説明

SOI基板の作製方法

【課題】単結晶半導体層にレーザー光を照射する場合において、レーザー光の照射時に単結晶半導体層中に不純物元素が取り込まれるのを抑制することを目的の一とする。
【解決手段】SOI基板の作製方法において、単結晶半導体基板と、ベース基板とを用意し、単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することにより、単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に脆化領域を形成し、単結晶半導体基板とベース基板とを絶縁層を介して貼り合わせ、単結晶半導体基板を加熱し、脆化領域を境として分離することにより、ベース基板上に絶縁層を介して単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体層上に形成された酸化膜を除去し、酸化膜を除去した後に単結晶半導体層の表面にレーザー光を照射して単結晶半導体層の少なくとも表面を溶融させ、レーザー光の照射による単結晶半導体層の溶融回数は1回とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層を介して半導体層が設けられた基板の作製方法に関し、特にSOI(Silicon on Insulator)基板の作製方法に関する。または、絶縁層を介して半導体層が設けられた基板を用いた半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バルク状のシリコンウエハに代わり、絶縁表面に薄い単結晶半導体層が存在するSOI基板を使った集積回路が開発されている。SOI基板を使うことで、トランジスタのドレインと基板間における寄生容量が低減されるため、SOI基板は半導体集積回路の性能を向上させるものとして注目されている。
【0003】
SOI基板を製造する方法の1つに、スマートカット(登録商標)法が知られている(例えば、特許文献1参照)。スマートカット法によるSOI基板の作製方法の概要を以下に説明する。まず、シリコンウエハにイオン注入法を用いて水素イオンを注入することによって表面から所定の深さに微小気泡層を形成する。次に、酸化シリコン膜を介して、水素イオンを注入したシリコンウエハを別のシリコンウエハに接合させる。その後、熱処理を行うことにより、微小気泡層が劈開面となり、水素イオンが注入されたシリコンウエハの一部が微小気泡層を境に薄膜状に分離し、接合させた別のシリコンウエハ上に単結晶シリコン膜を形成することができる。ここで、スマートカット法は水素イオン注入剥離法と呼ぶこともある。
【0004】
また、このようなスマートカット法を用いて単結晶シリコン層をガラスからなるベース基板上に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。ガラス基板はシリコンウエハよりも大面積化が容易であり、透明、且つ、安価であるため、主に、液晶表示装置等の製造の際に用いられている。このようなガラス基板をベース基板として用いることにより、大面積で安価なSOI基板を作製することが可能となる。
【0005】
また、特許文献2では、単結晶シリコン層の結晶品質を改善するために、単結晶シリコン層にレーザー光を照射する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−211128号公報
【特許文献2】特開2005−252244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示されるように、単結晶半導体層にレーザー光を照射することで、耐熱性が低いガラス基板等を用いる場合であっても、単結晶半導体層を溶融させて結晶性を向上させることができる。しかしながら、レーザー光の照射の際に何ら手当をしない場合には、雰囲気中に存在する炭素等の不純物元素が溶融した半導体層に取り込まれて、当該単結晶半導体層を用いた素子特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
特に、単結晶半導体層の表面に形成される酸化膜等に上記の不純物元素が含まれるような場合には、レーザー光の照射による単結晶半導体層の溶融と共に酸化膜が溶融し、単結晶半導体層中には高濃度の不純物元素が取り込まれてしまうことになる。
【0009】
これらの不純物元素は半導体素子の特性を悪化させ、また、信頼性を低下させる原因となるため、良好な素子特性を保ち、その信頼性を高めるためには、単結晶半導体層中の不純物元素を増加させないことが重要となる。
【0010】
上記問題に鑑み、開示する発明の一態様では、単結晶半導体層にレーザー光を照射する場合において、レーザー光の照射時に単結晶半導体層中に不純物元素が取り込まれるのを抑制することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する発明の一態様では、SOI基板の作製方法において、単結晶半導体層表面の酸化膜を除去した後、レーザー光を照射することを特徴とする。
【0012】
開示する発明の一は、SOI基板の作製方法において、単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することにより、単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に脆化領域を形成し、単結晶半導体基板とベース基板とを絶縁層を介して貼り合わせ、単結晶半導体基板を加熱し、脆化領域を境として分離することにより、ベース基板上に絶縁層を介して単結晶半導体層を形成し、単結晶半導体層上に形成された酸化膜を除去し、酸化膜を除去した後に単結晶半導体層の表面にレーザー光を照射して単結晶半導体層の少なくとも表面を溶融させ、レーザー光の照射による単結晶半導体層の溶融回数は1回であることを特徴としている。
【0013】
上記において、単結晶半導体層の厚さを200nm以上とし、レーザー光として、繰り返し周波数が10MHz以上のパルス発振のレーザー発振器又は連続発振のレーザー発振器から発振されたレーザー光を用いても良い。また、レーザー光の照射によって、単結晶半導体層を部分溶融させると好ましい。
【0014】
また、上記において、レーザー光を照射した単結晶半導体層の炭素濃度を1×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下にする。また、ベース基板としては、ガラス基板を用いることができる。
【0015】
本明細書において単結晶とは、ある結晶軸に注目した場合、その結晶軸の方向が試料のどの部分において同じ方向を向いている結晶のことをいい、かつ結晶と結晶との間の結晶粒界が存在しない結晶である。なお、本明細書では、結晶欠陥やダングリグボンドを含んでいても、上記のように結晶軸の方向が揃っており、粒界が存在していない結晶であるものは単結晶とする。また、単結晶半導体層の再単結晶化とは、単結晶構造の半導体層が、その単結晶構造と異なる状態(例えば、液相状態)を経て、再び単結晶構造になることをいう。あるいは、単結晶半導体層の再単結晶化とは、単結晶半導体層を再結晶化して、単結晶半導体層を形成するということもできる。
【0016】
また、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置に含まれる。
【0017】
また、本明細書中において表示装置とは、発光装置や液晶表示装置を含む。発光装置は発光素子を含み、液晶表示装置は液晶素子を含む。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。
【発明の効果】
【0018】
開示する発明の一態様では、単結晶半導体層の表面に形成された酸化膜を除去してレーザー光を照射する。これにより、酸化膜中に含まれる不純物元素が、単結晶半導体層中に取り込まれずに済むため、単結晶半導体層中の不純物元素の増加を抑制することが出来る。また、レーザー光の照射による単結晶半導体層の溶融回数を一回とすることにより、溶融後の固化に伴い形成される表面酸化膜中の不純物元素が、二回目以降の溶融によって単結晶半導体層中に取り込まれずに済むため、単結晶半導体層中の不純物元素の増加を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】SOI基板の作製方法の一例を示す図である。
【図2】溶融回数と不純物元素の増加の関係を説明する図である。
【図3】SOI基板の作製方法の一例を示す図である。
【図4】SOI基板を用いた半導体装置の作製方法の一例を示す図である。
【図5】SOI基板を用いた半導体装置の作製方法の一例を示す図である。
【図6】SOI基板を用いた半導体装置の一例を示す図である。
【図7】SOI基板を用いた半導体装置の一例を示す図である。
【図8】SOI基板を用いた表示装置の一例を示す図である。
【図9】SOI基板を用いた表示装置の一例を示す図である。
【図10】SOI基板を用いた電子機器を示す図である。
【図11】単結晶半導体層中の炭素濃度の分析結果を示す図である。
【図12】単結晶半導体層中の炭素濃度の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、その趣旨及び範囲から逸脱することなくその形態および詳細を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、発明は、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の一例に関して図面を参照して説明する。具体的には、スマートカット法を用いてベース基板上に絶縁層を介して単結晶半導体層を形成し、当該単結晶半導体層の結晶品質を改善する工程に関して説明する。
【0022】
まず、単結晶半導体基板100とベース基板120とを準備する(図1(A)、(B)参照)。
【0023】
単結晶半導体基板100として、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板も用いることができる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、単結晶半導体基板100の形状は円形に限られず、例えば、矩形状等に加工して用いることも可能である。
【0024】
ベース基板120として、絶縁体でなる基板を用いることができる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。他にも、ベース基板120として単結晶半導体基板(例えば、単結晶シリコン基板等)を用いてもよい。本実施の形態では、ガラス基板を用いる場合について説明する。ベース基板120として大面積化が可能で安価なガラス基板を用いることにより、低コスト化を図ることができる。
【0025】
次に、単結晶半導体基板100の表面から所定の深さに結晶構造が損傷された脆化領域104を形成し、その後、絶縁層102を介して単結晶半導体基板100とベース基板120とを貼り合わせる(図1(C)参照)。
【0026】
脆化領域104は、運動エネルギーを有する水素等のイオンを単結晶半導体基板100に照射することにより形成することができる。
【0027】
絶縁層102は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁層を単層、又は積層させて形成することができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0028】
本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、好ましくは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward scattering Spectrometry)を用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、好ましくは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、濃度範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。ただし、酸化窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0029】
次に、熱処理を行い脆化領域104にて分離することにより、ベース基板120上に、絶縁層102を介して単結晶半導体層124を設ける(図1(D)参照)。
【0030】
熱処理を行うことで、脆化領域104に形成されている微小な孔には添加された元素が析出し、内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化領域104の微小な孔に体積変化が起こり、脆化領域104に亀裂が生じるので、脆化領域104に沿って単結晶半導体基板100が分離する。絶縁層102はベース基板120に接合しているので、ベース基板120上には単結晶半導体基板100から分離された単結晶半導体層124が形成される。
【0031】
続いて、ベース基板120上に形成された単結晶半導体層124の表面にレーザー光を照射する工程を行う。単結晶半導体層124にレーザー光を照射することにより当該単結晶半導体層124の結晶性の改善と表面の平滑化を行うことができる。
【0032】
本実施の形態では、単結晶半導体層124にレーザー光を照射する前に、分離後の単結晶半導体層124の表面に形成される酸化膜126を除去する(図1(E)参照)。酸化膜126は、熱処理等に起因して形成された酸化膜であり処理雰囲気の不純物元素を取り込んでいるため、当該酸化膜126が形成されたままレーザー光を照射して単結晶半導体層124を溶融させた場合には、単結晶半導体層124中に炭素等の不純物元素がとりこまれるおそれがあるからである。
【0033】
具体的には、例えば、フッ酸などを用いた洗浄処理によって酸化膜126を除去することが出来る。フッ酸による処理は、単結晶半導体層124の表面が撥水性を示す程度まで行うと良い。撥水性の有無により、単結晶半導体層124表面の酸化膜126が除去されたか否かを確認できる。
【0034】
なお、上記酸化膜126は熱処理に起因するものに限定されず、他の処理に起因するものであっても良い。もちろん、自然酸化膜のように、特に何らかの処理に起因するものでないものも含む。
【0035】
さらにその後、単結晶半導体層124の表面にプラズマ処理などの処理を行い、単結晶半導体層124の表面に付着した不純物(炭素、窒素、酸素等から構成される不純物)を除去してもよい。
【0036】
次に、ベース基板120上に形成された単結晶半導体層124の表面にレーザー光130を照射することによって、単結晶半導体層124の結晶品質を改善(再単結晶化)する(図1(F)参照)。
【0037】
単結晶半導体層124の表層部は、脆化領域104の形成や脆化領域104での分離等により結晶欠陥等が形成され結晶性が低下している。そこで、図1(F)に示すように単結晶半導体層124の表面にレーザー光130を照射して、少なくとも単結晶半導体層124の表層部を溶融させることにより結晶品質を改善することができる。また、分離後の単結晶半導体層124の表面は凹凸が生じるが、単結晶半導体層124の表層部を溶融させることにより、表面を平滑化することもできる。なお、単結晶半導体層124の結晶性は、光学顕微鏡による観察、およびラマン分光スペクトルから得られるラマンシフト、半値全幅などにより評価することができる。
【0038】
また、本実施の形態では、分離により露出した単結晶半導体層124の表面側からレーザー光130を照射することにより、当該単結晶半導体層124を完全に溶融させるのではなく、部分的に溶融(部分溶融)させることが好ましい。部分溶融とは、レーザー光130の照射により単結晶半導体層124の溶融されている深さが絶縁層102の界面(単結晶半導体層124の厚さ)よりも浅くすることである。つまり、単結晶半導体層124の上層は溶融して液相となり、下層は溶融せずに固相のままである状態をいう。
【0039】
単結晶半導体層124を部分溶融させることにより、レーザー光130の照射により溶融した部分の結晶成長は、溶融していない単結晶半導体層の面方位に基づいて行われるため、完全に溶融させる場合と比較して面方位をそろえて再結晶化を行うことができる。また、単結晶半導体層124を部分的に溶融することによって、絶縁層102からの酸素や窒素等の不純物元素の取り込みを抑制することが出来る。
【0040】
また、本実施の形態では、上記レーザー光130の照射による単結晶半導体層124の溶融回数を一回とする。ここで、溶融回数が一回とは、単結晶半導体層124の同一領域における表層部が二回以上溶融しないことをいう。つまり、単結晶半導体層124の表層部は一回溶融した後には固化するが、一回溶融して固化した領域と同じ領域に二回目以降の溶融が生じないことを意味するものである。従って、単結晶半導体層124の異なる領域をそれぞれ一回溶融させた場合でも溶融回数は一回となる。
【0041】
このように、単結晶半導体層124の溶融回数を一回とすることにより、固化後に単結晶半導体層124の表面に新たに不純物元素を含む酸化膜が形成され、当該不純物元素が、再度の溶融過程によって単結晶半導体層124に取り込まれることを防止することが出来る。
【0042】
ここで、上記の溶融回数と単結晶半導体層中の不純物元素の増加との関係について、図2を参照してより詳細に説明する。なお、図2は単結晶半導体層124の溶融について説明する図であるから、溶融過程に大きな影響を与えない構成(例えばベース基板120等)については省略している。
【0043】
上述したように、分離後の単結晶半導体層124の表面には加熱処理などに起因する酸化膜126が形成されている(図2(A)参照)。そして、当該酸化膜126中には、不純物元素140が取り込まれている。このままレーザー光を照射して単結晶半導体層124を溶融させた場合には、単結晶半導体層中に不純物元素が取り込まれてしまうため、本実施の形態では酸化膜126を除去する(図2(B)参照)。
【0044】
次に、単結晶半導体層124の表面にレーザー光130を照射することによって、単結晶半導体層124の結晶品質を改善する(図2(C)参照)。なお、この段階では、酸化膜126は除去されており、酸化膜126に起因する不純物元素が単結晶半導体層124中に取り込まれることはない。
【0045】
その後、溶融した単結晶半導体層124が固化すると、その表面には新たに酸化膜128が形成される(図2(D)参照)。単結晶半導体層124の表層部の温度は溶融直後において十分に高く、固化後の単結晶半導体層124の熱酸化により酸化膜128が生じているものと考えられる。
【0046】
このようにして形成された酸化膜128中には、処理雰囲気などに起因する不純物元素140が存在している。このため、同じ領域に対して再度レーザー光を照射する場合など、単結晶半導体層124が再び溶融するような状況では、酸化膜128中の不純物元素140が拡散して単結晶半導体層124中に取り込まれてしまう(図2(E)参照)。
【0047】
これを防止するために、本実施の形態では、図2(E)の工程を行わずレーザー光130の照射による単結晶半導体層124の溶融回数を一回とするのである。なお、酸化膜128を除去する場合には、再度のレーザー光の照射も可能である。
【0048】
上記のレーザー光130の照射に適用可能なレーザー発振器としては、パルス発振レーザー又は連続発振レーザー(CWレーザー)がある。パルス発振レーザーを用いる場合であって、その繰り返し周波数が低い場合には、同じ領域に二以上のパルスレーザー光が照射されないようにすることが好ましい。つまり、パルスレーザー光がオーバーラップしないようにする。これは、上記のようなパルス発振レーザーでは、第1のパルスが照射された後、第2のパルスが照射されるまでの間に単結晶半導体層124が固化し、表面に酸化膜が形成されてしまうためである。
【0049】
一方で、パルス発振レーザーを用いる場合であっても、その繰り返し周波数が高い場合には、パルスレーザー光をオーバーラップさせてもよい。繰り返し周波数が高い場合には、オーバーラップさせた場合であっても、第1のパルスが照射された後第2のパルスが照射されるまでの間に単結晶半導体層が固化せず溶融したままの状態を維持するためである。繰り返し周波数が高いパルスレーザーとしては、例えば、繰り返し周波数が10MHz以上のパルス発振レーザーを用いることができる。
【0050】
また、連続発振レーザーを用いる場合には、このような問題は発生しないから、照射時間等の条件を適宜設定して部分溶融が実現されるよう照射すればよい。
【0051】
なお、単結晶半導体層124が厚い場合(例えば200nm以上の場合)には、連続発振レーザーを用いることが好ましい。これは、連続発振レーザーはエネルギー安定性が高く、安定した結晶品質の確保が可能となるためである。一方で、単結晶半導体層124が薄い場合(例えば200nm未満の場合)には、パルス発振レーザーを用いることが好ましい。これは、単結晶半導体層124が薄い場合において部分溶融を実現するためには、熱伝導との関係から、レーザー光の照射時間を短くする必要があるためである。
【0052】
また、レーザー光130の波長は、単結晶半導体層124に吸収される波長とする。レーザー光130の波長としては、紫外光域乃至可視光域(例えば、250nm以上700nm以下)にあるものを選択すればよい。例えば、単結晶半導体層124が厚い場合(200nm以上の場合)には、500nm以上の比較的長波長のレーザー光を照射すると、単結晶半導体層124の深い領域までレーザー光を到達させることが出来るため好ましい。一般的には、レーザー光の波長は、レーザー光の表皮深さ(skin depth)などを考慮して決定することができる。
【0053】
例えば、単結晶半導体層124がシリコン材料からなり、厚い場合(例えば200nm以上の場合)には、可視光を用いることが好ましい。これは、レーザー光の侵入深さを大きくし、単結晶半導体層124の底まで加熱することができるためである。一方で、単結晶半導体層124が薄い場合には、近紫外光を用いることが好ましい。レーザー光の侵入深さを小さくし、ベース基板への熱の影響を抑制することができるためである。
【0054】
単結晶半導体層124を部分溶融させるためのレーザー光のエネルギー密度の取りうる範囲は、レーザー光の波長、レーザー光の表皮深さ、単結晶半導体層124の膜厚などを考慮して、単結晶半導体層124が完全に溶融しない程度のエネルギー密度とする。例えば、単結晶半導体層124の膜厚が大きい場合には、単結晶半導体層124を完全に溶融するまでのエネルギーも大きいため、レーザー光のエネルギー密度の範囲を大きくとることができる。また、単結晶半導体層124の膜厚が小さい場合には、単結晶半導体層124を完全に溶融するまでのエネルギーも小さくなるため、レーザー光のエネルギー密度を小さくすることが望ましい。なお、単結晶半導体層124を加熱状態でレーザー光を照射する場合には、部分溶融に必要なエネルギー密度の範囲の上限の値を小さくすることが、単結晶半導体層124が完全に溶融してしまうことを防ぐためにも好ましい。
【0055】
また、レーザー光130の照射を減圧雰囲気としたチャンバー内において行っても良い。減圧雰囲気下で行うことによって、レーザー光130を照射して単結晶半導体層124を溶融させる場合であっても、雰囲気中の不純物元素が単結晶半導体層124中に取り込まれることを抑制することができる。その結果、レーザー光130の照射工程の前後において単結晶半導体層124に含まれる不純物元素の濃度を増加させずに済む。
【0056】
また、レーザー光130の照射工程において単結晶半導体層124に不純物元素が取り込まれるのを抑制するため、レーザー光の照射前にチャンバーのクリーニング処理を行っても良い。クリーニング処理の一例としては、シランガスを用いた処理、水素ガスを用いた処理などが挙げられる。ここで、シランガスを用いた処理、水素ガスを用いた処理はそれぞれ、シランフラッシュ、水素フラッシュなどとも呼ばれ(総称としてフラッシング処理と呼ぶこともある)、反応性のガスを所定の時間、所定の流量で流すことにより行われる。
【0057】
なお、上記のクリーニング処理は、例えば、フッ素ラジカルを用いたクリーニング処理の後に行うとより効果的である。フッ素ラジカルは、チャンバー外部などに設けられたプラズマ発生器に、フッ素などを導入して解離させることで生成することができる。
【0058】
本実施の形態で示した方法を用いることによって、ベース基板上に形成された単結晶半導体層にレーザー光を照射して溶融させることにより結晶品質を改善し、表面を平滑化する場合であっても、レーザー光の照射工程において単結晶半導体層に不純物元素が取り込まれることを抑制できる。
【0059】
上述のように、本実施の形態では、単結晶半導体層の表面に形成された酸化膜を除去してレーザー光を照射する。これにより、酸化膜中に含まれる不純物元素が、単結晶半導体層中に取り込まれずに済むため、単結晶半導体層中の不純物元素の増加を抑制することが出来る。また、レーザー光の照射による単結晶半導体層の溶融回数を一回とすることにより、溶融後の固化に伴い形成される表面酸化膜中の不純物元素が、二回目以降の溶融によって単結晶半導体層中に取り込まれずに済むため、単結晶半導体層中の不純物元素の増加を抑制することが出来る。
【0060】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、単結晶半導体基板100とベース基板120との貼り合わせに関して図面を参照して詳細に説明する。
【0062】
まず、単結晶半導体基板100を準備する(図3(A−1)参照)。単結晶半導体基板100の表面は、あらかじめ硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、塩酸過水(HPM)、希フッ酸(DHF)などを用いて適宜洗浄することが汚染除去の点から好ましい。また、希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
【0063】
次に、単結晶半導体基板100の表面に酸化膜132を形成する(図3(A−2)参照)。
【0064】
酸化膜132は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等の単層、又はこれらを積層させた膜を用いることができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、CVD法を用いて酸化膜132を形成する場合には、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC)等の有機シランを用いて作製される酸化シリコン膜を酸化膜132に用いることが生産性の点から好ましい。
【0065】
本実施の形態では、単結晶半導体基板100に熱酸化処理を行うことにより酸化膜132(ここでは、SiOx膜)を形成する(図3(A−2)参照)。
【0066】
また、熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板100に熱酸化処理(HCl酸化)を行うことによって酸化された酸化膜132を形成する。この場合、酸化膜132は、塩素原子を含有する膜となる。
【0067】
酸化膜132中に含有された塩素原子は、歪みを形成する。その結果、酸化膜132の水分に対する吸収割合が向上し、拡散速度が増大する。つまり、酸化膜132表面に水分が存在する場合に、当該表面に存在する水分を酸化膜132中に素早く吸収し、拡散させることができる。
【0068】
熱酸化処理の一例としては、酸素に対し塩化水素(HCl)を0.5〜10体積%(好ましくは3体積%)の割合で含む酸化性雰囲気中で、900℃〜1150℃の温度(代表的には1000℃)で行うことができる。処理時間は0.1〜6時間、好ましくは0.5〜1時間とすればよい。形成される酸化膜の膜厚としては、10nm〜1000nm(好ましくは50nm〜300nm)、例えば100nmの厚さとする。
【0069】
本実施の形態では、酸化膜132に含まれる塩素原子の濃度を1×1017atoms/cm〜1×1021atoms/cmとなるように制御することが好ましい。酸化膜132に塩素原子を含有させることによって、外因性不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して単結晶半導体基板100が汚染されることを防止する効果を奏する。
【0070】
また、酸化膜132として、HCl酸化などによって膜中に塩素等のハロゲンを含ませることにより、単結晶半導体基板に悪影響を与える不純物(例えば、Na等の可動イオン)をゲッタリングすることができる。つまり、酸化膜132を形成した後に行われる熱処理により、単結晶半導体基板に含まれる不純物が酸化膜132に析出し、ハロゲン(例えば塩素)と反応して捕獲されることとなる。それにより酸化膜132中に捕集した当該不純物を固定して単結晶半導体基板100の汚染を防ぐことができる。また、酸化膜132はガラス基板と貼り合わせた場合に、ガラスに含まれるNa等の不純物を固定する膜として機能しうる。
【0071】
特に、酸化膜132として、HCl酸化などによって膜中に塩素等のハロゲンを含ませることは、半導体基板の洗浄が不十分である場合や、繰り返し再利用して用いられる半導体基板の汚染除去に有効となる。
【0072】
なお、酸化膜132に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。酸化膜132にフッ素原子を含有させてもよい。例えば、単結晶半導体基板100をHF溶液に浸漬させた後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行うことや、NFを酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行えばよい。
【0073】
次に、運動エネルギーを有するイオンを単結晶半導体基板100に照射することで、単結晶半導体基板100の所定の深さに結晶構造が損傷された脆化領域104を形成する(図3(A−3)参照)。図3(A−3)に示すように、酸化膜132を介して、加速されたイオン103を単結晶半導体基板100に照射することで、単結晶半導体基板100の表面から所定の深さの領域にイオン103が添加され、脆化領域104を形成することができる。イオン103は、ソースガスを励起して、ソースガスのプラズマを生成し、このプラズマに含まれるイオンを、電界の作用によりプラズマから引き出して、加速したイオンである。
【0074】
脆化領域104が形成される領域の深さは、イオン103の運動エネルギー、質量と電荷、イオン103の入射角によって調節することができる。運動エネルギーは加速電圧などにより調節できる。なお、脆化領域104は、イオン103の平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に形成される。そのため、イオン103を添加する深さで、単結晶半導体基板100から分離される単結晶半導体層の厚さを決めることができる。この単結晶半導体層の厚さが10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下になるように、脆化領域104が形成される深さを調節する。
【0075】
脆化領域104の形成は、イオンドーピング処理で行うことができる。イオンドーピング処理には、イオンドーピング装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表的な例は、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種をチャンバー内に配置された被処理体に照射する非質量分離型の装置である。非質量分離型の装置であるのは、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで、全てのイオン種を被処理体に照射しているからである。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置は、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を被処理体に照射する装置である。
【0076】
イオンドーピング装置は、被処理物を配置するチャンバー、所望のイオンを発生させるイオン源、イオンを加速し照射するための加速機構等から構成されている。イオン源は、所望のイオン種を生成するためのソースガスを供給するガス供給装置や、ソースガスを励起してプラズマを生成させるための電極等から構成されている。プラズマを形成するための電極として、フィラメント型の電極や容量結合高周波放電用の電極等が用いられる。加速機構は、引出電極、加速電極、減速電極、接地電極等の電極や、これらの電極に電力を供給するための電源等で構成される。加速機構を構成する電極には複数の開口やスリットが設けられており、イオン源で生成されたイオンは電極に設けられた開口やスリットを通過して加速される。なお、イオンドーピング装置の構成は上述したものに限定されず、必要に応じた機構が設けられる。
【0077】
本実施形態では、イオンドーピング装置で、水素を単結晶半導体基板100に添加する。プラズマソースガスとして水素を含むガスを供給する。例えば、Hを供給する。水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずに、プラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンを単結晶半導体基板100に照射する。
【0078】
イオンドーピング装置において、水素ガスから生成されるイオン種(H、H、H)の総量に対してHの割合が50%以上とする。より好ましくは、そのHの割合を80%以上とする。イオンドーピング装置は質量分離を行わないため、プラズマ中に生成される複数のイオン種のうち、1つ(H)を50%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがより好ましい。同じ質量のイオンを照射することで、単結晶半導体基板100の同じ深さに集中させてイオンを添加することができる。
【0079】
脆化領域104を浅い領域に形成するためには、イオン103の加速電圧を低くする必要があるが、プラズマ中のHイオンの割合を高くすることで、原子状水素(H)を効率よく、単結晶半導体基板100に添加できる。HイオンはHイオンの3倍の質量を持つことから、同じ深さに水素原子を1つ添加する場合、Hイオンの加速電圧は、Hイオンの加速電圧の3倍にすることが可能となる。イオンの加速電圧を大きくできれば、イオンの照射工程のタクトタイムを短縮することが可能となり、生産性やスループットの向上を図ることができる。
【0080】
イオンドーピング装置は廉価で、大面積処理に優れているため、このようなイオンドーピング装置を用いてHを照射することで、半導体特性の向上、大面積化、低コスト化、生産性向上などの顕著な効果を得ることができる。また、イオンドーピング装置を用いた場合、重金属も同時に導入されるおそれがあるが、塩素原子を含有する酸化膜132を介してイオンの照射を行うことによって、上述したようにこれらの重金属による単結晶半導体基板100の汚染を防ぐことができる。
【0081】
なお、加速されたイオン103を単結晶半導体基板100に照射する工程は、イオン注入装置で行うこともできる。イオン注入装置は、チャンバー内に配置された被処理体に、ソースガスをプラズマ励起して生成された複数のイオン種を質量分離し、特定のイオン種を照射する質量分離型の装置である。したがって、イオン注入装置を用いる場合は、水素ガスやPHを励起して生成されたHイオンおよびHイオンを質量分離して、HイオンまたはHイオンの一方のイオンを加速して、単結晶半導体基板100に照射する。
【0082】
次に、ベース基板120を準備する(図3(B−1)参照)。
【0083】
ベース基板120は、絶縁体でなる基板を用いる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。本実施の形態では、ガラス基板を用いる場合について説明する。ベース基板120として大面積化が可能で安価なガラス基板を用いることにより、低コスト化を図ることができる。
【0084】
また、ベース基板120を用いるに際し、ベース基板120の表面をあらかじめ洗浄することが好ましい。具体的には、ベース基板120を、塩酸過水(HPM)、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、希フッ酸(DHF)等を用いて超音波洗浄を行う。例えば、ベース基板120の表面に塩酸過水を用いて超音波洗浄を行うことが好ましい。このような洗浄処理を行うことによって、ベース基板120表面の平坦化や残存する研磨粒子を除去することができる。
【0085】
次に、ベース基板120の表面に窒素含有層121(例えば、窒化シリコン膜又は窒化酸化シリコン膜等の窒素を含有する絶縁膜)を形成する(図3(B−2)参照)。
【0086】
本実施の形態において、窒素含有層121は、単結晶半導体基板100上に設けられた酸化膜132と貼り合わされる層(接合層)となる。また、窒素含有層121は、後にベース基板上に単結晶構造を有する単結晶半導体層を設けた際に、ベース基板に含まれるNa(ナトリウム)等の不純物が単結晶半導体層に拡散することを防ぐためのバリア層として機能する。
【0087】
また、単結晶半導体基板100とベース基板120との貼り合わせ不良を抑制するには、窒素含有層121の表面を平滑化することが好ましい。具体的には、窒素含有層121の表面の平均面粗さ(Ra)を0.5nm以下、自乗平均粗さ(Rms)を0.60nm以下、より好ましくは、平均面粗さを0.35nm以下、自乗平均粗さを0.45nm以下となるように窒素含有層121を形成する。膜厚は、10nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下の範囲とすることが好ましい。
【0088】
次に、単結晶半導体基板100の表面とベース基板120の表面とを対向させ、酸化膜132の表面と窒素含有層121の表面とを接合させる(図3(C)参照)。
【0089】
ここでは、単結晶半導体基板100とベース基板120を酸化膜132と窒素含有層121を介して密着させた後、単結晶半導体基板100の一箇所に1〜500N/cm、好ましくは1〜20N/cm程度の圧力を加える。圧力を加えた部分から酸化膜132と窒素含有層121とが接合しはじめ、自発的に接合が形成され全面におよぶ。この接合工程は、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、加熱処理を伴わず、常温で行うことができるため、ベース基板120に、ガラス基板のように耐熱温度が低い基板を用いることができる。
【0090】
なお、単結晶半導体基板100とベース基板120との貼り合わせを行う前に、単結晶半導体基板100上に形成された酸化膜132と、ベース基板120上に形成された窒素含有層121の表面処理を行うことが好ましい。
【0091】
表面処理としては、プラズマ処理、オゾン処理、メガソニック洗浄、2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)又はこれらの方法を組み合わせて行うことができる。特に、酸化膜132、窒素含有層121の少なくとも一方の表面にプラズマ処理を行った後に、オゾン処理、メガソニック洗浄、2流体洗浄等を行うことによって、酸化膜132、窒素含有層121表面の有機物等のゴミを除去し、表面を親水化することができる。その結果、酸化膜132と窒素含有層121の接合強度を向上させることができる。
【0092】
また、酸化膜132と窒素含有層121を接合させた後、接合強度を増加させるための熱処理を行うことが好ましい。この熱処理の温度は、脆化領域104に亀裂を発生させない温度とし、例えば、室温以上400℃未満の温度範囲で処理する。また、この温度範囲で加熱しながら、酸化膜132と窒素含有層121を接合させてもよい。熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。
【0093】
一般的に、酸化膜132と窒素含有層121を接合と同時又は接合させた後に熱処理を行うと、接合界面において脱水反応が進行し、接合面同士が近づき、水素結合の強化や共有結合が形成されることにより接合が強化される。脱水反応を促進させるためには、脱水反応により接合界面に生じる水分を高温で熱処理を行うことにより除去する必要がある。つまり、接合後の熱処理温度が低い場合には、脱水反応で接合界面に生じた水分を効果的に除去できないため、脱水反応が進まず接合強度を十分に向上させることが困難となる。
【0094】
一方で、本実施の形態で示すように酸化膜132として、塩素原子等を含有させた酸化膜を用いた場合、当該酸化膜132が水分を吸収し拡散させることができるため、接合後の熱処理を低温で行う場合であっても、脱水反応で接合界面に生じた水分を酸化膜132へ吸収、拡散させ脱水反応を効率良く促進させることができる。この場合、ベース基板120としてガラス等の耐熱性が低い基板を用いた場合であっても、酸化膜132と窒素含有層121の接合強度を十分に向上させることが可能となる。また、バイアス電圧を印加してプラズマ処理を行うことにより、酸化膜132の表面近傍に微小な空孔(マイクロポア)を形成し、水分を効果的に吸収し拡散させ、低温であっても酸化膜132と窒素含有層121の接合強度を向上させることができる。
【0095】
次に、熱処理を行い脆化領域104にて分離することにより、ベース基板120上に、酸化膜132及び窒素含有層121を介して単結晶半導体層124を設ける(図3(D)参照)。
【0096】
熱処理を行うことで、脆化領域104に形成されている微小な孔には添加された元素が析出し、内部の圧力が上昇する。これによって、脆化領域104に亀裂が生じるので、脆化領域104に沿って単結晶半導体基板100が分離する。酸化膜132はベース基板120上の窒素含有層121に接合しているので、ベース基板120上には単結晶半導体基板100から分離された単結晶半導体層124が形成される。また、ここでの熱処理の温度は、ベース基板120の歪み点を越えない温度とする。
【0097】
この加熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。例えば、RTA装置を用いる場合、加熱温度550℃以上730℃以下、処理時間0.5分以上60分以内で行うことができる。
【0098】
なお、酸化膜132と窒素含有層121との接合強度を増加させるための熱処理を行わず、図3(D)の熱処理を行うことにより、酸化膜132と窒素含有層121との接合強度の増加の熱処理工程と、脆化領域104における分離の熱処理工程を同時に行ってもよい。
【0099】
以上の工程により、ベース基板120上に酸化膜132及び窒素含有層121を介して単結晶半導体層124が設けられたSOI基板を作製することができる。本実施の形態で示した作製方法を用いることによって、窒素含有層121を接合層として用いた場合であっても、ベース基板120と単結晶半導体層124との接合強度を向上させ、信頼性を向上させることができる。その結果、ベース基板120上に形成される単結晶半導体層124への不純物の拡散を抑制すると共に、ベース基板120と単結晶半導体層124とが強固に密着したSOI基板を形成することができる。
【0100】
また、ベース基板側に窒素含有層を設け、単結晶半導体基板側に塩素等のハロゲンを有する酸化膜を形成することにより、ベース基板との貼り合わせ前に単結晶半導体基板へ不純物元素が混入することを抑制することができる。また、単結晶半導体基板側に設ける接合層として塩素等のハロゲンを有する酸化膜を形成することにより、接合後の熱処理を低温で行う場合であっても、脱水反応を効率良く促進させることにより接合強度を向上させることができる。
【0101】
その後、上記実施の形態1で示したように、単結晶半導体層124上に形成された酸化膜126を除去した後、単結晶半導体層124にレーザー光を照射して当該単結晶半導体層124の結晶性を回復させるとともに表面を平滑化する。レーザー光の照射工程は、上記実施の形態で示した方法や装置を用いて行うことができる。
【0102】
なお、本実施の形態では、単結晶半導体基板100上に酸化膜132を形成し、ベース基板120上に窒素含有層121を形成する場合を示したが、これに限られない。例えば、単結晶半導体基板100上に酸化膜132と窒素含有層を順に積層させて形成し、酸化膜132上に形成された窒素含有層の表面とベース基板120との表面とを接合させてもよい。この場合、窒素含有層は脆化領域104の形成前に設けてもよいし、形成後に設けてもよい。なお、窒素含有層上に酸化膜(例えば、酸化シリコン)を形成し、当該酸化膜の表面とベース基板120の表面とを接合させても良い。
【0103】
また、ベース基板120から単結晶半導体層124への不純物の混入が問題とならない場合には、ベース基板120上に窒素含有層121を設けずに、単結晶半導体基板100上に設けられた酸化膜132の表面とベース基板120の表面とを接合させてもよい。
【0104】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
【0105】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で作製したSOI基板を用いて、半導体装置を作製する方法を説明する。
【0106】
まず、図4および図5を参照して、nチャネル型薄膜トランジスタ、およびpチャネル型薄膜トランジスタを作製する方法を説明する。複数の薄膜トランジスタ(TFT)を組み合わせることで、各種の半導体装置を形成することができる。
【0107】
本実施の形態では、SOI基板として図3の工程を用いて作製したSOI基板を用いる場合について説明する。もちろん、上記実施の形態で示した他の方法で作製したSOI基板を用いることも可能である。
【0108】
図4(A)は、図3を用いて説明した方法で作製されたSOI基板の断面図である。
【0109】
まず、エッチングにより、単結晶半導体層124を素子分離して、図4(B)に示すように半導体層251、252を形成する。半導体層251はnチャネル型のTFTを構成し、半導体層252はpチャネル型のTFTを構成する。
【0110】
図4(C)に示すように、半導体層251、252上にゲート絶縁膜として機能する絶縁膜254を形成する。次に、絶縁膜254を介して半導体層251上にゲート電極255を形成し、半導体層252上にゲート電極256を形成する。
【0111】
なお、単結晶半導体層124のエッチングを行う前に、TFTのしきい値電圧を制御するために、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどの不純物元素、またはリン、ヒ素などの不純物元素を単結晶半導体層124に添加することが好ましい。例えば、nチャネル型TFTが形成される領域に不純物元素を添加し、pチャネル型TFTが形成される領域に不純物元素を添加する。
【0112】
絶縁膜254は、CVD法、スパッタリング法又は熱酸化法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の絶縁膜を用いて単層又は積層構造で設けることができる。
【0113】
また、絶縁膜254は、半導体層251、252に対しプラズマ処理を行うことにより、表面を酸化又は窒化することで形成してもよい。例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素(NO)、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを導入したプラズマ処理で形成する。この場合のプラズマの励起は、マイクロ波の導入により行うと、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、単結晶半導体層の表面を酸化または窒化することができる。このような高密度のプラズマを用いた処理により、1nm以上20nm以下、代表的には5nm以上10nm以下の絶縁膜が単結晶半導体層に形成される。この場合の反応は、固相反応であるため、当該絶縁膜と単結晶半導体層との界面準位密度をきわめて低くすることができる。このような高密度プラズマ処理は、単結晶半導体層を直接酸化(または窒化)するため、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを極めて小さくすることができる。このような高密度プラズマ処理により単結晶半導体層の表面を固相酸化することにより、均一性が良く、界面準位密度が低い絶縁膜を形成することができる。
【0114】
なお、絶縁膜254は、高密度プラズマ処理によって形成される絶縁膜のみを用いても良いし、それにCVD法やスパッタリング法等で酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンの絶縁膜のいずれか一つ又は複数を堆積し、積層させても良い。いずれにしても、高密度プラズマで形成した絶縁膜をゲート絶縁膜の一部または全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを小さくすることができる。
【0115】
次に、図4(D)に示すように半導体層251にn型の低濃度不純物領域257を形成し、半導体層252にp型の高濃度不純物領域259を形成する。具体的には、まず、半導体層251にn型の低濃度不純物領域257を形成する。このため、pチャネル型TFTとなる半導体層252をレジストでマスクし、不純物元素を半導体層251に添加する。不純物元素としてリンまたはヒ素を添加すればよい。イオンドーピング法またはイオン注入法により不純物元素を添加することにより、ゲート電極255がマスクとなり、半導体層251に自己整合的にn型の低濃度不純物領域257が形成される。半導体層251のゲート電極255と重なる領域はチャネル形成領域258となる。
【0116】
次に、半導体層252を覆うマスクを除去した後、nチャネル型TFTとなる半導体層251をレジストマスクで覆う。次に、イオンドーピング法またはイオン注入法により不純物元素を半導体層252に添加する。不純物元素として、ボロンを添加することができる。不純物元素の添加工程では、ゲート電極256がマスクとして機能して、半導体層252にp型の高濃度不純物領域259が自己整合的に形成される。高濃度不純物領域259はソース領域またはドレイン領域として機能する。半導体層252のゲート電極256と重なる領域はチャネル形成領域260となる。ここでは、n型の低濃度不純物領域257を形成した後、p型の高濃度不純物領域259を形成する方法を説明したが、先にp型の高濃度不純物領域259を形成することもできる。
【0117】
次に、半導体層251を覆うレジストを除去した後、プラズマCVD法等によって窒化シリコン等の窒素化合物や酸化シリコン等の酸化物からなる単層構造または積層構造の絶縁膜を形成する。この絶縁膜を垂直方向の異方性エッチングすることで、図5(A)に示すように、ゲート電極255、256の側面に接するサイドウォール絶縁膜261、262を形成する。この異方性エッチングにより、絶縁膜254もエッチングされる。
【0118】
次に、図5(B)に示すように、半導体層252をレジスト265で覆う。半導体層251にソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度不純物領域を形成するため、イオン注入法またはイオンドーピング法により、半導体層251に高ドーズ量で不純物元素を添加する。ゲート電極255およびサイドウォール絶縁膜261がマスクとなり、n型の高濃度不純物領域267が形成される。次に、不純物元素の活性化のための加熱処理を行う。
【0119】
活性化の加熱処理の後、図5(C)に示すように、水素を含んだ絶縁膜268を形成する。絶縁膜268を形成後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行い、絶縁膜268中に含まれる水素を半導体層251、252中に拡散させる。絶縁膜268は、プロセス温度が350℃以下のプラズマCVD法により窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを堆積することで形成できる。半導体層251、252に水素を供給することで、半導体層251、252中および絶縁膜254との界面での捕獲中心となるような欠陥を効果的に補償することができる。
【0120】
その後、層間絶縁膜269を形成する。層間絶縁膜269は、酸化シリコン膜、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)膜などの無機材料でなる絶縁膜、または、ポリイミド、アクリルなどの有機樹脂膜から選ばれた単層構造の膜、積層構造の膜で形成することができる。層間絶縁膜269にコンタクトホールを形成した後、図5(C)に示すように配線270を形成する。配線270の形成には、例えば、アルミニウム膜またはアルミニウム合金膜などの低抵抗金属膜をバリアメタル膜で挟んだ3層構造の導電膜で形成することができる。バリアメタル膜は、モリブデン、クロム、チタンなどの金属膜で形成することができる。
【0121】
以上の工程により、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTを有する半導体装置を作製することができる。
【0122】
また、半導体装置の作製に用いるSOI基板として、上記実施の形態1で作製したSOI基板を用いることによって、チャネル形成領域を構成する半導体層中に含まれる炭素等の不純物元素の濃度を低減することができるため、良好な特性を有するTFTを作製することができる。例えば、チャネル形成領域を構成する半導体層の炭素濃度は、1×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは2.5×1018atoms/cm以下であれば良い。
【0123】
図4及び図5を参照してTFTの作製方法を説明したが、TFTの他、容量、抵抗などTFTと共に各種の半導体素子を形成することで、高付加価値の半導体装置を作製することができる。以下、図面を参照しながら半導体装置の具体的な態様を説明する。
【0124】
まず、半導体装置の一例として、マイクロプロセッサについて説明する。図6はマイクロプロセッサ500の構成例を示すブロック図である。
【0125】
マイクロプロセッサ500は、演算回路501(Arithmetic logic unit。ALUともいう。)、演算回路制御部502(ALU Controller)、命令解析部503(Instruction Decoder)、割り込み制御部504(Interrupt Controller)、タイミング制御部505(Timing Controller)、レジスタ506(Register)、レジスタ制御部507(Register Controller)、バスインターフェース508(Bus I/F)、読み出し専用メモリ509、およびメモリインターフェース510を有している。
【0126】
バスインターフェース508を介してマイクロプロセッサ500に入力された命令は、命令解析部503に入力され、デコードされた後、演算回路制御部502、割り込み制御部504、レジスタ制御部507、タイミング制御部505に入力される。演算回路制御部502、割り込み制御部504、レジスタ制御部507、タイミング制御部505は、デコードされた命令に基づき様々な制御を行う。
【0127】
演算回路制御部502は、演算回路501の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部504は、マイクロプロセッサ500のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を処理する回路であり、割り込み制御部504は、割り込み要求の優先度やマスク状態を判断して、割り込み要求を処理する。レジスタ制御部507は、レジスタ506のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ500の状態に応じてレジスタ506の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部505は、演算回路501、演算回路制御部502、命令解析部503、割り込み制御部504、およびレジスタ制御部507の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば、タイミング制御部505は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えている。図6に示すように、内部クロック信号CLK2は他の回路に入力される。
【0128】
次に、非接触でデータの送受信を行う機能、および演算機能を備えた半導体装置の一例を説明する。図7は、このような半導体装置の構成例を示すブロック図である。図7に示す半導体装置は、無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作するコンピュータ(以下、「RFCPU」という)と呼ぶことができる。
【0129】
図7に示すように、RFCPU511は、アナログ回路部512とデジタル回路部513を有している。アナログ回路部512として、共振容量を有する共振回路514、整流回路515、定電圧回路516、リセット回路517、発振回路518、復調回路519、変調回路520、電源管理回路530を有している。デジタル回路部513は、RFインターフェース521、制御レジスタ522、クロックコントローラ523、CPUインターフェース524、中央処理ユニット525、ランダムアクセスメモリ526、読み出し専用メモリ527を有している。
【0130】
RFCPU511の動作の概要は以下の通りである。共振回路514はアンテナ528が受信した信号を電送する電磁波に基づいて誘導起電力を生じる。誘導起電力は、整流回路515を経て容量部529に充電される。この容量部529はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサーなどのキャパシタで形成されていることが好ましい。容量部529は、RFCPU511を構成する基板に集積されている必要はなく、他の部品としてRFCPU511に組み込むこともできる。
【0131】
リセット回路517は、デジタル回路部513をリセットし初期化する信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路518は、定電圧回路516により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路519は、受信信号を復調する回路であり、変調回路520は、送信するデータを変調する回路である。
【0132】
例えば、復調回路519はローパスフィルタで形成され、振幅変調(ASK)方式の受信信号を、その振幅の変動をもとに、二値化する。また、送信データを振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信するため、変調回路520は、共振回路514の共振点を変化させることで通信信号の振幅を変化させている。
【0133】
クロックコントローラ523は、電源電圧または中央処理ユニット525における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路530が行っている。
【0134】
アンテナ528からRFCPU511に入力された信号は復調回路519で復調された後、RFインターフェース521で制御コマンドやデータなどに分解される。制御コマンドは制御レジスタ522に格納される。制御コマンドには、読み出し専用メモリ527に記憶されているデータの読み出し、ランダムアクセスメモリ526へのデータの書き込み、中央処理ユニット525への演算命令などが含まれている。
【0135】
中央処理ユニット525は、CPUインターフェース524を介して読み出し専用メモリ527、ランダムアクセスメモリ526、制御レジスタ522にアクセスする。CPUインターフェース524は、中央処理ユニット525が要求するアドレスより、読み出し専用メモリ527、ランダムアクセスメモリ526、制御レジスタ522のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0136】
中央処理ユニット525の演算方式は、読み出し専用メモリ527にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、専用回路で演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の演算処理を行い、プログラムを使って、残りの演算を中央処理ユニット525が処理する方式を適用できる。
【0137】
次に、図8、図9を用いて、表示装置について説明する。
【0138】
図8は液晶表示装置を説明するための図面である。図8(A)は液晶表示装置の画素の平面図であり、図8(B)は、J−K切断線による図8(A)の断面図である。
【0139】
図8(A)に示すように、画素は、単結晶半導体層320、単結晶半導体層320と交差している走査線322、走査線322と交差している信号線323、画素電極324、画素電極324と単結晶半導体層320を電気的に接続する電極328を有する。単結晶半導体層320は、ベース基板120上に設けられた単結晶半導体層から形成された層であり、画素のTFT325を構成する。
【0140】
SOI基板には上記実施の形態で示したSOI基板が用いられている。図8(B)に示すように、ベース基板120上に、酸化膜132及び窒素含有層121を介して単結晶半導体層320が積層されている。ベース基板120としては、ガラス基板を用いることができる。TFT325の単結晶半導体層320は、SOI基板の単結晶半導体層をエッチングにより素子分離して形成された膜である。単結晶半導体層320には、チャネル形成領域340、不純物元素が添加されたn型の高濃度不純物領域341が形成されている。TFT325のゲート電極は走査線322と同じ層で一体的に形成され、ソース電極およびドレイン電極の一方は信号線323と同じ層で一体的に形成されている。
【0141】
層間絶縁膜327上には、信号線323、画素電極324および電極328が設けられている。層間絶縁膜327上には、柱状スペーサ329が形成されている。信号線323、画素電極324、電極328および柱状スペーサ329を覆って配向膜330が形成されている。対向基板332には、対向電極333、対向電極を覆う配向膜334が形成されている。柱状スペーサ329は、ベース基板120と対向基板332の隙間を維持するために形成される。柱状スペーサ329によって形成される隙間に液晶層335が形成されている。信号線323および電極328と高濃度不純物領域341との接続部は、コンタクトホールの形成によって層間絶縁膜327に段差が生じるので、この接続部では液晶層335の液晶の配向が乱れやすい。そのため、この段差部に柱状スペーサ329を形成して、液晶の配向の乱れを防ぐ。
【0142】
次に、エレクトロルミネセンス表示装置(以下、EL表示装置という。)について図9を参照して説明する。図9(A)はEL表示装置の画素の平面図であり、図9(B)は、J−K切断線による図9(A)の断面図である。
【0143】
図9(A)に示すように、画素は、TFTでなる選択用トランジスタ401、表示制御用トランジスタ402、走査線405、信号線406、および電流供給線407、画素電極408を含む。エレクトロルミネセンス材料を含んで形成される層(EL層)が一対の電極間に挟んだ構造の発光素子が各画素に設けられている。発光素子の一方の電極が画素電極408である。また、半導体層403は、選択用トランジスタ401のチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成されている。半導体層404は、表示制御用トランジスタ402のチャネル形成領域、ソース領域およびドレイン領域が形成されている。半導体層403、404は、ベース基板上に設けられた単結晶半導体層124から形成された層である。
【0144】
選択用トランジスタ401において、ゲート電極は走査線405と同じ層で一体的に形成され、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線406と同じ層で一体的に形成され、他方は電極411として形成されている。表示制御用トランジスタ402は、ゲート電極412が電極411と電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極の一方は、画素電極408に電気的に接続される電極413として形成され、他方は、電流供給線407と同じ層で一体的に形成されている。
【0145】
表示制御用トランジスタ402はpチャネル型のTFTである。図9(B)に示すように、半導体層404には、チャネル形成領域451、およびp型の高濃度不純物領域452が形成されている。なお、SOI基板は、実施の形態で作製したSOI基板が用いられている。
【0146】
表示制御用トランジスタ402のゲート電極412を覆って、層間絶縁膜427が形成されている。層間絶縁膜427上に、信号線406、電流供給線407、電極411、413などが形成されている。また、層間絶縁膜427上には、電極413に電気的に接続されている画素電極408が形成されている。画素電極408は周辺部が絶縁性の隔壁層428で囲まれている。画素電極408上にはEL層429が形成され、EL層429上には対向電極430が形成されている。補強板として対向基板431が設けられており、対向基板431は樹脂層432によりベース基板120に固定されている。
【0147】
EL表示装置の階調の制御は、発光素子の輝度を電流で制御する電流駆動方式と、電圧でその輝度を制御する電圧駆動方式とがあるが、電流駆動方式は、画素ごとでトランジスタの特性値の差が大きい場合、採用することは困難であり、そのためには特性のばらつきを補正する補正回路が必要になる。SOI基板の作製工程を含む製造方法でEL表示装置を作製することで、選択用トランジスタ401および表示制御用トランジスタ402は画素ごとに特性のばらつきがなくなるため、電流駆動方式を採用することができる。
【0148】
つまり、SOI基板を用いることで、様々な電気機器を作製することができる。電気機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)などの記録媒体に記憶された音声データを再生し、かつ記憶された画像データを表示しうる表示装置を備えた装置などが含まれる。それらの一例を図10に示す。
【0149】
図10は、本発明を適用した携帯電話の一例であり、図10(A)が正面図、図10(B)が背面図、図10(C)が2つの筐体をスライドさせたときの正面図である。携帯電話は、筐体701及び筐体702二つの筐体で構成されている。携帯電話は、携帯電話と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な所謂スマートフォンである。
【0150】
携帯電話は、筐体701及び筐体702で構成されている。筐体701においては、表示部703、スピーカ704、マイクロフォン705、操作キー706、ポインティングデバイス707、表面カメラ用レンズ708、外部接続端子ジャック709及びイヤホン端子710等を備え、筐体702においては、キーボード711、外部メモリスロット712、裏面カメラ713、ライト714等により構成されている。また、アンテナは筐体701に内蔵されている。
【0151】
また、携帯電話には、上記の構成に加えて、非接触型ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
【0152】
重なり合った筐体701と筐体702(図10(A)に示す)は、スライドさせることが可能であり、スライドさせることで図10(C)のように展開する。表示部703には、実施の形態3で説明した表示装置の作製方法を適用した表示パネル又は表示装置を組み込むことが可能である。表示部703と表面カメラ用レンズ708を同一の面に備えているため、テレビ電話としての使用が可能である。また、表示部703をファインダーとして用いることで、裏面カメラ713及びライト714で静止画及び動画の撮影が可能である。
【0153】
スピーカ704及びマイクロフォン705を用いることで、携帯電話は、音声記録装置(録音装置)又は音声再生装置として使用することができる。また、操作キー706により、電話の発着信操作、電子メール等の簡単な情報入力操作、表示部に表示する画面のスクロール操作、表示部に表示する情報の選択等を行うカーソルの移動操作等が可能である。
【0154】
また、書類の作成、携帯情報端末としての使用等、取り扱う情報が多い場合は、キーボード711を用いると便利である。更に、重なり合った筐体701と筐体702(図10(A))をスライドさせることで、図10(C)のように展開させることができる。携帯情報端末として使用する場合には、キーボード711及びポインティングデバイス707を用いて、円滑な操作が可能である。外部接続端子ジャック709はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット712に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動が可能になる。
【0155】
筐体702の裏面(図10(B))には、裏面カメラ713及びライト714を備え、表示部703をファインダーとして静止画及び動画の撮影が可能である。
【0156】
また、上記の機能構成に加えて、赤外線通信機能、USBポート、テレビワンセグ受信機能、非接触ICチップ又はイヤホンジャック等を備えたものであってもよい。
【0157】
図10において説明した電子機器は、上述したトランジスタ及び表示装置の作製方法を適用して作製することができる。
【0158】
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
【実施例1】
【0159】
本実施例では、レーザー光の照射工程において単結晶半導体層の溶融回数を1回とすることによる、不純物元素取り込みの抑制効果を確認した。具体的には、レーザー光を照射する際に、単結晶半導体層の溶融回数を1回とする場合と、溶融回数を複数回(10回)とする場合について、単結晶半導体層中に取り込まれた不純物に起因する炭素濃度プロファイルを比較した。
【0160】
以下、本実施例のSOI基板の製造方法について説明する。
【0161】
まず、単結晶半導体基板を準備し、当該単結晶半導体基板を熱酸化処理して絶縁層として機能する酸化シリコン膜を形成した。熱酸化処理の温度は、950℃とし、絶縁層の膜厚は100nmとした。また、熱酸化処理の雰囲気は酸素に対しHClを3体積%の割合で含む雰囲気とした。
【0162】
本実施例においては、単結晶半導体基板として単結晶シリコンウエハを用いて、ベース基板上に単結晶シリコン層を形成した。単結晶シリコンウエハは、5インチ角の四角い基板である。また、その結晶方位は、主表面が(100)であり、側面が<110>であり、導電型はP型である。
【0163】
単結晶半導体基板を熱酸化処理した後、単結晶半導体基板に脆化領域を形成するために、イオンドーピング装置を用い、水素イオンを照射した。ソースガスには100%水素ガスを用い、水素ガスを励起して生成されたプラズマ中のイオンを質量分離せずに、電界で加速して単結晶半導体基板に照射して、脆化領域を形成した。なお、イオンドーピング装置を用いて水素ガスを励起することで、3種類のイオン種(H、H、H)を生成し、このうち70%程度をHとした。水素イオンドーピングの条件は、加速電圧50kV、ビーム電流密度5μA/cm、ドーズ量1.8×1016ions/cmとした。
【0164】
次いで、ベース基板、及び単結晶半導体基板を純水中で超音波洗浄した後、オゾンを含む純水中で洗浄し、ベース基板表面と単結晶半導体基板上に形成された絶縁層とを密着させて、接合した。
【0165】
なお、本実施例においては、ベース基板として無アルカリガラス基板(商品名AN100)を用いた。AN100は、比重2.51g/cm、ポワソン比0.22、ヤング率77GPa、二軸弾性係数98.7GPa、熱膨張率38×10−7/℃といった物性値を有するガラス基板である。
【0166】
次いで、加熱炉において、200℃、2時間の加熱処理を行い、ベース基板と酸化シリコン膜の結合強度を向上させた。引き続き、加熱炉において600℃、2時間の加熱処理を行うことで、脆化領域を境として単結晶半導体基板を分離し、ベース基板上に絶縁層を介して単結晶半導体層を形成した。単結晶半導体層の膜厚は140nm程度とした。
【0167】
次いで、1/100に希釈されたフッ酸で単結晶半導体層の表面を処理して、表面に形成された自然酸化膜を除去した。続いて、単結晶半導体層にレーザー光を照射して、単結晶半導体層を溶融させて、再結晶化させた。
【0168】
レーザー発振器には、波長308nmのビームを発振するXeClエキシマレーザーを用い、光学系により、被照射面でのビーム形状がおおよそ300μm×130mmの線状となるように集光した。レーザー光のパルス幅は20nsecであり、繰り返し周波数は30Hzである。また、レーザー光の照射は、室温で窒素ガスを照射領域に吹き付けながら行い、照射面におけるエネルギー密度は、679mJ/cmであった。
【0169】
単結晶半導体層の溶融回数を1回とする場合には、単結晶半導体層にレーザー光を1ショット照射した。また、単結晶半導体層の溶融回数を10回とする場合には、レーザー光は走査させず、単結晶半導体層の一領域あたりにレーザー光を10ショット照射した。本実施例においては、レーザー光の繰り返し周波数が30Hzと低く、1つのショットと次のショットの間に単結晶半導体層の表層部が固化するため、同一領域あたりに10ショットのレーザー光を照射することで、同一領域あたりの単結晶半導体層の溶融回数を10回とすることができる。
【0170】
レーザー光の照射処理前後における単結晶半導体層の不純物元素濃度を確認するために、単結晶半導体層の炭素濃度を二次イオン質量分析法(SIMS、Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析した。図11に、SIMS分析による単結晶半導体層の深さ方向の炭素濃度プロファイルを示す。図11において、縦軸は炭素濃度を示し、横軸は単結晶半導体層表面からの深さを示す。また、図11において、細い実線のグラフは、表面酸化膜の除去後レーザー光を照射する前の単結晶半導体層における炭素濃度プロファイルを、太い実線のグラフは、溶融回数が1回の単結晶半導体層における炭素濃度プロファイルを、太い破線のグラフは、溶融回数が10回の単結晶半導体層における炭素濃度プロファイルをそれぞれ示す。
【0171】
図11より、酸化膜を除去した後にレーザー光を照射し、単結晶半導体層の溶融回数を1回とした場合には、レーザー光未照射の単結晶半導体層中の炭素濃度とほぼ同等の炭素濃度を示し、レーザー光の照射による炭素濃度の増加が抑制されていることがわかる。一方、酸化膜を除去した後にレーザー光を照射し、単結晶半導体層の溶融回数を10回とした場合には、レーザー光未照射の単結晶半導体層と比較して、炭素濃度の増加が見られた。これは、一度溶融した単結晶半導体層の固化に伴い形成された表面酸化膜中の炭素原子が、以後の溶融過程によって単結晶半導体層中に取り込まれたためである。
【0172】
また、図11より、単結晶半導体層の溶融回数を1回とした場合には、単結晶半導体層中に含まれる炭素濃度が概ね5×1018atoms/cm以下であり、炭素濃度の増加を十分に抑制することができると言える。
【0173】
なお、本実施例で示した構成は、本明細書の他の実施の形態及び実施例で示す構成を適宜組み合わせることができる。
【実施例2】
【0174】
本実施例では、ベース基板に設けられた単結晶半導体層にレーザー光を照射し、単結晶半導体層に含まれる炭素の量を測定した結果について示す。
【0175】
本実施例で評価した試料について説明する。まず、単結晶半導体基板として単結晶シリコン基板を用い、単結晶シリコン基板の表面に自然に形成されてしまった自然酸化膜を除去した後、ヒドロキシラジカルを含むオゾン水に120秒程度晒すことにより、単結晶シリコン基板表面に酸化シリコン膜を形成した。
【0176】
次に、単結晶シリコン基板に酸化膜を介してイオンドーピング法を用いて水素イオンを照射することにより、単結晶シリコン基板中に脆化領域を形成した。詳細な条件は、イオンドーピング装置を用い、加速電圧80kV、ドーズ量2.2×1016ions/cm、ビーム電流密度5μA/cm、水素ガス流量50sccmとして行った。次に、単結晶シリコン基板に形成されている酸化シリコン膜を除去した後、TEOS及びOを用い、酸化シリコン膜を100nm形成し、酸化シリコン膜上に窒化酸化シリコン膜を50nm形成した。
【0177】
次に、ベース基板としてガラス基板を用い、脆化領域が形成された側の窒化酸化シリコン膜とガラス基板とを接合させて、熱処理を行った後、脆化領域において分離することによって、ガラス基板上に窒化酸化シリコン膜及び酸化シリコン膜を介して単結晶シリコン層が設けられたSOI基板を作製した。分離後の単結晶シリコン層の膜厚は、320nmとした。
【0178】
次に、ガラス基板上に設けられた単結晶シリコン層に形成された酸化膜を除去した後にレーザー光を照射した。本実施例で用いたレーザー発振器は、連続発振のNd:YVOレーザーである。また、レーザー光の波長は532nm、ビーム形状は長軸が0.5mm、短軸が20μm、走査速度が80cm/sec、レーザー光の出力は23.5W、照射雰囲気は大気雰囲気であった。また、レーザー光の一領域あたりへの照射時間は、走査速度及びビームの短軸からから求めることができる。本実施例においては、ビームの短軸20μmで、走査速度が80cm/secであるため、単結晶シリコン層の一領域あたりの照射時間は、25μsとなる。
【0179】
次に、レーザー光を照射した後の単結晶シリコン層に含まれる炭素の濃度について、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)を用いて測定を行った。また、比較のため、表面酸化膜の除去後レーザー光の照射を行っていない単結晶シリコン層についても二次イオン質量分析法を用いて炭素の濃度を測定した。
【0180】
図12に、ガラス基板上に形成された単結晶シリコン膜におけるSIMS分析による炭素の濃度深さ方向プロファイルを示す。図12において、横軸は単結晶シリコン層の深さ(nm)を示し、縦軸は炭素濃度(atoms/cm)を示す。また、図12において、細い実線で示したグラフは、レーザー光の照射を行っていない単結晶シリコン層に含まれる炭素濃度のプロファイルを示しており、太い実線で示したグラフは、レーザー光を照射した後の単結晶シリコン層に含まれる炭素濃度のプロファイルを示している。なお、単結晶シリコン層の膜厚は320nmであるため、320nmより深い領域は酸化シリコン膜の領域である。
【0181】
図12より、レーザー光の照射を行っていない単結晶シリコン層に含まれる炭素濃度と、レーザー光の照射を行った単結晶シリコン層に含まれる炭素濃度は、ほぼ変わらないという結果が得られた。以上により、単結晶シリコン層に形成された酸化膜を除去した後に、レーザー光を照射することで、酸化膜中に含まれる炭素が、単結晶シリコン層中に取り込まれずにすむため、単結晶シリコン層に含まれる炭素の濃度の増加を抑制することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0182】
100 単結晶半導体基板
102 絶縁層
103 イオン
104 脆化領域
120 ベース基板
121 窒素含有層
124 単結晶半導体層
126 酸化膜
128 酸化膜
130 レーザー光
132 酸化膜
251 半導体層
252 半導体層
254 絶縁膜
255 ゲート電極
256 ゲート電極
257 低濃度不純物領域
258 チャネル形成領域
259 高濃度不純物領域
260 チャネル形成領域
261 サイドウォール絶縁膜
265 レジスト
267 高濃度不純物領域
268 絶縁膜
269 層間絶縁膜
270 配線
320 単結晶半導体層
322 走査線
323 信号線
324 画素電極
325 TFT
327 層間絶縁膜
328 電極
329 柱状スペーサ
330 配向膜
332 対向基板
333 対向電極
334 配向膜
335 液晶層
340 チャネル形成領域
341 高濃度不純物領域
400 室温以上
401 選択用トランジスタ
402 表示制御用トランジスタ
403 半導体層
404 半導体層
405 走査線
406 信号線
407 電流供給線
408 画素電極
410 電極
411 電極
412 ゲート電極
413 電極
427 層間絶縁膜
428 隔壁層
429 EL層
430 対向電極
431 対向基板
432 樹脂層
451 チャネル形成領域
452 高濃度不純物領域
500 マイクロプロセッサ
501 演算回路
502 演算回路制御部
503 命令解析部
504 制御部
505 タイミング制御部
506 レジスタ
507 レジスタ制御部
508 バスインターフェース
509 専用メモリ
510 メモリインターフェース
511 RFCPU
512 アナログ回路部
513 デジタル回路部
514 共振回路
515 整流回路
516 定電圧回路
517 リセット回路
518 発振回路
519 復調回路
520 変調回路
521 RFインターフェース
522 制御レジスタ
523 クロックコントローラ
524 CPUインターフェース
525 中央処理ユニット
526 ランダムアクセスメモリ
527 専用メモリ
528 アンテナ
529 容量部
530 電源管理回路
701 筐体
702 筐体
703 表示部
704 スピーカ
705 マイクロフォン
706 操作キー
707 ポインティングデバイス
708 表面カメラ用レンズ
709 外部接続端子ジャック
710 イヤホン端子
711 キーボード
712 外部メモリスロット
713 裏面カメラ
714 ライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することにより、前記単結晶半導体基板中に脆化領域を形成し、
前記単結晶半導体基板とベース基板とを絶縁層を介して貼り合わせ、
前記単結晶半導体基板を加熱し、前記脆化領域を境として分離することにより、前記ベース基板上に前記絶縁層を介して単結晶半導体層を形成し、
前記単結晶半導体層上に形成された酸化膜を除去し、
前記酸化膜を除去した後に前記単結晶半導体層の表面にレーザー光を照射して前記単結晶半導体層の少なくとも表面を溶融させ、
前記レーザー光の照射による前記単結晶半導体層の溶融回数は1回であることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記単結晶半導体層の厚さは200nm以上であり、
前記レーザー光として、繰り返し周波数が10MHz以上のパルス発振のレーザー発振器又は連続発振のレーザー発振器から発振されたレーザー光を用いることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記レーザー光の照射によって、前記単結晶半導体層を部分溶融させることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記レーザー光を照射した単結晶半導体層の炭素濃度を5×1018atoms/cm以下にすることを特徴とするSOI基板の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記ベース基板としてガラス基板を用いることを特徴とするSOI基板の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−114431(P2010−114431A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229324(P2009−229324)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】