説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】低コストかつ高製造歩留まりで、BiCMOS型半導体集積回路装置を実現することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】シャロートレンチ3、ディープトレンチ6に囲まれた半導体層2の基板領域17に、p型の単結晶半導体からなるエピタキシャル・ベース層24が島状に形成される。当該島状領域を含む半導体層2上の全面に窒化シリコン膜42、酸化シリコン膜43が形成される。島状領域上の異なる位置の窒化シリコン膜42、酸化シリコン膜43には、少なくとも2つの開口部が形成され、開口部が形成された窒化シリコン膜42、酸化シリコン膜43上に半導体膜44が形成される。当該半導体膜44が選択的に除去され、一方の開口部において島状領域に接続するベース電極と、他方の開口部において島状領域に接続するエミッタ電極とが同時に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、バイポーラトランジスタとしてのヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor;HBT)とMOS型トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;MOSFET)とを備えるバイシーモス(以下、BiCMOS)型半導体集積回路装置の構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット通信網高速化など超高速通信技術の発達に伴い、高速動作性・高電流駆動能力を有するバイポーラトランジスタの開発が進んでいる。中でもHBTは、Siホモ接合バイポーラトランジスタと比較して、優れた高速動作性・高電流駆動能力を有する特徴がある。例えば、Si/SiC、Si/SiGeもしくはSi/SiGeCなどのヘテロ接合構造を用いたHBTは、シリコン基板上に形成される素子でありながら、従来、GaAs等の化合物半導体を用いたトランジスタでなければ動作させることのできなかった高周波領域でも動作が可能である。シリコン系のHBTでは、一般に、エピタキシャル成長により形成された、SiC、SiGe、SiGeCといったIV族同士のヘテロ接合構造
がベース層に適用される。
【0003】
SiC、SiGe、SiGeCを使用したヘテロ接合構造は、Si中にGeやCを添加して含有量や分布を調整する。これにより、引っ張り応力や圧縮歪み応力をSi単結晶に与えることができ、バンドギャップを連続的に調整できる。SiC系では引っ張り応力、SiGe系では圧縮応力を与えるのが一般的である。このヘテロ接合構造によりベース電流を抑制でき、ベース層の低抵抗化のためにベース層内の不純物濃度を増大させても、トランジスタの電流利得(hFE)を高く維持できる。また、バンドギャップの連続変化を利用してキャリアのベース走行時間を短縮でき、高ft(遮断周波数)、高fmax(最大発振周波数)を有する高周波特性のデバイスを得ることができる。
【0004】
上記のヘテロ接合構造はSi基板と、SiC層、SiGe層あるいはSiGeC層というIV族同士の組合せのため、汎用シリコンプロセスとの整合性が高く、素子の集積化や低
コスト化の面で大きな利点をもつ。特に、ヘテロ接合バイポーラトランジスタとMOSFETとを共通のSi基板上に集積化できるため、MOS型トランジスタのレール・ツー・レール出力、低消費電流、低電源電圧という特徴と、バイポーラトランジスタの高精度・高安定度で低雑音という特徴と、ヘテロ接合バイポーラトランジスタの高速動作性という特徴とを兼ね備えた高性能BiCMOS集積回路装置を構成することができる(特許文献1、2等参照。)。
【0005】
図13〜図18は、従来のHBT(SiGe縦型HBT)を含むBiCMOS集積回路装置の製造過程の一例を示す工程断面図である。これらの図面を用いて従来の製造工程および従来法が有する問題点について説明する。なお、縦型HBTとはヘテロ接合バイポーラ素子を形成するnpnの接合界面の主要部分がSi基板の主面に対して平行であり、それに伴いキャリアの流れが縦方向となるHBT素子を指す。なお、各図(a)はHBT形成部を示し、各図(b)は同一基板上のMOS型トランジスタ形成部(以下、CMOS形成部という。)を示している。
【0006】
図13(a)に示すように、BiCMOS集積回路装置のHBT形成部においては、(001)結晶面を主面とするSi半導体基板100の上部に埋め込みコレクタ層101が形成される。埋め込みコレクタ層101は、例えば、リン(P)やヒ素(As)などのn型不純物を、注入および拡散させることで形成される。また、埋め込みコレクタ層101上にはn-エピタキシャル層102が形成されている。当該構造を有する基板の表面部には、素子分離が形成される。図13(a)の例では、素子分離は、酸化シリコン(シリコンオキサイド)が埋め込まれたシャロートレンチ103の部分と、ノンドープ(アンドープ)ポリシリコン膜104とこれを取り囲む酸化シリコン膜105とにより構成されるディープトレンチ106の部分から構成されている。図13(a)の例では、n-エピタキシャル層102に、シャロートレンチ103で分離されたSi基板領域107、108が形成されている。Si基板領域107はHBT素子形成領域であり、Si基板領域108はHBT素子のn+コレクタ引出層として使用される領域である。
【0007】
一方、図13(b)に示すように、BiCMOS集積回路装置のCMOS形成部は、n型MOSトランジスタ形成領域116とp型MOSトランジスタ形成領域117とを備える。ここでは、n型MOSトランジスタ形成領域116には、p型拡散層112上に設けられたn型ゲート電極109a、LDD(Lightly Doped Drain)サイドウォールスペーサ111、LDDとなるn-領域113、およびn+ソース・ドレイン領域122、123により構成されたn型のMOS型トランジスタが形成されている。また、p型MOSトランジスタ形成領域117には、n型拡散層114上に設けられたp型ゲート電極109b、LDDサイドウォールスペーサ111、LDDとなるp-領域115、およびp+ソース・ドレイン領域120、121により構成されたp型のMOS型トランジスタが形成されている。n型MOSトランジスタ形成領域116とp型MOSトランジスタ形成領域117との間は、シャロートレンチ103にて分離されている。
【0008】
なお、文中、図中のn-やn+、p-やp+などの添字−や添字+は濃度を表している。低濃度を意味する添字−は、おおよそ1016〜1018cm-3のオーダーの濃度を示し、高濃度を意味する添字+は、おおよそ1019〜1020cm-3のオーダーの濃度を示している。
【0009】
図13(a)、図13(b)に示すように、HBT形成部およびCMOS形成部に、プロテクトレイヤーが形成される。プロテクトレイヤーは、下層から順に、酸化シリコン(シリコンオキサイド)膜118、ノンドープ(アンドープ)ポリシリコン膜119が堆積された膜である。当該プロテクトレイヤーには、HBT素子形成領域107が露出する開口部がドライエッチングにより形成される。このプロテクトレイヤーは、HBT素子形成においてプロセス加工上必要であるが、素子構成要素とはならない犠牲的な保護膜である。また、図13(b)に示すように、CMOS領域はプロテクトレイヤーに覆われるため、HBT素子形成のための加工に対してマスクされる。図13(b)に示す、HBT素子の形成が開始される段階では、ソース・ドレイン領域を含め、MOS型トランジスタの構成要素の全ての形成が終了している状態にある。
【0010】
次に、図14(a)に示すように、HBT素子形成領域107上に、SiC層、SiGe層あるいはSiGeC層からなるヘテロ接合構造124がエピタキシャル成長により形成される。図14(b)は、図14(a)に示す工程におけるCMOS形成部の状態を示す断面であるが、ヘテロ接合構造124はHBT素子形成領域107上にのみ選択的に形成されるため、構造上の変化はない。
【0011】
続いて、図15(a)、図15(b)に示すように、HBT形成部およびCMOS形成部に酸化シリコン膜125が堆積される。当該酸化シリコン膜125には、ウェットエッチングにより、HBT素子形成領域107の特定部分(図15(a)では、メサ部の傾斜部分)を露出する開口が形成される。当該開口が形成された後、図16(a)、図16(b)に示すように、さらにHBT形成部およびCMOS形成部の全体に、ノンドープポリシリコン膜126と酸化シリコン膜127が堆積される。当該層膜は、HBT素子のベース引き出し電極として使用される。
【0012】
次いで、ヘテロ接合構造124上の、ノンドープポリシリコン膜126と酸化シリコン膜127の一部が選択的にエッチング除去され、ヘテロ接合構造124からなる島領域の約半分の領域を占めるエミッタ用開口領域が形成される。当該エッチングにおいて、酸化シリコン膜125はドライエッチングストッパ膜として機能する。その後、薄い酸化シリコン膜128および不純物ドープトポリシリコンが全面に堆積され、全面エッチバックが行われる。これにより、エミッタ用開口領域内に、不純物ドープトポリシリコンからなるサイドウォールスペーサ129が形成される。このとき、エミッタ用開口領域内で対向するサイドウォールスペーサ129の間隔がエミッタ幅Wおよびエミッタ長Lを決定する。なお、図16(a)では、図中の左右方向の開口幅をエミッタ幅Wとし、紙面に垂直な方向の開口幅をエミッタ長Lと定義している。
【0013】
エミッタ開口領域が形成されると、図17(a)に示すように、前記サイドウォールスペーサ129の間に露出した酸化シリコン膜128、125が除去された後、エミッタ電極として用いるn型の不純物がドープされたポリシリコン膜が堆積される。当該ポリシリコン膜と酸化シリコン膜127とが選択的にエッチングされ、エミッタ電極130が形成される。このとき、CMOS形成部の酸化シリコン膜127は、図17(b)に示すように、全て除去される。その後、図18(a)に示すように、ノンドープポリシリコン膜126がパターニングされ、外部ベース電極131が形成される。このとき、CMOS形成部では、図18(b)に示すように、ノンドープポリシリコン膜126、酸化シリコン膜125およびノンドープポリシリコン膜119は、HBT素子形成領域と同様に全て除去されるが、酸化シリコン膜118は残される。
【0014】
以上のように、CMOS形成部については、プロテクトレイヤーが形成された後は、堆積された膜はHBT素子加工のためのエッチングにより全面除去されていく。
【特許文献1】特開2000−332025号公報
【特許文献2】特開2002−208690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述の従来技術には、以下の課題がある。
【0016】
第1に、HBT素子形成には、上述したように多くの膜の堆積およびそれらの除去と加工のためのマスキングが必要になる。一般的な縦型HBT素子の場合、上述のように、特に、ヘテロ接合構造124からなるエピタキシャル・ベース層と、エミッタ電極130などを構成するポリシリコン膜とを分離・形成する際に、多くの工程が必要である。すなわち、各種絶縁膜やポリシリコン膜の堆積工程や、堆積された膜を加工するためのマスキング工程、ドライエッチング工程、ウェットエッチング工程などが必要であり、必然的に工程数が多くなってしまう。加えて、サイドウォールスペーサ129を形成するための膜堆積やその加工のための工程も必要となる。また、エミッタ電極130、外部ベース電極131を個別に形成する必要があるため、これらを加工するためのマスキング工程も2回必要である。製造のコスト低減には、工程数の削減が極めて有効であるため、BiCMOS集積回路装置では、HBT素子形成工程とMOSFET素子形成工程との工程の共有化が重要課題となっている。すなわち、工程の共有化ができるか否かが、マスク回数や工程回数の差となって表れ、製造コストを増減させることになる。
【0017】
第2に、従来技術では、上述のように、エピタキシャル・ベース層上にサイドウォールスペーサ129が形成される場合が多く、サイドウォールスペーサ129が形成される開口部においてエミッタ・ベース層を分離する酸化シリコン膜125の膜厚は極めて薄い。そのため、加工寸法の微細化等によりサイドウォールスペーサ129の加工マージンが小さくなると、酸化シリコン膜125を介してエピタキシャル・ベース層とその上に形成されるエミッタ電極130が接触し、ショートする不良が多発するようになる。加えて、HBT素子では、真性ベース抵抗∝(エミッタ幅W/エミッタ長L)×真性ベース層124のシート抵抗Rsbi、の関係が成立するため、エミッタ幅Wを縮小することによってベース抵抗を下げることが可能である。しかしながら、上述の従来構造では、エミッタ電極130が形成される開口部内のサイドウォールスペーサ129がエピタキシャル・ベース層とエミッタ電極との接触面積を規定している。そのため、サイドウォールスペーサ129を配置するスペースが必要であり、エミッタ開口部分の微細化には限界がある。したがって、より微細な構造を実現する観点では、低ベース抵抗を維持でき、かつサイドウォールスペーサ129のない構造が望まれる。
【0018】
第3に、縦型HBT素子は、図18(a)に示すように、エミッタ電極130部分の段差が大きくなる。このため、HBT形成部上とCMOS形成部上に、図18(a)、図18(b)より後の工程で層間絶縁膜を形成し、表面をCMP(化学的機械的研磨)などで平坦化した場合、エミッタ電極130上に形成するコンタクトホールとCMOS形成部に形成するシリコン基板上へのコンタクトホールとのアスペクト比(パターン幅と深さの比)の差が大きくなる。このようなアスペクト比が大きいコンタクトホールを同時にドライエッチングする場合、エミッタ電極130部のコンタクトホールは浅いので過剰なオーバーエッチやコンタクトホール底面へのエッチングイオンの打ち込みダメージが発生する可能性が高くなる。
【0019】
第4に、図18(a)、図18(b)に示すエミッタ電極130、外部引き出しベース電極131の構造では、各電極上にコンタクトホールが確実に形成できるように、各電極の端部からコンタクトホールまでのマージンを確保する必要がある。電極上にドライエッチングでコンタクトホールを形成する際にマスク合わせズレが発生した場合、コンタクトホールが位置ズレした状態で形成される。このとき、コンタクトホールが電極上からはみ出ると、電極周辺に形成された絶縁膜にも開口が形成される。そして、コンタクトホールを介してエミッタあるいはベースと、他の関係しない部分とがショートする可能性がある。
【0020】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、低コストかつ高製造歩留まりで、BiCMOS型半導体集積回路装置を実現することができる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明に係る半導体装置は、第1導電型の半導体層を備える。当該半導体層の、素子分離領域で囲まれた第1の領域には、第1導電型とは反対導電型である第2導電型の単結晶半導体からなる島領域を備える。また、上記半導体層の、第1の領域とは異なる第2の領域に形成されたコレクタ引出層と、第1の領域と第2の領域とにわたって、前記半導体層の内部に形成された第1導電型のコレクタ層とを備える。さらに、島領域の表面の所定部分に接触して形成された第2導電型の半導体膜からなるベース電極と、当該ベース電極から離間して、島領域の他の部分に接触して形成された第1導電型の半導体膜からなるエミッタ電極を備える。そして、本発明に係る半導体装置では、ベース電極とエミッタ電極とが、上記半導体層上に形成された共通の半導体膜を加工することで形成されている。
【0022】
一方、他の観点では、本発明は、上記半導体装置の製造に好適な半導体装置の製造方法を提供することができる。すなわち、本発明に係る半導体装置の製造方法では、まず、第1導電型の半導体層に素子分離領域が形成される。次いで、素子分離領域で囲まれた半導体層の第1の領域に、第1導電型とは反対導電型である第2導電型の単結晶半導体からなる島領域が形成される。続いて、当該島領域を含む半導体層上の全面に絶縁膜が形成される。島領域上の異なる位置の絶縁膜には、少なくとも2つの開口部が形成され、開口部が形成された絶縁膜上に半導体膜が形成される。そして、当該半導体膜の一部が除去され、一方の開口部において島領域に接続するベース電極と、他方の開口部において島領域に接続するエミッタ電極とが同時に形成される。その後、ベース電極に第2導電型の不純物が導入され、エミッタ電極に第1導電型の不純物が導入される。また、上記半導体層の、第1の領域とは異なる第2の領域に、第1導電型の不純物を導入することにより、コレクタ引出層が形成される。例えば、上記半導体層はシリコンからなり、上記島領域はSiGe単結晶半導体、SiC単結晶半導体またはSiGeC単結晶半導体等のSi-IV族系単結
晶半導体からなる。
【0023】
上記半導体装置および半導体装置の製造方法では、ベース電極とエミッタ電極とが、共通の半導体膜を加工することにより形成される。そのため、従来法において、エミッタ電極とベース電極との間に介在された絶縁膜を削減することができる。その結果、絶縁膜の堆積回数や加工回数を削減でき、製造コストを低減することができる。また、エミッタ電極と島領域との接続部にサイドウォールスペーサを形成することなくゲート電極とエミッタ電極とを電気的に分離できるため、パターン寸法が微細化された場合でも、高い製造歩留まりで製造することができる。加えて、サイドウォールスペーサを形成する必要がないため、エミッタサイズの微細化も容易である。さらに、従来のように、ベース電極上にエミッタ電極が積層された構造を有しないため、エミッタ電極の高さを従来に比べて低くすることができ、ゲート電極およびエミッタ電極に起因する段差を抑制することができる。
【0024】
上記半導体装置の製造方法において、製造される半導体装置は、第1および第2の領域とは異なる半導体層の領域に、第1導電型のチャネルを有する第1のMOSトランジスタおよび第2導電型のチャネルを有する第2のMOSトランジスタを備えてもよい。この場合、上記エミッタ電極に不純物を導入する工程において、第1のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域が同時に形成され、上記ベース電極に不純物を導入する工程において、第2のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域が同時に形成される構成を採用することができる。これにより、半導体装置の製造方法において、不純物を導入する工程の数を従来に比べて削減することができる。
【0025】
また、この半導体装置の製造方法では、さらに、上記半導体層上に、ゲート電極、エミッタ電極、第1のMOSトランジスタおよび第2のMOSトランジスタを被覆する、層間絶縁膜が形成され、当該層間絶縁膜を貫通するコンタクトホールが同時に形成されてもよい。同時に形成されるコンタクトホールが、例えば、ゲート電極と、エミッタ電極と、第1のMOSトランジスタのゲート電極、ソース電極およびドレイン電極と、第2のMOSトランジスタのゲート電極、ソース電極およびドレイン電極とのそれぞれに到達する場合に特に好適である。上述のように、ゲート電極およびエミッタ電極に起因する段差を抑制することができるため、同一基板上にMOSトランジスタが形成されている場合、エミッタ電極は、当該MOSトランジスタのゲート電極と同等高さになる。そのため、MOSトランジスタの各電極に接続するコンタクトを形成するための各コンタクトホールと、HBT素子の各電極にコンタクトを形成するための各コンタクトホールとのアスペクト比差を低減することができる。その結果、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成する際のドライエッチングに起因して従来発生していたダメージを著しく低減することができる。
【0026】
工程数をさらに削減する観点では、エミッタ電極と、ベース電極と、第1のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域と、第2のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域とに、導入された不純物を同一の熱処理工程で活性化させる構成を採用することが好ましい。
【0027】
なお、上記半導体膜の一部を除去する工程において、半導体膜を除去するエッチングは、エミッタ電極となる半導体膜上にエッチングマスクがなく、ベース電極となる半導体膜上にエッチングマスクが存在する状態で実施することができる。これにより、上記他方の開口部内に埋め込まれたエミッタ電極を、自己整合的に形成することができる。また、エミッタ電極に接続するコンタクトを形成するためのコンタクトホールを形成する場合、エミッタ電極の周囲に露出している絶縁膜と高選択比のドライエッチング条件を適用してコンタクトホールを形成することにより、エミッタ電極上のコンタクトホールの位置合わせマージンを著しく緩和することができる。したがって、従来法に比べて、開口径の大きなコンタクトホールを形成することができ、コンタクトプラグとエミッタ電極との接触面積を大きくすることができる。また、従来と同一のコンタクト抵抗を実現する場合には、エミッタ電極面積を従来に比べて小さくすることができる。したがって、エミッタ電極上に形成されるコンタクトホールを、平面視において、エミッタ電極を内包する構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来法に比べて、絶縁膜の堆積や加工等の工程数を大幅に削減することができ、製造コストを低減することができる。また、エミッタ電極と島領域との接続部にサイドウォールスペーサを形成する必要がないため、パターン寸法が微細化された場合でも、高い製造歩留まりで半導体装置を製造することができる。さらに、エミッタサイズの微細化も容易であり、ベース抵抗の低減を容易に実現することができる。加えて、ゲート電極やエミッタ電極に起因する段差を抑制することができるため、BiCMOS型の半導体装置では、HBT素子およびMOSトランジスタのそれぞれに接続するコンタクトを形成するためのコンタクトホールのアスペクト比差を低減でき、製造歩留まりを高めることができる。
【0029】
また、本発明において、エミッタ電極を埋め込み構造とすることで、エミッタ電極上のコンタクトホールの位置合わせマージンを著しく緩和することができ、開口径の大きなコンタクトホールを形成することができる。その結果、従来に比べて、コンタクトプラグとエミッタ電極との接触面積を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明の実施形態は様々な代替可能な実施形態に変形でき、本発明の範囲が後述の実施形態によって限定されるものと解釈されてはならない。
【0031】
図1〜図10は、本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図である。本実施形態において例示する半導体装置は、バイポーラトランジスタとしてのSiGe縦型HBTと、MOS型トランジスタとしての低電圧駆動CMOSデバイスを含む半導体集積回路装置である。なお、各図面上の同符号で表示された要素は同じ要素を意味し、各図(a)はHBT形成部を示し、各図(b)は同一基板上のMOS型トランジスタ形成部(以下、CMOS形成部という。)を示している。
【0032】
図1(a)に示すように、本実施形態に係るBiCMOS集積回路装置のHBT形成部においては、(001)結晶面を主面とするSi半導体基板10の上部に埋め込みコレクタ層1が形成されている。埋め込みコレクタ層1は、例えば、リン(P)やヒ素(As)などのn型不純物を、Si半導体基板10に高濃度に注入することで形成される。当該埋め込みコレクタ層1の形成は、CMOS形成部のCMOS型トランジスタを形成する領域を被覆するレジストマスク等を設けた状態で実施される。このため、図1(b)に示すように、CMOS形成部のCMOS型トランジスタを形成する領域には、埋め込みコレクタ層1が形成されていない。
【0033】
埋め込みコレクタ層1の形成後、Si半導体基板10の表面には、Siエピタキシャル成長により、n型低不純物濃度の半導体層2が形成される。半導体層2が形成された基板の表面部には、素子分離領域が形成される。図1(a)の例では、素子分離領域は、シャロートレンチ3とディープトレンチ6とで構成されている。ここでは、シャロートレンチ3は、基板に形成された浅いトレンチに酸化シリコン(シリコンオキサイド)膜を埋め込むことで形成される。また、ディープトレンチ6は、表面に酸化シリコン膜5が形成された深いトレンチにノンドープ(アンドープ)ポリシリコン膜4を埋め込むことで形成される。図1(a)の例では、HBT形成部のn-エピタキシャル半導体層2に、シャロートレンチ3で分離されたSi基板領域7、8が形成されている。Si基板領域7はHBT素子形成領域(第1の領域)であり、Si基板領域8はn+コレクタ引出層形成領域(第2の領域)として使用される。なお、シャロートレンチ3は少なくとも半導体層2を分離する素子分離であり、ディープトレンチ6は、少なくとも埋め込みコレクタ層1およびCMOS形成部のウェル層(後述する)を分離する素子分離領域である。
【0034】
一方、図1(b)に示すように、本実施形態に係るBiCMOS集積回路装置のCMOS形成部は、n型MOSトランジスタ形成領域16とp型MOSトランジスタ形成領域17とを備える。n型MOSトランジスタ形成領域16には、n型のMOS型トランジスタが形成され、p型MOSトランジスタ形成領域17には、n型のMOS型トランジスタが形成される。本実施形態では、HBT形成部にHBT素子の形成を開始する時点(後述のヘテロ接合構造24の形成を開始する時点)において、n型MOSトランジスタ形成領域16に、Pウェルである低不純物濃度のp型拡散層12上に設けられたn型ポリシリコン膜からなるゲート電極9a、LDD(Lightly Doped Drain)サイドウォールスペーサ11、n型低不純物濃度のLDDであるn-領域13が形成されている。また、p型MOSトランジスタ形成領域17には、Nウェルである低不純物濃度のn型拡散層14上に設けられたp型ポリシリコン膜からなるp型ゲート電極9b、LDDサイドウォールスペーサ11、p型低不純物濃度のLDDであるp-領域15が形成されている。なお、n型MOSトランジスタ形成領域16とp型MOSトランジスタ形成領域17との間は、シャロートレンチ3のみで分離されている。
【0035】
なお、従来技術と同様に、文中、図中のn-やn+、p-やp+などの添字−や添字+は濃度を表している。低濃度を意味する添字−は、おおよそ1016〜1018cm-3のオーダーの濃度を示し、高濃度を意味する添字+は、おおよそ1019〜1020cm-3のオーダーの濃度を示している。
【0036】
上述した従来技術では、CMOS形成部の高不純物濃度ソース・ドレイン拡散層(n+ソース・ドレイン領域122、123およびp+ソース・ドレイン領域120、121)が形成された後にHBT素子の形成が開始されていたが、本実施形態では、図1(a)、図1(b)に示すように、HBT素子形成の開始時に、MOSトランジスタのソース・ドレイン領域(高濃度不純物領域)は未だ形成されていない。本実施形態では、MOS型トランジスタのソース・ドレイン領域の形成を、後述するように、HBT素子のエミッタ電極、ベース電極への注入と同時に行う。これにより、HBT形成工程とMOSトランジスタ形成工程とを共用化し、工程削減・コスト削減を実現している。なお、図1(b)に示すMOS型トランジスタの構造は、周知の手法により形成可能であるため、ここでの説明は省略する。
【0037】
続いて、図2(a)に示すように、全面に絶縁膜41が形成される。ここでは、絶縁膜41として、LP−CVD(減圧化学的気相成長)法により、酸化シリコン膜を堆積している。絶縁膜41は、酸化シリコン膜に限らず、窒化シリコン膜であってもよい。この後、絶縁膜41上に、HBT素子形成領域7を露出する開口部を有するレジストマスク(図示せず)が形成される。ここでは、当該レジストマスクの開口端は、HBT素子形成領域7を区画するシャロートレンチ3上に位置している。そして、当該レジストマスクをエッチングマスクとして絶縁膜41をエッチングすることにより、前記開口部に対応する絶縁膜41が除去される。従来法の図14(a)、図14(b)に示す工程では、プロテクトレイヤーとして、酸化シリコン膜118とノンドープポリシリコン膜119の2層を堆積している。これに対し、本実施形態では1層の絶縁膜を堆積するため、この点でも工程が削減されていることになる。
【0038】
続いて、絶縁膜41に形成された開口部に露出したSi基板領域7上に、p型不純物がドープされたSiGe層からなる島状のヘテロ接合構造24がエピタキシャル成長により形成される。当該SiGe層はベース用導電層(エピタキシャル・ベース層)として機能する。ヘテロ接合構造24は、SiC層やSiGeC層で構成されてもよい。図2(b)は、Si基板領域7上に、ヘテロ接合構造24が形成されたときのCMOS形成部の状態を示す断面図である。ヘテロ接合構造24はHBT素子形成領域7上にのみ選択的に形成されるため、CMOS形成部にヘテロ接合構造は存在しない。
【0039】
続いて、図3(a)に示すように、ヘテロ接合構造24を含む基板全体にLP−CVD法により、窒化シリコン膜42および酸化シリコン膜43が下層から順に堆積される。堆積された酸化シリコン膜43上には、ヘテロ接合構造24の、外部ベース層形成領域およびエミッタ層形成領域を除く領域を被覆するレジストマスク51が形成される。当該レジストマスク51を用いたエッチングにより、酸化シリコン膜43、窒化シリコン膜42を順次パターニングすることで、ヘテロ接合構造24が表面に露出した、外部ベース層形成領域91およびエミッタ層形成領域92が形成される。なお、本実施形態では、酸化シリコン膜からなる絶縁膜41が窒化シリコン膜42をエッチングする際のエッチングストッパ膜として機能する。酸化シリコン膜43に対するエッチングには、例えば、フッ酸の希釈エッチング液を使用したウェットエッチングを適用でき、窒化シリコン膜42に対するエッチングには、150℃程度の熱リン酸を使用したウェットエッチングを適用することができる。あるいは、エッチングガスとして、CHF3などのフルオロカーボン系の混合ガスを使用したドライエッチングを適用することもできる。当該エッチングにおいてCMOS形成部は、レジストマスク51により被覆されていないため、絶縁膜41上の、窒化シリコン膜42および酸化シリコン膜43は、図3(b)に示すように全て除去される。
【0040】
上記レジストマスク51の除去後、図4(a)、図4(b)に示すように、ノンドープポリシリコン膜44が全面に堆積される。当該膜はノンドープであればよく、ポリシリコンに限らず、単結晶、非晶質(アモルファス)のシリコン膜を使用することもできる。この後、図5(a)に示すように、ノンドープポリシリコン膜44上に、外部ベース電極およびエミッタ電極に対応する部分を被覆するレジストマスク52が形成される。当該レジストマスク52を用いたポリシリコン膜44のエッチングにより、外部ベース電極31とエミッタ電極32とが形成される。このとき、ポリシリコン膜44は絶縁膜41と酸化シリコン膜43とに対して選択的にエッチング除去される。なお、CMOS形成部には、レジストマスク52が形成されないため、図5(b)に示すように、ポリシリコン膜44は全て除去され、絶縁膜41が露出する。
【0041】
以上のようにして、外部ベース電極31のパターンとエミッタ電極32のパターンの形成が完了すると、図6(a)、図6(b)に示すように、外部ベース電極31を含む領域およびp型MOSトランジスタ形成領域17に開口部を有するレジストマスク53が形成される。当該レジストマスク53をイオン注入マスクとしてp型不純物を高濃度にイオン注入することにより、外部ベース電極31の表面に高不純物濃度のp型層33が形成され、p型MOSトランジスタ形成領域17ではゲート電極9bがp型となり、p型ソース20、p型ドレイン21が同時に形成される。
【0042】
続いて、レジストマスク53を除去した後、図7(a)、図7(b)に示すように、エミッタ電極32を含む領域、n+コレクタ引出層となるSi基板領域8を含む領域およびn型MOSトランジスタ形成領域16に開口部を有するレジストマスク54が形成される。当該レジストマスク54をイオン注入マスクとしてn型不純物を高濃度にイオン注入することにより、エミッタ電極32の表面に高不純物濃度のn型層34が形成され、n型MOSトランジスタ形成領域16ではゲート電極9aがn型となり、n型ソース22、n型ドレイン23が同時に形成される。その後、レジストマスク54は除去される。
【0043】
なお、本実施形態では、外部ベース電極31等へのp型不純物のイオン注入を先に実施し、その後に、エミッタ電極32等へのn型不純物のイオン注入を実施しているが、先にn型不純物のイオン注入を実施し、その後にp型不純物のイオン注入を実施してもよい。また、本実施形態では、プロテクトレイヤーである絶縁膜41を通じたp型、n型不純物のイオン注入により、CMOS形成部にソース・ドレイン領域を形成しているが、上記イオン注入前に絶縁膜41が除去されてもよい。絶縁膜41の有無により、ソース・ドレイン領域の注入深さを変更することができる。また、絶縁膜41の膜厚を制御することにより、ソース・ドレイン領域の注入深さを制御することも可能である。なお、本実施形態では、絶縁膜41が酸化シリコン膜であるので、バッファードフッ酸や希釈フッ酸等のエッチング液を使用したウェットエッチング等により、容易に絶縁膜41を除去することができる。
【0044】
以上のようにして、イオン注入が完了すると、図8(a)、図8(b)に示すように、ウェットエッチングにより、表面に露出した酸化シリコン膜43、絶縁膜41が除去された後、基板上の全面に減圧CVDもしくは常圧CVDにて、薄い酸化シリコン膜45が堆積される。当該酸化シリコン膜45には、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、コンタクト領域(外部ベース電極31のコンタクト領域、エミッタ電極32のコンタクト領域、コレクタ引出層のコンタクト領域およびCMOS形成部のコンタクト領域)に開口部が形成される。酸化シリコン膜45に開口部が形成された後、基板上の全面に、スパッタリング法により、コバルト(Co)膜、チタン(Ti)膜が下層から順に積層される。当該状態で加熱処理を行い、酸化シリコン膜45の開口部に露出した、ポリシリコン膜からなる外部ベース電極31、エミッタ電極32と、TiもしくはCoとを反応させ、単結晶シリコン層であるn型ソース20、n型ドレイン21、p型ソース22、p型ドレイン23のシリコンとTiもしくはCoとを反応させる。これにより、酸化シリコン膜45の開口部に露出し、コバルト膜に接触した各部の表面部に、シリサイド層61、62、63、64、65、66、67、68、69が形成され、低抵抗化される。酸化シリコン膜45は、シリサイド層61〜69の形成後に除去される。
【0045】
以降の工程では、HBT素子、n型MOSトランジスタ、p型MOSトランジスタに接続する配線が、標準的な多層配線工程プロセスにより形成される。すなわち、図9(a)、図9(b)に示すように、基板上に酸化膜等からなる層間絶縁膜46が堆積された後、層間絶縁膜46に公知のリソグラフィ技術およびエッチング技術を適用することにより、層間絶縁膜46を貫通して各シリサイド層61〜69に到達するコンタクトホール71、72、73、74、75、76、77、78、79が形成される。
【0046】
その後に、図10(a)、図10(b)に示すように、各コンタクトホール71〜79にTi膜、TiN膜が形成された後、タングステン(W)膜が埋め込まれ、CMP等により表面の不要部を除去することで、Wプラグ81、82、83、84、85、86、87、88、89が形成される。次いで、基板上にアルミニウム合金膜を形成し、所定部分が開口されたマスク(図示せず)を用いて、アルミニウム合金膜をパターニングすることにより、各Wプラグと接続され、層間絶縁膜46の上に伸びる金属配線(図示せず)が形成される。このような、配線工程プロセスが必要に応じて繰り返し実施され、半導体装置が完成する。
【0047】
以上のようにして構成された本実施形態の半導体装置では、HBT素子のエミッタ電極32と、外部ベース電極31とが、共通の半導体膜44を加工することにより形成されるとともに、エミッタ・ベース間が窒化シリコン膜42と層間絶縁膜46とによって離間されている。当該構造では、極薄い酸化シリコン膜128とサイドウォールスペーサ129とによって分離される従来技術のように、外部ベース電極とエミッタ電極とがオーバーラップすることがない。そのため、加工寸法の微細化等により加工マージンが小さくなった場合でも、ベース・エミッタ間の短絡不良の発生を抑制することができる。また、サイドウォールスペーサが存在しないため、エミッタ電極32、ベース電極31間の絶縁膜の薄膜化によるエミッタサイズの縮小を従来構造に比べて容易に実現でき、容易にベース抵抗を低減することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の構成では、エミッタ電極32の上面位置は、従来と比較して、外部ベース電極を構成するポリシリコン膜と酸化シリコン膜127の膜厚分だけ低くなる。その結果、エミッタ電極32の上端はCMOS素子の各ゲート電極9a、9bの上端と同程度の高さになる。そのため、外部ベース電極31とエミッタ電極32上、ゲート電極9a、9b上、ソース・ドレイン領域20〜23上において、層間絶縁膜46に形成されるコンタクトホールの深さがほぼ同程度になり、従来構造に比べて、各コンタクトホール間のアスペクト比差が小さくなる。したがって、コンタクトホールのドライエッチ時の過剰なオーバーエッチングやエッチングイオン打ち込みダメージ、シリサイド膜破れなどを防ぐことができ、結果として、半導体装置を高い製造歩留まりで製造すること可能になる。
【0049】
ところで、上述の半導体装置の製造方法においては、製造工程の一部を変更した場合でも同様の効果を奏することができる。以下、図11、図12を用いて、当該変形例を説明する。図11(a)、図11(b)は、図5(a)、図5(b)を用いて説明した工程に対応する工程を示す断面図である。この変形例では、ノンドープポリシリコン膜44をパターニングする際、外部ベース電極に対応する部分を被覆し、エミッタ電極に対応する部分を露出するレジストマスク55が上述のレジストマスク52に代えて形成される。そして、当該レジストマスク55を通じた異方性ドライエッチングにより、ノンドープポリシリコン膜44がパターニングされる。これにより、自己整合的な埋め込みエミッタ電極36を実現することができ、上述の実施形態に比べて、HBT素子の占有面積を縮小することができる。なお、図11(b)に示すように、本変形例に係る半導体装置の製造方法を適用した場合であっても、CMOS形成部の構造に変化はない。
【0050】
以上のようにして、埋め込みエミッタ電極36を形成した後、図6(a)、図6(b)で説明したように、p型不純物を高濃度にイオン注入することにより、外部ベース電極31の表面に高不純物濃度のp型層33が形成され、p型MOSトランジスタ形成領域17ではゲート電極9bがp型となり、p型ソース20、p型ドレイン21が同時に形成される。また、図7(a)、図7(b)で説明したように、n型不純物を高濃度にイオン注入することにより、エミッタ電極36の表面に高不純物濃度のn型層34が形成され、n型MOSトランジスタ形成領域16ではゲート電極9aがn型となり、n型ソース22、n型ドレイン23が同時に形成される。
【0051】
続いて、図12(a)に示すように、酸化シリコン膜43、絶縁膜41が除去され、コンタクト領域(外部ベース電極31のコンタクト領域、エミッタ電極36のコンタクト領域、コレクタ引出層のコンタクト領域およびCMOS形成部のコンタクト領域)に開口を有する酸化シリコン膜47が形成される。その後、基板上の全面に、スパッタリング法により、コバルト(Co)膜、チタン(Ti)膜が下層から順に積層され、当該状態で加熱処理を行い、酸化シリコン膜47の開口部に露出し、コバルト膜に接触した各部の表面部にシリサイド層が形成される。このとき、エミッタ電極36は、酸化シリコン膜33を除去したことによって、窒化シリコン膜42の上面より上方に突出する凸形状となっており、当該凸形状のエミッタ電極36の表面にシリサイド層62が形成される。CMOS形成部については図12(b)に示すように、上述の実施形態と相違点はない。以降、上述の実施形態において、図9〜図10を用いて説明した各工程が実施され、半導体装置が完成する。なお、エミッタ電極36上に形成されるコンタクトホールは、平面視においてエミッタ電極36を包含する開口部を有していることが好ましい。
【0052】
この変形例では、上述の実施形態に比べて、エミッタ電極36の面積を小さくすることができる。また、エミッタ電極自体よりも大きなコンタクトホール(平面視においてエミッタ電極を包含するコンタクトホール)をエミッタ電極36上に形成することが可能になる。これは、エミッタ電極36の周辺が窒化シリコン膜42で囲まれ、かつ外部ベース電極31とは一定の距離だけ離間していることに起因する。すなわち、コンタクトホールのドライエッチングにおいて、層間絶縁膜46を構成する酸化シリコン膜と、窒化シリコン膜43とが大きなエッチング速度選択比を有する条件を採用することで、窒化シリコン膜43がエッチングストッパ膜として機能させることができるからである。また、エミッタ電極36は、窒化シリコン膜42の上面より上方に突出する凸形状を有しているため、開口径の大きなコンタクトホールを形成することで、コンタクトプラグとエミッタ電極36との接触面積も大きくすることができる。
【0053】
本変形例では、以上のように、エミッタ電極全体にコンタクトホールが形成できるので、上述の実施形態で説明した効果に加えて、エミッタ電極とコンタクトホールとの接触面積を大きくしてコンタクト抵抗を低減し、その寄生抵抗を低減できるという効果を得ることができる。
【0054】
以上説明したように、本発明では、従来法におけるエミッタ電極用開口部形成に伴う各種の膜の堆積工程やドライエッチング工程が不要であるため、工程数を大幅に削減することができる。また、本発明によれば、外部ベース電極とエミッタ電極とを共通の半導体膜を加工することにより同時に形成し、かつ外部ベース電極とヘテロ接合構造(エピタキシャル・ベース層)とを接続するための開口部とエミッタ電極とヘテロ接合構造とを接続するための開口部を同時に開口している。そのため、外部ベース電極とエミッタ電極を別々の工程で形成する従来法と比較してフォトリソ工程を2回削減することができる。また、外部ベース電極とエミッタ電極用のポリシリコン膜の堆積工程も1回削減できる。
【0055】
さらに、本発明では、HBT素子のエミッタ電極およびベース電極を加工する工程の後、外部ベース電極、エミッタ電極にそれぞれp型、n型不純物イオン注入すると同時に、MOS型トランジスタに対してn型、p型の高不純物濃度ソース・ドレインを形成するためのイオン注入を実施している。従来法では、HBT素子形成開始前にCMOS形成部の高不純物濃度ソース・ドレイン注入を完了しているのに対し、本発明では外部ベース電極注入とPch−MOSのソース・ドレイン注入およびエミッタ電極注入とNch−MOSのソース・ドレイン注入を兼用することで大幅な工程削減・コスト削減を実現している。
【0056】
また、本発明は、エミッタ電極とヘテロ接合構造とを接続するための開口部にサイドウォールスペーサを設ける必要がないため、従来、サイドウォールスペーサ間隔で規定されるエミッタ幅Wをサイドウォールスペーサがない分だけ拡張することができる。その結果、開口部の寸法で定義されるエミッタサイズを縮小しても従来のベース抵抗を維持することができる。あるいは、従来と同一のエミッタサイズとした場合には、従来に比べてベース抵抗を低減することができる。
【0057】
さらに、本発明ではエミッタ電極の高さを、外部ベース電極やCMOS型トランジスタのゲート電極の高さに近いものとするので、コンタクトホールのエッチングが容易になる。また、本発明において、エミッタ電極を埋め込み構造とすることで、エミッタ電極上のコンタクトホールの位置合わせマージンを著しく緩和することができ、開口径の大きなコンタクトホールを形成することができる。その結果、従来に比べて、コンタクトプラグとエミッタ電極との接触面積を大きくすることができる。
【0058】
以上、本発明を望ましい実施形態に基づいて説明した。本発明は上述の実施形態に限定せず、本発明の技術的な思想内で当業者によって様々な形態に変形が可能である。例えば、上記実施形態において示した成膜やエッチング等の各プロセスは、他の等価なプロセスに置換することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、低コストかつ高製造歩留まりで、BiCMOS型半導体集積回路装置を実現することができ、半導体装置およびその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図2】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図3】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図4】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図5】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図6】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図7】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図8】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図9】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図10】本発明の一実施形態における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図11】本発明の一実施形態の変形例における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図12】本発明の一実施形態の変形例における半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図13】従来の半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図14】従来の半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図15】従来の半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図16】従来の半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図17】従来の半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【図18】従来の半導体装置の製造過程を示す工程断面図
【符号の説明】
【0061】
10、100 シリコン基板
1、101 埋め込みコレクタ層
2、102 半導体層
3、103 シャロートレンチ
4、104 ノンドープポリシリコン
5、105 シリコン酸化膜
6、106 ディープトレンチ
7 Si基板領域(第1の領域)
8 Si基板領域(第2の領域)
9a、109a n型ゲート電極
9b、109b p型ゲート電極
16、116 n型MOSFET形成領域
17、117 p型MOSFET形成領域
20、120 p型MOSFETソース領域
21、121 p型MOSFETドレイン領域
22、122 n型MOSFETソース領域
23、123 n型MOSFETドレイン領域
24、124 ヘテロ接合エピタキシャル膜
31、131 ベース電極
32、130 エミッタ電極
33 ベース電極p+注入層
34 エミッタ電極n+注入層
35 コレクタ引出層n+注入層
36 埋め込みエミッタ電極
41 絶縁膜(酸化シリコン膜)
42 窒化シリコン膜
43 酸化シリコン膜
44 ノンドープポリシリコン膜
45、47 酸化シリコン膜
46 層間絶縁膜
51〜55 レジストマスク
61〜69 シリサイド層
71〜79 コンタクトホール
81〜89 コンタクトプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層と、
前記半導体層の、素子分離領域で囲まれた第1の領域に形成された、前記第1導電型とは反対導電型である第2導電型の単結晶半導体からなる島領域と、
前記半導体層の、前記第1領域とは異なる第2の領域に形成された、コレクタ引出層と、
前記第1の領域と前記第2の領域とにわたって、前記半導体層の内部に形成された第1導電型のコレクタ層と、
前記島領域の表面の所定部分に接触して形成された、第2導電型の半導体膜からなるベース電極と、
前記ベース電極から離間して、前記島領域の他の部分に接触して形成された、第1導電型の半導体膜からなるエミッタ電極と、
を備え、
前記ベース電極と前記エミッタ電極とが、前記半導体層上に形成された共通の半導体膜を加工することで形成されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層はシリコンからなり、前記島領域はSi-IV族系単結晶半導体からなる、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
第1導電型の半導体層に素子分離領域を形成する工程と、
前記素子分離領域で囲まれた前記半導体層の第1の領域に、前記第1導電型とは反対導電型である第2導電型の単結晶半導体からなる島領域を形成する工程と、
前記島領域を含む前記半導体層上の全面に絶縁膜を形成する工程と、
前記島領域上に形成された前記絶縁膜の互いに異なる位置に開口部を設ける工程と、
前記開口部が形成された前記絶縁膜上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜の一部を除去し、一方の前記開口部において前記島領域に接続するベース電極と、他方の前記開口部において前記島領域に接続するエミッタ電極とを同時に形成する工程と、
前記ベース電極に第2導電型の不純物を導入し、前記エミッタ電極に第1導電型の不純物を導入する工程と、
前記半導体層の、前記第1の領域とは異なる第2の領域に、第1導電型の不純物を導入してコレクタ引出層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体装置は、前記第1および第2の領域とは異なる前記半導体層の領域に、第1導電型のチャネルを有する第1のMOSトランジスタおよび第2導電型のチャネルを有する第2のMOSトランジスタを備え、
前記エミッタ電極に不純物を導入する工程において、前記第1のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域を同時に形成し、
前記ベース電極に不純物を導入する工程において、前記第2のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域を同時に形成する、請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体層上に、前記ゲート電極、エミッタ電極、第1のMOSトランジスタおよび第2のMOSトランジスタを被覆する、層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜を貫通し、前記ゲート電極と、前記エミッタ電極と、前記第1のMOSトランジスタのゲート電極、ソース電極およびドレイン電極と、前記第2のMOSトランジスタのゲート電極、ソース電極およびドレイン電極とのそれぞれに到達するコンタクトホールを同時に形成する工程と、
をさらに含む、請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記エミッタ電極と、前記ベース電極と、前記第1のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域と、前記第2のMOSトランジスタのソース領域またはドレイン領域とに、導入された不純物を同一の熱処理工程で活性化させる、請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体膜の一部を除去する工程において、半導体膜を除去するエッチングが、前記エミッタ電極となる前記半導体膜上にエッチングマスクがなく、前記ベース電極となる前記半導体膜上にエッチングマスクが存在する状態で実施され、前記他方の開口部内に埋め込まれた前記エミッタ電極を形成する、請求項3から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記エミッタ電極上に形成されるコンタクトホールは、平面視において、前記エミッタ電極を内包する、請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体層はシリコンからなり、前記島領域はSi-IV族系単結晶半導体からなる、請求項3から8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−192664(P2010−192664A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35269(P2009−35269)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】