説明

記憶回路

【課題】短時間の電源停止により消費電力を抑えることができ、電源再開時において誤動作を引き起こすことなく初期化することのできる信号処理装置の記憶回路の提供を目的の一つとする。
【解決手段】記憶回路に電源が供給されない間は、揮発性記憶部に記憶していたデータ信号を、不揮発性記憶部に保持する。不揮発性記憶部では、オフ電流が極めて小さいトランジスタを用いることによって、容量素子に保持されたデータ信号は長期間にわたり保持する。こうして、不揮発性記憶部は電源の供給が停止した間も論理状態を保持する。また電源停止時に容量素子で保持されたデータ信号は、電源再開時にはリセット回路を導通状態とすることで、誤動作を引き起こすことのない電位にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源を切っても記憶している論理状態が消えない信号処理装置の記憶回路に関する。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理装置は、その用途によって多種多様な構成を有している。信号処理装置は、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の記憶回路が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータ信号を保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算装置とメインメモリの間に介在し、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として設けられている。
【0003】
信号処理装置においてレジスタやキャッシュメモリ等の記憶回路は、メインメモリよりも高速でデータ信号の書き込みを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップが、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源電位の供給が途絶えるとデータ信号を消失してしまう揮発性の記憶回路が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データ信号の入出力が行われない期間において信号処理装置への電源の供給を一時的に停止するという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法では、レジスタ、キャッシュメモリ等の揮発性の記憶回路の周辺に不揮発性の記憶回路を配置し、上記データ信号をその不揮発性の記憶回路に一時的に記憶させる。こうして、信号処理装置において電源電位の供給を停止する間も、レジスタ、キャッシュメモリ等はデータ信号を保持する。
【0005】
また、信号処理装置において長時間の電源の供給停止を行う際には、電源の供給停止の前に、揮発性の記憶回路内のデータ信号をハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶回路に移すことで、データ信号の消失を防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−078836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信号処理装置において電源の供給を停止する間、揮発性の記憶回路の周辺に配置した不揮発性の記憶回路へ揮発性の記憶回路のデータ信号を記憶させる方法では、これらの不揮発性の記憶回路として主に磁気メモリ素子や強誘電体メモリ素子が用いられているため、信号処理装置の作製工程が複雑である。
【0008】
また、信号処理装置において電源の供給を停止する間、外部記憶回路に揮発性の記憶回路のデータ信号を記憶させる方法では、外部記憶回路から揮発性の記憶回路にデータ信号を戻すのには時間を要する。よって、外部記憶回路によるデータ信号のバックアップは、消費電力の低減を目的とした短時間の電源停止には適さない。
【0009】
上述の課題に鑑み、本発明の一態様は、複雑な作製工程を必要とせず、消費電力を抑えることができる信号処理装置の提供を目的の一つとする。特に、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる信号処理装置の記憶回路の提供を目的の一つとする。
【0010】
また本発明の一態様においては特に、短時間の電源停止時に保持したデータ信号を、電源再開時において誤動作を引き起こすことのない電位の状態にする信号処理装置の記憶回路の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、記憶回路に電源が供給されない間は、揮発性のメモリに相当する記憶部(以下、揮発性記憶部という)に記憶していたデータ信号を、不揮発性のメモリに相当する記憶部(以下、不揮発性記憶部という)に保持する。不揮発性記憶部では、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタを用いることによって、容量素子に保持されたデータ信号は長期間にわたり保持する。こうして、不揮発性記憶部は電源の供給が停止した間もデータ信号の論理状態を保持する。また電源停止時に容量素子で保持されたデータ信号は、電源再開時にはリセット回路を導通状態とすることで、誤動作を引き起こすことのない電位にする。
【0012】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、リセット動作によって、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0013】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、リセット動作によって、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路と、リセット動作の際に不揮発性記憶部の入力端子と第1のトランジスタのソース及びドレインの他方とを非導通状態とする切り替え回路と、が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0014】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、第1の制御信号及び第2の制御信号によるリセット動作によって、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0015】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、第1の制御信号及び第2の制御信号によるリセット動作によって、第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路と、リセット動作の際に不揮発性記憶部の入力端子と第1のトランジスタのソース及びドレインの他方とを非導通状態とする切り替え回路と、が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0016】
本発明の一態様において、切り替え回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号が入力される論理回路及び論理回路によって導通状態が制御されるアナログスイッチを有する信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0017】
本発明の一態様において、リセット回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号が入力される論理回路及び論理回路によって導通状態が制御されるアナログスイッチを有する信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0018】
本発明の一態様において、記憶回路は揮発性記憶回路または不揮発性記憶部にデータ信号を選択的に記憶するためのセレクタ回路を有し、セレクタ回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号が入力される論理回路及び論理回路によって揮発性記憶回路または不揮発性記憶部を選択して導通状態を制御するアナログスイッチを有する信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0019】
本発明の一態様において、第1のトランジスタは、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0020】
本発明の一態様において、第2のトランジスタは、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタである信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0021】
本発明の一態様において、第2のトランジスタは、第1のトランジスタと積層して設けられる信号処理装置の記憶回路でもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様により、複雑な作製工程を必要とせず、消費電力を抑えることができる。また本発明の一態様により、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる。
【0023】
また本発明の一態様により、短時間の電源停止時に保持したデータ信号を、リセット回路を導通状態とすることで、誤動作を引き起こすことのない電位にすることができる。そのため、容量素子にデータ信号が保持されることで生じるトランジスタの劣化の進行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】記憶回路および不揮発性記憶部の回路図。
【図2】揮発性記憶部の回路図。
【図3】不揮発性記憶部の回路図。
【図4】セレクタ回路の回路図。
【図5】不揮発性記憶部の回路図。
【図6】不揮発性記憶部の回路図。
【図7】不揮発性記憶部の回路図。
【図8】記憶回路の回路図。
【図9】記憶回路の動作を説明するタイミングチャート図。
【図10】記憶回路の構成を示す図。
【図11】信号処理装置のブロック図。
【図12】記憶回路を用いたCPUのブロック図。
【図13】記憶回路の作製工程を示す図。
【図14】記憶回路の作製工程を示す図。
【図15】記憶回路の作製工程を示す図。
【図16】記憶回路の構成を示す断面図。
【図17】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図18】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図19】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図20】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図21】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図22】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図23】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図24】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図25】酸化物半導体膜を用いたトランジスタ特性のグラフ。
【図26】試料1のトランジスタのBT試験後のVgs−I特性を示す図。
【図27】試料2であるトランジスタのBT試験後のVgs−I特性を示す図。
【図28】試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す図。
【図29】トランジスタのオフ電流と測定時基板温度との関係を示す図。
【図30】Iおよび電界効果移動度のVgs依存性を示す図。
【図31】基板温度としきい値電圧の関係および基板温度と電界効果移動度の関係を示す図。
【図32】半導体装置の上面図及び断面図。
【図33】半導体装置の上面図及び断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明の構成は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において共通とする。
【0026】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、信号波形、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0027】
なお、AとBとが接続されている、と明示的に記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合と、AとBとが機能的に接続されている場合と、AとBとが直接接続されている場合とを含むものとする。
【0028】
なお本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0029】
(実施の形態1)
信号処理装置は記憶回路を有し、単数または複数設けられる記憶回路によって1ビットまたは複数ビットのデータ信号を記憶することができる。本実施の形態では、信号処理装置における記憶回路の構成について説明する。
【0030】
なお、CPU、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSI(Large Scale Integrated Circuit)等が、信号処理装置の範疇に含まれる。
【0031】
図1(A)に記憶回路のブロック図の一例を示す。図1(A)に示す記憶回路100は、第1の記憶部101A、第2の記憶部101B、第1のアナログスイッチ102、第2のアナログスイッチ103及びインバータ回路104(位相反転回路ともいう)を有する。第1の記憶部101A及び第2の記憶部101Bは、揮発性記憶部105、不揮発性記憶部106及びセレクタ回路107を有する。
【0032】
図1(A)の記憶回路100の各回路には、高電源電位VDDを供給する電源電位Vx、低電源電位VSSとなるグラウンド電位GNDが供給される。また記憶回路100には、第1の記憶部101A及び第2の記憶部101Bで記憶するデータ信号D、不揮発性記憶部106及びセレクタ回路の制御に用いられる第1の制御信号EN及び第2の制御信号RD、第1のアナログスイッチ102、第2のアナログスイッチ103及び、揮発性記憶部105の制御に用いられるクロック信号CLKが供給される。また記憶回路100では、インバータ回路104により供給されるクロック信号CLKをもとにして、第1のアナログスイッチ102、第2のアナログスイッチ103及び、揮発性記憶部105の制御に用いられる反転クロック信号が生成される。他にも記憶回路100には揮発性記憶部105を初期化するための初期化信号RES(図示せず)が供給される。
【0033】
なお初期化信号RESによる揮発性記憶部105の初期化とは、揮発性記憶部105に最初に電源電圧を要求する際に誤動作が生じないよう予め所定の記憶状態とするための動作のことをいう。
【0034】
図1(A)では、揮発性記憶部105から出力される信号を示している。図1(A)では、一例として、出力信号Qを示している。
【0035】
図1(A)に示す第1の記憶部101A及び第2の記憶部101Bの揮発性記憶部105は、一例として、フリップフロップ回路を有する。なお、揮発性記憶部105が有するフリップフロップ回路は、他の種類のフリップフロップ回路であってもよい。揮発性記憶部105は、電源が供給されている期間のみ、データ信号を保持することができる記憶部である。逆に言えば、揮発性記憶部105は、電源の供給がなければ、データ信号の保持ができない記憶部である。
【0036】
図2(A)乃至(C)は、揮発性記憶部105の回路構成の一例を示したものである。図2(A)に示す揮発性記憶部105は、第1のインバータ回路131及び第2のインバータ回路132を有する。揮発性記憶部105の第1のインバータ回路131には、第1のアナログスイッチ102を介してデータ信号Dが供給される。保持されるデータ信号Dは、セレクタ回路107の制御により選択して出力されることとなる。また保持されるデータ信号Dは、第1のインバータ回路131及び第2のインバータ回路132により帰還ループさせることで保持される。
【0037】
なお本実施の形態において揮発性記憶部105及び不揮発性記憶部106の入力側は、第1のアナログスイッチ102(第2のアナログスイッチ103)に接続され、当該第1のアナログスイッチ102(第2のアナログスイッチ103)よりデータ信号Dが入力されている。そこで本実施の形態で説明する図面において、揮発性記憶部105及び不揮発性記憶部106の入力側をデータ信号Dが入力されるように図示することとする。もちろん、揮発性記憶部105及び不揮発性記憶部106の入力側には、図1(A)に示すように第1のアナログスイッチ102(第2のアナログスイッチ103)に接続されるものである。
【0038】
また図2(B)に示す揮発性記憶部105は、NAND回路133及びクロックドインバータ回路134を有する。図2(B)に示す揮発性記憶部105の回路構成の例は、図2(A)と同様に、NAND回路133及びクロックドインバータ回路134により、帰還ループさせることでデータ信号Dが保持される。なお図2(B)に示す揮発性記憶部105では、初期化信号RESを高電源電位VDDに基づく電位となるH信号とすることでNAND回路133をインバータ回路として機能させている。また図2(B)に示す揮発性記憶部105では、初期化信号RESを低電源電位VSSに基づく電位となるL信号とすることでNAND回路133の出力電位を固定電位(H信号)にし、揮発性記憶部105で保持するデータ信号を初期化させている。なお図2(B)では揮発性記憶部105とセレクタ回路107との接続をNAND回路133の出力端子側で行う構成としたが、図2(C)に示すように、揮発性記憶部105とセレクタ回路107との接続をNAND回路133の入力端子側で行う構成としてもよい。
【0039】
なお図2(A)乃至(C)においても特に図示していないが、揮発性記憶部105には、高電源電位VDDを供給する電源電位Vx及び低電源電位VSSとなるグラウンド電位GNDが供給される。
【0040】
図1(A)に示す記憶回路100の不揮発性記憶部106は、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタを有する。不揮発性記憶部106は、当該トランジスタを用いて電荷の保持を実現することで、揮発性記憶部105とは異なり、電源の供給がなくてもデータ信号の保持を可能にするものである。従って不揮発性記憶部106は、揮発性記憶部105と異なり、電源の供給がなくてもデータ信号の保持をすることができる。
【0041】
図1(A)では、不揮発性記憶部106に入力される信号を示している。図1(A)では、一例として、データ信号D、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDを示している。他にも不揮発性記憶部106には、高電源電位VDDを入力する電源電位Vx及び低電源電位VSSとなるグラウンド電位GNDが入力される。
【0042】
次いで図1(B)に、本発明の一態様である不揮発性記憶部106の回路図を示す。不揮発性記憶部106は、記憶回路111、反転出力回路112及びリセット回路113を有する。
【0043】
図1(B)に示す記憶回路111は、第1のトランジスタ121、第2のトランジスタ122及び容量素子123と、を有する。第1のトランジスタ121のソース及びドレインの一方の電極は、第2のトランジスタ122のゲートに接続されている。第1のトランジスタ121のソース及びドレインの一方の電極は、容量素子123の一方の電極に接続されている。第1のトランジスタ121のゲートは、第1の制御信号ENを入力するための配線に接続されている。第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極は、データ信号Dが入力される配線に接続されている。なお第1のトランジスタ121、第2のトランジスタ122及び容量素子123が接続されたノードは、以下の説明において「記憶ノード」と呼ぶ。
【0044】
第1のトランジスタ121は、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。なお図面において、第1のトランジスタ121は酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタであることを示すために、OSの符号を付している。
【0045】
図1(B)に示す第2のトランジスタ122は、スイッチとして機能する素子である。図1(B)では、第2のトランジスタ122として、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタを用いて構成された例を示す。ここでいうスイッチとは、スイッチの一方の端子がトランジスタのソース及びドレインの一方に対応し、スイッチの他方の端子がトランジスタのソース及びドレインの他方に対応する。またスイッチの導通状態又は非導通状態は、トランジスタのゲートに保持されるデータ信号Dに基づく電位によって選択される。nチャネル型のトランジスタである第2のトランジスタ122がスイッチとして機能する場合、H信号によって導通状態、L信号によって非導通状態が選択される。
【0046】
なお、容量素子123は、第2のトランジスタ122のゲートと第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極とで形成される容量等を積極的に利用することによって、省略することも可能である。
【0047】
図1(B)に示す反転出力回路112は、第3のトランジスタ124及び第4のトランジスタ125を有する回路である。第3のトランジスタ124のソース及びドレインの一方の電極は、電源電位Vxを入力するための配線に接続されている。第3のトランジスタ124のゲートは、第2の制御信号RDを入力するための配線に接続されている。第3のトランジスタ124のソース及びドレインの他方の電極は、第4のトランジスタ125のソース及びドレインの一方の電極に接続されている。また第4のトランジスタ125のゲートは、第2の制御信号RDを入力するための配線に接続されている。第4のトランジスタ125のソース及びドレインの他方の電極は、第2のトランジスタ122のソース及びドレインの一方の電極に接続されている。なお第2のトランジスタ122のソース及びドレインの他方の電極は、グラウンド電位GNDが入力される配線に接続されている。なお第3のトランジスタ124及び第4のトランジスタ125が接続されたノードは、セレクタ回路107に接続される。
【0048】
図1(B)に示す第3のトランジスタ124は、スイッチとして機能する素子である。第3のトランジスタ124は、一例として、一導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタを用いて構成される。また図1(B)に示す第4のトランジスタ125は、スイッチとして機能する素子である。第4のトランジスタ125は、一例として、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタを用いて構成される。なお第3のトランジスタ124及び第4のトランジスタ125は、交互に導通または非導通が制御されるよう、異なる導電型のトランジスタとする。すなわち反転出力回路112は、第2の制御信号RDの論理状態、すなわちHかLかに応じて、記憶ノードの論理状態を反転してセレクタ回路107に反転信号を出力するための回路である。具体的には、第2の制御信号RDがL信号のとき、記憶ノードがH信号またはL信号を保持している状態に関わらず、H信号をセレクタ回路107に出力する。また第2の制御信号RDがH信号のとき、記憶ノードがH信号を保持している場合、L信号をセレクタ回路に出力する。また第2の制御信号RDがH信号のとき、記憶ノードがL信号を保持している場合、前の状態を保持することによるH信号をセレクタ回路107に出力する。
【0049】
なお、不揮発性記憶部106は、容量素子123によって保持することのできるデータ信号に基づく電位が、第2のトランジスタ122のゲートに印加される構成としている。そのため容量素子123によって保持することのできるデータ信号は、記憶回路100への電源の供給が再開された後で、第4のトランジスタ125の導通状態に変換し、不揮発性記憶部106から読み出すことができる。それ故、容量素子123に保持することのできるデータ信号に基づく電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
【0050】
図1(B)において、不揮発性記憶部106に用いられるトランジスタのうち、第1のトランジスタ121以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、不揮発性記憶部106は、第1のトランジスタ121以外にも、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることもできる。
【0051】
用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0052】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0053】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0054】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0055】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0056】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0057】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0058】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0059】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物のrだけ近傍であるとは、a、b、cが、次式を満たすことをいう。
【0060】
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
【0061】
rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0062】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0063】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0064】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0065】
なお、Raは、JIS B0601で定義されている中心線平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0066】
【数1】

【0067】
なお、上記において、Sは、測定面(座標(x,y)(x,y)(x,y)(x,y)で表される4点によって囲まれる長方形の領域)の面積を指し、Zは測定面の平均高さを指す。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0068】
酸化物半導体層内の水素を徹底的に排除することで高純度化された酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、そのオフ電流密度を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、更に好ましくは1zA/μm以下にすることができる。よって、このオフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。その結果、第1のトランジスタ121がオフ状態である時、記憶ノードの電位、即ち第2のトランジスタ122のゲートの電位を長期間にわたり保持することができる。
【0069】
なお本明細書で説明するオフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態ともいう)のときに、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。nチャネル型のトランジスタ(例えば、閾値電圧が0乃至2V程度)では、ゲートとソースとの間に印加される電圧が負の電圧の場合に、ソースとドレインとの間を流れる電流のことをいう。
【0070】
なお、上記において、酸化物半導体材料の代わりに酸化物半導体材料と同等のオフ電流特性が実現できる材料を用いても良い。例えば、炭化シリコンをはじめとするワイドギャップ材料(より具体的には、例えば、エネルギーギャップEgが3eVより大きい半導体材料)などを適用することができる。また、トランジスタの代わりにMEMSスイッチ等を用いて配線間の接続を切り離すことにより、記憶ノードの電荷の長期間の保持を実現する構成としてもよい。
【0071】
図1(B)に示すリセット回路113は、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDによって制御される論理回路、及び第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極と低電源電位VSSを入力するための配線GNDとを接続するためのスイッチを有する。リセット回路113は、論理回路による所定のタイミングによって、データ信号に基づく記憶ノードの電位、即ち第2のトランジスタ122のゲートの電位を低電源電位VSSに基づくL信号にする、リセット動作をするための回路である。
【0072】
なおリセット動作とは、第1のトランジスタ121及びリセット回路113が有するスイッチを共に導通状態とすることにより、記憶ノードの電位、即ち第2のトランジスタ122のゲートの電位を低電源電位VSSに基づくL信号とする動作をいう。
【0073】
なおリセット回路113における論理回路は、第1の制御信号ENによるデータ信号の記憶ノードへの入力に際する第1のトランジスタ121を導通状態とするタイミングとは別に、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDにより第1のトランジスタ121を導通状態とし且つリセット回路113におけるスイッチを導通状態とするタイミングを生成する回路である。すなわちリセット回路113は、記憶ノードへのデータ信号の書き込みによる第1のトランジスタ121を導通状態とするタイミングとは別に、リセット回路113におけるスイッチ及び第1のトランジスタ121を同時に導通状態とすることで記憶ノードの電位を強制的に低電源電位VSSに基づくL信号とする回路である。
【0074】
特に本発明の一態様である不揮発性記憶部106では、リセット回路113を設ける構成とすることにより、例えば揮発性記憶部105の動作を再開するとともに、不揮発性記憶部106に記憶したデータ信号を初期化することができる。リセット回路113により、強制的に不揮発性記憶部106の記憶ノードをL信号とすることで、記憶ノードにH信号が保持された場合に、第1のトランジスタ121のゲートとソース又はドレイン間に電圧が印加され続けることに伴う第1のトランジスタ121の劣化の進行を抑制することができる。言い換えれば、リセット回路113により、強制的に不揮発性記憶部106の記憶ノードをL信号とすることで、第1のトランジスタ121のゲートとソース又はドレイン間の電位差をなくすものである。
【0075】
なおリセット回路113は、記憶ノードに保持されたデータ信号をL信号にするように設けられればよい。従って図3に示すように、リセット回路113が直接記憶ノードに接続される構成であってもよい。この場合、不揮発性記憶部106が有するスイッチとして酸化物半導体を有するトランジスタを用いることが好ましい。
【0076】
図5では、図1(B)で示したリセット回路113を具体的な回路構成にして示している。図5において一例として示すリセット回路113は、NAND回路161、インバータ回路162及びアナログスイッチ163を有する。
【0077】
NAND回路161は、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDにより、アナログスイッチ163を選択的に導通状態とするための信号を生成する回路である。図5に示す具体的な例では、第1の制御信号ENがH信号、第2の制御信号RDがH信号のとき、NAND回路161よりL信号を出力する。NAND回路161よりL信号を出力されると、図5に示す回路構成では、アナログスイッチ163を導通状態とすることができる。
【0078】
なお図5に示す具体的な例で、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDがその他の論理状態では、NAND回路161よりH信号を出力する。NAND回路161よりH信号を出力されると、図5に示す回路構成ではアナログスイッチ163を非導通状態とすることができる。なおNAND回路161、インバータ回路162及びアナログスイッチ163は、同様の動作をする回路であれば適宜回路の置き換えをすることができる。
【0079】
なおリセット回路113におけるスイッチとしてここではアナログスイッチ163を示したが、nチャネル型トランジスタを用いる構成であってもよい。
【0080】
また図1(A)に示す第1の記憶部101A及び第2の記憶部101Bのセレクタ回路107は、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDに応じて、第1の記憶部101A及び第2の記憶部101Bに入力されるデータ信号Dを揮発性記憶部105または不揮発性記憶部106で記憶するかを選択的に行うための回路である。なお第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDは、論理回路に入力し得られる出力信号を用いてスイッチの導通を制御することができる。
【0081】
図4は、セレクタ回路107の回路構成の一例を示したものである。図4に示すセレクタ回路107は、第1のアナログスイッチ141、第1のインバータ回路142、第2のアナログスイッチ143、第2のインバータ回路144、第3のインバータ回路145、第4のインバータ回路146及びNOR回路147を有する。
【0082】
セレクタ回路107の第1のアナログスイッチ141は、揮発性記憶部105におけるインバータ回路の帰還ループを導通状態とさせるための回路である。セレクタ回路107の第2のアナログスイッチ143は、不揮発性記憶部106における反転出力回路112からの信号を第3のインバータ回路145で反転させて、不揮発性記憶部106に入力されたデータ信号と同じ論理状態とした上で、当該データ信号を揮発性記憶部105におけるインバータ回路の帰還ループに入力するための回路である。
【0083】
第4のインバータ回路146及びNOR回路147は、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDにより、第1のアナログスイッチ141または第2のアナログスイッチ143を選択的に導通状態とするための信号を生成する回路である。図4に示す具体的な例では、第1の制御信号ENをL信号、第2の制御信号RDをH信号のとき、NOR回路147よりH信号を出力する。NOR回路147よりH信号を出力されると、図4に示す回路構成では、第1のアナログスイッチ141を非導通状態とし、第2のアナログスイッチ143を導通状態とすることができる。
【0084】
なお図4に示す具体的な例で、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDがその他の論理状態では、NOR回路147よりL信号を出力する。NOR回路147よりL信号を出力されると、図4に示す回路構成では、第1のアナログスイッチ141を導通状態とし、第2のアナログスイッチ143を非導通状態とすることができる。なお第4のインバータ回路146及びNOR回路147は、同様の動作をする回路であれば適宜回路の置き換えをすることができる。
【0085】
なお図4においても特に図示していないが、セレクタ回路107には、高電源電位VDDを入力する電源電位Vx及び低電源電位VSSとなるグラウンド電位GNDが入力される。
【0086】
なお本実施の形態の構成では不揮発性記憶部106にリセット回路113を有する構成に加えて、図6に示すような切り替え回路201を有する構成とすることが特に好適である。具体的には、切り替え回路201は、第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極と不揮発性記憶部106の入力端子との間に配置される。
【0087】
なお不揮発性記憶部106の入力端子とは、不揮発性記憶部106に入力されるデータ信号が第1のアナログスイッチ102(第2のアナログスイッチ103)を介して入力される際の途中のノードのことをいう。すなわち、切り替え回路201は、第1のアナログスイッチ102と揮発性記憶部105との間を除いた、第1のアナログスイッチ102と第1のトランジスタ121との間に配置される回路である。
【0088】
図6に示す切り替え回路201は、第1のトランジスタ121及びリセット回路113を導通状態として記憶ノードをL信号とする際、不揮発性記憶部106と揮発性記憶部105との接続部に、記憶ノードに保持されたデータ信号Dに基づく電流が流入するのを防ぐための回路である。従って、切り替え回路201は、第1のトランジスタ121が導通状態としてデータ信号に基づく電位を記憶ノードに保持させる期間に、第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極と不揮発性記憶部106の入力端子との間を導通状態とし、その他の期間には非導通状態となるよう制御する制御回路を具備する構成となる。
【0089】
具体的な切り替え回路201の構成について図7に示す。図7において一例として示す切り替え回路201は、第1のインバータ回路202、NOR回路203、第2のインバータ回路204及びアナログスイッチ205を有する。
【0090】
NOR回路203は、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDにより、アナログスイッチ205を選択的に導通状態とするための信号を生成する回路である。図7に示す具体的な例では、第1の制御信号ENをH信号、第2の制御信号RDをL信号のとき、NOR回路203よりH信号を出力する。NOR回路203よりH信号を出力されると、図7に示す回路構成では、アナログスイッチ205を導通状態とすることができる。
【0091】
なお図7に示す具体的な例で、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDがその他の論理状態では、NOR回路203よりL信号を出力する。NOR回路203よりL信号を出力されると、図7に示す回路構成ではアナログスイッチ205を非導通状態とすることができる。なお第1のインバータ回路202、NOR回路203、第2のインバータ回路204及びアナログスイッチ205は、同様の動作をする回路であれば適宜回路の置き換えをすることができる。
【0092】
以上が、記憶回路100の各回路の説明である。
【0093】
次いで、消費電力の低減を目的として、データ信号の保持時に電源の供給を停止して再び電源を供給するとともに、前述のリセット回路により、強制的に記憶回路111での記憶ノードをL信号として第1のトランジスタ121の劣化の進行を抑制するための記憶回路100の駆動方法について説明する。
【0094】
なお図8には、図2(B)、図4及び図7で説明した揮発性記憶部105、セレクタ回路107、並びにリセット回路及び切り替え回路を有する不揮発性記憶部106の各回路構成を図1(A)の記憶回路に適用した回路図について示す。また図9には図8で示した記憶回路の動作におけるタイミングチャート図を示し、当該タイミングチャート図を参照して記憶回路100の駆動方法、特に記憶回路100の第1の記憶部101Aについての駆動方法を説明する。なお記憶回路100の第2の記憶部101Bについても同様の駆動方法をすることができる。なお図8中において、セレクタ回路107の出力にあたる、揮発性記憶部105を帰還ループさせるためのノードを、「Sel」としている。
【0095】
図9のタイミングチャート図において、Vx、GND、RES、CLK、D、Sel、記憶ノード、EN及びRDは、上記説明した入出力信号またはノードの電位に対応する。また図9に示すタイミングチャート図では、記憶回路100の第1の記憶部101Aが取り得る複数の状態について説明するため、期間1乃至期間6の複数の期間に分けて示している。
【0096】
なお入出力信号及びノードの電位は、H信号(図中、Hで表記)及びL信号(図中、Lで表記)で表すことができる。
【0097】
まず図9中の期間1での第1の記憶部101Aの動作について説明する。期間1では、揮発性記憶部105にデータ信号Dを記憶し、不揮発性記憶部106がデータ信号Dの記憶に関与しない期間である通常動作期間について説明する。期間1では、VxをH信号とし電源が記憶回路100の各回路に供給されている。第1の記憶部101Aでは、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDをL信号とすることで、揮発性記憶部105がデータ信号Dの保持をする。期間1では、揮発性記憶部105はデータ信号DとしてdataAを保持しており、クロック信号CLKに同期して書き込まれたデータ信号dataAが書き換わっていく。期間1では、セレクタ回路107は揮発性記憶部105に接続されたアナログスイッチを導通状態とすることで、SelもdataAとなる。なおSelで保持されるdataAは、正確には、第1のアナログスイッチ102から入力されるdataAが反転した信号であるが、以下の説明ではdataAと記すこととする。期間1では、初期化信号RESはH信号としている。期間1では、記憶ノードには、前の期間でのリセット回路の動作によりL信号が書き込まれた状態となる。
【0098】
次いで図9中の期間2の動作について説明する。期間2では、電源の供給を停止する前にデータ信号Dを不揮発性記憶部106に記憶させるバックアップ準備期間について説明する。期間2では、第1の制御信号ENをH信号、第2の制御信号RDをL信号とする期間(図9中、T1)を設ける。このとき、不揮発性記憶部106における切り替え回路201のアナログスイッチ205及び第1のトランジスタ121が導通状態となることで、記憶ノードにdataAが保持されることとなる。そして一度保持されたdataAは、第1の制御信号ENをL信号、第2の制御信号RDをL信号としても、記憶ノードで保持され続けることとなる。なおバックアップ準備期間においても、通常動作期間と同様、揮発性記憶部105では入出力信号によるdataAの書き換えを行っている。
【0099】
次いで図9中の期間3の動作について説明する。期間3では、電源の供給を停止する電源停止期間について説明する。期間3では、VxをL信号として、記憶回路100の各回路に電源の供給を停止している。期間3では、揮発性記憶部105へ電源が供給されず、揮発性記憶部105に書き込まれたdataAが消去される(図9中、「X」で表記)。また揮発性記憶部105に書き込まれたdataAが消去されるとともに、Selで保持されるdataAも消去される(図9中、「X」で表記)。また期間3でのクロック信号CLKの入力は、L信号に固定することで揮発性記憶部105が動作しないようにしており、これと同時に、初期化信号RESもLに固定する。なおVxは、クロック信号CLK及び初期化信号RESをL信号とした後で、L信号とすることで、誤動作を低減することができる。また期間3では、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDをL信号として、記憶回路100が動作しないように制御している。
【0100】
次いで図9中の期間4の動作について説明する。期間4では、電源の供給を再開し、不揮発性記憶部106にバックアップされたデータ信号であるdataAを揮発性記憶部105に読み出すデータ信号復帰期間について説明する。期間4では、VxをH信号として、記憶回路100の各回路に電源の供給を再開する。次いで初期化信号RESをH信号にし、次いでクロック信号を発振させる。なお期間4でのクロック信号の発振時において、データ信号DはH信号またはL信号の固定電位(図9中、「H/L」で表記)としておく。そして、期間4では、第1の制御信号ENをL信号、第2の制御信号RDをH信号とする期間(図9中、T2)を設ける。その結果、記憶ノードに保持されたデータ信号dataAがセレクタ回路107で選択され、SelがdataAとなって揮発性記憶部105に読み出されることとなる。
【0101】
次いで図9中の期間5の動作について説明する。期間5では、揮発性記憶部105の動作に支障のないものの不揮発性記憶部106の第1のトランジスタの劣化に影響を及ぼす、記憶ノードに保持されているデータ信号dataAをリセット動作によりL信号とするためのリセット期間である。期間5では、第1の制御信号ENをH信号、第2の制御信号RDをH信号とする期間(図9中、T3)を設ける。その結果、記憶ノードに保持されたデータ信号dataAがL信号になる。そのため第1のトランジスタの劣化の進行を抑制することができる。またリセット期間では、リセット動作によって、不揮発性記憶部106と揮発性記憶部105との接続部に、記憶ノードに保持されたグラウンド電位GNDに基づく電流が流入するのを防ぐために、切り替え回路201を設けている。切り替え回路201が有するアナログスイッチは、リセット期間において非導通状態となる。そのため、揮発性記憶部105での誤動作を低減することができる。なおリセット期間において、揮発性記憶部105は、通常動作期間と同様に動作することができ、図9に示す例ではdataAとは異なるdataBが新たなデータ信号として、クロック信号CLKに同期して揮発性記憶部105において書き換えられている。
【0102】
期間6は、期間1と同様に、通常動作期間である。期間6では、期間5に続いて、データ信号としてdataBが、クロック信号CLKに同期して書き換わっていく例を示している。
【0103】
以上が、記憶回路の駆動方法の説明である。
【0104】
本発明の記憶回路では、記憶回路に電源が供給されない間は、揮発性記憶部に記憶されていたデータ信号を、不揮発性記憶部に設けられた記憶ノードによって保持することができる。
【0105】
また、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、オフ電流が極めて小さい。例えば、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そのため、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタを第1のトランジスタとして用いることによって、記憶回路に電源が供給されない間も容量素子に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶回路は電源の供給が停止した間も記憶内容(データ信号)を保持することが可能である。
【0106】
このような記憶回路を、信号処理装置が有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶回路に用いることで、電源の供給停止による記憶回路内のデータ信号の消失を防ぐことができる。また、電源の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、信号処理装置全体、もしくは信号処理装置を構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができる。そのため、消費電力を抑えることができる信号処理装置、消費電力を抑えることができる当該信号処理装置の駆動方法を提供することができる。
【0107】
特に本実施の形態の構成においては、電源停止時に記憶ノードに保持されたデータ信号は、リセット回路を導通状態とすることで、誤動作を引き起こすことのないL信号の電位にすることができる。そのため、記憶ノードにデータ信号が保持されることで生じるトランジスタの劣化の進行を抑制することができる。また本実施の形態の構成においては、切り替え回路を有する構成とすることにより、リセット動作時に、不揮発性記憶部と揮発性記憶部との接続部に、記憶ノードに保持されたデータ信号に基づく電流が流入するのを防ぐことができる。そのため、揮発性記憶部での誤動作を低減することができる。
【0108】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0109】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した記憶回路を複数用いる構成について説明する。
【0110】
図10(A)に、本実施の形態における記憶回路の構成を一例として示す。図10(A)に示す記憶回路は、高電源電位VDD及び低電源電位VSSに接続されたインバータ回路401と、記憶回路402を複数有する記憶回路群403とを有している。具体的に、各記憶回路402には、実施の形態1に記載されている構成を有する記憶回路100を用いることができる。記憶回路群403が有する各記憶回路402には、インバータ回路401を介して、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSが入力されている。さらに、記憶回路群403が有する各記憶回路402には、信号INの電位と、低電源電位VSSが与えられている。
【0111】
図10(A)でインバータ回路401は、制御信号SigAにより高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの出力の切り替えが制御される。
【0112】
また、図10(A)では、インバータ回路401により、記憶回路群403が有する各記憶回路402の高電源電位VDDより、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの入力が制御されているが、インバータ回路401により、低電源電位VSSより、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの入力が制御されていても良い。図10(B)に、記憶回路群403が有する各記憶回路402に、インバータ回路401を介して、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSが入力されている記憶回路の一例を示す。インバータ回路401により、記憶回路群403が有する各記憶回路402の低電源電位VSSより、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの入力を制御することができる。
【0113】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0114】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した記憶回路を用いた信号処理装置の構成について説明する。
【0115】
図11に、本発明の一態様に係る信号処理装置の一例を示す。信号処理装置は、一または複数の演算装置と、一または複数の記憶回路とを少なくとも有する。具体的に、図11に示す信号処理装置150は、演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、制御装置156、電源制御回路157を有する。
【0116】
演算装置151、演算装置152は、単純な論理演算を行う論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算装置などを含む。そして、記憶回路153は、演算装置151における演算処理の際に、データ信号を一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶回路154は、演算装置152における演算処理の際に、データ信号を一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0117】
また、記憶回路155はメインメモリとして用いることができ、制御装置156が実行するプログラムをデータ信号として記憶する、或いは演算装置151、演算装置152からのデータ信号を記憶することができる。
【0118】
制御装置156は、信号処理装置150が有する演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155の動作を統括的に制御する回路である。なお、図11では、制御装置156が信号処理装置150の一部である構成を示しているが、制御装置156は信号処理装置150の外部に設けられていても良い。
【0119】
実施の形態1で示した記憶回路を記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155に用いることで、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155への電源の供給を停止しても、データ信号を保持することができる。よって、信号処理装置150全体への電源の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。或いは、記憶回路153、記憶回路154、または記憶回路155のいずれか一つまたは複数への電源の供給を停止し、信号処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0120】
また、記憶回路への電源の供給が停止されるのに合わせて、当該記憶回路とデータ信号のやり取りを行う演算装置または制御回路への、電源の供給を停止するようにしても良い。例えば、演算装置151と記憶回路153において、動作が行われない場合、演算装置151及び記憶回路153への電源の供給を停止するようにしても良い。
【0121】
また、電源制御回路157は、信号処理装置150が有する演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、制御装置156へ供給する電源電圧の大きさを制御する。そして、電源の供給を停止する場合、電源の供給の停止は、電源制御回路157で行われる構成でも良いし、演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、制御装置156のそれぞれで行われる構成でも良い。
【0122】
なお、メインメモリである記憶回路155と、演算装置151、演算装置152、制御装置156の間に、キャッシュメモリとして機能する記憶回路を設けても良い。キャッシュメモリを設けることで、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶回路にも、上述した記憶回路を用いることで、信号処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0123】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0124】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る信号処理装置の一つである、CPUの構成について説明する。
【0125】
図12に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図12に示すCPUは、基板9900上に、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Timing・Controller9905、Register9906、Register・Controller9907、Bus・I/F9908、書き換え可能なROM9909、ROM・I/F9920と、を主に有している。なお、ALUはArithmetic logic unitであり、Bus・I/Fはバスインターフェースであり、ROM・I/FはROMインターフェースである。ROM9909及びROM・I/F9920は、別チップに設けても良い。勿論、図12に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0126】
Bus・I/F9908を介してCPUに入力された命令は、Instruction・Decoder9903に入力され、デコードされた後、ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905に入力される。
【0127】
ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALU・Controller9902は、ALU9901の動作を制御するための信号を生成する。また、Interrupt・Controller9904は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。Register・Controller9907は、Register9906のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてRegister9906の読み出しや書き込みを行なう。
【0128】
またTiming・Controller9905は、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばTiming・Controller9905は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に入力する。
【0129】
本実施の形態のCPUでは、Register9906に、上記実施の形態で示した構成を有する記憶回路が設けられている。Register・Controller9907は、ALU9901からの指示に従い、Register9906が有する記憶回路において、揮発性記憶部105によるデータ信号の保持を行うか、不揮発性記憶部106によるデータ信号の保持を行うかを選択する。揮発性記憶部105によるデータ信号の保持が選択されている場合、Register9906内の記憶回路への電源の供給が行われる。不揮発性記憶部106におけるデータ信号の保持が選択されている場合、Register9906内の記憶回路への電源の供給を停止することができる。
【0130】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源の供給を停止した場合においてもデータ信号を保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0131】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の信号処理装置はCPUに限定されず、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP、FPGA等のLSIにも応用可能である。
【0132】
本実施の形態は、上記実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0133】
(実施の形態5)
図1(B)に示した不揮発性記憶部106において、チャネルがシリコンに形成される場合における第2のトランジスタ122と、チャネルが酸化物半導体層に形成される第1のトランジスタ121と、容量素子123とを例に挙げて、記憶回路100の作製方法について説明する。
【0134】
図13(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0135】
基板700として使用することができる素材に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0136】
また、本実施の形態では、半導体膜702が単結晶のシリコンである場合を例に挙げて、以下、第2のトランジスタ122の作製方法について説明する。なお、具体的な単結晶の半導体膜702の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板であるボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成された基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、脆化層に存在する微小ボイドどうしが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成することができる。
【0137】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、パターニングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜702に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング前の半導体膜に対して、又はパターニングにより形成された半導体膜702に対しても行っても良い。
【0138】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法、950℃程度の高温アニール法を組み合わせた結晶化法を用いても良い。
【0139】
次に、図13(B)に示すように、半導体膜702を用いて半導体層704を形成する。そして、半導体層704上にゲート絶縁膜703を形成する。
【0140】
ゲート絶縁膜703は、一例としては、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムまたは酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む膜を、単層で、または積層させることで、形成することができる。
【0141】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
【0142】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0143】
次いで、図13(C)に示すように、ゲート電極707を形成する。
【0144】
ゲート電極707は、導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。上記導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0145】
なお、本実施の形態ではゲート電極707を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。ゲート電極707は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。
【0146】
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタルまたはタンタルを、2層目にタングステンを用いることができる。上記例の他に、2つの導電膜の組み合わせとして、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とタングステンシリサイド等も用いることができる。
【0147】
3つ以上の導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0148】
また、ゲート電極707に酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、または酸化亜鉛ガリウム等の透光性を有する酸化物導電膜を用いることもできる。
【0149】
なお、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極707を形成しても良い。液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0150】
また、ゲート電極707は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素若しくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄若しくは弗化窒素などのフッ素系ガスまたは酸素を適宜用いることができる。
【0151】
次に、図13(D)に示すように、ゲート電極707をマスクとして一導電性を付与する不純物元素を半導体層704に添加することで、ゲート電極707と重なるチャネル形成領域710と、チャネル形成領域710を間に挟む一対の不純物領域709とが、半導体層704に形成される。
【0152】
本実施の形態では、半導体層704にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する場合を例に挙げる。
【0153】
次いで、図14(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、ゲート電極707を覆うように、絶縁膜712、絶縁膜713を形成する。具体的に、絶縁膜712、絶縁膜713は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜712、絶縁膜713に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜712、絶縁膜713に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を更に低減することが可能である。
【0154】
本実施の形態では、絶縁膜712として酸化窒化珪素、絶縁膜713として窒化酸化珪素を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、ゲート電極707上に絶縁膜712、絶縁膜713を形成している場合を例示しているが、本発明はゲート電極707上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶縁膜を積層するように形成していても良い。
【0155】
次いで、図14(B)に示すように、絶縁膜713にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、絶縁膜713の露出した上面を平坦化させる。なお、後に形成される第1のトランジスタ121の特性を向上させるために、絶縁膜713の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0156】
以上の工程により、第2のトランジスタ122を形成することができる。
【0157】
次いで、第1のトランジスタ121の作製方法について説明する。まず、図14(C)に示すように、絶縁膜713上に酸化物半導体層716を形成する。
【0158】
酸化物半導体層716は、絶縁膜713上に形成した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、形成することができる。上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
【0159】
なお、酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁膜713の表面に付着している塵埃を除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気で行ってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気で行ってもよい。
【0160】
酸化物半導体膜には、上述したような、四元系の金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系の金属酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、二元系の金属酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物や、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛などを用いることができる。
【0161】
なおIn−Sn−Zn系酸化物半導体を用いる場合、トランジスタの移動度を高くすることができる。またIn−Sn−Zn系酸化物半導体を用いる場合、トランジスタのしきい値電圧を安定して制御することが可能である。なおIn−Sn−Zn系酸化物半導体を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn :Zn=1:1:1、または、In:Sn:Zn=20:45:35などとすればよい。
【0162】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含むターゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、またはIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0163】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0164】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源電力0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0165】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0166】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0167】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜712及び絶縁膜713までが形成された基板700を予備加熱し、基板700に吸着した水分又は水素などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。また、この予備加熱は、後に行われるゲート絶縁膜721の成膜前に、導電膜719、導電膜720まで形成した基板700にも同様に行ってもよい。
【0168】
なお、酸化物半導体層716を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0169】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0170】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO−07N(関東化学社製)を用いる。
【0171】
酸化物半導体層716を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0172】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層716及び絶縁膜712及び絶縁膜713の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0173】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が多量に含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体層716に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体層716に加熱処理を施す。
【0174】
酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体層716中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化又は脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0175】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0176】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0177】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0178】
なお、酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使えると指摘されている(神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.621−633.)。しかし、このような指摘は適切でない。アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体層に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体層内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタの特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体層中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体層中の水素濃度が1×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1017atoms/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、更に好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。
【0179】
以上の工程により、酸化物半導体層716中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加熱処理で、キャリア密度が極端に少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体層を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することができ、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体層を用いることで、耐圧性が高く、オフ電流の著しく低いトランジスタを作製することができる。上記加熱処理は、酸化物半導体層の成膜以降であれば、いつでも行うことができる。
【0180】
なお、酸化物半導体層は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。結晶性を有する酸化物半導体層としては、c軸配向を有した結晶(C Axis Aligned Crystal; CAACとも呼ぶ)を含む酸化物であっても、トランジスタの信頼性を高めるという効果を得ることができるので、好ましい。
【0181】
具体的に、CAACは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、または正六角形の原子配列を有する。なおかつ、CAACは、c軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状に配列した相、または、金属原子と酸素原子が層状に配列した相を、含む。
【0182】
CAACは、非晶質のみの酸化物半導体と比較して、金属と酸素の結合が秩序化している。すなわち、酸化物半導体が非晶質のみの場合は、個々の金属原子によって配位数が異なることも有り得るが、CAACでは金属原子の配位数はほぼ一定となる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、水素原子(水素イオンを含む)やアルカリ金属原子の脱着による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0183】
従って、CAACで構成された酸化物半導体膜を用いてトランジスタを作製することで、トランジスタへの光照射またはバイアス−熱ストレス(BT)の付加を行った後に生じる、トランジスタの閾値電圧の変化量を、低減することができる。よって、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0184】
CAACで構成された酸化物半導体膜は、スパッタ法によっても作製することができる。スパッタ法によってCAACを得るには酸化物半導体膜の堆積初期段階において六方晶の結晶が形成されるようにすることと、当該結晶を種として結晶が成長されるようにすることが肝要である。そのためには、ターゲットと基板の距離を広くとり(例えば、150mm〜200mm程度)、基板加熱温度を100℃〜500℃、好適には200℃〜400℃、更に好適には250℃〜300℃にすると好ましい。
【0185】
また、CAACで構成された酸化物半導体膜をスパッタ法を用いて成膜する場合には、雰囲気中の酸素ガス比が高い方が好ましい。例えば、アルゴン及び酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタ法を行う場合には、酸素ガス比を30%以上とすることが好ましく、40%以上とすることがより好ましい。雰囲気中からの酸素の補充によって、CAACの結晶化が促進されるからである。
【0186】
また、スパッタ法を用いてCAACで構成された酸化物半導体膜を成膜する場合には、CAACで構成された酸化物半導体膜が成膜される基板を150℃以上に加熱しておくことが好ましく、170℃以上に加熱しておくことがより好ましい。基板温度の上昇に伴って、CAACの結晶化が促進されるからである。
【0187】
また、CAACで構成された酸化物半導体膜に対して、窒素雰囲気中又は真空中において熱処理を行った後には、酸素雰囲気中又は酸素と他のガスとの混合雰囲気中において熱処理を行うことが好ましい。先の熱処理で生じる酸素欠損を後の熱処理における雰囲気中からの酸素供給によって復元することができるからである。
【0188】
また、CAACで構成された酸化物半導体膜が成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい。CAACで構成された酸化物半導体膜は、当該被成膜面に概略垂直となるc軸を有するため、当該被成膜面に存在する凹凸は、CAACで構成された酸化物半導体膜における結晶粒界の発生を誘発することになるからである。よって、CAACで構成された酸化物半導体膜が成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0189】
次いで、図15(A)に示すように、ゲート電極707と接し、なおかつ酸化物半導体層716とも接する導電膜719と、酸化物半導体層716とも接する導電膜720とを形成する。導電膜719及び導電膜720は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0190】
具体的に、導電膜719及び導電膜720は、ゲート電極707及び絶縁膜713上を覆うようにスパッタ法や真空蒸着法で導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。
【0191】
導電膜719及び導電膜720となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側若しくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウムまたは銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0192】
また、導電膜719及び導電膜720となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜、上層にCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電膜719及び導電膜720に用いることで、酸化膜である絶縁膜と、導電膜719及び導電膜720との密着性を高めることができる。
【0193】
また、導電膜719及び導電膜720となる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛または前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0194】
導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0195】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層716がなるべく除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。エッチング条件によっては、酸化物半導体層716の露出した部分が一部エッチングされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0196】
本実施の形態では、導電膜にチタン膜を用いる。そのため、アンモニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸化水素水と、28重量%のアンモニア水と水とを、体積比5:2:2で混合したアンモニア過水を用いる。或いは、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用いて、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0197】
なお、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光に多段階の強度をもたせる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことで更に形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0198】
また、酸化物半導体層716と、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720との間に、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けるようにしても良い。酸化物導電膜の材料としては、酸化亜鉛を成分として含むものが好ましく、酸化インジウムを含まないものであることが好ましい。そのような酸化物導電膜として、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウムなどを適用することができる。
【0199】
例えば、酸化物導電膜を形成する場合、酸化物導電膜を形成するためのパターニングと、導電膜719及び導電膜720を形成するためのパターニングとを一括で行うようにしても良い。
【0200】
ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、酸化物半導体層716と導電膜719及び導電膜720の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させることができる。また、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、トランジスタの耐圧を高めることができる。
【0201】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0202】
なお、プラズマ処理を行った後、図15(B)に示すように、導電膜719及び導電膜720と、酸化物半導体層716とを覆うように、ゲート絶縁膜721を形成する。そして、ゲート絶縁膜721上において、酸化物半導体層716と重なる位置にゲート電極722を形成し、導電膜719と重なる位置に導電膜723を形成する。
【0203】
ゲート絶縁膜721は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成することが可能である。なお、ゲート絶縁膜721は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。ゲート絶縁膜721に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体層716へ侵入し、または水素が酸化物半導体層716中の酸素を引き抜き、酸化物半導体層716が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、ゲート絶縁膜721はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記ゲート絶縁膜721には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体層716に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電膜719及び導電膜720及び酸化物半導体層716と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体層716内、ゲート絶縁膜721内、或いは、酸化物半導体層716と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分または水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体層716に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接酸化物半導体層716に接するのを防ぐことができる。
【0204】
本実施の形態では、スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタ法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜721を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。
【0205】
なお、ゲート絶縁膜721を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であることが望ましい。本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、導電膜719及び導電膜720を形成する前に、水分または水素を低減させるための酸化物半導体層に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜721が設けられた後に、加熱処理が施されることによって、酸化物半導体層716に対して行った先の加熱処理により、酸化物半導体層716に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜721から酸化物半導体層716に酸素が供与される。そして、酸化物半導体層716に酸素が供与されることで、酸化物半導体層716において、ドナーとなる酸素欠損を低減し、化学量論的組成比を満たすことが可能である。その結果、酸化物半導体層716をi型に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜721の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導体層716をi型に近づけることができる。
【0206】
また、酸素雰囲気下で酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体に酸素を添加し、酸化物半導体層716中においてドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。加熱処理の温度は、例えば100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0207】
或いは、イオン注入法またはイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体層716に酸素を添加することで、ドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体層716に添加すれば良い。
【0208】
また、ゲート電極722及び導電膜723は、ゲート絶縁膜721上に導電膜を形成した後、該導電膜をパターニングすることで形成することができる。ゲート電極722及び導電膜723は、ゲート電極707、或いは導電膜719及び導電膜720と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0209】
ゲート電極722及び導電膜723の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いたスパッタ法により150nmのゲート電極用の導電膜を形成した後、該導電膜をエッチングにより所望の形状に加工(パターニング)することで、ゲート電極722及び導電膜723を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0210】
以上の工程により、第1のトランジスタ121が形成される。
【0211】
なお、ゲート絶縁膜721を間に挟んで導電膜719と導電膜723とが重なる部分が、容量素子123に相当する。
【0212】
また、第1のトランジスタ121はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を複数有する、デュアルゲート構造またはマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0213】
なお、酸化物半導体層716に接する絶縁膜(本実施の形態においては、ゲート絶縁膜721が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体層に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0214】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0215】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体層に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体層と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体層と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0216】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法またはイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0217】
例えば、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0218】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0219】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0220】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体層が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給され、酸化物半導体層中、または酸化物半導体層と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化またはi型に限りなく近くすることができる。
【0221】
絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給されることで酸素欠陥が低減された酸化物半導体層は、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、且つ十分な酸素の供給により酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層とすることができる。そのため、キャリア濃度が極めて小さい酸化物半導体層とすることができ、オフ電流が著しく低いトランジスタとすることができる。このようなオフ電流が著しく低いトランジスタを、上記実施の形態の第1のトランジスタに適用することで、非導通状態とした際に、ほぼ絶縁体とみなすことができる。従って第1のトランジスタ121及び第2のトランジスタ111_2にそのようなトランジスタを用いることで、第1のデータ保持部D_HOLD1に保持された電位の低下を極めて小さいレベルに抑制できる。その結果、電源の供給が停止した場合でも、第1のデータ保持部D_HOLD1の電位の変動を小さくでき、記憶されたデータの消失を防ぐことができる。
【0222】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体層716に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜または下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体層716に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体層716を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0223】
また、酸化物半導体層716の上層または下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0224】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体層716の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体層716の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体層716の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0225】
次に、図15(C)に示すように、ゲート絶縁膜721、ゲート電極722を覆うように、絶縁膜724を形成する。絶縁膜724は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜724には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜724の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる寄生容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁膜724を単層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0226】
次に、ゲート絶縁膜721、絶縁膜724に開口部725を形成し、導電膜720の一部を露出させる。その後、絶縁膜724上に、上記開口部725において導電膜720と接する配線726を形成する。
【0227】
配線726は、PVD法や、CVD法を用いて導電膜を形成した後、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。また、導電膜の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0228】
より具体的には、例えば、絶縁膜724の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く(5nm程度)形成した後に、開口部725に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは導電膜720)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、アルミニウム膜のヒロックを防止することができる。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0229】
ここで、導電膜720と配線726との接続とを重畳させる場合について説明する。この場合、導電膜720を形成した後、ゲート絶縁膜721及び絶縁膜724において、下部の開口部と重畳する領域に開口部を形成し、配線726を形成することになる。
【0230】
次に、配線726を覆うように絶縁膜727を形成する。上述した一連の工程により、半導体記憶回路を作製することができる。
【0231】
なお、上記作製方法では、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716の後に形成されている。よって、図15(B)に示すように、上記作製方法によって得られる第1のトランジスタ121は、導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716の上に形成されている。しかし、第1のトランジスタ121は、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜が、酸化物半導体層716の下、すなわち、酸化物半導体層716と絶縁膜712及び絶縁膜713の間に設けられていても良い。
【0232】
図16に、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716と絶縁膜712及び絶縁膜713の間に設けられている場合の、第1のトランジスタ121の断面図を示す。図16に示す第1のトランジスタ121は、絶縁膜713を形成した後に導電膜719及び導電膜720の形成を行い、次いで酸化物半導体層716の形成を行うことで、得ることができる。
【0233】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0234】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5において酸化物半導体層に用いた、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸においては金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列しており、ab面においてはa軸またはb軸の向きが異なる(c軸を中心に回転した)結晶(CAAC:C Axis Aligned Crystalともいう。)を含む酸化物について説明する。
【0235】
CAACを含む酸化物とは、広義に、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形または正六角形の原子配列を有し、かつc軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む酸化物をいう。
【0236】
CAACは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAACは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0237】
CAACに酸素が含まれる場合、酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAACを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAACが形成される基板面、CAACの表面などに垂直な方向)に揃っていてもよい。または、CAACを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、CAACが形成される基板面、CAACの表面などに垂直な方向)を向いていてもよい。
【0238】
CAACは、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0239】
このようなCAACの例として、膜状に形成され、膜表面または支持する基板面に垂直な方向から観察すると三角形または六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる結晶を挙げることもできる。
【0240】
CAACに含まれる結晶構造の一例について図17乃至図19を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図17乃至図19は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。
【0241】
図17(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図17(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図17(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図17(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0242】
図17(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図17(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図17(B)に示す構造をとりうる。図17(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0243】
図17(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図17(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図17(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0244】
図17(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図17(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図17(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0245】
図17(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図17(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図17(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0246】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0247】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。Inの上半分の3個のOは下方向に3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Inを有する。Gaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。Znの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。その理由を以下に示す。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が上半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)の上半分の4配位のO、5配位の金属原子(GaまたはIn)の下半分の4配位のOまたは4配位の金属原子(Zn)の上半分の4配位のOのいずれかと結合することになる。
【0248】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0249】
図18(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図18(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図18(C)は、図18(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0250】
図18(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図18(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図18(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0251】
図18(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0252】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図17(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0253】
具体的には、図18(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。なお、In−Sn−Zn−O系の結晶は、mの数が大きいと結晶性が向上するため、好ましい。
【0254】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物や、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Pm−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物や、In−Ga系酸化物、一元系金属の酸化物であるIn系酸化物、Sn系酸化物、Zn系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0255】
例えば、図19(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0256】
図19(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0257】
図19(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図19(C)は、図19(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0258】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0259】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図19(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0260】
(実施の形態7)
本実施の形態では、トランジスタの特性について説明する。
【0261】
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0262】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、以下の式で表現できる。
【0263】
【数2】

【0264】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、以下の式で表される。
【0265】
【数3】

【0266】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
線形領域におけるドレイン電流Iは、以下の式となる。
【0267】
【数4】

【0268】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。
上式の両辺をVで割り、更に両辺の対数を取ると、以下のようになる。
【0269】
【数5】

【0270】
数5の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(I/V)、横軸を1/Vとする直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0271】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数2および数3よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は35cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0272】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、以下の式で表される。
【0273】
【数6】

【0274】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。BおよびGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数6の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0275】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した結果を図20に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0276】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0277】
図20で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0278】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図21乃至図23に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図24に示す。図24に示すトランジスタは酸化物半導体層にnの導電型を呈する半導体領域1103aおよび半導体領域1103cを有する。半導体領域1103aおよび半導体領域1103cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0279】
図24(A)に示すトランジスタは、下地絶縁層1101と、下地絶縁層1101に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成される。トランジスタは半導体領域1103a、半導体領域1103cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域1103bと、ゲート1105を有する。ゲート1105の幅を33nmとする。
【0280】
ゲート1105と半導体領域1103bの間には、ゲート絶縁膜1104を有し、また、ゲート1105の両側面には側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106b、ゲート1105の上部には、ゲート1105と他の配線との短絡を防止するための絶縁物1107を有する。側壁絶縁物の幅は5nmとする。また、半導体領域1103aおよび半導体領域1103cに接して、ソース1108aおよびドレイン1108bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0281】
図24(B)に示すトランジスタは、下地絶縁層1101と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁物1102の上に形成され、半導体領域1103a、半導体領域1103cと、それらに挟まれた真性の半導体領域1103bと、幅33nmのゲート1105とゲート絶縁膜1104と側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106bと絶縁物1107とソース1108aおよびドレイン1108bを有する点で図24(A)に示すトランジスタと同じである。
【0282】
図24(A)に示すトランジスタと図24(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106bの下の半導体領域の導電型である。図24(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁物1106aおよび側壁絶縁物1106bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域1103aおよび半導体領域1103cであるが、図24(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域1103bである。すなわち、半導体領域1103a(半導体領域1103c)とゲート1105がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域といい、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁物1106a(側壁絶縁物1106b)の幅と同じである。
【0283】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図21は、図24(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(I、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(V、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0284】
図21(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図21(B)は10nmとしたものであり、図21(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流I(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流I(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0285】
図22は、図24(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧V依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図22(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図22(B)は10nmとしたものであり、図22(C)は5nmとしたものである。
【0286】
また、図23は、図24(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流I(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Iは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図23(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図23(B)は10nmとしたものであり、図23(C)は5nmとしたものである。
【0287】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0288】
なお、移動度μのピークは、図21では80cm/Vs程度であるが、図22では60cm/Vs程度、図23では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0289】
(実施の形態8)
本実施の形態では、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタについて説明する。
【0290】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5atomic%以上含まれる元素をいう。
【0291】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせ、ノーマリ・オフ化させることが可能となる。
【0292】
例えば、図25(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vは10Vとした。
【0293】
図25(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm/Vsecが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図25(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsecが得られている。
【0294】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図25(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsecが得られている。
【0295】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体は、理想的には100cm/Vsecを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0296】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体を得ることができる。
【0297】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図25(A)と図25(B)の対比からも確認することができる。
【0298】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比としてIn:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比をIn:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0299】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0300】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0301】
実際に、酸化物半導体膜成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
【0302】
まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−I特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVgsを20Vにし、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−I測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
【0303】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−I特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVgsを−20Vにし、そのまま1時間保持した。次に、Vgsを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−I測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0304】
試料1のプラスBT試験の結果を図26(A)に、マイナスBT試験の結果を図26(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図27(A)に、マイナスBT試験の結果を図27(B)に示す。
【0305】
試料1のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80Vおよび−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79Vおよび0.76Vであった。
試料1および試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0306】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
【0307】
酸化物半導体中及び積層される膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm以上2×1020/cm以下のとすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体中に含ませることができる。
【0308】
また、熱処理によって酸化物半導体に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0309】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0310】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0311】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0312】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0313】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0314】
図28に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0315】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0316】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができ、それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0317】
図29に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0318】
具体的には、図29に示すように、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。これらのオフ電流値は、Siを半導体膜として用いたトランジスタに比べて、極めて低いものであることは明らかである。
【0319】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0320】
また、酸化物半導体膜成膜後に650℃の加熱処理を行った試料のトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0321】
測定に用いたトランジスタは、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vdsは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃および150℃で行った。ここで、トランジスタにおいて、ゲート電極と一対の電極との重畳する幅をLovと呼び、酸化物半導体膜に対する一対の電極のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0322】
図30に、I(実線)および電界効果移動度(点線)のVgs依存性を示す。また、図31(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図31(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0323】
図31(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0324】
また、図31(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0325】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vsec以上、好ましくは40cm/Vsec以上、より好ましくは60cm/Vsec以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性であれば、Si半導体で作られる集積回路の中に酸化物半導体で形成されるトランジスタを混載しても、動作速度を犠牲にすることなく新たな機能を有する集積回路を実現することができる。
【実施例1】
【0326】
本実施例では、In−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの一例について、図32などを用いて説明する。
【0327】
図32は、コプラナー型であるトップゲート・トップコンタクト構造のトランジスタの上面図および断面図である。図32(A)にトランジスタの上面図を示す。また、図32(B)は図32(A)の一点鎖線A1−A2に対応する断面図である。
【0328】
図32(B)に示すトランジスタは、基板500と、基板500上に設けられた下地絶縁膜502と、下地絶縁膜502の周辺に設けられた保護絶縁膜504と、下地絶縁膜502および保護絶縁膜504上に設けられた高抵抗領域506aおよび低抵抗領域506bを有する酸化物半導体膜506と、酸化物半導体膜506上に設けられたゲート絶縁膜508と、ゲート絶縁膜508を介して酸化物半導体膜506と重畳して設けられたゲート電極510と、ゲート電極510の側面と接して設けられた側壁絶縁膜512と、少なくとも低抵抗領域506bと接して設けられた一対の電極514と、少なくとも酸化物半導体膜506、ゲート電極510および一対の電極514を覆って設けられた層間絶縁膜516と、層間絶縁膜516に設けられた開口部を介して少なくとも一対の電極514の一方と接続して設けられた配線518と、を有する。
【0329】
なお、図示しないが、層間絶縁膜516および配線518を覆って設けられた保護膜を有していても構わない。該保護膜を設けることで、層間絶縁膜516の表面伝導に起因して生じる微小リーク電流を低減することができ、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【実施例2】
【0330】
本実施例では、上記とは異なるIn−Sn−Zn−O膜を酸化物半導体膜に用いたトランジスタの他の一例について示す。
【0331】
図33は、本実施例で作製したトランジスタの構造を示す上面図および断面図である。図33(A)はトランジスタの上面図である。また、図33(B)は図33(A)の一点鎖線B1−B2に対応する断面図である。
【0332】
図33(B)に示すトランジスタは、基板600と、基板600上に設けられた下地絶縁膜602と、下地絶縁膜602上に設けられた酸化物半導体膜606と、酸化物半導体膜606と接する一対の電極614と、酸化物半導体膜606および一対の電極614上に設けられたゲート絶縁膜608と、ゲート絶縁膜608を介して酸化物半導体膜606と重畳して設けられたゲート電極610と、ゲート絶縁膜608およびゲート電極610を覆って設けられた層間絶縁膜616と、層間絶縁膜616に設けられた開口部を介して一対の電極614と接続する配線618と、層間絶縁膜616および配線618を覆って設けられた保護膜620と、を有する。
【0333】
基板600としてはガラス基板を、下地絶縁膜602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜606としてはIn−Sn−Zn−O膜を、一対の電極614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いた。
【0334】
なお、図33(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極610と一対の電極614との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体膜606に対する一対の電極614のはみ出しをdWと呼ぶ。
【符号の説明】
【0335】
100 記憶回路
101A 第1の記憶部
101B 第2の記憶部
102 第1のアナログスイッチ
103 第2のアナログスイッチ
104 インバータ回路
105 揮発性記憶部
106 不揮発性記憶部
107 セレクタ回路
111 記憶回路
112 反転出力回路
113 リセット回路
121 第1のトランジスタ
122 第2のトランジスタ
123 容量素子
124 第3のトランジスタ
125 第4のトランジスタ
131 第1のインバータ回路
132 第2のインバータ回路
133 NAND回路
134 クロックドインバータ回路
141 第1のアナログスイッチ
142 第1のインバータ回路
143 第2のアナログスイッチ
144 第2のインバータ回路
145 第3のインバータ回路
146 第4のインバータ回路
147 NOR回路
150 信号処理装置
151 演算装置
152 演算装置
153 記憶回路
154 記憶回路
155 記憶回路
156 制御装置
157 電源制御回路
161 NAND回路
162 インバータ回路
163 アナログスイッチ
201 切り替え回路
202 第1のインバータ回路
203 NOR回路
204 第2のインバータ回路
205 アナログスイッチ
401 インバータ回路
402 記憶回路
403 記憶回路群
500 基板
502 下地絶縁膜
504 保護絶縁膜
506 酸化物半導体膜
506a 高抵抗領域
506b 低抵抗領域
508 ゲート絶縁膜
510 ゲート電極
512 側壁絶縁膜
514 電極
516 層間絶縁膜
518 配線
600 基板
602 下地絶縁膜
606 酸化物半導体膜
608 ゲート絶縁膜
610 ゲート電極
614 電極
616 層間絶縁膜
618 配線
620 保護膜
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 半導体層
707 ゲート電極
709 不純物領域
710 チャネル形成領域
712 絶縁膜
713 絶縁膜
716 酸化物半導体層
719 導電膜
720 導電膜
721 ゲート絶縁膜
722 ゲート電極
723 導電膜
724 絶縁膜
725 開口部
726 配線
727 絶縁膜
1101 下地絶縁層
1102 埋め込み絶縁物
1103a 半導体領域
1103b 半導体領域
1103c 半導体領域
1104 ゲート絶縁膜
1105 ゲート
1106a 側壁絶縁物
1106b 側壁絶縁物
1107 絶縁物
1108a ソース
1108b ドレイン
9900 基板
9901 ALU
9902 ALU・Controller
9903 Instruction・Decoder
9904 Interrupt・Controller
9905 Timing・Controller
9906 Register
9907 Register・Controller
9908 Bus・I/F
9909 ROM
9920 ROM・I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、
前記不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、リセット動作によって、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項2】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、
前記不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、リセット動作によって、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路と、前記リセット動作の際に前記不揮発性記憶部の入力端子と前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方とを非導通状態とする切り替え回路と、が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項3】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、
前記不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、第1の制御信号及び第2の制御信号によるリセット動作によって、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項4】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部とを有し、
前記不揮発性記憶部は、第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に当該揮発性記憶部に保持されるべきデータ信号が保持され、
前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方には、第1の制御信号及び第2の制御信号によるリセット動作によって、前記第1のトランジスタのソース及びドレインの一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間の電位を低電源電位にするリセット回路と、前記リセット動作の際に前記不揮発性記憶部の入力端子と前記第1のトランジスタのソース及びドレインの他方とを非導通状態とする切り替え回路と、が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項5】
請求項4において、前記切り替え回路は、第1の制御信号及び第2の制御信号が入力される論理回路及び前記論理回路によって導通状態が制御されるアナログスイッチを有する信号処理装置の記憶回路。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか一において、前記リセット回路は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号が入力される論理回路及び前記論理回路によって導通状態が制御されるアナログスイッチを有する信号処理装置の記憶回路。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一において、前記記憶回路は前記揮発性記憶部または前記不揮発性記憶部に前記データ信号を選択的に記憶するためのセレクタ回路を有し、
前記セレクタ回路は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号が入力される論理回路及び前記論理回路によって前記揮発性記憶部または前記不揮発性記憶部を選択して導通状態を制御するアナログスイッチを有する信号処理装置の記憶回路。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、前記第1のトランジスタは、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである信号処理回路の記憶回路。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、前記第2のトランジスタは、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタである信号処理装置の記憶回路。
【請求項10】
請求項9において、前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタと積層して設けられる信号処理装置の記憶回路。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10に記載の前記記憶回路と、前記記憶回路とデータのやり取りを行う演算装置とを有する信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−9300(P2013−9300A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23613(P2012−23613)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】