説明

半導体装置の製造方法

【課題】所望のシリサイド膜を形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板10に形成されたシリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層3上、および半導体基板に形成されソース・ドレイン拡散層に隣接する素子分離絶縁膜の上に、金属を堆積して金属膜を形成し、第1の加熱温度の第1の加熱処理によりソース・ドレイン拡散層のシリコンとソース・ドレイン拡散層上の金属とを反応させて、ソース・ドレイン拡散層の上部をシリサイド化してシリサイド膜106を形成し、シリサイド膜を酸化させないようにして、素子分離絶縁膜の上の金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜105を形成し、第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理によりシリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、素子分離絶縁膜上の金属酸化膜および金属膜の未反応部分を選択的に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect TranSistor)のシリサイド化電極を形成するための半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の微細化が進んでいる。これに伴って、トランジスタのゲート寸法や素子分離絶縁膜幅、配線幅といった半導体基板面に水平な方向の寸法を縮小することが要求されている。さらには、ゲート電極の高さやソース・ドレイン拡散層の接合深さのような半導体基板面に垂直な方向の寸法も、縮小することが要求されている。
【0003】
その一方で、例えば、ゲート電極上や、ソース・ドレイン拡散層上に低抵抗なシリサイド膜を形成して、これらの領域における寄生抵抗を低減することが求められている。
【0004】
このため、ゲート電極上やソース・ドレイン拡散層表面に低抵抗なシリサイド膜を形成する、いわゆるサリサイド(SALICIDE:Self−Aligned Silicide)プロセスが適用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2005−19705号公報
【特許文献2】特開平11−251591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、所望のシリサイド膜を形成することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る実施例に従った半導体装置の製造方法は、
MISFETを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板に形成されたシリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層上、および前記半導体基板に形成され前記ソース・ドレイン拡散層に隣接する素子分離絶縁膜の上に、金属を堆積して白金を含む金属膜を形成し、
第1の加熱温度の第1の加熱処理により前記ソース・ドレイン拡散層のシリコンと前記ソース・ドレイン拡散層上の前記金属とを反応させて、前記ソース・ドレイン拡散層の上部をシリサイド化してシリサイド膜を形成し、
前記素子分離絶縁膜の上の前記金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜を形成し、
前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理により前記シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、
前記素子分離絶縁膜上の前記金属酸化膜および前記金属膜の未反応部分を選択的に除去することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様に係る実施例に従った半導体装置の製造方法は、
MISFETを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたシリコンを主成分とするゲート電極上、および前記前記ゲート電極の側面に形成された絶縁膜の表面上に、金属を堆積して金属膜を形成し、
第1の加熱温度の第1の加熱処理により前記ゲート電極のシリコンと前記ゲート電極上の前記金属とを反応させて、前記ゲート電極の上部をシリサイド化してシリサイド膜を形成し、
前記シリサイド膜を酸化させないようにして、前記絶縁膜の表面上の前記金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜を形成し、
前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理により前記シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、
前記絶縁膜の表面上の前記金属酸化膜および前記金属膜の未反応部分を選択的に除去することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様に係る実施例に従った半導体装置の製造方法は、
MISFETを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板に形成されたシリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層上、および前記半導体基板に形成され前記ソース・ドレイン拡散層に隣接する素子分離絶縁膜の上に、金属を堆積して白金を含む金属膜を形成しながら、第1の加熱温度の第1の加熱処理により前記ソース・ドレイン拡散層のシリコンと前記ソース・ドレイン拡散層上の前記金属とを反応させて、前記ソース・ドレイン拡散層の上部をシリサイド化してシリサイド膜を形成し、
前記素子分離絶縁膜の上の前記金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜を形成し、
前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理により前記シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、
前記素子分離絶縁膜上の前記金属酸化膜および前記金属膜の未反応部分を選択的に除去する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、所望のシリサイド膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明者が行った実験により新たに知得したMISFETのソース・ドレインのサリサイド技術に関する問題点について述べる。
【0011】
(比較例)
図1Aないし1Cは、比較例であるMISFETのサリサイドプロセスの各工程の断面を示す図である。また、図2は、図1Bに示す工程の素子分離領域と素子領域との境界近傍に注目した図である。なお、サリサイドプロセスとは、表面にシリコン(Si)が露出した部分にのみに選択的にシリサイドを形成する製造方法である。
【0012】
先ず、シリコンを主成分とするシリコン基板10上部にSiOやSiNなどの絶縁体で構成された素子分離絶縁膜1を形成することにより、素子領域と素子分離領域を形成する。このシリコン基板10の素子領域上にMISFETのゲート絶縁膜8、ポリシリコンからなるゲート電極4を積層し、例えば、リソグラフィ技術により、ゲート絶縁膜8、ゲート電極4をパターニングする。
【0013】
そして、不純物を素子領域に注入することにより、ゲート電極4を挟むようにシリコン基板10の表面に、シリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層3を形成する。そして、このゲート電極4の両側に、SiOやSiNなどの絶縁体で構成されたゲート側壁2を形成する。
【0014】
そして、図1Aに示すように、素子分離絶縁膜1やゲート側壁2のSiOやSiNなどの表面上と、ソース・ドレイン拡散層3やゲート電極4のSiが表面に露出した表面上とに、シリサイドを行うための金属膜5を成膜する。
【0015】
次に、図1Bに示すように、例えば、窒素雰囲気中で加熱処理を行うことにより、ソース・ドレイン拡散層3の上部およびゲート電極4の上部を選択的にシリサイド化して、シリサイド膜6を形成する。一方、SiOやSiN等で構成された素子分離絶縁膜1の表面上およびゲート側壁2の表面上の金属膜5は、未反応のまま残る。
【0016】
次に、図1Cに示すように、未反応の金属膜5を溶解しシリサイド膜6を溶解しない薬液により、素子分離絶縁膜1の表面上およびゲート側壁2の表面上の未反応の金属を除去する。これにより、Siが露出した部分のみにシリサイド膜6が形成される。
【0017】
なお、この薬液としては、シリサイド膜6が白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属を含む場合、例えば、王水が選択される。
【0018】
ここで、具体的な金属として、例えば、Ptを含有するNiを用いたNiシリサイドを形成する場合についての問題点を述べる。
【0019】
図3は、シリコン基板上に形成されたPtを含有するNiシリサイド膜の比抵抗と加熱処理の温度との関係を示す図である。なお、図3において、加熱処理の時間は、一例として30秒としている。
【0020】
図3に示すように、加熱処理の温度が400℃以上で、加熱時間が30秒の場合、Niシリサイドの組成が、NiSi(X>1)からNiSiに変化することが分かる。
【0021】
既述のように、図1Cに示す工程では、金属膜5が貴金属であるPtを含有しているため、金属膜5を除去(エッチング)する薬液として王水を用いる。このエッチング時に、ソース・ドレイン拡散層3およびゲート電極4上に形成したシリサイド膜6が酸化されないようにする必要がある。
【0022】
そのためには、図1Bに示す工程における該加熱処理を比較的高温、具体的には400℃以上の処理とし、NiSiのXを極力1に近くする(図3)。すなわち、Niシリサイドを、酸化に対する耐性が高いNiSiに近づける必要がある。
【0023】
例えば、加熱処理を400℃より低温にしてしまうと、図3に示すように、X>1の組成となるNiリッチシリサイドが形成され、王水で酸化される。この場合、シリサイド膜6の所望の抵抗値を得ることができない。
【0024】
一方、既述のような高温(例えば、400℃以上)の加熱処理では、図2に示すように、素子分離領域と素子領域の境界部7において、該加熱処理中に、素子分離絶縁膜1上の金属膜(Ni)5が、マイグレーションを起こす。その結果、ソース・ドレイン拡散層3の境界部7においては、素子分離絶縁膜1上のNiがマイグレーションして、ソース・ドレイン拡散層3へ流入する。これにより、境界部7において厚いシリサイド膜6が形成される。
【0025】
よって、ソース・ドレイン拡散層3の境界部7における接合リーク特性が劣化してしまう問題がある。
【0026】
なお、ゲート側壁2上の金属膜(Ni)5も、同様に、該加熱処理中に、マイグレーションを起こす。その結果、ゲート電極4の両側においては、ゲート側壁2上のNiがマイグレーションして、ゲート電極4へ流入する。これにより、ゲート電極4の両側において厚いシリサイド膜6が形成される。これにより、MISFETの特性(しきい値電圧等)が変化してしまう問題がある。
【0027】
そこで、本発明は、上記問題を解決可能な、MISFETのソース・ドレイン・ゲート部のメタライゼーションを行うサリサイド技術に関する半導体装置の製造方法を提供する。
【0028】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0029】
本実施例では、MISFETのソース・ドレイン・ゲート部のメタライゼーションを行うサリサイド技術に関する半導体装置の製造方法の一例について説明する。以下にその工程の概略の一例を示す。
1)通常のサリサイド技術と同様に、SiまたはSiGeまたはSiCなどからなるソース・ドレイン拡散層を形成し、ウェハ全面にPtを含有するNiを成膜する。
2)第1の加熱処理を行いソース・ドレイン拡散層のSiやSiGeをシリサイド化して、Niシリサイド膜を形成する。
3)酸化雰囲気の加熱処理で、素子分離絶縁膜上などにある未反応のNi膜を酸化して、Ni酸化膜を形成する。
4)該第1の加熱処理より高温の第2の加熱処理を行うことにより、Niシリサイド膜の組成をSiリッチにする。
5)王水により、Ni酸化膜とPtを除去する。
【0030】
本発明の一の態様に係る半導体装置の製造方法においては、高温の第2の加熱処理を行う前に、素子分離絶縁膜上のNiを酸化させてNi酸化物に変化させることにより、ソース・ドレイン拡散層へのNi流入を防ぐ。
【0031】
これにより、所望のシリサイド膜を形成し、MISFETの接合リークを低減する。
【0032】
以下、実施例1に係る、MISFETを形成するための半導体装置の製造方法について、MISFETのサリサイドプロセスに注目して詳細に説明する。
【0033】
図4Aないし図4Eは、実施例1に係る半導体装置の製造方法の各工程の断面を示す図である。
【0034】
先ず、既述の比較例と同様に、シリコンを主成分とするシリコン基板(半導体基板)10上部にSiOやSiNなどの絶縁体で構成された素子分離絶縁膜1を形成することにより、素子領域と素子分離領域を形成する。このシリコン基板10の素子領域上にMISFETのゲート絶縁膜8、ポリシリコンからなるゲート電極4を積層し、例えば、リソグラフィ技術により、ゲート絶縁膜8、ゲート電極4をパターニングする。
【0035】
そして、不純物を該素子領域に注入することにより、ゲート電極4を挟むようにシリコン基板10の表面に、シリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層3を形成する。そして、このゲート電極4の両側に、SiOやSiNなどの絶縁体で構成されたゲート側壁2を形成する。なお、ソース・ドレイン拡散層3およびゲート電極4には、ゲルマニウム(Ge)や炭素(C)等を含有していてもよい。
【0036】
そして、図4Aに示すように、素子分離絶縁膜1やゲート側壁2のSiOやSiNなどの表面上と、ソース・ドレイン拡散層3やゲート電極4のSiが表面に露出した表面上とに、CVD(Chemical Vapor Deposition)等により、金属を堆積する。これにより、シリサイドを行うための金属膜5を成膜する。
【0037】
ここでは、シリサイド化のための該金属には、例えば、ニッケル(Ni)が選択される。なお、この金属は、コバルト、鉄、およびチタン等であってもよい。
【0038】
また、金属膜5には、白金(Pt)、またはパラジウム(Pd)等の貴金属が含有されていてもよい。これにより、後に形成されるシリサイド膜の組成を、加熱処理により、所望の組成(例えば、NiSi)に制御し易くできる。
【0039】
ここでは、金属膜5にはPtが含有されているものとする。この場合、該CVDで堆積される金属(Ni)にPtが含まれる。
【0040】
次に、第1の加熱温度ht1(例えば、300℃)の第1の加熱処理h1により、ソース・ドレイン拡散層3のシリコンとソース・ドレイン拡散層3上の該金属(Ni)とを反応させる。これにより、ソース・ドレイン拡散層3の上部をシリサイド化してシリサイド膜106を形成する。
【0041】
また、該第1の加熱処理h1により、ゲート電極4のシリコンとゲート電極4上の該金属(Ni)とを反応させる。これにより、ゲート電極4の上部をシリサイド化してシリサイド膜106を形成する(図4B)。
【0042】
なお、第1の加熱処理h1は、例えば、窒素雰囲気で行われる。これにより、ソース・ドレイン拡散層2上およびゲート電極4上に選択的にPtを含有するシリサイド膜(Niシリサイド)106が形成され、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の金属膜(Ni)5は反応しないまま残る。
【0043】
ここで、該比較例では後の王水でNiシリサイドが酸化されないように400℃程度以上の加熱処理を行う必要があった。
【0044】
しかし、本実施例1では、該第1の加熱処理h1の第1の加熱温度ht1を、金属膜(Ni)5でマイグレーションしない程度の温度、例えば、400℃以下、望ましくは300℃程度とする。すなわち、この第1の加熱温度ht1は、該比較例の加熱処理の温度よりも低い。
【0045】
これにより、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上のNiが、マイグレーションすることにより、ソース・ドレイン拡散層3、ゲート電極4へ流入するのを抑制できる。すなわち、例えば、比較例の図2に示すように、シリサイド膜の膜厚が必要以上に増加するのを抑制することができる。
【0046】
一方で、該第1の加熱処理h1は低温熱処理(例えば300℃)であるため、既述の図3に示すように、シリサイド膜の組成NiSiは、X>1となるNiリッチな組成になる。
【0047】
次に、図4Cに示すように、シリサイド膜106を酸化させないようにして、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の金属膜5の少なくとも表面を選択的に酸化(酸化処理)して、金属酸化膜105を形成する。
【0048】
すなわち、例えば、300℃程度の酸化雰囲気で酸化処理(熱酸化)することにより、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の未反応のNiを酸化して、Ni酸化膜にする。このとき、未反応の金属(Ni)膜5を全て金属酸化膜にしてもよいし、表層部分だけ酸化してもよい。どの程度の金属酸化膜を形成するかは、境界近傍においてシリサイド膜106の膜厚を、どの程度薄くするかにより決めればよい。
【0049】
この酸化処理の条件は、ソース・ドレイン拡散層3上に形成されたシリサイドは酸化されないか、酸化されても僅かで、シリサイド膜106の比抵抗などに影響のない程度にすることが望ましい。上述の300℃程度の熱酸化処理は、この条件を満たす。
【0050】
このように少なくとも金属膜5の表面を酸化して金属酸化膜105を形成することにより、後の加熱処理による金属(Ni)のマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0051】
なお、該酸化処理には、例えば、オゾン(O)水等の酸化剤を含有した薬液による酸化(ウエット酸化)を適用してもよい。また、該酸化処理には、プラズマ酸素による酸化を適用してもよい。これらの方法は、熱酸化よりもより低温で金属酸化膜105を形成でき、シリサイド膜106の酸化をより抑制できる。
【0052】
ここで、ソース・ドレイン拡散層3上に形成されたシリサイド膜106の酸化を抑制するためには、金属膜5がPtを含有していることが重要である。以下、この理由について詳細に説明する。
【0053】
図5は、ソース・ドレイン拡散層3上に形成されたNiリッチな組成のシリサイド膜106の結晶状態を模式的に示す図である。
【0054】
図5に示すように、金属膜5が、Ptを含有することにより、Niリッチな組成のシリサイド膜106の結晶粒106gの結晶粒界、および、この結晶粒106gの表面には、PtまたはPtシリサイドが自己整合的に形成される。この結晶粒106gの表面に形成されたPtまたはPtシリサイドが、酸化に対する保護層となる。この保護膜は、シリサイド膜106の表面全体に自己整合的に形成されることになる。
【0055】
これにより、この図4Cに示す工程において、300℃程度の酸化処理により、Niリッチな組成のシリサイド膜106の結晶粒106gの表面が酸化されることを、該保護膜が防ぐことになる。
【0056】
つまり、該第1の加熱処理h1の温度を300℃程度まで低温化しても、Niリッチな組成のシリサイド膜106にPtを含有させることにより、該酸化処理においてシリサイド膜106の結晶粒106gの表面の酸化が抑制される。
【0057】
以上のように、Niリッチな組成のシリサイド膜106にPtを含有させることによって、該第1の加熱処理h1を300℃程度まで低温化可能である。
【0058】
これにより、本実施例においては、既述の比較例のように、素子分離上のNiがマイグレーションしてソース・ドレイン部へ流入し、ソース・ドレイン拡散層3の素子分離端のみに、厚いNiシリサイド膜が形成されるのを、抑制することができる。
【0059】
ここで、既述の酸化処理の後に、そのまま王水による処理を行うと、ソース・ドレイン拡散層3のNiリッチなシリサイド膜106が酸化されてしまう。
【0060】
そこで、図4Dに示すように、第1の加熱温度(例えば、300℃)ht1よりも高い第2の加熱温度(例えば、400℃)ht2の第2の加熱処理h2により、シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させる。すなわち、シリサイド膜の組成を、NiSi(X>1)から、酸化に対する耐性が高いNiSiに、近づける。これにより、シリサイド膜106をシリコンの濃度がより高いシリサイド膜106aにする。
【0061】
また、既述のように、本実施例1では、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の金属(Ni)は、金属酸化膜105になっているため、マイグレーションが抑制され、ソース・ドレイン拡散層3、ゲート電極4へ流入することはない。
【0062】
このように、SiOやSiN上の未反応のNiはNi酸化膜へ変化させてから、高温の第2の加熱処理h2を行っている。
【0063】
次に、図4Eに示すように、素子分離絶縁膜1の表面上およびゲート側壁2の表面上の金属酸化膜105および金属膜5の未反応部分(図示せず)を選択的に除去する。
【0064】
すなわち、金属酸化膜105および未反応の金属膜5を溶解しシリサイド膜106aを溶解しない薬液により、素子分離絶縁膜1の表面上およびゲート側壁2の表面上の金属酸化膜105および未反応の金属を除去する。この薬液としては、シリサイド膜106aが白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの貴金属を含む場合、例えば、王水が選択される。また、シリサイド膜106aが該貴金属を含まない場合は、硝酸過水(HNO+ HO)、塩酸過水(HCl+ HO)、硫酸過水(HSO+ HO)、などの薬液を用いてもよい。
【0065】
このとき、シリサイド膜106aは、図4Dに示す第2の加熱処理h2により形成された、Siリッチなシリサイド、具体的にはNiSiにより近い組成を有する。このため、シリサイド膜106aは、王水により酸化されない。
【0066】
以上の工程により、シリサイド化のための金属のマイグレーションを抑制して、所望の 膜厚を有するシリサイド膜を形成することができる。これにより、接合リーク特性の劣化を抑制し、所望の特性を有するMISFETを得ることができる。
【0067】
ここで、既述の図4Bから図4Dに示す工程は、例えば、それぞれ、400℃以下の窒素雰囲気の加熱処理、300℃程度の酸化処理、400℃以上の窒素雰囲気の加熱処理である。したがって、これらの処理を1つのシーケンス処理(すなわち、同一チャンバ内)で行ってもよい。
【0068】
例えば、図4Bに示す工程の後に、加熱処理チャンバへウェハを導入後、まず、窒素雰囲気で400℃未満の第1の加熱処理h1、例えば300℃の加熱処理を行う。そして、そのまま、酸素ガスを導入することで酸化処理を行う。
【0069】
続いて、酸素ガスの導入を窒素雰囲気にしながら400℃以上へ昇温して第2の加熱処理h2を行う。
【0070】
これにより、図4Bから図4Dに示す工程の処理を、一つの処理として(同一チャンバ内で)行うことができる。
【0071】
図4Bに示す工程では、第1の加熱処理h1は400℃未満(例えば、300℃)の窒素雰囲気で実施したが、以下に示す酸素を含む雰囲気でもよい。
【0072】
すなわち、第1の加熱処理h1は、ソース・ドレイン拡散層上にNiシリサイドを選択的に形成することが目的である。したがって、Niの酸化速度よりもNiのSiやGeに対する反応速度が速い状態になるように、酸素濃度と加熱処理温度を調整して加熱処理を行えばよい。
【0073】
具体的には、酸素濃度1%以下で300℃の加熱処理を第1の加熱処理h1として実施すればよい。このように、酸素濃度を1%まで許容することで、続く図4Cに示す工程の酸化処理との交互の処理を一つの装置(同一チャンバ内)で行う場合に、チャンバ内の窒素置換処理を行う時間を短縮することができる。
【0074】
上記と同様に、図4Dに示す工程における400℃以上の高温の窒素雰囲気の第2の加熱処理h2においても、酸素を含んでもよい。
【0075】
特に、図4Dに示す工程の第2の加熱処理h2では、100%の酸素雰囲気で処理を行っても、ソース・ドレイン上のシリサイドはほとんど酸化されないことを発明者は確認している。
【0076】
したがって、図4Cに示す工程と図4Dに示す工程とは、温度が異なるだけの酸化雰囲気の処理でもよい。
【0077】
以上のような加熱処理シーケンスで、図4Bから図4Dに示す工程の処理を一つの処理として(同一チャンバ内で)行ってよい。
【0078】
ここで、図6は、図4Bから図4Dに示す工程の処理を同一チャンバ内で行う場合のフローの一例を示す図である。
【0079】
図6において、横軸は処理開始からの処理時間であり、縦軸は、左の軸が温度、右の軸が酸素濃度である。
【0080】
図6に示すように、まず、時間t1の区間では、酸素濃度1%以下で300℃程度の第1の加熱処理h1(図4Bに示す工程)を行う。
【0081】
続いて、時間t2の区間では、例えば100%の酸素濃度で引き続き300℃程度の酸化処理(図4Cに示す工程、ここでは、熱酸化)を行う。
【0082】
続いて、時間t3の区間では、酸素濃度は1%−100%の何れでもよいが、例えば1%の酸素濃度で400℃以上の第2の加熱処理h2(図4Dに示す工程)を行う。
【0083】
以降は、図4Eに示す工程により、素子分離絶縁膜1の表面上およびゲート側壁2の表面上の金属酸化膜105および金属膜5の未反応部分(図示せず)を選択的に除去する。
【0084】
以上の工程によっても、既述のように、シリサイド化のための金属のマイグレーションを抑制して、所望の膜厚を有するシリサイド膜を形成することができる。これにより、接合リーク特性の劣化を抑制し、所望の特性を有するMISFETを得ることができる。
【0085】
以上のように、本実施例に係る半導体装置の製造方法によれば、所望のシリサイド膜を形成することができ、特に、MISFETの接合リークを低減することができる。
【0086】
なお、本実施例においては、素子分離絶縁膜上などの未反応の金属を酸化させて、ソース・ドレイン拡散層上のシリサイド膜を酸化させなければよい。したがって、金属としては、既述のNi等に限られず、金属酸化物を形成する金属であれば適用可能である。そして、シリサイド膜の表面にPtまたはPdを含む保護膜が形成される形態であれば適用可能である。
【実施例2】
【0087】
実施例1では、特に、素子分離絶縁膜上の金属(Ni)がソース・ドレイン拡散層へ流入することによる問題を述べた。
【0088】
しかし、例えば、NAND型フラッシュメモリのMISFETであるメモリセルトランジスタのゲート電極上に、サリサイドプロセスによるシリサイド膜を形成する際に、特に、問題が生じ得る場合がある。
【0089】
本実施例2では、このゲート電極上に、サリサイドプロセスによるシリサイド膜を形成する際に注目して、上記問題を解決する半導体装置の製造方法について述べる。
【0090】
図7Aないし図7Eは、実施例2に係る半導体装置の製造方法の各工程の断面を示す図である。
【0091】
図7Aに示すように、まず、半導体基板10上に形成されたトンネル絶縁膜301上に、電荷を蓄積するための例えばポリシリコンで構成される浮遊ゲート電極(FG)302を形成する。さらに、この浮遊ゲート電極302上に絶縁膜303を介してポリシリコンで構成される制御ゲート電極(CG)304を形成する。
【0092】
これらの電極をパターンニングすることにより、最小ゲート長で形成された電荷を書き込むメモリセルトランジスタMCと、ゲート長のより太い選択ゲートトランジスタSTとが形成される。なお、この選択ゲートトランジスタSTにおいて、絶縁膜303の開口部303aを介して相互に接続されたポリシリコン(浮遊ゲート電極)302とポリシリコン(制御ゲート電極)304とが、選択ゲート電極SGに相当する。
【0093】
次に、図7Bに示すように、CVD等により、ゲート電極間にSiOやSiN等の絶縁膜を埋め込むことにより、ゲート電極の側面に層間絶縁膜307を形成する。さらに、CMP(Chemical MechaNical Polishing)等により、平坦化する。これにより、制御ゲート電極(CG)304および選択ゲート電極(SG)304の上部が露出した構造が形成される。
【0094】
次に、図7Cに示すように、ゲート電極の上部をシリサイド化するためのNiPt等の金属で構成される金属膜308を、制御ゲート電極CG上、選択ゲート電極SG上、および層間絶縁膜307上に成膜する。
【0095】
ここでは、シリサイド化のための該金属は、コバルト、鉄、およびチタン等であってもよい。
【0096】
また、金属膜308には、白金(Pt)に代えて、パラジウム(Pd)等の貴金属が含有されていてもよい。これにより、後に形成されるシリサイド膜の組成を、加熱処理により、所望の組成(例えば、NiSi)に制御し易くできる。
【0097】
ここで、図8A、図8Bは、比較例の半導体装置の製造方法のサリサイドプロセスを用いて、ゲート電極の上部に、金属膜(NiPt)を形成する工程の断面を示す図である。
【0098】
比較例の方法では、図7Cに示す工程の後、シリサイド化のための加熱処理は、400℃程度を必要とする。このため、層間絶縁膜上307の金属膜(NiPt)308がマイグレーションして、ゲート電極へ流れ込む(図8A)。
【0099】
したがって、該加熱処理により、メモリセルトランジスタMCのようなゲート長が短い領域では、シリサイド膜(NiSi)309が厚くなる。一方、該加熱処理により、選択ゲートトランジスタSTなどゲート長が長い領域ではゲートの端部のみが厚くなる形状が形成される(図8B)。
【0100】
これにより、選択ゲートトランジスタSTで最適なシリサイド膜(NiSi)309の膜厚を形成しようとすると、メモリセルトランジスタMCにおいて過剰に厚いシリサイド膜(NiSi)309が形成されることとなる。これにより、例えば、シリサイド膜309のNiSiが絶縁膜303まで到達してメモリセルトランジスタMCの閾値を変化させるといった問題を引き起こす。
【0101】
そこで、本実施例2では、実施例1と同様に、図7Cに示す工程の後、層間絶縁膜307上の金属膜(NiPt)308がマイグレーションしないような第1の加熱温度(300℃程度)の第1の加熱処理h1を行う。これにより、NiSi(X>1)の組成を有するシリサイド膜310を形成する(図7D)。
【0102】
そして、未反応のNiPtの酸化処理を行って、後の第2の加熱処理h2によるマイグレーションを抑制させる。そして、第2の加熱温度(400℃以上)の第2の加熱処理h2を行う。これにより、シリサイド膜310のシリコンの濃度を増加させる。すなわち、シリサイド膜310の組成を、NiSi(X>1)から、酸化に対する耐性が高いNiSiに、近づける。
【0103】
以上により、層間絶縁膜307上のNiPtがマイグレーションによりゲート電極へ流入することを防ぐことができる。
【0104】
そして、最後に、王水により酸化したNiやPtをシリサイド膜(NiSi)に対して選択的に除去する。これにより、ゲート長が異なるメモリセルトランジスタおよび選択ゲートトランジスタのゲート電極上部に、等しい膜厚を有するシリサイド膜を形成することが可能になる(図7E)。
【0105】
以上のように、本実施例に係る半導体装置の製造方法によれば、所望のシリサイド膜を形成することができ、特に、NAND型フラッシュメモリのメモリセルトランジスタの所望のしきい値電圧を得ることができる。
【実施例3】
【0106】
実施例1では、金属膜(NiPt)5を成膜した後、第1の加熱処理h1により、ソース・ドレイン拡散層3のシリコンとソース・ドレイン拡散層3上の金属(Ni)とを反応させる方法について述べた。
【0107】
本実施例3では、金属膜(NiPt)5を形成しながら、第1の加熱温度h1の第1の加熱処理によりソース・ドレイン拡散層3のシリコンとソース・ドレイン拡散層3上の金属(Ni)とを反応させる方法について述べる。
【0108】
図9、図10は、実施例3に係る半導体装置の製造方法の各工程の断面を示す図である。
【0109】
先ず、実施例1と同様に、シリコンを主成分とするシリコン基板(半導体基板)10上部にSiOやSiNなどの絶縁体で構成された素子分離絶縁膜1を形成することにより、素子領域と素子分離領域を形成する。このシリコン基板10の素子領域上にMISFETのゲート絶縁膜8、ポリシリコンからなるゲート電極4を積層し、例えば、リソグラフィ技術により、ゲート絶縁膜8、ゲート電極4をパターニングする。
【0110】
そして、不純物を該素子領域に注入することにより、ゲート電極4を挟むようにシリコン基板10の表面に、シリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層3を形成する。そして、このゲート電極4の両側に、SiOやSiNなどの絶縁体で構成されたゲート側壁2を形成する。なお、ソース・ドレイン拡散層3およびゲート電極4には、ゲルマニウム(Ge)や炭素(C)等を含有していてもよい。
【0111】
そして、図9に示すように、素子分離絶縁膜1やゲート側壁2のSiOやSiNなどの表面上と、ソース・ドレイン拡散層3やゲート電極4のSiが表面に露出した表面上とに、例えばスパッタにより、金属を堆積する。これにより、シリサイドを行うための金属膜5を成膜する。
【0112】
さらに、このスパッタによる金属膜5の成膜しながら第1の加熱温度ht1(例えば、300℃)の第1の加熱処理h1により、ソース・ドレイン拡散層3のシリコンとソース・ドレイン拡散層3上の該金属(Ni)とを反応させる。これにより、ソース・ドレイン拡散層3の上部をシリサイド化してシリサイド膜106を形成する。
【0113】
さらに、該第1の加熱処理h1により、ゲート電極4のシリコンとゲート電極4上の該金属(Ni)とを反応させる。これにより、ゲート電極4の上部をシリサイド化してシリサイド膜106を形成する(図9)。全ての該金属がシリサイド反応した場合は、実施例1と比較して、加熱処理工程が省略されるので、スループットを向上することができる。
【0114】
なお、第1の加熱処理h1により、全ての該金属がシリサイド反応していない場合は、金属膜5が残存するため、例えば、図11に示すようになる。
【0115】
また、シリサイド化のための該金属には、例えば、ニッケル(Ni)が選択される。なお、この金属は、コバルト、鉄、およびチタン等であってもよい。
【0116】
また、金属膜5には、白金(Pt)、またはパラジウム(Pd)等の貴金属が含有されていてもよい。これにより、後に形成されるシリサイド膜の組成を、加熱処理により、所望の組成(例えば、NiSi)に制御し易くできる。
【0117】
ここでは、金属膜5にはPtが含有されているものとする。この場合、該スパッタで堆積される金属(Ni)にPtが含まれる。
【0118】
なお、第1の加熱処理h1は、例えば、窒素雰囲気で行われる。これにより、ソース・ドレイン拡散層2上およびゲート電極4上に選択的にPtを含有するシリサイド膜(Niシリサイド)106が形成され、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の金属膜(Ni)5は反応しないまま残る。
【0119】
この第1の加熱処理h1には、例えば、該スパッタと同時に、ホットプレートにより半導体基板10を加熱する処理が含まれる。
【0120】
また、図11に示すように、金属膜5が残存する場合は、金属膜5の形成後であって該酸化処理の前に、金属膜5を形成した装置(例えば、スパッタ装置)内において、第1の加熱処理h1から継続する加熱処理(例えば、第1の加熱処理h1と同じ条件)を実施してもよい。例えば、金属膜5の形成後であって該酸化処理の前に、該装置内のホットプレートによる該加熱処理を実施する。
【0121】
これにより、ソース・ドレイン拡散層3のシリコンとソース・ドレイン拡散層3上の未反応の該金属とを反応させ、且つ、ゲート電極4のシリコンとゲート電極4上の未反応の該金属とを反応させる。すなわち、所定の厚さを有するシリサイド膜106が形成され、所定の抵抗値を有するソース・ドレイン拡散層3、ゲート電極4を得ることができる。
【0122】
特に、該装置内のホットプレートによる該加熱処理を実施する場合は、金属膜5を形成した装置とは別の装置内で加熱処理する場合と比較して、スループットを向上することができる。
【0123】
次に、図10に示すように、シリサイド膜106を酸化させないようにして、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の金属膜5の少なくとも表面を選択的に酸化(酸化処理)して、金属酸化膜105を形成する。
【0124】
すなわち、例えば、300℃程度の酸化雰囲気で酸化処理(熱酸化)することにより、素子分離絶縁膜1上およびゲート側壁2の表面上の未反応のNiを酸化して、Ni酸化膜にする。このとき、未反応の金属(Ni)膜5を全て金属酸化膜にしてもよいし、表層部分だけ酸化してもよい。どの程度の金属酸化膜を形成するかは、境界近傍においてシリサイド膜106の膜厚を、どの程度薄くするかにより決めればよい。
【0125】
この酸化処理の条件は、ソース・ドレイン拡散層3上に形成されたシリサイドは酸化されないか、酸化されても僅かで、シリサイド膜106の比抵抗などに影響のない程度にすることが望ましい。上述の300℃程度の熱酸化処理は、この条件を満たす。
【0126】
このように少なくとも金属膜5の表面を酸化して金属酸化膜105を形成することにより、後の加熱処理による金属(Ni)のマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0127】
なお、該酸化処理には、例えば、オゾン(O)水等の酸化剤を含有した薬液による酸化(ウエット酸化)を適用してもよい。また、該酸化処理には、プラズマ酸素による酸化を適用してもよい。これらの方法は、熱酸化よりもより低温で金属酸化膜105を形成でき、シリサイド膜106の酸化をより抑制できる。
【0128】
以降は、実施例1の図4Dから図4Eに示す工程と同様の工程が実施される。これにより、実施例1と同様に、シリサイド化のための金属のマイグレーションを抑制して、所望の膜厚を有するシリサイド膜を形成することができる。これにより、接合リーク特性の劣化を抑制し、所望の特性を有するMISFETを得ることができる。
【0129】
ここで、図12は、スパッタによりシリコン基板上に形成されたPtを含有するNiシリサイド膜の比抵抗と該スパッタ時における第1の加熱処理h1の温度との関係を示す図である。なお、図12において、スパッタ後酸化処理有の条件(本実施例)は、該酸化処理後、第2の加熱処理h2を行うものである。また、スパッタ後酸化処理無の条件(比較例)は、該スパッタ後、酸化処理をせずに、第2の加熱処理h2を行うものである。
【0130】
図12に示すように、スパッタ時の第1の加熱処理h1の温度が、室温〜200℃の場合、スパッタ後に酸化処理を行う条件は、スパッタ後に酸化処理を行わない条件と比較して、比抵抗が大きくなる。
【0131】
すなわち、スパッタ時の第1の加熱処理h1の温度が、室温〜200℃の場合、該スパッタ後の酸化処理により、未反応の金属が酸化される。これにより、その後の第2の加熱処理h2を行っても、シリサイド膜が所定の膜厚まで形成されない。
【0132】
一方、図12に示すように、スパッタ時の第1の加熱処理h1の温度が、225℃〜275℃の場合、スパッタ後に酸化処理を行う条件は、スパッタ後に酸化処理を行わない条件と比較して、比抵抗が同程度になる。
【0133】
すなわち、スパッタ時の第1の加熱処理h1の温度が、225℃〜275℃の場合、該第1の加熱処理h1によりほとんどの該金属がシリコンと反応するため、該酸化処理により酸化される未反応の金属がほとんどない。これにより、その後の第2の加熱処理h2を行ったときに、シリサイド膜が所定の膜厚まで形成される。
【0134】
このように、金属膜を成膜するスパッタ時に、第1の加熱処理h1をすることにより、所定の膜厚を有するシリサイド膜を形成することができる。
【0135】
以上のように、本実施例3に係る半導体装置の製造方法によれば、所望のシリサイド膜を形成することができ、特に、MISFETの接合リークを低減することができる。
【0136】
さらに、本実施例3では、金属膜の形成と同時にシリサイド膜を形成するので、実施例1と比較して、工程数が減ることになる。すなわち、実施例3では、スループット向上やコストダウンを図ることができる。
【0137】
なお、本実施例3においても、実施例1と同様に、素子分離絶縁膜上などの未反応の金属を酸化させて、ソース・ドレイン拡散層上のシリサイド膜を酸化させなければよい。したがって、金属としては、既述のNi等に限られず、金属酸化物を形成する金属であれば適用可能である。そして、シリサイド膜の表面にPtまたはPdを含む保護膜が形成される形態であれば適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1A】比較例であるMISFETのサリサイドプロセスの工程の断面を示す図である。
【図1B】図1Aに続く、比較例であるMISFETのサリサイドプロセスの各工程の断面を示す図である。
【図1C】図1Bに続く、比較例であるMISFETのサリサイドプロセスの各工程の断面を示す図である。
【図2】図1Bに示す工程の素子分離領域と素子領域との境界近傍に注目した図である。
【図3】シリコン基板上に形成されたPtを含有するNiシリサイド膜の比抵抗と加熱処理の温度との関係を示す図である。
【図4A】実施例1に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図4B】図4Aに続く、実施例1に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図4C】図4Bに続く、実施例1に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図4D】図4Cに続く、実施例1に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図4E】図4Dに続く、実施例1に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図5】ソース・ドレイン拡散層3上に形成されたNiリッチな組成のシリサイド膜106の結晶状態を模式的に示す図である。
【図6】図4Bから図4Dに示す工程の処理を同一チャンバ内で行う場合のフローの一例を示す図である。
【図7A】実施例2に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図7B】図7Aに続く、実施例2に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図7C】図7Bに続く、実施例2に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図7D】図7Cに続く、実施例2に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図7E】図7Dに続く、実施例2に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図8A】比較例の半導体装置の製造方法のサリサイドプロセスを用いて、ゲート電極の上部に、金属膜(NiPt)を形成する工程の断面を示す図である。
【図8B】図8Aに続く、比較例の半導体装置の製造方法のサリサイドプロセスを用いて、ゲート電極の上部に、金属膜(NiPt)を形成する工程の断面を示す図である。
【図9】実施例3に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図10】図9に続く、実施例3に係る半導体装置の製造方法の各工程の断面を示す図である。
【図11】実施例3に係る半導体装置の製造方法の工程の断面を示す図である。
【図12】スパッタによりシリコン基板上に形成されたPtを含有するNiシリサイド膜の比抵抗と該スパッタ時における第1の加熱処理h1の温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0139】
1 素子分離絶縁膜
2 ゲート側壁
3 ソース・ドレイン拡散層
4 ゲート電極
5 金属膜
6、106、106a シリサイド膜
7 境界部分
8 ゲート絶縁膜
10 半導体基板(シリコン基板)
105 金属酸化膜
106g 結晶粒
301 トンネル絶縁膜
302 浮遊ゲート電極(FG)
303 絶縁膜
303a 開口部
304 制御ゲート電極(CG)
307 層間絶縁膜
308 金属膜
309、310 シリサイド膜
MC メモリセルトランジスタ
ST 選択ゲートトランジスタ
SG 選択ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MISFETを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板に形成されたシリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層上、および前記半導体基板に形成され前記ソース・ドレイン拡散層に隣接する素子分離絶縁膜の上に、金属を堆積して白金を含む金属膜を形成し、
第1の加熱温度の第1の加熱処理により前記ソース・ドレイン拡散層のシリコンと前記ソース・ドレイン拡散層上の前記金属とを反応させて、前記ソース・ドレイン拡散層の上部をシリサイド化してシリサイド膜を形成し、
前記素子分離絶縁膜の上の前記金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜を形成し、
前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理により前記シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、
前記素子分離絶縁膜上の前記金属酸化膜および前記金属膜の未反応部分を選択的に除去する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
MISFETを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたシリコンを主成分とするゲート電極上、および前記前記ゲート電極の側面に形成された絶縁膜の表面上に、金属を堆積して金属膜を形成し、
第1の加熱温度の第1の加熱処理により前記ゲート電極のシリコンと前記ゲート電極上の前記金属とを反応させて、前記ゲート電極の上部をシリサイド化してシリサイド膜を形成し、
前記シリサイド膜を酸化させないようにして、前記絶縁膜の表面上の前記金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜を形成し、
前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理により前記シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、
前記絶縁膜の表面上の前記金属酸化膜および前記金属膜の未反応部分を選択的に除去する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の加熱処理は、酸素濃度1%以下の雰囲気で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
MISFETを形成する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板に形成されたシリコンを主成分とするソース・ドレイン拡散層上、および前記半導体基板に形成され前記ソース・ドレイン拡散層に隣接する素子分離絶縁膜の上に、金属を堆積して白金を含む金属膜を形成しながら、第1の加熱温度の第1の加熱処理により前記ソース・ドレイン拡散層のシリコンと前記ソース・ドレイン拡散層上の前記金属とを反応させて、前記ソース・ドレイン拡散層の上部をシリサイド化してシリサイド膜を形成し、
前記素子分離絶縁膜の上の前記金属膜の少なくとも表面を選択的に酸化して、金属酸化膜を形成し、
前記第1の加熱温度よりも高い第2の加熱温度の第2の加熱処理により前記シリサイド膜のシリコンの濃度を増加させ、
前記素子分離絶縁膜上の前記金属酸化膜および前記金属膜の未反応部分を選択的に除去する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜の形成後であって前記酸化処理の前に、加熱処理により、前記ソース・ドレイン拡散層のシリコンと前記ソース・ドレイン拡散層上の未反応の前記金属とを反応させる
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−28084(P2010−28084A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41177(P2009−41177)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】