説明

半導体デバイス、表示装置及び半導体デバイスの製造方法

【課題】高融点メタルをバリア層として形成することなく、Si膜またはSiを主成分とする膜と良好なコンタクト特性を実現するAl合金膜を提供する。
【解決手段】半導体デバイスは、シリコンを主成分とする膜と、シリコンを主成分とする膜、例えば、オーミック低抵抗Si膜8と直接接続し、接続界面近傍に、少なくともAl、Ni、及びNを含むアルミニウム合金膜、例えば、ソース電極9またはドレイン電極10と、を有する。アルミニウム合金膜は、高融点メタルをバリア層として形成することなく、シリコンを主成分とする膜と直接接続して、良好なコンタクト特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等の電気光学表示装置や半導体部品等の半導体デバイスの構造およびその製造方法に関し、特にアルミニウム合金膜(以下、「Al合金膜」と記す)と、Si膜(シリコン膜)またはSiを主成分とする膜とを構成要素として含む半導体デバイスの構造および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスのひとつの例として、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と記す)をスイッチング素子として用いたアクティブマトリックス型TFTのディスプレイ用電気光学表示装置は、CRT(Cathod Ray Tube)に変わるフラットパネルディスプレイの一つとして、低消費電力や薄型であるという特徴を活かした製品への応用が盛んになされている。
【0003】
従来より、半導体デバイスを構成する配線や電極材料としては、例えばチタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)やこれらを主成分とする合金等の、いわゆる高融点金属材料が一般的に用いられてきた。これらの高融点メタルは、Si半導体膜との接続界面における界面拡散反応が殆どなく、半導体デバイス用の電極材料として好適に用いられてきた。しかしながら、近年、TVの大型化や携帯電話等の小型ディスプレイの高精細化が進む中で、配線材料の低抵抗化が要求されており、従来の高融点メタルの比抵抗値(一般に12〜60μΩ・cm)では好適とはいえなくなってきた。このため、ディスプレイ用の配線材料として、比抵抗が低く、配線パターン加工が容易であるアルミニウム(Al)またはAlを主成分とする合金であるAl合金膜が注目されるようになった。
【0004】
しかしながら、Al合金膜は、一般的にSi半導体膜やSiを主成分とする膜との接続界面において、激しく相互拡散反応して電気的特性を劣化させることが知られている。このため、Al合金膜をSi膜と接続させる場合には、上述の高融点メタルをバリア層として介する必要があった。また、ディスプレイ用光学表示装置の場合には、透過画素電極材料として一般的に用いられる酸化インジウム系、例えば、酸化インジウムと酸化すずを混合させたITO(Indium Tin Oxide)と配線材料(例えば、Al合金膜)とを接合する必要がある。この場合にも、Al合金膜はITOとの界面で拡散反応を生じさせ電気的特性を劣化させるため、同様に高融点メタルをバリア層として介する必要があった。
【0005】
以上のような高融点メタルをバリア層として用い、低抵抗のAl合金膜とを組み合わせてTFTのソース・ドレイン電極に適用した例が、例えば、特許文献1〜3に開示されている。これらの例では、下層にCr、Mo、Ti、Zrの高融点メタルを設けてSiに不純物を添加した低抵抗Si膜(オーミックコンタクトSi膜)およびITO膜と直接接続させた後に、低抵抗のAl系メタルを形成した積層膜の構成となっている。
【0006】
一方で、Al合金膜とITOとの界面拡散反応を防止し、良好な界面の電気的特性(コンタクト特性)を得るための方法が、例えば特許文献4、5に開示されている。これらの方法を用いれば、少なくともAl合金膜とITOとの直接接続のみが必要なデバイスにおいては、高融点メタルによるバリア層は必ずしも形成する必要はない。
【特許文献1】特開平6−236893号公報
【特許文献2】特開平7−30118号公報
【特許文献3】特開平8−62628号公報
【特許文献4】特開2003−89864号公報
【特許文献5】特開2004−214606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のAl合金膜の材料および製造工程の組合せでは、上述のように、Al合金膜とSi半導体膜およびSiを主成分とするSi膜との界面拡散反応が防止できないために、高融点メタルによるバリア層を形成しなければならなかった。このため、成膜工程やエッチング加工の工程が増え、生産能力の低下を招いていた。また、エッチング加工時のAl合金膜と高融点メタルとのエッチング速度の違いや、横方向に進行するサイドエッチング量の違い等により、エッチング加工断面の形状に凹凸ができていた。このため、微細加工が困難であった。
【0008】
さらに、エッチング加工断面の形状に凹凸ができることによって、上層に形成する膜のカバレッジ特性を劣化させていた。このように、従来のAl合金膜や製造方法では、高品質で高い信頼性を有する半導体デバイスを製造することが困難である等の問題点があった。
【0009】
なお、上述の特許文献4においては、ITOとのコンタクト特性の改善のみならず、Siとのコンタクト特性の改善効果も記載されている。しかしながら、本発明者の評価結果によると、Si半導体を用いたTFTのソース・ドレイン電極にAl合金膜を直接形成した場合、成膜直後ではSiとの界面での相互拡散反応は認められないものの、熱処理(大気中、もしくは窒素ガス雰囲気中で約30分間の保持)によって拡散反応が徐々に進行し、250℃を超える温度では、光学顕微鏡観察レベルでも拡散反応が認められた。また、200℃を超える温度では、光学顕微鏡観察レベルでは顕著な拡散反応は認められなかったが、TFTの電気特性を測定したところ、TFT特性、具体的には、一般的なId(ドレイン電流)−Vg(ゲート電圧)のオン/オフ特性に明確な劣化が認められた。一般的なディスプレイ用のアクティブマトリックスTFT基板の製造プロセスでは、通常少なくとも200℃以上のプロセス温度が含まれる。従って、このような半導体デバイスへの適用は耐熱性の面から実質的に困難であるという問題点があった。
【0010】
本発明は、高融点メタルをバリア層として形成することなく、Si膜またはSiを主成分とする膜と良好なコンタクト特性を実現するAl合金膜、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体デバイスの一態様は、シリコン(Si)を主成分とする膜と、前記Siを主成分とする膜と直接接続し、接続界面近傍に、少なくともAl、ニッケル(Ni)、及び窒素(N)を含むアルミニウム合金膜と、を有する。また、本発明に係る表示装置の一態様は、前記半導体デバイスを用いたものである。
【0012】
また、本発明に係る半導体デバイスの製造方法の一態様は、Siを主成分とする膜を形成する工程と、前記Siを主成分とする膜と直接接続させ、前記Siを主成分とする膜と接続する接続界面近傍に、少なくともAl、Ni、及びNを含むアルミニウム合金膜を形成する工程と、を有する。さらに、本発明に係る半導体デバイスの製造方法の別の一態様は、積層する膜との境界面近傍に、少なくともAl、Ni、及びNを含むアルミニウム合金膜を形成する工程と、前記境界面の表面の少なくとも一部分に直接接続するようにSiを主成分とする膜を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高融点メタルをバリア層として形成することなく、Si膜またはSiを主成分とする膜と良好なコンタクト特性を実現するAl合金膜、及びその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0015】
始めに、図1を用いて、本発明に係る半導体デバイスを用いる表示装置の一例について説明する。図1は、表示装置に用いられるTFTアレイ基板の構成例を示す正面図である。本発明に係る表示装置は、液晶表示装置を例として説明するが、あくまでも例示的なものであり、有機EL表示装置等の平面型表示装置(フラットパネルディスプレイ)等を用いることも可能である。
【0016】
図1に示す液晶表示装置は、基板40を有している。基板40は、例えば、TFTアレイ基板等のアレイ基板である。基板40には、表示領域41と表示領域41を囲むように設けられた額縁領域42とが設けられている。この表示領域41には、複数のゲート配線(走査信号線)43と複数のソース配線(表示信号線)44とが形成されている。複数のゲート配線43は平行に設けられている。同様に、複数のソース配線44は平行に設けられている。ゲート配線43とソース配線44とは、互いに交差するように形成されている。ゲート配線43とソース配線44とは直交している。隣接するゲート配線43とソース配線44とで囲まれた領域が画素47となる。従って、基板40では、画素47がマトリクス状に配列される。
【0017】
基板40の額縁領域42には、走査信号駆動回路45と表示信号駆動回路46とが設けられている。ゲート配線43は、表示領域41から額縁領域42まで延設され、基板40の端部で、走査信号駆動回路45に接続される。ソース配線44も同様に、表示領域41から額縁領域42まで延設され、基板40の端部で、表示信号駆動回路46と接続される。走査信号駆動回路45の近傍には、外部配線48が接続されている。また、表示信号駆動回路46の近傍には、外部配線49が接続されている。外部配線48、49は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)等の配線基板である。
【0018】
外部配線48、49を介して走査信号駆動回路45、及び表示信号駆動回路46に外部からの各種信号が供給される。走査信号駆動回路45は外部からの制御信号に基づいて、ゲート信号(走査信号)をゲート配線43に供給する。このゲート信号によって、ゲート配線43が順次選択されていく。表示信号駆動回路46は外部からの制御信号や、表示データに基づいて表示信号をソース配線44に供給する。これにより、表示データに応じた表示電圧を各画素47に供給することができる。
【0019】
画素47内には、少なくとも1つのTFT50が形成されている。TFT50はソース配線44とゲート配線43の交差点近傍に配置される。例えば、このTFT50が画素電極に表示電圧を供給する。即ち、ゲート配線43からのゲート信号によって、スイッチング素子であるTFT50がオンする。これにより、ソース配線44から、TFT50のドレイン電極に接続された画素電極に表示電圧が印加される。画素電極と対向電極との間には、表示電圧に応じた電界が生じる。なお、基板40の表面には、配向膜(図示せず)が形成されている。
【0020】
更に、基板40には、対向基板が対向して配置されている。対向基板は、例えば、カラーフィルタ基板であり、視認側に配置される。対向基板には、カラーフィルタ、ブラックマトリクス(BM)、対向電極、及び配向膜等が形成されている。なお、対向電極は、基板40側に配置される場合もある。基板40と対向基板との間には液晶層が狭持される。即ち、基板40と対向基板との間には液晶が導入されている。更に、基板40と対向基板との外側の面には、偏光板、及び位相差板等が設けられる。また、液晶表示パネルの反視認側には、バックライトユニット等が配設される。
【0021】
画素電極と対向電極との間の電界によって、液晶が駆動される。即ち、基板間の液晶の配向方向が変化する。これにより、液晶層を通過する光の偏光状態が変化する。即ち、偏光板を通過して直線偏光となった光は液晶層によって、偏光状態が変化する。具体的には、バックライトユニットからの光は、アレイ基板側の偏光板によって直線偏光になる。この直線偏光が液晶層を通過することによって、偏光状態が変化する。
【0022】
偏光状態によって、対向基板側の偏光板を通過する光量は変化する。即ち、バックライトユニットから液晶表示パネルを透過する透過光のうち、視認側の偏光板を通過する光の光量が変化する。液晶の配向方向は、印加される表示電圧によって変化する。従って、表示電圧を制御することによって、視認側の偏光板を通過する光量を変化させることができる。即ち、画素ごとに表示電圧を変えることによって、所望の画像を表示することができる。以上が表示装置の概略である。以下、表示装置に用いる、本発明に係る半導体デバイス及びその製造方法の各態様ついて説明する。
【0023】
実施の形態1
本発明の実施の形態1として、表示素子に液晶を用いる液晶表示装置用アクティブマトリックス型TFT基板を例にとって詳しく説明する。図2はその平面構造の一例を示す図であり、図3は、図2のA−A断面等の構造を示す図である。図3に示す断面図では、TFT基板の製造工程の説明を容易にするため、図2に示すA−A断面、B−B断面及びC−C断面を示している。具体的には、図3において、TFT及び画素部分を含むA−A断面(右側)に加え、ゲート端子部4を含むB−B断面(左側)、及びソース端子部13を含むC−C断面(中間)を示している。以降の説明で用いる断面図についても同様に複数の断面を示している。
【0024】
図2、または図3において、透明絶縁性基板1は、ガラスやプラスチック等からなる基板である。該透明絶縁性基板1上には、メタル膜からなるゲート電極2、該ゲート電極2につながるゲート配線3、該ゲート配線3とつながり映像の走査信号を入力するためのゲート端子部4、および補助容量電極5が少なくとも形成されている。また、これらの上層にゲート絶縁膜6が形成されている。また、Si半導体膜7は、ゲート絶縁膜6を介して下層のゲート電極2近傍に形成されたTFTの構成要素となる。オーミック低抵抗Si膜8はSiに不純物を添加した半導体膜である。ソース電極9およびドレイン電極10はAl合金膜からなり、それぞれオートミック低抵抗Si膜8と直接接続されている。
【0025】
TFTのチャネル部11はソース電極9とドレイン電極10が分離され、さらにオーミック低抵抗Si膜8が除去された領域に構成されている。ソース配線12はソース電極9につながる配線である。図3では、ソース電極9とソース配線12の境界を明示していない。ソース端子部13は該ソース配線12とつながり外部から映像信号を入力する。層間絶縁膜14はチャネル部11を含む基板全体を覆うように形成される。
【0026】
開口部が、該層間絶縁膜14に複数(図3では3つ)形成されている。画素ドレインコンタクトホール15は下層のドレイン電極10にまで達する開口部である。ゲート端子部コンタクトホール16はゲート端子部4にまで達する開口部である。ソース端子部コンタクトホール17はソース端子部13にまで達する開口部である。また、透過画素電極18は、画素ドレインコンタクトホール15を介してドレイン電極10と接続された透明導電膜である。ゲート端子パッド19はゲート端子部コンタクトホール16を介してゲート端子部4と接続されたパッドである。ソース端子パッド20はソース端子部コンタクトホール17を介してソース端子部13と接続されたパッドである。
【0027】
以上のように構成されたアクティブマトリックス型TFT基板と、カラー表示用のカラーフィルタや対向電極等を具備した対向基板(図示せず)とを、一定の間隙(セルギャップ)を介して貼り合せ、この中に液晶を注入・封止することによって、ディスプレイ用途の光学表示用装置である半導体デバイスが製造される。
【0028】
次に、本発明の実施の形態1にかかわるアクティブマトリックス型TFT基板の製法の手順を図4(A)〜(C)、図5(D)〜(E)に基づいて説明する。図4(A)において、まずガラス基板などの透明絶縁性基板1を洗浄液または純水を用いて洗浄し、該透明絶縁性基板1上にメタル膜を成膜する。成膜したのちに、第1回目のフォトリソグラフィープロセスでメタル膜をパターニングしてゲート電極2、ゲート配線3、ゲート端子部4および補助容量電極5を形成する。メタル膜としては、電気的比抵抗の低い金属や合金を用いることが好ましい。
【0029】
好適な実施例として、ここではまず、公知のアルゴン(Ar)ガスまたはクリプトン(Kr)ガスを用いたスパッタリング法で2mol%(at%)のNiを含むAlNi合金膜を約200nmの厚さで成膜する。スパッタリング条件はDC(直流)マグネトロンスパッタリング方式で、Alに2mol%のNiを含むAlNi合金ターゲットを用い、成膜パワー密度3W/cm、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)の条件で成膜した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いてAlNi膜をエッチングした。フォトレジストパターンを除去することによって、ゲート電極2、ゲート配線3、ゲート端子部4および補助容量電極5のパターンを形成した。このとき、形成されたAlNi合金膜のNi組成はターゲット組成とほぼ同じの2mol%Niであった。また比抵抗値は、成膜直後は約12μΩ・cmであったが、以下に示す約300℃程度のプロセス温度を経たのちには、約5μΩ・cmまで低減されていた。この値は一般的な従来の高融点メタルよりも低いものであり、ゲート配線の抵抗を下げることが可能である。
【0030】
続いて、図4(B)において、まず窒化シリコン(SiN)からなるゲート絶縁膜6とアモルファスシリコン(a−Si)からなる半導体能動膜7と不純物を添加したn型のアモルファスシリコン(n+a−Si)からなるオーミック低抵抗Si膜8とを順次成膜する。成膜したのちに、第2回目のフォトリソグラフィープロセスで半導体能動膜7と、オーミック低抵抗Si膜8とをTFTの構成要素となる形状にパターニング形成する。
【0031】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、約300℃の基板加熱条件下で、ゲート絶縁膜6としてSiN膜を400nm、Si半導体能動膜7としてa−Si膜を150nm、オーミック低抵抗Si膜8としてリン(P)を不純物として添加したn+a−Si膜を50nmの厚さで順次成膜した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いてa−Si膜とn+a−Si膜とをエッチングし、フォトレジストパターンを除去してTFTの構成要素となる半導体パターン(半導体能動膜7、及びオーミック低抵抗Si膜8)を形成した。
【0032】
続いて図4(C)において、Al合金膜を成膜したのちに、第3回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングしてソース電極9、ドレイン電極10、ソース配線12、ソース端子部13およびTFTのチャネル部11を形成する。本工程に用いるAl合金膜としては、電気的比抵抗が低いこと、ならびにオーミック低抵抗Si膜8との良好なコンタクト特性を示すこと、および透過画素電極に用いる導電膜(以下では符号18で示す)との良好なコンタクト特性(特に電気的コンタクト抵抗が低いこと)等の利点を有する合金膜を用いることが好ましい。
【0033】
好適な実施例として、ここでは、Alに2mol%のNiを添加したAlNi合金ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法にてAl合金膜を形成した。スパッタリング条件は、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)にNガスを流量3×10−4/h(5sccm)で添加させた混合ガスを用い、成膜パワー密度3W/cmで約200nm厚のAlNiN膜を形成した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いてAlNiN膜をエッチングし、ソース電極9、ドレイン電極10、ソース配線12およびソース端子部13のパターンを形成した。次に、前記ソース電極9とドレイン電極10の間のオーミック低抵抗Si膜8を、フッ素系ガスを含む公知のドライエッチング法を用いてエッチングしたのちに、フォトレジストパターンを除去してTFTのチャネル部11を形成した。
【0034】
このAlNiN膜の組成を調べたところ、Niが2mol%、Nが5mol%含まれた合金膜となっていた。また比抵抗値は、成膜直後は約15μΩ・cmであったが、約300℃の温度で熱処理を行ったのちには、約10μΩ・cmまで低減されていた。この値は一般的な従来の高融点メタルよりも低いものであり、ソース配線の抵抗を下げることが可能である。また上記実施例ではスパッタリングガスとしてArガスとNガスとの混合ガスを用いたが、ArガスのかわりにKrガスを用いてもよい。この場合には、Arガスを用いた場合よりも膜の欠陥や応力を減らすことができるため、熱処理を加えなくても比抵抗を約10μΩ・cmにまで低減することが可能となる。またAl膜にNを添加する場合でも、スパッタリング時に添加するガスはNガスに限ることなく、例えばNHのように、Nを含むガスであれば、Al膜中にNを添加させることが可能である。また予め、スパッタリングターゲットにNを添加させたAlNiN合金を用いて形成してもよい。この場合は、スパッタリングガスとして、ArガスあるいはKrガスに、NまたはNを含むガスを添加した混合ガスを必ずしも用いる必要はなく、ArガスあるいはKrガス単独で成膜することが可能である。
【0035】
続いて図5(D)において、層間絶縁膜14をパッシベーション膜として成膜したのちに、第4回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングして、少なくともドレイン電極10の表面まで貫通する画素ドレインコンタクトホール15と、ゲート端子部4の表面まで貫通するゲート端子部コンタクトホール16と、ソース端子部13の表面まで貫通するソース端子部コンタクトホール17とを同時に形成する。
【0036】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、約300℃の基板加熱条件下で、層間絶縁膜として窒化シリコンSiN膜を300nmの厚さで成膜したのちに、フォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成し、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いてエッチングし、フォトレジストパターンを除去して画素ドレインコンタクトホール15、ゲート端子部コンタクトホール16およびソース端子部コンタクトホール17を形成した。
【0037】
最後に図5(E)において、透明導電性膜を成膜したのちに、第5回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングして、画素ドレインコンタクトホール15を介して下層のドレイン電極10と電気的に接続するように透過画素電極18と、ゲート端子部コンタクトホール16およびソース端子部コンタクトホール17を介してそれぞれ電気的に接続されるゲート端子パッド19及びソース端子パッド20のパターンを形成する。このようにして、本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置用途として好適に用いられるアクティブマトリックスTFT基板が完成する。なお、完成したTFT基板は、約200〜300℃の温度で熱処理を加えてもよい。これによって、基板全体に蓄積された静電荷や応力等が除去あるいは緩和され、さらにメタル膜の電気的比抵抗を下げることができるため、TFT特性を向上して安定化させることができるために好ましい。
【0038】
好適な実施例として、ここでは、透明導電性膜として酸化インジウム(In)と酸化スズ(SnO)とを混合したITO膜を公知のArガスを用いたスパッタリング法で100nmの厚さで成膜する。成膜したのちに、フォトリソグラフィープロセスを用いてフォトレジストパターンを形成して公知の塩酸+硝酸を含む溶液を用いてエッチングし、フォトレジストパターンを除去して透過画素電極18、およびゲート端子パッド19およびソース端子パッド20を形成した。その後、基板を大気中で、約300℃で30分間保持して熱処理を行った。
【0039】
このようにして完成させたTFTアレイ基板は、Siを主成分とする膜と、Al合金膜からなるソース電極9及びドレイン電極10とを直接接続させて形成している。具体的には、Siを主成分とするオーミック低抵抗Si膜8とソース電極9およびドレイン電極10としてAl合金膜とを、高融点メタルからなるバリア層を介さずに直接接続させて形成した。ここで、本明細書において、「Siを主成分とする膜」には、Si膜またはSiを主成分、すなわちSiの含有割合が最も多い膜をいう。また、「界面近傍あるいは接続界面近傍」とは、膜の厚さなど個々の条件にもよるが、少なくとも膜厚の半分より境界面寄りの領域をいう。また、Siを主成分とする膜と、Al合金膜との接続は、Siを主成分とする膜の表面の少なくとも一部分と、Al合金膜の少なくとも一部分とが接続している状態であればよい。
【0040】
本実施形態のTFTアレイ基板は、高融点メタルのバリア層を備えていないにもかかわらず、従来の高融点メタルをバリア層として用いた場合と同様のTFT特性を示した。これは、Al合金膜にNiとNを添加したことにより、接続界面に拡散反応が発生しなかったためである。また熱処理温度を350℃まで上げた場合でも接続界面での拡散反応は認められず、TFT特性も劣化することもなかった。従って、本実施の形態のTFTアレイ基板は、充分な耐熱性を有していることが確認された。
さらに、ゲート配線3に加えてソース配線12にも低抵抗のAl合金膜を単独で形成することが可能となるので、大型ディスプレイや小型の高精細ディスプレイにおいても配線の高抵抗化に起因する信号遅延等による表示ムラや表示不良のない高表示品質のディスプレイを効率よく低コストで生産することが可能となる。
【0041】
実施の形態2
本発明の実施の形態2として、表示素子に液晶を用いる液晶表示装置用のアクティブマトリックス型TFT基板であって実施の形態1とは異なる例を説明する。図6はその平面構造を示す図であり、図7は、図6のA−A断面等の構造を示す図である。本実施の形態2は、実施の形態1が、光を全て透過させて表示を行う全透過型ディスプレイ用であるのに対し、ドレイン電極の一部が光を反射させて表示を行う反射画素電極を兼ねた半透過型もしくは部分反射型ディスプレイ用に関するものである。したがって、ソース電極、ドレイン電極には、Si膜との界面拡散反応防止に加えて、高い表面反射率特性を備えている必要がある。
【0042】
図6、または図7において、図2、3と同じ符号をつけた構成要素は同様であるため説明を省略する。ソース電極9およびドレイン電極10はそれぞれAl合金膜からなり、オーミック低抵抗Si膜8と直接接続されている。TFTのチャネル部11はソース電極9とドレイン電極10が分離され、さらにオーミック低抵抗Si膜8が除去された領域に構成されている。ソース配線12はソース電極9につながる配線であり、ソース端子部13はソース配線12とつながり外部から映像信号を入力する。図7では、ソース電極9とソース配線12の境界を明示していない。また反射画素電極21はドレイン電極10から延在して形成される電極である。反射画素電極21は、表面の反射率が高いほど明るく高品質の表示特性が得られる。従って、これらを形成するAl合金膜は、下層のオーミック低抵抗Si膜との良好なコンタクト特性を有するAl合金膜(第一アルミニウム合金膜)と、その上層に形成した反射率の高いAl合金膜(第二アルミニウム合金膜)との少なくとも二層膜で形成するようにした。具体的には、第一アルミニウム合金膜は、符号9a、10a、12a、13a、21aで示される配線・電極であり、第二アルミニウム合金膜は、符号9b、10b、12b、13b、21bで示される配線・電極である。
【0043】
開口部は、該層間絶縁膜14に複数(図7では3つ)形成されている。画素ドレインコンタクトホール15は下層のドレイン電極10を兼ねる反射画素電極21にまで達する開口部である。ゲート端子部コンタクトホール16はゲート端子部4にまで達する開口部である。ソース端子部コンタクトホール17はソース端子部13にまで達する開口部である。また、透過画素電極18は、画素ドレインコンタクトホール15を介して反射画素電極21と接続された透明導電膜からなる。ゲート端子パッド19はゲート端子部コンタクトホール16を介してゲート端子部4と接続されたパッドであり、ソース端子パッド20はソース端子部コンタクトホール17を介してソース端子部13と接続されたパッドである。
【0044】
以上のように構成されたアクティブマトリックス型TFT基板と、カラー表示用のカラーフィルタや対向電極等を具備した対向基板(図示せず)とを、一定の間隙(セルギャップ)を介して貼り合せ、この中に液晶を注入・封止することによって、ディスプレイ用途の光学表示用装置である半導体デバイスが製造される。
【0045】
次に、本発明の実施の形態2に係るアクティブマトリックス型TFT基板の製法の手順を図8(A)〜(C)、図9(D)〜(E)に基づいて説明する。図8(A)において、まずガラス基板などの透明絶縁性基板1を洗浄液または純水を用いて洗浄し、該透明絶縁性基板1上にメタル膜を成膜したのちに、第1回目のフォトリソグラフィープロセスでメタル膜をパターニングしてゲート電極2、ゲート配線3、ゲート端子部4および補助容量電極5を形成する。メタル膜としては、電気的比抵抗の低い金属や合金を用いることが好ましい。
【0046】
好適な実施例として、ここではまず、公知のArガスまたはKrガスを用いたスパッタリング法で1mol%のNiを含むAlNi合金膜を約200nmの厚さで成膜する。スパッタリング条件はDCマグネトロンスパッタリング方式で、Alに1mol%のNiを含むAlNi合金ターゲットを用い、成膜パワー密度3W/cm、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)の条件で成膜した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いてAlNi膜をエッチングした。フォトレジストパターンを除去することによって、ゲート電極2、ゲート配線3、ゲート端子部4および補助容量電極5のパターンを形成した。このとき、形成されたAlNi合金膜のNi組成はターゲット組成とほぼ同じの1mol%Niであった。また比抵抗値は、成膜直後は約8μΩ・cmであったが、約300℃程度の熱処理を行うことにより、約4μΩ・cmまで低減することが可能である。この値は一般的な従来の高融点メタルよりも低いものであり、ゲート配線の抵抗を下げる効果がある。
【0047】
次に図8(B)において、まず窒化シリコン(SiN)からなるゲート絶縁膜6とアモルファスシリコン(a−Si)からなるSi半導体能動膜7と不純物を添加したn型のアモルファスシリコン(n+a−Si)からなるオーミック低抵抗Si膜8とを順次成膜する。成膜したのちに、第2回目のフォトリソグラフィープロセスで前記半導体能動膜7と、前記オーミック低抵抗Si膜8とをTFTの構成要素となる形状にパターニング形成する。
【0048】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、約300℃の基板加熱条件下で、ゲート絶縁膜6としてSiN膜を400nm、半導体能動膜7としてa−Si膜を150nm、オーミック低抵抗Si膜8としてリン(P)を不純物として添加したn+a−Si膜を50nmの厚さで順次成膜した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いてa−Si膜とn+a−Si膜とをエッチングし、フォトレジストパターンを除去してTFTの構成要素となる半導体パターン(半導体能動膜7、及びオーミック低抵抗Si膜8)を形成した。
【0049】
次に図8(C)において、Al合金膜を成膜したのちに、第3回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングしてソース電極9、ドレイン電極10、ソース配線12、ソース端子部13およびTFTのチャネル部11を形成する。本工程に用いるAl合金膜としては、電気的比抵抗が低いこと、ならびにオーミック低抵抗Si膜8との良好なコンタクト特性を示すこと、および透過画素電極に用いる導電膜(以下では符号18で示す)との良好なコンタクト特性(特に電気的コンタクト抵抗が低いこと)とともに、高い光反射率等の利点を有する合金膜を用いることが好ましい。
【0050】
好適な実施例として、ここでは、Alに1mol%のNiを添加したAlNi合金ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法にてAl合金膜を形成した。スパッタリング条件は、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)にNガスを流量1.2×10−3/h(20sccm)で添加させた混合ガスを用い、成膜パワー密度3W/cmで約50nm厚のAlNiN膜を形成した。次に、Nガスの添加を中止(流量0m/h)させ、Arガスのみを用い、成膜パワー密度3W/cmでNを添加しない約200nm厚のAlNi膜を形成した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いて上層AlNi/下層AlNiNの二層膜を一括エッチングし、ソース電極9b/9a、ドレイン電極10b/10a、ソース配線12b/12a、ソース端子部13b/13aおよび反射画素電極21b/21aのパターンを形成した。次に、ソース電極9とドレイン電極10の間のオーミック低抵抗Si膜8を、フッ素系ガスを含む公知のドライエッチング法を用いてエッチングしたのちに、フォトレジストパターンを除去してTFTのチャネル部11を形成した。
【0051】
この下層AlNiN膜の組成を調べたところ、Niが1mol%、Nが20mol%含まれた合金膜となっていた。比抵抗値は、成膜直後は約55μΩ・cmで、約300℃の温度で熱処理を行ったのちには、約50μΩ・cmであった。この値は一般的な従来の高融点メタルと比べて同等以上であり、低抵抗の効果はないが、上層のAlNi膜はNi組成1mol%で、比抵抗値が成膜直後で約8μΩ・cm、約300℃程度の熱処理後で約4μΩ・cmであり、二層膜とすることにより従来の高融点メタルを用いた場合に比べ、ソース配線の抵抗を下げることが可能である。また波長550nmで測定した光の反射率値も、下層AlNiN膜は70%であったが、上層AlNi膜は93%であり、純Alと同等の高い値を有していた。このように、Al合金膜を少なくとも二層以上の積層膜で形成する場合には、Si膜またはSiを主成分とする膜との界面拡散反応を防止する機能と、低い比抵抗値や高い反射率値の機能とを切り分けて、それぞれに特性を最適化したAl合金膜を組み合わせて構成できるので、デバイスに求められる性能をより効果的に発揮させることが可能となるため好ましい。
【0052】
なお、上記実施例ではスパッタリングガスとしてArガスとNガスとの混合ガスを用いて下層のAlNiN膜を成膜したのちに、ガスをArガスのみに切り替えて上層のAlNi膜を成膜するようにしたが、例えば、ArガスとNガスとの混合ガスを用いて下層のAlNiN膜の成膜を開始し、スパッタリングの時間の進行とともに、徐々にNガスの添加量を減らしていくようにしてもよい。この場合は、スパッタリング処理を中断することなく連続的にAl合金膜を成膜することができるので、処理時間を短縮することが可能である。また、スパッタリングガスとしてArガスとNガスとの混合ガスを用いたが、ArガスのかわりにKrガスを用いてもよい。このようにして成膜したAl合金膜においても、下層のオーミック低抵抗Si膜との界面近傍にはNiとNが存在して拡散反応を防止することができ、膜全体の比抵抗値を低減させることができるとともに、純Al膜と同等の高い反射率値を得ることが可能である。
【0053】
次に図9(D)において、層間絶縁膜14をパッシベーション膜として成膜したのちに、第4回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングして、少なくとも前記ドレイン電極10b(反射画素電極21b)の表面まで貫通する画素ドレインコンタクトホール15と、ゲート端子部4の表面まで貫通するゲート端子部コンタクトホール16と、ソース端子部13bの表面まで貫通するソース端子部コンタクトホール17とを同時に形成する。
【0054】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、約300℃の基板加熱条件下で、層間絶縁膜として窒化シリコンSiN膜を300nmの厚さで成膜したのちに、フォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成し、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いてエッチングし、フォトレジストパターンを除去して画素ドレインコンタクトホール15、ゲート端子部コンタクトホール16およびソース端子部コンタクトホール17を形成した。
【0055】
最後に図9(E)において、透明導電性膜を成膜したのちに、第5回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングして、画素ドレインコンタクトホール15を介して下層のドレイン電極10b(反射画素電極21b)と電気的に接続するように透過画素電極18と、ゲート端子部コンタクトホール16およびソース端子部コンタクトホール17を介してそれぞれ電気的に接続されるゲート端子パッド19およびソース端子パッド20のパターンを形成し、本発明の実施の形態2に係る液晶表示装置用途として好適に用いられるアクティブマトリックスTFT基板が完成する。なお、完成したTFT基板は、約200〜300℃の温度で熱処理を加えてもよい。これによって、基板全体に蓄積された静電荷や応力等が除去あるいは緩和され、さらにメタル膜の電気的比抵抗を下げることができるため、TFT特性を向上して安定化させることができるために好ましい。
【0056】
好適な実施例として、ここでは、透明導電性膜として酸化インジウム(In)と酸化スズ(SnO)とを混合したITO膜を公知のArガスを用いたスパッタリング法で100nmの厚さで成膜したのちに、フォトリソグラフィープロセスを用いてフォトレジストパターンを形成して公知の塩酸+硝酸を含む溶液を用いてエッチングし、フォトレジストパターンを除去して透過画素電極18、およびゲート端子パッド19およびソース端子パッド20を形成した。その後、基板を大気中で、約300℃で30分間保持して熱処理を行った。
【0057】
このようにして完成させたTFTアレイ基板は、Siを主成分とするオーミック低抵抗Si膜8と、接続されるソース電極9およびドレイン電極10として、高融点メタルからなるバリア層を介さずに直接Al合金膜から形成されている。バリア層を介することなく、Al合金膜が直接オーミック低抵抗Si膜8に接続しているにもかかわらず、Al合金膜の接続界面近傍にNiとNを添加させたことにより、接続界面に拡散反応が発生することなく、従来の高融点メタルを用いた場合と同等のTFT特性を示した。
また熱処理温度を350℃まで上げた場合でも接続界面での拡散反応は認められず、TFT特性も劣化することはなく、充分な耐熱性を有していることを確認した。さらに、接続界面とは反対側の膜の表面にはNを添加しないAlNi膜としたので、反射画素電極部の反射率が高く、明るく高品位の半透過型ディスプレイを得ることができる。さらにゲート配線3に加えてソース配線12にも低抵抗のAl合金膜のみで形成することが可能となるので、配線の高抵抗化に起因する信号遅延等による表示ムラや表示不良のない良好な表示品質の大型ディスプレイや小型高精細ディスプレイを効率よく低コストで生産することが可能となる。
【0058】
実施の形態3
本発明の実施の形態3として、表示素子に液晶を用いる液晶表示装置用のアクティブマトリックス型TFT基板であって実施の形態1、2とは異なる例を説明する。図2はその平面構造を示す図であり、図10は、図2のA−A断面等の構造を示す図である。図10において、図2、3と同じ符号をつけた構成要素は同様であるため説明を省略する。
【0059】
次に、本発明の実施の形態3に係るアクティブマトリックス型TFT基板の製造方法を図11(A)〜(C)、図12(D)〜(E)を参照して説明する。図11(A)において、まずガラス基板などの透明絶縁性基板1を洗浄液または純水を用いて洗浄し、該透明絶縁性基板1上にメタル膜を成膜したのちに、第1回目のフォトリソグラフィープロセスで前記メタル膜をパターニングしてゲート電極2、ゲート配線3、ゲート端子部4および補助容量電極5を形成する。メタル膜としては、電気的比抵抗の低い金属や合金を用いることが好ましい。
【0060】
好適な実施例として、ここではまず、公知のArガスまたはKrガスを用いたスパッタリング法で2mol%のNiを含むAlNi合金膜を約200nmの厚さで成膜する。スパッタリング条件はDCマグネトロンスパッタリング方式で、Alに2mol%のNiを含むAlNi合金ターゲットを用い、成膜パワー密度3W/cm、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)の条件で成膜した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いてAlNi膜をエッチングし、フォトレジストパターンを除去することによって、ゲート電極2、ゲート配線3、ゲート端子部4および補助容量電極5のパターンを形成した。このとき、形成されたAlNi合金膜のNi組成はターゲット組成とほぼ同じの2mol%Niであった。また比抵抗値は、成膜直後は約12μΩ・cmであったが、約300℃程度の熱処理を行うことにより、約5μΩ・cmまで低減することが可能である。この値は一般的な従来の高融点メタルよりも低いものであり、ゲート配線の抵抗を下げる効果がある。
【0061】
次に図11(B)において、まず窒化シリコン(SiN)からなるゲート絶縁膜6を成膜したのちに、続けてAl合金膜を成膜する。第2回目のフォトリソグラフィープロセスでAl合金膜をパターニングしてソース電極9、ドレイン電極10、ソース配線12、ソース端子部13およびTFTのチャネル部11を形成する。本工程に用いるAl合金膜としては、電気的比抵抗が低いこと、オーミック低抵抗Si膜8との良好なコンタクト特性を示すこと、及び、透過画素電極に用いる導電膜(以下では符号18で示す)との良好なコンタクト特性(特に電気的コンタクト抵抗が低いこと)等の利点を有する合金膜を用いることが好ましい。
【0062】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、約300℃の基板加熱条件下で、ゲート絶縁膜6としてSiN膜を400nmの厚さで成膜した。次に、Alに2mol%のNiを添加したAlNi合金ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法にてAl合金膜を形成した。スパッタリング条件は、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)にNガスを流量3×10−4/h(5sccm)で添加させた混合ガスを用い、成膜パワー密度3W/cmで約200nm厚のAlNiN膜を形成した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いてAlNiN膜をエッチングし、フォトレジストパターンを除去して上記ソース電極9、ドレイン電極10、ソース配線12、ソース端子部13およびTFTのチャネル部11のパターンを形成した。
【0063】
このAlNiN膜の組成を調べたところ、Niが2mol%、Nが5mol%含まれた合金膜となっていた。また比抵抗値は、成膜直後は約12μΩ・cmであったが、約300℃の温度で熱処理を行ったのちには、約5μΩ・cmまで低減されていた。この値は一般的な従来の高融点メタルよりも低いものであり、ソース配線12の抵抗を下げることが可能である。また上記実施例ではスパッタリングガスとしてArガスとNガスとの混合ガスを用いたが、ArガスのかわりにKrガスを用いてもよい。この場合には、Arガスを用いた場合よりも膜の欠陥や応力を減らすことができるため、熱処理を加えなくても比抵抗を約5μΩ・cmにまで低減することが可能となる。またAl膜にNを添加する場合でも、スパッタリング時に添加するガスはNガスに限ることなく、例えばNHのように、Nを含むガスであれば、Al膜中にNを添加させることが可能である。また予め、スパッタリングターゲットにNを添加させたAlNiN合金を用いて形成してもよい。この場合は、スパッタリングガスとして、ArガスあるいはKrガスに、NまたはNを含むガスを添加した混合ガスを必ずしも用いる必要はなく、ArガスあるいはKrガス単独でAlNiN膜を成膜することが可能である。
【0064】
次に図11(C)において、アモルファスシリコン(a−Si)からなるSi半導体能動膜7を成膜したのちに、第3回目のフォトリソグラフィープロセスでSi半導体能動膜7をTFTの構成要素となる形状にパターニング形成する。
【0065】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、Si半導体能動膜7としてa−Si膜を200nmの厚さで成膜した。次に、フォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いてa−Si膜をエッチングし、フォトレジストパターンを除去してTFTの構成要素となる半導体パターン(Si半導体能動膜7)を形成した。
【0066】
次に図12(D)において、層間絶縁膜14をパッシベーション膜として成膜したのちに、第4回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングして、少なくともドレイン電極10の表面まで貫通する画素ドレインコンタクトホール15と、ゲート端子部4の表面まで貫通するゲート端子部コンタクトホール16と、ソース端子部13の表面まで貫通するソース端子部コンタクトホール17とを同時に形成する。
【0067】
好適な実施例として、ここでは化学的気相成膜(CVD)法を用い、約300℃の基板加熱条件下で、層間絶縁膜として窒化シリコンSiN膜を300nmの厚さで成膜したのちに、フォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成し、公知のフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いてエッチングし、フォトレジストパターンを除去して画素ドレインコンタクトホール15、ゲート端子部コンタクトホール16およびソース端子部コンタクトホール17を形成した。
【0068】
最後に図12(E)において、透明導電性膜を成膜したのちに、第5回目のフォトリソグラフィープロセスでパターニングして、画素ドレインコンタクトホール15を介して下層のドレイン電極10と電気的に接続するように透過画素電極18と、ゲート端子部コンタクトホール16およびソース端子部コンタクトホール17を介してそれぞれ電気的に接続されるゲート端子パッド19およびソース端子パッド20のパターンを形成し、本発明の実施の形態3に係る液晶表示装置用途として好適に用いられるアクティブマトリックスTFT基板が完成する。なお、完成したTFT基板は、約200〜300℃の温度で熱処理を加えてもよい。これによって、基板全体に蓄積された静電荷や応力等が除去あるいは緩和され、さらにメタル膜の電気的比抵抗を下げることができるため、TFT特性を向上して安定化させることができるために好ましい。
【0069】
好適な実施例として、ここでは、透明導電性膜として酸化インジウム(In)と酸化スズ(SnO)とを混合したITO膜を公知のArガスを用いたスパッタリング法で100nmの厚さで成膜する。成膜したのちに、フォトリソグラフィープロセスを用いてフォトレジストパターンを形成して公知の塩酸+硝酸を含む溶液を用いてエッチングし、フォトレジストパターンを除去して透過画素電極18、ゲート端子パッド19、及びソース端子パッド20を形成した。その後、基板を大気中で、約300℃で30分間保持して熱処理を行った。
【0070】
このようにして完成させたTFTアレイ基板は、Si半導体能動膜7と接続されるソース電極9およびドレイン電極10として、高融点メタルからなるバリア層を介さずに直接Al合金膜を形成した。Al合金膜の接続界面近傍にNiとNを添加したことにより、接続界面に拡散反応が発生することもなく、従来の高融点メタルを用いた場合と同等のTFT特性を示した。また熱処理温度を350℃まで上げた場合でも接続界面での拡散反応は認められず、TFT特性も劣化することはなく、充分な耐熱性を有していることを確認した。さらに、ゲート配線3に加えてソース配線12にも低抵抗のAl合金膜を単独で形成することが可能となるので、大型ディスプレイや小型の高精細ディスプレイにおいても配線の高抵抗化に起因する信号遅延等による表示ムラや表示不良のない高表示品質のディスプレイを効率よく低コストで生産することが可能となる。
【0071】
実施の形態4
実施の形態3において、ソース電極9、ドレイン電極10を、たとえば図13に示すように、上層にNを含むAlNiN膜、下層にNを含まないAlNi膜の二層構成にすることができる。この場合は、膜全体の配線抵抗を低減することが可能であり、好ましい。
【0072】
好適な実施例として、ここではソース電極、ドレイン電極、ソース配線およびソース端子部として、Alに1mol%のNiを添加したAlNi合金ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法を用いた。具体的には、AlNi合金ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法にて、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)、成膜パワー密度3W/cmでまずNを添加しない約200nm厚のAlNi膜(第二アルミニウム合金膜)を形成した。次に、Arガス流量2.4×10−3/h(40sccm)にNガスを流量1.2×10−3/h(20sccm)で添加させた混合ガスを用い、成膜パワー密度3W/cmで約50nm厚のAlNiN膜(第一アルミニウム合金膜)を形成した。次にフォトリソグラフィープロセスでフォトレジストパターンを形成したのちに、公知のリン酸+硝酸+酢酸系からなる薬液を用いて上層AlNiN/下層AlNiの二層膜を一括エッチングし、上記ソース電極9a/9b、ドレイン電極10a/10b、ソース配線12a/12b、ソース端子部13a/13bおよびTFTのチャネル部11のパターンを形成した。
【0073】
この上層AlNiN膜の組成を調べたところ、Niが1mol%、Nが20mol%含まれた合金膜となっていた。比抵抗値は、成膜直後は約55μΩ・cmで、約300℃の温度で熱処理を行ったのちには、約50μΩ・cmであった。この値は一般的な従来の高融点メタルと比べて同等以上であり、低抵抗の効果はないが、下層のAlNi膜はNi組成1mol%で、比抵抗値が成膜直後で約8μΩ・cm、約300℃程度の熱処理後で約4μΩ・cmであり、二層膜とすることにより、上述の実施の形態3の場合よりもさらにソース配線の抵抗を下げることができた。このように、Al合金膜を少なくとも二層以上の積層膜で形成する場合には、SiまたはSiを主成分とする膜との界面拡散反応を防止する機能と、低い比抵抗値の機能とを切り分けて、それぞれに特性を最適化したAl合金膜を組み合わせて構成できるので、デバイスに求められる性能をより効果的に発揮させることが可能となるため好ましい。
【0074】
本実施の形態4におけるその他の構造と製造工程およびその方法については、上述の実施の形態3と同様であるので、説明を省略する。
【0075】
その他の実施の形態
上記各実施の形態においては、透過画素電極や端子パッドを形成する透明導電性膜としてITO(酸化インジウム+酸化スズ)膜を用いたが、これに限定されることはなく、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)またはこれらを混合させたものを用いてもよい。たとえば酸化インジウムに酸化亜鉛を混合させたIZO膜を用いた場合には、上記各実施例で用いた塩酸+硝酸系のような強酸ではなく、蓚酸系のような弱酸をエッチング液として用いることができる。このため、上記各実施の形態のようにメタル膜に耐酸薬液性に乏しいAl合金膜を用いる場合には、薬液のしみ込みによるAl合金膜の電極や配線の断線腐食を防止することができるので好ましい。また酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛それぞれのスパッタ膜の酸素組成が化学量論組成よりも少なく、透過率や比抵抗などの特性が不良の場合は、スパッタリングガスとしてArガスだけでなくOガスやHOガスを混合させたガスを用いて成膜するのが好ましい。特に、スパッタリングガスとしてArガスにHOガスを混合させた場合は、ITOを用いた場合でも、通常の多結晶体ではなく非晶質(アモルファス)状態で成膜することができ、蓚酸系の弱酸薬液でエッチングすることが可能となる。このアモルファス状態のITO膜は、エッチング加工後にたとえば200℃以上の熱処理を行うことによって、多結晶化させることにより、薬液耐性の強い通常のITO膜にすることが可能となるので信頼性の点で好適である。
【0076】
また、上記各実施の形態おいては、Si膜またはSiを主成分とするSi膜と直接接続するAl合金膜として、Al−1mol%Ni−20mol%N膜と、Al−2mol%Ni−5mol%N膜を適用した例を示したが、これらに限られることはない。
【0077】
図14(a)、(b)は、本発明者らが評価したAl合金膜とSi膜との界面拡散反応の結果を示すものである。CVD法によってa−Si膜150nm、Pを添加したオーミック低抵抗Si膜50nmを順次成膜したのちに、DCマグネトロンスパッタリング法を用いてAl合金膜200nmを成膜したサンプルを大気中で300℃、30分間保持した熱処理を加え、光学顕微鏡でサンプルを観察した。図14(a)は、2mol%のNiを添加したAl−2mol%Ni膜、図14(b)は、Al−2mol%Cu膜の結果である。Al−Cu膜は、Al膜のエレクトロマイグレーションやストレスマイグレーションを防止する従来公知のAl合金膜の一例である。図14(b)に示すようにAl−2mol%Cu膜の場合は、膜全体に迷路状のムラが認められた。この状態で膜の電気的比抵抗を測定したが、導電性は得られず絶縁体に近い状態になっていた。したがって、AlとSiとの界面で激しく相互拡散反応が生じていることがわかる。一方、図14(a)に示すようにAl−2mol%Ni膜の場合には、スポット状に相互拡散反応は生じているが、膜全体の激しい相互拡散反応は抑制される効果があった。また電気的比抵抗値も拡散の生じないガラス基板上に成膜したものとほぼ同等の値を示した。このような抑制効果は、Niと同様の、周期律表で8A族(8〜10族)に属し、かつ3d軌道の最外殻電子配置を有する鉄(Fe)およびコバルト(Co)を添加した場合でも認められた。
【0078】
図15は、同様の評価をAl−2mol%Ni−4mol%N膜で行った結果を示すものである。図14(a)で認められたスポット状の相互拡散反応が消えていることがわかる。このサンプルは、大気中において400℃で30分間保持の熱処理を行った場合でも相互拡散反応は認められず、耐熱性に関しても問題ないことを確認した。一方、Al−2mol%Cu−4mol%N膜でも相互拡散反応は認められず、N添加による相互拡散防止効果が認められたが、350℃、30分保持の熱処理で拡散反応が認められた。
【0079】
図16は、Al合金膜とSi膜との界面近傍の元素分布を示す図であり、(a)は、Al−2mol%Ni−10mol%N膜と、Si膜との界面近傍の元素分布状態、(b)は、Al−2mol%Ni膜とSi膜との界面近傍の元素分布状態を示している。図16では、元素分布状態をオージェ電子分光分析(AES)で調べた結果を示している。図16(b)をみると、Al膜に含まれるNiがSi膜との界面近傍で多くなっている。すなわち、Al膜中のNiが界面近傍に移動して界面にNi濃度の高いバリア層を形成することによってAlとSiの界面拡散を抑制しているものと考えられる。一方、図16(a)をみると、Nを添加したAl合金膜のSi界面近傍には、Nを添加しない図16(b)の場合に比べ、Ni原子の存在がさらに多くなっており、AlとSiの原子の相互拡散も抑えられている(界面におけるAlとSiの分布の傾きがより急峻になっている)ことがわかる。すなわち、Ni(またはFe、Coのいずれか1種以上の)原子を添加したAl合金膜に、さらにN原子を添加することにより、Siとの界面近傍にNi原子を集中させる効果をさらに促進する。これが強いバリア層として働くことによって、Al合金膜とSi膜との相互拡散を確実に防止しているものと考えられる。
【0080】
このようなバリア層効果は、Al合金膜を成膜する装置や成膜のプロセス条件等に依存するため、成膜する膜厚や添加するNiやN組成は、デバイスに求められる特性規格値を満たす範囲で任意に決定すればよいが、このようなバリア層の効果を充分に発揮させるためには、膜厚は少なくとも5nm以上、Ni組成比は0.1mol%以上、N組成比は1mol%以上であることが好ましい。
【0081】
図17は、AlにNiを添加したときの比抵抗値の変化を示したものである。ガラス基板上に約200nmの厚さでAl合金膜を成膜し、大気中で300℃、30分保持の熱処理後に測定した。Ni組成比が15mol%を超えると、比抵抗値は12μΩcmを超えるようであり、従来高融点メタルに対する優位性はなくなってくる。従って、配線抵抗を重視する配線膜に適用する場合には、添加するNi組成比は15mol%を超えないようにすることが好ましい。また図18は、AlにNを添加したときの比抵抗値の変化を示したものである。比抵抗値が12μΩcmを超えないようにするためには、N組成比は7.5mol%を超えないようにするのが好ましい。
【0082】
図19、図20は、AlにそれぞれNi、Nを添加したときの波長550nmにおける反射率値の変化を示したものである。いずれもNiあるいはNの添加に伴って反射率値は単調に低くなっていくことがわかる。したがって、反射特性を重視する反射板に適用する場合には、要求される規格値を満たすように組成比を調整すればよい。
【0083】
ただし、Si膜またはSiを主成分とする膜との界面拡散反応の抑制を重視することによって、Al合金膜の有する低比抵抗値や高反射率値がデバイスに要求される規格値を満たさないような場合には、上記のような組成範囲に限定されることなく、上述の実施の形態2、4で記載したように異なる組成のAl合金膜を組み合わせた積層構造として適用することが可能である。
【0084】
図21(a)、(b)は、図14(a)に示したAl−2mol%Niをベースにさらに第3の元素として、周期律表の4b族(14族)に属するケイ素(Si)を1mol%添加したAl−2mol%Ni−1mol%Si膜とSi膜との界面拡散を評価した結果を示すものであり、(a)は300℃で熱処理した場合、(b)は350℃で熱処理した場合である。Al−2mol%Ni膜の場合に比べ、スポット状の相互拡散反応が消失していることがわかる。しかしながら350℃で熱処理した場合には、わずかに相互拡散反応が認められており、耐熱性は不充分であった。このような抑制効果は、Siと同じ4b族に属する半金属元素の炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)を添加した場合でも認められた。従って、Alに、Niに加え、C、Si、Ge、Snから選ばれる1種以上の元素を添加し、さらにNを添加することによって、さらにAl合金膜とSi膜との相互拡散反応を防止できるので好ましい。
【0085】
また、図22(a)、(b)は、Al−2mol%Niに、さらに第3元素として周期律表の周期5に属する重金属であるモリブデン(Mo)を1mol%添加したAl−2mol%Ni−1mol%Mo膜とSi膜との界面拡散を評価した結果を示すものであり、(a)は300℃で熱処理した場合、(b)は350℃で熱処理した場合である。さらに図23(a)、(b)は、第3元素として周期6に属する重金属であるタングステン(W)を1mol%添加したAl−2mol%Ni−1mol%W膜とSi膜との界面拡散を評価した結果を示すものであり、(a)は300℃で熱処理した場合、(b)は350℃で熱処理した場合である。この場合、いずれのAl合金膜でもスポット状の相互拡散反応が発生しておらず、拡散防止に効果のあることが確認された。ただし、さらに350℃で熱処理した場合にはわずかに相互拡散反応が発生しており、耐熱性は不充分であった。このような拡散抑制効果は、同じ周期律表の周期5、6に属する重金属であるイットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロジウム(Dy)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)でも認められる。したがって、Alに、Niに加え、前記重金属から選ばれる1種以上の元素を添加し、さらにNを添加することによって、さらにAl合金膜とSi膜との相互拡散反応を防止できることになるので好ましい。また、同じ周期律表の周期5、6に属する重金属に加え、図21を用いて説明したC、Si、Ge、またはSnのいずれか一つとの組み合わせた元素を添加する場合であってもよい。
【0086】
以上説明したように、本発明に係る好適な実施形態によれば、Siを主成分とする膜と直接接続して、良好なコンタクト特性を実現するAl合金膜とその製造方法を提供することができる。これにより、Al合金膜が、Siを主成分とする膜と直接接続された構造を少なくとも有する半導体デバイスにおいて、高融点メタルを介さずにAl合金膜とSiを主成分とする膜との良好なコンタクト特性を得ることができる。より具体的には、ITO膜およびSiを主成分とする膜との良好なコンタクト特性を実現するAl合金膜を提供することを可能にする。従って、低コストで効率よく半導体デバイスを製造することが可能となる。
【0087】
また、上記各実施の形態のAl合金膜をディスプレイ用のアクティブマトリックス型TFT基板のソース・ドレイン電極およびソース配線等の配線に適用することによって、配線抵抗を低減できるとともに良好な特性を有するTFT素子をAl合金膜のみで形成することができる。従って、大型ディスプレイや小型の高精細ディスプレイにおいても信号遅延等による表示ムラや表示不良のない高表示品質のディスプレイを効率よく低コストで生産することが可能となる。このように、低抵抗配線が必要とされるディスプレイを高い生産能力で製造することができる。
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】表示装置に用いられるTFTアレイ基板の構成例を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1および3に係るディスプレイ用アクティブマトリックス型TFT基板を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るディスプレイ用アクティブマトリックス型TFT基板を示す平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板の製造工程を示す断面工程図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係るディスプレイ用アクティブマトリックスTFT基板を示す断面図である。
【図14】(a)Al−Ni膜とSi膜との界面拡散反応を調べた写真であり、(a)は2mol%のNiを添加したAl−2mol%Ni膜、(b)は、Al−2mol%Cu膜である。
【図15】Al−Ni−N膜とSi膜との界面拡散反応を調べた図(写真)である。
【図16】Al合金膜とSi膜との界面近傍の元素分布を示す図であり、(a)はAl−2mol%Ni−10mol%N膜とSi膜との界面近傍の元素分布、(b)はAl−2mol%Ni膜とSi膜との界面近傍の元素分布である。
【図17】Al−Ni膜のNi組成比と膜の比抵抗値の関係を示す図である。
【図18】Al−N膜のN組成比と膜の比抵抗値の関係を示す図である。
【図19】Al−Ni膜のNi組成比と膜の反射率値の関係を示す図である。
【図20】Al−N膜のN組成比と膜の反射率値の関係を示す図である。
【図21】Al−Ni−Si膜とSi膜との界面拡散反応を調べた写真であり、(a)は300℃で熱処理した場合、(b)は350℃で熱処理した場合である。
【図22】Al−Ni−Mo膜とSi膜との界面拡散反応を調べた写真であり、(a)は300℃で熱処理した場合、(b)は350℃で熱処理した場合である。
【図23】Al−Ni−W膜とSi膜との界面拡散反応を調べた写真であり、(a)は300℃で熱処理した場合、(b)は350℃で熱処理した場合である。
【符号の説明】
【0089】
1 透明絶縁性基板、2 ゲート電極、3、43 ゲート配線、4 ゲート端子部、5 補助容量電極、6 ゲート絶縁膜、7 Si半導体(能動)膜、8 オーミック低抵抗Si膜、9 ソース電極、10 ドレイン電極、11 TFTチャネル部、12、44 ソース配線、13 ソース端子部、14 層間絶縁膜、15 画素ドレインコンタクトホール
16 ゲート端子部コンタクトホール、17 ソース端子部コンタクトホール、18 透過画素電極、19 ゲート端子パッド、20 ソース端子パッド、21 反射画素電極
41 表示領域、42 額縁領域、45 走査信号駆動回路、46 表示信号駆動回路
47 画素、48、49 外部配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを主成分とする膜と、
前記Siを主成分とする膜と直接接続し、接続界面近傍に、少なくともAl、Ni、及びNを含むアルミニウム合金膜と、を有する半導体デバイス。
【請求項2】
前記Siを主成分とする膜は、半導体膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記Siを主成分とする膜は、Siに不純物を含むオーミック性の低抵抗膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記アルミニウム合金膜は、
前記Siを主成分とする膜と直接接続され、Nを添加して形成された少なくともNiとNとを含む導電性の第一アルミニウム合金膜と、
前記第一アルミニウム合金膜と接続され、Nを添加しないで形成された少なくともNiを含む第二アルミニウム合金膜と、
を少なくとも含む積層膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記アルミニウム合金膜は、前記接続界面近傍に少なくともNiとNとを含み、前記接続境界から離れるに従って少なくともNの濃度が少なくなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
アルミニウム合金膜は、前記接続界面近傍に、C、Si、Ge、またはSnのうち少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
アルミニウム合金膜は、前記接続界面近傍に、Y、Zr、Nb、Mo、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Hf、Ta、またはWのうち少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに一項に記載の半導体デバイスを備える表示装置。
【請求項9】
Siを主成分とする膜を形成する工程と、
前記Siを主成分とする膜と直接接続させ、前記Siを主成分とする膜と接続する接続界面近傍に、少なくともAl、Ni、及びNを含むアルミニウム合金膜を形成する工程と、を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記アルミニウム合金膜を形成する工程は、前記少なくもとNiを含むアルミニウム合金ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガス、またはクリプトン(Kr)ガスに、少なくとも窒素(N)ガスまたは窒素(N)を含むガスを添加した混合ガスを用いたスパッタリング法を用いて、前記Siを主成分とする膜の表面の少なくとも一部分と直接接続させるアルミニウム合金膜を形成することを特徴とする請求項9記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウム合金膜を形成する工程は、スパッタリングの時間の経過とともに、前記混合ガスに含まれる窒素ガスまたは窒素を含むガスの添加量を減らしていくことを特徴とする請求項10記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項12】
積層する膜との境界面近傍に、少なくともAl、Ni、及びNを含むアルミニウム合金膜を形成する工程と、
前記境界面の表面の少なくとも一部分に直接接続するようにSiを主成分とする膜を形成する工程と、を有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記アルミニウム合金膜を形成する工程は、前記少なくもとNiを含むアルミニウム合金ターゲットを用いて、アルゴンガス、またはクリプトンガスに、少なくとも窒素ガスまたは窒素を含むガスを添加した混合ガスを用いたスパッタリング方を用いて、アルミニウム合金膜を形成することを特徴とする請求項12記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記アルミニウム合金膜を形成する工程は、スパッタリングの時間の経過とともに、前記混合ガスに含まれる窒素ガスまたは窒素を含むガスの添加量を増やしていくことを特徴とする請求項13記載の半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図14】
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【図15】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−70956(P2009−70956A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236353(P2007−236353)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】