説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】微細化されても、EOTの増膜が抑制され、且つ、良好な品質を有する高誘電率膜を備えた信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板1内に形成された第1導電型の第1の領域3及び第2導電型の第2の領域4と、半導体基板1上であって、第1の領域3及び第2の領域4の上に形成されたゲート絶縁膜5と、ゲート絶縁膜5上に形成された保護膜6と、保護膜6のうち第1の領域3の上に設けられた部分上に形成され、金属からなる第1のゲート電極9と、保護膜6のうち第2の領域4の上に設けられた部分上に形成された第2のゲート電極12とを備えている。ゲート絶縁膜5及び保護膜6は、高誘電率膜からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電率膜からなる絶縁膜を備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高性能化に向けて、半導体素子の微細化とともに、ゲート絶縁膜の薄膜化が推進されてきた。しかしながら、ゲート絶縁膜を薄膜化すると、トンネルリーク電流が発生して絶縁耐性が低下することにより、デバイス特性に影響を及ぼす恐れがあり、ゲート絶縁膜の薄膜化には限界が見え始めている。
【0003】
そこで、ゲート絶縁膜を薄膜化するための効果的な対策として、ゲート絶縁膜の材料として、シリコン酸化物の代わりに、高誘電率を有するゲート絶縁膜を導入することが推進されている。
【0004】
上述の高誘電率を有するゲート絶縁膜の有力な材料としては、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜が知られている。これは、ハフニウムシリケート膜の比誘電率が比較的大きく(10<ε<20)、かつ600℃程度の熱処理を加えても結晶化しないという利点によるものである。しかしながら、ハフニウムシリケート膜を用いた場合、ゲート電極としてポリシリコン電極を用いると、ゲート絶縁膜中の酸素欠損を原因とするフェルミレベルピニング現象により、特に、p型トランジスタのしきい値が高電圧側にずれる問題が生じる。
【0005】
また、ポリシリコン電極とゲート絶縁膜との間に形成される空乏層の容量により、相対的にゲート絶縁膜容量が低下し、ゲート絶縁膜の酸化膜換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)が増膜化してしまう。これに対して、ポリシリコン電極の代わりに、金属電極を適用する試みが行われている。金属電極を用いる場合、それぞれP型MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor Field Effect Transistor)用、及びn型MISFET用の仕事関数を持つ材料を選定し、インテグレーションを構築する必要がある。ここで、図11は、金属の仕事関数を示す図である。同図に示すように、p型MISFET用(PMOS用)の電極材料の候補としては、例えばTiN、Pt、及びRuOが挙げられる。一方、n型MISFET用(NMOS用)の電極材料の候補としては、例えばMo及びTaなどが挙げられる。
【0006】
続いて、p型MISFET及びn型MISFETに、互いに異なる材料からなる金属ゲート電極をそれぞれ形成する方法について一例を以下に示す。図12は、従来の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。また、図13(a)〜(d)は、従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0007】
図12及び図13(a)に示すように、まず、素子分離絶縁膜101が形成された半導体基板100上に高誘電率膜(High-k膜)からなるゲート絶縁膜103を形成する。その後、ゲート絶縁膜103上に第1のゲート電極形成膜104aを成膜し、リソグラフィーによるパターニングを行う。次に、図13(b)に示すように、第1のゲート電極形成膜104aのうち、一方のチャネル領域(例えばN型MISFET領域)に形成された部分をウェットエッチングにより除去する。これにより、P型MISFET領域に第1のゲート電極を形成することができる。
【0008】
次に、半導体基板の全面上に第2のゲート電極形成膜106aを成膜した後、該第2のゲート電極形成膜のパターニングを行い、第2の金属ゲート電極膜のうち、P型MISFET領域に形成された部分をエッチングにより除去する。以降、所定の工程を経て、P型MISFET上に設けられた第1のゲート電極と、N型MISFET上に設けられた第2のゲート電極とを作り分けることができる。
【0009】
ここで、第1のゲート電極形成膜を選択的に除去するために、通常ウェットエッチングが行われるが、この際、N型MISFET領域に形成されたゲート絶縁膜が直接薬液に暴露されてしまう。そのため、N型MISFET領域に形成されたゲート絶縁膜は、ダメージを受けて膜質が劣化する恐れがある。
【0010】
また、図13(d)に示す工程では、N型MISFETとP型MISETが互いに非対称な構造であるため、ゲート電極のパターニングが比較的難しくなる。このように、各MISFET領域で互いに異なる金属ゲート電極を有するデュアルメタルゲート構造を実現することは、従来のポリシリコンからなるゲート電極の場合に比べて、様々な不具合が生じる。
【0011】
上述のウェットエッチング時にゲート絶縁膜が損傷を受ける不具合に対して、ゲート絶縁膜と第1のゲート電極形成膜との間に、バッファー層として窒化アルミニウム(AlNx)層を挿入する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法によれば、窒化アルミニウム層が設けられていることで、第1のゲート電極形成膜の除去時に、ゲート絶縁膜が露出することはなく、エッチング薬液に浸食されない。なお、窒化アルミニウム層は、活性化アニールなどの後工程における熱処理で、完全にP型メタル膜及びN型メタル膜中に拡散して消費されることで、ゲート絶縁膜の増膜には寄与しないと記されている。また、これに関して、TEM(透過電子顕微鏡像)写真においてAlN層は観察されず、且つ、ゲート絶縁膜の電気的な膜厚は変化しないことが示されている。
【特許文献1】特表2006−524431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献によれば、実際に評価されたゲート絶縁膜の膜厚は3nm程度である。3nm程度の膜厚では、AlO膜の存在の有無は膜厚の増膜という点からほとんど無視できるが、膜厚が例えば1.5nm程度以下であるような、より薄膜化されたゲート絶縁膜では、増膜及び特性への影響が無視できない可能性が高い。また、AlN層の比誘電率は、SiOの2倍程度であり、物理膜厚が変わるとEOTが変動しやすいことも懸念される。
【0013】
上記に鑑み、本発明は、微細化されても、EOTの増膜が抑制され、且つ、良好な品質を有する高誘電率膜を備えた信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1の領域及び第2導電型の第2の領域と、前記半導体基板上であって、前記第1の領域及び前記第2の領域の上に形成され、高誘電率膜からなるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成され、高誘電率膜からなる保護膜と、前記保護膜のうち前記第1の領域の上に設けられた部分上に形成され、金属からなる第1のゲート電極と、前記保護膜のうち前記第2の領域の上に設けられた部分上に形成された第2のゲート電極とを備えている。
【0015】
この構成によれば、高誘電率膜からなるゲート絶縁膜上に高誘電率膜からなる保護膜を備えているため、EOTを大きく増膜させることなく、ゲート絶縁膜が製造工程中に損傷するのを抑制することができる。その結果、リーク電流が抑制された良好な品質を有するゲート絶縁膜を備え、微細化されても高速に動作が可能で、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0016】
また、本発明の第2の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成され、高誘電率膜からなる容量絶縁膜と、前記容量絶縁膜上に形成され、高誘電率膜からなる保護膜と、前記保護膜上に形成され、金属からなる上部電極とを有し、前記半導体基板に電気的に接続されたMIMキャパシタとを備えている。
【0017】
この構成によれば、高誘電率膜からなる容量絶縁膜と上部電極との間に保護膜を有するMIMキャパシタを備えているため、容量絶縁膜を形成した後に金属からなる上部電極を形成する際に、該容量絶縁膜の膜質が劣化するのを抑制することができる。また、保護膜は高誘電率膜から構成され、EOTを大きく増加させることがないので、容量絶縁膜の十分な特性を確保することができる。その結果、本実施形態の半導体装置では、高容量化され、良好な特性を示すMIMキャパシタを備えた半導体装置を実現することができる。
【0018】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板内に第1導電型の第1の領域及び第2導電型の第2の領域を形成する工程(a)と、前記半導体基板上に高誘電率膜からなるゲート絶縁膜を形成した後、前記ゲート絶縁膜上に高誘電率膜からなる保護膜を形成する工程(b)と、前記保護膜上に金属からなる第1のゲート電極形成膜を堆積した後、前記第1のゲート電極形成膜のうち、前記第2の領域の上方に形成された部分を選択的に除去して、前記第2の領域の上方に形成された前記保護膜を露出させる工程(c)と、
前記金属膜及び露出した前記保護膜の上に第2のゲート電極形成膜を形成する工程(d)と、前記第1のゲート電極形成膜及び前記第2のゲート電極形成膜、前記保護膜、及び前記ゲート絶縁膜をパターニングすることで、前記第1の領域の上方及び前記第2の領域の上方にそれぞれ第1のゲート電極及び第2のゲート電極を形成する工程(e)とを備えている。
【0019】
この方法によれば、工程(b)で、高誘電率膜からなるゲート絶縁膜上に保護膜を形成することで、後の工程(c)で、第2の領域の上方に形成された第1のゲート電極形成膜を選択的に除去する際に、保護膜によりゲート絶縁膜が保護されるため、ゲート絶縁膜が製造工程中にダメージを受けるのを抑制することができる。さらに、本発明の半導体装置の製造方法では、保護膜として高誘電率膜を用いることで、ゲート絶縁膜とゲート電極(第1のゲート電極及び第2のゲート電極)との間に保護膜を設けても、EOTを大きく変化させることなく、ゲート絶縁膜の良好な特性を確保することができる。従って、本発明の半導体装置の製造方法を用いると、薄膜化され、良好な品質を有するゲート絶縁膜を備え、微細化されても、高速に動作が可能で信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体装置及びその製造方法を用いると、良好な品質を有する高誘電率膜からなる絶縁膜を備えることができるため、微細化されてもリーク電流が抑制され、高い信頼性を有する半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。図1(a)〜(d)及び図2(a)〜(d)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0022】
まず、図1(a)に示すように、活性領域を有する半導体基板1内にLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法、又はSTI(Shallow Trench Isolation)分離法などを用いて、素子分離絶縁膜2を形成する。次に、素子分離絶縁膜2に囲まれた活性領域に対して、イオン注入することで、半導体基板1内であって素子分離絶縁膜2に取り囲まれたn型ウェル領域3及びp型ウェル領域4をそれぞれ形成する。その後、半導体基板1に対してウェット洗浄を行い、n型ウェル領域3及びp型ウェル領域4上にケミカル酸化膜(図示せず)を形成する。
【0023】
次に、図1(b)に示すように、半導体基板1上に高誘電率膜からなるゲート絶縁膜5を形成する。具体的には、ゲート絶縁膜5を形成する前に、半導体基板1の表面に膜厚が0.5〜1.5nmの範囲のシリコン酸化膜などからなる界面層13を、熱酸化法により形成する。その後、界面層13をプラズマ窒化する。これにより、後の工程で形成するゲート絶縁膜5をアニールする際に界面層13が増膜するのを抑制することができる。ここで、プラズマ窒化の条件としては、例えば圧力が5〜1000mTorr(0.67〜133N/m)の範囲で、Nガス又はAr/Nガス雰囲気下で行い、PWR=0.5〜3kW、ステージ温度を400℃以下程度とする。
【0024】
続いて、プラズマ窒化された界面層13をアニール処理する。これにより、界面層13中に未反応で存在している原子状窒素の脱理を促進させるとともに、界面層13中の不完全な結合や欠陥を修復することができる。なお、アニール処理は、例えば圧力を0.5〜5Toor(66.7〜666.6N/m)、温度を1000℃に設定し、2.5〜15秒間行う。
【0025】
次に、界面層13上に高誘電率膜からなるゲート絶縁膜5を堆積する。この時、例えば熱CVD法により、例えばTEMAH(tetrakis(ethylmethylamido)hafnium)とSi(CH)NH(Tri-dimethyl-amino-silene)とを原料として用い、温度を500〜600℃、流量をTEMAH/Si(CH)NH/O=50/50/1000mL/min(sccm)に設定して成膜を行う。なお、シリコン酸化膜換算膜厚であるEOT(Equivalent Oxide Thickness)を1.0〜1.5nm程度に設定する場合、ゲート絶縁膜5を2〜3nmの膜厚で堆積したらよい。なお、ゲート絶縁膜5の材料としては、ハフニウムオキサイド又はハフニウムオキシナイトライドの高誘電率膜であれば好ましいが、これに限定されるものではない。
【0026】
続いて、ゲート絶縁膜5の結晶化を防止するために、高誘電率膜からなるゲート絶縁膜5をプラズマ窒化する。なお、プラズマ窒化の条件としては、図1(b)に示す工程の界面層13のプラズマ窒化と同様の条件を用いることができる。
【0027】
次に、プラズマ窒化されたゲート絶縁膜5を酸素雰囲気下でアニール処理する。これにより、ゲート絶縁膜5中の不純物の除去、及び不完全な結合や欠陥の修復をするとともに、界面層13との密着性を向上させることができる。なお、アニール処理の条件としては、上述の界面層13のアニール処理と同様の条件を用いることができる。
【0028】
次に、ゲート絶縁膜5上に、チタン酸化膜などからなる高誘電率膜の保護膜6を形成する。この時、例えば、酸素雰囲気下で、チタンターゲットを用いた反応性DC(Direct Current)スパッタ法を用いる。具体的な方法としては、DCパワーを0.1〜3kWに設定して成膜し、成膜後には酸素雰囲気下、600℃程度でアニール処理を行う。なお、DCスパッタ法の代わりに、TiCl及びO等を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法又はALD(Atomic Layer Deposition)法を使用してもよい。ただし、CVD法やALD法では、膜中に残留する原料の副生成物を概ね5%以下に抑えることが望ましい。なお、保護膜6の材料として、酸化チタン(ε>50)を用いれば、誘電率が十分に大きいため好ましいが、これに限定されるものではない。また、保護膜6の膜厚としては、0.5nm以上2.0nm以下であれば好ましい。この場合、EOTを増膜させることなく、保護膜6の効果を得ることができる。
【0029】
続いて、窒化チタン(TiN)などからなる第1のゲート電極形成膜7aを形成する。なお、TiNの膜厚は、例えば5nm以上20nm以下である。この時、例えば、窒素雰囲気下で行う反応性スパッタ法を用いる。具体的な条件としては、N又はAr/N雰囲気下で、磁束密度を0.5〜50mTに設定し、膜厚が10〜30nm程度となるように堆積する。なお、堆積後に、窒素雰囲気下で、600℃程度以下のアニール処理を行ってもよい。また、本工程では、スパッタ法の代わりに、窒化チタンとアンモニアを用いたCVD法やALD法を使用してもよい。ただし、この場合、膜中に残留する原料の副生成物を概ね5%以下に抑えることが望ましい。
【0030】
次に、図1(c)に示すように、第1のゲート電極形成膜7aのうちp型ウェル領域4の上方に形成された部分を選択的に除去する。具体的には、リソグラフィーによりパターニングを行い、第1のゲート電極形成膜7aのうち、n型ウェル領域3の上方に形成された部分上にレジスト(図示せず)を形成する。その後、レジストをマスクとして、例えば過酸化水素水(H)を含む酸で洗浄することで、第1のゲート電極形成膜7aを選択的に除去する。ここで、本工程で用いる洗浄方法として、例えば薬液としてSPM(硫酸過水)を用いた方法が挙げられる。具体的な薬液としては、液温が100℃程度で、H:HSO=1:4の混合液を用いる。ここで、酸化チタンからなる保護膜6は、硫酸に対して化学的に安定である。そのため、本工程では、p型ウェル領域4の上方に形成された第1のゲート電極形成膜7aが選択的に除去されることで、保護膜6のうちp型ウェル領域4の上方に形成された部分が露出する。続いて、レジスト(図示せず)をSPM洗浄により除去する。この時、半導体基板1上の有機物質も一緒に除去される。
【0031】
次に、保護膜6の表面及びゲート絶縁膜5を再酸化する。ここで、上述のTiNからなる第1のゲート電極形成膜7aは還元雰囲気で成膜されるため、酸化チタン膜からなる保護膜6及びハフニウムシリケート膜からなるゲート絶縁膜5中には、酸素欠損が生じてしまう。そのため、本工程では、保護膜6及びゲート絶縁膜5を再酸化することで、酸素欠損による膜質の劣化を抑制する。
【0032】
再酸化方法としては、水蒸気によるウェット酸化(水蒸気酸化)、プラズマを用いた酸化(プラズマ酸化)、又はオゾンガスを用いた酸化(オゾン酸化)などの方法が用いられる。ここで、再酸化工程では、処理温度を600℃以下にすることが好ましい。なお、水蒸気酸化やオゾン酸化の場合、膜の内部まで活性種が侵入しやすく、膜全体が酸化されやすい。この場合、ゲート絶縁膜の増膜が懸念されるため、最適な処理温度と処理時間を設定する必要がある。一方、プラズマ酸化の場合、活性種が侵入する深さは水蒸気酸化及びオゾン酸化よりも浅く、膜の表面部分が酸化されやすい。従って、プラズマ酸化では、上記2つの酸化方法よりも処理時間を長くするか、若しくは処理温度を高くするなどの条件を設定する必要がある。また、上記の方法以外にも、ラジカル酸化及び紫外線酸化を用いてもよい。
【0033】
なお、この再酸化工程では、保護膜6及びゲート絶縁膜5だけでなく、TiNからなる第1のゲート電極形成膜7aの表面も酸化される。そのため、再酸化工程の後に、例えば、1/100程度に薄められた希薄なフッ酸を用いて、第1のゲート電極形成膜7aの表面に形成された酸化被膜を除去する。
【0034】
次に、図2(a)に示すように、半導体基板1上に、ポリシリコンなどからなる第2のゲート電極形成膜8aを形成する。その後、図2(b)に示すように、リソグラフィーによりパターニングを行うことで、界面層13及びゲート絶縁膜5、保護膜6、第1のゲート電極形成膜7a、及び第2のゲート電極形成膜8aを選択的に除去する。これにより、p型MISFET領域には、n型ウェル領域3上に形成され、第1のゲート電極形成膜7a及び第2のゲート電極形成膜8aから構成されたp型ゲート電極(第1の電極)9を形成することができる。一方、n型MISFET領域には、p型ウェル領域4上に形成され、第2のゲート電極形成膜8aから構成されたn型ゲート電極(第2の電極)12を形成することができる。なお、第2のゲート電極形成膜8aの材料としては、例えばリンが導入されたポリシリコン、タンタルを含む炭化物、タンタル酸窒化物、又は、モリブデンアルミ窒化物を用いることができる。
【0035】
続いて、図2(c)に示すように、p型MISFET領域では、p型ゲート電極9をマスクとして所定の不純物をイオン注入することで、n型ウェル領域3内に低濃度不純物拡散層10を形成する。次に、CVD法を用いて、界面層13、ゲート絶縁膜5、保護膜6、p型ゲート電極9の側面にサイドウォール14を形成する。その後、サイドウォール14及びp型ゲート電極9をマスクして、半導体基板1内に所定の不純物をさらにイオン注入することで、n型ウェル領域3内に高濃度不純物拡散層11を形成する。その後、p型ゲート電極9及び高濃度不純物拡散層11の表面に、サリサイド技術を用いてシリサイド層15をそれぞれ形成する。一方、n型MISFET領域においても、同様にして、n型ゲート電極12をマスクとしてイオン注入を行うことで、p型ウェル領域4内に低濃度不純物拡散層10を形成する。続いて、p型MISFET領域と同様にして、サイドウォール14、高濃度不純物拡散層11、及びシリサイド層15をそれぞれ形成する。
【0036】
最後に、図2(d)に示すように、半導体基板1の全面に、層間絶縁膜16を形成する。その後、層間絶縁膜16を貫通し、シリサイド層15を介して高濃度不純物拡散層11に接続されるコンタクトプラグ17を形成する。以降、所定の工程を経て、本実施形態の半導体装置を製造することができる。
【0037】
本実施形態の半導体装置の製造方法の特徴は、図1(b)に示す工程で、高誘電率膜からなるゲート絶縁膜5上に、酸化チタン膜からなる保護膜6を形成したことにある。この方法によれば、後の図1(c)に示す工程で、ゲート絶縁膜5の上方に形成された第1のゲート電極形成膜7aを選択的に除去する際に、保護膜6によりゲート絶縁膜5が保護されるため、ゲート絶縁膜5が製造工程中にダメージを受けるのを抑制することができる。さらに、本実施形態の半導体装置の製造方法では、保護膜6として高誘電率膜を用いることで、ゲート絶縁膜5とゲート電極(p型ゲート電極9及びn型ゲート電極12)との間に保護膜6を設けても、EOTを大きく変化させることなく、ゲート絶縁膜の良好な特性を確保することができる。従って、本実施形態の半導体装置の製造方法を用いると、薄膜化され、良好な品質を有するゲート絶縁膜を備え、微細化されても、高速に動作が可能で信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0038】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法では、図1(d)に示す工程で、ゲート絶縁膜5及び保護膜6を再酸化する工程を備えている。ここで、図3は、本実施形態の半導体装置の製造方法に係る再酸化工程を示す断面図である。図3に示すように、再酸化工程では、ゲート絶縁膜5及び保護膜6に酸素が供給される。そのため、第1のゲート電極形成膜7aの成膜時に、酸化膜から構成されるゲート絶縁膜5及び保護膜6中の酸素が欠損しても、再度酸化を行うことで酸素欠損による膜質の劣化を抑制でき、良好な特性を示すゲート絶縁膜5及び保護膜6を得ることができる。その結果、本実施形態の半導体装置の製造方法を用いると、半導体装置の信頼性をより一層向上させることができる。
【0039】
次に、本実施形態の半導体装置の構成について、図2(d)を用いて簡単に説明する。同図に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板1と、半導体基板1内に形成されたn型ウェル領域3及びp型ウェル領域4と、n型ウェル領域3とp型ウェル領域4とを分離する素子分離絶縁膜2と、半導体基板1上であって、n型ウェル領域3及びp型ウェル領域4上にそれぞれ順に形成された界面層13、ゲート絶縁膜5、保護膜6と、保護膜6のうち、n型ウェル領域3の上に設けられた部分上に形成され、金属からなるp型ゲート電極(第1の電極)9と、保護膜6のうち、p型ウェル領域4の上に設けられた部分上に形成されたn型ゲート電極(第2の電極)12とを備えている。なお、p型ゲート電極(第1の電極)9は、TiNなどからなる第1のゲート電極形成膜7aと、ポリシリコンなどからなる第2のゲート電極形成膜8aとから構成されている。また、ゲート絶縁膜5及び保護膜6は、高誘電率膜から構成される。
【0040】
また、本実施形態の半導体装置は、n型ウェル領域3及びp型ウェル領域4内であって、それぞれ平面的に見てp型ゲート電極9及びn型ゲート電極12の両側方にそれぞれ形成された低濃度不純物拡散層10及び高濃度不純物拡散層11と、高濃度不純物拡散層11、p型ゲート電極9、及びn型ゲート電極12の表面に設けられたシリサイド層15と、p型ゲート電極9及びn型ゲート電極12の上に形成された層間絶縁膜16と、層間絶縁膜16を貫通し、シリサイド層15を介して高濃度不純物拡散層11に接続されたコンタクトプラグ17とを備えている。
【0041】
以上の構成を有する本実施形態の半導体装置では、ゲート絶縁膜5上に高誘電率膜からなる保護膜6を備えているため、EOTを大きく増膜させることなく、ゲート絶縁膜が製造工程中に損傷するのを抑制することができる。その結果、リーク電流が抑制された良好な品質を有するゲート絶縁膜を備え、微細化されても高速に動作が可能で、信頼性の高い半導体装置を実現することができる。
【0042】
以下、本発明の半導体装置及びその製造方法の特徴である保護膜6の効果について説明する。最初に、本願発明者らが行った検討について図4及び図5を用いて述べる。図4は、窒化チタン膜を成膜した場合と成膜しない場合における、n型MISFETのゲート電圧とリーク電流の関係をそれぞれ示す図である。なお、「TiN成膜なし」は、ゲート絶縁膜上に、ゲート電極材料としてポリシリコンを成膜した場合における、n型MISFETのリーク電流を測定した結果である。一方、「TiN成膜あり」は、ゲート絶縁膜上に窒化チタン膜を成膜して一旦洗浄により除去した後、ゲート絶縁膜上にゲート電極材料としてポリシリコンを新たに成膜した場合における、n型MISFETのリーク電流を測定した結果である。なお、いずれの場合もゲート絶縁膜の材料として高誘電率膜を用いた。
【0043】
図4に示すように、「TiN成膜あり」の場合、「TiN成膜なし」に比べてn型MISFETのリーク電流は大きくなる。これは、TiN膜を除去する工程でゲート絶縁膜がダメージを受ける結果、膜質が劣化してしまうからだと考えられる。
【0044】
続いて、図5は、窒化チタン膜を成膜した場合と成膜しない場合における、n型MISFETのゲート電圧と容量値を示す図である。なお、「TiN成膜なし」及び「TiN成膜あり」は、上述の方法と同様にして作製したn型MISFETの容量値をそれぞれ測定した結果である。図5に示すように、p型ゲート電極としてTiN膜を成膜してもしなくても、n型MISFETの容量値はほとんど変わらない。ここで、容量値は絶縁膜の膜厚に対して比例することから、TiN膜を成膜しても成膜しなくとも、実効的なゲート絶縁膜の膜厚は変わらないことがわかる。さらに、図4及び図5の結果を合わせて考えると、TiN膜を成膜した場合にリーク電流が増加するのは、実効的なゲート絶縁膜の膜厚の変化によるものではなく、TiN膜の除去工程によりゲート絶縁膜の膜質が劣化してしまうからだと思われる。
【0045】
そこで、本願発明者らは、EOTを大きく変化させることなく、且つ、TiN膜の除去工程時にゲート絶縁膜を保護するために、高誘電率膜からなる保護膜をゲート絶縁膜上に設けることにした。以下、図6を用いて本実施形態の半導体装置に係る保護膜の効果を説明する。図6は、本発明の半導体装置に係るEOTに対するリーク電流を示す図である。なお、図6に示す結果のうち、「TiN成膜なし」及び「TiN成膜あり」は、上述の図4及び図5と同じ条件で成膜した場合のn型MISFETのリーク電流をそれぞれ測定した結果である。なお、「TiN成膜なし」については、EOTの異なるサンプルを準備し、各サンプルにおいてリーク電流を測定した。また、「TiO挿入」は、本実施形態の半導体装置の製造方法を用いて、ゲート絶縁膜上にTiO膜、TiN膜を順次形成した後、TiN膜のみを一旦洗浄により除去し、露出したTiO膜上にゲート電極材料としてポリシリコンを新たに成膜した場合のn型MISFETのリーク電流を示している。さらに、「洗浄のみ」は、ゲート絶縁膜を洗浄した後、該ゲート絶縁膜上にポリシリコンを成膜した場合のn型MISFETのリーク電流を示している。なお、洗浄方法は、「TiN成膜あり」及び「TiO挿入」の場合における、Ti膜を除去する際に用いる洗浄方法と同様にして、硫酸過水洗浄を用いた。
【0046】
図6に示すように、TiO膜を用いた場合のリーク電流値は、「TiN成膜なし」の場合と同等の値となっている。このことから、ゲート絶縁膜とTiN膜との間にTiO膜を設けることで、TiN膜の除去工程を経ても、ゲート絶縁膜の膜質の劣化が抑制されることがわかる。一方、「洗浄のみ」の場合、リーク電流値は比較的低い値を示しており、ゲート絶縁膜に対して洗浄処理のみを行っても、ゲート絶縁膜の劣化は起こりにくいことが確認できた。言い換えると、TiN膜を成膜した後、部分的にTiN膜を除去することで、ゲート絶縁膜の劣化が生じると考えられる。そのため、本実施形態の半導体装置の製造方法に係る、TiOなどからなる保護膜6を用いることは、同一基板上に互いに異なる材料からなる各ゲート電極(第1の電極及び第2の電極)を作り分ける際に有用であると言える。
【0047】
なお、本実施形態の半導体装置及びその製造方法では、第1の電極をp型ゲート電極、第2の電極をn型ゲート電極としたが、これに限定されるものではない。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態の半導体装置及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、MIM(Metal Insulation Metal)キャパシタを有するDRAM(Dynamic Random Access Memory)を一例に挙げて説明する。ここで、近年の半導体装置の微細化に対応するために、キャパシタの容量絶縁膜として、ハフニウムオキサイド、ジルコニアオキサイドなどの高誘電率膜を用いる検討が行われている。この場合、高誘電率膜からなる容量絶縁膜の結晶化を抑制するために、電極材料としては従来のポリシリコンに代えて、例えば400℃程度以下の低温で成膜が可能なTiN、TaNなどの金属材料が用いられるようになった。以上のことより、本実施形態の半導体装置及びその製造方法では、高誘電率膜からなるキャパシタの容量絶縁膜と、金属からなる電極とを備えた半導体装置について説明する。図7は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【0049】
図7に示すように、本実施形態の半導体装置は、半導体基板31と、半導体基板31内に形成された素子分離絶縁膜32と、半導体基板31上に形成されたMOSトランジスタを備えている。ここで、MOSトランジスタは、半導体基板31内であって、互いに隣接する素子分離絶縁膜32の間の領域に形成された高濃度不純物拡散層37及び低濃度不純物拡散層35と、半導体基板31上であって、平面的に見て互いに隣接する高濃度不純物拡散層37の間に位置する領域上に形成されたゲート絶縁膜33と、ゲート絶縁膜33上に形成されたゲート電極34と、ゲート電極34及び高濃度不純物拡散層37の表面に形成されたシリサイド層38と、ゲート絶縁膜33及びゲート電極34の側面に形成されたサイドウォール36とを有している。
【0050】
さらに、本実施形態の半導体装置は、MOSトランジスタの上に形成された第1の層間絶縁膜50と、第1の層間絶縁膜50を貫通し、シリサイド層38を介して高濃度不純物拡散層37に接続される第1のコンタクトプラグ51と、第1の層間絶縁膜50及び第1のコンタクトプラグ51の上に形成され、開口部を有する第2の層間絶縁膜52と、該開口部に形成され、第1のコンタクトプラグ51を介してMOSトランジスタに接続されるMIMキャパシタ40とを備えている。ここで、MIMキャパシタ40は、開口部の内面に形成され、窒化チタンなどからなる下部電極24と、下部電極24及び第2の層間絶縁膜52の上に形成された容量絶縁膜25と、容量絶縁膜25上に形成され、酸化チタンなどからなる保護膜30と、保護膜30上に形成され、窒化チタンなどからなる上部電極26とを有している。
【0051】
また、本実施形態の半導体装置は、上部電極26上に形成され、開口部を埋める第3の層間絶縁膜57と、第3の層間絶縁膜57、上部電極26、保護膜30、容量絶縁膜25を貫通する第2のコンタクトプラグ58と、第2のコンタクトプラグ58及び第3の層間絶縁膜57の上に形成された第4の層間絶縁膜59と、第4の層間絶縁膜59を貫通し、第2のコンタクトプラグ58に接続される金属配線60とを備えている。
【0052】
続いて、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。図8(a)〜(c)及び図9(a)〜(c)は、本実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0053】
まず、図8(a)に示すように、素子分離絶縁膜32が形成された半導体基板31を準備し、半導体基板31上であって、素子分離絶縁膜2に取り囲まれた活性領域(図示せず)上にゲート絶縁膜33及びゲート電極34を順次形成する。その後、高濃度不純物拡散層37、サイドウォール36、及び低濃度不純物拡散層35を順次形成する。次いで、高濃度不純物拡散層37及びゲート電極34の表面にシリサイド層38を形成する。これにより、DRAMのいわゆるメモリ選択型トランジスタとなるMOSトランジスタ70を作製することができる。なお、各工程の詳細な方法は、上述の第1の実施形態の半導体装置の製造方法と同様である。
【0054】
次に、図8(b)に示すように、MOSトランジスタ70の上にCVD法により第1の層間絶縁膜50を形成する。なお、第1の層間絶縁膜50の材料としては、400℃以下で成膜可能な、例えば高密度プラズマを用いたシリコン酸化(SiO)膜を用いることが望ましい。次に、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、第1の層間絶縁膜50を貫通し、シリサイド層38の上面に達するコンタクトホールを形成する。その後、コンタクトホールにCVD法及びALD法により、バリアメタルと、金属膜からなる導電性部材とを埋め込むことで、第1のコンタクトプラグ51を形成する。金属膜の材料としては、例えばタングステンを用いる。
【0055】
続いて、図8(c)に示すように、第1の層間絶縁膜50の上に、CVD法により第2の層間絶縁膜52を形成する。ここで、第2の層間絶縁膜52の材料としては、例えば低温で成膜が可能なTEOS(テトラエチルオルソシリケート)膜を用いる。TEOS膜は、低温で成膜が可能な窒化膜を成長させた後、プラズマを用いて成膜させる。次いで、第2の層間絶縁膜52に、第1のコンタクトプラグ51及び第1の層間絶縁膜50の一部を露出させる開口部61を形成する。
【0056】
続いて、図9(a)に示すように、開口部61の内面に例えば窒化チタンからなる下部電極24を形成する。この時、TiClとNHを用いたCVD法、又は、TiClガスとNHガスを交互に供給し、原子層レベルで堆積させるALD法を用いて行う。なお、下部電極24の膜厚は、5nm以上20nm以下であれば好ましい。
【0057】
次に、図9(b)に示すように、下部電極24及び第2の層間絶縁膜52の上に、例えばHfOからなる容量絶縁膜25を形成する。ここで、TEMAH(Tetra Ethyl Methyl Amino Hafnium)などのHfを含有した有機金属原料を半導体基板に吸着させる工程(SA1)と、未吸着で残存する有機金属原料を排気する工程(SA2)と、半導体基板をオゾンに暴露することで、半導体基板に吸着した有機金属原料を酸化させる工程(SA3)と、オゾンを排気する工程(SA4)とを繰り返すことで、所望の膜厚を有するHfOx膜を形成することができる。本実施形態の半導体装置の製造方法では、上記各工程を繰り返すことで、例えば4〜8nmの膜厚を有するHfOが形成される。なお、容量絶縁膜25の材料としては、HfO及びハフニウムオキシナイトライドが好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、酸化ジルコニウム(ZrO)なども用いることができる。
【0058】
次に、図9(b)に示すように、容量絶縁膜25上に酸化チタンなどからなる高誘電率膜の保護膜30を形成する。形成方法は、上述の下部電極24の形成方法と同様にして、TiClとNHを用いたCVD法、又は、TiClガスとNHガスを交互に供給し、原子層レベルで堆積させるALD法を用いることができる。保護膜30の膜厚としては、0.5nm以上2nm以下であることが望ましい。この場合、MIMキャパシタの容量絶縁膜25のEOTを大きく変化させることなく、保護膜として十分に機能することができる。なお、保護膜30の材料として、酸化チタン(ε>50)を用いれば、誘電率が十分に大きいため好ましいが、これに限定されるものではない。また、保護膜30の膜厚としては、0.5nm以上2.0nm以下であれば好ましい。この場合、EOTを増膜させることなく、保護膜30の効果を得ることができる。
【0059】
続いて、例えばCVD法又はALD法を用いて、保護膜30上に窒化チタンなどからなる上部電極26を形成する。これにより、下部電極24、容量絶縁膜25、保護膜30、上部電極26を有する本実施形態の半導体装置に係るMIMキャパシタを形成することができる。ここで、上部電極26の形成工程は、HfOxなどからなる非晶質な容量絶縁膜25の膜質が劣化するのを抑制するため、400℃以下の低温で行うことが望ましい。従って、TiNからなる上部電極26は、CVD法又はALD法により成膜する。なお、上部電極26の膜厚は、5nm以上50nm以下であることが好ましく、保護膜30上に被覆性良く形成するために、さらには、後の工程で形成される第2のコンタクトプラグとの接触抵抗を下げるために、20nm以上50nm以下であればより好ましい。また、上部電極26は、上述のCVD法又はALD法により成膜した膜の上に、スパッタ法を用いてTiN膜をさらに形成することで、TiNの積層膜から構成されていてもよい。この場合、上部電極26の抵抗率を低減させることができるとともに、スパッタ法により開口部61を埋め込んで上部電極26を形成することができ、上部電極26の段差を低減させることができる。
【0060】
次に、上部電極26上に例えば低温で成膜が可能なプラズマTEOS膜などからなる第3の層間絶縁膜57を形成する。その後、第3の層間絶縁膜57、上部電極26、保護膜30、容量絶縁膜25を貫通するコンタクトホールをドライエッチングにより形成する。次に、コンタクトホールに、タングステンなどからなる導電性の金属膜を埋め込むことで、第2のコンタクトプラグ58を形成する。次いで、第2のコンタクトプラグ58及び第3の層間絶縁膜57の上に第4の層間絶縁膜59を形成した後、第4の層間絶縁膜59を貫通し、第2のコンタクトプラグ58に接続される金属配線60を形成する。以降、所定の工程を経て、本実施形態の半導体装置(DRAM)を製造することができる。
【0061】
図10は、本実施形態の半導体装置およびその製造方法に係るMIMキャパシタを示す断面図である。図10に示すように、本実施形態の半導体装置及びその製造方法の特徴は、キャパシタの容量絶縁膜25と上部電極26との間に、高誘電率膜からなる保護膜30を設けたことにある。ここで、容量絶縁膜25上にTiNからなる上部電極26を形成する工程は、還元雰囲気下で行われるため、高誘電率膜からなる容量絶縁膜25の膜質が劣化する恐れがある。しかし、本発明の半導体装置及びその製造方法では、容量絶縁膜25と上部電極26との間に保護膜30を備えていることで、容量絶縁膜25が上部電極26の形成時にダメージを受けるのを抑制することができる。また、保護膜30は高誘電率膜から構成されているため、EOTを大きく上昇させることなく、容量絶縁膜25を保護することができる。従って、本実施形態の半導体装置及びその製造方法によれば、良好な品質を有する容量絶縁膜を備え、高容量化され、高い信頼性を有するDRAMを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の半導体装置及びその製造方法は、半導体装置の高駆動化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法に係るn型MISFETのゲート電圧とリーク電流の関係をそれぞれ示す図である
【図5】は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法に係るn型MISFETのゲート電圧と容量値を示す図である。
【図6】は、第1の実施形態の半導体装置に係るEOTに対するリーク電流を示す図である。
【図7】は、本発明の第2の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、第2の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、第2の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】は、第2の実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図11】は、金属の仕事関数を示す図である。
【図12】は、従来の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図13】(a)〜(d)は、従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 半導体基板
2 素子分離絶縁膜
3 n型ウェル領域
4 p型ウェル領域
5 ゲート絶縁膜
6 保護膜
7a 第1のゲート電極形成膜
8a 第2のゲート電極形成膜
9 p型ゲート電極
10 低濃度不純物拡散層
11 高濃度不純物拡散層
12 n型ゲート電極
13 界面層
14 サイドウォール
15 シリサイド層
16 層間絶縁膜
17 コンタクトプラグ
24 下部電極
25 容量絶縁膜
26 上部電極
30 保護膜
31 半導体基板
32 素子分離絶縁膜
33 ゲート絶縁膜
34 ゲート電極
35 低濃度不純物拡散層
36 サイドウォール
37 高濃度不純物拡散層
38 シリサイド層
40 MIMキャパシタ
50 第1の層間絶縁膜
51 第1のコンタクトプラグ
52 第2の層間絶縁膜
57 第3の層間絶縁膜
58 第2のコンタクトプラグ
59 第4の層間絶縁膜
60 金属配線
61 開口部
70 MOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板内に形成された第1導電型の第1の領域及び第2導電型の第2の領域と、
前記半導体基板上であって、前記第1の領域及び前記第2の領域の上に形成され、高誘電率膜からなるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、高誘電率膜からなる保護膜と、
前記保護膜のうち前記第1の領域の上に設けられた部分上に形成され、金属からなる第1のゲート電極と、
前記保護膜のうち前記第2の領域の上に設けられた部分上に形成された第2のゲート電極とを備えている半導体装置。
【請求項2】
前記保護膜は、酸化チタン膜からなる請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記保護膜の膜厚は、0.5nm以上2nm以下である請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のゲート電極は、膜厚が5nm以上20nm以下の窒化チタンからなる請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2のゲート電極は、リンが導入されたポリシリコン、タンタルを含む炭化物、タンタル酸窒化物、又は、モリブデンアルミ窒化物からなる請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜は、ハフニウムオキサイド又はハフニウムオキシナイトライドからなる請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板と、
前記半導体基板の上方に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成され、高誘電率膜からなる容量絶縁膜と、前記容量絶縁膜上に形成され、高誘電率膜からなる保護膜と、前記保護膜上に形成され、金属からなる上部電極とを有し、前記半導体基板に電気的に接続されたMIMキャパシタとを備えた半導体装置。
【請求項8】
前記保護膜は、酸化チタンからなる請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記保護膜の膜厚は、0.5nm以上2nm以下である請求項7又は8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記上部電極は、膜厚が5nm以上50nm以下の窒化チタンからなる請求項7〜9のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記容量絶縁膜は、ハフニウムオキサイド又はハフニウムオキシナイトライドからなる請求項7〜10のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板上に形成され、開口部を有する層間絶縁膜をさらに備え、
前記MIMキャパシタは、前記開口部の内面に沿って形成されている請求項7〜11のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項13】
半導体基板内に第1導電型の第1の領域及び第2導電型の第2の領域を形成する工程(a)と、
前記半導体基板上に高誘電率膜からなるゲート絶縁膜を形成した後、前記ゲート絶縁膜上に高誘電率膜からなる保護膜を形成する工程(b)と、
前記保護膜上に金属からなる第1のゲート電極形成膜を堆積した後、前記第1のゲート電極形成膜のうち、前記第2の領域の上方に形成された部分を選択的に除去して、前記第2の領域の上方に形成された前記保護膜を露出させる工程(c)と、
前記金属膜及び露出した前記保護膜の上に第2のゲート電極形成膜を形成する工程(d)と、
前記第1のゲート電極形成膜及び前記第2のゲート電極形成膜、前記保護膜、及び前記ゲート絶縁膜をパターニングすることで、前記第1の領域の上方及び前記第2の領域の上方にそれぞれ第1のゲート電極及び第2のゲート電極を形成する工程(e)とを備えた半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1のゲート電極は、p型ゲート電極であり、前記第2の電極は、n型ゲート電極である請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(b)では、酸化チタンからなる前記保護膜を膜厚が0.5nmから2nmで形成する請求項13又は14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記工程(c)では、窒化チタンからなる前記第1のゲート電極形成膜を膜厚が5nm以上20nm以下で堆積する請求項13〜15のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記工程(c)の後、且つ、前記工程(d)の前に、前記半導体基板を酸化することで、前記保護膜及び前記ゲート絶縁膜に酸素を供給する工程(f)をさらに備えている請求項13〜16のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記工程(f)では、水蒸気酸化、ラジカル酸化、プラズマ酸化、オゾン酸化、又は紫外線酸化のうちいずれか1つの方法を用いて、前記半導体基板を酸化する請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記工程(f)では、600℃以下の温度で前記半導体基板を酸化する請求項17又は18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記工程(c)では、塩酸、又は、硫酸及び過酸化水素を含む水溶液を用いたウェットエッチングにより、前記第1のゲート電極形成膜を選択的に除去する請求項13〜19のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−111072(P2009−111072A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280504(P2007−280504)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】