説明

半導体装置とその作製方法

【課題】特性が良好なトランジスタを提供する。
【解決手段】例えば、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造のトランジスタを作製するに際して、ソースとドレインを構成する導電層を3層の積層構造とし、2段階のエッチングを行う。すなわち、第1のエッチング工程には、少なくとも第2の膜及び第3の膜に対するエッチングレートが高いエッチング方法を採用し、第1のエッチング工程は少なくとも第1の膜を露出するまで行う。第2のエッチング工程には、第1の膜に対するエッチングレートが第1のエッチング工程よりも高く、「第1の膜の下に接して設けられている層」に対するエッチングレートが第1のエッチング工程よりも低いエッチング方法を採用する。第2のエッチング工程後にレジストマスクをレジスト剥離液により剥離するに際し、第2の膜の側壁が少し削られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、半導体装置とその作製方法に関する。なお、本明細書において、半導体装置とは、半導体素子自体または半導体素子を含むものをいい、このような半導体素子として、例えばトランジスタ(薄膜トランジスタなど)が挙げられる。液晶表示装置などの表示装置も半導体装置に含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体と呼ぶ。)が注目されている。酸化物半導体は、例えば、トランジスタに適用することができる(特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
トランジスタは、様々に分類される。例えば、基板とゲートとチャネル形成領域の位置関係により、ボトムゲート型構造とトップゲート型構造に分類される。チャネル形成領域と基板の間にゲートが配されたトランジスタ構造はボトムゲート型構造と呼ばれる。一方で、ゲートと基板の間にチャネル形成領域が配されたトランジスタ構造はトップゲート型構造と呼ばれる。
【0004】
また、ソース及びドレインと、チャネルを形成する半導体層との接続箇所によりボトムコンタクト型とトップコンタクト型に分類される。ソース及びドレインと、チャネルを形成する半導体層との接続箇所が、基板側に配される構造はボトムコンタクト型と呼ばれる。ソース及びドレインと、チャネルを形成する半導体層との接続箇所が、基板とは逆側(すなわち、液晶表示装置においては対向基板側)に配される構造はトップコンタクト型と呼ばれる。
【0005】
即ち、トランジスタは、BGBC(ボトムゲート・ボトムコンタクト)構造、BGTC(ボトムゲート・トップコンタクト)構造、TGTC(トップゲート・トップコンタクト)構造、TGBC(トップゲート・ボトムコンタクト)構造のいずれかに分類することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−096055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、オン電流が十分に大きく、オフ電流が十分に小さいトランジスタを提供することを課題とする。オン電流が十分に大きく、オフ電流が十分に小さいトランジスタでは、スイッチング特性が良好である。
【0008】
ところで、トランジスタを各種製品に応用するに際して、トランジスタは高い信頼性を有することが好ましい。
【0009】
トランジスタの信頼性を調べるための手法の一つに、バイアス−熱ストレス試験(以下、GBT(Gate Bias Temperature)試験と呼ぶ。)がある。GBT試験は加速試験の一種であり、長期間の使用によって起こるトランジスタの特性変化を、短時間で評価することができる。特に、GBT試験前後におけるトランジスタのしきい値電圧の変化量は、信頼性を調べるための重要な指標となる。GBT試験前後において、しきい値電圧の変化量が小さいほど信頼性が高い。
【0010】
具体的には、トランジスタが形成されている基板を一定の温度に維持し、トランジスタのソースとドレインを同電位とし、ゲートにはソース及びドレインとは異なる電位を一定時間与える。基板の温度は、試験目的に応じて適宜設定すればよい。なお、「+GBT試験」では、ゲートに与える電位がソース及びドレインの電位(ソースとドレインは同電位である。)よりも高く、「−GBT試験」では、ゲートに与える電位がソース及びドレインの電位(ソースとドレインは同電位である。)よりも低い。
【0011】
GBT試験の試験強度は、基板温度、ゲート絶縁層に加えられる電界強度及び電界印加時間により決定することができる。ゲート絶縁層中の電界強度は、ゲートと、ソース及びドレインと、の間の電位差をゲート絶縁層の厚さで除して決定される。例えば、厚さが100nmのゲート絶縁層中の電界強度を2MV/cmとする場合には、該電位差を20Vとすればよい。
【0012】
なお、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタにおいてもGBT試験によるしきい値電圧の変化が確認されている。
【0013】
そこで、本発明の一態様は、長期間の使用に際しても、しきい値電圧がシフトしにくく、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題とする。
【0014】
また、本発明の一態様は、スイッチング特性が良好で、且つ信頼性の高い半導体装置を提供することを課題とする。
【0015】
更には、トランジスタのゲート、ソース及びドレインは、ゲート配線及びソース配線を形成する層と同一の層により形成することが好ましい。そして、ゲート配線及びソース配線は、導電性の高い材料により形成することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様であるスイッチング特性が良好な半導体装置は、チャネル形成領域となる半導体層をゲート絶縁層の厚さに対して十分に厚くすることで得ることができる。
【0017】
一方で、本発明の一態様である信頼性が高い半導体装置は、設けられる各層の被覆性を良好なものとすることで得ることができる。
【0018】
本発明の一態様の好ましい形態として、具体的な構成を以下に説明する。
【0019】
本発明の一態様は、少なくとも第1及び第2のエッチング工程により構成されるエッチング方法である。ここで、「エッチングされる膜」は、3層の積層構造であることが好ましく、「エッチングされる膜」は、下側から第1の膜、第2の膜及び第3の膜とする。第1のエッチング工程には、少なくとも第2の膜及び第3の膜に対するエッチングレートが高いエッチング方法を採用し、第1のエッチング工程は少なくとも第1の膜を露出するまで行う。第2のエッチング工程には、第1の膜に対するエッチングレートが第1のエッチング工程よりも高く、「第1の膜の下に接して設けられている層」に対するエッチングレートが第1のエッチング工程よりも低いエッチング方法を採用する。
【0020】
前記した本発明の一態様であるエッチング方法は、半導体装置の作製工程に適用することができる。特に、「エッチングされる膜」が導電膜である場合に前記した本発明の一態様であるエッチング方法を適用することが好ましい。特に、「第1の膜の下に接して設けられている層」が半導体層であることが好ましい。すなわち、トップコンタクト型であることが好ましい。
【0021】
すなわち、本発明の一態様は、第1の配線層を形成し、前記第1の配線層を覆って絶縁層を形成し、前記絶縁層上に半導体層を形成し、前記半導体層上に第1の導電膜、第2の導電膜及び第3の導電膜をこの順に積層して形成し、前記第3の導電膜上にレジストマスクを形成し、前記レジストマスクを用いて、前記第1乃至第3の導電膜に少なくとも2段階のエッチングを行って、3層の積層構造からなる第2の配線層を離間させて形成し、前記2段階のエッチングが、少なくとも前記第1の導電膜を露出させるまで行う第1のエッチング工程と、前記第1の導電膜に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも高く、前記半導体層に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも低い条件により行う第2のエッチング工程と、を有し、前記第2のエッチング工程後にレジスト剥離液を用いて前記レジストマスクを剥離することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0022】
または、本発明の一態様は、半導体層を形成し、前記半導体層上に第1の導電膜、第2の導電膜及び第3の導電膜をこの順に積層して形成し、前記第3の導電膜上にレジストマスクを形成し、前記レジストマスクを用いて、前記第1乃至第3の導電膜に少なくとも2段階のエッチングを行って、3層の積層構造からなる第1の配線層を離間させて形成し、前記第1の配線層及び前記半導体層を覆って絶縁層を形成し、前記絶縁層上に前記半導体層と重畳して第2の配線層を形成し、前記2段階のエッチングが、少なくとも前記第1の導電膜を露出させるまで行う第1のエッチング工程と、前記第1の導電膜に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも高く、前記半導体層に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも低い条件により行う第2のエッチング工程と、を有し、前記第2のエッチング工程後にレジスト剥離液を用いて前記レジストマスクを剥離することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0023】
ただし、本発明はこれらに限定されず、ボトムコンタクト型であってもよい。すなわち、BGBC構造またはTGBC構造において、3層の積層構造からなるソース及びドレインの形成に前記エッチング方法を用いてもよい。BGBC構造では、「第1の膜の下に接して設けられている層」はゲート絶縁層である。TGBC構造では、「第1の膜の下に接して設けられている層」は下地となる絶縁膜または基板である。
【0024】
または、本発明はこれらに限定されず、ゲートとなる導電膜のエッチングに際して、前記した本発明の一態様であるエッチング方法を適用してもよい。
【0025】
前記構成の本発明の一態様において、前記第1のエッチング工程は、主成分としてフッ素よりも塩素が多いガスを用いて行い、前記第2のエッチング工程は、主成分として塩素よりもフッ素が多いガスを用いて行えばよい。
【0026】
なお、より具体的には、主成分としてフッ素よりも塩素が多いガスとしては、BClガスとClガスの混合ガスが挙げられる。主成分として塩素よりもフッ素が多いガスとしては、SFガスが挙げられる。
【0027】
また、前記構成の本発明の一態様において、前記レジスト剥離液は、前記第2の導電膜を腐食させる薬液であるとよい。
【0028】
前記構成の本発明の一態様において、前記第1の導電膜は、前記第3の導電膜よりも厚いことが好ましい。第3の導電膜は第1のエッチングによりエッチングするため薄い方がよいが、第1の導電膜を厚くすると第1のエッチング工程において、第1の導電膜の下に接して設けられている層が露出されにくいからである。また、第1の導電膜を厚くすると配線抵抗が低減されるからである。
【0029】
前記構成の本発明の一態様において、前記第2の導電膜を厚く形成する場合、前記第2の導電膜を形成する導電性材料は、前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜を形成する導電性材料よりも導電率が高いことが好ましい。配線抵抗が低減されるからである。
【0030】
前記構成の本発明の一態様において、例えば、前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜はチタン膜であり、前記第2の導電膜はアルミニウム膜であればよい。
【0031】
前記構成の本発明の一態様において、例えば、前記半導体層は酸化物半導体層であればよい。
【0032】
前記構成の本発明の一態様において、例えば、前記酸化物半導体層がIGZOの材料で形成されていればよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一態様によれば、「第1の膜の下に接して設けられている層」が薄くなることを防止することができる。従って、「第1の膜の下に接して設けられている層」が半導体層である場合には、半導体層の厚さの減少を防止することができる。そのため、半導体層のオン電流を十分に大きくし、オフ電流を十分に小さくすることができる。更には、エッチングに起因する基板面内における半導体層の厚さのばらつきを防ぎ、特性のばらつきを抑制することができる。
【0034】
本発明の一態様によれば、GBT試験における特性シフトが小さい半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1の半導体装置の作製方法を説明する図。
【図2】実施の形態1の半導体装置の作製方法を説明する図。
【図3】実施の形態1の半導体装置の作製方法を説明する図。
【図4】実施の形態2の半導体装置の作製方法を説明する図。
【図5】実施の形態2の半導体装置の作製方法を説明する図。
【図6】実施の形態3の電子機器を説明する図。
【図7】実施例1で説明するSTEM像。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さないことがある。また、便宜上、絶縁層は上面図には表さないことがある。
【0037】
なお、以下の説明において、第1、第2などの序数は、説明の便宜上付したものであり、その数を限定するものではない。
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態は、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について説明する。なお、半導体装置の一例として、トランジスタを例示して説明する。
【0039】
図1乃至図3を参照して説明する本実施の形態のトランジスタの作製方法は、第1の配線層102を形成し、第1の配線層102を覆って第1の絶縁層104を形成し、第1の絶縁層104上に半導体層106を形成し、半導体層106上に第1の導電膜107A、第2の導電膜107B及び第3の導電膜107Cをこの順に積層して積層導電膜107を形成し、積層導電膜107に少なくとも2段階のエッチングを行って、3層の積層構造からなる第2の配線層108を離間させて形成し、前記2段階のエッチングが、少なくとも第1の導電膜107Aを露出させるまで行う第1のエッチング工程と、第1の導電膜107Aに対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも高く、半導体層106に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも低い条件により行う第2のエッチング工程と、を有することを特徴とする。
【0040】
まず、基板100上に第1の配線層102を位置選択的に形成し、第1の配線層102を覆って第1の絶縁層104を形成し、第1の絶縁層104上に半導体層106を位置選択的に形成する(図1(A))。
【0041】
基板100としては、絶縁性表面を有するものを用いればよい。基板100としては、例えば、ガラス基板、石英基板、表面に絶縁層が設けられた半導体基板、または表面に絶縁層が設けられたステンレス基板などを用いればよい。
【0042】
第1の配線層102は、少なくともトランジスタのゲートを構成する。第1の配線層102は、導電性材料により形成すればよく、第1の配線層102となる導電性材料膜を形成し、これをフォトリソグラフィ法により加工すればよい。
【0043】
第1の絶縁層104は、少なくともトランジスタのゲート絶縁層を構成する。第1の絶縁層104は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどにより形成すればよいが、半導体層106が酸化物半導体層である場合にはスパッタリング法により形成することが好ましい。半導体層106に接する第1の絶縁層104からは、水分及び水素を極力除去しておくことが好ましいからである。なお、第1の絶縁層104は単層であってもよいし、複数の層が積層されて設けられていてもよい。
【0044】
第1の絶縁層104は、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、またはその他の酸素過剰な酸化物により形成してもよい。
【0045】
なお、「酸化窒化シリコン」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものをいう。
【0046】
なお、「窒化酸化シリコン」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものをいう。
【0047】
半導体層106は、ここでは酸化物半導体により形成する。半導体層106は、半導体膜を形成し、これをフォトリソグラフィ法により加工すればよい。半導体層106を形成する酸化物半導体としては、不純物が除去され、酸化物半導体の主成分以外のキャリア供与体となる不純物が極力含まれないように高純度化することにより真性(I型)化または実質的に真性(I型)化された酸化物半導体を用いる。
【0048】
高純度化された酸化物半導体層中にはキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満である。
【0049】
半導体層106を形成する酸化物半導体層中にはキャリアが極めて少ないため、トランジスタのオフ電流を小さくすることができる。オフ電流は小さければ小さいほど好ましい。
【0050】
このような高純度化された酸化物半導体は界面準位及び界面電荷に対して極めて敏感であるため、第1の絶縁層104と半導体層106の界面の状態(界面準位、界面電荷など)を適切なものとなるよう調整することは重要である。そのため高純度化された酸化物半導体に接する第1の絶縁層104は、高品質であることが好ましい。ここで、「第1の絶縁層104が高品質である」ことは、第1の絶縁層104の表面もしくは内部に含まれる欠陥が少なく、電荷をトラップする欠陥準位や界面準位が少なく、固定電荷が発生しづらいことなどを意味する。
【0051】
第1の絶縁層104は、例えば、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法により形成されることで、第1の絶縁層104を緻密にすることができ、絶縁耐圧を高くすることができるため好ましい。高純度化された酸化物半導体層と高品質なゲート絶縁層が密接して形成されると、界面準位を低減し、界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0052】
もちろん、第1の絶縁層104として高品質な絶縁層を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法などの他の成膜方法を適用してもよい。
【0053】
半導体層106を形成する酸化物半導体としては、少なくともIn、Ga、Sn、Zn、Al、Mg、Hf及びランタノイドから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物半導体(IGZOとも呼ぶ)、In−Sn−Zn系酸化物半導体、In−Al−Zn系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn系酸化物半導体、Al−Ga−Zn系酸化物半導体、Sn−Al−Zn系酸化物半導体、In−Hf−Zn系酸化物半導体、In−La−Zn系酸化物半導体、In−Ce−Zn系酸化物半導体、In−Pr−Zn系酸化物半導体、In−Nd−Zn系酸化物半導体、In−Pm−Zn系酸化物半導体、In−Sm−Zn系酸化物半導体、In−Eu−Zn系酸化物半導体、In−Gd−Zn系酸化物半導体、In−Tb−Zn系酸化物半導体、In−Dy−Zn系酸化物半導体、In−Ho−Zn系酸化物半導体、In−Er−Zn系酸化物半導体、In−Tm−Zn系酸化物半導体、In−Yb−Zn系酸化物半導体、In−Lu−Zn系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn系酸化物半導体、Sn−Zn系酸化物半導体、Al−Zn系酸化物半導体、Zn−Mg系酸化物半導体、Sn−Mg系酸化物半導体、In−Mg系酸化物半導体や、一元系金属酸化物である酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などを用いることができる。また、前記酸化物半導体がSiOを含んでいてもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物半導体は、In、GaまたはZnを有する酸化物半導体という意味であり、その組成比は特に問わない。また、InとGaとZn以外の元素を含んでいてもよい。
【0054】
半導体層106を形成する酸化物半導体には、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記されるものを用いることができる。ここで、Mは、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を表す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどが挙げられる。または、前記酸化物半導体はSiOを含んでいてもよい。
【0055】
また、半導体層106を形成する酸化物半導体膜をスパッタリング法で形成するためには、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]のターゲットを用いればよい。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]のターゲットを用いてもよい。なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物半導体膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜という意味であり、その組成比は特に問わない。
【0056】
ここでは、半導体層106を形成する酸化物半導体膜は、In−Ga−Zn系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により形成される。また、半導体層106は、希ガス(例えばAr)雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、または希ガスと酸素ガスの混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0057】
また、ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。このように、充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜される酸化物半導体膜を緻密な膜とすることができる。
【0058】
次に、半導体層106に第1の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層の脱水化または脱水素化を行うことができる。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、または400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、第1の加熱処理として、窒素ガス雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。なお、第1の加熱処理は酸化物半導体層の形成後であればよく、このタイミングに限定されない。更には、第1の加熱処理を行う雰囲気は、窒素ガス雰囲気に限定されず、酸素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気でもよいし、酸素ガス雰囲気でもよいし、水分が十分に除去された空気(Dry Air)でもよい。第1の加熱処理後は、大気曝露を避けるなどして、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぐことが好ましい。
【0059】
なお、半導体層106を形成する前に予備加熱を行うことで、予め第1の絶縁層104に対して脱水化または脱水素化を行っておいてもよい。
【0060】
なお、半導体層106を形成する半導体膜を形成する前には、成膜室内の残留水分と水素を十分に除去することが好ましい。従って、半導体層106を形成する半導体膜の形成前に、吸着型の真空ポンプ(例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプ)を用いて排気を行うことが好ましい。
【0061】
次に、第1の絶縁層104及び半導体層106を覆って積層導電膜107を形成する(図1(B))。
【0062】
積層導電膜107は、基板100側から順に第1の導電膜107A、第2の導電膜107B及び第3の導電膜107Cにより構成されている。第1の導電膜107A、第2の導電膜107B及び第3の導電膜107Cは、導電性材料により形成すればよい。第1の導電膜107A及び第3の導電膜107Cを形成する導電性材料としては、例えば、Ti、W、Mo若しくはTaまたはこれらの窒化物が挙げられる。第2の導電膜107Bを形成する導電性材料としては、例えば、Alが挙げられる。
【0063】
次に、積層導電膜107上にレジストマスク109を位置選択的に形成する(図1(C))。レジストマスク109は、フォトリソグラフィ法により形成すればよい。
【0064】
次に、レジストマスク109を用いて積層導電膜107に対してエッチングを行って、第2の配線層108を形成する。第2の配線層108は、少なくともトランジスタのソース及びドレインを構成する。第2の配線層108を形成するエッチング工程は、2段階のエッチングにより行う。ここで、第2の配線層108を形成する第1及び第2のエッチング工程について、図1(C)の点線枠内に注目し、図2(A)乃至(D)を参照して説明する。
【0065】
まず、レジストマスク109(図2(A))を用いて、少なくとも第1の導電膜107Aが露出するまで積層導電膜107をエッチングする(第1のエッチング工程)。ここで、第1の導電膜107Aは、エッチングされて第1の導電膜107Dとなる。第1の導電膜107Dは、第1の絶縁層104及び半導体層106上の全面に存在し、第1の絶縁層104及び半導体層106を露出させない限り、第1の導電膜107Aがエッチングされる深さは特に限定されない(図2(B))。なお、レジストマスク109と重畳していない部分の第2の導電膜107Bは、エッチングされて第2の導電膜107Eとなる。そして、レジストマスク109と重畳していない部分の第3の導電膜107Cは、エッチングされて第3の導電膜107Fとなる。
【0066】
なお、第1のエッチング工程は、主成分として塩素を多く含む(フッ素よりも塩素が多い)ガス雰囲気中で行えばよい。ここで、塩素を多く含むガスとしては、例えば、CClガス、SiClガス、BClガス及びClガスが挙げられる。特に好ましくはBClガスとClガスの混合ガスを用いる。
【0067】
次に、第1の絶縁層104及び半導体層106が露出するまで第1の導電膜107Dをエッチングして第2の配線層の第1の層108Aを形成する(第2のエッチング工程)。ここで、第3の導電膜107Fは、レジストマスクが後退してエッチングされ、第2の配線層の第3の層108Cとなる。なお、第2のエッチング工程では、少なくとも第1の絶縁層104及び半導体層106が露出され、露出した半導体層106がエッチングにより消失しなければよい(図2(C))。
【0068】
なお、第2のエッチング工程は、主成分としてフッ素を多く含む(塩素よりもフッ素が多い)ガス雰囲気中で行えばよい。ここで、フッ素を多く含むガスとしては、例えば、CFガス、SFガス、NFガス、CBrFガス、CFSOHガス、及びCガスが挙げられる。特に好ましくはSFガスを用いる。
【0069】
このように、主成分としてフッ素を多く含むガス(特にSFガス)は、レジストマスクに対するエッチングレートが高く、レジストマスクを縮小(後退)させることが知られている。従って、第2のエッチングによりレジストマスク109は縮小し、レジストマスク109Cとなる。また、レジストマスク109が縮小することで、レジストマスク109Cと重畳しない部分の第3の導電膜107Fもエッチングされる。ただし、第2の導電膜107Eが例えばAlを主成分とする材料により形成されている場合には、第2の導電膜107Eはエッチングされない。
【0070】
ただし、本発明はこれに限定されず、レジストマスク109Cと重畳しない部分の第2の導電膜107Eがエッチングされていてもよい。
【0071】
最後に、レジストマスク109Cを剥離する(図2(D))。第2の導電膜107Eの主成分がアルミニウムであるときには、第2の導電膜107Eの側壁には第2のエッチングによりアルミニウムを含む生成物が付着している。この状態でレジストマスク109Cをレジスト剥離液により剥離すると、第2の導電膜107Eの側壁が少し削れ、第2の配線層の第2の層108Bが形成される。ここで、レジスト剥離液としてはアルミニウムを腐食させる薬液を用いればよく、例えば、ナガセケムテックス株式会社製「ナガセレジストストリップN−300」を用いればよい。なお、ナガセケムテックス株式会社製「ナガセレジストストリップN−300」は、2−アミノエタノールを30重量%、グリコールエーテルを70重量%含む。
【0072】
以上説明したように、積層導電膜107をエッチングして第2の配線層108を形成することで、チャネル形成領域となる部分の半導体層106の厚さを保ちつつ、第2の配線層108を離間させることができる。このようなエッチング方法を採用して第2の配線層108を形成することで、基板100が大面積基板であっても、基板面内におけるチャネル形成領域となる部分の半導体層106の厚さのばらつきを小さいものとすることができる。
【0073】
更には、このように形成した第2の配線層108では、第2の配線層の第1の層108Aの側壁と第2の配線層の第2の層108Bの側壁と第2の配線層の第3の層108Cの側壁が同一平面上に存在せず、第2の配線層108は、側壁の形状が3段の階段状になる。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態のトランジスタが完成する(図3(A))。
【0075】
なお、図3(A)に示すトランジスタは、基板100上に設けられており、第1の配線層102と、第1の配線層102を覆って設けられた第1の絶縁層104と、第1の絶縁層104上に設けられた半導体層106と、半導体層106を覆って設けられた第2の配線層108と、を有し、第2の配線層108と重畳していない部分の半導体層106の厚さ(第1の厚さとする。)と、第2の配線層108と重畳している部分の半導体層106の厚さ(第2の厚さとする。)の差はほとんどない。
【0076】
更には、図3(A)に示すトランジスタにおいて、半導体層106の厚さは厚く保つことが可能であるため、トランジスタのオン電流は十分に大きくすることができ、オフ電流は十分に小さいものとすることができる。更には、基板100が大面積の基板であっても、エッチングに起因する基板面内における半導体層の厚さのばらつきがほとんどないため、特性のばらつきも小さいトランジスタを得ることができる。
【0077】
半導体層106の厚さは、第1の絶縁層104の厚さとの関係で決定すればよい。第1の絶縁層104の厚さが100nmの場合には、半導体層106の厚さは概ね15nm以上とすればよい。なお、半導体層106の厚さを25nm以上とすると、トランジスタの信頼性が向上する。半導体層106の厚さは、30nm以上40nm以下とすることが好ましい。
【0078】
ところで、図3(A)に示すトランジスタには、更に第2の絶縁層110が形成されることが好ましい(図3(B))。
【0079】
第2の絶縁層110は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどにより形成すればよいが、スパッタリング法により形成することが好ましい。水分及び水素の再混入を防ぐことができるからである。特に、半導体層106と接する部分の第2の絶縁層110を酸化シリコンにより形成することが好ましい。または、第2の絶縁層110が、複数の層が積層された構造である場合には、少なくとも、半導体層106に接する層を酸化シリコンにより形成し、酸化シリコン層上に有機樹脂層などを形成してもよい。
【0080】
次いで、不活性ガス雰囲気下、または酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素ガス雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理では、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が第2の絶縁層110と接した状態で加熱される。なお、第2の加熱処理は第2の絶縁層110の形成後であればよく、このタイミングに限定されない。
【0081】
そして、更には、半導体層106のチャネル形成領域と重畳して第2の絶縁層110上に第3の配線層112が位置選択的に形成されることが好ましい(図3(C))。第3の配線層112はバックゲートとして機能するため、導電性材料により形成すればよい。第3の配線層112は電気的に独立した配線としてもよく、第3の配線層112は第1の配線層102と電気的に接続されていてもよいし、または、フローティングにしてもよい。第3の配線層112は、第1の配線層102と同様の方法及び同様の材料により形成することができるが、これに限定されない。
【0082】
第3の配線層112が、電気的に独立した配線である場合には、第1の配線層102の電位に依存しないバックゲートとして機能させることができる。このとき、バックゲートによりしきい値電圧の制御が可能となる。
【0083】
第3の配線層112が、第1の配線層102と電気的に接続されている場合には、第1の配線層102と同電位、または、第1の配線層102の電位に応じた電位とすることができる。第3の配線層112を第1の配線層102の電位に応じた電位とする場合には、第1の配線層102により形成されるゲートと第3の配線層112により形成されるバックゲートの間に抵抗素子が設けられていればよい。このとき、トランジスタがオンしているときの単位面積あたりの電流を大きくすることができる。
【0084】
第3の配線層112がフローティングである場合には、第3の配線層112をバックゲートとして機能させることはできないが、半導体層106の更なる保護層として機能させることが可能である。
【0085】
なお、高純度化された酸化物半導体層である半導体層106を適用したトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、10zA/μm未満(チャネル幅1μm当たり10zA未満)、85℃にて100zA/μm未満レベルにまで低くすることができる。すなわち、測定限界近傍または測定限界近傍以下までオフ電流を下げることができる。
【0086】
(実施の形態2)
本発明は、実施の形態1に示した形態に限定されない。例えば、本発明の一態様である半導体装置としてのトランジスタは、TGTC構造であってもよい。
【0087】
図4及び図5を参照して説明する本実施の形態のトランジスタの作製方法は、半導体層206を形成し、半導体層206上に第1の導電膜207A、第2の導電膜207B及び第3の導電膜207Cをこの順に積層して積層導電膜207を形成し、積層導電膜207に少なくとも2段階のエッチングを行って、3層の積層構造からなる第1の配線層208を離間させて形成し、第1の配線層208及び半導体層206を覆って絶縁層210を形成し、絶縁層210上に半導体層206と重畳して第2の配線層212を形成し、前記2段階のエッチングが、少なくとも第1の導電膜207Aを露出させるまで行う第1のエッチング工程と、前記第1の導電膜207Aに対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも高く、半導体層206に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも低い条件により行う第2のエッチング工程と、を有することを特徴とする。
【0088】
まず、基板200上に好ましくは下地絶縁層204を形成し、基板200上または下地絶縁層204上に半導体層206を位置選択的に形成する(図4(A))。
【0089】
基板200は、実施の形態1の基板100と同様のものを用いればよい。
【0090】
下地絶縁層204は、実施の形態1の第1の絶縁層104などと同様の方法及び同様の材料により形成することができる。
【0091】
半導体層206は、実施の形態1の半導体層106と同様の方法及び同様の材料により形成することができる。
【0092】
次に、下地絶縁層204及び半導体層206上に積層導電膜207を形成し、積層導電膜207上にレジストマスク209を位置選択的に形成する(図4(A))。
【0093】
積層導電膜207は、実施の形態1の積層導電膜107と同様の方法及び同様の材料により形成することができる。
【0094】
レジストマスク209は、実施の形態1のレジストマスク109と同様にフォトリソグラフィ法により形成することができる。
【0095】
次に、レジストマスク209を用いて積層導電膜207に対してエッチングを行って、第1の配線層208を形成する。第1の配線層208は、少なくともトランジスタのソース及びドレインを構成する。第1の配線層208を形成するエッチング工程は、2段階のエッチングにより行う。ここで、第1の配線層208を形成する第1及び第2のエッチング工程について、図4(A)の点線枠内に注目し、図5(A)乃至(D)を参照して説明する。
【0096】
まず、レジストマスク209(図5(A))を用いて、少なくとも第1の導電膜207Aが露出するまで積層導電膜207をエッチングする(第1のエッチング工程)。ここで、第1の導電膜207Aは、エッチングされて第1の導電膜207Dとなる。第1の導電膜207Dは、下地絶縁層204上及び半導体層206上の全面に存在し、下地絶縁層204及び半導体層206を露出させない限り、第1の導電膜207Aがエッチングされる深さは特に限定されない(図5(B))。なお、レジストマスク209と重畳していない部分の第2の導電膜207Bは、エッチングされて第2の導電膜207Eとなる。そして、レジストマスク209と重畳していない部分の第3の導電膜207Cは、エッチングされて第3の導電膜207Fとなる。
【0097】
なお、第1のエッチング工程は、主成分として塩素を多く含む(フッ素よりも塩素が多い)ガス雰囲気中で行えばよい。ここで、塩素を多く含むガスとしては、例えば、CClガス、SiClガス、BClガス及びClガスが挙げられる。特に好ましくはBClガスとClガスの混合ガスを用いる。
【0098】
次に、下地絶縁層204及び半導体層206が露出するまで第1の導電膜207Dをエッチングして第1の配線層の第1の層208Aを形成する(第2のエッチング工程)。ここで、第3の導電膜207Fは、レジストマスクが後退してエッチングされ、第1の配線層の第3の層208Cとなる。なお、第2のエッチング工程では、少なくとも下地絶縁層204及び半導体層206が露出され、露出した半導体層206がエッチングにより消失しなければよい(図5(C))。
【0099】
なお、第2のエッチング工程は、主成分としてフッ素を多く含む(塩素よりもフッ素が多い)ガス雰囲気中で行えばよい。ここで、フッ素を多く含むガスとしては、例えば、CFガス、SFガス、NFガス、CBrFガス、CFSOHガス、及びCガスが挙げられる。特に好ましくは、SFガスを用いる。
【0100】
このように、主成分としてフッ素を多く含むガス(特にSFガス)は、レジストマスクに対するエッチングレートが高く、レジストマスクを縮小(後退)させることが知られている。従って、第2のエッチングによりレジストマスク209は縮小し、レジストマスク209Cとなる。また、レジストマスク209が縮小することで、レジストマスク209Cと重畳しない部分の第3の導電膜207Fもエッチングされる。ただし、第2の導電膜207Eが例えばAlを主成分とする材料により形成されている場合には、第2の導電膜207Eはエッチングされない。
【0101】
ただし、本発明はこれに限定されず、レジストマスク209Cと重畳しない部分の第2の導電膜207Eがエッチングされていてもよい。
【0102】
最後に、レジストマスク209Cを剥離する(図5(D))。第2の導電膜207Eの主成分がアルミニウムであるときには、第2の導電膜207Eの側壁には第2のエッチングによりアルミニウムを含む生成物が付着している。この状態でレジストマスク209Cをレジスト剥離液により剥離すると、第2の導電膜207Eの側壁が少し削れ、第1の配線層の第2の層208Bが形成される。ここで、レジスト剥離液としてはアルミニウムを腐食させる薬液を用いればよく、例えば、ナガセケムテックス株式会社製「ナガセレジストストリップN−300」を用いればよい。
【0103】
以上説明したように、積層導電膜207をエッチングして第1の配線層208を形成することで、チャネル形成領域となる部分の半導体層206の厚さを保ちつつ、チャネル形成領域となる部分で第1の配線層208を離間させることができる。このようなエッチング方法を採用して第1の配線層208を形成することで、基板200が大面積基板であっても、基板面内におけるチャネル形成領域となる部分の半導体層206の厚さのばらつきをなくすことができる。
【0104】
更には、このように形成した第1の配線層208では、第1の配線層の第1の層208Aの側壁と第1の配線層の第2の層208Bの側壁と第1の配線層の第3の層208Cの側壁が同一平面上に存在せず、第1の配線層208は、側壁の形状が3段の階段状になる(図4(B))。
【0105】
次に、第1の配線層208、半導体層206及び下地絶縁層204上に絶縁層210を形成する(図4(C))。絶縁層210は、少なくともトランジスタのゲート絶縁層を構成する。
【0106】
絶縁層210は、実施の形態1の第1の絶縁層104と同様の方法及び同様の材料により形成することができる。従って、絶縁層210は、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、またはその他の酸素過剰な酸化物により形成してもよい。
【0107】
次に、絶縁層210上に、少なくとも半導体層206と重畳して第2の配線層212を位置選択的に形成する(図4(C))。第2の配線層212は、少なくともトランジスタのゲートを構成する。このように、本実施の形態のトランジスタが完成する(図4(C))。
【0108】
図4(C)に示すトランジスタは、半導体層206と、半導体層206上に離間して設けられた第1の配線層208と、第1の配線層208を覆って設けられた絶縁層210と、絶縁層210上に設けられた第2の配線層212と、を有し、第1の配線層208と重畳していない部分の半導体層206の厚さ(第1の厚さとする。)と、第1の配線層208と重畳している部分の半導体層206の厚さ(第2の厚さとする。)の差はほとんどない。
【0109】
更には、図4(C)に示すトランジスタにおいて、半導体層206の厚さは厚く保つことが可能であるため、トランジスタのオン電流は十分に大きくすることができ、オフ電流は十分に小さいものとすることができる。更には、基板200が大面積の基板であっても、エッチングに起因する基板面内における半導体層の厚さのばらつきがほとんどないため、特性のばらつきも小さいトランジスタを得ることができる。
【0110】
半導体層206の厚さは、絶縁層210の厚さとの関係で決定すればよい。絶縁層210の厚さが100nmの場合には、半導体層206の厚さは概ね15nm以上とすればよい。なお、半導体層206の厚さを25nm以上とすると、トランジスタの信頼性が向上する。半導体層206の厚さは、25nm以上50nm以下とすることが好ましい。
【0111】
本実施の形態にて説明したように、半導体層の厚さを調整してTGTC構造のトランジスタを作製することができる。
【0112】
なお、図示していないが、半導体層206と重畳して、下地絶縁層204と基板200の間にバックゲートが設けられていてもよい。バックゲートが設けられていると、実施の形態1における第3の配線層112が設けられている場合と同様の効果を享受する。
【0113】
なお、本実施の形態においても、酸化物半導体層は高純度化されている。高純度化された酸化物半導体層である半導体層206を適用したトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、10zA/μm未満(チャネル幅1μm当たり10zA未満)、85℃にて100zA/μm未満レベルにまで低くすることができる。すなわち、測定限界近傍または測定限界近傍以下までオフ電流を下げることができる。
【0114】
ただし、本発明は、実施の形態1及び実施の形態2に示した形態に限定されず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で異なる形態であってもよく、例えばBGBC構造であってもよいし、TGBC構造であってもよい。
【0115】
(実施の形態3)
次に、本発明の一態様である電子機器について説明する。本発明の一態様である電子機器には、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタの少なくとも一つを搭載させる。本発明の一態様である電子機器として、例えば、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などが挙げられる。例えば、このような電子機器の表示部を構成する画素トランジスタに実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを適用すればよい。
【0116】
図6(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体301、筐体302、表示部303、キーボード304などによって構成されている。筐体301と筐体302内には、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタが設けられている。図6(A)に示すノート型のパーソナルコンピュータに実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを搭載することで、表示部の表示むらを低減し、信頼性を向上させることができる。
【0117】
図6(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体311には、表示部313、外部インターフェイス315、操作ボタン314などが設けられている。更には、携帯情報端末を操作するスタイラス312などを備えている。本体311内には、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタが設けられている。図6(B)に示すPDAに実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを搭載することで、表示部の表示むらを低減し、信頼性を向上させることができる。
【0118】
図6(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍320であり、筐体321と筐体323の2つの筐体で構成されている。筐体321及び筐体323には、それぞれ表示部325及び表示部327が設けられている。筐体321と筐体323は、軸部337により接続されており、軸部337を軸として開閉動作を行うことができる。そして、筐体321は、電源331、操作キー333、スピーカー335などを備えている。筐体321及び筐体323の少なくともいずれかには、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタが設けられている。図6(C)に示す電子書籍に実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを搭載することで、表示部の表示むらを低減し、信頼性を向上させることができる。
【0119】
図6(D)は、携帯電話機であり、筐体340と筐体341の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体340と筐体341は、スライドし、図6(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。そして、筐体341は、表示パネル342、スピーカー343、マイクロフォン344、ポインティングデバイス346、カメラ用レンズ347、外部接続端子348などを備えている。そして、筐体340は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル349、外部メモリスロット350などを備えている。なお、アンテナは、筐体341に内蔵されている。筐体340と筐体341の少なくともいずれかには、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタが設けられている。図6(D)に示す携帯電話機に実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを搭載することで、表示部の表示むらを低減し、信頼性を向上させることができる。
【0120】
図6(E)は、デジタルカメラであり、本体361、表示部367、接眼部363、操作スイッチ364、表示部365、バッテリー366などによって構成されている。本体361内には、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタが設けられている。図6(E)に示すデジタルカメラに実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを搭載することで、表示部の表示むらを低減し、信頼性を向上させることができる。
【0121】
図6(F)は、テレビジョン装置370であり、筐体371、表示部373、スタンド375などで構成されている。テレビジョン装置370の操作は、筐体371が備えるスイッチや、リモコン操作機380により行うことができる。筐体371及びリモコン操作機380には、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタが搭載されている。図6(F)に示すテレビジョン装置に実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタを搭載することで、表示部の表示むらを低減し、信頼性を向上させることができる。
【実施例1】
【0122】
本実施例では、実施の形態1のトランジスタ、すなわち、図3(A)に示すトランジスタを実際に作製し、このトランジスタの断面形状のSTEM像を図7(A)及び図7(B)に示す。
【0123】
基板100としては、ガラス基板を用いた。なお、基板100と第1の配線層102の間には、酸化窒化シリコンにより下地絶縁層を形成した。
【0124】
第1の配線層102は、タングステンにより形成した。厚さは150nmとした。
【0125】
第1の絶縁層104は、酸化窒化シリコンにより形成した。厚さは100nmとした。
【0126】
半導体層106は、In−Ga−Zn系酸化物半導体により形成した。厚さは50nmとした。
【0127】
第2の配線層の第1の層108Aは、Tiにより形成し、厚さは100nmとした。第2の配線層の第2の層108Bは、Alにより形成し、厚さは200nmとした。第2の配線層の第3の層108Cは、Tiにより形成し、厚さは50nmとした。
【0128】
第2の絶縁層110は、酸化シリコンにより形成し、厚さは300nmとした。
【0129】
ここで、2種類のサンプルを準備して比較した。
【0130】
第1のサンプルでは、積層導電膜107を加工して第2の配線層108を形成するエッチングをBClガスとClガスの混合ガスのみで行った。
【0131】
第2のサンプルでは、積層導電膜107を加工して第2の配線層108を形成するエッチングを2段階で行い、第1のエッチング工程はBClガスとClガスの混合ガスで行い、第2のエッチング工程はSFガスのみで行った。
【0132】
図7(A)は、第1のサンプルにおける第2の配線層108の側面の断面STEM像を示す。図7(B)は、第2のサンプルにおける第2の配線層108の側面の断面STEM像を示す。
【0133】
図7(A)及び図7(B)からわかるように、第1のサンプルの半導体層106はエッチングされているが、第2のサンプルの半導体層106はほとんどエッチングされていない。すなわち、本発明の一態様である2段階のエッチング方法を用いることにより、エッチングされる膜の下に接して設けられている層が従来では深くエッチングされていたのに対し、エッチングされる膜の下に接して設けられている層がエッチングされることを防止することができた。
【符号の説明】
【0134】
100 基板
102 第1の配線層
104 第1の絶縁層
106 半導体層
107 積層導電膜
107A 第1の導電膜
107B 第2の導電膜
107C 第3の導電膜
107D 第1の導電膜
107E 第2の導電膜
107F 第3の導電膜
108 第2の配線層
108A 第2の配線層の第1の層
108B 第2の配線層の第2の層
108C 第2の配線層の第3の層
109 レジストマスク
109C レジストマスク
110 第2の絶縁層
112 第3の配線層
200 基板
204 下地絶縁層
206 半導体層
207 積層導電膜
207A 第1の導電膜
207B 第2の導電膜
207C 第3の導電膜
207D 第1の導電膜
207E 第2の導電膜
207F 第3の導電膜
208 第1の配線層
208A 第1の配線層の第1の層
208B 第1の配線層の第2の層
208C 第1の配線層の第3の層
209 レジストマスク
209C レジストマスク
210 絶縁層
212 第2の配線層
301 筐体
302 筐体
303 表示部
304 キーボード
311 本体
312 スタイラス
313 表示部
314 操作ボタン
315 外部インターフェイス
320 電子書籍
321 筐体
323 筐体
325 表示部
327 表示部
331 電源
333 操作キー
335 スピーカー
337 軸部
340 筐体
341 筐体
342 表示パネル
343 スピーカー
344 マイクロフォン
346 ポインティングデバイス
347 カメラ用レンズ
348 外部接続端子
349 太陽電池セル
350 外部メモリスロット
361 本体
363 接眼部
364 操作スイッチ
365 表示部
366 バッテリー
367 表示部
370 テレビジョン装置
371 筐体
373 表示部
375 スタンド
380 リモコン操作機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線層を形成し、
前記第1の配線層を覆って絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に半導体層を形成し、
前記半導体層上に第1の導電膜、第2の導電膜及び第3の導電膜をこの順に積層して形成し、
前記第3の導電膜上にレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクを用いて、前記第1乃至第3の導電膜に少なくとも2段階のエッチングを行って、3層の積層構造からなる第2の配線層を離間させて形成し、
前記2段階のエッチングが、
少なくとも前記第1の導電膜を露出させるまで行う第1のエッチング工程と、
前記第1の導電膜に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも高く、前記半導体層に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも低い条件により行う第2のエッチング工程と、を有し、
前記第2のエッチング工程後にレジスト剥離液を用いて前記レジストマスクを剥離することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
半導体層を形成し、
前記半導体層上に第1の導電膜、第2の導電膜及び第3の導電膜をこの順に積層して形成し、
前記第3の導電膜上にレジストマスクを形成し、
前記レジストマスクを用いて、前記第1乃至第3の導電膜に少なくとも2段階のエッチングを行って、3層の積層構造からなる第1の配線層を離間させて形成し、
前記第1の配線層及び前記半導体層を覆って絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記半導体層と重畳して第2の配線層を形成し、
前記2段階のエッチングが、
少なくとも前記第1の導電膜を露出させるまで行う第1のエッチング工程と、
前記第1の導電膜に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも高く、前記半導体層に対するエッチングレートが前記第1のエッチング工程よりも低い条件により行う第2のエッチング工程と、を有し、
前記第2のエッチング工程後にレジスト剥離液を用いて前記レジストマスクを剥離することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のエッチング工程は、主成分としてフッ素よりも塩素が多いガスを用いて行い、
前記第2のエッチング工程は、主成分として塩素よりもフッ素が多いガスを用いて行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1のエッチング工程は、BClガスとClガスの混合ガスを用いて行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記第2のエッチング工程はSFガスを用いて行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記レジスト剥離液は、前記第2の導電膜を腐食させる薬液であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1の導電膜は、前記第3の導電膜よりも厚いことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記第2の導電膜を形成する導電性材料は、前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜を形成する導電性材料よりも導電率が高く、
前記第2の導電膜は前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜よりも厚いことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜はチタン膜であり、
前記第2の導電膜はアルミニウム膜であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記半導体層は酸化物半導体層であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記酸化物半導体層の材料はIGZOであることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−39102(P2012−39102A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154661(P2011−154661)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】