説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】 半導体素子の微細化にともない半導体基板の斜面を使用したMOSトランジスタにおいては、斜面の上端に近い箇所と下端に近い箇所とでゲート電極膜の膜厚が異なることになり、ドライエッチングによるパターニングが困難になるという問題点がある。
【解決手段】 斜面上にゲート電極を有するMOSトランジスタは、最初に斜面の下端に近い箇所の下層ゲート電極膜のパターニングを行う。さらにそのゲート電極間のスペースを基板の主表面まで埋設させ主表面と高さを同一とした後、上層のゲート電極膜を成膜しゲート電極膜のパターニングを行う。このためにコンタクトホール開口時のアスペクト比が小さくなり、微細パターンのパターニングが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に係り、特に半導体基板の斜面に形成されたMOSトランジスタを備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の進歩は目覚しく、DRAM(Dynamic Random Access memory)を例に挙げると、ほぼ1〜1.5年毎に2倍のペースで半導体素子の高集積化が為されている。これらの高集積化の達成のためにMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタの寸法も縮小化されている。この寸法の縮小化に伴ってMOSトランジスタの性能が短チャネル効果によって劣化することが懸念されている。この対策としては、シリコン基板表面に設けられた斜面上にゲート電極を形成することが考えられる。このような構造では、ゲート電極の線幅に比べて実際のゲート長を長くすることができる。
【0003】
斜面上にゲート電極を形成する半導体装置としては下記特許文献がある。特許文献1(特開平05−259399)には、斜面をゲートとし、底部と主表面とをソース/ドレインとするトランジスタが開示されている。特許文献2(特開昭61−051974)では斜面上にMOSトランジスタを形成している。特許文献3(特開昭58−145156)には底部のエンハンスメント型MOSと斜面のデプレッション型MOSとを接続したMOSトランジスタが開示されている。
【0004】
しかしこれらの斜面を使用したMOSトランジスタにおいては下記の問題がある。図5(A)に示すように、ゲート電極膜の膜厚に比較して素子の寸法が十分に大きい場合には、斜面の上端(開口部)付近と下端(底部)付近でのゲート電極膜の膜厚はほぼ等しい。しかし、図5(B)に示すように、半導体装置の寸法が小さくなると、斜面に囲まれた溝部の幅が狭くなり、ゲート電極材料は溝部を完全に埋め込んでしまう。このような状態では、斜面の上端に近い箇所と下端に近い箇所とでゲート電極膜の膜厚が異なることになり、ドライエッチングによるパターニングが困難になる。また、斜面の下端に近い箇所はゲート電極膜のアスペクト比が高くなるため、層間膜に接続孔を開口する際のドライエッチングも困難になるという問題点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平05−259399号公報
【特許文献2】特開昭61−051974号公報
【特許文献3】特開昭58−145156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、最近の半導体素子の微細化にともない半導体基板の斜面を使用したMOSトランジスタにおいては斜面の上端に近い箇所と下端に近い箇所とでゲート電極膜の膜厚が異なる。このためドライエッチングによるパターニングが困難になるという問題点がある。本発明の目的は,上記した問題に鑑み、斜面の下端に近い箇所においてもパターニングしやすい半導体装置及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記した課題を解決するため、基本的に下記に記載される技術を採用するものである。またその技術趣旨を逸脱しない範囲で種々変更できる応用技術も、本願に含まれることは言うまでもない。
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン基板に溝を形成する工程と、ゲート絶縁膜と第1のゲート電極膜を成膜する工程と、前記溝の斜面下端近傍側の前記第1のゲート電極膜をパターニングし第1のゲート電極を形成する工程を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法においては、さらに形成された前記第1のゲート電極間のスペースを拡散層となる充填材で前記シリコン基板の主表面の高さまで充填することを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記充填材として、エピタキシャルシリコン、高融点金属、高融点金属の合金、ポリシリコンから選択された1つ、又はこれらを積層することにより形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記充填材により充填した後に、第2のゲート電極膜を成膜し、該第2のゲート電極膜及び前記第1のゲート電極膜の残り部分を同時にパターニングすることを特徴とする。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記第1のゲート電極膜はポリシリコンにより形成され、前記第2のゲート電極膜はタングステン、窒化タングステン、ポリシリコンから成る積層構造により形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法においては、前記第1のゲート電極膜はポリシリコンにより形成され、前記第2のゲート電極膜はタングステンシリサイドとポリシリコンから成る積層構造により形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の半導体装置は、上記したいずれかの半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の半導体装置は、溝の斜面部にゲート電極を構成し、斜面の上端付近の半導体基板の主表面を一方の拡散層とし、斜面の下端付近を充填材により前記半導体基板の主表面の高さまで充填し、該充填材を他方の拡散層とするMOSトランジスタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明における斜面にゲート電極を有するMOSトランジスタは、最初に斜面の下端に近い箇所の下層ゲート電極膜のパターニングを行う。さらに下層ゲート電極間を基板の主表面と同じ高さとなるように充填材で埋設させ、上層のゲート電極膜を成膜しゲート電極膜のパターニングを行う。ゲート電極間を基板の主表面と同じ高さとすることで、コンタクトホール開口時のアスペクト比を小さくする。
【0017】
第1の効果としては、ゲート電極膜の膜厚が異なる斜面の上端部と下端部を分けてドライエッチングすることにより、ゲート電極のパターニングが容易になる。第2の効果は、斜面下端部を充填材で埋設させゲート電極のアスペクト比が高くなることを抑制し、接続孔のドライエッチングが容易になる。以上のことにより、ゲート線幅の小さい半導体装置において、ゲート長を大きくとることができ、短チャネル効果によるトランジスタ性能の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1〜4を参照して説明する。図1にDRAMセル部の断面図を示す。図2〜4には各工程におけるトランジスタの断面図を、図2(A)、(B)、(C)、(D)、図3(E)、(F)、(G)、(H)、図4(I)、(J)、(K)、(L)に示す。
【0019】
図1を参照すると、本発明の実施例としてDRAM(Dynamic Random Access Memory)のメモリセル部の断面図を示す。ここでは共通のビット線に接続された2ビット分のメモリセルを示している。シリコン基板1の活性領域に斜面101が設けられ、この斜面101上にゲート絶縁膜(非常に薄いため図示されていない)を介してMOSトランジスタのゲート電極201が設けられている。かかるゲート電極においては、チャネル部分が斜面上に形成されることから寸法幅よりもトランジスタのチャネル長を大きくとることができる。そのためデバイスの寸法が小さくなった場合でも、短チャネル効果によるトランジスタの特性の劣化を抑制することができるという効果がある。
【0020】
斜面の下端付近のゲート電極間は充填され、その表面は半導体基板表面と同じ高さにある。斜面に形成されたMOSトランジスタの拡散層はコンタクトプラグ301により接続される。中央部にある共通の拡散層はビット線401に接続される。両側の拡散層からはそれぞれのメモリセル容量501に接続される。斜面に形成されたMOSトランジスタを使用することで短チャネル効果によるトランジスタの特性の劣化を抑制され、メモリセルの面積を小さくすることができる。その結果大容量のDRAMが得られる。
【0021】
次に、図2〜4を参照して実施例の製造方法を説明する。始めに、図2(A)示すように、従来と同様にして結晶軸(001)のシリコン基板1上に厚さ約10nmの熱酸化膜(非常に薄いため図示されていない)を介して厚さ約100nmの第1のシリコン窒化膜2をCVD(Chemical Vapor Deposition)によって堆積させる。第1のシリコン窒化膜2を、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングによってパターニングする。その後、更にこの第1のシリコン窒化膜2をマスクとしてシリコン基板1をドライエッチングして、深さ約250nmの開口を設ける。次にこの開口部にCVD法によってシリコン酸化膜3を埋め込んだ後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)とウェットエッチングによって余分なシリコン酸化膜を除去し、STI(Shallow Trench Isolation)を形成する。
【0022】
次に、図2(B)に示すように、第1のシリコン窒化膜2を、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングし、活性領域部分に溝となるべきパターンを形成して、フォトレジストを除去する。次に、図2(C)に示すように、第1のシリコン窒化膜2をマスクとして、アンモニア水等のアルカリ性の薬液でシリコン基板1をウェットエッチングして、溝4を活性領域部分に設ける。シリコンの結晶軸としては、逆台形状の溝4の側面は(111)面、底面は(001)面となる。溝4の深さは約100nmである。次に、図2(D)に示すように、第1シリコン窒化膜と熱酸化膜を除去した後、シリコン基板1の表面を熱酸化して、厚さ約6nmの熱酸化膜(非常に薄いため図示されていない)を形成し、更に厚さ約140nmの第1のポリシリコン膜5をCVD法によって堆積させる。この第1のポリシリコン膜5はゲート電極膜の下層部を構成する第1のゲート電極膜である。
【0023】
次に、図3(E)示すように、第1のポリシリコン膜5をCMPによって平坦化した後、第1のポリシリコン膜5上に厚さ約50nmの第2のシリコン窒化膜6をCVD法によって堆積させる。次に、図3(F)に示すように、第2のシリコン窒化膜6を、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングによってパターニングした後、フォトレジストを除去する。更に第2のシリコン窒化膜6をマスクとして第1のポリシリコン膜5をドライエッチングして、シリコン基板1に達する開口7を形成する。このドライエッチングにより溝4の斜面下端近傍側のポリシリコン膜5がエッチングされ、ゲート電極の片側のエッジがパターニングされる。
【0024】
次に、図3(G)に示すように、第3のシリコン窒化膜を堆積させた後、ドライエッチングによってエッチバックし、開口7の側面にシリコン窒化膜から成る厚さ10〜20nmのサイドウォール8を形成する。次に、図3(H)に示すように、開口7の底に選択的に充填材としてシリコンをエピタキシャル成長させ、エピタキシャル層9を形成する。エピタキシャル層9の上端は、シリコン基板1の表面とほぼ同じ高さとなるようにする。ここでのエピタキシャル層9はトランジスタの拡散層となることから、エピタキシャル成長の途中から不純物を導入し拡散層とすることができる。このように開口7は充填材であるエピタキシャル層9で埋設されることでその段差は解消される。更に、厚さ40nm程度の第3のシリコン窒化膜10を堆積させ、エピタキシャル成長したシリコンの表面をシリコン窒化膜で被覆する。
【0025】
次に、図4(I)に示すように、CMPによって上面における余分なシリコン窒化膜を除去し、エピタキシャル層9の上端部のみにシリコン窒化膜を残した状態とする。厚さ30〜70nmの第2のポリシリコン膜11をCVD法によって堆積させる。次に、図4(J)に示すように、第2のポリシリコン膜11の上にタングステン及び窒化タングステンから成る金属層12を50〜60nm、スパッタ法等によって堆積させる。第2のポリシリコン膜11、タングステン及び窒化タングステンから成る金属層12は上層のゲート電極膜である。さらにシリコン窒化膜を含むハードマスク層13を100〜150nm、CVD法等によって堆積させ、フォトレジストをマスクとしてハードマスク層13をドライエッチングする。更に、フォトレジストを除去した後、ハードマスク層13をマスクとして、タングステン、窒化タングステン、第2のポリシリコン、第1のポリシリコンの各層をドライエッチングする。このドライエッチングによりゲート電極がパターニングされる。
【0026】
次に、図4(K)に示すように、厚さ5〜20nmの第4のシリコン窒化膜14を堆積させた後、シリコン酸化膜から成る層間膜15を500〜700nm堆積させ、CMPによって表面を平坦化する。次に、図4(L)に示すように、フォトレジストをマスクとして層間膜15をドライエッチングして開口16を設け、更に、フォトレジストを除去した後、開口16の底部のシリコン窒化膜をドライエッチングして シリコン基板1に達する接続孔とする。溝斜面の下端付近は充填材で埋設され主表面と同じ高さであることから、ここでの開口6のエッチングにおけるアスペクト比は同じであり、微細パターンのパターニング、エッチングが可能となる。最後に、従来と同様にしてコンタクトプラグやキャパシタ、金属配線を形成し、図1のDRAMのメモリセルを得る。
【0027】
上記実施例において、ゲート電極はタングステン、窒化タングステン、ポリシリコンから成る積層構造を用いているが、タングステンシリサイドとポリシリコンの積層構造や、ポリシリコンの単層構造を用いた場合でも同様に構成することができる。また、ポリシリコン層は不純物を含んでいてもよく、ポリシリコン層への不純物の導入は、CVDによる堆積の際に気相から導入する他、堆積後にイオン注入によって行うこともできる。さらにエピタキシャル層によりシリコン基板の主表面の高さまで埋設したが、エピタキシャル層の代わりに高融点金属、高融点金属の合金、ポリシリコン又はエピタキシャル層を含むこれらの複合層により形成できる。充填材は拡散層として機能し、シリコン基板の主表面の高さまで埋設できる材料であればその材質はとくに限定されるものではない。
【0028】
本実施例では、シリコン基板の斜面上にトランジスタのゲート電極を形成する際に、厚さが異なる斜面の上端部と下端部を分けてドライエッチングする。このためドライエッチングによるゲート電極のパターニングが容易になるという利点が得られる。また、斜面下端部にシリコンのエピタキシャル層を形成することで、この部分のゲート電極のアスペクト比が高くなることを抑え、接続孔の開口が容易になるという利点が得られる。本発明を用いる事によって短チャネル効果によるトランジスタの特性の劣化が抑制され、メモリセルの面積を小さくすることができる。その結果大集積化された半導体装置が得られる。
【0029】
以上、実施例につき詳述したが、本願はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々変更して任意に組み合わせて適用することが可能である。また本発明の概念を超えない範囲で、種々変更して実施することが可能であり、これらが本願に含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明におけるDRAMのメモリセル部の断面図である。
【図2】本発明の各工程における断面図(A)、(B)、(C)、(D)である。
【図3】本発明の各工程における断面図(E)、(F)、(G)、(H)である。
【図4】本発明の各工程における断面図(I)、(J)、(K)、(L)である。
【図5】従来例における断面図(A)、(B)である。
【符号の説明】
【0031】
1 シリコン基板
2、6、10、14 シリコン窒化膜
3 シリコン酸化膜
4、7、16 開口
5、11 ポリシリコン膜
8 サイドウォール
9 エピタキシャル層
12 金属層
13 ハードマスク膜
15 層間膜
101 斜面
201 ゲート電極
301 コンタクトプラグ
401 ビット線
501 メモリセル容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法において、シリコン基板に溝を形成する工程と、ゲート絶縁膜と第1のゲート電極膜を成膜する工程と、前記溝の斜面下端近傍側の前記第1のゲート電極膜をパターニングし第1のゲート電極を形成する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
さらに、形成された前記第1のゲート電極間のスペースを拡散層となる充填材で前記シリコン基板の主表面の高さまで充填することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記充填材として、エピタキシャルシリコン、高融点金属、高融点金属の合金、ポリシリコンから選択された1つ、又はこれらを積層することにより形成することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記充填材により充填した後に、第2のゲート電極膜を成膜し、該第2のゲート電極膜及び前記第1のゲート電極膜の残り部分を同時にパターニングすることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のゲート電極膜はポリシリコンにより形成され、前記第2のゲート電極膜はタングステン、窒化タングステン、ポリシリコンから成る積層構造により形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1のゲート電極膜はポリシリコンにより形成され、前記第2のゲート電極膜はタングステンシリサイドとポリシリコンから成る積層構造により形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
半導体装置において、溝の斜面部にゲート電極を構成し、斜面の上端付近の半導体基板の主表面を一方の拡散層とし、斜面の下端付近を充填材により前記半導体基板の主表面の高さまで充填し、該充填材を他方の拡散層とするMOSトランジスタを備えたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−220734(P2007−220734A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36791(P2006−36791)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】