説明

半導体装置

【課題】円柱型構造のトランジスタの特性を向上させる。
【解決手段】導電層の形成された基板において前記導電層上に形成された柱状半導体と、前記柱状半導体の周囲に形成された絶縁層と、前記絶縁層の周囲に形成された一つのトランジスタのゲート電極を有しており、ゲート電極は、仕事関数の異なる少なくとも2層以上の導電膜の積層構造により構成されていることを特徴とする半導体装置を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものであり、特に、基板に垂直にチャネルの形成される円柱型構造のトランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型で大容量な不揮発性半導体記憶装置の需要が急増し、高集積化、大容量化が期待できるNAND型フラッシュメモリが注目されている。
【0003】
NAND型フラッシュメモリの高集積化、大容量化を進めるためには、デザインルールを縮小することが必要となる。デザインルールを縮小するためには、配線パターン等の更なる微細加工が必要となる。配線パターン等の更なる微細加工を実現するためには、非常に高度な加工技術が要求されるため、デザインルールの縮小化が困難になってきている。
【0004】
そこで、近年、メモリの集積度を高めるために、メモリセルを3次元的に配置した半導体記憶装置が多数提案されている(特許文献1及び非特許文献1)。
【0005】
メモリセルを3次元的に配置した従来の半導体記憶装置の多くは、メモリセル部分1層毎に複数のフォトエッチングプロセス(Photo Etching Process、以下「PEP」という。いわゆるフォトレジストを使ったリソグラフィ工程とエッチングなどの加工工程とを用いてパターンニングを行うプロセス。)を行う必要がある。ここで、そのデザインルールの最小線幅で行うフォトエッチングプロセスを「クリティカルPEP」とし、そのデザインルールの最小線幅より大きな線幅で行うフォトエッチングプロセスを「ラフPEP」とする。メモリセルを3次元的に配置した従来の半導体記憶装置においては、メモリセル部分1層につきクリティカルPEP数が3以上必要である。また、従来の半導体記憶装置においては、メモリセルを単純に積層していくものが多く、3次元化によるコスト増大が避けられない。
【0006】
また、メモリセルを3次元的に配置した従来の半導体記憶装置の一つに、円柱型構造のトランジスタ(SGT:Surrounding Gate Transistor)を用いた半導体記憶装置がある(特許文献1)。円柱型構造のトランジスタ(SGT)を用いた半導体記憶装置においては、積層メモリトランジスタのチャネル(ボディ)部をピラー(柱)状に形成した後に、側壁にゲート電極となるポリシリコンなどを形成するというプロセスを採用している。このため、真上から見た構造は、串刺し団子のような構造となっている。
【0007】
この円柱型構造のトランジスタ(SGT)は、チャネルが基板面に垂直に形成されるためチップ面積を増大させることなくチャネル長を長くすることが可能となることや、一般的に、チャネル方向がプロセス制御性の高い膜厚方向となるためゲート長の制御がより精密になること等が特徴として挙げられる。
【0008】
しかしながら、ゲート長の制御性は向上するものの、そのソース/ドレインとなる拡散層のプロファイル制御は、平面型に比較して困難度が増す傾向にある。ソース/ドレインにおける不純物層は、シリコン基板面に形成される不純物拡散領域からの不純物の基板垂直方向の拡散(a1)、基板上部からのイオン/インプランテーション(a2)、予め不純物ドープされた層間絶縁膜からの横方向の拡散(a3)等の方法が提案されている。このうち、a1、a3における方法では、熱工程の影響を受けやすく、ゲートオーバーラップ量やLDD構造の最適化が困難であった。また、a2における方法では、シリコン基板側となる深い地点にソース/ドレイン不純物領域を形成する場合、高加速のイオンインプランテーションにより形成する必要があり、比較的高濃度の不純物拡散領域を形成するためには、プロセスの時間が長くなり、製造上のスループットが低くなる傾向にあった。
【特許文献1】特開2003−078044号
【非特許文献1】Masuoka et al., “Novel Ultrahigh-Density Flash Memory With a Stacked-Surrounding Gate Transistor (S-SGT) Structured Cell”, IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 50, NO4, pp945-951, April 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、基板に垂直にチャネルの形成される円柱型構造のトランジスタの歩留まり及び信頼性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の態様に係る半導体装置は、導電層の形成された基板において前記導電層上に形成された柱状半導体と、前記柱状半導体の周囲に形成された絶縁層と、前記絶縁層の周囲に形成された一つのトランジスタのゲート電極と、を有しており、前記ゲート電極は、仕事関数の異なる少なくとも2層以上の導電膜の積層構造により構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、基板に垂直にチャネルの形成される円柱型構造のトランジスタにおいて、ゲート電極の構成を多層化することにより、ON/OFF比の良好な、歩留まり及び信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
本発明における一実施の形態を以下に記載する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る半導体装置である円柱型構造のトランジスタの構造図である。
【0014】
シリコン基板101上に形成された導電層であるN+型領域102上には柱状のアモルファスシリコン層103が形成され、更に、この上にはタングステン(W)からなる電極105が形成されている。アモルファスシリコン層103の直径は約80〔nm〕であり、成膜直後は不純物が何もドープされていないが、熱拡散により、所定の領域にソース/ドレインが形成されるように、所定の領域にP等のイオン注入によりN型層(不図示)が形成されている。
【0015】
アモルファスシリコン層103の周囲には、約10〔nm〕の膜厚により形成されたシリコンの熱酸化膜である絶縁膜104を介し、ゲート電極が形成されている。
【0016】
このゲート電極は、通常は不純物としてB等がドープされたP+型のみにより形成されている。従って、ドレイン/ソースにおけるゲートオーバーラップ量や、ドレイン/ソース近傍の濃度勾配は固相拡散により定まるが、固相拡散の制御性は高くないため、通常の構成のゲート電極が単層の場合では、各々のトランジスタごとのバラつきが多く不均一となる。
【0017】
これに対し、本実施の形態では、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層110、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜112、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層114、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜116、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層118が積層形成されている。
【0018】
アモルファスシリコン層103においては、熱拡散によりN+型領域102からの不純物がアモルファスシリコン層103へ拡散し、N型領域120が形成される(本実施の形態では、拡散の端部の濃度は、1×1017〔cm−3〕)。このように形成されたN型領域120は、絶縁膜104を介し下層電極層110の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層103の上部においては、絶縁膜104を介し上層電極層118が形成されている領域の位置に、イオン注入によりN型領域122Bを形成する。所定の工程を経た後、N型領域122Bからの熱拡散によりN型領域122Aが形成される。このようにして形成されたN型領域122Bは、絶縁膜104を介し上層電極層118の形成されている領域の位置まで形成される。
【0019】
これにより、図1に示すトランジスタにおいては、実際のトランジスタの動作における閾値付近の振る舞いは、下層電極層110における仕事関数が、中層電極層114における仕事関数よりも小さいため、中層電極層114近傍のアモルファスシリコン層103においてチャネルが形成されはじめる時点において、下層電極層110近傍のアモルファスシリコン層103ではすでに電子が誘起された状態となっている。即ち、中層電極層114と下層電極層110の間においては、閾値近傍では、固相拡散の程度によらず、必ず仕事関数差による低濃度のキャリア誘起層が形成され、これが、LDD(Lightly Doped Drain)構造のように機能する。また、キャリア誘起層の端部位置は下層電極層により決定されるため、素子間のばらつきを低減することが可能となる。このことは、上部電極層118と中層電極層114においても同様であり、上層電極層118における仕事関数が、中層電極層114における仕事関数よりも小さいため、中層電極層114近傍のアモルファスシリコン層103においてチャネルが形成される際には、上層電極層118近傍のアモルファスシリコン層103では電子が誘起された状態となっている。即ち、中層電極層114と上層電極層118の間においては、閾値近傍では、固相拡散の程度によらず、必ず仕事関数差による低濃度のキャリア誘起層が形成され、これが、LDD(Lightly Doped Drain)構造のように機能するため、素子間のばらつきを低減することが可能となる。以上より、半導体記憶装置における信頼性と歩留まりを向上させることができる。
【0020】
尚、図1においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層310、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜312、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層314、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜316、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層318が積層形成されている。
【0021】
アモルファスシリコン層303の下部では、既にイオン注入により形成されているN型領域320Aの領域から熱拡散によりN型領域320Bの領域が、絶縁膜108を介し下層電極層310の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層303の上部には、イオン注入によりN型領域322が、絶縁膜108を介し上層電極層318の形成されている領域の位置まで形成される。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。図2に示すように、本実施の形態では、P等が高濃度に注入されている膜厚が50〔nm〕のN+型の下層電極層130、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜132、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層134、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜136、P等が高濃度に注入されている膜厚が150〔nm〕のN+型の上層電極層138が積層形成されている。
【0022】
アモルファスシリコン層103においては、熱拡散によりN+型領域102からの不純物がアモルファスシリコン層103への拡散し、N型領域140が形成される(本実施の形態では、拡散の端部の濃度は、1×1017〔cm−3〕)。このように形成されたN型領域140は、絶縁膜104を介し下層電極層130の形成されている領域の位置まで形成される。
また、アモルファスシリコン層103の上部においては、絶縁膜104を介し上層電極層138が形成されている領域の位置に、イオン注入によりN型領域142Bを形成する。所定の工程を経た後、N型領域142Bからの熱拡散によりN型領域142Aが形成される。このようにして形成されたN型領域142Bは、絶縁膜104を介し上層電極層138の形成されている領域の位置まで形成される。
【0023】
下部のN型領域140はN+型領域102からの熱拡散により形成され、上部のN型領域142はイオン注入により形成された不図示の高濃度のN型層の熱拡散によって形成される。この場合、イオン注入により形成されたN型層を熱拡散した場合の方が、不純物のプロファイルが緩慢に変化する傾向にあり、この差を吸収するため、上層電極層138を厚く形成し、下層電極層130を薄く形成したものである。
【0024】
尚、図2においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、P等が高濃度に注入されている膜厚が50〔nm〕のN+型の下層電極層330、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜332、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層334、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜336、P等が高濃度に注入されている膜厚が150〔nm〕のN+型の上層電極層338が積層形成されている。
【0025】
アモルファスシリコン層303の下部では、既にイオン注入により形成されているN型領域340Aの領域から熱拡散によりN型領域340Bの領域が、絶縁膜108を介し下層電極層330の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層303の上部には、イオン注入によりN型領域342が、絶縁膜108を介し上層電極層338の形成されている領域の位置まで形成される。
【0026】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。図3に示すように、本実施の形態では、P等が高濃度に注入されている膜厚が50〔nm〕のN+型の下層電極層150、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜152、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層154、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜156、B等が低濃度に注入されている膜厚が150〔nm〕のP−型の上層電極層158が積層形成されている。
【0027】
アモルファスシリコン層103においては、熱拡散によりN+型領域102からの不純物がアモルファスシリコン層103への拡散し、N型領域160が形成される(本実施の形態では、拡散の端部の濃度は、1×1017〔cm−3〕)。このように形成されたN型領域160は、絶縁膜104を介し下層電極層150の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層103の上部においては、絶縁膜104を介し上層電極層158が形成されている領域の位置に、イオン注入によりN型領域162Bを形成する。所定の工程を経た後、N型領域162Bからの熱拡散によりN型領域162Aが形成される。このようにして形成されたN型領域162Bは、絶縁膜104を介し上層電極層158の形成されている領域の位置まで形成される。
【0028】
低濃度のP−型の上層電極層158を形成することにより、このトランジスタをOFFにするために、ゲートに閾値以下の電圧を印加した場合において、低濃度のP−型の上層電極層158は、アモルファスシリコン層103に面した部分が空乏化するため、ゲート・ドレイン間に高電界がかかりにくくなる。即ち、トランジスタをOFF状態においては、実効的なゲート端がドレインから距離をおいた、オフセットした構造となり、ドレイン端電界を緩和できるため、ドレイン端からチャネル部分にキャリア注入されることにより寄生バイポーラトランジスタがON状態となって大きなリーク電流が流れる恐れを防ぎ、ドレイン端部での電界を低減することによりリーク電流を低減し、カットオフ特性を良好にすることができる。
【0029】
尚、図3においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、P等が高濃度に注入されている膜厚が50〔nm〕のN+型の下層電極層350、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜352、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層354、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜356、B等が低濃度に注入されている膜厚が150〔nm〕のP−型の上層電極層358が積層形成されている。
【0030】
アモルファスシリコン層303の下部では、既にイオン注入により形成されているN型領域360Aの領域から熱拡散によりN型領域360Bの領域が、絶縁膜108を介し下層電極層350の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層303の上部には、イオン注入によりN型領域362が、絶縁膜108を介し上層電極層358の形成されている領域の位置まで形成される。
【0031】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。図4に示すように、本実施の形態では、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層170、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜172、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層174、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜176、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜178、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層180が積層形成されている。
【0032】
アモルファスシリコン層103においては、熱拡散によりN+型領域102からの不純物がアモルファスシリコン層103への拡散し、N型領域182が形成される(本実施の形態では、拡散の端部の濃度は、1×1017〔cm−3〕)。このように形成されたN型領域182は、絶縁膜104を介し下層電極層170の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層103の上部においては、絶縁膜104を介し上層電極層180が形成されている領域の位置に、イオン注入によりN型領域184Bを形成する。所定の工程を経た後、N型領域184Bからの熱拡散によりN型領域184Aが形成される。このようにして形成されたN型領域184Bは、絶縁膜104を介し上層電極層180の形成されている領域の位置まで形成される。
【0033】
このように、シリコン酸化膜178を形成することにより、トランジスタは、いわゆるドレイン・オフセット構造となり、ドレイン端部での電界の集中を回避することができる。また、オフセット量はリソグラフィの合わせ精度等には依存しないため、プロセス上制御性の高い絶縁膜(シリコン窒化膜176及びシリコン酸化膜178)により決まるため、素子間のばらつきを最小限に抑えることができる。これにより、リーク電流が抑えられ、かつ、ON電流への寄生抵抗効果も最小限となるよう制御された、ON/OFF比に優れたスイッチング特性の高いトランジスタを形成することができる。
【0034】
尚、図4においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層370、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜372、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層374、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜376、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜378、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層380が積層形成されている。
【0035】
アモルファスシリコン層303の下部では、既にイオン注入により形成されているN型領域382Aの領域から熱拡散によりN型領域382Bの領域が、絶縁膜108を介し下層電極層370の形成されている領域の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層303の上部には、イオン注入によりN型領域384が、絶縁膜108を介し上層電極層380の形成されている領域の位置まで形成される。
【0036】
同様の機能を得るためには、図5に示すように、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層210、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜212、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜214、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層216、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜218、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層220が積層形成されており、前述の方法と同様の方法により、絶縁膜104を介しN型領域222、224A、224Bを形成したものであってもよい。
【0037】
尚、図5においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層410、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜412、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜414、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層416、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜418、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層420が積層形成されており、前述の方法と同様の方法により、絶縁膜108を介しN型領域422A、422B、424を形成したものである。
【0038】
また、図6に示すように、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層230、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜232、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜234、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層236、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜238、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜240、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層242が積層形成されており、前述の方法と同様の方法により、絶縁膜104を介しN型領域244、246A、246Bを形成したものであってもよい。
【0039】
尚、図6においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層430、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜432、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜434、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層436、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜438、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜440、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層442が積層形成されており、前述の方法と同様の方法により、絶縁膜108を介しN型領域444A、444B、446を形成したものである。
【0040】
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態において、上層電極層、中層電極層、下層電極層の電位を均一にするためのコンタクト構造を設けたものである。従来の単層ゲート電極へのコンタクト構造としては、その最表面にコンタクトプラグ底部が接触した形態が一般的であったが、本実施の形態における積層ゲート電極構造においては、各々の電極層間がPN接合となったり、オフセット構造を実現するために絶縁膜を介したりしているため、すべての層に対して一様に電位を与えることが困難となる。本実施の形態は、この点を鑑み改良を加えたものである。
【0041】
図7に基づき説明すると、第4の実施の形態と同様な、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の下層電極層250、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜252、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の中層電極層254、膜厚が2〔nm〕のシリコン窒化膜256、膜厚が30〔nm〕のシリコン酸化膜258、P等が高濃度に注入されている膜厚が100〔nm〕のN+型の上層電極層260が積層形成されているものについて、下層電極層250、界面窒化膜252、中層電極層254、シリコン窒化膜256、シリコン酸化膜258、上層電極層260のすべてを貫通するようなスルーホールをRIE等によるエッチングにより形成する。この後、MOCVD(Metal Organic Chemical Vepor Deposition)法により、約20〔nm〕チタン膜266を形成した後、水素/窒素混合ガス中において、550〔℃〕でアニールすることによりポリシリコンからなる下層電極層250、中層電極層254、上層電極層260との間にシリサイドを形成しつつ、チタン膜266の表面を窒化して、窒化チタン膜を形成し更に、内部をMOCVD法によりタングステン(W)膜268を積層することにより、コンタクトプラグとなる電極が形成される。これにより、動作安定性や動作速度の向上したトランジスタを形成することができる。
【0042】
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。図8に示すように、本実施の形態では、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の下層電極層514、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜516、P等が高濃度に注入されている膜厚が150〔nm〕のN+型の上層電極層518が積層形成されている。
【0043】
アモルファスシリコン層103においては、熱拡散によりN+型領域102からの不純物がアモルファスシリコン層103への拡散し、N型領域520が形成される(本実施の形態では、拡散の端部の濃度は、1×1017〔cm−3〕)。このように形成されたN型領域520は、絶縁膜104を介し下層電極層514の形成されている領域の端の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層103の上部においては、絶縁膜104を介し上層電極層518が形成されている領域の位置に、イオン注入によりN型領域522Bを形成する。所定の工程を経た後、N型領域184Bからの熱拡散によりN型領域522Aが形成される。このようにして形成されたN型領域522Bは、絶縁膜104を介し上層電極層518の形成されている領域の位置まで形成される。
【0044】
下部のN型領域120はN+型領域102からの熱拡散により形成され、上部のN型領域522はイオン注入により形成された不図示の高濃度のN型層の熱拡散によって形成される。本実施の形態は、固相拡散プロセスが安定しており、ソース端位置が正確に形成され、トランジスタ特性が安定している場合等に効果を有する。
【0045】
尚、図8においては、タングステン(W)からなる電極105と前述のトランジスタとの間の領域において、同様の構成のトランジスタが、さらに直列に接続されている。具体的には、B等が高濃度に注入されている膜厚が200〔nm〕のP+型の下層電極層614、膜厚が2〔nm〕の界面窒化膜616、P等が高濃度に注入されている膜厚が150〔nm〕のN+型の上層電極層618が積層形成されている。
【0046】
アモルファスシリコン層603の下部では、既にイオン注入により形成されているN型領域620Aの領域から熱拡散によりN型領域620Bの領域が、絶縁膜108を介し下層電極層614の形成されている領域の端の位置まで形成される。また、アモルファスシリコン層603の上部には、イオン注入によりN型領域622が、絶縁膜108を介し上層電極層618の形成されている領域の位置まで形成される。
〔第7の実施の形態〕
第7の実施の形態は、第1から第5の実施の形態により形成されたトランジスタを選択トランジスタとして用いた半導体記憶装置である。
【0047】
図9に、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置の概略構成図を示す。本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、メモリトランジスタ領域2、ワード線駆動回路3、ソース側選択ゲート線(SGS)駆動回路4、ドレイン側選択ゲート線(SGD)駆動回路5、センスアンプ6等を有している。図9に示すように、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置では、メモリトランジスタ領域2を構成するメモリトランジスタは、半導体層を複数積層することによって形成されている。また、図9に示すとおり各層のワード線は、ある領域で2次元的に広がっている。各層のワード線は、それぞれ同一層からなる平面構造を有しており、板状の平面構造となっている。
【0048】
尚、図9に示す本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置では、ソース側選択ゲート線(SGS)は板状の平面配線構造を有しており、ドレイン側選択ゲート線(SGD)はそれぞれが絶縁分離された配線構造を有している。
【0049】
図10に、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置のメモリトランジスタ領域2の一部の概略構成図を示す。本実施の形態においては、メモリトランジスタ領域2は、メモリトランジスタ(MTr1mn〜MTr4mn)、選択トランジスタSSTrmn及びSDTrmnからなるメモリストリングス10をm×n個(m、nは自然数)有している。図10においては、m=3、n=4の例を示している。
【0050】
各メモリストリングス10のメモリトランジスタ(MTr1mn〜MTr4mn)のゲートに接続されているワードライン(WL1〜WL4)はそれぞれ同一の導電層によって形成されており、それぞれ共通である。即ち、各メモリストリングス10のメモリトランジスタMTr1mnのゲートの全てがワードラインWL1に接続されており、各メモリストリングス10のメモリトランジスタMTr2mnのゲートの全てがワードラインWL2に接続されており、各メモリストリングス10のメモリトランジスタMTr3mnのゲートの全てがワードラインWL3に接続されており、各メモリストリングス10のメモリトランジスタMTr4mnのゲートの全てがワードラインWL4に接続されている。本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置においては、図9及び図10に示すとおり、ワードライン(WL1〜WL4)は、それぞれ、2次元的に広がっており、板状の平面構造を有している。また、ワードライン(WL1〜WL4)は、それぞれ、メモリストリングス10に概略垂直な平面構造を有している。なお、ソース側選択トランジスタSSTrmnを駆動するソース側選択ゲート線SGSは、動作上、常に各層毎に共通電位とすることが可能である。よって、本実施の形態においては、ソース側選択ゲート線SGSには、板状の構造を採用している。
【0051】
各メモリストリングス10は、半導体基板のP−well領域に形成されたN+領域の上に柱状の半導体を有している。各メモリストリングス10は、柱状半導体に垂直な面内にマトリクス状に配置されている。なお、この柱状の半導体は、円柱状であっても、角柱状であってもよい。また、柱状の半導体とは、段々形状を有する柱状の半導体を含む。
【0052】
各ワード線WLは、隣り合う柱状半導体の間隔に柱状半導体の径を加えた距離の2倍以上の広がりを有するようにしてもよい。言い換えると、各ワード線WLは、隣り合う前記柱状半導体の中心間距離の2倍以上の広がりを有するのが好ましい。
【0053】
図11(A)に、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1の一つのメモリストリングス10(ここでは、mn番目のメモリストリングス)の概略構造を示し、図11(B)に、その等価回路図を示す。本実施の形態においては、メモリストリングス10は、4つのメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mn並びに2つの選択トランジスタSSTrmn及びSDTrmnを有している。これら4つのメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mn並びに2つの選択トランジスタSSTrmn及びSDTrmnは、図11(A)、(B)に示すようにそれぞれ直列に接続されている。本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1の1つのメモリストリングス10においては、半導体基板上のP型領域(P−Well領域)14に形成されたN+型領域15に柱状の半導体11が形成されている。また、柱状の半導体11の周りに形成された絶縁膜12と、絶縁膜12の周りに形成された複数の板状の電極13a〜13fが形成されている。この電極13b〜13eと絶縁膜12と柱状の半導体11とがメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnを形成する。なお、絶縁膜12は、電荷蓄積層として機能する絶縁膜(例えば、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化珪素膜の積層膜)である。例えば、絶縁膜12が酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化珪素膜の積層膜、所謂ONO膜である場合、窒化珪素膜に離散分布したトラップに電荷が保持される。電極13b〜13eはそれぞれワード線WL1〜WL4及び、13fは選択ゲート線SGDn及び、13aはSGSとなる。また、選択トランジスタSDTrmnのソース/ドレインの一端にはビット線BLmが接続されており、選択トランジスタSSTrmnのソース/ドレインの一端にはソース線SL(本実施の形態においては、N+型領域15)が接続されている。なお、前記電荷蓄積層は、MTr1mn〜MTr4mnの柱状半導体層11の周りに形成するように(柱状の半導体層11と電極13b〜13eとの間に局在するように)してもよい。
【0054】
なお、この電荷蓄積層に導電体によって形成したフローティングゲートを採用してもよい。このときは、導電体は柱状半導体と各ワード線の間にのみ形成される。また、電極13a及び13fと柱状の半導体11との間には、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜12が形成される。
【0055】
更に、本実施の形態においては、メモリストリングス10は4つのメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnを有しているが、1つのメモリストリングスにあるメモリトランジスタの数はこれに限定されるわけではなく、メモリ容量に応じて任意の数に適宜変更することが可能である。
【0056】
本実施の形態におけるメモリストリングスは、柱状半導体の中心軸に対して概略対称形状を有することになる。
【0057】
図12に、本実施の形態における一つのメモリトランジスタMTr(例えば、MTr4mn)の断面構造図を示す。なお、他のメモリトランジスタMTr1mn〜MTr3mnについてもメモリトランジスタMTr4mnと同様の構成である。メモリトランジスタMTr4mnは、絶縁体12を介して柱状の半導体11を取り囲む導電体層13eが制御ゲート電極として機能する。メモリトランジスタMTr4のソース20及びドレイン21は、柱状の半導体11に形成される。ただし、メモリトランジスタMTrlmn並びに選択ゲートトランジスタSSTrmn及びSDTrmnがディプレッション型のトランジスタ構造を有する場合は、半導体11部分に明確なソース/ドレイン拡散層を持たないようにする場合もある。また、柱状の半導体11のうち、おおむね導電体層13eで囲まれた領域をP型半導体にし、おおむね導電体層13eで囲まれていない領域をN型半導体にしたいわゆるエンハンスメント型トランジスタにしてもよい。
【0058】
図11(A)、(B)及び図12においては、1つのメモリストリングス10について説明したが、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置においては、全てのメモリストリングスが同様の構成を有している。
【0059】
〔動作〕
最初に、図11(A)、(B)に基づき本実施の形態に係る一つのメモリストリングス10のメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnにおける「読み出し動作」、「書き込み動作」及び「消去動作」について説明する。なお、「読み出し動作」及び「書き込み動作」については、メモリトランジスタMTr3mnを例にとって説明している。
【0060】
また、本実施の形態におけるメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnは、半導体11と電荷蓄積層として機能する絶縁膜(酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化珪素膜の積層膜)と導電体層(本実施の形態においてはポリシリコン層)とからなる所謂MONOS型縦型トランジスタであり、ここでは、電荷蓄積層に電子が蓄積されていない状態のメモリトランジスタMTrのしきい値Vth(以下「中性しきい値」という)が0V付近にあるとして説明する。
【0061】
〔読み出し動作〕
メモリトランジスタMTr3mnからのデータの読み出し時には、ビット線BLmにVbl(例えば0.7V)、ソース線SLに0V、選択ゲート線SGD及びSGSにVdd(例えば3.0V)、P−Well領域にVPW(例えば0V)を印加する。そして、読み出したいビット(MTr3mn)が接続されているワード線WL3を0Vとし、それ以外のワード線WLをVread(例えば、4.5V)に設定する。これにより、読み出したいビット(MTr3mn)のしきい値Vthが0Vより大きいか小さいかで、ビット線BLmに電流が流れるかどうかが決まるため、ビット線BLmの電流をセンスすることによってビット(MTr3mn)のデータ情報を読み出すことが可能となる。なお、同様の動作によって他のビット(メモリトランジスタMTr1mn、MTr2mn、MTr4mn)のデータを読み出すことができる。
【0062】
〔書き込み動作〕
メモリトランジスタMTr3mnにデータ“0”を書き込む場合、即ち、メモリトランジスタMTr3mnの電荷蓄積層に電子を注入してメモリトランジスタのしきい値を上げる(しきい値を正の方向にシフトさせる)場合は、BLmに0V、ソース線SLにVdd、選択ゲート線SGDnにVdd(例えば3.0V)、選択ゲート線SGSにVoff(例えば0V)、P−Well領域にVPW(例えば0V)を印加し、書き込みたいビット(MTr3)のワード線WL3をVprog(例えば18V)、それ以外のワード線WLをVpass(例えば10V)とすることで、所望ビット(MTr3mn)のみ電荷蓄積層に印加される電界強度が強くなり電荷蓄積層に電子が注入され、メモリトランジスタMTr3mnのしきい値が正の方向にシフトする。
【0063】
メモリトランジスタMTr3mnにデータ“1”を書き込む場合、即ち、メモリトランジスタMTr3mnの消去状態からしきい値を上げない(電荷蓄積層に電子を注入しない)場合は、ビット線BLmにVddを印加することにより、選択トランジスタSDTrmnのゲート電位とそのソース電位とが同電位になるため、選択トランジスタSDTrmnがoff状態になり、メモリトランジスタMTr3mnのチャネル形成領域(ボディ部)とワード線WL3との間の電位差が低減するため、メモリトランジスタMTr3mnの電荷蓄積層には電子の注入が起こらない。なお、同様の動作によって他のビット(メモリトランジスタMTr1mn、MTr2mn、MTr4mn)へデータを書き込むことができる。
【0064】
〔消去動作〕
データの消去時には、複数のメモリストリングス10からなるブロック単位でメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnのデータの消去を行う。
【0065】
選択ブロック(消去したいブロック)において、P−well領域にVerase(例えば20V)を印加し、ソース線SLをフローティングに、そしてP−well領域にVeraseを印加するタイミングと若干時間をずらして(例えば4μsec程度ずらして)、選択ゲート線SGS及びSGDnの電位を上昇(例えば15V)させる。こうすることにより、選択トランジスタSSTrmnのゲート端付近でGIDL(Gate Induced Drain Leak)電流が発生し、生成したホールがメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnのボディ部である半導体層11内部に流れ、一方、電子がP−well方向に流れる。これにより、メモリトランジスタMTrのチャネル形成領域(ボディ部)にはVeraseに近い電位が伝達するため、ワード線WL1〜WL4を例えば0Vに設定すると、メモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnの電荷蓄積層の電子がP−wellに引き抜かれ、メモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnのデータの消去を行うことができる。
【0066】
一方、選択ブロックのメモリトランジスタのデータ消去を行うとき、非選択ブロックにおいては、ワード線WL1〜WL4をフローティングとすることにより、メモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnのチャネル形成領域(ボディ部)の電位の上昇とともに、カップリングによってワード線WL1〜WL4の電位が上昇し、ワード線WL1〜WL4とメモリトランジスタMTr1mn〜MTr4mnの電荷蓄積層と間に電位差が生じないため、電荷蓄積層から電子の引き抜き(消去)が行われない。
【0067】
次に、メモリストリングス10を基板面に対して縦横2次元状に配置した本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1の「読み出し動作」、「書き込み動作」及び「消去動作」について説明する。図13には、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1の等価回路図を示す。本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1は、上述のとおり、各ワード線WL1〜WL4の電位がそれぞれ同電位となっている。また、ここでは、選択ゲート線SGS1〜SGS3は、それぞれ、独立して制御できるようにしているが、選択ゲート線SGS1〜SGS3を同じ導電体層によって形成するなどして同電位にし、それらの電位を制御するようにしてもよい。
【0068】
また、ここでは、点線で示したメモリトランジスタMTr321(ビット線BL2並びに選択ゲート線SGS1及びSGD1に接続されているメモリストリングスのMTr3)における「読み出し動作」及び「書き込み動作」について説明する。また、メモリトランジスタの「消去動作」についても説明する。
【0069】
〔読み出し動作〕
図14は、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1において、点線で示したメモリトランジスタMTr321のデータの読み出し動作を行う場合のバイアス状態を示した図である。ここでも、本実施の形態におけるメモリトランジスタMTrは、半導体11と電荷蓄積層として機能する絶縁膜(酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化珪素膜の積層膜)と導電体層(本実施の形態においてはポリシリコン層)とからなる所謂MONOS型縦型トランジスタであり、電荷蓄積層に電子が蓄積されていない状態のメモリトランジスタMTrのしきい値Vth(中性しきい値)が0V付近にあるとして説明する。
【0070】
メモリトランジスタMTr321からのデータの読み出し時には、メモリトランジスタMTr321が接続されているビット線BL2にVbl(例えば0.7V)、それ以外のビット線BLに0V、ソース線SLに0V、メモリトランジスタMTr321が接続されている選択ゲート線SGD1及びSGS1にVdd(例えば3.0V)、それ以外の選択ゲート線SGD及びSGSにVoff(例えば0V)、P−well領域(PW)にVPW(例えば0V。但し、VPWは、P−well領域とメモリストリングスが順バイアスになっていなければ如何なる電位でもよい。)を印加する。そして、読み出したいビット(MTr321)が接続されているワード線WL3を0Vとし、それ以外のワード線WLをVread(例えば、4.5V)に設定する。これにより、データを読み出すビット(MTr321)のビット線BL2とソース線SL間に電位差が生じ、且つ、選択ゲート線SGD1がオンしている状態となっているため、読み出したいビット(MTr321)のしきい値Vthが0Vより大きいか小さいかで、ビット線BL2に電流が流れるかどうかが決まるため、ビット線BL2の電流をセンスすることによってビット(MTr321)のデータ情報を読み出すことが可能となる。なお、同様の動作によって他のビット(メモリトランジスタMTrlmn)のデータを読み出すことができる。このとき、例えば、メモリトランジスタMTr322は、そのしきい値Vthが何れの値であっても、即ちメモリトランジスタMTr322に“1”が書き込まれていても“0”が書き込まれていても、SGD2がVoffとなっている為、メモリトランジスタMTr322およびMTr322が属しているメモリストリングス10に電流が流れることがない。このことは、ビット線BL2に接続されているメモリストリングス10であって、選択ゲート線SGD1に接続されていない全てのメモリストリングス10において同様である。
【0071】
また、例えばメモリトランジスタMTr331を例にとって説明すると、MTr331が属するメモリストリングス10の場合、メモリトランジスタMTr331のしきい値Vthが如何なる値であっても、即ち“1”が書き込まれていても“0”が書き込まれていても、ビット線BL3が0Vでありソース線SLと同電位の為、ビット線BL3に電流が流れることはない。このことは、ビット線BL2に接続されていない全てのメモリストリングス10おいて共通である。
【0072】
以上より、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1においては、ワード線WL1〜WL4をそれぞれ共通電位で駆動し、且つ選択ゲート線SGS1〜SGS3を共通電位で駆動させても、任意のビットのしきい値のデータを読むことが可能となる。
【0073】
〔書き込み動作〕
図15は、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置1において、点線で示したメモリトランジスタMTr321のデータの書き込み動作を行う場合のバイアス状態を示した図である。
【0074】
メモリトランジスタMTr3にデータ“0”を書き込む場合、即ち、メモリトランジスタMTr321の電荷蓄積層に電子を注入してメモリトランジスタのしきい値を上げる(しきい値を正の方向にシフトさせる)場合は、メモリトランジスタMTr321が接続されているビット線BL2に0V、それ以外のビット線BLにVdd、ソース線SLにVdd、メモリトランジスタMTr321が接続されている選択ゲート線SGD1にVdd、それ以外の選択ゲート線SGDにVoff、選択ゲート線SGS1〜SGS3にVoff、P−Well領域(PW)にVPW(例えば0V)を印加し、書き込みたいビット(MTr321)のワード線WL3をVprog(例えば18V)、それ以外のワード線WLをVpass(例えば10V)とすることで、MTr321が属するメモリストリングス10において、ソース側選択ゲート線SGS1が接続されている選択ゲートトランジスタSSTr21を除く全てのメモリトランジスタMTr121、MTr221、MTr321及びMTr421にチャネルが形成され、ビット線BL2の電位(0V)がチャネルに伝播される。このため、所望ビット(MTr321)のワードラインと柱状半導体の間に存在する電荷蓄積層を含むONO膜に印加される電界強度が強くなり、電荷蓄積層に電子が注入され、メモリトランジスタMTr321のしきい値が正の方向にシフトする。
【0075】
このとき、例えば、メモリトランジスタMTr322に置いては、ソース側選択ゲート線SGD2にはVoffが印加されているため、ビット線BL2の電位がメモリトランジスタMTr322のチャネル部に伝播されることがなく、メモリトランジスタTr322には電子の注入が起こらない。このことは、BL2に接続されているメモリストリングス10であって、メモリトランジスタMTr321が属していない全てのメモリストリングス10において同様である。
【0076】
また、例えば、メモリトランジスタMTr331においては、MTr331が属するメモリストリングス10において、選択ゲート線SGD1が接続されている選択トランジスタSDTr31のソース側電位がVddとなりビット線BL3の電位もVddとなっているため、選択トランジスタSDTr31のソースとゲートの電位が同電位となる。よって、選択トランジスタSDTr31はオンせず、メモリトランジスタMTr331のチャネル部には外部電位が伝播されないため、電子注入が起こらない。このことは、BL2に接続されていない全てのメモリストリングス10において同様である。
【0077】
メモリトランジスタMTr321にデータ“1”を書き込む場合、即ち、メモリトランジスタMTr321の消去状態からしきい値を上げない(電荷蓄積層に電子を注入しない)場合は、ビット線BL2にVddを印加することにより、選択トランジスタSDTr21のゲート電位とソース電位とが同電位になるため、選択トランジスタSDTr21がoff状態になり、メモリトランジスタMTr3のチャネル形成領域(ボディ部)とワード線WL3との間の電位差が低減するため、メモリトランジスタMTr321の電荷蓄積層には電子の注入が起こらない。なお、同様の動作によって他のビット(メモリトランジスタMTrlmn、図15に示す例においては、lは1〜4、mは1〜3、nは1〜3)のデータを書き込むことができる。
【0078】
また、各ビット線BLの電位を適切に0VかVddに設定することで、ある選択ゲート線SGDによって選択された共通のワード線WL上のビット(MTr)に同時に書き込み、即ちページ書き込みを行うことが可能となる。
【0079】
〔消去動作〕
データの消去時には、複数のメモリストリングスからなるブロック単位でメモリトランジスタMTrのデータの消去を行う。図16、図17は、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置において、選択したブロックのメモリトランジスタMTrのデータの消去動作を行う場合のバイアス状態を示した図である。
【0080】
選択ブロック(消去したいブロック)において、P−well領域(PW)にVerase(例えば20V)を印加し、ソース線SLをフローティングに、そしてP−well領域にVeraseを印加するタイミングと若干時間をずらして(例えば4μsec程度ずらして)、選択ゲート線SGS及びSGDの電位を上昇(例えば15V)させる。こうすることにより、選択トランジスタSSTrのゲート端付近でGIDL(Gate Induced Drain Leak)電流が発生し、生成したホールがメモリトランジスタMTrのボディ部である半導体層11内部に流れ、一方、電子がP−well方向に流れる。これにより、メモリトランジスタMTrのチャネル形成領域(ボディ部)にはVeraseに近い電位が伝達するため、ワード線WL1〜WL4を例えば0Vに設定すると、メモリトランジスタMTrの電荷蓄積層の電子がP−wellに引き抜きが行われ、データの消去を行うことができる。
【0081】
一方、選択ブロックのメモリトランジスタのデータ消去を行うとき、非選択ブロックにおいては、ワード線WL1〜WL4をフローティングとすることにより、メモリトランジスタMTr1〜MTr4のチャネル形成領域(ボディ部)の電位の上昇とともに、カップリングによってワード線WL1〜WL4の電位が上昇し、ワード線WL1〜WL4とメモリトランジスタMTr1〜MTr4の電荷蓄積層と間に電位差が生じないため、電荷蓄積層から電子の引き抜き(消去)が行われない。
【0082】
次に、図18に基づき、本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成について説明する。
【0083】
本実施の形態に係る不揮発性半導体記憶装置は、Si(シリコン)等の半導体基板101上に、B等のイオン注入によりP−well領域14、P等のイオン注入によりN+型領域102(図11(A)における柱状の半導体15に相当する)が順次形成され、更に、この上に、柱状半導体層であるアモルファスシリコン層103(図11(A)における柱状の半導体11に相当する)が形成される。
【0084】
一方、このアモルファスシリコン層103の周囲のN+型領域102上には、不図示の窒化シリコン(SiN)膜を介し、BPSG(Boron Phosopho Silicate Glass)膜32、シリコンに不純物をドープしたソース側選択ゲート積層膜34、窒化シリコン(SiN)膜38が積層形成されている。又、ソース側選択ゲート積層膜34のアモルファスシリコン層103と接する領域には、シリコンの熱酸化膜36が形成されている。ソース側選択ゲート積層膜34は、仕事関数の異なる2層以上の積層膜により形成されており、本実施の形態においては、3層からなる積層膜により構成されている。
【0085】
窒化シリコン(SiN)膜38上には、絶縁膜を介し、シリコン酸化膜40、44、48、52とゲート電極となるP+型ポリシリコン膜42、46、50、54(各々、図11(A)における13b、13c、13d、13eに相当)が交互に積層して形成されている。このP+型ポリシリコン膜42(13b)、46(13c)、50(13d)、54(13e)は、各々ワード線WL1、WL2、WL3、WL4となる。各々ワード線WL1、WL2、WL3、WL4は、仕事関数の異なる2層以上の積層膜とすることも可能である。
【0086】
N+型ポリシリコン膜54(13e)上には、シリコン酸化膜62、シリコンに不純物をドープしたドレイン側選択ゲート積層膜64、窒化シリコン(SiN)膜68が積層形成されている。又、ドレイン側選択ゲート積層膜64のアモルファスシリコン層103と接する領域には、シリコンの熱酸化膜66が形成されている。ドレイン側選択ゲート積層膜64は、仕事関数の異なる2層以上の積層膜により形成されており、本実施の形態においては、3層からなる積層膜により構成されている。
【0087】
アモルファスシリコン層103上には、ビット線を形成する電極105(図11(A)における16に相当)が形成され、更に、BPSG(Boron Phosopho Silicate Glass)膜72が全体的に形成されている。
【0088】
一つのメモリストリングスにおいては、破線Aで囲まれた領域に形成されるドレイン側選択トランジスタと、破線Bで囲まれた領域に形成されるソース側選択トランジスタの二つが形成される。この2つの選択トランジスタは第1から第5の実施の形態に記載されているいずれかのトランジスタ或いは、後述する第7の実施の形態に記載されているトランジスタにより構成されている。尚、本実施の形態においては、ブロック内にマトリックス状に複数配列されたメモリストリングを選択するための選択トランジスタとしては、例えば、従来の平面型フラッシュメモリに比べて、より優れたカットオフ特性が要求される。即ち、一つのソース線に接続するトランジスタの個数を考えた場合に、平面型フラッシュメモリでは選択トランジスタが一列に直線的に並び、一次元的に配列されているのに対し、本実施の形態においては、選択トランジスタは平面状のソース線上に二次元的に配置されている。このことは、記憶容量を大容量化することが可能となるため顕著に優位性のある効果である。しかしながら、接続するメモリストリング数がより多くなるために個々の選択トランジスタはカットオフ特性を向上させないと、二次元的に配列されている多数の非選択のメモリトランジスタに流れるリーク電流が無視できなくなるおそれがある。本実施の形態は、この点を鑑みたものであり、前述の実施の形態において説明したように、ゲート絶縁膜を積層構造とすることによって、制御性よくリーク電流を制御することが可能となるため、平板(平面)上の電極に二次元的に配列されたトランジスタのカットオフ特性を向上させるために極めて有効となる。
【0089】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要件を変形して具体化できる。具体的には、上述したアモルファスシリコン層103は、結晶状態がアモルファスではなく単結晶や多結晶のものであってもよい。また、ゲート電極を形成する上層電極層、中層電極層、下層電極層は、シリコン等の半導体に不純物を注入したもの以外に、金属や金属化合物等導電性を有するものを用いてもよい。この場合、より広範囲に仕事関数を変化させることができるため、耐圧の高い円柱型構造のトランジスタ(SGT)を得ることができる。更に、論理素子やメモリセルを形成するため、上述した円柱型構造のトランジスタ(SGT)を積層してもよい。また、本実施の形態における上層電極層、中層電極層、下層電極層は、不純物濃度が1×1018〔cm−3〕以下である半導体材料であることが好ましい。これらにより形成されるゲート電極を空乏化し、ドレイン端電界を緩和する効果は、不純物濃度が1×1018〔cm−3〕以下にすることにより、得ることができるからである。
【0090】
以上、上記実施の形態に開示されている複数の構成要件の適宜な組み合わせにより、種々の発明が形成可能である。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要件を適宜追加し組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1の実施の形態におけるトランジスタの断面図
【図2】第2の実施の形態におけるトランジスタの断面図
【図3】第3の実施の形態におけるトランジスタの断面図
【図4】第4の実施の形態におけるトランジスタの断面図
【図5】第4の実施の形態における別のトランジスタの断面図
【図6】第4の実施の形態における別のトランジスタの断面図
【図7】第5の実施の形態におけるトランジスタの断面図
【図8】第6の実施の形態におけるトランジスタの断面図
【図9】第7の実施の形態における不揮発性半導体記憶装置の概略構成図
【図10】第7の実施の形態における不揮発性半導体記憶装置のメモリトランジスタ領域の概略構成図
【図11】第7の実施の形態における不揮発性半導体記憶装置のメモリストリングスの概略構成図
【図12】第7の実施の形態における不揮発性半導体記憶装置のメモリトランジスタMTrの概略構成図
【図13】図10に示す不揮発性半導体記憶装置の等価回路図
【図14】不揮発性半導体記憶装置の読み出し動作における状態図
【図15】不揮発性半導体記憶装置の書き込み動作における状態図
【図16】不揮発性半導体記憶装置の消去動作における選択ブロックの状態図
【図17】不揮発性半導体記憶装置の消去動作における非選択ブロックの状態図
【図18】第7の実施の形態における不揮発性半導体記憶装置の断面図
【符号の説明】
【0092】
101・・・半導体基板、102・・・N+型領域、103、303・・・アモルファスシリコン層、104、108・・・絶縁膜、105・・・電極、110、310・・・下層電極層、112、312・・・窒化膜、114、314・・・中層電極層、116、316・・・窒化膜、118、318・・・上層電極層、120、122A、122B、320A、320B、322・・・N型領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層の形成された基板において前記導電層上に形成された柱状半導体と、
前記柱状半導体の周囲に形成された絶縁層と、
前記絶縁層の周囲に形成された一つのトランジスタのゲート電極と、
を有しており、
前記ゲート電極は、仕事関数の異なる少なくとも2層以上の導電膜の積層構造により構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記2層以上の導電膜は、形成される幅、不純物濃度が異なるものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記導電膜間には、絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記柱状半導体が、平面状の前記導電層上に二次元的に複数配列されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記2層以上の導電膜を貫通し、電気的に接続を取るための貫通電極が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−172164(P2008−172164A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6183(P2007−6183)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】