。第2MoN膜43の厚さは、例えば約9nmである。
【0088】
次に、図25に示すように、第2MoN膜43上に、例えばCVD法を用いてSiN膜25を形成する。SiN膜25の厚さは、例えば約30nmである。続いてフォトリソグラフィ法を用いてpMIS形成領域を覆うレジストパターン26を形成する。
【0089】
次に、図26に示すように、このレジストパターン26をマスクとして、レジストパターン26から露出しているnMIS形成領域のSiN膜25、第2MoN膜43、AlN1−z膜42、および第1MoN膜40を、例えばドライエッチング法を用いて除去した後、レジストパターン26を除去する。
【0090】
次に、図27に示すように、SiN膜19,25を除去した後、例えばスパッタリング法を用いてpMIS形成領域では第2MoN膜43上に、nMIS形成領域ではTaSiN膜18上にTiN膜27を形成する。TiN膜27の厚さは5nm以上であり、例えば約5〜10nmである。続いて、TiN膜27上に、例えばCVD法を用いて多結晶Si膜28を形成する。多結晶Si膜28の厚さは、例えば約20〜50nmである。pMIS形成領域およびnMIS形成領域の多結晶Si膜28は、n型不純物またはp型不純物を導入することにより、同じ導電性を示す多結晶Siにより構成してもよいが、pMIS形成領域の多結晶Si膜28をp型の導電性を示す多結晶Siにより構成し、nMIS形成領域の多結晶Si膜28をn型の導電性を示す多結晶Siにより構成してもよい。続いて、多結晶Si膜28上に、例えばスパッタリング法を用いてSiN膜29を形成する。
【0091】
次に、図28に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、pMIS形成領域にゲート絶縁膜5および仮ゲート電極NGp2を形成し、nMIS形成領域にゲート絶縁膜11およびゲート電極Gn2を形成する。pMIS形成領域に形成された仮ゲート電極NGp2は仮メタルゲート電極N6およびシリコンゲート電極7により構成されている。さらに、仮メタルゲート電極N6は第1MoN膜40、AlN1−z膜42、および第2MoN膜43からなる仮下層メタルゲート電極N6D2、ならびにTiN膜27からなる上層メタルゲート電極6Uにより構成されている。
【0092】
次に、図29に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、pMIS200pのp型拡張領域9、サイドウォール8、およびp型拡散領域10を形成し、nMIS200nのn型拡張領域14、サイドウォール8、およびn型拡散領域15を形成する。
【0093】
次に、半導体基板1に対して熱処理を行う。熱処理は600℃以上、例えば1000℃の温度で実施される。この熱処理によって、pMIS形成領域では、第1MoN膜40、AlN1−z膜42、および第2MoN膜43が相互拡散してMo1−xAl1−z膜が形成される。Mo1−xAl1−z膜の厚さは3nm以上であり、例えば約3〜10nmである。これにより、Mo1−xAl1−z膜からなる下層メタルゲート電極6D2が形成され、下層メタルゲート電極6D2および上層メタルゲート電極6Uからなるメタルゲート電極6が形成され、メタルゲート電極6およびシリコンゲート電極7からなるゲート電極Gp2が形成される。
【0094】
さらに、この熱処理によって、pMIS形成領域のp型拡張領域9およびp型拡散領域10に導入されたp型不純物を活性化し、nMIS形成領域のn型拡張領域14およびn型拡散領域15に導入されたn型不純物を活性化させて、ソース・ドレイン領域SDが形成される。
【0095】
その後は、前述した実施の形態1と同様にして、pMIS形成領域およびnMIS形成領域のソース・ドレイン領域SDの表面にNiSi膜30を形成し、シリコンゲート電極7,13の表面にNiSi膜32を形成する。そして、プラグ35および配線36等を形成することにより、CMISデバイスが略完成する。
【0096】
ところで、メタルゲート電極6の下層メタルゲート電極6Dを構成するMo1−xAl1−z膜の比抵抗は約300〜500μΩ・cm、上層メタルゲート電極6Uを構成するTiN膜27の比抵抗は約100μΩ・cmであり、Mo1−xAl1−z膜の抵抗はTiN膜27の抵抗よりも高い。しかし、シリコンゲート電極7を構成する多結晶Si膜28の比抵抗が約1000μΩ・cmであるため、ゲート電極Gp2全体で見た場合は、シリコンゲート電極7の抵抗がゲート電極Gp2の導電性を決めることになる。なお、本実施の形態2では、シリコンゲート電極7を構成する多結晶Si膜28の上部に、比抵抗が約100〜200μΩ・cmのNiSi膜32が形成されていることから、ゲート電極Gp2は高い導電性を有している。
【0097】
また、前述したCMISデバイスの製造方法では、第1MoN膜40、AlN1−z膜42、および第2MoN膜43を相互拡散させることによるMo1−xAl1−z膜の形成は、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、pMIS形成領域に仮ゲート電極NGp2を形成した後に行ったが、これに限定されるものではない。例えば、AlN1−z膜42上に第2MoN膜43を形成した後(前述の図23を用いて説明した工程)に半導体基板1に対して熱処理を施すことにより、Mo1−xAl1−z膜を形成してもよい。
【0098】
また、前述したCMISデバイスの製造方法では、pMIS200pおよびnMIS200nのそれぞれのソース・ドレイン領域SDの表面に低抵抗化のためのNiSi膜30を形成し、pMIS200pのゲート電極Gp2のシリコンゲート電極7およびnMIS200nのゲート電極Gn2のシリコンゲート電極13のそれぞれの表面に低抵抗化のためのNiSi膜32を形成したが、その他のシリサイド材料、例えばPtSi膜またはTiSi膜などを形成してもよい。
【0099】
このように、本実施の形態2によれば、pMIS200pのゲート電極Gp2のメタルゲート電極6をMe1−xAl1−z膜(Meは金属元素、例えばMo、Ru、またはIr)で構成し、Me1−xAl1−z膜に含まれるAl元素またはO元素のそれぞれの濃度を調整することにより、金属元素単体からなる膜の仕事関数よりも大きい所望する仕事関数を得ることができる。その結果、pMIS200pの所望する閾値電圧を得ることができる。
【0100】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、半導体装置、特にゲート長が30nm以下の半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 半導体基板
2 素子分離
3 n型ウェル
4 p型ウェル
5 ゲート絶縁膜
5h 高誘電体膜
5s 酸化膜
6 メタルゲート電極
6D 下層メタルゲート電極
6D2 下層メタルゲート電極
6U 上層メタルゲート電極
7 シリコンゲート電極
8 サイドウォール
9 p型拡張領域
10 p型拡散領域
11 ゲート絶縁膜
12 メタルゲート電極
12D 下層メタルゲート電極
12U 上層メタルゲート電極
13 シリコンゲート電極
14 n型拡張領域
15 n型拡散領域
16 SiO
17 HfSiON膜
18 TaSiN膜
19 SiN膜
20 レジストパターン
21 第1Mo膜
22 Al膜
23 AlO
24 第2Mo膜
25 SiN膜
26 レジストパターン
27 TiN膜
28 多結晶Si膜
29 SiN膜
30 NiSi膜
31 層間絶縁膜
32 NiSi膜
33 層間絶縁膜
34 接続孔
35 プラグ
36 配線
40 第1MoN膜
41 AlN
42 AlN1−z
43 第2MoN膜
100n,200n nチャネル型MISFET
100p,200p pチャネル型MISFET
Gn1,Gn2,Gp1,Gp2 ゲート電極
IM 界面
N6 仮メタルゲート電極
N6D,N6D2 仮下層メタルゲート電極
NGp1,NGp2 仮ゲート電極
SD ソース・ドレイン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜およびメタルゲート電極を備えるpチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、
前記メタルゲート電極は、金属元素、Al元素、およびO元素からなる結合を有するMe1−xAl組成の導電性膜により構成され、前記Al元素の割合xは0.2以上0.75以下、前記O元素の割合yは0.2以上1.5以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体基板の主面に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜およびメタルゲート電極を備えるpチャネル型電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、
前記メタルゲート電極は、金属元素、Al元素、N元素、およびO元素からなる結合を有するMe1−xAl1−z組成の導電性膜により構成され、前記Al元素の割合xは0.2以上0.75以下、前記O元素の割合zは0.1以上0.9以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記金属元素は、Mo、Ru、またはIrであることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記Al元素の濃度および前記O元素の濃度が、前記ゲート絶縁膜と前記メタルゲート電極との界面近傍で最大となる濃度勾配を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記メタルゲート電極の厚さは3nm以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記メタルゲート電極上に金属窒化膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記メタルゲート電極上に金属窒化膜が形成され、前記金属窒化膜上に多結晶Si膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記高誘電体膜は、HfO膜、HfON膜、HfSiO膜、またはHfSiON膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1または2記載の半導体装置において、前記半導体基板と前記高誘電体膜との間には1nm以下の酸化膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
半導体基板の主面にpチャネル型電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体基板の主面上に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記ゲート絶縁膜上に第1金属膜およびAl膜を順次形成する工程と、
(c)前記半導体基板に400℃以下の温度で熱処理を施し、前記Al膜を酸化してAlO膜を形成する工程と、
(d)前記AlO膜上に第2金属膜を形成する工程と、
(e)前記半導体基板に600℃以上の温度で熱処理を施して、前記ゲート絶縁膜上にMe1−xAl組成の導電性膜により構成されるメタルゲート電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置の製造方法において、前記導電性膜におけるAl元素の割合xは0.2以上0.75以下、前記導電性膜におけるO元素の割合yは0.2以上1.5以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の半導体装置の製造方法において、前記(d)工程と前記(e)工程との間に、
(f)前記第2金属膜上に金属窒化膜を形成し、前記金属窒化膜上に多結晶Si膜を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
半導体基板の主面にpチャネル型電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体基板の主面上に、SiOよりも誘電率の高い高誘電体膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記ゲート絶縁膜上に第1金属窒化膜およびAlN膜を順次形成する工程と、
(c)前記半導体基板に400℃以下の温度で熱処理を施し、前記AlN膜を酸化してAlN1−z膜を形成する工程と、
(d)前記AlN1−z膜上に第2金属窒化膜を形成する工程と、
(e)前記半導体基板に600℃以上の温度で熱処理を施して、前記ゲート絶縁膜上にMe1−xAl1−z組成の導電性膜により構成されるメタルゲート電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、前記導電性膜におけるAl元素の割合xは0.2以上0.75以下、前記導電性膜におけるO元素の割合zは0.1以上0.9以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、前記(d)工程と前記(e)工程との間に、
(f)前記第2金属窒化膜上に第3金属窒化膜を形成し、前記第3金属窒化膜上に多結晶Si膜を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項10または13記載の半導体装置の製造方法において、前記導電性膜におけるMe元素は、Mo、Ru、またはIrであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項10または13記載の半導体装置の製造方法において、前記導電性膜におけるAl元素の濃度および前記導電性膜におけるO元素の濃度が、前記ゲート絶縁膜と前記メタルゲート電極との界面近傍で最大となる濃度勾配を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項10または13記載の半導体装置の製造方法において、前記メタルゲート電極の厚さは3nm以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項10または13記載の半導体装置の製造方法において、前記高誘電体膜は、HfO膜、HfON膜、HfSiO膜、またはHfSiON膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項10または13記載の半導体装置の製造方法において、前記(a)工程の前に、
(g)前記半導体基板の主面に1nm以下の酸化膜を形成する工程と、
をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−278319(P2010−278319A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130808(P2009−130808)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】